説明

インターフェロンβを用いる慢性炎症性脱髄性多発性ニューロパシーの治療

【課題】本発明の目的は、慢性脱髄性ニューロパシー(例えば、CIDP)を処置するための効果的な治療方法を提供すること。
【解決手段】慢性脱髄性運動ニューロパシーの処置のための医薬品の製造におけるIFN−β治療剤の使用であって、このIFN−β治療剤が、非皮下非経口経路を介して投与され、この慢性脱髄性運動ニューロパシーが、慢性炎症性脱髄性ニューロパシー(CIDP)であり、IFN−β治療剤が、成熟IFN−βを含有し、第1メチオニンを欠失する、使用。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(発明の背景)
慢性炎症性脱髄性多発性ニューロパシー(CIDP)は、ゆっくりした進行性の衰弱および脚および腕の感覚の機能障害によって特徴づけられる神経学的障害である。この疾患は、末梢神経のミエリン鞘に対する損傷によって引き起こされる。神経根の膨潤がまた、この疾患の特徴である。任意の年齢および両性において生じ得るが、CIDPは、若い成人において、女性よりも男性においてより一般的である。症状としては、刺痛またはしびれ(つま先および指において生じる)、腕および脚の衰弱、筋肉の疼痛、深部腱反射の喪失(反射消失)、疲労、ならびに異常な感覚が挙げられる。
【0002】
CIDPは、特定の他の疾患と関連する。例えば、炎症性脱髄性ニューロパシー(例えば、CIDP)が、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)血清陽性患者の3分の1において診断され、末梢神経疾患と呼ばれることが見いだされている。CIDPはまた、狼瘡、パラプロテイン血症、リンパ腫または糖尿病に罹患した被験体において生じることが見いだされた。
【0003】
未処置のCIDPは、理学療法および作業療法、矯正用具、および長期の処置を必要とする障害を蓄積することによって特徴づけられる。この分野における知識を有する医師の密接な追跡した看護が処置を調節するために必要である。
【0004】
CIDPについての処置の現在の方法としては、単独でまたは免疫抑制剤と組み合わされて処方され得る、プレドニゾンのようなコルチコステロイドの投与が挙げられる。免疫抑制剤はまた、ステロイド無しで与えられ得る。プラスマフェレーシス(血漿交換)および静脈内免疫グロブリン(IVIg)療法もまた、比較的効果的であり、現在使用されている。IVIgは、最初のラインの治療としてさえ使用され得る。また、物理療法は、筋力、機能および運動性を改善し得、痙縮の発生を最小化する。
【0005】
CIDPの過程は、個体間で幅広く変化する。あるものは、CIDPの発作、続いて、自発的な回復を有し得るが、一方、他のものは、再発間の部分的な回復を伴う多くの発作を有し得る。この疾患は、後天的なニューロパシーの処置可能な原因であり、神経細胞の損失を妨げるための早期の処置の開始が推奨される。しかし、いくらかの個体は、いくらかの残余するしびれ感または衰弱を残す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、現在のCIDPの処置方法は、有害(例えば、ステロイドまたは免疫抑制剤);高価(例えば、IVIgおよびプラスマフェレーシス);または不便(例えば、プラスマフェレーシス)である方法からなる。従って、現在の方法よりも、より毒性が低く、あまり高価ではなく、そしてより簡便である、慢性脱髄性ニューロパシー(例えば、CIDP)を処置するための効果的な治療方法を有することが非常に望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、例えば、以下の手段を提供する。
(項目1)
慢性脱髄性運動ニューロパシーの処置のための医薬品の製造におけるIFN−β治療剤の使用。
(項目2)
前記IFN−β治療剤が、非皮下非経口経路を介して投与される、項目1に記載の使用。
(項目3)
前記IFN−β治療剤が、筋肉内投与される、項目2に記載の使用。
(項目4)
前記慢性脱髄性運動ニューロパシーが、慢性炎症性脱髄性ニューロパシー(CIDP)である、項目1〜3のいずれか1項に記載の使用。
(項目5)
前記IFN−β治療剤が、成熟IFN−βを含有する、項目1〜4のいずれか1項に記載の使用。
(項目6)
前記IFN−β治療剤が、第1メチオニンを欠失する、項目1〜5のいずれか1項に記載の使用。
(項目7)
前記IFN−βが、ヒトIFN−βである、項目1〜6のいずれか1項に記載の使用。
(項目8)
前記IFN−βが、配列番号4を有する全長成熟ヒトIFN−βと少なくとも約95%同一である、項目7に記載の使用。
(項目9)
前記IFN−βが、配列番号4を含む、項目8に記載の使用。
(項目10)
前記IFN−βが、グリコシル化されている、項目1〜9のいずれか1項に記載の使用。
(項目11)
前記IFN−βが、グリコシル化されていない、項目1〜9のいずれか1項に記載の使用。
(項目12)
前記IFN−βが、IFN−β−1aである、項目7に記載の使用。
(項目13)
前記IFN−βが、IFN−β−1bである、項目7に記載の使用。
(項目14)
前記IFN−β治療剤が、免疫グロブリン分子の定常ドメインと融合したIFN−βを含有する、項目1〜13のいずれか1項に記載の使用。
(項目15)
前記免疫グロブリン分子が、ヒト免疫グロブリン分子である、項目14に記載の使用。
(項目16)
前記免疫グロブリン分子が、IgG1の重鎖である、項目15に記載の使用。
(項目17)
前記IFN−βが、配列番号14を含む、項目16に記載の使用。
(項目18)
前記IFN−β治療剤が、ペグ化IFN−βを含有する、項目1〜17のいずれか1項に記載の使用。
(項目19)
前記IFN−β治療剤が、安定化剤を含有する、項目1〜18のいずれか1項に記載の使用。
(項目20)
前記安定化剤が、酸性アミノ酸である、項目19に記載の使用。
(項目21)
前記安定化剤が、アルギニンである、項目20に記載の使用。
(項目22)
前記IFN−β治療剤が、約4.0と7.2との間のpHを有する、項目1〜21のいずれか1項に記載の使用。
(項目23)
前記IFN−β治療剤が、静脈内(i.v.)投与される、項目1〜2および項目4〜22のいずれか1項に記載の使用。
(項目24)
前記哺乳動物に、数回用量のIFN−β治療剤を投与する工程を包含する、項目1〜23のいずれか1項に記載の使用。
(項目25)
前記IFN−β治療剤が、約6MIUの用量で週1回投与される、項目24に記載の使用。
(項目26)
前記IFN−β治療剤が、約6MIUの用量で週2回投与される、項目24に記載の使用。
(項目27)
前記IFN−β治療剤が、約12MIUの用量で週1回投与される、項目24に記載の使用。
(項目28)
前記IFN−β治療剤が、約12MIUの用量で週2回投与される、項目24に記載の使用。
(項目29)
前記哺乳動物が、ヒトである、項目1〜28のいずれか1項に記載の使用。
(項目30)
医薬品の調製のための、項目1〜29のいずれか1項に記載の使用であって、該医薬品が、慢性脱髄性ニューロパシーのための他の処置に耐性であることがあらかじめ見出されていない被験体に投与される、使用。
(項目31)
前記医薬品が、免疫抑制剤または血漿瀉血を含む組み合わせ処置において投与される、項目1〜30のいずれか1項に記載の使用。
(項目32)
前記医薬品が、ステロイド、アザチオプリン、シクロスポリン、シクロホスファミドおよびマイコフェノレートからなる群から選択される免疫抑制剤を含む組み合わせ処置において投与される、項目30に記載の使用。
(項目33)
前記医薬品が、第2のCIDP処置を含む組み合わせ処置において投与される、項目2〜32のいずれか1項に記載の使用であって、ここで、前記IFN−β治療剤の投与は、非皮下非経口経路を介する、使用。
(項目34)
前記医薬品が、第2のCIDP処置を含む組み合わせ処置において投与される、項目2〜32のいずれか1項に記載の使用であって、ここで、前記IFN−β治療剤の投与は、週1回である、使用。
(項目35)
項目33または項目34に記載の使用であって、前記第2のCIDP処置が、IVIgの投与;ステロイドの投与;抗炎症薬物の投与および血漿瀉血からなる群から選択される、使用。
(項目36)
前記医薬品が、慢性脱髄性運動ニューロパシーのための別の処置で処置される被験体に投与される、項目1〜30のいずれか1項に記載の使用であって、該処置は、他の処置を段階的に減らす工程をさらに包含する、使用。
(項目37)
哺乳動物において慢性脱髄性運動ニューロパシーを処置する方法であって、該方法は、該哺乳動物に治療有効量のIFN−β治療剤を投与する工程を包含する、方法。
(項目38)
前記IFN−β治療剤が、非皮下非経口経路を介して投与される、項目37に記載の方法。
(項目39)
前記IFN−β治療剤が、筋肉内投与される、項目37に記載の方法。
(項目40)
前記慢性脱髄性運動ニューロパシーが、慢性炎症性脱髄性ニューロパシー(CIDP)である、項目37に記載の方法。
(項目41)
前記IFN−β治療剤が、成熟IFN−βを含有する、項目37〜40のいずれか1項に記載の方法。
(項目42)
前記IFN−β治療剤が、第1メチオニンを欠失する、項目37〜41のいずれか1項に記載の方法。
(項目43)
前記IFN−βが、ヒトIFN−βである、項目37〜42のいずれか1項に記載の方法。
(項目44)
前記IFN−βが、配列番号4を有する全長成熟ヒトIFN−βと少なくとも約95%同一である、項目43に記載の方法。
(項目45)
前記IFN−βが、配列番号4を含む、項目44に記載の方法。
(項目46)
前記IFN−βが、グリコシル化されている、項目37〜45のいずれか1項に記載の方法。
(項目47)
前記IFN−βが、グリコシル化されていない、項目37〜46のいずれか1項に記載の方法。
(項目48)
前記IFN−βが、IFN−β−1aである、項目43に記載の方法。
(項目49)
前記IFN−βが、IFN−β−1bである、項目43に記載の方法。
(項目50)
前記IFN−β治療剤が、免疫グロブリン分子の定常ドメインと融合したIFN−βを含有する、項目37〜49のいずれか1項に記載の方法。
(項目51)
前記免疫グロブリン分子が、ヒト免疫グロブリン分子である、項目50に記載の方法。
(項目52)
前記免疫グロブリン分子が、IgG1の重鎖である、項目51に記載の方法。
(項目53)
前記IFN−βが、配列番号14を含む、項目52に記載の方法。
(項目54)
前記IFN−β治療剤が、ペグ化IFN−βを含有する、項目37〜53のいずれか1項に記載の方法。
(項目55)
前記IFN−β治療剤が、安定化剤を含有する、項目37〜54のいずれか1項に記載の方法。
(項目56)
前記安定化剤が、酸性アミノ酸である、項目55に記載の方法。
(項目57)
前記安定化剤が、アルギニンである、項目56に記載の方法。
(項目58)
前記IFN−β治療剤が、約4.0と7.2との間のpHを有する、項目37〜57のいずれか1項に記載の方法。
(項目59)
前記IFN−β治療剤が、静脈内(i.v.)投与される、項目37〜38および項目40〜58のいずれか1項に記載の方法。
(項目60)
前記哺乳動物に、数回用量のIFN−β治療剤を投与する工程を包含する、項目37〜60のいずれか1項に記載の方法。
(項目61)
前記IFN−β治療剤が、約6MIUの用量で週1回投与される、項目60に記載の方法。
(項目62)
前記IFN−β治療剤が、約6MIUの用量で週2回投与される、項目60に記載の方法。
(項目63)
前記IFN−β治療剤が、約12MIUの用量で週1回投与される、項目60に記載の方法。
(項目64)
前記IFN−β治療剤が、約12MIUの用量で週2回投与される、項目60に記載の方法。
(項目65)
前記哺乳動物が、ヒトである、項目37〜64のいずれか1項に記載の方法。
(項目66)
CIDPを処置するための方法であって、該方法は、CIDPを有する被験体に、薬学的有効量のIFN−β治療剤を投与する工程、および該被験体に免疫抑制剤をさらに投与する工程または該被験体に血漿瀉血を行う工程を包含する、方法。
(項目67)
前記被験体に、ステロイド、アザチオプリン、シクロスポリン、シクロホスファミドおよびマイコフェノレートからなる群から選択される免疫抑制剤を投与する工程を包含する、項目66に記載の方法。
(項目68)
CIDPを処置するための方法であって、該方法は、CIDPを有する被験体に、薬学的有効量のIFN−β治療剤を第2のCIDP処置と組み合わせて投与する工程を包含し、ここで、該IFN−β治療剤の投与は、非皮下非経口経路を介する、方法。
(項目69)
項目68に記載の方法であって、前記第2のCIDP処置が、IVIgの投与;ステロイドの投与;抗炎症薬物の投与および血漿瀉血からなる群から選択される、方法。
(項目70)
CIDPを処置するための方法であって、該方法は、CIDPを有する被験体に、薬学的有効量のIFN−β治療剤を第2のCIDP処置と組み合わせて投与する工程を包含し、ここで、該IFN−β治療剤の投与は、週1回である、方法。
(項目71)
項目70に記載の方法であって、前記第2のCIDP処置が、IVIgの投与;ステロイドの投与;抗炎症薬物の投与および血漿瀉血からなる群から選択される、方法。
(項目72)
ステロイドの投与;抗炎症薬物の投与;IVIGの投与および血漿瀉血からなる群から選択される第1CIDP処置を受けている被験体におけるCIDP処置の方法における改善であって、該改善は、該被験体に、該第1CIDP処置に加えて、該第1CIDP処置の用量または頻度を有意に減少するために有効な量のIFN−β治療剤の用量を投与する工程を包含し、ここで、該IFN−β治療剤の投与は、非皮下非経口経路を介し、CIDPの症状の有効な軽減を提供する、改善。
(項目73)
ステロイドの投与;抗炎症薬物の投与;IVIGの投与および血漿瀉血からなる群から選択される第1CIDP処置を受けている被験体におけるCIDP処置の方法における改善であって、該改善は、該被験体に、該第1CIDP処置に加えて、該第1CIDP処置の用量または頻度を有意に減少するために有効な量のIFN−β治療剤の用量を、週1回投
与する工程を包含し、CIDPの症状の有効な軽減を提供する、改善。
(項目74)
ステロイドの投与;抗炎症薬物の投与;および血漿瀉血からなる群から選択される第1CIDP処置を受けている被験体におけるCIDP処置の方法における改善であって、該改善は、該被験体に、該第1CIDP処置に加えて、該第1CIDP処置の用量または頻度を有意に減少するために有効な量のIFN−β治療剤の用量を投与する工程を包含し、CIDPの症状の有効な軽減を提供する、改善。
【0008】
(発明の要旨)
1つの実施形態において、本発明は、哺乳動物において慢性脱髄性運動ニューロパシーを処置するための方法を提供する。この方法は、哺乳動物への、治療有効量のIFN−β治療剤を投与する工程を包含する。IFN−β治療剤は、非皮下の非経口経路(例えば、筋肉内)を介して投与され得る。好ましい実施形態において、ニューロパシーは、慢性炎症性脱髄性ニューロパシー(CIDP)である。
【0009】
IFN−β治療剤は、ヒトIFN−βを含み得る。例えば、IFN−β治療剤は、配列番号4を有する全長成熟ヒトIFN−βに対して少なくとも約95%同一性があるタンパク質を含み得る。IFN−β治療剤はまた、配列番号4を有する全長成熟ヒトIFN−βを含み得る。IFN−β治療剤はまた、異種ポリペプチド(例えば、ヒト免疫グロブリン分子の定常ドメイン)に融合した配列番号4を有する全長成熟ヒトIFN−βを含み得る。免疫グロブリン分子は、IgG1の重鎖であり得る。IFN−β治療剤は、配列番号14を含み得る。IFN−β治療剤はまた、ペグ化IFN−βを含み得る。
【0010】
IFN−β治療剤、またはこのようなものを含む組成物は、安定剤(例えば、タンパク質またはアミノ酸)を含み得る。例えば、安定剤は、アルギニンであり得る。IFN−β治療剤またはこのようなものを含む組成物は、約4.0と7.0との間のpHを有し得る。
【0011】
IFN−β治療剤は、毎週、1回、2回または3回投与され得る。特定の実施形態において、IFN−β治療剤は、約600万または1200万国際単位(MIU)で投与される。IFN−β治療剤は、筋肉内または皮下で投与され得る。好ましい実施形態において、被験体は、哺乳動物であり、好ましくは、ヒトである。
【0012】
本発明はまた、ニューロパシー(例えば、CIDP)を処置するための方法を提供し、この方法は、ニューロパシーを有する被験体に、薬学的有効量のIFN−β治療剤を投与する工程、およびさらに、該被験体に免疫抑制剤を投与するかまたは該被験体をプラスマフェレーシスに供する工程を包含する。この方法は、該被験体に、ステロイド、アゾチオプリン、シクロスポリン、シクロホスファミド、およびミコフェノレート(mycophenolate)からなる群より選択される免疫抑制剤を投与する工程を包含し得る。
【0013】
ニューロパシー(例えば、CIDP)を処置するための方法もまた本発明の範囲内であり、この方法は、ニューロパシーを有する被験体に、ニューロパシーについての第2の処置と組み合わせて、薬学的有効量のIFN−β治療剤を投与する工程を包含し、ここで、IFN−β治療剤の投与は、非皮下の非経口経路による。IFN−β治療剤の投与は、筋肉内投与を介し得る。IFN−β治療剤は、毎週投与され得る(例えば、IFN−β治療剤の約6MIUの毎週の投与)。ニューロパシーがCIDPである場合、第2の処置は、ステロイドの投与;IVIgの投与;抗炎症剤の投与およびプラスマフェレーシスからなる群より選択され得る。
【0014】
別の実施形態において、本発明は、ニューロパシー(例えば、CIDP)を処置するための方法を提供し、この方法は、ニューロパシーを有する被験体に、ニューロパシーについての第2の処置と組み合わせて、薬学的有効量のIFN−β治療剤を投与する工程を包含し、ここで、IFN−β治療剤の投与は、毎週である。ニューロパシーがCIDPである場合、第2のCIDP処置は、ステロイドの投与;IVIgの投与;抗炎症剤の投与およびプラスマフェレーシスからなる群より選択され得る。
【0015】
なお別の実施形態において、本発明は、ステロイドの投与;抗炎症剤の投与;IVIGの投与およびプラスマフェレーシスからなる群より選択される第1のCIDP処置を受容する被験体においてCIDPを処置するための方法を提供し、改善として、第1のCIDP処置に加えて、該被験体に、第1のCIDP処置の用量または頻度を有意に減少させるのに有効な量のIFN−β治療剤の用量を投与する工程を包含し、ここで、IFN−β治療剤の投与は、CIDPの症状からの有効な軽減を提供するために、非皮下の非経口経路による。CIDPを処置するための別の方法において、被験体は、ステロイドの投与;抗炎症剤の投与;IVIgの投与;およびプラスマフェレーシスからなる群より選択され得る第1のCIDP処置を受容し、改善として、被験体に、第1のCIDP処置に加えて、CIDPの症状からの有効な軽減を提供するために、第1のCIDP処置の用量または頻度を有意に減少させるのに有効な量のIFN−β治療剤の用量を、毎週1回投与する工程を包含する。CIDPを有する被験体はまた、ステロイドの投与;抗炎症剤の投与;IVIgの投与;およびプラスマフェレーシスからなる群より選択され得る第1のCIDP処置を受容することによって処置され得、改善として、該被験体に、第1のCIDP処置に加えて、CIDPの症状からの有効な軽減を提供するために、第1のCIDP処置の用量または頻度を有意に減少させるのに有効な量のIFN−β治療剤の用量を投与する工程を包含する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1A】図1A〜Cは、成熟全長ヒトIFN−β(配列番号3および4)に融合したVCAMシグナル配列からなる融合タンパク質のヌクレオチド配列(配列番号1)およびアミノ酸配列(配列番号12)を示し、ここで、配列番号4のアミノ酸162のグリシンが、シトシンで置換され、ヒトIgG1Fc(ZL5107)のヒンジ、CH2およびCH3ドメインに融合されている。
