説明

インターロイキン−33(IL33)およびIL−33レセプター複合体の使用

【課題】炎症性障害および免疫障害の処置のためにIL−33またはIL−33レセプターのアゴニストおよびアンタゴニストを使用する方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、IL−33もしくはIL−33レセプターのアゴニストまたはアンタゴニスト(IL−100およびIL−100レセプターとして公知である)が、多くの免疫状態および炎症性状態に対する応答を調節するという知見に、部分的に基づく。例えば、免疫障害および炎症障害(腫瘍および癌を含む)を処置するという目的のために、サイトカイン活性を調節する方法が提供される。IL−33およびIL−33レセプターのアゴニストまたはアンタゴニストを投与する方法もまた、提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、一般的に、哺乳動物サイトカインの使用に関する。より具体的には、本発明は、IL−33およびIL−33に対するレセプターを使用する方法を開示する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
免疫系は、個体を感染性因子(例えば、細菌、多細胞生物)ならびに癌から保護する。この系は、いくつかの型のリンパ系細胞および骨髄性細胞(例えば、単球、マクロファージ、樹状細胞(DC)、好酸球、T細胞、B細胞、および好中球)を包含する。これらのリンパ系細胞および骨髄性細胞は、多くの場合、サイトカインとして公知のシグナル伝達タンパク質を産生する。免疫応答は、炎症(すなわち、身体の全身的か、または特に局所における免疫細胞の蓄積)を包含する。感染性因子または外来物質に応答して、免疫細胞は、サイトカインを分泌し、次いでサイトカインは、免疫細胞の増殖、発生、分化、または移動を調節する。免疫応答は、ときとして、病理学的な結果(すなわち、炎症性障害)をもたらす。免疫細胞およびサイトカインに関するこれらの炎症性障害としては、例えば、乾癬、慢性関節リウマチ、クローン病、多発性硬化症、およびアテローム性動脈硬化症が挙げられる(例えば、非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5;非特許文献6;非特許文献7;非特許文献8;非特許文献9を参照のこと)。
【0003】
サイトカインのインターロイキン−1(IL−1)ファミリーは、炎症性障害および増殖性の状態(例えば、関節炎および癌)の病理に寄与する。IL−1ファミリーのサイトカインとしては、IL−1α、IL−1β、IL−1δ、IL−1ε、塩基性線維芽細胞成長因子、IL−18、CREGおよびCREG2が挙げられる。IL−1αおよびIL−1βは、31kDaのポリペプチドとして生合成され、これらは成熟17kDa形態にさらに処理されるが、IL−1δおよびIL−1εは、別個の前駆形態を持たないようである(例えば、非特許文献10;非特許文献11;非特許文献12;非特許文献13を参照のこと)。
【0004】
上記IL−1ファミリーとしてはまた、IL−1レセプター(すなわち、IL−1RI、IL−1RII、およびIL−1R補助タンパク質(それぞれ、いわゆるIL−1RI、IL−1R2、およびIL−1R3)が挙げられる。IL−1αおよびIL−1βは、IL−1R1と結合することによって細胞シグナル伝達を引き起こすが、IL−1RIIは、循環するリガンドを吸着する分子として機能し得る。IL−1レセプターアンタゴニスト(IL−1Ra)(別のIL−1ファミリーのタンパク質)は、シグナルを伝達せずにIL−1レセプターと結合し、そしてIL−1のインヒビターとして役目を果たす。IL−1raおよびIL−1δは、レセプターを介するシグナル伝達のアンタゴナイズにおいて同様の役割を果たす(すなわち、IL−1raは、IL−1R1を介してIL−1α媒介性シグナル伝達をアンタゴナイズする一方で、IL−1δは、IL−1R6を介してIL−1ε媒介性シグナル伝達をアンタゴナイズする)(例えば、非特許文献14;非特許文献10;非特許文献15;非特許文献16を参照のこと)。
【0005】
IL−1ファミリーメンバーは、炎症性状態(例えば、慢性関節リウマチ、乾癬、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、敗血症、および炎症性腸障害(IBD)において役割を果たす。慢性関節リウマチ(RA)は、関節(例えば、滑膜、軟骨、および骨)の分解によって特徴付けられる一般的な慢性炎症性障害である。この障害は、約1%の人口を襲い、そして治癒され得ない。IL−1は、関節炎の炎症に関する多くの細胞(例えば、線維芽細胞、骨芽細胞、軟骨細胞、および好中球)を刺激し、これらの細胞は、異常増殖を示し得、そして関節の破壊を引き起こす酵素の放出し得る(例えば、非特許文献17;非特許文献18;非特許文献19;非特許文献20;非特許文献21;非特許文献22;非特許文献23;非特許文献24;非特許文献25;非特許文献26;非特許文献18(前出);非特許文献27;非特許文献28を参照のこと)。
増殖性の障害は、米国における死亡の第2の最も一般的な原因である(非特許文献29;非特許文献30;非特許文献31;非特許文献32)。上記IL−1ファミリーのサイトカインは、増殖性の障害(すなわち、癌)の制御および病理に関係している。IL−1は、細胞周期(例えば、サイクリン依存性キナーゼおよびサイクリン依存性キナーゼインヒビターの発現を変化させること)によって進行を調節する。高用量のIL−1βは、腫瘍の侵襲性を促進するが、低用量は、腫瘍の免疫性の排除を促進し得る(例えば、非特許文献33;非特許文献34;非特許文献35;非特許文献36;非特許文献15(前出);非特許文献37;非特許文献38;非特許文献39;非特許文献40;非特許文献41を参照のこと)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Abbasら(編)「Cellular and Molecular Immunology」、W.B.Saunders Co.、Philadelphia、PA、2000年
【非特許文献2】OppenheimおよびFeldmann(編)「Cytokine Reference」、Academic Press、San Diego、CA、2001年
【非特許文献3】Kaufmannら「Immunobiol.」、2001年、第204巻、603〜613ページ
【非特許文献4】SaurezおよびSchultz−Cheery「Dev.Comp.Immunol.」、2000年、第24巻、269〜283ページ
【非特許文献5】van ReethおよびNauwynck「Vet.Res.」、2000年、第31巻、187〜213ページ
【非特許文献6】Garcia−Sastre「Virology」、2001年、第279巻、375〜384ページ
【非特許文献7】Katzeら「Nat.Rev.Immunol.」、2002年、第2巻、675〜687ページ
【非特許文献8】van Reeth「Vet.Microbiol.」、2000年、第74巻、109〜116ページ
【非特許文献9】Tripp「Curr.Pharm.Des.」、2003年、第9巻、51〜59ページ
【非特許文献10】Debetsら「J.Immunol.」、2001年、第167巻、1440〜1446ページ
【非特許文献11】McMahonら「J.Biol.Chem.」、1997年、第272巻、28202〜28205ページ
【非特許文献12】Irikuraら「New Engl.J.Med.」、2002年、第169巻、393〜398ページ
【非特許文献13】Kimら「J.Biol.Chem.」、2002年、第277巻、10998〜11003ページ
【非特許文献14】Youら「New Engl.J.Med.」、2001年、第193巻、101〜109ページ
【非特許文献15】ApteおよびVoronov「Sem.Cancer Biol.」、2002年、第12巻、277〜290ページ
【非特許文献16】Wongら「Proc.Natl.Acad.Sci.USA」、1997年、第94巻、227〜232ページ
【非特許文献17】Debetsら「J.Immunol.」、1997年、第158巻、2955〜2963ページ
【非特許文献18】Laceyら「Arthritis Rheum.」、2003年、第48巻、103〜109ページ
【非特許文献19】Chung「Eur.Resp.J.」、2001年、補遺34、50s〜59sページ
【非特許文献20】FreemanおよびBuchman「Expert Opin.Biol.Ther.」、2001年、第1巻、301〜308ページ
【非特許文献21】Dinarello「Chest」、2000年、第118巻、503〜508ページ
【非特許文献22】Krauseら「J.Immunol.」、2002年、第169巻、6610〜6616ページ
【非特許文献23】ChoyおよびPanayi「New Engl.J.Med.」、2001年、第344巻、907〜916ページ
【非特許文献24】Woolley「New Engl.J.Med.」、2003年、第348巻、1709〜1711ページ
【非特許文献25】Williamsら、「New Engl.J.Med.」、2000年、第164巻、7240〜7245ページ
【非特許文献26】FeldmannおよびMaini「Annu.Rev.Immunol.」、2001年、第19巻、163〜196ページ
【非特許文献27】Nikiら「J.Clin.Invest.」、2001年、第107巻、1127〜1135ページ
【非特許文献28】Atturら「J.Biol.Chem.」、2000年、第51巻、40307〜40315ページ
【非特許文献29】Anderson「National Vital Statistics Reports」、2002年、第50巻、1〜86ページ
【非特許文献30】ToribaraおよびSleisenger「New Engl.J.Med.」、2003年、第332巻、861〜867ページ
【非特許文献31】JanneおよびMayer「New Engl.J.Med.」、2000年、第342巻、1960〜1968ページ
【非特許文献32】FuchsおよびMayer「New Engl.J.Med.」、1995年、第333巻、32〜41ページ
【非特許文献33】Zeislerら「Eur.J.Cancer」、1998年、第34巻、931〜933ページ
【非特許文献34】Yoshidaら「Brit.J.Cancer」、2002年、第86巻、1396〜1400ページ
【非特許文献35】Nesbitら「Oncogene」、1999年、第18巻、6469〜6476ページ
【非特許文献36】Dinarelloら「J.Leuko.Biol.」、1998年、第63巻、658〜664ページ
【非特許文献37】Saijoら「New Engl.J.Med.」、2002年、第169巻、469〜475ページ
【非特許文献38】Muraiら「J.Biol.Chem.」、2001年、第276巻、6797〜6806ページ
【非特許文献39】Koudssiら「J.Biol.Chem.」、1998年、第273巻、25796〜25803ページ
【非特許文献40】Zekiら「J.Endocrinol.」、1999年、第160巻、67〜73ページ
【非特許文献41】Osawaら「J.Biochem.」、2000年、第127巻、883〜893ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
炎症性障害および免疫障害を処置することに対する、未だに満たされない必要性が存在する。本発明は、IL−33またはIL−33レセプターのアゴニストおよびアンタゴニストを使用する方法を提供することによって、上記必要性を満たす。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の要旨)
本発明は、IL−33もしくはIL−33レセプターのアゴニストまたはアンタゴニスト(IL−100およびIL−100レセプターとして公知である)が、多くの免疫状態および炎症性状態に対する応答を調節するという知見に、部分的に基づく。
【0009】
本発明は、免疫障害または免疫状態を調節する方法を提供し、この方法は、有効量の、IL−33もしくはIL−33R複合体のアゴニストまたはアンタゴニストを投与する工程を包含する。上記障害または状態が、以下:a)先天的応答;b)喘息またはアレルギー;c)多発性硬化症;d)炎症性腸障害;e)関節炎;f)感染;g)癌または腫瘍を含む、上記の方法もまた提供される。上記感染が、以下:a)細胞内病原体;b)細菌;c)寄生生物;またはd)ウイルスを含む、上記の方法;およびこの細胞内病原体が、以下:a)Leishmania sp.;b)Mycobacterium sp.;c)Listeria sp.;d)Toxoplasma sp.;e)Schistosoma;またはf)呼吸器ウイルスである、上記の方法が、さらに提供される。さらに、本発明は、上記免疫障害または免疫状態がTH1型応答またはTH2型応答を含む上記の方法;およびこのTH2型応答がTH2型応答の初期の事象を含む、上記の方法;ならびに上記関節炎が慢性関節リウマチ;変形性関節症;または乾癬性関節炎を含む上記の方法を提供する。
【0010】
別の実施形態において、本発明は、アゴニストがIL−33または核酸を含む上記の方法;およびこの核酸がIL−33をコードする上記の方法;および上記アンタゴニストがIL−33またはIL−33の複合体、T1/ST2およびSIGIRR(IL−33R)に特異的に結合する抗体から得た結合組成物を含む上記の方法を提供する。なお別の実施形態において、本発明は、抗体から得た上記結合組成物がポリクローナル抗体;モノクローナル抗体;ヒト化抗体、もしくはそのフラグメント;Fabフラグメント、Fvフラグメント、もしくはF(ab’)フラグメント;抗体のペプチド模倣体;または検出可能な標識を含む上記の方法を提供する。上記アンタゴニストが、以下:a)可溶性IL−33R;b)低分子;またはc)核酸を含む上記の方法;ならびにこの核酸がIL−33をコードするポリヌクレオチドと特異的にハイブリダイズする上記の方法;およびこの核酸がアンチセンス核酸または低分子干渉RNA(siRNA)を含む上記の方法もまた、提供される。
【0011】
