説明

インターナライズする抗体を選択する方法

【課題】多価抗体ファージディスプレイライブラリーの提供。
【解決手段】当該多価抗体ファージディスプレイライブラリーは、複数のファージを含み、ここで、該ファージが、平均して、少なくとも2コピーの単鎖抗体を提示し、そして該ライブラリーが複数種の単鎖抗体を含む。好ましくは、前記ファージは、平均して、少なくとも4コピーの単鎖抗体を提示する。また、好ましくは、前記ライブラリーが少なくとも10の異なる種の単鎖抗体を含む。更に、多価ファージディスプレイ抗体ライブラリーを含む1以上の容器を備えるキット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、米国特許法第119条(e)に基づく仮出願米国特許仮出願番号60/082,953(1998年4月24日出願)(これは、本明細書において参考としてその全体がその全ての目的について援用される)に対する利益を主張する。
【0002】
(連邦政府が支援した研究および開発の下でなされた発明に対する権利についての陳述)
本研究は、部分的に、Department of Defense Grants DAMD17−96−1−6244およびDAMD17−94−4433によって支援された。米合衆国政府は、本発明においていくらかの権利を有し得る。
【0003】
(発明の分野)
本発明は、免疫診断および免疫治療の分野に関する。本発明は、インターナライズする抗体およびインターナライズするレセプターリガンドを同定する方法、ならびに結合したインターナライズされたレセプター結合を提供する。
【背景技術】
【0004】
(発明の背景)
増殖(成長)因子レセプターおよび他のシグナル伝達レセプターは、しばしば、ヒトのガンおよび他の疾患において過剰発現され、従って、標的化された治療の開発について利用されている。例えば、HER2/neu遺伝子は、ヒトアデノガン腫のいくつかの型(特に、乳房および卵巣の腫瘍)において増幅し(Slamonら(1989)Science 244:707−712)、これは、対応する増殖因子ErbB2の過剰発現をもたらす。ErbB2過剰発現細胞の標的化は、主に、異なる形式における抗ErbB2抗体を用いて達成されている。この形式としては、化学療法剤を含むリポソームとの結合体(Kirpotinら(1997)Biochem.36:66−75)、毒素遺伝子を送達するDNAキャリアタンパク質との融合物(ForminayaおよびWels(1996)J.Biol.Chem.271:10560−10568)、および毒素との直接融合物(Altenschmidtら(1997)Int.J.Cancer 73:117−124)が挙げられる。
【0005】
これらの標的化されたアプローチの多くについて、エフェクター分子を細胞膜を横切って細胞質ゾルへと送達することが必要である。いくつかの場合において、これは、レセプター媒介性のエンドサイトーシスの利点を利用することによって容易にされ得る(UllrichおよびSchlessinger(1990)Cell 61:203−212)。レセプター媒介性のエンドサイトーシスは、しばしば、リガンドとの結合が、ホモ二量化またはヘテロ二量化を介するレセプター活性化を引き起こす場合に、二価リガンドについて直接的にか、または一価のリガンドについてレセプターにおけるコンホメーション変化を引き起こすことのいずれかによって起こる。抗体は、このプロセスを模倣し得、エンドサイトーシスを刺激し得、インターナライズされ得、そしてその負荷物を細胞質ゾルへと送達する。さらに、抗体がインターナリゼーションを媒介する効率は、その抗体の型(例えば、抗体全体、フラグメント、単鎖抗体、モノマー、ダイマーなど)に依存し、そして認識されるエピトープに依存して有意に異なる(Yarden(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2569−2573;Hurwitzら(1995)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92:3353−3357)。従って、いくつかの適用(例えば、リポソーム標的化)について、特異的なエピトープに結合する抗体のみが迅速にインターナライズされ、そして機能的な標的化ビヒクルを生成する。
【0006】
インターナライズする抗体はまた、認識されるエピトープに依存して、細胞増殖阻害または細胞増殖の増強を引き起こすことが示されている。従って、インターナリゼーションについての選択は、増殖阻害性または増殖刺激性(アゴニスト性)の抗体の単離をもたらすはずである。そのような阻害性抗体は、ガン処置として使用され得るか、または細胞の過剰増殖によって特徴付けられる他の状態の処置のため、および炎症の処置(抗炎症)のために使用され得る。アゴニスト性抗体は、関連する細胞(例えば、幹細胞)の増殖を刺激するために使用され得る。遺伝子送達のためにガン以外の細胞を標的化することはまた、多くの適用を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
現在、インターナリゼーションを媒介する抗体は、ハイブリドーマをスクリーニングすることによって同定される。しかし、ハイブリドーマが産生する抗体のスクリーニングは骨が折れ、時間がかかり、そして高価である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の要旨)
本発明は、部分的に、レセプター媒介性のエンドサイトーシス後に細胞内から感染性のファージ粒子を回収することによって大きな非免疫ファージライブラリーからインターナライズする抗体を直接選択することが可能であるとの発見に基づく。
【0009】
従って、1つの実施態様において、本発明は、標的細胞中にインターナライズされるポリペプチドまたは抗体結合部分を選択する方法を提供する。この方法は、好ましくは、以下の工程を包含する:i)1つ以上のこの標的細胞を、ファージディスプレイライブラリーの1以上のメンバーと接触させる工程;iv)この標的細胞を、このディスプレイライブラリーのメンバーが、インターナライズするマーカーに結合する場合にインターナライズされ得る条件下で培養する工程;およびv)このファージディスプレイライブラリーのメンバーが1以上の標的細胞中にインターナライズされる場合にこのファージディスプレイライブラリーのインターナライズされたメンバーを同定する工程。この方法はまた、必要に応じて、および好ましくは、さらに以下の工程を包含する:該ファージディスプレイライブラリーのメンバーを、サブトラクティブ細胞株の細胞と接触させる工程;および次いで該標的細胞を洗浄して、サブトラクティブ細胞株の該細胞を取り除き、そして該標的細胞に非特異的に結合するかまたは弱く結合している該ファージディスプレイライブラリーのメンバーを除去する工程。好ましい実施態様において、このファージディスプレイは、抗体ファージディスプレイライブラリーであり、より好ましくは、単鎖抗体(例えば、scFv、scFabなど)を提示する抗体ファージディスプレイライブラリーである。
【0010】
好ましい実施態様において、「同定する」工程は、インターナライズされたファージを回収すること、および上記プロセスの工程を再び反復して、インターナライズする結合部分についてさらに選択することを包含する。1つの実施態様において、「回収する」工程は、その標的細胞を溶解してインターナライズされたファージを放出させる工程;および細菌宿主にそのインターナライズされたファージを感染させて、選択の次の回のためのファージを産生する工程を包含する。この回収する工程は、感染性ファージを回収する工程、および/またはファージに提示された抗体をコードする核酸を回収する工程、および/または選択マーカー(例えば、抗生物質耐性遺伝子またはcDNA)を発現するファージの選択を包含する。この同定する工程は、レポーター遺伝子の発現を検出する工程、特定の核酸の存在/非存在または量を検出する工程、または選択マーカーを介したファージの選択を包含し得る。好ましい方法において、サブトラクティブ細胞株の細胞は、その標的細胞よりも少なくとも2倍過剰で存在する。好ましい方法において、標的細胞は、接着層を形成する。好ましい方法において、この標的細胞株は、組織培養プレートに接着して増殖され、そして単一の細胞培養フラスコにおける懸濁物中でサブトラクトする細胞株とともに同時インキュベートされる。特に好ましい方法において、サブトラクティブ細胞株との接触は、インターナリゼーション培養条件(例えば、37℃)よりも低い温度(例えば、4℃)で行われる。
【0011】
特に好ましい実施態様において、ファージは、選択マーカーおよび/またはレポーター遺伝子を発現する。好ましい選択マーカーとしては、以下が挙げられるがそれらに限定されない:蛍光タンパク質、抗生物質耐性の遺伝子もしくはcDNAをコードする遺伝子(またはcDNA)および色素形成性の遺伝子またはcDNA(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、βラクタマーゼ、ルシフェラーゼおよびβガラクトシダーゼ)。特定の実施態様において、その標的細胞は、固形腫瘍細胞、cDNA発現ライブラリーのメンバー、サイトカインレセプターを過剰発現する細胞、増殖因子レセプターを過剰発現する細胞、転移性細胞、形質転換された細胞株の細胞、特定の表面標的レセプターをコードする遺伝子またはcDNAを用いて形質転換された細胞、および固形腫瘍の外側に由来する新生物細胞を含み得る。1つの特に好ましい実施態様において、サブトラクティブ細胞株のこの細胞は、その標的細胞と同じ組織型から選択される。適切なサブトラクティブ細胞株の細胞としては、線維芽細胞、単球、幹細胞、およびリンパ球が挙げられるがそれらに限定されない。
【0012】
本発明の方法はまた、インターナライズするレセプターおよび/またはインターナライズするレセプターエピトープ(結合した場合にその結合部分のインターナリゼーションを誘発する、レセプターの領域)を同定し得る。この方法は、一般に、本明細書において記載されるインターナライズする抗体またはポリペプチドを同定する方法のいずれかを、さらなる工程(これによって、同定されたインターナライズする抗体またはポリペプチドがもとの標的細胞または異なる細胞をプローブするために使用される)とともに包含する。インターナライズする抗体またはポリペプチドがそのように結合する場合、それらは、インターナライズするレセプターを有する細胞の単離を可能にし、そしてそのレセプターおよび/またはレセプターエピトープ自体の単離を可能にする。従って、1つの実施態様において、この方法は以下を包含する:i)1つ以上のその標的細胞を、ファージディスプレーライブラリーの1つ以上のメンバーとを接触させる工程;ii)必要に応じて、しかし、好ましくは、そのファージディスプレイライブラリーのメンバーを、サブトラクティブ細胞株の細胞と接触させる工程;iii)必要に応じて、しかし好ましくは、iii)この標的細胞を洗浄して、このサブトラクティブ細胞株の細胞を除去し、そして、この標的細胞に非特異的に結合しているか、または弱く結合しているこのファージディスプレイライブラリーのメンバーを除去する工程;iv)このファージディスプレイライブラリーのメンバーが、インターナライズするマーカーに結合したときにインターナライズされ得る条件下で、この細胞を培養する工程;v)このファージディスプレイライブラリーのメンバーが1以上のこの標的細胞にインターナライズされる場合、このファージディスプレイのインターナライズされるメンバーを同定する工程;vi)同一のまたは異なる標的細胞を、この工程(v)のこの同定されたインターナライズされるメンバー、またはそれから増殖されたメンバーと接触させ、それによって、このメンバーがこの同一または異なる標的細胞の表面に結合する工程。この方法は、そのメンバーが結合する、同じかまたは異なる標的細胞の成分を単離する工程をさらに包含し得る。いくつかの方法において、この「同定する」工程は、インターナライズするファージを回収する工程、および工程(i)〜(v)までの工程を反復して、インターナライズする結合部分についてさらに選択する工程を包含する。
【0013】
この接触工程、洗浄工程、培養工程および同定工程は、好ましくは、本明細書において記載されるように行われ、そしてその標的細胞およびサブトラクティブ細胞は、本明細書において記載される細胞を含む。
【0014】
なお別の実施態様において、本発明は、多価抗体ファージディスプレイライブラリーを提供する。このライブラリーは、好ましくは、複数のファージを含み、ここで、このファージは、平均して、少なくとも2コピーの単鎖抗体を提示し、そしてこのライブラリーは、複数の種の単鎖抗体を含む。好ましい実施態様において、このファージは、平均して、ファージ粒子1つあたり少なくとも3つ、少なくとも4つまたは少なくとも5つのコピーの単鎖抗体を、提示する。特に好ましいライブラリーは、平均して、少なくとも10、好ましくは少なくとも10、より好ましくは少なくとも10、および最も好ましくは少なくとも10の異なる種の単鎖抗体を含む。最も好ましい実施態様において、この抗体は、ファージ(ファージミドではない)ベクターである核酸によってコードされる。
【0015】
特定の実施態様において、このライブラリーは、インターナライズする細胞表面レセプターに特異的に結合するメンバー(例えば、erbB2、EGFレセプター、PDGFレセプター、VEGFレセプター、トランスフェリンレセプターなど)について選択される。この単鎖抗体は、好ましくは、単鎖抗体Fv(scFv)または単鎖Fab(scFab)抗体である。糸状ファージが、好ましくは、本発明のライブラリーにおいて使用され、そしてこの抗体は、好ましくは、PIIIのマイナー外被タンパク質との融合物として発現される。このファージはまた、選択マーカー(例えば、抗生物質耐性遺伝子またはcDNA)および/またはレポーター遺伝子もしくはcDNA(例えば、グリーン蛍光タンパク質(GFP)、Fflux、β−gal、β−ラクタマーゼなど)を発現し得る。
【0016】
さらになお別の実施態様において、本発明は、本明細書において記載されるファージディスプレイ抗体ライブラリーの1つをコードする核酸ライブラリーを提供する。この核酸ライブラリーは、少なくとも10、より好ましくは少なくとも10、および最も好ましくは少なくとも10の異なるファージまたはファージミドベクターを包含する。
【0017】
本発明はまた、本明細書において記載される方法を実施するためのキットを提供する。このキットは、好ましくは、本明細書に記載されるファージディスプレイライブラリー(またはその一部)を含む1つ以上の容器を備える(このキットは、そのライブラリーをコードする核酸および/または単鎖抗体(好ましくは多価ライブラリー)を発現するファージ粒子、および/またはそのファージからのインタクトなファージまたは核酸を含む細胞を備え得る。
【0018】
(定義)
本明細書において使用される場合、「抗体」とは、イムノグロブリン遺伝子またはイムノグロブリン遺伝子のフラグメントによって実質的にコードされる1つ以上のポリペプチドからなるタンパク質をいう。認識されるイムノグロブリン遺伝子は、κ、λ、α、γ、δ、εおよびμの定常領域遺伝子、ならびに多数のイムノグロブリンの可変領域遺伝子を含む。軽鎖は、κまたはλのいずれかと分類される。重鎖は、γ、μ、α、δまたはεと分類される。次いで、これらは、イムノグロブリンクラスである、それぞれIgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEを決定する。
【0019】
代表的なイムノグロブリン(抗体)の構造単位は、テトラマーを含むことが知られる。各テトラマーは、ポリペプチド鎖の2つの同一の対から構成され、ここで、各対は1つの「軽」鎖(約25kD)および1つの「重」鎖(約50〜70kD)を有する。各鎖のN末端は、約100〜110以上のアミノ酸の可変領域を規定し、これらは主に、抗原認識を担う。用語可変軽鎖(V)および可変重鎖(V)とは、それぞれ、これらの軽鎖および重鎖をいう。
【0020】
抗体は、インタクトなイムノグロブリンまたは種々のペプチダーゼを用いた消化により生成された多数の充分に特徴付けられたフラグメントとして存在する。従って、例えば、ペプシンは、ヒンジ領域におけるジスルフィド結合の下の抗体を消化して、FabのダイマーであるF(ab)’2(これは、それ自体がジスルフィド結合によってV−C1に結合した軽鎖である)を生成する。F(ab)’は、緩和な条件下で還元されて、ヒンジ領域におけるジスルフィドを結合を破壊され、それによって、(Fab’)ダイマーをFab’モノマーへと変換し得る。Fab’モノマーは、本質的にヒンジ領域の部分を有するFabである(他の抗体フラグメントのより詳細な説明について、Fundamental Immunology、W.E.Paul編、Raven Press、N.Y.(1993)を参照のこと)。種々の抗体フラグメントは、インタクトな抗体の消化に関して規定されるが、当業者は、そのようなFab’フラグメントがデノボで、化学的または組換えDNA方法論を利用することによるかのいずれかによって合成され得ることを理解する。従って、用語「抗体」はまた、本明細書において使用される場合、抗体全体の改変によって産生されたか、または組換えDNA方法論を用いてデノボ合成されたのいずれかの抗体フラグメントを包含する。好ましい抗体としては、単鎖抗体、(単鎖ポリペプチドとして存在する抗体)、より好ましくは単鎖Fv抗体(scFvまたはscFv)が挙げられ、ここで、可変重鎖および可変軽鎖は一緒に結合されて(直接またはペプチドリンカーを介して)、連続的なポリペプチドを形成する。単鎖Fv抗体は、共有結合されたV−Vヘテロダイマーであり、これは、直接結合されているか、またはペプチドコードリンカーによって結合されるかのいずれかであるVコード配列およびVコード配列を含む核酸から発現され得る。Huston,ら(1988)Proc.Nat.Acad.Sci.USA、85:5879−5883。VHおよびVLが各々単鎖ポリペプチドとして結合されている間、このVHドメインおよびVLドメインは、非共有結合的に会合する。糸状ファージの表面に発現されるべき第一の機能的な抗体分子は、単鎖Fv’(scFv)であるが、別の発現戦略もまた、首尾よく行われている。例えば、Fab分子は、鎖(重鎖または軽鎖)のうちの1つがg3キャプシドタンパク質に融合され、そして相補鎖が可溶性分子としてペリプラズムへと輸送される場合にファージにおいて提示され得る。この2つの鎖は、同じまたは異なるレプリコン上にコードされ得る;重要な点は、各々Fab分子におけるこの2つの抗体鎖が、翻訳後にアセンブルし、そしてこのダイマーが、g3pへのその鎖の一方の連結を介して、そのファージ粒子へと取り込まれることである(例えば、米国特許第5733743号を参照のこと)。scFv抗体および多数の他の構造(これは、天然に凝集するが、抗体V領域からの化学的に分離された軽鎖ポリペプチドおよび重鎖ポリペプチドを、抗体結合部位の構造に実質的に類似する三次元構造へと変換する)は、当業者に公知である(例えば、米国特許第5,091,513号、同第5,132,405号、および同第4,956,778号を参照のこと)。特に好ましい抗体としては、ファージI上に提示された抗体すべてが挙げられるが、好ましい抗体は、ファージ上に提示された抗体をすべて含むべきである(例えば、scFv、Fv、Fabおよびジスルフィド結合Fv(Reiterら(1995)Protein Eng.8:1323−1331)。
【0021】
「抗体結合部位」または「抗体部分」とは、抗原結合に関与するイムノグロブリン分子の部分をいう。抗原結合部位は、重鎖(「H」)および軽鎖(「L」)のN末端可変(「V」)領域のアミノ酸残基によって形成される。重鎖および軽鎖のV領域内の3つの高度に多岐にわたるストレッチは、「超可変領域」いわれる。この領域は、より保存的な隣接するストレッチ(「フレームワーク領域」または「FR」として知られる)の間に挿入されている。従って、用語「FR」とは、イムノグロブリンにおける超可変領域の間および近位に天然に見出されるアミノ酸配列をいう。抗体分子では、軽鎖の3つの超可変領域および重鎖の3つの超可変領域が、互いに三次元空間上で抗原結合「表面」を形成するように配置される。この表面は、標的抗原の認識および結合を媒介する。重鎖および軽鎖の各々の3つの超可変領域は、「相補性決定領域」または「CDR」と呼ばれ、そして例えば、Kabatら、Sequences of proteins of immunological interest、第4版.U.S.Dept.Health and Human Services、Public Health Services、Bethesda、MD(1987)によって特徴付けられている。
【0022】
本明細書において使用される場合、用語「免疫学的結合」および「免疫学的結合特性」とは、イムノグロブリン分子とそのイムノグロブリンが特異的である抗原との間に生じる型の非共有結合性の相互作用をいう。免疫学的な結合相互作用の強度または親和性は、相互作用の解離定数(Kd)で表され得、ここで、より小さなKdは、より大きな親和性を表す。選択されたポリペプチドの免疫学的結合特性は、当該分野で周知の方法を用いて定量され得る。1つのそのような方法は、抗原結合部位/抗原複合体形成および解離の速度を測定する工程を包含し、ここで、これらの速度は、複合体パートナーの濃度、相互作用の親和性および両方の方向における速度に等量に影響を与える幾何パラメータに依存する。従って、「オン速度定数」(kon)および「オフ速度定数」(koff)の両方は、会合および解離の濃度および実際の速度の計算によって決定され得る。koff/konの比は、親和性に関連しないすべてのパラメータの除去を可能にし、従って、解離定数Kと等価である(一般には、Daviesら(1990)Ann.Rev.Biochem.、59:439−473を参照のこと)。
【0023】
句「タンパク質に特異的に結合する」または「〜と特異的に免疫反応性である」とは、抗体に対して言及する場合、タンパク質および他の生物学的物質の異種集団の存在下で、タンパク質の存在の決定因子である結合反応をいう。従って、指定されたイムノアッセイ条件下で、特定された抗体は、特定のタンパク質に結合し、そしてそのサンプルに存在する他のタンパク質には有意な量で結合しない。そのような条件下でのタンパク質に対する特異的な結合は、特定のタンパク質の特異性について選択された抗体を必要とし得る。例えば、F5抗体またはC1抗体は、c−erbB−2タンパク質に対して惹起され得る。これらの抗体は、c−erbB−2に結合し、そして、組織サンプルに存在する他のタンパク質には結合しない。種々のイムノアッセイ形式を使用して、特定のタンパク質と特異的に免疫反応性の抗体を選択し得る。例えば、固相ELISAイムノアッセイは、あるタンパク質と特異的に免疫反応性であるモノクローナル抗体を選択するために慣用的に使用される。特異的な免疫反応性を決定するために使用され得るイムノアッセイの形式および条件の記載については、HarlowおよびLane(1988)Antibodies、A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Publications、New Yorkを参照のこと。
【0024】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」または「タンパク質」は、本明細書において交換可能に使用されて、αアミノ基と隣接する残基のカルボキシ基との間のペプチド結合によって、一方から他方へと結合されたアミノ酸残基の直鎖状のシリーズをいう。このアミノ酸残基は、好ましくは、天然の「L」イソ型形態で存在する。しかし、「D」イソ型形態における残基は、所望の機能的特性がそのポリペプチドによって維持される限り、任意のLアミノ酸残基に置き換わり得る。さらに、このアミノ酸は、20の「標準的な」アミノ酸に加えて、改変されたアミノ酸および異常なアミノ酸を含み、これには、米国特許法規則1.822条(b)(4)に列挙されるものが含まれるがそれらに限定されない。さらに、アミノ酸残基配列の開始部または末端のダッシュは、1以上のアミノ酸残基のさらなる配列へのペプチド結合を示すか、またはカルボキシル末端基もしくはヒドロキシル末端基への共有結合を示す。
【0025】
用語「結合するポリペプチド」とは、抗体が抗原に対して結合するものと類似の様式で、標的分子(例えば、細胞レセプター)に特異的に結合するポリペプチドをいう。結合するポリペプチドは、結合するポリペプチドがイムノグロブリン遺伝子またはイムノグロブリン遺伝子のフラグメントには最終的に由来しないという点において抗体とは区別される。
【0026】
用語「保存的置換」は、タンパク質またはペプチドに関して使用されて、その分子の活性(特異性または結合親和性)を実質的に変更しないアミノ酸置換を反映する。代表的には保存的アミノ酸置換は、類似の化学的特性(例えば、電荷または疎水性)を有する別のアミノ酸と1つのアミノ酸の置換を包含する。以下の6つのグループは、互いについて代表的な保存的置換であるアミノ酸を各々含む:
1)アラニン(A)、セリン(S)、トレオニン(T);
2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);
3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);
