説明

インターナライジング抗CD74抗体およびその使用方法

本発明は、B細胞悪性腫瘍などのB細胞疾患、細胞がCD74と反応性がある他の悪性腫瘍、および自己免疫疾患の治療および診断のために有用な、CD74と結合するヒト化、キメラおよびヒト抗CD74抗体、CD74抗体融合タンパク質、免疫複合体、ワクチンおよび二重特異性、腫瘍組織適合性複合体(MHC)クラスII不変鎖、Ii、ならびに治療および診断方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
1.発明の分野
本発明は、ヒト化、キメラおよびヒト抗CD74抗体もしくはそのフラグメント、または少なくとも一種のCD74抗体、特にモノクローナル抗体(mAb)を含んでなる抗体融合タンパク質、ヒト化、キメラおよびヒト抗CD74 mAbまたはそのフラグメントの治療および診断複合体、ならびにB細胞リンパ腫および白血病、細胞がCD74抗原に関して陽性であるリンパ腫および白血病以外の悪性腫瘍、および種々の自己免疫疾患および免疫不全症を、これらのヒト化、キメラおよびヒト抗CD74 mAbまたはそのフラグメントを用いて治療および診断する方法に関する。本発明は、抗CD74 mAbまたはそのフラグメントの少なくとも一方の腕と、病原性生物、癌細胞、寄生虫または感染性病原体などの有害なものに対して多重特異性のmAbの少なくとも一方の腕とを含んでなる多価かつ/または多重特異性抗CD74 mAbまたはそのフラグメントに関する。本発明はさらに、抗原ペプチドに結合された抗CD74 mAbまたはそのフラグメントに関する。このヒト化、キメラおよびヒト抗CD74 mAb、そのフラグメントおよびその複合体は単独で投与してもよいし、多様式治療計画の一部として投与してもよい。本発明はヒト化、キメラおよびヒト抗CD74抗体をコードするDNA配列、ならびに多価かつ/または多重特性抗CD74 mAbおよびそのフラグメント、その治療用複合体、診断用複合体および抗原複合体、そのDNA配列を含むベクターおよび宿主細胞、ならびにヒト化、キメラおよびヒト抗CD74抗体を作製する方法に関する。
【0002】
2.背景
免疫療法の主要な目標の一つは腫瘍細胞または感染性生物に対して患者の免疫系を協調させることである。癌療法に関しては、患者の免疫系を腫瘍細胞へ向けることが対象となる。非ホジキンリンパ腫(NHL)、多発性骨髄腫、ならびに急性および慢性リンパ球性白血病は、なお癌の死亡率に大きく影響しているB細胞悪性腫瘍である。種々の形態の処置に対するこれら悪性腫瘍の応答は複合型である。
【0003】
Tリンパ球応答の誘導は、宿主の免疫応答の重要な最初のステップである。T細胞が活性化されるとT細胞が増殖し、T細胞によりサイトカインが誘導され、T細胞媒介性のエフェクター機能が生じる。T細胞の活性化には抗原特異的シグナルが必要であり、これはしばしば初期活性化シグナルと呼ばれるものであり、T細胞の表面に存在するクローン的に分布したT細胞受容体(TcR)の刺激によって生じる。この抗原特異的シグナルは通常、抗原提示細胞(APC)の表面上に存在するクラスI主要組織適合性複合体(MHC)タンパク質かクラスII MHCタンパク質のいずれかと結合した抗原ペプチドの形態にある。ヒトのMHC分子はHLA(ヒト白血球抗原)分子と呼ばれている。
【0004】
クラスII分子は限られた数の細胞腫、主としてB細胞、単球/マクロファージおよび樹状細胞にしか見られず、ほとんどの場合、細胞外環境から取り込まれたタンパク質に由来するペプチドを提示する。クラスII MHCは細胞外環境と連絡した細胞コンパートメントに保持されている。ヒトでは、MHC−II分子は種々の遺伝子コードされている対立遺伝子に存在するHLA−DR、HLA−DQおよびHLA−DP分子を含む。従って、例えば細胞外環境からの細菌抗原が取り込まれ、それらの細胞上の抗原提示細胞において細胞内プロセシングされた後に提示される。CD4+T細胞はクラスII分子と会合しているペプチドを認識する。
【0005】
放射性核種またはその他の細胞傷害剤に結合されたターゲッティングモノクローナル抗体を使用できれば、このような薬剤を腫瘍部位へ直接送達できることになり、それにより正常組織が有毒な薬剤に曝されることもなくなる(Goldenberg, Semin. Nucl. Med., 19: 332 (1989))。最近では、抗原に基づく療法および腫瘍関連抗原の限局化におけるその精度の潜在能力が実験および診療試験の双方で実証された(例えば、Thorpe, TIBTECH, 11: 42 (1993); Goldenberg, Scientific American, Science & Medicine, 1: 64 (1994); Baldwin et al., 米国特許第4,925,922号および同第4,916,213号; Young, 米国特許第号4918163号;米国特許第5,204,095号; Irie et al., 米国特許第5,196,337号; Hellstrom et al., 米国特許第5,134,075および同第5,171,665号参照)。一般に、治療よりも、腫瘍の限局化を目的に腫瘍関連マーカーに対する放射性標識抗体または抗体フラグメントを用いる場合において成功を収めているが、これは一つには腫瘍による抗体の取り込みが一般に低く、全注射量の0.01%〜0.001%の範囲でしかないためである(Vaughan et al., Brit. J. Radiol., 60: 567 (1987))。腫瘍に対する用量増加のために放射性標識濃度を高めると、通常、健康な組織への放射能暴露が高まるので、意図とは逆の結果を招くことになる。
【0006】
マウスLL1(mLLIまたはマウス抗CD74抗体)は、クラスII HLA様抗原、すなわち、Bリンパ球、単球および組織球、ヒトBリンパ腫細胞、黒色腫、T細胞リンパ腫、およびその他種々の腫瘍細胞種の表面上の不変鎖(Ii決定基)であるCD74と反応性のある特定のモノクローナル抗体(mAb)である(Hansen et al., Biochem. J. 320: 293 (1996))。細胞表面結合LL1は、抗CD19や抗CD22などの他のmAbよりもはやく、リソソームコンパートメントに迅速にインターナライズされ、すぐさま異化される(同上)。このLL1固有の特性により、免疫療法に伴う上記のような困難な点はいくるか克服される。
【0007】
マウスLL1は、マウス骨髄腫細胞をRaji Bリンパ腫細胞系統(Pawlak-Byczkowska et al., Can. Res., 49: 4568 (1989)ではEPB−1と呼ばれている)からの調製物で免疫化したBALB/cマウスからの脾臓細胞と融合させることにより開発された。その他のほとんどの有望なマウス抗体の場合とまさに同じで、ヒトではヒト抗マウス抗体(HAMA)応答を生じることから、mLL1の臨床使用は制限されている。HAMA応答は一般に、99mTcにて標識されたre a mLLI Fab’を用いた骨髄イメージング研究で示されるように、mLLI Fab’を注射した後には見られない。Juweid et al., Nuc. Med Comm. 18: 142-148 (1997)を参照されたい。しかし、いくつかの治療および診断使用では、全長抗CD74 mAbが好ましいようである。この全長抗CD74 mAbの使用は、過敏感症の可能性の問題のためだけでなく、循環中の複合体の大部分が循環している抗マウス抗体と錯化し、封鎖されてしまうことから、このような抗体および抗体複合体の診断および治療の有用性は制限される。mLL1の抗体フラグメントを用いれば免疫原性の問題は回避できるかもしれないが、全IgGのほうが望ましく、また、治療または抗体の生存時間を引き延ばすためには細胞免疫の誘導が意図されるという状況がある。一般に、HAMA応答はマウス抗CD74 mAbの完全な診断および治療能を実現するには潜在的な障害がある。よって、治療および診断用のキメラ、ヒト化およびヒト抗CD74 mAbおよびそのフラグメント、抗体融合タンパク質およびそのフラグメント、免疫複合体、多価かつ/または多重特異性mAbおよびそのフラグメント、ならびにそのワクチン複合体の開発は、ヒト抗マウス抗体の形成が少ない治療および診断に極めて有用である。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、細胞内に迅速にインターナライズ(internalize)されうる抗CD74抗体およびそのフラグメントならびにその抗体融合タンパク質、特にキメラ、ヒト化またはヒト抗体を対象とする。
【0009】
本発明はさらに、互いに融合され、かつ/または本発明のその他の抗体およびそのフラグメントと融合されている抗体またはそのフラグメントを含有する抗CD74抗体融合タンパク質に関する。
【0010】
本発明はさらに、診断薬または治療薬に結合されている本発明による抗CD74抗体もしくはそのフラグメント、または抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントを含有する免疫複合体に関する。
【0011】
本発明はまた、抗原ペプチドに結合されている本発明による抗CD74抗体もしくはそのフラグメント、または抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントを含有する抗体複合体を含んでなるワクチンに関する。
【0012】
本発明はさらに、癌マーカー物質、感染性病原生物の表面上のエピトープまたは血液もしくは他の体液中の有害物質に特異的な抗体または抗体フラグメントに結合されている本発明による抗CD74抗体もしくはそのフラグメント、または抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントを含有する抗体を含んでなる二重特異性または多重特異性抗体に関する。
【0013】
本発明はさらに、本発明のCD74抗体およびそのフラグメント、または抗体融合タンパク質およびその複合体を用いて疾病を治療および診断する方法に関する。
【0014】
本発明はまた、CD74抗体もしくはそのフラグメント、または抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメント、免疫複合体および抗体複合体、およびその多重特異性抗体をコードするDNA配列、発現ベクター、および該DNA配列を含有する宿主細胞、ならびに本発明によるこれらのCD74抗体を発現させる方法に関する。
【発明の具体的説明】
【0015】
特に断りのない限り、「a」または「an」は「一またはそれ以上(one or more)」意味する。
【0016】
1.概説
本発明は、ヒト化、キメラおよびヒト抗CD74 mAb、そのフラグメント、および抗体融合タンパク質、ならびに単独で、または他の裸の抗体および多様式治療計画の一部としての抗体治療用複合体をはじめとする他の治療薬との複合体としての、またはそれらと組み合わせて投与される、哺乳類被験体、ヒトおよび家庭内動物の治療に有用なその治療用および診断用複合体を提供する。B細胞悪性腫瘍、その他のCD74陽性悪性腫瘍および自己免疫疾患の治療および診断方法が開示される。
【0017】
2.定義
以下の説明において、多数の専門用語が使用されており、以下、本発明の理解を容易にするために定義を示す。
【0018】
本明細書において「抗体」とは、全長(すなわち、天然に存在するまたは通常の免疫グロブリン遺伝子フラグメント組換えプロセスにより形成される)免疫グロブリン分子(例えばIgG抗体)、または抗体フラグメントのような、免疫グロブリン分子の免疫学的に有効な(すなわち、特異的に結合する)部分をいう。
【0019】
「抗体フラグメント」とは、F(ab')、F(ab)、Fab’、 Fab、Fv、scFvなどのような抗体の部分をいう。構造に関係なく、抗体フラグメントは無傷の抗体により認識される同じ抗原と結合する。例えば、抗CD74モノクローナル抗体フラグメントは、CD74のエピトープと結合する。「抗体フラグメント」とはまた、特定の抗原に結合して複合体を形成することにより抗体のようにふるまういずれの合成または遺伝子操作タンパク質も含む。例えば、抗体フラグメントとしては、H鎖およびL鎖の可変領域からなる「Fv」フラグメントのような可変領域からなる単離されたフラグメント、L鎖およびH鎖可変領域がペプチドリンカー(「scFvタンパク質」)により接続されている組換え単鎖ポリペプチド分子、および超過変領域を模倣したアミノ酸残基からなる最小認識ユニットが挙げられる。
【0020】
「裸の抗体」は一般的に治療薬と結合していない完全な抗体である。これは抗体分子のFc部分が、細胞溶解を引き起こす作用をするようメカニズムを設定する補体結合およびADCC(抗体依存性細胞傷害)のようなエフェクター機能を提供するためである。しかし、治療機能のためにはこのFc部分は必要なく、アポトーシスなどの他のメカニズム機能を果たす可能性がある。裸の抗体には、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体の双方ならびにキメラ、ヒト化またはヒト抗体のようなある種の組換え抗体が含まれる。
【0021】
「キメラ抗体」は、一つの種、好ましくは齧歯類の抗体由来の抗体の相補性決定領域(CDR)を含む可変ドメインを含み、この抗体分子の定常ドメインはヒト抗体の定常領域に由来する組換えタンパク質である。獣医学領域への適用のためには、このキメラ抗体の定常ドメインは、ネコまたはイヌのような他の種由来のものであってもよい。
【0022】
「ヒト化抗体」は、一つの種、例えば齧歯類抗体由来の抗体のCDRが齧歯類抗体のHおよびL可変鎖からヒトHおよびL可変ドメインに移された組換えタンパク質である。抗体分子の定常ドメインは、ヒト抗体の定常ドメインに由来する。
【0023】
「ヒト抗体」は、抗原刺激に応答して特定のヒト抗体を産生するために「操作された」トランスジェニックマウスから得られる抗体である。この技術では、ヒトH鎖およびL鎖遺伝子座のエレメントが、内在性H鎖およびL鎖遺伝子座が標的破壊されている胚幹細胞株由来のマウス系統に導入される。このトランスジェニックマウスはヒト抗原に特異的なヒト抗体を合成することができ、このマウスをヒト抗体を分泌するハイブリドーマを作製するために使用することができる。トランスジェニックマウスからヒト抗体を得るための方法は、Green et al., Nature Genet. 7:13 (1994), Lonberg et al., Nature 368:856 (1994),およびTaylor et al., Int. Immun. 6:579(1994)に記載されている。完全ヒト抗体はまた、遺伝子または染色体トランスフェクション法ならびにファージディスプレー技術により構築でき、これらはすべて当技術分野で公知である。例えば、非免疫ドナー由来の免疫グロブリン可変ドメイン遺伝子レパートリーからのin vitroにおけるヒト抗体およびそのフラグメントの産生に関しては、McCafferty et al., Nature 348:552-553(1990)を参照されたい。この技術では、抗体可変ドメイン遺伝子がフレーム内で糸状バクテリオファージの主要または微量コートタンパク質遺伝子へクローニングされ、機能的抗体フラグメントとしてファージ粒子表面上に提示される。この糸状粒子はファージゲノムの単鎖DNAコピーを含み、抗体の機能特性に基づいて選択すれば、それらの特性を示す抗体をコードする遺伝子が選択されることになる。このように、ファージはB細胞のいくつかの特性を模倣する。ファージディスプレーはさまざまな形式で行うことが可能であり、総説としては例えば、Johnson and Chiswell, Current Opinion in Structural Biology 3:5564-571 (1993)を参照されたい。
【0024】
ヒト抗体はまた、in vitro活性化B細胞により産生させることができる。引用することによりその全開示内容を本明細書の一部とする、米国特許第5,567,610号および同第5,229,275号を参照されたい。
【0025】
「治療薬」は、個別に、同時にまたは逐次に、抗体部分とともにまたは抗体部分(すなわち抗体、または抗体フラグメント、またはサブフラグメント)と結合させて投与される分子または原子であり、疾病の治療に有用である。治療薬の例としては、抗体、抗体フラグメント、薬物、毒素、酵素、ヌクレアーゼ、ホルモン、免疫調節剤、アンチセンスオリゴヌクレオチド、キレート剤、ホウ素化合物、光活性薬または色素および放射性同位元素が挙げられる。
【0026】
「診断薬」は、抗体部分(すなわち抗体、または抗体フラグメント、またはサブフラグメント)と結合させて投与される分子または原子であり、その抗原を含む細胞を限局化することにより疾病の診断に有用である。有用な診断薬としては、限定されるものではないが、放射性同位元素、色素(ビオチン−ストレプトアビジン複合体など)、造影剤、蛍光化合物または分子、および核磁気共鳴イメージング(MRI)のための増強剤(例えば、常磁性イオン)などがある。米国特許第6,331,175号はMRI技術およびMRI増強剤に結合させた抗体の調製について記載しており、引用することによりその全開示内容を本明細書の一部とする。好ましくは、この診断薬は放射性同位元素、核磁気共鳴イメージングで使用する増強剤、および蛍光化合物からなる群から選択される。抗体成分に放射性金属または常磁性イオンを付加するためには、イオンを結合させるための多様なキレート基を付着させた長い尾部を有する試薬と反応させる必要があろう。このような尾部は、ポリリシン、多糖、または例えばエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、ポルフィリン、ポリアミン、クラウンエーテル、ビス−チオセミカルバゾン、ポリミキシン、およびこの目的のために有用なことが公知の基といった、キレート基に結合できるペンダント基を有する他の誘導体化または誘導体化可能な鎖でありうる。キレート剤は標準的な化学法を用いてペプチド抗原に結合させる。キレート剤は通常、免疫反応性の損失が最小で、凝集および/または内部架橋が最小となる分子との結合を形成しうる基により抗体に連結される。キレート剤を抗体に結合させるその他の、もっと特殊な方法および試薬は、1989年4月25日出願の「Antibody Conjugates」と題されたHawthorneの米国特許第4,824,659号に開示されており、引用することによりその開示内容を本明細書の一部とする。特に有用な金属−キレートの組み合わせとしては、125I、131I、123I、124I、62Cu、64Cu、18F、111In、67Ga、68Ga、99mTc、94mTc、11C、13N、15Oおよび76Brのような一般エネルギー範囲60〜400keVの診断用同位元素とともに用いられる2−ベンジルDTPAならびにそのモノメチルおよびシクロヘキシル類似体が含まれ、ラジオイメージングに用いられる。同じキレート剤がマンガン、鉄およびガドリニウムのような非放射性金属と錯化した場合は、本発明の抗体とともに使用するとMRIに有用である。NOTA、DOTA、およびTETAのような大環状のキレート剤は種々の金属および放射性金属とともに、最も詳しくは、それぞれガリウム、イットリウム、および銅などの放射性核種とともに用いられる。このような金属−キレート錯体は、環のサイズを目的の金属にあわせて調整することにより極めて安定にすることができる。大環状ポリエーテルのような他のリング型キレート剤は、RAITのための223Raのような、安定に結合する核種を対照とするものであり、本発明に包含される。
【0027】
「免疫複合体」は、抗体成分と治療薬または診断薬との複合体である。この診断薬は、放射性または非放射性標識、造影剤(核磁気共鳴イメージング、コンピューター断層撮影法または超音波診断法など)を含んでなり、この放射性標識はγ−、β−、α−、オージェ電子、または陽電子放射性同位元素でありうる。
【0028】
「発現ベクター」は、宿主細胞中で発現された遺伝子を含んでなるDNA分子である。通常、遺伝子発現は構成または誘導プロモーター、組織特異的調節エレメントおよびエンハンサーをはじめとする、特定の調節エレメントの制御下に置かれる。このような遺伝子は調節エレメントに「作動可能なように連結されている」といわれる。
【0029】
「組換え宿主」は、クローニングベクターまたは発現ベクターのどちらかを含む任意の原核または真核細胞であってもよい。この語はまた、それらの原核、または細菌、酵母および哺乳類細胞などの真核細胞、ならびに宿主細胞または宿主細胞の細胞の染色体またはゲノム中にクローニングされた遺伝子を含むように遺伝子操作されたトランスジェニック動物も含む。好適な哺乳類宿主細胞としては、SP2/0細胞およびNS0細胞のような骨髄腫細胞、ならびにチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ハイブリドーマ細胞株および抗体発現に有用な他の哺乳類宿主細胞が挙げられる。また、mAbおよび他の融合タンパク質の発現に特に有用なものはWO 0063403 A2に開示されているヒト細胞株PER.C6であり、CHO、COS、 Vero、 HeLa、 BHKおよびSP2などの従来の哺乳類細胞株に比べて2〜200倍の組換えタンパク質を産生する。免疫系が改変された特別なトランスジェニック動物は完全なヒト抗体を作製するために特に有用である。
【0030】
本明細書に記載のように、「抗体融合タンパク質」とは、同じまたは異なる特異性の2以上の同じまたは異なる単鎖抗体もしくは抗体フラグメントのセグメントが連結されている、組換え生産された抗原結合分子である。融合タンパク質の原子価は、この融合タンパク質が単一抗原またはエピトープに対する結合腕または結合部位をいくつ有しているかを示し、すなわち、一価、二価、三価または多価などである。抗体融合タンパク質が多価であるということは、抗原に対する結合において複数の相互作用を利用できることを意味し、従って、抗原に結合する結合力が高まる。特異性は、抗体融合タンパク質がいくつの抗原またはエピトープに結合できるかを示し、すなわち、単一特異性、二重特異性、三重特異性、多重特異性などである。これらの定義により、例えばIgGのような天然の抗体は、結合腕を2本持つために二価であるといえるが、この抗体は一つのエピトープに結合するために単一特異性である。単一特異性、多価融合タンパク質は、エピトープに対する1以上の結合部位を有するが、ただ一つのエピトープとしか結合せず、例えば二つの結合部位を持つダイアボディー(diabody)は同じ抗原と反応性がある。融合タンパク質は単一抗体成分、異なる抗体成分の多価もしくは多重特異性の組み合わせ、または同じ抗体成分の複数のコピーを含んでもよい。この融合タンパク質はさらに抗体または抗体フラグメントおよび治療薬を含んでもよい。このような融合タンパク質に好適な治療薬の例としては、免疫調節剤(「抗体-免疫調節剤融合タンパク質」)および毒素(「抗体-毒素融合タンパク質」)が挙げられる。好ましい一つの毒素としては、リボヌクレアーゼ(RNアーゼ)であり、好ましくは組換えRNアーゼである。
