インターフェロン−τの経口投与
規定された食物および/または水の摂取レジメン後に、被験体にインターフェロン−τを投与する方法を記載する。この方法は、インターフェロン−τで処置されたが規定された食物および/または水の摂取レジメンに従わない被験体への経口投与により達成された全血中2’5’−オリゴアデニレートシンテターゼ(OAS)活性レベルと比較して上昇したレベルの全血中2’5’−オリゴアデニレートシンテターゼ(OAS)活性を達成するのに有効な量のインターフェロン−τを、絶食および/または制御された流体摂取もしくは流体摂取なしと組み合わせた絶食の後に、被験体に経口投与する工程を包含する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、一般的に、サイトカインの経口送達およびより詳細には、インターフェロンの経口送達に関する。
【背景技術】
【0002】
(背景)
近年は、生理学的条件および疾患状態の処置のための種々の治療剤は、治療剤としてポリペプチドおよびタンパク質の増加する用途に大部分起因して、かなり拡大された。代償療法におけるペプチドの重要な役割および薬剤としての重要な役割は、組換えDNA技術による膨大な量のタンパク質の合成に向けた努力に反映される。
【0003】
治療剤としてのタンパク質およびポリペプチドの使用における1つの限定的な因子は、非経口的に与えられる場合の、血漿タンパク質による代謝である。経口経路の投与は、酸性条件が、その意図される標的に到達する前に分子を破壊し得る胃でのタンパク質分解に起因して、さらにより問題がある。例えば、胃の酵素および膵臓の酵素の作用によって生成されるポリペプチドおよびタンパク質フラグメントは、腸内刷子縁膜中のエキソペプチダーゼおよびエンドペプチダーゼによって切断され、ジペプチドおよびトリペプチドを生じる。膵臓酵素によるタンパク質分解が避けられる場合、ポリペプチドは、刷子縁ペプチダーゼによる分解に供される。胃を通り抜けて残存し得るポリペプチドまたはタンパク質は、貫通障壁が細胞への侵入を防止する腸内粘膜中で代謝に供される。
【0004】
これらの障害に関わらず、タンパク質およびポリペプチドの治療的に有益な経口送達が、腸内粘膜によって吸収されるまで、代表的に、胃および腸内での残存のために保護投薬形態中に分子を処方することによって、達成され得る。例えば、タンパク質は、プロテアーゼインヒビターと共投与されるか、ポリマー材料により安定化されるか、または脂質粒子またはポリマー粒子にカプセル化され得る。別のアプローチは、一定期間の間、口腔中に保持されるロゼンジまたは溶液の形態で、タンパク質を口腔咽頭領域に送達することによって、胃腸管を全く避けることである。
【0005】
化合物の経口投与において考察されなければならない別の因子は、経口投与された薬物の薬物動態学的プロフィールおよび薬力学的プロフィールを変更し得る食物−薬物相互作用である。薬物吸収および薬物バイオアベイラビリティーに対する食物の効果は、薬物低分子について研究されてきている(例えば、Singh,B.,Clin.Pharmacokinet 37(3):213,(1999)を参照のこと)が、タンパク質およびペプチドの吸収およびバイオアベイラビリティーに対する食物の効果については、あまり知られておらず、より小さな薬物化合物についての機構が、タンパク質およびペプチドに適用されることは、明白ではない。低分子薬物化合物についてさえ、どの胃の内容物が、化合物に対して効果を有するのかは先験的に未知である。薬物低分子の吸収に対する食物効果の代表的な5つの範疇が存在し:これらは、(1)吸収の減少;(2)吸収の遅延;(3)吸収の増加;または(4)吸収の加速、および(5)食物が有意な効果を有さない吸収、を引き起こす。食物の差次的効果と食後のバイオアベイラビリティーとの間を調整する多くの変数が存在し、これらは、(i)薬物の物理化学的特徴および組成;(ii)薬物投与の時間に関連する食事のタイミング;(iii)食事の量および構成;および(iv)投薬量である。さらに「食物効果」の機構は、食物に対する生理学的応答および感覚的応答(例えば、胃腸環境の変化および胃排出速度(gastric emptying rate)、ならびに逆流作用)を含み得る(同書)。
【0006】
低分子薬物化合物に対する食物の効果についての莫大な量の文献が存在するが、治療剤の特定の化学実体または化学的クラスについての食物の効果を予測する根拠はなお存在しない(同書)。さらに、低分子薬物化合物に対する研究が、タンパク質およびポリペプチドに適用可能であるかどうかを知るための根拠は存在せず;たとえ存在したとしても、食物摂取および/または水分摂取のどの効果が、インターフェロン−τのような経口投与された非天然タンパク質に対して有されるかを単に知る方法は、存在しない。
【0007】
インターフェロン−τ(本明細書中以降、「IFN−τ」またはインターフェロン−τ)は、元々、反すう動物受胎産物の栄養外胚葉によって産生される妊娠認識ホルモンとして発見された(Imakawa,K.ら、Nature 330:377−379,(1987);Bazer,F.W.and Johnson,H.M.,Am J Repro Immunol 26:19−22,(1991))。IFN−τ遺伝子の分布は、反すう動物(ウシ、ヒツジ、およびヤギが挙げられる)に制限されるが(Alexenko,A.P.ら、J Interferon and Cytokine Res 19:1335−1341,(1999))、IFN−τは、ヒトおよびマウスを含む他の種に属する細胞中で活性を示す(Pontzer,C.H.ら、Cancer Res 51:5304−5307,(1991);Alexenko,A.P.ら、J Interferon and Cytokine Res 20:817−822,(2000))。例えば、IFN−τは、抗ウイルス活性(Pontzer,C.H.ら、Biochem Biophys Res Commun 152:801−807,(1988))、抗増殖活性(Pontzer,C.H.ら、1991)および免疫調節活性(Assal−Meliani,A.,Am J Repro Immunol 33:267−275,(1995))を保持することが示された。
【0008】
IFN−τが、I型 IFN(例えば、インターフェロン−αおよびインターフェロン−β)と伝統的に関連する多くの活性を示し、その一方で、かなりの差異が、IFN−τと他のI型 IFNとの間に存在する。最も顕著な差異は、反芻動物種における妊娠時のIFN−τの役割である。他のIFNは、妊娠の認識において、類似する活性を有さない。ウイルス誘導もまた異なる。全てのI型 IFN(IFN−τを除く)は、ウイルスおよびdsRNAによって容易に誘導される(Robertsら、Endocrine Reviews 13:432(1992))。誘導されたIFN−αおよびIFN−β発現は、一過性であり、約数時間続く。対照的に、IFN−τ合成は、一旦誘導されると、数日の期間にわたって維持される(Godkinら、J.Reprod Fert.65:141(1982))。細胞基準で、300倍より多いIFN−τが、他のI型 IFNより誘導される(Cross,J.C.およびRoberts,R.M.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:3817−3821(1991))。
【0009】
別の差異は、IFN−τおよび他のI型インターフェロンのアミノ酸配列に存在する。インターフェロンα2b、インターフェロンβ1、インターフェロンω1、インターフェロンγ、およびインターフェロンτの間の%アミノ酸配列類似性は、以下の表に要約される。
【0010】
【表1】
配列比較は、以下の参考文献から決定される:
Taniguchiら、Gene,10(1):11(1980)。
Adolfら、Biochim.Biophys.Acta,1089(2):167(1991)。
Streuliら、Science,209:1343(1980)。
Imakawaら、Nature,330:377(1987)。
【0011】
組換えヒツジIFNτ(rOvIFNτ)は、IFNα2bに対して48.8%相同であり、そしてIFNβ1に対して33.8%相同である。IFNτとIFNαとの間およびIFNτとIFNβとの間のこの限定された相同性に起因して、経口的に投与される場合、IFNτは、IFNαまたはIFNβと同じ様式で振舞うかどうかは予測し得ない。IFNα、IFNβ、または任意の他の非τインターフェロンの経口投与に関連する当該分野における教示は、IFN−τについての任意の予想を描くための基礎を提供できない。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
従って、1つの局面において、本発明は、規定された食物摂取および/または水摂取レジメンに続いて、被験体にインターフェロン−τを投与する方法を包含する。インターフェロン−τで処置されたが、規定された食物摂取および/または水摂取レジメンに従わない被験体への経口投与から達成されるレベルに比べて、全血中の2’,5’−オリゴアデニレートシンテターゼ(OAS)活性のレベルの増大を達成するのに有効な量のインターフェロン−τを被験体に経口投与する工程を包含する。
【0013】
1つの実施形態において、インターフェロン−τは、ヒツジまたはウシのインターフェロン−τである。
【0014】
インターフェロン−τは、固体投薬形態で、または液体投薬形態として、投与され得る。1つの例示的な投薬量は、少なくとも約1×104単位/日である。
【0015】
別の局面において、本発明は、インターフェロン−τを投与する方法を企図し、この方法は、(i)インターフェロン−τの投与のために選択された被験体の絶食工程;および(ii)インターフェロン−τを被験体に経口投与し、インターフェロン−τを食事を与えた被験体に経口投与した後に得られる血中2’,5’−オリゴアデニレートシンテターゼのレベルに比べて、上昇したレベルの血中2’,5’−オリゴアデニレートシンテターゼを達成する工程、を包含する。
【0016】
1つの実施形態において、絶食工程は、被験体に水を与えない工程をさらに包含する。別の実施形態において、絶食工程は、被験体に少なくとも1時間、より好ましくは少なくとも4時間、なおより好ましくは少なくとも6時間絶食し、その後、経口投与する工程を包含する。
【0017】
別の実施形態において、本発明の方法は、自己免疫状態、ウイルス感染、または細胞増殖に関連する状態の処置における用途を見出す。
【0018】
さらに別の局面において、インターフェロン−τの経口投与の方法の改良が、企図される。この改良は、被験体を絶食し、その後、被験体にIFN−τを経口投与する工程を包含する。このような絶食工程は、インターフェロン−τを摂食後の被験体に経口投与した後に得られる血中2’,5’−オリゴアデニレートシンテターゼのレベルに比べて、増大したレベルの血中2’,5’−オリゴアデニレートシンテターゼを達成するのに有効である。
【0019】
本発明のこれらおよび他の、課題および特徴は、以下の詳細な説明が、添付の図面と共に読まれる場合により完全に明らかになる。
【0020】
(配列の簡単な説明)
配列番号1は、ヒツジインターフェロン−τをコードする合成遺伝子のヌクレオチド配列である。コードされたアミノ酸配列もまたしめされる。
【0021】
配列番号2は、成熟OvIFN−τタンパク質のアミノ酸配列である。
【0022】
(発明の詳細な説明)
(1.定義)
