説明

インスリン様成長因子−1分泌促進剤

【課題】本発明は、皮膚刺激等の問題が解消され、例えば皮膚の弾力性の増加による皮膚のしわの抑制、皮膚のたるみの軽減および育毛の効果を有するIGF−1分泌促進剤を提供することを目的とする。
【解決手段】糖および/またはタンパク質と結合していないシアル酸を含有し、かつセリシンを含有しないことを特徴とするインスリン様成長因子−1分泌促進剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シアル酸を含有するインスリン様成長因子−1分泌促進剤に関する。
【背景技術】
【0002】
シアル酸(sialic acid)とは、ノイラミン酸(neuraminic acid)のアミノ基やヒドロキシ基が置換された物質を総称するファミリー名であり、天然には5位がアセチル化されたN−アセチルノイラミン酸(N-acetylneuraminic acid;NeuAc)が多く存在し、グリコール酸で修飾されたN−グライコリルノイラミン酸(N-glycolylneuraminic acid;NeuGc)が次に多く存在する。シアル酸は、酸性アミノ糖で、生体の糖脂質や糖タンパク質から得られるものであり、生体内で単体の他、複合糖質の構成成分として、細胞膜表面のオリゴ糖の末端に存在して、重要な生物学的機能を担っている。
【0003】
従来、肌のしわやたるみの予防・改善、肌への弾力や張りの付与などを目的とした化粧料として、燕窩を水や含水有機溶剤で抽出して得られた燕窩抽出物を有効成分として含有する化粧料が知られており(特許文献1、2)、また、皮膚に対して吸湿性や保湿性を付与することを目的とした化粧料として、セリシンと糖類との少なくとも2成分を含有する化粧料が知られている(特許文献3)。前者の化粧料の成分である燕窩抽出物の中には、シアル酸がタンパク質の少なくとも一部と糖質の少なくとも一部と結合した糖タンパク質の形で存在しており、遊離のシアル酸としては存在していない。また、後者の化粧料の一方の成分である糖類として、特許文献3では、D−グルコース、ラクトース、マルトトリオースなどが使用されており、さらにシアル酸も例示されているが、該シアル酸はあくまでもセリシンと併用されるものであり、シアル酸単独で使用されるものではない。
【0004】
一方、インスリン様成長因子−1(insulin-like growth factor-1;以下、IGF−1と略記することもある。)は、インスリンに非常に似た構造および作用を持つ分子量約7500のペプチドホルモンであり(非特許文献1参照)、細胞の分化を促し、細胞の増殖を助ける等、積極的に細胞を健康な状態に維持し(非特許文献2、3参照)、老化の進行を阻止し(非特許文献4参照)、育毛効果を有することが知られている(特許文献4参照)。しかしながら、シアル酸がIGF−1の分泌を促進させる等の言及はなく、またシアル酸とIGF−1との関係を示唆する記載も認められない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−301819号公報
【特許文献2】国際公開99/22709号パンフレット
【特許文献3】特開2001−64148号公報
【特許文献4】特公平4−60567号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】グッドマン・ギルマン薬理書[下] 薬物治療の基礎と臨床―第10版―;第61章 インスリン、経口血糖降下薬と膵臓内分泌の薬理学 2003、p2144 監訳:高折修二、福田英臣、赤池昭紀 東京廣川書店発行
【非特許文献2】コーン・ケー・ジェイ(Conn KJ)外6名,ザ・ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(J.Biol.Chem.)1996年、第271巻、第46号、p.28853−28860
【非特許文献3】ブラハム・シー(Braham C)外4名,デルマトロジー(Dermatology)、2002年、第20巻、第4号、p.325−329
【非特許文献4】ローベノッフ・アール(Roubenoff R)外8名,ザ・アメリカン・ジャーナル・オブ・メディシン(Am.J.Med.)、2003年、第115巻、第6号、p.501−502
