説明

インターロイキン−1受容体アンタゴニストの生産のための植込み型装置

インターロイキン−1受容体アンタゴニスト(IL−1ra)を生成し使用するための治療および装置。植込み型装置には脂肪組織および/または白血球が装入され、その装置は、インターロイキン−1受容体アンタゴニストをin vivoで生産するために患者の炎症部位に挿入される。植込み型装置は、内部空間を規定する閉鎖されたまたは実質的に閉鎖された本体を備えている。その本体の少なくとも一部は第1の生体吸収性材料を含んでなり、第2の生体吸収性材料は1以上のボイドとともに内部空間内に存在する。第2の生体吸収性材料は、IL−1raを生産するために装置に装入された脂肪組織および/または白血球を活性化する活性化表面を含む。

【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
緒言
本技術は、インターロイキン−1受容体アンタゴニストを生産する植込み型装置(implantable devices)、ならびにインターロイキン−1受容体アンタゴニストをin vivoで生産するための植込み型装置および植込み型装置の使用方法に関する。
【0002】
インターロイキン−1(IL−1)には、リンパ球およびマクロファージを刺激し、食細胞を活性化し、プロスタグランジン生産を増加させ、骨関節の変性に寄与し、骨髄細胞増殖を増加させることができ、多くの慢性炎症病態に関与するサイトカインのファミリーが含まれる。IL−1は、マクロファージ、単球および樹状細胞によって生成され、感染に対する炎症応答の一部である。
【0003】
IL−1の作用様式は、インターロイキン−1受容体アンタゴニストタンパク質(IL−1ra;「IRAP」としても知られる)によって影響を与えることができる。IL−1raは、IL−1と、細胞表面上の同じ受容体と結合し、それによってIL−1がその細胞にシグナルを送るのを妨げる。IL−1raは、単球、マクロファージ、好中球、多形核細胞(PMN)および他の細胞を含む白血球から分泌され、Arend WP, Malyak M, Guthridge CJ, Gabay C (1998) " Interleukin-1 receptor antagonist: role in biology" Annu. Rev. Immunol. 16: 27-55によって記載されているように、種々のIL−1関連の免疫応答および炎症応答を調整することができる。IL−1raの生産は、付着免疫グロブリンG(IgG)、他のサイトカインおよび細菌成分またはウイルス成分を含むいくつかの物質によって刺激を受ける。IL−1raは、関節炎、大腸炎および肉芽腫性肺疾患において重要な天然の抗炎症性タンパク質である。
【0004】
IL−1raは、IL−1が重要な役割を果たす自己免疫疾患である関節リウマチの治療において使用することができ、その疾患と関連がある炎症および軟骨破壊を低減させる。例えば、Kineret(商標)(アナキンラ)は、IL−1raの組換え非グリコシル化型(Amgen Manufacturing, Ltd., Thousand Oaks, California)である。様々な組換え型インターロイキン−1阻害薬および治療の方法は、2003年7月29日発行の米国特許第6,599,873号、Sommer et al.;1991年12月24日発行の米国特許第5,075,222号、Hannum et al.;および2005年9月8日公開の米国出願公開第2005/0197293号、Mellis et al.に記載されている。加えて、体液からIL−1raを生産するための方法は、自己体液の使用を含み、そのような方法は、2003年9月23日発行の米国特許第6,623,472号、Reincke et al.;2004年3月30日発行の米国特許第6,713,246号、Reinecke et al.;および2004年7月6日発行の米国特許第6,759,188号、Reinecke et al.に記載されている。
【0005】
IL−1raを使用する組成物および方法は、当技術分野で公知である。例えば、IL−1raは、2000年8月1日発行の米国特許第6,096,728号、Collins et al.に記載されているように、ヒアルロン酸を含む組成物の一部として送達されている。しかしながら、多くのそのような方法および組成物は、IL−1raの安定性および半減期、並びに、提供されるIL−1raの量および割合についての問題が関わっている。それゆえに、IL−1raを生産し送達する改善された方法が望ましく、炎症の管理を含む、インターロイキン−1受容体によって媒介される病態および病変の治療に有用であるであろう。
【発明の概要】
【0006】
概要
本技術は、ヒトまたは動物の対象において1以上の炎症部位を管理するためのインターロイキン−1受容体アンタゴニストを生産する、植込み型装置およびそのような装置を使用する治療方法を提供する。その植込み型装置は、白血球または脂肪細胞が装入されたときにインターロイキン−1受容体アンタゴニストを生産する。その植込み型装置は、内部空間を規定している閉鎖されたまたは実質的に閉鎖された本体を備え、その本体の少なくとも一部は第1の生体吸収性材料(bioresorbable material)を含んでなる。その内部空間内には第2の生体吸収性材料が存在し、第2の生体吸収性材料は活性化表面を含む。その内部空間内には1以上のボイドも存在する。白血球は全血、多血小板血漿の一部であるか、または単離された白血球である。脂肪細胞は脂肪組織の一部であるか、または単離された脂肪細胞である。治療部位(炎症の部位など)は、関節炎、例えば、変形性関節症と関連している場合がある。植込み型装置によって生産されるIL−1raは、その植込み型装置を受ける患者から得られた脂肪組織および/または全血から誘導することができ、それによって自己由来のIL−1raが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本技術は、詳細な説明および添付の図面からより十分に理解される。
【図1】本技術の実施形態による、IL−1raを生産するための方法の概略図である。
【図2】本技術の実施形態による第1の植込み型装置の破断斜視図である。
【図3】本技術の実施形態による第2の植込み型装置の斜視図である。
【図4】本技術の実施形態による、膝関節への植込み型装置の投与の例示である。
【0008】
