説明

インテグリンαvβ8中和抗体

本発明は、個体におけるTGFβ活性化を低減させるためのαvβ8アンタゴニスト、抗αvβ8抗体またはイムノコンジュゲートに関する。さらに、αvβ8アンタゴニスト、抗αvβ8抗体またはイムノコンジュゲートのうち1つを含む組成物、組成物を用いるための方法、および関連する対象物も提供する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2010年2月18日に提出された米国仮出願第61/305,749号、および2010年12月30日に提出された米国仮出願第61/428,814号の優先権を主張し、それらの開示内容はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
連邦政府の資金援助を受けた研究および開発の下で行われた発明に対する権利に関する申告
本発明は、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health)によって授与された助成金HL63993号、NS-44155号、U01 AI075443号の下で、政府の支援を受けて行われた。政府は本発明に一定の権利を有する。
【0003】
発明の背景
多機能性サイトカインであるトランスフォーミング増殖因子-β(TGF-β)は、無脊椎動物種および脊椎動物種において、発育期および成体期における免疫細胞、内皮細胞、上皮細胞および間葉細胞の生物現象に大きな役割を果たしている。哺乳動物では、これらの機能は3種のアイソフォーム、TGF-β1、2および3によって媒介され、これらはそれぞれ広範に発現される。3種のアイソフォームはすべて、同じ細胞表面受容体(TGFBR2およびALK5)と相互作用し、同じ細胞内シグナル伝達経路を通じてシグナルを伝達し、それらの経路には古典的(canonical)(すなわち、SMAD)または非古典的(すなわち、MAPK、JUN、PI3K、PP2A、Rho、PAR6)シグナル伝達エフェクターが関与する。TGF-βシグナル伝達が、TGF-β受容体装置から、細胞質SMAD-2/3のリン酸化、SMAD-4との複合体形成、SMAD-2/3/4複合体の核移行、および、線維形成反応に関与する多くの遺伝子のプロモーター領域に位置するSMAD応答エレメントとの結合を経由して伝わる古典的TGF-βシグナル伝達経路は、非常に詳細に研究されている。しかし、各アイソフォームは、類似のシグナル伝達パートナーを有するものの、おそらくはTGF-β受容体に対する結合親和性、活性化機序、シグナル伝達の強度もしくは持続時間、または空間的および/もしくは時間的分布の違いによって、個別の生物学的機能を果たす。
【0004】
TGF-βアイソフォーム、受容体およびシグナル伝達メディエーターのノックアウトモデルおよび条件欠失モデル、ならびにすべてのTGF-βアイソフォームを標的とする機能阻止試薬により、T細胞、心臓、肺、血管および口蓋の発生におけるTGF-βの必須な役割が明らかになっている。例えば、TGF-β1が欠損したマウスは、卵黄嚢血管形成の欠陥のために子宮内で死亡するか、出生して成体期まで生存するものの重篤な多臓器自己免疫を発症するかのいずれかである。TGF-βシグナル伝達メディエーターの遺伝的欠失により、初期パターン形成および中胚葉形成におけるSmad2の必須な役割が示されており、Smad3を持たないマウスは生存能力および生殖能力はあるものの、肢奇形、免疫調節異常、結腸炎、結腸癌および肺胞拡大を呈する。成体組織において、TGF-β経路は、環境ストレスに応答して、ホメオスタシスを維持するために免疫細胞、間葉細胞および上皮細胞の間の動的相互作用を調節すると考えられている。
【0005】
TGF-βによって媒介される正常なホメオスタシス経路は、慢性反復傷害に応答して擾乱を受ける。傷害の場合には、TGF-βは主な線維形成誘発性サイトカインとなり、上皮の増殖および移動を阻害することによって上皮創傷治癒を遅らせ、アポトーシスを促進し、線維芽細胞の動員、線維芽細胞の収縮性および細胞外マトリックスの付着を誘導することによって間葉性区画を拡張させる。事実、齧歯動物の肺へのアデノウイルス組換えTGF-β1の気管内移入は、気道周囲および肺間質における線維芽細胞の蓄積ならびにI型およびIII型コラーゲンの発現を顕著に増大させ、抗TGF-β中和抗体は実験的ブレオマイシンまたは放射線誘発肺線維症を阻止することができる。
【0006】
TGF-β経路の活性増大がまた、線維性肺疾患、糸球体硬化症および心血管の再狭窄と関連づけられている。TGF-β媒介性の病的変化のほとんどは、TGF-β1アイソフォームに起因するように思われる。ヒトにおけるTGF-β1機能の複雑性は、TGF-β1それ自体またはそのシグナル伝達エフェクターのいずれかの全般的または細胞型特異的な増強もしくは欠乏を伴う遺伝性疾患によって明確になる。TGF-β経路の活性を増大させる突然変異は、骨代謝(すなわち、カムラチ・エンゲルマン病)および結合組織(すなわち、マルファン症候群)の欠陥、ならびに大動脈瘤(すなわち、ロイス・ディーツ症候群)を招き、一方、TGF-β経路の活性低下を導く突然変異は、癌の発生率および予後と相関する。しかし、TGF-βはおそらくは免疫抑制、細胞浸潤、上皮-間葉移行または血管新生におけるその役割のために、腫瘍の増殖および転移も増強しうるため、癌における腫瘍抑制因子としてのTGF-βの役割は単純明快ではない。
【0007】
TGF-βに複数の必須な機能があるにもかかわらず、汎TGF-β中和抗体の単回投与または短期投与は、臓器線維症または実験的癌細胞の増殖および転移を阻害する用量では忍容性が良好であると報告されており、成体マウスおよびラットでは副作用は報告されていない。この処置は、実験的線維症を阻害する治療効果を示している。これらの有望な結果を受けて、転移性腎細胞癌、黒色腫、巣状分節性糸球体硬化症および特発性肺線維症に対して汎TGF-β中和抗体を用いる単回投与第I/II相臨床試験が実施済みであるか、または現在進行中である(Genzyme Corporation、genzymeclinicalresearch.com、最終アクセス2009年8月27日)。全身作用を最小限に抑えるためにTGF-β経路を確実に標的とすることが、非常に望ましい目標である。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、ヒトまたは非ヒトなどの個体におけるTGFβ活性化を低減させる方法であって、インテグリンαvβ8のアンタゴニストをそれを必要とする個体に投与して、それにより、その個体におけるTGFβ活性化を低減させることによる方法を対象とする。いくつかの態様において、アンタゴニストはTGFβ活性化(例えば、潜在型TGFβを切断して、それにより、成熟した活性TGFβペプチドを放出するプロテアーゼの動員)を低減させるが、TGFβに対するαvβ8の接着(例えば、細胞マトリックスに付随する潜在型TGFβに対する、細胞表面上に発現されたαvβ8の接着)を大きくは阻害しない。
【0009】
いくつかの態様において、アンタゴニストは抗体である。したがって、本発明は、活性のある成熟TGFβペプチドの放出(TGFβ活性化)を阻害するが、αvβ8発現細胞上のαvβ8に対するTGFβの接着を大きくは阻害しない、単離された抗体を提供する。いくつかの態様において、抗体はαvβ8、例えば、特にβ8と特異的に結合する。いくつかの態様において、抗体は、SEQ ID NO:11中にあるβ8上のエピトープと結合する。いくつかの態様において、エピトープは、ヒトβ8のアミノ酸I125、R128、R175、F179およびF180から選択される少なくとも1つのアミノ酸と結合する。いくつかの態様において、抗体は、ヒトβ8のアミノ酸R79、I85、S95、P100、I108、P109、R128、H140およびF179から選択される少なくとも1つのアミノ酸と結合する。いくつかの態様において、抗体は、ヒトβ8のアミノ酸I74、N88、I107、T110、I125、R175およびF180から選択される少なくとも1つのアミノ酸と結合する。いくつかの態様において、抗体はヒトβ8と結合するが、マウスβ8とは結合しない。いくつかの態様において、抗体はTGFβ活性化を低減させるが、TGFβに対するαvβ8媒介性の細胞接着を大きくは阻害しない。
【0010】
いくつかの態様において、抗体は、αvβ8に対する結合をめぐって、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6およびSEQ ID NO:7の3種の軽鎖CDRを含む軽鎖可変領域ならびにSEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10の3種の重鎖CDRを含む重鎖可変領域を有する抗体と競合する。いくつかの態様において、抗体は、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6およびSEQ ID NO:7の3種の軽鎖CDRを含む軽鎖可変領域ならびにSEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10の3種の重鎖CDRを含む重鎖可変領域を有する。例えば、いくつかの態様において、抗体は、SEQ ID NO:3または4の軽鎖可変領域およびSEQ ID NO:1または2の重鎖可変領域を有する。本発明の抗体の具体的な例には、SEQ ID NO:3の軽鎖可変領域およびSEQ ID NO:1の重鎖可変領域を有する抗体、ならびにSEQ ID NO:4の軽鎖可変領域およびSEQ ID NO:2の重鎖可変領域を有する抗体が含まれる。
【0011】
抗体は、さまざまなアイソタイプ、例えば、IgG1、IgG2、IgG2a、IgG3またはIgG4などのものであってよい。モノクローナル抗体を用いてもポリクローナル抗体を用いてもよい。いくつかの態様において、抗体はヒト抗体、ヒト化抗体またはキメラ抗体である。
【0012】
本発明はさらに、本発明の抗体をコードするのに適した、単離された核酸、1つまたは複数のベクター、および宿主細胞も提供する。
【0013】
本発明はさらに、本発明の抗体および薬学的に許容される添加剤を含む薬学的組成物に関する。いくつかの態様において、薬学的組成物は診断用であり、例えば標識化抗体を含む。いくつかの態様において、薬学的組成物は治療用である。
【0014】
いくつかの態様において、抗体は検出のため、例えば、β8の存在をインビボまたはインビトロで判定するために用いられる。そのような態様において、抗体は検出可能なモイエティーによって直接的または間接的に標識される。したがって、いくつかの態様において、本発明は、生物試料(インビトロまたはインビボ)中のインテグリンβ8の存在を判定する方法であって、生物試料を本発明による標識化抗体と接触させる段階、および標識化抗体の存在を検出して、それにより、インテグリンβ8の存在を判定する段階を含む方法を提供する。いくつかの態様において、本方法は、関節炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、線維性障害、炎症性脳自己免疫疾患、多発性硬化症、脱髄性疾患(例えば、横断性脊髄炎、デビック病、ギラン・バレー症候群)、神経炎症、腎疾患、腺癌、扁平上皮癌、神経膠腫、乳癌、ならびに癌の増殖および転移からなる群より選択される病状を診断するために用いられる。
【0015】
本発明はさらに、ヒトインテグリンβ8を発現するトランスジェニックマウスに関する。いくつかの態様において、本発明のトランスジェニックマウスは、マウスインテグリンβ8を発現しない。
【0016】
本発明の組成物および方法は、関節炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、線維性障害、炎症性脳自己免疫疾患、多発性硬化症、脱髄性疾患(例えば、横断性脊髄炎、デビック病、ギラン・バレー症候群)、神経炎症、腎疾患、腺癌、扁平上皮癌、神経膠腫、乳癌、ならびに癌の増殖および転移からなる群より選択される病状の1つまたは複数を有する個体におけるTGFβ活性化を低減させるために用いられ、ここでTGFβ低減は病状の改善をもたらす。いくつかの態様において、線維性障害は、気道線維症、特発性肺線維症、非特異的間質性肺炎、感染後肺線維症、びまん性肺胞障害、膠原血管病関連肺線維症、薬剤誘発性肺線維症、珪肺症、アスベスト関連肺線維症、呼吸細気管支炎、呼吸細気管支炎間質性肺疾患、剥離性間質性線維症、特発性器質化肺炎、慢性過敏性肺炎、薬剤関連肺線維症、腎線維症または肝線維症である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
発明の詳細な説明
序論
本発明は一部、ある種の抗αvβ8アンタゴニスト、抗αvβ8抗体またはイムノコンジュゲートが、αvβ8媒介性のTGF-β活性化を選択的に擾乱させるが、固定化したTGF-βに対するαvβ8発現細胞の細胞接着は擾乱させないという発見に基づく。したがって、本発明は、個体におけるTGFβ活性化を低減させる方法であって、αvβ8のアンタゴニスト(例えば、低分子、抗αvβ8抗体またはイムノコンジュゲート)をそれを必要とする個体に投与して、それにより、その個体におけるTGFβ活性化を低減させることによる方法を対象とする。本発明はまた、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6およびSEQ ID NO:7の3種の軽鎖CDRを含む軽鎖可変領域ならびにSEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10の3種の重鎖CDRを含む重鎖可変領域を有する抗体も提供する。
【0018】
定義
「インテグリンβ8」という用語は、itgb8、ITGB8、β8などの用語と互換的に用いられる。ITGB8は典型的には、ヒト配列のことを指して用いられ、一方、itgb8はマウス配列のことを指す。ヒトタンパク質配列はUniprotアクセッション番号P26012で見ることができ、一方、マウス配列はUniprotアクセッション番号Q0VBD0を有する。
【0019】
「アンタゴニスト」とは、本発明のポリペプチドもしくはポリヌクレオチドの発現を阻害するか、または本発明のポリペプチドもしくはポリヌクレオチドと結合する、その賦活を部分的もしくは完全に阻止する、減少させる、妨げる、活性化を遅らせる、不活性化する、感受性を低下させる、もしくはその活性をダウンレギュレートする、作用物質のことを指す。アンタゴニストは、活性を中和する(たとえば、天然リガンドによる結合および活性化を防ぐ)ことができるか、または活性を能動的に低減させることができる。
【0020】