【図1B】図1A〜Cは、成熟全長ヒトIFN−β(配列番号3および4)に融合したVCAMシグナル配列からなる融合タンパク質のヌクレオチド配列(配列番号1)およびアミノ酸配列(配列番号12)を示し、ここで、配列番号4のアミノ酸162のグリシンが、シトシンで置換され、ヒトIgG1Fc(ZL5107)のヒンジ、CH2およびCH3ドメインに融合されている。
【図1C】図1A〜Cは、成熟全長ヒトIFN−β(配列番号3および4)に融合したVCAMシグナル配列からなる融合タンパク質のヌクレオチド配列(配列番号1)およびアミノ酸配列(配列番号12)を示し、ここで、配列番号4のアミノ酸162のグリシンが、システインで置換され、ヒトIgG1Fc(ZL5107)のヒンジ、CH2およびCH3ドメインに融合されている。
【図2A】図2A〜Cは、成熟全長ヒトIFN−β(配列番号3および4)に融合したVCAMシグナル配列からなる融合タンパク質のヌクレオチド配列(配列番号13)およびアミノ酸配列(配列番号14)を示し、ここで、配列番号4のアミノ酸162のグリシンが、システインで置換され、ヒトIgG1Fc(ZL6206)のヒンジ、CH2およびCH3ドメインに融合されているG4Sリンカーに融合されている。
【図2B】図2A〜Cは、成熟全長ヒトIFN−β(配列番号3および4)に融合したVCAMシグナル配列からなる融合タンパク質のヌクレオチド配列(配列番号13)およびアミノ酸配列(配列番号14)を示し、ここで、配列番号4のアミノ酸162のグリシンが、システインで置換され、ヒトIgG1Fc(ZL6206)のヒンジ、CH2およびCH3ドメインに融合されているG4Sリンカーに融合されている。
【図2C】図2A〜Cは、成熟全長ヒトIFN−β(配列番号3および4)に融合したVCAMシグナル配列からなる融合タンパク質のヌクレオチド配列(配列番号13)およびアミノ酸配列(配列番号14)を示し、ここで、配列番号4のアミノ酸162のグリシンが、システインで置換され、ヒトIgG1Fc(ZL6206)のヒンジ、CH2およびCH3ドメインに融合されているG4Sリンカーに融合されている。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(発明の詳細な説明)
本発明は、慢性脱髄性ニューロパシー(例えば、CIDP)を処置するための方法を提供し、この方法は、薬学的有効量のIFN−β治療剤を投与する工程を包含する。
【0018】
(1.定義)
特許請求される本発明の主題をより明瞭かつ正確に指摘するために、記載される説明および添付の特許請求の範囲において使用される特定の用語について、以下の定義が、提供される。
【0019】
明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」「an」および「the」は、その内容が明らかに他を示さない限り、複数の参照を包含する。
【0020】
「慢性炎症性脱髄性多発性ニューロパシー」は、本明細書中において、「CIDP」と交換可能に使用される。以下の状態は、CIDPと同一であるかまたは本質的に同一であると考えられ、従って、本明細書中で使用される場合、用語「CIDP」に含まれる:「慢性再発性多発性ニューロパシー」、「慢性特発性脱髄性多発性ニューロパシー」、「慢性炎症性脱髄性多発神経根筋障害」、および「慢性後天性脱髄性多発性ニューロパシー」(「CADP」)。CIDPは、慢性の進行性、段階的、または再発性の過程を有する(例えば、Dyckら、(1993)、Dyck,P.J.,Thomas,PIK.,Griffin,J.W.,Low,P.A.,Produslo,J.F.(編),Peripheral Neuropathy,第3版、Saunders,Philadelphia,pp.1498−1527を参照のこと)。CIDPの病理学的特徴は、節性脱髄および再ミエリン化、ならびに神経内膜での単核細胞性浸潤物である(Dyckら、上記)。CIDPは、時々、多発性硬化症(MS)の末梢対応物と呼ばれる(Toyka and Hartung(1996)Curr.Opin.Neurol.9,240−250)。これはまた、時々、ギヤン−バレー症候群の慢性形態と呼ばれる。CIDPの診断についての基準としては、臨床基準、電気生理学的基準および脳脊髄液(CSF)基準が挙げられ、これらは、例えば、American Academy of Neurology AIDS taks force(1991)Neurology41:617のアドホック(adohoc)小委員会から報告されている。診断試験としては、9穴ペグ試験;10メートル歩行試験;Rankinスケールまたはその改変形態;およびMRCサムスコアまたはその改変形態が挙げられる(Mathiowetzら(1985)Occupational Therapy J.of Res.5:24;Thompsonら(1996)J.Neurol.243:280;Collenら(1990)Int.Disability Studies 12:6;van Swietenら(1988)Stroke 19:604およびKleywegら(1991)Muscle Nerve 14:1103)。神経学的評価としてはまた、神経学的障害スケール(NDS);障害スケール(0、健康;1、小さな徴候;2、補助無しで歩行可能だが、走ることができない;3、補助を伴って、5メートルのみ歩行可能;4、イス/床に縛られる);Hammersmith運動能力試験(HMAT)(Dyck P.J.,「Peripheral Neuropathy」(1993),上記、686−697頁;Scottら(1982)Muscle Nerve 5:291);ならびに神経伝導の試験が挙げられる。筋肉評価は、例えば、当該分野で公知なように、最大自発性等尺性収縮(MVIC)を測定することによる、および筋力の測定による、運動機能評価を包含し得る。障害についてのなお他の試験としては、Ambulation Index;Functional Independence Measure;Guy’s
Neurological Disability Scale(GNDS);Medical Research Council sumscore;感覚サムスコア(sumscore);およびHughes機能スケール(Heuserら(1983)N.Engl.J.Med.308:173;Hallら(1993)J.Head Trauma Rehabilitation 8:60;Sharrackら(1996)J.Neurol.243:S32およびMerkiesら(2002)Neurology 59:84)。CIDPについての電気生理学的基準は、Ad Hoc Subcommittee of the American Academy of Neurology(AAN)、1991によって提案され、そして最近訂正された(Nicolasら(2002)Muscle Nerve 25:26。感覚−運動免疫媒介多発性ニューロパシー(例えば、CIDPおよびGuillain−Barre症候群(GBS))について使用される別の試験は、炎症性ニューロパシーの原因および処置(INCAT)感覚サムスコア(ISS)の心理測定的評価である(Merkiesら(2000)Neurology 54:943)。ヒト白血球抗原Dw3、DRw3、A1およびB8は、健康な集団よりも、CIDPを有する患者において、より頻繁に生じる(Zvartau−Hindら(2002)Chronic Inflammatory Demyelinating Polyradiculoneuropathy,www.emedicine.com/neuro)。
【0021】
「IFN−β−1a」は、野生型ヒトIFN−βのアミノ酸配列を有しかつグリコシル化されたIFN−β分子を言う。
【0022】
「IFN−β−1b」は、野生型ヒトIFN−βのアミノ酸配列を有するIFN−β分子(第17番目のシステインは、セリンで置換される;第1番目のメチオニン(「開始メチオニン」)を欠いており、かつこの分子は、グリコシル化されない)をいう。
【0023】
「IFN−βの改変体」は、一以上の改変(例えば、アミノ酸の欠失、アミノ酸の付加、アミノ酸の置換、翻訳後の改変)を有する野生型IFN−βタンパク質または、一以上の非天然のアミノ酸残基またはそれらとの間の結合を含む野生型IFN−βタンパク質をいう。IFN−βの一部分は、用語「IFN−βの改変体」に含まれる。「生物学的に活性なIFN−βの改変体」は、ニューロパシー(例えば、CIDP)の処置において少なくともいくつかの活性を有するIFN−β改変体をいう。IFN−βの改変体は、野生型IFN−βと比較して、例えば一以上のアミノ酸の挿入、欠失または置換を有する天然に存在するIFN−β(つまり、天然に存在する変異体または多形性改変体)であり得るか、または非天然のIFN−βであり得る。
【0024】
IFN−βの「国際単位」または(IU)は、世界保健機構(WHO)インターフェロンについての国際標準によって定義される単位をいう。
【0025】
「単離された」(「実質的に純粋な」と互換的に使用される)は、ポリペプチドに適用される場合、その起源または操作により、(i)発現ベクターの部分の発現産物として宿主細胞中に存在するか、または(ii)天然では連結しているタンパク質または他の化学的部分以外のタンパク質または他の化学的部分に連結しているか、または(iii)天然で生じない(例えば、少なくとも1つの疎水性部分をタンパク質に追加または付加することにより化学的に操作され、その結果、天然で見出されない形態で存在するタンパク質)、ポリペプチドを意味する。「単離された」はさらに、(i)化学的に合成されたか、または(ii)宿主細胞において発現され、そして結合タンパク質および混入タンパク質から精製された、タンパク質を意味する。この用語は一般に、天然では共に存在する他のタンパク質および核酸から分離されたポリペプチドを意味する。好ましくは、ポリペプチドはまた、そのポリペプチドを精製するために使用される、抗体またはゲルマトリクス(ポリアクリルアミド)のような物質から分離されている。「単離された」(「実質的に純粋な」と互換的に使用される)は、核酸に適用される場合、その起源または操作により、(i)天然では結合しているポリヌクレオチド(例えば、発現ベクターまたはその部分として宿主細胞中に存在する)と全く結合していないか、または(ii)天然では連結している核酸または他の化学的部分以外の核酸または他の化学部分に連結しているか、または(iii)天然では生じない、RNAまたはDNAポリヌクレオチド、ゲノムポリヌクレオチドの部分、cDNAまたは合成ポリヌクレオチドを意味する。「単離された」はさらに、(i)例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により、インビトロで増幅されたか、(ii)化学的に合成されたか、(iii)クローニングにより組換え産生されたか、または(iv)(例えば切断およびゲル分離により)精製された、ポリヌクレオチド配列を意味する。
【0026】
「多病巣性運動ニューロパシー」または「MMN」は、慢性免疫媒介性脱髄ニューロパシーであり、これは、非対称性筋衰弱および周辺神経の解剖学的分布領域に局在する筋萎縮の段階的進行によって特徴付けられる(Pestronkら(1988)Ann.Neurol.24:73およびKornbergら(1995)Ann.Neurol.(前出1)S43)。多病巣性運動ニューロパシーの電気生理学的(electrohysiological)特徴は、持続性の伝導ブロックである。臨床的に、この疾患はまた、多病巣性運動伝導ブロックを伴うCIDPの非対称性純粋運動改変体として記載される。多病巣性運動ニューロパシーの発達の間、多病巣性特徴は、徐々に本質的に対称パターンで発達し、臨床的にCIDPの運動形態に似る。病理学的研究は、これらの2つの疾患を連結してきた(Krendelら(1996)Ann.Neurol.40:948およびOhら(1995)Neurology 45:1828)。多病巣性運動ニューロパシーを有する多くの患者は、高い力価のガングリオシドGM1に対する抗体を有する。(Pestronkら,前出およびKornbergら,前出)。
【0027】
核酸が、別の核酸配列と共に機能的な関係に置かれる場合、核酸は、別の核酸に対して「作動可能に連結される」。例えば、DNAがポリペプチドの分泌を担うタンパク質前駆体として発現された場合、プレ配列または分泌リーダーのためのDNA(例えば、シグナル配列またはシグナルペプチド)は、ポリペプチドをコードするDNAに対し作動可能に連結する;プロモーターまたはエンハンサーが、コード配列の転写に影響する場合、プロモーターまたはエンハンサーは、コード配列に対して作動可能に連結する;およびリボソームが、容易に翻訳を行えるように位置する場合、リボソーム結合部位は、コード配列に対して作動可能に連結する。一般的に、「作動可能に連結される」は、結合されたDNA配列は、連続しかつ、例えば、分泌リーダーの場合は、連続しかつ読み取り段階にあることを意味する。結合することは、例えば、うってつけの制限部位でライゲーションにより達成され得る。そのような部位が存在しない場合は、合成オリゴヌクレオチドアダプターまたは合成オリゴヌクレオチドリンカーが、慣行的な実務に従い使用され得る。
【0028】
「パーセント同一性」または「パーセント類似性」とは、2つのポリペプチド、2つの分子間、または2つの核酸との間の配列類似性をいう。2つの比較された配列の両方における位置が、同じ塩基またはアミノ酸モノマーサブユニットによって占有されている場合、それぞれの分子は、その位置で同一である。2つの配列間のパーセント同一性は、2つの配列によって共有される整合するかまたは同一な位置の数を、比較される位置の数によって除算し、100を掛けたものの関数である。例えば、2つの配列における10の位置のうちの6が整合するか、または同一である場合、2つの配列は、60%相同である。例示として、DNA配列CTGACTおよびCAGGTTは、50%の相同性を共有する(6の総位置のうちの3が整合する)。一般的に、2つの配列が、最大の同一性を生じるようにアラインされた場合に比較がなされる。このようなアラインメントは、例えば、以下により詳述に記載するKarlinおよびAltschulの方法を使用して提供され得る。核酸をいう場合、「パーセント相同性」および「パーセント同一性」は、交換可能に使用され、一方ポリペプチドをいう場合、「パーセント相同性」は、類似性の程度をいい、他のアミノ酸の保存された置換を示すアミノ酸は、これら他のアミノ酸と同一であると考えられる。参照配列中の残基の「保存された置換」は、例えば、類似のサイズ、形状、電荷、化学的特性(共有結合または水素結合などを形成する能力を含む)を有する対応する参照残基に物理的にかまたは機能的に類似のアミノ酸への置換である。特に好ましい保存的置換は、Dayhoffら、5:Atlas of Protein Sequence and Structure,5:Suppl.3,chapter 22:354−352,Nat.Biomed.Res.Foundation,Washington,D.C.(1978)における「受容される点変異」について規定される基準を満たすものである。2つのアミノ酸配列または2つの核酸配列の「パーセント相同性」または「パーセント同一性」は、KarlinおよびAltschul(Proc.Nat.Acad.Sci.,USA 90:5873(1993))で改変されたKarlinおよびAltschul(Proc.Nat.Acad.Sci.,USA 87:2264(1990))のアラインメントアルゴリズムを使用して決定され得る。このようなアルゴリズムは、Altschulら(J.Mol.Biol.215:403(1990))のNBLASTまたはXBLASTプログラムに組み込まれている。本発明の核酸と相同なヌクレオチド配列を入手するためには、BLAST検索は、NBLASTプログラム(スコア=100、ワード長=12)を用いて実行される。参照ポリペプチドと相同なアミノ酸配列を入手するためには、BLASTタンパク質検索は、XBLASTプログラム(スコア=50、ワード長=3)を用いて実行される。比較のためにギャップを有するアラインメントを得るためには、Altschulら(Nucleic Acids Res.,25:3389(1997))に記載されるギャップド(gapped)BLASTが使用される。BLASTおよびギャップドBLASTを使用する場合、それぞれのプログラム(XBLASTおよびNBLAST)の初期値パラメータが使用される(http://www/ncbi.nlm.nih.govを参照)。
【0029】
クオリティオブライフは、EuroQoL視覚的類似尺度(visual analogue scale)およびEuroQoL質問表合計スコア(questionnaire sum score);医療結果研究36アイテム短文式健康状態尺度(Medical Outcome Study 36−item short−form health status scale)(SF−36);視覚的類似尺度(Visual Analogue Scale)(VAS)(EuroQoL Group(1990)Health Policy 16:199およびMerkiesら(2002)Neurology 59:84)によって測定され得る。
【0030】
IFN−β治療剤は、「治療有効性」を有するといい、そしてIFN−β治療剤の量は、「治療的に有効」であるといい、組み合わせ治療においてこの量のIFN−β治療剤のみを投与する場合、IFN−β処置の非存在に関連する疾患の少なくとも1つの症状における臨床的に有意な改善を引き起こすために十分である。好ましい実施形態において、CIDPを有する被験体における治療有効量のIFN−β治療剤の投与は、CIDPの少なくとも1つの症状(例えば、筋肉または神経の欠陥)の改善をもたらす。
【0031】
「野生型IFN−β」は、ネイティブIFN−βの通常存在するアミノ酸配列を有する、天然または組換えのどちらかのIFN−βをいう。ネイティブヒトIFN−βのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は、それぞれ配列番号1および配列番号2に示され、これは、例えば、GenBank Accessionの第M28622(および第E00029)ならびに第AAA36040にそれぞれ示される配列である。
【0032】
(2.IFN−β治療剤)
本発明に従って使用され得るIFN−β治療剤は、野生型IFN−βおよびそれらの生物学的活性改変体(例えば、天然に存在する改変体および非天然の改変体)を含む。野生型天然ヒトIFN−βのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を、配列番号1および配列番号2にそれぞれ示し、これらは、GenBank Accessionの第M28622および第AAA36040にそれぞれ、同一である。これらのIFNはまた、例えば、Seghal(1985)J.Interferon Res.5:521に記載される。全長ヒトIFN−βタンパク質は、187アミノ酸の長さであり、配列番号1のコード配列はヌクレオチド76〜639に対応する。このシグナル配列は、アミノ酸の1〜21に対応する。このIFN−βの成熟形態のアミノ酸配列は、アミノ酸の22〜187(配列番号1のヌクレオチドの139〜639)に対応する。このような配列をコードする、成熟ヒトIFN−βタンパク質配列および成熟ヒトIFN−βヌクレオチド配列を、配列番号4および配列番号3として、それぞれ示す。
