説明

インターホン機器

【課題】強力な光源から発せられる直射光がカメラカバーから入射したとしてもゴーストやフレアの発生を抑制することができるインターホン機器を提供する。
【解決手段】鏡枠抑え部材16の前面16aを、レンズホルダー11を本体ケース内への設置状態においてレンズ部12が水平前方を向くような姿勢とした際に、鉛直方向に対して後方へ傾斜する傾斜面として形成し、前面16aで反射した光は従来よりもレンズ部12から離れる方向へ反射するようにした。したがって、ゴーストやフレアの発生を防止することができ、居室親機のモニターにおける視認性を良好な状態で確保することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば来訪者等を撮像するための撮像手段を備えたインターホン機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、たとえば特許文献1に開示されている玄関子機のように、本体ケース内にカメラを内蔵し、来訪者が呼び出し操作した際に当該来訪者をカメラにより撮像するように構成した種々のインターホン機器が考案されている。そして、このカメラで撮像された映像は、たとえばカメラを有するインターホン機器と通話可能に接続された別のインターホン機器(居室親機等)のモニターにおいて表示されることになる。
【0003】
ここで、図8をもとに、従来のインターホン機器のカメラ部分における構造を簡略に説明する。
81は、ドーム状のカメラカバーであり、インターホン機器の本体ケース82前面に取り付けられている。また、カメラカバー81の後方に、カメラがレンズ部83を前方へ向けた姿勢で設けられている。レンズ部83は、筒状のレンズホルダー84に支持されており、該レンズホルダー84の前部には、レンズ部83の周縁から径方向外側へ延びる鍔状の鏡枠抑え部85が設けられている。そして、鏡枠抑え部85の前面は、撮像時に映り込まないように、レンズ部83を水平方向とした際に光軸と直交する鉛直面85aとして形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−199931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のインターホン機器においては、カメラに対して太陽等の強力な光源から発せられる直射光がカメラカバー81から本体ケース82内側へ入射すると、図8に示す如く、カメラカバ−81とレンズホルダー84の前面(鉛直面85a)との間で反射した結果、レンズ部83を介してカメラの撮像素子に到達してしまい、モニターで映像を視認する際に、視認性悪化の原因となるゴーストやフレアが発生してしまうという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みなされたものであって、強力な光源から発せられる直射光がカメラカバーから入射したとしてもゴーストやフレアの発生を抑制することができるインターホン機器を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明のうち請求項1に記載の発明は、本体ケース内に開口部が設けられ、開口部を覆うようにカメラカバーが取り付けられているとともに、カメラカバーの後方に本体ケースの前方を撮像する撮像手段が設置されたインターホン機器であって、撮像手段は、レンズ部と、円板状の鏡枠抑え部を有するとともに、鏡枠抑え部にレンズ部を露出させる開口を開設してなるレンズホルダーとを備えており、鏡枠抑え部の前面に、鉛直方向に対して後方側へ傾斜するテーパ面を設けたことを特徴とする。
この構成によれば、レンズホルダーの鏡枠抑え部の前面に、鉛直方向に対して後方側へ傾斜するテーパ面を設けているため、テーパ面のないものと比較して、カメラホルダーから入射した入射光がレンズ部から離れる方向へ反射することになる。そのため、従来よりもレンズ部を介して撮像手段の撮像素子等へ到達する入射光を減らすことができる。したがって、ゴーストやフレアの発生を抑制することができ、モニターにおける視認性を良好な状態で確保することができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、テーパ面が、開口の縁から連続的に形成されていることを特徴とする。
