説明

インディゴ染料のための染色装置及び方法

本発明は、たて糸(3)又は織物をインディゴで連続的に染色するための装置(100)及び方法に関する。装置(100)は、染浴を収容するのに適した第1の密封された染色区画室(1)と、糸(3)又は織物の密封された定着/脱水区画室(2)を有する。染色区画室(1)及び定着/脱水区画室(2)は、不活性環境を有し、互いに機能的に且つ気密に結合されている。染色区画室(1)及び定着/脱水区画室(2)はそれぞれ、その内側に、窒素及び/又は脱酸素空気を導入するための手段(4)を有する。定着/脱水区画室(2)の内側には、糸(3)又は織物を直接加熱し及び/又は脱水する少なくとも1つの手段(5)を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たて糸のチェーン(warp yarn chain)及び/又は織物をインディゴで連続的に染色する染色装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インディゴ着色が独特である1つの特徴は、綿の糸に適用するために必要とされる特定の染色方法である。
【0003】
この染色方法は、実際、植物性染料の時代から、合成染料ができて100年以上を超える今日まで変化していない。
【0004】
実際、事実上、比較的小さい分子であり且つセルロース繊維に対して低い親和性しか有しないこの染料を付着させるために、この染料をアルカリ性溶液(ロイコ)の中で還元させなければならないだけでなく、様々な含浸と絞り及びそれに続く空気酸化を交互に必要とし、実際、中間色又は暗色の色合いは、糸が第1の染色工程(含浸、絞り、酸化)を受けた直後に何回もの染色工程を受けることのみによって得られ、かかる回数は、色合いの濃さと要求される色の堅実性の度合いとに依存する。
【0005】
インディゴについて、最も広く用いられている染色技術は、多工程プラントにおける綿の糸の連続的な染色技術である。
【0006】
各工程は、糸を比較的低温のロイコ溶液で含浸させる工程と、絞り工程の後に続いて、空気中の通行によって、ロイコを酸化させ、青色にして、不溶性にする。
【0007】
繊維に付着させるインディゴは、染色した糸を再びロイコで含浸させる前、糸が既に吸収した染料の部分が還元されることを防止し、その結果として、色合いの強化を回復させるめに不溶性の形態になっていなければならない。
【0008】
これは、染色プラントの構造データの重要性を説明するものであり、構造データの機能パラメータは、この染料の特定の特徴を考慮に入れなければならない。
【0009】
デニム織物のための糸のチェーンをインディゴで連続的な染色することは、主として、2つのシステム、すなわち、コードシステム及びフラットシステムに従って、1分間あたり20〜40メートルで変化する速度で行われる。
【0010】
コード染色システムは、1920年代に作られ、変化せずに残されており、およそ300/400の縦糸が結合されてコード(cord)を形成し、このコードは巻き取られてボール(ball)を形成し、12÷36のボールが染色機械の入口に配置され、関連するコードが染色タンクを通って同時に通過し、次に、乾燥され、大きな釜の中で層にされる。
【0011】
次に、コードは実質的に開かれてビーム(beam)にされ、ビームは、糸のチェーンを形成するような量において、糊付け機に通されて、従って、ウィーブビーム(weave beam)を形成し、従って、全体として連続的なシステムではない。
【0012】
他方、フラットシステムは、1970年代に作られ、全体的に完全に連続的なシステムであり、染色と糊付けとの両方を同時に行う。
【0013】
およそ250/400の縦糸が、事実上、ビームにされて糸の部分を形成し、これらのビームの10÷16は、染色機械の入口に配置され、全体のたて糸のチェーンを形成し、糸が染色タンクを通り抜けてから、ライン上で染色タンクに結合された糊付け機に直接入る。実際、最初に、部分的なビームが存在し、染色及び糊付けの後、連続ウィーブビームが得られる。
【0014】