2つまたはそれ以上の核酸またはポリペプチド配列の文脈において、「同一な」または「一致」度(percent "identity")という用語は、BLASTもしくはBLAST 2.0配列比較アルゴリズムを下記のデフォールトのパラメーターで用いての、もしくは手作業によるアラインメントおよび目視による評価で(例えば、NCBIのウェブサイトncbi.nlm.nih.gov/BLAST/などを参照)、同じであるか、または同一なアミノ酸残基もしくはヌクレオチドが指定の比率である(すなわち、比較域(comparison window)または指示された領域にわたって、最大の対応関係が得られるように比較およびアラインメントを行った場合に、指定の領域にわたる同一性が約60%、好ましくは65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上である)、2つまたはそれ以上の配列または部分配列のことを指す。そのような配列はその場合、「実質的に同一である」と言う。本発明は、例えば、SEQ ID NO:1〜10などの参照配列に対して、少なくとも80%の同一性、好ましくは85%、90%、91%、92%、93、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有するポリヌクレオチド配列またはポリペプチド配列を有する抗体を提供する。この定義はまた、被験配列の相補物のことも指すか、またはそれにも適用されうる。本定義はまた、欠失および/または付加を有する配列、さらには置換を有するものも含む。以下に述べるように、好ましいアルゴリズムはギャップなどを考慮に入れることができる。好ましくは、同一性は、少なくとも約25アミノ酸長もしくはヌクレオチド長の領域にわたって存在し、またはより好ましくは、少なくとも50〜100アミノ酸長もしくはヌクレオチド長の領域にわたって存在する。
【0021】
配列比較のためには、典型的には、1つの配列を、被験配列と比較するための参照配列として役立てる。配列比較アルゴリズムを用いる場合には、被験配列および参照配列をコンピュータに入力し、必要に応じて部分配列の座標を指定して、配列アルゴリズムプログラムのパラメーターを指定する。好ましくは、デフォールトのプログラムパラメーターを用いることができ、または別のパラメーターを指定することもできる。続いて、配列比較アルゴリズムが、プログラムのパラメーターに基づいて、参照配列を基準として被験配列の配列一致度を算出する。
【0022】
「比較域」とは、本明細書で用いる場合、ある配列を同じ数の連続した位置を持つ参照配列と、2つの配列の最適なアラインメントを行った後に比較しうるような、20〜600個、通常は約50〜約200個、より一般的には約100〜約150個からなる群より選択される数の連続した位置のうちいずれか1つのセグメントに対する言及を含む。比較のための配列のアラインメントの方法は当技術分野で周知である。比較のための配列の最適なアラインメントは、例えば、Smith & Waterman, Adv. Appl. Math. 2:482 (1981)の局所相同性アルゴリズムにより、Needleman & Wunsch, J. Mol. Biol. 48:443 (1970)の相同性アラインメントアルゴリズムにより、Pearson & Lipman, Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 85:2444 (1988)の類似性検索法により、これらのアルゴリズムのコンピュータ・インプリメンテーション(Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, WIのGAP、BESTFIT、FASTAおよびTFASTA)により、または手作業によるアラインメントおよび目視検査によって実施しうる(例えば、Current Protocols in Molecular Biology (Ausubel et al., eds. 1995 supplement)を参照)。
【0023】
配列一致度および配列類似度の決定のために適したアルゴリズムの1つには、BLASTおよびBLAST 2.0アルゴリズムがあり、これらはそれぞれAltschul et al., Nuc. Acids Res. 25:3389-3402 (1977)およびAltschul et al., J. Mol. Biol. 215:403-410 (1990)に記載されている。BLASTおよびBLAST 2.0は、本明細書に記載したパラメーターにより、本発明の核酸およびタンパク質に関する配列一致度を決定するために用いられる。BLAST解析を行うためのソフトウエアは、National Center for Biotechnology Information(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)に公開されている。このアルゴリズムは、まず、データベース配列中の同じ長さのワードとアラインメントを行った場合に何らかの正値の閾値スコアTと一致するかまたはそれを満たす、長さWの短いワードをクエリー配列中に同定することによって、高スコア配列ペア(HSP)を同定することを伴う。Tは近隣ワードスコア閾値と称される(Altschul et al., 前記)。これらの初期の近隣ワードでのヒットは、それらを含むさらに長いHSPを発見するための検索を開始するシードの役割を果たす。ワードヒットは、累積アラインメントスコアが増加する限り、各配列の両方向に対して延長される。累積スコアは、ヌクレオチド配列の場合にはパラメーターM(一致する残基対に対する報酬スコア;常に>0)およびN(ミスマッチ残基に対するペナルティスコア;常に<0)を用いて算出する。アミノ酸配列の場合には、累積スコアの算出にスコア行列を用いる。各方向へのワードヒットの延長は以下の場合に停止される:累積アラインメントスコアが最大達成値に比べて量Xより低くなった場合:1つもしくは複数の負スコアの残基アラインメントの蓄積のために累積スコアがゼロまたはそれ未満になった場合;または配列のいずれかの端に達した場合。BLASTアルゴリズムのパラメーターであるW、TおよびXはアラインメントの感度および速度を決定する。BLASTNプログラムは(ヌクレオチド配列の場合)、デフォールトとしてワード長(W)11、期待値(E)10、M=5、N=-4および両ストランドの比較を用いる。アミノ酸配列の場合、BLASTPプログラムはデフォールトとしてワード長3および期待値(E)10、ならびにBLOSUM62スコア行列(Henikoff and Henikoff, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 10915 (1989)を参照)のアラインメント(B)50、期待値(E)10、M=5、N=-4および両ストランドの比較を用いる。
【0024】
「核酸」とは、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチド、および一本鎖または二本鎖の形態にあるそれらの重合体、およびそれらの相補物のことを指す。この用語は、合成性、天然性または非天然性であって、参照核酸と同程度の結合特性を有し、かつ参照ヌクレオチドと類似の様式で代謝される、公知のヌクレオチド類似体または修飾された骨格残基もしくは結合を含む核酸を範囲に含む。そのような類似体の例には、ホスホロチオエート、ホスホロアミデート、メチルホスホネート、キラル-メチルホスホネート、2-O-メチルリボヌクレオチド、ペプチド-核酸(PNA)が非限定的に含まれる。
【0025】
別に指示する場合を除き、個々の核酸配列は、明示的に指定された配列のほかに、保存的に改変されたその変異体(例えば、縮重コドン置換物)および相補的配列も暗黙的に範囲に含む。具体的には、縮重コドン置換は、1つまたは複数の選択した(またはすべての)コドンの第3の位置が、混合塩基および/またはデオキシイノシン残基によって置換された配列を作製することによって行いうる(Batzer et al., Nucleic Acid Res. 19:5081 (1991);Ohtsuka et al., J. Biol. Chem. 260:2605-2608 (1985);Rossolini et al., Mol. Cell. Probes 8:91-98 (1994))。核酸という用語は、遺伝子、cDNA、mRNA、オリゴヌクレオチドおよびポリヌクレオチドと互換的に用いられる。
【0026】
また、個々の核酸配列は、「スプライス変異体」も暗黙的に範囲に含む。同様に、核酸によってコードされる個々のタンパク質は、その核酸のスプライス変異体によってコードされる任意のタンパク質も暗黙的に範囲に含む。「スプライス変異体」は、その名称が示唆するように、遺伝子の選択的スプライシングの産物である。転写後に、最初の核酸転写物は、異なる(代替的な)核酸スプライス産物が異なるポリペプチドをコードするようにスプライシングを受ける可能性がある。スプライス変異体の産生の機序はさまざまであるが、これにはエクソンの選択的スプライシングが含まれる。読み過ごし転写によって同一の核酸から導き出される代替的なポリペプチドも、この定義の範囲に含まれる。スプライス産物の組換え形態を含む、スプライシング反応のあらゆる産物が、この定義に含まれる。カリウムチャンネルのスプライス変異体の一例は、Leicher, et al., J. Biol. Chem. 273(52):35095-35101 (1998)に考察されている。
【0027】
「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」という用語は、本明細書において、アミノ酸残基の重合体を指す目的で互換的に用いられる。これらの用語は、天然アミノ酸重合体および非天然アミノ酸重合体のほか、1つまたは複数のアミノ酸残基が対応する天然アミノ酸の人工的な化学的模倣物であるアミノ酸重合体に対しても適用される。
【0028】
「アミノ酸」という用語は、天然アミノ酸および合成アミノ酸のほか、天然のアミノ酸と類似の様式で機能するアミノ酸類似体およびアミノ酸模倣物のことも指す。天然のアミノ酸とは、遺伝暗号によってコードされるもののほか、その後に修飾されたアミノ酸、例えばヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタミン酸およびO-ホスホセリンなどのこともいう。アミノ酸類似体とは、天然アミノ酸と同じ基本的な化学構造、すなわち、水素、カルボキシル基、アミノ基およびR基と結合したα炭素を有する化合物、例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムなどのことを指す。そのような類似体は、修飾されたR基(例えば、ノルロイシン)または修飾されたペプチド骨格を有するが、天然アミノ酸と同じ基本的な化学構造を保っている。アミノ酸模倣物とは、アミノ酸の一般的な化学構造とは異なる構造を有するものの、天然アミノ酸と類似の様式で機能する化合物のことを指す。
【0029】
本明細書ではアミノ酸を、一般的に知られた三文字記号、またはIUPAC-IUBの生化学物質命名委員会(Biochemical Nomenclature Commission)が推奨している一文字記号のいずれかによって参照する。ヌクレオチドも同じく、一般的に認められている一文字記号によって参照する。
【0030】
「保存的に改変された変異体」は、アミノ酸配列および核酸配列の両方に対して適用される。個々の核酸配列に関して、保存的に改変された変異体とは、同一もしくは本質的に同一なアミノ酸配列をコードする核酸のことを指し、または、核酸がアミノ酸配列をコードしない場合には本質的に同一な配列のことを指す。遺伝暗号の縮重性のために、多数の機能的に同一な核酸が、任意の所与のタンパク質をコードする。例えば、コドンGCA、GCC、GCGおよびGCUはすべて、アミノ酸アラニンをコードする。このため、コドンによってアラニンが指定されるあらゆる位置で、コードされるポリペプチドを変化させずに、そのコドンを対応する上記のコドンのいずれかに変更することができる。そのような核酸変種は「サイレント変種(silent variation)」であり、保存的に改変された変種の一種である。あるポリペプチドをコードする本明細書中のあらゆる核酸配列は、その核酸のあらゆる可能なサイレント変種についても述べている。当業者は、核酸中の各コドン(通常はメチオニンに対する唯一のコドンであるAUG、および通常はトリプトファンに対する唯一のコドンであるTGGを除く)を改変して、機能的に同一な分子を得ることができることを認識しているであろう。したがって、あるポリペプチドをコードする核酸の各サイレント変種は、発現産物に関しては、記載された各配列の中に暗黙的に含まれるが、実際のプローブ配列に関してはそうではない。
【0031】
アミノ酸配列に関して、当業者は、コードされる配列中の単一のアミノ酸または低比率のアミノ酸を改変、付加または欠失させる、核酸、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質の配列に対する個々の置換物、欠失物または付加物が、その改変によってあるアミノ酸の化学的に類似したアミノ酸による置換がもたらされる「保存的に改変された変異体」であることを認識しているであろう。機能的に類似したアミノ酸を提示している保存的置換の表は当技術分野において周知である。そのような保存的に改変された変異体は、本発明の多型変異体、種間相同体およびアレルに追加されるものであり、それらを除外しない。
【0032】
以下の8つの群はそれぞれ、互いに保存的置換物であるアミノ酸を含む:1)アラニン(A)、グリシン(G);2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);4)アルギニン(R)、リジン(K);5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);7)セリン(S)、トレオニン(T);および8)システイン(C)、メチオニン(M)(例えば、Creighton, Proteins (1984)を参照)。
【0033】
「標識」または「検出可能なモイエティー」とは、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、化学的または他の物理的な手段によって検出可能な組成物のことである。例えば、有用な標識には、32P、蛍光色素、高電子密度試薬、酵素(例えば、ELISAに一般的に用いられるもの)、ビオチン、ジゴキシゲニン、または、例えば放射性標識をペプチドに組み入れることによって検出可能となる、もしくはペプチドと特異的に反応する抗体を検出するために用いうる、ハプテンおよびタンパク質が含まれる。
【0034】
「組換え」という用語は、例えば、細胞、または核酸、タンパク質、またはベクターに言及して用いられる場合、その細胞、核酸、タンパク質またはベクターが、異種核酸もしくはタンパク質の導入またはネイティブ性の核酸もしくはタンパク質の変更によって改変されていること、または細胞がそのように改変された細胞に由来することを指し示している。したがって、例えば、組換え細胞は、ネイティブ(非組換え)型の細胞には見いだされない遺伝子を発現するか、または通常であれば異常に発現される、低発現されるもしくは全く発現されないネイティブ性遺伝子を発現する。
【0035】
「異種」という用語は、核酸の部分に言及して用いられる場合、核酸が、自然下では互いに同じ関係では認められない2つまたはそれ以上の部分配列を含むことを指し示している。例えば、核酸は典型的には組換え法によって産生され、1つの源からのプロモーターおよび別の源からのコード領域というような関連のない遺伝子に由来する2つまたはそれ以上の配列が配置されて、新たな機能的核酸が作製される。同様に、異種タンパク質とは、そのタンパク質が、自然下では互いに同じ関係では認められない2つまたはそれ以上の部分配列を含むことを指し示している(例えば、融合タンパク質)。
