説明

インスリン様増殖因子I型受容体(IGF−1R)を標的とする新規クラスの単一特異性ヒト化抗体および二重特異性ヒト化抗体

本発明は、抗IGF−1R抗体またはフラグメントの組成物および使用方法を提供する。好ましくは、この抗体はIGF−1Rに結合するが、IRには結合せず;IGF−1Rのアゴニストではなく;単離されたIGF−1RへのIGF−1またはIGF−2の結合をブロックせず;無傷細胞におけるIGF−1によるIGF−1Rの活性化を効果的に中和し;IGF−1RへのR1抗体の結合をブロックする。この抗体は、重鎖CDR配列
DYYMY(配列番号:1)、YITNYGGSTYYPDTVKG(配列番号:2)および
QSNYDYDGWFAY(配列番号:3)および軽鎖CDR配列KASQEVGTAVA(配列番号:4)、WASTRHT(配列番号:5)およびQQYSNYPLT(配列番号:6)を含む、マウスR1抗体、キメラR1抗体、ヒト化R1抗体またはヒトR1抗体とすることができる。好ましくは、この抗体は、IGF−1Rのシステインリッチドメインの前半部(残基151−222)を含む、IGF−1Rのエピトープに結合する。
抗IGF−1R抗体は、癌などの種々の疾患の診断または治療に利用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2010年1月19日出願のPCT特許出願PCT/US10/21345号の優先権を請求し、その全内容が参照により本明細書に組み込まれる、。
【0002】
配列一覧
本出願はEFS−Webを通じて提出され、その全内容が参照により本明細書に組み込まれる配列表を含む。2010年3月9日作成の前記ASCIIコピーはIMM316WO2.txtと命名され、サイズは19,152バイトである。
【背景技術】
【0003】
本発明は、インスリン様増殖因子I型受容体(IGF−1R)には結合するが、インスリン受容体(IR)には結合しない抗体および抗原結合抗体フラグメントに関する。好ましい実施形態において、抗IGF−1R抗体はIGF−1Rのアゴニストではない。より好ましい実施形態において、抗IGF−1R抗体は、アミノ酸残基151から222の間のIGF−1Rのシステインリッチドメインの前半部を含むIGF−1Rのエピトープに結合する。最も好ましい実施形態において、抗IGF−1R抗体は、IGF−1またはIGF−2が単離されたIGF−1Rに結合するのをブロックしないが、無傷細胞または組織においてin situでIGF−1によるIGF−1Rの活性化を効果的に中和する。その他の実施形態において、R1と呼ばれるマウス抗IGF−1R抗体は、重鎖可変領域相補性決定領域(CDR)配列CDR1(DYYMY、配列番号:1)、CDR2(YITNYGGSTYYPDTVKG、配列番号:2)およびCDR3(QSNYDYDGWFAY、配列番号:3)ならびに軽鎖可変領域CDR配列CDR1(KASQEVGTAVA、配列番号:4)、CDR2(WASTRHT、配列番号:5)およびCDR3(QQYSNYPLT、配列番号:6)を含む。より好ましい実施形態において、抗IGF−1R抗体は、hR1と呼ばれるヒト化R1抗体、キメラR1抗体またはヒトR1抗体であり、以上で挙げたCDR配列を含む。最も好ましい実施形態において、抗IGF−R1抗体は、上記のCDR配列ならびにヒト抗体定常配列およびフレームワーク(FR)領域配列を含むヒト化抗体である。
【0004】
このような抗体およびフラグメントは、以下に限定されないが、ウィルムス腫瘍、ユーイング肉腫、 神経芽細胞腫、神経内分泌腫瘍、メラノーマ、膠芽腫、皮膚、胸部、頭頸部、結腸、 直腸、胃、食道、卵巣、膀胱、前立腺、肝臓、腎臓、膵臓および/または肺の癌、ならびにリンパ腫、白血病および骨髄腫を含め、IGF−1Rの発現が、癌細胞の形質転換、増殖、生存、転移または他の治療薬に対する抵抗に重要となる多種多様な癌の検出および/または治療に有用である。抗IGF−1R抗体および/または抗体フラグメントは、単独で、またはその他の細胞毒性薬、たとえば癌化学療法剤、アポトーシス促進剤、放射性核種、EGFR阻害剤(たとえば、エルロチニブまたは抗EGFR抗体)、抗血管形成剤(たとえば、抗Vたとえば、F
および抗P1GFペプチドまたは抗体)および/またはトリホスチン(たとえば、AG1024、AG538)、ピロロ[2,3−d]−ピリミジン誘導体(たとえば、NVP−AEW541)もしくはその他の抗IGF−1R抗体などのその他のIGF−1R阻害剤、またはその他の腫瘍関連抗原(TAA)に対する抗体などと組み合せて組成物中および治療方法として使うことができる。抗IGF−1R抗体
は、裸の抗体であってもよく、あるいは1つまたは複数の治療薬および/または診断薬とコンジュゲートさせてもよい。抗体はマウス、キメラ、ヒト化またはヒト抗IGF−1R抗体とすることができる。
【0005】
他の実施形態は、場合によっては別の異なる抗体またはフラグメントと併用される、少なくとも1つの抗IGF−1R、モノクローナル抗体(MAb)またはそのフラグメントを含む多重特異性抗体、二重特異性抗体、抗体融合タンパク質またはそのフラグメントに関しうる。抗体、フラグメントまたは抗体融合タンパク質は治療イムノコンジュゲートとして単独で投与されることも、1つまたは複数の治療薬、他の裸の抗体またはイムノコンジュゲートと組み合せて投与することもできる。さらに他の実施形態は、抗IGF−1R抗体または抗体融合タンパク質をコード化しているDNA配列、そのDNA配列を含むベクターおよび宿主細胞、ならびに抗IGF−1R抗体を作製する方法に関する。さらなる実施形態は、抗IGF−1R抗体、融合タンパク質および/またはそれらのフラグメントを組み込むドック・アンド・ロック(DNL)技術を用いて作製される多価多重特異性および/または多機能の構築体に関する。
【0006】
インスリン様増殖因子I型受容体(IGF−1R)は、多種多様な細胞内経路を調節するチロシンキナーゼ受容体という大きなクラスに所属する。IGF−1Rは構造的にインスリンに類似したポリペプチドホルモン、IGF−1に結合する(Laron、Mol Pathol、2001、54:311−16)。IGF−1受容体はインスリン受容体(IR)と相同であり、IRと全体で配列相同性の約70%を共有している(RiedemannおよびMacaulay、Endocrine−Related Cancer、2006、13:S33−43)。驚くにはあたらないが、IGF−1R
に対抗するために開発された阻害剤はインスリン受容体との交差反応性を示す傾向があり、この種の化合物の毒性プロフィールの少なくとも一部の原因となっている(MillerおよびYee、2005、Cancer Res.65:10123−27;RiedemannおよびMacaulay、2006)。
【0007】
IGF系は細胞の増殖、分化、アポトーシスおよび形質転換の調節に重要な役割を果たす(Jonesら、Endocrinology Rev.1995、16:3−34)。IGF系は、2つの受容体、すなわちインスリン様増殖因子受容体1(IGF−1R;、CD221)およびインスリン様増殖因子受容体2 (IGF−2R;、CD222);2つのリガンド、すなわちインスリン様増殖因子1(IGF−1)およびIGF−2;ならびに複数のIGF結合タンパク質(IGFBP−1からIGFBP−6)から成る。さらに、IGFBPプロテアーゼ
(たとえば、カスパーゼ、メタロプロテイナーゼ、前立腺特異抗原)の大きなグループはIGFに結合したIGFBPを加水分解し、遊離IGFを放出するが、その後、遊離IGFはIGF−1R
およびIGF−2Rと相互作用する。
【0008】
IGF−1Rは、2つの細胞外αサブユニット (130−135kD)と細胞質チロシンキナーゼドメインを含む2つの膜貫通βサブユニット(95kD)とから成る。IGF−1Rは、インスリン受容体(IR)同様、共有結合二量体(α2β2)構造を有している点で、他の受容体チロシンキナーゼファミリーメンバーとは異なる。IGF−1Rは、キナーゼドメインにおいてIRに対して84%の配列同一性を有し、膜およびC−末端領域ではそれぞれ61%と44% の配列同一性を有する(Ulrichら、EMBOJ.、1986、5:2503−12;Blakesleyら、サイトカイン Growth Factor Rev.、1996、7:153−56)。
【0009】
IGF−1およびIGF−2 は、IGF−1Rの活性化リガンドである。IGF−1およびIGF−2がα鎖に結合すると、構造変化が引き起こされ、その結果、特定のチロシン残基で各β鎖の自己リン酸化が起こり、受容体が脱リン酸化された不活性状態からリン酸化された活性状態へと変化する。キナーゼドメインの活性化ループにおける3つのチロシン残基
(131、1135および1136のTyr残基)の活性化により、 触媒効果が増加し、IRS−1およびShcアダプタータンパク質などの基質のドッキングとリン酸化が引き起こされる。これらの基質の活性化は、生存(PI3K、AKT、TOR、S6)および/または
増殖(マイトジェン活性化プロテインキナーゼ、p42/p44)のシグナル伝達系に関与する他のタンパク質のリン酸化を引き起こす(Pollakら、Nature Reviews Cancer.2004、4:505−516;Basergaら、Biochim Biophys Acta.1997.1332:F105−F126;Basergaら、Int.J.Cancer.2003、107:873−77)。
【0010】
IGF−1R は正常細胞と癌細胞の両方において抗アポトーシス効果を持つ(Resnicoffら、1995、Cancer Res.55:2463−69;Kangら、Am J Physiol Renal Physiol. 2003、285:F1013−24;RiedemannおよびMacaulay、2006)。IGF−1Rの活性は、
化学療法剤、放射性核種およびEGFR阻害剤など、多種多様な細胞毒性薬に対する抵抗の発現が顕著であることが報告されている(Jonesら、Endocr Relat Cancer 2004、11:793−814;Warshamana−Greeneら、2005、Clin. Cancer Res、11:1563−71;RiedemannおよびMacaulay、2006;Lloretら、2007,Gynecol. Oncol、106:8−11)。IGF−1Rは、メラノーマ、神経芽細胞腫、結腸癌、前立腺癌、腎臓癌、乳癌および膵臓癌など、広い範囲の
腫瘍株で過剰発現される(Ellisら、1998、Breast Cancer Treat.52:175−84;van Golenら、2000、Cell Death Differ.7:654−65;Zhangら、2001、Breast Cancer Res.2:170−75;Jonesら、2004;RiedemannおよびMacaulay、2006)。機能性IGF−1R
は形質転換に必要であり、癌細胞の増殖、生存および転移を促進する(RiedmannおよびMacaulay、2006)。
【0011】
チルホスチン、ピロロ[2,3−d]−ピリミジン誘導体、ノルジヒドログアイアレチン酸類似体、ジアリール尿素、AG538、AG1024、NVP−AEW541、NVP−ADW742、BMS−5326924、BMS−554417、OSI−906、INSM−18、ルテオリン、シンバスタチン、シリビニン、紅茶ポリフェノール、
ピクロポドフィリン(picropodophyllin)、抗IGF−1R抗体 およびsiRNA阻害剤など、抗癌剤として使用する目的でIGF−1R阻害剤を開発する試みが行なわれてきた(Arteagaら、1998、J Clin Invest、84:1418−23;Warshamana−Greeneら、2005;Klein
およびFischer、2002、Carcinogenesis 23:217−21;Blumら、2000、Biochemistry 39:15705−12;Garcia−Echeverriaら、2004、Cancer Cell 5:231−39;Garber、2005、JNCI97:790−92;Bellら、2005、Biochemistry 44:930−40;Wuら、2005、Clin Cancer Res 11:3065−74;Wangら、2005、Mol Cancer Ther 4:1214−21;Singhおよび
Agarwal、2006、Mol Carinog、45:436−42;Gableら、2006、Mol Cancer Ther 5:1079−86;Niuら、Cell Biol Int.、2007、31:156−64;Blechaら、2007、Biorg Med Chem Lett、17:4026−29;Qianら、2007、Acta Biochim Biopys Sin、39:137−47;Fangら、2007、Carcinogenesis 28:713−23;Cohenら、2005、Clin Cancer Res 11:2063−73;Sekineら、Biochem Biophys Res Commun.、2008、25:356−61;Haluskaら、2008、J Clin Oncol、26:5月20日増補;アブストラクト14510;米国特許公報第2006−233810号
、その各々の実施例のセクションを参照により本明細書に組み込む)。通常、これらの薬剤は、IGF−1R
とIRの両方に程度の差はあれ、交差反応し、および/または IGF−1Rアゴニストとして作用する傾向を示した。癌治療にこのような薬剤を利用することは、それらの毒性によって制限を受けてきた(RiedemannおよびMacaulay、2006)。当分野では、(i)インスリン受容体と交差反応しない;(ii)より低い毒性プロフィールを示す;(iii)IGF−1R発現細胞においてIGF−1およびIGF−2の効果を中和する;(iv)好ましくは、IGF−1Rアゴニストとして効果しない;および(v単離したIGF−1Rへの結合にIGF−1
またはIGF−2と競合しなくてよい抗IGF−1R抗体の必要が存在している。
【発明の概要】
【0012】
本発明は、抗IGF−1R抗体またはその抗原結合フラグメントの組成物および使用方法を提供する。好ましい実施形態において、抗IGF−1R抗体はIGF−1Rには結合するが、IRには結合しない。より好ましい実施形態において、抗IGF−1R抗体
はIGF−1Rのアゴニストではない。最も好ましい実施形態において、抗IGF−1R抗体はヒトIGF−1R配列のアミノ酸残基151から222の間のIGF−1Rのシステインリッチドメインの前半部を含むIGF−1Rのエピトープに結合する(たとえば、Adamsら、Cell Mol Life Sci 57:1050−93、2000;NCBI Accession No.AAB22215を参照されたい)。フューリンによるプロテアーゼ開裂は、残基1−706から成るα鎖と残基
711−1337から成るβ鎖との産生をもたらす。 残基151−222は、システインリッチドメイン(残基151−300)のN末端側の半分から成る。
【0013】
好ましくは、抗IGF−1R抗体は、重鎖CDR配列CDR1(DYYMY、 配列番号:1)、CDR2(YITNYGGSTYYPDTVKG、配列番号:2)およびCDR3(QSNYDYDGWFAY、配列番号:3)ならびに軽鎖CDR
配列CDR1(KASQEVGTAVA、 配列番号:4)、CDR2(WASTRHT、 配列番号:5)およびCDR3(QQYSNYPLT、配列番号:6)を含む、マウス抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体もしくはヒト抗体またはそれらの抗原結合フラグメントである。代替実施形態では、抗IGF−1R抗体は、同一のエピトープに結合するおよび/または重鎖CDR配列CDR1(DYYMY、
配列番号:1)、CDR2(YITNYGGSTYYPDTVKG、 配列番号:2)およびCDR3(QSNYDYDGWFAY、配列番号:3)ならびに軽鎖CDR配列のCDR1(KASQEVGTAVA、配列番号:4)、CDR2(WASTRHT、配列番号:5)およびCDR3(QQYSNYPLT、配列番号:6)を含む、マウスR1抗体のIGF−1Rへの結合をブロックするキメラ抗体、ヒト化抗体またはヒト抗体である。抗IGF−1R抗体は、裸の抗体であっても、少なくとも1つの治療薬および/または診断薬に結合したイムノコンジュゲートであってもよい。
【0014】
種々の実施形態は、少なくとも1つの抗IGF−1R MAbもしくはそのフラグメントまたは第1の抗IGF−1R MAbもしくはそのフラグメントと第2のMAbとを含む、多重特異性抗体、二重特異性抗体または抗体融合タンパク質に関しうる。その他の実施形態は、第1の抗IGF−1R MAbまたはそのフラグメントと第2のMAbの癌治療に使用するための薬学的組成物または使用方法に関しうる。第2のMAbは、たとえば、標的設定可能な構築体上の腫瘍関連抗原(TAA)、すなわちハプテンと結合することができる。当該技術分野では種々の腫瘍関連抗原が知られており、そのような既知のTAAはいずれも、以下に限定されないが、炭酸脱水酵素IX、CCCL19、CCCL21、CSAp、CD1、CD1a、CD2、CD3、CD4、CD5、CD8、CD11A、CD14、CD15、CD16、CD18、CD19、IGF−1R、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD29、CD30、CD32b、CD33、CD37、CD38、CD40、CD40L、CD45、CD46、CD52、CD54、CD55、CD59、CD64、CD66a−e、CD67、CD70、CD74、CD79a、CD80、CD83、CD95、CD126、CD133、CD138、CD147、CD154、AFP、PSMA、CEACAM5、CEACAM−6、B7、フィブロネクチンのED−B、因子H、FHL−1、Flt−3、葉酸受容体、GROB、HMGB−1、低酸素誘導因子(HIF)、HM1、24、インスリン様増殖因子1(ILGF−1)、IFN−γ、IFN−α、IFN−β、IL−2、IL−4R、IL−6R、IL−13R、IL−15R、IL−17R、IL−18R、IL−6、IL−8、IL−12、IL−15、IL−17、
IL−18、IL−25、IP−10、 MAGE、 mCRP、MCP−1、MIP−1A、 MIP−1B、 MIF、 MUC1、
MUC2、 MUC3、MUC4、MUC5、PAM4抗原、NCA−95、
NCA−90、Ia、HM1.24、EGP−1、EGP−2、HLA−DR、テネイシン、Le(y)、RANTES、
T101、 TAC、 Tn 抗原、Thomson−Friedenreich 抗原、 腫瘍壊死抗原、TNF−α、TRAIL受容体(R1およびR2)、VEGFR、EGFR、P1GF、補体因子
C3、C3a、C3b、C5a、C5および癌遺伝子産物を含め、第2の MAbによって標的にすることができる。
【0015】
第2のMAbは、以下に限定されないが、列挙された各特許または出願の本文が図および実施例のセクションに関して、参照により本明細書に組み込まれる、hPAM4(米国特許第7,282,567号)、hA20(米国特許第7,251,164号)、hA19(米国特許第7,109,304号)、hIMMU31(米国特許第7,300,655号)、hLL1(米国特許第7,312,318号)、hLL2(米国特許第
7,074,403号)、hMu−9(米国特許第7,387,773号)、hL243(米国特許第7,612,180号)、hMN−14(米国特許第6,676,924号)、hMN−15(米国特許第7,541,440号)、hR1(米国特許仮出願第61/145,896号)、hRS7(米国特許第7,238,785号)、
hMN−3(米国特許第7,541,440号)、AB−PG1−XG1−026(ATCC PTA−4405およびPTA−4406として預けられている米国特許出願第11/983,372号)およびD2/B(WO2009/130575)を含め、当業で公知の多種多様の抗癌抗体のいずれもから選択することができ、第2のMAbは、以下に限定されないが、その各々の本文が参照により本明細書に組み込まれる、h679(米国特許第7,429,381号)および734(米国特許第7,405,320号)または
h734も含め、当業で公知の抗ハプテン抗体から選択することができる。特定の実施形態においては、臨床開発中の任意の抗IGF−1R抗体など、異なる抗IGF−1R抗体を使用することができる(たとえば、RyanおよびGoss、The Oncologist、2008、13:16−24を参照されたい)
【0016】
他の実施形態は、少なくとも1つの治療薬または少なくとも1つの診断薬に結合した抗IGF−1R MAbもしくはそのフラグメントまたは抗体融合タンパク質の治療または診断のコンジュゲートに関する可能性がある。同一または異なる種類の複数の治療薬を有する抗体および融合タンパク質も含有される。これに代わる実施形態では、抗体、フラグメントまたは融合タンパク質は、たとえば、一方の腕が腫瘍関連抗原に特異的に結合し、別の腕が1つまたは複数の診断薬または治療薬に結合する標的設定可能な構築体に結合する二重特異性抗体を使って、治療または診断するプレターゲット法で使うことができる。二重特異性抗体を用いるプレターゲット方法は当業で周知である(たとえば、その各々の実施例のセクションが本明細書に参照により組み込まれる、米国特許第7,300,644号;第7,138,103号;第7,074,405号;第7,052,872号;第6,962,702号,第6,458,933号を参照されたい)。
【0017】
様々な実施形態は、単独または1つもしくは複数の他の治療薬と組み合せて、治療または診断の目的に抗IGF−1R MAbもしくはそのフラグメントまたは抗体融合タンパク質を使用する方法に関する。抗IGF−1R
MAbは、裸の抗体として、または1つもしくは複数の治療薬および/または診断薬に結合したイムノコンジュゲートとして使うことができる。裸の抗IGF−1R MAbまたはイムノコンジュゲートは、1つまたは複数の他の治療薬の前、同時または後に投与される併用療法で使うことができる。以下でより詳細に論じるとおり、当業で公知の治療薬であればいずれも、以下に限定されないが、放射性核種、免疫調節剤、血管新生阻害剤、サイトカイン、ケモカイン、増殖因子、ホルモン、薬物、プロドラッグ、酵素、オリゴヌクレオチド、siRNA、アポトーシス促進剤、光活性治療薬、細胞毒性薬、化学療法剤、毒素、その他の抗体またはそれらの抗原結合フラグメントを含め、抗IGF−1R MAbと組み合せてまたは結合して活用することができる。好ましい実施形態において、
他の治療薬はEGFR阻害剤(たとえば、エルロチニブまたはエルビタックスなどの抗EGFR抗体)および/またはトリホスチン(たとえば、AG1024、AG538)、ピロロ[2,3−d]−ピリミジン誘導体(たとえば、NVP−AEW541)またはその他の抗IGF−1R抗体などの他のIGF−1R
阻害剤とすることができる。
【0018】
IGF−1Rを発現する癌細胞または異常細胞は、以下に限定されないが、ウィルムス腫瘍、ユーイング肉腫、神経内分泌腫瘍、膠芽腫、神経芽細胞腫、メラノーマ、皮膚、胸部、結腸、直腸、前立腺、肝臓、腎臓、膵臓および/または肺の癌、ならびにリンパ腫、白血病および骨髄腫も含め、抗IGF−1R抗体を使って治療および/または診断することができる。その他の治療できる癌の型としては、以下に限定されないが、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、胆道癌、子宮頸癌、慢性リンパ球性白血病、
慢性骨髄性白血病、子宮内膜癌、食道癌、胃癌、頭頸部癌、ホジキンリンパ腫、甲状腺髄様癌、非ホジキンリンパ腫、卵巣癌、神経膠腫および膀胱癌が挙げられる。
【0019】
特定の実施形態は、重鎖CDR配列CDR1(DYYMY、配列番号:1)、CDR2(YITNYGGSTYYPDTVKG、配列番号:2)およびCDR3(QSNYDYDGWFAY、配列番号:3)ならびに軽鎖CDR配列CDR1(KASQEVGTAVA、配列番号:4)、CDR2(WASTRHT、配列番号:5)およびCDR3(QQYSNYPLT、配列番号:6)を含む、キメラR1抗体、ヒト化R1抗体またはヒトR1抗体の治療および/または診断用途を含みうる。
キメラ抗体はマウス抗体ほど強いヒト抗マウス抗体(HAMA)応答を引き起こさないため、キメラ抗体の使用が好ましい。HAMA反応を引き起こす可能性をさらに減少させるためには、ヒト化抗体の使用がさらにいっそう好ましい。以下で論じるように、マウスフレームワークと定常領域との配列を対応するヒト抗体フレームワークと定常領域との配列で置換することにより、マウス抗体をヒト化する技法は、当業で周知であり、数多くのマウス抗癌抗体に適用されてきた。抗体のヒト化には、1つまたは複数のヒトフレームワークアミノ酸残基を親マウスフレームワーク領域配列からの対応する残基で置換することも必要とする場合もある。
【0020】
さらに他の実施形態は、抗IGF−1R抗体または 抗体融合タンパク質をコードしているDNA配列、そのDNA配列を含むベクターおよび宿主細胞、ならびに抗IGF−1R抗体を作製する方法に関する。好ましい実施形態において、DNA配列は、hR1 VH(配列番号:9)およびhR1 VK(配列番号:10)可変領域アミノ酸配列をコードする配列を含むことができる。さらなる実施形態は、抗IGF−1R抗体、
融合タンパク質および/またはそのフラグメントを組み込む、ドック・アンド・ロック(DNL)技術を用いて作成される多価で、多重特異性および/または多機能の構築体に関する。DNL構築体の製造および使用のための組成物および方法は報告されている(たとえば、米国特許第
7,521,056号;第7,550,143号;第7,534,866号;第7,527,787号および2007年10月26日出願の米国特許出願連番第11/925,408号および2009年4月6日出願の第12/418,877号を参照されたい。この各々の実施例のセクションは参照により本明細書に組み込まれる)。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】プラスミドcR1pdHL2の回路図である。
【図2】固定化した組換えヒトIGF−1Rおよび組換えヒトIRに対するキメラR1(cR1)抗体の結合特異性。cR1は2つの異なるクローン、すなわち、709.2D2と710.2G2とから獲得した。cR1抗体はヒトIGF−1Rには結合するが、ヒトインスリン受容体(IR)には結合しない。
【図3】固定化した組換えヒトIGF−1RへのcR1の結合親和性。
【図4】マウスR1(ML04R1)およびキメラR1(cR1)抗体の固定化した組換えヒトIGF−1Rへの競合結合。
【図5】ヒト化R1(hR1)、キメラR1(cR1)およびマウスR1(ML04R1)抗体の固定化した組換えヒト IF−1Rへの結合の比較。
【図6】キメラR1(cR1)はIGF−1またはIGF−2が固定化した組換えヒト IGF−1Rに結合するのをブロックしない。125Iで標識をつけたIGF−1またはIGF−2を非標識のIGF−1、IGF−2またはcR1を使って培養した。
【図7】ヒト化R1(hR1)およびマウスR1は、IGF−1が固定化した組換えヒトIGF−1Rに結合するのをブロックしない。125Iで標識をつけたIGF−1を非標識のIGF−1、MAB391、hR1またはR1を使って培養した。
【図8】R1抗体の結合は、MAB391と競合しない。蛍光標識したR1抗体 (A)またはMAB391(B)の固定化したrhIGF−1Rへの結合を、CD20に結合する、競合するマウスR1抗体(ML04R1)、MAB391または対照非特異的抗体hA20の存在下で測定した。R1抗体はIGF−1Rへの結合に対して、MAB391と競合しなかった。
【図9】ヒト化R1は、IGF−1R受容体のアゴニストではない。IGF−1とは異なり、hR1は無血清培地においてMCF−7細胞の増殖を促進しなかった。
【図10】Zenon標識抗体を使って、Guava Express分析により求めた細胞株中のIGF−1R発現。IGF−1Rの発現は、MCF−7(乳癌)、CaPan1(膵臓癌)およびDU−145(前立腺癌)へのhR1の結合により確認された。
【図11】R1抗体またはそのFabフラグメントを含むDNL構築体のIGF−1Rを発現している細胞株への結合。Hep G2肝臓癌細胞をDNL構築体TF−18(ヒト化抗AFP)、1R−31(ヒト化抗AFP/ヒト化抗IGF−1R)、1R15(ヒト化抗IGF−1R/ヒト化抗CEACAM6)、31−1R(ヒト化抗AFP IgGおよびhR1−IgG−AD2)を使って培養した。
【図12A】DNL構築体のMCF−7細胞 (A)DU−145細胞(B)またはME−180細胞(C)への結合をDNL構築体または無傷抗体を使ってFACScan上で測定した。Hexは六価のDNL構築体を意味する。hRS7はヒト化抗EGP−1抗体である。
【図12B】DNL構築体のMCF−7細胞 (A)DU−145細胞(B)またはME−180細胞(C)への結合をDNL構築体または無傷抗体を使ってFACScan上で測定した。Hexは六価のDNL構築体を意味する。hRS7はヒト化抗EGP−1抗体である。
【図12C】DNL構築体のMCF−7細胞 (A)DU−145細胞(B)またはME−180細胞(C)への結合をDNL構築体または無傷抗体を使ってFACScan上で測定した。Hexは六価のDNL構築体を意味する。hRS7はヒト化抗EGP−1抗体である。
【図13A】IGF−1RとEGP−1の両方を発現しているDU−145(A)およびME−180(B、C)細胞中のIGF−1の増殖促進効果の中和についてのDNL構築体の効果。抗IGF−1Rを含有するHex−hR1構築体は、DU−145(A)およびME−180(B)の増殖を抑制した。抗IGF−1Rおよび抗EGP−1を含有する1R−E1構築体は、ME−180(C)の増殖を抑制した。
【図13B】IGF−1RとEGP−1の両方を発現しているDU−145(A)およびME−180(B、C)細胞中のIGF−1の増殖促進効果の中和についてのDNL構築体の効果。抗IGF−1Rを含有するHex−hR1構築体は、DU−145(A)およびME−180(B)の増殖を抑制した。抗IGF−1Rおよび抗EGP−1を含有する1R−E1構築体は、ME−180(C)の増殖を抑制した。
【図13C】IGF−1RとEGP−1の両方を発現しているDU−145(A)およびME−180(B、C)細胞中のIGF−1の増殖促進効果の中和についてのDNL構築体の効果。抗IGF−1Rを含有するHex−hR1構築体は、DU−145(A)およびME−180(B)の増殖を抑制した。抗IGF−1Rおよび抗EGP−1を含有する1R−E1構築体は、ME−180(C)の増殖を抑制した。
【図14】hR1、MAB391および24−60の抗体で処置したが、hLL2対照抗体では処置していないMCF−7およびHT−29細胞中のIGF−1Rの下方制御。
【図15A】(A)Hex−hR1で処理したMCF−7およびDU−145細胞;(B)Hex−hR1および1R−E1 DNL構築体で処理したMCF−7、DU−145およびLNCaP細胞におけるIGF−1Rの下方制御。
【図15B】(A)Hex−hR1で処理したMCF−7およびDU−145細胞;(B)Hex−hR1および1R−E1 DNL構築体で処理したMCF−7、DU−145およびLNCaP細胞におけるIGF−1Rの下方制御。
【図16】Hex−hR1は、MCF−7細胞においてERK1/2リン酸化のIGF−1活性化をブロックする。Hex−hR1および対照DNL構築体Hex−hRS7を、100 ng/mL IGF−1で処理した細胞に10nMで添加した。
【図17】1R−E1、E1−1RおよびhR1は、ME−180細胞においてIGF−1Rリン酸化のIGF−1活性化をブロックする。指示された濃度のDNL構築体1R−E1、E1−R1、hR1および対照hRS7抗体を100nM IGF−1で処理した細胞に添加した。
【図18】Hex−hR1は、MCF−7細胞におけるIGF−1R、AktおよびERK1/2のリン酸化のIGF−1活性化をブロックする。指示された濃度のDNL構築体Hex−hR1、対照Hex−hRS7またはhR1抗体を100ng/mL IGF−1で処置した細胞に添加した。
【図19】二重特異性六値構築体の1R−E1またはE1−1R は、100ng/mL IGF−1で刺激したMCF−7細胞におけるIGF−1R、AktおよびERK1/2のリン酸化を阻害する。
【図20】Hex−hR1は、100ng/mL IGF−1で刺激したDU−145細胞におけるIGF−1R、Akt and ERK1/2のリン酸化を阻害する。
【0022】
定義
本明細書で用いるように、用語「1つの(a、an)」および「該(the)」は、文脈で単数を意味していることが明らかにされている場合を除き、単数と複数のいずれも意味しうる。
【0023】
本明細書で用いる用語「約」は、値の+10パーセントまたは−10パーセント(10%)を意味する。たとえば、「約100」は90から110までのどの数をも意味する。
【0024】
本明細書で用いるように、抗体とは完全長(すなわち、天然に生じる、もしくは正常な免疫グロブリン遺伝子フラグメントの組換え法により形成される)の免疫グロブリン分子(たとえばIgG抗体)または抗体フラグメントのように、免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な抗原結合部分をいう。
【0025】
抗体フラグメントは、F(ab’)2、F(ab)2、Fab’、Fab、Fv、scFvなどのような抗体の一部分をいう。構造に関係なく、抗体フラグメントは、無傷抗体によって認識されるのと同じ抗原に結合する。たとえば、抗IGF−1Rモノクローナル抗体フラグメントはIGF−1Rに結合する。また、用語「抗体フラグメント」には、重鎖および軽鎖の可変領域と軽鎖および重鎖の可変領域がペプチドリンカーによって結合されている組換え一本鎖ポリペプチド分子(「scFvタンパク質」)から成る「Fv」フラグメントなどの、単離されたフラグメントも含まれる。本明細書で用いられるように、用語「抗体フラグメント」には、
抗原結合活性がない抗体の部分、たとえばFcフラグメントまたは単一のアミノ酸残基などは含まれない。
【0026】
裸の抗体または裸の抗体フラグメントとは、治療薬にコンジュゲートしていない抗体またはその抗体結合フラグメントをいう。裸の抗体としては、マウスモノクローナル抗体ならびにキメラ抗体、ヒト化抗体またはヒト抗体などのような組換え抗体を挙げることができる。
【0027】
治療薬は、個別に、同時にまたは経時的に、抗体部分とともにまたは抗体部分(すなわち抗体もしくは抗体フラグメント)とコンジュゲートさせて投与される分子または原子であり、疾患の治療に有用である。治療薬の非限定的な例としては、抗体、抗体フラグメント、薬物、毒素、ヌクレアーゼ、ホルモン、免疫刺激剤、キレート剤、ホウ素化合物、光活性剤、オリゴヌクレオチド(たとえば、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはRNAi)および放射性同位元素が挙げられる。
【0028】
診断薬は、疾患または病状に関連する細胞、組織、病原またはその他の標的に送達するための抗体、抗体フラグメント、標的可能な構築体または他の
部分にコンジュゲートすることのできる、検出可能な分子または原子である。有用な診断薬としては、以下に限定されないが、放射性同位元素、色素、造影剤、蛍光化合物もしくは蛍光性分子および増強剤(たとえば磁気共鳴画像法用の常磁性イオン)が挙げられる。ある種の実施形態において、診断薬は
F−18標識化部分とすることができる(たとえば、米国特許出願第11/960,262号;第12/112,289号;PCT特許出願PCT/US08/62108号;その各々の実施例のセクションを参照により本明細書に組み込む)。
【0029】
イムノコンジュゲートは、抗体成分と、少なくとも1つの治療薬または診断薬とのコンジュゲートである。抗体成分は、イムノコンジュゲートを形成するために、複数の治療薬および/または診断薬とコンジュゲートされてもよい。
【0030】
用語「抗体融合タンパク質」は、同一もしくは異なる特異性を有する1つ以上の同一もしくは異なる一本鎖抗体または抗体フラグメントのセグメントが連結されている、組換えで作製された抗原結合分子を指すことができる。融合タンパク質の原子価は、融合タンパク質が1つの抗原またはエピトープに対していくつの結合腕もしくは結合部位を有しているか;すなわち、一価、二価、三価、または多価を表す。抗体融合タンパク質の多原子価は、それが抗原と結合する際に複数の相互作用を活用可能なこと、したがって、抗原に結合する結合活性の増加を意味する。特異性は、抗体融合タンパク質がいくつの抗原またはエピトープに結合することができるか;すなわち単一特異性、二重特異性、三重特異性、多重特異性を表す。これらの定義を用いると、たとえばIgGなどの自然抗体は結合腕を2本有するため、二価であるが、この抗体は1つのエピトープに結合するため、単一特異性である。単一特異性で、多価の融合タンパク質は、エピトープに対して2つ以上の結合部位を有するが、1つのエピトープのみに結合する。融合タンパク質は、1つの抗体成分、異なる抗体成分の多価もしくは多重特異性の組み合わせ、または同一の抗体成分の複数のコピーを含みうる。融合タンパク質は、さらに、抗体または抗体フラグメントおよび治療薬を含みうる。この融合タンパク質に適した治療薬の例としては、免疫調節剤および毒素が挙げられる。1つの好ましい毒素としては、リボヌクレアーゼ(RNase)、好ましくは組換えRNaseが挙げられる。ただし、この用語は非制限的であり、種々のタンパク質またはペプチドエフェクターも融合タンパク質に含みうる。もう1つの非制限的な例では、下記のように、DNL構築体を製造するためのADまたはDDD配列も含みうる。
【0031】
多重特異性抗体は、構造の異なる少なくとも2つの標的、たとえば2つの異なる抗原、同じ抗原上の2つの異なるエピトープ、または1つのハプテンおよび/または1つの抗原もしくは1つのエピトープに同時に結合可能な抗体である。1つの特異性は、B細胞抗原、T細胞抗原、骨髄系細胞抗原、形質細胞抗原またはマスト細胞抗原もしくはエピトープに対することもある。別の特異性は、B細胞上のIGF−1R、CD19、CD20、CD21、CD23、CD45、CD80、HLA−DR、CD74、MUClおよびCD22などの同じ細胞型上の異なる抗原に対することもある。しかし、第2の抗原は非制限的であり、他の有用な標的抗原は、炭酸脱水酵素IX、CCCL19、CCCL21、CSAp、CD1、CD1a、CD2、CD3、CD4、CD5、CD8、CD11A、CD14、CD15、CD16、CD18、CD19、CD20、IGF−1R、CD21、CD22、CD23、CD25、CD29、CD30、CD32b、CD33、CD37、CD38、CD40、CD40L、CD45、CD46、CD52、CD54、CD55、CD59、CD64、CD66a−e、CD67、CD70、CD74、CD79a、CD80、CD83、CD95、CD126、CD133、CD138、CD147、CD154、CEACAM5、CEACAM6、B7、ED-Bフィブロネクチン、因子H、FHL−1、Flt−33、葉酸受容体、GROB、HMGB−1、低酸素誘導因子(HIF)、HM1.24、インスリン様増殖因子−1(ILGF−1)、IFN−γ、IFN−α、IFN−β、IL−2、IL−4R、IL−6R、IL−13R、IL−15R、IL−17R、IL−18R,
IL−6,
IL−8,
IL−12、IL−15、IL−17、IL−18、IL−25、IP−10、MAGE、 mCRP、MCP−11、MIP−1A、MIP−1B、MIF、MUC1,
MUC2、MUC3、MUC4、MUC5、PAM4抗原、NCA−95、NCA−900、PSMA、EGP−1、EGP−2、AFP、Ia、HM1.24、 HLA−DR、テネイシン、Le(y)、RANTES、T101、TAC、Tn抗原、Thomson−Friedenrich抗原、腫瘍壊死抗原、TNF−α、TRAIL受容体(R1およびR2)、VEGFR、EGFR、P1GF、補体因子C3、C3a、C3b、C5a、C5および癌遺伝子産物から成る群から選択することができる。多重特異性で多価の抗体は、結合部位を複数有する構築体であり、それらの結合部位は異なる特異性を有する。
【0032】
種々の実施形態において、本発明は、哺乳類の被験者、ヒトおよび家畜の治療に有用な、単体で、コンジュゲートとして、または、他の裸の抗体および抗体治療的用コンジュゲートを含む、他の治療薬と組み合わせて投与されるヒト化抗IGF−1R抗体、キメラ抗IGF−1R抗体またはヒト抗IGF−1R抗体およびその抗体融合タンパク質を提供する。
【0033】
好ましくは、抗IGF−1R抗体は、以下から成る群から選択される1つまたは複数の機能特性を発揮する:(i)IGF−1Rには結合するが、IRには結合しない;(ii)IGF−1Rのアゴニストではない;(iii)単離したIGF−1RへのIGF−1またはIGF−2の結合をブロックしない;(iv)無傷細胞または組織においてIGF−1によるIGF−1Rの活性化を効果的に中和する;
および(v)ヒトIGF−1R配列のアミノ酸残基151から222の間のIGF−1Rのシステインリッチドメインの前半部を含む、IGF−1Rのエピトープに結合する。
【0034】
その他の好ましい実施形態において、抗IGF−1R MAbまたはそのフラグメントは、重鎖可変領域相補性決定領域(CDR)配列CDR1(DYYMY、配列番号:1)、CDR2(YITNYGGSTYYPDTVKG、配列番号:2)およびCDR3(QSNYDYDGWFAY、配列番号:3)および
軽鎖可変領域CDR配列CDR1 (KASQEVGTAVA、配列番号:4)、CDR2(WASTRHT、配列番号:5)およびCDR3(QQYSNYPLT、配列番号:6)を含む。最も好ましい実施形態において、
抗IGF−1R抗体またはそのフラグメントはhR1である。
【0035】
ヒト化抗IGF−1R MAbまたはそのフラグメントは、親マウスの抗IGF−1R MAbのIGF−1R標的特性を保持しつつ、マウス抗IGF−1R MAbのCDRならびに1つまたは複数のヒト抗体の軽鎖および 重鎖可変領域のフレームワーク(FR)および 定常領域を含んでもよい。ヒト化抗IGF−1R MAbまたはそのフラグメントは、親マウスMAbの対応するFRからの少なくとも1つのアミノ酸をさらに含んでもよい。マウスのフレームワークアミノ酸残基は、適切な結合を維持するため、またはIGF−1R
抗原への結合を増強するために必要な場合は、可変の軽鎖および重鎖のヒトFR 領域 で置換することができる。より好ましくは、ヒト化抗IGF−1R MAbまたはそのフラグメントは、hR1 VH(配列番号:9)およびhR1 VK(配列番号:10)のアミノ酸配列を含む。
【0036】
キメラ抗IGF−1R MAbまたはそのフラグメントは、ヒト抗体定常領域配列に結合された、マウスの
抗IGF−1R抗体の可変領域配列を含んでもよい。好ましい実施形態において、キメラ 抗IGF−1R MAbは、マウスR1 VH(配列番号:7)および R1 VK(配列番号:8)の重鎖および 軽鎖可変領域配列を含む。
【0037】
特定の実施形態は、重鎖相補性決定領域(CDR)配列CDR1(DYYMY、配列番号:1)、CDR2(YITNYGGSTYYPDTVKG、配列番号:2)およびCDR3(QSNYDYDGWFAY、配列番号:3)ならびに軽鎖CDR配列CDR1(KASQEVGTAVA、配列番号:4)、CDR2(WASTRHT、配列番号:5)およびCDR3(QQYSNYPLT、
配列番号:6)を含む、マウス抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体またはヒト 抗体のIGF−1Rへの結合をブロックする抗IGF−1R MAbまたはそのフラグメントに関しうる。
【0038】
他の実施形態は、上述のように、少なくとも1つの抗IGF−1R MAbまたはそのフラグメントを含む、抗体融合タンパク質を含有してもよい。抗体融合タンパク質は、少なくとも1つの