「絶食状態」または「絶食している状態」とは、治療剤(例えば、タンパク質またはペプチド)の経口投与の前に、少なくとも約1時間、好ましくは少なくとも約2時間、より好ましくは少なくとも約4時間、最も好ましくは少なくとも約6時間、全ての食物を絶ち、そして水のみを飲用することを意図する。
【0023】
「水も除く絶食状態」は、治療剤(例えば、タンパク質またはペプチド)の経口投与の前に、少なくとも約1時間、好ましくは少なくとも約2時間、より好ましくは少なくとも約4時間、最も好ましくは少なくとも約6時間、全ての食物および液体(水を含むが、これに限定されない)を絶つことを意図する。
【0024】
「非絶食状態」または「摂食状態」は、治療剤(例えば、タンパク質またはペプチド)の経口投与前の任意の時点における食物および/または水の消費を意図する。
【0025】
「食物を与えない」は、絶食状態を意図する。
【0026】
「経口投与する」または「経口投与」は、被験体の胃および/または胃腸系への化合物の送達を意図する。これらの用語は、化合物の全身送達が口腔または咽頭領域における吸収によって達成される、経口−咽頭送達を含まない。
【0027】
「ペプチド」および「ポリペプチド」は、本明細書中で交換可能に使用され、そしてペプチド結合によって結合されるアミノ酸残基の鎖から構築される化合物をいう。他に記載されない限り、これらのペプチドの配列は、アミノ末端からカルボキシル末端の方向で示される。
【0028】
第1のペプチドまたはポリペプチドが、第2のペプチドまたはポリペプチドフラグメントに「対応する」または「相同である」と言われる場合、これは、このペプチドまたはフラグメントが、プログラムALIGNを変異ギャップマトリクスおよび6以上のギャップペナルティーで使用して5(標準偏差単位)より大きいアライメントスコアを有する場合に、アミノ酸残基における類似性を有することを意味する(Dayhoff,M.O.,ATLAS OF PROTEIN SEQUENCE AND STRUCTURE(1972)Vol.5,National Biomedical Research Foundation,pp.101−110、およびこの巻の補完2、pp.1−10)。2つの配列(またはそれらの部分)は、より好ましくは、上記のALIGNプログラムを使用して最適に整列された場合、そのアミノ酸が、50%以上、好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上同一である場合に、相同である。
【0029】
ポリペプチド配列およびフラグメントは、これが別の配列またはフラグメントの領域と同じアミノ酸残基の配列を有する場合、この別のポリペプチド配列またはフラグメント「由来」である。
【0030】
インターフェロン−τポリペプチドは、インターフェロン−τアミノ酸コード配列由来の約15と172との間のアミノ酸を有するポリペプチドであり、ここで、この15〜172のアミノ酸は、天然のインターフェロン−τにおいて連続している。このような15〜172のアミノ酸領域はまた、2つ以上のこのようなインターフェロン−τ領域(これは通常、天然のタンパク質において不連続である)が連結されているポリペプチドに構築され得る。
【0031】
疾患の処置とは、その疾患の症状を減少し、そして/またはその疾患の重篤度を軽減するのに有効な治療物質を投与することをいう。
【0032】
(II.インターフェロンの投与方法)
(A.インターフェロン−τ)
ヒツジIFNτの172アミノ酸配列が、例えば、米国特許第5,958,402号に記載され、そしてまた、配列番号2として本明細書中に記載される。ヒツジIFN−τと類似の特性および活性を有するIFNτ配列は、他の反芻動物(ウシおよびヤギを含む)から単離されている(Bartol,F.F.ら,Biol.Reprod.32:681−693,(1985);Gnatek,G.G.ら,Biol.Reprod.41:655−664,(1989);Helmer,S.D.ら,J.Reprod.Fert.79:83−91(1987);およびImakawa,K.ら,Mol.Endocrinol.3:127(1989))。ウシIFNτ(BoIFNτ)およびOvIFNτは、(i)妊娠の母性認識における類似の機能を有し、そして(ii)成熟タンパク質間の高度のアミノ酸配列相同性およびヌクレオチド配列相同性を共有する。OvlFNτとBolFNτとの間の核酸配列相同性は、5’非コード領域について、76.3%であり、コード領域について、89.7%であり、そして3’非コード領域について、91.9%である。アミノ酸配列相同性は、80.4%である。相同ウシIFNτ配列は、例えば、Helmerら,J.Reprod.Fert.79:83−91(1987)およびImakawa,K.ら,Mol.Endocrinol.3:127)1989)に記載されている。これらの参考文献のヒツジIFNτおよびウシIFNτの配列は、本明細書中に参考として援用される。
【0033】
(B.投与方法)
本発明を支持して行われる研究において、OvIFN−τを、マウスに経口投与し、そして全血における、2’、5’−オリゴアデニレートシンテターゼ(OAS)活性(IFN作用の認識されたマーカー(Shindo,M.ら,Hepatology 8:366−370,(1988)))の誘導をモニタリングした。以下に記載される研究の全てにおいて、実施例1に記載の手順に従った。OvIFN−τの投与前に、少なくとも6時間、マウスに食物および飲料を与えず、そしてIFN−τを、経口(p.o.)投与により与え、そして比較コントロールについては、腹腔内(i.p.)注射によって与えた。経口投与した場合、IFN−τを、経口給餌針を使用して胃の上部に直接導入した。
【0034】
最初の研究において、OvIFN−τの投与によるマウスの血液OASの誘導に対する絶食状態の効果を評価した。この研究において、マウスを、規定された食物および水摂取レジメンに、6時間供した。6時間のレジメンの後、104UのOvINFτを、経口胃管栄養法または腹腔内注射によって、食物および水と共に投与した。この摂取レジメンは、以下のとおりであった:事例I、食物も水も与えなかった;事例II、水は与えたが食物は与えなかった;事例III、食物のみ与えた;事例IV、食物と水の両方を与えた。全血を、24時間目に心臓から採取し、そしてOAS活性のレベルを決定した。これらの結果を、図1A〜1Dに示す。
【0035】
図1A〜1Dは、ぞれぞれ、上記の段落で規定された事例I〜事例IVの食物および水摂取レジメンに供されたマウスに対応する。図1A〜1Dの結果は、10%マルトース溶液で処置され、インターフェロンで処置されていないマウスの血液OASとして採取された血液OASの誘導(コントロールに対する割合として表される)を示す。これらの結果は、より高い血液OASレベルが、絶食状態の被験体にIFN−τを経口投与することによって誘導されることを示す(食物を与えられていないマウスについて、図1Aおよび図1Bに最も良く示される)。
【0036】
この研究において、同じ量の食物のほとんどが、水の供給ありまたはなしで摂取されることが観察された。しかし、水の摂取は、食物を伴う場合(事例IIIおよび事例IV)より、食物を伴わない場合(事例Iおよび事例II)の方が低かった。いくつかの動物において、6時間の絶食の後、青色色素を含む0.2mlのマルトース溶液を、経口で与え、そして胃および腸におけるこの色素の分布を試験した(データは示さず)。食物の摂取(事例IIIおよび事例IV)の後、マウスの胃は膨張し、そしてこの色素は、おそらく、この食物が色素を吸収したため、主に胃中に存在していた。しかし、この色素は、食物を摂取しない場合、迅速に腸に移動した。この観察は、経口摂取されたOvIFN−τが、腸においてその効果を発揮して、血中で高レベルのOAS活性を誘導し得ることを示唆する。
【0037】
図2は、種々のマウス株:ICR、BALB/c、C57BL/9、NZW/NおよびSJL/Jにおける、血中のOAS活性の誘導に対する、OVIFN−τの胃投与の効果を示す。全ての試験マウスを、OvIFN−τ(105U)で経口的に処置した。コントロールマウスに、IFN−τを含まない10%マルトース溶液を経口で与えた。各バーは、類似の結果を有する、2回実施した1つの実験(3〜5匹のマウス)の平均±S.E.を表す。
【0038】
図2において見られるように、全てのマウス株におけるOAS活性のレベルは、OvIFN−τの経口投与の後に増加したが、この増加の程度は、株によって異なっていた。ICRマウス、C57BL/9マウスおよびNZW/Nマウスにおいて誘導された活性のレベルは、BALB/cマウスおよびSJL/Jマウスにおいて誘導される活性のレベルよりも高かった。
【0039】
別の研究において、OAS活性を、IFN−τの投与後の時間の関数としてモニタリングした。この研究において、動物(ICRマウス)を、IFN−τ(105U)の投与の前に、6時間の絶食(水を与えるが食物を与えない)に供した。血液を、IFN−τの投与後、8時間目、16時間目および24時間目に採取した。これらの結果を、図3Aに示す。
【0040】
図3Aは、IFNτの投与後に指定された時間間隔で採取された血液サンプルにおける血液OASレベル(コントロールに対する割合として表される(上記の図1の記載を参照のこと))を示す。図3Aにおいて、各バーは、類似の結果を有する、2回実施した1つの実験(3匹のマウス)の平均±S.E.を表す。全血におけるOAS活性は、経路(経口またはi.p.注射)とは無関係の時間依存性様式で増加したが、i.p.注射よりも高いレベルが、経口投与の24時間後に観察された。
【0041】
別の研究において、種々の濃度(0、102、103、104および105U)のOvIFN−τを、6時間の絶食後のマウスに与えた。24時間後に血液を採取し、そしてOAS活性をアッセイした。これらの結果を、図3Bに示す。
【0042】
図3Bは、0、102、103、104および105Uの濃度のOvIFNτの送達の24時間後における血液OASレベル(コントロールに対する割合として表される(上記の図1におけるコントロールの記載を参照のこと))を示す。各バーは、類似の結果を有する、2回実施した1つの実験(3のマウス)の平均±S.E.を表す。i.p.注射の後、活性レベルは、低用量(102U)においてさらに高く、そしてOVIFN−τのより高い用量(104および105U)において飽和であった。対照的に、p.o.投与後の活性レベルは、用量依存的に増加した。
【0043】
図3A〜3Bのデータは、経口投与されたIFN−τが、i.p.注射によって誘導されるよりも高レベルの血液OAS活性を誘導することを示す。特に、経口的に誘導された血液OASレベルは、約8時間より長い投与後の時点において、約103Uよりも多いIFNτの投薬量でi.p.注射することにより誘導された血液OASレベルよりも高かった。
【0044】
比較研究を行って、MuIFN−αの経口投与の血液OASレベルに対する効果を測定した。この研究において、ICRマウスを、種々の濃度(0、102、103、および104IU)のMuIFN−αで、p.o.経路またはi.p.経路のいずれかによって処置した。MuIFN−αの投与の16時間後に得られた血中のOAS活性をアッセイした。これらの結果を図4に示す。ここで、各バーは、類似の結果を有する、2回実施した1つの実験(3匹のマウス)の平均±S.E.を表す。
【0045】