【0036】
「抗体」とは、抗原と特異的に結合してそれを認識する、免疫グロブリン遺伝子由来のフレームワーク領域またはその断片を含むポリペプチドのことを指す。認知されている免疫グロブリン遺伝子には、κ、λ、α、γ、δ、εおよびμ定常領域遺伝子のほか、多数の免疫グロブリン可変領域遺伝子が含まれる。軽鎖はκまたはλとして分類される。重鎖はγ、μ、α、δまたはεに分類され、それらはひいては、それぞれIgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEという免疫グロブリンのクラスを定義する。典型的には、抗体の抗原結合領域が、結合の特異性および親和性には最も決定的に重要である。
【0037】
抗体は抗原上のエピトープと結合する。エピトープは抗原上の特異的な抗体結合相互作用部位であり、5〜6個のアミノ酸といった少数のアミノ酸、もしくは少数のアミノ酸の複数の部分、またはそれ以上の、例えば20個もしくはそれ以上のアミノ酸、またはそのようなアミノ酸の複数の部分を含みうる。場合によっては、エピトープは、糖質、核酸または脂質などに由来する非タンパク質性構成要素を含む。場合によっては、エピトープは三次元モイエティーである。すなわち、例えば、標的がタンパク質である場合、エピトープは、連続したアミノ酸、またはタンパク質フォールディングによって近接するようになったタンパク質の複数の異なる部分のアミノ酸(例えば、不連続エピトープ)で構成されうる。同じことが、三次元構造を形成する他の種類の標的分子にも言える。
【0038】
例示的な免疫グロブリン(抗体)の構造単位は四量体で構成される。各四量体は2つの同一なポリペプチド鎖の対で構成され、それぞれの対は1つの「軽鎖」(約25kDa)および1つの「重鎖」(約50〜70kDa)を有する。各鎖のN末端には、抗原認識を主に担う約100〜110アミノ酸またはそれ以上のアミノ酸からなる可変領域がある。可変軽鎖(VL)および可変重鎖(VH)という用語はそれぞれ、これらの軽鎖および重鎖のことを指す。
【0039】
抗体は、完全な免疫グロブリン、またはさまざまなペプチダーゼによる消化によって生じる、詳細に特徴づけられているいくつかの断片などとして存在する。すなわち、例えば、ペプシンは抗体をヒンジ領域のジスルフィド結合の下方で消化し、軽鎖がジスルフィド結合によってVH-CH1と連結したものであるFabの二量体、F(ab)'2を生成する。ヒンジ領域のジスルフィド結合を切断するためにF(ab)'2を穏和な条件下で還元し、それによってF(ab)'2二量体をFab'単量体に変換することもできる。Fab'単量体は本質的にはヒンジ領域の一部を伴うFabである(Fundamental Immunology (Paul ed., 3d ed. 1993)を参照)。さまざまな抗体断片が完全抗体の消化の点から定義されているが、当業者は、そのような断片を化学的に、または組換えDNA法を用いることによってデノボ合成しうることを理解するであろう。したがって、抗体という用語には、本明細書で用いる場合、抗体全体の修飾によって生成された抗体断片、または組換えDNA法を用いてデノボ合成されたもの(例えば、単鎖Fv)、またはファージディスプレイライブラリーを用いて同定されたものも含まれる(例えば、McCafferty et al , Nature 348:552-554 (1990)を参照)。
【0040】
本発明の、および本発明による使用のための適した抗体、例えば組換え抗体、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体などの調製には、当技術分野において公知の多くの手法を用いることができる(例えば、Kohler & Milstein, Nature 256:495-497 (1975);Kozbor et al., Immunology Today 4: 72 (1983);Cole et al , pp. 77-96 in Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, Inc. (1985);Coligan, Current Protocols in Immunology (1991);Harlow & Lane, Antibodies, A Laboratory Manual (1988);およびGoding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice (2d ed. 1986)を参照)。関心対象の抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子を細胞からクローニングし、例えば、モノクローナル抗体をコードする遺伝子をハイブリドーマからクローニングして、組換えモノクローナル抗体を作製するために用いることができる。モノクローナル抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子ライブラリーを、ハイブリドーマまたは形質細胞から作製することもできる。重鎖および軽鎖の遺伝子産物のランダムな組み合わせにより、種々の抗原特異性を有する抗体の大規模なプールが生じる(例えば、Kuby, Immunology (3rd ed. 1997)を参照)。単鎖抗体または組換え抗体の作製のための手法(米国特許第4,946,778号、米国特許第4,816,567号)を、本発明のポリペプチドに対する抗体を作製するために応用することができる。また、トランスジェニックマウスまたは他の哺乳動物などの他の生物を、ヒト化抗体またはヒト抗体を発現させるために用いることもできる(例えば、米国特許第5,545,807号;第5,545,806号;第5,569,825号;第5,625,126号;第5,633,425号;第5,661,016号、Marks et al., Bio/Technology 10:779-783 (1992);Lonberg et al., Nature 368:856-859 (1994);Morrison, Nature 368:812-13 (1994);Fishwild et al., Nature Biotechnology 14:845-51 (1996);Neuberger, Nature Biotechnology 14:826 (1996);およびLonberg & Huszar, Intern. Rev. Immunol. 13:65-93 (1995)を参照)。または、ファージディスプレイ技術を用いて、選択した抗原と特異的に結合する抗体およびヘテロマーFab断片を同定することもできる(例えば、McCafferty et al., Nature 348:552-554 (1990);Marks et ah , Biotechnology 10:779-783 (1992)を参照)。抗体を二重特異性のあるもの、すなわち、2つの異なる抗原を認識しうるものとして作製することもできる(例えば、WO 93/08829号、Traunecker et al., EMBO J. 10:3655-3659 (1991);およびSuresh et al., Methods in Enzymology 121:210 (1986)を参照)。抗体が、ヘテロコンジュゲート、例えば共有結合性に連結された2つの抗体、またはイムノトキシンであってもよい(例えば、米国特許第4,676,980号、WO 91/00360号;WO 92/200373号;およびEP 03089号を参照)。
【0041】
非ヒト抗体のヒト化または霊長類化のための方法は当技術分野において周知である。一般に、ヒト化抗体は、ヒト以外の源からその中に導入された1つまたは複数のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒト性アミノ酸残基はしばしばインポート残基と称され、これらは典型的にはインポート可変ドメインから採られる。ヒト化は、本質的にはWinterらの方法(例えば、Jones et al., Nature 321:522-525 (1986);Riechmann et al., Nature 332:323-327 (1988);Verhoeyen et al., Science 239: 1534-1536 (1988)、およびPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596 (1992))に従って、齧歯類のCDRまたはCDR配列を、ヒト抗体の対応する配列の代わりに用いることによって行うことができる。したがって、そのようなヒト化抗体は、実質的に少ない無傷のヒト可変ドメインが、非ヒト種由来の対応する配列によって置換されたキメラ抗体である(米国特許第4,816,567号)。実際には、ヒト化抗体は、典型的には、いくつかのCDR残基およびおそらくはいくつかのFR残基が、齧歯類抗体における類似部位由来の残基によって置換されたヒト抗体である。
【0042】
「キメラ抗体」とは、(a)抗原結合部位(可変領域)が、クラス、エフェクター機能および/もしくは種の異なるもしくは改変された定常領域と、またはキメラ抗体に新たな特性を付与する全く異なる分子、例えば酵素、毒素、ホルモン、増殖因子、薬物などと連結するように、定常領域もしくはその一部分が改変、置換もしくは交換されている;または(b)可変領域もしくはその一部分が、異なるもしくは改変された抗原特異性を有する可変領域によって改変、置換もしくは交換されている、免疫グロブリン分子のことである。本発明の、および本発明による使用のために好ましい抗体には、ヒト化および/またはキメラ性モノクローナル抗体が含まれる。
【0043】
1つの態様において、抗体は、「エフェクター」モイエティーとコンジュゲートしている。エフェクターモイエティーは、放射性標識もしくは蛍光標識などの標識モイエティーを含むさまざまな分子であってよく、または治療用モイエティーであってもよい。1つの局面において、抗体はタンパク質の活性をモジュレートする。そのようなエフェクターモイエティーには、抗腫瘍薬、毒素、放射性物質、サイトカイン、第2の抗体または酵素が非限定的に含まれる。さらに、本発明は、本発明の抗体が、プロドラッグを細胞傷害性薬剤に変換する酵素と連結されている態様も提供する。
【0044】
イムノコンジュゲートは、エフェクターモイエティーをαvβ8陽性細胞、特にαvβ8を発現する細胞に対して標的化するために用いることができる。そのような差異は、被験試料および対照試料をほぼ同程度にローディングしたゲルのバンドを観察すると容易に明らかにすることができる。細胞傷害性薬剤の例には、リシン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、タキソール、臭化エチジウム、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ジヒドロキシアントラシンジオン、アクチノマイシンD、ジフテリア毒素、緑膿菌外毒素(PE)A、PE40、アブリン、およびグルココルチコイド、ならびに他の化学療法薬、さらには放射性同位体が非限定的に含まれる。適した検出マーカーには、放射性同位体、蛍光性化合物、化学発光性化合物、生物発光性化合物、金属キレート剤または酵素が非限定的に含まれる。
【0045】
いくつかの態様において、本発明は、αvβ8に対する抗体を提供する。抗αvβ8抗体は、個体におけるTGFβ活性化を低減させるために、単独で、または検出可能な標識もしくはエフェクターモイエティーとコンジュゲートさせた上で、全身性に用いることができる。リシンなどの毒性物質とコンジュゲートさせた抗αvβ8抗体も、コンジュゲートさせていない抗体も、有用な治療用物質となりうる。
【0046】
さらに、本発明のモノクローナル抗体のいずれかの抗原結合領域を含む本発明の組換えタンパク質を、癌の検出または治療のために用いることもできる。そのような状況では、組換えタンパク質の抗原結合領域を、治療活性を有する第2のタンパク質の少なくとも機能的活性部分とつなぎ合わせる。第2のタンパク質には、酵素、リンホカイン、オンコスタチンまたは毒素が非限定的に含まれうる。適した毒素には、ドキソルビシン、リシン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、タキソール、臭化エチジウム、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ジヒドロキシアントラシンジオン、アクチノマイシンD、ジフテリア毒素、緑膿菌外毒素(PE)A、PE40、リシン、アブリン、グルココルチコイドおよび放射性同位体が含まれる。
【0047】
「標識」または「検出可能なモイエティー」とは、分光学的、放射線学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、化学的または他の物理的手段によって検出可能な診断用物質または構成要素のことである。例示的な標識には、放射性標識(例えば、111In、99mTc、131I、67Ga)およびFDAが承認した他の造影剤が含まれる。そのほかの標識には、32P、蛍光色素、高電子密度試薬、酵素、ビオチン、ジゴキシゲニン、または、例えば放射性標識を標的化物質に組み入れることによって検出可能となる、ハプテンおよびタンパク質もしくは他の実体が含まれる。例えば、Hermanson, Bioconjugate Techniques 1996, Academic Press, Inc., San Diegoを用いるといった、核酸またはナノキャリアを標識とコンジュゲートさせるための当技術分野において公知の任意の方法を使用することができる。
【0048】
「標識化」または「タグ標識化」抗体または作用物質とは、抗体または作用物質と結合した標識の存在を検出することによって抗体または作用物質の存在を検出しうるように、標識と、リンカーもしくは化学結合によって共有結合性に、またはイオン結合、ファンデルワールス結合、静電結合もしくは水素結合によって非共有結合性に結合させたもののことを指す。
【0049】
検出可能な作用物質および治療用物質を抗体とコンジュゲートさせるための手法は周知である(例えば、Arnon et al., "Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy", in Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy, Reisfeld et al. (eds.), pp. 243-56 (Alan R. Liss, Inc. 1985);Hellstrom et al., "Antibodies For Drug Delivery"in Controlled Drug Delivery (2nd Ed.), Robinson et al. (eds.), pp. 623-53 (Marcel Dekker, Inc. 1987);Thorpe, "Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy: A Review" in Monoclonal Antibodies '84: Biological And Clinical Applications, Pinchera et al. (eds.), pp. 475-506 (1985);およびThorpe et al., "The Preparation And Cytotoxic Properties Of Antibody-Toxin Conjugates", Immunol. Rev., 62:1 19-58 (1982)を参照)。
