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インスリン様成長因子−1分泌促進剤及びそれを含む飲食品
説明

インスリン様成長因子−1分泌促進剤及びそれを含む飲食品

【課 題】
安全で日常的に摂取しやすいインスリン様成長因子−1(IGF−1)分泌促進剤、およびそれを含む飲食品の提供。IGF−1分泌を促進する方法の提供。IGF−1分泌促進作用を有する飲食品を製造するためのポリフェノールの使用の提供。
【解決手段】
ポリフェノールを有効成分とすることを特徴とするIGF−1分泌促進剤、およびそれを含む飲食品。ポリフェノールを含有する飲食品を哺乳動物に経口摂取して、血中または臓器中のIGF−1分泌を促進する方法。IGF−1分泌促進作用を有する飲食品を製造するためのポリフェノールの使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリフェノールを有効成分とすることを特徴とするインスリン様成長因子−1分泌促進剤、およびそれを含む飲食品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリフェノールは、抗菌、抗ウイルス、抗酸化、抗突然変異、抗癌、血小板凝集抑制、血糖上昇抑制、血中コレステロール低下、抗う蝕、抗アレルギー、腸内フローラ改善、消臭など非常に広範な生理作用を有することが知られている。
中でも特に、カカオポリフェノールの機能については種々の作用が確認されている。
【0003】
抗酸化能に基づく作用としては、油脂の変敗抑制、ミクロゾームや赤血球膜といった生体成分の酸化抑制、スーパーオキシドディスムターゼ様作用やヒドロキシラジカル消去作用などのインビトロでの作用、胃潰瘍予防作用、低密度リポ蛋白酸化抵抗性増強作用などが知られている。
また、抗酸化作用以外では、ヘテロサイクリックアミンに対する抗変異原性作用、血小板凝集能低下作用、血圧低下作用、低密度リポ蛋白低下作用が知られている(非特許文献1
)。
【0004】
一方、インスリン様成長因子−1(insulin-like growth factor-1;以下、IGF−1と略記することもある。)はインスリンに非常に似た構造及び作用を持つ分子量約7500のペプチドホルモンである(非特許文献2)。IGF−1は細胞の分化を促し、細胞の増殖を助ける等、積極的に細胞を健康な状態に維持し(非特許文献3,4)、老化の進行を阻止することが知られている(非特許文献5)。
【0005】
IGF−1は成長ホルモン分泌刺激によって主に肝臓で生成されることが知られているポリペプチドであり、血中ではIGF結合タンパクと結合し高分子複合体として存在している。IGF−1の代謝、IGF−1の受容体への親和性はこのIGF結合タンパクによって調節されており、IGF結合タンパクの発現は成長ホルモンによって制御されることが知られている。最近では、全身に分布している知覚神経に存在するバニロイド受容体の活性化によって、カルシトニン遺伝子ペプチド(以下CGRPと略記することがある)が放出され、種々の臓器の幼若細胞からのIGF−1産生を促すことが報告されている。(非特許文献6)。
【0006】
実験的にはリコンビナントIGF−1の投与によってインスリン抵抗性が改善されることが報告されているが(非特許文献7)、臨床の現場ではリコンビナント成長ホルモンを投与し、その結果としてIGF−1を上昇させる治療法が普及している。しかしながらリコンビナント成長ホルモンには関節痛、過敏症、肝機能障害、皮膚の硬化、甲状腺ホルモンの低下、頭痛などの副作用が生じることが知られており、更に、投与方法は皮下注射など侵襲を伴う方法に限られ、その治療費用は非常に高価であるという問題があった。
【0007】
リコンビナント成長ホルモン以外では、非選択性β遮断薬であるカルベジロールを静脈内投与することでIGF−1の分泌が促進されると報告されている(非特許文献8)。しかしながら本薬品も侵襲を伴う方法により投与されなければならないので、その治療費用が安くはないことに加え、日常的に気軽に摂取し難いという問題があった。
【0008】
このような背景から、より安全かつ安価にIGF−1の分泌を促進する手段として食品成分に注目が集まっており、これまで唐辛子に含まれるカプサイシンが有効であると報告されている(特許文献1、非特許文献9)。しかしながら、カプサイシンは唐辛子の辛味成分であり、添加できる量は少なくならざるを得ないという問題点があった。
【特許文献1】特開2006−151971
【非特許文献1】チョコレート・ココアの科学と機能、第二部チョコレート・ココアの生理機能、福場博保、木村修一・板倉広重・大澤俊彦編、PP56-179、アイ・ケイコーポレーション
【非特許文献2】グッドマン・ギルマン薬理書[下] 薬物治療の基礎と臨床第10版;第61章 インスリン、経口血糖降下薬と膵臓内分泌の薬理学 2003、p2144 監訳:高折 修二、福田 英臣、赤池 昭紀 東京廣川書店発行
