説明

インダン系重合体及びその製造方法、並びにインデン系重合体及びその製造方法

【課題】インダン骨格を有する新規な重合体、及びインデン骨格を有する新規な重合体、並びにそれらの製造方法を提供すること。
【解決手段】下記式(1)で表される構造単位を有する、インダン系重合体。
【化1】


[式中、R、R、R、R、R、R、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を示す。RとR、RとR、RとR、RとR、及び、RとRは、それぞれ互いに結合して環を形成していてもよい。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インダン系重合体及びその製造方法、並びにインデン系重合体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1には、1−メチレンインダンを重合させて下記式(a)で表される重合体を得る方法が記載されている。
【0003】
【化1】

【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Journal of Plymer Science: Part A: Polymer Chemistry, Vol. 29, 1779−1787(1991)
【非特許文献2】「Catalytic Polymerization of Cycloolefines; Ionic Ziegler−Natta and rig opening metathesis polymerization」, Valerian Dragutan,Roland Streck
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、インダン骨格を有する新規な重合体、及びインデン骨格を有する新規な重合体、並びにそれらの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記式(1)で表される構造単位を有する、インダン系重合体を提供する。
【化2】


[式中、R、R、R、R、R、R、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を示す。RとR、RとR、RとR、RとR、及び、RとRは、それぞれ互いに結合して環を形成していてもよい。]
【0007】
本発明のインダン系重合体は、インダン骨格が主鎖中に組み込まれた特定の構造を有しているため、高いガラス転移温度を有する。そのため、本発明のインダン系重合体は、耐熱性が要求されるOA機器分野、自動車分野、電気・電子部品分野等において好適に用いることができる。
【0008】
本発明のインダン系重合体は、下記式(2)で表される構造単位をさらに有していてもよい。
【化3】


[式中、R、R、R、R、R、R、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を示す。RとR、RとR、RとR、RとR、及び、RとRは、それぞれ互いに結合して環を形成していてもよい。]
【0009】
式(1)で表される構造単位及び式(2)で表される構造単位を有するインダン系重合体は、高いガラス転移温度を有するとともに成形性に一層優れる。そのため、このようなインダン系重合体は、薄膜状等の様々な形状に容易に成形することができる。
【0010】
本発明はまた、下記式(3)で表される構造単位と、下記式(4)で表される構造単位と、を有する、インデン系重合体を提供する。
【化4】


[式中、R、R、R、R、R、R、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を示す。RとR、RとR、RとR、RとR、及び、RとRは、それぞれ互いに結合して環を形成していてもよい。]
【0011】
本発明のインデン系重合体は、上記インダン系重合体の前駆体として有用であり、本発明のインデン系重合体を水素化することで、式(1)で表される構造単位と式(2)で表される構造単位とを有するインダン系重合体を容易に製造することができる。
【0012】
本発明はまた、下記式(5)で表される化合物を含む重合性モノマーのアニオン重合により、下記式(3)で表される構造単位と下記式(4)で表される構造単位とを有するインデン系重合体を得る工程を備える、インデン系重合体の製造方法を提供する。
【化5】


【化6】


[式中、R、R、R、R、R、R、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を示す。RとR、RとR、RとR、RとR、及び、RとRは、それぞれ互いに結合して環を形成していてもよい。]
【0013】
本発明のインデン系重合体の製造方法によれば、インデン骨格が主鎖中に組み込まれた特定の構造を有する新規なインデン系重合体を、容易に得ることができる。
【0014】
本発明はまた、下記式(5)で表される化合物を含む重合性モノマーのアニオン重合により、下記式(3)で表される構造単位と下記式(4)で表される構造単位とを有するインデン系重合体を得る第一の工程と、上記インデン系重合体を水素化して、下記式(1)で表される構造単位と下記式(2)で表される構造単位とを有するインダン系重合体を得る第二の工程と、を備える、インダン系重合体の製造方法を提供する。
【化7】


【化8】


【化9】


[式中、R、R、R、R、R、R、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を示す。RとR、RとR、RとR、RとR、及び、RとRは、それぞれ互いに結合して環を形成していてもよい。]
【0015】
本発明のインダン系重合体の製造方法によれば、インダン骨格が主鎖中に組み込まれた特定の構造を有する新規なインダン系重合体を、容易に得ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、インダン骨格を有する新規な重合体、及びインデン骨格を有する新規な重合体、並びにそれらの製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のインデン系重合体及びインダン系重合体の好適な実施形態について、以下に説明する。
【0018】
(インデン系重合体)
本実施形態に係るインデン系重合体は、下記式(3)で表される構造単位(以下、場合により「構造単位3」と称する。)を有する。
【0019】
【化10】

【0020】
式中、R、R、R、R、R、R、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を示す。RとR、RとR、RとR、RとR、及び、RとRは、それぞれ互いに結合して環を形成していてもよい。
【0021】
本実施形態に係るインデン系重合体は、後述するインダン系重合体の前駆体として有用であり、本実施形態に係るインデン系重合体を水素化することでインダン系重合体を容易に製造することができる。
【0022】
アルキル基は直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。アルキル基としては、炭素数1〜10のアルキル基が好ましい。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基が挙げられる。
【0023】
アリール基は、アレーンの芳香環を構成する炭素原子に結合する水素原子を1つ除去してなる基である。アレーンは、芳香環を有する炭化水素化合物であり、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、クメン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレンを例示できる。
【0024】
アリール基の炭素数は、6〜15であることが好ましい。アリール基としては、例えば、フェニル基、oートリル基、m−トリル基、p−トリル基、2,3−キシリル基、2,4−キシリル基、2,6−キシリル基、メシチル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、アントラセニル基が挙げられる。
【0025】
インデン系重合体は、下記式(4−1)で表される構造単位(以下、場合により「構造単位4−1」と称する。)をさらに有していてもよい。なお、式(4−1)におけるR、R、R、R、R、R、R及びRは、それぞれ式(3)におけるR、R、R、R、R、R、R及びRと同義である。
【0026】
【化11】

【0027】
構造単位4−1を有するインデン系重合体は、後述する式(2−1)で表される構造単位を有するインダン系重合体の前駆体として有用であり、このインデン系重合体を水素化することで、式(1)で表される構造単位及び式(2−1)で表される構造単位を有するインダン系重合体を容易に製造することができる。
【0028】
構造単位3及び構造単位4−1を有するインデン系重合体において、インデン系重合体中の構造単位3の総モル量Cと構造単位4−1の総モル量C4−1との比C/C4−1は、0.1以上であることが好ましく、0.5以上であることがより好ましく、1以上であることがさらに好ましい。このようなインデン系重合体によれば、より高いガラス転移温度を有するインダン系重合体を得ることができる。
【0029】
また、比C/C4−1は、10以下であってよく、5以下であってもよく、3以下であってもよい。
【0030】
インデン系重合体は、下記式(4−2)で表される構造単位(以下、場合により「構造単位4−2」と称する。)をさらに有していてもよい。なお、式(4−2)におけるR、R、R、R、R、R、R及びRは、それぞれ式(3)におけるR、R、R、R、R、R、R及びRと同義である。
【0031】
【化12】

【0032】
構造単位4−2を有するインデン系重合体は、後述する式(2−2)で表される構造単位を有するインダン系重合体の前駆体として有用であり、このインデン系重合体を水素化することで、式(1)で表される構造単位及び式(2−2)で表される構造単位を有するインダン系重合体を容易に製造することができる。
【0033】
構造単位3及び構造単位4−2を有するインデン系重合体において、インデン系重合体中の構造単位3の総モル量Cと構造単位4−2の総モル量C4−2との比C/C4−2は、0.1以上であることが好ましく、0.5以上であることがより好ましく、1以上であることがさらに好ましい。このようなインデン系重合体によれば、より高いガラス転移温度を有するインダン系重合体を得ることができる。
【0034】
また、比C/C4−2は、10以下であってよく、5以下であってもよく、3以下であってもよい。
【0035】
インデン系重合体は、上記以外の構造単位を有していてもよい。上記以外の構造単位としては、例えば、後述する重合性モノマーのうち、式(5)で表される化合物以外の化合物に由来する構造単位が挙げられる。
【0036】
インデン系重合体は、例えば、構造単位3を有するブロックと、構造単位3以外の構造単位を有するブロックと、を備えるブロック共重合体であってもよい。また、インデン系重合体は、構造単位3と構造単位3以外の構造単位とのランダム共重合体であってもよい。
【0037】
なお、インデン系重合体は、両末端に、重合開始剤に由来する基又は重合停止剤に由来する基を有していてもよい。
【0038】
(インデン系重合体の製造方法)
インデン系重合体は、下記式(5)で表される化合物を含む重合性モノマーを重合することにより製造することができる。なお、式(5)におけるR、R、R、R、R、R、R及びRは、それぞれ式(3)におけるR、R、R、R、R、R、R及びRと同義である。
【0039】
【化13】