上述した2つのシステムは、実質的に異なっているけれども、インディゴで染色するとき、同一の染色方法が使用されることによって関連付けられ、かかる染色方法は、既に述べたように本質的に、何回か繰り返される3つの操作工程、すなわち、糸を、還元させた染料で含浸させる工程と、余分な水分を除くための絞り工程と、染色された糸を空気に曝すことによる染料の酸化工程とから構成される。
【0015】
染料を含浸させ、糸の皮層に均一に分布させ(リング形染色)、完全な絞りの後、完全に酸化させてから、続くタンクに入り、色合いを回復、すなわち、強くさせる特定の染色方法は、インディゴ染色に典型的であり、浸漬及び酸化の回数に関するある種の基本的パラメータの著しい重要性を示している。
【0016】
残念ながら、インディゴで連続的に染色することは、これらのパラメータの影響を受けるだけでなく、それぞれの単一のプラントの異なる物理化学的事項に関連したその他の多数の要因の影響を受けると共に、温度、空気の相対湿度、風の条件、高さなど、これが据え付けられた環境条件の影響を受ける。
【0017】
さらに、異なる染色条件、例えば、タンクの数、それらの容量、及び、浸漬されるメートル長さ、絞り圧力、ピックアップ、浴循環のタイプ及び速度、インディゴ、ハイドロサルファイトナトリウム、及びカセイソーダ等の自動投与システムの種類及び精度、及び、染浴の様々な条件、例えば、温度、濃度、pH、酸化還元ポテンシャルなどが、染色の強度、堅実性、皮層性などの大小による染色結果に決定的な影響を与えるだけでなく、それらが通常受ける洗濯及び強化処理の後に生じる衣料の最終的な外観を決定するのに著しく貢献する。
【0018】
温度の上昇と共に綿との親和性が高まる他の染料群とは対照的に、インディゴでは、親和性及び色の強度は、染色の皮層性が大きいため、温度の低下と共に増加することが指摘される。
【0019】
より詳しくは、インディゴで染色する連続染色機械は、通常、2÷4の前処理タンクと、6÷10の染色タンクと、2÷4の最終洗浄タンクとを備え、これらのすべては余分な水分を除く絞り群を備え、また、染色タンクは、酸化のための空気中のシリンダの群を備えている。
【0020】
染色タンクは、開放タイプであり、コードシステムでは、約3000/3500リットルの浴容量と、約8÷11メートルの糸の収量とを有し、一方、フラットシステムでは、容量は、800〜1500リットルに変化し、約4÷6メートルの収量を備え、これらの浴の量は、循環する総浴容積を決定し、かかる総浴容積はそれぞれ、約30,000リットル及び15,000リットルに達する。
【0021】
それぞれのタンクに含まれる浴は、連続的に再循環されて、それぞれのタンクの濃度の均質性を確保し、この循環は、遠心ポンプを有する様々な既知の配管系によって行われ、通常、高い流量と有害な乱流を避ける低い行き渡りとを有している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
残念ながら、すべての関連する予防措置にかかわらず、浴のこの動きは、その表面に連続的な交換を生じさせ、タンクの上が開いているので、これが空気と接触し、従って、収容された還元剤、すなわちハイドロスルファイトナトリウム及びカセイソーダを結果的に貧弱にする酸化を生じさせ、浴の温度が高まると、この程度はさらに大きくなる。
【0023】
しかしながら、多数の酸化工程が存在し、それらは、染色サイクルの一体的部分であり、それらは、実際には、1つのタンクから別の6÷10の染色タンクへ、ロイコに浸漬された糸の約30÷40メートルを空気へ曝すことからなり、従って、数百メートルの合計について、糸自体が浸漬された染浴の同じ要素を貧弱にする上で、上述したのに比べて、はるかに大きな程度だけ貢献する。
【0024】
これは、上述した酸化によって破壊されたハイドロサルファイトナトリウム及びソーダの分量で、染浴を連続的に再構成する必要性につながり、最良の染色歩留まりと、一定した再現性のある結果の確保に最適な化学的状態の下に一定に保つために、これらの連続的条件は著しい経済的コストを暗示し、それらは、浴の塩分濃度を高め、結果的に染色の問題点をもち、また、最終的な洗浄水にかなりの汚染を生じさせる。
【0025】