別の局面において、本発明は、有効量のIL−33のアゴニストまたはアンタゴニストを投与する工程を包含する、血球数を調節する方法;およびこのIL−33アゴニストが白血球;好中球;リンパ球;または好酸球の総数を増大させる上記の方法;ならびにこのIL−33アンタゴニストが血小板の数を増大させる上記の方法;およびこのIL−33アンタゴニストが白血球;好中球;リンパ球;または好酸球の総数を減少させる上記の方法を提供する。
【0012】
本発明のなお別の局面は、上記の免疫状態または免疫障害を診断する方法を提供し、この方法は、生物学的サンプルに、IL−33に特異的に結合する結合組成物を接触させる工程、およびこの生物学的サンプルに対するこの結合組成物の特異的結合を、測定または決定する工程を包含する。請求項1に記載の免疫状態または免疫障害の診断のためのキットもまた提供され、このキットは、コンパートメントと、およびIL−33;IL−33R複合体;IL−33およびIL−33Rの複合体;またはIL−33をコードする核酸に特異的に結合する結合組成物とを備える。
本発明は例えば、以下の項目を提供する:
(項目1)
免疫障害または免疫状態を調節する方法であって、該方法は、
有効量のIL−33レセプター複合体(IL−33R)のIL−33のアゴニストまたはアンタゴニストを投与する工程
を包含する、方法。
(項目2)
前記障害または状態が、
a)先天性応答;
b)喘息またはアレルギー;
c)多発性硬化症;
d)炎症性腸障害;
e)関節炎;
f)感染;
g)癌または腫瘍
を含む、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記感染が、
a)細胞内病原体;
b)細菌;
c)寄生生物;または
d)ウイルス
を含む、項目2に記載の方法。
(項目4)
前記細胞内病原体が、
a)Leishmania sp.;
b)Mycobacterium sp.;
c)Listeria sp.;
d)Toxoplasma sp.;
e)Schistosoma;または
f)呼吸器ウイルス
である、項目3に記載の方法。
(項目5)
前記免疫障害または免疫状態が、
a)TH1型応答;または
b)TH2型応答
を含む、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記TH2型応答が、TH2型応答の初期事象を含む、項目5に記載の方法。
(項目7)
前記関節炎が、
a)慢性関節リウマチ;
b)変形性関節症;または
c)乾癬性関節炎
を含む、項目1に記載の方法。
(項目8)
前記アゴニストが、
a)IL−33;または
b)核酸
を含む、項目1に記載の方法。
(項目9)
前記核酸がIL33をコードする、項目8に記載の方法。
(項目10)
前記アンタゴニストが、
a)IL−33;
b)IL−33R複合体;または
c)IL−33およびIL−33Rの複合体
に特異的に結合する抗体由来の結合組成物を含む、項目1に記載の方法。
(項目11)
前記抗体由来の結合組成物が、
a)ポリクローナル抗体;
b)モノクローナル抗体;
c)ヒト化抗体、またはそのフラグメント;
d)Fabフラグメント、Fvフラグメント、またはF(ab’)フラグメント;
e)抗体のペプチド模倣体;あるいは
f)検出可能な標識
を含む、項目10に記載の方法。
(項目12)
前記アンタゴニストが、
a)可溶性IL−33R;
b)低分子;または
c)核酸
を含む、項目12に記載の方法。
(項目13)
前記核酸が、IL−33をコードするポリヌクレオチドと特異的にハイブリダイズする、項目12に記載の方法。
(項目14)
前記核酸が、
a)アンチセンス核酸;または
b)低分子干渉RNA(siRNA)
を含む、項目13に記載の方法。
(項目15)
血球数を調節する方法であって、該方法は、
有効量のIL−33のアゴニストまたはアンタゴニストを投与する工程
を包含する、方法。
(項目16)
前記IL−33アゴニストが、
a)全白血球;
b)好中球;
c)リンパ球;または
d)好酸球
の数を増加させる、項目15に記載の方法。
(項目17)
前記IL−33アンタゴニストが、血小板の数を増加させる、項目15に記載の方法。
(項目18)
前記IL−33アンタゴニストが、
a)全白血球;
b)好中球;
c)リンパ球;または
d)好酸球
の数を減少させる、項目16に記載の方法。
(項目19)
項目1に記載の免疫状態または免疫障害を診断する方法であって、該方法は、
結合組成物を生物学的サンプルに接触させる工程であって、該結合組成物は、IL−33に特異的に結合する、工程、および
該結合組成物の該生物学的サンプルへの特異的結合を測定または決定する工程
を包含する、方法。
(項目20)
項目1に記載の免疫状態または免疫障害の診断をするためのキットであって、該キットは、
コンパートメント;および
結合組成物であって、
a)IL−33;
b)IL−33R複合体;
c)IL−33およびIL−33Rの複合体;または
d)IL−33をコードする核酸
に特異的に結合する、結合組成物
を備える、キット。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、IL−33+抗IL−33抗体処置マウス対IL−33単独処置マウスおよびアイソタイプコントロール抗体処置マウスにおけるIL−5の産生を示す。
【図2】図2は、抗IL−33処置マウスおよびアイソタイプコントロール処置マウスについてのCIA疾患スコアを示す。
【図3】図3は、抗IL−33処置マウスおよびアイソタイプコントロール処置マウスにおけるCIAの発生率を示す。
【図4】図4は、抗IL−33抗体またはアイソタイプコントロール抗体によって処置したマウス関節炎の肢の平均の数を示す。
【図5】図5は、抗IL−33処置マウスおよびアイソタイプコントロール処置マウスのEAE疾患のスコアを示す。
【図6】図6は、抗IL−33処置マウスおよびアイソタイプコントロール処置マウスのEAEの発生率を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(好ましい実施形態の詳細な説明)
添付の特許請求の範囲を含む本明細書において使用される場合、「a」、「an」および「the」のような単語の単数形態は、文脈が明らかにそうでないことを示さない限り、それらの対応する複数形の言及を包含する。
本明細書において引用される全ての参考文献は、あたかも各個々の刊行物または特許出願が、具体的かつ独立して参考として援用されることが示されるのと同じ程度に、本明細書において参考として援用される。
【0015】
(I.定義)
「活性化」、「刺激」および「処置」とは、細胞またはレセプターに対して適用される場合、文脈によってそうでないことが示されないか、または明示的にそうでないことが示されない限り、同じ意味(例えば、リガンドでの細胞またはレセプターの活性化、刺激または処置)を有し得る。「リガンド」は、天然リガンドおよび合成リガンド(例えば、サイトカイン、サイトカイン改変体、アナログ、ムテイン、および抗体由来の結合組成物)を包含する。「リガンド」はまた、低分子(例えば、サイトカインのペプチド模倣体、および抗体のペプチド模倣体)も包含する。「活性化」は、内部機構ならびに外部機構または環境因子によって調節される場合の細胞の活性化について言及し得る。例えば、細胞、組織、器官または生物の「応答」は、生化学的挙動または生理学的挙動(例えば、生物学的画分内の濃度、密度、接着または移動、遺伝子発現の速度、あるいは分化の状態)の変化を包含し、ここで、この変化は、活性化、刺激または処置、あるいは遺伝的プログラミングのような内部機構と相関する。
【0016】
分子の「活性」とは、リガンドもしくはレセプターに対する分子の結合、触媒活性;遺伝子発現もしくは細胞シグナル伝達、分化、または成熟を刺激する能力;抗原性活性、他の分子の活性の調節などを説明し得るか、あるいはこれらについていい得る。分子の「活性」はまた、細胞−細胞相互作用(例えば、接着)を調節もしくは維持する活性、または細胞の構造(例えば、細胞膜または細胞骨格)を維持する活性についていい得る。「活性」はまた、比活性(例えば、[触媒活性]/[mgタンパク質]、または[免疫学的活性]/[mgタンパク質]、生物学的画分における濃度など)を意味し得る。「増殖活性」は、例えば、正常な細胞分裂、ならびに癌、腫瘍、異形成、細胞形質転換、転移、および新脈管形成を増強する活性(すなわち、これらに必要とされるか、またはこれらに特異的に関連する活性)を包含する。
【0017】
「投与」および「処置(処理)」とは、例えば、動物、ヒト、実験被験体、細胞、組織、器官または生物学的流体にIL−33のアゴニストまたはアンタゴニストの投与を適用する場合、外因性の薬学的因子、治療因子、診断因子、化合物または組成物の、動物、ヒト、被験体、細胞、組織、器官または生物学的流体への接触をいう。「投与」および「処置(処理)」は、例えば、治療的方法、プラシーボ方法、薬物動態学的方法、診断方法、研究方法および実験方法をいい得る。「細胞の処理」とは、細胞への試薬の接触ならびに流体への試薬の接触(ここで、この流体は細胞と接触している)を包含する。「投与」および「処置(処理)」はまた、インビトロ処置(処理)またはエキソビボ処置(処理)(例えば、試薬、診断、結合組成物、または別の細胞による細胞の処理)を意味する。ヒト被験体、獣医学的被験体または研究用被験体に適用される場合、「処置(処理)」とは、研究用途および診断用途のための治療的処置、予防的処置、または予防手段をいう。ヒト被験体、獣医学的被験体または研究用被験体、または細胞、組織もしくは器官に適用される場合、「処置(処理)」は、IL−33アゴニストまたはIL−33アンタゴニストと、ヒト被験体もしくは動物被験体、細胞、組織、生理学的コンパートメント、生理学的流体との接触を包含する。「細胞の処理」はまた、IL−33アゴニストまたはIL−33アンタゴニストが(例えば、流体相またはコロイド相において)IL−33レセプター(T1/ST2)に接触する状況、ならびにアゴニストまたはアンタゴニストが流体(例えば、ここでこの流体は細胞またはレセプターと接触している)に接触するが、このアゴニストまたはアンタゴニストが、細胞またはレセプターと接触しているということは実証されていない状況を包含する。
【0018】
「結合組成物」とは、標的に結合可能な、分子、低分子、高分子、抗体、そのフラグメントもしくはアナログ、または可溶性レセプターをいう。ここで、この標的は、例えば、IL−33またはIL−33Rである。「結合組成物」はまた、標的に結合可能な、分子の複合体(例えば、非共有結合性の複合体)、イオン化分子、および共有結合的に修飾された分子もしくは非共有結合的に修飾された分子(例えば、リン酸化、アシル化、架橋、環化または限定切断による修飾)をいい得る。「結合組成物」はまた、標的に結合可能な、安定剤、賦形剤、塩、緩衝剤、溶媒または添加剤と組み合わせた分子をいい得る。「結合する」とは、標的との結合組成物の会合として定義され得、ここで、この結合組成物が溶液中に溶解または懸濁され得る場合に、この会合は結合組成物の正常なブラウン運動の縮小をもたらす。
【0019】
「保存的に修飾された改変体」は、アミノ酸配列および核酸配列の両方に適用される。特定の核酸配列に関して、保存的に修飾された改変体とは、同じアミノ酸配列または本質的に同じアミノ酸配列をコードする核酸、または核酸がアミノ酸配列をコードしない場合、本質的に同じ核酸配列をいう。遺伝暗号の縮重のために、多数の機能的に同じ核酸が任意の所定のタンパク質をコードし得る。アミノ酸配列については、当業者は、1個のアミノ酸または少ない割合のアミノ酸を、コードされた配列において保存されたアミノ酸と置換する、核酸配列、ペプチド配列、ポリペプチド配列またはタンパク質配列への個々の置換が「保存的に修飾された改変体」であるということを認識する。機能的に類似のアミノ酸を提供する保存的置換の表も、当該分野において周知である。保存的置換の例は、以下の群のうちの一つのアミンの酸の、同じ群の別のアミノ酸への交換である(Leeらに発行された米国特許第5,767,063号、KyteおよびDoolittle(1982)J.Mol.Biol.157:105−132):
(1)疎水性:ノルロイシン、Ile、Val、Leu、Phe、CysまたはMet;(2)中性で親水性:Cys、Ser、Thr;
(3)酸性:Asp、Glu;
(4)塩基性:Asn、Gln、His、Lys、Arg;
(5)鎖の配向に影響する残基:Gly、Pro;
(6)芳香性:Trp、Tyr、Phe;
(7)低分子アミノ酸:Gly、Ala、Ser。
【0020】
「由来する」とは、例えば、親ペプチド、親オリゴヌクレオチド、または親ポリペプチド(例えば、抗体)からのペプチド、オリゴペプチドまたはポリペプチドの構造に由来することを説明するために使用され得る。この文脈において、由来するとは、例えば、ペプチドが親において見出される配列と同一の配列を有する場合のペプチド構造、例えば、ペプチドが親に同一であるが、親のN末端、C末端またはN末端およびC末端の両方で切断を有するか、あるいは切断および融合を有するか、あるいは融合のみを有するペプチド構造を包含する。由来するはまた、そのペプチドが親において見出されるのと同一の配列を有するが、保存的なアミノ酸の交換あるいは欠失または挿入を有するペプチドを意味し、ここでこの欠失または挿入は、親に固有であるペプチドの生物学的特性を保つ。「由来する」は、このペプチドまたはポリペプチドが親を開始化合物として使用して合成される状況、およびこのペプチドまたはポリペプチドが親の構造を誘導装置として使用して新規に合成される状況を包含する。
【0021】
本発明のIL−33のアゴニストまたはアンタゴニストの「有効量」または「治療有効量」とは、障害または生理学的な状態の症状または兆候を改善するのに十分な量、あるいは障害または生理学的な状態の診断を可能にするか、または容易にするのに十分な量を意味する。特定の患者または獣医学的な被験体についての有効量は、処置される状態、患者の全体的な健康状態、投与の方法経路および用量、ならびに副作用の重篤度のような因子に依存して変動し得る(例えば、Nettiらに発行された米国特許第5,888,530号を参照のこと)。有効量は、最大用量あるいは重大な副作用または毒性作用を避ける投薬プロトコルであり得る。この作用は診断手段、パラメーターまたは検出可能なシグナルの、少なくとも5%、通常は少なくとも10%、より通常は少なくとも20%、最も通常は少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、最も好ましくは少なくとも60%、理想的には少なくとも70%、より理想的には少なくとも80%、最も理想的には少なくとも90%の改善(ここで、100%は正常な被験体によって示される診断パラメーターとして定義される)をもたらす(例えば、Maynardら(1996)A Handbook of SOPs for Good Clinical Practice,Interpharm Press,Boca Raton,FL;Dent(2001)Good Laboratory and Good Clinical Practice,Urch Publ.,London,UKを参照のこと)。
