インターフェロンを用いる肺疾患の処置方法
【課題】インターフェロンを用いる肺疾患の処置方法の提供。
【解決手段】例えば特発性肺線維症(IPF)及び喘息等の肺疾患を処置する方法であって、インターフェロンα、インターフェロンβ、又はインターフェロンγ等のエアロゾル化インターフェロンを治療有効量投与することを含む方法が、本明細書で提供される。又、1つ以上のエアロゾル化インターフェロンの薬学的組成物も提供される。一態様において、本発明は、肺疾患に罹患した患者の肺疾患を処置する方法であって、エアロゾル化インターフェロンを治療有効量で投与することを含む、方法を特徴とする。多くの実施形態において、肺疾患は閉塞性肺疾患である。幾つかの実施形態において、肺疾患は喘息又は特発性肺線維症である。
【解決手段】例えば特発性肺線維症(IPF)及び喘息等の肺疾患を処置する方法であって、インターフェロンα、インターフェロンβ、又はインターフェロンγ等のエアロゾル化インターフェロンを治療有効量投与することを含む方法が、本明細書で提供される。又、1つ以上のエアロゾル化インターフェロンの薬学的組成物も提供される。一態様において、本発明は、肺疾患に罹患した患者の肺疾患を処置する方法であって、エアロゾル化インターフェロンを治療有効量で投与することを含む、方法を特徴とする。多くの実施形態において、肺疾患は閉塞性肺疾患である。幾つかの実施形態において、肺疾患は喘息又は特発性肺線維症である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(政府の支援)
本発明に導いたいくつかの研究は、部分的に、研究用NIHグラントR01 HL55791、K07 HL03030、およびM01 RR00096によって支援された。政府は、本発明において一定の権利を有する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、エアロゾルインターフェロンを使用して肺疾患を処置する方法、エアロゾル送達のための1つ以上のインターフェロンの製剤、及びエアロゾル沈着を測定する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(背景)
現行のNAEPP/NIHのガイドラインによる喘息処置の主流は、依然として抗炎症薬であり、中でもコルチコステロイドが最も有効である。しかし、コルチコステロイドの長期投与は、全身性の副作用を伴う。更に、喘息患者の中には、コルチコステロイドに対して耐性を示す者もいる。従って、アレルギー性気道疾患の炎症反応を対象とした新たな薬剤が必要とされている。
【0004】
喘息の免疫機序は、2型(Th2)サイトカイン(インターロイキン(IL)−4、IL−5)を分泌する細胞の平衡異常を伴った、メモリーCD4+ヘルパーT細胞の分化障害を伴う。サイトカインのインターフェロン−γ(IFN−γ)は、ナイーブCD4+リンパ球のTh1表現型への分化に必要となる。
【0005】
喘息で生じる気道の炎症は、好酸球数及び活性化CD4+ T細胞数の増加を特徴とする。喘息は、Th2型サイトカインの分泌がTh1型サイトカインの分泌を上回る細胞の平衡異常を伴った、メモリーCD4+ヘルパーT細胞の分化障害を伴う。組織の好酸球増加及びIgEの産生増加の他にも、2型サイトカインIL−4及びIL−5、腫瘍壊死因子(TNF)−a、及び顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)を含めた幾つかのサイトカインの産生増加が見られる。気道の炎症におけるサイトカイン特性の研究の殆どは、喘息のマウスモデルを使用している。マウスは抗原(通常の場合オボアルブミン)により感作及び誘発される。そして、エアロゾル抗原の誘発に対して抗原特異的IgEの産生、気道の好酸球増加症、及び気道過敏性が示される。これらの変化は、Th2サイトカインの産生増加及びIFN−γの産生減少に関係している(Brusselle, et al., Am J Respir Cell Mol Biol, 1995 Mar; 12(3): 254−259)。
【0006】
Th2サイトカインであるIL−4は、IgEの合成に対するB細胞のアイソタイプ変換の促進、及びナイーブT細胞のTh2リンパ球への分化誘発により、気道の炎症において重要な役割を果たす。エアロゾル化抗原により誘発されたIL−4ノックアウトマウスは、気道において特異的IgEの産生、気道過敏性、気道好酸球増加症、又はTh2サイトカインの産生を示さなかった(Brussell, et al., Am J Respir Cell Mol Biol, 1995 Mar; 12(3):254−259.)。抗原誘発時に抗IL−4が投与された野生型マウスは、気道の好酸球増加症が阻害されなかったのに対し、抗原への最初の曝露時に抗IL−4が投与された野生型マウスは、IL−5の産生及び気道の好酸球増加症が阻害されたことから、局所的なTh2反応の誘導にはIL−4が極めて重要であることが示されている(Coyle, et al., Am J Respir Cell Mol Biol 1995 Jul;
13(1):54−59)。
【0007】
IL−10は、Th1及びTh2リンパ球、単球及びマクロファージ、肥満細胞、ケラチノサイト、並びに好酸球によって産生されるサイトカインである。IL−10は、種々の細胞、特に単球細胞が炎症誘発性サイトカインの合成を下方調節することにより、抗炎症性サイトカインとして作用する。IL−10は、抗原提示細胞(APC)の機能を阻害することによって、IL−5の産生を下方調節する(Pretolani, et al., Res lmmunol 1997 Jan.)。同様に、好酸球の機能に対するIL−10の直接的な作用も実証された。好酸球のCD4発現の減少及び細胞死の促進において、低濃度のIL−10は、コルチコステロイドとほぼ同程度の活性を示した。GM−CSFは、炎症組織における好酸球及び好中球の帰巣及び活性化に直接関与するサイトカインである。既に、PBMC及び肺胞マクロファージによるIL−10産生濃度の減少が、正常な対照と比較した喘息罹患者において着目されている(Borish, L, et al., J Allergy Clin lmmunol 1996 Jun.; 97(6):1288−1296; Koning, et al., Cytokine 1997 Jun; 9(6): 427−436)。マウスのアレルギー性炎症の2モデルにおいて、IL−10を注入すると、おそらくIL−5及びTNF−aを阻害することにより、感作されたマウスが気道の好酸球及び好中球の増加から保護されたことが考えられる(Zuany−Amorim, et al., J Clin lnvest 1996:2644−2651; Zuany−Amorim, et al., J Immunol 1996 Jul 1; 157(1): 377−84)。
【0008】
サイトカイン産生のTh2/Th1への二分化に一致して、喘息のマウスモデルでは、IL−4及びIL−5優性のサイトカイン特性、並びにTh1サイトカインIFN−γ及びIL−12の濃度が観察される(Ohkawara, et al., Am J Respir Cell Mol Biol 1997 May; 16(5):510−20)。Th2優性を逆転させる試みとして、組換えマウスのIL−12による処置が近年の動物実験で検討された。in vitroのデータでは、Tリンパ球の一次抗原刺激時におけるIL−12の存在によってTh1細胞の発現が促進されることが示されている(Kips, et al., Am J Respir Crit Care Med
1996 Feb; 153(2):535−9)。Kipsは、免疫処置時にIL−12を投与し、特異的IgEの産生、気道の好酸球増加症、及び気道過敏性を防止することによって、この説をin vivoで確認した。予め感作したマウスのエアロゾル誘発時にIL−12を投与することで、気道の好酸球増加症及び気道過敏性が防止されたが、特異的IgEの産生は減少せず、従って、IL−12がナイーブTh細胞のTh1細胞への分化を刺激し、Th2細胞の発現を抑制する可能性があることが示唆されている。IL−12による抗原誘発性の気道好酸球増加症の阻害は、最初の感作時にはIFN−γに依存するが、第二の誘発時にはIFN−γに依存しなくなる(Brusselle, et
al., Am J Respir Cell Mol Biol 1997 Dec; 17(6):767−71)。更に、エアロアレルゲンの誘発より前に感作したマウスに、ワクシニアウイルスベクターで肺におけるIL−12遺伝子の粘膜遺伝子導入を行ったところ、IFN−γに依存してIL−4、IL−5、気道過敏性及び気道の好酸球増加症が抑制されることが実証されている(Hogan, et al., − Eur J lmmunol 1998 Feb.; 28(2):413−23)。
【0009】
IFN−γ濃度の増加によって、免疫応答がTh1表現型に誘導され、喘息を発症しやすくなることが考えられる。ヒトの臨床相関では、血清サイトカイン濃度又は刺激されたPBMCに焦点が置かれてきた。刺激されたPBMCを使用したサイトカイン測定の殆どは、小児において行われてきた。これらの研究では、喘息に罹患した小児におけるIL−4及びIL−5産生の増加傾向、並びにIFN−γの産生減少が実証されている。更に、その他の研究では、アトピー及び/又は喘息の重症度とIFN−γの放出に逆関連性があることが実証されている(Imada, et al., (1995) Immunology 85(3): 373−80; Corrigan, et al., (1990)Am Rev Respir Dis 141(4) Pt 1: 970−7; Leonard, et al., (1997) Am J Respir Cell Mol Biol 17(3): 368−75; Kang, et al.,
(1997) J lnterferon Cytokine Res 17(8):
481−7)。喘息患者のBAL液におけるサイトカイン濃度によって、IFN−γの濃度が低いことが判明している(Kang, et al., (1997) J Interferon Cytokine Res 17(8): 481−7)。
【0010】
ヒトにおけるrIFN−γの臨床試験は、殆ど行われていない。1999年の時点で、IFN−γは、慢性肉芽腫性疾患の処置に使用されており、長期の利用(平均期間2.5年)では、皮膚病変の改善と最小限の有害事象(熱、下痢、及びインフルエンザ様疾患)が認められている(N Engl J Med 324(8):509−16; Bemiller, et al. (1995) Blood Cells Mol Dis
21(3): 239−47; Weening, et al., (1995) Eur J Pediatr 154(4): 295−8)。Boguniewiczは、エアロゾル化rIFN−γを、用量を漸増しながら(最大用量500mcg、全試験用量2,400mcg)、5名の軽度アトピー型喘息患者に20日間吸入させる処置を行った(非特許文献1)。全ての患者は、噴霧されたrIFN−γに対して耐性を示したが、最大流量を含む評価エンドポイントにおける顕著な変化は見られなかった。
【0011】
持続性抗酸菌(AFB)の塗抹、及び培養陽性の多剤耐性結核(TB)の患者5名にrIFN−γを噴霧投与した(非特許文献2)。患者は、エアロゾルrIFN−γ 500mcgを週3回4週間にわたって投与された(全試験用量6,000mcg)。治療は、最小限の副作用を伴うものの十分な耐性を示した。4週目の終了時には、患者5名の内の4名が喀痰AFB塗抹で陰性であり、陽性判定までの培養時間の増加により処置後の生体負荷の減少が示された。興味深いことに、これらの報告及び新たな患者において、最大呼気速度(PEFR)が処置の一時間後に6%改善された(n=10)。
【0012】
特発性間質性肺炎は、組織学的に7つのカテゴリーに分類されている。これらのカテゴリーには、通常型間質性肺炎(UIP)、非特異性間質性肺炎(NSIP)、びまん性肺胞障害(DAD)、器質化肺炎(OP)、剥離性間質性肺炎(DIP)、呼吸細気管支炎(RB)、及びリンパ球性間質性肺炎(LIP)が含まれる。例えば、Nicholson, Histopathology, 2002, 41, 381−391; White, J Pathol 2003, 201, 343−354を参照されたい。
【0013】
「特発性間質性肺炎」(CFA)と同義語である「特発性肺線維症」(IPF)という用語は、特発性間質性肺炎の主要なサブグループの臨床用語であり、呼吸困難発症からの平均生存率が3〜6年である進行性の特発性間質性疾患を特徴とする疾患を指す。特発性肺線維症の診断は、肺生検で通常型間質性肺炎(UIP)を確認することによって行われる。組織学的パターンは、斑状慢性炎(肺胞炎)、進行性損傷(増殖性の筋線維芽細胞及び線維芽細胞の小型凝集体、即ち線維芽細胞巣)及び線維形成(高密コラーゲン及び蜂巣化)等の不均質を特徴とする。(例えば、King, et al., 2000, Am J of Resp. and Critical Care Med., 164, 1025−1032を参照)。間質性肺炎の別のサブグループの処置は、特発性間質性線維症に対して有効な治療であることが予測されていない。
【0014】
コルチコステロイド及び細胞毒性薬は、治療の主流とされているが、患者の10〜30%しか初期の過渡応答を示しておらず、そのため長期間の治療を要することが示唆されている(Mapel, et al. (1996) Chest 110: 1058−1067; Raghu, et al. (1991) Am. Rev. Respir. Dis. 144:291−296)。特発性肺線維症患者の予後不良があることから、新たな治療法が必要とされている。
【0015】
インターフェロンは、免疫系の細胞によって産生される天然のタンパク質ファミリーである。インターフェロンは、アルファ、ベータ、ガンマの3つのクラスが確認されている。これらの活性は重複するものの、各クラスが異なる作用を有する。併せて、インターフェロンは、体内に侵入するウイルス、細菌、腫瘍、及びその他の異物に対する免疫系の攻撃を誘導する。インターフェロンは、異物を検出し、攻撃を開始すると、異物の成長又は機能を減速、抑止又は変換することによって異物を変化させる。
【0016】
インターフェロン−γは、特異的な免疫調節作用(例えば、マクロファージの活性化、酸素ラジカルの放出促進、微生物の殺傷、MHCクラスII分子の発現促進、抗ウイルス作用、誘導性一酸化窒素合成遺伝子の導入及び一酸化窒素の放出、免疫エフェクター細胞を召集及び活性化する走化因子、細胞内病原体の生存に必要となる菌の鉄への接触を制限するトランスフェリン受容体の下方調節等)を有する多形質発現サイトカインである。インターフェロン−γ又はその受容体が欠如した遺伝子改変マウスは、マイコバクテリアに極めて感染しやすい傾向にある。
【0017】
1980年代に組換え型のIFN−γが、健常志願者及び癌患者に対して筋肉内及び皮下経路により投与されたが、単球の活性化(例えば、オキシダントの放出)の証拠が認められた。Jaffe等は、20名の健常志願者に対するrINF−γの投与結果を報告している(Jaffe, et al., J Clin lnvest. 88, 297−302 (1991)を参照)。まず、rIFN−γを250μg皮下投与したところ、血清中濃度は4時間の時点でピークを示し、24時間の時点で谷を示した。
【0018】
感染症に対するIFN−γの評価のため、幾つかの臨床試験が資金提供を受け、実施された。”A Phase II/III Study of the Safety and Efficacy of Inhaled Aerosolized Recombinant Interferon−γ 1 b in Patients with
Pulmonary Multiple Drug Resistant Tuberculosis (MDR−TB) Who have Failed an Appropriate Three Month Treatment”と題したMDR−TB臨床試験では、数箇所(ケープタウン、ポートエリザベス、ダーバン、メキシコ)のMDR−TB患者80名が登録され、二次療法に加えてエアロゾルrIFN−γ(500μg
MWF)又はプラセボを少なくとも6ヶ月間投与するために、患者を無作為化した。しかし、この臨床試験は、喀痰塗抹、M tb培養、又は胸部X線の変化に対する有効性に欠けることから、早期に中断された。
【0019】
Ziesche等は、特発性肺線維症(IPF)患者18名の内の9名に、プレドニゾンの経口投与に加えて、rIFN−γ200mgを週3回投与した(非特許文献3を参照)。その後行われたIPFに対するインターフェロン−γ1b治療の第3相臨床試験の結果が、近年発表された。これは、適切な試料サイズのIPFの臨床試験としては初めてのものであり、無作為化・前向き・二重盲検・プラセボ対照研究であったが、努力性肺活量等の生理学的機能のマーカーに対する有意な作用は認められなかった。しかし、プラセボ群の方が死亡者数が多く、インターフェロンγ−1bの治療を受け、努力性肺活量が正常値の55%以上であり、肺一酸化炭素拡散能が正常値の35%以上であえる患者の部分集団では、生存率が著しく良好であった。当研究の疾患進行と生存における不一致については、現在のところ説明されていない。1つの可能性として、IPFに罹患した患者の臨床経過が複雑である場合に、インターフェロンγ−1bの治療によって、感染に対する宿主防御が改善され、下気道感染の重症度を低下させることが挙げられる。この可能性は、6ヶ月間のインターフェロンγ−1b治療においては、殆どの場合、線維化促進サイトカインの有意な変化が見られなかったのに対し、抗菌特性を有するインターフェロン誘導性CXCケモカインI−TAC/CXCL11は、プラセボ投与患者よりも、インターフェロンγ−1b投与患者の血漿及び気管支肺胞洗浄(BAL)液において、有意な上方調節が見られたというStrieterの所見によって裏付けられている(非特許文献4を参照)。不明瞭な結果を説明する1つの可能性としては、現行の投薬計画で肺間質に送達される薬剤濃度が不十分であることが挙げられる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】Boguniewicz, et al., (1995) J Allergy Clin lmmunol 95(1) Pt1: 133−5
【非特許文献2】Condos, et al., (1997) Lancet 349(9064): 1513−5
【非特許文献3】Ziesche, et al., (1999) N. Eng. J. Med., 341, 1264−1269
【非特許文献4】Strieter, et al., Am J Respir Crit Care Med. (2004)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0021】
(発明の簡単な要旨)
一態様において、本発明は、肺疾患に罹患した患者の肺疾患を処置する方法であって、エアロゾル化インターフェロンを治療有効量で投与することを含む、方法を特徴とする。多くの実施形態において、肺疾患は閉塞性肺疾患である。幾つかの実施形態において、肺疾患は喘息又は特発性肺線維症である。一実施形態において、肺疾患の症状の改善は、予測努力性肺活量(FVC)の値が処置前に比べて、少なくとも約10%の増加、好ましくは少なくとも約20%、又は少なくとも約25%、更には33%の増加によって測定される場合がある。インターフェロンは、インターフェロンα、インターフェロンβ、又はインターフェロンγである場合がある。
【0022】
別の実施形態において、例えば、IPF又は喘息等の肺疾患に罹患した患者は、コルチコステロイド、シクロホスファミド、及びアザチオプリンの1つ以上による処置に対して効果を示さない。更に、肺機能検査において軽度であるが、僅かな改善が示される免疫抑制治療であまり効果が示されない患者においては、1つ以上の免疫抑制又は抗炎症薬による処置を含むがこれに限定されない、1つ以上のその他の治療法による処置の継続中に、エアロゾル化インターフェロンを使用した処置を患者に併用することが、本発明の更なる態様である。
【0023】
更に具体的な実施形態において、エアロゾル化インターフェロンは、約250μg〜750μgの用量範囲で週3回、ネブライザーで投与される。別の実施形態においては、好ましくは500μgの用量が週3回、ネブライザーで投与される。ネブライザーの効率によっては、前述より低用量で投与される場合がある。インターフェロン−γ治療とその他の治療様式の組み合わせによってIPF患者を処置することが要求される場合、エアロゾル化インターフェロン−γは、望ましくない作用がこれらの患者に起こらないように滴定される。更に、併用療法が考慮される場合には、その他の薬剤が最も有効と考えられる手段で送達される場合がある。これは、静脈注入、筋肉内注入、皮下注入を含む場合もあれば、IFN−γと併用して、エアロゾルとして送達される場合もある。
【0024】
別の態様において、本発明は、エアロゾル吸入によって投与される薬剤の上気道沈着を正確に測定する方法を特徴とする。本発明の本態様の一実施形態において、エアロゾル吸入を経て投与される薬剤は、インターフェロンα、インターフェロンβ、又はインターフェロン−γ等のインターフェロンである。この技術は独特であり、全種類の肺疾患患者に対するインターフェロンα、インターフェロンβ、又はインターフェロン−γ等のインターフェロンの送達に適用される。
【0025】
その他の目的及び利点は、後述の説明図と共に以下の詳細な説明を考察することで明らかになるであろう。
例えば、本願発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
肺疾患に罹患する対象において肺疾患を処置する方法であって、エアロゾル化インターフェロンを治療有効量投与することを含む、方法。
(項目2)
前記肺疾患が閉塞性肺疾患である、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記肺疾患が特発性肺線維症である、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記肺疾患が喘息である、項目1に記載の方法。
(項目5)
処置が行われる前の値に比べて、少なくとも10%の予測FVCの増加よりも前記疾患が改善される、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記肺疾患に罹患する前記対象が、コルチコステロイド、シクロホスファミド、及びアザチオプリンの1つ以上を使用した処置に対して効果を示さない、項目1に記載の方法。
(項目7)
エアロゾル化インターフェロンが週3回、約250〜750μgの範囲の用量で投与される、項目1に記載の方法。
(項目8)
エアロゾル化インターフェロンが週3回、約500μgの用量で投与される、項目1に記載の方法。
(項目9)
エアロゾル化インターフェロンの前記投与量が計算及び最適化されたものである、項目1に記載の方法。
(項目10)
前記投与が、肺疾患を有する患者の肺におけるインターフェロンの沈着をもたらす、項目1に記載の方法。
(項目11)
前記投与が肺機能検査の結果の改善をもたらす、項目1に記載の方法。
(項目12)
前記インターフェロンがインターフェロンαである、項目1に記載の方法。
(項目13)
前記インターフェロンがインターフェロンβである、項目1に記載の方法。
(項目14)
前記インターフェロンがインターフェロンγである、項目1に記載の方法。
(項目15)
肺疾患を有する患者を処置する方法であって、免疫抑制薬又は抗炎症薬の治療有効量と共に、エアロゾル化インターフェロンの治療有効量を送達することを含む、方法。
(項目16)
前記免疫抑制薬又は抗炎症薬が、コルチコステロイド、アザチオプリン、及びシクロホスファミドからなる群から選択される、項目15に記載の方法。
(項目17)
前記肺疾患が閉塞性肺疾患である、項目15に記載の方法。
(項目18)
前記肺疾患が特発性肺線維症である、項目15に記載の方法。
(項目19)
前記肺疾患が喘息である、項目15に記載の方法。
(項目20)
処置が行われる前の値に比べて、少なくとも10%の予測FVCの増加よりも前記疾患が改善される、項目15に記載の方法。
(項目21)
前記肺疾患に罹患する前記患者が、コルチコステロイド、シクロホスファミド、及びアザチオプリンの1つ以上を使用した処置に対して効果を示さない、項目15に記載の方法。
(項目22)
エアロゾル化インターフェロンが週3回、約250〜750μgの範囲の用量で投与される、項目15に記載の方法。
(項目23)
エアロゾル化インターフェロンが週3回、約500μgの用量で投与される、項目15に記載の方法。
(項目24)
エアロゾル化インターフェロンの前記投与量が計算及び最適化されたものである、項目15に記載の方法。
(項目25)
前記投与が、肺疾患を有する患者の肺におけるインターフェロンの沈着をもたらす、項目15に記載の方法。
(項目26)
前記投与が、肺機能検査の結果の改善をもたらす、項目15に記載の方法。
(項目27)
前記インターフェロンがインターフェロンαである、項目15に記載の方法。
(項目28)
前記インターフェロンがインターフェロンβである、項目15に記載の方法。
(項目29)
前記インターフェロンがインターフェロンγである、項目15に記載の方法。
(項目30)
肺疾患を有する患者を処置するための、エアロゾル化インターフェロンを治療有効量含む、薬学的組成物。
(項目31)
免疫抑制薬又は抗炎症薬も更に含む、項目30に記載の薬学的組成物。
(項目32)
前記免疫抑制薬又は抗炎症薬が、コルチコステロイド、アザチオプリン、及びシクロホスファミドからなる群から選択される、項目30に記載の薬学的組成物。
(項目33)
前記肺疾患が閉塞性肺疾患である、項目30に記載の薬学的組成物。
(項目34)
前記肺疾患が特発性肺線維症である、項目30に記載の薬学的組成物。
(項目35)
前記肺疾患が喘息である、項目30に記載の薬学的組成物。
(項目36)
前記肺疾患に罹患する患者が、コルチコステロイド、シクロホスファミド、及びアザチオプリンの1つ以上を使用した処置に対して効果を示さない、項目30に記載の薬学的組成物。
(項目37)
前記インターフェロンがインターフェロンαである、項目30に記載の薬学的組成物。
(項目38)
前記インターフェロンがインターフェロンβである、項目30に記載の薬学的組成物。
(項目39)
前記インターフェロンがインターフェロンγである、項目30に記載の薬学的組成物。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、典型的な安静呼吸のパターンを示す。
【図2】図2は、安静呼吸に比べて緩深呼吸法に特徴的な、吸気流量の減少及び吸気時間の著しい延長を示す。
【図3】図3は、ヒト患者が、緩深呼吸で4.5μmのエアロゾルを吸入している時の沈着パターンを示す。この図は、胃における僅かな活動量によって示された上気道において、エアロゾルがあまり沈着されていない(10%未満)ことを示す。この沈着図は、約8秒の吸気時間で緩深呼吸により3回呼吸した後、ヒト患者の肺末梢部に沈着した、放射標識されたエアロゾルを示す。
【図4】図4は、現在の吸入の標準法である安静呼吸を20回行って1.5μm粒子を吸入した後の同患者のスキャン図である。この図の解析では、大型粒子の使用、緩徐な吸入、及び吸気時間の延長を組み合わせた緩深呼吸法では、肺へのエアロゾル粒子の沈着に対して、1回の呼吸につき51倍以上有効であることが示される。
【図5】図5は、ネブライザーでIFN−γ500μgを週3回12週間吸入投与された、IPFに罹患する患者の沈着スキャン図を示す。処置に続いて画像診断が行われた。対象領域については要約に記載する。sU/Lは、キセノンに対し正規化した肺上部から肺下部に沈着した放射活性の分布である。図中の水平線は、上下の肺を四分割した境界を示す。sC/Pは、以下に記載する特定の中枢対末梢比を意味する。a/Xeは、エアロゾル対キセノン比を意味する。
【図6】図6は、エアロゾル療法の前後にBALを通して測定されるTGF−β濃度を示す。
【図7】図7は、IPFに罹患した患者5名のエアロゾルrIFN−γ試験において処置した患者5名の処置後における予測全肺気容量の増加率を示す。全患者が、息切れの自覚的な改善を報告した。この試験の患者は、3ヶ月の処置の終わりまでに全肺気容量の統計的に有意な増加を示した。5名の被験患者の内の2名において、努力性肺活量の200ccを超える(それぞれ200及び500cc)改善も見られた。
【図8】図8は、IPFに罹患した患者5名のエアロゾルrIFN−γ試験において処置した患者5名の内の3名の処置後における予測全肺気容量の増加率を示す。これらの生理学的変化は、患者の気管支肺胞洗浄(BAL)液(肺内部の内壁から洗い出された液)から回収された活性化TGF−β濃度の減少と共に生じた。
【図9】図9A及び9Bは、IPFに対してエアロゾルrIFN−γで処置する患者5名における総タンパク質のTGF−βの一部の減少を示す。TGF−βは、肺線維形成の重要な媒介物質の1つである。これを活性化すると、コラーゲンの産生が誘導される。この濃度が減少すると、肺のコラーゲン沈着の減少及び線維形成の減少が誘導されるはずである。
【図10】図10は、インターフェロン−γによるエアロゾル処置の前後に結核患者及び特発性肺線維症患者の肺で測定された、インターフェロン−γの量を示す。