【非特許文献3】コーン・ケー・ジェイ(Conn K J)外6名,ザ・ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(J. Biol. Chem.)1996年、第271巻、第46号、p.28853-28860
【非特許文献4】ブラハム・シー(Braham C)外4名,デルマトロジー(Dermatology)、2002年、第20巻、第4号、p.325-329
【非特許文献5】ローベノッフ・アール(Roubenoff R)外8名,ザ・アメリカン・ジャーナル・オブ。メディシン(Am. J. Med.)、2003年、第115巻、第6号、p.501-502
【非特許文献6】岡嶋研二ら「マイクロバブル・ナノバブルの最新技術」 P131-149,(2007)
【非特許文献7】Acerini CL. et al. Randomised placebo-controlled trial of human recombinant insulin-like growth factor I plus intensive insulin therapy in adolescents with insulin-dependent diabetes mellitus. Lancet 350, 1199-204 (1997)
【非特許文献8】Okajima K, et al. J. Pharmacol Exp. Ther. 2004; 309: 684-691
【非特許文献9】Okajima K. et al Effect of capsaicin on plasma and tissue levels of insulin-like growth factor-I in spontaneously hypertensive rats.Growth Horm IGF Res. 18、75-81 (2008)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、安全で日常的に摂取しやすいIGF−1分泌促進剤、およびそれを含む飲食品を提供することを目的とする。また本発明の他の目的は、IGF−1分泌を促進する方法の提供にある。さらに、本発明の他の目的は、IGF−1分泌促進作用を有する飲食品を製造するためのポリフェノールの使用の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、ポリフェノールを含有する食品を摂取したマウスにおいて、血中および種々の臓器中のIGF−1が顕著に増加することを見出した。
また、ポリフェノールを含有する食品を摂取したマウスにおいて、記憶や認知力が高まることを見出した。
【0011】
さらに、これまでに唐辛子に含まれるカプサイシンがIGF−1分泌促進に有効であると報告されているが、本発明者らはIGF−1産生機序についてさらに検討した結果、カプサイシンと同様に、プロシアニジン類がバニロイド受容体を備えるマウス脊髄後根神経節細胞(以下DRGと略記することがある)を刺激し、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)の放出を促進することを見出した。
本発明はこれらの知見に基づくものである。
【0012】
すなわち、本願は以下の発明を包含する。
(1)ポリフェノールを有効成分とすることを特徴とするインスリン様成長因子−1分泌
促進剤。
(2)ポリフェノールがプロシアニジン類である上記(1)に記載のインスリン様成長因
子−1分泌促進剤。
(3)プロシアニジン類がカカオ、ぶどう、リンゴ、松の樹皮のうちのいずれか1種また
は2種以上に由来する上記(2)に記載のインスリン様成長因子―1分泌促進剤。(4)プロシアニジンB2、プロシアニジンB5、プロシアニジンC1、シンナムタンニ
ンA2から選択される1種または2種以上の化合物を有効成分とすることを特徴と
するインスリン様成長因子―1分泌促進剤。
(5)上記(1)〜(4)のいずれか1つに記載のインスリン様成長因子−1分泌促進剤
を含む飲食品。
(6)プロシアニジン類含有量が0.01〜20重量%である上記(5)に記載の飲食
品。
(7)ポリフェノールを含有する飲食品を哺乳動物に経口摂取して、血中または臓器中の
インスリン様成長因子−1分泌を促進する方法。
(8)インスリン様成長因子−1分泌促進作用を有する飲食品を製造するためのポリフェ
ノールの使用。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ポリフェノールを有効成分とするIGF−1分泌促進剤が提供される。また、本発明によればIGF−1分泌促進剤を含む飲食品が提供される。
そして、本発明によればポリフェノールを含有する飲食品を哺乳動物に経口摂取して、血中または臓器中のIGF−1分泌を促進する方法が提供される。