【0022】
「外因性の」とは、文脈により、生物、細胞またはヒトの身体の外側で生成される物質をいう。「内因性の」とは、文脈により、細胞、生物またはヒトの身体の内側で生成される物質をいう。
【0023】
「障害」とは、病理学的状態、または病理学的状態に相関しているか、もしくは病理学的状態になりやすい状態についていう。「感染性障害」とは、例えば、微生物、細菌、寄生生物、ウイルスなどから生じる障害、およびこの障害に対する不適切な免疫応答、効果の無い免疫応答、または異常な免疫応答をいう。「腫瘍形成障害」とは、癌、形質転換細胞、腫瘍、異形成(displasia)、新脈管形成、転移など、およびこの障害に対する不適切な免疫応答、効果の無い免疫応答、または異常な免疫応答を包含する。
【0024】
「有効量」とは、例えば、障害、状態、または病理学的状態の症状または徴候を改善するのに十分な、IL−33アゴニスト、IL−33アンタゴニスト、結合化合物または結合組成物の量を意味する。「有効量」はまた、障害、状態、または病理学的状態の症状または徴候の診断を可能にするか、あるいは容易にするのに十分な、IL−33アゴニスト、IL−33アンタゴニスト、または結合化合物もしくは組成物の量にも関する。
【0025】
「インヒビター」および「アンタゴニスト」あるいは「活性化因子」および「アゴニスト」は、それぞれ阻害分子または(例えば、(例えばリガンド、レセプター、補因子、遺伝子、細胞、組織または器官の)活性化のための)活性化分子をいう。例えば、遺伝子、レセプター、リガンドまたは細胞の調節因子は、遺伝子、レセプター、リガンドまたは細胞の活性を変更する分子であり、ここで、活性はその調節特性において活性化、阻害または変更され得る。この調節因子は、単独で作用し得るか、または補因子(例えば、タンパク質、金属イオンまたは低分子)を使用し得る。インヒビターは、例えば、遺伝子、タンパク質、リガンド、レセプターまたは細胞の活性を減少、ブロック、阻止、遅延、不活性化、減感、または下方制御する化合物である。活性化因子は、例えば、遺伝子、タンパク質、リガンド、レセプターまたは細胞の活性を、増大、活性化、促進、増強、増感、または上方制御する化合物である。インヒビターまたは、構成的な活性を減少、ブロック、または不活性化する組成物としても定義され得る。「アゴニスト」とは、標的と相互作用し、標的の活性化の増大を引き起こすか、または促進する化合物である。「アンタゴニスト」は、アゴニストの作用を対抗する化合物である。アンタゴニストは、アゴニストの活性を阻止、減少、阻害または中和する。アンタゴニストはまた、同定されたアゴニストが無い場合でさえ、標的(例えば、標的レセプター)の構成的な活性を、阻止、阻害または減少し得る。
【0026】
阻害の程度を検査するために、例えば、所定のタンパク質、遺伝子、細胞、または生物を含むサンプルまたはアッセイは、強力な活性化因子また強力なインヒビターによって処理され、そしてインヒビターを含まないコントロールサンプルと比較される。コントロールサンプル(すなわち、アンタゴニストによって処理されない)は、100%の相対活性値を示す。阻害は、コントロールに対する活性値が約90%以下であり、代表的には85%以下であり、より代表的には80%以下であり、最も代表的には75%以下であり、一般的には70%以下であり、より一般的には65%以下であり、最も一般的には60%以下であり、代表的には55%以下であり、通常では50%以下であり、より通常では45%以下であり、最も通常では40%以下であり、好ましくは35%以下であり、より好ましくは30%以下であり、さらにより好ましくは25%以下であり、そして最も好ましくは25%未満である場合に達成される。活性化は、コントロールに対する活性値が、約110%であり、一般的には少なくとも120%であり、より一般的には少なくとも140%であり、より一般的には少なくとも160%であり、多くの場合は少なくとも180%であり、より多くの場合は少なくとも2倍であり、最も多くの場合は少なくとも2.5倍であり、通常では少なくとも5倍であり、より通常では少なくとも10倍であり、好ましくは少なくとも20倍であり、より好ましくは少なくとも40倍であり、そして最も好ましくは40倍を超える場合に達成される。
【0027】
活性化または阻害における終末点は、以下の通りにモニタリングされ得る。例えば、細胞、生理学的流体、組織、器官、および動物被験体またはヒト被験体の、活性化、阻害および処置に対する応答は、終末点によってモニタリングされ得る。この終末点は、例えば、炎症、発癌性、または細胞の脱顆粒もしくは細胞の分泌(例えば、サイトカイン、有毒な酸素、またはプロテアーゼの放出)の印の所定の量または割合を含み得る。この終末点は、例えば、イオンの流れまたはイオンの輸送;細胞移動;細胞接着;細胞増殖;転移の可能性;細胞分化;および表現型の変化(例えば、炎症、アポトーシス、形質転換、細胞周期、または転移に関する遺伝子の発現における変化)の所定の量を含み得る(例えば、Knight(2000)Ann.Clin.Lab.Sci.30:145−158;HoodおよびCheresh(2002)Nature Rev.Cancer 2:91−100;Timmeら、(2003)Curr.Drug Targets 4:251−261;RobbinsおよびItzkowitz(2002)Med.Clin.North Am.86:1467−1495;GradyおよびMarkowitz(2002)Annu.Rev.Genomics Hum.Genet.3:101−128;Bauerら、(2001)Glia 36:235−243;StanimirovicおよびSatoh(2000)Brain Pathol.10:113−126を参照のこと)。
【0028】
阻害の終末点は、一般的にコントロールの75%以下であり、好ましくはコントロールの50%以下であり、より好ましくはコントロールの25%以下であり、そして最も好ましくはコントロールの10%以下である。一般的に、活性化の終末点は、コントロールの少なくとも150%であり、好ましくはコントロールの少なくとも2倍であり、より好ましくはコントロールの少なくとも4倍であり、そして最も好ましくはコントロールの少なくとも10倍である。
【0029】
「発現」とは、特異的遺伝子によってコードされるmRNAまたはポリペプチドの測定をいう。発現の単位は、細胞、組織、細胞抽出物、または組織抽出物による発現の測定における、タンパク質1mgあたりの、mRNAまたはポリペプチドの分子の数、細胞1個あたりのmRNAまたはポリペプチドの分子の数の測定であり得る。発現の単位は、相対的であり得、例えば、コントロール哺乳動物および実験哺乳動物からのシグナルの比較、またはmRNAまたはポリペプチドに非特異的である試薬に対する、mRNAまたはポリペプチドに特異的である試薬を用いたシグナルの比較である。
【0030】
特異的または選択的である「ハイブリダイゼーション」は、代表的に少なくとも約30ヌクレオチドの伸展に対して少なくとも約55%の相同性であり、好ましくは約25ヌクレオチドの伸展に対して少なくとも約75%の相同性であり、そして最も好ましくは約20ヌクレオチドに対して少なくとも約90%の相同性である場合に起こる(例えば、Kanehisa(1984)Nucleic Acids Res.12:203−213を参照のこと)。ストリンジェントな条件(例えば、第2の核酸に対する第1の核酸の条件)下でのハイブリダイゼーションは、以下の条件である:(1)洗浄に低イオン強度および高温を使用する条件(例えば、50℃にて0.015Mの塩化ナトリウム/0.0015Mのクエン酸ナトリウム/0.1%のドデシル硫酸ナトリウム);(2)ハイブリダイゼーションの間にホルムアミドのような変性剤を使用する条件(例えば、42℃にて750mMの塩化ナトリウム、75mMのクエン酸ナトリウムを含むpH6.5の0.1%ウシ血清アルブミン/0.1% Ficoll(登録商標)(Sigma−Aldrich,St.Louis,MO)/0.1%ポリビニルピロリドン/50mMリン酸ナトリウム緩衝液を含む50%(vol/vol)ホルムアミド);(3)42℃における0.2×SSCおよび0.1% SDS中での洗浄を伴って、42℃にて、50%ホルムアミド、5×SSC(0.75M NaCl、0.075M クエン酸ナトリウム)、50mM リン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%ピロリン酸ナトリウム、5×デンハート液、超音波処理したサケ精子DNA(50ng/ml)、0.1% SDS、および10%硫酸デキストランを使用する条件;または(4)55℃にて10%硫酸デキストラン、2×SSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)、および50%ホルムアミドの緩衝液を使用し、その後55℃にてEDTAを含む0.1×SSCからなる高ストリンジェンシーな洗浄を行う条件(Botsteinらに発行された米国特許第6,387,657号)。
【0031】
核酸のハイブリダイゼーションのためのストリンジェントな条件は、塩、温度、有機溶媒、およびカオトロピック剤の関数である。ストリンジェントな温度条件としては、通常では約30℃を超える温度が挙げられ、より通常では約37℃を超える温度が挙げられ、代表的には約45℃を超える温度が挙げられ、より代表的には約50℃を超える温度が挙げられ、好ましくは約65℃を超える温度が挙げられ、そしてより好ましくは約70℃を超える温度が挙げられる。ストリンジェントな塩条件は、通例では約1M未満であり、より通例では約500mMであり、通常では約400mM未満であり、より通常では約300mM未満であり、代表的には約200mM未満であり、好ましくは約100mM未満であり、そしてより好ましくは約80mMであり、約20mM未満に下がりさえする。しかし、パラメーターの組み合わせは、任意の単一のパラメーターの測定より重要である(WetmurおよびDavidson(1968)J.Mol.Biol.31:349−370)。
【0032】
「免疫状態」または「免疫障害」は、例えば、病理学的な炎症、炎症性障害、および自己免疫障害または自己免疫疾患を包含する。「免疫状態」とはまた、免疫系による排除(irradication)に抵抗する感染、腫瘍、および癌を含む感染、持続感染、および増殖性の状態(例えば、癌、腫瘍、および新脈管形成)をいう。「癌性の状態」としては、例えば、癌、癌細胞、腫瘍、新脈管形成、および異形成のような前癌状態が挙げられる。
【0033】
「炎症性障害」とは、病理が、例えば、免疫系の細胞の、数の変化、遊走の速度の変化、もしくは活性化における変化から、全体的または部分的にもたらされる障害または病理学的状態を意味する。免疫系の細胞としては、例えば、T細胞、B細胞、単球またはマクロファージ、抗原提示細胞(APC)、樹状細胞、小グリア細胞、NK細胞、NKT細胞、好中球、好酸球、肥満細胞、または免疫学と具体的に関連する任意の他の細胞(例えば、サイトカインを産生する内皮細胞または上皮細胞)が挙げられる。
【0034】
「炎症性障害」とは、病理が、免疫系の細胞(例えば、T細胞、B細胞、単球またはマクロファージ、肺胞マクロファージ、樹状細胞、NK細胞、NKT細胞、好中球、好酸球、または肥満細胞)の、数の増加および/もしくは活性化の上昇から、全体的または部分的にもたらされる、障害あるいは病理学的状態を意味する。
【0035】
本明細書中で使用される場合、「IL−33レセプター」、「IL−33R」、または「IL−33R複合体」は、IL−33による刺激に対して反応性であるレセプター複合体を形成する2つのIL−1Rファミリーメンバー(T1/ST2およびSIGIRR)の結合を意味する。
【0036】
「リガンド」とは、例えば、低分子、ペプチド、ポリペプチド、および膜関連分子もしくは膜結合分子、またはそれらの複合体をいい、これらは、レセプターのアゴニストまたはアンタゴニストとして作用し得る。「リガンド」はまた、アゴニストまたはアンタゴニストではないが、その生物学的特性(例えば、シグナル伝達または接着)に顕著に影響することなくレセプターに結合し得る因子を包含する。さらに、「リガンド」としては、例えば、化学的方法または組換え方法によって、膜結合リガンドの可溶性バージョンに変換される膜結合リガンドが挙げられる。慣例に従うと、リガンドは、第1の細胞上に膜結合され、レセプターは、通常、第2の細胞上に存在する。この第2の細胞は、第1の細胞と同じかまたは異なる独自性を有し得る。リガンドまたはレセプターは、全体として細胞内にあり得、サイトゾル、核、または一部の他の細胞内コンパートメントに存在し得る。リガンドまたはレセプターは、例えば、細胞内コンパートメントから原形質膜の外面にその配置を変化させ得る。リガンドとレセプターとの複合体は、「リガンドレセプター複合体」と称される。リガンドおよびレセプターが、シグナル伝達経路に関する場合、このリガンドは、そのシグナル伝達経路の上流の位置に存在し、そしてこのレセプターは、そのシグナル伝達経路の下流の位置に存在する。
【0037】
「第1のポリペプチド鎖」および「第2のポリペプチド鎖」とは、伝統的なペプチド結合の手段によって1つに連結されない2つのポリペプチド鎖をいう。代表的に、この第1のポリペプチド鎖は、N末端およびC末端を含み、そしてこの第2のポリペプチド鎖は、別のN末端および別のC末端を含み、すなわち全部で、2つのN末端および2つのC末端が存在する。この第1のポリペプチド鎖は、第1のベクターによってコードされ得る一方で、この第2のポリペプチド鎖は、第2のベクターによってコードされ得る。第1のプロモーターが第1のポリペプチド鎖に作動可能に連結され得、そして第2のプロモーターがこの第2のポリペプチド鎖に作動可能に連結され得る場合、この第1のポリペプチド鎖および第2のポリペプチド鎖は、1つのベクターによってコードされ得、または別の実施形態において、第1のポリペプチド鎖および第2のポリペプチド鎖の両方の発現が、同じプロモーターに作動可能に連結され得る。
