説明

インターフェロン−β含有医薬組成物

【課題】ヒト血清アルブミンを用いることなく、低濃度のIFN-βについて長期保存後の生物学的活性を維持し、治療またはその他研究などの用途に用いるのに適したIFN-β医薬組成物を提供すること。
【解決手段】液体医薬組成物は、薬理学的に許容できる媒体中に、IFN-βと、添加剤としてクエン酸、リン酸塩及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールを含み、ヒト血清アルブミンを含まない。また、凍結乾燥医薬組成物は、IFN-βに対する各添加剤の比が上記本発明の液体医薬組成物に等しい液体組成物を凍結乾燥してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒト血清アルブミンを安定化剤として含まない、長期間にわたって安定なインターフェロン-βの医薬組成物に関する。この組成物は、ヒト血清アルブミンを含まなくとも、低濃度のインターフェロン-βが長期間にわたり生物学的活性を維持し、安定であるという特徴を有する。
【背景技術】
【0002】
インターフェロン(Interferon:IFN、以下IFNと記載)は、抗ウィルス活性、抗腫瘍活性、免疫調節活性などの広範な生物学的活性を持ったタンパク質で、種々の悪性新生物の治療や、ウィルス感染による疾患(B型肝炎、C型肝炎)の治療、多発性硬化症の治療などに用いられている。IFNはウイルス、ポリペプチド、マイトジェンのような種々のインデューサーへの応答の際に哺乳動物によって産生される。ほとんどの場合において、IFNは他の動物種の組織および細胞に対するよりも、IFNが産生された動物種の組織および細胞に対してよりよい応答を示す(種特異性)。従って、ヒトの疾患に対する治療に関してはヒトIFNが用いられている。
【0003】
ヒトIFNには少なくとも3種類の異なるタイプが存在し、これらは単球・マクロファージなどの白血球、線維芽細胞、またはリンパ球などから産生され、IFN-α、IFN-β、IFN-γと呼ばれている。
【0004】
天然型のヒトIFN-βは、ヒト線維芽細胞においてポリ-ICによる超誘導によって産生され、その培養上清中からクロマトグラフィー技術などを用いて単離、精製することにより、工業的に生産することができる。天然型のIFN-βと同等の性質を有するタンパク質またはポリペプチド類は、組換えDNA技術を用いて、大腸菌、動物細胞、昆虫細胞、または酵母などで発現させることにより、工業的に生産することができる。
【0005】
IFN-βの濃度単位は、通常IFN-βの生物学的活性で表される。これは抗ウイルス活性を指標として測定されており、IFN-β標準品を基準として算出された国際単位(International units;IU)で表され、1×106IU=1MIUとして表記されることがある。
【0006】
IFN-βを投与する方法は、静脈内、筋肉内、または皮下注射のいずれかが最もよく用いられている。治療に有効な天然型IFN-βの用量としては、ヒトへの投与では、1日当たり1〜6MIUが最もよく用いられている。
【0007】
IFN-βを治療に用いるためには、長期間にわたって保存安定性を保つ製剤を開発することが必須である。しかし、IFN-βは非常に不安定であり、特に治療に用いることができるように精製されたIFN-βは、保存期間中に各種の不活化反応を受けやすい。例えば物理的な不安定化要素として、不溶解性凝集体の形成などが挙げられ、化学的な不安定化要素として、加水分解、イミド形成、アミド分解などが挙げられる。保存期間中のIFN-βのこれらの変化は、その生物学的活性を喪失または低下させ、結果として治療効果が損なわれる。さらには、凝集した、あるいは分解したIFN-βは免疫原性を示す可能性があり、副作用の原因となる場合がある。
【0008】
医薬組成物中のタンパク質の安定化は、未だ試行錯誤を要する領域である。タンパク質の安定性を高めるための添加剤として、ヒト血清アルブミン(Human Serum Albumin:HSA)、緩衝剤、糖、界面活性剤、アミノ酸、ポリエチレングリコール、ポリマーなどが汎用されるが、その効果はタンパク質の種類に依存するため、他種のタンパク質を安定化できる方法でもIFN-βを安定化できるとは限らない。
【0009】
また天然型IFN-βは一般に組換えDNA技術を用いて生産したIFN-βに比べて比活性(重量当たりの生物学的活性:IU/g)が高く、例えば既存の天然型IFN-β含有製剤(フェロン・東レ株式会社)では、IFN-βの比活性は3×108 IU/mgであり、IFN-βとして、3〜20μgという極微量の投与で有効な治療効果を得ることが出来る。タンパク質は濃度が低いほど安定性を保つことが困難となるため、治療に用いるための安定なIFN-β製剤の開発は非常に困難である。
【0010】
従来よりIFN-βを安定に保つ各種医薬組成物が開発され、安定化剤としてヒト血清アルブミンが使用されてきた。しかし、ヒト血清アルブミンはヒトの血液由来の成分であるため、ヒト免疫不全ウイルス(Human Immunodeficiency Virus:HIV)、およびヒトC型肝炎ウイルス(Hepatitis C Virus:HCV)のようなウイルス混入の危険性が存在する。従ってヒト血清アルブミンのような生物由来成分を含まない、安全で安定なIFN-β製剤の開発が望まれている。
【0011】
近年ヒト血清アルブミンを含まないIFN-β医薬組成物として、各種組成物が開発されており、以下のような報告がある。
【0012】
例えばヒト血清アルブミンを含まず、糖および/または糖アルコール、アミノ酸、要すれば、酸および塩基、界面活性剤を配合したIFN-βの安定な組成物が開示されている(特許文献1)。しかしながら、本願実施例において、液体医薬組成物として糖および/または糖アルコール、アミノ酸および緩衝液を添加した組成物では4℃、1週間の保存で生物学的活性の低下が生じるものが含まれることが示されており、加えて上記特許文献1において追加で添加する界面活性剤としてIFN-βに対して適切であると記載のあるポリソルベート80は、本願実施例においてIFN-βの活性を低下させるということが示されている。
【0013】
例えばイオン強度を60mM以下および、pHを3.0〜5.0に維持することによりIFN-βの溶解度を上昇させ、ヒト血清アルブミンを含まずとも安定なIFN-β含有液体組成物、または凍結乾燥組成物が開示されている(特許文献2)。上記特許文献2では、タンパク濃度が高い条件での保存安定性について、沈降係数(凝集体生成)、UV吸収または逆相HPLCによるIFN-β含量(IFN-βの残存率)を基準に判断しており、生物学的活性を保持しているかは示されていない。本願実施例において、天然型IFN-βの通常治療用いられる濃度(一般に約20μg/mL以下)では上記特許文献2に記載の組成物に4℃、1週間の保存で生物学的活性の低下が生じる組成物が含まれることが示されている。また、上特許文献2に記載の組成物のpHは低く、生体投与に問題を生じる場合があると考えられる。本発明において、より生体に近いpHにおいて安定な医薬組成物を提供することが可能である。
【0014】
例えば安定化剤として非イオン性ポリマー界面活性剤を含む不溶性キャリアー媒体中に溶解された組み換え型IFN-βの組成物が開示されている(特許文献3)。この組成物は凍結乾燥して保存後、使用時に水で溶解して再構成される。またこの組成物は液体状態で保存した後、遠心分離前後のタンパク量変化をUV吸収で評価し(凝集体生成)、さらに生物活性を評価しているが、4℃にて1週間保存後にはUV吸収に変化は見られないが、生物学的活性は半分になっており、治療に用いる際には十分な安定性を有していない。これより、UV吸収などの測定では生物活性を有しているかを評価することは不適切であると考えられる。さらにこの組成物の追加の添加剤として、ヒト血清アルブミンが挙げられている。
【0015】
例えば安定化剤として0.3〜5重量%の酸性アミノ酸、アルギニンまたはグリシンを含むIFN-βの液体組成物が記載されている(特許文献4)。使用されているIFN-βの濃度が12MIU/mL (60μg/mL)であり、治療に用いる際には濃度が高すぎる場合がある。例えば治療によく用いられている1MIUを投与する際には、投与液量約83μLとなることより正確な投与は困難である。また、本願実施例において、上記特許文献中4に最も安定と記載ある添加剤組成で、IFN-β濃度を1MIU/mLにしたとき、37℃、1週間の保存で著しい活性の低下を認め、IFN-β濃度6MIU/mLにおいても37℃、8週間の保存で生物学的活性の低下が生じる組成物が含まれることが示されたことより、治療に適した低濃度では上記特許文献4の技術による安定化では不十分と考えられる。
【0016】
例えばヒト血清アルブミンを含まず、pH5〜8の緩衝剤を含む溶液中で、25℃にて3ヶ月間保存後にIFN-βの生物学的活性が80%以上である安定なIFN-β液体医薬組成物が記載されている(特許文献5)。上記特許文献5の組成物は界面活性剤を含有しないことが特徴であるが、本願実施例において、界面活性剤未添加では調製操作において生物活性が低下することが示され、特定の界面活性剤の添加により、調製操作においてより安定性に優れた液体医薬組成物を提供できることが示されている。また、上記特許文献5では実質的に使用されているIFN-βの濃度は6MIU/mL以上であり、治療に用いる際には濃度が高すぎる場合がある。
【0017】
このようにヒト血清アルブミンを含まずに、治療に用いるのに適した低濃度でIFN-βの生物学的活性を長期に安定に保つ組成物は未だ開発されていない。
【0018】
【特許文献1】国際公開公報WO2004/028557
【特許文献2】特表2004-529917号公報
【特許文献3】特開昭63-179833号公報
【特許文献4】特表2001-519770号公報
【特許文献5】特表2001-517635号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたものであり、ヒト血清アルブミンを用いることなく、低濃度のIFN-βについて長期保存後の生物学的活性を維持し、治療またはその他研究などの用途に用いるのに適したIFN-β医薬組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明者らはクエン酸、リン酸塩、およびポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールを配合することにより、ヒト血清アルブミンを含まなくとも、IFN-β生物学的活性を長期間にわたり維持できるIFN-β含有凍結乾燥医薬組成物および液体医薬組成物を見出し、以下に示す発明を完成した。
【0021】
すなわち、本発明は、薬理学的に許容できる媒体中に、IFN-βと、添加剤としてクエン酸、リン酸塩及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールを含み、ヒト血清アルブミンを含まない液体医薬組成物を提供する。また、本発明は、IFN-βに対する各添加剤の比が上記本発明の液体医薬組成物に等しい液体組成物を凍結乾燥してなる凍結乾燥医薬組成物を提供する。さらに、本発明は、上記本発明の凍結乾燥医薬組成物と溶解液とを含むIFN-β投与用キットを提供する。
【発明の効果】
【0022】
本発明により、ヒト血清アルブミンを安定化剤として用いることなく、治療に用いるのに適した低濃度のIFN-βの生物学的活性を長期に安定に保つ医薬組成物が提供された。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の医薬組成物は、液体医薬組成物及び凍結乾燥医薬組成物を包含する。「液体医薬組成物」とは、そのまま生体へ投与またはその他研究などの用途へ適応可能な溶液状態の医薬組成物をいう。「凍結乾燥医薬組成物」は液体組成物を凍結乾燥することにより得られる。「凍結乾燥」とは、液体組成物を凍結し、凍結状態の液体組成物から氷を昇華させて水分を除去して乾燥させることを意味し、凍結乾燥を実施する凍結乾燥機は市販され、当業者によって容易に操作可能である。また、凍結乾燥医薬組成物の溶解に用いられる「溶解液」とは、凍結乾燥医薬組成物を生体へ投与またはその他研究などの用途へ適応可能な形態にするために使用する液体で、該凍結乾燥医薬組成物に加えられ、それを溶解し、溶液とする(再構成する)ものである。本発明のIFN-β医薬組成物は、液体医薬組成物、または凍結乾燥医薬組成物のいずれの形態で長期保存した場合もIFN-βの生物学的活性を維持している。これより、液体医薬組成物はそのまま用いることができ、凍結乾燥医薬組成物では投与時にこれを適切な溶解液で溶解して用いることができる。
