説明

インターロイキン−5に対するヒトモノクローナル抗体および方法およびこれを含む組成物

【課題】ヒトにおけるIl−5媒介性病理を処置するために使用され得る高親和性抗体、特にヒト抗IL−5抗体を得ること。
【解決手段】本発明は、インターロイキン5(IL−5)(好ましくは、ヒトIL−5)に特異的に結合する抗体およびその抗原結合部分に関する。本発明はまた、ヒト抗IL−5抗体に関し、この抗体としては、キメラ抗体、二重特異的抗体、誘導体化抗体、単鎖抗体または融合タンパク質の一部が挙げられる。本発明はまた、抗IL−5抗体およびこのような分子をコードする核酸分子由来の重鎖免疫グロブリン分子および軽鎖免疫グロブリン分子に関する。本発明はまた、抗IL−5抗体、これらの抗体を含む薬学的組成物を作製する方法ならびに診断および処置のための抗体およびその組成物を使用する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、インターロイキン−5(IL−5)に特異的に結合するヒトモノクローナル抗体およびその抗原結合部分および方法およびこのようなモノクローナル抗体またはその抗原結合部分を含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
好酸球は、喘息の病理において重要な役割を果たす。喘息の重篤度および気道過剰応答の程度の両方は、血液および痰の好酸球の数と相関する。気管支生検研究により、好酸球が、喘息の気道炎症の顕著な成分であり、好酸球顆粒内容物が、喘息の気道内層流体における濃度の増大に存在することが示される。これらの顆粒内容物は、複合的機構(例えば、上皮細胞脱落、毛様体鬱血、酸素ラジカルの生成および気道神経繊維の傷害)を介して気道細胞に対して直接的毒性影響を有する多くのタンパク質からなる。好酸球はまた、肥満細胞のヒスタミン放出を増加し得るメディエーターを生成する。活性のこのスペクトルは、気道壁の腫脹および気道粘膜の生成によって明らかになるような気管支気道の慢性炎症に直接寄与する。損傷した気道上皮を介した風媒因子の浸透を容易にすることによって、この炎症は、増大した神経応答性および平滑筋収縮を直接引き起こし得る(非特許文献1)。
【0003】
インターロイキン−5(IL−5)は、主要な好酸球メディエーターであり、かつ喘息における気道の炎症性傷害において重大な要因である。これは、主に、T細胞のTh2サブセットによって生成され、より少ない程度には、好酸球を含む他の細胞型によって生成される。IL−5は、骨髄における好酸球の成熟に非常に重要であり、好酸球の化学走性応答に二次的に重要である。IL−5はまた、好酸球活性化を刺激し、生存を長期化し、特異的刺激(例えば、IgAまたはIgG)に応答して、脱顆粒を容易にし、そして一般に、炎症誘発性メディエーターである。IL−5の増大したレベルは、臨床的な喘息およびヒト気管支抗原チャレンジモデルにおいて測定されている(非特許文献1)。
【0004】
喘息は、現在、喘息において多くの重要なメディエーター(IL−5を含む)の発現を抑制し、結果として肺炎症の減少を生じる吸入ステロイドまたは経口ステロイドのいずれかのレジメンによって最も効果的に処置される。しかし、ステロイド治療の長期の負担が分かっている。これらの理由によって、直接的な抗IL−5治療が、喘息の管理において魅力的な標的である。
従って、ヒトにおけるIl−5媒介性病理を処置するために使用され得る高親和性抗体、特にヒト抗IL−5抗体を得ることが望ましい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Greenfederら,Respiratory Research 2:71−79,200
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の要旨)
本発明は、特異的にIL−5と結合する抗体またはその抗原結合部分を提供する。特定の実施形態において、その抗体または抗原結合部分が単離され、これらは、ポリクローナル抗体であってもモノクローナル抗体であってもよい。好ましい実施形態において、その抗体は、ヒトIL−5と特異的に結合する。特に好ましい実施形態において、その抗体は、ヒトモノクローナル抗体である。本発明は、ヒト重鎖および/またはヒト軽鎖を含む抗体、ヒト可変領域全体またはその一部(本明細書中で提供される抗体の個々のCDRを含む)を包含する。
【0007】
いくつかの実施形態において、その抗体またはその抗原結合フラグメントの重鎖アミノ酸配列は、ヒトV3−23遺伝子、ヒトD1−20遺伝子およびヒトJH4B遺伝子の生殖系列アミノ酸配列に由来するアミノ酸配列を含む。さらなる実施形態において、抗体またはその抗原結合フラグメントの重鎖(CDR2)は、その生殖系列アミノ酸配列と比較して、1つのアミノ酸置換を含み、重鎖CDR3は、その生殖系列アミノ酸配列と比較して、2つのアミノ酸置換を含む。
【0008】
いくつかの実施形態において、抗体またはその抗原結合フラグメントの軽鎖アミノ酸配列は、ヒトVK08/018遺伝子およびヒトJK4遺伝子の生殖系列アミノ酸に由来するアミノ酸配列を含む。さらなる実施形態において、軽鎖CDR1、CDR2、FR3、CDR3およびFR4は、各々、生殖系列アミノ酸配列と比較して、1つのアミノ酸置換を含む。
【0009】
いくつかの実施形態において、その抗体は、配列番号2に示される重鎖アミノ酸配列を含む。他の実施形態において、その抗体は、配列番号8、10、および12にそれぞれ示される、CDR1、CDR2およびCDR3を含む重鎖を含む。別の実施形態において、その抗体重鎖は、表2に示される、CDR1からCDR3のアミノ酸配列の連続する部分を含む。さらなる実施形態において、その抗体重鎖は、配列番号6に示される重鎖可変領域のアミノ酸配列を含む。他の実施形態において、上記の抗体のいずれかが、配列番号4に示される軽鎖アミノ酸配列またはその可変領域(配列番号4のアミノ酸残基23〜130)、軽鎖のアミノ酸配列の表3に示されるCDR1からCDR3(配列番号4のアミノ酸残基46〜119)またはCDR1(配列番号14)、CDR2(配列番号16)およびCDR3(配列番号18)をさらに含む。
【0010】
本発明の抗体またはその一部は、免疫グロブリンG(IgG)、IgM、IgE、IgAまたはIgD分子であり得る。好ましい実施形態において、そのヒト抗体は、IgGであり、IgG1、 IgG2、IgG3またはIgG4サブタイプである。より好ましい実施形態において、そのヒト抗体は、IgG4サブタイプである。なおより好ましい実施形態において、そのヒト抗体は、20.13.3である。別の実施形態において、その抗体またはその抗原結合部分は、Fabフラグメント、F(ab’)フラグメント、Fフラグメント、単鎖抗体またはキメラ抗体に由来する。別の実施形態において、抗体またはその抗原結合部分は、融合タンパク質の一部を形成する。
【0011】
別の局面において、本発明は、本発明の重鎖および軽鎖の免疫グロブリン分子またはその一部をコードする配列、特に、重鎖および軽鎖の可変領域、CDR1からCDR3および個々のCDRの連続する重鎖および軽鎖のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド分子を提供する。
【0012】
別の目的によれば、本発明は、標識または誘導体化された、ヒト抗IL−5抗体またはその抗原結合部分を提供する。一実施形態において、抗体またはその一部は、放射性標識、酵素標識、毒素、磁性因子または薬物結合体で標識される。別の実施形態において、抗体またはその一部は、1種以上のその特性(例えば、半減期、バイオアベイラビリティーまたは活性)を改善するために誘導体化される。好ましい実施形態において、抗体またはその一部は、ポリエチレングリコール、少なくとも1つのメチル基もしくはエチル基または少なくとも1つの炭化水素部分で誘導体化される。別の好ましい実施形態において、標識または誘導体化された抗体またはその一部は、診断法または治療法において使用される。
【0013】
別の目的によれば、本発明は、以下のうちの1つ以上によって特徴付けられる、本発明の抗IL−5抗体またはその抗原結合部分を提供する:IL−5媒介性炎症、好酸球成熟、活性化、脱顆粒、またはインビボもしくはインビトロでの組織への浸潤を阻害あるいは減少させる、平滑筋のIL−5誘導性過剰応答性を阻害する、ならびに肺、気道もしくは血液中のIL−5レベルを低下させる。
【0014】
好ましい実施形態において、そのヒト抗体は、インビボでの組織への好酸球の浸潤を阻害または軽減する。好ましい実施形態において、その組織は、肺または気道の組織内層である。
【0015】
別の局面によれば、本発明は、抗体またはその抗原結合部分、および薬学的に受容可能なキャリアを含む薬学的組成物およびキットを提供する。好ましい実施形態において、その薬学的組成物またはキットは、別の成分(例えば、画像化試薬または治療剤)をさらに含む。好ましい実施形態において、その薬学的組成物またはキットは、診断法または治療法において使用される。
【0016】
本発明の別の局面は、診断方法を包含する。一実施形態において、本発明は、IL−5発現組織の存在または位置を診断するための方法を提供する。好ましい実施形態において、この方法は、標識された抗体またはその一部を使用する。この方法は、インビボまたはインビトロで使用され得る。別の実施形態において、ヒト抗IL−5抗体が、組織(例えば、肺)への好酸球の浸潤を阻害または軽減するか否かを決定する工程を包含する、診断方法が提供され得る。
【0017】
本発明の別の目的は、ヒト抗IL−5抗体またはその抗原結合部分を使用する診断方法を包含する。一実施形態において、治療方法は、その必要がある被験体に、有効量の抗体を投与する工程を包含する。好ましい実施形態において、その被験体は、喘息、喘息再燃(asthma exacerbations)、喘息悪化エピソード、慢性肺炎、アレルギー性鼻炎、通年性アレルギー性鼻炎、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、過好酸球増加症、チャーグ−ストラウス症候群、アトピー性皮膚炎、オンコセルカ皮膚炎(onchocercal dermatitis)、エピソード性血管水腫(angiodema)、好酸球性筋肉痛症候群、セアリック病、好酸球性胃腸炎、蠕虫感染、ホジキン病、鼻ポリープ、レフレル症候群、じんま疹、好酸球性増加気管支炎、結節性動脈炎、静脈洞炎、慢性静脈洞炎、好酸球性食道炎、アレルギー性好酸球性食道炎、アレルギー性結膜炎に罹患している。より好ましい実施形態において、その方法は、肺への好酸球浸潤を阻害または軽減する。抗体またはその一部は、1日3回から6ヶ月毎に1回まで投与されてもよいし、静脈内経路、皮下経路、筋肉内経路、非経口経路または局所的経路を介して投与されてもよい。別の実施形態において、その方法は、外科手術または他の免疫療法とともに行われる。なおさらなる実施形態において、その抗体は、放射性標識、薬物結合体、免疫毒素もしくは毒素で標識されるか、または毒性ペプチドを含む融合タンパク質である。
【0018】
別の局面において、本発明は、本発明の抗体またはその抗原結合部分を生成するための方法を提供し、この方法は、不死化細胞、合成手段、組換え発現またはファージディスプレイによる生成を包含する。
【0019】
本発明の別の目的は、抗IL−5抗体の重鎖および/または軽鎖、その抗原結合部分、またはその誘導体をコードする核酸を提供することである。好ましい実施形態において、その核酸分子は、抗IL−5抗体を発現する細胞または細胞株に由来する。より好ましい実施形態において、その核酸は、ハイブリドーマに由来する。なおより好ましい実施形態において、そのハイブリドーマは、20.13.3である。別の実施形態において、本発明は、その核酸分子を含むベクターおよび宿主細胞を提供する。さらなる実施形態において、本発明は、その重鎖および/または軽鎖、その抗原結合部分またはその誘導体を組換え生成する方法を提供する。
【0020】
本発明はまた、処置が必要な被験体を、抗IL−5抗体の重鎖および/または軽鎖、その抗原結合部分もしくはその誘導体をコードする、有効量の核酸分子で処置するための方法を提供する。好ましい実施形態において、この方法は、喘息、喘息再燃、喘息悪化エピソード、慢性肺炎、アレルギー性鼻炎、通年性アレルギー性鼻炎、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、過好酸球増加症、チャーグ−ストラウス症候群、アトピー性皮膚炎、オンコセルカ皮膚炎、エピソード性血管中胚葉、好酸球性筋肉痛症候群、セリアック病、好酸球性胃腸炎、蠕虫感染、ホジキン病、鼻ポリープ、レフレル症候群、じんま疹、過好酸球増加性気管支炎、結節性動脈炎、静脈洞炎、慢性静脈洞炎、好酸球性食道炎、アレルギー性好酸球性食道炎、アレルギー性結膜炎(これらに限定されない)を処置するために使用される。
例えば、本発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
IL−5と特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、該抗体またはフラグメントが、以下:
(a)配列番号2に示されるアミノ酸配列であって、シグナルペプチドを有していても有していなくても良い、アミノ酸配列;
(b)配列番号6に示されるアミノ酸配列;
(c)配列番号2の残基50〜127由来のアミノ酸配列;ならびに
(d)配列番号8、10および12にそれぞれ示されるCDR1、CDR2およびCDR3アミノ酸配列
からなる群より選択される、重鎖アミノ酸配列を含む、抗体またはフラグメント。
(項目2)
項目1に記載の抗体または抗原結合フラグメントであって、該抗体またはフラグメントが、以下:
(a)配列番号4に示されるアミノ酸配列であって、シグナルペプチドを有していても有していなくても良い、アミノ酸配列;
(b)配列番号4の残基23〜130由来のアミノ酸配列;
(c)配列番号4の残基46〜119由来のアミノ酸配列;ならびに
(d)配列番号14、16および18にそれぞれ示されるCDR1、CDR2およびCDR3アミノ酸配列
からなる群より選択される、軽鎖アミノ酸配列をさらに含む、抗体またはフラグメント。
(項目3)
核酸分子であって、以下:
(a)配列番号2に示されるアミノ酸配列であって、シグナルペプチドを有していても有していなくても良い、アミノ酸配列;
(b)配列番号6に示されるアミノ酸配列;
(c)配列番号2の残基50〜127由来のアミノ酸配列;ならびに
(d)配列番号8、10および12にそれぞれ示されるCDR1、CDR2およびCDR3アミノ酸配列
からなる群より選択されるアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含む、核酸分子。
(項目4)
核酸分子であって、該核酸分子が、以下:
(a)配列番号1のヌクレオチド1〜709、1102〜1137、1256〜1585、および1683〜2002由来のヌクレオチド配列;
(b)配列番号1のヌクレオチド58〜709、1102〜1137、1256〜1585、および1683〜2002由来のヌクレオチド配列;
(c)配列番号1のヌクレオチド58〜709由来のヌクレオチド配列;
(d)配列番号1のヌクレオチド148〜381由来のヌクレオチド配列;ならびに
(e)配列番号1のヌクレオチド1〜2002由来のヌクレオチド配列
からなる群より選択されるヌクレオチド配列を含む、核酸分子。
(項目5)
アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子であって、該アミノ酸配列が、以下:
(a)配列番号4に示されるアミノ酸配列であって、シグナルペプチドを有していても有していなくても良い、アミノ酸配列;
(b)配列番号4の残基23〜130由来のアミノ酸配列;
(c)配列番号4の残基46〜119由来のアミノ酸配列;ならびに
(d)配列番号14、16および18にそれぞれ示されるCDR1、CDR2およびCDR3アミノ酸配列からなる群より選択される、核酸分子。
(項目6)
核酸分子であって、以下:
(a)配列番号3に示されるヌクレオチド配列;
(b)配列番号3に示されるヌクレオチド67〜708由来のヌクレオチド配列;
(c)配列番号3に示されるヌクレオチド67〜390由来のヌクレオチド配列;および(d)配列番号3に示されるヌクレオチド67〜357由来のヌクレオチド配列
からなる群より選択されるヌクレオチド配列を含む、核酸分子。
(項目7)
項目3〜6のいずれか1項に記載の核酸分子であって、該核酸分子が、発現制御配列に作動可能に連結した、核酸分子。
(項目8)
項目7に記載の核酸分子を有する形質転換された宿主細胞。
(項目9)
IL−5と特異的に結合する免疫グロブリンまたはその抗原結合フラグメントを産生する方法であって、該方法が、項目8に記載の宿主細胞を培養する工程を包含する、方法。
(項目10)
項目3または4に記載の核酸分子および項目5または6に記載の核酸分子を有する形質転換された宿主細胞。
(項目11)
IL−5と特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントを産生する方法であって、該方法が、項目10に記載の宿主細胞を培養する工程を包含する、方法。
(項目12)
項目1または2に記載の抗体またはそのフラグメントおよび薬学的に受容可能なキャリアを含む、組成物。
(項目13)
項目12に記載の組成物であって、該組成物が、以下:
(a)診断剤;および
(b)治療剤
からなる群より選択される成分をさらに含む、組成物。
(項目14)
項目1または2に記載の抗体またはそのフラグメントを含むキット。
(項目15)
所望されないIL−5活性によって特徴付けられる状態または障害を妨げるまたは抑制するための方法であって、該方法が、項目1または2に記載の抗体またはそのフラグメントの有効量あるいは項目12または13に記載の組成物の有効量を投与する工程を包含する、方法。
(項目16)
項目15に記載の方法であって、前記状態または障害が、以下:喘息、喘息再燃、喘息悪化エピソード、慢性肺炎、アレルギー性鼻炎、通年性アレルギー性鼻炎、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、過好酸球増加症、チャーグ−ストラウス症候群、アトピー性皮膚炎、オンコセルカ皮膚炎、エピソード性血管中胚葉、好酸球性筋肉痛症候群、セアリック病、好酸球性胃腸炎、蠕虫感染、ホジキン病、鼻ポリープ、レフレル症候群、じんま疹、好酸球増加性気管支炎、結節性動脈炎、静脈洞炎、慢性静脈洞炎、好酸球性食道炎、アレルギー性好酸球性食道炎、アレルギー性結膜炎からなる群より選択される、方法。
(項目17)
項目15または16に記載の方法であって、該方法が、好酸球の作用された組織への浸潤を減少または抑制する、方法。
(項目18)
被験体におけるIL−5媒介されたアレルギー性反応を妨げるまたは抑制するための方法であって、該方法が、項目1または2に記載の抗体またはそのフラグメントの有効量あるいは項目12または13に記載の組成物の有効量を投与する工程を包含する、方法。
(項目19)
IL−5により媒介される事象を妨げるまたは抑制するための方法であって、該事象が、以下:
(a)好酸球増殖、成熟、生存、活性化、血流への移動、内皮への付着、組織への浸潤;(b)肺水腫;
(c)気管支収縮;
(d)気道過応答性;
(e)肺の好酸球増加症または好中球増加症;
(f)皮膚の好酸球増加症;および
(g)気道上皮損傷
からなる群より選択され、該方法が、項目1または2に記載の抗体またはそのフラグメントの有効量あるいは項目12または13に記載の組成物の有効量を投与する工程を包含する、方法。
(項目20)
項目17〜19のいずれか1項に記載の方法であって、前記抗IL−5抗体が、別の治療剤の投与と一緒に投与される、方法。
(項目21)
IL−5レセプターへのIL−5結合を妨げるまたは抑制するための方法であって、該方法が、IL−5レセプターを発現している細胞が存在している環境に項目1または2に記載の抗体またはその抗原結合フラグメントあるいは項目12または13に記載の組成物を投与する工程を包含する、方法。
(項目22)
IL−5レセプター媒介チロシンリン酸化反応を妨げるまたは抑制するための方法であって、該方法が、IL−5レセプターを発現している細胞が存在している環境に項目1または2に記載の抗体またはその抗原結合フラグメントあるいは項目12または13に記載の組成物を投与する工程を包含する、方法。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(発明の詳細な説明)
(定義および一般的技術)