本明細書において示された図は、ある特定の実施形態を説明するために、本技術のものの間で材料および方法の一般的特徴を例示することを目的としていることに留意すべきである。これらの図は、いかなる所定の実施形態の特徴をも正確に反映することはできず、この技術の範囲内で必ずしも特定の実施形態を定義しまたは限定するものではない。
【発明の具体的説明】
【0009】
詳細な説明
次の技術の説明は、1以上の発明の対象、製造および使用の性質を単に例示するものであり、この出願においてあるいはこの出願の優先権を主張して提出された他の出願またはそれらの出願から発行される特許において特許請求された任意の特定発明の範囲、用途または使用を限定するものではない。本明細書において示された技術の説明の概説では、次の定義と限定されないガイドラインを考慮する。
【0010】
本明細書において用いられる見出し(「緒言」および「概要」など)および小見出しは、開示の範囲内での主題の一般的構成のみを目的としており、技術またはその任意の態様の開示を限定するものではない。特に、「緒言」において開示される内容は新規技術を含むものであり、先行技術を引用するという性質のものはない。「概要」において開示される内容は、技術またはその任意の実施形態の全範囲を網羅的にまたは完全に開示するものではない。便宜上、この明細書の項中で材料を特定の有用性があるとして分類しまたは論じるが、その材料が任意の所定の組成物において使用される場合に、その材料が本明細書におけるその分類に従って必ずまたは単独で作用するに違いないと断定するものではない。
【0011】
本明細書における参考文献の引用は、それらの参考文献が、先行技術でありまたは本明細書において開示される技術の特許性に関連していることを認めるという性質のものではない。この明細書の「詳細な説明」項において引用される総ての参考文献は、全体として引用することにより本明細書の一部とされる。
【0012】
技術の実施形態を示しているが、説明および具体例は、例示のみを目的としたものであり、技術の範囲を限定するものではない。さらに、記述された特徴を有する多数の実施形態の引用は、追加の特徴を有する他の実施形態、または記述された特徴の異なる組合せを組み込んた他の実施形態を排除するものではない。具体例は、この技術の装置およびシステムの作製および使用の方法の例示のために提供され、特に明記されない限り、この技術の所定の実施形態が作製されたまたは検証されたこと、あるいは作製されていないまたは検証されていないことを意味するものではない。
【0013】
本明細書において言及されるように、総ての組成百分率は、特に断りのない限り、全組成の重量基準による。本明細書において用いられるように、「含む(include)」という単語およびその変形は非限定的であることが意図されており、リストにおける項目の引用により、この技術の材料、組成物、装置および方法において同様に有用であり得る他の類似の項目は排除されない。同様に、「できる(can)」および「してよい(may)」という用語およびそれらの変形は非限定的であることが意図されており、ある実施形態がある特定の要素または特徴を含んでなることができるまたは含んでなってよいという引用により、それらの要素または特徴を含まない本技術の他の実施形態は排除されない。
【0014】
本明細書において用いられる「1つの(a)」および「1つの(an)」は、「少なくとも1つの(at least one)」項目が存在すること;可能な場合には、複数の同様の項目が存在し得ることを示している。値に付けられる場合の「約(about)」は、計算または測定では値の多少の不正確さを許容する(値の正確さにいくらか近づいており;その値におおよそまたは合理的に近く;近似的である)ことを示している。いくつかの理由で、「約(about)」によってもたらされる不正確さが当技術分野でこのような通常の意味で理解されない場合には、本明細書において用いられる「約(about)」は、そのようなパラメーターを測定するまたは使用する通常の方法によって起こる可能性がある変動を少なくとも示している。加えて、範囲の開示は、全範囲内での総ての個別値および細分された範囲の開示を含む。
【0015】
本技術は、インターロイキン−1受容体アンタゴニスト(IL−1ra)に関し、IL−1raを生成する方法、そのような方法によって生産されるIL−1raを含んでなる組成物、IL−1raを使用する方法、IL−1raを含んでなる治療方法、ならびにIL−1raの生成、単離および投与のための装置が含まれる。
【0016】
白血球または脂肪細胞が装入されたときにインターロイキン−1受容体アンタゴニストを生産するための植込み型装置は、次の側面を含むことができる。いくつかの実施形態では、植込み型装置は、内部空間を規定している閉鎖された、または実質的に閉鎖された本体を備え、その本体の少なくとも一部は第1の生体吸収性材料を含む。その本体の内部空間内には第2の生体吸収性材料と1以上のボイドが存在する。第2の生体吸収性材料は、その装置内に入れられた細胞によるIL−1raの生産を刺激する活性化表面を含む。
【0017】
本技術の機構、有用性または機能を限定することなく、第2の生体吸収性材料の活性化表面は、脂肪細胞および白血球によるIL−1ra生産のアクチベーターとして機能を果たすと思われる。いくつかの関連で、第2の生体吸収性材料の活性化表面との脂肪細胞および/または白血球の接触は、これらの細胞によるIL−1ra生産および分泌を刺激すると思われる。また、IL−1ra生産量と白血球濃度との間に相関があるとも思われ、その点で脂肪組織は白血球を含んでよい。よって、本技術では、脂肪組織および解離脂肪組織を使用して脂肪細胞を得るが、その場合、白血球は脂肪組織および脂肪組織から得られる脂肪細胞の両方に存在してよい。白血球は骨髄から得ることもできる。
【0018】
本植込み型装置は、次の側面をさらに含んでなることができる。内部空間内の1以上のボイドに、白血球および/または脂肪細胞を含めてよい。例えば、白血球は、全血および/または多血小板血漿からなる群から選択される培地に存在し得る。脂肪細胞は単離された脂肪組織の一部であってよく;その場合、例えば、脂肪組織は他の細胞種を含んでよい。細胞の装入および活性化後、植込み型装置は、約30秒〜約24時間の活性化期間を経て約30,000pg/mL〜約110,000pg/mLのインターロイキン−1受容体アンタゴニストを生産し得る。
【0019】