図4は、経口でかまたは腹腔内注射によって与えられたMuIFNα(0、102、103、および104IU)の投与後の血液OAS活性の誘導(コントロールに対する割合として表される(上記の図1におけるコントロールの記載を参照のこと))を示す棒グラフである。OAS活性のレベルは、いずれかの投与経路によって用量依存的に増加し、i.p.注射は、p.o.投与よりも血液OAS活性のより良好な誘導を生じた。この結果は、IFN−τの経口投与がIFN−τの腹腔内注射よりも高い血液OASレベルに達するという、IFN−τの場合に観察された結果と反対である。さらに、マウスの体温は、MuIFN−αを投与した場合にわずかに上昇したが、OvIFN−τを使用した場合には上昇しなかった(データは示さず)。
【0046】
(III.有用性)
(A.IFN−τに応答性状態の処置)
上記のように、IFN−τは、抗ウイルス剤、抗増殖剤として、および自己免疫障害の処置において、生物活性を有する(例えば、米国特許第5,958,402号;同第5,942,223号;同第6,060,450号;同第6,372,206号(これらは本明細書中に参考として援用される)を参照のこと)。従って、本発明は、注射によって投与される場合、IFN−τに対して応答性の任意の状態を処置するためのIFN−τの経口投与を企図する。本発明の方法を使用して処置され得る状態および疾患としては、自己免疫疾患、炎症疾患、増殖性疾患および過剰増殖性疾患、ならびに免疫媒介性疾患が挙げられる。
【0047】
特に、本発明の方法は、免疫系過敏に関連する状態を処置するために有利である。4つの型の免疫系過敏がある(Clayman,C.B.編,AMERICAN MEDICAL ASSOCIATION ENCYCLOPEDIA OF MEDICINE,Random House,New York,N.Y.,(1991))。I型、または即時/アナフィラキシー過敏は、アレルゲン(例えば、花粉)に応答するマスト細胞の脱顆粒に起因し、これには、喘息、アレルギー性鼻炎(枯草熱)、じんま疹(urticaria)(じんま疹(hives))、アナフィラキシーショックおよび他のアレルギー性の疾病が挙げられる。II型、または自己免疫過敏は、身体自体の細胞の認識された「抗原」に対する抗体に起因する。III型過敏は、種々の組織にとどまりそしてさらなる免疫応答を活性化する抗原/抗体免疫複合体の形成に起因し、そして血清病、アレルギー性肺胞炎およびブースターワクチン接種の後に時折形成される大腫脹のような状態の原因となる。IV型過敏は、感作されたT細胞由来のリンホカインの放出に起因し、この放出は、炎症反応を生じる。例としては、接触性皮膚炎、麻疹の発疹および特定の薬物に対する「アレルギー」反応が挙げられる。
【0048】
いくつかの個体において特定の状態が過敏を生じ得る機構は、一般に、十分には理解されていないが、遺伝的要因および外因的要因の両方を含み得る。例えば、最近、ウイルスまたは薬物は、自己免疫障害の遺伝子素因をすでに有する個体における自己免疫反応の誘発において役割を果たし得る。いくつかの型の過敏の発生率は、他の素因と相関し得ることが示唆されている。例えば、特定の通常のアレルギーを有する個体は、自己免疫障害に対してより感受性であることが提唱されている。
【0049】
自己免疫障害は、大まかに、主に特定の器官または組織に制限される障害および身体全体に影響する障害に分類され得る。器官特異的障害(器官が罹患する)の例としては、以下が挙げられる:多発性硬化症(神経プロセスにおけるミエリンコーティング)、I型糖尿病(膵臓)、橋本甲状腺炎(甲状腺)、悪性貧血(胃)、アディソン病(副腎)、重症筋無力症(神経筋接合部におけるアセチルコリンレセプター)、慢性関節リウマチ(関節ライニング)、ブドウ膜炎(眼)、乾癬(皮膚)、ギヤン‐バレー症候群(神経細胞)およびグレーヴズ病(甲状腺)、全身自己免疫疾患としては、全身性エリテマトーデスおよび皮膚筋炎が挙げられる。
【0050】
過敏症障害の他の例としては、以下が挙げられる:喘息、湿疹、局所皮膚炎、接触皮膚炎、他の湿疹性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、鼻炎、扁平苔癬、Pemplugus、水疱性類天疱瘡、表皮水疱症、ウリトカリス(uritcaris)、血管性水腫、脈管炎、紅斑、皮膚好酸球増加症、円形脱毛症、アテローム性動脈硬化症、原発性胆汁性肝硬変およびネフローゼ症候群。関連する疾患としては、以下が挙げられる:腸炎(例えば、Coeliac病、直腸炎、好酸球増加性(eosinophilia)胃腸炎、肥満、炎症性腸疾患、クローン病(Chrohn’s disease)および潰瘍性大腸炎)、ならびに食物関連アレルギー。
【0051】
本発明の方法を使用する処置が特に有効な自己免疫疾患としては、以下が挙げられる:多発性硬化症、I型(インシュリン依存性)糖尿病、エリテマトーデス、筋萎縮性側索硬化症、クローン病、慢性関節リウマチ、口内炎、喘息、ブドウ膜炎、アレルギーおよび乾癬。
【0052】
本発明の方法は、治療的に処置するために使用され得、それによって、上記のような自己免疫疾患を軽減し得る。
【0053】
別の実施形態において、本発明の方法は、ウイルス感染に関連する状態を処置するために使用される。IFN−τの抗ウイルス活性は、IFNαに通常関連する毒性効果無しに、幅広い治療適用を有し、そしてIFN−τは、細胞に対する有害な効果無しに、その治療活性に影響する。IFN−τの細胞傷害性を相対的に欠くことによって、そのIFN−τは、インビボ治療剤として非常に価値のあるものになり、IFN−τを、ほとんどの他の公知の抗ウイルス剤および全ての他の公知のインターフェロンとを区別する。
【0054】
IFN−τを含む処方物は、ウイルス複製を阻害するように経口的に投与され得る。経口投与されるIFNτによって処置され得る特定のウイルス疾患の例としては、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、非A、非B、非C型肝炎エプスタイン−バーウイルス感染、HIV感染、ヘルペスウイルス(EB、CML、単純ヘルペス)、パピローマウイルス、ポックスウイルス、ピコルナウイルス、アデノウイルス、ライノウイルス、HTLV I、HTLV II、およびヒトロタウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
別の実施形態において、本発明の方法は、過剰増殖によって特徴付けられる状態の処置について企図される。IFN−τは、強力な抗細胞増殖活性を示す。従って、IFN−τを経口投与することによって細胞増殖を阻害する方法は、制御されない細胞増殖を阻害、予防、または遅延させるために、企図される。
【0056】
経口投与されるIFN−τによって処置され得る特定の細胞増殖障害の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:ヘアリーセル白血病、カポージ肉腫、慢性骨髄性白血病、多発性骨髄腫、表面膀胱癌(superficial bladder cancer)、皮膚癌(基底細胞癌および悪性黒色腫)、腎細胞癌、卵巣癌、低級リンパ性および癌性T細胞リンパ腫(low grade lymphocytic and cutaneous T cell lymphoma)、ならびに神経膠腫。
【0057】
上記に詳述される本発明の方法の使用に加えて、この方法が、家畜動物および野生動物が罹患する種々の免疫系障害の処置に適用され得ることが評価される。例えば、イヌにおける甲状腺機能低下症は、代表的に、甲状腺の進行性の破壊から生じ、これは、リンパ球性甲状腺炎と関連し得る(Kemppainen,R.J.,およびClark,T.P.,Vet Clin N Am Small Anim Pract 24(3):467−476,(1994))。リンパ球性甲状腺炎(ヒトにおける橋本甲状腺炎と類似する)は、自己免疫障害であると考えられる。本明細書中に提示されるガイダンスに従って、イヌおけるリンパ球性甲状腺炎に起因する甲状腺機能低下症は、上記のようにIFN−τで処置され得る。
【0058】
IFN−τでの処置によって軽減され得るイヌにおける別の型の自己免疫障害は、抗核抗体(ANA)陽性、発熱およびセロネガティブ関節炎(Day,M.J.ら,Clin Immunol Immunopathol 35(1):85−91,(1985))によって特徴付けられる。免疫媒介血小板減少症(ITP;Kristensen、A.T.、ら、J Vet Intem Med 8(1):36−39、(1994);Werner、L.L.、ら、Vet Immunol Immunopathol 8(1−2):183−192、(1985))、全身性エリテマトーデス(Kristensenら、1994)、および白血球減少症およびクームズ陽性溶血性貧血(Wernerら、1985)もまた、本発明の方法を使用する処置に受け入れ可能であり得る。
【0059】
(B.処方物および投薬量)
IFN−τを含む経口調製物は、薬学的組成物を調製するための公知の方法に従って処方され得る。一般的に、IFN−τ治療組成物は、有効量のIFN−τが、適切な添加剤、キャリア、および/または賦形剤と組み合わされて、組成物の有効な経口投与を容易にするように、処方される。例えば、IFN−τを含む錠剤およびカプセルは、IFN−τ(例えば、凍結乾燥されたIFN−τタンパク質)と添加剤(例えば、薬学的に受容可能なキャリア(例えば、ラクトース、コーンスターチ、微結晶セルロース、スクロース)、結合剤(例えば、α−形態のデンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン)、崩壊剤(例えば、カルボキシメチルセルロースカルシウム、デンプン、低置換ヒドロキシ−プロピルセルロース)、界面活性剤(例えば、Tween 80、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマー)、抗酸化剤(例えば、L−システイン、亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム)、潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、滑石)など)とを組み合わせることによって調製され得る。
【0060】
さらに、本発明のIFN−τポリペプチドは、固体、微粉または他のキャリア(例えば、ラクトース、サッカロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン(例えば、ジャガイモデンプン、コーンスターチ)、ミロペクチン(millopectine)、セルロース誘導体またはゼラチン)と混合され得、そしてまた潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウムもしくはステアリン酸カルシウム)、またはポリエチレングリコールワックス(錠剤の形成のために圧縮される)を含み得る。いくつかの層のキャリアまたは希釈剤を使用することによって、遅延放出で作動する錠剤が調製され得る。
【0061】
経口投与のための液体調製物は、エリキシル剤、シロップまたは懸濁液の形態(例えば、約0.1重量%〜約30重量%のIFN−τ、糖ならびにエタノール、水、グリセロール、プロピレン、グリコールおよび従来の性質の可能な他の添加剤を含む溶液)で作製され得る。
【0062】
