説明

インダクタ

【課題】電磁波妨害(EMI)ノイズ放射を遮蔽するインダクタを提供する。
【解決手段】インダクタは、インダクタ用パターン110、インダクタ用パターン110の上部及び下部に離隔して形成される一対の遮蔽板120及び一対の遮蔽板120を電気的に連結する複数の遮蔽用ビア130を含むものである。遮蔽板120の面積は、インダクタ用パターン110の表面積より大きくなることが好ましい。インダクタ用パターン110は、螺旋状(spiral)、蛇行状(meander)またはループ状(loop)などの多様な形態に具現できる。また、インダクタ用パターン110は、複数層のコイルパターン、これらの間を連結する複数のコイルビア、及び二つのリードアウトパターンを備えることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インダクタに関する。
【背景技術】
【0002】
電気及び電子回路において、一般的に使われる受動素子は、抵抗、キャパシタ、インダクタに大別することができる。そのうち、キャパシタとインダクタは、エネルギーを保存及び供給することができる最も基本的な素子であり、周波数特性を持つため、使用する周波数、電圧または電流によって使用材料が違わなければならない。
【0003】
一方、最近の電子器機は、小型化、軽量化及び薄型化しており、このような器機に使われている受動素子も製造技術及び設計技術の発達によってさらに小型化されている。特に、前述したキャパシタ及びインダクタの小型化は、製品のサイズを決定する重要な基準となることもある。
【0004】
このうち、インダクタは、他の受動素子とは異なり、低電力の信号用に使われている極めて一部の場合を除けばレディーメードがないため、インダクタを要する場合、設計、製作、試験、評価、外注などの多くの段階を経て採用する場合が一般的である。
【0005】
そして、二つ以上のインダクタを一つのコア(core)に共有させれば変圧器となり、変圧器は、一般的に電気的絶縁、インピーダンスの変換、電圧及び電流の大きさ変換、フィルターなどの目的で用いられる重要な素子である。
【0006】
したがって、インダクタと変圧器は、コアに巻線を行うので基本的に同じ構造を持っているが、用途には大きな差がある。
【0007】
従来のICパッケージやプリント基板に使用されているインダクタの構造は、基板の外層にマイクロストリップで構成される2D形態をなしており、インダクタをマイクロストリップとともにパターンで具現するためには、線路を長くしても可能であるが、空間的制約があるので、主に螺旋状(spiral)、蛇行状(meander)、ループ状(loop)に具現できる。
【0008】
このうち、螺旋状インダクタ(spiral inductor)が、特許文献1に開示されている。
【0009】
このような螺旋状インダクタ(spiral inductor)は、長いパターンの形成に有利であるので多く使われ、一方向に同心円をなすので、相互インダクタンスにおいて同一方向に磁場が加わるため、小さなサイズでも高いインダクタンス値を作り出すことができる利点があるが、図6及び図7のように、上下左右に電磁波妨害(ElectroMagnetic Interference:EMI)ノイズ放射がより多く発生する欠点を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】韓国公開特許第1998−0020010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は前述した従来技術の問題点を解決するためになされたもので、本発明の目的は、電磁波妨害(EMI)ノイズ放射を遮蔽するインダクタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一面によるインダクタは、インダクタ用パターン、前記インダクタ用パターンの上部及び下部に離隔して形成される一対の遮蔽板、及び前記一対の遮蔽板を電気的に連結する複数の遮蔽用ビアを含む。
【0013】
この際、前記一対の遮蔽板は、互いに平行であることが好ましい。
【0014】
また、前記遮蔽板は、板状であってもよい。
【0015】
また、前記遮蔽板の面積は、前記インダクタ用パターンの表面積より大きくなることが好ましい。
【0016】
また、前記遮蔽板は、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)または金(Au)でなることが好ましい。
【0017】
また、前記複数の遮蔽用ビアは、前記一対の遮蔽板の間に形成され、前記一対の遮蔽板の縁部を連結するように形成されることが好ましい。
【0018】
また、前記複数の遮蔽用ビアは、前記インダクタ用パターン側部から離隔して形成されることが好ましい。
【0019】
また、前記インダクタ用パターンは、螺旋状であってもよい。
【0020】
また、前記インダクタ用パターンは、複数のコイルパターン及び前記複数のコイルパターンの間を電気的に連結するための複数のコイルビアを含むことが好ましい。
【0021】
この際、前記コイルパターンは、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)または金(Au)でなることが好ましい。
【0022】
本発明の特徴及び利点は、添付図面に基づいた以降の詳細な説明からより明らかになるであろう。
【0023】
本発明の詳細な説明に先立ち、本明細書及び特許請求の範囲に使用された用語や単語は、通常的で辞書的な意味に解釈されてはいけなく、発明者がその自分の発明を最良の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるという原則にしたがって本発明の技術的思想にかなう意味と概念に解釈されなければならない。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、インダクタ用パターンの上部及び下部に遮蔽板を形成し、上部及び下部の遮蔽板の縁部を遮蔽用ビアで連結して前記インダクタ用パターンを前記遮蔽板と遮蔽用ビアで取り囲むことで、前記インダクタ用パターンで上下左右に放射される電磁波妨害(EMI)ノイズを遮蔽することができる効果がある。
