説明

インターフェロンとリバビリンとの併用治療効果の検出方法および検出キット

【課題】インターフェロンとリバビリンとの併用治療の有効性を治療開始前又は治療開始後の早期に判定することができる方法を提供すること。
【解決手段】C型肝炎ウィルスキャリアの被験者において、インターフェロンとリバビリンの併用治療効果をインビトロで検出する為に、インターフェロンとリバビリンの投与前後のそれぞれの細胞中の特定生体物質の発現レベルを測定し比較し、比較により見出される該特定生体物質の発現レベルの差異があることを、インターフェロンとリバビリンの併用治療の有効性を示す指標とする。特定生体物質は、ANXA3、PCNA、LMNB1、PAK1、4EBP1、KARS、PSME2、ENO1、STAT1、PHB、SP−100、およびPPP1CBからなる群より選択される少なくとも1つである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、C型肝炎ウィルスに起因するC型肝炎に対するIFN(インターフェロン)とリバビリンとの併用治療の有効性を検出する方法およびその為の検出キットに関する。
【背景技術】
【0002】
C型肝炎は、C型肝炎ウィルス(HCV)に感染することにより起こる疾患である。HCVは、直径50nmの球形で外殻(エンベロープ)を持つウィルスで、フラビウィルス科へパシウィルス属に属する、ゲノムの大きさが約9.5kb(約9500塩基) の線状1本鎖RNAを遺伝子に持つ。HBV発見後、輸血のHBVスクリーニングを実施していても減少しない輸血後肝炎の原因とされていたNANBウィルスを含むと思われるチンパンジーの血漿中から、1988年、カイロン社によって発見された。
【0003】
C型肝炎の遺伝子型は多様であり、遺伝子型は現在、タイプ1a(I)、 1b(II)、2a(III)、2b(IV)、3a、3b、4、5a、6a という分類がされている。このようなHCVウィルスの感染細胞における複製メカニズムはほとんど知られていないが、最近になって、細胞内に存在するPAK1(P21活性化キナーゼ1)との関連が報告されている(非特許文献1)。
【0004】
HCVは、初感染で劇症化する例はまれであるが、急性肝炎発症後、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)値が高値を保ち、ウィルスも陽性のまま持続して慢性肝炎に移行する例が多く、無症候性キャリアとなる場合もある。初感染者の約70 % はキャリアとなり慢性化すると報告されている。
【0005】
さらに、C型慢性肝炎は自然治癒することはまれであり、患者の30〜50%が、感染後20〜30年の間に肝硬変を発症する。また、肝硬変患者の60〜80%が肝癌を発症する。
【0006】
C型慢性肝炎の治療法としては、従来インターフェロン(IFN) が用いられてきたが、奏効率は30%程度に過ぎなかった。この為、近年では、IFNと抗ウィルス薬の1 種であるリバビリン(RBV)の併用治療が行なわれ、難治例においても治療効果の向上が見られる。また、ポリエチレングリコールを結合してIFNの血中半減期を長くしたポリエチレングリコール化IFNとRBVの併用治療もある。
【0007】
しかしながら、上記の併用治療でもなお著効例の割合は約50〜60%程度であり、約半数の患者に対しては効果が認められない。その一方で、例えば、ペグインターフェロンアルファ-2bとリバビリン併用治療の薬剤投与期間は24〜48週間にも及び、発熱、頭痛、倦怠感、食欲不振、体の痒み、脱毛、血小板減少等の副作用も報告されていることなど、IFNとRBVの併用治療は、特に高齢者や体力のない患者には負担が大きい。この為、IFNとRBVの併用治療が有効か否かを治療前又は治療初期に判定することができれば、併用治療が効かない患者に対して、副作用のある療法を避けることができ、また、そのような患者に対して他の治療方法を施すことが可能になる。
【0008】
C型肝炎治療のためのIFNとRBVの併用治療の有効性の判定方法として、遺伝子型1bのC型肝炎ウィルスに感染している患者から採取された検体中に含まれるC型肝炎ウィルスのコア領域中のアミノ酸配列の第70番目のアルギニンが他のアミノ酸に変異しているか否か及び第91番目のアミノ酸がメチオニンか否かを調べることが提案されている(特許文献1)。しかしながら、この方法では、ウィルス中の変異しているアミノ酸の同定まで行うことが必要であり、かつ感染しているウィルスの型が1b以外であると適用できない。また、ウィルスのアミノ酸の同定までを必要とする為、煩雑さは免れ得ない。
【0009】
一方、IFNとRBVとをウィルスに感染していないヒト肝がん由来Huh−7細胞に対し適用した結果、STAT1、MxA−1、PPP1CB、SP-100、PHBおよびPTBP1のタンパク質の発現量が増加していることが見出されている(非特許文献2および3)。
【0010】
【特許文献1】特開2007−43985号公報
【非特許文献1】H. Ishida, et al., J. Biol. Chem. 282(16)、11836−11848(2007)
【非特許文献2】日本農芸化学会2007年度(平成19年度)大会 [東京] 講演要旨集、p86、演題番号2A22P12
【非特許文献3】平成18年度日本製化学会九州支部例会 プログラム講演要旨集、p47、演題番号A−20
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
C型肝炎治療のためのIFNとRBVの併用治療の有効性を迅速に検出する為の手段については、未だに報告がなく、IFNとRBVの併用治療の有効性を判定する、簡便で且つ短時間での正確な検出法確立が待望されている。
【0012】
本発明の目的は、IFNとRBVの併用治療の有効性を治療開始前又は治療開始後の初期に判定することができる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
そこで、本発明者らは、鋭意検討を行い、IFNとRBVの併用治療効果が有効な被験者の細胞において、特定生体物質の発現レベルに変化が現れることを見出し、これらの特定生体物質をマーカーとしてIFNとRBVの併用治療効果の有効性を検出する方法を見出し、本発明に到達した。
【0014】
すなわち、本発明は、C型肝炎ウィルスキャリアの被験者における、インターフェロンとリバビリンの併用治療効果をインビトロで検出する方法であって、
インターフェロンとリバビリンの投与前後のそれぞれの細胞中の特定生体物質の発現レベルを測定し比較する工程を含み、
ここで、該比較により見出される該特定生体物質の発現レベルの差異があることを、インターフェロンとリバビリンの併用治療の有効性を示す指標とし、
該特定生体物質が、ANXA3、PCNA、LMNB1、PAK1、4EBP1、KARS、PSME2、ENO1、STAT1、PHB、SP−100、およびPPP1CBからなる群より選択される少なくとも1つである、検出方法、を提供する。
【0015】
上記検出方法において、上記インターフェロンとリバビリンの投与前後のそれぞれの細胞中の特定生体物質の発現レベルを測定し比較する工程が、インターフェロンとリバビリンの投与前の前記被験者から採取した細胞中の特定生体物質の発現レベルとインターフェロンとリバビリンの投与後の該被験者から採取した細胞中の該特定生体物質の発現レベルとを測定し比較する工程であり得る。
【0016】
上記検出方法において、上記インターフェロンとリバビリンの投与前後のそれぞれの細胞中の特定生体物質の発現レベルを測定し比較する工程が、インターフェロンとリバビリンの投与前の上記被験者から採取した細胞中の特定生体物質の発現レベルと、該細胞にインビトロでインターフェロンとリバビリンを投与した後に該細胞中に含まれる特定生体物質の発現レベルとを測定し比較する工程であり得る。
【0017】
上記細胞は、肝臓細胞または末梢血由来リンパ球であり得る。
【0018】
上記特定生体物質が、ANXA3、PCNA、LMNB1、PAK1、4EBP1、KARS、PSME2、STAT1、PHB、およびSP−100からなる群より選択される少なくとも1つであり、その特定生体物質の発現レベルは、該特定生体物質をコードする遺伝子のmRNA転写物を定量することによって測定され得る。
