インターナルポンプの二次シール交換方法
【課題】原子炉の定期検査時等の原子炉が炉水で満たされている状態において、インペラおよびポンプシャフトを取外すことなく、二次シールを交換する作業性の良い交換方法を提供する。
【解決手段】インターナルポンプのケーシング下端にケーシングを密閉する閉止ユニットを有する二次シール交換装置を設け、閉止ユニット内で新旧の二次シールを交換することにより、原子炉の定期検査の時など原子炉が炉水で満たされている状態において、インペラおよびポンプシャフトを取外すことなく二次シールを交換する。
【解決手段】インターナルポンプのケーシング下端にケーシングを密閉する閉止ユニットを有する二次シール交換装置を設け、閉止ユニット内で新旧の二次シールを交換することにより、原子炉の定期検査の時など原子炉が炉水で満たされている状態において、インペラおよびポンプシャフトを取外すことなく二次シールを交換する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は改良型沸騰水型原子炉で炉水を循環させるために使用するインターナルポンプの二次シールについて、特に原子炉の定期検査時など原子炉が炉水で満たされている状態での二次シール交換方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
改良型沸騰水型原子炉(ABWR)においては、炉水を循環させるために、原子炉圧力容器の下部にインターナルポンプが複数台設置されている。
【0003】
インターナルポンプの交換時または分解再組立時に、原子炉内の炉水が炉外に漏洩するのを防止するために、インターナルポンプにはポンプシャフトの外周に二次シールが設けられている。
【0004】
特許文献1には、インターナルポンプにおいて、シール部材を有する上部構造体と、上部構造体を保護するロック用部材と、下部構造体と、内周スリーブを有し、着脱作業が容易な二次シール装置が開示されている。また、特許文献2には、インターナルポンプのポンプケーシング内周面の固定溝に固定板を係合させ、固定板を周方向に拡張収縮可能とすることにより、二次シール機構の取り付け取り外しを容易化して保守作業効率を向上させる構成が開示されている。
【0005】
図2により、従来のインターナルポンプの構成について説明する。インターナルポンプ2は、原子炉圧力容器1の下部に設置され、原子炉圧力容器1の内部において炉水を循環させるインペラ3とこれに締結されたポンプシャフト4、インペラ駆動用の水中モータ5、インターナルポンプの静止側水力部であるディフューザ6、原子炉圧力容器1と一体構造のノズル上面にディフューザ6を固定するストレッチチューブ7、水中モータ5を内包するケーシング8、およびケーシング8内に固定されポンプシャフト4とケーシング8を封止する二次シール9で構成されている。1Aはディフューザ6が貫通するポンプデッキである。
【0006】
二次シール給水ノズル10から水を注入することにより、二次シール9をポンプシャフト4に封止して炉水のケーシング8内への流入を防ぐ構造となっている。
【0007】
水中モータ5の下部にはモータカバー11が取付けられており、モータカバー11はケーシング8の底部に、スタッドボルト12A及びナット12Bによってケーシング8に締め付け固定される。モータカバー11には補助カバー13が締め付けられており、モータカバー11と補助カバー13によりケーシング8の密封性を確保している。
【0008】
図3により、二次シール9の詳細構造について説明する。二次シール9は、ゴム等の弾性体からなるインフラートシール14を有するパッキンボックス15で構成されている。二次シール9はケーシング8内壁の円周溝22に収納されている。
【0009】
パッキンボックス15には貫通孔17を設けてあり、パッキンボックス15外周の二次シール給水ノズル10から、貫通孔17を経由してインフラートシール14に水を注入する。これにより、インフラートシール14を押圧してポンプシャフト4とインフラートシール14を封止して、原子炉圧力容器1からケーシング8に炉水が流入することを防止する。二次シール9は、スナップリング16によって、ケーシング8の内周に設けた溝18に固定される。ポンプ作動時には二次シール9はポンプシャフト4から離隔している。
【0010】
インターナルポンプ2の取外し作業は、通常、原子炉圧力容器1が炉水で満たされている状態で行われ、原子炉圧力容器1の上方およびケーシング8下方から行う。
【0011】
図4A〜図4Dにより取外し作業の工程について説明する。取外し作業では、最初に二次シール給水ノズル10から水を注入し、インフラートシール14とポンプシャフト4を封止し、原子炉圧力容器1からケーシング8への炉水の流入を防止する。
【0012】