4)アルギニン(R)、リジン(K);
5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);および 6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)。
【0027】
用語「核酸」とは、一本鎖または二本鎖の形態のいずれかの、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドおよびそれらのポリマーをいう。特に限定しない限り、この用語は、参照核酸と類似の結合特性を有し、そして天然に存在するヌクレオチドと類似の様式で代謝される天然のヌクレオチドの公知のアナログを含む形態を包含する。他に言及しない限り、特定の核酸配列はまた、暗示的に、その保存的に改変された改変体(例えば、縮重コドン置換)および相補配列、ならびに明示的に示された配列を包含する。
【0028】
詳細には、縮重コドン置換は、1つ以上の選択される(またはすべての)コドンの第三位が混合塩基および/またはデオキシイノシン残基に置換された配列を生成することによって達成され得る(Batzerら(1991)Nucleic Acid Res.19:5081;Ohtsukaら(1985)J.Biol.Chem.260:2605−2608;およびCassolら(1992);Rossoliniら、(1994)Mol.Cell.Probes 8:91−98)。用語核酸は、遺伝子、遺伝子にコードされるcDNAおよびmRNAと交換可能に使用される。
【0029】
用語「単離された」または「生物学的に純粋な」とは、そのネイティブな状態において見出される場合に通常付随する成分が実質的または本質的にない物質をいう。しかし、用語「単離された」とは、電気泳動ゲルまたは他の分離媒体に存在する成分をいうことは意図しない。単離された成分は、そのような分離媒体を含まず、そして別の適用における使用について用意された形態であるか、または新たな適用/環境においてすでに使用されている状態にある。
【0030】
キメラ分子は、それらのネイティブ状態では別個に存在する2以上の分子が一緒になって結合されて、その成分分子のすべての所望の機能性を有する単一の分子を形成する分子をいう。キメラ分子は、各々別個に合成された2つの分子を共有結合することによって調製され得るが、当業者は、キメラ分子が融合タンパク質である場合、そのキメラは、デノボで単一の「結合された」分子として調製され得ることを認識する。
【0031】
融合タンパク質は、成分分子がすべてポリペプチドであり、そして互いに末端のペプチド結合を介して接着(融合)し、その結果そのキメラ分子が連続した単鎖ポリペプチドであるキメラ分子である。種々の成分が、直接互いに接着され得るか、または1以上のペプチドリンカーを通じて結合され得る。
【0032】
エフェクター部分または分子は、代表的に、標的細胞(例えばc−erbBを過剰発現する腫瘍)に送達されることが所望される特徴的な活性を有する分子または分子である。エフェクター分子としては、細胞毒素、標識、放射性核種、リガンド、抗体、薬物、リポソームおよびウイルス外被タンパク質(これらは、そのウイルスを、c−erbB2発現細胞に感染し得るようにさせる)が挙げられる。
【0033】
「標的」細胞とは、本発明のファージディスプレイライブラリーのメンバーまたはキメラ分子によって特異的に結合される細胞または細胞型をいう。好ましい標的細胞は、インターナライズする抗体または結合ポリペプチドが探索される細胞である。この標的細胞は、代表的に、その細胞型に特徴的な標的分子の発現または過剰発現によって特徴付けられる。従って、例えば、標的細胞は、c−erbB−2のようなマーカーを過剰発現する、腫瘍細胞のような細胞であり得る。
【0034】
「標的化する部分」とは、標的分子に特異的に結合する部分(例えば、分子)をいう。標的分子が細胞表面上の分子であり、そしてその標的分子がキメラ分子の成分である場合、その標的化部分は、その標的を有する細胞に対するキメラ分子を特異的に結合する。その標的化部分がポリペプチドである場合、その部分は、「標的化ポリペプチド」といわれ得る。
【0035】
用語「インターナライズする」または「インターナライズ(される)(された)」とは、細胞について言及する場合、ある部分(例えば、ファージ)の細胞の外側から内側への輸送をいう。インターナライズされる部分は、細胞内画分(例えば、その細胞自体の液胞、リソソーム、小胞体、ゴルジ装置または細胞質ゾル)に配置され得る。
【0036】
インターナライズするレセプターまたはマーカーは、抗体または結合タンパク質によって特異的に結合される場合にその抗体または結合タンパク質の細胞内へのインターナリゼーションをもたらす、外部の細胞表面に存在する分子である。インターナライズするレセプターまたはマーカーとしては、レセプター(例えば、ホルモン、サイトカインまたは増殖(成長)因子レセプター)、リガンドおよびそれとの結合がインターナリゼーションをもたらす他の細胞表面マーカーが挙げられる。
【0037】
用語「異種核酸」とは、その核酸が見出される細胞にとってネイティブではないか、またはその最終的な起源が、その「異種核酸」が現在見出される細胞もしくは細胞株にはない核酸をいう。
【0038】
イディオタイプは、抗体の高度に可変性の抗原結合部位を表し、そしてそれ自体が、免疫原性である。抗体媒介性の免疫応答の生成の間、個体は、その抗原、ならびに抗イディオタイプ抗体(この免疫原性結合部位(イディオタイプ)は、その抗原を模倣する)に対する抗原を発達させる。抗イディオタイプ抗体はまた、抗体またはそのフラグメントを用いる免疫化によって生成され得る。
【0039】
「ファージディスプレイライブラリー」とは、ファージ(例えば、糸状ファージ)の収集物をいい、ここで、そのファージは、外部(代表的には異種)タンパク質を発現する。この外部タンパク質は、そのファージが接触する他の部分との相互作用(結合)はしない。外部タンパク質を提示する各々のファージは、このファージディスプレイライブラリーの「メンバー」である。
【0040】
「抗体ライブラリー」とは、抗体(1つ以上の抗体遺伝子またはcDNAによってコードされる結合するタンパク質)を提示するファージディスプレイライブラリーをいう.この抗体ライブラリーは、ファージの集団またはそのようなファージの集団をコードするベクターの集団、あるいはファージまたはベクターのそのような集団を有する細胞を含む。このライブラリーは、一価であり得、1ファージ粒子あたり平均して1つの単鎖抗体を提示するか、または1つのウイルス粒子あたり平均して2つ以上の単鎖抗体を提示する。好ましい抗体ライブラリーは、平均して10を超える。好ましくは10を超える、より好ましくは10を超える、そして最も好ましくは10の異なる種のメンバー(すなわち、その多くの異なる抗体をコードする)を含む。
【0041】
用語「糸状ファージ」とは、その表面上に異種ポリペプチドを提示し得るウイルス粒子をいう。当業者は、種々のバクテリオファージが本発明において使用され得ることを理解するが、好ましい実施態様において、そのベクターは、糸状バクテリオファージ(例えば、f1、fd、Pf1、M13などのような)であるか、またはそれに由来する。糸状ファージは、テトラサイクリンのような選択マーカーを含み得る(例えば、「fd−tet」)。種々の糸状ファージディスプレイ系は、当業者に周知である(例えば、Zacherら、(1980)Gene9:127−140、Smithら、(1985)Science 228:1315−1317(1985);ならびにParmleyおよびSmith(1988)Gene 73:305−318を参照のこと)。
【0042】
「ウイルスパッケージングシグナル」は、ウイルスキャプシドへの核酸の組み込みを指向するに必要かつ十分な核酸配列である。
【0043】
アセンブリ細胞は、核酸がウイルスコートタンパク質(キャプシド)にパッケージングされ得る細胞である。アセンブリ細胞は、1つ以上の異なるウイルス粒子(例えば、通常のファージまたは衰弱化ファージおよびヘルパーファージ)を感染させ得これらのウイルス粒子は、個々に、または核酸のウイルスキャプシドへのパッケージングと合わせて指向する。
【0044】
用語「検出可能な標識」は、検出可能な物理的特性または化学的特性を有する任意の物質をいう。このような検出可能な標識は、イムノアッセイの分野で十分に開発されてきており、一般に、このような方法において有用な任意の標識は、本発明に適用され得る。従って、標識は、分光学的手段、光化学的手段、生物化学的手段、免疫化学的手段、電子的手段、光学的手段または化学的手段によって検出可能ないずれかの組成物である。本発明において有用な標識としては、磁性ビーズ(例えば、DynabeadsTM)、蛍光染料(例えば、フルオレセインイソチオシアネート、テキサスレッド、ローダミンなど)、放射性標識(例えば、H、125I、35S、14C、または32P)、酵素(例えば、LacZ、CAT、西洋わさびペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼなど、検出可能な酵素として、マーカー遺伝子産物として、またはELISAにおいてのいずれかとして、一般に使用される)、および比色標識(例えば、コロイド金または着色ガラスもしくはプラスティック(例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ラテックスなど)のビーズ)が挙げられる。核酸によって発現され得るこれらの検出可能な標識は、「レポーター遺伝子」または「レポーター遺伝子産物」といわれる。
【0045】
蛍光標識は、単一種の有機分子(しかし、無機分子も含む)、有機分子および/または無機分子の複数分子混合物、結晶、ヘテロポリマーなどに限定されないことが認識される。従って、例えば、シリカ殻に囲まれるCdSe−CdSコア殻ナノ結晶は、生物学的分子とカップリングするために容易に誘導体化され得る(Bruchezら(1998)Science,281:2013−2016)。同様に、高度に蛍光性の量子ドット(quantum dot)(硫化亜鉛キャップ化セレン化カドミウム)を、超高感度生物学的検出における使用のための生体分子に共有結合した(WarrenおよびNie(1998)Science,281:2016−2018)。
以下の略語が本明細書中で使用される:AMP、アンピシリン;c−erbB−2 ECD、c−erbB−2の細胞外ドメイン;CDR、相補性決定領域;ELISA、酵素結合免疫吸着アッセイ;FACS、蛍光活性化セルソーター;FR、フレームワーク領域;Glu、グルコース;HBS、hepes緩衝化生理食塩水(10mM hepes、150mM NaCl、pH7.4);IMAC、固定化金属アフィニティークロマトグラフィー;kon、結合速度定数;koff、解離速度定数;MPBS、PBS中スキムミルク粉末;MTPBS、TPBS中のスキムミルク粉末;PBS、リン酸緩衝化生理食塩水(25mM NaHPO、125mM NaCl、pH7.0);PCR、ポリメラーゼ連鎖反応;RU、共鳴単位;scFv、単鎖Fvフラグメント;TPBS、PBS中の0.05% v/v Tween20;SPR、表面プラズモン共鳴;Vκ、免疫グロブリンκ軽鎖可変領域;Vλ、免疫グロブリンλ軽鎖可変領域;V、免疫グロブリン軽鎖可変領域;V、免疫グロブリン重鎖可変領域;wt、野生型。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】図1は、大きなヒトscFvファージ抗体ライブラリーの構築の方法を示す。ライブラリー構築のストラテジーは、ライブラリー構築の個々の工程を最適化して、scFv遺伝子アセンブリの効率およびアセンブリしたscFv遺伝子のクローニングの効率の両方を増大させる工程を包含した。(A)最初に、リンパ球由来のmRNAを使用して、VおよびV遺伝子レパートリーをRTPCRにより作製し、これは、異なるベクターにクローニングされ、それぞれ、8.0×10および7.2×10のメンバーのVおよびV遺伝子ライブラリーが作製される。クローニングされたV遺伝子ライブラリーは、scFvアセンブリのためのVおよびV遺伝子の安定かつ制限のない供給源を提供した。ペプチド(GS)をコードするDNAを、Vライブラリーの5’末端に組み込んだ。このことによって、scFv遺伝子の作製が、2つのDNAフラグメントをPCRスプライシングすることにより可能になった。以前に、scFv遺伝子レパートリーは、V、V、およびリンカーDNAからなる3つの別個のDNAフラグメントからアセンブリされた。(B)VおよびV遺伝子レパートリーを別個のライブラリーから増幅し、そして重複伸長PCR(overlap extension PCR)を使用してscFv遺伝子レパートリーにアセンブリした。プライマーを使用して、V遺伝子の5’末端の200bp上流およびV遺伝子の200bp下流にアニールしたVおよびV遺伝子レパートリーを再増幅した。これらの長い突出部は、効率的な制限酵素消化を確実にした。(C)scFv遺伝子レパートリーを、NcoIおよびNotIで消化し、そしてプラスミドpHEN1に、M13遺伝子IIIコートタンパク質遺伝子との融合物として、ファージディスプレイのためにクローニングした。
【図2】図2A、2B、および2Cは、抗体ファージディスプレイを示す模式図を示す:(2A)単一のscFv、(2B)単一のダイアボディー、または(2C)多重scFvを提示するファージのカーツーン。scFv=単鎖Fv抗体フラグメント;V=Ig重鎖可変領域ドメイン;V=Ig軽鎖可変領域ドメイン;pIII=ファージマイナーコートタンパク質pIII;Ag=scFvに結合される抗原。
【図3】図3は、抗原特異的ファージの富化に対するトリプシン処理の効果を示す。fdファージ(5.0×1011cfu)およびC6.5 scFvファージミド(5.0×10fu)の混合物をSKBR3細胞とともに37℃で2時間インキュベートした。表6に記載されたように洗浄した(−)か、または細胞を細胞溶解前にトリプシン処理した(+)。第1のストリッピング緩衝液洗浄物中に存在するファージ(細胞表面ファージ)および細胞溶解物(細胞内ファージ)を、アンピシリン(C6.5ファージミド)またはテトラサイクリン(fdファージ)の存在下で力価測定した。
【図4】図4は、抗原特異的ファージの回収に対するインキュベーション時間およびクロロキンの効果を示す。SKBR3細胞を、抗ボツリヌスファージミド(白四角、黒四角)またはC6.5 scFvファージミド(白丸、黒丸)(1.5×10cfu/ml)を添加する前に、クロロキン(50μM)の存在下(黒四角、黒丸)または非存在下(白四角、白丸)で2時間インキュベートした。細胞サンプルを、ファージ添加の0分後、20分後、1時間後、または3時間後に採取し、図4に記載されるように洗浄し(トリプシン処理工程を包含する)、そして細胞内ファージを力価測定した。
【図5】図5は、細胞内ファージの回収に対するファージ濃度の効果を示す。種々の濃度のC6.5 scFvファージミド、C6ML3−9 scFvファージミド、C6.5ダイアボディーファージミドまたはC6.5 scFvファージ(投入ファージ力価)を、6ウェルプレート中2時間37℃で増殖させたコンフルエント未満のSKBR3細胞とともにインキュベートした。細胞を図4に記載にように処理(トリプシン処理を包含する)し、そして細胞内ファージを力価測定する(産生ファージ力価)。
【図6】図6は、抗ErbB−2ファージミドおよび真核生物レポーター遺伝子をパッケージングするファージを生成するためのストラテジーを示す。左列:ヘルパーファージを使用して、TG1含有pHEN−F5−GFP、fl複製起点(fl ori)、遺伝子IIIに融合した抗ErbB−2 F5 scFv遺伝子、およびCMVプロモーターにより駆動される真核生物GFPレポーター遺伝子から構成されるファージミドを感染させる。培養上清から回収したファージは、平均1つのscFv−pIII融合タンパク質を提示し、そしてそれらの99%は、GFPレポーター遺伝子をパッケージングする。右列:抗ErbB2 F5 scFv遺伝子をfdファージゲノムに、scFv−pIII融合物として発現のためにクローニングする。fd−F5ファージを使用して、TG1含有GFPレポーターファージミドベクター(pcDNA3−GFP)を感染させる。培養上清から精製したファージは、多重scFv−pIII融合タンパク質を提示し、そして約50%がGFPレポーター遺伝子をパッケージする。
【図7】図7は、細胞に対する抗ErbB2ファージミドおよびファージの結合の比較を示す。10のErbB2発現SKBR3細胞を、漸増濃度のF5−ファージミド(白丸)またはfd−F5ファージ(白四角)とともに4℃で1時間インキュベートした。ファージを結合した細胞表面を、ビオチン化抗M13およびストレプトアビジン−PEを用いて検出した。結合をFACSにより検出し、そして結果を平均蛍光強度(MFI)として表した。
【図8】図8Aおよび8Bは、乳癌細胞株におけるファージミド媒介性遺伝子移入を示す。(図8A)6ウェルプレート中で増殖させた(1,2,3)2×10MCF7細胞(低ErbB2発現)または(4,5,6)2.0×10SKBR3細胞(高ErbB2発現)を、(1,4)ファージなし、(2,5)5.0×1012cfu/mlのGFPをパッケージングするヘルパーファージ、または(3,6)5.0×1011cfu/mlのF5−GFP−ファージミドのいずれかと、48時間インキュベートした。細胞をトリプシン処理し、そしてGFPをFACSにより検出した。(図8B)等量のMCF7およびSKBR3細胞(1×10)を、ともに増殖させ、そして5.0×1011cfu/mlのF5−GFP−ファージミドととともに48時間インキュベートした。細胞をトリプシン処理し、そして4D5抗体およびローダミン結合体化ヒツジ抗マウスIgを使用してErbB2発現について染色し、SKBR3細胞(領域R1)とMCF7細胞(領域R2)を区別した。各亜集団のGFP含量を、FACS により決定した。
【図9】図9A、9B、9C、および9Dは、SKBR3細胞におけるファージミド媒介性GFP発現の濃度依存性および時間経過を示す。図9Aおよび9Bは、ファージミドの濃度依存性およびSKBR3細胞におけるファージ媒介GFP発現を示す。5.0×10細胞を24ウェルプレート中で増殖させ、そして漸増濃度のF5−GFPファージミド(四角)、fg−F5−GFP−ファージ(菱形)またはGFP−ヘルパーファージ(丸)とともにインキュベートした。60時間後、細胞をトリプシン処理し、そしてGFP発現についてFACSで分析した。図9Cおよび9Dは、SKRB3細胞におけるファージミド媒介性GFP発現の時間依存性を示す。5.0×10細胞を、5×1011cfu/mlのF5−GFP−ファージミドとともにインキュベートし、そしてGFP発現についてFACSで分析した。48時間を超えるインキュベーション時間にわたり、ファージを2.5×10細胞に添加し、そして培養培地を48時間のインキュベーション後に新鮮培地と置き換えた。結果を、(9Aおよび9C)GFP陽性細胞の%ならびに(9Bおよび9D)GFP陽性細胞のMFIとして表す。
【発明を実施するための形態】
【0047】
(詳細な説明)
(I.緒言)
本発明は、特定の標的細胞によりインターナライズされる特異的結合ポリペプチドおよび/または抗体についてスクリーニングする新たな方法を提供する。細胞に対する外部標的(例えば、レセプター)への結合を単に検出する先行技術のアッセイ法とは異なり、本発明のアッセイは、結合し、そして細胞へ(すなわち、小胞および/もしくは小胞体へ、ならびに/または細胞質ゾル自体へ)輸送される分子を明らかに同定する。
【0048】
多くの特異的抗体の利用性は、インターナライズするレセプター(例えば、c−erbB−2)に結合することが一般に公知である抗体ですら、結合した抗体のインターナリゼーションがしばしば欠如すること、または受容しがたい緩慢なインターナリゼーション速度により制限されてきた。このような抗体は、細胞表面に対して一部分を送達するために有用である一方、一般には、エフェクター分子(活性については、細胞への侵入を得なければならない)の送達が満足いかないことが証明された。
【0049】
対照的に、本発明の方法により同定された結合ポリペプチドおよび/または抗体は、細胞へ迅速にインターナライズされる。従って、それらは、標的細胞へエフェクター部分を送達するためにきわめて有用である。さらに、一旦インターナライズする抗体またはポリペプチドが同定されると、これを使用して1つ以上の細胞または細胞株を再プローブし、これまで未知だったインターナライズする細胞標的(例えば、レセプター)を同定し得る。
【0050】
さらに、インターナリゼーションについて選択することはまた、生物学的機能について選択する。多くのレセプター(例えば、増殖因子レセプター)は、リガンドの効果を調整し、そして調節する方法としてインターナリゼーションを利用する。例えば、リガンド結合は、シグナル伝達およびレセプターインターナリゼーションを生じ得る。次いで、レセプターの数の減少は、さらなるリガンドの効果のダウンレギュレーションを引き起こす。同様のことが、増殖因子レセプターを結合する抗体を用いて生じる(Hurwitzら(1995)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92:3353−3357)。例えば、「増殖因子は、それらの細胞表面レセプターに結合し、そしてそれらの固有触媒活性を活性化することによって作用し、このことによって、細胞応答を導くシグナル伝達カスケードを開始する。増殖因子/レセプター複合体は、細胞表面膜に静的に存在しないが、エンドサイトーシス的な輸送プロセスのインターナリゼーションならびに再使用および分解の選別を受ける。結論として、増殖因子は、細胞外媒体から枯渇され、そしてそれらのレセプターは、ダウンレギュレーションを受ける。これらの輸送プロセスは、増殖因子/レセプター複合体のシグナル伝達の速度論に対するそれらの影響によって、細胞挙動応答の重要なモジュレーターである」(Reddyら(1996)Nature Biotech.14:1696−1699)。
【0051】
ErbB2系においては、ErbB2結合抗体が増殖を阻害する1つの機構は、レセプターインターナリゼーションを引き起こし、そしてダウンレギュレートすることである(Hurwitzら(1995)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92:3353−3357)。増殖因子レセプターを結合し、そして増殖阻害を引き起こすインターナライズする抗体を増殖刺激抗体へ向ける(turn)こともまた可能である。例えば、EGFのマイトジェン特性は、EGFのEGFレセプターに対する親和性を低下させることによって増加される。親和性が低くなるにつれて、EGFは、レセプターシグナル伝達を引き起こすが、(より低い親和性から推測すると)野生型EGFより低減されたインターナリゼーションおよびダウンレギュレーションを引き起こす(Reddyら(1996)Nature Biotech.14:1696−1699)。従って、増殖を阻害する、インターナライズする抗体の親和性の低下は、増殖因子へそれらを向け得る。従って、インターナライズする抗体の同定は、増殖阻害および増殖刺激の両方についてのリード化合物/薬物を提供し得る。
【0052】
(II.インターナライズする抗体および/またはレセプターを同定する方法)
(A)インターナリゼーションポリペプチド/抗体の同定)
1つの実施態様において、本発明は、インターナライズする抗体またはポリペプチドを同定する方法を提供する。この方法は、「標的」細胞と、抗体もしくは結合ポリペプチドを提示するファージディスプレイライブラリーの1つ以上のメンバーとを接触させる工程を包含する。このファージディスプレイライブラリーは、好ましくは、多価ファージディスプレイライブラリーであり、そして本発明は、多価抗体ファージディスプレイライブラリーの始めての記載を提供すると考えられる。
【0053】
適切なインキュベーション期間の後、細胞を洗浄して、外部に結合したファージ(ライブラリーメンバー)を除去する。次いで、インターナライズしたファージを細胞から遊離する(例えば、細胞溶解により)。インターナライズしたファージが依然として生存している(感染性)ことが本発明の発見であった。従って、細胞溶解においてインターナライズしたファージが回収され、そしてインターナライズしたファージを含む溶解物を使用して細菌宿主に感染させることにより増殖され得る。感染細菌の増殖は、選択のさらなるラウンドのために使用され得るファージの増殖を導く。選択の各ラウンドによって、さらに効率的にインターナライズするか、標的細胞に対してより特異的であるか、または改善した結合特性を有するファージを富化する。
【0054】
ファージディスプレイライブラリーは、好ましくは、サブトラクティブ細胞株と接触されて(すなわち、サブトラクティブ細胞株は、標的細胞および培養培地に添加される)、「標的」細胞に対して特異的でないファージディスプレイライブラリーのメンバーを除去する。サブトラクティブ細胞株は、好ましくは、ファージディスプレイライブラリーの非特異的結合メンバーが、サブトラクティブ細胞株によって差し引きされ得る前にインターナライズされない(封鎖されない(sequestered))ように、このライブラリーのメンバーがインターナライズされない条件下で(例えば、約4℃〜20℃の温度で、より好ましくは、約4℃の温度で)添加される。