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、皮膚刺激等の問題が解消され、例えば皮膚の弾力性の増加による皮膚のしわの抑制、皮膚のたるみの軽減および育毛等の効果を有する新規インスリン様成長因子−1(以下、IGF−1ともいう。)分泌促進剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、糖および/またはタンパク質と結合していないシアル酸を含有し、かつセリシンを含有しない皮膚外用剤を塗布したマウス皮膚に塗布したところ、該皮膚中のインスリン様成長因子−1が顕著に増加することを知見し、この知見に基づいてさらに研究を進め、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、
[1]糖および/またはタンパク質と結合していないシアル酸を含有し、かつセリシンを含有しないことを特徴とするインスリン様成長因子−1分泌促進剤、
[2]糖および/またはタンパク質と結合していないシアル酸が、N−アセチルノイラミン酸である前記[1]記載のインスリン様成長因子−1分泌促進剤、
[3]N−アセチルノイラミン酸を0.00001質量%以上10.0質量%以下含有する前記[2]記載のインスリン様成長因子−1分泌促進剤、
[4]皮膚の線維芽細胞の分化、増殖および/または間質物質産生機能を促進することを特徴とする前記[1]または[2]記載のインスリン様成長因子−1分泌促進剤、
[5]間質物質が、皮膚のコラーゲン、エラスチンおよびヒアルロン酸からなる群から選択される1種または2種以上であることを特徴とする前記[4]記載のインスリン様成長因子−1分泌促進剤、
[6]皮膚外用剤である前記[1]〜[5]のいずれかに記載のインスリン様成長因子−1分泌促進剤、
[7]非イオン界面活性剤、両性界面活性剤および陽イオン界面活性剤からなる群から選択される1種または2種以上の化合物を、インスリン様成長因子−1分泌促進剤全体に対し5質量%以上30質量%以下含有することを特徴とする前記[1]〜[6]のいずれかに記載のインスリン様成長因子−1分泌促進剤、
[8]非イオン界面活性剤が、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルおよびポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステルから選択される1種又は2種以上の化合物を含有することを特徴とする前記[7]に記載のインスリン様成長因子−1分泌促進剤、
[9]両性界面活性剤が、アルキルベタイン、アルキルアミドベタイン、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、スルホベタインおよびイミダゾリン型ベタインから選択される1種又は2種以上の化合物を含有することを特徴とする前記[7]に記載のインスリン様成長因子−1分泌促進剤、
[10]陽イオン界面活性剤が、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アミドアミン、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩から選択される1種又は2種以上の化合物を含有することを特徴とする前記[7]に記載のインスリン様成長因子−1分泌促進剤、
[11]液剤、懸濁剤、乳剤、クリーム剤、軟膏剤、ゲル剤、リニメント剤、ローション剤、パップ剤またはパック剤であることを特徴とする前記[1]〜[10]のいずれかに記載のインスリン様成長因子−1分泌促進剤、および
[12]育毛剤である前記[1]〜[11]のいずれかに記載のインスリン様成長因子−1分泌促進剤
に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のIGF−1分泌促進剤を投与することにより、皮膚の荒れやしわの改善効果、養毛・育毛効果を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、試験例1のマウス皮膚のIGF−1量(レベル)を示す。
【図2】図2は、N−アセチルノイラミン酸を配合したクリームを使用した20代・30代女性の弾力回復率の平均値を示す。
【図3】図3は、試験例4の結果を示す。左図が塗布前を示し、右図が塗布開始から3カ月後を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明で用いるシアル酸は、糖やタンパク質とは結合していない、遊離の形態のもの(以下、本願明細書中のシアル酸は糖やタンパク質とは結合していない形態のものをいう。)であって、例えば、N−アセチルノイラミン酸、N−グリコリルノイラミン酸、デアミノノイラミン酸、2,3−デヒドロノイラミン酸、N−アセチルー2,7−アンヒドロノイラミン酸などが挙げられる。
