インテグリン拮抗物質の超高速大量探索方法及びそれによる新規ペプチド
本発明は、蛋白質チップを用いてインテグリンの拮抗物質を探索する方法及びそれにより探索された有用なペプチドに関する発明である。用いられた蛋白質チップは特定の基質(substrate)に新物質であるカリックスアーレン(calixarene)誘導体をコーティング(coating)したものであって、蛋白質が均一で高い活性度(
activity)を維持することができ、この上にインテグリン受容体蛋白質を高密度
で配列して、リガンドの結合を特異的に抑制できる物質(蛋白質、ペプチド、低分子化合
物等)を探索することができる。用いられたインテグリンはインテグリンαVβ3とインテ
グリンαIIbβ3であり、ペプチドライブラリーを用いて探索された新しい拮抗ペプチドは結合力が卓越である。
activity)を維持することができ、この上にインテグリン受容体蛋白質を高密度
で配列して、リガンドの結合を特異的に抑制できる物質(蛋白質、ペプチド、低分子化合
物等)を探索することができる。用いられたインテグリンはインテグリンαVβ3とインテ
グリンαIIbβ3であり、ペプチドライブラリーを用いて探索された新しい拮抗ペプチドは結合力が卓越である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高感度蛋白質チップに少量の蛋白質のみを結合させた後、発生する蛋白質相互作用を用いた新薬候補物質のスクリーニング方法及びその方法により探索された有用なペプチドに関する発明である。
【背景技術】
【0002】
ポストゲノム(Post-genome)研究の重要な分野の一つは蛋白質体機能(functional proteomics)研究分野であり、このような蛋白質体機能研究
は今後蛋白質発現パターンの分析、疾病診断のためのバイオマーカーの分析、新しいバイオマーカー及び新薬ターゲットの発掘、そして新薬候補物質の探索など、新薬開発の核心的な技術として広く応用される展望である。しかし、蛋白質機能研究の促進のためには新しい技術的な突破口に備え得る技術革新が行われるべきであり、このような分野が高感度・高密度蛋白質チップ(highly sensitive protein microarray chip)技術であると言える。蛋白質チップ技術は蛋白質、抗体、ペプチド、リガンドなどの生体分子を用いて小型化及び集積化されたチップ表面での反応から大量及び同時分析をするための技術であって、最近、ヒトゲノムマップの発表で蛋白質の相互作用及び機能分析の重要性が台頭されながら、DNAチップと共に活発に開発されつつある。
【0003】
インテグリン受容体は、細胞付着及び移動、分化、増殖などのような細胞の重要な生理作用を調節する細胞表面受容体である。インテグリンはαとβ単位体(subunit)が非共有結合からなるヘテロダイマ(heterodimer)として作用し、αとβ単位体が対を成して22種のインテグリン系(family)を構成している。これらのリガンド特異性が各インテグリン種類によって異なり、一種類のインテグリンが複数のリガンドを同時に結合することができる。リガンドの種類としては、主に細胞外基質蛋白質(ext
racellular matrix proteins)(ビトロネックチン(vitro
nectin)、フィブロネックチン(fibronectin)、コラーゲン(collagen)、ラミニン(laminin)、ボンウィルレブランド因子(Von Willeb
rand Factor; vWF)、フィブリノゲン(fibrinogen)等)があって
、非常に多様である。インテグリンの構造を見ると、長い細胞外ドメイン(extrac
ellular domain)と短い原形質ドメイン(cytoplasmic domain)とから成っているが、細胞外ドメインはリガンドが結合する部位を有し、原形質ド
メインは細胞質内のサイトスケレトン(cytoskeleton)と繋がっていて、インテグリンが活性化するとサイトスケレトン再配列(cytoskeleton rearrangement)が行われてフォカルアドへジョンコンプレックス(focal adh
esion complex)を形成しながら細胞付着及び移動過程を遂行する。インテグリンαVβ3に対する拮抗物質は、例えば、蛇の毒から由来したディスインテグリン系(d
isintegrin family)がある。ディスインテグリンは約30余種類が知られており、共通したインテグリン結合部位であるArg-Gly-Asp(RGD)配列を有するのでインテグリンとリガンドとの結合を抑える機能を有する。これらは血小板表面に存在するインテグリンの一種であるαIIbβ3インテグリンを遮ってリガンドであるフィブリノゲン(fibrinogen)の結合を抑制し、血小板の凝集を阻害する作用をする。このようなディスインテグリンの特性のため、インテグリンαVβ3に対する拮抗物質として作用し、血管新生(angiogenesis)を抑制する。
【0004】
インテグリンαVβ3に対する人間化した(humanized)mAbであるビタックシン(Vitaxin)は、現在、固形癌治療目的で臨床試験1相で殆ど毒性がなく成功的に
完了され、現在、臨床試験2相が進行中である。特異なのは臨床試験を施した12人の癌患者のうち、一人は癌組織が50%以上減ったということである。EMD121974はMerck社で開発した内皮細胞のインテグリンαVβ3を遮る低分子物質(cyclic
RGDペプチド)として臨床実験1相が進行中である。この物質はRGD配列を有するサ
イクリック(cyclic)ペンタペプチドであって,動物実験を通じてヒトの悪性黒色腫等において血管新生を抑え、癌成長を阻害する活性を有している。エンドスタチン(En
dostatin)の場合、今までその作用メカニズムが明かになっていないが、最近組
み換えヒトエンドスタチン(recombinant human endostatin)が血管内皮細胞のα(5)-とα(v)-インテグリンと作用して内皮細胞の移動のようなインテグリン−依存的な内皮細胞機能を抑制すると判明された。従って、このような結果は、インテグリンをターゲットにした拮抗物質は抗癌治療を目的とする血管新生抑制剤として開発を可能にするということを示唆するのである。
【0005】
既存のインテグリンの拮抗物質探索技術は研究所又は病院などから診断を目的として常用化されて、広く用いられる技術の一つである酵素免疫抗体法(Enzyme Linked Immuno Sorbent Assay,ELISA)である。しかし、この方法は蛋白質量が多く要されるだけでなく、非特異的反応であり、大量探索に不適切である。
【0006】
[発明の詳細な説明]
本発明は、蛋白質チップを用いてインテグリンに反応する拮抗物質を迅速かつ大量探索する方法を提供する。本発明は、また、前述したインテグリン拮抗物質探索方法を用いて探索された有用な新規ペプチドを提供する。
【0007】
より具体的に、本発明は、前述した技術的課題を達成するために、蛋白質チップ上にインテグリンαIIbβ3及び/またはαVβ3を付着する段階、上記インテグリンが付着された蛋白質チップに、蛍光物質が付けられたリガンド蛋白質及びペプチドライブラリーのペプチドプールを反応させる段階、上記の反応が終った後、緩衝溶液で洗浄する段階、及び上記洗浄の後、リガンド結合程度を測定する段階を含むインテグリン拮抗物質の超高速探索方法を提供する。
【0008】
本発明において、前述したリガンドは、ビトロネックチン(EMBO J.1985 O
ct; 4(10):2519-24)、ファイブロネクチン(Nucleic Acids R
es.1984 Jul 25; 12(14):5853-68)、コラーゲン(FEBS Le
tt.1987 Dec 10; 225(1-2): 188-94)、ラミニン(Lab Invest.1989 Jun; 60(6):772-82)、ボンウィルレブランド因子(Von Willebrand Factor; vWF; Biochemistry.1986 Jun 3;25(11): 3171-84)及びフィブリノゲン(Thromb Haemost.1979 Jun 30;41(4):662-70)からなる群より選択された何れか一つのリガンドであるのが望ましい。
【0009】
本発明は、また、前述した探索方法によって探索されたインテグリン拮抗作用を有する有用な新規ペプチドである、配列番号1のHSDVHK、配列番号2のHGDVHK、配列番号3のHHLLHK、配列番号4のHGLVHK、及び配列番号5のHGDLHKペプチドを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明において、蛋白質チップとして、ProteoChipTM (Proteogen,Inc.,ソウル、韓国)が用いられる。ProteoChipTMは、アミン化した(aminated)ガラススライドにカリックスアーレン(calixarene)誘導体を
コーティング(coating)したものであって、カリックスアーレン誘導体は2つの作
用基を持つ分子リンカー(bifunctional molecular linker)として作用する。(Han M.H.et al.:ProteoChip,its fa
brication method and detection of protein using ProteoChip,Korea patent application No.2002-41770,2002及びLee,Y.S.et al.:ProteChip:a highly sensitive protein microarray proposed by a novel method of protein immobil
ization for application of protein−protein
