説明

イントロデューサシースおよびイントロデューサ組立体

【課題】イントロデューサシースにダイレータを挿入して組み立てた状態で長期間保管しても、イントロデューサシースの弁体の経時劣化を確実に防止することができるイントロデューサシースおよびイントロデューサ組立体を提供すること。
【解決手段】イントロデューサシース2は、長尺なシースチューブ3と、シースチューブの基端部に設けられ、ダイレータ9が挿入される挿入口53を有するシースハブ4と、挿入口53に着脱自在に装着され、弾性材料で構成された弁体6aを有するキャップ8と、キャップ8を回転可能に支持する回転支持部71と、回転支持部71とシースハブ4とを連結する連結部72とを有する連結部材7とを備え、キャップ8を外した状態で挿入口53からダイレータ9を挿入して使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イントロデューサシースおよびイントロデューサ組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療において、カテーテルを用いて様々な形態の治療が行われている。
このような治療法としては、カテーテルの長尺性を利用して、直接、患部(病変部)に薬剤を投与する方法、加圧によって拡張するバルーンを先端に取り付けたカテーテルを用いて血管内の狭窄部を押し広げて開く方法、先端部にカッターが取り付けられたカテーテルを用いて患部を削り取って開く方法、逆にカテーテルを用いて動脈瘤や出血箇所あるいは栄養血管に詰め物をして閉じる方法等がある。
【0003】
また、血管内の狭窄部を開口した状態に維持するために、側面が網目状になっている管形状をしたステントを、カテーテルを用いて血管内に埋め込んで留置する治療方法がある。
【0004】
このようなカテーテルを血管に挿入する一つの手段として、イントロデューサシース(例えば、特許文献1参照)を用いたセルジンガー法という血管確保の方法がある。この方法では、留置針のような穿刺針を、経皮的に血管に穿刺し、穿刺針の内管に後端からガイドワイヤを挿入する。次に、穿刺針を抜き取り、ガイドワイヤに沿って、イントロデューサシースの細長い中空管状体であるシースチューブを経皮的に挿入する。このとき、シースチューブ内にはダイレータが挿入・セットされている(組立状態)。これにより、経皮挿入口を広げてからガイドワイヤおよびダイレータを抜き取り、その後、シースチューブを通してカテーテルを挿入する。
【0005】
特許文献1に記載のイントロデューサシースのシースチューブの基端部には、ハブが設けられている。ハブは、管状をなすハブ本体と、ハブ本体の基端開口部に装着された弁体とを有している。また、弁体は、弾性材料で構成された板状をなすものであり、その厚さ方向に貫通する複数のスリットを有している。
【0006】
このような構成のイントロデューサシースは、組立状態では、弁体のスリットを介して、ダイレータが挿入されている。そして、この組立状態で長期間保存した場合、弁体(スリット)にダイレータによる変形癖等が生じて、経時劣化することがあった。この劣化により、スリットからダイレータを抜去しても、当該スリットが開いたままとなり、十分に(確実に)閉じることが困難となるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公平2−948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、イントロデューサシースにダイレータを挿入して組み立てた状態で長期間保管しても、イントロデューサシースの弁体の経時劣化を確実に防止することができるイントロデューサシースおよびイントロデューサ組立体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的は、下記(1)〜(12)の本発明により達成される。
(1) 長尺なシースチューブと、
前記シースチューブの基端部に設けられ、ダイレータが挿入される挿入口を有するハブと、
前記挿入口に着脱自在に装着され、弾性材料で構成された弁体を有するキャップと、
前記キャップを回転可能に支持する回転支持部と、該回転支持部と前記ハブとを連結する連結部とを有する連結部材とを備え、
前記キャップを外した状態で前記挿入口から前記ダイレータを挿入して使用されることを特徴とするイントロデューサシース。
【0010】
(2) 前記挿入口に挿入された前記ダイレータを抜去し、該ダイレータが抜去された挿入口に前記キャップを装着して使用される上記(1)に記載のイントロデューサシース。
【0011】
(3) 前記キャップは、その外形形状が円柱状をなすものであり、
前記回転支持部は、前記キャップの外周側に設置された、円環状をなす部材で構成されている上記(1)または(2)に記載のイントロデューサシース。