【0040】
重合方法は特に制限されず、例えば、インデン系重合体は、式(5)で表される化合物を含む重合性モノマーのカチオン重合により、製造することができる。
【0041】
上記カチオン重合は、例えば、有機溶媒中に分散又は溶解させた重合性モノマーを、ルイス酸触媒の存在下で反応させることにより行うことができる。
【0042】
上記有機溶媒としては、ハロゲン化炭化水素、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素等が好適に用いられ、これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0043】
ハロゲン化炭化水素としては、クロロホルム、塩化メチレン、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、n−プロピルクロライド、n−ブチルクロライド、1−クロロプロパン、1−クロロ−2−メチルプロパン、1−クロロブタン、1−クロロ−2−メチルブタン、1−クロロ−3−メチルブタン、1−クロロ−2,2−ジメチルブタン、1−クロロ−3,3−ジメチルブタン、1−クロロ−2,3−ジメチルブタン、1−クロロペンタン、1−クロロ−2−メチルペンタン、1−クロロ−3−メチルペンタン、1−クロロ−4−メチルペンタン、1−クロロヘキサン、1−クロロ−2−メチルヘキサン、1−クロロ−3−メチルヘキサン、1−クロロ−4−メチルヘキサン、1−クロロ−5−メチルヘキサン、1−クロロヘプタン、1−クロロオクタン、2−クロロプロパン、2−クロロブタン、2−クロロペンタン、2−クロロヘキサン、2−クロロヘプタン、2−クロロオクタン、クロロベンゼン等が挙げられる。
【0044】
脂肪族炭化水素としては、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、ネオペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等が挙げられる。芳香族炭化水素としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等が挙げられる。
【0045】
上記ルイス酸触媒としては、カチオン重合の触媒として用いられる公知のルイス酸を用いることができる。ルイス酸触媒としては、例えば、三塩化ホウ素、三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素のジエチルエーテル錯体、三フッ化ホウ素のメタノール錯体(BF・MeOH)等のハロゲン化ホウ素化合物;四塩化チタン、四臭化チタン、四ヨウ化チタン等のハロゲン化チタン化合物;四塩化スズ、四臭化スズ、四ヨウ化スズ等のハロゲン化スズ化合物;三塩化アルミニウム、アルキルジクロロアルミニウム、ジアルキルクロロアルミニウム等のハロゲン化アルミニウム化合物;五塩化アンチモン、五フッ化アンチモン等のハロゲン化アンチモン化合物;五塩化タングステン等のハロゲン化タングステン化合物;五塩化モリブデン等のハロゲン化モリブデン化合物;五塩化タンタル等のハロゲン化タンタル化合物;テトラアルコキシチタン等の金属アルコキシドなどが挙げられる。
【0046】
これらのうち、ルイス酸触媒としては、三フッ化ホウ素のジエチルエーテル錯体、四塩化スズ、四塩化チタン、五塩化アンチモン、アルキルジクロロアルミニウム等が好適に用いられる。
【0047】
重合性モノマーは、式(5)で表される化合物以外の化合物を含んでいてもよい。例えば、インデン系重合体をカチオン重合により製造する場合、重合性モノマーは芳香族ビニル化合物、炭素数4〜12のオレフィン、ビニルエーテル、ビニルシラン類、アリルシラン類等を含んでいてもよい。具体的には、1−ブテン、2−ブテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、ヘキセン、ビニルシクロヘキセン、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、スチレン、α−メチルスチレン、ジメチルスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、β−ピネン、インデン、ビニルトリクロロシラン、ビニルメチルジクロロシラン、ビニルジメチルクロロシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルトリメチルシラン、ジビニルジクロロシラン、ジビニルジメトキシシラン、ジビニルジメチルシラン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、トリビニルメチルシラン、テトラビニルシラン、アリルトリクロロシラン、アリルメチルジクロロシラン、アリルジメチルクロロシラン、アリルジメチルメトキシシラン、アリルトリメチルシラン、ジアリルジクロロシラン、ジアリルジメトキシシラン、ジアリルジメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン等を含んでいてもよい。
【0048】
カチオン重合においては、式(5)で表される化合物を重合させた後、式(5)で表される化合物以外の重合性モノマーを反応溶液中に添加すること、あるいは、式(5)で表される化合物以外の重合性モノマーを重合させた後、式(5)で表される化合物を反応溶液中に添加することで、ブロック共重合体を製造することができる。また、式(5)で表される化合物とそれ以外の重合性モノマーとを同時に反応溶液に供して、ランダム共重合体を製造することもできる。
【0049】
非特許文献2には、式(5)で表される化合物に相当するモノマーのカチオン重合により、インデン系重合体を得る方法が例示されており、インデン系重合体は非特許文献2に記載の方法で製造してもよい。
【0050】
非特許文献2に例示されているように、カチオン重合の条件によって、式(5)で表される化合物は構造単位3のみを形成する場合もあり、構造単位3及び構造単位4−2を形成する場合もある。そのため、カチオン重合の条件を適宜変更することで、所望のインデン系重合体を得ることができる。
【0051】
例えば、有機溶媒として塩化メチレンを用い、ルイス酸触媒として四塩化チタンを用い、−72℃でカチオン重合を行うことにより、式(5)で表される化合物から、構造単位3が形成される。
【0052】
また、有機溶媒としてクロロホルムを用い、ルイス酸触媒として五塩化アンチモンを用い、室温(25℃)でカチオン重合を行うことにより、式(5)で表される化合物から、構造単位3及び構造単位4−2が形成される。
【0053】
例えば、ベンゾフルベンの四塩化チタン(TiCl)を触媒とするカチオン重合により、下記式(a−1)で表されるインデン系重合体が得られる。具体的には、窒素雰囲気下にて、0.5mol/Lベンゾフルベンの塩化メチレン溶液を調製し、−72℃に冷却したのちに、四塩化チタンを加え、5分後に反応を停止することにより、収率80質量%にてインデン系重合体a−1が得られる。このようなインデン系重合体a−1を後述する水素化反応に供することで、下記式(b−1)で表されるインダン系重合体b−1が得られる。
【0054】
【化14】

【0055】
また、下記式(c−2)で表されるメチルベンゾフルベンの四塩化チタン(TiCl)を触媒とするカチオン重合により、下記式(a−2)で表されるインデン系重合体a−2が得られる。具体的には、窒素雰囲気下にて、0.5mol/Lメチルベンゾフルベンの塩化メチレン溶液を調製し、−72℃に冷却したのちに、四塩化チタンを加え、5分後に反応を停止することにより、収率100質量%にてインデン系重合体a−2が得られる。このようなインデン系重合体a−2を後述する水素化反応に供することで、下記式(b−2)で表されるインダン系重合体b−2が得られる。
【0056】
【化15】

【0057】
また、下記式(c−3)で表されるエチルベンゾフルベンの四塩化チタン(TiCl)を触媒とするカチオン重合により、下記式(a−3)で表されるインデン系重合体a−3が得られる。具体的には、窒素雰囲気下にて、0.5mol/Lエチルベンゾフルベンの塩化メチレン溶液を調製し、−72℃に冷却したのちに、四塩化チタンを加え、5分後に反応を停止することにより、収率94質量%にてインデン系重合体a−3が得られる。このようなインデン系重合体a−3を後述する水素化反応に供することで、下記式(b−3)で表されるインダン系重合体b−3が得られる。
【0058】
【化16】

【0059】
また、下記式(c−4)で表されるベンザルインデン(benzalindene)のSbClを触媒とするカチオン重合により、下記式(a−4−1)で表される構造及び下記式(a−4−2)で表される構造を有するインデン系重合体a−4が得られる。具体的には、ベンザルインデンのクロロホルム溶液を調製し、室温にて四塩化チタンを加え、5分後に反応を停止することにより、インデン系重合体a−4が得られる。そして、得られたインデン系重合体a−4を後述する水素化反応に供することで、下記式(b−4−1)で表される構造及び下記式(b−4−2)で表される構造を有するインダン系重合体b−4が得られる。
【0060】
【化17】

