説明

インターロイキン−6アンタゴニストを含有する脊髄損傷治療剤

インターロイキン−6アンタゴニストを有効成分とする、脊髄損傷治療剤、神経幹細胞の分化調節剤及びグリア細胞への分化抑制剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明はインターロイキン−6(IL−6)アンタゴニストを有効成分として含有する脊髄損傷治療剤に関する。
【背景技術】
現代社会においては、交通事故、転落・転倒、スポーツ中の事故など、脊髄損傷を受ける機会が多く、我が国における年間受傷者は5000人に及び、累積患者数は10万人達すると言われる。脊髄損傷の症状としては永続的な、四肢運動知覚麻痺、膀胱・直腸障害、呼吸障害など非常に深刻であり、日常的管理として、リハビリテーション、呼吸管理、褥瘡予防、排便・排尿管理、などが行なわれる。
脊髄損傷の治療方法としては、根本的に存在せず、手術を含めての局所安定等の対処療法のみである。症状の増悪を予防する目的で、ステロイドの大量投与が行われているが、麻痺の回復に有効な効果は得られていない。脊髄損傷の多くは、外部からの機械的な作用による損傷(一次損傷)に始まり、体内の反応経路を介して更なる組織破壊(二次損傷)へと進行する。このような2次的な損傷の進行を抑制するために使用される唯一の医薬はメチルプレドニゾロンであり、10000mgに近い大量投与が行われている。しかしながら、この方法においては、糖尿病の急性増悪や肺炎などの副作用が報告されている。
19世紀の初頭に神経解剖学の巨匠Ramon y Cajalがその著書において、「成体哺乳類の中枢神経系(脳と脊髄)は一度損傷を受けると再生しない」と述べて以来、この通説が長く信じられて来た。しかし、1980年代に入り、脊髄損傷に対する末梢神経(A.Aguayo et al.,J.Exp.Bilo.95:231−240,1981)、胎児脊髄移植(Bregman B.S.,Dev.Brain Res.,34:265−279,1987)が報告され、脊髄損傷後であっても損傷部に適切な環境が導入されれば損傷軸索の再生がみられることが示された。また、神経栄養因子が損傷軸索の再生を促進すること(Cai,D.et al.Neuron,22:89−101,1999)や軸索成長阻害因子の同定(Chen,D.et al.Nature,403:434−439,2000)など脊髄再生に関する多数の報告がなされ、損傷脊髄の再生が現実のものとなってきた。しかしながら、胎児脊髄移植はドナー不足と倫理的な問題のため、臨床応用は極めて困難である。
更に、神経幹細胞(Neural stem cell)は、増殖し継代を繰り返すことができる(自己複製能)と同時に、ニューロン、アストロサイト及びオリゴデンドロサイトという中枢神経系を構成する3種類の細胞を作りだすことができる(多分化能)未分化な神経系の細胞であり、成体脊髄にも存在するため損傷後の組織を修復できることも仮定される。しかし、実際にはそれらは損傷後はニューロンへと分化せず、すべてグリア細胞へと分化し瘢痕を形成してしまう。
神経幹細胞の分化誘導に係わるサイトカインの報告が散見される。Weissらは、胎仔マウス線条体由来の神経幹細胞のニューロンへの分化がBDNF(brain−derived neurotrophic factor)により促進されると報告した(Ahmed,S.,et al.,J.Neurosci.,150:5765−5778 1995)。また、Ghoshらは胎仔ラット大脳皮膚由来の神経幹細胞のニューロンへの分化がNT−3(Neurotrophin−3)により促進されることをした(Ghosh,A.,et al.Neuron 15:89−103 1995)。McKayらは胎仔ラット海由来の神経幹細胞の分化が、PDNF(Platelet−derived neurotrophic factor)でニューロンへ、CNTF(Ciliary neutrophic foctor)でアストロサイトへ、甲状腺ホルモン(T3)でオリゴデンドロサイトへとinstructiveに誘導されると報告した(Jone,K.,et al.,Gene & Dev.10:3129−3140 1996)。
更に、近年、多賀らは胎仔マウス神経上皮細胞由来の神経幹細胞のアストロサイトへの分化がLIF(Leukemia inhibitory factor)とBMP−2(Bone morphogenic protein−2)により促進されることを報告した(Nakashima,K.,et al.,Science,284:479−482,1999)。これらの報告の共通点は、CNTF、LIFなどのいわゆるIL−6スーパーファミリーである。即ち、サイトカイン受容体のサブユニットであるgp130を介するシグナルが神経幹細胞をアストロサイトへ分化誘導すると考えられる。
しかしながら、サイトカインによる神経幹細胞の分化誘導により、脊髄損傷が修復可能であることを証する文献は存在しない。
IL−6はB細胞刺激因子2(BSF2)あるいはインターフェロンβ2とも呼称されたサイトカインである。IL−6は、Bリンパ球系細胞の活性化に関与する分化因子として発見され(Hirano,T.et al.,Nature(1986)324,73−76)、その後、種々の細胞の機能に影響を及ぼす多機能サイトカインであることが明らかになった(Akira,S.et al.,Adv.in Immunology(1993)54,1−78)。IL−6は、Tリンパ球系細胞の成熟化を誘導することが報告されている(Lotz,M.et al.,J.Exp.Med.(1988)167,1253−1258)。
IL−6は、細胞上で二種の蛋白質を介してその生物学的活性を伝達する。一つは、IL−6が結合する分子量約80kDのリガンド結合性蛋白質のIL−6受容体である(Taga,T.et al.,J.Exp.Med.(1987)166,967−981,Yamasaki,K.et al.,Science(1987)241,825−828)。IL−6受容体は、細胞膜を貫通して細胞膜上に発現する膜結合型の他に、主にその細胞外領域からなる可溶性IL−6受容体としても存在する。
もう一つは、非リガンド結合性のシグナル伝達に係わる分子量約130kDの膜蛋白質gp130である。IL−6とIL−6受容体はIL−6/IL−6受容体複合体を形成し、次いでgp130と結合することにより、IL−6の生物学的活性が細胞内に伝達される(Taga,T.et al.,Cell(1989)58,573−581)。
IL−6アンタゴニストは、IL−6の生物学的活性の伝達を阻害する物質である。これまでに、IL−6に対する抗体(抗IL−6抗体)、IL−6受容体に対する抗体(抗IL−6受容体抗体)、gp130に対する抗体(抗gp130抗体)、IL−6改変体、IL−6又はIL−6受容体部分ペプチド等が知られている。
抗IL−6受容体抗体に関しては、いくつかの報吉がある(Novick,D.et al.,Hybridoma(1991)10,137−146、Huang,Y.W.et al.,Hybridoma(1993)12,621−630、国際特許出願公開番号WO 95−09873、フランス特許出願公開番号FR 2694767、米国特許番号US 521628)。その一つであるマウス抗体PM−1(Hirata,Y.et al.,J.Immunol.(1989)143,2900−2906)の相捕性決定領域(CDR;complementarity determining region)をヒト抗体へ移植することにより得られたヒト型化PM−1抗体が知られている(国際特許出願公開番号WO 92−19759)。
【特許文献1】WO 95−09873
【特許文献2】FR 2694767
【特許文献3】USP 0521628
【非特許文献1】A.Aguayo et al.,J.Exp.Bilo.95:231−240,1981
【非特許文献2】Bregman B.S.,Dev.Brain Res.,34:265−279,1987
【非特許文献3】Cai,D.et al.Neuron,22:89−101,1999
【非特許文献4】Chen,D.et al.Nature,403:434−439,2000
【非特許文献5】Ahmed,S.,et al.,J.Neurosci.,150:5765−5778 1995
【非特許文献6】Ghosh,A.,et al.Neuron 15:89−103 1995
【非特許文献7】Jone,K.,et al.,Gene & Dev.10:3129−3140 1996
【非特許文献8】Nakashima,K.,et al.,Science,284:479−482,1999
【非特許文献9】Hirano,T.et al.,Nature(1986)324,73−76
【非特許文献10】Akira,S.et al.,Adv.in Immunology(1993)54,1−78
【非特許文献11】Lotz,M.et al.,J.Exp.Med.(1988)167,1253−1258
【非特許文献12】Taga,T.et al.,Cell(1989)58,573−581
【非特許文献13】Yamasaki,K.et al.,Science(1987)241,825−828
【非特許文献14】Novick,D.et al.,Hybridoma(1991)10,137−146
【非特許文献15】Huang,Y.W.et al.,Hybridoma(1993)12,621−630
【非特許文献16】Hirata,Y.et al.,J.Immunol.(1989)143,2900−2906
【発明の開示】
従って、本発明は、脊髄損傷を、その症状の増悪の予防のみならず、回復をもたらす治療手段が求められており、本発明はこの手段として有用な医薬組成物を提供する。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく種々検討した結果、IL−6に対するアゴニスト、例えばIL−6受容体に対する抗体が、脊髄損傷を回復する作用を有することを見出した。従って、本発明は、インターロイキン−6(IL−6)アンタゴニストを有効成分として含んで成る脊髄損傷治療剤を提供する。
