説明

インターフェロンα抗体及びその使用

本発明は、複数のインターフェロン(IFN)αサブタイプの生物活性を阻害し、IFNα21の生物活性又はIFNβ又はIFNωの生物活性を実質的に阻害せず、抗インターフェロンαモノクローナル抗体、特にヒトモノクローナル抗体を提供する。また、免疫複合体、二重特異性分子及び本発明の抗体を含む医薬組成物を提供される。本発明の抗体を用いたIFNαの生物活性を阻害する方法、及び本発明の抗体を投与することによって、自己免疫疾病、移植片拒絶及び移植片対宿主病などのIFNαが仲介する疾病又は疾患の治療する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2003年12月10日に出願した米国特許仮出願第60/528,757号明細書の利益を享受し、その内容は、その全体を参照することによって本願明細書に含まれる。
【背景技術】
【0002】
I型インターフェロン(IFN)(IFN−α、IFN−β、IFN−ω、IFN−τ)は、抗ウィルス、抗ガン、及び免疫抑制性効果を有する、構造的に関連したサイトカインのファミリーである(Hardy他、(2001)Blood 97:473;Cutrone and Langer(2001)J.Biol.Chem.276:17140)。ヒトのIFNαは2個のサブファミリーを含む。第1のサブファミリーは、少なくとも75%のホモロジーを有する少なくとも14の非対立遺伝子及び4つの偽遺伝子からなる。第2のサブファミリーは、αII又はωであり、IFNα遺伝子と70%の類似を示す5個の偽遺伝子及び1個の機能的遺伝子を含む。IFNαのサブタイプは、異なる特異活性を有するが、同じ生物学的スペクトルを持ち(Streuli他、(1981)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:2848)、同じ細胞受容体を有する(Agnet M.他、(1983)in“Interferon 5”Ed.I.Gresser p.1−22,Academic Press,London)。
【0003】
全てのヒトのI型インターフェロンは、2個の膜貫通型タンパク質、IFNAR−1及びIFNAR−2からなる細胞表面受容体(IFNα受容体、IFNAR)と結合する(Uze他、(1990)Cell 60:225;Novick他、(1994)Cell 77:391;Pestka他、(1987)Annu Rev. Biochem.56:727;Mogensen他、(1999)J.Interferon Cyto1cine Res.19:1069)。IFNAR−1は、高親和性の結合及びIFNAR複合体の異なる特異性に必要とされる(Cutrone(2001)前述)。I型IFNサブタイプの機能的な違いは同定されていないが、潜在的に多様なシグナルを伝達するIFNAR受容体構成要素と、異なる相互作用を示すと考えられる(Cook他、(1996)J Biol.Chem.271:13448)。特に、変異型のIFNAR1及びIFNAR2を用いた研究は、インターフェロンα及びインターフェロンβが鎖を用いて別々に相互作用し、受容体を介して別々に信号を送ることが示唆される(Lewerenz他、(1998)J.Mol.Biol.282:585)。
【0004】
I型IFNの初期の機能研究は、ウィルス感染に対する生得的な防御に焦点が当てられた(Haller他、(1981)J Exp.Med.154:199;Lindenmann他、(1981)Methods Enzymol.78:181)。しかしながら、最近の研究では、I型IFNは、適応性のある免疫応答における免疫調節性サイトカインであることを示唆している。具体的に、I型IFNは、Thl経路に沿った未処理のT細胞の分化を促進し(Brinkmann他、(1993)J.Exp.Med.178:1655)、抗体産生を促進し(Finkelman他、(1991)J.Exp.Med.174:1179)、記憶T細胞の機能活性と生存を支持すること(Santini他、(2000)J.Exp.Med.191:1777;Tough他、(1996)Science 272:1947)が示されてきた。
【0005】
多くのグループによる最近の研究は、樹状細胞(DC)の成熟又は活性化を高めることを示唆している(Santini他、(2000)J.Exp.Med.191:1777;Luft他、(1998)J Immunol.161:1947;Luft他、(2002)Slit.Immunol.14:367;Radvanyi他、(1999)Scand.J.Immunol.50:499;Paquette他、(1998)J.Leukoc.Biol.64:358)。さらに、I型インターフェロンの発現の増加が、数多くの自己免疫疾患において記載される(Foulis他、(1987)Lancet 2:1423;Hooks他、(1982)Arthritis Rheurn 25:396;Hertzog(1988)Clin.48:192;Hopkins and Meager Clin.Exp.Immunol.73:88;Arvin and Miller(1984)Arthritis 27:582)。例えば、多くの研究は、高レベルのIFNαに関連するインスリン依存性糖尿病(IDDM)(Foulis(1987)前述)、全身性エリテマトーデス(SLE)(Hooks(1982)、前述;Blanco他、(2001)Science 294:1540;Ytterberg and Schnitzer(1982)Arthritis Rheum 25:401;Batteux他、(1999)Eur.Cytokine Netw _:509)、及び自己免疫性甲状腺炎(Prummel and Laurberg(2003)Thyroid 13:547;Mazziotti他、(2002)J.Endocrinol.Invest.25:624;You他、(1999)Chin.Med.J.112:61;Koh他、(1997)Thyroid 7:891)、及びIFN−βがより重要な役割を果たすリウマチ様関節炎(RA)(Hertzog(1988),Hopkins and Meager(1988),Arvin and Miller(1984)、前述)に関連する。
【0006】
さらに、インターフェロンの投与は、乾癬、自己免疫性甲状腺炎、及び多発性硬化症を持つ患者に内在する病気を悪化させ、自己免疫疾患の既往歴のない患者においてSLE症候群を引き起こすことが報告される。また、インターフェロンαは正常なマウスに糸球体腎炎を引き起こし、NZB/Wマウスの自発的な自己免疫疾患の攻撃の始まりを早めることも示される。さらに、IFN−α療法は、ある場合において、発熱や神経疾患などの望ましくない副作用を引き起こすことを示されている。従って、IFN−α活性の阻害は患者に対して有益となり、IFN−α活性を阻害するのに効果的な薬剤の必要がある病的状況が存在している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、IFNαに結合し、複数のIFNαサブタイプの生物活性を阻害するが、IFNαサブタイプ21、又はIFNβ又はIFNωの生物活性を実質的に阻害しない単離したモノクローナル抗体を提供する。好ましい実施形態では、本発明の抗体は、IFNαによって誘導される細胞マーカーの表面発現を阻害し、IFNαによって誘導されるIP−10発現を阻害し、全身性エリテマトーデス(SLE)を持つ患者の血漿が仲介する樹状細胞の成長を阻害する能力がある。これらの抗体は、例えば、インターフェロンαの産生又は発現が病的症状に関連する場合における予防目的を含んだ治療に用いられる。また、そのような抗体は、様々な病気の診断又は病気の研究を進展させるためにも使用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態において、本発明は、IFNα、好ましくはヒトIFNα(例えば、ヒトIFNα2a、ヒトIFNα2b)に結合し、そして複数のIFNαサブタイプの生物活性を阻害するが、IFNαサブタイプ21、又はIFNβ又はIFNガンマの生物活性を実質的に阻害しない抗体又は抗体断片を含む。さらに、様々な実施形態において、本発明の抗体は、IFNαによって誘導される細胞マーカーの表面発現を阻害し、IFNαによって誘導されるIP−10発現を阻害し、及び/又は全身性エリテマトーデス(SLE)の患者の血漿が仲介する樹状細胞の成長を阻害する能力を持つ。好ましくは、抗体又は抗体断片はヒトの抗体又は抗体断片であり、ネズミ、キメラ、又はヒト化された抗体であってよい。ある実施形態では、本発明の抗体は、非競合的な作用のメカニズムによって機能する。例えば、好ましい実施形態において、抗体は(i)IFNα2aなどのIFNαがインターフェロンα受容体(IFNAR)を発現する細胞との結合を阻害せず、(ii)IFNα2aなどのIFNαの存在下でIFNARを発現する細胞に結合する。
【0009】
1実施態様において、本発明は、
(a)ヒトVH 1−18又は4−61遺伝子の重鎖可変領域と、
(b)ヒトA27遺伝子の軽鎖可変領域と、を含み、
(c)インターフェロンα(少なくとも1個のIFNαサブタイプ)の生物学活性を阻害する単離した抗体又はその抗原結合部分に関する。
【0010】
別の実施態様において、本発明は、CDR1、CDR2、及びCDR3の配列を含む重鎖可変領域と、CDR1、CDR2、及びCDR3を含む軽鎖可変領域を含み、
(a)重鎖可変領域のCDR3の配列は、配列番号7、配列番号8、又は配列番号9のアミノ酸配列、又は該アミノ酸配列内の保存的修飾を含み、
(b)軽鎖可変領域のCDR3の配列は、配列番号16、配列番号17、又は配列番号18、又は該アミノ酸配列内の保存的修飾を含み、
(c)複数のIFNαサブタイプの生物活性を阻害するが、IFNα21の生物活性を実質的に阻害せず、
(d)
(i)IFNβ又はIFNωの生物活性を実質的に阻害せず、
(ii)末梢血単核細胞においてCD38又はMHCクラスIのIFNに誘導される表面発現を阻害する、
(iii)末梢血単核細胞による、IFNに誘導される発現を阻害する、
(iv)全身性エリテマトーデス(SLE)血漿が仲介する樹状細胞の成長を阻害する、(i)〜(iv)の特性の少なくとも1つを示す、
単離したモノクローナル抗体又はその抗原結合部分に関する。
【0011】
そのような抗体において、重鎖可変領域のCDR2配列は、配列番号4、配列番号5、又は配列番号6のアミノ酸配列、又は該アミノ酸配列内の保存的修飾と、を含み、軽鎖可変領域のCDR2配列は、配列番号13、配列番号14、又は配列番号15、又は該アミノ酸配列内の保存的修飾と、を含む。さらに、そのような抗体においては、重鎖可変領域のCDR1の配列は、配列番号1、配列番号2、又は配列番号3、又は該アミノ酸配列内の保存的修飾と、を含み、そして軽鎖可変領域のCDR1の配列は、配列番号10、配列番号11、又は配列番号12、又は該アミノ酸配列内の保存的修飾と、を含む。
【0012】
別の実施態様において、本発明は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、
(a)重鎖可変領域は、配列番号19、配列番号20、又は配列番号21と少なくとも80%相同するアミノ酸配列を含み、
(b)軽鎖可変領域は、配列番号22、配列番号23、又は配列番号24と少なくとも80%相同するアミノ酸配列を含み、
(c)抗体が、IFNαサブタイプの生物活性を阻害するが、IFNα21の生物活性を実質的に阻害せず、
(d)
(i)IFNβ又はIFNωの生物活性を実質的に阻害せず、
(ii)末梢血単核細胞のCD38又はMHCクラスIのIFNによって誘導される表面発現を阻害する、
(iii)末梢血単核細胞のIFNに誘導される発現を阻害する、
(iv)全身性エリテマトーデス(SLE)血漿が仲介する樹状細胞の成長を阻害する、(i)〜(iv)の特性のうち少なくとも1つを示す、
単離したモノクローナル抗体又はその抗原結合部分に関する。
【0013】
別の実施態様において、本発明は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、
(a)重鎖可変領域が、配列番号19、配列番号20、又は配列番号21のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列と、
(b)軽鎖可変領域が、配列番号22、配列番号23、又は配列番号24のアミノ酸配列を含み、インターフェロンα(少なくとも1個のIFNαサブタイプ)の生物活性を阻害する単離したモノクローナル抗体又はその抗原結合部分に関する。
【0014】
さらに別の実施態様において、本発明は、高い安定性のある配列番号19の変異体に関する。好ましい実施形態は、
(a)配列番号34、配列番号35、配列番号36、及び配列番号37からなるグループから選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、
(b)配列番号22のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、を含み、
少なくとも1個のインターフェロンαサブタイプの生物活性を阻害する単離したモノクローナル抗体又はその抗原結合部分を含む。
【0015】
さらに別の実施態様において、本発明は、
(a)配列番号1、配列番号2、及び配列番号3からなるグループから選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域のCDR1と、
(b)配列番号4、配列番号5、及び配列番号6からなるグループから選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域のCDR2と、
(c)配列番号7、配列番号8、及び配列番号9からなるグループから選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域のCDR3と、
(d)配列番号10、配列番号11、及び配列番号12からなるグループから選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域のCDR1と、
(e)配列番号13、配列番号14、及び配列番号15からなるグループから選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域のCDR2と、
(f)配列番号16、配列番号17、及び配列番号18からなるグループから選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域のCDR3と、を含み、
抗体がインターフェロンα(少なくとも1個のIFNαサブタイプ)の生物活性を阻害する単離したモノクローナル抗体又はその抗原結合部分に関する。
【0016】
さらに別の実施態様において、本発明は、IFNα2a又はIFNα2bと上記のいずれかの抗体との結合が競合する単離したモノクローナル抗体又はその抗原結合部分に関する。
【0017】
さらに別の実施態様において、本発明は、複数のインターフェロン(IFN)αサブタイプの生物活性を阻害し、IFNαとインターフェロンα受容体(IFNAR)を発現する細胞との結合を阻害せず、IFNαの存在下でIFNARを発現する細胞と結合する単離したモノクローナル抗体又はその抗原結合部分に関する。
【0018】
また、本発明は、上記のいずれかの抗体又はその抗原結合部分をコードする核酸分子も含む。
【0019】
本発明の抗体は、いかなるアイソタイプの抗体であってよい。好ましい抗体は、IgGl又はIgG4アイソタイプの抗体である。本発明の抗体は、可変領域及び定常領域を含む全長の抗体又は単鎖抗体又はFab断片などのその抗原結合断片であってよい。
【0020】
本発明は、細胞毒素又は放射性同位体などの治療薬に結合する抗体の免疫複合体も含む。さらに、本発明は、異なる結合特異性を有する第2の機能部分に結合される本発明の抗体を含む二重特異性分子も含む。
【0021】
また、抗体又はその抗原結合部分、免疫複合体、又は二重特異性分子を含む医薬組成物を提供する。そのような医薬組成物は、活性薬及び薬理学的に許容可能な担体を含む。
【0022】
別の実施態様において、本発明は、インターフェロンαの生物活性を阻害するように、本発明の抗IFNα抗体とインターフェロンαとを接触させることを含む、in vivo又はin vitroにおけるインターフェロンαの生物活性を阻害する方法を含む。
【0023】
別の実施態様において、本発明の抗IFNα抗体を被験者に投与することを含み、被験者におけるインターフェロンαが仲介する病気又は疾患を治療する方法を含む。治療する病気は、自己免疫疾患(例えば、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、インスリン依存性糖尿病、炎症性腸疾患、乾癬、自己免疫性甲状腺炎、リウマチ様関節炎、及び糸球体腎炎)、移植拒絶反応、及び移植片対宿主病などである。
【0024】
本発明の他の特徴及び長所は、以下の詳細な説明及び実施例から明らかであり、限定的に解釈されるべきでない。本願明細書の全体にわたって記載される全ての参考文献、特許、及び特許公報の内容は、明白に本願明細書に引用されて援用する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
発明の詳細な説明
本発明は、IFNαに結合し、複数のIFNαサブタイプの生物活性を阻害するが、IFNαサブタイプ21、又はIFNβ又はIFNωの生物活性を阻害しない単離したモノクローナル抗体に関係する。本発明の抗体は、IFNαによって誘導される細胞マーカーの表面発現を阻害し、IFNαによって誘導されるIP−10発現を阻害し、及び全身エリテマトーデス(SLE)を持つ患者の血漿が仲介する樹状細胞の成長を阻害する能力を持つ。本発明は、単離した抗体、その調製方法、及びそれらの抗体を含む免疫複合体及び二重特異性分子を作る方法、及び本発明の抗体、免疫複合体、又は二重特異性分子を含む医薬組成物を提供する。また、本発明は、例えば、自己免疫疾患の治療又は移植拒絶反応の阻害又は予防、又は移植片対宿主病の治療において、IFNα活性を阻害する抗体の使用の方法にも関連する。
【0026】
最初に、本発明がより容易に理解されるようにいくつかの用語を最初に定義する。さらなる定義は、詳細な説明の全体にわたって述べられる。
【0027】
本願明細書で使われる“インターフェロンα”及び“IFNα”という用語は、同義的に使用され、IFNα1(Genbank番号NP_076918又はGenbank番号NM_024013によってコードされるタンパク質)と75%以上の配列相同性を持つ、インターフェロンα遺伝子座位の機能的な遺伝子によってコードされたIFNαタンパク質について言及することを目的とする。IFNαサブタイプの例は、IFNα1、α2a、α2b、α4、α5、α6、α7,α8、α10、α1、α14、α16、α17、及びα21を含む。“インターフェロンα”という用語は、様々なIFNαサブタイプの組み換え体と同様に、白血球及びリンパ芽球腫のIFNなどのIFNαタンパク質を含む、自然発生的な標品を含むことを目的とする。IFNαという用語は、IFNωのみを含むことを目的としないが、IFNα及びIFNωの両方からなる組成物は、IFNαという用語によって包含される。
【0028】
本願明細書で使われる“IFNα受容体”という用語は、リガンドであるIFNαの受容体分子のIFNα受容体ファミリーのメンバーについて言及することを目的とする。IFNα受容体の例は、IFNα受容体1及びIFNα受容体2である。
【0029】
本願明細書で使われる“免疫応答”という用語は、例えば、リンパ球、抗原が存在する細胞、食細胞、顆粒球、及び上述の細胞又は肝臓によって産生される可溶性の巨大分子(抗体、サイトカイン、及び補足物を含む)、それらが侵入した病原体、病原体に感染された細胞又は組織、ガン細胞、又は、自己免疫又は病理学的な炎症の場合には、正常なヒト細胞又は組織の選択的な損傷、破壊、又は人体からの除去などの活動について言及する。
【0030】
本願明細書で使われる“シグナル伝達経路”という用語は、細胞のある部分から別の部分へのシグナルの送信において役割を果たす、様々なシグナル伝達分子の間の生化学的な関係について言及する。本願明細書で使われるフレーズ“細胞表面受容体”とは、例えば、シグナルを受信し、及び細胞の形質膜を介してシグナル伝達する能力を持つ分子及び分子の複合体を含む。本発明の“細胞表面受容体”は、例えば、IFNα受容体1又はIFNα受容体2である。
【0031】
本願明細書で使われる“抗体”という用語は、抗体全体、及びいずれの抗原結合断片(すなわち“抗原結合部分”)又はその単鎖を含む。“抗体”とは、ジスルフィド結合によって相互に繋がった、少なくとも2個の重鎖(H)及び2個の軽鎖(L)、又はその抗原結合部分を含む糖タンパク質について言及する。各重鎖は、重鎖可変領域(本願明細書においてVと略記される)及び重鎖定常領域からなる。重鎖定常領域は、3つのドメイン、CH1、CH2及びCH3からなる。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本願明細書においてVと略記される)及び軽鎖定常領域からなる。軽鎖定常領域は、1個のドメインCからなる。さらに、V領域及びV領域は、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域へと細かく分けられ、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる保存領域によって分散する。各V及びVは、アミノ末端からカルボキシ末端にかけて、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順序に並べられる3個のCDR及び4個のFRからなる。重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、様々な細胞の免疫系(例えば、効果細胞)及び、古典的な相補系の第1構成要素(C1q)を含む因子、又は宿主組織に対する免疫グロブリンとの結合を仲介する。
【0032】
本願明細書で使われる、抗体の“抗原結合部分”という用語(又は単に“抗体部分”)は、抗原(例えばIFNα)に対して特異結合する能力を持つ抗体の1個以上の断片について言及する。抗体の抗原結合機能は、抗体全長の断片によって行われることが示される。抗体の“抗原結合部分”という用語内に含まれる結合断片の例は、(i)Vドメイン、Vドメイン、Cドメイン、及びCH1ドメインからなる一価の断片であるFab断片と、(ii)ヒンジ領域のジスルフィド架橋によって結合した2個のFab断片からなる二価の断片であるF(ab’)断片と、(iii)Vドメイン及びCH1ドメインからなるFd断片と、(iv)抗体の一本の腕のVドメイン及びVドメインからなるFv断片と、(v)VドメインからなるdAb断片(Ward他、(1989)Nature 341:544−546)と、(vi)単離した相補性決定領域(CDR)を含む。さらに、Fv断片の2個のドメインV及びVは別々の遺伝子によってコードされるが、組み換え手法を用いて一価の分子を形成するV領域及びV領域のペアを単一のタンパク質鎖として生成することができる合成リンカーによって結合される(単鎖Fv(scFv)として知られる;例えば、Bird他、(1988)Science 242:423−426;and Huston他、(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879−5883を参照)。そのような単鎖抗体も、抗体の“抗原結合部分”という用語内に含まれることが意図される。これらの抗体断片は、当業者に従来公知の技術を用いて得られ、その断片は選別され、完全な抗体と同様に使用される。
【0033】
本願明細書で使われる“単離した抗体”という用語は、異なる抗原特異性を有する他の抗体から十分に離れた状態である抗体(例えば、特異的にIFNαに結合する単離した抗体は、IFNα以外の抗原に特異結合する抗体から十分に離れている)について言及することが意図される。しかしながら、IFNαに特異結合する単離した抗体は、他の種に由来するIFNα分子などの他の抗原に対して交差反応を有する。さらに、単離した抗体には、他の細胞素材及び/又は化学物質からほとんど存在しない。
【0034】
本願明細書で使われる“モノクローナル抗体”又は“モノクローナル抗体組成物”という用語は、単一分子組成の抗体分子の調製品について言及する。モノクローナル抗体組成物は、単一の結合特異性、及び特定のエピトープに対する親和性を表す。
【0035】
