説明

インターフェロンα受容体(IFNAR−1)に対するヒト化抗体

【課題】I型IFN活性の抑制に効果的な薬剤等を提供すること。
【解決手段】IFNAR−1に結合するヒト化モノクローナル抗体、及び、関連する抗体ベースの組成物並びに分子を提供する。また、ヒト化抗体を含有する医薬品組成物、ヒト化抗体を試用した治療方法及び診断方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、インターフェロンα受容体−1(IFNAR−1)に対するヒト化抗体に関する。
【背景技術】
【0002】
I型インターフェロン(IFN)(IFN−α、IFN−β、IFN−ω、IFN−τ)は、抗ウィルス性、抗腫瘍性、及び免疫調節性効果を有し、構造的に関連のあるサイトカインのファミリである(非特許文献1、2参照)。ヒトのIFNα遺伝子座は、2つのサブファミリを含む。第1のサブファミリは、少なくとも80%の相同性を有する、14の非対立遺伝子及び4の偽遺伝子から構成される。第2のサブファミリ(αII又はω)は、IFNα遺伝子(非特許文献3参照)と70%の相同性を有する、5の偽遺伝子及び1の機能遺伝子を含む(非特許文献4参照)。IFNαのサブタイプは、異なる比活性を有するが、同じ生物学的スペクトル(非特許文献5参照)、及び同じ細胞受容体を有する(非特許文献6参照)。
【0003】
インターフェロンβ(IFNβ)は、IFNα遺伝子とほぼ50%の相同性を有する単一遺伝子によってコードされる。
【0004】
γインターフェロンは、活性化リンパ球によって生じ、α/βインターフェロンと何の相同性も有さず、α/βインターフェロンの受容体と反応しない。
【0005】
全てのヒトI型インターフェロンは、2の膜貫通タンパク質、即ちIFNAR−1及びIFNAR−2、から構成される細胞表面受容体(IFNα受容体、IFNAR)に結合する。IFNAR−1は、IFNAR複合体の高親和性結合及び異なる特異性に不可欠である(非特許文献2参照)。各I型IFNサブタイプでの機能的差異はいまだ同定されていないが、潜在的に多様なシグナル結果を導くIFNAR受容体構成要素に対して異なる相互作用を有するものと考えられる(非特許文献7参照)。特に、IFNAR−1及びIFNAR−2の変異体を利用した研究により、αインターフェロン及びβインターフェロンが、各鎖と差次的に相互作用することによって、受容体を介して異なるシグナルを送ることを示唆された(非特許文献8参照)。
【0006】
初期におけるI型IFNの機能研究は、ウィルス感染に対する先天性防御に焦点をあてた(非特許文献9、10参照)。しかしながら、最近の研究によって、適応免疫反応における強力な免疫調節性サイトカインとしてのI型IFNが示唆されている。
具体的には、I型IFNが、Th1経路に沿ってナイーブT細胞の分化を促進し(非特許文献11参照)、抗体産生を亢進し(非特許文献12参照)、機能的活性及び記憶T細胞の生存を支持する(非特許文献13、14参照)ことが示されている。
【0007】
多くのグループによる最近の研究により、IFN−αが樹状細胞(DC)の成熟化又は活性化を亢進する可能性が示唆されている(非特許文献15〜18参照)。更に、I型インターフェロンの発現増加は、多数の自己免疫性疾患において記述されている(非特許文献19〜23参照)。これらの中で最も研究された例は、インスリン依存型糖尿病(IDDM)(非特許文献19参照)、全身性エリテマトーデス(SLE)(非特許文献20参照)、及び慢性関節リウマチ(RA)(非特許文献21〜23参照)である。インスリン依存型糖尿病(IDDM)及び全身性エリテマトーデス(SLE)は、IFN−αの高レベル化に関連する。慢性関節リウマチ(RA)においては、IFN−βがより重大な役割を担うとされる。
【0008】
更に、インターフェロンαの投与は、乾せん症患者及び多発性硬化症患者の群礎疾患を悪化させ、自己免疫性疾患の病歴のない患者においてはSLE様症候群を誘発すると報告されている。また、インターフェロンαは、正常なマウスにおいて糸球体腎炎を誘発し、NZB/Wマウスの自発性の自己免疫性疾患の発症を加速させることが示されている。更に、IFN−α治療は、熱や神経障害等の好ましくない副作用を導く場合があることが示されている。このように、I型IFN活性の抑制が患者に有益となり得る病理学的状況が存在し、I型IFN活性の抑制に効果的な薬剤が必要とされる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Hardy、他、「Blood」、97:473、2001
【非特許文献2】Cutrone、Langer、「J.Biol.Chem」、276:17140、2001
【非特許文献3】Weissmann、Weber、「Prog.Nucl.AcidRes.Mol.Biol」、33:251−300、1986
【非特許文献4】Weissmann、Weber、「Prog.Nucl.AcidRes.Mol.Biol.」、33:251−300、1986
【非特許文献5】Streuli、他、「PNAS−USA」、78:2848、1981
【非特許文献6】Agnet M、他、「Interferon 5」、Ed.1.Gresser、p.1−22、Academic Press、(London)、1983
【非特許文献7】Cook、他、(1996)、「J.Biol.Chem.」、271:13448
【非特許文献8】Lewerenz、他、(1998)、「J.Mol.Biol.」、282:585
【非特許文献9】Haller、他、(1981)、「J.Exp.Med.」、154:199
【非特許文献10】Lindenmann、他、(1981)、「Methods Enzymol.」、78:181
【非特許文献11】Brinkmann、他、(1993)、「J.Exp.Med.」178:1655
【非特許文献12】Finkelman、他、(1991)、「J.Exp.Med.」、174:1179
【非特許文献13】Santini、他、(2000)、「J.Exp.Med.」、191:1777
【非特許文献14】Though、他、「Science」、272:1947
【非特許文献15】Santini、他、(2000)、「J.Exp.Med.」、191:1777
【非特許文献16】Luft、他、(1998)、「J.Immunol.」、161:1947
【非特許文献17】Luft、他、(2002)、「Int.Immunol.」、14:367
【非特許文献18】Radvanyi、他、(1999)、「Scand.J.Immunol.」、50:499
【非特許文献19】Foulis、他、(1987)「Lancet」、2:1423
【非特許文献20】Hooks、他、(1982)「Arthritis Rheum」、25:396
【非特許文献21】Hertzog、他、(1988)「Clin.Immunol.Immunopathol.」、48:192
【非特許文献22】Hopkins、Meager、(1988)「Clin.Exp.Immunol.」、73:88
【非特許文献23】Arvin、Miller、(1984)、「Arthritis Rheum.」、27:582
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、ヒトI型IFNの生物学的活性のアンタゴニストを提供する。これらのアンタゴニストは、例えば、I型−IFN(IFNα/β/ω/τ)の生産又は発現が病理学的症状に関連している状況下で、治療(予防を含む)目的で使用できる。このようなアンタゴニストは、様々な病気の、診断や進化の研究のためにも使用できる。本発明は、IFNAR−1受容体に対するヒト化抗体を提供する。この抗体は、マウスのCDR配列が非改変ヒトフレームワーク配列に直接移植されることで、高親和性及び高機能性を有する。更に、本発明は、抗体自体の抗原性を減少させるために、付加的な抗体変異を含むヒト化抗体を提供する。更にまた、本発明は、上記抗体の抗体フラグメントを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一実施形態において、本発明は、IFNα受容体−1に特異的に結合するヒト化抗体又はヒト化抗体フラグメントであって、
配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の相補性決定領域アミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、
配列番号4、配列番号5、又は配列番号6の相補性決定領域アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、
ヒト抗体又はヒト抗体コンセンサスフレームワークの重鎖及び軽鎖からの可変ドメインフレームワーク領域と、を含み、
可変ドメインフレームワーク領域は、ヒト抗体又はヒト抗体コンセンサスフレームワークから不変であるヒト化抗体又はヒト化抗体フラグメントを提供する。
【0012】
別の実施形態において、本発明は、重鎖可変領域を有するIFNα受容体−1に特異的に結合するヒト化抗体又はヒト化抗体フラグメントであって、
マウス抗体64G12のCDR1(配列番号1)、CDR2(配列番号2)、及びCDR3(配列番号3)のアミノ酸配列を含み、CDR3(配列番号3)のアミノ酸配列では、少なくとも1つのアミノ酸置換がなされ、
ヒト抗体又はヒト抗体コンセンサスフレームワークに由来する可変ドメインフレームワーク領域と、を含むヒト化抗体又はヒト化抗体フラグメントを提供する。
【0013】
ヒト化抗体又はヒト化抗体フラグメントは、マウス抗体64G12のIFNα受容体−1結合能の少なくとも50%を保持することが好ましい。本実施形態において、可変ドメインフレームワーク領域は、ヒト抗体又はヒト抗体コンセンサスフレームワークから不変である、又はフレームワーク残基の中に特定の置換を含んでよい。好ましい実施形態においては、抗体又は抗体フラグメントは、CDR3のポジション4におけるアミノ酸置換を有する。この置換は、好ましくはL、N、E、V、A、C、G、S、I、R、D、M、H、T、W、及びKからなる群、より好ましくはL、E、V、A、C、G、S、I、R、D、M、T、W、及びKからなる群、より選択されるアミノ酸に対するプロリン置換である。好ましい別の実施形態においては、抗体又は抗体フラグメントは、CDR3のポジション11におけるアミノ酸置換を有する。この置換は、好ましくはL、E、Q、R、V、A、F、G、C、I、T、W、H、K、D、及びSからなる群、より好ましくはE、R、V、A、F及びHからなる群、より選択されるアミノ酸に対するチロシン置換である。更に別の好ましい実施形態において、抗体又は抗体フラグメントは、マウス抗体64G12のCDR1(配列番号4)、CDR2(配列番号5)、及びCDR3(配列番号6)のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域をも有する。
【0014】
別の実施形態において、本発明は、IFNα受容体−1に特異的に結合するヒト化抗体又はヒト化抗体フラグメントであって、
マウス抗体64G12のCDRl(配列番号1)、CDR2(配列番号2)、及びCDR3(配列番号3)のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、
マウス抗体64G12のCDR1(配列番号4)、CDR2(配列番号5)、及びCDR3(配列番号6)のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、を有し、
ヒト化抗体又はヒト化抗体フラグメントは、24H、29H、37H、40H、71H、78H、19L、37L、46L、58L、70L、及び83Lからなる群より選択されるアミノ酸ポジションにおける少なくとも1つのアミノ酸置換を有し、
群の各メンバーのアミノ酸ポジションは、Kabatに記載されるナンバリングシステムを利用して示されるヒト化抗体又はヒト化抗体フラグメントを提供する。
【0015】
好ましい実施形態において、アミノ酸置換は、Kabatに記載されるナンバリングシステムを利用した、
24H残基のフェニルアラニンに対するアラニン置換、
29H残基のロイシンに対するメチオニン置換、
29H残基のロイシンに対するアラニン置換、
37H残基のバリンに対するイソロイシン置換及び40H残基のアラニンに対するスレオニン置換、
40H残基のアラニンに対するプロリン置換、
71H残基のアルギニンに対するリシン置換、
78H残基のバリンに対するロイシン置換、
19L残基のバリンに対するアラニン置換、
37L残基のグルタミンに対するロイシン置換、
46L残基のロイシンに対するアラニン置換、
58L残基のバリンに対するイソロイシン置換、
70L残基のセリンに対するアスパラ酸置換、又は、
83L残基のフェニルアラニンに対するスレオニン置換である。
【0016】
本発明のその他の好ましいヒト化抗体又はヒト化抗体フラグメントは、
配列番号8(H2)(図1B)、配列番号10(H3)(図1D)、配列番号11(M3)(図1E)、配列番号14(M3−A)(図1H)、配列番号15(M3−B)(図1I)、配列番号16(M3−A/B)(図1J)、配列番号17(DI−M3)(図1K)、及び配列番号18(DI M3−B)(図1L)からなる群より選択される重鎖可変領域アミノ酸配列と、
配列番号20(K6)(図2B)、配列番号21(K1)(図2C)、配列番号22(K1−C)(図2D)、配列番号23(K1−D)(図2E)、配列番号24(K1−E)(図2F)、配列番号25(K1−C/D)(図2G)、
配列番号26(K1−C/E)(図2H)、配列番号27(K1−D/E)(図2I)、配列番号28(K1−C/D/E)(図2J)、及び配列番号30(DI K1−C)(図2L)からなる群より選択される軽鎖可変領域アミノ酸配列と、を有する。
【0017】
好ましい重鎖可変領域と軽鎖可変領域の組合せとしては、
可変重鎖アミノ酸配列(配列番号8(H2)(図1B))と可変軽鎖アミノ酸配列(配列番号20(K6)(図2B))、
可変重鎖アミノ酸配列(配列番号8(H2)(図1B))と可変軽鎖アミノ酸配列(配列番号21(K1)(図2C))、
可変重鎖アミノ酸配列(配列番号:10(H3)(図1D))と可変軽鎖アミノ酸配列(配列番号20(K6)(図2B))、
可変重鎖アミノ酸配列(配列番号:10(H3)(図1D))と可変軽鎖アミノ酸配列(配列番号21(K1)(図2C))、
可変重鎖アミノ酸配列(配列番号:11(M3)(図1E))と可変軽鎖アミノ酸配列(配列番号21(K1)(図2C))、
可変重鎖アミノ酸配列(配列番号:17(DI M3)(図1K))と可変軽鎖アミノ酸配列(配列番号21(K1)(図2C))、
可変重鎖アミノ酸配列(配列番号:15(M3−B)(図1I))と可変軽鎖アミノ酸配列(配列番号21(K1)(図2C))、
可変重鎖アミノ酸配列(配列番号:18(DI M3−B)(図1L))と可変軽鎖アミノ酸配列(配列番号21(K1)(図2C))、
可変重鎖アミノ酸配列(配列番号:11(M3)(図1E))と可変軽鎖アミノ酸配列(配列番号22(K1−C)(図2D))、
可変重鎖アミノ酸配列(配列番号:11(M3−B)(図1I))と可変軽鎖アミノ酸配列(配列番号22(K1−C)(図2D))、
可変重鎖アミノ酸配列(配列番号:17(DI M3)(図1K))と可変軽鎖アミノ酸配列(配列番号22(K1−C)(図2D))、
可変重鎖アミノ酸配列(配列番号18(DI M3−B)(図1L))と可変軽鎖アミノ酸配列(配列番号22(K1−C)(図2D))、が挙げられる。