経口的に活性なIFN−τ薬学的組成物は、処置の必要な個体に治療有効量で投与される。用量は、かなり変動し得、障害の重篤度、患者の年齢および体重、患者が受け得る他の投薬などのような因子に依存する。この量または投薬量は、代表的に、担当医によって決定される。投薬量は、代表的に、約1×104単位/日と約1×109単位/日の間、より好ましくは、1×105単位/日と1×108単位/日の間、好ましくは、約1×106単位/日と1×107単位/日の間である。1つの特定の実施形態において、IFN−τは、約1×104単位/日より多く、好ましくは、約1×106単位/日より多く、より好ましくは、約1×108単位/日より多くの投薬量で経口投与される。
【0063】
血漿において安定に高レベルのIFN−τを必要とする障害は、約2〜4時間毎のように頻繁に投与することから利益を得るが、一方、他の障害(例えば、多発性硬化症)は、より少ない頻度の間隔(例えば、48時間毎に1回)で治療的有効用量を投与することによって有効に処置され得る。個々の用量の投与速度は、代表的に、最も低い合計の投薬量の投与を可能にしながら、処置される疾患の重篤度を軽減するように、担当医によって調節される。
【0064】
一旦、患者の状態の改善が生じると、必要な場合、維持用量が投与される。引き続いて、投与の投薬量または投与の頻度、あるいはその両方は、症状の関数として、改善状態が保持されるレベルまで減少され得る。
【0065】
上記のように、IFN−τの経口投与は、規定の食物/水摂取レジメンに沿って処方される。図1A〜3Bに関して記載される支持研究について選択された食物/水摂取レジメンが、単なる例示であることが理解される。本発明は、食物および/または水が、タンパク質投薬の前の種々の時間(6時間より長いまたは短い範囲がここで例示される)の間、絶ち得ることを企図した。好ましい実施形態において、食物および/または水は、IFN−τの経口投与の前に少なくとも約1時間絶たれ、より好ましくは、少なくとも約2時間、さらにより好ましくは、少なくとも約6時間、絶たれる。
【0066】
もちろん、本発明に従うIFN−τの経口投与が、他の治療と組み合わせて使用され得ることが理解される。例えば、IFN−τは、自己免疫応答が指向する抗体の投与を伴い得る。例としては、多発性硬化症を処置するためのミエリン基礎タンパク質およびIFN−τの同時投与;慢性関節リウマチを処置するためのコラーゲンおよびIFN−τの同時投与、および重症筋無力症を処置するためのアセチルコリンレセプターポリペプチドおよびIFN−τの同時投与が挙げられる。
【0067】
さらに、IFN−τは、自己免疫疾患(例えば、多発性硬化症)を処置するために、公知の免疫抑制剤(例えば、ステロイド)とともに経口投与され得る。免疫抑制剤は、IFN−τと相乗的に作用し得、等価線量のIFN−τまたは免疫抑制剤単独で得られ得るよりも効果的な処置を生じる。
【0068】
同様に、癌またはウイルス疾患の処置において、IFN−τは、治療的有効量の1つ以上の化学療法剤(例えば、ブスルファン、5−フルオロウラシル(5−FU)、ジドブジン(AZT)、ロイコボリン、メルファラン、プレドニゾン、シクロホスファミド、ダカルバジン、シスプラチン、ジピリダモールなど)とともに投与され得る。
【0069】
(IV.実施例)
以下の実施例は、本発明を説明するが、本発明を限定することをいかなるようにも意図しない。
【0070】
(実施例1)
(経口投与の方法)
ICR系、BALB/c系、C57BL/9系、NZW/N系およびSJL/J系の、病原体を有さない5週齢の雌性マウスを、Japan SLC.Inc.,Hamamatsuから購入した。マウスを実験の前に、実験室において1週間、飼育した。
【0071】
組換えヒツジIFN−τ(OvIFN−τ)を、Pepgen Corporation(Alameda,CA)から得た。IFNは、OvIFN−τ1のサブタイプに属する。この研究に使用される調製は、VSVでチャレンジしたMDBK細胞においてアッセイし、そしてヒトIFN−αに対して標準化した場合、5×108単位(U)/mgタンパク質の比活性を有した。天然のマウスIFN−α(MuIFN−α)は、Sumitomo Pharmaceutical Co.(Osaka,Japan)から供給され、この比活性は、1×108国際単位(IU)/mgのタンパク質であった。
【0072】
マウスへの投与のために、IFN−τを、10%マルトースを含む溶液に溶解した。0.2mlのサンプルを、マウス(6週齢雌性)に、経口的(p.o.)処置または腹腔内(i.p.)注射のいずれかによって投与した。経口的に与えられる場合、サンプルを、20ゲージの経口給餌針を使用して、胃の上部に直接導入した。投与の前に、マウスに、午後1時から始まり午後7時で終わる6時間の間、食物および飲料の両方を与えなかった。絶食後、IFNを、p.o.経路またはi.p.経路のいずれかによって投与し、食物および飲料を、6時間で与えた。次いで、24時間で、心臓から全血を得た。
【0073】
全血における2’,5’−オリゴアデニレートシンテターゼ(OAS)活性を、Eikenの2−5A RIAキットを用いてアッセイした。希釈した血液を、ポリ:C−アガロースゲルと混合し、ATPを、ゲルを洗浄した後に添加し、そして生成された2−5Aを、RIA法によってアッセイした(Shindo,M.ら、1988)。各サンプルにおいて、アッセイを2回実施した。血液OASのレベルの推定のために、少なくとも3匹のマウスを使用した。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】図1A〜1Dは、OvIFN−τの投与によるマウス中の血液OASの誘導に対する絶食状態の効果を示す棒グラフである。血液OAS誘導は、コントロールの%として示され、インターフェロンを含まない10%マルトースの溶液で処置されたマウス中の血液OASとして解釈される。処置されたマウスは、示される摂取レジメンの6時間後、104UのOvINFτ(腹腔内注射または経口投与によって)を受容した:図1A、絶食絶水;図1B、絶食して水;図1C、絶水して食物;図1D、食物および水の両方。各バーは、同様の結果を有する2回実施した1つの実験(3匹のマウス)の平均±S.E.を示す。
【図2】図2は、OvIFN−τ(105U)の経口投与後の、いくつかのマウス株(ICR、BALB/c、C57BL、NZW/NおよびSJL/J)における血液OAS濃度(pmol/dL)を示す棒グラフである。コントロールマウスは、IFNを含まない10%マルトースの溶液を経口的に受容した。各バーは、同様の結果を有する2回実施した1つの実験(3〜5匹のマウス)の平均±S.E.を示す。
【図3A】図3A〜3Bは、6時間絶食後のOvIFNτの投与後の、マウス中の血液OAS活性の誘導を示す棒グラフであるである。IFNτは、経口的にかまたは腹腔内注射によって投与された。図3Aは、血液OASレベルを示し、時間0ならびにIFNτ(105U)投与の、8時間後、16時間後、および24時間後に採取した、血液サンプル中のコントロールの%(上記図1における記載を参照のこと)として表される。
【図3B】図3A〜3Bは、6時間絶食後のOvIFNτの投与後の、マウス中の血液OAS活性の誘導を示す棒グラフであるである。IFNτは、経口的にかまたは腹腔内注射によって投与された。図3Bは、血液OASレベルを示し、0、102、103、104、および105Uの濃度のOvIFNτの送達の24時間後の、コントロールの%として表される。各バーは、同様の結果を有する2つの実施された実験の1つの実験(3匹のマウス)の平均±S.E.を示す。
【図4】図4は、血液OAS活性の誘導を示し、経口的にかまたは腹腔内注射によってICRマウスに与えられたMuIFNα(0、102、103、および104IU)の投与による、コントロールの%(上記図1におけるコントロールの記載を参照のこと)として表される。血液中のOAS活性は、IFNα投与16時間後にアッセイされた。各バーは、同様の結果を有する2つの実施された1つの実験(3匹のマウス)の平均±S.E.を示す。
【配列表】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、一般的に、サイトカインの経口送達およびより詳細には、インターフェロンの経口送達に関する。
【背景技術】
【0002】
(背景)
近年は、生理学的条件および疾患状態の処置のための種々の治療剤は、治療剤としてポリペプチドおよびタンパク質の増加する用途に大部分起因して、かなり拡大された。代償療法におけるペプチドの重要な役割および薬剤としての重要な役割は、組換えDNA技術による膨大な量のタンパク質の合成に向けた努力に反映される。
【0003】
治療剤としてのタンパク質およびポリペプチドの使用における1つの限定的な因子は、非経口的に与えられる場合の、血漿タンパク質による代謝である。経口経路の投与は、酸性条件が、その意図される標的に到達する前に分子を破壊し得る胃でのタンパク質分解に起因して、さらにより問題がある。例えば、胃の酵素および膵臓の酵素の作用によって生成されるポリペプチドおよびタンパク質フラグメントは、腸内刷子縁膜中のエキソペプチダーゼおよびエンドペプチダーゼによって切断され、ジペプチドおよびトリペプチドを生じる。膵臓酵素によるタンパク質分解が避けられる場合、ポリペプチドは、刷子縁ペプチダーゼによる分解に供される。胃を通り抜けて残存し得るポリペプチドまたはタンパク質は、貫通障壁が細胞への侵入を防止する腸内粘膜中で代謝に供される。
【0004】
これらの障害に関わらず、タンパク質およびポリペプチドの治療的に有益な経口送達が、腸内粘膜によって吸収されるまで、代表的に、胃および腸内での残存のために保護投薬形態中に分子を処方することによって、達成され得る。例えば、タンパク質は、プロテアーゼインヒビターと共投与されるか、ポリマー材料により安定化されるか、または脂質粒子またはポリマー粒子にカプセル化され得る。別のアプローチは、一定期間の間、口腔中に保持されるロゼンジまたは溶液の形態で、タンパク質を口腔咽頭領域に送達することによって、胃腸管を全く避けることである。
【0005】
化合物の経口投与において考察されなければならない別の因子は、経口投与された薬物の薬物動態学的プロフィールおよび薬力学的プロフィールを変更し得る食物−薬物相互作用である。薬物吸収および薬物バイオアベイラビリティーに対する食物の効果は、薬物低分子について研究されてきている(例えば、Singh,B.,Clin.Pharmacokinet 37(3):213,(1999)を参照のこと)が、タンパク質およびペプチドの吸収およびバイオアベイラビリティーに対する食物の効果については、あまり知られておらず、より小さな薬物化合物についての機構が、タンパク質およびペプチドに適用されることは、明白ではない。低分子薬物化合物についてさえ、どの胃の内容物が、化合物に対して効果を有するのかは先験的に未知である。薬物低分子の吸収に対する食物効果の代表的な5つの範疇が存在し:これらは、(1)吸収の減少;(2)吸収の遅延;(3)吸収の増加;または(4)吸収の加速、および(5)食物が有意な効果を有さない吸収、を引き起こす。食物の差次的効果と食後のバイオアベイラビリティーとの間を調整する多くの変数が存在し、これらは、(i)薬物の物理化学的特徴および組成;(ii)薬物投与の時間に関連する食事のタイミング;(iii)食事の量および構成;および(iv)投薬量である。さらに「食物効果」の機構は、食物に対する生理学的応答および感覚的応答(例えば、胃腸環境の変化および胃排出速度(gastric emptying rate)、ならびに逆流作用)を含み得る(同書)。
【0006】