【図11】図11は、エアロゾルIFN−γによる処置後の喘息患者における最大流量の変化率を示す。エアロゾルインターフェロン−γの投与を受けた全ての患者は、改善可能な気道疾患を評価するため肺活量測定で検査された。各エアロゾル処置では、処置の前後に患者の最大流量のモニタリングが行われた。
【図12】図12は、図2に示す最大流量測定の変化率の概要を示す。平均最大流量は、エアロゾルインターフェロンγの投与後に増加し、数名の患者では有意な増加を示した。注目すべきは、最大流量測定がインターフェロンγの処置後に減少した全患者において、何れも咳又はその他の愁訴を呈さなかった点である。これらのデータは、エアロゾルインターフェロンγが気道疾患患者に安全であり、優れた耐性を有することを示している。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(詳細な説明)
本発明の方法及び処置法の説明に入る前に、本発明は特定の方法及び記載の実験条件に制限されることはなく、方法及び条件は変更される場合があることが理解されるものとする。又、本発明の適用範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることから、本明細書で使用される用語が単に特定の実施形態の説明を目的としたものであり、限定を目的としたものではないことも理解されるものとする。
【0028】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される、「a」、「an」及び「the」の単数形は、特に文脈で明記されない限り、複数形の言及を包含する。従って、例えば”the method(方法)”の言及は、1つ以上の方法、及び/又は本明細書に記載の及び/又は本開示内容等を一読すれば当業者に明らかになるであろう類の手順を包含する。
【0029】
特に定めのない限り、本明細書で使用される全ての専門用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者が通常理解するものと同じ意味を有する。本明細書に記載したものと同様又は同等の方法及び材料は何れも、本発明の実施又は試験で使用される可能性があるが、現時点で好ましい方法及び材料を記載する。本明細書で言及される全ての刊行物は、方法及び/又は材料を引用した刊行物と共に開示及び説明するために、参考として本明細書で援用される。
【0030】
定義
具体的な実施形態において、「症状の改善」という用語は、処置前の値に比べて少なくとも10%の予測FVCの改善として評価される。
【0031】
「コルチコステロイド、シクロホスファミド、及びアザチオプリンの1つ以上による処置に対して効果を示さない」という語句は、従来の先行技術の処置に対して効果を示さない患者の集団を意味する。
【0032】
肺活量(VC)とは、肺の内外に移動する可能性がある大気の総量を意味する。
【0033】
FEV1とは、1秒間における大気の努力性呼気肺活量を意味する。
【0034】
FEV1/FVC比とは、1秒間における努力性呼気肺活量と努力性肺活量の比を意味する。
【0035】
「肺疾患」という用語は、少なくとも部分的に肺又は呼吸器系に発症しているあらゆる病状を指す。この用語は、特発性肺線維症を含むがこれに限定されない全ての形態における、例えば、喘息、気腫、慢性閉塞性肺疾患、肺炎、結核及び線維症等の閉塞性及び非閉塞性の両症状を包含するものとして意図される。
【0036】
「閉塞性肺疾患」という用語は、呼吸器系の内外における空気流量の減少を起こすあらゆる肺疾患を指す。健常者と比較した空気流量の減少は、例えばFVC又はFEV1によって、全体の又は限定された時間において測定される場合がある。
【0037】
「特発性肺線維症」(IPF)という用語は、「特発性間質性肺炎」(CFA)と同義であり、特発性間質性肺炎の主なサブグループに対する臨床用語で、平均生存期間が呼吸困難の発症から3〜6年の特発性進行性間質性疾患を特徴とする疾患を指す。特発性肺線維症は、肺生検で通常型間質性肺炎(UIP)を確認することによって診断される。組織学的パターンは、斑状慢性炎(肺胞炎)、進行性傷害(増殖性筋線維芽細胞及び線維芽細胞の小型凝集体、即ち線維芽細胞巣)及び線維形成(高密コラーゲン及び蜂巣化)等の不均質を特徴とする。
【0038】
「喘息」という用語は、炎症(細胞傷害)を伴う一般的な病気と肺まで続く気道の狭窄を指す。喘息は、小児及び成人において発生する。小児喘息は思春期及び成人期になっても続く可能性があるが、喘息を発症した成人の中には、過去に喘息を発症していなかった者もいる。世界で何百万人もの人が喘息を発症しており、近年では更によく見られるようになった。
【0039】
「緩深呼吸」とは、吸気時間が呼気時間より長いあらゆる呼吸パターンを意味する。このパターンは、0.5を超える負荷サイクル(吸気時間/合計呼吸時間)を特徴とする。標準の安静呼吸中の負荷サイクルは、常に0.5未満又はその近似値を示す。即ち、吸気時間は呼気時間より常に少ない。疾患状態において、負荷サイクルは閉塞性疾患で減少し、限定的な疾患であっても0.5未満になると考えられる。「緩深」呼吸は、I/E比、即ち呼気時間に比べて吸気時間が1以上になることを特徴とし、場合によってこの比は0.8又は0.9の負荷サイクルを与えることにより8又は9に近付けることができる。
【0040】
インターフェロン−γの作用機序
近年、IFN−γに対する一時的な調節経路を再現した培養細胞で、シグナル伝達経路が研究された(Vilcek, et al., (1994) Int Arch Allergy Immunol 104(4): 311−6; Young, et al., (1995) J Leukoc Biol 58(4): 373−81)。添加したIFN−γが細胞外の受容体領域に結合すると、最初の事象が生じ、細胞内の受容体領域において、既存のシグナル伝達物質及び転写1(STAT−1)のアクチベーターのチロシンリン酸化を生じる。チロシンリン酸化されたSTAT−1のみが活性化され、これはホモダイマー(又はヘテロダイマー)を形成して特異的なDNA配列に結合する。
【0041】
核への移行時、及び多くの遺伝子のプロモーター中にある同種の調節要素に結合した時に、STAT−1は転写を活性化する。STAT−1は構成的に活性な他の既存の転写制御因子に働きかける可能性があり、従って、遺伝子の転写の一部は新規タンパク質の合成を必要とすることなく最大限に誘導される。その他の遺伝子は、IFN−γに反応して新しく合成される転写制御因子と共にSTAT−1によって制御される。転写制御因子もコードするIRF−1遺伝子も又、IFN−γに反応してSTAT−1によって制御される(Pine, R. (1992) J Virol 66(7): 4470−8; Pine, et al., (1994) Embo J 13(1): 158−67; Pine, et al., (1990) Mol Cell Biol 10(6): 2448−57)。又、IRF−1遺伝子のプロモーターは、腫瘍壊死因子アルファ(TNF−α)活性のIRF−1遺伝子の転写を媒介する核因子κB(NF−kB)に結合部位を含む点にも留意する必要がある(Harada, et al., (1994) Mol Cell Biol 14(2): 1500−9; R. Pine, unpublished)。
【0042】
IRF−1タンパク質が合成されると、一時的に下流の遺伝子群の転写を活性化する。IRF−1は、TAP−1、LMP−2、及びHLA−AとHLA−BのクラスI主要組織適合抗原を含めた、抗原処理及び提示に関与する重要な遺伝子の、IFN−γ誘発による発現を制御することが示された(Johnson, et al., (1994) Mol Cell Biol 14(2): 1322−32; White, et al., (1996) Immunity 5(4): 365−76)。
【0043】
IRF−1は、リン酸化され、リン酸化の程度を操作することにより、そのDNA結合活性に影響を与える(Pine, et al., (1990) Mol Cell Biol 10(6): 2448−57; Nunokawa, et al., (1994) Biochem Biophys Res Commun 200(2):
802−7)。しかし、IRF−1のリン酸化がin vivoで制御されるという明白な証拠は示されていない。STAT−1活性はチロシンリン酸化に依存しており、セリンリン酸化の程度に影響される。しかし、多数の潜在的STAT−1も調節される。IFN−γで一晩処理された細胞は、チロシンリン酸化及びDNA結合活性が刺激されていない細胞より僅かに多いだけであるものの、STAT−1タンパク質の濃度増加が見られる(Pine, et al., (1994) Embo J 13(1): 158−67)。
【0044】
この遺伝子発現及びその調節の研究は、全面的な免疫学的状態におけるその他の側面に関する情報を示す可能性がある。具体的には、サイトカイン変化の機能作用は特異的なDNA結合活性の決定によって確立される可能性がある。例えば、T細胞において、IL−4はSTAT−6の活性化を導くのに対し、IL−12はSTAT−4の活性化を導き、Th1及びTh2反応の発生又は一方から他方へのシフトは、特定の時間において認められるSTATのDNA結合活性の特性に反映される場合がある(Darnell (1996) Recent Prog Horm Res 51:391−403;Ivashkiv, L.B. (1995) Immunity 3(1): 1−4)。
【0045】
エアロゾル化インターフェロン−γによるIPFの処置
近年、IPFに罹患した患者の小規模無作為試験が、インターフェロン−γ(IFN−γ)の皮下処理により行われた(Ziesche, et al., (1999) N. Engl. J. Med. 341: 1264−1269)。IFN−γによる処置前及び処置の6ヶ月後における経気管支の生検標本解析では、増殖因子−β(TGF−β)を形質転換する線維化促進サイトカインの異常増加を処理前に示し、結合組織増殖因子(CTGF)はIFN−γによる処置後に顕著な減少を示した。(Ziesche,
et al. (1999) supra)。プレドニゾロンのみで処置された患者は、TGF−β及びCTGFの濃度変化が見られなかった。
【0046】
インターフェロンの送達
エアロゾル送達
発明の広範な態様において、肺疾患に罹患した患者の喘息及び特発性肺線維症(IPF)等の肺疾患を処置する方法は、インターフェロン−γ等のエアロゾル化インターフェロンを肺疾患の症状が改善する治療有効量で投与することを含む。症状の改善とは、処置前の値と比較した予測FVCの少なくとも10%以上の増加である場合がある。好ましい実施形態において、エアロゾル化IFN−γは、コルチコステロイド、シクロホスファミド、及びアザチオプリンの1つ以上による処置に効果を示さない、喘息又はIPFに罹患した患者の治療に使用される場合がある。更に、肺線維症患者においてIFN−γ等のエアロゾル化インターフェロンの投与が計算及び最適化される。このような投与によって、患者の肺機能検査における改善が見込まれる。
【0047】
IFN−γ等のインターフェロンは、静脈注入、筋肉内、皮下、鼻腔内、及びエアロゾル経由等、幾つかの異なる経路によって投与される場合がある。しかし、肺病変の進行のみを処置する場合、肺に対する直接的な薬物の送達は他の器官系への曝露の回避を可能にする。IFN−γ500μgのエアロゾルによる週3回、2週間の投与が効果的であることが、標準的な患者の気管支肺胞洗浄(BAL)解析における、投与後のIFN−γの濃度増加によって示された。同様に、週3回の約500マイクログラムのインターフェロン−β投与及び、週3回の約0.25mgのインターフェロン−α投与が効果的であると考えられる。
【0048】
本発明の目的は、肺の投与経路を経てインターフェロン−γ等のインターフェロンを送達することである。肺上皮内壁から血流までを巡回しながら、IFN−γのようなインターフェロンは哺乳類の肺に送達される(これに関するその他の報告には以下がある:Adjei, et al., PHARMACEUTICAL RESEARCH, VOL. 7, No. 6, pp. 565−569(1990); Adjei, et al., International Journal of Pharmaceutics, 63:135−144 (1990); Braquet, et al., Journal of Cardiovascular Pharmacology, Vol.13, suppl.5, s. 143 −146(1989); Hubbard, et al., Annals of Internal Medicine, Vol.III, No.3, pp. 206−212(1989); Smith, et al., J. Clin. Invest., Vol.84, pp. 1145−1146 (1989); Oswein, et al., ’’Aerosolization of Proteins”, Proceedings
of Symposium on Respiratory Drug Delivery II, Keystone, Colorado, March, 1990;及びPlatz, et al.,米国特許第5,284,656号)。治療用製品を肺へ送達するよう設計された広範な機械装置(ネブライザー、定量吸入器、及び粉末吸入器を含むがこれに限定されず、全て当業者に周知である)が、本発明の実施における使用において検討されている。
【0049】
本発明の実施に好適な市販の装置の幾つかの具体例には、Ultraventネブライザー(Mallinckrodt, Inc.[米国ミズーリ州セントルイス])、Acorn IIネブライザー(Marquest Medical Products[米国コロラド州エングルウッド])、Ventolin定量吸入器(Glaxo Inc., Research Triangle Park[米国ノースカロライナ州])、Spinhaler粉末吸入器(Fisons Corp.[米国マサチューセッツ州ベッドフォード])、MistyNeb(Allegiance, McGraw Park[米国イリノイ州])、AeroEclipse(Trudell Medical International[カナダ])がある。
【0050】
このような装置は全て、タンパク質の投与に好適な製剤の使用を必要とする。一般的に、各製剤は使用される装置の種類に特異的であり、治療で有用な通常の希釈液、アジュバント及び/又は担体に加えて、適当な噴霧剤物質の使用を含むことがある。又、リポソーム、マイクロカプセル又は微粒子、包接複合体、又はその他の種類の担体の使用も考慮される。化学修飾されたタンパク質は、化学修飾の種類又は使用する装置の種類によって、異なる製剤においても調製される場合がある。
【0051】
ジェット又は超音波ネブライザーの何れかとの使用に好適な製剤は、一般的に、溶液1mL当たり約0.1〜25mgの生物活性タンパク質濃度のタンパク質水溶液を含む場合がある。製剤は又、緩衝剤及び単糖(例えば、タンパク質安定化及び浸透圧の調節のため)も含む場合がある。ネブライザー製剤は、エアロゾルを形成する際に溶液の微粒化に起因してタンパク質表面に誘起された凝集を減少させるか又は防ぐため、界面活性剤も含む場合がある。
【0052】
定量吸入器装置用の製剤は、一般的に界面活性剤を使用して噴霧剤の中に懸濁されたタンパク質を含む、微粉化した粉末を含む場合がある。噴霧剤は、トリクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタノール、及び1,1,1,2−テトラフルオロメタン、又はその組み合わせを含む、クロロフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボン、又は炭化水素等の、当目的に使用される何れかの従来材料である場合がある。適切な界面活性剤は、トリオレイン酸ソルビタン及び大豆レシチンを含む。オレイン酸は、界面活性剤としても有用であると考えられる。
【0053】
粉末吸入器装置から投与する製剤は、タンパク質を含んだ微粉化した乾燥粉末を含む場合があり、装置から粉末の散布を促進する量、例えば製剤の50〜90重量%のラクトース、ソルビトール、スクロース、又はマンニトール等の充填剤も含む場合がある。タンパク質は、最も有利には、10μm(又はミクロン)未満の平均粒径の微粒子型で調製される必要があり、末端肺への送達が最も有効な0.5〜5μmまでが最も好適である。
【0054】
ヒト肺の深部に対し、IFN−γを含むインターフェロン等の治療薬の送達量を有意に増加させることがエアロゾル送達の目標である。特に好ましい緩深呼吸法では、標準(安静呼吸)に比べて最大で約50倍まで肺末梢への沈着効率が増加する場合がある。
【0055】
安静呼吸(図1)に比べて、緩深呼吸法を使用した呼吸パターンは、具体的に吸気流量の減少及び吸気時間の著しい延長を表す。このパターンは、図2で示される。緩徐な吸入により、エアロゾル粒子は上気道を飛び越えて進み、従って肺への沈着を有効にする。長期吸気は、肺末梢に対するエアロゾルの適切な固着を可能にする。吸気時間の延長及び十分な固着が行われることにより、残りの粒子が吐き出されうる前に「吸気沈着」が促進される。これらの状況下では、呼気の開始前に吸入された粒子のほぼ100%が沈着する可能性がある。このプロセスは、通常口内で沈着する比較的大きい粒子(例えば約4.5μm)を使用することにより更に促進することができる。緩深呼吸での吸気の長時間化は、薬剤の口内における沈着の回避を促進するのに加えて、従来の、より小さいエアロゾルの沈着量が減少する末梢気道症状を示す患者の肺へ薬剤を送達するのに特に適している。この方法によって処置される場合がある肺末梢の疾患には、例えば、特発性肺線維症及び肺気腫が含まれる。両疾患は、安静呼吸中に気腔の拡大をもたらし、沈着が殆ど見られない。
【0056】
吸入及び沈着の本技術は、肺毛細管を経た体循環への全身吸収を促進する意図を以って、薬剤の末梢送達を促進することができる。図3は、緩深呼吸パターンを使用して4.5μmのエアロゾルを吸入するヒト患者における沈着パターンを示す。この図は、胃における僅かな活動によって示された上気道において、エアロゾルがあまり沈着されていない(10%未満)ことを示す。沈着図は、約8秒の吸気時間で緩深呼吸により3回呼吸した後、ヒト患者の肺末梢部に沈着した、放射標識されたエアロゾルを示す。図4は、現在の吸入の標準法である安静呼吸を20回行って1.5μm粒子を吸入した後の同患者のスキャン図である。この図の解析では、大型粒子の使用、緩徐な吸入、及び吸気時間の延長を組み合わせた緩深呼吸法では、肺へのエアロゾル粒子の沈着に対して、1回の呼吸につき51倍以上有効であることが示される。
【0057】
緩深呼吸法の実行が可能な装置の製造は複雑であるが、本機能を実行する試作装置が開発及び使用されている(英国に拠点を置くProfile Therapeutics社の子会社である、Profile Therapeutics, Inc., 28 State Street, Ste. 1100, Boston, MA 02109)。
【0058】
肺実質の疾患は、吸入された粒子が殆ど沈着されない可能性がある肺末梢の幾何学的変化を起こす。同薬剤の全身への送達と比較した場合、疾患(肺末梢)部位に直接送達する療法はより有効であると言える。インターフェロン(IFN−γ等)のエアロゾルの緩深呼吸法は、特に肺線維症患者の肺胞における疾患の処置に適している。
【0059】
ヒト沈着試験により、緩深呼吸法が従来のエアロゾル送達系よりも約50倍効率的であることが示された。この呼吸パターンは、この薬剤の既存の製剤を使用した肺末梢への広い投薬範囲より優れた、例えばINF−γ等のインターフェロン等の薬剤を使用した、特発性肺線維症又は喘息を含めた閉塞性肺疾患等の肺疾患へのエアロゾル療法の有効性を調べる臨床試験の設計を可能にする。殆どエアロゾルが吐き出されないことから、肺における沈着量は呼吸パターンによって調節される。
【0060】
鼻部送達
タンパク質の鼻部送達も考えられる。鼻部送達は、肺における薬品沈着を必要とすることなく、鼻部への治療薬の投与後にタンパク質を直接血流へ輸送することを可能にする。鼻部送達用の製剤は、デキストラン又はシクロデキストランを含有する製剤を含む。
【0061】
投与量
更なる試験の実施の際に、種々の患者における種々の病態の処置に好適な、投与量に関する情報が明らかになることが理解されており、当業者は、投与患者の治療上の背景、年齢、及び健康状態を考慮して適切な投薬を決定することができる。一般的に、注射又は注入におけるインターフェロン−γの投与量は、生理活性タンパク質250μg(化学修飾を含まないタンパク質のみの質量で計算)〜750μg(同様に基づく)の間で週1〜5回の投与が予測される。更に好ましくは、約500μgで週3回の投与が行われる場合がある。一般的に、注射又は注入におけるインターフェロン−αの投与量は、通常250〜750μgで週1〜5回の投与、好ましくは約500μgで週3回の投与である。インターフェロン−βの場合において、投与量は、通常0.10〜1mgで週1〜3回の投与、好ましくは週に約0.25mgで3回の投与である。投薬スケジュールは、タンパク質の循環半減期、及び使用される製剤により異なる場合がある。
【0062】
その他の化合物の投与
肺疾患の処置に使用される1つ以上の薬学的組成物と併用してインターフェロンを投与する場合があることは、本発明の更なる態様である。又、例えばシクロホスファミド、アザチオプリン、又はコルチコステロイドといった抗炎症薬又は免疫抑制薬が同時に投与される場合もある。投与は同時行われる場合もあれば、連続して行われる場合もある。
【0063】
IFN−γ250μgの3日間の皮下投与により、末梢血単球の上方調節が示されたのに対して、IFN−γのBAL濃度の増加又は肺胞マクロファージの変化の増加は見られなかった(Jaffe, et al.(1991) J. Clin. Invest. 88:297−302)。更には、エアロゾルIFN−γが肺結核患者における補助療法として使用された。
【0064】
後述する試験では、IPFに罹患した従来の免疫抑制療法に対する効果を示さない患者が、エアロゾル化IFN−γによって処置されている。
【0065】
本発明は、後述の実施例を参照することにより更に理解することができるが、これらの実施例は、本発明を例示するためのものであり、本発明を限定するためのものではない。
【実施例】
【0066】
以下の実施例は、本発明及び化合物及び薬学的組成物の治療法を実施及び使用する方法の詳細な開示及び記載を、当業者に示するためのものであり、発明者が本発明と見なす範囲を限定することを目的としたものではない。使用する量(例えば、分量、温度等)に関しては精度を保証するように努めたが、いくらかの実験誤差及び偏向が含まれるはずである。特に指示がない限り、割合は重量割合を、分子量は平均分子量を、温度は摂氏温度を、及び圧力は大気圧又はその付近の圧力を指す。
【0067】
(実施例1)
患者集団
試験対象は、American Thoracic Societyの基準A又はB(下記)によって診断された特発性肺線維症(IPF)に罹患した患者であった。患者集団は、コルチコステロイド、シクロホスファミド、及び/又はアザチオプリンによる従来の治療に対して効果を示さなかった、又は適応しなかった。患者集団は、エアロゾル化IFN−γを12週間使用することにより処置された。
【0068】
UIPを示す外科生検の背景においては、以下の3つの条件が適合しなければならない。
【0069】
1. 特定の薬物毒性、環境曝露及び結合組織病等の間質性肺疾患におけるその他の既知原因の除外。
【0070】
2. 限定された(FEV1/FVC比の増加による肺活量(VC)減少)証拠結果を含む肺機能試験の異常及び/又はガス交換障害(O2に対する肺胞動脈較差の増加又はCOに対する拡散能の低下)。
【0071】
3. HRCTスキャンでスリガラス様陰影が殆ど示されない両肺基底部の網状異常。
【0072】
外科肺生検を行わない場合は、免疫正常成人において以下の場合にIPFの推定診断を行うことができる。
I. 上記の基準3つが全て満たされる。
II. 経気管支肺生検(TBBx)又は気管支肺胞洗浄(BAL)が、他の診断を支持する特徴を示さない。
III. 以下4つの小基準の内の3つに合致する。
1. 年齢50歳超
2. 未解明の運動時呼吸困難の潜伏性発症
3. 罹患期間3ヶ月超
4. 両肺基底部の吸気性クラックル
以下の改善が示される。
(1)ステロイド治療前に得られるFVCと比べた、処置前の値から10%の予測FVCの増加。
(2)患者のFVCが処置前の値から10%を超えて増加を示し、その後治療に関係なく処置前の値まで戻る場合。
【0073】
試験への参加条件を満たす患者は、以下の通りに定められる。
【0074】
(1)3年以内のスクリーニングで一般的に認められた基準(上記参照)に基づいてIPFと診断された患者。
【0075】
(2)年齢20〜70歳。
【0076】
(3)シクロホスファミド/アザチオプリンの有無に関係なくプレドニゾンによる処置に対して効果が示されない、又はステロイド又は細胞毒性薬剤による処置が禁忌である患者。
【0077】
(4)試験登録前に28日間0〜15mgのプレドニゾン又は同等物を服用していて、コルチコステロイドを同用量に留める意思がある患者。
【0078】
(5)FVC50%以上、及びスクリーニングで予測された処置前の値の90%以下。
【0079】
(6)室内大気下の安静時における60mmHg超のPaO2。
【0080】
(7)同意書が理解でき、署名する意思があり、試験プロトコールに含まれる全要求に応じる意思がある患者。
【0081】
(8)気管支鏡検査法による検査の基準に適合し、処置を受ける意思がある患者。
【0082】
(9)Bellevue HospitalのGCRC施設で週3回の薬物投与を受けられる患者。
【0083】
試験の参加に適さない患者は、以下の通りに定められる。
【0084】
(1)気管支鏡検査法の検査を受ける意思がない又は受けられない患者。
【0085】
(2)既知の喘息又は重症のCOPDに罹患する患者。
【0086】
(3)適切な動脈血酸素化を維持する酸素療法を必要とする患者。
【0087】
(4)試験薬物又はその他の成分の薬物に対する過感受性を有する患者。
【0088】
(5)試験薬剤投与(添付文書に従った薬剤投与に対する禁忌症)によって悪化のおそれがある既知の重症な心臓病、重症な末梢血管疾患、又は発作疾患の患者。
【0089】
(6)妊娠中又は授乳中の女性。
【0090】
妊娠可能年齢の女性は、妊娠試験が陰性である必要があり、産児制限の受諾書への記入が要求される(試験期間中の禁欲が好適な方法である)。
【0091】
(7)処置前から1週間以内の活動性感染症の証拠。
【0092】
(8)試験登録から1年以内に患者の死亡が予測されるIPF以外の全ての「条件」。
【0093】
(9)以下を含む異常な血清検査値。
【0094】
(a)指定の限度値を超える肝機能
総ビリルビン量:正常値上限の1.5倍超
アラニンアミノトランスフェラーゼ:正常値上限の3倍超
アルカリホスファターゼ:正常値上限の3倍超
アルブミン:スクリーニング時に3.0未満
(b)指定の限度値を外れたCBC。
【0095】
WBC:2,500/mm3未満
ヘマトクリット:30未満又は59超
血小板:100,000/mm3未満
(c)クレアチニン:スクリーニング時に正常値上限の1.5倍超;
(10)6週間前以内にコルチコステロイド、シクロホスファミド、及び/又はアザチオプリンを除外した肺線維症治療の薬剤。
【0096】
(11)全種類のインターフェロン投薬による以前の治療。
【0097】
(12)最後の28日における全徴候に対する治験の治療。
【0098】
(実施例2)
最初に、エアロゾル化インターフェロン−γによる非盲検の予備実験に登録されるIPF登録所から10名の患者が召集される。10名の患者は、参加及び除外基準に適合すると見込まれる。収集されたデータには、身長、体重、及びバイタルサイン(全ての投薬における個人歴、及び徹底した職業的及び喫煙経歴、身体検査、EKG、CBC、電解質パネル、肝臓酵素及び凝固プロフィール、CXR、胸部CT、PFT、ABG、出産年齢の女性における妊娠試験)等、過去の病歴が含まれる。
【0099】
各患者は試験の初めに、患者の生涯を通じたタバコ曝露、環境曝露、及び投薬使用について詳細に質問する肺線維症アンケートへの記入を完了している。各患者は、IFN−γの耐性及び起こりうる副作用を確認する症状アンケートにおいても記入を完了している。
【0100】
患者は、特定の線維化促進及び炎症性サイトカインの濃度を評価するために、気管支肺胞洗浄(BAL)を使用した基礎気管支鏡検査を受ける。手順は以下の通りに行われる。
【0101】
各患者は、Bellevue Hospitalプロトコールに従って気管支鏡検査について評価される。各評価には、Hgb、血小板、BUN/CR、凝固パネル、PO2によるABG≧75mmHg、EKG、CXRが含まれる。気管支鏡検査における矛盾には、患者の協力の欠如、最近の心筋梗塞、悪性不整脈、回復不能の低酸素血症、不安定な気管支喘息、肺高血圧、部分的な気管閉塞又は声帯麻痺、出血性素因及び尿毒症が含まれる。当患者は、気管支鏡検査の少なくとも8時間前に絶食していなければならない。静脈ラインの設置、酸素の補給投与、及び持続的なパルス酸素濃度測定及び血圧監視が実施される。
【0102】
患者は60mgのIMコデインを前投薬され、粘着性リドカインが鼻部へ投与され、リドカインうがい薬及びネブライザー(局所麻酔薬気管支鏡)が使用される。処置中に、ミダゾラム及び/又はモルヒネの投与によって、鎮静させ、咳反射を減少させる場合がある。これらの投薬は、気管支鏡検査で通常使用される。気管支鏡は鼻部及び声帯を通り抜けて通過し、気管支内検査が実施される。その時、無菌標準生理食塩水を50mLずつ分割して合計300mL投与し、液体の回収を最大にするため穏やかに吸引を行うことによりBALが行われる。