【0061】
また、下記式(c−5)で表されるジメチルベンゾフルベンの三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体、四塩化スズ、四塩化チタン又はエチルアルミニウムジクロライドを触媒とするカチオン重合により、下記式(a−5−1)で表される構造及び下記式(a−5−2)で表される構造を有するインデン系重合体a−5が得られる。そして、得られたインデン系重合体a−5の水素化を後述する水素化反応に供することで、下記式(b−5−1)で表される構造及び下記式(b−5−2)で表される構造を有するインダン系重合体b−5が得られる。
【0062】
【化18】

【0063】
インデン系重合体は、式(5)で表される化合物を含む重合性モノマーのアニオン重合により、製造することもできる。
【0064】
アニオン重合では、式(5)で表される化合物から、構造単位3及び構造単位4−1が形成される。そのため、式(5)で表される化合物を含む重合性モノマーのアニオン重合によれば、構造単位3及び構造単位4−1を有するインデン系重合体を得ることができる。
【0065】
上記アニオン重合は、例えば、有機溶媒中に分散又は溶解させた重合性モノマーを、アニオン重合開始剤と反応させることにより行うことができる。
【0066】
アニオン重合で用いられる有機溶媒としては、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、エーテル系溶媒等が好適に用いられ、これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。ここで脂肪族炭化水素及び芳香族炭化水素としては、上記と同様の化合物が例示できる。
【0067】
エーテル系溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジグライム等が挙げられる。
【0068】
アニオン重合開始剤としては、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、メチルリチウム、リチウムナフタレン、ナトリウムナフタレン、カリウムナフタレン、セシウムナフタレン、フェニルマグネシウムクロライド(PhMgCl)、フェニルマグネシウムブロミド(PhMgBr)、ベンジルマグネシウムクロライド、ベンジルマグネシウムブロミド、ジフェニルメチルリチウム、ジフェニルメチルナトリウム、ジフェニルメチルカリウム、ジフェニルメチルセシウム、トリフェニルメチルリチウム、トリフェニルメチルナトリウム、トリフェニルメチルカリウム、トリフェニルメチルセシウム、リチウムジイソプロピルアミド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムtert−ブトキシド等が挙げられる。
【0069】
重合性モノマーは、式(5)で表される化合物以外の化合物を含んでいてもよい。インデン系重合体をアニオン重合により製造する場合、重合性モノマーは、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート等のメタクリレート化合物;tert−ブチルアクリレート等のアクリレート化合物;スチレン、α−メチルスチレン、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン等のビニル化合物;イソプレン、1,3−ブタジエン等の不飽和炭化水素化合物;N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド等のN,N−ジアルキルアクリルアミド化合物;等を含んでいてもよい。この他にも、ヘキサメチルシクロトリシロキサン(D3)、ラクチド、ε−カプロラクトン等のアニオン開環重合性モノマーとの共重合も可能である。
【0070】
アニオン重合においては、式(5)で表される化合物を重合させた後、式(5)で表される化合物以外の重合性モノマーを反応溶液中に添加すること、あるいは、式(5)で表される化合物以外の重合性モノマーを重合させた後、式(5)で表される化合物を反応溶液中に添加することで、ブロック共重合体を製造することもできる。また、式(5)で表される化合物とそれ以外の重合性モノマーとを同時に反応溶液に供して、ランダム共重合体を製造することもできる。
【0071】
インデン系重合体は、式(5)で表される化合物を含む重合性モノマーのラジカル重合により、製造することもできる。
【0072】
上記ラジカル重合は、例えば、有機溶媒中に分散又は溶解させた重合性モノマーを、ラジカル重合開始剤と反応させることにより行うことができる。
【0073】
ラジカル重合で用いられる有機溶媒としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール等のアルコール系溶媒;シクロヘキサン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、アセトンメチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、酢酸イソプロピル、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン等が好適に用いられ、これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0074】
ラジカル重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキシド、ラウリルパーオキシド、オクタノイルパーオキシド、アセチルパーオキシド、ジ−tert−ブチルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーブチルピバレート、tert−ブチルパーオキシピバレート等の有機過酸化物;2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート等のアゾ系開始剤;等が挙げられる。
【0075】
重合性モノマーは、式(5)で表される化合物以外の化合物を含んでいてもよい。インデン系重合体をラジカル重合により製造する場合、重合性モノマーは、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、tert−ブチルメタアクリレート等のアルキルメタクリレート;スチレン、ジビニルベンゼン等の芳香族ビニル化合物;等を含んでいてもよい。
【0076】
ラジカル重合においては、式(5)で表される化合物を重合させた後、式(5)で表される化合物以外の重合性モノマーを反応溶液中に添加すること、あるいは、式(5)で表される化合物以外の重合性モノマーを重合させた後、式(5)で表される化合物を反応溶液中に添加することで、ブロック共重合体を製造することもできる。また、式(5)で表される化合物とそれ以外の重合性モノマーとを同時に反応溶液に供して、ランダム共重合体を製造することもできる。
【0077】
(インダン系重合体)
本実施形態に係るインダン系重合体は、下記式(1)で表される構造単位(以下、場合により「構造単位1」と称する。)を有する。なお、式(1)におけるR、R、R、R、R、R、R及びRは、それぞれ式(3)におけるR、R、R、R、R、R、R及びRと同義である。
【0078】
【化19】

【0079】
本実施形態に係るインダン系重合体は、インダン骨格が主鎖中に組み込まれた特定の構造を有しているため、高いガラス転移温度を有する。そのため、本実施形態に係るインダン系重合体は、耐熱性が要求されるOA機器分野、自動車分野、電気・電子部品分野等において好適に用いることができる。
【0080】
インダン系重合体は、下記式(2−1)で表される構造単位(以下、場合により「構造単位2−1」と称する。)をさらに有していてもよい。なお、式(2−1)におけるR、R、R、R、R、R、R及びRは、それぞれ式(3)におけるR、R、R、R、R、R、R及びRと同義である。
【0081】
【化20】

【0082】
構造単位1及び構造単位2−1を有するインダン系重合体は、高いガラス転移温度を有するとともに成形性に一層優れる。そのため、このようなインダン系重合体は、薄膜状等の様々な形状に容易に成形することができる。
【0083】
構造単位1及び構造単位2−1を有するインダン系重合体において、インダン系重合体中の構造単位1の総モル量Cと構造単位2−1の総モル量C2−1との比C/C2−1は、0.1以上であることが好ましく、0.5以上であることがより好ましく、1以上であることがさらに好ましい。このようなインダン系重合体は、ガラス転移温度が一層高くなるため、耐熱性を要する用途に一層好適に用いられる。
【0084】
また、比C/C2−1は、10以下であってよく、5以下であってもよく、3以下であってもよい。
【0085】
インダン系重合体は、下記式(2−2)で表される構造単位(以下、場合により「構造単位2−2」と称する。)をさらに有していてもよい。なお、式(2−2)におけるR、R、R、R、R、R、R及びRは、それぞれ式(3)におけるR、R、R、R、R、R、R及びRと同義である。
【0086】
【化21】