【0012】
(4) 前記連結部は、可撓性を有する線状体または帯状体で構成されている上記(1)ないし(3)のいずれかに記載のイントロデューサシース。
【0013】
(5) 前記回転支持部と前記連結部とは、一体的に形成されている上記(1)ないし(4)のいずれかに記載のイントロデューサシース。
【0014】
(6) 前記ハブおよび前記キャップのうちの一方には、雄ネジ部が形成され、他方には、前記雄ネジ部と螺合する雌ネジ部が形成されている上記(1)ないし(5)のいずれかに記載のイントロデューサシース。
【0015】
(7) 前記キャップは、前記挿入口に装着された際、該挿入口と液密に嵌合する上記(1)ないし(5)のいずれかに記載のイントロデューサシース。
【0016】
(8) 前記ハブは、管体で構成され、その基端開口部が前記挿入口として機能する上記(1)ないし(7)のいずれかに記載のイントロデューサシース。
【0017】
(9) 前記ハブは、その長手方向の途中を仕切り、開閉可能な補助弁体を有する上記(8)に記載のイントロデューサシース。
【0018】
(10) 前記弁体は、少なくとも1本のスリットを有する上記(1)ないし(9)のいずれかに記載のイントロデューサシース。
【0019】
(11) 上記(1)ないし(10)のいずれかに記載のイントロデューサシースと、
前記キャップが外された状態で前記イントロデューサシースに前記挿入口から挿入して、組み立てられたダイレータとを備えた状態で滅菌包装されてなることを特徴とするイントロデューサ組立体。
【0020】
(12) 前記ダイレータは、前記イントロデューサシースに対する挿入深さを規制する規制部を有する上記(11)に記載のイントロデューサ組立体。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、イントロデューサシースの挿入口にダイレータを挿入して組み立てた組立状態とすることができる。この組立状態では、キャップが外されており、ダイレータが当該キャップに設置された弁体を挿通するのが防止されている。これにより、組立状態で長期間保管しても、弁体に不本意な変形癖が生じるのが防止することができ、よって、弁体の前記変形癖による経時劣化を確実に防止することができる。これにより、弁体が確実に開閉することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明のイントロデューサ組立体(イントロデューサシース)(第1実施形態)の使用過程を順に示す部分縦断面図である。
【図2】本発明のイントロデューサ組立体(イントロデューサシース)(第1実施形態)の使用過程を順に示す部分縦断面図である。
【図3】本発明のイントロデューサ組立体(イントロデューサシース)(第1実施形態)の使用過程を順に示す部分縦断面図である。
【図4】本発明のイントロデューサ組立体(イントロデューサシース)(第1実施形態)の使用過程を順に示す部分縦断面図である。
【図5】本発明のイントロデューサ組立体が有する弁体を示す斜視図である。
【図6】本発明のイントロデューサ組立体(イントロデューサシース)の第2実施形態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明のイントロデューサシースおよびイントロデューサ組立体を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0024】
<第1実施形態>
図1〜図4は、本発明のイントロデューサ組立体(イントロデューサシース)(第1実施形態)の使用過程を順に示す部分縦断面図、図5は、本発明のイントロデューサ組立体が有する弁体を示す斜視図である。なお、以下では、説明の都合上、図1〜図4中(図6についても同様)の右側を「基端」、左側を「先端」と言う。
【0025】
図1に示すイントロデューサ組立体(イントロデューサキット)1は、イントロデューサシース(以下単に「シース」と言う)2とダイレータ9とを備え、シース2にダイレータ9を挿入して組み立てた組立状態のものである。また、この組立状態イントロデューサ組立体1は、滅菌包装されている。
【0026】
また、イントロデューサ組立体1では、シース2からダイレータ9を抜去することができる(図2参照)。そして、ダイレータ9が抜去され、キャップ8が装着された状態(以下この状態を「キャップ装着状態」と言う)のシース2にカテーテル10を挿入することができる(図4参照)。
【0027】
まず、シース2に挿入されるダイレータ9およびカテーテル10についてそれぞれ説明する。
【0028】
図1、図2に示すように、ダイレータ9は、可撓性を有するダイレータチューブ91と、このダイレータチューブ91の基端部に固定(固着)されたダイレータハブ92とを有している。