【0033】
哺乳動物細胞内で産生されるIFN−βは、グリコシル化される。天然に存在する野生型IFN−βは、配列番号4の成熟ポリペプチドの残基80(アスパラギン80)または配列番号2の未成熟ポリペプチドの残基101(アスパラギン101)で、グリコシル化される。
【0034】
IFN−β治療剤はまた、非ヒトIFN−β(例えば、脊椎動物(例えば、非ヒト霊長類、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマ、ネコ、イヌ、ラット、およびマウスのような哺乳動物;または鳥類もしくは両生類)由来)を含む。これらの種に由来するIFN−β配列は、GenBankおよび/または出版物から得ることが可能であり、または別の種由来のIFN−β遺伝子を用いた低ストリンジェンシーなのハイブリダイゼーションにより単離された核酸から決定され得る。
【0035】
野生型IFN−βタンパク質の改変体は、野生型IFN−β(例えば、配列番号2または配列番号4を有するヒトIFN−β)に対し、少なくともおよそ70%、80%、90%、95%、98%または99%同一または相同であるアミノ酸配列を有するタンパク質を含む。改変体は、一以上のアミノ酸の置換、欠失または付加を有し得る。例えば、野生型IFN−βタンパク質の生物学的活性フラグメントが、使用可能である。そのようなフラグメントは、タンパク質のC末端またはN末端において1、2、3、5、10または20までのアミノ酸の欠失、付加または置換を有し得る。改変体はまた、1、2、3、5、10または20までのアミノ酸の置換、欠失または付加を有し得る。いくつかの改変体は、およそ50、40、30、25、20、15、10、7または5未満のアミノ酸の置換、欠失、または付加を有し得る。置換は、天然に存在するアミノ酸またはそれらの類似体(例えば、D−立体異性体アミノ酸)においてあり得る。
【0036】
また、天然に存在するIFN−β(例えば、配列番号1もしくは配列番号3、またはそれらの相補体により表される)をコードする核酸に対して、ストリンジェンシーな条件下でハイブリダイズする核酸によりコードされるIFN−β改変体が本発明の範囲内である。DNAハイブリダイゼーションを促進する適切なストリンジェンシーな条件、例えば、およそ45℃で6.0×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)(その後続く、50℃で2.0×SSCの洗浄)は、当業者に公知であり、またはCurrent Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,N.Y. (1989),6.3.1−6.3.6;Sambrookら,1989,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press,N.Y;S.Agrawal(編)Methods in Molecular Biology,volume 20;およびTijssen (1993)Laboratory Techniques in biochemistry and molecular biology−hybridization with nucleic acid probes(例えば、第I部、第2章「Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid probe assays」,Elsevier,New Yorkに見出され得る。例えば、洗浄工程における塩濃度は、50℃でおよそ2.0×SSCの低ストリンジェンシーから50℃でおよそ0.2×SSCの高ストリンジェンシーより選択され得る。さらに、洗浄工程における温度を、室温(およそ22℃)での低ストリンジェンシーな条件からおよそ65℃での高ストリンジェンシーな条件まで高め得る。温度および塩濃度の両方は、変化し得、または温度もしくは塩濃度は、他の不定要素を変更している間、一定に保持され得る。例示的なハイブリダイゼーション条件は、6.0×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中約50℃でのハイブリダイゼーション、その後0.2×SSC中室温での洗浄を含む。洗浄工程の温度は、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーを高めるために約45℃、50℃、55℃、60℃、または65℃まで上昇させ得る。ハイブリダイゼーションは、5×SSC、4×SSC、3×SSC、2×SSC、1×SSCまたは0.2×SSCにおいて実施され得る。ハイブリダイゼーションは、少なくとも約1時間、2時間、5時間、12時間または24時間で実施され得る。ハイブリダイゼーションはまた、ストリンジェンシーに影響する別の薬剤(例えば、ホルムアミド)をも含み得る。例えば、ストリンジェントなハイブリダイゼーションは、50%ホルムアミド存在下で実施され得、これは、規定された温度でのハイブリダイゼーションのストリンジェンシーを高める。洗浄工程は、SDSのような界面活性剤(例えば、0.1%または0.2%のSDS)の存在下で実施され得る。ハイブリダイゼーションに続いて、1回の洗浄工程または少なくとも2回の洗浄工程を包含する洗浄工程が行われ得、少なくとも2回の洗浄工程は、同一または異なった塩濃度および温度であり得る。例えば、ハイブリダイゼーション後に、各約20分間の2×SSC、0.1% SDS中での65℃での2回の洗浄工程、次いで各約20分間の0.2×SSC、0.1% SDS中での65℃での2回の洗浄工程が行われ得る。例示的なストリンジェントハイブリダイゼーション条件は、50%ホルムアミド、10×Denhardt(0.2% Ficoll、2%ポリビニルピロリドン、0.2%ウシ血清アルブミン)および200μg/mlの変性キャリアDNA(例えば、剪断サケ精子DNA)を含むかまたはこれらからなる溶液中で65%での一晩のハイブリダイゼーション、その後の2工程の65℃での各約20分間2×SSC0.1% SDS中の洗浄工程および2工程の65℃での各約20分間0.2×SSC0.1% SDS中の洗浄工程を含む。ハイブリダイゼーションは、溶液中の2つの核酸をハイブリダイズさせる工程、または溶液中の核酸を固体支持体(例えば、フィルター)に付着した核酸にハイブリダイズさせる工程からなり得る。特定の状況において、例えば、1つの核酸が固体支持体上にある場合、ハイブリダイゼーションは、プレハイブリダイゼーション工程によって進められ得、これは、少なくとも1時間、3時間または10時間で実施され得、そしてハイブリダイゼーション溶液と同じ溶液および同じ温度であり得る(プローブは含まない)。特に好ましい実施形態において、IFN−β改変体をコードする核酸は、中程度の条件(例えば、およそ2.0×SSCおよびおよそ40℃での洗浄で、およびおよそ2.0×SSCおよびおよそ40℃での洗浄を含む)下で、配列番号1もしくは配列番号3またはこれらの相補体のうちの一つに対して結合する。特に好ましい実施形態において、IFN−β改変体をコードする核酸は、高ストリンジェンシーな条件(例えば、0.2×SSCおよびおよそ65℃での洗浄で、ならびに0.2×SSCおよびおよそ65℃での洗浄を含む)下で、配列番号1もしくは配列番号3またはそれらの相補体の内の一つとハイブリダイズする。
【0037】
例示的な改変は、保存的な改変(タンパク質の二次構造および三次構造への最小の影響を有する)である。例示的な保存的な置換は、Dayhoff、the Atlas of Protein Sequence and Structure 5(1978)により、およびArgos、EMBO J.,8,779−785(1989)により記載される保存的な置換を含む。例えば、アミノ酸は、保存的な変化を表す以下の群:ala、pro、gly、gln、asn、ser、thr;cys、ser、tyr、thr;val、ile、leu、met、ala、phe;lys、arg、his;およびphe、tyr、trp、hisのうちの一つに属する。
【0038】
他の改変は、必ずしも保存的な置換を表すわけではなくあり得る別のアミノ酸への一つのアミノ酸の置換を含む。例えばIFN−βの三次元構造に本質的に影響を与えない置換が、なされ得る。非グリコシル化のヒトIFN−βの三次元構造は、例えば、Radhakrishnanら、(1996)Structure 4:1453に記載され、ならびにグリコシル化されたIFN−βの三次元構造は、例えば、Karpusasら、(1997)PNAS 94:11813に記載される。本質的に、IFN−βは、五つのらせん体:配列番号4のおよそアミノ酸2〜アミノ酸22から成るヘリックスA;配列番号4のおよそアミノ酸51〜アミノ酸71から成るヘリックスB;配列番号4のおよそアミノ酸80〜アミノ酸107から成るヘリックスC;配列番号4のおよそアミノ酸118〜アミノ酸136から成るヘリックスD;配列番号4のおよそアミノ酸139〜アミノ酸162から成るヘリックスE(Karpusasら,前出)を含む。ヘリックスA、ヘリックスB、ヘリックスCおよびヘリックスEは、左巻き、2型4−ヘリックス束を形成する。ここには、長いオーバーハンドループ、ヘリックスAならびにヘリックスBに結合するABループおよびヘリックスの残りと結合する三つのより短いループ(BC、CDおよびDEと呼ばれる)(Karpusaら,前出)が存在する。これまでの研究は、IFN−β分子のN末端、C末端およびグリコシル化されたCヘリックス領域は、レセプター結合部位に位置しないことを示す(WO00/23472およびUSSN09/832,659参照)。従って、これらの領域内の変異は、IFN分子の生物学的活性に、有意な悪影響を与え得ることはなかった。また、ヘリックスC内の変異(成熟ヒトIFN−βのアミノ酸81、アミノ酸82、アミノ酸85、アミノ酸86およびアミノ酸89)は、野生型IFN−βと比較してより高い抗ウイルス活性を有する分子を生じることがこれまでに示された(WO00/23472およびUSSN09/832,659参照)。同様に、ヘリックスA内の変異(成熟ヒトIFN−βのアミノ酸2、アミノ酸4、アミノ酸5、アミノ酸8およびアミノ酸11)およびCDループ内の変異(アミノ酸110、アミノ酸11、アミノ酸113、アミノ酸116およびアミノ酸119)は、天然に存在する野生型ヒトIFN−βと比較して、レセプターに対しより高い結合活性およびより高い抗ウイルス活性および坑増殖活性を有することが示された(WO00/23472およびUSSN09/832,659参照)。
【0039】
他の好ましい修飾または置換は、分子間の架橋結合形成または不正確なジスルフィド結合形成の部位を除去する。例えば、IFN−βは、三つのcys残基(配列番号4の野生型部位17、部位31および部位141)を有するとして公知である。一つのIFN改変体は、部位17のcys(C)が、ser(S)により置換されたIFNである(例えば、米国特許第4,588,585号に記載される)。他のIFN−β改変体は、例えば、部位17でcys(C)を置換した一以上のser(S)およびphe(F),trp(W),tyr(Y)またはhis(H)、好ましくはphe(F)で置換された部位101のval(V)を有するIFN−β改変体を含む(例えば配列番号4を有する野生型IFN−βに基づいて番号付けした場合)(例えば、米国特許第6,127,332号に記載される)。他の好ましい改変体は、野生型IFN−βの配列(例えば、野生型IFN−βに基づいて番号付けした場合、部位101のval(V)が、phe(F)、tyr(Y)、trp(W)、his(H)またはphe(F)により置換された配列番号4)を有するポリペプチドを含む(例えば、また米国特許第6,127,332号に記載される)。
【0040】
他のIFN−β改変体は、開始メチオニン(例えば、配列番号4のメチオニン1)を欠いている成熟IFN−β分子である。例示的なIFN−β改変体は、開始メチオニンを欠き、かつ少なくとも一つのアミノ酸置換(例えば、成熟形態の17番の位置において)を有する(米国特許第4,588,585号に開示されるように)。
【0041】
IFN−β分子はまた、一以上の誘導体化したアミノ酸(天然に存在する側鎖または、天然に存在する末端基は、化学反応により改変される天然のアミノ酸または非天然のアミノ酸)での一以上のアミノ酸の置換により改変され得る。このような改変は、例えば、γ−カルボキシル化、β−カルボキシル化、ペグ化、硫酸化、スルホン化、リン酸化、アミド化、エステル化、N−アセチル化、カルボベンジル化、トシル化、および当該分野で公知である他の改変を含む。
【0042】
他の改変は、アミノ酸類似体または誘導体化したアミノ酸(適切な官能基を伴う改変体側鎖を有するアミノ酸類似体同様に、環化のためカルボキシル基、アミノ基または他の反応性前駆体官能基をさらに提供しながら側鎖を伸長し、または短縮している)の使用を含む。例えば、本発明の化合物は、アミノ酸類似体(例えば、シアノアラニン、カナバニン、ジエンコル酸、ノルロイシン、3−ホスホセリン、ホモセリン、ジヒドロキシフェニルアラニン、5−ヒドロキシトリプトファン、1−メチルヒスチジン、3−メチルヒスチジン、ジアミノピメリン酸、オルニチン、またはジアミノ酪酸を含み得る。他の天然に存在するアミノ酸代謝産物または天然に存在するアミノ酸前駆体(本明細書中において適切な側鎖を有する)は、当業者により認識されかつ、本発明の範囲内に含まれる。
【0043】
他のIFN−β改変体は、逆の(reversed)ペプチド配列、または逆の(retro)ペプチド配列を含む。「逆の(reversed)」ペプチド配列または「逆の(retro)」ペプチド配列は、アミノ酸骨格内の正常なカルボキシル−アミノ方向のペプチド結合形成が、一般的な左側から右側方向へ読む場合に、ペプチド結合のアミノ部分が、カルボニル部分に(後続するのではなく)先行するような、これらとは逆のものである、共有結合したアミノ酸残基(またはそれらの類似体もしくはそれらの擬似物)の全長配列の一部をいう。一般的に、Goodman,M.およびChorev,M. Accounts of Chem.Res.1979,12,423を参照。本明細書中に記載する逆向きのペプチドは、(a)一以上のアミノ末端残基が、逆([rev])向きに変換(それにより、分子の最も左側の位置に第二の「カルボキシ末端」を生じる)したもの、および(b)一以上のカルボキシ末端残基は、逆([rev])向きに変換(それにより、分子の最も右側の位置に第二の「アミノ末端」を生じる)したもの、を含む。ペプチド(アミド)結合は、正常な向きの残基および逆向きの残基との間の境界面において形成され得ない。それゆえに、本発明の特定の逆のポリペプチドは、逆向きペプチド(逆向きアミド)結合を利用して配列の二つの連続する部分に結合する適切なアミノ酸擬似物部分を使用することにより形成され得る。上記事例(a)においては、ジケト化合物の中央残基は、ペプチド擬似構造を達成するための二つのアミド結合を伴う構造に結合するために都合よく利用され得る。上記事例(b)においては、ジアミノ化合物の中央残基は同様に、ペプチド擬似構造を形成するための二つのアミド結合を伴う構造に結合するために有益である。このようなポリペプチドにおける逆向きの結合は一般的に、さらに、非逆向きペプチドの空間的な方向と類似する側鎖の空間的方向を維持するために、逆向きアミノ酸残基の鏡像異性構造の逆転が必要とされる。ペプチドの逆位におけるアミノ酸の構造は好ましくは(D)であり、および非逆位の構造は、好ましくは(L)である。結合活性を最適化するために適切である場合、反対の構造または混合した構造は、好ましい。ポリペプチドの改変はさらに、例えば、米国特許第6,399,075号に記載される。
【0044】
IFN−β治療剤はまた、1つ以上の異種ポリペプチドに対して融合するIFN−βタンパク質およびそれらの改変体(例えば、成熟タンパク質)を含む。異種ポリペプチドは、例えば、IFN−βタンパク質の半減期を延長する目的または、IFN−βタンパク質の産生を改善する目的で、加えられ得る。典型的な異種ポリペプチドは、免疫グロブリン(Ig)分子またはそれらの一部分(例えば、Ig分子の軽鎖または重鎖の定常ドメイン)を含む。一つの実施形態において、IFN−βタンパク質およびそれらの改変体は、免疫グロブリン軽鎖、重鎖、もしくはその両方のヒンジおよび定常領域の全部または一部に融合されるか、またはそうでなければ、結合される。したがって、本発明は、以下を含む分子を特徴とする:(1)IFN−βタンパク質部分(例えば、IFN−βまたはそれらの改変体)、(2)第二のペプチド(例えば、IFN−β部分の可溶性またはインビボでの寿命を増大するもの、例えば、免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーまたはそのフラグメントもしくは部分、例えば、IgGの部分またはフラグメント、例えば、ヒトIgG1重鎖定常領域、例えば、CH2、CH3、およびヒンジ領域)。具体的には、「IFN−β/Ig融合物」は、免疫グロブリン鎖のN−末端に結合した生物学的に活性なIFN−β部分を含むタンパク質である。IFN−β/Ig融合物の種は、免疫グロブリンの定常ドメインの少なくとも一部に連結したIFN−β部分を含むタンパク質である「IFN−β/Fc融合物」である。好ましいFc融合物は、重鎖免疫グロブリン鎖のC末端ドメインを含有する抗体のフラグメントに結合したIFN−β部分を含む。
【0045】
融合タンパク質は、IFN−βポリペプチドまたはその改変体を含み得、これに対し、異種ポリペプチドは、そのN末端およびC末端の両方に結合する。異種ポリペプチドはまた、その改変体のIFN−βポリペプチドに内在し得る。
【0046】
一つの実施形態において、融合タンパク質は、一般式X−Y−Z(Xは、IFN−βのアミノ酸配列を有するポリペプチド、またはそれらの部分またはそれらの改変体であり;Yは、任意のリンカー部分であり;およびZは、部分Xのインターフェロンβの部分以外の、少なくともポリペプチドの部分を含むポリペプチドである)を有する。他の実施形態において、融合タンパク質は、式Z−Y−X(非IFN−βポリペプチドは、IFN−βポリペプチドまたはIFN−βの部分またはそれらの改変体のN末端部分に融合するリンカーのN末端部分に融合する)を有する。部分Zは、免疫グロブリン様ドメインを含むポリペプチドの部分であり得る。このような他のポリペプチドの例として、CD1、CD2、CD4およびクラスIおよびクラスIIの主要組織適合性抗原のメンバーが挙げられる。そのようなポリペプチドの例として、米国特許第5,565,335号(Caponら)を参照。
【0047】
部分Zは例えば、多数のヒスチジン残基の、または好ましくは免疫グロブリンのFc領域、(本明細書中において「Fc」は、免疫グロブリン重鎖のC末端ドメインを含む抗体のフラグメントとして定義される)を含み得る。
【0048】