【0019】
上記特定生体物質の発現レベルのインターフェロンとリバビリンの投与後の細胞中において、投与前の細胞中よりも増加していることが、インターフェロンとリバビリンの併用治療の有効性を示す指標になり得る。
【0020】
上記特定生体物質の発現レベルは、該特定生体物質、すなわちタンパク質自体を定量することによって測定され得る。
【0021】
上記特定生体物質は、ANXA3、PCNA、PAK1、4EBP1、KARS、PSME2、ENO1、STAT1、PHB、SP−100、およびPPP1CBからなる群より選択される少なくとも1つであり、該特定生体物質のタンパク質の発現レベルが、インターフェロンとリバビリンの投与後の細胞中において、投与前の細胞中よりも増加していることが、インターフェロンとリバビリンの併用治療の有効性を示す指標になり得る。
【0022】
上記特定生体物質が、LMNB1であり、上記特定生体物質のタンパク質の発現レベルが、インターフェロンとリバビリンの投与後の細胞中において、投与前の細胞中よりも減少していることが、インターフェロンとリバビリンの併用治療の有効性を示す指標になり得る。
【0023】
HCVのタイプがHCV1b型であり得る。
【0024】
上記インターフェロンは、ペグインターフェロンであり得る。
【0025】
本発明はまた、C型肝炎ウィルスキャリアにおける、インターフェロンとリバビリンの併用治療効果を検出する為のキットであって、配列表の配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、または34に示す塩基配列に含まれる連続する少なくとも10ヌクレオチド、又はそれらと相補的な塩基配列の少なくとも10ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドの少なくとも1つを含んでなる、C型肝炎ウィルスキャリアにおけるインターフェロンとリバビリンの併用治療効果を検出する為のキットを提供する。
【0026】
本発明はまた、C型肝炎ウィルスキャリアにおける、インターフェロンとリバビリンの併用治療効果を検出する為のキットであって、ANXA3、PCNA、LMNB1、PAK1、4EBP1、KARS、PSME2、ENO1、STAT1、PHB、SP−100、およびPPP1CBからなる群より選択される少なくとも1つのタンパク質をバイオマーカーとして含む、検出キットを提供する。
【発明の効果】
【0027】
これまで、IFNとRBVを数週間投与してみなければわからなかった併用治療の効果が、本発明の方法により、特定の生体内タンパク質の発現レベルおよび/または該生体内タンパク質をコードする遺伝子の発現レベルを測定し比較することで、早期に且つ簡便で的確に検出できるようになり、投与患者の負担が大幅に軽減される。
【0028】
また、これらの高価な医薬を投与して患者や社会に経済的な負担をかけることを避けることもでき、C型慢性肝炎の治療に大いに貢献することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明で、C型肝炎ウィルスキャリアというときは、遺伝子型で、タイプ1a(I)、 1b(II)、2a(III)、2b(IV)、3a、3b、4、5a、または6a のいずれかのウィルスに感染している対象を示す。遺伝子型1bのC型慢性肝炎が日本に多いことから、この型のウィルスに感染している対象を表す場合も多いが、ここでは特に限定はしない。
【0030】
本発明の方法により有効性が判定される治療方法は、IFNとRBVの併用治療である(以下、単に「併用治療」ということがある)。ここで、IFNの型は特に限定されず、C型慢性肝炎の治療に用いられるいずれのIFNであってもよい。通常、IFNα、特にIFNα2bとIFNα2aが用いられるが、これらに限定されるものではない。また、IFNの血中半減期を長くするために、IFNにポリエチレングリコールを結合させたPEG−IFNも用いられており、本願明細書及び特許請求の範囲における「インターフェロン」は、特に断らない限り、または文脈上そうでないことが明らかな場合を除き、PEG−IFNのような、C型慢性肝炎の治療に用いられるIFN誘導体をも包含する意味で用いる。なお、併用治療は、現在の遺伝子型1bのC型慢性肝炎の治療ガイドラインでは、血清中のHCV RNA濃度が100kIU/mL以上の高ウィルス量の場合、PEG−IFNα2bとRBVの併用治療を48週間、併用治療非適応例には、IFN(非PEG化)を2年間投与するとされており、また、血清中のHCV RNA濃度が100〜500kIU/mLの、高ウィルス症例のうちの中程度の場合には、PEG−IFNα2aの単独投与も可とされている。一方、血清中のHCV RNA濃度が100kIU/mL未満の低ウィルス量の場合には、IFN(非PEG化)を24週間又はPEG−IFNα2aを24〜48週間投与するとされている。さらに、再投与の場合、高ウィルス量の場合には上記した初回投与と同様であり、低ウィルス量の場合には、IFNα2b(非PEG化)とRBVの併用治療24週間又はPEG−IFNα2aの単独投与48週間又はIFN(非PEG化)の単独投与48週間とされている。なお、本発明の方法により有効性が判定される併用治療は、必ずしもこのガイドラインに従った併用治療に限定されるものではなく、他のIFNとRBVの併用治療であってもよい。
【0031】
本発明の方法に供される細胞は、HCVに感染した患者から採取されたものであれば何ら限定されず、血液のような体液や、肝生検検体由来の細胞であってよい。これらのうち、採取が容易で感度も良好な血液(全血の他に、血清、血漿のような血液成分も包含する)由来の細胞が好ましく、末梢血由来のリンパ球が特に好ましい。
【0032】
本発明の方法においては、IFNとRBVの併用治療前と後との細胞に含まれる特定生体物質発現レベルを測定する。ここで、「特定生体物質」とは、アネキシンA3、核内増殖抗原(PCNA)、ラミンB1(LMNB1)、セリン/スレオニンプロテインキナーゼPAK1、翻訳開始因子4EBP1、リシルtRNAシンセターゼ、プロテアソームアクティベーターコンプレックスサブユニット2、α−エノラーゼ、転写因子STAT1,プロヒビチン、核自己抗原Sp−100、およびセリン/スレオニンプロテインフォスファターゼPP−1βカタリティックサブユニットPPP1CBからなる群より選択される少なくとも1つの物質を指す。本明細書においては、これらの物質をコードする遺伝子を表すそれぞれの記号、ANXA3、PCNA、LMNB1、PAK1、4EBP1、KARS、PSME2、ENO1、STAT1、PHB、SP−100、およびPPP1CBで、それぞれの特定物質を表す場合もあり、これらの名称は、タンパク質、遺伝子、mRNAのいずれに対しても互換可能に使用することとする。
【0033】
これらをより詳細に説明する。すなわち、アネキシンA3は、カルシウムおよびリン脂質に結合するタンパク質ファミリーの1つで、細胞の成長およびシグナル伝達経路において役割を果たすタンパク質として知られており、また、血管形成作用の可能性(Biochem BiophysRes Commun. 2005 Dec 2;337(4):1283-7. Epub 2005 Oct 10)および抗凝固作用も知られている。このタンパク質をコードする遺伝子は、ANXA3と表示される。ここで、アネキシンA3は、代表的には配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列を有し、それをコードする遺伝子配列として、代表的には、配列表の配列番号2に示す塩基配列をあげることができる。
【0034】
核内増殖抗原Proliferating Cell Nuclear Antigen(PCNA)は、以前はサイクリンとも呼ばれていた、増殖関連抗原であり、正常細胞と形質転換した細胞の両方にみられる細胞内ポリペプチド抗原である。PCNA合成レベルは、細胞周期中の細胞増殖及びDNA合成の程度に相関する。PCNAは、DNAポリメラーゼδの補助タンパクとして同定され、DNAの複製部位に強く結合することが知られている。ここで、PCNAは、代表的には配列表の配列番号3に示されるアミノ酸配列を有し、それをコードする遺伝子配列として、代表的には、配列表の配列番号4に示す塩基配列をあげることができる。