植込み型装置のさらなる側面には、閉鎖された、または実質的に閉鎖された本体に関連する特徴がある。例えば、本体の少なくとも一部は自己回復材料を含んでなってよい。そのような自己回復材料としては、ポリシロキサン−有機ハイブリッドコポリマー(例えば、アラニンまたはグリシンのオリゴペプチドおよびポリジメチルシロキサン(PDMS)などの成分を含み、サイドグラフト化(side-grafted)ポリペプチドまたはオリゴペプチドをさらに含んでよい);本明細書において記載される生体吸収性材料に基づく自己回復ポリマー(ポリ乳酸など);およびヒドロゲルが挙げられる。自己回復材料は、例えば、白血球および/または脂肪細胞の容量を内部空間内の1以上のボイドに注入するための、シリンジの使用を可能にする。また、本体は実質的に円筒形状であってもよい。例えば、閉鎖されたまたは実質的に閉鎖された本体は、管腔を含んでなる内部空間を有する管状であり得る。本体の一端(end)は、内部空間内の1以上のボイドを露出するように開放されていてよい。場合によって、1以上のボイドは、内部空間内の1以上のボイドに液体を運ぶ(wick)ように機能し、1以上のボイドの少なくとも1つは、本体の長さを実質的に通り抜ける長手方向チャネル(a longitudinal channel substantially traversing the length of the body)であってよい。ボイド(群)によるそのような運搬では毛細血管作用によって液体および細胞がそのボイドに引き込まれ、そこで液体および細胞は、本体の内部空間内の第2の生体吸収性材料の活性化表面と接触する。
【0020】
第2の生体吸収性材料は、次の側面を含むことができる。場合によって、第2の生体吸収性材料は、本体の内部空間内に複数のビーズを含んでなる。第2の生体吸収性材料は多孔性であってよく、その場合、細孔により活性化表面が提供される。例えば、細孔は、平均直径ナノメートルであってよく、最大数百ナノメートルであってよい。場合によって、第2の生体吸収性材料の活性化表面は、免疫グロブリンGを含んでなってよい。第2の生体吸収性材料はまた、例えば、活性化表面が、ナノメートルスケールからという特徴、長さ、幅および高さそれぞれが約10ナノメートルから数百ナノメートルまでに及ぶという特徴を有する、構造(texture)も有してよい。第2の生体吸収性材料の活性化表面は、約150,000m−1〜約300,000m−1の表面/体積比;例えば、約20ミクロン〜約10ミクロンの球状ビーズを含んでなってよい。第2の生体吸収性材料はまた、第2の生体吸収性材料に対して約50m/g〜約1,000m/gの表面積を有する活性化表面も提供し得る。
【0021】
第1の生体吸収性材料および第2の生体吸収性材料は、生分解性であり、植込み後に患者の体内で侵食され(eroded)または分解される。例えば、生体吸収性ポリマーの主鎖は加水分解に不安定であり得る;すなわち、そのポリマーは水性環境に不安定である。結果として、生体吸収が2段階で起こり得る。第1に、水がその材料に浸透し、化学結合を攻撃し長いポリマー鎖をより短い水溶性断片に変える。これにより分子量の低下が起こり得るが、ポリマーは、例えば、結晶領域および/または鎖間の架橋によってまだ結び付くことができるため、物理的性質を失うことはない。水は、時間とともにその材料に浸透し続けることができ、断片の代謝およびバルク侵食に至らせる。第2に、水が前記装置に浸透する速度がポリマーの水溶性材料への変換速度より遅い場合に材料の表面侵食が起こる。従って、生体吸収性材料の分解速度は植込み型装置の所望の持続性に応じて調整することができ、その場合、材料および物理的パラメーター(厚さなど)の選択は生体吸収速度に影響を及ぼす。
【0022】
生体吸収性材料としては、合成ポリマー、天然ポリマー、多糖類およびそれらの組合せが挙げられる。場合によって、第1の生体吸収性材料および第2の生体吸収性材料は同じ材料を含んでなり、場合によって、第1の生体吸収性材料および第2の生体吸収性材料は異なる材料を含んでなる。好適な合成ポリマーとしては、グリコール酸、L−乳酸、D−乳酸、ウレタンウレア、トリメチレンカーボネート、ジオキサノン、ε−カプロラクトン、ヒドロキシブチレート、オルトエステル、オルトカーボネート、アミノカーボネート、セバシド酸(sebacid acid)、p−(カルボキシフェノキシ)プロパンおよびp−(カルボキシフェノキシ)ヘキサンの少なくとも1つの無水物、トリメチレンカーボネートならびにそれらの組合せのポリマーおよびコポリマーが挙げられる。好適な天然ポリマーとしては、エラスチン、絹、フィブリン、フィブリノーゲン、コラーゲン、ゼラチンおよびそれらの組合せが挙げられる。また、好適な多糖類としては、ヒアルロン酸、キチン質、キトサン、アルギン酸塩、カルボキシメチルセルロースおよびそれらの組合せが挙げられる。他の生体吸収性材料としては、生物医学的技術において知られているものが含まれ、例えば、生体吸収性縫合糸、歯科用装置、整形外科用固定装置、組織工学スキャフォールドおよび生分解性血管ステントに使用されるものが挙げられる。
【0023】
いくつかの実施形態では、第2の生体吸収性材料は、液体を吸収するよう機能する乾燥材料またはデシケーティッド材料(dessicated material)を含んでなる。例えば、第2の生体吸収性材料は、脱水ゼラチンビーズであってよく、そのビーズは、植込み型装置の1以上のボイドに装入された脂肪組織、脂肪細胞、全血、PRPおよび/または白血球の容量から液体を吸い出す。このようにして、バルク溶液または液体(水、緩衝液または血液など)は、乾燥した第2の生体吸収性材料によって吸い出され、その結果、乾燥材料に吸収されない組織および/または細胞の濃度および密度が上昇する。濃度および密度が上昇したことにより、結果として、組織および/または細胞と第2の生体吸収性材料の活性化表面との間の接触を多くすることができる。
【0024】
また、植込み型装置の生体吸収性材料は、例えば、その装置で生産されるIL−1raが第1の生体吸収性材料を通じて本体から拡散できるように、多孔性または浸透性とすることができる。さらには、その透過性は、他のシグナル伝達分子の本体からの拡散を可能にするだけでなく、そのような分子の周囲植込み部位からその装置への拡散も可能にする。場合によって、本体は、植込み型装置内外への細胞の移動を可能にするのに十分な多孔性であってよい。第1の生体吸収性材料が分解するにつれて、例えば、細孔が形成しかつ/または現存する細孔のサイズが増大し、拡散および/または細胞移動の速度が経時的に増加する。最終的には、本体の内部空間内の第2の生体吸収性材料は分解し侵食し始める。その後ある時点で植込み型装置は完全に吸収される。
【0025】