部分Yは、IFN−β部分が、その生物学的活性を保持することを可能とする任意のリンカーであり得る。部分Yは、一つのアミノ酸の長さまたは少なくとも二つのアミノ酸の長さであり得る。Yはまた、およそ2個からおよそ5個のアミノ酸;およそ3個からおよそ10個のアミノ酸の長さまたは10個またはそれ以上のアミノ酸であり得る。好ましい実施形態において、Yは、例えば、ヌクレオチド配列GGCGGTGGTGGCAGC(配列番号5)によりコードされる、GlyGlyGlyGlySer(配列番号6)からなるかまたは含む。Yはまた、例えば、GACGATGATGACAAG(配列番号7)によりコードされるエンテロキナーゼ認識部位、例えば、AspAspAspAspLys(配列番号8)からなるかまたは含む。別の実施形態においては、Yは、例えば、AGCTCCGGAGACGATGATGACAAG(配列番号9)によりコードされる、SerSerGlyAspAspAspAspLys(配列番号10)からなるかまたは含む。
【0049】
さらに、IFN−β部分(X)と第二の、非IFN−β部分Z(例えば、免疫グロブリンのFc領域)との間の結合はまた、X部分およびZ部分がそれらのそれぞれの活性を本質的に保持する限り、二つの分子を共に結合させる化学反応により影響を受け得る。この化学的結合は、共有結合、親和性結合、インターカレーション、配位結合、および錯体化のような複数の化学的メカニズムを含み得る。IFN−β部分およびZ部分との間の共有結合を生じるための代表的な結合因子(すなわち、一般式におけるリンカー「Y」)は、チオエステル、カルボジイミド、スクシイミドエステル、ジイソシアネート(例えば、トリレン−2,6−ジイソシアネート)、グルタルアルデヒド、ジアゾベンゼンおよびヘキサメチレンジアミン(例えば、ビス−(p−ジアゾニウム−ベンゾイル)−エチレンジアミン)、イミドエステルの二官能性誘導体(例えば、ジメチルアジピミデート)、およびビス−活性フッ素化合物(例えば、1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼン)のような有機体化合物を含み得る。この列挙は、当該分野で公知である様々なクラスの化学的結合因子を余すところなく挙げたものを意図するものではない。これらの多くは、市販されている(例えば、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP),1−エチル−3−(3−ジメチルアミノ−プロピル)カルボジイミドハイドロクロライド(EDC);4−スクシンイミジルオキシカルボニル−α−メチル−α−(2−ピリジル−ジチオ)−トルエン(SMPT:Pierce Chem.Co.,カタログ番号第21558G号))。
【0050】
好ましいIFN−β/Ig融合タンパク質は、ヒトIgG1Fc(ZL5107)に対して融合する、配列番号12(全長の成熟型ヒトIFN−β(すなわち、配列番号4)を含む)より構成されるかまたは、配列番号12を含む(WO00/23472およびUSSN09/832,659参照)(図1参照)。対応するヌクレオチド配列は、配列番号11に記載される。ヒトIFN−βをコードするDNAは、ヌクレオチドの三つ揃い568〜570(アルギニンをコードするAAC)で終了し、そしてヒトIgG1の定常領域をコードするDNAは、配列番号11のヌクレオチド番号574を発端に三つ揃い(アスパラギン酸をコードするGAC)で開始する。
【0051】
別の好ましいIFN−β/Ig融合タンパク質は、配列番号14に記載され、かつ配列番号13によりコードされる(WO00/23472およびUSSN09/832,659参照)(図2参照)。この後者の融合タンパク質は、G4Sリンカー(G4Sリンカー自体ヒトIgG1Fc(ZL6206)に結合する)に対して結合するヒトIFN−βからなる。G4Sリンカー(配列番号7のヌクレオチド571からヌクレオチド585までによりコードされる)は、アミノ酸配列GGGGS(配列番号9)より成る。これらタンパク質を産生するための方法は、WO00/23472およびUSSN09/832,659に記載される。
【0052】
好ましい実施形態において、IFN−βポリペプチドは、そのC末端を介して少なくとも免疫グロブリンのFc領域の部分と融合する。IFN−βは、アミノ末端部分を形成し、そしてFc領域は、カルボキシ末端部分を形成する。これら融合タンパク質において、Fc領域は好ましくは、定常ドメインのヒンジ領域ならびにCH2ドメインおよびCH3ドメインに限定される。これら融合体におけるFc領域はまた、ヒンジ領域の部分(この部分は分子間のジスルフィド架橋を形成することが可能である)、およびCH2ドメインおよびCH3ドメイン、またはこれらと機能的に等価であるものに限定され得る。これら定常領域は、任意の哺乳動物の供給源(好ましくはヒト)に由来し得、そしてIgA、IgD、IgM、IgEおよびIgGl、IgG2、IgG3およびIgG4を含む任意の適切なクラスおよび/またはアイソタイプ由来であり得る。
【0053】
Ig融合体をコードする組換え核酸分子は、当該分野で公知である任意の方法(Maniatisら.,1982,Molecular Cloning;A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,N. Y.)により得られ得るか、または公共に利用可能なクローンから得られ得る。遺伝子(免疫グロブリンの重鎖の定常領域または軽鎖の定常領域をコードする)の調製のための方法は、例えば、Robinson,R.ら,PCT出願公開第WO87/02671により、教示される。インターフェロン分子またはインターフェロンフラグメントをコードするcDNAは、重鎖Igの定常領域をコードするcDNA配列に対し直接的に結合し得るか、または、リンカー配列を介して結合し得る。本発明のさらなる実施形態において、組換えベクター系が、合成ヒンジ領域を伴う正しい読み枠にインターフェロンβをコードする配列を適合させるために創造され得る。さらに、組換えベクター系の一部として、RNA切断/ポリアデニル化部位および下流配列を含む免疫グロブリン遺伝子の3’隣接領域に対応する核酸を含むことが望ましくあり得る。さらに、組換えベクターを用いて形質転換させた細胞からの融合分子の分泌を容易にするために、免疫グロブリン融合タンパク質をコードする配列の上流のシグナル配列を操作することが望ましくあり得る。
【0054】
本発明は、融合タンパク質を含む、二量体融合分子および単量体分子または多量体分子を提供する。このような多量体は、IgM五量体またはIgA二量体のように、普通は多価の、Ig分子のFc領域または、Fc領域の部分を使用することにより、創造され得る。J鎖ポリペプチドは、IgM五量体およびIgA二量体の形成および安定化に必要とされ得ると理解される。代替的に、IFN−β融合タンパク質の多量体は、タンパク質AのようにIg分子のFc領域に対する親和性を有するタンパク質を使用することにより形成され得る。例えば、複数のIFN−β/免疫グロブリン融合タンパク質は、タンパク質A−アガロースビーズに対して結合し得る。
【0055】
これらの多価形態は、多数のインターフェロンβレセプター結合部位を有するので、有益である。例えば、二価可溶性IFN−βは、リンカー領域(部分Y)により分けられる、配列番号4のアミノ酸1からアミノ酸166までの二つの直列的な繰り返し配列(または配列番号3の核酸番号1から核酸番号498によりコードされる直列的な繰り返し配列)(一般式における部分X)より構成され得、繰り返し配列は、少なくとも、免疫グロブリンの定常ドメインの部分(部分Z)と結合する。代替的な多価形態はまた、例えば、従来の結合技術を使用して、任意の臨床的に受容可能なキャリア分子(Ficoll、ポリエチレングレコールまたはデキストランから成る群より選択されるポリマー)にIFN−β/Ig融合体を化学的に結合することにより、構成され得る。代替的に、IFN−βは、ビオチンに対して化学的に結合し得、そしてビオチン−インターフェロンβFc結合体は次いで、アビジンに対して結合し得、結果として四価のアビジン/ビオチン/インターフェロンβ分子を得る。IFN−β/Ig融合体はまた、ジニトロフェノール(DNP)またはトリニトロフェノール(TNP)に対し共有結合し得、そして結果として生じた結合体を抗DNPまたは抗TNP−IgMを用いて、沈降させる(インターフェロンβレセプター結合部位に対する10個の原子価を伴う十量体の結合体を形成するため)。
【0056】
本発明のタンパク質の誘導体はまた、生物学的活性を保持する主要タンパク質の様々な構造式を含む。イオン化可能アミノ基およびイオン化可能カルボキシル基の存在に起因して、例えば、IFN−βタンパク質およびその改変体は、酸性塩または塩基性塩の形状にあり得るか、あるいは、中性の形状で存在し得る。個々のアミノ酸残基はまた、酸化または還元により改変され得る。さらに、主要アミノ酸構造(N末端および/またはC末端を含む)またはIFN−βのグリカンは、他の化学的部分(例えば、グリコシル基、ポリアルキレングリコールポリマー(例えば、ポリエチレングリコール)、脂質、リン酸塩、アセチル基等)を有する共有結合的な結合体または集合性の結合体の形成によりまたは、アミノ酸配列の改変体を創造することにより、改変(「誘導体化」)され得る。
【0057】
他のIFN−β/Igの誘導体は、他のタンパク質またはポリペプチド(例えば、付加的なN末端またはC末端として組み換え培養内での合成による)との、インターフェロンβまたはそのフラグメントの共有結合的な結合体または集合性の結合体を含む。例えば、結合体化したペプチドは、タンパク質(タンパク質合成の部位から細胞膜または細胞壁の内側または外側機能部位への翻訳と同時のまたは翻訳後の直接的なタンパク質の移行)のN末端領域におけるシグナル(またはリーダー)ポリペプチド配列であり得る(例えば、酵母α因子リーダー)。例えば、シグナルペプチドは、IFN−βのシグナルペプチド、すなわち、配列番号2のアミノ酸1〜アミノ酸21であり得、配列番号1のヌクレオチド1〜ヌクレオチド138に対応する。シグナルペプチドはまた、VCAMのシグナルペプチド、すなわち、配列番号12のアミノ酸1〜アミノ酸24(配列番号11のヌクレオチド1〜ヌクレオチド72によりコードされる)であり得る。
【0058】
異性ポリペプチド(例えば、ペプチド)または他の分子をまた、IFN−β治療剤の精製において標識として、または補助するものとして使用し得る。このようなペプチドは、当該分野で周知である。例えば、本発明のポリヌクレオチドは、本発明のポリペプチドのマーキングおよび/または精製を可能とするマーカー配列(また、本明細書中においては、「タグペプチド」をコードする「タグ配列」という)に対してインフレームで融合し得る。好ましい実施形態において、マーカー配列は、ヘキサヒスチジンタグ(例えば、PQE−9ベクターにより供給される)である。多数の他のタグペプチドが、市販されている。他の頻繁に使用されるタグは、myc−エピトープ(例えば、Ellisonら.(1991)JBiol Chem 266:21150−21157を参照)(c−mycから10残基の配列を含む)、pFLAG系(International Biotechnologies,Inc.)、pEZZ−タンパク質A系(Pharmacia, NJ)、およびインフルエンザ菌血球凝集素タンパク質の16アミノ酸部分を含む。さらに、任意のポリペプチドが、試薬(例えば、タグポリペプチドと特異的に相互作用する抗体)が、市販されており、または調製もしくは同定され得る限りタグとして使用され得る。
【0059】
一つの実施形態において、IFN−βタンパク質またはその改変体は、N末端またはC末端において、以下のペプチド:HisHisHisHisHisHis(配列番号16)(ヌクレオチド配列CATCATCATCATCATCAT(配列番号15)によりコードされ得る);SerGlyGlyHisHisHisHisHisHis(配列番号18)(ヌクレオチド配列TCCGGGGGCCATCATCATCATCATCAT(配列番号15)によりコードされ得る)およびSerGlyGlyHisHisHisHisHisHisSerSerGlyAspAspAspAspLys(配列番号:20)(ヌクレオチド配列TCCGGGGGCCATCATCATCATCATCATAGCTCCGGAGACGATGATGACAAG(配列番号19)によりコードされ得る)の一つと融合する。
【0060】
インターフェロンβのアミノ酸配列はまた、ペプチドAspTyrLysAspAspAspAspLys(DYKDDDDK)(配列番号21)(Hoppら.,Bio/Technology 6:1204,1988)に対して結合し得る。後者の配列は、高い抗原性であり、かつ特異的なモノクローナル抗体により可逆的に結合されるエピトープを提供し、発現された組換えタンパク質の迅速なアッセイおよび容易な精製を可能とする。この配列はまた、Asp−Lys対合のすぐ直後の残基においてウシ粘膜エンテロキナーゼにより特異的に切断される。
【0061】
別の実施形態において、IFN−β治療剤は、アルブミンタンパク質、それらの改変体またはそれらの部分に対して融合するIFN−βタンパク質またはそれらの改変体を含む。このような融合タンパク質は、例えば、WO01/77137に記載されるように、創造され得る。
【0062】
IFN−β治療剤はまた、ポリペプチドではない分子を含み得る。例えば、IFN−βタンパク質またはそれらの改変体は、ポリマー(例えば、生体分解性のポリマー)に対して、共有結合的にまたは非共有結合的に結合し得る。例えば、IFN−βタンパク質またはそれらの改変体は、ペグ化(例えば、ポリエチレングリコール(PEG)に対して結合する)され得る(WO 00/23114に記載)。
【0063】
本発明の広範な範囲内において、単一ポリマー分子は、IFN−βと結合するために使用され得るが、しかしまた、一より多くのポリマー分子が、同様に結合し得ることも予期される。結合体化するポリマーは、任意の基、部分、または他の結合される種(最終用途の適用に対して適切なように)を使用し得ることを認識し得る。例示により、いくつかの用途において、ポリマーにUV−分解耐性もしくは抗酸化または他の性質もしくは特徴を与える機能的部分に対してポリマーを共有結合することが有利であり得る。さらなる例示として、いくつかの用途において、ポリマーの性質を反応性または架橋可能とし、結合体化した物質全体の様々な性質もしくは特徴を高めるためにポリマーを官能基化することが有利であり得る。従って、ポリマーは、任意の官能基、繰り返し化学基、結合、または他の構成構造(意図される目的のための結合体化したIFN−β組成物の効力を除去しない)を含み得る。
【0064】
IFN−βは、最も好ましくは、ポリマー上の末端反応性基を介して結合されるが、結合はまた、非末端反応性基から分枝され得る。反応性基を伴うポリマーは、本明細書中において「活性化ポリマー」と称される。反応性基は、タンパク質上の遊離アミノ基または他の反応性基と選択的に反応する。活性化ポリマーは、結合が、任意の利用可能なIFN−βアミノ基(例えば、リジンのαアミノ基またはεアミノ基)において生じ得るように反応する。遊離したカルボキシル基(適切に活性化された、カルボニル基、ヒドロキシル基、グアニジル基、酸化炭水化物部分およびIFN−β(利用可能な場合)のメルカプト基)はまた、結合部位として使用され得る。
【0065】
ポリマーは、IFN−β分子もしくはそれらの改変体または他のアミノ酸(IFN−β分子に対して直接的にもしくは間接的に結合する)上のどこにでも結合し得るが、ポリマー結合のための最も好ましい部位は、IFN−β分子のN末端である。第2の部位は、C末端またはC末端付近であり、糖部分を介する。そのため、本発明は、最も好ましい実施形態として:(i)IFN−βまたはそれらの改変体のN末端結合のポリマー結合体;(ii)IFN−βまたはそれらの改変体のC末端結合のポリマー結合体;(iii)ポリマー結合体の糖結合結合体;(iv)ならびに、IFN−βタンパク質またはそれらの改変体のN−、C−および糖結合ポリマー結合体を予期する。
【0066】
一般に、1モルのタンパク質ごとにおよそ1.0モル〜およそ10モルの活性化ポリマーまで(タンパク質濃度に依存する)を、使用する。最終量は、産物の非特異的な改変を最小限にする間に、反応の程度を最大限にする量および、同時に、タンパク質の半減期(可能である場合)を最も効果的にする間の化学的性質(最適な活性を維持する)を特徴付ける量との間の平均である。好ましくは、タンパク質の生物学的活性の少なくともおよそ50%が保持され、そして最も好ましくは、100%が、保持される。
【0067】
反応は、不活性ポリマーと生物学的活性物質とを反応させるために使用される任意の適切な方法により生じ得る(N末端におけるαアミノ基上に反応性基がある場合に、好ましくはおよそpH5〜7で)。一般にこの工程は、活性化ポリマー(少なくとも一つの末端ヒドロキシル基を有し得る)を調製する工程、およびその後の、処方に適した可溶性タンパク質を産生するために活性化ポリマーとタンパク質を反応させる工程を含む。上記の改変反応は、複数の方法(一以上の工程を包含し得る)により、実施され得る。
【0068】
上記したように、本発明の最も好ましい実施形態においては、ポリマーへの結合の際にIFN−βのN末端を利用する。適切な方法は、N末端が改変されたIFN−βを選択的に得るために利用可能である。一つの方法は、IFN−β上の誘導体化のため利用可能である還元的アルキル化法(異なるタイプの1級アミノ基(リジン上のεアミノ基対N末端メチオニン上のアミノ基)の異なる反応性を利用する)により例示される。適切な選択条件下において、カルボニル基含有ポリマーによるN末端でのIFN−βの実質的に選択的な誘導体化を達成し得る。反応は、IFN−βのリジン残基のεアミノ基およびIFN−βのN末端残基のαアミノ基との間のpKa差を利用し得るpHで実施される。このタイプの化学反応は、当業者に周知である。
【0069】
例えば、この選択性が、PEGアルデヒドポリマーが、シアノホウ化水素ナトリウム存在下でIFN−βと反応する条件下において、低いpH(一般的に5〜6)で反応が実施されることにより維持される反応スキームが使用され得る。PEG−IFN−βの精製およびSDS−PAGE、MALDI質量分析およびペプチド配列決定/マッピングを用いた分析の後、N末端がPEG部分により特異的に標的化されたIFN−βが生成された。
【0070】
IFN−βの結晶体構造は、N末端およびC末端が互いに近接していることを示す(Karpusasら,1997,Proc.Natl.Acad.Sci.94:11813−11818参照)。そのため、IFN−βのC末端の改変はまた、活性に最小限の影響を有するべきである。ポリアルキレングリコールポリマー(例えば、PEG)をそのC末端に標的化する単純な化学的方法はないが、ポリマー部分を標的化するのに使用され得る部位を遺伝子操作することが直接的であり得る。例えば、C末端のまたはC末端付近の部位にけるCysの組込みは、マレイミド、ビニルスルフォンまたはハロアセテート−活性化ポリアルキレングリコール(例えば、PEG)を使用する特異的な改変を可能とする。これらの誘導体は特に、システインに対するこれら薬剤の高い選択性に基づき、操作されたCysの改変に使用され得る。他の方法(例えば、標的化され得るヒスチジンタグ(Fancyら,(1996)Chem.&Biol.3:551)または、付加的なグリコシル化部位の組み込み)は、IFN−βのC末端を改変するための他の代替法を表す。
【0071】
IFN−β上のグリカンはまた、活性を変化させることなく、さらなる改変を可能とする位置にある。化学的改変のための部位としての糖を標的化する方法はまた、周知であり、そしてそのため、おそらくポリアルキレングリコールポリマーは、酸化を通じて活性化されたIFN−β上の糖に対して直接的かつ特異的に加えられ得るようである。例えば、ポリエチレングリコール−ヒドラジドが産生され得、これは、アルデヒドおよびケトンによる結合により比較的安定なヒドラゾン結合を形成する。この性質は、酸化オリゴ糖結合によるタンパク質の改変のために使用されている。Andresz,H.ら,(1978),Makromol.Chem.179:301参照。特に、亜硝酸塩を用いたPEG−カルボキシメチルヒドラジドの処理は、PEG−カルボキシメチルアジド(アミノ基に対して反応する求電子的な活性基)を産生する。この反応は、同様に、ポリアルキレングリコール改変タンパク質を調製するために使用され得る。米国特許第4,101,380号および米国特許第4,179,337号参照。