【0038】
「感受性」(例えば、リガンドに対するレセプターの感受性)とは、レセプターへのリガンドの結合が、上記レセプターまたは上記レセプターに特異的に関連した事象もしくは分子の検出可能な変化(例えば、上記レセプターに関連したタンパク質のコンホメーション変化、リン酸化、性質もしくは量)を生じるか、あるいは上記レセプターによって仲介されるか、または上記レセプターに関連する遺伝的発現の変化を生じることを意味する。
【0039】
「低分子」は、腫瘍および癌の生理機能ならびに障害の処置のために提供される。「低分子」は、10kD未満である分子量、代表的には2kD未満である分子量、および好ましくは1kD未満である分子量を有する分子として定義される。低分子としては、無機分子、有機分子、無機成分を含む有機分子、放射活性原子を含む分子、合成分子、ペプチド模倣体、および抗体模倣体が挙げられるが、これらに限定されない。治療薬として、低分子は、細胞に対してより浸透性であり得、分解に対する感受性が低く、そして大きい分子より免疫応答を誘導する傾向があり得る。低分子(例えば、抗体およびサイトカインのペプチド模倣体、ならびに低分子毒素)が、記載される(例えば、Cassetら(2003)Biochem.Biophys.Res.Commun.307:198−205;Muyldermans(2001)J.Biotechnol.74:277−302;Li(2000)Nat.Biotechnol.18:1251−1256;Apostolopoulosら(2002)Curr.Med.Chem.9:411−420;Monfardiniら(2002)Curr.Pharm.Des.8:2185−2199;Dominguesら(1999)Nat.Struct.Biol.6:652−656;SatoおよびSone(2003)Biochem.J.371:603−608;Stewartらに発行された米国特許第6,326,482号を参照のこと)。
【0040】
「可溶性レセプター」とは、水溶性であり、そして例えば、細胞外流体、細胞内流体において存在するか、または膜に弱く結合されたレセプターをいう。さらに、可溶性レセプターとは、水溶性となるように操作されているレセプターをいう。T1/ST2に関して、可溶性ドメインまたは細胞外ドメインは、配列番号6(ヒト)の残基1〜337および配列番号8の残基1〜342(マウス)として定義される。SIGIRRに関して、可溶性ドメインまたは細胞外ドメインは、配列番号10(ヒト)の残基1〜118および配列番号12(マウス)の残基1〜117として定義される。
【0041】
「結合の特異性」、「結合の選択性」などとは、所定のリガンドと他のリガンドとの間または所定のレセプターと他のレセプターとの間を区別し得る、所定のリガンドと所定のレセプターとの間の結合相互作用をいう。「特異的に」または「選択的に」結合するとは、リガンド/レセプター、抗体/抗原、または他の結合対についていう場合、タンパク質および他の生物学的物質の不均一な集団においてタンパク質の存在の決定因となる結合反応を示す。従って、指定された条件下において、特定化されたリガンドは、特定のレセプターに結合し、かつサンプル中に存在するかなりの量の他のタンパク質には結合しない。抗体、または抗体の抗原結合部位に由来する結合組成物は、任意の他の抗原に対する親和性よりも、少なくとも2倍超、好ましくは少なくとも10倍超、より好ましくは少なくとも約20倍超、そして最も好ましくは少なくとも100倍超の親和性でその抗原に結合する。好ましい実施形態において、上記抗体は、約10リットル/molを超える親和性を有する(例えば、Munsenら(1980)Analyt.Biochem.107:220−239を参照のこと)。
【0042】
(II.概要)
本発明は、多くの免疫状態および免疫障害の調節または処置のための方法を提供する。特に、本発明は、例えば、喘息、アレルギー、関節炎、ならびに細胞内病原体(例えば、寄生生物)に対する応答および肉芽腫に関する障害(例えば、結核、サルコイドーシス、およびクローン病)に対する応答の処置および診断のためのIL−33のアゴニストおよびアンタゴニストを提供する。
【0043】
ナイーブT細胞は、その表面上にT1/ST2を発現しないようであるが、発現は、分化型TH2エフェクター細胞における抗原との接触後に誘導される。T1/ST2は、TH2型T細胞に対するマーカーとして使用される。T1/ST2はまた、肥満細胞および線維芽細胞上に発現される。
【0044】
T1/ST2ノックアウトマウスによる研究は、T1/ST2がナイーブCD4T細胞のTH2型T細胞への分化の一部を担わないことを示唆するようである。これらの結果は、使用されるアッセイ(例えば、病原生物がチャレンジ研究において使用されるか、またはTH2応答の段階が研究されるアッセイ)の性質の相関であるようである。証拠はまた、TH2応答の初期の事象におけるT1/ST2についての役割を示唆する(例えば、Kropfら(2002)Infect.Immunity 70:5512−5520;Hoshinoら(1999)J.Exp.Med.190:1541−1547;Sennら(2000)Eur.J.Immunol.30:1929−1938;Townsendら(2000)J.Exp.Med.191:1069−1075を参照のこと)。
【0045】
抗T1/ST2抗体は、免疫機能におけるT1/ST2の役割に取り組む多くの研究において使用されてきたが、他の研究は、免疫応答についてT1/ST2発現動物モデルを試験している。抗T1/ST2抗体による処置は、TH2型免疫応答の減少をもたらした。この抗体は、好酸球の浸潤、IL−5の産生、およびIgEの産生を阻害した。Schistosomaによる感染は、例えば、肺および肝臓の肉芽腫における発現を評価することによって決定されるようなT1/ST2の上方制御を誘発した。喘息についての動物モデル(例えば、イエダニ抽出物またはオボアルブミンによる処置)は、CD4T細胞でT1/ST2の発現の増加をもたらし、この増加は、アレルギー性の応答または喘息の応答にT1/ST2が果たす役割を示す。BALB/cマウスによる研究は、抗T1/ST2抗体による処置が、より高いTH−1型応答を誘導し、このTH−1型応答は、IL−12に応答するCD4T細胞の能力を上昇させることを明らかにした。抗T1/ST2抗体はまた、Leishmania majorの感染に起因する病変を減少させ、そしてTH2型サイトカインの発現を減少させた。関節炎の動物モデル(コラーゲン誘導性関節炎;CIA)は、抗T1/ST2抗体によって悪化された。特に、T1/ST2は、TH2型応答の発生の初期の事象において機能する。種々のアレルゲンに対する慢性的な曝露は、CD4T細胞のT1/ST2の発現の増加をもたらした。T1/ST2は、抗T1/ST2抗体がリポ多糖(LPS)の毒性効果を深刻にするような、先天的応答を媒介する役割を担う。T1/ST2に対する抗体はまた、ウイルス(例えば、RSウイルス)に対する免疫応答を調節した(例えば、Xuら(1998)J.Exp.Med.187:787−794;Lohningら(1998)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95:6930−6935;Coyleら(1999)J.Exp.Med.190:895−902;Lohningら(1999)J.Immunol.162:3882−3889;Johnsonら(2003)Am.J.Respir.Crit.Care Med.169:378−385;Kropfら(2003)Infect.Immunity 71:1961−1971;Xuら(1998)J.Exp.Med.187:787−794;Kropfら(2002)Eur.J.Immunol.32:2450−2459;Swirskiら(2002)J.Immunol.169:3499−3506;Sweetら(2001)J.Immunol.166:6633−6639;Walzlら(2001)J.Exp.Med.193:785−792を参照のこと)。
【0046】
IL−1ファミリーメンバーは、代表的に、IL−1レセプターファミリーのヘテロダイマーのメンバーに結合する。別の公知のIL−1RファミリーメンバーのSIGIRR(単一Ig IL−1レセプター関連タンパク質)が、T1/ST2と複合体化して、IL−33に対して機能的なレセプター複合体を形成することが示された。SIGIRRは、そもそも孤立のIL−1Rメンバーとして見出された(例えば、Garlandaら(2004)Proc.Natl.Acad.Sci.101:3522−3526;Clarkら(2003)Genome Res.13:2265−2270;Thomassenら(1999)Cytokine 11:389−399;GenBank登録番号NP_068577;GenBank登録番号NM_021805;GenBank登録番号NP_075546;およびGenBank登録番号NM_0230459を参照のこと)。SIGIRRは、幅広く発現されるIL−1Rメンバーである。
【0047】
ビオチン化成熟ヒトIL−33(配列番号2の残基112〜270)、T1/ST2−Fc融合およびSIGIRR−Fc融合を使用する沈降実験において、IL−33は、両方のレセプター融合タンパク質に結合し得るが、しかし、SIGIRRに対するIL−33の結合は、IL−33およびT1/ST2の結合と比較した場合に弱いことが示された。レセプターのいずれかまたは両方のシグナル伝達能力を試験するために、NF−κB依存性アッセイを、実施した。T1/ST2およびSIGIRRの両方の同時発現は、IL−33による刺激においてNF−κBシグナル伝達およびMAPキナーゼを活性化するのに必要かつ十分の両方であった。JNKキナーゼの活性化もまた、観察された。
【0048】
(III.アゴニスト、アンタゴニスト、および結合組成物)
本発明は、IL−33のアゴニストおよびアンタゴニストを提供し、これらは、IL−33またはIL−33レセプター複合体(T1/ST2およびSIGIRR)に特異的に結合する結合組成物を含む。結合組成物としては、抗体、抗体フラグメントおよび可溶性レセプターが挙げられる。本発明は、IL−33もしくはIL−33Rに結合する遮断抗体、またはIL−33R複合体を介してシグナル伝達を刺激するアゴニスト性抗体を企図する。本発明の結合組成物としてはまた、IL−33またはIL−33Rをコードする核酸に特異的にハイブリダイズする核酸(例えば、アンチセンス核酸および低分子干渉RNA(siRNA))が挙げられる。抗イディオタイプ抗体もまた、使用され得る。ヒトIL−33は、GenBank NM_033439に開示される。抗IL−33抗体を調製するのに適した、抗原性を増加させる領域は、Vector NTI(登録商標)Suite(Informax,Inc,Bethesda,MD)を使用するParkerプロットによって、例えば、GenBank NM_033439のアミノ酸1〜23;アミノ酸30〜38;アミノ酸61〜78;アミノ酸84〜93;アミノ酸99〜106;アミノ酸127〜133;アミノ酸139〜144;アミノ酸148〜158;アミノ酸166〜180;アミノ酸196〜204;アミノ酸231〜237;およびアミノ酸252〜257に存在する。
【0049】
これらの細胞外領域に基づくレセプターは、これらの正確なN末端アミノ酸およびC末端アミノ酸に限定されず、そのリガンド結合特性が実質的に維持される限り、例えば、1個、2個、3個またはそれより多いアミノ酸のぶん、長くても短くてもよい。例えば、精製もしくは安定性を促進するためか、または機能ドメイン(例えば、毒性ポリペプチド)を提供するために、可溶性レセプターに基づく融合タンパク質もまた、企図される。
【0050】
モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、およびヒト化抗体が、調製され得る(例えば、SheperdおよびDean(編)(2000)Monoclonal Antibodies,Oxford Univ.Press,New York,NY;KontermannおよびDubel(編)(2001)Antibody Engineering,Springer−Verlag,New York;HarlowおよびLane(1988)Antibodies A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,pp.139−243;Carpenterら(2000)J.Immunol.165:6205;Heら(1998)J.Immunol.160:1029;Tangら(1999)J.Biol.Chem.274:27371−27378;Bacaら(1997)J.Biol.Chem.272:10678−10684;Chothiaら(1989)Nature 342:877−883;FooteおよびWinter(1992)J.Mol.Biol.224:487−499;Vasquezらに発行された米国特許第6,329,511号を参照のこと)。抗体および可溶性レセプターのムテインならびに改変体(例えば、ペグ化または脱アミド化Asn残基を除去もしくは置換する突然変異誘発)が、企図される。
【0051】
抗原の精製は、抗体の産生に必ずしも必要なわけではない。免疫化は、DNAベクター免疫化によって行われ得る(例えば、Wangら(1997)Virology 228:278−284を参照のこと)。あるいは、動物は、目的の抗原を有する細胞によって免疫され得る。その後、脾細胞が、免疫された動物から単離され得、そしてその脾細胞は、骨髄腫細胞株と融合されて、ハイブリドーマを産生し得る(Meyaardら(1997)Immunity 7:283−290;Wrightら、(2000)Immunity 13:233−242;Prestonら、(1997)Eur.J.Immunol.27:1911−1918)。生じたハイブリドーマは、機能的アッセイまたは生物学的アッセイ(これらのアッセイは、精製された抗原があることに依存しない)によって所望の抗体の産生についてスクリーニングされ得る。細胞による免疫化は、精製された抗原による免疫化よりも、抗体の産生について優れていることを示し得る(Kaithamanaら(1999)J.Immunol.163:5157−5164)。
【0052】