低分子薬物化合物に対する食物の効果についての莫大な量の文献が存在するが、治療剤の特定の化学実体または化学的クラスについての食物の効果を予測する根拠はなお存在しない(同書)。さらに、低分子薬物化合物に対する研究が、タンパク質およびポリペプチドに適用可能であるかどうかを知るための根拠は存在せず;たとえ存在したとしても、食物摂取および/または水分摂取のどの効果が、インターフェロン−τのような経口投与された非天然タンパク質に対して有されるかを単に知る方法は、存在しない。
【0007】
インターフェロン−τ(本明細書中以降、「IFN−τ」またはインターフェロン−τ)は、元々、反すう動物受胎産物の栄養外胚葉によって産生される妊娠認識ホルモンとして発見された(Imakawa,K.ら、Nature 330:377−379,(1987);Bazer,F.W.and Johnson,H.M.,Am J Repro Immunol 26:19−22,(1991))。IFN−τ遺伝子の分布は、反すう動物(ウシ、ヒツジ、およびヤギが挙げられる)に制限されるが(Alexenko,A.P.ら、J Interferon and Cytokine Res 19:1335−1341,(1999))、IFN−τは、ヒトおよびマウスを含む他の種に属する細胞中で活性を示す(Pontzer,C.H.ら、Cancer Res 51:5304−5307,(1991);Alexenko,A.P.ら、J Interferon and Cytokine Res 20:817−822,(2000))。例えば、IFN−τは、抗ウイルス活性(Pontzer,C.H.ら、Biochem Biophys Res Commun 152:801−807,(1988))、抗増殖活性(Pontzer,C.H.ら、1991)および免疫調節活性(Assal−Meliani,A.,Am J Repro Immunol 33:267−275,(1995))を保持することが示された。
【0008】
IFN−τが、I型 IFN(例えば、インターフェロン−αおよびインターフェロン−β)と伝統的に関連する多くの活性を示し、その一方で、かなりの差異が、IFN−τと他のI型 IFNとの間に存在する。最も顕著な差異は、反芻動物種における妊娠時のIFN−τの役割である。他のIFNは、妊娠の認識において、類似する活性を有さない。ウイルス誘導もまた異なる。全てのI型 IFN(IFN−τを除く)は、ウイルスおよびdsRNAによって容易に誘導される(Robertsら、Endocrine Reviews 13:432(1992))。誘導されたIFN−αおよびIFN−β発現は、一過性であり、約数時間続く。対照的に、IFN−τ合成は、一旦誘導されると、数日の期間にわたって維持される(Godkinら、J.Reprod Fert.65:141(1982))。細胞基準で、300倍より多いIFN−τが、他のI型 IFNより誘導される(Cross,J.C.およびRoberts,R.M.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:3817−3821(1991))。
【0009】
別の差異は、IFN−τおよび他のI型インターフェロンのアミノ酸配列に存在する。インターフェロンα2b、インターフェロンβ1、インターフェロンω1、インターフェロンγ、およびインターフェロンτの間の%アミノ酸配列類似性は、以下の表に要約される。
【0010】
【表1】
配列比較は、以下の参考文献から決定される:
Taniguchiら、Gene,10(1):11(1980)。
Adolfら、Biochim.Biophys.Acta,1089(2):167(1991)。
Streuliら、Science,209:1343(1980)。
Imakawaら、Nature,330:377(1987)。
【0011】
組換えヒツジIFNτ(rOvIFNτ)は、IFNα2bに対して48.8%相同であり、そしてIFNβ1に対して33.8%相同である。IFNτとIFNαとの間およびIFNτとIFNβとの間のこの限定された相同性に起因して、経口的に投与される場合、IFNτは、IFNαまたはIFNβと同じ様式で振舞うかどうかは予測し得ない。IFNα、IFNβ、または任意の他の非τインターフェロンの経口投与に関連する当該分野における教示は、IFN−τについての任意の予想を描くための基礎を提供できない。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
従って、1つの局面において、本発明は、規定された食物摂取および/または水摂取レジメンに続いて、被験体にインターフェロン−τを投与する方法を包含する。インターフェロン−τで処置されたが、規定された食物摂取および/または水摂取レジメンに従わない被験体への経口投与から達成されるレベルに比べて、全血中の2’,5’−オリゴアデニレートシンテターゼ(OAS)活性のレベルの増大を達成するのに有効な量のインターフェロン−τを被験体に経口投与する工程を包含する。
【0013】
1つの実施形態において、インターフェロン−τは、ヒツジまたはウシのインターフェロン−τである。
【0014】
インターフェロン−τは、固体投薬形態で、または液体投薬形態として、投与され得る。1つの例示的な投薬量は、少なくとも約1×104単位/日である。
【0015】
別の局面において、本発明は、インターフェロン−τを投与する方法を企図し、この方法は、(i)インターフェロン−τの投与のために選択された被験体の絶食工程;および(ii)インターフェロン−τを被験体に経口投与し、インターフェロン−τを食事を与えた被験体に経口投与した後に得られる血中2’,5’−オリゴアデニレートシンテターゼのレベルに比べて、上昇したレベルの血中2’,5’−オリゴアデニレートシンテターゼを達成する工程、を包含する。
【0016】
1つの実施形態において、絶食工程は、被験体に水を与えない工程をさらに包含する。別の実施形態において、絶食工程は、被験体に少なくとも1時間、より好ましくは少なくとも4時間、なおより好ましくは少なくとも6時間絶食し、その後、経口投与する工程を包含する。
【0017】
別の実施形態において、本発明の方法は、自己免疫状態、ウイルス感染、または細胞増殖に関連する状態の処置における用途を見出す。
【0018】
さらに別の局面において、インターフェロン−τの経口投与の方法の改良が、企図される。この改良は、被験体を絶食し、その後、被験体にIFN−τを経口投与する工程を包含する。このような絶食工程は、インターフェロン−τを摂食後の被験体に経口投与した後に得られる血中2’,5’−オリゴアデニレートシンテターゼのレベルに比べて、増大したレベルの血中2’,5’−オリゴアデニレートシンテターゼを達成するのに有効である。
【0019】
本発明のこれらおよび他の、課題および特徴は、以下の詳細な説明が、添付の図面と共に読まれる場合により完全に明らかになる。
【0020】
(配列の簡単な説明)
配列番号1は、ヒツジインターフェロン−τをコードする合成遺伝子のヌクレオチド配列である。コードされたアミノ酸配列もまたしめされる。
【0021】
配列番号2は、成熟OvIFN−τタンパク質のアミノ酸配列である。
【0022】
(発明の詳細な説明)
(1.定義)
「絶食状態」または「絶食している状態」とは、治療剤(例えば、タンパク質またはペプチド)の経口投与の前に、少なくとも約1時間、好ましくは少なくとも約2時間、より好ましくは少なくとも約4時間、最も好ましくは少なくとも約6時間、全ての食物を絶ち、そして水のみを飲用することを意図する。
【0023】
「水も除く絶食状態」は、治療剤(例えば、タンパク質またはペプチド)の経口投与の前に、少なくとも約1時間、好ましくは少なくとも約2時間、より好ましくは少なくとも約4時間、最も好ましくは少なくとも約6時間、全ての食物および液体(水を含むが、これに限定されない)を絶つことを意図する。
【0024】
「非絶食状態」または「摂食状態」は、治療剤(例えば、タンパク質またはペプチド)の経口投与前の任意の時点における食物および/または水の消費を意図する。
【0025】
「食物を与えない」は、絶食状態を意図する。
【0026】
「経口投与する」または「経口投与」は、被験体の胃および/または胃腸系への化合物の送達を意図する。これらの用語は、化合物の全身送達が口腔または咽頭領域における吸収によって達成される、経口−咽頭送達を含まない。
【0027】
「ペプチド」および「ポリペプチド」は、本明細書中で交換可能に使用され、そしてペプチド結合によって結合されるアミノ酸残基の鎖から構築される化合物をいう。他に記載されない限り、これらのペプチドの配列は、アミノ末端からカルボキシル末端の方向で示される。
【0028】
第1のペプチドまたはポリペプチドが、第2のペプチドまたはポリペプチドフラグメントに「対応する」または「相同である」と言われる場合、これは、このペプチドまたはフラグメントが、プログラムALIGNを変異ギャップマトリクスおよび6以上のギャップペナルティーで使用して5(標準偏差単位)より大きいアライメントスコアを有する場合に、アミノ酸残基における類似性を有することを意味する(Dayhoff,M.O.,ATLAS OF PROTEIN SEQUENCE AND STRUCTURE(1972)Vol.5,National Biomedical Research Foundation,pp.101−110、およびこの巻の補完2、pp.1−10)。2つの配列(またはそれらの部分)は、より好ましくは、上記のALIGNプログラムを使用して最適に整列された場合、そのアミノ酸が、50%以上、好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上同一である場合に、相同である。
【0029】
ポリペプチド配列およびフラグメントは、これが別の配列またはフラグメントの領域と同じアミノ酸残基の配列を有する場合、この別のポリペプチド配列またはフラグメント「由来」である。
【0030】
インターフェロン−τポリペプチドは、インターフェロン−τアミノ酸コード配列由来の約15と172との間のアミノ酸を有するポリペプチドであり、ここで、この15〜172のアミノ酸は、天然のインターフェロン−τにおいて連続している。このような15〜172のアミノ酸領域はまた、2つ以上のこのようなインターフェロン−τ領域(これは通常、天然のタンパク質において不連続である)が連結されているポリペプチドに構築され得る。
【0031】
疾患の処置とは、その疾患の症状を減少し、そして/またはその疾患の重篤度を軽減するのに有効な治療物質を投与することをいう。
【0032】
(II.インターフェロンの投与方法)
(A.インターフェロン−τ)
ヒツジIFNτの172アミノ酸配列が、例えば、米国特許第5,958,402号に記載され、そしてまた、配列番号2として本明細書中に記載される。ヒツジIFN−τと類似の特性および活性を有するIFNτ配列は、他の反芻動物(ウシおよびヤギを含む)から単離されている(Bartol,F.F.ら,Biol.Reprod.32:681−693,(1985);Gnatek,G.G.ら,Biol.Reprod.41:655−664,(1989);Helmer,S.D.ら,J.Reprod.Fert.79:83−91(1987);およびImakawa,K.ら,Mol.Endocrinol.3:127(1989))。ウシIFNτ(BoIFNτ)およびOvIFNτは、(i)妊娠の母性認識における類似の機能を有し、そして(ii)成熟タンパク質間の高度のアミノ酸配列相同性およびヌクレオチド配列相同性を共有する。OvlFNτとBolFNτとの間の核酸配列相同性は、5’非コード領域について、76.3%であり、コード領域について、89.7%であり、そして3’非コード領域について、91.9%である。アミノ酸配列相同性は、80.4%である。相同ウシIFNτ配列は、例えば、Helmerら,J.Reprod.Fert.79:83−91(1987)およびImakawa,K.ら,Mol.Endocrinol.3:127)1989)に記載されている。これらの参考文献のヒツジIFNτおよびウシIFNτの配列は、本明細書中に参考として援用される。
