説明

インダゾール化合物の調製方法

本発明は、タンパク質キナーゼの修飾因子および/または阻害剤として有用な式Iのインダゾール化合物の調製方法に関する。本発明はまた、式Iの化合物の調製に有用な中間化合物に関する。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、いずれもその全体が参照により本明細書に組み込まれる、出願日2004年11月2日の米国特許仮出願第60/624,635号、および作成日2005年9月14日、出願日2005年9月14日の「インダゾール化合物の調製方法」と題する米国特許仮出願に対する優先権を主張する。
【0002】
本発明は、タンパク質キナーゼの修飾因子および/または阻害剤として有用なインダゾール化合物およびその中間体の調製方法に関する。
【背景技術】
【0003】
本発明は、タンパク質キナーゼの阻害剤として有用なインダゾール化合物およびその中間化合物の調製方法に関する。いずれもその全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,534,524号および第6,531,491号は、VEGF−R(血管内皮細胞増殖因子受容体)、FGF−R(線維芽細胞増殖因子受容体)、CDK(サイクリン依存性キナーゼ)複合体、CHK1、LCK(リンパ球特異的チロシンキナーゼとしても知られる)、TEK(Tie−2としても知られる)、FAK(接着斑キナーゼ)および/またはホスホリラーゼキナーゼなどの、ある種のタンパク質キナーゼの活性を修飾および/または阻害するインダゾール化合物を対象とする。そのような化合物は、タンパク質キナーゼにより媒介される血管新生または細胞増殖に関連する癌および他の疾患の治療に有用である。米国特許第6,534,524号で論じられているインダゾール化合物の一群は下記式で表すことができる。
【0004】
【化1】

【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そのような化合物の調製方法は米国特許第6,534,524号および第6,531,491号で既に言及されているが、効率的で費用対効果の高い新規の合成経路が当技術分野で依然として求められている。
【0006】
本明細書には、本発明の背景の考察が、本発明の文脈を説明するために含まれる。このことは、言及される資料のいずれかが、特許請求の範囲のいずれかの優先日現在で任意の国において刊行され、公知であり、または共通の一般的知識となっていたことを承認するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、式1の化合物、またはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物の調製方法であって、
【0008】
【化2】

(式中、RはCH=CH−RまたはCH=N−Rであり、Rは0〜4個のR基で置換されており、Rは(C〜C12)アルキル、(C〜C12)シクロアルキル、(5〜12員)ヘテロシクロアルキル、(C〜C12)アリール、(5〜12員)ヘテロアリール、(C〜C12)アルコキシ、(C〜C12)アリールオキシ、(C〜C12)シクロアルコキシ、NH−(C〜Cアルキル)、NH−(C〜C12アリール)、NH−(5〜12員ヘテロアリール)、N=CH−(C〜C12アルキル)、NH(C=O)RまたはNHであり、Rは0〜4個のR基で置換されており、各Rは独立に水素、ハロゲンまたは(C〜C)アルキルであり、(C〜C)アルキルは0〜4個のR基で置換されており、Rは(C〜C12)アルキル、(C〜C12)シクロアルキル、(5〜12員)ヘテロシクロアルキル、(C〜C12)アリール、(5〜12員)ヘテロアリールであり、Rは0〜4個のR基で置換されており、各Rは独立にハロゲン、(C〜C)アルキル、−OH、−NO、−CN、−COH、−O−(C〜Cアルキル)、(C〜C12)アリール、アリール(C〜C)アルキル、−COCH、−CONH、−OCHCONH、−NH、−SONH、ハロ(C〜C12)アルキルまたは−O−ハロ(C〜C12)アルキルである)、式2の化合物と式RHの化合物を反応させて式1の化合物を形成するステップを含む方法に関する。
【0009】
【化3】

(式中、Xは活性化した置換基である。)一実施形態では、RはCH=CH−(5〜12員)ヘテロアリールである。さらなる実施形態では、R中の(5〜12員)ヘテロアリール基はピリジニルである。別の実施形態では、Rは(C〜C12)アルキルである。さらなる実施形態では、Rはメチルである。別の実施形態では、各Rは水素である。一実施形態では、上記反応は触媒を含む条件下で行われる。一実施形態では、触媒はPdまたはCuである。さらなる実施形態では、触媒はPd(OAc)であり、反応条件はPd触媒と錯体を形成する配位子をさらに含む。一実施形態では、配位子はP(o−Tol)である。さらなる実施形態では、反応条件はジメチルアセトアミドを溶媒として、プロトンスポンジを塩基として、LiBrを添加剤としてさらに含み、反応は110℃で行われる。
【0010】
本発明の別の態様は、式1−aの化合物、またはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物の調製方法であって、
【0011】
【化4】

式2−aの化合物と式6の化合物を反応させて式1−aの化合物を形成するステップを含む方法に関する。
【0012】
【化5】

特定の一実施形態では、この反応はPdまたはCuを触媒として含む条件下で行われる。一実施形態では、触媒はPd(OAc)であり、反応条件はP(o−Tol)をPd触媒と錯体を形成する配位子としてさらに含む。さらなる実施形態では、反応条件はプロトンスポンジを塩基として、LiBrを添加剤として、ジメチルアセトアミドまたはN−メチル−2−ピロリドンを溶媒としてさらに含み、反応は100〜120℃の温度で行われる。一実施形態では、反応は110℃で行われる。
【0013】
本発明はまた、式2の化合物、またはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物に関する。
【0014】
【化6】

(式中、R、RおよびXは上記定義の通りである。)本発明の一実施形態では、式2aの化合物、またはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物である。
【0015】
【化7】

【0016】
本発明はまた、式2の化合物、またはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物の調製方法であって、式3の化合物と式4の化合物を反応させるステップを含む方法に関する。
【0017】
【化8】

(式中、R、RおよびXは上記定義の通りである。)特定の一実施形態では、Rは(C〜C12)アルキルである。別の特定の実施形態では、Rはメチルである。別の特定の実施形態では、各Rは水素である。別の特定の実施形態では、各Xはヨウ素である。さらなる実施形態では、反応は触媒を含む条件下で行われる。特定の一実施形態では、触媒はPdまたはCuである。さらなる実施形態では、触媒はPd(dba)であり、反応条件はPd触媒と錯体を形成する配位子をさらに含む。さらなる実施形態では、配位子はXantphosである。さらなる実施形態では、反応条件はジメチルホルムアミドを溶媒として、CsOHを塩基としてさらに含み、反応は70℃で行われる。
【0018】
本発明の別の態様は、式2aの化合物、またはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物の調製方法であって、式3−aの化合物と式4−aの化合物を反応させるステップを含む方法に関する。
【0019】
【化9】

【0020】
さらなる実施形態では、反応はPdまたはCuを触媒として含む条件下で行われる。さらなる実施形態では、触媒はPd(dba)であり、反応条件はXantphosをPd触媒と錯体を形成する配位子としてさらに含む。さらなる実施形態では、反応条件はCsOHを塩基として、ジメチルアセトアミドまたはN−メチル−2−ピロリドンを溶媒としてさらに含み、反応は60〜80℃の温度で行われる。例えば、反応は70℃で行うことができる。
【0021】
本発明はさらに、式5−aの化合物とIを反応させることにより、式4−aの化合物、またはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物を調製する方法に関する。
【0022】
【化10】

【0023】
本発明の別の態様は、式7の化合物、またはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物に関する。
【0024】
【化11】

(式中、R、RおよびXは上記定義の通りであり、Rは好適な保護基である。)特定の実施形態では、式7−aの化合物、またはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物である。
【0025】
【化12】

(式中、RはTHPまたはBocである。)さらなる実施形態では、RがTHPである式7aの化合物である。さらなる実施形態では、RはBocである。
【0026】
本発明はさらに、式8の化合物、またはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物に関する。
【0027】
【化13】

(式中、R、R、RおよびRは上記定義の通りである。)特定の実施形態では、本発明は、式8−aの化合物、またはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物に関する。
【0028】
【化14】

(式中、Rは好適な保護基である。)特定の一実施形態では、Rはテトラヒドロピランである。さらなる特定の実施形態では、RはBocである。
【0029】
本発明の別の態様では、式1の化合物、またはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物の調製方法であって、
【0030】
【化15】

(式中、R、RおよびRは上記定義の通りである)、式8の化合物を脱保護するステップを含む方法である。
【0031】
【化16】

(式中、Rは好適な保護基である。)特定の一実施形態では、式1−aの化合物、またはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物の調製方法であって、
【0032】
【化17】

式8−aの化合物を脱保護するステップを含む方法である。
【0033】
【化18】

(式中、Rは好適な保護基である。)一実施形態では、RはTHPである。別の実施形態では、RはBocである。さらなる実施形態では、脱保護はTsOHおよびMeOHを含む条件下で行われる。さらなる実施形態では、脱保護はトリフルオロ酢酸を含む条件下で行われる。
【0034】
本発明の別の態様では、式8の化合物、またはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物の調製方法であって、
【0035】
【化19】

(式中、R、R、RおよびRは既に定義の通りである)、式7の化合物と式RHの化合物を反応させて式8の化合物を形成するステップを含む方法である。
【0036】
【化20】

(式中、Xは活性化した置換基である。)特定の一実施形態では、式8−aの化合物、またはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物の調製方法であって、
【0037】
【化21】

(式中、Rは好適な保護基である)、式7−aの化合物と式6の化合物を反応させるステップを含む方法である。
【0038】
【化22】

【0039】
特定の一実施形態では、Rはテトラヒドロピランである。さらなる特定の実施形態では、RはBocである。さらなる特定の実施形態では、反応は触媒を含む条件下で行われる。さらなる特定の実施形態では、触媒はPdまたはCuである。さらなる特定の実施形態では、触媒はPd(OAc)であり、反応条件はPd触媒と錯体を形成する配位子をさらに含む。さらなる特定の実施形態では、配位子はP(o−Tol)である。さらなる特定の実施形態では、反応条件はジメチルホルムアミドを溶媒として、(i−Pr)NEtを塩基としてさらに含み、反応は100℃で行われる。さらなる実施形態では、触媒はPd(OAc)であり、反応条件は、P(o−Tol)をPd触媒と錯体を形成する配位子として、ジメチルホルムアミドまたはN−メチル−2−ピロリドンを溶媒として、(i−Pr)NEtを塩基としてさらに含み、反応は90〜110℃の温度で行われる。
【0040】
本発明の別の態様では、式7の化合物、またはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物の調製方法であって、
【0041】
【化23】

(式中、R、R、RおよびXは上記定義の通りである)、好適な保護基Rを式2の化合物に加えるステップを含む方法である。
【0042】
【化24】

【0043】
特定の一実施形態では、式7−aの化合物、またはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物の調製方法であって、
【0044】
【化25】

(式中、Rは好適な保護基である)、式2−aの化合物を好適な保護基で保護するステップを含む方法である。
【0045】
【化26】

【0046】
特定の一実施形態では、Rはテトラヒドロピランである。さらなる特定の実施形態では、保護ステップは、ジヒドロピラン、TsOHおよびEtOAcを含む条件下で行われる。別の特定の実施形態では、RはBocである。さらなる特定の実施形態では、Boc保護基はDMAPおよびDMFを含む条件下で加える。
【0047】
本発明の別の態様は、式10の化合物、またはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物に関する。
【0048】
【化27】

(式中、RはC≡C−Rであり、Rは0〜4個のR基で置換されていてもよく、R、RおよびRは既に定義の通りである。)特定の一実施形態では、式10−aの化合物、またはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物である。
【0049】
【化28】

【0050】
本発明の別の態様は、式11の化合物、またはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物に関する。
【0051】
【化29】

(式中、R、RおよびRは上記定義の通りであり、R置換基中の二重結合における立体化学はZ配置とされる。)特定の一実施形態では、式11−aの化合物、またはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物である。
【0052】
【化30】

【0053】
本発明の別の態様は、式10の化合物、またはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物の調製方法であって、
【0054】
【化31】

(式中、R、RおよびRは既に定義の通りである)、式2の化合物と式RHの化合物を反応させて式10の化合物を形成するステップを含む方法である。
【0055】
【化32】

(式中、Xは活性化した置換基である。)特定の一実施形態では、式10−aの化合物、またはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物の調製方法であって、
【0056】
【化33】

式2−aの化合物と式9の化合物を反応させるステップを含む方法である。
【0057】
【化34】

【0058】
さらなる特定の実施形態では、反応はPd(PPhCl/CulおよびDMFを含む条件下で行われる。
【0059】
本発明の別の態様では、式1の化合物、またはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物の調製方法であって、
【0060】
【化35】

