説明

インターロイキン−15活性のペプチドアンタゴニスト

本発明は、分子薬学の分野、特に、インターロイキン−15(IL−15)分子の生物学的活性を阻害するために最適化されたインターロイキン−15配列由来のペプチドに関する。本発明は、受容体のアルファサブユニット(IL−15Rα)に結合すると、ペプチドが、IL−15によって誘発されるT細胞の増殖、IL−15による腫瘍壊死因子−α(TNF−α)の誘発、並びにIL−15RαによるIL−8及びIL−6の発現を阻害することを示す。本発明は更に、IL−15又はIL−15Rαの異常発現が疾患の進行に関連する病状、例えば関節リウマチ(RA)及び前立腺癌の治療におけるペプチドの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分子薬学の分野に関し、特に、インターロイキン−15(IL−15)の受容体のアルファサブユニット(IL−15Rα)に対するこのサイトカインの結合を遮断するインターロイキン−15由来のペプチドを記載し、そのペプチドは、IL−15及び/又はIL−15Rαの異常発現が関与する疾患を進行中に治療するのに有用である。
【背景技術】
【0002】
IL−15として知られるサイトカインは、T細胞活性化因子として2つの研究グループにより同時に確認された14〜15kDaのタンパク質である(Grabstein,K.H.ら、Science 1994、264、965〜968;Burton,J.D.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 1994、91、4935〜4939)。このサイトカインのメッセンジャーリボ核酸(mRNA)は、様々な細胞及び組織に存在するが、翻訳段階及び細胞間輸送レベルでの強力な転写後調節により、その転写産物を発現する培養細胞の上清中にそのタンパク質を見出すことは難しい(Bamford RN.ら、J.Immunol 1998、160:4418〜4426;Kurys Gら、J Biol Chem 2000、275:30653〜30659)。更に、IL−15の活性型が膜タンパク質として存在する可能性があり(Mussoら、Blood 1999、93:3531〜3539)、最近、それがリガンド及び受容体の両方として機能する可能性があることが報告されている。IL−15は、内在性膜タンパク質として発現する場合、受容体として作用して、可溶性IL−15Rαの結合を介して、IL−6及びIL−8炎症性サイトカインの分泌、いわゆるMAPK及びFAKキナーゼの活性化を誘発し、細胞膜でIL−15を発現する前立腺癌細胞(PC−3)の移動を促進する(Budalgianら、J.Biol Chem 2004、40:42192〜42201)。
【0003】
IL−15の生物学的効果は、α、β及びγと名付けられた3種類のサブユニットを含む細胞膜中に見出される受容体に対するこのサイトカインの結合によって媒介される。これらのサブユニットは同じ細胞中で同時発現され得るか、又はαサブユニットが結合したIL−15が、β及びγサブユニットを発現する細胞に提示されて、トランスにおけるシグナル伝達として知られているプロセスによって細胞シグナル伝達が更に誘発され得る(Burkettら、J Exp.Med 2004、200:825〜834)。IL−15Rβサブユニットは、IL−15と高い構造的相同性を示すサイトカインである、IL−2によって共有され、IL−15Rβサブユニットは、IL−2、IL−4、IL−7、IL−9、IL−21などの他のサイトカインとも共有される。IL−15RαサブユニットはIL−15に特異的であり、非常に高い親和性の結合(Kd=10−11)を媒介し、膜受容体又は可溶性型のいずれかとして見出すことができる(Budagian V.ら、J Biol Chem.2004 24:40368〜75;Mortierら、J.Immunol 2004、173:1681〜1688)。
【0004】
高レベルのIL−15発現は、クローン病(Kirman I.、Am.J.Gastroenterol.1996、91:1789〜1794)、乾癬(Ruckert R.J.Immunol 2000、165:2240〜2250)、白血病(Yamada Y.Leukemia and Limphoma 1999、35:37〜45)及び関節リウマチ(RA)(Mclnnes I.B.、Immunology Today 1998、19:75〜79)のような自己免疫疾患及び炎症性疾患の病因と関連がある。