【0018】
更に、他の実施形態において、本発明のヒト化抗体は、ヒト重鎖不変ドメイン及び軽鎖不変ドメインを有する。好ましい実施形態において、ヒト重鎖定常領域は、ヒトγ1、ヒトγ2、ヒトγ3、及びヒトγ4からなる群より選択される。ヒト重鎖定常領域は、ヒトγ1であることがより好ましい。更にその他の実施形態において、本発明のヒト化抗体は、KD1×10-7M以下のIFNα受容体−1結合能を有することが好ましく、KD1×10-8M以下のIFNα受容体−1結合能を有することがより好ましい。「KD1×l0-7M以下の結合能」とは、1×10-7Mの結合能、又はそれを超える総結合能を意味する。他の実施形態において、結合能は、5×10-10M以上1×10-7M以下、5×10-10M以上1×10-8M以下、又は5×10-10M以上1×10-9M以下である。更に他の実施形態において、本発明のヒト化抗IFNAR−1抗体又はヒト化抗体フラグメントは、試験管内及び生体内における生物学的活性を有し、複数のI型インターフェロンによって誘発される生物学的反応を抑制する。
【0019】
本発明の別の側面は、IFNα受容体−1を発現する細胞上のIFNα受容体−1へのI型インターフェロンの結合を抑制する方法に関する。この方法は、IFNα受容体−1へのIFNの結合が抑制されるように、本発明のヒト化抗体又はヒト化抗体フラグメントを前記細胞に接触させることを含む。更に別の側面において、本発明は、被験体における免疫反応を抑制する方法に関する。この方法は、免疫反応が抑制されるように、本発明のヒト化抗体又はヒト化抗体フラグメントを被験体に投与することを含む。抑制される免疫反応は、例えば、細胞上のMHCクラスI又はMHCクラスIIの発現を調節する反応、樹状細胞の成長を誘導する反応か、又は、混合リンパ球培養反応により特徴付けられる反応でよい。免疫反応の抑制としては、異種刺激細胞(例えばGMCSF/IFN誘導樹状細胞)の抑制が挙げられる。
【0020】
更に、本発明は、被験体の自己免疫不全、移植拒絶反応、又は移植片対宿主疾患(GVHD)を治療する方法を提供する。この方法は、被験体の自己免疫不全、移植拒絶反応、又はGVHDを治療するために、本発明のヒト化抗体又はヒト化抗体フラグメントを被験体に投与することを含む。一実施形態において、自己免疫不全は、炎症性腸疾患(IBD)である。別の実施形態において、自己免疫不全は、全身性エリテマトーデス(SLE)である。更に別の実施形態において、自己免疫不全は、インスリン依存性糖尿病(IDDM)である。更に別の実施形態において、自己免疫不全は、慢性関節リウマチ(RA)である。
【0021】
別の形態において、本発明は、抗IFNAR−1キメラ抗体又は抗体フラグメントを提供する。キメラ抗体は、マウス抗IFNAR−1抗体64G12の重鎖可変ドメイン(配列番号7(図1A))及び軽鎖可変ドメイン(配列番号19(図2A))を含み、ヒト重鎖定常領域及びヒト軽鎖定常領域に操作可能な状態で連結されることが好ましい。好ましいヒト重鎖定常領域としては、ヒトγ1、ヒトγ2、ヒトγ3、及びヒトγ4が挙げられ、より好ましくはヒトγ1である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1Aは、元のマウス64G12重鎖可変領域を示す図である。 図1Bは、マウス配列由来のCDR及び他のアミノ酸と、ヒトイムノグロビン重鎖生殖細胞系DP−28のフレームワーク配列と、を結合して設計される重鎖可変領域を示す図である。 図1Cは、マウス配列由来のCDR−3と、ヒトイムノグロビン重鎖生殖細胞系DP−28のフレームワーク配列と、を結合して設計される重鎖可変領域を示す図である。 図1Dはマウス配列由来のCDR及び他のアミノ酸と、ヒトイムノグロビン重鎖のフレームワーク配列と、を結合して設計される重鎖可変領域を示す図である。 図1Eは、マウス配列由来のCDR及び他のアミノ酸と、ヒトイムノグロビン重鎖生殖細胞系DP−47のフレームワーク配列と、を結合して設計される重鎖可変領域を示す図である。 図1Fは、L、N、E、V、A、C、G、S、R、D、M、H、T、W、K、又はIによって置換されるアミノ酸Xを有する重鎖M3を示す図である。 図1Gは、L、E、Q、R、V、A、F、G、C、T、W、H、K、D、S、又はIによって置換されるアミノ酸Xを有する重鎖M3を示す図である。 図1Hは、CDR−1領域(イタリック体で示す)のアミノ酸に置換することでT細胞エピトープが除去された重鎖M3を示す図である。 図1Iは、CDR−2領域(イタリック体で示す)のアミノ酸に置換することでT細胞エピトープが除去された重鎖M3を示す図である。 図1Jは、CDR−1及びCDR−2の領域(イタリック体で示す)のに置換することで2つのT細胞エピトープが除去された重鎖M3を示す図である。 図1Kは、フレームワーク領域のイタリック体で示すアミノ酸を変更することで、潜在的全T細胞エピトープ除去される重鎖M3を示す図である。 図1Lは、フレームワーク領域及びCDR−2領域のイタリック体で示すアミノ酸を変更することで、潜在的全T細胞エピトープが除去される重鎖M3を示す図である。
【図2】図2Aは、元のマウス64G12軽鎖可変領域を示す図である。 図2Bは、マウス配列由来のCDRのアミノ酸及び他のアミノ酸と、ヒトイムノグロビン軽鎖生殖細胞系DPk−26のフレームワーク配列と、を結合して設計される軽鎖可変領域を示す図である。 図2Cは、マウスの配列由来のCDRのアミノ酸及び他のアミノ酸と、ヒトイムノグロビンκ鎖のフレームワーク配列と、を結合して設計される軽鎖可変領域を示す図である。 図2Dは、CDR−1のアミノ酸(イタリック体で示す)を変更することで、潜在的T細胞エピトープのうち1つが除去される軽鎖K1を示す図である。 図2Eは、CDR−1のアミノ酸(イタリック体で示す)を変更することで、潜在的T細胞エピトープのうち1つを有する軽鎖K1を示す図である。 図2Fは、CDR−3のアミノ酸(イタリック体で示す)を変更することで、潜在的なT細胞エピトープのうち1つが除去される軽鎖K1を示す図である。 図2Gは、CDR−1のアミノ酸(イタリック体で示す)を変更することで、潜在的T細胞エピトープうち2つが除去される軽鎖K1を示す図である。 図2Hは、CDR−1領域及びCDR−3領域のアミノ酸(イタリック体で示す)を変更することで、潜在的T細胞エピトープうち2つが除去される軽鎖K1を示す図である。 図2Iは、CDR−1領域及びCDR−3領域のアミノ酸(イタリック体で示す)を変更することで、潜在的T細胞エピトープうち2つが除去される軽鎖K1を示す図である。 図2Jは、CDR−1領域及びCDR−3領域のアミノ酸(イタリック体で示す)を変更することで、潜在的T細胞エピトープうち3つが除去される軽鎖K1を示す図である。 図2Kは、フレームワーク領域のアミノ酸(イタリック体で示す)を変更することで、潜在的全T細胞エピトープが除去される軽鎖K1を示す図である。 図2Lは、フレームワーク領域及びCDR−1領域のアミノ酸(イタリック体で示す)を変更することで、潜在的全T細胞エピトープが除去される軽鎖K1を示す図である。 図2Mは、フレームワーク領域のアミノ酸(イタリック体で示す)を変更することで、6つの潜在的T細胞エピトープのうち5つが除去される軽鎖K1を示す図である。 図2Nは、フレームワーク領域及びCDR−1領域のアミノ酸(イタリック体で示す)を変更することで、6つの潜在的T細胞エピトープのうち5つを有する軽鎖K1である。 図2Oは、フレームワーク領域のイタリック体にされたアミノ酸を交換することによって取り除かれるその6つの潜在的T細胞エピトープのうち5つが除去される軽鎖K1を示す図である。 図2Pは、フレームワーク領域のイタリック体にされたアミノ酸を交換することによって取り除かれるその6つの潜在的T細胞エピトープのうち5つが除去される軽鎖K1を示す図である。 図2Qは、フレームワーク領域のイタリック体にされたアミノ酸を交換することによって取り除かれるその6つの潜在的T細胞エピトープのうち5つが除去される軽鎖K1を示す図である。 図2Rは、フレームワーク領域のイタリック体にされたアミノ酸を交換することによって取り除かれるその6つの潜在的T細胞エピトープのうち5つが除去される軽鎖K1を示す図である。 図2Sは、フレームワーク領域のイタリック体にされたアミノ酸を交換することによって取り除かれるその6つの潜在的T細胞エピトープのうち5つが除去される軽鎖K1を示す図である。
【図3】図3Aは、重鎖可変領域M3の核酸配列を示す図である。 図3Bは、軽鎖可変領域K1の核酸配列を示す図である。 図3Cは、DI M3−Bの核酸配列を示す図である。 図3Dは、K1−Cの核酸配列を示す図である。
【図4A】インターフェロンに応答するレポーター遺伝子アッセイで測定した、抗IFNAR−1ヒト化抗体によるIFN−α活性の抑制を示すグラフである。
【図4B】インターフェロンに反応するレポーター遺伝子アッセイで測定した、抗IFNAR−1ヒト化抗体によるIFN−β活性の抑制を示すグラフである。
【図5】ヒト化抗IFNAR−1抗体による複数のIFNαサブタイプの生物学的活性の逆転を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、インターフェロン−α受容体1(IFNAR−1)に対する新規なヒト化抗体及びキメラ抗体を提供する。一実施形態では、本発明のヒト化抗体は、ヒト生殖細胞系配列から不変であるフレームワーク(FR)領域を有する。他の実施形態として、ヒト化抗体は、例えば抗体の結合を向上させるため、ドナーマウス抗体と比較して、CDR領域、好ましくはCDR3領域内に変異を含む。更に他の形態において、ヒト化抗体は、例えば抗体自体の抗原性を減少させる(例えば、T細胞エピトープを除去する)ため、ヒト生殖細胞系配列と比較して、フレームワーク領域内に変異を含む。本発明の抗体は、例えば、I型インターフェロン(IFN)の生産又は発現が病理学的症状と関連する場合、治療目的で使用できる。
【0024】
マウス抗ヒトIFNAR−1のモノクローナル抗体64G12のCDRをヒト抗体配列のFRに移植することにより、HAMAの誘発の減少及びエフェクタ活性の増大を呈すると共に、64G12抗IFNAR−1 mAbの抗原結束性及び高い抗原結合能を有する、ヒト化抗体及び抗体由来の試薬を提供できることが発見されている。ヒトフレームワークのアミノ酸配列は、結果として生じる抗体が人間の生体内投与に適するように選択されることが好ましい。例えば、ヒトFR等を含む抗体の従前の用途に基づいて決定できる。ヒトFRは、それ自体が大きな免疫原とならないことが好ましい。
【0025】
一実施形態において、本発明は、IFNAR−1に特異的に結合し、I型インターフェロンの活性をブロックできるヒト化抗体に向けられる。このようなヒト化抗体は、IFNAR−1に対する優れた結合能、及び全I型インターフェロンに対する優れた活性遮断を有する抗体(例えば64G12)に由来することが好ましい。このようなヒト化抗体は、IgGアイソタイプのマウス抗体である64G12に由来することが好ましい。64G12は、IFNAR−1と高い親和性で結合する(KD=1.2×10-9M)ことが報告されている。
【0026】
本発明のヒト化抗体は、64G12と同じエピトープに結合するのが好ましい。このような抗体は、IFNAR−1又はIFNAR−1発現細胞に結合する64G12と競合する能力に基づいて識別できる。64G12が結合するエピトープは、ペプチド(CNFSSLKLNVYE(配列番号42))を含むことが分かっている。このペプチドは、IFNAR1の細胞外部分のサブドメイン1内にある。このペプチドにおける特定の置換は、抗体結合を著しく抑制すると共に、I型IFNの結合及び活性を抑制する。
【0027】
マウス抗IFNAR−1モノクローナル抗体64G12及びこの製造は、米国特許第5919453号公報に既に記載され、1992年2月26日にECACC(European Collection of Animal Cell Cultures Porton Down Salisbury、Wiltshire SP4 056、United Kingdom)に寄託されている。
【0028】
上記のように、ヒト化抗体によれば、ヒトにおける抗原性の減少等の、マウス抗体及びキメラ抗体に対する潜在的利点が得られる。これが有利であるのは、SLE、IDDM、RA等の自己免疫性疾患の治療のため、又は移植拒絶反応やGVHDの予防のためにこれらのヒト化抗体を生体内で投与したとき、HAMA反応の誘発を減らし、潜在的に除去できるからである。また、これらの抗体は、薬物動態学的性質を改良することもできる。
【0029】
本発明のヒト化抗体は、完全な抗体分子を含んでもよい。この完全な抗体分子は、全長の重鎖及び軽鎖、抗体フラグメント(例えば、Fab、Fab’、(Fab’)2、又はFvフラグメント)、単鎖抗体フラグメント(例えば、単鎖Fv、軽鎖又は重鎖の単量体又は二量体)、接続構造によって互いに結合される2、3、4又はそれ以上の抗体又は抗体フラグメントを含む多価の単一特異性の抗原結合タンパク質、MAb64G12と同じ特異性を持つこれらのうちいずれかの又はその他の分子のフラグメント又はアナログを有する。好ましい実施形態において、抗体は、全長の重鎖及び軽鎖を有する完全な抗体分子を含む。
【0030】
本発明をより容易に理解することを可能にするため、特定の用語を最初に定義する。付加的な定義は、詳細な説明の全体にわたって記載する。
【0031】
用語「インターフェロンα受容体−1」、「IFNAR−1」、及び「IFNAR−1抗原」は、本明細書において同義的に使用され、ヒトIFNAR−1の変異型、アイソタイプ、ホモログを含む。従って、本発明のヒト抗体は、特定の場合において、ヒト以外の種からのヒトIFNAR−1と、又はヒトIFNAR−1と構造的に関連のある他のタンパク質(例えば、ヒトIFNAR−1ホモログ)と、交差反応してよい。他の場合では、抗体は、ヒトIFNAR−1に完全に特異的であり、交差反応性のある他の種又は他のタイプを有さない。
【0032】
本明細書において言及する用語「抗体」は、IgG、IgM、IgAアイソタイプ等の全ての抗体、あらゆる抗原結合フラグメント(つまり、「抗原結合部」)又は単鎖を含む。「抗体」は、ジスルフィド結合によって相互接続される少なくとも2の重(H)鎖及び2の軽(L)鎖、又は、抗体の抗原結合部を有するグリコプロテインを指す。重鎖の各々は、重鎖可変領域(本明細書ではVHと略称する)と重鎖定常領域とから構成される。IgG重鎖定常領域は、CH1、ヒンジ、CH2、CH3の4つのドメインから構成される。軽鎖の各々は、軽鎖可変領域(本明細書ではVLと略称する)と軽鎖定常領域とから構成される。軽鎖定常領域は、1つのドメインCLから構成される。VH領域及びVL領域は、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性を有する領域に更に分割できる。CDRは、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる、より保存された領域とともに散在する。VH及びVLの各々は、3つのCDRと4つのFRとから構成され、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順序でアミノ末端からカルボキシ末端に配置される。重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)や典型的な補体系の第一成分(Clq)等の宿主組織又は要素への、免疫グロブリンの結合を媒介してよい。