【0013】
本発明で用いるシアル酸は、常法によって製造することができ、例えばN−アセチルノイラミン酸は、酵素法により製造できる。具体的には、N−アセチルグルコサミンとピルビン酸ナトリウムをN−アセチルノイラミン酸リアーゼにより酵素合成反応をさせることによってN−アセチルノイラミン酸を製造することができる。
【0014】
本発明のIGF−1分泌促進剤へのN−アセチルノイラミン酸の配合量は、通常約0.00001質量%以上10.0質量%以下、好ましくは約0.0001質量%以上1.0質量%以下、より好ましくは約0.001質量%以上0.1質量%以下である。
【0015】
本発明におけるIGF−1分泌促進剤は、皮膚外用剤として用いるのが好ましい。皮膚外用剤としては、例えば液剤(エアゾール式トニックを含む)、懸濁剤、乳剤、クリーム剤、軟膏剤、ゲル剤、リニメント剤、ローション剤またはパップ剤等の医薬または医薬部外品が好ましく挙げられる。また、皮膚外用剤には、例えば化粧水、化粧用乳液、化粧用クリーム、化粧用ゲル、化粧用ローション、パック剤、エアゾール剤、ファンデーション、洗顔剤、ボディソープ、ハンドクリーム、シャンプー、リンス、整髪料、育毛剤等のスキンケア用品あるいはメイクアップ用品等の化粧料も含まれる。皮膚外用剤のpHは、好ましくは約2〜10、より好ましくは約3〜7、とりわけ好ましくは約3〜5である。
【0016】
本発明のIGF−1分泌促進剤の投与量は、摂取する人の性別、年齢、健康状態などによって異なるので一概には言えないが、局所に塗布する場合、投与する皮膚面積に応じて、適宜選択することができ、通常、適用部位の面積約1cmに対して、1日につき、約1〜1000mg、好ましくは約10〜500mg、さらに好ましくは約50〜100mgであるのが望ましく、これにより所望の効果が得られる。前記の投与用量を、1日あたり、1回または数回に分けて適用すると良い。
【0017】
本発明のIGF−1分泌促進剤は、皮膚中のIGF−1の分泌を促進し得る。IGF−1は、インスリンと構造、作用の似た増殖因子で、組織、特に皮膚において、細胞、特に線維芽細胞の分化、増殖及び間質物質産生機能を促進する。前記間質物質としては例えば皮膚のコラーゲン、エラスチンおよびヒアルロン酸等が挙げられる。前記線維芽細胞の分化、増殖が活発化すると、コラーゲンやエラスチンやヒアルロン酸が多量に産生する。コラーゲンやエラスチンは、真皮の殆どを占める線維で、皮膚の弾力を保持する働きを有する。ヒアルロン酸は、含水する力が強く皮膚の張りを持たせる。線維芽細胞がこれら間質物質を多量に産生させれば、皮膚は張りのある状態となり小ジワを少なくさせることができる。
【0018】
本発明のIGF−1分泌促進剤は、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤または陽イオン界面活性剤が配合されるのが好ましい。これらの界面活性剤は、1種または2種以上を適宜選択して用いることができる。これらの界面活性剤がIGF−1分泌促進剤に配合されることにより、皮膚に対する浸透が促進される。その結果、本発明のIGF−1分泌促進剤が適用された部位において、IGF−1の分泌が促進される。
【0019】
非イオン界面活性剤としては、例えばアルキルグルコシド(例えば、ブチルグルコシド、デシルグルコシド、ラウリルグルコシド、ミリスチルグルコシド、セトステアリルグルコシドなど)、プロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンラノリン、ポリオキシエチレンラノリンアルコール、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンステロール、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、脂肪酸アルカノールアミドなどが挙げられる。上記アルキルとしては、炭素数1〜20の直鎖状、分枝状もしくは環状のアルキル基が挙げられる。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、シクロペンチルメチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基などが挙げられる。
【0020】