【0005】
RAにおいて、Mclnnesらは、異常なIL−15発現である、滑液中の高濃度のIL−15及び滑膜細胞中のIL−15発現を見出した。彼らは、IL−15がサイトカインカスケードにおいて腫瘍壊死因子α(TNFα)に先行することを示唆しており、マクロファージ中のTNFα合成のIL−15活性化T細胞による誘発に関する細胞接触媒介性機構を提案している。彼らはまた、IL−15が、滑液に対するT細胞移動における非常に関連のある因子として作用することを提案している(Mclnnesら、Nat Med 1997、3:189〜195)。Ziolkowskaらは、IL−15が、RA患者の関節中でIL−17の発現を誘発することを報告し、このサイトカインが、IL−6及びIL−8などの炎症メディエーター、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子及び滑膜細胞によるE2プロスタグランジンの分泌を刺激することも知られており、RA病因におけるIL−15についての重要な役割を示唆している(Ziolkowskaら、J Immunology 2000、164:2832〜2838)。最近、IL−15が、このサイトカインを遺伝子導入したマウスにおいてコラーゲン誘発関節炎(CIA)を悪化させることが実証された(Yoshiharaら、Eur J.Immunol.2007、37:2744〜2752)。これらの要素は全て、IL−15のアンタゴニストが、RA並びに他の自己免疫疾患及び炎症性疾患を治療するための有力な治療薬であり得ることを示唆している。
【0006】
IL−15分子中の56位のアスパラギン酸残基は、IL−15Rβに対する結合に関連があり、156位のグルタミンはIL−15Rγサブユニットに対する結合に関連があることが以前に報告されている。ムテインとも呼ばれる変異タンパク質は、IL15−Rαに結合するIL−15に拮抗する分子として挙動し、IL−15Rβ及びγサブユニットからのシグナル伝達を妨げる。これらのアミノ酸(aa)を認識する抗体はまた、IL−15アンタゴニストとして作用する(米国特許第6177079号、米国特許第6168783号、米国特許第6013480号、米国特許第6001973号、米国特許第9706931号、国際公開第9741232号)。
【0007】
このサイトカインに対するアンタゴニストの使用は、乾癬(Villadsen L.S.ら、J.Clin.Invest.2003、112:1571〜1580)及びRA(Ferrari−Lacraz S.ら、J.Immunol 2004、173:5818〜5826)の動物モデルにおいて有用であることが証明されている。
【0008】
Ruchatzらは、DBA/1マウスに投与するとCIAを阻害するマウスIL−15Rαの可溶性断片を生成した(Ruchatz H、J.Immunology 1998、160:5654〜5660)。続いて、IL−15Rαが、IL−15の生物学的機能の有力なアゴニストとして作用できることも見出された(Mortier E.J.Biol.Chem.2006、281:1612〜1619;Rubinstein MP、PNAS USA 2006、103:9166〜9171)。
【0009】
Genmabは、4種類の抗体を記載している、IL−15に特異的な抗体についての特許(国際公開第03017935号)を所有している。146B7及び146H5と名付けられた、それらのうちの2種は、IL−15Rγと相互作用するIL−15領域を標的とし、CTLL−2細胞系及び末梢血単核細胞(PBMC)中のIL−15誘発細胞増殖を阻害する。その特許はまた、細胞増殖を阻害しない404A8及び404E4抗体を記載している。これらの4種類の抗体のうち、146B7は、AMG714と命名され、Amgen companyによってRAに関する第II相臨床試験で試験されている。
【0010】