さらに、本発明によればIGF−1分泌促進作用を有する飲食品を製造するためのポリフェノールの使用が提供される。
【0014】
本発明のIGF−1分泌促進剤およびそれを含む飲食品は、血中および臓器においてIGF−1の分泌を促進し得る。
本発明のIGF−1分泌促進剤およびそれを含む飲食品は、記憶や認知力を高め得る。
本発明のIGF−1分泌促進剤の有効成分の1つであるプロシアニジン類が、カプサイシンと同様に、バニロイド受容体を備えるマウス脊髄後根神経節細胞(DRG)を刺激しカルシトニン遺伝子関連ペプチドの放出を促進する。
【0015】
本発明のIGF−1分泌促進剤は、天然の植物由来とすることができるから、安全性に優れ、長期に摂取しても副作用がない。したがって、本発明のIGF−1分泌促進剤およびそれを含む飲食品は、日常的にかつ継続的に摂取しうるものとして非常に有用である。
【0016】
また、IGF−1に関するこれまでの報告から、さらに次のような可能性が考えられる。IGF−1は、皮膚中の線維芽細胞を活性化し、該細胞の分化、増殖及び/又は機能を促進する。線維芽細胞は、コラーゲン、エラスチン及びヒアルロン酸等の体内の間質物質の産生を促進する。コラーゲンは結合組織を構成する主要タンパク質で、皮膚のコラーゲンは、皮膚の質感又は弾力等の皮膚の形状形成に関与している。エラスチンはコラーゲンと同様に皮膚の結合組織に存在する繊維状のタンパク質で、コラーゲン繊維を束ね、バネのように支えて、皮膚の弾力性とハリを保つ機能を有する。ヒアルロン酸はグリコサミノグルカンの一種で、哺乳動物の結合組織に多量に分布し、肌に潤いを与え、クッションの役割を担っている。このため、本発明のIGF−1分泌促進剤は、皮膚中のIGF−1を増加させ、終局的には上記した皮膚中でのコラーゲン、エラスチン及びヒアルロン酸を増加させ得るので、皮膚の弾力性や皮膚の張り、肌の潤いを維持することができる可能性がある。
【0017】
また、本発明のIGF−1分泌促進剤が、弾力性の低下した皮膚又はしわやたるみのある皮膚に適用されると、適用部位で、IGF−1の分泌が促進されるので該部位の皮膚の弾力性が回復し、しわが伸び、たるみが改善される可能性がある。
【0018】
また、本発明のIGF−1分泌促進剤は、皮膚中のIGF−1を増加させ、線維芽細胞の分化、増殖及び/又は機能を促進するので、例えば外傷や手術後の創傷治癒を早め得る可能性がある。
【0019】
また、IGF−1は、毛母、毛乳頭等毛根部の細胞を活性化することから、本発明のIGF−1分泌促進剤は、育毛や発毛を目的に頭皮に適用し得る。
【0020】
高齢者では、骨組織内IGF−1量や血中IGF−1濃度、作用が低下し、骨量も低下するため本発明のIGF−1分泌促進剤は骨密度増加に寄与する可能性がある。
【0021】
IGF−1が作用すると血管が拡張し血圧低下の効果が得られるので、本発明のIGF−1分泌促進剤によって血圧低下効果が得られる可能性がある。
【0022】
また、IGF−1はアルツハイマー病において窿Aミロイド原線維を分解し解毒(無毒化
)するHSF−1を調整するので、本発明のIGF−1分泌促進剤は、アルツハイマー病の発症を遅延させることができる可能性がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本願において用語を以下のように定義する。
【0024】
ポリフェノール
本発明において「ポリフェノール」とは、ベンゼン環に2つ以上のヒドロキシル基がついている構造を示す化合物をいう。ポリフェノールはシンプルフェノール類、フラボノイド類、加水分解型タンニン類、縮合型タンニン類(プロアントシアニジン類)に分けられる。シンプルフェノールとしては、ジヒドロキシル酸、ヒドロキシルカフェ酸誘導体類等が例示でき、フラボノイド類としては、フラボン類、フラボノール類、イソフラボン類、フラバン類、フラバノール(カテキン)類、フラバノン類、フラバノノール類、カルコン類、アントシアニジン類等が例示できる。カテキン類としては、カテキン・エピカテキンなどが挙げられる。加水分解型タンニン類はシンプルフェノールの重合物であり、縮合型タンニン類(プロアントシアニジン類)はフラボノイド類の重合物である。
【0025】
プロシアニジン類
本発明において「プロシアニジン類」とは、例えば以下の(化1)〜(化9)の構造式(n=0〜1)で示される、フラボノイド類の基本骨格が重合した構造を持つ物質であり、4位→6位、4位→8位、2位→5位および4位→6位の2箇所、2位→7位および4位→8位の2箇所で結合する構造が認められている。代表的なものとしては、プロシアニジンB2(化1)、プロシアニジンB5(化2)、プロシアニジンC1(化3)、シンナムタンニンA2(化4)がある。
プロシアニジン類は、カカオ以外にも、ぶどう種子・皮、リンゴ、松の樹皮などに含まれる。