本発明はまた、インターロイキン−6(IL−6)アンタゴニストを有効成分として含んで成る神経幹細胞の分化調節剤を提供する。
本発明はさらに、インターロイキン−6(IL−6)アンタゴニストを有効成分として含んで成るグリア細胞への分化抑制剤を提供する。
前記IL−6アンタゴニストとしては、IL−6受容体に対する抗体が好ましく、モノクローナル抗体が特に好ましい。このモノクローナル抗体としては、例えば、ヒトIL−6受容体に対するモノクローナル抗体、及びマウスIL−6受容体に対するモノクローナル抗体が挙げられる。前記ヒトIL−6受容体に対するモノクローナル抗体の具体例としては例えばPM−1抗体が挙げられ、マウスIL−6受容体に対するモノクローナル抗体としては例えばMR16−1抗体が挙げられる。IL−6受容体に対する抗体としては更に、モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマからクローニングした遺伝子を人為的に操作して得られる組換え型抗体、たとえば、キメラ抗体、ヒト型化抗体などが挙げられる。
【図面の簡単な説明】
図1は、下肢運動機能評価において、抗IL−6受容体抗体(MR16)を投与しない脊髄損傷マウス(対照)に比べて、前記抗体を投与した脊髄損傷マウスにおいて、脊髄損傷後の運動の回復が大きいことを示すグラフである。
図2は、ロータロッドトレッドミル試験において、抗IL−6受容体抗体(MR16)を投与しない脊髄損傷マウス(対照)に比べて、前記抗体を投与した脊髄損傷マウスにおいて、脊髄損傷後の運動強調の回復が大きいことを示すグラフである。
図3は、抗IL−6受容体抗体(MR16)を投与しない脊髄損傷マウス(対照)に比べて、前記抗体を投与した脊髄損傷マウスとについて、脊髄損傷部におけるグリアの形成が抑制されることを示すグラフである。
図4は、脊髄損傷のない(シャム)マウスに対比して、脊髄損傷を受けたマウスの脊髄損傷部においてIL−6受容体の発現が行なわれることを示すグラフである。
図5は、抗IL−6受容体抗体(MRA)投与により実際に脊髄損傷部でのIL−6シグナルカスケードが抑制されていることを示すリン酸化STAT3ウエスタンブロット図である。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明で使用されるIL−6アンタゴニストは、脊髄損傷の治療効果を示すものであれば、その由来、種類および形状を問わない。
IL−6アンタゴニストは、IL−6によるシグナル伝達を遮断し、IL−6の生物学的活性を阻害する物質である。IL−6アンタゴニストは、好ましくはIL−6、IL−6受容体及びgp130のいずれかの結合に対する阻害作用を有する物質である。IL−6アンタゴニストとしては、例えば抗IL−6抗体、抗IL−6受容体抗体、抗gp130抗体、IL−6改変体、可溶性IL−6受容体改変体あるいはIL−6又はIL−6受容体の部分ペプチドおよび、これらと同様の活性を示す低分子物質が挙げられる。
本発明で使用される抗IL−6抗体は、公知の手段を用いてポリクローナル又はモノクローナル抗体として得ることができる。本発明で使用される抗IL−6抗体として、特に哺乳動物由来のモノクローナル抗体が好ましい。哺乳動物由来のモノクローナル抗体としては、ハイブリドーマに産生されるもの、および遺伝子工学的手法により抗体遺伝子を含む発現ベクターで形質転換した宿主に産生されるものがある。この抗体はIL−6と結合することにより、IL−6のIL−6受容体への結合を阻害してIL−6の生物学的活性の細胞内への伝達を遮断する。
このような抗体としては、MH166(Matsuda,T.et al.,Eur.J.Immunol.(1988)18,951−956)やSK2抗体(Sato,K.et al.,第21回 日本免疫学会総会、学術記録(1991)21,166)等が挙げられる。
抗IL−6抗体産生ハイブリドーマは、基本的には公知技術を使用し、以下のようにして作製できる。すなわち、IL−6を感作抗原として使用して、これを通常の免疫方法にしたがって免疫し、得られる免疫細胞を通常の細胞融合法によって公知の親細胞と融合させ、通常のスクリーニング法により、モノクローナルな抗体産生細胞をスクリーニングすることによって作製できる。
具体的には、抗IL−6抗体を作製するには次のようにすればよい。例えば、抗体取得の感作抗原として使用されるヒトIL−6は、Eur.J.Biochem(1987)168,543−550、J.Immunol.(1988)140,1534−1541、あるいはAgr.Biol.Chem.(1990)54,2685−2688に開示されたIL−6遺伝子/アミノ酸配列を用いることによって得られる。
IL−6の遺伝子配列を公知の発現ベクター系に挿入して適当な宿主細胞を形質転換させた後、その宿主細胞中又は、培養上清中から目的のIL−6蛋白質を公知の方法で精製し、この精製IL−6蛋白質を感作抗原として用いればよい。また、IL−6蛋白質と他の蛋白質との融合蛋白質を感作抗原として用いてもよい。
本発明で使用される抗IL−6受容体抗体は、公知の手段を用いてポリクローナル又はモノクローナル抗体として得ることができる。本発明で使用される抗IL−6受容体抗体として、特に哺乳動物由来のモノクローナル抗体が好ましい。哺乳動物由来のモノクローナル抗体としては、ハイブリドーマに産生されるもの、および遺伝子工学的手法により抗体遺伝子を含む発現ベクターで形質転換した宿主に産生されるものがある。この抗体はIL−6受容体と結合することにより、IL−6のIL−6受容体への結合を阻害してIL−6の生物学的活性の細胞内への伝達を遮断する。
このような抗体としては、MR16−1抗体(Tamura,T.et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1993)90,11924−11928)、PM−1抗体(Hirata,Y.et al.,J.Immunol.(1989)143,2900−2906)、AUK12−20抗体、AUK64−7抗体あるいはAUK146−15抗体(国際特許出願公開番号WO 92−19759)などが挙げられる。これらのうちで、特に好ましい抗体としてPM−1抗体が挙げられる。
なお、PM−1抗体産生ハイブリドーマ細胞株は、PM−1として、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)に、平成元年7月12日に、FERM BP−2998としてブダペスト条約に基づき国際寄託されている。また、MR16−1抗体産生ハイブリドーマ細胞株は、Rat−mouse hybridoma MR16−1として、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)に、平成9年3月13日に、FERM BP−5875としてブダペスト条約に基づき国際寄託されている。
抗IL−6受容体モノクローナル抗体産生ハイブリドーマは、基本的には公知技術を使用し、以下のようにして作製できる。すなわち、IL−6受容体を感作抗原として使用して、これを通常の免疫方法にしたがって免疫し、得られる免疫細胞を通常の細胞融合法によって公知の親細胞と融合させ、通常のスクリーニング法により、モノクローナルな抗体産生細胞をスクリーニングすることによって作製できる。
具体的には、抗IL−6受容体抗体を作製するには次のようにすればよい。例えば、抗体取得の感作抗原として使用されるヒトIL−6受容体は、欧州特許出願公開番号EP 325474に、マウスIL−6受容体は日本特許出願公開番号特開平3−155795に開示されたIL−6受容体遺伝子/アミノ酸配列を用いることによって得られる。
IL−6受容体蛋白質は、細胞膜上に発現しているものと細胞膜より離脱しているもの(可溶性IL−6受容体)(Yasukawa,K.et al.,J.Biochem.(1990)108,673−676)との二種類がある。可溶性IL−6受容体抗体は細胞膜に結合しているIL−6受容体の実質的に細胞外領域から構成されており、細胞膜貫通領域あるいは細胞膜貫通領域と細胞内領域が欠損している点で膜結合型IL−6受容体と異なっている。IL−6受容体蛋白質は、本発明で用いられる抗IL−6受容体抗体の作製の感作抗原として使用されうる限り、いずれのIL−6受容体を使用してもよい。
IL−6受容体の遺伝子配列を公知の発現ベクター系に挿入して適当な宿主細胞を形質転換させた後、その宿主細胞中又は、培養上清中から目的のIL−6受容体蛋白質を公知の方法で精製し、この精製IL−6受容体蛋白質を感作抗原として用いればよい。また、IL−6受容体を発現している細胞やIL−6受容体蛋白質と他の蛋白質との融合蛋白質を感作抗原として用いてもよい。
ヒトIL−6受容体をコードするcDNAを含むプラスミドpIBIBSF2Rを含有する大腸菌(E.coli)は、平成元年(1989年)1月9日付で独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)に、HB101−pIBIBSF2Rとして、受託番号FERM BP−2232としてブダペスト条約に基づき国際寄託されている。
本発明で使用される抗gp130抗体は、公知の手段を用いてポリクローナル又はモノクローナル抗体として得ることができる。本発明で使用される抗gp130抗体として、特に哺乳動物由来のモノクローナル抗体が好ましい。哺乳動物由来のモノクローナル抗体としては、ハイブリドーマに産生されるもの、および遺伝子工学的手法により抗体遺伝子を含む発現ベクターで形質転換した宿主に産生されるものがある。この抗体はgp130と結合することにより、IL−6/IL−6受容体複合体のgp130への結合を阻害してIL−6の生物学的活性の細胞内への伝達を遮断する。
このような抗体としては、AM64抗体(特開平3−219894)、4B11抗体および2H4抗体(US 5571513)B−S12抗体およびB−P8抗体(特開平8−291199)などが挙げられる。
抗gp130モノクローナル抗体産生ハイブリドーマは、基本的には公知技術を使用し、以下のようにして作製できる。すなわち、gp130を感作抗原として使用して、これを通常の免疫方法にしたがって免疫し、得られる免疫細胞を通常の細胞融合法によって公知の親細胞と融合させ、通常のスクリーニング法により、モノクローナル抗体産生細胞をスクリーニングすることによって作製できる。