この構成によれば、テーパ面が、開口の縁から連続的に形成されているため、レンズ部の近くにおいてレンズ部から離れる方向へ反射させることができる。したがって、レンズ部を介して撮像手段の撮像素子等へ到達する入射光を一層効率良く減らすことができ、ゴーストやフレアの発生を更に効果的に抑制することができる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、カメラカバーが平板状であり、レンズ部の前面とカメラカバーとの水平距離が3.0〜4.0mmであるとともに、テーパ面の鉛直方向からの傾斜角度が7.5度以上であることを特徴とする。
また、請求項4に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、カメラカバーがドーム状であり、レンズ部の前面とカメラカバーとの水平距離が3.5〜5.0mmであるとともに、テーパ面の鉛直方向からの傾斜角度が3.66度以上であることを特徴とする。
これらの構成によれば、レンズ部を介して撮像手段の撮像素子等へ到達する事態を極めて確実に防止することができ、ゴーストやフレアの発生の確実な防止を期待することができる。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4に記載の発明において、テーパ面に凹凸が設けられていることを特徴とする。
この構成によれば、テーパ面において入射光を乱反射させることができるため、レンズ部を介して撮像手段の撮像素子等へ到達する入射光を効率良く減らすことができ、ゴーストやフレアの発生を一層効果的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、レンズホルダーの鏡枠抑え部の前面に、鉛直方向に対して後方側へ傾斜するテーパ面を設けているため、テーパ面のないものと比較して、カメラホルダーから入射した入射光がレンズ部から離れる方向へ反射することになる。そのため、従来よりもレンズ部を介して撮像手段の撮像素子等へ到達する入射光を減らすことができる。したがって、ゴーストやフレアの発生を抑制することができ、モニターにおける視認性を良好な状態で確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】玄関子機を前方から示した説明図である。
【図2】玄関子機の上部の上下方向での断面を示した説明図である。
【図3】図2のカメラユニット部分を拡大して示した説明図である。
【図4】鏡枠抑え部材を前方から示した斜視説明図である。
【図5】鏡枠抑え部材を上方から示した説明図である。
【図6】鏡枠抑え部材の第1変更例を示した斜視説明図である。
【図7】鏡枠抑え部材の第2変更例を示した斜視説明図である。
【図8】従来のインターホン機器のカメラ部分における構造を示した断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態となる玄関子機について、図面にもとづき詳細に説明する。
【0014】
図1は、玄関子機1を前方から示した説明図であり、図2は、玄関子機1の上部の上下方向での断面を示した説明図である。尚、図2における右方が玄関子機1の前方となっている。
玄関子機1は、前側に配置される前ケース2と、後側に配置される後ケース3とで構成される本体ケースを有しており、この本体ケースの前面上部には、平板状のカメラカバー4が貼着されているとともに、カメラカバー4の後方に本体ケースの前方を撮像するためのカメラユニット5が設置されている。また、カメラカバー4の右側には、通話のためのマイク部6が設けられている。さらに、本体ケースの前面下部には、来訪者が居住者を呼び出す際に操作する呼出ボタン7と、通話のためのスピーカ部8が設けられている。そして、このような玄関子機1は、住戸の玄関の壁面等に設置されており、来訪者によって呼出ボタン7が操作されると、住戸内に設置されている居室親機(図示せず)を呼び出すとともに、カメラユニット5を作動させて来訪者を撮像する。尚、カメラユニット5により撮像された映像は、居室親機に備えられているモニターに表示される。
【0015】
ここで、本発明の要部となるカメラユニット5について、図2〜図5をもとに説明する。図3は、図2のカメラユニット5部分を拡大して示した説明図である。図4は、カメラユニット5を構成する鏡枠抑え部材16を前方から示した斜視説明図であり、図5は、鏡枠抑え部材16を上方から示した説明図である。