【0024】
本発明は天然型のIFN-β(特公平1-12760参照)、組換えDNA技術を用いて生産したIFN-β(米国特許第4966843号、米国特許第5376567号参照)、および化学合成または改変によって生産されるIFN-β(欧州特許出願第185459B1、米国特許第4518584号、米国特許第4588585号、米国特許第4737462号参照)に適用できるが、特に天然型のIFN-βへの適用が好ましい。また本発明のIFN-βは、鳥類、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ウマおよびヒト由来のものを含むが、これらに限定されない任意の動物種に由来しうる。好ましくはヒトIFN-βである。IFN-βの濃度単位は、通常IFN-βの生物学的活性で表される。これは抗ウイルス活性を指標として測定されており、IFN-β標準品を基準として算出された国際単位(International units;IU)で表され、製品には1×106IU=1MIUとして表記されるものがある。本発明のIFN-β医薬組成物は、治療に用いるのに適した低濃度のIFN-βに適用でき、好ましくは0.5MIU/mL以上、さらに好ましくは0.5〜12MIU/mL、さらに好ましくは0.5〜6MIU/mL、最も好ましくは1〜6MIU/mLである。IFN-βの比活性(重量当たりの生物学的活性:IU/g)は、その産生方法、単離・精製方法、IFN-βの種類(天然型、組換え型など)などにより異なるが、本発明では天然型IFN-βを使用しており、その比活性は約3×108IU/mgに相当する。
【0025】
本発明の医薬組成物における添加剤とは、IFN-βの他に該組成物中に含有する成分を示す。例えば緩衝剤(pH調節剤)、吸着防止剤、安定化剤、界面活性剤、溶解補助剤(可溶化剤)、賦形剤、等張化剤、無痛化剤、保存剤、酸化防止剤などが挙げられる。
【0026】
本発明の医薬組成物のpHは、好ましくは生理学的に妥当な中性から弱酸性の範囲である3.0〜6.5、さらに好ましくは4.5〜6.5、さらに好ましくは5.0〜6.0、最も好ましくは5.5である。医薬組成物のpHは、筋肉内注射や皮下注射の際に疼痛刺激をもたらさないpHであるといわれるpH4.5以上がより望ましい。
【0027】
本発明の医薬組成物は、IFN-βの安定性を害することなくpHを維持する緩衝剤として、クエン酸およびリン酸塩を含む。「クエン酸」という語は、クエン酸のみならず、クエン酸の水和物及び無水物も包含する意味で用いており、具体例としてクエン酸一水和物及び無水クエン酸などが挙げられ、好ましくはクエン酸一水和物である。「リン酸塩」という語は、オルトリン酸塩のみならず、リン酸一水素塩及びリン酸二水素塩を包含する意味で用いている。リン酸塩としてはリン酸のナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩などが挙げられ、好ましくはナトリウム塩である。リン酸のナトリウム塩としては、例えばリン酸水素2ナトリウム、リン酸2水素ナトリウムが挙げられ、最も好ましくはリン酸水素2ナトリウムである。
【0028】
本発明の医薬組成物に用いるクエン酸及びリン酸塩は、所望のpHを維持しうる比率で溶解させて用い、医薬組成物全体として浸透圧比、溶解性などに特に問題を生じず、所望のpHを維持できる濃度であれば特に限定されないが、好ましくは5〜20mMのクエン酸および5〜30mMのリン酸塩である。
【0029】
本発明の医薬組成物中に添加剤として含まれるポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールとしては、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール中のポリオキシエチレン部の平均重合度(ポリオキシエチレン単位の繰返し数)が3〜200、ポリオキシプロピレン部の平均重合度が5〜70であるものが好ましい。具体的には、ポリオキシエチレン(105)ポリオキシプロピレン(5)グリコール、ポリオキシエチレン(120)ポリオキシプロピレン(40)グリコール(別名:プルロニックF87)、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール(別名:プルロニックF68)、ポリオキシエチレン(42)ポリオキシプロピレン(67)グリコール(別名:プルロニックP123)、ポリオキシエチレン(54)ポリオキシプロピレン(39)グリコール(別名:プルロニックP85)、ポリオキシエチレン(196)ポリオキシプロピレン(67)グリコール(別名:プルロニックF127)、ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(20)グリコール(別名:プルロニックL44)、ポリオキシエチレン(200)ポリオキシプロピレン(70)グリコール、ポリオキシエチレン(3)、ポリオキシプロピレン(17)グリコールなどが挙げられる。最も好ましくは、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコールである。ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコールは、プルロニックF68またはポロクサマー188とも呼ばれる。
【0030】
本発明の医薬組成物中のポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールの用量は生体への投与に許容される量であればよい。例えばこれまでに厚生労働省に承認されている、ヒトへの投与に当たり使用できるポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコールの最大使用量は、経口投与では333mg、静脈内注射では10mg、筋肉内注射では10mg、一般外用剤では200mg/g、直腸膣尿道適用では300mgとされている(医薬品添加物事典2000、日本医薬品添加剤協会編集、薬事日報社)が、生体への安全性が確認され、生体に害を及ぼすことなく短期あるいは長期的に使用できる量であれば、本発明の医薬組成物中のポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールの用量はこれに限定されない。本発明のポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールの液体医薬組成物中濃度は、好ましくは 0.01〜2mg/mL、さらに好ましくは 0.1〜0.5mg/mLである。
【0031】
本発明の医薬組成物は、アミノ酸又はその塩を1種または複数種含有してもよい。アミノ酸は、安定性を向上させる目的、溶解補助剤、賦形剤または等張化剤として用いることができる。アミノ酸の形態は、生体への安全性が確認され、生体に害を及ぼすことなく短期あるいは長期的に使用できるものであれば、フリー体の他、その塩形態としても用いることができる。アミノ酸の塩形態としては例えば塩酸塩が挙げられる。アミノ酸の添加量は、生体への投与に許容される量であればよく、溶解可能である量であればよい。本発明において、アミノ酸として好ましくはグリシン、ヒスチジン及びアルギニンであり、これらのうち少なくとも1種のアミノ酸を含むことが好ましく、アルギニンを含むことが最も好ましい。
【0032】
本発明の液体医薬組成物中のアミノ酸濃度(複数種類含まれる場合はその合計)は、好ましくは23〜200mMである。アルギニンの形態として好ましくはアルギニン塩酸塩であり、アルギニンの液体医薬組成物中濃度は、好ましくは144mM以下(アルギニン塩酸塩として30mg/mL以下)、より好ましくは23〜144mM(アルギニン塩酸塩として5〜30mg/mL)、より好ましくは47〜96mM(アルギニン塩酸塩として10〜20mg/mL)、最も好ましくは95mM(アルギニン塩酸塩として20mg/mL)である。
【0033】
本発明の医薬組成物は、マンニトールおよび/またはラクトースを含有してもよい。マンニトールおよび/またはラクトースは安定性を向上させる目的、溶解補助剤、賦形剤または等張化剤として用いることができる。特に凍結乾燥医薬組成物において、マンニトールおよび/またはラクトースはケーキ形成のために添加することが望ましい。マンニトールおよび/またはラクトースの添加量は、生体への投与に許容される量であればよく、溶解可能である量であればよい。マンニトールを添加する場合、その液体医薬組成物中濃度は、好ましくは20mg/mL以下、より好ましくは 1.25〜20mg/mL、さらに好ましくは1.25〜5mg/mLである。ラクトースを添加する場合、その液体医薬組成物中濃度は、好ましくは 1〜20 mg/mLである。
【0034】
本発明の医薬組成物は、塩化ナトリウムを含有してもよい。塩化ナトリウムは等張化剤として用いることができる。塩化ナトリウムの添加量は、生体への投与に許容される量であればよく、溶解可能である量であればよい。塩化ナトリウムの液体医薬組成物中濃度は、好ましくは9mg/mL以下、より好ましくは0.6〜6mg/mLである。
【0035】
本発明の医薬組成物は、製剤学上許容される、上記した以外の他の添加剤をさらに含有しうる。例えば上記した3種類以外のアミノ酸、上記したマンニトール及びラクトース以外の糖または糖アルコール、無機塩類が挙げられる。アミノ酸とはアミノ基とカルボキシル基の両方をもつ有機化合物をいうが、プロリンおよびヒドロキシプロリンのようなイミノ酸も含まれる。アミノ酸としては、中性アミノ酸、酸性アミノ酸および塩基性アミノ酸が挙げられる。具体的には中性アミノ酸として、アラニン、バリン、ノルバリン、ロイシン、ノルロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、システイン、メチオニン、アスパラギン、グルタミン、プロリン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、ジヨードチロシン、スルナミン、ヒドロキシプロリン、チロキシン、システイン、α-アミノ酪酸などが挙げられる。酸性アミノ酸として、アスパラギン酸、グルタミン酸などが挙げられる。アミノ酸はその塩形態としても用いることができ、例えばアミノ酸の塩酸塩が挙げられる。糖または糖アルコールには、単糖類、二糖類、多糖類あるいは水溶性グルカン類が含まれ、生体への投与が許容されるものであれば使用できる。上記以外の糖として具体的には、グルコース、ガラクトース、フルクトース、マンノース、ソルボース、キシロース、イソマルトース、マルトース、スクロース、セロビオース、デキストラン、プルラン、デキストリン、シクロデキストリン、可溶性デンプン、ヒドロキシエチルデンプンなどが挙げられる。糖アルコールとしては3価以上の糖アルコールが好ましく、具体的にはグリセリン、エリスリトール、アラビトール、キシリトール、ソルビトール、イノシトール、ズルシトール、ラフィノース、マルチトール、ラクチトール、パラチニット、トレハロースなどが挙げられる。無機塩類としては、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウムが挙げられる。また注射剤の場合、フェノール、クレゾールなどの保存剤、亜硫酸塩、ピロ亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、チオグリコール酸などの酸化防止剤、ベンジルアルコール、クロロブタノールなどの無痛化剤、その他許容される添加剤を添加しても良い。経口投与、経鼻投与、経肺投与などに供する場合は各投与経路において許容されうる添加剤を添加しても良い。