(式中、R、RおよびRは既に定義の通りである)、水素化試薬と式10の化合物を反応させるステップを含む方法である。
【0061】
【化36】

(式中、Rは既に定義の通りである。)特定の一実施形態では、水素化試薬はHNNHである。さらなる特定の実施形態では、式1のR置換基中の二重結合における立体化学はE配置にある。さらなる特定の実施形態では、式1のR置換基中の二重結合における立体化学はZ配置にある。さらなる特定の実施形態では、式1−aの化合物、またはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物の調製方法であって、
【0062】
【化37】

水素化試薬と式10−aの化合物を反応させて式1−aの化合物を製造するステップを含む方法である。
【0063】
【化38】

特定の一実施形態では、水素化試薬はHNNHである。
【0064】
本発明の別の態様は、式11−aの化合物、またはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物の調製方法であって、
【0065】
【化39】

水素化試薬と式10−aの化合物を反応させて式11−aの化合物を製造するステップを含む方法である。
【0066】
【化40】

特定の一実施形態では、水素化試薬はHNNHである。
【0067】
本発明の別の態様は、式1の化合物、またはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物の調製方法であって、
【0068】
【化41】

(式中、R、RおよびRは既に定義の通りであり、式1のR置換基中の二重結合における立体化学はEとされる)、R置換基中の二重結合における立体化学がZとされる式1の化合物を紫外光または熱に曝露するステップを含む方法に関する。特定の一実施形態では、式1−aの化合物、またはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物の調製方法であって、
【0069】
【化42】

式11−aの化合物を紫外光または熱に曝露するステップを含む方法である。
【0070】
【化43】

【0071】
本発明の別の態様は、式2−aの化合物、またはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物の調製方法であって、
【0072】
【化44】

式12の化合物とIを反応させて式2−aの化合物を製造するステップを含む方法に関する。
【0073】
【化45】

一実施形態では、反応は塩基および溶媒を含む条件下で行われる。さらなる実施形態では、塩基はKOHであり、溶媒はN−メチル−2−ピロリドンである。
【0074】
本発明のさらなる態様は、式12の化合物、またはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物である。
【0075】
【化46】

【0076】
本発明の別の態様は、式12の化合物、またはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物の調製方法であって、式3−aの化合物と式5−aの化合物を反応させて式12の化合物を製造するステップを含む方法に関する。
【0077】
【化47】

一実施形態では、反応はPdまたはCuを触媒として含む条件下で行われる。さらなる実施形態では、触媒はPd(dba)であり、反応条件はXantphosをPd触媒と錯体を形成する配位子としてさらに含む。さらなる実施形態では、反応条件はCsOHを塩基として、ジメチルアセトアミドまたはN−メチル−2−ピロリドンを溶媒としてさらに含み、反応は70〜90℃の温度で行われる。特定の一実施形態では、反応は80℃の温度で行われる。
【0078】
本発明の別の態様は、有機相中のパラジウムの量を減少させる方法であって、有機相を1,2−ジアミノプロパンおよびDIPHOSと接触させて、パラジウムの量が前記1,2−ジアミノプロパンおよびDIPHOSとの接触前の有機相よりも少ない有機相を得るステップを含む方法に関する。特定の実施形態では、前記1,2−ジアミノプロパンおよびDIPHOSとの接触後の有機相中のパラジウムの量は1000ppm未満である。より特定的には、パラジウムの量は500ppm未満、300ppm未満、100ppm未満、50ppm未満または10ppm未満である。特定の実施形態では、有機相は式1−aの化合物およびパラジウムを含む。別の実施形態では、この方法は、有機相を前記1,2−ジアミノプロパンおよびDIPHOSと接触させた後、a)有機相を1,2−ジアミノプロパンおよびDIPHOSと接触させることで得られる溶液を、メタノールおよびテトラヒドロフランからなる群から選択される溶媒と接触させるステップと、b)有機相から固体物質を分離するステップとをさらに含む。
【0079】
特記なき限り、本明細書および特許請求の範囲で使用される下記の用語は、下記で論じる意味を有する。典型的な置換基の定義セクションでの列挙は例示的であり、本明細書および特許請求の範囲内の他の個所で定義される置換基を限定するものではない。
【0080】
本明細書では、「含む」(“comprising”および“including”)という用語は開かれた非限定的意味で使用される。
【0081】
本明細書で使用する「反応させる」という用語は、2種以上の反応物を互いに接触させて化学変化または変換を行う化学プロセスを意味する。例えば、反応物Aと反応物Bを互いに接触させて新規化合物Cを得る場合、AとBを「反応させて」Cを製造したといわれる。
【0082】
本明細書で使用する「保護する」という用語は、化合物中の官能基を非反応性官能基で選択的に隠蔽することにより選択的反応が前記化合物の他の個所で行われるようにするプロセスを意味する。そのような非反応性官能基を本明細書では「保護基」と呼ぶ。例えば、本明細書で使用する「水酸保護基」という用語は、水酸(−OH)基の反応性を選択的に隠蔽することが可能な基を意味する。本明細書で使用する「好適な保護基」という用語は、本発明の化合物の調製に有用な保護基を意味する。そのような基は一般に、対象化合物の他の部分に干渉しない穏和な反応条件を用いて選択的に導入および除去することができる。本発明のプロセスおよび方法での使用に適している保護基は当業者に公知である。そのような保護基の化学特性、それらの導入および除去方法は、例えばT.Greene and P.Wuts,Protective Groups in Organic Synthesis(3rd ed.),John Wiley&Sons,NY(1999)に見ることができる。本明細書で使用する「脱保護する」(“deprotecting”)、「脱保護された」(“deprotected”)または「脱保護する」(“deprotect”)という用語は、化合物から保護基を除去するプロセスを意味する。適切な条件および試薬を含む脱保護方法は当技術分野で公知である。
【0083】
本明細書で使用する「活性化した置換基」という用語は、それが結合した原子で置換反応が行われることを一般に可能にする化学官能基を意味する。例えば、アリールヨウ化物では、−I基が活性化した置換基と一般に呼ばれるが、これは−I基によりアリール炭素で置換反応が行われるためである。好適な活性化した置換基は公知であり、ハロゲン化物(塩化物、臭化物、ヨウ化物)、活性化した水酸基(例えばトリフレート、メシレートおよびトシレート)ならびにジアゾニウム塩を挙げることができる。
【0084】
「プロトンスポンジ」という用語は、下記の構造を有するN,N,N’,N’−テトラメチル−ナフタレン−1,8−ジアミンを意味する。
【0085】
【化48】

【0086】
「溶媒和物」とは、特定の化合物の生物学的有効性を保持する、そのような化合物の薬学的に許容できる溶媒和形態を意味するものとする。溶媒和物としては例えば、本発明の化合物と水、イソプロパノール、エタノール、メタノール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、酢酸エチル、酢酸、エタノールアミンまたはその混合物との組合せが挙げられるが、それだけに限定されない。
【0087】
本発明で使用する下記の頭字語は下記のように定義される。「Et」はエチルを意味し、「Ac」はアセチルを意味し、「Me」はメチルを意味し、「Ph」はフェニルを意味し、「Cy」はシクロヘキシルを意味し、(PhO)POClはリン酸クロロジフェニルを意味し、「HCl」は塩酸を意味し、「EtOAc」は酢酸エチルを意味し、「NaCO」は炭酸ナトリウムを意味し、「NaOH」は水酸化ナトリウムを意味し、「NaCl」は塩化ナトリウムを意味し、「NEt」はトリエチルアミンを意味し、「THF」はテトラヒドロフランを意味し、「DIC」はジイソプロピルカルボジイミドを意味し、「HOBt」はヒドロキシベンゾトリアゾールを意味し、「HO」は水を意味し、「NaHCO」は炭酸水素ナトリウムを意味し、「KCO」は炭酸カリウムを意味し、「MeOH」はメタノールを意味し、「i−PrOAc」は酢酸イソプロピルを意味し、「MgSO」は硫酸マグネシウムを意味し、「DMSO」はジメチルスルホキシドを意味し、「AcCl」は塩化アセチルを意味し、「CHCl」は塩化メチレンを意味し、「MTBE」はメチルt−ブチルエーテルを意味し、「DMF」はN,N−ジメチルホルムアミドを意味し、「DMA」はN,N−ジメチルアセトアミドを意味し、「SOCl」は塩化チオニルを意味し、「HPO」はリン酸を意味し、「CHSOH」はメタンスルホン酸を意味し、「AcO」は無水酢酸を意味し、「CHCN」はアセトニトリルを意味し、「KOH」は水酸化カリウムを意味し、「P(o−Tol)」はトリ−o−トリルホスフィンを意味し、「THP」はテトラヒドロピランを意味し、「Boc」はt−ブチルオキシカルボニルを意味し、「(i−Pr)NEt」はジ−イソプロピルエチルアミンを意味し、「Pd(dba)」はトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)を意味し、「TsOH」はp−トルエンスルホン酸を意味し、「Xantphos」は9,9−ジメチル−4,5−ビス(ジフェニル−ホスフィノ)キサンテンを意味し、「DIPHOS」は1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタンを意味し、「NMP」はN−メチル−2−ピロリドンを意味し、「DMAP」は4−ジメチルアミノピリジンを意味する。
【0088】
本明細書で使用する「C〜C12アルキル」という用語は、1個または複数の置換基で置換されていなくても置換されていてもよい、1〜12個の炭素原子を含む直鎖または分岐鎖飽和炭化水素を表す。C〜C12アルキル基としては例えば、メチル、エチル、プロピル、2−プロピル、n−ブチル、iso−ブチル、tert−ブチル、ペンチルなどが挙げられる。同様に、C1〜C8アルキルという用語は、1個または複数の置換基で置換されていなくても置換されていてもよい、1〜8個の炭素原子を含む直鎖または分岐鎖飽和炭化水素を意味する。
【0089】
本明細書で使用する「C〜Cアルケニル」という用語は、少なくとも1個の炭素−炭素二重結合を有する、2〜8個の炭素を含むアルキル部分を意味する。そのような基の炭素−炭素二重結合は、安定な化合物が得られるような、2〜8個の炭素の鎖に沿ったどの位置にあってもよい。そのような基は、前記アルケニル部分のEおよびZ異性体の両方を含む。そのような基としては例えば、エテニル、プロペニル、ブテニル、アリルおよびペンテニルが挙げられるが、それだけに限定されない。本明細書で使用する「アリル」という用語は−CHCH=CH基を意味する。
【0090】
本明細書で使用する「C〜Cアルキニル」という用語は、少なくとも1個の炭素−炭素三重結合を有する、2〜8個の炭素原子を含むアルキル部分を意味する。そのような基の炭素−炭素三重結合は、安定な化合物が得られるような、2〜8個の炭素の鎖に沿ったどの位置にあってもよい。そのような基としては例えば、エチン、プロピン、1−ブチン、2−ブチン、1−ペンチン、2−ペンチン、1−ヘキシン、2−ヘキシンおよび3−ヘキシンが挙げられるが、それだけに限定されない。
【0091】
「C〜C12シクロアルキル」とは、3〜12員全炭素単環、全炭素5員/6員もしくは6員/6員縮合二環、または多環縮合環基(「縮合」環系とは、系内の各環が系内の互いの環と炭素原子の隣接する対を共有していることを意味する)であって、環のうち1個または複数が1個または複数の二重結合を含むことができるが非芳香族である基を意味する。C〜C12シクロアルキル基の非限定的な例としてはシクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロペンテン、シクロヘキサン、シクロヘキサジエン、アダマンタン、シクロヘプタン、シクロヘプタトリエンなどが挙げられる。シクロアルキル基は置換されていても置換されていなくてもよい。シクロアルキル基の具体例は下記から誘導されるが、それだけに限定されない。
【0092】
【化49】