抗体は、通常、少なくとも約10−3M、より通常は少なくとも約10−6M、代表的には少なくとも約10−7M、より代表的には少なくとも約10−8M、好ましくは少なくとも約10−9M、そしてより好ましくは少なくとも約10−10M、そして最も好ましくは少なくとも約10−11MのKで結合する(例えば、Prestaら(2001)Thromb.Haemost.85:379−389;Yangら(2001)Crit.Rev.Oncol.Hematol.38:17−23;Carnahanら(2003)Clin.Cancer Res.(補遺)9:3982s−3990sを参照のこと)。
【0053】
IL−33レセプター複合体(T1/ST2およびSIGIRR)の細胞外ドメインを含む可溶性レセプターは、同定されたサブユニットの各々の細胞質領域、膜貫通領域、および細胞外領域として調製され得る(例えば、Lecartら(2002)Eur.J.Immunol.32:2979−2987;Mitchamら(1996)J.Biol.Chem.271:5777−5783;および以下の配列表を参照のこと)。
【0054】
可溶性レセプターは、標準的な方法に従って調製され、そして使用され得る(例えば、Jonesら(2002)Biochim.Biophys.Acta 1592:251−263;Prudhommeら(2001)Expert Opinion Biol.Ther.1:359−373;Fernandez−Botran(1999)Crit.Rev.Clin.Lab Sci.36:165−224を参照のこと)。siRNA干渉のための組成物もまた、提供される(例えば、ArenzおよびSchepers(2003)Naturwissenschaften 90:345−359;SazaniおよびKole(2003)J.Clin.Invest.112:481−486;Pirolloら(2003)Pharmacol.Therapeutics 99:55−77;Wangら(2003)Antisense Nucl.Acid Drug Devel.13:169−189を参照のこと)。
【0055】
(IV.治療用組成物、方法)
本発明は、先天的応答、喘息、アレルギー、および関節炎を処置し、そして診断するための方法を提供する。
【0056】
IL−33のアゴニストもしくはアンタゴニストを含む薬学的組成物または滅菌組成物を調製するために、試薬は、薬学的に受容可能なキャリアまたは賦形剤と混合される。治療剤および診断剤の処方物は、例えば、凍結乾燥粉末、スラリー、水溶液、ローションまたは懸濁物の形態で、生理学的に受容可能なキャリア、賦形剤、または安定剤と混合することによって調製され得る(例えば、Hardmanら(2001)Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics,McGraw−Hill,New York,NY;Gennaro(2000)Remington:The Science and Practice of Pharmacy,Lippincott,Williams,and Wilkins,New York,NY;Avisら(編)(1993)Pharmaceutical Dosage Forms:Parenteral Medications,Marcel Dekker,NY;Liebermanら(編)(1990)Pharmaceutical Dosage Forms:Tablets,Marcel Dekker,NY;Liebermanら(編)(1990)Pharmaceutical Dosage Forms:Disperse Systems,Marcel Dekker,NY;WeinerおよびKotkoskie(2000)Excipient Toxicity and Safety,Marcel Dekker,Inc.,New York,NYを参照のこと)。
【0057】
治療薬に対する投与レジメンを選択することは、いくつかの因子(実体(entity)の血清または組織のターンオーバー速度、症状のレベル、実体の免疫原性、および生物学的マトリックス中の標的細胞の接近のしやすさが挙げられる)に依存する。好ましくは、投与レジメンは、受容可能なレベルの副作用と整合性をとって、患者に送達される治療薬の量を最大にする。したがって、送達される生物製剤の量は、部分的に、処置される状態の特定の実体および重症度に依存する。抗体、サイトカイン、および低分子の適切な用量を選択する際の指標が、利用可能である(例えば、Wawrzynczak(1996)Antibody Therapy,Bios Scientific Pub.Ltd,Oxfordshire,UK;Kresina(編)(1991)Monoclonal Antibodies,Cytokines and Arthritis,Marcel Dekker,New York,NY;Bach(編)(1993)Monoclonal Antibodies and Peptide Therapy in Autoimmune Diseases,Marcel Dekker,New York,NY;Baertら(2003)New Engl.J.Med.348:601−608;Milgromら(1999)New Engl.J.Med.341:1966−1973;Slamonら(2001)New Engl.J.Med.344:783−792;Beniaminovitzら(2000)New Engl.J.Med.342:613−619;Ghoshら(2003)New Engl.J.Med.348:24−32;Lipskyら(2000)New Engl.J.Med.343:1594−1602を参照のこと)。
【0058】
抗体、抗体フラグメント、およびサイトカインは、例えば、1日、1週間もしくは1週間に1〜7回の間隔での持続注入によってか、または投薬によって提供され得る。投薬は、静脈内、皮下、局所、経口、経鼻、経直腸、筋肉内、脳室内に、または吸入によって提供され得る。好ましい用量プロトコルは、重大な望まれない副作用を避ける最大用量または投薬頻度を含むものである。全体の週用量は、一般的に少なくとも0.05μg/kg体重、より一般的には少なくとも0.2μg/kg、最も一般的には少なくとも0.5μg/kg、代表的には少なくとも1μg/kg、より代表的には少なくとも10μg/kg、最も代表的には少なくとも100μg/kg、好ましくは少なくとも0.2mg/kg、より好ましくは少なくとも1.0mg/kg、最も好ましくは少なくとも2.0mg/kg、最適には少なくとも10mg/kg、より最適には少なくとも25mg/kg、そして最も最適には少なくとも50mg/kgである(例えば、Yangら(2003)New Engl.J.Med.349:427−434;Heroldら(2002)New Engl.J.Med.346:1692−1698;Liuら(1999)J.Neurol.Neurosurg.Psych.67:451−456;Portieljiら(2003)Cancer Immunol.Immunother.52:133−144を参照のこと)。低分子治療薬(例えば、ペプチド模倣体、天然生成物、または有機化学物質)の所望の用量は、モル/kg体重ベースで抗体またはポリペプチドについての用量とほぼ同じである。低分子治療薬の所望の血漿濃度は、モル/kg体重ベースで、抗体についての用量とほぼ同じである。
【0059】
特定の患者に対する有効量は、処置される状態、患者の全体的な健康状態、投与の方法、経路および用量、ならびに副作用の重症度のような因子に依存して変化し得る(例えば、Maynardら(1996)A Handbook of SOPs for Good Clinical Practice,Interpharm Press,Boca Raton,FL;Dent(2001)Good Laboratory and Good Clinical Practice,Urch Publ.,London,UKを参照のこと)。
【0060】
代表的な獣医学的被験体、実験被験体、または研究被験体としては、サル、イヌ、ネコ、ラット、マウス、ウサギ、モルモット、ウマ、およびヒトが挙げられる。
【0061】
適切な用量の決定は、例えば、当該分野において処置に影響することが公知もしくはそれが疑われるか、または処置に影響することが予想されるパラメーターあるいは因子を使用して、医師によってなされる。一般的に、上記用量は、最適用量よりもいくらか少ない量で開始され、その後、あらゆるネガティブな副作用に対して所望の効果または最適な効果が達成されるまで、少量ずつ増加される。重要な診断測定としては、例えば、炎症の症状または産生された炎症性サイトカインのレベルの測定が挙げられる。好ましくは、使用される生物製剤は、処置の標的にされる動物と同じ種に由来し、これによってその試薬に対する液性反応を最小にする。
【0062】
第2の治療因子(例えば、サイトカイン、ステロイド、化学療法剤、抗生物質、または放射線)の同時投与またはこれらでの処置のための方法は、当該分野で周知である(例えば、Hardmanら(編)(2001)Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics,第10版,McGraw−Hill,New York,NY;PooleおよびPeterson(編)(2001)Pharmacotherapeutics for Advanced Practice:A Practical Approach,Lippincott,Williams & Wilkins,Phila.,PA;ChabnerおよびLongo(編)(2001)Cancer Chemotherapy and Biotherapy,Lippincott,Williams & Wilkins,Phila.,PAを参照のこと)。治療薬の有効量は、代表的に少なくとも10%まで;通常少なくとも20%まで;好ましくは少なくとも約30%まで;より好ましくは少なくとも40%まで;そして最も好ましくは少なくとも50%まで症状を軽減する。
【0063】
投与の経路は、例えば、局所適用または皮膚適用、静脈内の経路、腹腔内の経路、脳内の経路、筋肉内の経路、眼内の経路、動脈内の経路、脳脊髄内(intracerebrospinal)の経路、病巣内の経路、もしくは肺の経路による注射または注入によるか、あるいは徐放システムまたは移植物による(例えば、Sidmanら(1983)Biopolymers 22:547−556;Langerら、(1981),J.Biomed.Mater.Res.15:167−277;Langer(1982)Chem.Tech.12:98−105;Epsteinら、(1985)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:3688−3692;Hwangら(1980)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4030−4034;米国特許第6,350,466号および同第6,316,024号を参照のこと)。
【0064】
(V.キットおよび診断試薬)
抗体、核酸ハイブリダイゼーション、およびPCR法に基づく、炎症性障害(例えば、乾癬、クローン病、慢性関節リウマチ、喘息またはアレルギー、アテローム性動脈硬化症、および癌)に対する診断方法が、利用可能である。
【0065】
本発明は、例えば、ウイルス性障害(インフルエンザA型が挙げられる)、および気道および粘膜組織のウイルス性障害を診断するために、診断キットにおいて、IL−33のポリペプチド、そのフラグメント、IL−33の核酸およびそのフラグメントを提供する。IL−33、ならびにその代謝産物および分解産物を検出するための結合組成物(抗体または抗体フラグメントが挙げられる)もまた、提供される。代表的に、このキットは、IL−33ポリペプチド、もしくはその抗原性フラグメント、それに対する結合組成物、または核酸(例えば、核酸プローブ、プライマー、または分子ビーコン)のいずれかを含むコンパートメントを有する(例えば、Rajendranら(2003)Nucleic Acids Res.31:5700−5713;Cockerill(2003)Arch.Pathol.Lab.Med.127:1112−1120;Zammatteoら、(2002)Biotech.Annu.Rev.8:85−101;Klein(2002)Trends Mol.Med.8:257−260を参照のこと)。
【0066】
診断の方法は、被験体(例えば、試験被験体)からのサンプルと、IL−33もしくはIL−33レセプターのポリペプチドまたは核酸に特異的に結合する結合組成物とを接触させる工程を包含し得る。上記方法は、コントロール被験体、正常被験体、または試験被験体由来の正常組織もしくは正常流体に由来するサンプルと、上記結合組成物とを接触させる工程をさらに包含し得る。さらに、上記方法は、試験被験体への組成物の特異的結合を、正常被験体、コントロール被験体、または上記試験被験体由来の正常組織または正常流体への組成物の特異的結合と比較する工程をさらに包含し得る。試験サンプルもしくは試験被験体の発現または活性は、コントロールサンプルもしくはコントロール被験体からの発現または活性と比較され得る。コントロールサンプルとしては、例えば、免疫障害に罹患している患者の冒されていない組織または非炎症組織のサンプルが挙げられ得る。コントロール被験体もしくはコントロールサンプルからの発現または活性は、例えば、統計学的に適切な群のコントロール被験体から得られた所定値として提供され得る。
【0067】
上記キットは、例えば、試薬およびコンパートメント、試薬および使用のための説明書、またはコンパートメントを含む試薬および使用のための説明書を備え得る。上記試薬は、IL−33のアゴニストもしくはアンタゴニスト、またはその抗原性フラグメント、結合組成物、あるいはセンス配向および/またはアンチセンス配向の核酸を含み得る。例えば、生物学的サンプルまたは化学的ライブラリーから得られた試験化合物の結合を決定するためのキットは、コントロール化合物、標識化合物、および結合された標識化合物からの遊離した標識化合物を分離するための方法を備え得る。このコントロール化合物は、IL−33もしくはIL−33レセプターのポリペプチドのセグメント、またはIL−33もしくはIL−33レセプターをコードする核酸を含み得る。このセグメントは、0個、1個、2個、またはそれ以上の抗原性フラグメントを含み得る。
【0068】