その後、図4Aの様にケーシング8内の水を排水し、モータカバー11を取り外してケーシング8下方から水中モータ5を取外す。次に、ケーシング8下部のフランジ部を閉止板20で閉止し、ケーシング8内に純水を注入し充填する。次に二次シール9への水の注入を止めてインフラートシール14を緩め、シャフト4から離隔する。
【0013】
次に、図4Bの様に原子炉圧力容器1の上方から、遠隔操作可能なマニピュレータを持つ交換装置を用いて、インペラ3とポンプシャフト4とを一体で取外す。その後、ディフューザ6の開口部を閉止プラグ19で閉塞し、炉水のケーシング8への流入を防止する。
【0014】
次に、図4Cの様に閉止板20を取り外してケーシング8内の水を排水した後、ケーシング8から二次シール9を取り出す。
【0015】
次に、図4Dの様にケーシング8のフランジ部を再び閉止板20で閉止した後、ケーシング8内に純水を注入充填して次の取付け作業に備える。取付け作業は、取外し作業の逆の工程で行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開平2−156194号公報
【特許文献2】特開平1−240896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上記従来例では、二次シール9を取外す場合に、一旦インペラ3とポンプシャフト4をケーシング8から取り外す。その後、原子炉圧力容器1からの炉水流入を防ぐためにディフューザ6の開口部を閉止プラグ19で閉塞している。ディフューザ6の開口部はポンプシャフト4を挿入するために設けられており、インペラ3およびポンプシャフト4を一旦取外さないと閉止プラグ19を設置することができない。遠隔操作で複雑な形状のインペラ3とポンプシャフト4を取外す作業は大きな作業工数を要する。
【0018】
インペラ3およびディフューザ6の開口部は複雑な形状であり、原子炉圧力容器1のポンプデッキ22の上部と下部にそれぞれ開口部がある状態となるため、インペラ3を取付けたままの状態では開口部を閉塞するのは難しい。このため、原子炉の定期検査時など原子炉が炉水で満たされている状態において、インペラ3およびポンプシャフト4を取外さないと、二次シール9の取付け、取外しができないため、作業効率が低い点が課題となっている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、原子炉圧力容器に設けられ内部の炉水を循環させるインターナルポンプであって、一端にインペラを装着し他端にインペラを駆動する水中モータを装着したポンプシャフトと、水中モータおよびポンプシャフトを収納するケーシングと、ケーシング底部を封止するモータカバーと、ケーシング内に設けられるとともにポンプシャフトとケーシングを封止または離隔する二次シールを有するインターナルポンプにおける二次シール交換方法において、二次シールの封止状態でケーシング底部からモータカバーを取り外して水中モータを取り出す工程と、ケーシング底部に二次シール交換装置を装着してケーシング内を封止する工程と、使用中の二次シールをポンプシャフトと離隔状態にして、二次シール交換装置により二次シールをケーシングから取外す工程と、交換用の二次シールを二次シール交換装置によりケーシングに装着する工程を有することを特徴とする。
【0020】
また、インターナルポンプの二次シール交換方法において、二次シール交換装置はケーシング底部を封止する閉止ユニットを有することを特徴とする。
【0021】
また、インターナルポンプの二次シール交換方法において、二次シール交換装置は、先端に二次シール着脱装置を有し水中での遠隔操作可能な二次シール交換用のマニピュレータを有することを特徴とする。
【0022】
また、インターナルポンプの二次シール交換方法において、使用中の二次シールと交換用の二次シールの交換作業を、閉止ユニットの内部で行うことを特徴とする。
【0023】
また、インターナルポンプの二次シール交換方法において、交換用の二次シールを予め閉止ユニットの内部に装着したことを特徴とする。
【0024】
さらに、インターナルポンプの二次シール交換方法において、閉止ユニット内で使用中の二次シールを立て起こして側方に移動し、側方に立て起こして装着した交換用の二次シールを水平に移動することを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明の二次シール交換方法は、インペラと水中モータを装着したポンプシャフトと、水中モータおよびポンプシャフトを収納するケーシングと、ケーシング底部を封止するモータカバーと、ケーシング内に設けられるとともにポンプシャフトとケーシングを封止または離隔する二次シールを有するインターナルポンプにおける二次シール交換方法において、二次シールの封止状態でケーシング底部からモータカバーを取り外して水中モータを取り出す工程と、ケーシング底部に二次シール交換装置を装着してケーシング内を封止する工程と、使用中の二次シールをポンプシャフトと離隔状態にして、二次シール交換装置により二次シールをケーシングから取外す工程と、交換用の二次シールを二次シール交換装置によりケーシングに装着する工程を有することにより、インペラおよびポンプシャフトを取外さないで二次シールの交換を行えるため、定期検査における工程を短縮することができ、原子炉の稼動率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1A】本発明における二次シールの交換工程を示す模式図である。