【0055】
非特異的結合抗体を差し引きした後に、「標的」細胞を洗浄して、サブトラクティブ細胞株を除去し、そして非特異的に結合したか、または弱く結合したファージを除去する。
【0056】
次いで、標的細胞をインターナリゼーションが生じ得る条件下で(例えば、約35℃〜約39℃の温度で、より好ましくは、約37℃の温度で)培養する。インターナリゼーション培養期間は、抗体(ファージディスプレイメンバー)のインターナリゼーション速度を決定する。このために選択が生じる。インターナリゼーション期間がより短くなるにつれて、より迅速なインターナライズする抗体が選択されるが、その一方で、インターナリゼーション期間が長くなるにつれて、より緩慢な、インターナライズする抗体が選択される。インターナリゼーション期間は、好ましくは、約120分未満であり、より好ましくは、約60分未満であり、そして最も好ましくは、約30分未満、または約20分未満ですらある。
【0057】
インターナリゼーション期間の間に、インターナリゼーションが生じ得る条件下で標的細胞が増殖されることに注意のこと。多くの細胞株について、このことは、培養プレート上に接着して細胞株を培養することを包含する。
【0058】
インターナリゼーションが生じるようにした後、標的細胞を洗浄して、インターナライズしていないファージ(例えば、表面結合ファージ)を除去する。
【0059】
次いで、細胞をきれいな培地に移し得る。好ましい実施態様において、細胞が接着性である場合、それらは、トリプシン処理されて、細胞外マトリクス(これは、細胞外マトリクスと結合するファージ抗体を含み得る)から遊離される。洗浄を介して細胞を溶液へ遊離することが、さらに可能になり、そして細胞を新たな培養フラスコへ移すことによって、組織培養ディッシュへ固着していたかもしれない任意のファージを組織培養ディッシュへ残す。
【0060】
次いで、細胞を大容量のPBSで洗浄し、そしてインターナライズしたファージを遊離するために溶解し得る。次いで、これを増殖し得る(例えば、E.coliを感染するために使用して、次のラウンドの選択のためにファージを生成し得る)。インターナライズしたファージを実際に可視化する必要はないことに注意のこと。単純な細胞溶解および正式にインターナライズしたファージの増殖は、インターナライズするファージディスプレイメンバーを回収するに十分である。
【0061】
(B)インターナライズするレセプターの同定)
一旦、細胞へインターナライズされる抗体またはポリペプチドが同定されると、同定された抗体またはポリペプチドを用いて1つ以上の細胞型をプローブして、抗体によって認識され、そして結合される標的を同定することが可能である。この抗体はインターナライズする抗体であるため、このような標的は、それ自体インターナライズする標的であるようである(例えば、インターナライズするレセプターのメンバーまたはその一部)。
【0062】
1つの実施態様において、この抗体は、以下に記載のように標識され得る。次いで、細胞は、抗体と接触され(すなわち、インビボまたはインビトロ)、そして抗体が結合する細胞または細胞領域を単離し得る。
【0063】
あるいは、この抗体を、例えば、アフィニティーマトリクス(例えば、アフィニティーカラム)において使用して、それらが結合する標的(例えば、レセプターまたはレセプターサブユニット)を単離し得る。簡潔には、1つの実施態様において、アフィニティークロマトグラフィーは、本発明の方法に従って同定された、インターナライズする抗体の1つ以上の種を(例えば、個体支持体上に)固定化する工程を包含する。次いで、細胞、細胞溶解物、または細胞ホモジネートを、この固定化した抗体と接触させ、次いで、これを、そのコグネイトリガンドに結合させる。次いで、残りの物質を洗い流し、次いで結合した/単離されたコグネイトリガンドをさらなる使用のために、抗体から遊離させ得る。アフィニティークロマトグラフィーを行う方法は、当業者に周知である(例えば、米国特許第5,710,254号、同第5,491,096号、同第5,278,061号、同第5,110,907号、同第4,985,144号、同第4,385,991号、3,938,001号などを参照のこと)。
【0064】
別の実施態様において、この抗体を使用して、細胞溶解物から標的を免疫沈降し得る。次いで、沈降物をSDS−PAGEゲル上で泳動し、これをニトロセルロース上にウェスタンブロットする。このブロットを沈降させた抗体でプローブして、標的の位置を同定する。次いで、標的を含むブロットの一部分は、N末端タンパク質配列決定に供され得る。次いで、N末端配列を使用して、標準データベースから標的を同定し得るか、またはDNAプローブを合成して、ゲノムもしくはcDNAライブラリーをプローブし得る。このアプローチを使用してファージ抗体に結合した抗原を同定する。ファージ抗体ライブラリーの選択は、インタクトなChlamydia trachomatis(クラミジア症を引き起こす細菌様生物)上で行われた。次いで、選択した抗体を上記のように使用して、結合した抗原を同定した。
【0065】
(C)機能的ゲノム)
別の実施態様において、本発明のアッセイを使用して、ライブラリーをスクリーニングし、以前は未知だった結合因子を同定し得る。このタンパク質分析(proteomic)または機能的ゲノム分析に対する2つの好ましいアプローチが存在する。最初にファージディスプレイされたcDNAライブラリーを作製する。mRNA(おそらく差し引きされた)を細胞株または目的の組織から作製する。第1鎖DNAを合成し、そしてDNAseで処理するか、またはいくつかの他の方法でフラグメント化する。これは、5’および3’UTRならびに3’停止コドンを除去する。次いで、ファージライブラリーを作製し、そして細胞に対するインターナライズについて選択する。
【0066】
細胞表面レセプターに結合し、そしてインターナライズするリガンド(またはリガンドのドメイン)が同定される。このアプローチを使用して、例えば、インターナライズする増殖因子レセプターを結合するオーファン増殖因子を同定し得る。レセプターが公知であるが、リガンドは公知でない場合、レプセター遺伝子を細胞株へトランスフェクトし得、そしてトランスフェクトした細胞株を選択のために使用し得る。選択はまた、レポーター遺伝子の送達と組み合わせられ得る。この場合、ファージライブラリーを作製するために使用されるファージベクターは、レポーター遺伝子を含む。選択後に、例えば、レポーター遺伝子GFPを発現する緑色細胞を、(細胞を全て溶解して、インターナライズしたファージを回収するよりむしろ)FACSによって単離し得る。このことは、選択の特異性を改善するために予測される。
【0067】
第2のアプローチについては、第2段落:このファージライブラリーを、上記のように、標的細胞株に対するインターナリゼーションについて選択する。次いで、選択したポリクローナルまたはモノクローナルファージを使用して、cDNAライブラリーでトランスフェクトした細胞(例えば、COS細胞)をフロー選別する。cDNAライブラリープラスミドを選別した細胞から回収し、そして標準的技術を使用して細菌において増幅する。増幅したプラスミドcDNAライブラリーを使用して細胞(例えば、COS細胞)をトランスフェクトし、再びファージを使用して選別する。数ラウンドの選択後に、選別した細胞は、インターナライズしたファージに結合した細胞表面レセプターをコードするプラスミドのみを含むはずである。これらは、DNA配列決定によりそして各プラスミドDNAをファージの結合について試験することにより、このプラスミドDNAを使用して、COS細胞をトランスフェクトした後に、同定され得る。
【0068】
(III.アッセイ成分)
(A)ファージディスプレイライブラリー)
(1)一価抗体ライブラリーおよびポリペプチドライブラリー)
細菌に感染するウイルス(バクテリオファージまたはファージ)の表面上でポリペプチドおよび抗体フラグメントを発現する能力は、1010の非結合クローンを越えるライブラリーから単一の結合ポリペプチドまたは抗体フラグメントを単離することを可能にする。ファージ表面上でポリペプチドまたは抗体フラグメントを発現させる(ファージディスプレイ)ために、ポリペプチドまたは抗体フラグメント遺伝子をファージ表面タンパク質(pIII)をコードする遺伝子に挿入し、そして抗体フラグメント−pIII融合タンパク質をファージ表面上に提示する(McCaffertyら(1990)Nature,348:552−554;Hoogenboomら(1991)Nucleic Acids Res.19:4133−4137)。ファージ表面上の抗体フラグメントは機能的であるので、抗原結合ポリペプチドまたは抗体フラグメントを有するファージは、抗原アフィニティークロマトグラフィーにより非結合ファージから分離され得る(McCaffertyら(1990)Nature,348:552−554)。抗体フラグメントの親和性に依存して、20倍から1,000,000倍の富化因子が、1回の親和性選択について得られる。しかし、溶出したファージで細菌を感染させることによって、より多くのファージが増殖し得、そして別の回の選択に供され得る。このようにして、1回において1,000倍の富化により、2回の選択で1,000,000倍になる(McCaffertyら(1990)Nature,348:552−554)。従って、富化が少ない場合ですら(Marksら(1991)J.Mol.Biol.222:581−597)、複数ラウンドのアフィニティー選択によりまれなファージの単離が導かれ得る。ファージ抗体ライブラリーの抗原に対する選択は、富化を生じるので、クローンの大部分は、4回の選択後に抗原を結合する。従って、比較的少数のクローン(数百)は、抗原に対する結合について分析する必要がある。
【0069】
好ましい実施態様において、結合についての分析は、抗体フラグメント遺伝子と遺伝子IIIとの間にアンバーコドンを含めることによって簡単される。このアンバーコドンによって、宿主細菌株を単に変更することによって、提示された抗体フラグメントと可溶性(ネイティブな)抗体フラグメントとの間を簡単にスイッチすることができるようになる(Hoogenboomら(1991)Nucleic Acids Res.19:4133−4137)。
【0070】
非常に大きく、そして多様なV遺伝子レパートリーをファージ上で提示することによって、予備免疫を行うことなく、ヒト抗体が生成され得る(Marksら(1991)J.Mol.Biol.222:581−597)。第1の実施例において、ヒト末梢血リンパ球に存在する天然のVおよびVレパートリーは、免疫していないドナーからPCRにより単離された。V遺伝子レパートリーは、PCRを使用してランダムに、ともにスプライスされて、scFv遺伝子レパートリーを作製する。これは、ファージベクターにクローニングされて、3000万のファージ抗体(同定)のライブラリーを作製する。この単一の「未処理」ファージ抗体ライブラリーから、結合抗体フラグメントを、17を越える異なる抗原(ハプテン、ポリサッカライドおよびタンパク質を含む)に対して単離した(Marksら(1991)J.Mol.Biol.222:581−597;Marksら(1993)Bio/Technology.10:779−783;Griffithsら(1993)EMBO J.12:725−734;Clacksonら(1991)Nature.352:624−628)。抗体は、自己タンパク質(ヒトサイログロブリン、免疫グロブリン、腫瘍壊死因子およびCEAを含む)に対して生成された(Griffithsら(1993)EMBO J.12:725−734)。インタクトな細胞上で直接選択することによって細胞表面抗原に対する抗体を単離することもまた可能である。例えば、4つの異なる赤血球細胞表面抗原に対する抗体フラグメントを、赤血球上で直接選択することによって生成した(Marksら(1993)Bio/Technology.10:779−783)。抗体を、血液型抗原(表面密度が5,000部位/細胞ほどの低さ)に対して生成した。抗体フラグメントは、選択に使用した抗原に対して高度に特異的であり、そして凝集アッセイおよび免疫蛍光アッセイにおいて機能的であった。より低密度の抗体に対する抗体を、目的の抗原を欠失した高度に関連する細胞型上でファージ抗体ライブラリーを最初に選択することによって生成した。このネガティブ選択によってより高密度の抗原に対する結合物が除去され、そして枯渇したファージ抗体ライブラリーを、目的の抗原を発現する細胞上で引き続き選択することによって、その抗原に対する抗体の単離を生じた。ライブラリーのこの大きさと多様性があれば、いくつかの結合物に対して少なくとも1つは、そのときのタンパク質抗原の70%に対して単離され得る。抗体フラグメントは、選択に使用された抗原に対して高度に特異的であり、そして1:M〜100nM範囲の親和性を有する(Marksら(1991)J.Mol.Biol.222:581−597;Griffithsら(1993)EMBO J.12:725−734)。より大きなファージ抗体ライブラリーは、抗原のより大きな割合に対してより高い結合親和性のより多くの抗体の単離を生じた。
【0071】
適切な大きなファージディスプレイ抗体ライブラリーの作製は、実施例1に詳細に記載される。
【0072】
(2)多価抗体ファージディスプレイライブラリー)
ファージディスプレイ抗体ライブラリーから、インターナライズする抗体を選択する可能性は、ディスプレイされた抗体の価数を増加させることによって増加される。このアプローチは、正常な細胞表面レセプター生物学を利用する。しばしば、細胞表面レセプター(例えば、増殖因子レセプター)は、ホモまたはヘテロの二量体化(または三量体化、または四量体化など)のプロセスを通じてそれらのコグネイトリガンドを結合させることに際して活性化する。このプロセスにおけるレセプターサブユニットの会合は、直接的に(例えば、二価リガンドにより結合される場合)か、またはレセプター中のコンフォメーション変化を引き起こすことにより間接的に媒介され得る。
【0073】
ディスプレイライブラリー(例えば、ファージディスプレイライブラリー)中の多価抗体が、このプロセスを模倣し得、エンドサイトーシスを刺激し得、インターナライズされるようになり得、そしてそれらの有効荷重(payload)を細胞質ゾルに送達し得ることが、本発明の発見であった。従って、インターナライズする抗体を同定するかまたはインターナライズするエプトープを認識する可能性を増大させるために、本発明の好ましい実施態様は、多価ファージディスプレイ抗体ライブラリーを利用する。多価ファージディスプレイ抗体ライブラリーは、本発明以前にはまだ作製されていなかったと考えられる。多価提示ペプチドファージライブラリーとは異なり、ファージ抗体ライブラリーは、代表的には、ファージミド系を使用するファージ表面上の単コピーとして、pIIIに融合されたモノマー単鎖Fv(scFv)またはFab抗体フラグメントを提示する(Marksら、(1991)J.Mol.Biol.222:581−597;Sheetsら(1998)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95:6157−6162)。
【0074】
本明細書中で使用されるように、多価ファージディスプレイ抗体ライブラリーは、各メンバー(例えば、ファージ粒子)が平均して2以上の結合ドメインを提示するライブラリーを意味し、ここで、各結合ドメインは、可変の重鎖領域および可変の軽鎖領域を含む。より一般的には、多価ファージディスプレイライブラリーは、平均して、ページ(page)粒子当たり2以上のpIII融合物を提示する。多価ファージディスプレイは、ダイアボディー(diabody)(すなわち、2つの単鎖抗体の融合または結合体化によって形成されたタンパク質(例えば、scFv))を発現させることによるか、または各ファージ粒子上における平均して2つ以上の抗体の提示によって達成され得る。対して、単価ライブラリーは、平均して、ウイルス粒子当たり1つの単鎖抗体を提示する。
【0075】
(a)ダイアボディー発現)
ダイアボディーは、各鎖が、同じ鎖上のドメイン間の対合を可能にするには短すぎるリンカー(例えば、ペプチドリンカー)を用いて連結された重鎖(V)および軽鎖(V)可変ドメインからなるscFvダイマーである。結果的に、対合は、2つの異なる鎖の相補的ドメイン間で生じ、2つの結合部位を有する安定な非共有結合ダイマーを作製する(Holligerら(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.90:6444−6448)。C6.5ダイアボディーを、Ig VおよびVドメイン間のペプチドリンカーを15アミノ酸から5アミノ酸に短縮することにより構築した。そしてこれは、C6.5(4.0×10−10M)(Adamsら(1998)Brit.J.Cancer.77:1405−1412、1998)よりも約40倍低いKで、SKBR3細胞上でErbB2に二価的に結合する。
【0076】
本明細書中に記載の実施例5において、C6.5ダイアボディー遺伝子を、ファージミドpHEN−1におけるpIII融合物としての発現のためにサブクローニングした(Hoogenboomら(1991)Nucleic Acids Res.19:4133−4137)。このことは、ヘルパーファージでのレスキュー後に主に単一のscFvまたはダイアボディー−pIII融合物を発現するファージミドを生じた(Marksら(1992)J.Biol.Chem.267:16007−16010)。ダイアボディーファージミドは、1つのscFv−pIII融合分子および1つのネイティブのscFv分子の分子間対合から生じるダイアボディーフラグメントを提示する。本明細書中で提供された教示を使用して、当業者は、他のダイアボディーを慣用的に生成し得る。
【0077】
scFvの二価ダイアボディーまたは多重コピーを提示するファージは、モノマーscFvを提示するファージより効率的にエンドサイトーシスされ、そして感染性ファージの回収を、細胞をクロロキンとプレインキュベートすることにより増大させた。
【0078】
この結果は、10メンバーのライブラリーにおいて、単一のファージ抗体メンバーについて存在する低い濃度でさえも、エンドサイトーシス可能な抗体について選択することが可能であることを示す。
【0079】
(b)単鎖抗体の多価ディスプレイ)
ダイアボディーの使用に対する代替として、各ウイルス粒子が、平均して、少なくとも2コピー、好ましくは少なくとも3コピー、より好ましくは少なくとも4コピー、そして最も好ましくは少なくとも5コピーの単鎖抗体を発現する抗体ファージディスプレイライブラリーが、作製される。
【0080】
原則的には、ページ上のpIIIの各コピー(そして、1ファージ当たりに3コピーまたは5コピーのpIIIが存在するかに関して論争がある)は、抗体を発現しているはずである。しかし、タンパク質溶解が起こり、そして実際に提示される数は代表的には低い。従って、好ましい多価抗体ライブラリーは、ファージベクター中で構築されるが、ファージミド(phage mid)ベクター中では構築されない。このことは、ヘルパーファージがファージを作製するために添加される必要がないことを意味する。ヘルパーファージは、scFv−pIII融合物と競合するE.coli野生型pIIIになる。従って、ファージミドベクターにおいて、この競合により、平均して、ファージ当たりたった1つ(またはそれ未満)の抗体に至る。
【0081】
多価抗体ライブラリーを生成するために、単鎖抗体(代表的にはファージミドで発現された)は、ファージミドベクターからファージベクターにサブクローン化される。ヘルパーファージは必要とされず、そして野生型pIIIと融合scFv pIII融合物との間には競合は存在せず、従って、平均して、ファージは、2つ以上のpIII融合物を提示する。従って、例示のために、実施例5は、C6.5 scFv遺伝子のファージベクターfd−Sfi/Notへのサブクローン化を記載する。これは、3〜5コピーの各scFv−pIII融合タンパク質を有するファージを生じる。
【0082】
(B)標的細胞)
本発明の標的細胞は、インターナライズするポリペプチドまたは抗体を同定することが所望されるか、またはインターナライズするマーカー(例えば、レセプター)を同定することが所望される任意の細胞を包含する。この細胞は、多細胞真核生物、単細胞真核生物(植物および真菌を含む)の細胞、および原核生物細胞でさえも包含し得る。好ましい標的細胞は、真核生物、より好ましくは、脊椎動物細胞、および最も好ましくは哺乳動物細胞(例えば、マウス、ウシ、霊長類(ヒトを含む)、大型動物(largomorph)、イヌ、ネコなどに由来する細胞)である。細胞は、正常な健常細胞であり得るか、または特定の病状によって特徴付けられる細胞(例えば、腫瘍細胞)であり得る。
【0083】
標的細胞は、以下に有用である場合の任意の細胞型を包含し得る:1)細胞型または関連した細胞型を特異的に認識する抗体を有する(例えば、細胞選別、細胞染色、または他の診断手順のために);2)細胞型または関連した細胞型に特異的にインターナライズされるリガンドを有する(例えば、毒性または治療用の遺伝子もしくはタンパク質を送達するために)。さらなる標的細胞は、分化細胞(すなわち、組織(例えば、前立腺、乳房)になるように分化された細胞)を包含するが、これらに限定されない。従って、前立腺細胞を認識し、そして殺傷した抗体は、たとえそれが正常な前立腺細胞を殺傷しようと、前立腺癌に良好である(前立腺は、必須の器官ではない)。標的細胞は、組織特異的細胞、および所定の発生段階の細胞を包含し得る。標的細胞はまた、前駆細胞(例えば、骨髄幹細胞)を含み得、これは、単離、おそらく分化について刺激することについて有用である。
【0084】
標的細胞はまた、公知のレセプター(例えば、ErbB2)の遺伝子でトランスフェクトされた細胞株を包含し得る。このレセプターは、インターナライズする抗体を有するために有用である。
【0085】
多くのErbB2抗体は、インターナライズしていない。組換えタンパク質で免疫するか、または組換えタンパク質についてファージライブラリーを選択するよりむしろ、インターナリゼーションについてのErbB2トランスフェクト細胞の選択は、所望の特徴(インターナリゼーション)を有する抗体を正確に生じるはずである。最後に、cDNAライブラリーは、所望の標的細胞株または組織由来の細胞株(例えば、COS)にトランスフェクトされ得、そしてファージ抗体は、インターナリゼーションについて選択され得る。数回の選択後、ファージは、トランスフェクト細胞を(例えば、FACSによって)染色および選別するために使用され得る。DNAは、細胞から回収され得る。これは、インターナライズするレセプターの配列、ならびにそれらに結合するファージ抗体を生じる。
【0086】
(C)サブトラクティブ細胞株の細胞)
本発明のアッセイの好ましい実施態様では、ファージディスプレイライブラリーを、「サブトラクティブ」細胞株由来の細胞と接触させる。この工程は、細胞に非特異的に結合するか、または標的に対して結合するポリペプチドもしくは抗体を得るために所望される標的以外の標的に結合するかのいずれかであるファージディスプレイライブラリーのメンバーを枯渇または除去することが意図される。「サブトラクティブ」細胞株由来の細胞との接触は、標的細胞が、ファージディスプレイライブラリーのメンバーと接触される前、間、もしくは後に生じ得る。しかし、好ましい実施態様では、サブトラクティブ細胞株の細胞との接触は、標的細胞の接触と同時である。従って、例えば、好ましい実施態様では、標的細胞株(組織培養プレートに付着して増殖)を、単一細胞培養フラスコ中のサブトラクティング細胞株(懸濁中)と同時インキュベートさせる。
【0087】
事実上任意の細胞が、サブトラクティブ細胞として作用し得る。しかし、好ましい実施態様では、サブトラクティブ細胞は、標的細胞上に全てのマーカーを提示する。但し、所望の結合抗体または結合ポリペプチドの選択のために標的として作用するマーカー(例えば、レセプター)を除く。従って、特に好ましい細胞は、共通のインターナライズする細胞表面レセプター(例えば、トランスフェリン)を有することによって標的細胞に密接に関連する(例えば、線維芽細胞)。腫瘍細胞株において選択する場合(例えば、胸部腫瘍細胞株)、正常な胸部細胞株に対してネガティブに選択し得る。しかし、このことは、過剰発現した抗原に結合する抗体について枯渇し得、そのため再度、並行した経路は線維芽細胞においてネガティブ選択することである。トランスフェクト細胞を使用しようとした場合、非トランスフェクト細胞がサブトラクティブ細胞株として使用され得る。腫瘍が上皮起源である場合、好ましいサブトラクティブ細胞もまた上皮であり、なおより好ましくは同じ組織または器官由来である。
【0088】
特に好ましいサブトラクティブ細胞は、未分化細胞株、非トランスフェクト細胞、未分化細胞および非トランスフェクト細胞の混合物を包含するが、これらに限定されない。腫瘍細胞上でのインターナリゼーションについて選択する場合、好ましいサブトラクティブ細胞株は、好ましくは、同じ組織の非腫瘍細胞である(例えば、胸部腫瘍細胞、対、正常胸部上皮細胞)。また、cDNA発現ライブラリーのために、サブトラクティブ細胞株は、ライブラリー構築のために使用される非形質転換細胞株である(例えば、COS、CHOなど)。
【0089】
