説明

インスリン類似体の結晶およびそれらの製造方法

本発明は、B鎖の位置B3におけるアスパラギン(Asn)が天然に存在する塩基性アミノ酸残基で置換され、B鎖の位置B27、B28またはB29の少なくとも1個のアミノ酸残基が他の天然に存在する中性または酸性アミノ酸残基によって置換されているインスリン類似体の結晶に関する。本発明によれば、B鎖の位置B1におけるフェニルアラニン(Phe)は場合によってはなくてもよく、結晶は空間群R3(No. 146)に存在し、セル軸A=81.5ű1ÅおよびC=33.3ű1Åである。本発明はまた、上記結晶の製造および使用ならびにこれらの結晶を含有する医薬組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、B鎖の位置B3におけるアスパラギン(Asn)が天然の塩基性アミノ酸残基で置換され、B鎖の位置B27、B28またはB29の少なくとも1個のアミノ酸残基が他の天然に存在する中性または酸性アミノ酸残基により置換され、ここでB鎖の位置B1におけるフェニルアラニン(Phe)は場合によってはなくてもよく、結晶は空間群R3(No. 146)に存在し、セル軸A=81.5ű1ÅおよびC=33.3ű1Åであるインスリン類似体の結晶に関する。
【背景技術】
【0002】
世界中で約1億2千万人が糖尿病に罹患している。これらの内ほぼ1千2百万人がI型の糖尿病であり、現時点では、彼らに対する唯一の治療がインスリンの投与である。罹患した患者は一生涯インスリンの注射に依存しなければならず、通常1日数回の注射が必要になる。約1億人が罹患しているII型糖尿病では、原則的にはインスリンの欠損は伴っていないが、大多数の例ではインスリンによる処置が最も好ましいか、または可能な治療の唯一の形態と考えられている。
【0003】
この疾患の進行期間中に、大多数の患者は「糖尿病後期併発症」を発症する。この場合、主として微小血管および大血管の傷害が関与し、そのタイプと程度に応じて、腎不全、失明、四肢の喪失または心血管系疾患のリスクの増大がもたらされる。
【0004】
インスリン療法の注意深い調整によっても生理学的調節に相当する正常な血中グルコースプロフィルは達成されないので、慢性的に上昇したグルコースレベルは一義的に、その原因として保持されている(Ward, JD (1989) British Medical Bulletin 45, 111-126;Drury, PLら(1989) British Medical Bulletin 45, 127-147;Kohner EM (1989) British Medical Bulletin 45, 148-173)。
【0005】
健康人においては、インスリンの分泌は血液中のグルコース濃度に密接に依存する。食後に起こるような、グルコースレベルの上昇は、インスリンの放出増加によって迅速に補正される。絶食状態では、血漿インスリンレベルは、インスリン感受性の臓器および組織へのグルコースの継続的供給を保証するのに十分な基礎レベルまで低下する。治療の至適化、すなわち「強化インスリン療法」は、今日では血中グルコース濃度の変動、とくに上方への変動を可能な限り低く保持することを第一の目標としている(Bolli, G.B. (1989)
Diabetes Res. Clin. Pract. 6, P3-P16;Berger, M (1989) Diabetes Res. Clin. Pract. 6, P25-P32)。これにより糖尿病後期併発症の発症および進行の有意な低下がもたらされる(The Diabetes Control and Complications Trial Research Group (1993) N. Engl. J. Med. 329, 977-986)。
【0006】
インスリン分泌の生理学から、皮下投与製剤を使用する改良された強化インスリン療法のためには、薬力学的に異なる2種のインスリン製剤が必要であると推論できる。食後の血中グルコースの上昇を補正するために、インスリンは急速に流入しなければならず、そして、数時間だけ作用できる。とくに夜間に基礎レベルを供給するためには、製剤は長時間にわたって作用し、明瞭な最大値を示さず、きわめて緩徐に流入するものでなければならない。
【0007】
ヒトおよび動物のインスリンを原料とする製剤は、強化インスリン療法の要求をみたすが、その程度には限界がある。速効型インスリン(旧来のインスリン)は血中および作用部位への到達が遅すぎて、作用の総持続時間が長すぎる。その結果食後のグルコースレベ
ルは高すぎて、食事から数時間後のグルコースレベルの低下は遅すぎる(Kang, S.等 (1991) Diabetes Care 14, 142-148;Home, P.J.等 (1989) British Medical Bulletin 45, 92-110;Bolli, G.B. (1989) Diabetes Res. Clin. Pract. 6, P3-P16)。一方、利用可能な基礎的インスリン、とくにNPHインスリンは作用持続が短すぎ、過剰に強く発現された最大値を有する。