【0103】
BAL液は患者から得られた後、全てのBALを調べるために使用された標準的プロトコールに従って、GCRCの中核的な実験室で処理される。BAL液は無菌ガーゼを通して濾過される。総細胞数の相違は血球計で計測される。細胞生存率はトリパンブルー法によって決定される。20の細胞遠心分離標本は、BAL液の各葉から調製され、−70℃にて冷凍される。24時間の上清は、サイトカインELISA検定のため106細胞/mLの濃度で採取される。上皮内壁液の量は、タンパク質測定法によって決定される。遠心分離の後、BAL液上清はAMICONフィルター法を使用して10X−50Xに濃縮される。サイトカイン検定は、市販のキットで実施される(R&D Systems[米国ミネソタ州ミネアポリス])。全試料は三つ組で評価され、サイトカインの量はマイクロタイタープレートリーダーによって検定終了後に定量化される。経気管支生検標本は、前述のように(Raghu, et al. (1989) Am. Rev. Resp. Dis. 140:95−100)、線維芽細胞を単離するために処理され、コラーゲンタンパク質の3Hプロリン取り込みを使用したコラーゲン産生の分析が行われる。各患者は、病院の看護職員によるGCRCでの処置後の4時間で、熱、息切れ、喀血、及び気胸を含むがこれに制限されない気管支鏡検査の潜在的な副作用がモニターされる。同時投薬は患者の医療記録に記録される。
【0104】
各患者は、コルチコステロイド又は免疫抑制薬の服用を継続を続行する。患者は試験中、治験による処置は許可されない。前臨床のラット試験により、非経口のIFN−γは肝臓ミクロソームのシトクロムP−450の濃度を減少させることが示された。このことにより、この分解経路を利用することが知られている薬剤の代謝の低下を起こす可能性がある。患者がこの経路で代謝されることが知られている薬物療法中である場合は、適正なモニタリング方法が実行される。
【0105】
IFN−γは週3回で12週間、携帯型ネブライザーによって投与される。各用量投与の前に、投与する医師による試験が実施される。最大流量測定が実施され、成績の良い順に3つまでが処理前の値として記録される。Aeroeclipse又はAerotech IIネブライザーは、通常の方法及び500μgの薬剤をネブライザーに入れて調製される。患者は鼻栓をした状態で着席位置につき通常の呼吸をしている状態で、圧縮空気(壁掛け装置又は携帯装置)による処置が実施される。処置が終了したら、患者は再び試験医師によって検査され、1時間装置上で観察される。投薬送達の1時間後に最大流量の測定値が得られ、記録される。追加の肺試験及び最大流量測定を受ける場合、各患者は最初のエアロゾル治療から更に4時間、装置から離れてはならない。各患者はIFN−γの投与中に、熱、疲労、GI異常、頭痛、咳、息切れ、喘鳴、及び検査所見の異常を含むがこれに限定されない副作用についてモニターされる。
【0106】
毒性は、”The Common Toxicity Criteria”によりグレード分けされる。これに従って用量調整が行われる。毒性グレードIでは、患者は医師の裁量で処置を続けることができる。毒性グレードIIでは、(必要に応じ即時に繰り返して異常検査パラメータが確認される)毒性グレードIと同等又はそれ以下に戻るまで患者の用量は継続され、戻った段階で患者は処置を再開することができる。グレードII又は更に悪性の毒性に戻った場合、患者は試験から脱退させられる。全ての毒性グレードIII又はIV毒性において、患者は試験から脱退する。異常な検査パラメータは確認の必要がある。
【0107】
(実施例3)
臨床上の有用性
慢性アレルギーの既往歴を有する38歳のハイチ人女性は、次第に増加する息切れ及び運動性呼吸困難の1年半の既往歴があった。患者のPFTは、主に拡散能の低い限定的なパターンを示し、間質性肺疾患の疑いがあった。彼女は他の胸部CTスキャンを受け、前記のPFT結果が確証され、主に肺底部で胸膜下線維形成及び蜂巣状の変化が明らかになった。開胸肺生検は、UIP/IPFと一致したパターンを示した。
【0108】
患者にエアロゾル化IFN−γの治療を開始した。彼女は呼吸困難の減少を報告し、職場復帰することができた。彼女は、3年間(表1参照)臨床的に安定していた。客観的所見は表2に記載する。最大酸素消費量の増加、換気量の減少、及び酸素飽和度の低下程度の減少によって示される通り、運動成績が改善されている。患者の呼吸困難度スコアは減少した(UCSD SOBQ)。エアロゾル療法を行っている間、患者の肺機能検査は安定状態を維持していた。図5に示す沈着図は、54μgのIFN−γに相当する。肺実質で沈着する。図6は、エアロゾル療法の前後にBALによって測定されたTGF−β濃度を示す。IFN−γエアロゾルの作用と一致して、TGF−β活性の顕著な減少が示された。
【0109】
表1.処置前後のPFTの結果
【0110】
【表1】
【0111】
【表2】
(実施例4)
BAL液は、タンパク質の測定のために使用され、送達される薬剤量を測定するためウイルス抑制試験によってIFN−γを評価する。濃縮したBAL液及び24時間の細胞培養上清は、ELISA(R&D[米国ミネソタ州ミネアポリス])によってサイトカインIL−1β、IL−4、IL−6、IL−8、及びTNF−αについて評価される。無細胞のBAL上清は、ELISA及びルシフェラーゼレポーター検定によってTGF−β活性の測定に使用される。経気管支生検(TBBX)標本は、半定量的なRT−PCRによってTGF−β遺伝子の転写の測定に使用される。線維芽細胞はTBBX標本から得られ、コラーゲンI、III、及びフィブロネクチンRNAの量がRT−PCRによって測定される。RNA(10μg)はTBBX又はTBBXの培養細胞から得られ、ノーザンブロット解析が行われる。ヒドロキシプロリン含有タンパク質の含有量は、BAL液、BAL上清、及びTBBX標本を使用した分光光度法によって測定される。処置前後の両治療試料のBAL液細胞数は、各患者において計算される。保存のため、血液試料が各患者から採取される。
【0112】
(実施例5)
各患者は、携帯型ネブライザーによるIFN−γ投与の沈着試験への参加を依頼された(別の同意の下)。この沈着試験は以下に記載する通り、エアロゾル化IFN−γを試験するように計画された。薬剤は99mTcで標識され、エアロゾルネブライザーによって投与された。「減衰技法」を使用して、肺の種々の部分に送達されたIFN−γの投与量が計算された。IFN−γの初期投与量500μgの安全性が以前に示されたため、この投与量が使用された。投与量は、個々の患者の沈着試験によって調節される。後に続く気管支鏡検査は、治療終了後に上記のプロトコールを使用して実施された。BALは肺沈着図に従って誘導されたため、薬剤沈着が最も多い部分が分析され、最も薬剤送達の少ない部分及びエアロゾルIFN−γ処置前試料と比較された。このように、肺の各部位に対する全投与量は、計算及び定量が可能である。臨床反応及びBALデータに従って、投与量は最適な臨床及び沈着パラメータを反映するために調整することができる。可能な場合は、試料の同様の部分に対する試みが処置前及び処置後に行われる。各患者は、治療の1ヶ月後に経過観察が評価される。全ての手順、検査評価、放射線試験、及び肺の生理学的評価の結果は、患者の医療記録で詳細に記録される。全試験の評価は、NYU医療センターのGCRCで実施される。
【0113】
呼吸に作用する市販のネブライザーであるAeroEclipseは、患者のネブライザーを通した呼吸に依存して粒子を発生させ、この試験において使用された。これは吸入中にのみエアロゾルを産生する。
【0114】
IFN−γは、in vitro及びin vivoの両試験でジエチレントリアミン五酢酸99mテクネチウム(99mTc−DTPA)を使用した放射標識された。AeroEclipseにおいて、2つのバイアル(250mgのIFN−γ)が2mLの最終量で調製するために使用された。AeroEclipseは、Pari Masterエアコンプレッサー(PARI Respiratory Equipment, Inc.[米国カリフォルニア州モンテレー])を使用して操作した。
【0115】
ネブライザーは、その臨床用途における方法で回路に接続された。10の過程で、低流量(1.0L/m)カスケードインパクター(California measurements[米国カリフォルニア州シエラマドレ])は、Tコネクター(T connectorcascade、Hudson Respiratory Care[米国カリフォルニア州テメキュラ])を使用して接続された。呼気中に、カスケードインパクターに粒子が入ることを防ぐ吸気フィルターが、ピストンポンプとカスケードインパクターの間に設置された。二番目のフィルター(漏出フィルター)は、吸気フィルターにもインパクターにも誘導されない過剰粒子を捕捉するためシステムに設置された。患者の換気で起こりうる作用を評価するため、ピストンポンプ(Harvard Apparatus[米国マサチューセッツ州ミリス])が患者の呼吸運動の模擬実験を行うために使用された。
【0116】
吸入の前に、エアロゾルは以下の2つの条件下においてベンチで試験された。
雲の発生(換気なし): カスケードインパクターは、ピストンポンプ(ポンプは回路から接続分離される)によって起こる換気を行わずに、1Lpmにおいて管から直接粒子試料を採取した。AeroEclipseからの粒子の発生により、呼吸作動弁はサンプリング期間中に手動で圧縮された。
換気中: Harvardポンプはシステムで正弦曲線の流量を発生するために使用され、患者の呼吸に類似であった。750mLの1呼吸容量では、20/mの呼吸数及び0.5の負荷サイクルが利用された。
【0117】
空気力学的な粒子分布が、カスケード(Tコネクターcascade)に接続している管上の沈着に加えて測定された。エアロゾルの弾道特性は、Tコネクターcascade上での活性として定量化され、カスケードインパクターで捕捉された活性の百分率として報告された(カスケード%)。この沈着は、肺沈着を予測する際に利用された。
【0118】
(キセノン画像診断及び減衰試験)
全患者のIFN−γ沈着は、AeroEclipseネブライザーを使用して行われた。キセノン画像診断及び減衰試験(下記参照)が実施された。
【0119】
肺気量及び概要研究(133キセノン(133Xe)平衡スキャン)
患者は、後部に配置されたガンマ線カメラ(Picker Dinaカメラ;米国コネティカット州ノースフォード)の前に着席した。99mテクネチウム(99mTc)に対する室内バックグラウンド画像を撮影した後、カメラは133Xeに対して設定された。患者は機能的残気量(FRC)で安静呼吸を行い、計数率が15秒にわたり土10%に安定するまで、5〜10mCiの133Xeを吸入した。1.0分のガンマ線カメラ画像(133Xe平衡画像)が得られ、解析のためコンピュータで保存された(Nuclear
Mac v1.2/94; Scientific Imaging Inc.[米国コロラド州リトルトン])。この画像は肺の外縁を示すのに使用された。
【0120】
エアロゾル沈着試験
133Xe画像診断の後、カメラは99mTcに切り替えられた。そこで、患者は放射標識したエアロゾル化IFN−γをネブライザーから吸入した。各装置に、呼気フィルターが吐き出された粒子を捕捉するために設置された。ネブライザーは乾燥するまで運転された。最終吸入の後、患者は口部から胃までの物質を洗うために、コップ1杯の水を飲んだ。胃活性測定により上気道の沈着を評価した。
【0121】
肺減衰試験(血流スキャン)
肺の減衰係数を計算するために、肺血流スキャンが行われた。沈着画像診断の後に続いて、5mCiの99mTc−粗大凝集アルブミンが直ちに末梢静脈を経て注入された。全ての粗大凝集体が心臓の右面を横断し、局所血流に比例して肺で分散したことが想定された。1分の画像が得られた。血流は、測定された活性から前(沈着)画像で測定された活性を減算して計算された。肺の減衰係数は、注入された活性量でカメラが測定した活性量を除算することによって測定した(肺減衰係数=測定した活性/注入した活性)。
【0122】
胃減衰
患者には既知量の99mTcを添加したパンが与えられ、摂取後に胃のガンマ線カメラ画像が撮影された。胃減衰は、ガンマ線カメラで測定した活性で経口摂取した活性を除算することによって計算された(胃減衰係数=測定した活性/経口摂取した活性)。
【0123】
沈着の定量化
肺の輪郭を明示して肺気量を網羅するために、コンピュータを使用して関心領域が保存平衡133Xe平衡スキャンに関して視覚的に示された。二次元の肺領域内部の3分の1の輪郭を表した肺中央部分がその時に示された。キセノン部分が示された後、同部分は沈着画像の上に配置され、胃の活性が確認された。この時「胃部分」は、胃の輪郭が視覚的に示された。胃部分と左肺のキセノン平衡部分との重複があった場合、重複する部分は「肺上の胃」又はSOLとして定義された。肺の全沈着を測定するため、胃及び肺部分上の胃からの放射活性は除外された。
【0124】
肺沈着は、肺部分で活性を定量化し適正な減衰補正を加えることにより、ガンマ線カメラを使用して測定された。口腔咽頭の沈着は、沈着画像上の全活性から肺活性を減算して定量された。胃減衰に対して適切な補正が行われた。
【0125】
特定の中枢対末梢比(sC/P)
肺活性の特定の中枢対末梢比は、キセノン平衡画像でエアロゾル画像を除算することによって定められた。この比は、部位的肺ガス量に対して正規化したエアロゾル沈着の分布を表す。
【0126】
エアロゾル沈着のsC/P=(C/Pエアロゾル / C/Pキセノン)
エアロゾルがガスとして完全に機能して133Xe分布に追従する場合、sC/P比は1.0となる。粒子が気道中央に優先的に沈着した場合、2.0又はそれ以上のsC/P比が得られる。
【0127】
沈着試験の結果は、肺全体を通じてエアロゾルが顕著に沈着したことを示す。
肺気量に関して正規化する場合、肺の末梢より中心において比較的多くの粒子が存在する(sC/P比=1.618、上気道の沈着は殆どなし)。
【0128】
(実施例6)
エアロゾルIFN−γの作用
副作用
エアロゾル化IFN−γで15名の個人(健常志願者と肺結核患者)を処置した。エアロゾルの投与は、時折の咳又は筋肉痛を訴える患者が数名いたが、耐性は良好であった。投与の最長期間は、副作用が増幅しない3ヶ月であった。更に、Jaffeは、通常の患者に与えられるエアロゾル化IFN−γが非経口で送達されたrIFN−γとは対照的に、全身性の副作用がなく安全であること、及び肺胞マクロファージとPBMC以外を活性化することができ、その作用は末梢血のみで示される可能性があることを発見した(Jaffe, et al., (1991) J Clin Invest 88(1):
297−302)。
【0129】
沈着試験
IFN−γのエアロゾル沈着特性を調査した。沈着画像は、放射活性(エアロゾル)が肺の正常な部位全てに沈着されることを示し、明らかにする。疾患及び空洞性部位は沈着されない。血流スキャンは、同様に空洞性部位に血流が殆ど無いことを示す。沈着の予備測定において、質量平衡技法及びキセノン(図)を使用することにより肺に送達されたエアロゾルが投与量の10〜20%の範囲であることを明らかにする。肺に対する薬剤の標的への送達が、正常な肺実質において薬剤沈着を示すことが結論付けられた(Condos,, et al., (1998) Am J Respir Crit Care
Med 157(3): A187)。
【0130】
気管支肺胞洗浄所見
以前に、IFN−γで処置された、重症の多種薬剤耐性の結核患者群における臨床状態の改善を示した。患者は、処置の前後にX線撮影で病変した部位のBALを使用して気管支鏡検査を受けた。24時間の細胞培養上清及びBAL由来の液体はELISAによって評価され、TNF−a(平均172〜117pg/mL)、IL1−b(平均25〜8pg/mL)の濃度が時間の経過と共に減少し、IFN−γ(平均3.3〜2.5pg/mL)の濃度があまり検出されないことが示された。IFN−γの投与が、疾患部で局所的に産生されるTNF−aの減少に関係していることが結論付けられた。これにより、進行したMDR−TBにおけるIFN−γの有益な効果を部分的に説明することができる(Condos, et al., (1998) Am J Respir Crit Care Med 157(3): A187)。
【0131】
(実施例7)
特発性肺線維症の効果的な処置
IPFに罹患する5名の患者に対するエアロゾルrIFN−γの試験において、耐性が良好な処置を発見した。副作用には、疲労、咳、及び微熱(n=1)が含まれた。試験期間中の定期的な検査評価は、異常を示さなかった。患者全員が息切れの自覚的な改善を報告した。3ヶ月の治療の終了時までに、試験での患者の全肺気容量において統計的に有意な増加が示された。図7は、処置を受けた5名の患者の内の3名が、処置後に予測された全肺気容量の増加率が認められたことを示す。被験患者5名の内の2名の努力性肺活量においても、200ccを超える(それぞれ200及び500cc)の改善が見られた。図8は、処置された5名の患者の内の3名における、処置後の予測努力性肺活量の増加率を示す。これらの生理学的変化は、これらの患者の気管支肺胞洗浄(BAL)液(肺内部の内壁から洗出される液体)から回収された活性化TGF−β濃度の減少を伴った。図9は、処置された5名の患者において、総タンパク質のTGF−βの減少した部分を示す。TGF−βは、肺の線維症の重要な介在物質の1つである。その活性化は、コラーゲン産生を誘導する。その濃度の減少により、肺のコラーゲン沈着の減少及び線維形成の減少が誘導されるはずである。更に、エアロゾル療法の前後に患者のBAL液でインターフェロン−γの濃度を測定し、薬剤のエアロゾル投与に関連した増加が示された。図10は、結核患者と特発性肺線維症に罹患する患者の肺において、インターフェロン−γによるエアロゾル処置の前後両方で測定されたインターフェロン−γの量を示す。
【0132】
以前に実施された皮下試験と対照的に、rIFN−γのエアロゾル送達で肺機能における生理学的改善を示すことができた。この改善は、Intermune社の皮下試験で患者が受けた1年の処置に比べて、3ヶ月の処置期間にわたって見られた。この生理学的改善は、エアロゾル療法後に患者の肺から回収された活性化TGF−β濃度の減少を誘導している肺のIFN−γ濃度の増加に関与していた。このデータは、肺にインターフェロン−γの薬理学的有効量を送達可能であることを示す。皮下投与後に、肺におけるインターフェロン−γ濃度は検出されなかった(Jaffe, et al., J Clin lnvest. 88, 297−302 (1991)を参照)。更に肺への投与量を決定するため、5名の患者の内の2名に沈着試験を実施した。この試験において、肺末端部に約40mcgのrIFN−γによる沈着を確認した。肺投与量又はrIFN−γの肺濃度の測定は、実施されなかったか又は皮下rIFN−γ試験を報告しなかった。
【0133】
(実施例8)
サイトカイン遺伝子調節
この試験において、転写制御因子の存在量、リン酸化、及びDNA結合活性の調査により、エアゾールIFN−γ処置が潜在的なSTAT−1を活性化し、IRF−1の新規合成を誘導するため、細胞シグナル伝達経路に影響を与えるという仮説が試験される。肺結核患者のIFN−γによる処置前後の肺の、非疾患及び疾患部位から得たBAL細胞において、これらの実験を実施した(Condos, et al., (1999) Am
J Respir Crit Care Med (in press))。IRF−1の精製及びクローニングは、Laboratory of Molecular Cell Biology at Rockefeller University with James E. Darnell, Jr.においてRichard Pine, Ph.Dにより行われた最初の作業の主要な部分であった(Pine, et al., (1990) Mol Cell Biol 10(6): 2448−57)。本プロジェクトの「目的3」に対して提唱された免疫ブロット法及び電気泳動移動度シフト試験の同法又は類似の方法が、ここに言及された作業で使用された。
【0134】
結核患者の未病変の肺におけるサイトカイン遺伝子の操作結果に最も関連性が認められた。結果はBAL細胞の接着(主に肺胞マクロファージ)及び非接着の(リンパ球と多核白血球)の両部分で、エアロゾルIFN−γ処置後に特異的IRF−DNA及びSTAT−1−DNA複合体の量の増加が示される結果となった。
【0135】
(実施例10)
喘息処置の有効性
標準処置に対してIFN−γエアロゾル処置を受ける30名の軽度から中等度の喘息患者を召集する。本試験は、症状抑制のためコルチコステロイドの吸入による中等度の投与量を必要とする軽度から中等度の持続性喘息に罹患する患者における、無作為化、プラセボ対照、クロスオーバー、二重盲検rIFN−γエアロゾル送達試験として行われる。
【0136】
患者は人種又は性別を問わず、年齢が18〜65歳の間でなければならない。患者は年間10箱より少ない喫煙歴を有し、現時点で非喫煙者でなければならない。喘息の診断用のNAEPPガイドラインを満たす患者が登録される。1秒努力呼気肺活量(FEV1)の基準が予測値の70%以上及び回復可能の証拠(気管支拡張剤治療後のFEV1における15%以上の改善)が認められた軽度から中等度の持続性喘息患者を召集する。これらの患者は、吸入b2−アゴニスト、及び低用量の吸入コルチコステロイドの使用を断続的に行うことが必要とされる。低用量の吸入コルチコステロイドの使用には、168〜500mcg/日のジプロピオン酸ベクロメタゾン、200〜400mcg/日のブデソニドDPI、500〜1000mcgのフルニソリド、又は400〜1000mcg/日のトリアムシノロンアセトニドが含まれる。
【0137】
妊娠中であるか、光ファイバー気管支鏡検査に対する禁忌症があるか、現時点で喫煙者であるか、喫煙歴が年間で10箱より多い患者は除外される。十分に制御されていない又は重症な喘息の既往歴を有する患者、近年に全身へのコルチコステロイドの使用における既往歴、又は近年の増悪又は感染の既往歴も除外される。
【0138】
召集された全患者が吸入コルチコステロイド(ジプロピオン酸ベクロメタゾン4〜12息/日)を同基準の投与で開始するため、1ヶ月の「洗浄」期間を設けることになる。各患者は処置開始前に以下について調べられる。
1)全病歴及び現症、並びに定期的な実験作業、
2)肺機能測定(FEV1、FVC、及び最大呼気速度)、
3)静脈刺入によって採血された50mLのヘパリン添加血、
4)血液試料は、全IgE、特定のアレルゲンに対する特異的IgEと好酸球算定のために採取される、
5)細胞数/差、及び24時間の培養上清におけるIFN−γ、IL−4、IL−5、GM−CSF、IL−10、IL−12、及びIL−13の濃度のELISAによる解析を伴った、BALによる光ファイバーの気管支鏡検査。
【0139】
この時、15名の患者にエアロゾルrIFN−γ(500mcg)を週3回、8週間投与する。エアロゾル化生理食塩水の等価量が、無作為方法で15名の患者に投与される。8週目に、1ヶ月の洗い出し期間と患者が試験で第2の腕に換えることを許可する。患者は、それぞれ通院治療を行う。
1)徴候及び症状についての簡単なアンケート。
2)毎日の日誌カード及びb−アゴニスト使用のモニターのレビュー。
3)エアロゾル療法の前後にモニターしている最大流量。
4)簡略された既往歴及び毎週の身体検査。
5)患者は、エアロゾル化IFN−γ治療の前中後に、毎日の日誌で症状の特徴を示す。患者は、咳、喘鳴及び息切れの症状の程度を評価する。患者は、毎日の最大流量測定も記録する。
【0140】
各腕の試験の完了で、(8週目におけるエアロゾル化IFN−γ治療又は対照の生理食塩水の何れか)患者は以下について調べられる。
1)全病歴及び現症、並びに定期的な検査作業、
2)肺機能測定(FEV1、FVC、及び最大呼気速度)、
3)静脈刺入によって採血された50mLのヘパリン添加血、
4)血液試料は、全IgE、特定のアレルゲンに対する特異的IgEと好酸球算定のために採取される、
5)BALによる光ファイバーの気管支鏡検査が、最後のIFN−γ治療後又は治療のない日に行われる。細胞数/差、及び24時間の培養上清におけるIFN−γ、IL−4、IL−5、GM−CSF、IL−10、IL−12、及びIL−13の濃度がELISAによって解析される。
6)全ての患者は喘息の病院で以下を継続する。
【0141】
a)全既往歴及び身体検査
b)定期的な実験
c)肺活量測定及び最大流量測定
種々の理由のために低用量の吸入ステロイドを常用する、軽度から中等度の持続性の喘息に罹患する試験患者を選択した。第一に、軽度の断続的な症状のみの患者が含まれた場合、このような集団において感受性の生理学的変化か、症状的変化か、免疫的変化の判別が不可能になる恐れがある。第二に、この治験の治療を中断するため吸入ステロイドを要求する患者は認められない。更に本試験の目的は、エアロゾル化IFN−γがすでに指定された治療法の補助として利用することができるかを判定することである。コルチコステロイドがサイトカイン濃度に影響する可能性があるため、吸入ステロイドの使用が本試験との混同を招く恐れがあると理解される。「洗浄」は全患者が同基準で開始するための期間であることが含まれる。
【0142】
(実施例11)
喘息患者の肺機能における効果
肺機能測定におけるエアロゾル化rIFN−γの効果を測定するため、エアロゾル治療前の各患者に対する全肺気容量(TLC)及び機能的残気量(FRC)を含む1秒努力呼気肺活量(FEV1)、努力性肺活量(FVC)、最大呼気流量、及び肺容量における肺活量測定値を得る。この測定は、Bellevue Hospital Pulmonary Function Laboratoryで行われる。
【0143】
喘息のない結核患者の処置で示されたように、エアロゾル化rIFN−γの投与後に直ちに最大流量測定の軽度の改善が認められることが予測される。現在のところ、IFN−γが気管支拡張効果を示す理由は不明である。気道の炎症が減少したことを反映して、8週間のエアロゾルIFN−γ処置後にFEV1及びFVCの改善が予測される。
【0144】
各患者の再現性のため、特にFEV1を追跡することを選択する。これらの値は、大規模な気道閉塞に対して特異的である。試験の初期部分の間に、小規模の気道疾患における他の変数が影響されることが認められれば、特異的気道コンダクタンス、気道抵抗、又はエンドポイントとして25〜50%の努力性呼気値を使用する。気道抵抗の感受性試験が更に必要であれば、コンプライアンス試験の呼吸数依存性を実施することができる。気道過敏性を試験するため、メタコリンで気管支の誘発試験を行うことも可能である。これらの追加的な試験は、個人間の変動性に加えて個人差があるため、信頼性に問題がある。クロスオーバー試験としての試験設計は、個体間変動を回避するはずである。
【0145】
(実施例12)
BAL検体の効果
BAL検体は30名の喘息患者から得られる。IFN−γがサイトカイン産生を調節するかを評価するため、15名のこれらの患者にエアロゾルIFN−γを8週間投与する。これらの患者は、処置の前後にBAL及び採血が行われる。
【0146】
光ファイバー気管支鏡検査法
患者は、医学的な病歴と現症、肺活量測定、酸素測定、気管支過敏性の評価、凝固試験(PT、PTT、血小板)、及びCBCを使用して事前にスクリーニングを行い、化学スクリーニングを行う。処置の間、患者は心拍数及びO2飽和度の継続的なモニタリング、患者の症状及び投薬量の記録、適所での静脈カテーテル、吸入b−アゴニストによる前投薬、アトロピン皮下投与(0.4mg)、及び鎮静剤の使用(ミダゾラム、静脈注入)、及び酸素補給が行われる。光ファイバー気管支鏡は、少量の前投薬と、鼻部及び上気道の表面麻酔の後に導入される。気管支鏡の先端は、右中葉又は小舌の区域又は亜区域気管支に挿入される。37℃の標準生理食塩水100mLが、20mLの分割量で気管支に注入される。加温した生理食塩水により、喘息患者の熱による気管支痙攣の誘発が回避されるはずである。流出液を回収するために、穏やかな断続的吸入が行われる。軽度の喘息患者において60〜80%の液体回収が予測される。回収率は、中等度から重度の疾患患者において50%まで減少する[Jarjour, 1998#62]。パルス酸素濃度計及び患者の状態における臨床評価は、処置後にも継続される。退院指導は、追跡治療のための週内の受診、及び電話連絡を含む。
【0147】
肺胞マクロファージ(AM)及びBAL細胞
細胞は標準的な技法によって行われた気管支肺胞洗浄(BAL)によって採取され、培養に対して以下の通りに調製される。液体は粘液のかたまりを除去するため、一層の滅菌ガーゼを通して濾過された。総細胞数は血球計で計測され、合計500の計測された細胞が改変ライト−ギムザ染色で染色され、その細胞遠心分離標本において細胞差が計測された。細胞生存率はトリパンブルー除外法によって測定され、全症例において、実験に使用される回収された細胞の生存率は90%以上になる。20の細胞遠心分離標本は、BALの各葉から調製され、一度10%のホルマリンで固定され、−70℃にて凍結される。BAL細胞は洗浄され、10%の熱失活したウシ胎児血清(FCS)及び100u/mLのペニシリン及び100mcg/mLのストレプトマイシンを加えたRPMI(GIBCO)により、106細胞/mLの濃度で24時間培養される(37℃)。
【0148】
末梢血