1つの特に好ましい実施態様では、「標的」細胞は、特異的標的レセプターの遺伝子またはcDNAで形質転換された細胞である。この場合、サブトラクティブ細胞株は、好ましくは、非トランスフェクト細胞株である。従って、例えば、CHO細胞がEGFレセプターの遺伝子を含むベクターで形質転換された場合、EGF発現細胞は、標的細胞株として使用され、そしてサブトラクティブ細胞株は、形質転換されていないCHO細胞である。このアプローチを使用して、インターナライズする抗EGFレセプター抗体が得られた。
【0090】
サブトラクティブ細胞は、標的細胞に対して過剰に提供された場合、より効果的である。過剰は、好ましくは少なくとも約2倍から約1000倍過剰であり、より好ましくは、約3倍から約100倍過剰であり、そして最も好ましくは約5倍から50倍過剰である。1つの実施態様では、5倍過剰で十分である。
【0091】
(D)洗浄工程)
上記のように種々の洗浄工程が、本発明の方法において使用される。特に、「弱い」洗浄工程が使用されて、サブトラクティブ細胞、およびファージディスプレイライブラリーの弱く結合するメンバーまたは非特異的結合メンバーを除去し得る。第2の強い洗浄工程は、好ましくは、ファージディスプレイライブラリーのメンバーのインターナリゼーション後に使用される。「強い」洗浄工程は、強固に結合した表面ファージおよび弱く結合した表面ファージを取り除くことを意図する。
【0092】
弱いおよび強い洗浄工程を行なうための緩衝液および方法は、当業者に周知である。例えば、弱い洗浄は、標準的な緩衝液または培養培地(例えば、リン酸緩衝化生理食塩水(緩衝液)DMEM(培養培地)など)を用いて行われ得る。
【0093】
(E)インターナライズする条件下での培養)
上記で説明したように、細胞は、好ましくは、「インターナライズする」条件下で培養される。インターナライズする培養条件とは、細胞が、適切な(例えば、インターナライズする)部位またはレセプターでファージディスプレイライブラリーのメンバーにより結合される場合、細胞中へ結合メンバーを輸送する条件である。これは、小胞へ、小胞体へ、ゴルジ複合体へ、または細胞自身の細胞質中への輸送を含み得る。
【0094】
インターナライズする条件は、細胞が、そのネイティブな状態の細胞の状態を模倣する条件下で培養される場合、最も容易に達成される。したがって、多くの細胞(例えば、上皮細胞)は、好ましくは、基底膜に結合された接着層として増殖する。そのような細胞は、それらが接着性の単層として培養される場合、結合ポリペプチドおよび結合抗体をより有効にインターナライズする。クロロキンおよび血清を含まない培地の両方は、非特異的インターナリゼーションを回避し、そして特異的インターナリゼーション(目的のレセプターのインターナリゼーションを誘導し、そしてその隣にある非特異的ファージを取りこむ血清中のリガンド)を増強する。さらに、インターナリゼーションを生じるために、細胞は、インターナリゼーションを可能にする温度およびpHで培養されるべきである。適切な温度およびpHは、それぞれ約35℃〜約39℃およびpH6〜約pH8、より好ましくは、約pH6.5〜約pH7.5、好ましい温度とpHは、約37℃およびpH7.5である。好ましい実施態様において、細胞は、ファージおよび競合(サブトラクション)細胞を添加する約2時間前に血清培養培地中で、予めインキュベートされる。
【0095】
(F)インターナライズしたファージの同定)
インターナライズしたファージディスプレイライブラリーのメンバーは、直接的または間接的に同定され得る。直接的同定は、単に細胞内のファージを可視化することにより(例えば、免疫蛍光または共焦点顕微鏡を介して)達成され得る。ファージのインターナリゼーションは、細胞中で発現されるレポーター遺伝子を送達するそれらの能力により同定され得る。レポーター遺伝子は、検出可能なシグナル(例えば、蛍光シグナル(例えば、lux、緑色蛍光タンパク質など)または比色シグナル(例えば、HRP、β−ガラクトシダーゼ)あるいは、それ自身が選択マーカーであり得る(例えば、抗生物質耐性遺伝子))を産生する遺伝子であり得る。そのようなファージにおけるβ−ガラクトシダーゼおよびGFPの両方のレポーター遺伝子としての使用は、本明細書中に記載される。
【0096】
あるいは、ファージディスプレイのメンバーは、マーカー(例えば、標識)を有し得、そして単に標識の検出(例えば、フローサイトメトリー)により検出され得るインターナライズされたファージを含有する細胞を検出し得る。直接的な方法は、好ましくは、選択が行なわれた後に結合しているレセプターまたは細胞の同定のために使用される。セルソーティングアプローチ(FACS)は、表面結合またはインターナライズされたファージのいずれかの同定に働くことが注目される。しかし、特異性のさらなるレベルは、細胞が溶解前にインターナライズされたファージの存在についてまず選別される場合、達成され得る。直接的な方法はまた、選択されたファージが実際にインターナライズされることを実証するための分析期の間に使用される。
【0097】
あるいは、インターナライズされたファージディスプレイライブラリーのメンバーが、間接的に同定され得る。間接的検出方法において、ファージディスプレイライブラリーのメンバーは、それらが細胞内に存在する間に検出される必要はない。それらは単に、インターナライズされるだけで十分である。
【0098】
間接的同定は、例えば、以下に記載されるような細胞中にインターナライズされたファージを、単離および拡大することにより達成される。間接的同定は、同定されたファージディスプレイライブラリーのメンバーが、引き続く選択工程において使用されるか、または続くモノクローナルファージの特徴付け(選択の結果についての分析のため)をするためのモノクローナルファージゲノムを有する細菌を単離する場合、特によく適している。
【0099】
(G)インターナライズしたファージの同定および拡大)
本発明の発見は、標的細胞(例えば、哺乳動物腫瘍細胞)中にインターナライズされたファージディスプレイライブラリーのメンバーが生存し続け、そして回収され得、そして続く選択および/または単離の工程、ならびに特定のメンバーの特徴づけに適切な「選択された」ライブラリー中へ拡大され得るということである。
【0100】
本明細書中で使用する場合、用語「回収」は、感染ファージの回収ならびに/あるいはファージ抗体遺伝子の回収および/または抗体遺伝子を伴う異種核酸の回収を含むことを意図する。
【0101】
インターナライズされたファージは、標準的な方法を用いて、単離および拡大され得る。代表的には、それらは、細胞の溶解(例えば、100mMのトリエチルアミン(高pH)を用いて)および適切な細菌宿主(例えば、E.coli TG1)に感染する溶解物を使用することを含む。次いで、ファージ含有細菌は、標準的な方法に従って、培養される(例えば、Sambrookら(前出)、Marksら、(1991)J.Mol.Biol.222:581−597を参照のこと)
(IV.インターナライズする抗体の調製および改変)
以下に記載するように、一旦インターナライズする抗体が同定されると、抗体のさらなるコピーが、化学合成手段または組換え発現系のいずれかを使用することにより調製され得る。さらに、他の「関連した」インターナライズする抗体は、同じエピトープに結合する抗体についてスクリーニングすることにより、および/または改変された抗体のライブラリーを産生する同定されたインターナライズする抗体の改変により同定され得、次いでライブラリーのインターナリゼーションにおいて抗体を再スクリーニングする。
【0102】
(A)抗体合成)
(1)化学合成)
インターナライズする抗体は、本発明の方法により一旦同定されると、ペプチド合成の周知の方法を使用して化学的に合成され得る。配列のC末端アミノ酸が不溶性支持体に結合され、その後に配列中の残るアミノ酸の連続的な付加をする、固相合成は、単鎖抗体の化学合成のための1つの好ましい方法である。固相合成のための技術は、以下により記載される:BaranyおよびMerrifield、Solid Phase Peptide Synthesis;3−284頁、The Peptides:Analysis、Synthesis、Biology.第2巻:Special Methods in Peptide Synthesis、Part A.、Merrifieldら(1963)、J.Am.Chem.Soc.、85:2149−2156、およびStewartら、(1984)Solid Phase Peptide Synthesis、第2版、Pierce Chem.Co.、Rpckford、III。
【0103】
(2)インターナライズする抗体の組換え発現)
好ましい実施態様において、インターナライズする抗体は、本発明の方法により一旦同定されると、当業者に周知の標準的な技術により調製される。インターナライズする抗体をコードする核酸配列が決定される(例えば、Sanger配列決定を介して)。配列情報を使用して、核酸は、当業者に公知の多くの標準的な方法により化学的に合成され得る。オリゴヌクレオチド合成は、好ましくは、市販の固相オリゴヌクレオチド合成機(Needham−VanDevanterら(1984)Nucleic Acids Res.12:6159−6168)を実行するか、またはBeaucageら(Beaucageら(1981)Tetrahedron Letts.22(20):1859−1862)により記載される固相ホスホロアミダイトトリエステル法を用いて手動で合成される。あるいは、抗体をコードする核酸は、標準的な方法により増幅および/またはクローニングされ得る。
【0104】
これらの目的を達成するための分子クローニング技術は、当該分野で公知である。広範な種々のクローニング方法およびインビトロ増幅方法が、組換え核酸の構築に適切である。多くのクローニング実施を通して、当業者を指示するのに十分なこれらの技術および説明の例は、BergerおよびKimmel、Guide to Molecular Cloning Techniques、Methods in Enzymology 第152巻 Academic Press、Inc.、San Diego、CA(Berger);Sambrookら(1989)Molecular Cloning−A Laboratory Manual(第2版)1−3巻、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor Press、NY(Sambrook);およびCurrent Protocols in Molecular Biology、F.M.Ausubelら編、Current Protocols、Greene Publishing Associates,Inc.およびJohn Wiley&Sons,Inc.との間の合弁会社(1994遺補)(Ausubel)、に見出される。組換え免疫グロブリンの産生の方法もまた、当該分野において公知である。Cabilly、米国特許第4,816,567号;およびQueenら(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:10029−10033を参照のこと。さらに、抗体の単離およびクローニングの詳細なプロトコルは、本明細書中の実施例およびSchierら(1996)J.Mol.Biol.、263:551−567において提供される。
【0105】
(B)同じ「インターナライズする」エピトープに結合する他の抗体の同定)
一旦、1つ以上のインターナライズする抗体が、本発明のスクリーニング方法により同定されると、他の「関連する」インターナライズする抗体は、同定されたインターナライズする抗体と、抗体により結合されるエピトープにおいて、またはインターナライズする抗体に対して惹起されるイディオタイプ抗体と結合するエピトープのいずれかで交叉反応する抗体をスクリーニングすることにより、同定され得る。
【0106】
(1)抗イディオタイプ抗体との交差反応性)
イディオタイプは、抗体の高度に可変性である抗原結合部位を表し、そしてこれ自身免疫原性である。抗体媒介性免疫応答の生成の間に、個体は、抗原に対する抗体、ならびに抗イディオタイプ抗体(この免疫原性結合部位(イディオタイプ)は、抗原を模擬する)を発達させる。
【0107】
抗イディオタイプ抗体は、当業者に周知の標準的な方法を使用する本発明のスクリーニングシステムにおいて同定されたインターナライズする抗体の可変領域に対して惹起され得る。簡潔には、抗イディオタイプ抗体は、本発明のインターナライズする抗体、またはそのフラグメント(例えば、CDR)を動物に注射し、それによって抗体上の種々の抗原決定基(イディオタイプ領域における決定基を含む)に対する抗血清を誘発することによって作製され得る。
【0108】
抗被分析物抗体の産生のための方法は、当該分野において周知である。大きな分子量の抗原(約5000ダルトンより大きい)は、動物に直接的に注射され得るが、小さな分子量の化合物(約5000ダルトン未満)は、それらを免疫原性にするために、好ましくは、高分子量の免疫原性キャリア(通常は、タンパク質)と結合される。免疫化に応答して産生される抗体は、血清、腹水、免疫グロブリン(Ig)画分、IgG画分として、またはアフィニティ精製された単一の特異性の物質として利用され得る。
【0109】
ポリクローナル抗イディオタイプ抗体は、上記のように調製される本発明の抗体を用いて動物を免疫することによって調製され得る。一般的には、この抗体(例えば、ファージディスプレイライブラリー)が由来する動物の種であり、かつアロタイプがその動物と適合した動物を免疫化することが所望され得る。このことは、非イディオタイプ決定基に対して指向された抗体の産生を最小化する。次いで、上記のように得られた抗血清は、通常、ファージディスプレイライブラリーが由来するのと同じ種由来の正常な血清に対して大量に吸収され、それによって、非イディオタイプ決定基に対して指向された抗体を排除する。吸収は、正常な(非免疫)血清タンパク質をグルタルアルデヒドと架橋することによって形成されるゲルに対して抗血清を通過させることによって達成され得る。抗イディオタイプ特異性を有する抗体は、直接ゲルを通過するが、非イディオタイプ決定基についての特異性を有する抗体は、ゲルと結合する。不溶性ポリサッカリド支持体(例えば、セファロース)上での非免疫血清タンパク質の固定化もまた、吸収のための適切なマトリックスを提供する。
【0110】
モノクローナル抗イディオタイプ抗体は、Kohlerら(1975)Nature 256:495の方法を用いて生成され得る。特に、モノクローナル抗イディオタイプ抗体は、ハイブリドーマ技術を使用して調製され得る。この技術は、(1)目的の抗原またはハプテンキャリア結合体で免疫されたマウス由来の脾臓細胞(すなわち、本発明の抗体またはその部分配列)、(2)薬剤(例えば、8−アザグアニン)に対する耐性について選択されたマウス骨髄腫細胞株との融合を含む。一般に、免疫グロブリンを分泌しない骨髄腫細胞株の使用が所望される。いくつかのそのような株が、当該分野で公知である。好ましい細胞株は、P3X63Ag8.653である。この細胞株は、CRL−1580のようにアメリカンタイプカルチャーコレクションに寄託される。
【0111】
融合は、確立された方法(例えば、Monoclonal Antibodies、R.Kennett、J.McKearnおよびK.Bechtol編、N.Y.、Plenum Press、1980、およびCurrent Topics in Microbiology & Immunology、第81巻、F.Melchers,M.PotterおよびN.L.Warner編、N.Y.、Springer−Verlag、1978を参照のこと)に従って、ポリエチレングリコールの存在下で実施され得る。細胞と融合されたおよび融合されなかった、得られた混合物をヒポキサンチンアミノプテリン−チミジン(HAT)選択培地にプレートする。これらの条件下で、ハイブリッド細胞のみが増殖する。
【0112】
十分な細胞増殖が生じた時に(代表的には、融合後10〜14日)、培養培地を採取し、そして固相RIAおよび酵素結合イムノソルベント検定法を含む多くの方法のいずれか1つにより、モノクローナルイディオタイプ抗被分析物抗体の存在についてスクリーニングする。次いで、所望の特異性の抗体を含む培養ウェルからの細胞は、拡大されそして再クローニングされる。次いで、目的に抗体に対して陽性を維持する培養物由来の細胞は、通常、感受性であり、組織適合性であり、プリスタンで感作されたマウスにおいて腹水腫瘍として継代される。
【0113】
腹水は、腹腔の穿刺により採取され、抗体について再検査され、そして上記のように精製される。非分泌骨髄腫株が融合に使用される場合、モノクローナル抗体のアフィニティー精製は、通常必要がない。なぜなら、抗体は、すでにその抗原結合特性に対して均質だからである。腹水の夾雑タンパク質からそれを単離すること(すなわち、免疫グロブリン画分を産生すること)が必要なことの全てである。
【0114】
あるいは、目的のハイブリッド細胞株は、血清を含まない組織培養物中で増殖され得、そして抗体は、培養培地から採取される。一般に、これは、大量の抗体を得るのには、あまり望ましくない方法である。なぜなら、収量が低いからである。細胞をマウスの静脈に通過させることおよび血清から抗体を採取することがまた、可能である。この方法は、一般的に好ましくない。なぜなら、採血あたりの得られ得る血清の量が少なく、そして他の血清成分からの非常に広範な精製が必要だからである。しかし、いくつかのハイブリドーマは、腹水腫瘍として増殖しない。従って、抗体を得る代替的なこれらの方法の1つを使用しなければならない。
【0115】
(2)F5またはC1エピトープとの交差反応性)
抗イディオタイプ抗体の代わりに、他のインターナライズする抗体は、元々の選択において使用したエピトープに対する同定された「プロトタイプの」抗体との交差反応性によって同定され得る。エピトープマッピング形式における「プロトタイプの」インターナライズする抗体と新たな候補との間の競合は、その抗体が同じエピトープに対して競合していることを確立する。
【0116】
(C)他の「関連する」インターナライズする抗体を選択するためのファージ)ディスプレイ法 (1)鎖シャッフリング法)
より高親和性の抗体を作製するために、同定されたインターナライズする抗体の結合の配列に基づく変異体scFv遺伝子レパートリーは、ファージの表面上で作製され、そして発現される。より高い親和性scFvは、上記および実施例で記載されるように、抗原上で選択される。
【0117】
改変された単鎖抗体(scFv)遺伝子レパートリーを作製する1つのアプローチは、新たなパートナーを作製するために、元々のVまたはV遺伝子をV遺伝子のレパートリーで置換することであった(鎖シャッフリング)(Clacksonら(1991)Nature.352:624−628)。鎖シャッフリングおよびファージディスプレイを使用して、ハプテンフェニルオキサゾロン(phOx)を結合したヒトscFv抗体フラグメントの親和性は、300nMから1nMまで(300倍)増大した(Marksら(1992)Bio/Technology 10:779−783)。
【0118】
従って、例えば、インターナライズする抗体の親和性を変更するために、変異体scFv遺伝子レパートリーは、インターナライズする抗体のV遺伝子およびヒトV遺伝子レパートリーを含有して作製され得る(軽鎖シャッフリング)。scFv遺伝子レパートリーは、ファージディスプレイベクターpHEN−1中にクローニングされ得(Hoogenboomら(1991)Nucleic Acids.,19:4133−4137)、そして形質転換の後、形質転換体のライブラリーが得られる。
【0119】
同様に、重鎖シャッフリングのために、インターナライズする抗体V CDR1および/またはCDR2および/またはCDR3ならびに軽鎖は、ファージ抗体ライブラリー形質転換体を作製するために、ヒトV遺伝子レパートリーを含有するベクター中にクローニングされる。抗体親和性を作製するための鎖シャッフリングの詳細な説明については、Schierら(1996)J.Mol.Biol.,255:28−43,1996を参照のこと。
【0120】
(2)結合親和性を改善するための部位特異的変異誘発)
アミノ酸側鎖に接触する抗原の大部分は、相補性決定領域(CDR)に位置し、3つはV(CDR1、CDR2、およびCDR3)に、そして3つはV(CDR1、CDR2、およびCDR3)に位置している(Chothiaら(1987)J.Mol.Biol.,196:901−917;Chothiaら(1986)Science,233:755−8;Nhanら(1991)J.Mol.Biol.,217:133−151)。これらの残基は、抗原に対する抗体親和性を担う結合エネルギー論の大部分に寄与する。他の分子において、リガンドに接触するアミノ酸を変異させることは、その結合パートナーに対する1つのタンパク質分子の親和性を増大させる有効な手段であることが示されている(Lowmanら(1993)J.Mol.Biol.,234:564−578;Wells(1990)Biochemistry、29:8509−8516)。CDRの部位特異的変異誘発およびc−erbB−2に対するスクリーニングは、改善された結合親和性および/または公知のインターナライズする抗体のインターナリゼーションを有するC6抗体を作製するために使用され得る。
【0121】
(3)より高い親和性ヒトscFvを産生するためのCDR無作為化)
単純な部位特異的変異誘発の延長において、部分CDRまたはCDR全体が無作為化される変異体抗体ライブラリーが、作製され得る(V CDR1およびCDR2、ならびにV CDR1、CDR2、およびCDR3)。1つの実施態様において、各CDRは、公知のインターナライズする抗体を鋳型として使用して、別々のライブラリーにおいて無作為化される。各CDRライブラリーからの最も親和性の高いアフィニティー変異体のCDR配列が、相加的な親和性の増大を得るために組み合わせられる。同様のアプローチが、3.4×10−10から9.0×10−13Mまで1500倍にわたって、成長ホルモンレセプターに対するヒト成長ホルモン(hGH)の親和性を増大するために使用されてきた(Lowmanら(1993)J.Mol.Biol.,234:564−578)。
【0122】
CDR3は、しばしば、結合ポケットの中心を占有し、従って、この領域における変異は、親和性の増大を生じるようである(Clacksonら(1995)Science,267:383−386)。1つの実施態様において、4つのV CDR3残基は、ヌクレオチドNNSを使用して一度に無作為化される(例えば、Schierら(1996)Gene,169:147−155;SchierおよびMarks(1996)Human Antibodies and Hybridomas.7:97−105,1996;およびSchierら(1996)J.Mol.Biol.263:551−567,1996)。
【0123】
(4)ホモダイマーの作製)
(scFv’)抗体を作製するために、2つのインターナライズするscFvが、リンカー(例えば、炭素リンカー、ペプチド、など)か、または例えば、2つのシステイン間のジスルフィド結合を介してのいずれかで連結される。従って、例えば、ジスルフィド結合したscFvを作製するためには、システイン残基が、mycタグと本明細書に記載される抗体のカルボキシ末端のヘキサヒスチジンタグとの間での部位特異的変異誘発によって導入される。正確な配列の導入は、DNA配列決定によって確認され得る。その構築物が、pUC119中にある場合、pelBリーダーは、発現されたscFvをペリプラズムに指向し、そしてクローニング部位(Nco1およびNot1)は、F5またはC1変異体scFvを導入するために存在する。発現されたscFvは、mycタグをC末端に有し、続いて2つのグリシン、システイン、および次いで6個のヒスチジンが続き、IMACによる精製を容易にする。2つのシステイン残基間のジスルフィド結合形成後、その2つのscFvを、互いに約26アミノ酸(2つの11アミノ酸mycタグおよび4つのグリシン)だけ分離する。
【0124】
scFvは、この構築物から発現され得、IMACによって精製され得、そしてゲル濾過によって分析され得る。(scFv’)ダイマーを作製するために、システインは、1mM βメルカプトエタノールとともにインキュベートすることによって還元され、そしてscFvの半分は、DTNBの添加によって遮断される。遮断されたscFvおよび遮断されていないscFvは、(scFv’)を形成するために互いにインキュベートされ、そして得られる物質が、ゲル濾過によって分析され得る。F5およびC1 scFv’モノマー、ならびにF5およびC1(svFv’)ダイマーの親和性は、BIAcoreによって決定される。
【0125】
特に好ましい実施態様において、(scFv’)ダイマーは、scFv’フラグメントをリンカーを介して、より好ましくは、ペプチドリンカーを介して結合することによって作製される。これは、広範な種々の当業者に周知の手段によって達成され得る。例えば、1つの好ましいアプローチは、Holligerら(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90:6444−6448(WO94/13804もまた参照のこと)に記載される。
【0126】
(5)抗体/ポリペプチド結合親和性の測定)