本明細書中で別段規定されなければ、本発明に関連して使用される科学用語および技術用語は、当業者によって通常理解されている意味を有するものとする。さらに、文脈が別段要求しなければ、単数形の用語は、複数形を含むものとし、複数形の用語は、単数形を含むものとする。一般に、本明細書中で記載される、細胞および組織の培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学、ならびにタンパク質および核酸化学、ならびにハイブリダイゼーションと関連して使用される名称およびこれらの技術は、周知であり、かつ当該分野で一般的に使用されている。本発明の方法および技術は、一般に、当該分野で周知の、および種々の一般的およびより具体的な参考文献(別段示されなければ、本明細書全体を通して引用および議論される)に記載される従来法に従って行われる。例えば、Sambrookら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(1989)およびAusubelら,Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing Associates(1992)、ならびにHarlowおよびLane Antibodies:A Laboratory
Manual Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(1990)(これらは、本明細書中に参考として援用される)を参照のこと。酵素反応および精製技術は、当該分野で一般的に達成されるかまたは本明細書中で記載されるように、製造業者の仕様書に従って行われる。本明細書中に記載される分析化学、合成有機化学、ならびに医化学および製薬化学と関連して使用される名称、そしてこれらの実験手順および技術は、当該分野で周知であり、一般的に使用されている。標準的な技術は、化学合成、化学分析、薬学的調製物、処方物、および送達、ならびに患者の処置のために使用される。
【0022】
以下の用語は、別段示されなければ、以下の意味を有すると理解されるものとする:
用語「ポリペプチド」は、ネイティブまたは人工的なタンパク質、タンパク質フラグメントおよびタンパク質配列のポリペプチドアナログを包含する。ポリペプチドは、モノマーまたはポリマーであり得る。本発明に従う好ましいポリペプチドは、ヒト重鎖免疫グロブリン分子およびヒトκ軽鎖免疫グロブリン分子、ならびに重鎖免疫グロブリン分子と軽鎖免疫グロブリン分子(例えば、κ軽鎖免疫グロブリン分子)を含む組み合わせにより形成される抗体分子、ならびにこれらのフラグメントおよびアナログを包含する。
【0023】
用語「単離されたタンパク質」または「単離されたポリペプチド」は、その起源または由来の源に起因して、(1)そのネイティブな状態でそれに付随する天然に関連する成分と会合していない、(2)同じ種に由来する他のタンパク質を含まない、(3)異なる種由来の細胞により発現される、あるいは(4)天然に存在しない、タンパク質またはポリペプチドである。従って、化学的に合成されたポリペプチド、またはポリペプチドが天然に由来する細胞とは異なる細胞系において合成されたポリペプチドは、その天然に関連する成分から「単離されて」いる。タンパク質はまた、当該分野で周知のタンパク質精製技術を使用する単離によって、天然に関連する成分を実質的に含まないようにされ得る。
【0024】
タンパク質またはポリペプチドは、サンプルの少なくとも約60〜75%が、単一のポリペプチド種を示す場合、「実質的に純粋」であるか、「実質的に均質」であるか、または「実質的に精製され」ている。そのポリペプチドまたはタンパク質は、単量体であっても多量体であってもよい。実質的に純粋なポリペプチドまたはタンパク質は、代表的には、タンパク質サンプルのうちの約50%、60%、70%、80%または90% W/W、より通常には、約95%を構成し、好ましくは、99%純粋である。タンパク質の純度または均一性は、当該分野で周知の多くの手段(例えば、タンパク質サンプルのポリアクリルアミドゲル電気泳動、続いてゲルを当該分野で周知の色素で染色した際の単一ポリペプチドバンドの可視化)により示され得る。特定の目的のために、HPLCまたは精製に関して当該分野で周知の他の手段を使用することによって、より高い分解能が提供され得る。
【0025】
本明細書中で使用される場合、用語「ポリペプチドフラグメント」とは、アミノ末端および/またはカルボキシ末端の欠失を有するが、残りのアミノ酸配列が、その天然に存在する配列中の対応する位置と同一なポリペプチドをいう。フラグメントは、代表的には、少なくとも5個、6個、8個または10個のアミノ酸長であり、好ましくは、少なくとも14アミノ酸長、より好ましくは、少なくとも20アミノ酸長、通常、少なくとも50アミノ酸長、およびなおより好ましくは、少なくとも70アミノ酸長である。
【0026】
本明細書中で使用される場合、用語「ポリペプチドアナログ」とは、アミノ酸配列の一部に対する実質的同一性を有し、適切な結合条件下でIL−5を特異的に結合する、少なくとも25アミノ酸のセグメントから構成されるポリペプチドをいう。代表的には、ポリペプチドアナログは、天然に存在する配列に関して保存的アミノ酸置換(または挿入もしくは欠失)を含む。アナログは、代表的には、少なくとも20アミノ酸長、好ましくは少なくとも50以上のアミノ酸長であり、しばしば、全長の天然に存在するポリペプチド程度の長さであり得る。
【0027】
非ペプチドアナログは、テンプレートペプチドのものと類似の特性を有する薬物として、製薬産業において一般に使用される。これらの型の非ペプチド化合物は、「ペプチド模倣物(peptide mimetics)」または「ペプチドミメティクス(peptidomimetics)」といわれる。Fauchere,J.Adv.Drug Res.15:29(1986);VeberおよびFreidinger TINS p.392(1985);ならびにEvansら,J.Med.Chem.30:1229(1987)(これらは、本明細書中に参考として援用される)。このような化合物は、しばしば、コンピューター化分子モデリングの補助により開発される。治療的に有用なペプチドに構造的に類似するペプチド模倣物は、等価な治療効果または予防効果をもたらすために使用され得る。一般に、ペプチドミメティクスは、ヒト抗体のようなパラダイムポリペプチド(すなわち、所望の生化学的特性または薬理学的活性を有するポリペプチド)に構造的に類似しているが、1以上のペプチド結合が、当該分野で周知の方法によって、−−CHNH−−、−−CHS−−、−−CH−CH−−、−−CH=CH−−(シスおよびトランス)、−−COCH−−、−−CH(OH)CH−−、および−−CHSO−−からなる群より選択される結合によって必要に応じて置換されている。コンセンサス配列の1以上のアミノ酸を同じ型のD−アミノ酸で体系的に置換すること(例えば、L−リジンの代わりにD−リジン)もまた、より安定なペプチドを生成するために使用され得る。さらに、コンセンサス配列または実質的に同一のコンセンサス配列バリエーションを含む束縛されたペプチドは、当該分野で公知の方法によって生成され得る(本明細書中に参考として援用されるRizoおよびGierasch Ann.Rev.Biochem.61:387(1992));例えば、ペプチドを環化する、分子内ジスルフィド架橋を形成し得る内部システイン残基を付加することによって。
【0028】
「免疫グロブリン」は、四量体分子である。天然に存在する免疫グロブリンにおいて、各四量体は、2つの同一対のポリペプチド鎖から構成され、各々の対は、1つに「軽」鎖(約25kDa)および1つの「重」鎖(約50〜70kDa)を有する。各鎖のアミノ末端部分は、主に抗原認識を担う、約100〜110またはそれ以上のアミノ酸の可変領域を含む。各鎖のそのカルボキシ末端部分は、主にエフェクター機能を担う定常領域を規定する。ヒト軽鎖は、κ軽鎖およびλ軽鎖として分類される。重鎖は、μ、Δ、γ、α、またはεとして分類され、それぞれ、IgM、IgD、IgG、IgA、およびIgEとして、抗体のアイソタイプを規定する。軽鎖および重鎖内で、可変領域および定常領域が、約12以上のアミノ酸の「J」領域によって連結され、重鎖はまた、約10以上のアミノ酸の「D」領域を含む。一般には、Fundamental Immunology Ch.7(Paul,W.編,第2版.Raven Press,N.Y.(1989))(全ての目的のためにその全体が参考として援用される)を参照のこと。各軽鎖/重鎖の可変領域は、インタクトな免疫グロブリンが、2つの結合部位を有するように、抗体結合部位を形成する。
【0029】
免疫グロブリン鎖は、3つの超可変領域(相補性決定領域またはCDRともいわれる)によって連結された、比較的保存されたフレームワーク領域(FR)のおなじ一般的構造を示す。各対の2つの鎖からのCDRは、フレームワーク領域によって並べられ、特異的エピトープに結合することが可能になる。N末端からC末端へ、軽鎖および重鎖はともに、以下のドメイン、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3およびFR4を含む。アミノ酸の各ドメインへの割り当ては、Proteins of Immunological Interest(National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1987および1991))、またはChothia&Lesk J.Mol.Biol.196:901−917(1987);Chothiaら.Nature 342:878−883(1989)のKabat配列の定義に従う。
【0030】
「抗体」とは、インタクトな免疫グロブリンまたはこのインタクトな抗体と特異的結合に関して競合するその抗原結合部分をいう。抗原結合部分は、組換えDNA技術によって、またはインタクトな抗体の酵素的切断もしくは化学的切断によって生成され得る。抗原結合部分としては、特に、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)フラグメント、Fvフラグメント、dAbフラグメント、および相補性決定領域(CDR)フラグメント、単鎖抗体(scFv)、キメラ抗体、二価抗体(diabody)ならびにポリペプチドに特異的抗原結合を付与するに十分な、少なくとも免疫グロブリンの一部を含むポリペプチドが挙げられる。Fabフラグメントは、VL、VH、CLおよびCH Iドメインからなる一価のフラグメントである;F(ab’)フラグメントは、ヒンジ領域においてジスルフィド架橋により連結された2つのFabフラグメントを含む二価のフラグメントである;Fdフラグメントは、VHドメインおよびCH1ドメインからなる;Fvフラグメントは、抗体の一本のアームのVLドメインおよびVHドメインからなる;そしてdAbフラグメント(Wardら,Nature 341:544−546,1989)は、VHドメインからなる。単鎖抗体(scFv)は、VL領域およびVH領域が対になって、合成リンカー(これは、VL領域およびVH領域を1つのタンパク質鎖として作られることを可能にする)を介して一価の分子が形成される抗体である(Birdら,Science 242:423−426,1988およびHustonら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879−5883,1988)。二価抗体は、二価の、二重特異的抗体であり、ここでVHドメインおよびVLドメインは、1つのポリペプチド鎖上で発現されるが、同じ鎖上の2つのドメインの間で対形成することを可能にするには短すぎるリンカーを使用して、それによって、これらのドメインが別の鎖の相補性ドメインと対形成するように強いられ、2つの抗原結合部位を作り出す(例えば、Holliger,P.ら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA
90:6444−6448,1993,およびPoljak,R.J.ら,Structure 2:1121−1123,1994)。1つ以上のCDRは、分子を免疫吸着物にするように、共有結合または非共有結合のいずれかで分子に組み込まれ得る。免疫吸着物は、より大きなポリペプチド鎖の一部としてCDRに組み込まれてもよいし、CDRを別のポリペプチド鎖に共有結合してもよいし、非共有結合的にCDRを組み込んでもよい。そのCDRは、免疫吸着物が、目的の特定の抗原に特異的に結合することを可能にする。
【0031】
抗体は、1つ以上の結合部位を有し得る。1つを超える結合部位がある場合、その結合部位は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。例えば、天然に存在する免疫グロブリンは、2つの同一の結合部位を有し、単鎖抗体またはFabフラグメントは、1つの結合部位を有し、その一方で「二重特異的」または「二官能性」抗体は、2つの異なる結合部位を有する。二重特異的抗体は、種々の方法(ハイブリドーマの融合またはFab’フラグメントの連結が挙げられる)によって生成され得る(例えば、Songsivilai&Lachmann Clin.Exp.Immunol.79:315−321(1990)、Kostelnyら,J.Immunol.148:1547−1553(1992)を参照のこと)。
【0032】
「単離された抗体」は、(1)天然に関連する成分(その天然の状態で、これに付随する他の天然に関連する抗体を含む)と会合していない、(2)同じ種に由来する他のタンパク質を含まない、(3)異なる種に由来する細胞により発現される、または(4)天然に存在しない、抗体である。単離された抗体の例としては、IL−5を用いてアフィニティー精製された抗IL−5抗体、インビトロでハイブリドーマまたは他の細胞株によって合成された抗IL−5抗体、およびトランスジェニックマウスに由来するヒト抗IL−5抗体が挙げられる。
【0033】
用語「ヒト抗体」は、ヒト免疫グロブリン配列に由来する1つ以上の可変領域および定常領域を有する全ての抗体を包含する。これらの抗体は、以下に記載のように、種々の様式において調製され得る。
【0034】
ヒト化抗体は、非ヒト種に由来する抗体であり、この非ヒト種抗体において、重鎖および軽鎖におけるフレームワークドメインおよび定常ドメイン中の特定のアミノ酸が、ヒトにおける免疫応答を回避または排除するために変異されている。あるいは、ヒト化抗体は、ヒト抗体に由来する定常ドメインを、非ヒト種の可変ドメインに融合することによって生成され得る。ヒト化抗体を作製する方法の例は、米国特許第6,054,297号、同第5,886,152号および同第5,877,293号に見いだされ得る。
【0035】
用語「キメラ抗体」とは、1つの抗体に由来する1つ以上の領域および1つ以上の他の抗体に由来する1つ以上の領域を含む抗体をいう。
【0036】
用語「Koff」とは、抗体/抗原複合体から抗体が解離する、オフ速度定数をいう。
【0037】
用語「K」とは、特定の抗体−抗原相互作用の解離定数をいう。
【0038】
用語「エピトープ」は、免疫グロブリンまたはT細胞レセプターに特異的に結合し得る任意のタンパク質決定基を含む。エピトープ決定基は、通常、分子の化学的に活性な表面基群(例えば、アミノ酸または糖側鎖)からなり、通常、特定の三次元構造特徴、ならびに特定の荷電特徴を有する。抗体は、解離定数が、≦1μM、好ましくは、≦100nMおよび最も好ましくは、≦10nMである場合、抗原を特異的に結合することをいう。
【0039】
抗体または免疫グロブリン分子のフラグメントまたはアナログは、本明細書の教示に従って、当業者によって容易に調製され得る。フラグメントまたはアナログの好ましいアミノ末端およびカルボキシ末端は、機能的ドメインの境界近くに生じる。構造的ドメインおよび機能的ドメインは、ヌクレオチド配列データおよび/またはアミノ酸配列データの、公的配列データベースまたは所有配列データベースとの比較によって、同定され得る。好ましくは、コンピューターを使用した比較方法を使用して、既知の構造および/または既知の機能を有する他のタンパク質において生じる配列モチーフまたは予想タンパク質コンフォメーションドメインが同定される。既知の三次元構造をとるタンパク質配列を同定する方法は、公知である。Bowieら、Science 253:164(1991)。
【0040】
好ましいアミノ酸置換は、(1)タンパク質分解への感受性を低下させる置換、(2)酸化への感受性を低下させる置換、(3)タンパク質複合体を形成するための結合親和性を変える置換、(4)結合親和性を変える置換、および(4)このようなアナログの他の物理化学的特性または機能的特性を付与するか、または改変する置換である。アナログとしては、天然に存在するペプチド配列以外の種々のムテインの配列が挙げ得る。例えば、単一のアミノ酸置換または多数のアミノ酸置換(好ましくは、保存的アミノ酸置換)が、天然に存在する配列中(好ましくは、分子間接触を形成するドメインの外側のポリペプチドの部分)でなされ得る。保存的アミノ酸置換は、実質的に親配列の構造的特徴を変えるべきではない。例えば、置換アミノ酸は、親配列中で生じるヘリックスを破壊する傾向にあるべきではないし、また親配列を特徴付ける他の種類の二次構造を崩壊させる傾向にあるべきではない。当該分野で認識されているポリペプチドの二次構造および三次構造の例は、Proteins、Structures and Molecular Principles(Creighton編、W.H.FreemanおよびCompany、New York(1984));Introduction to Protein Structure(C.BrandenおよびJ.Tooze編、Garland Publishing、New York、N.Y.(1991));およびThorntonら Nature 354:105(1991)に記載されており、これらはそれぞれ、本明細書中で参考として援用される。
【0041】
本明細書中で使用する場合、20個の慣習的アミノ酸およびそれらの略語は、慣習的用法に従う。Immunology−A Synthesis(第2版、E.S.GolubおよびD.R.Gren編、Sinauer Associates、Sunderland、Mass.(1991)、本明細書中で参考として援用される)を参照のこと。20個の慣習的なアミノ酸の立体異性体(例えば、D−アミノ酸)、非天然アミノ酸(例えば、α−,α−二置換アミノ酸)、N−アルキルアミノ酸、乳酸、および他の非慣習的アミノ酸もまた、本発明のポリペプチドのための適切な構成成分であり得る。非慣習的アミノ酸の例としては、4−ヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタミン酸、ε−N,N,N−トリメチルリジン、ε−N−アセチルリジン、O−ホスホセリン、N−アセチルセリン、N−ホルミルメチオニン、3−メチルヒスチジン、5−ヒドロキシリジン、s−N−メチルアルギニン、および他の同様のアミノ酸およびイミノ酸(例えば、4−ヒドロキシプロリン)が挙げられる。標準の用法および慣習に従い、本明細書中で使用されるポリペプチド表記において、左側の方向がアミノ酸末端方向であり、右側の方向がカルボキシ末端方向である。
【0042】
本明細書でいわれる場合、用語「ポリヌクレオチド」とは、長さが少なくとも10塩基のヌクレオチドの重合形態であって、リボヌクレオチドまたはデオキシヌクレオチドのいずれかあるいはいずれかの種類のヌクレオチドの改変形態を意味する。本用語は、DNAの一本鎖形態および二本鎖形態を含む。
【0043】
本明細書中で使用される場合、用語「単離されたポリヌクレオチド」とは、ゲノムのポリヌクレオチド、cDNAのポリヌクレオチド、または人工的な起源をもつポリヌクレオチドあるいはそれらのある組合せを意味し得る。ここで、人工的な起源をもつポリヌクレオチドは、その起源のために、(1)「単離されたポリヌクレオチド」が、天然に見出されるポリペプチドの全部または一部とは関係がないか、(2)自然界で連結されていないポリヌクレオチドと作動可能に連結されているか、あるいは(3)より大きな配列の一部として自然界に生じない。
【0044】
本明細書中でいわれる用語「オリゴヌクレオチド」とは、天然に存在するオリゴヌクレオチド結合および天然には存在しないオリゴヌクレオチド結合によって1つに結合した、天然に存在するヌクレオチドおよび改変ヌクレオチドが挙げられる。オリゴヌクレオチドは、一般に、200塩基以下の長さを有するポリヌクレオチドの部分集合である。好ましくは、オリゴヌクレオチドは、10〜60塩基長であり、最も好ましくは、12、13、14、15、16、17、18、19、または20〜40塩基長である。オリゴヌクレオチドは、通常は一本鎖である(例えば、プローブ);にもかかわらず、オリゴヌクレオチドは、二本鎖であり得る(例えば、遺伝子の変異体の構築における使用のため)。本発明のオリゴヌクレオチドは、センスオリゴヌクレオチドまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドのいずれかであり得る。
【0045】