【0033】
本明細書において使用されるように、抗体の用語「抗原結合部」(又は単に「抗体部」)は、抗原(例えば、IFNAR−1)に特異的に結合する能力を保持する抗体の1つ以上のフラグメントを指す。抗体の抗原結合機能は、全長抗体のフラグメントによって実行できることが示されている。抗体の用語「抗原結合部」の中に包含される結合フラグメントとしては、(i)Fabフラグメントであって、VL、VH、CL、及びCH1ドメインからなる一価のフラグメントと、(ii)F(ab’)2フラグメントであって、ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって結合される2つのFabフラグメントを含む二価のフラグメントと、(iii)VH領域とCH1領域とから構成されるFdフラグメントと、(iv)抗体の単一アームのVLドメインとVHドメインとから構成されるFvフラグメントと、(v)VHドメインを含むdAbフラグメント(Ward、他、(1989)「Nature」、341:544−546)と、(vi)隔離された相補性決定領域(CDR)と、を含む結合フラグメントが挙げられる。更に、Fvフラグメントの2つのドメイン(VL及びVH)は、別々の遺伝子によってコードされるにもかかわらず、一価性の分子(単鎖Fv(scFv)として知られる。Bird、他、(1988)「Science」242:423−426」、「Huston、他、(1988)「Proc.Natl.Acad.Sci.USA」85:5879−5883」参照。)を形成するためにVL領域及びVH領域が対になる単一のタンパク質鎖を形成できる合成リンカーによる組換え法、ジスルフィド結合の使用や二量体化モチーフの媒介等の他の手段によって、VL及びVHは結合できる。このような単鎖抗体は、抗体の用語「抗原結合部」の中に包含されることも意図される。これらの抗体フラグメントは、当業者に公知の従来技術を使用して得られ、無傷の抗体と同様の方法で実用のためにスクリーニングされる。
【0034】
用語「エピトープ」は、抗体に特異的に結合できるタンパク質決定因子を意味する。通常、エピトープは、アミノ酸又は糖側鎖等の分子の化学的活性表面グループから構成され、特定の電荷特性と、特定の3次元構造特性とを有する。配座エピトープと非配座エピトープとは、変性溶媒中で、前者との結合が失われ、後者との結合が失われない点で、区別される。
【0035】
本明細書において使用されるように、用語「モノクローナル抗体」又は「モノクローナル抗体組成物」は、単一の分子組成の抗体分子の調整を指す。モノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープに対する単一の結合特異性及び単一の結合親和性を示す。従って、用語「ヒトモノクローナル抗体」は、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列に由来する可変領域及び定常領域を有する、単一の結合特異性を示す抗体を指す。一実施形態において、ヒトモノクローナル抗体は、不死化細胞に融合されたヒト重鎖外来遺伝子及び軽鎖外来遺伝子を有するゲノムを備える形質転換非ヒト動物(例えば、形質転換マウス)から得られるB細胞を含むハイブリドーマによって生産される。
【0036】
「分離抗体」は、本明細書において使用されるように、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に有しない抗体を指すことが意図される(例えば、IFNAR−1に特異的に結合する分離抗体は、IFNAR−1以外の抗原に特異的に結合する抗体を実質的に有しない。)。しかしながら、ヒトIFNAR−1のエピトープ、アイソタイプ、又は変異型に特異的に結合する分離抗体は、例えば、他の種(例えば、IFNAR−1ホモログ)由来の関連する他の抗原との交差反応性を有する場合がある。更に、分離抗体は、他の細胞成分及び/又は化学物質を実質的に有しなくてよい。本発明の一実施形態において、異なる特性を有する「分離」モノクローナル抗体の組み合わせは、非常に明確な組成物において組み合わされる。
【0037】
本明細書で使用されるように、「特異的結合」は、予定された抗原に結合する抗体を指す。一般的に、抗体は、解離定数(KD)10-7Mの以下で結合し、予定された抗原又は類縁抗原以外の非特異的抗原(例えば、BSA、カゼイン)への結合でのKDに比べて少なくとも2分の1未満であるKDで、予定された抗原に結合する。用語「抗原を認識する抗体」及び「抗原に特異的な抗体」は、用語「抗原に特異的に結合する抗体」と、本明細書において同義的に使用される。
【0038】
本明細書で使用されるように、IgG抗体に対する用語「高親和性」は、10-8M以下のKD、より好ましくは10-9M以下のKD、更に好ましくは10-10M以下のKDを有する抗体を指す。しかしながら、「高親和性」結合は、他の抗体アイソタイプによって異なってよい。例えば、IgMアイソタイプに対する「高親和性」結合は、10-7M以下のKD、より好ましくは10-8M以下のKDを有する抗体を指す。
【0039】
用語「Kassoc」又は「Ka」は、本明細書において使用されるように、特定の抗体−抗原相互作用の会合速度を指すことが意図され、用語「Kdis」又は「Kd」は、本明細書において使用されるように、特定の抗体−抗原相互作用の解離速度を指すことが意図される。用語「KD」は、本明細書において使用されるように、解離定数を指すことが意図される。解離定数は、Kaに対するKdの比率(つまりKd/Ka)から得られ、モル濃度(M)として表される。
【0040】
本明細書に使用されるように、「アイソタイプ」は、重鎖定常領域遺伝子によってコードされる抗体クラス(例えば、IgM、IgA、又はIgG1)を指す。
【0041】
本明細書に使用されるように、「アイソタイプスイッチング」は、抗体のクラス又はアイソタイプが、あるIgクラスから、他のIgクラスの1つへと変化する現象を指す。
【0042】
ある対象に適用される、本明細書において使用される用語「自然発生」は、ある対象が自然界で発見できる事実を指す。例えば、自然界のソースからの分離が可能で、実験室の人間によって意図的に改変されてない有機体(ウィルスを含む)に存在するポリペチド配列又はポリヌクレオチド配列は、自然発生である。
【0043】
V部位に関連する、本明細書において使用される用語「再構成されていない」又は「生殖細胞系構成」は、V部位が、D部位又はJ部位と直接隣接するよう再結合されていない構成を指す。
【0044】
用語「核酸分子」は、本明細書において使用されるように、DNA分子とRNA分子を含むことが意図される。核酸分子は、一本鎖DNA又は二本鎖DNAであってよいが、二本鎖DNAであることが好ましい。
【0045】
本明細書において開示され、クレームされるように、記載された配列は「保存性配列変異」、即ち、ヌクレオチド配列変異及びアミノ酸配列変異であって、そのヌクレオチド配列によってコードされる、又はそのアミノ酸配列を含む抗体の結合特異性に大きな影響は及ぼさない、又は結合特異性を変えない変異のことである。このような保存性配列変異としては、ヌクレオチド及びアミノ酸の置換、付加、欠失が挙げられる。変異は、例えば、部位定方向突然変異誘発、PCRを介した変異といった、この分野における公知の標準技術によって導入できる。保存性アミノ酸置換としては、アミノ酸残基が、類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置換されることが挙げられる。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリは、この分野において定められている。これらのファミリとしては、塩基性側鎖(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、β分岐側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)、芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)、を有するアミノ酸が挙げられる。このように、ヒト抗IFNAR−1抗体における、非不可欠であることが予測されるアミノ酸残基は、同じ側鎖ファミリの別のアミノ酸残基と置換されることが好ましい。
【0046】
核酸に関して、用語「実質的相同性」は、2つの核酸、又は指定された核酸配列が、最適に配置されて比較されるときに、適切なヌクレオチドの挿入又は欠失を伴って、約80%以上、通常は少なくとも約90%以上約95%以下、より好ましくは約99.5%以上の同一性を有することを示す。または、セグメントが、選択的なハイブリダイゼーション条件の下で、ヌクレオチド鎖の相補体に対してハイブリダイズするとき、実質的相同性が存在すると言うこともできる。
【0047】
2つの配列間の同一性パーセントは、2つの配列の最適アラインメントのためにギャップ数及び各ギャップの長さを考慮し、配列を共有する同一ポジション数の関数(つまり、相同性%=同一ポジション数/全ポジション数×100)である。後述する非限定の実施例において説明されるように、配列比較、及び2つの配列間の同一性パーセントの決定は、数学的アルゴリズムを用いて達成できる。
【0048】
NWSgapdna.CMPマトリクスを用いるGCGソフトウェアパッケージ(http://www.gcg.comにて入手可能)GAPプログラムを使用し、ギャップ加重40、50、60、70又は80及び長さ加重1、2、3、4、5又は6で、2つのヌクレオチド配列間の同一性パーセントを決定できる。2つのヌクレオチド配列、又は2つのアミノ酸配列間の同一性パーセントは、PAM120加重残基表、ギャップ長ペナルティ12、ギャップペナルティ4を用い、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれたE.Meyers及びW.Millerのアルゴリズム(「Comput.Appl.Biosci.」、4:11−17(1988))を使用して決定することもできる。更に、2つのアミノ酸配列間の同一性パーセントは、Blossum62マトリクス又はPAM250マトリクスのいずれか、ギャップ加重16、14、12、10、8、6、4、長さ加重1、2、3、4、5、6を用いて、GCGソフトウェアパッケージ(http://www.gcg.comで入手可能)のGAPプログラムに組み込まれたNeedleman及びWunschのアルゴリズム(「J.Mol.Biol.」、48:444−453(1970))を使用して決定できる。
【0049】
本発明の核酸配列及びタンパク質配列は、更に、例えば、関連配列を同定するために、公知のデータベースに対して検索を実行するための「クエリー配列」として使用できる。このような検索は、NBLAST及びXBLASTプログラム(バージョン2.0)(Altschul、他、(1990)「J.Mol.Biol.」、215:403−10)を使用して実行できる。NBLASTプログラム、スコア=100、文字長=12によって、BLASTヌクレオチド検索を実行することにより、本発明の核酸分子に相同なヌクレオチド配列を得ることができる。XBLASTプログラム、スコア=50、文字長=3によって、BLASTタンパク質検索を実行することにより、本発明のタンパク質分子に相同なアミノ酸配列を得ることができる。Altschul、他、(1997)「Nucleic Acids Res.」、25(17):3389−3402にて説明されるように、比較目的でギャップ化アラインメントを得るために、Gapped BLASTを利用できる。BLAST及びGapped BLASTプログラムを利用する場合、各プログラム(例えば、XBLAST及びNBLASTプログラム)のデフォルトパラメータを使用できる。http://www.ncbi.nlm.nih.govを参照されたい。
【0050】
核酸は、全細胞、細胞溶菌液、部分的に純化された形態、又は実質的に純粋な形態で存在し得る。核酸は、標準の技術により、他の細胞成分又は他の夾雑物(つまり、他の細胞核酸又は細胞タンパク質)から純化され、「分離される」又は「実質的に純粋になる」(F.Ausubel、他編、「Current Protocols in Molecular Biology」、Greene Publishing and Wiley Interscience、NewYork(1987)参照)。標準技術としては、アルカリSDS処理、塩化セシウムバンド、カラムクロマトグラフィ、アガロースゲル電気泳動、その他の周知技術が挙げられる。
【0051】
しばしば自然な配列(変異された制限部位等を除く)において、cDNA、ゲノム、又は混合物のいずれか由来の本発明の核酸組成物は、遺伝子配列を提供するための標準技術に従って、変異されてよい。コーディング配列については、これらの変異によって、アミノ酸配列に所望の影響を与えられる場合がある。特に、未変性V、D、J、定常、スイッチ、その他このような配列に対して実質的に相同、あるいは、これらに由来するDNA配列が考察される(ここで、「由来する」は、配列が他の配列と同一又は改変されていることを示す。)。
【0052】
核酸は、別の核酸配列と機能的な関係を有するよう配置されたとき、「操作可能な状態で連結される」と言う。例えば、プロモーター又はエンハンサーが、配列の転写に影響を及ぼす場合、コーディング配列に操作可能な状態で連結される。転写調節配列に関して、「操作可能な状態で結合」は、連結されるDNA配列が連続的である意味であり、2つのタンパク質コーディング領域を結合する必要がある場合には、読み枠の中で連続的であるという意味である。スイッチ配列に関して、「操作可能な状態で連結」は、配列がスイッチ組換えをもたらすことができることを示す。
【0053】
用語「ベクター」は、本明細書において使用されるように、連結される別の核酸を移送できる核酸分子を指すことが意図される。ベクターの1つのタイプは「プラスミド」であり、プラスミドとは、付加的なDNAセグメントをライゲートできる環状二本鎖DNAループを指す。ベクターの別のタイプは、ウィルスベクターであって、付加的なDNAセグメントをウィルスゲノムにライゲートできる。特定のベクターは、導入される宿主細胞内で自律複製できる(例えば、細菌複製開始点を有する細菌ベクター、エピソーム性の哺乳類ベクター)。宿主細胞への導入時に宿主細胞のゲノムに組み込まれ、これにより、宿主ゲノムとともに複製されることができる、その他のベクター(例えば、非エピソーム性の哺乳類ベクター)もある。更に、特定のベクターは、これらが操作可能状態で連結される遺伝子の発現を調節できる。このようなベクターは、本明細書において、「組換え発現ベクター」(又は、単に「発現ベクター」)と称される。一般に、組換えDNA技術における有用な発現ベクターは、しばしばプラスミドの形態である。本明細書において、「プラスミド」及び「ベクター」は、プラスミドがベクターで最も一般的に用いられる形態であることから、同義的に使用される場合がある。しかしながら、本発明は、発現ベクターの他の形態として、等価の機能を提供するウィルスベクター(例えば、複製欠陥のある、レトロウィルス、アデノウィルス、及びアデノ随伴ウィルス)等を含むことが意図される。
【0054】