両性界面活性剤としては、ベタイン型(例えば、デシルベタイン、セチルベタイン、ヤシ油アルキルベタイン等のアルキルベタイン;ラウリン酸アミドメチルベタイン、ミリスチン酸アミドメチルベタイン、パルミチン酸アミドメチルベタイン、ラウリン酸アミドプロピルベタイン、ヤシ酸アミドプロピルベタイン等のアルキルアミドベタイン;ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン等のアルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン;ラウリルヒドロキシスルホベタイン、ヤシ油脂肪酸ジメチルスルホプロピルベタイン、ヤシ油脂肪酸アミノメチルスルホプロピルベタイン、ミリスチルアミノメチルジメチルスルホプロピルベタイン、ラウリルアミノメチル−ビス−(2−ヒドロキシエチル)−スルホプロピルベタイン等のスルホベタイン;2−ヤシ油脂肪酸アシル−N−カルボキシエチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等のイミダゾリン型ベタイン)、グリシン型(例えば、ジアルキルジアミノエチルグリシン、アルキルジメチルベンジルグリシン)、アミノ酸型(アミドアミノ酸塩)などが挙げられる。上記アルキルとしては、炭素数1〜20の直鎖状、分枝状もしくは環状のアルキル基が挙げられる。
【0021】
陽イオン界面活性剤としては、例えばアルキルトリメチルアンモニウム塩(例えば、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム等)、アミドアミン(例えば、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド)、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩(例えば、塩化ジステアリルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム)などが挙げられる。上記アルキルとしては、炭素数1〜20の直鎖状、分枝状もしくは環状のアルキル基が挙げられる。
【0022】
陰イオン界面活性剤としては、例えばN−アシルアミノ酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、脂肪酸石けん、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、N−アシルタウリン塩、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、スルフォコハク酸塩、サルコシン塩などが挙げられる。上記アルキルとしては、炭素数1〜20の直鎖状、分枝状もしくは環状のアルキル基が挙げられる。
【0023】
上記界面活性剤の配合量は、使用される界面活性剤によっても異なるが、IGF−1分泌促進剤全体に対して、約1質量%以上、好ましくは約5質量%以上、より好ましくは約10質量%以上である。これら界面活性剤の上限は、使用される界面活性剤によっても異なるが、約30質量%である。
【0024】
本発明のIGF−1分泌促進剤において、シアル酸と界面活性剤の配合比率は、使用される界面活性剤によっても異なるが、通常は、シアル酸1質量部に対し、界面活性剤約100〜3000質量部、好ましくは約500〜2000質量部である。上記配合比率のIGF−1分泌促進剤としては、例えばシアル酸を約0.001質量%以上0.1質量%以下およびポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を約5質量%以上20質量%以下含有する製剤等が挙げられる。
【0025】
本発明のIGF−1分泌促進剤には、さらに化粧料に一般的に使用されるその他の成分、例えば、高分子化合物(例えば、カチオン化セルロース、ヒドロキシ化セルロース等)、溶剤(例えば、精製水、生理食塩液、イソプロパノール、グリセリン、エタノール、1,3ブチレングリコール、プロピレングリコール、マクロゴール400等)、保湿剤(例えば、ヒアルロン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、リンゴ酸ジイソステアリル、グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等)、懸濁化剤・増粘剤(例えば、アラビアゴム、キサンタンガム、カルメロース、カルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポピドン、メチルセルロース、モノステアリン酸アルミニウム等)、炭化水素(例えば、流動パラフィン、流動イソパラフィン、ワセリン、スクワラン等)、