具体的には、モノクローナル抗体を作製するには次のようにすればよい。例えば、抗体取得の感作抗原として使用されるgp130は、欧州特許出願公開番号EP 411946に開示されたgp130遺伝子/アミノ酸配列を用いることによって得られる。
gp130の遺伝子配列を公知の発現ベクター系に挿入して適当な宿主細胞を形質転換させた後、その宿主細胞中又は、培養上清中から目的のgp130蛋白質を公知の方法で精製し、この精製gp130受容体蛋白質を感作抗原として用いればよい。また、gp130を発現している細胞やgp130蛋白質と他の蛋白質との融合蛋白質を感作抗原として用いてもよい。
感作抗原で免疫される哺乳動物としては、特に限定されるものではないが、細胞融合に使用する親細胞との適合性を考慮して選択するのが好ましく、一般的にはげっ歯類の動物、例えば、マウス、ラット、ハムスター等が使用される。
感作抗原を動物に免疫するには、公知の方法にしたがって行われる。例えば、一般的方法として、感作抗原を哺乳動物の腹腔内又は、皮下に注射することにより行われる。具体的には、感作抗原をPBS(Phosphate−Buffered Saline)や生理食塩水等で適当量に希釈、懸濁したものを所望により通常のアジュバント、例えば、フロイント完全アジュバントを適量混合し、乳化後、哺乳動物に4−21日毎に数回投与するのが好ましい。また、感作抗原免疫時に適当な担体を使用することができる。
このように免疫し、血清中に所望の抗体レベルが上昇するのを確認した後に、哺乳動物から免疫細胞が取り出され、細胞融合に付される。細胞融合に付される好ましい免疫細胞としては、特に脾細胞が挙げられる。
前記免疫細胞と融合される他方の親細胞としての哺乳動物のミエローマ細胞は、すでに、公知の種々の細胞株、例えば、P3X63Ag8.653(Kearney,J.F.et al.J.Immnol.(1979)123,1548−1550)、P3X63Ag8U.1(Current Topics in Microbiology and Immunology(1978)81,1−7)、NS−1(Kohler.G.and Milstein,C.Eur.J.Immunol.(1976)6,511−519)、MPC−11(Margulies.D.H.et al.,Cell(1976)8,405−415)、SP2/0(Shulman,M.et al.,Nature(1978)276,269−270)、F0(de St.Groth,S.F.et al.,J.Immunol.Methods(1980)35,1−21)、S194(Trowbridge,I.S.J.Exp.Med.(1978)148,313−323)、R210(Galfre,G.et al.,Nature(1979)277,131−133)等が適宜使用される。
前記免疫細胞とミエローマ細胞の細胞融合は基本的には公知の方法、たとえば、ミルステインらの方法(Kohler.G.and Milstein,C.、Methods Enzymol.(1981)73,3−46)等に準じて行うことができる。
より具体的には、前記細胞融合は例えば、細胞融合促進剤の存在下に通常の栄養培養液中で実施される。融合促進剤としては例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、センダイウィルス(HVJ)等が使用され、更に所望により融合効率を高めるためにジメチルスルホキシド等の補助剤を添加使用することもできる。
免疫細胞とミエローマ細胞との使用割合は、例えば、ミエローマ細胞に対して免疫細胞を1〜10倍とするのが好ましい。前記細胞融合に用いる培養液としては、例えば、前記ミエローマ細胞株の増殖に好適なRPMI1640培養液、MEM培養液、その他、この種の細胞培養に用いられる通常の培養液が使用可能であり、さらに、牛胎児血清(FCS)等の血清補液を併用することもできる。
細胞融合は、前記免疫細胞とミエローマ細胞との所定量を前記培養液中でよく混合し、予め、37℃程度に加温したPEG溶液、例えば、平均分子量1000〜6000程度のPEG溶液を通常、30〜60%(w/v)の濃度で添加し、混合することによって目的とする融合細胞(ハイブリドーマ)が形成される。続いて、適当な培養液を逐次添加し、遠心して上清を除去する操作を繰り返すことによりハイブリドーマの生育に好ましくない細胞融合剤等を除去できる。
当該ハイブリドーマは、通常の選択培養液、例えば、HAT培養液(ヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジンを含む培養液)で培養することにより選択される。当該HAT培養液での培養は、目的とするハイブリドーマ以外の細胞(非融合細胞)が死滅するのに十分な時間、通常数日〜数週間継続する。ついで、通常の限界希釈法を実施し、目的とする抗体を産生するハイブリドーマのスクリーニングおよびクローニングが行われる。
また、ヒト以外の動物に抗原を免疫して上記ハイブリドーマを得る他に、ヒトリンパ球をin vitroで所望の抗原蛋白質又は抗原発現細胞で感作し、感作Bリンパ球をヒトミエローマ細胞、例えばU266と融合させ、所望の抗原又は抗原発現細胞への結合活性を有する所望のヒト抗体を得ることもできる(特公平1−59878参照)。さらに、ヒト抗体遺伝子のレパートリーを有するトランスジェニック動物に抗原又は抗原発現細胞を投与し、前述の方法に従い所望のヒト抗体を取得してもよい(国際特許出願公開番号WO 93/12227、WO 92/03918、WO 94/02602、WO 94/25585、WO 96/34096、WO 96/33735参照)。
このようにして作製されるモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、通常の培養液中で継代培養することが可能であり、また、液体窒素中で長期保存することが可能である。
当該ハイブリドーマからモノクローナル抗体を取得するには、当該ハイブリドーマを通常の方法にしたがい培養し、その培養上清として得る方法、あるいはハイブリドーマをこれと適合性がある哺乳動物に投与して増殖させ、その腹水として得る方法などが採用される。前者の方法は、高純度の抗体を得るのに適しており、一方、後者の方法は、抗体の大量生産に適している。
例えば、抗IL−6受容体抗体産生ハイブリドーマの作製は、特開平3−139293に開示された方法により行うことができる。独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)に、平成元年7月12日に、FERM BP−2998としてブタペスト条約に基づき国際寄託されたPM−1抗体産生ハイブリドーマをBALB/cマウスの腹腔内に注入して腹水を得、この腹水からPM−1抗体を精製する方法や、本ハイブリドーマを適当な培地、例えば、10%ウシ胎児血清、5%BM−Condimed H1(Boehringer Mannheim製)含有RPMI1640培地、ハイブリドーマSFM培地(GIBCO−BRL製)、PFHM−II培地(GIBCO−BRL製)等で培養し、その培養上清からPM−1抗体を精製する方法で行うことができる。
本発明には、モノクローナル抗体として、抗体遺伝子をハイブリドーマからクローニングし、適当なベクターに組み込んで、これを宿主に導入し、遺伝子組換え技術を用いて産生させた組換え型抗体を用いることができる(例えば、Borrebaeck C.A.K.and Larrick J.W.THERAPEUTIC MONOCLONAL ANTIBODIES,Published in the United Kingdom by MACMILLAN PUBLISHERS LTD,1990参照)。
具体的には、目的とする抗体を産生する細胞、例えばハイブリドーマから、抗体の可変(V)領域をコードするmRNAを単離する。mRNAの単離は、公知の方法、例えば、グアニジン超遠心法(Chirgwin,J.M.et al.,Biochemistry(1979)18,5294−5299)、AGPC法(Chomczynski,P.et al.,Anal.Biochem.(1987)162,156−159)等により全RNAを調製し、mRNA Purification Kit(Pharmacia製)等を使用してmRNAを調製する。また、QuickPrep mRNA Purification Kit(Pharmacia製)を用いることによりmRNAを直接調製することができる。
得られたmRNAから逆転写酵素を用いて抗体V領域のcDNAを合成する。cDNAの合成は、AMV Reverse Transcriptase First−strand cDNA Synthesis Kit等を用いて行うことができる。また、cDNAの合成および増幅を行うには5’−Ampli FINDER RACE Kit(Clontech製)およびPCRを用いた5’−RACE法(Frohman,M.A.et al.,Proc.Natl.Acad Sci.USA(1988)85,8998−9002;Belyavsky,A.et al.,Nucleic Acids Res.(1989)17,2919−2932)を使用することができる。得られたPCR産物から目的とするDNA断片を精製し、ベクターDNAと連結する。さらに、これより組換えベクターを作成し、大腸菌等に導入してコロニーを選択して所望の組換えベクターを調製する。目的とするDNAの塩基配列を公知の方法、例えば、デオキシ法により確認する。
目的とする抗体のV領域をコードするDNAが得られれば、これを所望の抗体定常領域(C領域)をコードするDNAと連結し、これを発現ベクターへ組み込む。又は、抗体のV領域をコードするDNAを、抗体C領域のDNAを含む発現ベクターへ組み込んでもよい。
本発明で使用される抗体を製造するには、後述のように抗体遺伝子を発現制御領域、例えば、エンハンサー、プロモーターの制御のもとで発現するよう発現ベクターに組み込む。次に、この発現ベクターにより宿主細胞を形質転換し、抗体を発現させることができる。