用語「組換え宿主細胞」(又は、単に「宿主細胞」)は、本明細書において使用されるように、組換え発現ベクターが導入された細胞を指すことが意図される。このような用語は、特定の被験体細胞だけでなく、これらの細胞の子孫も指すことが意図されると理解されるべきである。変異又は環境的影響により、継代する間に特定の変異が発生しうるため、このような子孫は、実際、親細胞と同一でない場合があるが、それでもなお、本明細書において使用される用語「宿主細胞」の範囲内には含まれる。組換え宿主細胞としては、例えば、CHO細胞、リンパ球細胞が挙げられる。
【0055】
本明細書において使用されるように、用語「被験体」は、ヒト又は非ヒト動物のいかなるものも含む。用語「非ヒト動物」は、全ての脊椎動物、例えば、哺乳類と非哺乳類(人間以外の霊長類、ヒツジ、イヌ、ウシ、鶏、両生類、爬虫類等)を含む。
【0056】
本発明の様々な態様は、以下のサブセクションにおいて更に詳細に説明される。
【0057】
[IFNAR−1に対するヒト化抗体の作製]
被験体ヒト化抗体は、IFNAR−1に結合する抗体(好ましくは64G12)の可変重鎖(VH)及び可変軽鎖(VL)をコードする核酸配列を取得し、前記VH配列及び前記VL配列のCDRを同定し、選択されたヒトフレームワークコーディング核酸配列にこれらのCDRコーディング核酸配列を移植させることによって作製される。免疫グロブリンをコードする核酸配列のクローン化の方法は、周知の技術である。このような方法には、通常、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により、適切なプライマーを使用してクローン化される免疫グロブリンコーディング配列の増幅が含まれる。免疫グロブリン核酸配列の増幅、特にマウスの可変重鎖配列及び可変軽鎖配列の増幅に適したプライマーは、文献において報告されている。このような免疫グロブリンコーディング配列は、クローン化した後に、周知の方法によって配列決定される。このような配列決定は、VLコード配列及びVHコード配列、より詳しくはCDR及びFRをコードするVLコーディング配列部とVHコーディング配列部を同定するために行われるであろう。これは、例えば、Bossらの米国特許第4816397号公報、及びWinterの米国特許第5225539号公報において開示される方法といった周知の方法によって行うことができる。
【0058】
ヒト化される抗体のCDR及びFRをコードするDNA配列が同定されれば、CDRをコードするアミノ酸配列が同定(核酸配列及び遺伝コードに基づき、既知の抗体配列との比較によって推定)され、CDRコーディング核酸配列は、選択されたヒトFRコード配列に移植される。この移植は、適切なプライマー及びリンカーを用いて達成できる。所望の核酸配列のライゲーションを提供するための適切なプライマー及びリンカーを選択する方法は、当業者に周知である。
【0059】
上記のように、ヒト化のために使用される選択されたヒトFRは、生体内投与に適するようなもの、即ち、ヒトFR自体がヒト体内で抗原性を有しないもの、であることが好ましいであろう。
【0060】
選択されるヒトFRコード配列にCDRコーディング配列を移植した後、「ヒト化」可変重鎖配列及び「ヒト化」可変軽鎖配列をコードする合成DNAは、ヒト化Fvを生産するために発現されるか、IFNAR−1に結合するヒト化抗体を生産するためにヒト定常領域配列に結合される。一般的に、ヒト化VH配列及びヒト化VL配列は、αIFNAR−1抗体分子全体の一部、即ち、コーディングDNA配列が市販のライブラリから取得される、又はDNA配列を取得するための上記方法のいずれかを使用して取得されるヒト不変領域配列を有する融合タンパクとして発現される。ヒト化抗体分子の軽鎖可変ドメイン又は重鎖可変ドメインは、必要に応じて、ヒト軽鎖定常ドメイン又はヒト重鎖定常ドメインに融合されてよい(本明細書で使用される用語「重鎖定常ドメイン」は、他に指定されない限り、ヒンジ領域を含むと理解されるべきである。)。ヒト化抗体分子のヒト定常領域は、存在する場合、抗体の提案される機能(特に、必要とされ得るエフェクタ機能の欠如)を考慮して選択してよい。例えば、重鎖可変領域に融合される重鎖定常ドメインは、ヒトIgA、IgG、又はIgMドメインであってよい。ヒトIgGドメインを使用することが好ましい。軽鎖可変領域に融合される軽鎖ヒト定常ドメインとしては、ヒトλ鎖又はヒトκ鎖が挙げられる。ヒトκ鎖領域を使用することが好ましい。
【0061】
あるいは、ヒト定常ドメインのアナログを使用することが好ましい場合もある。ヒト定常ドメインのアナログとしては、対応するヒトドメインよりも1以上のアミノ酸が付加されている定常ドメイン、対応するヒトドメインの1以上の既存アミノ酸が欠失又は変更されているヒト定常ドメインが挙げられる。このようなドメインは、例えば、オリゴヌクレオチド定方向突然変異誘発によって得られる。しかしながら、VH配列及びVL配列は、ヒト化αIFNAR−1 Fvを作製するために、定常配列の非存在下で発現されてもよい。それにもかかわらず、場合によっては、合成されるヒト化αIFNAR−1抗体が実質的に改良された薬物動態学的プロファイルを有することができるため、ヒト定常配列を融合することが好ましい。既知の配列のタンパク質をコードするDNAを合成する方法は、周知の技術である。このような方法を使用することで、被験体のヒト化VL配列及びVH配列(定常領域の有無にかかわらず)をコードするDNA配列が合成され、組換え抗体の発現に適したベクター系において発現される。これは、被験体のヒト化VL配列及びVH配列を、ヒト定常ドメイン配列を有する融合タンパク質として発現でき、機能的な(抗原結合)抗体又は抗体フラグメントを生産できるよう会合できる、いかなるベクター系においても行うことができる。実用的な方法は、例えば、Bossらの米国特許第4816397号公報、及びWinterの米国特許第5225539号公報に記載されている。
【0062】
組換え抗体及びとりわけヒト化抗体の発現に適する、発現ベクター及び宿主細胞は周知である。本発明を実施する際に利用できる組換え免疫グロブリンの発現に適した方法及びベクターは、Weidleら、「Gene」、51:21−29(1987);Doraiら、「J.Immunol.」、13(12):4232−4241(1987);De Waeleら、「Eur.J.Biochem」、176:287−295(1988);Colcherら、「CancerRes.」、49:1738−1745(1989);Woodら、「J.Immunol.」、145(9):3011−3016(1990);Bulensら、「Eur.J.Biochem.」、195:235−242(1991);Beldsingtonら、「Biol.Technology」、10:169(1992);Kingら、「Biochem.J.」、281:317−323(1992);Pageら、「Biol.Technology」、9:64(1991);Kingら、「Biochem.J.」、290:723−729(1993);Chaudharyら、「Nature」、339:394−397(1989);Jonesら、「Nature」、321:522−525(1986);Morrison、Oi、「Adv.Immunol.」、44:65−92(1989);Benharら、「Proc.Natl.Acad.Sci.USA」、91:12051−12055(1994);Singerら、「J.Immunol.」、150:2844−2857(1993);Coutoら、「Hybridoma」、13(3):215−219(1994);Queenら、「Proc.Natl.Acad.Sci.USA」、86:10029−10033(1989);Caronら、「CancerRes.」、52:6761−6767(1992);Colouraら、「J.Immunol.Meth.」、152:89−109(1992)に記載されている。更に、組換え抗体の発現に適するベクターは、市販されている。このベクターは、例えば、裸の核酸セグメント、キャリア関連の核酸セグメント、核タンパク質、プラスミド、ウィルス、ウイロイド、又は転移因子であってよい。
【0063】
機能的な免疫グロブリンを発現できる公知の宿主細胞としては、例えば、哺乳動物細胞(Chinese Hamster Ovary(CHO)細胞等)、コス細胞、骨髄腫細胞(NSO、SP2/0細胞等)、バクテリア(大腸菌等)、イースト細胞(酵母等)、その他の宿主細胞が挙げられる。これらのうち、CHO細胞は、効果的に発現して免疫グロブリンを分泌できるため、多くの研究者に使用されている。NSO細胞は、本発明で使用できる宿主細胞のうち、好ましいタイプの1つである。
【0064】
基本的に、ヒト化抗体の組換え発現は、2つの典型的な方法のうちの1つによって得られる。第1の方法では、選択された定常領域に選択的に融合されるVH可変配列及びVL可変配列の両方の発現を提供する単一のベクターを、宿主細胞に形質移入する。第2の方法では、VH可変配列及びVL可変配列のいずれかの発現を提供し、任意で選択された定常領域に融合される、各々のベクター2つを、宿主細胞に形質導入する。
【0065】
ヒト定常ドメイン配列は、周知であり、文献において報告されている。好ましいヒト定常軽鎖配列(CL)としては、κ定常軽鎖配列、λ定常軽鎖配列が挙げられる。好ましいヒト定常重鎖配列としては、ヒトγ1、ヒトγ2、ヒトγ3、ヒトγ4、及び、効果や機能を変更(例えば、生体内半減期の向上、Fc受容体結合の減少)するために提供される、これらヒトγ鎖の変異型が挙げられる。
【0066】
発現の後、合成されるヒト化抗体の抗原結合能は、スキャッチャード分析等の公知の方法によって分析される。理想的には、ヒト化抗体の抗原結合親和性は、親の抗体(例えば、64G12)の抗原結合親和性に近似するか、親の抗体(CDRを寄与した抗体)の結合能の少なくとも50%を保持する。
【0067】
抗体は、ヒト抗体のCDRの少なくとも一部を、非ヒト抗体由来のCDRに置換できる限りにおいて、いかなる方法でヒト化してもよい。Winterは、本発明のヒト化抗体を調整するために使用できる方法を記述しており(1987年3月26日に出願の英国特許出願公開GB第2188638A号公報)、この内容は参照して明確に引用される。ヒトCDRは、国際公開第94/10332号公報(発明の名称「Humanaized Antibodies to Fc Receptors for Immunoglobulin G on Human Mononuclear Phagocytes」)に記述されるようなオリゴヌクレオチド部位定方向突然変異誘発等を使用して、非ヒトCDRと置換されてよい。
【0068】
また、本発明の範囲内には、特定のアミノ酸が置換、欠失、又は付加された、キメラ抗体及びヒト化抗体が存在する。特に、好ましいヒト化抗体は、例えば抗原との結合を改善するために、フレームワーク領域におけるアミノ酸置換を有する。例えば、マウスCDRを有するヒト化抗体において、ヒトフレームワーク領域に位置するアミノ酸は、マウス抗体において対応するポジションに位置するアミノ酸と置換できる。このような置換が、いくつかの例の抗原に対するヒト化抗体の結合を改善することは公知である。アミノ酸が付加、欠失、又は置換された抗体は、本明細書において、改良抗体又は修正抗体と称される。
【0069】
更に、本発明は、本明細書において記載されるヒト化抗体及び抗体フラグメントに実質的に相同な、変異体及びその等価体を包含する。これらの変異体は、例えば、保存的置換、即ち、類似アミノ酸による1つ以上のアミノ酸の置換を含んでよい。例えば、保存的置換は、同じ一般的クラス内の別のアミノ酸へのアミノ酸置換、例えば、ある酸性アミノ酸の別の酸性アミノ酸への置換、ある塩基性アミノ酸の別の塩基性アミノ酸への置換、又はある中性アミノ酸の別の中性アミノ酸への置換、を指す。保存的アミノ酸置換によって意図されることは、公知である。
【0070】
用語「実質的に相同」は、関連する参照アミノ酸配列に対して、被験体の(オリゴペプチド、ポリペチド、又はタンパク質の)アミノ酸配列の類似性に関して使用される。この用語は、少なくとも約75%の「一致」、即ち、被験配列及び参照配列が「アラインメント」されるとき、これらの配列間において同一アミノ酸残基が平行に存在する状況、を示す。「アラインメント」とは、即ち、被験配列及び/又は参照配列に挿入される「ヌル」塩基が最小化されることで、これらの配列間で一致する塩基数が最大化された状態をいう。「ヌル」塩基は、被験配列及び参照配列の部分ではない。また、被験配列に挿入される「ヌル」塩基の最小数は、参照配列に挿入される最小数と異なってよい。この定義において、参照配列は、両方のアミノ酸配列が、αIFNAR−1抗体又はαIFNAR−1結合能を有する抗体フラグメントのいずれかである、タンパク質又はタンパク質部分を構成する場合、被験配列に「関連する」とみなされる。これらαIFNAR−1抗体又は抗体フラグメントを有するタンパク質の各々は、抗体、抗体フラグメント、二機能タンパク質、又は多機能タンパク質(例えば、融合タンパク質、二重特異的抗体、多重特異的抗体、単鎖抗体)として、独立して存在してよい。
【0071】
当業者は、(ルーチン試験によって)どのような抗体量が、自己免疫性疾患の治療又は移植拒絶反応の予防のために効果的で非毒性であるかを判断できる。しかしながら、一般的に、有効投薬量は、約0.05ミリグラム/キログラム体重/日以上100ミリグラム/キログラム体重/日以下である。
【0072】
本発明のヒト化抗体又はヒト化抗体フラグメントは、上述の治療方法に従って、治療効果又は予防効果を奏する充分量、被験体に投与されてよい。本発明の抗体は、公知の技術に従って、本発明の抗体を、従来の薬理学的に許容できるキャリア、希釈剤、及び/又は賦形剤に結合して調合される従来の用法において、ヒトその他の動物等に投与できる。薬理学的に許容できるキャリア、希釈剤、及び/又は賦形剤の形状及び性質は、結合される有効成分量、投与経路、及び他の周知の変数によって指示されることは、当業者が認識することである。
【0073】
本発明の抗体(又は抗体フラグメント)の投与経路は、経口、非経口、吸入、又は局所的でよい。本明細書で使用される用語「非経口」は、静脈内、筋肉内、皮下、直腸、膣、腹膜内投与を含む。非経口投与は、皮下、静脈内、及び筋肉内の態様が一般的に好ましい。
【0074】
[IFNAR−1に対してヒト化モノクローナル抗体を生じるトランスフェクト細胞の生成]
例えば、本発明のヒト化抗体は、周知の組換えDNA技術及び遺伝子移入方法の組合せ(例えば、Morrison、S.(1985)「Science」229:1202)を使用することで、宿主細胞にトランスフェクト細胞を作製できる。
【0075】
例えば、抗体又は抗体フラグメントを発現するため、軽鎖及び重鎖の部分又は全長をコードするDNAは、分子生物学の標準技術(例えば、PCR増幅、部位定方向突然変異誘発)によって得ることができ、遺伝子が転写制御配列及び翻訳制御配列に有効に結合されるよう発現ベクターに挿入できる。本明細書において、用語「有効に結合」は、ベクター内の転写制御配列及び翻訳制御配列が、抗体遺伝子の転写及び翻訳の制御を意図通りに行うことできるよう、抗体遺伝子がベクターにライゲートされることを意味する。発現ベクター及び発現制御配列は、使用される発現宿主細胞と適合するよう選択される。抗体軽鎖遺伝子及び抗体重鎖遺伝子は、別々のベクターに挿入され得るが、より一般的には、両方の遺伝子が同じ発現ベクターに挿入される。抗体遺伝子は、標準的方法(例えば、抗体遺伝子フラグメント上及びベクター上の相補的制限部位のライゲーション、又は、制限部位がない場合はブラントエンドライゲーション)によって、発現ベクターに挿入される。本明細書において記述される抗体の軽鎖可変領域及び重鎖可変領域は、所望のアイソタイプの重鎖定常領域及び軽鎖定常領域を既にコードする発現ベクターに挿入されることで、あらゆる抗体アイソタイプの抗体遺伝子全長の生成に使用できる。これにより、VHセグメントはベクター内のCHセグメントに有効に結合され、VLセグメントはベクター内のCLセグメントに有効に結合される。加えてもしくは代わりに、組換え発現ベクターは、抗体鎖の宿主細胞からの分泌を促進するシグナルペプチドをコードできる。抗体鎖遺伝子は、抗体鎖アミノ末端の遺伝子に対してシグナルペプチドがインフレームで結合するように、ベクターにクローン化されてよい。シグナルペプチドは、免疫グロブリンシグナルペプチド、又は異性シグナルペプチド(即ち、非免疫グロブリンタンパク質由来のシグナルペプチド)でよい。