第1の 抗IGF−1R MAbまたはそのフラグメントと少なくとも1つの第2のMAbまたはそのフラグメントとを含んでもよい。より好ましくは、第2のMAbは、B7、CD4、CD5、CD8
、CD14、CD15、CD16、CD19, IGF−1R、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD30、CD32b、CD33、CD37、CD38、CD40、CD40L、CD45、CD46、CD52、CD54、CD55、CD59、CD66a−3、CD70、CD74、CD79a、CD80、CD95、CD126、CD133、CD138、CD154、CEACAM5、CEACAM6、PAM4抗原、PSMA、AFP、EGP−1、EGP−2、MIF、ED−Bフィブロネクチン、IL−2、IL−6、IL−25、MUC1、MUC2、
MUC3、 MUC4、 MUC5、NCA−90、 NCA-95、Ia、HM1.24、HLA−DR、テネイシン、T101、TAC、TRAIL−R1、TRAIL−R2、VEGFR、EGFR、P1GF、 Flt−3、ILGF、補体因子C5、および癌遺伝子産物から成る群から選択される抗原に結合する。あるいは、第2のMAbは、本明細書に記述の抗IGF−1R
MAbとは異なる抗IGF−1R MAbとすることもできる。
【0039】
アミノ酸置換
ある種の実施形態において、開示した方法および組成物は、1つまたは複数の置換アミノ酸残基を有する抗体またはその抗原結合フラグメンットの製造および使用を含んでよい。後述するように、実質的にどのような標的抗原に対してもモノクローナル抗体を作製する方法は当該技術分野で周知である。通常、これらの方法は標的抗原に対するマウス抗体の産生をもたらす。当該技術分野で周知のように、マウスモノクローナル抗体の抗原結合特異性は、主に超可変領域の相補性決定領域(CDR)配列で決定される。マウス抗体は、一般に、抗体軽鎖上に3つ、重鎖上に3つの計6つのCDR配列を含む。以下に詳細に述べるように、マウス抗体のキメラバージョン、ヒト化バージョンまたはヒトバージョンは、たとえば、ヒト抗体フレームワーク領域配列および定常領域配列にマウスCDR配列を挿入するCDR移植などの技法によって、またはマウス可変領域配列全体をヒト抗体定常領域配列に結合させることによって構築されてもよい。代替実施形態では、抗体の可変領域配列は、たとえば、抗体の軽鎖可変領域および重鎖可変領域全体をコードするオリゴヌクレオチドを化学合成し組立てることよって構築されうる。
【0040】
種々の実施形態において、自然抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体またはヒト抗体の構造特性、物理特性および/または治療上の特性は、1つ以上のアミノ酸残基を置換することによって最適化されうる。たとえば、ヒト化抗体の機能的特性は、限定された数のヒトフレームワーク領域(FR)アミノ酸を親マウス抗体の対応するFRアミノ酸で置換することにより改善されうる。
これはフレームワーク領域アミノ酸残基がCDR残基の近傍にあるときに、特にあてはまる。
【0041】
他の場合において、標的抗原に対する結合親和性、抗体のその標的抗原からの乖離速度、すなわちoff速度、またはさらには、抗体によるCDC(補体依存性細胞毒性)またはADCC(抗体依存性細胞毒性)の誘導の有効性など、抗体の治療上の特性は、限定された数のアミノ酸置換により最適化されうる。このような置換は、たとえば、抗体のCDR部で行なわれてもよい。ただし、アミノ酸置換は抗体のCDRまたはフレームワーク領域配列に制限されず、たとえば、抗体のFc部で行なってもよい。
【0042】
通常、アミノ酸置換は、アミノ酸を比較的類似した特性を有する別のアミノ酸とを置換すること(すなわち同類アミノ酸置換)を一般的に含むことを当業者は承知しているであろう。種々のアミノ酸の特性およびアミノ酸置換のタンパク質構造ならびに機能への影響は、当該技術分野で広範囲にわたる研究の主題および知識となっている。
【0043】
たとえば、アミノ酸のハイドロパシックインデックスを考えてもよい(KyteおよびDoolittle、1982、J.Mol.Biol.、157:105−132)。アミノ酸の相対的なハイドロパシー特性は、得られたタンパク質の二次構造に寄与し、ひいてはこのタンパク質と他の分子との相互作用を定義する。各アミノ酸には、その疎水性および電荷特性に基づいてハイドロパシックインデックスが割り当てられており(KyteおよびDoolittle、1982)、これらは以下のとおりである:イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン/シスチン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(−0.4);スレオニン(−0.7);セリン(−0.8);トリプトファン(−0.9);チロシン(−1.3);プロリン(−1.6);ヒスチジン(−3.2);グルタミン酸塩(−3.5);グルタミン(−3.5);アスパラギン酸塩(−3.5);アスパラギン(−3.5);リジン(−3.9);およびアルギニン(−4.5)。同類置換を行なう際、ハイドロパシックインデックスが±2以内のアミノ酸を使用することが好ましく、±1以内がより好ましく、±0.5以内がさらにより好ましい。
【0044】
アミノ酸置換は、アミノ酸残基の親水性を考慮に入れてもよい(たとえば米国特許第4,554,101号)。親水性値はアミノ酸残基に割り当てられている:アルギニン(+3.0);リジン(+3.0);アスパラギン酸塩(+3.0);グルタミン酸塩(+3.0);セリン(+0.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グリシン(0);スレオニン(−0.4);プロリン(−0.5.+‐.1);アラニン(−0.5);ヒスチジン(−0.5);システイン(−1.0);メチオニン(−1.3);バリン(−1.5);ロイシン(−1.8);イソロイシン(−1.8);チロシン(−2.3);フェニルアラニン(−2.5);トリプトファン(−3.4)。アミノ酸は類似の親水性を有する他のアミノ酸との置換が好ましい。
【0045】
他に考慮すべきこととして、アミノ酸側鎖の大きさが挙げられる。たとえば、アミノ酸をグリシンもしくはセリンなど、小型の側鎖と置換する、または、たとえば、アミノ酸をトリプトファン、チロシンなど、大きな側鎖と置換することは通常好ましくないであろう。種々のアミノ酸残基のタンパク質二次構造への影響も、考慮すべきことである。実証的研究を通して、タンパク質ドメインがαヘリカル、βシートまたは折り返しの二次構造を取り入れる傾向への異なるアミノ酸残基の影響は、決定されており、当該技術分野において既知である(たとえば、ChouおよびFasman、1974、Biochemistry、13:222−245;1978、Ann.Rev.Biochem.、47:251−276;1979、Biophys.J.,26:367−384を参照されたい)。
【0046】
こうした考慮すべきことと広範囲な実証的試験とに基づき、同類アミノ酸置換の表が作成され、当該技術分野で既知となっている。たとえば:アルギニンとリジン;グルタミン酸塩とアスパラギン酸塩;セリンとスレオニン;グルタミンとアスパラギン;ならびにバリン、ロイシンおよびイソロイシンが挙げられる。あるいは:Ala(A)leu、ile、val;Arg(R)gln、asn、lys;Asn(N)his、asp、lys、arg、gln;Asp(D)asn、glu;Cys(C)ala、ser;Gln(Q)glu、asn;Glu(E)gln、asp;Gly(G)ala;His(H)asn、gln、lys、arg;Ile(I)val、met、a、phe、leu;Leu(L)val、met、a、phe、ile;Lys(K)gln、asn、arg;Met(M)phe、ile、leu;Phe(F)leu、val、ile、ala、tyr;Pro(P)ala;Ser(S)、thr;Thr(T)ser;Trp(W)phe、tyr;Tyr(Y)trp、phe、thr、ser;Val(V)ile、leu、met、phe、ala。
【0047】
アミノ酸置換について考慮すべきその他の事柄には、残基がタンパク質の内部に位置しているかどうかまたは溶媒露出であるかどうかがある。CDR
残基の場合、遊離抗体中の残基は、通常、想定されるであろう。内部残基の場合、同類置換として以下が挙げられる:AspとAsn;SerとThr;SerとAla;ThrとAla;AlaとGly;IleとVal;ValとLeu;
LeuおよびIle;LeuとMet;PheとTyr;TyrとTrp。( たとえば、rockefeller.eduのPROWLウェブサイトを参照されたい)。溶媒露出残基の場合、同類置換として以下が挙げられる:AspとAsn;AspとGlu;GluとGln;GluとAla;GlyとAsn;AlaとPro;
AlaとGly;AlaとSer;AlaとLys;SerとThr;LysとArg;ValとLeu;LeuとIle;IleとVal;PheとTyr(同書)。PAM250スコアリングマトリックス、Dayhoffマトリックス、Granthamマトリックス、McLachlanマトリックス、Doolittleマトリックス、Henikoffマトリックス、Miyataマトリックス、Fitchマトリックス、Jonesマトリックス、Raoマトリックス、LevinマトリックスおよびRislerマトリックスなど、種々のマトリックスが構築され、アミノ酸置換の選択に役立っている(同書)。
【0048】
アミノ酸置換を決定する際に、正に帯電した残基 (たとえば、His、Arg、Lys)と負に帯電した残基(たとえば、Asp、Glu)との間のイオン結合(塩橋)または近傍のシステイン残基間のジスルフィド結合の形成など、分子間または分子内の結合の存在も考慮する必要がある。
【0049】
たとえば、部位特異的突然変異誘発法により、またはアミノ酸置換をコードして発現ベクター構築体に挿入するオリゴヌクレオチドの合成および組み立てにより、コードされたタンパク質配列内の任意の他のアミノ酸を置換する方法は、周知であり、当業者にとって日常的に実験する事柄である。
【0050】
キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体も含めた、モノクローナル 抗体の調製
実質的にいかなる標的抗原に対するモノクローナル 抗体を調製する技法も当該技術分野で周知である。 たとえば、KohlerおよびMilstein、Nature 256:495(1975)およびColiganら(編)、CURRENT PROTOCOLS IN IMMUNOLOGY、第1巻、2.5.1−2.6.7頁 (John WileyおよびSons 1991)を参照されたい。簡単に言うと、モノクローナル 抗体は、抗原を含有する組成物をマウスに注射し、脾臓を摘出して、Bリンパ球を得、得たBリンパ球を骨髄腫細胞と融合して、ハイブリドーマを作製し、作製したハイブリドーマをクローニングし、抗原に対する抗体を産生する陽性クローンを選択し、抗原に対する抗体を産生するクローンを培養して、ハイブリドーマ培養物から抗体を単離することにより取得することができる。
【0051】
MAbは、多種多様な十分に確立された技法により、ハイブリドーマ培養物から単離し、精製することができる。このような分離技法としては、タンパク質−Aまたは
タンパク質−G セファロースによるアフィニティークロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、およびイオン交換クロマトグラフィーが挙げられる。たとえば、Coligan、2.7.1−2.7.12頁および2.9.1−2.9.3頁を参照されたい。また、Bainesら「Purification of Immunoglobulin G(IgG)」、METHODS IN MOLECULAR BIOLOGY、第10巻、79−104頁(The
Humana Press,Inc. 1992)も参照されたい。
【0052】
免疫原に対する抗体をまず育成した後、配列を決定し、続いて組換え技法により調製することができる。マウス抗体および抗体フラグメントのヒト化およびキメラ化は、下記のように、当業者には周知である。
【0053】
キメラ抗体
キメラ抗体は、ヒト抗体の可変領域が、たとえば、マウス抗体の相補性決定領域(CDR)を含むマウス抗体の可変領域と置換された組換えタンパク質である。被験者への投与時、キメラ抗体は免疫原性の低下と安定性の増加を示す。マウス免疫グロブリンの可変ドメインをクローニングするための一般的な技法は、たとえば、Orlandiら、Proc. Nat’l Acad.Sci、USA 6:3833(1989)に開示されている。キメラ抗体を構築する技法は、当業者に周知である。1つの例としては、Leungら(Hybridoma 13:469(1994))は、マウスLL2のVκおよびVHドメインをコードするDNA配列、抗CD22モノクローナル抗体とヒトκおよびIgGそれぞれの定常領域ドメインとを組み合わせることによってLL2キメラを作製した。
【0054】
ヒト化抗体
ヒト化MAbを作製する技法は、当該技術分野で周知ある(たとえば、Jonesら、Nature 321:522(1986)、Riechmannら、Nature 332:323(1988)、Verhoeyenら,Science
239:1534(1988)、Carter ら、Proc.Nat.Acad.Sci USA 89:4285(1992)、Sandhu、Crit.Rev.Biotech、12:437(1992)、およびSinger
ら、J.Immun、150:2844(1993)を参照されたい)。キメラモノクローナル抗体またはマウスモノクローナル抗体は、マウス免疫グロブリンの重可変鎖および軽可変鎖由来のマウスCDRをヒト抗体の対応する可変ドメインに移入することによってヒト化することができる。キメラモノクローナル抗体中のマウスフレームワーク領域(FR)は、ヒトFR配列とも置換される。単純にマウスCDRをヒトFRに移入するだけでが、抗体親和性の減少または損失さえもたされることが多いため、マウス抗体の本来の親和性を回復させるためにさらなる修飾を必要とすることもある。この修飾は、その抗体のエピトープに良好な結合親和性を有する抗体を得るため、1つ以上のヒト残基の一部をFR領域にてマウスのそれらのカウンターパートと置換することで達成される。たとえば、Tempestら、Biotechnology 9:266(1991)およびVerhoeyenら、Science 239:1534(1988)を参照されたい。置換のための好ましい残基としては、CDRの1、2または3オングストローム内に位置するFR残基、CDR配列に隣接する位置に存在するFR残基、またはCDR残基と相互作用することが予想されるFR残基が挙げられる。
【0055】
ヒト抗体
組み合わせのアプローチまたはヒト免疫グロブリン遺伝子座で形質転換されたトランスジェニック動物のいずれかを用いて完全ヒト抗体を作製する方法は、当該技術分野で既知である(たとえば、Mancini
ら、2004、New Microbiol、27:315−28;ConradおよびScheller、2005、Comb.Chem.High
Throughput Screen、8:117−26;Brekkeおよび Loset、2003、Curr.Opin.Phamacol、3:544−50)。完全ヒト抗体も、遺伝子または染色体のトランスフェクション法、ならびにファージディスプレイ技法によって構築されうる。これらの方法はすべて、当該技術分野で既知である。たとえば、McCafferty
ら、Nature 348:552−553(1990)を参照されたい。この完全ヒト抗体は、キメラ抗体またはヒト化抗体よりさらに少ない副効果を示し、かつin
vivoで本質的に内在性のヒト抗体として機能することが期待される。
【0056】
1つの代替実施形態において、ファージディスプレイ技法を用いて、ヒト抗体を作製することもできる(たとえば、Dantas−Barbosaら、2005、Genet.Mol.Res、4:126−40)。ヒト抗体は、正常なヒトから、または、癌など特定の病態を示すヒトから作製することができる(Dantas−Barbosaら、2005)。罹患した個人に由来するヒト抗体を構築する利点は、循環抗体レパートリーが疾患関連抗原に対する抗体に偏る可能性があるということである。
【0057】
この方法論の非限定例の1つでは、Dantas−Barbosaら(2005)が、骨肉腫患者由来のヒトFab抗体フラグメントのファージディスプレイライブラリーを構築した。一般に、全RNAは、循環血液リンパ球から得られた(同書)。組換えFabは、μ鎖、γ鎖およびκ鎖の抗体レパートリーからクローン化し、ファージディスプレイライブラリーに挿入された(同書)。RNAをcDNAに変えて使用し、重鎖免疫グロブリン配列および軽鎖免疫グロブリン配列に対して特定のプライマーを用いてFab cDNAライブラリーを作製した(Marksら、1991、J.Mol.Biol、222:581−97)。ライブラリー構築は、Andris−Widhopfら(2000、In:Phage Display Laboratory Manual、Barbasら(編)、第1版、Cold
Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor、NY、9.1頁−9.22頁)に従って行なわれた。最終的なFabフラグメントを、制限酵素で消化し、バクテリオファージゲノムに挿入してファージディスプレイライブラリーを作製した。当該技術分野で既知のように、このライブラリーは標準ファージディスプレイ方法でスクリーニングすることができる。ファージディスプレイは、種々のフォーマットで行なうことができ、フォーマットのレビューに関しては、たとえば、JohnsonおよびChiswell、Current Opinion in Structural Biology 3:5564−571(1993)を参照されたい。
【0058】
ヒト抗体は、in vitroで活性化したB細胞によって作製することもできる。米国特許第5,567,610号および第5,229,275号を参照されたい。その各々の実施例のセクションは参照により本明細書に組み込まれる。当業者は、これらの技法が例示的なものであり、ヒト抗体または抗体フラグメントを作製しスクリーニングするための既知のいかなる方法も利用されうることを理解するであろう。
【0059】
別の代替実施形態において、ヒト抗体を作製するために遺伝子組換えが行なわれたトランスジェニック動物を用いて、標準免疫方法により本質的にどのような免疫原標的に対してでも抗体を作製することができる。トランスジェニックマウスからヒト抗体を得る方法は、Greenら、Nature Genet、7:13(1994)、Lonbergら、Nature 368:856(1994)およびTaylorら、Int.Immun、6:579(1994)に開示されている。この系の非限定例として、Abgenix(Fremont、CA)からのXenoMouse(登録商標)が挙げられる(たとえば、Greenら、1999、J.Immunol.Methods 231:11−23、参照により本明細書に組み込まれる)。XenoMouse(登録商標)および同様の動物において、マウス抗体遺伝子は不活性化され、機能的ヒト抗体遺伝子により置換されているが、マウス免疫系の残りの部分は無傷のままである。
【0060】
XenoMouse(登録商標)は、アクセサリー遺伝子および制御配列とともに可変領域配列の大部分を含むヒトIgHおよびIgkappa遺伝子座の部分を含む生殖細胞形成YAC(酵母人工染色体)で形質変換された。ヒト可変領域レパートリーを用いて、既知の技法によってハイブリドーマにプロセシングされうる抗体産生B細胞を作製してもよい。標的抗原で免疫されたXenoMouse(登録商標)は、正常な免疫応答によってヒト抗体を産生する。このヒト抗体は、上述の標準技法によって収集および/または作製されうる。XenoMouse(登録商標)の種々の系統は入手可能であり、その各々は異なるクラスの抗体を産生することができる。遺伝子導入で作製されたヒト抗体は、正常なヒト抗体の薬物動態特性を保持する一方で、治療可能性を有することが示される(Greenら、1999)。当業者は、特許請求する組成物および方法がXenoMouse(登録商標)系の使用に限定されることなく、ヒト抗体を産生するように遺伝子組換えが行なわれたいずれのトランスジェニック動物も利用できることを理解する。
【0061】
抗体フラグメントの製造
特異的なエピトープを認識する抗体フラグメントは、既知の技法によって作製することができる。抗体フラグメントは、F(ab’)、Fab’、F(ab)、Fab、Fv、sFvなどの抗体の抗原結合部分である。F(ab’)フラグメントは、抗体分子のペプシン消化によって作製することができ、Fab’フラグメントは、F(ab’)フラグメントのジスルフィド架橋を減少させることによって作製することができる。あるいは、Fab’発現ライブラリーを構築(Huseら、1989、Science、246:1274−1281)することで、所望の特異性を有するモノクローナルFab’フラグメントの同定が迅速かつ簡単に実施される。
【0062】
一本鎖Fv分子(scFv)は、VドメインおよびVドメインを含む。VおよびVのドメインは、結合して標的結合部位を形成する。これら2つのドメインは、ペプチドリンカー(L)によってさらに共有結合的に結合される。scF分子を作製し、適切なペプチドリンカーを設計する方法は、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第4,704,692号、米国特許第4,946,778号、R.Raag および M.Whitlow、"Single Chain Fvs."FASEB第9巻:73−80(1995)およびR.E.BirdおよびB.W.Walker、"Single Chain Antibody Variable Regions"、TIBTECH、第9巻:132−137(1991)に記述されている。
【0063】
抗体フラグメントは、完全長の抗体のタンパク質加水分解によって、または、大腸菌(E.coli)もしくは別の宿主内で該フラグメントをコードするDNAの発現によって調製されうる。抗体フラグメントは、従来の方法により完全長抗体のペプシン消化またはパパイン消化によって得られる。たとえば、パパインを用いる酵素切断によって、2つの一価FabフラグメントおよびFcフラグメントが作製される。これらの方法は、たとえば、Goldenberg、米国特許第4,036,945号および第4,331,647号ならびにそれらに含まれている文献に記載されており、両特許は参照により本明細書に組み込まれる。また、Nisonoffら、Arch
Biochem.Biophys、89:230(1960);Porter、Biochem、J.73:119(1959),Edelmanら、
METHODS IN ENZYMOLOGY第1巻、422頁(Academic Press 1967)、ならびにColigan、2.8.1−2.8.10頁および2.10.−2.10.4頁を参照されたい。
【0064】
二重特異性および多重特異性抗体
二重特異性抗体は、多くの生物医学的用途において有用である。たとえば、腫瘍細胞表面抗原の結合部位およびT細胞表面受容体の結合部位を有する二重特異性抗体は、T細胞によって特定の腫瘍細胞の溶解を導くことができる。T細胞上でグリオーマおよびCD3エピトープを認識する二重特異性抗体を用いた、ヒト患者の脳腫瘍治療は成功を収めている(Nittaら、Lancet、1990;355:368−371)。腫瘍関連抗原(TAA)または他の疾患標的のための少なくとも1つの結合部位、ならびに治療薬または診断薬にコンジュゲートした標的設定可能な構築体のための少なくとも1つの結合部位を含む二重特異性抗体によるプレターゲッティング法は、当該技術分野でも周知ある(たとえば、米国特許第7,300,644号;第7,138,103号;第7,074,405号;第7,052,872号;第6,962,702号;第6,458,933号を参照されたい。各特許の実施例のセクションは、参照により本明細書に組み込まれる)。
【0065】
たとえば、米国特許第7,405,320号(この実施例のセクションは、参照により本明細書に組み込まれる)で開示されているとおり、二重特異性または
多重特異性抗体を産生するための数多くの方法が周知である。二重特異性抗体は、各々が異なる抗原部位を認識するモノクローナル抗体を産生する2つの異なるハイブリドーマの融合を包含するクアドローマ法により産生されうる(Milstein
およびCuello、Nature、1983;305:537−540)。
【0066】
二重特異性抗体を産生するための別の方法は、ヘテロ二機能性架橋剤を用いて、2つの異なるモノクローナル抗体を化学的に結びつける(Staerzら、Nature、1985;314;628−631;Perezら、Nature、1985;316:354−356)。二重特異性抗体は、2つの親モノクローナル抗体の各々をそれぞれの半分子に低減し、これを次に混合して、再酸化させて、ハイブリッド構造を獲得することによっても産生されうる(StaerzおよびBevan、Proc.Natl.Acad.Sci. USA、1986;83:1453−1457)。別の代替法は、適切なリンカーを用いて2または3つの別々に精製されたFab’フラグメントを化学的に架橋することを包含する(例えば、欧州特許出願第0453082号を参照されたい)。
【0067】
他の方法は、レトロウイルス由来シャトルベクターを介して、別個の選択可能なマーカーをそれぞれの親ハイブリドーマ中に遺伝子移入し、その後、これを融合することにより(DeMonteら、Proc.Natl.Acad.Sci. USA、1990、87:2941−2945);あるいは異なる抗体の重鎖および軽鎖遺伝子を含む発現プラスミドを用いたハイブリドーマ細胞系統のトランスフェクションにより、ハイブリッドハイブリドーマ生成の効率を改善することを包含する。
【0068】
同族VおよびVドメインは、適切な組成および長さのペプチドリンカー(通常、12個より多いアミノ酸残基から成る)と連結されて、結合活性を有する一本鎖Fv(scFv)を形成することができる。scFvの製造方法は、米国特許第4,946,778号および米国特許第5,132,405号(各々の実施例のセクションは、参照により本明細書に組み込まれる)に開示されている。12個未満のアミノ酸残基へのペプチドリンカー長の低減は、同一鎖上でのVHおよびVLドメインの対合を防止し、他の鎖上でのVおよびVドメインと相補的ドメインとの対合を強いて、機能性多量体を形成する。3〜12個のアミノ酸残基のリンカーと連結されるVおよびVドメインのポリペプチド鎖は、主に二量体(ダイアボディと呼ばれる)を形成する。0〜2個のアミノ酸残基のリンカーでは、三量体(トリアボディと呼ばれる)および四量体(テトラボディと呼ばれる)が選択されるが、しかしオリゴマー化の正確なパターンは、リンカー長のほかに、Vドメインの組成ならびに配向(V−リンカー−VまたはV−リンカー−V)に依っていると思われる。
【0069】
多重特異性または二重特異性抗体を産生するためのこれらの技法は、当該技法の低収率、精製の必要性、低安定性または労働集約性に関して種々の困難を示
す。さらに近年、以下でさらに詳細に考察される「ドック・アンド・ロック(DNL)」として知られている技法は、効果的に任意の所望の抗体、抗体フラグメントおよび
その他のエフェクター分子の組合せを産生するために利用されてきた(例えば、米国特許第7,521,056号;第7,550,143号;第7,534,866号;第7,527,787号および2007年10月26日出願の米国特許出願第11/925,408号および2009年4月6日出願の米国特許出願第12/418,877号を参照されたい;これらの各々の 実施例のセクションは、参照により本明細書に組み込まれる)。この技法は、アンカードメイン(AD)と称される相補的タンパク質結合ドメインおよび二量体形成ドメインならびにドッキングドメイン(DDD)を利用する。これらは互いに結合して、二量体から三量体、四量体、五量体および六量体に及ぶ複合構造の構築を可能にする。これらは、大量の精製を必要とせず、高収率で安定な複合体を形成する。DNL技法は、裸の抗体部分として、または、たとえば、免疫調節剤、酵素、化学療法剤、ケモカイン、サイトカイン、診断薬、治療薬、放射性核種、造影剤、抗血管新生剤、増殖因子、オリゴヌクレオチド、ホルモン、ペプチド、毒素、プロアポトーシス剤もしくはそれらの組み合わせなどの広範な他のエフェクター分子との組み合わせとしてのいずれかで、単一特異性抗体、二重特異性抗体、または多重特異性抗体の構築を可能にする。二重特異性抗体または多重特異性抗体を作製するための当該技術分野で既知のどのような技法も、現在特許請求する方法を実施する際に利用することができる。
【0070】
二重特異性または多重特異性抗体は。治療上有用な既知の任意の抗体を組み込むこともできる。有用な抗体は幅広い既知のソースから市販されている。たとえば、ハイブリドーマ系統を分泌する種々の抗体は、American Type Culture Collection(ATCC、Manassas、VA)から市販されている。種々の疾患標的に対する多数の抗体は、腫瘍関連抗原を含むがこれに限定されることなく、ATCCに寄託されおよび/または可変領域配列を公開されており、ならびに本明細書にて特許請求する方法および組成物での使用に利用できる。たとえば
米国特許第7,312,318号;第7,282,567号;第7,151,164号;第7,074,403号;第7,060,802号;第7,056,509号;第7,049,060号;第7,045,132号;第7,041,803号;第7,041,802号;第7,041,293号;第7,038,018号;第7,037,498号;第7,012,133号;第7,001,598号;第6,998,468号;第6,994,976号;第6,994,852号;第6,989,241号;第6,974,863号;第6,965,018号;第6,964,854号;第6,962,981号;第6,962,813号;第6,956,107号;第6,951,924号;第6,949,244号;第6,946,129号;第6,943,020号;第6,939,547号;第6,921,645号;第6,921,645号;第6,921,533号;第6,919,433号;第6,919,078号;第6,916,475号;第6,905,681号;第6,899,879号;第6,893,625号;第6,887,468号;第6,887,466号;第6,884,594号;第6,881,405号;第6,878,812号;第6,875,580号;第6,872,568号;第6,867,006号;第6,864,062号;第6,861,511号;第6,861,227号;第6,861,226号;第6,838,282号;第6,835,549号;第6,835,370号;第6,824,780号;第6,824,778号;第6,812,206号;第6,793,924号;第6,783,758号;第6,770,450号;第6,767,711号;第6,764,688号;第6,764,681号;第6,764,679号;第6,743,898号;第6,733,981号;第6,730,307号;第6,720,15号;第6,716,966号;第6,709,653号;第6,693,176号;第6,692,908号;第6,689,607号;第6,689,362号;第6,689,355号;第6,682,737号;第6,682,736号;第6,682,734号;第6,673,344号;第6,653,104号;第6,652,852号;第6,635,482号;第6,630,144号;第6,610,833号;第6,610,294号;第6,605,441号;第6,605,279号;第6,596,852号;第6,592,868号;第6,576,745号;第6,572,856号;
第6,566,076号;第6,562,618号;第6,545,130号;第6,544,749号;第6,534,058号;第6,528,625号;第6,528,269号;第6,521,227号;第6,518,404号;第6,511,665号;第6,491,915号;第6,488,930号;第
6,482,598号;第6,482,408号;第6,479,247号;第6,468,531号;第6,468,529号;第6,465,173号;第6,461,823号;第6,458,356号;第6,455,044号;第6,455,040号;第6,451,310号;第6,444,206号;第6,441,143号;第6,432,404号;第6,432,402号;第6,419,928号;第6,413,726号;第6,406,694号;第6,403,770号;第6,403,091号;第6,395,276号;第6,395,274号;第6,387,350号;第6,383,759号;第6,383,484号;第6,376,654号;第6,372,215号;第6,359,126号;第6,355,481号;第6,355,444号;第6,355,245号;第6,355,244号;第6,346,246号;第6,344,198号;第6,340,571号;第6,340,459号;第6,331,175号;第6,306,393号;第6,254,868号;第6,187,287号;第6,183,744号;第6,129,914号;第6,120,767号;第6,096,289号;第6,077,499号;第5,922,302号;第5,874,540号;第5,814,440号;第5,798,229号;第5,789,554号;第5,776,456号;第5,736,119号;第5,716,595号;第5,677,136号;第5,587,459号;第5,443,953号;第5,525,338号を参照されたい(その各々の図および実施例のセクションは、参照により本明細書に組み込まれる)。これらは単に例示的なものであって、種々の他の抗体およびそれらのハイブリドーマが、当該技術分野において既知である。当業者は、関心の対象である、選択した疾患関連標的に対する抗体についてATCC、NCBIおよび/またはUSPTOデータベースを簡単に検索するだけで、いずれの疾患関連抗原に対する抗体配列または抗体分泌ハイブリドーマのほとんどを得られることを理解する。クローン化抗体の抗原結合ドメインを、当該技術分野で周知の標準的技法を用いて、増幅し、切除し、発現ベクターに連結し、適合した宿主細胞に導入し、タンパク質産生のために使用することができる。
【0071】
ドック・アンド・ロック(DNL)
好ましい実施形態において、二重特異性または多重特異性抗体または他の構築物を、ドック・アンド・ロック技法を用いて産生し得る(たとえば、米国特許第7,521,056号;第7,550,143号;第7,534,866号;第7,527,787号および2007年10月26日出願の米国特許出願第11/925,408号および2009年4月6日出願の米国特許出願第12/418,877号を参照されたい;これらの各々の実施例のセクションは、参照により本明細書に組み込まれる)。DNL法は、cAMP依存性プロテインキナーゼ(PKA)の調節(R)サブユニットとA−キナーゼアンカータンパク質(AKAP)のアンカードメイン(AD)との間に起こる特異的タンパク質/タンパク質相互作用を利用する(Baillieら、FEBS Letters、2005;579:3264;WongおよびScott、Nat.Rev.Mol.Cell Biol、2004;5:959)。二次メッセンジャーcAMPとRサブユニットとの結合により誘発される最良の試験されたシグナル伝達経路のうちの1つにおいて中心的役割を果たすPKAは、1968年にウサギ骨格筋から最初に単離された(Walshら、J.Biol.Chem、1968;243:3763)。ホロ酵素の構造は、Rサブユニットにより不活性形態で保持される2つの触媒性サブユニットからなる(Taylor、J.Biol.Chem、1989
;264:8443)。PKAのアイソザイムは2つの型のRサブユニット(RIおよびRII)と一緒に見出され、各型は、αおよびβアイソフォームを有する(Scott、Pharmacol.TheR1991;50:123)。Rサブユニットは、安定二量体としてのみ単離されており、二量体化ドメインは最初の44個のアミノ末端残基からなることが示されている(Newlonら、Nat.Struct.Biol.1999;6:222)。cAMPとRサブユニットとの結合は、広範囲のセリン/トレオニンキナーゼ活性に関する活性触媒性サブユニットの放出をもたらし、これは、AKAPとのそのドッキングを介してPKAを区画分けすることにより選定基質に向けられる(Scottら、J.Biol.Chem.1990;265:21561)。
【0072】
微小管関連タンパク質−2である最初のAKAPが1984年に特性化されて以来(Lohmannら、Proc.Natl.Acad.Sci. USA.1984;81:6723)、形質膜、アクチン細胞骨格、核、ミトコンドリアおよび小胞体を含めて、種々の細胞成分部位に局在する50を超えるAKAPが、酵母からヒトまでの範囲の種において、多様な構造で同定されてきた(WongおよびScott、
Nat.Rev.Mol.Cell Biol.2004;5:959)。PKAに対するAKAPのADは、14〜18残基の両親媒性らせんである(Carrら、J.Biol.Chem.1991;266:14188)。ADのアミノ酸配列は、個々のAKAPの間でかなり異なり、RII二量体に関して報告された結合親和性は2−90nMの範囲である(Altoら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA.2003;100:4445)。興味深いことに、AKAPは、二量体Rサブユニットのみと結合する。ヒトRIIαに関しては、ADは、23アミノ末端残基により形成される疎水性表面と結合する(ColledgeおよびScott、
Trends Cell Biol.1999;6:216)。したがって、ヒトRIIαの二量体化ドメインおよびAKAP結合ドメインはどちらも、本明細書中でDDDと呼ばれる同一のN末端44アミノ酸配列内に位置する(Newlonら、Nat.Struct.Biol.1999;Newlonら、EMBOJ.2001;20:1651)。
【0073】
任意の2つの存在物(本明細書中で以後、AおよびBと呼ぶ)を非共有結合複合体にドッキングするためのリンカーモジュールの優れた一対として、ヒトRIIαのDDD配列(たとえば、配列番号:15および配列番号:16)およびAKAPのAD配列(たとえば、配列番号:17および 配列番号:18)を利用するためのプラットフォーム技術をわれわれは開発してきた。ドッキングしたAおよびBは、さらに、ジスフィルド結合の形成を促すために、戦略位置でDDDとADの両方にシステイン残基を導入することにより、安定係留構造中にロックできるようにもなる。「ドック・アンド・ロック」アプローチの一般的方法を、以下に示す。DDD配列をAの前駆体に連結して、以後aと呼ばれる第1の構成成分を生じさせることにより、存在物Aを構築する。DDD配列は二量体の自発的形成を引き起こすため、Aはaから成る。AD配列をBの前駆体に連結して、以後bと呼ばれる第2の構成成分を生じることにより、存在物Bを構築する。a中に含入されるDDDの二量体モチーフは、bに含入されるAD配列と結合するためのドッキング部位を作製し、したがって、aおよびbの即時会合を促して、abで構成される二元性三量体複合体を形成する。この結合事象は、ジスルフィド架橋を介して2つの存在物を共有的に固定するその後の反応で不可逆にされる。これは、初期結合相互作用が、DDDおよびADの両方の上に置かれた反応性チオール基を近接させて(Chimuraら、Proc.Natl.Acad.Sci. USA.2001;98:8480)、部位特異的にライゲーションするはずであるため、有効局所濃度の原理に基づいて非常に効率的に起こる。
【0074】
2つの前駆体の官能基から離れてDDDおよびADを付着することにより、このような部位特異的なライゲーションは、2つの前駆体の元の活性を保存することも予期される。このアプローチは、効果的にモジュラーであり、広範囲の活性を有する広範囲の物質、たとえば、ペプチド、タンパク質、抗体、抗体フラグメントおよびその他のエフェクター部分を、部位特異的に、かつ共有的に連結する目的に潜在的に適用され得る。以下の実施例に記載されるADおよびDDD共役エフェクターを構築する融合タンパク質法を用いて、実質的に任意のタンパク質またはペプチドがDNL構築体中に組み入れられうる。しかしながら、当該技法は、非限定的であり、他の種類の分子を連結するために他の共役方法が利用されうる。
【0075】
関心のある融合タンパク質をコードする合成二本鎖核酸を産生するために、融合タンパク質を製造するための種々の方法が、核酸合成、ハイブリダイゼーションおよび/または増幅を含めて知られている。このような二本鎖核酸は、標準分子生物学的技法により、融合タンパク質産生のために発現ベクター中に挿入されうる(たとえば、Sambrookら、Molecular Cloning、A
laboratory manual、第2版、1989を参照されたい)。このような好ましい実施形態においては、ADおよび/またはDDD部分は、エフェクタータンパク質またはペプチドのN末端またはC末端のいずれにも付着されうる。しかしながら、当業者は、エフェクター部分へのADまたはDDD部分の付着の部位は、エフェクター部分の化学的性質ならびにその生理学的活性に関与するエフェクター部分の一部(単数または複数)によって変わりうると理解する。種々のエフェクター部分の部位特異的付着は、当該技術分野で既知の技法を用いて、たとえば、二価架橋試薬および/またはその他の化学的共役技法の使用により、実施されうる。
【0076】
DNL配列バリアント
代替実施形態において、DNL複合体の構築にAD部分および/またはDDD部分の配列バリアントを活用してもよい。ADおよびDDDドメインの構造と機能の関係は、調査の対象になってきた(たとえば、Burns−Hamuroら、2005、タンパク質 Sci 14:2982−92;
Carrら、2001、J Biol Chem 276:17332-38; Altoら、2003、Proc.Natl.Acad.Sci. USA 100:4445−50;
Hundsruckerら、2006、Biochem J 396:297−306; Stokkaら、2006、Biochem J 400:493−99;
Gold ら、2006、Mol Cell 24:383−95;Kindermanら、
2006、Mol Cell 24:397−408を参照されたい)。
【0077】
たとえば、Kindermanら(2006)は、AD−DDD結合相互作用の結晶構造を調べ、ヒトDDD配列には、二量体形成またはAKAP結合のいずれかに重要な保存アミノ酸残基(以下の配列番号:15の下線部)が数多く含まれていると結論づけた(参照により本明細書に組み込まれる、Kindermanら、2006の図1を参照されたい)。当業者は、DDD配列の配列バリアントを設計する際、二量体化およびAKAP結合に対して重要度の低い 残基については、保存アミノ酸置換を行なうこともありうるが、下線を引かれた残基については、どれも変更することは避けた方が望ましいことを理解する。
プロテインキナーゼA由来のヒトDDD配列
SHPPGTELLQGVLRQQPPDLVYFTRREARA(配列番号:15)
【0078】
Altoら(2003)は、AKAP−IS(配列番号:17)と呼ばれるRII選択的AD配列を、DDDに対する結合定数0.4 nMで設計するために、様々なAKAPタンパク質のAD配列のバイオインフォマティック分析を実施した。このAKAP-IS配列は、PKAへのAKAP結合のペプチドアンタゴニストとして設計された。置換によって、DDDへの結合が減少した傾向を示したAKAP−IS配列中の残基には、配列番号:17の中で下線が引かれている。