次に図1に関し、フローチャート100は、患者において部位を治療するための本植込み型装置の使用およびIL−1raの生産について概略図で示している。ステップ110において示されるように、脂肪組織は患者から得ることができる。この脂肪組織は、ステップ160の通り、植込み型装置に直接置いてよく、またはステップ120で示されるように、この脂肪組織を処理して脂肪細胞を単離してもよい。ステップ130において示されるように、全血も患者から得ることができる。その全血は、ステップ140で示されるように、処理して多血小板血漿(PRP)にすることができる。例えば、全血を遠心分離機にかけて、白血球および血小板を含んでなるPRPを単離することができ、これは沈降分離後バフィーコート層に存在する。また、ステップ150の通り、全血を処理して白血球を単離することもできる。
【0026】
次いで、ステップ160の通り、ステップ110、ステップ120、ステップ130、ステップ140およびステップ150の産物の少なくとも1つが植込み型装置の内部空間内の1以上のボイドに置かれる。いくつかの実施形態では、2つ、3つ、4つまたは5つ総ての産物がボイド(群)に置かれる;すなわち、脂肪組織、脂肪細胞、全血、PRPおよび/または白血球。いくつかの実施形態では、脂肪組織だけが使用され、他の実施形態では、PRPだけが使用される。これらの産物の1つ以上を他の産物の調製に使用してもよい。例えば、全血を使用して、単離脂肪細胞および白血球の細胞ペレットを再懸濁してよい。また、110での脂肪組織および130での全血は、170で植込み型装置を受ける患者から得てもよい。このようにして、植込み型装置は自己由来のIL−1raを生産する。
【0027】
図1のステップ160において示されるように、一度、植込み型装置に、脂肪組織、脂肪細胞、全血、PRPおよび/または白血球が装入されると、産物(群)は第2の生体吸収性材料の活性化表面と接触する。いくつかの実施形態では、接触は約30秒〜約72時間の期間であり得、約20℃〜約41℃の温度で行ってよい。例えば、インキュベーションは、約1分〜約48時間であってよく、約5分〜約12時間であってよく、または約10分〜約6時間であってよい。いくつかの実施形態では、植込み型装置は、約37℃でこれらの期間にインキュベートされ得る。他の実施形態では、インキュベーションは、周囲条件において、例えば、約20〜25℃の温度で行ってよい。いくつかの実施形態では、装入済の植込み型装置はインキュベートせず、その代わりに、装入後直ちにまたは装入後わずか数分で患者の炎症部位に挿入される。
【0028】
本技術の機構、有用性または機能を限定することなく、第2の生体吸収性材料の活性化表面は、脂肪組織、脂肪細胞、全血、PRPおよび/または白血球によるIL−1ra生産のアクチベーターとして機能を果たす。記載したように、第2の生体吸収性材料はまた、IL−1raの生産を刺激する活性化表面を提供することに加え、液体を吸収する乾燥材料またはデシケーティッド材料であってよい。そのような場合には、第2の生体吸収性材料は、IL−1raの生産を活性化するだけでなく、脂肪組織、脂肪細胞、全血、PRPおよび/または白血球の容量から液体を吸収し、その結果、活性化表面に関係している組織および/または細胞を濃縮する。
【0029】
全血、多血小板血漿および白血球は、生物医学的技術において知られている方法を用いて獲得しまたは単離してよい。例えば、様々な装置を使用して、全血より最大約8倍高い血小板濃度と全血より最大約5倍高い白血球濃度を有する多血小板血漿を生成し得る。その多血小板血漿は、全血中に存在する白血球の約80%〜約90%を含んでなり得る。市販されている装置には、Biomet Biologies, LLC (Warsaw, Indiana, USA)のGPS(登録商標)II Platelet Concentrate SystemおよびBiomet Biologies, LLC (Warsaw, Indiana, USA)のGPS(登録商標)III Platelet Separation Systemなどがある。ステップ120において多血小板血漿を単離するために使用し得るさらなる装置も、例えば、2002年6月4日発行の米国特許第6,398,972号、Blasetti et al.;2003年11月18日発行の米国特許第6,649,072号、Brandt et al.;2004年9月14日発行の米国特許第6,790,371号、Dolocek;2006年3月14日発行の米国特許第7,011,852号、Sukavaneshvar et al.;2004年12月16日公開の米国出願公開第2004/0251217号、Leach et al.(引用することにより本明細書の一部とされる);2005年5月26日公開の米国出願公開第2005/0109716号、Leach et al.(引用することにより本明細書の一部とされる);2005年9月8日公開の米国出願公開第2005/0196874号、Dorian et al.(引用することにより本明細書の一部とされる);および2006年8月10日公開の米国出願公開第2006/0175242号、Dorian et al.(引用することにより本明細書の一部とされる)に記載されている。
【0030】
他の方法を使用して、多血小板血漿を単離してもよい。例えば、全血は、ブイシステムを使用せずに遠心分離機にかけることができ、全血を多段階で遠心分離機にかけてもよく、連続フロー式遠心分離法を用いることもでき、また濾過も用いることができる。加えて、血小板のペレット化を妨げるために低速遠心分離ステップを用いて赤血球から血漿を抽出することによって、多血小板血漿を含む血液成分を生産することができる。他の実施形態では、血液の遠心分離により生じるバフィーコート画分を、残留血漿から抽出し、再懸濁して多血小板血漿を形成することができる。
【0031】
GPS(登録商標)Platelet Concentrate and Separation Systemsに加えて、他の市販装置も、ステップ120において多血小板血漿を単離するするために使用してよく、そのような装置には、Medtronic, Inc. (Minneapolis, Minnesota, USA)から市販されているMagellan(商標)Autologous Platelet Separator System; Harvest Technologies Corporation (Plymouth, Massachusetts, USA)から市販されているSmartPReP(商標); DePuy (Warsaw, Indiana, USA); Cytomedix, Inc. (Rockville, Maryland, USA)から市販されているAutoloGel(商標)Process; EmCyte Corporation (Fort Myers, Florida, USA)から市販されているGenesisCS System; およびBiomet 3i, Inc. (Palm Beach Gardens, Florida, USA)から市販されているPCCS Systemが挙げられる。