【0087】
構造単位1及び構造単位2−2を有するインダン系重合体において、インダン系重合体中の構造単位1の総モル量Cと構造単位2−2の総モル量C2−2との比C/C2−2は、0.1以上であることが好ましく、0.5以上であることがより好ましく、1以上であることがさらに好ましい。このようなインダン系重合体は、ガラス転移温度が一層高くなるため、耐熱性を要する用途に一層好適に用いられる。
【0088】
また、比C/C2−2は、10以下であってよく、5以下であってもよく、3以下であってもよい。
【0089】
インダン系重合体は、上記以外の構造単位を有していてもよい。上記以外の構造単位としては、例えば、上述した式(5)で表される化合物以外の重合性モノマーに由来する構造単位が挙げられる。また、式(5)で表される化合物以外の重合性モノマーに由来する構造単位を、水素化してなる構造単位も例示できる。
【0090】
インダン系重合体は、例えば、構造単位1を有するブロックと、構造単位1以外の構造単位を有するブロックと、を備えるブロック共重合体であってもよい。また、インダン系重合体は、構造単位1と構造単位1以外の構造単位とのランダム共重合体であってもよい。
【0091】
(インダン系重合体の製造方法)
インダン系重合体は、上記インデン系重合体を水素化することにより、製造することができる。
【0092】
水素化反応は、例えば、有機溶媒中に分散又溶解させたインダン系重合体を、水素化触媒の存在下、水素雰囲気下で反応させることにより、行うことができる。
【0093】
水素化反応で用いられる有機溶媒としては、脂肪族炭化水素;芳香族炭化水素;メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール系溶媒類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジグライム等のエーテル系溶媒;塩化メチレン、ジクロロエタン、クロロホルム、等のハロゲン化炭化水素;等を好適に用いることができる。ここで脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、エーテル系溶媒、ハロゲン化炭化水素としては、それぞれ上記と同様の化合物が例示できる。
【0094】
水素化触媒としては、例えば、活性炭上に担持されたパラジウム、活性炭上に担持されたロジウム、活性炭上に担持されたルテニウム、酸化アルミニウム上に担持されたパラジウム、酸化アルミニウム上に担持されたロジウム、酸化アルミニウム上に担持されたルテニウム、ルテニウムジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)錯体(RuCl(PPh)、トリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウムハイドロクロライド錯体(RuHCl(PPh)、ルテニウムジヒドリドテトラキストリフェニルホスフィン錯体(RuH(PPh)等が挙げられる。
【0095】
水素化反応は、例えば、反応温度0〜200℃で行うことができ、反応の転化率、ポリマー収率の観点から、80〜180℃が好ましく、100〜170℃がより好ましい。
【0096】
水素化反応の反応時間は、15分〜10時間とすることができ、反応の転化率の観点から30分〜9時間が好ましく、2時間〜8時間がより好ましい。
【0097】
水素化反応における水素圧は、1〜20MPaとすることができ、反応の転化率、操作の簡便さの観点から、2〜15MPaが好ましく、3〜12MPaがより好ましい。
【0098】
水素化反応において添加する触媒量は、重合性モノマーの総量に対して、0.0001〜25質量%とすることができ、反応速度及び経済性の観点から、0.001〜20質量%が好ましく、0.005〜15質量%がより好ましい。
【0099】
水素化反応において用いる溶媒の量は、重合性モノマー1gに対して1〜300gとすることができ、反応の転化率、反応速度及び反応原料の溶解性の観点から、5〜250gが好ましく、10〜230gがより好ましい。
【0100】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【実施例】
【0101】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0102】
(実施例1:インデン系重合体1の製造)
ベンゾフルベンのアニオン重合を、パイレックス(登録商標)製反応容器を用いてブレークシール法にて行った。
【0103】
具体的には、パイレックス(登録商標)製反応容器に、ブレークシールによって封じられたsec−ブチルリチウム4.1mg(0.0646mmol)を含むヘプタン溶液3.0ml(関東化学(株)製)のアンプルと、ベンゾフルベン1.05g(8.21mmol)及びテトラヒドロフラン(THF)10mlを含むアンプルと、を溶接した。その後、反応容器を高真空ライン(10−6mmHg)に接続して、高真空下で脱気とベーキングを2回繰り返し、反応容器を溶封した。
【0104】
次いで、sec−ブチルリチウム溶液が収容されている容器のブレークシールを割り、反応容器にsec−ブチルリチウム溶液を移したのち、−78℃に冷却した。sec−ブチルリチウム溶液を含む反応溶液を激しく攪拌し、同じく−78℃に冷却したベンゾフルベンとTHFを含む容器のブレークシールを割り、反応溶液に添加し、そのまま20時間反応させた。なお、ベンゾフルベンとTHFを含む溶液を加えた際、瞬時に溶液の色が薄い黄色からやや濃い黄色に変化し、反応系の粘度の上昇が見られた。
【0105】
重合終了後、反応容器を開封し、重合停止剤であるメタノール5mlを添加し、重合を停止した。その反応溶液を200mlのメタノールに注ぎ込んだところ、白色の固体が沈殿した。その固体を桐山ロート及び桐山ろ紙を用いた減圧ろ過によってろ別した後に、20mlのベンゼンに溶解させ、凍結乾燥を行うことで、インデン系重合体1を1.05g得た。ポリマー収率は、仕込んだベンゾフルベンに対して100質量%であった。
【0106】
得られたインデン系重合体1について、下記(I)の方法で、数平均分子量Mnの計算値を算出した。また、下記(II)の方法で、数平均分子量Mn及び重量平均分子量Mwを測定し、下記(III)の方法で分子量分布Mw/Mnを求めた。また、下記(IV)の方法で、ガラス転移温度Tgを測定した。結果は、表2に示すとおりであった。
【0107】
また、得られたインデン系重合体1について、BLUKER製GPX(300MHz)を用いてH NMRスペクトル及び13C NMRスペクトルを測定したところ、下記式(A−1)で表される構造(以下、「構造A−1」と称する。)と下記式(A−2)で表される構造(以下、「構造A−2」と称する。)にそれぞれ対応するシグナルが観測された。各構造に対応するシグナルの13C NMRのケミカルシフトは、表1に示すとおりであった。なお、ケミカルシフトは、CDClH:7.26ppm、13C:77.1ppm)を基準とした。
【0108】
【化22】