Bernardらは、2004年に、IL15−Rαに対する結合に関するIL−15分子の2つの配列を同定した。これらの配列は、成熟タンパク質中のアミノ酸44〜52及び64〜68を含み、彼らはまた、IL−15のアゴニスト又はアンタゴニストとして作用できるムテインを記載している(Bernard J.ら、J Biol Chem 2004、279:24313〜24322)。
【0011】
Santosらは、IL−15アンタゴニストペプチドを記載している(国際公開第2006/029578号)。IL−15のアンタゴニストとしての小さいサイズ(10アミノ酸)のペプチドの使用は、IL−15Rαに対するIL−15結合を選択的に遮断し、さらにはその相互作用の効果を媒介又は回避するために利点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、以前に報告されているペプチドと比べて可溶性が高く、IL−15に拮抗する生物学的活性が増強されたペプチド配列の同定が特に関係する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、国際公開第2006/029578号に記載されるものよりも可溶性及び活性が高いペプチドを提供することによって上述の問題の解決策を示し、2番目のLysをThrに置換し、ペプチド二量体を得ることによって、50%の阻害を生じる物質の濃度である、その阻害濃度50(IC50)を130μMから8μMに減少させる。前記配列である、配列番号12は10アミノ酸の直鎖ペプチドとして合成され、IL−15Rαと相互作用し、IL−15アンタゴニストの能力を示す)。
【0014】
前記ペプチドを、IL−15に対するそのアンタゴニスト活性に必須のアミノ酸を同定するために点アミノ酸置換によって最適化した。具体的には、2番目のLysに関して、電荷に影響を及ぼす置換、例えばLysを中性のThr残基又は負に帯電したGluアミノ酸と置き換えることにより、10倍のアンタゴニスト活性をこのペプチドに対して得た。更に、遊離システインを介して連結された2つのペプチド分子間で形成される二量体は、単量体よりも活性が7倍高いことを見出した。
【0015】
CTLL−2細胞系のIL−15依存性増殖アッセイにおいて、活性が10倍高いペプチドを得た。これは上述の置換から生じたペプチドである。このペプチドはまた、IL−15αに結合する能力を保持する。
【0016】
本発明の目的である、得られたペプチドは、配列表で配列番号12として記載されるペプチド配列を含む。示したLysからThrへのアミノ酸変化の後に見出された活性の増加は驚くべきものであった。ペプチドの生物学的活性がその一次配列上の変化の後にこのように増加することは、本発明の実施形態の例において実証するように、以前の知見に基づいて当該技術分野における当業者が誰も予期しないものであった。
【0017】
遊離Cysを介する、配列番号12として配列表で識別される単量体の連結によって得られる、化学的に合成されたペプチド二量体は、単量体よりも活性が7倍高く、国際公開第2006/029578号に記載される元のペプチドよりも活性が15倍高かった。
【0018】
配列番号12として記載されるアミノ酸配列として識別されるペプチドは、前記ペプチドの可溶性アルファ鎖に対する結合により、2004年にBudalgianら(Budalgianら、J.Biol Chem 2004、40:42192〜42201)によって報告されている膜IL−15を介する逆シグナル伝達作用を阻害できる。
【0019】
本発明は、単独で、又はステロイド抗炎症性薬(例えばコルチコステロイド)及び疾患の経過を改善する薬物(例えばメトトレキサート)などの任意の他の適切な分子と併用して、RAを治療するための前記ペプチドの使用を含む。
【0020】
本発明の別の実施形態は、乾癬及び皮膚T細胞性リンパ腫などの、その病変においてIL−15が疾患の経過の間に検出される皮膚疾患を治療するためのこのペプチドの局所使用を含む。
【0021】
本発明の別の実施形態において、このペプチドは、腫瘍細胞膜において発現されるIL−15に対する可溶性IL−15Rαの結合を阻害し、腫瘍細胞移動を阻害するために使用される。
【0022】
本発明のペプチド対象物は、直鎖ペプチドであってもよく、又は二量体を形成してもよく、主に、IL−15に拮抗するその活性によって特徴付けられる。一方で、本発明のペプチド対象物のインビトロでの効果は、CTLL−2マウス細胞系及びヒトリンパ球Kit225白血病細胞系の細胞増殖アッセイにおいて実証される。