【0072】
チオールリンカー媒介性の化学反応はさらに、タンパク質の架橋結合を促進し得る。これは、例えば、過ヨウ素酸塩ナトリウムを用いて炭水化物部分上に反応性のアルデヒドを生成し、アルデヒドを介してシスタミン結合体を形成し、そしてシスタミン上のチオール基を介して架橋結合を誘導することにより実施され得る(Pepinsky,B.ら,(1991),J.Biol.Chem.,266:18244−18249およびChen,L.L.ら,(1991)J.Biol.Chem.,266:18237−18243参照)。従って、化学反応のこのタイプは、ポリアルキレングリコールポリマーを用いた改変(リンカーを糖へ組み込ませ、およびポリアルキレングリコールポリマーは、リンカーに対して結合させる)のために適切であると考えられる。アミノチオールまたはヒドラジンを含むリンカーは、単一ポリマー基の付加を可能とするが、リンカーの構造は、多数のポリマーを付加するためにおよび/またはIFN−βに関するポリマーの空間的配向性を変化させるために変化し得る。
【0073】
例示のポリマーとして、水可溶性ポリマー(例えば、ポリアルキレングリコールポリマー)が挙げられる。このようなポリマーの非限定的な列挙は、他のポリアルキレンオキシドホモポリマー(例えば、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレン化ポリオール、それらのコポリマーおよびそれらのブロックコポリマー)を含む。適切な水可溶性ポリマー骨格および非ペプチドポリマー骨格の他の例は、ポリ(オキシエチレン化ポリオール)、ポリ(オレフィンアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ヒドロキシプロピルメタアクリルアミド)、ポリ(αヒドロキシ酸)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリフォスファゼン、ポリオキサゾリン、ポリ(N−アクリロイルモルフォリン)ならびにそれらのコポリマー、ターポリマー、および混合物を含む。一つの実施形態において、ポリマー骨格は、平均分子量およそ200Da〜およそ400,000Daを有するポリ(エチレングリコール)またはモノメトキシポリエチレングリコール(mPEG)である。他の関連するポリマーもまた、本発明の実施における使用に適切であり、および用語PEGまたはポリ(エチレングリコール)の使用は、これに関して包括的であり排他的でないことを意図すると理解すべきである。用語PEGは、任意の形態のポリ(エチレングリコール)(アルコキシPEG、二官能性のPEG、多岐のPEG、分岐のPEG(forked PEG)、分枝のPEG(branched PEG)、ペンダントのPEG、または分解性の結合を含むPEGを含む)を含む。
【0074】
一つの実施形態において、Cl−C4アルキルポリアルキレングリコール(好ましくはポリエチレングリコール(PEG))のポリアルキレングリコール残基または、これらグリコールのポリ(オキシ)アルキレングリコールの残基は、目的のポリマー系に組み込まれる。そのために、タンパク質に結合されるポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)のホモポリマーであり得、またはポリオキシエチル化ポリオールであり、但し、全ての場合において、ポリマーは、室温で水に可溶である。このようなポリマーの非限定的な例示としては、ブロックコポリマーの水溶性を維持するポリアルキレンオキシドホモポリマー(例えば、PEG、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレン化グリコール、それらのコポリマー、およびそれらのブロックコポリマー)が挙げられる。ポリオキシエチル化ポリオールの例としては、例えば、ポリオキシエチル化グリセロール、ポリオキシエチル化ソルビトール、ポリオキシエチル化グルコースなどを含む。ポリオキシエチル化グリセロールのグリセロール骨格は、天然(例えば、動物およびヒトにおけるモノグリセリド、ジグリセリドおよびトリグリセリド内)に存在する骨格と同一である。そのため、この分枝は、体内において外来因子として必ずしも認識されるわけではない。
【0075】
ポリアルキレンオキシドの代替的なものとして、デキストラン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、炭水化物ベースのポリマーなどが、使用され得る。当業者は、前述した列挙が単なる例示にすぎず、かつ本明細書中に記載した性質を有する全てのポリマー物質が想定されるということを認識する。
【0076】
ポリマーは、任意の特定の分子量を有することが必要ではないが、好ましくは、分子量はおよそ300と100,000との間、より好ましくは10,000と40,000との間である。特に、20,000以上の大きさが、腎臓における濾過に起因するタンパク質の損失を抑える点で最も良い。
【0077】
ポリアルキレングリコール誘導体は、本発明の実施におけるポリマー−IFN−β結合体の製剤において、多くの有利な特性(ポリアルキレングリコール誘導体の以下の特性に関連する:同時に抗原性応答および免疫原性応答を誘発しない水溶性の改善;高度の生体親和性;ポリアルキレングリコール誘導体のインビボ生体分解の欠如;および生体組織による容易な排出)を有する。
【0078】
さらに、本発明の別の局面において、ポリマー成分(結合の性質が、切断可能な共有化学結合を含む)に対して共有結合するIFN−βを利用し得る。これは、ポリマーが、IFN−βから切断され得るのにかかる時間経過の点で制御を可能とする。IFN−β薬物とポリマーとの間のこの共有結合は、化学的な反応または酵素反応により切断され得る。ポリマー−IFN−β産物は、受容可能な量の活性を保持する。同時に、ポリエチレングリコールの一部分は、結合するポリマー内に存在し、ポリマー−IFN−β結合体に高い水溶性および長期血液循環能を与える。これらの改善された特性の結果として、本発明は、インビボ適用において、活性ポリマー−IFN−β種および加水分解後の、生体利用可能なIFN−βそれ自体の両者の非経口送達、経鼻送達、経口送達を予期する。
【0079】
結合体(例えば、N末端結合体化産物)を得るためのIFN−βとポリマーの反応は、幅広い様々な反応スキームを使用することにより容易に実行され得る。IFN−β結合体の活性および安定性は、異なる分子サイズのポリマーを使用することにより、いくつかの様式で変化し得る。結合体の溶解度は、ポリマー組成体内に組み込まれるポリエチレングリコールフラグメントの割合およびサイズを変化させることにより変化させ得る。
【0080】
一つの実施形態において、本発明による結合体は、活性化ポリアルキレングリコール化合物(PCG)とタンパク質の反応により調製される。例えば、IFNは、アミン結合を介して結合したPEG−タンパク質結合体を産生するために、還元的アルキル化を介して、還元剤(例えば、シアノホウ化水素ナトリウム)の存在下で、PEG−アルデヒドと反応させ得る(例えば、欧州特許0154316 B1および国際特許出願第PCT/US03/01559参照)。
【0081】
本発明の特定の実施形態において、ヒトIFN−βを、20kDa mPEG−O−2−メチルプロピオンアルデヒド改変IFN−β、20kDa mPEG−O−p−メチルフェニル−O−2−メチルプロピオンアルデヒド改変IFN−β、20kDa mPEG−O−m−メチルフェニル−O−2−メチルプロピオンアルデヒド改変IFN−β、20kDa mPEG−O−p−フェニルアセトアルデヒド改変IFN−β、20kDa mPEG−O−p−フェニルプロピオンアルデヒド改変IFN−β、および20kDa mPEG−O−m−フェニルアセトアルデヒド改変IFN−βを得るために、それぞれ以下の活性化ポリアルキレングリコール:20kDa mPEG−O−2−メチルプロピオンアルデヒド、20kDa mPEG−O−p−メチルフェニル−O−2−メチルプロピオンアルデヒド、20kDa mPEG−O−m−メチルフェニル−O−2−メチルプロピオンアルデヒド、20kDa mPEG−O p−フェニルアセトアルデヒド、20kDa mPEG−O p−フェニルプロピオンアルデヒド、および20kDa mPEG−O−m−フェニルアセトアルデヒドを用いてペグ化する。20kDa mPEG−O−2−メチルプロピオンアルデヒドおよび20kDa mPEG−O−p−フェニルアセトアルデヒドで改変されたヒトIFN−βの調製および特性決定の詳細は、以下に記載され、かつまた、国際特許出願第PCT/US03/01559において提供される。
【0082】
一つの実施形態において、ペグ化IFN−βを、以下の通り調製する。IFN−β(例えば、(100mMリン酸ナトリウムpH7.2、200mM NaCl中250μg/mLの処方されていないAVONEX(登録商標)IFN−β−1aバルク中間体(ヒトに使用するための全てのテストに合格したバルク薬剤の臨床バッチ))を、等量の100mM MES pH5.0を用いて希釈し、そしてpHをHClを用いてpH5.0に調整する。サンプルをSP−Sepharose(登録商標)FFカラム(Pharmacia,Piscataway,NJ)に6mg IFN−β/mL樹脂にロードする。カラムを、5mMリン酸ナトリウムpH5.5、75mM NaClを用いて洗浄し、産物を、30mMリン酸ナトリウムpH6.0、600mM NaClを用いて溶出する。溶出分画は、280nmの吸光度値を分析し得、ならびに1mg/ml溶液の1.51の吸光係数を使用して、吸光度から測定されたサンプル内のインターフェロンの濃度を分析し得る。
【0083】
SP溶出液由来のIFN−βの1mg/mL溶液へ、0.5Mリン酸ナトリウムpH6.0を50mMとなるように加え、シアノホウ化水素ナトリウム(Aldrich,Milwaukee,WI)を、5mMとなるように加え、および20K PEGアルデヒド(Shearwater Polymers,Huntsville,AL)を、5mg/mLとなるように加える。サンプルは、室温で20時間インキュベートする。ペグ化したインターフェロンを、移動相として5mMリン酸ナトリウムpH5.5、150mM NaCl、およびSP−Sepharose(登録商標)FFを用いるSuperose(登録商標)6FPLCサイジングカラム(Pharmacia)での連続的なクロマトグラフィー工程により反応液から精製する。サイジングカラムにより、改変IFN−βと非改変IFN−βの基礎分離を行う。ゲル濾過由来のPEG−インターフェロンβを含む溶出プールを、水を用いて1:1に希釈し、そしてSP−Sepharose(登録商標)カラムに2mgインターフェロンβ/mL樹脂でロードする。カラムを、5mMリン酸ナトリウムpH5.5、75mM NaClを用いて洗浄し、次いでペグ化インターフェロンβを、5mMリン酸ナトリウムpH5.5、800mM NaClを用いてカラムから溶出する。溶出分画を、280nmの吸光度によりタンパク質含有量について分析する。ペグ化インターフェロン濃度は、280nmの吸光度に関与しないPEG部分として、インターフェロン当量で報告する。これらの方法および得られたペグ化IFN−βの性質はさらに、WO00/23114に記載される。IFN−βのPEG結合体は、その抗ウイルス活性を変化させない。さらに、ペグ化IFN−βの比活性は、非ペグ化IFN−βの比活性よりも、大きい(およそ10倍)ものとして見出された(WO00/23114)。
【0084】
IFN−βはまた、20K PEGアルデヒドについて上記したのと同じプロトコルに従い、5K PEG−アルデヒド部分(例えば、Fluka,Inc.(Cat.No.75936,Ronkonkoman,NY)から購入し得る)を用いてペグ化し得る。
【0085】
20kDa mPEG−O−2−メチルプロピオンアルデヒド改変IFN−βを、以下の通り調製し得る。処方されていないAVONEX(登録商標)(100mMリン酸ナトリウムpH7.2、200mM NaCl中250μg/mLのIFN−β−1aバルク中間体(ヒトに使用するための全てのテストに合格したバルク薬剤の臨床バッチ))10mLを、12mLの165mM MES pH5.0および50μLの5N HClを用いて希釈する。サンプルを、300μL SP−Sepharose FFカラム(Pharmacia)にロードする。カラムを、300μLの5mMリン酸ナトリウムpH5.5、75mM NaClを用いて3回洗浄し、タンパク質を、5mMリン酸ナトリウムpH5.5、600mM NaClを用いて溶出する。溶出分画を、それらの280nmの吸光度について分析し、サンプル内のIFN−βの濃度を1mg/mL溶液について1.51の吸光係数を使用して算出した。ピークの分画は、3.66mg/mLのIFN−β濃度を得るためにプールされ、これを続いて、水を用いて1.2mg/mLまで希釈する。
【0086】
希釈されたSP−Sepharose溶出液プール由来のIFN−βの0.8mLへ、0.5Mリン酸ナトリウムpH6.0を50mMとなるように加え、シアノホウ化水素ナトリウム(Aldrich)を、5mMとなるように加え、および20kDa mPEG−O−2−メチルプロピオンアルデヒドを、5mg/mLとなるように加える。サンプルは、遮光し、室温で16時間インキュベートする。ペグ化IFN−βを、0.5mL SP−Sepharose FFカラム上の反応混合液(0.6mLの反応混合液は、2.4mL20mM MES pH5.0を用いて希釈し、そしてSP−Sepharoseカラム上にロードする)から精製する。カラムを、リン酸ナトリウムpH5.5、75mM NaClを用いて洗浄し、次いでペグ化IFN−βを、25mM MES pH6.4、400mM NaClを用いてカラムから溶出する。ペグ化IFN−βをさらに、移動相として5mMリン酸ナトリウムpH5.5、150mM NaClを用いるSuperose6HR10/30FPLCサイジングカラム上で精製する。サイジングカラム(25mL)は、20mL/hで行われ、そして0.5mL分画を、収集する。溶出分画を、280nmの吸光度によりタンパク質含有量を分析し、プールし、そしてプールのタンパク質濃度を決定する。ペグ化IFN−β濃度は、280nmの吸光度に関与しないPEG部分として、IFN当量で報告する。プールのサンプルは、分析のために取除き、そして残りを、HSAを含む製剤緩衝液を用いて30μg/mLまで希釈し得、0.25mL/バイアルで等分し、そして−70℃で保存する。
【0087】
20kDa mPEG−O−p−フェニルアセトアルデヒド改変IFN−βを、以下の通り調製し得る。処方されていないAVONEX(登録商標)IFN−βバルク中間体(100mMリン酸ナトリウムpH7.2、200mM NaCl中、250μg/mLのヒトに使用するための全てのテストに合格したバルク薬剤の臨床バッチ)20mLを、24mLの165mM MES pH5.0、100μLの5N HClおよび24mLの水を用いて希釈する。サンプルを、600μL SP−Sepharose FFカラム(Pharmacia)上にロードする。カラムを、900μLの5mMリン酸ナトリウムpH5.5、75mM NaClを用いて2回洗浄し、タンパク質を、5mMリン酸ナトリウムpH5.5、600mM NaClを用いて溶出する。溶出分画は、それらの280nmの吸光度を分析し、ならびにサンプル内のIFN−βの濃度を1mg/mL溶液について1.51の吸光係数を使用することにより算出した。ピークの分画は、2.3mg/mLのIFN−β濃度を与えるためにプールする。SP−Sepharose溶出液プール由来のIFN−β−1aの1.2mLへ、0.5Mリン酸ナトリウムpH6.0を50mMとなるように加え、シアノホウ化水素ナトリウム(Aldrich)を、5mMとなるように加え、および20kDa mPEG−O−p−フェニルアセトアルデヒドを、10mg/mLとなるように加える。サンプルは、遮光し、室温で18時間インキュベートする。ペグ化IFN−βを、0.75mL SP−Sepharose FFカラム上の反応混合液(1.5mLの反応混合液は、7.5mL20mM MES pH5.0、7.5mLの水、および5μL 5N HClを用いて希釈し、そしてSP−Sepharoseカラム上にロードする)から精製し得る。カラムを、リン酸ナトリウムpH5.5、75mM NaClを用いて洗浄し、次いでペグ化IFN−βを、20mM MES pH6.0、600mM NaClを用いてカラムから溶出する。ペグ化IFN−βをさらに、移動相として5mMリン酸ナトリウムpH5.5、150mM NaClを用いるSuperose6HR10/30FPLCサイジングカラム上に精製する。サイジングカラム(25mL)は、20mL/hで行われ、そして0.5mL分画を、収集する。溶出分画を、280nmの吸光度によりタンパク質含有量を分析し、プールし、そしてプールのタンパク質濃度を決定する。ペグ化IFN−β濃度は、280nmの吸光度へのPEGの寄与(20kDa mPEG−O−p−フェニルアセトアルデヒドは、1mg/mL溶液の0.5の280nmにおける吸光係数を有する)を調節後、ペグ化IFN−βの1mg/mL溶液について2の吸光係数を使用して、IFN当量で報告する。プールのサンプルは、分析のために取除き、そして残りを、HSAを含む製剤緩衝液を用いて30μg/mLまで希釈し得、0.25mL/バイアルで等分し、そして−70℃で保存する。
【0088】
非天然のポリマーに対し結合したグリコシル化IFN−βを、本発明の方法において、使用し得る。このポリマーは、ポリアルキレングリコール部分を含み得る。ポリアルキレン部分は、インターフェロン−βに対して、アルデヒド基、マレイミド基、ビニルスルフォン基、ハロアセテート基、複数個のヒスチジン残基、ヒドラジン基、およびアミノチオール基より選択された基により、結合し得る。IFN−βは、ポリエチレングリコール部分に結合し得る(IFN−βは、不安定な結合によりポリエチレングリコール部分に結合し、不安定な結合は、生化学的な加水分解および/または生化学的なタンパク質分解により切断可能である)。ポリマーは、およそ5キロダルトン〜およそ40キロダルトンまでの分子量を有し得る。使用され得る別のIFN−βは、ポリアルキレングリコール部分を含むポリマーに対し結合する、生理学的に活性のグリコシル化したインターフェロン−βのN末端を含む生理学的な活性インターフェロン−β組成物である(生理学的に活性インターフェロン−βおよびポリアルキレングリコール部分は、生理学的に活性インターフェロン−β組成物内の生理学的に活性インターフェロン−βが、抗ウイルスアッセイにより計測された場合に、前記部分を欠いている生理学的に活性インターフェロン−βに関して、実質的に同様の活性を有するように配置する)。
【0089】
異種ポリペプチドまたは他の分子は、IFN−βタンパク質またはそれらの改変体に対して共有結合または非共有結合し得る。「共有結合」とは、本発明の異なる部分が、直接互いに共有結合するか、または間接的に介在する部分(単数または複数)(例えば、架橋、スペーサー、または連結部分(単数または複数))を介して互いに共有結合により結び付けられているかのいずれかであることを意味する。介在する部分(単数または複数)は、「結合基」と呼ばれる。用語「結合体化」は、「共有結合した」と互換的に使用される。