【0033】
(B.投与方法)
本発明を支持して行われる研究において、OvIFN−τを、マウスに経口投与し、そして全血における、2’、5’−オリゴアデニレートシンテターゼ(OAS)活性(IFN作用の認識されたマーカー(Shindo,M.ら,Hepatology 8:366−370,(1988)))の誘導をモニタリングした。以下に記載される研究の全てにおいて、実施例1に記載の手順に従った。OvIFN−τの投与前に、少なくとも6時間、マウスに食物および飲料を与えず、そしてIFN−τを、経口(p.o.)投与により与え、そして比較コントロールについては、腹腔内(i.p.)注射によって与えた。経口投与した場合、IFN−τを、経口給餌針を使用して胃の上部に直接導入した。
【0034】
最初の研究において、OvIFN−τの投与によるマウスの血液OASの誘導に対する絶食状態の効果を評価した。この研究において、マウスを、規定された食物および水摂取レジメンに、6時間供した。6時間のレジメンの後、104UのOvINFτを、経口胃管栄養法または腹腔内注射によって、食物および水と共に投与した。この摂取レジメンは、以下のとおりであった:事例I、食物も水も与えなかった;事例II、水は与えたが食物は与えなかった;事例III、食物のみ与えた;事例IV、食物と水の両方を与えた。全血を、24時間目に心臓から採取し、そしてOAS活性のレベルを決定した。これらの結果を、図1A〜1Dに示す。
【0035】
図1A〜1Dは、ぞれぞれ、上記の段落で規定された事例I〜事例IVの食物および水摂取レジメンに供されたマウスに対応する。図1A〜1Dの結果は、10%マルトース溶液で処置され、インターフェロンで処置されていないマウスの血液OASとして採取された血液OASの誘導(コントロールに対する割合として表される)を示す。これらの結果は、より高い血液OASレベルが、絶食状態の被験体にIFN−τを経口投与することによって誘導されることを示す(食物を与えられていないマウスについて、図1Aおよび図1Bに最も良く示される)。
【0036】
この研究において、同じ量の食物のほとんどが、水の供給ありまたはなしで摂取されることが観察された。しかし、水の摂取は、食物を伴う場合(事例IIIおよび事例IV)より、食物を伴わない場合(事例Iおよび事例II)の方が低かった。いくつかの動物において、6時間の絶食の後、青色色素を含む0.2mlのマルトース溶液を、経口で与え、そして胃および腸におけるこの色素の分布を試験した(データは示さず)。食物の摂取(事例IIIおよび事例IV)の後、マウスの胃は膨張し、そしてこの色素は、おそらく、この食物が色素を吸収したため、主に胃中に存在していた。しかし、この色素は、食物を摂取しない場合、迅速に腸に移動した。この観察は、経口摂取されたOvIFN−τが、腸においてその効果を発揮して、血中で高レベルのOAS活性を誘導し得ることを示唆する。
【0037】
図2は、種々のマウス株:ICR、BALB/c、C57BL/9、NZW/NおよびSJL/Jにおける、血中のOAS活性の誘導に対する、OVIFN−τの胃投与の効果を示す。全ての試験マウスを、OvIFN−τ(105U)で経口的に処置した。コントロールマウスに、IFN−τを含まない10%マルトース溶液を経口で与えた。各バーは、類似の結果を有する、2回実施した1つの実験(3〜5匹のマウス)の平均±S.E.を表す。
【0038】
図2において見られるように、全てのマウス株におけるOAS活性のレベルは、OvIFN−τの経口投与の後に増加したが、この増加の程度は、株によって異なっていた。ICRマウス、C57BL/9マウスおよびNZW/Nマウスにおいて誘導された活性のレベルは、BALB/cマウスおよびSJL/Jマウスにおいて誘導される活性のレベルよりも高かった。
【0039】
別の研究において、OAS活性を、IFN−τの投与後の時間の関数としてモニタリングした。この研究において、動物(ICRマウス)を、IFN−τ(105U)の投与の前に、6時間の絶食(水を与えるが食物を与えない)に供した。血液を、IFN−τの投与後、8時間目、16時間目および24時間目に採取した。これらの結果を、図3Aに示す。
【0040】
図3Aは、IFNτの投与後に指定された時間間隔で採取された血液サンプルにおける血液OASレベル(コントロールに対する割合として表される(上記の図1の記載を参照のこと))を示す。図3Aにおいて、各バーは、類似の結果を有する、2回実施した1つの実験(3匹のマウス)の平均±S.E.を表す。全血におけるOAS活性は、経路(経口またはi.p.注射)とは無関係の時間依存性様式で増加したが、i.p.注射よりも高いレベルが、経口投与の24時間後に観察された。
【0041】
別の研究において、種々の濃度(0、102、103、104および105U)のOvIFN−τを、6時間の絶食後のマウスに与えた。24時間後に血液を採取し、そしてOAS活性をアッセイした。これらの結果を、図3Bに示す。
【0042】
図3Bは、0、102、103、104および105Uの濃度のOvIFNτの送達の24時間後における血液OASレベル(コントロールに対する割合として表される(上記の図1におけるコントロールの記載を参照のこと))を示す。各バーは、類似の結果を有する、2回実施した1つの実験(3のマウス)の平均±S.E.を表す。i.p.注射の後、活性レベルは、低用量(102U)においてさらに高く、そしてOVIFN−τのより高い用量(104および105U)において飽和であった。対照的に、p.o.投与後の活性レベルは、用量依存的に増加した。
【0043】
図3A〜3Bのデータは、経口投与されたIFN−τが、i.p.注射によって誘導されるよりも高レベルの血液OAS活性を誘導することを示す。特に、経口的に誘導された血液OASレベルは、約8時間より長い投与後の時点において、約103Uよりも多いIFNτの投薬量でi.p.注射することにより誘導された血液OASレベルよりも高かった。
【0044】
比較研究を行って、MuIFN−αの経口投与の血液OASレベルに対する効果を測定した。この研究において、ICRマウスを、種々の濃度(0、102、103、および104IU)のMuIFN−αで、p.o.経路またはi.p.経路のいずれかによって処置した。MuIFN−αの投与の16時間後に得られた血中のOAS活性をアッセイした。これらの結果を図4に示す。ここで、各バーは、類似の結果を有する、2回実施した1つの実験(3匹のマウス)の平均±S.E.を表す。
【0045】
図4は、経口でかまたは腹腔内注射によって与えられたMuIFNα(0、102、103、および104IU)の投与後の血液OAS活性の誘導(コントロールに対する割合として表される(上記の図1におけるコントロールの記載を参照のこと))を示す棒グラフである。OAS活性のレベルは、いずれかの投与経路によって用量依存的に増加し、i.p.注射は、p.o.投与よりも血液OAS活性のより良好な誘導を生じた。この結果は、IFN−τの経口投与がIFN−τの腹腔内注射よりも高い血液OASレベルに達するという、IFN−τの場合に観察された結果と反対である。さらに、マウスの体温は、MuIFN−αを投与した場合にわずかに上昇したが、OvIFN−τを使用した場合には上昇しなかった(データは示さず)。
【0046】
(III.有用性)
(A.IFN−τに応答性状態の処置)
上記のように、IFN−τは、抗ウイルス剤、抗増殖剤として、および自己免疫障害の処置において、生物活性を有する(例えば、米国特許第5,958,402号;同第5,942,223号;同第6,060,450号;同第6,372,206号(これらは本明細書中に参考として援用される)を参照のこと)。従って、本発明は、注射によって投与される場合、IFN−τに対して応答性の任意の状態を処置するためのIFN−τの経口投与を企図する。本発明の方法を使用して処置され得る状態および疾患としては、自己免疫疾患、炎症疾患、増殖性疾患および過剰増殖性疾患、ならびに免疫媒介性疾患が挙げられる。
【0047】
特に、本発明の方法は、免疫系過敏に関連する状態を処置するために有利である。4つの型の免疫系過敏がある(Clayman,C.B.編,AMERICAN MEDICAL ASSOCIATION ENCYCLOPEDIA OF MEDICINE,Random House,New York,N.Y.,(1991))。I型、または即時/アナフィラキシー過敏は、アレルゲン(例えば、花粉)に応答するマスト細胞の脱顆粒に起因し、これには、喘息、アレルギー性鼻炎(枯草熱)、じんま疹(urticaria)(じんま疹(hives))、アナフィラキシーショックおよび他のアレルギー性の疾病が挙げられる。II型、または自己免疫過敏は、身体自体の細胞の認識された「抗原」に対する抗体に起因する。III型過敏は、種々の組織にとどまりそしてさらなる免疫応答を活性化する抗原/抗体免疫複合体の形成に起因し、そして血清病、アレルギー性肺胞炎およびブースターワクチン接種の後に時折形成される大腫脹のような状態の原因となる。IV型過敏は、感作されたT細胞由来のリンホカインの放出に起因し、この放出は、炎症反応を生じる。例としては、接触性皮膚炎、麻疹の発疹および特定の薬物に対する「アレルギー」反応が挙げられる。
【0048】
いくつかの個体において特定の状態が過敏を生じ得る機構は、一般に、十分には理解されていないが、遺伝的要因および外因的要因の両方を含み得る。例えば、最近、ウイルスまたは薬物は、自己免疫障害の遺伝子素因をすでに有する個体における自己免疫反応の誘発において役割を果たし得る。いくつかの型の過敏の発生率は、他の素因と相関し得ることが示唆されている。例えば、特定の通常のアレルギーを有する個体は、自己免疫障害に対してより感受性であることが提唱されている。
【0049】
自己免疫障害は、大まかに、主に特定の器官または組織に制限される障害および身体全体に影響する障害に分類され得る。器官特異的障害(器官が罹患する)の例としては、以下が挙げられる:多発性硬化症(神経プロセスにおけるミエリンコーティング)、I型糖尿病(膵臓)、橋本甲状腺炎(甲状腺)、悪性貧血(胃)、アディソン病(副腎)、重症筋無力症(神経筋接合部におけるアセチルコリンレセプター)、慢性関節リウマチ(関節ライニング)、ブドウ膜炎(眼)、乾癬(皮膚)、ギヤン‐バレー症候群(神経細胞)およびグレーヴズ病(甲状腺)、全身自己免疫疾患としては、全身性エリテマトーデスおよび皮膚筋炎が挙げられる。
【0050】
過敏症障害の他の例としては、以下が挙げられる:喘息、湿疹、局所皮膚炎、接触皮膚炎、他の湿疹性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、鼻炎、扁平苔癬、Pemplugus、水疱性類天疱瘡、表皮水疱症、ウリトカリス(uritcaris)、血管性水腫、脈管炎、紅斑、皮膚好酸球増加症、円形脱毛症、アテローム性動脈硬化症、原発性胆汁性肝硬変およびネフローゼ症候群。関連する疾患としては、以下が挙げられる:腸炎(例えば、Coeliac病、直腸炎、好酸球増加性(eosinophilia)胃腸炎、肥満、炎症性腸疾患、クローン病(Chrohn’s disease)および潰瘍性大腸炎)、ならびに食物関連アレルギー。
