説明

インテグリンα5β1のインヒビターおよび組織顆粒化の制御のためのそれらの使用

本発明はユーザーが傷部以内およびその周辺の組織肉芽化のインヒビターを同定し、それにより傷付いた組織の治癒に伴う過剰の廃痕形成を制限することを可能にする。本発明の方法を用いて同定される肉芽化インヒビターのあるものは、創傷部位内およびその周辺の肉芽化を5倍まで阻害し、網膜障害で試験した場合、それに対応して廃痕組織形成を減少する。本発明の方法を用いて同定し得る肉芽化インヒビターには抗体、ペプチド、核酸(アプタマー)および非ペプチド低分子量分子が含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生化学および生理学、特に傷の治癒を促進する方法に関する。提供される方法により、ユーザーは創傷部位中およびその周辺における組織の肉芽化を処置するための治療薬として有用なインヒビターを特定し、傷ついた組織の治癒に伴う過剰の傷跡形成を制限することができる。本発明の方法を用いて同定された肉芽化インヒビターは、創傷部位内およびその周辺の肉芽化を5倍程度阻害し、それに伴って網膜の障害に試験した場合、廃痕組織の形成が減少する。さらに、これらのインヒビターはRPE細胞中の病変部に関連するマクロファージの挙動を阻害する。本発明の方法を用いて同定し得る肉芽化インヒビターには抗体、ペプチド、拡散(アプタマー)および非ペプチド低分子量分子が含まれる。
【背景技術】
【0002】
正常な状態、および傷治癒条件における傷の修復および組織形成は医療における主な目標である。傷の治癒における特異的な問題は、創傷部位内およびその周辺の過剰肉芽形成の結果である体液集積で生じる廃痕形成と下部膜からの組織の剥離である。これらの問題は眼の傷害、および関節軟骨等の他の組織において特に深刻である。例えば、傷の治癒においてI型およびIII型コラーゲンの再編成が主として行われることが示されているが、結合組織内のこの様な分子の集積は、リューマチ性関節炎およびアテローム性動脈硬化と関連している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、治療された傷における肉芽化ばかりでなく、傷ついた、または組織移植を受けた哺乳動物組織、特にヒト組織の修復を制御するのに有用な方法と組成物が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は傷ついた組織領域における肉芽化の制御法を提供する。この方法において、本発明の方法は初期の傷に伴う組織の損傷を最小にすることを幇助する。従って、本発明は傷ついた、または病んだ組織に肉芽化インヒビターを適用することを含む、有害な肉芽化を減少させる方法を提供する。病んだ、または傷ついた組織は眼の一部または関節であるか、または滑液嚢と関連し得る。ある方法はケロイド形成、火傷または皮膚硬化症等の症状で生じる、傷ついた、または病んだ組織の処置に有用である。他の方法は組織の炎症を生じる疾患に関連する、傷ついた、または病んだ組織の処置を提供する。このタイプの疾患の例にはリュウマチ性関節炎、Wegener肉芽腫症、Churg−Straussアレルギー性肉芽腫症、好酸球肉芽腫症、正中肉芽腫、デスモイド、類肉腫症、黄紋変性、増殖性硝子体網膜症、増殖性糖尿病性網膜症、子宮類線維腫、側頭筋動脈炎、およびTakayasu動脈炎が含まれる。例えばCrohn病、特発性肺線維症、およびアレルギー性肺線維症等の炎症で生じる繊維形成を含む疾患も、本明細書に記載の処置に応答する。上記の様な疾患を治療する医薬として有用な肉芽化インヒビターには抗体、低分子量有機分子、および核酸、タンパク質およびペプチドが含まれる。
【0005】
本発明の他の実施態様は、α5β1インテグリン結合剤を組織に施すことを含む、傷付いた、または病んだ組織における肉芽化を減少する方法である。この様な方法の対象となる組織には眼、皮膚、骨、関節、血管、靭帯および腱が含まれる。直接塗布、静脈注射、全身注入、噴霧吸入、点眼、および経口摂取を含むいくつかの技術で、結合剤を傷付いた、または病んだ組織に施すことができる。
【0006】
本発明の方法を用いて処置し得る組織の損傷には切り傷、火傷、打撲傷および刺傷等の物理的傷害、化学的外傷、放射線源への暴露等が含まれる。組織の損傷による感染症もまた、本発明により処置し得る。しかしながら、本発明は非感染症、特に好ましくは手術中等の滅菌環境中で生じる、または優先的な感染を伴わないと思われる傷の処置に特に適している。本発明の方法で処置し得る疾患には糖尿病性網膜炎、リューマチ性関節炎、骨関節炎、組織肉芽化による黄斑変性、側頭動脈炎、多発性筋肉痛リューマチ、巨細胞動脈炎、Takayasu動脈炎、Kawasaki病、Wegener肉芽腫症、Churg−Straussアレルギー性肉芽腫症および血管炎、特発性肺線維症、全身性硬化症/皮膚硬化症、Sjogren症候群/症、乾燥症候群、アレルギー性肺線維症、類肉腫症、子宮前線維組織、血管腫、リンパ管腫、ケロイド瘢痕生成、Goodpasteur病、Crohn病、Pasgets症候群、プテリギア、好酸球肉芽症、細胞顆粒化を生じる自己免疫疾患、および罹患組織内に血管新生を誘発する多くの傷および疾患が含まれるが、それらに限定されない。
【0007】
本発明のいくつかの態様では、核酸(アプタマー)糖タンパク質、低分子量有機分子、ムティエン等であるα5β1結合剤が使用される。結合剤は抗α5β1インテグリン抗体であることが最も好ましく、配列番号1〜6でなる群より選ばれるアミノ酸配列と相同であるアミノ酸配列を有する可変重鎖領域と、配列番号7〜12でなる群より選ばれるアミノ酸配列と相同であるアミノ酸配列を有する可変軽鎖領域とを有する抗体であることが望ましい。
【0008】
本発明にはまた、細胞性肉芽化のインヒビターの同定法も含まれる。これらの方法のいくつかには、第1の傷組織をインヒビター候補の存在下にインキュベーションする工程、第2の傷組織をインヒビター候補を加えずにインキュベーションする工程、および第1傷組織と比較して第2傷組織中に存在する細胞性肉芽化のレベルを測定する工程が含まれる。
【0009】
細胞性肉芽化の他の同定法には別なスクリーニングが含まれる。別なスクリーニングにはα5β1インテグリンを結合剤候補とインキュベーションする工程、フィブロネクチンをα5β1インテグリンと結合剤候補のインキュベーションに添加する工程、およびα5β1インテグリンがフィブロネクチンと結合するかどうかを測定する工程が含まれる。α5β1インテグリンがフィブロネクチンと結合できない場合、結合剤候補はインヒビター候補であることを示している。一度インヒビター候補が同定されると、それらを細胞性肉芽化阻害能について試験する。これには第1傷組織をインヒビター候補の存在下にインキュベーションする工程、第2傷組織をインヒビター候補を加えずにインキュベーションする工程、および第1傷組織と比較して第2傷組織中に存在する細胞性肉芽化レベルを測定する工程が含まれる。
【0010】
細胞性肉芽化インヒビターを同定する二つの方法のある態様では、第1および第2傷組織は眼組織である。ある態様では、測定工程には染色組織切片を検査する工程が含まれる。また別な態様には結合またはインヒビター候補がタンパク質、好ましくは抗α5β1インテグリン抗体、最も好ましくは配列番号1〜6でなる群より選ばれるアミノ酸配列に相同であるアミノ酸配列を有する可変重鎖領域と配列番号7〜12でなる群より選ばれるアミノ酸配列と相同であるアミノ酸配列を有する可変軽鎖領域とを有する抗体である場合が含まれる。
【0011】
眼の傷害および疾患に関連する実施態様では、罹患した眼の中の創傷部位を上記のα5β1インテグリン結合剤と接触させる工程を含むRPE細胞の挙動の制御法が提供される。その結果、罹患した眼のRPE細胞がマクロファージ挙動を示すことを阻害する。または、RRE細胞はより繊維芽細胞型の形態を取る様に思われる。阻害されるマクロファージ挙動のタイプには食細胞活性、およびサイトカイン、ケモカインおよび炎症反応媒介因子が含まれる。結合剤は抗α5β1抗体であることが好ましく、α5β1インテグリンに対し配列番号1〜6でなる群より選ばれるアミノ酸配列と相同であるアミノ酸配列を有する可変重鎖領域と、配列番号7〜12でなる群より選ばれるアミノ酸配列と相同であるアミノ酸配列を有する可変軽鎖領域とを有する抗体と競合的に結合する抗体であることがより好ましく、配列番号1〜6でなる群より選ばれるアミノ酸配列と相同であるアミノ酸配列を有する可変重鎖領域と、配列番号7〜12でなる群より選ばれるアミノ酸配列と相同であるアミノ酸配列を有する可変軽鎖領域とを有する抗体であることが最も好ましい。本発明のある態様では、傷付いたまたは病んだ組織への直接塗布、静脈内注射、全身注入、噴霧吸引、点眼、および経口摂取を含むいくつかの方法で、結合剤を傷付いたまたは病んだ組織に施すことができる。傷付いたまたは病んだ眼の傷害部位が感染で生じたものでないことが好ましい。
【0012】
肉芽化インヒビターで調節される生理効果の評価法に、眼組織も用いられる。これらの方法には肉芽化を形成するに十分な障害を眼組織中に形成する工程、眼組織に一定量の肉芽化インヒビターを投与する工程、および薬品投与眼組織の障害中またはその周りの肉芽化をモニターする工程が含まれる。本実施態様のある態様では、眼組織は生きた霊長類の眼の一部である。本実施態様で使用される眼組織は網膜、角膜斑または角膜組織である。本発明のある態様では、眼組織中の障害の形成がレーザー光で行われる。ある態様では、レーザー光は約300〜700ミリワットであり、暴露時間は0.1秒以下である。形成した傷害は直径約50〜100μmであることが好ましい。肉芽化インヒビターの投与は任意の方法、例えば直接適用、静脈内注射、全身注入、噴霧吸入、点眼、または経口摂取が可能である。肉芽化インヒビターは上記の任意の分子でよいが、好ましくは抗α5β1抗体、より好ましくは配列番号1〜6でなる群より選ばれるアミノ酸配列と相同であるアミノ酸配列を有する可変重鎖領域と、配列番号7〜12でなる群より選ばれるアミノ酸配列と相同であるアミノ酸配列を有する可変軽鎖領域とを有する抗体である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(発明の詳細な説明)
1.定義
特に断らない限り、本明細書で使用する全ての科学技術用語は、本発明が属する技術の当業者が通常理解する意味を有する。以下の文献は、本発明で用いられる多くの用語の一般的な定義を提供する:Singleton et al.、Dictionary of Microbiology and Molecular Biology (2nded.1994);The Cambridge Dictionary of Science and Technology (Walker ed.、1988); The Glossary of Genetics、5th Ed.、R.Rieger et al.(eds.)、Springer Verlag(1991);and Hale & Marham、The Harper Collins Dictionary of Biology(1991)。本明細書で用いる以下の用語は、特に断らない限りその本来の意味を有する。
【0014】
「インテグリン」という用語は、多様な細胞中で発現し、細胞外マトリックス中で特定のリガンドに結合する細胞外受容体を指す。インテグリンが結合する特異的リガンドはアルギニン−グリシン−アスパラギン酸トリペプチド(Arg−Gly−Asp;RGD)またはロイシン−アスパラギン酸−バリントリペプチドを含み、例えばフィブロネクチン、ビトロネクチン、オステオポンチン、テナスシンおよびvon Willebrand因子が含まれる。ヘテロダイマーのインテグリン領域スーパーファミリーはαサブユニットとβサブユニットで構成される。例えばαV、α5等で指定される多くのαサブユニット、および例えばβ1、β2、β3、β5等で指定される多くのβサブユニットが同定され、α5β1、αVβ3およびαVβ5を含むこれらのサブユニットの様々な組み合わせが、インテグリンサブファミリーを代表する。インテグリンのスーパーファミリーを例えばαVβ3およびαVβ5を含むαV含有インテグリン、またはα5β1およびαVβ1を含むPi含有インテグリン等のファミリーに細分することができる。インテグリンはC.elegans、Drosophila属、両生類、トリおよびヒトを含む哺乳動物を含む広い範囲の生物中で発現する。
【0015】
α5β1インテグリンと結合する本明細書で開示するタンパク質、特に抗体、突然変異タンパク質、ムティン、核酸アプタマー、およびペプチドおよび非ペプチド低分子量有機分子は、本発明の「結合剤」および「肉芽化インヒビター」として作用する。「結合剤」という用語は、本明細書では受容体とそのリガンドとの特異的相互作用を妨害し得る試薬を意味するものとして使用される。α5β1とフィブロネクチンとの結合を妨害し、それにより会合を減少または阻害し得る抗α5β1インテグリン抗体は、α5β1結合剤の1例である。α5β1結合剤は、そのリガンドへ結合するα5β1インテグリンの競合的インヒビターまたは非競合的インヒビターとして作用し得る。
【0016】
肉芽化インヒビターには、本明細書で説明する様に創傷部位へ施した場合、組織の肉芽化を減少させる結合剤が含まれる。
【0017】
「結合剤候補」とは、本明細書で定義する様にα5β1インテグリンに特異的に結合し得る分子種を指す(すなわち結合剤であり得る分子種)。
【0018】
「インヒビター候補」とは、α5β1インテグリンに特異的に結合し、傷組織に施した場合、細胞の肉芽化を阻害し得る分子種を指す。
【0019】
「特異的に(または選択的に)結合する」という語句、または抗体相互作用を指す場合、「特異的に(または選択的に)〜と免疫反応性」という語句は、生理条件下でバックグラウンド分子会合の少なくとも2倍、より典型的には10〜100倍以上の2つの分子間の結合反応を指す。タンパク質である少なくとも1個の検出可能結合剤を使用する場合、当為的結合とはタンパク質および他の生体物質の異種集団中のそのタンパク質の存在を決定する因子である。従って、特定の免疫分析条件下では、特異性抗体が特定のタンパク質配列に結合し、その存在を同定する。
【0020】
この様な条件下の抗体への特異的結合には、特定のタンパク質に対する特異性で選択された抗体が必要である。例えば、特定のタンパク質、多形突然変異体、対立遺伝子、オーソログ、および保存的に修飾された突然変異体、またはスプライス突然変異体、またはその一部を選択して、α5β1インテグリンと特異的に免疫反応性であるが他のタンパク質とは反応性でないポリクローン抗体を得ることができる。この選択を、他の分子と交差反応性である抗体を除外することで実行できる。特定のタンパク質と特異的に免疫反応性である抗体を選択するために、様々な免疫分析フォーマットを使用し得る。例えば、タンパク質と特異的に免疫反応性である抗体を選択するために、固相ELISA免疫分析が日常的に使用される(特異的免疫反応性を測定するために使用できる免疫分析フォーマットと条件については、例えばHarlow & Lane、Antibodies、A Laboratory Manual(1988)参照)。2つの分子が特異的に相互作用するかどうかを決定する方法が本明細書に記載され、結合親和性と特異性の決定法は公知である(例えばHarlow and Lane、Antibodies:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press、1988);Friefelder、“Physical Biochemistry:Applications to Biochemistry and Molecular biology”(W.H.Freeman and Co.、1976)参照)。
【0021】
一般に結合剤と肉芽化インヒビターは、その天然リガンドに結合するα5β1インテグリンを「妨害」する。他のインテグリンリガンドのインテグリン結合能に関する結合剤の作用を参照して使用される場合、「妨害する」とはインテグリンとそのリガンド間の相互作用の親和性が、結合剤がない場合に生じる結合レベル以下に減少することを指す。受容体とそのリガンドとの会合がこの様な分子群間で生じる動的な関係にあり、任意の時点で受容体とリガンドのある部分が会合状態にあることを、当業者は理解し得ると考えられる。従って、受容体とそのリガンドとの特異的相互作用を妨害する試薬は、ある時点で生じるこの様な相互作用の相対的な数を減少させ、ある場合はこの様な会合の全てを完全に阻害し得る。α5β1インテグリン結合剤が受容体とそのリガンドとの会合を阻害する、または会合を特定の分析の検出限界以下に減少させるかどうかを判別することは困難である。従って、受容体とそのリガンドとの特異的結合を減少させる、または阻害すること包含して、「妨害」という用語は本明細書では広く用いられる。