【0032】
患者から採取された血液は抗凝固薬と混合してよい。好適な抗凝固薬としては、ヘパリン、クエン酸リン酸デキストロース(CPD)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、抗凝固クエン酸デキストロース溶液(ACD)およびそれらの混合物が挙げられる。抗凝固薬は、対象からの採血に使用されるシリンジに入れてよく、または採血後に血液と混合してもよい。
【0033】
白血球はまた、当技術分野で公知の他の方法を用いて調製してもよい。例えば、全血から、赤血球を溶解することによって、または密度勾配を利用した全血の遠心分離によって(この場合、白血球は遠心管の底に沈降する)白血球を調製してよい。密度遠心分離の例としては、Ficoll-Paque(商標)Plus(GE Healthcare Bio-Sciences, Piscataway, New Jersey, USA)が挙げられる。場合によって、単核および多形核細胞をさらに抽出するために、密度勾配を使用してよい。また、全血から濾過を用いて白血球を調製してもよい;例としては、Acelere(商標)MNC Harvest System (Pall Life Sciences, Ann Arbor, Michigan, USA)が挙げられる。白血球は骨髄から得ることもできる。
【0034】
脂肪組織とは、任意の脂肪組織、白色脂肪組織または褐色脂肪組織のいずれかを意味し、その脂肪組織は、皮下、大網/内臓、乳房、生殖腺の脂肪組織または他の脂肪組織の部位から得られるものでよい。いくつかの実施形態では、脂肪組織は、吸引脂肪組織切除術または脂肪吸引術によって分離されたヒト皮下脂肪から得られるものである。脂肪細胞は、任意の好適な方法を用いて脂肪組織および/または組織部分から単離されたおよび/または遊離されたものでよく、そのような方法には、機械による破壊遠心分離などの当技術分野で公知の方法が含まれる。脂肪細胞はまた、酵素消化を用いて単離することもできる。例えば、脂肪細胞は、脂肪吸引物から単離し、音波処理および/または酵素消化によって処理し、遠心分離によって濃縮することができる。脂肪組織から単離された脂肪細胞は、洗浄し、ペレット化してよい。
【0035】
脂肪組織および脂肪細胞を単離するための方法は、次の側面を含むことができる。約50ccの脂肪組織は、吸引による脂肪吸引チューメセント法によって、吸引ホースおよび脂肪吸引カニューレに取り付けられている専用の収集容器内に収集され得る。収集容器は、ガーゼタイプのグリッドフィルターを備えていてよく、そのフィルターはチューメセント液を通過させ、固形脂肪組織を保持する。脂肪組織収集後、収集容器は吸引装置から外され、遠心分離装置に再び取り付けられる。フィルターユニットは、およそ100マイクロメートルの孔径を有するフィルターをさらに備えていてよい。一度、脂肪組織が収容されている収集容器が遠心分離装置に取り付けられたら、脂肪組織は音波処理される。音波処理後、装置全体が遠心バケットに挿入される、例えば、約300×gで約5分間遠心分離機にかけられる。遠心分離後、収集容器はフィルターユニットとともに取り外され、廃棄することができる。脂肪細胞を含有するペレットは、その後、1種以上の生体適合性溶液、例えば、自己血漿、血漿濃縮物および多血小板血漿などを用いて再懸濁することができる。
【0036】
脂肪組織はまた、消化酵素や、隣接する細胞間の結合を弱めるキレート化剤で処理してよく、目に見えるほどの細胞破砕なしに、脂肪組織を、脂肪細胞を含む単一細胞の懸濁液に分散させることが可能である。解離後、細胞と解離組織の懸濁液から脂肪細胞を単離することができる。例えば、脂肪細胞の単離は、脂肪吸引処置から皮下脂肪組織を得、37℃で1時間緩やかに撹拌しながらI型コラゲナーゼ溶液(Worthington Biochemical Corp., Lakewood, N.J.)でその組織を消化することにより行ってよい。解離細胞は、500μmおよび250μmのNitexフィルターで濾過してよい。その画分を約300×gで約5分間遠心分離機にかける。上清を廃棄し、細胞ペレットを適合性のある溶液(血液由来の溶液など)に再懸濁する。
【0037】
いくつかの実施形態では、脂肪細胞は次の通り調製する。脂肪組織を小片に細分し(約1cm)、断続的に機械撹拌しながら水浴中37℃で180分間、2mg/mL I型コラゲナーゼ(Worthington Biochemical Corp., Lakewood, N.J.)で消化する。培地または血液由来の溶液を加えることによって消化の効力を失わせることができる。解離細胞は、500μmおよび/または250μmのNitexフィルターで濾過してよい。細胞懸濁液を遠心分離機にかけ(300×g、25℃で7分間)、続いて、細胞ペレットから上清の除去を行う。次いで、そのペレットを適合性のある溶液に再懸濁して、脂肪細胞を含んでなる液体容量を準備する。
【0038】
脂肪組織の単離および/または分画のための様々な方法および装置には、Leach et al.の米国特許第7,374,678号および同第7,179,391号およびLeach et al.の米国出願公開第2009/0014391号、同第2008/0283474号および同第2007/0208321号によって記載されているものが含まれる。脂肪細胞を単離するために、GPS(商標)Platelet Concentrate System(Biomet, Warsaw, IN)などの装置を使用してよい。これらの方法は、脂肪組織を得るために患者において脂肪吸引を行うことにより脂肪細胞を得ること、その脂肪組織を酵素によって消化すること、およびこれらの装置を使用して脂肪細胞を抽出しことおよび/または洗浄することを含み得る。
【0039】
さらに図1に関し、ステップ160で、一度、植込み型装置に装入されると、第2の生体吸収性材料の活性化表面が脂肪組織、脂肪細胞、全血、PRPおよび/または白血球によるIL−1raの生成を刺激する。その後、ステップ170において示されるように、植込み型装置は、患者の炎症部位(変形性関節症の部位など)に挿入される。