【0036】
本発明の液体医薬組成物は、薬理学的に許容できる媒体中に上記した各成分を含み、好ましくは溶液の形態にある。薬理学的に許容できる媒体としては水が好ましい。
【0037】
本発明の凍結乾燥医薬組成物は、IFN-βに対する各添加剤の比が上記液体医薬組成物と等しい液体組成物を凍結乾燥することによって得られる。これはすなわち、凍結乾燥に供する液体組成物として、上記液体医薬組成物に加え、さらにその希釈溶液および濃縮溶液が包含されることを意味する。もちろん、上記液体医薬組成物をそのまま凍結乾燥することによっても本発明の凍結乾燥医薬組成物を得ることができる。
【0038】
本発明の凍結乾燥医薬組成物は、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを含有する溶解液で溶解することができる。ここで用いられる溶解液は、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを含有することが好ましい。ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとして具体的には、ポリソルベート20(商品名「Tween20」)、ポリソルベート40(商品名「Tween40」)、ポリソルベート60(商品名「Tween60」)、ポリソルベート65(商品名「Tween65」)、ポリソルベート80(商品名「Tween80」)などがある。好ましくはポリソルベート20およびポリソルベート80であり、さらに好ましくはポリソルベート20である。溶解液に含まれるポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの量は、生体への投与に許容される量であればよい。例えばこれまでに厚生労働省に承認されている、ヒトへの投与一回当たり使用できるポリソルベート20の最大使用量は、経口投与では0.76mg、静脈内注射では0.6mg、一般外用剤では66mg、歯科外用及び口中用では0.6mgであり、一方、投与一回当たり使用できるポリソルベート80の最大使用量は、経口投与では300mg、静脈内注射では500mg、筋肉内注射では100.2mg、一般外用剤では100mg/g、歯科外用及び口中用では37mg/gとされている(医薬品添加物事典2000、日本医薬品添加剤協会編集、薬事日報社)が、生体への安全性が確認され、生体に害を及ぼすことなく短期あるいは長期的に使用できる量であればこれに限定されない。溶解液中に含有されるポリソルベート20の量は好ましくは0.01〜0.5mg、最も好ましくは0.5mgであり、ポリソルベート80の量は好ましくは0.01〜50mgである。ポリソルベート20、ポリソルベート80はそれぞれ単独で用いてもよいが、必要に応じて混合して用いることもできる。
【0039】
また、上記溶解液は、等張化のために例えば無機塩類などの等張化剤を含有しうる。無機塩類としては、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウムなどが挙げられるが、好ましくは塩化ナトリウムである。塩の添加量は、凍結乾燥医薬組成物を溶解液で溶解後の液体医薬組成物が血液に対して等張となる量であることが好ましい。
【0040】
該溶解液に添加するその他の等張化剤として、例えば糖、糖アルコール、アミノ酸が挙げられる。糖あるいは糖アルコールとして、具体的にはグルコース、ガラクトース、フルクトース、マンノース、ソルボース、キシロース、イソマルトース、マルトース、ラクトース、スクロース、セロビオース、デキストラン、プルラン、デキストリン、シクロデキストリン、可溶性デンプン、ヒドロキシエチルデンプン、グリセリン、エリスリトール、アラビトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、イノシトール、ズルシトール、ラフィノース、マルチトール、ラクチトール、パラチニット、トレハロースなどが挙げられる。アミノ酸は等張化のほかに、溶解性を増大する目的でも用いることができる。アミノ酸としては、生体への投与に許容されるものであれば使用でき、中性アミノ酸、酸性アミノ酸および塩基性アミノ酸が挙げられる。具体的にはグリシン、アラニン、バリン、ノルバリン、ロイシン、ノルロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、システイン、メチオニン、アスパラギン、グルタミン、プロリン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、ジヨードチロシン、スルナミン、ヒドロキシプロリン、チロキシン、システイン、α-アミノ酪酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、アルギニン、ヒスチジン、ヒドロキシリジン、オルニチン、γ-アミノブチル酸、ε-アミノカプロン酸などが挙げられる。アミノ酸はその塩形態としても用いることができ、例えばアミノ酸の塩酸塩が挙げられる。これらの等張化剤は、凍結乾燥医薬組成物を溶解液で溶解後の医薬組成物が血液に対して等張となる量を添加すればよい。該溶解液はさらに製剤学上許容される添加剤を含有しうる。注射剤の場合、フェノール、クレゾールなどの保存剤、亜硫酸塩、ピロ亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、チオグリコール酸などの酸化防止剤、ベンジルアルコール、クロロブタノールなどの無痛化剤、その他許容される添加剤を添加しても良い。経口投与、経鼻投与、経肺投与などに供する場合は各投与経路において許容されうる添加剤を添加しても良い。
【0041】
本発明の凍結乾燥医薬組成物は、キットとして提供されうる。ここでいうキットの好ましい具体例としては、容易に開通できるように構成された隔壁で隔てられた複数の室からなる容器の1室に本発明の凍結乾燥医薬組成物を封入し、他の1室に本発明の溶解液を封入し、用時に隔壁を開通し、両者を混合・溶解して用いる形態、もしくは本発明の凍結乾燥医薬組成物をバイアルなどに封入したものに本発明の溶解液を添付した形態などがあげられるが、使用に際し問題を生じなければこれに限定されない。
【0042】
本発明の医薬組成物は、凍結乾燥医薬組成物については、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを含有する溶解液で溶解して、液体医薬組成物についてはそのまま生体に投与される。投与の代表的な経路としては、経口投与、経鼻投与、経肺投与、および非経口投与(経皮、静脈内、筋肉内、皮下、動脈内、腹腔内、髄腔内、および腫瘍内・周辺への注射、注入を含む)が挙げられる。好ましくは非経口投与であり、さらに好ましくは静脈内投与、筋肉内投与、または皮下投与のいずれかによる方法である。
【0043】
また、本発明の医薬組成物は治療用途の他、試薬などとして研究などの用途にも応用できる。特に、これまでヒト血清アルブミンが共存することによりIFN-β単独の分析が困難であった分析法、例えばHPLC分析、UV測定、タンパク定量などに供する場合に有用である。
【0044】
本発明の凍結乾燥医薬組成物、溶解液、または液体医薬組成物を含む容器は、表面がIFN-βの容器への吸着を抑制する物質でコーティングされた容器を用いることが好ましい。例えばシリコン、ポリプロピレン、またはポリテトラフルオロエチレンによるコーティングが挙げられ、好ましくはシリコンコーティングした容器である。容器の形状としてはバイアルまたは注射器などが挙げられる。
【0045】
本発明のIFN-β液体医薬組成物および凍結乾燥医薬組成物は長期保存後も安定であり、調製操作中も安定であり、凍結乾燥医薬組成物においては凍結乾燥工程においてもIFN-βが安定に保持される。「安定」とはIFN-βの生物学的活性が維持され、IFN-βの治療有効性が損なわれないことを意味する。「保存」とは、調製された液体医薬組成物が、調製後すぐには使用されず保持されること、凍結乾燥医薬組成物が溶解されずに凍結乾燥形態で保持される(後で溶解し、液体状態とする)ことを意味する。「調製操作」とは、IFN-βと他の添加物の混合操作、容器への移し替え操作および短期間の静置など本発明の医薬組成物製造に必須の操作を意味する。
【0046】
本発明の長期保存後も安定なIFN-β液体医薬組成物は37℃で4週間の保存後に初期生物学的活性の少なくとも70%の生物学的活性を維持しており、4℃で8週間保存後に初期生物学的活性の少なくとも80%の生物学的活性を維持している。本発明の安定なIFN-β凍結医薬組成物は、37℃で4週間の保存後に溶解液で溶解した時、初期生物学的活性の少なくとも70%の生物学的活性を維持しており、4℃で8週間保存後に溶解液で溶解した時、初期生物学的活性の少なくとも80%の生物学的活性を維持している。ここで「初期生物学的活性」とは、液体医薬組成物の長期保存後の安定性の評価においては、液体医薬組成物調製直後(保存開始前)の液体医薬組成物の生物学的活性を表し、凍結乾燥医薬組成物の長期保存後の安定性の評価においては、凍結乾燥医薬組成物調製に供したIFN-β液体組成物または凍結乾燥直後(保存開始前)の凍結乾燥医薬組成物の生物学的活性を表す。本発明の安定なIFN-β医薬組成物は調製操作においても調製に用いたIFN-β量(IFN-β仕込み量)の90%以上の生物学的活性を維持している。また、凍結乾燥医薬組成物については、その製造工程に含まれる凍結乾燥工程および、凍結乾燥医薬組成物を溶解する工程での生物学的活性の保持が必要である。本発明の凍結乾燥医薬組成物は、凍結乾燥工程および溶解において凍結乾燥医薬組成物調製に供したIFN-β液体組成物の生物学的活性の80%以上の生物学的活性を維持している。
【0047】
IFN-βの安定性は、調製後、あるいは保存後の生物学的活性の残存率を測定することにより評価できる。IFN-βの生物学的活性は、ウイルスの細胞変性効果の抑制について評価する標準的な方法(Cytopathic effect inhibition:CPE法)で測定できる。詳細はArmstrong, J.A.: Cytopathic effect inhibition assay for interferon: microculture plate assay, in: Methods in Enzymology, vol.78 S.Pestka, (ed). pp.381-387, Academic Press (New York), 1981に記載されている。また、この方法の代替方法として、抗ヒトIFN-β抗体を用いたエンザイムイムノアッセイ(EIA)法を用いることもできる。Yamazaki, S. et al.: Highly sensitive enzyme immunoassay of human interferon-beta 1., J. Immunoassay, 10: 57-73, 1989に示されているEIA法はCPE法の結果をよく再現する方法である。IFN-βの保存後の残存率を測定する方法としては、UV測定法や逆相HPLCを用いてIFN-βの含量を測定する方法が他に考えられるが、これら方法では生物学的活性を持たないIFN-βも含量として測定してしまう。IFN-βを治療に用いる際に重要なのは、IFN-βの含量ではなく生物学的活性であるため、これらの方法ではIFN-βの安定性を評価するには不適切である。IFN-βの長期安定性は4℃、あるいは37℃にて保存したのちにCPE法、もしくはEIA法で評価することが好ましい。37℃の温度条件を用いるのは、分解反応を加速するためであり、当業者間では一般的に用いられている方法である。
【実施例】
【0048】
本発明をさらに以下の実施例で具体的に説明するが、これらに限定されない。以下の実施例及び比較例においては、IFN-βとしてすべて線維芽細胞由来の天然型ヒトIFN-βを用いた。また、液体組成物の媒体としては、純水を用いた。実施例及び比較例に用いた添加剤類を以下の表1に記す。
【0049】
【表1】