「標識されている」組成物は、分光学的方法、光化学的方法、生化学的方法、免疫化学的方法、同位体的方法、または化学的方法によって、直接的または間接的に検出可能である。例えば、有用な標識としては、32P、33P、35S、14C、H、125I、安定な同位体、蛍光色素、高電子密度試薬、基質、エピトープタグ、または酵素(例えば、酵素結合免疫アッセイにおいて使用される)またはフルオレット(fluorette)が挙げられる(RozinovおよびNolan(1998)Chem.Biol.5:713−728)。
【0069】
診断アッセイは、生物学的マトリックス(例えば、生細胞、細胞抽出物、細胞溶解物、固定された細胞、細胞培養物、体液、または法医学的サンプル)を用いて使用され得る。診断またはキットの目的に有用な結合体化抗体としては、色素、同位体、酵素、および金属に結合された抗体が挙げられる。例えば、Le Doussalら(1991)New Engl.J.Med.146:169−175;Gibelliniら(1998)J.Immunol.160:3891−3898;HsingおよびBishop(1999)New Engl.J.Med.162:2804−2811;Evertsら(2002)New Engl.J.Med.168:883−889を参照のこと。ラジオイムノアッセイ(RIA)、ELISA、およびラボオンアチップ(lab on a chip)(米国特許番号第6,176,962号および同第6,517,234号)のような種々のアッセイ形式が存在する。
【0070】
遺伝子発現のデータは、疾患および病理学的状態の診断ならびに処置において有用な手段である(例えば、LiおよびWong(2001)Genome Informatics 12:3−13;Lockhartら(1996)Nature Biotechnol.14:1675−1680;Homeyら(2000)J.Immunol.164:3465−3470;Debetsら(2000)J.Immunol.165:4950−4956を参照のこと)。
【0071】
(VI.使用)
本発明は、感染に対する不適切な応答または効果の無い応答を含む、炎症性障害および免疫障害の処置ならびに診断のための方法を提供する。例えば、喘息、アレルギー、関節炎、好酸球性の炎症に関連する障害、および病原性のTH2型応答または効果の無いTH2型応答に関する障害に関連する方法が、提供される。
【0072】
本発明は、細菌、寄生生物、およびウイルス、細胞内病原体、ならびに癌および腫瘍に対する免疫防御を刺激するための方法を提供する。細胞内の細菌の処置のための方法が、提供される。細胞内の細菌の種としては、Salmonella sp.、Shigella sp.、Listeria sp.、Francisella sp.、Mycobacteria sp.(結核;ライ病)、Legionella sp.、Rickettsia sp.、Orienta sp.、Ehrlichia sp.、Anaplasma sp.、Neorickettsia sp.、Chlamydia sp.およびCoxiella sp.が挙げられる。さらに、IFNγは、寄生生物(例えば、Plasmodia sp.(マラリア)、Toxoplasma sp.、Leishmania sp.、Trypanosoma sp.、およびCryptosporidium sp.)に対する応答を媒介する。ウイルス(例えば、HIV、痘瘡ウイルスおよびワクシニアウイルス(痘瘡)のようなオルソポックスウイルス、ならびにアルファヘルペスウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルス)およびベータヘルペスウイルス(例えば、サイトメガロウイルス)を含むヘルペスウイルス)を処置するための方法が、提供される。慢性的な炎症性障害の処置のための方法もまた、提供される(例えば、Kentら、(2000)Vaccine 18:2250−2256;Ismailら(2002)FEMS Microbiol.Lett.207:111−120;Kaufmann (2001)Nature Revs.Immunol.1:20−30;GoebelおよびGross(2001)TRENDS Microbiol.9:267−273;Heusslerら(2001)Int.J.Parasitol.31:1166−1176;Luderら(2001)Carstenら(2001)TRENDS Parasitol.17:480−486;Rookら(2001)Eur.Resp.J.17:537−557;StengerおよびRollinghoff(2001)Ann.Rheum.Dis.60:iii43−iii46;Haasら(2002)Am.J.Dermatopathol.24:319−323;DormanおよびHolland(2000)Cytokine Growth Factor Revs.11:321−333;Smithら(2002)J.Gen.Virol.83(Pt.12)2915−2931;CohrsおよびGilden(2001)Brain Pathol.11:465−474;TannenbaumおよびHamilton(2002)Sem.Cancer Biol.10:113−123;Ikedaら(2002)Cytokine Growth Factor Revs.13:95−109;Klimpら(2002)Crit.Rev.Oncol.Hematol.44:143−161;Fruchtら(2001)TRENDS Immunol.22:556−560を参照のこと)。
【0073】
本発明は、増殖性の状態または増殖性の障害(例えば、子宮、頚部、乳房、前立腺、精巣、陰茎、胃腸管(例えば、食道、口腔咽頭部、胃、小腸および大腸、結腸、または直腸)、腎臓、腎細胞、膀胱、骨、骨髄、皮膚、頭部またはくび、皮膚、肝臓、胆嚢、心臓、肺、膵臓、唾液腺、副腎、甲状腺、脳、神経節、中枢神経系(CNS)および末梢神経系(PNS)、ならびに免疫系(例えば、脾臓または胸腺)の癌)を処置するか、または診断する方法を提供する。本発明は、例えば、免疫原性の腫瘍、非免疫原性の腫瘍、休眠中の腫瘍、ウイルス誘導性の癌(例えば、上皮細胞の癌、内皮細胞の癌、扁平上皮癌、パピローマウイルス、腺癌、リンパ腫、癌腫、黒色腫、白血病、骨髄腫、肉腫、奇形癌、化学的に誘導性の癌、転移、および新脈管形成)を処置する方法を提供する。本発明はまた、例えば調節性T細胞(Treg)の活性を調節することによって腫瘍細胞抗原または癌細胞抗原に対する寛容を減少させる工程を企図する(例えば、Ramirez−Montagutら(2003)Oncogene 22:3180−3187;Sawayaら(2003)New Engl.J.Med.349:1501−1509;Farrarら(1999)J.Immunol.162:2842−2849;Leら(2001)J.Immunol.167:6765−6772;CannistraおよびNiloff(1996)New Engl.J.Med.334:1030−1038;Osborne(1998)New Engl.J.Med.339:1609−1618;LynchおよびChapelle(2003)New Engl.J.Med.348:919−932;EnzingerおよびMayer(2003)New Engl.J.Med.349:2241−2252;Forastiereら(2001)New Engl.J.Med.345:1890−1900;Izbickiら(1997)New Engl.J.Med.337:1188−1194;Hollandら(編)(1996)Cancer Medicine Encyclopedia of Cancer,第4版,Academic Press,San Diego,CAを参照のこと)。
【0074】
本発明は、IL−33のアゴニストまたはアンタゴニスト、少なくとも1つのさらなる治療因子または診断因子によって、増殖性の状態、癌、腫瘍、または前癌状態(例えば、異形成)を処置するための方法を提供する。上記少なくとも1つのさらなる治療因子または診断因子は、例えば、サイトカインまたはサイトカインアンタゴニスト(例えば、インターフェロンα)、または抗上皮細胞成長因子レセプター、ドキソルビシン、エピルビシン、葉酸代謝拮抗薬(例えば、メトトレキサートまたはフルオロウラシル)、イリノテカン、シクロホスファミド、放射線治療、ホルモン療法または抗ホルモン療法(例えば、アンドロゲン、エストロゲン、抗エストロゲン、フルタミド、またはジエチルスチルベストロール)、手術、タモキシフェン、イホスファミド、ミトラクトール(mitolactol)、アルキル化剤(例えば、メルファランまたはシスプラチン)、エトポシド、ビノレルビン、ビンブラスチン、ビンデシン、糖質コルチコイド、ヒスタミンレセプターアンタゴニスト、新脈管形成インヒビター、放射線、放射線感作物質、アントラサイクリン、ビンカアルカロイド、タキサン(例えば、パクリタキセルおよびドセタキセル)、細胞周期インヒビター(例えば、サイクリン依存性キナーゼインヒビター)、モノクローナル抗体、モノクローナル抗体と毒素との複合体、T細胞アジュバント、骨髄移植または抗原提示細胞(例えば、樹状細胞療法)であり得る。例えば、可溶性タンパク質またはタンパク質をコードする核酸のようなワクチンが、提供され得る(例えば、Leら、前出;GrecoおよびZellefsky(編)(2000)Radiotherapy of Prostate Cancer,Harwood Academic,Amsterdam;ShapiroおよびRecht(2001)New Engl.J.Med.344:1997−2008;Hortobagyi、(1998)New Engl.J.Med.339:974−984;Catalona(1994)New Engl.J.Med.331:996−1004;NaylorおよびHadden(2003)Int.Immunopharmacol.3:1205−1215;The Int.Adjuvant Lung Cancer Trial Collaborative Group(2004)New Engl.J.Med.350:351−360;Slamonら(2001)New Engl.J.Med.344:783−792;Kudelkaら(1998)New Engl.J.Med.338:991−992;van Nettenら(1996)New Engl.J.Med.334:920−921を参照のこと)。
【0075】
炎症性障害(例えば、乾癬、クローン病、および慢性関節リウマチ)をスコアリングするための多くの生物マーカーおよび方法が、利用可能である(例えば、Bresnihan(2003)Arthritis Res.Ther.5:271−278;BarneroおよびDelmas(2003)Curr.Opin.Rheumatol.15:641−646;Gionchettiら、(2003)Dig.Dis.21:157−167;Wiik(2002)Autoimmune Rev.1:67−72;Sostegniら(2003)Aliment Pharmacol.Ther.17(補遺2):11−17を参照のこと)。
【0076】
癌をスコアリングするための生物マーカーおよび方法もまた、記載される(例えば、Alison(編)(2001)The Cancer Handbook,Grove’s Dictionaries,Inc.,St.Louis,MO;Oldham(編)(1998)Principles of Cancer Biotherapy,第3版,Kluwer Academic Publ.,Hingham,MA;Thompsonら(編)(2001)Textbook of Melanoma,Martin Dunitz,Ltd.,London,UK;Devitaら(編)(2001)Cancer:Principles and Practice of Oncology,第6版,Lippincott,Phila,PA;Hollandら(編)(2000)Holland−Frei Cancer Medicine,BC Decker,Phila.,PA;GarrettおよびSell(編)(1995)Cellular Cancer Markers,Humana Press,Totowa,NJ;MacKie(1996)Skin Cancer,第2版,Mosby,St.Louis;Moertel(1994)New Engl.J.Med.330:1136−1142;Engleman(2003)Semin.Oncol.30(3 補遺8):23−29;Mohrら(2003)Onkologie 26:227−233を参照のこと)。
【0077】
本発明の広範な範囲は、以下の実施例の参照によって最もよく理解されるが、以下の実施例が、本発明を特定の実施形態に限定することは意図されない。
【実施例】
【0078】
(I.一般的方法)
生物化学および分子生物学における標準的な方法が記載される(例えば、Maniatisら(1982)Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY;SambrookおよびRussell(2001)Molecular Cloning,第3版,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY;Wu(1993)Recombinant DNA,第217巻,Academic Press,San Diego,CAを参照のこと)。標準的な方法はまた、Ausbelら(2001)Current Protocols in Molecular Biology,第1〜4巻,John Wiley and Sons,Inc. New York,NYに表され、これは、細菌細胞におけるクローニングおよびDNA変異誘発(第1巻)、哺乳動物細胞および酵母におけるクローニング(第2巻)、複合糖質およびタンパク質発現(第3巻)、ならびにバイオインフォマティクス(第4巻)を記載する。
【0079】