本発明では、ヒトに対する異種抗原性を低下させること等を目的として人為的に改変した遺伝子組換え型抗体、例えば、キメラ(Chimeric)抗体、ヒト型化(Humanized)抗体、ヒト(human)抗体を使用できる。これらの改変抗体は、既知の方法を用いて製造することができる。
キメラ抗体は、前記のようにして得た抗体V領域をコードするDNAをヒト抗体C領域をコードするDNAと連結し、これを発現ベクターに組み込んで宿主に導入し産生させることにより得られる(欧州特許出願公開番号EP 125023、国際特許出願公開番号WO 92−19759参照)。この既知の方法を用いて、本発明に有用なキメラ抗体を得ることができる。
例えば、キメラPM−1抗体のL鎖およびH鎖のV領域をコードするDNAを含むプラスミドは、各々pPM−k3およびpPM−h1と命名され、このプラスミドを有する大腸菌は、National Collections of Industrial and Marine Bacteria Limited(グレートブリテン及び北部アイルランド連合王国 スコットランド アバディーン AB2 1RY マックハードライブ通り 23)に、1991年2月12日に、各々NCIMB40366及びNCIMB40362としてブダペスト条約に基づき国際寄託されている。
ヒト型化抗体は、再構成(reshaped)ヒト抗体とも称され、ヒト以外の哺乳動物、例えばマウス抗体の相補性決定領域(CDR)をヒト抗体の相補性決定領域へ移植したものであり、その一般的な遺伝子組換え手法も知られている(欧州特許出願公開番号EP125023、国際特許出願公開番号WO 92−19759参照)。
具体的には、マウス抗体のCDRとヒト抗体のフレームワーク領域(FR;framework region)を連結するように設計したDNA配列を、末端部にオーバーラップする部分を有するように作製した数個のオリゴヌクレオチドからPCR法により合成する。得られたDNAをヒト抗体C領域をコードするDNAと連結し、次いで発現ベクターに組み込んで、これを宿主に導入し産生させることにより得られる(欧州特許出願公開番号EP239400、国際特許出願公開番号WO 92−19759参照)。
CDRを介して連結されるヒト抗体のFRは、相補性決定領域が良好な抗原結合部位を形成するものが選択される。必要に応じ、再構成ヒト抗体の相補性決定領域が適切な抗原結合部位を形成するように抗体の可変領域のフレームワーク領域のアミノ酸を置換してもよい(Sato,K.et al.,Cancer Res.(1993)53,851−856)。
キメラ抗体、ヒト型化抗体には、ヒト抗体C領域が使用される。ヒト抗体C領域としては、Cγが挙げられ、例えば、Cγ1、Cγ2、Cγ3又はCγ4を使用することができる。また、抗体又はその産生の安定性を改善するために、ヒト抗体C領域を修飾してもよい。
キメラ抗体はヒト以外の哺乳動物由来抗体の可変領域とヒト抗体由来のC領域からなり、ヒト型化抗体はヒト以外の哺乳動物由来抗体の相補性決定領域とヒト抗体由来のフレームワーク領域およびC領域からなり、ヒト体内における抗原性が低下しているため、本発明に使用される抗体として有用である。
本発明に使用されるヒト型化抗体の好ましい具体例としては、ヒト型化PM−1抗体が挙げられる(国際特許出願公開番号WO 92−19759参照)。
また、ヒト抗体の取得方法としては先に述べた方法のほか、ヒト抗体ライブラリーを用いて、パンニングによりヒト抗体を取得する技術も知られている。例えば、ヒト抗体の可変領域を一本鎖抗体(scFv)としてファージディスプレイ法によりファージの表面に発現させ、抗原に結合するファージを選択することもできる。選択されたファージの遺伝子を解析すれば、抗原に結合するヒト抗体の可変領域をコードするDNA配列を決定することができる。抗原に結合するscFvのDNA配列が明らかになれば、当該配列を適当な発現ベクターを作製し、ヒト抗体を取得することができる。これらの方法は既に衆知であり、WO 92/01047,WO 92/20791,WO 93/06213,WO 93/11236,WO 93/19172,WO 95/01438,WO 95/15388を参考にすることができる。
前記のように構築した抗体遺伝子は、公知の方法により発現させ、取得することができる。哺乳類細胞の場合、常用される有用なプロモーター、発現される抗体遺伝子、その3’側下流にポリAシグナルを機能的に結合させたDNAあるいはそれを含むベクターにより発現させることができる。例えばプロモーター/エンハンサーとしては、ヒトサイトメガロウィルス前期プロモーター/エンハンサー(human Cytomegalovirus immediate early promoter/enhancer)を挙げることができる。
また、その他に本発明で使用される抗体発現に使用できるプロモーター/エンハンサーとして、レトロウィルス、ポリオーマウィルス、アデノウィルス、シミアンウィルス40(SV 40)等のウィルスプロモーター/エンハンサーやヒトエロンゲーションファクター1α(HEF1α)などの哺乳類細胞由来のプロモーター/エンハンサーを用いればよい。
例えば、SV 40プロモーター/エンハンサーを使用する場合、Mulliganらの方法(Mulligan,R.C.et al.,Nature(1979)277,108−114)、また、HEF1αロモーター/エンハンサーを使用する場合、Mizushimaらの方法(Mizushima,S.and Nagata,S.Nucleic Acids Res.(1990)18,5322)に従えば容易に実施することができる。
大腸菌の場合、常用される有用なプロモーター、抗体分泌のためのシグナル配列、発現させる抗体遺伝子を機能的に結合させて発現させることができる。例えばプロモーターとしては、lacZプロモーター、araBプロモーターを挙げることができる。lacZプロモーターを使用する場合、Wardらの方法(Ward,E.S.et al.,Nature(1989)341,544−546;Ward,E.S.et al.FASEB J.(1992)6,2422−2427)、araBプロモーターを使用する場合、Betterらの方法(Better,M.et al.Science(1988)240,1041−1043)に従えばよい。
抗体分泌のためのシグナル配列としては、大腸菌のペリプラズムに産生させる場合、pelBシグナル配列(Lei,S.P.et al J.Bacteriol.(1987)169,4379−4383)を使用すればよい。ペリプラズムに産生された抗体を分離した後、抗体の構造を適切にリフォールド(refold)して使用する(例えば、WO96/30394を参照)。
複製起源としては、SV 40、ポリオーマウィルス、アデノウィルス、ウシパピローマウィルス(BPV)等の由来のものを用いることができ、さらに、宿主細胞系で遺伝子コピー数増幅のため、発現ベクターは選択マーカーとして、アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ(APH)遺伝子、チミジンキナーゼ(TK)遺伝子、大腸菌キサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Ecogpt)遺伝子、ジヒドロ葉酸還元酵素(dhfr)遺伝子等を含むことができる。
本発明で使用される抗体の製造のために、任意の産生系を使用することができる。抗体製造のための産生系は、in vitroおよびin vivoの産生系がある。in vitroの産生系としては、真核細胞を使用する産生系や原核細胞を使用する産生系が挙げられる。
真核細胞を使用する場合、動物細胞、植物細胞、又は真菌細胞を用いる産生系がある。動物細胞としては、(1)哺乳類細胞、例えば、CHO、COS、ミエローマ、BHK(baby hamster kidney)、HeLa、Veroなど、(2)両生類細胞、例えば、アフリカツメガエル卵母細胞、あるいは(3)昆虫細胞、例えば、sf9、sf21、Tn5などが知られている。植物細胞としては、ニコチアナ・タバクム(Nicotiana tabacum)由来の細胞が知られており、これをカルス培養すればよい。真菌細胞としては、酵母、例えば、サッカロミセス(saccharomyces)属、例えばサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、糸状菌、例えばアスペルギルス属(Aspergillus)属、例えばアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)などが知られている。
原核細胞を使用する場合、細菌細胞を用いる産生系がある。細菌細胞としては、大腸菌(E.coli)、枯草菌が知られている。
これらの細胞に、目的とする抗体遺伝子を形質転換により導入し、形質転換された細胞をin vitroで培養することにより抗体が得られる。培養は、公知の方法に従い行う。例えば、培養液として、DMEM、MEM、RPMI1640、IMDMを使用することができ、牛胎児血清(FCS)等の血清補液を併用することもできる。また、抗体遺伝子を導入した細胞を動物の腹腔等へ移すことにより、in vivoにて抗体を産生してもよい。
一方、in vivoの産生系としては、動物を使用する産生系や植物を使用する産生系が挙げられる。動物を使用する場合、哺乳類動物、昆虫を用いる産生系などがある。
哺乳類動物としては、ヤギ、ブタ、ヒツジ、マウス、ウシなどを用いることができる(Vicki Glaser,SPECTRUM Biotechnology Applications,1993)。また、昆虫としては、カイコを用いることができる。植物を使用する場合、例えばタバコを用いることができる。
これらの動物又は植物に抗体遺伝子を導入し、動物又は植物の体内で抗体を産生させ、回収する。例えば、抗体遺伝子をヤギβカゼインのような乳汁中に固有に産生される蛋白質をコードする遺伝子の途中に挿入して融合遺伝子として調製する。抗体遺伝子が挿入された融合遺伝子を含むDNA断片をヤギの胚へ注入し、この胚を雌のヤギへ導入する。胚を受容したヤギから生まれるトランスジェニックヤギ又はその子孫が産生する乳汁から所望の抗体を得る。トランスジェニックヤギから産生される所望の抗体を含む乳汁量を増加させるために、適宜ホルモンをトランスジェニックヤギに使用してもよい。(Ebert,K.M.et al.,Bio/Technology(1994)12,699−702)。