【0090】
本発明において使用するためのIFN−βは、グリコシル化されていても、グリコシル化されていなくてもよい(すなわち、非グリコシル化であり得る)。非グリコシル化IFN−βは、例えば、原核生物の宿主細胞内で、産生され得る。
【0091】
IFN−βタンパク質またはそれらの改変体はまた、多糖類(本来はIFN−β上に存在しない)が付くことにより改変されえ得る。
【0092】
(3.IFN−β治療剤の産生方法)
本発明のIFN−β治療剤は、任意の適切な方法(例えば、IFN−β治療剤をコードする核酸を構築することおよび適切な形質転換された宿主内にこの核酸を発現することを含む方法)により産生され得る。この方法は、組換えIFN−β治療剤を産生する。IFN−β治療剤はまた、化学的合成または化学的合成および組換えDNA技術との組合せにより産生され得る。
【0093】
一つの実施形態において、IFN−β治療剤をコードする核酸は、IFN−βまたはその改変体をコードするDNA配列の単離もしくは合成により構築される。例えば、IFN−β融合タンパク質は、例えば、本明細書中に記載されるように産生され得る。天然に存在するIFN−β核酸は、当業者に周知の方法に従って得られ得る。例えば、核酸は、IFN−βを発現することが知られる細胞(例えば、白血球)から得られたRNAおよびIFN−β遺伝子の配列(例えば、配列番号1)に基づくプライマーを使用する逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)により単離され得る。IFN−βタンパク質をコードする核酸はまた、IFN−β配列の一部を含むプローブ(例えば、オリゴヌクレオチド)を用いて、IFN−βを発現する細胞から作製されたライブラリー(例えば、cDNAライブラリー)をスクリーニングすることにより単離され得る。
【0094】
あるいは、完全なアミノ酸配列は、逆翻訳(back−translated)された遺伝子を構築するために使用され得る。IFN−β治療剤をコードしているヌクレオチド配列を含むDNAオリゴマーが、合成され得る。例えば、望ましいポリペプチドの一部をコードしている複数の小さなオリゴヌクレオチドが、合成され得、そして次いで共に連結され得る。個々のオリゴヌクレオチドは代表的に、相補的な組立てのための、5’突出または3’突出を含む。
【0095】
変化を、当該分野で周知の方法により、IFN−βタンパク質をコードしている核酸に誘導され得る。例えば、変化を、部位特異的突然変異(例えば、Markら.,「Site−specific Mutagenesis Of The Human Fibroblast Interferon Gene」,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81,pp.5662−66(1984)および米国特許第4,588,585号に記載)により、引き起こされ得る。
【0096】
IFN−β治療剤をコードしている核酸を構築する別の方法は、化学的合成を介すものである。例えば、望ましいIFN−β治療剤をコードする遺伝子は、オリゴヌクレオチド合成機を使用する化学的な手法により、合成され得る。このようなオリゴヌクレオチドを、望ましいIFN−β治療剤のアミノ酸配列に基づいて設計される。
【0097】
発現系において発現のための核酸を選択する場合、宿主細胞内または発現系(組み換えIFN−β治療剤を産生する)で、有利に働くこれらのコドンを選択することが望ましくあり得る。例えば、特定のコドンは、原核生物の細胞内で、他よりも優先して発現される(「コドン優先(codon preference))。
【0098】
IFN−β治療剤をコードしているDNA配列はまた、シグナル配列をコードするDNAを含んでも含まなくてもよい。このようなシグナル配列(ある場合)は、IFN−β治療剤の発現のために選択した細胞により、認識されるものであるべきである。シグナル配列は、原核生物のもの、真核生物のものまたはこの二つの組合せであり得る。シグナル配列は、当該分野で周知であり、ならびに複数の異なるシグナル配列が、当該分野で記述されている。シグナル配列は、ネイティブな(すなわち、天然に存在する)IFN−βのシグナル配列であり得る。シグナル配列を含むことは、IFN−β治療剤を産生する組換え細胞からIFN−β治療剤が分泌されることが望ましいか否かに依存する。選択した細胞が原核生物である場合、DNA配列がシグナル配列をコードしないことが、一般的に好ましい。選択した細胞が真核生物である場合、一般的に、シグナル配列がコードされていることが好ましく、ならびに最も好ましくは野生型IFN−βのシグナル配列が使用される。
【0099】
一旦構築すると(合成、部位指示突然変異、または別の方法によって)、IFN−β治療剤をコードする核酸は、発現ベクターに挿入される(作動可能に、望ましい形質転換した宿主内でのIFN−β治療剤の発現に適切な発現制御配列に連結される)。適正な構築物は、ヌクレオチド配列決定、制限酵素マッピング、および適切な宿主または宿主細胞における生物学的活性ポリペプチドの発現により確認され得る。当該分野で周知であるように、宿主または宿主細胞においてトランスフェクトした遺伝子の高い発現レベルを得るために、遺伝子を、作動可能に転写または翻訳の発現制御配列(選択した発現宿主内で機能的である)に作動可能に連結させなければならない。
【0100】
発現制御配列および発現ベクターの選択は、宿主細胞の選択に依存する。広範な種々の発現宿主/ベクターの組合せが、使用され得る。真核生物の宿主(例えば、真核生物の宿主細胞)に有用な発現ベクターとしては、例えば、SV40、ウシパピローマウイルス、アデノウイルスおよびサイトメガロウイルス由来の発現制御配列を含むベクター(例えば、以下のベクター:pcDNAI/amp、pcDNAI/neo、pRc/CMV、pSV2gpt、pSV2neo、pSV2−dhfr、pTk2、pRSVneo、pMSG、pSVT7、pko−neoおよびpHygから生成されたベクター)が挙げられる。あるいは、ウイルスの誘導体(例えば、ウシパピローマウイルス(BPV−1)、またはエプスタイン・バーウイルス(pHEBo、pREP−誘導体およびp205))が、真核生物の細胞内におけるタンパク質の一過性の発現のために使用され得る。プラスミドの調製および宿主生物の形質転換に使用される種々の方法は、当該分野で周知である。他の適切な発現系については、Molecular Cloning A Laboratory Manual,第2版.Sambrook、FritschおよびManiatis編(Cold Spring Harbor Laboratory Press:1989)第16章および第17章を参照。
【0101】
細菌性の宿主に有用な発現ベクターとしては、細菌性プラスミドとして知られるもの(例えば、col E1、pCR1、pBR322、pMB9およびそれらの誘導体を含むE.coli由来のプラスミド)、より広い宿主範囲のプラスミドとして知られるもの(例えば、RP4、ファージDNA(例えば、ファージλの多数の誘導体(例えば、NM989)))、および他のDNAファージとして知られるもの(例えば、M13および糸状の一本鎖DNAファージ)が挙げられる。酵母細胞に有用な発現ベクターとしては、2.mu.プラスミドおよびそれらの誘導体が挙げられる。昆虫細胞に有用なベクターとしては、pVL941が挙げられる。Cateら.,「Isolation Of The Bovine And Human Genes For Mullerian Inhibiting Substance And Expression Of The Human Gene In Animal Cells」,Cell,45,pp.685−98(1986)を、また参照。
【0102】
さらに、任意の広範で種々の発現制御配列が、これらのベクターにおいて使用され得る。このような有用な発現制御配列としては、先述した発現ベクターの構造遺伝子に関連する発現制御配列が挙げられる。有用な発現制御配列の例としては、例えば、SV40またはアデノウイルスの初期プロモーターおよび後期プロモーター、lac系、trp系、TAC系またはTRC系、ファージλの主要オペレーター領域および主要プロモーター領域(例えば、PL)、fdコートタンパク質の制御領域、3−ホスホグリセリン酸キナーゼまたは他の糖分解性の酵素のプロモーター、酸性ホスファターゼのプロモーター(例えば、Pho5)、酵母α−交配系のプロモーターならびに原核生物細胞もしくは真核生物細胞またはそれらのウイルスの遺伝子発現を制御することが知られている他の配列およびこれらの様々な組み合わせが挙げられる。
【0103】
任意の適切な宿主は、IFN−β治療剤を産生するために使用され得、これらとしては、細菌、菌類(酵母を含む)、植物、昆虫、哺乳動物、または、他の適切な動物細胞または細胞株、ならびにトランスジェニック動物またはトランスジェニック植物が挙げられる。例示的な宿主としては、E.coli、Pseudomonas、Bacillus、Streptomyces、菌類、酵母、昆虫細胞(例えば、Spodoptera fruaiperda(SF9)、動物細胞(例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)およびマウス細胞(例えば、NS/0)、アフリカミドリザル細胞(例えば、COS1、COS7、BSC1、BSC40およびBMT10)およびヒト細胞)、ならびに同様に組織培養物内の植物細胞が挙げられる。このような細胞は、American Type Culture Collection(ATCC)より得られ得る。動物細胞での発現に好ましい宿主細胞としては、培養CHO細胞およびCOS7細胞および特にCHO−DDUKY−β1細胞株が挙げられる。
【0104】
全てのベクターおよび発現制御配列が、本明細書中に記載されるDNA配列を発現するために等しく良く機能するわけではないことが、当然理解されるべきである。また、すべての宿主が同一の発現系において等しく良く機能するのではない。しかし、当業者は、過度の実験をすることなく、これらのベクター、発現制御配列および宿主の内で選択し得る。ベクターのコピー数、コピー数を制御する能力、およびベクターによりコードされる任意の他のタンパク質(例えば、抗生物質マーカー)の発現もまた、考慮すべきである。例えば、本発明において使用するための好ましいベクターとしては、IFN−β治療剤をコードするDNAが、コピー数において増幅されるものが挙げられる。このような増幅可能なベクターは、当該分野で周知である。例えば、それらとしては、DHFR増幅(例えば、Kaufman,米国特許第4,470,461号、KaufmanおよびSharp,「Construction Of A Modular Dihydrafolate Reductase cDNA Gene:Analysis Of Signals Utilized For Efficient Expression」,Mol.Cell.Biol.,2,pp.1304−19(1982)参照)またはグルタミン合成酵素(「GS」)増幅(例えば、米国特許第5,122,464号および欧州特許出願公開第338,841号参照)により増幅可能なベクターが挙げられる。
【0105】
発現制御配列の選択において、種々の要因をまた、考慮すべきである。例えば、これらとしては、配列の相対的強度、配列の制御性、およびIFN−β治療剤をコードする実際のDNA配列との互換性(特に潜在的な二次構造に関するもの)が挙げられる。宿主は、選択したベクターと宿主の適合性、本発明のDNA配列によりコードされる産物の毒性、宿主の分泌特性、ポリペプチドを正しく折り曲げる宿主の能力、宿主の発酵または培養に必要なもの、およびDNA配列によりコードされた産物の精製の容易性についての考慮により選択すべきである。
【0106】
これらの要因の中で、当業者は、種々のベクター/発現制御配列/宿主の組み合わせ(発酵または例えば、CHO細胞もしくはCOS7細胞を使用する大量動物培養で望ましいDNA配列を発現する)を選択し得る。IFN−β改変体を発現するためのCHO−KUKX−B1 DHFRを加えたCHO細胞株の使用はさらに、米国特許第6,127,332号に記載される。
【0107】
IFN−β治療剤はまた、インビトロ系(例えば、インビトロ翻訳系、例えば、細胞溶解物、例えば、網状赤血球溶解物)において産生され得る。用語「インビトロ翻訳系」(本明細書中において用語「無細胞翻訳系」と交換可能に使用される)は、少なくともRNA分子をタンパク質へ翻訳するために必要な最小限度の要素を含む無細胞抽出物である翻訳系をいう。インビトロ翻訳系は代表的に、マクロ分子(例えば、酵素)、翻訳因子、開始因子、および伸長因子、化学反応試薬、およびリボソームを含む。例えば、インビトロ翻訳系は、少なくともリボソーム、RNA、開始メチオニル−RNAMet、翻訳に関与するタンパク質または複合体(例えば、eIF、eIF、キャップ−結合タンパク質(CBP)および真核生物開始因子4F(eIF4F)を含む、キャップ−結合(CB)複合体)を含み得る。種々のインビトロ翻訳系は、当該分野で周知であり、ならびに市販されるキットを含む。インビトロ翻訳系の例としては、真核生物溶解物(例えば、ウサギ網状赤血球溶解物、ウサギ卵母細胞溶解物、ヒト細胞溶解物、昆虫細胞溶解物および小麦胚芽抽出物)が挙げられる。溶解物は、製造業者(例えば、Promega Corp.,Madison,Wis.;Stratagene,La Jolla,Calif.;Amersham,Arlington Heights,Ill.;およびGIBCO/BRL,Grand Island,N.Y.)より市販されている。インビトロ翻訳系に使用するRNAは、例えば、SP6プロモーターまたはT7プロモーターを使用し、当該分野で公知の方法に従って、インビトロで産生され得る。
【0108】
別の方法においては、IFN−β治療剤は、宿主細胞内の内在性の遺伝子から発現される。この方法は、IFN−β遺伝子のコード領域の上流の異種性プロモーター(例えば、誘導性プロモーター)を挿入する工程、内在性IFN−β遺伝子を発現する工程および産生されたIFN−βを回収する工程、を含み得る。異種性プロモーターは、当該分野で公知である方法に従う「ノック−イン」により、あるいは、IFN−β遺伝子内のプロモーターの挿入により、細胞内へ誘導され得る。
【0109】
本発明に従って得られたIFN−β治療剤は、治療剤を産生するために使用される宿主生物に依存してグリコシル化または非グリコシル化される。細菌が、宿主として選択される場合、IFN−β治療剤産生は、非グリコシル化であり得る。一方、真核細胞は、IFN−β治療剤をグリコシル化する。
【0110】
形質転換した宿主により産生されたIFN−β治療剤は、任意の適切な方法に従って精製され得る。種々の方法が、IFN−βを精製するために公知である。例えば、米国特許第4,289,689号、同第4,359,389号、同第4,172,071号、同第4,551,271号、同第5,244,655号、同第4,485,017号、同第4,257,938号、同第4,541,952号、および同第6,127,332号参照。好ましい実施形態において、IFN−β治療剤は、免疫親和性により精製される(例えば、Okamuraら、「Human Fibroblastoid Interferon:Immunosorbent Column Chromatography And N−Terminal Amino Acid Sequence.」Biochem.,19,pp.3831−35(1980)に記載されるように)。
【0111】
例えば、IFN−βタンパク質およびそれらの改変体は、例えば、抽出、沈降、クロマトグラフィー、親和性クロマトグラフィー、電気泳動などの慣用的な条件に従い単離および精製され得る。例えば、インターフェロンタンパク質およびインターフェロンフラグメントは、固定化したインターフェロンレセプターを有するカラムに、それらの溶液を通過させることにより精製され得る(米国特許第4,725,669号参照)。結合したインターフェロン分子は次いで、カオトロピック塩を用いて処置するかまたは酢酸水溶液を用いて溶出することにより、溶出され得る。免疫グロブリン融合タンパク質は、融合タンパク質を含む溶液を、融合タンパク質のFc部分に選択的に結合する固定化したプロテインAまたはプロテインGを含むカラムを通過させることにより精製され得る。例えば、Reis,K.J.ら、J.Immunol.132:3098−3102(1984);PCT出願公開第WO87/00329号、参照。次いでキメラ抗体が、カオトロピック塩を用いて処置するかまたは酢酸水溶液を用いて溶出することにより、溶出され得る。
【0112】
あるいは、インターフェロンタンパク質および免疫グロブリン−融合分子は、実質的に純粋なタンパク質を与えるために抗インターフェロン抗体カラム上、または抗免疫グロブリン抗体カラム上で、精製され得る。用語「実質的に純粋」により、タンパク質が、生来関係する不純物を含まないことを意図する。実質的な純粋性は、電気泳動による単一のバンドにより証明され得る。
【0113】
産生および精製されたIFN−βは、例えば、ペプチドマッピングにより、特徴づけられ得る。例えば、IFN−β治療剤サンプルは、エンドプロテイナーゼLys−Cを用いて消化され得、そして逆相HPLC上で分析され得る(米国特許第6,127,332号に記載されるように)。
【0114】
好ましい実施形態において、IFN−β治療剤は、実質的に他の細胞性物質(例えば、タンパク質)を含まない。用語「実質的に純粋な」、または、「IFN−β治療剤の精製調製物」は、およそ20%(乾燥重量による)未満の細胞性物質(例えば、核酸、タンパク質、および脂質)の混入を有する、および好ましくはおよそ5%未満の細胞性物質の混入を有するIFN−β治療剤の調製物をいう。好ましいIFN−β治療剤の調製物は、およそ2%未満の細胞性物質の混入;さらにより好ましくは、およそ1%未満の細胞性物質の混入および最も好ましくは、およそ0.5%;0.2%;0.1%;0.01%;0.001%未満の細胞性物質の混入を有する。
【0115】
好ましいIFN−β治療剤組成物はまた、他の細胞性タンパク質(また、「混入タンパク質」として本明細書中で称される)を実質的に含まず、すなわち、組成物は、約20%(乾燥重量により)未満の混入タンパク質を有し、および好ましくは、約5%未満の混入タンパク質を有する。本発明のポリペプチドの好ましい調製は、約2%未満の混入タンパク質を有し;さらにより好ましくは、約1%未満の混入タンパク質であり、および最も好ましくは、およそ0.5%;0.2%;0.1%;0.01%;0.001%未満の混入タンパク質を有する。
【0116】
IFN−β調製物の純度および濃度は、例えば、サンプルをゲル電気泳動にかけることによって、当該分野で公知の方法、およびRobert K.Scopes,Protein Purification,Principles and Practice,第3版,Springer Verlag New York,1993および同書に引用される参考文献に記載されるように決定され得る。
【0117】
IFN−β治療剤の生物学的活性は、当該分野で公知である任意の適切な方法(例えば、抗ウイルス活性の抗体中和、タンパク質キナーゼの誘導、オリゴアデニル酸2,5−A合成酵素活性またはホスホジエステラーゼ活性)によりアッセイされ得る(例えば、EP−B1−41313およびWO00/23472に記載されるように)。このようなアッセイはまた、免疫調節性アッセイ(例えば、米国特許第4,753,795号参照)、増殖阻害アッセイ、およびインターフェロンレセプターを発現する細胞に対する結合の測定を含む。例示的な抗ウイルスアッセイはさらに、米国特許第6,127,332号およびWO00/23472に記載される。