interaction studies,Proteomics 2003;3:22
89−2304参照)。ProteoChipTM(Proteogen Inc.から購入)にインテグリン受容体を付着させ、インテグリン単一層を構成した後、蛍光物質で標識
されたリガンド蛋白質と無作為配列を有するペプチドを混合してリガンド結合を妨げる最適なペプチドを超高速大量探索することができるか否かを実験した。
【0011】
まず、チップ上に結合されたインテグリン受容体の安定性を調べるためにインテグリン-リガンド間の親和力を確認した結果、濃度依存的にリガンドがチップに固定されたイン
テグリンに結合することから見て、固定化されたインテグリン受容体の安定性には全く問題が無いということを確証したのである。今まで、インテグリン拮抗物質として知られているディスインテグリン(disintegrin)及びインテグリンに対する単一抗体等を利用してインテグリン-リガンド結合を抑えることができるのかを調べた結果、これら
の蛋白質が全てProteoChipTM上で効果的にインテグリン-リガンド結合を競争
的に抑制することを確認したのである。実際に、約200万種類の無作為配列を有するペプチドを有するペプチドライブラリーを対象としてインテグリン−リガンド結合抑制実験をProteoChipTMで大量探索を試みたが、その結果、最適なアミノ酸配列を有するペプチドを探索することができたのである。このような結果は、ProteoChipTMがインテグリン−リガンド結合を妨げる新しい先導物質の探索を可能にして新薬開発の新しい探索技術として用いられることを証明するのである。
【0012】
本発明の工程と望ましい非限定的な実施例に対して図面を参照しながら詳しく説明すると次のようである。
実施例1:蛋白質チップ上にインテグリン受容体の固定化
蛋白質チップとしてProteoChipTM(Proteogen,Inc.,ソウル
、韓国)を用いて、ProteoChipTM(Proteogen,Inc.,ソウル、韓国)上にマイクロアレイ(CM-1000;Proteogen,Inc.,ソウル、韓国)
でインテグリンをスポッティングし、インテグリン受容体マイクロアレイ(microa
rray)を構成した(Lee,Y.S. et al.:ProteoChip:a hig
hly sensitive protein microarray proposed
by a novel method of protein immobilization
for application of protein-protein interaction studies,Proteomics 2003;3:2289−2304参照)。αIIbβ3インテグリンはGRGDSPK−セファロス(Sepharose)コラム
クロマトグラフィーを用いて血小板から分離精製し(Kang I.C.and KIM D.S.,Analysis of potent glycoprotein IIb−IIIa
antagonist from
natural sources. J Biochem Mol Biol 1998;3
1:515−518参照)、αVβ3インテグリンはChemicon International,Inc.(CA,USA)で購入して用いた。
【0013】
10mM β-オクチルチオグルコピラノサイド(octylthioglucopyr
anoside)、1.0mM CaCl2、1.0mM MgCl2、及び30%グリセ
ロールを含有する燐酸-緩衝生理食塩水(phosphate-buffered sal
ine,PBS)で希釈されたインテグリン(40μg/ml)をスポッティングした後、37℃で3時間保管し、その後、結合して残ったインテグリンを0.5%ツイン20を含有した燐酸-緩衝生理食塩水(0.5%PBST)で洗浄した。製造されたインテグリンマイ
クロアレイを使用時まで4℃で保管した。このように製造されたインテグリンマイクロアレイ(インテグリン付着蛋白質チップ)をインテグリン受容体の拮抗物質超高速大量探索に用いたのである(図1参照)。
【0014】
実施例2:インテグリンマイクロアレイを用いたインテグリン-リガンド結合反応実験
実施例1で製造したインテグリン付着蛋白質チップに蛍光物質(Cy-5またはCy-3;Amersham-Pharmacia Biotech,米国)が付いているリガンド蛋
白質(fibrinogenまたはvitronectin;Chemicon Inte
rnational, Inc.,米国)を1μg/ml〜1fg/mlまでマイクロアレ
イにスポッティングした後、温度が37℃湿度が75%以上のオーブンで1時間反応させた。0.5%PBSTに10分程度浸して洗浄した後、蛍光スキャナーでインテグリン-
リガンド反応結果を観察した。
【0015】
濃度に応じた蛍光の相対的強さをグラフに描くと、線形で示されることが分かる。これで、限界測定濃度が1fg/mlまでであることが分かる。(図2)。
実施例3:インテグリン拮抗物質によるインテグリンαIIbβ3-フィブリノゲン結合抑制実験
実施例1で製造したインテグリンαIIbβ3-付着蛋白質チップに、蛍光物質(Cy-5)が付いているリガンド蛋白質(fibrinogen 100ng/ml)と知られているイ
ンテグリン拮抗物質としてディスインテグリンの種類であるエッチスタチン(echis
tatin)250μg/ml、フラボリジン(flavoridin)250μg/ml、
キストリン(kistrin)250μg/ml、サルモシン(salmosin)2.6n
g/mlとインテグリンに対する単一クローン抗体(mAb)1.0mg/ml、及び多様な濃度の合成RGDペプチド(エッチスタチン、フラボリジン、キストリン:Sigma-Aldrich,米国;サルモシン:遺伝子組換え大腸菌から分離精製;インテグリンに対する単一クローン抗体:Chemicon International,Inc.米
国;合成RGDペプチド:韓国生命工学研究院で合成)を混合して、マイクロピペット又
はマイクロアレイ(CM-1000;Proteogen,Inc.,ソウル、韓国)を用
いてチップ表面に固定されたインテグリン受容体の上に落とした後、温度が37度湿度が75%以上のオーブンで4〜12時間反応させた。反応後、3%BSAが含まれた0.5%PBSTで10分程度洗浄した。蛍光スキャナーを用いてリガンド結合程度を相対的蛍光の強さに分析することにより、拮抗物質の競争的拮抗能力を測定した。その結果、知られているインテグリン拮抗物質処理群から相対的に顕著に低い蛍光強さを示すことから見て、これらの物質がインテグリンαIIbβ3-フィブリノゲン結合反応を効果的に抑制する
のであることを証明する(図3)。
【0016】
図3で実験に用いたRGEとRGDとは自動化ペプチド合成装置を用いて合成したものであって、このようなペプチドを注文者の要求に応じて合成してくれる業者から購入し実験した。実験に用いたものは塩基が6個であるものであって、中間に塩基配列であるRGEまたはRGDを有する。一般に、インテグリンαIIbβ3は塩基配列であるRGDとは結合しフィブリノゲンがインテグリンαIIbβ3と結合することを抑制する。しかし、RGEはインテグリンαIIbβ3と結合しないのでこのような役割を果たせない。図3はこのような内容を実験した結果である。つまり、まず、インテグリンαIIbβ3がスポッティングされているチップに、RGDまたはRGEを濃度別に一定濃度の蛍光が付いているフィブリノゲンと混合して抑制役割をするか否かを実験した結果である。結果は蛍光スキャナーで測定し蛍光強度を測定することになる。本来は赤色または青色のような一つの色で結果が
出るが、この場合、蛍光強度を見分け難く機器のソフトウェアがこれを蛍光強度に応じて色の変化を与えるようになっている。通常、最も蛍光強度が高い場合、白色、そして赤、橙色、黄色、緑、青の順に蛍光強度を表現するようになる。即ち、結果を見ると、RGE(濃度別)とフィブリノゲンとが混合された場合、色が白色または赤色であってRGEがインテグリンαIIbβ3とフィブリノゲン間の相互作用を抑えることができないということが分かる。しかし、RGD(濃度別)と一定濃度のフィブリノゲンが混合された場合,RGDの濃度が増えることに従い、白色から黄色に変化する。つまり、RGDがフィブリノゲンのインテグリンに結合することを阻害し、蛍光強度が減って来ることが分かる。
【0017】
実施例4:インテグリン拮抗物質によるインテグリンαVβ3- ビトロネックチン結合抑
制実験
実施例1で製造したインテグリンαVβ3-付着蛋白質チップに、蛍光物質(Cy-3)が付いているリガンド蛋白質(vitronectin 100ng/ml)と知られているイ
ンテグリン拮抗物質でディスインテグリンの種類であるエッチスタチン(echista
tin)250μg/ml、フラボリジン(flavoridin)250μg/ml、キス
トリン(kistrin)250μg/ml、サルモシン(salmosin)2.6ng/
mlとインテグリンに対する単一クローン抗体(mAb)1.0mg/ml、及び多様な濃度の合成RGDペプチド(エッチスタチン、フラボリジン、キストリン:Sigma-Aldrich,米国;サルモシン:遺伝子組換え大腸菌から分離精製;インテグリンに対する単一クローン抗体:Chemicon International,Inc.米国;
合成RGDペプチド:韓国生命工学研究院で合成)を混合して、マイクロピペット又はマ
イクロアレイ(CM-1000;Proteogen,Inc.,ソウル、韓国)を用いて