IFN−γ処置の終了前後に、一日のうち一定の時間に静脈刺入によって採血が行われる。PBMCは、Ficoll−Hypaque密度勾配遠心法によってヘパリン処置された静脈血から単離される。ヘパリン処置された静脈血はFicoll−Hypaqueの上に重層させて、2500rpmで20分間遠心分離される。PBMCの低密度層は吸引され、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄され、10%の熱失活したFCS、100U/mLのペニシリン、及び100mcg/mLのストレプトマイシンを加えたRPMI−1640(GIBCO)により106細胞/mLの濃度で再懸濁される。その時細胞培養は、37℃の5%CO2で24時間インキュベートされる。その時細胞上清は回収され、サイトカインについてELISAによって評価される。
【0149】
都市部の喘息と関連しているアレルゲンに対する特異的IgE(RAST)を測定するため、血清試料も採取される(D. pteronyssinus, D. farinea, B. germanica−German cockroach, and P. americana−American cockroach)。
【0150】
アトピー性喘息患者及び正常な対照から採取したPBMCにおいて、追加試験が行われる。これは先述したようにPBMを単離した後、同を加えたRPMI培地において細胞培養が行われることを必要とする。その時、培養細胞は非特異性の刺激(LPS)又は既知のアレルゲンによって刺激される。培養上清は、そこでサイトカインについてELISAによって評価される。これらの濃度は、休止細胞のサイトカイン濃度と比較される。この評価は、処置前のIFN−γに効果を示さない患者のエアロゾル化IFN−γ処置試験への動員のため、喘息患者の大規模な都市部の集団をスクリーニングするために行うことができる。
【0151】
サイトカインの評価
24時間にわたって回収されたBAL細胞上清106細胞/mLを、IFN−γ、IL−4、IL−5、IL−10、IL−12、IL−13、及びGM−CSFについてELISA(Endogen)で評価する。各サイトカインに対して三つ組で検体を測定することができるように、106細胞/mLのチューブを5本採取する。肺区域につき平均で30〜40×106のBAL細胞になるため、各患者のBAL細胞上清を評価することが予期できる。BAL後の検体中のIFN−γを回収することができるため、及びBAL細胞の自発的なサイトカインの放出に重点が置かれているため、BAL液中のサイトカインの測定は行われない。
【0152】
(実施例13)
IFN−γ処置によって起こる遺伝子調節の機序
臨床処置プロトコールにより、IFN−γに反応して遺伝子発現を制御する転写因子の存在量において明確な効果及び活性が示され、サイトカインの特性とこれらのデータの相関は、喘息の免疫応答を評価できる基準を拡張する。更に、得られたデータにより、サイトカイン産生の解析及びサイトカインと他の遺伝子の発現による結果の機構の説明が可能になる。
【0153】
本プロジェクトの設計は、その他の種々の処置と異なるエアロゾルIFN−γの治療効果の確証を助けるため、幾つかの対照が含まれる。これは処置の経過の前後にBAL及び血液試料を採取すること、及び病変した葉並びに病変していない葉からBAL検体を収集することを含む。この目的に対する全試験は、BAL又はPBM細胞から調製される抽出タンパク質を使用して行われる。細胞質及び核タンパク質が得られ、別々に分析される。より明確な結果を得るため、BAL細胞は接着及び非接着の集団に分けられる。前者は、主に肺胞マクロファージを含む。後者は、主にリンパ球及び顆粒球から成る。PBMCは、更に分離を行わずに抽出される。
【0154】
本プロジェクトに対する転写因子の存在量及びDNA結合活性の調査により、エアロゾルIFN−γ処置の臨床プロトコールは潜在的STAT−1を活性化し、IRF−1及びCIITAの新規合成を誘発するため細胞シグナル伝達経路に影響を与えるという仮説が検証される。得られるデータは、初期臨床観察に対して遺伝子発現を制御する分子機構に関連する。処置に対する分子反応を示すデータと同時に解釈された場合、エアロゾルIFN−γによるin vivoの処置での限られた経過による結果は、今後の治験設計にはるかに多くの予測能を有することになる。
【0155】
転写因子STAT−1、IRF−1、及びCIITAの存在量における測定
処置プロトコールの前後にこれらの転写因子の総量を定量化することが有益である主な理由が2つある。これらのデータは、IFN−γ治療に対する制御された反応の全体的な解釈のために重要である。これにより、得られたタンパク質がリン酸化反応を受ける程度とDNA結合活性がある総タンパク質量の割合について結論が導かれる。更に、タンパク質の存在量は、因子をコードする遺伝子の制御された発現の最終測定により示され、従って、更に誘起された免疫応答の機能及び調節態様を集積する今後の研究のための根拠を提示する。免疫ブロット法検出は、ここで使用される主要な技法である。細胞質又は核抽出物から最大で5×106の細胞が各解析に使用される。上述の細胞は、各患者から10検体を得ることにより調達される。1名の患者から得たPBMC及びBAL細胞の抽出物全ては一回の試験に使用され、これにより検体のセット内での相対定量が容易になる。培養された細胞株から調製される対照の細胞質及び核抽出物も又、各試験に使用される。前の試験に基づき、これらの検体は、標的タンパク質を含むことが分かっており、免疫ブロット法の検出で陽性対照を提示することができる。更に、その検体は得られたデータが定量的であるか、又は定量的検出の範囲を明らかにする検証に使用することができる。
【0156】
タンパク質はSDS−PAGEによって分離され、そこでメンブレンに転写される。メンブレンは順にSTAT−1、IRF−1、及びCIITAを検出するため、試薬で反応させる。メンブレンは、細胞質及び核抽出タンパク質に存在するb−チューブリンを検出するために最終的にプロービングされ、従って試験期間内及び期間中の細胞質又は核抽出物の定量的比較のための内標準として供給することができる。必要な全ての抗体は、実験で得るか又は市販品を入手することができ、免疫ブロット法プロトコールで使用されることが知られている。異なるタンパク質の連続した検出を可能にするために、メンブレンは標的タンパク質を保持したまま抗体結合を切断する処理が行われる。この手法は、順番に各標的タンパク質の検出を繰り返すこと、及び第1及び第2ラウンドで得られたシグナルを比較することで証明できる。検出の特異性に対する陰性対照は、他の2つに対する抗体が各タンパク質に対して調製される。更に、メンブレンを一次抗体が包含しないように最後に反応させる。
【0157】
得られた細胞量が不十分であるか、又は特定の転写因子の存在量が非常に低い場合、シグナルは検出されない。このタンパク質において、ELISA解析を使用することにより感度を上げられる可能性もあるが、免疫ブロット法の時よりも信頼性及び特異性に欠ける恐れがある。しかし、これらの潜在的な問題はそれほど重要ではない。細胞の望ましい量は、通常各BAL検体の一部のみを構成するはずである。標的タンパク質の存在量が少ないのは、重要な結論に導く生理学的に適切な結果となるだろう。しかし、各細胞につき標的タンパク質の100−1000コピーが存在する場合に、利用可能な試薬及び検出システムはシグナルを示し、それは分析された分量で多くても8フェムトモル(0.5−1.5ng)程度に相当する点に留意する必要がある。
【0158】
STAT−1、IRF−1、及びCIITAのチロシン及びセリンのリン酸化の特徴付け
転写因子のリン酸化の変化は、因子の存在と因子の機能の関連性を示すことが多い。このことは、DNA結合活性がリン酸化の変化によって直接変化しなくても当てはまる(David, et al., (1995) Science 269(5231): 1721−3; Wen, Z, et al., (1995) Ceil 82(2): 241−50; Pine, et al., (1994) Embo J 13(1): 158−67; Cho, et al., (1996) J Immuno1 157(11): 4781−9; David, et a1., (1996) J Bio1 Chem 271(27): 15862−5; Gupta, et a1., (1995) Science 267(5196): 389−93; Hibi, et al., (1993) Genes Dev 7(11): 2135−48; Parker, et al., (1996) Mol Ce11
Bio1 16(2): 694−703; Schindler, et a1.,
(1992) Science 257(5071): 809−13; Shuai, et a1., (1992) Science 258(5089): 1808−12)。上述の通り、STAT−1のチロシン及びセリンのリン酸化は調節され、その活性を制御する。IRF−1はリンタンパク質であるが、リン酸化の自然発生的な変化については文献が存在せず、CIITAのリン酸化についても殆ど研究されていない。本明細書に記載する実験では、主に細胞培養系で以前に実証されたリン酸化反応についてPBMC及びBAL細胞からの抽出物を検査することにより、in vivoにおけるSTAT−1の調節に関するデータを得る。IRF−1及びCIITAについて得られるデータは、以前に測定されたものを上回る。
【0159】
この一連の実験の最も単純明快な手順は、免疫沈降によって細胞抽出物から標的タンパク質を定量的に回収し、回収したタンパク質をSDS−PAGEによって分離し、分離したタンパク質を免疫ブロット法により解析してリン酸化を検出するものである。免疫ブロットに反応させ、特定の標的タンパク質に殆ど依存することなく、チロシンリン酸化の存在及び程度を測定するには、市販の抗ホスホチロシン抗体が使用できることが、十分に確立されている。ホスホセリンに対する抗体も市販されているが、この抗体が標的タンパク質においてこのような残基を検出するかどうかについては不明である。従って、本手法の適用における好結果については、多少の不確定要素が存在する。上述の陽性及び陰性対照の種類に加えて、リン酸化チロシン又はリン酸化セリンの特異的な検出も、リン酸化アミノ酸を溶液に含め、シグナルが得られないことを観察することで証明することができる。
【0160】
SDS−PAGEによって変性したタンパク質が抗ホスホセリン抗体と反応する可能性が最も高いものの、セリンリン酸化の免疫ブロット検出が機能しない場合には、ELISAが好結果を示す代替法となりうる可能性も依然として残されている。その場合には、ウェルを標的タンパク質に対する抗体でコーティングし、タンパク質を固定し、検出手順では、標的タンパク質に対する抗体の供給源よりも、異なる種から得た抗ホスホセリン一次抗体を使用することになると思われる。免疫ブロットに使用される対照も又、基本的にはELISA系に同様に適用する。
【0161】
STAT−1セリンリン酸化の解析には別の代替法も使用できる。特異的抗リン酸STAT−1(P−セリン)抗体は、調節されたリン酸化を受けるセリンの既知の位置、セリン727を基に作成することができた(「方法」を参照)(Wen, Z, et al., (1995) Cell 82(2): 241−50)。これは、適切なリン酸化ペプチドで免疫化した後、タンパク質A、ペプチド、及びリン酸化ペプチド親和性マトリクスを使用して特異的抗体を精製することにより、幾つかのタンパク質のリン酸化形態に特異的な市販の抗体(New England BioLabs)が得られたことから、非常に成果が期待できる。同様の手法がこのプロジェクトにも使用されるであろう。しかし、標的タンパク質は代謝標識に必要な培養期間中に修飾される可能性があり、利用可能な物質量がその手法において十分ではないと予測されることから、32P−オルトリン酸塩による細胞の代謝標識後に、標的タンパク質の特異的免疫沈降及びリン酸化アミノ酸の分析を行うのは、本プロジェクトに適切ではない。何れの標的タンパク質においてもセリンリン酸化の変化の測定は容易に行えないものの、その調節された翻訳後修飾の考えられる重要性が、この試みを強く後押しする。
【0162】
これらのデータは、この系におけるこれらの因子の存在量とその機能の関係を確証するのに使用される。STAT−1チロシンリン酸化の程度により、DNA結合活性の活性化レベルが決定され、それによって最高及び最低レベルが設定される。セリンリン酸化の変化は、DNA結合活性を調節し、上述のSTAT−1の機能に対する更なる効果を有すると考えられる。又、STAT−1の存在量の増加及びリン酸化の基礎レベルが検出される可能性がある。このような結果は、全体的なin vivo反応が長期間IFN−γに曝露された培養細胞の反応に類似しており、IFN−γへの分子反応としてSTAT−1の新規合成と共に、翻訳後の修飾(リン酸化及び脱リン酸化)の経時変化を反映することを暗示する。IRF−1又はCIITAのリン酸化の変化に関するデータは、IFN−γに対するin vivo分子反応の更なる指標となり、このような変化の機能的重要性を判定する今後の基礎研究の確かな根拠となる。リン酸化ではなく存在量の変化が認められれば、これらの因子のリン酸化がこの系では調節されないか、或いはSTAT−1ではあり得ることだが、検体が得られた時に純変化が持続しなかった可能性がある。これらの可能性を区別するには、今後他の系による研究が必要となる。
【0163】
STAT−1、STAT−4、STAT−5 STAT−6、及びIRF−1のDNA結合活性の測定
DNA結合活性の測定によって、処置プロトコールへの分子反応の調節を評価するために必要となる最終データが得られる。実験試料の電気泳動移動度シフト検定によるSTATファミリー及びIRF−1転写因子の検出及び定量化は、確立された手順によって達成される。培養細胞から調製される抽出物は、陽性対照としてこれらの検定で使用される。当該因子の特異性及び同定のための対照は、競合オリゴヌクレオチド又は抗血清を使用した反応を行うことによって提供される。オリゴヌクレオチド又は抗血清は、非特異的及び特異的の両方のものが使用される。
【0164】
全集団が追加のサイトカインに同時に且つ同じ期間にわたり曝露される、細胞培養系の同調性とは対照的に、BAL又は血中試料により得られる細胞は、曝露部位の内外への移動により制御される各細胞の曝露の非同時的な開始及び期間に対する、重複して繰り返されるエアロゾルIFN−γ処置の全体の効果を示す。細胞培養モデルにおいては、IFN−γによるSTAT−1のDNA結合活性の活性化が数分以内に起こる。幾つかの細胞株では、活性が非常に急速に減衰する。それに対し、単球細胞株NB4、U937、及びTHP−1等の細胞株では、数時間持続する(R. Pine and E. Jackson, unpublished)。STAT−1がIRF−1遺伝子を調節することから、IFN−γによるIRF−1のDNA結合活性の導入は、一般的に僅か1〜2時間後には検出されるが、その後少なくとも16時間持続する。従って、STAT−1及びIRF−1のDNA結合活性が同時に起こる可能性もあるが、どちらか一方のみが検出される可能性もある。
【0165】
実験試料から得られた結果は、STAT−1及びIRF−1の両者においてDNA結合活性が存在することを明らかにし、従ってin vivoにおいて数日にわたる断続的な投薬における正味の結果が、細胞培養系の曝露の中間時点と同等であることを示唆する。これは、白血病患者由来のBcr/abl形質転換細胞系又はPBMCにおいて報告されたSTAT因子の恒常的な活性化とは異なる(Carlesso, et a1., (1996) J Exp Med 183(3): 811−20; Gouilleux−Gruart et a1., (1996) Blood 87(5): 1692−7)。更に、このような結果は、IFN−γに対する反応の全ての防御体制が、試料を得た時点で継続していたことを強く示唆する。或いは、STAT−1又はIRF−1のDNA結合活性のみが検出される可能性がある。STAT−1の活性化は通常一過性のものであるものの、IRF−1は長期誘発が標準であるため、STAT−1のみが検出されることは起こりそうにないと予測される。STAT−1のDNA結合活性が存在せずにIRF−1のDNA結合活性が存在することは、IFN−γを一晩投与した後に培養細胞で認められるものと同等の反応が、この投与で誘起されることを暗示する。生理学的には、これは、単球からマクロファージへの分化又はTh1のT細胞反応による合成等の生物学的エンドポイントを誘起するのに十分な期間にわたってIFN−γの存在が持続した状況と一致する。
【0166】
STAT−4、−5、及び−6の検定は、重要なTh1又はTh2サイトカインの存在及び機能だけでなく、IL−2に対するT細胞の反応の分子マーカーとなる。IL−2がSTAT−5を、IL−12がSTAT−4を、IL−4がSTAT−6を活性化することは、最近の多くの研究で報告されている(Cho, et al., (1996) J Immuno1 157(11): 4781−9; Gilmour, et al., (1995) Proc Natl Acad Sci USA 92(23): 10772−6; Schindler, et a1., (1992) Science 257(5071): 809−13)。ここで得られるデータはそれだけでこのようなの解釈の証拠とはならない。何故なら、STATファミリーのほぼ全てのメンバーが複数のサイトカインにより活性化され、ほぼ全てのサイトカインが複数のSTATを活性化できるためである。具体的には、STAT−4はIFN−αによっても、STAT−5はIL−7、IL−15、プロラクチン、及び成長ホルモンによっても、STAT−6はIL−13によっても活性化される(Ivashkiv, L. B. (1995) Immunity 3(1): 1−4; Darnell (1996) Recent Prog Horm Res 51:391−403; Cho, et al., (1996) J Immuno1 157(11): 4781−9)。又、STAT−1がIFN−γだけでなくIL−6及びIL−10によっても活性化できることも留意する必要がある。しかし、このデータの解釈は、上記のサイトカイン遺伝子発現の解析により裏付けられる。更には、STAT−4、−5、及び−6のDNA結合活性の検定が、所定のサイトカイン特性と共に生じる細胞内の分子効果に関するデータを提供することにより、それらの所見を著しく拡大する。
【0167】
方法
GITC及び超遠心分離を使用することにより、10×106のBAL細胞からmRNAを抽出する。RT−PCRはこのような僅かな細胞量で行うことができることから、全RNAが抽出され、−70℃にて保存され、IRF−1の遺伝子発現について検定される。PCRプライマーは、公開された配列に基づいており、サイトカイン遺伝子において記載したRT−PCRを行い、対照としてb−アクチン又はGAPDHと転写強度を比較する。IRF−1は基礎量発現することから、RT−PCRの定量的な手法が必要となる。BAL細胞由来の全RNAは、標準の方法に従い、オリゴd(T)及びPCRを使用して逆転写される。1回目のPCRは、以下のオリゴヌクレオチド(フォワードプライマー:5’−GTCAGGGACTTGGACAGGAG−3’、及びリバースプライマー:5’−AGCTCGGGGGAAATGTTAGT−3’)を使用したcDNAの20%を使用して行われる。IRF−1の発現は、GAPDHの発現に対して正規化される。
【0168】
細胞抽出物の調製
BAL由来の細胞は、上述の通り、血清を加えていないRPMI培地に移して処理された後、計数して、組織培養プレートへ移される。37℃にて2時間静置した後、非接着細胞は培地で除去され、再度計数される。接着細胞の量は、2つの細胞数の差から得られる。PBMCは、上述の通り、血清を加えていないRPMI培地に移して処理された後、計数される。残りの手順は全て、0〜4℃にて実施される。懸濁液中の細胞は、遠心分離され(200×g、10分)、上清が吸引された後、ペレットがリン酸緩衝食塩水(PBS)に再懸濁される。この手順が繰り返され、細胞が再度遠心分離された後、最終的なPBS上清が吸引される。付着した細胞単層は、そこで吸引用のPBSを加えることによって洗浄される。再度PBSが加えられ、単層が擦り落とされる。細胞及びPBSは遠心管へ移されて遠心分離が行われた後、PBSが吸引除去される。洗浄した細胞ペレットは、溶解緩衝剤(20mM Hepes・Na、pH 7.9、0.1mM EDTA・Na、0.1M NaCl、0.5% NP−40、10%グリセロール、1mM DTT、0.4mM PMSF、3μg/mLアプロチニン、2μg/mLロイペプチン、1μg/mLペプスタチン、100μM Na3VO4、10mM Na2P2O7、5mM NaF)(3μL/細胞105)で懸濁し、5分間インキュベートすることにより溶解される。核は遠心分離によって回収される(500×g、10分)。上清は除去された後、遠心分離によって浄化される(13,000×g、10分)。得られた上清は細胞質抽出物として回収され、砕いたドライアイス又は液体窒素で冷凍された後、−80℃にて保存される。核ペレットは洗浄緩衝剤(NP−40を除く溶解緩衝剤)で再懸濁された後、遠心分離によって回収される。上清が吸引された後、ペレットは抽出緩衝剤(洗浄緩衝剤、0.1M NaClの代わりに0.3MのNaClを除く)で懸濁され(3μL/細胞105)、30分間混合される。抽出した核は、遠心分離によってペレット化し、核抽出物として上清が回収され、上述の通り冷凍保存される。同量の異なる抽出物が実験で使用できるように、タンパク質濃度が計量される。単一系列又は異なる試料の核又は細胞質抽出物においては、通常、細胞数に対する抽出緩衝剤の量の比率を固定することで均一のタンパク質濃度が得られることから、これにおいては通常、各抽出物で同じ量を使用する必要がある。
【0169】
免疫化学的手順
免疫ブロットは、以下の通りに行われる。抽出物及びタンパク質サイズの標準物質が、SDS−PAGE用に濃縮したLaemmli試料添加緩衝剤と混合され、標準のプロトコールに従って8%の分離用ゲルと4%の濃縮用ゲルで調製された不連続なトリスグリシンゲルシステムに適用された。このゲルの比率は、対象のタンパク質を全て分離する。マーカー色素がゲルの最下部に到達するまで、電気泳動は一定の電圧で行われる。ゲルは転写用緩衝剤(トリスグリシン+15%のメタノール)で平衡化された後、タンパク質はセミドライ式装置(BioRad Transblot SD)を使用し、同じ緩衝剤によってニトロセルロースメンブレンに転写される。メンブレンは、標準的な手順によって展開される。簡潔に言えば、トリス緩衝食塩水+Tween 20界面活性剤に加えた脱脂粉ミルクとインキュベーションすることによりブロッキングを行い、特異的な一次抗体とインキュベートし、ブロッキング溶液で数回洗浄し、酵素結合の二次抗体とインキュベートし、ブロッキング剤を含まない緩衝剤で洗浄し、酵素基質でインキュベートする必要がある。化学発光基質の場合は、X線写真でシグナルが検出される。或いは、化学蛍光基質のシグナル検出には、PHRIのMolecular Dynamics Storm 860装置が使用可能である。実験計画に基づき、STAT−1及びIRF−1の転写に最適な条件が、(既にほぼ同じであることが判明しているが(Pine, et al., (1994) Embo J 13(1): 158−67; Pine, et al., (1990) Mol Cell Biol 10(6): 2448−57; Pine unpublished))、本プロジェクトでも、これらの各タンパク質に最適な以前の展開条件を同じように使用される。CIITAの場合、最適な検出条件は、ブロッキング剤の選択、界面活性剤の濃度、各手順のインキュベーション時間、及び検出方法を含め、培養細胞から調製した対照抽出物により経験的に決定される。STAT−1及びIRF−1の免疫沈降は、僅かに改変されているものの、既述の通りに行われる。具体的には、抗IRF−1抗体に結合するIRF−1の回収にS. aureus細胞を使用するところを、タンパク質−Aアガロースを使用することに置き換えている。
【0170】
ELISA検定が転写因子の存在量の検出又はリン酸化を検査するのに望ましい場合、標準的操作法に基づいた詳細な方法は培養細胞からの対照抽出物を使用して経験的に行われる。感度を増大させるため、好適な手段としてマイクロタイターディッシュのウェルに捕捉抗体を結合させ、その後にブロッキングを行い、それから目的の抽出物とインキュベートする。更に洗浄した後に、特異的な二次抗体が使用され、そこで二次抗体に対する酵素結合抗体が使用され、基質とインキュベーションされた。それぞれの抗体のインキュベーション後に洗浄が行われる。STAT−1に関して、タンパク質及びリン酸化チロシン又はリン酸化セリンの両者に対して使用できるため、抗体を捕捉するウサギポリクローナル抗血清及びマウスモノクローナル抗体が検出に使用するか、又は逆に使用することが可能である。IRF−1及びCIITAに関しては、タンパク質に対してウサギポリクローナル抗体のみが使用できるため、リン酸化チロシン又はリン酸化セリンに対するマウスモノクローナル抗体を使用する必要がある。それらのタンパク質を検出するには、抽出物をマイクロタイターのディッシュにコーティングし、その後に特異的一次抗体及び酵素結合二次抗体とインキュベーションする必要がある。実験試料の検定において特異性に関する対照は、一次抗血清の省略及び/又はリン酸化アミノ酸の包含を適宜含む。
【0171】
電気泳動移動度シフト検定
指定されたSTATファミリーのそれぞれ及びIRF−1に対し、最適な検定が行われた(Pine and Gilmour, supra)。反応において、非特異的及び特異的競合物質又は非特異的及び特異的抗体が使用される。各反応において、抽出タンパク質を通常は2〜3μLであるが、5μgを使用して行われる。競合物質との反応のため抽出物と混合する場合、オリゴヌクレオチドは放射識別されたプローブと共に使用される。抗体との反応のためタンパク質−DNA結合反応は通常通り行われ、それから抗血清が加えられ、インキュベーションが続行される。インキュベーションが完了した時、反応物質は未変性のポリアクリルアミドゲルに加えられ、4℃にて電気泳動される。ゲルが乾燥した後、結果はオートラジオグラフィにより、又はMolecular Dynamic
PhosphoImagerを使用して得られる。
【0172】
rIFN−γ処理による処置前及び処置後に得られたデータは、Studentのペアのt検定及び発現解析の平均±SEMによって比較された。以前の試験に基づいて、FEV1において0.3L、及び3×l05細胞/mLの差を検出する必要がある。30名の対象で、80%の信頼性が示される。従って、各集団に対し15名の対象を召集する。
【0173】
対象集団
喘息の個人400名において医学的評価が行われる。30名の軽度から中等度の持続性アレルギー性喘息患者は、IFN−γエアロゾル(n=15)又はこれに対する標準処置(n=15)を受けるために無作為化される。患者は、肺機能及び気管支誘発測定を行われなければならない。ファイバー気管支鏡検査に対する禁忌があってはならない。大部分の試験集団は、Bellevue Hospital Primary Care Asthma Clinicから召集される。患者集団の人口統計的特性は以下の通りである。90%は少数民族(主にヒスパニック系及びアフリカ系アメリカ人)で、年齢18〜79才(中央値=39)、男女比は1:2である。
【0174】
潜在的リスク
一般的に、インターフェロン−γ(IFN−γ)に対する副作用のリスク及び重症度は、与えられる投薬量に関連する。この試験で使用される投与量(50mcg/m2)で、最もよく起こりうる副作用は、熱、頭痛、及び倦怠感等である。高用量で時折の嘔気と嘔吐が報告された。エアロゾル状散布においては副作用との関連がなかったが、頭痛、咳及び熱が予測される場合がある。症状が重症である場合、投薬は中断される。喘息に関連のないIFN−γにおける未知の副作用のリスクが、以前より存在する。一つに考えられるのはIFN−γのタンパク質部分に対するアレルギー反応を呈することであり、その場合、投薬は中止される。
【0175】
リスク管理手順
あらゆるリスクを最小化するため、気管支肺胞洗浄は心臓病又はアンギナの既往歴を有する個人を除外する医学的評価の後に行われる。胸部X線と出血性パラメータを含む血液検査が行われる。気管支肺胞洗浄は、医師の監督下で肺疾患の人によって行われる。この手順に続いて、試験対象は3時間絶食を続け、バイタルサインは30分毎に3時間記録される。処置の間、全患者の心臓がモニターされ、低酸素血を防ぐため処置中と処置後に2時間鼻部への02を受ける。全ての患者のデータは、肺疾患調査室に施錠して保管される。対象に副作用が起こった場合のために、気管内チューブ、注射用のリドカイン及びエピネフリン等と一緒に光ファイバー気管支鏡を揃えた「緊急用カート」が備えられ、全手順は病棟医とCPRチームが待機している病院で行われる。気管支肺胞洗浄処置の全ては、副作用の発生増加を全て確認し、原因を特定するため、定期的にチェックされる。
【0176】
(実施例14)
インターフェロン−γのエアロゾル投与を受けた全患者は、改善可能な気道疾患を評価するため肺活量測定で検査された。殆どの患者は、改善可能性の徴候がない閉塞性気道疾患を有した。各エアロゾル療法で、患者は各処置の前後に最大流量が観察された。全患者に関するデータは、図11で示される。最大流量測定の変化率の要約データは、図12で示される。平均最大流量は、エアロゾルインターフェロン−γの処理後で増加し、一部の患者では顕著な増加を示した。これらのデータは、エアロゾルインターフェロン−γが、気道疾患患者において安全且つ耐性が良好であることを示す。
【技術分野】
【0001】
(政府の支援)