【0050】
安定性の評価に用いたCytopathic effect inhibition:CPE法、エンザイムイムノアッセイ(EIA)法は以下のように行った。
【0051】
Cytopathic effect inhibition(CPE法)は、ヒト羊膜細胞(FL細胞)とSindbis ウイルスを用いて行った。細胞培養用の96穴マイクロプレートのウエルに、FL細胞を3〜4×104 個播き(培養培地:MEM supplemented with 5% heat-inactivated FBS, 10mM HEPES)、一晩培養した(37 oC, 5% CO2)。IFN-βを含む測定サンプルは培養培地で適当な希釈(2倍段階希釈)を行った後、FL細胞に添加しさらに一晩培養した(37 oC, 5% CO2)。コントロールとしては、ヒトIFN-β標準品(国立感染症研究所由来のJapanese reference)を加えた。培養液を洗浄除去した後、Sindbis ウイルスを各ウエルに加えて一晩培養した(37 oC)。培養後、ウイルス液を捨てて、プレートをホルマリンを含むクリスタルバイオレット液に15分ほど浸し、生存している細胞を固定染色した。その後、分光光度計で波長595nmでの吸光度を測定することにより生存している細胞を定量化した。IFN-β処理なしでウイルスのみ処理した細胞の生存率を0%とし、IFN-β処理、およびウイルス処理しない細胞の生存率を100%として、各ウェルの細胞生存率を百分率で求め、細胞の生存率が50%となる点を終点とし(50%endpoint)、ヒトIFN-β標準品の50%endpoint値をもとに、各測定サンプルの生物学的活性を国際単位に換算し、求めた。
【0052】
エンザイムイムノアッセイ(EIA)法はIFN-β ELISAキット(鎌倉テクノサイエンス社製)を用い、キットに添付の説明書に従い、検量線を作成し、検量線から各サンプルの生物学的活性を算出した。
【0053】
実施例1〜4、比較例1〜9
医薬組成物調製操作におけるIFN-β安定性
下記表2に示す成分を含むIFN-β組成物を調製し、シリコナイズした2mLのバイアルに0.5mLずつ分注し、4℃で表に記載の期間保存した。保存後のIFN-β生物学的活性をEIA法により測定した。結果はIFN-β仕込量を100%とした生物学的活性の残存率(%)で表している。下記の表2の「24hr」は調製後24時間静置、「72hr」は調製後72時間静置を示す。
【0054】
組成物1(比較例1)は、既存のHSA含有天然型IFN-β医薬組成物であるフエロン(東レ株式会社)の添加剤組成、組成物2(比較例2)はフエロン(東レ株式会社)の添加剤組成からHSAを除いた組成物である(IFN-β 1MIUあたりラクトース1mgを含有)。組成物7、8(比較例6、7)は特表2001-517635号に記載のある界面活性剤を含有しない組成物である。
【0055】
【表2】