【0076】
抗体鎖遺伝子に加えて、本発明の組換え発現ベクターは、宿主細胞の抗体鎖遺伝子の発現を制御する調節配列を担持する。用語「調節配列」は、プロモーター、エンハンサー、及び抗体鎖遺伝子の転写又は変換を制御するその他の発現調節要素(例えば、ポリデニル化信号)を含むことが意図される。このような調節配列は、例えば、「Gene Expression Technology Methods in Enzymology 185、AcademicPress、San Diego、CA(1990)」に記述される。調節配列の選択等の発現ベクター設計は、形質転換される宿主細胞の選択、タンパク質の所望される発現レベル等の要素に依存し得ることが、当業者によって認められる。哺乳類宿主細胞での発現に好ましい調節配列としては、例えば、サイトメガロウィルス(CMV)、シミアンウィルス40(SV40)、アデノウィルス(例えば、アデノウィルス主後期プロモーター(AdMLP)、及びポリオーマ由来のプロモーター及び/又はエンハンサーといった、哺乳動物細胞における高レベルのタンパク質発現を導くウィルス要素が挙げられる。あるいは、ユビキチンプロモーター又はβ−グロビンプロモーターのような非ウィルス調節配列を使用してもよい。
【0077】
抗体鎖遺伝子及び調節配列に加えて、本発明の組換え発現ベクターは、例えば、宿主細胞の複製を制御する配列(例えば、複製開始点)や選択マーカー遺伝子といった、付加的配列を担持してよい。選択マーカー遺伝子は、ベクターが導入される宿主細胞の選択を促進する(Axelらの、米国特許番号第4399216号、第4634665号、及び第5179017号参照)。例えば、一般的に、選択マーカー遺伝子は、G418、ハイグロマイシン、メトトレキセート等の薬剤に対する耐性を、ベクターが導入される宿主細胞に与える。好ましい選択マーカー遺伝子としては、(メトトレキセート選択/増幅をジヒドロ葉酸還元酵素欠損宿主細胞に使用される)DHFR宿主細胞遺伝子、(G418による選択に使用される)ネオ遺伝子が挙げられる。
【0078】
軽鎖及び重鎖の発現のために、重鎖及び軽鎖をコードする発現ベクターは、標準技術によって、宿主細胞にトランスフェクションされる。用語「トランスフェクション」の様々な形は、原核宿主細胞又は真核宿主細胞への外来性DNAの導入に一般的に使用される幅広い種々の技術(例えば、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、DEAE−デキストラントランスフェクション)を包含することが意図される。
【0079】
本発明の組換え抗体を発現する好ましい哺乳動物宿主細胞としては、DHFR選択マーカー(R.J.Kaufman、P.A.Sharp、(1982)「Mol.Biol.」、159:601−621に記述)を使用する、Chinese Hamster Ovary(CHO細胞)(例えば、dhfr−CHO細胞、Urlaub、Chasin、(1980)「Proc.Natl.Acad.Sci.USA」、77:4216−4220に記述)、NS0骨髄腫細胞、COS細胞、SP2細胞が挙げられる。特に、NS0骨髄腫細胞の使用に関する、別の好ましい発現系は、WO第87/04462号パンフレット、WO第89/01036号パンフレット、欧州特許第33841号公報において開示されるGS遺伝子形質発現系である。抗体遺伝子をコードする組換え発現ベクターが哺乳動物宿主細胞に導入されると、宿主細胞内の抗体の発現、より好ましくは宿主細胞が成育する培養液への抗体の分泌、を促すのに充分な時間、宿主細胞を培養することにより、抗体が作製される。抗体は、標準のタンパク質精製法を使用して培養液から回収できる。
【0080】
<薬剤組成物>
別の形態において、本発明は、薬剤組成物等の組成物を提供する。薬剤組成物は、本発明のヒト化モノクローナル抗体の一種又は組み合わせ、又は本発明の抗体の抗原結合部を含み、薬理学的に許容できるキャリアと共に調製される。このような組成物としては、本発明のヒト化抗体の一種、又は組合せ(例えば、2種又はそれ以上の異なるもの)が挙げられる。
【0081】
一実施形態において、本発明は、ヒトIFNAR−1上の異なるエピトープに結合し、例えば薬剤組成物のような相補的活性を有する、ヒト化抗IFNAR−1抗体の組合せから構成される治療組成物を提供する。更に、本発明のヒト化抗体は、免疫複合体を形成するよう治療薬(例えば、毒素、放射標識)に共役してよく、又は、二重特異性(又は多重特異性)分子を形成するよう1以上の付加的な抗体に連結させてよい。別の実施形態において、治療組成物は、本発明の免疫複合体又は二重特異性(又は多重特異性)分子の1種又は組合せを含む。
【0082】
本発明の薬剤組成物は、複合治療で、即ち他の薬剤と組み合わせて、投与できる。例えば、複合治療としては、他の治療成分を少なくとも1種含む本発明の組成物が挙げられる。
【0083】
本明細書で使用されるように、「薬理学的に許容できるキャリア」は、生理的に適合性のある、溶剤、分散媒、コーティング、殺菌剤、抗真菌剤、等張剤、吸収遅延剤等のいずれか及び全てを包含する。キャリアは、(例えば、注射又は注入による)静脈内、筋肉内、皮下、非経口、脊髄、表皮への投与に適することが好ましい。投与の経路に応じて、活性化合物(即ち、抗体、二重特異性分子、多重特異性分子)は、酸活性及び化合物を不活性化する他の自然条件から化合物を保護する物質でコーティングされてよい。
【0084】
「薬理学的に許容できる塩」は、親化合物の所望の生物活性を保持し、いかなる所望しない毒物的作用ももたらさない塩を指す(「Berge、S.M.ら、(1977)「J.Pharm.Sci.」、66:1−19」参照)。このような塩の例には、酸付加塩と塩添加塩が含まれる。酸付加塩としては、非毒性有機酸(例えば、脂肪族モノカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、フェニル置換アルカン酸、ヒドロキシアルカン酸、芳香族酸、脂肪族スルホン酸、芳香族性スルホン酸等)のみならず、非毒性無機酸(例えば、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、亜燐酸等)に由来するものが挙げられる。塩基付加塩としては、非毒性有機のアミン(例えば、N、N’−ジベンジルエチレンジアミン、N−メチルグルカミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、プロカイン等)のみならず、アルカリ土類金属(例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム等)に由来するものが挙げられる。
【0085】
本発明の組成物は、公知の様々な方法によって投与できる。当業者が理解できるように、投与経路及び/又は投与様式は、所望の結果によって異なる。活性化合物は、インプラント、経皮パッチ、マイクロカプセルによる送達システム等の放出制御製剤のように、化合物を急激な放出から保護するキャリアとともに調合できる。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルソエステル、ポリ乳酸のような、生体分解性ポリマー、生体適合性ポリマーが、使用できる。このような製剤の調合方法の多くは、特許化されるか、一般に当業者に公知である(Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems、J.R.Robinson編、Marcel Dekker社、New York、1978参照)。
【0086】
特定の投与経路で本発明の化合物を投与するために、化合物の不活性を抑制する物質で化合物をコーティングする、又は併用する必要のある場合がある。例えば、化合物は、適切なキャリア(例えば、リポソーム又は希釈剤)にコーティングされて、被験体に投与されてよい。薬理学的に許容できる希釈剤としては、生理食塩水、水性緩衝液が挙げられる。リポソームとしては、従来のリポソームと同様に、水中油中水CGFエマルジョンが挙げられる(Strejanら、(1984)「J.Neuroimmunol.」、7:27)。
【0087】
薬理学的に許容できるキャリアとしては、無菌水溶液、分散液、無菌注射できる溶液や分散液の即席調整用の無菌粉末が挙げられる。薬理学的な活性物質のための、これら培地及び薬剤の使用は、この分野で公知である。いかなる従来の培地や薬剤も活性化合物と適合しない場合を除けば、本発明の薬剤組成物への使用が考察される。補助活性化合物は、組成物に組み込まれてよい。
【0088】
治療組成物は、一般的に、製造条件及び保存条件のもと、無菌且つ安定でなければならない。組成物は、溶液、ミクロエマルジョン、リポソーム、又は高い薬剤濃度に適した他の秩序構造、として調製できる。キャリアは、例えば、水、エタノール、ポリオール(グリセリン、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール等)及びこれらの適切な混合液等の、溶液又は分散媒でよい。例えば、本来の液性は、レシチン等のコーティングの使用、分散時に必要な粒子径の維持、及び、界面活性剤の使用によって維持できる。多くの場合、等張剤(例えば、組成物中に、糖、多価アルコール(マンニトール等)、ソルビトール、又は塩化ナトリウム)を含有することが好ましい。組成物に吸収を遅延させる薬剤(例えば、モノステアリン酸塩、ゼラチン)を含有させることにより、注射可能な組成物を長期吸収させることができる。
【0089】
無菌注射可能な溶液は、上記で列挙された成分の1種又は組合せによる適切な溶剤に、必要に応じてマイクロフィルトレーション滅菌の後に、必要量の活性化合物を組み込むことにより、調合できる。通常、分散液は、基本分散媒及び上記で列挙された成分の必要な成分を含む無菌溶媒に、活性化合物を組み込むことによって調合される。無菌注射可能な溶液の調合用の無菌粉末の場合、好ましい調整方法は、真空乾燥、及び凍結乾燥である。これにより、フィルター滅菌済み溶液から、あらゆる所望の任意成分が含まれた活性成分の粉末が得られる。
【0090】
用法用量は、最適な所望の応答(例えば、治療応答)が提供されるように調整される。例えば、単一回数のボーラスで投与する場合もあり、分割用量を時間ごとに投与する場合もあり、治療状態の緊急状況に応じて用量を比例して減少又は増加させる場合もある。投与の容易及び投薬量の均一のために、投薬単位形態において非経口用組成物を調製することは特に有利である。本明細書において使用されるような投薬単位形態は、治療対象の被験体に対する単位投薬として適した、物理的に分離された単位を指す。各単位は、必要な薬剤キャリアと共に所望の治療効果を奏すると計算される所定量の活性化合物を含む。本発明の投薬単位形態の明細は、(a)活性化合物の特性及び達成すべき治療効果と、(b)個人の感度に対応するための、活性化合物等の調剤の分野に固有の制限と、に応じて決定される。
【0091】
薬理学的に許容できる抗酸化剤としては、(1)水溶性抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、システイン塩酸塩、硫化水素ナトリウム、異性重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム等)、(2)油溶性抗酸化剤(例えば、アスコルビルパルミテート、ブチルヒドロキシアニゾール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、プロピルガレート、α−トコフェロール等)、(3)金属キレート剤(例えば、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸等)が挙げられる。
【0092】
治療組成物に関して、本発明の製剤としては、経口、経鼻、局所(例えば、舌下、舌下腺)、直腸、膣、及び/又は、非経口投与、に適した製剤が挙げられる。製剤は、単位投与形態で簡便に提供され、薬学分野で公知のあらゆる方法によって調合されてよい。単一の剤形を作製するためにキャリア材に混合される有効成分の量は、治療対象の被験体、及び特定の投与様式によって異なるであろう。単一剤形を作製するためにキャリア材に混合される有効成分の量は、通常、治療効果をもたらす組成物の量となろう。通常、100パーセントのうち、この量は、有効成分が約0.01パーセントから約99パーセント、好ましくは約0.1パーセントから約70パーセント、もっとも好ましいのは約1パーセントから約30パーセントの範囲であろう。
【0093】
本明細書において使用される用語「非経口投与」及び「非経口的に投与される」は、経腸と局所投与以外の投与様式、通常は注射様式を意味し、特に限定されないが、静脈内、筋肉内、動脈内、クモ膜下、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、上皮下、関節内、被膜下、クモ膜下、髄腔内、硬膜外、胸骨内への注射及び注入が挙げられる。
【0094】
本発明の抗体組成物の好ましい投与経路は、静脈内、筋肉内、及び腹膜内である。好ましい送達様式は、注射及び注入による。
【0095】
本発明の薬剤組成物に使用される水性キャリア及び非水系キャリアの適切な例としては、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)、適切な混合液、植物油(例えば、オリーブ油)、注射可能な有機エステル(例えば、エチルオレイン酸塩)等が挙げられる。例えば、適切な液性は、コーティング材(例えばレシチン)の使用、分散の場合は必要な粒子径の維持、及び界面活性剤の使用によって維持できる。
【0096】
これらの組成物は、アジュバント(例えば保恒剤、湿潤剤、乳化剤と分散剤)を含んでもよい。上記の滅菌手順と、様々な殺菌剤や抗真菌剤(例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸等)の添加と、の両方によって、微生物の存在を確実に防止できる。また、等張剤(例えば、糖、塩化ナトリウム等)を組成物に添加することも、好ましい場合がある。更に、吸収を遅延させる薬剤(例えば、モノステアリン酸アルミニウム、ゼラチン)を添加することにより、注射可能な薬剤を長期吸収させることができる場合がある。
【0097】
例えば人間又は動物に、本発明の化合物を薬剤として投与する場合、これら化合物は、単独で、又は、例えば、薬理学的に許容できるキャリアに結合して0.01%以上99.5%以下(より好ましくは、0.1%以上90%以下)の活性成分を含有する薬剤組成物として、与えられてよい。
【0098】