【0109】
【表1】

【0110】
表1中、D、T及びQはそれぞれ2級、3級及び4級の炭素のシグナルであることを示す。119.3〜149.5ppmに観測されたシグナルが、アリール基及びオレフィンに対応するシグナルである。なお、構造A−1に対応するシグナルが2種類観測されている理由は、結合様式が反映されているためと考えられる。
【0111】
また、13C NMRスペクトルの構造A−1及び構造A−2にそれぞれ対応するシグナルの面積比から、構造A−1及び構造A−2の総量に対する、構造A−1の含有量を算出したところ、59%であった。
【0112】
(I)数平均分子量Mnの計算値の算出
得られたインデン系重合体の末端に存在する重合開始剤及び重合停止剤に由来する部分構造の分子量と、重合開始剤の使用量(モル)に対するモノマーの使用量(モル)の比(モノマーの使用量/重合開始剤の使用量)に基づき算出した重合鎖の分子量と、を合計して、数平均分子量Mnの計算値とした。
【0113】
(II)重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnの測定
Right Angle Laser Light Scattering GPC(RALLS−GPC)を用いて、インデン系重合体の重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnを測定した。より具体的には、屈折率計、散乱強度計及び粘度計を検出器として有するViscotek Model 302 Triple Detector Array(旭テクネイオン(株)製)を使用し、流量を1.0ml/min、カラムオーブンの温度を30℃に設定して、測定を行った。流出溶媒にはTHFを用い、分析カラムはTOSOH G5000HXL+G4000 HXL+G3000 HXLを使用した。
【0114】
(III)分子量分布Mw/Mnの算出
上記(2)により得られた重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnの比Mw/Mnを、分子量分布を示す値とした。
【0115】
(IV)ガラス転移温度Tgの測定
DSC装置(セイコー電子社製「DSC6220」)を用いて測定した。測定は、一度150℃まで試料を加熱し、同温度で5分間アニールを施した後、室温まで試料を急冷した。この後、再度20℃/分で昇温して、ガラス転移温度(Tg)を測定した。
【0116】
(実施例2:インデン系重合体2の製造)
sec−ブチルリチウムに代えてカリウムナフタレン32.6mg(0.196mmol)を用い、ベンゾフルベンの使用量を852mg(6.65mmol)とし、反応時間を1時間としたこと以外は、実施例1と同様にアニオン重合を行い、インデン系重合体2を850mg得た。ポリマー収率は、仕込んだベンゾフルベンに対して100質量%であった。
【0117】
得られたインデン系重合体2について、上記(I)、(II)、(III)及び(IV)の方法で、数平均分子量Mnの計算値の算出、重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnの測定、分子量分布Mw/Mnの算出、並びにガラス転移温度Tgの測定を行った。結果は表2に示すとおりであった。
【0118】
また、得られたインデン系重合体2について、BLUKER製GPX(300MHz)を用いてH NMRスペクトルを測定したところ、構造A−1と構造A−2にそれぞれ対応するシグナルが観測された。
【0119】
(実施例3:インデン系重合体3の製造)
sec−ブチルリチウムに代えてフェニルマグネシウムクロライド170mg(1.24mmol)を用い、ベンゾフルベンの使用量を2.87g(22.4mmol)とし、反応時間を1時間としたこと以外は、実施例1と同様にアニオン重合を行い、インデン系重合体3を2.87g得た。ポリマー収率は、仕込んだベンゾフルベンに対して100質量%であった。
【0120】
得られたインデン系重合体3について、上記(I)、(II)、(III)及び(IV)の方法で、数平均分子量Mnの計算値の算出、重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnの測定、分子量分布Mw/Mnの算出、並びにガラス転移温度Tgの測定を行った。結果は表2に示すとおりであった。
【0121】
また、得られたインデン系重合体3について、BLUKER製GPX(300MHz)を用いてH NMRスペクトルを測定したところ、構造A−1と構造A−2にそれぞれ対応するシグナルが観測された。
【0122】
(実施例4:インデン系重合体4の製造)
sec−ブチルリチウムに代えてジフェニルメチルリチウム6.9mg(0.0394mmol)を用い、ベンゾフルベンの使用量を659mg(5.14mmol)とし、反応時間を1時間としたこと以外は、実施例1と同様にアニオン重合を行い、インデン系重合体4を660mg得た。ポリマー収率は、仕込んだベンゾフルベンに対して100質量%であった。
【0123】
得られたインデン系重合体4について、上記(I)、(II)、(III)及び(IV)の方法で、数平均分子量Mnの計算値の算出、重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnの測定、分子量分布Mw/Mnの算出、並びにガラス転移温度Tgの測定を行った。結果は表2に示すとおりであった。
【0124】
また、得られたインデン系重合体4について、BLUKER製GPX(300MHz)を用いてH NMRスペクトルを測定したところ、構造A−1と構造A−2にそれぞれ対応するシグナルが観測された。
【0125】
(実施例5:インデン系重合体5の製造)
sec−ブチルリチウムに代えてジフェニルメチルカリウム14.2mg(0.0686mmol)を用い、ベンゾフルベンの使用量を700mg(5.46mmol)とし、反応時間を1時間としたこと以外は、実施例1と同様にアニオン重合を行い、インデン系重合体5を得た。ポリマー収率は、仕込んだベンゾフルベンに対して100質量%であった。
【0126】
得られたインデン系重合体5について、上記(I)、(II)、(III)及び(IV)の方法で、数平均分子量Mnの計算値の算出、重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnの測定、分子量分布Mw/Mnの算出、並びにガラス転移温度Tgの測定を行った。結果は表2に示すとおりであった。
【0127】
また、得られたインデン系重合体5について、BLUKER製GPX(300MHz)を用いてH NMRスペクトルを測定したところ、構造A−1と構造A−2にそれぞれ対応するシグナルが観測された。
【0128】
(実施例6:インデン系重合体6の製造)
sec−ブチルリチウムに代えてtert−ブトキシカリウム55.7mg(0.496mmol)を用い、ベンゾフルベンの使用量を769mg(6.00mmol)とし、反応時間を1時間としたこと以外は、実施例1と同様にアニオン重合を行い、インデン系重合体6を得た。ポリマー収率は、仕込んだベンゾフルベンに対して100質量%であった。
【0129】
得られたインデン系重合体6について、上記(I)、(II)、(III)及び(IV)の方法で、数平均分子量Mnの計算値の算出、重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnの測定、分子量分布Mw/Mnの算出、並びにガラス転移温度Tgの測定を行った。結果は表2に示すとおりであった。
【0130】
また、得られたインデン系重合体6について、BLUKER製GPX(300MHz)を用いてH NMRスペクトルを測定したところ、構造A−1と構造A−2にそれぞれ対応するシグナルが観測された。
【0131】
(実施例7:インデン系重合体7の製造)
sec−ブチルリチウムに代えてジフェニルメチルカリウム8.9mg(0.043mmol)を用い、ベンゾフルベンの使用量を1948mg(15.2mmol)とし、反応時間を3時間としたこと以外は、実施例1と同様にアニオン重合を行い、インデン系重合体7を1955mg得た。ポリマー収率は、仕込んだベンゾフルベンに対して100質量%であった。
【0132】
得られたインデン系重合体7について、上記(I)、(II)、(III)及び(IV)の方法で、数平均分子量Mnの計算値の算出、重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnの測定、分子量分布Mw/Mnの算出、並びにガラス転移温度Tgの測定を行った。結果は表2に示すとおりであった。
【0133】
(実施例8:インデン系重合体8の製造)
sec−ブチルリチウムに代えてトリフェニルメチルリチウム21.2mg(0.085mmol)を用い、ベンゾフルベンの使用量を575mg(4.49mmol)とし、反応時間を2時間としたこと以外は、実施例1と同様にアニオン重合を行い、インデン系重合体8を596mg得た。ポリマー収率は、仕込んだベンゾフルベンに対して100質量%であった。
【0134】
得られたインデン系重合体8について、上記(I)、(II)及び(III)の方法で、数平均分子量Mnの計算値の算出、重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnの測定、並びに、分子量分布Mw/Mnの算出を行った。結果は表2に示すとおりであった。
【0135】
(実施例9:インデン系重合体9の製造)
sec−ブチルリチウムに代えてトリフェニルメチルカリウム24.8mg(0.088mmol)を用い、ベンゾフルベンの使用量を845mg(6.59mmol)とし、反応時間を2時間としたこと以外は、実施例1と同様にアニオン重合を行い、インデン系重合体9を832mg得た。ポリマー収率は、仕込んだベンゾフルベンに対して96質量%であった。
【0136】
得られたインデン系重合体9について、上記(I)、(II)及び(III)の方法で、数平均分子量Mnの計算値の算出、重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnの測定、並びに、分子量分布Mw/Mnの算出を行った。結果は表2に示すとおりであった。
【0137】
(実施例10:インデン系重合体10の製造)
sec−ブチルリチウムに代えてベンジルマグネシウムクロリド24.7mg(0.164mmol)を用い、ベンゾフルベンの使用量を652mg(5.09mmol)とし、反応時間を17時間としたこと以外は、実施例1と同様にアニオン重合を行い、インデン系重合体10を607mg得た。ポリマー収率は、仕込んだベンゾフルベンに対して91質量%であった。
【0138】
得られたインデン系重合体10について、上記(I)、(II)及び(III)の方法で、数平均分子量Mnの計算値の算出、重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnの測定、並びに、分子量分布Mw/Mnの算出を行った。結果は表2に示すとおりであった。
【0139】
【表2】

【0140】
(実施例11:インデン系重合体11の製造)
ベンゾフルベンのラジカル重合を、パイレックス(登録商標)製二口フラスコを用いて行った。
【0141】
具体的には、窒素置換したパイレックス(登録商標)製100mLナスフラスコに三方コックを備えつけ、ベンゾフルベン701mg(5.47mmol)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル10.0mg(0.061mmol)及びベンゼン4ml(特級、関東化学(株)製)を加えた。
【0142】
次いで、ナスフラスコを液体窒素浴に浸し反応溶液を凍結させ、真空ポンプで脱気を行った。30分ほど脱気を行った後に、液体窒素浴からナスフラスコを上げることで室温に戻し、反応溶液を融解させた。この操作を繰り返した後に、ナスフラスコを窒素気流下とし、70℃で6時間加熱した。
【0143】
ナスフラスコを室温に戻すことで重合を停止し、2mlのTHFを加えて希釈した後に200mlのメタノールに注ぎ込んだところ、白色の固体が沈殿した。その固体を桐山ロート及び桐山ろ紙を用いた減圧ろ過によってろ別した後に、20mlのベンゼンに溶解させ、凍結乾燥を行うことで、インデン系重合体11を561mg得た。ポリマー収率は、仕込んだベンゾフルベンに対して80質量%であった。
【0144】
得られたインデン系重合体11について、上記(II)、(III)及び(IV)の方法で、重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnの測定、分子量分布Mw/Mnの算出、並びにガラス転移温度Tgの測定を行ったところ、数平均分子量Mnの測定値は14000であり、分子量分布Mw/Mnは2.46であり、ガラス転移温度は146℃であった。
【0145】
また、得られたインデン系重合体11について、BLUKER製GPX(300MHz)を用いてH NMRスペクトル及び13C NMRスペクトルを測定したところ、構造A−1と構造A−2にそれぞれ対応するシグナルが観測された。各構造に対応するシグナルの13C NMRのケミカルシフトは、表3に示すとおりであった。なお、ケミカルシフトは、CDClH:7.26ppm、13C:77.1ppm)を基準とした。
【0146】
【化23】

