説明

インターロイキン4レセプターの貯蔵安定性粉末組成物

【課題】本発明は、貯蔵安定性のIL−4Rの乾燥粉末組成物を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明の粉末組成物は、特に温度および湿度の変化する条件下での貯蔵において、それらの溶液対応物よりも優れた化学的および物理的安定性を示すことによって解決した。さらに、調製された粉末は、優れたエアロゾル特性を有し、この優れたエアロゾル特性は、貯蔵の間維持される。また、本発明は、IL−4R組成物を提供する工程および該組成物をガス流中に分散して、吸入のために適切なエアロゾル化乾燥粉末を形成する工程を包含するIL−4R乾燥粉末組成物をエアロゾル化するための方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国仮特許出願第60/256,786号の優先権を主張し、その内容は、その全体を参考として本明細書中で援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、一般に、インターロイキン−4レセプター(IL−4R)の噴霧乾燥された、吸入可能な粉末組成物、およびそのような組成物を作製し、そして肺に投与するための方法に関する。本発明の粉末は、調製および貯蔵の両方における、モノマー含量および凝集レベルの点で特に安定で、さらに安定化するキャリアまたは賦形剤の非存在下でさえも、優れたエアロゾル特性を保持する。本発明の粉末は、肺の深くに投与される場合、例えば喘息、アトピー、およびアトピー性皮膚炎のようなアレルギー疾患を処置するために有用である。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
インターロイキン−4(B細胞刺激因子としても公知であるIL−4、またはBSF−1)は、ヘルパーT細胞、肥満細胞、および好塩基細胞によって産生されるサイトカインである。IL−4は、T細胞、肥満細胞、顆粒球、巨核球、および赤血球の増殖同時刺激を含む、広範囲の生物学的活性を保持することが示された。さらに、IL−4は、いくつかのIL−2およびIL−3依存性細胞株の増殖を刺激し、休止期B細胞上での、クラスII主要組織適合遺伝子複合体分子の発現を誘導し、IgEの生産に影響し、そしてリポ多糖類興奮性B細胞によって、IgEおよびIgGアイソタイプの分泌を増強する。IL−4は、アレルギー疾患の進行において重大な役割を果たすと同定され、最も一般的には、喘息およびアレルギー;すなわち呼吸困難性によって特徴付けられる疾患に関連する。
【0004】
IL−4は、IL−4レセプター(IL−4R)、特定の細胞の表面上の、内因性膜結合タンパク質に結合する。そのような結合によって、IL−4Rは、生物学的シグナルを種々の免疫エフェクター細胞に伝達し、それによって、臨床的な症状を導く事象のカスケードをトリガーする(Renz Hら、1991、J Immunol,146(9):3049−55)。IL−4Rのヌクレオチド配列および核酸配列の決定が、実施されてきた。成熟ヒトIL−4Rは、3つのドメイン構造:細胞外ドメイン(約207アミノ酸)、膜通過領域(約24アミノ酸)、および細胞質内ドメイン(約569アミノ酸)を有する(欧州特許第EP585−681号(1994))。可溶性IL−4R(sIL−4R)はまた、単離され、クローン化され、そして広範囲に研究されてきた(欧州特許第EP367−566号(1997);Mosleyら、1989、Cell、59−335、1989;米国特許第5,767,065号およびGarrone Pら、1991、Eur J Immunol,21(6):1365−9)。IL−4は、内因性細胞表面IL−4Rによりも、溶液中のsIL−4Rに優先的に結合し、それによって、細胞の活性化を阻害し、生物学的応答(例えば、IL−4およびその内因性レセプターへの結合と関連する効果のカスケード)をブロックする(Renz Hら、1991、上述およびRenz,H、1999、Inflamm Res.、48(8):425−31)。
【0005】
IL−4Rは、免疫抑制薬および抗炎症因子として記載されて、そして、IL−4Rの投与は、アレルギー、鼻炎、アトピー性皮膚炎、慢性関節リウマチ、移植片拒絶、慢性移植片対宿主疾患(GvH)および全身性紅斑性狼瘡(SLE)のような状態の処置において有益であり得る(米国特許第5,856,296号;Renz Hら、1992、J Invest Dermatol、99(4):403−8;Hackstein Hら、1999、Tissue Antigens、54(5):471−7;Rivas Dら、1995、J.Autoimmun、8(4):587−600;およびSchorlemmer HUら、1995、Inflamm Res、44補遺2:S194−6を参照のこと)。
【0006】
多くの生体ペプチドのように、IL−4Rは、不安定な傾向にある。このIL−4Rは、極限条件(例えば、高度に酸性pHまたは塩基性pH、高温)下で、分解および/または凝集する傾向があり、酸化剤および内因性プロテアーゼに感受性である。IL−4Rの固有の化学的および物理的不安定性は、薬学的処方物を、著しく問題のあるものにする。タンパク質の安定性および生物活性を維持するために、現在のIL−4Rの処方物は、主として溶液ベースであり、そして投与前に凍結乾燥品として保存される(例えば、米国特許第5,856,296号;同第5,767,065、および同第6,063,371号)。吸入によって投与するための、可溶な、溶液ベースのIL−4Rペプチド組成物、NuvanceTMは、現在、喘息の処置に対する臨床試験の段階にある(Borish LCら、1999、Am J Resp Crit Care Med、160(6):1816−23)。
【0007】
IL−4Rの溶液ベースの処方物は、溶液相の不安定性に関連する欠点以外の、他の欠点を有する。第1に、溶液ベースの処方物は、固体処方物よりも多くの場所をふさぎ、多くの注意を必要とし、従って、より費用がかかる。さらに、一般的に、これら処方物は、冷却されねばならず(代表的には、2〜8℃の環境で維持される)、このことは、さらに保存および輸送オプションを制限する。さらに、多くの溶液ベースの処方物は、時間がたつにつれてタンパク質濃度の損失を示し、これは、おそらく、溶液中でのダイマーまたは他のタンパク質凝集体の形成に起因する。そのような処方物は、しばしば、溶液の不安定性を最小にするために、緩衝液および/または抗酸化剤のような安定化添加物で補われなければならない。従って、これは、固体またはIL−4Rの粉末ベースの組成物、特に、安定に調整され、そして保存されるだけではなく、吸入可能な乾燥粉末のような固体形態としてさらに投与され得る組成物を提供することが望ましい。吸入されたタンパク質、ペプチド、DNAおよび低分子を用いる、多くの前臨床的および臨床的研究は、肺および全身両方内で有効性を示す。
【0008】
粉末処方物は、溶液処方物の代替を示し、そしてタンパク質は、粉末形態が望まれる場合、しばしば、凍結乾燥品として調製されなければならない(例えば、米国特許第5,856,296号)。不幸にも、凍結乾燥された粉末は、代表的には、ケークとして形作られ、それはさらなるすり潰しプロセシング工程および粉砕プロセシング工程、そして必要に応じて、ふるいプロセシング工程を、流動する粉末を提供するために必要とする。過去数年において、噴霧乾燥は、特にエアロゾル化した投与について、多くの治療的タンパク質ベースの粉末を調製するための、代替的なアプローチとして使用されてきた(例えば、Inhale Therapeutic Systems,Inc.に譲渡された、国際特許公報第WO96/32149号;WO95/31479号;WO97/41833号)。不幸にも、特定のタンパク質、および特にサイトカインは、噴霧乾燥の間に変性し、これらの二次構造を損失する傾向がある(Maa,Y.F.ら、J.Pharm.Sciences,87(2)、152−159(1998))。代表的なサイトカイン、ヒト増殖ホルモンについて、Mumenthalerは、90℃での噴霧乾燥が、不溶性凝集体を4%形成し、可溶性凝集体を21%形成する、つまり25%のインタクトのタンパク質を損失することを報告した(Pharmaceutical Res.,11,12−20(1994))。例示的なサイトカイン、hGHの不安定性は、hGHの溶液の霧化による42%の凝集体形成(可溶および不溶)を報告したMaa,Y.F.ら(同上)によって、さらに示された。
【0009】
さらに、sIL−4Rは、溶液ベースの不安定性および固体状態ベースの不安定性の両方を導く、多くの潜在的な不安定性部位を保持する。具体的には、sIL−4Rは、7個のシステイン(Cys11、Cys21、Cys31、Cys51、Cys61、Cys63およびCys184)を含み、分子間ジスルフィド結合に利用され得る、少なくとも1つの遊離スルフヒドリル基を確保する。そのような分子間ジスルフィド結合は、ダイマー、トリマーおよび他の自己凝集体の迅速な形成を導く。従って、この分子は、特に不安定な傾向にある。凝集に感受性のある部位に加えて、IL−4Rペプチドはまた、分解に感受性の部位を有する。例えば、酸化的攻撃を受けやすい部位は、4個のメチオニン残基を含む(Met3、Met16、Met25、およびMet67)。さらに、低いpHで開裂可能な、酸不安定性Asp−Pro結合は、アミノ酸残基145−146で見られる。脱アミノ化の可能性のある2つの部位は、Asn−Gly(26−27)、およびAsn−Gly(56−57)を含むが、この分子は、多くの他の潜在的な脱アミノ化残基(AsnおよびGln)を保持する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明者らが直面する難題は、上記のような、IL−4Rの溶液ベースの処方物に関連するいくつかの欠点を克服するための、IL−4Rの改善された乾燥粉末処方物を提供することだけでなく、肺動脈投与に適切な、安定な乾燥粉末処方物に達するための、IL−4Rの不安定性およびエアロゾル特性に影響する因子を釣り合わせることである。つまり、本発明に先立って、エアロゾル化に必要な物理的性質(例えば、長時間安定な、高度な分散可能性、適切な空気動力学的サイズ)もまた保持する、化学的および物理的に安定で、生物活性な、IL−4Rの乾燥粉末の開発は未知である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
したがって、本発明は、以下を提供する。
(1)IL−4Rを含有する噴霧乾燥粉末組成物。
(2)項目1に記載の粉末組成物であって、該組成物が、その噴霧乾燥前溶液または噴霧乾燥前懸濁液のモノマー含量および凝集体レベルに対して実質的に変化しない、モノマー含量および凝集体レベルを有する、組成物。
(3)項目1に記載の貯蔵安定性粉末組成物であって、該組成物が、25℃で14日間の該組成物の貯蔵後に決定される場合、その噴霧乾燥前溶液または噴霧乾燥前懸濁液のモノマー含量と比較して、5%以下のモノマー含量の減少によって特徴付けられる、組成物。
(4)項目3に記載の貯蔵安定性粉末組成物であって、該組成物が、25℃で14日間の該組成物の貯蔵後に決定される場合、その噴霧乾燥前溶液または噴霧乾燥前懸濁液の凝集体の形成の程度と比較して、5%以下の凝集体の形成の程度によって特徴付けられる、組成物。
(5)項目1に記載の組成物であって、該組成物が、湿気に安定性であり、湿性条件下、その噴霧乾燥前溶液または噴霧乾燥前懸濁液の前記凝集体レベルおよびモノマー含量と比較して、凝集体形成の最小限の増加およびモノマー含量の最小限の変化を示す、組成物。
(6)項目5に記載の湿気安定性組成物であって、該組成物が、相対湿度33%で14日間の該組成物の貯蔵後に決定される場合、10%以下のモノマー含量の減少によって特徴付けられる、組成物。
(7)項目5に記載の湿気安定性組成物であって、該組成物が、相対湿度33%で14日間の該組成物の貯蔵後に決定される場合、7%以下のモノマー含量の減少によって特徴付けられる、組成物。
(8)項目5に記載の湿気安定性組成物であって、該組成物が、相対湿度33%で少なくとも14日間の該組成物の貯蔵後に決定される場合、5%以下のモノマー含量の減少によって特徴付けられる、組成物。
(9)項目5に記載の湿気安定性組成物であって、該組成物が、相対湿度75%で少なくとも14日間の該組成物の貯蔵後に決定される場合、5%以下のモノマー含量の減少によって特徴付けられる、組成物。
(10)項目5に記載の湿気安定性組成物であって、該組成物が、相対湿度33%で14日間の貯蔵後、10%未満の不溶性凝集体の形成によって特徴付けられる、組成物。
(11)項目1に記載の組成物であって、該組成物が、相対湿度33%で14日間の貯蔵で7%未満の不溶性凝集体の形成によって特徴付けられる、組成物。
(12)項目1に記載の組成物であって、該組成物が、相対湿度33%で14日間の貯蔵で5%未満の不溶性凝集体の形成によって特徴付けられる、組成物。
(13)項目1に記載の組成物であって、該組成物が、相対湿度75%で14日間の貯蔵で5%未満の不溶性凝集体の形成によって特徴付けられる、組成物。
(14)項目1に記載の組成物であって、該組成物が、温度安定性であり、極度の温度下で、その噴霧乾燥前溶液または噴霧乾燥前懸濁液の前記凝集体レベルおよびモノマー含量と比較して、凝集体形成の最小限の増加およびモノマー含量の最小限の変化を示す、組成物。
(15)項目14に記載の温度安定性組成物であって、該組成物が、2〜8℃または40〜50℃で14日間の貯蔵後に10%以下のモノマー含量の減少によって特徴付けられる、組成物。
(16)項目14に記載の温度安定性組成物であって、該組成物が、2〜8℃または40〜50℃で14日間の貯蔵後に7%以下のモノマー含量の減少によって特徴付けられる、組成物。
(17)項目14に記載の温度安定性組成物であって、該組成物が、2〜8℃または40〜50℃で14日間の貯蔵後に5%以下のモノマー含量の減少によって特徴付けられる、組成物。