本願明細書で使われる“ヒト抗体”という用語は、フレームワーク及びCDR領域の両方がヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する抗体を含むことが意図される。さらに、抗体が定常領域を含む場合、定常領域もまたヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する。本発明のヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、in vitroでのランダム又は部位特異変異によって、又はin vivoでの体細胞変異によって導入される変異)を含む。しかしながら、本願明細書で使われる“ヒト抗体”という用語は、マウスなど別の哺乳類種の生殖系列に由来するCDR配列がヒトのフレームワーク配列上に移植される抗体を含むことを意図しない。
【0036】
“ヒトモノクローナル抗体”という用語は、フレームワーク及びCDR領域がヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する単一の結合特異性を表す抗体について言及する。一実施形態において、ヒトモノクローナル抗体は、不死化細胞に融合したヒト重鎖導入遺伝子及び軽鎖導入遺伝子を含むゲノムを有する非ヒト形質転換動物、例えば形質転換マウスから得られるB細胞を含むハイブリドーマによって産生される。
【0037】
本願明細書で使われる“組み換えヒト抗体”という用語は、(a)ヒト免疫グロブリン遺伝子又は後述する調製されたハイブリドーマのために、形質転換又は染色体導入された動物(例えば、マウス)から単離した抗体と、(b)ヒト抗体を発現するために形質転換した宿主細胞、例えばトランスフェクトーマから、単離した抗体、(c)組み換えのコンビナトリアルなヒト抗体ライブラリーから単離した抗体、及び(d)ヒト免疫グロブリン遺伝子配列の他のDNA配列に対するスプライシングと、を含む、いずれかの他の方法によって、調製、発現、生成、又は単離などの組み換え手法によって調製、発現、生成、又は単離した全てのヒト抗体を含む。そのような組み換えヒト抗体は、フレームワーク領域及びCDR領域がヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する。しかしながら、ある実施形態において、そのような組み換えヒト抗体は、in vitro突然変異誘発(又は、ヒトIg配列を形質転換動物が使われた場合はin vivo体細胞突然変異誘発)を受けやすく、組み換え抗体のV領域及びV領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖系列のV配列及びV配列に由来するため、in vivoでのヒト抗体生殖系列レパートリーにおいて天然に存在しない配列である。
【0038】
本願明細書で使われる“アイソタイプ”という用語は、重鎖定常領域遺伝子によってコードされる、抗体のクラス(例えば、IgM又はIgG1)について言及する。
【0039】
本願明細書で使われる、IFNαサブタイプの“生物活性を阻害する”抗体とは、例えば、実施例に記載されるDaudi細胞増殖検定などの機能検定を用いて、抗体の非存在下の活性のレベルと比較して、少なくとも10%、より好ましくは20〜80%のサブタイプの活性レベルで阻害する抗体について言及する。IFNαサブタイプの“生物活性を阻害する”抗体とは、200nM以下、より好ましくは100nM以下、さらに好ましくは50nM以下、持に好ましくは10nM以下のEC50を持つサブタイプの活性を阻害する抗体について言及することができる。
【0040】
本願明細書で使われる、IFNαサブタイプ、又はIFNβ又はIFNωの“生物活性を十分に阻害しない”抗体とは、そのサブタイプの活性を10%以下にまで、より好ましくは5%以下、さらに好ましくは原則的に検出できない量において阻害する抗体について言及することが意図される。また、IFNαサブタイプの“生物活性を阻害しない”抗体とは、そのサブタイプの活性を、300nM以上のEC50で阻害する抗体について言及することができる。
【0041】
本願明細書で使われる、“特異結合”とは、所定の抗原に結合する抗体について言及する。一般的に、抗体は、10−8M以下の解離定数(K)で結合し、所定の抗原または非常に密接な抗原以外の非特異的な抗原(例えば、BSA、カゼイン)に対する結合のKより少なくとも1/2のKで所定の抗原に結合する。“抗原認識抗体”及び“抗原に特異抗体”というフレーズは、本願明細書の“抗原特異結合抗体”という用語と同義である。
【0042】
本願明細書で使われる“Kassoc”又は“K”という用語は、特定の抗体−抗原相互作用の結合速度について言及することが意図され、本願明細書で使われる“Kdis”または“K”という用語は、特定の抗体−抗原相互作用の解離速度について言及することが意図される。本願明細書で使われる“K”という用語は、KのKに対する比(すなわち、K/K)から得られるモル濃度(M)で表される解離定数について言及することが意図される。抗体のK値は、従来的に十分に確立された方法を用いて決定する。抗体のKを決定する好ましい方法は、表面プラズモン共鳴を使用し、好ましくはBiacore(登録商標)システムなどのバイオセンサーシステムを使用する。
【0043】
本願明細書で使われる、IgG抗体の“高親和性”という用語は、10−8M以下、より好ましくは10−9M以下、そしてさらにより好ましくは10−10M以下、Kを有する抗体について言及する。しかしながら、“高親和性”結合は、他の抗体アイソタイプに対して変化する。例えば、IgMアイソタイプに対する“高親和性”結合は、10−7M以下、より好ましくは10−8以下のKを有する抗体について言及する。
【0044】
本願明細書で使われる、“被験者”という用語は、ヒト又は非ヒト動物も含む。“非ヒト動物”という用語は、例えば、非ヒト霊長類、羊、犬、猫、馬、牛、ニワトリ、両生類、は虫類など、哺乳類及び非哺乳類の全ての脊椎動物を含む。
【0045】
本発明の様々な実施態様が、詳細に以下の区分に記載される。
【0046】
[抗IFNα抗体]
本発明の抗体は、抗体の特定の機能特徴又は機能特性を有する。例えば、特定の実施形態において、抗体はIFNα2a及びIFNα2bなどの、複数のINFαのサブタイプに特異結合する。本発明の抗体は、高親和性、好ましくは10−8M以下、より好ましくは10−9M以下、さらに好ましくは10−10M以下のKでIFNα2a及び/又はα2bに結合する。好ましい実施形態において、抗体は、ヒトIFNα2a及びヒトIFNα2bに結合する。本発明の抗体の結合親和性及び反応速度は、例えば、実施例に記載されるようなBiacore分析によって調べることができる。
【0047】
さらに、他の実施形態において、本発明の抗体は様々な機能特性を表す。例えば、抗体は、複数のIFNαサブタイプの生物活性を阻害するが、IFNα21の生物活性を実質的に阻害しない。また、その抗体は、IFNβ又はIFNωの生物活性を実質的に阻害しない。また、本発明の抗体は、正常なヒト末梢血単核細胞のCD38又はMHCクラスIなどの細胞マーカーのIFNによって誘導される表面発現を阻害する能力を持つ。IFNαサブタイプ、IFNβ及び/又はIFNωの生物活性の阻害は、Daudi細胞増殖検定などの実施例に記載される機能検定を用いて評価する。
【0048】
またさらに、抗体は、全身エリテマトーデス(SLE)を持つ患者の血漿が仲介する、樹状細胞の成長を阻害する能力を持つ。樹状細胞の成長は、実施例に記載されるように、CD38、MHCクラスI、及び/又はCD123などの細胞表面マーカーの発現を調べることによって評価される。
【0049】
ある好ましい実施形態では、本発明の抗体が、非競合的な作用のメカニズム、すなわち抗体がIFNαのIFNARとの結合に競合しないメカニズムによって、IFNαの生物活性を阻害する。つまり、そのような抗体は、IFNαの存在下で細胞表面のIFNARに結合した状態になり、IFNARを介した細胞シグナリングを阻害する。他の好ましい実施形態において、これらの結合特性を有する抗体は有意なADCC活性を阻害しない。抗体のこれらの機能特性を調べるための検定は従来公知であり、実施例8及び実施例9に記載される。例えば、放射性同位元素で識別したIFNαのIFNARを発現する細胞との結合を阻害する抗体の能力を調べる。放射性同位元素で識別したIFNαのIFNARとの結合は非競合的なメカニズのム作用であることが示唆される。この非競合的なメカニズムの作用をさらに調べるため、放射性同位元素で識別した抗体のIFNARを発現する細胞との結合は、IFNαの存在下又は非存在下において検定される。放射性同位元素で識別した抗体は、IFNARを発現する細胞にIFNαの存在下では結合し、IFNα非存在下では結合しないというメカニズムの作用が示唆される。
【0050】
好ましい実施形態において、本発明の抗体は、IFNα単独(1個以上のサブタイプ)及び/又はIFNAR単独に対してより高い親和性(例えばK)で、IFNα−IFNAR複合体に結合する。例えば、ある実施形態において、本発明の抗体は、10−8M以上の親和性のK10−9M以上の親和性のK、又は10−10M以上の親和性のKで、IFNα−IFNAR複合体に結合する。
【0051】
別の好ましい実施形態において、本発明の抗体は、IFNα(1個以上のサブタイプ)及びIFNAR(IFNAR1及び/又はIFNAR2)に対して二重特異性である。つまり、抗体が、IFNαとIFNAR(IFNAR1及び/又はIFNAR2)の両方に結合することを意味する。従って、本発明は、例えば、IFNAR1の第2の結合特異性は、少なくとも1個のIFNαに対する第1の結合特異性及びIFNAR1に対する第2の結合特異性からなる二重特異的分子を含み、IFNαと抗体との結合によって形成される。また、本発明は、例えば、IFNAR2に対する第2の結合特異性は、少なくとも1個のIFNαに対する結合特異性及びIFNAR2に対する第2の結合特異性を含む二重特異的分子も含み、IFNαと抗体との結合によって形成される。
【0052】
[モノクローナル抗体13H5、13H7、及び7H9]
本発明の好ましい抗体は、実施例に記載されるように単離し、構造的であることを特徴とするヒトモノクローナル抗体13H5、13H7、及び7H9である。13H5、13H7、及び7H9のVのアミノ酸配列は、それぞれ配列番号19、配列番号20、及び配列番号21に示される。13H5、13H7、及び7H9のVアミノ酸配列は、それぞれ配列番号22、配列番号23、及び配列番号24に示される。これらの抗体のそれぞれがIFNαに結合する場合、V配列とV配列を“混ぜて合わせる”ことによって、本発明の他の抗IFNα結合分子を生成する。又はそのような“混ぜて合わせられる”抗体のIFNαの結合活性又は中性化活性は、上記の及び実施例中に記載される結合検定(例えば、ELISA、Biacore分析、Daudi細胞増殖検定)を用いて検査される。好ましくは、これらの抗体は、13H5と7H9のV配列を混ぜて合わせられる。なぜなら、同じ生殖系列配列(VH 1−18)に由来するV配列を使うため、構造上の類似性を表すからである。また、これらの抗体は13H5、13H7及び7H9のV配列は混ぜて合わせられる。同じ生殖系列の配列(VA27)を使うことによって構造上の類似性を表すからである。
【0053】
従って、1個の実施態様において、本発明の抗体は、
(a)配列番号19、配列番号20及び配列番号21からなるグループから選択されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域と、
(b)配列番号22、配列番号23及び配列番号24からなるグループから選択されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域と、を含み、インターフェロンαの生物活性を阻害する単離したモノクローナル抗体又はその抗原結合部分を提供する。
【0054】
好ましい重鎖と軽鎖の組み合わせは、
(a)配列番号19のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域と(b)配列番号22のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域と、
(a)配列番号20のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域と(b)配列番号23のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域と、
(a)配列番号21のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域と(b)配列番号24のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域のうちいずれかを含む。
【0055】
別の実施態様において、本発明は、13H5、13H7及び7H9の重鎖及び軽鎖のCDR1、CDR2、及びCDR3、又はその組み合わせからなる抗体を提供する。13H5、13H7及び7H9のVのCDR1のアミノ酸配列は、配列番号1、配列番号2、及び配列番号3に示される。13H5、13H7及び7H9のVのCDR2のアミノ酸配列は、配列番号4、配列番号5、及び配列番号6に示される。13H5、13H7及び7H9のVのCDR3sのアミノ酸配列は、配列番号7、配列番号8、及び配列番号9に示される。13H5、13H7及び7H9のVのCDR1のアミノ酸配列は、配列番号10、配列番号11、及び配列番号12に示される。13H5、13H7及び7H9のVのCDR2のアミノ酸配列は、配列番号13、14、及び15に示される。13H5、13H7及び7H9のVのCDR3のアミノ酸配列は、配列番号16、配列番号17、及び配列番号18に示される。CDR領域は、Kabatシステム(Kabat.E.A.他、(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U.S.Department of Health and Human Services,NIHPulibcation No.91−3242)を用いて図示される。
【0056】
これらの各抗体はIFN結合活性に基づいて選択され、抗原結合特異性がCDR1、CDR2、及びCDR3領域によって最初に与えられる場合、VのCDR1、2、及び3配列、及びVのCDR1、2、及び3配列を“混ぜて合わせる”ことによって、本発明の他の抗IFNα分子を生成する(すなわち、異なる抗体に由来するCDRを混ぜて合わせるが各抗体はVのCDR1、CDR2、及びCDR3、及びVのCDR1、CDR2、及びCDR3を含む必要がある)。そのような“混ぜて合わせられる”抗体のIFNα結合は、実施例に記載される結合検定(例えば、ELISA及び/又はBiacore)を用いて検査される。好ましくは、VのCDR配列を混ぜて合わせると、特定のV配列に由来するCDR1、CDR2、及び/又はCDR3の配列は、構造的に類似したCDR配列に置き換えられる。同様に、VのCDR配列を混ぜて合わせると、特定のV配列に由来するCDR1、CDR2、及び/又はCDR3の配列は、構造的に類似したCDR配列に置き換えられる。例えば、13H5及び7H9のVのCDR1は、いくつかの構造の類似性を共有する。当業者にとって、新規的なV配列及びV配列は、モノクローナル抗体13H5、13H7、及び7H9として本願明細書に開示されたCDR配列に由来する構造的に類似した配列と、1個以上のV及び/又はVのCDR領域配列とを置換して生成されることは明らかである。
【0057】
従って、別の実施態様において、本発明は、
(a)配列番号1、配列番号2、及び配列番号3からなるグループから選択されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域のCDR1と、
(b)配列番号4、配列番号5、及び配列番号6からなるグループから選択されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域のCDR2と、
(c)配列番号7、配列番号8、及び配列番号9からなるグループから選択されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域のCDR3と、
(d)配列番号10、配列番号11、及び配列番号12からなるグループから選択されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域のCDR1と、
(e)配列番号13、配列番号14、及び配列番号15からなるグループから選択されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域のCDR2と、
(f)配列番号16、配列番号17、及び配列番号18からなるグループから選択されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域のCDR3と、を含み、
インターフェロンαの生物活性を阻害する単離したモノクローナル抗体又はその抗原結合部分を提供する。
【0058】
好ましい実施形態において、抗体は、
(a)配列番号1からなる重鎖可変領域のCDR1と、
(b)配列番号4からなる重鎖可変領域のCDR2と、
(c)配列番号7からなる重鎖可変領域のCDR3と、
(d)配列番号10からなる軽鎖可変領域のCDR1と、
(e)配列番号13からなる軽鎖可変領域のCDR2と、
(f)配列番号16からなる軽鎖可変領域のCDR3と、を含む。
【0059】
別の好ましい実施形態においては、抗体は、
(a)配列番号2からなる重鎖可変領域のCDR1と、
(b)配列番号5からなる重鎖可変領域のCDR2と、
(c)配列番号8からなる重鎖可変領域のCDR3と、
(d)配列番号11からなる軽鎖可変領域のCDR1と、
(e)配列番号14からなる軽鎖可変領域のCDR2と、
(f)配列番号17からなる軽鎖可変領域のCDR3と、を含む。
【0060】
別の好ましい実施形態においては、抗体は、
(a)配列番号3からなる重鎖可変領域のCDR1と、
(b)配列番号6からなる重鎖可変領域のCDR2と、
(c)配列番号9からなる重鎖可変領域のCDR3と、
(d)配列番号12からなる軽鎖可変領域のCDR1と、
(e)配列番号15からなる軽鎖可変領域のCDR2と、
(f)配列番号18からなる軽鎖可変領域のCDR3と、を含む
【0061】
[特定の生殖系列配列を有する抗体]
ある実施形態において、本発明の抗体は、特定の生殖系列の重鎖免疫グロブリン遺伝子に由来する重鎖可変領域、及び/又は特定の生殖系列の軽鎖免疫グロブリン遺伝子に由来する軽鎖可変領域からなる。
【0062】
例えば、好ましい実施形態においては、本発明は、
(a)ヒトVH 1−18又は4−61遺伝子の重鎖可変領域と、
(b)ヒトVk A27遺伝子の軽鎖可変領域と、を含み、
(c)インターフェロンαの生物活性を阻害する単離したモノクローナル抗体又はその抗原結合部分を提供する。
【0063】
一実施形態において、抗体は、ヒトVH 1−18遺伝子の重鎖可変領域を含む。VH 1−18のVH遺伝子配列及びVk A27のVk遺伝子配列を有する抗体は、13H5及び7H9を含む。別の実施形態において、抗体は、ヒトVH 4−61遺伝子の重鎖可変領域を含む。VH 4−61VH遺伝子配列及びVk A27のVk遺伝子配列を有する抗体は、例えば、13H7である。
【0064】
抗体の可変領域がヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子を用いた系から得られる場合、本願明細書で使われるヒト抗体は、特定の生殖系列の配列“の”(産生物)、又は特定の生殖系列の配列“に由来する”(産生物)の重鎖又は軽鎖可変領域からなる。そのような系は、注目される抗原とともにヒト免疫グロブリン遺伝子を有する形質転換マウスに免疫性を持たせること、又は注目する抗原とともにファージ上に表わされるヒト免疫グロブリン遺伝子ライブラリーを選別することを含む。ヒト生殖系列の免疫グロブリン配列“の”(産生物)、又はヒト生殖系列の免疫グロブリン配列“に由来する”(産生物)のヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリンのアミノ酸配列とヒト抗体のアミノ酸配列を比較して、及びヒト抗体の配列と配列上最も近い(すなわち、相同性が最も大きい)ヒト生殖系列免疫グロブリン配列を選択してヒト抗体を同定する。特定のヒト生殖系列免疫グロブリン配列“の”(産生物)、又は特定のヒト生殖系列免疫グロブリン配列“に由来する”ヒト抗体は、例えば、自然発生的に起こる体細胞突然変異又は部位特異変異の計画的に導入するために、生殖系列の配列と比較した場合にアミノ酸の違いを含む。しかしながら、一般的に、選択されるヒト抗体は、アミノ酸配列において、ヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子によってコードしたアミノ酸配列と、少なくとも90%相同し、他の種の生殖系列の免疫グロブリンのアミノ酸配列と比較してヒト抗体であると同定するアミノ酸残基を含む。ヒト抗体は、アミノ酸配列において、生殖系列の免疫グロブリン遺伝子によってコードしたアミノ酸配列と、少なくとも95%、好ましくは96〜99%相同する。一般的に、特定のヒト生殖系列の配列に由来するヒト抗体は、ヒト生殖系列によってコードしたアミノ酸配列と10アミノ酸程の違いしか示さない。ある状況において、ヒト抗体は、生殖系列の免疫グロブリン遺伝子によってコードしたアミノ酸配列と5個、好ましくは4〜1個のアミノ酸の違いしか示さない。
【0065】
[同種抗体]
さらに別の実施形態において、本発明の抗体は、本願明細書に記載される好ましい抗体のアミノ酸配列と類似するアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び軽鎖可変領域からなり、本発明の抗IFNα抗体の望ましい機能特性を保持する。
【0066】
例えば、本発明は、重鎖可変領域と、軽鎖可変領域と、を含み、
(a)重鎖可変領域は、配列番号19、配列番号20、及び配列番号21からなるグループから選択されるアミノ酸配列と、少なくとも80%相同するアミノ酸配列と、を含み、
(b)軽鎖可変領域は、配列番号22、配列番号23、及び配列番号24からなるグループから選択されるアミノ酸配列と、少なくとも80%相同するアミノ酸配列と、を含み、
(c)IFNαサブタイプの生物活性を阻害するが、IFNα21の生物活性を実質的に阻害せず、
(d)
(i)IFNβ又はIFNωの生物活性を実質的に阻害せず、
(ii)末梢血単核細胞のCD38又はMHCクラスIのIFNによって誘導される表面発現を阻害する、
(iii)末梢血単核細胞によるIP−10のIFNによって誘導される発現を阻害する、
(iv)全身エリテマトーデス(SLE)血漿が仲介する樹状細胞の成長を阻害する、(i)〜(iv)の特性のうち少なくとも1つを示す、
単離したモノクローナル抗体又はその抗原結合部分を提供する。
【0067】
他の実施形態において、V及び/又はVのアミノ酸配列は、上記に記載される配列と85〜99%相同する。配列番号19、配列番号20、及び配列番号21と配列番号22、配列番号23、及び配列番号24のそれぞれにおいて高い相同性(すなわち80%以上の相同性)を有するV領域及びV領域を有する抗体は、配列番号19、配列番号20、及び配列番号21、及び/又は配列番号22、配列番号23、及び配列番号24をコードする核酸分子の変異(例えば、部位特異変異、又はPCR変異)によって得られ、本願明細書に記載される機能検定を用いて、保持機能(すなわち、上記の(c)及び(d))について、コードした変異抗体の検査を行う。
【0068】
本願明細書で使われる2個のアミノ酸配列の間のパーセント類似性は、2個の配列の間の相同性に相当する。2個の配列の間の相同性は、2個の配列の最適なアラインメントを導くために必要なギャップの数及びギャップの長さを考慮に入れ、配列が共有する相同的な部位の数(すなわち、相同性%=相同的な部位の数/部位の数の全体×100)の関数である。配列の比較、及び相同性の決定は、以下の非限定的な実施例に記載される数学的なアルゴリズムを用いて行われる。
【0069】
2個の配列間の相同性は、PAM120残基重みテーブル、12のギャップ長ペナルティ、及び4のギャップペナルティを用いたALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれたE.MeyersとW.Millerのアルゴリズム(Comput.Appl.Biosci.,4:11−17(1988))を用いて決定する。さらに、2個のアミノ酸配列間の相同性は、Blossum62マトリクス又はPAM250マトリクス、及び16、14、12、10、8,6、又は4のギャップ重み、及び1、2、3、4、5、又は6の長さ重みを用いたGCGソフトウェアパッケージ(http://www.gcg.comで入手可能)のGAPプログラムに組み込まれたNeedlemanとWunschのアルゴリズム(J.Mol.Biol.48:444−453(1970))を用いて決定する。
【0070】