チップ表面に固定されたインテグリン受容体の上に落とした後、温度が37度湿度が75%以上のオーブンで4〜12時間反応させた。反応後、3%BSAが含まれた0.5%PBST溶液で10分程度洗浄した。蛍光スキャナーを用いてリガンド結合程度を相対的蛍光の強さに分析することで、拮抗物質の競争的拮抗能力を測定した。その結果、知られているインテグリン拮抗物質処理群から相対的に顕著に低い蛍光強さを示すことから見て、この物質がαVβ3-ビトロネックチン結合反応を効果的に抑制することを証明する(図4)
。
【0018】
図4に用いた拮抗物質は既にインテグリンαVβ3-ビトロネックチンの拮抗物質で広く
知られている物質である。やはり、これも拮抗物質と蛍光を付けたビトロネックチンを混合してインテグリンαVβ3とビトロネックチン相互作用を抑制するか否かを実験した結果である。対照群(control)は拮抗物質がなく蛍光が付いたビトロネックチンがある場合であり、その他は、拮抗物質とRGE塩基配列を含むペプチドをもって実験した結果である。これも、図3の説明のように、蛍光強度はにじ色で表現される。つまり、結果を見ると、対照群(control)、つまり、蛍光の付いたビトロネックチンのみある場合、そしてRGEが含まれたペプチドの場合、蛍光の色が白色と赤色で現れている。つまり、インテグリンαVβ3とビトロネックチンが相互作用をするということが分かる。しかし、拮抗物質が含まれた場合、拮抗物質がインテグリンαVβ3とビトロネックチンの相互作用を抑えてインテグリンαVβ3にビトロネックチンが結合しないので蛍光が最も低い青色で現れている。
【0019】
実施例5:インテグリンマイクロアレイを用いてペプチドライブラリーからインテグリ
ン拮抗ペプチドの超高速大量探索
実施例1で製造したインテグリンαVβ3-付着蛋白質チップに、蛍光物質(Cy-3)が付いているリガンド蛋白質(フィブリノゲン100ng/ml及びビトロネックチン100
ng/ml)とペプチドライブラリーの114種類のペプチドプール(pool)を混合し
て、マイクロピペットまたはマイクロアレイ(CM-1000;Proteogen,Inc.,ウル、韓国)を用いてチップ表面に固定されたインテグリン受容体の上に落とした
後、温度が37℃湿度が75%以上のオーブンで4〜12時間反応させた。反応後、3%BSAが含まれた0.5%PBST溶液で10分程度洗浄した。蛍光スキャナーを用いてリガンド結合程度を相対的蛍光の強さに分析することにより、拮抗物質の競争的拮抗能力を測定した。その結果、知られているインテグリン拮抗物質であるRGDペプチドより相対的に顕著に低い蛍光強さを示すペプチドを観察することができ、よって、このペプチドが、インテグリンαVβ3に対する結合力が合成RGDペプチドより遥かに強いペプチドであることを証明するのである。四角で示されたペプチド配列は拮抗能力を有するペプチドを意味する(図5及び図7)。これを根拠として、αVβ3に特異的に結合し、拮抗作用をするペプチド配列を決めることができ、これらに対する生物学的活性分析結果は後述する図9、図10、図11、図12及び13に示した。各ペプチド配列はインテグリン結合部位として知られているアミノ酸配列(例;RGD、LDV等)とは全く異なり、かつ、今まで報告されなかった新しいアミノ酸配列を有している。この結果から見ると、本発明のインテグリンマイクロアレイは、拮抗ペプチドを探索する道具として非常に有用であることを証明するのであり、さらに、新薬候補物質の探索技術としてProteoChipTMを用いたインテグリンマイクロアレイが用いられるということを意味するのである。
【0020】
実施例6:探索発掘されたインテグリン拮抗ペプチドのアミノ酸配列によるインテグリ
ン拮抗作用分析
実施例3〜5の競争的阻害分析(competitive inhibition as
say)を通じてインテグリンαVβ3-特異抑制活性を示す新しいペプチドを掘り出した(
表1及び表2参照)。表1は、インテグリンマイクロアレイを用いて発掘された拮抗ペプ
チド配列を示す表である。表1の結果に基づいて見ると、ヘキサペプチドの1番位置にヒスチジンまたはロイシン等を含むと、相対的に他のものより阻害程度が最も良いことを意味し、ヘキサペプチドの1番位置にグルタメート又はグルタミンがある場合、ある程度阻害するが、その程度がヒスチジン、ロイシン、又はチロシンよりは相対的に弱いということを意味する。以下の表1にインテグリンαVβ3-ビトロネックチン相互作用を阻害する
ヘキサペプチド群内の指定位置アミノ酸を示した。以下の表1において主な阻害は80%以上の阻害である場合、付随的な阻害は50%以下の阻害である場合を示し、この結果は三回の独立した実験を通じて得られたものである。
【0021】
【表1】
【0022】
このような結果を基にインテグリンαVβ3-特異抑制活性を示すと予想される12個の
ペプチドを製造し、これを用いて濃度別にインテグリンαVβ3-ビトロネックチン相互作
用の抑制程度を評価した。言い換えれば、アミノ酸配列の差による拮抗作用の強度を調べた。以下の表2にインテグリンαVβ3-ビトロネックチン相互作用を阻害する合成ペプチ
ド及びこれらの阻害濃度を示した。以下の表2において阻害はペプチドの無い対照群に対して拮抗活性を有する最大阻害濃度の1/2に定量化し、NDは活性が検出されなかったということを意味する。
【0023】
【表2】
【0024】
インテグリンαVβ3-特異抑制活性実験でHSDVHKとHGDVHKは既存に拮抗物
質として知られいるGRGDSPと比較優位の拮抗能力を示したが、HHDVHKは拮抗能力が殆どないことと観察された。これは2、3、4番目のアミノ酸(ヘキサペプチドの
二番目のアミノ酸はGly、Ser、及びHisであり;三番目のアミノ酸はLeu及びAspであり;四番目のアミノ酸がLeu及びValである)が拮抗作用に重要な役割を
果たすと予想される。拮抗作用を有するペプチドの中でもHSDVHKが最も効果的である。また、この結果はアミノ酸配列特異的拮抗作用をProteoChipTMを用いたインテグリンマイクロアレイで正確に測定できるということを明かす証拠である。ゆえに、本発明のインテグリンマイクロアレイは蛋白質-蛋白質相互作用を正確で、敏感に分析す
ることのできる道具になるだろうと解釈される。
【0025】
実施例7:インテグリンマイクロアレイを用いて探索した拮抗ペプチドの生物学的活性
分析
7−1)ヒト子宮血管内皮細胞(HUVEC)移動実験
HUVE細胞を10%牛胎児血清(fetal calf serum)と3ng/ml
bFGFが含有されたM199培地で培養した。この細胞を移動実験(migratio
n assay)に用いるために16時間コントロール培地(0.1%BSAが含まれたM
199)で培養した後、ボイデンチャンバー(Boyden chamber)内に挿入されているゼラチン(gelatin)(40μM)で塗布された多孔性膜の上側間に3X104
個で加えた。同時に、試料も濃度別に一緒に処理した。チャンバーの下側間にはケモアトラクタント(chemoattractant)であるbFGFを入れてHUVE細胞が下側間に移動できるように導いた。4時間37℃で培養した後、膜を除去し固定した後、クリスタルバイオレット(crystal violet)で染め、膜を通って移動した細胞
数を顕微鏡で測定した。その結果を図9に示した。図9に示したように、HSDVHKとHGDVHKとは効果的にヒト子宮血管内皮細胞(HUVEC)の移動を抑えたが、HHDVHKは影響が殆ど無かった。このような結果から、インテグリンαVβ3-特異抑制ペプ
チドの生物学的活性を確認できるのである。
【0026】
7−2)鶏絨毛膜血管新生抑制実験
(1) 実験材料及び試薬調剤
受精卵はプルムウォン(株)(韓国)から購入し、サンプルローディング(Sample loading)のためのサーマノックスカバースリップ(Thermanox cover-slips)はNunc社(米国)から、観察時必要な10%イントラリポス(Intralipose)(脂肪懸濁液)と注射器は緑十字社(韓国)から各々購入した。
【0027】
(2) 実験段階(過程)
1日目(0日胚):受精卵をインキュベータで孵す。この時、インキュベータの温度は37〜38℃で、湿度は90%以上維持されるように随時確認した。
【0028】
3日目(2日胚):受精卵の尖った終部にカッターで疵を出した。以後、水平に横たえて5ml シリンジ(syringe)で穴をつけた後、アルブミン(albumin)を2m
lくらい抜き出した。受精卵が乾燥せず、また感染されないよう穴を透明なテープで封じた後、穴が下に向かうように置いてまたインキュベータに保管した。
【0029】
4日目(3日胚):受精卵のエアサック(air sac)がある方(注射器穴の反対側)に
直径2〜3cmの丸型窓(window)をつけ、受精卵に確認されたものだけ広い透明テープで封じ、さらにインキュベートさせた。参考に、丸型窓をつける方法は鋭いカッターで受精卵の殻の上に丸型に疵を出した後ピンセットで殻を取り出した。
【0030】
5日目(4.5日胚):この時期になると、CAMが生成され、その直径が2〜5mm程度になる。サンプルを適当な溶媒(ddH2O、エタノールなど)に溶かしてから4等分されたサーマノックスカバースリップの上に10μlずつ落とし、クリーンベンチ(cle
an bench)内で乾かした。ここで、サーマノックスカバースリップ(Therma
nox coverslip)は、はさみで切って4等分しクリーンベンチのUV下でオーバーナイト(overnight)させたのである。受精卵の透明テープをカッターで取り出し、CAMを探して確かめた後、ピンセットでサンプルが処理されたサーマノックスを覆し置いて、さらに透明テープで防いだ。この際、使うはさみ、カッター、ピンセットなどは70%エタノールで消毒して使用し、ピンセットはサンプルを一つ一つロードする度に消毒して用いた。
【0031】
7日目(6.5日胚):透明テープをカッターで取り出した。シリンジでイントラリポス(脂肪懸濁液)を1ml取って、気泡を除去した後、CAMのすぐ下に注入した。この際、白色基に明らかな血管を観察できた。シリンジでイントラリポスを注入する際には血管が傷つかないように注意する。観察が終った受精卵はカメラで近接撮影した。