【0031】
「多重特異性抗体」は、同時に構造の異なる少なくとも二つの標的、例えば二つの異なる抗原、同じ抗原上の二つの異なるエピトープ、またはハプテンおよび/または抗原、もしくはエピトープに結合できる抗体である。一つの特異性は、B細胞、T細胞、骨髄性細胞、形質細胞および肥満細胞抗原またはエピトープであろう。もう一つの特異性は、B細胞上のCD20、CD19、CD21、CD23、CD46、CD80、HLA−DR、CD74、およびCD22などの、同じ細胞種上の異なる抗原でありうる。多重特異性、多価抗体は一以上の結合部位を有する構築物であり、その結合部位は特異性が異なる。例えばダイアボディーでは、一つの結合部位が一つの抗原と反応し、もう一方は他の抗原と反応する。
【0032】
「二重特異性抗体」は、同時に構造の異なる二つの標的に結合できる抗体である。二重特異性抗体(bsAb)および二重特異性抗体フラグメント(bsFab)は、例えば、B細胞、T細胞、骨髄性細胞、形質細胞および肥満細胞抗原またはエピトープに特異的に結合する少なくとも一つの腕、および治療薬または診断薬を担持する標的化可能な複合体に特異的に結合する少なくとも一つの他の腕を有する。分子工学技術を用いて種々の二重特異性融合タンパク質を作製できる。一つの形態においては、二重特異性融合タンパク質は一価であり、例えば一つの抗原に対して一つの結合部位を有するscFvと第二の抗原に対して一つの結合部位を有するFabフラグメントからなる。もう一つの形態においては、この二重特異性融合タンパク質は二価であり、例えば一つの抗原に対して一つの結合部位を有するIgGおよび第二の抗原に対して二つの結合部位を有する二つのscFvからなる。
【0033】
「イヌ化またはネコ化抗体」は、モノクローナル抗体の齧歯類(または他の種)の相補性決定領域が、齧歯類(または他の種)免疫グロブリンのH鎖およびL鎖可変領域から、それぞれイヌまたはネコの免疫グロブリン可変ドメイン中に移されている組換えタンパク質である。
【0034】
「家庭動物」は、ウマ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ラマ、アルパカおよびブタのような大型動物、ならびにコンパニオン動物を含む。好ましい実施形態においては、過程動物はウマである。
【0035】
「コンパニオン動物」は、ペットとして飼われる動物を含む。これらは主としてイヌおよびネコであるが、モルモット、ハムスター、ラットおよびフェレットのような小型齧歯類、またサルのような類人霊長類も含まれる。好ましい実施形態において、コンパニオン動物とはイヌまたはネコである。
【0036】
3.キメラ、ヒト化およびヒト抗体をはじめとするモノクローナル抗体の調製
モノクローナル抗体(MAb)は特定の抗原に対する抗体の均質な集団であり、その抗体はただ一種の抗原結合部位を含んでなり、抗原決定基上のただ一つのエピトープに結合する。特定の抗原に対する齧歯類モノクローナル抗体は、当業者に公知の方法により得ることができる。例えば、Kohler and Milstein, Nature 256:495(1975), and Coligan et al.(eds.), CURRENT PROTOCOLS IN IMMUNOLOGY, VOL. 1, pages 2.5.1-2.6.7(John Wiley & Sons 1991)[以下「Coligan」]を参照されたい。要するに、マウスに抗原を含む組成物を注射し、血清サンプルを採取して抗体産生を確認し、脾臓を摘出してBリンパ球を採取し、そのBリンパ球と骨髄腫細胞を融合させてハイブリドーマを作製し、そのハイブリドーマをクローニングし、抗原に対する抗体を産生する陽性クローンを選択し、抗原に対する抗体を産生するクローンを培養して、その抗体をハイブリドーマ培養物から単離することによりモノクローナル抗体を得ることができる。
【0037】
MAbは、ハイブリドーマ培養液から種々の十分確立された技術により単離、精製できる。このような単離技術としては、Aタンパク質セファロースを用いるアフィニティークロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィーおよびイオン交換クロマトグラフィーが挙げられる。例えば、Coligan at pages 2.7.1-2.7.12およびpages 2.9.1-2.9.3.を参照されたい。また、Baines et al.,"Purification of Immunogloburin G (IgG),"in METHODS IN MOLECULAR BIOLOGY, VOL. 10, pages 79-104(The Humana Press, Inc. 1992)も参照されたい。
【0038】
免疫原に対する最初の抗体生成の後に、その抗体の配列を決定し、次いで組換え技術により作製することができる。マウス抗体および抗体フラグメントのヒト化およびキメラ化は当業者に周知である。例えば、ヒト化モノクローナル抗体は、マウス免疫グロブリンのHおよびL可変鎖由来のマウス相補性決定領域をヒト可変ドメインに移し、次いでフレームワーク領域中のヒト残基をマウスの対応物で置換することにより作製する。ヒト化モノクローナル抗体由来の抗体成分を使用することによってマウス定常領域の免疫原性に伴う潜在的な問題が防げられる。
【0039】
マウス免疫グロブリン可変ドメインのクローニングのための一般的な技術は、例えば、引用することによりその全開示内容を本明細書の一部とする、Orlandi et al., Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 86:3833 (1989)に記載されている。キメラ抗体構築のための技術は当業者に周知である。例えば、Leung et al., Hybridoma 13:469 (1994)は、LL2モノクローナル抗体、抗CD22抗体のVおよびVドメインをコードするDNA配列をそれぞれのヒトκおよびIgG1定常領域ドメインと組み合わせることでLL2キメラをいかに作製したかが記載されている。この公報はまた、LL2のL鎖およびH鎖可変領域のヌクレオチド配列、VおよびVをそれぞれ提供する。ヒト化MAbを産生する技術は、例えばJones et al., Nature 321:522 (1986), Riechmann et al., Nature 332:323 (1988), Verhoeyen et al., Science 239:1534 (1988), Carter et al., Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 89:4285 (1992), Sandhu, Crit. Rev. Biotech. 12:437 (1992),およびSinger et al., J Immun. 150:2844 (1993)に記載されており、これらはそれぞれ引用することによりその全開示内容を本明細書の一部とする。
【0040】
この目的で、本発明は、CD74抗原と結合し、診断および治療法に使用できるキメラ、ヒト化およびヒト抗体ならびにそのフラグメントを記載する。ヒト化抗体および抗体フラグメントは、「Anti-CD20 Antibodies And Fusion Proteins Thereof And Methods Of Use」と題された米国仮出願、弁理士管理番号18733/1073、米国仮出願番号60/356,132、米国仮出願番号60/416,232および弁理士管理番号18733/1155に記載されており、クラスIII抗癌胎児性抗原抗体(抗CEA抗体)である、米国出願第5,874,540号に開示されているようなhMN−14抗体;米国出願番号10/116,116に開示されているようなMu−9抗体;米国仮出願番号60/399,707に記載されているようなAFP抗体;「Monoclonal Antibody cPAM4」と題された米国仮出願、弁理士管理番号18733/1102に記載されているようなPAM4抗体;米国仮出願番号60/360,229に記載されているようなRS7抗体;および米国特許第5,789,554号および同第6,187,287号および米国出願番号09/741,843および同09/988,013に開示されているようなCD22抗体があり、これらは総て、引用することによりその全開示内容を本明細書の一部とする。
【0041】
キメラ抗体は、齧歯類抗体のような一種の動物由来のCDRを含む可変ドメインを含む組換えタンパク質であり、抗体分子の残りの部分、すなわち定常ドメインはヒト抗体に由来する。従って、キメラモノクローナル抗体はまた、キメラmAbの可変ドメイン中のマウスFR配列を、一以上の異なるヒトFRと置換することによりヒト化することができる。具体的には、マウスCDRをマウス免疫グロブリンのHおよびL可変鎖からヒト抗体の相当する可変ドメインに転移させる。マウスCDRをヒトFRに単に転移させるだけでは、しばしば抗体親和性の低下または損失さえ起こるために、マウス抗体の元の親和性を回復させるためにはさらなる修飾が必要となる。これは、そのエピトープに対して良好な結合親和性を有する抗体を得るために、FR領域の一以上のいくつかのヒト残基をマウスの相当部分と置換することにより達成することができる。例えば、Tempest et al., Biotechnology 9:266(1991)およびVerhoeyen et al., Science 239:1534 (1988)を参照。さらに、ヒト化、キメラおよびヒトMAbの特定のエピトープに対する親和性は、CDRの突然変異誘発により高めることができ、その結果、より低用量の抗体が突然変異前の高用量の低親和性MAbと同等の有効性を示しうる。例えば、WO0029584A1を参照されたい。
【0042】
本発明の抗体を作製するもう一つの方法は、トランスジェニック家畜の乳汁中での産生によるものがある。例えば、Colman, A., Biochem. Soc. Symp., 63:141-147,1998; 米国特許第5,827,690号を参照されたい。なお、双方とも引用することによりその全開示内容を本明細書の一部とする。対をなす免疫グロブリンH鎖およびL鎖をコードするDNAセグメントをそれぞれ含む二つのDNA構築物体が調製される。このDNAセグメントを、哺乳類上皮細胞中で優先的に発現されるプロモーター配列を含む発現ベクターへクローニングする。例としては、限定されるものではないが、ウサギ、ウシおよびヒツジのカゼイン遺伝子、ウシα−ラクトグロブリン遺伝子、ヒツジβ−ラクトグロブリン遺伝子、およびマウスホエー酸タンパク質遺伝子由来のプロモーターが挙げられる。好ましくは、挿入されたフラグメントの3’側に哺乳類特異的遺伝子由来の同族ゲノム配列が隣接する。これによりポリアデニル化部位および転写安定化配列が提供される。この発現カセットを受精した哺乳類の卵子の前核に同時注入し、次いでレシピエント雌の子宮に着床させて妊娠させる。出産後、サザン分析により導入遺伝子の存在に関してその後代をスクリーニングする。抗体が存在するためには、H鎖およびL鎖双方の遺伝子が同時に同じ細胞で発現されなければならない。トランスジェニック雌動物から得た乳汁を当技術分野で公知の標準的な免疫学的方法により、該抗体または抗体フラグメントの存在と機能に関して分析する。この抗体は当技術分野で公知の標準的方法により、乳汁から精製することができる。
【0043】
ヒト化、キメラまたはヒト抗CD74抗体との組み合わせ療法のための、本発明の完全なヒト抗体、すなわちヒト抗CD74 MAb、または抗CD22、抗CD19、抗CD23、抗CD20、または抗CD21 MAbなどの他のヒト抗体は、トランスジェニック非ヒト動物から得ることができる。例えば、引用することによりその全開示内容を本明細書の一部とするMendez et al., Nature Genetics, 15: 146-156 (1997); 米国特許第5,633,425号を参照されたい。例えば、ヒト抗体はヒト免疫グロブリン遺伝子座を有するトランスジェニックマウスから回収することができる。このマウス体液性免疫系は、内在する免疫グロブリン遺伝子を不活化し、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を導入することによりヒト化する。ヒト免疫グロブリン遺伝子座は極めて複雑で、多数の離散セグメントを含み、それはヒトゲノムのほぼ0.2%を占める。トランスジェニックマウスが十分な抗体レパートリーを産生できることを保証するには、ヒトH鎖およびL鎖遺伝子座の大きな部分をマウスゲノムに導入しなければならない。これは、生殖系構造においてヒトH鎖またはL鎖免疫グロブリン遺伝子座のいずれかを含む酵母人工染色体(YAC)の形成に始まる段階的なプロセスで達成される。それぞれの挿入配列はほぼ1Mbのサイズなので、YAC構築体は免疫グロブリン遺伝子座の重複フラグメントの相同的組換えを必要とする。一つはH鎖遺伝子座、もう一つはL鎖遺伝子座を含む二つのYACを、YAC含有酵母スフェロプラストとマウス胚幹細胞の融合を通じてマウスに個々に導入する。次いで、胚幹細胞クローンをマウス胚盤胞にマイクロインジェクションする。得られたキメラ雄動物を、生殖細胞系を通じてYACを伝達する能力に関してスクリーニングし、マウス抗体産生を欠損しているマウスと交配させる。一種はヒトH鎖遺伝子座を含み、もう一種はヒトL鎖遺伝子座を含む二種のトランスジェニック系統を繁殖させ、免疫感作に応答してヒト抗体を産生する作出する。
【0044】
二重特異性mAbを産生するさらなる最新の方法は、付加的なシスチン残基を有し、より一般的な免疫グロブリンイソ型よりも強く架橋結合している人工的組換えmAbを含む。例えば、FitzGerald et al., Protein Eng. 10(10):1221-1225, 1997を参照されたい。もう一つのアプローチは、二以上の異なる単鎖抗体または必要とされる二重特異性を有する抗体フラグメントセグメントを連結する組換え融合タンパク質を設計することである。例えば、Coloma et al., Nature Biotech. 15:159-163, 1997を参照されたい。分子工学技術を用いて様々な二重特異性融合タンパク質を作製できる。一つの形態においては、二重特異性融合タンパク質は一価であり、例えば一つの抗原に対する単一結合部位を有するscFvと第二の抗原に対する単一結合部位を有するFabフラグメントからなる。もう一つの形態においては、二重特異性融合タンパク質は二価であり、例えば、一つの抗原に対する二つの結合部位を有するIgGと、第二の抗原に対する二つの結合部位を有する二つのscFvからなる。
【0045】
二以上の異なる単鎖抗体または抗体フラグメントを連結している二重特異性融合タンパク質も、同様の方法で作製する。種々の融合タンパク質を作製するためには組換え法を用いることができる。例えば、ヒト化モノクローナル抗CD74抗体由来のFabフラグメントおよびマウス抗diDTPA由来のscFvを含んでなる融合タンパク質を作製することができる。GGGSのような柔軟なリンカーは、scFvを抗CD74抗体のH鎖の定常領域に結合させる。あるいは、scFvは別のヒト化抗体のL鎖の定常領域に結合させることができる。H鎖FdのscFvとのフレーム内結合のために必要な適当なリンカー配列は、PCR反応を介してVλおよびVκドメインに導入される。次いでscFvをコードするDNAフラグメントをCH1ドメインをコードするDNA配列を含むス足場ベクターに連結する。これにより得られたscFv−CH1構築物を切り出して、抗CD74抗体のVH領域をコードするDNA配列を含むベクターに連結する。得られたベクターは、二重特異性融合タンパク質の発現のための哺乳類細胞のような適当な宿主細胞をトランスフェクトするために使用することができる。
【0046】
4.抗体フラグメントの生産
特定のエピトープを認識する抗体フラグメントは、公知の技術により作製し得る。抗体フラグメントは、F(ab')、Fab'、Fab、Fv、sFvなどの抗体の抗原結合部分である。他の抗体フラグメントとしては、限定されるものではないが、抗体分子のペプシン消化により作製できるF(ab)'フラグメント、およびF(ab')フラグメントのジスルフィド結合を還元することにより作製できるFab'フラグメントが挙げられる。あるいは、所望の特異性を有するモノクローナルFab’フラグメントの迅速で容易な同定を可能にするFab’発現ライブラリーを構築することができる(Huse et al., 1989, Science, 246:1274-1281)。本発明は抗体および抗体フラグメントを包含する。
単鎖Fv分子(scFv)は、VLドメインおよびVHドメインを含んでなる。このVLおよびVHドメインは組み合わさって標的結合部位を形成している。これらの二つのドメインはペプチドリンカー(L)によりさらに共有結合されている。scFv分子は、VLドメインがscFv分子のN末端部である場合、VL−L−VH、またはVHドメインがscFv分子のN末端部である場合、VH−L−VLと表される。scFv分子の作製方法、および好適なペプチドリンカーの設計方法は、米国特許第4,704,692号、同第4,946,778号、R. Raag and M. Whitlow,"Single Chain Fvs."FASEB Vol 9:73-80(1995)およびR. E. Bird and B. W. Walker,"Single Chain Antibody Variable Regions,"TIBTECH, Vol 9:132-137(1991)を参照されたい。これらの参照文献は引用することにより本明細書の一部とされる。
【0047】
抗体フラグメントは、全長抗体のタンパク質加水分解、またはフラグメントをコードするDNAの、大腸菌(E.coli)もしくは他の宿主中での発現により調製することができる。抗体フラグメントは、常法により全長抗体のペプシンまたはパパイン消化により得られる。例えば、抗体フラグメントは抗体をペプシンで酵素的に切断して、F(ab’)と表される5Sフラグメントを与えることにより作製することができる。このフラグメントはチオール還元剤、および所望によりジスルフィド結合の切断により生じるスルフヒドリル基の遮断基を用いてさらに切断することができ、3.5SFab’一価フラグメントが得られる。あるいは、パパインを用いる酵素的切断により二つの一価Fabフラグメントと一つのFcフラグメントが直接的に生じる。これらの方法は、例えば、Goldenbergの米国特許第4,036,945号および同第4,331,647号、ならびにそこに含まれる参照文献に記載されており、これらの特許は引用することによりその全開示内が本明細書の一部とされる。また、Nisonoff et al., Arch Biochem. Biophys. 89:230(1960); Porter, Biochem. J 73:119(1959)、Edelman et al., in METHODS IN ENZYMOLOGY VOL. 1, page 422(Academic Press 1967)、および Coligan at pages 2.8. 1-2.8.10および2.10.-2. 10.4.も参照されたい。
【0048】
抗体フラグメントのもう一つの形態は、単一の相補性決定領域(CDR)をコードするペプチドである。CDRは抗体の可変領域のセグメントであり、抗体が結合するエピトープに対し相補的な構造であり、残りの可変領域よりもさらに変化に富んでいる。従って、CDRはしばしば超過変領域と呼ばれる。可変領域は三つのCDRを含んでなる。CDRペプチドは、対象となる抗体のCDRをコードする遺伝子を構築することにより得られる。かかる遺伝子は、例えば抗体産生細胞のRNAから可変領域を合成するためのポリメラーゼ連鎖反応を用いて調製される。例えば、Larrick et al., Methods:A Companion to Methods in Enzymology 2:106(1991); Courtenay-Luck,"Genetic Manipulation of Monoclonal Antibodies, "in MONOCLONAL ANTIBODIES:PRODUCTION, ENGINEERING AND CLINICAL APPLICATION, Ritter et al.(eds.), pages 166-179 (Cambridge University Press 1995);およびWard et al.,"Genetic Manipulation and Expression of Antibodies, "in MONOCLONAL ANTIBODIES:PRINCIPLES AND APPLICATIONS, Birch et al., (eds.), pages 137-185(Wiley-Liss, Inc. 1995)を参照されたい。
【0049】
H鎖を分離して一価のL−H鎖フラグメントを形成し、さらにフラグメントを切断するような抗体を切断する他の方法、または他の酵素学的、化学的または遺伝学的技術も、それらのフラグメントが無傷の抗体により認識される抗原に結合する限り用いてよい。
【0050】
5.抗CD74抗体
本発明の抗CD74 mAbはCD74抗原に対して特異性を有する特定のマウスCDRを含む。本発明の抗CD74 mAbはヒト化、キメラまたはヒトmAbであり、それらはマウス抗CD74 mAbであるマウスLL1mAbのCDRのアミノ酸を含む。ヒト化抗CD74モノクローナル抗体(mAb)またはそのフラグメントは、アミノ酸配列RSSQSLVHRNGNTYLHを含むCDR1、アミノ酸配列TVSNRFSを含むCDR2、およびアミノ酸配列SQSSHVPPTを含むCDR3を含んでなるマウス抗CD74 mAbのL鎖可変領域のCDRを含んでなる。さらに、このヒト化抗CD74モノクローナル抗体またはそのフラグメントは、アミノ酸配列NYGVNを含むCDR1、アミノ酸配列WINPNTGEPTFDDDFKGを含むCDR2、およびアミノ酸配列SRGKNEAWFAYを含むCDR3を含んでなるマウス抗CD74 mAbのH鎖可変領域のCDRを含んでなる、ヒト化mAbのH鎖可変領域を含んでなる。さらに、このヒト化mAbはCD74に対する特異性を実質的に保持しており、すなわち、Bリンパ球、単球および組織球、ならびにB細胞リンパ腫および白血病、ならびに骨髄腫細胞などの細胞の表面上に存在するクラスII MHC不変鎖IiはこれらのmAb、そのフラグメントまたはmAb複合体の 迅速なインターナリゼーションと異化作用をもたらす。