【0008】
薬学的法則によって作用プロフィルに影響を与える可能性に加えて、今日では、たとえば、遺伝子操作の助けにより構造上の性質により単独で作用の発現および持続性のような特定の性質を達成する、インスリン類似体を設計する変更方法が提案されている。すなわち、適当なインスリン類似体の使用によって、有意に良好で自然の状態にさらに密接に適合する血中グルコースレベルの調整の達成が可能となった。
【0009】
作用発現が加速されたインスリン類似体は、EP 0 214 826、EP 0 375 437およびEP 0 678 522に記載されている。EP 0 214 826はとくにB27およびB28の置換に関して記載しているが、B3の置換との組み合わせについては記載がない。EP 0 678 522には、様々なアミノ酸、好ましくはプロリンを位置B29に含有するインスリン類似体が記載されているが、グルタミン酸についての記載はない。EP 0 375 437はB28にリシンまたはアルギニンを有するインスリン類似体からなり、さらにB3および/またはA21が場合によっては追加で修飾されている。EP 0 885 961A1にはB3−リジン、B29−グルタミン酸ヒトインスリンが、新規な、迅速に作用するインスリンとして開示されている。
【0010】
EP 0 419 504には、B3におけるアスパラギンおよび、さらに位置A5、A15、A18またはA21における少なくとも1個のアミノ酸を変化させることにより、化学的修飾から保護されたインスリン類似体が開示されている。しかしながらここに記載されているインスリン類似体は位置B3に只1個の修飾を有するのみで、上述の基の更なる修飾はない。これらの化合物が結果的に、より迅速な作用発現を伴う改変された薬物動態を有するとの指摘はない。
【0011】
インスリン類似体は、天然に存在するインスリンすなわちヒトまたは動物のインスリンの類似体である。これらは少なくとも1個の天然に存在するアミノ酸残基の置換および/または少なくとも1個のアミノ酸残基および/またはそれに相当する有機残基の付加で異なり、他の点では天然に存在するインスリンと同じである。
【0012】
ヒトインスリンのA鎖は、以下のアミノ酸配列を有する。すなわち、
Gly Ile Val Glu Gln Cys Cys Thr Ser Ile Cys Ser Leu Tyr Gln Leu Glu Asn Tyr Cys Asn(配列番号1)である。
【0013】
ヒトインスリンのB鎖は以下のアミノ酸配列を有する。すなわち、
Phe Val Asn Gln His Leu Cys Gly Ser His Leu Val Glu Ala Leu Tyr Leu Val Cys Gly Glu Arg Gly Phe Phe Tyr Thr Pro Lys Thr(配列番号2)である。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明のインスリン類似体の結晶は、B鎖の位置B3におけるアスパラギン(Asn)が天然に存在する塩基性アミノ酸残基で置換され、B鎖の位置B27、B28またはB29の少なくとも1個のアミノ酸残基が他の天然に存在するアミノ酸残基により置換され、ここで、B鎖の位置B1におけるフェニルアラニン(Phe)は場合によってはなくてもよいインスリン類似体またはその生理学的に耐容性のある塩を含有する。
【0015】
好ましくは、インスリン類似体またはその生理学的に耐容性のある塩は、式I:
【化1】

[式中、
(A1〜A5)は、ヒトインスリン(配列番号1参照)または動物インスリンのA鎖の位置A1〜A5におけるアミノ酸残基であり、
(A8〜A10)はヒトインスリン(配列番号1参照)または動物インスリンのA鎖の位置A8、A9およびA10におけるアミノ酸残基であり、
(A12〜A19)はヒトインスリン(配列番号1参照)または動物インスリンのA鎖の位置A12〜A19におけるアミノ酸残基であり、
(B8〜B18)はヒトインスリン(配列番号2参照)または動物インスリンのB鎖の位置B8〜B18におけるアミノ酸残基であり、
(B20〜B26)はヒトインスリン(配列番号2参照)または動物インスリンのB鎖の位置B20〜B26におけるアミノ酸残基であり、
(B30)は、ヒトインスリン(配列番号2参照)または動物インスリンのB鎖の位置B30におけるアミノ酸残基であり、
B1は、フェニルアラニン残基(Phe)または水素原子であり、
B3は、天然に存在する塩基性アミノ酸残基であり、
B27、28およびB29は、ヒトインスリン(配列番号2参照)または動物インスリンのB鎖の位置B27、B28およびB29におけるアミノ酸残基であり、この場合、B鎖の位置B27、B28およびB29のアミノ酸残基の少なくとも1個はそれぞれ、天然に存在する他のアミノ酸残基により置換される]
によって特徴づけられる。
【0016】