【図1B】本発明における二次シールの交換工程を示す模式図である。
【図1C】本発明における二次シールの交換工程を示す模式図である。
【図1D】本発明における二次シールの交換工程を示す模式図である。
【図1E】本発明における二次シールの交換工程を示す模式図である。
【図1F】本発明における二次シールの交換工程を示す模式図である。
【図1G】本発明における二次シールの交換工程を示す模式図である。
【図2】従来例のインターナルポンプを示す断面図である。
【図3】従来例のインターナルポンプの二次シールを示す断面図である。
【図4A】従来例のインターナルポンプの二次シール交換工程を示す模式図である。
【図4B】従来例のインターナルポンプの二次シール交換工程を示す模式図である。
【図4C】従来例のインターナルポンプの二次シール交換工程を示す模式図である。
【図4D】従来例のインターナルポンプの二次シール交換工程を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の実施形態を、以下に図1A〜1Gを用いて説明する。
【0028】
二次シールの取外し作業では、図1Aの様に二次シール9に水を注入し、インフラートシール14とシャフト4を封止して原子炉圧力容器1からのケーシング8への炉水の流入を防止する。その後、ケーシング8内の水を排水し、ケーシング8の下方から水中モータ5を取外す。
【0029】
次に、図1Bの様に二次シール交換装置21をケーシング8に装着し、ケーシング8に固定する。二次シール交換装置21はケーシング8下端のフランジ部に取付ける閉止ユニット23と、閉止ユニット23内に収納する遠隔操作可能なマニピュレータMを有する。マニピュレータMは図2Bでは模式的に描いてあるが、炉水と純水が充填されたケーシング8及び二次シール交換装置21の外部から遠隔操作可能なように作業者による操作端末からの制御信号を受信する制御装置と、先端に設けた二次シールを着脱する着脱装置をネジ昇降機構等で昇降自在に構成するメカニズムを有する。閉止ユニット23によりケーシング8下端の開口部を閉止して炉水がケーシング8外に流出することを防ぐ。その後、ケーシング8内に純水を注入し充填した後、二次シール9への水の注入を止め、インフラートシール14を緩めてポンプシャフト4との封止を解除する。
【0030】
次に、図1Cの様に二次シール交換装置21のマニピュレータMにより、二次シール9aをケーシング8から取外し、二次シール9aをポンプシャフト4下端より下の閉止ユニット23内まで下降させる。
【0031】
さらに、図1Dの様に閉止ユニット23内にて、取外した二次シール9aを立て起こし、ケーシング内周面の方へ片寄せる。
【0032】
さらに、図1Eの様に二次シール交換装置21の閉止ユニット23内に事前に立て起こして装填しておいた交換用の新しい二次シール9bを水平にし、ポンプシャフト4下端に移動させる。
【0033】
さらに、図1Fの様に取付け用の二次シール9bを開止筒23内から据付位置まで上昇させ、ケーシング8に固定して据付ける。
【0034】
最後に、図4Gの様に二次シール9に水を注入してインフラートシール14とポンプシャフト4を封止し、ケーシング8内の水を二次シール9上方と下方に分離させる。その後ケーシング8内の水を排水し、二次シール交換装置21を取外す。次いでケーシング8の底部を閉止板20で閉止し、ケーシング8内に純水を注入する。
【0035】
本発明は、上記のようにインペラおよびポンプシャフトを取外さないで二次シールの交換を行えるため、定期検査における工程を短縮することができ、原子炉の稼動率の向上を図ることができる。また、ディフューザの開口部を開塞する閉止プラグを使わずに二次シールを交換することができるため、従来に比べ作業工数を低減することができる。更に、取外す二次シールとは別に点検済みの交換用の二次シールを準備することにより、従来は二度実施する必要があった二次シール交換装置の脱着を一度で済ませることができる。
【符号の説明】
【0036】
1…原子炉圧力容器
2…インターナルポンプ
3…インペラ
4…ポンプシャフト
5…水中モータ
6…ディフューザ
8…ケーシング
9…二次シール
10…二次シール給水ノズル
11…モータカバー
14…インフラートシール
15…パッキンボックス
20…閉止板
21…二次シール交換装置
23…閉止ユニット
M…マニピュレータ
【技術分野】