上記に説明されるように、増大したアビディティーについての選択は、標的抗原(例えば、c−erbB−2)についての抗体の親和性を測定することを含む。このような測定を行う方法は、同時係属中の出願USSN08/665,202に詳細に記載される。簡単には、例えば、F5、C1の、またはF5由来またはC1由来の抗体のK、c−erbB−2への結合の速度反応論は、BIAcore(表面プラズモン共鳴に基づくバイオセンサ)において決定される。この技術のために、抗原は、質量の変化を検出し得る誘導体化センサチップに結合される。抗体がセンサチップを通過するとき、抗体はその抗原に結合し、定量可能な質量の増大を生じる。抗体濃度の関数としての会合速度の測定は、会合速度定数(kon)を計算するために使用され得る。会合相の後、緩衝液を、そのチップ上に流し、そして抗体の乖離の速度(koff)を決定する。Konは、代表的には、1.0×10〜5.0×10の範囲において測定され、そしてkoffは、1.0×10−1〜1.0×10−6の範囲である。平衡定数Kは、しばしばkoff/konとして計算され、従って、代表的には、10−5〜10−12の範囲で測定される。このようにして測定された親和性は、蛍光消光滴定によって溶液中で測定された親和性と良好に相関する。
【0127】
(V.ライブラリーおよびベクター)
別の実施態様において、本発明は、本明細書に記載される方法の実施のためのライブラリーおよびベクターを提供する。このライブラリーは、好ましくは、多価のライブラリーであり、ダイアボディー(diabody)ライブラリーを含み、そしてより好ましくは、多価単鎖抗体ライブラリー(例えば、scFv)(例えば、ファージにより発現された)を含む。
【0128】
このライブラリーは、多くの形態をとり得る。従って、1つの実施態様において、このライブラリーは、ファージディスプレイライブラリーのメンバーを含む細胞の集団であるが、一方、別の実施態様において、そのライブラリーは、単離されたファージの集団からなり、そしてなおライブラリーは、多価ファージディスプレイライブラリーをコードする核酸のライブラリーからなる。核酸は、抗体をコードするファージミドベクターであり得、そしてファージベクター中へのサブクローニングの準備ができているか、または核酸は、サブクローン化された抗体をコードする核酸をすでに保有しているファージミドの集団であり得る。
【0129】
(VI.インターナライズする抗体を選択するためのキット)
別の実施態様において、本発明は、本明細書に記載される方法の実施のためのキットを提供する。そのキットは、好ましくは、ファージディスプレイライブラリーのメンバーを含む(例えば、ファージ粒子として、ベクターとして、またはファージを含む細胞として)。このアッセイキットは、さらに、本発明のアッセイの実施のために本明細書に記載される任意の他の成分を含み得る。このような材料は、好ましくは、ヘルパーファージ、1つ以上の細菌または哺乳動物細胞株、緩衝液、抗生物質、標識などを含むが、これらに限定されない。
【0130】
さらに、キットは、必要に応じて、本明細書に記載される選択方法を開示する指示(すなわち、プロトコル)を含む説明資料を含み得る。説明資料は、代表的には、記述されたか、または印刷された資料を含むが、これらはこのようなものに限定されない。このような説明書を保存し得る、およびそれらとエンドユーザーとをコミュニケーションさせ得る任意の媒体が、本発明によって意図される。このような媒体には、電子的保存媒体(例えば、磁気ディスク、テープ、カートリッジ、チップ)、光学媒体(例えば、CD ROM)などが含まれるが、これらに限定されない。このような媒体は、このような説明資料を提供するインターネットサイトへのアドレスを含み得る。
【0131】
(実施例)
以下の実施例は、本願発明を例証するために提供するが、限定するためではない。
【0132】
(実施例1:10〜1011メンバーを含む非免疫ヒトFabファージ抗体ライブラリーの作製)
以前の10メンバーのファージディスプレーライブラリーの操作は、主に2つの制限を示した:1)Fabの発現レベルは、低すぎて特徴付けに適切な物質を生成しなかった、および2)このライブラリーは、比較的不安定であった。これらの制限は、ファージベクターにおけるライブラリの作製、およびcre−lox組換え系の使用の結果である。従って、本発明者らは、この計画に最適なアプローチは、ファージミドベクターを用いて、非常に大きなscFVライブラリーを作製することであると判断した。この目的は、本発明者らの以前の3.0×10メンバーscFVライブラリーよりも少なくとも100倍大きいライブラリーを作製することであった。取られたアプローチは、別々のレプリコン上のVおよびVライブラリーをクローン化し、オーバーラップエクステンションによるスプライシングによって、これらをscFv遺伝子レパートリーへと合わせ、そしてこのscFv遺伝子レパートリーをファージディスプレーベクターpHEN1中にクローン化することであった。ヒト末梢血リンパ球RNAおよび脾臓RNAを、IgM重鎖定常領域プライマー、ならびにκ軽鎖定常領域プライマーおよびλ軽鎖定常領域プライマーを用いてプライミングし、そして第1鎖cDNAを合成した。第1鎖cDNAを、VH Vκk遺伝子およびVλ遺伝子のレパートリーのPCR増幅のためのテンプレートとして用いた。
【0133】
遺伝子レパートリーを、Nco1−NotIフラグメントとしてベクターpCU119Sfi−Not中にクローン化して、8.0×10メンバーのライブラリーを作製した。このライブラリーは、PCRフィンガープリント法によると多様であった。一本鎖リンカーDNAを、PCRを用いてV遺伝子レパートリー上に重ね継ぎ、そしてこのレパートリーをXhoI−NotIフラグメントとしてベクターpHENIXscFv中にクローン化して、7.2×10メンバーのライブラリーを作製した。このVおよびV遺伝子レパートリーをこれらのそれぞれのベクターから増幅し、そしてPCRを用いて共に重ね継いで、scFv遺伝子レパートリーを作製した。このscFv遺伝子レパートリーをNcoI−NotIフラグメントとしてこのベクター中にクローン化して、7.0×10メンバーのscFvファージ抗体ライブラリーを作製した。このライブラリーは、BstN1フィンガープリント法によって決定した場合に多様であった。
【0134】
このライブラリーの質を検証するために、ファージを調製し、そして14の異なるタンパク質抗原上で選択した。この結果を表1に示す。scFv抗体を、選択に用いた全ての抗原(ここで、1抗原あたり3〜15の特有のscFvが単離された(平均8.7)を有する)に対して得た(表1)。
【0135】
【表1】


これは、より小さいscFvライブラリーから得た結果に遜色がない(選択に用いた抗原の70%のみに対して1〜数個のバインダーを得た)。4つの抗ErbB−2 scFvおよび4つの抗ボツリヌス菌scFvの親和性を、BIAcoreにおける表面プラスモン共鳴を用いて測定し、そして抗ErbB2 scFvについては4.0×10−9M〜2.2×10−10Mの範囲内にあること、そして抗ボツリヌス菌scFvについては2.6×1−8〜7.15×10−8Mの範囲内にあることを見出した(表2)。scFvは、選択に用いた抗体に非常に特異的であった(図2)。このライブラリーもまた、抗原の複合体混合物において首尾よく選択し得た。
【0136】
【表2】


例えば、Chlamydia trachomatis基本小体(クラミジア疾患の病原生物)における選択によって、クラミジアを特異的に認識した7つを得た(表1)。scFvは、ELISA、免疫蛍光法、ウエスタンブロット法、エピトープマッピング法および免疫沈降法を含む多数の免疫学的アッセイに首尾よく用いられ得る。各抗原に対する結合抗体の数および結合scFvの親和性は、最良のファージ抗体ライブラリーから得た結果に匹敵する(表3)。従って、このライブラリーを、マウスの二次応答と少なくとも等価な親和性を有する、任意の抗原に対するヒト抗体のパネルの供給源として確立した。
【0137】
【表3】


これらの実験は、高親和性ヒトscFvのパネルが任意の精製された抗原に対して産生され得る、非常に複雑なヒトscFvファージ抗体ライブラリーの作製を実証する。このようなライブラリーは、新規の細胞表面マーカーを同定するために細胞の表面をプローブするのに理想的である。
【0138】
(実施例2:レセプターを媒介したエンドサイトーシスによる、細胞へのscFvの取り込み、そして引き続く回収。)
上記の7.0×10メンバーscFvファージディスプレーライブラリーを、悪性乳房腫瘍細胞株MB231およびZR−75−1において、正常な乳房細胞株HBL100におけるネガティブ選択の有り無しの両方で選択した。上節に記載したのと同様の結果を得た。非悪性細胞株と悪性細胞株とを区別し得ない、scFvを単離した。
【0139】
選択の特異性を増加させるために、細胞表面レセプターに結合するファージを、スレセプターを媒介したエンドサイトーシによって細胞へ取り込み得、次いでその細胞を溶解することによって細胞から回収し得ることを仮定した。これは、以下のことを仮定した:1)ファージは、レセプターを媒介したエンドサイトーシスによってインターナライズされ得、そして2)このファージはリソソーム分解の前に細胞内から感染状態において回収され得る。インターナライズされたファージ抗体について選択する能力は、2つの利点を有する:1)インターナライズし得るレセプターへ結合する抗体の同定、および2)選択プロセスにおける、さらなるレベルの特異性。インターナライズされる抗体の同定は、インターナリゼーションが必須である場合に、(例えば、免疫毒素、標的化されたリポソーム、標的化された遺伝子治療ベクターなど)多くの標的とした治療的アプローチに非常に有用である。
【0140】
(A)F5またはC1ファージのレセプターを媒介したインターナリゼーション)
原理の証拠を決定するために、本発明者らは、C6.5ファージおよびC6.5ダイアボディーファージを利用した(同時係属中の出願の米国特許出願第08/665,202号を参照のこと)。本発明者らは、以前にscFvはインターナライズされるが、低速であること、そしてC6.5ダイアボディーは、幾分良くインターナライズされる(おそらく、このダイアボディーがレセプター二量体化を引き起こすため)ことを示した。C6.5ファージ、C6.5ダイアボディーファージ、または無関係な抗ボツリヌス菌ファージをSKBR3細胞(ErbB2発現乳房腫瘍細胞株)と共に37℃または4℃のいずれかでインキュベートし、そしてインターナライズされているファージを、PBSおよび低pHグリシン緩衝液を用いて連続的に洗浄することによって除去した。次いで、細胞を透過処理し、そしてビオチン化抗M13抗体を添加し、次いでストレプトアビジンTexas Redを添加した。次いで、細胞を共焦点顕微鏡によって検査した。C6.5ファージおよびC6.5ダイアボディーファージの両方を、細胞質内で観測した。約1%の細胞が、C6.5ファージをインターナライズし、そして20%の細胞が、C6.5ダイアボディーファージをインターナライズしていた。抗ボツリヌス菌ファージのインターナリゼーションは存在しなかった。
【0141】
感染性ファージが、特異的に取り込まれ得、そして細胞内から回収され得たか否かを決定するために、C6.5ファージまたはC6.5ダイアボディーファージをSKBR3細胞とともに37℃でインキュベートした。非結合ファージを、PBSを用いて取り除き、そして細胞表面に結合したファージを、低pHグリシンを用いて2度洗浄することによって溶出した。次いで、この細胞を溶解し、そして各画分(初回および2回目のグリシン洗浄液、ならびに細胞質画分)を用いてE.coli TG1に感染させた。抗ボツリヌス菌ファージ(グリシンで1回洗浄)の、20倍(C6.5)または30倍(C6.5ダイアボディー)のファージが細胞表面に結合していた(表4)。2回目のグリシン洗浄の後、細胞表面由来の感染性ファージの力価は低下していた。このことは、洗浄が、表面結合ファージを除去することに効果的であったことを示した(表4)。細胞溶解の後、力価は、2回目のグリシン洗浄液の10倍(C6.5ファージ)または50倍(C6.5ダイアボディーファージ)を超えて増加した。本発明者らは、この力価は、細胞内から回収したファージを示すと考える。この細胞内からのファージの回収は、抗ボツリヌス菌ファージについてよりも、ErbB2結合C6.5について100倍高く、C6.5ダイアボディーファージについて200倍高かった(表4)。
【0142】
【表4】


まとめると、これらの結果は以下のことを示す:1)細胞表面レセプターに結合するファージは、細胞によって取り込まれ得、そして感染性ファージが細胞質から回収され得た。取り込みの量は、非結合ファージの取り込みよりも有意に多く、そしてこの100〜200倍の差異が、ライブラリーから富化し得る十分な範囲内である。この結果からは未知であることは、このファージ抗体が、レセプター媒介性のインターナリゼーションを媒介しているか否か、またはファージ抗体が、膜の代謝回転によって結合した後に、単に取り込まれるか否かである。
【0143】
(B)ファージ抗体ライブラリーからのインターナライズ抗体の選択および特徴付け)
上記の結果は、本発明者らを、上記のファージ抗体ライブラリーの選択を試み、インターナライズされた新規なファージ抗体を同定するよう駆り立てた。ファージ抗体をライブラリーからレスキューし、そしてSKBR3細胞上で選択した。選択のために、ファージを37℃で細胞と共にインキュベートし、非結合ファージを、PBSで細胞を洗浄することによって除去し、そして細胞表面抗原に結合したファージを、低pHグリシンでの連続的な洗浄によって除去した。次いで、細胞を、インターナライズされたファージを放出するために溶解し、そして溶解物を使用して、E.coli TG1を感染させ、次回の選択のためのファージを調製した。3回の選択を行った。各回の選択由来の100のクローンを、SKBR3細胞への結合について、およびErbB2細胞外ドメインへの結合について、ELISAによって分析した。本発明者らは、SKBR3細胞がErbB2を高レベルで発現することが公知であり、そしてErbB2が、インターナライズされることが公知であるレセプターであることから、ErbB2に対するバインダーを獲得するようであると仮説した。各回の選択後、細胞質から回収したファージの力価は増加した(表5)。3回目後、クローンの45%が、SKBR3細胞結合に陽性であり、そして17%が、ErbB2に結合した(表5)。
【0144】
【表5】


独特なバインダーの数を推定するため、ELISA陽性クローンからscFv遺伝子をPCR増幅し、BstN1での消化によって、フィンガープリントした。2つの独特な制限パターンを同定した。scFv遺伝子を配列決定し、そして2つの独特なErbB2結合scFvを同定した。ErbB2に結合しなかったSKBR3 ELISA陽性クローンの同様の分析によって、さらなる11の独特なscFvが同定された。
【0145】
ファージ抗体がSKBR3細胞に特異的であることを確証するために、ファージを、各独特なクローンから調製し、そしてSKBR3細胞(高ErbB2発現)および2つの他の上皮腫瘍細胞株(SK−OV−3(中程度のErbB2発現)およびMCF7(低ErbB2発現))ならびに正常乳房細胞株(HS578B)への結合について分析した。各独特なクローンは、腫瘍細胞株を特異的に染色したが、正常乳房細胞株は染色しなかった。
【0146】
SKBR3細胞およびMCF7細胞を、ファージ抗体C6.5(陽性コントロール)、3TF5および3GH7と共にインキュベートした。後者2つのクローンをライブラリーから単離した(3TF5はErbB2および3GH7に結合する抗原(未知)に結合する)。3つ全てのファージ抗体は、SKBR3細胞(選択細胞株でかつ高ErbB2発現因子)を強く染色する。C6.5ファージは、MCF7細胞(低ErbB2発現因子)を弱く染色する。ライブラリー由来の抗ErbB2クローン3TF5は、3GH7同様、C6.5よりMCF7細胞をかなりより強く染色する。
【0147】
SKBR3、SK−OV−3、MCF7およびHST578細胞を、ネイティブの精製scFv 3TF5および3GH7を使用して研究した。これらの研究のために、scFv遺伝子を、scFvのC末端にヘキサヒスチジンタグを融合するベクター内へ、サブクローニングした。次いで、scFvを発現し、細菌ペリプラズムから収集し、固定化金属アフィニティークロマトグラフィーによって精製した。2つのscFvは、SKBR3細胞を強く染色し、そして正常乳房細胞株HST578を染色しない。低いErbB2発現細胞株MCF7についてはわずかな染色、およびSK−OV−3細胞(中程度のErbB2発現因子)については中程度の染色である。一般に、染色の強度は、ファージによって確認されるよりも低い。このことは予測されることである。なぜなら、ファージ染色のための二次抗体は、相当なシグナル増幅を生じる主要コートタンパク質(2500コピー/ファージ)を認識するからである。
【0148】
抗ErbB2ファージ抗体3TF5をさらに研究して、それが実際にインターナライズされるか否かを決定した。この抗体を、そのインターナライズがErbB2結合C6.5と比較され得るので、最初の研究のために選択した。5.0×1011の3TF5またはC6.5ファージを、SKBR3細胞と共に、37℃または4℃でインキュベートした。PBSでの洗浄後、3TF5ファージは、C6.5ファージよりも強く細胞を染色した。低pHグリシンでの洗浄後、共焦点顕微鏡によって、3TF5ファージは、95%よりも多くの細胞によってインターナライズされる一方、C6.5は、ほんの数パーセントの細胞にしかインターナライズされないことが明らかになった。いずれかの抗体の4℃でのインキュベーションは、インターナライズを導かなかった。
【0149】
ネイティブの精製3TF5 scFvを、同様に分析し、そしてこれもまた、SKBR3細胞によって効率的にインターナライズされた。ネイティブ3TF5 scFvは、ゲル濾過によって決定されるように、明らかな二量体化または凝集化を有さないモノマーとしてのみ存在した。
【0150】
これらの実験は、ファージ抗体が細胞によってインターナライズされ得、そして細胞質から回収され得ることを実証する。インターナライズする細胞表面レセプターに結合するファージは、非結合ファージより100倍を超えて富化され得る。この富化のレベルは、細胞表面上で選択することによって達成される富化よりも多い。本発明者らは、このアプローチをライブラリー選択に適用し、そしてSKBR−3細胞に結合し、インターナライズされるファージ抗体を単離した。これらの抗体のいくつかは、ErbB2に結合するが、純粋な抗原上で選択することによって生成される抗体(例えば、C6.5)よりも、より効率的にインターナライズされる。SKBR−3および他の乳房腫瘍細胞株に特異的に結合し、そして効率的にインターナライズされる、他の多くの抗体を単離した。これらの抗体は、腫瘍の標的化、および潜在的な、新規なインターナライジング腫瘍細胞レセプターを同定するために有用であることが明らかであるはずである。
【0151】
(実施例3:変異ファージ抗体ライブラリーの作製および適切な乳房腫瘍細胞株についての選択による、所望の結合特性を有する抗体フラグメントの親和性の増加)
ファージディスプレイは、従来のハイブリドーマ技術を使用して産生され得ない親和性を有する抗体を産生するための可能性を有する。超高親和性ヒト抗体フラグメントは、優れた腫瘍貫入、長期の腫瘍滞留および循環からの迅速なクリアランスを生じ得、高い特異性を導く。従って、本発明者らは、超高親和性ヒト抗体フラグメントを生成するための方法論を発展させるために一連の実験を行った。実験を、以下の疑問に答えるために行った:1)より低い親和性バインダーのバックグラウンド中で、希少なより高い親和性のファージ抗体について選択およびスクリーニングするための最も効果的な方法は何であるか;2)最も高い親和性のファージ抗体の選択を確実にするために、抗原から結合ファージを除去するための最も効果的な手段は何であるか;3)変異ファージ抗体ライブラリーを作製するための最も効果的な技術(ランダム変異誘発または部位特異的変異誘発)は何であるか;4)抗体分子のどの領域が、抗体フラグメントの親和性を最も効果的に増加するための変異誘発について選択されるべきか。
【0152】
これらの疑問に答えるために、本発明者らは、ヒトscFv C6.5を研究した。このヒトscFv C6.5は、腫瘍抗原ErbB−2(32)の細胞外ドメイン(ECD)に、1.6×10−8MのKおよび6.3×10−3−1のKoffで、結合する(Schierら(1995)Immunotechnology,1:63−71)。C6.5の単離および特徴付けは、以下に間単に記載され、同時継続出願である米国特許出願第08/665,202号に詳細に記載される。
【0153】
インビボにおける優れた腫瘍:正常組織の比にもかかわらず、C6.5の定量的送達は、放射免疫療法を使用して動物において腫瘍を治癒するのに適切ではなかった(Schierら(1995)Immunotechnology,1:63−71)。腫瘍への抗体の定量的送達を改善するために、C6.5の親和性を増加した。最初に、差示的なE.coli内での増殖または宿主株の毒性よりむしろ、親和性に基づいてファージ抗体の選択を可能にする技術を開発した(Schierら(1996)J.Mol.Biol.255:28−43;Schierら(1996)Gene 169:147−155;Schierら(1996)Human antibodies and hybridomas 7:97−105)。次いで、本発明者らは、親和性の最大の増大を達成するためにsvFc遺伝子のどの位置を変異させるかを決定した(Schierら(1996)J.Mol.Biol.255:28−43;Schierら(1996)Gene;Schierら(1996)J.Mol.Biol.263:551−567)。ランダム変異誘発は、抗原が接触するアミノ酸を含む相補性決定領域(CDR)の部位特異的変異誘発と同様大きさの親和性の増大を生じなかった。CDRの多様化から得られた結果は、以下のことを示した:1)親和性の最大の増大は、結合ポケット(VおよびV CDR3)の中心に位置するCDRを変異させることにより達成された;2)CDR残基の半分は、scFvにおける構造的役割を有し、そして変異した場合、野生型のように復帰する;および3)これらの構造的残基は、相同な原子結晶構造上でのモデリングによって、ライブラリーの構築の前に同定され得る。これらの観察は、相同モデリングによって構造的役割を有すると仮定された残基を保存して、変異が、ランダムにVおよびV CDR3内に連続的に導入される、抗体の親和性を増加するための一般的なストラテジーの開発を導いた(Schierら(1996)J.Mol.Biol.263:551−567)。このアプローチを使用して、C6.5の親和性は、1.3×10−11MのKへ、1200倍に増加した(同書)。
【0154】
体内分布研究によって、親和性と24時間での腫瘍1グラムあたりのscFvの注入用量パーセント(%ID/g)との間の密接な相関が明らかになった(Adamsら(1998)Cancer Res.58:485−490)。最大程度の腫瘍滞留が、125I−C6ML3−9(1.42%ID/g、K=1.0×10−9M)で観察された。有意により少ない腫瘍滞留が、125I−C6.5(0.80%ID/g、K=1.6×10−8)およびC6G98A(0.19%ID/g、K=3.2×10−7M)で達成された。腫瘍:正常器官の比もまた、親和性の差異を反映した(例えば、24時間でのC6ML3−9、C6.5およびC6G98Aについて、それぞれ、腫瘍:血液の比が17.2、13.3、3.5および2.6、ならびに腫瘍:肝臓の比が26.2、19.8、4.0および3.1)。より高い親和性のscFvの研究は、継続中である。この結果は、ハイブリドーマ技術からは達成可能でない値へ、抗体の親和性を増加する本研究者らの能力を実証し、腫瘍標的化における親和性の重要性を確証した。
【0155】
(実施例4:C6.5ベースの乳癌治療の前臨床開発)
C6.5ベースの乳癌治療を開発するために、2つのアプローチを共同的に追求した。C6.5ベースの分子を、放射免疫療法のために操作している。定量的腫瘍送達および抗体フラグメントの滞留を増加するために、二量体scFv「ダイアボディー」を、VおよびVドメインの間のリンカーを15アミノ酸から5アミノ酸に短縮することによって作製した。結果として、対形成が、2つの異なる鎖の相補的ドメイン間で生じ、2つの結合部位を有する、安定な非共有結合的に結合した二量体を作製する。インビトロで、C6.5のV遺伝子から生成されるダイアボディーは、C6.5 scFvに比べて、SK−OV−3細胞の表面上での有意により高い見かけの親和性およびより長い滞留を有する(T1/2>5時間 対 5分)(Adamsら(1998)Brit.J.Cancer.)。C6.5ダイアボディーの体内分布研究により、24時間で6.5%ID/g(対して、C6.5 scFvについては、たった1%ID/g)が明らかになった。ダイアボディーの滞留を72時間にわたって試験して、そして累積曲線下面積(AUC)値を測定した場合、得られた腫瘍:器官のAUC比は、他の一価または二価のscFv分子について報告された比より大きかった。これらの分子の治療的可能性を、ヌードマウスにおける放射免疫療法研究において試験している。C6.5ベースの分子のインビボでの特徴付けは、正式には技術目的の1つではないので、本発明者らは、C6.5およびC6.5ベースのダイアボディーの親和性変異体を使用し続け、抗体親和性、大きさおよび結合価の間の関係、ならびにNIH R01 1 CA65559−01A1の一部としての特異的腫瘍標的化を研究した。