また、染料は、当然、連続的に及び一定して、濃縮したロイコの条件の下で、所望の色合いを得るのに必要な量において、染浴に加えられなければならない。
【0026】
インディゴ染料、ハイドロサルファイトナトリウム、及びソーダを連続して自動的に投与するためには、多数のシステムを使用することができ、例えば、投与ポンプ、はかり、容積、質量装置など、すべては既知であるが、しかしながら、それらは通常、他の織物処理などに使用されている。
【0027】
容積が大きくなるほど、明らかに、新たな浴を、同一の色合いを一定して得るために必要な化学的/染料の平衡にするには、より長い時間を要し、可能な正しい介入のための応答時間も同様に長くなり、これは製品の品質にとって好ましくない。
【0028】
しかしながら、インディゴの染浴、及び、この染料の別の特定の特徴は、色合いを変化させる場合を除いて、決して取り替えられないが、既に述べたように、それらは、それらの化学的/染料の平衡を一定に保つために、ハイドロサルファイトナトリウム、カセイソーダ、及び染料を加えつつ、連続的に再使用される。
【0029】
従って、すべての染色プラントは、生産される青色の変化に対応した、所定の数の容器を有し、容器は、これらの浴を保存及び再使用するために、すべての染料タンクの総容量をもっている。
【0030】
性質上の目的のために、全体のバッチの染色に必要な全体の時間にわたって、染浴の物理的及び化学的状態を一定に保つことは最大限に重要であり、前記時間は通常は、糸の長さと染色速度に応じて15〜36時間の間を往復する。
【0031】
残念ながら、染色機械の連続的な機械的及び液圧的な完成度と、洗練された制御及び投与システムの助けとにかかわらず、問題となる容積が大きい結果、また、上述した多数の理由のために、これらが個々に又は互いに関連して、染浴の状態に不都合な変動を生成するのに貢献し、インディゴを用いた連続的な染色は、困難な作業であり続け、極めてしばしば、問題の解決又は不解決、又は、良好な品質を得ることは、オペレータの技能及び経験に結び付く。
【0032】
また、これは、フラット染色システムにおいては極めて重要である事実によって複雑化し、染色/糊付けラインに引き入れられる糸の長さ、これは、最も完全な多機能機械においては、約500/600メートルに達し、このことは、ユニット全体の制御を困難にするだけでなく、廃物を生成し、従って、各バッチの変更には費用の損失が生じる。
【0033】
これらの問題点は、過去に比べて今日ではさらに重要になっており、デニムは、ファッションに行き渡り、色合いの多様性、洗濯の浸透性及び堅実性(安定性)などについて連続的な要求条件をもった大きなフレキシビリティと、ますます短いバッチをを必要とする。
【0034】
上述したことから、ハイドロサルファイト及びソーダの消費を劇的に減少させ、その結果、染浴の塩分濃度を減少させた多染色工程を可能にする染色装置の利用の明確な要望が存在する。
【0035】
従って、本発明の目的は、ハイドロサルファイト及びソーダの消費を劇的に減少させ、その結果、染浴の塩分濃度を減少させた多染色工程を可能にする染色装置を提供することにある。
【0036】
本発明のさらに別の目的は、染料タンクの数を著しく減少させ、その結果、機械の寸法及びコストを減少させ、回復タンクの容量を減少させ、染色平衡に迅速に達することを可能にし、染色工程を最適化し、これらの工程をすべての外部変数から独立させることにある。
【0037】
本発明の別の目的は、酸化のための空気通路にある糸の長さを減少させ、その結果、各バッチの変化時の廃棄物を減少させるように作動することを可能にする染色装置を提供することにある。
【0038】
本発明のさらに別の目的は、インディゴ染色において、繊維内への染料の拡散及び定着を促進させ、また、染料自体の吸収容量(ピックアップ)を増大させる装置を提供することにある。
【0039】
本発明の別の目的は、インディゴ染色において、従来技術よりも高度な着色及び堅実性能が得られ、その結果、染料を節約し、洗浄水の汚染を少なくする装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0040】