【0035】
ラミンB1(LMNB1)は、核内膜に隣接して存在するタンパク質の二次元マトリックスからなる。ラミンファミリーは、マトリックスを作り、進化の過程で高度に保存されている。有糸分裂の間、ラミンタンパク質がリン酸化され、ラミナマトリックスは可逆的に分解される。ラミンタンパク質は核の安定性、染色質構造、遺伝子発現に関与すると考えられている。脊椎動物のラミンはAとBの2つの型からなる。この遺伝子は2つ存在するB型タンパク質の1つ、B1を指令する。ここで、ラミンB1は、代表的には配列表の配列番号5に示されるアミノ酸配列を有し、それをコードする遺伝子配列として、代表的には、配列表の配列番号6に示す塩基配列をあげることができる。
【0036】
セリン/スレオニンプロテインキナーゼPAK1は、Rho(GTPase)を細胞骨格の再編成および核への情報伝達に結びつける重要な作動体であるセリン/トレオニンp21活性化リン酸化酵素ファミリーであるPAKタンパク質の1つである。哺乳類細胞での細胞増殖、分化、遊走、細胞死のコントロールを含む多くの細胞内機能において重要な役割を担っている。PAK1が関与するPI3K/mTOR経路は、細胞グロースやmRNA翻訳の調節を行っている経路として知られており、インシュリン、EGF(表皮成長因子)等の成長因子によって活性化されることが報告されている。この経路の中で、PAK1自身もリン酸化されることにより活性化される。ここでは、「PAK1」には、リン酸化される前のPAK1とリン酸化された活性型PAK1も含まれる。ここで、PAK1は、代表的には配列表の配列番号7に示されるアミノ酸配列を有し、それをコードする遺伝子配列として、代表的には、配列表の配列番号8に示す塩基配列をあげることができる。そして、配列番号7に示されるアミノ酸配列中において、リン酸化され得る部位としては、21位のセリン、57位のセリン、84位のスレオニン、144位のセリン、149位のセリン、199位のセリン、204位のセリン、212位のスレオニン、220位のセリン、223位のセリン、225位のスレオニン、423位のスレオニンが挙げられる。
【0037】
真核翻訳開始因子4E結合タンパク質1(4EBP1)は、インスリンによって急速に燐酸化される蛋白として見出されたが、その後この蛋白はmRNAの翻訳開始に重要な役目を果たしていることが明らかとなった。ここで、4EBP1は、代表的には配列表の配列番号9に示されるアミノ酸配列を有し、それをコードする遺伝子配列として、代表的には、配列表の配列番号10に示す塩基配列をあげることができる。
【0038】
リシルtRNAシンセターゼ(KARS)は、リボソームでの遺伝暗号の翻訳における基質となるアミノアシルtRNAの合成を担う酵素であり、対応するアミノ酸をtRNAに担わせる役割を果たす。リシル-tRNA合成酵素はtRNA合成酵素のクラスIIファミリーに属し、細胞質に局在するホモ二量体で、ヒト自己免疫疾患である多発性筋炎または皮膚筋炎における自己抗体の標的になることが示されている。また、KARS過剰発現がHIVのプロテアーゼ活性を減少させることが報告されている。HIVプロテアーゼは、HIV感染細胞においてウィルスの前駆体タンパク質を切断することによってウィルス酵素及び構造タンパク質を生じさせ、ウィルスの成熟を誘導し、ウィルスは感染性を示すようになる。HCVとKARSの関連性についての報告は成されていない。ここで、KARSは、代表的には配列表の配列番号11または13に示されるアミノ酸配列を有し、それをコードする遺伝子配列として、代表的には、配列表の配列番号12または14に示す塩基配列をあげることができる。
【0039】
プロテアソームアクティベーターコンプレックスサブユニット2(PSME2)は、多機能(タンパク質分解酵素)複合体として知られるプロテアソームのサブユニットである。プロテアソームは、2つの複合体(20Sコアと19S調節因子)からなる非常に規則正しい構造をもつ。20Sコアは28個の非同一サブユニットの4つの環状構造で構成される(2つの環は7個のαサブユニット、もう2つの環は7個のβサブユニットで構成される)。19S調節因子は基部(6個のATPaseサブユニットと2個の非ATPaseサブユニットをもつ)とふた(最大10の非ATPaseサブユニットをもつ)で構成される。プロテアソームは真核細胞中に高濃度で分布し、非リソソーム経路のATP/ユビキチン依存過程でペプチドを切断する。修飾されたプロテアソーム(免疫プロテアソーム)の本来の機能は、MHCクラスIペプチド類のプロセシングである。免疫プロテアソームには、11S調節因子もしくはPA28とよばれる、19S調節因子置き換わる選択的な調節因子がある。11S調節因子の3つのサブユニット(α、β、γ)が特定されており、インターフェロンによって誘導される2つのサブユニットのうちの1つ、βサブユニットをPSME2遺伝子がコードする。3つのβと3つのαサブユニットが結合して、ヘテロ六量体の環を形成する。ここで、PSME2は、代表的には配列表の配列番号15に示されるアミノ酸配列を有し、それをコードする遺伝子配列として、代表的には、配列表の配列番号16に示す塩基配列をあげることができる。
【0040】
α−エノラーゼは、解糖系やグロース調節など様々なプロセスで役割を持つ多触媒な酵素であり、哺乳類でみられる3つのエノラーゼ(イソ酵素)のうちの1つ、ホモ二量体可溶性酵素αエノラーゼであり、これをコードする遺伝子が、より短い単量体構造水晶体タンパク質であるτクリスタリンもコードする。2つのタンパク質は、同じmRNAから作られる。完全長タンパク質(イソ酵素)は細胞質にみられる。短いほうのタンパク質は、選択的翻訳開始点から生産され、核に局在し、c-mycプロモーター内の配列要素に結合する。ENO1自体には抗ウィルス活性との関連は報告されていない。一方で、このENO1のMBP−1というアイソフォーム(相同性は97%)がHCV以外のウィルス感染細胞のアポトーシスを誘導していることが証明されている。ここで、α−エノラーゼは、代表的には配列表の配列番号17または19に示されるアミノ酸配列を有し、それをコードする遺伝子配列として、代表的には、配列表の配列番号18または20に示す塩基配列をあげることができる。
【0041】
転写因子STAT1は、型IFNが抗ウィルス状態を誘導する際に働くJAK‐STATシグナル経路に関与するタンパク質である。JAK-STATシグナル経路では、IFNがレセプターに結合した後、シグナルが伝わり抗ウィルスタンパク質であるMx1、PKR、2’,5’-OAS、p53などの発現が誘導され、細胞内で抗ウィルス状態が誘導される。サイトカインや増殖因子と反応してSTATファミリーのタンパク質は、受容体に付随するリン酸化酵素によってリン酸化され、次にホモ二量体もしくはヘテロ二量体を形成する。これらの二量体は細胞核に移り、そこで転写活性化因子として作用する。このタンパク質は、インターフェロンの他にも、EGF、PDGF、IL6などのさまざまなリガンドの作用で活性化することが知られている。このタンパク質が発現を仲介するさまざまな遺伝子は、別の細胞からの刺激や病原体に応じた細胞生存に重要であると考えられている。(転写変異体あり)ここで、STAT1は、代表的には配列表の配列番号21または23に示されるアミノ酸配列を有し、それをコードする遺伝子配列として、代表的には、配列表の配列番号22または24に示す塩基配列をあげることができる。
【0042】