【0032】
実験結果、図9の結果と一致するように、HSDVHKとHGDVHKは効果的に鶏絨毛膜血管新生(CAM angiohenesis)を抑える効果が強弱の差を表しながら
観察されたが、HHDVHKは影響が殆ど無かった。結果をまとめて図10に示した。
【0033】
7−3)皮下固形癌の成長抑制実験
ルイス肺癌細胞(Lewis lung carcinomas cell、1X106個)をC57BL/6マウスの背(dorsal)中間部位に皮下注射し、腫瘍の嵩が100〜200mm3になった時、無作為に三つの群に分けた。二つの群には一日に一回、腫瘍か
ら離れた部位にHGDVHK又はHSDVHK(100mg/マウスkg)PBS溶液を各々皮下注射し、他の一つの群には対照群としてPBS溶液を注射した。全てのグループにおいて、腫瘍の大きさを毎日同一時間に測定し、実験は対照群のマウスが死んだ時に中断した。
【0034】
実験結果、ルイス肺癌細胞を実験マウスに注射して作った固形癌の成長は、100mg/マウスkgの HSDVHKを投与すると、顕著に抑制されることを観察した。このよ
うな結果は、HSDVHKの抗新生血管形成活性により固形癌の成長を抑えた結果であると解釈される。その結果をまとめて図11、図12及び図13に示した。
【0035】
以上の結果から見ると、本発明により製造されたインテグリンマイクロアレイはペプチドライブラリーを通じてインテグリンと特異的に結合する拮抗ペプチドを効果的に探索す
ることができ、その結果、今まで知られていなかった独特なアミノ酸配列を有するペプチドを掘り出すことができたのである。同時に、このような拮抗ペプチドの生物学的活性をインビトロ(in vitro)ヒト子宮血管内皮細胞移動実験、インビボ(in vivo)鶏絨毛膜血管新生抑制実験及び皮下固形癌成長抑制実験を通じて証明したのである。
【産業上の利用可能性】
【0036】
以上のような本発明は次のような効果を奏する。
第一、新薬候補物質スクリーニングに応用することができる。インテグリン拮抗物質の超高速大量探索(High-Throughput Screening)が可能であるため、疾患と係わった他の種類の標識蛋白質に対する拮抗蛋白質の超高速大量探索が可能になるので短い時間内に多くの新薬候補物質を探索することができる。
【0037】
第二、ProteoChipTMを用いて製造したインテグリン蛋白質チップのインテグリン-リガンド反応は、測定の限界が非常に低いので高感度測定が可能である。既存のイ
ンテグリン-リガンド相互作用研究方式はELISA方法であったが、これは蛋白質の量
が多く所要され、非特異的反応を現す短所があったのである。しかし、ProteoChipTMを用いて、使用される蛋白質の量がELISAより1,000倍以上少ない量を用いるため、既存に用いたものより費用の面で遥かに節減効果があり、さらに、その結果も既存のものより高感度測定が可能であるため、より良質の結果を得ることができる。
【0038】
第三、蛋白質-蛋白質相互作用研究に用いられる。インテグリン受容体を一つの例とし
てインテグリン-リガンド相互作用を調べたが、他の多くの種類の蛋白質に対して反応す
る蛋白質-蛋白質相互作用研究も可能である。
【0039】
第四、応用性が多様である。つまり、蛋白質-DNA、蛋白質-小分子(Small molecules)(化学的化合物)、蛋白質-特定細胞との相互作用などの研究が可能になるのである。
【0040】
第五、本発明は、優れたインテグリンαIIbβ3及びインテグリン αVβ3阻害活性を有
する新規ペプチドを提供し、このような本発明のペプチドは抗癌剤として用いられるのである。
【0041】
本明細書に記載された実施例と図面に示された構成は本発明の最も望ましい一実施例に過ぎず、本発明の技術的思想のすべてを代弁するものではないため、本出願時点においてこれらに代替できる多様な均等物と変更例が有り得ることを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】図1は蛋白質チップであるProteoChipTM上にインテグリン受容体の固定化方法を模式的に示した図である。
【図2】図2は蛋白質チップであるProteoChipTMを用いたインテグリン-リガンド結合反応の実験結果を示した図である。
【図3】図3は上のようなインテグリン-リガンド結合反応の一つの実施例であって、インテグリン拮抗物質によるインテグリンαIIbβ3-フィブリノゲン結合抑制実験を遂行した結果である。実験に用いたRGEとRGDは自動化ペプチド合成装置を用いて合成したものであって、このようなペプチドを注文者の要求に応じて合成してくれる業者から購入した。実験に用いたものは塩基が6個であるもので中間に塩基配列であるRGEまたはRGDを有する。一般にインテグリンαIIbβ3は塩基配列であるRGDとは結合してフィブリノゲンがインテグリンαIIbβ3と結合することを抑制する。しかし、RGEはインテグリンαIIbβ3とは結合しないのでこのような抑制役割を果たすことができない。図3はこのような内容を実験した結果である。
【図4】図4はインテグリン拮抗物質によるインテグリンαVβ3-ビトロネックチン結合抑制実験の結果である。
【図5】図5はインテグリンαIIbβ3に拮抗作用を有するペプチドを掘り出すための実験である。蛍光強度はにじ色で表現される。ここで用いられた1A6のような記号において、一番目の数字は特定アミノ酸が調整された位置を、二番目の英文字はアミノ酸を、そして最後の数字はペプチドの長さを示すのである。例えば、2H6はヘキサペプチドであって、2番目の位置にヒスチジンがあるということを意味する。
【図6】図6は図5で実験した結果、つまり、蛍光強度を数字で計算してグラフとして描いた結果である。グラフにおいて黄色棒はフィブリノゲンのみある場合の蛍光強度と比べて蛍光強度が約30%ないし約50%の間である場合、そして、赤色棒は約20%未満である場合を示す。グラフの下の1ない19という数字は左側ボックスの内にある塩基を言い、「position数字」は塩基が固定された位置である。例えば、position1でX軸が1であるものはヘキサペプチドの1番位置にアラニンがあるということを意味する。また、Y軸は蛍光強度であって色を数字で示したもので最大蛍光強度は65535である。グラフが短いほど阻害する役割が大きいと言える。
【図7】図7は図5と同様の方法を用いてインテグリンαVβ3をもって実験した結果である。
【図8】図8は図6と同様の方法を用いてインテグリンαVβ3をもって実験した結果である。
【図9】図9はヒト子宮血管内皮細胞(HUVE cell)の移動に及ぶインテグリンαVβ3拮抗ペプチドの影響を分析した結果である。各拮抗ペプチドの生物学的特性研究の一環としてインビトロ(in vitro)血管内皮細胞移動実験を遂行した結果である。
【図10】図10は卵絨毛膜血管新生に及ぶインテグリンαVβ3拮抗ペプチドの影響を分析した結果である。各拮抗ペプチドの生物学的特性研究の一環としてインビボ(in vivo)で血管新生抑制実験を遂行した。図10において、AはペプチドなしにbFGFのみを処理した陽性対照群(positive control群)の結果であり;BはbFGFなしに細胞のみある陰性対照群(negative control群)の結果であり;CはbFGFの存在下でGRGDSPペプチドで処理した群の結果であり;DはbFGFの存在下でHGDVHKペプチドで処理した群の結果であり;EはbFGFの存在下でHSDVHKペプチドで処理した群の結果であり;FはbFGFの存在下でHHDVHKペプチドで処理した群の結果である。
【図11】図11はルイス肺癌細胞を投与したC57BL/6マウスを用いた皮下固形癌成長抑制実験においてインテグリンαVβ3拮抗ペプチドが及ぶ影響を評価した実験結果写真である。
【図12】図12はルイス肺癌細胞を投与したC57BL/6マウスを用いた皮下固形癌成長抑制実験においてインテグリンαVβ3拮抗ペプチドを投与することによって変化する腫瘍の大きさを示した結果である。
【図13】図13はルイス肺癌細胞を投与したC57BL/6マウスを用いた皮下固形癌成長抑制実験においてインテグリンαVβ3拮抗ペプチドを投与したことによって変化する腫瘍の重さを示した結果である。
【配列表フリーテキスト】
【0043】
インテグリン拮抗物質ペプチド
【技術分野】
【0001】
本発明は、高感度蛋白質チップに少量の蛋白質のみを結合させた後、発生する蛋白質相互作用を用いた新薬候補物質のスクリーニング方法及びその方法により探索された有用なペプチドに関する発明である。
【背景技術】
【0002】
ポストゲノム(Post-genome)研究の重要な分野の一つは蛋白質体機能(functional proteomics)研究分野であり、このような蛋白質体機能研究
は今後蛋白質発現パターンの分析、疾病診断のためのバイオマーカーの分析、新しいバイオマーカー及び新薬ターゲットの発掘、そして新薬候補物質の探索など、新薬開発の核心的な技術として広く応用される展望である。しかし、蛋白質機能研究の促進のためには新しい技術的な突破口に備え得る技術革新が行われるべきであり、このような分野が高感度・高密度蛋白質チップ(highly sensitive protein microarray chip)技術であると言える。蛋白質チップ技術は蛋白質、抗体、ペプチド、リガンドなどの生体分子を用いて小型化及び集積化されたチップ表面での反応から大量及び同時分析をするための技術であって、最近、ヒトゲノムマップの発表で蛋白質の相互作用及び機能分析の重要性が台頭されながら、DNAチップと共に活発に開発されつつある。
【0003】