【0025】
また、本発明は、前述したように、インダクタ用パターンから放射されるEMIノイズを遮蔽することにより、周辺回路に及ぶノイズを最小化することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施例によるインダクタの構造を示す平面図である。
【図2】本発明の一実施例によるインダクタを示す斜視図である。
【図3】本発明の一実施例によるインダクタの構造を示す側面図である。
【図4】本発明の一実施例によるインダクタにおけるEMI放射特性を示す写真である。
【図5】本発明の一実施例によるインダクタにおけるEMI放射特性を示す写真である。
【図6】従来のインダクタにおけるEMI放射特性を示す写真である。
【図7】従来のインダクタにおけるEMI放射特性を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の目的、特定の長所及び新規の特徴は、添付図面に係る以下の詳細な説明及び好ましい実施例によってさらに明らかになるであろう。本明細書において、各図面の構成要素に参照番号を付け加えるに際し、同一の構成要素に限っては、たとえ異なる図面に示されても、できるだけ同一の番号を付けるようにしていることに留意しなければならない。また、「第1」、「第2」などの用語は、一つの構成要素を他の構成要素から区別するために用いられるものであり、構成要素が前記用語によって限定されるものではない。以下、本発明を説明するにあたり、本発明の要旨をあいまいにする可能性がある係る公知技術についての詳細な説明は省略する。
【0028】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0029】
図1は、本発明の一実施例によるインダクタの構造を示す平面図、図2は、本発明の一実施例によるインダクタの構造を示す斜視図、図3は、本発明の一実施例によるインダクタの構造を示す側面図、図4及び図5は、本発明の一実施例によるインダクタにおけるEMI放射特性を示す写真である。
【0030】
図1を参照すれば、本発明の一実施例によるインダクタ100は、インダクタ用パターン110、インダクタ用パターン110の上部及び下部に形成される一対の遮蔽板120、及び上部及び下部に位置する一対の遮蔽板120を電気的及び機械的に連結する複数の遮蔽用ビア130を含む。
【0031】
本実施例において、インダクタ用パターン110は、図1及び図2に示すように、螺旋状(spiral)に具現されるが、これは一実施例に過ぎなく、蛇行状(meander)またはループ状(loop)などの多様な形態に具現できる。
【0032】
本実施例において、インダクタ用パターン110は、複数のコイルパターン110a、110b、110c、110d、複数のコイルパターン110a、110b、110c、110dの間を連結する複数のコイルビア111a、111b、及び二つのリードアウトパターンL10を備えることが好ましい。
【0033】
図3において、複数のコイルパターン110a、110b、110c、110dは、4層で具現されているが、これは一実施例に過ぎなく、より少ないか多い数の層で具現させることもできる。
【0034】
また、図1及び図2に示すように、複数のコイルパターン110a、110b、110c、110dは、内側のパターンより外側に行くほどその長さがますます長くなって、前述したように、スパイラル状(sprial)に形成できるが、特にこれに限定されるものではない。
【0035】
また、複数のコイルパターン110a、110b、110c、110dは、マイクロストリップ状に形成され、各層のコイルパターンは互いに平行に離隔して形成できる。
【0036】
また、本実施例において、複数のコイルパターン110a、110b、110c、110dの幅は、実質的にほぼ等しく具現したが、これは一実施例に過ぎなく、層ごとにパターンの幅または厚さを互いに異なるように具現することも可能であると言える。
【0037】
例えば、複数のコイルパターン110a、110b、110c、110dの内側及び外側の幅を調節して、直流抵抗値とQ値を調節することができる。
【0038】
ここで、コイルパターン110a、110b、110c、110dは、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、または金(Au)などからなることが好ましいが、特にこれに限定されるものではない。
【0039】
また、コイルパターン110a、110b、110c、110d及びコイルビア111a、111bは、特にこれに限定されるものではないが、当業界一般的に使われる回路形成工程、例えば、フォトリソグラフィー(photolithography)法、エッチング(etching)法及びホール加工法を組み合わせた工程で形成できる。
【0040】
複数のコイルビア111a、111bは、複数のコイルパターン110a、110b、110c、110dに垂直に形成されて、互いに対応する複数のコイルパターン110a、110b、110c、110dの間を電気的に連結する。
【0041】
この際、複数のコイルビア111a、111bは、各層を貫く貫通ホール(図示せず)に無電解銅メッキ層と電解銅メッキ層を形成して導電層を確保し、中央部分には、導電性ペーストが充填されるかあるいはフィルメッキされた形態であることができるが、特にこれに限定されるものではない。
【0042】
また、複数のコイルビア111a、111bの両端には、導電層を強化するために、それぞれランド部(図示せず)が形成できる。
【0043】
本実施例においては、図1及び図2に示すように、インダクタ用パターン110の上部及び下部にインダクタ用パターン110から離隔した一対の遮蔽板120が形成できる。