【0093】
本明細書で使用する「C〜C12アリール」という用語は、6〜12個の炭素原子を含む芳香族炭化水素から誘導される基を意味する。そのような基としては例えば、フェニルまたはナフチルが挙げられるが、それだけに限定されない。本明細書で使用する「Ph」または「フェニル」という用語は−C基を意味する。本明細書で使用する「ベンジル」という用語は−CH基を意味する。
【0094】
本明細書で使用される「5〜12員ヘテロアリール」という用語は、その環内に合計5〜12個の原子を有し、2〜11個の炭素原子ならびにO、SおよびNからそれぞれ独立に選択される1〜4個のヘテロ原子を含む芳香族複素環基であって、前記基の環が2個の隣接するO原子または2個の隣接するS原子を含まないことを条件とする基を意味する。複素環基としてはベンゾ縮合環系が挙げられる。芳香族複素環基としては例えば、ピリジニル、イミダゾリル、ピリミジニル、ピラゾリル、トリアゾリル、ピラジニル、テトラゾリル、フリル、チエニル、イソキサゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、イソチアゾリル、ピロリル、キノリニル、イソキノリニル、インドリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾフラニル、シノリニル、インダゾリル、インドリジニル、フタラジニル、ピリダジニル、トリアジニル、イソインドリル、プテリジニル、プリニル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、フラザニル、ベンゾフラザニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、キナゾリニル、キノキサリニル、ナフチリジニルおよびフロピリジニルが挙げられる。C〜C12ヘテロアリール基は、それが可能である場合はC結合またはN結合していてもよい。例えば、ピロールから誘導される基はピロール−1−イル(N結合)であってもピロール−3−イル(C結合)であってもよい。さらに、イミダゾールから誘導される基はイミダゾール−1−イル(N結合)であってもイミダゾール−3−イル(C結合)であってもよい。
【0095】
典型的な単環式ヘテロアリール基としては例えば下記が挙げられるが、それだけに限定されない。
【0096】
【化50】

【0097】
好適な縮合環ヘテロアリール基としては例えば下記が挙げられるが、それだけに限定されない。
【0098】
【化51】

【0099】
【化52】

【0100】
本明細書で使用される「5〜12員ヘテロシクロアルキル」という用語は、その環系内に合計5〜12個の原子を有し、2〜11個の炭素原子ならびにO、SおよびNからそれぞれ独立に選択される1〜4個のヘテロ原子を含む非芳香族単環式、二環式、三環式または四環式基であって、前記基の環が2個の隣接するO原子または2個の隣接するS原子を含まないことを条件とする基を意味する。さらに、そのような5〜12員ヘテロシクロアルキル基は、安定な化合物が得られるような任意の利用可能な原子においてオキソ置換基を含むことができる。例えば、そのような基は利用可能な炭素または窒素原子においてオキソ原子を含むことができる。そのような基は化学的に可能であれば2個以上のオキソ置換基を含むことができる。また、そのような5〜12員ヘテロシクロアルキル基が硫黄原子を含む場合、前記硫黄原子を1個または2個の酸素原子で酸化してスルホキシドまたはスルホンを得ることができると理解されたい。4員複素環基の一例は(アゼチジンから誘導される)アゼチジニルである。5員複素環基の一例はチアゾリルであり、10員複素環基の一例はキノリニルである。そのような5〜12員ヘテロシクロアルキル基のさらなる例としては、ピロリジニル、テトラヒドロフラニル、ジヒドロフラニル、テトラヒドロチエニル、テトラヒドロピラニル、ジヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、ピペリジノ、モルホリノ、チオモルホリノ、チオキサニル、ピペラジニル、アゼチジニル、オキセタニル、チエタニル、ホモピペリジニル、オキセパニル、チエパニル、オキサゼピニル、ジアゼピニル、チアゼピニル、1,2,3,6−テトラヒドロピリジニル、2−ピロリニル、3−ピロリニル、インドリニル、2H−ピラニル、4H−ピラニル、ジオキサニル、1,3−ジオキソラニル、ピラゾリニル、ジチアニル、ジチオラニル、ジヒドロピラニル、ジヒドロチエニル、ジヒドロフラニル、ピラゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサニル、3−アザビシクロ[4.1.0]ヘプタニル、3H−インドリルおよびキノリジニルが挙げられるが、それだけに限定されない。
【0101】
「C〜C12アルコキシ」という用語は、「C〜C12アルキル」が上記定義の通りである−O−(C〜C12アルキル)基を意味する。代表例としてはメトキシ、エトキシ、プロポキシおよびブトキシが挙げられるが、それだけに限定されない。
【0102】
「C〜C12アリールオキシ」という用語は、「C〜C12アリール」が本明細書で定義の通りである−O−(C〜C12アリール)基を意味する。代表例としてはフェノキシが挙げられるが、それだけに限定されない。
【0103】
「C〜C12シクロアルコキシ」という用語は、C〜C12シクロアルキルが本明細書で定義の通りである−O−(C〜C12シクロアルキル)基を意味する。そのような基としては例えば、シクロプロピルオキシ、シクロブチルオキシ、シクロペンチルオキシおよびシクロヘキシルオキシが挙げられるが、それだけに限定されない。
【0104】
「ハロ」および/または「ハロゲン」という用語はフッ素、塩素、臭素またはヨウ素を意味する。
【0105】
「3〜12員複素環」という用語は、合計3〜12個の環原子を有する非芳香族単環式または縮合環基であって、1〜4個の環原子がN、OおよびS(O)(式中、nは0、1または2である)から選択されるヘテロ原子であり、残りの環原子がCであり、そのような環系が2個の隣接するO原子または2個の隣接するS原子を含むことができないことを条件とする基を意味する。環は1個または複数の二重結合を有していてもよい。さらに、そのような基は、本発明の化合物の残りと、可能であれば炭素原子またはヘテロ原子により結合することができる。好適な飽和複素環基としては例えば下記が挙げられるが、それだけに限定されない。
【0106】
【化53】

【0107】
複素環基は1個または2個の置換基で置換されていてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0108】
下記のプロセスは、タンパク質キナーゼ阻害剤であるインダゾール化合物の、本発明の方法による調製を例示する。本発明はまた、本明細書に記載のプロセスで生じる新規中間体を含む。本発明の方法により調製された化合物は、ある種のタンパク質キナーゼの活性を調節および/または阻害する。そのような化合物は、タンパク質キナーゼにより媒介される血管新生または細胞増殖に関連する癌または他の疾患の治療に有用である。
【0109】
特記なき限り、下記のプロセスによる化合物の置換基の変更は本明細書で定義の通りである。その合成が本明細書に具体的に記載されていないか、刊行された参考文献を参照することで規定されない出発原料は、市販されているか、当業者に公知の方法で調製することができる。合成に関するある種の変更は当業者に公知の方法により行うことができる。
【0110】
本発明の薬学的に許容できる塩は、(ジ塩を含む)酸付加および塩基塩を含む。好適な酸付加塩は、無毒の塩を形成する酸から形成される。例えば、酢酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベシル酸塩、炭酸水素塩/炭酸塩、硫酸水素塩/硫酸塩、ホウ酸塩、カンシル酸塩、クエン酸塩、エジシル酸塩、エシル酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、ヒベンズ酸塩、塩酸塩/塩化物塩、臭化水素酸塩/臭化物塩、ヨウ化水素酸塩/ヨウ化物塩、イセチオン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メシル酸塩、メチル硫酸塩、ナフチル酸塩、2−ナプシル酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オロト酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、リン酸塩/リン酸水素塩/リン酸二水素塩、サッカリン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、トシル酸塩およびトリフルオロ酢酸塩が挙げられる。
【0111】
好適な塩基塩は、無毒の塩を形成する塩基から形成される。例えば、アルミニウム塩、アルギニン塩、ベンザチン塩、カルシウム塩、コリン塩、ジエチルアミン塩、ジオールアミン塩、グリシン塩、リシン塩、マグネシウム塩、メグルミン塩、オラミン塩、カリウム塩、ナトリウム塩、トロメタミン塩および亜鉛塩が挙げられる。
【0112】
好適な塩に関する考察は、その開示の全体が参照により本明細書に組み込まれるStahl and Wermuth,“Handbook of Pharmaceutical Salts:Properties,Selection,and Use”(Wiley−VCH,Weinheim,Germany,2002)を参照。
【0113】
本発明の化合物の薬学的に許容できる塩は、化合物の溶液と所望の酸または塩基を適切に混合することで容易に調製することができる。塩は、溶液から析出させて濾取してもよく、溶媒の蒸発により回収してもよい。塩のイオン化の程度は、完全イオン化からほぼ非イオン化まで変動し得る。
【0114】
固体である物質の場合、本発明の化合物、物質および塩が異なる結晶形または多形として存在することができ、これらの形態がいずれも本発明および特定の式の範囲内にあるものとされることが当業者には理解される。
【0115】
1個または複数の不斉炭素原子を含む本発明の化合物は2種以上の立体異性体として存在することができる。本発明の化合物がアルケニルまたはアルケニレン基を含む場合、幾何シス/トランス(またはZ/E)異性体が可能である。化合物が例えばケトもしくはオキシム基または芳香族部分を含む場合、互変異性(‘tautomerism’)が生じ得る。単一の化合物は2種以上の異性を示すことができる。2種以上の異性を示す化合物を含む、本発明の化合物のすべての立体異性体、幾何異性体および互変異性体、ならびにその1種または複数の混合物が本発明の範囲に含まれる。
【0116】
本発明の一態様は、下記スキームAで示される式1のインダゾール化合物の調製プロセスである。
【0117】
【化54】

【0118】
スキームAの化合物中の上記で示す各種置換基は下記のように定義される。RはCH=CH−RまたはCH=N−Rであり、Rは1〜4個のR基で置換されていてもよい。RはC〜C12アルキル、C〜C12シクロアルキル、5〜12員ヘテロシクロアルキル、C〜C12アリール、5〜12員ヘテロアリール、C〜C12アルコキシ、C〜C12アリールオキシ、C〜C12シクロアルコキシ、NH(C〜Cアルキル)、NH(C〜C12アリール)、NH(5〜12員ヘテロアリール)、N=CH−(C〜C12アルキル)、NH(C=O)RまたはNHであり、Rは1〜4個のR基で置換されていてもよい。各Rは独立に水素、ハロゲンまたはC〜Cアルキルである。各Rは独立にC〜C12アルキル、C〜C12シクロアルキル、5〜12員ヘテロシクロアルキル、C〜C12アリール、5〜12員ヘテロアリールであり、Rは1〜4個のR基で置換されていてもよい。各Rは独立にハロゲン、C〜C12アルキル、C〜C12アルコキシ、C〜C12シクロアルキル、C〜C12アリール、3〜12員複素環、5〜12員ヘテロアリール、−O(C〜C12アルキル)、−O(CH(C〜C12シクロアルキル)、−O(CH(C〜C12アリール)、−O(CH(3〜12員複素環)、−O(CH(5〜12員ヘテロアリール)または−CNであり、R中の各水素はハロゲン、−OH、−CN、部分的または完全にハロゲン化していてもよいC〜C12アルキル、部分的または完全にハロゲン化していてもよい−O(C〜C12アルキル)、−CO、−SOおよび−SOから選択される1個または複数の基で置換されていてもよい。nは0、1、2、3または4である。各Xは独立に活性化した置換基である。
【0119】
上記スキームAの第1ステップでは、式5の化合物と活性化した置換基を、塩基および好適な溶媒の存在下で反応させることにより、式4で表される化合物を製造することができる。使用可能な塩基としてはpKaが7を超える塩基が挙げられる。好適な溶媒としては極性非プロトン性溶媒が挙げられる。例えば、塩基はKOHであることができ、溶媒はDMFであることができる。活性化した置換基としては例えばIなどのハロゲンが挙げられる。この反応は−20℃〜30℃で行うことができる。例えば、この反応は0℃で反応フラスコを氷/水中に浸漬することで行うことができる。式5の化合物は、市販の出発原料から、ザンドマイヤー反応などの当技術分野で公知の標準的な反応により調製することができる。例えば、XがIである式5の化合物を調製するには、(市販の)6−アミノインダゾールを、ヨウ素源としてヨウ化カリウムを使用するザンドマイヤー反応で使用することができる。
【0120】
次に、式4の化合物と式3の化合物を反応させて式2の化合物を調製することができる。式3の化合物は市販されている。式3の化合物の特定の実施形態では、Rは水素であることができ、RはC〜C12アルキルであることができる。例えばRはメチルであることができる。式2の化合物を与える式4の化合物と式3の化合物のカップリング反応は、触媒、塩基および好適な溶媒の存在下で行う。CuまたはPd触媒などの各種の市販の触媒をこのステップで使用できることが当業者には認識されよう。パラジウムまたは銅触媒を使用してアリール硫化物と活性化した置換基Xを含むアリール化合物とをカップリングする方法は公知である。例えば、上記カップリング反応で有用なパラジウム触媒としては、Pd(dppf)Cl−CHCl、Pd[(P(t−Bu)、Pd(PCyCl、Pd(P(o−トリル)Cl、[Pd(P(OPh−2,4−t−Bu))Cl]、FibreCat(商標)1007(PCy−繊維/Pd(OAc))、FibreCat(商標)1026(PCy−繊維/PdCl/CHCN)、FibreCat(商標)1001(PPh−繊維/Pd(OAc))、Pd(dppf)Cl、Pd(dppb)Cl、Pd(dppe)Cl、Pd(PPh、Pd(PPh)Clなどが挙げられるが、それだけに限定されない。上記変換用の他の有用な触媒としては、1個または複数の配位子、特にホスフィン配位子がパラジウム触媒とさらに錯体を形成している触媒、例えば2−(tert−ブチル−ホスフィノ)ビフェニルなどのホスフィン配位子と錯体を形成しているPd(dba)、9,9−ジメチル−4,5−ビス(ジフェニル−ホスフィノ)キサンテン(Xantphos)と錯体を形成しているPd(dba)、P(t−Bu)と錯体を形成しているPd(dba)、(o−ビフェニル)P(t−Bu)と錯体を形成しているPd(OAc)、および(o−ビフェニル)P(t−Cy)と錯体を形成しているPd(dba)が挙げられる。上記カップリング反応で有用な銅触媒としては、CuI/エチレングリコール錯体、CuBr/DBU錯体、Cu(PPh)Br、ならびに1,10−フェナントロリンまたはネオクプロインとさらに錯体を形成しているCu(PPh)Br(例えばそれぞれCu(phen)(PPh)BrおよびCu(neocup)(PPh)Br)などを含むがそれだけに限定されない、銅が1種または複数の配位子と錯体を形成している触媒が挙げられるが、それだけに限定されない。
【0121】
上記カップリング反応で有用な塩基としては、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム、水酸化セシウム、ナトリウムtert−ブトキシド、カリウムtert−ブトキシド、カリウムフェノキシド、トリエチルアミンなど、またはその混合物が挙げられるが、それだけに限定されない。トルエン、キシレン、ジグライム、テトラヒドロフラン、ジメチルエチレングリコール、DMFなど、またはその混合物を含むがそれだけに限定されない溶媒を、そのようなカップリング反応で使用することができる。この反応は50℃〜90℃の温度で行うことができる。例えば、この反応は70℃の温度で行うことができる。
【0122】
一般に、式4の化合物中の活性化した置換基Xは、式3の化合物と反応して式2の化合物を得るのに十分な比反応性を与えるようなものでなければならない。例えば、XがIの場合、インダゾールの6位のヨード基は3位のヨード基に比べて酸化的付加に対する反応性が高いことが観察される。そのような活性化した置換基を含む式4の化合物は、調製、単離および/または精製し、続いて式3の化合物と反応させることができる。あるいは、好適な活性化した置換基を有する式4の化合物を調製し、単離またはさらなる精製なしに式3の化合物とさらに反応させて式2の化合物を得ることができる。Xの好適な活性化した置換基としては、ハロゲン(例えばCl、BrおよびI)、誘導体化した水酸基(例えばトリフレート、メシレートおよびトシレート)ならびにジアゾニウム塩が挙げられる。他の好適な活性化した置換基は公知であり、例えば米国特許第5,576,460号ならびにHumphrey,J.M.;Chamberlin,A.R.Chem.Rev.97,2243(1997);Comprehensive Organic Synthesis;Trost,B.M.,Ed.;Pergamon:New York,(1991);Vol.6,pp301−434;およびComprehensive Organic Transformations;Larock,R.C.;VCH:New York,(1989),Chapter 9に見ることができる。
【0123】
式2で表されるこのカップリングステップで製造される化合物は、式1の化合物の合成における新規中間体である。本発明はそのような中間体、ならびにその薬学的に許容できる塩および溶媒和物を含む。特定の一実施形態では、このカップリングステップは下記のように行うことができる。
【0124】
【化55】