インテグリン受容体は、細胞付着及び移動、分化、増殖などのような細胞の重要な生理作用を調節する細胞表面受容体である。インテグリンはαとβ単位体(subunit)が非共有結合からなるヘテロダイマ(heterodimer)として作用し、αとβ単位体が対を成して22種のインテグリン系(family)を構成している。これらのリガンド特異性が各インテグリン種類によって異なり、一種類のインテグリンが複数のリガンドを同時に結合することができる。リガンドの種類としては、主に細胞外基質蛋白質(ext
racellular matrix proteins)(ビトロネックチン(vitro
nectin)、フィブロネックチン(fibronectin)、コラーゲン(collagen)、ラミニン(laminin)、ボンウィルレブランド因子(Von Willeb
rand Factor; vWF)、フィブリノゲン(fibrinogen)等)があって
、非常に多様である。インテグリンの構造を見ると、長い細胞外ドメイン(extrac
ellular domain)と短い原形質ドメイン(cytoplasmic domain)とから成っているが、細胞外ドメインはリガンドが結合する部位を有し、原形質ド
メインは細胞質内のサイトスケレトン(cytoskeleton)と繋がっていて、インテグリンが活性化するとサイトスケレトン再配列(cytoskeleton rearrangement)が行われてフォカルアドへジョンコンプレックス(focal adh
esion complex)を形成しながら細胞付着及び移動過程を遂行する。インテグリンαVβ3に対する拮抗物質は、例えば、蛇の毒から由来したディスインテグリン系(d
isintegrin family)がある。ディスインテグリンは約30余種類が知られており、共通したインテグリン結合部位であるArg-Gly-Asp(RGD)配列を有するのでインテグリンとリガンドとの結合を抑える機能を有する。これらは血小板表面に存在するインテグリンの一種であるαIIbβ3インテグリンを遮ってリガンドであるフィブリノゲン(fibrinogen)の結合を抑制し、血小板の凝集を阻害する作用をする。このようなディスインテグリンの特性のため、インテグリンαVβ3に対する拮抗物質として作用し、血管新生(angiogenesis)を抑制する。
【0004】
インテグリンαVβ3に対する人間化した(humanized)mAbであるビタックシン(Vitaxin)は、現在、固形癌治療目的で臨床試験1相で殆ど毒性がなく成功的に
完了され、現在、臨床試験2相が進行中である。特異なのは臨床試験を施した12人の癌患者のうち、一人は癌組織が50%以上減ったということである。EMD121974はMerck社で開発した内皮細胞のインテグリンαVβ3を遮る低分子物質(cyclic
RGDペプチド)として臨床実験1相が進行中である。この物質はRGD配列を有するサ
イクリック(cyclic)ペンタペプチドであって,動物実験を通じてヒトの悪性黒色腫等において血管新生を抑え、癌成長を阻害する活性を有している。エンドスタチン(En
dostatin)の場合、今までその作用メカニズムが明かになっていないが、最近組
み換えヒトエンドスタチン(recombinant human endostatin)が血管内皮細胞のα(5)-とα(v)-インテグリンと作用して内皮細胞の移動のようなインテグリン−依存的な内皮細胞機能を抑制すると判明された。従って、このような結果は、インテグリンをターゲットにした拮抗物質は抗癌治療を目的とする血管新生抑制剤として開発を可能にするということを示唆するのである。
【0005】
既存のインテグリンの拮抗物質探索技術は研究所又は病院などから診断を目的として常用化されて、広く用いられる技術の一つである酵素免疫抗体法(Enzyme Linked Immuno Sorbent Assay,ELISA)である。しかし、この方法は蛋白質量が多く要されるだけでなく、非特異的反応であり、大量探索に不適切である。
【0006】
[発明の詳細な説明]
本発明は、蛋白質チップを用いてインテグリンに反応する拮抗物質を迅速かつ大量探索する方法を提供する。本発明は、また、前述したインテグリン拮抗物質探索方法を用いて探索された有用な新規ペプチドを提供する。
【0007】
より具体的に、本発明は、前述した技術的課題を達成するために、蛋白質チップ上にインテグリンαIIbβ3及び/またはαVβ3を付着する段階、上記インテグリンが付着された蛋白質チップに、蛍光物質が付けられたリガンド蛋白質及びペプチドライブラリーのペプチドプールを反応させる段階、上記の反応が終った後、緩衝溶液で洗浄する段階、及び上記洗浄の後、リガンド結合程度を測定する段階を含むインテグリン拮抗物質の超高速探索方法を提供する。
【0008】
本発明において、前述したリガンドは、ビトロネックチン(EMBO J.1985 O
ct; 4(10):2519-24)、ファイブロネクチン(Nucleic Acids R
es.1984 Jul 25; 12(14):5853-68)、コラーゲン(FEBS Le
tt.1987 Dec 10; 225(1-2): 188-94)、ラミニン(Lab Invest.1989 Jun; 60(6):772-82)、ボンウィルレブランド因子(Von Willebrand Factor; vWF; Biochemistry.1986 Jun 3;25(11): 3171-84)及びフィブリノゲン(Thromb Haemost.1979 Jun 30;41(4):662-70)からなる群より選択された何れか一つのリガンドであるのが望ましい。
【0009】
本発明は、また、前述した探索方法によって探索されたインテグリン拮抗作用を有する有用な新規ペプチドである、配列番号1のHSDVHK、配列番号2のHGDVHK、配列番号3のHHLLHK、配列番号4のHGLVHK、及び配列番号5のHGDLHKペプチドを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明において、蛋白質チップとして、ProteoChipTM (Proteogen,Inc.,ソウル、韓国)が用いられる。ProteoChipTMは、アミン化した(aminated)ガラススライドにカリックスアーレン(calixarene)誘導体を
コーティング(coating)したものであって、カリックスアーレン誘導体は2つの作
用基を持つ分子リンカー(bifunctional molecular linker)として作用する。(Han M.H.et al.:ProteoChip,its fa
brication method and detection of protein using ProteoChip,Korea patent application No.2002-41770,2002及びLee,Y.S.et al.:ProteChip:a highly sensitive protein microarray proposed by a novel method of protein immobil
ization for application of protein−protein
interaction studies,Proteomics 2003;3:22
89−2304参照)。ProteoChipTM(Proteogen Inc.から購入)にインテグリン受容体を付着させ、インテグリン単一層を構成した後、蛍光物質で標識
されたリガンド蛋白質と無作為配列を有するペプチドを混合してリガンド結合を妨げる最適なペプチドを超高速大量探索することができるか否かを実験した。
【0011】
まず、チップ上に結合されたインテグリン受容体の安定性を調べるためにインテグリン-リガンド間の親和力を確認した結果、濃度依存的にリガンドがチップに固定されたイン
テグリンに結合することから見て、固定化されたインテグリン受容体の安定性には全く問題が無いということを確証したのである。今まで、インテグリン拮抗物質として知られているディスインテグリン(disintegrin)及びインテグリンに対する単一抗体等を利用してインテグリン-リガンド結合を抑えることができるのかを調べた結果、これら
の蛋白質が全てProteoChipTM上で効果的にインテグリン-リガンド結合を競争
的に抑制することを確認したのである。実際に、約200万種類の無作為配列を有するペプチドを有するペプチドライブラリーを対象としてインテグリン−リガンド結合抑制実験をProteoChipTMで大量探索を試みたが、その結果、最適なアミノ酸配列を有するペプチドを探索することができたのである。このような結果は、ProteoChipTMがインテグリン−リガンド結合を妨げる新しい先導物質の探索を可能にして新薬開発の新しい探索技術として用いられることを証明するのである。
【0012】
本発明の工程と望ましい非限定的な実施例に対して図面を参照しながら詳しく説明すると次のようである。
実施例1:蛋白質チップ上にインテグリン受容体の固定化
蛋白質チップとしてProteoChipTM(Proteogen,Inc.,ソウル
、韓国)を用いて、ProteoChipTM(Proteogen,Inc.,ソウル、韓国)上にマイクロアレイ(CM-1000;Proteogen,Inc.,ソウル、韓国)
でインテグリンをスポッティングし、インテグリン受容体マイクロアレイ(microa
rray)を構成した(Lee,Y.S. et al.:ProteoChip:a hig
hly sensitive protein microarray proposed
by a novel method of protein immobilization
for application of protein-protein interaction studies,Proteomics 2003;3:2289−2304参照)。αIIbβ3インテグリンはGRGDSPK−セファロス(Sepharose)コラム
