説明

インターネットを利用するビル設備管理システム

【課題】インターネットを利用するビル設備管理システムにおいて、状態変化情報が短時間に大量に発生したときでも、的確に状態変化情報の送信を可能にすることである。
【解決手段】インターネットを利用するビル設備管理システム10は、ビル設備である複数の空調装置12等を管理するセンタ装置30と、監視用表示装置50とがインターネット40を介して接続される。監視用表示装置50は、インターネット40を介したセンタ装置30との間の通信速度を予め定めた計測間隔で計測し、計測された通信速度から、インターネット40を介したセンタ装置30との間の単位時間当たりの通信可能容量を算出してセンタ装置の交信可能な通信容量として設定する。センタ装置30は、複数の状態変化情報があるときに、予め定めた交信優先順位に従って、設定された通信容量の範囲に制限して送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インターネットを利用するビル設備管理システムに係り、特に、ビル設備に接続されるセンタ装置と監視用表示装置とがインターネットを介して接続されるインターネットを利用するビル設備管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数のビル設備の動作状態等を管理するシステムとしては、管理用コンピュータを各ビル設備に接続する方法がある。ビル設備の数が多くなると、例えば建物の各階に専用のコントローラを配置し、各階のコントローラと上位のコントローラを接続する階層的管理が行われる。さらに複数の建物についてそれぞれのビル設備の動作状態を管理するには、各建物のコントローラと、遠隔地の監視装置とをネットワークで接続することが行われる。
【0003】
このように、管理するビル設備の範囲が広がるにつれて、管理システムが大規模になる。ビル設備の動作状態の監視管理は、詳細な動作状態データよりも、動作状態の変化が合ったことを的確に取得し、その状態変化の内容を表示して監視することが効率的な場合が多い。このように状態変化が生じた都度、その状態変化情報を監視装置に送信するようにすれば、専用のネットワークを用いなくても、インターネットの仮想プライベートネットワーク(Virtual Private Network:VPN)サービスを利用することができる。
【0004】
ここで、インターネットの仮想プライベートネットワークサービスとは、インターネットを共有しながら第三者の侵入・傍聴・改ざんしにくくする技術を用いて、帯域共有型の開放された安価な通信網を利用するものである。
【0005】
VPNに関連する技術として、特許文献1には、コンピュータシステムの開発・保守・サポート方法として、顧客コンピュータまたは顧客ネットワーク環境と、コンピュータシステムの開発・保守・サポートシステムとの間に、インターネットVPNを利用したWAN環境を新たに構築することが述べられている。ここでは、ベースプログラム、クラス、マクロプログラムおよびプラグインソフトそのものの開発は別途開発環境を有する開発システムで行い、それらが蓄積されたクラスデータベースから必要なものを組み合わせて、開発・保守・サポートシステムの開発手段がカスタマイズを行うことが開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、動画配信サーバから中継サーバを介してクライアント端末に動画を送信する際のトラフィック制御システムとして、中継サーバとクライアント端末との間の通信回線Aについて通信品質を測定し、測定された通信回線Aの通信品質が許容する通信データ量の画面上方の量に対応した動画配信サーバと中継サーバとの間の通信回線Bでの動画データの配信量を特定して、特定された動画データの配信量となるように動画配信サーバから中継サーバへ配信される動画データの配信量を制御することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−240930号公報
【特許文献2】特開2009−60425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
インターネットのVPNを用いれば、ビル設備を管理するコントローラと、遠隔地の監視装置との間の通信手段として、帯域共有型の開放された通信網を安価で利用できる。しかし、帯域共有型の開放された通信網は、専用回線等に比較して、一般的に通信速度が遅く、安定しないことがある。そこで、例えば、停電等で、多数のビル設備に動作状態の変化が生じ、送信したい状態変化情報が急増すると、許容されている通信容量を超えてしまうことが生じえる。通信容量を超えると、その通信網が麻痺し、送信したい状態変化情報が監視装置に伝送されず、また、他の情報通信を圧迫することが生じる。