本明細書中でいわれる用語「天然に存在するヌクレオチド」とは、デオキシリボヌクレオチドおよびリボヌクレオチドが挙げられる。本明細書中でいわれる用語「改変ヌクレオチド」とは、改変された糖基または置換された糖基などを有するヌクレオチドが挙げられる。本明細書中でいわれる用語「オリゴヌクレオチド連結」とは、例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレノエート、ホスホロジセレノエート、ホスホロアニロチオエート、ホスホルアニラデート(phoshoraniladate)、ホスホロアミデートなどのオリゴヌクレオチド連結が挙げられる。例えば、LaPlancheら Nucl.Acids.Res.14:9081(1986);Stecら J.Am.Chem.Soc.106:6077(1984);Steinら Nucl.Acids.Res.16:3209(1988);Zonら Anti−Cancer Drug Design 6:539(1991);Zonら Oligonucleotides and Analogues:A Practical Approach、pp.87〜108(F.Eckstein編、Oxford University Press、Oxford England(1991));Stecら 米国特許第5,151,510号;UhlmannおよびPeyman Chemical Reviews 90:543(1990)(これらの開示は、本明細書によって参考として援用される)を参照のこと。オリゴヌクレオチドは、所望される場合、検出のための標識を備え得る。
【0046】
他に特定しない限り、一本鎖のポリヌクレオチド配列の左端は、5’末端であり、二本鎖のポリペプチド配列の左方向は、5’方向として参照される。初期のRNA転写物の5’から3’への付加の方向は、転写方向と呼ばれる。RNAと同じ配列を有し、RNA転写物の5’末端に対して5’側に位置するDNA鎖上の配列領域は、「上流配列」と呼ばれる。RNAと同じ配列を有し、RNA転写物の3’末端に対して3’側に位置するDNA鎖上の配列領域は、「下流配列」と呼ばれる。
【0047】
「作動可能に連結された」配列としては、目的の遺伝子と隣接する発現制御配列および、トランスで(つまり、距離を置いて)作用し、目的の遺伝子を制御する発現制御配列の両方が挙げられる。本明細書中で使用される場合、用語「発現制御配列」は、それらが結紮されているコード配列の発現およびプロセッシングを生じるために必要なポリヌクレオチド配列をいう。発現制御配列としては、適切な転写開始配列、転写終結配列、転写プロモーター配列および転写エンハンサー配列;効率的なRNAプロセッシングシグナル(例えば、スプライシング)およびポリアデニル化シグナル;細胞質のmRNAを安定化する配列;翻訳効率を増強する配列(すなわち、Kozakコンセンサス配列);タンパク質の安定性を増強する配列;ならびに所望される場合、タンパク質の分泌を増強する配列が挙げられる。このような制御配列の性質は、宿主生物に依存して異なる;原核生物では、このような制御配列としては、一般的にはプロモーター、リボソーム結合部位、および転写終結配列が挙げられる;真核生物では、このような制御配列としては、一般的にはプロモーターおよび転写終結配列が挙げられる。用語「制御配列」は、最低限でも、その存在が発現およびプロセッシングにとって必須である全ての成分を含むことが企図され、そして、その存在が有利であるさらなる成分(例えば、リーダー配列および融合パートナー(fusion partner)配列)も含み得る。
【0048】
本明細書中で使用される場合、用語「ベクター」は、連結している別の核酸を輸送し得る核酸分子をいうことが企図される。1つの種類のベクターが、「プラスミド」であり、これは、その中にさらなるDNAセグメントが連結され得る環状の二本鎖DNAループをいう。別の種類のベクターは、ウイルスベクターであり、ウイルスゲノム中にさらなるDNAセグメントが連結され得る。特定のベクターは、導入された宿主細胞内で自律的に複製され得る(例えば、細菌の複製起点を有する細菌ベクターおよびエピソーム性哺乳類ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム性哺乳類ベクター)は、宿主細胞に導入された場合に、その宿主細胞のゲノムに組み込まれ、それによって、宿主ゲノムと共に複製され得る。さらに、特定のベクターは、それらが作動可能に連結された遺伝子の発現を指向し得る。このようなベクターは、本明細書中では、「組換え発現ベクター」(または単に「発現ベクター」)という。一般に、組換えDNA技術において有用な発現ベクターは、しばしばプラスミドの形態である。プラスミドは、ベクターの最も一般的に使用される形態であるので、本明細書において、「プラスミド」および「ベクター」は、交換可能に使用され得る。しかし、本発明は、ウイルスベクターのような同等の機能を果たす別の形態の発現ベクター(例えば、複製欠失性レトロウイルス、複製欠失性アデノウイルスおよび複製欠失性アデノ関連ウイルス)を含むことが企図される。
【0049】
本明細書中で使用される場合、用語「組換え宿主細胞」(または単に「宿主細胞」)は、その中に組換え発現ベクターが導入された細胞をいうことが企図される。このような用語は、特定の被験体細胞のみならず、このような細胞の子孫もいうことを企図されることが理解されるべきである。世代が進行するのにしたがって、変異または環境的影響のいずれかに起因して、特定の改変が起こり得るために、このような子孫は、実際には、親細胞と同一ではないことがあり得るが、まだ本明細書中で使用される用語「宿主細胞」の範囲内に含まれる。
【0050】
用語「選択的にハイブリダイズする」とは、本明細書中では、検出可能であって特異的に結合する手段をいう。本発明に従うポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチドおよびこれらのフラグメントは、非特異的な核酸への検出可能な結合の評価可能な量を最小にするハイブリダイゼーション条件下および洗浄条件下で、核酸鎖に選択的にハイブリダイズする。「高いストリンジェンシー」または「高度にストリンジェントな」状態は、当該分野で公知であり、本明細書中で議論したような選択的なハイブリダイゼーション条件を達成するために使用され得る。「高いストリンジェンシー」または「高度にストリンジェントな」状態の例は、ポリヌクレオチドを別のポリヌクレオチドとインキュベートする方法である。この方法において、1つのポリヌクレオチドは、ハイブリダイゼーション緩衝液(6
×SSPEまたはSSC、50%ホルムアミド、5×デンハルト(Denhardt)試薬、0.5%SDS)中で、膜のような固体表面に固定され、100μg/mlのフラグメント化した変性サケ精子DNAと42℃のハイブリダイゼーション温度で12〜16時間、ハイブリダイゼーションされ、次いで洗浄緩衝液(1×SSC、0.5%SDS)を使用して、55℃で、二回洗浄され得る。Sambrookら(前出)、pp9.50〜9.55も参照のこと。
【0051】
配列間に部分的な同一性または完全な同一性がある場合、2つのアミノ酸配列は相同である。例えば、85%の相同性とは、2つの配列が最大に一致するように整列した場合、アミノ酸の85%が同一であることを意味する。ギャップ(一致する2つの配列のいずれかにおける)が、一致の最大化を可能にする;ギャップの長さは、5以下が好ましく、2以下がさらに好ましい。あるいは、そして好ましくは、変異データマトリクスおよび6以上のギャップペナルティを用いたプログラムALIGNを使用して、5(標準偏差単位)よりも大きいアラインメントスコアを有する場合、2つのタンパク質配列(または、長さが少なくとも30アミノ酸であるタンパク質配列由来のポリペプチド配列)は、この用語が本明細書中で使用されるように、相同である。Dayhoff,M.O.、in Atlas of Protein Sequence and Structure、pp.101〜110(5巻、National Biomedical Research
Foundation(1972))およびこの巻への補遺2、p1〜10を参照のこと。ALIGNプログラムを使用して最適に整列した場合に、アミノ酸が50%以上同一であれば、2つの配列またはその部分は、より好ましく相同である。
【0052】
用語「に対応する」は、ポリヌクレオチド配列が、参照ポリヌクレオチド配列の全てまたはその一部と同一であること、またはポリペプチド配列が、参照ポリペプチド配列と同一であることを意味するように、本明細書中で使用される。対照的に、用語「に相補的である」は、相補的配列が、参照ポリヌクレオチド配列の全てまたはその一部と同一であることを意味するように、本明細書中で使用される。例えば、ヌクレオチド配列「TATAC」は、参照配列「TATAC」に対応し、参照配列「GTATA」に相補的である。
【0053】
以下の用語は、2つ以上のポリヌクレオチドまたはアミノ酸配列間の配列関係を記載するために使用される。:「参照配列」、「比較ウインドウ」、「配列同一性」、「配列同一性のパーセント」、および「実質的同一性」。「参照配列」は、配列の比較のための基準として使用される定義された配列である;参照配列は、より大きな配列の部分集合(例えば、全長cDNA配列または配列リスト中で得られる遺伝子配列のセグメント)であり得るか、あるいは完全なcDNA配列または完全な遺伝子配列を含み得る。一般的に、参照配列は、少なくとも18ヌクレオチドまたは6アミノ酸の長さであり、頻繁には少なくとも24ヌクレオチドまたは8アミノ酸の長さであり、しばしば少なくとも48ヌクレオチドまたは16アミノ酸の長さである。2つのポリヌクレオチド配列またはアミノ酸配列はそれぞれ、(1)2つの分子間で類似する配列(すなわち、完全なポリヌクレオチド配列またはアミノ酸配列の一部)を含み得、そして(2)2つのポリヌクレオチド配列またはアミノ酸配列の間で異なる配列をさらに含み得る。そのために、2つ(または、それよりも多くの)分子間の配列の比較は、代表的には、「比較ウインドウ」間で2つの分子の配列を比較し、配列類似性のある局所的領域を同定および比較することにより、行われる。本明細書中で使用する場合、「比較ウインドウ」は、少なくとも18個の連続するヌクレオチド配置または6アミノ酸の概念的セグメントをいう。比較ウインドウの中では、ポリヌクレオチド配列またはアミノ酸配列が、少なくとも18の連続するヌクレオチド配列または6アミノ酸配列の参照配列に対して比較され得、そして、比較ウインドウ中のポリヌクレオチド配列の部分が、2つの配列の最適のアラインメントにおいて、参照配列(付加または欠失を含まない)と比較して、20%以下の付加、欠失、置換など(すなわちギャップ)を含み得る。比較ウインドウを整列するための配列の最適のアラインメントは、SmithおよびWaterman Adv.Appl.Math.2:482(1981)の局所的相同性アルゴリズムによるか、NeedlemanおよびWunsch J.Mol.Biol.48:443(1970)の相同性アラインメントアルゴリズムによるか、PearsonおよびLipman Proc.Natl.Acad.Sci.(U.S.A)85:2444(1988)の類似性検索方法によるか、コンピューターによるこれらのアルゴリズムの実行(Wisconsin Genetics Software Package Release 7.0、(Genetics Computer Group、575 Science Dr.,Madison,Wis.)、Geneworks、またはMac Vector software package)の中のGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA)によるか、または調査によって導かれ得、そして種々の方法により生成される最良のアラインメント(すなわち、比較ウインドウ間で、最も高い相同性パーセントとなる)が選択される。
【0054】
用語「配列同一性」は、2つのポリヌクレオチド配列またはアミノ酸配列が、比較ウインドウ間で(すなわち、ヌクレオチドごとまたは残基ごとに)同一であることを意味する。用語「配列同一性パーセント」は、次のように計算される。2つの最適に整列された配列を比較ウインドウ間で比較し、同一の核酸塩基(例えば、A、T、C、G、U、またはI)あるいは残基が両方の配列に生じている位置の数を決定し、一致する位置の数を出し、一致する位置の数を比較ウインドウの位置の総数(すなわち、ウインドウの大きさ)で割り、そして、その結果に100を掛けて、配列同一性パーセントを出す。本明細書中で使用される場合、用語「実質的同一性」は、ポリヌクレオチド配列またはアミノ酸配列の特徴を示し、ここで、少なくとも18ヌクレオチド(6アミノ酸)位置の比較ウインドウ間の、頻繁には24〜48ヌクレオチド(8〜16アミノ酸)位置のウインドウ間の参照配列と比較して、ポリヌクレオチドまたはアミノ酸が、少なくとも85%の配列同一性、好ましくは少なくとも90〜95%の配列同一性、より好ましくは少なくとも98%の配列同一性、より通常は少なくとも99%の配列同一性を有する配列を構成している。ここで、配列同一性パーセントは、参照配列を、全体として比較ウインドウ間の参照配列の20%以下である欠失または付加を含み得る配列と比較することにより、計算される。参照配列は、より大きな配列の部分集合であり得る。
【0055】
ポリペプチドに適用される場合、用語「実質的同一性」とは、(例えば、デフォルトのギャップ重量(gap weight)を使用するGAPまたはBESTFIT プログラムによって)最適に整列した場合、少なくとも80%の配列同一性、好ましくは少なくとも90%の配列同一性、より好ましくは少なくとも95%の配列同一性、さらにより好ましくは少なくとも98%の配列同一性および最も好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有する、2つのペプチド配列を意味する。好ましくは、同一でない残基配置は、保存的アミノ酸置換によって異なる。保存的アミノ酸置換とは、類似の側鎖を有する残基の交換可能性をいう。例えば、脂肪族側鎖を有するアミノ酸群は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシンである;脂肪族ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸群は、セリンおよびトレオニンである;アミド含有側鎖を有するアミノ酸群は、アスパラギンおよびグルタミンである;芳香族側鎖を有するアミノ酸群は、フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファンである;塩基性側鎖を有するアミノ酸群は、リジン、アルギニン、およびヒスチジンである;ならびに硫黄含有側鎖を有するアミノ酸群は、システインおよびメチオニンである。好ましい保存的アミノ酸置換群は、バリン−ロイシン−イソロイシン、フェニルアラニン−チロシン、リジン−アルギニン、アラニン−バリン、グルタミン酸−アスパラギン酸、およびアスパラギン−グルタミンである。
【0056】
本明細書中で議論したように、抗体または免疫グロブリン分子のアミノ酸配列の少数のバリエーションは、アミノ酸配列の変化が、少なくとも75%の配列同一性、より好ましくは少なくとも80%の配列同一性、90%の配列同一性、95%の配列同一性、および最も好ましくは99%の配列同一性を維持する場合、本発明に含まれることが企図される。特に、保存的アミノ酸置換が、企図される。保存的置換は、その側鎖において関連するアミノ酸の1つのファミリーの中で起こる置換である。遺伝子的にコードされるアミノ酸は、一般的に、次のファミリーに分類される:(1)酸性=アスパラギン酸、グルタミン酸;(2)塩基性=リジン、アルギニン、ヒスチジン;(3)非極性=アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン;および(4)非荷電極性=グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、トレオニン、チロシン。より好ましいファミリーは、以下:セリンおよびトレオニンは、脂肪族ヒドロキシファミリー;アスパラギンおよびグルタミンはアミド含有ファミリー;アラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシンは、脂肪族ファミリー;およびフェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシンは、芳香族ファミリー。例えば、ロイシンのイソロイシンまたはバリンによる単一性の置換、アスパラギン酸のグルタミン酸による単一性の置換、トレオニンのセリンによる単一性の置換、または構造的に関連するアミノ酸による類似のアミノ酸置換は、その結果物である分子の結合または特性に対して大きな影響を及ぼさない。特に、その置換が、フレームワーク(framework)部位内のアミノ酸を含まない場合はそうである。アミノ酸変化が機能性ペプチドを生じるか否かは、ポリペプチド誘導体の特定の活性をアッセイすることにより、容易に決定し得る。アッセイは、本明細書中で詳細に記載される。
【0057】
本明細書中で使用される場合、用語「標識」または「標識化」とは、抗体中に別の分子を取り込むことをいう。1つの実施形態において、標識は、検出可能なマーカーである(例えば、放射性標識アミノ酸の取り込み、またはビオチン部分(マークされたアビジン(例えば、蛍光マーカーあるいは光学的方法または比色法によって検出され得る酵素活性を含むストレプトアビジン)によって検出され得る)のポリペプチドへの結合)。別の実施形態において、標識またはマーカーは、治療薬であり得る(例えば、薬物結合体または毒物)。ポリペプチドおよび糖タンパク質を標識する種々の方法が、当該分野で公知であり、使用され得る。ポリペプチド用の標識の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:放射性同位体または放射性核種(例えば、H、14C、15N、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131I)、蛍光標識(例えば、FITC、ローダミン、ランタニド蛍光体)、酵素標識(例えば、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ)、化学発光標識、ビオチン基、二次的レポーターによって認識される所定のポリペプチドエピトープ(例えば、ロイシンジッパー対配列、二次抗体の結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグ)、磁性因子(例えば、ガドリニウムキレート)、毒素(例えば、百日咳毒素、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、エチジウムブロマイド、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド(tenoposide)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトザントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1−デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、およびプロマイシン)、ならびにこれらのアナログまたはホモログ。いくつかの実施形態では、標識は、潜在的な立体傷害を軽減するために、種々の長さのスペーサーアームによって結合される。
【0058】
用語「試薬」は、化学化合物、化学化合物の混合物、生物学的高分子、または生物学的材料から得た抽出物を表すために、本明細書中で使用される。
【0059】
本明細書中で使用される場合、用語「薬学的試薬または薬学的薬物」とは、患者に適切に投与された場合に所望の治療効果を誘導し得る、化学化合物または化学組成物をいう。本明細書中の他の化学用語は、当該分野の従来の語法に従って、「The McGraw−Hill Dictionary of Chemical Terms」(Parker,S.編、McGraw−Hill、San Francisco(1985)、本明細書中で参考として援用される)で例示されるように、使用される。
【0060】
用語「患者」は、人および獣医学の被験体を含む。
【0061】
本特許請求の範囲および本明細書を通じて、語句「含む(comprise)」またはその変形(例えば、「含む(comprises)」「含んでいる(comprising)」)は、述べる整数または整数の群の包含を示すのであって、任意の他の整数または整数の群の除外を示すのではないことが理解される。
【0062】
(ヒト抗体および抗体のヒト化)
ヒト抗体は、マウスもしくはラットの可変領域および/または定常領域を有する抗体に関連するいくつかの問題を避ける。このようなマウスまたはラット由来タンパク質の存在は、その抗体の急速なクリアランスをもたらし得るか、または患者によるその抗体に対する免疫応答の誘発をもたらし得る。完全ヒト抗IL−5抗体は、その免疫原性およびマウスMabまたはマウス由来のMabに固有のアレルギー応答を最小にすることが予測され、従って投与する抗体の効果および安全性を増大させることが予測される。完全ヒト抗体は、慢性ヒト疾患および再発性ヒト疾患(例えば、炎症および癌であり、これらは、繰り返しの抗体投与を必要とし得る)の処置において、かなりの利点を提供することが予測され得る。