【0050】
抗体と「特異的に(または選択的に)結合する」、または「特異的に(または選択的に)免疫反応性である」という語句は、タンパク質またはペプチドに言及する場合、多くの場合はタンパク質または他の生体物質の不均一集団内に、そのタンパク質が存在することの決定要因となる結合反応のことを指す。すなわち、指示されたイムノアッセイ条件下で、指定の抗体は特定のタンパク質とバックグラウンドの少なくとも2倍、より典型的には10〜100倍結合する。そのような条件下での抗体に対する特異的結合には、特定のタンパク質に対する特異性の点から選択された抗体が必要である。例えば、選択した抗原に対して特異的に免疫反応性であり、他のタンパク質に対してはそうでないポリクローナル抗体のみが得られるように、ポリクローナル抗体を選択することができる。この選択は、他の分子と交差反応する抗体を取り除くことによって実施しうる。特定の抗体に対して特異的に免疫反応性である抗体を選択するには、種々のイムノアッセイ形式を用いうる。例えば、あるタンパク質に対して特異的に免疫反応性である抗体の選択のためには、固相ELISAイムノアッセイが慣行的に用いられる(特異的な免疫反応性を決定するために用いうるイムノアッセイの形式および条件の説明については、例えば、Harlow & Lane, Using Antibodies, A Laboratory Manual (1998)を参照)。
【0051】
本明細書における「治療的有効用量または量」とは、投与の目的とする効果を生じさせる用量のことを意味する。厳密な用量および製剤は治療の目的に依存すると考えられ、公知の方法を用いて当業者によって見極められると考えられる(例えば、Lieberman, Pharmaceutical Dosage Forms (vols. 1-3, 1992);Lloyd, The Art, Science and Technology of Pharmaceutical Compounding (1999);Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 20th Edition, Gennaro, Editor (2003)、およびPickar, Dosage Calculations (1999)を参照)。
【0052】
「薬学的に許容される塩」または「薬学的に許容される担体」という用語は、本明細書に記載された化合物上にある特定の置換基に応じた比較的無毒性の酸または塩基を用いて調製される活性化合物の塩を含むものとする。本発明の化合物が比較的酸性の官能性を含む場合には、中性形態のそのような化合物を、そのまま、または適した不活性溶媒中で、十分な量の所望の塩基と接触させることによって塩基付加塩を得ることができる。薬学的に許容される塩基付加塩の例には、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩、有機アミノ塩、またはマグネシウム塩、または類似の塩が含まれる。本発明の化合物が比較的塩基性の官能基を含む場合には、中性形態のそのような化合物を、そのまま、または適した不活性溶媒中で、十分な量の所望の酸と接触させることによって酸付加塩を得ることができる。薬学的に許容される酸付加塩の例には、塩酸、臭化水素酸、硝酸、炭酸、一水素炭酸(monohydrogen carbonic)、リン酸、一水素リン酸(monohydrogen phosphoric)、二水素リン酸(dihydrogen phosphoric)、硫酸、一水素硫酸(monohydrogen sulfuric)、ヨウ化水素酸または亜リン酸などのような無機酸に由来する塩、ならびに酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、乳酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p-トリルスルホン酸、クエン酸、酒石酸、メタンスルホン酸などのような比較的無毒性の有機酸に由来するものが含まれる。アルギネート(arginate)などのアミノ酸の塩、およびグルクロン酸またはガラクツロン酸(galactunoric acid)などのような有機酸の塩も含まれる(例えば、Berge et al., Journal of Pharmaceutical Science 66:1-19 (1977)を参照)。本発明のある特定の化合物は、化合物が塩基付加塩または酸付加塩のいずれにも変換されることを可能にする、塩基性および酸性の両方の官能基を含む。当業者に公知である他の薬学的に許容される担体も本発明に適している。
【0053】
中性形態の化合物は、塩を塩基または酸と接触させて、従来の様式で親化合物を単離することによって再生される。親形態の化合物は、極性溶媒中での溶解性などのある種の物理特性の点でさまざまな塩形態とは異なるが、その他の点では、塩は、本発明の目的において親形態の化合物と同等である。
【0054】
塩形態に加えて、本発明は、プロドラッグ形態である化合物も提供する。本明細書に記載される化合物のプロドラッグは、生理的条件下で容易に化学変化を受けて本発明の化合物をもたらす化合物である。さらに、プロドラッグが、エクスビボ環境で化学的または生化学的方法によって本発明の化合物に変換されてもよい。例えば、プロドラッグは、適した酵素または化学試薬を含む経皮パッチリザーバー中に置かれた場合に、本発明の化合物に緩徐に変換されうる。
【0055】
本発明のある種の化合物は、非溶媒和形態のほか、水和形態を含む溶媒和形態で存在することができる。一般に、溶媒和形態は非溶媒和形態と同等であり、本発明の範囲内に含まれるものとする。本発明のある種の化合物は、複数の結晶形態または非結晶形態で存在しうる。一般に、あらゆる物理的形態は、本発明によって想定される使用に対して同等であり、本発明の範囲内にあるものとする。
【0056】
本発明のある種の化合物は、不斉炭素原子(光学中心)または二重結合を保有する;ラセミ体、ジアステレオマー、幾何異性体および個々の異性体はすべて、本発明の範囲内に含まれるものとする。
【0057】
「低減させる」、「低減させること」または「低減」という用語は、αvβ8媒介性のTGFβ活性化の文脈で用いられる場合、本明細書に記載された作用物質(例えば、抗αvβ8アンタゴニスト、抗αvβ8抗体およびイムノコンジュゲート)が存在しないことを除いて同一の条件下で得られた標準的な値と比較した場合の、TGFβ活性化を反映するパラメーターの数量の検出可能な何らかの負の変化または減少のことを指す。本明細書に記載された作用物質(例えば、抗αvβ8アンタゴニスト、抗αvβ8抗体およびイムノコンジュゲート)に対する曝露後のこの減少のレベルは、いくつかの態様において、少なくとも10%または20%、より好ましくは少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%であり、最も好ましくは100%である。
【0058】
「競合する」という用語は、抗体に関して本明細書で用いられる場合、第1の抗体またはその抗原結合部分が、結合をめぐって第2の抗体またはその抗原結合部分と競合することを意味し、ここで第1の抗体のそのコグネイトエピトープとの結合は、第2の抗体の非存在下における第1の抗体の結合と比較して、第2の抗体の存在下では検出可能なように減少する。代替的なものとして、第2の抗体のそのエピトープに対する結合が第1の抗体の存在下で検出可能なように減少することも可能であるが、必ずしもそうである必要はない。すなわち、第1の抗体は、第2の抗体が第1の抗体のその各々のエピトープに対する結合を阻害することを伴わずに、第2の抗体のそのエピトープに対する結合を阻害することができる。しかし、各抗体が、他の抗体のそのコグネイトエピトープまたはリガンドとの結合を、同じ程度、より大きな程度、またはより小さい程度のいずれにかかわらず、検出可能なように阻害する場合には、抗体は、それらの各々のエピトープとの結合をめぐって互いに「交差競合する」と言う。競合抗体および交差競合抗体はいずれも、本発明の範囲に含まれる。そのような競合または交差競合が起こる機序(例えば、立体障害、コンフォメーション変化、または共通のエピトープもしくはその部分に対する結合など)にかかわらず、当業者は、本明細書に提供された教示に基づき、そのような競合抗体および/または交差競合抗体が範囲に含まれること、および本明細書に開示された方法にとって有用となりうることを理解するであろう。
【0059】
数多くのタイプの競合結合アッセイが公知であり、例えば以下のものがある:固相直接または間接ラジオイムノアッセイ(RIA)、固相直接または間接酵素イムノアッセイ(EIA)、サンドイッチ競合アッセイ(Stahli et al , Methods in Enzymology 9:242-253 (1983)を参照);固相直接ビオチン-アビジンEIA(Kirkland et al , J. Immunol. 137:3614-3619 (1986)を参照);固相直接標識アッセイ、固相直接標識サンドイッチアッセイ(Harlow and Lane, Antibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press (1988)を参照);I-125標識を用いる固相直接標識RIA(Morel et al., Molec. Immunol. 25(1):7-15 (1988)を参照);固相直接ビオチン-アビジンEIA(Cheung et al , Virology 176:546-552 (1990));および直接標識RIA(Moldenhauer et al., Scand. J. Immunol. 32:77-82 (1990)。典型的には、そのようなアッセイは、これら非標識被験免疫グロブリンおよび標識参照免疫グロブリンのうちのいずれかを保有する固体表面または細胞に結合させた精製抗原の使用を伴う。競合阻害は、被験免疫グロブリンの存在下で固体表面または細胞に結合した標識の量を決定することによって測定される。通常、被験免疫グロブリンは過剰に存在する。競合アッセイによって同定される抗体(競合抗体)には、参照抗体と同じエピトープと結合する抗体、および、参照抗体による結合を受けるエピトープに対して立体障害が起こるほど十分に近接する隣接エピトープと結合する抗体が含まれる。通常、競合抗体が過剰に存在する場合には、それは共通抗原に対する参照抗体の特異的結合を少なくとも50%または75%阻害すると考えられる。
【0060】
TGFβ活性化
トランスフォーミング増殖因子β(TGFβ)は当初、培養下にある非新生物性細胞における形質転換表現型を誘導することのできるタンパク質(腫瘍細胞株より分泌される)として特徴づけられた。この効果は、TGFβの除去後に細胞が正常表現型に復帰したことによって実証されたように、可逆的であった。現時点で、TGFβ1〜TGFβ5が同定されている。これらのタンパク質は類似したアミノ酸領域を有する。
【0061】
TGFβは多くの間葉性および上皮性細胞型に対して増殖促進効果を及ぼす。ある特定の条件下では、TGFβは上皮細胞、内皮細胞、マクロファージならびにTリンパ球およびBリンパ球に対して増殖抑制効果を及ぼす。そのような効果には、免疫グロブリンの分泌を減少させること、ならびに造血、筋形成、脂肪形成および副腎ステロイド合成を抑制することが含まれる。TGFβファミリーのいくつかのメンバー、特にTGF-βおよびアクチビンAは、初期胚における中胚葉分化の強力な誘導物質である。
【0062】
TGFβ、特にTGFβ 1、2および3は、細胞増殖、炎症、マトリックス合成、免疫系、血管新生およびアポトーシスの重要なモジュレーターである多能性サイトカインである(Taipale et al.)。TGFβ機能の欠陥は、免疫抑制、腫瘍細胞増殖、線維症および自己免疫疾患を含む、数多くの病的状態と関連している(Blobe et al.)。TGFβは、初期発生、パターン形成、組織修復および創傷治癒における重要なイベントを制御する、40種を上回るメンバーからなるTGFβスーパーファミリーのプロトタイプである。TGFβは潜在型複合体の一部として放出され、その中にあると、このサイトカインはその受容体と相互作用することができない。
【0063】
TGFβがシグナルを伝達するためには、TGFβ活性化と呼ばれる過程によって、それがその不活性複合体から放出されなければならない。潜在型TGF複合体は、以下の3つの構成要素を含む:活性(成熟)TGFβ二量体、LAP(潜在性関連ペプチド)およびLTBP(潜在型TGFβ結合タンパク質)。LAPは、TGFβ前駆体タンパク質のN末端に相当するdiS結合した二量体である。成熟TGFβタンパク質は前駆体のC末端(約25kD)に相当する。TGFβとLAPとの間の結合はゴルジ体の内部でタンパク質分解性に切断されるが、TGF-βプロペプチドは非共有結合性相互作用によってTGFβと結合したままに保たれる。TGFβとLAPとの複合体は小型潜在型複合体(small latent complex)(SLC)と呼ばれる。潜在性を付与するのは、LAPとTGFβとの会合である。LAP-TGFβ結合は可逆的であり、単離され精製された構成要素を再結合させて不活性SLCを形成させることができる。本明細書では、SLCおよびより大型の複合体の両方を、いずれも不活性であることから潜在型TGFβと称する。
【0064】
TGFβの特異な性質は、その活性が潜在型TGFβの活性TGFβへの変換(潜在型TGFβの活性化と名づけられた過程)によって制約されることである。組織はかなりの量の潜在型TGFβを含有し、この潜在型TGFβのごくわずかな割合の活性化によって最大の細胞応答が生じる(Annes et al. (2003) J. Cell Sci. 116:217)。潜在性は、潜在性関連タンパク質(LAP)とも呼ばれるTGFβプロペプチドの非共有結合性相互作用によって付与される。活性化は、成熟TGFβとLAPとの間の結合が切断されると起こる。潜在型TGFβはそれ故、成熟した活性TGFβのタンパク質前駆体である。ひとたび活性化すると、TGFβはその高親和性セリン/トレオニンキナーゼI型およびII型受容体と結合してそれらを集結させ、シグナル伝達カスケードを開始させる。
【0065】