【0147】
【表3】

【0148】
表3中、D、T及びQはそれぞれ2級、3級及び4級の炭素のシグナルであることを示す。119.3〜149.5ppmに観測されたシグナルが、アリール基及びオレフィンに対応するシグナルである。なお、構造A−1に対応するシグナルが2種類観測されている理由は、結合様式が反映されているためと考えられる。
【0149】
また、13C NMRスペクトルの構造A−1及び構造A−2にそれぞれ対応するシグナルの面積比から、構造A−1及び構造A−2の総量に対する、構造A−1の含有量を算出したところ、90%であった。
【0150】
(実施例12:インデン系重合体12(ブロック共重合体)の製造)
ベンゾフルベンとメチルメタクリレートのブロック共重合を、パイレックス(登録商標)製反応容器を用いてブレークシール法にて実施した。
【0151】
具体的には、パイレックス(登録商標)製反応容器に、ブレークシールによって封じられたジフェニルメチルリチウム12.9mg(0.0742mmol)を含むTHF溶液3.0mlのアンプルと、塩化リチウム16.0mg(0.38mmol)を含むTHF溶液3.0mlのアンプルと、ベンゾフルベン606mg(4.73mmol)及びTHF5.0mlを含むアンプルと、メチルメタクリレート528mg(5.27mmol、東京化成工業(株)製)及びTHF5.0mlを含むアンプルと、を溶接した。その後、反応容器を高真空ライン(10−6mmHg)に接続して、高真空下で脱気とベーキングを2回繰り返し、反応容器を溶封した。
【0152】
次いで、ジフェニルメチルリチウム溶液が収容されているブレークシール、及び塩化リチウム溶液が収容されているブレークシールを割り、反応容器にジフェニルメチルリチウム溶液、及び塩化リチウム溶液を移したのち、−78℃に冷却した。ジフェニルメチルリチウム溶液、及び塩化リチウム溶液を含む反応溶液を激しく攪拌し、同じく−78℃に冷却したベンゾフルベン及びTHFを含むブレークシールを割り、反応溶液に添加し、そのまま1時間反応させた。その後、メチルメタクリレート及びTHFを含むブレークシールを割り、反応溶液に添加し、そのまま30分間攪拌した。重合終了後、反応溶液を開封し、重合停止剤であるメタノール5mlを添加し、重合を停止した。
【0153】
反応溶液を200mlのメタノールに注ぎ込んだところ、白色の固体が沈殿した。その固体を桐山ロート及び桐山ろ紙を用いた減圧ろ過によってろ別した後に、10mlのベンゼンに溶解させ、凍結乾燥を行うことで、ブロック共重合体としてインデン系重合体12を1.08g得た。ポリマー収率は、仕込んだベンゾフルベン及びメチルメタクリレートの合計量に対して95質量%であった。
【0154】
得られたインデン系重合体12について、上記(II)、(III)及び(IV)の方法で、重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnの測定、分子量分布Mw/Mnの算出、並びにガラス転移温度Tgの測定を行ったところ、数平均分子量Mnの測定値は24000であり、分子量分布Mw/Mnは1.14であり、ガラス転移温度は133℃であった。
【0155】
また、得られたインデン系重合体12について、BLUKER製GPX(300MHz)を用いてH NMRスペクトル及び13C NMRスペクトルを測定したところ、ベンゾフルベンの重合末端とメチルメタクリレートとが反応して生成した、構造A−1と構造A−2とメタクリレートに由来する構造とを有する重合体であることが確認された。
【0156】
また、上記(II)、(III)の方法にて、反応途中のベンゾフルベンのホモ重合体の重量平均分子量Mw、数平均分子量Mn及び分子量分布Mw/Mnを測定して、得られたインデン系重合体12の重量平均分子量Mw、数平均分子量Mn及び分子量分布Mw/Mnと比較したところ、両者の分子量分布には差がなかった一方で、メチルメタクリレートとの重合終了後(インデン系重合体12)の重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnの増大が見られたことから、インデン系重合体12がブロック共重合体であることが確認された。
【0157】
(実施例13:インデン系重合体13(ブロック共重合体)の製造)
ベンゾフルベンとメチルメタクリレートのブロック共重合を、パイレックス(登録商標)製反応容器を用いてブレークシール法にて実施した。
【0158】
具体的には、パイレックス(登録商標)製反応容器に、ブレークシールによって封じられたsec−ブチルリチウム15.5mg(0.121mmol)を含むヘプタン溶液2.4mlのアンプルと、ジフェニルエチレン43.6mg(0.242mmol)を含むTHF溶液2.4mlのアンプルと、塩化リチウム17.8mg(0.42mmol)を含むTHF溶液2.4mlのアンプルと、ベンゾフルベン1.04g(8.09mmol)及びTHF12.8mlを含むアンプルと、メチルメタクリレート1.01g(10.1mmol、東京化成工業(株)製)及びTHF10.7mlを含むアンプルと、を溶接した。その後、反応容器を高真空ライン(10−6mmHg)に接続して、高真空下で脱気とベーキングを2回繰り返し、反応容器を溶封した。
【0159】
次いで、sec−ブチルリチウム溶液が収容されているブレークシールを割り、反応容器にsec−ブチルリチウム溶液を移したのち、−78℃に冷却した。反応溶液を激しく攪拌し、同じく−78℃に冷却したジフェニルエチレン溶液が収容されているブレークシール及び塩化リチウム溶液が収容されているブレークシールを割り、10分間激しく攪拌した。次いで、同じく−78℃に冷却したメチルメタクリレート及びTHFを含むブレークシールを割り、反応溶液に添加し、そのまま10分間反応させた。その後、ベンゾフルベン及びTHFを含むブレークシールを割り、反応溶液に添加し、そのまま1時間攪拌した。重合終了後、反応溶液を開封し、重合停止剤であるメタノール5mlを添加し、重合を停止した。
【0160】
反応溶液を200mlのメタノールに注ぎ込んだところ、白色の固体が沈殿した。その固体を桐山ロートおよび桐山ろ紙を用いた減圧ろ過によってろ別した後に、20mlのベンゼンに溶解させ、凍結乾燥を行うことで、ブロック共重合体としてインデン系重合体13を1.84g得た。ポリマー収率は、仕込んだベンゾフルベン及びメチルメタクリレートの合計量に対して96質量%であった。
【0161】
得られたインデン系重合体13について、上記(II)、(III)及び(IV)の方法で、重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnの測定、分子量分布Mw/Mnの算出、並びにガラス転移温度Tgの測定を行ったところ、数平均分子量Mnの測定値は28000であり、分子量分布Mw/Mnは1.06であり、ガラス転移温度は132℃であった。
【0162】
また、得られたインデン系重合体13について、BLUKER製GPX(300MHz)を用いてH NMRスペクトル及び13C NMRスペクトルを測定したところ、メチルメタクリレートの重合末端とベンゾフルベンとが反応して生成した、構造A−1と構造A−2とメタクリレートに由来する構造とを有する重合体であることが確認された。
【0163】
また、上記(II)、(III)の方法にて、反応途中のメチルメタクリレートのホモ重合体の重量平均分子量Mw、数平均分子量Mn及び分子量分布Mw/Mnを測定して、得られたインデン系重合体13の重量平均分子量Mw、数平均分子量Mn及び分子量分布Mw/Mnと比較したところ、両者の分子量分布には差がなかった一方で、ベンゾフルベンとの重合終了後(インデン系重合体13)の重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnの増大が見られたことから、インデン系重合体13がブロック共重合体であることが確認された。
【0164】
(実施例14:インデン系重合体14(ランダム共重合体)の製造)
ベンゾフルベンとメチルメタクリレートの共重合を、パイレックス(登録商標)製反応容器を用いてブレークシール法にて実施した。
【0165】
具体的には、パイレックス(登録商標)製反応容器に、ブレークシールによって封じられたジフェニルメチルリチウム23.7mg(0.136mmol)を含むTHF溶液5.5mlのアンプルと、ベンゾフルベン496mg(3.87mmol)及びメチルメタクリレート480mg(4.79mmol、東京化成工業(株)製)とTHF10mlを含むアンプルとを溶接した。その後、反応容器を高真空ライン(10−6mmHg)に接続して、高真空下で脱気とベーキングを2回繰り返し、反応容器を溶封した。
【0166】
最初に、ジフェニルメチルリチウム及びTHFを含むブレークシールを割り、−78℃に冷却した。続いて、反応容器を激しく攪拌しながら、−78℃に冷却したメチルメタクリレート及びベンゾフルベンとTHFを含むブレークシールを割り、開始剤と混合し、そのまま1時間攪拌した。重合終了後、反応溶液を開封し、重合停止剤であるメタノール5mlを添加し、重合を停止した。
【0167】
反応溶液を200mlのメタノールに注ぎ込んだところ、白色の固体が沈殿した。その固体を桐山ロートおよび桐山ろ紙を用いた減圧ろ過によってろ別した後に、20mlのベンゼンに溶解させ、凍結乾燥を行うことで、ランダム共重合体としてインデン系重合体14を1.84g得た。ポリマー収率は、仕込んだベンゾフルベン及びメチルメタクリレートの合計量に対して96質量%であった。
【0168】
得られたインデン系重合体14について、上記(II)、(III)及び(IV)の方法で、重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnの測定、分子量分布Mw/Mnの算出、並びにガラス転移温度Tgの測定を行ったところ、数平均分子量Mnの測定値は8800であり、分子量分布Mw/Mnは1.28であり、ガラス転移温度は118℃であった。
【0169】
また、得られたインデン系重合体14について、BLUKER製GPX(300MHz)を用いてH NMRスペクトル及び13C NMRスペクトルを測定したところ、構造A−1と構造A−2とメタクリレートに由来する構造とを有するランダム共重合体であることが確認された。
【0170】
(実施例15:インデン系重合体15(ブロック共重合体)の製造)
ベンゾフルベンとt−ブチルメタクリレートのブロック共重合を、パイレックス(登録商標)製反応容器を用いてブレークシール法にて実施した。
【0171】
具体的には、パイレックス(登録商標)製反応容器に、ブレークシールによって封じられたジフェニルメチルカリウム10.4mg(0.050mmol)を含むTHF溶液2.4mlのアンプルと、ベンゾフルベン719mg(5.61mmol)及びTHF8.0mlを含むアンプルと、t−ブチルメタクリレート365mg(2.57mmol、東京化成工業(株)製)及びTHF6.0mlを含むアンプルと、を溶接した。その後、反応容器を高真空ライン(10−6mmHg)に接続して、高真空下で脱気とベーキングを2回繰り返し、反応容器を溶封した。
【0172】
次いで、ジフェニルメチルカリウム溶液が収容されているブレークシールを割り、反応容器にジフェニルメチルカリウム溶液を移したのち、−78℃に冷却した。反応溶液を激しく攪拌し、同じく−78℃に冷却したt−ブチルメタクリレート及びTHFが収容されているブレークシールを割り、10分間激しく攪拌した。次いで、ベンゾフルベン及びTHFを含むブレークシールを割り、反応溶液に添加し、そのまま1時間攪拌した。重合終了後、反応溶液を開封し、重合停止剤であるメタノール5mlを添加し、重合を停止した。
【0173】
反応溶液を200mlのメタノールに注ぎ込んだところ、白色の固体が沈殿した。その固体を桐山ロートおよび桐山ろ紙を用いた減圧ろ過によってろ別した後に、20mlのベンゼンに溶解させ、凍結乾燥を行うことで、ブロック共重合体としてインデン系重合体15を1.09g得た。ポリマー収率は、仕込んだベンゾフルベン及びt−ブチルメタクリレートの合計量に対して100質量%であった。
【0174】
得られたインデン系重合体15について、上記(II)及び(III)の方法で、重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnの測定、並びに、分子量分布Mw/Mnの算出を行ったところ、数平均分子量Mnの測定値は29000であり、分子量分布Mw/Mnは1.11であった。
【0175】