または、本発明のタンパク質配列は、例えば、関連した配列を同定するための公共のデータベースに対して検索を行う“問合せ配列”としてさらに使用する。そのような検索は、Altschul他、(1990)J.Mol.Biol.215:413−10のXBLASTプログラム(バージョン2.0)を用いて行うことができる。BLASTタンパク質検索は、本発明の抗体分子に対するアミノ酸配列類似性を得るために、スコア=50、語の長さ=3の条件でXBLASTプログラムを用いて行われる。比較の目的でギャップの入ったアラインメントを得るために、Gapped BLASTを「Altschul他、(1997)Nucleic Acids Res.25(17):3389−3402」に記載されるようにして用いる。BLAST及びGapped BLASTを用いる場合、それぞれのプログラム(例えば、XBLAST及びNBLAST)の初期のパラメーターが使われる。http://www.ncbi.nlm.nih.govを参照。
【0071】
[抗体内の保存的修飾]
ある実施形態において、本発明の抗体は、CDR1、CDR2及びCDR3からなる重鎖可変領域、及びCDR1、CDR2及びCDR3からなる軽鎖可変領域からなり、1個以上のCDR配列は、本願明細書に記載される好ましい抗体(例えば、13H5、13H7、又は7H9)に基づく特異的なアミノ酸配列、又は該アミノ酸配列内の保存的修飾からなる。抗体は、本発明の抗IFNα抗体の望ましい機能特性を保持する。例えば、本発明の好ましい抗体は、重鎖可変領域のCDR3配列が配列番号3のアミノ酸配列、又は該アミノ酸配列内の保存的修飾からなり、軽鎖可変領域のCDR3配列が配列番号6のアミノ酸配列、又は該アミノ酸配列内の保存的修飾を含む。従って、本発明は、CDR1、CDR2、及びCDR3からなる重鎖可変領域、及びCDR1、CDR2、及びCDR3からなる軽鎖可変領域を含み、
(a)重鎖可変領域のCDR3配列は、配列番号7、配列番号8、及び配列番号9のアミノ酸配列、及び該アミノ酸配列内の保存的修飾からなるグループから選択され、
(b)軽鎖可変領域のCDR3配列は、配列番号16、配列番号17、及び配列番号18のアミノ酸配列、及び該アミノ酸配列内の保存的修飾からなるグループから選択され、
(c)複数のIFNαサブタイプの生物活性を阻害するが、IFNα21の生物活性を阻害せず、
(d)
(i)IFNβ又はIFNωの生物活性を実質的に阻害せず、
(ii)末梢血単核細胞のCD38又はMHCクラスIのIFNが誘導する表面発現を阻害し、
(iii)末梢血単核細胞のIP−10のIFNが誘導する発現を阻害する、
(iv)全身エリテマトーデス(SLE)血漿が仲介する樹状細胞の成長を阻害する、(i)〜(iv)の特性のうち少なくとも1つを示す、
単離したモノクローナル抗体又はその抗原結合部分を提供する。
【0072】
さらなる実施形態において、重鎖可変領域のCDR2配列は、配列番号4、配列番号5、及び配列番号6のアミノ酸配列、及び該アミノ酸配列内の保存的修飾からなるグループから選択され、軽鎖可変領域のCDR2配列は、配列番号13、配列番号14、及び配列番号15、及び該アミノ酸配列内の保存的修飾からなるグループから選択される。さらなる実施形態において、重鎖可変領域のCDR1の配列が、配列番号1、配列番号2、及び配列番号3のアミノ酸配列、及び該アミノ酸配列内の保存的修飾からなるグループから選択され、軽鎖可変領域のCDR1の配列は、配列番号10、配列番号11、及び配列番号12のアミノ酸配列、及び該アミノ酸配列内の保存的修飾からなるグループから選択される。
【0073】
本願明細書で使われる、“配列内の保存的修飾”という用語は、アミノ酸配列を含む抗体の結合特性に実質的に影響しない又はそれを変えない、アミノ酸変異について言及することが意図される。そのような保存的修飾は、アミノ酸の置換、付加、及び欠失を含む。部位特異変異及びPCRに仲介された変異などの従来公知の標準技術によって、本発明の抗体は変異する。アミノ酸内の保存的修飾とは、アミノ酸残基が、類似した側鎖を有するアミノ酸残基と置換されることである。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、技術的に定義される。ファミリーは、塩基性の側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性の側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、電荷のない極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、β分枝側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)、及び芳香族側鎖(チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を持つアミノ酸を含む。従って、本発明の抗体のCDR領域内で1個以上のアミノ酸残基は、同じ側鎖ファミリーに由来する他のアミノ酸残基で置換することができ、変異した抗体については、本願明細書に記載される機能検定を用いて保持機能(すなわち、上記の(c)及び(d))を検査することができる。
【0074】
[本発明の抗IFNα抗体と同じエピトープに結合する抗体]
別の実施形態において、本発明は、本願明細書に記載される13H5、13H7、及び7H9抗体と同じエピトープに結合する他のヒト抗体などの本願明細書に記載される本発明の様々なヒトIFNα抗体が結合する抗体と同じエピトープに結合する抗体を提供する。そのような抗体は、標準的なIFNα結合検定において、13H5、13H7又は7H9などの本発明の他の抗体と交差競合する(例えば、統計的に重要な様式で結合を競合的に阻害する)能力に基づいて同定される。例えば、実施形態において示すように、Biacore分析を用いて13H5はIFNα2a及びIFNα2bと高い親和性で結合する。従って、一実施形態において、本発明は、本発明の別の抗体(例えば、13H5、13H7又は7H9)と、IFNα2a又はIFNα2bとの結合について競合する抗体、好ましくはヒト抗体を提供する。例えば、13H5、13H7又は7H9のIFNα2a又はIFNα2bとの結合を阻害する検査抗体の能力は、検査抗体がIFNα2a又はIFNα2bと結合する抗体と競合することを示す。このような抗体は、非限定的な理論によれば、競合する抗体とは、IFNα2a又はIFNα2b上の同じ、又は関連した(例えば、構造的に類似した又は空間的に近接した)エピトープに結合する。好ましい実施形態において、例えば、13H5、13H7又は7H9が、IFNα2a又はIFNα2b上の同じエピトープに結合する抗体は、ヒトモノクローナル抗体である。そのようなヒトモノクローナル抗体は、実施例において記載されるように調製され、単離される。
【0075】
[改変抗体及び変異抗体]
さらに、本発明の抗体は、最初の抗体の特性が変化した変異抗体へと改変する出発材料として、本願明細書に開示する1個以上のV配列及び/又はV配列を有する抗体を用いて調製する。例えば、1個以上のCDR領域内、及び/又は1個以上のフレームワーク領域内の1個又は両方の可変領域(すなわち、V及び/又はV)の1個以上の残基を変異して、抗体を改変する。また、例えばその抗体のエフェクター機能を変化させるために、定常領域内の残基を変異して抗体を改変する。
【0076】
形変が行われる可変領域の1つのタイプはCDR移植である。抗体は、6つの重鎖及び軽鎖の相補性決定領域(CDR)に位置づけられたアミノ酸残基を通して、標的抗原と優勢に相互作用する。従って、CDR内のアミノ酸配列は、CDRの外側の配列よりも、個々の抗体の間で多様となる。CDR配列は、ほとんどの抗体−抗原相互作用を担うため、異なる特性を持つ抗体に由来するフレームワーク配列上に移植した天然の特異抗体に擬似のCDR配列を含む、発現ベクターを構築することによって、天然の抗体の特性を真似る組み換え抗体の発現が可能である(例えば、Riechmann,L.他、(1998)Nature 332:323−327;Jones,P.他、(1986)Nature 321:522−525;Queen,C.他、(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.86:10029−10033;Winterらの米国特許第5,225,539号明細書;及びQueenらの米国特許第5,530,101号明細書;米国特許第5,585,089号明細書;米国特許第5,693,762、及び米国特許第6,180,370号明細書を参照)。
【0077】
従って、本発明の別の実施形態は、配列番号1、配列番号2、及び配列番号3と、配列番号4、配列番号5、及び配列番号6と、配列番号7、配列番号8、及び配列番号9のアミノ酸配列からなるグループからそれぞれ選択されるCDR1、CDR2、及びCDR3の配列を含む重鎖可変領域と、配列番号10、配列番号11、及び配列番号12と、配列番号13、配列番号14、及び配列番号15と、配列番号16、配列番号17、及び配列番号18のアミノ酸配列からなるグループからそれぞれ選択されるCDR1、CDR2、及びCDR3の配列を含む軽鎖可変領域と、を含む、単離したモノクローナル抗体又はその抗原結合部分に関する。従って、そのような抗体は、モノクローナル抗体13H5、13H7、又は7H9のV及びVのCDRの配列を含み、さらにこれらの抗体に由来する異なるフレームワーク配列を含む。
【0078】
そのようなフレームワーク配列は、公共のDNAデータベース、又は生殖系列の抗体遺伝子配列を含む公開された参考文献から得られる。例えば、ヒトの重鎖及び軽鎖可変領域遺伝子の生殖系列のDNA配列は、“VBase”ヒト生殖系列配列データベース(www.mrc−cpe.cam.ac.uk/vbaseで利用可能)と、「Kabat,E.A.,他、(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91−3242;Tomlinson,I.M.,他、(1992)“The Repertoire of Human Germline VH Sequences Reveals about Fifty Groups of VH Segments with Different Hypervariable Loops”J.Mol.Biol.227:776−798;及びCox,J.P.L.他、(1994)“A Directory of Human Germ−line VH Segments Reveals a Strong Bias in their Usage”Eur.J.Immunol.24:827−836」の内容は明示的に本願明細書に引用されて援用する。
【0079】
本発明の抗体の使用のための好ましいフレームワーク配列は、本発明の選択される抗体によって使われるフレームワーク配列に構造的に類似したものであり、例えば、本発明の好ましいモノクローナル抗体によって使われるVH 1−18又は4−61及びVK A27フレームワーク配列に類似する。VのCDR1、CDR2、及びCDR3の配列、及びVのCDR1、CDR2、及びCDR3の配列は、フレームワーク配列に由来する生殖系列の免疫グロブリン遺伝子に見られるのと同じ配列を有するフレームワーク領域上に移植されるか、又はそのCDR配列は、生殖系列の配列と比較し、1個以上の変異を含むフレームワーク領域上に移植される。例えば、抗体の抗原結合能力を調節又は向上させるフレームワーク領域内の残基を変異させることは有益であるということが見出される(例えば、Queenの米国特許第5,530,101;米国特許第5,585,089;米国特許第5,693,762及び米国特許第6,180,370号明細書を参照)。
【0080】
可変領域の変異の別のタイプは、注目する抗体の1個以上の結合特性(親和性)を改善することによって、V及び/又はVのCDR1、CDR2、及び/又はCDR3領域内でアミノ酸残基を変異させる。部位特異変異又はPCR変異は、変異の導入のために行われ、抗体の結合又は他の注目される機能特性上の効果は、本願明細書及び実施例に記載されるin vitro又はin vivoの検定において評価する。上記に記載される好ましい保存的修飾が導入される。変異は、アミノ酸の置換、付加、又は欠失であるが、好ましくは置換である。さらに、一般的に、CDR領域内の変化される1〜5個の残基が変化する。
【0081】
従って、別の実施形態において、本発明は、(a)配列番号1、配列番号2、及び配列番号3のアミノ酸配列又は配列番号1、配列番号2、及び配列番号3と比較して1〜5個のアミノ酸置換、欠失、又は付加を有するアミノ酸配列からなるグループから選択されるVのCDR1領域と、(b)配列番号4、配列番号5、及び配列番号6のアミノ酸配列、又は配列番号4、配列番号5、及び配列番号6と比較して1〜5個のアミノ酸置換、欠失、又は付加を有するアミノ酸配列からなるグループから選択されるVのCDR2領域と、(c)配列番号7、配列番号8、及び配列番号9のアミノ酸配列、又は配列番号7、8、及び9と比較して1〜5個のアミノ酸置換、欠失、又は付加を有するアミノ酸配列からなるグループから選択されるVのCDR3領域と、(d)配列番号10、配列番号11、及び配列番号12のアミノ酸配列又は配列番号10、配列番号11、及び配列番号12と比較して1〜5個のアミノ酸置換、欠失、又は付加を有するアミノ酸配列、からなるグループから選択されるVのCDR1領域と、(e)配列番号13、配列番号14、及び配列番号15のアミノ酸配列、又は配列番号13、配列番号14、及び配列番号15と比較して1〜5個のアミノ酸置換、欠失、又は付加を有するアミノ酸配列からなるグループから選択されるVのCDR2領域と、(f)配列番号16、配列番号17、及び配列番号18のアミノ酸配列、又は配列番号16、配列番号17、及び配列番号18と比較して1〜5個のアミノ酸置換、欠失、又は付加を有するアミノ酸配列からなるグループから選択されるVのCDR3領域とを含む重鎖可変領域を含む、単離した抗IFNαモノクローナル抗体又はその抗原結合部分を提供する。
【0082】
本発明の改変された抗体は、例えば、特性を改善するようにV及び/又はV内のフレームワーク残基の変異も含む。一般的に、フレームワークの変異は、抗体の免疫原性を減少させる。例えば、1つの手段は、1個以上のフレームワーク残基を対応する生殖系列の配列に“逆突然変異”させることである。具体的に、体細胞変異を受けた抗体は、抗体の由来する生殖系列の配列から異なるフレームワーク残基を含む。そのような残基は、抗体の由来する生殖系列の配列と、抗体のフレームワーク配列を比較することによって同定される。例えば、13H5について、Vのアミノ酸残基番号81(FR3内)は、ロイシンであり、VH 1−18生殖系列の配列に相当する残基はメチオニンである(図4参照)。フレームワーク領域の配列を生殖系列の構成に戻すため、体細胞変異は、例えば、部位特異変異又はPCR変異によって生殖系列の配列に“逆突然変異”する(例えば、13H5のVの残基81は、ロイシンからメチオニンに“逆突然変異”する)。そのような“逆突然変異”された抗体も本発明に含まれるということが意図される。
【0083】
フレームワーク変異の別のタイプは、抗体の有力な免疫原性を減少させることによって、T細胞のエピトープを除去するフレームワーク領域内、又は1個以上のCDR領域の1個以上の残基を変異させることを含む。この手段はまた、“脱免疫化”と呼ばれ、Carr他の米国特許公開第20030153043号明細書に詳細に記載される。
【0084】
さらにまた、フレームワーク又はCDR領域内の変異のため、本発明の抗体は、血清の半減期、補体結合、Fc受容体結合、及び/又は抗原依存的な細胞毒性など抗体の1個以上の機能特性を一般的に変化させるFc領域内の変異を含むように改変する。さらに、本発明の抗体は、化学的に変異(例えば、1個以上の化学的部分が抗体に結合する)、又は糖鎖形成と抗体の1個以上の機能特性を変化させるように変異する。これらの実施例は、以下に詳細に記載される。Fc領域の残基の番号付けは、KabatのEU指標のものである。
【0085】
一実施形態において、CH1のヒンジ領域は、ヒンジ領域中のシステイン残基の数が変わる、例えば、増加する又は減少するように変異される。この手段は、Bodmerの米国特許第5,677,425号明細書に記載される。CH1のヒンジ領域のシステイン残基の数は、例えば、軽鎖と重鎖の結合を容易にする、又は抗体の安定性を増加又は減少させるために変化する。
【0086】
別の実施形態においては、抗体のFcヒンジ領域は、抗体の生物学的な半減期を減少させるために変異させる。具体的には、1個以上のアミノ酸の変異は、抗体が天然のFc−ヒンジドメインのスタフィロコッカス属タンパク質A(SpA)の結合と比較して、SpAの結合が損なわるFc−ヒンジ断片のCH2−CH3ドメインの接点領域に導入される。この手段は、Ward他の米国特許第6,165,745号明細書に詳細に記載される。
【0087】
別の実施形態において、抗体は、その生物学的な半減期を増加させるために変異される。例えば、Wardに対する米国特許第6,277,375に記載されるように、1個以上の変異(T252L、T254S、T256F)が導入される。また、Presta他の米国特許第5,869,046号明細書及び米国特許第6,121,022号明細書に記載されるように、抗体は、生物学的な半減期を増加させるため、IgGのFc領域のCH2ドメインの2個のループから受け継がれる再利用受容体結合エピトープを含むCH1又はCL領域内で変化する。
【0088】
さらに他の実施形態において、Fc領域は、少なくとも1個のアミノ酸残基を、抗体のエフェクター機能を変化させる異なるアミノ酸残基で置換することによって変化する。例えば、234、235、236、237、297、318、320及び322のアミノ酸残基から選択される1個以上のアミノ酸は、抗体とエフェクターリガンドとの親和性を変化させるが、元の抗体の抗原結合能力を保持するように、異なるアミノ酸残基で置換する。親和性が変化したエフェクターリガンドは、例えば、Fc受容体又は補体のC1成分である。この手段は、Winter他の米国特許第5,624,821号明細書及び米国特許5,648,260号明細書に詳細に記載される。
【0089】
別の実施形態において、アミノ酸残基329、331及び332から選択される1個以上のアミノ酸は、抗体がC1q結合を変化させ、及び/又は補体依存的な細胞毒性(CDC)を減少又は消滅させる異なるアミノ酸残基で置換される。この手段は、Idusogie他の米国特許第6,194,551号明細書に詳細に記載される。
【0090】
別の実施形態においては、アミノ酸位置231及び239内の1個以上のアミノ酸残基は、補体を固定する抗体の能力を変化させる。この手段は、Bodmer他の国際公開第94/29351号明細書に記載される。
【0091】
さらに別の実施形態においては、Fc領域が、抗体依存的な細胞毒性(ADCC)を仲介する抗体の能力を向上させる、及び/又は以下の位置において1個以上のアミノ酸の変異によってFcγ受容体に対する抗体の親和性を向上させるように変異される:238、239、248、249、252、254、255、256、258、265、267、268、269、270、272、276、278、280、283、285、286、289、290、292、293、294、295、296、298、301、303、305、307、309、312、315、320、322、324、326、327、329、330、331、333、334、335、337、338、340、360、373、376、378、382、388、389、398、414、416、419、430、434、435、437、438又は439。この手段は、Prestaによる国際公開第00/42072号明細書に記載される。さらに、ヒトIgG1上の、FcγR1、FcγRII、FcγRIII及びFcRnに対する結合部位が位置づけられ改善した結合を持つ変異体について記載される(Shields,R.L.他、(2001)J.Biol.Chem.276:6591−6604を参照)。位置256、290、298、333、334及び339での特異変異は、FcγRIIIとの結合を改善させることを示す。さらに、これらの組み合わせ(T256A/S298A,S298A/E333A,S298A/K224A及びS298A/E333A/K334A)の変異がFcγRIII結合を改善させることが示す。
【0092】
さらに別の実施形態において、抗体の糖鎖形成が変異(欠如)する。例えば、糖鎖形成のない抗体が生成される。糖鎖形成は、例えば、抗原に対する抗体の親和性を向上させるために変化する。糖質の変異は、例えば、抗体配列内の1個以上の糖鎖形成の部位を変えることによって達成する。例えば、1個以上のアミノ酸は、部位における成を除去することによって、1個以上の可変領域フレームワークの糖鎖形成部位の除去をもたらすように置換される。このような脱糖鎖形成は、抗原に対する抗体の親和性を向上させる。そのような手段は、Co他の米国特許第5,714,350号明細書及び米国特許第6,350,861号明細書に記載される。
【0093】
また、抗体は、フコシル残基の量が減少したハイポフコシル化抗体又は交差したGlcNac構造が増加した抗体などの糖鎖形成の変化したタイプを有するように生成される。このように変化した糖鎖形成パターンには、抗体のADCC能力を増加させることが示される。そのような糖質の変異は、例えば、糖鎖形成の機構を変化させた宿主細胞中で抗体を発現させることによって行われる。糖鎖形成の機構が改変した細胞は、従来的に記載されており、糖鎖形成が改変した抗体を産生することによって、本発明の組み換え抗体を発現する宿主細胞として使われる。例えば、Hanai他の欧州特許第1,176,195号明細書は、ハイポフコシル化を示す細胞株中に発現したフコシルトランスフェラーゼをコードするFUT8遺伝子を機能的に破壊した細胞株について記載する。Prestaによる国際公開第03/035835号明細書は、Asn(297)に結合した糖質にフコースが結合する能力を減少させた変異体CHO細胞株であるが、Lee13細胞もまた、宿主細胞中で発現された抗体のハイポフコシル化をもたらすことが記載されている(Shields,R.L.et al.(2002)J.Biol.Chem.277:26733−26740も参照)。Umana他の国際公開第99/54342号明細書には、抗体のADCC活性の増加をもたらすGlcNac構造の二分の増加を示す改変した細胞株において抗体を発現させるように、糖タンパク質−変異グリコシルトランスフェラーゼ(例えば、β(1,4)−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII))を発現するために改変された細胞株が記載されている(Umana他(1999)Nat.Biotech.17:176−180も参照)。
【0094】
本発明によって検討される抗体の別の変異は、ペグ化である。抗体は、例えば、抗体の生物学的な(例えば、血清)半減期を増加させるためにペグ化する。一般的に、抗体をペグ化するため、抗体又はその断片は、1個以上のポリエチレングリコール(PEG)基が抗体又は抗体断片に結合する条件下で、PEGの反応性のあるエステル又はアルデヒド誘導体などのPEGと反応する。好ましくは、ペグ化は、反応性のPEG分子(又は類似の反応性な水可溶性ポリマー)とのアシル化反応又はアルキル化反応によって行われる。本願明細書で使われる、“ポリエチレングリコール”という用語は、モノ(C1−C10)アルコキシ−ポリエチレングリコール又はポリエチレングリコール−マレイミド、又はアリロキシ−ポリエチレングリコール又はポリエチレングリコール−マレイミドなどの、他のタンパク質を誘導化するために使われるPEGのいずれの形も含むことが意図される。ある実施形態において、ペグ化される抗体は、糖鎖形成のない抗体である。タンパク質をペグ化する方法は従来公知であり、本発明の抗体にも適用される(Nishimura他の欧州特許第0,154,316号明細書、及びIshikawa他の欧州特許第0,401,384号明細書を参照)。
【0095】
[安定性が向上した変異抗体]
別の実施態様において、本発明は、野生型の13H5と比べて向上した安定性を示す、13H5抗体の変異型を供給する。実施例10において詳細に記載されるように、13H5抗体は、V鎖のCDR2内のAsn−55に脱アミド部位を含む。この部位、位置55〜58のアミノ酸配列は、NGNTである(配列番号19のアミノ酸残基55〜58)。従って、ある実施形態において、13H5のV鎖のアミノ酸配列は、位置55においてアスパラギンから異なるアミノ酸に変異される。位置55での好ましいアミノ酸置換は、アスパラギン酸及びグルタミンを含み、グルタミンがより好ましい。N55D置換を持つ13H5のアミノ酸配列は、配列番号34に示される。N55Q置換を持つ13H5のアミノ酸配列は、配列番号35に示される。別の実施形態において、Asn−55の変異と共に13H5のV鎖のAsn−57も変異する。位置57での好ましいアミノ酸置換はグルタミンである。N55Q及びN57Q置換を持つ13H5のアミノ酸配列は、配列番号36に示される。これら3つの変異した抗体は、実施例11において記載されるように、野生型の13H5と比較して、強制的な脱アミド化条件下において、安定性の向上が示される。