免疫沈降、クロマトグラフィー、電気泳動、遠心分離および結晶化を含むタンパク質精製のための方法が記載される(Coliganら(2000)Current Protocols in Protein Science,第1巻,John Wiley and Sons,Inc.,New York)。化学分析、化学修飾、翻訳後修飾、融合タンパク質の産生、タンパク質のグリコシル化が記載される(例えば、Coliganら(2000)Current Protocols in Protein Science,第2巻,John Wiley and Sons,Inc.,New York;Ausubelら(2001)Current Protocols in Molecular Biology,第3巻,John Wiley and Sons,Inc.,NY,NY,pp.16.0.5−16.22.17;Sigma−Aldrich,Co.(2001)Products for Life Science Research,St.Louis,MO;pp.45−89;Amersham Pharmacia Biotech(2001)BioDirectory,Piscataway,N.J.,pp.384−391を参照のこと)。ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の、産生、精製、および断片化のための方法が記載される(Coliganら(2001)Current Protcols in Immunology,第1巻,John Wiley and Sons,Inc.,New York;Harlow and Lane(1999)Using Antibodies,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY;Harlow and Lane,前出)。リガンド/レセプター相互作用を特徴化するための標準的な方法が利用可能である(例えば、Coliganら(2001)Current Protcols in Immunology,第4巻,John Wiley,Inc.,New Yorkを参照のこと)。
【0080】
フローサイトメトリー(蛍光表示式細胞分取器(FACS)が挙げられる)のための方法が利用可能である(例えば、Owensら(1994)Flow Cytometry Principles for Clinical Laboratory Practice,John Wiley and Sons,Hoboken,NJ;Givan(2001)Flow Cytometry,第2版;Wiley−Liss,Hoboken,NJ;Shapiro(2003)Practical Flow Cytometry,John Wiley and Sons,Hoboken,NJを参照のこと)。例えば、診断試薬として使用するための核酸(核酸プライマーおよび核酸プローブ、ポリペプチド、ならびに抗体が挙げられる)の修飾に適切な蛍光試薬が利用可能である(例えば、Molecular Probes(2003)Catalogue,Molecular Probes,Inc.,Eugene,OR;Sigma−Aldrich(2003)Catalogue,St.Louis,MOを参照のこと)。
【0081】
免疫系の組織学に関する標準的な方法が記載される(例えば、Muller−Harmelink(編)(1986)Human Thymus:Histopathology and Pathology,Springer Verlag,New York,NY;Hiattら(2000)Color Atlas of Histology,Lippincott,Williams,and Wilkins,Phila,PA;Louisら(2002)Basic Histology:Text and Atlas,McGraw−Hill,New York,NYを参照のこと)。
【0082】
動物モデル(例えば、ノックアウトマウス)を使用するための方法、ならびに診断因子、治療因子、および医薬品を試験、評価、およびスクリーニングするための細胞ベースのアッセイが、利用可能である(例えば、CarおよびEng(2001)Vet.Pathol.38:20−30;Kenyonら(2003)Toxicol.Appl.Pharmacol.186:90−100;Deurlooら(2001)Am.J.Respir.Cell Mol.Biol.25:751−760;Zuberiら(2000)J.Immunol.164:2667−2673;Temelkovskiら(1998)Thorax 53:849−856;Horrocksら(2003)Curr.Opin.Drug Discov.Devel.6:570−575;Johnstonら(2002)Drug Discov.Today 7:353−363を参照のこと)。
【0083】
例えば、抗原性フラグメント、リーダー配列、タンパク質の折り畳み、機能的ドメイン、グリコシル化部位、および配列アラインメントを決定するためのソフトウェアパッケージならびにデータベースが、利用可能である(例えば、GenBank、Vector NTI(登録商標)Suite(Informax,Inc.,Bethesda,MD);GCGウィスコンシンパッケージ(Accelrys,Inc.,San Diego,CA);DeCypher(登録商標)(TimeLogic Corp.,Crystal Bay,Nevada);Menneら(2000)Bioinformatics 16:741−742;Menneら(2000)Bioinformatics Applications Note 16:741−742;Wrenら(2002)Comput.Methods Programs Biomed.68:177−181;von Heijne(1983)Eur.J.Biochem.133:17−21;von Heijne(1986)Nucleic Acids Res.14:4683−4690を参照のこと)。
【0084】
(II.インターロイキン−100)
IL−1ファミリーの他のメンバーに対するヒトIL−33のアミノ酸配列の類似度は、以下の通りである。IL−1Raとの類似度は、34%であり;IL−1δとの類似度は、36%であり;IL−1F10との類似度は、36%であり;IL−1ζとの類似度は、9%であり;IL−1F8との類似度は、32%であり;IL−1εとの類似度は、40%であり;そしてIL−IF9との類似度は、31%である。
【0085】
インターロイキン−100を、計算上の配列分析を用いて見出し、そしてIL−1ファミリーのメンバー(それぞれ、IL−1βおよびIL−18)との2次構造の比較によって、新規なIL−1ファミリーメンバーとして同定した。IL−1ファミリーメンバーは、病原体のチャレンジに対する応答において放出される、免疫系の高度な炎症制御因子である。IL−33のヒト相同体およびマウス相同体を同定し、そしてラットIL−33およびイヌIL−33を同定した。遺伝子発現分析は、ヒトIL−33が上皮細胞、平滑筋細胞およびメサンギウム細胞において発現することを示した。IL−1βおよびTNF−αによる刺激において、ヒトIL−33mRNAレベルは、初代正常ヒト皮膚線維芽細胞および肺線維芽細胞において高度に誘導され、そして気管支の平滑筋において高度に誘導される。乾癬の皮膚サンプルおよび肺胞タンパク症におけるIL−33mRNAの発現は、著しく上昇した。
【0086】
IL−1およびIL−18と同様に、IL−33は、シグナルペプチドを有さない。代わりに、IL−33は、成熟した生物学的に活性な形態を放出するための大規模なプロセッシングを必要とする大きなプレプロタンパク質として作られ、そして分泌される。プレプロIL−33は、カスパーゼによって処理されるようである。本発明者らは、タンパク質配列のカスパーゼ切断部位を同定し、そしてインビトロで翻訳されたヒトIL−33が、構成的に活性な組換えカスパーゼ−1によって切断されることを示した。IL−33の推定上の生物学的役割を調査するために、E.coli中で組換えタンパク質を発現させ、そして精製した。これによって、IL−33遺伝子を、pET3a細菌発現ベクター中にクローニングした。組換えタンパク質のN末端を、成熟した生物学的に活性なタンパク質が、プロドメイン(pro−domain)を欠くようなIL−1βおよびIL−18と、IL−33の成熟した配列とを比較することによって選択した。完全長のタンパク質のアミノ酸112を、N末端のアミノ酸として選択した。組換えタンパク質を、E.coliで発現させ、そしてE.coliから精製した。インビボの研究を実施した。5ug/日または50ug/日のいずれかの投薬量による、マウス(C57BL/6J)に対する組換えヒトIL−33の腹腔内(IP)注射は、7日後に重篤な好酸球増加および巨脾腫を生じた。数種のサイトカインの血清レベルを、3日目および7日目に試験した。50ugのrhIL−33/日の群においてIL−5を10000pg/mlまで導入し、そして5ugのrhIL−33/日の群においてIL−5を1000pg/mlまで導入して、3日目に観察した。IL−5の血清レベルは、50ugのrhIL−33/日の群において1100pg/mlまで減少し、そして5ugのrhIL−33/日の群において500pg/mlまで減少した。IL−13血清レベルはまた、5ugのIL−33/日または50ugのIL−33/日のいずれかによる処置後7日目に、30pg/mlおよび100pg/mlにてそれぞれ検出可能であった。IL−5およびIL−13は、PBS処理したコントロール群において検出できなかった。さらに、IFN−γ、TNF−α、IL−12、IL−10、IL−6、IL−4、IL−2またはMCP−1の上昇したレベルは、IL−33処置したマウスまたはコントロール群において検出できなかった。
【0087】
2日間の50ugのrhIL−33/日のIP注射の後に肝臓リンパ球を回収した。細胞を2x10e6/mlの培養培地を伴う培養皿にプレートし、そして50ng/mlのPMAおよびluMのイオノマイシンで4時間刺激した。最後の2時間の間、BrefeldingA(分泌インヒビター)を添加した。細胞を、CD3およびNK1.1について表面染色し、そしてIL−5またはIL−4のいずれかについて細胞内染色し、そしてFACSによって分析した。IL−33によって2日間処置したマウスに由来するCD3/NK1.1ポジティブな肝臓リンパ球細胞は、IL−5およびIL−4の蓄積を示した。これらの結果は、IL−33は、NKT細胞を活性化してIL−4およびIL−5を分泌させることを示唆する。
【0088】
IL−33がNKT細胞に結合するか否かを試験するために、ビオチン化IL−33を、結合実験のために使用した。PBMCに由来するヒトNKT細胞を、Strepdavidin−PE、またはビオチン化rhIL−33およびStrepdavidin−PEのいずれかと一緒にインキュベートした。この染色した細胞を、FACSによって分析した。ヒトNKT細胞に対するrhIL−33の結合を観察した。この結合は、非ビオチン化rhIL−33と競合し得た。
【0089】
IL−1ファミリーメンバーは、細胞表面レセプターと相互作用することによってそれらの生物学的応答を発揮した。本発明者らは、IL−33に関する細胞レセプターとしてオーファンIL−1レセプターST2/T1を同定した。ST2/T1特異的モノクローナル抗体によるマウス肥満細胞株のFACS染色は、この肥満細胞株がST2/T1レセプターを発現することを示した。この染色を、この肥満細胞株をIL−33タンパク質とインキュベートすることによって、特異的かつ用量依存的に競合した。
【0090】
NKT細胞は、喘息のマウスモデルにおけるアレルゲン誘導性の気道の反応性亢進において、気道の炎症、ならびにIL−4の産生およびIL−13の産生に必須である。NKT細胞におけるIL−33によるIL−5の誘導およびIL−13の誘導は、IL−33が、これらの疾患の誘導に関与し得ることを示唆する。IL−33を中和する治療用抗体の産生は、これらの疾患の処置に有利であり得る。
【0091】
NKT細胞は、多くの疾患に関わっている。NKT細胞の調節因子としてのIL−33の同定は、IL−33が、他の疾患(例えば、狼瘡、多発性硬化症、悪性腫瘍、気道の炎症および感染性疾患)に影響し得ることを示唆する。IL−33によるTh2サイトカイン(例えば、IL−5およびIL−13)の誘導は、微生物感染に対する保護または腫瘍に対する保護に役立ち得る。
【0092】
IL−1ファミリーメンバーは、代表的に、IL−1レセプターファミリーの2つの異なるメンバーに結合して、完全なレセプター複合体を形成する。IL−33に関するレセプターをなすサブユニットの1つとしてのIL−33およびST2/T1の同定は、このサブユニットが、第2のIL−33レセプターサブユニットの同定することを可能にする。完全なIL−33レセプターの同定は、IL−33によって誘導される生物学的応答の詳細な同定を可能にする。
【0093】
Taqmanを使用するリアルタイムPCR分析は、IL−33が、多くの細胞および組織で発現したことを示した(表1)。本発明は、炎症性障害および自己免疫障害ならびに炎症性状態および自己免疫性状態(例えば、乾癬、喘息、アレルギーおよび炎症性腸疾患(例えば、胃の炎症、潰瘍性大腸炎、クローン病、セアリック病および過敏性腸症候群)を調節するためのIL−33のアゴニストおよびアンタゴニストを提供する。
【0094】
【表1】

IL−1βにTNF−αを加えることによるIL−33の誘導(8時間)を、培地単独によるIL−33の誘導と比較した。誘導を、示した細胞型において研究した(表2)。
【0095】
【表2】

インビトロで翻訳されたヒトIL−33が、見出してカスパーゼ−1によって切断されることを見出した。カスパーゼ処理を伴わない、SDS PAGEによる分析は、プロ−ヒトIL−33に対応する約32kDaにおいてバンドを示した。37℃にて1時間のカスパーゼ−1による処理は、ほぼ同じ強度の2つのバンドを生じ、これらのバンドの一方は、プロ−IL−33に対応し、そして他方は、約20〜22kDa(成熟ヒトIL−33)に移動した。37℃にて2時間の処理は、同じ2つのバンドを生じたが、これらのバンドは、約3分の2のタンパク質が約22kDaに移動した。同様の研究はまた、インビトロで翻訳されたヒトIL−33が、エラスターゼまたはカテプシンGによって、約20〜22kDaに移動する種へと切断され得るが、MMP−3処理は、使用した条件下において切断を生じなかったことを実証した。IL−33のアミノ酸112は、他のIL−1ファミリーメンバーとの相同性に起因して、成熟IL−33を産生する切断の位置であると考えられる。
【0096】
T1/ST2を、ヒトIL−33に関するレセプターの少なくとも1つのサブユニットとして同定した。T1/ST2の発現は、以下の通りであった(表3)。
【0097】
【表3】

ヒトIL−33を、pET3aベクター中にクローニングし、そしてE.coli中で発現した。このクローニングしたタンパク質は、アミノ酸112で始まり、158アミノ酸長(18kDa)であった。IPTGを使用して発現を誘導し、そしてそのタンパク質が、水溶性であることを見出した。この発現したタンパク質を、A−カラムおよびSephadexゲル濾過を使用して精製した。この精製した調製物を、内毒素について試験し、その結果は、1μgのタンパク質あたり約0.023EUであることを実証した。非還元条件を使用するSDS PAGEによる分析は、少なくとも95%のタンパク質が、18kDaの単一分子量に移動したことを示した。