【0026】
プロシアニジンB2
【化1】


【0027】
プロシアニジンB5
【化2】


【0028】
プロシアニジンC1
【化3】

【0029】
シンナムタンニンA2
【化4】

【0030】
その他のプロシアニジン類
【化5】

【0031】
【化6】

【0032】
【化7】

【0033】
【化8】

【0034】
【化9】

【0035】
ポリフェノール総量定量方法
ポリフェノール総量は、プルシアンブルー法により測定した。Martin L. Price and Larry G. Butler, J. Agric Food Chem., Vol. 25 No.6, 1268-1273,1977に記載の方法に従い、市販のエピカテキンを標準物質として算出した値を用いた。
【0036】
ポリフェノール個別成分定量方法
個別成分の定量は次の条件の逆相HPLCにて行った。
(逆相HPLC条件)
分離用カラム:Deverosil ODS HG−5(野村化学、φ4.6mm×250mm、
5μm)
溶離液:A)0.1%トリフルオロ酢酸水溶液 と B)0.1%トリフルオロ酢酸アセ
トニトリル溶液 の2液のグラジェント
グラジェント条件:0分:A90%、5分:A90%、35分:A75%、
40分:A0%、45分:A0%(溶離液の組成変化は
リニアグラジェント)。
溶離液の流速:0.8ml/min
検出:UV280nm
標準物質:エピカテキン
【0037】
IGF−1分泌促進剤調製方法
本発明のIGF−1分泌促進剤はポリフェノールを含有することを特徴としているので、ポリフェノールを含有する植物体から溶媒抽出等によって抽出し、さらに必要に応じてイオン交換樹脂等を使用して純度を高めることによって得ることができるが、その調製方法は特に限定されない。
【0038】
また、本発明のIGF−1分泌促進剤におけるポリフェノールの濃度は、IGF−1の分泌が促進される濃度であれば特に制限されない。
【0039】
本発明によるIGF−1分泌促進剤は、天然の植物由来とすることができるため、飲食品として用いることができる。本発明の飲食品としては、チョコレートやココアのようにカカオ豆を主原料とする飲食品はもちろんのこと、パン、ビスケット、麺類をはじめとする澱粉系食品、あるいはキャンデー、飲料、ヨーグルトなど広範な飲食品に用いることができ、使用態様としては各飲食品の特性、目的に応じ、適当な製造工程で適宜添加すればよく、例えば、チョコレート、キャンデー、パン、ココア飲料、クッキー等の飲食品には重量割合でおおよそ0.01%〜20%添加するのが、これらの飲食品の味や物性を活かす上で好ましい。
【0040】
本発明のIGF−1分泌促進剤は、経口又は非経口投与のいずれかの投与経路で、ヒトやヒト以外の動物に投与し、IGF−1の分泌を促進することができる。
【0041】
経口投与する場合には、例えば、乳糖、結晶セルロース、デンプン、リン酸カルシウム等の賦形剤、例えば、デンプン、カルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース等の結合剤、例えばカルメロースカルシウム、炭酸カルシウム等の崩壊剤、例えばステアリン酸マグネシウム、タルク等の滑沢剤、コーティング剤、保存剤、安定剤などを用いることにより、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、シロップ剤、ドライシロップ剤、散剤、丸剤、細粒剤、トローチ錠、乳濁剤や、又は常法によるシロップを含む各種液剤、ドリンク剤等の形態に処方できる。そして、これらの各種製剤は、長時間にわたって作用が持続する徐放性製剤とすることもできる。
【0042】
経口投与以外の場合としては、貼付剤、軟膏、クリーム剤、ローション剤、更にシャンプー、リンス、ボディーソープ、石鹸、洗顔料、整髪料、乳液、パック、入浴剤などの形態が挙げられる。
【0043】
次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0044】
ココアパウダーHPA12(明治製菓株式会社製、油分12重量%)250Kgを、50
%エタノール水溶液1250Kgに、攪拌しながらゆっくりと添加した。温度を50℃にまで上げ30分間引き続き攪拌して抽出をおこなった。デカンターで分離後、さらに3000Gで遠心分離を行い、エキスとスラッジに分離した。エキスの収量は1003.6Kgであった。さらにエキスをウルトラフィルター(ミウラ化学装置株式会社製)で精密ろ過し、清澄ろ過液982.8Kgを得た。続いてエキスにデキストリン4.4Kgを加えてよく攪拌した後、エバポレーターで濃縮をおこない、一次濃縮液234Kgを得た。アルコールが若干残存していたため、水を240Kg加えて再度よく攪拌した後、再度エバポレーターで濃縮した。濃縮液は235.4Kgであった。この濃縮液を加熱殺菌処理後、スプレードライを行い、粉末39.2kgを得た。得られた粉末を、以下カカオポリフェノール濃縮粉末と呼ぶ。カカオポリフェノール濃縮粉末の分析結果を表1に示した。
【0045】
【表1】