また、得られたインデン系重合体15について、BLUKER製GPX(300MHz)を用いてH NMRスペクトル及び13C NMRスペクトルを測定したところ、t−ブチルメタクリレートの重合末端とベンゾフルベンとが反応して生成した、構造A−1と構造A−2とt−ブチルメタクリレートに由来する構造とを有する重合体であることが確認された。
【0176】
また、上記(II)、(III)の方法にて、反応途中のt−ブチルメタクリレートのホモ重合体の重量平均分子量Mw、数平均分子量Mn及び分子量分布Mw/Mnを測定して、得られたインデン系重合体15の重量平均分子量Mw、数平均分子量Mn及び分子量分布Mw/Mnと比較したところ、両者の分子量分布には差がなかった一方で、ベンゾフルベンとの重合終了後(インデン系重合体15)の重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnの増大が見られたことから、インデン系重合体15がブロック共重合体であることが確認された。
【0177】
(実施例16:インデン系重合体16(ブロック共重合体)の製造)
ベンゾフルベンとt−ブチルメタクリレートのブロック共重合を、パイレックス(登録商標)製反応容器を用いてブレークシール法にて実施した。
【0178】
具体的には、パイレックス(登録商標)製反応容器に、ブレークシールによって封じられたジフェニルメチルリチウム10.3mg(0.059mmol)を含むTHF溶液2.4mlのアンプルと、ベンゾフルベン561mg(4.38mmol)及びTHF6.0mlを含むアンプルと、t−ブチルメタクリレート231.8mg(1.63mmol、東京化成工業(株)製)及びTHF4.0mlを含むアンプルと、を溶接した。その後、反応容器を高真空ライン(10−6mmHg)に接続して、高真空下で脱気とベーキングを2回繰り返し、反応容器を溶封した。
【0179】
次いで、ジフェニルメチルリチウム溶液が収容されているブレークシールを割り、反応容器にジフェニルメチルリチウム溶液を移したのち、−78℃に冷却した。反応溶液を激しく攪拌し、同じく−78℃に冷却したベンゾフルベン及びTHFが収容されているブレークシールを割り、10分間激しく攪拌した。次いで、t−ブチルメタクリレート及びTHFを含むブレークシールを割り、反応溶液に添加し、そのまま1時間攪拌した。重合終了後、反応溶液を開封し、重合停止剤であるメタノール5mlを添加し、重合を停止した。
【0180】
反応溶液を200mlのメタノールに注ぎ込んだところ、白色の固体が沈殿した。その固体を桐山ロートおよび桐山ろ紙を用いた減圧ろ過によってろ別した後に、20mlのベンゼンに溶解させ、凍結乾燥を行うことで、ブロック共重合体としてインデン系重合体16を801mg得た。ポリマー収率は、仕込んだベンゾフルベン及びt−ブチルメタクリレートの合計量に対して100質量%であった。
【0181】
得られたインデン系重合体16について、上記(II)及び(III)の方法で、重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnの測定、並びに、分子量分布Mw/Mnの算出を行ったところ、数平均分子量Mnの測定値は10000であり、分子量分布Mw/Mnは1.50であった。
【0182】
また、得られたインデン系重合体16について、BLUKER製GPX(300MHz)を用いてH NMRスペクトル及び13C NMRスペクトルを測定したところ、t−ブチルメタクリレートの重合末端とベンゾフルベンとが反応して生成した、構造A−1と構造A−2とt−ブチルメタクリレートに由来する構造とを有する重合体であることが確認された。
【0183】
また、上記(II)、(III)の方法にて、反応途中のベンゾフルベンのホモ重合体の重量平均分子量Mw、数平均分子量Mn及び分子量分布Mw/Mnを測定して、得られたインデン系重合体16の重量平均分子量Mw、数平均分子量Mn及び分子量分布Mw/Mnと比較したところ、ベンゾフルベンとの重合終了後(インデン系重合体16)の重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnの増大が見られたことから、インデン系重合体16がブロック共重合体であることが確認された。
【0184】
(実施例17:インデン系重合体17(ブロック共重合体)の製造)
ベンゾフルベンとスチレンのブロック共重合を、パイレックス(登録商標)製反応容器を用いてブレークシール法にて実施した。
【0185】
具体的には、パイレックス(登録商標)製反応容器に、ブレークシールによって封じられたs−ブチルリチウム5.6mg(0.087mmol)を含むヘプタン溶液2.4mlのアンプルと、ベンゾフルベン989mg(7.72mmol)及びTHF10.0mlを含むアンプルと、スチレン437mg(4.20mmol、東京化成工業(株)製)及びTHF5.0mlを含むアンプルと、を溶接した。その後、反応容器を高真空ライン(10−6mmHg)に接続して、高真空下で脱気とベーキングを2回繰り返し、反応容器を溶封した。
【0186】
次いで、s−ブチルリチウム溶液が収容されているブレークシールを割り、反応容器にs−ブチルリチウム溶液を移したのち、−78℃に冷却した。反応溶液を激しく攪拌し、同じく−78℃に冷却したスチレン及びTHFが収容されているブレークシールを割り、10分間激しく攪拌した。次いで、ベンゾフルベン及びTHFを含むブレークシールを割り、反応溶液に添加し、そのまま1時間攪拌した。重合終了後、反応溶液を開封し、重合停止剤であるメタノール5mlを添加し、重合を停止した。
【0187】
反応溶液を200mlのメタノールに注ぎ込んだところ、白色の固体が沈殿した。その固体を桐山ロートおよび桐山ろ紙を用いた減圧ろ過によってろ別した後に、20mlのベンゼンに溶解させ、凍結乾燥を行うことで、ブロック共重合体としてインデン系重合体17を1.431g得た。ポリマー収率は、仕込んだベンゾフルベン及びスチレンの合計量に対して100質量%であった。
【0188】
得られたインデン系重合体17について、上記(II)及び(III)の方法で、重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnの測定、並びに、分子量分布Mw/Mnの算出を行ったところ、数平均分子量Mnの測定値は14000であり、分子量分布Mw/Mnは1.12であった。
【0189】
また、得られたインデン系重合体17について、BLUKER製GPX(300MHz)を用いてH NMRスペクトル及び13C NMRスペクトルを測定したところ、スチレンの重合末端とベンゾフルベンとが反応して生成した、構造A−1と構造A−2とスチレンに由来する構造とを有する重合体であることが確認された。
【0190】
また、上記(II)及び(III)の方法にて、反応途中のスチレンのホモ重合体の重量平均分子量Mw、数平均分子量Mn及び分子量分布Mw/Mnを測定して、得られたインデン系重合体17の重量平均分子量Mw、数平均分子量Mn及び分子量分布Mw/Mnと比較したところ、両者の分子量分布には差がなかった一方で、ベンゾフルベンとの重合終了後(インデン系重合体17)の重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnの増大が見られたことから、インデン系重合体17がブロック共重合体であることが確認された。
【0191】
(実施例18:インデン系重合体18(ブロック共重合体)の製造)
ベンゾフルベンと2−ビニルピリジンのブロック共重合を、パイレックス(登録商標)製反応容器を用いてブレークシール法にて実施した。
【0192】
具体的には、パイレックス(登録商標)製反応容器に、ブレークシールによって封じられたジフェニルメチルリチウム20.2mg(0.098mmol)を含むヘプタン溶液2.4mlのアンプルと、ベンゾフルベン1.011g(7.89mmol)及びTHF10.0mlを含むアンプルと、2−ビニルピリジン526mg(5.00mmol、東京化成工業(株)製)及びTHF6.0mlを含むアンプルと、を溶接した。その後、反応容器を高真空ライン(10−6mmHg)に接続して、高真空下で脱気とベーキングを2回繰り返し、反応容器を溶封した。
【0193】
次いで、ジフェニルメチルリチウム溶液が収容されているブレークシールを割り、反応容器にジフェニルメチルリチウム溶液を移したのち、−78℃に冷却した。反応溶液を激しく攪拌し、同じく−78℃に冷却したベンゾフルベン及びTHFが収容されているブレークシールを割り、30分間激しく攪拌した。次いで、2−ビニルピリジン及びTHFを含むブレークシールを割り、反応溶液に添加し、そのまま1時間攪拌した。重合終了後、反応溶液を開封し、重合停止剤であるメタノール5mlを添加し、重合を停止した。
【0194】
反応溶液を200mlのメタノールに注ぎ込んだところ、白色の固体が沈殿した。その固体を桐山ロートおよび桐山ろ紙を用いた減圧ろ過によってろ別した後に、20mlのベンゼンに溶解させ、凍結乾燥を行うことで、ブロック共重合体としてインデン系重合体18を1.553g得た。ポリマー収率は、仕込んだベンゾフルベン及び2−ビニルピリジンの合計量に対して100質量%であった。
【0195】
得られたインデン系重合体18について、上記(II)及び(III)の方法で、重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnの測定、並びに、分子量分布Mw/Mnの算出を行ったところ、数平均分子量Mnの測定値は19000であり、分子量分布Mw/Mnは1.22であった。
【0196】
また、得られたインデン系重合体18について、BLUKER製GPX(300MHz)を用いてH NMRスペクトル及び13C NMRスペクトルを測定したところ、2−ビニルピリジンの重合末端とベンゾフルベンとが反応して生成した、構造A−1と構造A−2と2−ビニルピリジンに由来する構造とを有する重合体であることが確認された。
【0197】
また、上記(II)、(III)の方法にて、反応途中のベンゾフルベンのホモ重合体の重量平均分子量Mw、数平均分子量Mn及び分子量分布Mw/Mnを測定して、得られたインデン系重合体18の重量平均分子量Mw、数平均分子量Mn及び分子量分布Mw/Mnと比較したところ、ベンゾフルベンとの重合終了後(インデン系重合体18)の重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnの増大が見られたことから、インデン系重合体18がブロック共重合体であることが確認された。
【0198】
(実施例19:インダン系重合体1の製造)
実施例3で得られたインデン系重合体3の水素化を、ステンレス鋼(SUS)製耐圧反応容器を用いて実施した。
【0199】
具体的には、回分式の攪拌器を備えた100mlステンレス鋼(SUS)製耐圧反応容器に、インデン系重合体3を151.3mg、トリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウムハイドロクロライド錯体(RuHCl(PPh)を15.1mg、トルエンを35ml(ナカライテスク(株)製)加えた後に、反応系内を窒素ガスで10分間置換した。その後、反応容器内を水素ガスで5回置換し、水素圧を7MPaに設定し、150℃で6時間攪拌した。反応終了液を100mlのナスフラスコに移し、60℃、20Torrにて減圧濃縮することで、トルエンを除去し、粗生成物を得た。
【0200】
得られた粗生成物を再び5mlのトルエンに溶解させ、200mlのメタノールに注ぎ込んだところ、白色の固体が沈殿した。その固体を桐山ロート及び桐山ろ紙を用いた減圧ろ過によってろ別した後に、白色の固体を10Torr、30℃、8時間の真空オーブンで乾燥したところ、115mgのインダン系重合体1が得られた。ポリマー収率は仕込んだインデン系重合体3に対して75質量%であった。
【0201】
得られたインダン系重合体1について、上記(II)、(III)及び(IV)と同様の方法で、重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnの測定、分子量分布Mw/Mnの算出、並びにガラス転移温度Tgの測定を行ったところ、数平均分子量Mnの測定値は23000であり、分子量分布Mw/Mnは2.2であり、ガラス転移温度は155℃であった。
【0202】
また、得られたインダン系重合体1について、BLUKER製GPX(300MHz)を用いてH NMRスペクトル及び13C NMRスペクトルを測定したところ、インデン系重合体3のオレフィンに由来するシグナルが消失しており、下記式(B−1)で表される構造(以下、場合により「構造B−1」と称する。)と下記式(B−2)で表される構造(以下、場合により「構造B−2」と称する。)とを有するインダン系重合体であることが確認された。
【0203】
【化24】