選択された投与経路にかかわらず、本発明の化合物(適切な水和状態で使用されてよい)、及び/又は本発明の薬剤組成物は、当業者に公知の従来法により、薬理学的に許容できる剤形に調製される。
【0099】
本発明の薬剤組成物における活性成分の実際の投薬量レベルは、患者に対して毒性とならず、特定の患者、組成物、投与様式のもと、所望の治療応答を達成するのに効果的な活性成分量を得られるように変化させてよい。選択された投薬量レベルは、使用される本発明の特定の組成物、この組成物中のエステル、塩、又はアミド、投与経路、投与時間、使用される特定化合物の排出率、治療期間、他の薬剤、使用される特定組成物と組み合わせて使用される化合物、年齢、性別、体調、健康状態、治療中の患者の既往症等の、医学分野で周知の要因等の様々な薬物動態学的要素に依存するであろう。
【0100】
通常の知識を有する医師又は獣医は、必要な薬剤組成物の有効量を直ちに決定し、処方できる。例えば、医師又は獣医は、薬剤組成物に使用される本発明の化合物を、所望の治療効果の達成に必要な投薬量より低いレベルの投薬量から開始して、所望の効果を得られるまで段階的に投薬量を増やしてもよい。一般に、本発明の組成物の適切な1日投薬量は、治療効果をもたらすことができる最少投薬量である。このような有効量は、一般的に、上述した要素に依存するであろう。投与は、静脈内、筋肉内、腹腔内、又は皮下に行われるのが好ましく、標的の部位に隣接して投与されることが好ましい。必要に応じて、治療組成物の有効1日投薬量は、一日を通して、適切な間隔で2、3、4、5、6、又はこれ以上に分割して、任意的には単位投与形態で、投与できる。本発明の化合物は、単独で投与することもできるが、薬品製剤として投与することが好ましい。
【0101】
治療組成物は、公知の医療機器で投与できる。本発明において有用な治療組成物としては、米国特許第5399163号公報、第5383851号公報、第5312335号公報、第5064413号公報、第4941880号公報、第4790824号公報、又は第4596556号公報において開示される装置のような、無針の皮下注射装置で投与できる。本発明における周知の実用的なインプラント及びモジュールとしては、米国特許第4487603号公報(制御率で薬物を投与するインプラント可能なマイクロインフュージョンポンプを開示)、米国特許第4486194号公報(皮膚を通して薬物を投与する治療装置を開示)、米国特許第4447233号公報(薬物を正確な注入速度で送達する薬剤注入ポンプを開示)、米国特許第4447224号公報(連続薬物送達用の可変流量式インプラント可能注入装置を開示)、米国特許第4439196号公報(マルチ・チャンバ室を有する浸透圧薬物送達システムを開示)、米国特許第4475196号公報(浸透圧薬物送達システムを開示)が挙げられる。これらの特許は、参照して本明細書に組み入れられる。インプラント、送達システム、モジュールの他の多くは、当業者に公知である。
【0102】
特定の実施形態では、本発明のヒト化モノクローナル抗体は、生体内で確実に適切な分配がされるよう、調製できる。例えば、血液−脳関門(BBB)は、多くの高親水性化合物を排除する。本発明の治療的な化合物は、(必要ならば)BBBを横断することを確実にするため、例えば、リポソーム内で調製できる。リポソーム製造方法に関しては、米国特許第4522811号公報、米国特許第5374548号公報、及び米国特許第5399331号公報を参照されたい。リポソームは、特定の細胞又は器官に選択的に運ばれる1以上の成分を含んでよく、これにより、標的とする薬物送達を促進できる(V.V.Ranade(1989)「J.Clin.Pharmacol.」29:685参照)。例示的なターゲット成分としては、葉酸塩又はビオチン(米国特許第5416016、Lowら)、マンノシド(Umezawaら、(1988)「Biochem.Biophys.Res.Commun.153:1038)、抗体(P.G.Bloemanら(1995)「FEBS Lett.」357:140、M.Owaisら、(1995)「Antimicrob.Agents Chemother.」39:180)、界面活性剤プロテインA受容体(Briscoeら(1995)「Am.J.Physiol.」1233:134)、発明された分子:pl20(Schreierら、(1994)「J:Biol.Chem.」、269:9090)の構成要素、及び本発明の剤型を構成できる異なる種、が挙げられる(K.Keinanen、M.L.Laukkanen(1994)「FEBS Lett.」、346:123、J.J.Killion、I.J.Fidler(1994)「Immunomethods」、4:273も参照)。本発明の一実施形態において、本発明の治療化合物は、リポソーム内に調製され、より好ましい実施形態において、リポソームはターゲット成分を含有する。最も好ましい実施形態では、リポソーム内の治療化合物は、所望の部位にボーラス注射によって送達される。組成物は、容易に注射可能な状態となる程度に、流動的でなければならない。製造及び貯蔵の条件のもとで、安定し、微生物(例えば、バクテリア、菌類)の汚染活動から保存されなければならない。
【0103】
「治療有効投薬量」は、非処理の被験体と比較して、約20%以上、好ましくは約40%以上、より好ましくは約60%以上、更により好ましくは約80%以上、I型インターフェロンの生物学的活性を抑制する投薬量である。化合物のI型インターフェロン生物学的活性抑制能力は、動物モデル系(実施例に説明される動物モデル系)、又はI型インターフェロン異常活性に関連するヒトの条件で有効性が予測できる、その他の公知のモデル系において、評価できる。あるいは、この組成物の特質は、化合物のI型インターフェロンの生物学的活性を抑制する能力を調べることによって、評価できる。このような抑制は、実施例で説明される試験管内アッセイで決定できるが、これに限らず、当業者に公知の試験管内アッセイを使用して決定できる。治療有効量の治療化合物によれば、I型インターフェロン活性を抑制でき、これにより、TypeIインターフェロンの異常な発現又は活性によって媒介された病気又は障害の症状が、少なくとも部分的に、改善される。このような病気及び障害としては、自己免疫性疾患、移植拒絶反応、及びGVHDが挙げられる。これらの量は、被験体のサイズ、被験体の症状の重症度、及び選択された特定組成物又は投与経路等といった要素に基づいて、当業者が決定できる。
【0104】
組成物は、無菌で、且つ、注射器により送達可能な程度に流動的でなければならない。水に加えて、キャリアは、等張緩衝生理食塩水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセリン、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール)、これらの適切な混合液であってよい。適切な液性は、レシチン等のコーティングの使用、分散の場合は必要な粒子径の維持、界面活性剤の使用、によって維持できる。多くの場合、等張剤(例えば、組成物中の糖、多価アルコール(マンニトール又はソルビトール)、塩化ナトリウム)を含むことが好ましい。注射可能な組成物は、組成物に吸収を遅延させる薬剤(例えばモノステアリン酸アルミニウム又はゼラチン)添加することにより、長期吸収させることができる。
【0105】
上記のように活性化合物を適切に保護すれば、この化合物は、例えば、不活性希釈剤又は吸収可能な食用キャリアと共に、経口的に投与してよい。
【0106】
[本発明の使用及び方法]
本発明のヒト化抗−IFNAR−1モノクローナル抗体、及び関連する誘導剤/結合体、本発明の組成物は、試験管内及び生体内における診断及び治療において様々な有用性を備える。これらの分子は、例えば、生体内又は試験管内における、培養中の細胞に投与できる。あるいは、これらの分子は、被験体、例えば生体内に投与されることにより、I型インターフェロンが役割を果たす様々な疾患を治療、予防、又は診断できる。本明細書で使用されるように、用語「被験体」は、ヒト及び非ヒト動物を含むことが意図される。本発明の用語「非ヒト動物」は、全ての脊椎動物、例えば、哺乳類及び非哺乳類を含み、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ウシ、鶏、両生類、爬虫類等が挙げられる。
【0107】
本発明の抗体組成物は、自己免疫性疾患(例えば、全身性エリテマトーデス(SLE)、炎症性腸疾患(IBD;クローン病、潰瘍性大腸炎、小児脂肪便症等)、インスリン依存性糖尿病(IDDM)、慢性関節リウマチ(RA))の治療において使用できる。更に、本発明の抗体組成物は、移植拒絶反応の抑制や予防のため、又は移植片対宿主疾患(GVHD)の治療において、使用できる。
【0108】
本発明の抗体組成物の炎症性腸疾患治療のための使用は、共同所有される米国出願公開第60/465155号公報(発明の名称「Compositions and Methods for the Therapy of Inflammatory Bowel Disease」、2003年4月23日出願)に詳細に記述され、その内容は全て、参照して本明細書に明白に組み込まれる。
【0109】
本発明のヒト抗体は、最初に試験管内で、治療用途に関連する結合活性を検査できる。例えば、本発明の組成物は、後述する実施例で記載される、ビアコア及びフローサイトメトリー分析を用いて、検査できる。本発明の抗体及び組成物を投与する適切な方法は、周知技術である。適切な投薬量も、従来技術によって決定でき、被験体の年齢及び体重、使用される特定の薬剤に依存するであろう。
【0110】
本発明のヒト抗IFNAR−1抗体も、上述した他の治療薬と共に、投与できる。
【0111】
例えば、「Remington’s Pharmaceutical Sciences、MackPublishing Co.、Easton、Pa.、1989」で記述されるような、非経口投与の製剤が好ましい。この最終的な製剤は、活性成分を0.01%以上50%以下含有する。このような結合体の作製方法、診断や治療への結合体の使用方法は、例えば、「Shihら、米国特許第5057313号公報」、「Shihら、「Int.J.Cancer」、41:832(1988)」、同時係属出願で、公有の米国継続出願第08/162912号公報、及び「McKearnら、米国特許第5156840号公報」において提供されており、これらの内容は全て参照して組み込まれる。
【0112】
上述のように、治療のために、ヒト化抗体組成物及び薬理学的に許容できるキャリアは、患者に治療有効量投与される。抗体組成物及び薬理学的に許容できるキャリアの組合せは、投与量が生理学的に有意な場合に、「治療有効量」投与されたと言う。薬剤は、被投与患者の生理に検出可能な変化を生じるとき「生理学的に有意」である。標的治療薬は、同量の非標的治療薬を全身投与した場合に標的で増加するよりも高比率の投薬量を意図する標的に送達するとき、「治療有効」である。
【0113】
本発明は、以下の実施例で更に例示されるが、更に限定するものとして解釈すべきではない。全ての図及び全ての参考文献の内容、本出願で引用される特許及び公開された特許出願は、本明細書に明白に組み込まれる。
【実施例】
【0114】
<実施例1:IFNAR−1特異的ヒト化抗体の作製>
ヒト化抗体の調製に用いるドナーCDRの供与源は、IFNAR−1に特異的である、マウスモノクローナル抗体64G12とした(米国特許第5919453号公報参照)。64G12ハイブリドーマ細胞系統は、既に確立してある。
【0115】
[64G12可変領域のクローン化]
64G12ハイブリドーマから、oligotexmRNAミニプレップキット(Qiagen)を用いてmRNAを抽出し、次いで、マラソンcDNA増幅キット(Clontech)を用いてcDNAを合成した。HotStarTaq(Qiagen)によって、64G12の重鎖可変領域は、マウスのIgG1遺伝子に対するプライマー(フォワード:ATGGGCAGACTTACATTCTCATTCCTG(配列番号43)、リバース:CAGTGGATAGACAGATGGGG(配列番号44))を用いて増幅し、軽鎖可変領域は、マウスκ遺伝子(ACTGGATGGTGGGAAGATGG)(配列番号45)及びN末端アミノ酸配列(CTCACCCAGTCTCCAACCACCATGGCTGCATC)(配列番号46)に対するプライマーを用いて増幅した。鎖の同一性は、64G12抗体のN末端ペプチド配列を、cDNAクローンから翻訳したタンパク質配列と比較することにより確認した。
【0116】
[可変領域のコンストラクション]
64G12のVHドメイン及びVLドメインの配列から、Kabatらのデータベース(“Sequences of Proteins of Immunological Interest”、US Department of Health and Human Services、US Government Printing Office)を参照してCDR配列を決定した。このデータベースの内容は明白に組み入れられ、コンピュータを使用して他のVH配列及びVL配列とのアラインメントを行った。VH配列は、配列番号7に示される。VL配列は、配列番号19に示される。VHドメイン及びVLドメインの、CDR領域アミノ酸配列は、下記の表1に示す通りである。
【0117】
【表1】

【0118】
哺乳動物発現ベクターへのインフレームでのサブクローニングを可能とする制限部位を備えるプライマーを使用して、上述のテンプレートからマウス可変領域を増幅した。
【0119】
ヒト可変領域cDNAの第1シリーズを、オペロンによって合成した。次に、非免疫化抗体を、QuikChange Site−directed Mutagenesis Kit(ストラタジーン社)によって作製した。
【0120】
[全長抗体の発現]
(マウス、ヒト)重鎖可変領域全配列及び軽鎖可変領域全配列を、各々、インビトロジェン社製の哺乳動物発現ベクターpcdna3.1/neo及びpcdna3.1/hygroに、ヒトIgG定常領域にインフレームでサブクローニングした。組換え抗体を分泌させるため、内在性IgG配列の代わりに、ヒトオステオネクチンシグナル配列を使用した。更に、開いているクロマチンを維持し、高レベルの抗体を発現する細胞の急激な生成を可能とするために、4.2kbのRNP UCOE領域(Bentonら、「Cytotechnology」、38:43−46、2002)を、CMVプロモーターの上流に挿入した。
【0121】
一過性トランスフェクションのため、ヒト293細胞に、FuGENE6(ロシェ社製)を使用して、重鎖を保持するプラスミド及び軽鎖を保持するプラスミドを、共トランスフェクションした。トランスフェクションの3〜4日後に、上澄み液を回収し、プロテインA−セファロースクロマトグラフィによって、抗体を精製した。
【0122】
安定発現のために、CHO−S細胞を、DMRIE−C(インビトロジェン社)を使用して、重鎖を保持する線状プラスミド及び軽鎖を保持する線状プラスミドを、共トランスフェクションした。500ug/mLのジェネティシン及びハイグロマイシンBを培養液に添加することによって、安定なトランスフェクション細胞を選抜した。抗体分泌細胞を膨張させ、Harlow及びLaneの「Antibodies:ALaboratory Manual」(Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、N.Y.)に記述されるように、プロテインAアフィニティークロマトグラフィによって、培養液から抗体を精製した。これらの内容は参照して明白に組み込まれる。