「TGFβ活性化」および「TGFβプロセシング」という用語の間には違いがある。TGF-βに関して、「TGFβプロセシング」という用語は、TGF-βとLAPとの間の結合のタンパク質分解性切断のことを指す。切断が起こらなければ、いかなる条件下でも前駆体TGF-β二量体においてTGF-β活性は全く検出することができない。切断はTGFβ活性のための前提条件である。「TGFβ活性化」という用語は、TGF-β二量体が、LAPとのその相互作用から遊離することを指す。したがって、「プロセシングを受けた」TGF-β前駆体は活性化される能力、すなわち、TGF-βを放出する能力を有するが、一方、プロセシングを受けていないTGF-βは、プロペプチド結合がまず切断(プロセシング)を受けなければ、活性化させることができない。
【0066】
いくつかの分子が潜在型TGFβの活性化物質として記述されている。いくつかの細胞型が、ほとんどの細胞によって恒常的に産生されるLLCをプロテアーゼ依存性反応によって活性TGFβに変換する、第1の細胞媒介性活性化過程は、プロテアーゼによるものであった。潜在型TGFβの活性化は、a)プロテアーゼであるウロキナーゼプラスミノーゲンアクチベーター(uPA)、b)uPAの基質であるプラスミノーゲンの活性化(プロテアーゼであるプラスミンの酵素原)、c)細胞表面マンノース-6(M6P)リン酸/IGF-II受容体に対するLAPの結合、d)LTBP、およびe)TGアーゼを必要としたが、その理由はこれらの反応物のそれぞれの抗体および/または阻害物質が潜在型TGF-βの活性化を阻止したためである。MMP-2、MMP-9、プラスミン、カルパイン、キマーゼおよびエラスターゼを含む他のいくつかのプロテアーゼが、その後に潜在型TGFβの活性化物質として記述されている(Koli, et al. (2001))。
【0067】
潜在型TGFβの活性化の第2の機序には、マトリックス細胞タンパク質トロンボスポンジン(TSP-1)の、TSP-1受容体のほかにCD36、さらに場合によってはプラスミンも含む多分子複合体中での潜在型TGFβとの相互作用が関与する。潜在型TGFβの活性化はTSP-1とLAPとの間の直接相互作用を必要とし、これにはTSP-1の1型反復配列中に認められるトリペプチド配列RFKが含まれる。このペプチドは、LAPとTGF-βとの間の非共有結合性会合を妨げる、LAPアミノ末端中の保存的テトラペプチドLSKLと相互作用すると考えられている。テトラペプチドKRFKはインビトロおよびインビボで潜在型TGF-βを活性化するが、一方、LAPペプチド(LSKL)の過剰な添加は潜在型TGF-β活性化を阻止する。TSP-1 -/-マウスは、TGF-β1 -/-マウスと炎症亢進の点で部分的に重複する表現型を示す。野生型マウスに対するLSKL阻止ペプチドの投与は、TGF-β -/-動物で観察されるものに類似した膵臓および肺の病態を誘発するが、一方、TSP-1 -/-マウスに対するKRFK活性化ペプチドの添加は表現型を正常に復帰させる。しかし、TSP-1 -/-マウスの表現型はTGF-β1 -/-マウスの表現型すべてを再現するものではない上、TSP-1 -/-表現型はTGF-β2 -/-マウスまたはTGF-β3 -/-マウスの表現型のいずれにも類似していない。これらの相違からも、潜在型TGF-βの活性化に関しては複数のアイソフォーム特異的な機序が存在する可能性が示唆される。
【0068】
潜在型TGF-βは弱酸(pH 4.5)によって活性化され、それはおそらくLAPとTGF-βとの間の相互作用を不安定化すると考えられる。しかし、骨再吸収時に破骨細胞によって形成される細胞外区画のような特殊な状況を除き、このpHにインビボの細胞外環境で達することはおそらく稀である。このため、pHはTGF-β活性化のための一般的な機序である可能性は低い。
【0069】
TGF-β1およびβ3プロペプチドはインテグリン認識配列RGDを含有するが、TGF-β2プロペプチドは含有しない。TGF-β1およびTGF-β3のLAPは、インテグリンαvβ1およびαvβ5を発現する細胞と相互作用する。潜在型TGF-βのこれらのインテグリンとの結合は活性化を引き起こさないが、潜在型TGF-βのαvβ6との結合は活性化を引き起こす(Munger et al. (1999) Cell 96:319)。RGEを含む突然変異型のTGF-β1またはβ3は活性化される能力がないことからみて、αvβ6による潜在型TGF-β1またはβ3の活性化はRGD配列を必要とする。
【0070】
インテグリンαvβ8は、MT1-MMPとの組み合わせで潜在型TGFβを活性化する(Mu et al. (2002) J. Cell Biol. 159:493)。インテグリンαvβ8は主として正常上皮(例えば、気道上皮)、間葉細胞および神経組織で発現される。特有の機序と考えられるものにおいて、細胞表面上に発現されたαvβ8は細胞マトリックス中の潜在型TGFβと相互作用して、MT1-MMPをその複合体に動員させ、そこでプロテアーゼが潜在型TGFβを切断して、活性のある成熟TGFβペプチドを放出させる。
【0071】
TGFβバイオアッセイ
TGFβ活性化を共培養アッセイで判定するためには、αvβ8を発現する被験細胞を、ルシフェラーゼ遺伝子を作動させるプラスミノーゲンアクチベーターインヒビター-1プロモーターのTGF-β応答性断片を安定的にトランスフェクトしたミンク肺上皮細胞であるTMLC細胞と共培養する(Abe et al. (1994) Annal Biochem 216:276)。TMLC細胞はTGFβに対する応答性が高く、それが生じるTGFβ活性化のバックグラウンド値は極めて低い。TMLC細胞はこのため、発光を読み取り値として用いて活性TGFβの存在に関して検査するために、他の細胞株との共培養下または無細胞画分中で用いることができる。アッセイは、記載された通り(Abe (1994);Munger (1999)に、抗TGFβ阻止抗体(10μg/ml、1D11;R&D Systems)、抗β8(20μg/ml、37E1B5)または抗β6(150μg/ml、10D5)の存在下または非存在下で行う。
【0072】
腫瘍組織中の活性TGFβを測定するためには、同重量の腫瘍組織をミンチ状にして、滅菌DME中で30分間、4℃でインキュベートする。4℃での遠心処理(20g)後に、活性TGFβを含む上清を採取する。続いてペレットを無血清DME中で20分間、80℃でインキュベートしてSLCを活性化し、その後に上清を採取する。続いて、活性または熱失活(潜在型)TGFβを含む上清を、あらかじめプレーティングしておいたTMLC細胞に、1D11を伴うかまたは伴わずに添加する。プロテアーゼ阻害物質アッセイのためには、共培養の開始時に阻害物質を添加する。各阻害物質の最大用量は、TMLC細胞が組換え活性TGFβに応答する能力を阻害しない最高濃度と定義される。培養細胞からの可溶性TGFβ活性を測定するためには、細胞を、37E1または10D5を伴うかまたは伴わない完全培地100μl中で、穏やかに回転させながら1時間、37℃でインキュベートする。5分間、4℃での遠心処理(20g)によって無細胞上清を採取し、続いて、プレーティングしたTMLC細胞に1D11の存在下または非存在下で添加する。可溶性受容体アッセイのためには、細胞の一晩培養物から得た馴化培地を用いる。相対ルシフェラーゼ単位は、TMLCレポーター細胞のバックグラウンド活性を差し引いた活性と定義される。
【0073】
本発明の抗体
本発明は、インテグリンαvβ8と特異的に結合するが、他のインテグリン(例えば、αvβ6、αvβ3など)とは顕著には結合しない抗体を提供する。本発明の抗体は、αvβ8中の特定のエピトープまたはエピトープ領域と結合する。エピトープは立体構造(非直線的)エピトープであっても非立体構造エピトープであってもよい。そのような抗体はβ8のみと結合することができ、すなわち、そのエピトープはβ8の内部に位置する。本発明の抗体の結合が、β8の外側のエピトープ領域、例えば立体構造エピトープ、またはαv内部およびβ8内部の両方に由来するエレメントに依存するものを必要としてもよい。
【0074】
いくつかの態様において、抗体はβ8と結合し、例えば抗体の非存在下でのTGFβ活性化と比較して、TGFβ活性化を阻害する。いくつかの態様において、抗体は、αvβ8を発現する細胞のTGFβに対する接着を低下させない、すなわち、抗体は、TGFβに対するαvβ8媒介性の細胞接着を低下させない。いくつかの態様において、抗体は、抗体の非存在下でのαvβ8結合と比較して、TGFβに対する可溶性αvβ8の結合を低下させない。いくつかの態様において、抗体は、SEQ ID NO:11の中にあるβ8上のエピトープと結合することができる。いくつかの態様において、エピトープは、ヒトβ8のアミノ酸R79、I85、S95、P100、I108、P109、R128、H140およびF179から選択される少なくとも1つのアミノ酸を含む。いくつかの態様において、エピトープは、ヒトβ8のアミノ酸I74、N88、I107、T110、I125、R175およびF180から選択される少なくとも1つのアミノ酸を含む。いくつかの態様において、エピトープは、ヒトβ8のアミノ酸I125、R128、R175、F179およびF180から選択される少なくとも1つのアミノ酸を含む。いくつかの態様において、抗体はヒトβ8と結合するが、マウスβ8とは結合しない。
【0075】
所与の抗原に対して産生された抗体の結合部位、すなわちエピトープは、当技術分野において公知の方法を用いて決定することができる。例えば、競合アッセイ(例えば、競合ELISA)を、既知のエピトープを有する抗体を用いて行うことができる。被験抗体が抗原結合をめぐって競合するならば、それは同じエピトープの少なくとも一部を共有している可能性が高い。抗原のドメインスワッピングまたは選択的突然変異誘発を用いて、エピトープの位置を特定することもできる。すなわち、抗原の各領域または各アミノ酸を、被験抗体と相互作用しないことが判明しているアミノ酸または構成要素と「取り替える」または置換する。所与の領域またはアミノ酸の置換により、置換された抗原に対する被験抗体の結合が、置換されていない抗原と比較して低下するならば、その領域またはアミノ酸はエピトープに含まれる可能性が高い。
【0076】
本発明は、αvβ8媒介性のTGF-β活性化(例えば、細胞表面の潜在型TGFβからの成熟した活性TGFβの放出)を選択的に擾乱させる抗体を提供するが、いくつかの態様において、抗体は、潜在型TGFβに対するαvβ8(例えば、αvβ8発現細胞上の)の接着に大きくは干渉しない。一部の抗体は、インテグリンαvβ8媒介性のTGF-β活性化のみを擾乱させ、阻害するのが望ましくない可能性のある細胞接着性は擾乱させないという高度の選択性を特徴とする。また別の抗体は、インテグリンαvβ8が発現される箇所でTGFβ活性化を局所的に阻止する。
【0077】
例示的な本発明の抗体は、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6およびSEQ ID NO:7の3種の軽鎖CDRを含む軽鎖可変領域ならびにSEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10の3種の重鎖CDRを含む重鎖可変領域を有する。また、本発明の抗体には、αvβ8に対する結合をめぐって、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6およびSEQ ID NO:7の3種の軽鎖CDRを含む軽鎖可変領域ならびにSEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10の3種の重鎖CDRを含む重鎖可変領域を有する抗体と競合する抗体も含まれる。SEQ ID NO:9の第1の残基はRまたはYのいずれかでありうる。RまたはYの他の保存的置換物も同じく機能すると考えられる。抗体のアイソタイプはIgG1、IgG2、IgG2a、IgG3またはIgG4でありうる。
【0078】
したがって、本発明の抗体は、SEQ ID NO:3またはSEQ ID NO:4のいずれかの軽鎖可変領域およびSEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:2のいずれかの重鎖可変領域を有する抗体でありうる。いくつかの態様において、本発明の抗体は、SEQ ID NO:3の軽鎖可変領域およびSEQ ID NO:1の重鎖可変領域を有する。いくつかの態様において、本発明の抗体は、SEQ ID NO:4の軽鎖可変領域およびSEQ ID NO:2の重鎖可変領域を有する。例示的な抗体には37E1および37E1B5の2つがある。
【0079】
発明の抗体は、ポリクローナル性でもモノクローナル性でもよい。ポリクローナル血清は典型的には、αvβ8の長軸方向に沿ったいくつかのエピトープと特異的に結合する抗体の混在集団を含有する。しかし、ポリクローナル血清が、αvβ8のある特定のセグメントに対して特異的なこともある。例示的な抗体には、キメラ抗体、ヒト化抗体(Queen et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86: 10029-10033 (1989)ならびにWO 90/07861号、米国特許第5,693,762号、米国特許第5,693,761号、米国特許第5,585,089号、米国特許第5,530,101号およびWinter, 米国特許第5,225,539号を参照)またはヒト抗体(Lonberg et al., WO93/12227号(1993);米国特許第5,877,397号、米国特許第5,874,299号、米国特許第5,814,318号、米国特許第5,789,650号、米国特許第5,770,429号、米国特許第5,661,016号、米国特許第5,633,425号、米国特許第5,625,126号、米国特許第5,569,825号、米国特許第5,545,806号、Nature 148, 1547-1553 (1994), Nature Biotechnology 14, 826 (1996), Kucherlapati, WO 91/10741号(1991)) EP1481008号、Bleck, Bioprocessing Journal 1 (Sept/Oct. 2005), US2004132066号、US2005008625号、WO2004072266号、WO2005065348号、WO2005069970号、およびWO2006055778号)が含まれる。いくつかの態様において、抗体は、37E1または37E1B5のヒト化形態またはキメラ形態である。ヒトのアイソタイプIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4を、ヒト化またはキメラ抗体のために用いることができる。ある種の抗体は、αvβ8と、約107、108、109、1010、1011または1012 M-1を上回るかまたはそれと等しい結合親和性で特異的に結合する。
【0080】
インテグリンαvβ8のアンタゴニスト