遺伝子によってコード可能な天然に存在する20個のアミノ酸中、アミノ酸:グリシン(Gly)、アラニン(Ala)、バリン(Val)、ロイシン(Leu)、イソロイシン(Ile)、セリン(Ser)、スレオニン(Thr)、システイン(Cys)、メチオニン(Met)、アスパラギン(Asn)、グルタミン(Gln)、フェニルアラニン(Phe)、チロシン(Tyr)、トリプトファン(Trp)およびプロリン(Pro)は中性アミノ酸と呼ばれ、アミノ酸:アルギニン(Arg)、リシン(Lys)およびヒスチジン(His)は塩基性アミノ酸と呼ばれ、アミノ酸:アスパラギン酸(Asp)およびグルタミン酸(Glu)は酸性アミノ酸と呼ばれる。
【0017】
本発明のインスリン類似体の結晶には、好ましくはウシインスリン、ブタインスリン、ヒツジインスリンもしくはヒトインスリンまたはその生理学的に耐容性のある塩、すなわち、式Iのインスリン類似体もしくはその生理学的に耐容性ある塩を含有する。この場合、
A8はアラニン(Ala)であり、A9はセリン(Ser)であり、A10はバリン(Val)であり、B30はアラニン(Ala)(アミノ酸残基A8−A10およびB30はウシインスリン)であるか、A8はスレオニン(Thr)であり、A9はセリン(Ser)であり、A10はイソロイシン(Ile)(アミノ酸残基A8−A10はヒトまたはブタインスリン)であり、この場合、B30はアラニン(Ala)(アミノ酸残基B30はブタインスリン)またはB30はスレオニン(Thr)(アミノ酸残基B30はヒトインスリン、配列番号2参照)である。
【0018】
ヒトインスリンのアミノ酸残基A8〜A10およびB30を有する式Iのインスリン類似体またはその生理学的に耐容性のある塩は、とくに好ましく、さらに、
(A1〜A5)が、ヒトインスリンのA鎖(配列番号1参照)の位置A1〜A5におけるアミノ酸残基であり、
(A12〜A19)が、ヒトインスリンのA鎖(配列番号1参照)の位置A12〜A19におけるアミノ酸残基であり、
(B8〜B18)が、ヒトインスリンのB鎖(配列番号2参照)の位置B8〜B18におけるアミノ酸残基であり、
(B20〜B26)が、ヒトインスリンのB鎖(配列番号2参照)の位置B20〜B26におけるアミノ酸残基であることによって特徴づけられる。
【0019】
さらに、本発明の好ましい実施態様は、式IにおいてB鎖の位置B1のアミノ酸残基がフェニルアラニン残基(Phe)であるインスリン類似体もしくはその生理学的に耐容性のある塩を含有する結晶、または、
式IにおいてB鎖の位置B3におけるアミノ酸残基がヒスチジン(His)、リシン(Lys)もしくはアルギニン(Arg)残基であるインスリン類似体もしくはその生理学的に耐容性のある塩を含有する結晶である。
【0020】
さらに、本発明の好ましい実施態様は、式IにおいてB鎖の位置B27、28およびB29のアミノ酸残基の少なくとも1個が中性もしくは酸性アミノ酸からなる群より選択される天然に存在するアミノ酸残基により置換されているインスリン類似体もしくはその生理学的に耐容性のある塩からなる結晶、または、
式IにおいてB鎖の位置B27、B28およびB29の少なくとも1個のアミノ酸残基が、イソロイシン(Ile)、アスパラギン酸(Asp)およびグルタミン酸(Glu)からなる群より選択される天然に存在するアミノ酸残基であり、この場合好ましくはB鎖の位置B27、B28およびB29の少なくとも1個のアミノ酸残基が、中性アミノ酸からなる群より選択される天然に存在するアミノ酸残基、もしくはとくに好ましくはB鎖の位置B27、B28およびB29の少なくとも1個のアミノ酸残基がイソロイシン残基(Ile)によって置換されているインスリン類似体もしくはその生理学的に耐容性のある結晶であるか、または、
式IにおいてB鎖の位置B27、B28およびB29の少なくとも1個のアミノ酸残基が、酸性アミノ酸からなる群より選択される天然に存在するアミノ酸残基であり、好ましくはこの場合、B鎖の位置B27、B28およびB29の少なくとも1個のアミノ酸残基がアスパラギン酸残基(Asp)であるか、もしくはB鎖の位置B27、B28およびB29の少なくとも1個のアミノ酸残基がグルタミン酸残基(Glu)であるインスリン類似体もしくはその生理学的に耐容性のある結晶である。
【0021】
本発明の好ましい実施態様は、また、B鎖の位置B29におけるアミノ酸残基がアスパラギン酸残基(Asp)である式Iのインスリン類似体またはその生理学的に耐容性の塩からなる結晶である。
【0022】
さらに好ましい実施態様は、B鎖の位置B27におけるアミノ酸残基がグルタミン酸残基(Glu)である式Iのインスリン類似体もしくはその生理学的に耐容性の塩からなる結晶であるか、または、
B鎖の位置B28におけるアミノ酸残基がグルタミン酸残基(Glu)である式Iのインスリン類似体もしくはその生理学的に耐容性の塩からなる結晶であるか、または、
B鎖の位置B29におけるアミノ酸残基がグルタミン酸残基(Glu)である式Iのインスリン類似体もしくはその生理学的に耐容性の塩からなる結晶である。
【0023】
とくにきわめて好ましい結晶は、B鎖が以下の配列を有することを特徴とするインスリン類似体またはその生理学的に耐容性のある塩、すなわち