【0001】
本発明は改良型沸騰水型原子炉で炉水を循環させるために使用するインターナルポンプの二次シールについて、特に原子炉の定期検査時など原子炉が炉水で満たされている状態での二次シール交換方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
改良型沸騰水型原子炉(ABWR)においては、炉水を循環させるために、原子炉圧力容器の下部にインターナルポンプが複数台設置されている。
【0003】
インターナルポンプの交換時または分解再組立時に、原子炉内の炉水が炉外に漏洩するのを防止するために、インターナルポンプにはポンプシャフトの外周に二次シールが設けられている。
【0004】
特許文献1には、インターナルポンプにおいて、シール部材を有する上部構造体と、上部構造体を保護するロック用部材と、下部構造体と、内周スリーブを有し、着脱作業が容易な二次シール装置が開示されている。また、特許文献2には、インターナルポンプのポンプケーシング内周面の固定溝に固定板を係合させ、固定板を周方向に拡張収縮可能とすることにより、二次シール機構の取り付け取り外しを容易化して保守作業効率を向上させる構成が開示されている。
【0005】
図2により、従来のインターナルポンプの構成について説明する。インターナルポンプ2は、原子炉圧力容器1の下部に設置され、原子炉圧力容器1の内部において炉水を循環させるインペラ3とこれに締結されたポンプシャフト4、インペラ駆動用の水中モータ5、インターナルポンプの静止側水力部であるディフューザ6、原子炉圧力容器1と一体構造のノズル上面にディフューザ6を固定するストレッチチューブ7、水中モータ5を内包するケーシング8、およびケーシング8内に固定されポンプシャフト4とケーシング8を封止する二次シール9で構成されている。1Aはディフューザ6が貫通するポンプデッキである。
【0006】
二次シール給水ノズル10から水を注入することにより、二次シール9をポンプシャフト4に封止して炉水のケーシング8内への流入を防ぐ構造となっている。
【0007】
水中モータ5の下部にはモータカバー11が取付けられており、モータカバー11はケーシング8の底部に、スタッドボルト12A及びナット12Bによってケーシング8に締め付け固定される。モータカバー11には補助カバー13が締め付けられており、モータカバー11と補助カバー13によりケーシング8の密封性を確保している。
【0008】
図3により、二次シール9の詳細構造について説明する。二次シール9は、ゴム等の弾性体からなるインフラートシール14を有するパッキンボックス15で構成されている。二次シール9はケーシング8内壁の円周溝22に収納されている。
【0009】
パッキンボックス15には貫通孔17を設けてあり、パッキンボックス15外周の二次シール給水ノズル10から、貫通孔17を経由してインフラートシール14に水を注入する。これにより、インフラートシール14を押圧してポンプシャフト4とインフラートシール14を封止して、原子炉圧力容器1からケーシング8に炉水が流入することを防止する。二次シール9は、スナップリング16によって、ケーシング8の内周に設けた溝18に固定される。ポンプ作動時には二次シール9はポンプシャフト4から離隔している。
【0010】
インターナルポンプ2の取外し作業は、通常、原子炉圧力容器1が炉水で満たされている状態で行われ、原子炉圧力容器1の上方およびケーシング8下方から行う。
【0011】
図4A〜図4Dにより取外し作業の工程について説明する。取外し作業では、最初に二次シール給水ノズル10から水を注入し、インフラートシール14とポンプシャフト4を封止し、原子炉圧力容器1からケーシング8への炉水の流入を防止する。
【0012】
その後、図4Aの様にケーシング8内の水を排水し、モータカバー11を取り外してケーシング8下方から水中モータ5を取外す。次に、ケーシング8下部のフランジ部を閉止板20で閉止し、ケーシング8内に純水を注入し充填する。次に二次シール9への水の注入を止めてインフラートシール14を緩め、シャフト4から離隔する。
【0013】
次に、図4Bの様に原子炉圧力容器1の上方から、遠隔操作可能なマニピュレータを持つ交換装置を用いて、インペラ3とポンプシャフト4とを一体で取外す。その後、ディフューザ6の開口部を閉止プラグ19で閉塞し、炉水のケーシング8への流入を防止する。
【0014】
次に、図4Cの様に閉止板20を取り外してケーシング8内の水を排水した後、ケーシング8から二次シール9を取り出す。
【0015】
次に、図4Dの様にケーシング8のフランジ部を再び閉止板20で閉止した後、ケーシング8内に純水を注入充填して次の取付け作業に備える。取付け作業は、取外し作業の逆の工程で行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開平2−156194号公報