【0051】
一つの態様によれば、本発明によるCD74抗体は、マウス抗CD74(mLL1)の相補性決定領域(CDR)とヒト抗体のフレームワーク(FR)領域を含んでなるL鎖およびH鎖可変領域を含んでなる、ヒト化抗CD74モノクローナル抗体(mAb)またはそのフラグメントであり、このヒト化mAbのL鎖可変領域は、アミノ酸配列RSSQSLVHRNGNTYLHを含むCDR1、アミノ酸配列TVSNRFSを含むCDR2、およびアミノ酸配列SQSSHVPPTを含むCDR3を含んでなるマウス抗CD74 mAbのL鎖可変領域のCDRを含んでなり、かつ、このヒト化mAbのH鎖可変領域は、アミノ酸配列NYGVNを含むCDR1、アミノ酸配列WINPNTGEPTFDDDFKGを含むCDR2、およびアミノ酸配列SRGKNEAWFAYを含むCDR3を含んでなるマウス抗CD74 mAbのH鎖可変領域のCDRを含んでなる。H鎖およびL鎖可変領域のマウスCDRはそれぞれ図1Aおよび1Bに示されている。ヒトFRのL鎖およびH鎖可変領域は、マウスmAbの対応するFRから少なくとも一つのアミノ酸を置換することにより、CD74に対する特異性を維持するように改変すればよい。より具体的には、特異性を維持するためにはヒト化抗CD74のヒトFRにおいて、図3BのcLL1Vk配列のマウスL鎖可変領域のアミノ酸残基2、3、4、46、87および100、ならびに図3AのcLL1VH配列のマウスH鎖可変領域アミノ酸残基5、37、38、46、68、91および93で示されるマウスmAb由来の一以上の特異的アミノ酸が維持されていればよい。
【0052】
ある好ましい態様によれば、図4AのH鎖可変領域と図4BのL鎖可変領域を含むヒト化抗CD74 mAb、ヒト化LL1(hLL1)またはそのフラグメントが本発明に開示される方法で用いられる。より具体的には、このヒト化抗CD74 mAbまたはそのフラグメントはヒト抗体のL鎖およびH鎖定常領域またはその一部を含む。9.あるいは、本明細書に記載のヒト化抗CD74 mAbまたはそのフラグメントのいずれか一つのヒト化抗CD74 mAbまたはそのフラグメントはヒト化IgG1でありうる。
【0053】
ヒト化抗CD74 mAbが好ましいが、本発明ではキメラ抗CD74(cCD74)mAbまたはそのフラグメントも意図される。ある態様によれば、キメラ抗CD74(cCD74)モノクローナル抗体(mAb)またはそのフラグメントは、アミノ酸配列RSSQSLVHRNGNTYLHを含むCDR1、アミノ酸配列TVSNRFSを含むCDR2、およびアミノ酸配列SQSSHVPPTを含むCDR3を含んでなるマウス抗CD74 mAbのL鎖可変領域を含んでなる。さらなる態様によれば、キメラ抗CD74モノクローナル抗体またはそのフラグメントは、アミノ酸配列NYGVNを含むCDR1、アミノ酸配列WINPNTGEPTFDDDFKGを含むCDR2、およびアミノ酸配列SRGKNEAWFAYを含むCDR3を含んでなるマウス抗CD74 mAbのH鎖可変領域を含んでなる。またさらなる態様によれば、キメラ抗CD74 mAbは、マウス抗CD74 mAbの相補性決定領域(CDR)とマウス抗CD74 mAbのフレームワーク(FR)領域とを含んでなるL鎖およびH鎖可変領域とヒト抗体のL鎖およびH鎖定常領域とを含んでなり、キメラmAbのL鎖可変領域は、アミノ酸配列RSSQSLVHRNGNTYLHを含むCDR1、アミノ酸配列TVSNRFSを含むCDR2、およびアミノ酸配列SQSSHVPPTを含むCDR3を含んでなるマウス抗CD74 mAbのL鎖可変領域のCDRを含んでなり、かつ、キメラmAbのH鎖可変領域は、アミノ酸配列NYGVNを含むCDR1、アミノ酸配列WINPNTGEPTFDDDFKGを含むCDR2、およびアミノ酸配列SRGKNEAWFAYを含むCDR3を含んでなるマウス抗CD74 mAbのH鎖可変領域のCDRを含んでなる。好ましいキメラ抗CD74 mAbまたはそのフラグメントは図2AのH鎖可変領域と図2BのL鎖可変領域を含んでなる。
【0054】
また、本発明には、アミノ酸配列RSSQSLVHRNGNTYLHを含むCDR1、アミノ酸配列TVSNRFSを含むCDR2、およびアミノ酸配列SQSSHVPPTを含むCDR3を含んでなるヒト抗CD74 mAbのL鎖可変領域のCDRを含んでなるヒト抗CD74(huCD74)モノクローナル抗体(mAb)またはそのフラグメントも含まれる。さらに、アミノ酸配列NYGVNを含むCDR1、アミノ酸配列WINPNTGEPTFDDDFKGを含むCDR2、およびアミノ酸配列SRGKNEAWFAYを含むCDR3を含んでなるマウス抗CD74 mAbのH鎖可変領域のCDRを含んでなるヒトmAbのH鎖可変領域を含んでなるヒト抗CD74(huCD74)モノクローナル抗体(mAb)またはそのフラグメントも含まれる。より好ましくは、本発明は、ヒト抗体のL鎖およびH鎖可変領域ならびに定常領域を含んでなるヒト抗CD74(huCD74)モノクローナル抗体(mAb)またはそのフラグメントを開示し、ここで、このヒト抗CD74 mAbのL鎖可変領域のhuCD74 CDRは、アミノ酸配列RSSQSLVHRNGNTYLHを含むCDR1、アミノ酸配列TVSNRFSを含むCDR2、およびアミノ酸配列SQSSHVPPTを含むCDR3を含んでなり、かつ、このヒトmAbのH鎖可変領域は、アミノ酸配列NYGVNを含むCDR1、アミノ酸配列WINPNTGEPTFDDDFKGを含むCDR2、およびアミノ酸配列SRGKNEAWFAYを含むCDR3を含んでなるマウス抗CD74 mAbのH鎖可変領域のCDRを含んでなる。
【0055】
本発明のヒト、キメラまたはヒト化抗CD74 mAbの各々は好ましくはIgG1であり、ここでその定常領域は好ましくはヒトIgG1であるが、このIgG1はそれぞれヒトIgG1、キメラIgG1またはヒト化IgG1と呼ばれることがある。特に、ヒト化CD74 mAb、hLLIはヒトIgG1由来の定常ドメインとヒンジ領域を有する。好ましくは、このキメラおよびヒトLL1 mAbの双方は同一の定常ドメインとヒンジ領域を有する。しかし、IgG1の定常領域がヒトIgG2a、IgG3またはIgG4のヒト定常領域で置換されるように改変を行うことができる。
【0056】
本発明はまた、アミノ酸配列RSSQSLVHRNGNTYLHを含むCDR1、アミノ酸配列TVSNRFSを含むCDR2、およびアミノ酸配列SQSSHVPPTを含むCDR3を含んでなるマウス抗CD74 mAbのL鎖可変領域のCDRを含んでなるマウス抗CD74モノクローナル抗体またはそのフラグメントも対象とする。さらに、アミノ酸配列NYGVNを含むCDR1、アミノ酸配列WINPNTGEPTFDDDFKGを含むCDR2、およびアミノ酸配列SRGKNEAWFAYを含むCDR3を含んでなるマウス抗CD74 mAbのH鎖可変領域のCDRを含んでなるマウス抗CD74モノクローナル抗体またはそのフラグメントも対象とする。より好ましくは、マウス抗CD74(mLL1)の相補性決定領域(CDR)とマウス抗CD74抗体のフレームワーク(FR)領域とを含んでなるマウス抗CD74モノクローナル抗体またはそのフラグメントも対象とし、ここで、該マウスmAbのL鎖可変領域は、アミノ酸配列RSSQSLVHRNGNTYLHを含むCDR1、アミノ酸配列TVSNRFSを含むCDR2、およびアミノ酸配列SQSSHVPPTを含むCDR3を含んでなり、かつ、マウスmAbのH鎖可変領域は、アミノ酸配列NYGVNを含むCDR1、アミノ酸配列WINPNTGEPTFDDDFKGを含むCDR2、およびアミノ酸配列SRGKNEAWFAYを含むCDR3を含んでなる。
【0057】
本発明のヒト、キメラ、ヒト化またはマウス抗CD74 mAbまたはそのフラグメントの各々は次のような特性の一以上を有する:抗原CD74と特異的に結合し、それと反応性があり、そのCD74に対する結合はCD74に特異的であるか、またはCD74と反応性のある抗体またはそのフラグメントによってブロックされること;Rajiリンパ腫培養細胞によってインターナライズされること;およびマウスIgG1 mAbのFcと反応性のあるヤギ抗血清と架橋した場合にRaji培養細胞のアポトーシスを誘導すること。
【0058】
ヒト、キメラまたはヒト化抗CD74 mAbのフラグメントはF(ab’)、Fab、scFv、Fv、またはF(ab’)、Fab、scFvもしくはFvのL鎖およびH鎖の一部または全部を用いた融合構築物などのフラグメントであってよい。これらのフラグメントがCD74と結合することが重要である。
【0059】
6.多重特異性抗体および多価抗体
組み合わせ療法で使用するための本明細書に記載の抗CD74抗体、ならびに異なる特異性を有する他の抗体はまた、多重特異性抗体(CD74エピトープまたは抗原に対して少なくとも一つの結合部位、およびCD74上の別のエピトープまたは別の抗原に対して少なくとも一つの結合部位を含んでなる)、ならびに多価抗体(同じエピトープまたは抗原に対して複数の結合部位を含んでなる)としても作製することができ、あるいは抗体は多価および多重特異性の双方とすることもできる。
【0060】
本発明の好ましい抗体融合タンパク質は本明細書に記載のヒト化、キメラ、ヒトまたはマウス抗CD74 mAbまたはそのフラグメントの4以上のFvまたはFabを含む。さらに、別の好ましい抗体融合タンパク質は、本明細書に記載のヒト化、キメラ、ヒトまたはマウス抗CD74 mAbまたはそのフラグメントのmAbまたはそのフラグメントの一以上のFvまたはFab、ならびに例えば、B細胞悪性腫瘍の治療のためのCD19、CD20またはCD22などのB細胞系抗原から選択される腫瘍マーカーなどCD74発現細胞によって発現され、ならびに黒色腫などにおけるS100のような他の種の悪性腫瘍を発症させる他のCD74陽性細胞によって発現される、CD74抗原ではない腫瘍細胞マーカーに特異的な別の抗原に特異的な抗体に由来する一以上のFvまたはFabを含む。さらに、この腫瘍細胞マーカーはHLA−DR、CD30、CD33、CD52、MUC1およびTACからなる群から選択される非B細胞系抗原であってもよい。
【0061】
本発明はまた、本発明による抗CD74 mAbもしくはそのフラグメント、または抗体融合タンパク質が癌マーカー物質、感染性病原生物の表面上のエピトープまたは血液もしくは体液中の有害なものに特異的な抗体または抗体フラグメントに結合されている二重特異性または多重特異性抗体も提供する。本発明による二重特異性および多重特異性抗体は、その二重特異性抗体が病原性生物など有害なものに対する少なくとも一つの特異性と、引用することによりその全開示内容を本明細書の一部とする、「Therapeutic Using a Bispecific Antibody」と題された、1999年5月19日出願の米国出願番号09/314,135に詳細に記載されているようなCD74、クラスII HLA不変鎖(Ii)に対する少なくとも一つの特異性を有する場合、種々の有害物質のクリアランスを誘導する方法に特に有用である。
【0062】
本発明はさらに、標的細胞マーカーに特異的に結合する少なくとも一つの結合領域、および標的化可能な複合体に特異的に結合する少なくとも一つの他の結合領域を有する、二重特異性抗体または抗体フラグメントを提供する。標的化可能な複合体は、二重特異性抗体または抗体フラグメントの少なくとも一つの結合領域により認識される少なくとも一つのエピトープを含んでなるか、または担持する、担体部分を含んでなる。
【0063】
上記のような二重特異性抗体および抗体フラグメントを作製するためには、様々な組換え法を使用できる。
【0064】
本発明では、抗CD74多価抗体もまた意図される。この多価標的結合タンパク質は、第一および第二のポリペプチドの結合により構築される。第一のポリペプチドは、好ましくは免疫グロブリンL鎖可変領域ドメインである第一の免疫グロブリン様ドメインに共有結合された第一の単鎖Fv分子を含んでなる。第二のポリペプチドは、好ましくは免疫グロブリンH鎖可変領域ドメインである第二の免疫グロブリン様ドメインに共有結合された第二の単鎖Fv分子を含んでなる。第一および第二の単鎖Fv分子は各々、標的結合部位を形成し、第一および第二の免疫グロブリン様ドメインは結合して第三の標的結合部位を形成する。
【0065】
VL−L−VH立体配置を有する単鎖Fv分子(ただしLはリンカー)は、VH−L−VL立体配置を有する別の単鎖Fv分子と結合し、二価の二量体を形成しうる。この場合、第一のscFvのVLドメインおよび第二のscFv分子のVHドメインは結合して一つの標的結合部位を形成し、一方、第一のscFvのVHドメインおよび第二のscFvのVLドメインは結合してもう一方の標的結合部位を形成する。
【0066】
本発明の他の態様は、非共有結合して三つの結合部位を形成し、そのうちの二つが一つの標的に対して親和性を有し、第三の結合部位は作製可能で診断薬および/または治療薬のための担体に結合しているハプテンに親和性を有する、二つの異種ポリペプチド鎖を含んでなるCD74二重特異性、三価のターゲッティングタンパク質である。好ましくは、その結合タンパク質は二つのCD20結合部位および一つのCD22結合部位を有する。この二重特異性、三価のターゲッティング薬剤は二つの異なるscFvを有し、第一のscFvは短いリンカーによりもう一つの抗体のVドメインに連結された一つの抗体由来の二つのVドメインを含み、第二のscFvは短いリンカーによりもう一つの抗体のVドメインに連結された第一の抗体由来の二つのVドメインを含む。VおよびVドメインから多価、多重特異的薬剤を作製するこれらの方法によれば、一つのV鎖と一つのV鎖の非共有結合により多価および多重特異的ないずれの薬物でも作製できるという方法で、宿主生物中でDNAプラスミドから合成された個々の鎖が完全なVドメイン(V鎖)または完全なVドメイン(V鎖)から構成されることになる。例えば、三価の三重特異性薬剤の形成では、V鎖は三つのVドメインのアミノ酸配列からなり、それぞれのドメインは異なる特異性の抗体に由来し、種々の長さのペプチドリンカーにより連結され、またV鎖は相補的Vドメインからなり、V鎖に使用されたものと類似のペプチドリンカーにより連結されている。抗体のVおよびVドメインは逆平行に結合しているため、本発明の好ましい方法では、V鎖のVドメインはV鎖のVドメインとは逆の順序で配置されている。
【0067】
6.ダイアボディー、トリアボディーおよびテトラボディー
本発明による抗CD74抗体はまた、ダイアボディーとも呼ばれる、機能性二重特異性単鎖抗体(bscAb)の調製に使用でき、組換え法により哺乳類細胞中で作製できる。例えば、引用することにより本明細書の一部とされる、Mack et al., Proc. Natl. Acad. Sci., 92:7021-7025,1995を参照されたい。例えば、bscAbは組換え法によりグリシン−セリンリンカーを介して二つの単鎖Fvフラグメントを結合することで作製する。問題の二つの抗体のVL鎖(V)およびVH鎖(V)ドメインは、標準的PCR法により単離される。次に、それぞれのハイブリドーマから得られたcDNAのVおよびVは二段階の融合PCRにおいて結合されて単鎖フラグメントを形成する。第一のPCRステップでは(Gly−Serリンカーを導入し、第二のステップではVおよびVアンプリコンを結合させる。次いでそれぞれの単鎖分子を細菌発現ベクターへクローニングする。増幅後に単鎖分子の一つを切り出して問題の第二の単鎖分子を含む他のベクターへサブクローニングする。得られたbscAbフラグメントを真核細胞発現ベクターへサブクローニングする。機能性タンパク質の発現は、そのベクターをチャイニーズハムスター卵巣細胞へトランスフェクトすることにより得られる。二重特異性融合タンパク質も同様の方法で調製される。二重特異性単鎖抗体および二重特異性融合タンパク質は本発明の範囲内に含まれる。
【0068】
例えば、ヒト化、キメラ、またはヒト抗CD74モノクローナル抗体を、抗原特異的ダイアボディー、トリアボディー(triabody)、およびテトラボディー(tetrabody)を作製するために使用することができる。この単一特異性ダイアボディー、トリアボディー、およびテトラボディーは選択的に標的抗原に結合し、分子上の結合部位数が増加すると標的細胞に対する親和性が高まり、所望の位置における滞留時間が長くなるのが観察される。ダイアボディーに関しては、5つのアミノ酸残基のリンカーによりヒト化CD74 mAbのVKポリペプチドに連結されたヒト化CD74 mAbのVポリペプチドを含んでなる二つの鎖が利用される。各々の鎖はヒト化CD74ダイアボディーの1/2を形成する。トリアボディーの場合、ヒト化CD74 mAbのVポリペプチドにリンカーは介さずに連結されたヒト化CD74 mAbのVポリペプチドを含んでなる三つの鎖が利用される。各々の鎖はhCD74トリアボディーの1/3を形成する。
【0069】
本明細書に記載の二重特異性ダイアボディーは最終的に、その後の診断薬または治療薬の特異的送達のために、CD74陽性腫瘍をプレターゲッティングするために使用する。これらのダイアボディーは標的抗原に選択的に結合し、親和性を高め、所望の位置における滞留時間を延長する。さらに、抗原と結合していないダイアボディーは体内から迅速に排泄され、正常組織の曝露は最小限に抑えられる。診断薬および治療薬としては、同位元素、薬物、毒素、サイトカイン、ホルモン、酵素、オリゴヌクレオチド、増殖因子、複合体、放射性核種および金属が挙げられる。例えば、核磁気共鳴イメージング(MRI)にはガドリニウム金属が用いられる。放射性核種の例としては、225Ac、18F、68Ga、67Ga、90Y、86Y、111In、131I、125I、123I、99mTc、94mTc、186Re、188Re、177Lu、62Cu、64Cu、67Cu、212Bi、213Bi、32P、11C、13N、15O、76Br、および211Atが挙げられる。特に診断薬用としてはエネルギー範囲が60〜4,000keV、治療薬用としてはエネルギー範囲が60〜700keVの他の放射性核種も診断薬および治療薬として利用可能である。
【0070】
より最近では、二重特異性を有する四価タンデムダイアボディー(tandabと呼ばれる)も報告されている(Cochlovius et al., Cancer Researchm (2000) 60:4336-4341)。この二重特異性tandabは同一の二つのポリペプチドの二量体であり、それぞれが二つの異なる抗体の四つの可変ドメインを含み(VH1、VL1、VH2、VL2)、これは自己会合に際してそれぞれの二つの異なる特異性のための二つの可能性のある結合部位の形成を容易にする方向に連結されている。
【0071】
7.結合多価および多重特異性抗CD74抗体
本発明による他の態様は、結合多価抗CD74抗体である。第一または第二のポリペプチドのN末端またはC末端のいずれかに、さらなるアミノ酸残基を付加してもよい。このさらなるアミノ酸残基は、ペプチドタグ、シグナルペプチド、サイトカイン、酵素(例えば、プロドラッグ活性化酵素)、ホルモン、シュードモナス外毒素のようなペプチド毒素、ペプチド薬、細胞傷害性タンパク質または他の機能性タンパク質を含んでよい。本明細書において機能性タンパク質とは、生物学的機能を有するタンパク質である。
【0072】
ある一つの態様によれば、薬物、毒素、放射性化合物、酵素、ホルモン、細胞傷害性タンパク質、キレート剤、サイトカインおよび他の機能性薬剤を多価標的結合タンパク質に、好ましくはこの多価標的結合タンパク質のアミノ酸残基の側鎖、例えばアミン、カルボキシル、フェニル、チオールまたはヒドロキシル基に対する共有結合を介して結合させてもよい。
【0073】
例えば、ジイソシアネート、ジイソチオシアネート、ビス(ヒドロキシスクシンイミド)エステル、カルボジイミド、マレイミド−ヒドロキシスクシンイミドエステル、グルタルアルデヒドなど、種々の慣用されるリンカーをこの目的のために用いてよい。多価タンパク質への薬剤の結合は、該タンパク質のその標的に対する結合特異性または親和性に有意な影響しないことが好ましい。本明細書において機能性薬剤とは、生物学的機能を有する薬剤である。好ましい機能性薬剤は細胞傷害剤である。
【0074】
さらに他の態様によれば、二重特異性抗体によって指示される治療薬またはプロドラッグポリマーのin vivo標的への送達は、放射性核種の二重特異性抗体送達と組み合わせることが可能なので、化学療法と免疫療法を組み合わせることができる。各々の治療法は標的化可能な複合体と結合させて同時に投与することができ、また、核種は第一の標的化可能な複合体の一部として投与し、薬物は後のステップで第二の標的化可能な複合体の一部として投与することができる。
【0075】
もう一つの態様によれば、細胞傷害剤は高分子担体と結合させ、次いでその高分子担体を多価標的結合タンパク質を結合させればよい。この方法に関しては、引用することによりその全開示内容を本明細書の一部とする、Ryser et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 75:3867-3870, 1978, 米国特許第4,699,784号および同第4,046,722号を参照されたい。複合体化は多価結合タンパク質の結合特異性または親和性に有意な影響を及ぼさないことが好ましい。
【0076】
8.ヒト化、キメラおよびヒト抗体の治療および診断への使用
本明細書に記載の本発明のヒト化、キメラおよびヒトモノクローナル抗体、すなわち抗CD74 mAbおよび他のMAbは、治療法および診断法での使用に好適である。従って本発明は、本発明によるヒト化、キメラおよびヒト抗体の裸の抗体としての単独投与、または多様式療法として、治療薬とは結合させないが、投与計画に従った一時的投与を意図する。免疫複合体は、診断薬または治療薬と結合された、CD74と結合する本発明に記載のヒト化、キメラ、またはヒトCD74 mAbの少なくとも一つのmAbもしくはそのフラグメント、またはその融合タンパク質を含んでなる抗体成分を含んでなる複合体である。
【0077】