これらの及びその他の目的は、請求項1及び定着/脱水区画室22に含まれる特徴を有する本発明に従った、糸のチェーンをインディゴで連続的に染色する染色装置によって達成される。
【0041】
本発明の更なる特徴及び利点については、添付図面を参照して例示的且つ非限定的な目的でなされる以下の本発明の説明によってより明瞭になるだろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
図面を参照すると、糸をインディゴで連続的に染色する本発明による染色装置が示されている。
【0043】
明瞭にするため、たとえ説明が明らかに織物を参照している場合であっても、たて糸のチェーンだけを参照する。
【0044】
図1に示すように、全体を参照符号100で示す染色装置は、染浴を収容するのに適した密封不活性環境の染色区画室1と、糸3の少なくとも1つの不活性環境の定着/脱水区画室2とを備えている。
【0045】
密封不活性環境にある定着/脱水区画室2は、染色区画室1に機能的に且つ密封式に結合されている。
【0046】
窒素及び/又は脱酸素空気を染色区画室1及び定着/脱水区画室2の内側に導入するための手段4が、染色区画室1及び定着/脱水区画室2に設けられ、染色区画室1及び定着/脱水区画室2を不活性にし、定着/脱水区画室2内に、糸3を直接加熱し及び/又は直接脱水する少なくとも1つの手段5が設けられる。
【0047】
不活性環境中において糸3を直接加熱することにより、染色区画室1での浸漬の後おける繊維への染料の拡散及び定着を促進させ、引き続いて、含有水の蒸発による脱水により、次の工程における染料の吸収を促進させる。
【0048】
不活性環境は、高温及び低温の両方において、インディゴの染浴内に使用されるハイドロサルファイト及びソーダの消費を減少させ、また、糸に含有された染料を酸化させることなしに、糸を加熱及び脱水する。
【0049】
不活性環境と糸の直接加熱とにより、高濃度のインディゴを含む染浴が低レベル及び高温で作動することを可能にし、既知の工程と組み合わされた新しい工程は、多数の異なる染色結果を得ることを可能にする。
【0050】
染色区画室1と定着/脱水区画室2とを不活性にするために、窒素及び/又は脱酸素空気を連続的に導入するための手段4に加えて、染色区画室1と定着/脱水区画室2自体それぞれ、その中に含まれる空気を最初に追い出すための手段6、7を有している。
【0051】
染色区画室1及び定着/脱水区画室2の内側の窒素及び/又は脱酸素空気を導入するための手段4は、少なくとも1つの入口ノズル8を備え、加圧下の脱酸素空気又は窒素の供給源(図示せず)に接続されている。
【0052】
他方、空気を追い出すための手段6、7はそれぞれ、少なくとも1つの排出弁9、10を備えている。
【0053】
最初、排出弁9、10を開いて、窒素又は脱酸素空気を一定の時間流すと、過圧及び比重の違いにより、空気を染色区画室1及び定着/脱水区画室2から排出させる。
【0054】
染色区画室1及び定着/脱水区画室2の内側に不活性環境を作り出すのに必要な流し時間は、染色区画室1及び定着/脱水区画室2自体の内部条件を計器で検出することによって決定されてもよいし、変形例として、専門家による評価及び計算によって論理的に決定されてもよい。
【0055】
また、装置100は、不活性環境の定着/脱水区画室2の上流側に配置された絞り要素11を有している。
【0056】
本発明によれば、糸3を直接加熱及び/又は脱水するための手段は、図1に示す好ましい実施形態では、加熱シリンダ5によって代表されるのが有利であり、加熱シリンダ5は、好ましくは流体によって加熱される。
【0057】
より詳しくは、6つの加熱シリンダ5が定着/脱水区画室2の中に指示され且つ配置され、糸3が加熱シリンダ5の上を走行する。
【0058】
最後の2つのシリンダ5は、特定の染色工程に関連して冷却されてもよい。
【0059】
放射によって糸3を直接加熱するのに適した赤外線源、又は、糸3を直接加熱するのに適したマイクロ波源又は高周波を、糸3の直接加熱手段5として代わりに使用してもよい。
【0060】
しかしながら、糸3を直接加熱する任意適当な加熱手段を使用してもよく、すべての加熱手段が本発明の保護範囲に含まれることを指摘しておく。
【0061】