【0063】
(抗体および抗体産生細胞株を生産する方法)
(免疫)
本発明の1つの実施形態において、ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン遺伝子座のいくらかまたは全部を含む非ヒト動物を、IL−5抗原またはその免疫原性フラグメントで免疫することにより、産生される。好ましい実施形態において、非ヒト動物は、XenoMouseTMである。
【0064】
XenoMouseTMは、ヒト免疫グロブリン遺伝子座の大きなフラグメントを含み、マウス抗体の産生ができない遺伝子操作されたマウス系である。例えば、Greenら
Nature Genetics 7;13〜21(1994)および米国特許第5,916,771号、同第5,939,598号、同第5,985,615号、同第5,998,209号、同第6,075,181号、同第6,091,001号、同第6,114,598号、同第6,130,364号を参照のこと。また、WO91/10741(1991年7月25日公開)、WO94/02602(1994年2月3日公開)、WO96/34096およびWO96/33735(両方とも1996年10月31日公開)、WO98/16654(1998年4月23日公開)、WO98/24893(1998年6月11日公開)、WO98/50433(1998年11月12日公開)、WO99/45031(1999年9月10日公開)、WO99/53049(1999年10月21日公開)、WO00 09560(2000年2月24日公開)、およびWO00/037504(2000年6月29日公開)も参照のこと。
【0065】
XenoMouseTM系は、245kbの大きさおよび190kbの大きさのヒト重鎖遺伝子座およびヒトκ軽鎖遺伝子座の生殖細胞系配置フラグメント(それぞれ、コア可変領域配列およびコア定常領域配列を有する)を有する酵母人工染色体(YAC)を用いて、遺伝子操作された。Id.XenoMouseTMは、完全ヒト抗体の成人様ヒトレパートリーを生産し、抗原特異的なヒトモノクローナル抗体(Mab)を産生する。第2世代XenoMouseTMは、メガベースの大きさのヒト重鎖遺伝子座およびヒトκ軽鎖遺伝子座の生殖細胞系配置YACフラグメントの導入を介して、ヒト抗体レパートリーのおよそ80%を有する。Mendezら Nature Genetics 15:146〜156(1997)、GreenおよびJakobovits J.Exp.Med.188:483〜495(1998)、ならびに米国特許出願第08/759,620号(1996年12月3日出願、この開示は、本明細書によって参考として援用される)を参照のこと。
【0066】
別の実施形態において、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を含む非ヒト動物は、ヒト免疫グロブリンの「ミニ遺伝子座(minilocus)」を有する動物である。ミニ遺伝子座アプローチにおいて、外因性Ig遺伝子座は、Ig遺伝子座からの個々の遺伝子の包含を介して模倣される。従って、1つ以上のV遺伝子、1つ以上のD遺伝子、1つ以上のJ遺伝子、mu定常領域、および第2の定常領域(好ましくは、γ定常領域)が、動物への挿入用の構築物中に形成される。このアプローチは、特に、米国特許第5,545,807号、同5,545,806号、同5,625,825号、同5,625,126号、同5,633,425号、同5,661,016号、同5,770,429号、同5,789,650号、同5,814,318号、同5,591,669号、同5,612,205号、同5,721,367号、同5,789,215号、および同5,643,763号に記載され、本明細書で参考として援用される。
【0067】
ミニ遺伝子座アプローチの利点は、Ig遺伝子座の部分を含む構築物が、生成され得、そして動物中に導入され得る場合の迅速性である。しかし、ミニ遺伝子座アプローチの潜在的欠点は、完全なB細胞の発生を支持するために十分な免疫グロブリン多様性が無い場合があり得ること、そのため、抗体産生がより低い場合があり得ることである。
【0068】
別の実施形態において、本発明は、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を有する非ヒトトランスジェニック動物を免疫することによって、非ヒトかつ非マウス動物から抗IL−5抗体を製造するための方法を提供する。米国特許第5,916,771号、同第5,939,598号、同第5,985,615号、同第5,998,209号、同第6,075,181号、同第6,091,001号、同第6,114,598号および同第6,130,364号に記載される方法を使用して、このような動物を生産し得る。また、WO91/10741(1991年7月25日公開)、WO94/02602(1994年2月3日公開)、WO96/34096およびWO96/33735(両方とも1996年10月31日公開)、WO98/16654(1998年4月23日公開)、WO98/24893(1998年6月11日公開)、WO98/50433(1998年11月12日公開)、WO99/45031(1999年9月10日公開)、WO99/53049(1999年10月21日公開)、WO00 09560(2000年2月24日公開)およびWO00/037504(2000年6月29日公開)も参照のこと。これらの特許で開示される方法は、米国特許第5,994,619号に記載されているように改変され得る。好ましい実施形態において、非ヒト動物は、ラット、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウシまたはウマであり得る。
【0069】
抗IL−5抗体を生産するために、ヒト免疫グロブリン遺伝子座のいくらかまたは全部を有する非ヒト動物が、IL−5抗原またはその免疫原性フラグメントで免疫される。1つの実施形態において、IL−5抗原は、単離されたIL−5および/または精製されたIL−5である。好ましい実施形態において、IL−5抗原は、ヒトIL−5である。別の実施形態において、IL−5抗原は、IL−5のフラグメントである。別の実施形態において、IL−5抗原は、少なくとも1つのIL−5のエピトープを有するフラグメントである。別の実施形態において、IL−5抗原は、IL−5を発現する細胞である。
【0070】
動物の免疫化は、当該分野で公知である任意の方法によって行われ得る。例えば、HarlowおよびLane、Antibodies:A Laboratory Manual、New York:Cold Spring Harbor Press、1990を参照のこと。非ヒト動物(例えば、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウシおよびウマ)を免疫するための方法は、当該分野では周知である。例えば、HarlowおよびLaneならびに米国特許第5,994,619号を参照のこと。好ましい実施形態において、IL−5抗原は、免疫応答を刺激するために、アジュバントと共に投与される。このようなアジュバントとしては、フロイント完全アジュバントまたはフロイント不完全アジュバント、RIBI(ムラミルジペプチド(muramyl dipeptides))またはISCOM(免疫刺激性複合体)が挙げられる。このようなアジュバントは、局所的な沈着物中にポリペプチドを隔離することによって、ポリペプチドが、急速に分散するのを保護し得るし、または、それらは、宿主を刺激して、マクロファージまたは免疫系の他の成分に対して化学走性である因子を分泌させる物質を含み得る。好ましくは、ポリペプチドが投与される場合、免疫化の計画は、数週間にわたって分散する、2回以上のポリペプチド投与を必要とし得る。
【0071】
(抗体および抗体産生細胞株の産生)
動物をIL−5抗原で免疫した後、抗体および/または抗体産生細胞が、その動物から得られ得る。1つの実施形態において、抗IL−5抗体含有血清が、その動物を育種し犠牲にすることで、その動物から得られる。この血清は、それが動物から得られたように使用され得るか、免疫グロブリンの画分が、この血清から得られ得るか、または、抗IL−5抗体が、この血清から精製され得る。この様式で得られた血清または免疫グロブリンが、ポリクローナルであることは、当業者にとって周知である。血清から調製したポリクローナル抗体を使用する場合の欠点は、得られ得る抗体量が限られている点、および、ポリクローナル抗体が、不均一な一連の特性を有する点である。
【0072】
別の実施形態では、抗体を産生する不死化細胞が、免疫した動物から調製され得る。免疫後、その動物を屠殺し、そして、当該分野で周知である任意の手段に従って、脾臓またはリンパ節に由来するB細胞が、不死化される。このような不死化としては、形質転換(例えば、EBVによる形質転換)または適切な不朽化細胞株(例えば、当該分野で周知である骨髄腫細胞)との融合が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、HarlowおよびLane(前出)を参照のこと。好ましい実施形態において、この骨髄腫細胞は、免疫グロブリンポリペプチドを分泌しない(非分泌的細胞株)。融合および抗生物質による選択の後で、IL−5、IL−5の部分、またはIL−5を発現する細胞を使用して、ハイブリドーマが、選別される。好ましい実施形態において、最初のスクリーニングは、酵素結合免疫アッセイ(ELISA)または放射免疫アッセイを使用して実施される。より好ましい実施形態において、ELISAが、最初の選別のために使用される。ELISA選別の例が、WO00/37504(本明細書中で参考として援用される)で提供される。
【0073】
以下でさらに議論するように、抗IL−5抗体産生ハイブリドーマは、選択され、クローン化され、そしてさらに所望の特徴(ハイブリドーマの活発な増殖、高い抗体産生および所望の抗体特徴が挙げられる)について選別される。ハイブリドーマは、同系の動物に、免疫系を欠いた動物(例えば、ヌードマウス)においてインビボで増殖され得るか、または細胞培養物においてインビトロで増殖させ得る。ハイブリドーマを選択する方法、ハイブリドーマをクローン化する方法およびハイブリドーマを増殖させる方法は、当業者にとって周知である。
【0074】
好ましい実施形態において、免疫される動物は、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現する非ヒト動物であり、脾臓またはリンパ節に由来するB細胞が、非ヒト動物のと同じ種に由来する骨髄腫に融合される。より好ましい実施形態において、免疫される動物は、XenomouseTMであり、その骨髄腫細胞株は、非分泌性マウス骨髄腫である。特定の実施形態において、骨髄腫細胞株は、NSO−bcl2またはP3−X63−Ag8.653である。例えば、実施例1を参照のこと。
【0075】
1つの実施形態において、ヒト抗IL−5抗体を産生するハイブリドーマが、産生される。好ましい実施形態において、ハイブリドーマは、上記のように、マウスハイブリドーマである。別の好ましい実施形態において、ハイブリドーマは、非ヒトの非マウス種(例えば、ラット、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウシまたはウマ)において産生される。別の実施形態において、ハイブリドーマは、ヒト非分泌性骨髄腫が、抗IL−5抗体を発現するヒト細胞と融合している、ヒトハイブリドーマである。
【0076】
(核酸、ベクター、宿主細胞および抗体作製の組換え方法)
(核酸)
本発明はまた、ヒト抗IL−5抗体をコードする核酸分子を含む。1つの実施形態において、核酸分子は、インタクトなヒト抗IL−5免疫グロブリンの重鎖および/または軽鎖をコードする。好ましい実施形態において、1つの核酸分子は、ヒト抗IL−5免疫グロブリンの重鎖をコードし、もう1つの核酸分子は、ヒト抗IL−5免疫グロブリンの軽鎖をコードする。より好ましい実施形態において、コードされる免疫グロブリンは、ヒトIgGである。コードされる軽鎖は、λ鎖またはκ鎖であり得る。さらにより好ましい実施形態において、コードされる軽鎖は、κ鎖である。
【0077】
好ましい実施形態において、重鎖の可変領域(VH)をコードする核酸分子は、ヒトDP−47/3−11 VH遺伝子に由来する。種々の実施形態において、VHをコードする核酸分子は、生殖細胞系のDP−47/3−11遺伝子由来の、10未満のアミノ酸変化、6未満のアミノ酸変化または3未満のアミノ酸変化を含む。好ましい実施形態において、VHをコードする核酸分子は、生殖細胞系の配列と比較して、少なくとも1つのアミノ酸変化を有する。このアミノ酸変化は、20.13.3抗体の重鎖由来の生殖細胞系の配列上のアミノ酸変化と同じである。さらにより好ましい実施形態において、VHは、生殖細胞系の配列と比較して、少なくとも3つのアミノ酸変化を有する。このアミノ酸変化は、20.13.3抗体のVH由来の生殖細胞系の配列上の少なくとも3つのアミノ酸変化と同じである。
【0078】
いくつかの実施形態において、核酸分子は、ヒトD1−20多様セグメント遺伝子に由来するヌクレオチド配列を、さらに含む。なお他の実施形態において、核酸分子は、ヒトJH4Bに由来する核酸配列を、さらに含む。
【0079】
表1は、20.13.3抗体またはその部分の核酸配列および、それらがコードする対応するアミノ酸配列を列挙する。
【0080】
【表1】

好ましい実施形態において、核酸分子は、少なくともCDR1からCDR3までの(表2に示される)20.13.3抗体のVHのアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含む。別の実施形態において、核酸分子は、20.13.3抗体の重鎖中の1つ以上のCDRのアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含む。別の実施形態において、核酸分子は、配列番号2で示される20.13.3モノクローナル抗体の重鎖のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含む。別の実施形態において、核酸分子は、配列番号1に示される20.13.3モノクローナル抗体の重鎖をコードするヌクレオチド配列を含む。別の実施形態において、核酸分子は、表2に示されるか、またはそれぞれ配列番号8,10および12に示される、20.13.3モノクローナル抗体の重鎖中の1つ以上のCDRをコードするヌクレオチド配列を含む。
【0081】
【表2】

他の実施形態において、上記のヌクレオチド分子は、上記のような高度にストリンジェントな条件下で、上記の核酸配列の任意の1つとハイブリダイズし得る。
【0082】
他の実施形態において、抗体の軽鎖の可変領域をコードする核酸分子は、ヒト08/018 Vκ遺伝子に由来するヌクレオチド配列を含む。この核酸配列分子は、生殖細胞系の08/018 Vκ遺伝子由来の、10まで、6までまたは3までのアミノ酸変化を含み得る。好ましい実施形態において、核酸分子は、生殖細胞系のVκ配列と比較して、少なくとも3つのアミノ酸変化を含み、このアミノ酸変化は、20.13.3モノクローナル抗体に見出される生殖細胞系由来の変化と同じである。さらなる実施形態において、前述の核酸分子のいずれかは、ヒトJκ4結合(joining)セグメント遺伝子に由来するヌクレオチド配列をさらに含む。
【0083】
好ましい実施形態において、核酸分子は、少なくともCDR1からCDR3(表3に示される)までの20.13.3モノクローナル抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含む。他の実施形態において、核酸分子は、20.13.3抗体の軽鎖の1つ以上のCDRのアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含む。別の実施形態において、核酸分子は、20.13.3モノクローナル抗体の軽鎖のアミノ酸配列(配列番号4)をコードするヌクレオチド配列を含む。別の実施形態において、核酸分子は、配列番号3に示されるヌクレオチド配列を含む。別の実施形態において、核酸分子は、配列番号14、16および18に示される1つ以上のCDRのアミノ酸配列をコードする核酸配列を含む。
【0084】
【表3】

別の実施形態において、VLをコードする核酸分子は、上記のような高度にストリンジェントな条件下で、直前に記載されるVLをコードする核酸配列とハイブリダイズし得る。
【0085】
抗IL−5抗体の全重鎖または抗IL−5抗体の全軽鎖、あるいはそれらの可変領域のいずれかをコードする核酸分子は、抗IL−5抗体を産生する任意の供給源から得られ得る。本発明の1つの実施形態において、核酸分子は、抗IL−5抗体を発現するハイブリドーマから得られ得る。抗体をコードするmRNAを単離する方法は、当該分野で周知である。例えば、Sambrookらを参照のこと。このmRNAは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)または抗体遺伝子のcDNAクローニングにおいて使用する目的で、cDNAを産生するために使用され得る。好ましい実施形態において、核酸分子は、融合相手の1つとして、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現するトランスジェニック動物の細胞を有する、ハイブリドーマに由来する。さらにより好ましい実施形態において、融合相手の動物細胞は、XenomouseTM動物に由来する。別の実施形態において、ハイブリドーマは、上記のような非ヒトかつ非マウスのトランスジェニック動物に由来する。
【0086】
好ましい実施形態において、抗IL−5抗体の重鎖は、重鎖の可変ドメインをコードする核酸分子を、重鎖の定常ドメインと融合することにより、構築され得る。同様に、抗IL−5抗体の軽鎖は、軽鎖の可変ドメインをコードする核酸分子を、軽鎖の定常ドメインと融合することにより、構築され得る。より好ましい実施形態において、重鎖の可変領域をコードする核酸は、配列番号6のアミノ酸配列をコードし、軽鎖の可変領域をコードする核酸分子は、配列番号4の残基23〜残基130に由来するアミノ酸配列をコードする。配列番号2の残基139〜残基465に由来するアミノ酸配列は、20.13.3の重鎖の定常領域のアミノ酸配列を示し、配列番号4の残基131〜残基236に由来するアミノ酸は、20.13.3の軽鎖の定常領域のアミノ酸配列を示す。配列番号1のヌクレオチド415〜709、ヌクレオチド1102〜1137、ヌクレオチド1256〜1585、およびヌクレオチド1683〜2002に由来する核酸配列は、20.13.3の重鎖の定常領域をコードする核酸配列を示し、配列番号3のヌクレオチド391〜708に由来する核酸配列は、20.13.3の軽鎖の定常領域をコードする核酸配列を示す。好ましい実施形態において、重鎖の定常領域をコードする核酸分子は、配列番号2の残基139〜465に由来するアミノ酸配列をコードし、軽鎖の定常領域をコードする核酸分子は、配列番号4の残基131〜236に由来するアミノ酸配列をコードする。さらにより好ましい実施形態において、重鎖の定常領域をコードする核酸分子は、配列番号1のヌクレオチド415〜709、1102〜1137、1256〜1585、および1683〜2002に由来する核酸配列を有し、軽鎖の定常領域をコードする核酸分子は、配列番号3のヌクレオチド391〜708に由来する核酸配列を有する。
【0087】
別の実施形態において、抗IL−5抗体産生細胞自体は、非ヒト動物から単離され得る。1つの実施形態において、抗体産生細胞は、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現し、IL−5抗原で免疫されたトランスジェニック動物に由来し得る。トランスジェニック動物は、マウス(例えば、XenomouseTMマウス)、または別の非ヒトトランスジェニック動物であり得る。別の実施形態において、抗IL−5抗体産生細胞は、非トランスジェニック動物に由来する。
【0088】
別の実施形態において、核酸分子は、当業者に公知の方法を使用してベクターを作製するために使用され得る。例えば、SambrookらおよびAusubelらを参照のこと。一実施形態において、これらのベクターはプラスミドベクターまたはコスミドベクターであり得る。別の実施形態において、これらのベクターは、ウイルスベクターであり得る。ウイルスベクターとしては、アデノウイルス、レトロウイルス、アデノ随伴ウイルスおよび他のピコルナウイルス、ヘルペスウイルスおよびバキュロウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。これらのベクターはまた、バクテリオファージ(M13が挙げられるが、これに限定されない)であり得る。