裸の抗CD74 mAbの効力は、裸の抗体を一以上の他の裸の抗体、すなわちCD4、CD5、CD8、CD14、CD15、CD19、CD21、CD22、CD23、CD25、CD30、CD33、CD37、CD38、CD40、CD40L、CD46、CD52、CD54、CD80、CD126、B7、MUC1、Ia、テネイシン、HM1. 24、またはHLA−DR、好ましくは成熟HLA−DR二量体などの特定の抗原に対するmAbによって、あるいは薬物、毒素、免疫調節剤、ホルモン、酵素、治療用放射性核種などの治療薬と結合させた抗CD74またはこれら挙げられた抗原に対する抗体の一以上の免疫複合体によって、あるいはmAbと同時または逐次または指示された投与計画に従って投与される薬物、毒素、免疫調節剤、ホルモン、酵素、治療用放射性核種などの一以上の治療薬によって補完することにより増強させることができる。好ましいB細胞結合抗原としては、ヒトCD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD46、CD52、CD74、CD80およびCD5抗原と同等なものが挙げられる。好ましいT細胞抗原としては、ヒトCD4、CD8およびCD25(IL−2受容体)抗原と同等なものが挙げられる。HLA−DR抗原と同等なものは、B細胞およびT細胞性疾患の双方の治療に使用できる。特に好ましいB細胞抗原はヒトCD19、CD22、CD21、CD23、CD74、CD80およびHLA−DR抗原と同等なものである。特に好ましいT細胞抗原は、ヒトCD4、CD8およびCD25抗原と同等なものである。CD46は癌細胞表面上の抗原であり、補体依存性溶解(CDC)を阻害する。
【0078】
好ましい悪性黒色腫関連抗原はMART−1、TRP−1、TRP−2およびgp100と同等なものである。さらに、好ましい多発性黒色腫関連抗原はMUC1およびCD38と同等なものである。
【0079】
さらに、本発明は、B細胞リンパ腫および他の疾病または疾患における診断および治療のための免疫複合体の投与も意図する。本明細書に記載のように、免疫複合体は抗体成分および診断薬もしくは治療薬を担持するペプチドをはじめとする、治療薬または診断薬を含んでなる分子である。免疫複合体は、抗体成分の免疫反応性を保持しており、すなわち抗体部分の複合体形成前と複合体形成後の同族抗原に対する結合能力はほぼ同等か、わずかに低下している。
【0080】
多種多様な診断薬および治療薬が、本発明による抗体と有利にも結合できる。本明細書に列挙された治療薬は、上記のように裸の抗体とは別に投与しても有用である薬剤である。治療薬としては、例えば、ビンカアルカロイド、アントラサイクリン、エピトフィロトキシン、タキサン、抗代謝剤、アルキル化剤、抗生物質、Cox−2阻害剤、抗有糸分裂剤、抗脈管形成剤、およびアポトーシス剤、特にドキソルビシン、メトトレキサート、タキソール、CPT−11、カンプトテカン、およびこれらまたは他の種類の抗癌剤由来の他のものなどの化学療法薬が挙げられる。免疫複合体および抗体融合タンパク質の調製に有用な他の癌化学療法薬としては、ナイトロジェンマスタード、アルキルスルホネート、ニトロソウレア、トリアゼン、葉酸類似体、COX−2阻害剤、ピリミジン類似体、プリン類似体、プラチナ錯体、ホルモンなどが挙げられる。好適な化学療法薬は、REMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCES,19th Ed.(Mack Publishing Co. 1995およびGOODMAN AND GILMAN'S THE PHARMACOLOGICAL BASIS OF THERAPEUTICS, 7th Ed. (MacMillan Publishing Co. 1985)、ならびにこれらの刊行物の改訂版に記載されている。実験薬のような他の好適な化学療法薬も、当業者に公知である。
【0081】
これに加えて、DTPA、DOTA、TETAまたはNOTAのようなキレート剤または好適なペプチドに、蛍光分子のような検出可能な標識または、重金属もしくは放射性核種のような細胞傷害剤を結合させることができる。例えば、治療上有用な免疫複合体は、光活性薬または色素を抗体混成物に結合させることにより得られる。蛍光色素のような蛍光組成物、および他の色素原、または可視光線に感受性のあるポルフィリンのような色素は好適な光線を病巣に当てることにより病巣の検出および治療に使用されてきた。治療においては、これは光照射、光療法または光線力学療法と呼ばれている(Jori et al. (eds.), PHOTODYNAMIC THERAPY OF TUMORS AND OTHER DISEASES(Libreria Progetto 1985); van den Bergh, Chem. Britain 22:430(1986))。さらに、光療法を行うためにはモノクローナル抗体が光活性化色素と結合させられてきた。Mew et al., J.Immunol. 130:1473(1983);前掲, Cancer Res. 45:4380 (1985); Oseroff et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83:8744 (1986);前掲, Photochem. Photobiol. 46:83 (1987); Hasan et al., Prog. Clin. Biol. Res. 288:471 (1989); Tatsuta et al., Lasers Surg. Med.9:422 (1989); Pelegrin et al., Cancer 67:2529(1991)。しかし、これらの初期の研究には、特に抗体フラグメントまたはサブフラグメントの使用を伴った内視鏡療法の適用は含まれていなかった。従って本発明は、光活性薬または色素を含んでなる免疫複合体の治療的使用を意図する。
【0082】
放射性および非放射性薬剤の診断薬としての使用もまた、本発明により意図される。好適な非放射性診断薬は、核磁気共鳴イメージング、コンピューター断層撮影法または超音波診断法に好適な造影剤である。核磁気イメージング剤としては、本発明の抗体とともに用いる場合には、例えば、2−ベンジル−DTPAならびにそのモノメチルおよびシクロヘキシル類似体を含む金属キレート剤と錯化したマンガン、鉄およびガドリニウムのような非放射性金属が挙げられる。引用することによりその全開示内容を本明細書の一部とする、2001年10月10日出願の米国出願番号09/921,290を参照されたい。
【0083】
さらに、放射性標識抗体または免疫複合体は、診断イメージングに有用なγ線を放射する放射性同位元素または陽電子放射体を含んでよい。特にエネルギー範囲が60〜4,000keVの好適な放射性同位元素としては、131I、123I、124I、86Y、62Cu、64Cu、111In、67Ga、68Ga、99mTc、94mTc、18F、11C、13N、15O、75Brなどが挙げられる。例えば、造影の目的で18F、68Gaおよび94mTcなどのような陽電子放射体を開示する、「Labeling Targeting Agents with Gallium-68」と題された発明者G. L.Griffiths and W. J. McBrideの米国特許出願(米国仮出願番号60/342,104)(引用することによりその全開示内容を本明細書の一部とする)を参照されたい。
【0084】
シュードモナス外毒素のような毒素も複合化しうるし、あるいは本発明の抗CD74抗体の抗体融合タンパク質の治療薬部分を形成することができる。このような複合体または他の融合タンパク質の調製に適切に使用される他の毒素としては、リシン、アブリン、リボヌクレアーゼ(RNアーゼ)、DNアーゼ I、ブドウ球菌内毒素−A、アメリカヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、ゲロニン、ジフテリア毒、シュードモナス外毒素、およびシュードモナス内毒素が挙げられる。例えば、Pastan et al., Cell 47:641(1986)、およびGoldenberg, CA-A Cancer Journal for Clinicians 44:43(1994)を参照されたい。本発明で用いるのに好適なさらなる毒素は当業者に公知であり、引用することによりその全開示内容を本明細書の一部とする米国特許第6,077,499号に開示されている。
【0085】
サイトカインのような免疫調節剤もまた結合させうるし、あるいは抗体融合タンパク質の治療薬部分を形成することができ、あるいは本発明のヒト化抗CD20抗体とともに投与してもよい。本発明に好適なサイトカインとしては、限定されるものではないが、後述のようにインターフェロンおよびインターロイキンが挙げられる。
【0086】
また、本発明によれば、クラスIまたはクラスII MHC抗原ペプチドと共有結合させて抗体複合体とした、ヒト化、キメラまたはヒトCD74 mAabまたはそのフラグメントまたはその抗体融合タンパク質を含んでなるワクチンも意図され、このワクチンは癌または感染症を有する患者を治療するために用いられる。抗体複合体がCD74マーカーを含む細胞によってインターナライズされると、樹状細胞のような抗原提示細胞により、mabまたはそのフラグメントと結合している大きなペプチドまたはタンパク質からのタンパク質分解消化されてクラスIまたはクラスII抗原ペプチドが放出される。この抗体複合体は、mAbまたはそのフラグメントをコードするcDNAと抗原ペプチドまたはタンパク質をコードするcDNAとを融合させ、細菌、酵母または哺乳類細胞でその融合タンパク質を発現させることにより生産される。本発明によるヒト化、キメラまたはヒトCD74 mAbまたはそのフラグメントまたは抗体融合タンパク質を含む抗体複合体は、引用することによりその全開示内容を本明細書の一部とする、1995年12月22日出願の「Use of Immunoconjugates to Enhance the Efficacy of Multi-Stage Cascade Boosting Vaccines」と題された、係属中の米国出願番号08/577,106に記載されている治療法で特に有用である。本発明のヒト化抗CD74 mAbは実施例5のマウスLL1の代わりとして特に有用である。
【0087】
9.免疫複合体の調製
本発明のいずれの抗体または抗体融合タンパク質も、一種以上の治療薬または診断薬と結合させることができる。一般に、一種の治療薬または診断薬を各々抗体または抗体フラグメントに結合させるが、二種以上の治療薬または診断薬を同じ抗体または抗体フラグメントに結合させることもできる。本発明による抗体融合タンパク質は二以上の抗体またはそのフラグメントを含んでなり、この融合タンパク質を含んでなる抗体各々が治療薬または診断薬を含みうる。また、一以上の抗体融合タンパク質の抗体には、二種以上の治療薬または診断薬を結合させることができる。さらに、この治療薬は同じである必要はなく、異なる治療薬であってもよい。例えば、同じ融合タンパク質に薬物と放射性同位元素を結合させることができる。特に、IgGは131Iで放射性標識し、薬物に結合させることができる。この131Iは、IgGのチロシンに組み込むことができ、薬物はIgGリジンのεアミノ酸に結合させることができる。治療薬および診断薬はいずれも、還元SH基および炭化水素側鎖に結合させることもできる。
【0088】
本発明による二重特異性抗体はプレターゲッティング法において有用であり、二種の治療薬または二種の診断薬を被検体に送達する好ましい方法を提供する。米国出願番号09/382,186は、二重特異性抗体を用いるプレターゲッティング法を開示しており、そこでは二重特異性抗体を125Iで標識して被検体に送達し、次に99mTcで標識した二価のペプチドを送達する。送達の結果、125Iおよび99mTcに関して腫瘍/正常組織比は良好となることから、二つの診断用放射性同位元素の有用性が示されている。抗体および抗体融合タンパク質を標識するには公知の治療薬または診断薬のいずれの組み合わせでも使用できる。mAb複合体の抗体成分の結合特異性、治療薬または診断薬の有効性および抗体のFc部分のエフェクター活性は、複合体の標準的な試験により判定することができる。
【0089】
治療薬または診断薬は、ジスルフィド結合形成を介して還元された抗体成分のヒンジ領域に結合することができる。あるいは、このようなペプチドはN−スクシニル3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)のようなヘテロ二官能性架橋剤を用いて抗体成分に結合させることができる。Yu et al., Int. J. Cancer 56 : 244(1994)を参照されたい。このような結合に関する一般的な技術は当技術分野で周知である。例えば、Wong, CHEMISTRY OF PROTEIN CONJUGATION AND CROSS-LINKING (CRC Press 1991); Upeslacis et al.,"Modification of Antibody by Chemical Methods, "in MONOCLONAL ANTIBODIES: PRINCIPLES AND APPLICATIONS, Birch et al.(eds), pages 187-230(Wiley-Liss, Inc. 1995); Price, "Production and Characterization of Synthetic Peptide-Derived Antibodies, "in MONOCLONAL ANTIBODIES: PRODUCTION, ENGINEERING AND CLINICAL APPLICATION, Ritter et al.(eds.), pages 60-84(Cambridge University Press 1995)を参照されたい。あるいは、治療薬または診断薬は抗体のFc領域の炭化水素部分を介して結合させることもできる。この炭化水素基は、チオール基に結合している同じペプチドの付加量を増大させるためにも使用できるし、あるいはこの炭化水素部分は異なるペプチドに結合するためにも使用できる。
【0090】
抗体の炭水化物部分を介して抗体成分にペプチドを結合させる方法は当業者に周知である。例えば、Shih et al., Int. J. Cancer 41: 832 (1988); Shih et al., Int. J. Cancer 46: 1101 (1990);およびShih et al., 米国特許第5,057,313号を参照されたい(なお、これらは総て、引用することによりその全開示内容を本明細書の一部とする)。一般的な方法としては、炭水化物部分が酸化された抗体成分を、少なくとも一つの遊離アミン基を有し、かつ、複数のペプチドが付加された担体ポリマーと反応させることを含む。この反応により最初のシッフ塩基(イミン)結合が生じ、これは第二級アミンへの還元により安定化され最終の複合体を形成しうる。
【0091】
免疫複合体の抗体成分として用いられる抗体が抗体フラグメントである場合には、Fc領域は存在しない。しかし、炭化水素部分を全長抗体または抗体フラグメントのL鎖可変領域へ導入することが可能である。例えば、Leung et al., J. Immunol. 154:5919 (1995); Hansen et al., 米国特許第5,443,953号(1995), Leung et al., 米国特許第6,254,868号を参照されたい(なお、これらは総て引用することにより本明細書の一部とする)。この操作された炭化水素部分は、治療薬または診断薬を結合させるために用いられる。
【0092】
10.医薬上許容される賦形剤
被検体に送達されるヒト化、キメラおよびヒト抗CD74 mAbは、mAb単独、免疫複合体、融合タンパク質から構成されるか、または一以上の医薬上好適な賦形剤、一以上の付加的成分またはこれらのある組み合わせを含みうる。
本発明による免疫複合体または裸の抗体は、医薬上有用な組成物を調製するための公知の方法に従って調剤され、この免疫複合体または裸の抗体は混合物中で医薬上好適な賦形剤と結合する。滅菌リン酸緩衝生理食塩水は医薬上好適な賦形剤の一例である。他の好適な賦形剤は当業者に周知である。例えば、Ansel et al., PHARMACEUTICAL DOSAGE FORMS AND DRUG DELIVERY SYSTEMS, 5th Edition (Lea & Febiger 1990)、およびGennaro(ed.), REMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCES, 18th Edition (Mack Publishing Company 1990)およびそれらの改訂版を参照されたい。
【0093】
本発明による免疫複合体または裸の抗体は、例えばボーラス注射または点滴による静脈内投与のために調剤できる。注射製剤は、例えばアンプルのような単位投与形、または保存剤を加えた複数回投与用容器で提供することができる。この組成物は油性または水性ビヒクル中の懸濁液、溶液またはエマルションの形態をとってもよく、沈殿防止剤、安定剤および/または分散剤のような処方剤を含むことができる。あるいは、その活性成分は使用前に例えば滅菌パイロジェンフリー水のような好適なビヒクルで構成するための粉末形態であってもよい。
【0094】
治療用もしくは診断用複合体または裸の抗体の作用時間を制御するために、その他の製薬法を用いてもよい。徐放性製剤は、免疫複合体または裸の抗体と複合体形成するか、または免疫複合体または裸の抗体を吸着するポリマーの使用を通じて調製することができる。例えば、生体適合性ポリマーとしては、ポリ(エチレン−co−酢酸ビニル)マトリックスおよびステアリン酸二量体とセバシン酸の無水共重合体マトリックスが挙げられる。Sherwood et al., Bio/Technology 10:1446(1992)を参照されたい。このようなマトリックスからの免疫複合体または抗体の放出速度は、免疫複合体または抗体の分子量、マトリックス内の免疫複合体、抗体の量、および分散している粒子の大きさによって異なる。Saltzman et al., Biophys. J. 55:163(1989); Sherwood et al.,前掲を参照されたい。他の固形投与形は、Ansel et al., PHARMACEUTICAL DOSAGE FORMS AND DRUG DELIVERY SYSTEMS, 5th Edition(Lea & Febiger 1990)、およびGennaro(ed.), REMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCES, 18th Edition (Mack Publishing Company 1990)およびその改定版に記載されている。
【0095】
また、免疫複合体、抗体融合タンパク質または裸の抗体は哺乳類に皮下投与または他の非経口経路でも投与できる。さらに、投与は点滴でも単回または複数回のボーラス注射によってもよい。一般に、ヒトにおいては投与される免疫複合体、融合タンパク質または裸の抗体の用量は、患者の年齢、体重、身長、性別、全身の健康状態、および以前の病歴といった因子によって異なる。通常、単回の静脈点滴として約1mg/kg〜20mg/kgの範囲の用量の免疫複合体、抗体融合タンパク質または裸の抗体をレシピエントに与えるのが好ましいが、状況によってはより低い、またはより高い用量を投与してもよい。この用量は必要に応じで繰り返してもよく、例えば、1週間に1回の投与を4〜10週間、好ましくは1週間に1回の投与を8週間、そしてより好ましくは、1週間に1回の投与を4週間繰り返してもよい。また、1週間おきの投与を数ヶ月といったように低い頻度で投与してもよい。用量および日程を適宜調節して、種々の非経口経路により投与してよい。
治療目的では、治療上有効な量の免疫複合体、融合タンパク質または裸の抗体を哺乳類に投与する。ヒト以外の動物被検体もまた意図されるが、本発明の好適な被検体は通常ヒトである。抗体製剤は、投与される量が生理学上有意であれば、「治療上有効量」で投与されると言われる。薬物は、その存在が受容哺乳類の生理に検出可能な変化をもたらす場合に、生理学上有意である。特に、本発明の抗体製剤は、その存在が抗腫瘍応答を誘起するか、または自己免疫疾患の徴候および症候を緩和する場合に、生理学上有意である。また、生理学上有意な効果は、受容哺乳類における体液性および/または細胞性免疫応答を誘起することでありうる。
【0096】
11.治療方法
本発明はCD74発現悪性腫瘍の治療のための基本組成物としての本発明の裸の抗CD74抗体の使用を意図し、これらの疾病または疾患は免疫調節障害症、自己免疫疾患、臓器移植拒絶症、および移植片対宿主病からなる群から選択される。CD74発現悪性腫瘍は固形腫瘍、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、その他のB細胞悪性腫瘍およびT細胞悪性腫瘍からなる群から選択される。固形腫瘍は黒色腫、癌腫および肉腫からなる群から選択され、癌腫は腎臓癌、肺癌、腸癌、胃癌および黒色腫からなる群から選択される。B細胞悪性腫瘍は非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、無痛性B細胞リンパ腫、急速進行性B細胞リンパ腫、慢性リンパ性白血病、急性リンパ性白血病、および多発性骨髄腫、B細胞疾患、およびその他の疾患からなる群から選択される。特に本明細書に記載の組成物は、種々の自己免疫性ならびに無痛性B細胞リンパ腫、急速進行性B細胞リンパ腫、慢性リンパ性白血病、急性リンパ性白血病、多発性骨髄腫、およびワルデンシュトレームマクログロブリン血症の治療に特に有用である。例えば、ヒト化抗CD74抗体成分および免疫複合体を用いて無痛性および急速進行性非ホジキンリンパ腫の双方を治療することができる。
【0097】
より具体的には、本発明は、医薬上許容される担体と、本発明の少なくとも一種のヒト化、キメラまたはヒト抗CD74 mAbまたはそのフラグメントまたはその抗体融合タンパク質を含んでなる治療組成物を、B細胞関連悪性腫瘍を有する被験体に投与することを含んでなる、B細胞悪性腫瘍の治療方法を意図し、ここで、B細胞悪性腫瘍はリンパ腫または白血病である。より具体的には、B細胞悪性腫瘍は非ホジキンリンパ腫、無痛型B細胞リンパ腫、急速進行性B細胞リンパ腫、多発性骨髄腫、慢性リンパ性白血病、または急性リンパ性白血病である。CD74 mAbまたはそのフラグメントは20〜2000mgの用量で静脈または筋肉内投与される。本方法はさらに、B細胞悪性腫瘍を治療するのに用いられる少なくとも一種の治療薬を投与する前、投与する際、または投与した後に抗CD74 mAbまたはそのフラグメントを投与することを含んでなる。この治療薬は裸の抗体、免疫調節剤、ホルモン、細胞傷害剤、酵素、少なくとも一種の免疫調節剤、放射性標識、ホルモン、酵素もしくは細胞傷害剤と結合させた抗体、またはそれらの組み合わせを含んでなる。免疫調節剤は好ましくはサイトカインであり、細胞傷害剤は薬物または毒素である。裸の抗体として組み合わせなしに、または補助的免疫調節剤として投与される抗体は医薬上許容されるビヒクル中に調剤され、CD4、CD5、CD8、CD14、CD15、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD30、CD33、CD37、CD38、CD40、CD40L、CD46、CD52、CD54、CD80、CD126、B7、MUC1、Ia、HM1.24、テネイシン、およびHLA−DR、好ましくは成熟HLA−DR二量体と反応性がある。