【0096】
別の実施形態において、アミノ酸位置56のグリシンは、アラニンに変異され(G56A)、脱アミド化の速度が、アラニンに隣接したグリシンよりアラニンが約20倍遅いということがモデルペプチドから測定される(Ahern,T.and Manning,M.C.,eds.Stability of Protein Pharmaceuticals,Pharmaceutical Biotechnology,volume 2,1章,1−30ページを参照)。従って、G56A変異は、反応性の減少と野生型配列からの構造変化との間のバランスを示すので、活性を調節する間に安定性を向上させる。G56A置換を持つ13H5のアミノ酸配列は、配列番号37に示される。
【0097】
従って、様々な実施形態において、本発明は、配列番号19に示された野生型の配列の13H5V鎖のCDR2におけるAsn−55、Gly−56及び/又はAsn−57におけるアミノ酸置換を有するIFNα抗体を提供する。好ましい変異抗体は、配列番号34、35、36及び37からなるグループから選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。好ましくは、抗体のV鎖は、配列番号22に示される13H5のVK鎖とペアさせる。
【0098】
[抗体を改変する方法]
上記に記載されるように、本願明細書に公開されたVH配列及びVL配列を有する抗IFNα抗体は、VH配列及び/又はVL配列、又はそれに結合した定常領域を変異させることによって、新しい抗IFNα抗体を生成するために使われる。従って、本発明の別の実施態様において、本発明の抗IFNα抗体、例えば、13H5、13H7、又は7H9の構造上の特徴は、IFNαに結合する本発明の抗体の少なくとも1個の機能特性を保持する構造上関連した抗IFNα抗体を生成するために使われる。例えば、13H5、13H7又は7H9の1個以上のCDR領域、又はその変異体は、上記に記載されるように、付加的又は組み換え的に改変した本発明の抗IFNα抗体を生成するために、既知のフレームワーク領域及び/又は他のCDRと組み換え的に結合する。他のタイプの変異は上記に記載される変異を含む。改変方法に必要な出発材料は、本願明細書で提供されたV配列及び/又はV配列の1個以上、又はその1個以上のCDR領域である。改変された抗体を生成するために、本願明細書で提供されたV配列及び/又はV配列の1個以上、又はその1個以上のCDR領域を有する抗体を調製する(すなわち、タンパク質として発現させる)必要はない。むしろ、配列に含まれる情報は、元の配列に由来する“第2世代の”配列を生成するために出発材料として使われ、“第2世代の”配列が調製され、タンパク質として発現させる。
【0099】
従って、別に実施形態において、本発明は、
(a)
(i)配列番号1、配列番号2及び配列番号3からなるグループから選択されるCDR1のアミノ酸配列、及び/又は配列番号4、配列番号5、及び配列番号6からなるグループから選択されるCDR2のアミノ酸配列、及び/又は配列番号7、8、及び9からなるグループから選択されるCDR3のアミノ酸配列と、
(ii)配列番号10、配列番号11、及び配列番号12からなるグループから選択されるCDR1のアミノ酸配列、及び/又は配列番号13、配列番号14、及び配列番号15からなるグループから選択されるCDR2のアミノ酸配列、及び/又は配列番号13、配列番号14、及び配列番号15からなるグループから選択されるCDR3のアミノ酸配列と、を含む重鎖可変領域の抗体配列を提供し、
(b)重鎖可変領域抗体配列及び/又は軽鎖可変領域抗体配列の少なくとも1個のアミノ酸残基を少なくとも1個の変化した抗体配列を生成するために変えることと、
(c)変化した抗体配列をタンパク質として発現させること、とを含む抗IFNα抗体の調製方法を提供する。
【0100】
標準的な分子生物学的な技術は、変化した抗体配列を調製し、及び発現させるために使われる。
【0101】
好ましくは、変化した抗体配列によってコードした抗体は、
(i)インターフェロンαの生物活性を阻害することと、
(ii)複数のIFNαサブタイプの生物活性を阻害するが、IFNα21の生物活性を実質的に阻害しないことと、
(iii)IFNβ又はIFNωの生物活性を実質的に阻害しないことと、
(iv)末梢血単核細胞におけるCD38又はMHCクラスIのIFNによって誘導される発現を阻害することと、
(v)末梢血単核細胞による、IP−10のIFNによって誘導される発現を阻害することと、
(vi)全身エリテマトーデス(SLE)血漿が仲介する、樹状細胞の成長を阻害することと、
(vii)ヒトインターフェロンα2aと高い親和性で結合することと、
(viii)ヒトインターフェロンα2bと高い親和性で結合することと、を含むが、これらに限定されず、本願明細書に記載される、抗IFNα抗体の1個、いくつか、又は全ての機能特性を保持する。
【0102】
変化した抗体の機能特性は、従来利用される検定、及び/又は本願明細書に記載される標準的な検定を用いて評価する。例えば、IFNαに結合するための抗体の能力は、実施例に記載されるような標準的な結合検定(例えば、ELISA及び/又はBiacore)を用いて決定する。インターフェロンαの様々な機能活性を阻害する抗体の能力は、実施例に記載される検定(例えば、Daudi細胞増殖、IFNよって誘導される細胞マーカーの発現、IFNによって誘導されるIP−10の発現など)によって決定される。
【0103】
本発明の改変した抗体の方法のある実施例において、変異は、抗IFNα抗体(例えば、13H5)をコードする配列の全体又は部分の間に、ランダムに又は選択的に導入して得られた抗IFNαの変異抗体は、本願明細書に記載される結合活性及び/又は他の機能特性によって選別される。変異の方法は従来的に記載される。例えば、Shortによる国際公開第02/092780号明細書は、サチュレーション突然変異誘発、合成的なライゲーション結合、又はその組み合わせを用いて、変異抗体を生成及び選別する方法を記載する。また、Lazer他の国際公開第03/074679号明細書は、抗体の生理化学的な特性を最適化するコンピュータースクリーニング法の使用の方法を記載する。
【0104】
[本発明の抗体をコードする核酸分子]
本発明の別の実施態様は、本発明の抗体をコードする核酸分子に関する。核酸は、細胞全体又は細胞溶解物中に部分的に精製した形又は実質的に純粋な形で存在する。核酸が、アルカリ/SDS処理、CsCl帯分画、カラムクロマトグラフィー、アガロースゲル電気泳動、及び他の従来公知の方法によって、核酸が、他の細胞成分、例えば、他の細胞の核酸又はタンパク質から精製される場合、“単離される”又は“実質的に純粋にされる”。F.Ausubel,et al.,ed.(1987)Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing and Wiley Interscience,New Yorkを参照。本発明の核酸は、例えば、DNA又はRNA及びイントロン配列を含む又は含まない。好ましい実施形態において、核酸はcDNA分子である。
【0105】
本発明の核酸は、標準的な分子生物学の手法を用いて得られる。ハイブリドーマ(例えば、以下に記載されるヒト免疫グロブリン遺伝子を有する形質転換マウスから調製したハイブリドーマ)によって発現された抗体について、ハイブリドーマによって生成した抗体の軽鎖及び重鎖をコードするcDNAは、標準的なPCR増幅手法又はcDNAクローニング手法によって得られる。免疫グロブリン遺伝子ライブラリーから得られた抗体(例えば、ファージディスプレイ手法を用いて)について、抗体をコードする核酸は、ライブラリーから回収される。
【0106】
本発明の好ましい核酸分子は、13H5、13H7、又は7H9モノクローナル抗体のV配列及びV配列をコードするものである。13H5、13H7、及び7H9のV配列をコードしたDNA配列は、配列番号25、配列番号26、及び配列番号27に示される。13H5、13H7、及び7H9のV配列をコードしたDNA配列は、配列番号28、配列番号29、及び配列番号30に示される。
【0107】
部分及びV部分をコードするDNA断片を得ると、DNA断片は、例えば、可変領域の遺伝子を抗体鎖全長の遺伝子、Fab断片の遺伝子、又はscFv遺伝子と変換するように標準的な組み換えDNA手法によって改変する。これらの改変において、V又はVをコードするDNA断片は、抗体定常領域又は柔軟なリンカーなどの別のタンパク質をコードする別のDNA断片へと改変可能となるように結合される。本願明細書で使われる“改変可能となるように結合される”という用語は、2個のDNAによってコードしたアミノ酸配列をつなげた2個のDNA断片が、フレームに分けたままで保持されることを意味することが意図される。
【0108】
領域をコードする単離したDNAは、V領域をコードするDNAを、重鎖定常領域(CH1、CH2及びCH3)をコードする別のDNA分子へと改変可能となるように結合することによって、重鎖遺伝子全長へと変換する。ヒト重鎖定常領域遺伝子の配列は従来公知であり、(例えば、Kabat,E.A.,el al.(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91−3242を参照)、これらの領域を含むDNA断片は、標準的なPCR増幅によって得られる。重鎖定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3。IgG4、IgGA、IgE、IgM又はIgD定常領域であり、好ましくは、IgG1又はIgG4の定常領域である。Fab断片の重鎖遺伝子について、V領域をコードするDNAは、重鎖CH1定常領域のみをコードする別のDNA分子に改変可能となるように結合する。
【0109】
領域をコードする単離したDNAは、V領域をコードするDNAを、軽鎖定常領域、CKをコードする別のDNA分子に改変可能な結合を行うことによって、軽鎖遺伝子全長(と同様にFab軽鎖遺伝子)へと変換する。ヒト軽鎖定常領域遺伝子の配列は従来公知であり(例えば、Kabat,E.A.,et al.(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91−3242を参照。)、これらの領域を含むDNA断片は、標準的なPCR増幅によって得られる。軽鎖定常領域はκ又はラムダ定常領域であり、好ましくはκ定常領域である。
【0110】
scFv遺伝子を生成するために、V及びVをコードする遺伝子断片は、例えば、柔軟なリンカーによってつながれたV領域及びV領域を持つ、隣接する単一鎖のタンパク質として発現するV配列及びV配列などのアミノ酸配列(Gly−Ser)をコードする柔軟なリンカーをコードする別の断片に改変可能な結合を行う(例えば、Bird et al.(1988)Science 242:423−426;Huston et al.(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879−5883;McCafferty et al.,(1990)Nature 348:552−554を参照)。
【0111】
[本発明のモノクローナル抗体の産生]
本発明のモノクローナル抗体(mAbs)は、例えば、KohlerとMilstein(1975)Nature 256:495の標準的な体細胞ハイブリダイゼーション手法などの、従来型のモノクローナル抗体方法論を含む、様々な方法によって産生される。体細胞ハイブリダイゼーション手法が好ましく、原則として、モノクローナル抗体を産生する他の手法、例えば、ウィルス又はBリンパ球のガン化などが行われる。
【0112】
ハイブリドーマを調製する好ましい動物系は、ネズミ系である。マウスにおけるハイブリドーマ産生は、非常に良く確立された手法である。融合のために免疫化された脾細胞の単離する免疫化手順及び手法は従来公知である。融合のパートナー(例えば、ネズミの骨髄腫細胞)及び融合の手法も公知である。
【0113】
本発明のキメラ抗体又はヒト化抗体は、上記に記載されるように調製したネズミのモノクローナル抗体の配列に基づいて調製される。重鎖及び軽鎖の免疫グロブリンをコードする遺伝子は、ネズミハイブリドーマから得られ、標準的な分子生物学の手法を用いて非ネズミ(例えば、ヒト)の免疫グロブリン配列を含むように改変する。例えば、キメラ抗体を生成するために、ネズミの可変領域が、従来公知の方法を用いてヒトの定常領域に結合する(例えば、Cabillv他の米国特許第4,816,567を参照)。ヒト化した抗体を生成するために、ネズミのCDR領域が、従来公知の方法を用いてヒトのフレームワークへと挿入される(Winterに対する米国特許第5,225,539、及びQueen他の米国特許第5,530,101号明細書;米国特許第5,585,089号明細書;米国特許第5,693,762号明細書及び米国特許第6,180,370号明細書を参照)。
【0114】
好ましい実施形態において、本発明の抗体は、ヒトモノクローナル抗体である。そのようなIFNαに向けられたヒトモノクローナル抗体は、マウスの系よりもむしろヒトの免疫系を持つ形質転換マウス又は染色体導入マウスを用いて生成する。これらの形質転換及び染色体導入マウスは、それぞれ本願明細書においてHuMAbマウス及びKMマウスと言及されたマウスを含み、本願明細書において集合的に“ヒトIgマウス”と言及される。
【0115】
HuMAbマウス(登録商標、Medarex社)は、位置が改変していないヒト重鎖(μ及びγ)及びκ軽鎖免疫グロブリン配列をコードするヒト免疫グロブリン小遺伝子座と共に、内因性のμ及びκ鎖部位を不活性化する標的変異を含む(例えば、Lonberg他(1994)Nature 368(6474):856−859を参照)。従って、マウスは、IgM又はκの発現の減少を示し、免疫化に対する応答においては、導入されたヒト重鎖及び軽鎖の導入遺伝子が、クラススイッチ、及び高親和性ヒトIgGκモノクローナルを生成させる体細胞変異を受ける(Lonberg,N.他(1994)、上述;Lonberg,N.(1994)Handbook of Experimental Pharmacology 113:49−101;Lonberg,N.and Huszar,D.(1995)Intern.Rev.Immunol.13:65−93、及びHarding,F.and Lonberg,N.(1995)Ann.N.Y.Acad.Sci.764:536−546に概説される)。HuMAbマウスの調製と使用、及びそのようなマウスによって運ばれたゲノムの変異は、さらに、「Taylor,L.他、(1992)Nucleic Acids Research 20:6287−6295;Chen,J.他、(1993)International Immunology 5:647−656;Tuaillon他、(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:3720−3724;Choi他、(1993)Nature Genetics 4:117−123;Chen,J.他、(1993)EMBO J.12:821−830;Tuaillon他、(1994)J.Immunol.152:2912−2920;Taylor,L.他、(1994)International Immunology 6:579−591;及びFishwild,D.他、(1996)Nature Biotechnology 14:845−851」に記載され、内容の全ては、具体的にその全体を参照して本願明細書に添付する。さらに、LongbergとKayの米国特許第5,545,806号明細書;米国特許第5,569,825号明細書;米国特許第5,625,126号明細書;米国特許第5,633,425号明細書;米国特許第5,789,650号明細書;米国特許第5,877,397号明細書;米国特許第5,661,016号明細書;米国特許第5,814,318号明細書;米国特許第5,874,299号明細書;及び米国特許第5,770,429号明細書、Suraniの米国特許第5,545,807号明細書、LonbergとKayの国際公開第92/03918号明細書,国際公開第93/12227号明細書号明細書,国際公開第94/25585号明細書,国際公開第97/13852号明細書,国際公開第98/24884号明細書及び国際公開第99/45962号明細書、及びKorman他の国際公開第01/14424号明細書も参照される。
【0116】
別の実施形態において、本発明のヒト抗体は、ヒト重鎖導入遺伝子及びヒト軽鎖導入染色体を持つマウスなどの導入遺伝子及び導入染色体上にヒト免疫グロブリン配列を持つマウスを用いて生成される。そのようなマウスは、本願明細書において“KMマウス”と言及され、Ishida他の国際公開第02/43478号明細書に詳細に記載される。
【0117】
またさらに、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現する別の形質転換動物の系を従来的に利用することができ、本発明の抗IFNα抗体を生成するために使われる。例えば、ゼノマウス(Abgenix社)と言及される別の形質転換の系が使われる。そのようなマウスは、例えば、Kucherlapatiの米国特許第5,939,598号明細書、米国特許第6,075,181号明細書、米国特許第6,114,598号明細書、米国特許第6,150,584号明細書及び米国特許第6,162,963号明細書に記載される。
【0118】
さらに、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現する別の染色体導入動物系を利用することができ、本発明の抗IFNα抗体を生成するために使用する。例えば、ヒト重鎖導入染色体及びヒト軽鎖導入染色体の両方を持つ、“TCマウス”と称するマウスが使われる。そのようなマウスは、「Tomizuka他、(2000)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97:722−727」に記載される。さらに、ヒト重鎖及び軽鎖導入染色体を持つウシが、技術的に記載され(Kuroiwa他、(2002)Nature Biotechnology 20:889−894)、本発明の抗IFNα抗体をもたらすために使われる。
【0119】
また、本発明のヒトモノクローナル抗体は、ヒト免疫グロブリン遺伝子のスクリーニングライブラリーのファージディスプレイ法を用いて調製する。そのようなヒト抗体を単離するファージディスプレイ法は従来的に確立される。(Ladner他の米国特許第5,223,409号明細書;米国特許第5,403,484号明細書;及び米国特許第5,571,698号明細書、Dower他の米国特許第5,427,908号明細書及び米国特許第5,580,717号明細書、McCafferty他の米国特許第5,969,108号明細書及び米国特許第6,172,197号明細書、Griffiths他の米国特許第5,885,793号明細書;米国特許第6,521,404号明細書;米国特許第6,544,731号明細書;米国特許第6,555,313号明細書;米国特許第6,582,915号明細書及び6,593,081号明細書を参照。)
【0120】
また、本発明のヒトモノクローナル抗体は、ヒト抗体の応答が免疫化において生成し、ヒト免疫細胞が再構成されたSCIDマウスを用いて調製される。そのようなマウスは、例えば、Wilson他の米国特許第5,476,996号明細書及び米国特許5,698,767号明細書に記載される。
【0121】
[ヒトIgマウスの免疫化]
ヒトIgマウスが本発明のヒト抗体を産生するために使われる場合、「Lonberg,N.他、(1994)Nature 368(6474):856−859;Fishwild,D.他、(1996)Nature Biotechnology 14:845−851;及び国際公開第98/24884号明細書及び国際公開第01/14424号明細書」に記載されるように、IFNα抗原の精製された又は組み換えの調製においてそのようなマウスを免疫化する。好ましくは、マウスは最初の注入は6〜16週齢に行われる。例えば、複数のIFNαサブタイプを含む(しかしIFNωは含まない)IFNα調製物を産生するリンパ芽球状細胞株をウィルスで処理して調製されるリンパ芽球状のIFNが精製される調製物(25〜100μg)は、ヒトIgマウスを腹腔内に免疫化するために使われる。また、IFNαサブタイプの組み換え体の混合物が、免疫原として使われる。
【0122】
IFNαに対するヒトモノクローナル抗体の完全に生成する詳細な方法は、以下の実施例1に記載される。様々な抗原による累積経験において、まず完全なフロイントの補助剤中の抗原によって腹腔内で(IP)免疫化され、不完全な免疫増強剤中の抗原で隔週にIP免疫化した(全部で6回以下)場合、形質転換マウスが応答するということを示した。しかしながら、フロイントのもの以外の補助剤もまた効果的であることが分かった。さらに、補助剤のない細胞全体は、大いに免疫原性であることが分かった。免疫応答は、眼球後出血によって得られる血漿サンプルを用いて免疫化手順の経過の間モニターされる。血漿は、以下に記載のELISAによって選別され、抗IFNαヒト免疫グロブリンの十分な滴定濃度を有するマウスが融合のために使われる。マウスは、犠牲となって脾臓が除去される3日前に抗原で静脈中に追加免疫される。免疫化するために2から3回の融合に必要であると予想される。6匹と24匹の間のマウスが、一般的に抗原に対して免疫化される。HuMAbマウスのために、HCo7及びHCo12種の両方が使われる。さらに、HCo7及びHCo12導入遺伝子の両方が、2個の異なるヒト重鎖導入遺伝子を有する単一のマウス中で繁殖される(HCo7/HCo12)。または、KMマウス種が、実施例2に記載されるように使われる。
【0123】
[本発明のヒトモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマの生成]
本発明のヒトモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを生成するために、免疫化したマウスに由来する脾細胞及び/又はリンパ節細胞を単離し、マウス骨髄腫細胞株などの適切な不死化細胞株と融合する。結果として生じたハイブリドーマは、抗原特異抗体の産生について選別する。例えば、免疫化したマウスに由来する脾リンパ球の単一細胞懸濁液を50%PEG中で6分の1の数のP3X63−Ag8.653非分泌マウス骨髄腫細胞(ATCC、CRL1580)と融合する。平底のマイクロタイタープレートに約2×10で細胞を配置し、続いて20%のFetal Clone血清、18%の“653”調製した培地、5%のオリゲン(IGEN)、4mMのL−グルタミン、1mMのピルビン酸ナトリウム、5mMのHEPES、0.055mMの2−メルカプトエタノール、50ユニット/mlのペニシリン、50mg/mlのストレプトマイシン、50mg/mlのゲンタマイシン、及び1X HAT(シグマ、HATは融合の24時間後に加えられる)を含む選択培地中で2週間インキュベーションする。約2週間の後、細胞は、HATをHTで置き換えた培地中で培養する。個々のウェルは、ヒトモノクローナルIgM及びIgG抗体についてELISAによってスクリーニングする。培地において、大量のハイブリドーマの成長が通常10〜14日後に観察される。ハイブリドーマが分泌する抗体は、再びプレート及びスクリーニングされる。ヒトIgGについて陽性である場合、モノクローナル抗体は、限界希釈法によって2回以上サブクローニングする。安定なサブクローンはin vitroで培養され、特徴付けのために組織培養培地中で少量の抗体を生成する。
【0124】
ヒトモノクローナル抗体を精製するために、モノクローナル抗体を生成する2リットルのスピナー培養瓶中で選択したハイブリドーマを生育する。プロテインA−セファロース(ファルマシア、ピスカタウェイ、ニュージャージー州)を用いたアフィニティークロマトグラフィーの前に、上清を濾過し濃縮する。純度を確認するために、ゲル電気泳動及び高速液体クロマトグラフィーによって、溶出したIgGを検査する。バッファー溶液をPBSに交換し、1.43の減衰係数を用いてOD280によって濃度を測定する。そのモノクローナル抗体を分注し、−80℃で保存する。
【0125】
[本発明のモノクローナル抗体を産生するトランスフェクトーマの生成]
また、本発明の抗体は、例えば、従来公知の組み換えDNA手法及び遺伝子形質移入法の組み合わせを用いて、宿主細胞のトランスフェクトーマ中に産生される(例えば、Morrison,S.(1985)Science 229:1202)。
【0126】