【0023】
本発明に記載されるペプチドは、国際公開第2006/029578号に記載されるペプチドのAlaスキャニングによって同定した。各々の変異ペプチドを、固相合成法によって化学的に合成した。得られたペプチドを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって精製し、95%より高い純度について、質量分析により分析した。各ペプチドを、IL−15の生物学的活性を阻害する有効性について評価した。
【0024】
本発明のペプチド対象物は、IL−15Rαによって誘発されるIL−8の発現を阻害する。この同じペプチドは、IL−15Rαによって誘発されるIL−6の発現及び腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)の放出を阻害する。
【0025】
本発明の別の実施形態において、このペプチドは遺伝子操作又は化学合成によって得られる。本発明の一実施形態において、このペプチドは、配列番号12として識別されるアミノ酸配列を含むペプチドの2分子間で形成される二量体として得られる。特定の実施形態において、この二量体は、遊離システインを介して二量体化された2つのペプチド分子から得られる。
【0026】
また、本発明の対象物は、配列番号12として記載される配列を有するペプチドをコードするデオキシリボ核酸(DNA)であり、その発現産物はIL−15Rα又はその可溶性画分に結合でき、IL−15の生物学的活性を阻害する。本発明の一実施形態において、前記DNA配列を有するベクターがこのペプチド配列の発現に使用され得る。得られた結果から、IL−15の過剰発現によって特徴付けられる、上述のような疾患を治療するための治療手段として、本発明において請求されるペプチドの使用が示唆され、IL−15アンタゴニストの使用が証明される。
【0027】
したがって、本発明の対象物はまた、IL−15Rαに依存するIL−15の生物学的活性を阻害できる治療用医薬組成物であり、前記医薬組成物は、配列番号12として配列表に記載されるアミノ酸配列を含む。本発明の一実施形態において、治療用医薬組成物は二量体化されたペプチドを含む。本発明の別の実施形態において、IL−15のIL−15Rα依存性生物学的活性を阻害できる治療用医薬組成物は、許容可能な医薬賦形剤とコンジュゲートした、又は混合した、単量体又は二量体としてのペプチドを含む。別の実施形態において、IL−15のIL−15Rα依存性生物学的活性を阻害できる治療用医薬組成物は、前記ペプチド(配列番号12)をコードする核酸鎖を含む。
【0028】
本発明の対象はまた、関節リウマチ、クローン病、乾癬及び前立腺癌を治療するための医薬を製造するための、配列番号12として配列表に記載されるアミノ酸配列を含むペプチドの使用である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】CTLL−2細胞系のIL−15誘発性増殖に対するペプチドの異なる濃度の効果を示すグラフである。CTLL−2細胞を、ペプチドの連続希釈物と混合した300pg/mLのIL−15とインキュベートした。増殖を、3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)でミトコンドリア染色を使用することによって測定した。図1A:配列番号4及び配列番号5のペプチドの評価;図1B:配列番号2及び配列番号3のペプチドの評価;図1C:配列番号7、配列番号8及び配列番号9のペプチドの評価。
【図2】ヒトIL−15Rαのペプチド結合を表すグラフである。ペプチドによるIL−15のIL−15Rαへの結合の置換をELISAによって評価した。
【図3】KiT225細胞系のIL−15誘発性増殖に対する異なるペプチド濃度の効果を示すグラフである。Kit225細胞を、ペプチドの連続希釈物と混合した300pg/mLのIL−15とインキュベートした。増殖を、MTTミトコンドリア染色を使用することによって測定した。
