説明

インダクター一体型トランスフォーマー

【課題】夫々異なる機能を有する二つの素子を物理的に一つの素子に一体化することにより、システム構成の単純化に寄与することができるトランスフォーマーを提供する。
【解決手段】本発明はインダクター一体型トランスフォーマーを公開する。前記トランスフォーマーは、互いに対向して結合された第1コア及び第2コアを備え、前記第1コアと第2コアの間の空間に備えられた1次、2次コイルの間の相互誘導作用によって変圧動作を遂行するトランスフォーマー部と、前記第2コアと結合された第3コア、及び、前記第2コアと第3コアの間の空間に備えられたインダクターを含むインダクター部と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインダクター一体型トランスフォーマーに関し、特に、トランスフォーマー機能を遂行する素子と共振インダクター機能を遂行する素子を物理的に一つの素子に一体化したトランスフォーマーに関する。
【背景技術】
【0002】
最近、国際的に高調波に対する規制が強化されたことにより、各種電気及び電子製品での力率改善回路の使用が普遍化、義務化されている。その結果、現在、大部分の電源供給装置は力率改善回路(Power Factor Correction circuit、PFC)とDC−DCコンバーターを含んでいる。一般的な力率改善回路の場合、ブーストコンバーター(Boost Converter)を用いるようになるが、ブーストコンバーターの特性上、出力が常に入力より高くなる。また、この出力電圧がまたDC−DCコンバーターの入力として用いられるため、DC−DCコンバーターは高い入力電圧を有するようになる。
【0003】
一方、電源供給装置を高電力密度を有する搭載型製品に製作するためには、構造を単純化し、体積を減らさなければならない。一般的に、スイッチング周波数を高めるほど力率改善回路の大きさを減らすことができる一方、スイッチング周波数に比例してスイッチング損失が増加するようになるため、効率は低下される。これにより、力率改善回路で高効率を得るための零電圧スイッチングは必須事項になった。零電圧スイッチングは、トランスフォーマーの漏洩インダクタンス(inductance)と外部の共振インダクターのインダクタンスを用いて遂行される。即ち、共振型コンバーター構造で共振インダクターとトランスフォーマーは重要な役割を遂行するようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】韓国公開特許第10−2008−0020276号公報
【特許文献2】米国特許第6344979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はシステム構成の単純化に寄与することができる手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための本発明によるインダクター一体型トランスフォーマーは、互いに対向して結合された第1コア及び第2コアを備え、前記第1コアと第2コアの間の空間に備えられた1次、2次コイルの間の相互誘導作用によって変圧動作を遂行するトランスフォーマー部と、前記第2コアと結合された第3コア、及び、前記第2コアと第3コアの間の空間に備えられたインダクターを含むインダクター部と、を含む。
【0007】
また、前記課題を解決するための本発明によるインダクター一体型トランスフォーマーは、順次に結合された第1乃至第3コアと、前記第1コア及び第2コアの間に挿入され、第1次コイルと第2次コイルが順次に巻かれている第1ボビンと、前記第2コア及び第3コアの間に挿入され、第3次コイルが巻かれている第2ボビンを含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明は夫々異なる機能を有する二つの素子を物理的に一つの素子に一体化することにより、システム構成の単純化に寄与することができる。
【0009】
また、本発明は二つの素子を一つの素子に一体化することにより、二つの素子夫々に備えなければならなかった放熱構造も一元化することができるため、放熱構造の効率化を実現することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態によるトランスフォーマーを含んだ電源供給装置の構成を図示した図面である。
【図2】図1のトランスフォーマーを図示した断面図である。
【図3】図1のトランスフォーマーを図示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の具体的な実施形態を説明する。しかし、これは例示に過ぎず、本発明はこれに限定されない。
本発明の説明において、本発明に係わる公知技術に対する具体的な説明が本発明の要旨を不必要にぼかす可能性があると判断される場合は、その詳細な説明を省略する。そして、後述する用語は本発明においての機能を考慮して定義された用語であり、これは使用者、運用者の意図または慣例などによって変わることができる。従って、その定義は本明細書の全体における内容を基に下すべきであろう。
【0012】
本発明の技術的思想は請求範囲によって決まり、以下の実施形態は本発明の技術的思想を本発明が属する技術分野にて通常の知識を有する者に効率的に説明するための一つの手段に過ぎない。