【0044】
ここで、遮蔽板120は、板状の導体パターンを意味するもので、その面積は、インダクタ用パターン110の表面積より大きくなることが好ましいが、特にこれに限定されるものではない。
【0045】
ただ、インダクタ用パターン110の面積より大きく具現されるとき、電磁波妨害(ElectroMagnetic Interference:EMI)ノイズ遮蔽に一層高い効果があり得る。
【0046】
また、図1及び図2において遮蔽板120を四角形に具現しているが、これは一実施例に過ぎなく、いろいろの多様な形状に具現できる。
【0047】
本実施例において、遮蔽板120は、前述したコイルパターン110a、110b、110c、110dと同様に、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、または金(Au)などでなることが好ましいが、特にこれに限定されるものではない。
【0048】
また、本実施例において、インダクタ用パターン110の上部及び下部に形成された一対の遮蔽板120を電気的及び機械的に連結するための複数の遮蔽用ビア130を含むことができる。
【0049】
ここで、複数の遮蔽用ビア130は、図1〜図3に示すように、遮蔽板120の縁部に形成されて、上部及び下部に形成された一対の遮蔽板120を機械的及び電気的に連結する。
【0050】
この際、遮蔽用ビア130の個数及び直径は、特に限定されない。
【0051】
結果として、本実施例によるインダクタ100は、インダクタ用パターン110の上部及び下部に一対の遮蔽板120を形成し、側部には遮蔽板120と連結される遮蔽用ビア130を形成することで、インダクタ用パターン110を遮蔽板120及び遮蔽用ビア130で取り囲むことにより、インダクタ用パターン110から上下左右に放射される電磁波妨害(EMI)ノイズを遮蔽板120及び遮蔽用ビア130によって効果的に遮蔽することができる。
【0052】
本実施例によるインダクタ100の電磁波妨害(EMI)ノイズ遮蔽特性をシミュレーションした結果を、図4及び図5に示す。
【0053】
ここで、図4は、H−field(Magnetic−field、磁界)放射特性を示し、図5は、E−field(Electric−field、電界)放射特性を示す。
【0054】
図4及び図5に示した本実施例によるインダクタ100の電磁波妨害(EMI)ノイズ遮蔽特性と、図6及び図7に示した従来技術によるインダクタの電磁波妨害(EMI)ノイズ遮蔽特性を比較して見ると、本実施例によるインダクタ100のインダクタ用パターン110の上部、下部及び側部に放射される電磁波妨害(EMI)ノイズを効果的に遮蔽できることが分かる。
【0055】
以上、本発明を具体的な実施例に基づいて詳細に説明したが、これは本発明を具体的に説明するためのものであり、本発明はこれに限定されず、該当分野における通常の知識を有する者であれば、本発明の技術的思想内にての変形や改良が可能であることは明白であろう。
【0056】
本発明の単純な変形乃至変更はいずれも本発明の領域に属するものであり、本発明の具体的な保護範囲は添付の特許請求の範囲により明確になるであろう。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、電磁波妨害(EMI)ノイズ放射を遮蔽するインダクタに適用可能である。
【符号の説明】
【0058】
100 インダクタ
110 インダクタ用パターン
110a、110b、110c、110d コイルパターン
111a、111b コイルビア
120 遮蔽板
130 遮蔽用ビア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インダクタ用パターン;
前記インダクタ用パターンの上部及び下部に離隔して形成される一対の遮蔽板;及び
前記一対の遮蔽板を電気的に連結する複数の遮蔽用ビア;
を含むインダクタ。
【請求項2】
前記一対の遮蔽板は、互いに平行である請求項1に記載のインダクタ。
【請求項3】
前記遮蔽板は、板状である請求項1に記載のインダクタ。
【請求項4】
前記遮蔽板の面積は、前記インダクタ用パターンの表面積より大きい請求項1に記載のインダクタ。
【請求項5】
前記遮蔽板は、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)または金(Au)でなる請求項1に記載のインダクタ。
【請求項6】
前記複数の遮蔽用ビアは、前記一対の遮蔽板の間に形成され、前記一対の遮蔽板の縁部を連結するように形成される請求項1に記載のインダクタ。
【請求項7】
前記複数の遮蔽用ビアは、前記インダクタ用パターン側部から離隔して形成される請求項1に記載のインダクタ。
【請求項8】
前記インダクタ用パターンは、螺旋状である請求項1に記載のインダクタ。
【請求項9】
前記インダクタ用パターンは、
複数のコイルパターン;及び
前記複数のコイルパターンの間を電気的に連結するための複数のコイルビア;
を含む請求項1に記載のインダクタ。
【請求項10】
前記コイルパターンは、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)または金(Au)でなる請求項9に記載のインダクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−98539(P2013−98539A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−180439(P2012−180439)
【出願日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【出願人】(594023722)サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド. (1,585)
【Fターム(参考)】