【0056】
界面活性剤を含有せず、クエン酸、リン酸塩のみを含有する組成物(組成物3(比較例3))、界面活性剤を含有せず、クエン酸、リン酸塩、アミノ酸のみを含有する組成物(組成物7〜10(比較例6〜9))では、生物学的活性は72時間静置後に90%以下に低下した。一方で界面活性剤としてポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコールを含有する組成物では、生物学的活性は90%以上に保持された(組成物4、11−13(実施例1〜4))。他の界面活性剤を含有する組成物では生物学的活性は90%以下に低下した(組成物5、6(比較例4、5))。
【0057】
実施例5〜10、比較例10〜19
液体医薬組成物の長期保存後のIFN-β安定性(1) −添加剤選択−
下記表3に示す成分を含むIFN-β組成物を調製し、シリコナイズした2mLのバイアルに0.5mLずつ分注し、4℃または37℃の温度条件下で表に記載の期間保存した。保存後のIFN-β生物学的活性をCPE法により測定した。結果は調製直後の各液体医薬組成物の初期生物学的活性を100%とした生物学的活性の残存率(%)で表している。下記の表3の「1W」は1週間保存、「4W」は4週間保存、「8W」は8週間保存を表す。
【0058】
組成物14(比較例10)は特表2004-529917に記載のある低イオン強度、pH5.0の組成物である。組成物15、16、17、21(比較例11、12、13、15)は特表2001-519700に記載されている添加剤組成である。組成物20(比較例14)はWO2004/028557に記載のある糖および/または糖アルコールおよびアミノ酸を含有する組成物である。組成物23(比較例16)は、遺伝子組み替え型IFN-β医薬組成物であるAVONEX(BIOGEN社)の添加剤組成である。組成物24(比較例17)は、既存のヒト血清アルブミン含有天然型IFN-β医薬組成物であるフェロン(東レ株式会社)の添加剤組成からヒト血清アルブミンを除いた組成物である(IFN-β 1MIUあたりラクトース1mgを含有)。
【0059】
【表3】