AKAP-IS配列
QIEYLKQIVDNAIQQA(配列番号:17)
【0079】
同様に、Gold(2006)は、結晶学およびペプチドスクリーニングを活用して、RIイソフォームと比較して、PKAのRIIイソフォームに対して5桁大きな選択性を示す、SuperAKAP−IS配列(配列番号:39)を開発した。下線を引いた残基は、AKAP-IS配列と比較して、RIIαのDDD部分への結合が増加したアミノ酸置換の位置を表している。この配列では、N末端のQ残基は残基番号4が付与されており、C末端のA残基は残基番号20である。 RIIαに対する親和性に影響を及ぼすために置換を行なうことのできる残基は、残基8、11、15、16、18、19および20(Goldら、2006)だった。 特定の代替実施形態においては、AKAP−IS AD部配列をSuperAKAP−IS配列で置換し、DNL構築体を調整することもありうると考えられる。AKAP-IS AD配列を置換できる可能性のある代替配列が、配列番号:40−42に示されている。AKAP−IS配列に比較した置換に下線を引いてある。配列番号:18に示されているように、AKAP−IS配列(配列番号:17)の場合と同様、AD部分には、追加のN末端残基のシステインおよびグリシン、ならびにC末端残基のグリシンおよびシステインを挿入することもありうると予測される。
SuperAKAP−IS
QIEYAKQIVDAIQA(配列番号:39)
代替AKAP配列
QIEYAKQIVDAIQA(配列番号:40)
QIEYAKQIVDAIQA(配列番号:41)
QIEYAKQIVDAIQA (配列番号:42)
【0080】
Stokkaら(2006)も、配列番号:43−45に示される、PKAへのAKAP結合の競合ペプチドを開発した。 ペプチドアンタゴニストは、Ht31(配列番号:43)、RIAD(配列番号:44)およびPV−38(配列番号:45)と命名された。Ht31ペプチドは 、PKAのRIIアイソフォームに対してより高い親和性を発揮し、RIADおよびPV−38はRIに対してより高い親和性を示した。.
Ht31
DLIEEAASRIVDAVIEQVKAAGAY(配列番号:43)
RIAD
LEQYANQLADQIIKEATE(配列番号:44)
PV−38
FEELAWKIAKMIWSDVFQQC(配列番号:45)
【0081】
Hundsruckerら(2006)は、PKAのRII型のDDDに対する結合定数を最低0.4 nMにして、PKAへのAKAP結合に対するさらに他の競合ペプチドを開発した。様々なAKAPアンタゴニストペプチドの配列が Hundsruckerらによる表1(参照により本明細書に組み込む)に示されている。AKAP IS配列と比較して、異なるAKAPタンパク質のADドメインの間で高度に保存された残基は、以下に下線で示されている。C末端アラニン残基が追加されているが、この残基は、Altoら(2003)が観察したものと同じである(参照により本明細書に組み込まれる、Hundsruckerら(2006)による図4を参照されたい)。RII DDD配列に対して特に高い親和性を有するペプチドアンタゴニストの配列は、配列番号:46−48に示されている。
AKAP−IS
QIEYLKQIVDNAIQQ(配列番号:17)
AKAP7δ−wt−pep
PEDAELVRLSKRLVENAVLKAVQQY(配列番号:46)
AKAP7δ−L304T−pep
PEDAELVRTSKRLVENAVLKAVQQY(配列番号:47)
AKAP7δ−L308D−pep
PEDAELVRLSKRDVENAVLKAVQQY(配列番号:48)
【0082】
Carrら(2001)は、ヒトおよびヒト以外のタンパク質由来の異なるAKAP結合DDD配列間の配列相同性の度合いを調べ、異なるDDD部分の間で最も高度に保存されていると見えるDDD配列中の残基を同定した。これらは、配列番号:15のヒトPKA RIIαDDD配列と比較して、以下で下線を付けて示されている。特に保存度の高かった残基はさらにイタリックで示されている。これらの残基は、Kinderman
ら(2006)がAKAPタンパク質への結合に重要であると示唆した残基と重なるが、同一ではない。