【0125】
スキームAの最終ステップはヘック反応を含み、式2のハロゲン化合物を式RHのアルケンと反応させて式1の化合物を製造することにより行う。上記の通り、アルケンRはCH=CH−RまたはCH=N−Rである。例えば、RはCH=CH−(5〜12員ヘテロアリール)であることができる。さらに、Rの5〜12員ヘテロアリールはピリジニルであることができる。特定の一実施形態では、Rは2−ビニルピリジンである。
【0126】
ヘック反応はC−C結合の触媒カップリングを含み、ビニル水素はビニル、アリールまたはベンジル基で置換され、後者はハロゲン化物、ジアゾニウム塩、アリールトリフレートまたは超原子価ヨード化合物として導入される。
【0127】
【化56】

【0128】
モル濃度1〜5%のPd(II)塩または錯体およびPd(0)の形態のパラジウムが、これらの種類の反応に最も広く使用される金属触媒である。無機塩基または有機塩基(例えば有機アミン)などの適切な強度の塩基も遊離酸の中性化に必要である。LiBrなどの有益な添加剤を使用してもよい。ヘック反応で使用される典型的な触媒としては、Pd(dppf)Cl/CHCl、[Pd(OAc)、トランス−PdCl(CHCN)、Pd(C1714O)ならびにPd(PPhおよびトランス−PdCl(PPhなどのPd(0)−ホスフィン錯体、またはPd(OAc)/PPhなどのin situ触媒などが挙げられるが、それだけに限定されない。CpFe(PPhおよびPhP(CH2−4PPhなどの配位挟角がより大きいキレートホスフィンは、Pd(OAc)、(pi−アリル)Pd錯体、Pd(dba)、Pd(dba)およびPdClなどの触媒と併用することで有用となる。ホスフィンの存在はこれらの触媒を「安定化させる」。一般に、これらの種類の反応は極性非プロトン性媒体(アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドまたはジメチルアセトアミドなどのシグマ供与型溶媒)中で行う。反応時間および温度は、活性化されるべき有機ハロゲン化物の性質に依存する。ヨード誘導体はより反応性が高いため、補助的な配位子(ホスフィン)が必要でない場合がある。これらの場合では、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドおよびN−メチルピロリジンなどの極性溶媒と塩基としての酢酸ナトリウムの併用が特に有益である。
【0129】
したがって、上記スキームAに示すように、式1の化合物は、ビニル水素を含む式RHの化合物、およびハロゲン化物、ジアゾニウム塩、アリールトリフレートまたは超原子価ヨード化合物で置換されているビニル、アリール、ヘテロアリールまたはベンジル基を含む式2の化合物が関与するヘック反応により調製することができる。
【0130】
特定の一実施形態では、2−(3−ヨード−1H−インダゾール−6−イルスルファニル)−N−メチル−ベンズアミド(2−a)と2−ビニルピリジンのヘック反応を、下記の通りこれらの反応物を酢酸パラジウム(II)(Pd(OAc))などの触媒、トリ−o−トリルホスフィンなどの配位子、プロトンスポンジ(N,N,N’,N’−テトラメチル−ナフタレン−1,8−ジアミン)などの好適な塩基、LiBrなどの好適な添加剤、およびDMAまたはNMPなどの溶媒の存在下で加熱することにより行ってN−メチル−2−[3−(2−ピリジン−2イル−ビニル)−1H−インダゾール−6イルスルファニル]−ベンズアミド(1−a)を得る。
【0131】
【化57】

【0132】
パラジウム触媒を上記の反応ステップいずれかで使用する場合、残ったパラジウムの除去が重要な目標である。そのようなパラジウム除去は、「重金属の除去方法」と題し、2004年11月2日に出願された、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許仮出願第60/624,719号で論じられたように、10%システイン−シリカを用いて行うことができる。このパラジウム除去の最終ステップは、合成化合物を様々な多形に結晶化させる条件と組み合わせることもできる。例えば、Rが2−ビニルピリジンであり、Rがメチルであり、Rがそれぞれ水素である式1の化合物を調製する場合、IV形とされる多形は、THF、DMFおよびMeOHを用いて還流させた後、HOAcおよびキシレンを加えることで製造することができる。IV形および他の多形の形成および特徴づけは、「6−[2−(メチルカルバモイル)フェニルスルファニル]−3−E−[2−(ピリジン−2−イル)エテニル]インダゾールの多形」と題し、2004年11月2日に出願された、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許仮出願第60/624,665号でさらに詳論されている。このパラジウム除去プロセスおよび多形制御ステップは下記の実施例11でもさらに詳述されている。
【0133】
パラジウム除去を、単独使用または併用することができる1,2−ジアミノプロパンまたはDIPHOSをパラジウムスカベンジャーとして使用して行い、有機相中のパラジウムの量を減少させることができる。1,2−ジアミノプロパンおよび/またはDIPHOSなどのパラジウムスカベンジャーを加えた後、パラジウム濃度を、メタノールまたはテトラヒドロフランなどの好適な溶媒で洗浄後、濾過することでさらに減少させることができる。パラジウムの量を減少させるための1,2−ジアミノプロパンおよびDIPHOSのそのような使用は下記の実施例14でさらに詳述されている。
【0134】
本発明の別の態様では、下記スキームBで示される式1の化合物の調製プロセスである。
【0135】
【化58】