クロマトグラフィーを用いて血小板から分離精製し(Kang I.C.and KIM D.S.,Analysis of potent glycoprotein IIb−IIIa
antagonist from
natural sources. J Biochem Mol Biol 1998;3
1:515−518参照)、αVβ3インテグリンはChemicon International,Inc.(CA,USA)で購入して用いた。
【0013】
10mM β-オクチルチオグルコピラノサイド(octylthioglucopyr
anoside)、1.0mM CaCl2、1.0mM MgCl2、及び30%グリセ
ロールを含有する燐酸-緩衝生理食塩水(phosphate-buffered sal
ine,PBS)で希釈されたインテグリン(40μg/ml)をスポッティングした後、37℃で3時間保管し、その後、結合して残ったインテグリンを0.5%ツイン20を含有した燐酸-緩衝生理食塩水(0.5%PBST)で洗浄した。製造されたインテグリンマイ
クロアレイを使用時まで4℃で保管した。このように製造されたインテグリンマイクロアレイ(インテグリン付着蛋白質チップ)をインテグリン受容体の拮抗物質超高速大量探索に用いたのである(図1参照)。
【0014】
実施例2:インテグリンマイクロアレイを用いたインテグリン-リガンド結合反応実験
実施例1で製造したインテグリン付着蛋白質チップに蛍光物質(Cy-5またはCy-3;Amersham-Pharmacia Biotech,米国)が付いているリガンド蛋
白質(fibrinogenまたはvitronectin;Chemicon Inte
rnational, Inc.,米国)を1μg/ml〜1fg/mlまでマイクロアレ
イにスポッティングした後、温度が37℃湿度が75%以上のオーブンで1時間反応させた。0.5%PBSTに10分程度浸して洗浄した後、蛍光スキャナーでインテグリン-
リガンド反応結果を観察した。
【0015】
濃度に応じた蛍光の相対的強さをグラフに描くと、線形で示されることが分かる。これで、限界測定濃度が1fg/mlまでであることが分かる。(図2)。
実施例3:インテグリン拮抗物質によるインテグリンαIIbβ3-フィブリノゲン結合抑制実験
実施例1で製造したインテグリンαIIbβ3-付着蛋白質チップに、蛍光物質(Cy-5)が付いているリガンド蛋白質(fibrinogen 100ng/ml)と知られているイ
ンテグリン拮抗物質としてディスインテグリンの種類であるエッチスタチン(echis
tatin)250μg/ml、フラボリジン(flavoridin)250μg/ml、
キストリン(kistrin)250μg/ml、サルモシン(salmosin)2.6n
g/mlとインテグリンに対する単一クローン抗体(mAb)1.0mg/ml、及び多様な濃度の合成RGDペプチド(エッチスタチン、フラボリジン、キストリン:Sigma-Aldrich,米国;サルモシン:遺伝子組換え大腸菌から分離精製;インテグリンに対する単一クローン抗体:Chemicon International,Inc.米
国;合成RGDペプチド:韓国生命工学研究院で合成)を混合して、マイクロピペット又
はマイクロアレイ(CM-1000;Proteogen,Inc.,ソウル、韓国)を用
いてチップ表面に固定されたインテグリン受容体の上に落とした後、温度が37度湿度が75%以上のオーブンで4〜12時間反応させた。反応後、3%BSAが含まれた0.5%PBSTで10分程度洗浄した。蛍光スキャナーを用いてリガンド結合程度を相対的蛍光の強さに分析することにより、拮抗物質の競争的拮抗能力を測定した。その結果、知られているインテグリン拮抗物質処理群から相対的に顕著に低い蛍光強さを示すことから見て、これらの物質がインテグリンαIIbβ3-フィブリノゲン結合反応を効果的に抑制する
のであることを証明する(図3)。
【0016】
図3で実験に用いたRGEとRGDとは自動化ペプチド合成装置を用いて合成したものであって、このようなペプチドを注文者の要求に応じて合成してくれる業者から購入し実験した。実験に用いたものは塩基が6個であるものであって、中間に塩基配列であるRGEまたはRGDを有する。一般に、インテグリンαIIbβ3は塩基配列であるRGDとは結合しフィブリノゲンがインテグリンαIIbβ3と結合することを抑制する。しかし、RGEはインテグリンαIIbβ3と結合しないのでこのような役割を果たせない。図3はこのような内容を実験した結果である。つまり、まず、インテグリンαIIbβ3がスポッティングされているチップに、RGDまたはRGEを濃度別に一定濃度の蛍光が付いているフィブリノゲンと混合して抑制役割をするか否かを実験した結果である。結果は蛍光スキャナーで測定し蛍光強度を測定することになる。本来は赤色または青色のような一つの色で結果が
出るが、この場合、蛍光強度を見分け難く機器のソフトウェアがこれを蛍光強度に応じて色の変化を与えるようになっている。通常、最も蛍光強度が高い場合、白色、そして赤、橙色、黄色、緑、青の順に蛍光強度を表現するようになる。即ち、結果を見ると、RGE(濃度別)とフィブリノゲンとが混合された場合、色が白色または赤色であってRGEがインテグリンαIIbβ3とフィブリノゲン間の相互作用を抑えることができないということが分かる。しかし、RGD(濃度別)と一定濃度のフィブリノゲンが混合された場合,RGDの濃度が増えることに従い、白色から黄色に変化する。つまり、RGDがフィブリノゲンのインテグリンに結合することを阻害し、蛍光強度が減って来ることが分かる。
【0017】
実施例4:インテグリン拮抗物質によるインテグリンαVβ3- ビトロネックチン結合抑
制実験
実施例1で製造したインテグリンαVβ3-付着蛋白質チップに、蛍光物質(Cy-3)が付いているリガンド蛋白質(vitronectin 100ng/ml)と知られているイ
ンテグリン拮抗物質でディスインテグリンの種類であるエッチスタチン(echista
tin)250μg/ml、フラボリジン(flavoridin)250μg/ml、キス
トリン(kistrin)250μg/ml、サルモシン(salmosin)2.6ng/
mlとインテグリンに対する単一クローン抗体(mAb)1.0mg/ml、及び多様な濃度の合成RGDペプチド(エッチスタチン、フラボリジン、キストリン:Sigma-Aldrich,米国;サルモシン:遺伝子組換え大腸菌から分離精製;インテグリンに対する単一クローン抗体:Chemicon International,Inc.米国;
合成RGDペプチド:韓国生命工学研究院で合成)を混合して、マイクロピペット又はマ
イクロアレイ(CM-1000;Proteogen,Inc.,ソウル、韓国)を用いて
チップ表面に固定されたインテグリン受容体の上に落とした後、温度が37度湿度が75%以上のオーブンで4〜12時間反応させた。反応後、3%BSAが含まれた0.5%PBST溶液で10分程度洗浄した。蛍光スキャナーを用いてリガンド結合程度を相対的蛍光の強さに分析することで、拮抗物質の競争的拮抗能力を測定した。その結果、知られているインテグリン拮抗物質処理群から相対的に顕著に低い蛍光強さを示すことから見て、この物質がαVβ3-ビトロネックチン結合反応を効果的に抑制することを証明する(図4)
。
【0018】
図4に用いた拮抗物質は既にインテグリンαVβ3-ビトロネックチンの拮抗物質で広く
知られている物質である。やはり、これも拮抗物質と蛍光を付けたビトロネックチンを混合してインテグリンαVβ3とビトロネックチン相互作用を抑制するか否かを実験した結果である。対照群(control)は拮抗物質がなく蛍光が付いたビトロネックチンがある場合であり、その他は、拮抗物質とRGE塩基配列を含むペプチドをもって実験した結果である。これも、図3の説明のように、蛍光強度はにじ色で表現される。つまり、結果を見ると、対照群(control)、つまり、蛍光の付いたビトロネックチンのみある場合、そしてRGEが含まれたペプチドの場合、蛍光の色が白色と赤色で現れている。つまり、インテグリンαVβ3とビトロネックチンが相互作用をするということが分かる。しかし、拮抗物質が含まれた場合、拮抗物質がインテグリンαVβ3とビトロネックチンの相互作用を抑えてインテグリンαVβ3にビトロネックチンが結合しないので蛍光が最も低い青色で現れている。
【0019】
実施例5:インテグリンマイクロアレイを用いてペプチドライブラリーからインテグリ
ン拮抗ペプチドの超高速大量探索
実施例1で製造したインテグリンαVβ3-付着蛋白質チップに、蛍光物質(Cy-3)が付いているリガンド蛋白質(フィブリノゲン100ng/ml及びビトロネックチン100
ng/ml)とペプチドライブラリーの114種類のペプチドプール(pool)を混合し
て、マイクロピペットまたはマイクロアレイ(CM-1000;Proteogen,Inc.,ウル、韓国)を用いてチップ表面に固定されたインテグリン受容体の上に落とした
後、温度が37℃湿度が75%以上のオーブンで4〜12時間反応させた。反応後、3%BSAが含まれた0.5%PBST溶液で10分程度洗浄した。蛍光スキャナーを用いてリガンド結合程度を相対的蛍光の強さに分析することにより、拮抗物質の競争的拮抗能力を測定した。その結果、知られているインテグリン拮抗物質であるRGDペプチドより相対的に顕著に低い蛍光強さを示すペプチドを観察することができ、よって、このペプチドが、インテグリンαVβ3に対する結合力が合成RGDペプチドより遥かに強いペプチドであることを証明するのである。四角で示されたペプチド配列は拮抗能力を有するペプチドを意味する(図5及び図7)。これを根拠として、αVβ3に特異的に結合し、拮抗作用をするペプチド配列を決めることができ、これらに対する生物学的活性分析結果は後述する図9、図10、図11、図12及び13に示した。各ペプチド配列はインテグリン結合部位として知られているアミノ酸配列(例;RGD、LDV等)とは全く異なり、かつ、今まで報告されなかった新しいアミノ酸配列を有している。この結果から見ると、本発明のインテグリンマイクロアレイは、拮抗ペプチドを探索する道具として非常に有用であることを証明するのであり、さらに、新薬候補物質の探索技術としてProteoChipTMを用いたインテグリンマイクロアレイが用いられるということを意味するのである。