【0040】
植込み型装置は、ステップ170では、ヒトまたは動物の対象(すなわち、患者)の炎症部位にまたは炎症部位近くにIL−1raを供給するために挿入される。IL−1raに富んだ溶液を受ける患者は、ステップ110およびステップ130において脂肪組織および/または全血を得た同じ患者であってよい。この場合、その方法により自己由来のIL−1ra調製物が提供される。植込み型装置の投与は、様々な手段を用いて、例えば、シリンジを使用した植込み型装置の注射、カニューレ装置、外科的適用、または別の外科的手法との併用適用などによって行ってよい。しかしながら、インターロイキン−1受容体の刺激に関連している作用(炎症および変形性関節症による炎症など)に影響を与えるために植込み型装置を部位内にまたは部位に近接して挿入し、植え込み、注射し、あるいは投与する任意の生物医学上許容されるプロセスまたは手法を、ステップ170が含み得ることは理解することができる。例えば、自己由来のIL−1raを生産するための植込み型装置は、関節炎による炎症を治療するために、カニューレ装置を介して患者に投与され得る。植込みは、炎症関節の滑膜腔にまたは炎症関節の滑膜腔内に、あるいはその関節にまたはその関節近くに行ってよい。
【0041】
本植込み型装置は、脂肪組織、脂肪細胞、全血、PRPおよび/または白血球の装入前に滅菌してよい。例えば、化学滅菌または照射を用いて、植込み型装置を滅菌してよく、その装置は、生物医学上許容される滅菌技術を用いて装入され得る。加えて、抗生物質を、植込み型装置に含めてよく、またはその装置に装入される脂肪組織、全血およびそれらの産物の1以上に;例えば、脂肪組織、脂肪細胞、全血、PRPおよび/または白血球に添加してもよい。
【0042】
本技術は、植込み後に、自己由来のIL−1raを含む、IL−1raをin vivoで生産することができる植込み型装置を提供し、そのような装置によって、非自己由来の材料または組換え材料を用いたときに起こる可能性がある免疫学的問題は軽減されおよび/または実質的に排除される。加えて、IL−1raは患者の細胞によって生産されるため、自然翻訳後修飾(グリコシル化など)はすでに存在している。これは大部分の組換えタンパク質には当てはまらず、それらのタンパク質が原核生物宿主で生産されるためである。
【0043】
植込み型装置は、脂肪組織、脂肪細胞、全血、PRP、および/または白血球の装入後数分でIL−1raを生産することができ、IL−1raを最大24時間またはそれ以上生産し続けることができる。例えば、植込み型装置は、約34,000pg/mL〜約108,000pg/mLのIL−1raを生産することができる。しかしながら、任意の所定の溶液中に存在する濃度は、本方法において使用される脂肪組織、脂肪細胞および/または白血球源中に存在する成分の初期レベルによって変化し得ることおよび濃度の上昇が初期レベルとの比較によるものであることは理解する。一般的に、IL−1raは、少なくとも約10,000pg/ml、少なくとも約25,000pg/ml、または少なくとも約30,000pg/mlの濃度で生産され、最大108,000pg/mLまたはそれ以上であり得る。植込み型装置の本体の第1の生体吸収性材料は植込み後に侵食し始めるため、その装置で生産されるIL−1raは、炎症部位のまたは炎症部位近くの植込み部位の領域と接触する。生体吸収性材料が分解し始める前でも装置からのIL−1raの拡散開始を可能にするように、第1の生体吸収性材料は多孔性および/または浸透性とすることができる。
【0044】
IL−1raを生産するための植込み型装置は、IL−1の作用に影響しインターロイキン−1受容体を介するシグナル伝達を減弱するために使用される。植込み型装置から生産されたIL−1raは、多くの組織および器官で発現されるインターロイキン−1型受容体とのIL−1の結合を競合的に阻害することにより、天然に存在するIL−1の生物活性(関節炎に関連する炎症および軟骨破壊を含む)を遮断するために使用される。例えば、IL−1によるプロテオグリカン喪失の結果としての骨吸収および組織損傷(軟骨破壊など)は、IL−1raに富んだ溶液の投与によって治療することができる。関節炎を有する患者では、滑膜および滑液において内因性IL−1raが、これら患者においてIL−1濃度を中和するのに有効な濃度で存在しない場合があり、そのため、これらの病態およびこれらの部位を治療するために、IL−1raを生産するための植込み型装置が挿入される。装置のサイズ、投与および植込みの方法、ならびに治療頻度は、効果的な治療を達成するために、確立された医療行為に基づいて変更してよい。本技術はまた、ある炎症部位に1以上の植込み型装置を使用することにより、または複数の炎症部位に1以上の装置を使用することにより、患者の1以上の炎症部位を治療する方法も含む。
【0045】
一例として、IL−1raを生産するための植込み型装置は、カニューレ装置を使用して患者の膝関節内に挿入される。その装置は、IL−1raをin vivoで生産し、そのIL−1raはその装置から外に向かって拡散し、患者の大腿骨、脛骨、腓骨、膝蓋骨および軟骨の1以上を直接取り巻く空間と接触する。しかしながら、植込み部位は、ヒトまたは動物の患者の任意の関節内であってよく、そのような関節には、肩、肘、手首、足首、股関節および脊椎が含まれることは理解される。加えて、本方法および装置は、他の組織(筋肉および腱など)内の部位における炎症を治療するためにも使用してよい。
【0046】
本技術は、2008年2月27日提出の米国仮出願第61/031,803号、2008年11月21日提出の米国仮出願第61/116,940号および2009年2月24日提出の米国仮出願第61/155,048号の態様を含み得るものであり、2009年2月27日提出の第PCT/US2009/035541号の態様を含んでいる。
【0047】
次の具体例は、この技術の組成物および方法の作製および使用の方法の例示のために提供され、特に明記されない限り、この技術の所定の実施形態が作製されたまたは検証されたこと、あるいは作製されていないまたは検証されていないことを意味するものではない。
【実施例】
【0048】
実施例1