また、カイコを用いる場合、目的の抗体遺伝子を挿入したバキュロウィルスをカイコに感染させ、このカイコの体液より所望の抗体を得る(Maeda,S.et al.,Nature(1985)315,592−594)。さらに、タバコを用いる場合、目的の抗体遺伝子を植物発現用ベクター、例えばpMON 530に挿入し、このベクターをAgrobacterium tumefaciensのようなバクテリアに導入する。このバクテリアをタバコ、例えばNicotiana tabacumに感染させ、本タバコの葉より所望の抗体を得る(Julian,K.−C.Ma et al.,Eur.J.Immunol.(1994)24,131−138)。
上述のようにin vitro又はin vivoの産生系にて抗体を産生する場合、抗体重鎖(H鎖)又は軽鎖(L鎖)をコードするDNAを別々に発現ベクターに組み込んで宿主を同時形質転換させてもよいし、あるいはH鎖およびL鎖をコードするDNAを単一の発現ベクターに組み込んで、宿主を形質転換させてもよい(国際特許出願公開番号WO 94−11523参照)。
本発明で使用される抗体は、本発明に好適に使用され得るかぎり、抗体の断片やその修飾物であってよい。例えば、抗体の断片としては、Fab、F(ab’)2、Fv又はH鎖とL鎖のFvを適当なリンカーで連結させたシングルチェインFv(scFv)が挙げられる。
具体的には、抗体を酵素、例えば、パパイン、ペプシンで処理し抗体断片を生成させるか、又は、これら抗体断片をコードする遺伝子を構築し、これを発現ベクターに導入した後、適当な宿主細胞で発現させる(例えば、Co,M.S.et al.,J.Immunol.(1994)152,2968−2976、Better,M.& Horwitz,A.H.Methods in Enzymology(1989)178,476−496、Plueckthun,A.& Skerra,A.Methods in Enzymology(1989)178,476−496、Lamoyi,E.,Methods in Enzymology(1989)121,652−663、Rousseaux,J.et al.,Methods in Enzymology(1989)121,663−66、Bird,R.E.et al.,TIBTECH(1991)9,132−137参照)。
scFvは、抗体のH鎖V領域とL鎖V領域を連結することにより得られる。このscFvにおいて、H鎖V領域とL鎖V領域はリンカー、好ましくは、ペプチドリンカーを介して連結される(Huston,J.S.et al.、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.(1988)85,5879−5883)。scFvにおけるH鎖V領域およびL鎖V領域は、上記抗体として記載されたもののいずれの由来であってもよい。V領域を連結するペプチドリンカーとしては、例えばアミノ酸12−19残基からなる任意の一本鎖ペプチドが用いられる。
scFvをコードするDNAは、前記抗体のH鎖又は、H鎖V領域をコードするDNA、およびL鎖又は、L鎖V領域をコードするDNAを鋳型とし、それらの配列のうちの所望のアミノ酸配列をコードするDNA部分を、その両端を規定するプライマー対を用いてPCR法により増幅し、次いで、さらにペプチドリンカー部分をコードするDNAおよびその両端を各々H鎖、L鎖と連結されるように規定するプライマー対を組み合せて増幅することにより得られる。
また、一旦scFvをコードするDNAが作製されれば、それらを含有する発現ベクター、および該発現ベクターにより形質転換された宿主を常法に従って得ることができ、また、その宿主を用いて常法に従って、scFvを得ることができる。
これら抗体の断片は、前記と同様にしてその遺伝子を取得し発現させ、宿主により産生させることができる。本発明でいう「抗体」にはこれらの抗体の断片も包含される。
抗体の修飾物として、ポリエチレングリコール(PEG)等の各種分子と結合した抗体を使用することもできる。本発明でいう「抗体」にはこれらの抗体修飾物も包含される。このような抗体修飾物を得るには、得られた抗体に化学的な修飾を施すことによって得ることができる。これらの方法はこの分野においてすでに確立されている。
前記のように産生、発現された抗体は、細胞内外、宿主から分離し均一にまで精製することができる。本発明で使用される抗体の分離、精製はアフィニティークロマトグラフィーにより行うことができる。アフィニティークロマトグラフィーに用いるカラムとしては、例えば、プロテインAカラム、プロテインGカラムが挙げられる。プロテインAカラムに用いる担体として、例えば、Hyper D、POROS、Sepharose F.F.等が挙げられる。その他、通常のタンパク質で使用されている分離、精製方法を使用すればよく、何ら限定されるものではない。
例えば、上記アフィニティークロマトグラフィー以外のクロマトグラフィー、フィルター、限外濾過、塩析、透析等を適宜選択、組み合わせれば、本発明で使用される抗体を分離、精製することができる。クロマトグラフィーとしては、例えば、イオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、ゲルろ過等が挙げられる。これらのクロマトグラフィーはHPLC(High performance liquid chromatography)に適用し得る。また、逆相HPLC(reverse phase HPLC)を用いてもよい。
上記で得られた抗体の濃度測定は吸光度の測定又はELISA等により行うことができる。すなわち、吸光度の測定による場合には、PBS(−)で適当に希釈した後、280nmの吸光度を測定し、1mg/mlを1.35 ODとして算出する。また、ELISAによる場合は以下のように測定することができる。すなわち、0.1M重炭酸緩衝液(pH9.6)で1μg/mlに希釈したヤギ抗ヒトIgG(TAG製)100μlを96穴プレート(Nunc製)に加え、4℃で一晩インキュベーションし、抗体を固相化する。ブロッキングの後、適宜希釈した本発明で使用される抗体又は抗体を含むサンプル、あるいは標品としてヒトIgG(CAPPEL製)100μlを添加し、室温にて1時間インキュベーションする。
洗浄後、5000倍希釈したアルカリフォスファターゼ標識抗ヒトIgG(BIO SOURCE製)100μlを加え、室温にて1時間インキュベートする。洗浄後、基質溶液を加えインキュベーションの後、MICROPLATE READER Model 3550(Bio−Rad製)を用いて405nmでの吸光度を測定し、目的の抗体の濃度を算出する。
本発明で使用されるIL−6改変体は、IL−6受容体との結合活性を有し、且つIL−6の生物学的活性を伝達しない物質である。即ち、IL−6改変体はIL−6受容体に対しIL−6と競合的に結合するが、IL−6の生物学的活性を伝達しないため、IL−6によるシグナル伝達を遮断する。
IL−6改変体は、IL−6のアミノ酸配列のアミノ酸残基を置換することにより変異を導入して作製される。IL−6改変体のもととなるIL−6はその由来を問わないが、抗原性等を考慮すれば、好ましくはヒトIL−6である。
具体的には、IL−6のアミノ酸配列を公知の分子モデリングプログラム、たとえば、WHATIF(Vriend et al.,J.Mol.Graphics(1990)8,52−56)を用いてその二次構造を予測し、さらに置換されるアミノ酸残基の全体に及ぼす影響を評価することにより行われる。
適切な置換アミノ酸残基を決定した後、ヒトIL−6遺伝子をコードする塩基配列を含むベクターを鋳型として、通常行われるPCR法によりアミノ酸が置換されるように変異を導入することにより、IL−6改変体をコードする遺伝子が得られる。これを必要に応じて適当な発現ベクターに組み込み、前記組換え型抗体の発現、産生及び精製方法に準じてIL−6改変体を得ることができる。
IL−6改変体の具体例としては、Brakenhoff et al.,J.Biol.Chem.(1994)269,86−93、及びSavino et al.,EMBO J.(1994)13,1357−1367、WO 96−18648、WO96−17869に開示されている。
本発明で使用されるIL−6部分ペプチド又はIL−6受容体部分ペプチドは、各々IL−6受容体あるいはIL−6との結合活性を有し、且つIL−6の生物学的活性を伝達しない物質である。即ち、IL−6部分ペプチド又はIL−6受容体部分ペプチドはIL−6受容体又はIL−6に結合し、これらを捕捉することによりIL−6のIL−6受容体への結合を特異的に阻害する。その結果、IL−6の生物学的活性を伝達しないため、IL−6によるシグナル伝達を遮断する。
IL−6部分ペプチド又はIL−6受容体部分ペプチドは、IL−6又はIL−6受容体のアミノ酸配列においてIL−6とIL−6受容体との結合に係わる領域の一部又は全部のアミノ酸配列からなるペプチドである。このようなペプチドは、通常10〜80、好ましくは20〜50、より好ましくは20〜40個のアミノ酸残基からなる。
IL−6部分ペプチド又はIL−6受容体部分ペプチドは、IL−6又はIL−6受容体のアミノ酸配列において、IL−6とIL−6受容体との結合に係わる領域を特定し、その一部又は全部のアミノ酸配列を通常知られる方法、例えば遺伝子工学的手法又はペプチド合成法により作製することができる。
IL−6部分ペプチド又はIL−6受容体部分ペプチドを遺伝子工学的手法により作製するには、所望のペプチドをコードするDNA配列を発現ベクターに組み込み、前記組換え型抗体の発現、産生及び精製方法に準じて得ることができる。
IL−6部分ペプチド又はIL−6受容体部分ペプチドをペプチド合成法により作製するには、ペプチド合成において通常用いられている方法、例えば固相合成法又は液相合成法を用いることができる。