【0020】
実施例6:探索発掘されたインテグリン拮抗ペプチドのアミノ酸配列によるインテグリ
ン拮抗作用分析
実施例3〜5の競争的阻害分析(competitive inhibition as
say)を通じてインテグリンαVβ3-特異抑制活性を示す新しいペプチドを掘り出した(
表1及び表2参照)。表1は、インテグリンマイクロアレイを用いて発掘された拮抗ペプ
チド配列を示す表である。表1の結果に基づいて見ると、ヘキサペプチドの1番位置にヒスチジンまたはロイシン等を含むと、相対的に他のものより阻害程度が最も良いことを意味し、ヘキサペプチドの1番位置にグルタメート又はグルタミンがある場合、ある程度阻害するが、その程度がヒスチジン、ロイシン、又はチロシンよりは相対的に弱いということを意味する。以下の表1にインテグリンαVβ3-ビトロネックチン相互作用を阻害する
ヘキサペプチド群内の指定位置アミノ酸を示した。以下の表1において主な阻害は80%以上の阻害である場合、付随的な阻害は50%以下の阻害である場合を示し、この結果は三回の独立した実験を通じて得られたものである。
【0021】
【表1】
【0022】
このような結果を基にインテグリンαVβ3-特異抑制活性を示すと予想される12個の
ペプチドを製造し、これを用いて濃度別にインテグリンαVβ3-ビトロネックチン相互作
用の抑制程度を評価した。言い換えれば、アミノ酸配列の差による拮抗作用の強度を調べた。以下の表2にインテグリンαVβ3-ビトロネックチン相互作用を阻害する合成ペプチ
ド及びこれらの阻害濃度を示した。以下の表2において阻害はペプチドの無い対照群に対して拮抗活性を有する最大阻害濃度の1/2に定量化し、NDは活性が検出されなかったということを意味する。
【0023】
【表2】
【0024】
インテグリンαVβ3-特異抑制活性実験でHSDVHKとHGDVHKは既存に拮抗物
質として知られいるGRGDSPと比較優位の拮抗能力を示したが、HHDVHKは拮抗能力が殆どないことと観察された。これは2、3、4番目のアミノ酸(ヘキサペプチドの
二番目のアミノ酸はGly、Ser、及びHisであり;三番目のアミノ酸はLeu及びAspであり;四番目のアミノ酸がLeu及びValである)が拮抗作用に重要な役割を
果たすと予想される。拮抗作用を有するペプチドの中でもHSDVHKが最も効果的である。また、この結果はアミノ酸配列特異的拮抗作用をProteoChipTMを用いたインテグリンマイクロアレイで正確に測定できるということを明かす証拠である。ゆえに、本発明のインテグリンマイクロアレイは蛋白質-蛋白質相互作用を正確で、敏感に分析す
ることのできる道具になるだろうと解釈される。
【0025】
実施例7:インテグリンマイクロアレイを用いて探索した拮抗ペプチドの生物学的活性
分析
7−1)ヒト子宮血管内皮細胞(HUVEC)移動実験
HUVE細胞を10%牛胎児血清(fetal calf serum)と3ng/ml
bFGFが含有されたM199培地で培養した。この細胞を移動実験(migratio
n assay)に用いるために16時間コントロール培地(0.1%BSAが含まれたM
199)で培養した後、ボイデンチャンバー(Boyden chamber)内に挿入されているゼラチン(gelatin)(40μM)で塗布された多孔性膜の上側間に3X104
個で加えた。同時に、試料も濃度別に一緒に処理した。チャンバーの下側間にはケモアトラクタント(chemoattractant)であるbFGFを入れてHUVE細胞が下側間に移動できるように導いた。4時間37℃で培養した後、膜を除去し固定した後、クリスタルバイオレット(crystal violet)で染め、膜を通って移動した細胞
数を顕微鏡で測定した。その結果を図9に示した。図9に示したように、HSDVHKとHGDVHKとは効果的にヒト子宮血管内皮細胞(HUVEC)の移動を抑えたが、HHDVHKは影響が殆ど無かった。このような結果から、インテグリンαVβ3-特異抑制ペプ
チドの生物学的活性を確認できるのである。
【0026】
7−2)鶏絨毛膜血管新生抑制実験
(1) 実験材料及び試薬調剤
受精卵はプルムウォン(株)(韓国)から購入し、サンプルローディング(Sample loading)のためのサーマノックスカバースリップ(Thermanox cover-slips)はNunc社(米国)から、観察時必要な10%イントラリポス(Intralipose)(脂肪懸濁液)と注射器は緑十字社(韓国)から各々購入した。
【0027】
(2) 実験段階(過程)
1日目(0日胚):受精卵をインキュベータで孵す。この時、インキュベータの温度は37〜38℃で、湿度は90%以上維持されるように随時確認した。
【0028】
3日目(2日胚):受精卵の尖った終部にカッターで疵を出した。以後、水平に横たえて5ml シリンジ(syringe)で穴をつけた後、アルブミン(albumin)を2m
lくらい抜き出した。受精卵が乾燥せず、また感染されないよう穴を透明なテープで封じた後、穴が下に向かうように置いてまたインキュベータに保管した。
【0029】
4日目(3日胚):受精卵のエアサック(air sac)がある方(注射器穴の反対側)に
直径2〜3cmの丸型窓(window)をつけ、受精卵に確認されたものだけ広い透明テープで封じ、さらにインキュベートさせた。参考に、丸型窓をつける方法は鋭いカッターで受精卵の殻の上に丸型に疵を出した後ピンセットで殻を取り出した。
【0030】
5日目(4.5日胚):この時期になると、CAMが生成され、その直径が2〜5mm程度になる。サンプルを適当な溶媒(ddH2O、エタノールなど)に溶かしてから4等分されたサーマノックスカバースリップの上に10μlずつ落とし、クリーンベンチ(cle
an bench)内で乾かした。ここで、サーマノックスカバースリップ(Therma
nox coverslip)は、はさみで切って4等分しクリーンベンチのUV下でオーバーナイト(overnight)させたのである。受精卵の透明テープをカッターで取り出し、CAMを探して確かめた後、ピンセットでサンプルが処理されたサーマノックスを覆し置いて、さらに透明テープで防いだ。この際、使うはさみ、カッター、ピンセットなどは70%エタノールで消毒して使用し、ピンセットはサンプルを一つ一つロードする度に消毒して用いた。
【0031】
7日目(6.5日胚):透明テープをカッターで取り出した。シリンジでイントラリポス(脂肪懸濁液)を1ml取って、気泡を除去した後、CAMのすぐ下に注入した。この際、白色基に明らかな血管を観察できた。シリンジでイントラリポスを注入する際には血管が傷つかないように注意する。観察が終った受精卵はカメラで近接撮影した。
【0032】
実験結果、図9の結果と一致するように、HSDVHKとHGDVHKは効果的に鶏絨毛膜血管新生(CAM angiohenesis)を抑える効果が強弱の差を表しながら
観察されたが、HHDVHKは影響が殆ど無かった。結果をまとめて図10に示した。
【0033】
7−3)皮下固形癌の成長抑制実験
ルイス肺癌細胞(Lewis lung carcinomas cell、1X106個)をC57BL/6マウスの背(dorsal)中間部位に皮下注射し、腫瘍の嵩が100〜200mm3になった時、無作為に三つの群に分けた。二つの群には一日に一回、腫瘍か
ら離れた部位にHGDVHK又はHSDVHK(100mg/マウスkg)PBS溶液を各々皮下注射し、他の一つの群には対照群としてPBS溶液を注射した。全てのグループにおいて、腫瘍の大きさを毎日同一時間に測定し、実験は対照群のマウスが死んだ時に中断した。
【0034】
実験結果、ルイス肺癌細胞を実験マウスに注射して作った固形癌の成長は、100mg/マウスkgの HSDVHKを投与すると、顕著に抑制されることを観察した。このよ
うな結果は、HSDVHKの抗新生血管形成活性により固形癌の成長を抑えた結果であると解釈される。その結果をまとめて図11、図12及び図13に示した。
【0035】
以上の結果から見ると、本発明により製造されたインテグリンマイクロアレイはペプチドライブラリーを通じてインテグリンと特異的に結合する拮抗ペプチドを効果的に探索す
ることができ、その結果、今まで知られていなかった独特なアミノ酸配列を有するペプチドを掘り出すことができたのである。同時に、このような拮抗ペプチドの生物学的活性をインビトロ(in vitro)ヒト子宮血管内皮細胞移動実験、インビボ(in vivo)鶏絨毛膜血管新生抑制実験及び皮下固形癌成長抑制実験を通じて証明したのである。
【産業上の利用可能性】
【0036】
以上のような本発明は次のような効果を奏する。
第一、新薬候補物質スクリーニングに応用することができる。インテグリン拮抗物質の超高速大量探索(High-Throughput Screening)が可能であるため、疾患と係わった他の種類の標識蛋白質に対する拮抗蛋白質の超高速大量探索が可能になるので短い時間内に多くの新薬候補物質を探索することができる。
【0037】
第二、ProteoChipTMを用いて製造したインテグリン蛋白質チップのインテグリン-リガンド反応は、測定の限界が非常に低いので高感度測定が可能である。既存のイ