【0022】
さらに、α5β1インテグリン結合剤は様々な機構、例えばリガンド結合部位に結合し、その結果リガンド結合を妨害することにより;受容体のリガンド結合部位以外に結合するが、リガンドの受容体への結合を立体的に妨害することにより;受容体に結合し、リガンドの結合を妨害する受容体の立体配座その他の変化を生じさせることにより;または他の機構により、受容体とそのリガンドとの特異的結合を妨害することができる。同様に、結合剤はリガンドと結合して、または相互作用して受容体との特異的相互作用を妨害する。本明細書に開示した目的では、妨害を生じる機構の理解は必要でなく、作用の機構を提案していない。抗α5β1抗体またはその抗原結合フラグメント等のα5β1結合剤の特徴は、少なくとも約10mol−1、10mol−1以上、好ましくは10mol−1以上、より好ましくは10mol−1以上、最も好ましくは10mol−1以上のα5β1インテグリンに対する特異性結合活性(Ka)を有することである。例えばScatchard分析(Scatchard、Ann.NY Acad.Sci.51:660−72、1949)により、当業者は抗体の結合親和性を容易に決定することができる。
【0023】
本明細書で用いる「抗体」という用語は、天然起源の抗体の他、例えば1本鎖抗体、キメラ2価ヒト化抗体、およびその抗体結合フラグメント(例えばFab‘、F(ab‘)、Fab、FvおよびrIgG)を包含する。Pierce Catalog and Handbook 1994−1955(Pierce Chemical Co.、Rockford、IL)および例えばKuby、J.Immnol.3rd Ed.、W.H.Freeman&Co,、New York(1998)参照。この様な非天然起源抗体を固相ペプチド合成を用いて構築するか、組み換えで製造するか、例えばHuseら、Science 246:1275−1281(1989)に記載され、本明細書に引用して援用する可変重鎖および可変軽鎖でなるコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングして得ることができる。例えばキメラ、ヒト化、CDRグラフト1本鎖2価抗体は当業者に公知である(Winter and Harris、Immunol.Today、14:243−246(1993);Ward et al.、Nature341:544−546(1989);Harlow and Lane,supra,1988;Hilyardら、Protein Engineering:A Practical Approach(IRL Press、1992);Borrabeck、Antibody Engineering、2nd ed.(Oxford Universiry Press、1995);それぞれを本明細書に引用して援用する)。
【0024】
「抗体」という用語にはポリクローンおよびモノクローン抗体の双方が含まれる。この用語にはまた、キメラ抗体(例えばヒト化マウス抗体)およびヘテロ共役付加抗体(例えば双特異性抗体)遺伝子操作型も含まれる。この用語は組み換え1本鎖Fvフラグメント(scFv)も指す。抗体という用語には2価または双特異性分子、2抗体、3抗体および4抗体も含まれる。2価および双特異性分子は例えばKostelny et al.、(1992)J Immunol 148:1547,Pack and Pluckthun(1992)Biochemistry 31:1579,Hollinger et al.,1993,supra,Gruber et al.(1994)、J.Immunol:5368;Zhu et al.,(1997)、Protein Sci.6:781;Hu et al.,(1996)、Cancer Res.56:3055;Adams et al.,(1993)、Cancer Res.53:4026;およびMcGartney et al.,(1995)、Protein Eng.8:301に記載されている。
【0025】
典型的には抗体は重鎖および軽鎖を有する。重鎖および軽鎖のそれぞれは不変領域および可変領域を有する(この領域は「ドメイン」としても知られている)。軽鎖および重鎖可変領域は3個の超可変領域で隔てられた4個の「骨格」領域を有し、「相補性決定領域」または「CDR」とも呼ばれる。骨格領域とCDRの長さは定義されている。異なった重鎖または軽鎖の骨格領域の配列は一定の種内では相対的に保存されている。構成軽鎖および重鎖の組み合わせ骨格領域である抗体の骨格領域は、CDRを3次元空間に位置し配列する役割を果たす。
【0026】
CDRは主として抗原のエピトープへの結合に関与する。各鎖のCDRは典型的にはN−末端から開始して番号が付けられるCDR1、CDR2およびCDR3と呼ばれ、特定のCDRが位置する鎖で同定される。従って、VCDR3はそれが結合する抗体の重鎖の可変領域に位置し、一方、VCDRはそれが見出される抗体の軽鎖の可変ドメイン由来のCDR1である。
【0027】
「V」の例はFv、scFvまたなFabの重鎖を含む抗体の免疫グロブリン重鎖の可変領域である。「V」の例はFv、scFvまたなFabの軽鎖を含む免疫グロブリン軽鎖の可変領域である。
【0028】
「1本鎖Fv」または「scFv」という語句は、伝統的な2本鎖抗体の重鎖および軽鎖の可変ドメインが結合して1本鎖を形成する抗体を指す。典型的には、リンカーペプチドが2本の鎖の間に挿入され、適切な折り畳みと活性結合部位の形成が可能になる。
【0029】
「キメラ抗体」とは(a)抗原結合部位(可変領域)が異なった、または変化したクラス、エフェクター機能および/または種の不変領域、またはキメラ抗体に例えば酵素、毒素、ホルモン、成長因子、薬剤等の新しい性質を付与する全く異なった分子に結合する様に、不変領域またはその一部が変化した、または置換または交換された免疫グロブリン分子;または(b)可変領域またはその一部が変化した、または異なったまたは変化した抗原特異性を有する可変領域で置換または交換された免疫グロブリン分子である。
【0030】
「ヒト化抗体」とは非ヒト免疫グロブリン由来の最少の配列を含む免疫グロブリン分子である。ヒト化抗体には受容者の相補性決定領域(CDR)由来の残基が所望の特異性、親和性および容量を有するマウス、ラットまたはウサギ等の非ヒト種(供与者抗体)由来の残基で置換されたヒト免疫グロブリン(受容者抗体)が含まれる。ある場合は、ヒト免疫グロブリンのFv骨格領域が対応する非ヒト残基で置換されている。ヒト化抗体はまた、受容者抗体または導入CDRまたは骨格配列内に見出されない残基を有してもよい。一般にヒト化抗体は少なくとも1個、典型的には2個の可変ドメインの実質的に全てを有するが、可変領域内では骨格領域(FR)の全て、または実質的に全てがヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである。ヒト化抗体は免疫グロブリン不変領域(Fc)の少なくとも一部、典型的にはヒト免疫グロブリンの不変領域の一部を有することが最適である(Jones et al.,、Nature 321:522−525(1986);Riechman et al.,、Nature 332:323−329;およびPresta、Curr.Op.Struct.Biol.2:593−596(1992))。ヒト抗体に対しげっ歯類CDR配列(単数または複数)を置換することにより、ヒト化をWinterおよび共同研究者の方法(Jones et al.,、Nature 321:522−525(1986);Riechman et al.,、Nature 332:323−327(1988);Verhoeyen et al.,、Science 239:1534−1536(1988))に従って基本的にあらかじめ生成することができる。従って、この様なヒト化抗体はキメラ抗体であり(米国特許第4,816,567号)、実質的に少なくとも無傷のヒト可変ドメインが非ヒト種由来の対応する配列で置換されている。
【0031】
「エピトープ」または「抗原決定基」とは、抗体が結合する抗原上の部位を指す。エピトープをタンパク質の3次元折り畳みで並置された隣接アミノ酸または非隣接アミノ酸の双方から形成することができる。隣接アミノ酸で生成したエピトープは典型的には変性溶剤に晒しても保持されるが、3次元折り畳みで形成したエピトープは変性溶剤で処理すると典型的に失われる。エピトープには独自の空間配置中に少なくとも3個、通常は少なくとも5または8〜10個のアミノ酸が含まれる。エピトープの空間配置の決定法には例えばX−線結晶学および2次元核磁気共鳴が含まれる。例えば「分子生物学の方法におけるエピトープマッピングプロトコール」、第66巻、Glenn E.Morris Ed(1996)参照。エピトープマッピングの好ましい方法は表面プラズモン共鳴であり、本明細書に開示するIIAIと同じエピトープ境域を認識する好ましい肉芽化インヒビターを同定するために用いられている。
【0032】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」はアミノ酸残基のポリマーを指すために本明細書では互換的に用いられている。この用語は、少なくとも1個のアミノ酸残基が対応する天然起源アミノ酸の人工化学模倣物であるアミノ酸ポリマーの他、修飾された残基、および非天然由来のアミノ酸ポリマーにも適用される。
【0033】
用語「アミノ酸」とは天然起源アミノ酸および合成アミノ酸の他、天然起源アミノ酸と同様に機能をするアミノ酸アナログおよびアミノ酸模倣体を指す。天然起源アミノ酸は遺伝子コードでコードされるアミノ酸の他、以後に修飾されたアミノ酸、例えばヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタミン酸、およびO−ホスフォセリンである。アミノ酸アナログとは天然起源アミノ酸と同じ基本化学構造、例えば水素、アミノ基およびR基に結合したα炭素を有する化合物、例えばホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルフォキシド、メチオニンメチルスルフォニウムを指す。この様なアナログは修飾されたR基(例えばノルロイシン)または修飾されたペプチド骨格を有してもよいが、天然起源アミノ酸と同じ基本化学構造を維持している。アミノ酸模倣体とはアミノ酸の一般的な化学構造とは異なった構造を有するが、天然起源アミノ酸と類似の機能を有する化合物を指す。
【0034】
アミノ酸は本明細書では一般に知られた3文字記号、またはIUPAC−IUB生化学命名委員会が推奨する1文字記号で表される。同様にヌクレオチドも一般に受け入れられている1文字コードで表される。
【0035】
「保存的に修飾された突然変異体」はアミノ酸および核酸配列の双方に適用される。特定の核酸配列に関して、保存的に修飾された突然変異体とは、同一または基本的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸を指すか、または核酸がアミノ酸配列をコードしない場合は基本的に同一または関連する配列、例えば天然の隣接配列を指す。遺伝コードの縮退のため、多数の機能的に同一の核酸がほとんどのタンパク質をコードする。例えば、コドンGCA、GCC,GCGおよびGCUは全てアミノ酸アラニンをコードする。従って、アラニンがコドンによって指定される全ての位置で、コードされるポリペプチドを変えることなくあるコドンを対応する他のコドンに変えることができる。この様な核酸の突然変異は「沈黙突然変異」であり、保存的に修飾された変化の1種である。あるポリペプチドをコードする本明細書の核酸配列の全ては、その核酸の沈黙突然変異である。当業者はある状況では核酸中の各コドン(通常はメチオニンに対する唯一のコドンであるAUG、および通常はトリプトファンに対する唯一のコドンであるTGGを除いて)を修飾して機能的に同一の分子を生成することができることを理解し得ると思われる。従って、あるポリペプチドをコードする核酸の沈黙突然変異は、発現生成物に関して記載された配列中で暗黙に認められるものであるが、実際のプローブ配列中ではそうではない。
【0036】
アミノ酸配列に関して、コードされた配列中の単一アミノ酸またはアミノ酸のわずかな割合を変化、付加または欠失する核酸、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質配列に対する個々の置換、欠失または付加は、その変化があるアミノ酸を化学的に類似のアミノ酸で置換する結果になる場合、「保存的に修飾された突然変異体」であることを当業者は理解し得ると思われる。機能的に類似のアミノ酸を提供する保存的置換表は公知である。この様な保存的に修飾された突然変異体は本発明の多形突然変異体、種間同族体および対立遺伝子に付加されるものであり、それらを除外するものではない。典型的な相互の保存性置換は1)アラニン(A)、グリシン(G);2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);4)アルギニン(R)、リジン(K);5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);7)セリン(S)、トレオニン(T);および8)システイン(C)、メチオニン(M)である(例えばCreighton、Protein(1984)参照)。
【0037】
少なくとも2個のペプチドに関連する「同種」とは、以下に記載するデフォルトパラメーターを有するBLASTまたはBLAST2.0配列比較アルゴリズムを用いて測定される、または手動整列および目視検査による、同一であるアミノ酸残基の指定されたパーセント(すなわち、比較ウインドウまたは指定された領域にわたる最大の対応性に対して比較し整列した場合、指定した領域にわたる約60%の同一性、好ましくは70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上の同一性)を有する少なくとも2個の配列またはサブ配列を指す(例えばNCBIウエブサイトhttp://ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/等を参照)。この定義には欠失および/または付加を有する配列の他、置換を有する配列、天然起源、例えば多形または対立遺伝子突然変異体、および人工突然変異体も含まれる。以下に述べる様に、好ましいアルゴリズムはギャップ等を考慮することができる。長さで少なくとも25アミノ酸である領域にわたって同一性が存在することが好ましく、長さで50〜100アミノ酸である領域に渡って同一性が存在することがより好ましい。
【0038】
配列の比較のため、典型的にはある配列が参照配列となり、それに対して試験配列が比較される。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験および参照配列がコンピューターに入力され、必要あればサブ配列座標が指定され、配列アルゴリズムプログラムパラメーターが指定される。デフォルトプログラムパラメーターを指定することが好ましいが、別なパラメーターを指定することもできる。次いでプログラムパラメーターに基づき、参照配列と比較して配列比較アルゴリズムが試験配列に対する配列同一パーセントを計算する。
【0039】
本明細書で使用する「比較ウインドウ」には、2つの配列を最適に整列した後、ある配列が同じ数の隣接位置の参照配列と比較される、典型的には20〜600、通常は約50〜約200、さらに約100〜約150でなる群より選ばれた隣接位置の数の一つに対する参照が含まれる。比較のための配列の整列法は公知である。比較のための配列の最適整列は例えばSmith and Waterman(Adv.Appl.Math.2:482(1981))の局所相同性アルゴリズム、Needleman&Wunsch(J.Mol.Biol.48:443(1970))の相同性整列アルゴリズム、Pearson&Lipman(Proc.Nat‘l.Acad.Sci.USA 85:2444(1988))の類似性検索法、これらのアルゴリズムのコンピューター化実装(Wisconsin Genetics Software Package(Genetic Computer Group、575Science Dr.、Madison、WI)中のGAP、BESTFIT、およびFASTA)、または手動整列および目視検査(例えばCurrent Protocol in Molecular Biology(Ausubel et al.,eds.、1995、supplement))により行うことができる。