具体的には、続医薬品の開発第14巻ペプチド合成 監修矢島治明廣川書店1991年に記載の方法に準じて行えばよい。固相合成法としては、例えば有機溶媒に不溶性である支持体に合成しようとするペプチドのC末端に対応するアミノ酸を結合させ、α−アミノ基及び側鎖官能基を適切な保護基で保護したアミノ酸をC末端からN末端方向の順番に1アミノ酸ずつ縮合させる反応と樹脂上に結合したアミノ酸又はペプチドのα−アミノ基の該保護基を脱離させる反応を交互に繰り返すことにより、ペプチド鎖を伸長させる方法が用いられる。固相ペプチド合成法は、用いられる保護基の種類によりBoc法とFmoc法に大別される。
このようにして目的とするペプチドを合成した後、脱保護反応及びペプチド鎖の支持体からの切断反応をする。ペプチド鎖との切断反応には、Boc法ではフッ化水素又はトリフルオロメタンスルホン酸を、又Fmoc法ではTFAを通常用いることができる。Boc法では、例えばフッ化水素中で上記保護ペプチド樹脂をアニソール存在下で処理する。次いで、保護基の脱離と支持体からの切断をしペプチドを回収する。これを凍結乾燥することにより、粗ペプチドが得られる。一方、Fmoc法では、例えばTFA中で上記と同様の操作で脱保護反応及びペプチド鎖の支持体からの切断反応を行うことができる。
得られた粗ペプチドは、HPLCに適用することにより分離、精製することができる。その溶出にあたり、蛋白質の精製に通常用いられる水−アセトニトリル系溶媒を使用して最適条件下で行えばよい。得られたクロマトグラフィーのプロファイルのピークに該当する画分を分取し、これを凍結乾燥する。このようにして精製したペプチド画分について、マススペクトル分析による分子量解析、アミノ酸組成分析、又はアミノ酸配列解析等により同定する。
IL−6部分ペプチド及びIL−6受容体部分ペプチドの具体例は、特開平2−188600、特開平7−324097、特開平8−311098及び米国特許公報US5210075に開示されている。
本発明で使用されるIL−6アンタゴニストのIL−6シグナル伝達阻害活性は、通常用いられる方法により評価することができる。具体的には、IL−6依存性ヒト骨髄腫株(S6B45,KPMM2)、ヒトレンネルトTリンパ腫細胞株KT3、あるいはIL−6依存性細胞MH60.BSF2を培養し、これにIL−6を添加し、同時にIL−6アンタゴニストを共存させることによりIL−6依存性細胞のH−チミジン取込みを測定すればよい。また、IL−6受容体発現細胞であるU266を培養し、125I標識IL−6を添加し、同時にIL−6アンタゴニストを加えることにより、IL−6受容体発現細胞に結合した125I標識IL−6を測定する。上記アッセイ系において、IL−6アンタゴニストを存在させる群に加えIL−6アンタゴニストを含まない陰性コントロール群をおき、両者で得られた結果を比較すればIL−6アンタゴニストのIL−6阻害活性を評価することができる。
後述の実施例に示されるように、抗IL−6受容体抗体の投与により、脊髄損傷患者において、治療効果が認められた。本発明における治療対象は哺乳動物である。治療対象の哺乳動物は、好ましくはヒトである。
本発明の脊髄損傷治療剤は、経口的にまたは非経口的に全身あるいは局所的に投与することができる。例えば、点滴などの静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、皮下注射、坐薬、注腸、経口性腸溶剤などを選択することができ、患者の年齢、症状により適宜投与方法を選択することができる。
有効投与量は、一回につき体重1kgあたり0.01mgから100mgの範囲で選ばれる。あるいは、患者あたり1〜1000mg、好ましくは5〜50mgの投与量を選ぶことができる。好ましい投与量、投与方法は、たとえば抗IL−6レセプター抗体の場合には、血中にフリーの抗体が存在する程度の量が有効投与量であり、具体的な例としては、体重1kgあたり1ヶ月(4週間)に0.5mgから40mg、好ましくは1mgから20mgを1回から数回に分けて、例えば2回/週、1回/週、1回/2週、1回/4週などの投与スケジュールで点滴などの静脈内注射、皮下注射などの方法で、投与する方法などである。投与スケジュールは、病状の観察および血液検査値の動向を観察しながら2回/週あるいは1回/週から1回/2週、1回/3週、1回/4週のように投与間隔を延ばしていくなど調整することも可能である。
本発明の脊髄損傷治療剤は、投与経路次第で医薬的に許容される担体や添加物を共に含むものであってもよい。このような担体および添加物の例として、水、医薬的に許容される有機溶媒、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、エチルセルロース、キサンタンガム、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチン、寒天、ジグリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン(HSA)、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、医薬添加物として許容される界面活性剤などが挙げられる。使用される添加物は、剤型に応じて上記の中から適宜あるいは組合せて選択されるが、これらに限定されるものではない。
【実施例】
以下、実施例および参考例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例1]
材料及び方法
動物:
成体(18〜22g)雌C57BL/6Jマウスを、すべての実験グループに使用した。
脊髄損傷:
雌マウスを、ケタミン(100mg/kg)及びキシラジン(10mg/kg)の腹腔内注射により麻酔した。背部を毛剃し、20mmの中線皮膚切開を行い、次に脊柱を露出した。脊柱胸部領域を背面筋肉の側面への分離により露出した後、T7−T13椎骨の棘突起を露出した。椎弓切除を第9胸椎レベルで行い、硬膜を損なわないよう注意しながら脊髄を露出させた。脊柱を、T7及びT11棘突起及び靭帯上で鉗子及びクランプにより安定化し、さらに台座を下げ体を浮かせた後NYU Impactorにより脊髄損傷(SCI)を作成した。3gの重量(直径で1.2mmの先端)を、T9レベルの脊髄へ25mmの高さから落下させた。筋肉及び切開部を層状に閉じ、そして動物を熱調節が再確立されるまで、温度調節されたチャンバーに置いた。手動膀胱圧出による排尿を自然排尿が確立されるまで、一日に2度ずつ行った。
実験計画及びラット抗−マウスIL−6受容体mAb(MR16−1)の注入:
損傷直後にマウス体重1gあたり100μgのMR16−1の単回腹腔内注入を行い(MR16−1グループ、n=15)、コントロール群には同量のラットIg−Gの腹腔内注入を行った(対照グループ、n=15)。両グループにおける組織学的及び免疫組織学的分析に関しては、分裂する細胞をラベルするためにBrdU(50mg/kg体重)の腹腔内注入を手術された日から2週間行った。
運動機能評価:
本発明者は、3種の異なった試験を用いて、損傷を受けた後の運動機能の回復性を評価した。機能評価は損傷後6週目まで続けた。
下肢運動機能評価:SCIの機能的効果を評価するために、本発明者は、一般的に広く用いられているBasso−Beattie−Bresnahan(BBB)スコアで運動機能評価を行った。3人の異なる検者が4分間にわたって個々の動物をダブルブラインドに評価し、個々の下肢機能について定義された評点(0〜21)を与えた。すべての試験はビデオテープに記録された。
SCANET:SCANETは、赤外線センサーフレームを備えたケージから成る自動動物移動分析システムであり、これにより、小さな(M1)及び大きな(M2)水平の移動及び垂直移動(RG)、つまり立ち上がり回数がモニターされ、一定時間内に動物が自発的に行った運動量が定量される。特に、RG評点とBBB尺度評点との間に統計学的に正の相互関係が存在するといわれる。
ロータロッドトレッドミル(Rota rod tredmill):四肢協調運動を、プラスチックロッドからなる回転ロッド装置上にマウスをのせ、強制歩行させることにより評価した。5,10及び15rpmの速度で回転するロッド上にマウスを配置し、落下するまでの潜伏時間を、120秒間モニターした。それぞれの平均値と最大値から協調運動機能を評価した。
免疫組織化学:
組織学的検討のため、マウスをジエチルエーテルの吸入により麻酔し、4%のパラホルムアルデヒドを経心臓的に還流し固定した。脊髄を摘出し、室温で数時間、4%パラホルムアルデヒドにより後固定した。組織サンプルを10%スクロースに4℃で24時間含浸し、30%スクロースに48時間、配置しOTCコンパウンドに埋封した。封埋組織を液体窒素で凍結させ、−80℃で保存した。凍結切片はクリオスタットにて矢状断、軸断に20マイクロメーターの厚さで作成し、HE染色あるいは免疫蛍光二重染色を行った。
免疫蛍光二重ラベリング実験に関しては、脊髄切片を0.01MのPBS(pH7.4)中、0.03%Triton X−100及び10%正常ヤギ血清により30分間ブロッキングした。1次抗体としては、ウサギ抗−GFAP抗体、ラット抗−Brd−U抗体、及びヒト抗Hu抗体(ニューロンマーカーとして)を用い、4℃で一晩インキュベートした。2次抗体としてFITC−conjugatedのウサギIgG抗体及びTexas Red−conjugated−ラット抗体を使用し、2重染色を行った。スライドを洗浄し、浸潤−固定し、蛍光顕微鏡下に解析を行った。
ウェスターンブロット分析:
損傷作成から12時間後に(個々のグループ当たりn=4)、8mmの脊髄セグメント(外傷中心から4mmの吻側及び4mmの尾側)を切除し、プロテアーゼインヒビターを含むMAPK溶菌緩衝液においてホモジナイズし、そして音波処理の後、15,000rpmで遠心分離した。個々のサンプルの上清液からのタンパク質をSDS−PAGEにより分離し、そして電気泳動によりポリ二弗化ビニリデン膜にブロットした。膜を5%脱脂乳、150mMのNaCl及び0.05%のTween20(pH7.5)を含むTBST緩衝液において室温で1時間ブロッキングした後、1次抗体としてポリクローナルウサギ抗−stat3抗体又はウサギ抗−リン酸化stat3抗体、又はウサギ抗IL−6Rα抗体のいずれかを用い、続いて2次抗体としてHRP−conjugated抗−ウサギIgG抗体と共にインキュベートした。自動現像器によりフィルムに焼いた後、α−imagerにて定量化した。