【0089】
核酸分子は、以下に記載されるように、多量の抗IL−5抗体を組換え発現するために使用され得る。この核酸分子はまた、以下にさらに記載されるように、キメラ抗体、単鎖抗体、免疫吸着物、二価抗体、変異抗体および抗体誘導体を生成するために使用され得る。
【0090】
一実施形態において、重鎖の可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域をコードする核酸分子が、全長抗体遺伝子に変換される。一実施形態において、このような核酸分子は、それぞれ、重鎖定常領域および軽鎖定常領域をコードする配列をすでに含む発現ベクターに挿入され、その結果、このVHセグメントまたはVLセグメントは、それぞれ、ベクター内のCHセグメントまたはCLセグメントに作動可能に連結される。別の実施形態において、VH鎖および/またはVL鎖をコードする核酸分子は、標準的な分子生物学的技術を使用して、VH鎖をコードする核酸分子をCH鎖をコードする核酸分子に連結することによって、全長抗体遺伝子に変換される。このことは、VL鎖およびCL鎖をコードする核酸分子を使用して達成され得る。ヒト重鎖定常領域遺伝子およびヒト軽鎖定常領域遺伝子の配列は、当該分野で公知である。例えば、Kabatら,Sequences of Proteins of Immunological Interest,第5版、NIH Publ.No.91−3242,1991を参照のこと。
【0091】
(ベクター)
上記のようにして得られた、抗体、本発明の抗体部分、部分または全長の軽鎖および重鎖をコードするDNAを発現するために、これらの遺伝子が、転写制御配列および翻訳制御配列に作動可能に連結されるように、発現ベクターに挿入される。発現ベクターとしては、プラスミド、レトロウイルス、コスミド、YAC、EBV由来エピソームなどが挙げられる。抗体遺伝子は、ベクター中にライゲーションされ、その結果、このベクター中の転写制御配列および翻訳制御配列は、抗体遺伝子の転写および翻訳を調節するというその意図された機能を果たす。発現ベクターおよび発現制御配列は、使用される発現宿主細胞と適合性であるように選択される。抗体軽鎖遺伝子および抗体重鎖遺伝子は、別個のベクターに挿入され得る。好ましい実施形態において、両方の遺伝子が、同じ発現ベクターに挿入される。抗体遺伝子は、標準的な方法(例えば、抗体遺伝子フラグメントおよびベクターへの相補制限部位のライゲーション、または制限部位がない場合には、平滑末端ライゲーション)によって、発現ベクターに挿入される。
【0092】
都合良いベクターは、上記のように、任意のVH配列またはVL配列が容易に挿入され得そして発現され得るように適切な制限部位が操作されている、機能的に完全なヒトCH免疫グロブリン配列またはCL免疫グロブリン配列をコードするベクターである。このようなベクターにおいて、スプライシングは、通常、挿入されたJ領域中のスプライスドナー部位と、ヒトC領域の前のスプライスアクセプター部位との間で、かつヒトCHエキソン内で生じるスプライス領域で生じる。ポリアデニル化および転写の終結は、コード領域の下流のネイティブの染色体部位で生じる。組換え発現ベクターはまた、宿主細胞からの抗体鎖の分泌を促進するシグナルペプチドをコードし得る。この抗体鎖の遺伝子は、そのシグナルペプチドが、この抗体鎖の遺伝子のアミノ末端にインフレームで連結されるようにベクターにクローニングされ得る。このシグナルペプチドは、免疫グロブリンシグナルペプチドまたは異種シグナルペプチド(すなわち、非免疫グロブリンタンパク質由来のシグナルペプチド)であり得る。
【0093】
抗体鎖遺伝子に加えて、本発明の組換え発現ベクターは、宿主細胞における抗体鎖遺伝子の発現を制御する調節配列を有する。発現ベクターの設計(調節配列の選択を含む)は、形質転換される宿主細胞の選択、所望されるタンパク質発現レベルなどのような要因に依存し得ることが当業者に理解される。哺乳動物宿主細胞の発現に好ましい調節配列としては、哺乳動物細胞における高レベルのタンパク質発現を指向するウイルスエレメント(例えば、レトロウイルスLTR由来のプロモーターおよび/またはエンハンサー、サイトメガロウイルス(CMV)由来のプロモーターおよび/またはエンハンサー(例えば、CMVプロモーター/エンハンサー)、シミアンウイルス40(SV40)由来のプロモーターおよび/またはエンハンサー(例えば、SV40プロモーター/エンハンサー)、アデノウイルス由来のプロモーターおよび/またはエンハンサー(例えば、アデノウイルス主要後期プロモーター(AdMLP)由来のプロモーターおよび/またはエンハンサー)、ポリオーマ由来のプロモーターおよび/またはエンハンサー、ならびに強力な哺乳動物プロモーター(例えば、ネイティブの免疫グロブリンプロモーターおよびアクチンプロモーター))が挙げられる。ウイルス調節エレメントおよびその配列のさらなる説明については、例えば、米国特許第5,168,062号(Stinski)、米国特許第4,510,245号(Bellら)、および米国特許第4,969,615号(Schaffnerら)を参照のこと。
【0094】
抗体鎖遺伝子および調節配列に加えて、本発明の組換え発現ベクターは、さらなる配列(例えば、宿主細胞におけるベクターの複製を調節する配列(例えば、複製起点)、および選択マーカー遺伝子)を有し得る。この選択マーカー遺伝子は、ベクターが導入される宿主細胞の選択を容易にする(例えば、米国特許第4,399,216号、同第4,634,665号および同第5,179,017号(全てAxelらによる)を参照のこと)。例えば、代表的に、選択マーカー遺伝子は、薬物(例えば、G418、ハイグロマイシンまたはメトトレキサート)に対する耐性を、ベクターが導入された宿主細胞に与える。好ましい選択マーカー遺伝子としては、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)遺伝子(メトトレキサートの選択/増幅を有するdhfr宿主細胞での使用のため)およびneo遺伝子(G418選択のため)が挙げられる。
【0095】
(非ハイブリドーマ宿主細胞およびタンパク質を組換え産生する方法)
抗IL−5抗体およびこの抗体を含むベクターをコードする核酸分子は、適切な哺乳動物宿主細胞の形質転換のために使用され得る。形質転換は、宿主細胞へポリヌクレオチドを導入するための任意の公知の方法によりなされ得る。異種ポリヌクレオチドを哺乳動物細胞に導入するための方法は、当該分野で周知であり、そしてこの方法としては、デキストラン媒介性トランスフェクション、リン酸カルシウム沈降、ポリブレン媒介性トランスフェクション、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、リポソーム中へのポリヌクレオチドのカプセル化、および核へのDNAの直接マイクロインジェクションが挙げられる。さらに、核酸分子は、ウイルスベクターによって哺乳動物細胞中に導入され得る。細胞を形質転換する方法は、当該分野で周知である。例えば、米国特許第4,399,216号、同第4,912,040号、同第4,740,461号および同第4,959,455号(これらの特許は、本明細書中で参考として援用される)を参照のこと。
【0096】
発現のための宿主として利用可能な哺乳動物細胞系は、当該分野で周知であり、これには、American Type Culture Collection(ATCC)から入手可能な多くの不死化細胞株が上げられる。これには、とりわけ、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、NSO、SP2細胞、HeLa細胞、新生児ハムスター腎臓(BHK)細胞、サル腎臓細胞(COS)、ヒト肝細胞癌細胞(例えば、Hep G2)、A549細胞および多数の他の細胞株が上げられる。特に好ましい細胞株は、どの細胞が高い発現レベルを有するかを決定することによって選択される。使用され得る他の細胞株は、昆虫細胞株(例えば、Sf9細胞)である。抗体遺伝子をコードする組換え発現ベクターが哺乳動物宿主細胞に導入される場合、抗体は、宿主細胞中で抗体を発現させるのに十分な期間、より好ましくは、この宿主細胞が増殖する培養培地にこの抗体が分泌されるのに十分な期間、この宿主細胞を培養することによって生成される。抗体は、標準的なタンパク質精製方法を使用して、培養培地から回収され得る。
【0097】
さらに、細胞株の産生による本発明の抗体(またはこれ由来の他の部分)の発現は、多数の公知の技術を使用して促進され得る。例えば、グルタミンシンターゼ遺伝子発現系(GS系)は、特定の条件下で発現を促進するための一般的なアプローチである。このGS系は、全体的にかまたは部分的に、欧州特許第02169846号、同第0256055号、および同第0323997号、および欧州特許出願第89303964.4号と共に議論される。
【0098】
(トランスジェニック動物)
本発明の抗体はまた、目的の免疫グロブリンの重鎖配列および軽鎖配列に対してトランスジェニックな哺乳動物または植物の作製、およびその回収可能な形態の抗体の産生によって、トランスジェニック生成され得る。哺乳動物におけるトランスジェニック生成と共に、抗体が、ヤギ、牛または他の哺乳動物の乳汁で産生され、そして回収され得る。例えば、米国特許第5,827,690号、同第5,756,687号、同第5,750,172号および同第5,741,957号を参照のこと。一実施形態において、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を含む非ヒトトランスジェニック動物は、IL−5またはその部分で免役される。当業者は、以下に記載される方法を使用してこのようなトランスジェニック動物を作製し得る:米国特許第5,916,771号、同第5,939,598号、同第5,985,615号、同第5,998,209号、同第6,075,181号、同第6,091,001号、同第6,114,598号および同第6,130,364号。以下もまた参照のこと:WO91/10741(1991年7月25日公開)、WO94/02602(1994年2月3日公開)、WO96/34096およびWO96/33735(両方とも、1996年10月31日公開)、WO98/16654(1998年4月23日公開)、WO98/24893(1998年6月11日公開)、WO98/50433(1998年11月12日公開)、WO99/45031(1999年9月10日公開)、WO99/53049(1999年10月21日公開)、WO00/09560(2000年2月24日公開)、およびWO00/037504(2000年6月29日公開)。別の実施形態において、トランスジェニック動物は、ヒト免疫グロブリン遺伝子の「ミニ遺伝子座」を含み得る。上で開示される方法は、特に、米国特許第5,994,619号に記載されるように改変され得る。好ましい実施形態において、非ヒト動物は、ラット、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウシまたはウマであり得る。別の実施形態において、トランスジェニック動物は、抗IL−5抗体をコードする核酸分子を含む。好ましい実施形態において、このトランスジェニック動物は、IL−5に特異的な重鎖および軽鎖をコードする核酸分子を含む。別の実施形態において、このトランスジェニック動物は、改変抗体(例えば、単鎖抗体、キメラ抗体またはヒト化抗体)をコードする核酸分子を含む。抗IL−5抗体は、任意のトランスジェニック動物で作製され得る。好ましい実施形態において、非ヒト動物は、マウス、ラット、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウシまたはウマである。
【0099】
(ファージディスプレーライブラリー)
本発明の組換え抗IL−5ヒト抗体は、本明細書中に開示される抗IL−5抗体に加えて、ヒト白血球由来のmRNAから調製されるヒトVL cDNAおよびVH cDNAを使用して調製される組換えコンビナトリアル抗体ライブラリー、好ましくは、scFvファージディスプレーライブラリーをスクリーニングすることによって単離され得る。このようなライブラリーを調製およびスクリーニングする方法は、当該分野で公知である。ファージディスプレーライブラリーを作製するための市販のキット(例えば、Pharmacia Recombinant Phage Antibody System、カタログ番号27−9400−01;およびStratagene SurfZAPTMファージディスプレーキット、カタログ番号240612)がある。抗体ディスプレーライブラリーの作製およびスクリーニングに使用できる他の方法および試薬もある(例えば、Ladnerら、米国特許第5,223,409号:Kangら、PCT公開番号WO92/18619;Dowerら、PCT公開番号WO91/17271;Winterら、PCT公開番号WO92/20791;Marklandら、PCT公開番号WO92/15679;Breitlingら、PCT公開番号WO93/01288;McCaffertyら、PCT公開番号WO92/01047;Garrardら、PCT公開番号WO92/09690;Fuchsら(1991)Bio/Technology 9:1370−1372;Hayら(1992)Hum.Antibod.Hybridomas 3:81−85;Huseら(1989)Science 246:1275−1281;McCaffertyら、Nature(1990)348:552−554;Griffithsら(1993)EMBO J 12:725−734;Hawkinsら(1992)J.Mol.Biol.226:889−896;Clacksonら(1991)Nature 352:624−628;Gramら(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:3576−3580;Garradら(1991)Bio/Technology 9:1373−1377;Hoogenboomら(1991)Nuc Acid Res 19:4133−4137;およびBarbasら(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:7978−7982を参照のこと)。
【0100】
好ましい実施形態において、所望の特性を有するヒト抗IL−5抗体を単離するために、最初に、本明細書中に記載されるようなヒト抗IL−5抗体を使用して、Hoogenboomら、PCT公開番号WO93/06213に記載されるエピトープインプリンティング法を使用して、IL−5に対する類似の結合活性を有するヒト重鎖配列および軽鎖配列を選択する。この方法で使用される抗体ライブラリーは、好ましくは、scFvライブラリーであり、このライブラリーは、McCaffertyら、PCT公開番号WO92/01047;McCaffertyら、Nature(1990)348:552−554;およびGriffithsら、(1993)EMBO J 12:725−734に記載される様に調製されそしてスクリーニングされている。このscFv抗体ライブラリーは、好ましくは、ヒトIL−5を抗原として使用してスクリーニングされる。
【0101】
一旦初期ヒトVLセグメントおよびVHセグメントが選択されると、「混合および一致」実験(ここで、最初に選択されたVLセグメントおよびVHセグメントの異なる対がIL−5結合についてスクリーニングされる)が、好ましいVL/VH対の組合せを選択するために実施される。さらに、抗体の質をさらに改善するために、天然の免疫応答の間に抗体の親和性成熟を担うインビボ体細胞変異プロセスに類似のプロセスで、好ましいVL/VH対のVLセグメントおよびVHセグメントが、好ましくはVHおよび/またはVLのCDR3領域内でランダムに変異され得る。このインビトロ親和性成熟は、VH CDR3またはVL CDR3に相補的なPCRプライマーを使用して、それぞれ、VH領域およびVL領域を増幅することによって達成され得、ここでこのプライマーは、特定の位置で、4つのヌクレオチド塩基のランダム混合物で「スパイク」され、その結果、得られるPCR産物は、ランダム変異がVHおよび/またはVLのCDR3領域に導入されたVHセグメントおよびVLセグメントをコードする。これらのランダムに変異されたVHセグメントおよびVLセグメントは、IL−5への結合について再びスクリーニングされ得る。
【0102】
本発明の抗IL−5抗体のスクリーニング、および組換え免疫グロブリンディスプレーライブラリーからのIL−5抗体の単離の後、選択された抗体をコードする核酸が、ディスプレーパッケージから(例えば、ファージゲノムから)回収され得、そして標準的な組換えDNA技術によって他の発現ベクターにサブクローニングされ得る。所望の場合、この核酸は、以下に記載されるように、本発明の他の抗体形態を作製するためにさらに操作され得る。コンビナトリアルライブラリーをスクリーニングすることによって単離された組換えヒト抗体を発現するために、この抗体をコードするDNAを組換え発現ベクターにクローニングし、そして以下に記載されるように、哺乳動物宿主細胞に導入する。
【0103】
(クラススイッチ)
本発明の別の局面は、あるクラスの抗IL−5抗体が他のクラスとスイッチされ得る機構を提供することである。本発明の1つの局面において、VLまたはVHをコードする核酸分子が、当該分野で周知の方法を使用して単離され、その結果、この核酸分子は、CLをコードする核酸配列もCHをコードする核酸配列も含まない。VLまたはVHをコードする核酸分子は、次いで、異なるクラスの免疫グロブリン分子由来のCLまたはCHをコードする核酸配列に作動可能に連結される。これは、上記のように、CL鎖またはCH鎖を含むベクターまたは核酸分子を使用して達成され得る。例えば、本来IgMであった抗IL−5抗体は、IgGにクラススイッチされ得る。さらに、このクラススイッチは、あるIgGサブクラスを別のサブクラスへ変換(例えば、IgG1からIgG2へ)するために使用され得る。
【0104】
(抗体誘導体)
当業者は、上記の核酸分子を使用して、当業者に公知の技術および方法を使用して、抗体誘導体を作製する。
【0105】
(変異抗体)
別の実施形態において、核酸分子、ベクターおよび宿主細胞は、変異抗IL−5抗体を作製するために使用され得る。この抗体は、抗体の結合特性を変更するために、重鎖および/または軽鎖の可変ドメインで変異され得る。例えば、変異をCDR領域の1つ以上で行って、IL−5に対する抗体のKを増加または減少させ得るか、Koffを増加または減少させ得るか、あるいは抗体の結合特異性を変更し得る。部位特異的変異誘発技術は、当該分野で周知である。例えば、SambrookらおよびAusubelら(前出)を参照のこと。好ましい実施形態において、変異は、抗IL−5抗体の可変領域における生殖細胞系列と比較して変化していることが知られているアミノ酸残基で作製される。より好ましい実施形態において、1つ以上の変異が、本発明の抗IL−5抗体の1つの可変領域中の生殖細胞系列と比較して変化していることが知られているアミノ酸残基で作製される。別の実施形態において、核酸分子が、フレームワーク領域の1つ以上において変異される。変異は、フレームワーク領域または定常ドメインで作製されて、抗IL−5抗体の半減期が延長され得る。例えば、米国特許出願第09/375,924号(1999年8月17日出願、本明細書中で参考として援用される)を参照のこと。フレームワークまたは定常ドメインにおける変異はまた、抗体の免疫原性を変更するためか、別の分子への共有結合もしくは非共有結合のための部位を提供するためか、または補体結合のような特性を変更するために、作製され得る。変異は、1つの変異抗体中のフレームワーク領域、定常領域および可変領域の各々に作製され得る。あるいは、変異は、1つの変異抗体中のフレームワーク領域、可変領域または定常ドメインの1つのみに作製され得る。
【0106】
一実施形態において、変異抗IL−5抗体のVH領域またはVL領域のいずれかにおいて、変異前の抗IL−5抗体と比較して、10個以下のアミノ酸変化が存在する。より好ましい実施形態において、変異抗IL−5抗体のVH領域またはVL領域のいずれかにおいて、5個以下のアミノ酸変化が存在し、より好ましくは、3個以下のアミノ酸変化が存在する。別の実施形態において、定常領域において、15個以下のアミノ酸変化が存在し、より好ましくは、10個以下のアミノ酸変化が存在し、さらにより好ましくは、5個以下のアミノ酸変化が存在する。
【0107】
(融合抗体および免疫吸着物)