ンテグリン-リガンド相互作用研究方式はELISA方法であったが、これは蛋白質の量
が多く所要され、非特異的反応を現す短所があったのである。しかし、ProteoChipTMを用いて、使用される蛋白質の量がELISAより1,000倍以上少ない量を用いるため、既存に用いたものより費用の面で遥かに節減効果があり、さらに、その結果も既存のものより高感度測定が可能であるため、より良質の結果を得ることができる。
【0038】
第三、蛋白質-蛋白質相互作用研究に用いられる。インテグリン受容体を一つの例とし
てインテグリン-リガンド相互作用を調べたが、他の多くの種類の蛋白質に対して反応す
る蛋白質-蛋白質相互作用研究も可能である。
【0039】
第四、応用性が多様である。つまり、蛋白質-DNA、蛋白質-小分子(Small molecules)(化学的化合物)、蛋白質-特定細胞との相互作用などの研究が可能になるのである。
【0040】
第五、本発明は、優れたインテグリンαIIbβ3及びインテグリン αVβ3阻害活性を有
する新規ペプチドを提供し、このような本発明のペプチドは抗癌剤として用いられるのである。
【0041】
本明細書に記載された実施例と図面に示された構成は本発明の最も望ましい一実施例に過ぎず、本発明の技術的思想のすべてを代弁するものではないため、本出願時点においてこれらに代替できる多様な均等物と変更例が有り得ることを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】図1は蛋白質チップであるProteoChipTM上にインテグリン受容体の固定化方法を模式的に示した図である。
【図2】図2は蛋白質チップであるProteoChipTMを用いたインテグリン-リガンド結合反応の実験結果を示した図である。
【図3】図3は上のようなインテグリン-リガンド結合反応の一つの実施例であって、インテグリン拮抗物質によるインテグリンαIIbβ3-フィブリノゲン結合抑制実験を遂行した結果である。実験に用いたRGEとRGDは自動化ペプチド合成装置を用いて合成したものであって、このようなペプチドを注文者の要求に応じて合成してくれる業者から購入した。実験に用いたものは塩基が6個であるもので中間に塩基配列であるRGEまたはRGDを有する。一般にインテグリンαIIbβ3は塩基配列であるRGDとは結合してフィブリノゲンがインテグリンαIIbβ3と結合することを抑制する。しかし、RGEはインテグリンαIIbβ3とは結合しないのでこのような抑制役割を果たすことができない。図3はこのような内容を実験した結果である。
【図4】図4はインテグリン拮抗物質によるインテグリンαVβ3-ビトロネックチン結合抑制実験の結果である。
【図5】図5はインテグリンαIIbβ3に拮抗作用を有するペプチドを掘り出すための実験である。蛍光強度はにじ色で表現される。ここで用いられた1A6のような記号において、一番目の数字は特定アミノ酸が調整された位置を、二番目の英文字はアミノ酸を、そして最後の数字はペプチドの長さを示すのである。例えば、2H6はヘキサペプチドであって、2番目の位置にヒスチジンがあるということを意味する。
【図6】図6は図5で実験した結果、つまり、蛍光強度を数字で計算してグラフとして描いた結果である。グラフにおいて黄色棒はフィブリノゲンのみある場合の蛍光強度と比べて蛍光強度が約30%ないし約50%の間である場合、そして、赤色棒は約20%未満である場合を示す。グラフの下の1ない19という数字は左側ボックスの内にある塩基を言い、「position数字」は塩基が固定された位置である。例えば、position1でX軸が1であるものはヘキサペプチドの1番位置にアラニンがあるということを意味する。また、Y軸は蛍光強度であって色を数字で示したもので最大蛍光強度は65535である。グラフが短いほど阻害する役割が大きいと言える。
【図7】図7は図5と同様の方法を用いてインテグリンαVβ3をもって実験した結果である。
【図8】図8は図6と同様の方法を用いてインテグリンαVβ3をもって実験した結果である。
【図9】図9はヒト子宮血管内皮細胞(HUVE cell)の移動に及ぶインテグリンαVβ3拮抗ペプチドの影響を分析した結果である。各拮抗ペプチドの生物学的特性研究の一環としてインビトロ(in vitro)血管内皮細胞移動実験を遂行した結果である。
【図10】図10は卵絨毛膜血管新生に及ぶインテグリンαVβ3拮抗ペプチドの影響を分析した結果である。各拮抗ペプチドの生物学的特性研究の一環としてインビボ(in vivo)で血管新生抑制実験を遂行した。図10において、AはペプチドなしにbFGFのみを処理した陽性対照群(positive control群)の結果であり;BはbFGFなしに細胞のみある陰性対照群(negative control群)の結果であり;CはbFGFの存在下でGRGDSPペプチドで処理した群の結果であり;DはbFGFの存在下でHGDVHKペプチドで処理した群の結果であり;EはbFGFの存在下でHSDVHKペプチドで処理した群の結果であり;FはbFGFの存在下でHHDVHKペプチドで処理した群の結果である。
【図11】図11はルイス肺癌細胞を投与したC57BL/6マウスを用いた皮下固形癌成長抑制実験においてインテグリンαVβ3拮抗ペプチドが及ぶ影響を評価した実験結果写真である。
【図12】図12はルイス肺癌細胞を投与したC57BL/6マウスを用いた皮下固形癌成長抑制実験においてインテグリンαVβ3拮抗ペプチドを投与することによって変化する腫瘍の大きさを示した結果である。
【図13】図13はルイス肺癌細胞を投与したC57BL/6マウスを用いた皮下固形癌成長抑制実験においてインテグリンαVβ3拮抗ペプチドを投与したことによって変化する腫瘍の重さを示した結果である。
【配列表フリーテキスト】
【0043】
インテグリン拮抗物質ペプチド
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)蛋白質チップ上にインテグリンαIIbβ3及び/またはαVβ3を付着する段階;b)上記インテグリンが付着された蛋白質チップに蛍光物質が付いたリガンド蛋白質及びペプチドライブラリーのペプチドプールを反応させる段階;c)上記反応が終った後、緩衝溶液で洗浄する段階;及びd)上記洗浄後、リガンド結合程度を測定する段階を含むインテグリン拮抗物質の超高速探索方法。
【請求項2】
上記リガンドはビトロネックチン、ファイブロネックチン、コラーゲン、ラミニン、ボンウィルレブランド因子(Von Willebrand Factor; vWF)、及びフィブリノゲンから構成された群より選択された何れか一つのリガンドであることを特徴とする請求項1に記載のインテグリン拮抗物質の超高速探索方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の探索方法により得られたインテグリンαVβ3拮抗作用を有する配列番号1のHSDVHK、配列番号2のHGDVHK、配列番号3のHHLLHK、配列番号4のHGLVHK、または配列番号5のHGDLHKペプチド。
【請求項4】
請求項3に記載のペプチドを含むことを特徴とする抗癌治療用薬学的組成物。
【請求項1】
a)蛋白質チップ上にインテグリンαIIbβ3及び/またはαVβ3を付着する段階;b)上記インテグリンが付着された蛋白質チップに蛍光物質が付いたリガンド蛋白質及びペプチドライブラリーのペプチドプールを反応させる段階;c)上記反応が終った後、緩衝溶液で洗浄する段階;及びd)上記洗浄後、リガンド結合程度を測定する段階を含むインテグリン拮抗物質の超高速探索方法。
【請求項2】
上記リガンドはビトロネックチン、ファイブロネックチン、コラーゲン、ラミニン、ボンウィルレブランド因子(Von Willebrand Factor; vWF)、及びフィブリノゲンから構成された群より選択された何れか一つのリガンドであることを特徴とする請求項1に記載のインテグリン拮抗物質の超高速探索方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の探索方法により得られたインテグリンαVβ3拮抗作用を有する配列番号1のHSDVHK、配列番号2のHGDVHK、配列番号3のHHLLHK、配列番号4のHGLVHK、または配列番号5のHGDLHKペプチド。
【請求項4】
請求項3に記載のペプチドを含むことを特徴とする抗癌治療用薬学的組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2007−510139(P2007−510139A)
【公表日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−535278(P2006−535278)
【出願日】平成16年11月26日(2004.11.26)
【国際出願番号】PCT/KR2004/003086
【国際公開番号】WO2005/052590
【国際公開日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【出願人】(506125443)プロテオゲン インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年11月26日(2004.11.26)
【国際出願番号】PCT/KR2004/003086
【国際公開番号】WO2005/052590
【国際公開日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【出願人】(506125443)プロテオゲン インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】
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