【0060】
IFN-β 1MIU/mLにおいて、クエン酸、リン酸塩、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコールを添加した組成物(組成物18、19(実施例5、6))で、低イオン強度、pH5.0の組成物(組成物14(比較例10))、特表2001-519700に記載の組成物(組成物15、16(比較例11、12))および緩衝剤としてクエン酸/クエン酸ナトリウムを用いた組成物(組成物17(比較例13))に比較して安定な組成物が得られた。組成物18、19(実施例5、6)は4℃で8週間保存した場合、生物学的活性の残存率は80%以上を示した。
【0061】
IFN-β 6MIU/mLにおいて、クエン酸、リン酸塩、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール、アルギニン塩酸塩を添加した組成物(組成物22(実施例7))でリン酸緩衝液、アルギニンおよびスクロースを含有する組成物(組成物20(比較例14))、クエン酸緩衝液、アルギニンおよびスクロースを含有する組成物(組成物21(比較例15))に比べて長期安定性の改善が確認された。組成物22(実施例7)では37℃で8週間保存後も生物学的活性の残存率は70%以上を示した。
【0062】
IFN-β 10MIU/mLにおいて、クエン酸、リン酸塩、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコールを添加した組成物(組成物26〜28(実施例8〜10))で、緩衝剤を含有しない組成物(組成物25(比較例18))およびAVONEX処方(組成物23(比較例16))に比べて長期安定性の改善が確認された。組成物26〜28(実施例8〜10)では37℃で8週間保存後も生物学的活性の残存率は70%以上を示した。
【0063】
ポリソルベート20のみを用いた組成物(組成物29)(比較例19)では安定性の改善は得られなかった。
【0064】
実施例11〜15
液体医薬組成物の長期保存後のIFN-β安定性(2) −pHの影響−
下記表4に示す成分を含むIFN-β組成物を調製し、シリコナイズした2mLのバイアルに0.5mLずつ分注し37℃の温度条件下で表に記載の期間保存した。保存後のIFN-β生物学的活性をCPE法により測定した。結果は調製直後の各液体医薬組成物の生物学的活性を100%とした生物学的活性の残存率(%)で表している。下記の表4の「4W」は4週間保存、「8W」は8週間保存を表す。
【0065】
【表4】

【0066】
クエン酸、リン酸塩、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール、アルギニン塩酸塩、マンニトールを含有する組成物では、pHが4.5〜6.5において、37℃で8週間保存後においても、生物学的活性の残存率は70%以上を示した。(組成物30〜34(実施例11〜15))。
【0067】
実施例16〜19
液体医薬組成物の長期保存後のIFN-β安定性(3) −IFN-β濃度の影響−
下記表5に示す成分を含むIFN-β組成物を調製し、シリコナイズした2mLのバイアルに0.5mLずつ分注し、4℃または37℃の温度条件下で表5に記載の期間保存した。保存後のIFN-β生物学的活性をCPE法により測定した。結果は調製直後の各液体医薬組成物の生物学的活性を100%とした生物学的活性の残存率(%)で表している。下記の表5の「4W」は4週間保存、「8W」は8週間保存、「17W」は17週間保存を表す。
【0068】
【表5】

【0069】
クエン酸、リン酸塩、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール、アルギニン塩酸塩、マンニトールを含有する組成物において、IFN-βの保存開始時の生物学的活性が1MIU/mLという低濃度から、4℃、17週間にわたる長期保存後においても、生物学的活性の残存率は80%以上を示した(組成物35〜38(実施例16〜19))。
【0070】
実施例20〜24、比較例20〜24
凍結乾燥医薬組成物の作製時のIFN-β安定性(1)
下記表6に示す成分を含むIFN-β組成物を調製し、シリコナイズした2mLのガラスバイアルに1mLずつ分注し、ゴム製の栓をして凍結乾燥した。凍結乾燥前のIFN-β液体組成物および凍結乾燥直後に凍結乾燥医薬組成物を溶解した溶液(EIA法で測定するため、EIA buffer(0.1%(w/v)BSA, 0.05%(v/v)Tween20, 0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0))1mLで溶解)のIFN-β生物学的活性をEIA法により測定した。結果は凍結乾燥医薬組成物調製に供したIFN-β液体組成物の生物学的活性を100%とした凍結乾燥後の生物学的活性の残存率(%)で表している。
【0071】
組成物39(比較例20)は、既存のヒト血清アルブミン含有天然型IFN-β医薬組成物であるフェロン(東レ株式会社)の添加剤組成である。組成物40(比較例21)は、既存のヒト血清アルブミン含有天然型IFN-β医薬組成物であるフェロン(東レ株式会社)の添加剤組成からヒト血清アルブミンを除いた物である。組成物41(比較例22)はクエン酸、リン酸塩を含有し、界面活性剤を含まない組成物である。
【0072】
【表6】