本発明に導いたいくつかの研究は、部分的に、研究用NIHグラントR01 HL55791、K07 HL03030、およびM01 RR00096によって支援された。政府は、本発明において一定の権利を有する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、エアロゾルインターフェロンを使用して肺疾患を処置する方法、エアロゾル送達のための1つ以上のインターフェロンの製剤、及びエアロゾル沈着を測定する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(背景)
現行のNAEPP/NIHのガイドラインによる喘息処置の主流は、依然として抗炎症薬であり、中でもコルチコステロイドが最も有効である。しかし、コルチコステロイドの長期投与は、全身性の副作用を伴う。更に、喘息患者の中には、コルチコステロイドに対して耐性を示す者もいる。従って、アレルギー性気道疾患の炎症反応を対象とした新たな薬剤が必要とされている。
【0004】
喘息の免疫機序は、2型(Th2)サイトカイン(インターロイキン(IL)−4、IL−5)を分泌する細胞の平衡異常を伴った、メモリーCD4+ヘルパーT細胞の分化障害を伴う。サイトカインのインターフェロン−γ(IFN−γ)は、ナイーブCD4+リンパ球のTh1表現型への分化に必要となる。
【0005】
喘息で生じる気道の炎症は、好酸球数及び活性化CD4+ T細胞数の増加を特徴とする。喘息は、Th2型サイトカインの分泌がTh1型サイトカインの分泌を上回る細胞の平衡異常を伴った、メモリーCD4+ヘルパーT細胞の分化障害を伴う。組織の好酸球増加及びIgEの産生増加の他にも、2型サイトカインIL−4及びIL−5、腫瘍壊死因子(TNF)−a、及び顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)を含めた幾つかのサイトカインの産生増加が見られる。気道の炎症におけるサイトカイン特性の研究の殆どは、喘息のマウスモデルを使用している。マウスは抗原(通常の場合オボアルブミン)により感作及び誘発される。そして、エアロゾル抗原の誘発に対して抗原特異的IgEの産生、気道の好酸球増加症、及び気道過敏性が示される。これらの変化は、Th2サイトカインの産生増加及びIFN−γの産生減少に関係している(Brusselle, et al., Am J Respir Cell Mol Biol, 1995 Mar; 12(3): 254−259)。
【0006】
Th2サイトカインであるIL−4は、IgEの合成に対するB細胞のアイソタイプ変換の促進、及びナイーブT細胞のTh2リンパ球への分化誘発により、気道の炎症において重要な役割を果たす。エアロゾル化抗原により誘発されたIL−4ノックアウトマウスは、気道において特異的IgEの産生、気道過敏性、気道好酸球増加症、又はTh2サイトカインの産生を示さなかった(Brussell, et al., Am J Respir Cell Mol Biol, 1995 Mar; 12(3):254−259.)。抗原誘発時に抗IL−4が投与された野生型マウスは、気道の好酸球増加症が阻害されなかったのに対し、抗原への最初の曝露時に抗IL−4が投与された野生型マウスは、IL−5の産生及び気道の好酸球増加症が阻害されたことから、局所的なTh2反応の誘導にはIL−4が極めて重要であることが示されている(Coyle, et al., Am J Respir Cell Mol Biol 1995 Jul;
13(1):54−59)。
【0007】
IL−10は、Th1及びTh2リンパ球、単球及びマクロファージ、肥満細胞、ケラチノサイト、並びに好酸球によって産生されるサイトカインである。IL−10は、種々の細胞、特に単球細胞が炎症誘発性サイトカインの合成を下方調節することにより、抗炎症性サイトカインとして作用する。IL−10は、抗原提示細胞(APC)の機能を阻害することによって、IL−5の産生を下方調節する(Pretolani, et al., Res lmmunol 1997 Jan.)。同様に、好酸球の機能に対するIL−10の直接的な作用も実証された。好酸球のCD4発現の減少及び細胞死の促進において、低濃度のIL−10は、コルチコステロイドとほぼ同程度の活性を示した。GM−CSFは、炎症組織における好酸球及び好中球の帰巣及び活性化に直接関与するサイトカインである。既に、PBMC及び肺胞マクロファージによるIL−10産生濃度の減少が、正常な対照と比較した喘息罹患者において着目されている(Borish, L, et al., J Allergy Clin lmmunol 1996 Jun.; 97(6):1288−1296; Koning, et al., Cytokine 1997 Jun; 9(6): 427−436)。マウスのアレルギー性炎症の2モデルにおいて、IL−10を注入すると、おそらくIL−5及びTNF−aを阻害することにより、感作されたマウスが気道の好酸球及び好中球の増加から保護されたことが考えられる(Zuany−Amorim, et al., J Clin lnvest 1996:2644−2651; Zuany−Amorim, et al., J Immunol 1996 Jul 1; 157(1): 377−84)。
【0008】
サイトカイン産生のTh2/Th1への二分化に一致して、喘息のマウスモデルでは、IL−4及びIL−5優性のサイトカイン特性、並びにTh1サイトカインIFN−γ及びIL−12の濃度が観察される(Ohkawara, et al., Am J Respir Cell Mol Biol 1997 May; 16(5):510−20)。Th2優性を逆転させる試みとして、組換えマウスのIL−12による処置が近年の動物実験で検討された。in vitroのデータでは、Tリンパ球の一次抗原刺激時におけるIL−12の存在によってTh1細胞の発現が促進されることが示されている(Kips, et al., Am J Respir Crit Care Med
1996 Feb; 153(2):535−9)。Kipsは、免疫処置時にIL−12を投与し、特異的IgEの産生、気道の好酸球増加症、及び気道過敏性を防止することによって、この説をin vivoで確認した。予め感作したマウスのエアロゾル誘発時にIL−12を投与することで、気道の好酸球増加症及び気道過敏性が防止されたが、特異的IgEの産生は減少せず、従って、IL−12がナイーブTh細胞のTh1細胞への分化を刺激し、Th2細胞の発現を抑制する可能性があることが示唆されている。IL−12による抗原誘発性の気道好酸球増加症の阻害は、最初の感作時にはIFN−γに依存するが、第二の誘発時にはIFN−γに依存しなくなる(Brusselle, et
al., Am J Respir Cell Mol Biol 1997 Dec; 17(6):767−71)。更に、エアロアレルゲンの誘発より前に感作したマウスに、ワクシニアウイルスベクターで肺におけるIL−12遺伝子の粘膜遺伝子導入を行ったところ、IFN−γに依存してIL−4、IL−5、気道過敏性及び気道の好酸球増加症が抑制されることが実証されている(Hogan, et al., − Eur J lmmunol 1998 Feb.; 28(2):413−23)。
【0009】
IFN−γ濃度の増加によって、免疫応答がTh1表現型に誘導され、喘息を発症しやすくなることが考えられる。ヒトの臨床相関では、血清サイトカイン濃度又は刺激されたPBMCに焦点が置かれてきた。刺激されたPBMCを使用したサイトカイン測定の殆どは、小児において行われてきた。これらの研究では、喘息に罹患した小児におけるIL−4及びIL−5産生の増加傾向、並びにIFN−γの産生減少が実証されている。更に、その他の研究では、アトピー及び/又は喘息の重症度とIFN−γの放出に逆関連性があることが実証されている(Imada, et al., (1995) Immunology 85(3): 373−80; Corrigan, et al., (1990)Am Rev Respir Dis 141(4) Pt 1: 970−7; Leonard, et al., (1997) Am J Respir Cell Mol Biol 17(3): 368−75; Kang, et al.,
(1997) J lnterferon Cytokine Res 17(8):
481−7)。喘息患者のBAL液におけるサイトカイン濃度によって、IFN−γの濃度が低いことが判明している(Kang, et al., (1997) J Interferon Cytokine Res 17(8): 481−7)。
【0010】
ヒトにおけるrIFN−γの臨床試験は、殆ど行われていない。1999年の時点で、IFN−γは、慢性肉芽腫性疾患の処置に使用されており、長期の利用(平均期間2.5年)では、皮膚病変の改善と最小限の有害事象(熱、下痢、及びインフルエンザ様疾患)が認められている(N Engl J Med 324(8):509−16; Bemiller, et al. (1995) Blood Cells Mol Dis
21(3): 239−47; Weening, et al., (1995) Eur J Pediatr 154(4): 295−8)。Boguniewiczは、エアロゾル化rIFN−γを、用量を漸増しながら(最大用量500mcg、全試験用量2,400mcg)、5名の軽度アトピー型喘息患者に20日間吸入させる処置を行った(非特許文献1)。全ての患者は、噴霧されたrIFN−γに対して耐性を示したが、最大流量を含む評価エンドポイントにおける顕著な変化は見られなかった。
【0011】
持続性抗酸菌(AFB)の塗抹、及び培養陽性の多剤耐性結核(TB)の患者5名にrIFN−γを噴霧投与した(非特許文献2)。患者は、エアロゾルrIFN−γ 500mcgを週3回4週間にわたって投与された(全試験用量6,000mcg)。治療は、最小限の副作用を伴うものの十分な耐性を示した。4週目の終了時には、患者5名の内の4名が喀痰AFB塗抹で陰性であり、陽性判定までの培養時間の増加により処置後の生体負荷の減少が示された。興味深いことに、これらの報告及び新たな患者において、最大呼気速度(PEFR)が処置の一時間後に6%改善された(n=10)。
【0012】
特発性間質性肺炎は、組織学的に7つのカテゴリーに分類されている。これらのカテゴリーには、通常型間質性肺炎(UIP)、非特異性間質性肺炎(NSIP)、びまん性肺胞障害(DAD)、器質化肺炎(OP)、剥離性間質性肺炎(DIP)、呼吸細気管支炎(RB)、及びリンパ球性間質性肺炎(LIP)が含まれる。例えば、Nicholson, Histopathology, 2002, 41, 381−391; White, J Pathol 2003, 201, 343−354を参照されたい。
【0013】
「特発性間質性肺炎」(CFA)と同義語である「特発性肺線維症」(IPF)という用語は、特発性間質性肺炎の主要なサブグループの臨床用語であり、呼吸困難発症からの平均生存率が3〜6年である進行性の特発性間質性疾患を特徴とする疾患を指す。特発性肺線維症の診断は、肺生検で通常型間質性肺炎(UIP)を確認することによって行われる。組織学的パターンは、斑状慢性炎(肺胞炎)、進行性損傷(増殖性の筋線維芽細胞及び線維芽細胞の小型凝集体、即ち線維芽細胞巣)及び線維形成(高密コラーゲン及び蜂巣化)等の不均質を特徴とする。(例えば、King, et al., 2000, Am J of Resp. and Critical Care Med., 164, 1025−1032を参照)。間質性肺炎の別のサブグループの処置は、特発性間質性線維症に対して有効な治療であることが予測されていない。
【0014】
コルチコステロイド及び細胞毒性薬は、治療の主流とされているが、患者の10〜30%しか初期の過渡応答を示しておらず、そのため長期間の治療を要することが示唆されている(Mapel, et al. (1996) Chest 110: 1058−1067; Raghu, et al. (1991) Am. Rev. Respir. Dis. 144:291−296)。特発性肺線維症患者の予後不良があることから、新たな治療法が必要とされている。
【0015】
インターフェロンは、免疫系の細胞によって産生される天然のタンパク質ファミリーである。インターフェロンは、アルファ、ベータ、ガンマの3つのクラスが確認されている。これらの活性は重複するものの、各クラスが異なる作用を有する。併せて、インターフェロンは、体内に侵入するウイルス、細菌、腫瘍、及びその他の異物に対する免疫系の攻撃を誘導する。インターフェロンは、異物を検出し、攻撃を開始すると、異物の成長又は機能を減速、抑止又は変換することによって異物を変化させる。
【0016】
インターフェロン−γは、特異的な免疫調節作用(例えば、マクロファージの活性化、酸素ラジカルの放出促進、微生物の殺傷、MHCクラスII分子の発現促進、抗ウイルス作用、誘導性一酸化窒素合成遺伝子の導入及び一酸化窒素の放出、免疫エフェクター細胞を召集及び活性化する走化因子、細胞内病原体の生存に必要となる菌の鉄への接触を制限するトランスフェリン受容体の下方調節等)を有する多形質発現サイトカインである。インターフェロン−γ又はその受容体が欠如した遺伝子改変マウスは、マイコバクテリアに極めて感染しやすい傾向にある。
【0017】
1980年代に組換え型のIFN−γが、健常志願者及び癌患者に対して筋肉内及び皮下経路により投与されたが、単球の活性化(例えば、オキシダントの放出)の証拠が認められた。Jaffe等は、20名の健常志願者に対するrINF−γの投与結果を報告している(Jaffe, et al., J Clin lnvest. 88, 297−302 (1991)を参照)。まず、rIFN−γを250μg皮下投与したところ、血清中濃度は4時間の時点でピークを示し、24時間の時点で谷を示した。
【0018】
感染症に対するIFN−γの評価のため、幾つかの臨床試験が資金提供を受け、実施された。”A Phase II/III Study of the Safety and Efficacy of Inhaled Aerosolized Recombinant Interferon−γ 1 b in Patients with
Pulmonary Multiple Drug Resistant Tuberculosis (MDR−TB) Who have Failed an Appropriate Three Month Treatment”と題したMDR−TB臨床試験では、数箇所(ケープタウン、ポートエリザベス、ダーバン、メキシコ)のMDR−TB患者80名が登録され、二次療法に加えてエアロゾルrIFN−γ(500μg
MWF)又はプラセボを少なくとも6ヶ月間投与するために、患者を無作為化した。しかし、この臨床試験は、喀痰塗抹、M tb培養、又は胸部X線の変化に対する有効性に欠けることから、早期に中断された。
【0019】
Ziesche等は、特発性肺線維症(IPF)患者18名の内の9名に、プレドニゾンの経口投与に加えて、rIFN−γ200mgを週3回投与した(非特許文献3を参照)。その後行われたIPFに対するインターフェロン−γ1b治療の第3相臨床試験の結果が、近年発表された。これは、適切な試料サイズのIPFの臨床試験としては初めてのものであり、無作為化・前向き・二重盲検・プラセボ対照研究であったが、努力性肺活量等の生理学的機能のマーカーに対する有意な作用は認められなかった。しかし、プラセボ群の方が死亡者数が多く、インターフェロンγ−1bの治療を受け、努力性肺活量が正常値の55%以上であり、肺一酸化炭素拡散能が正常値の35%以上であえる患者の部分集団では、生存率が著しく良好であった。当研究の疾患進行と生存における不一致については、現在のところ説明されていない。1つの可能性として、IPFに罹患した患者の臨床経過が複雑である場合に、インターフェロンγ−1bの治療によって、感染に対する宿主防御が改善され、下気道感染の重症度を低下させることが挙げられる。この可能性は、6ヶ月間のインターフェロンγ−1b治療においては、殆どの場合、線維化促進サイトカインの有意な変化が見られなかったのに対し、抗菌特性を有するインターフェロン誘導性CXCケモカインI−TAC/CXCL11は、プラセボ投与患者よりも、インターフェロンγ−1b投与患者の血漿及び気管支肺胞洗浄(BAL)液において、有意な上方調節が見られたというStrieterの所見によって裏付けられている(非特許文献4を参照)。不明瞭な結果を説明する1つの可能性としては、現行の投薬計画で肺間質に送達される薬剤濃度が不十分であることが挙げられる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】Boguniewicz, et al., (1995) J Allergy Clin lmmunol 95(1) Pt1: 133−5
【非特許文献2】Condos, et al., (1997) Lancet 349(9064): 1513−5
【非特許文献3】Ziesche, et al., (1999) N. Eng. J. Med., 341, 1264−1269
【非特許文献4】Strieter, et al., Am J Respir Crit Care Med. (2004)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0021】
(発明の簡単な要旨)
一態様において、本発明は、肺疾患に罹患した患者の肺疾患を処置する方法であって、エアロゾル化インターフェロンを治療有効量で投与することを含む、方法を特徴とする。多くの実施形態において、肺疾患は閉塞性肺疾患である。幾つかの実施形態において、肺疾患は喘息又は特発性肺線維症である。一実施形態において、肺疾患の症状の改善は、予測努力性肺活量(FVC)の値が処置前に比べて、少なくとも約10%の増加、好ましくは少なくとも約20%、又は少なくとも約25%、更には33%の増加によって測定される場合がある。インターフェロンは、インターフェロンα、インターフェロンβ、又はインターフェロンγである場合がある。
【0022】
別の実施形態において、例えば、IPF又は喘息等の肺疾患に罹患した患者は、コルチコステロイド、シクロホスファミド、及びアザチオプリンの1つ以上による処置に対して効果を示さない。更に、肺機能検査において軽度であるが、僅かな改善が示される免疫抑制治療であまり効果が示されない患者においては、1つ以上の免疫抑制又は抗炎症薬による処置を含むがこれに限定されない、1つ以上のその他の治療法による処置の継続中に、エアロゾル化インターフェロンを使用した処置を患者に併用することが、本発明の更なる態様である。
【0023】
更に具体的な実施形態において、エアロゾル化インターフェロンは、約250μg〜750μgの用量範囲で週3回、ネブライザーで投与される。別の実施形態においては、好ましくは500μgの用量が週3回、ネブライザーで投与される。ネブライザーの効率によっては、前述より低用量で投与される場合がある。インターフェロン−γ治療とその他の治療様式の組み合わせによってIPF患者を処置することが要求される場合、エアロゾル化インターフェロン−γは、望ましくない作用がこれらの患者に起こらないように滴定される。更に、併用療法が考慮される場合には、その他の薬剤が最も有効と考えられる手段で送達される場合がある。これは、静脈注入、筋肉内注入、皮下注入を含む場合もあれば、IFN−γと併用して、エアロゾルとして送達される場合もある。
【0024】
別の態様において、本発明は、エアロゾル吸入によって投与される薬剤の上気道沈着を正確に測定する方法を特徴とする。本発明の本態様の一実施形態において、エアロゾル吸入を経て投与される薬剤は、インターフェロンα、インターフェロンβ、又はインターフェロン−γ等のインターフェロンである。この技術は独特であり、全種類の肺疾患患者に対するインターフェロンα、インターフェロンβ、又はインターフェロン−γ等のインターフェロンの送達に適用される。
【0025】
その他の目的及び利点は、後述の説明図と共に以下の詳細な説明を考察することで明らかになるであろう。
例えば、本願発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
肺疾患に罹患する対象において肺疾患を処置する方法であって、エアロゾル化インターフェロンを治療有効量投与することを含む、方法。
(項目2)
前記肺疾患が閉塞性肺疾患である、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記肺疾患が特発性肺線維症である、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記肺疾患が喘息である、項目1に記載の方法。
(項目5)
処置が行われる前の値に比べて、少なくとも10%の予測FVCの増加よりも前記疾患が改善される、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記肺疾患に罹患する前記対象が、コルチコステロイド、シクロホスファミド、及びアザチオプリンの1つ以上を使用した処置に対して効果を示さない、項目1に記載の方法。
(項目7)
エアロゾル化インターフェロンが週3回、約250〜750μgの範囲の用量で投与される、項目1に記載の方法。
(項目8)
エアロゾル化インターフェロンが週3回、約500μgの用量で投与される、項目1に記載の方法。
(項目9)
エアロゾル化インターフェロンの前記投与量が計算及び最適化されたものである、項目1に記載の方法。
(項目10)
前記投与が、肺疾患を有する患者の肺におけるインターフェロンの沈着をもたらす、項目1に記載の方法。
(項目11)
前記投与が肺機能検査の結果の改善をもたらす、項目1に記載の方法。
(項目12)
前記インターフェロンがインターフェロンαである、項目1に記載の方法。
(項目13)
前記インターフェロンがインターフェロンβである、項目1に記載の方法。
(項目14)
前記インターフェロンがインターフェロンγである、項目1に記載の方法。
(項目15)
肺疾患を有する患者を処置する方法であって、免疫抑制薬又は抗炎症薬の治療有効量と共に、エアロゾル化インターフェロンの治療有効量を送達することを含む、方法。
(項目16)
前記免疫抑制薬又は抗炎症薬が、コルチコステロイド、アザチオプリン、及びシクロホスファミドからなる群から選択される、項目15に記載の方法。
(項目17)
前記肺疾患が閉塞性肺疾患である、項目15に記載の方法。
(項目18)
前記肺疾患が特発性肺線維症である、項目15に記載の方法。
(項目19)
前記肺疾患が喘息である、項目15に記載の方法。
(項目20)
処置が行われる前の値に比べて、少なくとも10%の予測FVCの増加よりも前記疾患が改善される、項目15に記載の方法。
(項目21)
前記肺疾患に罹患する前記患者が、コルチコステロイド、シクロホスファミド、及びアザチオプリンの1つ以上を使用した処置に対して効果を示さない、項目15に記載の方法。
(項目22)
エアロゾル化インターフェロンが週3回、約250〜750μgの範囲の用量で投与される、項目15に記載の方法。
(項目23)
エアロゾル化インターフェロンが週3回、約500μgの用量で投与される、項目15に記載の方法。
(項目24)
エアロゾル化インターフェロンの前記投与量が計算及び最適化されたものである、項目15に記載の方法。
(項目25)
前記投与が、肺疾患を有する患者の肺におけるインターフェロンの沈着をもたらす、項目15に記載の方法。
(項目26)
前記投与が、肺機能検査の結果の改善をもたらす、項目15に記載の方法。
(項目27)
前記インターフェロンがインターフェロンαである、項目15に記載の方法。
(項目28)
前記インターフェロンがインターフェロンβである、項目15に記載の方法。
(項目29)
前記インターフェロンがインターフェロンγである、項目15に記載の方法。
(項目30)
肺疾患を有する患者を処置するための、エアロゾル化インターフェロンを治療有効量含む、薬学的組成物。
(項目31)
免疫抑制薬又は抗炎症薬も更に含む、項目30に記載の薬学的組成物。
(項目32)
前記免疫抑制薬又は抗炎症薬が、コルチコステロイド、アザチオプリン、及びシクロホスファミドからなる群から選択される、項目30に記載の薬学的組成物。
(項目33)
前記肺疾患が閉塞性肺疾患である、項目30に記載の薬学的組成物。
(項目34)
前記肺疾患が特発性肺線維症である、項目30に記載の薬学的組成物。
(項目35)
前記肺疾患が喘息である、項目30に記載の薬学的組成物。
(項目36)
前記肺疾患に罹患する患者が、コルチコステロイド、シクロホスファミド、及びアザチオプリンの1つ以上を使用した処置に対して効果を示さない、項目30に記載の薬学的組成物。
(項目37)
前記インターフェロンがインターフェロンαである、項目30に記載の薬学的組成物。
(項目38)
前記インターフェロンがインターフェロンβである、項目30に記載の薬学的組成物。
(項目39)
前記インターフェロンがインターフェロンγである、項目30に記載の薬学的組成物。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、典型的な安静呼吸のパターンを示す。
【図2】図2は、安静呼吸に比べて緩深呼吸法に特徴的な、吸気流量の減少及び吸気時間の著しい延長を示す。
【図3】図3は、ヒト患者が、緩深呼吸で4.5μmのエアロゾルを吸入している時の沈着パターンを示す。この図は、胃における僅かな活動量によって示された上気道において、エアロゾルがあまり沈着されていない(10%未満)ことを示す。この沈着図は、約8秒の吸気時間で緩深呼吸により3回呼吸した後、ヒト患者の肺末梢部に沈着した、放射標識されたエアロゾルを示す。
【図4】図4は、現在の吸入の標準法である安静呼吸を20回行って1.5μm粒子を吸入した後の同患者のスキャン図である。この図の解析では、大型粒子の使用、緩徐な吸入、及び吸気時間の延長を組み合わせた緩深呼吸法では、肺へのエアロゾル粒子の沈着に対して、1回の呼吸につき51倍以上有効であることが示される。
【図5】図5は、ネブライザーでIFN−γ500μgを週3回12週間吸入投与された、IPFに罹患する患者の沈着スキャン図を示す。処置に続いて画像診断が行われた。対象領域については要約に記載する。sU/Lは、キセノンに対し正規化した肺上部から肺下部に沈着した放射活性の分布である。図中の水平線は、上下の肺を四分割した境界を示す。sC/Pは、以下に記載する特定の中枢対末梢比を意味する。a/Xeは、エアロゾル対キセノン比を意味する。
【図6】図6は、エアロゾル療法の前後にBALを通して測定されるTGF−β濃度を示す。
【図7】図7は、IPFに罹患した患者5名のエアロゾルrIFN−γ試験において処置した患者5名の処置後における予測全肺気容量の増加率を示す。全患者が、息切れの自覚的な改善を報告した。この試験の患者は、3ヶ月の処置の終わりまでに全肺気容量の統計的に有意な増加を示した。5名の被験患者の内の2名において、努力性肺活量の200ccを超える(それぞれ200及び500cc)改善も見られた。
【図8】図8は、IPFに罹患した患者5名のエアロゾルrIFN−γ試験において処置した患者5名の内の3名の処置後における予測全肺気容量の増加率を示す。これらの生理学的変化は、患者の気管支肺胞洗浄(BAL)液(肺内部の内壁から洗い出された液)から回収された活性化TGF−β濃度の減少と共に生じた。
【図9】図9A及び9Bは、IPFに対してエアロゾルrIFN−γで処置する患者5名における総タンパク質のTGF−βの一部の減少を示す。TGF−βは、肺線維形成の重要な媒介物質の1つである。これを活性化すると、コラーゲンの産生が誘導される。この濃度が減少すると、肺のコラーゲン沈着の減少及び線維形成の減少が誘導されるはずである。
【図10】図10は、インターフェロン−γによるエアロゾル処置の前後に結核患者及び特発性肺線維症患者の肺で測定された、インターフェロン−γの量を示す。
【図11】図11は、エアロゾルIFN−γによる処置後の喘息患者における最大流量の変化率を示す。エアロゾルインターフェロン−γの投与を受けた全ての患者は、改善可能な気道疾患を評価するため肺活量測定で検査された。各エアロゾル処置では、処置の前後に患者の最大流量のモニタリングが行われた。
【図12】図12は、図2に示す最大流量測定の変化率の概要を示す。平均最大流量は、エアロゾルインターフェロンγの投与後に増加し、数名の患者では有意な増加を示した。注目すべきは、最大流量測定がインターフェロンγの処置後に減少した全患者において、何れも咳又はその他の愁訴を呈さなかった点である。これらのデータは、エアロゾルインターフェロンγが気道疾患患者に安全であり、優れた耐性を有することを示している。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(詳細な説明)
本発明の方法及び処置法の説明に入る前に、本発明は特定の方法及び記載の実験条件に制限されることはなく、方法及び条件は変更される場合があることが理解されるものとする。又、本発明の適用範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることから、本明細書で使用される用語が単に特定の実施形態の説明を目的としたものであり、限定を目的としたものではないことも理解されるものとする。
【0028】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される、「a」、「an」及び「the」の単数形は、特に文脈で明記されない限り、複数形の言及を包含する。従って、例えば”the method(方法)”の言及は、1つ以上の方法、及び/又は本明細書に記載の及び/又は本開示内容等を一読すれば当業者に明らかになるであろう類の手順を包含する。