【0136】
上記スキームBで示されるプロセスのステップは、スキームAで既に記載のステップと同様であるが、ただし、保護ステップを行った後、式2の化合物にR置換基を加え、続いて保護基を除去して式1の化合物を得る。上記スキームBに示す化合物では、置換基はスキームAで既に定義の通りである。スキームBによれば、好適な保護基(R)を式2の化合物中のインダゾール環のN−1位に加えることで式7の中間化合物を調製する。次に、スキームAで既に論じたヘック反応でR置換基を加えた後、R保護基を除去することができる。
【0137】
好適な窒素保護基Rは、式7の化合物を式RHの化合物と反応させて式8の化合物を得る反応条件に対して安定な保護基である。さらに、そのような保護基は、続いてそれを除去することで式1の化合物を得ることができるように選択しなければならない。
【0138】
好適な窒素保護基は公知であり、本発明の化合物の調製方法において有用であるか有用である可能性がある任意の窒素保護基を使用することができる。窒素保護基としては例えば、シリル、置換シリル、アルキルエーテル、置換アルキルエーテル、シクロアルキルエーテル、置換シクロアルキルエーテル、アルキル、置換アルキル、カルバメート、尿素、アミド、イミド、エナミン、スルフェニル、スルホニル、ニトロ、ニトロソ、酸化物、ホスフィニル、ホスホリル、シリル、有機金属、ボリン酸およびボロン酸基が挙げられる。これらの基、これらの基を用いた窒素部分の保護方法、および窒素部分からこれらの基を除去する方法のそれぞれの例はT.GreeneおよびP.Wuts前掲書に開示されている。
【0139】
したがって、Rとして有用である好適な窒素保護基としては、シリル保護基(例えばSEM:トリメチルシリルエトキシメチル、TBDMS:tert−ブチルジメチルシリル)、シクロアルキルエーテルなどのアルキルエーテル保護基(例えばTHP:テトラヒドロピラン)、アルキルオキシカルボニルなどのカルバメート保護基(例えばBoc:t−ブチルオキシカルボニル)、アリールオキシカルボニル(例えばCbz:ベンジルオキシカルボニルおよびFMOC:フルオレン−9−メチルオキシカルボニル)、アルキルオキシカルボニル(例えばメチルオキシカルボニル)、アルキルカルボニルまたはアリールカルボニル、置換アルキル、特にアリールアルキル(例えばトリチル(トリフェニルメチル)、ベンジルおよび置換ベンジル)などが挙げられるが、それだけに限定されない。
【0140】
Rpがシリル保護基(例えばSEM:トリメチルシリルエトキシメチル、TBDMS:tert−ブチルジメチルシリル)である場合、そのような基は公知の条件下で適用し、続いて除去することができる。例えば、そのようなシリル保護基は、窒素部分および水酸基に、それらのシリル塩化物(例えばSEMCl:塩化トリメチルシリルエトキシメチル、TBDMSCl:塩化tert−ブチルジメチルシリル)を経由して、好適な塩基(例えば炭酸カリウム)、触媒(例えば4−ジメチルアミノピリジン(DMAP))および溶媒(例えばN,N−ジメチルホルムアミド)の存在下で結合させることができる。そのようなシリル保護基は、フッ化テトラアルキルアンモニウム塩などの有機フッ化物塩、または無機フッ化物塩の使用などの、フッ化物イオン源への対象化合物の曝露により開裂させることができる。好適なフッ化物イオン源としてはフッ化テトラメチルアンモニウム、フッ化テトラエチルアンモニウム、フッ化テトラプロピルアンモニウム、フッ化テトラブチルアンモニウム、フッ化ナトリウムおよびフッ化カリウムが挙げられるが、それだけに限定されない。あるいは、そのようなシラン保護基は、有機酸または鉱酸を用いた酸性条件下で、緩衝剤を使用して、または使用せずに開裂させることもできる。好適な酸としては例えば、フッ化水素酸、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、クエン酸およびメタンスルホン酸が挙げられるが、それだけに限定されない。そのようなシラン保護基は適切なルイス酸により開裂させることもできる。好適なルイス酸としては例えば、ジメチルブロモボラン、テトラフルオロホウ酸トリフェニルメチルおよびある種のPd(II)塩が挙げられるが、それだけに限定されない。そのようなシラン保護基は、適切な有機または無機塩基性化合物を用いた塩基性条件下で開裂させることもできる。そのような塩基性化合物としては例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムが挙げられるが、それだけに限定されない。
【0141】
シラン保護基の開裂は、選択された特定の反応条件に適合し、所望の変換に干渉しない適切な溶媒中で行うことができる。そのような好適な溶媒としては例えば、アルキルエステル、アルキルアリールエステル、アリールエステル、アルキルエーテル、アリールエーテル、アルキルアリールエーテル、環状エーテル、炭化水素、アルコール、ハロゲン化溶媒、アルキルニトリル、アリールニトリル、アルキルケトン、アリールケトン、アルキルアリールケトンまたは非プロトン性複素環化合物が挙げられる。好適な溶媒としては例えば、酢酸エチル、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、メチルイソブチルケトン、ジメトキシエタン、ジイソプロピルエーテル、クロロベンゼン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、プロピオニトリル、ブチロニトリル、t−アミルアルコール、酢酸、ジエチルエーテル、メチルt−ブチルエーテル、ジフェニルエーテル、メチルフェニルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、t−ブタノール、n−ブタノール、2−ブタノール、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、アセトニトリル、ベンゾニトリル、アセトン、2−ブタノン、ベンゼン、トルエン、アニソール、キシレンおよびピリジン、または上記溶媒の任意の混合物が挙げられるが、それだけに限定されない。さらに、必要であればこの変換において水を共溶媒として使用してもよい。最後に、そのような反応は、使用する特定の反応物に応じて−20℃〜100℃の適温で行うことができる。さらなる好適な反応条件はT.GreeneおよびP.Wuts前掲書に見ることができる。
【0142】
が環状エーテル保護基(例えばテトラヒドロピラン(THP)基)である場合、そのような基は公知の条件下で適用し、続いて除去することができる。例えば、そのような環状エーテルは、窒素部分および水酸基に、それらのエノールエーテル(例えばジヒドロピラン(DHP))を経由して、好適な酸(例えばp−トルエンスルホン酸またはメタンスルホン酸)および溶媒(例えばジクロロメタン)の存在下で結合させることができる。そのような環状エーテル基は、対象化合物を有機もしくは無機酸またはルイス酸で処理することにより開裂させることができる。特定の試薬の選択は、存在するエーテルの種類および他の反応条件に依存する。好適な試薬としては例えば、塩酸、硫酸、硝酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、または三フッ化ホウ素エーテラートなどのルイス酸が挙げられるが、それだけに限定されない。Rがアルキルオキシカルボニル(例えばBoc:t−ブチルオキシカルボニル)またはアリールオキシカルボニル(例えばCbz:ベンジルオキシカルボニル)などのカルバメート保護基である場合、保護基の開裂は、カルバミン酸が生成され、続いてCOを失ってアミノ基が再生される、水が不在の酸性条件下で行うことができる。そのようなカルバメート基を脱保護するのに好適な酸としては、トリフルオロ酢酸、塩化水素、TsOHおよびMsOHが挙げられるが、それだけに限定されない。
【0143】
これらの反応は、選択された特定の反応条件に適合し、所望の変換に干渉しない溶媒中で行うことができる。そのような好適な溶媒としては例えば、アルキルエステル、アルキルアリールエステル、アリールエステル、アルキルエーテル、アリールエーテル、アルキルアリールエステル、環状エーテル、炭化水素、アルコール、ハロゲン化溶媒、アルキルニトリル、アリールニトリル、アルキルケトン、アリールケトン、アルキルアリールケトンまたは非プロトン性複素環化合物が挙げられる。好適な溶媒としては例えば、酢酸エチル、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、メチルイソブチルケトン、ジメトキシエタン、ジイソプロピルエーテル、クロロベンゼン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、プロピオニトリル、ブチロニトリル、t−アミルアルコール、酢酸、ジエチルエーテル、メチルt−ブチルエーテル、ジフェニルエーテル、メチルフェニルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、t−ブタノール、n−ブタノール、2−ブタノール、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、アセトニトリル、ベンゾニトリル、アセトン、2−ブタノン、ベンゼン、トルエン、アニソール、キシレンおよびピリジン、または上記溶媒の任意の混合物が挙げられるが、それだけに限定されない。さらに、必要であればこの変換において水を共溶媒として使用してもよい。最後に、そのような反応は、使用する特定の反応物に応じて−20℃〜100℃の適温で行うことができる。さらなる好適な反応条件はT.GreeneおよびP.Wuts前掲書に見ることができる。
【0144】
特定の一実施形態では、下記のように式2−aの化合物をインダゾール環のN−1位でテトラヒドロピラン(THP)により保護して式7−aの窒素保護化合物を得る。
【0145】
【化59】

【0146】
さらなる特定の実施形態では、スキームAで既に論じたヘック反応によって次に式RHの化合物を式7−aの化合物に加えることができる。例えば、RHが2−ビニルピリジンの場合、式7−aのN−1保護インダゾールを用いたヘック反応は下記のように進行させることができる。
【0147】
【化60】

【0148】
さらなる特定の実施形態では、得られた式8−aの化合物を下記の条件でN−1位で脱保護して式1−aの化合物を得ることができる。
【0149】
【化61】

【0150】
特定の一実施形態では、下記のように式2−aの化合物をインダゾール環のN−1位でBoc基により保護して式7−bの窒素保護化合物を得る。
【0151】
【化62】

【0152】
さらなる特定の実施形態では、スキームAで既に論じたヘック反応によって式RHの化合物を式7−bの化合物に加えた後、脱保護することができる。例えば、RHが2−ビニルピリジンの場合、式7−bのN−1保護インダゾールを用いたヘック反応、後続のトリフルオロ酢酸による脱保護は下記のように進行させることができる。
【0153】
【化63】

【0154】
本発明の別の態様では、下記スキームCで示される式1の化合物の調製プロセスである。
【0155】
【化64】

【0156】
上記にスキームCとして示すスキームでは、置換基はスキームAで既に定義の通りであり、RはC≡C−Rであり、Rは1〜4個のR基で置換されていてもよい。式2の化合物を与えるスキームCの最初の2つのステップは、スキームAで既に示したステップと同様である。次に式RHの化合物を式2の化合物と反応させて式10の化合物を得た後、Rの三重結合を二重結合に還元して式1の化合物を得る。式1の化合物の得られた二重結合はZ配置でもE配置でもよい。
【0157】
当業者に公知の園頭カップリングによりRHを式2の化合物に加えることができる(Sonogashira et al.Tetrahedron Lett,4467(1975);Rossi et al.Org.Prep.Proceed.Int,27,129−160(1995)を参照)。このカップリングはPd(PPhClなどの好適な触媒、CuIなどの添加剤、およびDMF、THF、ジオキサン、ジメトキシエタンまたはトルエンなどの好適な溶媒の存在下で行うことができる。
【0158】
特定の一実施形態では、下記のように2−エチニルピリジンを式2−aの化合物に加えて式10−aの化合物を得る。
【0159】
【化65】

【0160】
次に、R置換基中に三重結合を含む式10の化合物を当業者に公知の標準的な水素化還元条件で還元することができる。例えば、三重結合の二重結合への還元をリンドラー触媒などのPd触媒を用いた水素化反応により行ってZ−オレフィンを得るか、またはLi/NHにより行ってE−オレフィンを得ることができる。Z−オレフィンのE−オレフィンへの変換およびその逆は当業者に公知の手順で行うことができる(例えばOkamura et al.J.Am.Chem.Soc.107,1034−1041(1985)を参照)。
【0161】
特定の一実施形態では、下記のように式10−aの化合物の三重結合をZ−オレフィンに還元して式11−aの化合物を得ることができる。
【0162】
【化66】

【0163】
さらなる実施形態では、下記のように式10−aの化合物の三重結合をE−オレフィンに還元して式1−aの化合物を得ることができる。
【0164】
【化67】

【0165】
Z−オレフィンである式1の化合物は上記で論じたようにE−オレフィンに変換することができる。例えば、特定の一実施形態では、下記のように式11−aの化合物を式1−aの化合物に変換することができる。そのような異性体変換反応は当業者に公知である。
【0166】
【化68】

【0167】
本発明の別の態様では、式2−aの化合物を下記スキームDにより調製することができる。
【0168】
【化69】

【0169】
式12の化合物を与える式5の化合物と式3−aの化合物のカップリング反応は、触媒、塩基および好適な溶媒の存在下で行うことができる。CuまたはPd触媒などの各種の市販の触媒をこのステップで使用できることが当業者には認識されよう。パラジウムまたは銅触媒を使用してアリール硫化物と活性化した置換基Xを含むアリール化合物とをカップリングする方法は公知である。例えば、上記カップリング反応で有用なパラジウム触媒としては、Pd(dppf)Cl−CHCl、Pd[(P(t−Bu)、Pd(PCyCl、Pd(P(o−トリル)Cl、[Pd(P(OPh−2,4−t−Bu))Cl]、FibreCat(商標)1007(PCy−繊維/Pd(OAc))、FibreCat(商標)1026(PCy−繊維/PdCl/CHCN)、FibreCat(商標)1001(PPh−繊維/Pd(OAc))、Pd(dppf)Cl、Pd(dppb)Cl、Pd(dppe)Cl、Pd(PPh、Pd(PPh)Clなどが挙げられるが、それだけに限定されない。上記変換用の他の有用な触媒としては、1個または複数の配位子、特にホスフィン配位子がパラジウム触媒とさらに錯体を形成している触媒、例えば2−(tert−ブチル−ホスフィノ)ビフェニルなどのホスフィン配位子と錯体を形成しているPd(dba)、9,9−ジメチル−4,5−ビス(ジフェニル−ホスフィノ)キサンテン(Xantphos)と錯体を形成しているPd(dba)、P(t−Bu)と錯体を形成しているPd(dba)、(o−ビフェニル)P(t−Bu)と錯体を形成しているPd(OAc)、および(o−ビフェニル)P(t−Cy)と錯体を形成しているPd(dba)が挙げられる。上記カップリング反応で有用な銅触媒としては、CuI/エチレングリコール錯体、CuBr/DBU錯体、Cu(PPh)Br、ならびに1,10−フェナントロリンまたはネオクプロインとさらに錯体を形成しているCu(PPh)Br(例えばそれぞれCu(phen)(PPh)BrおよびCu(neocup)(PPh)Br)などを含むがそれだけに限定されない、銅が1種または複数の配位子と錯体を形成している触媒が含まれる。
【0170】
上記カップリング反応で有用な塩基としては、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム、水酸化セシウム、ナトリウムtert−ブトキシド、カリウムtert−ブトキシド、カリウムフェノキシド、トリエチルアミンなど、またはその混合物が挙げられるが、それだけに限定されない。トルエン、キシレン、ジグライム、テトラヒドロフラン、ジメチルエチレングリコール、DMF、NMPなど、またはその混合物を含むがそれだけに限定されない溶媒を、そのようなカップリング反応で使用することができる。この反応は50℃〜90℃の温度で行うことができる。上記スキームDでは、特に好ましい反応条件はIであるX、触媒としてXantphosと錯体を形成したPd(dba)、塩基としてCsOH、溶媒としてNMPを含み、80℃で行う。
【0171】
上記スキームDの最終反応ステップは、式12の化合物を活性化した置換基Xと反応させることで行う。この反応は好適な塩基および好適な溶媒を使用して室温で行うことができる。例えば、KOHを塩基として使用することができ、NMPを溶媒として使用することができる。好ましくは、活性化した置換基XはIである。
【実施例】
【0172】
下記の実施例では、特記なき限り、下記の記載での温度はすべて摂氏(℃)であり、特記なき限り、部およびパーセントはすべて重量部および重量パーセントである。
【0173】
各種出発原料および他の試薬は、特記なき限り、Aldrich Chemical Company、Regis Chemical Company、SAI Lifesciences、EM Scienceなどの供給業者から購入し、さらに精製せず使用した。
【0174】
下記に開示した反応は、陽圧の窒素、アルゴン下または乾燥管で、(特記なき限り)周囲温度で、無水溶媒中で行った。分析薄層クロマトグラフィーは、ガラスで裏打ちされたシリカゲル60°F 254プレート(Analtech(0.25mm))上で行い、溶出は適切な溶媒比(v/v)で行った。反応は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)または薄層クロマトグラフィー(TLC)で試験し、出発原料が消失したと判断された時点で終了とした。TLCプレートはUV、リンモリブデン酸染色またはヨウ素染色で可視化した。
【0175】
H−NMRスペクトルは300MHzで動作するBruker社の装置上で記録し、13C−NMRスペクトルは75MHzで記録した。NMRスペクトルは、参照標準としてクロロホルム(7.25ppmおよび77.00ppm)またはDMSO−d(2.50ppmおよび39.52ppm)を使用して、DMSO−dまたはCDCl溶液(ppmで報告)として得る。他のNMR溶媒を必要に応じて使用した。ピークの多重度を報告する場合には下記の略語を使用する。s=シングレット、d=ダブレット、t=トリプレット、m=マルチプレット、br=ブロード、dd=ダブレットのダブレット、dt=トリプレットのダブレット。結合定数を与える場合はヘルツで報告する。
【0176】
赤外スペクトルは、Perkin−ElmerのFT−IR分光計上で、ニートオイルとして、KBrペレットとして、またはCDCl溶液として記録した。報告する場合は波数(cm−1)とする。質量スペクトルはLC/MSまたはAPCIにより得た。すべての融点は未補正である。
【0177】
すべての最終生成物の(波長220nmおよび254nmでのHPLCによる)純度は95%を超えていた。
【0178】
下記で与える実施例および調製例により本発明の方法をさらに説明および例証する。本発明の範囲は決して下記の実施例の範囲により限定されないものと理解されたい。
【0179】
(実施例1)
6−[2−(メチルカルバモイル)フェニルスルファニル]−3−E−[2−(ピリジン−2−イル)エテニル]インダゾールの調製
【0180】
【化70】