【0040】
配列同一度パーセントと配列類似性を決定するために適したアルゴリズムの好ましい例には、Altshul et al.,、Nuc.Acids Res.25:3389−3402(1977)and Altschul et al.,、J.Mol.Biol.215:403−410(1990)に記載されたBLASTおよびBLAST2.0が含まれる。本明細書に記載のパラメーターを有するBLASTおよびBLAST2.0は、本発明の核酸およびタンパク質に対する配列同一性パーセントを決定するために用いられる。BLAST解析を実行するためのソフトウエアはNationl Center for Biotechnology Information(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)から公開されている。このアルゴリズムには最初に質問配列中の長さWの短いワードを同定することによる高スコア配列対の同定が含まれ、データーベース配列中の同じ長さのワードと整列した場合、ある正の値の閾値スコアTと一致するか、それを満足する。Tは近隣ワードスコア閾値と呼ばれる(Altshulら、上記)。最初の近隣ワードヒットが、それらを含むより長いHSPの検索を開始するためのシードとなる。累積整列スコアが増加する限り、ワードヒットが各配列に沿って両方向に延長される。累積スコアは例えばヌクレオチド配列、パラメーターM(一致残基対に対する報酬スコア;常に>0)およびパラメータN(ミスマッチスコアに対する罰スコア;常に<0)を用いて計算される。アミノ酸配列に対してスコアマトリックスが累積スコアを計算するために用いられる。累積整列スコアがその達成した最大値からある量Xだけ下降した場合;少なくとも1個の負スコア残基整列の累積のため、累積スコアがゼロ以下に下がった場合;またはいずれかの配列の末端に達した場合、各方向へのワードヒットの延長を停止する。BLASTアルゴリズムパラメーターW、TおよびXは整列の感度と速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列に対する)はデフォルトとしてワード長(W)11、期待値(E)10、M=5、N=4、および2つの鎖の比較を使用する。アミノ酸配列に対して、BLASTPプログラムはデフォルトとしてワード長(W)3、期待値(E)10、およびBLOSUM62スコアマトリックス整列(B)50(Henikoff&Henikoff、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915(1989)参照)、期待値(E)10、M=5、N=4、および2つの鎖の比較を使用する。
【0041】
BLASTアルゴリズムはまた、2つの配列間の類似性の統計的解析も行う(KarlinおよびAltschul、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873−5787(1993)参照)。BLASTアルゴリズムが提供する類似性の基準は最少和確率(P(N))であり、2つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列間の一致が偶然に生じる確率の指針を提供する。例えば、試験ペプチドの参照ペプチドに対する比較における最少和確率が約0.2以下、より好ましくは約0.01以下、最も好ましくは約0.001である場合、あるペプチドが参照配列に類似であると考えられる。ログ値は例えば5、10、20、30、40、40、70、90、110、150、170等の大きな負の値である。
【0042】
「ラベル」または「検出可能成分」はスペクトロスコピー、光化学、生化学、免疫化学、化学または他の物理的手段により検出可能な成分である。例えば、有用なラベルには蛍光染料、高電子密度試薬、酵素(通常ELISAで使用される)、ビオチン、ジゴキシゲニン、またはハプテンまたは例えば放射線ラベルをペプチド中に取り込むことにより検出可能にした、またはペプチドと特異的に反応する抗体を検出するために用いられる他の成分が含まれる。例えば放射性同位体はH、14C、32P、35Sまたは125Iである。ある場合、特に抗α5β1インテグリン抗体を用いる場合は、放射性同位元素は以下に記載する様な毒性成分として用いられる。抗体の任意の位置にラベルを取り込んでもよい。抗体をラベルに結合する任意の公知の方法を用い得るが、それらにはHunter et al.,、Nature、144:945(1962);David et al.,、Biochemistry、13:1014(1974);Pain et al.,、J.Immunol.Meth.40:219(1981);およびNygren、J.Histochem.and Cytochem。30:407(1982)が含まれる。放射線標識ペプチドまたは放射線標識抗体成分の寿命を、放射線標識ペプチドまたは抗体を安定化し、分解を防止する物質を添加することにより延長し得る。放射線標識ペプチドまたは抗体を安定化する任意の物質またはその組み合わせを、米国特許第5,961,955号に記載の物質を含め使用し得る。
【0043】
例えば細胞、核酸、タンパク質、またはベクターに関して使用される用語「組み換え体」は、細胞、核酸、タンパク質またはベクターが異種核酸またはタンパク質の導入、または天然核酸またはタンパク質の変化により修飾されているか、または細胞がその様に修飾された細胞から誘導されたことを示す。従って、例えば組み換え細胞は細胞の天然(非組み換え)型内に見出されない遺伝子を発現するか、または他の場合は異常発現するか、わずかに発現するか、または全く発現しない天然遺伝子を発現する。本明細書の「組み換え核酸」という用語は、一般的に例えばポリメラーゼおよびエンドヌクレアーゼを用いる核酸の操作により、天然に通常見いだされない形で最初にインビトロで形成される核酸を意味する。この様にして、異なった配列の作動可能な結合が行われる。従って、鎖状の単離核酸、または通常は結合しないDNA分子をライゲーションしてインビトロで生成する発現ベクターの双方は、本発明の目的のための組み換え体であると考えられる。組み換え核酸が一度作成され、宿主細胞または生物中に再導入されると、その核酸は非組み換え的に、すなわちインビトロ操作でなく宿主細胞のインビボ細胞機構を用いて複製すると理解される。しかしながら、組み換えで一度製造されたこの様な核酸は非組み換え的に引き続き複製するが、本発明の目的に対しては組み換え体であると考えられる。同様に、「組み換えタンパク質」は組み換え技術を用いて上記の様な組み換え核酸の発現により製造されたタンパク質である。
【0044】
「眼組織」とは脊椎動物の眼に見出される任意の組織型、または組織型の組み合わせを指す。眼組織の例には網膜、硝子体、角膜斑および角膜組織が含まれる。「病変眼」とは本発明の肉芽化インヒビターに反応する傷付いた組織を有する眼を指す。
【0045】
「損傷または病変組織」または「傷付いた組織」とは、細胞性肉芽化を誘発するに十分な外傷を負った任意の組織を指す。「傷付いた部位」とは、細胞性肉芽化を生じる領域を指す。肉芽化を誘発するに十分な外傷は罹患組織の物理的、化学的または感染侵入の結果である。外傷は自己免疫反応等の異常な生理的な出来事、または例えばカビまたはバクテリア等の病原体の侵入で生じ得る。
【0046】
「傷」とは組織への物理的、化学的または感染傷害で生成した組織損傷の局部領域を指す。本発明の文脈では、傷が傷害部位を生成し、肉芽化を引き起こす。
【0047】
「感染」とは体部分または組織中への病原性微生物の侵入と増殖を指す。本発明の文脈では、組織の感染がそれに続く組織の障害を形成し、傷付いた組織となる。
【0048】
「肉芽化」または「細胞性肉芽化」とは、小さな赤い突起が傷または傷付いた部位の生の表面上に形成し、一般的には治癒プロセスを促進する傷治癒プロセスの部分を指す。しかしながらある場合は、肉芽化が過剰で治癒した組織を不必要に損なったり、周辺組織に損傷を与えたりすることもある。「肉芽化減少」とは過剰の肉芽化を制御または減少し、弱くなった治癒組織、または過剰の肉芽化で生じる周辺組織への損傷を最少にするプロセスである。
【0049】
有害な肉芽化とは、最初の傷の後に生じ、最初の創傷部位を越えてに組織を傷つける肉芽化を指す。有害な肉芽化は一般に創傷部位を生じる解剖学的環境の結果である。創傷部位が有害な肉芽化を受ける組織の例には、眼の角膜斑(硝子体空間)、結合組織(滑液空間)および肺胞膜(肺胞空間)等の内腔を接着する表面、またはその近くが含まれる。
【0050】
「マクロファージ挙動」とは活性化マクロファージの挙動を真似る非マクロファージ細胞型の表現型挙動を指す。マクロファージ挙動の例にはバクテリア等の細胞性および異物屑を指向する食細胞活性、およびサイトカイン等の成長およびパラクリン因子の分泌が含まれる。
【0051】
「RPE細胞挙動」とは、網膜の下に細胞層を形成し、光受容体細胞の機能を支援する網膜色素上皮細胞の表現型活性を指す。栄養を提供し老廃物を除去するために、光受容体細胞はRPEに依存する。RPE細胞の挙動には罹患した眼に傷付いた組織を形成する障害に対するRPE細胞の反応が含まれる。傷害に反応して、RPE細胞は形質変換してマクロファージ挙動を取る様に思われる。本発明の肉芽化インヒビターは、細胞がマクロファージ挙動の代わりに繊維芽細胞様の形態を取る様に導くことにより、傷に対するこのRPE細胞挙動を変化させる。
【0052】
「染色組織切片」とは、組織薄片に存在する特徴を同定し易くする少なくとも1種の染料またはラベルを染み込ませた組織の薄い薄片を指す。組織染色キットは当業者に公知であり、例えばSANYO Gallenkamp plc、Monarch Way、Belton Park,Loughborough、Leicestershire LE11 5XG等が市販されている。
【0053】
肉芽化インヒビター、結合剤、インヒビターおよび結合剤候補、およびこれらの化合物を含む組成物を傷付いた組織に様々な方法で施すことができる。本明細書で用いる「直接塗布」とは、化合物を創傷部位に直接接触させることを指す。「硝子体内注入」とは、化合物を眼の硝子体液中に注入し、化合物を創傷部位に拡散させるか、または罹患した対照の血管系を通って創傷部位に運送することを指す。「強膜注入」とは、肉芽化インヒビターを眼の強膜中に直接注入することを指す。「全身注入」とは、処置する創傷部位から離れた部位に注入することを指す。全身注入には静脈内、皮下および筋肉内注入が含まれる。「噴霧吸入」とは液状化合物を微小液滴中に分散し、次いで吸入することを指す。噴霧吸入は肺中の創傷部位の処置に特に有用であり、化合物を肺胞中に吸収し、血管系を通って離れた創傷部位に輸送する。「点眼」とは、液状化合物を罹患者の眼の外部表面に施すことを指す。
【0054】
II.始めに
本発明はユーザーが創傷部位内およびその周辺の組織肉芽化インヒビターを同定し、傷組織の治癒に伴う過剰の瘢痕形成を制限し得る方法を提供する。本発明の方法の有効性が図12に示され、25μgまたは100μgの肉芽化インヒビターの硝子体内注入で処置された網膜損創傷部位における組織形成が、緩衝液で処置された対照者と比較してほぼ5倍減少したことを示す。本発明の好ましい肉芽化インヒビターは、α5β1インテグリンに対し競合的に結合する、配列番号1〜6でなる群から選ばれたアミノ酸配列と相同であるアミノ酸配列を有する可変重鎖領域と、配列番号7〜12でなる群より選ばれたアミノ酸配列と相同であるアミノ酸配列を有する可変軽鎖領域とを有する抗体を有する複数の抗体である。より好ましくは、肉芽化インヒビターは配列番号1〜6でなる群から選ばれたアミノ酸配列と相同であるアミノ酸配列を有する可変重鎖領域(図1および2参照)と、配列番号7〜12でなる群より選ばれたアミノ酸配列と相同であるアミノ酸配列を有する可変軽鎖領域(図1および2参照)とを有する抗体である。
【0055】
本発明の肉芽化インヒビターを、本明細書に記載の様々な技術で局所的または全身に配送することができる。図13は5mg/kg(図13A)、15mg/kg(図13B)および50mg/kg(図13C)の最初の静脈内投与後の異なった時点における、肉芽化インヒビターM200(以前は「EOS200−4」と呼ばれる)の血清レベルを示す。簡単に言えば、個体に5mg/kg、15mg/kgまたは50mg/kgで静脈注入し、血清を採取し、示された日に書く投与量レベルに対するM200を調べた。
【0056】
図13D〜13Fは、各週の静脈投与で治療投与量レベルを個体中で維持することが可能であることを示している。簡単に言えば、5mg/kg、15mg/kgおよび50mg/kgを個体に毎週、静脈注射し、血清を採取し、示された日に各投与量レベルに対してM200を試験した。肉芽化インヒビターの治療レベルは、少なくとも15および50mg/kg投与で維持された。
【0057】
図14は肉芽化インヒビターM200の単核細胞α5β1インテグリンへの結合を示し、インヒビターの機能が劣化せず、血清中で活性を保っていることが確認された。簡単に言えば、先に記載した様に個体に指示された量で一回投与した。示された日に採集した全血単核細胞についてFACS測定を行った。図に示す様に、α5β1インテグリンと県連する結合部位のM200占有率は、各日の肉芽化インヒビターの血清レベルと相関する。これらの研究から、約60μlの血清肉芽化インヒビターが、血液単核細胞α5β1インテグリン結合部位を完全に飽和するに十分であることを決定することができる。
【0058】
図15は図14の結果を確認する。図15はM200結合と逆数の関係にある単核細胞α5β1インテグリンを用いる競合FACS分析であり、M200が飽和するこれらのデーターポイントでは完全にブロックされている。
【0059】
本発明の方法により同定された肉芽化インヒビターの多くが毛管膜および/または基底膜を透過し得るので、全身および直接投与に加えてこれらのインヒビターを局所投与してもよい。
【0060】
III.α5β1インテグリン結合部位および肉芽化インヒビター化合物、およびライブラリーの調製
本明細書に開示する様に、α5β1インテグリンに結合するタンパク質、特に抗体、突然変異タンパク質、核酸アプタマー、およびペプチドおよび非ペプチド低分子量有機分子は本発明の結合剤および肉芽化インヒビターとなる。結合剤を天然起源、合成または組み換え調製物、およびその組み合わせから単離し得る。
【0061】
例えば、ペプチドを“Solid Phase Peptide Synthsis”by G.Barany and R.B.Merrifield(Peptides、Vol.2,edited by E.Gross and J.Meinenhoffer、Academic Press、New York、N.Y.、p100−118、(1980))に記載の様に固相技術を用いて製造してもよい。同様に、核酸をBeaucage、S.L.&Iyer、R.P(1992)Advances in the synthesis of oligonucleotides by the phosphoramidite approach(Tetrahedron、48、2223−2311)、およびMatthes et al.,、EMBO J.3:801−805(1984)に記載の様に固相技術を用いて合成することができる。
【0062】
様々なアミノ酸模倣体または非天然アミノ酸による本発明のペプチドの修飾が、ペプチドのインビボ安定性を増加させるのに特に有用である。安定性をいくつかの方法で分析することができる。例えば、ペプチダーゼ、およびヒト血漿および結成等の様々な生物媒体が安定性試験に使用されている。例えばVerhoef et al.,、Eur.J.Drug Metab.Pharmacokin.11:291−302(1986)参照。本発明のペプチドの半減期は通常、25%(v/v)ヒト血清分析を用いて測定される。そのプロトコールは一般に以下の通りである。プールされたヒト血清(AB型、熱不活性化なし)の脂質を使用前に遠心で除去する。次いで血清をRPMI組織培養培地で25%に希釈し、ペプチド安定性試験に用いられる。所定の時間間隔で少量の反応液を取り出し、6%トリクロロ酢酸水溶液またはエタノール中に添加する。濁った反応試料を15分間冷却(4℃)し、沈殿した血清蛋白質をペレットにする。次いで安定性特異性条件を用いてペプチドの存在を逆相HPLCで測定する。公知の他のペプチド修飾にはグリコシル化およびアセチル化が含まれる。
【0063】