【0029】
特に定めのない限り、本明細書で使用される全ての専門用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者が通常理解するものと同じ意味を有する。本明細書に記載したものと同様又は同等の方法及び材料は何れも、本発明の実施又は試験で使用される可能性があるが、現時点で好ましい方法及び材料を記載する。本明細書で言及される全ての刊行物は、方法及び/又は材料を引用した刊行物と共に開示及び説明するために、参考として本明細書で援用される。
【0030】
定義
具体的な実施形態において、「症状の改善」という用語は、処置前の値に比べて少なくとも10%の予測FVCの改善として評価される。
【0031】
「コルチコステロイド、シクロホスファミド、及びアザチオプリンの1つ以上による処置に対して効果を示さない」という語句は、従来の先行技術の処置に対して効果を示さない患者の集団を意味する。
【0032】
肺活量(VC)とは、肺の内外に移動する可能性がある大気の総量を意味する。
【0033】
FEV1とは、1秒間における大気の努力性呼気肺活量を意味する。
【0034】
FEV1/FVC比とは、1秒間における努力性呼気肺活量と努力性肺活量の比を意味する。
【0035】
「肺疾患」という用語は、少なくとも部分的に肺又は呼吸器系に発症しているあらゆる病状を指す。この用語は、特発性肺線維症を含むがこれに限定されない全ての形態における、例えば、喘息、気腫、慢性閉塞性肺疾患、肺炎、結核及び線維症等の閉塞性及び非閉塞性の両症状を包含するものとして意図される。
【0036】
「閉塞性肺疾患」という用語は、呼吸器系の内外における空気流量の減少を起こすあらゆる肺疾患を指す。健常者と比較した空気流量の減少は、例えばFVC又はFEV1によって、全体の又は限定された時間において測定される場合がある。
【0037】
「特発性肺線維症」(IPF)という用語は、「特発性間質性肺炎」(CFA)と同義であり、特発性間質性肺炎の主なサブグループに対する臨床用語で、平均生存期間が呼吸困難の発症から3〜6年の特発性進行性間質性疾患を特徴とする疾患を指す。特発性肺線維症は、肺生検で通常型間質性肺炎(UIP)を確認することによって診断される。組織学的パターンは、斑状慢性炎(肺胞炎)、進行性傷害(増殖性筋線維芽細胞及び線維芽細胞の小型凝集体、即ち線維芽細胞巣)及び線維形成(高密コラーゲン及び蜂巣化)等の不均質を特徴とする。
【0038】
「喘息」という用語は、炎症(細胞傷害)を伴う一般的な病気と肺まで続く気道の狭窄を指す。喘息は、小児及び成人において発生する。小児喘息は思春期及び成人期になっても続く可能性があるが、喘息を発症した成人の中には、過去に喘息を発症していなかった者もいる。世界で何百万人もの人が喘息を発症しており、近年では更によく見られるようになった。
【0039】
「緩深呼吸」とは、吸気時間が呼気時間より長いあらゆる呼吸パターンを意味する。このパターンは、0.5を超える負荷サイクル(吸気時間/合計呼吸時間)を特徴とする。標準の安静呼吸中の負荷サイクルは、常に0.5未満又はその近似値を示す。即ち、吸気時間は呼気時間より常に少ない。疾患状態において、負荷サイクルは閉塞性疾患で減少し、限定的な疾患であっても0.5未満になると考えられる。「緩深」呼吸は、I/E比、即ち呼気時間に比べて吸気時間が1以上になることを特徴とし、場合によってこの比は0.8又は0.9の負荷サイクルを与えることにより8又は9に近付けることができる。
【0040】
インターフェロン−γの作用機序
近年、IFN−γに対する一時的な調節経路を再現した培養細胞で、シグナル伝達経路が研究された(Vilcek, et al., (1994) Int Arch Allergy Immunol 104(4): 311−6; Young, et al., (1995) J Leukoc Biol 58(4): 373−81)。添加したIFN−γが細胞外の受容体領域に結合すると、最初の事象が生じ、細胞内の受容体領域において、既存のシグナル伝達物質及び転写1(STAT−1)のアクチベーターのチロシンリン酸化を生じる。チロシンリン酸化されたSTAT−1のみが活性化され、これはホモダイマー(又はヘテロダイマー)を形成して特異的なDNA配列に結合する。
【0041】
核への移行時、及び多くの遺伝子のプロモーター中にある同種の調節要素に結合した時に、STAT−1は転写を活性化する。STAT−1は構成的に活性な他の既存の転写制御因子に働きかける可能性があり、従って、遺伝子の転写の一部は新規タンパク質の合成を必要とすることなく最大限に誘導される。その他の遺伝子は、IFN−γに反応して新しく合成される転写制御因子と共にSTAT−1によって制御される。転写制御因子もコードするIRF−1遺伝子も又、IFN−γに反応してSTAT−1によって制御される(Pine, R. (1992) J Virol 66(7): 4470−8; Pine, et al., (1994) Embo J 13(1): 158−67; Pine, et al., (1990) Mol Cell Biol 10(6): 2448−57)。又、IRF−1遺伝子のプロモーターは、腫瘍壊死因子アルファ(TNF−α)活性のIRF−1遺伝子の転写を媒介する核因子κB(NF−kB)に結合部位を含む点にも留意する必要がある(Harada, et al., (1994) Mol Cell Biol 14(2): 1500−9; R. Pine, unpublished)。
【0042】
IRF−1タンパク質が合成されると、一時的に下流の遺伝子群の転写を活性化する。IRF−1は、TAP−1、LMP−2、及びHLA−AとHLA−BのクラスI主要組織適合抗原を含めた、抗原処理及び提示に関与する重要な遺伝子の、IFN−γ誘発による発現を制御することが示された(Johnson, et al., (1994) Mol Cell Biol 14(2): 1322−32; White, et al., (1996) Immunity 5(4): 365−76)。
【0043】
IRF−1は、リン酸化され、リン酸化の程度を操作することにより、そのDNA結合活性に影響を与える(Pine, et al., (1990) Mol Cell Biol 10(6): 2448−57; Nunokawa, et al., (1994) Biochem Biophys Res Commun 200(2):
802−7)。しかし、IRF−1のリン酸化がin vivoで制御されるという明白な証拠は示されていない。STAT−1活性はチロシンリン酸化に依存しており、セリンリン酸化の程度に影響される。しかし、多数の潜在的STAT−1も調節される。IFN−γで一晩処理された細胞は、チロシンリン酸化及びDNA結合活性が刺激されていない細胞より僅かに多いだけであるものの、STAT−1タンパク質の濃度増加が見られる(Pine, et al., (1994) Embo J 13(1): 158−67)。
【0044】
この遺伝子発現及びその調節の研究は、全面的な免疫学的状態におけるその他の側面に関する情報を示す可能性がある。具体的には、サイトカイン変化の機能作用は特異的なDNA結合活性の決定によって確立される可能性がある。例えば、T細胞において、IL−4はSTAT−6の活性化を導くのに対し、IL−12はSTAT−4の活性化を導き、Th1及びTh2反応の発生又は一方から他方へのシフトは、特定の時間において認められるSTATのDNA結合活性の特性に反映される場合がある(Darnell (1996) Recent Prog Horm Res 51:391−403;Ivashkiv, L.B. (1995) Immunity 3(1): 1−4)。
【0045】
エアロゾル化インターフェロン−γによるIPFの処置
近年、IPFに罹患した患者の小規模無作為試験が、インターフェロン−γ(IFN−γ)の皮下処理により行われた(Ziesche, et al., (1999) N. Engl. J. Med. 341: 1264−1269)。IFN−γによる処置前及び処置の6ヶ月後における経気管支の生検標本解析では、増殖因子−β(TGF−β)を形質転換する線維化促進サイトカインの異常増加を処理前に示し、結合組織増殖因子(CTGF)はIFN−γによる処置後に顕著な減少を示した。(Ziesche,
et al. (1999) supra)。プレドニゾロンのみで処置された患者は、TGF−β及びCTGFの濃度変化が見られなかった。
【0046】
インターフェロンの送達
エアロゾル送達
発明の広範な態様において、肺疾患に罹患した患者の喘息及び特発性肺線維症(IPF)等の肺疾患を処置する方法は、インターフェロン−γ等のエアロゾル化インターフェロンを肺疾患の症状が改善する治療有効量で投与することを含む。症状の改善とは、処置前の値と比較した予測FVCの少なくとも10%以上の増加である場合がある。好ましい実施形態において、エアロゾル化IFN−γは、コルチコステロイド、シクロホスファミド、及びアザチオプリンの1つ以上による処置に効果を示さない、喘息又はIPFに罹患した患者の治療に使用される場合がある。更に、肺線維症患者においてIFN−γ等のエアロゾル化インターフェロンの投与が計算及び最適化される。このような投与によって、患者の肺機能検査における改善が見込まれる。
【0047】
IFN−γ等のインターフェロンは、静脈注入、筋肉内、皮下、鼻腔内、及びエアロゾル経由等、幾つかの異なる経路によって投与される場合がある。しかし、肺病変の進行のみを処置する場合、肺に対する直接的な薬物の送達は他の器官系への曝露の回避を可能にする。IFN−γ500μgのエアロゾルによる週3回、2週間の投与が効果的であることが、標準的な患者の気管支肺胞洗浄(BAL)解析における、投与後のIFN−γの濃度増加によって示された。同様に、週3回の約500マイクログラムのインターフェロン−β投与及び、週3回の約0.25mgのインターフェロン−α投与が効果的であると考えられる。
【0048】
本発明の目的は、肺の投与経路を経てインターフェロン−γ等のインターフェロンを送達することである。肺上皮内壁から血流までを巡回しながら、IFN−γのようなインターフェロンは哺乳類の肺に送達される(これに関するその他の報告には以下がある:Adjei, et al., PHARMACEUTICAL RESEARCH, VOL. 7, No. 6, pp. 565−569(1990); Adjei, et al., International Journal of Pharmaceutics, 63:135−144 (1990); Braquet, et al., Journal of Cardiovascular Pharmacology, Vol.13, suppl.5, s. 143 −146(1989); Hubbard, et al., Annals of Internal Medicine, Vol.III, No.3, pp. 206−212(1989); Smith, et al., J. Clin. Invest., Vol.84, pp. 1145−1146 (1989); Oswein, et al., ’’Aerosolization of Proteins”, Proceedings
of Symposium on Respiratory Drug Delivery II, Keystone, Colorado, March, 1990;及びPlatz, et al.,米国特許第5,284,656号)。治療用製品を肺へ送達するよう設計された広範な機械装置(ネブライザー、定量吸入器、及び粉末吸入器を含むがこれに限定されず、全て当業者に周知である)が、本発明の実施における使用において検討されている。
【0049】
本発明の実施に好適な市販の装置の幾つかの具体例には、Ultraventネブライザー(Mallinckrodt, Inc.[米国ミズーリ州セントルイス])、Acorn IIネブライザー(Marquest Medical Products[米国コロラド州エングルウッド])、Ventolin定量吸入器(Glaxo Inc., Research Triangle Park[米国ノースカロライナ州])、Spinhaler粉末吸入器(Fisons Corp.[米国マサチューセッツ州ベッドフォード])、MistyNeb(Allegiance, McGraw Park[米国イリノイ州])、AeroEclipse(Trudell Medical International[カナダ])がある。
【0050】
このような装置は全て、タンパク質の投与に好適な製剤の使用を必要とする。一般的に、各製剤は使用される装置の種類に特異的であり、治療で有用な通常の希釈液、アジュバント及び/又は担体に加えて、適当な噴霧剤物質の使用を含むことがある。又、リポソーム、マイクロカプセル又は微粒子、包接複合体、又はその他の種類の担体の使用も考慮される。化学修飾されたタンパク質は、化学修飾の種類又は使用する装置の種類によって、異なる製剤においても調製される場合がある。
【0051】
ジェット又は超音波ネブライザーの何れかとの使用に好適な製剤は、一般的に、溶液1mL当たり約0.1〜25mgの生物活性タンパク質濃度のタンパク質水溶液を含む場合がある。製剤は又、緩衝剤及び単糖(例えば、タンパク質安定化及び浸透圧の調節のため)も含む場合がある。ネブライザー製剤は、エアロゾルを形成する際に溶液の微粒化に起因してタンパク質表面に誘起された凝集を減少させるか又は防ぐため、界面活性剤も含む場合がある。
【0052】
定量吸入器装置用の製剤は、一般的に界面活性剤を使用して噴霧剤の中に懸濁されたタンパク質を含む、微粉化した粉末を含む場合がある。噴霧剤は、トリクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタノール、及び1,1,1,2−テトラフルオロメタン、又はその組み合わせを含む、クロロフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボン、又は炭化水素等の、当目的に使用される何れかの従来材料である場合がある。適切な界面活性剤は、トリオレイン酸ソルビタン及び大豆レシチンを含む。オレイン酸は、界面活性剤としても有用であると考えられる。
【0053】
粉末吸入器装置から投与する製剤は、タンパク質を含んだ微粉化した乾燥粉末を含む場合があり、装置から粉末の散布を促進する量、例えば製剤の50〜90重量%のラクトース、ソルビトール、スクロース、又はマンニトール等の充填剤も含む場合がある。タンパク質は、最も有利には、10μm(又はミクロン)未満の平均粒径の微粒子型で調製される必要があり、末端肺への送達が最も有効な0.5〜5μmまでが最も好適である。
【0054】
ヒト肺の深部に対し、IFN−γを含むインターフェロン等の治療薬の送達量を有意に増加させることがエアロゾル送達の目標である。特に好ましい緩深呼吸法では、標準(安静呼吸)に比べて最大で約50倍まで肺末梢への沈着効率が増加する場合がある。
【0055】
安静呼吸(図1)に比べて、緩深呼吸法を使用した呼吸パターンは、具体的に吸気流量の減少及び吸気時間の著しい延長を表す。このパターンは、図2で示される。緩徐な吸入により、エアロゾル粒子は上気道を飛び越えて進み、従って肺への沈着を有効にする。長期吸気は、肺末梢に対するエアロゾルの適切な固着を可能にする。吸気時間の延長及び十分な固着が行われることにより、残りの粒子が吐き出されうる前に「吸気沈着」が促進される。これらの状況下では、呼気の開始前に吸入された粒子のほぼ100%が沈着する可能性がある。このプロセスは、通常口内で沈着する比較的大きい粒子(例えば約4.5μm)を使用することにより更に促進することができる。緩深呼吸での吸気の長時間化は、薬剤の口内における沈着の回避を促進するのに加えて、従来の、より小さいエアロゾルの沈着量が減少する末梢気道症状を示す患者の肺へ薬剤を送達するのに特に適している。この方法によって処置される場合がある肺末梢の疾患には、例えば、特発性肺線維症及び肺気腫が含まれる。両疾患は、安静呼吸中に気腔の拡大をもたらし、沈着が殆ど見られない。
【0056】
吸入及び沈着の本技術は、肺毛細管を経た体循環への全身吸収を促進する意図を以って、薬剤の末梢送達を促進することができる。図3は、緩深呼吸パターンを使用して4.5μmのエアロゾルを吸入するヒト患者における沈着パターンを示す。この図は、胃における僅かな活動によって示された上気道において、エアロゾルがあまり沈着されていない(10%未満)ことを示す。沈着図は、約8秒の吸気時間で緩深呼吸により3回呼吸した後、ヒト患者の肺末梢部に沈着した、放射標識されたエアロゾルを示す。図4は、現在の吸入の標準法である安静呼吸を20回行って1.5μm粒子を吸入した後の同患者のスキャン図である。この図の解析では、大型粒子の使用、緩徐な吸入、及び吸気時間の延長を組み合わせた緩深呼吸法では、肺へのエアロゾル粒子の沈着に対して、1回の呼吸につき51倍以上有効であることが示される。
【0057】
緩深呼吸法の実行が可能な装置の製造は複雑であるが、本機能を実行する試作装置が開発及び使用されている(英国に拠点を置くProfile Therapeutics社の子会社である、Profile Therapeutics, Inc., 28 State Street, Ste. 1100, Boston, MA 02109)。
【0058】
肺実質の疾患は、吸入された粒子が殆ど沈着されない可能性がある肺末梢の幾何学的変化を起こす。同薬剤の全身への送達と比較した場合、疾患(肺末梢)部位に直接送達する療法はより有効であると言える。インターフェロン(IFN−γ等)のエアロゾルの緩深呼吸法は、特に肺線維症患者の肺胞における疾患の処置に適している。
【0059】
ヒト沈着試験により、緩深呼吸法が従来のエアロゾル送達系よりも約50倍効率的であることが示された。この呼吸パターンは、この薬剤の既存の製剤を使用した肺末梢への広い投薬範囲より優れた、例えばINF−γ等のインターフェロン等の薬剤を使用した、特発性肺線維症又は喘息を含めた閉塞性肺疾患等の肺疾患へのエアロゾル療法の有効性を調べる臨床試験の設計を可能にする。殆どエアロゾルが吐き出されないことから、肺における沈着量は呼吸パターンによって調節される。
【0060】
鼻部送達
タンパク質の鼻部送達も考えられる。鼻部送達は、肺における薬品沈着を必要とすることなく、鼻部への治療薬の投与後にタンパク質を直接血流へ輸送することを可能にする。鼻部送達用の製剤は、デキストラン又はシクロデキストランを含有する製剤を含む。
【0061】
投与量
更なる試験の実施の際に、種々の患者における種々の病態の処置に好適な、投与量に関する情報が明らかになることが理解されており、当業者は、投与患者の治療上の背景、年齢、及び健康状態を考慮して適切な投薬を決定することができる。一般的に、注射又は注入におけるインターフェロン−γの投与量は、生理活性タンパク質250μg(化学修飾を含まないタンパク質のみの質量で計算)〜750μg(同様に基づく)の間で週1〜5回の投与が予測される。更に好ましくは、約500μgで週3回の投与が行われる場合がある。一般的に、注射又は注入におけるインターフェロン−αの投与量は、通常250〜750μgで週1〜5回の投与、好ましくは約500μgで週3回の投与である。インターフェロン−βの場合において、投与量は、通常0.10〜1mgで週1〜3回の投与、好ましくは週に約0.25mgで3回の投与である。投薬スケジュールは、タンパク質の循環半減期、及び使用される製剤により異なる場合がある。
【0062】
その他の化合物の投与
肺疾患の処置に使用される1つ以上の薬学的組成物と併用してインターフェロンを投与する場合があることは、本発明の更なる態様である。又、例えばシクロホスファミド、アザチオプリン、又はコルチコステロイドといった抗炎症薬又は免疫抑制薬が同時に投与される場合もある。投与は同時行われる場合もあれば、連続して行われる場合もある。
【0063】
IFN−γ250μgの3日間の皮下投与により、末梢血単球の上方調節が示されたのに対して、IFN−γのBAL濃度の増加又は肺胞マクロファージの変化の増加は見られなかった(Jaffe, et al.(1991) J. Clin. Invest. 88:297−302)。更には、エアロゾルIFN−γが肺結核患者における補助療法として使用された。
【0064】
後述する試験では、IPFに罹患した従来の免疫抑制療法に対する効果を示さない患者が、エアロゾル化IFN−γによって処置されている。
【0065】
本発明は、後述の実施例を参照することにより更に理解することができるが、これらの実施例は、本発明を例示するためのものであり、本発明を限定するためのものではない。
【実施例】
【0066】
以下の実施例は、本発明及び化合物及び薬学的組成物の治療法を実施及び使用する方法の詳細な開示及び記載を、当業者に示するためのものであり、発明者が本発明と見なす範囲を限定することを目的としたものではない。使用する量(例えば、分量、温度等)に関しては精度を保証するように努めたが、いくらかの実験誤差及び偏向が含まれるはずである。特に指示がない限り、割合は重量割合を、分子量は平均分子量を、温度は摂氏温度を、及び圧力は大気圧又はその付近の圧力を指す。
【0067】
(実施例1)
患者集団
試験対象は、American Thoracic Societyの基準A又はB(下記)によって診断された特発性肺線維症(IPF)に罹患した患者であった。患者集団は、コルチコステロイド、シクロホスファミド、及び/又はアザチオプリンによる従来の治療に対して効果を示さなかった、又は適応しなかった。患者集団は、エアロゾル化IFN−γを12週間使用することにより処置された。
【0068】
UIPを示す外科生検の背景においては、以下の3つの条件が適合しなければならない。
【0069】
1. 特定の薬物毒性、環境曝露及び結合組織病等の間質性肺疾患におけるその他の既知原因の除外。
【0070】
2. 限定された(FEV1/FVC比の増加による肺活量(VC)減少)証拠結果を含む肺機能試験の異常及び/又はガス交換障害(O2に対する肺胞動脈較差の増加又はCOに対する拡散能の低下)。
【0071】
3. HRCTスキャンでスリガラス様陰影が殆ど示されない両肺基底部の網状異常。
【0072】
外科肺生検を行わない場合は、免疫正常成人において以下の場合にIPFの推定診断を行うことができる。
I. 上記の基準3つが全て満たされる。
II. 経気管支肺生検(TBBx)又は気管支肺胞洗浄(BAL)が、他の診断を支持する特徴を示さない。
III. 以下4つの小基準の内の3つに合致する。
1. 年齢50歳超
2. 未解明の運動時呼吸困難の潜伏性発症
3. 罹患期間3ヶ月超
4. 両肺基底部の吸気性クラックル
以下の改善が示される。
(1)ステロイド治療前に得られるFVCと比べた、処置前の値から10%の予測FVCの増加。
(2)患者のFVCが処置前の値から10%を超えて増加を示し、その後治療に関係なく処置前の値まで戻る場合。
【0073】
試験への参加条件を満たす患者は、以下の通りに定められる。
【0074】
(1)3年以内のスクリーニングで一般的に認められた基準(上記参照)に基づいてIPFと診断された患者。
【0075】
(2)年齢20〜70歳。
【0076】
(3)シクロホスファミド/アザチオプリンの有無に関係なくプレドニゾンによる処置に対して効果が示されない、又はステロイド又は細胞毒性薬剤による処置が禁忌である患者。
【0077】
(4)試験登録前に28日間0〜15mgのプレドニゾン又は同等物を服用していて、コルチコステロイドを同用量に留める意思がある患者。
【0078】
(5)FVC50%以上、及びスクリーニングで予測された処置前の値の90%以下。
【0079】
(6)室内大気下の安静時における60mmHg超のPaO2。
【0080】
(7)同意書が理解でき、署名する意思があり、試験プロトコールに含まれる全要求に応じる意思がある患者。
【0081】
(8)気管支鏡検査法による検査の基準に適合し、処置を受ける意思がある患者。
【0082】
(9)Bellevue HospitalのGCRC施設で週3回の薬物投与を受けられる患者。
【0083】
試験の参加に適さない患者は、以下の通りに定められる。
【0084】
(1)気管支鏡検査法の検査を受ける意思がない又は受けられない患者。
【0085】
(2)既知の喘息又は重症のCOPDに罹患する患者。
【0086】
(3)適切な動脈血酸素化を維持する酸素療法を必要とする患者。
【0087】
(4)試験薬物又はその他の成分の薬物に対する過感受性を有する患者。
【0088】
(5)試験薬剤投与(添付文書に従った薬剤投与に対する禁忌症)によって悪化のおそれがある既知の重症な心臓病、重症な末梢血管疾患、又は発作疾患の患者。
【0089】
(6)妊娠中又は授乳中の女性。
【0090】
妊娠可能年齢の女性は、妊娠試験が陰性である必要があり、産児制限の受諾書への記入が要求される(試験期間中の禁欲が好適な方法である)。
【0091】
(7)処置前から1週間以内の活動性感染症の証拠。
【0092】
(8)試験登録から1年以内に患者の死亡が予測されるIPF以外の全ての「条件」。
【0093】
(9)以下を含む異常な血清検査値。
【0094】
(a)指定の限度値を超える肝機能
総ビリルビン量:正常値上限の1.5倍超
アラニンアミノトランスフェラーゼ:正常値上限の3倍超
アルカリホスファターゼ:正常値上限の3倍超
アルブミン:スクリーニング時に3.0未満
(b)指定の限度値を外れたCBC。
【0095】
WBC:2,500/mm3未満
ヘマトクリット:30未満又は59超
血小板:100,000/mm3未満
(c)クレアチニン:スクリーニング時に正常値上限の1.5倍超;
(10)6週間前以内にコルチコステロイド、シクロホスファミド、及び/又はアザチオプリンを除外した肺線維症治療の薬剤。
【0096】
(11)全種類のインターフェロン投薬による以前の治療。
【0097】
(12)最後の28日における全徴候に対する治験の治療。
【0098】
(実施例2)
最初に、エアロゾル化インターフェロン−γによる非盲検の予備実験に登録されるIPF登録所から10名の患者が召集される。10名の患者は、参加及び除外基準に適合すると見込まれる。収集されたデータには、身長、体重、及びバイタルサイン(全ての投薬における個人歴、及び徹底した職業的及び喫煙経歴、身体検査、EKG、CBC、電解質パネル、肝臓酵素及び凝固プロフィール、CXR、胸部CT、PFT、ABG、出産年齢の女性における妊娠試験)等、過去の病歴が含まれる。
【0099】
各患者は試験の初めに、患者の生涯を通じたタバコ曝露、環境曝露、及び投薬使用について詳細に質問する肺線維症アンケートへの記入を完了している。各患者は、IFN−γの耐性及び起こりうる副作用を確認する症状アンケートにおいても記入を完了している。
【0100】
患者は、特定の線維化促進及び炎症性サイトカインの濃度を評価するために、気管支肺胞洗浄(BAL)を使用した基礎気管支鏡検査を受ける。手順は以下の通りに行われる。
【0101】
各患者は、Bellevue Hospitalプロトコールに従って気管支鏡検査について評価される。各評価には、Hgb、血小板、BUN/CR、凝固パネル、PO2によるABG≧75mmHg、EKG、CXRが含まれる。気管支鏡検査における矛盾には、患者の協力の欠如、最近の心筋梗塞、悪性不整脈、回復不能の低酸素血症、不安定な気管支喘息、肺高血圧、部分的な気管閉塞又は声帯麻痺、出血性素因及び尿毒症が含まれる。当患者は、気管支鏡検査の少なくとも8時間前に絶食していなければならない。静脈ラインの設置、酸素の補給投与、及び持続的なパルス酸素濃度測定及び血圧監視が実施される。
【0102】
患者は60mgのIMコデインを前投薬され、粘着性リドカインが鼻部へ投与され、リドカインうがい薬及びネブライザー(局所麻酔薬気管支鏡)が使用される。処置中に、ミダゾラム及び/又はモルヒネの投与によって、鎮静させ、咳反射を減少させる場合がある。これらの投薬は、気管支鏡検査で通常使用される。気管支鏡は鼻部及び声帯を通り抜けて通過し、気管支内検査が実施される。その時、無菌標準生理食塩水を50mLずつ分割して合計300mL投与し、液体の回収を最大にするため穏やかに吸引を行うことによりBALが行われる。
【0103】
BAL液は患者から得られた後、全てのBALを調べるために使用された標準的プロトコールに従って、GCRCの中核的な実験室で処理される。BAL液は無菌ガーゼを通して濾過される。総細胞数の相違は血球計で計測される。細胞生存率はトリパンブルー法によって決定される。20の細胞遠心分離標本は、BAL液の各葉から調製され、−70℃にて冷凍される。24時間の上清は、サイトカインELISA検定のため106細胞/mLの濃度で採取される。上皮内壁液の量は、タンパク質測定法によって決定される。遠心分離の後、BAL液上清はAMICONフィルター法を使用して10X−50Xに濃縮される。サイトカイン検定は、市販のキットで実施される(R&D Systems[米国ミネソタ州ミネアポリス])。全試料は三つ組で評価され、サイトカインの量はマイクロタイタープレートリーダーによって検定終了後に定量化される。経気管支生検標本は、前述のように(Raghu, et al. (1989) Am. Rev. Resp. Dis. 140:95−100)、線維芽細胞を単離するために処理され、コラーゲンタンパク質の3Hプロリン取り込みを使用したコラーゲン産生の分析が行われる。各患者は、病院の看護職員によるGCRCでの処置後の4時間で、熱、息切れ、喀血、及び気胸を含むがこれに制限されない気管支鏡検査の潜在的な副作用がモニターされる。同時投薬は患者の医療記録に記録される。
【0104】