【特許文献2】特開平1−240896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上記従来例では、二次シール9を取外す場合に、一旦インペラ3とポンプシャフト4をケーシング8から取り外す。その後、原子炉圧力容器1からの炉水流入を防ぐためにディフューザ6の開口部を閉止プラグ19で閉塞している。ディフューザ6の開口部はポンプシャフト4を挿入するために設けられており、インペラ3およびポンプシャフト4を一旦取外さないと閉止プラグ19を設置することができない。遠隔操作で複雑な形状のインペラ3とポンプシャフト4を取外す作業は大きな作業工数を要する。
【0018】
インペラ3およびディフューザ6の開口部は複雑な形状であり、原子炉圧力容器1のポンプデッキ22の上部と下部にそれぞれ開口部がある状態となるため、インペラ3を取付けたままの状態では開口部を閉塞するのは難しい。このため、原子炉の定期検査時など原子炉が炉水で満たされている状態において、インペラ3およびポンプシャフト4を取外さないと、二次シール9の取付け、取外しができないため、作業効率が低い点が課題となっている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、原子炉圧力容器に設けられ内部の炉水を循環させるインターナルポンプであって、一端にインペラを装着し他端にインペラを駆動する水中モータを装着したポンプシャフトと、水中モータおよびポンプシャフトを収納するケーシングと、ケーシング底部を封止するモータカバーと、ケーシング内に設けられるとともにポンプシャフトとケーシングを封止または離隔する二次シールを有するインターナルポンプにおける二次シール交換方法において、二次シールの封止状態でケーシング底部からモータカバーを取り外して水中モータを取り出す工程と、ケーシング底部に二次シール交換装置を装着してケーシング内を封止する工程と、使用中の二次シールをポンプシャフトと離隔状態にして、二次シール交換装置により二次シールをケーシングから取外す工程と、交換用の二次シールを二次シール交換装置によりケーシングに装着する工程を有することを特徴とする。
【0020】
また、インターナルポンプの二次シール交換方法において、二次シール交換装置はケーシング底部を封止する閉止ユニットを有することを特徴とする。
【0021】
また、インターナルポンプの二次シール交換方法において、二次シール交換装置は、先端に二次シール着脱装置を有し水中での遠隔操作可能な二次シール交換用のマニピュレータを有することを特徴とする。
【0022】
また、インターナルポンプの二次シール交換方法において、使用中の二次シールと交換用の二次シールの交換作業を、閉止ユニットの内部で行うことを特徴とする。
【0023】
また、インターナルポンプの二次シール交換方法において、交換用の二次シールを予め閉止ユニットの内部に装着したことを特徴とする。
【0024】
さらに、インターナルポンプの二次シール交換方法において、閉止ユニット内で使用中の二次シールを立て起こして側方に移動し、側方に立て起こして装着した交換用の二次シールを水平に移動することを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明の二次シール交換方法は、インペラと水中モータを装着したポンプシャフトと、水中モータおよびポンプシャフトを収納するケーシングと、ケーシング底部を封止するモータカバーと、ケーシング内に設けられるとともにポンプシャフトとケーシングを封止または離隔する二次シールを有するインターナルポンプにおける二次シール交換方法において、二次シールの封止状態でケーシング底部からモータカバーを取り外して水中モータを取り出す工程と、ケーシング底部に二次シール交換装置を装着してケーシング内を封止する工程と、使用中の二次シールをポンプシャフトと離隔状態にして、二次シール交換装置により二次シールをケーシングから取外す工程と、交換用の二次シールを二次シール交換装置によりケーシングに装着する工程を有することにより、インペラおよびポンプシャフトを取外さないで二次シールの交換を行えるため、定期検査における工程を短縮することができ、原子炉の稼動率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1A】本発明における二次シールの交換工程を示す模式図である。
【図1B】本発明における二次シールの交換工程を示す模式図である。
【図1C】本発明における二次シールの交換工程を示す模式図である。
【図1D】本発明における二次シールの交換工程を示す模式図である。
【図1E】本発明における二次シールの交換工程を示す模式図である。
【図1F】本発明における二次シールの交換工程を示す模式図である。
【図1G】本発明における二次シールの交換工程を示す模式図である。
【図2】従来例のインターナルポンプを示す断面図である。