また、不活性な定着/脱水区画室2は、間接的な加熱手段12を備えていてもよい。
【0062】
間接的な加熱手段12は、非凝縮タイル13を有し、非凝縮タイル13は、傾斜縁部と、暖かい流体が循環するコイル14とを有している。
【0063】
図1に示す実施形態によれば、暖かい流体は蒸気であり、その結果、コイル14の一方の端部に配置された蒸気入口結合部15と、コイル14の反対側の端部に配置された凝縮物出口16とが一緒に考えられ、この加熱は、他の手段で行ってもよい。
【0064】
二重縁部の非凝縮タイル13は、下にある糸3に凝縮物が落下するのを防止する。
【0065】
また、不活性な定着/脱水区画室2は、その壁及び底部に、壁冷却手段17を有し、壁冷却手段17は、直接加熱手段5の通路を進む糸3から蒸発した水を凝縮する。
【0066】
図1に示す例示的な実施形態では、壁冷却手段17は、冷たい流体が流れる2つのコイル18と、冷たい流体のための2つの入口19と、加熱された流体のためにコイルの端部に配置されたの2つの出口20とを有している。
【0067】
また、凝縮物を横方向に搬送する水門21が設けられ、凝縮物が糸3の上に垂れることを防止するように働く。
【0068】
この目的のために、定着/脱水区画室2の底部に、凝縮物22の収集箇所が設けられ、収集箇所は、凝縮物の最大最小レベルプローブ等の特定の制御手段24によって駆動される排出弁23に結合されている。
【0069】
図2に示す別の例示的な実施形態によれば、定着/脱水区画室2から蒸気と共に流体を吸引するのに適した遠心吸引器等の少なくとも蒸気吸引手段102が、不活性な定着/脱水区画室2の外部に配置されると共に、定着/脱水区画室2から来る水蒸気を凝縮させて除湿させた流体を定着/脱水区画室2に戻すための少なくとも1つの熱交換器104が設けられている。
【0070】
既知の方法で、熱交換器104は、冷却流体が流れるコイル106と、熱交換器104の底部のところで凝縮した水用の排出弁108とを有している。
【0071】
また、定着/脱水区画室2は、直接加熱シリンダ5の下流側に配置された、シール群25を備えている。
【0072】
シール群25は、糸3が定着/脱水区画室2から出ることを許容するが、定着/脱水区画室2内に収容された窒素又は脱酸素空気の排出を防止する。
【0073】
シール群25を、図1に示した方法に加えて、様々な既知の方法で生産することができ、関連するワッシャを有し且つゴム引きされた2つの対向するシリンダからなってもよい。
【0074】
他方、清掃及び保守の介入に好ましいように、染色区画室1は、少なくとも1つのタンク26と、タンク26に対して上昇可能で且つタンク26を再び閉鎖可能な少なくとも1つのフード27とを有している。
【0075】
染色区画室1は、特定のシール手段28によって密封閉鎖されている。
【0076】
特に、図1に示す好ましい実施形態では、シール手段28は、液圧による気密シールを生じさせるようにフード27と係合するのに適した周囲座部(seat)29によって代表される。
【0077】
変形例として、フード27とタンク26との間に介在させたワッシャ(図示せず)を、、気密シール手段28として考えてもよく、このことも本発明の保護範囲に含まれる。
【0078】
既に述べたように、糸3に強い圧力を加えることができる絞り要素11が、染色区画室1の内側において、糸3を直接加熱するための手段5の上流側に設けられている。
【0079】
染色区画室1から出る糸3に絞り要素11が及ぼす強い絞りにより、過剰な水分を糸3から排除することを可能にする。
【0080】
図1に示すように、染色区画室1は、染浴を間接的に且つ非接触で加熱又は冷却するための少なくとも1つの装置30を備えている。
【0081】
特に、この目的のために、染色区画室1は、加熱又は冷却流体が循環する少なくとも1つのコイル31を有し、このコイル31は、染色処理に応じて、染色区画室1内に収容されている染浴を間接的に且つ非接触で加熱又は冷却するのに適している。
【0082】
この目的のために、コイル31は、内部空間を染色区画室1の底部面の近くに既知の仕方で形成している。
【0083】