プロヒビチン(PHB)は、普遍的に発現される進化的に保存された遺伝子で、細胞増殖の負の調節因子であると思われ、腫瘍抑制因子である可能性をもつ。PHBの突然変異は、散発性乳癌に関連している。プロヒビチンは、異なった長さの3'非翻訳領域をもつ2つの転写物として発現される。長いほうの転写物は増殖中の組織と細胞により高いレベルで存在し、この長い方の'3非翻訳領域がトランス作用調節RNAとして機能する可能性をもつことを示唆している。同タンパク質は転写因子であるE2F1の活性を抑制することによってがん抑制因子として機能し、p53の転写活性を上げることも報告されている。p53は抗腫瘍効果のみならず、HCV以外のウィルス感染細胞に対するアポトーシス誘導効果も報告されており、抗ウィルスタンパク質としても機能している。PHBは、代表的には配列表の配列番号25に示されるアミノ酸配列を有し、それをコードする遺伝子配列として、代表的には、配列表の配列番号26に示す塩基配列をあげることができる。
【0043】
核自己抗原Sp−100は、核抗原であり、そのタンパク質に対する自己抗体の出現が、原発性胆汁性肝硬変などの疾患と関係があるなどされているが、HCVとの関連については、過去に知られていない。また、単純ヘルペスウィルス(HSV−1)由来でウィルス増殖に適した環境を作る働きを持つHSV−1 immediate early protein ICP0を抑制する事が報告されており、HCV以外の抗ウィルス経路との関連が示唆されているタンパク質である。Sp−100は、代表的には配列表の配列番号27、29または31に示されるアミノ酸配列を有し、それをコードする遺伝子配列として、代表的には、配列表の配列番号28、30、または32に示す塩基配列をあげることができる。
【0044】
セリン/スレオニンプロテインフォスファターゼPP−1βカタリティックサブユニットPPP1CBは、タンパク質(脱リン酸酵素)1(PP1)の3つの触媒サブユニットのうちの1つである。PP1はセリン/トレオニン特異タンパク質脱リン酸酵素で、細胞分裂、グリコーゲン代謝、筋収縮性、タンパク質合成、HIV−1ウィルスの転写など、さまざまな細胞過程の調節にかかわることが知られている。マウスによる研究で、PP1が学習と記憶の抑制因子として働くことが示唆されている。2つの異なったアイソフォームを指令する少なくとも3つの選択的スプライシングが観察されている。PPP1CBは、代表的には配列表の配列番号33に示されるアミノ酸配列を有し、それをコードする遺伝子配列として、代表的には、配列表の配列番号34に示す塩基配列をあげることができる。
【0045】
本明細書において、「IFNとRBVの投与前後」とは、被験者に実際にIFNとRBVの治療と同様の方法で両薬剤を投与する前と後という意味と、投与前の被験者から採取した細胞にインビトロで両薬剤を投与する前後のいずれをも意味する。
【0046】
本明細書で「インターフェロンとリバビリンの投与前に採取した」とは、実際に全く両剤のいずれの投与の経験のない被験者からの採取が含まれるが、それ以外にも、採取前の少なくとも1週間以内、好ましくは、1ヶ月以内には、インターフェロンとリバビリンのいずれの影響も受けないていない状態の被験者からの採取も含んだ広い意味を指す。
【0047】
本発明において、インターフェロンとリバビリンの投与前に被験者から採取した細胞にインビトロで治療に有効な量として知られる量に質量で比例するような割合で両薬剤を投与することであり、その具体的態様は特に限定されず、細胞と薬剤とを混合し、4時間〜72時間培養することが代表的には挙げられる。
【0048】
「インターフェロンとリバビリンの投与後に該被験者から採取した」とは、一般的に治療に有効な量として知られる量を、C型肝炎ウィルスキャリアに投与した4時間〜72時間後に採取したことをいい、1回の採取でもよいが、異なった時間において数回の採取も可能である。異なった時間に数回の採取を行う場合には、発現レベルの相違は、いつの時点の相違でもよい。例えば、4時間〜72時間後のある時点において、発現量が急激に増加した後、時間の経過に従い、通常レベルに戻る場合も、本明細書では、「発現レベルが相違している」ことになる。ここで、インビボに両薬剤を投与する際の薬剤の量は、特に限定されないが、血液1mlあたりに対し、2〜200IUのIFNおよび1μg〜20μgのRBV程度であり得る。
【0049】
また、このことは、インビトロにおいて、インターフェロンとリバビリンの投与後に、投与前との発現レベルを比較する場合にも当てはまる。すなわち、薬剤未投与のC型肝炎ウィルスキャリアから採取した細胞をインビトロにおいて、両薬剤に曝し、4時間〜72時間後に発現レベルを比較することが可能である。インビトロにおいて両薬剤を投与する際の薬剤の量は、特に限定されないが、1mlあたり3×10個の細胞に対し、0.2〜200IUのIFNおよび1μg〜20μgのRBV程度であり得る。
【0050】
これらの特定生体物質の発現レベルは、IFNとRBVの併用治療前と後との被験者細胞中のこれらのタンパク質自体を定量することによって測定することができる。測定方法は、特に限定されず、当業者に公知の様々なタンパク質定量方法を用いることができる。例えば、二次元電気泳動を含むゲル電気泳動を組み込んだプロテオーム解析、LC−MSを利用したショットガン法、特定生体物質に対する抗体を使用してのウェスタンブロッティング法、免疫測定法などである。
【0051】
これらの特定生体物質の発現レベルは、IFNとRBVの併用治療前と後との被験者細胞中のこれらのタンパク質をコードする遺伝子のmRNA転写物を定量することによって測定することも可能である。mRNA転写物を定量する方法は、特に限定されず、当業者に公知の様々な定量方法の1つまたは組合せを用いることができる。これらの方法には、例えば、ハイブリダイゼーション、ノーザンブロッテオイング法、ポリメラーゼ連鎖反応、およびDNAアレイを用いる方法などである。
【0052】
本発明においては、インターフェロンとリバビリンの投与後の細胞中の特定生体物質の発現レベルとインターフェロンとリバビリンの投与前の細胞中の該特定生体物質の発現レベルとを測定した結果、見出される特定生体物質の発現レベルの差異がある場合をインターフェロンとリバビリンの併用治療の有効性を示すこととする。
【0053】
「発現レベルの差異」は、当業者に公知のいずれかの測定手段において、具体的な基準は適宜設定することができる。特に限定はされないが、例えば、インターフェロンとリバビリンの投与前後に該被験者から採取した細胞中において、少なくともどちらかの発現レベルが、片方の発現レベルと比較して、1.4倍から2倍程度以上であれば、明らかに差異があるということができる。
【0054】
本発明によれば、併用治療の初期に検体中の遺伝子及び/又はタンパク質の発現量が有意に増加あるいは減少するか否かを調べ、その結果を持って併用効果の有効性を判定することができる。すなわち、併用治療の初期に検体中の遺伝子若しくはタンパク質の発現量が有意に増加若しくは減少しない場合には、併用治療が無効である確率が高く、成功の可能性の低い無駄な治療を回避できる。
【0055】
ここで、このような検出方法をより簡易に実施する為に、以下のようなキットを作成することも可能である。
【0056】
すなわち、C型肝炎ウィルスキャリアにおける、インターフェロンとリバビリンの併用治療効果を検出する為のキットとして、上記のANXA3、PCNA、LMNB1、PAK1、4EBP1、KARS、PSME2、ENO1、STAT1、PHB、SP−100、またはPPP1CBにそれぞれ由来する塩基配列に含まれる連続する少なくとも10ヌクレオチド、又はそれらと相補的な塩基配列の少なくとも10ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドの少なくとも1つ、好ましくは2つ以上を含んでなる、インターフェロンとリバビリンの併用治療効果を検出する為のキットが提供される。
【0057】
これらは、代表的には、配列表の配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、および34に示す塩基配列に含まれる連続する少なくとも10ヌクレオチド、又はそれらと相補的な塩基配列の少なくとも10ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドの少なくとも1つを含んでなる、C型肝炎ウィルスキャリアにおけるインターフェロンとリバビリンの併用治療効果を検出する為のキットである。このようなキットに含まれるオリゴヌクレオチドをプローブとして、例えば、ノーザンブロッティング手法を用い、細胞におけるmRNAの解析を行うことで、投与前後の細胞中に含まれる対象のRNA量の変化を簡便に調べることが可能である。キットに含まれる他の成分は、緩衝液、発現レベルの比較などを示す指示書などである。