【0009】
本発明の目的は、状態変化情報が短時間に大量に発生したときでも、的確に状態変化情報の送信を可能にするインターネットを利用するビル設備管理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るインターネットを利用するビル設備管理システムは、インターネットに接続されるセンタ装置と監視用表示装置とを含むビル設備管理システムであって、センタ装置は、ビル設備の動作状態に関して、動作状態の変化があった都度、その内容を状態変化情報として、監視用表示装置に送信する機能を有し、監視用表示装置は、センタ装置から状態変化情報を受信して表示する機能を有し、さらに、インターネットを介したセンタ装置との間の通信速度を予め定めた計測間隔で計測する通信速度計測部と、計測された通信速度から、インターネットを介したセンタ装置との間の単位時間当たりの通信可能容量を算出する通信容量算出部と、算出された通信容量をセンタ装置の交信可能な通信容量として設定する通信容量設定部と、を含み、センタ装置は、さらに、複数の状態変化情報があるときに、予め定めた交信優先順位に従って、設定された通信容量の範囲に制限して送信する制限情報送信部を含むことを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係るインターネットを利用するビル設備管理システムにおいて、監視用表示装置は、通信容量算出部によって算出された単位時間当たりの通信可能容量に基づいて、センタ装置がビル設備の状態変化情報を取得してから監視用表示装置にその情報が表示されるまでの所要時間を算出して表示することが好ましい。
【0012】
また、本発明に係るインターネットを利用するビル設備管理システムにおいて、センタ装置は、インターネットの仮想プライベートネットワークサービスを用いて監視用表示装置と交信することが好ましい。
【0013】
また、本発明に係るインターネットを利用するビル設備管理システムにおいて、通信容量算出部は、単位時間当たりの送信可能パケット数で通信可能容量を算出することが好ましい。
【0014】
また、本発明に係るインターネットを利用するビル設備管理システムにおいて、センタ装置は、交信優先順位として、ビル設備に対する警報が出力されたことを示す状態変化情報を最優先順位とし、ビル設備のオン/オフ状態の変化を示す状態変化情報を第2優先順位として予め設定することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
上記構成によれば、インターネットに接続されるセンタ装置と監視用表示装置とを含むビル設備管理システムは、監視用表示装置が、インターネットを介したセンタ装置との間の通信速度を予め定めた計測間隔で計測し、計測された通信速度から、インターネットを介したセンタ装置との間の単位時間当たりの通信可能容量を算出し、算出された通信容量をセンタ装置の交信可能な通信容量として設定する。そして、センタ装置は、複数の状態変化情報があるときに、予め定めた交信優先順位に従って、設定された通信容量の範囲に制限して送信する。このようにすることで、ネットワークの利用可能な通信容量の範囲で状態変化情報が送信されるので、状態変化情報が短時間に大量に発生したときでも、交信優先順位に従って、的確に状態変化情報の送信が可能となる。
【0016】
また、インターネットを利用するビル設備管理システムにおいて、監視用表示装置は、通信容量算出部によって算出された単位時間当たりの通信可能容量に基づいて、センタ装置がビル設備の状態変化情報を取得してから監視用表示装置にその情報が表示されるまでの所要時間を算出して表示するので、監視用表示装置を利用するユーザにとって利便性が向上する。
【0017】
また、インターネットを利用するビル設備管理システムにおいて、センタ装置は、インターネットの仮想プライベートネットワークサービスを用いて監視用表示装置と交信する。VPNを用いることで、安価な通信網を利用できる。
【0018】
また、インターネットを利用するビル設備管理システムにおいて、通信容量算出部は、単位時間当たりの送信可能パケット数で通信可能容量を算出する。例えば、1つの状態変化情報を1つのパケットを用いて送信するものとすると、送信可能パケット数=送信可能状態変化情報数であるので、送信したい状態変化情報の数が容易に分かる。