【0181】
2−(3−ヨード−1H−インダゾール−6−イルスルファニル)−N−メチル−ベンズアミド(239.19g)、2−ビニルピリジン(75.7mL、702Mmol)、Pd(OAc)(6.56g)、P(o−Tol)(23.12g)、プロトンスポンジ(187.82g)、LiBr(314.59g)およびDMA(3.1L、3.5mL/g)を、メカニカルスターラーおよび温度プローブを備えた5L三つ口フラスコに加えた。室内減圧および窒素に交互に接続することで混合物を3回脱気した。次に混合物を1時間で110℃に加熱し、温度を110℃に24時間維持し、その時点ですべての2−(3−ヨード−1H−インダゾール−6−イルスルファニル)−N−メチル−ベンズアミドが消失した(HPLC)。冷却後、混合物を22L抽出器に移し、その後CHCl5.5L、水5.5Lおよび37%HCl水溶液275mLを加えた。撹拌および分配後、有機相を水2.0Lおよび37%HCl100mLで2回抽出した。この段階で、有機相(HPLC)は著しい量の最終生成物(HPLC)を含んでおらず、それを廃棄した。合わせた水層をトルエン2.2Lで処理後、28%NHOH1.05Lを(添加漏斗を経由して)45分間かけて加えた。濃縮析出物がこの段階で形成された。得られた混合物を約48時間撹拌した。次に混合物を濾過し、吸引乾燥させた。ケーキをトルエン3.5Lで研和し、終夜撹拌し、濾過し、吸引乾燥させた。次にケーキをガラス皿に移し、室内減圧下50℃で終夜乾燥させて最終生成物160.20gを得た。
H NMR,300MHz,(DMSO−D6)、ppm;13.35(1H,s)、8.61(1H,d,J=3.8Hz)、8.39(1H,q,J=4.4Hz)、8.21(1H,d,J=8.8Hz)、7.96(1H,d,J=16.4Hz)、7.85〜7.76(1H,m)、7.66(1H,d,J=7.8Hz)、7.61(1H,s)、7.58(1H,d,J=16.5Hz)、7.50(1H,dd,J=5.7Hz)、7.36〜7.23(3H,m)、7.192(1H,dd,J=8.4,1.2Hz)、7.05(1H,dd,J=7.5,1.5Hz)、2.78(3H,d,J=4.5Hz)。
【0182】
(実施例2)
2−(3−ヨード−1H−インダゾール−6−イルスルファニル)−N−メチル−ベンズアミドの調製
【0183】
【化71】

【0184】
3,6−ジヨードインダゾール(250.00g)、2−メルカプト−N−メチルベンズアミド(118.48g)、Pd(dba)(9.28g)、Xantphos(11.73g)、DMF(2.5L、10mL/g)、次にCsOHを、メカニカルスターラーおよび温度プローブを備えた5L四つ口フラスコに順次加えた。次に反応混合物を撹拌した。室内減圧、次に窒素に交互に接続することで濃色混合物を3回脱気した。混合物を30分間かけて70℃に加熱し、同温で4時間維持し、その時点で一定分量のHPLCは3,6−ジヨードインダゾールが3%未満であることを示した。冷却後、混合物を22L抽出器中の水7.5L、トルエン1.25LおよびCHCl1.25Lの混合物に注いだ。混合物を周囲温度で終夜撹拌した。濃縮析出物が終夜に形成された。混合物を濾過し、ケーキを吸引乾燥させた。ケーキを室内減圧下35℃で6時間さらに乾燥させて最終生成物216gを得た。次に母液をEtOAc1.5Lで抽出した。分配後水層を廃棄した。有機層をそれぞれ水2Lで2回洗浄し、濃縮した。残渣をCHCl250mLで処理し、終夜保存した。濃縮析出物が終夜に形成された。混合物を濾過し、ケーキを吸引乾燥させた。ケーキを室内減圧下35℃で終夜乾燥させて最終生成物24.71gを得た。合わせた収量は最終生成物241gであった。材料は十分な純度を示し、さらに精製せず次のステップに使用した。
H NMR 300MHz,DMSO ppm:13.53(s,1H)、8.35(q,J=4.7Hz,1H)、7.56(s,1H)、7.51〜7.40(m,2H)、7.36〜7.23(m,3H)、7.13(dd,J=8.5,1.3Hz,1H)、7.06〜7.01(m,1H)、2.76(d,J=4.7Hz,3H)。
【0185】
(実施例3)
3,6−ジヨードインダゾールの調製
【0186】
【化72】

【0187】
固体NaHSO13.6gを脱イオン水250mLに激しく撹拌しながら加えることでNaHSO水溶液を調製した。6−ヨードインダゾール(30.0g)、次にDMF(60mL)をメカニカルスターラー、温度プローブおよび100mL滴下漏斗を装着した500mL三つ口フラスコに加えた。撹拌を開始した後、フラスコを氷/水浴中に浸漬させた。30分後、KOHを1回で加え、得られた混合物をさらに30分間撹拌した。I54.3gのDMF55mL溶液(全量71mL)を滴下漏斗に加え、ランインを開始した。30分後、溶液42mLを反応混合物に加えた。添加を停止し、一定分量サンプルを取り出してHPLC(TFASH法)で分析したところ、依然として6−ヨードインダゾールが存在していることが示された。ヨウ素/DMF溶液をさらに10mL加えた後、第2の一定分量サンプルは、すべての出発原料6−ヨードインダゾールが消失したことを示した。NaHSO13.6gの脱イオン水溶液を反応混合物にゆっくりと加えた。この段階で濃色溶液は黄色懸濁液になった。1時間撹拌後、混合物を濾過し、ケーキを水200mLおよびヘキサン200mLで洗浄した。ケーキを吸引乾燥させ、真空オーブン(25インチ真空/60℃)でさらに18時間乾燥させて最終生成物38.60gを淡褐色固体として得た。
H NMR 300MHz,DMSO ppm:7.96(s,1H)、7.46(d,J=8.4Hz,1H)、7.24(d,J=8.4Hz,1H)、3.33(s,1H)。
【0188】
(実施例4)
6−[2−(メチルカルバモイル)フェニルスルファニル]−3−E−[2−(ピリジン−2−イル)エテニル]インダゾールを製造する最終脱保護ステップ
【0189】
【化73】

【0190】
N−1 THP 6−[2−(メチルカルバモイル)フェニルスルファニル]−3−E−[2−(ピリジン−2−イル)エテニル]インダゾール(355g)をメタノール2,485mLに懸濁させた後、p−トルエンスルホン酸一水和物(718g)を加えた。次に、反応をHPLC(gluco法)で監視しながら、混合物をアルゴン下4時間かけて65℃に加熱した(ハード還流)。残存するN−1 THP保護出発原料が1%未満になるまで加熱を続けた。次にヒーティングを除去し、反応液を室温に冷却した。固体を濾過し、湿潤ケーキをメタノール(2体積、710mL)で洗浄した後、固体を酢酸エチル(2体積、710mL)ですすいだ。炭酸水素ナトリウム(126.84g)、脱イオン水(1800mL)および酢酸エチル(975mL)を含む反応器に湿潤ケーキを移した後、20℃で2時間撹拌した。固体を濾過し、5体積の脱イオン水(1800mL)、次に2体積の酢酸エチル(760mL)で洗浄した後、真空オーブン中40℃で16時間乾燥させた。反応液の単離収率は92.5%(274g)であった。単離した材料は結晶III形遊離塩基(0.5酢酸エチル溶媒和物)と同定された。
H NMR,300MHz,(DMSO−D6)、ppm;13.35(1H,s)、8.60(1H,d,J=3.8Hz)、8.39(1H,m)、8.23(1H,d,J=8.5Hz)、7.95(1H,d,J=16.4Hz)、7.82(1H,ddd,J=7.7,7.6,1.8Hz)、7.67(1H,d,J=7.8Hz)、7.60(1H,s)、7.57(1H,d,J=16.4Hz)、7.49(1H,dd,J=7.1,1.6Hz)、7.35〜7.26(3H,m)、7.19(1H,d,J=8.4Hz)、7.04(1H,d,J=7.8Hz)、2.77(3H,d,J=4.6Hz)。
13C NMR,75MHz,(DMSO−D6)ppm:168.23、155.18、149.81、142.35、142.22、137.31、136.00、132.89、130.64、130.36、129.51、128.14、126.50、125.93、124.08、123.01、122.85、122.12、120.642、115.08、26.45。
【0191】
(実施例5)
テトラヒドロピラニル保護基を使用した6−[2−(メチルカルバモイル)フェニルスルファニル]−3−E−[2−(ピリジン−2−イル)エテニル]インダゾールの調製
【0192】
【化74】

【0193】
N−1 THP 2−(3−ヨード−1H−インダゾール−6−イルスルファニル)−N−メチル−ベンズアミド(21.77g)、2−ビニルピリジン(5.92mL、54.9Mmol)、Pd(OAc)(0.96g)、P(o−Tol)(3.42g)、(i−Pr)NEt(11.3mL、64.9Mmol)およびN,N−ジメチルホルムアミド(550mL)を、メカニカルスターラーおよび温度プローブを備えた1L三つ口フラスコに加えた。次に、室内減圧および窒素に交互に接続することで混合物を3回脱気した。混合物を100℃に加熱し、温度を100℃に終夜維持し、その時点ですべての出発原料が消失した(HPLC)。冷却後、混合物を飽和NaHCO800mLに注ぎ、EtOAc400mLを加えた。混合物を30分間撹拌し、その時点で濃縮析出物が形成された。固体を濾去し、濾液を分配した。分配後、水層をEtOAc300mLで2回抽出した。合わせた有機層を2回水洗し、MgSOで乾燥させ、濃縮した。室温で静置することで残渣を結晶化させた。固体をEtOAc20mLで処理し、濾過した。ケーキを終夜風乾させて最終生成物17.66gを得た。
【0194】
(実施例6)
N−1 THP保護2−(3−ヨード−1H−インダゾール−6−イルスルファニル)−N−メチル−ベンズアミドの調製
【0195】
【化75】