【0156】
別の共同研究において、C6.5ベースの分子を、充填リポソームを含有するドキソルビシンをErbB2発現乳癌に対して標的するために使用している(Kirpotinら(1997)Biochemistry.36:66−75)。scFvのリポソームへの化学的カップリングを促進するために、C6.5遺伝子を、scFvのC末端で遊離のシステイン残基の付加を生じるE.coli発現ベクター内へサブクローニングした。精製C6.5cys scFvを、リポソームに結合体化し、インビトロでの取り込みを、SKBR3細胞を使用して決定した。取り込みの全量は、6時間で3.4mmolリン脂質/10細胞であり、取り込みの70%がインターナライズされた。この取り込みは、Genentechの4D5抗HER2 Fab’を使用して達成された取り込みに匹敵する。非結合体化リポソームの取り込みは、存在しなかった。結果は、C6.5がErbB2エピトープに結合し、この結合が、ハイブリドーマ(4D5)から産生される抗体の最良のインターナリゼーションと匹敵する割合でインターナリゼーションを生じることを示す。SCIDマウスにおけるインビボ治療研究は、C6.5標的化リポソームが、非標的リポソーム、または非標的化リポソームおよび全身性4D5抗体との組み合わせよりも、より大きな程度の腫瘍の緩解、およびより高い治癒比率を生じることを示した。
【0157】
(結論)
本明細書中に記載された実験は、マウスの免疫化によって産生される抗体の親和性に匹敵する親和性を有する精製された抗体に対するヒト抗体のパネルを提供し得る、大量の(7.0×10メンバー)ファージ抗体ライブラリーが作製されたことを実証する。細胞表面レセプターに結合するファージ抗体は、細胞によってインターナライズされ、そして細胞内から感染性状態において回復され得る。非インターナライズ抗体を100倍より超えるインターナライズファージ抗体の富化を可能にする方法論が開発された。次いで、これらの方法論を適用して、SKBR−3細胞上のインターナライズレセプターに結合する新規なscFv抗体を選択した。これらの抗体のいくつかは、ErbB2に結合するが、C6.5ベースのscFvよりも効率的にインターナライズされる。より多くの抗体は、未知のインターナライズレセプターに結合する。これらscFvの全ては、SKBR−3細胞または関連する腫瘍細胞株に特異的に結合する。これらの結果は、この選択アプローチが、1つの細胞型(悪性)と別の細胞型(非悪性)を区別し得る抗体を生成するための強力なアプローチであることを示す。さらに、本発明者らは、結合について選択することが可能なだけでなく、機能(インターナリゼーション)について選択することも可能であることを実証した。近々、本発明者らはさらに、単離した抗体を特異性に関して特徴付けし、そしてErbB2結合scFvの場合においては、親和性に関して特徴付けする。より長期的には、本発明者らは、以下のためにこれらの試薬を使用する:1)インターナリゼーションの割合に対する親和性および結合価の効果を研究する;そして2)免疫沈降を使用して結合された抗原を同定する。これらの結果は、有用な治療標的である、新規なインターナライズする腫瘍細胞表面レセプターの同定を導くであろう。このアプローチは有用であると証明された場合、本発明者らは、このアプローチを原発性腫瘍細胞およびDCISに対して適用する予定である。本発明者らはまた、リポソーム標的化について3TF5(ErbB2結合scFvがC6.5より速くインターナライズされる)を評価するつもりである。3TF5は、C6.5より効果的である可能性がある。
【0158】
さらに、これらの実験は、インビトロでの抗体親和性を、インビボで以前に達成されなかった値に増加するための方法論の実証する。本発明者らは、これらの方法論を適用し、新規なErbB2結合scFvを生成した。
【0159】
(実施例5:ファージライブラリーよりのインターナライズ抗体の選択)
この実施例において、本発明者らはErbB2に結合するヒトscFv(C6.5)を研究し、ファージライブラリーからインターナライズ抗体を直接選択する可能性を決定し、最も効果的なディスプレイ型式を同定した。ファージミド上に一価で提示された野生型C6.5scFvを使用して、本発明者らは、抗ErbB2ファージ抗体がレセプター媒介性エンドサイトーシスを行い得ることを実証する。単一のコピーとしてファージミド上に提示されるか、またはファージ上に複数のコピーとして提示されるかのいずれかである、C6.5の親和性変異体および二価のダイアボディー(diabodiies)を使用して、本発明者らは、ファージエンドサイトーシスにおける親和性、価、および提示型式の役割を規定し、そしてインターナリゼーションについて最も大きな富化をもたらす因子を同定する。二価のダイアボディーまたはscFvの複数のコピーを提示するファージは、一価のscFvを提示するファージよりも効率的にエンドサイトーシスし、そして感染性のファージの回収率は、クロロキンと細胞とのプレインキュベーションによって増加した。アプライしたファージ力価の関数としての細胞質内からのファージの回収の測定は、10のライブラリー中に単一のファージ抗体のメンバーについて存在する低濃度であっても、エンドサイトーシスし得る抗体を選択することが可能である。
【0160】
(A)材料および方法)
(1)細胞)
SKBR3胸部腫瘍細胞株を、ATCCより得て、10%FCS(Hyclone)を補充したRPMI培地中で、5% CO2中で37℃で増殖した。
【0161】
(2)抗体および抗体ファージ調製物)
C6.5scFvファージベクターを、scFv C6.5 pHEN1(Schierら、(1995)Immunotechnology 1:63〜71)由来のSfiI/NotIフラグメントとしてのC6.5遺伝子を、ファージベクターfd/SfiI/NotI(Andrew Griffiths、MRC Cambridge、UKより贈呈)中にサブクローニングすることにより構築した。C6.5ダイアボディーファージミドベクターを、NcoI/NcoIフラグメントとしてのC6.5ダイアボディー遺伝子(Adamsら、(1998)Brit.J.Cancer.77:1405〜1412、1998)を、pHEN1(Hoogenboomら、(1991)Nucleic Acids Res.19:4133〜4137)中にサブクローニングすることにより構築した。pHEN1中の抗ボツリヌスscFvファージミド(クローン3D12)(Amersdorferら、(1997)Infection and Immunity 65:3743〜3752)C6.5 scFvファージミド(Schierら、(1995)Immunotechnology 1:63〜71)およびscFv C6ML3−9 scFvファージミド(Schierら、(1996)J.Mol.Biol.263:551〜567)は以前に記載されている。ファージを、適切なベクターから調製し(Sambrookら、(1990)Molecular Clonig−A Laboratory Manual、New York:Cold Spring Harbor Laboratory)、pHEN1中の構築物の滴定についてアンピシリン耐性(100μg/ml)を使用し、そしてfd中の構築物の滴定についてテトラサイクリン(50μg/ml)を使用し、以前に記載されたように(Marksら、(1991)J.Mol.Biol.222:581〜597)、E.coli TG1において滴定した。可溶性C6.5 scFv、C6.5ダイアボディーおよび抗ボツリヌスscFvを、ベクターpUC119mycHis(Schierら(1995)Immunotechnology 1:63〜71)より発現し、そして他に記載される(同書)固定化金属アフィニティークロマトグラフィーによって精製した。
【0162】
(3)インターナライズされたネイティブ抗体フラグメントおよびファージ抗体の検出)
SKBR3細胞を6ウェル培養プレート(Falcon)中のカバーガラス上で、50%コンフルエンスまで増殖させた。培養培地を、5.1011cfu/mlのファージ調製物(最大1/10の培養培地容量を表すファージ調製物)、またはリン酸緩衝化生理食塩水(pH7.4(PBS))中の20μg/mlの精製scFvもしくはダイアボディーの添加の2時間前に新しくした。37℃でのインキュベーションの2時間後、ウェルを氷冷PBSを用いて6回迅速に洗浄し、そして4mLのストリッピング(stripping)緩衝液(50mM グリシン pH2.8、0.5M NaCl、2M 尿素、2% ポリビニルピロリドン)を用いて室温で、各10分間3回洗浄した。2回のさらなるPBS洗浄の後、細胞を4%パラホルムアルデヒド(室温で10分)中で固定化し、PBSで洗浄し、−20℃でアセトンを用いて透過化し(30秒)、そしてPBS中で再度洗浄した。カバーガラスをPBS−1% BSA(室温、20分)で飽和した。ファージ粒子をビオチン化抗−M13免疫グロブリン(5Prime−3Prime、Inc.、300倍希釈)(室温、45分)、およびTexas red結合体化ストレプトアビジン(Amersham、300倍希釈)(室温、20分)で検出した。C末端mycペプチドタグを含有する可溶性scFvおよびダイアボディーを、マウスmAb9E10(Santa Cruz Biotech、100倍希釈)(室温、45分)、抗マウスビオチン化免疫グロブリン(Amersham、100倍希釈)およびTexas red結合体化ステレプトアビジンを用いて検出した。光学的共焦点切片を、Bio−Rad MRC 1024走査型レーザー共焦点顕微鏡を使用して得た。あるいは、スライドを、Zeiss Axioskop UV 蛍光顕微鏡を用いて分析した。
【0163】
(4)細胞表面結合またはインターナライズされたファージの回収および滴定)
コンフルエント未満のSKRB3細胞を6ウェルプレート上で増殖した。培養培地を実験の2時間前に再び新しくした。細胞を、37℃で、異なる濃度のファージ調製物を用いて、異なる時間、インキュベートした。PBSおよびストリッピング緩衝液の洗浄後、インターナライズされたネイティブの抗体フラグメントおよびファージ抗体の検出について、正確に上記のように行い、細胞を再度2回PBSで洗浄し、そして1mL〜100mL トリエチルアミン(TEA)を用いて溶解した。ストリッピング緩衝液を洗浄し、TEA溶解物を1/2容量のTris−HCl 1M、pH7.4を用いて中和した。いくつかの実験について、3回のストリッピング緩衝液洗浄の後に、細胞をトリプシン処理し、15ml Falconチューブに回収し、PBSで2回洗浄し、次にTEAで溶解した。クロロキンの存在下で行った実験において、SKBR3細胞を、ファージの添加前に、50μMのクロロキンを含有する完全培地の存在下で2時間プレインキュベートした。クロロキンの非存在下で、対応するコントロールサンプルを同時に調製した。全ての実験について、ファージを、上記のように、E.coli TG1上で滴定した。
【0164】
(B)結果)
(1)ファージ抗体インターナリゼーションを研究するために利用したモデル系)
ヒト抗ErbB2 scFv C6.5を、組換えErbB2細胞外ドメイン(13)上のヒトscFvファージ抗体ライブラリーを選択することにより、得た。C6.5 scFvは、K=1.6×10−8MでErbB2と結合し、そして自発的に二量体化または凝集する傾向をともなわずに、溶液中で、安定な単量体scFvである(Schierら、(1995)Immunotechnology 1:63〜71)。インターナリゼーションに対する親和性の影響を決定するために、本発明者らは、C6.5と3アミノ酸異なるscFv(C6ML3−9)を研究した(Schierら、(1996)J.Mol.Biol.263:551〜567)。C6ML3−9 scFvはまた、溶液中で安定な単量体であり、そしてC6.5 scFVと同一のエピトープに結合するが、16倍低いKである(1.0×10−9M)(Schierら、(1996)J.Mol.Biol.263:551〜567;Adamsら、(1998)Cancer Res.58:485〜490)。レセプターのホモ二量体化は、代表的に抗体のインターナリゼーションを必要とするようなので、本発明者らはまた、二量体C6.5ダイアボディーを研究した(Adamsら、(1998)Brit.J.Cancer.77:1405〜1412、1998)。ダイアボディーは、各鎖が、同一鎖のドメイン間での対形成をさせない程度に短いペプチドリンカーを使用して連結される、重鎖(V)可変ドメインおよび軽鎖(V)可変ドメインからなるscFv二量体である。結果として、対形成は、2つの異なる鎖の相補ドメイン間に生じ、2つの結合部位を有する安定な非共有結合二量体を生じる(Holligerら(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.、 90:6444〜6448)。C6.5ダイアボディーをIgのVおよびVドメイン間のペプチドリンカーを15から5アミノ酸に短縮し、そしてSKBR3細胞上のErbB2に対して、二価で、C6.5の約40分の1のKで結合する(4.0×10−10M)(Adamsら(1998)Brit.J.Cancer.77:1405〜1412、1998)。
【0165】
ネイティブのC6.5 scFvおよびC6.5ダイアボディーを発現し、そしてE.coliから精製し、そして免疫蛍光共焦点顕微鏡によってErbB2を発現するSKBR3胸部腫瘍細胞中へのエンドサイトーシスについて分析した。予測されたように、単量体のC6.5 scFvは、有意にインターナライズされないが、二量体C6.5ダイアボディーは、全ての可視化された細胞の細胞質中において検出され得る。
【0166】
引き続いての実験のために、C6.5およびC6ML3−9 scFvおよびC6.5ダイアボディー遺伝子を、ファージミドpHEN−1中にpIII融合物としの発現のために、サブクローニングした(Hoogenboomら、(1991)Nucleic Acids Res.19:4133〜4137)。このことは、ヘルパーファージを用いたレスキューの後に、単一のscFvまたはダイアボディーpIII融合物をもっぱら発現するファージミドを生じるはずである(Marksら、(1992)J.Biol.Chem.267:16007〜16010)(図2Aおよび図2B)。ダイアボディーファージミドは、1つのscFv−pIII融合分子と1つのネイティブscFv分子との分子間対形成より生じる二価の抗体フラグメントを提示する(図2B)。C6.5 scFv遺伝子もまた、ファージベクターfd−Sfi/Not中にサブクローニングされた。このことは、scFv−pIII融合タンパク質の各々の3〜5コピーを有するファージを生じる(図2C)。ヒト乳癌細胞株SKBR3をエンドサイトーシスの標的細胞として使用した。その表面ErbB2密度は、1細胞当たり約1.0×10である(Hynesら、(1989)J.Cell.Biochem.39:167〜173)。
【0167】
(2)C6.5ファージミドは、ヒト細胞によってエンドサイトーシスされる)
C6.5 scFvファージミドを37℃でカバーガラス上でSKBR3細胞とともに2時間インキュベートし、インターナリゼーションを活性化させた。細胞をPBSを用いて広範に洗浄し、非特異的結合を除去し、そして高塩−低pH(ストリッピング)緩衝液を用いてさらに3回洗浄し、細胞表面レセプターに特異的に結合したファージを除去した。インターナライズされたファージミドを、主要コートファージタンパク質pVIIIを認識するビオチン化M13抗血清を用いて検出した。抗ボツリヌス毒素ファージミドをネガティブコントロールとして使用した。染色を免疫蛍光顕微鏡を使用することにより分析した。C6.5 scFvファージミドとインキュベートした約1%の細胞は、エンドソームの局在と一致する強力な細胞内染色を示したが、一方、抗ボツリヌスファージミドについては染色が観察されなかった。さらに、インキュベーションを37℃の代わりに4℃で2時間おこなった場合、染色は見られなかった(データ示さず)。PBS洗浄の後であるが、ストリッピング緩衝液での洗浄前に行った染色は、全ての細胞の膜染色を示した。このことは、ストリッピング緩衝液を用いる複数回の洗浄が、表面に結合したファージミドの除去に必要であることを示した。結果はまた、細胞に結合したファージの画分のみがエンドサイトーシスされることを示す。
【0168】
(3)増加した親和性および二価性は、増加したファージエンドサイトーシスをもたらす)
本発明者らは、免疫蛍光を用いて、C6.5 scFv、C6ML3−9 scFvおよびC6.5ダイアボディーファージミドおよびC6.5 scFvファージのインターナリゼーションを比較した。C6ML3−9 scFvおよびC6.5ダイアボディーファージミドの両方、ならびにC6.5 scFvファージは、C6.5 scFvファージミドと比較して、細胞表面において観察された、増加された免疫蛍光の強度を生じた。C6ML3−9 scFvファージミドについて、約10%の細胞が、2時間のインキュベーションの後に、細胞内蛍光を示した。この値は、二量体のC6.5ダイアボディーファージミドについて細胞の約30%まで増加し、多価のC6.5 scFvファージについて細胞の100%まで増加した。
【0169】
(3)感染性ファージは、細胞内から回収し得、そしてその力価は、免疫蛍光を使用して観察された取り込みレベルと相関する)
感染性ファージ抗体粒子が、細胞内から回収され得るか否か決定するために、本発明者らは約5.0×10SKBR3細胞を、異なるファージミドまたはファージの3.0×1011cfuとともに、37℃で2時間インキュベートした。6回のPBS洗浄を使用して、非特異的結合したファージを除去し、そして特異的に結合したファージを、ストリッピング緩衝液を用いる3回の継続する洗浄によって細胞表面から取り除いた(それぞれ、洗浄I、IIおよびIII、表6)。次に細胞を1mLの100mM トリエチルアミン溶液(TEA)を用いて溶解した(細胞内ファージを示す)。3回のストリッピングで洗浄し、そして細胞溶解液を中和し、そしてそのファージ力価をE.coli TG1での感染によって決定した。ファージ回収の力価を、表6に報告する。
【0170】
【表6】


かなりのバックグラウンド結合を、抗ボツリヌスファージについて、6回のPBS洗浄の後でさえも、最初のストリッピング洗浄において観察した(2.8×10cfu、表6)。この値は、細胞表面に対するファージの非特異的結合、ならびに細胞外マトリックスに捕獲されたファージを表すようである。表面に結合したファージの量は、C6.5 scFvファージミドについてのこのバックグラウンドを2.1倍のみ超えて増加した(表6および7)。提示されたC6.5抗体フラグメントの親和性およびアビディティの増加にともない、細胞表面に結合したファージミドまたはファージの力価が増加した(表6)。継続するストリッピング洗浄におけるファージの力価は、各洗浄において約10分の1に減少した。これらのさらなるストリッピング洗浄は、抗ボツリヌスファージのバックグラウンド結合と比べて、溶出した特異的ファージの力価のわずかな増加をもたらした(C6.5 scFvファージミドについて2.7倍〜C6.5 scFvファージについて20倍、表7)。唯一の例外は、C6.5 scFvダイアボディーファージミドの力価であり、ここでその比は6.4倍から4.6倍に実際に減少した。このことは、ダイアボディー中において単一の結合部位を有するVおよびVドメインが、ペプチドリンカーを介してお互いに共有結合しないという事実に起因するようである。この増加は、ストリンジェントな溶出(グリシンのような)が、VからVを解離し、抗原への結合を抑止し得る可能性を増加する。
【0171】
【表7】


3つのストリッピング洗浄は、細胞溶解の後に回収されたファージの力価が、最後のストリッピング洗浄における力価よりも大きかったことを確実にするために、必要であった(表6)。本発明者らは、3回のストリッピング洗浄の後に、溶出されたファージの大半が、細胞表面の感染性粒子よりもむしろ細胞内由来の感染性粒子を示すと推定した。実際、非特異的抗ボツリヌスファージを用いて観察された細胞溶解物の力価は、かなりのものであり(1.5×10)、そして最後のストリッピング洗浄において観察されたものより大きかった。そのため、多くのファージが細胞外マトリックス内に捕獲されたままであり、そしてストリッピング緩衝液洗浄に対して比較的近づきにくいようである。いくつかの抗ボツリヌスファージもまた、細胞によって非特異的エンドサイトーシスされ得るが、免疫蛍光の結果を考慮すると、これは少量のようである。TEA画分中のファージの力価は、C6.5の親和性およびアビディティの増加とともに増加し、最高の力価は、二量体C6.5ダイアボディーファージミドおよび多価C6.5 scFvファージについて観察された(表6)。この値は、抗ボツリヌスファージと比べた力価において、30倍(C6.5ダイアボディーファージミド)および146倍(C6.5 scFvファージ)の増加を示す(表6)。本発明者らは、最後のストリッピング洗浄と比較した細胞溶解物中のファージ力価における増加は、エンドサイトーシスされたファージに起因すると推定した。実際、これらファージのいくつかは、細胞表面または細胞内マトリックスに由来し得た。このことは、細胞溶解物に由来するファージの画分に当てはまり得るが、免疫蛍光の結果は、少なくともいくつかのファージがエンドサイトーシスされることを示す。異なるC6.5分子について、エンドサイトーシスされたファージの相対的画分の1つの指標は、細胞溶解前に細胞表面に残存するファージの量(最後のストリッピング洗浄)を、細胞溶解後に回収された量と比較することである。この比は、抗ボツリヌスファージミド(5.4)と比較して、多価C6.5 scFvまたはC6ML3−9 scFvファージミドのほんの微量な増加(それぞれ6.8倍および8.4倍)を示す(表7)。対照的に、二量体C6.5ダイアボディーファージミドと多価C6.5 scFvファージの比が、抗ボツリヌスファージミドと比較して、大量に増加する(それぞれ35および39)。
【0172】
(4)特異的にエンドサイトーシスされたファージの富化比の増加)
上記の結果は、ファージ抗体が、レセプター媒介性エンドサイトーシスを受け得ること、および細胞溶解物中で感染性を保持し得ることを示す。ファージライブラリー由来のインターナライズされたファージの選択は、非特異的ファージに対する特異的にインターナライズされるファージの富化を増加する方法の最適化を必要とする。2つのパラメーターを改善し得る:(1)非特異的またはインターナライズされないファージの回収の減少、および(2)インターナライズされたファージの感染性の保持。これらのパラメーターを試験するために、本発明者らは、野生型C6.5 scFvファージミドを研究した。本発明者らは、この分子を選択した。なぜなら、この分子が最少の程度の特異的エンドサイトーシスを受けるにもかかわらず、それは共焦点顕微鏡に基づいて、明らかにエンドサイトーシスされるからである。C6.5 scFvファージミドもまた、非免疫ファージ抗体ライブラリーのディスプレーのために最も一般に利用される型式を表し(ファージミドベクター中の1コピーのpIII)、そして親和性で成熟したC6ML3−9 scFvよりもそのようなライブラリーに由来するscFvのKdのより代表的な親和性(16nM)を有する(Sheetsら、(1998)Proc.Natl.Acad.Sci.USA、 95:6157〜6162;Vaughanら、(1996)Nature Biotech.14:309〜314)。
【0173】
(a)インターナライズされないファージのバックグラウンドの減少)
非特異的ファージ回収のバックグラウンドを減少するために、本発明者らは、TEA溶解前の細胞のトリプシン処理の効果を研究した。このことは、細胞外マトリックスに捕獲されたファージを除去するはずである。トリプシン処理もまた、細胞培養フラスコから細胞を解離させ、新しい容器へ移すこと、および細胞培養フラスコに結合した任意のファージの除去を可能にする。これらの実験のために、C6.5 scFvファージミド(5.0×10アンピシリン耐性cfu)を、1000倍過剰の野生型fdファージ(5.0×1011テトラサイクリン耐性cfu)と混合した。ファージミドとSKBR−3細胞との2時間の37℃でのインキュベーションの後、細胞をPBSで洗浄し、3回ストリッピング緩衝液で洗浄した。次に細胞を、直接TEAで溶解するか、またはトリプシン処理し、2回PBSで洗浄し、次にTEAで溶解した。最初のストリッピング洗浄液中のファージミドおよび細胞溶解液を、E.coli TG1の感染によって力価測定し、そしてアンピシリンおよびテトラサイクリンプレートにプレートした。細胞表面から回収したfdファージおよびC6.5 scFvファージミドの力価は、2つの実験群について同様であった(図3)。細胞表面画分中のfdファージ/C6.5 scFvファージミドの比(160/1および250/1)は、最初の1000倍の比からの、特異的細胞表面結合によって達成される4〜6倍の富化を生じる。トリプシン処理を行わない場合、細胞溶解物中のfdファージ/C6.5 scFvファージミドの比は、6.1倍にのみ増加し、対照的に、トリプシン処理した場合、209倍に増加する(図3)。このことは、特異的ファージ回収の量におけるほんのわずかの減少をともなう、非特異的結合の60分の1の減少より生じる(図3)。