カメラユニット5は、撮像素子(図示せず)を有する回路基板に設けられたレンズ部12を有するカメラと、レンズ部12を支持するレンズホルダー11と、カメラの後方を覆うように取り付けられるチルトレバー14とからなる。レンズホルダー11は、レンズ部12を支持するための円筒状の支持部15を有する支持部材、及び中央に開口16cを有する円板状の前面16aと、該前面16aから後方へ一体的に延設された周面16bとを有する鏡枠抑え部材16を前後で組み付けてなる。支持部15は、その内部にレンズ部12の後部を収納した状態で支持可能に構成されるものであって、支持部15の前端は開口しており、収納したレンズ部12の前部を前方へ突出させた状態で支持可能としている。また、鏡枠抑え部材16の前面16aは、従来と異なり、レンズホルダー11を本体ケース内への設置状態においてレンズ部12が水平前方を向くような姿勢とした際に、鉛直方向に対して後方へ傾斜する傾斜面として形成されており、この鉛直方向からの傾斜角度は7.5度となっている。さらに、鏡枠抑え部材16の開口16c縁から後方へは、レンズ部12の前部を嵌入させた状態で支持する支持壁が設けられており、レンズ部12は、上記支持部材及び鏡枠抑え部材16により支持された状態で開口16cから露出することになる。加えて、鏡枠抑え部材16の周面16bから左右外側へは、一対の軸部17が突設されている。尚、レンズホルダー11は、ABS樹脂により成形されており、特に鏡枠抑え部16の表面には、光を反射しにくくするためのコーティング処理が施されている。また、前面16aは開口16c縁から外周縁にわたって傾斜する傾斜面となっている。
【0016】
そして、上記レンズホルダー11は、前ケース2に設けられた筒状の開口部18の内周面に鏡枠抑え部材16の周面16bを当接させた状態で、前ケース2に設けられた軸支部(図示せず)に軸部17、17を軸支させることにより、チルト角度を調整可能に取り付けられる。このとき、レンズホルダー11に収納されているレンズ部12前面と、開口部18を覆うように前ケース2の前面に貼着されているカメラカバー4との水平距離は略3.5mmとなっている。また、レンズホルダー11の後方には、チルトレバー14が一体的に組み付けられる。該チルトレバー14は、その一部(突起部19)を後ケース3の操作窓(図示せず)から突出させた状態で取り付けられ、作業者は、操作窓から突出する突起部19を摘んで上下方向へ操作することにより、レンズホルダー11、ひいてはカメラのチルト角度を調整することになる。
【0017】
このようなレンズホルダー11を有する玄関子機1に対し、太陽等の強力な光源から発せられる直射光がカメラカバー4から入射してくると、従来同様、その入射光は鏡枠抑え部16の前面16aで反射する。しかしながら、前面16aが上述したようなテーパ面として形成されているため、前面16aで反射した光は従来よりもレンズ部12から離れる方向へ反射する。そして、最終的には、図3に示すような経路をたどり、レンズ部12を介してカメラの撮像素子へは到達しない。つまり、前面16aを上述したようなテーパ面として形成したことにより、入射光がレンズ部12を介してカメラの撮像素子へ略到達しないようになっている。したがって、ゴーストやフレアの発生を防止することができ、居室親機のモニターにおける視認性を良好な状態で確保することができる。
【0018】
なお、本発明に係るインターホン機器は、上記実施形態の態様に何ら限定されるものではなく、インターホン機器全体の構成は勿論、レンズホルダーに係る構成に関しても、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、必要に応じて適宜変更することができる。
【0019】
たとえば、上記実施形態では、カメラカバーとして平板状のカメラカバー4を採用しているが、従来技術として示した図8同様に、ドーム状のカメラカバーを採用することも可能である。ドーム状のカメラカバーを採用すると、平板状のカメラカバー4を採用した場合よりもレンズ部12の前面とカメラカバーとの水平距離が長くなる(略3.7mm)ため、鏡枠抑え部材16の前面16aの鉛直方向からの傾斜角度については、3.66度以上あればよい。尚、傾斜角度が3.66度以上となる前面を有する鏡枠抑え部材により、効果的なゴーストやフレアの発生防止を期待するには、レンズ部12の前面とカメラカバーとの水平距離を3.5〜5.0mmとすればよい。
【0020】
また、レンズホルダーの鏡枠抑え部材についても、上記実施形態のものではなく、たとえば図6や図7に示すような鏡枠抑え部材31、32を採用することも可能である。図6に示す鏡枠抑え部材31では、前面31aを上記実施形態の如くテーパ面とした上で、更に径方向に沿って溝を刻設し、前面31a上に凹凸を設けている。一方、図7に示す鏡枠抑え部材32では、前面32aを上記実施形態の如くテーパ面とした上で、更に周方向に沿って溝を刻設し、鏡枠抑え部材31同様、前面32a上に凹凸を設けている。そして、このような鏡枠抑え部材31、32を用いることで、カメラカバー4からの入射光が鏡枠抑え部材31、32の前面31a、32aで様々な方向へ乱反射するため、一層レンズ部12を介して撮像素子へと一層到達しづらくなり、ゴーストやフレアの発生を更に効果的に防止することができる。尚、溝の深さについては適宜変更可能であって、3mm程度でよい。