【0098】
本発明はまた、リンパ腫または白血病以外のCD74抗原陽性悪性腫瘍を有する被験体に、医薬上許容される担体と本発明で開示される少なくとも一種の抗CD74 mAbまたはそのフラグメントまたはその抗体融合タンパク質を含んでなる治療組成物を投与することを含んでなる悪性腫瘍を治療することを意図する。抗CD74 mAbまたはそのフラグメントまたはその抗体融合タンパク質は20〜2000mgの用量で静脈または筋肉内投与される。さらに、抗CD74 mAbまたはそのフラグメントまたはその抗体融合タンパク質は、悪性腫瘍の治療に用いられる少なくとも一種の治療薬を投与する前、投与する際、または投与した後に投与される。上記のような、また、本明細書を通じた治療薬は、抗体、免疫調節剤、ホルモン、細胞傷害剤、少なくとも一種の免疫調節剤、放射性標識、酵素、ホルモン、細胞傷害剤、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはそれらの組み合わせと結合させた抗体を含んでなり、この免疫調節剤はサイトカインであり、細胞傷害剤は薬物または毒素である。B細胞悪性腫瘍ではない悪性腫瘍を治療するために、医薬上許容されるビヒクル中に調剤して抗体を抗CD74 mAbまたはそのフラグメントと組み合わせて投与する場合、それは治療する悪性腫瘍を含む細胞によって発現されるCD74以外の腫瘍マーカーと反応性がなければならない。悪性黒色腫関連抗原に対して投与しうる抗体の例としては、MART−1、TRP−1、TRP−2およびgap100と反応性のある抗体が挙げられる。さらに、多発性骨髄腫関連に対する好ましい抗体としては、MUC1およびCD38に反応性があるものが挙げられる。
【0099】
治療用組成物は少なくとも一種のヒト化、キメラまたはヒトモノクローナル抗CD74抗体を単独で、あるいは他のヒト化、キメラ、もしくはヒト抗体などの他の抗体、または治療薬または免疫調節剤と組み合わせて含む。特に完全なヒト抗体との組み合わせ療法も意図され、これは上記に示される方法によって製造される。
【0100】
また、裸の、あるいは同じもしくは異なるエピトープまたは抗原と結合させた抗体を本発明の一以上の抗体と組み合わせてもよい。例えば、ヒト化、キメラまたはヒト裸抗CD74抗体を他の裸のヒト化、裸のキメラまたは裸のヒト抗CD74 mAbと組みあわせてもよく、ヒト化、キメラまたはヒト裸抗CD74抗体を抗CD74免疫複合体と組みあわせてもよく、裸の抗CD74抗体を抗CD22放射性複合体と組みあわせてもよく、あるいは、抗CD22裸抗体を同位元素、一以上の化学治療薬、サイトカイン、酵素、毒素またはそれらの組み合わせと結合させたヒト化、キメラまたはヒト抗CD74抗体と組みあわせてもよい。ヒト化、キメラまたはヒトCD20抗体と毒素もしくは免疫調節剤との融合タンパク質、あるいは少なくとも二つの異なるB細胞抗体(例えば、CD74とCD22 mAb、CD20 mAbまたはCD19 mAb)の融合タンパク質も本発明において使用できる。米国特許第6,306,393号の継続出願である、「Immunotherapy of B-Cell Malignancies Using Anti-CD-22 Antibodies」と題された、2001年10月1日出願の、係属中の米国出願番号09/965,796を参照されたい(両者とも引用することによりその全開示内容を本明細書の一部とし、他の裸の抗体と組み合わせた抗CD22抗体により治療を開示している)。上記ですでに挙げたようなB細胞疾患に関連する少なくとも二つの異なる抗原を標的とする多くの異なる抗体の組み合わせが、裸の抗体として、または一部は裸で一部は治療薬もしくは免疫調節剤と結合したものとして、あるいは単に細胞傷害剤などの他の治療薬または放射線と組み合わせて構成することができる。
【0101】
本明細書において「免疫調節剤」としては、サイトカイン、幹細胞増殖因子、腫瘍壊死因子(TNF)などのリンホトキシン、ならびにインターロイキン(例えば、インターロイキン−1(IL−1)、IL−2、IL−3、IL−6、IL−10、IL−12、IL−18およびIL−21)、コロニー刺激因子(例えば、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)および顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF))、インターフェロン(例えば、インターフェロン−α、−βおよび−γ)、「S1因子」と呼ばれる幹細胞増殖因子、エリスロポエチンおよびトロンボポエチンなどの造血因子、またはそれらの組み合わせが挙げられる。好適な免疫調節剤部分の例としては、IL−1、IL−2、IL−3、IL−6、IL−10、IL−12、IL−18、L−21、およびそれらの組み合わせ、ならびにインターフェロン−γ、TNF−αなどが挙げられる。あるいは、被検体に裸の抗CD74抗体を投与してもよく、別にサイトカインを投与することもでき、これは裸の抗CD74抗体を投与する前、投与する際または投与した後に投与することができる。上記に述べたように、抗CD74抗体はまた、免疫調節剤と結合させてもよい。この免疫調節剤はまた、異なる抗原と結合する一以上の抗体からなるハイブリッド抗体と結合させてもよい。
【0102】
本発明の多様式療法はさらに、裸の抗体、融合タンパク質の形態で、または免疫複合体として抗CD22、抗CD19、抗CD21、抗CD20、抗CD80、抗CD23、抗CD46またはHLA−DR、好ましくは成熟HLA−DR二量体抗体の投与を補った裸の抗CD74抗体による免疫療法も含む。これらの抗体としては、これらの抗原決定基上の少なくとも一つのエピトープを認識するポリクローナル、モノクローナル、キメラ、ヒトまたはヒト化抗体が挙げられる。抗CD19および抗CD22抗体は当業者に公知である。例えば、引用することによりそれらの全開示内容を本明細書の一部とする、Ghetie et al., Cancer Res. 48:2610 (1988); Hekman et al., Cancer Immunol. Immunother. 32:364 (1991); Longo, Curr. Opin. Oncol. 8:353 (1996)、ならびに米国特許第5,798,554号および同第6,187,287号を参照されたい。
【0103】
多様式療法の別の形態では、被検体に裸の抗CD74抗体および/または免疫複合体を、標準的な癌の化学療法と組み合わせて投与する。例えば、「CVB」(1.5g/mシクロホスファミド、200〜400mg/mエトポシド、および150〜200mg/mカルムスチン)は、非ホジキンリンパ腫の治療に用いられる投与計画である。Patti et al., Eur. J. Haematol. 51:18 (1993)を参照されたい。その他の好適な組み合わせ化学療法計画も当業者に周知である。例えば、Freedman et al., "Non-Hodgkin's Lymphomas," CANCER MEDICINE, VOLUME 2, 3rd Edition, Holland et al. (eds. ), pages 2028-2068 (Lea & Febiger 1993)を参照されたい。示したように、中悪性度非ホジキンリンパ腫(NHL)の治療のための第一世代化学療法計画としては、C−MOPP(シクロホスファミド、ビンクリスチン、プロカルバジンおよびプレドニソン)およびCHOP(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチンおよびプレドニソン)が挙げられる。有用な第二世代の化学療法計画としては、m−BACOD(メトトレキサート、ブレオマイシン、ドキソルビシン、シクロホスファミド、ビンクリスチン、デキサメタゾンおよびロイコボリン)があり、好適な第三世代の計画としては、MACOP−B(メトトレキサート、ドキソルビシン、シクロホスファミド、ビンクリスチン、プレドニソン、ブレオマイシンおよびロイコボリン)がある。さらなる有用な薬物としては、フェニルブチレートおよびブロスタチン−1がある。好ましい多様式療法では、化学療法薬とサイトカインの双方を本発明の抗体、免疫複合体または融合タンパク質と同時に投与する。サイトカイン、化学療法薬および抗体または免疫複合体はいずれの順序で投与してもよく、一緒に投与してもよい。
【0104】
ある好ましい態様によれば、NHLは、連続4週間毎週または隔週200〜400mg/mの用量でヒト化抗CD74抗体の週1回を4回点滴し(2〜6時間かけて静脈投与)、必要があれば次の月/年にわたって繰り返す。また好ましくは、NHLは上記のように半月後と4回の点滴、同じ日に、抗CD74モノクローナル抗体の点滴前、点滴中または点滴後に1時間にわたる静脈点滴として投与する360mg/mの用量のエプラツズムAb(抗CD22ヒト化抗体)と組み合わせて治療する。いっそう好ましくは、NHLはイットリウム−90(Y90の用量は何週間または何ヶ月という期間で一回以上の注入として5〜35mCi/mの間である)などの治療用同位元素で放射性標識したCD22 mAbの二回以上の注入と組み合わせて、上記のような抗CD74抗体の1週1回の4回で処置する。
【0105】
さらに、本発明による治療組成物は異なる非ブロッキングCD74エピトープに向けられた裸のモノクローナル抗CD74抗体の混合物またはハイブリッド分子を含みうる。よって、本発明は、少なくとも二つのCD74エピトープと結合するモノクローナル抗CD74抗体の混合物を含んでなる治療組成物を意図する。さらに、本明細書に記載の治療組成物はCDR配列の異なる抗CD74抗体の混合物を含みうる。
【0106】
裸の抗CD74抗体はB細胞リンパ腫および自己免疫疾患の治療のための基本治療組成物であるが、このような抗体療法の効力は、この裸の抗体に、IFNα、IFNβおよびIFNγをはじめとするインターフェロン;IL−1、IL−2、IL−3、IL−6、IL−10、IL−12、IL−15、IL−18、IL−21およびそれらの組み合わせを含むインターロイキン;ならびにG−CSFおよびGM−CSFをはじめとするサイトカインのような免疫調節剤などの添加剤を補うことにより増強することができる。よって、CD74抗体は、混合物として(個別に、または所定の投与計画で投与される)または抗CD74抗体との複合体もしくは融合タンパク質として抗体およびサイトカインと組み合わせることができるだけでなく、薬物またはアンチセンスオリゴヌクレオチドとの組み合わせとしても投与することができる。例えば抗CD74抗体は4薬化学療法計画としてのCHOPと組み合わせてもよい。さらに、裸の抗CD74抗体は裸の抗CD22抗体、およびNHL療法用の薬物組み合わせとしてのCHOPまたはフルダラビンと組み合わせてもよい。これらの補助的治療組成物は抗CD74抗体の投与前、投与と同時または投与後に投与することができる。裸の抗CD74 mAbはまた、アンチセンスbclオリゴヌクレオチドと組み合わせてもよい。
【0107】
上記で述べたように、本発明の抗体はB細胞リンパ腫および白血病、ならびにその他のB細胞の疾病または疾患、ならびに罹患した、または関連する悪性細胞がCD74と反応性がある他の悪性腫瘍を治療するために使用できる。例えば、抗CD74抗体は、免疫不全症、および急性特発性血小板減少性紫斑病および慢性特発性血小板減少性紫斑病などの免疫媒介性血小板減少症、皮膚筋炎、シェーグレン症候群、多発性硬化症、シドナム舞踏病、重症筋無力症、全身性紅斑性狼瘡、狼瘡腎炎、リウマチ熱、多腺性症候群、水疱性類天瘡、真性糖尿病、ヘノッホ−シェーンライン紫斑病、溶血性連鎖球菌感染後腎炎、結節性紅斑らい、高安動脈炎、アジソン病、慢性関節リウマチ、類肉腫症、潰瘍性大腸炎、多形性紅斑、IgA腎症、結節性多発性動脈炎、強直性脊椎炎、グッドパスチャー症候群、閉塞性血栓血管炎、原発性胆汁性肝硬変、橋本甲状腺炎、甲状腺中毒症、強皮症、慢性活動性肝炎、多発性筋炎/皮膚筋炎、多発性軟骨炎、尋常性天疱瘡、ウェジナー肉芽腫、膜性腎症、筋萎縮性側索硬化症、脊髄ろう、巨細胞動脈炎/多筋痛、悪性貧血、急速進行性糸球体腎炎、および繊維性肺胞炎といった第III種自己免疫疾患をはじめとするB細胞関連免疫疾患の治療に使用できる。
【0108】
特に、本発明のヒト化、キメラまたはヒト抗CD74 mAbまたはそのフラグメントまたはその抗体融合タンパク質はこれらの自己免疫疾患の一以上を有する被験体に投与される。本発明による抗CD74抗体は、引用することによりその全開示内容を本明細書の一部とする、「Immunotherapy of Autoimmune Disorders using Antibodiess that Target B-Cells」と題された、2000年6月9日出願の係属中の米国出願番号09/590,284に開示されている自己免疫疾患の治療法に特に有用である。好ましくは、この抗CD74 mAbまたはそのフラグメントまたはその抗体融合タンパク質は20〜2000mgの用量で静脈または筋肉内投与される。さらに、この抗CD74 mAbまたはそのフラグメントまたはその抗体融合タンパク質は、この疾患の治療に用いられる少なくとも一種の治療薬を投与する前、投与する際、または投与した後に投与される。上記のような、また、本明細書を通じた治療薬は、抗体、免疫調節剤、ホルモン、酵素、細胞傷害剤、少なくとも一種の免疫調節剤、放射性標識、ホルモン、酵素、細胞傷害剤、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはそれらの組み合わせと結合させた抗体を含んでなり、この免疫調節剤はサイトカインであり、細胞傷害剤は薬物または毒素である。裸の抗体として組み合わせなしに、または補助的免疫調節剤として投与される抗体は医薬上許容されるビヒクル中に調剤され、CD4、CD5、CD8、CD14、CD15、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD30、CD33、CD37、CD38、CD40、CD40L、CD46、CD52、CD54、CD80、CD126、B7、MUC1、Ia、HM1.24、テネイシン、および成熟HLA−DR、好ましくは成熟HLA−DR二量体と反応性がある。
【0109】
リンパ腫、白血病、骨髄腫、他のCD74発現悪性腫瘍、免疫不全症、自己免疫疾患およびそれらの組み合わせからなる群から選択される疾病の治療のためのさらなる方法は、医薬上許容される担体と本発明の少なくとも一種の抗CD74 mAbまたはそのフラグメントまたはその抗体融合タンパク質を含んでなる治療組成物を投与することを含んでなり、ここで、少なくとも一種の治療薬が化学結合または遺伝子融合により、mAbまたはそのフラグメントまたはその抗体融合タンパク質のFvまたはFabに結合されている。この治療薬は免疫調節剤、放射性標識、ホルモン、酵素、または細胞傷害剤であってよく、免疫調節剤はサイトカインであり、細胞傷害剤は薬物または毒素である。
【0110】
抗CD74抗体はまた、CD74抗原を発現する細胞においてアポトーシスを誘導しうる。この誘導の証拠は本発明の実施例で支持されている。他の抗体でも、架橋したCD20 MAbのIgG1−Fcと反応性のあるFc受容体を有するリンパ系細胞を用いてアポトーシスが誘導できたことが実証されている。Shan et al., Cancer Immunol. Immunother. 48 (12):673-683 (2000)を参照されたい。さらに、キメラCD20 MAbの集合体、すなわちホモポリマーがアポトーシスを誘導したことも報告されている。Ghetie et al., Blood 97(5):1392-1398 (2000)およびGhetie et al., Proc. Natl. Acad. Sci USA 94(14):7509-7514 (1997)を参照されたい。
【0111】
B細胞のCD74表面抗原に特異的な抗体を哺乳類被験体に注射することができ、これは次に正常B細胞と悪性B細胞の両者のCD74細胞表面抗原と結合する。哺乳類被験体としてはヒトおよびイヌやネコなどのペットをはじめとする家庭内動物が挙げられる。本発明による抗CD74 mAb、すなわちヒト化、キメラ、ヒト、イヌ化およびネコ化、さらにはマウス抗CD74 mAbは、CD74抗原に対して交差反応性のある種が存在する場合、非ヒト哺乳類被検体を治療するのに使用できる。ヒトにおいて免疫原性のあるマウスmAbは通常、非ヒト哺乳類被検体では免疫原性が低い。CD74表面抗原に結合している抗CD74抗体は腫瘍性B細胞の破壊と枯渇をもたらす。
【0112】
12.診断方法
本発明ではまた、リンパ腫、白血病、骨髄腫、その他のCD74発現悪性腫瘍、免疫不全症、自己免疫疾患、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも一つの疾病を有するかどうか診断される、または疑いのある被験体の疾病を診断する方法を提供し、その方法は医薬上許容される担体と少なくとも一種の抗CD74 mAbまたはそのフラグメントまたはその抗体融合タンパク質を含んでなる、診断上有効量の診断用複合体を該被験体に投与すること(ここで、診断薬は化学結合によりmAbもしくはそのフラグメント、またはその抗体融合タンパク質のFvもしくはFabと結合されている)、およびその診断薬を検出することを含んでなる。本発明に有用な診断薬は、放射性同位元素(この放射性同位元素の光量子はラジオシンチグラフィーまたはPETにより検出される)、またはMRIにより検出できる金属、またはリポソームもしくはガス充填リポソームである(このリポソームは超音波走査装置により検出することができる)。
【0113】
マウス抗CD74 mAb、キメラ抗CD74 mAbおよびヒト化抗CD74 mAbの標的細胞へのインターナリゼーションは、本質的にPirker et al., J. Clin. Invest., 76: 1261 (1985)(引用することによりその全開示内容を本明細書の一部とする)の手順に従って蛍光標識により追跡することができる。Raji培養細胞を遠心分離し、細胞を新鮮培地に約5×10細胞/mLの濃度で再懸濁させる。96ウェルマイクロタイタープレートの各ウェルに細胞懸濁液100μLを加える。総ての反応が同時に終わるような時間間隔で、反応ウェルに40μg/mLの抗体100μL量を加える。このプレートをCO細胞培養インキュベーターにて37℃でインキュベートする。インキュベーションが終わったところで、細胞を冷1%FCS/PBSで3回洗浄することで結合しなかった抗体を除去する。次にこれらの細胞を4℃で15分間、1mLのFormaid−Fresh[10%ホルマリン溶液(Fisher, Fair Lawn, NJ)]で処理する。洗浄後、細胞表面か細胞内かのいずれかに存在する抗体を、それぞれアッセイされる抗体がマウスであるかキメラであるかヒト化であるかによってFITC標識ヤギ抗マウス抗体(Tago, Burlingame, CA)、またはFITC標識ヤギ抗ヒト抗体(Jackson ImmunoResearch, West Grove, PA)で処理することにより検出する。蛍光分布をBH−2蛍光顕微鏡(Olympus, Lake Success, NY)を用いて評価する。
【0114】
これに関して、骨癌をスクリーニング/診断する方法がJuweid et al., 1999に記載されており、本発明の優れた抗CD74 mAbから利益を得ることができるだろう。よって、99mTc標識ヒト化またはキメラ抗CD74 mAbを含んでなる方法が意図される。
【0115】
13.発現ベクター
DNA配列はヒト化、キメラまたはヒト抗CD74 mAbをコードしているものである。より具体的には、このDNA配列は、(a)本明細書に記載の抗CD74mAbまたはそのフラグメント、(b)本明細書に記載の抗CD74 mAbまたはそのフラグメントのいずれか一つを含んでなる免疫複合体、(c)本明細書に記載の少なくとも二種の抗CD74mAbまたはそのフラグメントを含んでなる抗体融合タンパク質またはそのフラグメント、(d)本明細書に記載の抗体融合タンパク質またはそのフラグメント、(e)本明細書に記載のワクチン、および(f)本明細書に記載の二重特異性または多重特異性抗体からなる群から選択されるmAbまたはそのフラグメントをコードする核酸を含んでなる。本発明によるDNA配列はいずれも、核酸の複製をもたらす種々の既知の宿主ベクター中へ組換え操作することができる。これらのベクターは公知の方法を用い、核酸が送達される細胞内で核酸の転写、翻訳またはその双方を命令するために必要なエレメントを含むよう設計することができる。既知の方法論を用い、適当な転写/翻訳制御シグナルと作動可能なように連結されたタンパク質コード配列を有する発現構築物を作製することができる。これらの方法としてはin vitro組換えDNA技術および合成技術を含む。例えば、Sambrook et al., 1989, MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL, Cold Spring Harbor Laboratory (New York); Ausubel et al., 1997, CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY, John Wiley & Sons (New York)を参照されたい。また、本発明では、ベクターと会合していないポリヌクレオチドの送達も提供する。
【0116】
本発明における使用に好適なベクターはウイルス系であっても非ウイルス系であってもよい。ウイルスベクターの特定の例としては、アデノウイルス、AAV、単純ヘルペスウイルス、レンチウイルス、およびレトロウイルスベクターが挙げられる。非ウイルス系ベクターの例としては、プラスミドがある。好ましい態様によれば、ベクターはプラスミドである。
【0117】
本明細書に記載の発現ベクターは、宿主細胞で発現される遺伝子を含むポリヌクレオチドである。典型的には、遺伝子発現は構成的または誘導型プロモーター、組織特異的調節エレメント、およびエンハンサーをはじめとする、ある特定の調節エレメントの制御下に置かれる。このような遺伝子はそれら調節エレメントに「作動可能なように連結される」と言われる。好ましい発現ベクターはpdHl2およびGSベクターである。
【0118】
好ましくは本発明による発現ベクターは、H鎖およびL鎖可変および定常領域の双方を含むヒト化、キメラまたはヒト抗CD74 mAbをコードするDNA配列を含んでなる。しかし、一方がH鎖可変および定常領域を含み、他方がL鎖可変および定常領域を含むといったように二つの発現ベクターを用いてもよい。この発現ベクターはさらにプロモーターを含むと一層好ましい。任意の強力なプロモーターを使用できるので、分泌シグナルペプチドをコードするDNA配列、ヒトIgG1 H鎖定常領域をコードするゲノム配列、Igエンハンサーエレメント、および選択マーカーをコードする少なくとも一つのDNA配列を含みうる。