例えば、抗体又はその抗体断片を発現させるように、軽鎖及び重鎖の部分又は全長をコードするDNAは、標準的な分子生物学の手法(例えば、当該の抗体を発現するハイブリドーマを用いたPCR増幅又はcDNAクローニング)によって得られ、DNAは、遺伝子が転写の及び翻訳の調節配列に改変可能となる結合によって発現ベクターに挿入される。本願明細書において“改変可能となる結合”という用語は、抗体遺伝子が、ベクター内の転写の及び翻訳の調節配列が抗体遺伝子の転写及び翻訳を制御する機能を与えるベクターに連結されることが意図される。発現ベクター及び発現制御配列は、使われる発現宿主細胞と適合するように選択される。抗体の軽鎖遺伝子及び抗体の重鎖遺伝子は、別々のベクターに挿入され、一般的には、両方の遺伝子は同じ発現ベクターに挿入される。抗体遺伝子は、標準的な方法によって発現ベクターに挿入される(例えば、抗体遺伝子断片及びベクター上の相補的な制限酵素認識部位における連結、制限酵素認識部位が存在しない場合は平滑末端連結する)。本願明細書に記載される抗体の軽鎖及び重鎖可変領域は、V部分がベクター内でC部分に改変可能となるように結合され、及びV部分がベクター内でC部分に改変可能となるように結合される望ましいアイソタイプの重鎖定常及び軽鎖定常領域を既にコードする発現ベクターへと、軽鎖及び重鎖可変領域の遺伝子を挿入することによって、いずれの抗体のアイソタイプの全長抗体遺伝子を生成するために使われる。また、組み換え発現ベクターは、宿主細胞に由来する抗体鎖の分泌を容易にするシグナルペプチドをコードすることができる。シグナルペプチドは、免疫グロブリンシグナルペプチド又は異種のシグナルペプチドである(すなわち、免疫グロブリンタンパク質でないものに由来するシグナルペプチド)。
【0127】
抗体鎖遺伝子にさらに、本発明の組み換え発現ベクターは、宿主細胞中で抗体鎖遺伝子の発現を制御する調節配列を持つ。“調節配列”という用語は、抗体鎖遺伝子の転写又は翻訳を制御するプロモーター、エンハンサー、及び他の発現制御要素(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含むことが意図される。そのような調節配列は、例えば、「Goeddelの(Gene Expression Technology.Methods in Enzymology 185,Academic Press,San Diego,CA(1990))」に記載される。調節配列の選択を含めた発現ベクターのデザインは、形質転換される宿主細胞の選択、望ましいタンパク質の発現レベルなどの要素に依存することは、当業者にとって良く理解されよう。哺乳類宿主細胞発現のために好ましい調節配列は、サイトメガロウィルス(CMV)、Simianウィルス40(SV40)、アデノウィルス(例えば、アデノウィルス主要後期プロモーター(AdMLP))及びポリオーマに由来するプロモーター及び/又はエンハンサーなどの哺乳類の細胞内で高いレベルのタンパク質発現を導くウィルスの成分を含む。また、ユビキチンプロモーター又はβ−グロブリンプロモーターなどの非ウィルスの調節配列が使われる。さらに、調節要素は、SV40初期プロモーター及びヒトT細胞白血病ウィルスタイプ1の長い末端繰り返しに由来する配列を含むSRαプロモーター系などの異なるソースに由来する配列からなる(Takabe,Y。他、(1988)Mol.Cell.Biol.8:466−472)。
【0128】
抗体鎖遺伝子及び調節配列にさらに、本発明の組み換え発現ベクターは、宿主細胞中のベクターの複製を調節する配列(例えば、複製の起点)及び選択可能なマーカー遺伝子などの付加的な配列を有する。選択可能なマーカー遺伝子は、ベクターが導入された宿主細胞の選択を容易にする(例えば、Axel他の米国特許第4,399,216号明細書、米国特許第4,634,665号明細書及び米国特許第5,179,017号明細書、を参照)。例えば、一般的に、選択可能なマーカー遺伝子は、ベクターが導入される宿主細胞において、G418、ハイグロマイシン又はメトトレキセートなどの薬剤に対する耐性を与える。好ましい選択可能なマーカー遺伝子は、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)遺伝子(メトトレキセートを使ってdhfr−宿主細胞中における選択/増幅させるために使用)及びneo遺伝子(G418選択のするために使用)を含む。
【0129】
軽鎖及び重鎖の発現のために、重鎖及び軽鎖をコードする発現ベクターが標準技術によって宿主細胞へと形質移入される。“形質移入”という用語の様々な形は、例えば、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、DEAE−デキストラン形質移入など、原核又は真核の宿主細胞へ外来のDNAの導入するために一般に使われる幅広く多様な手法を含むことが意図される。本発明の抗体を原核または真核の宿主細胞のどちらかで発現させることは理論的に可能であるが、真核細胞、好ましくは哺乳類細胞における抗体は、原核細胞より発現され、適切に混合した免疫学的に活性な抗体を結合し及び分泌する。抗体遺伝子における原核細胞での発現は、活性な抗体の高収量な産生のためには効果的でないことが報告される(Boss,M.A.とWood,C.R.(1985)Immunology Today 6:12−13)。
【0130】
本発明の組み換え抗体を発現する好ましい哺乳類宿主細胞は、チャイニーズハムスターの卵巣(CHO細胞)(例えば、R.J.KaufmanとP.A.Sharp(1982)Mol.Biol.159:601−621に記載されるDHFR選択可能なマーカーとともに使われ、UrlaubとChasin(1980)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216−4220に記載され、dhfr−CHO細胞を含む)、NSO骨髄腫細胞、COS細胞及びSP2細胞を含む。特に、NSO骨髄腫細胞とともに使用する別の好ましい発現系は、国際公開第87/04462号明細書,国際公開第89/01036号明細書及び欧州特許第338,841号明細書に公開されたGS遺伝子発現系である。抗体遺伝子をコードする組み換え発現ベクターが哺乳類宿主細胞へと導入される場合、抗体は、宿主細胞中で抗体の発現をさせるのに十分な、好ましくは、宿主細胞が生育される培地に抗体を分泌させるのに十分な期間、宿主細胞を培養することによって産生される。抗体は標準的なタンパク質精製法を用いて培養培地から回収される。
【0131】
[抗原に結合する抗体の特徴付け]
本発明の抗体は、例えば、標準的なELISA又はBiacore分析によって、IFNαとの結合を検査する。ELISAについて簡潔に説明すれば、マイクロタイタープレートは、PBS中0.25μg/mlのIFNα(例えば、異なるIFNαサブタイプの組み換え体、又は白血球又はリンパ芽球状のIFN)で被覆し、その後PBS中5%のウシ血清アルブミンでブロックする。抗体(例えば、IFNαで免疫化したマウスに由来する血漿)の希釈液を各のウェルに加え、37℃で1〜2時間インキュベートする。PBS/Tweenで洗浄され、その後アルカリホスファターゼと結合された二次的な試薬(例えば、ヒト抗体については、ヤギ抗ヒトIgGのFc特異的ポリクローナル試薬)とともにプレートを37℃で1時間インキュベートする。洗浄の後、プレートはpNPP基質(1mg/ml)で現像し、405〜650のODで分析する。好ましくは、最も高い滴定濃度を呈するマウスが融合のために使われる。
【0132】
上記に記載したようなELISA検定はまた、IFNα免疫原と陽性の反応性を示すハイブリドーマを選別するために使われる。IFNαと高い親和力で結合するハイブリドーマは、サブクローニングされ、特徴付けされる。元の細胞の反応性(ELISAによる)を保持するそれぞれのハイブリドーマに由来するクローンは、−140℃で5−10のバイアル細胞バンクを保存され、抗体精製用に選択される。
【0133】
抗IFNα抗体を精製するために、選択されるハイブリドーマは、モノクローナル抗体精製するのに2リットルのスピナー培養瓶中で生育する。プロテインA−セファロース(ファルマシア、ピスカタウェイ、ニュージャージー州)でのアフィニティークロマトグラフィーの前に、上清を濾過及び濃縮する。溶出したIgGは、純度を確認するためにゲル電気泳動及び高速液体クロマトグラフィーによって検査する。バッファー溶液をPBSに交換し、1.43の減衰係数でOD280によって濃度を決定する。モノクローナル抗体を分注し、−80℃で保存する。
【0134】
選択される抗IFNα抗体はユニークなエピトープに結合するかを決定するため、抗体は、市販の試薬(ピアース、ロックフォード、イリノイ州)を用いてビオチン化される。ラベルされていないモノクローナル抗体とビオチン化したモノクローナル抗体を用いた競合実験が、上記に記載されるようなIFNαで被覆したELISAプレートを用いて行われる。ビオチン化したmAbの結合が、ストレプトアビジン−アルカリホスファターゼのプローブで検出される。
【0135】
精製した抗体のアイソタイプを決定するために、アイソタイプのELISAが、特定のアイソタイプの抗体に特異的な試薬を用いて行われる。例えば、ヒトモノクローナル抗体のアイソタイプを決定するために、マイクロタイタープレートのウェルを、4℃で1μg/mlの抗ヒト免疫グロブリンで一晩被覆する。1%のBSAでブロックした後、そのプレートと、1μg/ml以下の検査モノクローナル抗体又は精製したアイソタイプコントロールを室温で1〜2時間反応させる。ヒトIgG1、又はヒトIgMに特異的なアルカリホスファターゼを結合させたプローブのどちらかとウェルを反応させる。プレートは、上記に記載されるように現像され、分析される。
【0136】
さらに、抗IFNαヒトIgGは、ウェスタンブロッティングによってIFNα抗原との反応性を検査する。簡潔に説明すれば、IFNαを発現する細胞に由来する細胞抽出物が調製され、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動が行われる。電気泳動の後、分離された抗原はニトロセルロース膜に移され、10%ウシ胎仔血清でブロックされ、検査するモノクローナル抗体で精査される。ヒトIgG結合は、抗ヒトIgGアルカリホスファターゼを用いて検出され、BCIP/NBT基質タブレット(シグマケム社、セントルイス、ミズーリ州)で現像する。
【0137】
[免疫複合体]
別の実施態様において、本発明は、細胞毒素、薬剤(例えば、免疫抑制剤)又は放射性毒物などの治療上の部分と結合した抗IFNα抗体又はその断片を特徴とする。そのような結合は本願明細書において“免疫複合体”として言及される。1個以上の細胞毒素を含む免疫複合体は“抗毒素”として言及される。細胞毒素又は細胞毒性因子は、細胞にとって有害な(例えば、殺す)因子を含み、例えば、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、エチジウムブロマイド、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビジン、ダウノルビジン、ジヒドロキシアントラシン−ジオン、マイトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1−デヒドロ検査ステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、及びピューロマイシン、及びそのアナログ又は同族体を含む。また、治療薬は、代謝拮抗物質(例えば、メトトレキセート、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、シタラビン、5−フルオロウラシルダカルバジン)、アルキル化薬剤(例えば、メクロレタミン、チオエパクロラブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)及びロムスチン(CCNU)、シクロトスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、及びシス−ジクロロジアミンプラチナ(II)(DDP)シスプラチン)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビジン(以前は、ダウノマイシン)及びドクソルビシン)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(以前は、アクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、及びアントラマイシン(AMC))、及び抗有糸分裂性薬剤(例えば、ビンクリスチン及びビンブラスチン)を含む。
【0138】
本発明の抗体と結合する、治療上の細胞毒素の他の好ましい例は、デュオカルマイシン、カリチェアミシン、マイタンシン及びオーリスタチン、及びその類縁体を含む。カリチェアミシン抗体の結合の例は、市販される(Mylotarg(登録商標)、ウイエス−アイエルスト)。
【0139】
細胞毒素は、技術的に利用可能なリンカー手法を用いて、本発明の抗体と結合される。抗体と細胞毒素との結合に使われるリンカーのタイプの例は、ヒドラゾン、チオエーテル、エステル、ジスルフィド及びペプチドを含むリンカーを含むが、これらに限定されない。リンカーは、例えば、リソソーム区画内で低いpHによって切断されやすい、又はカテプシン(例えば、カテプシンB、C、D)などのガン組織中に優先的に発現するプロテアーゼによって切断されやすいものを選択する。
【0140】
細胞毒素、リンカー、及び抗体と治療薬を結合させるための方法のタイプのさらなる検討は、「Saito,G.他、(2003)Adv.Drug Deliv.Rev.55:199−215;Trail,P.A.他、(2003)Cancer Immunol.Immunother.52:328−337;Payne,G.(2003)Cancer Cell 3:207−212;Allen,T.M.(2002)Nat.Rev.Cancer 2:750−763;Pastan,I.とKreitman,R.J.(2002)Curr.Opin.Investit Drugs 3:1089−1091;Senter,P.D.とSpringer,C.J.(2001)Adv.Drug Deliv.Rev.53:247−264」が参照される。
【0141】
また、本発明の抗体は、放射性免疫複合体として言及される、細胞毒性な放射性医薬を産み出すために、放射性同位体と結合する。診断上の又は治療上の使用のために、抗体と結合する放射性同位体の例は、ヨウ素131、インジウム111、イットリウム90及びルテニウム177を含むが、これらに限定されない。放射性免疫複合体を調製するための方法は従来的に確立されている。放射性免疫複合体の例は市販されており、Zevalin(登録商標、IDECファーマシューティカルズ)及びBexxar(登録商標、コリクサ ファーマシューティカルズ)を含む。類似の方法が、本発明の抗体を用いた放射性免疫複合体を調製するために使われる。
【0142】
本発明の抗体複合体は、与えられた生物学的応答を変異するために使用され、薬剤部分は古典的な化学的治療薬に限定して解釈されない。例えば、薬剤部分は、望ましい生物活性を持つタンパク質又はポリペプチドであってよい。そのようなタンパク質は、例えば、アブリン、リシンA、Pseudomonas属の外毒素、ジフテリア毒素などの酵素的に活性な毒素、又は酵素的に活性な断片、腫瘍壊死因子腫瘍又はインターフェロン−γなどのタンパク質、又はリンフォカイン、インターロイキン−1(“IL−1”)、インターロイキン−2(“IL−2”)、インターロイキン−6(“IL−6”)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(“GM−CSF”)、顆粒球コロニー刺激因子(“G−CSF”)、又は他の成長因子などの生物学的応答変異体などを含んでもよい。
【0143】
抗体に、そのような治療的な部分を結合させるための手法は、よく知られており、例えば、「Arnon他、“Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy”,in Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy,Reisfeld他、編,pp.243−56(Alan R.Liss社,1985);Hellstrom他、“Antibodies For Drug Delivery”in Controlled Drug Delivery(2nd Ed.),Robinson他、編,pp.623−53(Marcel Dekker社,1987);Thorpe,“Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy:A Review”,in Monoclonal Antibodies ’84:Biological And Clinical Applications,Pinchera他、編,pp.475−506(1985);“Analysis,Results,And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy”,in Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy,Baldwin他、編,pp.303−16(Academic Press 1985),及びThorpe他、“The Preparation And Cytotoxic Properties Of Antibody−Toxin Conjugates”,Immunol.Rev.,62:119−58(1982)」が参照される。
【0144】
[二重特異性分子]
別の実施態様において、本発明は、本発明の抗IFNα抗体又はその断片からなる二重特異性分子を特徴とする。本発明の抗体又はその抗原結合部分は、別の機能分子、例えば、少なくとも2個の異なる結合部位又は標的分子に結合する二重特異性分子を生成させる別のペプチド又はタンパク質(例えば、別の抗体又は受容体に対するリガンド)に誘導化又は結合される。本発明の抗体は、実際に、2個以上の異なる結合部位及び/又は標的分子に結合する多重特異性分子もまた、本願明細書で使われる“二重特異性分子”という用語に同義であることが意図され、この分子を生成させる1個以上の他の機能分子に誘導化又は結合される。本発明の二重特異性分子を生成するために、本発明の抗体は、(例えば、化学的な結合、遺伝子の融合、非共有的な結合又はその他の方法よって)別の抗体、別の断片、ペプチド、又は二重特異性分子をもたらす結合模倣体などの1個以上の他の結合分子に機能結合する。
【0145】
従って、本発明は、少なくとも1個のIFNαに対する第1の結合特異性及び第2の標的エピトープに対する第2の結合特異性を含む二重特異性分子を含む。本発明の特定の実施形態において、第2の標的エピトープは、例えば、ヒトFcγRI(CD64)又はヒトFcα受容体(CD89)などのFc受容体である。それゆえ、本発明は、エフェクター細胞(例えば、単球、マクロファージ、又は多核白血球(PMNs))が発現するFcγR、FcαR又はFcεR、及びIFNαを発現する標的細胞の両方に対して結合する能力を持つ二重特異性分子を含む。これらの二重特異性分子は、IFNαを発現する細胞からエフェクター細胞までを標的とし、IFNαを発現する細胞の食細胞活動、抗体依存的な細胞を仲介した細胞毒性(ADCC)、サイトカインの放出、又はスーパーオキシド・アニオンの生成などの、Fc受容体が仲介するエフェクター細胞の活動を引き起こす。
【0146】
二重特異性分子が多重特異性である、本発明の実施形態において、その分子は抗Fc結合特異性及び抗IFNα結合特異性にさらに、第三の結合特異性をさらに含む。一実施形態において、第三の結合特異性は、例えば、細胞毒性活性に関係する表面タンパク質に結合することによって標的細胞に対する免疫応答が増加する分子である強化因子(EF)部分に対抗するものである。“抗強化因子部分”は抗体、機能的な抗体断片、又は例えば抗原又は受容体などの与えられた分子に結合するリガンドであり、これによって、Fc受容体又は標的細胞抗原に対する結合決定基の効果の強化をもたらす。“抗強化因子部分”は、Fc受容体又は標的細胞抗原に結合する。また、抗強化因子部分は、第1及び第2の結合特異性をもつものが結合する存在物とは異なる存在物に結合する。例えば、抗強化因子部分は、(例えば、標的細胞に対して増加した免疫応答をもたらす、CD2、CD3、CD8、CD28、CD4、CD40、ICAM−1又は他の免疫細胞などを介して)細胞毒性T細胞に結合する。
【0147】
一実施形態において、本発明の二重特異性分子は、例えば、Fab、Fab’、F(ab’)、Fv、又は単鎖Fvなどを含む、少なくとも1個の抗体又はその抗体断片を、結合特異性を持つものとして含む。また、抗体は、軽鎖又は重鎖の二量体、又は、その内容が参考のために明白に示されるLadnerらの米国特許第4,946,778号明細書に記載されるFv又は単鎖構成物などの最小の断片である。
【0148】
一実施形態において、Fcγ受容体に対する結合特異性は、ヒト免疫グロブリンG(IgG)によって結合がブロックされないモノクローナル抗体によって与えられる。本願明細書で使われる“IgG受容体”とは、染色体1上に位置する8つのγ鎖遺伝子のいずれかについて言及する。これらの遺伝子は、3つのFcγ受容体クラス:FcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)、及びFcγRIII(CD16)へとグループ分けされる、全部で12の膜貫通又は可溶性受容体アイソフォームをコードする。1個の好ましい実施形態において、Fcγ受容体はヒト高親和性FcγRIである。ヒトFcγRIは、単量体のIgGに対して高い親和性(10−10−1)を示す、72kDaの分子である。
【0149】
ある好ましい抗Fcγモノクローナル抗体の産生及び特徴付けは、その教示は本願明細書に完全に参考のために示され、Fanger他の国際公開第88/00052号明細書及び米国特許第4,954,617号明細書に記載される。これらの抗体は、受容体のFcγ結合部位とは別の部位で、FcγRI、FcγRII又はFcγRIIIのエピトープに結合し、生理学的なレベルのIgGによって実質的にブロックされない。本発明において有用で特異的な抗FcγRI抗体は、mAb22、mAb32、mAb44、mAb62及びmAb197である。mAb32を産生するハイブリドーマは、米国培養細胞系統保存機関、ATCC受け入れ番号HB9469から入手可能である。他の実施形態において、抗Fcγ受容体抗体は、モノクローナル抗体22のヒト化型(H22)である。H22抗体の産生及び特徴付けは、Graziano,R.F.ら(1995)J.Inamufzol 155(10):4996−5002及び国際公開第94/10332に記載される。H22抗体を産生する細胞株は、HA022CL1と命名され、米国培養細胞系統保存機関に保管され、受入番号はCRL11177である。
【0150】
さらに他の好ましい実施形態において、Fc受容体に対する結合特異性は、例えば、ヒト免疫グロブリンA(IgA)によって好ましくはブロックされない、Fc−α受容体(FcαRI(CD89))などのヒトIgA受容体に結合する抗体によって与えられる。“IgA受容体”という用語は、染色体19に位置するα−遺伝子(FcαRI)の遺伝子産物を含むことが意図される。この遺伝子は、55から110kDaの択一的にスプライシングされる膜貫通アイソフォームをコードすることが知られている。FcαRI(CD89)は、単球/マクロファージ、エオシン好性及び好中球の顆粒球において恒常的に発現され、非エフェクター細胞集団においては発現されない。FcαRIは、G−SCF又はGM−SCFなどのサイトカインに曝された状況下で増加するIgA1及びIgA2両方に対して、中程度の親和性(≒5×10−1)を有する(Morton,H.C.他、(1996)Critical Reviewsira Immunology 16:423−440)。IgAリガンド結合ドメインの外側のFcαRIに結合するA3、A59、A62及びA77として同定される4つのFcαRI特異的なモノクローナル抗体は(Monteiro,R.C.他、(1992)J.Immunol.148:1764)。に記載される
【0151】
FcαRI及びFcγRIは、(1)例えば、単球、PMN、マクロファージ及び樹状細胞などの免疫のエフェクター細胞において主に発現し、(2)高レベルに発現し(例えば、細胞あたり5,000−100,000)、(3)細胞毒性活性の仲介者であり(例えば、ADCC、食細胞活動)、(4)標的とされる抗原、抗原自身も含む、増加した抗原の提示を仲介するなどの理由から、本発明の二重特異性分子において使用する好ましいトリガー受容体である。
【0152】
ヒトモノクローナル抗体が好ましいが、本発明の二重特異性分子に用いられる他の抗体は、ネズミモノクローナル抗体、キメラモノクローナル抗体、及びヒト化モノクローナル抗体である。
【0153】