【0073】
クエン酸、リン酸塩、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコールを含む組成物(組成物42、47(実施例20、24))およびクエン酸、リン酸塩、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール、アミノ酸を含む組成物(組成物44〜46(実施例21〜23))で凍結乾燥時の生物学的活性の残存率は80%以上を示した。他の界面活性剤では、IFN-β安定性の改善は得られなかった(組成物43、48(比較例23、24))。
【0074】
実施例25〜31、比較例25
凍結乾燥医薬組成物の作製時のIFN-β安定性(2)
下記表7に示す成分を含むIFN-β組成物を調製し、シリコナイズした5mLのガラスバイアルに1mLずつ分注し、ゴム製の栓をして凍結乾燥した。凍結乾燥医薬組成物調製に供したIFN-β液体組成物および凍結乾燥直後に溶解液(0.25mg/mL Tween20, 4.6mg/mL NaCl)2mLで溶解した凍結乾燥医薬組成物のIFN-β生物学的活性をCPE法により測定した。結果は凍結乾燥医薬組成物調製に供したIFN-β液体組成物の生物学的活性を100%とした凍結乾燥後の生物学的活性の残存率(%)で表している。
【0075】
【表7】

【0076】
クエン酸、リン酸塩、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコールを含む組成物においてアルギニン塩酸塩5〜30mg/mLの添加で凍結乾燥時の生物学的活性の残存率は80%以上を示した(組成物49〜52(実施例25〜28))。クエン酸、リン酸塩、アルギニン塩酸塩を含む組成物において、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコールの添加により凍結乾燥時の生物学的活性の残存率は80%以上を示した(組成物54〜56(実施例29〜31))。
【0077】
実施例32〜42、比較例26〜30
凍結乾燥医薬組成物の長期保存後のIFN-β安定性(1)
下記表8に示す成分を含むIFN-β組成物を調製し、シリコナイズした2mLのガラスバイアルに1mLずつ分注し、ゴム製の栓をして凍結乾燥した。凍結乾燥医薬組成物を37℃にて4週間または8週間保存した。凍結乾燥医薬組成物調製に供したIFN-β液体組成物および保存後の凍結乾燥医薬組成物をEIA bufferで溶解したもの(EIA法、CPE法の両方で測定するためEIA bufferで溶解)のIFN-β生物学的活性をCPE法およびEIA法により測定した。結果はCPE法での測定結果を示しており、凍結乾燥医薬組成物調製に供したIFN-β液体組成物の生物学的活性を100%とした凍結乾燥後の生物学的活性の残存率(%)で表している。下記の表8の「4W」は4週間保存、「8W」は8週間保存を表す。EIA法で測定した結果もCPE法と同等の値を示した。
【0078】
組成物57(比較例26)は、既存のヒト血清アルブミン含有天然型IFN-β医薬組成物であるフェロン(東レ株式会社)の添加剤組成である。組成物58(比較例27)は、既存のヒト血清アルブミン含有天然型IFN-β医薬組成物であるフェロン(東レ株式会社)の添加剤組成からヒト血清アルブミンを除いた物である。組成物59(比較例28)はクエン酸、リン酸塩を含有し、界面活性剤を含まない組成物である。
【0079】
【表8】

【0080】
クエン酸、リン酸塩、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコールを含む凍結乾燥医薬組成物(組成物60、61、63〜69、71、72(実施例32〜42))で、8週間保存した後も、生物学的活性の残存率は70%以上を示した。他の公知文献(例えば特開昭61-277633など)で有用性が示されている他の界面活性剤では、IFN-β安定性の改善は得られなかった(組成物62、70(比較例29、30))。クエン酸、リン酸塩、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール、アルギニン塩酸塩、マンニトールを含有する組成物ではIFN-βの濃度が0.5MIU/mLという低濃度においても、8週間保存した後も、生物学的活性の残存率は100%を示した(組成物72(実施例42))。
【0081】
実施例43〜53
凍結乾燥医薬組成物の長期保存後のIFN-β安定性(2) 各種添加剤濃度の影響−
下記表9に示す成分を含むIFN-β組成物を調製し、シリコナイズした5mLのガラスバイアルに1mLずつ分注し、ゴム製の栓をして凍結乾燥した。凍結乾燥医薬組成物を37℃にて4週間保存した。凍結乾燥直後の凍結乾燥医薬組成物および保存後の凍結乾燥医薬組成物をそれぞれ溶解液(0.25mg/mL Tween20, 4.6mg/mL NaCl)2mLで溶解して、IFN-β生物学的活性をCPE法により測定した。結果は凍結乾燥直後の凍結乾燥医薬組成物の生物学的活性を100%とした保存後の生物学的活性の残存率(%)で表している。下記の表9の「4W」は4週間保存を表す。
【0082】
【表9】

【0083】
クエン酸、リン酸塩、アルギニン塩酸塩、マンニトール、塩化ナトリウムを含有する組成物において、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール含有量が0.01〜1mg/mLで37℃、4週間保存後も生物学的活性の残存率は70%以上を示した(組成物73〜76(実施例43〜46))。クエン酸、リン酸塩、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール、マンニトール、塩化ナトリウムを含有する組成物において、アルギニン塩酸塩含有量10〜30mg/mLで37℃、4週間保存後も生物学的活性の残存率は70%以上を示した(組成物77〜79(実施例47〜49))。クエン酸、リン酸塩、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール、アルギニン塩酸塩、塩化ナトリウムを含有する組成物でマンニトール含有量が5mg/mL以下で37℃、4週間保存後も生物学的活性の残存率は70%以上を示した(組成物80〜83(実施例50〜53))。
【0084】
実施例54〜61
凍結乾燥医薬組成物の長期保存後のIFN-β安定性(3) pHの影響−
下記表10に示す成分を含むIFN-β組成物を調製し、シリコナイズした2mLのガラスバイアルに1mLずつ分注し、ゴム製の栓をして凍結乾燥した。凍結乾燥医薬組成物を37℃にて4週間保存した。凍結乾燥直後の凍結乾燥医薬組成物および保存後の凍結乾燥医薬組成物をそれぞれ溶解液(0.25mg/mL Tween20, 4.6mg/mL NaCl)2mLで溶解して、IFN-β生物学的活性をCPE法により測定した。結果は凍結乾燥直後の生物学的活性を100%とした保存後の生物学的活性の残存率(%)で表している。下記の表10の「4W」は4週間保存を表す。
【0085】
【表10】