本発明によれば、有利には、染色区画室1の底部に近接して位置する浸漬ロール32が設けられ、この浸漬ロール31は、染色区画室1の底部の近くにおいて、糸3を染浴の中に強制的に通す。
【0084】
中間絞り要素33が、染色区画室1の浸漬ロール32の間に介在している。
【0085】
中間絞り要素33によって加えられる圧力は、絞り要素11によって加えられる圧力よりも低く、糸3の中への染料の浸透及び分布の一様性に好ましい。
【0086】
染色区画室1は、有利には、入口34a,34bと、オーバーフロータイプの出口35a,35bとを有し、遮断弁(図示せず)を備えている。
【0087】
上述した入口34a,34b及び出口35a,35bのおかげで、染色区画室1は、関連した遮断弁を選択することによって、行うべき染色工程に関連して異なる浴レベルで作動できる。
【0088】
最大量の糸と可能な最小の浴とで常に作動する染色区画室1の可能性が、浸漬ロール32を取り囲む染色区画室1の底部の特定の形状のおかげで達成される。
【0089】
染色区画室1と定着/脱水区画室2との間の結合領域は、図1に示すように、密封シールを有し、即ち、密封装置が染色区画室1の出口と定着/脱水区画室2の入口に適用され、この結合領域には、糸3の経路を定めるのに適した案内ロール36、37が設けられる。
【0090】
本発明による装置100によれば、上述したように、糸をインディゴで染色することを以下の工程からなる方法で可能にし、かかる方法は、(a)インディゴ染料の浴を収容した染色区画室1の中に糸3を浸漬させる工程と、(b)染色区画室1の浴の出口において、糸の絞りを強い圧力で行う工程と、(c)繊維中への染料の拡散及び定着を促進させるために、糸3を定着/脱水区画室2の中で直接加熱し、次の工程において染料の吸収を促進させるために糸を脱水する工程と、(d)糸を装置100の外部で既知の方法で酸化させる工程と、を有する。
【0091】
上述した染色工程は、不活性環境中で実質的に行われる特定の特徴を有している。
【0092】
特に、工程(a)〜(c)は、不活性環境中で実行され、すなわち、染浴及び糸がない状態で、還元させた染料(ロイコ)の浴に浸漬され、空気の酸素と接触させられ、従って、ハイドロサルファイト及びソーダの著しい破壊を生じさせる酸化を回避する。
【0093】
また、インディゴでの染色工程を開始する前、窒素又は脱酸素空気の流れを染色区画室1及び定着/脱水区画室2の中にノズル8から必要な時間導入し、染色区画室1及び定着/脱水区画室2の内部に収容された空気を手段6及び7を介して追いだし、かくして、実質的に不活性環境を生じさせることに注目すべきである。
【0094】
このように発生させた不活性環境は、装置100の密封及びノズル8からの連続流により、そのまま維持される。
【0095】
本発明の方法によれば、染色区画室1に収容されたインディゴ染料の浴は、有利には、加熱され、糸の中への染料の浸透を促進させてもよいし、染料の皮層性と繊維への親和性を増大させるために適当に冷却されてもよく、冷却の結果、色の強度を高め、既知のように、温度の低下を増加させる。
【0096】
また、染色区画室1内の浴の中の糸への染料の浸透及び分布の均一化を容易にするために、糸3は、浴に対応して、中間絞り要素33によるわずかな絞りを受けることに注目すべきである。
【0097】
本発明による装置100は、任意の伝統的なインディゴ染色プラントに挿入することができ、様々な装置100を同一の染色プラントに考えることができる。
【0098】
さらに、本発明による装置100は、定着/脱水区画室2から出ていく糸3を染色区画室1の内側に再導入するための手段(図示せず)を備えていてもよい。このように、連続的なサイクルの染色工程が行われると(ループ)、同一のプラントにおいて直列に配置すべき装置100の数が減少する。
【0099】
従って、本発明による装置100及び方法は、明細書の冒頭に述べた目的を達成し、インディゴ染色工程にこれまで使用されていた機械及び方法とは異なり、処理タンクの数を著しく減少でき、結果的にプラントのコストを減少できると共に、バッチ変更中の生産廃物を減少できる。
【0100】