【実施例2】
【0046】
ココアパウダーHPA12(明治製菓株式会社製、油分12重量%)1.0kgにn−ヘキサン5Lを加え脱脂した。脱脂カカオ775gに70%アセトン6Lを加え抽出した。次にエバポレーターで抽出液中のアセトンを除いた。続いて抽出液に9倍量の水飽和ブタノールを加え攪拌した後、静置しブタノール層を回収し濃縮した。濃縮液をDiaion HP2MG(三菱化学、15cm×内径10cm)に吸着させた。吸着後、15%エタノール溶出で不要成分を除き、次いで80%エタノール水溶液で溶出し、その80%エタノール画分を濃縮してカカオプロシアニジン画分(CLPr)を得た。本サンプルを分析した結果、プロシアニジンB2(3.9%)、プロシアニジンB5(1.3%)、プロシアニジンC1(2.6%)、シンナムタンニンA2(3.2%)が含まれていた。
【実施例3】
【0047】
(成分の精製・単離)
実施例2記載のカカオプロシアニジン画分(CLPr)284mgをメタノール2.84mlに溶解し、LC-Siカラム(Supelcosil、25cm×φ20mm、5μm)で分離
した。溶離液は、A)n−ヘキサン:メタノール:酢酸エチル=8:3:1とB)n−ヘキサン:メタノール:酢酸エチル=2:3:1の2液のグラジェントで溶出した。グラジェント条件は、0分A100%、20分A100%、50分A0%であった(溶離液の組成変化はリニアグラジェント)。溶離液の流速は20ml/min、検出は、UV280
nmで行った。本条件下で、図1に示すようにプロシアニジン類が分子量毎に溶出され、
それぞれピーク2から23.1mg、ピーク3から23.3mg、ピーク4から24.3mgのIGF−1分泌促進剤が得られた。
ピーク2から得られたIGF−1分泌促進剤23.1mgを50%メタノール2.31mlに溶解して、次の条件でプロシアニジンB2ならびにプロシアニジンB5の精製・単離を行った。