【0118】
糸球体腎炎を処置するIFN−β治療剤の能力はまた、動物モデルにおいて評価され得る(例えば、これらは、実施例および本明細書中でさらに記載される)。この試験は、例えば、実施例に記載されるように実施され得る。
【0119】
IFN−β治療剤はまた、以下の商品名:AVONEX(登録商標)(IFN−β−1a)(Biogen,Inc.,Cambridge,MA);REBIF(登録商標)(IFN−β−1a)(Serono,S.A.,Geneva,Switzerland);BETAFERON(登録商標)(IFN−β−1b)(Schering Aktiengesellschaft,Berlin,Germany)の下で販売され得、これは、また、BETASERON(登録商標)(Berlex,Montville,NJ;IFN−β−1b)としても市販される。AVONEX(登録商標)およびREBIF(登録商標)は、チャイニーズハムスター卵巣細胞において産生される組換え野生型ヒトグリコシル化IFN−βである。BETAFERON(登録商標)は、細菌において産生される。
【0120】
(4.IFN−β治療剤を用いた処置方法)
本発明は、被験体において、必要に応じて別の治療に対する添加剤として、治療的に有効量のIFN−β治療剤を被験体に投与する工程を含む、ニューロパシーを処置するかまたは予防するための方法を提供する。一実施形態において、ニューロパシーは、脱髄性ニューロパシー(例えば、慢性脱髄性ニューロパシー)である。慢性脱髄性ニューロパシーの例としては、CIDPおよび多病巣性運動ニューロパシーが挙げられる。好ましい実施形態において、ニューロパシーは、CIDPである。
【0121】
被験体は、ニューロパシーを有するとして同定された被験体であり得る。被験体は、当該分野で公知の方法に従って、ニューロパシーを有すると診断され得る。特に、CIDPの診断は、当該分野で公知の方法(例えば、本明細書中にさらに記載される)に従ってなされ得る。IFN−β治療剤を用いた処置は、ニューロパシーを有すると診断された人において、任意のときに開始され得る。処置はまた、ニューロパシーを有するようには見えないが、ニューロパシーを発症しているようである被験体において開始され得る。このような被験体は、例えば、遺伝的判断基準によって同定され得る。ニューロパシーを発症しているようである被験体は、被験体が実際ニューロパシーを発症しているかどうかが明らかではない特定の例のように、代表的にニューロパシーと関連する、全てではないが、いくつかの症状を有する被験体も含む。処置は、少なくとも約1ヶ月間、少なくとも約3ヶ月間、少なくとも約6ヶ月間、少なくとも約1年間、少なくとも約3年間、少なくとも約5年間またはそれより長い間実施され得る。
【0122】
被験体は、動物(例えば、哺乳動物)であり得る。哺乳動物の例としては、ヒト、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマ、イヌ、ネコ、非ヒト霊長類、マウスおよびラットが挙げられる。
【0123】
特定の実施形態において、IFN−β治療剤は、治療添加物として被験体、すなわち別の処置も受ける被験体に投与される。例えば、CIDPを有するヒトは、IFN−β治療剤を受けることに加えて、IVIg;ステロイド(例えば、プレドニソロン);もしくは免疫抑制剤(例えば、アゾチオプリン、シクロスポリン、またはシクロホスファミド)の投与によって;または、血漿交換によって処置され得る。IFN−β治療剤との組合せ治療は、他の処置(他の処置は、より有害(例えば、ステロイド)、より高価(例えば、IVIg)、またはより不便(血漿交換)であり得る)の使用を最小化し得る。従って、特定の実施形態において、IFN−β治療剤の被験体への投与は、他の処置の用量および/または頻度を減少させることが可能である。例えば、用量および/または頻度は、少なくとも約10%、約30%、約50%、約75%、約100%(すなわち、2倍)、5倍、10倍以上減少され得る。以下に示すものは、CIDPに対する治療の現在の標準である。
【0124】
従って、一実施形態において、本発明は、慢性脱髄性ニューロパシー(例えば、ステロイドの投与、抗炎症薬物の投与;IVIgの投与;および血漿交換、第一のCIDP処置に加えて、CIDPの症状から有効な低減を提供するために、被験体へ、第一のCIDP処置に加えて、第一のCIDP処置の用量または頻度を有意に減少させるのに有効である量でのIFN−β治療剤の用量を投与する工程を含む改善からなる群より選択される第一のCIDP処置を受ける被験体におけるCIDP)を処置するための方法を提供する。
【0125】
免疫抑制剤は現在、CIDPを処置するために使用される。例えば、ステロイドは、CIDPに有益であることが見出されている。好ましい応答は、通常、4週間以内に見られる。一般に使用される一つのステロイドは、プレドニゾン(デルタゾン、オラゾン、メティコーテン)である。プレドニゾンは、炎症および免疫反応を抑制し、炎症の部位において媒介物の機能を変化させると考えられ、そしてCIDPにおける免疫反応を抑制する経口コルチコステロイド剤である。用量は、変化するが、ほとんどの成体患者は、最初は、0.5〜1mg/kg/日 PO(すなわち、口により)で開始する(約30〜40から60〜80mg/日)。改善は、次の2ヶ月以内に予測され得る。その後、投薬は、隔日治療に変更され得、次いで、患者の回復を維持することを可能にする最も低い有効用量に滴定され得る。
【0126】
CIDPを処置するのに有効であることが見出されている別の免疫抑制剤は、アザチオプリン(イムラン)であって、これは、プリンの代謝を減少させ、DNA合成およびRNA合成も阻害し得るプリンアナログである。アザチオプリンは、神経に対する免疫仲介性損傷を抑制することにより、CIDPの障害および症状を低減させると考えられる。開始用量は、約50mg PO qd(口による、毎日)であって、これは、通常、徐々に増加して毎日、2〜3mg/kg/日 POの投薬量になる。アザチオプリンの治療用量を各患者に対して決定するのは困難であるが;いくつかの証拠は、赤血球容積の上昇が治療用量を示すことを示唆する。治療反応が明らかになるまでに、6ヶ月より長い期間を要し得る。
【0127】
CIDPの処置に現在使用されるさらに別の免疫抑制剤は、ミコフェノレート(セルセプト)であって、これは、免疫抑制剤ミコフェノール酸に対するプロドラッグである。ミコフェノレートは、酵素イノシン一リン酸デヒドロゲナーゼを阻害することによりリンパ球のプリン合成を阻害すると考えられる。成体に対する代表的な用量は、臨床効果に依存して用量の調節を要するが、250mg/日〜3g/日である。
【0128】
11アミノ酸からなる環状ポリペプチドであるシクロスポリン(Sandimmune,Neoral)もまた、CIDPを処置するために使用され得る。シクロスポリンは、T細胞活性化の第1期を阻害し、体液免疫に影響しない。T細胞の抑制により、シクロスポリンは、炎症/免疫応答部位における細胞媒介性神経損傷を阻害すると考えられる。通常、これは、まず5mg/kg/日PO分割量で(日に2回経口で)投与され、そして用量は、反応に従って増加される。溝レベルおよびピークレベルをモニターして、効力を記録し、そして毒性を避けるべきである:最終的な望ましい溝レベルは、CIDPに特異的に同定されており、免疫障害のために通常使用される溝レベルは、100と250との間である。
【0129】
別の免疫抑制剤は、シクロホスファミド(Cytoxan)であり、これは、細胞周期非特異的抗腫瘍剤であり、そしてアルキル化剤として作用する免疫抑制剤である。この用量は、代表的に1〜2mg/kg/日POである。
【0130】
CIDP患者の処置の別の標準的方法は、静脈内免疫グロブリン(IVIg)投与である。IV輸液は、代表的に、主に異種ヒトIgGで、しかし少量のIgAおよびIgMで構成される。特定の実施形態において、IV溶液は、抗体によって認識されるエピトープに関して異種であり、例えば、特定の抗原での動物の免疫化から得る抗体の調製物ではない。その作用の提唱された機構は、IVIgが、免疫因子を中性化し、CIDPにおいて周辺神経を損傷するランダムな抗体のセットを含むという考えに基づく。平均で、10日で改善が見られ、42日目まで続く。血清半減期は、約21〜29日間である。患者は、寛解を維持するためまたは再発を処置するために、数週間または数ヶ月毎の通常繰り返し処置を必要とする。一般的用量は、0.4〜2g/kgであり、通常、400mg/kgの1日に5回の用量に分割される。処置は、より高い用量(例えば、2g/kg)で開始され得、そして後により低い用量(例えば、0.5〜1g/kg)に低下され得る。これらの用量の投与の頻度は、変化するが、殆どの患者は、2〜8週間毎に投薬を受ける。例えば、IVIGは、数日にわたって0.4g/kgで投与され得、1〜4週毎に1〜2g/kg投与され得る。
【0131】
別の認可されたCIDPの処置の方法は、血漿瀉血(または血漿交換)である。この処置は、周辺神経の免疫媒介性損傷に応答する抗体および補体成分を除去すると考えられる。血漿は、血液から、透析と類似の方法を介して除去される。その効力は、CIDPの処置におけるIVIgの効力に類似するようである。一般に、患者は、最初の2週間について、週に3回の血漿交換を受ける;その後、処置の回数および頻度は、臨床的反応によって決定される。
【0132】
従って、IFN−β治療剤は、免疫抑制剤(例えば、ステロイド)の投与と共に;IVIgの投与および/または血漿瀉血と共に、被験体に投与され得る。IFN−β治療剤および補助剤は、同時にまたは連続的に投与され得る。連続的である場合、これは、同じ日または異なった日に投与され得る。IFN−β治療剤が血漿瀉血と組み合わされる場合、IFN−β治療剤は、血漿瀉血の後に投与され、その結果、IFN−β治療剤は血漿瀉血の間に除去されない。IFN−β治療がIVIg治療と組み合わされる場合、2つの異なった薬物の投与は、好ましくは、少なくとも1または2時間で分離される。
【0133】
別の実施形態において、IFN−β治療剤は、別の(上記のような)CIDP治療に無反応性であることが見出された被験体に投与される。他の状況において、IFN−β治療剤は、別のCIDP治療に無反応性でないことが見出された被験体に投与される。例えば、IFN−β治療剤は、1以上の他の治療に反応性の患者に対し投与され得る。なお他の実施形態において、IFN−β治療剤は、未処置の、すなわちいかなるCIDP処置も以前に受けていない被験体に投与され得る。被験体が以前にCIDP処置を受けていない場合、IFN−β治療剤を用いた処置方法は、被験体がCIDPを有するかまたはCIDPを発症しそうであるかを最初に同定する工程を包含する。
【0134】
処置はまた、以下であり得る:IFN−β治療剤は、第1CIDP処置(たとえば、IVIG)を受けているヒトに投与され、そして組み合わせ処置は、特定の期間続けられ、その後、第1CIPD処置は中断される。第1CIDP処置は、例えば、第1CIDP処置の用量および/または頻度を減少することによって、徐々に中断され得る。例示的な実施形態において、被験体は、IVIGを2週間に1回または4週間に1回受ける。この被験体は、次いで、IVIG処置と組み合わせて、IFN−β処置(例えば週1回または2週に1回のIFN−β治療剤の投与)を受ける。組み合わせ処置は、約10〜20週間(例えば、約16週間)続けられ得る。組み合わせ処置の間、IVIgの投与およびIFN−βの投与は、少なくとも約1〜3時間(例えば、少なくとも約2時間)あけることが好ましい。約16週間後、第1CIDP処置を、中断するかまたは減らす。例えば、被験体は、従って、より少ない容量のIVIgを受け得るか、またはより少ない頻度の投与を受け得る。第1CIDP処置の中断または減少後、改善しない個体において、第1CIDP処置を復活させ得、そしてIFN−β治療剤との組み合わせ処置を続行する。
【0135】
一般に、INF−β治療剤は、任意の適切な手段によって投与される。例えば、INF−β治療剤は、直接的に(例えば、注射または組織位置への局部的投与として、局所的に)、あるいは全身的(例えば、非経口または経口で)、個体に提供され得る。局所投与としては、例えば、罹患した筋肉への直接的な投与が挙げられる。非経口投与としては、エアロゾル、皮下、静脈内、筋肉内、関節腔内、滑液包内、腹腔内、胸骨内、髄腔内、肝臓内、病巣内、および頭蓋内の注射または注入技術が挙げられる。投与は、IFN−β治療剤のボーラス(bolus)の周期的な注射によってなされ得るか、あるいは外側(例えば、静脈バック)または内側(例えば、生腐食可能な(bioerodable)移植物または移植されたポンプ)であるリザバからの静脈または腹腔内投与によって、より連続的になされ得る。
【0136】
IFN−β治療剤は、好ましくは、薬学的に受容可能なキャリアを含む無菌の薬学的組成物として投与される。本明細書中で使用される場合、用語「キャリア」は、受容可能なアジュバントおよびビヒクルを含む。本発明の薬学的組成物において使用され得る、薬学的に受容可能なキャリアとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、ヒト血清アルブミンのような血清タンパク質、リン酸塩のような緩衝物質、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩または電解質(例えば、プロラミンスルフェート)、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロースベースの物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ろう、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロックポリマー、ポリエチレングリコール、羊毛脂、デキストラン、グリセロール、エタノールなど、またはそれらの組み合わせ。IFN−β治療剤は、一以上の他のタンパク質(例えば、IFN−β治療剤を安定化するため)を含む組成物中に調製され得る。例えば、IFN−β治療剤は、アルブミンと共に混合され得る。
【0137】
IFN−β治療剤が、非経口で提供されるべき場合、薬剤は、好ましくは、水溶液の部分を含む。この溶液は、生理学的に受容可能であり、その結果、被験体への所望のIFN−β治療剤の送達に加えて、溶液は、他の点では被験体の電解質および/または容量バランスに悪影響を及ぼさない。従って、IFN−β治療剤のための水溶液媒体は、通常生理的食塩水(例えば、0.9%NaCl、0.15M、pH7−7.4)を含み得る。非経口投与のための有用な溶液は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Gennaro,A.編)、Mack Pub.、1990に記載される、薬学的分野で周知の任意の方法によって調製され得る。
【0138】
薬学的組成物は、無菌の注射用の調製物の形態(例えば、無菌の注射用の水性または油性の懸濁液)であり得る。この懸濁液は、適切な分散剤または湿潤剤および懸濁剤を使用して、当該分野において公知の技術に従って処方され得る。無菌の注射用調製物はまた、無毒の非経口的に受容可能な希釈剤または溶媒中の無菌の注射用溶液または懸濁液(例えば、1,3−ブタンジオール中の溶液として)であり得る。利用され得る受容可能なビヒクルおよび溶媒には、水、リンガー溶液、および塩化ナトリウム等張液がある。さらに、無菌の不揮発性油が、溶媒または懸濁媒体として慣習的に利用される。この目的のために、低刺激性の任意の不揮発性油が、合成モノグリセリドまたは合成ジグリセリドを含め使用され得る。オレイン酸およびそのグリセリド誘導体のような脂肪酸は、注射液の調製において有用であり、天然の薬学的に受容可能な油(例えば、オリーブ油またはヒマシ油)も、特にそのポリオキシエチル化バージョンでは、同様に有用である。これらの油溶液または懸濁液はまた、長鎖アルコール希釈剤または長鎖アルコール分散剤を含み得る。
【0139】
IFN−β治療剤を含む薬学的組成物はまた、経口で与えられ得る。例えば、これらは、任意の経口的に受容可能な投与形態(カプセル、錠剤、水性懸濁液または水溶液が挙げられるが、これらに限定されない)で投与され得る。経口使用のための錠剤の場合、通常使用されるキャリアとしては、ラクトースおよびコーンスターチが挙げられる。ステアリン酸マグネシウムのような滑沢剤がまた、典型的に添加される。カプセル形態での経口投与のために、有用な希釈剤としては、ラクトースおよび乾燥したコーンスターチが挙げられる。経口使用のために水性懸濁液が必要とされる場合は、活性成分が乳化剤および懸濁剤と合わせられる。所望ならば、特定の甘味料、矯味矯臭剤、または着色剤がまた添加され得る。局所経皮パッチもまた使用され得る。
【0140】
本発明の薬学的組成物はまた、ネブライザー、乾燥粉末吸入器または定量吸入器の使用によって、経鼻エアロゾルまたは吸入によって投与され得る。このような組成物は、薬学的処方物の分野において周知の技術に従って調製され、そして、ベンジルアルコールまたは他の適切な防腐剤、生物学的利用能を増強するための吸収プロモーター、フルオロカーボン、および/または他の従来の可溶化剤または分散剤を利用して、生理食塩水中の溶液として調製され得る。
【0141】
IFN−β治療剤は、リポソーム送達系(例えば、小さな単膜小胞、大きな単膜小胞および多重膜小胞)の形態において投与され得る。リポソームは、様々なリン脂質(コレステロール、ステアリルアミンまたはホスファチジルコリンを含む)から形成され得る。いくつかの実施形態において、脂質成分のフィルムは、薬物をカプセル化した脂質層を形成するために薬物の水溶液を用いて水和される(米国特許第5,262,564号に記載)。リポソームは、特定の細胞または組織に特異的な表面分子を含み得る。このように修飾されたリポソームは、当該分野で公知の方法に従って調製され得る。
【0142】
IFN−βまたはその改変体はまた、標的化可能な薬物キャリアとしての可溶性ポリマーに結合し得る。このようなポリマーとしては、ポリビニルピロリドン、ピランコポリマー、ポリヒドロオキシプロピル−メタクリルアミド−フェノール、ポリヒドロオキシエチルアスパンアミドフェノール(polyhydroxyethylaspanamidephenol)またはパルミトイル残基で置換したポリエチレンオキシドポリリジンが挙げられ得る。IFN−βまたはその変異体はまた、例えば、レセプタータンパク質およびアルブミンのような、タンパク質に対して結合し得る。さらに、IFN−βまたはその変異体は、薬剤の制御放出を達成するのに有益である生分解性ポリマーのクラス(例えば、ポリ乳酸、ポリε−カプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリジヒドロピラン、ポリシアノアクリレートおよびヒドロゲルの架橋型ブロックコポリマーまたは両親媒性ブロックコポリマー)に対して結合し得る。
【0143】