脂肪油(例えば、中鎖脂肪酸トリグリセリド(例えば、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、トリエチルヘキサノインなど)、ハードファット等の合成油、オリーブ油、ダイズ油、ナタネ油、水添パーム油、ラッカセイ油、ベニバナ油、ヌカ油、ゴマ油、ツバキ油、トウモロコシ油、メンジツ油、ヤシ油、スクワラン等またはこれらの硬化油等)、酸化防止剤(例えば、酢酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸またはビタミンC等)、紫外線吸収剤(例えば、桂皮酸、p−メトキシ桂皮酸、2,4−ジイソプロポキシ桂皮酸、メトキシ桂皮酸オクチル、オキシベンゾン、アニス酸、サリチル酸、トリアゾールカルボン酸、アミノ安息香酸、ジメチルアミノ安息香酸、フェルラ酸またはt−ブチルメトキシジベンゾイルメタン等)、抗酸化剤(例えば、酢酸DL−α−トコフェロール、α−トコフェロール等)、乳化安定剤(例えば、セチルアルコール、セトステアリルアルコール、クエン酸三ナトリウム等)、抗フケ剤(例えば、サリチル酸、ジンクピリチオン、塩化ベンザルコニウム等)、香料(例えば、l−メントール等)、その他パール化剤、キレート剤、防腐剤、着色剤等を目的に応じて配合することができる。
【実施例】
【0026】
以下に実施例および試験例を用いて本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0027】
[実施例1]
加熱しながら油相成分としてセトステアリルグルコシド、セトステアリルアルコール、水添パーム油、トリエチルヘキサノイン、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、スクワラン、および防腐剤を混合して溶解した。別に、加熱しながら水相成分として精製水にキサンタンガム、1,3−ブチレングリコール、エタノール、ヒアルロン酸ナトリウム、リンゴ酸を混合し分散させた。撹拌しながら水相に油相を加え乳化後、攪拌しながら冷却した。途中、精製水にN−アセチルノイラミン酸を溶解したものを加え、下記表1に記載の配合量にてクリーム剤を製造した。
【0028】
【表1】

【0029】
[実施例2]
加熱しながら油相成分として酢酸DL−α−トコフェロール、l−メントール、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、グリセリン、エタノールを溶解・混合したのち、熱水に投入した。別に、サリチル酸、クエン酸、クエン酸三ナトリウム、N−アセチルノイラミン酸を精製水に溶解し、上記熱水に加え、下記表2に記載の配合量にて液剤(エアゾール式トニック)を得た。
【0030】
【表2】

【0031】
[実施例3]
加熱しながら油相成分として流動イソパラフィン、流動パラフィン、イソステアロイルダイマージリノール酸ポリグリセリル−2、リンゴ酸ジイソステアリル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、テトライソステアリン酸ペンタエリスリチル、ジイソステアリン酸ポリグリセリル、(ベヘン酸/エイコサン二酸)グリセリル、グリセリン、防腐剤を溶解・混合した。そこへ、精製水にN−アセチルノイラミン酸を溶解したものを添加して、下記表3に記載の配合量にてゲル剤(リップグロス)を得た。
【0032】
【表3】

【0033】
[試験例1]
(試験方法)
8週齢のC57BL−6系雄性マウス(1群3例)の腹腔内に、ケタラール(100mg/kg)、キシラジン(10mg/kg)を投与してマウスを麻酔し、マウスの背部皮膚にシェービングクリームを塗布した後、かみそりを使用して除毛した。被験クリーム剤(実施例1のN−アセチルノイラミン酸をそれぞれ0.005質量%、0.01質量%、0.05質量%としたクリーム剤)またはコントロール(実施例1のN−アセチルノイラミン酸無添加のクリーム剤)を、除毛10分後、除毛した背部皮膚に1cmあたり100mgの量で塗布した。塗布部位のマウス皮膚(表皮および真皮)を、被験クリーム剤またはコントロールの塗布後30分に採取した。採取したマウスの表皮および真皮(各1cm)は液体窒素で凍結させた後、1N酢酸でホモジネート(Homogenate)して、IGF−1の測定まで−80℃で保存した。前記冷凍保存したホモジネート中のIGF−1の量を、IGF−1測定キット(ACTIVE 登録商標、Rat IGF-1 EIA;コスモ・バイオ株式会社製)を用いてEIA法で測定した。結果を図1に示す。図中、*は有意水準1%で有意差があったことを示す。