核酸の場合は、既存の配列を公知の組み換えDNA技術を用いて修飾することができる。例えば、Alderman et al.,、DNA、2:183(1983)に記載の様に部位指向突然変異誘発技術を用いて塩基1個の変更を行うことができる。
【0064】
または、PCR技術または適当な宿主中の発現を用いて核酸を増幅することができる(注:Sambrook et al.,、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、1989、Cold Spring Harbor Laboratory、New York、USA)。ペプチドおよびタンパク質を公知の組み換え技術を用いて、例えばMorrison、J.Bact.132:349−351(1977);and Clark−Curtis&Curtis、Method in Enzymology、101:347−362(Wu et al.,eds、1983)に記載の様に適当な宿主細胞を組み換えDNAコンストラクトで形質転換して発現してもよい。
【0065】
本発明のペプチドおよび核酸は市場でも入手し得るか、または所望の分子の構想的および/または機能的性質が与えられれば商業的に生産し得る。
【0066】
本発明はまた、ペプチドの構造を模倣する有機分子、またはビニローグペプトイドであるペプトイドペプチド模倣体を含む非ペプチド低分子量分子であるα5β1インテグリン結合剤を想定している。α5β1インテグリン結合剤として作用する非ペプチド低分子量分子および肉芽化インヒビターは、例えば一般構造(S)−2−フェニルスルフォニルアミノ−3−{{{8−(2−ピリジニルアミノメチル)−}−1−オキサ−2−アザスピロ−{4,5}−デク−2−エンイル}カルボキシアミノ}プロピオン酸;(S)−2−{(2,4,6−トリメチルフェニル)スルフォニル}アミノ−3−{7−ベンジルオキシカルボニル−8−(2−ピリジニルアミノエチル)−1−オキサ−2,7−ジアザスピロ−{4,4}−ノン−2−エン−3−イル}カルボニルアミノ}プロピオン酸(米国特許第5,760,029号参照)を有する複素環であり得る。本発明の方法に有用な別な非ペプチド低分子量有機分子であるα5β1結合剤を、例えば上記に開示された構造を有する複素環の化学修飾誘導体、または他の非ペプチド低分子量有機分子をスクリーニングすることにより同定することができる(以下を参照)。
【0067】
本発明の好ましい実施態様には、α5β1抗体、好ましくはキメラ抗体、最も好ましくはヒト化抗体である肉芽化インヒビターが含まれる。この様な抗体の製造法はすぐ下に議論される。
【0068】
A.抗体肉芽化インヒビター
抗α5β1インテグリン抗体を含む抗インテグリン抗体を製造業者、たとえばChemicon Inc(Temecula、Calif.)から購入することができるか、実質的に精製された全長インテグリン等の免疫源を用いて育成することができる。このインテグリンはヒトインテグリン、マウスインテグリンまたは天然起源から調製された、または組み換えで製造された他の哺乳動物インテグリンまたは非哺乳動物インテグリンである。または、このインテグリンはRDG結合ドメイン部分を含むインテグリンのペプチド部分、例えば合成ペプチドである。ヒトα5β1等のインテグリンの非免疫源ペプチド部分を、ウシ血清アルブミン(BSA)またはキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)等の担体分子にハプテンを結合することで、またはペプチド部分を融合タンパク質として発現することで免疫原性にすることができる。様々な他の担体分子、およびハプテンを担体分子に結合する方法は公知であり、例えばHarkowおよびLane(上記、1988)により記載されている。
【0069】
本発明の方法を実施するために特に有用な抗体は、α5β1インテグリンに特異的に結合するヒト化抗体である。この様な抗体は、それらが他のインテグリン、例えばαVβ3またはαVβ5に結合するよりも少なくとも1桁大きい親和性でα5β1インテグリンに結合する場合、特に有用である。ヒト化抗体を含むキメラ抗体の生成法を以下に詳しく説明する。
【0070】
1.組み換え抗体肉芽化インヒビターの製造
本発明の肉芽化インヒビターとして機能し得る組み換えキメラヒト化抗体を調製するために、非ヒト化抗体をコードする核酸を最初に単離しなければならない。典型的にはこれは動物、例えばマウスを調製されたα5β1インテグリン、またはそれから誘導された抗原性ペプチドで免疫処理することで行われる。典型的には1匹のマウスあたり約50マイクログラムのタンパク質抗体で2回、マウスを腹腔内免疫処理する。この様なポリペプチドを発現する任意の宿主系に関する免疫組織学または免疫細胞学、および発現ポリペプチドを用いるELISAにより、免疫処理したマウス由来の血清の抗体活性を試験することができる。免疫組織学では、本発明の活性抗体をビオチン結合抗マウス免疫グロブリン、次いでアビジン−ペルオキシダーゼおよび色素生成ペルオキシダーゼ基質を用いて同定することができる。この様な試薬の調合物は例えばZymap Corp.、San Francisco、Calif.から購入することができる。その血清が検出可能な本発明に記載の活性抗体を含むマウスを3日後に殺し、融合およびハイブリドーマ製作のために脾臓を取り出す。当業者に公知の分析、例えばウエスターンブロット分析を用いて、この様なハイブリドーマの要請の上澄み液を同定することができる。
【0071】
次いで例えばハイブリドーマmRNAまたは脾臓mRNAを重鎖および軽鎖遺伝子のPCR増幅用の鋳型として用いて、所望の抗体鎖をコードする核酸を単離することができる(Huse et al.,、Science、246:1276(1989))。抗体および細胞内抗体の双方を製造するための核酸を、この技術を用いてマウスモノクローンハイブリドーマから誘導することができる(Richardson、J.H et al.,、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、92:3137−3141(1995);Biocca、S. et al.,、Biochem and Biophys.Res.Comm.197:422−427(1993);Mhashilkar、A.M. et al.,、EMBO J.14:1542−1551(1995))。これらのハイブリドーマは、抗体構築用の特性が良く分かった試薬の信頼できる供給源を提供し、それらのエピトープ反応性および親和性の特性が分かれば特に有用である。単離された細胞から核酸の単離はClackson、T. et al.,、Nature,352:624−628(1991)(脾臓);Portolano、S. et al.,、上記;Barbas、C.F. et al.,、上記;Marks、J.D. et al.,、上記;Barbas、C.F. et al.,、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、88:7978−7982(1991)(ヒト末梢血リンパ球)にさらに議論されている。ヒト化抗体には免疫グロブリン不変領域(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンの少なくとも一部が任意に含まれる(Jones et al.,、Nature、321:522−525(1986);Riechman et al.,、Nature、332:323−329(1988);およびPresta、Curr.Op.Struct.Biol.2:593−596(1992))。
【0072】
キメラおよびヒト化組み換え抗体の双方を製造するためにいくつかの方法が報告されている。タンパク質のジスルフィド結合を通じて結合した抗体ドメインの配列の制御を利用できる(Konieczny et al.,、Haematologia、14(1):95−99(1981))。マウス抗体可変軽鎖および重鎖可変ドメイン、およびヒト抗体軽鎖および重鎖不変ドメインをコードするDNA配列間の遺伝子融合を構築するために、組み換えDNA技術を使用することもできる(Morrison et al.,、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、81(21):6851−6855(1984))。
【0073】
マウスモノクローン抗体の抗原結合部分または相補性決定領域(CDR)をコードするDNA配列を、分子的手段でヒト抗体重鎖および軽鎖の骨格をコードするDNA配列中へ移植してもよい(Jones et al.,、Nature、321(6069):522−525(1986);Riechmann et al.,、Nature、332(6162):323−327(1988))。発現した組み換え生成物は「再形成」またはヒト化抗体と呼ばれ、ヒト抗体軽鎖および重鎖、およびマウスモノクローン抗体の抗原認識部分CDRを有する。
【0074】
ヒト化抗体を製造する他の方法は米国特許第5,693,762号、5,693,761号、5,585,089号、5,639,641号、5,565,332号、5,733.743号、5,750,078号、5,502,167号、5,705,154号、5,770,403号、5,698,417号、5,693,493号、5,558,864号、4,935,496号、4,816,567号および5,530,101号に記載され、本明細書に引用して援用する。
【0075】
1本鎖抗体を製造するための技術(米国特許第4,946,778号)を、α5β1インテグリンに対する1本鎖ヒト化抗体を製造するために用いることができる。
【0076】
2.抗体肉芽化インヒビターの単離
親和性精製
血清の抗体プールのアフィニティー精製は、当業者により均一な試薬を提供する。アフィニティーカラムを作成するための抗体アフィニティーマトリックスを用いる抗体肉芽化インヒビターの濃縮法は公知であり、市販されている(AntibodyShop、c/oStatens Serum Institut、Artillerivej5、Bldg.P2、DK−2300、Copenhagen S)。簡単に言えば、抗体アフィニティーマトリックスがアフィニティー支持体に付着している(例えばCNBR Sepharose(R)、Pharmacia Biotech参照)。抗体を含む混合物をアフィニティーマトリックス上に流し、抗体を付着させる。結合した抗体を当業者に公知の技術で遊離し、濃縮抗体プールを得る。次いで濃縮抗体プールをその後の免疫研究に使用するが、そのいくつかは例として本明細書に記載されている。本発明の抗体を単離するために用いられる抗体アフィニティーマトリックスは本発明の抗α5β1抗体を特異的に任意記する様に設計されていないが、本質的にモノクローンであるシステム中で抗体が組み換えタンパク質として発現しているので、このことが抗体の精製におけるアフィニティーマトリックスの有用性を制限しない。
【0077】
pH感受性抗体精製
中性または塩基性pHでアフィニティー精製した場合、本発明の抗体結合試薬のいくつかは沈殿する傾向を示す。この問題を解決するため、図1に示す抗体を含むpH感受性抗体、およびマウス可変領域を含むか、マウス可変領域と80%以上の並列同一性を有するキメラ抗体、または図1に含まれる抗体のCDR領域と80%以上の配列同一性を有するキメラ抗体の精製法を考案した。このプロセスには抗体結合アフィニティーマトリックスを含むクロマトグラフィーカラム、例えばイオン交換カラムを用いる抗体に対するアフィニティークロマトグラフィーを行い、次いで約3.0〜5.5好ましくは約3.3〜5.5、最も好ましくは約3.5〜4.2または約4.2〜5.5のpHで抗体を溶出する工程が含まれる。この範囲内のより低いpHが小スケール精製により適しているが、約4.2以上のpHが大スケール精製により適していると考えられる。この範囲内の精製プロセス操作により、ほとんど凝集しないまたは凝集しない、最も好ましくは本質的に凝集しない製品が製造される。
【0078】
アフィニティークロマトグラフィーは、抗体または他の生物活性高分子等の物質を単離または精製するための公知の手段である。一般にこれはカラム上に固定化された抗体に特異的に結合する少なくとも1種のリガンドを含むクロマトグラフィーカラムに、抗体を含む溶液を通して行われる。この様な基はリガンド−アフィニティー反応により抗体を溶液から抽出することができる。一度これが行われると、抗体を絡むから溶出して回収し得る。
【0079】
精製プロセスには基質に結合した抗体アフィニティーマトリックスへの抗体の吸収が含まれる。様々な形の抗体アフィニティーマトリックスを使用し得る。唯一の要請は、抗体アフィニティーマトリックス分子が精製すべき抗体に結合する能力を有することである。例えば、天然起源から単離された抗体アフィニティーマトリックス、組み換えDNA技術で製造された抗体アフィニティーマトリックス、抗体アフィニティーマトリックスの修飾型、または問題の抗体への結合能を維持するこれらの材料のフラグメントを使用し得る。抗体アフィニティーマトリックスとして使用するための材料の例にはポリペプチド、ポリサッカライド、脂肪酸、脂質、核酸アプタマー、糖タンパク質、リポタンパク質、複数のタンパク質の複合体、生体膜、ウイルス、プロテインA、プロテインG、レクチンおよびFc受容体が含まれる。
【0080】
抗体アフィニティーマトリックスを一般的な相互作用(例えば非特異的イオン交換結合または疎水性/親水性相互作用により)、または特異的相互作用(例えば抗原−抗体相互作用)、またはリガンドと固相間の共有結合、または当業者に公知の任意の方法で固相または支持体に付着させる。または、中間化合物またはスペーサーを固相に付着させ、アフィニティーマトリックスをスペーサーに付着して抗体アフィニティーマトリックスを固相上に固定化することができる。スペーサー自体が遊離抗体アフィニティーマトリックスに対し特異的結合アフィニティーを有するリガンド(すなわち第2リガンド)であることも可能である。
【0081】
例えば緩衝液を用いて抗体をカラムから溶離する通常の手順を用いて、抗体を基質結合抗体アフィニティーマトリックスから溶離してもよい。沈殿を最少にするため、pH感受性抗α5β1インテグリン抗体をpH3.5で0.1Mグリシンを含む緩衝液で溶離することが好ましい。分解および/または変性を最少にするため、緩衝液の温度を10℃以下に保つことが好ましく、4℃以下がより好ましい。同じ理由で、抗体が酸性pHに晒される期間も最少にしなければならない。これは例えば所定量の塩基性溶液を溶出した抗体溶液に添加することで行われる。この塩基性溶液が緩衝液であることが好ましく、揮発性塩基性緩衝液であることがより好ましく、アンモニウム溶液が最も好ましい。
【0082】
基質結合抗体アフィニティーマトリックスから抗体の溶出を、公知の方法でモニターし得る。例えば、カラム手順を用いる場合、分画をカラムから集め、タンパク質の存在を分画の吸光度を測定して決定できる。既知の特異性を精製する場合、カラムから集められた分画中の抗体の存在を例えば放射線免疫分析(RIA)または酵素免疫分析(EIA)等の免疫分析技術で測定し得る。
【0083】
本発明のプロセスを、精製される抗体を実質的に劣化しない、または基質に結合した抗体アフィニティーマトリックスに悪影響を及ぼさない任意の便利な温度で行い得る。使用する温度が室温であることが好ましい。
【0084】
必要あれば公知の様々な方法を用いて、抗体アフィニティーマトリックスカラムから溶出した抗体を回収し得る。
【0085】
B.低分子量肉芽化インヒビター
コンビナトリアル化学ライブラリーは、化学合成または生合成により、試薬等の多数の化学「建築ブロック」を組み合わせた種々の化合物の集積である。例えば、ポリペプチドライブラリー等の線形コンビナトリアル化学ライブラリーは、ある長さ(すなわちポリペプチド化合物中のアミノ酸数)に対しできる限り可能な方法で化学建築ブロック(アミノ酸)のセットを組み合わせて作成される。化学建築ブロックのこの様なコンビナトリアル混合物により、何百万の化合物を合成することができる。
【0086】