(18)項目14に記載の温度安定性組成物であって、該組成物が、2〜8℃または40〜50℃で14日間の貯蔵後に10%未満の不溶性凝集体の形成によって特徴付けられる、組成物。
(19)項目14に記載の温度安定性組成物であって、該組成物が、2〜8℃または40〜50℃で14日間の貯蔵後に7%未満の不溶性凝集体の形成によって特徴付けられる、組成物。
(20)項目14に記載の温度安定性組成物であって、該組成物が、2〜8℃または40〜50℃で14日間の貯蔵後に5%未満の不溶性凝集体の形成によって特徴付けられる、組成物。
(21)エアロゾル化形態の項目1に記載の粉末組成物。
(22)実質的に賦形剤のない項目1に記載の粉末組成物。
(23)項目1に記載の粉末組成物であって、該組成物が、少なくとも1つの薬学的に受容可能な賦形剤をさらに含有する、組成物。
(24)項目23に記載の粉末組成物であって、前記賦形剤が、炭水化物、アミノ酸、オリゴペプチド、ペプチド、およびタンパク質からなる群より選択される、組成物。
(25)前記炭水化物が、糖または糖アルコールである、項目24に記載の粉末組成物。
(26)前記アミノ酸が疎水性アミノ酸である、項目24に記載の粉末組成物。
(27)項目23に記載の粉末組成物であって、前記賦形剤が、クエン酸塩、ロイシン、ラフィノース、亜鉛塩、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、組成物。
(28)前記賦形剤が緩衝剤である、項目23に記載の粉末組成物。
(29)前記賦形剤が二価金属陽イオンである、項目23に記載の粉末組成物。
(30)前記組成物が、少なくとも30%の放出用量によって特徴付けられる、項目1に記載の粉末組成物。
(31)前記組成物が、少なくとも45%の放出用量によって特徴付けられる、項目30に記載の粉末組成物。
(32)前記組成物が、少なくとも60%の放出用量によって特徴付けられる、項目31に記載の粉末組成物。
(33)前記組成物が、約10ミクロン未満の質量中心空気力学的直径(MMAD)を有する粒子を含有する、項目1に記載の粉末組成物。
(34)前記組成物が、約5ミクロン未満の質量中心空気力学的直径(MMAD)を有する粒子を含有する、項目1に記載の粉末組成物。
(35)前記組成物が、約3.5ミクロン未満の質量中心空気力学的直径(MMAD)を有する粒子を含有する、項目1に記載の粉末組成物。
(36)前記組成物が、約0.1〜3ミクロンの間の質量中心直径(MMAD)を有する粒子を含有する、項目1に記載の粉末組成物。
(37)残留水分含有量が、約10重量%未満である、項目1に記載の粉末組成物。
(38)約5重量%未満の残留水分含有量を有する、項目37に記載の粉末組成物。
(39)前記組成物が、約0.1〜10g/ccの範囲である嵩密度を有する、項目1に記載の粉末組成物。
(40)単位投薬形態における、項目1に記載の粉末組成物。
(41)IL−4R乾燥粉末組成物をエアロゾル化するための方法であって、該方法が、以下:
(a)項目1に記載のIL−4R組成物を提供する工程、および
(b)該組成物をガス流中に分散して、吸入のために適切なエアロゾル化乾燥粉末を形成する工程、
を包含する、方法。
(42)前記分散が、乾燥粉末吸入器を使用して達成される、項目41に記載の方法。
(43)乾燥IL−4R粉末組成物を調製するための方法であって、該方法が、以下:
(a)溶媒中でIL−4Rの混合物または溶液を調製する工程、および
(b)該混合物または該溶液を噴霧乾燥して、項目1に記載のIL−4R粉末を得る工程、
を包含する、方法。
(発明の要旨)
本発明は、化学的および物理的に安定な、IL−4Rの噴霧乾燥粉末組成物であり、そのような分子(すなわち、サイトカイン)が、剪断応力、液体−壁相互作用、高温条件および噴霧乾燥などに曝された場合、特に不安定であることが公知であるにもかかわらず思いがけず発見したことに基づく。驚いたことに、本発明の噴霧乾燥粉末は、この前噴霧乾燥溶液のモノマー含量および凝集レベルに比べて、本質的に違わないモノマー含量および凝集レベルを示す。さらに、本発明は、極端に湿潤な条件下でさえ、モノマー含量および凝集レベルの両方の点において、保存において安定なIL−4R乾燥粉末組成物を提供する。すなわち、本発明書中で記載される、噴霧乾燥粉末は、優れた化学的および物理的安定性の両方を示し、そしてこれら粉末の肺への投与を適切にする良い分散特性(すなわち、エアロゾル特性)を有する。
【0012】
1つの局面において、本発明は、極端な湿潤状態および温度状態において、エアロゾル特性(化学的および/または物理的特徴、生物活性など)を実質的に変化させることなく、延長された時間(14日以上)、貯蔵され得る、噴霧乾燥IL−4R粉末組成物を提供する。より詳しくは、本発明の粉末組成物のIL−4R含量は、前噴霧乾燥懸濁物または溶液と比較して、本質的に変化しない。すなわち、長期にわたる最小の凝集体形成および/または最小のタンパク質モノマーの損失を受ける。
【0013】
IL−4粉末組成物は、調製および貯蔵でほぼ分解しないことを示し、安定化添加物もしくは賦形剤の非存在下で調製され得、または、薬学的に受容可能な賦形剤をさらに含み得る。好ましい賦形剤としては、亜鉛塩、クエン酸、ロイシン、およびその組合せが挙げられる。
【0014】
好ましくは、このIL−4R粉末組成物は、前乾燥溶液または懸濁物と比べて、実質的に変化しないモノマー含量を有する。モノマー含量の変化は、(前乾燥溶液または懸濁物と比べた)パーセント減少として本明細書中に示される。好ましくは、モノマー含量の減少は、約10%未満、より好ましくは、7%未満、最も好ましくは、5%未満である。
【0015】
好ましくは、IL−4R粉末組成物は、前乾燥溶液または懸濁物と比べて、最小の凝集体形成を示す。凝集体形成のレベルは、(前乾燥溶液または懸濁物と比べた)パーセント減少として本明細書中に示される。好ましくは、凝集体含量の上昇は、10%未満、より好ましくは、7%未満、最も好ましくは、5%未満である。
【0016】
さらに、本発明のIL−4R粉末組成物は、肺の肺胞に浸透するのに効果的な粒子を含む。すなわち、特定の実施形態において、約10μmより小さい直径、好ましくは、約7.5μmより小さい直径、そして最も好ましくは、5μmより小さい直径の動力学的粒径(MMD)を有する。特定の実施形態において、粉末は、約1.0〜3.5μmまでのMMDを有する粒子から構成される。
【0017】
本発明に従うIL−4R粉末組成物のさらなる実施形態は、約10ミクロン未満の、好ましくは約5.0ミクロン未満の、そしてより好ましくは約3.5ミクロン未満の空気動力学的粒径(MMAD)を有する噴霧乾燥IL−4R粒子を含む。特に好ましい実施形態において、MMADは、1.5〜3.5ミクロンの範囲にある。
【0018】
エアロゾル化されたIL4R粉末処方物、および単位投薬形態のIL−4粉末もまた、本発明に含まれる。
【0019】
別の局面において、本発明は、本明細書に記載されるように、IL−4R粉末組成物をそれを必要とする患者の肺に投与するための方法を指示する。この方法において、上に記載される組成物は、エアロゾル化された形態での吸入によって、投与される。
【0020】
なお別の局面において、本発明はまた、上に記載される特徴を有する、分散可能な、乾燥IL−4R粉末組成物を調製するための方法を含む。
【0021】
1つの実施形態において、呼吸に適するIL−4R粉末組成物は、混合物または溶液を生成するために、適切な溶媒中に活性なIL−4R薬剤を混合すること、そして、不連続な実質的に非晶質の粒子、好ましくは、乾燥粉末の形態で得るために、この混合物または溶液を噴霧乾燥することによって、調製される。このIL−4Rは、噴霧乾燥で本質的にインタクトのままであり、(モノマー含量および凝集体形成の減少によって特徴付けられる)タンパク質分解の程度がわずかである粉末粒子を得る。
【0022】
任意の薬学的な賦形剤を、溶液または混合物の噴霧乾燥によって、溶液または混合物中に存在する、IL−4R、賦形剤、緩衝液、および任意の他の成分との組合せを含む粒子が産出されるように、一様な溶液または不均一な混合物を生成するための溶媒中にさらに加え得る。あるいは、薬学的な賦形剤は、別々に溶解され得、同時投与可能な粉末粒子を産出するためになお別々に噴霧乾燥され得る。
【0023】
本発明のこれらのおよび他の目的および特徴は、以下の詳細な記述が、添付される図面および実施例と共に読まれる場合、より十分に明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、噴霧乾燥粉末(実施例1の処方物1(A)〜1(D))のモノマー含量における温度の効果のグラフ(2週間の安定性のデータ)を示す。
【図2】図2は、噴霧乾燥粉末(実施例1の処方物1(A)〜1(D))のモノマー含量における相対湿度の効果のグラフ(2週間の安定性のデータ)を示す。
【図3】図3は、噴霧乾燥粉末(実施例1の処方物1(A)〜1(D))のモノマー含量における温度の効果のグラフ(2週間の温度安定性のデータ)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(発明の詳細な説明)
(A.定義)
本明細書中で使用される場合、以下の用語は、示された意味を有する。
【0026】
本発明の文脈において、「IL−4R」および「sIL’4R」は、サイトカイン、インターロイキン−4に対するレセプターとして作用する細胞結合タンパク質の細胞外ドメインをいう。以下に議論されるように、本明細書中で使用される場合、IL−4Rは、単一のペプチド配列に限定されず、IL−4R活性を有する任意の公知のタンパク質を含むことを意味し、ネイティブなペプチドと関連する治療的活性を保持する範囲で、天然から誘導されるIL−4Rおよび合成により誘導されるIL−4R、ならびにそのアゴニストおよびそのアナログを含むことを意味する。
【0027】
本明細書中で使用される場合、用語「アゴニスト」は、ネイティブな化合物の効果を模倣する化合物をいう。アゴニストは、ペプチドまたは非ペプチド化合物であり得る。
【0028】
本明細書中で使用される場合、用語「アナログ」は、1つ以上のアミノ酸が、ネイティブ(野生型)ヒト配列から、置換され、欠失され(すなわち、フラグメント)、付加され、または他の様式で改変される化合物をいい、そして、この化合物は、ネイティブの(非合成の)内因性のペプチドの化合物の生物活性の、少なくとも約10%、約20%、約30%、または約40%の生物活性、そして好ましくは、少なくとも50%、60%、または70%の生物活性、そして最も好ましくは、少なくとも80%、90%、95%、100%または100%よりも大きな生物活性を示す。このレセプターの特異性は、必要に応じて、ネイティブ(野生型)で、内因性のペプチドに、実質的に類似する。代表的に、レセプターの親和性は、ネイティブ(野生型)で、内因性のペプチドの、少なくとも約30%、約40%、または50%であり、より好ましくは、ネイティブ(野生型)で、内因性のペプチドの、少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、100%であるかまたは100%よりも大きい。
【0029】
本発明の組成物は、これらが、吸入療法(すなわち、口または鼻によって吸入され、肺に吸い込まれることが可能な)および/または肺送達(すなわち、肺深部の組織への局所的な送達、およびその中の上皮細胞を通った血液循環への吸収)に適切である場合、「呼吸に適する」と考えられる。本発明の組成物は、好ましくは、肺を通した迅速な全身の吸収、すなわち、60分未満のうちに血液内で最高値に達する、に適している。
【0030】
本明細書中に使用される場合、「肺深部」は、(気管支領域に対立するものとして)肺の肺胞領域をいう。「吸入療法」に適切な組成物は、エアロゾル化された場合、(i)口腔吸入送達デバイスまたは鼻腔内送達デバイス内に迅速に分散され得、そして(ii)少なくとも一部の粒子が、鼻経路または肺の粘膜を通して吸収されるように、哺乳動物被験体によって、口または鼻かのいずれかを通して吸入され得る組成物である。「肺投与」に適する組成物は、エアロゾル化した形態における吸入を介して送達される場合、少なくとも一部の粒子が、肺深部を含んだ肺の組織に到達する粒子を含む。
【0031】
「経口呼吸に適する」組成物は、特に経口吸入に適する、呼吸に適する組成物である。同様に、「経鼻的呼吸に適する」組成物は、特に鼻の吸入(すなわち、上気道への経鼻的送達)に適する呼吸に適する組成物である。
【0032】
「乾燥粉末」は、相対的に自由に流れ、以下の能力を有する、よく分散した固体粒子を含む、呼吸に適した組成物をいう:(i)吸入デバイス内で迅速に分散される能力、そして(iii)被験体によって吸収され、一部の粒子が、肺に到達し、肺胞に浸透することが可能になるような能力。乾燥粉末は、結晶性、非晶質のガラスまたは、両形態の混合物であり得る。乾燥粉末は、代表的には、約10%未満の湿気、好ましくは、約5%未満の湿気、そして、より好ましくは、約3%未満の湿気を含む。
【0033】
「放出用量」または「ED」は、放出または分散事象の後、適切な吸入デバイスからの薬物処方の送達の指標を提供する。より明確に、乾燥粉末処方について、EDは、1単位用量パッケージから出され、そして吸入デバイスの口金から出る、粉末のパーセンテージの程度である。EDは、名目上の用量に対する吸入デバイスによって送達される用量の割合(すなわち、放出前の適切な吸入デバイスへ配置される1単位用量あたりの粉末の質量)として定義される。EDは、実験的に測定されるパラメータであり、そして代表的に患者の投与を模擬するインビトロデバイス設定を用いて、測定される。ED値を測定するために、乾燥粉末の名目上の用量は、代表的に単位用量の形態において、適切な乾燥粉末吸入器(例えば、米国特許第5,785,049号に記載され、Inhale Therapeutic Systemsに譲渡される)へ配置され、この吸入器は、次いで作動され、粉末を分散する。得られたエアロゾルは、次いでデバイスから減圧によって引き出され、デバイスの口金に添えられる分裂フィルタ上で獲得される。フィルタに届いた粉末の量は、放出用量を構成する。例えば、5mgのための、吸入デバイスに配置される乾燥粉末含有投薬形態は、上記に記載されるような分裂フィルタ上の4mgの粉末の回収を生じる場合、乾燥粉末組成物に対する放出用量は:4mg(送達される用量)/5mg(名目上の用量)×100=80%である。不均一な粉末に対して、ED値は、乾燥粉末の指標というよりもむしろ放出後の吸入デバイスからの薬物送達の指標を提供し、そして全粉末重量の量というよりもむしろ薬物の量に基づく。同様に、MDIおよび霧化器投薬形態と同様に、EDは、1単位投薬形態から引き出され、そして吸入の口金を出る薬物のパーセンテージに対応する。