本発明の二重特異性分子は、従来公知の方法を用いて、例えば、抗FcR及び抗IFN結合特異体などの恒常的な結合特異体と結合させることによって調製される。例えば、二重特異性分子の各結合特異体は、別々に生成され、互いに結合される。結合特異体がタンパク質又はペプチドである場合、様々な結合又は架橋剤が共有結合のために使われる。架橋剤の例は、プロテインA、カルボジイミド、N−スクシニミジル−S−アセチル−チオ酢酸(SATA)、5,5’−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)(DTNB)、o−フェニレンジマレイイミド(oPDM)、N−スクシニミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオン酸(SPDP)、及びスルフォスクシニミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボン酸(sulfo−SMCC)を含む(例えば、Karpovsky他、(1984)J.Exp.Med.160:1686;Liu,MA他、(1985)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:8648を参照)。他の方法は、「Paulus(1985)Behring Ins.Mitt.No.78,118−132;Brennan他、(1985)Science 229:81−83,及びGlennie他、(1987)J.linmunol 139:2367−2375」に記載のものを含む。好ましい結合試薬はSATA及びsulfo−SMCCであり、ピアースケミカル社(ロックフォード、イリノイ州)より入手可能である。
【0154】
結合特異体が抗体である場合、それらは、2個の重鎖のC−末端ヒンジ領域のスルフヒドリル結合を介して結合される。特に好ましい実施形態において、ヒンジ領域は、結合の前に奇数個、好ましくは1個のスルフヒドリル基を含むように変異される。
【0155】
また、両方の結合特異体が、同じ宿主細胞内で同じベクター内にコードされ、発現され、そして結合する。この方法は、二重特異性分子がmAb x mAb、mAb x Fab、Fab x F(ab’)、又はリガンドxFab融合タンパク質である場合に、特に有用である。本発明の二重特異性分子は、1個の単鎖抗体と結合決定基、又は2個の結合決定基からなる単鎖二重特異性分子からなる単鎖の分子である。二重特異性分子は、少なくとも2個の単鎖分子を含んでもよい。二重特異性分子の調製方法は、例えば、米国特許第5,260,203号明細書、米国特許第5,455,030号明細書、米国特許第4,881,175号明細書、米国特許第5,132,405号明細書、米国特許第5,091,513号明細書、米国特許第5,476,786号明細書、米国特許第5,013,653号明細書、米国特許第5,258,498号明細書及び米国特許第5,482,858号明細書に記載される。
【0156】
二重特異性分子の特異標的に対する結合は、例えば、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、放射免疫測定(RIA)、FACS分析、生物検定(例えば、生育阻害)、又はウェスタンブロット検定によって確認される。一般に、当該複合体に特異ラベル化された試薬(例えば、抗体)を用いることによって、特定のタンパク質−抗体複合体の存在が検出される。例えば、FcR−抗体複合体は抗体−FcR複合体を認識し、特異結合又は酵素結合した抗体又は抗体断片を用いて検出される。また、複合体は、様々な他の免疫検定を用いて検出する。例えば、抗体は、放射性ラベルされ、放射免疫測定(RIA)に使われる(例えば、本願明細書に参考のために示す、Weintraub,B.,Principles of Radioimmunoassays,Seventh Training Course on Radioligand Assay Techniques,The Endocrine Society,March,1986を参照)。放射性同位体は、γカウンター又はシンチレーションカウンターの使用などの方法によって、又はオートラジオグラフィーによって検出される。
【0157】
[医薬組成物]
別の実施態様において、本発明は、例えば、薬理学的に許容可能な担体とともに処方される本発明のモノクローナル抗体又はその抗原結合部分の1個又は組み合わせを含む、医薬組成物などの組成物を提供する。そのような組成物は、(例えば、2個又はそれ以上の異なる)抗体又は免疫複合体又は本発明の二重特異性分子の1個又は組み合わせを含む。例えば、本発明の医薬組成物は、標的抗原上の異なるエピトープに結合する、又は相補的な活性を有する抗体(又は免疫複合体又は二重特異性体)の組み合わせを含む。
【0158】
また、本発明の医薬組成物は、併用療法において、すなわち他の薬剤を組み合わせて投与される。例えば、併用療法は、少なくとも1個の他の抗IFNα薬剤(例えば、免疫抑制剤)と組み合わせ、本発明の抗IFNα抗体を含む。
【0159】
本願明細書で使われる、“薬理学的に許容可能な担体”とは、いずれかの溶媒、分散媒体、被膜、抗細菌薬剤及び抗真菌薬剤、等張性及び吸収を遅らせる薬剤などの生理適合的なものを含む。好ましくは、担体は、(例えば、注射又は輸液による)静脈注射、筋肉内、皮下、非経口、脊髄、又は表皮からの投与に適切なものである。投与の経路に依存して、活性化合物、すなわち抗体、免疫複合体、又は二重特異性分子は、酸の作用及び化合物が不活性である他の自然条件から化合物を守る素材を被覆してもよい。
【0160】
また、本発明の医薬的化合物は、1個以上の薬理学的に許容可能な塩を含んでもよい。“薬理学的に許容可能な塩”とは、元の化合物の望ましい生物学活性を保持し、望ましくない毒物学的な効果を与えない塩について言及する(例えば、Berge,S.M.他、(1977)J.Pharm.Sci.66:1−19を参照)。そのような塩の例は、酸付加塩及び塩基付加塩を含む。酸付加塩は、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、亜リン酸などの非毒性な無機酸、脂肪族モノカルボン酸及びジカルボン酸、フェニル置換のアルカン酸、ヒドロキシアルカン酸、芳香族酸、脂肪族硫酸及び芳香族硫酸などの非毒性な有機酸に由来するものを含む。塩基付加塩は、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属、N,N−ジベンジルエチレンジアミン、N−メチルグルカミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、プロカインなどの非毒性な有機アミンに由来するものを含む。
【0161】
また、本発明の医薬組成物は、薬理学的に許容可能な抗酸化剤を含んでもよい。薬理学的に許容可能な抗酸化剤の例は、(1)アスコルビン酸、システイン塩酸塩、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなどの水可溶性な抗酸化剤と、(2)アスコルビン酸パルミテート、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α−トコフェロールなどのオイルに可溶な抗酸化剤と、(3)クエン酸、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などの金属キレート薬剤と、を含む。
【0162】
本発明の医薬組成物に用いてもよい。適切な水性担体及び非水性担体は、水、エタノール、多価アルコール(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、その適切な混合物、オリーヴオイルなどの植物油、及びオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルを含む。適当な流動性は、例えば、レクチンなどの被膜素材の使用、分散の場合には必要な粒子の大きさの調節、及び界面活性剤の使用によって調節される。
【0163】
これらの組成物はまた、防腐剤、湿潤剤、乳化剤及び分散剤などの補助剤を含んでもよい。微生物の予防は、上述の滅菌手法、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸などの様々な抗細菌薬剤及び抗真菌薬剤を含むことによって保証されてもよい。また、砂糖、塩化ナトリウムなど組成物中へ等張剤を含むことも望ましい。さらに、吸収を遅らす注射可能な医薬剤形は、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンなどの薬剤の含んでもよい。
【0164】
薬理学的に許容可能な担体は、無菌の水性溶液又は分散液、及び無菌の注射可能な溶液又は分散液の素早く調製する無菌粉末を含む。医薬活性物質用の培地及び薬剤の使用は従来公知である。いずれの従来型の培地又は薬剤も活性化合物と相性が悪い範囲を除外して、本発明の医薬組成物におけるその使用が検討される。補助的な活性化合物もまた、組成物中に組み込まれる。
【0165】
治療上の組成物は、一般的に、製造及び保存の条件下では無菌かつ安定である必要がある。組成物は、溶液、微小乳濁液、リポソーム、又は高い医薬濃度に適切した構造として処方される。担体は、例えば、水、エタノール、多価アルコール(グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコールなど)、及びその適切な混合物を含む、溶液又は分散培地である。適切な流動性は、例えば、レクチンなどの被膜の使用、分散の場合には必要な粒子サイズの調節、及び界面活性剤の使用によって調節される。多くの場合において、例えば、組成物中に砂糖、マンニトールやソルビトールなどの多価アルコール、塩化ナトリウムなどの等張剤を含むことが好ましい。吸収を遅らす注射可能な組成物は、例えば、組成物中に、モノステアリン酸塩及びゼラチンなどの吸収を遅らせる薬剤を含んでもよい。
【0166】
無菌の注射可能な溶液は、上記の含有物の1個又は組み合わせを含む適切な溶媒の必要な量に活性化合物を組み込ませることによって調製され、必要があれば、その後に精密濾過滅菌を行う。一般に、分散液は、基本的な分散培地及び上記の含有物中で必要なものを含む無菌の媒体に活性化合物を取り込んで調製される。無菌での注射を可能にする溶液の調製用の無菌粉末の好ましい調製方法は、活性含有物の粉末、前もって濾過滅菌した溶液からの添加物を生成する真空乾燥及び凍結乾燥である。
【0167】
単一の投与形態を生成する担体素材と組み合わせられる活性含有物の量は、治療される被験者、及び投与の特定の形態に依存して変化する。単一の投与形態を産み出す担体素材と組み合わせられる活性含有物の量は、一般的に、治療効果を産み出す組成物の量であり、薬理学的に許容可能な担体との組み合わせにおいて、活性含有物の約0.01〜約99%、好ましくは約0.1〜約70%、より好ましくは約1〜約30%含まれる。
【0168】
投与計画は、最適な望ましい応答(例えば、治療上の応答)を与えるように調節される。例えば、医者は、投与量を分けて時間の経過とともに投与し、投与量は治療の状況の緊急性応じて投薬量を減少又は増加してもよい。投与及び投与量の均一性を簡略化するために、投与量単位で非経口の組成物を処方することは特に有利である。本願明細書で使われる投与量単位とは、治療される被験者への単一の投与量に適切な、物理的に不連続な単位について言及し、単位は、必要な医薬担体に関連する望ましい治療効果を得るように計算された活性化合物の規定量を含む。本発明の投与量単位の仕様は、(a)活性化合物のユニークな特性及び達成される特定の治療効果、及び(b)個々の過敏症治療用の活性化合物などの化合物から複合の制限によって決定され、及び直接的に依存する。
【0169】
抗体の投与に関して、その投与量は、宿主体重の約0.0001〜約100mg/kg、一般的に、0.01〜5mg/kgの範囲である。例えば、投与量は1−10mg/kgの範囲内である。治療例として、週、隔週、3週間、4週間、月、3ヶ月又は3〜6ヶ月に一度投与される。
【0170】
本発明の抗IFNα抗体のための投与計画は、(i)4週間ごとに6回その後3ヶ月ごとに1mg/kg体重又は3mg/kg体重(ii)3週間ごとに1mg/kg体重又は3mg/kg体重、(iii)1回目は3mg/kg体重、3週間ごとに1mg/kg体重の用量で静脈注射によって投与される。
【0171】
ある方法において、各投与量が上記範囲内である場合、異なる結合特異性を持つ2個又はそれ以上のモノクローナル抗体の同時に投与される。抗体は、たいてい複数回に投与される。1回の投与の間隔は、例えば、週、月、3ヶ月ごと、年であるが、患者における標的抗原に対する抗体の血中レベルの測定に示されるように変則的である。ある方法における投与量は、約1〜1000μg/mlの血漿抗体濃度となるように調節され、ある異なる方法においては約25〜300μg/mlで調節される。
【0172】
また、抗体は、高い頻度の投与が必要ではない場合に、徐放剤として投与される。投与量及び頻度は患者中の抗体の半減期に依存する。一般に、ヒト抗体は、最も長い半減期を示し、続いてヒト化抗体、キメラ抗体、そして非ヒト抗体の順である。投与の量及び頻度は予防か治療かに依存する。予防への応用において、相対的に少ない投与量が、長期にわたって相対的に低頻度の間隔で投与される。ある患者は、余命において治療を受け続ける。治療上の応用において、相対的に短い間隔で相対的に多い投与量が、病気の進行が減少又は終了し、及び好ましくは患者が病気の症状の部分的な又は完全な改善を示すまで必要とされる。その後は予防計画において患者に投与する。
【0173】
本発明の医薬組成物における活性剤の実際の投与量レベルは、特別の患者、組成物、及び患者に対して毒性を示さない投与への望ましい治療上の応答を得るのに効果的な活性含有物の量を知るために変化してもよい。選択される投与量レベルは、用いられる本発明の特定の組成物、又はそのエステル、塩、又はアミドの活性、投与の経路、投与の時間、用いられた特定の化合物の排出の速度、治療期間、用いられる特定の組成物と組み合わせて使われる他の医薬、化合物、素材、一般的な健康及び治療された患者の年齢、性別、体重、状態、既往歴など医療技術において公知の要因を含む様々な薬物動態学的な要因に依存する。
【0174】
本発明の抗IFNα抗体の“治療上効果的な投与量”は、好ましくは、病状の軽減、病状のない期間の頻度及び持続時間の増加、又は苦痛による機能障害又は能力障害を予防する。例えば、全身エリテマトーデス(SLE)において、治療上効果的な投与量は、好ましくは、例えば痛み又は疲労などのSLEに関連する肉体的な症状のさらなる悪化を予防する。また、治療上効果的な投与は、好ましくは、病気の初期又は発端の兆候が現われる時に望まれ、SLEの始まりを予防又は遅らせる。同様に、それはSLEに関わる慢性的な進行を遅らせることを含む。SLEの診断において用いられる臨床検査は、化学(IFNαのレベルの測定を含む)、血液学、血清学及び放射線医学を含む。従って、モニターする臨床検査又は生化学検査は、SLEを治療するのに治療上効果的な投与量かどうかを決定するために使われる。ある従来公知の技術は、被験者の大きさ、被験者の症状の重症度、及び特定の組成物又は選択される投与の経路などの要因に基づいて、投与量が決定される。
【0175】
本発明の組成物は、ある従来公知の様々な方法を用いて、1つ以上の投与の経路で投与される。熟練した技術者によって正しく評価されるように、投与の経路及び/又は方式は、望まれる結果に依存して変化する。本発明の抗体の好ましい投与の経路は、静脈、筋肉内、皮内、腹腔内、皮下、脊髄又は他の非経口の、例えば、注射又は輸液などを含む。本願明細書で使われる“非経口投与”というフレーズは、腸の及び局所的な投与以外の投与の方式、通常は注射を意味し、静脈内、筋肉内、動脈内、髄こう内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮膚内、腹腔内、経気管内、皮下、角皮下、関節内、被膜下、クモ膜下、髄腔内、硬膜外、及び茎内の注射及び輸液を含むが、これらに限定されない。
【0176】
また、本発明の抗体は、局所的な表皮性、又は、例えば、鼻腔内、口腔内、膣内、直腸、舌下又は粘膜への投与の経路など、非経口ではない経路を介して投与される。
【0177】
活性化合物は、埋め込み、経皮貼布、及びマイクロカプセルに入れた送達システムを含む、遊離制御した製剤などの素早い放出に対して化合物を守る担体とともに調製される。生物分解性のポリマー、生物適合性のポリマー、エチレンビニル酢酸、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸などが使われる。このような多くの調製方法は、特許権利化され、当業者に公知である。例えば、「Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems,J.R.Robinson編、Marcel Dekker社,New York,1978」から参照することができる。
【0178】
治療上の組成物は、従来公知の医療器具を用いて投与される。例えば、好ましい実施形態において、本発明の治療上の組成物は、米国特許第5,399,163号明細書、米国特許第5,383,851、米国特許第5,312,335号明細書、米国特許第5,064,413号明細書、米国特許第4,941,880号明細書、米国特許第4,790,824号明細書、又は米国特許第4,596,556号明細書で開示され、無針皮下注射器を用いて投与される。本発明において有用な公知の埋め込みモジュールの例は、制御速度で薬剤を調剤する埋め込み可能なマイクロ注入ポンプ(米国特許第4,487,603号明細書)、皮膚を通して医薬体を投与する治療器具(米国特許第4,486,194号明細書にて開示)、正確な注入速度で薬剤を送達する薬剤注入ポンプ(米国特許第4,447,233号明細書にて開示)、継続的な医薬送達する可変流かつ埋め込み可能な注入装置(米国特許第4,447,224号明細書にて開示)複数の試験槽区画を有する浸透圧の医薬運搬システム(米国特許第4,439,196号明細書にて開示)、及び浸透圧の医薬運搬システム(米国特許第4,475,196号明細書にて開示)を含む。これらの特許明細書は本願明細書に引用されて援用する。多くの他のそのような埋め込み型の運搬システム及びモジュールが当業者にとって公知である。
【0179】
ある実施形態において、本発明のヒトモノクローナル抗体は、in vivoにおける適切な分布を確認するために調製される。例えば、血液脳関門(BBB)は多くの高親水性化合物を排除する。本発明の治療上の化合物がBBBを通過することを確認するために(もし望むのであれば)、例えば、リポソームが調製される。リポソームを生成する方法については、例えば、米国特許第4,522,811号明細書、米国特許第5,374,548号明細書、及び米国特許第5,399,331号明細書から参照することができる。リポソームは、特定の細胞又は臓器へ選択的に送達される1つ以上の部分からなってもよく、医薬送達性の向上を目的とする(例えば、V.V.Ranade(1989)J Cliva.Pharmacol.29:685を参照)。模範的な標的部分は、葉酸又はビオチン(例えば、Low他の米国特許第5,416,016を参照)、マンノシド(Umezawa他、(1988)Biochem.Biophys.Res.Commun.153:1038)、抗体(P.G.Bloeman他、(1995)FEBS Lett.357:140;M.Owais他、(1995)Antimicrob.Agents Chemother.39:180)、界面活性剤プロテインA受容体(Briscoe他、(1995)Am.J.Physio.1233:134);p120(Schreier他、(1994)J.Biol.Chem.269:9090)を含む。また、「K.Keinanen;M.L.Laukkanen(1994)FEBS Lett.346:123;J.J.Killion;I.J.Fidler(1994)Immunomethods 4:273」も参照することができる。
【0180】
[本発明の使用及び方法]
本発明のモノクローナル抗IFNα抗体及びそれに関連した誘導体/複合体及び組成物は、様々なin vitro及びin vivoでの診断上の及び治療上の有用性を有する。例えば、抗体は、標準的な抗体/抗原結合検定(例えば、ELISA、RIA)を用いて、in vitro又はin vivoで、IFNαタンパク質を検出するために使われる。さらに、これらの分子は、例えば、in vivoにおいて、IFNαが役割を果たす様々な疾患を治療、予防、又は診断するため、被験者に投与される。本願明細書で使われる、“被験者”という用語は、ヒト及びヒトでない動物の両方を含むことが意図される。好ましい被験者は、自己免疫疾患を示すヒトの患者を含む。本発明の“ヒトでない動物”という用語は、例えば、哺乳類、及びヒトでない霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ニワトリ、両生類、は虫類などの非哺乳類などの全ての脊椎動物を含む。
【0181】
本発明の抗体組成物は、全身エリテマトーデス(SLE)、多発性硬化症(MS)、炎症性腸疾患(IBD;クローン病、潰瘍性大腸炎及びセリアック病を含む)、乾癬、自己免疫性甲状腺炎、リウマチ様関節炎(RA)及び糸球体腎炎などの自己免疫疾病の治療において使われる。さらに、本発明の抗体組成物は、移植片対宿主病(GVHD)の治療における移植の拒絶を阻害又は予防するために使われる。
【0182】
本発明の抗体は、始めに、in vitroにおける治療上の使用に関連する結合活性について検査される。例えば、本発明の組成物は、以下の実施例に記載されるBiacore、ELISA及びフローサイトメトリー検定を用いて検査する。さらに、これらの分子の活性は、例えば、以下の実施例に記載されるような、細胞増殖検定、その後のIFNαへの暴露によって検定される。本発明の抗体及び組成物を投与する適切な方法は、従来公知であり開示されている。また、当分野の技術の範囲内で適切な投与量を決定することができ、被験者の年齢及び体重及び使われる特定の医薬に依存する。模範的な投与量は上記に記載される。
【0183】
また、本発明の抗IFNα抗体は上記に記載されるような他の治療上の薬剤とともに投与する。
【0184】
上記に記載されるように、治療目的のために、治療上効果的な量のヒト抗体組成物及び薬理学的に許容可能な担体が患者に投与される。投与される量が生理学的に重要である場合、抗体組成物及び薬理学的に許容可能な担体の組み合わせで“治療上効果的な量”において投与されると言われる。薬剤は、過敏症の患者の生理において検出可能な変化をもたらす場合、“生理的に重要”である。標的でない薬剤を全身に投与して標的となる場合より標的となる治療薬が指定した標的へ高い割合の投与量を送達される場合、“治療上効果的”である。
【0185】
また本発明の範囲内には、本発明の組成物(例えば、ヒト抗体、免疫複合体及び二重特異性分子)及び使用のための説明書からなるキットも含まれる。さらに、このキットは、本発明の1個以上の付加的なヒト抗体(例えば、IFNα活性を阻害するが、第1のヒト抗体とは別のものである相補的な活性を有するヒト抗体)などの少なくとも1個の付加的な試薬を含む。
【0186】
本発明は、以下の実施例によって詳細に説明されるが、本発明の内容を限定するものと解釈されるべきではない。本願明細書の全体にわたって、全ての図及び全ての参考文献、特許及び公報は明白に引用されて援用する。
【実施例1】
【0187】
<IFNαに対するヒトモノクローナル抗体の生成>
抗原:
結果として複数のIFNαサブタイプを産生するが、IFNωは産生しない、ウィルスで刺激されたヒトリンパ芽球状細胞株から精製した、複数のサブタイプを含む天然のヒトIFNαを抗原として用いた。
【0188】
形質転換及び染色体導入KM Mice(登録商標):
IFNαに対する完全なヒトモノクローナル抗体を、ヒト抗体遺伝子を発現する形質転換、染色体導入マウスのKM種を用いて調製した。このマウス種において、内因性のマウスκ軽鎖遺伝子を、「Chen他、(1993)EMBO J.12:811−820」に記載されるようにホモ接合的に破壊し、内因性のマウス重鎖遺伝子をHuMabマウスにおいて、「国際公開第01/09187号明細書」の実施例1に記載されるようにホモ接合的に破壊した。このマウスは、「Fishwild他、(1996)Nature Biotechnology 14:845−851」に記載されるように、ヒトκ軽鎖導入遺伝子を持つ。また、このマウスは、「国際公開第02/43478号明細書」に記載されるようにヒト重鎖導入染色体SC20を持つ。
【0189】
KM Mouse(登録商標)の免疫化:
IFNαに対する完全なヒトモノクローナル抗体を生成するために、ウィルスで刺激したヒトリンパ芽球状細胞株から精製した複数のサブタイプを含む天然のヒトIFNαを用いて、KMマウスを免疫化した。一般的な免疫化の概要は、「Lonberg,N.他、(1994)Nature 368:856−859;Fishwild,D.他、(1996)Nature Biotechnology 14:845−851」及び「国際公開第98/24884号明細書」に記載される。最初に、6−16週齢において、マウスに抗原を注入した。IFNα抗原を精製した(すなわち、ウィルスで刺激したヒトリンパ芽球状細胞株から精製した)天然の調製物(25〜100μg)は、腹腔内に(IP)又は皮下(Sc)に注入し、KMマウスを免疫化した。