【0119】
本発明を用いる抗CD74 mAbもしくはそのフラグメントまたは抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントを発現させる方法は、(a)宿主細胞を、抗CD74 mAbもしくはそのフラグメント、またはその免疫複合体、融合タンパク質、または二重特異性もしくは多重特異性抗体をコードするDNA配列でトランスフェクトすること;および(b)抗CD74 mAbもしくはそのフラグメント、または抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントを分泌する細胞を培養することを含んでなる。宿主細胞は細菌、酵母、または哺乳類細胞に由来するものである。より好ましくは哺乳類細胞由来のものであり、ある態様によれば、骨髄腫細胞などのリンパ系細胞である。
【0120】
また、本明細書では、ヒト化抗CD74 mAbを発現させる方法を意図し、その方法は、(i)ヒト化、キメラまたはヒト抗CD74 mAbをコードするDNA配列を含んでなる少なくとも一つの発現ベクターをインターナライズすること、(ii)少なくとも一つの該インターナライズベクターで哺乳類細胞をトランスフェクトすること、(iii)マーカー遺伝子を発現するトランスフェクト細胞を選択すること、および(iv)それらのトラスフェクト細胞からヒト化抗CD74 mAbを分泌する細胞を同定することを含んでなる。
【0121】
本発明者らは、マウス抗CD74モノクローナル抗体(mLL1 mAb)のVLおよびVH領域をコードするcDNAを単離し、ヒト抗体のそれぞれκおよびIgG定常領域をコードする遺伝子を含む哺乳類発現ベクターへそれらを組換え的にサブクローニングした。これら二つの組換えDNAで哺乳類細胞を同時トランスフェクトしたところ、キメラ抗CD74 mAb(cLL1)を発現し、それは親のmLL1 mAb同様、Bリンパ腫細胞と強く結合し、Bリンパ腫細胞によって迅速にインターナライズされた。
【0122】
上記のような哺乳類細胞でヒト化抗CD74 mAb(hLL1)が発現されるよう、VKおよびVH DNAのCDRも同様に、それぞれヒトVKおよびVH領域のフレームワーク(FR)配列に組換え的に結合させ、次にこれらをそれぞれヒトκおよびIgG定常領域に結合させる。
【0123】
H鎖を分離して一価のL−H鎖フラグメントを形成し、さらにフラグメントを切断するような抗体を切断する他の方法、または他の酵素学的、化学的または遺伝学的技術も、それらのフラグメントが無傷の抗体により認識される抗原に結合する限り用いてよい。
【0124】
本明細書に記載の抗体はモノクローナル(mAb)である。モノクローナル抗体は特定の抗原に対する抗体の均質な集団であり、これらの抗体は核酸が特異的に結合するただ一つのタイプの抗原結合部位を含んでなる。特定の抗原に対する齧歯類モノクローナル抗体は当業者に公知の方法により得ることができる。例えば、Kohler and Milstein, Nature 256:495 (1975),およびColigan et al. (eds.), CURRENT PROTOCOLS IN IMMUNOLOGY, VOL. 1, pages 2.5.1-2.6.7 (John Wiley & Sons 1991)[以下、"Coligan"]を参照されたい。要するに、モノクローナル抗体は、抗原を含む組成物をマウスに注射し、血清サンプルを採取することで抗体生産の存在を確認し、脾臓を摘出してBリンパ球を得、Bリンパ球を骨髄腫細胞と融合させてハイブリドーマを作出し、そのハイブリドーマをクローニングし、その抗原に対する抗体を産生する陽性クローンを選択し、その抗原に対する抗体を産生するクローンを培養し、そのハイブリドーマ培養物から抗体を単離することによって得ることができる。
【0125】
mAbは十分確立された種々の技術によってハイブリドーマ培養物から単離および精製することができる。このような単離技術としては、Aタンパク質セファロースを用いたアフィニティークロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィーおよびイオン交換クロマトグラフィーが挙げられる。例えば、Coligan at pages 2.7.1-2.7.12およびpages 2.9.1-2.9.3を参照されたい。また、Baines et al., "Purification of Immunoglobulin G (IgG)," in METHODS IN MOLECULAR BIOLOGY, VOL. 10, pages 79-104 (The Humana Press, Inc. 1992)も参照されたい。
【0126】
14.作製方法
キメラまたはヒト化抗CD74 mAbのVKおよびVH配列は、引用することによりその全開示内容を本明細書の一部とするOrlandi et al., (Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 86:3833 (1989))が記載しているようなPCRにより増幅することができる。VK配列はプライマーCK3BHおよびVK5−3を用いて増幅することができ(引用することによりその全開示内容を本明細書の一部とするLeung et al., BioTechniques, 15:286 (1993))、VH配列はマウスIgGのCH1領域へアニーリングするプライマーCH1BおよびVHIBACK(Orlandi et al., 1989, 前掲)を用いて増幅することができる。10μlの第一鎖cDNA産物、9μLの10X PCRバッファー[500mM KCl、100mM Tris−HCl(pH8.3)、15mM MgCl、および0.01%(w/v)ゼラチン](Perkin Elmer Cetus, Norwalk, CT)を含有するPCR反応混合物に対して30サイクルのPCRを行うことができる。各PCRサイクルは好ましくは94℃で1分間の変性、50℃で1.5分間のアニーリングおよび72℃で1.5分間の重合からなる。増幅されたVKおよびVHフラグメントは2%アガロース(BioRad, Richmond, CA)上で精製することができる。ヒト化V遺伝子を構築する際に用いる自動Cyclone Plus DNAシンセサイザー(Milligan-Biosearch)でのオリゴA(149マー)およびオリゴB(140マー)の合成方法については実施例3を参照されたい。
【0127】
VKのPCR産物は、Igプロモーター、シグナルペプチド配列、およびVK PCR産物のフレーム内連結を容易にする便宜な制限部位を含む、pBR327に基づく足場ベクターVKpBRなどの足場ベクター中にサブクローニングすることができる。VHのPCR産物はpBluescriptに基づくVHpBSなどの同様の足場ベクター中へサブクローニングすることができる。各PCR産物を含む個々のクローンは、例えば引用することにより本明細書の一部とするSanger et al., Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 74:5463 (1977)の方法により配列決定すればよい。
【0128】
本明細書に記載のDNA配列は、天然に存在するものであれ誘導されたものであれ、総てのその対立遺伝子、突然変異体および変異体を含むと考えられる。
【0129】
この二つのプラスミドを適当な細胞、例えば骨髄腫Sp2/0−Ag14中に同時トランスフェクトし、ハイグロマイシン耐性に関してコロニーを選択し、上清を、例えば下記のようにELISAアッセイにより、キメラまたはヒト化抗CD74 mAbの産生に関してモニタリングすることができる。
【0130】
トランスフェクションおよびELISAによる抗体分泌クローンのアッセイは次のようにして行うことができる。引用することにより本明細書の一部とするCo et al., J Immunol., 148:1149 (1992)に従うエレクトロポレーション(BioRad, Richmond, CA)による5×10個のSP2/0骨髄腫細胞のトランスフェクションには、約10μgのhLL1pKh(L鎖発現ベクター)および20μgのhLL1pG1g(H鎖発現ベクター)を用いることができる。トランスフェクション後、細胞を37℃、5%CO下、96ウェルマイクロタイタープレートにて完全HSFM培地(GIBCO, Gaithersburg, MD)中で増殖させればよい。選択プロセスは2日後、ハイグロマイシン選択培地(Calbiochem, San Diego, CA)を最終濃度500μg/mLハイグロマイシンで加えることにより開始することができる。コロニーは通常エレクトポレーション後2〜3週間で出現する。次に、これらの培養物をさらなる分析のために拡張することができる。
【0131】
キメラまたはヒト化H鎖の分泌に関して陽性のトランスフェクトーマクローンはELISAアッセイにより同定することができる。要するに、トランスフェクトーマ培養物からの上清サンプル(100μL)を、ヤギ抗ヒト(GAH)−IgG、F(ab’)フラグメント特異的抗体(Jackson ImmunoResearch, West Grove, PA)をプレコートしたELISAマイクロタイタープレートに3反復で添加する。プレートを室温で1時間インキュベートする。洗浄バッファー(0.05%ポリソルベート20を含有するPBS)で3回洗浄することで結合していないタンパク質を除去する。ホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ(HRP)結合GAH−IgG、Fcフラグメント特異的抗体(Jackson ImmunoResearch, West Grove, PA)をウェルに加える(抗体原液を10倍希釈したもの100μL、非結合抗体を最終濃度1.0μg/mLまで添加)。1時間インキュベートした後、プレートを通常3回洗浄する。反応溶液[PBS中、167μgのオルトフェニレンジアミン(OPD)(Sigma, St. Louis, MO)、0.025%過酸化水素を含有する100μL]をウェルに加える。暗所にて30分間、発色させる。各ウェルに50μLの4N HCl溶液を加えることで反応を停止させた後、自動ELISAリーダー(Bio-Tek instruments, Winooski, VT)で490nmにて吸光度を測定する。次に、無関係なキメラ抗体標品(Scotgen, Ltd., Edinburg, Scotlandから入手可能)に対して結合キメラ抗体を測定する。
【0132】
抗体は細胞培養培地から次のようにして単離することができる。トランスフェクトーマ培養物を血清フリー培地に適用する。キメラ抗体の生産のためには、HSFMを用い細胞を回転瓶中500mLの培養物として細胞を増殖させる。培養物を遠心分子し、上清を0.2μメンブランで濾過する。濾過した培地をAタンパク質カラム(1×3cm)に流速1mL/分で通す。次にこの樹脂を約10倍カラム量のPBSで洗浄し、10mMEDTAを含有する0.1Mグリシンバッファー(pH3.5)を用いて、Aタンパク質結合抗体をカラムから溶出させる。1.0mL画分を、10μLの3M Tris(pH8.6)の入った試験管に回収し、280/260nmの吸光度からタンパク質濃度を求める。ピーク画分をプールし、PBSの対して透析し、例えばCentricon 30(Amicon, Beverly, MA)を用いて抗体を濃縮する。抗体濃度は上記のようにELISAにより測定し、その濃度をPBSを用いて約1mg/mLに調整する。保存のためにはサンプルにアジ化ナトリウム0.01%(w/v)を加えると便宜である。
【0133】
本明細書に挙げられた総ての刊行文献および特許ならびに特許出願は引用することによりその全開示内容を本明細書の一部とする。以下、単に例として示される実施例により本発明をさらに説明する。本発明はこれらの実施例に限定されるものではなく、本明細書に示される技術から明らかな総ての改変を含む。
【実施例】
【0134】
実施例1 LL1 H鎖およびL鎖可変領域の分子クローニングおよび配列の解明
それぞれLeung et al. 1993およびOrlandi et al. (PNAS 86:3833-3837 (1989))が記載しているようにVK5’−4およびVK1FORプライマーを用いたRT−PCRによりmLL1のV遺伝子を得、pCR2.1 AT−クローニングベクター(Invitrogen)中へクローニングした。PCR反応から生じたエラーを排除するため、複数のクローンを配列決定した。大多数のクローン(6)は同じマウスV配列を含んでおり、これをLL1 Vと名づけ、その配列が図1Bに示されている。他のマウスVk配列と比較したところ、LL1VkはκL鎖サブクラスIIに属するものであることが明らかになった。
【0135】
RT−PCRではマウスVH遺伝子をコードする全長配列が得られなかったので、もう一つのクローニングアプローチとしてcDNA 5’末端(5’−RACE)の迅速増殖を用いた。LL1ハイブリドーマ細胞から調製したアダプターにより連結されたcDNAを、ユニバーサルアンカープライマー(Life Technologies)およびマウスH鎖のCH1領域にアニーニングする遺伝子特異的プライマーCH−1B(Leung et al. 1994)を用いたPCRにより増幅した。PCRから得られた〜650bpの主要なPCR種をpCR2.1 AT−クローニングベクターへクローニングし、DNAシーケンシングにより複数のクローンの配列を決定した。このPCR産物は、非コード配列、5’末端分泌シグナルペプチドおよびγ1鎖のCH1ドメインの部分コード配列によりフランキングされた全長VH配列(図1A)を含んでいた。VHをコードする配列内で欠失突然変異が見られ、これはLL1VHと名づけた。hLL1VHを他のマウスVH配列と比較したところ、マウス重鎖のその他のサブグループに属することが明らかになった(Kabat et al., 1991)。KabatデータベースにてLL1VHおよびVκのアミノ酸配列をマウスAb V遺伝子と比較し、Kabatの定義を当てはめることにより、hLL1VHおよびVkのCDR領域はそれぞれ図1AおよびBに示されるように同定された。KabatデータベースにてLL1VHおよびVκのアミノ酸配列をマウスAb V遺伝子と比較し、Kabatの定義を当てはめることにより、hLL1VHおよびVkのCDR領域はそれぞれ図1AおよびBに示されるように同定された。
【0136】
実施例2 キメラLL1の発現ベクターの構築
クローニングされたLL1のFvの忠実性を評価するため、キメラLL1(cLL1)を構築し、発現させた。LL1 Vkのヌクレオチド残基7〜12を、プライマーLL1VK−PvuIIおよびVK1FORを用いたPCRによりPvuII制限部位CAGCTGへと改変した。得られたPCR産物をPvuIIおよびBgIIIで消化(Vkの内部BgIII部位の存在により部分的)し、pBR327に基づく足場ベクター(PvuIIおよびBcIIで消化)VKpBR2へ強制的にクローニングしたところ、同じIgプロモーター、シグナルペプチド配列およびOrlandi et al., 1989およびLeung et al., 1994により用いられているようなVK PCR産物のフレーム内連結を容易にするのに便宜な制限部位を含んでいた。
LL1VK-PvuII 5'-GAT GTT CAG CTG ACC CAA ACT CCA CTC TCC-3'
【0137】
同様に、LL1VHの10〜15および345〜351番のヌクレオチド配列を、プライマーLL1B−1およびLL1F−1を用いたPCRによりそれぞれPstIおよびBstEIIへと変換した。次に、VH PCR産物をPstIおよびBstEIIで消化し、PstIおよびBstEIIで消化したVHpBS2[VHpBS(Leung, S.O., Shevitz, J., Pellegrini, M.C., Dion, A.S., Shih, L.B., Goldenberg, D.M.およびHansen, H.J. (1994))から改変したもので、シグナルペプチド配列と、VH PCR産物のフレーム内連結を容易するのに便宜な制限部位を含有するpBluescriptに基づく足場ベクター{Orlandi, Gussow, et al. 1989 741/同上}]に連結した。
LL1B-1 5'-CAG ATC CAG CTG CAG CAG TCT GGA CCT GAG-3'
LL1F-1 5'-GA GAC GGT GAC CAG AGT CCC TTG GCC CCA A-3'
【0138】
cLL1VHおよびVkの両配列をDNAシーケンシングにより確認し、それぞれ図2Aおよび2Bに示している。
【0139】
シグナルペプチド配列とともにcLL1のVk配列を含むフラグメントを、XbaIおよびBamHIでの二重消化によりLL1VKpBR2から切り出した。次に、〜550bpのVkフラグメントを哺乳類発現ベクターpdHL2のXbaI/BamHI部位へサブクローニングした。得られたベクターをcLL1VkpdHL2と名づけた。同様に、シグナルペプチド配列とともにLL1VHを含む約750bpのフラグメントを、XhoIおよびBamHI消化によりLL1VHpBS2から切り出し、アガロースゲルにて電気泳動により単離した。このフラグメントを、BamHIおよびHindIIIの双方の末端に相応するリンカーを用いてcLL1VkpdHL2のXhoIおよびHindIII部位へサブクローニングし、cLL1pdHL2と呼ばれる最終の発現ベクターを得た。
【0140】
実施例3 cLL1のトランスフェクションおよび発現
約30μgのcLL1pdHL2をSalで消化することにより線状化し、エレクトロポレーションによりSp2/0−Agl4細胞にトランスフェクトした。トランスフェクト細胞を96ウェルプレートで2日間平板培養した後、MTX耐性に関して選択した。選択に生き残ったコロニーの上清をELISAアッセイによりキメラ抗体分泌に関してモニタリングした。陽性細胞クローンを拡張し、細胞培養上清から、Aタンパク質カラムでのアフィニティークロマトグラフィーによりcLL1を精製した。
【0141】
実施例4 結合活性アッセイ
親mLL1と比較してcLL1の免疫反応性を評価するため、競合細胞結合アッセイを行った。一定量の125I標識mLL1(100,000cpm)を4℃で1〜2時間、種々の濃度のcLL1またはmLL1の存在下でRaji細胞とともにインキュベートした。洗浄後、細胞と結びついた放射活性を測定した。図5に示されているように、cLL2抗体はmLL1に匹敵する結合活性を示し、クローニングされたV遺伝子の忠実性が確認された。
【0142】
これらの結果をフローサイトメトリーに基づく第二の競合アッセイにより確認した。要するに、上記のようにRaji細胞を用い、上記のように一方の抗体の濃度を他方に対して変化させ、結合したcLL1またはmLL1の量を、FITC標識抗マウスFcまたは抗ヒトFc抗体を用いて測定した後、フローサイトメトリーを用いて分析した。
【0143】
親mLL1と比較したcLL1の免疫反応性を評価するため、Raji細胞膜をコーティングしたプレートでELISA競合結合アッセイを行った。Raji細胞膜画分は音波処理と遠心分離により調製した。粗膜抽出物を遠心分離により96ウェル平底PVCプレートにコーティングし、0.1%グルタルアルデヒドで固定した。種々の濃度のmLL1またはcLL1と混合した一定量のビオチニル化mLL1をこの膜コートウェルに加え、室温で1〜2時間インキュベートした。洗浄後、HRP結合ストレプトアビジンを加え、室温で1時間インキュベートした。膜結合ビオチニル化mLL1に結合したHRP結合ストレプトアビジンの量は、4mMオルトフェニレンジアミン二塩酸塩および0.04%Hを含む基質溶液を加えた後、A490nmを読みとることによって明らかにした。図6の競合アッセイによって示されるように、hRS7 IgGはmRS7およびcRS7のものに匹敵する結合活性を示し、RS7の結合親和性はヒト化しても保存されていることが確認された。
【0144】
実施例5 LL1モノクローナル抗体のヒト化のためのヒトフレームワークおよび配列デザインの選択
KabatデータベースにてcLL1の可変(V)領域フレームワーク(FR)配列とヒト抗体のそれを比較することにより、cLL1VHおよびVkのFRがそれぞれヒト抗体RF−TS3 VHおよびHF−21/28 Vkのそれと最も高い程度の配列ホモロジーを示すことが分かった。これらのアミノ酸配列は図3Aおよび3Bに示されており、cLL1VHおよびVk配列と比較させてある。よって、RF−TS3 VHおよびHF−21/28 VkのFRおよびFRは、それぞれLL1 VHおよびVkのCDRがグラフトされるヒトフレームワークとして選択された。しかし、RF−TS3のFR配列ではなくNEWMのFR配列を用いて、LL1H鎖のヒト化のためにRF−TS3 FR4配列を置換した。図3Aを参照されたい。hLL1では、これまでに記載されている指針(Qu et al., Clin. Cancer Rec. 5:3095s-3100s (1990))に基づき、推定CDRに近接するLL1 FRの数個のアミノ酸残基を維持した。これらの残基はVkのL46、F87およびQ100(図3B)、ならびにVHのI36、K37、Q46、A68、F91およびS93(図3A)である。図3Aおよび3Bはヒト、キメラおよびヒト化VHおよびVkアミノ酸配列を比較したものである。点線はヒトVHおよびVk配列における対応する残基と同一であるcLL1およびhLL1の残基を示す。hLL1VHおよびVkのDNAおよびアミノ酸配列はそれじれ図4Aおよび4Bに示されている。
【0145】
実施例6 ヒトV遺伝子のPCR/遺伝子合成
Leung et al. (Leung et al., 1994)が記載しているような改変戦略を用い、図5で示されているように、長いオリゴヌクレオチド合成とPCRの組み合わせを用い、hLL1のデザインされたVkおよびVH遺伝子を構築した。hLL1VHドメインを構築する場合には、自動DNAシンセサイザー(Applied Biosystem)で二つの長いオリゴヌクレオチドhLL1VHA(176マー)およびhLL1VHB(165マー)を合成した。hLL1VHA配列はhLL1VHドメインのnt20〜195に相当する。
【0146】
【化1】

hLL1VHB配列はnt173〜337に相補的なhLL1VHドメインの負鎖に相当する。
【0147】
【化2】