HIIPGLELLQGYTEVLRQPDLVEFAVEYFTRA(配列番号:15)
【0083】
当業者は、本明細書に記載のADおよび/またはDDD配列の配列バリアントを製造するには、一般に、異なるタンパク質由来のDDDおよびAD配列で高度に保存されるアミノ酸残基はアミノ酸置換を行なう際に一定のまま維持した方が好ましい可能性があるが、保存される程度がより低い残基はより容易に変化させうると認識するであろう。
【0084】
scFvベースのADモジュール
代替実施形態は、より小さいDNLコンジュゲートを産生する目的でのDDD2(配列番号:16)をベースとするサイトカインまたはRNaseとの対合のためのscFVベースのADモジュールの使用に関しうる。サイズのより小さいDNL構築体は、固形腫瘍への浸透を促進する可能性がある。われわれは、各ポリペプチド鎖のカルボキシル末端において、6−Hisタグ(配列番号:51)を有する相補可変ドメインを含む、2つの別個のポリペプチド鎖を発現することにより、scFvベースの二重特異性抗体を数種類製造した。同一のアプローチを使って、一方または両方の6−Hisタグ(配列番号:51)をAD配列またはAD−HHHHHH配列(配列番号:51)のいずれかで置換することにより、scFvベースのADモジュールを生成してもよい。われわれは、さらに、各ポリペプチド鎖を異なるAD配列(たとえば、AD2(配列番号:18) and AD3(配列番号:49))に融合することもできる。融合した場合、その同族配列により特定の認識が可能となり、したがって、最終的なDNLコンジュゲートの複雑性がさらに増加する。以下の表1に、このようなscFvベースのDNL構築体を列挙するが、すべてを完全に包括したリストではない。
【表1】