IFN−β治療剤はまた、安定化剤を含む液体組成物として提供され得る。安定化剤は、IFN−β治療剤の0.3重量%と5重量%との間の量で存在し得る。安定化剤は、酸性アミノ酸(例えば、グルタミン酸およびアスパラギン酸)またはアルギニンまたはグリシンのようなアミノ酸であり得る。安定化剤が、アルギニン−HClである場合、その濃度は好ましくは、0.5%(w/v)から5%(w/v)までの間の範囲であり、そして最も好ましくは、3.13%(150mMアルギニン−HClに等しい)である。安定化剤が、グリシンである場合、その濃度は好ましくは、0.5%(w/v)から2.0%(w/v)までの間の範囲であり、そして最も好ましくは、0.52%(66.7mMから266.4mMに等しく、そして最も好ましくは70mMに等しい)である。安定化剤が、グルタミン酸である場合、その濃度は好ましくは、100mMから200mMまでの間の範囲であり、そして最も好ましくは170mMであり得る(1.47%から2.94%までの範囲のw/vパーセント、そして最も好ましくは2.5%のw/vパーセントと等しい)。特定の実施形態において、液体処方物内のIFN−β治療剤の濃度の範囲は、およそ30μg/mlからおよそ250μg/ml(例えば、48μg/mlから78μg/ml(例えば、およそ60μg/ml))までである。この量は、例えば、特定のIFN−β治療剤の比活性に依存する。一般的に、投与の範囲は、約1百万国際単位(MIU)〜約50MIU(例えば、1用量あたり約3、6、9、または12MIU)からであり得る。
【0144】
いくつかの実施形態において、アミノ酸安定化剤は、およそpH5.0の溶液内で酸性の形態(アルギニン−HCl)として組み込まれる、アルギニンである。従って、この場合において、ポリイオン化賦形剤が好ましい。液体組成物は、IFN−βに対して不活性な物質(例えば、シリコーンまたはポリエトラフルオロエチレン)でコートした、液体と接する表面を有する、容器(例えばシリンジ)内に収納され得る。好ましい組成物は、4.0および7.2との間のpHを有する。特定の実施形態において、安定化剤を含む溶液は、凍結乾燥されておらず、そして/または調製および保存の間に酸素を含むガスに供されていない。
【0145】
およそ4.0からおよそ7.2(例えば、およそ4.5からおよそ5.5(例えば、5.0))の範囲のpHを維持するために、本発明において使用される有機酸およびリン酸緩衝液は、有機酸およびそれらの塩の慣習的な緩衝液(例えば、さらにWO98/28007に記載されるようなクエン酸緩衝液(例えば、クエン酸一ナトリウム−クエン酸二ナトリウム混合物、クエン酸−クエン酸三ナトリウム混合物、クエン酸−クエン酸一ナトリウム混合物など)、コハク酸緩衝液(例えば、コハク酸−コハク酸一ナトリウム混合物、コハク酸−水酸化ナトリウム混合物、コハク酸−コハク酸二ナトリウム混合物など)、酒石酸緩衝液、フマル酸緩衝液、グルコン酸緩衝液、シュウ酸緩衝液、乳酸緩衝液、リン酸緩衝液、および緩衝酢酸溶液)であり得る。
【0146】
WO98/38007に記載されるように調製され得る、典型的な処方物は、
(i)pH5.0の20mM酢酸緩衝液(この緩衝液は、好ましくは事前に凍結乾燥されておらず、この緩衝液は、IFN−βおよび(a)150mMアルギニン−HCl;(b)100mM塩化ナトリウムおよび70mMグリシン;(c)150mMアルギニン−HClおよび15mg/ml ヒト血清アルブミン;(d)150mMアルギニン−HClおよび0.1%Pluronic F−68;(e)140mM塩化ナトリウム;(f)140mM塩化ナトリウムおよび15mg/mlヒト血清アルブミン;および(g)140mM塩化ナトリウムおよび0.1%Pluronic F−68より選択される少なくとも一種の成分を含む);
(ii)IFN−βまたはその改変体、170mM L−グルタミン酸、および150mM水酸化ナトリウムを含むpH5.0の液体(この液体は、好ましくは事前に凍結乾燥されていない);および
(iii)pH7.2の20mMリン酸緩衝液(この緩衝液は、好ましくは事前に凍結乾燥されておらず、この緩衝液は、IFN−βおよび(a)140mMアルギニン−HClならびに(b)100mM塩化ナトリウムおよび70mMグリシンより選択される少なくとも一種の成分を含む);
を含む。
【0147】
好ましい組成物はまた、ポリソルベート(例えば、0.005%w/vのポリソルベート20)を含む。
【0148】
IFN−βまたはその改変体はまた、可溶性IFN I型レセプターまたはその一部(例えば、このレセプターのIFN結合鎖(例えば、米国特許第6,372,207号に記載される))と共に投与され得る。この特許に記載されるように、このレセプターのIFN結合鎖との複合体の形態でのIFN I型の投与は、IFNの安定性を改善し、IFNの効力を高める。この複合体は、非共有結合の複合体であっても、または共有結合の複合体ではあってもよい。
【0149】
IFN−βは、被験体に投与する前に溶解または懸濁されてもされなくてもよく、乾燥粉末の状態で処方され得る。特に、ポリマー(例えば、PEG)に対して結合したIFN−βは、乾性形態において特に安定であることが示されている(例えば、WO00/23114およびPCT/US/95/06008を参照のこと)。
【0150】
処方された組成物は、治療的有効量のIFN−β治療剤を含み得る。つまり、この組成物は、適切な濃度のIFN−β治療剤を、筋肉の機能の持続的または進行性の喪失を防止するか、阻害するか、遅れさせるか、または緩和するか、他のようにして治療的効力を提供するのに十分な時間、筋肉組織または他の適切な組織に提供する量のIFN−β治療剤を含み得る。当業者によって考えられるように、治療的組成物中のIFN−β治療剤の濃度は、選択されたIFN−β治療剤の生物学的効力、利用されるIFN−β治療剤の化学的性質(例えば、疎水性)、IFN−β治療賦形剤の処方、投与経路、および、考えられる処置(例えば、IFN−β治療剤が組織に直接投与されるか否か、またはそれが全身投与されるか否か)を含む、多数の因子に依存して変動し得る。投与されるべき好ましい投薬量はまた、被験体組織の状態、筋肉喪失の程度、および特定の被験体の全体的な健康状態のような変数に依存する可能性がある。投薬量はまた、患者の年齢、体重、性別、身体全体の健康、食事療法、排泄速度、および被験体の副作用に対する感受性、ならびにIFN−β治療剤が他の薬物と同時投与されるか否かに依存され得る。一般的な技術を有する医師または獣医師は容易に、状態の進行を防ぐか、対抗するか、または阻止するために要するIFN−β治療剤の有効量を決定および指示し得る。
【0151】
投薬は、連続的に、または毎日行われ得るが、(例えば、適切な医学マーカーおよび/または生活の質の指標による、疾患の安定化および/または改善によって測定される場合に、)満足できる応答が続く限り、週に1度、2度、または3度、投薬を行うことが現在は、好ましい。より頻度の低い投薬(例えば、月に一度の投薬)もまた利用され得る。頻繁な注入を簡易にするために、半永久的なステントの(例えば、静脈内、腹腔内、または嚢内の)移植が賢明であり得る。
【0152】
任意の上記薬学的組成物は、0.1%から99%、1%から70%、または好ましくは、1%から50%のIFN−β治療剤を活性化合物として含み得る。
【0153】
任意の投与経路について、分割投与または単回投与が使用され得る。例えば、IFN−β治療剤は、毎日または毎週投与され得、単一用量または全投与が、2回、3回、または4回の分割用量で投与され得る。
【0154】
IFN−β治療剤は、1用量ごとにおよそ0.001mg/kg体重とおよそ100mg/kg体重との間の投与量レベル(例えば、およそ0.1mg/kg体重とおよそ50mg/kgとの間;およそ0.1mg/kg体重とおよそ20mg/kg体重との間;あるいは、およそ1mg/kg体重とおよそ3mg/kg体重との間で投与され得る。これらの投与は、1日ごとから14日ごとのインターバル(例えば、1日ごと、2日ごと、3日ごと、5日ごと、1週間ごとまたは2週間ごと)で投与され得る。特に、INF−β治療剤の比活性に依存して、IFN−β治療剤は、約10〜約100μg/用量(例えば、約20〜約50μg/用量(例えば、約30μg/用量))の範囲で投与され得る。
【0155】
国際単位に関して、IFN−β治療剤は、約1MIU/用量と30MIU/用量との間(例えば、3MIU/用量と20MIU/用量との間(例えば、3MIUと12MIUとの間))の用量で投与され得る。好ましい用量としては、1用量あたり、約3MIU、6MIUおよび12MIUが挙げられる。このような用量は、好ましくは、約1週間ごとまたは2週間ごとで投与される。投与量の最適化は、例えば、IFN−β治療剤の投与、続くIFN−β治療剤の循環または局所濃度の評価により決定され得る。
【0156】
特定の実施形態において、IFN−β治療剤は、1週間をかけて、0.01μg/kgから100μg/kg、またはより好ましくは0.01μg/kgから10μg/kgのIFN−β(例えば、ペグ化IFN−β)を送達するために皮下注射によって投与され、0.005μg/kgから50μg/kgまたはより好ましくは0.005μg/kgから5μg/kgの2回の注射を、それぞれ0時間および72時間に投与し得る。さらに、非経口的投与の一つのアプローチは、米国特許第3,710,795号に従い、一定レベルの投与量を維持することを保証する、持続放出(slow−release)系または持続放出(sustained−released)系の移植を使用する。
【0157】
本発明の経口の投与量(好ましくは、ペグ化IFN−β治療剤)は、経口的に0.01μg/kg/日から100μg/kg/日、またはより好ましくは経口的に0.01μg/kg/日から10μg/kg/日の間の範囲であり得る。組成物を好ましくは、0.5μgから5000μg、またはより好ましくは0.5μgから500μgのINF−β治療剤を含む分割錠の形状で提供される。好ましい実施形態において、ニューロパシー(例えば、CIDP)を有する被験体は、INF−β治療剤の筋肉内投与によって、INF−β治療剤によって処置される。INF−β治療剤は、毎週投与され得る。なおさらに好ましい実施形態において、INF−β治療剤は、約6MIUの用量で被験体に毎週投与される。他の実施形態において、被験体は、約6MIUのINF−β治療剤の毎週の投与(この投与は、必ずしも筋肉内投与である必要はない)によって処置される。
【0158】
特定の実施形態において、IFN−β治療剤は、特定の時間の間、1つのレジメンに従って投与され、次いで、別のレジメンに従って投与される。例えば、ある被験体は、IFN−β治療剤を2ヶ月の間毎週受け、次いで、次の月に、週2回受け得る。被験体はまた、最初皮下投与され、次いで筋肉内投与され得る。他のレジメンにおいて、特定の用量、特定の投与様式または特定のIFN治療剤が、他の投与ごとに、異なった用量、異なった投与様式、または異なったIFN治療剤に変えられる。
【0159】
最も好ましい実施形態において、INF−β治療剤はAVONEX(登録商標)である。AVONEX(登録商標)は、以下:
1ml用量あたりの処方:
30mcgインターフェロン−β−1a(6百万国際単位(MIU))
50mMリン酸ナトリウム
100mM塩化ナトリウム
15mgヒト血清アルブミン
pH7.2
からなる、凍結乾燥粉末として、市販される。AVONEX(登録商標)インターフェロンの比活性は、2×10単位/mg(すなわち、IFN−β−1aタンパク質1ミリグラムあたり200MUの抗ウイルス活性)である。患者は、1週間ごとに一度、1mlの筋肉内注射の前に、滅菌水を用いてこの粉末を再構成する。AVONEX(登録商標)はまた、以下:
0.5ml用量あたりの処方:
30mcg(μg)インターフェロン−β−1a(6百万国際単位(MIU))
20mM酢酸塩(酢酸ナトリウムおよび酢酸)
150mMアルギニンHCl
0.005%w.vポリソルベート20
注射用水
pH4.8
からなる、液体処方物として調製され得る。この処方物を、あらかじめ充填したシリンジ内にパッケージし得る。患者は、提供された通りに、手でシリンジを使用しても、または自動注入装置と組み合わせて使用してもよい。投与計画は、1週間ごとに1度、筋肉内に6MUI(すなわち、30mcg)である。
【0160】
別の実施形態において、IFN−βは、REBIF(登録商標)であり、この凍結乾燥粉末として、および液体処方物として提供される。凍結乾燥粉末は、以下:
2.0ml用量あたり処方:
3MIUのIFN−β−1a
マンニトール
HSA
酢酸ナトリウム
pH5.5
からなる。
REBIF(登録商標)インターフェロンの比活性は、2.7×10単位/mg(すなわち、IFN−β−1aタンパク質1ミリグラムごとに270MUの抗ウイルス活性)である。患者は、1週間に3回、皮下注射の前に、塩化ナトリウム溶液(0.9%NaCl)を用いてこの粉末を再構成する。液体REBIF(登録商標)の処方は、以下の通りである:
0.5ml用量あたりの処方:
6MIUまたは12MIUのIFN−β−1a
4mgまたは2mgのHSA
27.3mgマンニトール
0.4mg酢酸ナトリウム
注射用水。
この液体処方物を、あらかじめ充填したシリンジ内にパッケージし、そして1週間ごとに3回(6MIUまたは12MIU(それぞれ66μg/週または132μg/週に相当する))、自動注入装置(Rebiject)を使用してか、または使用せずに、皮下に投与する。
【0161】
さらに別の実施形態において、IFN−βは、BETASERON(登録商標)(Berlexより)であり、これは、E.coli内で産生されるcys−17→ser変異を含むIFN−βである。この非グリコシル化IFN−βは、CHO細胞内で共に産生されるAVONEX(登録商標)またはREBIF(登録商標)よりも効力が小さい。用量は、1日おきに皮下注射するために、凍結乾燥処方物および液体処方物の両方が、250mcg(8MIU)用量として、市販される。BETAFERON(登録商標)は、市販される別のIFN−βであり、これは、製造者の指示に従って、皮下に投与され得る。
【0162】
IFN−β治療剤および必要に応じて別の治療に加えて、被験体はまた、ニューロパシー疼痛の処置のための薬剤(例えば、鎮痙薬)を受け得る。2つの最も頻繁に使用される薬剤は、ギャバペンチン(gabapentin)(Neurontin)およびカルバマゼピン(Tegretol)である。あるいは、三環系抗うつ薬(例えば、アミトリプチリン(Elavil))がまた、ニューロパシー疼痛の処置のために使用され得る。
【0163】
疾患の過程およびその薬物処置への反応は、臨床試験および検査所見によって追跡され得る。本発明の治療の有効性は、以前記載された疾患の徴候および症状が緩和される範囲およびインターフェロンの副作用(すなわち、熱、頭痛、悪寒、筋肉痛、疲労などのインフルエンザ様症状および鬱、感覚異常、集中力低下(impaired concentration)などの中枢神経系関連症状)が消えるか、また実質的に低減する範囲によって、決定される。
【0164】
本発明はさらに、以下の実施例(限定するとは決して解釈すべきではない)により例示される。全ての引用文献(この出願全体を通して引用される参考文献、発行された特許、公開された特許出願が挙げられる)の内容は、本明細書中に参考として明白に援用される。
【0165】
本発明の実施は、他に示さない限り、細胞生物学、細胞培養、分子生物学、遺伝子組み換え生物学、微生物学、組換えDNA、および免疫学の従来技術(当該分野の技術内である)を使用する。このような技術は、文献に十分に説明される。例えば、Molecular Cloning A Laboratory Manual,第2版,Sambrook、FritschおよびManiatis編(Cold Spring Harbor Laboratory Press: 1989);DNA Cloning,第I巻および第II巻(D.N.Glover編,1985);Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait編,1984);Mullisら,米国特許第4,683,195号;Nucleic Acid Hybridization(B.D.Hames&S.J.Higgins編,1984);Transcription And Translation(B.D.Hames&S.J.Higgins編,1984);Culture Of Animal Cells(R.I.Freshney,Alan R.Liss,Inc.,1987);Immobilized Cells And Enzymes(IRL Press,1986);B.Perbal,A Practical Guide To Molecular Cloning(1984);論文Methods In Enzymology(Academic Press,Inc.,N.Y.);Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells(J.H.MillerおよびM.P.Calos編,1987,Cold Spring Harbor Laboratory);Methods In Enzymology,第154巻および第155巻(Wuら,編集),Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology (MayerおよびWalker編, Academic Press,London,1987);Handbook Of Experimental Immunology,第I−IV巻(D.M.WeirおよびC.C.Blackwell,編,1986);Manipulating the Mouse Embryo,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1986)を参照のこと。
【実施例】
【0166】
(実施例1:CIDP患者のIFN−β 1αによる処置)
IVIgで処置したCIDP患者を、以下のIFN−β 1α処置に転換する。
【0167】
CIDPについての確立した診断を有し、かつ2週に一回または4週に一回の安定なIVIgIVIGIVIgのレジメンで処置される患者に、以下のIFN−β 1αのtr地面のうちの1つを、筋肉内注射を介して与えた:30mcg(6MIU)のAVONEX(登録商標)を週1回;または60mcg(12MIU)のAVONEX(登録商標)を週に2回。IVIgおよびIFN−β 1αの投与が同じ日になった場合、投与は、少なくとも2時間の間で分離する。患者は、この組み合わせ処置を16週間受け、その間、患者の疾患状態を、約4週間ごとに評価する。16週目に、IVIgを中断し、IFN−β 1α処置を、以前と同じレジメンに従って続ける。
【0168】
疾患を、患者においてモニターし続ける。組み合わせ処置によって患者がよくなった場合、IVIg処置を再度用いた。IVIgは、後にIVIg投与の用量または頻度を徐々に減少させ得る。
【0169】
(等価物)
当業者は、本明細書中に記載した本発明の特定の実施形態の多くの等価物を認識し、または慣用実験に過ぎないものを使用して、これらを確認することができる。このような等価物は、添付の特許請求の範囲により包含されることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書中に記載される発明。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【公開番号】特開2011−132248(P2011−132248A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−23226(P2011−23226)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【分割の表示】特願2006−250090(P2006−250090)の分割
【原出願日】平成15年9月26日(2003.9.26)
【出願人】(592221528)バイオジェン・アイデック・エムエイ・インコーポレイテッド (224)
【Fターム(参考)】