hLL1VHAおよびBの3’末端配列(22nt残基)は互いに相補的である。規定のPCR条件下では、hLL1VHAおよびBの3’末端はアニーリングして、長いオリゴヌクレオチドの残りの部分によりフランキングされる短い二本鎖DNAを形成する。各アニール末端は一本鎖DNAの転写のためのプライマーとして働き、その結果、hLL1VHのnt20〜337からなる二本鎖DNAが生じる。このDNAを、二つの短いオリゴヌクレオチドhLL1VHBACKおよびhLL1VHFORの存在下でさらに増幅し、全長hLL1VHを形成させた。
hLL1VHBACK 5'-GTG GTG CTG CAG CAA TCT GGG TCT GAG TTC AAG AAG CC-3'
HLL1VHFOR 5'-AAG TGG ATC CTA TAA TCA TTC CTA GGA TTA ATG-3'
【0148】
最少量のhLL1VHAおよびB(実験的に決定)を10μlの10×PCRバッファー(500mM KCl、100mM Tris.HCLバッファー、pH8.3、15mM MgCl)、2μmolのLL1VHBACKおよびhLL1VHFOR、ならびに2.5単位のTaq DNAポリメラーゼ(Perkin Elmer Cetus, Norwalk, Ct)の存在下で増幅した。この反応混合物に対して、94℃で1分間の変性、45℃で1分間のアニーリングおよび72℃で1.5分間の重合からなる3サイクルのPCR反応、その後、94℃で1分間の変性、55℃で1分間のアニーリングおよび72℃で1分間の重合からなる27サイクルのPCR反応を行った。hLL1VHの二本鎖PCR増幅産物をゲル精製し、PstIおよびBstEIIで制限消化し、H鎖足場ベクターVHpBS2の相補的PstI/BstEII部位へクローニングした。
【0149】
ヒト化Vk配列の全長DNAの構築に関しては、hLL1VKA(159マー)およびhLL1VKB(169マー)を上記のように合成した。hLL1VKAおよびBは上記のように二種の短いオリゴヌクレオチドhLL1VKBACKおよびhLL1VKFORによって増幅した。
【0150】
hLL1VHA配列はhLL1VHドメインのnt16〜174に相当する。
【化3】

hLL1VHB配列はnt153〜321に相補的なhLL1VHドメインの負鎖に相当する。
【0151】
【化4】

hLL1VKBACK 5'-GAT GTT CAG CTG ACT CAG TCT CCA CTC TCC CTG-3'
hLL1VKFOR 5'-G TTA GAT CTC CAG TCG TGT CCC AGC ACC GAA CG-3'
【0152】
hLL1Vkのゲル精製したPCR産物をPvuIIおよびBglIIIで制限消化し、L鎖足場ベクターVKpBR2の相補的PvuI/BcII部位へクローニングした。最終の発現ベクターhLL1pdHL2は、上記のように、それぞれhLL1VkおよびVHのXbaI−BamHIおよびXhoI/BamHI断片をpdHL2へ順次サブクローニングすることにより構築した。
【0153】
実施例7 hLL1のトランスフェクション、発現および結合活性アッセイ
hLL1の発現および結合アッセイの方法はcLL1に関して記載したものと同じである。
hLL1の免疫反応性を評価するため、Raji細胞膜抽出物をコーティングしたプレートを用いるELISA競合結合アッセイを開発した。Raji細胞膜画分を音波処理と遠心分離により調製した。粗膜抽出物を遠心分離により96ウェル平底PVCプレートにコーティングし、0.1%グルタルアルデヒドで固定した。種々の濃度のmLL1またはcLL1と混合した一定量のビオチニル化mLL1をこの膜コートウェルに加え、室温で1〜2時間インキュベートした。洗浄後、HRP結合ストレプトアビジンを加え、室温で1時間インキュベートした。膜結合ビオチニル化mLL1に結合したHRP結合ストレプトアビジンの量は、4mMオルトフェニレンジアミン二塩酸塩および0.04%Hを含む基質溶液を加えた後、A490nmを読みとることによって明らかにした。図6の競合アッセイによって示されるように、mLL1およびcLL1抗体は同等の結合活性を示した。同様に、図7の競合アッセイでは、hLL1およびcLL1抗体は同等の結合活性を示した。
【0154】
実施例8 hLL1のインターナリゼーション
標準的な抗体プロセシングアッセイを用いて、Raji細胞のインターナリゼーションおよび異化作用を評価した(Hansen et al., 1996)。細胞(10)を、125I標識hLL1またはLL1(10cpm)を含む組織培養培地1mL中で、37℃にて1時間インキュベートした。Ab結合の特異性を評価するため、過剰量(最終濃度100μg/mL)の非標識Abを含む、また含まない総ての実験で1/10サンプルサイズ(細胞、放射活性および培地)の対照を設けた。結合インキュベーションの後、結合しなかった放射活性を洗浄により除去した。特異性対照を計数した。総ての実験で、細胞に対する放射活性の結合は非標識Abのよって少なくとも90%ブロックされた。次にこれらの細胞を30mlの新鮮培地に再懸濁させ、24ウェルプレートに1.5mL/ウェルで分注した。サンプル1.5mLを放射活性の測定のために用い、これを最初の結合cpmとした。プレートをCOインキュベーターでインキュベートした。3、24、48および72時間の時点で、細胞を次のように回収した。細胞を繰り返しピペットで吸い取って懸濁させ、コニカル試験管へ移した。ウェルおよびピペットを1mLの新鮮培地ですすぎ、最初の細胞懸濁液回収物に加えた。この試験管を600xgで10分間遠心分離し、上清1mLを注意深く採取し(全上清の40%)、放射活性を計数した。担体タンパク質としてBSAを最終濃度1%まで加え、このタンパク質を冷10%(w/v)トリクロロ酢酸(TCA)5mlで沈降させた。4℃で30分間インキュベートし、5000xgで15分間遠心分離した後、上清を廃棄し、沈降したタンパク質の放射活性を計数した。TCAにより沈降しなかった放射性標識タンパク質は分解していたものとし、沈降した放射性タンパク質は完全であるとみなした。この細胞ペレットについて、洗浄した後、細胞に残留している放射活性を計数した。各画分の放射活性を最初に結合していたものに対する割合(%)として表した。図8Aに示されているように、hLL1は、Raji細胞の表面に結合した後のマウスLL1と同様の迅速なインターナリゼーションと異化作用を示し、すなわち、結合していた放射活性はほとんど総て3時間内に異化作用を受け、上清中に放出された。これは抗CD22や抗CD19などの他のインターナライジングAbの場合よりもはるかに速い(Hansen et al., 1996)。これらの試験の最初の時点では、hLL1およびmLL1は同じプロセシングパターンが確認された。1時間内に最大異化作用に達した(図8B)。
【0155】
実施例9 hLL1の細胞傷害性
hLL1の細胞傷害性をヒトリンパ腫細胞系統のRaji細胞にて、mLL1およびcLL1のものと比較した。hLL1およびcLL1の架橋剤としてヤギ抗ヒトIgG Fcフラグメント特異的Ab(α−hFc)を用い、mLL1についてはヤギ抗マウスIgG Fc特異的Ab(α−mFc)を用いた。0日目、5μg/mLのLL1 Abおよび50μg/mlの適当な架橋剤を含む1mLの培地に5×10のRaji細胞を播種した。全細胞および生存細胞の数を3日間毎日計数した。図9に示されているように、通常のRaji細胞の総数は3日間で4〜5倍増え、3日目の終わりには細胞生存率が80%を超えるまでに留まっていた。架橋剤単独、LL1 Ab単独、またはLL1 Abと同等でない架橋剤(例えば、hLL1およびヤギ抗マウスIgG Fc特異的Ab)で処理した細胞は通常のRaji細胞とは区別できなかった。しかし、hLL1と抗ヒトIgG Fc特異的Abの組み合わせは効果的に細胞死をもたらし、一日のうちに細胞生存率に40%を超える減少と、3日目にほとんど全細胞の死滅をもたらした。hLL1の有効性はmLL1およびcLL1に匹敵するものであった。Daudi細胞を用いた場合にも同様の結果が認められた(図10)。別のインターナライジングAb、hLL2(ヒト化抗CD22 Ab)ではこのような結果は見られなかった。これらの結果から、リンパ腫細胞系統に対するhLL1の細胞傷害作用は細胞表面上のAbの架橋に特異的に依存することが証明された。
【図面の簡単な説明】
【0156】
【図1】マウスLL1H鎖およびL鎖可変領域のDNAおよびアミノ酸配列を示す。図1AはRT−PCRにより得られたLL1VHのDNAおよびアミノ酸配列を示す。図1Bは5’−RACEにより得られたLL1VkのDNAおよびアミノ酸配列を示す。対応するDNA配列によりコードされるアミノ酸配列は、ヌクレオチド配列の下に一文字コードで示されている。ヌクレオチド配列のナンバリングは右側にある。CDR領域のアミノ酸残基は太字と下線で示されている。KabatのIg分子のナンバリングはアミノ酸残基の上にあるナンバリングで示されるようなアミノ酸残基に対して用いられる。特定のディジット(digit)の後は一文字でナンバリングされるアミノ酸残基はKabatナンバリング法で定義された挿入残基を示す。一文字でナンバリングされた挿入残基はその前の残基と同じディジットを持つ。例えば、図1Aの残基82A、82Bおよび82Cは82A、BおよびCとして示される。
【図2】Sp2/0細胞で発現されたキメラLL1(cLL1)H鎖およびL鎖可変領域のDNAおよびアミノ酸配列を示す。図2AはcLL1VHのDNAおよびアミノ酸配列を示す。図2BはcLL1Vkの二本鎖DNAおよびアミノ酸配列を示す。対応するDNA配列によってコードされるアミノ酸配列は一文字コードで示されている。CDR領域のアミノ酸残基は太字と下線で示されている。ヌクレオチドおよびアミノ酸のナンバリングは図1の場合と同じである。cLL1の構築に用いる制限部位は囲み線をつけ、表記している。
【図3】ヒト抗体cLL1およびhLL1のL鎖およびH鎖可変領域のアミノ酸配列のアライメントを示す。図3Aはヒト抗体RF−TS3、cLL1およびhLL1のVHアミノ酸配列のアライメントを示し、図3Bはヒト抗体HF−21/28、cLL1およびhLL1のVkアミノ酸配列のアライメントを示す。点線はcLL1において、ヒト抗体で対応する残基と同一の残基を示す。囲み線の領域はCDR領域を表す。cLL1のN末端残基もC末端残基も(下線)、使用する足場ベクターにより固定され、ヒト抗体とは比較されない。図1同様、KabatのIg分子ナンバリング法を用いている。
【図4】Sp2/0細胞で発現されたヒト化LL1(hLL1)H鎖およびL鎖可変領域のDNAおよびアミノ酸配列を示す。図4AはhLL1VHのDNAおよびアミノ酸配列を示し、図4BはhLL1VkのDNAおよびアミノ酸配列を示す。対応するDNA配列によってコードされるアミノ酸配列は一文字コードで示されている。CDR領域のアミノ酸残基は太字と下線で示されている。ヌクレオチドおよびアミノ酸のナンバリングは図1の場合と同じである。図1Aおよび図1B同様、アミノ酸残基にはKabatのIg分子ナンバリング法を用いている。
【図5】hLL1VH遺伝子の構築の模式図を示す。鋳型およびプライマーとして用いるオリゴは矢印線で示されている。矢印の頭は3’末端を示す。センスDNA鎖(鋳型、プライマーおよびPCR産物)は実線で、アンチセンス鎖は点線で示されている。Vk遺伝子も同様に構築した。
【図6】競合的細胞表面結合アッセイの結果を、cLL1とマウスLL1との結合アッセイと比較して示す。種々の濃度のcLL1(黒三角)またはmLL1(黒ひし形)を一定量の125I標識mLL1と混合し、Raji細胞とともに4℃で1時間インキュベートした。洗浄後、細胞表面に結合した放射性標識mLL1をカウントした。cLL1とマウスLL1はRaji細胞に対する放射性標識LL1の結合に関して同等によく競合したが、このことからクローニングされたV遺伝子が忠実であることが確認される。
【図7】Raji細胞膜をコートしたマイクロウェルにおける競合結合アッセイの結果を、hLL1とcLL1との結合親和性を比較して示す。種々の濃度のhLL1(黒三角)またはcLL1(黒ひし形)を一定量のHRP結合LL1と混合し、Raji細胞膜抽出物でコートした96ウェルマイクロタイタープレートにて室温で1時間インキュベートした。膜に結合したHRP−LL1を測定した。hLL1おcLL1はHRP−LL1の結合に関して同等によく競合したが、このことはヒト化LL1ではmAb LL1の結合特異性および親和性が保存されていることを示唆している。
【図8】Raji細胞の表面に結合した125I標識hLL1およびmLL1の運命を示す。放射性標識hLL1(記号付きの実線)またはmLL1(記号付きの点線)をRaji細胞とともにインキュベートし、結合しなかったAbを洗浄により除去した。次に、これらの細胞を対照として培養し、細胞と結合した放射性標識Ab(黒ひし形の線)、培地中に分泌された放射性標識Ab(黒三角の線)または分解された(黒丸の線)を示された時間に測定した。図8Aは3日までにたどった結合Abの運命を示す。図8Bは初期の時点(3日以内)で調べたhLL1プロセシングの結果を示す。データは2回の実験の平均とした。
【図9】Raji細胞の架橋LLIAbの細胞傷害作用を示す。0日目、5×10のRaji細胞を、パネルの上に示されているように5μg/mlのmLL1、cLL1またはhLLIを含有する、またはAbを含まない(Nil)、そしてパネルの右側に示されているように50μg/mlのα−mFcまたはα−hFc Abを含む、または架橋剤を含まない(Nil)、培地1mlに播種した。全細胞および生存細胞の数をを3日間毎日計数した。生存細胞のパーセンテージ(黒四角)および0時における生存細胞に対する生存細胞の比率(黒ひし形)を算出し、培養時間に対してプロットした。
【図10】Daudi細胞に対する架橋hLL1の細胞傷害作用を示す。0日目、5×10のDaudi細胞を、パネルの上に示されているように5μg/mlのhLL1またはhLL2(抗CD22、インターナライジングAb)、またはAbを含まない(Nil)、そしてパネルの右側に示されているように50μg/mlのα−hFc Abを含有する、または含まない(Nil)、培地1mlに播種した。全細胞および生存細胞の数をを3日間毎日計数した。生存細胞のパーセンテージ(黒四角)および0時における生存細胞に対する生存細胞の比率(黒ひし形)を算出し、培養時間に対してプロットした。
【図1A】

【図1B】

【図2A】

【図2B】

【図3A】

【図3B】

【図4A】

【図4B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト化、ヒトまたはキメラ抗CD74抗体またはそのフラグメント。
【請求項2】
アミノ酸配列RSSQSLVHRNGNTYLHを含むDR1、アミノ酸配列TVSNRFSを含むCDR2、およびアミノ酸配列SQSSHVPPTを含むCDR3を含んでなるマウス抗CD74 mAbのL鎖可変領域のCDRを含んでなる、請求項1に記載のヒト化抗CD74モノクローナル抗体(mAb)またはそのフラグメント。
【請求項3】
アミノ酸配列NYGVNを含むCDR1、アミノ酸配列WINPNTGEPTFDDDFKGを含むCDR2、およびアミノ酸配列SRGKNEAWFAYを含むCDR3を含んでなるマウス抗CD74 mAbのH鎖可変領域のCDRを含んでなるヒト化mAbのH鎖可変領域のCDRを含んでなる、請求項1に記載のヒト化抗CD74モノクローナル抗体またはそのフラグメント。
【請求項4】
マウス抗CD74(mLL1)の相補性決定領域(CDR)とヒト抗体のフレームワーク(FR)領域とを含んでなるL鎖およびH鎖可変領域を含んでなる、ヒト化抗CD74モノクローナル抗体(mAb)またはそのフラグメントであって、該ヒト化mAbのL鎖可変領域が、アミノ酸配列RSSQSLVHRNGNTYLHを含むCDR1、アミノ酸配列TVSNRFSを含むCDR2、およびアミノ酸配列SQSSHVPPTを含むCDR3を含んでなるマウス抗CD74 mAbのL鎖可変領域のCDRを含んでなり、かつ、該ヒト化mAbのH鎖可変領域が、アミノ酸配列NYGVNを含むCDR1、アミノ酸配列WINPNTGEPTFDDDFKGを含むCDR2、およびアミノ酸配列SRGKNEAWFAYを含むCDR3を含むマウス抗CD74 mAbのH鎖可変領域のCDRを含んでなるものである、請求項1に記載のヒト化抗CD74モノクローナル抗体(mAb)またはそのフラグメント。
【請求項5】
前記ヒト化抗体のL鎖およびH鎖可変領域のFRが、これに対応する前記マウスmAbのFRから置換した少なくとも一つのアミノ酸を含んでなる、請求項4に記載のヒト化抗CD74 mAbまたはそのフラグメント。
【請求項6】
前記マウスmAb由来のアミノ酸が図3BのcLL1Vk配列のマウスL鎖可変領域のアミノ酸残基2、3、4、46、87および100、ならびに図3AのcLL1VH配列のマウスH鎖可変領域のアミノ酸残基5、37、38、46、68、91および93からなる群から選択される、請求項5に記載のヒト化抗CD74 mAbまたはそのフラグメント。
【請求項7】
図4AのH鎖可変領域および図4BのL鎖可変領域を含んでなる、請求項4に記載のヒト化抗CD74 mAbまたはそのフラグメント。
【請求項8】
ヒト抗体のL鎖およびH鎖定常領域またはその一部をさらに含んでなる、請求項2〜7のいずれか一項に記載のヒト化抗CD74 mAbまたはそのフラグメント。
【請求項9】
ヒト化IgG1である、請求項2〜8のいずれか一項に記載のヒト化抗CD74 mAbまたはそのフラグメント。
【請求項10】
アミノ酸配列RSSQSLVHRNGNTYLHを含むCDR1、アミノ酸配列TVSNRFSを含むCDR2、およびアミノ酸配列SQSSHVPPTを含むCDR3を含んでなるマウス抗CD74 mAbのL鎖可変領域を含んでなる、請求項1に記載のキメラ抗CD74(cCD74)モノクローナル抗体(mAb)またはそのフラグメント。
【請求項11】
アミノ酸配列NYGVNを含むCDR1、アミノ酸配列WINPNTGEPTFDDDFKGを含むCDR2、およびアミノ酸配列SRGKNEAWFAYを含むCDR3を含んでなるマウス抗CD74 mAbのH鎖可変領域を含んでなる、請求項1に記載のキメラ抗CD74モノクローナル抗体またはそのフラグメント。
【請求項12】
マウス抗CD74 mAbの相補性決定領域(CDR)とマウス抗CD74 mAbのフレームワーク(FR)領域とを含んでなるL鎖およびH鎖可変領域、並びに、ヒト抗体のL鎖およびH鎖定常領域を含んでなる、キメラ抗CD74(cCD74)モノクローナル抗体(mAb)またはそのフラグメントであって、前記キメラmAbのL鎖可変領域が、アミノ酸配列RSSQSLVHRNGNTYLHを含むCDR1、アミノ酸配列TVSNRFSを含むCDR2、およびアミノ酸配列SQSSHVPPTを含むCDR3を含んでなるマウス抗CD74 mAbのL鎖可変領域のCDRを含んでなり、かつ前記キメラmAbのH鎖可変領域が、アミノ酸配列NYGVNを含むCDR1、アミノ酸配列WINPNTGEPTFDDDFKGを含むCDR2、およびアミノ酸配列SRGKNEAWFAYを含むCDR3を含んでなるマウス抗CD74 mAbのH鎖可変領域のCDRを含んでなる、請求項11に記載のキメラ抗CD74(cCD74)モノクローナル抗体(mAb)またはそのフラグメント。
【請求項13】
図2AのH鎖可変領域および図2BのL鎖可変領域を含んでなる、請求項12に記載のキメラ抗CD74 mAbまたはそのフラグメント。
【請求項14】
キメラIgG1である、請求項12に記載のキメラ抗CD74 mAbまたはそのフラグメント。
【請求項15】
アミノ酸配列RSSQSLVHRNGNTYLHを含むCDR1、アミノ酸配列TVSNRFSを含むCDR2、およびアミノ酸配列SQSSHVPPTを含むCDR3を含んでなるヒト抗CD74 mAbのL鎖可変領域を含んでなる、請求項1に記載のヒト抗CD74(huCD74)モノクローナル抗体(mAb)またはそのフラグメント。
【請求項16】
アミノ酸配列NYGVNを含むCDR1、アミノ酸配列WINPNTGEPTFDDDFKGを含むCDR2、およびアミノ酸配列SRGKNEAWFAYを含むCDR3を含んでなるマウス抗CD74 mAbのH鎖可変領域のCDRを含んでなる該ヒトmAbのH鎖可変領域を含んでなる、請求項1に記載のヒト抗CD74(huCD74)モノクローナル抗体(mAb)またはそのフラグメント。
【請求項17】
ヒト抗体のL鎖およびH鎖可変領域および定常領域を含んでなる、ヒト抗CD74(huCD74)モノクローナル抗体(mAb)またはそのフラグメントであって、前記ヒト抗CD74 mAbのL鎖可変領域のhuCD74 CDRが、アミノ酸配列RSSQSLVHRNGNTYLHを含むCDR1、アミノ酸配列TVSNRFSを含むCDR2、およびアミノ酸配列SQSSHVPPTを含むCDR3を含んでなり、かつ前記ヒトmAbのH鎖可変領域が、アミノ酸配列NYGVNを含むCDR1、アミノ酸配列WINPNTGEPTFDDDFKGを含むCDR2、およびアミノ酸配列SRGKNEAWFAYを含むCDR3を含んでなるマウス抗CD74 mAbのH鎖可変領域のCDRを含んでなる、請求項1に記載のヒト抗CD74(huCD74)モノクローナル抗体(mAb)またはそのフラグメント。
【請求項18】
ヒトIgG1である、請求項17に記載のヒト抗CD74 mAbまたはそのフラグメント。
【請求項19】
ヒト、キメラ、またはヒト化抗CD74 mAbまたはそのフラグメントであって、以下の少なくとも一つの特性:
(a)CD−74に対する前記mAbまたはそのフラグメントの結合が、CD74の特異的な抗体またはそのフラグメントによってブロッキングされること、
(b)前記mAbまたはそのフラグメントが、Rajiリンパ腫培養細胞によってインターナライズ(internalize)されること、および
(c)前記mAbまたはそのフラグメントが、マウスIgG1 mAbのFcと反応性を有するヤギ抗血清と架橋させた場合、Raji培養細胞のアポトーシスを誘導することを含んでなる、請求項1〜18のいずれか一項に記載のヒト、キメラ、またはヒト化抗CD74 mAbまたはそのフラグメント。
【請求項20】
前記フラグメントが、F(ab’)、Fab、scFv、Fvであるか、またはF(ab’)、Fab、scFv、もしくはFvのL鎖およびH鎖の一部もしくは全部を用いた融合構築物であり、かつ前記フラグメントがCD74と結合する、請求項1〜19のいずれか一項に記載のヒト、キメラまたはヒト化抗CD74 mAbまたはそのフラグメント。
【請求項21】
前記融合タンパク質が、多価、または多価かつ多重特異性である、請求項20に記載のヒト、キメラまたはヒト化抗CD74 MAbまたはそのフラグメント。
【請求項22】