【図4】一定のペプチド濃度にてIL−15の異なる濃度によって誘発されるCTLL−2細胞系の増殖に対するペプチドの効果を示すグラフである。IL−15の濃度は75pg/mL(1);150pg/mL(2);300pg/mL(3)であった。
【図5】IL−15RαとインキュベートしたPC−3細胞系の細胞中のIL−8(図5A)及びIL−6(図5B)のmRNAの誘発に対するペプチドの阻害効果を示すグラフである。
【図6】ペプチドと滑液細胞とをインキュベートすることによるTNFαの放出の阻害を示すグラフである。RA患者由来の滑液細胞を、IL−15(100ng/mL)及びペプチド(65μM)と同時に48時間インキュベートした。TNFαの量をELISAによって測定した。外傷によって引き起こされる滑膜炎を示すコントロールのデータを示す。
【実施例】
【0030】
本発明を以下の具現化した例により説明する。
(例1)
IL−15Rαに結合し、IL−15の生物学的機能を阻害するIL−15ペプチドの最適化
設計
ペプチドのパネルを、国際公開第2006/029578号で請求されているペプチドの配列上の各アミノ酸をアラニン(Ala)アミノ酸で置換することによって設計した。別のペプチドのセットにおいて、システイン(Cys)をSerで置換し、LysをThr又はGluで置換した。
【0031】
ペプチド合成
ペプチドを、シリンジ中でFmoc/tBu戦略を使用することによって合成した。Fmoc−Am−MBHA樹脂を0.54mmol/gにて使用し、合成手順を機械的攪拌下で実施した。ペプチドをトリフルオロ酢酸で処理し、凍結乾燥し、HPLC及び質量分析によって更に特徴付けた。全てのペプチドを95%より高い純度で得、それらの対応する質量はそれらのアミノ酸配列について予想される通りであった。
【0032】
(例2)
CTLL−2及びKiT225細胞系の増殖に対する記載されるペプチドの効果
CTLL−2及びKiT225細胞系は、IL−15のサイトカインが存在する場合、IL−15に依存し、増殖する。IL−15に結合でき、IL−15R由来のシグナル伝達を遮断する上記の分子は、それらの2種の細胞系の増殖を阻害する。
【0033】
本発明のペプチドの中和能力を評価するために、それらのペプチドの連続希釈を、10%のウシ胎仔血清(Gibco)を添加した25μL体積のRPMI培地(Gibco)入りの96ウェルプレート(Costar,USA)中で実施した。予め洗浄したCTLL−2又はKiT225細胞を5×10細胞/ウェルにて加え、30分間インキュベートし、飽和量の300pg/mLのIL−15をウェルごとに加えた。
【0034】
ペプチドのアンタゴニスト活性もまた、各ペプチドを260μMの一定濃度にしてIL−15の濃度を変化させることにより評価した。インキュベーションを、37℃及び5%COにて72時間実施した。増殖を、MTTミトコンドリア染色法(Cosmanら、Nature 1984、312:768−771)を使用することにより評価した。MTTは生細胞のミトコンドリアデヒドロゲナーゼにより赤色のホルマザンに還元する。IC50を、300pg/mLのIL−15濃度にて各ペプチドについて測定した。
【0035】
【表1】

【0036】
このアッセイを全てのペプチドを評価するために使用して、表1に示すIC50値を得ることができた。IC50値は、Cys−Ala、Cys−Ser、Phe−Ala及びGly−Glu変異体においてペプチドの阻害効果の損失を示し、この効果はLue−Ala変異体において約50%の影響を受ける。Lys−Thr変異体に関して5倍の阻害活性を得て、Lys−Thr変異体の二量体型において15倍の阻害活性を得た。
【0037】
図1A、1B及び1Cは、Phe−Ala、Cys−Ala、Leu1−Ala、Leu2−Ala、Met−Ala、Thr−Ala及びVal−Ala変異体の異なるペプチド濃度についての576nmにおける吸光度(O.D.)の挙動を表す。図3は、単量体及び二量体としてのLys−Thr変異体の挙動を示し、ペプチドの濃度に依存する阻害効果及びLys−Thr変異体の二量体についてのより高い阻害効果を示す。
【0038】
ペプチドのアンタゴニスト活性もまた、一定のペプチド濃度にてIL−15濃度を変化させることにより評価した。図4は、IL−15濃度における変異体Lys−Thrペプチドのアンタゴニスト活性の依存を示す。
【0039】