天然性または合成性である、インテグリンαvβ8のさまざまなアンタゴニストを用いうることも想定している。そのようなアンタゴニストには、例えばペプチドまたは低分子が含まれる。アンタゴニストには、例えば、医薬品、治療薬、環境物質、農業用または産業用物質、汚染物質、薬用化粧品、薬剤、有機化合物、脂質、グルココルチコイド、抗生物質、ペプチド、タンパク質、糖、糖質およびキメラ分子が含まれうる。いくつかの態様において、インテグリンαvβ8のアンタゴニストは、TGFβ特異的ペプチド、例えばTGFβ1特異的ペプチドまたはTGFβ3特異的ペプチドである。TGFβ特異的ペプチドの例には、GRRGDLATIHを含むペプチド(Mu et al. (2002) Journal of Cell Biology 157:493-507)およびHGRGDLGRLKを含むペプチドが非限定的に含まれる。いくつかの態様において、アンタゴニストは、TGFβ活性化を低減させるが、TGFβに対するαvβ8媒介性の細胞接着を大きくは阻害しない。
【0081】
適応症
本発明の抗αvβ8アンタゴニスト、抗αvβ8抗体またはイムノコンジュゲート、組成物および方法は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)および喘息を検出、治療または予防するために用いることができる。
【0082】
本発明の抗αvβ8アンタゴニスト、抗αvβ8抗体またはイムノコンジュゲート、組成物および方法を、炎症性脳自己免疫疾患、多発性硬化症、脱髄性疾患(例えば、横断性脊髄炎、デビック病、ギラン・バレー症候群)、神経炎症、腎疾患または神経膠腫を検出、治療または予防するために用いうることも、さらに想定している。
【0083】
本発明の抗αvβ8アンタゴニスト、抗αvβ8抗体またはイムノコンジュゲート、組成物および方法を、関節炎を検出、治療または予防するために用いうることも、さらに想定している。
【0084】
本発明の抗αvβ8アンタゴニスト、抗αvβ8抗体またはイムノコンジュゲート、組成物および方法を、さまざまな線維性障害、例えば気道線維症、特発性肺線維症、非特異的間質性肺炎、感染後肺線維症、びまん性肺胞障害、膠原血管病関連肺線維症、薬剤誘発性肺線維症、珪肺症、アスベスト関連肺線維症、呼吸細気管支炎、呼吸細気管支炎間質性肺疾患、剥離性間質性線維症、特発性器質化肺炎、慢性過敏性肺炎、薬剤関連肺線維症、腎線維症、肝線維症などを検出、治療または予防するために用いうることも、さらに想定している。
【0085】
本発明の抗αvβ8アンタゴニスト、抗αvβ8抗体またはイムノコンジュゲート、組成物および方法を、腺癌、扁平上皮癌、乳癌、ならびに癌の増殖および転移を検出、治療または予防するために用いうることも、さらに想定している。
【0086】
診断用組成物
検出可能なモイエティーを、直接的に、または例えばキレート剤もしくはリンカーを介して間接的に、本発明の抗体に付随させることができる。続いて、意図する治療法の適用可能性を判定するために、標識化抗体を個体に与える。例えば、標識化抗体を用いて罹患部におけるインテグリンβ8密度を検出することができ、その密度は典型的には非罹患組織に比して高い。また、標識化抗体は、罹患部に治療法が到達しうることも指し示すことができる。このようにして、患者を撮像結果に基づいて治療法に関して選択することができる。癌の正確な境界を判定するというような解剖学的特徴決定は、古典的な撮像手法(例えば、CT スキャニング、MRI、PETスキャニングなど)を用いて達成することができる。
【0087】
本発明の抗体を含む診断用物質には、例えば、以下の参考文献に提示されているような、当技術分野において公知であるあらゆる診断用物質が含まれうる:Armstrong et al., Diagnostic Imaging, 5th Ed., Blackwell Publishing (2004);Torchilin, V. P., Ed., Targeted Delivery of Imaging Agents, CRC Press (1995);Vallabhajosula, S., Molecular Imaging: Radiopharmaceuticals for PET and SPECT, Springer (2009)。診断用物質は、検出可能なシグナルを与える、および/または増強する作用物質としてのものを含む、種々の方法によって検出することができる。検出可能なシグナルには、γ線放射性、放射性、エコー源性、光学的、蛍光性、吸収性、磁気または断層撮影シグナルが非限定的に含まれる。診断用物質の撮像のための手法には、単一光子放出型コンピュータ断層撮影法(SPECT)、磁気共鳴撮像法(MRI)、光学撮像法、ポジトロン放出断層撮影法(PET)、コンピュータ断層撮影法(CT)、X線撮像法、γ線撮像法などが非限定的に含まれうる。「検出可能な作用物質」、「検出可能なモイエティー」、「標識」、「造影剤」および同様の用語などの用語は、本明細書において同義に用いられる。
【0088】
放射性同位体を本明細書に記載された診断用物質に組み入れることができ、それにはγ線、ポジトロン、β粒子およびα粒子、ならびにX線を放射する放射性核種が含まれうる。適した放射性核種には、225Ac、72As、211At、11B、128Ba、212Bi、75Br、77Br、14C、109Cd、62Cu、64Cu、67Cu、18F、67Ga、68Ga、3H、166Ho、123I、124I、125I、130I、131I、111In、177Lu、13N、15O、32P、33P、212Pb、103Pd、186Re、188Re、47Sc、153Sm、89Sr、99mTc、88Yおよび90Yが非限定的に含まれる。ある態様において、放射性物質には、111In-DTPA、99mTc(CO)3-DTPA、99mTc(CO)3-ENPy2、62/64/67Cu-TETA、99mTc(CO)3-IDAおよび99mTc(CO)3トリアミン(環状または直鎖状)が含まれる。他の態様において、作用物質には、DOTA、および111In、177Lu、153Sm、88/90Y、62/64/67Cuまたは67/68Gaを有するそのさまざまな類似体が含まれる。いくつかの態様においては、以下の参考文献に提示されているように、キレート剤と結びつけた脂質、例えばDTPA-脂質などの組み入れによってナノ粒子を標識することができる:Phillips et al., Wiley Interdisciplinary Reviews: Nanomedicine and Nanobiotechnology, 1 (1): 69-83 (2008);Torchilin, V.P. & Weissig, V., Eds. Liposomes 2nd Ed.: Oxford Univ. Press (2003);Elbayoumi, T.A. & Torchilin, V.P., Eur. J. Nucl. Med. Mol. Imaging 33:1196-1205 (2006);Mougin-Degraef, M. et al., Int'l J. Pharmaceutics 344:110-117 (2007)。
【0089】
いくつかの態様において、診断用物質は、種々の画像診断法に用いられる金属イオンなどと結合するキレート剤を含みうる。例示的なキレート剤には、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、[4-(1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデク-1-イル)メチル]安息香酸(CPTA)、シクロヘキサンジアミン四酢酸(CDTA)、エチレンビス(オキシエチレンニトリロ)四酢酸(EGTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、クエン酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、イミノ二酢酸(IDA)、トリエチレンテトラアミン六酢酸(TTHA)、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-テトラ(メチレンホスホン酸)(DOTP)、1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン-1,4,8,11-四酢酸(TETA)、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸(DOTA)、N1,N1-ビス(ピリジン-2-イルメチル)エタン-1,2-ジアミン(ENPy2)およびそれらの誘導体が非限定的に含まれる。
【0090】
いくつかの態様においては、診断用物質に、発色基質に接触すると有色生成物を生じる二次結合リガンドまたは酵素(酵素タグ)を付随させることができる。適した酵素には、ウレアーゼ、アルカリホスファターゼ、(西洋ワサビ)水素ペルオキシダーゼおよびグルコースオキシダーゼが含まれる。二次結合リガンドには、例えば、当技術分野において公知であるようなビオチンおよびアビジンまたはストレプトアビジン化合物である。
【0091】
いくつかの態様において、診断用物質は、蛍光性物質、リン光性物質、化学発光性物質などの光学的物質である。当技術分野において公知のさまざまな作用物質(例えば、色素、プローブ、標識または指示薬)を、本発明に用いることができる。(例えば、Invitrogen, The Handbook--A Guide to Fluorescent Probes and Labeling Technologies, Tenth Edition (2005)を参照)。蛍光性物質には種々の有機および/もしくは無機低分子、または種々の蛍光性タンパク質、ならびにそれらの誘導体が含まれる。例えば、蛍光性物質には、シアニン、フタロシアニン、ポルフィリン、インドシアニン、ローダミン、フェノキサジン、フェニルキサンテン、フェノチアジン、フェノセレナジン、フルオレセイン、ベンゾポルフィリン、スクアラン(squaraine)、ジピロロピリミドン、テトラセン、キノリン、ピラジン、コーリン、クロコニウム、アクリドン、フェナントリジン、ローダミン、アクリジン、アントラキノン、カルコゲンピリリウム類似体、クロリン、ナフタロシアニン、メチン色素、インドレニウム色素、アゾ化合物、アズレン、アザアズレン、トリフェニルメタン色素、インドール、ベンゾインドール、インドカルボシアニン、ベンゾインドカルボシアニン、およびBODIPY(商標)誘導体が非限定的に含まれうる。
【0092】
投与および製剤化の方法
抗αvβ8アンタゴニスト、抗αvβ8抗体またはイムノコンジュゲートは、ヒト患者に対して、公知の方法に従って、例えば、ボーラスとしてもしくは一定期間にわたる連続注入による静脈内投与、筋肉内、腹腔内、脳脊髄内(intracerobrospinal)、皮下、関節内、滑膜内、髄腔内、経口、局部(例えば、経皮的)または吸入経路などによって投与される。抗体の静脈内投与または皮下投与が好ましい。投与は局所性でも全身性でもよい。
【0093】
投与用の組成物は、一般的に、薬学的に許容される担体、好ましくは水性担体中に溶解された、本明細書に記載された作用物質(例えば、抗αvβ8アンタゴニスト、抗αvβ8抗体およびイムノコンジュゲート)を含む。種々の水性担体、例えば緩衝食塩水などを用いることができる。これらの溶液は無菌であり、望ましくない物質を一般に含まない。これらの組成物は、従来の周知の滅菌手法によって滅菌することができる。組成物が、必要に応じて、生理的条件に近づけるための薬学的に許容される補助物質、例えば、pH調整剤および緩衝剤、毒性調整剤(toxicity adjusting agent)など、例えば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウムなどを含んでもよい。これらの製剤における活性物質の濃度は非常にさまざまであってよく、これは主として、選択された特定の投与様式および患者の必要性に応じて、液体の容積、粘性、体重などに基づいて選択される。
【0094】
このため、静脈内投与のための典型的な薬学的組成物は、作用物質に応じてさまざまであると考えられる。非経口的に投与可能な組成物を調製するための実際の方法は、当業者には公知または明らかであると考えられ、Remington's Pharmaceutical Science, 15th ed., Mack Publishing Company, Easton, Pa. (1980)などの文献にさらに詳細に記載されている。
【0095】
薬学的組成物は、投与方法に応じて、種々の単位投与剤形として投与することができる。例えば、経口投与のために適した単位投与剤形には、粉剤、錠剤、丸剤、カプセル剤およびロゼンジ剤が非限定的に含まれる。抗体を経口的に投与する場合に、消化から防御する必要があることは認知されている。これは典型的には、分子を、酸加水分解および酵素加水分解に対する抵抗性を付与する組成物と複合体化することにより、または分子を、適切な抵抗性のある担体、例えばリポソームもしくは防御障壁内に封入することによって行われる。作用物質を消化から防御するための手段は当技術分野において周知である。
【0096】
本発明に用いるための薬学的製剤、特に、抗体およびイムノコンジュゲートおよび阻害物質の薬学的製剤は、所望の純度を有する抗体を、任意で、薬学的に許容される担体、添加剤または安定化剤と混合することによって調製することができる。そのような製剤は凍結乾燥製剤または水性溶液であってよい。許容される担体、添加剤または安定化剤は、用いられる投与量および濃度でレシピエントに対して無毒性である。許容される担体、添加剤または安定化剤は、酢酸、リン酸、クエン酸および他の有機酸;酸化防止剤(例えば、アスコルビン酸) 保存料 低分子量ポリペプチド;血清アルブミンもしくはゼラチンなどのタンパク質、またはポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;ならびにアミノ酸、グルコース、マンノースまたはデキストリンを含む単糖類、二糖類および他の糖質;キレート剤;ならびにイオン性および非イオン性界面活性剤(例えば、ポリソルベート);ナトリウムなどの塩形成性対イオン;金属複合体(例えば、Zn-タンパク質複合体);ならびに/または非イオン性界面活性剤であってよい。抗体は、0.5〜200mg/mlの間、または10〜50mg/mlの間の濃度であってよい。
【0097】
製剤はまた、化学療法薬、細胞傷害性薬剤、サイトカイン、増殖抑制性薬剤および抗ホルモン剤を含む、追加的な活性化合物を提供しうる。活性成分を、持続放出製剤(例えば、固体疎水性ポリマーの半透性マトリックス(例えば、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド)として調製することもできる。また、抗体およびイムノコンジュゲートを、例えばコアセルベーション法または界面重合法によって調製されたマイクロカプセル、例えば、それぞれヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチンマイクロカプセルおよびポリ-(メチルメタクリレート)マイクロカプセルの中に、コロイド状薬物送達システム(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子およびナノカプセル)の中に、またはマクロエマルジョン中に封入することもできる。
【0098】