【0058】
さらに、これらのオリゴヌクレオチドを複数固体支持体上に固定化したDNAアレイを作成することによって、効率的に検出を行うことも可能である。
【0059】
また、他の態様では、C型肝炎ウィルスキャリアにおける、インターフェロンとリバビリンの併用治療効果を検出する為のキットであって、代表的には、配列表の配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、および34に示す塩基配列に含まれる連続する少なくとも10ヌクレオチド、又はそれらと相補的な塩基配列の少なくとも10ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドプライマー、およびこれと同じ配列で、別の領域に含まれる連続する少なくとも10ヌクレオチド、又はそれらと相補的な塩基配列の少なくとも10ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドプライマーとの対からなる群より選択される少なくとも1つのオリゴヌクレオチドプライマーの対を含んでなる、C型肝炎ウィルスキャリアにおけるインターフェロンとリバビリンの併用治療効果を検出する為のキットが提供される。すなわち、上記各塩基配列から適宜選択し得るプライマーの対を含んでなる、C型肝炎ウィルスキャリアにおけるインターフェロンとリバビリンの併用治療効果を検出する為のキットが提供される。このようなキットに含まれる1つのそれぞれの対、あるいは2つ以上のそれぞれの対を、RT−PCR用のプライマー対として用い、細胞中に含まれるmRNA量の発現レベルあるいはcDNA量を測定し、比較することが可能である。
【0060】
本発明ではまた、C型肝炎ウィルスキャリアにおける、インターフェロンとリバビリンの併用治療効果を検出する為のキットであって、ANXA3、PCNA、LMNB1、PAK1、4EBP1、KARS、PSME2、ENO1、STAT1、PHB、SP−100、およびPPP1CBからなる群より選択される少なくとも1つのタンパク質をバイオマーカーとして含む検出キットが提供される。このようなキットは、バイオマーカーとして使用するタンパク質の抗体が生体内に誘起されている場合に特に有用である。実際に、ここに上げるいくつかのマーカーについては、自己抗体が知られており、このようなキットによりこれらの自己抗体を微量であっても効率的に検知することで、インターフェロンとリバビリンの併用治療効果を検出することが可能となる。
【0061】
以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明する。しかしながら、本実施例は、本発明の具体例を示すのみで、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0062】
(インビトロにおける、IFNとRBVのHCVレプリコン複製抑制効果の検出)
IFNとRBVの併用による抗ウィルス状態の誘導を解析するために、HCVレプリコン細胞を用いた。HCVレプリコンとは、HCVの構造領域と非構造領域の一部を取り除き、その部分にIRES(internal ribosome entry site)とネオマイシン耐性遺伝子を挿入したものである。この構造物を鋳型として試験管内でRNAを合成し、肝臓がん細胞株Huh-7内に導入した後にネオマイシンで選択培養を行う。その結果、複製したHCVレプリコンRNAからネオマイシン耐性遺伝子が発現し、その遺伝子の働きでレプリコンが発現している細胞のみが生存可能となり増殖してコロニーを形成する。レプリコン複製細胞ではHCVレプリコンRNAが非常に高いレベルで複製されており、複製しているRNAや発現しているHCVタンパク質が持続的に安定して検出可能である。
【0063】
HCVレプリコン細胞の培養は、FCSを適度に添加したダルベッコ改変イーグル培地(GIBCO社製)を用いた。特に継代培養には、G418を添加した培地を用いた。細胞は、DMEM培地中で、5%CO2ガスで平衡化された37℃インキュベーターを用いて培養した。
【0064】
IFNは、IFN-α2b, ヒト、組換え(Procpec-TanyTechnoGene社製)を滅菌水で溶解して5.2×106IU/mlとした。RBV(シグマ社製)は、滅菌水で溶解して100mg/mlとした。
【0065】
HCVレプリコンは、ルシフェラーゼ翻訳領域を保持しており、HCVレプリコン細胞内でのレプリコン複製量をルシフェラーゼ活性で測定可能である。ルシフェラーゼアッセイは、Steady GloTM ルシフェラーゼ アッセイシステム(プロメガ社製)を用いて行った。また、HCVレプリコン細胞へC型肝炎治療薬であるIFN-α2bとRBVを単独あるいは併用して処理した際の細胞への毒性を評価する必要があったので、Cell Counting Kit-8 (WST-8;同仁化学社製)を用いて細胞毒性を評価した。
【0066】
IFN−α2bとRBVを単独あるいは併用してHCVレプリコン細胞へ24時間処理し、HCVレプリコン複製への影響を検討した結果の一部を表1に示した。4.3 IU/mlのIFN−α2bを単独で、あるいは10μg/mlのRBVを単独で細胞に投与した場合、レプリコンの複製が50%阻害された。また、IFN−α2bとRBVを併用した場合、combination index (CI)が0.5以下となり、両薬剤の相乗効果が認められた。なお、これら両薬剤の処理による細胞への毒性は観察されなかった。
【表1】

【実施例2】
【0067】
(インビトロにおいて、HCV感染細胞にINFとRBVとを併用投与した場合におけるプロテオーム解析)
IFN−α2bとRBVとの併用投与をHCV感染細胞で試みた。HCVレプリコン細胞を、5%FCS(非働化済み)含有DMEM培地で3×105cells/mlの密度に調製し、37℃インキュベーター(5%CO条件下)内で24時間の前培養を行った。24時間後に培地を除去し100IU/mlのIFN−α2b、3μg/mlのRBVをそれぞれ単独あるいは併用して添加したDMEM培地(5%FCS含有)を新しく加えた。
【0068】
各処理の処理時間は、実験開始から24時間である。
【0069】
細胞回収時はまず培地を除去し、PBSで1回細胞表面を洗浄し、1mM EDTA−PBSを5ml程度加えてセルスクレーパー(NUNC社製)で細胞を掻き集めた。回収した細胞は200×gで5分間遠心し、上清を除去し冷却しておいたPBSで再懸濁(3回)し、3回目に懸濁した際に細胞数を血球計算盤でカウントした。最後の遠心終了後、パスツールで上清を除去し、更にできるだけ完全にPBSを取り除いた。
【0070】
次に得られた細胞を二次元電気泳動に供した。電気泳動は以下に示す2種類の緩衝液を使用した。膨潤緩衝液(細胞溶解用緩衝液)は、7M Urea(Wako社製)、2M Thiourea(Wako社製)、3% CHAPS(同仁化学社製)、1% TritonX-100(Wako社製)、0.2% Ampholyte、0.0002% ブロモフェノールブルー(BPB;Wako社製)を溶解し分注して凍結保存しておいた。使用する約30分前には解凍を行い、使用する直前にDTT(SH基酸化保護用;Wako社製)を終濃度が75mMとなるように加えた。平衡化緩衝液は、6M Urea、0.375M Tris-HCl(pH8.8)、2% Sodium Dodecyl Sulfate(SDS;Wako社製)、20% グリセロール(Wako社製)、0.0002%BPBを溶解し凍結保存しておいた。使用する約30分前には解凍を行い、平衡化緩衝液Iでは2%DTTを、平衡化緩衝液IIでは2.5% Iodoacetoamide(IAA;Wako社製)を使用直前に加えた。
【0071】
