説明

インダクタンス素子

【課題】グランド端子を設けることなく、広帯域に亘って良好な減衰特性を呈することのできるインダクタンス素子を提供すること。
【解決手段】インダクタンス素子14aは、トロイダル形状の磁気コア15をリング状の絶縁性ケース16に組み込んでなる組込体に対して被覆導線17,18を途中まで巻回した後、被覆導線17,18の導体に中心導体を接続された同軸線17a,18aを巻回して形成される。即ち、被覆導線17,18の導体と同軸線17a,18aの中心導体とはインダクタとして機能する。一方、同軸線17a,18aの外導体は、例えば、端子台(図示せず)などに固定されても良いが、電気的に接地する必要はないことから、グランド端子を設ける必要はない。即ち、同軸線17a,18aの外導体は、電気的にフローティングな状態で使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として交流線(ACライン)等においてノイズフィルタとして用いられるインダクタンス素子に関する。
【背景技術】
【0002】
インダクタンス素子が高周波領域にて用いられる際にコイルの線間容量がノイズ抑制に与える悪影響を排除するために、磁気コアを接地すると共に接地された磁気コアに被覆導線を直接巻回することでコイルを形成する技術が提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0003】
これに対して、被覆導線における被覆の耐電圧などを問題とし、接地導体を形成された磁気コア上に、誘電体及び近接導体を順に形成し、更にその上に被覆導線を巻回することにより、磁気コアと被覆導線とを離し、それによって信頼性を高めたものも提案されている(特許文献3参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平9−102426号公報
【特許文献2】特開2004−311866号公報
【特許文献3】特開2004−235709号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1乃至特許文献3に開示された技術は、いずれも何らかの構成要素を接地しなければならず、そのためグランド端子を設ける必要がある。
【0006】
そこで、本発明は、グランド端子を設けることなく、特許文献1乃至特許文献3記載の技術と同様の効果を得ることの出来る新たな構造のインダクタンス素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するための手段として、磁気コアと、複数の芯線を有する複芯線を少なくとも一部に有する巻線とを備えたインダクタンス素子であって、前記複芯線に含まれる一の芯線はインダクタとして使用され且つ他の芯線は電気的にフローティングな状態とされる、インダクタンス素子を提供する。
【0008】
巻線に含まれる芯線のうちインダクタとして使用されない芯線は、例えば絶縁体に固定されても良いが、外部の接続部(例えば基板上のグランドパッド)などに対して電気的に接続する必要はない。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、グランド端子を特に設ける必要がないことから、特許文献1乃至特許文献3記載の技術と比較して端子数を減らすことが出来る。
【0010】
インダクタンス素子に付加されるキャパシタの容量は、線状導体の巻回数によって調整可能であり、様々な状況に柔軟に対応することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。以下に説明する実施の形態におけるインダクタンス素子は、コモンモード用のものであり、被覆導線を2本備えて構成したものであるが、本発明はこれに限定されるものではなく、被覆導線を1本のみ用いたノーマルモード用のインダクタンス素子にも適用可能である。
【0012】
図1及び図2に示されるように、本発明の実施の形態によるインダクタンス素子14aは、トロイダル形状の磁気コア15と、磁気コア15の外周表面を覆うリング状の絶縁性ケース16と、単芯の被覆導線17,18及び同軸線17a,18aからなる巻線(コイル)とを備えている。
【0013】
同軸線17a,18aは、図3に示されるように、中心導体21、内部絶縁体22、外導体23、外部絶縁体24からなり、本実施の形態においては、中心導体21と被覆導線17,18の導体とが接続部19において接続されている。即ち、図1及び図2に示されるように、巻線は、磁気コア15を絶縁性ケース16に対して組み込んでなる組込体に対して、被覆導線17,18を途中まで巻回した後、被覆導線17,18と接続された同軸線17a,18aを巻回してなるものである。即ち、被覆導線17,18の導体と同軸線17a,18aの中心導体21とはインダクタとして機能する。ここで、同軸線17a,18aの外導体23は、例えば、端子台(図示せず)などに固定されても良いが、電気的に接地する必要はないことから、グランド端子を設ける必要はない。即ち、同軸線17a,18aの外導体23は、電気的にフローティングな状態で使用される。
【0014】
なお、中心導体21に代えて、外導体23を被覆導線17,18の導体に接続しても良い。その場合、中心導体21は電気的にフローティングな状態で使用される。
【0015】
また、図1及び図2に示された例においては、被覆導線17,18を途中まで巻回した後、被覆導線17,18と接続された同軸線17a,18aを巻回して巻線を構成したが、巻線数を増やしたい場合には、例えば、図4及び図5に示されるように、被覆導線17,18を巻回して巻線の一層目を構成し、その後、被覆導線17,18と接続部19において接続された同軸線17a,18aを被覆導線17,18上に更に巻回して多層構造の巻線を構成することとしても良い。
【0016】
上述した実施の形態において、導体23aを被覆導線17,18と重複させる個所や面積等は、被覆導線17,18の巻回数(ターン数),太さ,長さや、磁気コア15の大きさ,材料特性等により適宜変更することが可能である。
【0017】
上述した実施の形態においては、被覆導線17,18と同軸線17a,18aを接続して巻線を構成する例について説明してきたが、被覆導線17,18と接続するものは、複数の芯線を有する複芯線であればよく、同軸線に限定されるものではない。例えば、本発明に適用可能な複芯線としては、図6及び図7に示されるような平行線17b,18b及び17c,18cや図8及び図9に示されるようなツイスト線17d,18d及び17e,18eがある。
【0018】
平行線17b,18bは、図6に示されるように、平行に配された二本の導体21b1及び21b2を内部絶縁体22bで互いに絶縁した後、外部絶縁体24bで被覆してなるものであり、二本の導体21b1及び21b2のいずれか一方が、被覆導線17,18の導体に接続される。平行線は、内部絶縁体22b及び外部絶縁体24bを一つの絶縁体で構成してなるものであっても良いし、導体21b1及び21b2からは電気的に絶縁された導体を内部絶縁体22bと外部絶縁体24bの間に更に介在させたものであっても良い。同様に、平行線17c,18cは、図7に示されるように、平行に配された二本の導体21c1及び21c2を内部絶縁体22c1,22c2互いに絶縁した後、外部絶縁体24cで被覆してなるものであり、二本の導体21c1及び21c2のいずれか一方が、被覆導線17,18の導体に接続される。この平行線もまた、内部絶縁体22c1及び22c2並びに外部絶縁体24cを一つの絶縁体で構成してなるものであっても良いし、導体21c1及び21c2からは電気的に絶縁された導体を内部絶縁体22c1及び22c2と外部絶縁体24cの間に更に介在させたものであっても良い。
【0019】
ツイスト線17d,18dは、図8に示されるように、内部絶縁体22d1,22d2により被覆され互いに絶縁された導体21d1,21d2を捻った後、更に外部絶縁体24dにて全体を被覆してなるものであり、導体21d1,21d2のいずれか一方が被覆導線17,18の導体に接続される。ツイスト線は、導体21d1及び21d2からは電気的に絶縁された導体を内部絶縁体22d1,22d2と外部絶縁体24dの間に更に介在させたものであっても良い。同様に、ツイスト線17e,18eは、図9に示されるように、内部絶縁体22e1,22e2により被覆され互いに絶縁された導体21e1,21e2を捻ってなるものである。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明は、例えば、ノイズフィルタやノイズフィルタを備えたスイッチング電源装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態によるインダクタンス素子を示す正面図である。
【図2】図1に示されるインダクタンス素子を図1の紙面に平行な面で切断したものの一部分を拡大して示す断面図である。
【図3】図1に示されるインダクタンス素子に用いられている同軸線を示す斜視図である。
【図4】図1に示されるインダクタンス素子の変形例を示す正面図である。
【図5】図4に示されるインダクタンス素子を図4の紙面に平行な面で切断したものの一部分を拡大して示す断面図である。
【図6】本発明に適用可能な平行線の一例を示す斜視図である。
【図7】本発明に適用可能な平行線の他の一例を示す斜視図である。
【図8】本発明に適用可能なツイスト線の一例を示す斜視図である。
【図9】本発明に適用可能なツイスト線の他の一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0022】
14a,14a’ インダクタンス素子
15 磁気コア
16 絶縁性ケース
17,18 被覆導線
17a,18a 同軸線
19 接続部
21 中心導体
22 内部絶縁体
23 外導体
24 該部絶縁体
17b,18b,17c,18c 平行線
17d,18d,17e,17e ツイスト線