【0098】
IL−33を、B6/Balb/cマウスの腹腔内(i.p.)に注射した。以下の、3群のマウスを使用した:(1)リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)の注射;(2)hIL−33(5μg/日)の注射;および(3)hIL−33(50μg/日)の注射。このプロトコルはまた、処置の3日後に屠殺する3日間の注射(i.p.)、または処置の7日後に屠殺する7日間の注射(i.p.)を含んだ。血液、血清、血液塗沫標本、白血球細胞の鑑別、組織学を行った。胸腺/脾臓細胞懸濁物を、FACS分析によって分析した。
【0099】
IL−33処置は、IL−5およびIL−13の血清レベルを測定することによって決定されたように、IL−5およびIL−13を誘導する(表4)。サイトカインIL−4、IL−5、およびIL−13をまた、IL−33投与を伴う種々の器官において測定した。この試験した器官は、胸腺、肺、脾臓、および肝臓であった。これらの3つのサイトカインが、全て誘導されたこと見出した。これらは、IL−33による処置の7日後に決定した。増加を、両方のレベルのIL−33(5μgのIL−33および50μgのIL−33)において見出した。例えば、肺において、生理食塩水処置によるIL−4の発現、IL−5の発現、およびIL−13の発現は、約1.0以下であった。しかし、IL−33(50μg)によるIL−4の発現は、8.0であり;IL−5の発現は、11.0であり;そしてIL−13の発現は、41.0であった。IL−33処置はまた、血清IgEおよび血清IgAの増加を引き起こした。7日間の処置によって、IgEレベルは、30,000ng/ml(PBS)および17,000ng/ml(50μgのIL−33)であった。7日間の処置によって、IgAレベルは、90ng/ml(PBS)および420ng/ml(50μgのIL−33)であった。IL−33処置はまた、巨脾腫をもたらした。ここで、PBS(コントロール)処置マウスの脾臓の重量は、80mgであり、5μgのIL−33で7日間処置したマウスの脾臓は150mgであり、50μgのIL−33で7日間処置したマウスの脾臓は190mgであった。IL−33処置はまた、脾臓における骨髄外造血、および胸腺の形成不全(胸腺の大きさの減少)、および胸腺の皮質の形成不全を生じた。
【0100】
【表4】

形質転換細胞および非形質転換細胞を、マウスに注射し、その後マウス内での細胞のインキュベーション期間をおき、そして注射した細胞の回収および精製を行い、T1/ST2の発現を評価した(表5)。非形質転換乳腺細胞およびras形質転換乳腺細胞を使用した。宿主免疫欠損ヌードマウスに対するras形質転換細胞の注射によって、ras形質転換細胞は、T1/ST2を増加したレベルで発現し、その発現は、103であった(表5)。インタクトな免疫系を有する宿主マウスに対するras形質転換細胞の注射、形質転換細胞の回収、およびTaqman(登録商標)分析によって、より大きいT1/ST2発現の増加を示した。T1/ST2発現のこれらの増加は、可溶性T1/ST2の増加を反映し、この可溶性T1/ST2は、囮として作用することが考えられる。可溶性T1/ST2が囮として作用する場合、これはIL−33に結合し、そして宿主が腫瘍細胞に対するTH2型免疫応答を増大するのを妨げた。使用したインタクトな免疫系を有する宿主マウスは、XtbマウスおよびXBalbマウスであった(表6)。T1/ST2の可溶性バージョン(いわゆるFit 1)が、記載される(例えば、Bergersら(1994)EMBO J.13:1176−1188;Reikerstorferら(1995)J.Biol.Chem.270:17645−17648を参照のこと)。
【0101】
IL−33を、4T1乳癌を有するマウスに投与した。投与したIL−33は、腫瘍の大きさを減少するのに効率的であった(表6)。本発明は、癌および腫瘍を含む増殖性の状態の処置のためのIL−33のアゴニスト(例えば、IL−33またはIL−33をコードする核酸)を提供する。
【0102】
【表5】

ヒト組織サンプルのTaqman分析は、種々の癌(例えば、乳癌および卵巣癌)におけるIL−33の減少した発現を示した(表7)。この結果は、免疫系の活性化を回避して抗腫瘍応答を増大するために、腫瘍細胞がIL−33の産生を控えることを示す(表7)。
【0103】
【表7】

IL−33処置は、実験的自己免疫性脳炎(多発性硬化症に関する動物モデル)を延長する。EAEを、プロテオリピドタンパク質(PLP)によって引き起こした(Kjellenら(2001)J.Neuroimmunol.120:25−33;Lamanら(2001)J.Neuroimmunol.119:124−130;Fifeら(2001)J.Immunol.166:7617−7624)。3群のマウスを、PBS、0.5μgのIL−33、または2.0μgのIL−33の注射のために使用した。これは、0日目〜12日目まで毎日のi.p.注射であった。疾患スコアを、7日目〜23日目に評価した(表8)。この結果は、PBS処置マウスにおいて、この疾患が自発的に回復されたことを実証した。しかし、IL−33のいずれかの用量による処置によって、この疾患は延長され、PBS処置によって見出される疾患より高度であり、そして2.5〜3.0の間の疾患スコアに疾患を維持した(表8)。本発明は、中枢神経系の自己免疫障害(例えば、多発性硬化症)を含む自己免疫障害の処置のための、IL−33のアンタゴニストを提供する。
【0104】
【表8】

IL−33処置は、NKT細胞においてIL−5の誘導を生じた。NKT細胞を、NK1.1マーカーおよびCD3マーカーの両方の存在によって同定した。Black−6マウスを、PBSまたは50μg/日のIL−33で2日間処置した。肝臓リンパ球を単離し、そしてPMAイオノマイシンで3時間再び刺激し、そしてブレフェルジン(brefeldin)で1時間刺激した。この結果は、IL−33が、NKT細胞においてIL−5を誘導することを実証した。
【0105】
抗T1/ST2抗体を、野生型肥満細胞(WTMC)にその結合する能力、およびこの肥満細胞に対するこの抗体の結合に対する添加したIL−33の影響について試験した。IL−33を添加することは、抗T1/ST2抗体のこの肥満細胞に結合する能力を無効にし、IL−33のレセプターが、T1/ST2であることを実証した。
【0106】
(III.IL−33抗体処置のインビトロでの効果)
ヒトIL−33に対するマウスモノクローナル抗体を、当該分野で周知である方法を使用して産生した(上記を参照のこと)。IL−33活性に拮抗するこの抗体の能力を試験するために、Balb/cマウスに、0日目に0.2mgの抗IL−33抗体を皮下に注射した。1日目に、このマウスに、100ngのmIL−33を腹腔内に注射した。血清を、2日目に回収し、そしてIL−5レベルを測定した。抗IL−33抗体による処置は、IL−33単独で処置したマウスならびにアイソタイプコントロール抗体およびIL−33で処置したマウスと比較した場合に、IL−5をわずかに産生するか、全く産生しなかった(図1を参照のこと)。
【0107】
(IV.コラーゲン誘導性関節炎(CIA)の処置)
B10.RIIIマウス(CIAの発症に対して感受性であることが知られる)に、完全なフロイントアジュバント(Difco)中のウシコラーゲンII型(ウシCII;Sigma)を注射した。マウスに、100ulの1mg/mlウシCIIのエマルジョンを尾基底(tail base)上に注射した。第2の追加免疫用量を、21日目に投与した。マウスを、以下の臨床スケールによって評価した:0=正常;1=1つの関節/部位における発赤および/または腫れ;2=1つより多い関節/部位における発赤および/または腫れ;ならびに3=肢全体における発赤および/または腫れ。CIAを誘導したマウスは、70〜90%の疾患発現の割合を有する。
【0108】
マウスを、1mgの抗IL−33抗体またはアイソタイプコントロール抗体で23日目に処置した。抗体を、さらに2つの処置について7日ごとに投与した。抗IL−33処置マウスは、減少した疾患スコアおよびより低い疾患発現の発生の割合を示した(図2および図3を参照のこと)。抗IL−33処置マウスはまた、関節炎の肢の平均の数はより低かった(図4を参照のこと)。
【0109】
(V.実験的自己免疫性脳炎(EAE)の処置)
C57BL/6マウスを、50ugのミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)ペプチドで免疫してEAEを誘導した。この疾患の臨床的評価は、以下のように記録される:1=力のない尾;2=後肢の脱力;3=立ち直りの不全(inability to right)+1つの後肢の脱力;4=立ち直りの不全+片方の後肢麻痺;5=両方の後肢麻痺;6=両方の後肢麻痺+腹部の虚脱(abdomen collapse);および7=6+瀕死。EAEマウスを、100mgの抗IL−33抗体またはアイソタイプコントロール抗体のいずれかで皮下的に処置した。抗IL−33処置マウスは、コントロール群より低い疾患スコアおよび疾患の発生率を示した(図5および図6を参照のこと)。
【0110】
(VI.IL−33R複合体を同定するためのプルダウンアッセイ)
IL−33を、EX−LINK Supho−NHS−Biotin(Pierce)でビオチン化した。2μgのビオチン化IL−33のプルダウンを、50μlの50%のAgarose bound Avidin D(Vector Laborities)50%スラリーを含む500μlのRIPA溶解緩衝液(アップステート(upstate)の細胞シグナル伝達溶液)中で行った。5μgの組換え細胞外ST2−Fc(R&D Systems)または5μgの組換え細胞外SIGIRR−Fc(R&D Systems)のいずれかを使用した。4℃にて一晩のインキュベーションの後、沈殿を、500μlのRIPA溶解緩衝液で3回洗浄した。この沈殿したタンパク質を、SDS−Pageによって分離し、電気ブロット(electroblot)し、そしてST2(R&D Systems)またはSIGIRR(R&D Systems)に対して特異的な抗体を用いたウェスタンブロット/ECL反応によって可視化した。ST2FcまたはSIGIRR−Fcによるビオチン化IL−33のプルダウンを、プロテインG−Sepharose(Amersham Bioscience)をAgarose bound Avidin Dの代わりに使用することを除いては、上記と同じ様式で行った。IL−33の存在を、Streptavidin−HRP結合体(Pierce)およびECL反応を介して可視化した。
【0111】
(VII.NF−κBおよびMAPキナーゼのリン酸化)
肥満細胞株WTMCは、これまでに記載された(例えば、Wrightら(2003)J.Immunol.171:3034−3046を参照のこと)。細胞を、Complete Miniプロテアーゼインヒビターカクテル(Roche)および10mM NaVOを含むRIPA溶解緩衝液(Upstate)中に溶解した。タンパク質を、SDS−Pageによって分離し、Immobilon−Pメンブレン(Millipore)に移し、リン酸化p65 NF−κB、p65 NF−κB、リン酸化p44/42 MAPキナーゼ、p44/42 MAPキナーゼ、リン酸化p38 MAPキナーゼ、およびp38 MAPキナーゼに対する抗体(全てCell Signaling Technologyからの抗体)を使用して免疫ブロットした。
【0112】
(VIII.一過性トランスフェクションおよびレポーター遺伝子アッセイ)
製造業者の推薦に示されるように、NF−κB駆動性GFPレポーター遺伝子構築物(pNF−κB−hrGFP;Stratagene)およびST2もしくはSIGIRRまたはその両方についてコードするプラスミドの組み合わせによるトランスフェクションの前に、HEK293FT細胞を、Fugene−6(Roche)とともに播種した。細胞を、トランスフェクション24時間後に、分けた。24時間後、細胞を、未処置のままか、または50ng/mlの濃度にてマウスIL−33で刺激した。刺激の16時間後に、細胞を、FACSによってGFP発現について分析した。
【0113】
【表9】

本明細書中の全ての引用は、各個々の刊行物、特許出願、または特許が、あたかも具体的かつ個別に、全ての図面(figure)および図面(drawing)を含んで参考として援用されることが示されるのと同じ程度に、本明細書において参考として援用される。
【0114】
本発明の多くの改変および変化物が、当業者には明らかなように、本発明の目的、趣旨および範囲を保存するために、特定の状況、材料、組成物、プロセス、処置工程に適合するようになされ得る。全てのこのような改変物は、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、本明細書に添付される特許請求の範囲の範囲内であることが意図される。本明細書において記載される特定の実施形態は、実施例のみによって提供され、そして本発明は、権利を与えられるこのような特許請求の範囲と等価の全体の範囲に加えて、添付された特許請求の範囲の用語によって限定されるべきである。そして、本発明は、実施例によって本明細書中に提示されている特定の実施形態によって限定されるべきではない。
【表10】


















【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−178810(P2011−178810A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−131646(P2011−131646)
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【分割の表示】特願2006−553342(P2006−553342)の分割
【原出願日】平成17年2月15日(2005.2.15)
【出願人】(596129215)シェーリング コーポレイション (785)
【氏名又は名称原語表記】Schering Corporation
【Fターム(参考)】