Phe Val Lys Gln His Leu Cys Gly Ser His Leu Val Glu Ala Leu Tyr Leu Val Cys Gly Glu Arg Gly Phe Phe Tyr Thr Pro Glu Thr(配列番号3)、または、
B鎖の位置B27におけるアミノ酸残基がイソロイシン残基(Ile)であることを特徴とするインスリン類似体もしくはその生理学的に耐容性のある塩、好ましくはB鎖が以下の配列を有することを特徴とするインスリン類似体もしくはその生理学的に耐容性のある塩、すなわち
Phe Val Lys Gln His Leu Cys Gly Ser His Leu Val Glu Ala Leu Tyr Leu Val Cys Gly Glu Arg Gly Phe Phe Tyr Ile Pro Lys Thr(配列番号4)、または、
B鎖の位置B28におけるアミノ酸残基がイソロイシン残基(Ile)残基であることを特徴とするインスリン類似体もしくはその生理学的に耐容性のある塩、好ましくはB鎖が以下の配列を有することを特徴とするインスリン類似体もしくはその生理学的に耐容性のある塩、すなわち
Phe Val Lys Gln His Leu Cys Gly Ser His Leu Val Glu Ala Leu Tyr Leu Val Cys Gly Glu Arg Gly Phe Phe Tyr Thr Ile Lys Thr(配列番号5)、
を含む結晶である。
【0024】
式Iのインスリン類似体は、好ましくは遺伝子操作によって製造することができる。
【0025】
式Iのインスリンの製造は、主として、標準的方法に従い部位特異的突然変異による遺伝子操作によって実施される。
【0026】
このためには、所望の式Iのインスリン類似体をコードする遺伝子構造を構築し、これを宿主細胞とくに好ましくはE. coliのような細菌、または、Saccharomyces cerevisiaeのような酵母中で発現させる。遺伝子構造が融合蛋白質をコードする場合には、たとえばEP-A-0 211 299、EP-A-0 227 938、EP-A-0 229 998、EP-A-0 286 956およびDE特許出願P 38 21 159に記載の方法により、融合蛋白質から式Iのインスリン類似体を遊離させる。
【0027】
融合蛋白質部分の除去は、細胞の破壊後にハロゲン化シアンを用いる化学的方法により実施することができる(EP-A-0 180 920参照)。
【0028】
US 5,358,857に従い、融合蛋白質部分(プレ配列)を有するプレプロインスリン前駆体を用いる製造の場合には、融合蛋白質部分の除去は、後の段階でCペプチドの除去と一緒に行われる。
【0029】
ついで、インスリン前駆体を、たとえばR. C. Marshall & A. S. Inglis“Practical Protein Chemistry-A Handbook(A. Darbre編)1986, 49-53頁に記載の方法により、酸化的スルフィトリシス(sulfitolysis)に付し、次にたとえばG. H. Dixon & A. C. Wardlow, Nature (1960), 721-724頁に記載された方法によりチオールの存在下に再生させて正しいジスルフィド橋を形成させる。
【0030】
しかしながら、インスリン前駆体はまた、直接フォールディングさせることもできる(EP-A-0 600 372;EP-A-0 668 292)。
【0031】
Cペプチドは、たとえばKemmler等, J. B. C. (1971), 6786-6791頁の方法に従い、トリプシン切断によって除去され、ついで式Iのインスリン類似体は既知の方法たとえばクロマトグラフィーによって精製し(たとえばEP-A-0 305 760)、結晶化する。
【0032】
これらの方法では、B鎖のC末端は1または2個のアルギニン残基で終結する。これら
は、カルボキシペプチダーゼBを用いて酵素的に除去することができる。
【0033】
このインスリン類似体は完全な生物活性を有する。これは、ウサギへの静脈内注射およびその結果としての血中グルコースの低下によって示された。皮下投与後のより迅速な作用の発現は、絶食イヌに対する正常血糖鉗子(euglycemic clamp)法を用いて示された(EP 0 885 961 A1、実施例5および6)。0.3 IU/kgを投与した。対照薬はヒトインスリンとした。鉗子法では、インスリン注射後、短い時間間隔で血中グルコース値を測定し、その低下を補正するために正確に十分量のグルコースを注入した。これはインスリンの投与後における血中グルコースの大きな低下の場合のような逆調節が動物で起こらないという利点がある。注入するグルコースの量および時間的な変動がインスリンの作用を特徴づける。Lys (B3)、Glu (B29)−(配列番号3)およびLys (B3)、Ile (B28)−(配列番号4)インスリンは、ヒトインスリンより著しく迅速な活性の発現を示す。最大の活性(グルコース注入速度)はヒトインスリンでは100分後に達成されるが、Lys (B3)、Glu (B29)−インスリン(配列番号3)では80分後に、Lys (B3)、Ile (B28)−インスリン(配列番号4)では60分後にすでに活性の発現が認められる。これらの類似体は、したがって食事の直前に注射すれば、ヒトインスリンの場合よりも良好に、食後の血中グルコースの上昇を補正するはずである。