【0051】
本発明の方法を使用する処置が特に有効な自己免疫疾患としては、以下が挙げられる:多発性硬化症、I型(インシュリン依存性)糖尿病、エリテマトーデス、筋萎縮性側索硬化症、クローン病、慢性関節リウマチ、口内炎、喘息、ブドウ膜炎、アレルギーおよび乾癬。
【0052】
本発明の方法は、治療的に処置するために使用され得、それによって、上記のような自己免疫疾患を軽減し得る。
【0053】
別の実施形態において、本発明の方法は、ウイルス感染に関連する状態を処置するために使用される。IFN−τの抗ウイルス活性は、IFNαに通常関連する毒性効果無しに、幅広い治療適用を有し、そしてIFN−τは、細胞に対する有害な効果無しに、その治療活性に影響する。IFN−τの細胞傷害性を相対的に欠くことによって、そのIFN−τは、インビボ治療剤として非常に価値のあるものになり、IFN−τを、ほとんどの他の公知の抗ウイルス剤および全ての他の公知のインターフェロンとを区別する。
【0054】
IFN−τを含む処方物は、ウイルス複製を阻害するように経口的に投与され得る。経口投与されるIFNτによって処置され得る特定のウイルス疾患の例としては、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、非A、非B、非C型肝炎エプスタイン−バーウイルス感染、HIV感染、ヘルペスウイルス(EB、CML、単純ヘルペス)、パピローマウイルス、ポックスウイルス、ピコルナウイルス、アデノウイルス、ライノウイルス、HTLV I、HTLV II、およびヒトロタウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
別の実施形態において、本発明の方法は、過剰増殖によって特徴付けられる状態の処置について企図される。IFN−τは、強力な抗細胞増殖活性を示す。従って、IFN−τを経口投与することによって細胞増殖を阻害する方法は、制御されない細胞増殖を阻害、予防、または遅延させるために、企図される。
【0056】
経口投与されるIFN−τによって処置され得る特定の細胞増殖障害の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:ヘアリーセル白血病、カポージ肉腫、慢性骨髄性白血病、多発性骨髄腫、表面膀胱癌(superficial bladder cancer)、皮膚癌(基底細胞癌および悪性黒色腫)、腎細胞癌、卵巣癌、低級リンパ性および癌性T細胞リンパ腫(low grade lymphocytic and cutaneous T cell lymphoma)、ならびに神経膠腫。
【0057】
上記に詳述される本発明の方法の使用に加えて、この方法が、家畜動物および野生動物が罹患する種々の免疫系障害の処置に適用され得ることが評価される。例えば、イヌにおける甲状腺機能低下症は、代表的に、甲状腺の進行性の破壊から生じ、これは、リンパ球性甲状腺炎と関連し得る(Kemppainen,R.J.,およびClark,T.P.,Vet Clin N Am Small Anim Pract 24(3):467−476,(1994))。リンパ球性甲状腺炎(ヒトにおける橋本甲状腺炎と類似する)は、自己免疫障害であると考えられる。本明細書中に提示されるガイダンスに従って、イヌおけるリンパ球性甲状腺炎に起因する甲状腺機能低下症は、上記のようにIFN−τで処置され得る。
【0058】
IFN−τでの処置によって軽減され得るイヌにおける別の型の自己免疫障害は、抗核抗体(ANA)陽性、発熱およびセロネガティブ関節炎(Day,M.J.ら,Clin Immunol Immunopathol 35(1):85−91,(1985))によって特徴付けられる。免疫媒介血小板減少症(ITP;Kristensen、A.T.、ら、J Vet Intem Med 8(1):36−39、(1994);Werner、L.L.、ら、Vet Immunol Immunopathol 8(1−2):183−192、(1985))、全身性エリテマトーデス(Kristensenら、1994)、および白血球減少症およびクームズ陽性溶血性貧血(Wernerら、1985)もまた、本発明の方法を使用する処置に受け入れ可能であり得る。
【0059】
(B.処方物および投薬量)
IFN−τを含む経口調製物は、薬学的組成物を調製するための公知の方法に従って処方され得る。一般的に、IFN−τ治療組成物は、有効量のIFN−τが、適切な添加剤、キャリア、および/または賦形剤と組み合わされて、組成物の有効な経口投与を容易にするように、処方される。例えば、IFN−τを含む錠剤およびカプセルは、IFN−τ(例えば、凍結乾燥されたIFN−τタンパク質)と添加剤(例えば、薬学的に受容可能なキャリア(例えば、ラクトース、コーンスターチ、微結晶セルロース、スクロース)、結合剤(例えば、α−形態のデンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン)、崩壊剤(例えば、カルボキシメチルセルロースカルシウム、デンプン、低置換ヒドロキシ−プロピルセルロース)、界面活性剤(例えば、Tween 80、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマー)、抗酸化剤(例えば、L−システイン、亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム)、潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、滑石)など)とを組み合わせることによって調製され得る。
【0060】
さらに、本発明のIFN−τポリペプチドは、固体、微粉または他のキャリア(例えば、ラクトース、サッカロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン(例えば、ジャガイモデンプン、コーンスターチ)、ミロペクチン(millopectine)、セルロース誘導体またはゼラチン)と混合され得、そしてまた潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウムもしくはステアリン酸カルシウム)、またはポリエチレングリコールワックス(錠剤の形成のために圧縮される)を含み得る。いくつかの層のキャリアまたは希釈剤を使用することによって、遅延放出で作動する錠剤が調製され得る。
【0061】
経口投与のための液体調製物は、エリキシル剤、シロップまたは懸濁液の形態(例えば、約0.1重量%〜約30重量%のIFN−τ、糖ならびにエタノール、水、グリセロール、プロピレン、グリコールおよび従来の性質の可能な他の添加剤を含む溶液)で作製され得る。
【0062】
経口的に活性なIFN−τ薬学的組成物は、処置の必要な個体に治療有効量で投与される。用量は、かなり変動し得、障害の重篤度、患者の年齢および体重、患者が受け得る他の投薬などのような因子に依存する。この量または投薬量は、代表的に、担当医によって決定される。投薬量は、代表的に、約1×104単位/日と約1×109単位/日の間、より好ましくは、1×105単位/日と1×108単位/日の間、好ましくは、約1×106単位/日と1×107単位/日の間である。1つの特定の実施形態において、IFN−τは、約1×104単位/日より多く、好ましくは、約1×106単位/日より多く、より好ましくは、約1×108単位/日より多くの投薬量で経口投与される。
【0063】
血漿において安定に高レベルのIFN−τを必要とする障害は、約2〜4時間毎のように頻繁に投与することから利益を得るが、一方、他の障害(例えば、多発性硬化症)は、より少ない頻度の間隔(例えば、48時間毎に1回)で治療的有効用量を投与することによって有効に処置され得る。個々の用量の投与速度は、代表的に、最も低い合計の投薬量の投与を可能にしながら、処置される疾患の重篤度を軽減するように、担当医によって調節される。
【0064】
一旦、患者の状態の改善が生じると、必要な場合、維持用量が投与される。引き続いて、投与の投薬量または投与の頻度、あるいはその両方は、症状の関数として、改善状態が保持されるレベルまで減少され得る。
【0065】
上記のように、IFN−τの経口投与は、規定の食物/水摂取レジメンに沿って処方される。図1A〜3Bに関して記載される支持研究について選択された食物/水摂取レジメンが、単なる例示であることが理解される。本発明は、食物および/または水が、タンパク質投薬の前の種々の時間(6時間より長いまたは短い範囲がここで例示される)の間、絶ち得ることを企図した。好ましい実施形態において、食物および/または水は、IFN−τの経口投与の前に少なくとも約1時間絶たれ、より好ましくは、少なくとも約2時間、さらにより好ましくは、少なくとも約6時間、絶たれる。
【0066】
もちろん、本発明に従うIFN−τの経口投与が、他の治療と組み合わせて使用され得ることが理解される。例えば、IFN−τは、自己免疫応答が指向する抗体の投与を伴い得る。例としては、多発性硬化症を処置するためのミエリン基礎タンパク質およびIFN−τの同時投与;慢性関節リウマチを処置するためのコラーゲンおよびIFN−τの同時投与、および重症筋無力症を処置するためのアセチルコリンレセプターポリペプチドおよびIFN−τの同時投与が挙げられる。
【0067】
さらに、IFN−τは、自己免疫疾患(例えば、多発性硬化症)を処置するために、公知の免疫抑制剤(例えば、ステロイド)とともに経口投与され得る。免疫抑制剤は、IFN−τと相乗的に作用し得、等価線量のIFN−τまたは免疫抑制剤単独で得られ得るよりも効果的な処置を生じる。
【0068】
同様に、癌またはウイルス疾患の処置において、IFN−τは、治療的有効量の1つ以上の化学療法剤(例えば、ブスルファン、5−フルオロウラシル(5−FU)、ジドブジン(AZT)、ロイコボリン、メルファラン、プレドニゾン、シクロホスファミド、ダカルバジン、シスプラチン、ジピリダモールなど)とともに投与され得る。
【0069】
(IV.実施例)
以下の実施例は、本発明を説明するが、本発明を限定することをいかなるようにも意図しない。
【0070】
(実施例1)
(経口投与の方法)
ICR系、BALB/c系、C57BL/9系、NZW/N系およびSJL/J系の、病原体を有さない5週齢の雌性マウスを、Japan SLC.Inc.,Hamamatsuから購入した。マウスを実験の前に、実験室において1週間、飼育した。
【0071】
組換えヒツジIFN−τ(OvIFN−τ)を、Pepgen Corporation(Alameda,CA)から得た。IFNは、OvIFN−τ1のサブタイプに属する。この研究に使用される調製は、VSVでチャレンジしたMDBK細胞においてアッセイし、そしてヒトIFN−αに対して標準化した場合、5×108単位(U)/mgタンパク質の比活性を有した。天然のマウスIFN−α(MuIFN−α)は、Sumitomo Pharmaceutical Co.(Osaka,Japan)から供給され、この比活性は、1×108国際単位(IU)/mgのタンパク質であった。
【0072】