【0019】
また、インターネットを利用するビル設備管理システムにおいて、交信優先順位として、ビル設備に対する警報が出力されたことを示す状態変化情報を最優先順位とし、ビル設備のオン/オフ状態の変化を示す状態変化情報を第2優先順位として予め設定する。このように設定することで、状態変化情報が短時間に大量に発生したときでも、まず警報出力が監視用表示装置に送信され、余裕があるときは、さらにどの設備がオン/オフの状態変化を発生したかの情報が監視用表示装置に送信されるので、緊急性と重要性を有する状態変化情報を的確に送信することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る実施の形態のインターネットを利用するビル設備管理システムのブロック図である。
【図2】本発明に係る実施の形態において、インターネットを利用するビル設備管理の手順を示すフローチャートである。
【図3】本発明に係る実施の形態において、設定された通信可能容量と、送信したい状態変化情報との関係を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に図面を用いて本発明に係る実施の形態につき、詳細に説明する。以下では、建物におけるビル設備管理を、各階に設けられるローカルコントローラと、その上位のセンタ装置の2段階の階層構造として説明するが、これは例示であって、1つの管理階層であってもよく、3段階以上の管理階層を有するものとしてもよい。また、各ローカルコントローラが管理するビル設備の数は例示であって、これ以外の数のビル設備を管理するものとしてもよい。ビル設備として空調装置を説明するが、これは例示であって、空調装置以外のビル設備であってもよい。例えば、配電装置、エレベータやエスカレータの昇降装置、照明装置、セキュリティ装置等であってもよい。
【0022】
以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、本文中の説明においては、必要に応じそれ以前に述べた符号を用いるものとする。
【0023】
図1は、ネットワークを利用するビル設備管理システム10の構成を示すブロック図である。このシステムは、ある建物の各階に設けられる複数の空調装置12,14,16,18の動作状態の変化の情報である状態変化情報について、インターネット40を介し監視用表示装置50に送信し、表示部52に表示するシステムである。
【0024】
1Fローカルコントローラ20は、建物の1階に設置されるNo.1空調装置12とNo.2空調装置14にそれぞれ接続され、これらの動作状態を管理する制御装置である。同様に、2Fローカルコントローラ22は、建物の1階に設置されるNo.3空調装置16とNo.4空調装置18にそれぞれ接続され、これらの動作状態を管理する制御装置である。図1では図示されていないが、その他の階についてもそれぞれ各階用のローカルコントローラが各階に設けられる空調装置をそれぞれ管理する。かかるローカルコントローラ20,22等としては、適当なコンピュータ、例えば、パーソナルコンピュータを用いることができる。
【0025】
センタ装置30は、建物内の1Fローカルコントローラ20、2Fローカルコントローラ22等に接続され、また、インターネット40に接続されるコンピュータである。センタ装置30は、各ローカルコントローラが取得した各空調装置12,14,16,18等の動作状態データを取得し、それらの動作状態データに基づいて、各空調装置12,14,16,18の状態変化情報について、インターネット40を介して監視用表示装置50に送信する機能を有する。
【0026】
かかるセンタ装置30としては、各ローカルコントローラよりはデータ処理能力の高い上位のコンピュータを用いることができる。勿論、場合によっては、各ローカルコントローラと同等のパーソナルコンピュータをセンタ装置30として用いることが可能である。
【0027】
状態変化情報とは、各空調装置12,14,16,18等の動作状態データそのものではなく、時間経過に伴って、これらの動作状態データに変化があるときに、その動作状態変化を示す情報のことである。状態変化情報としては、状態変化があったことのみを内容とするもの、状態変化量を内容とするもの、状態変化があった動作状態データを内容とするもの等とすることができる。
【0028】