結果:
(1)下肢運動機能評価
抗IL−6受容体抗体(MR16)を投与した脊髄損傷マウス15匹と、前記抗体を投与しない脊髄損傷マウス15匹(対照)とについて、BBBスコアの平均値をグラフ化したものを図1に示す。脊髄損傷後、7日以後、運動の回復は、MR16抗体を投与したマウス群において良好で、5週および6週で有意差を認めた。
(2)SCANET
抗IL−6受容体抗体(MR16)を投与した脊髄損傷マウス15匹と、前記抗体を投与しない脊髄損傷マウス15匹(対照)とについて、水平の動き及び立ち上がり回数を比較した結果、水平の動きには有意な差は無かったが、立ち上がり運動は、抗IL−6受容体抗体(MR16)を投与した脊髄損傷マウス15匹中12匹に観察され、他方、抗体を投与しない脊髄損傷マウス15匹(対照)の内3匹にのみ観察された。この差は、Fisher’s exact probability testにおいて、p<0.05で有意であった。
(3)ロータロッドトレッドミル
抗IL−6受容体抗体(MR16)を投与した脊髄損傷マウス15匹と、前記抗体を投与しない脊髄損傷マウス15匹(対照)とについて、上記の方法により実験したところ、ロッドの回転数が10rpm(1分間当りの回転数が10回転)及び15rpmの場合には有意な差は見られなかったが、5rpmにおいては、図2に示す通り、脊髄損傷後358日以降、抗IL−6受容体抗体(MR16)を投与した脊髄損傷マウスの回復は、前記抗体を投与しない脊髄損傷マウス(対照)に比べて有意に(p<0.05)高かった。
(4)免疫組織化学観察
成体脊髄には内在性の神経幹細胞が存在するにも拘らず、この細胞の分化による脊髄の修復は生じない。この理由として、損傷脊髄内では内在性神経幹細胞がグリア前駆細胞に、更にアストロサイトに分化してしまい、ニューロン系の細胞へ分化しないためと考えられている。上記の方法により、抗IL−6受容体抗体(MR16)を投与した脊髄損傷マウス4匹の損傷部分の脊髄と、前記抗体を投与しない脊髄損傷マウス4匹(対照)の損傷部分の脊髄とについて、抗GFAP抗体と抗BrDU抗体を用いた免疫蛍光法により反応性アストロサイトの形成をカウントしたところ、図3に示す通り、前記抗体を投与することにより、反応性アストロサイトの形成が有意に(p<0.01)減少した。
(5)ウエスタンブロット分析
脊髄損傷マウス4匹と、脊髄損傷マウス4匹(対照)とについて、脊髄損傷後12時間目にIL−6受容体の発現をウエスタンブロット法により調べた。結果を図4に示す。脊髄損傷マウスにおいてのみ、IL−6受容体の発現が認められた。また、図5に示すとおり、MR16投与ではリン酸化STAT3の量が抑制されており、腹腔内投与したMR16が脊髄で作用したことが示された。
以上のことから、IL−6受容体のアンタゴニストが脊髄損傷の修復を促進することが確認され。
参考例1ヒト可溶性IL−6受容体の調製
Yamasakiらの方法(Yamasaki,K.et al.,Science(1988)241,825−828)に従い得られたIL−6受容体をコードするcDNAを含むプラスミドpBSF2R.236を用いて、PCR法により可溶性IL−6受容体を作成した。プラスミドpBSF2R.236を制限酵素Sph Iで消化して、IL−6受容体cDNAを得、これをmp18(Amersham製)に挿入した。IL−6受容体cDNAにストップコドンを導入するようにデザインした合成オリゴプライマーを用いて、インビトロミュータジェネシスシステム(Amersham製)により、PCR法でIL−6受容体cDNAに変異を導入した。この操作によりストップコドンがアミノ酸345の位置に導入され、可溶性IL−6受容体をコードするcDNAが得られた。
可溶性IL−6受容体cDNAをCHO細胞で発現するために、プラスミドpSV(Pharmacia製)と連結させ、プラスミドpSVL344を得た。dhfrのcDNAを含むプラスミドpECEdhfrにHind III−Sal Iで切断した可溶性IL−6受容体cDNAを挿入し、CHO細胞発現プラスミドpECEdhfr344を得た。
10μgのプラスミドpECEdhfr344をdhfr−CHO細胞株DXB−11(Urlaub,G.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1980)77,4216−4220)へカルシウムフォスフェイト沈降法(Chen,C.et al.,Mol.Cell.Biol.(1987)7,2745−2751)により、トランスフェクトした。トランスフェクトしたCHO細胞を1mMグルタミン、10%透析FCS、100U/mlのペニシリンおよび100μg/mlのストレプトマイシンを含むヌクレオシド不含αMEM選択培養液で3週間培養した。
選択されたCHO細胞を限界希釈法でスクリーニングし、単一のCHO細胞クローンを得た。このCHO細胞クローンを20nM〜200nMの濃度のメトトレキセートで増幅し、ヒト可溶性IL−6受容体産生CHO細胞株5E27を得た。CHO細胞株5E27を5%FBSを含むイスコーブ改変ダルベコ培養液(IMDM,Gibco製)で培養した。培養上清を回収し、培養上清中の可溶性IL−6受容体の濃度をELISAにて測定した。その結果、培養上清中には可溶性IL−6受容体が存在することが確認された。
参考例2抗ヒトIL−6抗体の調製
10μgの組換型IL−6(Hirano,T.et al.,Immunol.Lett.(1988)17,41)をフロイント完全アジュバントとともにBALB/cマウスを免疫し、血清中に抗IL−6抗体が検出できるまで一週間毎にこれを続けた。局部のリンパ節から免疫細胞を摘出し、ポリエチレングリコール1500を用いてミエローマ細胞株P3U1と融合させた。ハイブリドーマをHAT培養液を用いるOiらの方法(selective Methods in Cellular Immunology,W.H.Freeman and Co.,San Francisco,351,1980)に従って選択し、抗ヒトIL−6抗体を産生するハイブリドーマを樹立した。
抗ヒトIL−6抗体を産生するハイブリドーマは下記のようにしてIL−6結合アッセイをおこなった。すなわち、柔軟なポリビニル製の96穴マイクロプレート(Dynatech Laboratories,Inc.製,Alexandria,VA)を0.1Mのcarbonate−hydrogen carbonate緩衝液(pH9.6)中で100μlのヤギ抗マウスIg(10μl/ml,Cooper Biomedical,Inc製 Malvern,PA)により4℃で一晩コートした。次いで、プレートを100μlの1%ウシ血清アルブミン(BSA)を含むPBSにより室温で2時間処理した。
これをPBSで洗浄した後、100μlのハイブリドーマ培養上清を各穴へ加え、4℃にて一晩インキュベートした。プレートを洗浄して、2000cpm/0.5ng/wellとなるように125I標識組換型IL−6を各穴へ添加し、洗浄した後各穴の放射活性をガンマカウンター(Beckman Gamma9000,Beckman Instruments,Fullerton,CA)で測定した。216ハイブリドーマクローンのうち32のハイブリドーマクローンがIL−6結合アッセイにより陽性であった。これらのクローンのなかで最終的に安定なMH166.BSF2が得られた。該ハイブリドーマが産生する抗IL−6抗体MH166はIgG1κのサブタイプを有する。
ついで、IL−6依存性マウスハイブリドーマクローンMH60.BSF2を用いてMH166抗体によるハイブリドーマの増殖に関する中和活性を調べた。MH60.BSF2細胞を1×10/200μl/穴となるように分注し、これにMH166抗体を含むサンプルを加え、48時間培養し、0.5μCi/穴のHチミジン(New England Nuclear,Boston,MA)を加えた後、更に6時間培養を続けた。細胞をグラスフィルターペーパー上におき、自動ハーベスター(Labo Mash Science Co.,Tokyo,Japan)で処理した。コントロールとしてウサギ抗IL−6抗体を用いた。
その結果、MH166抗体はIL−6により誘導されるMH60.BSF2細胞のHチミジンの取込みを容量依存的に阻害した。このことより、MH166抗体はIL−6の活性を中和することが明らかとなった。
参考例3抗ヒトIL−6受容体抗体の調製
Hirataらの方法(Hirata,Y.et al.J.Immunol.(1989)143,2900−2906)により作成した抗IL−6受容体抗体MT18をCNBrにより活性化させたセファロース4B(Pharmacia Fine Chemicals製,Piscataway,NJ)と添付の処方にしたがって結合させ、IL−6受容体(Yamasaki,K.et al.,Science(1988)241,825−828)を精製した。ヒトミエローマ細胞株U266を1%ジギトニン(Wako Chemicals製),10mMトリエタノールアミン(pH7.8)および0.15M NaClを含む1mM p−パラアミノフェニルメタンスルフォニルフルオライドハイドロクロリド(Wako Chemicals製)(ジギトニン緩衝液)で可溶化し、セファロース4Bビーズと結合させたMT18抗体と混合した。その後、ビーズをジギトニン緩衝液で6回洗浄し、免疫するための部分精製IL−6受容体とした。
BALB/cマウスを3×10個のU266細胞から得た上記部分精製IL−6受容体で10日おきに4回免疫し、その後常法によりハイブリドーマを作成した。成長陽性穴からのハイブリドーマ培養上清を下記の方法にてIL−6受容体への結合活性を調べた。5 ラ10個のU266細胞を35S−メチオニン(2.5mCi)で標識し、上記ジギトニン緩衝液で可溶化した。可溶化したU266細胞を0.04ml容量のセファロース4Bビーズと結合させたMT18抗体と混合し、その後、ジギトニン緩衝液で6回洗浄し、0.25mlのジギトニン緩衝液(pH3.4)により35S−メチオニン標識IL−6受容体を流出させ、0.025mlの1M Tris(pH7.4)で中和した。