【0013】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態によるインダクター一体型トランスフォーマーを説明すると次の通りである。
【0014】
図1は本発明の実施形態によるトランスフォーマーを含んだ電源供給装置の構成を図示した図面である。
【0015】
本発明の実施形態による電源供給装置100は、図1に図示されたように、EMIフィルター102、力率改善回路104及びDC−DCコンバーター106を含む。
【0016】
このように構成された電源供給装置100の各ブロックの機能を説明すると次の通りである。
【0017】
まず、EMIフィルター102は交流電源に含まれる高周波成分を除去して出力する。
【0018】
次に、力率改善回路(Power Factor Correction circuit、PFC)104は交流電源を直流電源に変換させて出力し、直流電源を構成する電流波形と電圧波形のノイズを低減させて、力率(Power Factor)を高めた後で出力する回路である。さらに具体的には、電源が送電される距離が長くなるほど電圧波形と電流波形の不一致が大きくなり、電圧波形と電流波形が不一致する区間が増えるほど有効電力に対する無効電力の割合が大きくなるため、力率は落ちる。力率改善回路104は、二つの波形が一致する区間を増やすことにより、有効電力を用いることができる区間を増やして力率を高める。力率改善回路104で出力された直流電源はDC−DCコンバーター106によって内部回路の駆動に適するレベルの電源に昇圧される。
【0019】
DC−DCコンバーター106は、スイッチング部107、共振キャパシタCs、トランスフォーマー108、整流部109及び平滑部110を含む。
【0020】
まず、スイッチング部107は第1乃至第4スイッチSW1〜SW4を備え、第1、第4スイッチSW1、SW4及び第2、第3スイッチSW2、SW3を一定の時間間隔で交互にターンオンまたはターンオフさせることにより、矩形波を生成する。さらに具体的には、第1、第4スイッチSW1、SW4または第2、第3スイッチSW2、SW3がターンオフされる時、トランスフォーマー108の共振インダクターLsと共振キャパシタCsによる共振動作によって、トランスフォーマー108の1次側コイルに誘導される電流の方向が変わるようになる。この際、第1、第4スイッチSW1、SW4または第2、第3スイッチSW2、SW3の両端が0Vになり、このような零電圧状態で該当スイッチをターンオンさせて電力変換効率を高める。即ち、スイッチング部107は、共振キャパシタCsとトランスフォーマー108の共振インダクターLsによる共振を用いて零電圧スイッチング(Zero Voltage Switching、ZVS)を遂行することにより、矩形波生成時に高い電力変換効率を得ることができるようになる。
【0021】
トランスフォーマー108の共振インダクターLsは共振キャパシタCsとともに共振動作を遂行してスイッチング部107の零電圧スイッチングを助け、スイッチング部107で生成される矩形波、即ち、交流を1次、2次コイルによって一定のレベルに昇圧して出力する。1次、2次コイルの間には相互誘導作用が発生し、1次コイルに入力される交流電圧は変圧されて2次コイルに誘導される。トランスフォーマー108の1次コイルは共振インダクターLs及び共振キャパシタCsと夫々直列に連結される。一方、トランスフォーマー108は物理的に共振インダクターLsと一体化された構造で製作される。このような構造に対する詳しい説明は図2及び図3に対する説明で後述する。
【0022】
次に、整流部109はトランスフォーマー108によって昇圧された交流電源を整流させ、平滑部110は整流部109で整流された直流電源を平滑して出力する。
【0023】
図2は図1のトランスフォーマーを図示した断面図であり、図3は図1のトランスフォーマーを図示した斜視図である。
【0024】
図2及び図3を参照すると、トランスフォーマー108はトランスフォーマー部200及びインダクター部202を含む。
【0025】
まず、トランスフォーマー部200は、互いに対向して結合された第1コア204及び第2コア206と、第1及び第2コア204、206の間に挿入されて1次コイル210と2次コイル212が巻かれたボビン(bobbin)214を含む。ここで、ボビン214にはまず1次コイル210が巻かれ、その上に2次コイル212が巻かれて、1次コイル210と2次コイル212の間は絶縁ビニールなどで絶縁される。一方、インダクター部202は、トランスフォーマー部200の第2コア206と結合された第3コア208と、第2コア206と第3コア208の間に挿入されてコイル216が巻かれたボビン218を含む。この際、第2コア206と第3コア208は第1、第2コア204、206とは異なって、同一の方向に向けて結合される。即ち、トランスフォーマー108は、第1乃至第3コア204、206、208が順次に結合されて、第1コア204と第2コア206の間には互いに相互誘導作用によって変圧機能を遂行するための1次、2次コイル210、212が備えられ、第2コア206と第3コア208の間には共振インダクターとして機能するコイル216が備えられる。即ち、1、2次コイル210、212とコイル216の間の離隔距離は第2コア206の厚さBによって決まる。第1乃至第3コア204、206、208は図2及び図3に図示されたように、全てE字形態を有するEコアで構成されることができる。