【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気コアと、複数の芯線を有する複芯線を少なくとも一部に有する巻線とを備えたインダクタンス素子であって、前記複芯線に含まれる一の芯線はインダクタとして使用され且つ他の芯線は電気的にフローティングな状態とされる、インダクタンス素子。
【請求項2】
前記巻線は、前記複芯線の前記一の芯線に直列に接続される単芯線を更に備えており、前記一の芯線と前記単芯線とがインダクタとして使用される、請求項1記載のインダクタンス素子。
【請求項3】
前記一の芯線の一端及び前記単芯線の一端が前記インダクタのリード端子として使用され、前記一の芯線の他端と前記単芯線の他端とが接続される、請求項1又は請求項2記載のインダクタンス素子。
【請求項4】
前記複芯線は、中心導体及び外導体を有する同軸線であり、前記一の芯線は、前記中心導体又は前記外導体のいずれか一方である、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のインダクタンス素子。
【請求項5】
前記複芯線は、互いに絶縁された二本の導体を平行に配してなる平行線であり、前記一の芯線は、前記二本の導体のいずれか一方である、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のインダクタンス素子。
【請求項6】
前記複芯線は、互いに絶縁された二本の導体を捻ってなるツイスト線であり、前記一の芯線は、前記前記二本の導体のいずれか一方である、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のインダクタンス素子。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のインダクタンス素子を備えたフィルタ回路。
【請求項8】
請求項7記載のフィルタ回路を備えたスイッチング電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−98306(P2008−98306A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−276889(P2006−276889)
【出願日】平成18年10月10日(2006.10.10)
【出願人】(000134257)NECトーキン株式会社 (1,832)
【Fターム(参考)】