【0034】
「分散可能な」粉末は、少なくとも約30%、好ましくは少なくとも約40%、より好ましくは少なくとも約50%およびなおより好ましくは少なくとも約55%のED値を有するものである。
【0035】
「質量中間径(mass median diameter)」または「MMD」は、本発明の粉末が、一般的に多分散である(すなわち、粒子サイズの範囲から成る)ので、平均の粒子サイズの程度である。多数の通常利用される技術が、平均粒子サイズを測定するために使用され得る(例えば、電子顕微鏡、光散乱、レーザー回折)けれども、本明細書中に報告されるようなMMD値は、遠心沈降によって測定される。
【0036】
「空気動力学的粒径(mass median aerodynamic diameter)」または「MMAD」は、分散される粒子の空気動力学的サイズの程度である。空気動力学的直径は、沈殿挙動の点でエアロゾル化粉末を記載するために使用され、そして空気中での、粒子として、同様の沈殿速度を有する、1単位密度球面の直径である。空気動力学的直径は、粒子型、密度および粒子の物理的サイズを含む。本明細書中で使用される場合、MMADは、他に示さない限りカスケードインパクションによって測定されるエアロゾル化した粉末の空気動力学的粒子サイズの分布の中点またはメジアンをいう。
【0037】
「微粒子分画(Fine Particle Fraction)」(FPF<3.3μm)は、カスケードインパクションによって決定される、3.3ミクロン以下である、粉末の用量として定義される。このパラメータは、1cfm(28.3L/分)の流速で作動する場合、Andersenインパクターのステージ3下の全質量に対応する。
【0038】
「薬学的に受容可能な賦形剤」および「薬学的に受容可能なキャリア」は、同義であり、そして本発明の処方において含まれ得、そして被験体に対して特に、被験体の肺に対して有意に有害な中毒的効果のない、粒子に関連して肺に取り入れられ得る、賦形剤をいう。
【0039】
「薬理学的な有効量」または「生理学的な有効量」は、本明細書中に記載されるような本発明の組成物中に存在するIL−4Rの量であり、このような組成物が、肺中に沈着しそして肺から吸収されるために吸入によって投与される場合、このような量は処置されるべき被験体の組織の血流中のIL−4Rの所望のレベルを提供するため、そしてそれにより、予測される生理学的応答を提供するために必要である。正確な量は、多数の因子(例えば、特に、使用されるIl−4R(例えば、天然または合成の、全長またはフラグメントあるいはアナログ)、利用される送達デバイス、粉末の物理的特性、意図された患者の使用(例えば、1日に投与される用量の数)、および患者の状態(例えば、年齢、体重、健康状態など))に依存し、そして本明細書中に提供される情報に基づいて当業者によって決定され得る。
【0040】
「界面活性剤」は、界面活性(例えば、界面張力計によって測定される)を有する賦形剤であり、溶解される液体の表面張力を減少し、そして関連する薬物を粘膜の表面にわたって急速に広がらせる能力によって特徴付けられる。液体と別の相との間の界面に関連する、表面張力は、表面分子が内向の誘引を示すことによる液体の性質である。この用語はまた、界面活性剤、乳化剤、浸透剤および湿潤剤を含む。
【0041】
「水溶性ペプチド」は、少なくとも0.5mg/ml、そしてより好ましくは少なくとも1mg/mlの水への溶解性を有するペプチドを意味する。
【0042】
「アミノ酸」は、アミノ基およびカルボン酸基の両方を含む任意の化合物をいい、そしてそれらの薬学的に受容可能な塩を含む。アミノ基は、カルボキシ官能基に隣接する位置に最も通常存在するけれども、アミノ基は、分子の中で任意の位置に配置され得る。アミノ酸はまた、さらに官能基(例えば、アミノ、チオ、カルボキシ、カルボキシアミド、イミダゾールなど)を含み得る。アミノ酸は、合成であり得るかまたは天然に存在し得、そしてこれらのラセミ体または光学活性(D−またはL−)な形態(例えば、単一の光学活性エナンチオマーとしてまたはエナンチオマーの任意の組み合わせ、もしくは任意の割合として)使用され得る。
【0043】
「分散剤」は、本明細書中に記載される、呼吸用Il−4R粉末の組成物の構成成分に関し、分散剤が存在しない呼吸用IL−4R組成物の分散能と比較すると、組成物の重量の0.01重量%〜99重量%、好ましくは0.01重量%〜70重量%で存在する場合に少なくとも10%(放出用量の決定によって測定される)の呼吸用IL−4R粉末の組成物の分散能を上昇するのに有効である。
【0044】
「肺中の肺のバイオアベイラビリティー」または「相対的なバイオアベイラビリティー」は、IL−4Rの投与される用量のパーセンテージであり、これは、筋内注射部位または皮下注射部位から血液中に吸収されるパーセントと比較して肺中に沈着され、そして吸収され、哺乳動物の体循環中で利用可能になる割合である。肺中のバイオアベイラビリティーを測定するための代表的なモデル系は、ラット、ウサギおよびサルを含む。肺中の肺のバイオアベイラビリティーは、直接的な器官内投与に基づくかまたは本明細書中に記載される呼吸用Il−4R粉末の組成物の吸入により得る。
【0045】
「かさ密度」は、圧縮の前の粉末の密度(すなわち、未圧縮粉末の密度)をいい、そして周知のUSP方法によって代表的に測定される。
【0046】
本発明のIL−4R粉末の組成物のモノマー含有量または凝集レベルに関連して、使用されるような「基本的に不変である」は、対応する予備噴霧乾燥溶液または懸濁液の組成物と比較する場合、モノマー含有量かまたは凝集レベルのいずれかにおいて約2%以下の変化を示す組成物のことをいう。
【0047】
噴霧乾燥IL−4R粉末のIL−4R凝集レベルに関して、使用される場合、「最小増加」は、対応する予備噴霧乾燥溶液または懸濁液の凝集物のレベルと比較して、約10%以下の凝集レベルにおける増加をいう。
【0048】
噴霧乾燥IL−4R粉末中のモノマー含有量に関連して使用される場合の「最小変化」は、対応する予備噴霧乾燥溶液または懸濁液中のIL−4Rモノマーのレベルと比較して、約10%以下のモノマー含有量における変化(すなわち、減少)をいう。
【0049】
「湿潤状態」とは、30%相対的湿度(RH)より高い相対的湿度を有する環境をいう。特に湿潤な環境は、約60%RHより高い相対温度を有する環境であり、高い湿度は、約70%RHから75%RHまたはそれ以上の範囲である。
【0050】
(B.呼吸用IL−4R粉末組成物の成分)
本発明は、肺の送達のためのIL−4Rを含む高い分散能を有する呼吸用粉末組成物を提供する。本明細書中に記載される粉末組成物は、全身経路でペプチド剤を投与することにおいて、従来、しばしば遭遇してきた多くの問題(特に、IL−4Rの溶液に基づく処方に関連する問題)を克服する。このような問題の例としては、延長した応答時間(例えば、投与と生理学的応答の開始との間の時間)、低い全身吸収、および組織および分泌物中の相対的に低い濃度、受容可能な血清レベルを維持することの不可能さ、ならびにペプチドの不安定さ、ならびに特に溶液中のサイトカインが挙げられる。
【0051】
本発明の組成物は、喘息およびアトピー性皮膚炎のようなアレルギー性疾患およびアレルギー状態の処置に対して、特に効果的である。さらに、本明細書中に記載される組成物を含む噴霧乾燥したIL−4R粉末は、驚くほどに安定である(すなわち、温度および湿度の極端な状態下においてさえ、調製および貯蔵の際に、最小限の化学的および物理的な分解を示す)。すなわち、本明細書で提供される粉末は、安定化賦形剤および分散化を増強する賦形剤の非存在においても、驚くほどに強い。本発明のIL−4R粉末は、(i)エアロゾル送達デバイスによって容易に分散され(すなわち、よいエアロゾル性能を実証する)(ii)粉末の製造およびプロセッシングの間、および貯蔵上で、驚くほどによい物理的および化学的安定性を示し、そして(iii)再現可能に調製される(実施例1〜5)。
【0052】
本発明に従う呼吸用IL−4R粉末の組成物は、IL−4Rおよび任意に必ずではないが、薬学的に受容可能な賦形剤を含む。本発明の呼吸用IL−4R粉末の組成物の構成成分は、ここで記載される。
【0053】
本発明において使用されるIL−4Rは、一般的に以下のように特徴づけられる。内在性の成熟したインターロイキン−4レセプターは、高い親和性でIL−4に結合する140kDaの膜糖タンパク質として発現される(Idzerda RLら、1990 J.Exp.Med.,171(3),861−873;Jacobs,CAら、1991,Blood,77(11):2396−2403、両方を、本明細書中で参考として援用する)。血清を含む培地においてCHO細胞中でクローンされそして産生された、ヒトのIL−4Rの細胞外ドメインは、23.9kDAの非グリコシル化分子を有し、209アミノ酸残基を含む、高いグリコシル化(N−結合)およびシアル酸付加したタンパク質である。細胞外ドメインIL−4Rは、成熟したインターロイキン−4レセプターの残基24と残基234との間に位置される。質量分析法は、約37kDaであるタンパク質分子量を示し、少なくとも35%のグリコシル化を示唆する。SDS−PAGE分析によって、このタンパク質は、54kDaのバンドとして溶出される。IL−4RのpIは、等電点電気泳動によって測定され、3.36〜5.18である。DSCによって測定された変性の転移温度は、57.8℃であり、そして変性プロセスは、高度に可逆性である。
【0054】
本明細書中に記載された組成物中での使用のためのIL−4Rは、商業的な供給源から購入され得るか、または例えば、米国特許第5,767,065号およびArmitageら、Adv Exp Med Biol 1991;292:121−30(これらの両方は、その全体が本明細書中で参考として援用される)によって記載されるプロセスを用いて、組換え産生され得る。IL−4Rは、中性(すなわち、非電荷)であり得るか、または薬学的に受容可能な塩(例えば、酢酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩などのような酸添加塩、または塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩などのような無機酸塩)の形態であり得る。カチオン性塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩またはアンモニウム塩)はまた、利用され得る。
【0055】
呼吸用粉末組成物中に含まれるIL−4Rの量は、毎日の投薬レジメンの経過にわたる単位用量あたりのIL−4Rの治療的有効量(すなわち、治療的効果を働かせるために必要な量)を肺に送達するために必要な量である。実施において、これは、特定のIL−4R(例えば、天然対合成、全長対フラグメントおよびその対応する生物活性)、患者の集団および投与の要件に依存して変化する。本発明の呼吸用粉末の高い分散性質に起因して、吸入デバイスに対する損失は、最小化されるより多くの粉末用量が、患者に実際に送達されることを意味する。これは、次いで、所望の治療的目的を成し遂げるためのより低い必要とされる投薬量と相互関係を示す。
【0056】
一般的に、呼吸用粉末組成物中に含まれるIL−4Rの全量は、呼吸用粉末組成物の全重量の1%〜100%まで、好ましくは、5%〜98%まで、より好ましくは10%〜95%まで、なおより好ましくは約45重量%〜約95重量%、約50重量%〜約90重量%までの範囲である。好ましい乾燥粉末組成物は、約40%〜約80%のIL−4R(組成物の重量%)を含み、なおより好ましくは、約0.2重量%〜約99重量%のIL−4Rを含む。
【0057】
必要とされるIL−4Rの有効量は、1人の患者から次の患者まで、そして1つの治療的レジメンから次のレジメンまで、変化する。投与の量および頻度は、もちろん、処置される徴候の性質および重大さ、所望の反応、患者の集団、患者の状態などのこのような因子に依存する。
【0058】
非経口投与されるsIL−4Rに対して生物学的効果を引き起こすための一般的に受容される適切な投薬量は、約1ng/kg/日〜約10mg/kg/日、より好ましくは約5ug/kg/日〜約2mg/kg/日の範囲である。上記に議論されるこのようなIL−4Rの非経口処方は、米国特許第5,856,296号および同第6,063,371号に議論される。しかし、肺送達は、非経口送達よりもしばしばより効果的であるので、必要とされる投薬量は、変化し得、そして実際に、非経口処方において利用されるこれらよりもわずかに少なくなり得る。特に、喘息のようなアレルギー疾患の治療のための、IL−4Rの投薬は、代表的に毎週である。吸入によるIL−4Rの毎週の投薬は、約0.1mg〜約10mgまで、より好ましくは0.5mg〜5mgの間、なおより好ましくは1mg〜2mgの間の範囲であり得る。正確な投薬量は、噴霧乾燥粉末中のIL−4Rの濃度のような様々な因子に依存する。所望される投薬量は、利用されるまさにその単位投薬形態に依存して、1〜10呼吸または2〜6呼吸、より好ましくは1〜4呼吸で代表的に成し遂げられる。
【0059】
本明細書中に記載される方法を介する全身のIL−4R送達の有効性(すなわち、固体の吸入される投薬形態から血流に到達する投与される用量のパーセンテージ(例えば、肺中の肺バイオアベイラビリティー)は、代表的に少なくとも約1%、より好ましくは少なくとも約2%、代表的に少なくとも約3%〜約5%である。よりこの好ましい実施形態において、肺から血流中への全身送達の有効性は、少なくとも約15%〜約30%である。