【0085】
I型は、1対のDDD2(配列番号:16)モジュールを連結するように設計されている。II型は、2対の同一または異なるDDD2モジュールを連結するように設計されている。III型は、1対のDDD2モジュールと1対のDDD3
(配列番号:50)モジュールを連結するように設計されている。2つのポリペプチド鎖は、逆平行な形で結び付くように設計されている。
【0086】
プレターゲッティング
二重特異性抗体または多重特異性抗体を、プレターゲッティング技法で利用してもよい。プレターゲッティングは当初は、直接、抗体を標的設定する遅い血液クリアランスを解決するために開発された多段階方法である。この遅れは骨髄など正常組織に対する望ましくない毒性の一因となる。プレターゲッティングでは、血液から数分内に除去される小型の送達分子(標的可能な構築体または標的可能な構築体)に、放射性核種または他の治療薬を付着させる。標的可能な構築体ならびに標的抗原との結合部位を有するプレターゲッティング二重特異性抗体または多重特異性抗体が最初に投与されることで、遊離抗体が血液循環から除去され、次いで標的可能な構築体が投与される。
【0087】
プレターゲッティング法は、当該技術分野で周知の方法であり、たとえば、Goodwinら、米国特許第4,863,713号;Goodwinら、J.Nucl.Med.29:226、1988;Hnatowichら、J.Nucl.Med.28:1294、1987;Oehrら、J.Nucl.Med.29:728、1988;Klibanov
ら、J.Nucl.Med.29:1951,1988;Sinitsynら、J.Nucl.Med.30:66、1989;Kalofonosら、J.Nucl.Med.31:1791、1990;Schechterら、Int.J.
Cancer 48:167,1991;Paganelliら、Cancer Res.51:5960、1991;Paganelliら、Nucl.Med.Commun.12:211、1991;米国特許第5,256,395号;Stickneyら、Cancer Res.51:6650、1991;Yuanら、Cancer Res.51:3119、1991;米国特許第6,077,499号;第7,011,812号;第7,300,644号;第7,074,405号;第6,962,702号;第7,387,772号;第7,052,872号;第7,138,103号;第6,090,381号;第6,472,511号;第6,962,702号;第6,962,702号;第7,074,405号;および米国特許出願第10/114,315(現在、放棄された)に開示されている;これらの各々の実施例のセクションは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0088】
被験者における疾患または障害を治療または診断するプレターゲッティング法は、以下によってもたらされうる:(1)被験者に二重特異性抗体または抗原結合抗体フラグメントを投与すること;(2)被験者に除去組成物を随意に投与して、該組成物が血液循環から該抗体を除去するのを可能にすること;および(3)1つ以上のキレート化したもしくは化学結合した治療薬または診断薬を含む標的可能な構築体を被験者に投与すること。標的可能な構築体にコンジュゲートされた酵素を投与し、該酵素によって活性型に変えられるプロドラッグを投与することによって、この技法を抗体依存性酵素プロドラッグ療法(ADEPT)に利用してもよい。
【0089】
アビマー
ある種の実施形態において、本明細書に記載の結合部分は、1つまたは複数のアビマー配列を含んでもよい。アビマーは、種々の標的分子に対する親和性および特異性において、抗体とやや類似する結合タンパク質の1つのクラスである。アビマーはin vitroでのエキソン・シャッフリングおよびファージ提示法により、ヒト細胞外受容体ドメインから開発された(Silvermanら、2005、Nat.Biotechnol.23:1493−94;Silvermanら、2006、Nat.Biotechnol.24:220)。得られる多ドメイン・タンパク質は、複数の独立した結合ドメインを含むことができ、単一エピトープ結合タンパク質に比較して、親和性(場合によっては、サブナノモル)および特異性に改善が見られる可能性がある(同書)。種々の実施形態において、アビマーは、特許請求された方法および組成物で使用するための、たとえば、DDDおよび/またはAD配列に付加してもよい。アビマーの構築および使用の方法に関する補足詳細情報は、たとえば、米国特許出願第20040175756号(現在、放棄されている)、第20050048512号(現在、放棄されている)、第20050053973号(現在、放棄されている)、第20050089932号および20050221384号(現在、放棄されている)に開示されている。これらの各々の実施例のセクションは、引用により本明細書に組み込まれる。
【0090】
ファージ提示法
特許請求対象の組成物および/または方法の特定の実施形態は、種々の標的分子、細胞または組織の結合ペプチドおよび/またはペプチド模倣薬に関しうる。結合ペプチドは、ファージ提示法を含め(ただし、これに限定されない)、当業で既知の任意の方法によって同定することができる。ペプチドの多種多様なペプチド群を製造するための種々のファージ提示法および技法が当業で周知である。たとえば、米国特許第5,223,409号;第5,622,699号および第6,068,829号は、ファージライブラリーを作製するための方法を開示している。ファージ提示技法は、一般に、小型ペプチドがバクテリオファージの表面上に発現できるようにバクテリオファージを操作することを伴う(SmithおよびScott、1985、Science 228:1315−1317;SmithおよびScott、1993、
Meth.Enzymol.21:228−257)。ペプチド以外に、一本鎖抗体などの、より大型のタンパク質をファージ分子の表面上に提示することもできる(Arapら、1998、Science 279:377−380)。
【0091】
所定の器官、組織、細胞型または標的分子に対して選択的な標的設定アミノ酸配列を、パニングにより単離することもできる(PasqualiniおよびRuoslahti、1996、Nature 380:364−366;Pasqualini、
1999、The Quart.J.Nucl.Med.43:159−162)。簡単に説明すると、推定標的設定ペプチドを含むファージのライブラリーを無傷の器官または単離された器官、組織、細胞型または標的分子に投与し、結合したファージを含む試料を採取する。標的に結合したファージを標的器官、組織、細胞型または標的分子から溶出した後、宿主細菌中で増殖することにより、増幅させることができる。
【0092】
特定の実施形態において、ファージは1回のパニングから次のパニングの間に宿主細菌中で増殖することもありうる。ファージによって溶解させる代わりに、細菌は特定のインサートを提示するファージのコピーを多数分泌することがありうる。望ましい場合は、増幅したファージを標的器官、組織、細胞型または標的分子に再度暴露し、追加のパニングのために採取してもよい。選択的または特定的バインダーが獲得できるまで、パニングは繰り返し実行してもよい。ペプチドのアミノ酸配列はファージゲノム中の標的設定ペプチドインサートに対応するDNA配列を決定することにより求めることができる。同定された標的設定ペプチドは、その後、標準的なタンパク質化学技法により合成ペプチドとして製造されうる(Arapら、1998、Smithら、1985)。
【0093】
いくつかの実施形態において、バックグラウンドファージ結合をさらに減少させるために、減算プロトコルを使うこともありうる。減算の目的は、関心の対象である標的以外の標的に結合するファージをライブラリーから除去することである。代替実施形態において、対照細胞、組織または器官に対して、ファージライブラリーのプレスクリーニングを行なうこともできる。たとえば、対照正常細胞系列に対してライブラリーをプレスクリーニングした後に、腫瘍結合ペプチドを同定してもよい。減算後、ライブラリーを関心対象の分子、細胞または組織に対してスクリーニングしてもよい。たとえば、米国特許第5,840,841号、第5,705,610号、第5,670,312号および第5,492,807号で開示されているように、減算プロトコルは他の方法も知られており、本特許請求された方法の実践に使ってもよい。
【0094】
アプタマー
ある種の実施形態において、有用な標的設定部分はアプタマーになりうる。アプタマーの結合特性を構築および決定する方法は、当業で周知である。たとえば、そのような技法が米国特許第5,582,981号、
第5,595,877号および第5,637,459号に記載されており、その各々の実施例のセクションは、参照により本明細書に組み込まれる。関心対象の特定の標的に結合するアプタマーを調製およびスクリーニングするための方法は周知であり、たとえば、米国特許第
5,475,096号および米国特許第5,270,163号に記載されており、その各々の実施例のセクションは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0095】
アプタマーは、合成、組換えおよび精製方法を含め、任意の既知の方法により調製してよく、単独で使用しても、同一の標的に特異的なほかのリガンドと組み合せて使用してもよい。一般に、特定の結合を生じさせるには、最低でおよそ3個のヌクレオチド、好ましくは5個のヌクレオチドが必要である。ヌクレオチドの数が10、20、30または40のアプタマーが好ましい場合があるが、10塩基より短い配列のアプタマーも可能である。
【0096】
アプタマーは、通常のDNAまたはRNA分子として、単離、配列決定および/または増幅または合成することができる。あるいは、関心対象のアプタマーは、修飾されたオリゴマーを含み得る。通常、アプタマーに存在しているヒドロキシ基のいずれもホスホン酸基、リン酸基による置換、標準の保護基による保護を受けるか、活性化されて、他のヌクレオチドへのさらなる結合を準備する、または固体支持体にコンジュゲートされることもありうる。Rが、Hまたはアルキル (1−20C)であり、R’がアルキル (1−20C)である場合、P(O)OがP(O)S、P(O)NR、P(O)R、P(O)OR’、COまたはCNR2で置換されるなど、1つまたは複数のホスホジエステル結合が代替結合基により置換されうる;さらに、この基は、OまたはSを通じて隣接するヌクレオチドに結合されうる。オリゴマーの結合のすべてが同一である必要はない。
【0097】
治療薬および診断薬
ある種の実施形態において、本明細書に記述した抗体、 抗体フラグメントまたは
融合タンパク質は単独で、「裸の」抗体フラグメントまたは 融合タンパク質として投与することができる。代替実施形態において、抗体フラグメントまたは 融合タンパク質は少なくとも1つの他の治療薬の投与前、同時または投与後のいずれかに投与することができる。その他の実施形態では、 抗体フラグメントまたは融合タンパク質は、治療薬および/または診断薬と共有または非共有結合させ、イムノコンジュゲートを形成することができる。.
【0098】
治療薬は、好ましくは、放射性核種、免疫調節剤、血管新生阻害剤、サイトカイン、ケモカイン、増殖因子、ホルモン、薬物、プロドラッグ、酵素、オリゴヌクレオチド、アポトーシス促進剤、干渉RNA、光活性治療薬、細胞毒性薬(
化学療法剤または毒素、およびその組合せとすることができる)から成る群から選択される。
使用する薬物は、抗有糸分裂、 抗キナーゼ、アルキル化、代謝拮抗、抗生、アルカロイド、
抗血管形成、アポトーシス促進、およびこれらの組合せから成る群から適切に選択される薬物学的性質を所有しうる。
【0099】
有用な薬物の例は、以下に限定されないが、有用で例示的な薬物は、以下を含むがこれらに限定されない:5‐フルオロウラシル、アプリジン、アザリビン、アナストロゾール、アントラサイクリン、ベンダムスチン、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、ブリオスタチン−1、ブスルファン、カリチアマイシン、カンプトセシン、カルボプラチン、10−ヒドロキシカンプトセシン、カルムスチン、セレブレックス、クロラムブシル、シスプラチン(CDDP)、コックス−2阻害剤、イリノテカン(CPT−11)、SN−38、カルボプラチン、クラドリビン、カンプトテカン、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ドセタキセル、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、2−ピロリノドキソルビシン(2P−DOX)、シアン−モルフォリノドキソルビシン、ドキソルビシングルクロニド、エピルビシン・グルクロニド、エストラムスチン、エピドフィロトキシン、エストロジェン受容体結合剤、エトポシド(VP16)、エトポシドグルクロニド、リン酸エトポシド、フロキシウリジン(FUdR)、3′,5′−O−ジオレオイル−FudR(FUdR−dO)、フルダラビン、フルタミド、ファルネシル−タンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、イダルビシン、イフォスファミド、L−アスパラギナーゼ、レナリダミド、ロイコボリン、ロムスチン、メクロレタミン、メルファラン、メルカプトプリン、6−メルカプトプリン、メトトレキセート、ミトキサントロン、ミトラマイシン、マイトマイシン、ミトタン、ナベルビン、ニトロソウレア、プリコマイシン、プロカルバジン、パクリタキセル、ペントスタチン、PSI−341、ラロキシフェン、セムスチン、ストレプトゾシン、タモキシフェン、タキソール、テマゾロミド(DTICの水性形態)、トランスプラチナ、サリドマイド、チオグアニン、チオテパ、テニポシド、トポテカン、ウラシルマスタード、ビノレルビン、ビンブラスチン、ビンクリスチンおよびビンカアルカロイド。
【0100】
有用な毒素としては、リシン、アブリン、アルファ毒素、サポリン、リボヌクレアーゼ(RNase)(たとえば、オンコナーゼ、DNase
I、ブドウ球菌エンテロトキシン−A、ヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、ゲロニン、ジフテリア毒素、緑膿菌外毒素、および緑膿菌内毒素が挙げられる。
【0101】
有用な免疫調節剤は、サイトカイン、幹細胞増殖因子、リンホトキシン、造血因子、コロニー刺激因子(CSF)、インターフェロン(IFN)、エリスロポイエチン、トロンボポエチンおよびそれらの組み合わせから選択されてもよい。特に有用なのは、腫瘍壊死因子(TNF)などのリンホトキシン、インターロイキン(IL)などの造血因子、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)または顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)などのコロニー刺激因子、インターフェロン−α、−βまたは−γなどのインターフェロン、および「S1因子」と名付けられたものなど幹細胞増殖因子である。サイトカインに含まれるのは、ヒト成長ホルモン、N−メチオニルヒト成長ホルモンおよびウシ成長ホルモンなどの成長ホルモン;上皮小体ホルモン;チロキシン;インスリン;プロインスリン;リラキシン;プロリラキシン;卵胞刺激ホルモン(FSH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)および黄体ホルモン(LH)などの糖タンパク質ホルモン;肝細胞増殖因子;プロスタグランジン、線維芽細胞増殖因子;プロラクチン;胎盤性ラクトゲン、OBタンパク質;腫瘍壊死因子−αおよび−β;ミュラー管抑制物質;マウスゴナドトロピン関連ペプチド;インヒビン;アクチビン;血管内皮増殖因子;インテグリン;トロンボポエチン(TPO);NGF−βなどの神経成長因子;血小板増殖因子;TGF−αおよびTGF−βなどのトランスフォーミング増殖因子(TGF);インスリン様増殖因子−Iおよび−II;エリスロポイエチン(EPO);骨形成誘導因子;インターフェロン−α、−βおよび−γなどのインターフェロン;マクロファージ−CSF(M−CSF)などのコロニー刺激因子(CSF);IL−1、IL−1α、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−13、IL−14、IL−15、IL−16、IL−17、IL−18、IL−21、IL−25のようなインターロイキン(IL);LIF、キットリガンドまたはFLT−3、Flt−1、アンギオスタチン、トロンボスポンジン、エンドスタチン、腫瘍壊死因子(TNF)ならびにLTが挙げられる。本明細書に用いるように、用語サイトカインという用語は自然源由来のまたは組換え細胞培養由来のタンパク質および天然配列サイトカインの生物活性等価物を含む。
【0102】
有用なケモカインとしては、RANTES、MCAF、MIP1−α、MIP1−βおよびIP−10が挙げられる。
【0103】
患部組織の治療に有用な放射性同位元素としては、以下に限定されないが、:111In、177Lu、212Bi、213Bi、211At、62Cu、67Cu、90Y、125I、131I、32P、33P、47SC−11Ag、67Ga、142PR153Sm、161Tb、166Dy、166Ho、186Re、188Re、189Re、212Pb、223Ra、225Ac、59Fe、75Se、77As、89Sr、99Mo、105Rh、109Pd、143PR149Pm、169ER194IR198Au、199Auおよび211Pbが挙げられる。治療用放射性核種は、Augerエミッタの場合は20〜6,000keVの範囲、好ましくは60〜200keVの範囲、ベータエミッタの場合は100〜2,500kevVの範囲、アルファエミッタの場合は4,000〜6,000keVの範囲で崩壊エネルギーを有することが好ましい。有用なベータ粒子放出核種の最大崩壊エネルギーは、好ましくは20〜5,000keV、より好ましくは100〜4,000keV、および最も好ましくは500〜2,500keVである。また、Auger放出粒子により実質的に崩壊する放射性核種が好ましい。たとえば、Co−58、Ga−67、Br−80m、Tc−99m、Rh103m、Pt−109、In−111、Sb−119、l−125、Ho−161、Os−189mおよびIR192。有用なベータ粒子放出核種の崩壊エネルギーは、好ましくは<1,000keV、より好ましくは<100keV、および最も好ましくは<70keVである。また、アルファ粒子の生成によって実質的に崩壊する放射性核種が好ましい。これらの放射性核種としては以下が挙げられるがこれらに限定されない:Dy−152、At−211、Bi−212、Ra−223、Rn−219、Po−215、Bi−211、Ac−225、Fr−221、At−217、Bi−213およびFm−255。有用なアルファ粒子放出放射性核種の崩壊エネルギーは、好ましくは2,000〜10,000keV、より好ましくは3,000〜8,000keV、および最も好ましくは4,000〜7,000keVである。さらに有用で有望な放射性同位元素として、11C、13N、15O、75BR198Au、224Ac、126I、133I、77BR113mIn、95Ru、97Ru、103Ru、105Ru、107Hg、203Hg、121mTe、122mTe、125mTe、165Tm、167Tm、168Tm、197Pt、109Pd、105Rh、142PR143PR161Tb、166Ho、199Au、57Co、58Co、51Cr、59Fe、75Se、201Tl、225Ac、76BR169Yb等が挙げられる。有用な診断核種のいくつかとしては、18F、52Fe、62Cu、64Cu、67Cu、67Ga、68Ga、86Y、89Zr、94Tc、94mTc、99mTcまたは111Inが挙げられる。ある種の実施形態において、hR1などの
抗IGF−1R抗体は、放射線治療の腫瘍の感作のための治療用放射性核種と組み合せることで有用になりえる(たとえば、Allenら、2007、Cancer Res. 67:1155を参照されたい)。
【0104】
治療薬は、光活性剤または色素を含んでもよい。蛍光色素などの蛍光組成物、および他の色源体、または可視光に感受性のあるポルフィリンなどの色素を用いて、病変に適切な光を向けることによって病変を検出し、治療してきた。治療において、これは光放射、光線療法、または光線力学療法と称されてきた。Joriら(編)、PHOTODYNAMIC THERAPY OF TUMORS AND OTHER
DISEASES(Libreria Progetto 1985);van den Bergh、Chem.Britain(1986),22:430を参照されたい。さらに、モノクローナル抗体は光線療法を達成するために、光活性化色素に結合されてきた。Mew
ら、J.Immunol.(1983)、130:1473;(同書)、Cancer Res.(1985)、45:4380;Oseroffら、Proc.Natl.Acad.Sci..USA(1986)、83:8744;(同書)、Photochem.Photobiol.(1987)、46:83;Hasanら、Prog.Clin.Biol.Res.(1989),288:471;Tatsuta
et al.,Lasers Surg.Med.(1989)、9:422;Pelegrinら、Cancer(1991)、67:2529を参照されたい。
【0105】
副腎皮質ホルモンは他の化学療法剤の効果を増加することが可能で、したがって、併用療法で多用される。プレドニゾンおよびデキサメタゾンは、副腎皮質ホルモンの例である。
【0106】
いくつかの実施形態において、血管新生阻害剤は、たとえばアンジオスタチン、バキュロスタチン、カンスタチン、マスピン、抗胎盤成長因子(PlGF)ペプチドおよび抗体、抗血管増殖因子抗体(抵VEGFおよび抗PIGFなど)、抗Flk−1抗体、抗Flt−1抗体およびペプチド、抗Kras抗体、抗cMET抗体、抗MIF(マクロファージ遊走阻止因子)抗体、ラミニンペプチド、フィブロネクチンペプチド、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤、組織メタロプロテイナーゼ阻害剤、インターフェロン、インターロイキン12、IP−10、Gro−β、トロンボスポンジン、2−メトキシエストラジオール、プロリフェリン関連タンパク質、カルボキシアミドチリアゾール、CM101、マリマスタット、ペントサン多硫酸塩、アンジオポエチン−2、インターフェロンα、ハービマイシンA、PNU145156E、16Kプロラクチンフラグメント、リノミド、サリドマイド、ペントキシフィリン、ゲニステイン、TNP−470、エンドスタチン、パクリタキセル、アキュチン、アンギオスタチン、シドフォビル、ビンクリスチン、ブレオマイシン、AGM−1470、血小板第4因子またはミノサイクリンが有用であろう。
【0107】
他の有用な治療薬は、オリゴヌクレオチドを含み、好ましくは癌遺伝子および癌遺伝子産物(bcl−2など)に向けられるアンチセンスオリゴヌクレオチドが特に好ましい。
【0108】
診断薬は、好ましくは、放射性核種、放射線造影剤、常磁性イオン、金属、蛍光標識、化学発光標識、超音波造影剤および光活性剤からなる群より選択される。このような診断薬は公知であり、任意のこのような既知の診断薬を使用しうる。診断薬の非限定的な例として、110In、111In、177Lu、18F、52Fe、62Cu、64Cu、67Cu、67Ga、68Ga、86Y、90Y、89Zr、94mTc、94Tc、99mTc、120I、123I、124I、125I、131I、154‐158Gd、32P、11C、13N、15O、186Re、188Re、51Mn、52mMn、55Co、72As、75Br、76Br、82mRb、83Srあるいはその他のガンマ、ベータまたは陽電子放射体を挙げられる。有用な常磁性イオンとして、クロム(III)、マンガン(II)、鉄(III)、鉄(II)、コバルト(II)、ニッケル(II)、銅(II)、ネオジム(III)、サマリウム(III)、イッテルビウム(III)、ガドリニウム(III)、バナジウム(II)、テルビウム(III)、ジスプロシウム(III)、ホルミウム(III)またはエルビウム(III)が挙げられる。金属造影剤として、ランタン(III)、金(III)、鉛(II)またはビスマス(III)を挙げられる。超音波造影剤には、ガス封入リポソームのようなリポソームが包含されうる。放射線不透過性の診断薬は、バリウム化合物、ガリウム化合物およびタリウム化合物のような化合物から選択されうる。広範な種々の蛍光標識が当該分野で公知であり、フルオレセインイソチアシアネート、ローダミン、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o‐フタルデヒドおよびフルオレサミンが挙げられるが、これらに限定されない。有用な化学発光標識として、ルミノール、イソルミノール、芳香族アクリジニウムエステル、イミダゾール、アクリジニウム塩またはシュウ酸エステルを挙げられる。
【0109】
イムノコンジュゲート
本明細書に記載の抗体、抗体フラグメントまたは抗体融合タンパク質のいずれも、1つまたは複数の治療薬または診断薬とコンジュゲートしてよい。複数の治療薬は同一である必要はなく、たとえば、薬物と放射性同位元素のように、異なっていてもよい。たとえば、131Iを抗体または融合タンパク質のチロシン中に組み込み、薬物をリジン残基のイプシロンアミノ基に付加してもよい。治療薬および診断薬を、たとえば、還元SH基および/または炭化水素側鎖に付加してもよい。治療薬または診断薬と抗体または融合タンパク質との共有結合的または非共有結合的コンジュゲートを作製するための多くの方法が当該分野で公知であり、任意のこのような既知の方法を用いてもよい。
【0110】
治療薬または診断薬を、ジスルフィド結合形成を介して、還元抗体成分のヒンジ領域に付加してもよい。あるいは、このような薬剤を、N‐スクシニル3‐(2‐ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)のようなヘテロ二官能性架橋剤を用いて付加してもよい(Yuら、Int.J.Cancer、56:244(1994))。このようなコンジュゲーションのための一般的技術は、当該分野で公知である。例えば、Wong、CHEMISTRY
OF タンパク質 CONJUGATION AND CROSS‐LINKING(CRC Press 1991);Birchら編、(Wiley‐Liss、Inc.、1995)に掲載の、Upeslacisら、Modification of Antibodies by Chemical
Methods、187頁‐230頁;MONOCLONAL ANTIBODIES: PRODUCTION,
ENGINEERING AND
CLINICAL APPLICATION、Ritterら編、(Cambridge University Press、1995)に掲載の、Price、Production and Characterization of Synthetic Peptide‐Derived Antibodies
、60頁‐84頁 を参照されたい。あるいは、治療薬または診断薬を、抗体のFc領域中の炭水化物部分を介して、コンジュゲートしてもよい。チオール基と結合した同一薬剤の装薬量を増大させるために炭水化物基を用いてもよく、あるいは異なる治療薬または診断薬を結合させるために炭水化物部分を用いてもい。
【0111】
ペプチドを、抗体の炭水化物部分を介して抗体成分にコンジュゲートするための方法は、当業者に公知である。たとえば、Shihら、Int.J.Cancer、41:832(1988);Shihら、Int.J.Cancer、46:1101(1990);Shihら、米国特許第5,057,313号(その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。一般的な方法として、酸化された炭水化物部分を有する抗体成分を、遊離アミン官能基を少なくとも1つ有する担体ポリマーと反応させることが挙げられる。この反応により、まずシッフ塩基(イミン)結合が形成され、これを第2級アミンに還元することで安定化させて、最終的なコンジュゲートを形成する。
【0112】
イムノコンジュゲートの抗体成分として用いられる抗体が、抗体フラグメントである場合、Fc領域が欠如することもありうる。しかし、炭水化物部分を完全長抗体または抗体フラグメントの軽鎖可変領域に導入することは可能である。たとえば、Leungら、J.Immunol.、154:5919(1995);米国特許第5,443,953号および第6,254,868号(その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。改変された炭水化物部分を用いて、治療薬または診断薬が付加される。
【0113】
いくつかの実施形態において、キレート剤を抗体、抗体フラグメントまたは融合タンパク質または標的設定可能構築体に付加して、放射性核種のような治療薬または診断薬をキレート化するために使用してもよい。キレート剤の例として、DTPA(Mx‐DTPAなど)、DOTA、TETA、NETAまたはNOTAが挙げられるが、これらに限定されない。コンジュゲーション法ならびにキレート剤を使用して、金属またはその他のリガンドをタンパク質に付加する方法は、当該分野で公知である(例えば、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願第7,563,433を参照されたい)。
【0114】
特定の実施形態において、放射性金属または常磁性イオンを、イオンを結合させるための多様なキレート基を付加することのできる長い尾部を有する試薬と反応させて、タンパク質またはペプチドに付加してもよい。このような尾部は、ポリリジン、多糖または、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、ポルフィリン、ポリアミン、クラウンエーテル、ビス‐チオセミカルバゾン、ポリオキシムおよびこの目的に有用であると知られている同様な基のようなキレート基が結合可能なペンダント基を有する他の誘導体化されたまたは誘導体化可能な鎖のような、ポリマーであってよい。
【0115】
キレートを、たとえば、米国特許第4,824,659号(その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる)に開示されているように、抗体またはペプチドに直接結合させることもありうる。特に有用な金属−キレートの組合せとして、1251、131I、123I、124I、62Cu、64Cu、18F、111In、67Ga、68Ga、99mTc、94mTC−11C、13N、150、76Brのような一般的エネルギー範囲が60〜4000keVの診断用アイソトープとともに放射性イメージングに用いられる、2‐ベンジル‐DTPAならびにそのモノメチルおよびシクロヘキシル類似体が挙げられる。同じキレートが、マンガン、鉄およびガドリニウムのような非放射性金属と錯体化した場合は、MRIに有用である。NOTA、DOTAおよびTETAのような大環状キレートは、様々な金属および放射性金属とともに、最も具体的には、それぞれガリウム、イットリウムおよび銅の放射性核種とともに用いられる。このような金属キレート錯体は、対象とする金属に環のサイズを合わせることにより、非常に安定させることができる。RAITに対する223Raなど、安定な結合核種のために興味深い、大環状ポリエーテルなど、他の環型キレートが包含される。
【0116】
ごく最近では、PETスキャン技術で使用される18F標識の方法、たとえば、F‐18とアルミニウムのような金属または他の原子との反応による方法が開示されている。18F‐Alコンジュゲートは、抗体に直接付加する、またはプレターゲティング法において標的となりうる構築体を標識するために使用される、DOTA、NOTAまたはNETAのようなキレート基と錯体化されることもありうる。このようなF‐18標識技術は、米国特許第7,563,433号(その実施例のセクションが、参照により本明細書に組み込まれる)に開示されている。
【0117】
治療処置方法
種々の実施形態は、ヒト、家畜、コンパニオンペット(イヌおよびネコなど)を含む哺乳類などの被験者における癌を治療する方法に関し、この方法には該被験者に治療有効量の抗体、フラグメントまたは融合タンパク質を投与することを含む。好ましい実施形態において、この抗体またはフラグメントは、抗IGF−1R MAbである。特定の実施形態においは、治療は、治療薬が結合されていない「裸の抗体」を利用することもある。
【0118】
「裸の」抗IGF−1R抗体の投与は、標的細胞の表面上で別の抗原と結合もしくは反応する別の「裸の抗体」の治療有効量を同時にまたは経時的に投与することによって補充されうる。好ましい追加のMAbは、CD4、CD5、CD8、CD14、CD15、CD16、CD19、IGF−1R、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD30、CD32b、CD33、CD37、CD38、CD40、CD40L、CD45、CD46、CD52、CD54、CD70、CD74、CD79a、CD80、CD95、CD126、CD133、CD138、CD154、CEACAM5、CEACAM6、B7、AFP、PSMA、EGP−1、EGP−2、炭酸脱水酵素IX、PAM4抗原、MUC1、MUC2、MUC3、MUC4、MUC5、Ia、MIF、HM1.24、HLA−DR、テネイシン、Flt−3、VEGFR、PlGF、ILGF、IL−6、IL−25、テネイシン、TRAIL−R1、TRAIL−R2、補体因子C5、癌遺伝子産物、またはこれらの組み合わせから成る群から選択される少なくとも1つのヒト化MAb、キメラMAbまたはヒトMAbを含む。
【0119】
単体でもしくは他の裸のMAbとの組み合わせでの裸の抗IGF−1R治療のいずれも、上述のように少なくとも1つの治療薬を同時にまたは経時的に投与することでさらに補充されうる。集学的治療は、抗CD22、抗CD19、抗CD20、抗CD21、抗CD74、抗CD80、抗CD23、抗CD45、抗CD46、抗MIF、抗EGP−1、抗CEACAM5、抗CEACAM6、PAM4、または抗HLA−DR(インバリアント鎖を含む)抗体を、裸の抗体または融合タンパク質の形状で、あるいはイムノコンジュゲートとして投与することで補充される裸の抗IGF−1R抗体による治療を含んでもよい。さらに、裸の抗IGF−1R抗体またはそのフラグメントは、MUC1またはMUC5抗原に対する裸の抗体で補充されてもよい。抗CD19抗体、抗CD20抗体および抗CD22抗体など、有用な種々の抗体が当業者には周知である。たとえば、Ghetieら、Cancer Res. 48:2610 (1988); Hekmanら、Cancer Immunol.Immunother.32:364 (1991); Longo、Curr.Opin.Oncol.8:353(1996)、米国特許第5,798,554号;第6,187,287号;第6,306,393号;第6,676,924号;第7,109,304号;第7,151,164号;第7,230,084号;第7,230,085号;第7,238,785号;第 7,238,786号;第 7,282,567号;第7,300,655号;第7,312,318号;第7,612,180号;第7,501,498号および米国特許出願第20080131363号;第20080089838号;第20070172920号;第20060193865号;および第20080138333号を参照されたい。その各々のセクションは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0120】
もう1つの集学的療法の形態では、被験者は、標準的な癌化学療法と併せて、裸の抗IGF−1R抗体および/またはイムノコンジュゲートを投与される。たとえば、「CVB」(1.5g/m2シクロホスファミド、200−400mg/m2エトポシド、および150−200mg/m2カルムスチン)は、非ホジキンリンパ腫を治療するのに用いられるレジメンである。Pattiら、Eur.J.Haematol.51:18(1993)。他の適切な併用化学療法レジメンは、当業者に周知である。たとえば、Hollandら(編)のCANCER
MEDICINE,第2、3版2028頁−2068頁に掲載されたFreedmanら"Non−Hodgkin’s Lymphomas"(Lea&Febiger 1993)を参照されたい。例示として、中悪性度の非ホジキンリンパ腫(NHL)治療のための第一世代の化学療法レジメンには、C−MOPP(シクロホスファミド、ビンクリスチン、プロカルバジンおよびプレドニゾン)ならびにCHOP(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチンおよびプレドニゾン)が挙げられる。有用な第二世代の化学療法レジメンは、m−BACOD(メトトレキセート、ブレオマイシン、ドキソルビシン、シクロフォスファミド、ビンクリスチン、デキサメタゾンおよびロイコボリン)であリ、適切な第三世代のレジメンは、MACOP−B(メトトレキセート、ドキソルビシン、シクロホスファミド、ビンクリスチン、プレドニゾン、ブレオマイシンおよびロイコボリン)である。さらなる有用な薬物として、フェニル酪酸塩、ベンダムスチンおよびブリオスタチン−1が挙げられる。好ましい集学的療法では、化学療法薬およびサイトカインのどちらも、本発明に従って、抗体、イムノコンジュゲートまたは融合タンパク質と共投与される。サイトカイン、化学療法薬および抗体またはイムノコンジュゲートは、どのような順序でも、または一緒に投与されてもよい。
【0121】
イムノコンジュゲートまたは裸の抗体は、薬学的に有用な組成物を製造するための既知の方法によって製剤化されえ、それによってイムノコンジュゲートまたは裸の抗体は、混合物として薬学的に適切な賦形剤と組み合わせられる。無菌リン酸緩衝食塩水は、薬学的に適切な賦形剤の一例である。他の適切な賦形剤は、当業者に周知である。たとえば、Anselら、PHARMACEUTICAL DOSAGE FORMS AND DRUG DELIVERY SYSTEMS、第5版(LeaおよびFebiger 1990)、およびGennaro(編)、REMINGTON′S PHARMACEUTICAL SCIENCES、第18版(Mack Publishing Company 1990)およびその改訂版を参照されたい
【0122】
本発明のイムノコンジュゲートまたは裸の抗体は、たとえばボーラス注射または持続注入を介する静脈内投与用に製剤化されうる。好ましくは、この抗体は約4時間未満の時間をかけて、より好ましくは、約3時間未満の時間をかけて注入される。たとえば、最初の25−50mgは、30分以内に、好ましくは15分以内に注入され、残りは次の2−3時間にわたって注入されてもよい。注射用の製剤は、保存剤を添加して、単位投薬形態、たとえば、アンプルで、または多回投与用容器で提供することができる。組成物は、油性溶媒または水性溶媒中の懸濁剤、溶液剤または乳剤などの形状をとってよく、懸濁剤、安定化剤および/または分散剤などの製剤化剤を含有することができる。あるいは、有効成分は、使用前に、無菌の発熱性物質除去蒸留水などの適切な溶媒との組成のための粉末形態を取ることもできる。
【0123】
さらなる製薬方法を用いて、治療用または診断用のコンジュゲートもしくは裸の抗体の作用持続時間を制御することができる。イムノコンジュゲートまたは裸の抗体を複合化するまたは吸着するために、ポリマーを用いることによって徐放製剤を調製することができる。たとえば、生体適合性ポリマーには、ポリ(エチレン−co−酢酸ビニル)のマトリックスおよびステアリン酸二量体とセバシン酸のポリ酸無水物共重合体のマトリックスが含まれる。Sherwoodら、Bio/Technology 10:1446(1992)。イムノコンジュゲートまたはそのようなマトリックス由来の抗体の放出速度は、イムノコンジュゲートまたは抗体の分子量、イムノコンジュゲートの量、マトリックス内の抗体、および分散粒子径に依る。Saltzmanら、Biophys.J.55:163(1989);Sherwoodら(上記参照)。他の固体剤形については、Anselら、PHARMACEUTICAL DOSAGE FORMS AND DRUG DELIVERY
SYSTEMS、第5版(Lea&Febiger 1990),およびGennaro(編)、REMINGTON′S PHARMACEUTICAL SCIENCES、第18版(Mack Publishing
Company 1990)およびその改訂版に記載がある。
【0124】
イムノコンジュゲート、抗体融合タンパク質、または裸の抗体は、皮下経路もしくは他の非経口経路で、哺乳類に投与されてもよい。さらに、この投与は持続注入による、または、単回もしくは複数回のボーラスによるものであってもよい。好ましくは、この抗体は約4時間未満の時間をかけて、およびより好ましくは、約3時間未満の時間をかけて注入される。
【0125】
一般に、ヒトに投与されるイムノコンジュゲート、融合タンパク質または裸の抗体の投与量は、患者の年齢、体重、身長、性別、全身病状および病歴などの要因に応じて変化する。単回静脈注入として約1mg/kgから25mg/kgまでの範囲にあるイムノコンジュゲート、抗体融合タンパク質または裸の抗体の投与量をレシピエントに供給することが望ましいこともあるが、状況に応じてより低いまたはより高い投与量が投与されることもある。たとえば、投与量が1−20mg/kgならば、体重70kgの患者の場合は70−1,400mg、あるいは身長が1.7mの患者の場合は41−824mg/mになる。この投与量はたとえば4−10週間毎週1回、8週間毎週1回、4週間毎週1回のように、必要に応じて繰り返すことができる。さらに、維持療法の必要に応じて、投与は、数カ月間は隔週、または何カ月間は毎月1回もしくは3カ月ごとに1回など、より低い頻度で与えられてもよい。
【0126】
あるいは、裸の抗IGF−1Rなどの抗体は、2週または3週ごとに1つの投与量として投与され、合計少なくとも3回の投与量で繰り返されてもよい。また、抗体は4−6週間の間は毎週2回投与されてもよい。投与量を約200−300mg/m2(身長1.7mの患者に対して1投与につき340mg、または体重70kgの患者に対して4.9mg/kg)まで下げる場合、この投与量を4−10週間は毎週1回または2回投与されてもよい。あるいは、投与計画は減少させてもよい、すなわち2−3カ月間は2週ごとまたは3週ごとに1回としてもよい。ただし、1週間に1回または2−3週間に1回20mg/kgを投与するなどの、より高い投与量でも、反復投与サイクルの間、速度の遅い点滴で投与することができる。投薬計画は、場合により他の間隔で繰り返してよく、投与量を投与回数および計画を適切に調整することで、種々の非経口経路を介して与えてもよい。
【0127】
好ましい実施形態において、 抗IGF−1R抗体は、
癌の治療に有用である。 癌の例としては、
以下に限定されないが、癌腫、リンパ腫、膠芽細胞腫、 メラノーマ、肉腫および白血病、骨髄腫または リンパ性悪性疾患が挙げられる。このような癌のより具体的な例を下記で言及し、以下が含まれる:扁平上皮癌(たとえば、扁平上皮細胞癌)、ユーイング肉腫、ウィルムス腫瘍、星状細胞腫、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌および肺の扁平上皮癌を含む肺癌、腹膜の癌、肝細胞癌、消化管癌を含む胃の癌つまり胃癌、膵臓癌、多形性膠芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、肝癌、肝細胞癌腫、神経内分泌腫瘍、甲状腺髄様癌、分化甲状腺癌、乳癌、卵巣癌、
結腸癌、直腸癌、子宮内膜癌または子宮癌腫、唾液腺癌腫、腎臓癌つまり腎癌、前立腺癌、外陰癌、肛門癌、陰茎癌、ならびに頭頸部癌が挙げられる。用語「癌」には、原発性悪性細胞または腫瘍(たとえば、細胞が元々悪性または腫瘍である部位以外の被験者の身体部位に遊走しなかった細胞または腫瘍)、および二次的な悪性細胞または腫瘍(たとえば、転移により発症した腫瘍、最初の腫瘍部位と異なる二次的部位への悪性細胞または腫瘍細胞の転移)を含む。本発明の治療方法の対象となる癌には、IGF−1Rを発現する、過剰発現する、または異常に発現する細胞が必要である。
【0128】
癌または悪性腫瘍の他の例は、以下に限定されないが、急性小児急性リンパ性白血病、急性リンパ性白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄(性)白血病、副腎皮質癌、成人(原発性)肝細胞癌、
成人(原発性)肝臓癌、成人急性リンパ球性白血病、成人急性骨髄(性)白血病、成人ホジキンリンパ腫、成人リンパ球性白血病、成人非ホジキンリンパ腫、
成人原発性肝臓癌、成人軟部肉腫、AIDS関連リンパ腫、AIDS関連悪性腫瘍、肛門癌、星状細胞腫、胆管癌、
膀胱癌、骨癌、脳幹神経膠腫、脳腫瘍、乳癌、腎盂癌および尿管癌、中枢神経系(原発性)リンパ腫、中枢神経系リンパ腫、小脳星状細胞腫、大脳星状細胞腫、子宮頸癌、小児(原発性)肝細胞癌、小児(原発性)肝臓癌、小児急性リンパ性白血病、小児急性骨髄(性)白血病、小児脳幹神経膠腫、小児小脳星状細胞腫、小児大脳星状細胞腫、小児頭蓋外胚細胞腫瘍、小児ホジキン病、小児ホジキンリンパ腫、小児視床下部および視覚路神経膠腫、小児急性リンパ性白血病、小児髄芽腫、小児非ホジキンリンパ腫、小児松果体およびテント上原始神経外胚葉腫瘍、小児原発性肝臓癌、小児横紋筋肉腫、小児軟部組織肉腫、小児視覚路および視床下部神経膠腫、神経膠腫、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、結腸癌、皮膚T細胞リンパ腫、膵内分泌部島細胞細胞腫、子宮内膜癌、上衣腫、上皮癌、食道癌、ユーイング肉腫および関連腫瘍、外分泌膵癌、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞性腫瘍、肝臓外胆管癌、眼癌、女性の乳癌、ゴーシェ病、胆汁膀胱癌、胃癌、眼癌、女性の乳癌、ゴーシェ病、胆汁膀胱癌、胃癌、消化管カルチノイド腫瘍、胃腸腫瘍、胚細胞性腫瘍、妊娠性絨毛性腫瘍、ヘアリー細胞白血病、頭頸部癌、肝細胞癌、ホジキンリンパ腫、ガンマグロブリン血症、下咽頭癌、腸癌、眼内メラノーマ、島細胞癌、島細胞膵癌、カポジ肉腫、腎臓癌、喉頭癌、口唇癌および口腔癌、肝癌、肺癌、リンパ球増殖性疾患、マクログロブリン血症、男性の乳癌、悪性中皮腫、悪性胸腺腫、髄芽腫、メラノーマ、中皮腫、転移性潜在性原発性の扁平上皮性頸部癌、転移性原発性の扁平上皮性頸部癌、転移性の扁平上皮性頸部癌、多発性骨髄腫、多発性骨髄腫/形質細胞腫瘍、骨髄異形成症候群、骨髄性の白血病、骨髄性白血病、骨髄増殖性疾患、鼻腔癌および副鼻腔癌、上咽頭癌、神経芽細胞腫、非ホジキンリンパ腫、非黒色腫皮膚癌、非小細胞肺癌、潜在性原発性転移性の扁平上皮性頸部癌、中咽頭癌、骨/悪性線維性肉腫、骨肉種/悪性線維性組織球腫、骨の骨肉種/悪性線維性組織球腫、卵巣上皮癌、卵巣胚細胞性腫瘍、卵巣低悪性度腫瘍、膵癌、パラプロテイン血症、真性多血症、副甲状腺癌、陰茎癌、褐色細胞腫、下垂体腫瘍、原発性中枢神経系リンパ腫、原発性肝臓癌、前立腺癌、直腸癌、腎細胞癌、腎盂癌および尿管癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺癌、サルコイドーシス肉腫、セザリー症候群、皮膚癌、小細胞肺癌、小腸癌、軟部組織肉腫、扁平上皮性頸部癌、胃癌、テント上原始神経外胚葉および松果体腫瘍、T細胞リンパ腫、精巣癌、胸腺腫、甲状腺癌、移行細胞性腎盂癌および尿管癌、移行性腎盂癌および尿管癌、絨毛性腫瘍、尿管および腎盂の細胞癌、尿道癌、子宮癌、子宮肉腫、腟癌、視覚路および視床下部性神経膠腫、外陰癌、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、ウィルムス腫瘍、ならびに、腫瘍症に加え、先に記載した臓器系にある、他の任意の過剰増殖性疾患を含む。
【0129】
本明細書に記述し、請求する方法および組成物は、限定されるものではないが、先に説明した疾患悪性状態または前癌状態を治療し、腫瘍性状態または悪性状態の進行を防ぐために使用することができる。そのような使用とは、公知の状態、または進行に先立って、腫瘍症または癌、特に、過形成、化生、または最も具体的には、異形成から成る非腫瘍性細胞増殖が発症したと予想される状態での使用を指す(そのような異常な増殖状態の概説は、RobbinsおよびAngell、Basic Pathology、第2版、W.B.Saunders
Co.、Philadelphia、68頁−79頁(1976)を参照されたい)。
【0130】
異形成は、癌の前兆であることが頻繁にあり、主に上皮に認められる。これは最も秩序の無い非腫瘍性細胞増殖の形態であり、各細胞の均一性および細胞の構造上の位置の欠損を伴う。特徴的な異形成は、慢性的な刺激つまり炎症の存在によって生じる。治療できる異形成疾患としては、以下に限定されないが、無汗性外胚葉異形成症、前後異形成、窒息性胸郭異形成、心房指状異形成、気管支肺異形成、大脳異形成、頸部異形成、軟骨外胚葉異形成、鎖骨頭蓋異形成、先天性外胚葉異形成、
頭蓋骨幹異形成、頭蓋骨軟骨異形成、頭蓋骨幹端異形成、象牙質異形成、骨幹異形成、外胚葉異形成、エナメル質異形成、脳−眼部異形成、骨端欠損異形成、多発性骨端、点状軟骨異形成症、上皮異形成、顔面生殖異形成、下顎の家族性線維性異形成、家族性白色襞性異形成、線維筋性異形成、骨の線維性異形成、セメン
ト質骨異形成、遺伝性腎臓−網膜異形成、発汗外胚葉性異形成、無汗性外胚葉異形成、リンパ性減少性胸腺異形成、乳腺異形成、下顎顔面異形成、骨幹端異形
成、Mondini異形成、単骨性線維性骨異形成、粘膜上皮異形成、多発性骨端異形成、眼耳脊椎異形成、眼歯指異形成、眼脊椎異形成、歯原性異形成、眼下
顎異形成(opthalmomandibulomelic dysplasia)、根尖性セメント質異形成、多発性線維性異形成、偽軟骨発育不全性脊椎骨端異形成、網膜異形成、中隔視神経異形成、脊椎骨端異形成、および心室橈骨異形成が挙げられる。
【0131】
治療できるさらなる前腫瘍疾患としては、以下に限定されないが、良性悪性増殖疾患(例えば、良性腫瘍、線維嚢胞性状態、組織肥大、腸ポリープまたは腺腫、および食道異形成)、白板症、角化症、ボーエン病、農夫の皮膚病(Farmer’sSkin)、日光口唇炎、および日光性角化症が挙げられる。
【0132】
好ましい実施形態では、本発明の方法は、癌、詳細には先に記載した癌の増殖、進行、および/または転移を阻害するために使用される。
【0133】
さらなる過剰増殖疾患、疾患および/または状態としては、以下に限定されないが、白血病(急性白血病(たとえば、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病(骨髄芽球、前骨髄球、骨髄単球性、単球性、および赤白血病を含む)、慢性白血病(たとえば、慢性骨髄性(顆粒球性)白血病および慢性リンパ性白血病))、真性多血症、リンパ腫(たとえば、ホジキン病および非ホジキン病)、多発性骨髄腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、重鎖病などの悪性腫瘍および関連疾患、以下に限定されないが、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫(lymphangioendotheliosarcoma)、滑膜腫、中皮腫、ユーイング肉腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、膵癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平細胞癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺細胞腫、嚢腺癌、髄様癌、気管支癌、腎細胞癌、肝癌、胆管癌、絨毛癌、精上皮腫、胎児性癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、睾丸腫瘍、肺癌、肺小細胞癌、膀胱癌、上皮細胞腫、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫瘍、希突起神経膠腫、髄膜腫、メラノーマ、神経芽腫、および網膜芽細胞腫のような肉腫および細胞腫を含む固形腫瘍の進行および/または転移が挙げられる。
【0134】
キット
種々の実施形態は、患者における患部組織の治療または診断に適した成分を含むキットに関することがある。例示的なキットは、本明細書に記述するように、少なくとも1つの抗体、フラグメントまたは融合タンパク質を含んでもよい。投与のための成分を含む組成物が、経口送達によるなど消化管を介する送達用に製剤化されていない場合、別の経路を介してキット成分を送達しうる装置を含むこともできる。非経口送達などの適用の場合、装置の1つの種類は、組成物を被験者の体内に注射するために用いられる注射器である。吸入装置を用いてもよい。
【0135】
キット成分はまとめて包装する、または2つ以上の容器に分けてもよい。一部の実施形態では、この容器は、再構成に適した組成物の無菌の凍結乾燥製剤を含むバイアルであってもよい。キットは、また、再構成に適した1つ以上の緩衝剤および/または他の試薬の希釈物を含んでもよい。用いてもよい他の容器としては、以下に限定されないが。ポーチ、トレー、箱、管などが挙げられる。キット成分を、包装しても、容器内に無菌で保持してもよい。もう1つキットに含めてもよい要素としては、キット使用者向けの説明書がある。
【0136】
発現ベクター
さらに他の実施形態は、抗体、フラグメント、融合タンパク質または二重特異性抗体をコードする核酸を含むDNA配列に関することがある。コードされて発現されうる例示的な配列として、抗IGF−1R−MAbもしくはそのフラグメント、少なくとも1つの抗IGF−1R抗体もしくはそのフラグメントを含む融合タンパク質、少なくとも1つの第1の抗体もしくはフラグメントおよび少なくとも1つの第2の抗体もしくはフラグメントを含む融合タンパク質が挙げられる。第1の抗体および第2の抗体は、抵IGF−1R抗体、腫瘍関連抗原に対する抗体、および/または標的設定可能な構築体上のハプテンを含んでもよい。融合タンパク質は、下記の実施例でより詳細に論じるように、DNL構築体の形成に活用するADおよびDDDペプチドなど、異なるペプチドまたはタンパク質に付加された抗体または抗体フラグメントを含んでもよい。
【0137】
種々の実施形態は、コードDNA配列を含む発現ベクターに関する。このベクターは、キメラ、ヒト化もしくはヒト可変領域配列が付加されうる、ヒト免疫グロブリンの軽鎖定常領域および重鎖定常領域ならびにヒンジ領域をコードする配列を含んでもよい。ベクターは、選択した宿主細内でMAbを発現させるプロモーター、免疫グロブリンエンハンサーおよびシグナル配列またはリーダー配列をさらに含んでもよい。特に有用なベクターは、pdHL2またはGSである。より好ましくは、軽鎖定常領域および重鎖定常領域ならびにヒンジ領域が、ヒトEU骨髄腫免疫グロブリンに由来していて、アロタイプ部位で少なくとも1つのアミノ酸を、異なるIgG1アロタイプに見られるアミノ酸に任意に変えることができ、かつEU番号付与体系に基づくEUの重鎖のアミノ酸253を場合によりアラニンと置換することもできる。Edelmanら、Proc.Natl.Acad.Sci USA 63:78−85(1969)を参照されたい。他の実施形態においては、IgG1配列は下記のように、IgG4配列に変換されうる。
【0138】
また、抗体もしくはそのフラグメントまたは融合タンパク質を発現させる方法も包含する。発現構築体を遺伝子改変し、宿主細胞へ挿入して改変タンパク質を発現させる方法は、当該技術分野で周知であり、日常的な実験の問題であると、当業者は理解するであろう。宿主細胞およびクローン化抗体またはフラグメントの発現方法は、たとえば、米国特許第7,531,327号;第7,537,930号;および第7,608,425号に記載されており、その各々の実施例のセクションは参照により本明細書に組み込まれる。
【0139】
抗IGF−1R抗体の構築のための一般技法
抗IGF−1R抗体のVκ (可変軽鎖)およびVH (可変重鎖)配列は、RT−PCR、5’−RACEおよびDNAライブラリースクリーニングなどの多種多様な分子クローニング手法により獲得することができる。マウス抗IGF−1R
MAbを発現する細胞由来の抗IGF−1R MAbの V遺伝子は、PCR増幅によりクローニングし、配列を決定することができる。配列の確実性を確認するために、クローン化したV
およびV遺伝子をOrlandiら (Proc.Natl.Acad.Sci. USA、86:3833(1989))が記述しているように、キメラAbとして細胞培養中で発現させることができる。その後、V遺伝子配列に基いて、ヒト化抗IGF−1R
MAbを 、Leungら(Mol.Immunol.32:1413(1995))によって記述されているように、設計して構築することができる。
【0140】
マウス抗IGF−1R MAbを産生するいかなる既知のハイブリドーマ系列または形質移入細胞株からも、cDNAは一般の分子クローン技術によって調製されうる(Sambrookら、Molecular Cloning,A laboratory manual、第2版(1989))。MAbのためのVκ配列は、プライマーVK1BACKおよびVK1FOR(Orlandiら、1989)またはLeungら(BioTechniques、15:286(1993))によって記述された伸長プライマーセットを用いて増幅することができる。VH配列は、プライマー対VH1BACK/VHIFOR(Orlandiら、1989)またはLeungら(Hybridoma、13:469(1994))によって記述されたマウスIgGの定常領域にアニーリングするプライマーを用いて増幅することができる。
【0141】
第1ストランドcDNA産物を10μL、10XPCR緩衝液を10μL[500mM KCl、100mM Tris−HCl(pH8.3)、15mM MgCl、および0.01%(w/v)ゼラチン](Perkin Elmer Cetus、Norwalk、CT)、各dNTPを250μM、プライマーを200nM、およびTaq DNAポリメラーゼ(Perkin Elmer
Cetus)を5単位含有するPCR反応混合物を,30サイクルのPCRにかけることができる。各PCRサイクルは、94℃で1分間の変性、50℃で1.5分間のアニーリング、および72℃で1.5分間の重合で構成されることが好ましい。増幅したVκおよびVHのフラグメントは2%アガロース上で精製することができる(BioRad、Richmond、CA)。Leung
ら(Mol.Immunol.、32:1413(1995))によって記述されているように、ヒト化V遺伝子は長いオリゴヌクレオチド鋳型合成とPCR増幅との組み合わせによって構築することができる。
【0142】
VκのPCR産物は、Igプロモーター、シグナルペプチド配列およびVκ
PCR産物のインフレームライゲーションを容易にする便利な制限酵素認識部位を含む、pBR327をベースとするステージングベクター、VKpBRなどのステージングベクター中にサブクローニングすることができる。VのPCR産物は、pBluescriptをベースとするVHpBSなど同様のステージングベクター中にサブクローニングすることができる。それぞれのPCR産物を含んでいる個々のクローンは、たとえば、Sanger
ら(Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,74:5463(1977))の方法によって配列を決定することができる。
【0143】
Vκ配列およびV配列を含む発現カセットは、プロモーター配列およびシグナルペプチド配列と一緒に、HindIII−BamHIフラグメントとして二重制限消化によってそれぞれ、VKpBRおよびVHpBSから切除することができる。このVκおよびVの発現カセットは、それぞれ、pKhおよびpG1gなど適切な発現ベクターにライゲーションすることができる(Leungら、Hybridoma、13:469(1994))。発現ベクターは、たとえば骨髄腫Sp2/0−Agl4(ATCC、VA)の適切な細胞に同時導入することができ、ハイグロマイシン耐性に関してコロニーを選択し、およびキメラ、ヒト化またはヒト抗IGF−1Rの産生に関して、たとえば、ELISAアッセイによって上澄みをモニタリングすることができる。あるいは、Gillesら(J.Immunol.Methods 125:191(1989)、LosmanらのCancer,80:2660(1997)にも示されている)によって記述されているように、VκおよびV発現カセットを、修飾したステージングベクター、VKpBR2およびVHpBS2中で組み立て、それぞれ、XbaI/BamHIフラグメントおよびXhoI/BamHIフラグメントとして切除し、pdHL2など単一の発現ベクター中にサブクローニングすることができる。Barnesら、Cytotechnology
32:109−123(2000)に記述されるように、有用な別のベクターは、GSベクターである。他の適切な哺乳類発現系は、Wernerら、Arzneim.−Forsch./Drug Res.48(II)、Nr.8、870−880(1998)に記述されている。
【0144】
同時トランスフェクションおよびELISAによる抗体分泌クローンに関するアッセイは、以下のように実施することができる。CoらによるJ.Immunol.、148:1149(1992)に従って、5×10SP2/0骨髄腫細胞をエレクトロポレーション(BioRad、Richmond、CA)によってトランスフェクトするために、約10μgのVKpKh(軽鎖発現ベクター)および20μgのVHpG1g(重鎖発現ベクター)を用いることができる。トランスフェクトした後、細胞を37℃、5%COで、96ウェルのマイクロタイタープレートで完全HSFM培地(Life Technologies社、Grand
Island、NY)中で増殖させてもよい。選択プロセスは2日後、ハイグロマイシン選択培地(Calbiochem、San
Diego、CA)を、ハイグロマイシンの最終濃度500単位/mLで加えることによって、開始することができる。コロニーは、通常、エレクトロポレーションから2−3週間後に出現する。次いでこの培養物をさらなる分析のために成長させることができる。キメラ重鎖、ヒト化重鎖またはヒト重鎖の分泌に陽性のトランスフェクトーマクローンをELISAアッセイによって同定することができる。
【0145】
抗体は以下のようにして培地から単離することができる。トランスフェクトーマ培養物は、無血清培地に適応している。キメラ抗体を作製するために、HSFMを用いることによってローラーボトル中で500mLの培養物として細胞を増殖させる。培養物を遠心分離し、上清を0.2μ膜で濾過する。濾過した培地を、1mL/分の流速で、タンパク質Aカラム(1×3cm)に通過させる。次いで、この樹脂を約10カラム容積のPBSで洗浄して、10mMのEDTAを含む0.1Mグリシン緩衝液(pH3.5)によってタンパク質A結合抗体をカラムから溶出させる。1.0mLの画分を、10μLの3M
Tris(pH8.6)を含む管に収集し、タンパク質濃度を、280/260nmの吸光度で測定する。ピーク画分をプールして、PBSに対して透析し、抗体を、たとえばCentricon
30(Amicon、Beverly、MA)で濃縮する。抗体濃度をELISAによって測定し、PBSを用いて約1mg/mLに調整する。アジ化ナトリウム(0.01%(w/v))を、保存剤として試料に加えると都合が良い。
【発明を実施するための形態】
【0146】
実施例1 抗IGF−1R抗体: R1、cR1およびhR1の生成および初期特性化
完全フロイントアジュバント中にヒトIGF−1Rの処理済みおよび未処理
の両方の細胞外ドメインの混合物を含む、15 μgの組換えヒトIGF−1R(R&D Systems、カタログ#391−GR)をBALB/cマウス3匹のそれぞれの腹腔内に接種し、免疫を施した。初回免疫の14日後、21日後および28日後に、不完全フロイントアジュバントで追加免疫を施した。標準プロトコルに従い、
免疫を施したマウスからの脾細胞をP3X63Ag8.653細胞と融合し、ハイブリドーマを生成した。 抗IGF−1R活性を発現しているが、抗IR(インスリン受容体)活性は発現していない1つのクローン(C−11)を単離し、培地で展開させ、ML04R1またはR1と命名されたマウス抗体を取得した。このマウス抗体は、市販のマウス抗IGF−1R
モノクローナル抗体(MAb)MAB391に匹敵する、ヒト乳癌細胞株MCF−7L(MCF−7のサブライン)を発現しているIGF−1R
への放射性ヨウ化IGF−1の結合を阻害する能力を有するIgG1/k
であることが明らかになった(表2)。
【表2】