【0196】
2−(3−ヨード−1H−インダゾール−6−イルスルファニル)−N−メチル−ベンズアミド(24.65g)、ジヒドロピラン(5.50mL、60.3Mmol)およびTsOH・HO(1.146g)のEtOAc600mL中混合物を60℃で終夜加熱した。冷却後、混合物をEtOAc500mLで希釈し、NaHCO(200mL)で洗浄し、MgSOで乾燥させた後、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルに予め吸着させ、ヘキサン/EtOAc(2:1、1:1、1:2、1:3)を用いたフラッシュクロマトグラフィーにかけて最終生成物21.77gを得た。
H NMR,300MHz,DMSO δ8.35(q,J=4.5Hz,1H)、7.92(s,1H)、7.53〜7.41(m,2H)、7.34〜7.22(m,2H)、7.17(dd,J=8.4 1.5Hz,1H)、7.97(dd,J=7.1,1.9Hz,1H)、5.87(dd,J=9.6,2.1Hz,1H)、3.93〜3.79(m,1H)、3.79〜3.65(m,1H)、2.77(d,J=4.8Hz,3H)、2.44〜2.23(m,1H)、2.08〜1.89(m,2H)、1.82〜1.62(m,1H)、1.62〜1.48(m,2H)。
【0197】
(実施例7)
tert−ブトキシカルボニル保護基を使用した6−[2−(メチルカルバモイル)フェニルスルファニル]−3−E−[2−(ピリジン−2−イル)エテニル]インダゾールの調製
【0198】
【化76】

【0199】
N−1 Boc 2−(3−ヨード−1H−インダゾール−6−イルスルファニル)−N−メチル−ベンズアミド(510mg)および2−ビニルピリジン(0.14mL、1.3Mmol)を、撹拌バーおよび温度プローブを備えた100mL三つ口フラスコに加えた。次に、室内減圧および窒素に交互に接続することで混合物を3回脱気した。混合物を2時間撹拌後、一定分量は出発原料のみが存在することを示した(HPLC)。最初にPd[P(t−Bu)を触媒(9.28g)としてDMF20mLおよびCyNMe124mL(711Mmol)と共に室温で2時間使用したが、反応は生じなかった。続いて、Pd(OAc)を触媒としてP(o−Tol)と共に使用したところ、反応が生じたことがわかった。しかし、反応全体におけるPd[P(t−Bu)触媒の役割は排除できなかった。したがって、次にPd(OAc)22mgおよびP(o−Tol)91mgをフラスコに加え、混合物を室内減圧および窒素に3回交互に接続することで再度脱気した。混合物を100℃に加熱し、温度を100℃に終夜維持し、その時点ですべての出発原料が消失した(HPLC)。TFA(1.0mL、13.0Mmol)を加えてBoc保護基を除去した。冷却後、混合物を水100mLおよびEtOAc100mLの混合物に注いだ。分配後、水層をEtOAc50mLで2回抽出した。合わせた有機層を2回水洗し、MgSOで乾燥させ、濃縮した。残渣をシリカに予め吸着させ、グラジエントフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン/EtOAc、1:3、1:4、EtOAc、EtOAc/MeOH、100:1、50/1)にかけて最終生成物155mgを得た。
【0200】
(実施例8)
N−1 Boc 2−(3−ヨード−1H−インダゾール−6−イルスルファニル)−N−メチル−ベンズアミドの調製
【0201】
【化77】

【0202】
(Boc)O(1.18g)を細かく分けて2−(3−ヨード−1H−インダゾール−6−イルスルファニル)−N−メチル−ベンズアミド(2.20g)、ジメチルアミノピリジン(66mg)およびN,N−ジメチルホルムアミド(22mL)の溶液に加え、氷水浴中で冷却した。添加完了時に、一定分量のHPLCは、すべての2−(3−ヨード−1H−インダゾール−6−イルスルファニル)−N−メチル−ベンズアミドが消失したことを示した。反応混合物をEtOAc100mLと水100mLの混合物に注いだ。分配後、水層をEtOAc50mLでさらに2回抽出した。合わせた有機層を2回水洗し、MgSOで乾燥させ、濃縮した。残渣をヘキサン/EtOAc(1:1、1:2、1:4、0:1)を用いてクロマトグラフィーにかけて最終生成物1.35gを得た。
H NMR,300MHz,CDCl δ8.06(s,1H)、7.68〜7.56(m,1H)、7.43〜7.20(m,5H)、6.60(d,J=4.2Hz,1H)、2.92(d,J=5.1Hz,3H)、1.62(s,9H)。
【0203】
(実施例9)
6−[2−(メチルカルバモイル)フェニルスルファニル]−3−[2−(ピリジン−2−イル)エチニル]インダゾールの調製
【0204】
【化78】

【0205】
2−(3−ヨード−1H−インダゾール−6−イルスルファニル)−N−メチル−ベンズアミド(2.30g)、2−エチニルピリジン(0.25mL)、Pd(PPhCl(128mg)、CuI(64mg)、(i−Pr)NEt(0.50mL)およびN,N−ジメチルホルムアミド(15mL)を、撹拌バーおよび温度プローブを備えた50mL三つ口フラスコに加えた。混合物を室内真空および窒素に3回交互に接続することで脱気し、66℃で1時間加熱した。温かい混合物に2−エチニルピリジン0.16mLおよび(i−Pr)NEt0.30mLを加えた。得られた混合物を66℃で終夜撹拌し、その時点でHPLCはすべての出発原料が消失したことを示した。冷却後、混合物をジクロロメタン100mLで希釈し、水洗した。有機層にシリカ10gを加え、激しく撹拌した。次に混合物を濾過し、濾液を廃棄した。次にシリカをテトラヒドロフラン/ジクロロメタン(廃棄)、次に純テトラヒドロフランで洗浄した。テトラヒドロフラン溶液を減圧濃縮して最終生成物0.95gを得た。
H NMR,300MHz,DMSO δ13.66(s,1H)、8.65(d,J=4.7Hz,1H)、8.34(q,J=4.9Hz,1H)、7.94〜7.81(m,2H)、7.76(d,j+7.9Hz,1H)、7.63(s,1H)、7.53〜7.41(m,2H)、7.38〜7.26(m,2H)、7.22(dd,J=8.7,1.5Hz,1H)、7.08(dd,J=7.0,2.1Hz,1H)、2.76(d,J=4.5Hz,3H)。
【0206】
(実施例10)
6−[2−(メチルカルバモイル)フェニルスルファニル]−3−Z−[2−(ピリジン−2−イル)エテニル]インダゾールの調製
【0207】
【化79】

【0208】
6−[2−(メチルカルバモイル)フェニルスルファニル]−3−[2−(ピリジン−2−イル)エチニル]インダゾール0.95gの溶液を含む100mL三つ口フラスコにヨウ化フェニル二酢酸塩2.5g、次にHNNH・HO1.0mLを加えた。バブリングが落ち着いた後、さらにヨウ化フェニル二酢酸塩およびHNNH・HOを小さく分けて加え、これをLC/MSが6−[2−(メチルカルバモイル)フェニルスルファニル]−3−[2−(ピリジン−2−イル)エチニル]インダゾールの消失および6−[2−(メチルカルバモイル)フェニルスルファニル]−3−Z−[2−(ピリジン−2−イル)エテニル]インダゾールの形成を示すまで行った。
H NMR,500MHz,CDCl δ8.89(d,J=2.4Hz,1H)、7.90(s,1H)、7.86〜7.90(m,1H)、7.82(d,J=8.8Hz,1H)7.56(d,J=6.6Hz,1H)、7.51(d,J=8.3Hz,1H)、7.35〜7.40(m,1H)、7.23〜7.30(m,2H)、7.21(d,J=6.6Hz,1H)、7.15(d,J=8.3Hz,1H)、7.04(d,J=13.3Hz,1H)、6.70(d,J=12.6Hz,1H)、6.30(s,1H)、2.92(d,J=4.5Hz,1H)。
【0209】
(実施例11)
6−[2−(メチルカルバモイル)フェニルスルファニル]−3−E−[2−(ピリジン−2−イル)エテニル]インダゾールのパラジウム除去および多形制御
【0210】
【化80】

【0211】
メカニカルスターラーを備えた12L三つ口フラスコに6−[2−(メチルカルバモイル)フェニルスルファニル]−3−E−[2−(ピリジン−2−イル)エテニル]インダゾール160.20g、DMA1.6LおよびTHF1.6Lを加えた。20分間撹拌後、混合物は均一になった。透明溶液に10%システイン−シリカ800.99gを加え、得られた混合物を室温で終夜撹拌した。
【0212】
混合物を中程度焼結ガラスフリット漏斗で濾過し、ケーキをDMA500mLおよびTHF500mLの溶液で洗浄した。ケーキをTHF2.0Lでさらに洗浄し、濾液を別のフラスコに収集した。後者の濾液の揮発性部分を減圧除去し、残渣を主な濾液と組み合わせた。合わせた濾液を12Lフラスコに戻した後、10%システイン−シリカ800gを加えた。フラスコはメカニカルスターラーを備えており、週末にかけて室温で撹拌した。
【0213】
次に、混合物を中程度焼結ガラスフリット漏斗で濾過し、シリカをDMA500mLおよびTHF500mLの溶媒の混合物、次にTHF3.0Lで洗浄した。濾液の揮発性部分を減圧除去し、残りの溶液を22L三つ口フラスコに移し、(20分間かけて加えた)水12Lで処理し、濃厚析出物がこの段階で形成された。終夜撹拌後、混合物を濾過し、ケーキを水2.0Lで洗浄し、吸引乾燥させた。
【0214】
ケーキを5L三つ口フラスコに加えた後、THF1.6LおよびDMF160mLを加えた。フラスコはメカニカルスターラー、還流冷却器を備えており、混合物を還流温度で8時間加熱した。終夜冷却後、混合物をシャークスキン濾紙で濾過し、吸引乾燥させた。
【0215】
ケーキを5L三つ口フラスコに加え、MeOH1.6Lを加えた。フラスコはメカニカルスターラー、水冷却器を備えており、内容物を還流温度で6時間加熱した。終夜冷却後、混合物をシャークスキン濾紙で濾過し、吸引乾燥させた。
【0216】
ロータリーエバポレーターの水浴中で緩やかに加熱しながらケーキをHOAc1.6Lに溶解させた。溶液を#3濾紙で濾過し、濾液の全量をロータリーエバポレーター上、60℃/60mmHgで体積約500mLに減少させた。この段階で混合物の大部分は黄色溶液にとどまり、少量の析出物が形成された。フラスコにキシレン500mLを加え(析出物が形成された)、全量をロータリーエバポレーター上、60℃/60mmHgで体積約500mLに減少させた。このプロセスをさらに2回繰り返した。冷却後、混合物を濾過し、ケーキをキシレン500mLで洗浄し、吸引乾燥させた。ケーキをガラス皿に移し、80℃/27インチ真空で終夜乾燥させた。
【0217】
ケーキは色がオフホワイトであり、重さが108.38gであった。X線粉末回折解析は、近似回折角(2θ)8.9、12.0、14.6、15.2、15.7、17.8、19.2、20.5、21.6、23.2、24.2、24.8、26.2および27.5でのピークを含む粉末X線回折パターンによりIV形と特徴づけられる結晶形が存在することを示した。
【0218】
(実施例12)
2−(3−ヨード−1H−インダゾール−6−イルスルファニル)−N−メチル−ベンズアミドの調製
【0219】
【化81】

【0220】
5L三つ口フラスコはメカニカルスターラー、温度プローブおよびN入口を備えていた。フラスコに6−ヨードインダゾール(200g)、次に2−メルカプト−N−メチルベンズアミド(144g)、Pd(dba)(3.75g)、Xantphos(4.74g)、NMP(1.2L)および50%CsOH水溶液(150mL)をその順序で加えた。次に撹拌を開始した。室内減圧および窒素に交互に接続することで濃色反応混合物を3回脱気した。混合物を30分間かけて80℃に加熱し、同温に18時間維持した。反応はHPLCで監視した。6−ジヨードインダゾールの量が3%未満になれば加熱を中断できることに留意した。反応混合物を室温に冷却した。
【0221】
固体NaHSO90gを脱イオン水1.5Lに激しく撹拌しながら加えることでNaHSO水溶液を調製した。次に下記の反応クエンチステップまでこの溶液を保存した。5Lフラスコ中の反応混合物を、内部温度が0.9℃に到達するまで氷水浴中で冷却した。次にKOH(183g)を1回で加え、得られた混合物を氷水浴(わずかな発熱、最高点4.0℃)中で30分間撹拌した。ヨウ素(417g)を別のフラスコ中のNMP(420mL)に撹拌しながら溶解させた。ヨウ素の完全溶解を確認した時点で、濃色混合物を1L添加漏斗に加えた。
【0222】
次にヨウ素/NMP溶液を反応混合物に1時間かけて滴下した。(注:添加は発熱性であり、したがって内部反応温度は添加速度の制御に加えて外部冷却により制御しなければならない。内部温度は0℃〜16.8℃に保たなければならない。)添加完了時の最終温度は14.5℃であった。
【0223】
次にフラスコを浴から取り出し、内部温度は70分間で21.1℃に達した。混合物を室温で3時間撹拌し、その時点で一定分量サンプルの分析は反応が完了した(3%未満残存)ことを示した。反応完了の確認(HPLC)後、フラスコを氷水浴に再浸漬した。既に記載のように調製したNaHSO水溶液を添加漏斗から40分間かけてゆっくり加えた。(注:この添加は発熱性であり、したがって内部反応温度は添加速度の制御に加えて外部冷却により制御しなければならない。内部温度は15.7℃未満に保たなければならない。)添加完了時には反応液は淡黄色固体のスラリーであった。混合物を周囲温度で終夜撹拌した。
【0224】
固体生成物を濾取した。湿潤ケーキを5Lフラスコに戻し、漏斗を水1.5Lですすぎ、リンスも5Lフラスコに加えた。混合物を1時間撹拌し、濾過した。湿潤ケーキを5Lフラスコに戻し、漏斗をメタノール1.5Lですすぎ、リンスも5Lフラスコに加えた。混合物を45℃で2時間加熱後、冷却した。混合物を濾過し、ケーキをMeOH500mLで洗浄し、吸引乾燥させた。生成物(ケーキ)を60℃の真空オーブン中に18時間置いて2−(3−ヨード−1H−インダゾール−6−イルスルファニル)−N−メチル−ベンズアミド317gを得た。
【0225】
(実施例13)
6−[2−(メチルカルバモイル)フェニルスルファニル]−3−E−[2−(ピリジン−2−イル)エテニル]インダゾールの調製
【0226】
【化82】