【0190】
形質転換及び染色体導入マウスは、腹腔内に(IP)又は皮下(Sc)に完全な免疫増強剤中の抗原を2回注入して、2−4週間(全部で8回)にかけてIPに不完全な免疫増強剤中の抗原を注入して免疫化した。免疫応答を、眼球後出血によって監視した。(以下に記載されるように)ELISAで血漿を選別し、十分な滴定濃度の抗IFNαヒト免疫グロブリンを有するマウスを使用して融合した。マウスの静脈内に抗原を追加して免疫化した2日又は3日後にマウスを犠牲にした。
【0191】
抗IFNα抗体を産生するKMマウスの選択:
IFNαに結合する抗体を産生するKMマウスを選択するために、Fishwild他(1996)が記載するように、ELISAによって免疫化したマウスの血清を検査した。要約すると、マイクロタイタープレートにPBS中1−2μg/mlのリンパ芽球細胞から精製した天然のIFNαを50μl/ウェル加え、4℃で一晩インキュベートして被覆し、200μl/ウェルのPBS/Tween(0.05%)中の5%のニワトリ血清でブロックした。IFNαで免疫化したマウスの血漿の希釈液を各ウェルに加え、室温で1〜2時間インキュベートした。そのプレートをPBS/Tweenで洗浄し、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)と結合したヤギ−抗ヒトIgG Fcポリクローナル抗体とともに室温で1時間インキュベートした。洗浄後、そのプレートをABTS基質(シグマ、A−1888,0.22mg/ml)で現像し、495nmのバックグラウンド補正で波長を415nmに設定した分光光度計を用いて各ウェルの光学濃度を測定した。抗IFNα抗体の最も高い滴定濃度を呈したマウスを使って以下に記載されるように融合し、抗IFNα活性についてハイブリドーマの上清をELISAで検査した。
【0192】
IFNαに対するヒトモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマの生成:
脾細胞をKMマウスから単離し、PEGを用いて標準的な手順に基づいてマウス骨髄腫細胞株に融合した。抗原特異抗体の産生において、得られたハイブリドーマを選別した。
【0193】
免疫化したマウスに由来する脾臓のリンパ球の単一細胞懸濁液を、50%PEG(シグマ)を用いて、4分の1の数のP3X63−Ag8.653非分泌マウス骨髄腫細胞(ATCC,CRL 1580)又はSP2/0非分泌マウス骨髄腫細胞(ATCC,CRL 1581)に融合された。細胞を約1×10/ウェルの密度で平底のマイクロタイタープレートに配置し、10%のウシ胎仔血清、10%のP388D1(ATCC,CBL TIB−63)調製した培地、3〜5%のDMEM(メディアテック、CRL 10013、高グルコース、L−グルタミン及びピルビン酸ナトリウム含有)中のオリジン(IGEN)、5mMのHEPES、0.055mMの2−メルカプトエタノール、50mg/mlのゲンタマイシン及び1xHAT(シグマ、CRL P−7185)を含む選択培地において約2週間インキュベートした。ヒト抗IFNαIgG抗体についてELISAによって各ウェルを選別した。
【0194】
IFNαの抗増殖効果をブロックする能力について、ELISAによって同定した抗体を分泌するハイブリドーマから調製した培地をDaudi増殖検定(以下に記載する)において検査した。Daudi検定の選別において最も高い中和活性をもつハイブリドーマを、限界希釈法によって少なくとも2回サブクローニングした。得られた安定なサブクローンをin vitroで培養し、組織培養培地中で少量のモノクローナル抗体を生成した。Daudi増殖検定を繰り返し、サブクローンの活性を確認した。モノクローナル抗IFNαを精製して特徴付けするため、Daudi検定において最も高い活性を持つサブクローンを増量し、十分な量(一般的に1L)の調製した培地を生成した。
【0195】
抗IFNα抗体を中和するハイブリドーマの選別:Daudi増殖検定:
インターフェロンαは、分量依存的な様式でDaudi細胞(バーキットリンパ腫、ATCC番号CCL−213)の増殖を阻害する。インターフェロンのその受容体に対する結合をブロックする中和抗体は、増殖を回復させる。Daudiにおける天然のリンパ芽球状のIFNαの抗増殖効果についての用量応答曲線を測定し、Daudiの生育を50%にまで阻害する(EC50)のに十分な濃度を求めた。
【0196】
IFNαの添加又は非添加の条件下、96ウェルの平底細胞培養プレートにおいて、ハイブリドーマを調製した培地を培養培地(10%のFCS、1x2−ME、L−グルタミン及びペニシリン、ストレプトマイシンを補ったRPMI1640)のDaudi細胞と混合した。最終的な試薬の混合物は、1×10Daudi細胞+10%のハイブリドーマ上清+/−EC50における100μl/ウェルのIFNαであった。細胞を、37℃、5%のCOにおいて72時間インキュベートした。20μl/ウェルのMTS(プロメガ)を添加して増殖を検定し、490nmにおいてO.D.を読み、さらに3時間インキュベートした。生存可能な細胞の数は、O.D.の読み取り値に比例していた。ハイブリドーマ上清のみに対するDaudi阻害のパーセンテージをハイブリドーマ上清+IFNαについて計算し、IFNα添加及び非添加の培地コントロールと比較した。ハイブリドーマをIFNαの効力に従って順序づけし、最も活性を中性化したハイブリドーマを選択してサブクローニングした。
【0197】
ハイブリドーマクローン13H5、13H7及び7H9を選択して、さらに分析した。
【実施例2】
【0198】
<ヒトモノクローナル抗体13H5、13H7及び7H9の構造上の特徴付け>
標準的なPCR手法を用いて、13H5、13H7、及び7H9モノクローナル抗体の重鎖及び軽鎖可変領域をコードするcDNA配列を、13H5、13H7、及び7H9ハイブリドーマからそれぞれ得た。そして、標準的なシークエンス手法を用いて配列決定した。
【0199】
図1Aに、13H5の重鎖可変領域のヌクレオチド及びアミノ酸配列、及び配列番号2配列番号5及び配列番号19をそれぞれ示す。
【0200】
図1Bに、13H5の軽鎖可変領域のヌクレオチド及びアミノ酸配列、及び配列番号2配列番号8及び配列番号22をそれぞれ示す。
【0201】
13H5の重鎖免疫グロブリン配列と既知のヒト生殖系列免疫グロブリン重鎖の配列との比較によって、13H5の重鎖が、ヒト生殖系列VH 1−18に由来するV部分、未決定D部分、及びヒト生殖系列J 4bに由来するJ部分を利用することを明らかにした。図4に13H5のV配列のヒト生殖系列VH 1−18配列に対するアラインメントを示す。CDR領域決定のKabatシステムを用いて、13H5のV配列をさらに分析し、図1A及び図4の配列番号1、配列番号4及び配列番号7に重鎖のCDR1領域、CDR2領域及びCDR3領域をそれぞれ図示した。
【0202】
13H5の軽鎖免疫グロブリン配列と既知のヒト生殖系列免疫グロブリン軽鎖の配列との比較によって、13H5の軽鎖が、ヒト生殖系列VK A27に由来するV部分及びヒト生殖系列JK 1に由来するJK部分を利用することを明らかにした。図6に13H5のV配列の生殖系列VK A27配列に対するアラインメントを示す。CDR領域決定のKabatシステムを用いて13H5のV配列のさらに分析し、図1B及び図6、の配列番号10、配列番号13及び配列番号16に軽鎖のCDR1領域、CDR2領域及びCDR3領域をそれぞれ図示した。
【0203】
図2Aの配列番号26及び配列番号20に13H7の重鎖可変領域のヌクレオチド及びアミノ酸配列をそれぞれ示す。
【0204】
図2Bの配列番号29及び配列番号23に13H7の軽鎖可変領域のヌクレオチド及びアミノ酸配列をそれぞれ示す。
【0205】
13H7の重鎖免疫グロブリン配列と既知のヒト生殖系列免疫グロブリン重鎖の配列を比較して、13H7の重鎖が、ヒト生殖系列VH 4−61に由来するV部分、ヒト生殖系列3−10に由来するD部分、及びヒト生殖系列J 4bに由来するJ部分を利用することを明らかにした。図5に13H5のV配列のヒト生殖系列VH 4−61配列に対するアラインメントを示す。CDR領域決定のKabatシステムを用いて13H7のV配列をさらに分析し、図2A及び図5の配列番号2、配列番号5及び配列番号8に重鎖のCDR1、CDR2及びCDR3領域をそれぞれ図示した。
【0206】
13H7の軽鎖免疫グロブリン配列と既知のヒト生殖系列免疫グロブリン軽鎖の配列を比較して、13H5の軽鎖が、ヒト生殖系列VK A27に由来するV部分及びヒト生殖系列JK 2に由来するJK部分を利用することを明らかにした。図6に13H7のV配列の生殖系列VK A27配列に対するアラインメントを示す。CDR領域決定のKabatシステムを用いて13H7のV配列のさらに分析し、図2B及び図6の配列番号11、配列番号14及び配列番号17に軽鎖のCDR1、CDR2及びCDR3領域をそれぞれ図示した。
【0207】
図3Aの配列番号27及び配列番号21に7H9の重鎖可変領域のヌクレオチド及びアミノ酸配列をそれぞれ示す。
【0208】
図3Bの配列番号30及び配列番号24に7H9の軽鎖可変領域のヌクレオチド及びアミノ酸配列をそれぞれ示す。
【0209】
7H9の重鎖免疫グロブリン配列と既知のヒト生殖系列免疫グロブリン重鎖の配列を比較し、7H9の重鎖が、ヒト生殖系列VH 1−18に由来するV部分、ヒト生殖系列6−6に由来するD部分、及びヒト生殖系列J 4bに由来するJ部分を利用することを明らかにした。図4に7H9のV配列のヒト生殖系列VH 1−18配列に対するアラインメントを示す。CDR領域決定のKabatシステムを用いて7H9のV配列をさらに分析し、図3A及び図4の配列番号3、配列番号6及び配列番号9に重鎖のCDR1、CDR2及びCDR3領域をそれぞれ図示した。
【0210】
7H9の軽鎖免疫グロブリン配列と既知のヒト生殖系列免疫グロブリン軽鎖の配列を比較し、7H9の軽鎖が、ヒト生殖系列VK A27に由来するV部分及びヒト生殖系列JK 1に由来するJK部分を利用することを明らかにした。図6に7H9のV配列の生殖系列VK A27配列に対するアラインメントを示す。CDR領域決定のKabatシステムを用いて7H9のV配列をさらに分析し、図3B及び図6の配列番号12、配列番号15及び配列番号18に軽鎖のCDR1、CDR2及びCDR3領域を図示した。
【実施例3】
【0211】
<抗IFNαヒトモノクローナル抗体は複数のインターフェロンαサブタイプの生物活性阻害>
実施例1に記載されるように、インターフェロンαは、用量依存的な様式でDaudi細胞(バーキットリンパ腫、ATCC番号CCL−213)の増殖を阻害する。インターフェロンの受容体との結合をブロックする中和抗体は増殖を回復させる。細胞増殖検定を用いて、天然のリンパ芽球状IFNα、天然の白血球インターフェロン、13の組み換えIFNαサブタイプ、IFNβ及びIFNωの阻害について、精製したヒト抗IFNα抗体の特異性を検査して調べた。
【0212】
平底細胞培養プレート中で、IFNαの添加又は非添加の条件下、96ウェルのDaudi細胞を培養培地(10%FCS、1x2−ME、L−グルタミン、及びペニシリン、ストレプトマイシンで補ったRPMI 1640)中で生育させた。各タイプIインターフェロンを、EC50で検定し、各抗体の2倍ずつ増加させた滴定濃度、一般的に50μg/ml(312nM)〜381pg/ml(2.4pM)で混合した。抗体/IFN混合物は、1×10Daudi細胞/100μl/ウェルが最終濃度となるように底に積層し、96ウェルのDaudi細胞に加えられ、37℃で、5%のCOにおいて72時間インキュベートした。20μl/ウェルのMTS(プロメガ)を添加して増殖を検定し、490nmでO.D.を測定し、さらに3時間インキュベートした。生育可能な細胞の数は、O.D.の読み取りに比例した。インターフェロンの阻害パーセンテージを、IFNがない(=100%阻害)及びIFNだけが存在するDaudiの増殖に対して計算した。抗体は、阻害の度合いに従ってスコア付けを行い、検査した各抗体についてのIFNARサブタイプ特異性のプロファイルを得た。非線形回帰;S字状用量曲線;可変傾斜曲線適合を用いたPRISMソフトウェアを用いてEC50値を得た。結果として、ヒト抗IFNα抗体13H5は、複数のインターフェロンαサブタイプ、特にIFNα 6、2b、2a、1、16、10、8、5及び14の作用を阻害するが、IFNα 21、IFNβ又はIFNωを阻害しないことが明らかであった。13H5は、IFNαサブタイプ17、7及び4の阻害度の低い阻害剤である。インターフェロンのEC50値及び阻害度は、下の表1に示される。
【0213】
【表1】

【実施例4】
【0214】
<抗IFNα抗体による細胞表面マーカーのIFNαが誘導する発現の阻害>
IFNα2bを細胞培養培地へ添加することによって、正常な末梢血単核細胞(PBMNC)の細胞表面マーカーCD38及びMHCクラスIの発現を誘導することが知られている。ヒト抗IFNα抗体13H5の活性による一次ヒト細胞の培養における細胞表面マーカーの発現を誘導するインターフェロンの阻害について検査し、FACS分析によって検定した。
【0215】
抗IFNαモノクローナル抗体13H5及び同位体コントロールを、各PBMNC培養培地(RPMI+10%のFBS+1%のヒト血清)中で20μg/mlに希釈した。1.5ml/ウェルの抗体は、T25通気キャップ培養フラスコへ分配し、培養培地中に希釈した400iu/mlの白血球IFN、IFNα2b又はIFNωのいずれか、又は等量の培地とともに混合した。PBMNCを製造者(ベクトン ディッキンソン社)の指示に従って用い、ヘパリンで被覆したVacutainer(登録商標)CPT(登録商標)チューブを正常なヒトの血液から単離した。細胞を培養培地(RPMI 1640+10%のFBS+1%のヒト血清)中で2×10細胞/mlに再懸濁し、最終の検定条件として、6mlの培地あたり6×10のPBMNC+5μg/mlのAb+/−100iu/mlのIFNのAb/IFN混合物を等量加えた。フラスコは37℃、5%のCOにおいて24時間又は48時間インキュベートした。
【0216】
調製した培地を各フラスコから収集し、懸濁細胞をSorvall RTH−750ローターにおける1000rpmの遠心によって回収した。固まった細胞を氷上に保持し、上清はELISAのために−80℃で凍結した。付着した細胞をPBS洗浄(2ml)でフラスコから回収し、ヴェルセン中で15分間インキュベートした。ヴェルセンインキュベーション後にフラスコを掻き取り、PBS(2ml)で洗浄した。各PBS洗浄液の及びヴェルセンは、調製した培地の収穫から回収した細胞と混合した。溜めた細胞懸濁液を、Sorvall RTH−750ローターにおいて1000rpmで遠心し、得られたペレットを染色バッファー(PBS+0.1M EDTA+2%PBS+1%HS)中で300μlに再懸濁し、V型底の96ウェルプレートへ100μl/ウェルずつ分配した。
【0217】
そのプレートを、Sorvall RTH−750ローターにおいて2800rpmでパルス遠心し、以下のようにして、蛍光色素ラベルした抗体中で25μl/ウェルに固まった細胞を再懸濁した。
(1)マウス抗MHC I−FITC+マウス抗CD38−PE
(2)同位体コントロール、マウスIgG−FITC+マウスIgG−PE
光を遮って、そのプレートを氷上で45分間インキュベートした。細胞を200μlの染色バッファーを添加して3回洗浄し、パルス遠心し、最終的に200μlのPBS中の2%のパラホルムアルデヒド中で懸濁した。ベクトン ディックソンFACScalibur(登録商標)を用いたフローサイトメトリーによって単球細胞の染色を分析し、側方散乱光対前方散乱光のグラフで描き、ゲートは分析から汚染した細胞を除去した。結果として、ヒトモノクローナル抗体13H5が、正常なPBMNCにおけるCD38及びMHCクラスIの発現の変化を誘導する白血球IFN及び組み換えIFNα 2bを阻害することを明らかにした。ヒトモノクローナル抗体13H5は、CD38及びMHCクラスIの細胞表面マーカーの発現における変化を仲介するIFNωを阻害しない。これらの結果は、以下の表2及び表3に示す。
【0218】
【表2】

【0219】
【表3】

【実施例5】
【0220】
<抗IFNα抗体によるIP−10のIFNが誘導する発現の阻害>
IFNα2bを細胞培養培地に添加することによって、正常な末梢血単核細胞(PBMNC)におけるIP−10発現を誘導することが知られている。ELISA結合検定によって、ヒト抗IFNα抗体13H5の活性による正常なPBMNC中のIP−10発現を誘導するインターフェロンの発現の阻害について検査した。
【0221】
実施例4に記載されるようにPBMNC培養を調製し、白血球IFN、IFNα2b又はIFNωとともに調製した。調製した培地は、製造者の指示に従って定量的なサンドウィッチELISAキット(Quantkine(登録商標)、R&Dシステムズ)を用い、1:30希釈でIP−10/CXCL10の発現について分析した。その結果、ヒトモノクローナル抗体13H5が、正常なPBMNC培養中のIP−10の発現を誘導し、白血球IFN及び組み換えIFNα2bを阻害するが、IP−10発現を誘導するIFNωを阻害しないことを明らかにした。これらの結果を表4に示す。
【0222】
【表4】

【実施例6】
【0223】
<抗IFNαヒトモノクローナル抗体の親和性の特徴付け>
本実施例において、Biacore分析を用い、モノクローナル抗体13H5を組み換えIFNα2a及びIFNα2bとの結合親和性について調べた。
【0224】
10μg/mlの精製した抗体を、Prot−Gで被覆したCM5チップ上に捕捉した。HBS−EP流動バッファー中の80〜10nmの濃度の抗原の液体を25μl/minの速度でチップ上を通過させた。放置した結合時間は5分であり、解離期間を10分設定した。バックグラウンドとチップ及び抗体への非特異結合を、捕捉したアイソタイプコントロールであるヒトIgG(シグマ)とバッファーを用いて表面との結合を検出して除外した。20mMのNaOH+400mMのNaClを用い、100μl/minの流速で0.4分間、チップの再生を行なった。結合曲線及び解離曲線は、BIAevaluationソフトウェア(Biacore AB)を用いたラングミュア結合モデルへ適用した。これらの結果を以下の表5に示す。
【0225】
【表5】

【実施例7】
【0226】
<SLE血漿に仲介された樹状細胞成長の抗体阻害>
SLE血漿は、正常なヒト単球に由来する樹状細胞の成長を誘導する。本実施例において、精製したモノクローナルヒト抗IFNα抗体によるSLE血漿の細胞表面マーカーCD38、MHCクラスI及びCD123の誘導を阻害する抗体の能力によって評価し、樹状細胞の成長の阻害について検査した。
【0227】
25mlの軟膜をPBSで4倍に希釈した。そのサンプルを4×50mlの円錐管に分け、15mlの白血球分離培地(ICNバイオメディカルズ)を底部に積層した。500xgにおいて30分間回転させ、PBMCを含む軟膜を除去し、PBSで洗浄した。細胞を4×10細胞/mlで培養培地中に再懸濁した。単球を培養培地中で37℃にて1.5時間、PBMC(2.0×10細胞/5ml/25cmフラスコ)をインキュベートし、非接着細胞を2回洗い流すことによって単離した。二度目の洗浄に続いて、その細胞を1%の熱不活性化ヒト血清を含む培地中で培養した。25%のSLE患者の血漿、プラス/マイナス中和抗体及びアイソタイプコントロール(30μg/ml)を培養培地に加え、IFNα2b(100&10iu/ml)プラス25%の正常なヒトの血漿をマーカー誘導の陽性対照として使用した。フラスコを37℃で5%のCOにおいて3〜7日間インキュベートした。樹状細胞を調製した培地から回収し、(実施例4に記載されるように)PBMNC培養中のマーカー誘導の阻害について染色する前に、PBS及びヴェルセン処理してもよい。樹状細胞の染色をベクトン ディックソンのFACScalibur(登録商標)を用いたフローサイトメトリーによって分析した。側方散乱光対前方散乱光のグラフにおいて描き、ゲートは分析から汚染した細胞を除去した。抗IFNαヒトモノクローナル抗体13H5は、13H5の存在下で細胞表面マーカーMHCクラスI、CD38、及びCD123の正常化した発現によって明らかとなり、樹状細胞の成長におけるIFNαに依存する過程を阻害する。以下表6の(A)、(B)、(C)及び(D)の4人のSLE提供者のサンプルについての結果を示す。
【0228】
【表6】

【実施例8】
【0229】
<モノクローナル抗体13H5の作用のメカニズム>
本実施例において、放射性ラベルされたサイトカイン及び抗体を用い、13H5の作用のメカニズムを決定するため、IFNARを発現する細胞とのいくつかの結合実験を行った。
【0230】
実験の第1のセットにおいて、組み換えIFNα2aは、29.3Ci/m mole比放射能(ピアースIODO−GEN(登録商標)試験管)で放射性ヨウ素化され、約1nMのKでDaudi細胞に特異結合することが決定された。細胞に対するこのリガンドとの結合の競合について調べるために、ガラス繊維プレートを、200μl/ウェルのミルクバッファーとともに4℃にて一晩ブロックした。Daudi細胞をRPMI 1640培地において2×10細胞/ウェルで分配し、125I−IFNαに加えて、13H5、アイソタイプコントロール又は非ラベルのIFNαのいずれかの競合相手の3倍ずつ希釈(30nM〜14pM)して混合した。そのプレートをRPMIで洗浄し、振とう器上で4℃にて2時間インキュベートして空気乾燥した。そのフィルターをガラス試験管に移し、放射活性を分析した。
【0231】
いくつかの実験結果を図7に示す。非ラベルのリガンドを陽性対照として使用し、約0.5nMのIC50125I−IFNαとの結合を特異的に阻害することが観測された。しかしながら、13H5抗体はヨウ素化リガンドとの結合を阻害しなかったが、細胞に対する125I−IFNαとの結合に効果を持たないアイソタイプコントロール抗体の作用に対照し、処理した細胞に関連した放射性シグナルが高められることが観測された。この結果は、13H5が非競合的な作用のメカニズムを有し、リガンドとの結合の阻害ではなく、シグナリングを阻害することによって生物学活性を中和することを示す。
【0232】
また、上記の結果は、13H5がIFNαの存在下で細胞の表面に結合することを示唆する。各13H5分子は2個のIFNα分子を結合させる能力を有するので、細胞膜に結合した第2のリガンドを生成する可能性がある。この仮説は、細胞に結合した放射活性が、IFNαの13H5結合部位に対して1:1の比率と一致し、抗体及びリガンドの各濃度で約2倍向上したという観測に基づいて支持される。
【0233】
13H5の作用のメカニズムをさらに調べるために、抗体のDaudi細胞に対する結合について、IFNα2aの存在下又は非存在下において放射性ラベル化した抗体を用いて検定した。結合実験に基づき、サイトカインをIFNARとの結合を飽和させるように計算された濃度(10nM)で使用した。13H5抗体を、414Ci/m moleの比放射能(ピアースIODO−GEN(登録商標)試験管)で放射性ヨウ素化した。細胞に結合する抗体を調べるために、ガラス繊維プレートを、200μl/ウェルのミルクバッファーとともに4℃で一晩ブロックした。Daudi細胞をRPMI 1640培地中2×10細胞/ウェルで分配し、125I−13H5の2倍ずつ希釈し、プラス/マイナスIFNα(10nM)と混合した。そのプレートをRPMIで洗浄し、振とう器上で4℃にて2時間インキュベートし、空気乾燥した。IFNα2aに依存した結合を決定するために、単独で結合する125I−13H5についてのCPM値をIFNα2aの存在下で測定された値から差し引いた。いくつかの実験結果を図8に示す。結果として、IFNα2aの存在下でDaudi細胞に対して125I−13H5の用量依存的かつ飽和可能な結合を示すが、125I−13H5のみとの結合はごく僅かであることを示した。13H5とのIFNα依存的な特異結合は、図8に●で示され、IFNα存在下おける13H5との結合について、の全体のCPMから抗体のみについてのCPM(非特異結合を意味する)を差し引いて計算した。
【0234】
従って、13H5の作用のメカニズムとは、13H5に結合したIFNαの複合体が細胞表面のIFNARに結合できる非競合的なものであり、IFNαの生物活性はIFNARを通したシグナリングの阻害によって中和される。
【実施例9】
【0235】
<13H5を用いた抗体依存的な細胞を介した細胞毒性検定>