(例3)
IL−15Raに対する結合を置換するペプチドの能力を試験するための競合ELISA
IL15−Rαに対するペプチド結合をELISAによって特徴付けた。つまり、96ウェルプレートを、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で精製したIL−15でコーティングし、PBS中で1%にてウシアルブミンを用いて遮断した。各ペプチドの希釈物をウェルに加え、プレートを37℃にて1時間インキュベートした。プレートをPBS−Tween20で洗浄し、37℃にて1時間、IL−15Rα−Fcとインキュベートした。プレートをPBS−Tween20で再び洗浄し、抗Fc−ヒトIgGペルオキシダーゼコンジュゲートを37℃にて1時間、更にインキュベートした。洗浄後、抗原−抗体反応を、基質及び3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)を加えることによって実施し、O.D.を450nmにて読み取った。結果を図2に示し、Cys−Ala変異体(配列番号5)が、IL−15のIL15−Rαへの結合を置換せず、変異体Phe−Ala(配列番号4)がIL−15を10%のみ置換することを示す。
【0040】
(例4)
前立腺癌細胞系PC−3におけるIL−6及びIL−8の発現に対するペプチド(配列番号12)の効果の評価
PC−3細胞の細胞膜におけるIL15−Rαに対するII−15の結合によって媒介される発現(Budagian V.ら、J.Biol.Chem 2004 279:42192〜42201)である、IL−6及びII−8の発現に対するペプチド(配列番号12)の効果を評価した。
【0041】
24ウェルプレート中で1.5×10細胞を、100μg/mLの配列番号1と配列番号12のペプチド、及びIL15−Rα(1ng/mL)、さらには、IL15−Rαと配列番号1と配列番号12のペプチドの組合せとインキュベートすることにより実験を実施した。RNAを、TriReagent法(Sigma)により単離し、O.D.260/280nm比を測定し、アガロースゲル電気泳動により分析した。リアルタイム逆転写及びポリメラーゼ連鎖反応を、Rotor Gene6000機器においてQuantitect Reverse Transcription Kit及びQuantiTect SYBR Green PCR(QIAGEN)を使用することにより実施した。
【0042】
図5A及び5Bは、配列番号12のペプチドが、炎症性サイトカインIL−6及びIL−8のIL15−Rαによって媒介される転写を阻害することを示す。
【0043】
(例5)
RA患者の滑液細胞において、二量体としての配列番号12のペプチドによって誘発されるIL−15媒介性TNFα産生の阻害
文書でインフォームドコンセントを取得後、RA患者から滑液を抽出し、37℃にて45分間、10μg/mLの液にてヒアルロニダーゼとインキュベートした。滑液細胞を、10分間1200rpmでの遠心分離後に取得した。細胞を、2×10細胞/ウェルにて播種した96ウェル中で、50μg/mLのペプチド及び60ng/mLのIL−15及びまたペプチドとIL−15の組合せとインキュベートした。48時間のインキュベーション後、上清を回収し、評価するまで−70℃で保存した。TNFαの量をELISA(R&D DTA50)により定量した。
【0044】
図6は、配列番号12のペプチドが、RA患者の滑液細胞中でTNFα分泌を阻害することを示す。
【0045】
(例6)
ヒト乾癬の異種移植SCIDマウスモデル
2〜3ヶ月齢のSCIDマウスに、乾癬患者からの1.5cm×1.5cmの植皮を移植した。3週間後、マウスを無作為化し、3群に分けた:2週間隔日で、プラセボ、10mg/kg体重の配列番号12のペプチドで処置したマウス、及び10mg/kgのシクロスポリンAで処置したマウス。最後の注射から1週間後にマウスを屠殺し、4mmの生検を各々の異種移植から取得した。生検をパラフィンで包埋するためにホルマリンで固定し、ヘマトキシリンエオシン色素(H&E)で染色した。
【0046】