組成物は、治療的または予防的な処置のために投与することができる。治療的な用途において、組成物は、疾患(例えば、癌、線維症、COPD、関節炎など)に罹患した患者に対して「治療的有効用量」で投与される。この用途のために有効な量は、疾患の重症度および患者の全般的健康状態に応じて決まると考えられる。患者が必要とし、かつ忍容性のある投与量および頻度に応じて、組成物の単回または多回の投与を行うことができる。本発明の目的における「患者」または「対象」には、ヒトおよび他の動物、特に哺乳動物の両方が含まれる。したがって、本方法は、ヒトの治療および獣医学用途の両方に適用可能である。好ましい態様において、患者は哺乳動物、好ましくは霊長動物であり、最も好ましい態様において、患者はヒトである。他の公知の癌治療法を本発明の方法と併用することができる。例えば、本発明に従って用いるための組成物を、5FU、ビンブラスチン、アクチノマイシンD、シスプラチン、メトトレキサートなどの癌治療薬を細胞の標的とするため、またはそれらに対する感受性を高めるために用いることもできる。
【0099】
併用投与は、別々の製剤または単一の医薬製剤を用いる同時投与、およびいずれかの順番での連続投与を想定しており、この場合、両方(またはすべての)活性物質がそれらの生物活性を同時に発揮する時間間隔をおくことが好ましい。
【0100】
αvβ8の発現および/または機能を間接的または直接的にモジュレートすることが同定された分子および化合物は、個体におけるTGFβ活性化を低減させるために有用である。抗αvβ8アンタゴニスト、抗αvβ8抗体またはイムノコンジュゲートは、単独で投与することもでき、または従来の化学療法、放射線療法もしくは免疫療法、さらには現在開発中と組み合わせて同時投与することもできる。
【0101】
経口投与のために適した製剤は、(a)溶液剤、例えば、パッケージングされた核酸の有効量が、水、食塩水またはPEG 400などの希釈剤中に懸濁されたものなど;(b)それぞれが所定量の有効成分を液体、固体、顆粒またはゼラチンとして含む、カプセル剤、サシェ剤または錠剤;(c)適切な液体中にある懸濁剤;および(d)適した乳剤、からなりうる。錠剤形態は、ラクトース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、リン酸カルシウム、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、微結晶性セルロース、ゼラチン、コロイド状二酸化ケイ素、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸および他の添加剤、着色剤、充填剤、結合剤、希釈剤、緩衝剤、保湿剤、保存料、香味剤、色素、崩壊剤ならびに薬学的に適合性のある担体のうち1つまたは複数を含むことができる。ロゼンジ形態は、スクロースなどの香味剤中にある有効成分、ならびに不活性基剤中に有効成分を含むパステル剤、例えば、有効成分に加えて、当技術分野において公知の担体を含む、ゼラチンおよびグリセリンまたはスクロースおよびアラビアゴム乳剤、ゲルなどを含むことができる。
【0102】
選択した化合物は、単独で、または他の適した構成要素と組み合わせて、吸入によって投与するためのエアロゾル製剤(すなわち、それらは「噴霧」することが可能である)の形にすることができる。エアロゾル製剤は、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素などの加圧された許容される噴霧剤中に配合することができる。
【0103】
直腸投与のために適した製剤には、例えば、坐薬用基剤とともにパッケージングされた核酸からなる坐薬が含まれる。適した坐薬用基剤には、天然性または合成性のトリグリセリドまたはパラフィン炭化水素が含まれる。加えて、選択した化合物と、例えば液体トリグリセリド、ポリエチレングリコールおよびパラフィン炭化水素を含む基剤との組み合わせからなるゼラチン直腸カプセルを用いることも可能である。
【0104】
例えば、関節内(関節の中)、静脈内、筋肉内、腫瘍内、皮内、腹腔内および皮下経路などによる非経口投与のために適した製剤には、酸化防止剤、緩衝剤、静菌剤、および製剤を意図するレシピエントの血液と等張にする溶質を含む、水性および非水性の等張滅菌注射液、ならびに懸濁剤、可溶化剤、増粘剤、安定剤および保存料を含む、水性および非水性の滅菌懸濁液が含まれる。本発明の実施に際しては、組成物を、例えば、静脈内注入、経口、局部、腹腔内、膀胱内または髄腔内に投与することができる。非経口投与、経口投与および静脈内投与が、好ましい投与方法である。化合物の製剤は、単回投与分または多回投与分が封入されたアンプルおよびバイアルなどの容器として提供することができる。
【0105】
注射液および懸濁液は、前述したような種類の滅菌粉末、顆粒および錠剤から調製することができる。エクスビボ療法のための核酸によって形質導入された細胞を、上記のように静脈内投与または非経口投与することもできる。
【0106】
医薬製剤は、単位投与剤形であることが好ましい。そのような剤形では、製剤を、適量の活性成分を含む単位用量にさらに分割する。単位投与剤形は、バイアルまたはアンプル中に充填された錠剤、カプセル剤、粉剤などの個別量の製剤をパッケージが含む、パッケージングされた製剤であってよい。また、単位投与剤形が、カプセル、錠剤、カシェ剤、またはロゼンジ剤そのものであってもよく、適切な数のこれらのいずれかを含むパッケージングされた形態にあってもよい。組成物は、必要に応じて、適合性のある他の治療用物質を含むこともできる。
【0107】
好ましい医薬製剤は、持続放出製剤中に、1つまたは複数の抗αvβ8アンタゴニスト、抗αvβ8抗体またはイムノコンジュゲートを、任意で1つまたは複数の化学療法薬または免疫療法薬との組み合わせで含む。
【0108】
癌の治療のための治療的使用において、本発明の薬学的方法に利用される抗αvβ8アンタゴニスト、抗αvβ8抗体またはイムノコンジュゲートは、1日当たり約0.001mg/kg〜約1000mg/kgの初回投与量で投与される。約0.01mg/kg〜約500mg/kgまたは約0.1mg/kg〜約200mg/kgまたは約1mg/kg〜約100mg/kgまたは約10mg/kg〜約50mg/kgの範囲の1日用量を用いることができる。しかし、投与量は、患者の要件、治療しようとする病状の重症度、および使用する化合物に応じて異なってもよい。例えば、投与量を、個々の患者において診断された癌の病型および病期を考慮して経験的に決定することができる。本発明に関連して、患者に対して投与される用量は、患者において有益な治療反応を経時的に生じさせるのに十分であるべきである。用量のサイズは、個々の患者における個々のベクターまたは形質導入された細胞型の投与に伴う有害な副作用の存在、性質および程度によっても決まると考えられる。個々の状況における適正な投与量の決定は、臨床医の技能の範囲内にある。一般に、治療は、化合物の至適用量よりも少ない、比較的低用量で開始される。その後に、投与量を、その状況下での至適効果に達するまで少しずつ増量していく。必要であれば、便宜を図るために、1日の総投与量を分割して、1日の間に一部ずつ投与してもよい。
【0109】
本発明に従って用いるための医薬製剤(例えば、抗αvβ8アンタゴニスト、抗αvβ8抗体またはイムノコンジュゲート)は、典型的には、ヒトおよび非ヒト哺乳動物を含む哺乳動物に対して送達される。本方法を用いて治療される非ヒト哺乳動物には、飼い馴らされた動物(すなわち、イヌ科動物、ネコ科動物、ネズミ科動物、齧歯目動物およびウサギ目動物)および家畜(ウシ科動物、ウマ科動物、ヒツジ科動物、ブタ科動物)が含まれる。
【実施例】
【0110】
以下の実施例は、請求される発明を説明するために提供され、それを限定するものではない。
【0111】
実施例1.気道リモデリングにおけるインテグリンαvβ8の役割の検討
トランスフォーミング増殖因子-β(TGF-β)は、炎症性反応および線維形成反応に関与するサイトカインである。本発明者らは以前に、IL-1βがβ8の発現をアップレギュレートすること、およびCOPD患者の気道内ではβ8発現が増大していることを示した。しかし、β8、TGF-βおよびIL-1βの相互作用はインビボではほとんど解明されていないことから、本発明者らはβ8媒介性気道リモデリングのマウスモデルを開発することにした。本明細書において、本発明者らは、IL-1-β誘発性でβ8媒介性のTGF-β活性化が、気道リモデリングにおいて決定的な役割を果たすことを示す。
【0112】
気道リモデリングの媒介におけるβ8の役割に関して、気管内アデノウイルスIL-1βを炎症のモデルとして用いて、Cre/LoxPシステムを用いることによるβ8の欠失によって取り組んだ。C57B1/6をバックグラウンドとし、loxP導入(floxed)インテグリンβ8アレル1つおよびノックアウトアレル1つを有する(Floxed/-)、6週齢〜9週齢のマウスを用いた。アデノウイルスヒトIL-1β(Ad-hIL-1β)または対照アデノウイルスを、Ad-Creを伴うかまたは伴わずに、気管内に点滴注入した。さらに、線維芽細胞が、ブレオマイシン誘発肺線維症、オボアルブミン(ovalalbumin)誘発気道リモデリングおよびAd-IL1β誘発気道リモデリングにおけるαvβ8媒介性のTGF-β活性化に主要な役割を果たすことを示すために、コラーゲンIα2プロモーターの制御下でCre-ER(T)融合リコンビナーゼを発現するマウスを用いた。組織検査によって気道形態計測上の変化を評価し、Ad-hIL-1β投与後の複数の時点でいくつかの炎症サイトカインの遺伝子発現を分析したところ、炎症性反応を特徴づける複数の遺伝子の逐次的誘導が明らかになった。
【0113】
β8条件ノックアウトモデルにおいて、β8は、ヒトIL-1β誘発性の一過性の気道炎症および線維症のために必要であった。ヒトIL-1βの添加は、β8媒介性のTGF-β活性化、マウスccl2およびccl20遺伝子の誘導、樹状細胞の動員、ならびに適応免疫応答の開始および持続化を導いた。
【0114】
これらのデータは、インテグリンβ8の条件欠失が、Ad-hIL-1βおよびオボアルブミンの両方に対する炎症性反応および線維形成反応の低下をもたらし、その結果、気道リモデリングからの防御がもたらされたことを示している。本発明者らは、気道リモデリングにおける、さらにはブレオマイシン誘発急性肺傷害に対する、IL-1β誘発性またはオボアルブミン誘発性のβ8媒介性TGF-β活性化の極めて重要な役割を特定した。
【0115】
実施例2.抗体37E1
本発明者らは、ヒトインテグリンαvβ8とそのリガンドであるトランスフォーミング増殖因子-β(TGF-β)との相互作用を選択的に阻止するマウスモノクローナル抗体(クローン37E1と命名、アイソタイプIgG2a)を作製した。TGF-βは、哺乳動物において3種のアイソフォーム(TGF-β 1〜3)として遍在性に発現されるが、そのプロペプチドであるTGF-βの潜在性関連ドメイン(LAP)とのその非共有結合性相互作用によって、不活性形態に維持される。インテグリンαvβ8はTGF-βのLAPと結合して、TGF-β1および3の活性化を媒介する。生殖細胞遺伝子欠失試験または条件的遺伝子欠失試験により、インテグリンαvβ8媒介性のTGF-β活性化がTGF-βのインビボ活性化のためには必須であり、それ故にαvβ8はTGF-β機能の「ゲートキーパー」であることが明らかになっている。特に、インテグリンαvβ8媒介性のTGF-β活性化は、COPD、肺線維症、腎線維症、炎症性脳自己免疫疾患(多発性硬化症および脱髄性疾患)、神経炎症、腎疾患、ならびに癌の増殖および転移の病態に関与する可能性が高い。一般に、インテグリンは接着分子であり、細胞外マトリックスタンパク質に対する細胞の接着を媒介する。クローン37E1は、それがαvβ8媒介性のTGF-β活性化を選択的に擾乱させ、固定化または分泌されたTGF-βに対するαvβ8の結合に対してはそうでないという点で特徴的である。このことは、インテグリンαvβ8媒介性のTGF-β活性化のみを擾乱させ、阻害することが望ましくない可能性のある細胞接着性は擾乱させないという高度の選択性をもたらす。加えて、TGF-βは必須なホメオスタシス性の上皮および免疫エフェクターであるため、TGF-βの全般的不活性化は望ましくない副作用を伴う可能性が高い。
【0116】
実施例3.抗体37E1B5
本発明者らは、クローン37E1の重鎖および軽鎖の可変領域を操作し、さらに酵母ディスプレイシステムにおけるランダム突然変異誘発および鎖シャッフリングを用いて、より親和性の高い抗体を作り出した。本発明者らは同じ抗原に対してより高度の親和性を付与する特異的なアミノ酸置換を同定し、本発明者らはこれらの突然変異を機能に応じて大きく分類した。それらの突然変異体の1つは37E1B5と命名された。これはインビトロで親和性の増大を示し、培養細胞におけるインテグリンαvβ8媒介性のTGF-β活性化を阻害する効果がより強かった。インビトロでの37E1B5抗体の有効治療用量はピコモル濃度の範囲であった。より優れた診断用および治療用の用途のために、本発明者らは、37E1B5の以下の3種のバージョンを作製した:マウスIgG1、マウスIgG2aおよび部分的ヒト化IgG1。いずれも形質転換CHO細胞において産生させた。
【0117】
実施例4.ITGB8 BACトランスジェニックマウスの作製
本発明者らは、ヒトβ8を発現するヒト化BACトランスジェニックマウスを作出し、マウスインテグリンαvβ8欠失の致死効果のレスキューを目的として、それをβ8 koマウスと交雑させた。このヒト化マウスは、肺疾患、脳疾患、肝疾患および腎疾患のモデルにおける高親和性クローンの毒性および有効性を試験するために用いうると考えられる。
【0118】
ITGB8遺伝子の5'および3'フランキング領域のそれぞれ72315 5'および30,683 3'領域を含むクローンRP11-431K20を、(Children's Hospital Oakland Research Institute, Oakland, CA)から、細菌穿刺培養物として入手した。プレート(クロラムフェニコール12.5μg/mlを有するLB)に画線培養を行い、5'および3' BAC末端に対して設計されたプライマーを使用するコロニーPCRを用いて、コロニーを選択した。配列を、5'および3'末端、5' UTRから第1イントロン、第9エクソンから第9イントロン、ならびに第10エクソン/イントロン領域で確認した。個々のコロニーを増殖させ、BACプラスミドDNAを単離した(Nucleobond)。プラスミドをPI-Sce(NEB)で線状化し、NAP5カラム上で精製した上で、DNAの濃度および完全性を確認にするためにパルスフィールド電気泳動に供した。このDNAを、UCSF Cancer Center Transgenic FacilityにおいてFVB/N胚に注入した。注入した200個を上回る胚から、24匹の仔が得られ、そのうち4匹が、5'および3' BAC末端プライマーを用いる尾部DNA PCRによってファウンダーとして同定された。
【0119】
これらの系統のうち3つ(B、CおよびD)で、生殖細胞系列伝達が得られた。系統B、CおよびDを、itgb8アレルノックアウトを1つ有するように操作したitgb8 C57B/6マウスと交雑させた。F2世代を交雑させて、itgb8 -/-をバックグラウンドとするITGB8 BAC tgマウスを得た。
【0120】