13H5はIFNα存在下で細胞表面に結合するため、抗体依存的な細胞を介した細胞毒性(ADCC)が51Cr放出検定を用いて調べた。Raji細胞を新鮮なヒト単核細胞による溶解の標的として使用した。単核細胞をFicoll Hypaque密度遠心分離によってヘパリン添加の全血液から精製した。標的細胞を10細胞あたり100μCiの51Crで1時間ラベル化し、U型底のマイクロタイタープレートにウェルあたり10細胞で分配し、エフェクター細胞に加えて、滴定濃度の抗体とともに混合した(エフェクター:標的=50:1)。37℃で4時間のインキュベートに続いて、上清を調製した培地を回収し、放射活性について分析した。抗体の非存在下で放射活性を放出してバックグラウンドコントロールとして使い、標的細胞を界面活性剤処理して100%溶解を測定した。細胞毒性を次の式によって計算した。
%溶解=(実験のcpm−標的細胞の漏れによるcpm)/(界面活性剤による溶解のcpm−標的細胞の漏れによるcpm)×100%
特異的溶解=13H5存在下での%溶解−13H5非存在下での%溶解
検定は、3回行われた。
【0236】
図9に示すADCC検定の結果は、13H5が、単独又はIFNα2bの存在下のいずれおいても、Raji細胞において有意なADCC活性を有しないことを示す。同様に、陽性対照(リツキシマブ)が強い用量依存的な細胞毒性を示したのに対して、IgGと一致したアイソタイプは活性を示さなかった。これらの結果は、IFNARを発現する細胞の細胞表面にある13H5との結合に仲介されるIFNαがADを仲介するのに十分ではないことを示す。
【実施例10】
【0237】
<13H5の安定性の試験>
13H5抗体は、重鎖のCDR2領域内のAsn−55において強力な脱アミド部位を含む。アスパラギン残基の脱アミド化は、組み換えDNA手法を用いて得られるポリペプチド及びタンパク質の一般的な修飾であり、脱アミド化が常に生物活性の喪失と関連するとは限らないが、生物活性及び/又は安定性を減少させる可能性がある。アスパラギン酸(及びイソアスパラギン酸)を形成するアスパラギンの脱アミド化は、荷電に基づいた分析方法によって検出する実効荷電を変化させる。促進された条件下(塩基性のpH)における13H5の脱アミド化を調べるために、IEX−HPLC及びキャピラリー等電点電気泳動法(cEIF)によるFab断片の脱アミド化変異体の検出方法が用いられた。
【0238】
13H5の脱アミド化を促進させるために、抗体はアルカリ性のpHでバッファーに曝した。出発材料として、102μlの一定分量の13H5(5.9mg/mlで全体の600μgに対して)を、498μlのPBS及び6μlの100Xアジ化ナトリウム(2%溶液)へ加えた。PBS時間ゼロサンプルのために、130μlの出発材料を30μlのPBSに混合し、そのサンプルをさらなる分析まで−20℃で保存した。脱アミドバッファーにおける時間ゼロのサンプルのために、130μlの出発材料を15μlの10X脱アミド化バッファー(pH8.5の10%炭酸水素アンモニウム)及び15μlのpH調節バッファー(pH6.0の1M MES)と混合し、さらなる分析まで−20℃で保存した。PBSの2日のサンプルのために、130μlの出発材料を30μlのPBSと混合し、40℃で48時間インキュベートし、そのサンプルをさらなる分析まで−20℃で保存した。脱アミド化条件下の2日サンプルのために、130μlの出発材料を15μlの10X脱アミド化バッファーと混合し、40℃で48時間インキュベートした。48時間後、15μlのpH調節バッファーを加え、そのサンプルをさらなる分析まで−20℃で保存された。
【0239】
分析用の上記のサンプルを調製するために、パパイン消化が行った。使用した反応条件は、160μlのサンプル(130μg 13H5)、3.2μlの50mMのシステイン及び6.5μlの1.0mg/ml溶液中でのパパイン酵素であった。そのサンプルを40℃で4時間置き、4.8μlの1Mヨードアセトアミドを添加して反応を止めた。パパイン消化後、Fab及びFc断片の存在を確認するために非還元SDS−PAGEを行なった。
【0240】
そのサンプルにおいてIEX−HPLC分析を行うために、全てのサンプルをまず水に対して透析した。その後、50μlの各サンプルを以下のクロマトグラフィー条件でHPLC分析を行なった。
カラム=Dionex WCX−10弱陽イオン交換カラム
“A”バッファー=pH5.5の10mM MES
“B”バッファー=pH5.5の10mM MES;1.0M NaCl
溶出=4−25%“B”を30分の間0.8ml/minで溶出
検出=280nmにおけるUV吸収
IEX−HPLC分析の結果は、脱アミド化条件下の時間ゼロ及び2日サンプルにおいて、脱アミド化したFabのピーク面積を図7に示す。
【0241】
【表7】

【0242】
cIEF分析を行うために、サンプルをまず水に対して3時間透析し、分析の標準的な方法を用いてcIEF分析を行なった。cIEF分析の結果として、脱アミド化条件下での時間ゼロ及び2日サンプルにおいての脱アミド化したFabのピーク面積を下記の表8に示す。
【0243】
【表8】

【0244】
強制的な脱アミド化のpH依存性について調べるために、PBS(pH7.0)中の2日サンプルにおいてのIEX−HPLCデータを、脱アミド化条件下の2日サンプルと比較した。その結果として、脱アミド化条件下のPBS2日サンプル及び2脱アミド化条件下の2日サンプルのFabのピーク面積を下記の表9に示す。
【0245】
【表9】

このデータは、中性のpHと比較し、塩基性のpHの下で速度が増加すると、β−アスパルチルシフトメカニズムによるポリペプチドの脱アミド化が発生すると予想されるタンパク質分解の既存の理論を支持する。
【実施例11】
【0246】
<安定性が向上した13H5変異体の調製及び特徴付け>
本実施例において、13H5変異体をAsn−55でアミノ酸置換を有するように調製し、実施例10に記載されるようにcIEF分析によって、変異体の安定性を脱アミド化条件下に2日置いて調べた。変異体を標準的な組み換えDNA変異手法によって調製し、野生型13H5とVのアミノ酸位置55−58での変異の配列は、以下の通りであった。
13H5野生型: N G N T
変異体番号1: D G N T
変異体番号2: Q G N T
変異体番号3: Q G Q T
変異体番号1、変異体番号2及び変異体番号3の全長のVアミノ酸配列は、配列番号34、配列番号35及び配列番号36に示される。
【0247】
野生型及び2日脱アミド化条件の変異体のcIEF分析した結果について、脱アミド化したFabのピーク面積を下記の表10に示す。
【0248】
【表10】

結果から、3つのAsn−55変異体は、野生型の13H5抗体より強制的な脱アミド化条件下で良い安定性を示すことが明らかである。
【0249】
配列リストの要約
【表11】

【図面の簡単な説明】
【0250】
【図1A】13H5ヒトモノクローナル抗体の重鎖可変領域のヌクレオチド配列(配列番号25)及びアミノ酸配列(配列番号19)を示す。CDR1(配列番号1)、CDR2(配列番号4)及びCDR3(配列番号7)領域を線引きし、そしてV、D、及びJ生殖系列の派生を表す。
【図1B】13H5ヒトモノクローナル抗体の軽鎖可変領域のヌクレオチド配列(配列番号28)及びアミノ酸配列(配列番号22)を示す。CDR1(配列番号10)、CDR2(配列番号13)及びCDR3(配列番号16)領域を線引きし、そしてV、D、及びJ生殖系列の派生を表す。
【図2A】13H7ヒトモノクローナル抗体の重鎖可変領域のヌクレオチド配列(配列番号26)及びアミノ酸配列(配列番号20)を示す。CDR1(配列番号2)、CDR2(配列番号5)及びCDR3(配列番号8)領域を線引きし、そしてV、D、及びJ生殖系列の派生を表す。
【図2B】13H7ヒトモノクローナル抗体の軽鎖可変領域のヌクレオチド配列(配列番号29)及びアミノ酸配列(配列番号23)を示す。CDR1(配列番号11)、CDR2(配列番号14)及びCDR3(配列番号17)領域を線引きし、そしてV、D、及びJ生殖系列の派生を表す。
【図3A】7H9ヒトモノクローナル抗体の重鎖可変領域のヌクレオチド配列(配列番号27)及びアミノ酸配列(配列番号21)を示す。CDR1(配列番号3)CDR2(配列番号6)及びCDR3(配列番号9)領域を線引きし、そしてV、D、及びJ生殖系列の派生を表す。
【図3B】7H9ヒトモノクローナル抗体の軽鎖可変領域のヌクレオチド配列(配列番号30)及びアミノ酸配列(配列番号24)を示す。CDR1(配列番号12)、CDR2(配列番号15)及びCDR3(配列番号18)領域を線引きし、そしてV、D、及びJ生殖系列の派生を表す。
【図4】13H5及び7H9の重鎖可変領域及びヒト生殖系列VH 1−18(配列番号31)とのアミノ酸配列のアラインメントを示す。
【図5】13H7の重鎖可変領域及びヒト生殖系列VH 4−61(配列番号32)とのアミノ酸配列のアラインメントを示す。
【図6】13H5、13H7及び7H9の軽鎖可変領域及びヒト生殖系列VK A27(配列番号33)とのアミノ酸配列のアラインメントを示す。
【図7】mAb 13H5による125I−IFNα 2a結合の増加(▼)と対比した、非ラベルIFNα 2aによるIFNARを発現するDaudi細胞との結合(●)の競合物質の濃度を示したグラフである。アイソタイプコントロール抗体は、結合において効果がなかった(◆)。
【図8】IFNα 2aの存在下での125I−13H5のDaudi細胞に結合(■)するが、IFNα 2a非存在下では結合しない(▲)ことを示すグラフである。13H5の特異的なIFNα依存的な結合は丸(●)によって表される。
【図9】13H5存在下(■)、13H5+IFNα存在下(▲)、アイソタイプコントロール抗体+IFNα(▼)、又は陽性対照抗体(●)の新鮮なヒト単核細胞による、Raji細胞溶解のADCC検定の結果を示すグラフである。溶解は、陽性対照を用いた場合のみ見られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離された抗インターフェロンαモノクローナル抗体又はその抗原結合部分であって、前記抗体は、
(a)複数のインターフェロン(IFN)αサブタイプの生物活性を阻害するが、IFNα21の生物活性を実質的に阻害せず、
(b)IFNβ又はIFNωの生物活性を実質的に阻害しない、単離された抗インターフェロンαモノクローナル抗体又はその抗原結合部分。
【請求項2】
末梢血単核細胞のCD38又はMHCクラスIのIFNによって誘導される表面発現を阻害する請求項1記載の抗体。
【請求項3】
末梢血単核細胞のIP−10のIFNによって誘導される発現を阻害する請求項1記載の抗体。
【請求項4】
全身エリテマトーデス(SLE)血漿が仲介する樹状細胞の成長を阻害する請求項1記載の抗体。
【請求項5】
複数のヒトIFNαサブタイプの生物活性を阻害するが、ヒトIFNα21の生物活性を実質的に阻害しない請求項1記載の抗体。
【請求項6】
(i)インターフェロンα受容体(IFNAR)を発現する細胞とIFNαとの結合を阻害せず、
(ii)IFNα存在下でIFNARを発現する細胞に結合する請求項1記載の抗体。
【請求項7】
ヒト抗体である請求項1記載の抗体。
【請求項8】
IgG1又はIgG4アイソタイプの全長抗体である請求項1記載の抗体。
【請求項9】
抗体断片又は単鎖抗体である、請求項1記載の抗体。
【請求項10】
単離された抗インターフェロンαモノクローナル抗体又はその抗原結合部分であって、前記抗体は、
(a)ヒトVH 1−18遺伝子の重鎖可変領域又は4−61遺伝子の重鎖可変領域と、
(b)ヒトVk A27遺伝子の軽鎖可変領域と、を含み、
(c)少なくとも1個のインターフェロンαサブタイプの生物活性を阻害する、単離された抗インターフェロンαモノクローナル抗体又はその抗原結合部分。
【請求項11】
前記ヒトVH 1−18遺伝子の重鎖可変領域を含む請求項10記載の抗体。
【請求項12】
前記ヒトVH 4−61遺伝子の重鎖可変領域を含む請求項10記載の抗体。
【請求項13】
単離された抗インターフェロンαモノクローナル抗体又はその抗原結合部分であって、CDR1、CDR2、及びCDR3の配列を含む重鎖可変領域と、CDR1、CDR2、及びCDR3の配列を含む軽鎖可変領域と、を含み、
(a)前記重鎖可変領域の前記CDR3の配列は、配列番号7、配列番号8及び配列番号9からなる群より選択されるアミノ酸配列と、該アミノ酸配列内の保存的修飾と、を含み、
(b)前記軽鎖可変領域の前記CDR3の配列は、配列番号16、配列番号17及び配列番号18からなる群より選択されるアミノ酸配列と、該アミノ酸配列内の保存的修飾と、を含み、
(c)前記抗体は、複数のIFNαサブタイプの生物活性を阻害するが、IFNα21の生物活性を実質的に阻害せず、
(d)前記抗体は、IFNβ又はIFNωの生物活性を実質的に阻害しない、単離された抗インターフェロンαモノクローナル抗体又はその抗原結合部分。
【請求項14】
末梢血単核細胞のCD38又はMHCクラスIのIFNによって誘導される表面発現を阻害する請求項13記載の抗体。
【請求項15】
末梢血単核細胞のIP−10のIFNによって誘導される発現を阻害する請求項13記載の抗体。
【請求項16】
全身エリテマトーデス(SLE)血漿が仲介する樹状細胞の成長を阻害する請求項13記載の抗体。
【請求項17】
前記重鎖可変領域の前記CDR2配列は、配列番号4、配列番号5及び配列番号6からなる群より選択されるアミノ酸配列と、該アミノ酸配列内の保存的修飾と、を含み、
前記軽鎖可変領域の前記CDR2配列は、配列番号13、配列番号14及び配列番号15からなる群より選択されるアミノ酸配列と、該アミノ酸配列内の保存的修飾と、を含む請求項13記載の抗体。
【請求項18】
前記重鎖可変領域の前記CDR1の配列は、配列番号1、配列番号2及び配列番号3のアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列と、該アミノ酸配列内の保存的修飾と、を含み、
前記軽鎖可変領域の前記CDR1の配列は、配列番号10、配列番号11及び配列番号12のアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列と、該アミノ酸配列内の保存的修飾と、を含む請求項17記載の抗体。
【請求項19】
ヒト抗体である請求項13記載の抗体。
【請求項20】
ヒト化抗体又はキメラ抗体である請求項13記載の抗体。
【請求項21】
単離された抗インターフェロンαモノクローナル抗体又はその抗原結合部分であって、重鎖可変領域と、軽鎖可変領域と、を含み、
(a)前記重鎖可変領域は、配列番号19、配列番号20及び配列番号21からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%相同であるアミノ酸配列を含み、
(b)前記軽鎖可変領域は、配列番号22、配列番号23及び配列番号24からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%相同であるアミノ酸配列を含み、
(c)前記抗体は、複数のIFNαサブタイプの生物活性を阻害するが、IFNα21の生物活性を実質的に阻害せず、
(d)前記抗体は、IFNβ又はIFNωの生物活性を実質的に阻害しない、単離された抗インターフェロンαモノクローナル抗体又はその抗原結合部分。
【請求項22】
末梢血単核細胞のCD38又はMHCクラスIのIFNによって誘導される表面発現を阻害する請求項21記載の抗体。
【請求項23】
末梢血単核細胞のIP−10のIFNによって誘導される発現を阻害する請求項21記載の抗体。
【請求項24】
全身エリテマトーデス(SLE)血漿が仲介する樹状細胞の成長を阻害する請求項21記載の抗体。
【請求項25】
ヒト抗体である請求項21の抗体。
【請求項26】
ヒト化抗体又はキメラ抗体である請求項21記載の抗体。
【請求項27】
単離された抗インターフェロンαモノクローナル抗体又はその抗原結合部分であって、
(a)配列番号1、配列番号2及び配列番号3からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域のCDR1と、
(b)配列番号4、配列番号5及び配列番号6からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域のCDR2と、
(c)配列番号7、配列番号8及び配列番号9からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域のCDR3と、
(d)配列番号10、配列番号11及び配列番号12からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域のCDR1と、
(e)配列番号13、配列番号14及び配列番号15からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域のCDR2と、
(f)配列番号16、配列番号17及び配列番号18からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域のCDR3と、を含み、
少なくとも1個のインターフェロンαサブタイプの生物活性を阻害する、単離された抗インターフェロンαモノクローナル抗体又はその抗原結合部分。
【請求項28】
(a)前記配列番号1を含む前記重鎖可変領域のCDR1と、
(b)前記配列番号4を含む前記重鎖可変領域のCDR2と、
(c)前記配列番号7を含む前記重鎖可変領域のCDR3と、
(d)前記配列番号10を含む前記軽鎖可変領域のCDR1と、
(e)前記配列番号13を含む前記軽鎖可変領域のCDR2と、
(f)前記配列番号16を含む前記軽鎖可変領域のCDR3と、を含む請求項27記載の抗体。
【請求項29】
(a)前記配列番号2を含む前記重鎖可変領域のCDR1と、
(b)前記配列番号5を含む前記重鎖可変領域のCDR2と、
(c)前記配列番号8を含む前記重鎖可変領域のCDR3と、
(d)前記配列番号11を含む前記軽鎖可変領域のCDR1と、
(e)前記配列番号14を含む前記軽鎖可変領域のCDR2と、
(f)前記配列番号17を含む前記軽鎖可変領域のCDR3と、を含む請求項27記載の抗体。
【請求項30】
(a)前記配列番号3を含む前記重鎖可変領域のCDR1と、
(b)前記配列番号6を含む前記重鎖可変領域のCDR2と、
(c)前記配列番号9を含む前記重鎖可変領域のCDR3と、
(d)前記配列番号12を含む前記軽鎖可変領域のCDR1と、
(e)前記配列番号15を含む前記軽鎖可変領域のCDR2と、
(f)前記配列番号18を含む前記軽鎖可変領域のCDR3と、を含む請求項27記載の抗体。
【請求項31】
単離された抗インターフェロンαモノクローナル抗体又はその抗原結合部分であって、
(a)配列番号19、配列番号20及び配列番号21からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、
(b)配列番号22、配列番号23及び配列番号24からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、を含み、
少なくとも1個のインターフェロンαサブタイプの生物活性を阻害する、単離された抗インターフェロンαモノクローナル抗体又はその抗原結合部分。
【請求項32】
(a)前記配列番号19のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、
(b)前記配列番号22のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、を含む請求項31記載の抗体。
【請求項33】
(a)前記配列番号20のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、
(b)前記配列番号23のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、を含む請求項31の抗体。
【請求項34】
(a)前記配列番号21のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、
(b)前記配列番号24のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、を含む請求項31の抗体。
【請求項35】
単離された抗インターフェロンαモノクローナル抗体又はその抗原結合部分であって、
(a)配列番号34、配列番号35、配列番号36及び配列番号37からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、
(b)配列番号22のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、を含み、
少なくとも1個のインターフェロンαサブタイプの生物活性を阻害する、単離された抗インターフェロンαモノクローナル抗体又はその抗原結合部分。
【請求項36】
インターフェロンα受容体(IFNAR)を発現する細胞とIFNαとの結合を阻害せず、IFNARを発現する細胞にIFNαの存在下では結合するがIFNα非存在下では結合せず、複数のインターフェロン(IFN)αサブタイプの生物活性を阻害する、単離された抗インターフェロンαモノクローナル抗体又はその抗原結合部分。
【請求項37】
請求項1から36のいずれかに記載の抗体とIFNα2a又はIFNα2bとの結合が競合する、単離されたヒト抗体又はその抗原結合部分。
【請求項38】
請求項1から36のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合部分、及び薬理学的に許容可能な担体を含む組成物。
【請求項39】
治療薬に結合する請求項1から36のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合部分を含む免疫複合体。
【請求項40】
前記治療薬は細胞毒素である請求項39記載の免疫複合体。
【請求項41】
前記治療薬は放射性同位体である請求項39記載の免疫複合体。
【請求項42】
請求項39記載の免疫複合体、及び薬理学的に許容可能な担体を含む組成物。
【請求項43】
抗体又はその抗原結合部分とは異なる結合特異性を有する第2の機能部分に結合され、請求項1から36のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合部分を含む二重特異性分子。
【請求項44】
請求項43記載の二重特異性分子、及び薬理学的に許容可能な担体を含む組成物。
【請求項45】
請求項1から36のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合部分をコードする単離された核酸分子。
【請求項46】
請求項45記載の核酸分子を含む発現ベクター。
【請求項47】
請求項46記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項48】
ヒト免疫グロブリン重鎖及び軽鎖の導入遺伝子を含む形質転換マウスであって、前記マウスは、請求項1から36のいずれかに記載の抗体を発現する形質転換マウス。
【請求項49】
請求項48記載のマウスから調製されるハイブリドーマであって、前記抗体を産生するハイブリドーマ。
【請求項50】
請求項1から36のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合部分と、インターフェロンαと、を接触させることを含む、インターフェロンαの生物活性を阻害する方法。
【請求項51】
請求項1から36のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合部分を被験者に投与することを含む、治療の必要がある被験者においてインターフェロンαが仲介する疾病又は疾患を治療する方法。
【請求項52】
前記疾病又は疾患は、全身エリテマトーデスである請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記疾病又は疾患は、多発性硬化症、炎症性腸疾患、インシュリン依存性糖尿病、乾癬、自己免疫性甲状腺炎、リウマチ様関節炎及び糸球体腎炎からなる群より選択される請求項51記載の方法。
【請求項54】
前記疾病又は疾患は、移植片拒絶又は移植片対宿主病である請求項51記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2007−513633(P2007−513633A)
【公表日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−544092(P2006−544092)
【出願日】平成16年12月10日(2004.12.10)
【国際出願番号】PCT/US2004/041777
【国際公開番号】WO2005/059106
【国際公開日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(504378238)メダレックス インコーポレイテッド (20)
【Fターム(参考)】