R&Dクローン33255.111
【0147】
cR1を取得するために、R1のマウス−ヒトキメラMAb、R1のV
および V
遺伝子のクローニングを5’−RACEにより行なった。 くローン化したV および V 遺伝子の信頼性は、DNA配列から推定される対応するアミノ酸と最初の15個のN末端アミノ酸が正確に一致することを示すN末端
タンパク質配列決定により確認された(表3)。クローン化したVH および
K 遺伝子をpdHL2 ベクターに挿入し、 cR1pdHL2 (図1)、cR1の発現ベクターを生成した。
【表3】

精製したR1 を、N末端 タンパク質配列決定(15サイクル)に供した。エドマン分解のサイクルが1回終了するごとに2つの残基を検出した。
DNA配列から推定。
【0148】
SpE−26(たとえば、
米国特許第7,531,327号)、成長特性の改善を示したSp2/0−Ag14のバリアントを宿主細胞として使って、cR1産生クローンを精製した。簡単に説明すると、およぞ30
μgのcR1pdHL2をSalI 制限エンドヌクレアーゼを使用して消化により線形化し、エレクトロポレーションにより、SpE−26細胞に導入した。トランスフェクタントを0.075μMのメトトレキサート(MTX)を使って選択し、ヒトFc結合活性についてELISAでスクリーニングした。比較的高い産生クローンをさらに展開し、2つの最も良いクローン(709.2D2および710.2G2)を選び、それらをもとにcR1をバッチ培地で産生させ、タンパク質Aで精製し、各々が図3に示すように、固定化したrhIGF−1Rに同じく高い親和性(KD
〜0.1 nM)を持って、図2に示すように、固定化したrhIGF−1Rに特異的に結合するが、固定化したrhIRには結合しないことが、ELISAにより確認された。驚くべきことに、様々な濃度のcR1または
R1の存在下で 、蛍光プローブでタグを付けたR1の結合をフローサイトメトリーで測定した競合アッセイ(図4)で示されているように、cR1は、ポリスチレンビーズに固定化したrhIGF−1Rに対して、R1より高い親和性を有するように見える。
【0149】
cR1のhR1へのヒト化は、
特定のヒトフレームワーク残基を対応する位置でR1のマウスの対応残基で置換する、hMN−14のヒトフレームワーク
領域へのCDRの移植(米国特許第5,874,540号および第6,676,924号;各々の実施例のセクションは参照により本明細書に組み込まれる)により成功した。他の選択した残基をクローニングの目的のために置換し、hR1 Vおよび
hR1 Vのアミノ酸配列が、それぞれ配列番号:9および配列番号:10で示されているとおりになった。続いて、hR1 Vおよび
hR1 Vをコードしている遺伝子を合成し、pdHL2に操作し、hR1pdHL2(hR1の発現ベクター)を得た。hR1の産生クローン(711.3C11)を確保するためにその後、行なった努力は、cR1について上述した内容と同様だった。rhIGF−1Rへの結合活性について陽性クローンを選別した。 図5に示すように、hR1は、 ポリスチレンビーズ上に固定化されたrhIGF−1Rに対して、cR1とほぼ同じ結合親和性を示した。
【0150】
cR1がIGF−1RへのIGF−1またはIGF−2の結合をブロックできるかどうかを判断するために、IGF−1Rを発現している細胞のサロゲートとして、hIGF−1Rで固定化されたポリスチレンビーズを使い、以下の要領でビーズ競合アッセイを実施した。簡単に説明すると、cR1の濃度を様々に変えて(0〜670nM)、IGF−1またはIGF−2を一定量の125I−IGF−1または125I−IGF−2と混合した。次いでrhIGF−1でコーティングしたビーズを加え、1時間、室温でそっと揺らしながら培養し、洗浄して、
放射能をカウントした。図6に示す結果は、cR1は上記の条件のもとで、このような固定化されたrhIGF−1RへのIGF−1またはIGF−2のいずれの結合もブロックできなかったことを示している。図7に示す同様の実験の結果も、ビーズに固定化したIGF−1Rへの125I−IGF−1の結合はIGF−1または
MAB391によって効果的にブロックされたが、hR1またはR1ではブロックされなかったことを示している。これらの発見は、IGF−1および
MAB391は同一のエピトープに結合するか、あるいはIGF−1Rにオーパーラップするエピトープを有しているが、hR1
は MAB391またはIGF−1とは異なるIGF−1Rの領域を標的にしていることを示唆している。IGF−1に対するIGF−1Rの第1の結合部位は、アミノ酸(aa)223から274までのシステインリッチ(CR)ドメインに位置し、同一の領域(aa223〜274)がαIR−3へのエピトープとして割り当てられていて、MAB391と同様、IGF−1結合で競合することが報告されている(Gustafson TA、Rutter WJ.J Biol
Chem 1990;265:18663−7)ため、MAB391も同一の領域に結合するか、あるいは近傍の部位と相互作用するようだった。
【0151】
実施例2 R1、cR1およびhR1のエピトープマッピング研究
hR1が結合するIGF−1Rの領域をさらに特定するために、IGF−1Rへのエピトープがマッピングされている市販の抗IGF−1R
MAbのパネルについて、IGF−1Rをコーティングしたビーズへの結合を互いにクロスブロックする能力を評価した。代表的な2つの実験の結果を図8A(蛍光プローブ(PE)でタグを付けたR1の結合は、100μg/mLでもMAB391による影響を受けなかったことを示している)および図8B(PEでタグ付けされたMAB391の結合は、100μg/mLでR1により一部だけ(50〜60%)阻害されたことを示している)で提供する。表3Aに要約した追加結果は、R1のエピトープがaa151から282までのCRドメインに位置し、aa151から222までのCRドメインの前半部にあるとさらに詳しく特定できることを表している(表3B)。
【表4】

【表5】

【0152】
実施例3 R1、cR1およびhR1の追加特性化
IGF−1は、無血清培地で生育されたMCF−7細胞の増殖を刺激し、48時間目に未処置の対照と比較すると、100
ng/mLで生存細胞数を最大50%増加する効果を達成するのに対し、hR1はそうしない(図9)。
したがって、hR1は、IGF−1Rへの結合時にアゴニスト的ではない。hR1のMCF−7への内在化は37℃で観察されたが、4℃では観察されなかった(図示されていない)。
【0153】
実施例4 hR1−IgG4(S228P)バリアントに対する発現ベクターの構築
IgG4遺伝子を含有するB13−24
細胞をATCC (ATCC番号CRL−11397)から購入し、ゲノムDNAを単離した。簡単に説明すると、細胞をPBSを使って洗浄し、
消化緩衝液(NaCl 100mM、Tris−HCl 10mM(pH8.0)、EDTA 25 mMの(pH8.0)、0.5% SDS、プロテイナーゼK 0.1 mg/mL)で再懸濁し、50℃で
18時間培養した。 試料を等容量のフェノール/クロロフォルム/イソアミルアルコールで抽出し、
7.5MのNHAc/100%エタノールを使って沈殿させた。ゲノムDNAを遠心分離で回収し、TE緩衝液に溶解した。ゲノムDNAを鋳型として使い、IgG4遺伝子を以下のプライマーを使ってPCRで増幅した。
プライマー−SacII
CCGCGGTCACATGGCACCACCTCTCTTGCAGCTTCCACCAAGGGCCC(配列番号:11)
プライマー−EagI:
CCGGCCGTCGCACTCATTTACCCAGAGACAGGG(配列番号:12)
【0154】
増幅したPCR産物をTOPO−TA配列決定ベクター
(Invitrogen)にクローニングし、DNA配列決定により確認した。hR1pdHL2にIgG1の重鎖定常領域を含むSacII−EagI フラグメントをTOPO−TA−IgG4プラスミドのSacII−EagIで置換し、hR1−pdHL2−IgG4(hR1pdHL2-γ4)ベクターを生成した。
IgG4−プロリン変異
【0155】
半分子の形成を回避するために、Ser228Pro変異をIgG4のヒンジ領域に導入した。変異したヒンジ領域56bpフラグメント(PstI−StuI)を合成した。
上部
GAGTCCAAATATGGTCCCCCATGCCCACCGTGCCCAGGTAAGCCAACCCAGG((配列番号:13);
下部:
CCTGGGTTGGCTTACCTGGGCACGGTGGGCATGGGGGACCATATTTGGACTCTGCA(配列番号:14)
アニールして、IgG4のPstI−StuIフラグメントで置換した。この構築の結果、最終的にベクターhR1pdHL2-γ4Pが生成された。
【0156】
実施例5 DNLによる 多価 hR1ベース 抗体の生成
DNL技法を使って、様々なフォーマットで単一特異性または二重特異性のいずれかの多価hR1ベース抗体を作製することができる。特定の好ましい実施形態において、Fab抗体フラグメントをDDD配列またはAD配列のいずれかを含む融合タンパク質として製作することができる。二重特異性抗体は、最初の抗体のFab−DDD
融合タンパク質をもう1つの抗体のFab-AD 融合タンパク質と組み合せることで形成することができる。あるいは、IgG−ADモジュールを
融合タンパク質として製作し、同一または異なる特異性のFab−DDDモジュールと組み合わせる。抗体の標的化能力を任意の他のタンパク質またはペプチドのエフェクター機能と併せ持つ追加の種類の構築体を作製することもできる。
【0157】
独立したトランスジェニック細胞株を、DDDまたはAD融合タンパク質の各々向けに開発する。モジュールはいったん製作した後、望ましい場合は精製するか、または培養上清液に保持することができる。
製作後、Fab−DDDモジュールのどれもADモジュールのどれと組み合せてもよい。DDDモジュールADモジュールは、AD配列をポリエチレングリコールに、またはDDD配列
をオリゴヌクレオチドに連結するなど、合成的に製造することができる。異なる種類の構築体に対して、異なるAD配列またはDDD配列を利用することができる。

DDD1:SHIQIPPGLTELLQGYTVEVLRQQPPDLVEFAVEYFTRLREARA(配列番号:15)

DDD2:CGHIQIPPGLTELLQGYTVEVLRQQPPDLVEFAVEYFTRLREARA(配列番号:16)

AD1:QIEYLAKQIVDNAIQQA(配列番号:17)

AD2:CGQIEYLAKQIVDNAIQQAGC(配列番号:18)
【0158】
プラスミドベクターpdHLを使って、数多くの抗体および抗体ベースの構築体が製作されてきた。. Gilliesら、J Immunol Methods(1989)、125:191−202;Losmanら、Cancer(Phila)(1997)、80:2660−6を参照されたい。
2シストロン性哺乳類発現ベクターは、 IgGの重鎖および軽鎖の合成を指示する。ベクター配列は多数の異なるIgG-pdHL2構築体に対してほとんど同一であり、可変ドメイン(VおよびV)配列のみに違いが存在する。当業者に公知の分子生物学ツールを使って、Fab−DDD1およびFab−AD1について以下で詳しく記述するように、これらのIgG
発現ベクターをFab−DDD、Fab-ADまたはIgG−AD発現ベクターに変換することができる。Fab−DDD1の発現ベクターを生成するには、重鎖のヒンジ部、C2およびC3ドメインのコード配列をヒンジ部の最初の4
残基、14 残基Gly−Serリンカー、およびDDD1 (ヒトRIIαの最初の44 残基)をコードする配列で置換する。Fab−AD1の発現ベクターを生成するには、IgGのヒンジ部、C2およびC3ドメインの配列をヒンジの最初の4
残基、15 残基Gly−Serリンカー、およびAD1(AKAP−ISと呼ばれる17残基合成AD)をコードする配列で置換する。このAKAP−ISと呼ばれる17残基合成ADは、バイオインフォマティックとペプチドアレイ技術を使って生成され、RIIα二量体を極めて高い親和性(0.4 nM)で結合することが示されている。Altoら、Proc.Natl.Acad.Sci.、USA(2003)、100:4445−50)を参照されたい)。
【0159】
後述のように、IgG−pdHL2ベクターからFab−DDD1またはFab−AD1のいずれかの発現ベクターへの変換を容易にするために、2つのシャトルベクターを設計し、構築した。
【0160】
1の調製
dHL2プラスミドベクターを鋳型として使い、C1ドメインをPCRで増幅した。左側のPCRプライマーは、C1ドメインの上流(5’)端部とSacII
制限エンドヌクレアーゼ部位とから成る。これはC1のコード配列の5’である。右側のプライマーは、ヒンジ部(PKSC)の最初の4残基をコードする配列と、これに続くグリシン4個とセリン1個から成り、最後の2つのコドン(GS)には、BAM HI制限酵素認識部位を含まれる。
5’側のC1左側プライマー

5’GAACCTCGCGGACAGTTAAG−3’(配列番号:19)

1+GS−Bam 右側(「GS」は配列番号:54として開示されている)

5’GGATCCTCCGCCGCCGCAGCTCTTAGGTTTCTTGTCCACCTTGGTGTTGCTGG−3’(配列番号:20)
【0161】
410 bp PCR
アンプライマーをpGemT PCR クローニングベクター(Promega社)内にクローニングし、
T7(5’)の配向にある挿入についてクローンのスクリーニングを行なった。
【0162】
(GS)DDD1の構築
(「(GS)」は 配列番号:55として開示されている)
最初の2つのコドンにBamHI制限酵素認識部位が含まれる状態で、リンカーペプチドの11残基の下流に、DDD1のアミノ酸配列がコードするように、Sigma Genosys(Haverhill、UK)
によってニ本鎖オリゴヌクレオチドを合成し、(GS)DDD1(「(GS)」は
配列番号:55として開示されている)と命名した。終始コドンおよびEagI制限酵素認識部位を3’末端に付加した。コードしたポリペプチド配列を以下に示す。