マウスへの投与のために、IFN−τを、10%マルトースを含む溶液に溶解した。0.2mlのサンプルを、マウス(6週齢雌性)に、経口的(p.o.)処置または腹腔内(i.p.)注射のいずれかによって投与した。経口的に与えられる場合、サンプルを、20ゲージの経口給餌針を使用して、胃の上部に直接導入した。投与の前に、マウスに、午後1時から始まり午後7時で終わる6時間の間、食物および飲料の両方を与えなかった。絶食後、IFNを、p.o.経路またはi.p.経路のいずれかによって投与し、食物および飲料を、6時間で与えた。次いで、24時間で、心臓から全血を得た。
【0073】
全血における2’,5’−オリゴアデニレートシンテターゼ(OAS)活性を、Eikenの2−5A RIAキットを用いてアッセイした。希釈した血液を、ポリ:C−アガロースゲルと混合し、ATPを、ゲルを洗浄した後に添加し、そして生成された2−5Aを、RIA法によってアッセイした(Shindo,M.ら、1988)。各サンプルにおいて、アッセイを2回実施した。血液OASのレベルの推定のために、少なくとも3匹のマウスを使用した。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】図1A〜1Dは、OvIFN−τの投与によるマウス中の血液OASの誘導に対する絶食状態の効果を示す棒グラフである。血液OAS誘導は、コントロールの%として示され、インターフェロンを含まない10%マルトースの溶液で処置されたマウス中の血液OASとして解釈される。処置されたマウスは、示される摂取レジメンの6時間後、104UのOvINFτ(腹腔内注射または経口投与によって)を受容した:図1A、絶食絶水;図1B、絶食して水;図1C、絶水して食物;図1D、食物および水の両方。各バーは、同様の結果を有する2回実施した1つの実験(3匹のマウス)の平均±S.E.を示す。
【図2】図2は、OvIFN−τ(105U)の経口投与後の、いくつかのマウス株(ICR、BALB/c、C57BL、NZW/NおよびSJL/J)における血液OAS濃度(pmol/dL)を示す棒グラフである。コントロールマウスは、IFNを含まない10%マルトースの溶液を経口的に受容した。各バーは、同様の結果を有する2回実施した1つの実験(3〜5匹のマウス)の平均±S.E.を示す。
【図3A】図3A〜3Bは、6時間絶食後のOvIFNτの投与後の、マウス中の血液OAS活性の誘導を示す棒グラフであるである。IFNτは、経口的にかまたは腹腔内注射によって投与された。図3Aは、血液OASレベルを示し、時間0ならびにIFNτ(105U)投与の、8時間後、16時間後、および24時間後に採取した、血液サンプル中のコントロールの%(上記図1における記載を参照のこと)として表される。
【図3B】図3A〜3Bは、6時間絶食後のOvIFNτの投与後の、マウス中の血液OAS活性の誘導を示す棒グラフであるである。IFNτは、経口的にかまたは腹腔内注射によって投与された。図3Bは、血液OASレベルを示し、0、102、103、104、および105Uの濃度のOvIFNτの送達の24時間後の、コントロールの%として表される。各バーは、同様の結果を有する2つの実施された実験の1つの実験(3匹のマウス)の平均±S.E.を示す。
【図4】図4は、血液OAS活性の誘導を示し、経口的にかまたは腹腔内注射によってICRマウスに与えられたMuIFNα(0、102、103、および104IU)の投与による、コントロールの%(上記図1におけるコントロールの記載を参照のこと)として表される。血液中のOAS活性は、IFNα投与16時間後にアッセイされた。各バーは、同様の結果を有する2つの実施された1つの実験(3匹のマウス)の平均±S.E.を示す。
【配列表】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インターフェロン−τ応答性状態の処置に用いる組成物であって、インターフェロン−τの経口投薬形態を含み、該投薬形態は、絶食状態の被験体に投与されて、非絶食状態の患者へのインターフェロン−τの経口投与後に得られる血中2’,5’−オリゴアデニレートシンテターゼのレベルと比較して上昇したレベルの血中2’,5’−オリゴアデニレートシンテターゼを達成する、組成物。
【請求項2】
前記インターフェロン−τが、ヒツジまたはウシのインターフェロン−τである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記インターフェロン−τが、配列番号2で示されるアミノ酸配列に相当する配列を有する、請求項1または請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記経口投与が、固体投薬形態または液体投薬形態の経口投与による、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記経口投与が、少なくとも約1×104単位/日の用量である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記インターフェロン−τ応答性状態が、自己免疫状態、ウイルス感染、または細胞増殖により特徴付けられる障害である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
絶食状態の被験体へとインターフェロン−τを経口投与して、摂食後の被験体へのインターフェロン−τの経口投与後に得られる血中2’,5’−オリゴアデニレートシンテターゼのレベルと比較して上昇したレベルの血中2’,5’−オリゴアデニレートシンテターゼを達成するための医薬の製造のための組成物の使用。
【請求項8】
前記絶食状態が、経口投与前の少なくとも1時間の間、前記被験体に食物を与えないことによって達成される、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
前記絶食状態が、経口投与前の少なくとも2時間の間、前記被験体に食物を与えないことによって達成される、請求項7に記載の使用。
【請求項10】
前記絶食状態が、経口投与前の少なくとも6時間の間、前記被験体に食物を与えないことによって達成される、請求項7に記載の使用。
【請求項11】
前記絶食状態が、水も排除した絶食状態である、請求項7〜10のいずれか1項に記載の使用。
【請求項12】
前記インターフェロン−τが、ヒツジまたはウシのインターフェロン−τである、請求項7〜10のいずれか1項に記載の使用。
【請求項13】
前記インターフェロン−τが、配列番号2で示される配列に相当するアミノ酸配列を有する、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
前記医薬が、固体投薬形態または液体投薬形態である、請求項12に記載の使用。
【請求項15】
前記投薬形態が、少なくとも約1×104単位/日の用量のインターフェロン−τを含む、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
自己免疫状態、ウイルス感染、または細胞増殖により特徴付けられる障害の処置のための、請求項14に記載の使用。
【請求項1】
インターフェロン−τ応答性状態の処置に用いる組成物であって、インターフェロン−τの経口投薬形態を含み、該投薬形態は、絶食状態の被験体に投与されて、非絶食状態の患者へのインターフェロン−τの経口投与後に得られる血中2’,5’−オリゴアデニレートシンテターゼのレベルと比較して上昇したレベルの血中2’,5’−オリゴアデニレートシンテターゼを達成する、組成物。
【請求項2】
前記インターフェロン−τが、ヒツジまたはウシのインターフェロン−τである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記インターフェロン−τが、配列番号2で示されるアミノ酸配列に相当する配列を有する、請求項1または請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記経口投与が、固体投薬形態または液体投薬形態の経口投与による、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記経口投与が、少なくとも約1×104単位/日の用量である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記インターフェロン−τ応答性状態が、自己免疫状態、ウイルス感染、または細胞増殖により特徴付けられる障害である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
絶食状態の被験体へとインターフェロン−τを経口投与して、摂食後の被験体へのインターフェロン−τの経口投与後に得られる血中2’,5’−オリゴアデニレートシンテターゼのレベルと比較して上昇したレベルの血中2’,5’−オリゴアデニレートシンテターゼを達成するための医薬の製造のための組成物の使用。
【請求項8】
前記絶食状態が、経口投与前の少なくとも1時間の間、前記被験体に食物を与えないことによって達成される、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
前記絶食状態が、経口投与前の少なくとも2時間の間、前記被験体に食物を与えないことによって達成される、請求項7に記載の使用。
【請求項10】
前記絶食状態が、経口投与前の少なくとも6時間の間、前記被験体に食物を与えないことによって達成される、請求項7に記載の使用。
【請求項11】
前記絶食状態が、水も排除した絶食状態である、請求項7〜10のいずれか1項に記載の使用。
【請求項12】
前記インターフェロン−τが、ヒツジまたはウシのインターフェロン−τである、請求項7〜10のいずれか1項に記載の使用。
【請求項13】
前記インターフェロン−τが、配列番号2で示される配列に相当するアミノ酸配列を有する、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
前記医薬が、固体投薬形態または液体投薬形態である、請求項12に記載の使用。
【請求項15】
前記投薬形態が、少なくとも約1×104単位/日の用量のインターフェロン−τを含む、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
自己免疫状態、ウイルス感染、または細胞増殖により特徴付けられる障害の処置のための、請求項14に記載の使用。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【公表番号】特表2006−501137(P2006−501137A)
【公表日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−561668(P2003−561668)
【出願日】平成15年1月16日(2003.1.16)
【国際出願番号】PCT/US2003/001596
【国際公開番号】WO2003/061728
【国際公開日】平成15年7月31日(2003.7.31)
【出願人】(504265086)ペプジェン コーポレイション (5)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年1月16日(2003.1.16)
【国際出願番号】PCT/US2003/001596
【国際公開番号】WO2003/061728
【国際公開日】平成15年7月31日(2003.7.31)
【出願人】(504265086)ペプジェン コーポレイション (5)
【Fターム(参考)】
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