【0174】
(b)感染性インターナライズファージの回収の改善)
感染性インターナライズファージの回収を増加するために、本発明者らは、クロロキンの使用を介するリソゾームの酸性化の阻止がエンドサイトーシスされるファージをエンドソーム分解から保護するのか否か、研究した(Barryら、(1996)Nat.Med.2:299〜305)。SKBR3細胞を、クロロキンおよびC6.5 scFvファージミドまたは抗ボツリヌスファージミドのいずれかととともにインキュベートした。細胞溶解物を、種々の時点で力価測定し、細胞内ファージミドの数を測定した。C6.5 scFvファージミドは、20分の時点で存在し、ファージミドの量は、クロロキンの添加の有無において、類似していた。より後の時点で、約2倍の感染性ファージミドがクロロキンの使用により回収された。対照的に、抗ボツリヌスファージのかなり少ない量が存在し、そしてクロロキンは、力価に対する効果を有さなかった。このことは、このファージミドが、エンドソームへの非特異的エンドサイトーシスよりもむしろ、非特異的表面結合より生じることを示唆する。全体として、これらの結果は、リソソームの酸性化の阻止が、20分より長いインキュベーションについて回収される感染性ファージの量を増加することを示す。
【0175】
(5)低ファージ濃度でのインターナライズされたファージの回収)
5.0×10より多いメンバーを含む極めて大きなファージ抗体ライブラリーのみが、全ての抗原に対する抗体の高い親和性のパネルを生成し得る(10、23、24)。ファージは、ただ約1013cfu/mlに濃縮され得るので、大きなライブラリーからの代表的なファージ調製物は、各メンバーにつき10のコピーのみ含む。従って、エンドサイトーシスのためのライブラリーの選択は、ファージが10と同じくらい低い力価で細胞に適用する時にファージが回収され得る場合のみ、行い得る。従って、本発明者らは、適用したファージの力価の関数として、SKBR3細胞内からの感染性ファージの回収率を決定した。SKBR3細胞を、C6.5scFv、C6ML3−9scFvもしくはC6.5ダイアボディー(diabody)ファージミドまたはC6.5 scFvファージとともに、37℃で2時間インキュベートした。細胞を回収用緩衝液で3回洗浄し、トリプシン処理し、そしてPBSで2回洗浄した。細胞を溶解し、そして細胞内ファージをE.coli TG1において滴定した。研究した全てのファージについてのファージ力価が増大するにつれてファージの回収率が増大した(図5)。一価を示した抗体について、ファージミドは、3.0×10(C6.5 scFv)から3.0×10(C6ML3−9 scFv)未満の投入力価では、細胞内から回収され得なかった。この閾値は、二価および多価ディスプレイ(C6.5ダイアボディーファージミドおよびC6.5 scFvファージについては3.0×10)について減少した。
【0176】
(C)考察)
本発明者らは、抗レセプター抗体を提示するファージは、レセプター発現細胞により特異的にエンドサイトーシスされ得、そして感染形態において細胞質ゾルから回収され得ることを、初めて実証する。この結果は、大きな非免疫ファージライブラリーからインターナライズする抗体を直接的に選択する可能性を実証し、そして首尾良い選択をもたらす因子を同定する。抗ErbB2抗体フラグメントを提示するファージは、ErbB2を発現するSKBR3細胞によって特異的にエンドサイトーシスされ、細胞質ゾル内で可視化され得、そしてその細胞内から感染形態で回収され得る。一価のscFv抗体フラグメントがファージミド系において一価的に提示された場合、インターナライズされたファージの回収は、バックグラウンドのたった3.5〜18倍上回ったのみであった。二価のダイアボディーのディスプレイ、またはファージベクター中のscFvの多価ディスプレイは、インターナライズされたファージの回収が、バックグラウンドより30〜146倍上回って増大した。この結果は、天然のモノマーC6.5 scFvおよびダイマーのC6.5ダイアボディーの本発明者らの研究、ならびに他のモノクローナル抗ErbB2抗体の研究(モノマーFabではなくダイマーIgGが二量体化し、かつレセプターを活性化させ、そしてエンドサイトーシスを受ける(Yarden(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2569〜2573;Hurwitzら(1995)Proc.Natl.Acad.Sci.USA92:3353〜2257))と一致する。実際、C6.5およびC6ML3−9 scFvファージミドのエンドサイトーシスは、2つ以上のscFvを提示するファージの小さな割合を反映するようである(Marksら(1992)J.Biol.Chem.267:16007〜16010)。高い結合活性の結合またはレセプター架橋のいずれか、および続くエンドサイトーシスを媒介する際の価数の重要性は、特異的なファージエンドサイトーシスを示す唯一の他の報告によって確認される。pVIII上での高い親和性Arg−Gly−Aspインテグリン結合ペプチドの約300コピーを提示するファージは、哺乳動物細胞によって効率良くエンドサイトーシスされた(Hartら(1994)J.Biol.Chem.269:12468〜12474)。エンドサイトーシス後のファージの回収はまた、細胞表面からのファージの回収と比較して、細胞選択の特異性を増大させる。従って、非特異的表面結合に対する特異的表面結合の濃縮率は、2〜20倍の範囲である。これらの値は、一回の細胞表面選択について、他に報告されたものの約10倍濃縮に匹敵する(Pereiraら(1997)J.Immunol.Meth.203:11〜24;Wattersら(1997)Immunotechnology3:21〜29)。対照的に、本発明者らの、非特異的エンドサイトーシスに対する特異的エンドサイトーシスの濃縮割合は、3.5〜146倍の範囲である。
【0177】
これらの結果に基づくと、ファージ抗体ライブラリーからのインターナライズする抗体の選択は、ファージベクターを用いて、ファージミドベクターまたは多価scFvのいずれかのホモダイマーダイアボディーで最も成功するはずである。このようなライブラリーは公開されていないが、一方それらの構築を妨げる技術的障壁は存在しない。多価ライブラリーは、レセプターを架橋させ、そしてエンドサイトーシスをもたらすと思われる形態で抗体フラグメントを提示する。このようなライブラリーからの抗体は、エンドサイトーシスを媒介するために二価である必要がある。あるいは、モノマーレセプターリガンドは、ダイマー形態を好むレセプターにおけるコンホメーションの変化を引き起こすことによってか、または2つのレセプターを同時に結合することによってのいずれかでレセプターを活性化し、そしてエンドサイトーシスをもたらし得る。同様の様式でレセプターを結合したモノマーscFvもまた、エンドサイトーシスされ得た。従って、ファージミドベクター中の一価scFvのライブラリーの選択により、レセプターを活性化し、かつモノマーとしてエンドサイトーシスされるリガンド模倣物の選択を生じ得た。このようなscFvは、薬物、毒素またはDNAの細胞質への送達のための融合分子の構築に、特に有用であり得た。レセプターのインターナライゼーションを媒介する抗体は、レセプターのダウンレギュレーションおよび増殖阻害をもたらし得るので(Hurwitzら(1995)Proc.Natl.Acad.Sci.USA92:3353〜3357;Hudziakら(1989)Mol.Cel..Biol.9:1165〜1172;Stancovskiら(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:8691〜8698);Lewisら(1993)Cancer Immunol.Immunother、37:255〜263)、エンドサイトーシスし得る抗体についての選択もまた、細胞増殖を直接的に阻害または調節する抗体を想定し得る。
【0178】
(実施例5:細胞のトランスフェクション)
制限酵素SfiIおよびNotIを用いてファージミドDNAを消化することにより、pHEN1−F5からF5 scFv遺伝子を取り出した。fdDOG1(前述の参考文献を参照のこと)に基づくが、StiI部位を遺伝子IIIリーダー配列に挿入するように改変したファージベクターを、SfiIおよびNotIで消化し、そして消化したF5遺伝子を消化したファージFdベクターDNAに連結させた。組換え形質転換体を同定した。F5組換えファージを含むE.coliを、培養物中で増殖させ、F5−Fdファージを産生した(ファージ調製についてManiatisを参照のこと)。次いで、F5ファージを用いて、哺乳動物プロモーター(CMV)、続いて∃−ガラクトシダーゼについての遺伝子(pcDNA3.1/HisB/LacZ、In Vitrogen)または増強させたグリーン蛍光タンパク質についての遺伝子(pN2EGFP、Clonetchプラスミド)のいずれか、および真核生物のポリアデニル化配列を含むファージミドを保有するE.coliに感染させた。細菌を一晩、テトラサイクリン15μg/mL、およびアンピシリン100μg/mL(pcDNA3.1/HisB/LacZを含む細菌)かまたはカナマイシン30μg/mL(pN2EGFPを含む細菌)のいずれかの存在下で増殖させた。F5−Fdコートの混合物の上清から調製されたファージは、単鎖形式でのレポーター遺伝子(ファージの約50%)か、またはF5−Fdファージゲノム(ファージの約50%)のいずれかを含む。10pfuファージ混合物とのErbB2陽性細胞5.105 SKBR3のインキュベーション(滅菌するまで0.45μmフィルターを2回通して濾過する)により、細胞の1%においてレポーター遺伝子が発現し得る。10倍より陰性のコントロールファージ(すなわち、野生型Fd中のレポーター遺伝子パッケージング)とともにインキュベートされた細胞は、レポーター遺伝子の発現を示さなかった。ErbB2高細胞(SKBR3)とErbB2低細胞(MCF7)の混合集団(Lewisら(1993)Cancer Immunol Immunother 37:255〜263)をF5−Fd−EGFPファージとともに2日間インキュベートした実験において、本発明者らは、erbB2陽性細胞(FACSによるそれらのErbB2レベルより分化した細胞)においてのみ、レポーター遺伝子の発現を得た。
【0179】
(実施例6:糸状バクテリオファージによる哺乳動物細胞への標的化遺伝子送達)
本実施例において、本発明者らは、原核動物ウイルスが、真核生物細胞に感染するように再操作され得、バクテリオファージゲノムの一部分の発現を生じることを示す。増殖因子レセプターErbB2を発現する哺乳動物細胞を結合し得、そしてレセプター媒介エンドサイトーシスを引き起こし得るファージを、乳腫瘍細胞上でのファージ抗体ライブラリーを選択することおよびその細胞内から感染性ファージを回収することにより単離した。免疫蛍光により決定した場合、F5ファージは、ErbB2を発現するSKBR3細胞の100%に効率的にエンドサイトーシスされた。このファージゲノムの一部分の発現を達成するために、F5ファージを操作して、CMVプロモーターにより駆動されるグリーン蛍光タンパク質(GFP)レポーター遺伝子をパッケージングした。これらのファージは、細胞に適用される場合、ErbB2媒介エンドサイトーシスを引き起こし、GFP発現を導いた。ErbB2を過剰発現する細胞においてのみ生じるGFP発現は、用量依存性であり、60時間後、細胞の4%に達成し、そして2.0×10cfu/ml程の低さのファージ力価で検出された(500ファージ/細胞)。この結果は、適切な抗体を提示する細菌性ウイルスが、哺乳動物レセプターに結合し得、そして嚢胞内膜性経路を利用して真核生物細胞に感染し、そしてウイルス遺伝子発現を生じ得る。このことは、ファージ抗体を直接的にスクリーニングすることによって遺伝子発現のための正確な輸送経路に、細胞内で遺伝子を送達し得る、標的化された分子を発見するための新規の方法を示す。このことは、細胞質ゾルへの送達が必要である遺伝子治療または他の適用のための適切な標的物および標的化分子の同定を有意に容易にすべきである。このアプローチはまた、標的化された遺伝子発現のためのファージ抗体をスクリーニングするよりもむしろ直接選択するために適用され得る。この結果はまた、ファージ抗体の、インビトロまたはインビボでの標的化された遺伝子送達ビヒクルとしての可能性を実証する。
【0180】
(A)導入)
遺伝子治療の広範な適用は、高い効率で、治療遺伝子を適切な細胞もしくは組織型に標的化する能力を必要とする(MichealおよびCuriel(1994)Gene Ther.1:223〜232)。レトロウイルスベクターの標的化は、レセプターリガンドまたは単鎖Fv(scFv)抗体フラグメントをウイルスエンベロープタンパク質に挿入することにより報告されている(Kasaharaら(1994)Science 266:1373〜1376)。アデノウイルスベクターの標的化は、アデノウイルスノブを結合する抗体フラグメント、およびレセプターリガンドまたは抗体のような細胞標的化分子からなる「アダプター」融合分子の使用により達成された(Douglasら(1996)Nat.Biotechnol.14:1574〜1578;Watkinsら1997)Gene Ther.4(10):1004〜1012)。細胞表面レセプターリガンドまたは抗体を用いた非ウイルスベクターの標的化もまた、報告されている(FominayaおよびWels(1996)J.Biol.Chem.271(18):10560〜10568;MichealおよびCuriel(1994)Gene Ther.1:223〜232)。これらのアプローチの全ては、細胞表面レセプターに結合し、続いてDNAを核へ送達する遺伝子送達ビヒクルのインターナリゼーションをもたらす標的化分子の使用に依存する。適切な標的化分子の同定は、主に、レセプターリガンドまたは抗体を個々にスクリーニングすることによって実施されている。scFv抗体フラグメントの場合、これは、代表的には、ハイブリドーマのV遺伝子からのscFvの構築、標的化された遺伝子送達ビヒクルの構築、およびインビトロでの標的化能力の評価を必要とする。
【0181】
より最近では、糸状ファージライブラリーから、細胞表面レセプターに結合するペプチドおよび抗体フラグメントを直接選択することが可能であることが証明された(Andersenら(1996)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93(5):1820〜1824;Barryら(1996)Nat.Med.2:299〜305;CaiおよびGaren(1995)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92(24):6537〜6541;de Kruifら(1995)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92(6):3938〜3942;Marksら(1993)Bio/Technology 11(10):1145〜1149)。このことは、潜在的な標的化分子の数の目立った増加を導いた。バクテリオファージがレセプター媒介エンドサイトーシスをもたらす能力(Barryら(1996)Nat.Med.2:299〜305;Hartら(1994)J.Biol.Cehm.269(17):12468〜12474)は、ファージライブラリーが細胞結合のためにだけでなく、哺乳動物細胞中にインターナリゼーションするためにも選択され得ることを示す。ファージ単鎖ファージゲノムが転写され、そして翻訳され得る場合、エンドサイトーシスおよび発現を導く正確な輸送経路へのファージゲノムの送達を導く様式でレセプターを結合するファージについてスクリーニングおよび選択することが、可能であることが分かるはずである。ファージが、細胞膜の化学的変化後、哺乳動物細胞中に侵入し、レポーター遺伝子の発現を導き得ることが以前に示されている(OkayamaおよびBerg(1985)Mol.Cell.Biol.5(5):1136〜1142;Yokoyama−KobayashiおよびKato(1993)Biochem.Biophys.Res.Commun.193(2):935〜939)。より最近、Laroccaらは、間接的なバクテリオファージ媒介遺伝子送達は、ビオチン化ファージを、ストレプトアビジンおよびビオチン化線維芽細胞増殖因子(FGF)を介してFGFレセプターを発現する哺乳動物細胞に対して標的化することによって起こり得ることを示した(Laroccaら(1998)Hum.Gene Ther.9:2393〜2399)。
【0182】
この報告において、本発明者らは、ファージマイナータンパク質pIIIとの遺伝子融合物として抗ErbB2 scFv F5を提示する糸状ファージが、ErbB2を発現する哺乳動物細胞に直接感染し、ファージゲノム中に含まれるレポーター遺伝子の発現を導き得ることを示す。これは、細胞内薬物送達または遺伝子治療のための標的化分子を、ファージ抗体を直接スクリーニングして、エンドサイトーシスを引き起こし、そして遺伝子を遺伝子発現のための正確な輸送経路に細胞内送達し得る分子を同定することによって発見する、新規の方法を与える。これは、細胞質ゾルへの送達が必要とされる遺伝子治療または他の適用のための適切な標的および標的化分子の同定を有意に容易にするはずである。本発明者らはまた、このアプローチを用いて標的化された遺伝子発現のためにファージ抗体を直接選択する方法を議論する。最終的には、本発明者らは、インビトロまたはインビボでの標的化遺伝子送達ベクターのためのファージ抗体それ自体の使用についての可能性を議論する。
【0183】
(B)材料および方法)
(1)抗ErbB2 F5 scFv)
ベクターpHEN−1中の抗ErbB2 scFv(F5)(Hoogenboomら(1991)Nucleic Acids Res.19(15):4133〜4137)(pHEN−F5)を、ErbB2を発現するSKBR3細胞上の非免疫ファージ抗体ライブラリー(Sheetsら(1998)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95(11):6157〜6162)を選択し、続いて組換えErbB2細胞外ドメイン(ECD)上での結合をスクリーニングすることによって得られた。天然のF5 scFvは、ErbB2 ECDと、K=1.6×10−7M(先に記載されるような(Schierら(1996)J.Mol.Biol.255(1):28〜43)BIAコアにおける表面プラズモン共鳴により決定した)で結合する。
【0184】
(2)ファージおよびファージミドベクター)
pNEGFP(4.7Kbp)(Clontech)のHindIII/NotIフラグメントを、pcDNA3−HisB/LacZ(Invitrogen)HindIII/NotI骨格中にサブクローニングすることによって、pcDNA3−GFP(6.1Kbp)を得た。pHEN−1からのSfiI/NotI scFv−F5挿入物を、fd−Sfi/NotのSfiI/NotI部位(これは、遺伝子IIIリーダー中のApaL1クローニング部位をSfiIに変化させることによってfd−tet−DOG(Clacksonら(1991)Nature 352(6336):624〜628)から構築された)にサブクローニングすることによって、fd−F5−ファージベクターを構築した。1.6KbpのpNEGFPの平滑末端化したAse I/Afl IIフラグメントを、pHEN−F5の平滑末端化したEcoR I部位にサブクローニングすることによって、pHEN−F5−GFPファージミドベクター(6.8Kbp)を得た。挿入物の配向をNotI制限消化により分析した。
【0185】
(3)細胞株の培養およびトランスフェクション)
SKBR3およびMCF7を、10%ウシ胎仔血清(FBS)(Hyclone)を補充したRPMI中で増殖させた。6ウェルプレート中で増殖させた50%コンフルエントなSKBR3細胞を、製造業者により推奨されるように、リポフェクタミン(GIBCO BRL)を用いて1ウェルあたり1μgのDNAでトランスフェクトした。Maxiprep Qiagen Kit(Qiagen Inc.)を用いたアルカリ溶解により、pNEGFP dsDNAを調製した。500μlのファージミド調製物(以下を参照のこと)から、2回のフェノール抽出続いてエタノール沈殿により、ssDNAを抽出した。ssDNAについて40μg/mlまたはdsDNAについて50μg/mlに等しい、1.0A260nmでの吸光度の測定により、DNAを定量した。GFPの検出について、トリプシンEDTAmix(GIBCO BRL)を用いて細胞を剥離し、そしてFACScan(Becton Dickinson)で分析した。
【0186】
(4)ファージミドおよびファージの調製)
pHEN−F5、pHEN−F5−GFP、pcDNA3−GFPまたはpNEGFPファージミドを、以前に記載されるように(Marksら(1991)J.Mol.Biol.222(3):581〜597)、VCS−M13ヘルパーファージ(Stratagene)を用いた重感染により、E.coli TG1より調製した。Fd−F5−ファージを、以前に記載されるように(McCaffertyら(1990)Nature 348(6301):552〜554)、E.coli TG1から調製した。pcDNA3−GFPを含むE.coli TG1をfd−F5−ファージで重感染させることによって、F5−GFP−ファージおよびF5−LacZ−ファージを調製した。培養物上清から、2回のポリエチレングリコール沈殿(Sambrookら(1990)、Molecular cloning−a laboratory manual、Cold Spring Harbor Laboratory、New York)によりウイルス粒子を精製し、リン酸緩衝化生理食塩水(pH7.4)(PBS)中に再懸濁し、0.45μmのフィルターで濾過し、そして4℃で保存した。あるいは、この調製物は、さらなるCsCl超遠心分離工程に供した(SmithおよびScott(1993)Meth.Enzymol.217:228〜257)。ファージミドDNAに対するパッケージングされたヘルパーファージDNAの比を、アンピシリンおよびカナマイシン耐性(ヘルパーファージレスキューpHEN−F5について)、またはアンピシリンおよびテトラサイクリン耐性(fd−F5ファージレスキューpcDNA3−GFPについて)についてファージを滴定することによって(Sambrookら、前出)決定した。
【0187】
(5)ファージFACS)
細胞をトリプシン処理し、1%FBS含有PBS(FACS緩衝液)で洗浄し、そして同じ緩衝液に10細胞/mlで再懸濁した。染色手順をFACS緩衝液で希釈された試薬を用いて氷上で実行した。細胞の100μlのアリコートを円錐形の96ウェルプレート(Nunc)に分配し、300gで遠心分離し、そして細胞ペレットを100μlのファージまたはファージミド調製物の階段希釈物に再懸濁し、そして1時間インキュベートした。細胞を2回、遠心分離し、そして洗浄し、細胞ペレットを100μlの抗M13抗体(5Prime,3Prime Inc.)(1/400希釈)に再懸濁し、そして45分間インキュベートした。細胞を上記のように洗浄し、100μlのストレプトアビジン−フィコエリトリン(Jackson Inc.)(1/400希釈)に再懸濁し、そして20分間インキュベートした。最後の洗浄後、細胞をFACSで分析した。
【0188】
(6)免疫蛍光検査)
細胞を6ウェルプレートで50%コンスルエンスまでカバーガラスにおいて増殖した。ファージ調製物(培養培地の10%未満)を添加し、そして細胞を16時間インキュベートした。カバーガラスを6回PBSで、グリシン緩衝液(50mMグリシン、pH2.8、NaCl 500mM)で10分間3回洗浄し、PBSで中和し、そしてPBS−4%パラホルムアルデヒドで、室温で5分間固定した。細胞を30秒間、冷アセトンで透過性にし、PBS−1% BSAで飽和し、そして抗M13抗体(飽和溶液において1/300希釈)と、その後ストレプトアビジン−テキサスレッド(Amersham)(飽和溶液において1/300希釈)とともにインキュベートした。カバーガラスをAxioskop蛍光顕微鏡(Zeiss)で分析した。
【0189】
(7)バクテリオファージ媒介細胞感染)
CsClファージ調製物を培養培地で少なくとも10倍に希釈し、0.45μmフィルターを通して濾過し、そして30%〜80%コンフルエントな細胞に添加した。インキュベーション後、細胞をトリプシン処理し、FACS緩衝液で洗浄し、そしてFACSによりGFP発現について分析した。MCF7およびSKBR3が同時培養される実験において、ErbB2発現を、ErbB2 ECD(10μg/ml)に結合する抗ErbB2マウスmAb 4D5(1時間)、ビオチン化ヒツジ抗マウス免疫グロブリン(Amersham)およびストレプトアビジン−フィコエリトリンを用いてFACSにより定量した。
【0190】
C)結果 (1)ErbB2発現細胞による一価F5ファージ粒子および多価F5ファージ粒子に結合するErbB2のインターナリゼーション)