本発明による装置100及び方法は、有利には、インディゴ染色の場合に、不活性環境中で作動して、染料を酸化させずに糸を脱水し、ハイドロサルファイト及びソーダの通常の消費を著しく減少させることを可能にする。
【0101】
本発明による直接加熱手段5のおかげで、不活性環境における、糸の加熱及び/又は脱水は、染料の糸への拡散及び定着、及び、糸自体のピックアップ(染料吸収)を増加させ、従って、染色工程をより効果的に、経済的に、及び環境にやさしくする。
【0102】
本発明について、その好ましい実施形態に従って、例示的に、非限定的な目的のために説明したけれども、変形例及び/又は改変例は、明らかに当業者によって適用でき、これらのすべては、特許請求の範囲に定められた保護範囲に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本発明の第1の実施形態による染色装置を示した側面図である。
【図2】本発明の第2の実施形態による染色装置を示した側面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
たて糸のチェーン(3)及び/又は織物をインディゴで連続的に染色する染色装置(100)であって、
染浴を収容するのに適した第1の密封された染色区画室(1)と、
糸(3)の密封された定着/脱水区画室(2)と、を有し、
前記染色区画室(1)及び前記定着/脱水区画室(2)は、不活性環境を有し、機能的に互いに結合され、
更に、前記染色区画室(1)及び前記定着/脱水区画室(2)内に設けられた、窒素及び/又は脱酸素空気を前記染色区画室(1)及び前記定着/脱水区画室(2)の内側に導入するための手段(4)と、
糸(3)を直接加熱し及び/又は脱水させるための少なくとも1つの手段(5)と、を有する染色装置。
【請求項2】
更に、糸のチェーン(3)に強い圧力を及ぼすことが可能な少なくとも1つの絞り要素(11)を有する、請求項1に記載の染色装置。
【請求項3】
糸(3)の前記加熱及び/又は脱水手段(5)は、少なくとも1つの加熱可能なシリンダ(5)を有し、糸(3)は、前記少なくとも1つの加熱可能なシリンダの上を通る、請求項1又は2に記載の染色装置。
【請求項4】
糸の前記加熱及び/又は脱水手段(5)は、糸(3)を直接照射によって加熱するのに適した少なくとも1つの赤外線供給源を有する、請求項1又は2に記載の染色装置。
【請求項5】
糸の前記加熱及び/又は脱水手段(5)は、糸(3)を直接加熱するのに適した少なくとも1つのマイクロ波又は無線周波数の供給源を前記絞り要素(11)の下流側に有する、請求項1又は2に記載の染色装置。
【請求項6】
糸(3)の前記加熱及び/又は脱水手段(5)は、糸(3)を対流によって加熱するのに適した暖かい流体の少なくとも1つの流れのための少なくとも1つの供給源を有する、請求項1〜5の何れか1項に記載の染色装置。
【請求項7】
窒素及び/又は脱酸素空気を前記染色区画室(1)及び前記定着/脱水区画室(2)の内側に導入するための前記手段(4)は、圧力下にある脱酸素又は窒素の供給源に接続された少なくとも1つの入口ノズル(8)を有する、請求項1〜6の何れか1項に記載の染色装置。
【請求項8】
更に、前記染色区画室(1)及び前記定着/脱水区画室(2)から空気を追い出すための手段(6、7)を有し、前記空気を追い出すための手段は、少なくとも1つの排出弁(9、10)を有する、請求項1〜7の何れか1項に記載の染色装置。
【請求項9】
前記定着/脱水区画室(2)は、少なくとも1つの間接的な加熱手段(12)を有する、請求項1〜8の何れか1項に記載の染色装置。
【請求項10】
前記間接的な加熱手段(12)は、傾斜した縁部を備えたタイル(13)と、暖かい流体が循環するコイル(14)とを有する、請求項9に記載の染色装置。
【請求項11】
不活性な前記定着/脱水区画室(2)は、前記直接加熱手段(5)の上を通る糸(3)から蒸発した水を凝縮させる壁冷却手段(17)を側壁及び底部に有する、請求項1〜10の何れか1項に記載の染色装置。
【請求項12】
前記定着/脱水区画室(2)は、少なくとも1つの凝縮物収集箇所(22)を有し、前記少なくとも1つの凝集物収集箇所は、特別な制御手段(24)によって駆動される少なくとも1つの排出弁(23)を有する、請求項11に記載の染色装置。