【図3】従来例のインターナルポンプの二次シールを示す断面図である。
【図4A】従来例のインターナルポンプの二次シール交換工程を示す模式図である。
【図4B】従来例のインターナルポンプの二次シール交換工程を示す模式図である。
【図4C】従来例のインターナルポンプの二次シール交換工程を示す模式図である。
【図4D】従来例のインターナルポンプの二次シール交換工程を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の実施形態を、以下に図1A〜1Gを用いて説明する。
【0028】
二次シールの取外し作業では、図1Aの様に二次シール9に水を注入し、インフラートシール14とシャフト4を封止して原子炉圧力容器1からのケーシング8への炉水の流入を防止する。その後、ケーシング8内の水を排水し、ケーシング8の下方から水中モータ5を取外す。
【0029】
次に、図1Bの様に二次シール交換装置21をケーシング8に装着し、ケーシング8に固定する。二次シール交換装置21はケーシング8下端のフランジ部に取付ける閉止ユニット23と、閉止ユニット23内に収納する遠隔操作可能なマニピュレータMを有する。マニピュレータMは図2Bでは模式的に描いてあるが、炉水と純水が充填されたケーシング8及び二次シール交換装置21の外部から遠隔操作可能なように作業者による操作端末からの制御信号を受信する制御装置と、先端に設けた二次シールを着脱する着脱装置をネジ昇降機構等で昇降自在に構成するメカニズムを有する。閉止ユニット23によりケーシング8下端の開口部を閉止して炉水がケーシング8外に流出することを防ぐ。その後、ケーシング8内に純水を注入し充填した後、二次シール9への水の注入を止め、インフラートシール14を緩めてポンプシャフト4との封止を解除する。
【0030】
次に、図1Cの様に二次シール交換装置21のマニピュレータMにより、二次シール9aをケーシング8から取外し、二次シール9aをポンプシャフト4下端より下の閉止ユニット23内まで下降させる。
【0031】
さらに、図1Dの様に閉止ユニット23内にて、取外した二次シール9aを立て起こし、ケーシング内周面の方へ片寄せる。
【0032】
さらに、図1Eの様に二次シール交換装置21の閉止ユニット23内に事前に立て起こして装填しておいた交換用の新しい二次シール9bを水平にし、ポンプシャフト4下端に移動させる。
【0033】
さらに、図1Fの様に取付け用の二次シール9bを開止筒23内から据付位置まで上昇させ、ケーシング8に固定して据付ける。
【0034】
最後に、図4Gの様に二次シール9に水を注入してインフラートシール14とポンプシャフト4を封止し、ケーシング8内の水を二次シール9上方と下方に分離させる。その後ケーシング8内の水を排水し、二次シール交換装置21を取外す。次いでケーシング8の底部を閉止板20で閉止し、ケーシング8内に純水を注入する。
【0035】
本発明は、上記のようにインペラおよびポンプシャフトを取外さないで二次シールの交換を行えるため、定期検査における工程を短縮することができ、原子炉の稼動率の向上を図ることができる。また、ディフューザの開口部を開塞する閉止プラグを使わずに二次シールを交換することができるため、従来に比べ作業工数を低減することができる。更に、取外す二次シールとは別に点検済みの交換用の二次シールを準備することにより、従来は二度実施する必要があった二次シール交換装置の脱着を一度で済ませることができる。
【符号の説明】
【0036】
1…原子炉圧力容器
2…インターナルポンプ
3…インペラ
4…ポンプシャフト
5…水中モータ
6…ディフューザ
8…ケーシング
9…二次シール
10…二次シール給水ノズル
11…モータカバー
14…インフラートシール
15…パッキンボックス
20…閉止板
21…二次シール交換装置
23…閉止ユニット
M…マニピュレータ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉圧力容器に設けられ内部の炉水を循環させるインターナルポンプであって、一端にインペラを装着し他端にインペラを駆動する水中モータを装着したポンプシャフトと、前記水中モータおよび前記ポンプシャフトを収納するケーシングと、前記ケーシング底部を封止するモータカバーと、前記ケーシング内に設けられるとともに前記ポンプシャフトと前記ケーシングを封止または離隔する二次シールを有するインターナルポンプにおける二次シール交換方法において、
前記二次シールの封止状態で前記ケーシング底部から前記モータカバーを取り外して前記水中モータを取り出す工程と、
前記ケーシング底部に二次シール交換装置を装着してケーシング内を封止する工程と
使用中の前記二次シールを前記ポンプシャフトと離隔状態にして、前記二次シール交換装置により前記二次シールを前記ケーシングから取外す工程と、
交換用の二次シールを前記二次シール交換装置により前記ケーシングに装着する工程