状態変化情報の例を示すと、建物の1Fが停電等をしたことによって出力される警報がある。この場合には、警報が出力されたこと自体が状態変化情報であり、さらに、停電に伴う警報出力として、警報の内容を付加して、これを状態変化情報とすることができる。他の状態変化情報の例としては、1FのNo.1空調装置12が運転停止したときは、1FのNo.1空調装置12がオン状態からオフ状態に変化したことが状態変化情報である。また、1Fの室温が上昇したときは、1F室温が変化したこと自体が状態変化情報である。これに例えば、3℃上昇した等の情報を付加してこれらを状態変化情報とすることもできる。
【0029】
センタ装置30は、状態変化情報が生じた都度、インターネット40を介して、監視用表示装置50に送信する。このように、状態変化情報の生じたときを送信タイミングとして通知する通信方式は、状態変化情報通知方式、あるいは簡単に省略して状変通知方式と呼ばれる。この状態変化情報通知方式では、ビル設備が安定して動作しているときはほとんどインターネット40を利用することがない代わり、一旦異常事態が生じると、状態変化情報の量が短時間に急増し、インターネット40においてセンタ装置30に許容されている通信容量を超えることが生じ得る。センタ装置30の制限情報送信部32は、そのような事態に対応する手段であるが、その詳細な内容は後述する。
【0030】
これに対し、予め定めた所定期間ごとに監視用表示装置50の側からセンタ装置30にアクセスして、動作状態データを取得する通信方式は、ポーリング型方式と呼ばれる。ポーリング型方式は、詳細な時系列データの管理には適しているが、送信データが多くなり、また、アクセスする所定期間の長さによっては、ビル設備の動作状態が急変した異常事態等を迅速に把握することが困難となる。
【0031】
インターネット40は、センタ装置30と、監視用表示装置50とが接続される公開型のネットワークである。インターネット40を介したセンタ装置30と監視用表示装置50との間の交信は、VPNを用いて行われる。VPNを用いることで、帯域共有型の開放された安価な通信網を利用しながら、第三者の侵入・傍聴・改ざんをしにくくすることができる。なお、図1では、インターネット40を介して監視用表示装置50に接続されるセンタ装置30は1つが示されているが、複数のセンタ装置と監視用表示装置50がインターネット40を介して接続されるものとしてもよい。
【0032】
監視用表示装置50は、センタ装置30から送信された状態変化情報を受け取って、表示部52に表示する機能を有する制御装置である。なお、インターネット40を介するセンタ装置30との交信は、直接的に交信するというよりは、図1に示されるように、ウェブサーバ42を介して行われる。すなわち、センタ装置30−インターネット40−ウェブサーバ42−インターネット40−監視用表示装置50のルートで交信が行われる。
【0033】
かかる監視用表示装置50は、表示部52を有するコンピュータで構成することができる。監視用表示装置50は、センタ装置30から送信された状態変化情報を受け取って、即時的に表示部52に表示する機能の他に、異常事態等で、状態変化情報の量が短時間に急増したときに対応する機能を有する。
【0034】
その機能を実行するために、監視用表示装置50は、インターネット40を介したセンタ装置30との間の通信速度を予め定めた計測間隔で計測する通信速度計測部54と、計測された通信速度から、インターネット40を介したセンタ装置30との間の単位時間当たりの通信可能容量を算出する通信容量算出部56と、算出された通信容量をセンタ装置30の交信可能な通信容量として設定する通信容量設定部56と、通信容量算出部によって算出された単位時間当たりの通信可能容量に基づいて、センタ装置30がビル設備の状態変化情報を取得してから監視用表示装置50にその情報が表示されるまでの所要時間を算出して表示部52に表示する所要時間算出部58を含んで構成される。
【0035】
かかる機能は、ソフトウェアを実行することで実現でき、具体的には、ビル設備管理プログラムの中の通信制御に関する部分を実行することで実現できる。かかる機能の一部をハードウェアで実現するものとしてもよい。
【0036】
なお、センタ装置30における制限情報送信部32は、複数の状態変化情報があるときに、予め定めた交信優先順位に従って、設定された通信容量の範囲に制限して送信する機能を有するものである。
【0037】
上記構成の作用、特に、監視用表示装置50の各機能を主に、図2、図3を用いてさらに詳細に説明する。図2は、インターネット40を利用するビル設備管理において、通信制御の手順を示すフローチャートである。各手順は、ビル設備管理プログラムの中の通信制御に関する部分の各処理手順に対応する。