各患者は、コルチコステロイド又は免疫抑制薬の服用を継続を続行する。患者は試験中、治験による処置は許可されない。前臨床のラット試験により、非経口のIFN−γは肝臓ミクロソームのシトクロムP−450の濃度を減少させることが示された。このことにより、この分解経路を利用することが知られている薬剤の代謝の低下を起こす可能性がある。患者がこの経路で代謝されることが知られている薬物療法中である場合は、適正なモニタリング方法が実行される。
【0105】
IFN−γは週3回で12週間、携帯型ネブライザーによって投与される。各用量投与の前に、投与する医師による試験が実施される。最大流量測定が実施され、成績の良い順に3つまでが処理前の値として記録される。Aeroeclipse又はAerotech IIネブライザーは、通常の方法及び500μgの薬剤をネブライザーに入れて調製される。患者は鼻栓をした状態で着席位置につき通常の呼吸をしている状態で、圧縮空気(壁掛け装置又は携帯装置)による処置が実施される。処置が終了したら、患者は再び試験医師によって検査され、1時間装置上で観察される。投薬送達の1時間後に最大流量の測定値が得られ、記録される。追加の肺試験及び最大流量測定を受ける場合、各患者は最初のエアロゾル治療から更に4時間、装置から離れてはならない。各患者はIFN−γの投与中に、熱、疲労、GI異常、頭痛、咳、息切れ、喘鳴、及び検査所見の異常を含むがこれに限定されない副作用についてモニターされる。
【0106】
毒性は、”The Common Toxicity Criteria”によりグレード分けされる。これに従って用量調整が行われる。毒性グレードIでは、患者は医師の裁量で処置を続けることができる。毒性グレードIIでは、(必要に応じ即時に繰り返して異常検査パラメータが確認される)毒性グレードIと同等又はそれ以下に戻るまで患者の用量は継続され、戻った段階で患者は処置を再開することができる。グレードII又は更に悪性の毒性に戻った場合、患者は試験から脱退させられる。全ての毒性グレードIII又はIV毒性において、患者は試験から脱退する。異常な検査パラメータは確認の必要がある。
【0107】
(実施例3)
臨床上の有用性
慢性アレルギーの既往歴を有する38歳のハイチ人女性は、次第に増加する息切れ及び運動性呼吸困難の1年半の既往歴があった。患者のPFTは、主に拡散能の低い限定的なパターンを示し、間質性肺疾患の疑いがあった。彼女は他の胸部CTスキャンを受け、前記のPFT結果が確証され、主に肺底部で胸膜下線維形成及び蜂巣状の変化が明らかになった。開胸肺生検は、UIP/IPFと一致したパターンを示した。
【0108】
患者にエアロゾル化IFN−γの治療を開始した。彼女は呼吸困難の減少を報告し、職場復帰することができた。彼女は、3年間(表1参照)臨床的に安定していた。客観的所見は表2に記載する。最大酸素消費量の増加、換気量の減少、及び酸素飽和度の低下程度の減少によって示される通り、運動成績が改善されている。患者の呼吸困難度スコアは減少した(UCSD SOBQ)。エアロゾル療法を行っている間、患者の肺機能検査は安定状態を維持していた。図5に示す沈着図は、54μgのIFN−γに相当する。肺実質で沈着する。図6は、エアロゾル療法の前後にBALによって測定されたTGF−β濃度を示す。IFN−γエアロゾルの作用と一致して、TGF−β活性の顕著な減少が示された。
【0109】
表1.処置前後のPFTの結果
【0110】
【表1】
【0111】
【表2】
(実施例4)
BAL液は、タンパク質の測定のために使用され、送達される薬剤量を測定するためウイルス抑制試験によってIFN−γを評価する。濃縮したBAL液及び24時間の細胞培養上清は、ELISA(R&D[米国ミネソタ州ミネアポリス])によってサイトカインIL−1β、IL−4、IL−6、IL−8、及びTNF−αについて評価される。無細胞のBAL上清は、ELISA及びルシフェラーゼレポーター検定によってTGF−β活性の測定に使用される。経気管支生検(TBBX)標本は、半定量的なRT−PCRによってTGF−β遺伝子の転写の測定に使用される。線維芽細胞はTBBX標本から得られ、コラーゲンI、III、及びフィブロネクチンRNAの量がRT−PCRによって測定される。RNA(10μg)はTBBX又はTBBXの培養細胞から得られ、ノーザンブロット解析が行われる。ヒドロキシプロリン含有タンパク質の含有量は、BAL液、BAL上清、及びTBBX標本を使用した分光光度法によって測定される。処置前後の両治療試料のBAL液細胞数は、各患者において計算される。保存のため、血液試料が各患者から採取される。
【0112】
(実施例5)
各患者は、携帯型ネブライザーによるIFN−γ投与の沈着試験への参加を依頼された(別の同意の下)。この沈着試験は以下に記載する通り、エアロゾル化IFN−γを試験するように計画された。薬剤は99mTcで標識され、エアロゾルネブライザーによって投与された。「減衰技法」を使用して、肺の種々の部分に送達されたIFN−γの投与量が計算された。IFN−γの初期投与量500μgの安全性が以前に示されたため、この投与量が使用された。投与量は、個々の患者の沈着試験によって調節される。後に続く気管支鏡検査は、治療終了後に上記のプロトコールを使用して実施された。BALは肺沈着図に従って誘導されたため、薬剤沈着が最も多い部分が分析され、最も薬剤送達の少ない部分及びエアロゾルIFN−γ処置前試料と比較された。このように、肺の各部位に対する全投与量は、計算及び定量が可能である。臨床反応及びBALデータに従って、投与量は最適な臨床及び沈着パラメータを反映するために調整することができる。可能な場合は、試料の同様の部分に対する試みが処置前及び処置後に行われる。各患者は、治療の1ヶ月後に経過観察が評価される。全ての手順、検査評価、放射線試験、及び肺の生理学的評価の結果は、患者の医療記録で詳細に記録される。全試験の評価は、NYU医療センターのGCRCで実施される。
【0113】
呼吸に作用する市販のネブライザーであるAeroEclipseは、患者のネブライザーを通した呼吸に依存して粒子を発生させ、この試験において使用された。これは吸入中にのみエアロゾルを産生する。
【0114】
IFN−γは、in vitro及びin vivoの両試験でジエチレントリアミン五酢酸99mテクネチウム(99mTc−DTPA)を使用した放射標識された。AeroEclipseにおいて、2つのバイアル(250mgのIFN−γ)が2mLの最終量で調製するために使用された。AeroEclipseは、Pari Masterエアコンプレッサー(PARI Respiratory Equipment, Inc.[米国カリフォルニア州モンテレー])を使用して操作した。
【0115】
ネブライザーは、その臨床用途における方法で回路に接続された。10の過程で、低流量(1.0L/m)カスケードインパクター(California measurements[米国カリフォルニア州シエラマドレ])は、Tコネクター(T connectorcascade、Hudson Respiratory Care[米国カリフォルニア州テメキュラ])を使用して接続された。呼気中に、カスケードインパクターに粒子が入ることを防ぐ吸気フィルターが、ピストンポンプとカスケードインパクターの間に設置された。二番目のフィルター(漏出フィルター)は、吸気フィルターにもインパクターにも誘導されない過剰粒子を捕捉するためシステムに設置された。患者の換気で起こりうる作用を評価するため、ピストンポンプ(Harvard Apparatus[米国マサチューセッツ州ミリス])が患者の呼吸運動の模擬実験を行うために使用された。
【0116】
吸入の前に、エアロゾルは以下の2つの条件下においてベンチで試験された。
雲の発生(換気なし): カスケードインパクターは、ピストンポンプ(ポンプは回路から接続分離される)によって起こる換気を行わずに、1Lpmにおいて管から直接粒子試料を採取した。AeroEclipseからの粒子の発生により、呼吸作動弁はサンプリング期間中に手動で圧縮された。
換気中: Harvardポンプはシステムで正弦曲線の流量を発生するために使用され、患者の呼吸に類似であった。750mLの1呼吸容量では、20/mの呼吸数及び0.5の負荷サイクルが利用された。
【0117】
空気力学的な粒子分布が、カスケード(Tコネクターcascade)に接続している管上の沈着に加えて測定された。エアロゾルの弾道特性は、Tコネクターcascade上での活性として定量化され、カスケードインパクターで捕捉された活性の百分率として報告された(カスケード%)。この沈着は、肺沈着を予測する際に利用された。
【0118】
(キセノン画像診断及び減衰試験)
全患者のIFN−γ沈着は、AeroEclipseネブライザーを使用して行われた。キセノン画像診断及び減衰試験(下記参照)が実施された。
【0119】
肺気量及び概要研究(133キセノン(133Xe)平衡スキャン)
患者は、後部に配置されたガンマ線カメラ(Picker Dinaカメラ;米国コネティカット州ノースフォード)の前に着席した。99mテクネチウム(99mTc)に対する室内バックグラウンド画像を撮影した後、カメラは133Xeに対して設定された。患者は機能的残気量(FRC)で安静呼吸を行い、計数率が15秒にわたり土10%に安定するまで、5〜10mCiの133Xeを吸入した。1.0分のガンマ線カメラ画像(133Xe平衡画像)が得られ、解析のためコンピュータで保存された(Nuclear
Mac v1.2/94; Scientific Imaging Inc.[米国コロラド州リトルトン])。この画像は肺の外縁を示すのに使用された。
【0120】
エアロゾル沈着試験
133Xe画像診断の後、カメラは99mTcに切り替えられた。そこで、患者は放射標識したエアロゾル化IFN−γをネブライザーから吸入した。各装置に、呼気フィルターが吐き出された粒子を捕捉するために設置された。ネブライザーは乾燥するまで運転された。最終吸入の後、患者は口部から胃までの物質を洗うために、コップ1杯の水を飲んだ。胃活性測定により上気道の沈着を評価した。
【0121】
肺減衰試験(血流スキャン)
肺の減衰係数を計算するために、肺血流スキャンが行われた。沈着画像診断の後に続いて、5mCiの99mTc−粗大凝集アルブミンが直ちに末梢静脈を経て注入された。全ての粗大凝集体が心臓の右面を横断し、局所血流に比例して肺で分散したことが想定された。1分の画像が得られた。血流は、測定された活性から前(沈着)画像で測定された活性を減算して計算された。肺の減衰係数は、注入された活性量でカメラが測定した活性量を除算することによって測定した(肺減衰係数=測定した活性/注入した活性)。
【0122】
胃減衰
患者には既知量の99mTcを添加したパンが与えられ、摂取後に胃のガンマ線カメラ画像が撮影された。胃減衰は、ガンマ線カメラで測定した活性で経口摂取した活性を除算することによって計算された(胃減衰係数=測定した活性/経口摂取した活性)。
【0123】
沈着の定量化
肺の輪郭を明示して肺気量を網羅するために、コンピュータを使用して関心領域が保存平衡133Xe平衡スキャンに関して視覚的に示された。二次元の肺領域内部の3分の1の輪郭を表した肺中央部分がその時に示された。キセノン部分が示された後、同部分は沈着画像の上に配置され、胃の活性が確認された。この時「胃部分」は、胃の輪郭が視覚的に示された。胃部分と左肺のキセノン平衡部分との重複があった場合、重複する部分は「肺上の胃」又はSOLとして定義された。肺の全沈着を測定するため、胃及び肺部分上の胃からの放射活性は除外された。
【0124】
肺沈着は、肺部分で活性を定量化し適正な減衰補正を加えることにより、ガンマ線カメラを使用して測定された。口腔咽頭の沈着は、沈着画像上の全活性から肺活性を減算して定量された。胃減衰に対して適切な補正が行われた。
【0125】
特定の中枢対末梢比(sC/P)
肺活性の特定の中枢対末梢比は、キセノン平衡画像でエアロゾル画像を除算することによって定められた。この比は、部位的肺ガス量に対して正規化したエアロゾル沈着の分布を表す。
【0126】
エアロゾル沈着のsC/P=(C/Pエアロゾル / C/Pキセノン)
エアロゾルがガスとして完全に機能して133Xe分布に追従する場合、sC/P比は1.0となる。粒子が気道中央に優先的に沈着した場合、2.0又はそれ以上のsC/P比が得られる。
【0127】
沈着試験の結果は、肺全体を通じてエアロゾルが顕著に沈着したことを示す。
肺気量に関して正規化する場合、肺の末梢より中心において比較的多くの粒子が存在する(sC/P比=1.618、上気道の沈着は殆どなし)。
【0128】
(実施例6)
エアロゾルIFN−γの作用
副作用
エアロゾル化IFN−γで15名の個人(健常志願者と肺結核患者)を処置した。エアロゾルの投与は、時折の咳又は筋肉痛を訴える患者が数名いたが、耐性は良好であった。投与の最長期間は、副作用が増幅しない3ヶ月であった。更に、Jaffeは、通常の患者に与えられるエアロゾル化IFN−γが非経口で送達されたrIFN−γとは対照的に、全身性の副作用がなく安全であること、及び肺胞マクロファージとPBMC以外を活性化することができ、その作用は末梢血のみで示される可能性があることを発見した(Jaffe, et al., (1991) J Clin Invest 88(1):
297−302)。
【0129】
沈着試験
IFN−γのエアロゾル沈着特性を調査した。沈着画像は、放射活性(エアロゾル)が肺の正常な部位全てに沈着されることを示し、明らかにする。疾患及び空洞性部位は沈着されない。血流スキャンは、同様に空洞性部位に血流が殆ど無いことを示す。沈着の予備測定において、質量平衡技法及びキセノン(図)を使用することにより肺に送達されたエアロゾルが投与量の10〜20%の範囲であることを明らかにする。肺に対する薬剤の標的への送達が、正常な肺実質において薬剤沈着を示すことが結論付けられた(Condos,, et al., (1998) Am J Respir Crit Care
Med 157(3): A187)。
【0130】
気管支肺胞洗浄所見
以前に、IFN−γで処置された、重症の多種薬剤耐性の結核患者群における臨床状態の改善を示した。患者は、処置の前後にX線撮影で病変した部位のBALを使用して気管支鏡検査を受けた。24時間の細胞培養上清及びBAL由来の液体はELISAによって評価され、TNF−a(平均172〜117pg/mL)、IL1−b(平均25〜8pg/mL)の濃度が時間の経過と共に減少し、IFN−γ(平均3.3〜2.5pg/mL)の濃度があまり検出されないことが示された。IFN−γの投与が、疾患部で局所的に産生されるTNF−aの減少に関係していることが結論付けられた。これにより、進行したMDR−TBにおけるIFN−γの有益な効果を部分的に説明することができる(Condos, et al., (1998) Am J Respir Crit Care Med 157(3): A187)。
【0131】
(実施例7)
特発性肺線維症の効果的な処置
IPFに罹患する5名の患者に対するエアロゾルrIFN−γの試験において、耐性が良好な処置を発見した。副作用には、疲労、咳、及び微熱(n=1)が含まれた。試験期間中の定期的な検査評価は、異常を示さなかった。患者全員が息切れの自覚的な改善を報告した。3ヶ月の治療の終了時までに、試験での患者の全肺気容量において統計的に有意な増加が示された。図7は、処置を受けた5名の患者の内の3名が、処置後に予測された全肺気容量の増加率が認められたことを示す。被験患者5名の内の2名の努力性肺活量においても、200ccを超える(それぞれ200及び500cc)の改善が見られた。図8は、処置された5名の患者の内の3名における、処置後の予測努力性肺活量の増加率を示す。これらの生理学的変化は、これらの患者の気管支肺胞洗浄(BAL)液(肺内部の内壁から洗出される液体)から回収された活性化TGF−β濃度の減少を伴った。図9は、処置された5名の患者において、総タンパク質のTGF−βの減少した部分を示す。TGF−βは、肺の線維症の重要な介在物質の1つである。その活性化は、コラーゲン産生を誘導する。その濃度の減少により、肺のコラーゲン沈着の減少及び線維形成の減少が誘導されるはずである。更に、エアロゾル療法の前後に患者のBAL液でインターフェロン−γの濃度を測定し、薬剤のエアロゾル投与に関連した増加が示された。図10は、結核患者と特発性肺線維症に罹患する患者の肺において、インターフェロン−γによるエアロゾル処置の前後両方で測定されたインターフェロン−γの量を示す。
【0132】
以前に実施された皮下試験と対照的に、rIFN−γのエアロゾル送達で肺機能における生理学的改善を示すことができた。この改善は、Intermune社の皮下試験で患者が受けた1年の処置に比べて、3ヶ月の処置期間にわたって見られた。この生理学的改善は、エアロゾル療法後に患者の肺から回収された活性化TGF−β濃度の減少を誘導している肺のIFN−γ濃度の増加に関与していた。このデータは、肺にインターフェロン−γの薬理学的有効量を送達可能であることを示す。皮下投与後に、肺におけるインターフェロン−γ濃度は検出されなかった(Jaffe, et al., J Clin lnvest. 88, 297−302 (1991)を参照)。更に肺への投与量を決定するため、5名の患者の内の2名に沈着試験を実施した。この試験において、肺末端部に約40mcgのrIFN−γによる沈着を確認した。肺投与量又はrIFN−γの肺濃度の測定は、実施されなかったか又は皮下rIFN−γ試験を報告しなかった。
【0133】
(実施例8)
サイトカイン遺伝子調節
この試験において、転写制御因子の存在量、リン酸化、及びDNA結合活性の調査により、エアゾールIFN−γ処置が潜在的なSTAT−1を活性化し、IRF−1の新規合成を誘導するため、細胞シグナル伝達経路に影響を与えるという仮説が試験される。肺結核患者のIFN−γによる処置前後の肺の、非疾患及び疾患部位から得たBAL細胞において、これらの実験を実施した(Condos, et al., (1999) Am
J Respir Crit Care Med (in press))。IRF−1の精製及びクローニングは、Laboratory of Molecular Cell Biology at Rockefeller University with James E. Darnell, Jr.においてRichard Pine, Ph.Dにより行われた最初の作業の主要な部分であった(Pine, et al., (1990) Mol Cell Biol 10(6): 2448−57)。本プロジェクトの「目的3」に対して提唱された免疫ブロット法及び電気泳動移動度シフト試験の同法又は類似の方法が、ここに言及された作業で使用された。
【0134】
結核患者の未病変の肺におけるサイトカイン遺伝子の操作結果に最も関連性が認められた。結果はBAL細胞の接着(主に肺胞マクロファージ)及び非接着の(リンパ球と多核白血球)の両部分で、エアロゾルIFN−γ処置後に特異的IRF−DNA及びSTAT−1−DNA複合体の量の増加が示される結果となった。
【0135】
(実施例10)
喘息処置の有効性
標準処置に対してIFN−γエアロゾル処置を受ける30名の軽度から中等度の喘息患者を召集する。本試験は、症状抑制のためコルチコステロイドの吸入による中等度の投与量を必要とする軽度から中等度の持続性喘息に罹患する患者における、無作為化、プラセボ対照、クロスオーバー、二重盲検rIFN−γエアロゾル送達試験として行われる。
【0136】
患者は人種又は性別を問わず、年齢が18〜65歳の間でなければならない。患者は年間10箱より少ない喫煙歴を有し、現時点で非喫煙者でなければならない。喘息の診断用のNAEPPガイドラインを満たす患者が登録される。1秒努力呼気肺活量(FEV1)の基準が予測値の70%以上及び回復可能の証拠(気管支拡張剤治療後のFEV1における15%以上の改善)が認められた軽度から中等度の持続性喘息患者を召集する。これらの患者は、吸入b2−アゴニスト、及び低用量の吸入コルチコステロイドの使用を断続的に行うことが必要とされる。低用量の吸入コルチコステロイドの使用には、168〜500mcg/日のジプロピオン酸ベクロメタゾン、200〜400mcg/日のブデソニドDPI、500〜1000mcgのフルニソリド、又は400〜1000mcg/日のトリアムシノロンアセトニドが含まれる。
【0137】
妊娠中であるか、光ファイバー気管支鏡検査に対する禁忌症があるか、現時点で喫煙者であるか、喫煙歴が年間で10箱より多い患者は除外される。十分に制御されていない又は重症な喘息の既往歴を有する患者、近年に全身へのコルチコステロイドの使用における既往歴、又は近年の増悪又は感染の既往歴も除外される。
【0138】
召集された全患者が吸入コルチコステロイド(ジプロピオン酸ベクロメタゾン4〜12息/日)を同基準の投与で開始するため、1ヶ月の「洗浄」期間を設けることになる。各患者は処置開始前に以下について調べられる。
1)全病歴及び現症、並びに定期的な実験作業、
2)肺機能測定(FEV1、FVC、及び最大呼気速度)、
3)静脈刺入によって採血された50mLのヘパリン添加血、
4)血液試料は、全IgE、特定のアレルゲンに対する特異的IgEと好酸球算定のために採取される、
5)細胞数/差、及び24時間の培養上清におけるIFN−γ、IL−4、IL−5、GM−CSF、IL−10、IL−12、及びIL−13の濃度のELISAによる解析を伴った、BALによる光ファイバーの気管支鏡検査。
【0139】
この時、15名の患者にエアロゾルrIFN−γ(500mcg)を週3回、8週間投与する。エアロゾル化生理食塩水の等価量が、無作為方法で15名の患者に投与される。8週目に、1ヶ月の洗い出し期間と患者が試験で第2の腕に換えることを許可する。患者は、それぞれ通院治療を行う。
1)徴候及び症状についての簡単なアンケート。
2)毎日の日誌カード及びb−アゴニスト使用のモニターのレビュー。
3)エアロゾル療法の前後にモニターしている最大流量。
4)簡略された既往歴及び毎週の身体検査。
5)患者は、エアロゾル化IFN−γ治療の前中後に、毎日の日誌で症状の特徴を示す。患者は、咳、喘鳴及び息切れの症状の程度を評価する。患者は、毎日の最大流量測定も記録する。
【0140】
各腕の試験の完了で、(8週目におけるエアロゾル化IFN−γ治療又は対照の生理食塩水の何れか)患者は以下について調べられる。
1)全病歴及び現症、並びに定期的な検査作業、
2)肺機能測定(FEV1、FVC、及び最大呼気速度)、
3)静脈刺入によって採血された50mLのヘパリン添加血、
4)血液試料は、全IgE、特定のアレルゲンに対する特異的IgEと好酸球算定のために採取される、
5)BALによる光ファイバーの気管支鏡検査が、最後のIFN−γ治療後又は治療のない日に行われる。細胞数/差、及び24時間の培養上清におけるIFN−γ、IL−4、IL−5、GM−CSF、IL−10、IL−12、及びIL−13の濃度がELISAによって解析される。
6)全ての患者は喘息の病院で以下を継続する。
【0141】
a)全既往歴及び身体検査
b)定期的な実験
c)肺活量測定及び最大流量測定
種々の理由のために低用量の吸入ステロイドを常用する、軽度から中等度の持続性の喘息に罹患する試験患者を選択した。第一に、軽度の断続的な症状のみの患者が含まれた場合、このような集団において感受性の生理学的変化か、症状的変化か、免疫的変化の判別が不可能になる恐れがある。第二に、この治験の治療を中断するため吸入ステロイドを要求する患者は認められない。更に本試験の目的は、エアロゾル化IFN−γがすでに指定された治療法の補助として利用することができるかを判定することである。コルチコステロイドがサイトカイン濃度に影響する可能性があるため、吸入ステロイドの使用が本試験との混同を招く恐れがあると理解される。「洗浄」は全患者が同基準で開始するための期間であることが含まれる。
【0142】
(実施例11)
喘息患者の肺機能における効果
肺機能測定におけるエアロゾル化rIFN−γの効果を測定するため、エアロゾル治療前の各患者に対する全肺気容量(TLC)及び機能的残気量(FRC)を含む1秒努力呼気肺活量(FEV1)、努力性肺活量(FVC)、最大呼気流量、及び肺容量における肺活量測定値を得る。この測定は、Bellevue Hospital Pulmonary Function Laboratoryで行われる。
【0143】
喘息のない結核患者の処置で示されたように、エアロゾル化rIFN−γの投与後に直ちに最大流量測定の軽度の改善が認められることが予測される。現在のところ、IFN−γが気管支拡張効果を示す理由は不明である。気道の炎症が減少したことを反映して、8週間のエアロゾルIFN−γ処置後にFEV1及びFVCの改善が予測される。
【0144】
各患者の再現性のため、特にFEV1を追跡することを選択する。これらの値は、大規模な気道閉塞に対して特異的である。試験の初期部分の間に、小規模の気道疾患における他の変数が影響されることが認められれば、特異的気道コンダクタンス、気道抵抗、又はエンドポイントとして25〜50%の努力性呼気値を使用する。気道抵抗の感受性試験が更に必要であれば、コンプライアンス試験の呼吸数依存性を実施することができる。気道過敏性を試験するため、メタコリンで気管支の誘発試験を行うことも可能である。これらの追加的な試験は、個人間の変動性に加えて個人差があるため、信頼性に問題がある。クロスオーバー試験としての試験設計は、個体間変動を回避するはずである。
【0145】
(実施例12)
BAL検体の効果
BAL検体は30名の喘息患者から得られる。IFN−γがサイトカイン産生を調節するかを評価するため、15名のこれらの患者にエアロゾルIFN−γを8週間投与する。これらの患者は、処置の前後にBAL及び採血が行われる。
【0146】
光ファイバー気管支鏡検査法
患者は、医学的な病歴と現症、肺活量測定、酸素測定、気管支過敏性の評価、凝固試験(PT、PTT、血小板)、及びCBCを使用して事前にスクリーニングを行い、化学スクリーニングを行う。処置の間、患者は心拍数及びO2飽和度の継続的なモニタリング、患者の症状及び投薬量の記録、適所での静脈カテーテル、吸入b−アゴニストによる前投薬、アトロピン皮下投与(0.4mg)、及び鎮静剤の使用(ミダゾラム、静脈注入)、及び酸素補給が行われる。光ファイバー気管支鏡は、少量の前投薬と、鼻部及び上気道の表面麻酔の後に導入される。気管支鏡の先端は、右中葉又は小舌の区域又は亜区域気管支に挿入される。37℃の標準生理食塩水100mLが、20mLの分割量で気管支に注入される。加温した生理食塩水により、喘息患者の熱による気管支痙攣の誘発が回避されるはずである。流出液を回収するために、穏やかな断続的吸入が行われる。軽度の喘息患者において60〜80%の液体回収が予測される。回収率は、中等度から重度の疾患患者において50%まで減少する[Jarjour, 1998#62]。パルス酸素濃度計及び患者の状態における臨床評価は、処置後にも継続される。退院指導は、追跡治療のための週内の受診、及び電話連絡を含む。
【0147】
肺胞マクロファージ(AM)及びBAL細胞
細胞は標準的な技法によって行われた気管支肺胞洗浄(BAL)によって採取され、培養に対して以下の通りに調製される。液体は粘液のかたまりを除去するため、一層の滅菌ガーゼを通して濾過された。総細胞数は血球計で計測され、合計500の計測された細胞が改変ライト−ギムザ染色で染色され、その細胞遠心分離標本において細胞差が計測された。細胞生存率はトリパンブルー除外法によって測定され、全症例において、実験に使用される回収された細胞の生存率は90%以上になる。20の細胞遠心分離標本は、BALの各葉から調製され、一度10%のホルマリンで固定され、−70℃にて凍結される。BAL細胞は洗浄され、10%の熱失活したウシ胎児血清(FCS)及び100u/mLのペニシリン及び100mcg/mLのストレプトマイシンを加えたRPMI(GIBCO)により、106細胞/mLの濃度で24時間培養される(37℃)。
【0148】
末梢血
IFN−γ処置の終了前後に、一日のうち一定の時間に静脈刺入によって採血が行われる。PBMCは、Ficoll−Hypaque密度勾配遠心法によってヘパリン処置された静脈血から単離される。ヘパリン処置された静脈血はFicoll−Hypaqueの上に重層させて、2500rpmで20分間遠心分離される。PBMCの低密度層は吸引され、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄され、10%の熱失活したFCS、100U/mLのペニシリン、及び100mcg/mLのストレプトマイシンを加えたRPMI−1640(GIBCO)により106細胞/mLの濃度で再懸濁される。その時細胞培養は、37℃の5%CO2で24時間インキュベートされる。その時細胞上清は回収され、サイトカインについてELISAによって評価される。
【0149】
都市部の喘息と関連しているアレルゲンに対する特異的IgE(RAST)を測定するため、血清試料も採取される(D. pteronyssinus, D. farinea, B. germanica−German cockroach, and P. americana−American cockroach)。
【0150】
アトピー性喘息患者及び正常な対照から採取したPBMCにおいて、追加試験が行われる。これは先述したようにPBMを単離した後、同を加えたRPMI培地において細胞培養が行われることを必要とする。その時、培養細胞は非特異性の刺激(LPS)又は既知のアレルゲンによって刺激される。培養上清は、そこでサイトカインについてELISAによって評価される。これらの濃度は、休止細胞のサイトカイン濃度と比較される。この評価は、処置前のIFN−γに効果を示さない患者のエアロゾル化IFN−γ処置試験への動員のため、喘息患者の大規模な都市部の集団をスクリーニングするために行うことができる。