回収した細胞ペレットを1×106個の細胞から得られたペレットに対して、膨潤緩衝液を100μl加えた(終濃度が75mMのDTTを含む)。膨潤緩衝液で溶解させた後、超音波洗浄機に10分間かけることで完全に溶解させた。超音波後に、15,000×gで10分間(4℃条件下)遠心を行った。遠心後の上清を別のマイクロチューブに移して、2-D clean-up kit(Amersham Bioscience社製)で脱塩及び不純物の除去を行った。2-D clean-up kitは製品プロトコールに従って使用し、clean-up後のペレットを膨潤緩衝液で再溶解し、15,000×gで5分間遠心を行った上清を試料とした。なお、clean-up後、膨潤緩衝液で再溶解したサンプルのタンパク質濃度をRC DC protein assay kit(Bio-Rad社製)を用いて測定し、同時に泳動を行うサンプル同士の蛋白濃度を合わせた上で一次元目の電気泳動装置にアプライした。
【0072】
二次元電気泳動の一次元目にはIPGストリップpH3-10 NL 7cm(Bio-Rad社製)を用い、電気泳動装置Protean IEF Cell(Bio-Rad社製)で泳動を行った。先ず、135μl以上の膨潤緩衝液を膨潤トレイの各レーンに添加し、IPGストリップのゲル面を下向きにして装着した。各レーンにミネラルオイルを重層し、11時間から15時間水平な場所で静置することでゲルを膨潤させた。また、膨潤中は室温を22℃に保った。
【0073】
膨潤終了後、膨潤トレイからストリップを取り出した。サンプルカップ用のカップローディングトレイにストリップのゲル面を上向きにしてセットし、可動式電極をストリップゲル面の一番端に乗るように陽極側、陰極側にそれぞれセットした。サンプルカップをストリップの酸性側に設置し、100μlのサンプル溶液をアプライした。
【0074】
一次元目の等電点電気泳動のフォーカシング条件は以下のように設定した。
ステップ1(低い電圧で過剰の塩類を除くステップ):250V、30min、ラピッドランピングモード
ステップ2(脱塩電圧からフォーカシング電圧まで電圧を上昇させるステップ):4,000V、1h、スローランピングモード
ステップ3(タンパク質のpI値にフォーカシングするステップ):4,000V、10,000Vhour(V×時間)、ラピッドランピングモード
Step4(フォーカシングされたタンパク質の拡散を防ぐためのステップ):500V、2時間程度、ラピッドランピングモード
【0075】
一次元目の泳動が終了した後、ストリップをカップローディングトレイから取り出し、次いで、膨潤トレイに2.5mlの平衡化緩衝液Iをアプライしておき、ゲル面を上にしてストリップを入れ、20分間振とうした。次に、2.5mlの平衡化緩衝液IIをアプライしておいた膨潤トレイにゲル面を上に向けてストリップを入れ、アルミホイルで遮光して20分間振とうし平衡化した。
【0076】
二次元目のSDS-PAGE電気泳動は、常法に従い、26mA、200Vの条件で行った。
【0077】
泳動後のゲルは、クマシー染色により可視化した。クマシー染色は、常法に従い行った後、染色後、染色液を捨て、脱色液(5%メタノール、7%酢酸)を加えて、脱色した。脱色後は超純水と置き換えてしばらく振とうし、ゲルの画像をTIFF形式のグレースケールでスキャナーで取り込んだ。次いで、ゲル内消化及びMS解析に供した。
【0078】
各ゲル画像間のディファレンス解析には2-D Analysis Software PDQuest(Version 7.3;Bio-Rad社製)を使用した。先ず、スポットの検出及びゲル間でのスポットのマッチングを自動で行い、検出された全スポットの発現強度の和を基準にするノーマライズした。全てのスポットは発現強度を基に数値化され、3連分の実験結果を統計的に解析した。
【0079】
それぞれの処理において無処理のコントロールゲルと比較して発現量に2倍以上変化の見られたスポットが多数検出された。これらのスポットを以下に示す2種類に分類した。
(1)発現量増加タンパク質:コントロールゲルと比較して発現量が増加したタンパク質スポット
(2) 発現量減少タンパク質:コントロールゲルと比較して発現量が減少したタンパク質スポット
【0080】
コントロールと比較して発現量に有意な変化の見られたスポットを中心にゲル内消化を行った。MS解析に必要なタンパク質量を考慮し、クマシー染色法によって染色されたゲル複数枚からゲル内消化用のゲル片の切り出しを行った。
【0081】
脱色後のゲルをMilli-Q水で数回洗浄し、ピペットチップでスポットをゲルからピッキングした。切り出したゲル片を1.5ml容マイクロチューブ(サンプル多数の場合は96ウエルプレートを使用)に移し、CBBの色素を抜くために400μlの脱色液(50%アセトニトリル、25mM重炭酸アンモニウム)を加えて、室温で10分間振とうした後、脱色液をピペットで取り除いた。この操作をゲル片から青色が消えるまで繰り返し行った。
【0082】
次にゲル片の脱水を行うために、200μlのアセトニトリルを入れ、ゲル片を収縮させた後、遠心してゲル片を沈殿させ、遠心エバポレーターにてアセトニトリルを完全に除去した。脱水後、還元アルキル化を行う為に、100μlの還元液(100mM DTT、25mM重炭酸アンモニウム)を入れ、56℃で1時間静置し反応させた後、DTTを除去するために100μlの25mM重炭酸アンモニウムを入れ、室温で10分間振とうした。
【0083】
還元した後、100μlのアルキル化液(55mMヨードアセトアミド、25mM重炭酸アンモニウム)を入れ、遮光し室温で45分間静置することにより、SH基をアルキル化した。アルキル化液を取り除き、100μlの洗浄緩衝液(25mM重炭酸アンモニウム)を入れて室温で10分間振とうした。ゲル内消化を行うために、400μlの脱水液(50% CAN、25mM重炭酸アンモニウム)を加え、室温で10分間振とうし、ゲルを脱水した。200μlのアセトニトリルを入れてゲル片を収縮させ、卓上遠心機でフラッシュしてゲル片を沈殿させた後、アセトニトリルを取り除き、さらに遠心エバポレーターにて残存するアセトニトリルを除去した。
【0084】
脱水したゲル片にトリプシン溶液(10ng/μl、50mM重炭酸アンモニウム)を15〜30μl添加して、37℃で一晩反応させた。消化したゲル片に50%アセトニトリル/5% TFA溶液を40μl添加してボルテックスをした後、15分間振とうした。5000rpmで遠心して、ゲル片を沈殿させ上清を回収した。この操作を2回程繰り返した後、上清が10μl以下になるまで遠心エバポレーターで濃縮し、サンプルとした。
【0085】
ターゲットへのアプライに先立って、マトリックスを調製した。マトリックスをAnchorChipのサンプル部分とキャリブラント部分に薄くのせたのち、濃縮しておいたサンプルを1μlアプライした。AnchorChipにのせた試料は乾燥と同時に濃縮され、スポットの直径が0.2mmまで縮小する。サンプルの上から0.1%TFAをのせ、吸い取ることでサンプルの脱塩を行った。また、キャリブラントの場合も同様にキャリブラントを0.5μlアプライ後に0.1%TFAをのせ、吸い取ることでキャリブラントの脱塩を行った。脱塩後は、充分に風乾させた。
【0086】
タンパク質の同定方法には、ペプチドマスフィンガープリンティング(PMF)法を用いた。MALDI-TOF MS解析にはAuto FLEX TOF/TOF(BRUKER DALTONICS社製)を用いた。
【0087】
レーザーの照射は1箇所につき2回ほど行い、良好なスペクトルが得られたらスペクトルを積算していき、レーザー照射位置を変えながらShots数が200前後になるまで測定・積算を行った。なお、試料の測定の前にキャリブレーションを行った。キャリブレーションには、Peptide calibration standard (Angiotensin II[M+H] +average:1,047.20、Angiotensin I[M+H] +average:1,297.51、Substance P [M+H] +average:1,348.66、Bombesin[M+H] +average:1,620.88、ACTH clip 1-17 [M+H] +average:2,094.46、ACTH clip 18-39 [M+H] +average:2,466.73、Somatostatin 28 [M+H] +average:3,149.61;BRUKER DALTONICS社製)を用い、ターゲットにアプライし、測定を行った。