【0060】
(C.賦形剤および添加剤)
本発明の呼吸用粉末組成物は、「ニート(neat)」(すなわち、薬学的な賦形剤および添加剤なしで)で処方され得る。この知見は、分解および凝集の両方に関するIL−4Rのようなサイトカインの傾向から見て、特に驚くべきことである。本発明の1つの特定の実施形態において、呼吸用組成物は、「ニート」乾燥粉末処方物である。別の実施形態において、浸透エンハンサーのような乾燥粉末処方物は、特定の賦形剤および添加剤を含まない。
【0061】
あるいは、本発明の組成物は、呼吸器および肺投与に適切である1つ以上の薬学的に受容可能な賦形剤または添加剤と組み合わせたIL−4Rを含み得る。このような賦形剤は、存在する場合、粉末組成物中に約0.01重量%〜約99重量%、好ましくは約0.1重量%〜約95重量%、より好ましくは約0.5重量%〜約80重量%、なおより好ましくは約1重量%〜約50重量%〜約60重量%の範囲での量で存在する。賦形剤含有呼吸用Il−4R組成物の例としては、実施例1に記載される。興味深いことに、実施例に記載される例示的な組成物において、1つ以上の賦形剤の存在または非存在は、調製または貯蔵のいずれかの間に、本発明の噴霧乾燥粉末の化学的安定性にも物理的安定性にも実質的に影響を与えなかった。
【0062】
しかし、好ましい賦形剤は、以下の1つ以上の改善のために、部分的に役立つ:組成物のエアロゾル特性、その化学的安定性、その物理的安定性、および/または貯蔵安定性。好ましい賦形剤はまた、乾燥粉末吸入器によるIL−4Rのより効率的に再現性送達を提供するために機能し得、そして製造および粉末充填を促進するために、Il−4Rの粉末組成物の取扱いの特徴(例えば、流動性およびコンシスランシー)をさらに改善し得る。
【0063】
特に、賦形剤の材料は、しばしば、呼吸用Il−4Rの粉末組成物またはこれらの中に含まれる活性剤の物理的安定性および化学的安定性を、改善するために機能し得る。例えば、賦形剤は、残留含水量および後の水分取り込みを最小化し得、そして/または粒子サイズ、凝集の程度、表面特性(すなわち、しわのある)、それぞれの吸入、肺に対して生じる粒子の標的化を向上し得る。賦形剤はまた、乾燥粉末組成物中の活性剤濃度を減少するためのバルキング剤として簡単に供給され得る。
【0064】
本発明の組成物中で有用な薬学的な賦形剤および添加剤は、限定しないが以下が挙げられる:タンパク質(すなわち、特定のオーダーにおけるアミノ酸の1つ以上の鎖から構成される大きい分子)、オリゴペプチド(すなわち、ペプチド結合によって結合されるアミノ酸の短鎖)、ペプチド(すなわち、アミノ酸に加水分解する分子のクラス)、アミノ酸、脂質(すなわち、脂肪、ロウまたは代表的に水中で不溶性であるが有機溶媒中で可溶性であり、炭素、水素およびより小さい程度の酸素を含む、油状の化合物)、ポリマー(すなわち、多くの類似のより小さい分子の組み合わせによって形成される大きい分子)および炭水化物(例えば、単糖類、二糖類、三糖類、四糖類、およびオリゴ糖を含む糖;アルジトール、アルドン酸、エステル化糖などのような誘導体化糖;および多糖類(ply saccharides)または糖ポリマー)(これらは、単一または組み合わせで存在し得る)。適切な賦形剤は、Inhale Therapeutic Systems,Inc.から譲渡された国際公開番号WO 96/32096中で提供される賦形剤を含み、これらの全体の内容は、本明細書中で参考として援用する。
【0065】
好ましい賦形剤は、糖アルコール、脂質、DPPC、DSPC、カルシウム/マグネシウム、および疎水性賦形剤(例えば、疎水性アミノ酸および疎水性糖)を含む。特に好ましい賦形剤としては、亜鉛塩、ロイシン、シトレートおよびラフィノースのような糖が挙げられる。粒子処方のための、好ましい賦形剤は、約35℃より上、好ましくは約45℃より上、より好ましくは約55℃より上のガラス転移温度(Tg)を有するものである。
【0066】
例示的なポリペプチドおよびタンパク質賦形剤としては、ヒト血清アルブミン(HSA)のような血清アルブミン、組換えヒトアルブミン(rHA)、ゼラチン、カゼイン、ヘモグロビンなどが挙げられる。特に好ましくは、分散能を増強するポリペプチドである(例えばInhale Therapeutic Systems,Inc.に譲渡された国際公開番号WO 96/32096に記載されるようなHSA(この内容は本明細書中で参考として援用する))。
【0067】
緩衝作用能力でまた機能し得る、代表的な、アミノ酸/ポリペプチドの構成成分としては、アラニン、グリシン、アルギニン、ベタイン、ヒスチジン、グルタミン酸、アスパラギン酸、システイン、リジン、ロイシン、イソロイシン、バリン、メチオニン、フェニルアラニン、アスパルテーム、チロシン、トリプトファン、などが挙げられる。分散剤として機能するアミノ酸およびペプチドが好ましい。このカテゴリーに分類されるアミノ酸としては、疎水性アミノ酸(例えば、ロイシン(leu)、バリン(val)、イソロイシン(isoleu)、トリプロファン(try)アラニン(alinine)(ala)、メチオニン(met)、フェニルアラニン(phe)、チロシン(try)、ヒスチジン(his)およびプロリン(pro))が挙げられる。1つの特定の好ましいアミノ酸は、アミノ酸ロイシンである。ロイシンは、本明細書中に記載される処方で使用される場合、D−ロイシン、L−ロイシンおよびラセミ体ロイシンを含む。本発明に使用される分散能を増強するペプチドとしては、上記に記載されたもののような疎水性アミノ酸構成成分から構成されるダイマー、トリマー、テトラマーおよびペンタマーが挙げられる。例としては、ジロイシン、ジバリン、ジイソロイシン、ジトリプトファン、ジアラニンなど、トリロイシン(tripleucine)、トリバリン(tripvaline)、トリイソロイシン(tripisoleucine)、トリトリプトファン(triptryptophan)など;混合したジペプチドおよびトリペプチド(例えば、leu−val、isoleu−leu、try−ala、leu−tryなど、およびleu−val−leu、val−isoleu−try、ala−leu−valなど)、およびテトラアラニンおよびペンタアラニンのようなホモテトラマーまたはペンタマーが挙げられる。特に好ましいオリゴペプチドの賦形剤は、「Dry Powder Compositions Having Improved Dispersibity」と表題される、国際特許出願PCT/US00/09785のInhale Therapeutic Systems Inc.中に記載されるような2つ以上のロイシン残基で構成されるダイマーおよびトリマーである。これらのうちの、ジロイシンおよびトリロイシンは、特に好ましい。
本発明における使用のための賦形剤の別の好ましい特徴は、表面活性である。表面活性賦形剤(これはまた、分散剤(例えば、疎水性アミノ酸(例えば、ロイシンバリン、イソロイシン、フェニルアラニンなど)、ジペプチドおよびトリペプチド、ポリアミノ酸(例えば、ポリグルタミン酸)ならびにタンパク質(例えば、HSA、rHA、ヘモグロビンゼラチン))として機能し得る)は、特に好ましい。なぜなら、それらの表面活性性質に起因して、これらの賦形剤が呼吸用IL−4R組成物の粒子の表面に集中する傾向があり、その結果、自然状態で極めて分散可能な粒子を作製するからである。本明細書中に記載される呼吸用IL−4R組成物に含まれ得る他の例示的表面活性剤としては、ポリソルベート、レシチン、オレイン酸、塩化ベンズアルコニウムおよびソルビタンエステルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0068】
本発明の使用に適する炭水化物賦形剤としては、例えば、単糖類(例えば、フルクトース、マルトース、ガラクトース、グルコース、d−マンノース、ソルボースなど);二糖類(例えば、ラフィノース、メレジトース、マルトデストリン、デキストラン、スターチなど);およびアルジトール(例えば、マンニトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、キシリトールソルビタル(グルシット(glucito))、ミオイノシトールなど)が挙げられる。
【0069】
呼吸用IL−4R組成物としてはまた、緩衝液またはpH調製剤が挙げられる;代表的には、緩衝液は有機酸または有機塩基から調製された塩である。代表的な緩衝液としては、有機酸塩(例えば、クエン酸、アスコルビン酸、グルコン酸、カルボン酸、酒石酸、コハク酸、酢酸、またはフタル酸の塩)、Tris、塩酸トロメタミンまたはリン酸緩衝液が挙げられる。
【0070】
さらに、本発明の呼吸用IL−4R組成物としては、例えば以下のような高分子賦形剤/添加剤が挙げられ得る:ポリビニルピロリドン、誘導されたセルロース(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、フィッコル(ficcol)(高分子糖)、ヒドロキシエチルスターチ、デキストラン(例えば、シクロデキストラン(例えば、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストランおよびスルホブチルエステル−β−シクロデキストラン))、ポリエチレングリコール、ペクチン香料添加剤、塩(例えば、塩化ナトリウム)、抗菌剤、甘味料、抗酸化剤、帯電防止剤、界面活性剤(例えば、ポリソルベート(例えば、「TWEEM 20」および「TWEEN 80」))、レクチン、オレイン酸、塩化ベンズアルコニウム、ソルビタンエステル、脂質(例えば、リン脂質、脂肪酸)、ステロイド(例えば、コレステロール)およびキレート剤(例えば、EDTA)。高分子成分を含有する組成物にとって、ポリマーは、代表的に、組成物中で限定された程度(すなわち、重量あたり10%より少ない)を示し得る。本発明の好ましい組成物は、IL−4Rが、好ましくはリポソームでないか、またはカプセル化されたもしくはコートされていない(すなわち別々のコーティング層がない)ポリマーである組成物である。好ましいIL−4R組成物(例えば、本明細書中で例示された組成物)は、即効作用する処方物(すなわち、持続性放出適用よりも即効性のために設計される)である。
【0071】
本発明に従う呼吸用IL−4Rの使用に適した他の薬学的賦形剤および/または添加剤は、以下に記載されている:「Remington:the Scinece & Practice of Pharmacy」第19版、Williams & Williams、(19950「Physician’s Desk Reference」第52版、Medical Economics,Montvale,NJ(1998)および「The Handbook of Pharmaceutical Excipients」第3版、A.H.Kibbe編、American Pharmaceutical Association,Pharmaceutical Press、2000、これらの開示は本明細書中に参考として援用される。
【0072】
本発明に従って、呼吸用IL−4R粉末組成物は、乾燥粉末、結晶の乾燥粉末、非晶質ガラス、または両方の形態の混合物であり得る。表面活性剤を含む処方物にについて、表面活性物質(結晶形態または非晶質形態のいずれかにおいて)は、代表的に、原末中よりも高濃度中で粒子の表面に存在する。
【0073】
(D.呼吸用Il−4R組成物の調製)
呼吸用Il−4R粉末組成物(例えば、乾燥粉末処方物)は、好ましくは、噴霧乾燥によって調製される。処方物の噴霧乾燥は、例えば、「Spray−drying Handbook」、第5版、K.masters,John Wiley & Sons,Inc.,NY,NY(1991)、Platz,R.ら、国際特許出願番号WO97/41833(1997)およびWO96/32149(1996)(これらの内容は本明細書中に参考として援用される)中に一般的に記載されているように実施される。
【0074】
噴霧乾燥のためのIL−4R溶液の調製のために、Il−4R(および他の任意の賦形剤)は、一般に、水、必要に応じて生理学的に受容可能な緩衝液を含む水に溶解される。溶液のpH範囲は、一般的に、約3および約10の間で、ほぼ中性のpHが好ましい。なぜなら、このようなpHは、肺内での粉末の溶解後に、粉末の生理学的適合性の維持を介助し得るからである。水性処方物は、必要に応じて、さらなる水混和性溶剤(例えば、アセトン、アルコールなど)を含み得る。代表的なアルコールは低級アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなど)である。この溶液は、一般に、0.01%(重量/体積)〜約20%(重量/体積)、好ましくは0.1%(重量/体積)〜10%(重量/体積)、より好ましくは1%(重量/体積)〜3%(重量/体積)の濃度で溶解されるIL−4Rを含む。あるいは、IL−4R処方物の成分は、有機溶剤または補溶剤系を使用して噴霧乾燥され得、この系は、1つ以上の溶剤(例えば、アセトン、アルコール(例えばメタノールおよびエタノール)、エーテル、アルデヒド、炭化水素、ケトンおよび極性非プロトン性溶剤)を使用する。
【0075】
次いで、溶液を含むIL−4Rは従来の噴霧乾燥機中で噴霧乾燥され、この噴霧乾燥機は、例えば、市販のもの(Niro A/S(Denmark)、Buchi(Switzerland)など)であり、その結果、分散可能な呼吸用IL−4R組成物(好ましくは、呼吸用乾燥粉末の形態で)を生じる。活性剤溶液を噴霧乾燥するための最適条件は、処方成分に依存して変化し、そして、一般的に、実験で決定される。物質の噴霧乾燥に使用されるガスは、不活性ガス(例えば、窒素またはアルゴン)もまた適しているが、代表的に空気である。さらに、噴霧された物質を乾燥するために使用されるガスの注入口と出口の両方の温度は、噴霧した物質中でIL−4Rの分解が起こらないような温度である。このような温度は、一般に、注入口の温度が約50℃〜約200℃であり、出口の温度が約30℃〜約150℃であるが、代表的に実験で決定される。