【0021】
さらに、テーパ状に形成された前面にメッシュ加工を施したり、植毛したりすることにより、鏡枠抑え部材の前面での光の反射が更に抑制されるため、更なるゴーストやフレアの発生防止効果を期待することができる。
さらにまた、上記実施形態では、鏡枠抑え部材16の前面16aの傾斜角度を7.5度としているが、7.5度以上であれば何度とするかは設計変更可能であるし、平板状のカメラカバー4とレンズ部12の前面との水平距離が3.0〜4.0mmであれば、傾斜角度が7.5度以上となる前面を有する鏡枠抑え部材により、効果的なゴーストやフレアの発生防止を期待することができる。
【0022】
また、上記実施形態では、鏡枠抑え部材16の前面16a全てをテーパ面としているが、少なくとも前面16aの径方向における一部幅がテーパ面として周設されていれば一定の効果を奏することができる。とは言うものの、上記実施形態の如く、テーパ面を開口16c縁から連続的に形成した構成の方が、レンズ部12の近くにおいて入射光をレンズ部12から離れる方向へ反射させることができるため、より高いゴーストやフレアの発生防止効果を期待することができる。さらに、上記実施形態では、支持部15を有する支持部材と鏡枠抑え部材16とを前後で組み合わせてレンズホルダー11を構成しているが、そのような2つの部材を組み合わせてなるレンズホルダー11に代えて、両部を一体的に有する1つの部材からなるレンズホルダーを採用してもよい。
加えて、インターホン機器の一例である玄関子機1について説明しているが、本発明のインターホン機器は、カメラを内蔵しているのであれば、住戸内に設置される居室親機や電話機器、集合住宅インターホンシステムを構成する集合玄関機等の他のインターホン機器に対しても良好に適用することができる。
【符号の説明】
【0023】
1・・玄関子機(インターホン機器)、2・・前ケース(本体ケース)、3・・後ケース(本体ケース)、4・・カメラカバー、5・・カメラユニット、11・・レンズホルダー、12・・レンズ部、15・・支持部、16、31、32・・鏡枠抑え部材(鏡枠抑え部)、16a、31a、32a・・前面(テーパ面)、16b・・周面、16c・・開口、17・・軸部、18・・開口部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体ケース内に開口部が設けられ、開口部を覆うようにカメラカバーが取り付けられているとともに、カメラカバーの後方に本体ケースの前方を撮像する撮像手段が設置されたインターホン機器であって、
前記撮像手段は、レンズ部と、円板状の鏡枠抑え部を有するとともに、前記鏡枠抑え部に前記レンズ部を露出させる開口を開設してなるレンズホルダーとを備えており、
前記鏡枠抑え部の前面に、鉛直方向に対して後方側へ傾斜するテーパ面を設けたことを特徴とするインターホン機器。
【請求項2】
前記テーパ面が、前記開口の縁から連続的に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のインターホン機器。
【請求項3】
前記カメラカバーが平板状であり、前記レンズ部の前面と前記カメラカバーとの水平距離が3.0〜4.0mmであるとともに、
前記テーパ面の鉛直方向からの傾斜角度が7.5度以上であることを特徴とする請求項2に記載のインターホン機器。
【請求項4】
前記カメラカバーがドーム状であり、前記レンズ部の前面と前記カメラカバーとの水平距離が3.5〜5.0mmであるとともに、
前記テーパ面の鉛直方向からの傾斜角度が3.66度以上であることを特徴とする請求項2に記載のインターホン機器。
【請求項5】
前記テーパ面に凹凸が設けられていることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のインターホン機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−205259(P2012−205259A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−70555(P2011−70555)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000100908)アイホン株式会社 (777)
【Fターム(参考)】