図2に関しては、白血球または脂肪組織が装入されたときにインターロイキン−1受容体アンタゴニストをin vivoで生産するための、植込み型装置200の実施形態を示している。植込み型装置200は、管腔を有する閉鎖された管状本体を備え、その管状本体は第1の生体吸収性材料210を含んでなる。第2の生体吸収性材料220は、切り抜き部分で示されるように、管状本体の管腔内に存在する。第2の生体吸収性材料220は、直径約10ミクロン〜約20ミクロンの複数のゼラチンビーズを含んでなる。管状本体の一端は、装置200の管腔に脂肪組織、脂肪細胞、全血、PRPおよび/または白血球を装入するために1以上の針で突き通すことができる自己回復表面230を含んでなる。一度装入が完了し針(群)が引き抜かれたら、自己回復表面230は、穿刺孔を実質的に塞ぐよう機能する。このように、第2の生体吸収性材料のビーズ220と、装入された脂肪組織、脂肪細胞、全血、PRPおよび/または白血球は装置200から漏出しない。
【0049】
実施例2
図3に関しては、白血球または脂肪組織が装入されたときにインターロイキン−1受容体アンタゴニストをin vivoで生産するための、植込み型装置300の実施形態を示している。植込み型装置300は、第1の生体吸収性材料310を含んでなる管状本体を備えている。その管状本体は、管腔と少なくとも1つの開口端を有し、その開口端面で管腔内の多孔性の第2の生体吸収性材料320が露出している。多孔性の第2の生体吸収性材料は、IL−1raを生産する、脂肪組織、脂肪細胞、全血、多血小板血漿および/または白血球を活性化することが可能である。管腔は、多孔性の第2の生体吸収性材料320と混合された1以上のボイドを含み、そのボイド(群)は液体を管腔に運ぶよう機能する。
【0050】
植込み型装置300の開口端は、脂肪組織、脂肪細胞、全血、多血小板血漿および/または白血球を含む溶液と接触し、その結果、その溶液は、管腔内のボイド(群)に運ばれ、装置に装入される。
【0051】
実施例3
図4に関し、本技術を使用する治療400の実施形態は、カニューレ装置420を使用して本植込み型装置410の実施形態を送達することを含む。可動要素(示されていない)は、カニューレ装置420の一部の内部に配置され、植込み型装置410は、最初は、カニューレ装置420の一部の内部に配置される。可動要素は、図のように、カニューレ装置420から炎症部位の位置または炎症部位近くの位置に植込み型装置410を放出するよう機能する。植込み型装置410に白血球または脂肪細胞が装入され、その装置は、植込み部位においてインターロイキン−1受容体アンタゴニストをin vivo生産する。図4で示されるように、植込み部位は膝関節に近い患者の大腿骨の端部に近接している。
【0052】
本明細書において記載される実施例および他の実施形態は、例示であり、この技術の組成物および方法の総ての範囲の説明において限定することを目的としていない。特定の実施形態、材料、組成物および方法の等価の変更、修飾および変形は、本技術の範囲内で行うことができ、実質的に同様の結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
白血球または脂肪細胞が装入されたときにインターロイキン−1受容体アンタゴニストを生産するための植込み型装置であって、該植込み型装置が、
内部空間を規定している閉鎖されたまたは実質的に閉鎖された本体であって、該本体の少なくとも一部が、第1の生体吸収性材料を含んでなる、本体と;
該内部空間内に、活性化表面を含む第2の生体吸収性材料と;
該内部空間内に1以上のボイドと
を備えている、装置。
【請求項2】
前記内部空間内の前記1以上のボイドが、白血球、脂肪細胞、およびそれらの組合せからなる群から選択されるメンバーをさらに含んでなる、請求項1に記載の植込み型装置。
【請求項3】
前記白血球が、全血、多血小板血漿、およびそれらの組合せからなる群から選択される培地に存在する、請求項2に記載の植込み型装置。
【請求項4】
前記脂肪細胞が、脂肪組織に存在する、請求項2に記載の植込み型装置。
【請求項5】
前記本体の少なくとも一部が、自己回復材料をさらに含んでなる、請求項1に記載の植込み型装置。
【請求項6】
前記本体が、実質的に円筒形状である、請求項1に記載の植込み型装置。
【請求項7】
前記本体が、前記内部空間内の前記1以上のボイドを露出するように開放されている少なくとも1つの端を含む、請求項6に記載の植込み型装置。
【請求項8】
前記1以上のボイドが、前記内部空間内の前記1以上のボイドに液体を運ぶように機能する、請求項7に記載の植込み型装置。
【請求項9】
前記1以上のボイドの少なくとも1つが、前記本体の長さを実質的に通り抜ける長手方向チャネルである、請求項8に記載の植込み型装置。
【請求項10】
第2の生体吸収性材料が、複数のビーズを含んでなる、請求項1に記載の植込み型装置。
【請求項11】
第2の生体吸収性材料が、液体を吸収するよう機能する乾燥材料を含んでなる、請求項1に記載の植込み型装置。
【請求項12】
第2の生体吸収性材料が、多孔性であり、細孔により活性化表面が提供される、請求項1に記載の植込み型装置。
【請求項13】
前記細孔が、平均直径約1ナノメートル〜約10ナノメートルである、請求項12に記載の植込み型装置。
【請求項14】
第2の生体吸収性材料の活性化表面が、免疫グロブリンGを含んでなる、請求項1に記載の植込み型装置。
【請求項15】
第2の生体吸収性材料の活性化表面が、長さ、幅および高さそれぞれが約10ナノメートル〜約500ナノメートルまでに及ぶ特徴を有する構造を含んでなる、請求項1に記載の植込み型装置。
【請求項16】
第2の生体吸収性材料の活性化表面が、約150,000m−1〜約300,000m−1の表面/体積比を含んでなる、請求項1に記載の植込み型装置。
【請求項17】
第2の生体吸収性材料の活性化表面が、約50m/g〜約1,000m/gの表面積を含んでなる、請求項1に記載の植込み型装置。
【請求項18】
第1の生体吸収性材料および第2の生体吸収性材料が、独立に、合成ポリマー、天然ポリマー、多糖類、およびそれらの組合せ:からなる群から選択されるメンバーを含んでなる、請求項1に記載の植込み型装置。
【請求項19】
前記合成ポリマーが、グリコール酸、L−乳酸、D−乳酸、ウレタンウレア、トリメチレンカーボネート、ジオキサノン、ε−カプロラクトン、ヒドロキシブチレート、オルトエステル、オルトカーボネート、アミノカーボネート、セバシド酸、p−(カルボキシフェノキシ)プロパンおよびp−(カルボキシフェノキシ)ヘキサンの少なくとも1つの無水物、トリメチレンカーボネート、ならびにそれらの組合せのポリマーおよびコポリマー:からなる群から選択される、請求項18に記載の植込み型装置。
【請求項20】