別の実施形態において、別のポリペプチドに連結された抗IL−5抗体の全部または一部を含む融合抗体または免疫吸着物が、作製され得る。好ましい実施形態において、抗IL−5抗体の可変領域のみが、ポリペプチドに連結される。別の好ましい実施形態において、抗IL−5抗体のVHドメインは、第1のポリペプチドに連結され、その一方で、VHドメインおよびVLドメインが、互いに相互作用し、抗体結合部位を形成し得る様式で、抗IL−5抗体のVLドメインは、第1のポリペプチドに会合する第2のポリペプチドに連結される。別の好ましい実施形態において、VHドメインおよびVLドメインが、互いに相互作用し得るように、VHドメインは、リンカーによってVLドメインから隔離される(以下の単鎖抗体を参照のこと)。次いで、VH−リンカー−VL抗体は、目的のポリペプチドに連結される。融合抗体は、ポリペプチドをIL−5発現細胞または組織に指向するのに有用である。ポリペプチドは、毒素、増殖因子または他の調節タンパク質のような治療剤であり得るか、または診断剤(例えば、容易に可視化され得る酵素(例えば、セイヨウワサビペルオキシダーゼ))であり得る。さらに、2つ(以上)の単鎖抗体が互いに連結される融合抗体が、作製され得る。当業者が二価抗体または多価抗体を単一のポリペプチド鎖上に作製することを望む場合、または当業者が二特異的抗体を作製することを望む場合、これは有用である。1つの実施形態において、融合抗体または免疫吸着体は、20.13.3モノクローナル抗体由来の可変領域を使用して調製される。別の実施形態において、融合抗体または免疫吸着体は、抗IL−5抗体由来の(例えば、20.13.3由来の)1つ以上のCDR領域を使用して調製される。
【0108】
(単鎖抗体)
単鎖抗体(scFv)を作製するために、VHコードDNAフラグメントおよびVLコードDNAフラグメントを、可撓性リンカーをコードする別のフラグメント(例えば、アミノ酸配列(Gly−Ser)をコードする別のフラグメント)に作動可能に連結され、その結果、VH配列およびVL配列は、連続的単鎖タンパク質(VL領域およびVH領域は、可撓性リンカーによって連結される)として発現され得る(例えば、Birdら(1988)Science 242:423−426;Hustonら(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879−5883;McCaffertyら、Nature(1990)348:552−554を参照のこと)。単鎖抗体は、単一のVHおよびVLのみが使用される場合、一価であり得るか、2つのVHおよびVLが使用される場合、二価であり得るか、または2つを超えるVHおよびVLが使用される場合、多価であり得る。
【0109】
1つの実施形態において、単鎖抗体は、20.13.3モノクローナル抗体由来の1つ以上の可変領域を使用して調製される。別の実施形態において、単鎖抗体は、前記抗IL−5抗体由来の1つ以上のCDR領域を使用して調製される。
【0110】
(κ体、ミニボディ、二価抗体およびジャヌシン(Janusins))
別の実施形態において、他の改変抗体は、抗IL−5コード核酸分子を使用して調製され得る。例えば、「κ体」(Illら、Protein Eng 10:949−57(1997))、「ミニボディ」(Martinら、EMBO J 13:5303−9(1994))、「二価抗体」(Holligerら、PNAS USA 90:6444−6448(1993))、または「ジャヌシン」(Trauneckerら、EMBO
J 10:3655−3659(1991)およびTrauneckerら、「Janusin:new molecular design for bispecific
reagents」Int J Cancer Suppl 7:51−52(1992))は、本明細書中の教示に従って標準的な分子生物学的技術を使用して調製され得る。
【0111】
1つの実施形態において、改変抗体は、20.13.3モノクローナル抗体由来の1つ以上の可変領域を使用して調製される。別の実施形態において、改変抗体は、前記抗IL−5抗体由来の1つ以上のCDR領域を使用して調製される。
【0112】
(キメラ抗体)
別の局面において、二特異的抗体が、生成され得る。1つの実施形態において、1つの結合ドメインによってIL−5に特異的に結合するキメラ抗体および第2の結合ドメインによって第2の分子に特異的に結合するキメラ抗体が、生成され得る。キメラ抗体は、組換え分子生物学的技術によって生成され得るか、または物理的に一緒に結合体化され得る。さらに、IL−5および別の分子に特異的に結合する、1つを超えるVHおよびVLを含む単鎖抗体が、生成され得る。このような二特異的抗体は、周知技術(例えば、Fangerら、Immunol Methods 4:72−81(1994)ならびにWrightおよびHarris,(上述))を使用して、ならびに(iii)(例えば、Trauneckerら、Int.J.Cancer(補遺)7:51−52(1992)を参照のこと)と共に使用して、生成され得る。好ましい実施例において、キメラ抗体は、IL−5ならびに好酸球および好塩基球の増殖の促進に関与する別の分子に結合する。好ましい実施形態において、他の分子は、エオタキシン(eotaxin)、IL−3、またはGM−CSFである。
【0113】
1つの実施形態において、キメラ抗体は、20.13.3モノクローナル抗体由来の1つ以上の可変領域を使用して調製される。別の実施形態において、キメラ抗体は、前記抗IL−5抗体由来の1つ以上のCDR領域を使用して調製される。
【0114】
(誘導体化抗体および標識化抗体)
本発明の抗体または抗体部分は、誘導体化され得るか、または別の分子(例えば、別のペプチドまたはタンパク質)に連結され得る。一般に、抗体またはその部分は、IL−5結合が誘導体化、または標識によって有害には影響されないように誘導体化される。従って、本発明の抗体および抗体の部分は、本明細書中に記載されるヒト抗IL−5抗体のインタクト形態および改変形態の両方を含むことが意図される。例えば、本発明の抗体または抗体の部分は、1つ以上の他の分子実体(例えば、別の抗体(例えば、二特異的抗体またはジア体)、検出剤、細胞傷害性剤、薬学的薬剤、および/または抗体もしくは抗体の部分の別の分子との結合を媒介し得るタンパク質もしくはペプチド(例えば、ストレプトアビジンコア領域またはポリヒスチジンタグ))に官能基的に(化学的カップリング、遺伝的融合、非共有結合またはその他によって)結合され得る。
【0115】
1つの型の誘導体化抗体は、(例えば、二特異的抗体を生成するための同じ型または異なる型の)2つ以上の抗体を架橋することによって生成される。適切な架橋剤は、適切なスペーサーによって隔離される2つの別々に反応性である基を有するヘテロ二官能性である架橋剤(例えば、m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル)またはホモ二官能性である架橋剤(例えば、ジスクシンイミジルスベレート)を含む。このようなリンカーは、Pierce Chemical Company,Rockford,Illから入手可能である。
【0116】
別の型の誘導体化抗体は、標識化抗体である。本発明の抗体または抗体の部分が誘導体化され得る有用な検出剤としては、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、5−ジメチルアミン−1−ナフタレンスルホニルクロリド、フィコエリスリン、リン化ランタニド(lanthanide phosphor)などを含む蛍光化合物が挙げられる。抗体はまた、検出のために有用である酵素(例えば、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ、グルコースオキシダーゼなど)で標識され得る。抗体が検出可能な酵素で標識される場合、酵素が認識され得る反応生成物を生成するために使用するさらなる試薬を添加することによって、この抗体は、検出される。例えば、因子セイヨウワサビペルオキシダーゼが存在する場合、過酸化水素およびジアミノベンジジンの添加によって、有色の反応生成物が導かれ、これは、検出可能である。抗体はまた、ビオチンで標識され得、アビジン結合またはストレプトアビジン結合の間接測定によって検出され得る。抗体はまた、二次レポーターによって認識される所定のポリペプチドエピトープ(例えば、ロイシンジッパー対配列、二次抗体に対する結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグ)で標識され得る。いくつかの実施形態において、標識は、種々の長さのスペーサーアームによって結合され、潜在的な立体障害を減少する。
【0117】
抗IL−5抗体はまた、放射標識されたアミノ酸で標識され得る。放射標識は、診断目的および治療目的の両方のために使用され得る。放射標識された抗IL−5抗体は、例えば、被験体におけるIL−5レベルを決定するために、診断的に使用され得る。さらに、放射標識された抗IL−5抗体は、以下を治療するために治療的に使用され得る:例えば、著しい好酸球浸潤によって特徴付けられるアレルギー疾患(例えば、以下が挙げられるがこれらに限定されない:喘息、喘息再燃、喘息悪化エピソード、慢性肺炎、アレルギー性鼻炎、通年性アレルギー性鼻炎、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、過好酸球増加症、チャーグ−ストラウス症候群、アトピー性皮膚炎、オンコセルカ皮膚炎、エピソード性血管中胚葉、好酸球性筋肉痛症候群、セアリック病、好酸球性胃腸炎、蠕虫感染、ホジキン病、鼻ポリープ、レフレル症候群、じんま疹、好酸球増加性気管支炎、結節性動脈炎、静脈洞炎、慢性静脈洞炎、好酸球性食道炎、アレルギー性好酸球性食道炎、アレルギー性結膜炎)。ポリペプチドに対する標識の例としては、以下の放射性同位元素または放射性核種(H、14C、15N、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131I)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0118】
抗IL−5抗体はまた、化学基(例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、メチル基またはエチル基、あるいは炭水化物基)で誘導体化され得る。これらの基は、抗体の生物学的特性を改善する(例えば、血清半減期を増加するかまたは組織結合を増強する)ために有用であり得る。
【0119】
(抗IL−5抗体の特徴付け)
(抗IL−5抗体のクラスおよびサブクラス)
抗IL−5抗体のクラスおよびサブクラスは、当該分野において公知の任意の方法によって決定され得る。一般に、抗体のクラスおよびサブクラスは、特定のクラスおよびサブクラスの抗体に特異的な抗体を使用して決定され得る。このような抗体は、市販される。クラスおよびサブクラスは、ELISA、ウエスタンブロットおよび他の技術によって決定され得る。あるいは、クラスおよびサブクラスは、抗体の重鎖および/または軽鎖の定常ドメインの全部または部分を配列決定し、これらのアミノ酸配列を免疫グロブリンの種々のクラスおよびサブクラスの公知のアミノ酸配列と比較し、そして抗体のクラスおよびサブクラスを決定することによって決定され得る。
【0120】
本発明の1つの実施形態において、抗体は、ポリクローナル抗体である。別の実施形態において、抗体は、モノクローナル抗体である。抗体は、IgG分子、IgM分子、IgE分子、IgA分子またはIgD分子であり得る。好ましい実施形態において、抗体は、IgGであり、そしてIgG1サブタイプ、IgG2サブタイプ、IgG3サブタイプまたはIgG4サブタイプである。より好ましい実施形態において、抗IL−5抗体は、サブクラスIgG2である。別の好ましい実施形態において、抗IL−5抗体は、20.13.3モノクローナル抗体と同じクラスおよびサブクラスである。
【0121】
(抗IL−5のIL−5に対する結合親和性)
本発明の別の局面において、抗IL−5抗体は、高い親和性でIL−5に結合する。1つの実施形態において、抗IL−5抗体は、1×10−8M以下のKでIL−5に結合する。より好ましい実施形態において、抗体は、1×10−9M以下のKでIL−5に結合する。さらにより好ましい実施形態において、抗体は、0.5×10−9M以下のK(0.25×10−9M以下のK)でIL−5に結合する。別の好ましい実施形態において、抗体は、20.13.3モノクローナル抗体と実質的に同じKでIL−5に結合する。別の好ましい実施形態において、抗体は、20.13.3モノクローナル抗体由来の1つ以上のCDRを含む抗体と実質的に同じKでIL−5に結合する。
【0122】
抗IL−5抗体のIL−5に対する結合親和性および解離速度は、当該分野で公知の任意の方法によって決定され得る。1つの実施形態において、結合親和性は、比較ELISA技術、RIA技術、BIAcore技術またはKinExA技術によって測定され得る。解離速度は、BIAcore技術またはKinExA技術によってもまた測定され得る。1つの実施形態において、結合親和性および解離速度は、例えば、BIAcoreを使用する表面プラズモン共鳴によって測定される。
【0123】
(抗IL−5抗体によって認識されるIL−5エピトープの同定)
本発明はまた、ヒト抗IL−5抗体と同じ抗原またはエピトープを結合する抗IL−5抗体を提供する。さらに、本発明は、ヒト抗IL−5抗体と交差競合する抗IL−5抗体を提供する。好ましい実施形態において、ヒト抗IL−5抗体は、20.13.3モノクローナル抗体である。別の好ましい実施形態において、ヒト抗IL−5抗体は、20.13.3モノクローナル抗体由来の1つ以上のCDRを含む。好ましい実施形態において、抗IL−5抗体は、別のヒト抗体である。
【0124】
当業者は、抗IL−5抗体が、当該分野で公知の種々の方法を使用して同じ抗原に結合するかどうかを決定し得る。例えば、当業者は、抗IL−5抗体を使用して、抗IL−5抗体に結合することが公知である抗原(例えば、IL−5)を捕捉し、この抗体から抗原を溶出し、次いで、試験抗体が溶出された抗原に結合するかどうかを決定することによって同じ抗原に試験抗IL−5抗体が、結合するかどうかを決定し得る。当業者は、抗体が、飽和条件下で抗IL−5抗体をIL−5に結合し、次いで、試験抗体のIL−5に結合する能力を測定することによって、抗IL−5抗体と同じエピトープに結合するかどうかを決定する。試験抗体が、抗IL−5抗体と同時にIL−5に結合し得る場合、試験抗体は、抗IL−5抗体と異なるエピトープに結合する。しかし、試験抗体が、同時にIL−5に結合し得ない場合、試験抗体は、ヒト抗IL−5抗体と同じエピトープに結合する。この実験は、ELISA、RIAまたは表面プラズモン共鳴を使用して実施され得る。好ましい実施形態において、実験は、表面プラズモン共鳴を使用して実施される。より好ましい実施形態において、BIAcoreが使用される。当業者はまた、抗IL−5抗体が、抗IL−5抗体と抗IL−5抗体が、交差競合するかどうかを決定し得る。好ましい実施形態において、当業者は、抗IL−5抗体が、別の抗IL−5抗体と同じエピトープに結合し得るかどうかを測定するために使用される同じ方法を使用することによって、抗IL−5抗体が、別の抗IL−5抗体と交差競合するかどうかを決定し得る。
【0125】
(軽鎖および重鎖の使用法)
本発明はまた、ヒトVκ遺伝子およびヒトJκ遺伝子によってコードされる軽鎖可変配列を含む抗IL−5抗体を提供する。20.13.3モノクローナル抗体において、κ軽鎖は、ヒトJκ4遺伝子と結合したヒト08/018Vκ遺伝子を利用する。
【0126】
好ましい実施形態において、本発明の抗IL−5抗体の軽鎖可変領域は、20.13.3モノクローナル抗体のように、生殖細胞系08/018遺伝子アミノ酸配列と比べて、同じアミノ酸置換を含む。例えば、ある実施形態において、抗IL−5抗体の軽鎖可変領域は、20.13.3モノクローナル抗体に存在している08/018生殖細胞系配列と比べて1つ以上のアミノ酸配列を含み得る。この様式において、例えば、IL−5に対する抗体の親和性または抗原からの解離速度を変えるために、抗体結合の異なる特徴を混合し得、適合し得る。
【0127】
別の実施形態において、軽鎖可変領域は、20.13.3モノクローナル抗体と同じ位置にてアミノ酸置換を含むが、それらの位置において異なるアミノ酸を使用する。好ましくはこの置換は、20.13.3におけるその位置にて存在しているアミノ酸と比較して、保存的である。例えば、グルタミン酸が特定の位置にて20.13.3において存在しており、グルタミン酸が生殖細胞系と比べて置換を表す場合、本発明に従って、その位置にてアスパラギン酸に保存的に置換することが出来る。同様に、アミノ酸置換基がセリンである場合、セリンをトレオニンで置き換えることが出来る。
【0128】
別の好ましい実施形態において、軽鎖は、Mab20.13.3のVLのアミノ酸配列と同じであるアミノ酸配列を含む。別の非常に好ましい実施形態において、軽鎖は、20.13.3モノクローナル抗体の軽鎖のCDR領域と同じであるアミノ酸配列を含む(表3ならびに配列番号14、16および18にそれぞれ示されるように)。別の好ましい実施形態において、軽鎖は、20.13.3モノクローナル抗体の軽鎖の少なくとも1つのCDR領域由来のアミノ酸配列を含む。
【0129】
別の実施形態において、抗体またはその部分は、λ軽鎖を含む。
【0130】
本発明はまた、抗IL−5抗体またはその部分を提供し、ヒト重鎖またはヒト重鎖由来の配列を含む。1つの実施形態において、重鎖アミノ酸配列は、ヒトVDP−47遺伝子ファミリー由来である。より好ましい実施形態において、重鎖は、生殖細胞系VDP−47からわずか8つのアミノ酸変化、より好ましくはわずか6つのアミノ酸変化、なおより好ましくはわずか3つのアミノ酸変化を含む。
【0131】
好ましい実施形態において、抗IL−5抗体のVHは、Mab20.13.3のように生殖細胞系アミノ酸配列と比べて同じアミノ酸置換を含む。別の実施形態において、アミノ酸置換は、Mab20.13.3のVHにおいて見出されるアミノ酸置換と同じ位置においてなされるが、保存的なアミノ酸置換が、同じアミノ酸を使用することなく、なされる。
【0132】
別の好ましい実施形態において、重鎖は、Mab20.13.3のVHのアミノ酸配列と同じであるアミノ酸配列を含む。別の非常に好ましい実施形態において、重鎖は、表2に示される20.13.3モノクローナル抗体の重鎖のCDR領域と同じであるアミノ酸配列を含む。別の好ましい実施形態において、重鎖は、20.13.3モノクローナル抗体の重鎖の少なくとも1つのCDR領域由来のアミノ酸配列を含む。別の好ましい実施形態において、重鎖は、配列番号2、6、8、10および12から選択されるアミノ酸配列を含む。別の好ましい実施形態において、重鎖は、配列番号8、10および12から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0133】
(抗IL−5抗体によるIL−5レセプター活性の阻害)
(ILレセプターへのIL−5結合の阻害)
別の実施形態において、本発明は、IL−5のIL−5レセプターへの結合を阻害する抗IL−5抗体を提供する。好ましい実施形態において、IL−5レセプターは、ヒトである。別の好ましい実施形態において、抗IL−5抗体は、ヒト抗体である。別の実施形態において、抗体またはその部分は、IL−5とIL−5レセプターとの間の結合を阻害し、わずか50nMのIC50を有する。好ましい実施形態において、IC50は、わずか10nMである。より好ましい実施形態において、IC50は、わずか2.0nM、0.5nM、0.25nM、0.1nMまたは0.05nMである。IC50は、当該分野で公知の任意の方法によって測定され得る。代表的には、IC50は、ELISA、RIAまたはFunctional Antagonismによって測定される。好ましい実施形態において、IC50は、Functional Antagonismによって測定される。
【0134】
(抗IL−5抗体によるIl−5媒介細胞増殖の阻害(インビトロ))
別の好ましい実施形態において、本発明は、IL−5応答性細胞株のIL−5媒介増殖を阻害する抗IL−5抗体を提供する。好ましい実施形態において、この細胞株は、ヒトである。なおさらに好ましい実施形態において、細胞株は、ヒト好酸球細胞株またはヒト赤白血病細胞株、例えば、TF−1である。
【0135】
好ましい実施形態において、この抗体は、ヒト抗体である。より好ましい実施形態において、この抗体は、20.13.3モノクローナル抗体またはその機能的フラグメントである。
【0136】
特定の実施形態において、抗IL−5抗体またはその機能的タンパク質は、わずか10nMのIC50値で、IL−5応答性細胞株の増殖を阻害する。好ましい実施形態において、IC50は、1nMである。他の好ましい実施形態において、IC50は、わずか250pMである。さらなる好ましい実施形態において、IC50は、わずか100pMである。なお他の好ましい実施形態において、IC50は、わずか50pMである。
【0137】
(インビボにおける好酸球蓄積の阻害)