【0029】
ダイレータチューブ91は、内腔911を有する管状の部材である。また、ダイレータチューブ91の先端部912は、その外径が先端方向に向かって漸減するテーパ状をなす。ダイレータチューブ91の長さは、図1に示す組立状態で、ダイレータチューブ91の先端部912がシース2のシースチューブ3の先端開口部32から突出する程度とされる。
【0030】
ダイレータチューブ91の構成材料としては、例えば、比較的剛性の高い樹脂材料を用いることができるが、特に、高密度ポリエチレン、ポリプロピレンのようなポリオレフィン、ナイロン66のようなポリアミド、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンテレフタレートのようなポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体等のフッ素系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を主とするものが好ましい。
【0031】
これらのものは、特に、摩擦抵抗の小さい材料(低摩擦材料)であるため、かかる材料でダイレータチューブ91を構成することにより、例えば、ガイドワイヤ(図示せず)の内腔911へ挿入する操作や、内腔911から引き抜く操作等を容易かつ確実に行うことができるようになる。
【0032】
このような構成材料には、X線不透過性材料(放射線不透過性材料)で構成される粒子を含有してもよい。これにより、X線透視下でのダイレータチューブ91の視認性が向上する。このようなX線不透過性材料としては、例えば、酸化ビスマス、硫酸バリウム等が挙げられる。
【0033】
また、ダイレータチューブ91の内面には、シリコーン樹脂等による被膜を形成するようにしてもよい。これにより、ダイレータチューブ91の内面は、摩擦力がさらに低減される。
【0034】
ダイレータチューブ91の基端部には、ダイレータハブ92が配置、固定されている。この固定方法としては、特に限定されず、例えば、融着、接着剤による接着、溶剤による接着等の方法が挙げられる。
【0035】
このダイレータハブ92は、筒状をなし、その内腔921がダイレータチューブ91の内腔911と連通している。
【0036】
ダイレータハブ92の先端部には、円板状のフランジ部(規制部)922が突出形成されている。組立状態では、ダイレータハブ92のフランジ部922がシースハブ(ハブ)4の挿入口53(基端面(開口面)531)に当接している。これにより、ダイレータ9のシース2に対する位置決めがなされる、すなわち、挿入量(挿入深さ)が規制される。
【0037】
また、シースハブ4の挿入口53に当接したフランジ部922は、挿入口53を液密に封止することができる。これにより、シースハブ4内が滅菌されている場合、その滅菌状態を維持することができる。このように、フランジ部922は、挿入口53を封止する封止部としても機能する。
【0038】
ダイレータハブ92の構成材料としては、特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンのようなポリオレフィン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスチレン等が挙げられる。
【0039】
図4に示すように、カテーテル10は、可撓性を有するカテーテルチューブ101と、カテーテルチューブ101の基端部に固定(固着)されたカテーテルハブ102とを有している。
【0040】
カテーテルチューブ101は、内腔103を有する管状の部材である。このカテーテルチューブ101の構成材料としては、特に限定されず、例えば、ダイレータチューブ91の説明で挙げたような材料を用いることができる。
【0041】
カテーテルハブ102は、筒状をなし、その内腔104がカテーテルチューブ101の内腔103と連通している。このカテーテルハブ102の構成材料としては、特に限定されず、例えば、ダイレータハブ92の説明で挙げたような材料を用いることができる。
【0042】
シース2は、血管に留置して使用され、その内部に、ダイレータ9やカテーテル10を挿通して、血管内に導入するものである。図1〜図4に示すように、シース2は、可撓性を有するシースチューブ3と、このシースチューブ3の基端部に固定(固着)されたシースハブ4と、シースハブ4に着脱自在に装着されるキャップ8と、シースハブ4とキャップ8とを連結する連結部材7とを有している。
【0043】
シースチューブ3は、経皮的に血管に導入されるものである。このシースチューブ3は、ダイレータ9やカテーテル10等の医療用長尺物が挿通可能な内腔31を有する管状(長尺状)のものである。
【0044】