【0204】
また、得られたインダン系重合体1を、クロロベンゼンに溶解し、キャストフィルムを作成したところ、しなやかな膜が得られ、インデン系重合体1の成形性が良好であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0205】
本発明のインダン系重合体は、耐熱性が要求されるOA機器分野、自動車分野、電気・電子部品分野等に用いられる樹脂として有用である。また、本発明のインデン系重合体は、上記インダン系重合体の前駆体として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される構造単位を有する、インダン系重合体。
【化1】


[式中、R、R、R、R、R、R、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を示す。RとR、RとR、RとR、RとR、及び、RとRは、それぞれ互いに結合して環を形成していてもよい。]
【請求項2】
下記式(2)で表される構造単位をさらに有する、請求項1に記載のインダン系重合体。
【化2】


[式中、R、R、R、R、R、R、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を示す。RとR、RとR、RとR、RとR、及び、RとRは、それぞれ互いに結合して環を形成していてもよい。]
【請求項3】
下記式(3)で表される構造単位と、下記式(4)で表される構造単位と、を有する、インデン系重合体。
【化3】


[式中、R、R、R、R、R、R、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を示す。RとR、RとR、RとR、RとR、及び、RとRは、それぞれ互いに結合して環を形成していてもよい。]
【請求項4】
下記式(5)で表される化合物を含む重合性モノマーのアニオン重合により、下記式(3)で表される構造単位と下記式(4)で表される構造単位とを有するインデン系重合体を得る工程を備える、インデン系重合体の製造方法。
【化4】


【化5】


[式中、R、R、R、R、R、R、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を示す。RとR、RとR、RとR、RとR、及び、RとRは、それぞれ互いに結合して環を形成していてもよい。]
【請求項5】
下記式(5)で表される化合物を含む重合性モノマーのアニオン重合により、下記式(3)で表される構造単位と下記式(4)で表される構造単位とを有するインデン系重合体を得る第一の工程と、
前記インデン系重合体を水素化して、下記式(1)で表される構造単位と下記式(2)で表される構造単位とを有するインダン系重合体を得る第二の工程と、
を備える、インダン系重合体の製造方法。
【化6】


【化7】


【化8】


[式中、R、R、R、R、R、R、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を示す。RとR、RとR、RとR、RとR、及び、RとRは、それぞれ互いに結合して環を形成していてもよい。]

【公開番号】特開2012−193362(P2012−193362A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−46994(P2012−46994)
【出願日】平成24年3月2日(2012.3.2)
【出願人】(000004444)JX日鉱日石エネルギー株式会社 (1,898)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】