コンビナトリアル化学ライブラリーの調製とスクリーニングは当業者に公知である。この様なコンビナトリアル化学ライブラリーにはペプチドライブラリー(例えば米国特許第5,010,175号、Furka et al.,、Int.J.Pept.Prot.Res.37:487−493(1991)、およびHoughton et al.,、Nature、354:84−88(1991)参照)が含まれるが、それに限定されない。化学多様性ライブラリーを作成するための他の化合物も使用できる。この様な化合物にはペプチド(PCT公開番号WO91/19735)、コードされたペプチド(例えばPCT公開番号WO93/20242)、ランダムバイオオリゴマー(PCT公開番号WO92/00091)、ベンゾジアゼピン(米国特許第5,288,514号)、ヒダントイン、ベンゾジアゼピンおよびジペプチド等のダイバーソマー(Hobbs et al.,、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90:6909−6913(1993))、ビニローグポリペプチド(Hagihara et al.,、J.Amer.Chem.Soc.114:6568(1992))、グルコース骨格を有する非ペプチド性ペプチド模倣体(Hirshmann et al.,、J.Am.Chem.Soc.114:9217−9218(1992))、低分子量化合物ライブラリーの類縁有機合成(Chen et al.,、J.Amer.Chem.Soc.116:2661(1994))、オリゴカルバメート(Cho et al.,、Science、261:1303(1993))、および/またはペプチジルホスフォネート(Campbell et al.,、J.Org.Chem.59:658(1994))、核酸ライブラリー(Ausubel、BergerおよびSambrook、全て上記参照)、ペプチド核酸ライブラリー(例えば米国特許第5,539,083参照)、抗体ライブラリー(例えばVaughn et al.,、Nature Biotechnology、14(3):309−314(1996)およびPCT/US96/10287)、carbohydrate libraries(例えばLiang et al.Sience,274;1520−1522(1996)and U.S.Patent5,593,853参照),低分子量有機分子ライブラリー(例えばベンゾジアゼピン、Baum C&EN、Jan 18、p33(1993);イソプレノイド、米国特許第5,569,588号;チアゾリドンおよびメタチアゾリドン、米国特許第5,549,974号;ピロリジン、米国特許第5,525,735号および第5,519,134号;モルフォリノ化合物、米国特許第5,506,337号;ベンゾジアゼピン、米国特許第5,288,514号等を参照)が含まれるが、それに限定されない。
【0087】
他のアプローチでは大きなライブラリーを作成するために組み換えバクテリオファージを使用する。「ファージ法」(ScottおよびSmith、Science、249:386−390(1990);Cwirla et al.,、Proc.Natl.Acad.Sci.87:6378−6382(1990);Devlin et al.,、Science、49:404−406(1990))を使用し、非常に大きいライブラリーを構築できる(10〜10化学種)。第2のアプローチは主として科学的方法を使用するが、その例はGeysen法(Geysen et al.,、Molecular Immunology、23:709−715(1986);Gysen et al.,、J.Immunologic.Method、102:259−274(1987))およびFodor et al.,の方法(Science、251:767−773(1991))である。Furka et al.,(14th International Congress of Biochemistry、Volume#5、AbstractFR:013(1988);Furka、Int.J.Peptide Protein Res.37:487−493(1991))、Houghton(米国特許第4,631,211号、1986年12月出願)およびRutter et al.,(米国特許第5,010,175号、1991年4月出願)は、作動剤または拮抗剤として試験し得るペプチド混合物の製造法を記載している。
【0088】
コンビナトリアルライブラリー調製用の装置は市販されている(例えば357MPS、390MPS、Advanced Chem.Tech.、Louisville KY、Symphony、Rainin、Woburn、MA、433A Applied Biosystems、Foster City、CA、9050Plus、Millipore、Bedford、MA参照)。さらに、多数のコンビナトリアルライブラリー事態が市販されている(例えばComGenex、Princeton、N.J.、Tripos、Inc.、St Louis、MO、3D Pharmaceuticals
、Exton、PA、Martek Bioscience、Columbia,MD等)。
【0089】
肉芽化インヒビターとして使用するに適した低分子量ペプチドはHorton、M.“Arg−gly−Asp(RGD)Peptides and peptidomimetics as therapeutics:relevance for renal diseases.”、Exp.Nephrol.1999、Mar−Apr;7(2)178−84;Pasqualini、R.、Koivunen、E.、Rouslahti、E.“A peptide isolatedfrom phage display libraries is a structural and functional mimic of an RGD−binding site on integrins.”、J.Cell.Biol.1995年9月、130(5):1189−96;Koivunen、E.、Wang、B.、Ruoslhati、E.“Isolation of a highly specific ligand for the alpha 5 beta 1 integrin from a phage display library.”、J.Cell Biol.1994年Feb;124(3):373−80;Ruoslahti et al.,、米国特許第6,177,542号および関連特許に議論されている。
【0090】
低分子量二重鎖RNA、またはsiRNAも本発明で検討されている。本発明のsiRNAはα5β1インテグリンサブユニットの1つの配列と同一の配列を有する。α5β1を発現する細胞に適用した場合、そのサブユニットをコードする対応するmRNA転写産物を分解させることにより、これらのsiRNAはsiRNA配列を有するα5β1インテグリンサブユニットの翻訳を阻害する。
【0091】
C.肉芽化インヒビターを単離するための一般法
肉芽化インヒビターの単離法は公知である。一般に核酸またはタンパク質の単離に適した任意の精製プロトコールを用いることができる。例えば、抗体肉芽化インヒビター単離の関係で上記の様なアフィニティー精製を、任意のα5β1インテグリン結合肉芽化インヒビターを単離するために、より一般的な意味で使用することができる。公知の様に、核酸肉芽化インヒビターをアガロースゲル電気泳動を用いて精製することもできる。カラムクロマトグラフィー技術、沈殿プロトコールおよびタンパク質および/または核酸を分離するための他の方法も使用できる(例えばScopes、Protein Purification:Principle and Practice(1982);米国特許第4,673,641号;Ausubel et al.,、上記;およびSambrook et al.,、上記;およびLeonard et al.,、J.Biol.Chem265:10373−10382(1990)参照)。
【0092】
IV.肉芽化インヒビター同定法
本発明は診断および治療肉芽化インヒビターの同定法を提供する。肉芽化インヒビター同定法の例には、制御された条件下で創傷部位に肉芽化または瘢痕組織の形成に対する効果の評価が含まれる。まず類似の創傷部位を2つの異なった対象の同じ生きた組織に形成する。創傷部位を、外科穿刺、切断、火傷、例えばレーザーによる火傷、または化学的刺激等の任意の適した方法を用いて形成することができる。スクリーニング分析に適した組織には眼、皮膚、骨、軟骨、血管、靭帯および腱が含まれる。
【0093】
一度創傷部位が形成すると、ある創傷部位(試験創傷部位)が一定投与量の肉芽化インヒビター候補で処置される。第2創傷部位(対象部位)は対照溶液、好ましくは非刺激性緩衝液または他の担体で処置される。
【0094】
肉芽化インヒビター候補が担体中で配送される場合、対照溶液は理想的には肉芽化インヒビター候補がない担体である。現在知られている肉芽化インヒビターの多くは毛細間膜を横断できるので、試験および対照創傷部位は異なった個体または離れた組織試料である必要がある。対照および試験創傷部位が同じ個体の左と右の眼にそれぞれ置かれている場合、試験部位に施された肉芽化インヒビターは個体の血管系を通って対照部位に達することができ、正しくない結果が得られる。好ましくは所定の投与計画に従い、肉芽化インヒビターが試験創傷部位に複数回投与される。投与計画は1日でもよいが、より好ましくは数週間である。
【0095】
投与計画が終了すると、試験および対照創傷部位を調べて、存在する肉芽化または廃痕のレベルを測定する。これは例えば染色および顕微鏡検査に適した組織切片を作成する(肉芽化)か、または単純に顕微鏡で検査する(廃痕)ことで行われる。顕微鏡検査および組織切片作成法は公知である。肉芽化インヒビターとして使用するに適した肉芽化インヒビター候補は、対照部位と比較して試験部位から採取した組織切片中の有意に減少した肉芽化に注目して同定される。理想的には創傷部位における肉芽化または廃痕形成は、対照創傷部位中に存在するものより少なくとも75%、より好ましくは50%、最も好ましくは30%以下の肉芽化である。必要な場合、各創傷部位に存在する肉芽化組織の面積を測定して肉芽化または廃痕形成のレベルを計算することができる。各創傷部位における2次元像を作成し、映像内に保たれる面積を計算する。この様な計算をデジタルコンピューターの助けを借りて行うことが好ましく、顕微鏡と連動したデジタルコンピューターが理想的である。廃痕で覆われた表面積を測定して廃痕組織を定量してもよい。
【0096】
実施態様例では、2頭の霊長類の眼の角膜斑に対するレーザー処置で創傷部位を誘発する。例えば網膜または角膜組織との他の眼の組織を任意に用いてもよい。隣接する解剖学的特徴に対し、各眼の創傷部位は理想的には類似の場所に置く必要がある。各創傷部位のサイズは類似している必要があり、好ましくは約25μm、より好ましくは約50μmであり、約100μmが有利であり、約200μmがより有利である。レーザーの設定は理想的には肉芽化を誘発する創傷部位を作成するに十分なだけの量である必要があり、好ましくは約200ミリワット、より好ましくは約300ミリワットであり、約450ミリワットが有利であり、約500ミリワットが寄り有利であり、理想的には約300ミリワット〜約700ミリワットの間である。この様な創傷部位を誘発するための装置は市販され、例えばIRIS Medical(商標)ポータブルスリットランプアダプターを備えたOcuLight GL(532nm)レーザーホトコアギュレーターである。
【0097】
次いで肉芽化インヒビター候補、例えば配列番号1〜6でなる群より選ばれたアミノ酸配列と相同であるアミノ酸配列を有する可変重鎖領域と、配列番号7〜12でなる群より選ばれたアミノ酸配列と相同であるアミノ酸配列を有する可変軽鎖領域とを有する抗体候補の硝子体内注入を各眼で行う。
【0098】
レーザー処置直後に最初の注入が行われる。強膜および平面部を通って、角膜縁の後方約4mmの位置に注射器の針を通す。針を水晶体の後方で硝子体中位に向け、硝子体中にゆっくりと注入する。週毎に4週間、同じ量を投与する必要がある。適当な投与量は、試験される特定の肉芽化インヒビター候補の性質に依存すると思われる。例えば、硝子体の容積を2mlとすると、眼あたりFabフラグメントを約25μg、好ましくは約50μg、より好ましくは約100μg、最も好ましくは約200μgの投与量で与える必要がある。他のインヒビター候補の投与量を決定するベースラインとして、これは1μMの肉芽化インヒビターに相当する。このベースライン値を用い、当業者は他の肉芽化インヒビター候補に対する投与量レベルを決定することができる。
【0099】
投与する場合、静脈注射、皮下注射または筋肉注射のいずれかで全身注入し得ることに注意する必要がある。肉芽化インヒビターまたは肉芽化インヒビター候補の全身注入では、投与量は約5mg/kg、好ましくは約15mg/kgであり、約50mg/kgが有利であり、約100mg/kgがより有利であり、約200mg/kgが許容し得る。噴霧吸入、点眼または経口投与で行われる投与量は、全身注入を用いて達成される量に類似の肉芽化インヒビターまたは肉芽化インヒビター候補の血液レベルを生成するに十分な量である必要がある。これらのレベルを達成するために噴霧吸入、点眼、または経口摂取で配送される肉芽化インヒビターまたは肉芽化インヒビター候補の量は、通常の試験で決定できる。抗体肉芽化インヒビターM200の全身注入では、インヒビターの治療レベルが15mg/kg配送の1週間後に血液中で検出される(図13B)。図13Eおよび13Fは、1週間間隔で15および50mg/kgのM200による繰り返し投与がM200の血漿濃度を治療レベルに保つに十分であることを示している。この発見は図14および15で確認され、これらの図は全ての試験日で血漿マクロファージのα5β1インテグリン受容体のM200による飽和(図14)と、α5β1インテグリン抗体IIA1のブロック結合(図15)を示している。
【0100】
肉芽化レベルの評価は、試験眼から採取した固定組織切片を染色して決定する。簡単に言えば、フォルマリン固定眼を瞳、視神経および角膜斑が同じ平面にあり、パラフィン中に埋没される様に水平に切り出す。全試料にわたって連続切片を作成し、一定間隔の薄片をヘムトキソリンおよびエオシンで通常通り染色する。傷を光学顕微鏡で同定し、測定し、傷、および視神経の位置を示す地図を作成する。組織学的に最も重症度の大きい傷害を示すスライド(幹部の中心領域と考えられる)上で、肉芽化組織領域をCarl Zeiss製のAxio Visionソフトウエアを用いて測定する。
【0101】
上記の実施態様を用いてサルの眼を処置して得られた結果と、より詳しくは実施例4の結果は、対象と比較して眼への投与量あたり25μgおよび100μgの肉芽化インヒビターF200(EOS200−Fとも呼ばれる)で処置した創傷部位で形成された廃痕の量が劇的に減少した(図12A参照)。
【0102】
本発明はまた、上記の定性的スクリーニング分析に基づく肉芽化インヒビターの定量分析を提供する。この肉芽化インヒビター評価法には最初に眼組織中に傷を形成し、上記の様に肉芽化インヒビターを眼組織に少なくとも1回投与する工程が含まれる。上記の技術を用いて、創傷部位における肉芽化または廃痕形成のレベルを定期的に、または処置の最後にモニターする。
【0103】
高処理能力技術
上記方法を任意のタイプの肉芽化インヒビターを同定するために使用できるが、それらは通常、既知の肉芽化インヒビターとのある関係により肉芽化インヒビターであると推定される肉芽化インヒビター候補(既知の肉芽化インヒビターと同じ化学ファミリーに属するか、またはそれとある構造または機能的特徴を共有する)のスクリーニングに最も適している。さらに、以下に議論する様に、新規肉芽化インヒビターをコンピューター、または分子モデリングとして知られるプロセスを用いて同定し得る。
【0104】
コンピューターモデリング
コンピューターモデリングにより、選ばれた分子の3次元原子構造の可視化と、その分子と相互作用すると思われる新しい化合物の合理的な設計が可能になる。3次元コンストラクトは典型的には選ばれた分子のX−線結晶解析またはNMRイメージングからのデータに依存する。分子動力学には力場のデータが必要である。コンピューターグラフィックにより、新規化合物がどの様に標的化合物と結合するかの予測を可能にし、その化合物と標的化合物を完全な結合特異性へ実験的に操作することができる。いずれか一つ、または双方に小さな変化が生じた場合、分子−化合物相互作用がどうなるかの予測には、通常はユーザーに優しく、分子設計プログラムとユーザーの間のメニュー駆動インターフェースと組み合わせた分子動力学ソフトウエアと強力な計算能力を有するコンピューターが必要である。
【0105】
上記に一般的に記載された分子モデリングシステムの一例は、Polygon Corporation、Waltham、Mass.製のCHARMmおよびQUANTAプログラムで構成される。CHARMmはエネルギー最小化と分子動力学機能を実行する。QUANTAは構築、グラフィックモデリングおよび分子構造の解析を行う。QUANTAにより相互作用構築、修飾、可視化および分子相互の挙動の解析が行われる。
【0106】