0.05mlのハイブリドーマ培養上清を0.01mlのProtein G セファロース(Phramacia製)と混合した。洗浄した後、セファロースを上記で調製した0.005mlの35S標識IL−6受容体溶液とともにインキュベートした。免疫沈降物質をSDS−PAGEで分析し、IL−6受容体と反応するハイブリドーマ培養上清を調べた。その結果、反応陽性ハイブリドーマクローンPM−1(FERM BP−2998)を樹立した。ハイブリドーマPM−1から産生される抗体は、IgG1κのサブタイプを有する。
ハイブリドーマPM−1が産生する抗体のヒトIL−6受容体に対するIL−6の結合阻害活性をヒトミエローマ細胞株U266を用いて調べた。ヒト組換型IL−6を大腸菌より調製し(Hirano,T.et al.,Immunol.Lett.(1988)17,41−45)、ボルトン−ハンター試薬(New England Nuclear,Boston,MA)により125I標識した(Taga,T.et al.,J.Exp.Med.(1987)166,967−981)。
4×10個のU266細胞を1時間、70%(v/v)のハイブリドーマPM−1の培養上清および14000cpmの125I標識IL−6とともに培養した。70μlのサンプルを400μlのマイクロフュージポリエチレンチューブに300μlのFCS上に重層し、遠心の後、細胞上の放射活性を測定した。
その結果、ハイブリドーマPM−1が産生する抗体は、IL−6のIL−6受容体に対する結合を阻害することが明らかとなった。
参考例4抗マウスIL−6受容体抗体の調製
Saito,T.et al.,J.Immunol.(1991)147,168−173に記載の方法により、マウスIL−6受容体に対するモノクローナル抗体を調製した。
マウス可溶性IL−6受容体を産生するCHO細胞を10%FCSを含むIMDM培養液で培養し、その培養上清から抗マウスIL−6受容体抗体RS12(上記Saito,T.et al参照)をAffigel 10ゲル(Biorad製)に固定したアフィニティーカラムを用いてマウス可溶性IL−6受容体を精製した。
得られたマウス可溶性IL−6受容体50μgをフロイント完全アジュバンドと混合し、ウィスターラットの腹部に注射した。2週間後からはフロイント不完全アジュバンドで追加免疫した。45日目にラット脾臓細胞を採取し、2×10個を1×10個のマウスミエローマ細胞P3U1と50%のPEG1500(Boehringer Mannheim製)をもちいて常法により細胞融合させた後、HAT培地にてハイブリドーマをスクリーニングした。
ウサギ抗ラットIgG抗体(Cappel製)をコートしたプレートにハイブリドーマ培養上清を加えた後、マウス可溶性IL−6受容体を反応させた。次いで、ウサギ抗マウスIL−6受容体抗体およびアルカリフォスファターゼ標識ヒツジ抗ウサギIgGによるELISA法によりマウス可溶性IL−6受容体に対する抗体を産生するハイブリドーマをスクリーニングした。抗体の産生が確認されたハイブリドーマクローンは2回のサブスクリーニングを行い、単一のハイブリドーマクローンを得た。このクローンをMR16−1と名付けた。
このハイブリドーマが産生する抗体のマウスIL−6の情報伝達における中和活性をMH60.BSF2細胞(Matsuda,T.et al.,J.Immunol.(1988)18,951−956)を用いたHチミジンの取込みで調べた。96ウェルプレートにMH60.BSF2細胞を1 ラ10個/200μl/ウェルとなるように調製した。このプレートに10pg/mlのマウスIL−6とMR16−1抗体又はRS12抗体を12.3〜1000ng/ml加えて37℃、5%COで44時間培養した後、1μCi/ウェルのHチミジンを加えた。4時間後にHチミジンの取込みを測定した。その結果MR16−1抗体はMH60.BSF2細胞のHチミジン取込みを抑制した。
したがって、ハイブリドーマMR16−1(FERM BP−5875)が産生する抗体は、IL−6のIL−6受容体に対する結合を阻害することが明らかとなった。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
インターロイキン−6(IL−6)アンタゴニストを有効成分として含んで成る脊髄損傷治療剤。
【請求項2】
前記IL−6アンタゴニストがIL−6受容体に対する抗体である、請求項1に記載の脊髄損傷治療剤。
【請求項3】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項2に記載の脊髄損傷治療剤。
【請求項4】
前記抗体が、ヒトIL−6受容体に対するモノクローナル抗体である、請求項2又は3に記載の脊髄損傷治療剤。
【請求項5】
前記抗体が、マウスIL−6受容体に対するモノクローナル抗体である請求項2又は3に記載の脊髄損傷治療剤。
【請求項6】
前記抗体が、組換え型抗体である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の脊髄損傷治療剤。
【請求項7】
前記ヒトIL−6受容体に対するモノクローナル抗体がPM−1抗体である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の、脊髄損傷治療剤。
【請求項8】
前記マウスIL−6受容体に対するモノクローナル抗体がMR16−1抗体である、請求項5に記載の脊髄損傷治療剤。
【請求項9】
前記抗体がIL−6受容体に対するキメラ抗体、ヒト型化抗体又はヒト抗体である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の脊髄損傷治療剤。
【請求項10】
前記ヒト型化抗体がヒト型化PM−1抗体である、請求項9に記載の脊髄損傷治療剤。
【請求項11】
インターロイキン−6(IL−6)アンタゴニストを有効成分として含んで成る神経幹細胞の分化調節剤。
【請求項12】
インターロイキン−6(IL−6)アンタゴニストを有効成分として含んで成るグリア細胞への分化抑制剤。
【請求項13】
脊髄損傷治療剤の製造のための、インターロイキン−6(IL−6)アンタゴニストの使用。
【請求項14】
前記IL−6アンタゴニストがIL−6受容体に対する抗体である、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
前記抗体が、ヒトIL−6受容体に対するモノクローナル抗体である、請求項13又は14に記載の使用。
【請求項17】
前記抗体が、マウスIL−6受容体に対するモノクローナル抗体である請求項14又は15に記載の使用。
【請求項18】
前記抗体が、組換え型抗体である、請求項13〜16のいずれか1項に記載の使用。
【請求項19】
前記ヒトIL−6受容体に対するモノクローナル抗体がPM−1抗体である、請求項13〜18のいずれか1項に記載の使用。
【請求項20】
前記マウスIL−6受容体に対するモノクローナル抗体がMR16−1抗体である、請求項17に記載の使用。
【請求項21】
前記抗体がIL−6受容体に対するキメラ抗体、ヒト型化抗体又はヒト抗体である、請求項13〜20のいずれか1項に記載の使用。
【請求項22】
前記ヒト型化抗体がヒト型化PM−1抗体である、請求項21に記載の使用。
【請求項23】
神経幹細胞の分化調節剤の製造のための、インターロイキンー6(IL−6)アンタゴニストの使用。
【請求項24】
グリア細胞への分化抑制剤の製造のための、インターロイキン−6(IL−6)アンタゴニストの使用。
【請求項25】
インターロイキン−6(IL−6)アンタゴニストを対象に投与することを含んで成る脊髄損傷治療方法。
【請求項26】
前記IL−6アンタゴニストがIL−6受容体に対する抗体である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記抗体が、ヒトIL−6受容体に対するモノクローナル抗体である、請求項26又は27に記載の方法。
【請求項29】
前記抗体が、マウスIL−6受容体に対するモノクローナル抗体である請求項26又は27に記載の方法。
【請求項30】
前記抗体が、組換え型抗体である、請求項25〜28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記ヒトIL−6受容体に対するモノクローナル抗体がPM−1抗体である、請求項25〜30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記マウスIL−6受容体に対するモノクローナル抗体がMR16−1抗体である、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
前記抗体がIL−6受容体に対するキメラ抗体、ヒト型化抗体又はヒト抗体である、請求項25〜32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記ヒト型化抗体がヒト型化PM−1抗体である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
インターロイキン−6(IL−6)アンタゴニストを対象に投与することを含んで成る神経幹細胞の分化調節する方法。
【請求項36】
インターロイキン−6(IL−6)アンタゴニストを対象に投与することを含んで成るグリア細胞への分化抑制方法。

【国際公開番号】WO2004/073741
【国際公開日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【発行日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−519063(P2006−519063)
【国際出願番号】PCT/JP2004/002111
【国際出願日】平成16年2月24日(2004.2.24)
【出願人】(000003311)中外製薬株式会社 (228)
【出願人】(899000079)学校法人慶應義塾 (742)
【Fターム(参考)】