IgG1の定常領域が、ヒトIgG2a、IgG3、またはIgG4の定常領域で置換されている、請求項1〜21のいずれか一項に記載のヒト、キメラまたはヒト化抗CD74 mAbまたはそのフラグメント。
【請求項23】
アミノ酸配列RSSQSLVHRNGNTYLHを含むCDR1、アミノ酸配列TVSNRFSを含むCDR2、およびアミノ酸配列SQSSHVPPTを含むCDR3を含んでなるマウス抗CD74 mAbのL鎖可変領域のCDRを含んでなる、マウス抗CD 74モノクローナル抗体またはそのフラグメント。
【請求項24】
アミノ酸配列NYGVNを含むCDR1、アミノ酸配列WINPNTGEPTFDDDFKGを含むCDR2、およびアミノ酸配列SRGKNEAWFAYを含むCDR3を含んでなるマウス抗CD74 mAbのH鎖可変領域のCDRを含んでなる、マウス抗CD74モノクローナル抗体またはそのフラグメント。
【請求項25】
マウス抗CD74(mLL1)の相補性決定領域(CDR)とマウス抗CD74抗体のフレームワーク(FR)領域とを含んでなる、マウス抗CD74モノクローナル抗体またはそのフラグメントであって、前記マウスmAbのL鎖可変領域が、アミノ酸配列RSSQSLVHRNGNTYLHを含むCDR1、アミノ酸配列TVSNRFSを含むCDR2、およびアミノ酸配列SQSSHVPPTを含むCDR3を含んでなり、かつ前記マウスmAbのH鎖可変領域が、アミノ酸配列NYGVNを含むCDR1、アミノ酸配列WINPNTGEPTFDDDFKGを含むCDR2、およびアミノ酸配列SRGKNEAWFAYを含むCDR3を含んでなる、マウス抗CD74モノクローナル抗体またはそのフラグメント。
【請求項26】
請求項1〜25のいずれか一項に記載のmAbまたはそのフラグメントの4以上のFvまたはFabを含んでなる、抗体融合タンパク質。
【請求項27】
請求項1〜26のいずれか一項に記載のmAbまたはそのフラグメントの1以上のFvまたはFab、およびCD74抗原ではない腫瘍細胞マーカーに特異的な抗体に由来する1以上のFvまたはFabを含んでなる、抗体融合タンパク質。
【請求項28】
前記腫瘍細胞マーカーがB細胞系抗原から選択される、請求項27に記載の抗体融合タンパク質。
【請求項29】
前記腫瘍細胞マーカーが、CD19、CD20およびCD22からなる群から選択される抗原である、請求項28に記載の抗体融合タンパク質。
【請求項30】
前記腫瘍細胞マーカーが、HLA−DR、CD30、CD33、CD52、MUC1およびTACからなる群から選択される抗原である、請求項27に記載の抗体融合タンパク質。
【請求項31】
請求項1〜30のいずれか一項に記載の少なくとも一つのmAbまたはそのフラグメントまたはその抗体融合タンパク質を含む抗体成分を含んでなり、CD74と結合する免疫複合体であって、前記抗体成分が診断薬または治療薬と結合されている、免疫複合体。
【請求項32】
医薬上許容される担体と、請求項1〜31のいずれか一項に記載の少なくとも一つのmAbまたはそのフラグメントまたはその抗体融合タンパク質または免疫複合体とを含んでなる治療組成物を患者に投与することを含んでなる、疾病または疾患の治療方法。
【請求項33】
前記疾病または疾患がCD74発現悪性腫瘍である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記疾病または疾患が、免疫調節障害症、自己免疫疾患、臓器移植拒絶症、および移植片対宿主病からなる群から選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記CD74発現悪性腫瘍が、固形腫瘍、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、その他のB細胞悪性腫瘍およびT細胞悪性腫瘍からなる群から選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記固形腫瘍が、黒色腫、癌腫、および肉腫からなる群から選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記癌腫が、腎臓癌、肺癌、腸癌、胃癌および黒色腫からなる群から選択される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記B細胞悪性腫瘍が、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、無痛性B細胞リンパ腫、急速進行性B細胞リンパ腫、慢性リンパ性白血病、急性リンパ性白血病、および多発性骨髄腫からなる群から選択される、請求項35に記載の疾病または疾患の治療方法。
【請求項39】
前記mAbまたはそのフラグメントまたはその抗体融合タンパク質が、20〜2000mgの用量にて静脈内投与または筋肉内投与される、請求項32〜38のいずれか一項に記載の疾病または疾患の治療方法。
【請求項40】
少なくとも一つの治療薬または診断薬を投与することをさらに含んでなる、請求項32〜38のいずれか一項に記載の疾病または疾患の治療方法。
【請求項41】
前記mAbまたはそのフラグメントが、少なくとも一種の治療薬を投与する前、投与する際、または投与した後に投与される、請求項40に記載の疾病または疾患の治療方法。
【請求項42】
前記治療薬が、抗体、免疫調節剤、ホルモン、細胞傷害剤、酵素、および少なくとも一つの免疫調節剤、放射性核種、酵素、ホルモン、細胞傷害剤、アンチセンスオリゴヌクレオチドに結合された抗体、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項41に記載の疾病または疾患の治療方法。
【請求項43】
前記細胞傷害剤が薬物または毒素である、請求項42に記載の疾病または疾患の治療方法。
【請求項44】
前記免疫調節剤が、サイトカイン、幹細胞増殖因子、リンフォトキシン、造血因子、コロニー刺激因子、インターフェロン、エリスロポエチン、トロンボポエチン、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
前記造血因子が、IL−1、IL−2、IL−3、IL−6、IL−10、IL−12、IL−18、IL−21およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるインターロイキンである、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記リンフォトキシンが腫瘍壊死因子である、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
前記インターフェロンが、α−インターフェロン、β−インターフェロンおよびγ−インターフェロンからなる群から選択される、請求項44に記載の方法。
【請求項48】
前記コロニー刺激因子が顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)または顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)である、請求項44に記載の方法。
【請求項49】
前記抗体が、CD4、CD5、CD8、CD14、CD15、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD30、CD33、CD37、CD38、CD40、CD40L、CD46、CD52、CD54、CD80、CD126、B7、MUC1、テネイシン、Ia、HM1.24、およびHLA−DRと反応性のあるmAbまたはそのフラグメントからなる群から選択され、医薬上許容されるビヒクル中に調剤されたものである、請求項42に記載の疾病または疾患の治療方法。
【請求項50】
リンパ腫または白血病以外のCD74抗原陽性悪性腫瘍を有する被験体に、医薬上許容される担体と、請求項1〜30のいずれか一項に記載の少なくとも一つのmAbまたはそのフラグメントまたはその抗体融合タンパク質とを含んでなる治療組成物を投与することを含んでなる、悪性腫瘍の治療方法。
【請求項51】
前記mAbまたはそのフラグメントまたはその抗体融合タンパク質が、20〜2000mgの用量にて静脈内投与または筋肉内投与される、請求項50に記載の悪性腫瘍の治療方法。
【請求項52】
mAbまたはそのフラグメントまたはその抗体融合タンパク質が、悪性腫瘍の治療に用いられる少なくとも一つの治療薬を投与する前、投与する際、または投与した後に投与される、請求項50に記載の悪性腫瘍の治療方法。
【請求項53】
前記治療薬が、抗体、免疫調節剤、ホルモン、細胞傷害剤、酵素、放射性核種、および少なくとも一種の免疫調節剤、酵素、放射性標識、ホルモン、アンチセンスオリゴヌクレオチド、もしくは細胞傷害剤に結合された抗体、またはそれらの組み合わせを含んでなる、請求項52に記載の悪性腫瘍の治療方法。
【請求項54】
前記細胞傷害剤が、薬物または毒素である、請求項53に記載の悪性腫瘍の治療方法。
【請求項55】
前記免疫調節剤が、サイトカイン、幹細胞増殖因子、リンフォトキシン、造血因子、コロニー刺激因子、インターフェロン、エリスロポエチン、トロンボポエチン、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項53に記載の方法。
【請求項56】
前記造血因子がIL−1、IL−2、IL−3、IL−6、IL−10、IL−12、IL−18、IL−21およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるインターロイキンである、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記リンフォトキシンが腫瘍壊死因子である、請求項55に記載の方法。
【請求項58】
前記インターフェロンが、α−インターフェロン、β−インターフェロン、およびγ−インターフェロンからなる群から選択される、請求項55に記載の方法。
【請求項59】
前記コロニー刺激因子が、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)または顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)である、請求項55に記載の方法。
【請求項60】
前記抗体が、医薬上許容されるビヒクル中に調剤され、CD74以外の腫瘍マーカーと反応性のあるmAbまたはそのフラグメントからなる群から選択されるものであり、治療する悪性腫瘍を含む細胞によって発現される、請求項53に記載の悪性腫瘍の治療方法。
【請求項61】
免疫調節障害症および自己免疫疾患と診断される少なくとも一つの疾病を有する被験体を治療する方法であって、医薬上許容される担体と請求項1〜30のいずれか一項に記載の少なくとも一つのmAbまたはそのフラグメントまたはその抗体融合タンパク質とを含んでなる治療組成物を、被験体に投与することを含んでなる、方法。
【請求項62】
前記mAbまたはそのフラグメントまたはその抗体融合タンパク質が、20〜2000mgの用量にて静脈内投与または筋肉内投与される、請求項61に記載の疾病の治療方法。
【請求項63】
前記mAbまたはそのフラグメントまたはその抗体融合タンパク質が、疾病の治療に用いられる少なくとも一つの治療薬を投与する前、投与する際、または投与した後に投与される、請求項61または62に記載の疾病の治療方法。
【請求項64】
前記治療薬が、抗体、酵素、免疫調節剤、ホルモン、細胞傷害剤、および少なくとも一つの免疫調節剤、放射性標識、ホルモン、酵素、細胞傷害剤、アンチセンスオリゴヌクレオチドに結合された抗体、またはそれらの組み合わせを含んでなる、請求項63に記載の疾病の治療方法。
【請求項65】
前記細胞傷害剤が薬物または毒素である、請求項64に記載の疾病の治療方法。
【請求項66】
前記免疫調節剤が、サイトカイン、幹細胞増殖因子、リンフォトキシン、造血因子、コロニー刺激因子、インターフェロン、エリスロポエチン、トロンボポエチン、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項64に記載の方法。
【請求項67】
前記造血因子が、IL−1、IL−2、IL−3、IL−6、IL−10、IL−12、IL−18、IL−21およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるインターロイキンである、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記リンフォトキシンが腫瘍壊死因子である、請求項66に記載の方法。
【請求項69】
前記インターフェロンが、α−インターフェロン、β−インターフェロン、およびγ−インターフェロンからなる群から選択される、請求項66に記載の方法。
【請求項70】
前記コロニー刺激因子が顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)または顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)である、請求項66に記載の方法。
【請求項71】
前記抗体が、CD4、CD5、CD8、CD14、CD15、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD30、CD33、CD37、CD38、CD40、CD40L、CD46、CD52、CD54、CD80、CD126、B7、MUC1、Ia、HM1.24、テネイシン、および成熟HLA−DR二量体と反応性のあるmAbまたはそのフラグメントからなる群から選択され、医薬上許容されるビヒクル中に調剤されたものである、請求項64に記載の疾病の治療方法。
【請求項72】
リンパ腫、白血病、その他のCD−74発現悪性腫瘍、免疫調節障害、自己免疫疾患、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される疾病の治療方法であって、医薬上許容される担体と請求項1〜30のいずれか一項に記載の少なくとも一つのmAbまたはそのフラグメントまたはその抗体融合タンパク質とを含んでなる治療組成物を投与することを含んでなり、ここで、少なくとも一つの治療薬が、化学結合または遺伝子融合によって前記mAbもしくはそのフラグメントまたはその抗体融合タンパク質のFvもしくはFabに結合されている、方法。
【請求項73】
前記治療薬が、免疫調節剤、放射性標識、ホルモン、酵素、または細胞傷害剤を含んでなる、請求項72に記載の疾病の治療方法。
【請求項74】
前記細胞傷害剤が、薬物または毒素である、請求項73に記載の疾病の治療方法。
【請求項75】
前記免疫調節剤が、サイトカイン、幹細胞増殖因子、リンフォトキシン、造血因子、コロニー刺激因子、インターフェロン、エリスロポエチン、トロンボポエチン、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項73に記載の方法。
【請求項76】
前記造血因子が、IL−1、IL−2、IL−3、IL−6、IL−10、IL−12、IL−18、IL−21およびそれらの組み合わせからなる群から選択インターロイキンである、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記リンフォトキシンが腫瘍壊死因子である、請求項75に記載の方法。
【請求項78】
前記インターフェロンが、α−インターフェロン、β−インターフェロン、およびγ−インターフェロンからなる群から選択される、請求項75に記載の方法。
【請求項79】
前記コロニー刺激因子が顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)または顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)である、請求項75に記載の方法。
【請求項80】
疾病の診断方法であって、リンパ腫、白血病、その他のCD−74発現悪性腫瘍、免疫調節障害症、自己免疫疾患、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも一つの疾病を有するものと診断されたまたはその疑いがある被験体に、医薬上許容される担体と請求項1〜30のいずれか一項に記載の少なくとも一つのmAbまたはそのフラグメントまたはその抗体融合タンパク質とを含んでなる診断組成物を投与することを含んでなり、ここで、診断薬が化学結合によってmAbもしくはそのフラグメント、またはその抗体融合タンパク質のFvもしくはFabに結合されている、方法。
【請求項81】
前記診断薬が放射性同位元素であり、該射性同位元素の光量子がラジオシンチグラフィーまたはPETによって検出される、請求項80に記載の疾病の診断方法。
【請求項82】
前記診断薬がMRIにより検出可能な金属である、請求項80の疾病の治療方法。
【請求項83】
前記診断薬がリポソームまたはガス充填リポソームであり、該リポソームが超音波走査装置によって検出できる、請求項80に記載の疾病の診断方法。
【請求項84】
請求項1〜22のいずれか一項に記載のmAbまたはそのフラグメントと、クラスIまたはクラスII MHC抗原ペプチドとを共有結合させ、抗体複合体を形成させることを含んでなり、癌または感染症を有する患者を治療するのに用いられる、ワクチン。
【請求項85】
前記クラスIまたはクラスII 抗原ペプチドが、抗原提示細胞によるタンパク質分解性消化により、前記mAbまたはそのフラグメントに結合されたより大きなペプチドまたはタンパク質から遊離される、請求項84に記載のワクチン。
【請求項86】
前記抗体複合体が、前記mAbまたはそのフラグメントをコードするcDNAと抗原ペプチドまたはタンパク質をコードするcDNAとを融合させ、その融合タンパク質を細菌、酵母または哺乳類細胞内で発現させることによって製造される、請求項84または85に記載のワクチン。
【請求項87】
請求項1〜30のいずれか一項に記載のmAbまたはそのフラグメントまたはその抗体融合タンパク質が、癌または炎症細胞のマーカー物質、感染性病原生物の表面上のエピトープ、または血液もしくは他の体液中の有害物質に特異的な抗体または抗体フラグメントに結合されている、二重特異性または多重特異性抗体。
【請求項88】
(a)請求項1〜25のいずれか一項に記載の抗CD74mAbまたはそのフラグメント;
(b)請求項31に記載の免疫複合体;
(c)請求項1〜25のいずれか一項に記載の少なくとも二つの抗CD74mAbまたはそのフラグメントを含んでなる抗体融合タンパク質またはそのフラグメント;
(d)請求項26〜30のいずれか一項に記載の抗体融合タンパク質またはそのフラグメント;
(e)請求項84〜86のいずれか一項に記載のワクチン;および
(f)請求項87に記載の二重特異性または多重特異性抗体
からなる群から選択されるmAbまたはそのフラグメントをコードする核酸を含んでなるDNA配列。
【請求項89】
請求項88に記載のDNA配列を含んでなる、発現ベクター。
【請求項90】
前記ベクターがpdHL2またはGSである、請求項89に記載の発現ベクター。
【請求項91】
キメラ、ヒト化またはヒトIgGを発現させるのに用いる場合のpdHL2またはGSがIgG1のH鎖およびL鎖定常領域およびヒンジ領域をコードする、請求項90に記載の発現ベクター。
【請求項92】
請求項88に記載のDNA配列を含んでなる宿主細胞。
【請求項93】
前記細胞が細菌、酵母または哺乳類細胞である、請求項92に記載の宿主細胞。
【請求項94】
前記哺乳類細胞がリンパ細胞である、請求項93に記載の宿主細胞。
【請求項95】
前記リンパ細胞が骨髄腫細胞である、請求項94に記載の宿主細胞。
【請求項96】
抗CD74mAbもしくはそのフラグメント、または抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントを発現させる方法であって、
(a)宿主細胞を請求項88に記載のDNA配列にてトランスフェクトすること;および
(b)抗CD74 mAbもしくはそのフラグメント、または抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントを分泌する細胞を培養すること
を含んでなる、方法。
【請求項97】
前記宿主細胞が細菌、酵母または哺乳類細胞由来のものである、請求項96に記載の方法。
【請求項98】
CD74発現悪性腫瘍、免疫調節障害症、自己免疫疾患、臓器移植拒絶症および移植片対宿主病からなる群から選択される疾患または疾病の治療のための、請求項1〜30のいずれか一項に記載の裸の抗CD74抗体もしくはそのフラグメント、または裸の抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントの使用。
【請求項99】
請求項1〜31のいずれか一項に記載の抗CD74抗体もしくはそのフラグメント、または抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメント、または免疫複合体を含んでなる治療用複合体の使用であって、前記抗CD74抗体もしくはそのフラグメント、または抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメント、または免疫複合体が、CD74発現悪性腫瘍、免疫調節障害症、自己免疫疾患、臓器移植拒絶症、および移植片対宿主病からなる群から選択される疾患または疾病の治療のための少なくとも一つの治療薬に結合されている、使用。
【請求項100】
請求項1〜31のいずれか一項に記載の抗CD74抗体もしくはそのフラグメント、または抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメント、または免疫複合体を含んでなる診断用複合体の使用であって、前記抗CD74抗体もしくはそのフラグメント、または抗体融合タンパク質が、CD74発現悪性腫瘍、免疫調節障害症、自己免疫疾患、臓器移植拒絶症、移植片対宿主病、またはそれらの組み合わせの診断のための少なくとも一つの治療薬に結合されている、使用。

【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2006−502699(P2006−502699A)
【公表日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−573032(P2003−573032)
【出願日】平成15年3月3日(2003.3.3)
【国際出願番号】PCT/GB2003/000890
【国際公開番号】WO2003/074567
【国際公開日】平成15年9月12日(2003.9.12)
【出願人】(504149971)イミューノメディクス、インコーポレイテッド (48)
【氏名又は名称原語表記】IMMUNOMEDICS, INC.
【Fターム(参考)】