【0076】
種々の噴霧乾燥プロセスパラメーター下での呼吸用乾燥IL−4R粉末組成物の調製は、実施例1および実施例2中に記載される。驚くべきことに、噴霧乾燥中に溶液の噴霧化により生成された剪断力は、IL−4Rの加水分解または凝集化を生じない。本明細書中に記載されるように、有効な物理的および化学的安定性ならびに有効な空力特性を有する極めて分散可能な乾燥粉末は、再生可能にそして種々のプロセス条件下にて生成され得る。
【0077】
あるいは、あまり好ましくはないが、呼吸用IL−4R粉末組成物は、凍結乾燥、真空乾燥、噴霧凍結乾燥、超臨界流体(super critical fluid)プロセス、空気乾燥、またはエバポレート乾燥の他の形態によって調製され得る。
【0078】
時には、上質な粒子凝集体(すなわち、上記の呼吸用IL−4Rの凝集体または塊)から構成される組成物を生成することによって、改良された操作/プロセス特性(例えば、減少した静電気、より良い流動性、低粘結)を有する呼吸用IL−4R乾燥粉末処方物を提供することが所望され得る。凝集体が容易に壊れやすい乾燥粉末粒子は、肺送達のための上質な粉末に戻り、これは、Johnson,K.,ら、米国特許第5,654,007号、1997(本明細書中に参考として援用される)中に記載されている。あるいは、呼吸用IL−4R粉末は、例えば、Ahlneck,C.ら、国際PCT出願番号WO95/09616(1995)(本明細書中に参考として援用される)に記載されるように、粉末成分を凝集させること、塊を得るために物質をふるいにかけること、より球形の塊を提供するために球状化すること、および均一な大きさの生成物を得るためにサイズ分けすることによって調製され得る。
【0079】
呼吸用IL−4R乾燥粉末は、好ましくは、製造、プロセスおよび保存の間、乾燥(すなわち、相対的に低湿度)条件下で保持される。使用される乾燥プロセスにかかわりなく、このプロセスは、実質的に非晶質のIL−4R粒子から構成される呼吸用高分散可能組成物を好ましく生じる。
【0080】
(E.呼吸用IL−4R粉末組成物の特性)
噴霧乾燥されたIL−4R粉末組成物の特定の物理的特性は、このような組成物の肺へのエアロゾル化された送達の効率を最大にするために、好まれる。
【0081】
呼吸用IL−4R粉末組成物は、肺へ浸透するのに有効な粒子から構成される。粒子の肺生理機能への通過は、本発明の重要な局面である。このために、本発明の粒子は、約10μmよりも小さい、好ましくは7.5μmよりも小さい、およびより好ましくは5μmよりも小さい中央粒子経(MMD)を有し、そして、通常は直径が0.1μm〜5μmの範囲である。好ましい組成物は、0.5μm〜3.5μmのMMDを有する粒子から構成される。異なる濃度の活性剤(単数または複数)および/または賦形剤の呼吸用IL−4R粉末組成物の例は、実施例1に記載される。呼吸用IL−4R粉末組成物はまた、非呼吸用キャリア粒子(例えば、ラクトース)を含み得、ここで、非呼吸用粒子は、代表的に、大きさが40ミクロンより大きい。好ましい実施形態において、乾燥粉末は非リポソームを含んでいるか、または非脂質を含んでいる。
【0082】
本発明の呼吸用IL−4R粉末組成物はさらに、約10μmの空気動力学的中央粒子経(MMAD)より小さい、好ましくは5.0μmより小さい、およびより好ましくは3.5μmより小さいエアロゾル粒子サイズ分布によって特徴付けられる。粉末の空気動力学的中央粒子経は、特徴として、約0.5μm〜10μm、好ましくは約0.5μm〜5.0μmのMMAD、より好ましくは約1.0μm〜4.0μmのMMAD、および、さらにより好ましくは約1.5μm〜3.5μmにわたる。
【0083】
呼吸用IL−4R粉末組成物(特に、呼吸用乾燥粉末組成物)は、一般的に、重量あたり10%より少ない、通常は重量あたり5%より少ない、および好ましくは重量あたり3%より少ない含水率を有する。このような低水分含有固体は、包装および保存においてより高い安定性を示す傾向がある。
【0084】
乾燥粉末は、好ましくは、約0.1g/cc〜10g/cc、より好ましくは約0.25g/cc〜4g/cc、より好ましくは約0.5g/cc〜2g/cc、および最も好ましくは約0.7g/cc〜1.4g/ccにわたる充填密度を有する。
【0085】
これらの粉末の放出用量(emitted dose)(ED)は、30%より大きく、そして、通常は40%より大きい。より好ましくは、本発明の粉末のEDは、50%より大きく、そして、しばしば55%より大きい。
【0086】
乾燥粉末の全体のエアロゾル能力を特徴付けるためのさらなる測定は、微粒子用量(FPD)または微粒子画分(FPF)(これらは、3.3ミクロンより小さい空気力学的径を有する粉末の質量パーセントを表す)である。40%よりも大きい、より好ましくは50%よりも大きい、なおより好ましくは60%よりも大きいFPF値を有する乾燥粉末は、特に、肺送達によく適している。0.5μmと3.5μmとの間の大きさのエアロゾル粒子を少なくとも50%含む粉末は、肺領域(肺胞を含む)に到達した際にエアロゾルの形態で送達された場合、非常に有効である。
【0087】
本発明の噴霧乾燥された呼吸用IL−4R粉末組成物はさらに、その予備噴霧乾燥された溶液または懸濁液のモノマー含量と比較して、本質的に変化しないモノマー含量を有すると特徴付けられる。言い換えれば、噴霧乾燥プロセスは、ダイマーまたは他の凝集体の形成を誘導せず、その結果、組成物中のパーセントモノマーに作用する。すなわち、噴霧乾燥粉末と予備噴霧乾燥溶液または懸濁液との間のモノマー含量の変化は、「本質的に変化されない」。例えば、予備噴霧乾燥された溶液または懸濁液のモノマー含量%と比較した噴霧乾燥された粉末のモノマー含量%は、実施例中に記載された代表的なIL−4Rによって例示されるように、好ましくは、ほんの約15%、より好ましくはほんの約10%、より好ましくはほんの7%、なおより好ましくは5%以下である。
【0088】
本発明の噴霧乾燥された呼吸用IL−4R粉末組成物は、極度の温度(「温度安定」)および湿度(「湿度安定」)で長期間保存された場合、「保存安定」で、すなわち、最小の不溶性凝集形成および/またはモノマー含量の最小減少によって特徴付けられる。例えば、本発明の噴霧乾燥された呼吸用IL−4R粉末組成物は、約2℃〜約50℃にわたる温度(好ましくは約25℃)、および/または0%〜約75%にわたる相対湿度(好ましくは約33% RH)で一定期間(例えば、2週間以上)保存した後、最小の凝集形成およびモノマー含量の最小減少に直面する。特に、本発明の保存された噴霧乾燥された呼吸用IL−4R粉末組成物は、好ましくは、約15%よりも少ない不溶性凝集体、より好ましくは約10%よりも少ない不溶性凝集体(予備噴霧乾燥された溶液または懸濁液と比較して)、より好ましくは約7%よりも少ない不溶性凝集体、なおより好ましくは約5%以下の不溶性凝集体を形成する。あるいは、本発明の保存された噴霧乾燥された呼吸用IL−4R粉末組成物は、好ましくは、ほんの約20%、好ましくはほんの約10%、より好ましくはほんの約7%、なおより好ましく約5%以下であるモノマー含量の減少に直面する。
【0089】
呼吸用粉末に基づく処方物と霧化器処方物との間の区別に注意することが重要である。処方物を噴霧する事実は「吸入可能」であるとみなされ得、すなわち、これらは口を介しそして肺へ呼吸されるにもかかわらず、これらは本明細書中で定義するように「呼吸用」ではない。例えば、ネブライザー処方物は、代表的に、深部肺(deep lung)の組織に到達し得ず、そして、そこの上皮細胞を介して血液循環へ吸収される。さらに、ネブライザー処方物は、溶液に基づき、すなわち、固体形態ではなく溶液で処方される。
【0090】
肺送達のための代表的な呼吸用IL−4R粉末組成物は、実施例1−5中で提供される。
【0091】
(F.呼吸用IL−4R粉末組成物の肺投与)
呼吸用IL−4R粉末組成物(特に、本明細書中の乾燥粉末組成物)は、好ましくは、任意の適切な乾燥粉末吸入器(DPI)(すなわち、(受動的方法または能動的方法によって)かつて分散された乾燥粉末を肺へ輸送するためのビヒクルとして患者の吸入呼吸を利用する吸入デバイス)を使用して送達される。好ましくは、Patton,J.S.ら、米国特許第5,458,135号(1995);Smith,A.ら、米国特許第5,740,794号(1998);Smith A.ら、米国特許第5,785,049号(1998)および国際特許出願PCT 00/18084中に記載されるような吸入治療システム(Inhale Therapeutic System)の乾燥粉末吸入デバイスである。
【0092】
この型のデバイスを使用して投与される場合、呼吸用IL−4R粉末組成物は、穿刺可能な蓋または他のアクセス表面(好ましくはブリスター包装またはブリスターカートリッジ)を有する容器中に含まれ、ここで、この容器は、単一の用量単位または複数の用量単位を含み得る。多数の空洞は、通常、Parks,D.J.ら、国際特許出願WO 97/41031(1997)中に記載されるように、測定された用量の乾燥粉末薬剤で満たされる。
【0093】
例えば、Cocozza,S.、米国特許第3,906,950号(1974)、およびCocozza,S.、米国特許第4,013,075号(1977)中に記載される型の乾燥粉末吸入器もまた、本明細書中で記載される呼吸用IL−4R粉末組成物を送達するのに適しており、ここで、被検体への送達のための前処理された用量の乾燥粉末は、硬ゼラチンカプセル内に含まれる。
【0094】
乾燥粉末の肺投与のための他の乾燥粉末分散デバイスとしては、例えば、以下中に記載されるデバイスが挙げられる:Newell,R.E.、欧州特許EP 129985(1998);Hodson,P.D.ら、欧州特許第EP 472598号(1996)、Cocozza,S.ら、欧州特許第EP 467172号(1994)、およびLloyd,L.J.ら、米国特許第5,522,385号(1996)。Astra−Draco「TURBUHALER」の様な吸入デバイスもまた、本発明のIl−4R粉末組成物の送達に適切である。この型のデバイスは、Virtanen,R.、米国特許第4,668,218号、;Wetterlin,Kら、米国特許第4,667,668号(1987);およびWetterilin K.ら、米国特許第4,805,811号中に詳細に記載される。粉末化された薬物に入ること、空気がスクリーンを通ることによってキャリアスクリーンから薬物を持ち上げること、または混合チャンバー中で粉末薬物と空気を混合し、続いてデバイスのマウスピースを介して患者に粉末を導入すること(例えば、Mulhauser,P.ら、米国特許第5,388,572号(1997))のいずれかのために空気を提供するようなピストンを使用するデバイスもまた、適している。
【0095】
吸入可能なIL−4R粉末組成物はまた、薬学的不活性液体高圧ガス(例えば、クロロフルオロカーボンまたはフルオロカーボン)中で薬剤の溶液または懸濁液を含有する加圧型定量吸入器(MDI)を使用することによって送達され得、これは、Laubeら、米国特許第5,320,094号(1994)およびRubsamen,R.M.ら、米国特許第5,672,581号(1994)中に記載される。使用する前に、呼吸用IL−4R粉末組成物は、一般に、周囲条件下で容器中に保存され、そして、好ましくは、約25℃の温度またはそれ以下の温度および約30%〜約60%にわたる相対湿度(RH)で保存される。より好ましい相対湿度条件(例えば、約30%より少ない)は、用量形態の二次包装において乾燥剤を組み込むことによって到達され得る。本発明の呼吸用乾燥粉末は、優れたエアロゾル性能だけでなく優れた安定性によって特徴付けられる。
【0096】
肺への直接送達のためにエアロゾル化される場合、本明細書中に記載されるIL−4R粉末組成物は、優れた肺生物学的利用能(in−lung bioavailability)を示す。
【0097】
(G.有効性)
本発明の呼吸用IL−4R粉末組成物は、肺に投与される場合、アレルギー疾患またはアレルギー障害(例えば、喘息、アトピー、アトピー性皮膚炎、ならびにIgEおよびIgGの高血清レベルに関する他の状態)の処理において特に有効である。
【0098】
呼吸用IL−4R粉末組成物はまた、特に、γ−インターフェロンと組み合わせて投与された場合、アレルギー性疾患、ウイルス性疾患、寄生性疾患、および細菌性疾患、ならびに白カビ感染疾患の処理または予防のために使用され得る。(欧州特許第EP 585,681号(1994)を参照のこと)。
【0099】
本発明の粉末組成物は、吸入された場合、肺の気道へ浸透し、循環系へ入り、そして有効な全身送達を達成する。さらに、肺へ投与されたIL−4R粉末の用量は、代表的に、口腔投与量形態に関する消化および分解に関連する損失に起因して、口腔で投与された用量よりも少ない。
【0100】
本発明の呼吸用IL−4R粉末組成物は、現在の喘息治療の代替品または補助物として有用であることを見出す。
【0101】
呼吸用IL−4R粉末組成物は、特に、IL−4の血清レベルおよびその後に関連する免疫グロブリン(例えば、IgEおよびIgG)の生理学的調節において有用であることを見出す。
【0102】
呼吸用IL−4R粉末組成物は、さらに、サイトカインIL−4の生物学的活性のエンハンサーとして利用可能であることを見出し、その結果、必要とされるサイトカイン用量を減少させ、そして、その後に関連する負の副作用を最小化させる(米国特許第6,063,371号(本明細書中に参考として援用される)を参照のこと)。
【0103】
以下の実施例は説明するが、本発明の範囲に限定することが企図されない。
【実施例】
【0104】
(材料および方法)
下記の材料を、以下の実施例に使用した。
【0105】
(材料)
L−ロイシン(Aldrich、St.Louis、MO)
塩酸(J.T.Baker、Phillipsburg、N.J.)