GSGGGGSGGGGSHIQIPPGLTELLQGYTVEVLRQQPPDLVEFAVEYFTRLREARA
(配列番号:21)
【0163】
RIIA1−44上部およびRIIA1−44下部と命名した、3’末端部において30塩基対が重なっている2つのオリゴヌクレオチドを合成し(Sigma Genosys)、174
bpのDDD1配列の中心にある154塩基対を含むように結合した。オリゴヌクレオチドをアニールし、Taqポリメラーゼによるプライマー伸張反応に供した。

RIIA1−44上部

5’GTGGCGGGTCTGGCGGAGGTGGCAGCCACATCCAGATCCCGCCGGGGCTCACGGAGCTGCTGCAGGGCTACACGGTGGAGGTGCTGCGACAG−3’(配列番号:34)

RIIA1−44下部

5’GCGCGAGCTTCTCTCAGGCGGGTGAAGTACTCCACTGCGAATTCGACGAGGTCAGGCGGCTGCTGTCGCAGCACCTCCACCGTGTAGCCCTG−3’(配列番号:35)
【0164】
プライマー伸張の後、以下のプライマーを使って二本鎖をPCRで増幅した:

G4S Bam−左側(「G4S」は配列番号:54として開示されている)

5’−GGATCCGGAGGTGGCGGGTCTGGCGGAGGT−3’(配列番号:36)

1−44 終止 Eag右側

5’−CGGCCGTCAAGCGCGAGCTTCTCTCAGGCG−3’(配列番号:37)
【0165】
このアンプライマーをpGemT内にクローニングし、T7(5’)の配向にある挿入についてクローンのスクリーニングを行なった。
【0166】
(GS)−AD1の構築(「(GS)」は配列番号:55として開示されている)
最初の2つのコドンにBamHI制限酵素認識部位が含まれる状態で、リンカーペプチドの11残基の下流に、AD1のアミノ酸配列がコードするようにニ本鎖オリゴヌクレオチド合成し(Sigma Genosys)、(GS)−AD1(「G」は、配列番号:55として開示されている)と命名した。
終始コドンおよびEagI制限酵素認識部位を3’末端に付加した。コードしたポリペプチド配列を以下に示す。

GSGGGGSGGGGSQIEYLAKQIVDNAIQQA((配列番号:38)
【0167】
AKAP−IS 上部およびAKAP−IS下部と命名する2種類の重なる相補的なオリゴヌグレオチドを合成した。

AKAP−IS上部

5’GGATCCGGAGGTGGCGGGTCTGGCGGAGGTGGCAGCCAGATCGAGTACCTGGCCAAGCAGATCGTGGACAACGCCATCCAGCAGGCCTGACGGCCG−3’(配列番号:22)

AKAP−IS下部

5’CGGCCGTCAGGCCTGCTGGATGGCGTTGTCCACGATCTGCTTGGCCAGGTACTCGATCTGGCTGCCACCTCCGCCAGACCCGCCACCTCCGGATCC−3’(配列番号:23)
【0168】
ニ本鎖を以下のプライマーを使ってPCRで増幅した:

G4S Bam−左側 (「G4S」は配列番号:54として開示されている)

5’−GGATCCGGAGGTGGCGGGTCTGGCGGAGGT−3’(配列番号:24)

AKAP−S 終止 Eag右側

5’−CGGCCGTCAGGCCTGCTGGATG−3’(配列番号:25)
【0169】
このアンプライマーをpGemTベクターにクローニングし、T7(5’)の配向にある挿入についてクローンのスクリーニングを行なった。
【0170】
DDD1の CH1とのライゲーション
DDD1配列をコードしている190bpフラグメントを、BamHIおよびNotI制限酵素を使ってpGemTから切り離した後、C1−pGemT内の同じ部位にライゲーションして、シャトルベクターC1−DDD1−pGemTを生成した。
【0171】
AD1のCH1とのライゲーション
AD1配列を含有する110bpフラグメントを、BamHIおよびNotI制限酵素を使ってpGemTから切り離した後、C1−pGemT内の同じ部位にライゲーションして、シャトルベクターCH1−AD1−pGemTを生成した。
【0172】
pdHL2をベースとするベクターへのCH1−DDD1またはCH1−AD1のクローン化
このモジュラー設計を利用して、C1−DDD1またはCH1−AD1は任意のIgG−pdHL2
ベクターに組み込むことができる。pdHL2からSacII−EagI制限フラグメント(C1−C3)を除去し、それをC1−DDD1またはC1−AD1のSacII−EagI
フラグメント(それぞれのpGemTシャトルベクターから切り離す)で置換することにより、重鎖定常ドメイン全体を上記の構築体の1つで置換する。
【0173】
CH1−DDD2−Fab−hR1−pdHL2
1−DDD2−Fab−hR1−pdHL2は、
1−DDD2−Fab−hR1の産生の発現ベクターである。C1−DDD2−Fab−hR1は、14アミノ酸残基のGly/Serペプチドリンカーを通じて、Fdのカルボキシル末端に付加されたDDD2の二量化およびドッキングドメイン配列を有している。
【0174】
発現ベクターを下記のように設計した。リンカーペプチド(GGGGSGGGCG、
配列番号:26)の一部およびDDD2の残基1−13をコードする配列を含む、2種類の重なる相補的オリゴヌクレオチドを合成的に作製した。オリゴヌクレオチドをアニールして、T4 PNKでリン酸化した結果、それぞれ制限エンドヌクレアーゼBamHI
およびPstIで消化されるDNAとのライゲーションに適合する5末端と3末端にオーバーハングが生じた。

G4S−DDD2上部 ((「G4S」は 配列番号:54として開示されている)

5’GATCCGGAGGTGGCGGGTCTGGCGGAGGTTGCGGCCACATCCAGATCCCGCCGGGGCTCACGGAGCTGCTGCA−3’(配列番号:27)

G4S−DDD2下部 ((「G4S」は 配列番号:54として開示されている)

5’GCAGCTCCGTGAGCCCCGGCGGGATCTGGATGTGGCCGCAACCTCCGCCAGACCCGCCACCTCCG−3’(配列番号:28)
【0175】
二本鎖DNAを、BamHIおよびPstIで消化して調製したシャトルベクターCH1−DDD1−pGemTとライゲーションし、シャトルベクターCH1−DDD2−pGemTを生成した。507bpフラグメントを、SacIIおよびEagIでCH1−DDD2−pGemTから切り離し、SacIIおよびEagIで消化して調製したIgG
発現ベクターhR1pdHL2 とライゲーションした。最終発現構築体は、C1−DDD2−Fab−hR1−pdHL2である。
【0176】
1−AD2−Fab−h679−pdHL2の生成
1−AD2−Fab−h679−pdHL2は、C1−AD2−Fab−h679の産生のための発現ベクターであり、AD2をコードするDNA配列の鋳型として有用である。この発現ベクターは下記のように設計する。AD2をコードする配列およびリンカー配列の一部を含む、2種類の重なる相補的オリゴヌクレオチド (AD2上部およびAD2下部)を合成的に作製した。オリゴヌクレオチドをアニールし、
T4ポリヌクレオチド・キナーゼでリン酸化した結果、それぞれ制限エンドヌクレアーゼBamHI
およびPstIで消化されるDNAとのライゲーションに適合する5末端と3末端にオーバーハングが生じた。

AD2上部

5’GATCCGGAGGTGGCGGGTCTGGCGGATGTGGCCAGATCGAGTACCTGGCCAAGCAGATCGTGGACAACGCCATCCAGCAGGCCGGCTGCTGAA−3’(配列番号:29)

AD2下部

5’TTCAGCAGCCGGCCTGCTGGATGGCGTTGTCCACGATCTGCTTGGCCAGGTACTCGATCTGGCCACATCCGCCAGACCCGCCACCTCCG−3’(配列番号:30)
【0177】
二本鎖DNAを、BamHIおよびSpeIで消化して調製したシャトルベクターC1−AD1−pGemTにライゲーションし、シャトルベクターCH1−AD2−pGemTを生成した。C1およびAD2のコード配列を含む429塩基対フラグメントをSacIIおよびEagI制限酵素でシャトルベクターから切り離し、同じ2つの酵素で消化して調製したh679−pdHL2ベクター
とライゲーションし、その結果、C1−AD2−Fab−h679−pdHL2を生じた。
【0178】
3−AD2−IgGを発現させるためのCH3−AD2−IgG−pdHL2の生成
3−AD2−IgGモジュール
には、9アミノ酸残基ペプチドリンカーを通じて、IgGの重鎖のカルボキシル末端にAD2ペプチドが融合されている。AD2ペプチド(CGQIEYLAKQIVDNAIQQAGC、配列番号:18)が後に続くリンカーペプチドのDNAコード配列(GSGGGGSGG、
配列番号:31)を標準組換えDNA方法でC3(重鎖定常ドメイン3)コード配列の3’末端に連結し、連続的なオープン・リーディング・フレームを生成した。重鎖AD2ポリペプチドを軽鎖ポリペプチドと共発現させると、IgG分子が形成され、2つのAD2ペプチドが処理され、したがって、2つのFab−DDD2二量体を結合することができる。C3−AD2−IgGモジュールは任意のC1−DDD2−Fabモジュールと組み合わせることができ、Fcフラグメント1個とFabフラグメント6個とから成る、
種々多様な六価構造体を生成することができる。C3−AD2−IgGモジュールおよびC1−DDD2−Fabモジュールが同一の親モノクローナル抗体(MAb)に由来する場合、生じる複合体は単一特異性となり、同一抗体への結合腕を6本有する。モジュールが2つの異なるMAbに由来する場合、生じる複合体は二重特異性となり、C3−AD2−IgGモジュールの特異性に対応する結合腕を2本とC1−DDD2−Fabモジュールの特異性に対応する結合腕を4本有する。
【0179】
任意のIgG−pdHL2
ベクターのC3−AD2−IgG−pdHL2ベクターへの変換を容易にするために、プラスミドシャトルベクターを製造した。鋳型としてpdHL2
ベクターを、プライマーとしてオリゴヌクレオチドFc BglII左側とFc Bam−EcoRI右側 を使って、Fcの遺伝子(C2およびC3ドメイン)を増幅した。

Fc BglII 左側

5’−AGATCTGGCGCACCTGAACTCCTG−3’ (配列番号:32)

Fc Bam−EcoRI 右側

5’−GAATTCGGATCCTTTACCCGGAGACAGGGAGAG−3’(配列番号:33)
【0180】
アンプライマーをpGemT PCRクローニングベクター中でクローニングした。Fc挿入フラグメントをXbaIおよびBamHI
制限酵素を使ってpGemTから切り離し、XbaIおよびBamHIを使ってC1−AD2−Fab−h679−pdHL2を消化することで調製したAD2−pdHL2
ベクターとライゲートし、シャトルベクターFc−AD2−pdHL2を生成した。
【0181】
任意のIgG−pdHL2
発現ベクターをC3−AD2−IgG−pdHL2発現ベクターに変換するために、861bpのBsrGI/NdeI制限フラグメントを前者から切り離し、Fc−AD2−pdHL2ベクターから切り離した952bpのBsrGI/NdeI制限フラグメントで置換した。BsrGIは、C3ドメイン中にカットインし、NdeIは発現カセットの下流(3’)をカットする。
【0182】
Hex−hR1の生成
DNL法を用いて、CH−AD2−IgGhR1をC1−DDD2−Fab−hR1と組み合せることにより。1つのFcと6つのFabを有する単一特異性
抗IGF−1RであるHex−hR1を作製した。 Hex−hR1 は4工程で作製した。

工程1 組合せ: C3−AD2−IgG−hR1上の各AD2につき2つのC1−DDD2−Fab−hR1が存在するように、モル比4.2で、pH
7.4のリン酸緩衝食塩水(PBS)中で、C1−DDD2−Fab−hR1を1mMのEDTAと混合し、C1−DDD2−Fab−hR1をある程度過剰にすることで、結合反応が確実に完了するようにした。

工程2 穏やかな還元: 還元型のグルタチオン(GSH)を1 mMの終濃度で添加し、この溶液を室温(16−25℃)で1−24時間保持した。
工程3 穏やかな酸化: 還元の後、酸化型グルタチオン(GSSH)を2
mMの終濃度で反応混合物に直接加え、この溶液を室温で1−24時間保持した。

工程4 DNL産物の単離: 酸化の後、反応混合物を、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーカラム上に直接ローディングした。カラムをPBSで洗浄し、Hex−hR1を0.1 Mのグリシン(pH 2.5)で溶離した。反応しなかったCH−DDD2−Fab−hR1を結合していない部分中の所望の生成物から除去した。他の六価のDNL構築体も、CH−AD2−IgG
とC1−DDD2−Fabの選択した対を混合することにより同様に調製することができる。
【0183】
本発明に関するこのようなDNL構築体および構造的コントロールの一覧を表4に示す。これらの構築体の各々は、構成要素である抗体の結合活性を維持することが示された。
【表6】

【0184】
実施例7 癌細胞株におけるIGF−1R発現
Zenon標識を付けた種々の親抗体ならびにこれらの抗体から派生した多価抗体を使って、Guava計器でフローサイトメトリーを実施し、複数の癌細胞株の同種抗原の発現レベルを評価した。図10に示すように、IGF−1Rの発現はhR1のMCF−7(乳癌)、CaPan1(膵臓癌)およびDU−145(前立腺癌)への結合により確認した。図11では、ヒト化抗AFP
IgGおよびTF18(hAFPの2つのFabフラグメントが含まれるように、C1−DDD2−Fab−hAFPをC1−AD2−Fab−h679
と組み合せることで作製した)の結合ならびにhR1−IgG−AD2(C3−AD2−IgG−hR1の二量体)および1R−31の結合増加により、HepG2(肝臓癌)におけるIGF−1R
およびAFPの二重発現も示されており、これらの多価DNL構築体は親和性が高くなることを示唆している。Hep G2におけるCEACAM6の発現を、1R15の結合増加を観察することにより認識した。図12に、FACScan上でMCF−7、DU−145およびME−180(子宮頸癌)を使って実施した追加調査を示してあり、表5はその調査の要約である。これらは多価の
DNL構築体はそれぞれの親抗体に比較して、標的細胞株に対して結合増加を示すという、Guavaによる発見を裏付けている。興味深いことに、
多価二重特異性構築体は、問題の抗原を種々のレベルで発現している細胞株において、それぞれの対応する多価単一特異性構築体に比べて、より高い親和性で結合するように見える。
【表7】

【0185】
実施例8 Hex−hR1および1R−E1の中和活性
DU−145およびME−180(どちらもIGF−1RおよびEGP−1を発現する)において、IGF−1の増殖刺激活性を中和するHex−hR1または1R−E1の効果を測定するために次の実験を実施した。標的細胞を2000/ウェルで96ウェルプレート内に播種し、完全培地で一晩培養した。細胞を無血清培地で2回洗浄し、0.8、
4、20および100μg/mLで、無血清培地で2時間、選択した多価抗体に暴露した後、IGF−1を添加して、最終濃度を10ng/mLにした。細胞を72時間培養した後、MTSアッセイに供した。以上の条件下では、Hex−hR1はDU−145(図13A)およびME−180(図13B)の増殖を用量依存的に、統計的有意に抑止した。ME−180で1R−E1を使った場合も、同様の結果を得た(図13C)。
【0186】
実施例9 IGF−1Rの下方制御
抗IGF−1R抗体により誘導される抗癌効果の1つの主要な機構は、抗IGF−1R抗体がアゴニストとアンタゴニストのいずれであるかに関係なく、エンドサイトーシスを通じてIGF−1R
を下方制御し、後にエンドソーム小胞において分解を引き起こすことである。図14に示すように、MCF−7またはHT−29(結腸直腸癌)におけるIGF−1R
の効率的な下方制御が、100nMでのhR1、ならびに陽性対照として使われる市販の2つの抗IGF−1R抗体(MAB391および24−60)によって明確に示されたが、抗CD22抗体であるhLL2(エプラツズマブ)では示されなかった。hLL2は陰性対象として使われる。さらなる研究によって、Hex−hR1および1R−E1は、図15AおよびBで示すように、MCF−7、DU−145およびLnCap(アンドロゲン依存性前立腺癌)において、最低0.1nMの濃度でIGF−1Rのレベルを実質的に減少させることが可能であることが明らかになった。
【0187】
実施例10 IGF−1により誘導されるシグナル伝達経路のブロック
hR1は、ビーズに固定されたrhIGF−1RへのIGF−1の結合を防止していないように見えるかもしれないが、図16から20にまとめて示してあるように、リン酸化IGF−1R(pIGF−1R)、リン酸化Akt(pAkt)およびリン酸化ERK1/2(pERK1/2)のレベルを減少させ、IGF−1が3つの細胞株(MCF−7、DU−145および
ME−180)で種々の信号伝達分子を活性化するのを効果的にブロックしている。
【0188】
記載した方法および組成物は、前立腺癌の治療に有用である。上に開示した実施例は、in vitroでの結果であり、hR1ならびにDNLを使って作製したその六価誘導体(Hex−hR1、R−E1およびE1−1R)は、IGF−1Rを効果的に下方制御し、IGF−1がアンドロゲン非依存性DU−145細胞の増殖を刺激するのを阻害することを示している。DNL構築体について観察されたより高い有効性は、細胞上で標的化可能抗原の増加が示されていることから、親和性の高まりが原因と推測され、これは対応する二重特異性抗体の場合にさらに増幅する可能性がある。IGF−1Rは種々の固形腫瘍および悪性血液疾患で発現するため、当業者は、本特許請求の組成物および方法は、多発性骨髄腫および肝癌など、IGF−1Rを発現するその他の既知の癌の治療にも有用であることを認識するであろう。hR1を
抗EGFR(C25)または抗HER2(ハーセプチン)などの他の抗体と併用することも、上記のように、治療的に有用である。
【0189】
実施例11 MCF−7
乳癌異種移植モデルにおける種々のhR1 構築体の効果
4週齢の雌の 無胸腺(nu/nu)マウスに、0.5mgの17βエストラジオールの60日放出ペレットを移植し(Sachdevら、Cancer Res.2003;63:627−35)
、その後、1,000万個のMCF−7ヒト乳癌細胞を皮下注射した。腫瘍容積を測定し、平均200mm
に達したら、連続4週間にわたり、1週間に2回、以下の薬剤を投与する腹腔内治療の対象として9匹のマウスの群をランダム抽出した:(1)試験物質と同量の対照生理食塩水;(2)400μgのhR1
IgG;(3)800μgのhR1 IgG; (4)400μgのhRS7 IgG(抗−EGP−1);(5)800μgのhRS7 IgG;(6)300μgの1R−E1 六価構築体(hR1
IgG−hRS7−4個のFab);(7)600μgの1R−E1;および(8)800μgの1R−E1。腫瘍容積の測定は、ランダム抽出と治療を実施した日から始めて、週に2回、測径器を使って双方向で測定した;動物の体重も週に2回測定した。マウスが瀕死状態になるか、20%を超える体重減があったとき、または腫瘍の大きさが2.5cm達したときに、マウスを犠牲にし、腫瘍および正常組織を除去し、組織学的および免疫組織化学的分析のために、ホルマリンで保存した。60日目までに実験は終了し、対照群での継続的な腫瘍増殖が明らかになった。対照群は治療の開始後、最も早いマウスは5週目で、その後も次の2週のうちに犠牲になった。腫瘍増殖の阻害の証拠は、治療終了後1週間で、第1群については(対照を基準として)20%、第2群については35%、第3群については54%、第4群については11%、第5群については26%、第6群については32%、第7群については51%、第8群については68%
と測定された。これらの結果は、以上の用量のhR1抗体 は、hRS7 (抗−EGP−1)抗体よりも腫瘍増殖の阻害性があることを示しているが、後者の抗体もある程度の抗癌活性を示した。しかし、hR1
およびhRS7の六価の二重特異性抗体構築体は、比較的低い用量で、対応する親抗体に匹敵またはそれより高い抗癌効果を示し、DNLを使って作製される二重特異性抗体構築体のより高い有効性を示唆している。治療に関係する毒性、特に20%を超える体重減は治療群では観察されなかった。
【0190】
生理食塩水の代わりに、無関係なアイソタイプ対照抗体を使って、4週間にわたり、週に2回、それぞれ400μgおよび800μg
の用量で腹腔投与する、六価hR1群および六価hRS7群を入れて、同一の実験をMCF−7を有する同様のマウスで繰り返し、腫瘍増殖阻害は、六価hR1の場合は25−46%、六価hRS7の場合は20−33%の範囲であることを算出した。これは6価構築体は、対応する2価の親抗体よりも有効性が高いことを示唆している。
【0191】
実施例12 BxPC3ヒト膵臓癌とColo205
ヒト 結腸癌の異種移植におけるhR1構築体の効果
5−6週齢の雌のnu/nu無胸腺マウスの腫瘍異種移植片に、マトリゲルで混合した200万個のBxPC3ヒト膵臓癌またはColo205
ヒト 結腸癌の細胞を皮下注射し、大きさが約200mm
になるまで放置し、各々11匹の群にランダムに分類した。連続する4週間にわたり、週に2回、様々な用量で食塩水ビヒクル(対照)または試験物質をマウスの腹腔注射することにより処置した。直前の実施例と同じように、腫瘍を測定し、動物の体重を測定し、観察した。腫瘍モデルのそれぞれにつき、以下の用量を投与した。腫瘍増殖阻害率GI(腫瘍増殖の進行のために対照群の20%を超えるマウスが犠牲になる前の処置群対対照群の平均容積を比較している)を括弧内に示す:

BxPC3ヒト膵臓癌モデル

(1)0.5mgのhR1(39%GI)
(2)1.0mgのhR1(68%GI)
(3)0.5mgのhPAM4(15%GI)
(4)1.0mgのhPAM4 (24%GI)
(5)0.5mgのhRS7(18%GI)
(6)1.0mgのhRS7(29%GI)
(7)0.5mgの1R−E1(63%GI)
(8)0.5mgの1R−1M(48%GI)
(9)1.0mgのhLL2(抗CD22 IgG)アイソタイプ対照
【0192】
以上の結果は、ヒト膵臓癌異種移植片の増殖を阻害する上でのhR1の用量依存的な効果を示唆しており、hRS7抗体またはhPAM4抗体よりも優れているように見えるが、hR1およびhRS7(1R−E1)の二重特異性構築体は、別々に投与された同一用量の親抗体に比べて、増加した活性およびhR1およびhPAM4(1R1M)の二重特異性抗体に対してはやや低い増加効果を示すように見える。