分離用カラム:Deverosil ODS HG−5(野村化学、φ4.6mm×250mm、
5μm)
溶離液:A)0.1%トリフルオロ酢酸水溶液 と B)0.1%トリフルオロ酢酸アセ
トニトリル溶液 の2液のグラジェント
グラジェント条件:0分:A90%、5分:A90%、35分:A75%、
40分:A0%、45分:A0%(溶離液の組成変化は
リニアグラジェント)。
溶離液の流速:0.8ml/min
検出:UV280nm
標準物質:エピカテキン
【0048】
同様にピーク3から得られたIGF−1分泌促進剤からプロシアニジンC1を、ピーク4から得られたIGF−1分泌促進剤からシンナムタンニンA2を精製・単離した。
【実施例4】
【0049】
(チョコレート)
以下の配合のミルクチョコレートを定法に従って製造した。本チョコレートは50gあたりプロシアニジン類を112.9mg含むミルクチョコレートである。

グラニュー糖 42 重量%
カカオマス 19 重量%
全粉乳 17.4 重量%
ココアバター 17.0 重量%
レシチン 0.5 重量%
香料 0.1 重量%
実施例1のカカオポリフェノール濃縮粉末 4 重量%
【実施例5】
【0050】
(錠菓)
以下の配合の錠菓を定法に従って製造した。本品は20gあたりプロシアニジン類を27.7mg含む錠菓である。

粉糖 85.0重量%
クエン酸 3.5重量%
香料 3.0重量%
乳化剤 2.0重量%
実施例1のカカオポリフェノール濃縮粉末 6.5重量%
【実施例6】
【0051】
(ゼリードリンク)
以下の配合のゼリードリンクを定法に従って製造した。本品は100gあたりプロシアニジン類を42.6mg含むゼリードリンクである。

果糖ぶどう糖液糖 16.0重量%
クエン酸 0.7重量%
香料 0.2重量%
ゲル化剤 0.2重量%
実施例1のカカオポリフェノール濃縮粉末 2.0重量%
水 80.9重量%
【実施例7】
【0052】
(チューイングガム)
以下の配合のチューイングガムを定法に従って製造した。本品は10gあたりプロシアニ
ジン類を14.9mg含むチューイングガムである。

砂糖 68.5重量%
ガムベース 20 重量%
香料 3.0重量%
クエン酸 1.5重量%
実施例1のカカオポリフェノール濃縮粉末 7 重量%
【実施例8】
【0053】
(飲料)
以下の配合の飲料を定法に従って製造した。本品は100gあたりプロシアニジン類を1
2.8mg含む飲料である。

果糖ぶどう糖液糖 16.0重量%
クエン酸 0.7重量%
香料 0.2重量%
実施例1のカカオポリフェノール濃縮粉末 0.6重量%
水 82.5重量%
【実施例9】
【0054】
(ハードキャンデー)
以下の配合のハードキャンデーを定法に従って製造した。本品は20gあたりプロシアニ
ジン類を12.8mg含むハードキャンデーである。

ショ糖 65 重量%
水あめ 31.3重量%
クエン酸 0.7重量%
実施例1のカカオポリフェノール濃縮粉末 3.0重量%
【実施例10】
【0055】
(調整ココア)
以下の配合の調整ココアを定法に従って製造した。本品は30gあたりプロシアニジン類を32.0mg含む調整ココアである。

ココアパウダー 20重量%
実施例1のカカオポリフェノール濃縮粉末 5重量%
脱脂粉乳 18重量%
全粉乳 9重量%
砂糖 48重量%
【0056】
〔試験例1〕
プロシアニジン類によるCGRP放出作用の確認
6〜8週齢のC57BL/6マウス(雄)からマウス脊髄後根神経節細胞(DRG)を採取し、以下の条件で7日間培養した。

(培養条件)
培養液:以下成分を含有するD−MEM/F12培養液(インビトロジェン株
式会社製)

10%ウシ胎児血清
10 U/ml ペニシリン
0.1 mg/ml ストレプトマイシン
0.25 μg/ml アンフォテリシンB
10 ng/ml 神経成長因子(シグマ社製)