水酸化ナトリウムの0.1N容積測定溶液(J.T.Baker、Phillipsburg、N.J.)
エタノール、200プルーフ(USP/NF、Spectrum Chemical Mfg.Corp.、New Brunswick、N.J.)
メタノール(HPLCグレード、EM Industries、Gibbstown、N.J.)
組換えヒトIl−4R(rhuIl−4R)(Immunex Corporation、Seattle、WA)
雄SDラット(Simonsen laboratories、Gilroy、CA)
(粉末分析)
(IL−4R溶液):以下のIL−4R溶液を調製した。溶液Aは、pH7.0まで緩衝化した5mMのNaHPO中に22.6mg/mLの無血清IL−4Rを含んだ。溶液Bは、希釈水中に6.1mg/mLの無血清IL−4Rを含んだ。この溶液濃度を、単位体積あたりのペプチドの質量として示した。本明細書中で報告される値は、アミノ酸分析データからであり;UV試験からの値は、わずかに高かった(それぞれ、25.6および7.8mg/mL)。
【0106】
(粒径)例示的なIL−4R粉末の粒径分布を、SediSperseA−11(Micrometrics、Norcross、GA)に粉末を分散させた後、Horiba
CAPA−700 Particle Size Analyzerでの液体遠心沈降によって測定した。
【0107】
(含水量)この粉末の含水量を、Mitsubishi CA−06 Moisture Meterを使用するカールフィッシャー滴定法によって、または熱重量分析によって測定した。
【0108】
(MMAD)空気動力学的粒径分布(MMAD)を、カスケードインパクター(Graseby Andersen、Smyrna、GA)を使用して、流速28L/分で、入口マニホルドの粉末損失を無視して決定した。
【0109】
(放出用量)放出用量を、米国特許第5,740,794号に記載されるようなInhale乾燥粉末吸入器、および47mmの直径のGelmanガラスフィルタを使用して「定義」の節に記載されるように決定した。
【0110】
(走査型電子顕微鏡(SEM))粒子形態を、Philips Electron Optics(Eindhoven、The Netherlands)製のXL 30 ESEMを使用して決定した。
【0111】
(熱分析)熱分析実験を、改良されたDifferntial Scanning Calorimeter(mDSC−Model 2920)Dielectric Analyzer(DEA 2970)およびThermal Gravimetric Analyzer(TA Instruments(New Castle、DE)製のTGA Model 2950)を使用して行った。高熱期顕微鏡法をNikon Optiphot−2−pol光学顕微鏡(Nikon Inc.、Torrance、CA)、HamatsuカメラおよびC2400コントローラー(Hamatsu Photonics、herrsching、German7)、Mettler−Toledo FP90中央プロセッサ(Mettler−Toledo、Columbus、OH)およびFP8902H高熱期アタッチメント(Mettler、Toledo、OH)を使用して行った。
【0112】
(化学的特徴づけ):SE−HPLC実験を、Millenium Vソフトウエア(Waters)を実行しながら、Waters HPLC Allianceモデル 2690システム(Alliance HPLC Systems、Millford、MA)で行った。クロマトグラフィーカラムを、Phenomenex(Torrance
CA)から入手した。UV実験を、Hitachi U−3000、デュアルビーム分光器(Hitachi Instruments Inc.、San Jose、CA)により実施した。SDS−PAGW実験を、Novex Xcall電気泳動装置(Novex、San Diego、CA)により実施した。
【0113】
(実施例1)
(IL−4R乾燥粉末の調製)
優れたエアロゾル特性を有し、優れた化学安定性および物理安定性によってさらに特徴付けられる、インターロイキンレセプタータンパク質IL4−Rの貯蔵安定性噴霧乾燥粉末を調製した。粉末を賦形剤の存在下と非存在下の両方で調製した;使用した賦形剤は、種々の代表的な化学類(例えば、有機酸塩、アミノ酸、金属陽イオン)由来である。このIL−4粉末は、長期間の貯蔵の際に安定であり、そして極度の温度および湿度条件に耐性である。
【0114】
代表的なIl−4R粉末を以下のプロトコルに従って調製した。
【0115】
(実施例1(A)−IL−4Rのニート処方物)
IL−4Rの乾燥粉末組成物を、噴霧乾燥のために、賦形剤の添加なしで脱イオン水に処方した。IL−4Rの600〜700mg処理単位のニート処方物を、適切な体積の溶液Aを噴霧乾燥することによって調製した。プレ噴霧乾燥溶液中のリン酸緩衝液の最終濃度は、1.9mMであった。
【0116】
(実施例1(B)−IL−4Rの塩化亜鉛含有処方物)
IL−4Rの乾燥粉末組成物を、噴霧乾燥のために塩化亜鉛とともに脱イオン水中に処方した。600〜700mg処理単位のZnCl:Il−4Rが5.4:1である処方物を、19.53mLのIL−4R溶液Aおよび0.456mLのZnCl溶液(19.37mg/mL)を50mLのメスフラスコ内で調合し、脱イオン水を加えて最終体積を50mLに調整することによって調製した。リン酸緩衝液の最終濃度は、1.9mMであった。
【0117】
(実施例1(C)−IL−4Rのクエン酸含有処方物)
IL−4Rの乾燥粉末組成物を、噴霧乾燥のために、クエン酸塩を含有する脱イオン水に処方した。600〜700mgの処理単位のクエン酸:Il−4R処方物を、約12mLの溶液Aと200mgのクエン酸溶液(pH7.5)を合わせ、脱イオン水を加えて50mLの最終体積に調整することによって調製した。リン酸緩衝液の最終濃度は、1.2mMであった。
(実施例1(D)−Il−4Rのロイシン含有処方物)
IL−4Rの乾燥粉末組成物を、噴霧乾燥のために、ロイシンを含有する脱イオン水に処方した。600〜700mgの処理単位のロイシン:IL−4R処方物を、約12mLの溶液Aと200mgのロイシンを合わせ、脱イオン水を加えて50mLの最終体積に調整することによって調製した。リン酸緩衝液の最終濃度は、1.2mMであり、pHは7.5であった。
【0118】
処方物1(A)〜1(D)の相対成分量(wt/wt)を、以下の表1に要約する。
【0119】
【表1】

意図されるさらなる粉末処方物としては、ニートなもの(neat)と賦形剤の両方を含有し、クエン酸緩衝液または水性(緩衝液なし)のIL−4R溶液を使用して調製されるIL−4R処方物が挙げられる。本発明に従う好ましいIL−4R粉末は、IL−4Rに加え、1以上の以下の賦形剤を含有する:トリロイシン、ラフィノース、マンニトール、スクロース、F−68、(マグネシウム、カルシウムなどの)2価の金属陽イオン、グルコホスフェート、亜鉛塩、トレハロース、グリシンおよびヒスチジン。特定の処方物は、10〜40重量%のトリロイシン、または1重量%のF−68、または10重量%のクエン酸、または3:1〜10:1(重量比)のカチオン性の2価の金属陽イオン:IL−4R、または10〜30重量%のスクロース、または5〜50重量%のトレハロース、または上記の任意の組合せを含み得る。さらなる例示的なIl−4R処方物としては、クエン酸とロイシンの両方(例えば、クエン酸:ロイシン:IL−4Rの比が15:15:70である処方物)またはラフィノース(例えば、5%〜50%のラフィノースを含む処方物)を含む処方物が挙げられる。
【0120】
上記のIL−4R処方物を、改良されたサイクロン、噴霧器ノズルおよび粉末収集容器を取り付けた、実験室スケールのBuchi小型噴霧乾燥機(Buchi Labortechnik、Ag.、Meierseggstrasse、Switzerland)を使用して噴霧乾燥した。このBuchi噴霧乾燥機の噴霧器を、きれいな乾燥空気で操作した。Buchi内への液体の流速は、5mL/分であった。この入口温度を目的の粒子径および粒子形態を達成するために調節した(80℃〜150℃)。出口温度の範囲は、約30℃〜100℃であった。IL−4R処方物ロット1(A)〜1(D)に対する収率は、75%よりも大きく、78〜91%の範囲であった。このIL−4R粉末(3±0.15mg)を相対湿度5%未満のグローブボックスに移し、米国特許第5,740,794号に記載されるように乾燥粉末吸入デバイスで使用するのに適切な単位投薬形態(ブリスター包装、BP)で配置し、生じた固体の特徴を、以下に記載する。
【0121】
(実施例2)
(IL−4R粉末処方物の安定性)
実施例2〜5の研究の目的は、実施例1に記載される代表的なIL−4R乾燥粉末処方物のエアロゾル性能、物理的安定性、および化学的安定性を評価することであった。エアロゾル試験、熱試験、物理学試験、および化学的試験を、最初に調製されるような粉末で実施した。熱分析および物理的分析および化学的分析もまた、4つの異なる温度(2〜8℃、25℃、40℃および50℃)および25℃における3つの相対湿度(0%、33%および75%)での2週間の貯蔵後に実施した。この安定性プロトコルを以下に示す:
粉末をホイル/PVCブリスター包装に詰め、開始時点のみでの放出用量、粒径分布、および熱分析についてアッセイした。化学的な特徴付けおよびSEM分析をバルクエアロゾル薬物粉末(すなわちブリスター包装に含まれない)に対して、開始時点および2週間経過時点において実施した。すべての粉末を5%未満の相対湿度の湿度制御グローブボックス内で操作した。
【0122】
バルク粉末をグローブボックス中のホウケイ酸ガラスバイアルに計りとった。0%の相対湿度(RH)について(安定サンプル)、バイアルに栓をし、ホイルを巻いた乾燥剤を含む袋に入れ、熱シールし、その後、温度チャンバに貯蔵した。湿度を制御した安定サンプルについて、バイアルを開けたままにし、25℃のデシケーターに貯蔵した。2週間後に、サンプルを取りだし、UV、SDS−PAGE、SE−HPLCおよびSEMによって分析した。
(表2:IL−4R噴霧乾燥バルク粉末およびストック溶液に対する安定なプロトコルの概要)
【0123】
【表2】

ブリスター包装を使用して実施した試験
バルク粉末を使用して実施した試験
栓をして、シールしたホイルオーバーラップ(sealed foil overwrap)においてパラフィルムを付けた(parafilmed)バルクエアロゾル粉末
栓をせずにホウケイ酸ガラスバイアル中に貯蔵したバルクエアロゾル粉末
(表3:ストックからの水性希釈)
【0124】
【表3】

IL−4R溶液Aで希釈された溶液
栓をして、シールしたホイルオーバーラップにおいてパラフィルムを付けたホウケイ酸ガラスバイアル中に貯蔵された1mLのIL−4R溶液(1mg/mL)
(実施例3)
(IL−4R粉末処方物のエアロゾル性能)
エアロゾル試験を、Inhale Therapeutic Systems Inc.に譲渡した米国特許第5,740,794号に記載されるような乾燥粉末吸入器を使用して実施した。充填した全てのブリスター包装を、エアロゾル試験に使用する前に乾燥ボックスに貯蔵した。
【0125】
(実施例3(A):放出用量)
放出用量を、デバイスのチャンバの吹き出し口を覆うホルダーに配置されたガラス繊維フィルタによりエアロゾルを収集することによって測定した。放出用量パーセント(ED%)を測定するために、ブリスター包装を、上に記載されるような乾燥粉末吸入器を使用して、エアロゾルとして分散させた。この粉末サンプルを、事前に測量しておいたガラス繊維フィルタ(Gelman、47mm直径)上で収集した。このエアロゾル群を30±0.5L/分の空気流速で、2.5〜3.5秒引くことによってチャンバからフィルタ上に収集した。吸引の時間は、自動タイマーで制御した。このサンプリングパターンは、患者のゆっくりとした深い呼吸とを模倣している。
【0126】
このED%を、フィルタ上に収集された粉末の質量を、ブリスター包装中の粉末の質量(実質量)で割ることによって計算した。結果を表4に報告する。報告した各結果は、10回の測定の平均偏差および標準偏差であった。
【0127】
(実施例3(B):空気動力学的粒径(MMAD)および幾何標準偏差(GSD))
エアロゾルの空気動力学的粒径および粒径分布を8つのステージ(9.0、5.8、4.7、3.3、2.1、1.1、0.7、および0.4μmのカットサイズ)のAndersen Cascade Impactorを使用して得た。各Andersen測定を、28.3±0.5L/minで2.5秒間吸引しながら、乾燥粉末吸入器に10個の3mgの充填重量のブリスター包装を分散させることによって得た。吸引の時間は、自動タイマーで制御した。このデータから、空気動力学的粒径を計算した。結果を表4に示す。
【0128】
幾何標準偏差(GSD)を、Andersen MMADデータから図解的に計算した。このプレートの切断直径を、確率目盛に対する累積的なパーセントアンダーサイズの関数としてプロットした。このGSDを、50%での直径で割った85%での直径として得た。得られた値を表4に列挙する。
【0129】
(実施例3(C):微粒子画分(FPF))