【0038】
ビル設備管理プログラムが立上ると、予め定めた計測間隔で、インターネット40を介したセンタ装置30との間の通信速度が計測される(S10)。この手順は、監視用表示装置50の通信速度計測部54の機能によって実行される。予め定めた計測間隔としては、数分間に1回とすることができる。例えば、3分ごとに計測するものとできる。計測対象の通信速度としては、センタ装置30−インターネット40−ウェブサーバ42の間の通信速度、ウェブサーバ42−インターネット40−監視用表示装置50の間の通信速度があるが、いずれか遅い方を計測することでよい。例えば、前者の通信速度が後者の通信速度よりも遅いことが予め分かっているときは、センタ装置30−インターネット40−ウェブサーバ42の間の通信速度を計測すればよい。通信速度とは、毎分当たりの送信可能なビット数であるbpmを用いることができる。
【0039】
通信速度が計測されると、次に、計測された通信速度から、インターネット40を介したセンタ装置30との間の単位時間当たりの通信可能容量が算出される(S12)。単位時間当たりの通信可能容量としては、単位時間当たりの交信可能なパケット数で示すことが好ましい。このようにすることで、例えば、1つの状態変化情報を1つのパケットを用いて送信するものとすると、送信可能パケット数=送信可能状態変化情報数であるので、送信したい状態変化情報の数が容易に分かる。
【0040】
通信可能容量が算出されると、算出された通信容量をセンタ装置30の交信可能な通信容量として設定される(S14)。この手順は、監視用表示装置50の通信容量設定部56の機能によって実行される。上記の例では、センタ装置30について、単位時間に送信可能なパケット数が設定される。
【0041】
このように、計測された現在の通信速度に対応して、インターネット40を介したセンタ装置30との間の単位時間当たりの通信可能容量が設定されると、センタ装置30において、送信したい状態変化情報が多い場合に、これらの全部を即時的に監視用表示装置50に送信できず、全部の送信にはある程度の時間を要することになる。
【0042】
そこで、算出された単位時間当たりの通信可能容量に基づいて、センタ装置30がビル設備の状態変化情報を取得してから監視用表示装置50にその情報が表示されるまでの所要時間を算出する(S16)。算出された所要時間は、表示部52に表示される。これらの手順は、監視用表示装置50の所要時間算出部58の機能によって実行される。これにより、監視用表示装置50を利用するユーザは、全部の状態変化情報がまだ一部しか表示されていないことを認識し、あとどの程度の時間で、全体の状態変化情報が表示されるのかが分かる。
【0043】
そして、センタ装置30では、複数の状態変化情報があるときに、予め定めた交信優先順位に従って、設定された通信容量の範囲に制限して、状態変化情報の送信が行われる。これは、センタ装置30の制限情報送信部32の機能によって実行される。監視用表示装置50では、送信された制限情報の受信が行われる(S18)。受信された制限情報は、表示部52に表示される。
【0044】
図3は、制限情報の様子を説明する図である。図3の左側の欄には、センタ装置30に設定された通信容量に対応する設定送信可能パケット数が示されている。この例の場合、標準的な通信速度において送信可能パケット数は4であるが、現在の通信速度からは、送信可能パケット数が2に設定されていることが示されている。
【0045】
図3の右側の欄は、センタ装置30が取得した状態変化情報を、予め定めた交信優先順位に従って並べた様子を示す図である。この例では、図1で説明した建物の1階が停電して、それに伴って警報が出力されたこと、建物の1階に設置されるNo.1空調装置12が動作停止しオン状態からオフ状態となったこと、建物の1階の室温が予め定めた閾値変化温度を超えたこと、建物の1階の積算電力量が減少したことが、センタ装置30の取得した状態変化情報として示されている。
【0046】
予め定めた交信優先順序は、センタ装置30が管理するビル設備の特性に応じて設定できる。ここでは、図3に示されるように、ビル設備に対する警報が出力されたことを示す状態変化情報を最優先順位とし、ビル設備のオン/オフ状態の変化を示す状態変化情報を第2優先順位として予め設定することができる。この2つは、ビル設備の管理上から緊急性と重要性が高いものであり、ビル設備が空調装置以外の場合でも適切な交信優先順位と考えることができる。図3では、第3優先順位として、ビル設備が空調装置であることから、室温の変化情報が設定され、第4優先順位として、ビル設備が電気消費設備であることから、積算電力量の変化情報が設定されている。