Rotivinen et al.,、Acta Pharmaceutica Fennica 97、159−166(1988);Ripka、New Scientist、54−57(Jun.16,1988);McKinalyおよびRossmann、Annu.Rev.Pharmacol.Toxicol.29、111−122(1989);PerryおよびDavies、OSAR:“Ouantitative Structure−Activity Relationships in Drug Design pp189−193(Alan R.Liss、Inc.1989);LewisおよびDean、Proc.R.Soc.London、236:125−140および141−162(1989)等の数多くの文献にタンパク質と特異的に相互作用する薬品のコンピューターモデリングがレビューされ、核酸成分に対するモデル受容体に関してAskew et al.,、J.Am.Chem.Soc.111:1082−1090(1989)にレビューされている。Askewらは、水素結合と原子積層力の双方が同時に作用する新しい分子の形を構築した。AskewらはU−型(2軸)関係が任意の2個のカルボキシル基間に存在するKempの三塩基酸(Kemp et al.,、J.Org.Chem.46:5140−5143(1981))を使用した。三塩基酸のイミド酸塩化物への変換により、アミドまたはエステル結合により実用的に使用し得る任意の芳香族表面に付加し得るアシル化剤が得られた。得られた構造は、イミド基中の原子面にほぼ平行である芳香族平面が特徴であり、水素結合と積層力が垂直方向から集中し、アデニン誘導体に相補的であるミクロ環境を提供する。
【0107】
力の場のデータの作成とX線結晶学情報がコンピューター技術より遅れているので、核酸と相互作用すると思われる化合物の設計におけるコンピューターモデリングの使用には限界があることが分かった。Mei et al.,、Proc.Natl.Acad.Sci.86:9727(1989)に報告される様に、4種のRNAの一部の3次元構造の可視化にCHARMmが使用されている。核酸とのモデリング相互作用の方法については米国特許第6,446,032号およびその中の参考文献参照。
【0108】
化合物をスクリーニングしグラフ表示する他のコンピュータープログラムはBioDesign、Inc.、Pasadena、Calif.、Allelix、Thc,Mississauga、Ontrio、CanadaおよびHypercube、Inc.、Cambridge、Ontarioから入手できる。これらは主として特定のタンパク質に特異的である薬品への応用のために設計されているが、RNA領域が同定されればその領域に特異的である薬品の設計にも用いることができる。
【0109】
スクリーニング化合物ライブラリー
既存の肉芽化インヒビターまたは分子モデリング技術のいづれから同定されても、その治療上の有用性を増進するためには一般的には肉芽化インヒビターをさらに修飾しなければならない。典型的にはこれは肉芽化インヒビターに関連する化合物、またはコア構造の周りに基づいて無秩序に合成された化合物のライブラリーを作成して行われる。肉芽化インヒビター候補の大きな、および/または広範囲のライブラリーを効率的にスクリーニングするためには、上記の分析を用いてスクリーニングされる候補化合物の数を少なくとも減少するために、高処理能力スクリーニング法が必要である。高処理能力スクリーニング法には、多数の潜在的治療用化合物(潜在的モジュレーターまたはリガンド化合物)を含むコンビナトリアル化合物またはペプチドライブラリーを準備する工程が含まれる。この様な「コンビナトリアル化合物ライブラリー」または「候補ライブラリー」を以下に述べる様に少なくとも1回の分析でスクリーニングし、肉芽化を阻害し瘢痕形成を制限し得るライブラリーメンバー(特定の化学種またはサブクラス)を同定する。この様にして同定された化合物は通常の「リード化合物」となり得るか、またはそれ自体を潜在的または実際の治療薬として使用し得る。
【0110】
ライブラリーの候補化合物は任意の低分子量化合物であるか、上記のタンパク質、糖、核酸または脂質等の生物要素であり得る。典型的には、試験化合物は低分子量化合物分子およびペプチドである。以下に議論する分析は、分析工程を自動化し、化合物を任意の便利な起源から、典型的には平行して(例えば図15に示すロボット分析におけるマイクロタイタープレート上のマイクロタイターフォーマットで)実行される分析に提供して、大きな化学ライブラリーをスクリーニングする様に設計されている。Sigma(St.Louis、MO)、Aldrich(St.Louis,MO),Sigma−Aldrich(St.Louis,MO),Fluka Chemika−Biochemica Analytica(Buchs、Switzerland)等、化合物の供給者は多数あることは理解されると思われる。
【0111】
従って、本発明は肉芽化インヒビター候補の高処理能力スクリーニング法を提供する。これらの方法の最初の工程で、肉芽化インヒビターである高い確率を有するコンビナトリアルライブラリーメンバーの効率的で迅速な同定が行われる。これらの初期工程は、肉芽化インヒビターがα5β1インテグリン結合剤であるという観察を利用する。α5β1インテグリンに特異的に結合する、結合候補と呼ばれるライブラリ0メンバーの能力を決定する任意の方法が、この初期高処理能力スクリーニングに適している。例えば、競合的および非競合的ELISA型分析を使用できる。
【0112】
競合的ELISA分析には固相に結合したα5β1インテグリンが含まれる。結合剤にα5β1インテグリンを結合させるに十分な時間後、基質を洗浄し、次いでフィブロネクチン等の既知のα5β1インテグリンリガンドを競合させる。利用可能なα5β1インテグリン結合部位の数は、フィブロネクチンが固定化α5β1インテグリンを結合する能力に正比例していると思われる。利用できるα5β1インテグリン結合部位がほとんどない場合、それは結合部位が結合候補で占有されているためである。フィブロネクチンのα5β1インテグリンへの結合を妨害し得る結合候補は、肉芽化インヒビター候補であると思われる。Harlow&Lane、Antibodies、A Laboratory Manualに記載される様に、フィブロネクチンを標識することにより結合したフィブロネクチンを測定し得る。
【0113】
非競合的分析は競合的分析で説明した同じ手順に従うが、既知のα5β1インテグリンリガンドを添加しない。結合候補の固定化α5β1インテグリンへの結合を、未結合候補を洗い流し、結合した結合候補を支持体から溶出し、溶出物を例えばマススペクトロスコピー、タンパク質検出(BradfordまたはLowry分析、または280nm吸光度測定)等で分析して測定することができる。または、支持体表面の有機層の分光学的性質の変化をモニターして結合を同定し得る。表面の分光学的性質のモニター法には吸光度、反射率、二色性、屈折率、回折、表面プラズモン共鳴、楕円偏光法、共鳴ミラー技術、格子連動導波管技術および多極性共鳴分光学等が含まれ、その全ては当業者に公知であるが、それらに限られない。
【0114】
例えばα5β1に対するKaが少なくとも10mol−1、10mol−1以上、好ましくは10mol−1以上、より好ましくは10mol−1以上、最も好ましくは10mol−1以上の許容し得る特異性でα5β1インテグリンに結合することが見出された結合候補は肉芽化インヒビター候補であり、細胞性肉芽化を阻害する能力、および廃痕組織形成を制限する能力を決定するため、上記の様にさらにスクリーニングされる。
【0115】
いくつかの公知のロボットシステムが液相化学分析のために開発されている。これらのシステムにはTakeda Chemical Industried LTD.(Osaka、Japan)で開発された自動合成装置等の自動化ワークステーション、およびロボットアームを利用する多くのロボットシステム(ZymateII、Zymark Corporation、Hopkinton、Mass;Orca、Hewlett Packard、Palo Alto、Calif.)が含まれ、これらは化学者が行う手動合成操作を模倣している。上記装置のいずれも本発明での使用に適している。本明細書で議論した様に操作しえる様な、これらの装置の改造の性質と実行(必要あれば)は当業者に公知であると考えられる。さらに、多数のコンビナトリアルライブラリー自体が市販されている(例えばComGenex、Princeton、N.J.;Asinex、Moscow、Ru.;Tripos、Inc.、St Louis、MO.;ChemStar、Ltd.、RU;3D Pharmaceuticals、Exton、PA.;Martek Biosciences、Columbia、MD.等)。
【0116】
V.治療への使用
本発明の方法を用いて処置される個体は、顕著な細胞性肉芽化の結果としての副次的な組織損傷および/または過剰廃痕形成になり易い傷を有する任意の個体である。この様な個体は例えばヒト、イヌ、ネコ、ウマ、ウシまたはヤギ等の哺乳動物、トリ、または任意の他の動物、特に商業的に重要な動物または家畜である。
【0117】
最後に、本発明は肉芽化インヒビターであるα5β1インテグリン結合剤を個体に投与することによる、個体中の肉芽化を減少または阻害する方法を提供する。肉芽化を減少することにより、本発明の方法は創傷部位に形成する廃痕組織の量を制限し、膨潤および過剰マクロファージ挙動で生じた副次的組織損傷を減少する。
【0118】
本発明の方法は、組織肉芽化をもたらし得る傷害または疾患に罹り易い任意の組織に使用するに適している。この様な組織には眼、皮膚、骨、軟骨、血管、靭帯および腱が含まれるが、それらに限定されない。本発明で処置し得る疾患にはリューマチ性関節炎、側頭動脈炎、リューマチ性多発性筋肉痛、巨大細胞動脈炎、Takayasu動脈炎、Kawasaki病、Wrgener肉芽腫症、Churg−Straussアレルギー性肉腫症および血管炎、特発性肺線維症、全身性硬化症/皮膚強化症、Sjogren症候群/病、乾燥症候群、アレルギー性肺線維症、類肉腫症、子宮前線維組織、血管腫、リンパ管腫、ケロイド廃痕形成、Goodpasteur病、Grohns病、Pagets症候群、プテリギア、正中肉芽腫、デスモイド、黄紋変性、増殖性硝子体網膜症、増殖性糖尿病性網膜症、アレルギー性肺線維症および好酸性肉芽腫が含まれるが、それらに限定されない。
【0119】
本明細書に記載の方法のある実施態様は、眼の傷害および疾患の治療特に適している。網膜色素上皮(RPE)細胞が、肉芽化を誘発するに十分な眼の傷害に反応してマクロファージ挙動と呼ばれるマクロファージ様特性を取る能力を有することが観察されている。RPE細胞のこのマクロファージ挙動は、創傷部位を取り囲む細胞の損傷を引き起こし、過剰の廃痕組織が形成されると共に、失明になり得る組織損傷を引き起こす。本発明の方法で同定される肉芽化インヒビターを用いて、RPE細胞を繊維芽細胞様挙動を取る様に導くことができる。付随するマクロファージ挙動の減少は廃痕形成、肉芽化およびその結果の組織損傷の大部分を低減する。その結果、治癒組織は肉芽化インヒビターがない場合に治癒される組織よりはるかに機能性である(図12)。
【0120】
従って、本発明は罹患眼の創傷部位をα5β1インテグリン結合剤、好ましくは肉芽化インヒビターと接触させる工程を有するRPE細胞の制御法であって、罹患した眼のRPE細胞がマクロファージ挙動を表すことを阻害する方法も提供する。
【0121】
治療用途では、肉芽化インヒビターは一般にインヒビターと薬学的に許容し得る担体を含む医薬組成物の形である。薬学的に許容し得る担体は公知であり、生理緩衝食塩水または他の緩衝液等の溶液、または溶剤、またはグリコール、グリセロール、オリーブオイル等のオイル、または注射可能有機エステル等のビヒクルが含まれる。薬学的に許容し得る担体の選択は、部分的には例えばインヒビターが抗体であるか、ペプチドまたは非ペプチドであるか、低分子量有機分子であるか等のインヒビターの化学的性質に依存する。
【0122】
薬学的に許容し得る担体には、例えば肉芽化インヒビターを安定化するかその吸収を増加する生理学的に許容し得る化合物、または必要あれば他の賦形剤が含まれてもよい。生理学的に許容し得る化合物の例にはグルコース、スクロースまたはデキストリン等の炭水化物、アスコルビン酸またはグルタチオン等の抗酸化剤、キーレート剤、低分子量タンパク質または他の安定化剤または賦形剤が含まれる。当業者は生理学的に許容し得る化合物を含む薬学的に許容し得る担体の選択は、例えば肉芽化インヒビターの投与経路、またはその特定の物理化学的特性に依存することを知っていると思われる。
【0123】
本発明の方法には他の薬剤、例えば抗生物質、殺かび剤および抗炎症剤を含むカクテル中に肉芽化インヒビターを適用することが含まれる。または、本方法は罹患した個体に肉芽化インヒビターと少なくとも1種の別な薬剤を順次投与し、治療法を最適化することも含まれる。この様な最適化された治療法では、肉芽化インヒビターを含む薬剤を任意の順番および任意の組み合わせで投与し得る。
【0124】
傷害または疾患で生じる細胞性肉芽化は、例えば糖尿病網膜症を患う個体の網膜中等の局所に生じるか、または例えばリューマチ性関節炎を患う個体で全身的に生じる。処置される組織および疾患または傷害の性質によって、当業者は肉芽化インヒビターの投与法および投与経路を選択すると考えられる。例えば、糖尿病性網膜塩を患う個体では、インヒビターを点眼剤として使用するに便利な医薬組成物に調合し、それを眼に直接投与する。対照的に、骨関節炎を患う患者では、インヒビターを静脈内、経口または薬剤を全身に配送する他の方法で投与可能な医薬組成物中で配送してもよい。従って、肉芽化インヒビターを様々な経路、例えば静脈内、経口、または処置すべき領域中に直接、例えば病状が関節を含む場合は滑液内に投与することができる。一回投与後に治療を継続させるため、本発明の肉芽化インヒビターは徐放製剤中に含まれてもよい。ある実施態様では、製剤はミクロ球体の形で調製される。ミクロ球体を、治療に必要ならば任意の別な薬剤と共に、生分解性放出制御材料による肉芽化インヒビターの均一マトリックスとして調製してもよい。ミクロ球体は浸透および/または注入に適したサイズで調整されることが好ましく、創傷部位へ全身的に、または直接注入される。
【0125】
製剤の直接塗布を受け入れ易い解剖学的位置の例には目の硝子体液が含まれ、関節内投与には膝、肘、腰、胸骨鎖骨、顎関節、手首、足根、腕、踝、および関節炎症状を起こす他の関節が含まれる。本発明で有用な製剤を投与できる滑液嚢の例には肩峰、二頭筋橈骨、肘橈骨、三角筋、膝蓋下、坐骨、および当業者に有害な肉芽化を形成することが知られている他の滑液嚢が含まれる。
【0126】
本発明の製剤は胸膜、腹膜、頭蓋骨、縦隔、心膜、滑液嚢または包、硬膜外、硬腔内、眼球内等を含むがそれに限定されない全身空間/空洞に投与するのに適している。
【0127】
徐放実施態様のいくつかには生分解性および/または徐々に溶解する高分子物質が含まれる。この様な高分子物質にはポリビニルピロリドン、低および中分子量ヒドロキシプロピルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロース、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチル澱粉、メタクリル酸カリウム−ジビニルベンゼン共重合体、ポリビニルアルコール、澱粉、澱粉誘導体、微結晶性セルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、およびセルロース誘導体、β−シクロデキストリン、ポリ(メチルビニルエーテル/マレイン酸無水物)、グルカン、シエロズルカン、マンナン、ザンタス、アルギン酸およびその誘導体、デキストリン誘導体、グリセリルモノステアリン酸、半合成グリセリド、グリセリルパルミトステアリン酸、グリセリルベヘン酸、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ステアリン酸ナトリウム、タルク、安息香酸ナトリウム、硼酸、およびコロイドシリカが含まれる。
【0128】
本発明の徐放剤には澱粉等のアジュバント、プレゲル澱粉、マンニトール燐酸カルシウム、ラクトース、蔗糖、グルコース、ソルビトール、微結晶性セルロース、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、澱粉溶液、エチルセルロース、アラビアゴム、トラガカントガム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、コロイドシリカ、ぐるセリルモノステアリン酸、水素化ヒマシ油、ワックス、およびモノ−、ビ−およびトリ置換グリセリドも含まれる。