【0088】
サンプルの解析には、External Calibration. FAMS methodを選択し、解析を行った。積算図の得られた後、Flex コントロールでデータを保存後スペクトルをFlex Analysisに転送した。Flex Analysisの画面のMass List Findボタンで全範囲にわたってピークピックし、データをBiotoolsに転送しデータベース検索を行った。
【0089】
PMF法でMS解析を行ったスポットの同定結果から、IFN−α2bとRBV処理を併用した時に発現量が変化したタンパク質がわかった。IFN単独処理の場合と比較してIFN−α2bとRBVの併用処理で発現量に変化の認められたスポットが示された。
【0090】
すなわち、IFN−α2bとRBVをHCVレプリコン細胞にインビトロで投与した時に、発現量に2倍以上変化の認められたタンパク質の種類とその発現量の変化を図1AからDに示す。
【0091】
このIFN−α2bとRBVを併用した際に発現量が変化したタンパク質の中には、I型IFNが抗ウィルス状態を誘導する際に働くJAK―STATシグナル経路に関与するSTAT1とMx1も含まれていた。
【0092】
また、両タンパク質ともIFN−α2b単独において2倍以上発現量が増加しており、RBVと併用することでIFN−α2b単独における発現量よりも有意な増加が認められた。
【0093】
STAT1とMx1以外のタンパク質については、次にPHBが抽出されてきた。PHBは、IFN−α2b単独処理で2倍程度相加しており、更にRBVとの併用でIFN−α2b単独の場合と比較して有意な増加が認められていたので、抗ウィルス状態誘導に関するマーカータンパク質となることが示された。
【0094】
Sp−100は、IFN−α2b単独処理では2倍程の増加は確認できなかったが増加傾向であり、RBVとの併用でIFN−α2b単独の場合と比較して有意な増加が認められていたので、抗ウィルス状態誘導に関するマーカータンパク質となることが示された。
【0095】
次に、PI3K/mTOR経路の下流に位置するPAK1が抽出されてきた。PAK1は、IFN−α2b単独処理では2倍程の増加は観察できなかったもの、コントロールと比較して増加傾向にあり、RBVとの併用でIFN−α2b単独投与の場合と比較して有意な増加が認められた。このような結果から、PI3K/mTOR経路によるPAK1の活性化についても両薬剤併用によってC型肝炎治療効果が増強される理由の一つである可能性が示された。
【0096】
ENO1も併用処理で発現量に変化が認められた。また、KARSの発現量変化を見てみると、IFN−α2bとRBV併用時ではIFN−α2b単独の場合と比較して24時間後には発現量が有意に増加した。
【0097】
その他、ANXA3、PSME2、PCNA、4EBP1、PPP1CBについても両薬剤の併用により有意に発現上昇していた。一方、LMNB1については、両薬剤の併用により有意に発現が減少していた。
【0098】
上記のタンパク質はいずれもIFN−α2bとRBVを併用した場合に、IFN−α2bを単独で投与した場合と比較して、発現が有意に上昇、あるいは減少していることから、両薬剤の併用効果を検出するマーカーとして使用できることがわかる。
【実施例3】
【0099】
(HCVキャリアにIFNとRBVとを併用投与した場合における末梢血由来リンパ球の網羅的遺伝子発現解析)
PEG−IFNα2bとRBVの両薬剤を投与したHCVキャリア末梢血由来リンパ球から全RNAを抽出し、DNAマイクロアレイによる遺伝子発現解析を行った。
【0100】
1.著効例と無効例の被験者の血液回収
HCVに感染し、併用療法を受けた4名の患者の血液を実験に供した。これらの患者は、毎週1回、1.5μg/kgのPEG−IFNα2bの皮下投与を受けると共に毎日600〜800mg/日のRBVの経口投与を48週間続けた。RBVの投与量は、体重に応じて調節した(体重が60kg以下の場合には600mg/日、体重が60kgを超える場合には800mg/日)。併用療法終了後24週経過した後の血清中のHCV RNAが、定性的PCRで検出限界未満になった患者を著効例(ウィルス学的著効例、VR)、併用療法終了時に定量的PCR(後述)及び/又は定性的PCRで血清中のHCV RNAが陽性であった患者を無効例(ウィルス学的無効例、NVR)とした。この結果、併用治療で著効であった者2名と無効であった者2名の群に分けることができた。
【0101】
血清中のHCV RNA濃度は、先ず、定量的PCR(アンプリコアHCVモニター version 2.0, ロッシュ ダイアグノスティクス社製)により行なった。この測定方法の検出限界は約0.5K IU/mlである。定量的PCRによりHCV RNAが測定されなかった場合には、より検出限界の低い定性的PCR(アンプリコアHCV version 2.0, ロッシュ ダイアグノスティクス社製)によって測定した。
【0102】
患者4名から、予め治療前(day0:0日目)に血液を採取し、そこから常法により、GE Healthcare社製Ficol-Paque PLUS を用いて末梢血リンパ球を単離した。さらに、これらの4名の患者に、毎週1回、1.5μg/kgのPEG−IFNα2bの皮下投与を受けると共に毎日600〜800mg/日のRBVの経口投与を48週間続けた際の、PEG−IFNα2bの初回皮下投与翌日(day1:1日目)、2回目の投与翌日(day8:8日目)に採血を行い、末梢血リンパ球を単離した。
【0103】
得られた末梢血リンパ球(濃度)から、全RNAを、インビトロジェン社製 TRIZOL(R) Reagent: 15596-026を用い製造者の説明書に従って抽出した。抽出した全RNAは、アフィメトリックス社製GeneChip(R)Two-Cycle Target Labeling and コントロール Reagents:900494 を用い製造者の説明書に従ってcDNA合成後、cRNA合成を行った。続いて再度cDNA合成を行い、ビオチンラベルを行いながらcRNAを合成した。これをDNAマイクロアレイ分析に用いた。
【0104】
使用したアレイは、アフィメトリックス社製のHuman Genome U133 Plus2.0 array :520019である。ビオチンでラベル化したcRNAを、製造者の説明書に従ってアレイ上に固定されているDNAに、45℃、16時間ハイブリダイゼーションさせた。
【0105】
その後、アフィメトリックス社製Fludics Station 450にてマイクロアレイを洗浄し、モレキュラープローブス社製フィコエリスリン-ストレプトアビジン:S866試薬を含む蛍光色素溶液に浸し、さらにベクターラボラトリーズ社製ビオチン化抗ストレプトアビジン抗体(ヤギ):BA-0500を含むビオチン化抗体溶液に浸した。再度フィコエリスリン-ストレプトアビジンを含む蛍光色素溶液に浸し、染色を行った。蛍光強度はアフィメトリックス社製GeneChip(R)スキャナー3000で測定した。
【0106】
測定したデータは、TOMY DIGITAL BIOLOGY社製 解析ソフト GeneSpringGXにて遺伝子発現解析に供した。その結果を図2A〜Eに示す。
【0107】
図2A〜Eから明らかなように、ANXA3、PAK1、4EBP1、SP−100、PSME2、については、1日目あるいは8日目において、大幅な発現の上昇が見られ、LMNB1、KARS、PCNA、PHB、STAT1については増加傾向が見られた。
【実施例4】
【0108】
(インビトロにおいて、HCV感染細胞にIFNとRBVとを併用投与した場合における免疫反応による解析)