FPF%<3.3μmを、短いステーク設定のAndersenカスケードインパクターステージFおよび3を使用することによって得た。各FPF測定を28.3L/分で2.5秒間、真空に吸引しながら、乾燥粉末吸入器中に計りとられた3mgの充填重量のブリスター包装を2つ分散させることによって得た。結果を表4に示す。
(表4:IL−4R処方物(3mg充填重量)に対する初期エアロゾル試験結果)
【0130】
【表4】

n=3に対するRSD
**値は、10個の測定値の平均値およびRSD(括弧内)である。
【0131】
IL−4R粉末処方物のエアロゾル性能は、極めて良好であり、全てが実質的に60%以上のEd値および4μm以下のMMAD値を有し、粒子の少なくとも34%は、3.3μm未満のMMADを有する。
【0132】
このGSD値は、ロイシン処方物を除いて、全て2μm未満であった。このことは、観察された双峰の粒径分布が、AndersenCIから作成されたことに起因して、人為的であると考えられた。
【0133】
(IL−4R粉末処方物の固体状態の特徴)
(実施例4(A)−走査型電子顕微鏡)
走査型電子顕微鏡を、噴霧乾燥粉末の最初の形態学情報を得、温度および湿度の変化条件下での貯蔵の際の形態学の変化を評価するために利用した。
【0134】
画像を、画像構成用2次電子を取りこむためのEverhart−Thornley検出器を使用して、高い減圧モードで操作されるPhilips XL30 ESEMで得た。LaB電源を使用して、電圧を3〜10kVに高めた。処理した距離範囲は、30〜10μmであった。
【0135】
ロイシン:IL−4R粉末以外の全ての粉末の処方物1(D)は、実施例2の安定なプロトコルに記載される温度およびRH条件での2週間の貯蔵後、形態学において明らかな変化を示さなかった(表2)。いくつかのロイシン:IL−4R粉末は、33〜75%RHおよび40〜50℃の温度において、RH値の形態学変化を示し、これはリボン様成長で特徴付けられ、この成長は、アモルファスロイシンの結晶化に起因し得る。
【0136】
SEMによって可視的に試験する場合、この粒子は、皺のよった、干しブドウのような形態学を示し得る。皺の多い粒子(すなわち、実質的に滑面であるよりも粗面である深く皺のよった粒子)がより好ましい。
【0137】
代表的なIL−4R処方物に対する温度および相対湿度の影響を測定した。調製された例示的なIL−4R粉末である、ロイシン噴霧乾燥粉末は、形態学において、温度およびRH操作された変化に基づいてわずかに形態学的に安定であるようであった。有意な形態学変化は、同一の貯蔵条件に曝された場合、他の粉末のいずれにおいても見られなかった。
【0138】
(実施例4(B)−熱分析)
(示差走査熱分析(Calormietry)(DSC)):DSCプロフィールを、TA Instruments DSCにおける密封してシールしたパン中のサンプルを加熱することによって増強した。サンプル重量は、3.5〜4.5mgのオーダーであった。このDSC加熱速度は、10℃/分であり、パージガスとしてヘリウムを流した。この温度を最初に70℃まで上げ(ramp)、10℃/分で−30℃まで冷却し、そして10℃/分で220℃まで再び加熱し、調節モードを使用する代わりに、熱過程を除いた。全ての粉末は、約198℃で大きな吸熱を示した。亜鉛含有IL−4R処方物である処方物1(B)は、約180℃でさらなる吸熱を示した。クエン酸含有IL−4R処方物である処方物1(C)は、約172℃でさらなる吸熱を示した。ロイシン含有IL−4R処方物である処方物1(D)は、約186℃でさらなる吸熱を示した。この技術を使用する粉末は、ガラス転移(Tg)を示さなかった。
【0139】
従って、本発明の噴霧乾燥粉末は、好ましい乾燥粉末処方物の特徴(特に長期間の貯蔵)である、室温よりも非常に高いガラス転移温度を示す。従って、別の局面において、本発明の代表的なIL−4R粉末は、100℃より高いTgによって特徴付けられる。本発明の粉末の高いTgに起因して、これらのIL−4粉末は、周囲における温度または25℃を超えて、安定に貯蔵され得、そして30℃、35℃、40℃、45℃、50℃、55℃、60℃、65℃またはそれ以上(約100℃までもしくはそれ以上でさえも)の温度で、延長された期間(例えば、1週間、2週間、1ヶ月、2ヶ月、3〜6ヶ月、9ヶ月、1年までまたはそれ以上)で安定に貯蔵され得るにも拘わらず、これらは有利なエアロゾル特性(放出用量における実質的に最小の液滴(約15%以下、好ましくは約10%以下、さらにより好ましくは約5%以下)を示し、そして貯蔵の際に、約1ミクロン以下、好ましくは約0.75ミクロン以下、そしてさらにより好ましくは、0.5ミクロン以下のMMADの増加によって特徴付けられるように、MMADにおける変化を実質的に示さない)を維持する。
【0140】
(誘電緩和分光測定(Dielectric Relazation Spectrometry)(DRS)):ILR−4R噴霧乾燥処方物のガラス転移温度(Tg)は、DSCによって測定され得なかったので、DRSを実施した。2つのDRS実験を、亜鉛含有IL−4R処方物である処方物1(B)に対して行い、代表的な処方物のガラス転移温度をより良く同定した。実施した第1の実験は、標準的なDRS分析(TA Instruments Dieletctic Analyzer(DEA2970))であり、2℃/分にて30℃〜150℃で実行し、そして再び30℃まで冷却し、1、10、100、10および10および10Hzの周波数で走査した。実施した第2の実験は、まさに熱力学的分析器(TMA)のような軟化実験であり、2℃/分30℃〜250℃で実行し、1、10、100、10および10および10Hzの周波数で走査した。両方の実験をZn:IL−4R粉末(処方物1(B))上で100℃で一晩乾燥後(処方物1(B)〜(D))行った。
【0141】
これらの研究から、乾燥サンプルは分解温度より低いガラス転移を示さず、乾燥されないサンプルは150℃より低いガラス転移を示さないと結論に付けた。このことは、DSCによって観察される100℃未満のベースラインにおける変化は、ガラス転移事象に起因しなかったことを示す。従って、この処方物のTgは、タンパク質の分解温度よりも高い。
【0142】
(熱力学的分析(TMA)):TMA実験を、DRS実験の間、サンプルの厚さをモニタリングすることによって実施した。ガスケットを除く他は、第1の実験のように同一の電極配置を使用した。ラム力を20Nにセットし、サンプルの厚さおよび温度を、30℃〜250℃のいくつかの時間間隔で手動で記録した。軟化の開始は、処方物1(B)および処方物1(B)−Dの両方について224℃である。TMA実験に見られる軟化は、分解に起因しており、同時にガラス転移が起こっている可能性がある。より低い温度での他の軟化が起こらないので、標準的なDRS試験からの1Hzのピークは、測鎖の動きまたはイオン電導の開始のような別の機構に起因し、ガラス転移には起因しない(Seyler、R.J.、1994、「Assignment of the Glass Transition」、ASTM、108〜113)。このガラス転移が分解と同時に起こる場合、1Hzより低い損失を有するサンプルにおいて、因子ピークは、同様に、より低い温度にシフトされるガラス転移を有し得る。この標準的なDEA試験は、150℃まででのみ実施されたため、150℃未満ではガラス転移が存在しないことが明らかである。この型の分析に対して、誘電率(permitivity)対温度プロットの評価によって、予想される標準的なs形状プロフィールが確認された。
【0143】
(熱重量分析(Therman Gravimetric Anlysis)(TGA)):噴霧乾燥後の粉末中の残渣溶媒含有量を、TA Instruments TGAを使用するTGAによって測定した。約3mgの粉末を3%未満の相対湿度であるグローブボックス内の密封されたアルミニウムパンに詰めた。このTGAを、パンなしでゼロに合わせ、そして、粉末の重量を評論の節に記録した。分析のちょうど前に、パンをピンで穿孔し、機器に装填した。この走査速度は、25〜175℃で10℃/分であった。この結果を表5に示す。
(表5:IL−4R噴霧乾燥粉末のTGAによる溶媒含有量)
【0144】
【表5】

(ホットステージ顕微鏡法(HSM)) ホットステージ顕微鏡法を、Nikon Optiphot−2−pol光学顕微鏡、HamatsuカメラおよびC2400制御装置、Mettler Toledo FP90中央処理装置およびFP8902Hホットステージ付属部品を用いて、室温から220℃までで実施した。粉末の外観において有るか無しかの変化を、乾燥調製物で観察した。ニート処方物(NM1392−04)および亜鉛処方物(NM1392−05)は、約80℃でいくつかの粒子の「はじけ(popping)」または粒子の跳ね(jumping)を示した。全ての処方物について、高温液浸油中で評価し、約90℃でチャネルを形成し、そして110℃でガス放出を観察した。このガス放出は、粉末からの水分損失に起因することと考えられる。このガス放出についての延長された時間は、DSCにより観測された下方勾配の特徴と一致する。
【0145】
(実施例5)
(IL−4R粉末処方物の化学的特徴付け)
いくつかの技術を、凝集および分解の程度を決定するために、実施例1のサンプルを分析するために使用し得る。不溶性凝集体を、目視検査およびUV分光測定法によって決定した。可溶性凝集体を、サイズ排除クロマトグラフィーによって定量的に、そしてSDS−PAGEによって定性的に分析した。
【0146】
(実施例5(A):サイズ排除高圧液体クロマトグラフィー(SE−HPLC))
可溶性凝集体を、SE−HPLCによって定量的に測定した。サンプルを、注入まで5℃で貯蔵した。クロマトグラムを、220nmで抽出および処理した。
【0147】
噴霧乾燥前の処方された溶液のモノマー含量パーセンテージを、対応する再構成されたエアロゾル薬物粉末と比較した。処方された溶液と再構成されたエアロゾル薬物粉末との間でモノマー含量パーセンテージに有意な変化は存在しなかった。結果を、以下の表6に示す。
【0148】
2週間での粉末安定性温度のデータから得られた結果に基づいて、貯蔵温度が増加するにつれて、初期時間データと比較してモノマー含量の量が減少した。初期からのモノマーパーセンテージの最大の変化は、50℃で、ニート処方物中2.1%、亜鉛処方物およびクエン酸処方物の両方で1.9%までの範囲であった。2週間の粉末安定性湿度の研究において、クエン酸処方物は、極度の75%のRHで、初期からわずか1.8%のモノマーの最大の落ち込みを示した。これは、おそらくクエン酸塩の結晶化に起因した。従って、本発明のIL−4R組成物は、(例示的な組成物のモノマー含量によって証明されるように)噴霧乾燥の間に熱分解を実質的に示さず、そして種々の例示的な温度および湿度条件下で、貯蔵の間にモノマーの最小限の減少を示す。噴霧乾燥の間にしばしば有意な凝集の傾向がある、他のタンパク質と異なり(Maa,Y.F.ら、J.of Pharmaceutical Sciences,第87巻,(2),152−159頁(1997))、IL−4Rは、そのような条件に驚くほど耐久性でありかつ影響されないことが見出され、そして一般的に使用される安定賦形剤/保護賦形剤の非存在下でさえもこのタンパク質が有意な分解を示さない、噴霧乾燥粉末を形成する。
【0149】
2週間25℃および50℃で貯蔵した2つの1mg/mLの液体サンプルを、コントロールとして評価した。25℃で貯蔵した液体サンプルは、モノマーのパーセンテージとして表現される0.7%のダイマー含量を有したが、17%を越える低分子量種を有した。50℃で、この液体は、モノマーのパーセンテージとして表現される2.3%のダイマー含量および2.1%の低分子量種を有した。サンプルを調製および再試験し、そして最初の結果を確認した。50℃で2週間のIL−4R液体処方物のモノマー含量におけるパーセンテージの低下は、初期から約40%であるが(表6および図1、図2、および図3を参照のこと)、粉末処方物は、本質的に変化しないままである。従って、IL−4Rの溶液処方物は、本質的に同一の条件下で所定の期間貯蔵された、対応する粉末処方物よりも、顕著により不安定(すなわち、分解する傾向がある)である。興味深いことに、噴霧乾燥の間、溶液中のIL−4R分子によって経験される、温度および剪断の極度の条件は、モノマー含量の有意な低下を引き起こさないか、または貯蔵して置かれた液体サンプルについて観測されるような分子の大規模な化学的分解を促進しなかった。上記のデータは、化学的および物理的安定性データの両方に基づいて、貯蔵に関して、対応する液体処方物を越えるIL−4Rの粉末処方物の顕著な利点を指摘する。
【0150】
(実施例5(B):紫外線分光法(UV))
UV分光光度分析を、再構成したサンプル中の濁度(すなわち、凝集/沈殿)を評価するために使用した。測定を、Hitachi U−3000、デュアルビーム分光光度計で実施した。装置パラメーターを、300nm/分の走査速度;1.0nmのスリット幅;および450nm〜200nmまでの範囲の走査で設定した。サンプルを、粒子状物質について目視検査した。不溶性凝集体を、UVで溶液の濁度を測定することによって定量的に決定した。散乱に対して補正するための線形回帰を、350、375および400nmでの吸光度の値から実施した。光散乱に対して補正されたλmaxでの吸光度を、回帰直線の式から外挿した。不溶性凝集体パーセントは、以下の式1で示されるように、λmaxで、光散乱に対して補正した吸光度を補正していない吸光度で割り算したパーセンテージである。