【0034】
記載のインスリン類似体は、I型およびII型の両糖尿病の治療に適当であり、好ましくは基礎的インスリンとの配合物である。
【0035】
インスリン類似体はまた、医薬製剤中にそれらの生理学的に耐容性のある塩の形態で、たとえばアルカリ金属塩またはアンモニウム塩として使用することができる。1もしくは2種以上の式Iのインスリン類似体または式Iのインスリン類似体の任意な量は、互いに独立してこれらの更なるインスリン類似体の混合物として、各場合、溶液、無定形または結晶型で存在させることができる。
【0036】
インスリンおよびインスリン類似体は、多くの場合、亜鉛イオンを含む水性の医薬製剤として調製される。
【0037】
インスリン製剤への亜鉛イオンの添加は主として2つの理由により行われる。すなわち、
1.Zn2+イオンは、インスリンヘキサマーの形成を促進するので(Brange等, Diabetic
Medicine, 3, 532-536 (1986))、インスリン製剤の安定化作用を有する。
2.Zn2+イオンの濃度に依存して、インスリン製剤の流入(influx)および流出(efflux)動態の時間による変動が制御できる。
【0038】
速効型インスリンの場合には、ポイント1および2の両者によって問題を生じる。高められた製剤の安定性のためには、高濃度のインスリンヘキサマーが有利である。しかしながら、Zn2+はインスリン類似体の流入および流出動態を遅延させるので、活性化合物の放出の所望の動態とは逆方向に作用する。したがって、記載のようなインスリン類似体すなわちLys B3、Glu B29ヒトインスリンの1種を、亜鉛を含まない水性溶液の形態で調製することを決定したものである(国際特許出願PCT/EP02/02625)。
【0039】
記載のような亜鉛を含まない水性製剤の形態のインスリン類似体、とくにLys B3、Glu B29ヒトインスリンの製造のためには、ヒトインスリン類似体の亜鉛を含まない結晶を使用する必要がある。しかも、本発明によるインスリン類似体の亜鉛を含まない結晶はまた、他の製剤の製造、たとえば吸入により投与される固体製剤もしくは乳化剤の場合、または経口投与の場合に使用することができる。
【0040】
本発明がその根拠とする目的は、したがって、上述のインスリン類似体の亜鉛を含まない結晶の製造である。同時に、亜鉛イオンを、それらの毒性のために医薬製剤には不適当な他の2価イオンによる置換もまた避けねばならない。
【0041】
本発明においては、驚くべきことに記載のインスリン類似体は、2価のイオンたとえば亜鉛イオンを含まないヘキサマーの結晶として製造できることが見出された。これは、たとえばインスリン類似体であるLys B3、Glu B29ヒトインスリンについてなお詳細に例示される。
【0042】
Lys B3、Glu B29−ヒトインスリンのこの新規な結晶は、ブタインスリンおよびヒトインスリンについて文献に記載された従来型の2Zn型インスリン(Baker等, Phil. Trans. Roy Soc. 319, 369-454 (1988))と結晶学的に同型(isomorphous)である。新規な亜鉛を含まないヘキサマー結晶は斜方六面体空間群R3(No. 146)に属し、非対称単位あたり2個のインスリンモノマーを有する。−70℃における基本セル軸は、ショック凍結法の使用により、A=81.5Å、C=33.3Åと測定された。1.8Åにおける新規な結晶型のX線構造解析は、約2.0Åの結合距離(Zn2+−His−B10)を有する(従来型2Zn型における)Zn2+イオンに代わりに、Lys B3、Glu B29−ヒトインスリンの新規な結晶型では、水(H2O)分子(結合距離H2O−His−B10、約2.3Å)に相当するきわめて小さい電子密度ピークが見出されることを示した。電子密度の量および結合距離の両者は、グルタミン酸B21側鎖を有するインスリンについて、ヒスチジンB10側鎖の周囲領域のこれまで未知の構造配列を示している。
【0043】
ヒスチジンB10周辺領域の電子密度(1σ−2Fo−Fc)は、従来型の2Zn型に対して著しく異なり、Zn2+イオンはそれぞれ3つの対称的隣接ヒスチジン−B10およびそれぞれの水3分子によって八面体結晶に配位される。PDBデータベースに寄託された(Bernsteinら, J. Mol Biol. 112, 535-542 (1977))2Zn型の構造における結合距離(Zn2+−His−B10)は1.9Åから2.1Åの間であり、新規な亜鉛を含まない結晶構造において観察される約2.3Åの結合距離とは明らかに異なっている。ここに記載の新規なLys B3、Glu B29−ヒトインスリンのヘキサマー結晶型についての特別な点は、このために他の場合には必須である2価の陽イオン(たとえばZn2+、Co2+、Cd2+)を含まないインスリンヘキサマーを含有することである。以前は、2価の陽イオンなしでのインスリンヘキサマーの形成は、グルタミン酸B21側鎖の反発力が蛋白質工学によって(たとえばB21−GluのGlnによる置換によって)低下させることができる場合のみ可能であると考えられていた(Bentley等, J. Mol. Biol. 228, 1163-1176 (1992))。しかしながら、インスリンヘキサマーの分解を促進するGlu-B21側鎖の保持は、迅速な流入および流出動態の維持のために速効型インスリンにとってとくに重要である。