別の実施形態において、抗IL−5抗体は、インビボにおける好酸球蓄積を阻害する。好ましい実施形態において、この抗体は、処置されない動物における好酸球の蓄積と比較して、好酸球蓄積を阻害する。より好ましい実施形態において、この抗体は、好酸球蓄積を50%阻害する。さらにより好ましい実施形態において、この抗体は、好酸球蓄積を75%阻害する。
【0138】
特定の実施形態において、抗IL−5抗体治療は、1つ以上のさらなる治療剤を用いる治療と共に行なわれる。好ましい実施形態において、さらなる薬剤が、好酸球産生、成熟、血液中への移動、活性化、蓄積または哺乳動物中の組織への浸潤のさらなる阻害を促進する。特定の実施形態において、さらなる治療が、コルチコステロイド、βアゴニスト、5−LO阻害剤、LTD4レセプターアンタゴニストおよび抗ヒスタミンからなる群より選択される1つ以上の薬剤の投与を包含する。このような治療についてのコルチコステロイドの実施例としては、ベタメタゾン、プレドニゾロン、およびヒドロコルチゾンが挙げられるが、これらに限定されない。1つ以上のさらなる治療剤が、本発明の抗IL−5抗体と別個にまたは同時にのいずれかで、投与され得る。好ましい実施形態において、薬剤および抗IL−5抗体の同時投与は、22〜24日後に少なくとも50%、より好ましくは75%、より好ましくは90%、好酸球蓄積を阻害する。
【0139】
(薬学的組成物およびキット)
本発明はまた、IL−5に媒介される好酸球産生、成熟、血液中への移動、活性化または哺乳動物中の組織への浸潤によって特徴付けられる障害、特にアレルギー性障害の処置のための薬学的組成物に関する。1つの実施形態において、前記薬学的組成物は、喘息、喘息再燃、喘息悪化エピソード、慢性肺炎、アレルギー性鼻炎、通年性アレルギー性鼻炎、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、過好酸球増加症、チャーグ−ストラウス症候群、アトピー性皮膚炎、オンコセルカ皮膚炎、エピソード性血管水腫、好酸球性筋肉痛症候群、セアリック病、好酸球性胃腸炎、蠕虫感染、ホジキン病、鼻ポリープ、レフレル症候群、じんま疹、好酸球性増加気管支炎、結節性動脈炎、静脈洞炎、慢性静脈洞炎、好酸球性食道炎、アレルギー性好酸球性食道炎、およびアレルギー性結膜炎のような、しかしこれらに限定されない、好酸球疾患の処置のためである。
【0140】
本発明の抗IL−5抗体は、被験体への投与に適切な薬学的組成物に導入され得る。代表的には、薬学的組成物は、本発明の抗体またはその機能的フラグメントおよび薬学的に受容可能なキャリアを含む。本明細書中で使用されるように、「薬学的に受容可能なキャリア」は、生理学的に適合性の、任意のおよび全ての溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを含む。薬学的に受容可能なキャリアの例としては、水、生理食塩水、リン酸緩衝化生理食塩水、ブドウ糖、グリセロール、およびエタノールなどのうちの1つ以上、ならびにその混合物を含む。多くの場合において、組成物中の等張剤、例えば、糖、マンニトール、ソルビトールのようなポリアルコールまたは塩化ナトリウムを含むのが好ましい。湿潤剤または乳化剤のような、湿潤物質または少量の補助物質のような薬学的に受容可能な物質、防腐剤または緩衝剤が、抗体または抗体部分の有効期間または有効性を高める。
【0141】
本発明の組成物は、種々の形態であり得る。これらとしては、例えば、液体溶液(例えば、注射可能溶液および注入可能溶液)、分散液または懸濁液、錠剤、丸剤、散剤、リポソームおよび坐剤のような、液体、半固体および固体の投薬形態が挙げられる。この好ましい形態は、投与および治療的適用の意図された様式に依存する。代表的な好ましい組成物は、ヒトの他の抗体との受動免疫のために用いられる組成物と類似の組成物のような、注射可能溶液または注入可能溶液の形態である。好ましい投与の様式は、非経口(例えば、静脈内、皮下、腹腔内、筋肉内)である。好ましい実施形態において、抗体は、静脈内注射または静脈内注入によって投与される。別の好ましい実施形態において、抗体は、筋肉内注射または皮下注射によって投与される。
【0142】
治療的組成物は、代表的に製造および保存の状態で滅菌かつ安定であらねばならない。この組成物は、高い薬物濃度に適切な、溶液、マイクロエマルジョン、分散、リポソームまたは他の注文された構造として処方され得る。滅菌注射可能溶液は、所望されるように、上に列挙された成分の1つ以上の組み合わせで、適切な溶媒中、所望される量で抗IL−5抗体を導入し、続いて滅菌濾過を行なうことによって調製され得る。一般に、分散液は、上で列挙されたもの由来の基本的な分散媒体および所望される他の成分を含む滅菌ビヒクル中に化合物を導入することによって調製される。滅菌注射可能溶液の調製のための滅菌散剤の場合、調製の好ましい方法は、活性成分とその予め滅菌濾過された溶液由来の任意のさらなる所望される成分の散剤を生じる、真空乾燥および凍結乾燥である。溶液の適切な流動性が、例えば、レシチンのようなコーティングの使用、分散の場合における所望される粒子サイズの保持、および界面活性剤の使用によって、保持され得る。注射可能組成物の延長された吸収は、吸収を遅延させる薬剤(例えば、一ステアリン酸塩およびゼラチン)を組成物中に含むことによってもたらされ得る。
【0143】
多くの治療的適用について、好ましい投与経路/様式は、皮下、筋肉内、静脈内または注入であるが、本発明の抗体または抗原結合フラグメントは、当該分野で公知の種々の方法によって投与され得る。当業者によって理解されるように、投与の経路/様式は、所望される結果に依存して変動する。
【0144】
特定の実施形態において、活性化合物は、移植、経皮パッチおよびマイクロカプセル化送達システムを含む、制御された放出処方物のような、迅速な放出に対して化合物を保護するキャリアと共に調製され得る。エチレンビニルアセテート、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸のような生体分解性、生体適合性ポリマーが、使用され得る。このような処方物の調製のための多くの方法が、特許権を持ち、当業者に一般に公知である。例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems,J.R.Robinson,ed.,Marcel Dekker,Inc.,New York,1978を参照のこと。
【0145】
特定の実施形態において、本発明の抗IL−5抗体または抗原結合フラグメントが、例えば、不活性希釈キャリアまたは吸収可能食用キャリアを用いて、投与され得る。この化合物(および他の成分(所望される場合))がまた、硬いシェルゼラチンカプセルまたは柔らかいシェルゼラチンカプセル中に封入され得、錠剤に圧縮され得、または直接被験体の食事に導入され得る。経口治療投与について、この化合物は、賦形剤と混合され得、かつ摂取可能な錠剤、バッカル錠、トローチ剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁液、シロップ剤およびカシェ剤などの形態において用いられ得る。非経口投与以外によって本発明の化合物を投与するために、化合物の不活性化を防ぐために、その化合物を材料でコーティングするか、または材料と化合物を共投与することが、必要かもしれない。
【0146】
補助活性化合物がまた、組成物中に組み込まれ得る。特定の実施形態において、本発明の抗IL−5抗体が、1つ以上のさらなる治療剤と共に処方され、そして/または共投与される。これらの薬剤としては、他の標的と結合する抗体(例えば、1つ以上の増殖因子またはサイトカインあるいはその細胞表面レセプターに結合する抗体)IL−5結合タンパク質のようなIL−5産生または活性を減少させる薬剤、IL−5またはIL−5レセプターに対するアンチセンスオリゴヌクレオチド、IL−5レセプター活性、可溶IL−5レセプター、グルココルチコイドおよびシクロスポリンを阻害するペプチドアナログ、ならびにコルチコステロイドのように、骨髄由来の好酸球産生、成熟、生存、活性化または移動を阻害する薬剤が挙げられるが、これらに限定されない。このような組み合わせ治療は、抗IL−5抗体および/または共投与された薬剤のより低い用量を必要とするだけで良く、従って種々の単一要素からなる治療に付随する可能性のある毒性または複雑性を避ける。
【0147】
本発明の薬学的組成物は、本発明の抗体または抗体部分の「治療的有効量」もしくは「予防的有効量」を含み得る。「治療的有効量」とは、所望される治療結果を達成するために、必要な投薬量での、および期間についての有効量を言う。抗体または抗体部分の治療的有効量は、個体の疾患状態、年齢、性別および重量、ならびにこの抗体または抗体部分が所望の治療効果を個体において誘発する能力のような因子に従って変動し得る。治療的有効量はまた、抗体または抗体部分の任意の毒性または有害な効果が、治療的有益な効果によって超えられているような量である。「予防的有効量」とは、所望される予防効果を達成するために、必要な投薬量での、および期間についての有効量を言う。代表的に、予防的投与量が、疾患のより初期の段階以前またはその段階にて被験体において用いられるために、予防的有効量は、治療的有効量よりも少ない。
【0148】
投薬計画が、最適な所望される反応(例えば、治療的応答または予防的応答)を提供するために適合され得る。例えば、単一のボーラスが投与され得るか、いくつかの分割された投薬量が時間をかけて投与され得るか、または投薬量が、治療的状況の必要性によって指示されるように比例して減少もしくは増加され得る。投薬の容易さおよび投薬の均一性のために、投薬単位形態において非経口的組成物を処方することが、特に有益である。本明細書中で用いられるような投薬単位形態は哺乳類被験体が処置されるための、単位投薬量として適切な物理的に異なる量をいい;各々の単位が所望される薬学的キャリアと一緒に所望される治療的効果を作り出すために計算された活性化合物の所定の量を含む。本発明の投薬単位形態についての詳述は、(a)抗体の特有の特徴および達成されるべき特定の治療効果または予防効果、ならびに(b)個体における感受性の処置のための抗体のようなものを調合する際の、当該分野に固有の制限によって支配され、かつこれらに直接依存している。
【0149】
例示的な、本発明の抗体または抗体部分の治療的有効量または予防的有効量についての非限定的な範囲は、0.1〜100mg/kg、より好ましくは0.1〜50mg/kg、より好ましくは0.1〜20mg/kg、さらにより好ましくは1〜10mg/kg(例えば、0.3mg/kg、1mg/kgまたは3mg/kg)である。投薬値が、軽減されるべき症状の型および重篤度で変動し得ることに留意するべきである。任意の特定の被験体について、特定の投薬計画が、個体の要望および組成物を投与するまたは指図する人の専門的判断に従って、時間をかけて適合されるべきであること、ならびに本明細書中に示される投薬範囲が、例示のみであり、特許請求された組成物の範囲または実施を制限するようには意図されない。
【0150】
本発明の別の局面が、抗IL−5抗体または抗原結合フラグメントおよびこれらの抗体を含む薬学的組成物を含むキットを提供する。キットは、抗体または薬学的組成物に加えて、診断剤または治療剤を含み得る。キットはまた、診断的方法または治療的方法における使用のための説明書を含み得る。好ましい実施形態において、このキットは、以下に記載される方法において使用され得る抗体またはその薬学的組成物および診断剤を含む。別の好ましい実施形態において、このキットは、以下に記載される方法において使用され得る抗体またはその薬学的組成物および1つ以上の治療剤を含む。
【0151】
(使用の診断方法)
本発明の抗IL−5抗体またはその抗原結合フラグメントを使用して、生物学的サンプル中のIL−5を検出し得る。抗IL−5抗体は、従来の免疫学的検定法(ELISA、RIA、FACS、組織免疫組織化学、ウェスタンブロットまたは免疫沈降が挙げられるが、これらに限定されない)において使用され得る。本発明の抗IL−5抗体は、ヒト由来のIL−5を検出するために使用し得る。別の実施形態において、抗IL−5抗体を使用して、カニクイザルおよびアカゲザルのような旧世界ザル、ならびにチンパンジーおよび類人猿由来のIL−5を検出し得る。本発明は、生物学的サンプル中のIL−5を検出する方法を提供する。この方法は、生物学的サンプルとその本発明の抗IL−5抗体または抗原結合フラグメントとを接触させる工程、およびIL−5に結合された抗体を検出して、生物学的サンプル中のIL−5を検出する工程を包含する。1つの実施形態において、抗IL−5抗体は、検出可能な標識で直接標識される。別の実施形態において、抗IL−5抗体(第1の抗体)は、標識されず、抗IL−5抗体と結合し得る第2の抗体または他の分子は、標識される。当業者に周知であるように、第1の抗体の特定の種およびクラスと特異的に結合し得る第2の抗体が、選択される。例えば、抗IL−5抗体が、ヒトIgGである場合、第2の抗体は、抗ヒトIgGであり得る。抗体に結合し得る他の分子としては、タンパク質A、タンパク質Gが挙げられるが、これらに限定されない。これらの両方が、市販されている(例えば、Pierce Chemical Co.より)。
抗体または第2の抗体について適切な標識が、上に開示されており、これらとしては、種々の酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質および放射活性物質が挙げられる。適切な酵素の例としては、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼが挙げられる;適切な補欠分子族複合体の例としては、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンが挙げられる;適切な蛍光物質の例としては、ウンベリフェロン(umbelliferone)、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、塩化ダンシルまたはフィコエリトリンが挙げられる;発光物質の例としては、ルミノールが挙げられる;そして適切な放射活性物質の例としては、125I、131I、35SまたはHが挙げられる。
【0152】
代替的な実施形態において、IL−5は、検出可能な物質で標識されたIL−5標準、非標識抗IL−5抗体を利用する競合免疫アッセイによって生物学的サンプル中でアッセイされ得る。このアッセイにおいて、生物学的サンプル、標識されたIL−5標準および抗IL−5抗体が、混合され、標識されない抗体に結合した標識されたIL−5の量が決定される。生物学的サンプル中のIL−5の量は、抗IL−5抗体に結合した標識されたIL−5標準の量に反比例している。
【0153】
多くの目的のために上で開示された免疫アッセイを用いることが出来る。1つの実施形態において、抗IL−5抗体またはフラグメントは、サンプル、特に生物学的サンプル中でIL−5を検出するために使用され得る。
【0154】
(使用の治療的方法)
別の実施形態において、本発明は、本発明の抗IL−5抗体またはその抗原結合フラグメントを、それを必要とする患者に投与することによって、IL−5活性を阻害するための方法を提供する。本明細書中に記載される抗体の任意の型は、治療学的に使用され得る。好ましい実施形態において、抗IL−5抗体は、ヒト抗体である。別の好ましい実施形態において、IL−5は、ヒトであり、患者は、ヒト患者である。代替的に、抗体またはフラグメントは、抗体が獣医学的目的のためにまたはヒト疾患の動物モデルとして交差反応するIL−5を発現する非ヒト哺乳類(すなわち、霊長類の動物、カニクイザル、アカゲザル)に投与され得る。このような動物モデルは、本発明の抗体の治療的有効性を評価するために有効であり得る。
【0155】
本明細書中で用いられるように、用語「IL−5活性が有害である障害」は、障害に罹患している被験体におけるIL−5の存在が、障害の機能上の変化もしくは傷害の悪化に寄与する因子のいずれかを担うと、示されるかまたは疑われている、疾患および他の障害を含むように意図される。従って、IL−5抗体が有害である障害は、IL−5活性の阻害が障害の症状および/または進行を軽減すると予期されている障害である。このようなIL−5に媒介される障害としては、アレルギー性障害、特に皮膚および肺組織のアレルギー性障害ならびに肺炎症が挙げられるが、これらに限定されない。このような障害は、例えば、骨髄、血液または他の組織あるいは気管支肺胞洗浄(BAL)流体における増加した数の好酸球および/または好塩基球によって明示され得る。特に、このような障害は、肺もしくは皮膚の好酸球増加症、気管支過応答性、肺組織、血管周囲のおよび/もしくは気管支周囲の領域における好酸球蓄積、気道上皮への損傷、間質気道浮腫、気管支における増加した粘液分泌または気管支収縮によって特徴付けられ得る。代替的に、病理学上のIL−5活性は、骨髄中の増加した好酸球産出、増加した好酸球生存、内皮細胞への増加した好酸球付着および高められた好酸球細胞傷害性活性の1つ以上によって明示され得る。
【0156】
好ましい実施形態において、本発明の抗IL−5抗体またはその抗原結合フラグメントが、炎症に罹患している患者に投与され得る。この炎症は、鼻炎、鼻ポリープ、喘息、特発性好酸球症候群およびアトピー性皮膚炎のような顕著な好酸球浸潤によって特徴付けられる、アレルギー性疾患を含む。さらにより好ましい実施形態において、抗IL−5抗体が、慢性肺炎症を有する患者に投与される。高度に好ましい実施形態において、この方法は、炎症をより重篤でなくさせ、消失させる。
【0157】
別の好ましい実施形態において、抗IL−5抗体が、骨髄、血液または他の体組織中の好酸球の増加したレベルを有する患者に投与され得る。増加した好酸球の存在は、以下を含むが、これらに限定されない疾患と結びつけられることが当該分野で公知である:喘息、喘息再燃、喘息悪化エピソード、慢性肺炎、アレルギー性鼻炎、通年性アレルギー性鼻炎、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、過好酸球増加症、チャーグ−ストラウス症候群、アトピー性皮膚炎、オンコセルカ皮膚炎、エピソード性血管水腫、好酸球性筋肉痛症候群、セアリック病、好酸球性胃腸炎、蠕虫感染、ホジキン病、鼻ポリープ、レフレル症候群、じんま疹、好酸球性増加気管支炎、結節性動脈炎、静脈洞炎、慢性静脈洞炎、好酸球性食道炎、アレルギー性好酸球性食道炎、およびアレルギー性結膜炎。好ましい実施形態において、本発明の抗IL−5抗体またはその抗原結合フラグメントは、喘息を有する患者に投与される。さらにより好ましい実施形態において、この方法は、疾患の重篤度を妨げ、または軽減させる。
【0158】
抗体またはフラグメントは、一日約3回から6ヶ月ごとに約1回まで、投与され得、好ましくは、経口で、粘膜に、頬に、鼻腔内に、吸入可能に、静脈内に、皮下に、筋肉内に、非経口に、腫瘍内に、または局部経路で投与され得る。抗体はまた、ミニポンプを介して連続的に投与され得る。抗体は一般に、抗体が症状の悪化を止め、または改善させる場合、疾患の症状が存在している限り投与される。抗体は一般に、上記のような薬学的組成物の一部として、投与される。抗体はまた、アレルギー性炎症および/または好酸球浸潤が起こるのを妨げるために予防的に投与され得る。これは、IL−5に媒介された症状または好酸球に媒介された症状を現すより高い危険を有することが示されている患者において、特に有用である。
【0159】
(遺伝子治療)
本発明の核酸分子は、遺伝子治療を介してその必要のある患者に投与され得る。この治療は、インビボまたはエクスビボのいずれかであり得る。好ましい実施形態において、重鎖および軽鎖の両方をコードする核酸分子が、患者に投与される。より好ましい実施形態において、核酸分子が投与され、その結果、これらの核酸分子は、B細胞が抗体を産生するために適応されるために、B細胞の染色体に安定に統合される。好ましい実施形態において、前駆体B細胞が、エクスビボでトランスフェクションされるか、または感染され、そしてそれを必要とする患者に再移植される。別の実施形態において、前駆体B細胞または他の細胞が、目的の細胞型を感染することが既知であるウイルスを用いて、インビボで感染される。遺伝子治療のために用いられる代表的なベクターとしては、リポソーム、プラスミドまたはレトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ関連ウイルスのようなウイルスベクターが挙げられる。インビボまたはエクスビボのいずれかでの感染後に、抗体発現のレベルが、処置された患者からサンプルを採取し、当該分野で公知あり、本明細書中で考察される任意の免疫アッセイを用いることによって、モニタリングされ得る。
【0160】