を有することを特徴とするインターナルポンプの二次シール交換方法。
【請求項2】
請求項1に記載のインターナルポンプの二次シール交換方法において、前記二次シール交換装置は前記ケーシング底部を封止する閉止ユニットを有することを特徴とするインターナルポンプの二次シール交換方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のインターナルポンプの二次シール交換方法において、前記二次シール交換装置は、先端に二次シール着脱装置を有し水中での遠隔操作可能な二次シール交換用のマニピュレータを有することを特徴とするインターナルポンプの二次シール交換方法。
【請求項4】
請求項2または3に記載のインターナルポンプの二次シール交換方法において、前記使用中の二次シールと交換用の二次シールの交換作業を、前記閉止ユニットの内部で行うことを特徴とするインターナルポンプの二次シール交換方法。
【請求項5】
請求項2乃至4のいずれかに記載のインターナルポンプの二次シール交換方法において、前記交換用の二次シールを予め前記閉止ユニットの内部に装着したことを特徴とするインターナルポンプの二次シール交換方法。
【請求項6】
請求項2乃至5のいずれかに記載のインターナルポンプの二次シール交換方法において、
前記閉止ユニット内で使用中の前記二次シールを立て起こして側方に移動し、側方に立て起こして装着した交換用の前記二次シールを水平に移動することを特徴とするインターナルポンプの二次シール交換方法。
【請求項1】
原子炉圧力容器に設けられ内部の炉水を循環させるインターナルポンプであって、一端にインペラを装着し他端にインペラを駆動する水中モータを装着したポンプシャフトと、前記水中モータおよび前記ポンプシャフトを収納するケーシングと、前記ケーシング底部を封止するモータカバーと、前記ケーシング内に設けられるとともに前記ポンプシャフトと前記ケーシングを封止または離隔する二次シールを有するインターナルポンプにおける二次シール交換方法において、
前記二次シールの封止状態で前記ケーシング底部から前記モータカバーを取り外して前記水中モータを取り出す工程と、
前記ケーシング底部に二次シール交換装置を装着してケーシング内を封止する工程と
使用中の前記二次シールを前記ポンプシャフトと離隔状態にして、前記二次シール交換装置により前記二次シールを前記ケーシングから取外す工程と、
交換用の二次シールを前記二次シール交換装置により前記ケーシングに装着する工程
を有することを特徴とするインターナルポンプの二次シール交換方法。
【請求項2】
請求項1に記載のインターナルポンプの二次シール交換方法において、前記二次シール交換装置は前記ケーシング底部を封止する閉止ユニットを有することを特徴とするインターナルポンプの二次シール交換方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のインターナルポンプの二次シール交換方法において、前記二次シール交換装置は、先端に二次シール着脱装置を有し水中での遠隔操作可能な二次シール交換用のマニピュレータを有することを特徴とするインターナルポンプの二次シール交換方法。
【請求項4】
請求項2または3に記載のインターナルポンプの二次シール交換方法において、前記使用中の二次シールと交換用の二次シールの交換作業を、前記閉止ユニットの内部で行うことを特徴とするインターナルポンプの二次シール交換方法。
【請求項5】
請求項2乃至4のいずれかに記載のインターナルポンプの二次シール交換方法において、前記交換用の二次シールを予め前記閉止ユニットの内部に装着したことを特徴とするインターナルポンプの二次シール交換方法。
【請求項6】
請求項2乃至5のいずれかに記載のインターナルポンプの二次シール交換方法において、
前記閉止ユニット内で使用中の前記二次シールを立て起こして側方に移動し、側方に立て起こして装着した交換用の前記二次シールを水平に移動することを特徴とするインターナルポンプの二次シール交換方法。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図1F】
【図1G】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図1F】
【図1G】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【公開番号】特開2013−53937(P2013−53937A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192554(P2011−192554)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
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