【0151】
サイトカインの評価
24時間にわたって回収されたBAL細胞上清106細胞/mLを、IFN−γ、IL−4、IL−5、IL−10、IL−12、IL−13、及びGM−CSFについてELISA(Endogen)で評価する。各サイトカインに対して三つ組で検体を測定することができるように、106細胞/mLのチューブを5本採取する。肺区域につき平均で30〜40×106のBAL細胞になるため、各患者のBAL細胞上清を評価することが予期できる。BAL後の検体中のIFN−γを回収することができるため、及びBAL細胞の自発的なサイトカインの放出に重点が置かれているため、BAL液中のサイトカインの測定は行われない。
【0152】
(実施例13)
IFN−γ処置によって起こる遺伝子調節の機序
臨床処置プロトコールにより、IFN−γに反応して遺伝子発現を制御する転写因子の存在量において明確な効果及び活性が示され、サイトカインの特性とこれらのデータの相関は、喘息の免疫応答を評価できる基準を拡張する。更に、得られたデータにより、サイトカイン産生の解析及びサイトカインと他の遺伝子の発現による結果の機構の説明が可能になる。
【0153】
本プロジェクトの設計は、その他の種々の処置と異なるエアロゾルIFN−γの治療効果の確証を助けるため、幾つかの対照が含まれる。これは処置の経過の前後にBAL及び血液試料を採取すること、及び病変した葉並びに病変していない葉からBAL検体を収集することを含む。この目的に対する全試験は、BAL又はPBM細胞から調製される抽出タンパク質を使用して行われる。細胞質及び核タンパク質が得られ、別々に分析される。より明確な結果を得るため、BAL細胞は接着及び非接着の集団に分けられる。前者は、主に肺胞マクロファージを含む。後者は、主にリンパ球及び顆粒球から成る。PBMCは、更に分離を行わずに抽出される。
【0154】
本プロジェクトに対する転写因子の存在量及びDNA結合活性の調査により、エアロゾルIFN−γ処置の臨床プロトコールは潜在的STAT−1を活性化し、IRF−1及びCIITAの新規合成を誘発するため細胞シグナル伝達経路に影響を与えるという仮説が検証される。得られるデータは、初期臨床観察に対して遺伝子発現を制御する分子機構に関連する。処置に対する分子反応を示すデータと同時に解釈された場合、エアロゾルIFN−γによるin vivoの処置での限られた経過による結果は、今後の治験設計にはるかに多くの予測能を有することになる。
【0155】
転写因子STAT−1、IRF−1、及びCIITAの存在量における測定
処置プロトコールの前後にこれらの転写因子の総量を定量化することが有益である主な理由が2つある。これらのデータは、IFN−γ治療に対する制御された反応の全体的な解釈のために重要である。これにより、得られたタンパク質がリン酸化反応を受ける程度とDNA結合活性がある総タンパク質量の割合について結論が導かれる。更に、タンパク質の存在量は、因子をコードする遺伝子の制御された発現の最終測定により示され、従って、更に誘起された免疫応答の機能及び調節態様を集積する今後の研究のための根拠を提示する。免疫ブロット法検出は、ここで使用される主要な技法である。細胞質又は核抽出物から最大で5×106の細胞が各解析に使用される。上述の細胞は、各患者から10検体を得ることにより調達される。1名の患者から得たPBMC及びBAL細胞の抽出物全ては一回の試験に使用され、これにより検体のセット内での相対定量が容易になる。培養された細胞株から調製される対照の細胞質及び核抽出物も又、各試験に使用される。前の試験に基づき、これらの検体は、標的タンパク質を含むことが分かっており、免疫ブロット法の検出で陽性対照を提示することができる。更に、その検体は得られたデータが定量的であるか、又は定量的検出の範囲を明らかにする検証に使用することができる。
【0156】
タンパク質はSDS−PAGEによって分離され、そこでメンブレンに転写される。メンブレンは順にSTAT−1、IRF−1、及びCIITAを検出するため、試薬で反応させる。メンブレンは、細胞質及び核抽出タンパク質に存在するb−チューブリンを検出するために最終的にプロービングされ、従って試験期間内及び期間中の細胞質又は核抽出物の定量的比較のための内標準として供給することができる。必要な全ての抗体は、実験で得るか又は市販品を入手することができ、免疫ブロット法プロトコールで使用されることが知られている。異なるタンパク質の連続した検出を可能にするために、メンブレンは標的タンパク質を保持したまま抗体結合を切断する処理が行われる。この手法は、順番に各標的タンパク質の検出を繰り返すこと、及び第1及び第2ラウンドで得られたシグナルを比較することで証明できる。検出の特異性に対する陰性対照は、他の2つに対する抗体が各タンパク質に対して調製される。更に、メンブレンを一次抗体が包含しないように最後に反応させる。
【0157】
得られた細胞量が不十分であるか、又は特定の転写因子の存在量が非常に低い場合、シグナルは検出されない。このタンパク質において、ELISA解析を使用することにより感度を上げられる可能性もあるが、免疫ブロット法の時よりも信頼性及び特異性に欠ける恐れがある。しかし、これらの潜在的な問題はそれほど重要ではない。細胞の望ましい量は、通常各BAL検体の一部のみを構成するはずである。標的タンパク質の存在量が少ないのは、重要な結論に導く生理学的に適切な結果となるだろう。しかし、各細胞につき標的タンパク質の100−1000コピーが存在する場合に、利用可能な試薬及び検出システムはシグナルを示し、それは分析された分量で多くても8フェムトモル(0.5−1.5ng)程度に相当する点に留意する必要がある。
【0158】
STAT−1、IRF−1、及びCIITAのチロシン及びセリンのリン酸化の特徴付け
転写因子のリン酸化の変化は、因子の存在と因子の機能の関連性を示すことが多い。このことは、DNA結合活性がリン酸化の変化によって直接変化しなくても当てはまる(David, et al., (1995) Science 269(5231): 1721−3; Wen, Z, et al., (1995) Ceil 82(2): 241−50; Pine, et al., (1994) Embo J 13(1): 158−67; Cho, et al., (1996) J Immuno1 157(11): 4781−9; David, et a1., (1996) J Bio1 Chem 271(27): 15862−5; Gupta, et a1., (1995) Science 267(5196): 389−93; Hibi, et al., (1993) Genes Dev 7(11): 2135−48; Parker, et al., (1996) Mol Ce11
Bio1 16(2): 694−703; Schindler, et a1.,
(1992) Science 257(5071): 809−13; Shuai, et a1., (1992) Science 258(5089): 1808−12)。上述の通り、STAT−1のチロシン及びセリンのリン酸化は調節され、その活性を制御する。IRF−1はリンタンパク質であるが、リン酸化の自然発生的な変化については文献が存在せず、CIITAのリン酸化についても殆ど研究されていない。本明細書に記載する実験では、主に細胞培養系で以前に実証されたリン酸化反応についてPBMC及びBAL細胞からの抽出物を検査することにより、in vivoにおけるSTAT−1の調節に関するデータを得る。IRF−1及びCIITAについて得られるデータは、以前に測定されたものを上回る。
【0159】
この一連の実験の最も単純明快な手順は、免疫沈降によって細胞抽出物から標的タンパク質を定量的に回収し、回収したタンパク質をSDS−PAGEによって分離し、分離したタンパク質を免疫ブロット法により解析してリン酸化を検出するものである。免疫ブロットに反応させ、特定の標的タンパク質に殆ど依存することなく、チロシンリン酸化の存在及び程度を測定するには、市販の抗ホスホチロシン抗体が使用できることが、十分に確立されている。ホスホセリンに対する抗体も市販されているが、この抗体が標的タンパク質においてこのような残基を検出するかどうかについては不明である。従って、本手法の適用における好結果については、多少の不確定要素が存在する。上述の陽性及び陰性対照の種類に加えて、リン酸化チロシン又はリン酸化セリンの特異的な検出も、リン酸化アミノ酸を溶液に含め、シグナルが得られないことを観察することで証明することができる。
【0160】
SDS−PAGEによって変性したタンパク質が抗ホスホセリン抗体と反応する可能性が最も高いものの、セリンリン酸化の免疫ブロット検出が機能しない場合には、ELISAが好結果を示す代替法となりうる可能性も依然として残されている。その場合には、ウェルを標的タンパク質に対する抗体でコーティングし、タンパク質を固定し、検出手順では、標的タンパク質に対する抗体の供給源よりも、異なる種から得た抗ホスホセリン一次抗体を使用することになると思われる。免疫ブロットに使用される対照も又、基本的にはELISA系に同様に適用する。
【0161】
STAT−1セリンリン酸化の解析には別の代替法も使用できる。特異的抗リン酸STAT−1(P−セリン)抗体は、調節されたリン酸化を受けるセリンの既知の位置、セリン727を基に作成することができた(「方法」を参照)(Wen, Z, et al., (1995) Cell 82(2): 241−50)。これは、適切なリン酸化ペプチドで免疫化した後、タンパク質A、ペプチド、及びリン酸化ペプチド親和性マトリクスを使用して特異的抗体を精製することにより、幾つかのタンパク質のリン酸化形態に特異的な市販の抗体(New England BioLabs)が得られたことから、非常に成果が期待できる。同様の手法がこのプロジェクトにも使用されるであろう。しかし、標的タンパク質は代謝標識に必要な培養期間中に修飾される可能性があり、利用可能な物質量がその手法において十分ではないと予測されることから、32P−オルトリン酸塩による細胞の代謝標識後に、標的タンパク質の特異的免疫沈降及びリン酸化アミノ酸の分析を行うのは、本プロジェクトに適切ではない。何れの標的タンパク質においてもセリンリン酸化の変化の測定は容易に行えないものの、その調節された翻訳後修飾の考えられる重要性が、この試みを強く後押しする。
【0162】
これらのデータは、この系におけるこれらの因子の存在量とその機能の関係を確証するのに使用される。STAT−1チロシンリン酸化の程度により、DNA結合活性の活性化レベルが決定され、それによって最高及び最低レベルが設定される。セリンリン酸化の変化は、DNA結合活性を調節し、上述のSTAT−1の機能に対する更なる効果を有すると考えられる。又、STAT−1の存在量の増加及びリン酸化の基礎レベルが検出される可能性がある。このような結果は、全体的なin vivo反応が長期間IFN−γに曝露された培養細胞の反応に類似しており、IFN−γへの分子反応としてSTAT−1の新規合成と共に、翻訳後の修飾(リン酸化及び脱リン酸化)の経時変化を反映することを暗示する。IRF−1又はCIITAのリン酸化の変化に関するデータは、IFN−γに対するin vivo分子反応の更なる指標となり、このような変化の機能的重要性を判定する今後の基礎研究の確かな根拠となる。リン酸化ではなく存在量の変化が認められれば、これらの因子のリン酸化がこの系では調節されないか、或いはSTAT−1ではあり得ることだが、検体が得られた時に純変化が持続しなかった可能性がある。これらの可能性を区別するには、今後他の系による研究が必要となる。
【0163】
STAT−1、STAT−4、STAT−5 STAT−6、及びIRF−1のDNA結合活性の測定
DNA結合活性の測定によって、処置プロトコールへの分子反応の調節を評価するために必要となる最終データが得られる。実験試料の電気泳動移動度シフト検定によるSTATファミリー及びIRF−1転写因子の検出及び定量化は、確立された手順によって達成される。培養細胞から調製される抽出物は、陽性対照としてこれらの検定で使用される。当該因子の特異性及び同定のための対照は、競合オリゴヌクレオチド又は抗血清を使用した反応を行うことによって提供される。オリゴヌクレオチド又は抗血清は、非特異的及び特異的の両方のものが使用される。
【0164】
全集団が追加のサイトカインに同時に且つ同じ期間にわたり曝露される、細胞培養系の同調性とは対照的に、BAL又は血中試料により得られる細胞は、曝露部位の内外への移動により制御される各細胞の曝露の非同時的な開始及び期間に対する、重複して繰り返されるエアロゾルIFN−γ処置の全体の効果を示す。細胞培養モデルにおいては、IFN−γによるSTAT−1のDNA結合活性の活性化が数分以内に起こる。幾つかの細胞株では、活性が非常に急速に減衰する。それに対し、単球細胞株NB4、U937、及びTHP−1等の細胞株では、数時間持続する(R. Pine and E. Jackson, unpublished)。STAT−1がIRF−1遺伝子を調節することから、IFN−γによるIRF−1のDNA結合活性の導入は、一般的に僅か1〜2時間後には検出されるが、その後少なくとも16時間持続する。従って、STAT−1及びIRF−1のDNA結合活性が同時に起こる可能性もあるが、どちらか一方のみが検出される可能性もある。
【0165】
実験試料から得られた結果は、STAT−1及びIRF−1の両者においてDNA結合活性が存在することを明らかにし、従ってin vivoにおいて数日にわたる断続的な投薬における正味の結果が、細胞培養系の曝露の中間時点と同等であることを示唆する。これは、白血病患者由来のBcr/abl形質転換細胞系又はPBMCにおいて報告されたSTAT因子の恒常的な活性化とは異なる(Carlesso, et a1., (1996) J Exp Med 183(3): 811−20; Gouilleux−Gruart et a1., (1996) Blood 87(5): 1692−7)。更に、このような結果は、IFN−γに対する反応の全ての防御体制が、試料を得た時点で継続していたことを強く示唆する。或いは、STAT−1又はIRF−1のDNA結合活性のみが検出される可能性がある。STAT−1の活性化は通常一過性のものであるものの、IRF−1は長期誘発が標準であるため、STAT−1のみが検出されることは起こりそうにないと予測される。STAT−1のDNA結合活性が存在せずにIRF−1のDNA結合活性が存在することは、IFN−γを一晩投与した後に培養細胞で認められるものと同等の反応が、この投与で誘起されることを暗示する。生理学的には、これは、単球からマクロファージへの分化又はTh1のT細胞反応による合成等の生物学的エンドポイントを誘起するのに十分な期間にわたってIFN−γの存在が持続した状況と一致する。
【0166】
STAT−4、−5、及び−6の検定は、重要なTh1又はTh2サイトカインの存在及び機能だけでなく、IL−2に対するT細胞の反応の分子マーカーとなる。IL−2がSTAT−5を、IL−12がSTAT−4を、IL−4がSTAT−6を活性化することは、最近の多くの研究で報告されている(Cho, et al., (1996) J Immuno1 157(11): 4781−9; Gilmour, et al., (1995) Proc Natl Acad Sci USA 92(23): 10772−6; Schindler, et a1., (1992) Science 257(5071): 809−13)。ここで得られるデータはそれだけでこのようなの解釈の証拠とはならない。何故なら、STATファミリーのほぼ全てのメンバーが複数のサイトカインにより活性化され、ほぼ全てのサイトカインが複数のSTATを活性化できるためである。具体的には、STAT−4はIFN−αによっても、STAT−5はIL−7、IL−15、プロラクチン、及び成長ホルモンによっても、STAT−6はIL−13によっても活性化される(Ivashkiv, L. B. (1995) Immunity 3(1): 1−4; Darnell (1996) Recent Prog Horm Res 51:391−403; Cho, et al., (1996) J Immuno1 157(11): 4781−9)。又、STAT−1がIFN−γだけでなくIL−6及びIL−10によっても活性化できることも留意する必要がある。しかし、このデータの解釈は、上記のサイトカイン遺伝子発現の解析により裏付けられる。更には、STAT−4、−5、及び−6のDNA結合活性の検定が、所定のサイトカイン特性と共に生じる細胞内の分子効果に関するデータを提供することにより、それらの所見を著しく拡大する。
【0167】
方法
GITC及び超遠心分離を使用することにより、10×106のBAL細胞からmRNAを抽出する。RT−PCRはこのような僅かな細胞量で行うことができることから、全RNAが抽出され、−70℃にて保存され、IRF−1の遺伝子発現について検定される。PCRプライマーは、公開された配列に基づいており、サイトカイン遺伝子において記載したRT−PCRを行い、対照としてb−アクチン又はGAPDHと転写強度を比較する。IRF−1は基礎量発現することから、RT−PCRの定量的な手法が必要となる。BAL細胞由来の全RNAは、標準の方法に従い、オリゴd(T)及びPCRを使用して逆転写される。1回目のPCRは、以下のオリゴヌクレオチド(フォワードプライマー:5’−GTCAGGGACTTGGACAGGAG−3’、及びリバースプライマー:5’−AGCTCGGGGGAAATGTTAGT−3’)を使用したcDNAの20%を使用して行われる。IRF−1の発現は、GAPDHの発現に対して正規化される。
【0168】
細胞抽出物の調製
BAL由来の細胞は、上述の通り、血清を加えていないRPMI培地に移して処理された後、計数して、組織培養プレートへ移される。37℃にて2時間静置した後、非接着細胞は培地で除去され、再度計数される。接着細胞の量は、2つの細胞数の差から得られる。PBMCは、上述の通り、血清を加えていないRPMI培地に移して処理された後、計数される。残りの手順は全て、0〜4℃にて実施される。懸濁液中の細胞は、遠心分離され(200×g、10分)、上清が吸引された後、ペレットがリン酸緩衝食塩水(PBS)に再懸濁される。この手順が繰り返され、細胞が再度遠心分離された後、最終的なPBS上清が吸引される。付着した細胞単層は、そこで吸引用のPBSを加えることによって洗浄される。再度PBSが加えられ、単層が擦り落とされる。細胞及びPBSは遠心管へ移されて遠心分離が行われた後、PBSが吸引除去される。洗浄した細胞ペレットは、溶解緩衝剤(20mM Hepes・Na、pH 7.9、0.1mM EDTA・Na、0.1M NaCl、0.5% NP−40、10%グリセロール、1mM DTT、0.4mM PMSF、3μg/mLアプロチニン、2μg/mLロイペプチン、1μg/mLペプスタチン、100μM Na3VO4、10mM Na2P2O7、5mM NaF)(3μL/細胞105)で懸濁し、5分間インキュベートすることにより溶解される。核は遠心分離によって回収される(500×g、10分)。上清は除去された後、遠心分離によって浄化される(13,000×g、10分)。得られた上清は細胞質抽出物として回収され、砕いたドライアイス又は液体窒素で冷凍された後、−80℃にて保存される。核ペレットは洗浄緩衝剤(NP−40を除く溶解緩衝剤)で再懸濁された後、遠心分離によって回収される。上清が吸引された後、ペレットは抽出緩衝剤(洗浄緩衝剤、0.1M NaClの代わりに0.3MのNaClを除く)で懸濁され(3μL/細胞105)、30分間混合される。抽出した核は、遠心分離によってペレット化し、核抽出物として上清が回収され、上述の通り冷凍保存される。同量の異なる抽出物が実験で使用できるように、タンパク質濃度が計量される。単一系列又は異なる試料の核又は細胞質抽出物においては、通常、細胞数に対する抽出緩衝剤の量の比率を固定することで均一のタンパク質濃度が得られることから、これにおいては通常、各抽出物で同じ量を使用する必要がある。
【0169】
免疫化学的手順
免疫ブロットは、以下の通りに行われる。抽出物及びタンパク質サイズの標準物質が、SDS−PAGE用に濃縮したLaemmli試料添加緩衝剤と混合され、標準のプロトコールに従って8%の分離用ゲルと4%の濃縮用ゲルで調製された不連続なトリスグリシンゲルシステムに適用された。このゲルの比率は、対象のタンパク質を全て分離する。マーカー色素がゲルの最下部に到達するまで、電気泳動は一定の電圧で行われる。ゲルは転写用緩衝剤(トリスグリシン+15%のメタノール)で平衡化された後、タンパク質はセミドライ式装置(BioRad Transblot SD)を使用し、同じ緩衝剤によってニトロセルロースメンブレンに転写される。メンブレンは、標準的な手順によって展開される。簡潔に言えば、トリス緩衝食塩水+Tween 20界面活性剤に加えた脱脂粉ミルクとインキュベーションすることによりブロッキングを行い、特異的な一次抗体とインキュベートし、ブロッキング溶液で数回洗浄し、酵素結合の二次抗体とインキュベートし、ブロッキング剤を含まない緩衝剤で洗浄し、酵素基質でインキュベートする必要がある。化学発光基質の場合は、X線写真でシグナルが検出される。或いは、化学蛍光基質のシグナル検出には、PHRIのMolecular Dynamics Storm 860装置が使用可能である。実験計画に基づき、STAT−1及びIRF−1の転写に最適な条件が、(既にほぼ同じであることが判明しているが(Pine, et al., (1994) Embo J 13(1): 158−67; Pine, et al., (1990) Mol Cell Biol 10(6): 2448−57; Pine unpublished))、本プロジェクトでも、これらの各タンパク質に最適な以前の展開条件を同じように使用される。CIITAの場合、最適な検出条件は、ブロッキング剤の選択、界面活性剤の濃度、各手順のインキュベーション時間、及び検出方法を含め、培養細胞から調製した対照抽出物により経験的に決定される。STAT−1及びIRF−1の免疫沈降は、僅かに改変されているものの、既述の通りに行われる。具体的には、抗IRF−1抗体に結合するIRF−1の回収にS. aureus細胞を使用するところを、タンパク質−Aアガロースを使用することに置き換えている。
【0170】
ELISA検定が転写因子の存在量の検出又はリン酸化を検査するのに望ましい場合、標準的操作法に基づいた詳細な方法は培養細胞からの対照抽出物を使用して経験的に行われる。感度を増大させるため、好適な手段としてマイクロタイターディッシュのウェルに捕捉抗体を結合させ、その後にブロッキングを行い、それから目的の抽出物とインキュベートする。更に洗浄した後に、特異的な二次抗体が使用され、そこで二次抗体に対する酵素結合抗体が使用され、基質とインキュベーションされた。それぞれの抗体のインキュベーション後に洗浄が行われる。STAT−1に関して、タンパク質及びリン酸化チロシン又はリン酸化セリンの両者に対して使用できるため、抗体を捕捉するウサギポリクローナル抗血清及びマウスモノクローナル抗体が検出に使用するか、又は逆に使用することが可能である。IRF−1及びCIITAに関しては、タンパク質に対してウサギポリクローナル抗体のみが使用できるため、リン酸化チロシン又はリン酸化セリンに対するマウスモノクローナル抗体を使用する必要がある。それらのタンパク質を検出するには、抽出物をマイクロタイターのディッシュにコーティングし、その後に特異的一次抗体及び酵素結合二次抗体とインキュベーションする必要がある。実験試料の検定において特異性に関する対照は、一次抗血清の省略及び/又はリン酸化アミノ酸の包含を適宜含む。
【0171】
電気泳動移動度シフト検定
指定されたSTATファミリーのそれぞれ及びIRF−1に対し、最適な検定が行われた(Pine and Gilmour, supra)。反応において、非特異的及び特異的競合物質又は非特異的及び特異的抗体が使用される。各反応において、抽出タンパク質を通常は2〜3μLであるが、5μgを使用して行われる。競合物質との反応のため抽出物と混合する場合、オリゴヌクレオチドは放射識別されたプローブと共に使用される。抗体との反応のためタンパク質−DNA結合反応は通常通り行われ、それから抗血清が加えられ、インキュベーションが続行される。インキュベーションが完了した時、反応物質は未変性のポリアクリルアミドゲルに加えられ、4℃にて電気泳動される。ゲルが乾燥した後、結果はオートラジオグラフィにより、又はMolecular Dynamic
PhosphoImagerを使用して得られる。
【0172】
rIFN−γ処理による処置前及び処置後に得られたデータは、Studentのペアのt検定及び発現解析の平均±SEMによって比較された。以前の試験に基づいて、FEV1において0.3L、及び3×l05細胞/mLの差を検出する必要がある。30名の対象で、80%の信頼性が示される。従って、各集団に対し15名の対象を召集する。
【0173】
対象集団
喘息の個人400名において医学的評価が行われる。30名の軽度から中等度の持続性アレルギー性喘息患者は、IFN−γエアロゾル(n=15)又はこれに対する標準処置(n=15)を受けるために無作為化される。患者は、肺機能及び気管支誘発測定を行われなければならない。ファイバー気管支鏡検査に対する禁忌があってはならない。大部分の試験集団は、Bellevue Hospital Primary Care Asthma Clinicから召集される。患者集団の人口統計的特性は以下の通りである。90%は少数民族(主にヒスパニック系及びアフリカ系アメリカ人)で、年齢18〜79才(中央値=39)、男女比は1:2である。
【0174】
潜在的リスク
一般的に、インターフェロン−γ(IFN−γ)に対する副作用のリスク及び重症度は、与えられる投薬量に関連する。この試験で使用される投与量(50mcg/m2)で、最もよく起こりうる副作用は、熱、頭痛、及び倦怠感等である。高用量で時折の嘔気と嘔吐が報告された。エアロゾル状散布においては副作用との関連がなかったが、頭痛、咳及び熱が予測される場合がある。症状が重症である場合、投薬は中断される。喘息に関連のないIFN−γにおける未知の副作用のリスクが、以前より存在する。一つに考えられるのはIFN−γのタンパク質部分に対するアレルギー反応を呈することであり、その場合、投薬は中止される。
【0175】
リスク管理手順
あらゆるリスクを最小化するため、気管支肺胞洗浄は心臓病又はアンギナの既往歴を有する個人を除外する医学的評価の後に行われる。胸部X線と出血性パラメータを含む血液検査が行われる。気管支肺胞洗浄は、医師の監督下で肺疾患の人によって行われる。この手順に続いて、試験対象は3時間絶食を続け、バイタルサインは30分毎に3時間記録される。処置の間、全患者の心臓がモニターされ、低酸素血を防ぐため処置中と処置後に2時間鼻部への02を受ける。全ての患者のデータは、肺疾患調査室に施錠して保管される。対象に副作用が起こった場合のために、気管内チューブ、注射用のリドカイン及びエピネフリン等と一緒に光ファイバー気管支鏡を揃えた「緊急用カート」が備えられ、全手順は病棟医とCPRチームが待機している病院で行われる。気管支肺胞洗浄処置の全ては、副作用の発生増加を全て確認し、原因を特定するため、定期的にチェックされる。
【0176】
(実施例14)
インターフェロン−γのエアロゾル投与を受けた全患者は、改善可能な気道疾患を評価するため肺活量測定で検査された。殆どの患者は、改善可能性の徴候がない閉塞性気道疾患を有した。各エアロゾル療法で、患者は各処置の前後に最大流量が観察された。全患者に関するデータは、図11で示される。最大流量測定の変化率の要約データは、図12で示される。平均最大流量は、エアロゾルインターフェロン−γの処理後で増加し、一部の患者では顕著な増加を示した。これらのデータは、エアロゾルインターフェロン−γが、気道疾患患者において安全且つ耐性が良好であることを示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載された発明。
【請求項1】
本願明細書に記載された発明。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−193207(P2012−193207A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−157469(P2012−157469)
【出願日】平成24年7月13日(2012.7.13)
【分割の表示】特願2008−532198(P2008−532198)の分割
【原出願日】平成17年9月20日(2005.9.20)
【出願人】(502074002)ニューヨーク・ユニバーシティ (3)
【出願人】(508084548)ザ リサーチ ファウンデーション オブ ザ ステート ユニバーシティー オブ ニューヨーク (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−157469(P2012−157469)
【出願日】平成24年7月13日(2012.7.13)
【分割の表示】特願2008−532198(P2008−532198)の分割
【原出願日】平成17年9月20日(2005.9.20)
【出願人】(502074002)ニューヨーク・ユニバーシティ (3)
【出願人】(508084548)ザ リサーチ ファウンデーション オブ ザ ステート ユニバーシティー オブ ニューヨーク (2)
【Fターム(参考)】
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