【0129】
徐放剤はWO94/06416に一般的に記載される様に調製されてもよい。
【0130】
間質性腫瘍では、α5β1インテグリン結合剤は抗体、好ましくはIgG1抗体である。IgG1はα5β1拮抗作用に加えて、例えば補体固定、ADCCおよびT細胞動員等の別な有用な機構を動員し、これらの腫瘍の治療に有益であると思われる。
【0131】
個体に投与される肉芽化インヒビターの量は、部分的には疾患と組織損傷の程度に依存する。診断または治療過程で投与される有効量の決定法は公知であり、フェーズI、フェーズIIおよびフェーズIII臨床試験が含まれる。一般に全身投与の場合は拮抗薬を約0.01〜200mg/体重kgで投与し、創傷部位に直接投与する場合は約1μMの濃度で投与する。肉芽化インヒビターの全量をボーラスまたは吸入のいずれかで、比較的短期間で対象に1回の投与で与えることができる。または、分割処置プロトコールを用いて投与できるが、その場合は複数の投与回数でより長期間にわたって投与する。当業者は組織傷害の領域(単数または複数)へ有効量を提供するに必要な特定の肉芽化インヒビターの濃度は、対象の年齢と一般的な健康状態の他、投与経路、投与される処置部位の数、およびインヒビターが抗体、ペプチドまたは非ペプチド低分子量分子のいづれであるかを含むインヒビターの性質を含む多くの因子に依存することを等業者は知っていると考えられる。これらの因子の観点から、治療の目的で肉芽化および廃痕形成を効率よく阻害するための有効量を得る様に、当業者は特定の投与量を調節すると考えられる。
【0132】
本発明の方法で同定された肉芽化インヒビター、またはインヒビターを含むその組成物を、少なくとも部分的に過剰肉芽化および廃痕形成が特徴である任意の病状を治療するために使用することができる。当業者はインヒビターを例えば経口または非経口を含む様々な経路で投与できることを知っていると考えられ、非経口経路には静脈内、筋肉内、眼球内、関節包内、滑液内、腹腔内、大槽内、または例えば皮膚パッチまたは経皮イオン浸透を用いる受動または促進吸収が含まれる。さらに、インヒビターを座薬または局所剤を経由して注射、注入できるが、後者は例えばインヒビターを含む軟膏または粉末の直接投与による受動投与であるか、噴霧化吸入配送のための鼻スプレーまたは吸入剤を使用する能動投与である。必要あれば医薬組成物をリポソーム、ミクロ球体または他のポリマーマトリックス中に取り込むこともできる(Gregoriadis、Liposome Technology第1巻(CRC Press、Boca Raton、Fla.1984);本明細書に引用して援用する)。例えば、リン脂質または他の脂質でなるリポソームは非毒性であり、生理学的に許容され、製造と投与が比較的簡単な代謝可能な担体である。
【0133】
本明細書に引用したすべての文献と特許出願は、各文献または特許が具体的かつ個別に引用して援用されるかの様に本明細書に引用して援用する。
【0134】
先行する発明を明確性と理解のための説明と例示の手段としてある程度詳細に説明したが、ある程度の変更と修正を付随するクレームの精神と範囲から逸脱せずに行い得ることは、本発明の教示に照らして当業者に自明のことと考えられる。
【0135】
上記の開示から理解し得る様に、本発明は多様な用途を有する。従って、以下の実施例は説明の目的で提示されたものであり、本発明の制約として構成されることを意図するものではない。本質的に類似の結果を得るために変更または修正し得る様々な重要でないパラメーターを、当業者は理解すると考えられる。
【実施例】
【0136】
実施例1:マウスIIA1抗α5β1インテグリン由来のM200キメラ抗体の構築
本実施例はキメラ抗体M200の構築を説明する。
【0137】
A.IIA1および200−4VおよびVドメインの出発DNA配列
マウス抗ヒトα5β1インテグリン抗体の可変重鎖(V)および軽鎖(V)、IIA1(Pharmingen、San Diego CA)をIIA1ハイブリドーマからクローニングし、200−4抗体の初期構築の一部として配列決定した。図3はIIA1V(配列番号13)およびV(配列番号14)ドメインのcDNA配列を示す。IIA1由来の200−4マウス/ヒトキメラIgG4抗体の構築中に、沈黙XhoI制限部位(CTCGAG:配列番号29)をIIA1VおよびV双方の骨格4領域中に導入した。発現コンストラクトDEF38IIA1/ヒトG4キメラおよびNEF5IIA1/Kキメラ中に見出される、これらの沈黙XhoI部位を含む200−4V(配列番号15)およびV(配列番号17)DNA配列が図4に示される。これらの200−4VおよびV配列を、以後の全ての組み換えDNA操作の出発点として使用した。
【0138】
B.M200ミニエクソンの設計
発現プラスミドDEF38IIA1/ヒトG4キメラおよびNEF5IIA1/Kキメラ中の200−4VおよびVドメインを、イントロンの介在なしに沈黙XhoI部位を通って隣接不変ドメインに直接融合した。これらの可変ドメインをゲノムDNAに基づいて所望の抗体発現ベクターと互換性にするために、可変コード領域の3’末端で機能性ドナースプライスを生成する「ミニエクソン」を設計することが必要であった。配列の比較により、IIA1のVおよびV領域はマウスJH4およびJK1セグメントをそれぞれ利用することが明らかになったので、VおよびVドメイン中の最後のアミノ酸の後に天然マウスJH4およびJK1ドナースプライス部位を作成するためにミニエクソンを設計した。さらに、XhoI部位を除去し、最初のIIA1ハイブリドーマ中に見出された様な骨格4配列を修復した。制限部位をミニエクソンの両側面−すなわちVミニエクソンに対し5’および3’XbalI部位(TCTAGA:配列番号30)、およびVミニエクソンに対し5’MluI部位(ACGCGT:配列番号31)−に置いた。
【0139】
組み換え抗体可変ドメインは時には望ましくない別なmRNAスプライス部位を含み、交互にスプライスされたmRNA種を生じる。理論的にはこの様な部位はマウス可変ドメイン中に存在するが、キメラ不変領域由来の異種発現細胞および/または新しい受容体部位の状態でのみ活性になる。潜在性別スプライス部位を除去し、コードされたアミノ酸配列を変えないためにコドン縮退を利用することにより、子の様な望ましくない別なスプライシングを排除し得る。M200VおよびVミニエクソン中の任意の潜在性別スプライス部位を検出するため、最初の設計をTechnical University of Denmark、Center for Biological Science Analysis(hhtp://cbs.dtu.dk/service/NetGene2/)で作成したスプライス部位予測プログラムで解析した。2つの200−Mミニエクソンでは正しいドナースプライス部位が同定されたが、潜在性別スプライス部位がVミニエクソンのCDR3およびVミニエクソンのCDR1中に検出された。これらのスプライス部位が使用される可能性を除くため、ミニエクソンの設計に単一沈黙塩基対の変更を行った。Vの設計の場合は、グリシン100(Kabat番号)における沈黙GGTをGGAへ変化させ、Vの設計ではバリン29における沈黙GTAをGTCへ変化させた。双方の場合で、これらの沈黙配列変化により、V遺伝子における潜在性2次スプライスドナー信号が排除された。
【0140】
両側制限部位、マウスドナースプライス部位を含み、2004−Xholが除去され、潜在性別ドナースプライス部位が排除されたM200VおよびVミニエクソン(配列番号19、21)に対する最終設計が図5に示される。
【0141】
C.M200Vミニエクソンおよびプラスミドp200−M−Hの構築
図5Aに示すM200Vに対する設計されたミニエクソンを、200−4発現プラスミドDEF38IIA1/ヒトG4キメラを出発点として用いてPCR系突然変異誘発により構築した。簡単に言えば、200−4V領域を、200−4Vの3’末端にアに−リングし、Kozak配列およびXbaI部位を追加するプライマー#110(5’−TTTTCTAGACCACCATGGCTGTCCTGGGGCTGCTT−3’:配列番号32)と、200−4Vの3’末端にアニーリングし、XbaI部位を追加するプライマー#104(5’−TTTTCTAGAGGTTGTGAGGACTCACCTGAGGAGACGGTGACTGAGGT−3’:配列番号33)を用いてDEF38IIA1/ヒトG4キメラから増幅した。469bpPCRフラグメントをpCR4Blunt−TOPOベクター(Invitrogen)中にクローニングし、DNA配列決定で確認してプラスミドp200M−V−2.1を作成した。次いでこの中間プラスミドを第2のPCR突然変異誘発反応に使用し、CDR3中の潜在的に異常なスプライス部位を除去し、マウスJH4ドナースプライス部位をVコード領域の3‘’末端に付加した。二つの相補性プライマー#111(5’−TGGAACTTACTACGGAATGACTACGACGGGG−3’:配列番号34)および#112(5’−CCCCGTCGTAGTCATTCCGTAGTAAGTTCCA−3’:配列番号35)を設計し、M200VのCDR3中のグリシン100(Kabat番号)におけるGGTからGGAへのコドン変化を導いた。プライマー#110および#112をPCR反応に使用し、M200Vミニエクソンの5’末端から395bpフラグメントを作成し、プライマー#111および#113()による別なPCR反応によりM200Vミニエクソンの3’末端から101bpフラグメントを作成した。2つのPCR生成物を1.5%低融点アガロース上でゲル精製し、それらを合わせてプライマー#110および#113を用いる最終PCR反応中で結合した。最終456bpPCR生成物を精製し、XbalIで消化し、XbaI消化およびエビアルカリホスファターゼ処理ベクターpHuHCg4.D中にクローニングした。XbaI部位間の200−MVミニエクソンに対する正しい配列を確認し、XbaI−XbaIインサートの正しい配位を実証するため、最終プラスミドp200−M−H(図6)のDNA配列を決定した。
【0142】
D.M200Vミニエクソンおよびプラスミドp200−M−Lの構築
図5Bに示される様な設計されたミニエクソンM200Vは、出発点として200−4発現プラスミドNEF5―IIA1―Kを用いるPCR系突然変異誘発により構築された。信号配列の5’末端にアニーリングし、Kozak配列とMluI部位を追加するプライマー#101(5’−TTTACGCGTCCACCATGGATTTTCAGGTGCAGATT−3’:配列番号37)と、2004−VLの3’間単にアニーリングし、XbaI部位を追加するプライマー#102(5’−TTTTCTAGATTAGGAAAGTGCACTTACGTTTGATTTCCAGCTTGGTGCC−3’:配列番号38)を用いてVL領域をNFE5IIA1−Kから増幅した。432bpのPCRフラグメントをpCR4Blunt−TOPOベクター(Invitrogen)中にクローニングし、DNA配列決定で確認し、プラスミドp200M−VL−3.3を生成した。この中間プラスミドを第2のPCR突然変異誘発反応に使用し、CDR1中の潜在性異常スプライス部位を除去し、Vコード領域の3’末端にマウスJK1ドナースプライス部位を付加した。2つの相補プライマー#114(5’−TGCCAGTTCAAGTGTCAGTTCCAATTACTTG−3’:配列番号39)および#115(5’−CAAGTAATTGGAACTGACACTTGAACTGGCA−3’:配列番号40)を設計し、VドメインのCDR1中のバリン29(Kabat番号)にGTAからGTCへの変化を導いた。プライマー#101と#115をPCR反応に使用し、VLミニエクソンの5’末端から182bpフラグメントを作成した。プライマー#114と#116(5’−TTTTCTAGACTTTGGATTCTACTTACGTTTGATTTCCAGCTTGGTGCC−3’:配列番号41)とを用いる別なPCR反応により、Vミニエクソンの3’末端から280bpフラグメントを生成した。PCR生成物を1.5%低融点アガロース上でゲル精製し、それらを合わせ、プライマー#101および#116を用いて最終PCR反応中で結合した。431bpの最終PCR生成物を精製し、MluIおよびXbaIで消化し、MluI−およびXbaI消化軽鎖発現ベクターpHuCkappa.rgpt.dE中へクローニングした。最終プラスミドp200−M−L(図7)のDNA配列決定を行い、MluIおよびXbaI部位間のVミニエクソンに対する正しい配列を確認した。
【0143】
E.最終発現プラスミドp200−Mを作成するためのプラスミドp200−M−Hとp200−M−Lとの組み合わせ
1個のプラスミドからM200を発現するため、p200−M−Hおよびp200−M−LをEcoRIで消化し、p200−M−H由来の全IgG4重さ遺伝子を有するEcoRIフラグメントをEcoRIp200−M−L中にライゲートしプラスミドp200−M(図8)を作成した。p200−Mの内毒素フリープラスミドの大スケール調製物を内毒素フリープラスミドMaxi−prepキット(Qiagen)を用いて2.5リッターのE.coli培養から調製した。酵素BamHI、XbaIおよびFspIを用いる制限酵素マッピングによりプラスミドの構造を実証した。M200V、V、CκおよびCγ4に対する全コード領域をDNA配列決定で実証した。完全M200重鎖(配列番号23)およびM200軽鎖(配列番号24)に対するDNA配列を図9に示す。完全M200重鎖(配列番号25)およびM200軽鎖(配列番号26)に対する対応するアミノ酸配列を図10に示す。
【0144】
実施例2:M200からFabフラグメントF200の作成
本実施例はFabフラグメントF200の生成を説明する。
【0145】
Fabフラグメントを酵素消化によりM200IgG出発物質から作成する。出発IgGの緩衝液を20mM燐酸ナトリウム、20mM N−アセチルシステイン、pH7.0に交換した。可溶性パパイン酵素を加え、混合物を37℃で4時間回転させた。消化後、混合物をプロテインAカラムに通し、Fcフラグメントを除くと共に未消化IgGを除去した。テトラチオネートナトリウムを10mMで加え、室温で30分間インキュベーションした。最後にこの調製物の緩衝液を20mM燐酸ナトリウム、100mM塩化ナトリウム、pH7.4に交換し、F200溶液を得た。
【0146】
Fabフラグメントであるので、F200軽鎖DNAとアミノ酸配列はM200軽鎖と同じである。完全F200重鎖(配列番号27)およびアミノ酸配列(配列番号28)を図11に示す。
【0147】
実施例3:全身投与後の肉芽化インヒビター血清レベルの維持
本実施例は、肉芽化インヒビター血清レベルが規則的な投与レジームで維持し得ることを示す。
【0148】
各対象の投与法は、頭静脈または伏在静脈中の静脈内注入による全身配送であった。各動物に対する投与容積は最新の体重測定に基づき、50、15または5mg/kgであった。動物が霊長類椅子に拘束されている間に、シリンジ注入ポンプを用いて静脈内注入を行った。投与のために動物を麻酔しなかった。投与スケジュールはレーザー傷害の当日から初めて、週1回、4週間であった。
【0149】
【表1】

M200の静脈内投与後のCD14上のα5β1部位の飽和度を測定した。FITC結合抗CD14を用いてCD14単核細胞が同定される2色分析を用い、PE結合マウス抗ヒトIgG抗体を用いて結合M200を定量して、占有されたα5β1部位の測定を行った。平行して細胞をPEに結合したマウス抗体IIA1とインキュベーションし、IIA1結合を定量し、占有された(利用できる)α5β1部位の測定を行った。これらの2つの測定を用いて、M200によるα5β1部位の飽和度を計算した。
【0150】
以下の様な平均GMF(平均蛍光強度)を用い、結合M200の正規化GMF(GMFNorm)を決定して飽和度を計算を行った。
【0151】
GMFNormM200=(PE抗ヒトIgG4のGMF)/(対照同位体のGMF)

平均GMF値を用いる結合IIA1の正規化GMF(GMFNorm)の計算は以下の通りである。
【0152】
GMFNormIIA1=(PE−IIA1のGMF)/(対照同位体のGMF)

M200によるα5β1の占有率の計算は以下の通りである。
【0153】
M200による占有%=[(GMFNormM200−1)×100]/[(GMFNormM200−1)+(GMFNormIIA1−1)]
【0154】
結果