【0123】
ヒトフレームワークに対するマウス64G12CDRの転送は、Nakamyeら、「Nucleic Acids Res14」(9679−9687(1986))に記述されるように、オリゴヌクレオチド部位定方向突然変異誘発によって行なった。これらの内容は参照して、明白に組み込まれる。VHの突然変異誘発に使用したDNAテンプレートは、ヒト生殖細胞系配列DP−26、DP−47、DPk26由来のヒトフレームワーク領域で構成した。
【0124】
(DP−26)(Genbank:HSIGDP26)
QVTLKESGPVLVKPTETLTLTCTVSGFSLSNARMGVSWIRQPPGKALEWLAHIFSNDEKSYSTSLKSRLTISKDTSKSQVVLTMTNMDPVDTATYY(配列番号47)
【0125】
(DP−47)(Genbank:HSIGDP47)
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYAMSWVRQAPGKGLEWVSAISGSGGSTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAK(配列番号48)
【0126】
(DPk26)(Genbank:HSIGDPK26)
EIVLTQSPDFQSVTPKEKVTITCRASQSIGSSLHWYQQKPDQSPKLLIKYASQSFSGVPSRFSGSGSGTDFTLTINSLEAEDAATYYCHQSSSLP(配列番号49)
【0127】
更に、特定のコンストラクトにおいて、結合能の増加又は抗体免疫原性の減少のために、CDR及び/又はFR残基に付加的な置換を行なった(以下に詳述する)。
【0128】
要約すると、以下の配列で構成される、一連のヒト化抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を作製した。ドナーマウス64G12可変領域のアミノ酸配列(64G12VH配列は図1Aの配列番号7に、64G12VL配列は図2Aの配列番号19に示す)とともに、抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域のアミノ酸配列を図1B〜1L及び図2B〜2Sに示す。
【0129】
図1A〜1Lは、マウス重鎖可変領域、及び本発明の抗IFNAR−1抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列を示す概念図である。CDR1、CDR2、及びCDR3領域は、下線部で示される。また、CDR又はフレームワーク残基において行なわれた置換は、イタリック体で示される。
【0130】
図2A〜図2Sは、マウス軽鎖可変領域、及び本発明の抗IFNAR−1の軽鎖可変領域のアミノ酸配列を示す概念図である。CDR1、CDR2、及びCDR3領域は、下線部で示される。CDR又はフレームワーク残基において行なわれた置換は、イタリック体で示される。
【0131】
重鎖配列H2(図1Bの配列番号8)を、64G12VHのCDRを、ヒト免疫グロブリン重鎖生殖細胞系DP−28のフレームワーク配列と結合することによって設計した。
【0132】
64G12VHのCDR3のみをヒト免疫グロブリン重鎖生殖細胞系DP−28のフレームワーク配列に結合することによって、重鎖配列H2−C3(図1Cの配列番号9)を設計した。
【0133】
64G12VHのCDRをコンセンサスヒト免疫グロブリン重鎖フレームワーク配列に結合することによって、重鎖配列H3(図1Dの配列番号10)を設計した。
【0134】
64G12VHのCDRをヒト免疫グロブリン重鎖生殖細胞系DP−47のフレームワーク配列に結合することによって、重鎖配列M3(図1Eの配列番号11)を設計した。
【0135】
M3配列から重鎖配列M3−4(図1Fの配列番号12)を設計し、以下のアミノ酸のうちの1つによってCDR3のポジション4を置換した。
L、N、E、V、A、C、G、S、R、D、M、H、T、W、K、又はI
【0136】
M3配列から重鎖配列M3−11(図1Gの配列番号13)を設計し、以下のアミノ酸のうちの1つによってCDR3のポジション11を置換した。
L、E、Q、R、V、A、F、G、C、T、W、H、K、D、S又はI
【0137】
M3配列から重鎖配列M3−A(図1Hの配列番号14)を設計し、CDR1のポジション4(メチオニン)をアラニンで置換することにより、T細胞エピトープを除去した。
【0138】
M3配列から重鎖配列M3−B(図1Iの配列番号15)を設計し、CDR2のポジション16(メチオニン)をアラニンで置換することにより、T細胞エピトープを除去した。
【0139】
M3配列から重鎖配列M3−A/B(図1Jの配列番号16)を設計し、M3−A及びM3−Bでの両方の置換を配列に組み込んだ。
【0140】
M3配列から重鎖配列DI M3(図1Kの配列番号17)を設計し、6つのフレームワーク残基を置換することにより、潜在的なT細胞エピトープ全てを除去した。
【0141】
M3配列から重鎖配列DI M3−B(図1Lの配列番号18)を設計し、DI M3配列からのフレームワーク置換と、M3−B配列からのCDR2置換と、を結合した。
【0142】
64G12VLのCDRと、ヒト免疫グロブリン軽鎖生殖細胞系DPk−26のフレームワーク配列と、を結合することによって、軽鎖配列K6(図2Bの配列番号20)を設計した。
【0143】
64G12VHのCDRと、コンセンサスヒト免疫グロブリン軽鎖フレームワーク配列と、を結合することによって、軽鎖配列K1(図2Cの配列番号21)を設計した。
【0144】
K1配列から軽鎖配列K1−C(図2Dの配列番号22)を設計し、CDR1のポジション4(セリン)をスレオニンで置換することによって、その潜在的T細胞エピトープの1つを除去した。
【0145】
K1配列から軽鎖配列K1−D(図2Eの配列番号23)を設計し、CDR1のポジション12(ヒスチジン)をアスパラギンで置換することによって、その潜在的T細胞エピトープの1つを除去した。
【0146】
K1配列から軽鎖配列K1−E(図2Fの配列番号24)を設計し、CDR3のポジション3(グリシン)をスレオニンで置換することによって、その潜在的T細胞エピトープの1つを除去した。
【0147】
軽鎖配列K1−C/D(図2Gの配列番号25)、K1−C/E(図2Hの配列番号26)、K1−D/E(図2Iの配列番号27)、及びK1−C/D/E(図2Jの配列番号27)を、K1配列から設計した。これらは各々、K1−CとK1−Dからの置換群、K1−CとK1−Eからの置換群、K1−DとK1−Eからの置換群、K1−CとK1−DとK1−Eからの置換群を、結合したものである。
【0148】
K1配列から軽鎖配列DI K1(図2Kの配列番号29)を設計し、6つのフレームワーク残基を置換することによって、その潜在的なT細胞エピトープの全てを除去した。
【0149】
K1配列から軽鎖配列DI K1−C(図2Lの配列番号30)を設計し、DI K1のフレームワーク置換群を、K1−CのCDR1置換群に組み合わせた。
【0150】
K1配列から軽鎖配列DI K1−DS(図2Mの配列番号31)を設計し、5つのフレームワーク残基を置換することによって、6つの潜在的T細胞エピトープのうちの5つを除去した。
【0151】
K1配列から軽鎖配列DI K1−C−DS(図2Nの配列番号32)を設計し、DI K1−DSの置換群及びK1−Cの置換群を組み合わせた。
【0152】
軽鎖配列DI K1−A19V(図2Oの配列番号33)、DI K1−L37Q(図2Pの配列番号34)、DIK−1−A46L(図2Qの配列番号35)、DI K1−I58V(図2Rの配列番号36)、及びDI K1−T83F(図2Sの配列番号37)をK1配列から設計し、フレームワーク領域内の強調文字で表すアミノ酸を変更することにより、6つの潜在的T細胞エピトープのうちの5つを除去した。
【0153】
図3A〜3Dは、重鎖可変領域M3の核酸配列(図3A)、DI M3−B(図3C)及び軽鎖可変領域klの核酸配列(図3B)、K1−Cの核酸配列(図3D)を示す。
【0154】
<実施例2:ヒト化VHとVLとの組合せのビアコア分析>
ヒト化抗体のVHとVLとの一連の組合せを作製し、64G12由来のマウス可変領域及びヒトIgG4κ定常領域を有するマウス−ヒトキメラ抗体、及び元のマウス抗体と、比較した。抗体H2K6、H2K1、H3K6とH3K1を作製するために、ヒト重鎖H2及びH3を、ヒト軽鎖K1及びK6と組み合わせて発現させた。これらの可変領域のアミノ酸配列は、図1B、1D、2B、2Cに示した。
【0155】
結合キネティクスを決定するために、クローン64G12、H2K6、H2K1、H3K6、及びH3K1由来の抗体をビアコア分析(Biacore AB、Uppsala、Sweden)によってアッセイした。精製した組換えIFNAR−1細胞外フラグメントを、CM5センサチップに600RUで結合した。1.75nM以上80nM以下の濃度の抗体を20ul/分の速度で添加することにより、結合を測定した。結合曲線は、BIAevaluationソフトウェア(Biacore AB、Uppsala、Sweden)を使用して、ラングミュア結合モデルに当てはめた。決定したKD値を、表2に示す。
【0156】
【表2】

【0157】
このアッセイによって、マウス抗体標準及びヒトIgG4キメラ抗体の結合能は、1.2nM以上3.6nM以下の範囲と決定された。ヒト化抗体の全ての組合せにおいて、IFNAR−1に対して高い結合能を有する抗体が作製されており、キメラ抗体及び元のマウスハイブリドーマ由来の抗体64G12とは区別できかった。
【0158】
H2−C3(図1Cの配列番号9)と称する相互性の重鎖(CD3だけがマウス抗体から保護される)もK6軽鎖と組み合わせて発現させたが、生成された抗体はIFNAR−1に結合できなかった。
【0159】
M3(図IEの配列番号11に示され、ヒト免疫グロブリン重鎖生殖細胞系DP−47のフレームワーク配列から構成される)と称する別のヒト化重鎖をK1軽鎖と共発現させることで、IFNAR−1に対して高親和性結合できる抗体が生成された。キャプチャアッセイを行うことで、結合能を決定した。キャプチャアッセイにおいては、抗ヒトIgGFcをビアコアチップに固定し、ヒト抗IFNAR−1抗体を抗ヒトIgGFc表面に通した後、結合能を計算できる25nM以上400nM以下の濃度で、可溶性IFNAR−1の結合を測定した。M3K1の結合能を、H3K1の結合能と比較した。この結果を表3に示す。
【0160】
【表3】

【0161】
<実施例3:選択された抗体配列の非免疫化>
H3K1 VH及びVK配列は、Peptide Threadingプログラム(Biovation社)を用いて分析した。簡略化すれば、アミノ酸配列を、全ての可能な13−merに分割する。13−merペプチドを、HLA−DRアロタイプの結合溝のモジュールに経時的に与え、各対立遺伝子の各ペプチドに結合スコアを割り当てる。立体配座スコアを、各ポケットに結合されるペプチドの側鎖に関して計算する。このスコアは、立体的な重なり、結合溝におけるペプチド及び残基間の潜在的な水素結合、静電的相互作用、ペプチド及びポケット残基間の好ましい接触に基づく。各側鎖の立体構造が変化すると、スコアを再計算する。
【0162】
潜在的なT細胞エピトープは、エピトープを構成する特定のペプチドのアミノ酸置換を行うことによって、除去される。可能であれば、同様の生理化学的性質のアミノ酸を挿入することによって、置換を行った。しかしながら、いくつかの潜在的なエピトープを除去するためには、サイズ、荷電性、又は疎水性の異なるアミノ酸で置換する必要のある場合もある。置換のためのアミノ酸残基のナンバリングは、Kabat(Kabatら、1991)の通りである。アミノ酸置換は、図1H〜1L及び2D〜2Sにまとめられ、例示される。
【0163】
一連の抗体を、潜在的なT細胞エピトープの数を減少させて、構成した。これらには、残基がCDR領域において変更された重鎖変異体M3−AとM3−B、及び、フレームワーク残基が変更されたDI M3が含まれていた。また、非免疫化軽鎖を構成し、K1−C、K1−D、Ksi−E、及びDI K1と称する。これらの非免疫化V−領域を、表4に示す種々の組合せのヒトIgG4抗体として、発現させた。抗体を、発現させて、ビアコア分析の前に精製した。ビアコアチップは、IFNAR−1をフローセル2に690RUでコーティングし、抗ヒトIgGを5000RUでフローセル4にコーティングして、使用した。抗ヒトIgGFcに対する、この抗体のIFNAR−1への結合相対値を、フローセル2での応答をフローセル4での応答で除算した(Fc2/Fc4)比率によって、決定した。また、表4に示されるように、いくつかの変異体は、H3K1標準と比較して、高いIFNAR−1結合活性を保持していた。
【0164】
【表4】

【0165】
重鎖DI M3−B及び軽鎖DI K1−Cの付加的な結合変異体を作製した。これらの結合変異体についても、IFNAR−1との結合試験を行なった。その結果、DI M3−B重鎖によって高い結合能が保持されたにもかかわらず、DI K1軽鎖で見られた現象と同様に、DI K1−C軽鎖を使用したことにより、結合活性が減少していた。この結果を、表5に示す。固定された可溶性IFNAR−1に抗体を結合させた状態で、ビアコアによって結合分析を行った。最大応答を2つの濃度で決定し、示した値は4回の平均値である。
【0166】
【表5】

【0167】
選択された変異体を更に特徴づけるために、これら変異体の親和性を、抗体キャプチャ分析(抗ヒトIgGFcをビアコアチップに結合させ、可溶性IFNAR−1を25nM以上400nM以下で使用した)を用いて決定した。この結果を表6に示す。この結果から、これらの変異体がIFNARに対する高い結合能を示すことが分かった。
【0168】
【表6】

【0169】
<実施例4:選択される抗体配列のCDR残基の変化>
一連の互換性重鎖を、CDR3配列を変更させて、作製した。各々がCDR3の11ポジションのうちの1つにおいて複数のアミノ酸置換を含む、一連のプールをK1軽鎖と共発現させ、試験のために各プールから抗体を精製した。固定した可溶性IFNAR−1に対する結合活性を決定するために、ビアコア実験を行った。抗IFNAR−1抗体のCDR3変異体ライブラリを、抗体のプールを、固定した可溶性IFNAR−1に結合させることによって、決定した。反応ユニットを、200nM試料(A:最大結合時のRU;D:解離800秒後のRU)から発生させた。表7に示されるように、各プールにおいて、異なる活性レベルが得られた。
【0170】
【表7】

【0171】
更なる研究のためにプール4及び11を選択し、各プールの個々の抗体を作製し、別々に発現させた。これらの個々の抗体の配列は、図1Fの配列番号12、及び図1Gの配列番号13に示す通りであった。プール4の個々の抗体のIFNAR−1への結合に関するビアコア分析を、表8に示す。データは、M3K1に対する最大結合として表される。プール11の個々の抗体のIFNAR−1への結合に関するビアコア分析を、表9に示す。データは、M3K1に対する最大結合として表される。
【0172】
【表8】

【0173】
【表9】

【0174】
表8及び9に示されるように、IFNAR−1への結合は、抗原結合活性を変化させて作製した変異体の全てで、維持されていた。
【0175】
<実施例5:細胞に対する抗IFNAR−1ヒト化抗体のスキャッチャード結合分析>