【0026】
一方、1次、2次コイル210、212とコイル216を隣接して配置することにより、これらの間に相互誘導作用(mutual induction)の問題が発生される可能性があるが、これを防止するために、1、2次コイル210、212とコイル216を物理的に隔離する機能を遂行する第2コア206の厚さBを第1コア204の厚さAや第3コア208の厚さCに比べて特に広く製作する。この際、第1コア204、第2コア206及び第3コア208夫々の厚さの割合は1:2:1になる。勿論、十分な離隔距離を与えるために第2コア206の厚さBをさらに増やすこともできるであろう。一方、第1乃至第3コア204、206、208の厚さA、B、Cを全部同一のもので用いて、第2コア206と第3コア208の間にIコアを追加的に結合することにより、1、2次コイル210、212とコイル216の間の距離を増やすこともできる。ここで、1:2:1の割合は一例として提示されたものに過ぎず、第1乃至第3コア204、206、208の材質を夫々異なるようにしたり、捲線数、コアの形態などによって変わることができる。
【0027】
上述のように、本発明の実施形態による共振インダクター一体型トランスフォーマーは、トランスフォーマー機能を遂行する素子と共振インダクター機能を遂行する素子を物理的に一体化させて一つの素子に製作することにより、システムの構成を単純化することができ、放熱構造を一元化して放熱構造の効率を高めることができる。また、二つの素子の間の離隔距離を十分に設定し、一体化された二つの素子の間に発生する可能性がある相互誘導作用を防止する。
【0028】
以上、代表的な実施形態を参照して本発明に対して詳細に説明したが、本発明に属する技術分野にて通常の知識を有する者は、上述の実施形態に対して本発明の範囲を外れない限度内で多様な変形が可能であることを理解するのであろう。
【0029】
従って、本発明の権利範囲は上述の実施形態に限定されてはならず、添付の特許請求範囲だけでなく、この特許請求範囲と均等なものによって決まるべきである。
【符号の説明】
【0030】
100 電源供給装置
102 EMIフィルター
104 力率改善回路
106 DC−DCコンバーター
107 スイッチング部
108 トランスフォーマー
109 整流部
110 平滑部
200 トランスフォーマー部
202 インダクター部
204 1次コイル
206 2次コイル
208 コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向して結合された第1コア及び第2コアを備え、前記第1コアと第2コアの間の空間に備えられた1次、2次コイルの間の相互誘導作用によって変圧動作を遂行するトランスフォーマー部;及び
前記第2コアと結合された第3コアと、前記第2コアと第3コアの間の空間に備えられたインダクターとを含むインダクター部;
を含むトランスフォーマー。
【請求項2】
前記第2コア及び第3コアは同一の方向に向けて結合される請求項1に記載のトランスフォーマー。
【請求項3】
前記第2コアの厚さは前記第1コア及び第3コアの厚さに比べて大きく設定される請求項1に記載のトランスフォーマー。
【請求項4】
前記第1コア、第2コア及び第3コア夫々の厚さの比は1:2:1に設定される請求項3に記載のトランスフォーマー。
【請求項5】
前記第2コア及び第3コアの間にIコアが追加的に結合される請求項1に記載のトランスフォーマー。
【請求項6】
前記第1乃至第3コアはEコアである請求項1または5に記載のトランスフォーマー。
【請求項7】
前記第1乃至第3コアの厚さは同一に設定される請求項5に記載のトランスフォーマー。
【請求項8】
順次に結合された第1乃至第3コア;
前記第1コア及び第2コアの間に挿入され、第1次コイルと第2次コイルが順次に巻かれている第1ボビン;及び
前記第2コア及び第3コアの間に挿入され、第3次コイルが巻かれている第2ボビン;
を含むトランスフォーマー。
【請求項9】
前記第1コアと第2コアは互いに対向して結合され、前記第2コアと第3コアは同一の方向に向けて結合される請求項8に記載のトランスフォーマー。
【請求項10】
前記第2コアの厚さは前記第1コア及び第3コアの厚さに比べて大きく設定される請求項8に記載のトランスフォーマー。
【請求項11】
前記第1コア、第2コア及び第3コア夫々の厚さの比は1:2:1に設定される請求項10に記載のトランスフォーマー。
【請求項12】
前記第2コア及び第3コアの間にIコアが追加的に結合される請求項8に記載のトランスフォーマー。
【請求項13】
前記第1乃至第3コアはEコアである請求項8または12に記載のトランスフォーマー。
【請求項14】
前記第1乃至第3コアの厚さは同一に設定される請求項12に記載のトランスフォーマー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−54549(P2012−54549A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−184687(P2011−184687)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(594023722)サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド. (1,585)