【0047】
図3では、設定送信可能パケット数が2であるので、1つのパケットで1つの状態変化情報を送信するものとすると、第1優先順位の1F警報と、第2優先順位の1F−No.1オフ情報の2つが送信される。その他の状態変化情報は、それまでに優先順位の高い状態変化情報が取得されなければ、次の送信タイミングの2つのパケットを用いて送信されることになる。
【0048】
このように、定期的に送信速度を計測し、その計測結果に基づいてセンタ装置30からの状態変化情報の送信を制限するので、ネットワークに合わせた通信量に調整が行われることになる。したがって、状態変化情報が短時間に大量に発生したときでも、交信優先順位に従って、的確に状態変化情報の送信を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明に係るインターネットを利用するビル設備管理システムは、複数のビル設備を管理するシステムに利用できる。
【符号の説明】
【0050】
10 インターネットを利用するビル設備管理システム、12,14,16,18 空調装置、20,22 ローカルコントローラ、30 センタ装置、32 制限情報送信部、40 インターネット、42 ウェブサーバ、50 監視用表示装置、52 表示部、54 通信速度計測部、56 通信容量算出部、56 通信容量設定部、58 所要時間算出部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インターネットに接続されるセンタ装置と監視用表示装置とを含むビル設備管理システムであって、
センタ装置は、ビル設備の動作状態に関して、動作状態の変化があった都度、その内容を状態変化情報として、監視用表示装置に送信する機能を有し、
監視用表示装置は、
センタ装置から状態変化情報を受信して表示する機能を有し、さらに、
インターネットを介したセンタ装置との間の通信速度を予め定めた計測間隔で計測する通信速度計測部と、
計測された通信速度から、インターネットを介したセンタ装置との間の単位時間当たりの通信可能容量を算出する通信容量算出部と、
算出された通信容量をセンタ装置の交信可能な通信容量として設定する通信容量設定部と、
を含み、
センタ装置は、さらに、
複数の状態変化情報があるときに、予め定めた交信優先順位に従って、設定された通信容量の範囲に制限して送信する制限情報送信部を含むことを特徴とするインターネットを利用するビル設備管理システム。
【請求項2】
請求項1に記載のインターネットを利用するビル設備管理システムにおいて、
監視用表示装置は、
通信容量算出部によって算出された単位時間当たりの通信可能容量に基づいて、センタ装置がビル設備の状態変化情報を取得してから監視用表示装置にその情報が表示されるまでの所要時間を算出して表示することを特徴とするインターネットを利用するビル設備管理システム。
【請求項3】
請求項2に記載のインターネットを利用するビル設備管理システムにおいて、
センタ装置は、
インターネットの仮想プライベートネットワークサービスを用いて監視用表示装置と交信することを特徴とするインターネットを利用するビル設備管理システム。
【請求項4】
請求項3に記載のインターネットを利用するビル設備管理システムにおいて、
通信容量算出部は、単位時間当たりの送信可能パケット数で通信可能容量を算出することを特徴とするインターネットを利用するビル設備管理システム。
【請求項5】
請求項4に記載のインターネットを利用するビル設備管理システムにおいて、
センタ装置は、
交信優先順位として、ビル設備に対する警報が出力されたことを示す状態変化情報を最優先順位とし、ビル設備のオン/オフ状態の変化を示す状態変化情報を第2優先順位として予め設定することを特徴とするインターネットを利用するビル設備管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−186668(P2012−186668A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−48518(P2011−48518)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】