実施例2と同様にして、培養したHCVレプリコン細胞にIFN-α2b(10 IU/ml)とribavirin(3μg/ml)を併用して投与し、24時間後に解析に供した。まず、培養した細胞を、Cell Culture Lysis Reagent CCLR(PBSで5倍希釈;プロメガ社)を用いて細胞抽出液を作製し、ウエスタンブロッティングに供した。
【0109】
ウエスタンブロッティングでは、リン酸化PAK1(p−PAK1)を検出するために、phospho-PAK1(Thr423)PAK2(Thr402)抗体(Cell Signal Technology)を、PAK1を検出するためにPAK1抗体(Cell Signaling Technology)を、標準化に必要なGAPDHを検出するためにGAPDH抗体(Santa Cruz Biotechnology)を、それぞれ用いた。
【0110】
検出されたp−PAK1及びPAKのバンド強度をGAPDHのバンド強度で標準化した結果のうち、p−PAKの結果を図3に示した。
【0111】
IFN−α2bの単独処理の場合、無処理の場合と比較してPAK1のリン酸化が約1.6倍増加していた。また、IFN-α2bとRBVを併用した場合は、約3.5倍増加しており、IFN−α2bを単独で処理した場合と比較しても有意な増加であった。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1A】レプリコン細胞にIFNとRBVを投与した場合の発現量の変化をプロテオソーム解析した結果を示す図である。
【図1B】レプリコン細胞にIFNとRBVを投与した場合の発現量の変化をプロテオソーム解析した結果を示す図である。
【図1C】レプリコン細胞にIFNとRBVを投与した場合の発現量の変化をプロテオソーム解析した結果を示す図である。
【図1D】レプリコン細胞にIFNとRBVを投与した場合の発現量の変化をプロテオソーム解析した結果を示す図である。
【図2A】HCVキャリアにIFNとRBVとを併用投与した場合における末梢血由来リンパ球の網羅的遺伝子発現解析の結果を示す図である。
【図2B】HCVキャリアにIFNとRBVとを併用投与した場合における末梢血由来リンパ球の網羅的遺伝子発現解析の結果を示す図である。
【図2C】HCVキャリアにIFNとRBVとを併用投与した場合における末梢血由来リンパ球の網羅的遺伝子発現解析の結果を示す図である。
【図2D】HCVキャリアにIFNとRBVとを併用投与した場合における末梢血由来リンパ球の網羅的遺伝子発現解析の結果を示す図である。
【図2E】HCVキャリアにIFNとRBVとを併用投与した場合における末梢血由来リンパ球の網羅的遺伝子発現解析の結果を示す図である。
【図3】レプリコン細胞にIFNとRBVを投与した場合のp−PAK1の発現量の変化を免疫反応により解析した結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
C型肝炎ウィルスキャリアの被験者における、インターフェロンとリバビリンの併用治療効果をインビトロで検出する方法であって、
インターフェロンとリバビリンの投与前後のそれぞれの細胞中の特定生体物質の発現レベルを測定し比較する工程を含み、
ここで、該比較により見出される該特定生体物質の発現レベルの差異があることを、インターフェロンとリバビリンの併用治療の有効性を示す指標とし、
該特定生体物質が、ANXA3、PCNA、LMNB1、PAK1、4EBP1、KARS、PSME2、ENO1、STAT1、PHB、SP−100、およびPPP1CBからなる群より選択される少なくとも1つである、検出方法。
【請求項2】
請求項1に記載の検出方法であって、
前記インターフェロンとリバビリンの投与前後のそれぞれの細胞中の特定生体物質の発現レベルを測定し比較する工程が、インターフェロンとリバビリンの投与前の前記被験者から採取した細胞中の特定生体物質の発現レベルとインターフェロンとリバビリンの投与後の該被験者から採取した細胞中の該特定生体物質の発現レベルとを測定し比較する工程である、検出方法。
【請求項3】
請求項1に記載の検出方法であって、
前記インターフェロンとリバビリンの投与前後のそれぞれの細胞中の特定生体物質の発現レベルを測定し比較する工程が、インターフェロンとリバビリンの投与前の前記被験者から採取した細胞中の特定生体物質の発現レベルと、該細胞にインビトロでインターフェロンとリバビリンを投与した後に該細胞中に含まれる特定生体物質の発現レベルとを測定し比較する工程である、検出方法。
【請求項4】
前記細胞が、肝臓細胞または末梢血由来リンパ球である、請求項1から3までのいずれかに記載の検出方法。
【請求項5】
前記特定生体物質が、ANXA3、PCNA、LMNB1、PAK1、4EBP1、KARS、PSME2、STAT1、PHB、およびSP−100からなる群より選択される少なくとも1つであり、該特定生体物質の発現レベルが、該特定生体物質をコードする遺伝子のmRNA転写物を定量することによって測定される、請求項1から4までのいずれかに記載の検出方法。
【請求項6】
前記特定生体物質の発現レベルが、インターフェロンとリバビリンの投与後の細胞中において、投与前の細胞中よりも増加していることが、インターフェロンとリバビリンの併用治療の有効性を示す指標になる、請求項5に記載の検出方法。
【請求項7】
前記特定生体物質の発現レベルが、該特定生体物質を定量することによって測定される、請求項1から4までのいずれかに記載の検出方法。
【請求項8】
前記特定生体物質が、ANXA3、PCNA、PAK1、4EBP1、KARS、PSME2、ENO1、STAT1、PHB、SP−100、およびPPP1CBからなる群より選択される少なくとも1つであり、該特定生体物質の発現レベルが、インターフェロンとリバビリンの投与後の細胞中において、投与前の細胞中よりも増加していることが、インターフェロンとリバビリンの併用治療の有効性を示す指標になる、請求項7に記載の検出方法。
【請求項9】
前記特定生体物質が、LMNB1であり、前記特定生体物質の発現レベルが、インターフェロンとリバビリンの投与後の細胞中において、投与前の細胞中よりも減少していることが、インターフェロンとリバビリンの併用治療の有効性を示す指標になる、請求項7に記載の検出方法。
【請求項10】
HCVのタイプがHCV1b型である、請求項1から9までのいずれかに記載の検出方法。
【請求項11】
前記インターフェロンが、ペグインターフェロンである、請求項1から10までのいずれかに記載の検出方法。
【請求項12】
C型肝炎ウィルスキャリアにおける、インターフェロンとリバビリンの併用治療効果を検出する為のキットであって、
配列表の配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、または34に示す塩基配列に含まれる連続する少なくとも10ヌクレオチド、又はそれらと相補的な塩基配列の少なくとも10ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドの少なくとも1つを含んでなる、C型肝炎ウィルスキャリアにおけるインターフェロンとリバビリンの併用治療効果を検出する為のキット。
【請求項13】
C型肝炎ウィルスキャリアにおける、インターフェロンとリバビリンの併用治療効果を検出する為のキットであって、
ANXA3、PCNA、LMNB1、PAK1、4EBP1、KARS、PSME2、ENO1、STAT1、PHB、SP−100、およびPPP1CBからなる群より選択される少なくとも1つのタンパク質をバイオマーカーとして含む、検出キット。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−178057(P2009−178057A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−17738(P2008−17738)
【出願日】平成20年1月29日(2008.1.29)
【出願人】(306024609)財団法人宮崎県産業支援財団 (23)
【出願人】(504258527)国立大学法人 鹿児島大学 (284)
【出願人】(504224153)国立大学法人 宮崎大学 (239)
【Fターム(参考)】