【0227】
3L三つ口フラスコはメカニカルスターラー、温度プローブおよび窒素入口を備えていた。実施例12で調製した2−(3−ヨード−1H−インダゾール−6−イルスルファニル)−N−メチル−ベンズアミド(200g)をフラスコに加えた後で、Pd(OAc)(5.48g)、P(o−tol)(19.3g)、プロトンスポンジ(104.7g)およびNMP(1.0L)を加えた。ただし、最初の混合はわずかに発熱性であり、温度は22.8℃から20.9℃に低下した。
【0228】
撹拌を開始した後、LiBr(262g)を加えた。この添加は発熱性であり、温度は15分間で20.9℃から68℃に上昇した後低下を始めた。次に2−ビニルピリジン(69mL)を加えた。室内減圧および窒素に交互に接続することで混合物を3回脱気した。混合物を1時間かけて110℃に加熱し、温度を110℃に18時間維持した。すべての2−(3−ヨード−1H−インダゾール−6−イルスルファニル)−N−メチル−ベンズアミドが消失するまで反応をHPLCで監視した。次に加熱を中断し、反応液を室温に冷却した。
【0229】
別の操作で濃HCl(0.25L)250mLを注意深く脱イオン水2750mLに加えて、次のステップで使用するのに必要な1.0N塩酸溶液3.0Lを調製した。1N HCl水溶液(2L)を反応混合物に撹拌を続けながら加えた。ただし、HCl添加はわずかに発熱性である。
【0230】
次にメチルイソブチルケトン(MIBK、2L)を加え、混合物を激しく(300〜400RPM)2時間撹拌した。この分配ステップ時にある種の固体が形成された。セライトの1”パッドでの濾過により固体を除去した。フィルターケーキを1N HCl(200mL)とMIBK(200mL)の両方で洗浄した。ただし、この濾過はスケールアップにより遅くなる可能性がある。今回のスケールでは約2.5+Lが2L焼結ガラス漏斗を4分未満で通過した。収集した固体は大部分がプロトンスポンジおよびHPLCによる二量体不純物であった。標準的な用心として、廃棄する前に固体の同一性をHPLCで確認しなければならない。
【0231】
濾液を激しい機械撹拌により撹拌した後、有機層(上層)および水層(下層)に分離した。下層の水層を排出し(約3.6L)、有機層を1N HCl(500mL、次に300mL)で2回抽出した。酸性の水性抽出物を貯蔵し、MIBK(1L)で1回洗浄した。下層の水層の最終体積は約4.3Lであり、上層のMIBK層の体積は約1.1Lであった。相混合が既に記載の通りに行われるため、後続の実験に基づいて、さらに撹拌を行わないことが推奨される。相の再分離のためのさらなる撹拌にはさらに時間が必要であり、それは不要である。最初のMIBK抽出物は色が水相に非常に近似しており、識別が困難である可能性がある。測定体積は上記の通りである。
【0232】
合わせた水層にトルエン(1L)を加え、混合物をオーバーヘッドスターラーおよびpHメーター付きの反応フラスコに移した。混合物を迅速に撹拌しながら(400rpm)、28% NHOH(300mL)を添加漏斗を経由して20〜30分間かけてゆっくり加えた。標的pHは9であるため、追加の試薬を手元に置いておかなければならないが、これはわずかに多かれ少なかれ塩基を加えて所望のpH終点に到達させる必要がある可能性があるためである。ゴム状の(濾過できない)固体の形成を防止するにはNHOHをゆっくり加えることが必要であった。トルエンは、塩基性化時に析出したプロトンスポンジを溶解させることでこのゴム状生成物の形成の防止に役立った。
【0233】
次に固体を濾取した。フィルターケーキを水(1L)およびトルエン(400mL)で洗浄した。ただし、2L焼結ガラスBuchner漏斗上で最初の濾過および洗浄(全量約7.5L)を9分以内に完了した。次にケーキをガラス皿に移し、室内減圧下60℃で24時間乾燥させて粗6−[2−(メチルカルバモイル)フェニルスルファニル]−3−E−[2−(ピリジン−2−イル)エテニル]インダゾール148.2g(収率78%)を淡橙色固体として得た。
【0234】
ただし、反応はHPLC(TFASH法、詳細は本明細書に含まれる)により監視した。サンプル調製は下記の通りであった。反応混合物1滴をメタノール1mLおよび80/20 0.1N HCl/ACN1mLで希釈し、サンプルを振とうした。サンプル0.5mgを用いて生成物試験を上記のように行った。典型的な純度は83〜87%であった。生成物はH NMRにより可視化したNMPを含んでいた。
【0235】
(実施例14)
パラジウム除去
【0236】
【化83】

【0237】
250mL丸底フラスコに窒素雰囲気下で、実施例13で調製した粗6−[2−(メチルカルバモイル)フェニルスルファニル]−3−E−[2−(ピリジン−2−イル)エテニル]インダゾール(35g)、DIPHOS、NMP(175mL)、次に1,2−ジアミノプロパンを機械撹拌をしながら加えた。混合物は約10分後に橙色溶液になった。次に溶液を室温で2.5時間撹拌した。
【0238】
次にメタノール(1400mL)を混合物に5〜10分かけて加えた。添加中に溶液は混濁した。数分後、析出物が形成された。撹拌(250RPM未満、中程度の撹拌速度)を18時間続けた。ただし、MeOHを加えた後、造粒を18時間行った。より短い造粒時間の使用により収率が低下することがわかった。より長い造粒時間の使用は、収率を増大させないが、悪影響なしに行うことができる。
【0239】
次に粒状固体を濾取した。固体をMeOH105mL(3体積)で洗浄した。固体をフィルター上での吸引により引張乾燥させた。ケーキをガラス皿に移し、室内減圧下65℃で18時間乾燥させて26gの6−[2−(メチルカルバモイル)フェニルスルファニル]−3−E−[2−(ピリジン−2−イル)エテニル]インダゾールをオフホワイト粒状固体(収率74重量%、純度補正収率は89%)として得た。生成物のHPLC(TFASH法)による純度は97+%であったが、NMRにより可視化したDIPHOSを含んでおり、これを次のステップで除去した。したがって生成物は残存パラジウム金属16ppmを含んでいた(処理前の当初のPd含有量は1189ppmであった)。
【0240】
生成物の一部(21.2g)をフラスコに加え、テトラヒドロフラン(210mL、10mL/g)を窒素雰囲気下で加えた。混合物を〜250rpm撹拌下で15時間かけて65℃に加熱した。再スラリー化を通じて混合物は固体の懸濁液のままであった。混合物を室温に冷却し、3時間撹拌した。固体を濾取し、THF42mL(2体積)で洗浄した後、フィルター上で吸引により引張乾燥させた。ただし、THFは濾液にある種の生成物を洗い流すようであるため、少ない洗浄量のTHFを使用した。材料の洗浄またはすすぎ用には2体積を超えて使用しないことが推奨される。
【0241】
次に固体を真空オーブン中65℃で18時間乾燥させた。得られた白色固体の重量は16g(収率76重量%、純度補正収率は77%)であり、HPLC(TFASH法)による純度は98+%であった。Pd含有量は7ppmであった。
【0242】
生成物の一部(13g)をフラスコに加え、メタノール(130mL)を窒素雰囲気下で撹拌しながら加えた。混合物を65℃に加熱し、10時間機械撹拌した。再スラリー化を通じて混合物は固体の懸濁液のままであった。ただし、MeOHを加えた約5〜10分後、見かけの物理的形態の変化が生じた結果、希薄スラリーが、室温ではよく撹拌されない高濃縮スラリーに急速に変化した(スラリー自体は実際には濃縮ではなかったが、新しい形態の固体は針状結晶のようであり、したがってその体積は著しく膨張した)。撹拌は加熱を迅速に改善し、混合物は高温時と25℃に再冷却時の両方で容易に撹拌可能なスラリーにとどまった。
【0243】
次に混合物を室温に冷却し、3時間撹拌した。固体を濾取し、フィルター上で吸引により引張乾燥させた。フィルターケーキは洗浄しなかった。固体を真空オーブン中65℃で18時間乾燥させた。得られた白色固体の重量は12.1g(収率94重量%、純度補正収率は85%)であり、HPLC(TFASH法)による純度は99+%であった。Pd含有量は7ppmであった。
【0244】
本発明を特定のおよび好ましい実施形態を参照して説明したが、本発明の日常的な実験および実践を通じて変形および変更を行うことが可能であることが当業者には認識されよう。したがって、本発明は、上記記載に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲およびその等価物により定義されるものとする。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式1−aの化合物、またはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物の調製方法であって、
【化1】

式2−aの化合物と式6の化合物を反応させて式1−aの化合物を形成するステップを含む方法。
【化2】

【請求項2】
反応がPdまたはCuを触媒として含む条件下で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
触媒がPd(OAc)であり、反応条件がP(o−Tol)をPd触媒と錯体を形成する配位子としてさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
反応条件がプロトンスポンジを塩基として、LiBrを添加剤として、ジメチルアセトアミドまたはN−メチル−2−ピロリドンを溶媒としてさらに含み、反応が100〜120℃の温度で行われる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
式2aの化合物、またはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物。
【化3】

【請求項6】
式2−aの化合物、またはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物の調製方法であって、
【化4】

式12の化合物とIを反応させて式2−aの化合物を製造するステップを含む方法。
【化5】

【請求項7】
反応が塩基および溶媒を含む条件下で行われる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
塩基がKOHであり、溶媒がN−メチル−2−ピロリドンである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
式12の化合物、またはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物。
【化6】

【請求項10】
式12の化合物、またはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物の調製方法であって、
【化7】

式3−aの化合物と式5−aの化合物を反応させて式12の化合物を製造するステップを含む方法。
【化8】

【請求項11】
反応がPdまたはCuを触媒として含む条件下で行われる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
触媒がPd(dba)であり、反応条件がXantphosをPd触媒と錯体を形成する配位子としてさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
反応条件がCsOHを塩基として、ジメチルアセトアミドまたはN−メチル−2−ピロリドンを溶媒としてさらに含み、反応が70〜90℃の温度で行われる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
有機相中のパラジウムの量を減少させる方法であって、有機相を1,2−ジアミノプロパンおよびDIPHOSと接触させて、パラジウムの量が前記1,2−ジアミノプロパンおよびDIPHOSとの接触前の有機相よりも少ない有機相を得るステップを含む方法。
【請求項15】
有機相が式1−aの化合物およびパラジウムを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
有機相を前記1,2−ジアミノプロパンおよびDIPHOSと接触させた後、
a)得られた溶液をメタノールおよびテトラヒドロフランからなる群から選択される溶媒と接触させるステップと、
b)有機相から固体物質を分離するステップとをさらに含む、請求項15に記載の方法。


【公表番号】特表2008−518900(P2008−518900A)
【公表日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−538537(P2007−538537)
【出願日】平成17年10月21日(2005.10.21)
【国際出願番号】PCT/IB2005/003297
【国際公開番号】WO2006/048744
【国際公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【出願人】(593141953)ファイザー・インク (302)
【Fターム(参考)】