好ましい実施形態において、遺伝子治療方法は、ヒト抗体の重鎖またはその抗原結合部分をコードする有効量の単離された核酸分子を投与し、そして核酸分子を発現する工程を包含する。別の実施形態において、遺伝子治療方法は、ヒト抗体の軽鎖またはその抗原結合部分をコードする有効量の単離された核酸分子を投与し、そして核酸分子を発現する工程を包含する。より好ましい方法において、遺伝子治療方法は、ヒト抗体の軽鎖またはその抗原結合部分をコードする有効量の単離された核酸分子およびヒト抗体の重鎖またはその抗原結合部分をコードする有効量の単離された核酸分子を投与し、そして核酸分子を発現する工程を包含する。遺伝子治療方法はまた、抗体またはその機能的フラグメントとして同様の治療効果を有する別の因子(例えば、前記に列挙される因子)を投与する工程を包含する。
【0161】
本発明をより理解し得るために、以下の実施例が示される。これらの実施例は、例示の目的のみであり、そしていかなる様式においても本発明の範囲を限定するように解釈されるべきでない。
【実施例】
【0162】
(実施例1:抗IL−5を産生するハイブリドーマの生成)
本発明の抗体を、以下のように調製し、選択し、そしてアッセイした:
(免疫化およびハイブリドーマ生成)
8〜15週齢のマウスを15〜20匹のグループに分けた全288のIgG2 XenoMiceTMまたはIgG4 XenoMiceTMを、以下の表4に示されるスケジュールに従って免疫化した。
【0163】
(表4:免疫化スケジュール)
【0164】
【表4】

テイルベース(bot)の免疫化について、ヒトIL−5を、上記に示された用量および時間で、一次免疫化についてフロイント完全アジュバント(CFA)および引き続く免疫化についてフロイント不完全アジュバント(IFA)中に乳化した。(IL−5の配列情報について、欧州特許出願番号EP0267779を参照のこと)。フットパッド(footpad:FP)免疫化について、抗原は、Ribiアジュバントに乳化した。いくつかの動物(グループ7)は、CFAまたはRibi中のbotおよび腹腔内(ip)の両方を介して抗原を受けた。グループ8は、ヒトIl−5が、マウス抗CD3抗体に化学的に結合体化した結合体の形態の抗原を受けた。
【0165】
免疫化マウス由来の脾臓細胞および/またはリンパ節細胞を、非分泌性骨髄腫P3−X63−Ag8.653細胞株(ATCC,Rockville,MD)または骨髄腫NSO−bcl2細胞株(B.Diamond,Albert Einstein College of Medicine, NY)のいずれかと、上記(GalfreおよびMilstein,Methods Enzymol.73:3−46,1981)のように、融合した。培養物を、ハイブリッド細胞増殖について通常通り試験し、そしてハイブリドーマを含有するこれらのウェルからの上清を、IL−5に特異的なヒトIgG/κの存在についての一次ELISAスクリーンのために回収した。
【0166】
(IL−5結合アッセイ)
ELISAプレートを、コーティング緩衝液(0.1M 炭酸塩緩衝液,pH 9.6および8.4g/l NaHCO3(MW 84))中2μg/mlの50μl/ウェルIL−5抗原で被膜し、4℃にて一晩または37℃にて2時間インキュベートした。これらのプレートを、洗浄緩衝液(PBS中0.05% Tween 20)で3回洗浄し、200μl/ウェルのブロッキング緩衝液(1×PBS中0.5% BSA、0.1% Tween 20、0.01% チメロサール)で1時間室温にてブロックし、そして3回以上洗浄緩衝液で洗浄した。50μl/ウェルのサンプル(またはコントロール)をウェルに添加し、そして室温にて2時間インキュベートした。洗浄緩衝液で3回洗浄した後、100μl/ウェルの検出抗体ヤギ抗huIgGfc−HRP(Caltag,カタログ番号;H10507)(および二次スクリーニングにおけるGT抗hκ−HRP)を、各ウェルに添加し、そして1時間室温にてインキュベートした。これらのプレートを洗浄し、そして100μlの現像溶液(10ml 基質緩衝液、7.14g/l クエン酸および16.96g/l 第二リン酸ナトリウム)、10mg o−フェニレンジアミン(Sigma,カタログ番号P−7288)および10μl 30% H)を、各ウェルに添加する。約10分後、停止溶液(2M HSO)を各ウェルに添加し、そしてプレートをELISAプレートリーダーを使用して、492nmの波長で分析した。ポジティブ培養物を48ウェルプレートに移し、次いで、コンフルエンスに達した後に24ウェルプレートに移した。
【0167】
IL−5と反応性の抗体を産生する全116のハイブリドーマを得、このうちの7つはIgG2であり、そして109は、IgG4であった。IgG4抗体の不均衡な罹患率は、クラススウィッチに対するIL−5の効果に関連することが考えられる。IL−5特異的抗体を産生する116のハイブリドーマのうち、20.13と命名されるIgG4/κハイブリドーマを、マウスIgGコントロール抗体(Schering−Plough製の39D10)に匹敵する強い中和活性に基づいてさらに特徴付けするために選択した。
【0168】
(実施例2:生物学的機能抗体を決定するための増殖アッセイ)
アフィニティー精製したハイブリドーマ腹水および上清を、TF1細胞(DNAX)のIl−5誘導増殖の中和についての定量的機能アッセイに使用した。簡単に言えば、組換えヒトIL−5を、1% FBS RPMI−1640培養培地に1.0ng/mlの最終濃度まで希釈し、そしてこのコントロール抗体(39D10(Schering−Plough))を、IL−5培地で1.0ng/mlの最終濃度まで希釈した。IL−5溶液またはIL−5および39D10溶液のいずれかを、96ウェルプレートのウェルに添加した。コントロールウェルは、培地のみまたはIL−5のみを含んだ。
【0169】
TF1細胞を、RPMI−1640培地で2回洗浄し、そしてFBS培養培地中に1mlあたり2.5×105 TF1細胞の最終濃度まで再懸濁した。100μlの細胞懸濁液を各ウェルに添加し、そして48〜56時間、37℃にておよび5%のCOでインキュベートした。48時間後、20μlのAlamar Blueを各ウェルに添加し、そして一晩インキュベートした。このプレートを、FluoroCountTMプレートリーダーを使用して、530nmの励起波長、590nmの放出波長および600ボルトのPMTで、分析した。
【0170】
腹水または上清から精製された抗体20.13.3を使用する研究の結果は、20.13.3がIL−5によって誘導される細胞増殖を効果的にブロックすることを示す。
【0171】
(実施例3:中和IC50の決定)
Mab20.13.3を、ヒトIL−5およびマウスIL−5の両方に対してTF−1抗増殖アッセイで試験した(Eganら Drug Res.49:779−790(1999))。簡単に言うと、50μlのアッセイ培地(1% グルタミン、1% ペン/ストレップ(pen/strep)溶液、0.1% メルカプトエタノール、0.05%
フンギゾン(fungizone)および1% ウシ胎仔血清を補充したRPMI 1640)を、96ウェルプレートのウェルに添加した。可変濃度のMab20.13.3をウェルに添加し、そして室温にて30分間インキュベートした。20μlのヒトIL−5またはマウスIL−5(12ng/ml)を、各ウェルに添加した(ネガティブコントロールを除いて)。TF−1細胞を、1mlあたり5×10細胞の濃度で調製し、そして30μl細胞懸濁液アリコートを、全てのウェルに添加した。これらのプレートを、44〜48時間37℃にて、5%COでインキュベートした。次いで、25μlの5mg/mlMTT溶液を各ウェルに添加し、そしてさらに6時間インキュベートした。100μlの10%SDS溶液を各ウェルに添加し、そしてこれらのプレートを一晩インキュベートした。これらのプレートを、UV MAXTM分光光度計で分析した。結果は、このアッセイにおいて、Mab20.13.3が、ヒトIL−5およびマウスIL−5に対して、それぞれ、250pMおよび380pMのIC50値を示すことを示す。
【0172】
(実施例4:インビボでの機能アッセイ)
本発明の抗IL−5抗体を、抗原誘導性肺炎症のマウスモデルにおいて評価した(Kungら 1994)。簡単に言うと、オブアルブミン(OVA)で感作したマウスに、エアロゾル化したOVAで試す2時間前に、生理食塩水、5、1、0.5または0.1mg/kgのMab20.13.3を皮下に、あるいは腹腔内に1mg/kgのポジティブコントロールのマウス抗IL−5mAb(TRFK−5(Schering Plough
Research Institute;Mitaら、J.Immunol.Methods 125:233(1987))のいずれかを投薬した。気管支肺胞の洗浄(BAL)液体を、試みの24時間後に回収し、そして細胞性を決定した。TRFK−5は、全てのパラメータの有意な減少を生じた。Mab20.13.3は、5、1および0.5mg/kgでのBALにおける全ての細胞および好酸球を有意に阻害した。
【0173】
本発明の抗Il−5抗体の活性の持続時間を、上記のモデルにおいて評価した。オブアルブミン(OVA)で感作したマウスに、エアロゾル化したOVAでの試みの2時間、2週間、4週間、6週間、8週間または12週間前に、5mg/kgおよび1mg/kgの生理食塩水またはMab20.13.3のいずれかを皮下に投薬した。気管支肺胞の洗浄流体を、試みの24時間後に回収し、そして細胞性を決定した。血液サンプルを、薬物動態学的分析のためにBAL回収の時点で取った。5および1mg/kg用量のMab20.13.3は、OVA試みの2時間および13日前に与えられた場合に、BAL中の全細胞および好酸球を有意に阻害した。Mab20.13.3は、試みの4週間前に与えられた場合、5mg/kg用量においてのみ、BAL中の全細胞および好酸球を有意に阻害した。Mab20.13.3が試みの6週間〜12週間前に投与される場合、阻害は、もはや観察されなかった。
【0174】
本発明者らは、抗原誘導性肺炎症のカニクイザルモデルにおけるMab.20.13.3を評価した(Mauserら 1995)。簡単に言うと、まず、Ascaris suumに天然に感受性の9匹のサルを、ビヒクルで偽処理し(皮下に生理食塩水)、そして18時間後エアロゾル化したAscaris suum(抗原)で試みた。Ascarisの試みの24時間後、BAL流体サンプルを回収し、そして末梢血サンプルを得た。BALおよび血液サンプルの細胞含量を、測定した。
【0175】
3週間後、9匹のサルを、0.3mg/kgのMab20.13.3を皮下に投薬した。18時間後、サルを、エアロゾル化したAscaris suumで試み、そしてBALサンプルを24時間後に回収した。血液サンプルを、Ascaris suumの投与前およびAscaris suum後の選択した時間に取った。そしてAscaris suumの試みを、Mab20.13.3での投薬開始後4および8週間繰り返し、そしてBAL流体中の細胞含量を、Ascarisの試みの前および各Ascarisの試みの24時間後に分析した。Mab20.13.3は、投薬の4週間後、BAL中の好酸球の抗原誘導蓄積を有意に減少し、そして、投薬の8週間後、減少したレベル(55%減少)に傾いた。Mab20.13.3は、投薬の42時間、2週間、4週間、8週間および12週間後、末梢血中の好酸球の数を有意に減少し、レベルは、14週目投薬前レベル付近に戻った。
【0176】
(実施例5:完全なヒト抗IL−5モノクローナル抗体の構造的分析)
本発明に従って産生された抗体の構造を分析するために、本発明者らは、抗IL−5モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ由来の重鎖フラグメントおよび軽鎖フラグメントをコードする核酸をクローン化し、そして配列決定した。本発明者らは、MacVectorおよびGeneworksソフトウェアプログラムを使用して、「V BASE配列ディレクトリ(Tomlinsonら、MRC Center for Protein Engineering,Cambrige,UK)」に対する整列によって全ての配列を分析した。
【0177】
モノクローナル抗体20.13.3をコードするcDNAをクローン化するために、本発明者らは、RNAzol(Tel−Test,INC.)法によって、約1×106ハイブリドーマ細胞由来のRNAを単離した。本発明者らは、オリゴ−dt(18)およびAdvantageTmRT/PCRキット(Clonetech)を使用して、mRNAを逆転写した。本発明者らは、以下のプライマーを使用して、cDNAを増幅した。
【0178】
【表4A】

20.13.3cDNAの軽鎖PCR産物を、1%アガロース/TAEゲル中で電気泳動し、そして約760bpのバンドを切除し、そしてセファガラス(sephaglas)ビーズ(Amersham)で精製し、そしてPCR TOP02.1ベクター(Invitrongen)にサブクローン化した。cDNA挿入物を、染色プライマー配列決定キット(Applied Biosystems)を用いて、vk018−Ecoおよびckp2−Apaプライマーを用いて配列決定した。配列分析を、SeqEdおよびGeneWorksソフトウェアを使用して行った。同定したプラスミドから単離したEcoRI/ApaIフラグメントを、発現ベクターpManuKappaにクローン化した。
【0179】
20.13.3重鎖PCR産物を、EcoRI/NheIで消化し、1%アガロース/TAEゲル中で電気泳動し、そして約435bpのバンドを切除し、そしてセファガラス(Amersham)で精製し、そしてpManuGamma4にサブクローン化した。クローンを染色プライマー配列決定キット(Applied Biosystems)を用いて、v3023−EcoプライマーおよびJh4−Nheプライマーを用いて、配列決定した。
【0180】
各クローンについて、本発明者らは、少なくとも3つの反応物中の両方の鎖での配列決定を確認した。
【0181】
(遺伝子利用分析)
表5は、本発明に従う20.13.3ハイブリドーマによる遺伝子利用を示す。
【0182】
(表5:重鎖および軽鎖の遺伝子利用)
【0183】
【表5】

(変異分析)
理解されるように、遺伝子利用分析は、限定される他の抗体構造の概要のみを提供する。XenoMouseTM動物においてB細胞が、V−D−J重鎖転写物またはV−Jκ軽鎖転写物を確率的に産生する場合、生じる二次プロセスが多数存在し、これらのプロセスとしては限定されないが、体細胞超突然変異(hypermutation)、対細胞性過剰付加(hyperaddition)およびCDR3伸長が挙げられる。例えば、Mendezら、Nature Genetics 15:146−156(1997)および国際特許出願W098/24893(1998年10月11日に出願された)を参照のこと。従って、抗体構造をさらに試験するために、本発明者らは、クローンから得られたcDNA由来の抗体の予測されたアミノ酸配列を生成した。
【0184】
Mab20.13.3の重鎖可変ドメインは、生殖系列と比較して3つのアミノ酸置換(CDR2中に1つおよびCDR3中に2つ)を含む。Mab20.13.3の軽鎖可変ドメインは、生殖系列と比較して5つの変異(CDR1、CDR2、FR3、CDR3およびFR4中に各1つずつ)を含む。
【0185】
多数の上記のアミノ酸置換または挿入が、CDRと密接にまたはCDR内に存在することが理解される。このような置換は、IL−5分子への抗体の結合に対していくらかの効果を与えるようである。さらに、このような置換は、抗体の親和性に対する有意な効果を有し得る。
【0186】
(実施例6:反応速度排除アッセイ(Kinetic Exclusion Assay)による完全ヒト抗IL−5モノクローナル抗体の親和定数(K)の決定)
ヒトモノクローナル抗体20.13.3の平衡解離定数(Kd)を、KinExA3000TM機器(Sapidyne Instruments Inc.)を使用して決定した。KinExAは、抗体、抗原および抗体−抗原複合体の混合物中の複合化していない抗体の濃度を測定することに基づいた反応速度排除アッセイ法の原理を使用する。遊離の抗体の濃度を、非常に短時間に抗原を固定化した固相に、混合物を曝露することによって測定する。実際には、これは、フローセル中にトラップした抗原コート粒子に液相の抗原−抗体混合物を流すことによって達成される。機器によって生成されたデータを、カスタムソフトウェアを使用して分析する。平衡定数を、以下の仮説に基づいて数学的理論を使用して計算する。
【0187】
1. 結合は、平衡の可逆結合式に従う:
on[Ab][Ag]=Koff[Ab Ag];
2. 抗体と抗原は1:1で結合し、そして全抗体は、抗原−抗体複合体+遊離の抗体に等しい;そして
3. 機器のシグナルは、遊離の抗体の濃度に直線的に比例する。
【0188】
全ての実験の手順を、KinExA3000TMマニュアルに従って行った。全てのランは、二連で行った。以下の表は、それぞれ0.1nMおよび0.01nMのAb濃度での標準Kdランのアッセイ条件を示す:
【0189】
【表5A】

各アッセイにおいて、抗原の2倍連続希釈を調製し、そして一定濃度の抗体と混合した。この混合物を、室温にて2時間インキュベートし、平衡化した。
【0190】
上記のアッセイに使用した材料は以下であった:Mab20.13.3;組換えヒトIL_5(rhIL−5)(Sigma(カタログ番号5273)、R & D Systems(カタログ番号205−IL−005)、Amersham(カタログ番号ARM19005)およびCalbiochem(カタログ番号407641)から入手可能);PMMA粒子、8ミクロン(Sapidyne,カタログ番号440198);ニュートラビジン(Neutravidin)(Pierce,カタログ番号31000);EZ−連結TFP PEO−ビオチン(Pierce,カタログ番号21219);ビオチン化rhIL−5(ビオチン/タンパク質比:19/1);およびCy5結合体化ヤギ抗−HuIgG(H+L)(Jackson Immunoresearch Laboratories カタログ番号109−175−003)。PMMA粒子を、Sapidyne「Protocol for coating PMMA particles with biotinylated ligands having short or nonexistent linker arms」に従ってビオチン化したrhIL−5でコーティングした。rhIL−5 EZ−連結TFP PEO−ビオチンのビオチン化は、製造者の勧め(Pierce bulletin 0874)に従って使用した。ビオチン/タンパク質比を、HABAアッセイ(Pierce bulletin 0212)を使用して見積った。
【0191】
「標準モード」2重曲線分析における2重曲線分析(0.1および0.01nM抗体濃度)は、明確な最小値を有するKdの非常に良いフィットカーブを生成した(2重曲線データ分析法(Dual Curve data analysis method)の説明についてKinExA 3000TMマニュアルを参考のこと)。この分析の方法についてのMab20.13.3についての計算されたKd値は、1.5×10−11Mであった。2重曲線(未知の抗原)法によって計算されたMab20.13.3Kdは、1.95×10−11Mであり、これは2重曲線(標準)法によって得られたKdに検出可能に密接している。計算に使用した抗体分子量は、150Kdaであった。
【0192】
反応速度分析は、本発明に従って調製された抗体が、ヒトIL−5に高い親和性を有することを示す。
【0193】
本明細書および特許請求の範囲の全体を通して、用語「含む(comprise)」あるいは「含む(comprises)」または「含むこと(comprising)」は、定められた整数または整数の群の包含だけでなく任意の他の整数または整数の群の排除を意味することが理解される。
【0194】
本明細書に引用される全ての公報および特許出願は、各個々の公表または特許出願が、参考として援用されるように特定してかつ個々に示されるように、本明細書中に参考として援用される。上記の本発明は、理解の明確さの目的にために例示または例の方法によっていくつか詳細に記載されるが、特定の変更および改変が、添付の特許請求の範囲の精神または範囲から逸脱することなく当業者になされ得ることが、本発明の教示により当業者に容易に理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【公開番号】特開2010−11874(P2010−11874A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−243925(P2009−243925)
【出願日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【分割の表示】特願2003−582268(P2003−582268)の分割
【原出願日】平成15年3月27日(2003.3.27)
【出願人】(596129215)シェーリング コーポレイション (785)
【氏名又は名称原語表記】Schering Corporation
【出願人】(501343271)アブジェニックス インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】