前記天然ポリマーが、エラスチン、絹、フィブリン、フィブリノーゲン、コラーゲン、ゼラチン、およびそれらの組合せ:からなる群から選択される、請求項18に記載の植込み型装置。
【請求項21】
前記多糖類が、ヒアルロン酸、キチン質、キトサン、アルギン酸塩、カルボキシメチルセルロース、およびそれらの組合せ:からなる群から選択される、請求項18に記載の植込み型装置。
【請求項22】
第1の生体吸収性材料および第2の生体吸収性材料が、同じ材料を含んでなる、請求項1に記載の植込み型装置。
【請求項23】
白血球または脂肪細胞が装入されたときにインターロイキン−1受容体アンタゴニストを生産するための、組織内への植込み型装置の送達用のカニューレ装置であって、該カニューレ装置が、
カニューレと;
該カニューレの一部に配置された可動要素と;
IL−1raを生産するための植込み型装置であって、
内部空間を規定している閉鎖されたまたは実質的に閉鎖された本体であって、該本体の少なくとも一部が第1の生体吸収性材料を含んでなる、本体と;
該内部空間内に、活性化表面を含む第2の生体吸収性材料と;
該内部空間内に1以上のボイドと;
を備えている、装置と
を含んでなり、
この際、該植込み型装置が該カニューレの一部の中に配置され、該可動要素が、該カニューレから該植込み型装置を放出するよう機能する、カニューレ装置。
【請求項24】
白血球または脂肪組織が装入されたときにインターロイキン−1受容体アンタゴニストをin vivoで生産するための植込み型装置であって、該植込み型装置が、
第1の生体吸収性材料を含んでなる、管腔を有する閉鎖された管状本体であって、該管状本体の少なくとも1つの端が、自己回復表面を含んでなる、本体と;
該管腔内に、直径約10ミクロン〜約20ミクロンの複数のゼラチンビーズを含んでなる第2の生体吸収性材料と
を備えている、装置。
【請求項25】
前記ゼラチンビーズ表面が、免疫グロブリンGを含む、請求項24に記載の植込み型装置。
【請求項26】
前記管腔内に複数の白血球をさらに含んでなる、請求項24に記載の植込み型装置。
【請求項27】
前記白血球が、全血、多血小板血漿、およびそれらの組合せからなる群から選択される培地に存在する、請求項24に記載の植込み型装置。
【請求項28】
前記管腔内に脂肪組織をさらに含んでなる、請求項24に記載の植込み型装置。
【請求項29】
白血球または脂肪組織が装入されたときにインターロイキン−1受容体アンタゴニストをin vivoで生産するための植込み型装置であって、該植込み型装置が、
第1の生体吸収性材料を含んでなる、管腔および少なくとも1つの開口端を含む管状本体と;
該管状本体の開口端で露出された、該管腔内の、多孔性の第2の生体吸収性材料であって、該管腔が、液体を該管腔に運ぶように機能する1以上のボイドを含む、第2の生体吸収性材料と
を備えている、装置。
【請求項30】
第2の生体吸収性材料の表面が、免疫グロブリンGを含む、請求項29に記載の植込み型装置。
【請求項31】
前記1以上のボイド内に複数の白血球をさらに含んでなる、請求項29に記載の植込み型装置。
【請求項32】
前記白血球が、全血、多血小板血漿、およびそれらの組合せからなる群から選択される培地に存在する、請求項31に記載の植込み型装置。
【請求項33】
前記1以上のボイド内に脂肪組織をさらに含んでなる、請求項29に記載の植込み型装置。
【請求項34】
請求項1に記載の植込み型装置を使用する、患者における炎症部位の治療方法であって、
前記植込み型装置の1以上のボイドに、脂肪組織、脂肪細胞、全血、多血小板血漿、白血球、およびそれらの組合せからなる群から選択されるメンバーを含んでなる液体容量を装入すること;および
前記植込み型装置を、患者における炎症部位に、または炎症部位に近接して植え込むこと
を含んでなる、方法。
【請求項35】
請求項23に記載のカニューレ装置を使用する、患者における炎症部位の治療方法であって、
前記植込み型装置の1以上のボイドに、脂肪組織、脂肪細胞、全血、多血小板血漿、白血球、およびそれらの組合せからなる群から選択されるメンバーを含んでなる液体容量を装入すること;
患者における炎症部位に前記カニューレを挿入すること;
前記カニューレから前記植込み型装置を放出するように前記可動要素を移動させ、それによって、前記植込み型装置を、患者における炎症部位に、または炎症部位に近接して植え込むこと
を含んでなる、方法。
【請求項36】
請求項24に記載の植込み型装置を使用する、患者における炎症部位の治療方法であって、
前記植込み型装置の管腔に、脂肪組織、脂肪細胞、全血、多血小板血漿、白血球、およびそれらの組合せからなる群から選択されるメンバーを含んでなる液体容量を装入すること;および
前記植込み型装置を、患者における炎症部位に、または炎症部位に近接して植え込むこと
を含んでなる、方法。
【請求項37】
請求項29に記載の植込み型装置を使用する、患者における炎症部位の治療方法であって、
前記植込み型装置の管腔の1以上のボイドに、脂肪組織、脂肪細胞、全血、多血小板血漿、白血球、およびそれらの組合せからなる群から選択されるメンバーを含んでなる液体容量を装入すること;および
前記植込み型装置を、患者における炎症部位に、または炎症部位に近接して植え込むこと
を含んでなる、方法。
【請求項38】
患者における炎症の治療に用いるための植込み型装置であって、
内部空間を規定している閉鎖されたまたは実質的に閉鎖された本体であって、該本体の少なくとも一部が第1の生体吸収性材料を含んでなる、本体と;
該内部空間内に、活性化表面を含む第2の生体吸収性材料と;
該内部空間内に1以上のボイドと
を備えている、装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−503012(P2013−503012A)
【公表日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−527030(P2012−527030)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【国際出願番号】PCT/US2010/046994
【国際公開番号】WO2011/031553
【国際公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(510206198)バイオメット、バイオロジクス、リミテッド、ライアビリティー、カンパニー (4)
【氏名又は名称原語表記】BIOMET BIOLOGICS, LLC
【Fターム(参考)】