培養環境:37℃のCO2インキュベーター内で培養した。
【0057】
(作用確認方法)
培養上清中に、実施例3によって得られたプロシアニジンB2(procyanidin B2)、プロシアニジンB5(procyanidin B5)、プロシアニジンC1(procyanidin C1)、およびシンナムタンニンA2(cinnamtannin A2)を、それぞれ1または10μM加え、30分後
に培養上清を採取し、それに含まれるカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)濃度を測定してCGRP放出に対する効果を検討した。CGRP濃度は、ELISAキット(SPI-BIO, Massey Cedex, France)を用いて測定した。陽性コントロールとしてカ
プサイシン(capsaicin)を用いた。その結果、それぞれプロシアニジンB2、プロシア
ニジンB5、プロシアニジンC1、シンナムタンニンA2を添加したいずれのケースでもCGRP放出が見られた。中でもシンナムタンニンA2は、陽性コントロールであるカプサイシンと同等の結果が得られた。結果を図2に示す。
【0058】
〔試験例2〕
カカオポリフェノールのIGF−1分泌作用の確認
カカオポリフェノール(実施例2のCLPr)0.5%含有粉餌(組成は下記)をマウスに4週間投与して、全身の臓器を採取し、1Nの酢酸溶液につけてホモジネートし、遠心分離後上清中のIGF−1濃度をenzyme immunoassay(EIA) kit(Diagnostic Systems Laboratories Inc., Webster, TX)を用いて測定した。また、腹部大動脈から採血し
血漿中のIGF-1濃度も測定した。測定した結果を図3に示す。0.5%カカオポリフ
ェノール含有粉餌の投与によって、各臓器および血液中のIGF−1濃度が増加した。

(0.5%カカオポリフェノール含有粉餌配合)
粉餌(CLEA Rod ent Diet CE-2;日本クレア株式会社製) 99.5重量%
カカオポリフェノール(実施例2のCLPr) 0.5重量%
【0059】
〔試験例3〕
カカオポリフェノール摂取の空間認知機能への影響
試験例2と同様にして0.5%カカオポリフェノール含有粉餌を投与したマウスを用いてモーリス水迷路試験を行った。具体的には、直径120cmのプールに直径10cm、高さ11cmの透明なアクリル板のプラットホームを設置し、その1cm上まで水を満たし、プラットホームを隠す。1日1回、固定したスタート地点からプラットホームに到着するまでの時間を計測し、これを5日間繰り返した。比較としてCGRPの放出能を欠損したマウスを用いた場合も実施した。結果を図4に示す。0.5%カカオポリフェノール含有粉餌をマウスに投与することによって、スタート地点からプラットホームに到着するまでの所要時間は有意に減少した。一方CGRP放出能欠損マウスの実験では0.5%カカオポリフェノール含有粉餌の投与による効果はみられなかったことから、上記0.5%カカオポリフェノール含有粉餌の投与による効果はCGRPを介する作用であることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】実施例2のCLPrをHPLCで分析したクロマトグラムである。
【0061】
【図2】プロシアニジン類のCGRP放出効果測定結果を示す図である。
【0062】
【図3】カカオポリフェノール摂取の、臓器および血液中のIGF−1濃度に対する影響を表すグラフである。
【0063】
【図4】カカオポリフェノール摂取の空間認知機能への影響を表すグラフである。上のグラフが野生型C57BL/6マウスの場合(Wild-typeと標記)、下のグラフがCGRPの放出能を欠損したCGRPノックアウト(−/−)マウスの場合(CGRPKOと標記)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリフェノールを有効成分とすることを特徴とするインスリン様成長因子−1分泌促進剤。
【請求項2】
ポリフェノールがプロシアニジン類である請求項1に記載のインスリン様成長因子−1分泌促進剤。
【請求項3】
プロシアニジン類がカカオ、ぶどう、リンゴ、松の樹皮のうちのいずれか1種または2種以上に由来する請求項2に記載のインスリン様成長因子―1分泌促進剤。
【請求項4】
プロシアニジンB2、プロシアニジンB5、プロシアニジンC1、シンナムタンニンA2から選択される1種または2種以上の化合物を有効成分とすることを特徴とするインスリン様成長因子―1分泌促進剤。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のインスリン様成長因子−1分泌促進剤を含む飲食
品。
【請求項6】
プロシアニジン類含有量が0.01〜20重量%である請求項5に記載の飲食品。
【請求項7】
ポリフェノールを含有する飲食品を哺乳動物に経口摂取して、血中または臓器中のインスリン様成長因子−1分泌を促進する方法。
【請求項8】
インスリン様成長因子−1分泌促進作用を有する飲食品を製造するためのポリフェノールの使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−93807(P2011−93807A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−238859(P2008−238859)
【出願日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(000006091)明治製菓株式会社 (180)
【Fターム(参考)】