Colo205ヒト結腸癌モデル

(1) 0.5mgのhR1(46%GI)
(2) 1.0mgのhR1(70%GI)
(3) 0.5mgのhMN−14(14%GI)
(4) 1.0mgのhMN−14(29%GI)
(5) 0.5mgの14−1R(58%GI)
(6) 1.0mgの14−1R (83%GI)
(7) 1.0mgのhLL2対照.
【0193】
抗IGFR1および抗CEACAM5(hMN−14)ヒト化抗体の両方について、用量に依存する増殖阻害が観察され、このモデルにおいて前者がより効果的であったが、DNLにより作製されたそれぞれの二重特異性抗体構築体は、相当する用量の二価親抗体に比べて、効果の改善を示している。
【0194】
実施例13 多発性骨髄腫異種移植片モデルにおけるhR1構築体の単独およびボルテゾミブとの併用での効果
Charles River Laboratories(Frederick、MD)から入手した6−8週齢の雌のSCIDマウスに移植するために、100万個の細胞を収穫できる密度まで、AGヒト骨髄腫細胞を細胞培養で増殖した。Steinら(Blood、2004;104:3705−11)が記述しているように、5−10x16
の骨髄腫細胞を静脈注射する3日前に、マウスにはフルダラビンおよびシクロホスファミドで事前に処置を施し、免疫を抑制した。マウスは毎日検査して、苦痛または後ろ肢麻痺の兆候がないかを調べ、毎週、体重を測定した。後ろ肢麻痺または
> 20%の体重減を生存終点として用い、その状態になると、動物を安楽死させた。8−10匹のマウスから成る群を使った。hR1の用量を100、
300、600および1,000μgとして、4週間にわたり、週に2回、 hR1を腹腔内投与する用量反応研究では、生理食塩水ビヒクルまたは未反応性のアイソタイプ対照抗体を使って処置されたマウス(平均生存期間は40日だった)に比べて生存の大幅な向上(P<0.03)が見られた。hR1で処置したマウスの平均生存期間は80日から100日に及び、用量反応を示している。hR1とボルテゾミブを併用する効果について、同じ骨髄腫モデルで評価した。骨髄腫細胞の注入後5日目から開始して、3週間にわたり、週に2回、腹腔投与として処置を施した。
単一薬剤として与えた場合、0.5mg/kgボルテゾミブでは体重減が起こらず、良好に耐えられた。未処置の対照マウスにおける平均生存期間は33日で、ボルテゾミブのみを40日間与えた場合は40日(21.2%の増加)だった。3週間、週に2回、マウス1匹につき0.6mgでhR1での処置を繰り返した群では、平均生存期間は60日に増加した。ボルテゾミブとhR1の処置を併用した群では、0.5mgのボルテゾミブ+0.6mgのhR1の場合、平均生存期間はさらに79日という有意な増加(p=0.04)を示した。したがって、骨髄腫の治療において活性のある薬剤は、この抗IGFR1抗体と併用することにより、活性の増加を示す。
【0195】
実施例14 膵臓癌におけるゲミシタビンおよび抗IGFR1抗体(hR1)免疫治療と90Y−hPAM4 放射免疫治療の併用療法の効果
YSは、2ヵ月前に、ステージIII/IVの転移性で手術不可能な膵臓腺癌と診断された61歳の男性で、膵臓の先端部に直径6cmの膵臓病変と肝臓に直径約3cmと約4cmの2つの転移がある。この患者はCA19.9の滴定濃度の上昇(7,200)を示しているが、他の臨床検査値のほとんどは境界線または正常範囲内にある。男性は活発だが、疲労しやすく、
最小量の薬物投与を必要とする腹痛に時々襲われ、診断以降、体重が約10kg減少した。男性は、1週間に1回200mg/mでゲミシタビン(GEMZAR(登録商標))を静脈から注入すること、免疫シンチグラフィーによって抗体局在を評価するために、(Sharkeyらによる[J Nucl Med.2003年12月;44(12):2000−18]の記述に従って標識を付けた)111In−DOTA−hPAM4抗体も1週目に注入した後、次の連続する3週間、毎週(Sharkeyらによる同書の記述に従って標識を付けた)12mCi/m90Y−DOTA−h PAM4を注入することから成る、4週間の治療を必要とする治験中の治療を選んだ。1日目、7日目、14日目および21日目に、hR1を
10mg/kg、16mg/kg、16 mg/kgおよび20mg/kgの用量で 静脈注入した。患者はグレード1−2の悪心、背痛、低血圧、食欲不振および疲労を注入の各回後に経験したが、回を重ねるごとに重症度は減少し、軽度だった。これは注入反応を抑制するために、50mgのヒドロコルチゾン、アセトアミノフェンおよびジフェニルヒドラミンを前投与しておいたことによる。治療後4週間目に、患者にFDG−PETおよびCTスキャンを実施し、治療前と治療後の膵臓癌病変の代謝および大きさを比較し、血液を採取して、CA19−9腫瘍バイオマーカー滴定濃度を測定した。原発癌のSUVは、8.9から3.3に変化し、肝臓の2箇所の転移性病変はそれぞれ6.1と5.3から5.3と3.5にそれぞれ大幅に減少していた。CTの測定値は、原発腫瘍は1cmの減少を、2箇所の肝臓転移性病変は約33%の減少を示した。このとき、CA19.9の滴定濃度は930で、7,200から大きく低下したことを示した。4週間後の経過観察では、SUV値の連続した低下および腫瘍の大きさの安定化または多少の減少がCT測定により確認された。患者の疾患が安定していたため、3ヶ月後、治療を繰り返し、患者は良好に耐え、再度安定した疾患を示し、
次の4週後の経過観察でCA19.9の滴定濃度の増加は見られなかった。この併用療法は、最低でも、疾患を安定化させ、腫瘍の代謝活性を低下させ、膵臓癌の血液バイオマーカーであるCA19−9を著しく減少させると結論づけられる。この患者はこの期間、通常、活発であり、疲労または苦痛を感じず、体重を4kg取り戻した。血液学的異常もその他の検査所見の異常もなかった。
【0196】
実施例15 hR1との転移性結腸直腸癌の併用FOLFIRI療法
RSは、重病歴のない71歳の女性で、6ヶ月前のS状結腸B3腺癌の切除後に転移性結腸癌を示していた。女性は術後の放射線療法も化学療法も拒否していた。女性の血液CEA滴定濃度は11ng/mLで上昇していた。FDG−PET/CT撮影で、原発切除部位での再発は見つからなかったが、肝臓の右葉に別々の病変3つ(直径2−4cm)と肝臓の左葉に比較的大きな病変(6cm)1つが見つかった。サルベージ肝臓切除の候補ではなかったため、患者はhR1治療と組み合わせたFOLFIRI併用療法を受けた。1日目に、1, 180mg/mのイリノテカンを2時間の注入で、500mlの生理食塩水で与え、1日目および2日目に、400mg/m
のフォリン酸を2時間かけて、静脈内ボーラスで注入した後、2週間ごとに、連続46時間注入で
フルオロウラシル(2,400mg/m)を投与した。抗IGF−1R抗体、hR1を10mg/kgで、2週間、週に1回、遅い注入速度で与え、直前の患者の実施例と同様、前投薬も行なった。この併用療法を8サイクル実施した。治療完了の6週間後、FDG−PET/CTスキャンによって、左葉の転移病変の大きさは60%減少して、SUVも減少し、右葉の3つの転移病変のうちの2つは直径1cmに見え、3つ目の病変は大きさが変わっていないことが分かった。3つの病変のうち、2つのSUV値はほぼ0まで減少し、3つ目は3.2になった。CEAの循環に変化は見られなかった。さらに6週間後、右葉の転移病変の3つのうちの2つは見えなくなり、3つ目は直径約1.5cmになった。左葉の腫瘍は、現在、直径3cmと測定される。この患者は、部分反応状態にあるとみなされ、治療終了の8ヶ月後、この状態が継続している。
【0197】
実施例16 肝細胞癌患者の放射線標識hR1モノクローナル抗体による治療
黄疸、不快感、体重減、全身の脱力感のある57歳の男性が、コンピュータ断層撮影により、手術不可能な肝細胞癌と診断された。癌は肝臓の右葉に直径約6cmに及ぶように見え、左葉にも3cmの病変と見えるものが1つあった。右葉の病変は生検により肝細胞癌と確認された。
【0198】
この患者に、Sharkeyら(J Nucl Med.2003年12月;44(12):2000−18)の記述に従って、90Yを有するDOTAでコンジュゲートしたhR1モノクローナル抗体の2サイクルを与え、25mCi(100mg抗体タンパク質)の治療用量ごとに、投入するようにした。初回の治療は、外来診療の場で実施し、6週間後に繰り返した。治療の各回に先立って、腫瘍の標的化を実施し、腫瘍に届く放射線量と肝臓、腎臓、骨髄などの他の正常組織に届く放射線量を概算し、耐容可能とみなされる(たとえば、腎臓には2000cGy)範囲を超えて正常組織/器官に毒性を引き起こすことがないように、1週間後に与える90Yによる治療用量を調節できるように、抗体にDOTAでコンジュゲートしたの診断用量の111In(標識化についても、Sharkeyらの2003の同書に記述されている)も注入した。
患者はこの後、治療後4−8週間ごとに、コンピュータ断層撮影(CT)スキャンを繰り返し、さらに血中AFP、ビリルビン、アミノ酸転移酵素およびLDHの濃度により、反応をモニタリングした。
【0199】
90Yで標識を付けた抗体を2回目に治療投与した8週間後に、患者のビリルビン、アミノ酸転移酵素およびLDHの血中濃度は正常値の約20%上まで低下し、血中AFP滴定濃度の測定値は60
ng/mLで、これも改善していた。肝臓疾患のCT測定では、左葉病変のほぼ完全な消失と右葉の比較的大きな塊の40%の減少が示された。左葉に残っている小さな病変は癌ではなく、瘢痕組織であると判断されるため、この後、患者は右葉の外科的切除の候補になった。
【0200】
実施例17 裸のhR1抗体と組み合わせた90Y標識hR1抗体による患者の治療

62歳の男性は、3年前にデュークスC直腸癌を切除した後、放射線治療および5−フルオロウラシル/フォリン酸化学療法を受けた病歴を持つ。患者は血漿CEA
滴定濃度の上昇を示し始めていて、濃度は30ng/mLに到達しようとしている。再発が疑われるため、患者に様々な診断手順を実施した。コンピュータ断層撮影により、肝臓に転移病変が2つあり、一方は右葉に存在し、直径3cmに及び、他方は左葉で、葉間間膜付近に存在し、多少小さいことが分かった。患者には、まず10mg/kgのhR1抗体を週に1回、3回投与した後、裸のhR1治療の3週目、3回目のhR1注入の前に、hR1抗体にコンジュゲートした用量の25mCiの90Yを、50mgのタンパク質量で2時間かけて、静脈内注入によって投与した。この治療を2ヵ月後に繰り返した。最後の治療注入の2−4週後に測定したところ、患者は白血球の数と血小板の低下を示したが、
治療8週間後の評価では回復していた。治療の3ヶ月後でのコンピュータ断層撮影では、肝臓の右葉の一番大きな腫瘍転移は40%縮小し、左葉の腫瘍もそれより低い割合で縮小していることが分かった。
【0201】
6ヶ月後の経過観察で、患者の癌病変は2倍(two-diameter)CT測定で約70パーセント減少しており、血中CEAは8ng/mLで、全般的な病状が改善し、治療に関係する明らかな毒性も副作用も見られなかった。
【0202】
実施例18 乳癌患者のY-90 hR1 MAbと裸のhR1 MAbによる治療
乳腺癌の再発歴がある56歳の女性が、頸部リンパ節および左肺に転移を示している。女性は化学療法とホルモン療法の後に2回、再発した。その後、女性には100mgの抗体のタンパク質量で、各々15mCiの90Yの投与量で、90YにコンジュゲートしたhR1
MAbをそれぞれ1週間の間隔をあけて、3回治療的に静脈内注入した。治療の4週間後、女性の白血球および血小板の数は約50%減少したが、治療の9週間後に回復した。治療の12週間後の再ステージング(restaging)では、肺および節の転移病変は、コンピュータ断層撮影で、約30%減少していると測定された。したがって、患者は各々4時間をかけて、裸のhR1抗体の注入を週に1回、4回受けた。患者は一時的にやや悪寒や寒気を感じたことを除き、治療に良好に耐え、血球の数にも、血液の化学的性質にも一切副作用はなかった。1回に注入する裸の抗体の用量は12mg/kgであった。約8週間後、コンピュータ断層撮影による再ステージングでは、測定可能な病変が約20パーセントさらに縮小したことが示された。3ヶ月後の追跡検査で、患者の疾患は安定しているように見えた(すなわち、追加的増殖および進行的増殖の証拠はなかった)。
【0203】
本明細書に開示し、特許請求する組成物および方法はすべて、本開示を踏まえて、不当な実験を行なうことなく、製作および使用することができる。組成物および方法は好ましい実施形態の観点から記述されているが、本発明の概念、精神および範囲から逸脱することなく、該組成物および該方法に、本明細書に記載された方法の工程でまたは一連の工程で変化を加えることが可能であることは、当業者には明白である。より具体的には、化学的と物理的の療法で関係する特定の薬剤は、本明細書で記載した薬剤の代わりに使っても同一または同様の結果を達成できる可能性がある。そのような当業者には明白な類似の置換および改変は、付属する請求項によって定義されているように、本発明の精神、範囲および概念の中に入るものと見なされる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトIGF−1Rのアミノ酸残基151から222の間のIGF−1Rのシステインリッチドメインの前半部を含むIGF−1Rのエピトープに結合する抗IGF−1R(インスリン様増殖因子1型受容体)抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項2】
前記抗体が、(i)ヒトIGF−1Rには結合するが、ヒトインスリン受容体
(IR)には結合しない;(ii)IGF−1Rのアゴニストではない;(iii)IGF−1またはIGF−2の単離されたIGF−1Rへの結合をブロックしない;
(iv)無傷細胞において、IGF−1によるIGF−1Rの活性化を中和する;および(v)可変領域配列の配列番号:9および配列番号:10を含むhR1抗体のIGF−1Rへの結合をブロックする、から成る群から選択される機能特性を少なくとも1つ発揮する請求項1に記載の抗IGF−1R抗体またはそのフラグメント。
【請求項3】
前記抗IGF−1R抗体が、単離されたIGF−1Rへの結合について、
抗IGF−1R抗体24−31、24−57、17−69、1−2、1H7、2C8または3B7と競合しない、請求項1に記載の抗IGF−1R抗体またはそのフラグメント。
【請求項4】
前記抗IGF−1R抗体が、単離されたヒトIGF−1Rのアミノ酸残基1−150、223−274、184−283、
283−440、440−514、514−586 または1323−1337に結合しない、請求項1に記載の抗IGF−1R抗体またはそのフラグメント。
【請求項5】
前記抗IGF−1R抗体が、重鎖可変領域相補性決定領域(CDR)配列CDR1(DYYMY、配列番号:1)、CDR2(YITNYGGSTYYPDTVKG、
配列番号:2)およびCDR3(QSNYDYDGWFAY、配列番号:3)ならびに軽鎖可変領域CDR配列CDR1(KASQEVGTAVA、
配列番号:4)、CDR2(WASTRHT、配列番号:5)およびCDR3(QQYSNYPLT、配列番号:6)を含む、請求項1に記載の抗IGF−1R抗体またはそのフラグメント。
【請求項6】
重鎖可変領域CDR配列CDR1(DYYMY、配列番号:1)、CDR2
(YITNYGGSTYYPDTVKG、配列番号:2)およびCDR3 (QSNYDYDGWFAY、配列番号:3)、ならびに軽鎖可変領域CDR配列CDR1(KASQEVGTAVA、 配列番号:4)、CDR2(WASTRHT、配列番号:5)およびCDR3(QQYSNYPLT、 配列番号:6)を含む、R1抗体の単離されたヒトIGF−1Rへの結合をブロックする、抗IGF−1R抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項7】
前記抗IGF−1R抗体が、ヒトIGF−1Rのアミノ酸残基151から222の間の、IGF−1Rのシステインリッチドメインの前半部を含むIGF−1Rのエピトープに結合する、請求項6に記載の抗IGF−1R抗体またはそのフラグメント。
【請求項8】
前記抗体が、(i)ヒトIGF−1Rには結合するが、ヒトインスリン受容体(IR)には結合しない;(ii)IGF−1Rのアンタゴニストではない;(iii)単離されたIGF−1RへのIGF−1またはIGF−2の結合をブロックしない;(iv)無傷細胞においてIGF−1によるIGF−1Rの活性化を中和する、から成る群から選択される機能的特性を少なくとも1つ発揮する、請求項6に記載の抗IGF−1R抗体またはそのフラグメント。
【請求項9】
前記抗体またはフラグメントが、裸の抗体またはフラグメントであるか、あるいは少なくとも1つの診断薬または治療薬にコンジュゲートしている、請求項6に記載の抗IGF−1R抗体またはそのフラグメント。
【請求項10】
重鎖可変領域CDR配列CDR1(DYYMY、配列番号:1)、CDR2(YITNYGGSTYYPDTVKG、配列番号:2)およびCDR3(QSNYDYDGWFAY、
配列番号:3)ならびに軽鎖可変領域CDR配列CDR1(KASQEVGTAVA、配列番号:4)、CDR2(WASTRHT、配列番号:5)およびCDR3 (QQYSNYPLT、 配列番号:6)を含む、抗IGF−1R抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項11】
前記抗体が、(i)ヒトIGF−1Rには結合するが、ヒトインスリン受容体 (IR)には結合しない;(ii)IGF−1Rのアゴニストではない;(iii)単離されたIGF−1RへのIGF−1またはIGF−2の結合をブロックしない;(iv)無傷細胞におけるIGF−1によるIGF−1Rの活性化を中和する;(v)可変領域配列の配列番号:9および配列番号:10を含むhR1抗体のIGF−1Rへの結合をブロックする;および(vi)ヒトIGF−1Rのアミノ酸残基151から222の間のIGF−1Rのシステインリッチドメインの前半部を含むIGF−1Rのエピトープに結合する、から成る群から選択される機能的特性を少なくとも1つ発揮する、請求項10に記載の抗IGF−1R抗体またはそのフラグメント。
【請求項12】
前記抗IGF−1R抗体が、マウス抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体またはヒト抗体である、請求項10に記載の抗IGF−1R抗体またはそのフラグメント。
【請求項13】
前記抗IGF−1R抗体が、ヒト抗体由来のフレームワークおよび定常領域配列を含むヒト化抗体である、請求項12に記載の抗IGF−1R抗体またはそのフラグメント。
【請求項14】
前記ヒト化抗IGF−1R抗体が、配列番号:9(hR1 VH)および配列番号:10(hR1 VK)のアミノ酸配列を含むヒト化R1(hR1)抗体である、請求項13に記載の抗IGF−1R抗体またはそのフラグメント。
【請求項15】
前記ヒト化抗IGF−1R抗体の可変領域配列が、配列番号:9および
配列番号:10に対して、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列相同性を有する、請求項13に記載の抗IGF−1R抗体またはそのフラグメント。
【請求項16】
配列番号:9および配列番号:10の配列において保存的アミノ酸置換が20個以下である場合を除き、前記ヒト化抗IGF−1R抗体の可変領域配列が、配列番号:9および配列番号:10のアミノ酸配列を含む、請求項13に記載の抗IGF−1R抗体またはそのフラグメント。
【請求項17】
前記抗IGF−1R抗体が、ヒト抗体定常領域配列に付加された配列番号:7(R1 VH)および配列番号:8(R1 VK)のアミノ酸配列を含むキメラR1(cR1)抗体である、請求項13に記載の抗IGF−1R抗体またはそのフラグメント。
【請求項18】
前記キメラ抗IGF−1R抗体の可変領域配列が、配列番号:7および
配列番号:8に対して、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列相同性を有する、請求項13に記載の抗IGF−1R抗体またはそのフラグメント。
【請求項19】
配列番号:7および 配列番号:8の配列において保存的アミノ酸置換が20個以下である場合を除き、前記キメラ抗IGF−1R抗体の可変領域配列が、配列番号:7および
配列番号:8のアミノ酸配列を含む、請求項13に記載の抗IGF−1R抗体またはそのフラグメント。
【請求項20】
前記抗体が裸の抗体である、請求項10に記載の抗IGF−1R抗体またはそのフラグメント。
【請求項21】
前記抗体が(i)少なくとも1つの治療薬、(ii)少なくとも1つの診断薬、または(iii)少なくとも1つの治療薬と少なくとも1つの診断薬である、請求項10に記載の抗IGF−1R抗体またはそのフラグメント。
【請求項22】
前記治療薬が、放射性核種、免疫調節剤、血管新生阻害剤、サイトカイン、ケモカイン、増殖因子、ホルモン、薬物、プロドラッグ、酵素、オリゴヌクレオチド、アポトーシス促進剤、干渉RNA、光活性治療薬、細胞毒性剤、
化学療法剤および毒物から成る群から選択される、請求項21の抗IGF−1R抗体またはそのフラグメント。
【請求項23】
前記診断薬が、放射線同位体、色素、放射線造影剤、超音波造影剤、蛍光標識、化学発光標識、酵素、増強剤および常磁性イオンから成る群から選択される、請求項21の抗IGF−1R抗体またはそのフラグメント。
【請求項24】
前記抗体がヒトIgG1またはIgG4抗体の定常領域配列を含む、請求項10に記載の抗IGF−1R抗体。
【請求項25】
請求項1の抗IGF−1R抗体またはそのフラグメントを含む融合タンパク質。
【請求項26】
少なくとも1つの他の抗体またはそのフラグメントに付加された請求項1の抗IGF−1R抗体またはそのフラグメントを含む、多重特異性抗体。
【請求項27】
他方の抗体が腫瘍関連抗原に結合する、請求項26に記載の多重特異性抗体。
【請求項28】
前記腫瘍関連抗原が、炭酸脱水酵素IX、CCCL19、CCCL21、
CSAp、CD1、CD1a、CD2、CD3、CD4、CD5、CD8、CD11A、CD14、CD15、CD16、CD18、CD19、CD20, IGF−1R、CD21、CD22、CD23、CD25、CD29、CD30、CD32b、CD33、CD37、CD38、CD40、CD40L、CD45、CD46、CD52、CD54、CD55、CD59、CD64、CD66a-e、CD67、CD70、CD74、CD79a、CD80、CD83、CD95、CD126、CD133、CD138、CD147、CD154、CEACAM5、
CEACAM6、B7、ED−Bフィブロネクチン、因子H、FHL−1、Flt−3、葉酸受容体、
GROB、HMGB−1、低酸素誘導因子(HIF)、HM1.24、インスリン様増殖因子−1(ILGF−1)、IFN−γ、 IFN−α、IFN−β、IL−2、IL−4R、IL−6R、IL−13R、IL−15R, IL−17R、IL−18R、IL−6、IL−8、IL−12、IL−15、IL−17、 IL−18、IL−25、IP−10、MAGE、mCRP、MCP−1、 MIP−1A、
MIP−1B、 MIF、 MUC1、 MUC2、 MUC3、
MUC4、 MUC5、PAM4 抗原、NCA-95、NCA-90、PSMA、EGP−1、EGP−2、AFP、Ia、HM1.24, HLA−DR、テネイシン、Le(y)、RANTES、T101、TAC、Tn 抗原、Thomson−Friedenreich抗原、腫瘍壊死抗原、TNF−α、
TRAIL受容体(R1およびR2)、VEGFR、EGFR、P1GF、補体因子 C3、C3a、C3b、C5a、C5、および癌遺伝子産物から成る群から選択される、請求項27に記載の多重特異性抗体。
【請求項29】
他方の抗体が標的化可能な構築体上のハプテンに結合する、請求項26に記載の多重特異性抗体。
【請求項30】
他方の抗体がキメラ抗体、ヒト化抗体またはヒト抗体である、請求項26に記載の多重特異性抗体。
【請求項31】
他方の抗体が、hPAM4、hA20、hA19、hIMMU31, hLL1、hLL2、hMu-9、hL243、hMN−14、hMN−15、hMN−3、hRS7、h679およびh734 抗体から成る群から選択される、請求項26に記載の多重特異性抗体。
【請求項32】
多重特異性抗体が二重特異性抗体である、請求項26に記載の多重特異性抗体。
【請求項33】
IGF−1Rを発現する癌を罹患した個人への、請求項1に記載の抗IGF−1R抗体またはその抗原結合フラグメントの投与を含む、癌の診察または治療の方法。
【請求項34】
前記抗IGF−1R抗体がキメラ抗体、ヒト化抗体またはヒト抗体である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記抗IGF−1R抗体が、重鎖CDR配列CDR1(DYYMY、 配列番号:1)、CDR2(YITNYGGSTYYPDTVKG、配列番号:2)およびCDR3(QSNYDYDGWFAY、 配列番号:3)ならびに軽鎖CDR配列CDR1(KASQEVGTAVA、 配列番号:4)、CDR2(WASTRHT、
配列番号:5)およびCDR3(QQYSNYPLT、配列番号:6)を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記抗IGF−1R抗体が、配列番号:9 (hR1 VH)および 配列番号:10(hR1 VK)のアミノ酸配列を含むヒト化R1抗体である、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記抗IGF−1R抗体が裸の抗体である、請求項33に記載の方法。
【請求項38】
前記方法が癌の治療方法であり、少なくとも1つの他の治療薬を個人に投与することをさらに含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記少なくとも1つの他の治療薬が、放射性核種、 免疫調節剤、血管新生阻害剤、サイトカイン、ケモカイン、増殖因子、ホルモン、薬物、プロドラッグ、酵素、オリゴヌクレオチド、干渉RNA、アポトーシス促進剤、光活性
治療薬、 細胞毒性剤、 化学療法剤、抗体、抗原結合抗体フラグメントおよび毒物から成る群から選択される、請求項38の方法。
【請求項40】
前記少なくとも1つの他の治療薬が、EGFR阻害剤、エルロチニブ、抗EGFR抗体、IGF−1R阻害剤、トリホスチン、AG1024、
AG538、ピロロ[2,3−d]−ピリミジン誘導体、NVP−AEW541および第2の抗IGF−1R抗体から成る群から選択される、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記少なくとも1つの他の治療薬が、5‐フルオロウラシル、アプリジン、アザリビン、アナストロゾール、アントラサイクリン、ベンダムスチン、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、ブリオスタチン−1、ブスルファン、カリチアマイシン、カンプトセシン、カルボプラチン、10−ヒドロキシカンプトセシン、カルムスチン、セレブレックス、クロラムブシル、シスプラチン(CDDP)、コックス−2阻害剤、イリノテカン(CPT−11)、SN−38、カルボプラチン、クラドリビン、カンプトテカン、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ドセタキセル、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、2−ピロリノドキソルビシン(2P−DOX)、シアン−モルフォリノドキソルビシン、ドキソルビシングルクロニド、エピルビシン・グルクロニド、エストラムスチン、エピドフィロトキシン、エストロジェン受容体結合剤、エトポシド(VP16)、エトポシドグルクロニド、リン酸エトポシド、フロキシウリジン(FUdR)、3′,5′−O−ジオレオイル−FudR(FUdR−dO)、フルダラビン、フルタミド、ファルネシル−タンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、イダルビシン、イフォスファミド、L−アスパラギナーゼ、レナリダミド、ロイコボリン、ロムスチン、メクロレタミン、メルファラン、メルカプトプリン、6−メルカプトプリン、メトトレキセート、ミトキサントロン、ミトラマイシン、マイトマイシン、ミトタン、ナベルビン、ニトロソウレア、プリコマイシン、プロカルバジン、パクリタキセル、ペントスタチン、PSI−341、ラロキシフェン、セムスチン、ストレプトゾシン、タモキシフェン、タキソール、テマゾロミド、DTIC、トランスプラチナ、サリドマイド、チオグアニン、チオテパ、テニポシド、トポテカン、ウラシルマスタード、ビノレルビン、ビンブラスチン、ビンクリスチンおよびビンカアルカロイドから成る群から選択される、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記方法が癌治療方法であり、前記抗IGF−1R抗体が少なくとも1つの治療薬に付加される、請求項33に記載の方法。
【請求項43】
前記方法が癌の診断方法であり、前記抗IGF−1R抗体が少なくとも1つの診断薬に付加される、請求項33に記載の方法。
【請求項44】
前記診断薬が、放射線同位体、色素、放射線造影剤、超音波造影剤、蛍光標識、化学発光標識、酵素、増強剤および常磁性イオンから成る群から選択される、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記抗IGF−1R抗体またはそのフラグメントが融合タンパク質または二重特異性抗体の一部になっている、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
免疫調節剤が、IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−13、IL−14、IL−15、IL−16、IL−17、IL−18、IL−21、IL−25、インターフェロン−アルファ、インターフェロン−ベータ、インターフェロン−ガンマ、TNF−アルファおよび「S1因子」と命名された肝細胞増殖因子から成る群から選択される、請求項39に記載の方法。
【請求項47】
ウィルムス腫瘍、ユーイング肉腫、神経芽細胞腫、神経内分泌腫瘍、メラノーマ、膠芽細胞腫、胸部、結腸、直腸、胃、前立腺、肝臓、腎臓、胆管、膵臓、肺、子宮内膜、頸部、卵巣、食道、甲状腺髄様、膀胱、頭頸部、皮膚癌、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、星状細胞腫および神経膠腫から成る群から癌が選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項48】
IGF−1Rを発現する癌を罹患した個人への、請求項6に記載の抗IGF−1R抗体またはその抗原結合フラグメントの投与を含む、癌の治療方法。
【請求項49】
IGF−1Rを発現する前癌または異形成病変を罹患した個人への、請求項10に記載の抗IGF−1R抗体またはその抗原結合フラグメントの投与を含む、前癌または異形成病変の治療方法。
【請求項50】
IGF−1Rを発現する癌を罹患した個人への、請求項10に記載の抗IGF−1R抗体またはその抗原結合フラグメントの投与を含む、癌の治療方法。
【請求項51】
請求項1に記載の抗IGF−1R抗体をコードする単離された核酸。
【請求項52】
配列番号:9および配列番号:10の配列をコードする、請求項51の単離された核酸。
【請求項53】
請求項51に記載の単離された核酸を含む発現ベクター。
【請求項54】
請求項53に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項55】
a)請求項53に記載の発現ベクターを含む宿主を取得すること;および
b)抗IGF−1R抗体またはフラグメントを発現するために培地で宿主細胞を培養すること
を含む、抗IGF−1R抗体またはそのフラグメントを製造する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公表番号】特表2013−516996(P2013−516996A)
【公表日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−549978(P2012−549978)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【国際出願番号】PCT/US2010/027155
【国際公開番号】WO2011/090492
【国際公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(504149971)イミューノメディクス、インコーポレイテッド (48)
【氏名又は名称原語表記】IMMUNOMEDICS, INC.
【Fターム(参考)】