【0086】
ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール、アルギニン塩酸塩、マンニトール、塩化ナトリウムを含有する組成物でクエン酸、リン酸塩で調節されるpHが3.0〜6.5の範囲で37℃、4週間保存後も生物学的活性の残存率は70%以上を示した(組成物84〜91(実施例54〜61))。
【0087】
実施例62〜64
凍結乾燥医薬組成物の長期保存後のIFN-β安定性(4) IFN-β濃度の影響−
下記表11に示す成分を含むIFN-β組成物を調製し、シリコナイズした2mLのガラスバイアルに1mLずつ分注し、ゴム製の栓をして凍結乾燥した。凍結乾燥医薬組成物を37℃にて4週間保存した。凍結乾燥直後の凍結乾燥医薬組成物および保存後の凍結乾燥医薬組成物をそれぞれ溶解液(0.25mg/mL Tween20, 4.6mg/mL NaCl)2mLで溶解して、IFN-β生物学的活性をCPE法により測定した。結果は凍結乾燥直後の生物学的活性を100%とした保存後の生物学的活性の残存率(%)で表している。下記の表11の「4W」は4週間保存を表す。
【0088】
【表11】

【0089】
クエン酸、リン酸塩、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール、アルギニン塩酸塩、マンニトール、塩化ナトリウムを含有する組成物でIFN-βの濃度が1〜6MIU/mLの範囲で37℃、4週間保存後も生物学的活性の残存率は70%以上を示した(組成物92〜94(実施例62〜64))。
【0090】
実施例65
凍結乾燥医薬組成物の溶解液の選択(1)
下記表12脚注に示す成分を含むIFN-β組成物を調製し、シリコナイズした2mLのガラスバイアルに1mLずつ分注し、ゴム製の栓をして凍結乾燥した。凍結乾燥直後、凍結乾燥医薬組成物を表12に記載の各溶解液1mLで溶解して、IFN-βの生物学的活性をCPE法により測定した。結果は凍結乾燥に供した液体組成物の生物学的活性を100%とした凍結乾燥組成物溶解液の生物学的活性の残存率(%)で表している。
【0091】
【表12】

組成物:1MIU/mL IFN-β、9mMクエン酸、22mMリン酸水素2Na、0.5mg/mL PLU F68、
10mg/mL Arg、2.5mg/mL Man、0.6mg/mL NaCl (pH5.5)
【0092】
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを含む溶解液(溶解液2〜5)を用いることで、凍結乾燥医薬組成物のIFN-βの生物学的活性の残存率は80%以上を示した。一方、生理食塩液のみ(溶解液1)、または他の非イオン性界面活性剤であるポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール(溶解液6、7)を含む溶解液を用いた場合、生物学的活性の残存率は50%前後となり、凍結乾燥医薬組成物中の活性を十分維持することができなかった。
【0093】
実施例67
凍結乾燥医薬組成物の溶解液の選択(2)
下記表13脚注に示す成分を含むIFN-β組成物を調製し、シリコナイズした2mLのガラスバイアルに1mLずつ分注し、ゴム製の栓をして凍結乾燥した。凍結乾燥直後、凍結乾燥医薬組成物を表13に記載の各溶解液1mLで溶解して、IFN-β生物学的活性をCPE法により測定した。結果は凍結乾燥に供した液体組成物の生物学的活性を100%とした凍結乾燥組成物溶解液の生物学的活性の残存率(%)で表している。
【0094】
【表13】

組成物:6MIU/mL IFN-β、9mMクエン酸、22mMリン酸水素2Na、0.5mg/mL PLU F68、
10mg/mL Arg、2.5mg/mL Man、0.6mg/mLNaCl (pH5.5)
【0095】
Tween20を0.01〜0.5m/mLg含む溶解液(溶解液8〜11)、およびTween80を0.01〜50mg/mL含む溶解液(溶解液12〜16)を用いた場合、生物学的活性の残存率は80%以上を示した。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明により、治療に用いるのに適した低濃度のIFN-βの生物学的活性を長期間安定に保つ、ヒト血清アルブミンを含まない安全な医薬組成物を提供できる。この医薬組成物は凍結乾燥医薬組成物または液体医薬組成物として治療用途、または研究などの用途に使用できる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬理学的に許容できる媒体中に、インターフェロン-βと、添加剤としてクエン酸、リン酸塩及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールを含み、ヒト血清アルブミンを含まない液体医薬組成物。
【請求項2】
前記インターフェロン-βの濃度が0.5〜12MIU/mLである請求項1記載の液体医薬組成物。
【請求項3】
前記クエン酸の濃度が5〜20mMである請求項1又は2記載の液体医薬組成物。
【請求項4】
前記リン酸塩の濃度が5〜30mMである請求項1ないし3のいずれか1項に記載の液体医薬組成物。
【請求項5】
前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールの濃度が0.01〜2mg/mLである請求項1ないし4のいずれか1項に記載の液体医薬組成物。
【請求項6】
pHが3.0から6.5である請求項1ないし5のいずれか1項に記載の液体医薬組成物。
【請求項7】
前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール中のポリオキシエチレン部の平均重合度が3〜200、ポリオキシプロピレン部の平均重合度が5〜70である請求項1ないし6のいずれか1項に記載の液体医薬組成物。
【請求項8】
前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールがポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコールである請求項7記載の液体医薬組成物。
【請求項9】
添加剤として、アルギニン、ヒスチジン及びグリシンから成る群より選択される少なくとも1種のアミノ酸をさらに含有する請求項1ないし8のいずれか1項に記載の液体医薬組成物。
【請求項10】
前記アミノ酸を23〜200mM含有する請求項9に記載の液体医薬組成物。
【請求項11】
前記アミノ酸として、アルギニンを含有する請求項9または10記載の液体医薬組成物。
【請求項12】
前記アミノ酸として、アルギニンを23〜144mM含有する請求項11記載の液体医薬組成物。
【請求項13】
添加剤としてマンニトールまたは/およびラクトースをさらに含有する請求項1ないし12のいずれか1項に記載の液体医薬組成物。
【請求項14】
マンニトールを含有する請求項13に記載の液体医薬組成物。
【請求項15】
前記マンニトールの濃度が1.25〜20mg/mLである請求項14記載の液体医薬組成物。
【請求項16】
インターフェロン-βに対する各添加剤の比が請求項1ないし15のいずれか1項に記載の液体医薬組成物に等しい液体組成物を凍結乾燥してなる凍結乾燥医薬組成物。
【請求項17】
請求項1ないし15のいずれか1項に記載の液体医薬組成物を凍結乾燥してなる請求項16記載の凍結乾燥医薬組成物。
【請求項18】
請求項16または17記載の凍結乾燥医薬組成物と溶解液とを含むインターフェロン-β投与用キット。
【請求項19】
前記溶解液がポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを含有する請求項18記載のキット。
【請求項20】
前記溶解液中にポリソルベート20またはポリソルベート80から選択される1種または2種のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを含有する請求項19または20記載のキット。
【請求項21】
前記溶解液にポリソルベート20を0.01〜0.5mg含有する請求項20記載のキット。
【請求項22】
前記溶解液にポリソルベート80を0.01〜50mg含有する請求項21に記載のキット。


【公開番号】特開2008−50320(P2008−50320A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−230112(P2006−230112)
【出願日】平成18年8月28日(2006.8.28)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】