これらのマウス(系統B、CおよびD)は、3カ月齢または6カ月齢で、肉眼的な表現型異常を全く呈しない。これらの結果は、必要な調節エレメントのすべてが、BAC RP11-431K20の中に含まれる上流および下流エレメントに限局しており、itgb8 -/-マウスの致死性表現型をレスキューするための適切な組織発現が得られることを実証している。これらのマウスはまた、バイオマーカーを明らかにし、インビボでの疾患機序をさらに検討し、ヒト疾患をモデル化し、かつαvβ8媒介性のTGF-β活性化に向けた治療薬の効果を試験するための実験系も与える。
【0121】
実施例5.中和性抗インテグリンβ8はColIを減少させる
ECM産生の増大および線維芽細胞収縮性の増大は、気道壁肥厚における線維化反応で認められる顕著な特徴であり、I型コラーゲン(Col I)の増加およびSMA(αSMA)の増加はその反応の重要な生化学マーカーである。線維形成促進性の線維芽細胞表現型に対する自己分泌αvβ8媒介性のTGF-β活性化の寄与を評価するために、本発明者らは、中和性抗β8を用いた。β8阻止抗体による気道線維芽細胞の処理はαSMA発現およびCol I分泌を阻害したことから、自己分泌αvβ8媒介性のTGF-β活性化は筋線維芽細胞の表現型に影響を及ぼした。気道線維芽細胞と扁平化生ヒト気管支上皮細胞との共培養は、気道線維芽細胞によるCol I転写およびタンパク質産生の増加を導いた。コラーゲンの産生増加はIL-1β依存性および線維芽細胞β8依存性であった。扁平化生ヒト気管支上皮細胞との共培養によるCol I発現の増大は、IL-1 RAとの共培養処理によって、またはβ8 siRNAによる気道線維芽細胞のトランスフェクションによって、ほぼ完全に阻害することができた。
【0122】
実施例6.37E1B5エピトープの特性決定
マウス配列をヒトITGB8にスワッピングしたキメラ性インテグリンβ8構築物を、37E1B5結合エピトープの位置決定のために用いた。エピトープの位置決定は、抗体結合、細胞表面染色、およびフローサイトメトリーによる検出によって行った。37E1B5エピトープはヒトインテグリンβ8のアミノ酸74〜180の範囲に含まれる。37E1B5はヒトβ8と結合するが、マウスβ8とは結合しない。このため、9種の非保存的なアミノ酸の違い、または7種の軽微なアミノ酸の違い(配列の中心線に+で表示)のうち少なくとも1つを、結合エピトープに含めた。これらのドメインは、インテグリンβ8サブユニットのPsi、ハイブリッド(hybrid)、およびβ-Iドメインのα1ヘリックスとして知られる区域の部分を反映し、これらは分子の表面上に認められる。

【0123】
SEQ ID NO:11は、37E1B5エピトープ(アミノ酸74〜180)を含む、ヒトインテグリンβ8の領域を表している。SEQ ID NO:12は、37E1B5抗体による結合を受けない相同マウス配列を表している。マウス配列の140位のRは多型性であり、Hである可能性もある。
【0124】
本発明者らはさらに、どのアミノ酸が37E1B5エピトープに含まれるかを明らかにするために、この領域のドメインスワッピング試験を行い、マウス配列でヒトのものを置き換えた。本発明者らは、インテグリンβ8のマウスアミノ酸125〜180による置換が37E1B5結合性を有意に低下させることを見いだした。したがって、ヒトインテグリンβ8上のエピトープは、I125、R128、R175、F179およびF180から選択される少なくとも1つのアミノ酸を含む。
【0125】
実施例7:COPD線維芽細胞におけるインテグリンβ8発現
本発明者らは、組織染色および初代培養によって実証されたように、ヒトCOPD患者の肺由来の線維芽細胞においてインテグリンβ8の発現が増大していることを見いだした。加えて、インテグリンβ8の発現は、特発性肺線維症の患者から単離した線維芽細胞でも、正常患者由来の線維芽細胞と比較して増大している。本発明者らはまた、COPD線維芽細胞では、IL-1β依存性のインテグリンαvβ8タンパク質発現が、正常肺線維芽細胞と比較して増大していることも見いだした。これらのデータは、αvβ8がIL-1βの効果の下流標的および病的メディエーターの両方であることを実証している。
【0126】
37E1B5抗体は、インテグリンβ8が発現され、かつIL-1βおよび/またはTGF-βが病的な役割を果たす疾患において、治療的および診断的に用いることができる。
【0127】
実施例8:インテグリンβ8中和抗体は誘発性気道炎症を低減させる
本発明者らは、ヒトBACクローンRP11-431K20を用いて、BACトランスジェニックマウス3種の系統を作製した。これらのマウスを、マウスitgb8の機能性アレルを1つ有するマウスと交配させて、ヒトITGB8およびマウスitgb8の機能性コピー1つを有するマウスのF1世代を作製した。これらのマウスの交雑育種によってF2世代を作製したところ、その結果、生存能力のあるBAC ITGB8、すなわちその遺伝子のヒトコピーを有するitgb8 -/-マウスが得られ、これにより、itgb8 -/-致死性のレスキューが実証された。
【0128】
これらのマウスを、気管内アデノウイルスIL-1β送達モデルを用いる気道リモデリングの誘発に用いた。このアデノウイルスIL-1β誘発性の気道壁炎症モデルでは、ヒト慢性閉塞性肺疾患に類似した免疫学的プロフィールを有する活発な気道リモデリングが再現性を伴って誘発される。
【0129】
本発明者らは、37E1B5抗体が7mg/kgの用量で気道炎症を有意に阻止し、その際、気管支肺胞洗浄液中の好中球の有意な減少が伴うことを見いだした。組織学的に、気道壁の炎症および線維症は37E1B5によって有意に低下した。これらのデータは、itgb8の線維芽細胞特異的欠失が、アデノウイルスIL-1β誘発性の気道リモデリングを有意に阻害することができるという他のデータを補完するものである。
【0130】
本発明者らはまた、itgb8の線維芽細胞特異的欠失を有するマウスでは、アレルギー性気道リモデリング(オボアルブミン誘発性の気道炎症、線維症および粘膜化生)が大きく抑えられることも見いだした。このアレルギー性モデルも、IL-1βおよびTGF-βの両方に依存性である。これらのデータは、IL-1βおよびTGF-βが役割を果たす病的な先天免疫応答および適応免疫応答の両方の増幅におけるitgb8の一般的な役割を意味するものである。IL-1βは、気道および肺由来の線維芽細胞ならびにアストロサイトを含む複数の細胞型において、インテグリンβ8の増加を引き起こす。このIL-1β誘導性のインテグリンβ8発現はマウスおよびヒトの両方で認められる。
【0131】
実施例9:ヒト関節軟骨細胞はインテグリンαvβ8を発現する
慢性骨関節炎に対して膝の選択的修復術を受ける患者の膝の関節腔から、成人関節軟骨を採取した。初代軟骨細胞を集密度70%まで増殖させて、インテグリン受容体の発現を細胞染色およびフローサイトメトリーによって判定した。用いた抗体は抗β8(37E1B5)および抗β6(E7P6)であった。37E1B5では強い染色が検出され、E7P6では染色が全く認められなかった。TGF-βバイオアッセイ物において、抗β8(37E1B5)または中和性抗β6の存在下または非存在下で、初代軟骨細胞をTMLC TGF-βレポーター細胞(Annes et al. (2004) J. Cell Biol. 165:723)と共培養した。抗β8はTGF-β活性化の強い阻止を生じたが、一方、抗β6はそのような効果を全く生じなかった。
【0132】
これらの結果は、αvβ8が軟骨細胞において発現されることだけでなく、その発現がTGFβ活性化をもたらすことも指し示している。このことからみて、αvβ8の阻害を、活性化TGFβと関連する軟骨障害、例えば関節炎および滑膜線維症などの治療に利用することができる(例えば、Bakker et al. (2001) Osteoarthritis and Cartilage 9:128)。
【0133】
本明細書に記載された実施例および態様は説明のみを目的としたものであり、当業者にはそれらに鑑みてさまざまな修正または変更が想起されると考えられるが、それらも本出願の趣旨および範囲、ならびに添付の特許請求の範囲に含まれるものとする。本明細書に引用した刊行物、特許および特許出願はすべて、その全体が目的を問わず、参照により本明細書に組み入れられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性のある成熟TGFβペプチドの放出を阻害するが、αvβ8発現細胞上のαvβ8に対する潜在型TGFβの接着を大きくは阻害しない、αvβ8と特異的に結合する単離された抗体。
【請求項2】
β8と特異的に結合する、請求項1記載の単離された抗体。
【請求項3】
SEQ ID NO:11のポリペプチド配列中にあるβ8上のエピトープと特異的に結合する、請求項1記載の単離された抗体。
【請求項4】
αvβ8に対する結合に関して、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6およびSEQ ID NO:7の3種の軽鎖CDRを含む軽鎖可変領域ならびにSEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10の3種の重鎖CDRを含む重鎖可変領域を有する抗体と競合する、請求項1記載の単離された抗体。
【請求項5】
SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6およびSEQ ID NO:7の3種の軽鎖CDRを含む軽鎖可変領域ならびにSEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10の3種の重鎖CDRを含む重鎖可変領域を有する、請求項1記載の単離された抗体。
【請求項6】
SEQ ID NO:3または4の軽鎖可変領域およびSEQ ID NO:1または2の重鎖可変領域を有する、請求項1記載の単離された抗体。
【請求項7】
アイソタイプがIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4である、請求項1記載の単離された抗体。
【請求項8】
モノクローナル抗体である、請求項1記載の単離された抗体。
【請求項9】
ヒト抗体、ヒト化抗体またはキメラ抗体である、請求項1記載の単離された抗体。
【請求項10】
請求項1記載の抗体および薬学的に許容される添加剤を含む薬学的組成物。
【請求項11】
請求項1記載の抗体をコードする、単離された核酸。
【請求項12】
請求項11記載の核酸を含む、単離された発現ベクター。
【請求項13】
請求項12記載のベクターを含む、単離された宿主細胞。
【請求項14】
個体におけるTGFβ活性化を低減させる方法であって、請求項1〜9のいずれか一項記載の抗体をそれを必要とする個体に投与して、それにより、その個体におけるTGFβ活性化を低減させる段階を含む方法。
【請求項15】
個体がヒトである、請求項14記載の方法。
【請求項16】
個体が、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、関節炎、線維性障害、炎症性脳自己免疫疾患、多発性硬化症、脱髄性疾患(例えば、横断性脊髄炎、デビック病、ギラン・バレー症候群)、神経炎症、腎疾患、腺癌、扁平上皮癌、神経膠腫、乳癌、ならびに癌の増殖および転移からなる群より選択される少なくとも1つの病状を有し、かつTGFβの低減が病状の改善をもたらす、請求項14記載の方法。
【請求項17】
線維性障害が、気道線維症、特発性肺線維症、非特異的間質性肺炎、感染後肺線維症、びまん性肺胞障害、膠原血管病関連肺線維症、薬剤誘発性肺線維症、珪肺症、アスベスト関連肺線維症、呼吸細気管支炎、呼吸細気管支炎間質性肺疾患、剥離性間質性線維症、特発性器質化肺炎、慢性過敏性肺炎、薬剤関連肺線維症、腎線維症および肝線維症からなる群より選択される、請求項16記載の方法。
【請求項18】
生物試料中のインテグリンβ8の存在を判定する方法であって、
生物試料を、標識化抗体を形成させるための検出可能な標識と結びつけられた請求項1〜9のいずれか一項記載の抗体と接触させる段階;および
標識化抗体の存在を検出して、それにより、インテグリンβ8の存在を判定する段階
を含む方法。
【請求項19】
判定がインビトロにおいてである、請求項18記載の方法。
【請求項20】
判定がインビトロにおいてである、請求項18記載の方法。
【請求項21】
慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、関節炎、線維性障害、炎症性脳自己免疫疾患、多発性硬化症、脱髄性疾患(例えば、横断性脊髄炎、デビック病、ギラン・バレー症候群)、神経炎症、腎疾患、腺癌、扁平上皮癌、神経膠腫、乳癌、ならびに癌の増殖および転移からなる群より選択される病状を検出するために用いられる、請求項18記載の方法。
【請求項22】
個体におけるTGFβ活性化を低減させる方法であって、インテグリンαvβ8のアンタゴニストをそれを必要とする個体に投与して、それにより、その個体におけるTGFβ活性化を低減させる段階を含む方法。
【請求項23】
アンタゴニストが、活性のある成熟TGFβペプチドの放出を阻害するが、αvβ8発現細胞上のαvβ8に対する潜在型TGFβの接着を大きくは阻害しない、請求項22記載の方法。
【請求項24】
個体がヒトである、請求項22記載の方法。
【請求項25】
アンタゴニストがαvβ8と特異的に結合する抗体である、請求項22記載の方法。
【請求項26】
個体が、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、関節炎、線維性障害、炎症性脳自己免疫疾患、多発性硬化症、脱髄性疾患(例えば、横断性脊髄炎、デビック病、ギラン・バレー症候群)、神経炎症、腎疾患、腺癌、扁平上皮癌、神経膠腫、乳癌、ならびに癌の増殖および転移からなる群より選択される少なくとも1つの病状を有し、かつTGFβの低減が病状の改善をもたらす、請求項22記載の方法。
【請求項27】
線維性障害が、気道線維症、特発性肺線維症、非特異的間質性肺炎、感染後肺線維症、びまん性肺胞障害、膠原血管病関連肺線維症、薬剤誘発性肺線維症、珪肺症、アスベスト関連肺線維症、呼吸細気管支炎、呼吸細気管支炎間質性肺疾患、剥離性間質性線維症、特発性器質化肺炎、慢性過敏性肺炎、薬剤関連肺線維症、腎線維症および肝線維症からなる群より選択される、請求項26記載の方法。

【公表番号】特表2013−520173(P2013−520173A)
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−554069(P2012−554069)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【国際出願番号】PCT/US2011/025514
【国際公開番号】WO2011/103490
【国際公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(506115514)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (87)
【Fターム(参考)】