【0044】
したがって、本発明は、B鎖の位置B3におけるアスパラギン(Asn)が天然に存在する塩基性アミノ酸残基によって置換され、B鎖の位置B27、B28またはB29の少なくとも1個のアミノ酸残基が他の天然に存在する中性または酸性アミノ酸残基で置換され、ここで、B鎖の位置B1におけるフェニルアラニン(Phe)は場合によっては存在しなくてもよいインスリン類似体の結晶に関し、その結晶は空間群R3(No. 146)に存在し、セル軸A=81.5ű1ÅおよびC=33.3ű1Åである。とくにインスリン類似体の分子は亜鉛を含まないヘキサマーの形態であり、各場合、3つのダイマーから構成される。
【0045】
本発明の更なる主題は上述の結晶であり、この場合、ヘキサマー中のインスリン類似体各3分子のそれぞれのヒスチジンB10残基は、水分子、二水素リン酸塩イオン(H2PO42-)、一水素リン酸塩イオン(HPO42-)または硫酸塩イオン(SO42-)に水素結合を介して結合する。
【0046】
本発明の更なる主題は上述の結晶であり、この場合、ヘキサマー中のインスリン類似体分子のヒスチジンB10残基はそれぞれそれら自身のダイマー上に折り畳まれ、ヒスチジンB10残基の水分子への水素結合の形成は存在しない。
【0047】
したがって本発明による結晶は、この場合上述の式Iによるインスリン類似体を含有し、とくにインスリン類似体B鎖の位置B3におけるアミノ酸残基はヒスチジン(His)、リシン(Lys)またはアルギニン(Arg)残基であり、ならびに、とくにB鎖の位置B27、B28およびB29におけるアミノ酸残基の少なくとも一つは好ましくはイソロイシン(Ile)、アスパラギン酸(Asp)およびグルタミン酸(Glu)からなる群より選択される天然に存在するアミノ酸残基である。
【0048】
この場合、本発明による結晶はとくにB鎖が以下の配列:
Phe Val Lys Gln His Leu Cys Gly Ser His Leu Val Glu Ala Leu Tyr Leu Val Cys Gly Glu Arg Gly Phe Phe Tyr Thr Pro Glu Thr(配列番号3)を有するインスリン類似体を含有する。
【0049】
本発明の更なる主題は、少なくとも1種の上述の結晶を含有する医薬製剤であって、ここで、好ましくは、インスリン類似体の血中への吸収を促進する賦形剤が存在することができ、そして特に好ましくは、この医薬製剤は、迅速な作用の発現を有するインスリン活性を有している。
【0050】
本発明の更なる主題は、少なくとも1種の上述の結晶、ならびに、インスリンまたはインスリン類似体の吸入用および/または経口投与用製剤に使用される賦形剤を含有する医薬製剤である。
【0051】
本発明の更なる主題は、上述の結晶の製造方法において、
(a)上述のような亜鉛を含まないインスリン類似体の無定形粉末を水に15〜25mg/mLの濃度に溶解し、
(b)適当な沈殿剤を用いて沈殿を形成させ、ついで
(c)結晶を単離し乾燥させ、
インスリン類似体はとくにLys B3、Glu B29−ヒトインスリンである、方法に関する。
【0052】
本発明の更なる主題は、上述の結晶を沈殿させる方法において、沈殿剤は
(a)二水素リン酸アンモニウム、
(b)二水素リン酸アンモニウムとクエン酸三ナトリウムとの組み合わせ、および、
(c)硫酸アンモニウムと様々な分子量のポリエチレングリコールとの組み合わせ、
からなる群より選択され、
使用される好ましい沈殿剤はpH 3.0〜8.0の二水素リン酸アンモニウムもしくは一水素リン酸二アンモニウム、または、pH 5.5±1.5における二水素リン酸アンモニウム/一水素リン酸アンモニウムとクエン酸三ナトリウムの組み合わせ、または、pH6.0±1.5の硫酸アンモニウムと様々な分子量のPEGの組み合わせである。
【0053】
本発明はまた、I型および/またはII型糖尿病の治療用医薬製剤の製造における上述の結晶の使用に関する。
【0054】
本発明を以下の実施例によってさらに詳細に例示するが、これらは本発明を、それらに限定するものではない。
【実施例1】
【0055】
亜鉛を含まない新規なヘキサマー結晶型の製造
Lys B3、Glu B−29ヒトインスリンの無定形の、亜鉛を含まない粉末を蒸留水/HClの非緩衝型にpH約2.0で溶解させる。この過程で、インスリン濃度約20mg/mLの澄明な溶液の形成が可能になる。結晶化は24−ウエルLinbroプレート中において、ハンギングドロップ(hanging−drop)法により実施される。使用された沈殿剤はHampton Research Inc. の“Protein Crystallization Screening Kit”の以下の試剤:1.0.4M二水素リン酸アンモニウム、pH 4.2である。