図3A〜3Cに示す様に、肉芽化インヒビターM200のレベルは時間と共に減少する。肉芽化インヒビターの治療レベルは5mg/kgのM200投与後168時間、15mg/kg注入の240時間後、50mg/kg投与の336時間以上後でも存在する。
【0155】
図3D〜3Fは、15mg/kgまたは50mg/kgのM200毎週投与により、有益な効果を与えるに必要な肉芽化インヒビターの最少レベルを維持するか、またはそれを超えることを示している。この結果は図2および3にまとめられるM200およびIIA1結合の研究で確認される。
【0156】
図14は血液単核細胞に対するM200肉芽化インヒビターの結合を示す。各棒グラフは付随する説明で表される様な日毎のFACS分析で測定したM200の占有率を示す。このチャートは、各投与量を与えた4日後に単核細胞α5β1インテグリン結合部位がM200で飽和していることを示す。5mg/kgの投与量では、単核細胞へのM200結合レベルが急速に消滅し、21日でのレベルは無視し得る程度であった。しかしながら、単核細胞α5β1インテグリン結合部位のM200による飽和レベルは、15mg/kgおよび50mg/kgの投与量の双方で実験期間中維持される。これらの結果は、図15に示されるIIA1のFACS分析で確認される。部位がM200で占有されていない場合のみ、IIA1は単核細胞α5β1インテグリン結合部位へ結合する。図15に示す様に、5mg/kgの投与量でIIA1の単核細胞α5β1インテグリン結合部位への結合は約14日以内にほぼ飽和レベルに増加する。このIIA1占有の増加は、単核細胞α5β1インテグリン結合部位へのM200の結合の減少の後を追うものである。IIA1結合とM200結合の間の同じパターンが15mg/kgおよび50mg/kgでも観察される。
【0157】
実施例4:肉芽化インヒビターF200による硝子体内処置後の肉芽化の減少
本実施例は肉芽化インヒビターF200によるレーザー誘発眼障害処置の効果を示す。動物モデルにおけるレーザー誘発眼障害の研究を記載する背景文献には:S.Ryan、“The Development of an Experimental Model of Subretinal Neovascularization in Disciform Macular Degeneration”、Transactions of the American Optthalmological Society、77:707−745(1979);S.J.Ryan、“Subretinal Neovascularizaion:Natural History of an Experimental Model”、Archives of Ophthalmology、100:1804−1809(1982);M.J.Tolentino et al.、“Angiography of Fluoresceinated Anti−Vascular Endothelial Growth Factor Antibody and Dextrans in Experimental Choroidal Neovascularization,”、Archieves of Ophthalmology、118:78−74(2000)が含まれる。
【0158】
以下に記す様に、本発明の細胞性肉芽化インヒビターの硝子体内注入により、サルで誘発した斑紋傷における組織肉芽化がかなり減少する。
【0159】
まとめ
以下の表2に示す様に、合計4匹のサルを処置群とした。EOS200Fは担体緩衝液中で投与したマウス抗α5β1インテグリンIgGおよびヒトIgG由来のFabフラグメントである。第1日に各動物の両眼の斑紋にレーザー処置により斑紋肉芽化を誘発した。週に1回、4週間、全ての動物に表に示す様に薬剤を投与した。投与の最初の日を第1日と定義した。標準法を用いて臨床症候、体重および他のパラメーターにつき動物を評価した。全ての動物を第32日に安楽死させた。
【0160】
【表2】

細胞性肉芽化の誘発
レーザー処理および薬剤投与の前に動物を終夜縛り付けた。レーザー処理および薬剤投与操作のため、動物をケタミンHCl(筋肉内、有効量)、続いて筋肉内ケタミンとジアゼパム(有効量)で麻酔した。
【0161】
レーザー処理により斑紋肉芽化を両眼の斑紋に誘発した。レーザー(IRIS Medial(商標)ポータブルスリットランプアダプターを備えたOcuLightGL(532nm)レーザーフォトコアギュレーター)による標準グリッドパタンで傷を斑紋中に形成した。右眼のレーザースポットを左眼に反転して照射した。レーザーパラメーターの概要は以下の通りである:スポットサイズ50〜100μm;レーザー出力300〜700ミリワット;露光時間0.1秒。各動物に対するパラメーターをレーザー処置の当日に記録した。TRC50EX網膜カメラおよび/またはデジタルCCDカメラを備えたSL−4EDスリットランプを使用して写真を撮影した。
【0162】
薬剤投与
免疫グロブリンまたは緩衝液対照品の硝子体内注入を各眼に行った。レーザー処理の直後に第1日の注入を行う。薬剤投与の前に散瞳薬(1%トロピカミド)を各眼に滴下した。眼を薄い抗菌剤溶液(5%ベタジン溶液またはその等価物)で漱ぎ、抗菌剤を0.9%滅菌食塩水(またはその等価物)で洗い流し、2滴の局所麻酔剤(プロパラカインまたはその等価物)を眼に滴下した。術中に瞼を開いたままにしておくため、瞼鏡を挿入し、球を引き抜いた。角膜の約4mm後方で強膜および平面部に注射器の針を通した。針をレンズの後方で中間硝子体に指し込んだ。薬品を硝子体中にゆっくり注入した。針を引き抜く前に注射器を取り巻く結膜を掴むため、鉗子を使用した。針を引き抜く間、および針を引き抜いた後の短時間、結膜を鉗子で保持した。次いで瞼鏡を取り除いた。薬剤投与後直ちに、眼を検眼鏡で調べて、眼に見える投与後の問題があるかどうかを検査した。
【0163】
薬剤投与の直後、および投与の1日後に、感染を防ぐため各眼に局所抗生物質(トブレックス(商標)またはその等価物)を分配した。麻酔から十分に回復してから、動物をケージに戻した。薬剤投与を上記の様に毎週行った。示されたグラム量投与レベルを各眼に与えた。使用した肉芽化インヒビターの濃度範囲は以下の通りである:各無損傷抗体を約1〜500μg/ml、好ましくは約10〜300μg/ml、より好ましくは約25〜200μg/ml、最も好ましくは約7.5〜150μg/mlの濃度で使用する。好ましいFab濃度は全抗体で挙げられた濃度と同じであり、好ましくは眼に対し2.5〜50μg/mlである。
【0164】
肉芽化阻害のモニタリング
後部チャンバーを調べるために関節検眼鏡を使用し、眼の前部セグメントを調べるために生物顕微鏡を使用した。標準法を用いて眼を評価した(Robert、B.HackettおよびT.O.McDonald、1966、Dermatotoxicology、5th Edition.Ed.By F.B.Marxulli and H.I.Maibach、Hemisphere Publishing Corp.、Washington、D.C)。
【0165】
眼の写真を撮影する(TRC−50EX網膜カメラおよび/またはデジタルCCDカメラ付きSL−4EDスリットランプ)。この処置の前に動物をケタミンHClで軽く麻酔し、数滴の散瞳薬(典型的には1%トロピァカミド)を眼に滴下して検査し易くする。
【0166】
動物を安楽死させ、眼を取り出して切開した。瞳、視神経および斑紋が同一平面になる様にフォルマリン固定眼を水平に切開し、パラフィンに埋没した。全試料にわたり連続切片を作成し、一定間隔のスライドをヘムトキソリンおよびエオシンにより定法で染色した。傷を光学顕微鏡で同定し、測定して傷、斑紋および視神経の位置を示すマップを作成した。組織学的に最も重症度の高い傷害(傷の中心領域と考えられる)を示すスライド上で、Carl Zeiss製のAxioVisionソフトウエアを用いて肉芽化組織の領域を測定した。
【0167】
これらのグループの解析は、傷における組織肉芽化を明瞭に検出した。図12に示す様に、未処置対照動物(グループ1および2)中に見出された肉芽化のレベルと比較して、処置動物の眼における肉芽化(グループ8および9)が有意に減少している。
【図面の簡単な説明】
【0168】
【図1】図1はマウス抗α5β1インテグリン抗体(IIA1)の重鎖(VH)および軽鎖(VL)、およびマウスオリジナル由来の5個のヒト化抗体(1.0〜5.0)のアミノ酸配列(配列番号1〜12)を示す。
【図2】図2はマウスオリジナル(IIA1)に対する5個のヒト化抗体中の配列置換を強調するアミノ酸配列(配列番号1〜12)の並びを示す。
【図3】図3は(A)IIA1VH核酸配列(配列番号13)およびアミノ酸配列(配列番号1);(B)IIA1VL核酸配列(配列番号14)およびアミノ酸配列(配列番号7)を示す。
【図4】図4は(A)抗体M200−4VH核酸配列(配列番号15)およびアミノ酸配列(配列番号16)、(B)抗体M200−4VL核酸配列(配列番号17)およびアミノ酸配列(配列番号18)を示す。
【図5】図5は(A)抗体M200VH核酸配列(配列番号19)およびアミノ酸配列(配列番号20)、(B)抗体M200VL核酸配列(配列番号21)およびアミノ酸配列(配列番号22)を示す。
【図6】図6はM200重鎖発現のためのp200−M−Hプラスミドコンストラクトを示す。
【図7】図7はM200軽鎖発現のためのp200−M−Lプラスミドコンストラクトを示す。
【図8】図8はM200重鎖および軽鎖発現のための単一プラスミドp200−Mを示す。
【図9】図9は完全M200重鎖および軽鎖DNA配列(配列番号23、24)を示す。
【図10】図10は完全M200重鎖および軽鎖アミノ酸配列(配列番号25、26)を示す。
【図11】図11は完全F200重鎖DNAおよびアミノ酸配列(配列番号27、28)を示す。
【図12】図12は肉芽化インヒビターF200(EOS200−Fとも呼ばれる)の不在に対する肉芽化インヒビターの存在における瘢痕形成の減少を示す。
【図13】図13A〜13Cは5、15または50mg/kg体重それぞれの1回の静脈内注射後の指示された期間中の肉芽化インヒビターM200(EOS200−4とも呼ばれる)の血清レベルを示す。図13D〜13Fは毎週5、15または50mg/kg体重それぞれのスケジュール中の指示された期間中の肉芽化インヒビターM200の血清レベルを示す。
【図14】図14は図13A〜13Cに記載の個体から採集した全血のFACS測定の結果のまとめであり、肉芽化インヒビターM200(ビヒクル=0mg・kg)による血液単核細胞α5β1インテグリン結合部位の占有率を示す。
【図15】図15は図13A〜13Cに記載の個体から採集した全血のFACS測定の結果のまとめであり、血液単核細胞α5β1インテグリン結合部位の利用可能率を示す。データは図4に示すデータで補正され、肉芽化インヒビターM200(ビヒクル=0mg/kg)を投与した個体から採集した単核細胞α5β1インテグリン結合部位へ抗α5β1抗体が結合できないことを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
罹患した眼の創傷部位をα5β1インテグリン結合剤と接触させる工程を包含するマクロファージ挙動の制御法であって、罹患した眼のRPE細胞がマクロファージ挙動を示すことを阻害する、方法。
【請求項2】
結合剤が抗α5β1インテグリン抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
抗体が配列番号1〜6からなる群より選ばれるアミノ酸配列と相同であるアミノ酸配列を有する可変重鎖領域と、配列番号7〜12からなる群より選ばれるアミノ酸配列と相同であるアミノ酸配列を有する可変軽鎖領域とを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
マクロファージ挙動が食細胞活性を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
マクロファージ挙動がサイトカイン、ケモカインまたは炎症反応のメディエーターの分泌を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
創傷部位が感染によって作られない、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
接触工程が直接適用、硝子体内注入、全身注入、噴霧吸引、点眼および経口摂取からなる群より選ばれる技術を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
α5β1インテグリン結合剤を傷害または罹患組織に適用し、それにより肉芽化を減少させる工程を包含する、傷害または罹患組織中の有害な肉芽化を減少させる方法。
【請求項9】
α5β1インテグリン結合剤が配列番号1〜6からなる群より選ばれるアミノ酸配列と相同であるアミノ酸配列を有する可変重鎖領域と、配列番号7〜12からなる群より選ばれるアミノ酸配列と相同であるアミノ酸配列を有する可変軽鎖領域とを含む抗α5β1抗体である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
組織が眼、皮膚、骨、軟骨、血管、靭帯または腱からなる群より選ばれる、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
罹患組織が眼、関節の一部、または包に関連する、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
傷害または罹患組織がケロイド形成、火傷および強皮症からなる群より選ばれる症状によって作られる、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
傷害または罹患組織が組織炎症を生じる疾患に関連している、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
疾患がリュウマチ性関節炎、Wegener肉芽腫症、Churg−Straussアレルギー性肉芽腫症、好酸球肉芽腫症、正中肉芽腫症、デスモイド、類肉腫症、黄紋変性、増殖性硝子体網膜症、増殖性糖尿病性網膜症、子宮類線維腫症、側頭筋動脈炎、およびTakayasu動脈炎からなる群より選ばれる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
疾患がCrohn病、特発性肺線維症およびアレルギー性肺線維症からなる群より選ばれる、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
適用する工程が直接適用、硝子体内注入、全身注入、噴霧吸入、点眼または経口摂取を含む技術により結合剤を組織に接触させる工程を包含する、請求項8に記載の方法。
【請求項17】
(a)肉芽化を生じるに十分な傷を眼組織中に作る工程と;
(b)眼組織にα5β1インテグリン結合剤の1回分以上の投与量を適用する工程と;
(c)適用した眼組織の傷中の肉芽化、またはその周囲の肉芽化をモニタリングする工程と、を包含するRPE細胞中でマクロファージ挙動をのインヒビターを同定する方法であって:
繊維芽細胞様細胞挙動の増加がRPE細胞中のマクロファージ挙動のインヒビターを示す、方法。
【請求項18】
眼組織が生きた霊長類の眼の一部である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
モニタリング工程が染色組織切片を検査する工程を包含する、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
眼組織が網膜、斑紋および角膜からなる群より選ばれる、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
結合剤の適用が直接適用、硝子体内注入、全身注入、噴霧吸引、点眼および経口摂取からなる群より選ばれる技術を含む、請求項17に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2007−524605(P2007−524605A)
【公表日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−509702(P2006−509702)
【出願日】平成16年4月2日(2004.4.2)
【国際出願番号】PCT/US2004/010422
【国際公開番号】WO2004/089988
【国際公開日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【出願人】(500533422)ピーディーエル バイオファーマ,インコーポレイティド (18)
【Fターム(参考)】