細胞に対する抗IFNAR−1ヒト化抗体の結合を、スキャッチャード分析によって評価するために、IFNAR−1とIFNAR−2を発現するBALL−1細胞を使用した。細胞を、10%のFCSを含有するRPMIで培養し、4℃のハンクス平衡緩衝塩溶液(HBSS)で二回洗浄した。この細胞を、トリス結合緩衝液(トリス24mM、NaCl137mM、KCl2.7mM、HSA0.1%、グルコース2mM、MgCl21mM、CaCl21mM、pH7.4)内で、4×107細胞/mlに調整した。ミリポアプレート(MAFB NOB)を1%脱脂粉乳水でコーティングし、4℃で一晩保存した。プレートを結合緩衝液で洗浄し、TBS結合緩衝液内の未標識抗体(1000倍過剰)25ulを、ミリポア96ウェルガラス繊維フィルタプレートの対照ウェルに添加した(非特異的結合:NSB)。緩衝液のみ25マイクロリットルを、最大結合対照ウェルに添加した(全結合)。125I−抗IFNAR−1抗体25マイクロリットルと、TBS結合緩衝液内のBALL−1細胞懸濁液(4×107細胞/ml)25ulを添加した。プレートを、シェーカー上200RPM/分、4℃で、2時間インキュベートした。インキュベーションの終了後、ミリポアプレートを、終濃度0.5MのNaClを含有する冷たいTBS結合緩衝液0.2mlで、二回洗浄した。フィルターを除去して、γカウンタ内でカウントを行った。Prismソフトウェア(SanDiego、CA)により、単一部位結合パラメータを用いて、平衡結合の評価を行った。
【0176】
上記のスキャッチャード結合実験によれば、BALL−1細胞に対するヒト化抗体H3K1(IgG4アイソタイプ)の親和性は4nMであって、これはマウスの64G12に非常に類似する。全細胞結合アッセイによって得られた低いナノモル濃度親和性値は、精製した組換えリガンドに対する抗体の親和性を決定するビアコアデータに匹敵する(表10)。従って、タンパク質ベースアッセイ又は細胞ベースのアッセイのいずれかにおいて、抗体の結合能は低nM範囲にある。
【0177】
【表10】

【0178】
<実施例6:細胞増殖及びIFN応答レポーター分析における、抗IFNAR−1ヒト化抗体によるI型IFNの生物学的活性の抑制>
ヒトB−リンパ芽球バーキットリンパ腫に由来する細胞株ダウディは、高レベルのIFNARを発現し、これらの細胞の増殖はI型インターフェロンによって抑制される。ヒト化抗IFNAR−1抗体の機能的ブロック能力を測定するために、2つの異なるアッセイをいった。第1のアッセイにおいて、ダウディ細胞を抗体の存在下及び不存在下で、インターフェロンα2bと共に培養し、3[H]−チミジンの取り込みによって、増殖を測定した。ダウディ細胞をATCCから取得し、10%FCS及び2mMβメルカプトエタノールを含有するRPMI(培地)において培養した。細胞を遠心分離し、1%ヒト血清アルブミンを添加した培地(培地及びHS)に1×106細胞/ml濃度に再懸濁した。96ウェルプレートの各ウェルに、適切な濃度の抗体が添加されたインターフェロンα2b(Schering社)200U/mlを100μl添加した。培地及びHS中のダウディ細胞100μlをウェルに添加し、プレートを37℃で48時間インキュベートした。プレートは、3[H]−チミジン1μCiでパルスして、24時間インキュベートした。プレートを回収して、96ウェル繊維フィルタプレート上に収集し、TopCountシンチレーションカウンタ(Packard)を用いてカウントを行った。毎分放射能数を抗体濃度の関数として表し、Prismソフトウェア(サンディエゴ、CA)を用いて、非線形回帰、S字形投薬応答によって、データを解析した。
【0179】
第2のアッセイにおいて、インターフェロン刺激応答要素がレポーター遺伝子に連結されたコンストラクト(ISRE−RG)によってトランスフェクションされたU937細胞を用いて、ヒト化抗IFNAR−1抗体の、IFN誘導のレポーター遺伝子発現をブロックする能力を測定した。細胞を、10%FCS及び2mMβメルカプトエタノールを含有するRPMI(培地)において培養した。この細胞を、2%のヒト血清を添加した培地中に再懸濁した(1×106細胞/ml)。細胞100μlを、96ウェルプレートに添加した。インターフェロンα2b(Schering社)200U/mlを含有する培地で抗体を連続的に希釈し、100μlを各ウェルに添加した。このプレートを37℃で一晩インキュベートした。このインキュベーションの後、レポーター遺伝子の発現を、フローサイトメトリーによって評価した。幾何的平均蛍光強度を抗体濃度の関数として表し、Prismソフトウェア(サンディエゴ、CA)を用いて、非線形回帰、S字形投薬応答によって、データを解析した。
【0180】
上記した2つのアッセイによれば、ダウディ増殖アッセイにおいて2nM以上10nM以下の力価が得られ、ISRE−RGレポーターアッセイにおいて2nM以上22nM以下の力価が得られた。マウス64G12の力価は、ヒト化IgG1抗体に匹敵した。この結果を、表11にまとめた。
【0181】
【表11】

【0182】
これらのデータに示されるように、ヒト化抗IFNAR−1抗体がIFNα2bに対する強力な活性を有するため、抗体のIFNβ応答抑制能力を試験した。試験した2つのヒト化抗体、H3K1(IgG1)及びH3K1(IgG4)は、レポーターアッセイで測定されたように、IFNβ誘導細胞シグナリングの強力なインヒビターであった。マウス64G12がH3K1(IgG1)の3分の1以下の力であるところ、H3K1(IgG1)はH3K1(IgG4)の約10倍以上強力であった。IFN−α及びIFN−βに関するレポーターアッセイの結果を、図4A〜4Bのグラフに示す。
【0183】
ヒト化抗IFNAR−1抗体の、複数のI型IFNの生物学的活性を抑制する能力を評価するために、異なるIFNαサブタイプを、ダウディ増殖アッセイによって試験した。IFNαサブタイプ(2a、2b、4b、8、10、1、21、5、14、17、7、6、又は16)のうちの1つ、又は白血球IFNや全身性IFNと共に、10ug/mlのヒト化抗体DI M3−BK1C又は対照アイソタイプの存在下で、ダウディ細胞を培養した。ダウディ増殖は、上記のように決定した。この結果を、図5の棒グラフに示す。この結果に示されるように、特に限定されないが、白血球IFN、全身性IFN、IFNα2a、IFNα2b、IFNα4b、IFNα8、IFNα10、IFNα1、IFNα21、IFNα5、IFNα14、IFNα17、IFNα7、IFNα6、及びIFNα16を含む複数のI型IFNによって誘発される応答の逆転が、抗IFNAR−1抗体によって誘導されていた。
【0184】
<実施例7:抗IFNAR−1抗体の樹状細胞成熟化への効果>
IFNαは、SLE患者の樹状細胞成熟化及び活性化を誘導する。抗IFNAR−1抗体の、IFNαが媒介する樹状細胞成熟を抑制する能力を検査するために、試験管内システムを確立した。これらの実験において、GM−CSFとIL−4、又は、GM−CSFとIFNαの中で培養することにより、末梢血液細胞を樹枝状細胞表現型へと誘導した。GM−CSF単独の存在下での培養を、これらの細胞がマクロファージ様の表現型を維持するため、対照区として用いた。抗原を取り込む細胞の能力及び細胞表面マーカー発現の変化によって測定されるように、IFNαは、樹枝状細胞培養の成熟を誘導する。
【0185】
分析を行うために、25mlのバフィーコートを、PBSで4倍に希釈した。試料を4×50mlの円錐管に分け、15mlのリンパ球分離培地(ICN Biomedicals)を底に積層した。500×gで30分間の遠心分離の後、PBMCを含有するバフィー層を除去し、PBSで洗浄した。細胞を培地で再懸濁し、4×106細胞/mlとした。PBMC(2.0×107細胞/5ml/25cm2フラスコ)を、培地で37℃、1.5時間インキュベーションすることにより、単核細胞を分離し、非付着細胞を2回洗い流した。最後の洗浄後、細胞を、1%熱不活性化ヒト血清(Gemini Bio Products)を添加した培地で培養した。GM−CSF(500U/ml)、IL−4(1000U/ml)、IFNα(イントロンA;1000U/ml)、IFNβ(1000U/ml)、及び/又は、抗IFNAR−1抗体、又は対照アイソタイプ抗体(30ug/ml)を適切な培養フラスコに添加し、細胞を3〜7日間培養した。DC成熟化のため、TNF−α(l0ng/ml)を3日目及び5日目に添加し、DCをPBSで洗浄し、37℃で10分間、1:5000のベルセンで処理した。必要に応じて、穏やかに細胞を掻爬することによってDCを分離し、洗浄した後、分析を行った。
【0186】
各DC培養液を、染色培地(0.2%重炭酸ナトリウム、0.01%アジ化ナトリウム、0.1mMEDTA、20mMHEPES、2%FCSを含有するハンクス平衡緩衝塩溶液(HBSS))に再懸濁し、V底の96ウェルプレートの6ウェルに均等に分けた。Sorvall RTH−750ローター上、2100rpmで細胞をパルススピンし、25μl染色培地に再懸濁した。特定の蛍光色素複合抗体1マイクログラムを各ウェルに添加し、氷上で45分間インキュベートした。このDCを3回洗浄し、2%パラホルムアルデヒドを含有する200μlPBS中に再懸濁し、ベクトン ディキンソンFACScaliburを用い、フローサイトメトリーによって分析した。夾雑細胞を分析から除去するため、フォワード対サイドの分布グラフにゲートを記入した。
【0187】
GM−CSFから得られるDCの表現型は、IL−4又はIFNαの存在下で、異なる。IL−4由来のDCがCD1aを発現し、CD14及びCD123を欠く一方、IFNα由来のDCは、より高いレベルのCD123及びCD14を発現し、より低いレベルのCD1aを発現する。更に、IFNa由来のDCは、共刺激性分子MHCクラスII及びCD86を、IL−4由来のDCで見られるよりも高いレベルで発現する。IFN培養のヒト化抗IFNARl抗体H3K1による共処理によって、マクロファージ(GM−CSF単独)に似た発現パターンが得られた。更に、H3K1処理培養したIFNの形状は、典型的なパンケーキに似た外観を有するマクロファージ様であった。このように、この実験によって、ヒト化抗IFNAR−1抗体がIFNα誘導樹状細胞の成熟化を抑制できることが実証された。フローサイトメトリー解析の結果を、表12(4回の実験の幾何平均のメディアンを示す)にまとめた。
【0188】
【表12】

【0189】
<実施例8:アカゲザルにおけるヒト化抗IFNAR−1抗体の薬物動態学及び免疫原性>
ヒト化抗IFNAR−1抗体H3K1の、アカゲザル由来の末梢血液細胞に結合する能力を、フローサイトメトリー解析によって評価した。H3K1抗体は、アカゲザル細胞において、ヒト細胞で見られるのと同様の反応性を有したことから、アカゲザルが臨床用動物実験に適切であることが示唆された。131Iラベル化H3K1を用いて、アカゲザルで薬物動態学的研究を行なった。CDR融合を移植した非ヒト霊長類抗体に対して予想された通り、H3K1の半減期(t1/2β)は、5.5日以下(2動物)あった。
【0190】
減少率の上昇は10日目で見られたことから、免疫原性の可能性が示唆された。これを評価するために、この実験におけるサルに対して、H3K1を3回投与した後、ラベル化抗体によって再実験した。14時間から19時間の推定t1/2bを伴う急激な減少が観察された。この結果により、H3K1がサルの抗体除去反応を発生させたことが示唆される。前述の実施例で記述した本発明の非免疫化ヒト化抗体は、ヒト化抗IFNAR−1抗体の生体内での免疫原性を減少するために使用できる。
【0191】
<実施例9:アカゲザルにおけるヒト化抗IFNAR−1抗体によるIFNAR/IFNα活性の中和>
抗IFNAR抗体の、生体内でのインターフェロン活性抑制能力を研究するために、薬力学的モデルを使用した。このモデルでは、外来性のIFN−α2bを筋肉内に投薬し、末梢血液細胞の活性化及び血清活性化マーカーの存在を測定する。10mg/kgのマウス抗IFNAR−1mAb64G12、ヒト化IFNAR−1mAbH3K1、又は対照キャリアを、静脈内注入することで、アカゲザルを処理した。この後、ヒトIFN−α2b(3×106U/Kg)の筋肉内投与を行なった。細胞表面マーカーCD86、MHCクラスII、MHCクラスI、及びIFNAR1の発現を、24時間にわたって観察した。更に、プラズママーカー ネオプテリン、β2ミクログロブリン、及びC反応性タンパク質を観察した。主要所見は、以下の通りであった。a)IFN−α2b処理によって、末梢血液細胞上のMHCクラスI発現が増え、この発現増加は抗体処理によってブロックされた。b)β2ミクログロブリンによっては何の変化も見られなかったが、測定した3つのプラズママーカー全てがIFN−α2b処理によって上昇し、H3K1は、ネオプテリンレベルで50%のブロック、及びCRPで25%の減少を誘導した。従って、IFNα2bに対するかなりの生体内応答が観察され、抗体処理によって部分的にブロックされた。
【0192】
<均等物>
当業者は、ルーチン試験のみによって、本明細書において記述される本発明の特定の実施形態の多くの均等物を認識し、又は確認することができよう。このような均等物は、以下の請求項に包含されることが意図される。
【0193】
<文献の引用>
本明細書において引用される全ての特許、係属中の特許出願、その他の文献は、参照して、全体において本明細書に組み込まれている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
IFNα受容体−1に特異的に結合する、ヒト化抗体又はヒト化抗体フラグメントであって、
配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の相補性決定領域アミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、
配列番号4、配列番号5、又は配列番号6の相補性決定領域アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、21記載のアミノ酸配列を有する可変軽鎖アミノ酸配列と、
を有する、ヒト化抗体又はヒト化抗体フラグメント。
【請求項2】
ヒト重鎖定常ドメイン及びヒト軽鎖定常ドメインを更に有する請求項1記載のヒト化抗体又はヒト化抗体フラグメント。
【請求項3】
ヒト重鎖定常領域は、ヒトγ1、ヒトγ2、ヒトγ3、及びヒトγ4からなる群より選択される請求項2記載のヒト化抗体又はヒト化抗体フラグメント。
【請求項4】
ヒト重鎖定常領域は、ヒトγ1である請求項2記載のヒト化抗体又はヒト化抗体フラグメント。
【請求項5】
配列番号42のアミノ酸配列を有するポリペプチドに対して、請求項1のヒト抗体、ヒト化抗体又はヒト化抗体フラグメントと競合的に結合しうる、ヒト化モノクローナル抗体、又は抗原結合部。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−298818(P2009−298818A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−223533(P2009−223533)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【分割の表示】特願2006−513277(P2006−513277)の分割
【原出願日】平成16年4月23日(2004.4.23)
【出願人】(504378238)メダレックス インコーポレイテッド (20)
【Fターム(参考)】