結果として、配列番号12又は二量体としてのペプチドで処置したマウスに由来する乾癬患者からの植皮が、疾患の重症度の減少、表皮の厚さの著しい減少、著しく減少した数の炎症細胞及びケラチノサイトの周期並びに乾癬病巣において低い悪性度の錯角化を示すことを観察した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号12として配列表に記載されるアミノ酸配列を含むことを特徴とする、IL−15の活性に拮抗するペプチド。
【請求項2】
IL−15の細胞受容体のアルファサブユニット(IL−15Rα)又はその可溶性画分に結合できる、請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
IL−15Rαに依存するIL−15の生物学的活性を阻害する、請求項1に記載のペプチド。
【請求項4】
IL−15Rαによって媒介されるIL−8の発現を阻害する、請求項1に記載のペプチド。
【請求項5】
IL−15Rαによって媒介されるIL−6の発現を阻害する、請求項1に記載のペプチド。
【請求項6】
IL−15によって媒介される腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)の放出を阻害する、請求項1に記載のペプチド。
【請求項7】
遺伝子操作又は化学合成によって得られる、請求項1から6までに記載のペプチド。
【請求項8】
2つのペプチド分子の二量体として得られ、配列番号12として配列表に記載されるアミノ酸配列を含む、請求項7に記載のペプチド。
【請求項9】
前記二量体は、前記ペプチドの2分子において遊離システインを介する二量体化によって得られる、請求項8に記載のペプチド。
【請求項10】
配列番号12として配列表に記載されるアミノ酸配列を含むペプチドをコードし、その発現産物が、IL−15の細胞受容体のアルファサブユニット又はその可溶性画分に結合でき、IL−15の生物学的活性を阻害することを特徴とする配列核酸鎖。
【請求項11】
IL−15の受容体のアルファサブユニットに依存するIL−15の生物学的活性を阻害でき、発現ベクターの一部である、請求項10に記載の配列核酸鎖。
【請求項12】
IL−15の細胞受容体のアルファサブユニットに依存するIL−15の生物学的活性を阻害できる治療用医薬組成物であって、配列番号12として配列表に記載されるアミノ酸配列を含むペプチドを含む上記治療用医薬組成物。
【請求項13】
二量体として配列番号12のペプチドを含む、請求項12に記載の治療用医薬組成物。
【請求項14】
単量体として、若しくはコンジュゲートされた二量体として配列番号12のペプチドを含むか、又は許容可能な医薬賦形剤と混合される、請求項12に記載の治療用医薬組成物。
【請求項15】
IL−15の細胞受容体のアルファサブユニットに依存するIL−15の生物学的活性を阻害できる、治療用医薬組成物であって、請求項10に記載の核酸鎖を含む上記治療用医薬組成物。
【請求項16】
関節リウマチを治療するための医薬を製造するための、配列番号12として配列表に記載されるアミノ酸配列を含むペプチドの使用。
【請求項17】
クローン病を治療するための医薬を製造するための、配列番号12として配列表に記載されるアミノ酸配列を含むペプチドの使用。
【請求項18】
乾癬を治療するための医薬を製造するための、配列番号12として配列表に記載されるアミノ酸配列を含むペプチドの使用。
【請求項19】
前立腺癌を治療するための医薬を製造するための、配列番号12として配列表に記載されるアミノ酸配列を含むペプチドの使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−503976(P2012−503976A)
【公表日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−528178(P2011−528178)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【国際出願番号】PCT/CU2009/000006
【国際公開番号】WO2010/037351
【国際公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(304012895)セントロ デ インジエニエリア ジエネテイカ イ バイオテクノロジア (46)
【Fターム(参考)】