【0151】
【数1】

サンプルは、分析に先立って、水で1mLあたり0.1mgのIL−4R(Il−4R)ペプチドの濃度まで再構成したか、または希釈したかのいずれかあった。
【0152】
1つのサンプルを除いて、全ての溶液サンプルは、噴霧乾燥の前および後で、粒子状物質の可視的な徴候を有さないか、または5%未満の算出された不溶性凝集体を有した。この噴霧乾燥ニート処方物(処方物1(A))は、初期条件では視覚的に透明であるが、式1によって算出された場合、7%の不溶性凝集体を有した。このサンプルについて2週間の安定性の時点は、3%の不溶性凝集体しか含まないので、初期値が誤りであると結論付けた。特定の温度および湿度条件に対して2週間の曝露後の全てのサンプルは、微粒子または検出可能な不溶性凝集体の可視的な徴候を示さなかった。3.5%未満の不溶性凝集体を、全てのバッチについて式1を使用して算出した。表6は、SE−HPLCによってのみ収集されたデータを含み、そして不溶性凝集体の情報を含まない。
【0153】
【表6】

(実施例5(C):ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE))
可溶性凝集体および分解を、Novex Silver Xpresss染色キットを使用して、SDS PAGEによって定性的に測定した。Novexプレキャスト4〜20%トリス−グリシンゲルを、Novex Xcell II電気泳動ミニセル上で電気泳動した。サンプルは、水で1mLあたり0.1mgのIL−4Rペプチドの濃度まで再構成するか、または希釈するかのいずれかであった。溶液を、還元性条件下および非還元性条件下で調製し、そしてレーンあたり1〜5μgのタンパク質のロードで適用した。この5μgのタンパク質ロードを、1μgのタンパク質ロードで観測不能なバンドの検出を試験および増強するために電気泳動した。還元したサンプルを、2−メルカプトエタノールで処理し、そして100℃で3分間加熱した。ゲルを、125V、25mA/ゲルで、ゲル先端が下端に到達するまで(約1.5時間)電気泳動した。噴霧乾燥前溶液、初期粉末、および安定性サンプルに加えて、1mLあたり1mgのIL−4Rペプチドの溶液をコントロールとして分析した。還元性ゲルおよび非還元性ゲルを、液体処方物に対して、初期、25℃で2週間および40℃で2週間で電気泳動した。
【0154】
噴霧乾燥前の処方された溶液と再構成したエアロゾル薬物粉末との間でゲル特性において変化が存在しなかった。ゲル上のIL−4Rの全てのサンプルおよびコントロールのモノマーバンドは、報告される値よりもより高分子量(約50kDa)で泳動し、そして幅広および拡散して現れる。これは、タンパク質がグリコシル化され、そしてゲルを通るIL−4Rの泳動に影響することに起因する可能性が最も高い。約97kDaに泳動する別の明確なバンドが存在し、これは、おそらくタンパク質のダイマー形態であるダイマーに起因した。いくつかのより低分子量のバンドが、5μgのロードゲル中に見え、これらは同定されていない。
【0155】
初期と同様に、コントロール溶液と比較した湿度の研究の温度のいずれにおいても、2週間のバルクのエアロゾル粉末の安定性ゲル特性において可視的な変化は存在しなかった。25℃、75%RHで2週間インキュベートしたニートのIL−4Rサンプルは、最初のゲル中で検出されず、おそらく希釈の過失に起因した。繰り返し分析すると、このサンプルは、他の安定性サンプルと等価であった。IL−4R溶液サンプルのゲルは、噴霧乾燥粉末と比較して、高い程度の分解および凝集を示した。
【0156】
要約すると、安定性研究から得られた結果に基づいて、IL−4Rは、バルク粉末処方物(処方物1(A)〜1(D))の4つの全てのロットにおいて、2〜8℃、25℃、40℃および50℃で2週間まで、さらにむき出しで貯蔵した粉末について0%、33%および75%のRHで25℃で、化学的に安定であることが観測された。不溶性凝集体は、全てのバッチについて、UVによって観測されなかった。モノマー含量は、これらの条件で全ての処方物に対して2%未満低下し、クエン酸処方物が、貯蔵の間にモノマー含量の最大の減少を示した。
【0157】
本明細書中に言及されるそれぞれの刊行物、特許または特許出願の開示は、それぞれの個々の刊行物、特許または特許出願が、詳細および個々に参考として援用されることが示されるように、同じ程度で本明細書中に参考として援用される。
【0158】
前述の発明は、理解の明瞭さの目的のために、例示および例の目的で、いくらか詳細に記載されているが、特定の変更および改変が、添付された特許請求の範囲の範囲内で実施され得ることは、当業者に明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
5ミクロン未満の質量中心空気力学的直径(MMAD)を有するIL−4R粒子およびリン酸緩衝剤を含有する噴霧乾燥粉末組成物であって、該組成物が、該組成物の噴霧乾燥前溶液または噴霧乾燥前懸濁液のIL−4R凝集体およびIL−4Rモノマー含量のレベルに比べてIL−4Rモノマー凝集体形成において最小限の増加およびIL−4Rモノマー含量において最小限の変化を示すものである、組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の貯蔵安定性粉末組成物であって、該組成物が、25℃で14日間の該組成物の貯蔵後に決定される場合、その噴霧乾燥前溶液または噴霧乾燥前懸濁液のIL−4Rモノマー含量と比較して、5%以下のIL−4Rモノマー含量の減少によって特徴付けられる、組成物。
【請求項3】
請求項2に記載の貯蔵安定性粉末組成物であって、該組成物が、25℃で14日間の該組成物の貯蔵後に決定される場合、その噴霧乾燥前溶液または噴霧乾燥前懸濁液のIL−4R凝集体の形成の程度と比較して、5%以下のIL−4R凝集体の形成の程度によって特徴付けられる、組成物。
【請求項4】
請求項1に記載の組成物であって、該組成物が、湿気に安定性であり、湿性条件下、その噴霧乾燥前溶液または噴霧乾燥前懸濁液の前記IL−4R凝集体レベルおよびIL−4Rモノマー含量と比較して、IL−4R凝集体形成の最小限の増加およびIL−4Rモノマー含量の最小限の変化を示す、組成物。
【請求項5】
請求項4に記載の湿気安定性組成物であって、該組成物が、相対湿度33%で14日間の該組成物の貯蔵後に決定される場合、10%以下のIL−4Rモノマー含量の減少によって特徴付けられる、組成物。
【請求項6】
請求項4に記載の湿気安定性組成物であって、該組成物が、相対湿度33%で14日間の該組成物の貯蔵後に決定される場合、7%以下のIL−4Rモノマー含量の減少によって特徴付けられる、組成物。
【請求項7】
請求項4に記載の湿気安定性組成物であって、該組成物が、相対湿度33%で14日間の該組成物の貯蔵後に決定される場合、5%以下のIL−4Rモノマー含量の減少によって特徴付けられる、組成物。
【請求項8】
請求項4に記載の湿気安定性組成物であって、該組成物が、相対湿度75%で14日間の該組成物の貯蔵後に決定される場合、5%以下のIL−4Rモノマー含量の減少によって特徴付けられる、組成物。
【請求項9】
請求項4に記載の湿気安定性組成物であって、該組成物が、相対湿度33%で14日間の貯蔵後、10%未満の不溶性凝集体の形成によって特徴付けられる、組成物。
【請求項10】
請求項1に記載の組成物であって、該組成物が、相対湿度33%で14日間の貯蔵で7%未満の不溶性凝集体の形成によって特徴付けられる、組成物。
【請求項11】
請求項1に記載の組成物であって、該組成物が、相対湿度33%で14日間の貯蔵で5%未満の不溶性凝集体の形成によって特徴付けられる、組成物。
【請求項12】
請求項1に記載の組成物であって、該組成物が、相対湿度75%で14日間の貯蔵で5%未満の不溶性凝集体の形成によって特徴付けられる、組成物。
【請求項13】
請求項1に記載の組成物であって、該組成物が、温度安定性であり、2℃〜50℃の範囲の極限温度下で、その噴霧乾燥前溶液または噴霧乾燥前懸濁液の前記IL−4R凝集体レベルおよびIL−4Rモノマー含量と比較して、IL−4R凝集体形成の最小限の増加およびIL−4Rモノマー含量の最小限の変化を示す、組成物。
【請求項14】
請求項13に記載の温度安定性組成物であって、該組成物が、2〜8℃または40〜50℃で14日間の貯蔵後に10%以下のIL−4Rモノマー含量の減少によって特徴付けられる、組成物。
【請求項15】
請求項13に記載の温度安定性組成物であって、該組成物が、2〜8℃または40〜50℃で14日間の貯蔵後に7%以下のIL−4Rモノマー含量の減少によって特徴付けられる、組成物。
【請求項16】
請求項13に記載の温度安定性組成物であって、該組成物が、2〜8℃または40〜50℃で14日間の貯蔵後に5%以下のIL−4Rモノマー含量の減少によって特徴付けられる、組成物。
【請求項17】
請求項13に記載の温度安定性組成物であって、該組成物が、2〜8℃または40〜50℃で14日間の貯蔵後に10%未満の不溶性凝集体の形成によって特徴付けられる、組成物。
【請求項18】
請求項13に記載の温度安定性組成物であって、該組成物が、2〜8℃または40〜50℃で14日間の貯蔵後に7%未満の不溶性凝集体の形成によって特徴付けられる、組成物。
【請求項19】
請求項13に記載の温度安定性組成物であって、該組成物が、2〜8℃または40〜50℃で14日間の貯蔵後に5%未満の不溶性凝集体の形成によって特徴付けられる、組成物。
【請求項20】
エアロゾル化形態の請求項1に記載の粉末組成物。
【請求項21】
請求項1に記載の粉末組成物であって、該組成物が、少なくとも1つの薬学的に受容可能な賦形剤をさらに含有する、組成物。
【請求項22】
請求項21に記載の粉末組成物であって、前記賦形剤が、炭水化物、アミノ酸、オリゴペプチド、ペプチド、およびタンパク質からなる群より選択される、組成物。
【請求項23】
前記炭水化物が、糖または糖アルコールである、請求項22に記載の粉末組成物。
【請求項24】
前記アミノ酸が疎水性アミノ酸である、請求項22に記載の粉末組成物。
【請求項25】
請求項21に記載の粉末組成物であって、前記賦形剤が、クエン酸塩、ロイシン、ラフィノース、亜鉛塩、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、組成物。
【請求項26】
前記賦形剤が二価金属陽イオンである、請求項21に記載の粉末組成物。
【請求項27】
少なくとも30%の放出用量によって特徴付けられる、請求項1に記載の粉末組成物であって、該放出用量は、単位用量パッケージから引き出され、吸入デバイスのマウスピースから出る粉末のパーセンテージの測量である、粉末組成物。
【請求項28】
少なくとも45%の放出用量によって特徴付けられる、請求項27に記載の粉末組成物であって、該放出用量は、単位用量パッケージから引き出され、吸入デバイスのマウスピースから出る粉末のパーセンテージの測量である、粉末組成物。
【請求項29】
少なくとも60%の放出用量によって特徴付けられる、請求項28に記載の粉末組成物であって、該放出用量は、単位用量パッケージから引き出され、吸入デバイスのマウスピースから出る粉末のパーセンテージの測量である、粉末組成物。
【請求項30】
前記組成物が、3.5ミクロン未満の質量中心空気力学的直径(MMAD)を有する粒子を含有する、請求項1に記載の粉末組成物。
【請求項31】
前記組成物が、0.1〜3ミクロンの間の質量中心直径(MMAD)を有する粒子を含有する、請求項1に記載の粉末組成物。
【請求項32】
残留水分含有量が、10重量%未満である、請求項1に記載の粉末組成物。
【請求項33】
残留水分含有量が、5重量%未満である、請求項32に記載の粉末組成物。
【請求項34】
前記組成物が、0.1〜10g/ccの範囲である嵩密度を有する、請求項1に記載の粉末組成物。
【請求項35】
単位投薬形態の、請求項1に記載の粉末組成物。
【請求項36】
IL−4R乾燥粉末組成物をエアロゾル化するための方法であって、該方法が、以下:
(a)請求項1に記載のIL−4R組成物を提供する工程、および
(b)該組成物をガス流中に分散して、吸入のために適切なエアロゾル化乾燥粉末を形成する工程、
を包含する、方法。
【請求項37】
前記分散が、乾燥粉末吸入器を使用して達成される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
乾燥IL−4R粉末組成物を調製するための方法であって、該方法が、以下:
(a)溶媒中でIL−4Rの混合物または溶液を調製する工程、および
(b)該混合物または該溶液を噴霧乾燥して、請求項1に記載のIL−4R粉末を得る工程、
を包含する、方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−153719(P2012−153719A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−108462(P2012−108462)
【出願日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【分割の表示】特願2008−326601(P2008−326601)の分割
【原出願日】平成13年12月21日(2001.12.21)
【出願人】(500138043)ネクター セラピューティックス (32)
【Fターム(参考)】