【0034】
(考察)
図1から明らかなように、N−アセチルノイラミン酸を含有するクリーム剤を塗布したマウス皮膚のIGF−1量が、コントロールを塗布した皮膚のIGF−1量に対し有意に上昇し、IGF−1の分泌が促進されたことが確認された。
【0035】
[試験例2]
20歳から66歳までの女性パネラー11名に実施例3のN−アセチルノイラミン酸を0.01%配合したリップグロスを、1回分を20mgとし、1日3回程度唇に塗布してもらい、これを20日間継続した。使用開始直後から20日までの結果を下記表4に示す。
【0036】
【表4】

【0037】
表4から明らかなように、N−アセチルノイラミン酸を0.01質量%含有するリップグロスを塗布した場合、皮膚の乾燥、しわ、弾力性が改善されることが確認された。
【0038】
[試験例3]
20・30代女性パネラー10名に実施例1のN−アセチルノイラミン酸を0.01%配合したクリーム剤を、1回分を100mgとし、1日1回、洗顔後就寝前に顔、首、手に塗布してもらい、これを4週間継続した。塗布前および使用開始から4週間後に、キュートメーター(インテグラル株式会社製)を用いて皮膚の弾力回復率を測定し、試料塗布後の弾力回復率から試料塗布前の弾力回復率を差し引き計算し、各パネラーの平均をとり評価した。結果を下記図2に示す。弾力回復率は以下にて算出される。
弾力回復率(%)=〔(伸展長−非退縮長)/伸展長〕×100
但し、上記式において、陰圧吸引により伸びた皮膚の高さを伸展長(単位はmm)とし、陰圧開放後も戻らず盛り上がったままの皮膚の高さを非退縮長(単位はmm)とする。
【0039】
図2から明らかなように、N−アセチルノイラミン酸を0.01質量%含有するクリーム剤を塗布した場合、皮膚の弾力性が改善されることが確認された。
【0040】
[試験例4]
20代〜40代男性パネラー10人に、実施例2のN−アセチルノイラミン酸を0.01%配合した液剤を、毎日1回約2mL程度を就寝前に薄毛部分に塗布してもらい、塗布する前と3ヵ月後の頭髪の状態とを比較した。その結果、抜け毛の状態、薄毛部分の拡がり、または薄毛部分の増毛の項目について10人中9人に改善が見られた。あるパネラーの塗布開始前と3カ月後の状態を図3に示す。
以上の結果から、N−アセチルノイラミン酸を0.01質量%含有する液剤を塗布した場合、育毛に顕著な効果があることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、皮膚の弾力性の増加による皮膚のしわの抑制効果、皮膚のたるみの軽減効果および育毛効果を発揮するインスリン様成長因子−1分泌促進剤として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖および/またはタンパク質と結合していないN−アセチルノイラミン酸を0.001質量%以上0.1質量%以下含有し、(ベヘン酸/エイコサン二酸)グリセリル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル及びジイソステアリン酸ポリグリセリルからなる非イオン界面活性剤を含有し、かつセリシンを含有しないことを特徴とする皮膚の乾燥改善剤。
【請求項2】
糖および/またはタンパク質と結合していないN−アセチルノイラミン酸を0.001質量%以上0.1質量%以下含有し、セトステアリルグルコシド及びトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルからなる非イオン界面活性剤を含有し、かつセリシンを含有しないことを特徴とする皮膚の弾力性改善剤。
【請求項3】
糖および/またはタンパク質と結合していないN−アセチルノイラミン酸を0.001質量%以上0.1質量%以下含有し、ポリオキシエチレンオレイルエーテルを含有し、かつセリシンを含有しないことを特徴とする育毛剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−6844(P2010−6844A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−237772(P2009−237772)
【出願日】平成21年10月14日(2009.10.14)
【分割の表示】特願2008−69477(P2008−69477)の分割
【原出願日】平成20年3月18日(2008.3.18)
【出願人】(399065682)イリヤ化学株式会社 (4)
【Fターム(参考)】