【請求項13】
前記不活性な定着/脱水区画室(2)は、前記不活性な定着/脱水区画室(2)から蒸気を吸引するのに適した少なくとも1つの蒸気吸引手段(102)と、水蒸気を凝縮させて脱水させた流体を不活性な前記定着/脱水区画室(2)に戻すのに適した少なくとも1つの熱交換器(104)とを有する、請求項1〜10の何れか1項に記載の染色装置。
【請求項14】
前記染色区画室(1)は、前記染色区画室に収容された染浴を間接的に且つ非接触で加熱又は冷却するための少なくとも1つの装置(30)を底部に有する、請求項1に記載の染色装置。
【請求項15】
前記染色区画室(1)は、染浴を加熱又は冷却するための少なくとも1つの装置(30)を有し、前記少なくとも1つの装置は、前記染色区画室(1)の底部に近接した内部空間を形成し、加熱又は冷却流体が循環する少なくとも1つのコイル(31)を有する、請求項14に記載の染色装置。
【請求項16】
密封された前記染色区画室(1)は、少なくとも1つのタンク(26)と、少なくとも1つのフード(27)とを有し、前記少なくとも1つのフードは、清掃及び保守の介入のために前記少なくとも1つのタンク(26)に対して上昇可能であり、且つ、前記タンク(26)の上に密封式に再閉鎖可能である、請求項1〜15の何れか1項に記載の染色装置。
【請求項17】
密封された前記染色区画室(1)は、気密シール手段(28)を有する、請求項16に記載の染色装置。
【請求項18】
前記染色区画室(1)は、糸(3)を絞るのに適した少なくとも1つの中間絞り群(33)を有する、請求項1〜17の何れか1項に記載の染色装置。
【請求項19】
前記染色区画室(1)と前記定着/脱水区画室(2)との間に、糸(3)のための一連の案内ロール(36,37)を有する、請求項1〜18の何れか1項に記載の染色装置。
【請求項20】
前記染色区画室(1)は、少なくとも1つの入口(34a,34b)と、オーバーフロータイプの少なくとも1つの出口(35a,35b)とを有する、請求項1〜19の何れか1項に記載の染色装置。
【請求項21】
前記染色区画室(1)は、異なる浴レベルで作動可能である、請求項1〜20の何れか1項に記載の染色装置。
【請求項22】
請求項1〜21の何れか1項に記載の染色装置を用いて、糸のチェーン(3)をインディゴで連続的な染色する染色方法(100)であって、
染浴を収容している前記染色区画室(1)に糸(3)を浸漬させる工程(a)と、
糸(3)を前記染色区画室(1)の浴の出口で絞る工程(b)と、
定着/脱水区画室(2)の中において、繊維中への染料の拡散及び定着を促進させるために糸(3)を直接加熱し、続きの工程において染料の吸収を促進させるために糸を脱水する工程(c)と、
糸を染色装置(100)の外部で酸化させる工程(d)と、を有する染色方法。
【請求項23】
前記工程(a)〜(c)を不活性環境中で行う、請求項22に記載の染色方法。
【請求項24】
染色処理を始める前に、前記染色区画室(1)及び前記定着/脱水区画室(2)内において、窒素及び/又は脱酸素空気の流れを、前記染色区画室(1)及び前記定着/脱水区画室(2)の内側に不活性環境を得るのに充分な時間流す、請求項22又は23に記載の染色方法。
【請求項25】
請求項1〜24の何れか1項に記載の少なくとも1つの染色装置(100)を有する、染色プラント。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−523200(P2009−523200A)
【公表日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−549854(P2008−549854)
【出願日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際出願番号】PCT/EP2007/000370
【国際公開番号】WO2007/080134
【国際公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【出願人】(508208546)マスター ソシエタ ア レスポンサビリタ リミタータ (1)
【Fターム(参考)】