【実施例2】
【0056】
亜鉛を含まない新規なヘキサマー結晶型の製造
Lys B3、Glu B−29ヒトインスリンの無定形の、亜鉛を含まない粉末を蒸留水/HClの非緩衝型にpH約2.0で溶解させる。この過程で、インスリン濃度約20mg/mLの澄明な溶液の形成が可能になる。結晶化は24−ウエルLinbroプレート中において、ハンギングドロップ法により実施される。使用された沈殿剤はHampton Research Inc. の“Protein Crystallization Screening Kit”の以下の試剤:1M二水素リン酸アンモニウム、0.1Mクエン酸三ナトリウム、 pH 5.6である。
【実施例3】
【0057】
亜鉛を含まない新規なヘキサマー結晶型の製造
Lys B3、Glu B−29ヒトインスリンの無定形の、亜鉛を含まない粉末を蒸留水/HClの非緩衝型にpH約2.0で溶解させる。この過程で、インスリン濃度約20mg/mLの澄明な溶液の形成が可能になる。結晶化は24−ウエルLinbroプレート中において、ハンギングドロップ法により実施される。使用された沈殿剤はHampton Research Inc. の“Protein Crystallization Screening Kit”の以下の試剤:0.2 M硫酸アンモニウム、20%PEG 3350、pH 6.0である。
【実施例4】
【0058】
X線構造解析
実施例1〜3に従って得られた結晶は良好に配列され、X線構造解析が可能であり、グルタミン酸B21側鎖を有するインスリンは、ヒスチジンB10側鎖周辺領域のこれまで知られていなかった構造の配列を示している。
【0059】
2Zn型の亜鉛含有ヒトインスリン結晶は、 空間群としてR3(146)およびセル軸A=82.5、C=34.0Åを有する。化合物Iの亜鉛を含まない結晶は、同型であり、典型的には、セル軸A=81.5、C=33.3Åを有する。ヒトインスリンの亜鉛含有結晶構造におけるインスリン分子、およびLys B3、Glu B29−ヒトインスリンの亜鉛を含まない結晶構造はT6または2Zn型にフォールディングされていた。2Znインスリン(T6)においては、6個のすべてのモノマーが「T=緊張(T=tensed)」状態で存在する。B鎖のN末端は明瞭な二次構造的特徴はなく延びている。別のR状態のようなα−ヘリックス二次構造は存在しない。ヒトインスリン結晶構造および化合物Iにおける有意な差はヒスチジンB10側鎖周辺領域の配列を生じる。
【0060】
実施例1〜3によるすべての製造方法では、高分解単一結晶X線構造分析を利用することが可能で、これらのインスリンヘキサマー結晶の亜鉛を含まない状態における状態を証明できる。基本セル軸および結晶の対称性は以下のように決定された。
製造方法1:A=81.52、C=33.31Å、R3(空間群No. 146)
製造方法2:A=81.51、C=33.43Å、R3(空間群No. 146)
製造方法3:A=81.38、C=33.22Å、R3(空間群No. 146)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
B鎖の位置B3におけるアスパラギン(Asn)が天然に存在する塩基性アミノ酸残基で置換され、B鎖の位置B27、B28またはB29の少なくとも1個のアミノ酸残基が他の天然に存在する中性または酸性アミノ酸残基によって置換され、ここでB鎖の位置B1におけるフェニルアラニン(Phe)は場合によってはなくてもよく、結晶は空間群R3(No. 146)に存在し、セル軸A=81.5ű1ÅおよびC=33.3ű1Åであるインスリン類似体の結晶。
【請求項2】
インスリン類似体分子は、それぞれ3個のダイマーから成る、亜鉛を含まないヘキサマーの形態で存在する請求項1記載の結晶。
【請求項3】
ヘキサマー中の3分子のインスリン類似体のそれぞれにおけるヒスチジンB10残基は、水素結合を介して水分子に結合している請求項2記載の結晶。
【請求項4】
ヘキサマー中の3分子のインスリン類似体のそれぞれにおけるヒスチジンB10残基は、水素結合を介して二水素リン酸イオン(H2PO4-)に結合している請求項2記載の結晶。
【請求項5】
ヘキサマー中の3分子のインスリン類似体のそれぞれにおけるヒスチジンB10残基は、水素結合を介して一水素リン酸イオン(HPO42-)に結合している請求項2記載の結晶。
【請求項6】
ヘキサマー中の3分子のインスリン類似体のそれぞれにおけるヒスチジンB10残基は、水素結合を介して硫酸イオン(SO42-)に結合している請求項2記載の結晶。
【請求項7】
ヘキサマー中の3分子のインスリン類似体のヒスチジンB10残基は、それぞれにおいてそれら自身のダイマー上に折り畳まれ、ヒスチジンB10残基の水分子への水素結合の形成は存在しない請求項1〜6のいずれかに記載の結晶。
【請求項8】
インスリン類似体は、式I:
【化1】

[式中、
(A1〜A5)は、ヒトインスリンまたは動物インスリンのA鎖の位置A1〜A5におけるアミノ酸残基であり、
(A8〜A10)はヒトインスリンまたは動物インスリンのA鎖の位置A8、A9およびA10におけるアミノ酸残基であり、
(A12〜A19)はヒトインスリンまたは動物インスリンのA鎖の位置A12〜A19におけるアミノ酸残基であり、
(B8〜B18)はヒトインスリンまたは動物インスリンのB鎖の位置B8〜B18におけるアミノ酸残基であり、
(B20〜B26)はヒトインスリンまたは動物インスリンのB鎖の位置B20〜B26におけるア
ミノ酸残基であり、
(B30)は、ヒトインスリンまたは動物インスリンのB鎖の位置B30におけるアミノ酸残基であり、
B1は、フェニルアラニン残基(Phe)または水素原子であり、
B3は、天然に存在する塩基性アミノ酸残基であり、
B27、28およびB29は、ヒトインスリンまたは動物インスリンのB鎖の位置B27、B28およびB29におけるアミノ酸残基であるか、B鎖の位置B27、B28およびB29のアミノ酸残基の少なくとも1個は中性または酸性アミノ酸からなる群より選択される天然に存在する他のアミノ酸残基により置換される]
の化合物である請求項1〜7のいずれかに記載の結晶 。
【請求項9】
インスリン類似体のB鎖の位置B3におけるアミノ酸残基はヒスチジン(His)、リシン(Lys)またはアルギニン残基(Arg)である請求項8記載の結晶。
【請求項10】
B鎖の位置B27、B28およびB29の少なくとも1個のアミノ酸残基は、イソロイシン(Ile)、アスパラギン酸(Asp)およびグルタミン酸(Glu)からなる群より選択される天然に存在するアミノ酸残基である請求項8または9に記載の結晶。
【請求項11】
B鎖は以下の配列:
Phe Val Lys Gln His Leu Cys Gly Ser His Leu Val Glu Ala Leu Tyr Leu Val Cys Gly Glu Arg Gly Phe Phe Tyr Thr Pro Glu Thr(配列番号3)を有する請求項10記載の結晶。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の少なくとも1種の結晶を含有する医薬製剤。
【請求項13】
さらに、インスリン類似体の血中への吸収を加速する賦形剤を含有する請求項12に記載の医薬製剤。
【請求項14】
請求項1〜11のいずれかに記載の結晶少なくとも1種ならびにインスリンまたはインスリン類似体の吸入用および/または経口投与用製剤に使用される賦形剤を含有する請求項12記載の医薬製剤である。
【請求項15】
迅速な作用発現を示すインスリン活性を有する医薬製剤の製造における請求項1〜11のいずれかに記載の結晶の使用。
【請求項16】
(a)請求項1〜11のいずれかに記載のインスリン類似体の、亜鉛を含まない無定形粉末を水に15〜20mg/mLの濃度に溶解し、
(b)適当な沈殿剤を用いて沈殿を形成させ、ついで
(c)結晶を単離し乾燥させる、
請求項1〜11のいずれかに記載の結晶の製造方法。
【請求項17】
インスリン類似体はLys B3、Glu B29−ヒトインスリンである請求項16記載の方法。
【請求項18】
沈殿剤は
(a)二水素リン酸アンモニウム、
(b)二水素リン酸アンモニウムとクエン酸三ナトリウムとの組み合わせ、および
(c)硫酸アンモニウムと様々な分子量のポリエチレングリコールとの組み合わせ
からなる群より選択される請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
使用される沈殿剤はpH 3.0〜8.0の二水素リン酸アンモニウムまたは一水素リン酸二ア
ンモニウムである、請求項18記載の方法による請求項1、2、4、5および7〜11のいずれかに記載の結晶の製造方法。
【請求項20】
使用される沈殿剤は、pH 5.5±1.5における二水素リン酸アンモニウム/一水素リン酸二アンモニウムとクエン酸三ナトリウムとの組み合わせ、またはpH 6.0±1.5における硫酸アンモニウムと様々な分子量のPEGとの組み合わせのいずれかである、請求項18記載の方法による請求項1〜11のいずれかに記載の結晶の製造方法。
【請求項21】
Iおよび/またはII型糖尿病の治療用医薬製剤の製造における請求項1〜11のいずれかに記載の結晶の使用。

【公表番号】特表2006−516536(P2006−516536A)
【公表日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−547518(P2004−547518)
【出願日】平成15年10月16日(2003.10.16)
【国際出願番号】PCT/EP2003/011470
【国際公開番号】WO2004/039838
【国際公開日】平成16年5月13日(2004.5.13)
【出願人】(397056695)サノフィ−アベンティス・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (456)
【Fターム(参考)】