本発明者らは、ErbB2発現SKBR3乳房腫瘍細胞での選択、および細胞内での感染性ファージの回収(M.Poulら、manuscript in preparation)により、pIIIへの融合物として、バクテリオファージの表面で提示されたscFvのライブラリーから抗ErbB2 scFv−F5を単離した(Sheetsら(1998)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95(11):6157〜6162)。この選択ストラテジーを、レセプター結合の際に、エンドサイトーシスを被り得るscFvを選択するために使用した。pHEN−F5ファージミドベクターがVCS−M13ヘルパーファージでレスキューされる場合、得られたウイルス粒子(F5−ファージミド)は、平均1コピーのscFv−pIII融合タンパク質、およびヘルパーファージからの3〜4コピーの野生型pIII型の非主要コートタンパク質を提示する(Marksら(1992)J.Biol.Chem.267(23):16007〜16010)。結果として、ファージミドは一価で結合する。ErbB2発現細胞へのウイルス粒子の結合を改善するため、多価ファージ抗体は、F5 scFvDNAを、pIIIタンパク質との融合のためファージベクターfd−Sfi/Notにサブクローニングすることにより作製した。fd−F5ファージといわれるウイルス粒子は、4〜5コピー数のscFv−pIII融合タンパク質(Id.)を提示する。
【0191】
F5ファージ抗体が哺乳動物細胞によりインターナライズされ得るか否かを決定するために、ErbB2を過剰発現するSKBR3細胞をfd−F5ファージ(10コロニー形成単位/ml、cfu/ml)、F5ファージミド(1011 cfu/ml)、または陰性のコントロールとして、無関係の抗ボツリヌス菌scFv−pIII融合タンパク質(1012 cfu/ml)(Amersdorferら、1997)を提示するファージミドとともに16時間インキュベートした。細胞表面を低いpHのグリシン緩衝液を用いてファージ抗体を剥がし、細胞を透過性にし、そして固定し、そして細胞内ファージを抗M13抗体を用いて検出した。著しいことに、全ての細胞は、fd−F5ファージ、またはF5ファージミドでインキュベートされた場合、強力な細胞内染色を示したが、抗−ボツリヌス菌ファージミドとインキュベートされた場合は示さなかった。これは、pIIIに融合したscFvの特異性に対するファージ侵入の依存を実証する。
【0192】
(2)真核生物細胞における発現のためのレポーター遺伝子をパッケージングするErbB2結合ファージおよびファージミドの調製)
F5ファージが発現を誘導する哺乳動物細胞にレポーター遺伝子を送達し得るか否かを研究するために2つのストラテジーを用いた。レポーター遺伝子を含有する一価ファージを作製するため、本発明者らは、CMVプロモーターにより駆動されたグリーン蛍光タンパク質(GFP)の遺伝子を、ベクターpHEN−F5−GFPを生成するファージミドベクターpHEN−F5へクローニングした(図6、左側)。pHEN−F5−GFP(アンピシリン耐性)を含有するEschrichia coli TG1をヘルパーファージ(カナマイシン耐性)で感染し、そして高い力価の一価F5−GFPファージミドを得た(培養上清の5.0×1010アンピシリン耐性cfu/ml)。パッケージングされたファージミドDNA対ヘルパーファージDNAの比(アンピリシン耐性cfu対カナマイシン耐性cfu)は100:1と決定された。レポーター遺伝子を含有する多価ファージを作製するため、pcDNA3−GFPファージミド(アンピシリン耐性)を保有するE.coli TG1を、fd−F5−ファージ(テトラサイクリン耐性)で感染することにより(従ってヘルパーファージとしてfd−F5ファージを用いて)、fd−F5−GFPファージを生成した。fd−F5−GFPファージの力価は、約5.0×10アンピシリン耐性cfu/ml 培養上清であった。fdをヘルパーファージとして用いた場合、より低いファージ力価が生じるのは、それがファージミドf1起点から干渉を生じるプラスミドの複製起点を欠失するからである(ClearyおよびRay(1980)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77(8):4638〜4642)。パッケージングされたレポーター遺伝子DNA対ファージDNAの比(アンピシリン耐性cfu対テトラサイクリン耐性cfu)は1:1であった。fdをヘルパーファージとして用いる場合のレポーター遺伝子/ヘルパーゲノムのより低い比は、VCS−M13における変異したパッケージングシグナルと比較して、fdゲノム上の完全に機能的なパッケージングシグナルの存在に起因する(VieiraおよびMessing(1987)Meth.Enzymol.153:3〜11)。ファージ調製物およびファージミド調製物の両方は、SKBR3細胞結合について評価された(図7)。両方の調製物がSKBR3細胞に結合したが、結合は、1010 cfu/mlのF5−GFPファージミド(15ピコモル)に対して、fd−F5−GFPファージでは10 cfu/ml(160フェムトモル)程度と決定され得た。従って、多価結合は、ウイルス粒子の結合定数の明白な上昇を導く。
【0193】
(3)ErbB2発現乳癌細胞への標的化されたファージミドおよびファージ媒介型の遺伝子トランスファー)
ErbB2結合ファージミドが遺伝子送達を標的され得るか否かを決定するため、2.0×10のSKBR3細胞(高いレベルのErbB2を発現する乳房腫瘍細胞株)または2.0×10のMCF7細胞(低いErbB2を発現する乳房腫瘍細胞株)を、37℃で、5.0×1011cfu/mlのF5−GFPファージミドとインキュベートした。細胞を48時間後FACSにより、GFP発現について分析した(図8A)。SKBR3細胞の1.37%は、F5−GFPファージミドでのインキュベーション後、GFPを発現した(図8A6)。GFP発現は、f1パッケージングシグナルの方向にかかわらず同一であった(データ示さず)。これは、転写/翻訳が相補的DNA鎖の合成を介して進行していたことを示す。GFP発現は、ファージなしで、またはレポーター遺伝子をパッケージングするヘルパーファージとともにインキュベートされたSKBR3細胞において検出されなかった(図8A4および8A5)。発現はまた、ファージ、ヘルパーファージまたはpHEN−F5−GFPなしにインキュベートされたMCF7細胞においても見られなかった。これは、標的された遺伝子送達のためのErbB2発現の必要性を示す(図8A1、8A2および4A3)。遺伝子トランスファー適用が異種の細胞集団における特定の細胞の標的化に関するようなので、本発明者らは、SKBR3細胞およびMCF7細胞の同時培養において同じ実験を実行した(図8B)。細胞をSKBR3細胞からMCF7細胞を識別するためにErbB2発現について染色した。そしてそれぞれの小集団のGFP発現をFACSにより分析した。SKBR3細胞のみ(1.91%)がGFPを発現した。同様の結果がF5−GFPファージミドの代わりにF5−GFPファージを用いて見出された(データ示さず)。これらのデータは、fd−F5−GFPファージおよびF5−GFPファージミド媒介型の遺伝子送達が、ErbB2過剰発現細胞に制限されること、そして非発現細胞の存在下でこのような細胞に標的され得ることを確認する。
【0194】
(4)ファージ媒介型の遺伝子トランスファーの特徴づけ)
ファージ媒介型の遺伝子トランスファーの用量応答性の特徴を決定するため、SKBR3細胞を、漸増量のfd−F5−GFPファージまたはF5−GFPファージミドとともに60時間インキュベートし、そしてGFP陽性細胞のパーセントを決定した(図9Aおよび9B)。有意な数のGFP陽性細胞(図9A)の検出のために必要な最小のファージ濃度(図9A)は、fd−F5−GFPファージについては約4.0×10cfu/ml(0.13%)、そしてF5−GFPファージミドについては1.0×1010cfu/ml(0.12%)であった。この価は、結合曲線と密接に関係し(図7)、そして遺伝子発現について、多価ファージは、ファージミドよりも100〜1000倍より有効であることを示す。有意な数の陽性細胞は、レポーター遺伝子をパッケージングするヘルパーファージの4.0×1013cfu/mlまででは観察されなかった。ファージおよびファージミドの両方について、GFP陽性細胞のパーセントは、ファージ濃度にともない増加した(プラトーの証拠はない)。得られた最大の値はfd−F5−GFPファージについては細胞の2%であり、そしてF5−GFPファージミドについては4%であり、そして適用されたファージの力価(それぞれ、1.5×10cfu/mlおよび4.0×1012cfu/ml)により限定されるようである。1細胞あたりの発現されるGFPの量(平均蛍光強度(MFI)により評価される、図9B)はまた、ファージ濃度にともない増加し、少数の細胞が2.0×10cfu/ml(fd−F5−GFPファージ)〜1.0×1010cfu/ml(F5−GFPファージミド)の低いファージミド力価で発現を示す。
【0195】
ファージで得られた遺伝子発現の収量と伝統的なトランスフェクション方法を比較するため、一本鎖(ssDNA)または二本鎖(dsDNA)をリポフェクタミンを用いてSKBR3にトランスフェクトした。ssDNAの1μgあたり、ファージミド媒介型の遺伝子送達の効率(約1%)は、ssDNA(0.98%)およびdsDNA(1.27%)のリポフェクタミントランスフェクションに匹敵した(表8)。効率は、ファージ媒介型のトランスフェクションについて約500倍高く、2.25ngのssDNAで、細胞の0.87%のトランスフェクションを生じた。
【0196】
【表8】


遺伝子発現の時間経過を決定するため、5.0×1011cfu/mlのF5−GFPファージミドをSKBR3細胞とインキュベートした。48時間後、培養培地を新鮮な培地で置換した。GFP発現細胞は、ファージの適用後24時間内に検出され得、そして陽性細胞のパーセンテージは、120時間の4.5%の最大値まで時間の増加とともに直線的に増加した(図9C)。MFIで評価されるように、陽性細胞のGFP含量は、96時間まで増加する(図9D)。96時間後、GFP陽性細胞の数は増加し続けるが、おそらく、細胞分裂時の娘細胞へのGFP分子の配分の起因して、MFIは低下する。
【0197】
(C)考察)
本発明者らは、非主要コートタンパク質pIIIとの遺伝的融合物として抗ErbB2 scFv抗体フラグメントを提示する糸状ファージが、scFvの特異性を発現する哺乳動物細胞に直接標的され得ることを実証する。このようなファージは、レセプター媒介型のエンドサイトーシスを被り、そして最終的にレポーター遺伝子発現を導く細胞内輸送経路に侵入する。これは、原核生物のウイルスを再操作して、真核生物細胞を感染させ、その結果、バクテリオファージゲノムの一部の発現を生じ得ることを実証する顕著な知見である。遺伝子発現は、2.0×10cfu程度のファージで検出され、そして細胞の4%までファージの力価を増大するにつれて増大された。多価提示は、一価提示と比べて、検出可能な遺伝子発現についての閾値を500倍低下した。このことは、機能性の親和性における上昇およびレセプター架橋からのレセプター媒介型エンドサイトーシスの上昇した速度にもっとも起因するようである。しかし、トランスフェクトされた細胞の最大パーセントは、産生された有意により高いファージの力価に起因して、一価提示(ファージミド)について、より高かった。多価ファージのより低い力価は、レポーターファージミドに対するf1複製起点のfdファージ抗体複製起点での妨害に起因する(ClearyおよびRay(1980)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77(8):4638〜4642)。
【0198】
エンドサイトーシス可能レポーターに結合するファージを用いる哺乳動物細胞の標的された感染は、一般的な現象のようである。例えば、pHEN−GFPの遺伝子IIIへの抗トレンスフェリンレセプターScFvの融合は、MCF7細胞の10%、SKBR3細胞の4%、LNCaP細胞の1%、および初代黒色腫細胞の1%においてGFP発現を生じる。同様に、ビオチン化ファージおよびストレプトアビジンFGF融合分子を用いるFGFレセプター発現細胞への標的されたGFP遺伝子の送達は、現在報告されている(Laroccaら(1998)Hum.Gene.Ther.9:2393〜2399)。しかし、遺伝子IIIを介する標的分子の直接の遺伝的融合は、アダプター分子を用いるよりもより有効であり得る。従って、FGF−アダプター分子を用いてトランスフェクトされた細胞の最大パーセントは、報告されていないが、本発明者らは、それが感染された細胞の数、感染後の遺伝子発現の測定までの時間、およびGFPを発現する細胞の数に基づいてFGF発現L6ラット筋原細胞のわずか0.03%であることを評価する。発現のより大きい頻度(0.5%)がCOS−1細胞で見られたが、これは、ラージT抗原およびSV40媒介型DNA複製の存在から生じ、従って、ほとんどの細胞には一般化されない。
【0199】
本発明者らの記載するアプローチは、標的化された細胞内薬物または遺伝子送達のためのリガンドを発見するための新規な方法を示す。ファージ抗体またはペプチドのライブラリーは、まず哺乳動物細胞によるエンドサイトーシスについて(Barryら、(1996)Nat.Med.2:299〜305)、または精製された抗原、細胞、組織もしくは器官への結合について、選択される。選択されたscFv遺伝子のpHEN−GFPベクターへのサブクローニング後、個々のコロニーから産生されたファージは、遺伝子発現について直接スクリーニングされ得る。発現が1.0×1010cfu程度のプラスミドの少なさで検出され得るので、これは、可能である。これは、エンドサイトーシスされたscFvの直接の同定を可能にするだけでなく、遺伝子発現のための適切な輸送を被るレセプター抗体のサブセットも可能にする。多価提示が効率的なエンドサイトーシスに必要である場合、scFv遺伝子はfd−Sfi−Notにサブクローニングされ得、次いでこれはレポーターファージミドのレスキューに用いられる。scFv−fdファージの使用はまた種々の発現ベクターにおける多数の異なるレポーター遺伝子の標的化を可能にする。なぜなら、多数の市販の哺乳動物ベクターは、f1複製起点を含むからである。この場合、抗体標的ファージは、特に標準的技術によりトランスフェクトすることが困難な細胞について、有用なトランスフェクション試薬であると証明され得る。
【0200】
このアプローチを、標的化遺伝子送達のための抗体の、スクリーニングよりも直接選択に用いることが可能であることも証明されている。例えば、哺乳動物の細胞はGFP遺伝子を含むファージ抗体ライブラリーとともにインキュベートされ、次いでFACSを用いてGFPの発現に基づいてソートされる。ファージ抗体DNAは、細胞溶解により哺乳動物の細胞質から回収され、そしてE.coliをトランスフェクトするために用いられ、そして選択の別の回のためのさらなるファージを調製する。回収可能なファージDNAの量が不十分である場合、pHEN−GFPベクター中のネオマイシン遺伝子の包含がG418を用いるGFP発現哺乳動物細胞の選択を可能にする(Laroccaら、前出)。
【0201】
最後に、この系は、標的可能なインビトロまたはインビボにおける遺伝子治療ビヒクルとして見込まれる。主な制限は感染の効率、薬物動態および免疫原性である。感染効率に関しては、この報告において標的されたファージにより得られた値(ファージ調製物の8.0×10ml)は、標的化レトロウイルスについて報告された値(10〜10/mlのウイルス)(Kasaharaら(1994)Science 266:1373〜1376;Somiaら(1995)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92(16):7570〜7574)と異ならないが、アデノウイルス標的化ストラテジーについて報告された(Douglasら(1996)Nat.Biotechnol.14:1574〜1578;Watkinsら、1997)Gene Ther.4(10)1004〜1012)よりは低い。しかし、より高い感染効率を制限する因子は、系の間で異なるようである。従って、レトロウイルスにより感染された細胞のパーセンテージは、バクテリオファージについて観察されたものよりも有意に高いが、感染は、細胞に侵入し得る多数のウイルス産生に遭遇する問題により制限される。すべての細胞は、標的化ファージを取り込むので、遺伝子発現は1つまたはいくつかの取りこみ後事象(例えば、DNAを放出するためのファージの分解、エンドソームのエスケープ、核標的化または転写)により制限される。ファージおよびそのDNAの運命のより詳細な研究は、感染効率を増大するためのファージの操作を可能にするブロックがどこに存在するかを示唆するようである。例えば、エンドソームのエスケープは、複製欠陥アデノウイルスの同時投与(Curielら(1991)Proc.Natl.Acad.SciUSA 88(19):8850〜8854)または、ファージの主要コートタンパク質pVIIIへの、エンドソームエスケープペプチド(Waguerら(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89(17):7934〜7938)もしくはエンドソームエスケープタンパク質(FominayaおよびWels(1996)J.Biol.Chem.271(18):10560〜10568)の組み込みにより増強され得る。あるいは、感染効率は、pVIII変異体のscFv標的ライブラリーを作製すること、および増加した遺伝子発現について選択することにより複合的に上昇され得る。薬物動態に関しては、徹底的に研究されてはいないが、ファージの生体分布は血管内の腔に制限されるようである。これは、インビトロのファージ遺伝子治療に影響しないが、血管系を標的するものへのインビボ使用を制限し得る。これはなお、癌のような血管新生が役割を果たすものを含む多くの適用を残す。免疫原性に関しては、ファージは免疫原性であるらしく、従ってこれは、ファージがインビボで投与され得る回数を制限する。あるいは、例えば、免疫血清でのpVIIIライブラリーのネガティブ選択により、免疫原性を軽減または排除するために主要コートタンパク質pVIIIを進化することが可能であることが証明され得る(Jenneら(1998)J.Immunol.161(6):3161〜3168)。
【0202】
本明細書で記載される実施例および実施態様は、例証的な目的のみのためであり、そしてそれらの観点から種々の改変および変化が当業者に示唆され、そして本出願の思想および本文ならびに添付の特許請求の範囲に含まれることが理解される。本明細書に引用される全ての刊行物、特許および特許出願は、すべての目的のためにその全体が参考として本明細書に援用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0203】
【特許文献1】米国特許第5,733,743号
【特許文献2】米国特許第5,091,513号
【特許文献3】米国特許第5,132,405号
【特許文献4】米国特許第4,956,778号
【非特許文献】
【0204】
【非特許文献1】Slamonら(1989)Science 244:707−712
【非特許文献2】Kirpotinら(1997)Biochem.36:66−75
【非特許文献3】ForminayaおよびWels(1996)J.Biol.Chem.271:10560−10568
【非特許文献4】Altenschmidtら(1997)Int.J.Cancer 73:117−124
【非特許文献5】UllrichおよびSchlessinger(1990)Cell 61:203−212
【非特許文献6】Yarden(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2569−2573
【非特許文献7】Hurwitzら(1995)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92:3353−3357
【非特許文献8】Fundamental Immunology、W.E.Paul編、Raven Press、N.Y.(1993)
【非特許文献9】Huston,ら(1988)Proc.Nat.Acad.Sci.USA、85:5879−5883
【非特許文献10】Reiterら(1995)Protein Eng.8:1323−1331
【0205】
(配列表)



【特許請求の範囲】
【請求項1】
多価抗体ファージディスプレイライブラリーであって、
該ライブラリーは、複数のファージを含み、ここで、
該ファージが、平均して、少なくとも2コピーの単鎖抗体を提示し、そして該ライブラリーが複数種の単鎖抗体を含む、
ライブラリー。
【請求項2】
請求項1に記載のライブラリーであって、前記ファージは、平均して、少なくとも4コピーの単鎖抗体を提示する、ライブラリー。
【請求項3】
請求項1に記載のライブラリーであって、前記ライブラリーが少なくとも10の異なる種の単鎖抗体を含む、ライブラリー。
【請求項4】
請求項1に記載のライブラリーであって、前記抗体が、ファージベクターである核酸によってコードされる、ライブラリー。
【請求項5】
請求項1に記載のライブラリーであって、該ライブラリーがインターナライズする細胞の表面レセプターに特異的に結合するメンバーについて選択される、ライブラリー。
【請求項6】
請求項5に記載のライブラリーであって、前記細胞表面レセプターが、erbB2、EGFレセプター、PDGFレセプター、VEGFレセプターおよびトランスフェリンレセプターからなる群より選択される、ライブラリー。
【請求項7】
請求項1に記載のライブラリーであって、前記単鎖抗体が、単鎖Fvまたは単鎖Fab抗体である、ライブラリー。
【請求項8】
請求項1に記載のライブラリーであって、前記ファージが糸状ファージである、ライブラリー。
【請求項9】
請求項1に記載のライブラリーであって、前記抗体がPIIIマイナー外被タンパク質との融合物として発現される、ライブラリー。
【請求項10】
請求項1に記載のライブラリーであって、前記ファージが、選択マーカーを発現する、ライブラリー。
【請求項11】
請求項1に記載のライブラリーであって、前記選択マーカーが、蛍光タンパク質、抗生物質耐性遺伝子および色素形成遺伝子からなる群より選択される、ライブラリー。
【請求項12】
請求項11に記載のライブラリーであって、前記色素形成遺伝子が、西洋ワサビペルオキシダーゼ、βラクタマーゼ、ルシフェラーゼおよびβガラクトシダーゼからなる群より選択される、ライブラリー。
【請求項13】
抗体ライブラリーをコードする核酸ライブラリーであって、該ライブラリーは、複数のファージベクターを含み、ここで、該ライブラリーは、複数の単鎖抗体をコードする、ライブラリー。
【請求項14】
請求項13に記載のライブラリーであって、前記ライブラリーが、少なくとも10の異なるファージベクターを含む、ライブラリー。
【請求項15】
請求項13に記載のライブラリーであって、前記単鎖抗体が、単鎖Fv(scFv)または単鎖Fab(scFab)である、ライブラリー。
【請求項16】
請求項13に記載のライブラリーであって、前記ファージベクターが、さらに選択マーカーを含む、ライブラリー。
【請求項17】
請求項13に記載のライブラリーであって、前記ライブラリーがインターナライズする細胞の表面レセプターに特異的に結合する抗体をコードするメンバーについて選択される、ライブラリー。
【請求項18】
請求項17に記載のライブラリーであって、前記レセプターが、erbB2、EGFレセプター、PDGFレセプター、VEGFレセプターおよびトランスフェリンレセプターからなる群より選択される、ライブラリー。
【請求項19】
多価ファージディスプレイ抗体ライブラリーを含む1以上の容器を備える、キット。
【請求項20】
請求項19に記載のキットであって、前記ファージディスプレイライブラリーが、ウイルス外被タンパク質と融合された単鎖抗体をコードする複数のファージベクターを含む、キット。
【請求項21】
請求項19に記載のキットであって、前記ファージディスプレイライブラリーが、1つのファージ粒子あたり平均して少なくとも2つのコピーの抗体を提示する複数のファージ粒子を含む、キット。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−278993(P2009−278993A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−170482(P2009−170482)
【出願日】平成21年7月21日(2009.7.21)
【分割の表示】特願2000−546239(P2000−546239)の分割
【原出願日】平成11年4月22日(1999.4.22)
【出願人】(592130699)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (364)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of The University of California
【Fターム(参考)】