シースチューブ3の外面には、親水化処理が施されているのが好ましい。これにより、シースチューブ3の外面が、血液や生理食塩水等の液体に接触した際に潤滑性が発現し、シースチューブ3の摩擦抵抗が減少して、摺動性が一段と向上して、特に蛇行した血管への挿入操作がより容易となる。
【0045】
この親水化処理は、例えば、プラズマ処理、グロー放電、コロナ放電、紫外線照射等の物理活性化処理の他、界面活性剤、水溶性シリコン、親水性高分子材料の付与(塗布)等により行うことができる。
【0046】
ここで、親水性高分子材料としては、特に限定されないが、例えば、セルロース系高分子物質(例えばヒドロキシプロピルセルロース)、ポリエチレンオキサイド系高分子物質(例えばポリエチレングリコール)、無水マレイン酸系高分子物質(例えばメチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体)、アクリルアミド系高分子物質(例えばアクリルアミド−グリシジルメタクリレート共重合体)、水溶性ナイロン等のうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0047】
シースチューブ3の構成材料としては、特に限定されず、例えば、ダイレータチューブ91の説明で挙げたような材料を用いることができる。
【0048】
図1(図2〜図4も同様)に示すように、シースチューブ3の基端部には、シースハブ4が配置、固定されている。この固定方法としては、特に限定されず、例えば、融着、接着剤による接着、溶剤による接着等の方法が挙げられる。このシースハブ4は、ハブ本体5と、ハブ本体5に固定された弁体6bとを有している。
【0049】
図1に示すように、ハブ本体5は、両端が開口した管体で構成されたものである。ハブ本体5の先端開口部51には、シースチューブ3の基端部33が挿入されている。シースチューブ3の基端部33は、ハブ本体5内で拡径している。これにより、ハブ本体5とシースチューブ3とが接続され、ハブ本体5の内腔52とシースチューブ3の内腔31とが連通する。また、ハブ本体5の先端部には、その内径が漸減したテーパ状をなすテーパ部541が形成されている。ハブ本体5のテーパ部541の基端側の部分には、テーパ部541の最大内径と同じ(またはそれよりも大きい)内径の大径部542が形成されている。
【0050】
ハブ本体5の基端開口部は、ダイレータ9が挿入される挿入口53として機能する(図1参照)。この挿入口53は、シースチューブ3の延長線上に位置している。これにより、挿入口53からダイレータ9を挿入した際、当該ダイレータ9がシースチューブ3に確実に向かうことができ、よって、ダイレータ9を確実に血管に案内する(導入する)ことができる。また、キャップ装着状態でも、後述するキャップ8の弁体6aの開閉部61がシースチューブ3の延長線上に位置することとなる(図3参照)。これにより、開閉部61からカテーテル10を挿入した際、前記ダイレータ9と同様に、当該カテーテル10がシースチューブ3に確実に向かうことができ、よって、カテーテル10を確実に血管に案内する(導入する)ことができる(図4参照)。
【0051】
ハブ本体5には、その大径部542の長手方向の途中に、チューブ11が接続されるポート59が突出形成されている。ポート59は、管状をなし、その外径が段階的に変化したバーブ継ぎ手を構成している。シース2では、ポート59を介して、ハブ本体5の内腔52とチューブ11の内腔111との間で液体(例えば造影剤等)の出入りが行なわれる。
【0052】
また、ハブ本体5の大径部542には、ポート59よりも基端側の部分に、弁体(補助弁体(仮止血弁))6bが設置される弁体設置部543が設けられている。弁体設置部543は、大径部542の周方向に沿って形成されたリング状の凹部(溝)で構成されている。この弁体設置部543に、弁体6bの縁部が挿入されることにより、弁体6bを固定することができる。この弁体6bにより、ハブ本体5をその長手方向の途中を仕切ることができる。これにより、挿入口53が露出した場合(図2に示す状態)でも、シース2の弁体6bよりも先端側の内部空間(ハブ本体5の内腔52、シースチューブ3の内腔31)の無菌性を維持することができる。なお、弁体6bは、後述する弁体6aと同様の構成であるため、ここではその説明を省略する。
【0053】
ハブ本体5の挿入口53の内周部には、雌ネジ部532が形成されている。この雌ネジ部532は、キャップ8の雄ネジ部85と螺合することができる。これらのネジ部同士が螺合することにより、キャップ装着状態が確実に維持され、よって、キャップ8がシースハブ4から不本意に離脱するのを防止することができる。また、キャップ8がシースハブ4に液密に装着されることとなり、よって、キャップ8とシースハブ4との境界部から血液が漏出するのを確実に防止することができる。
【0054】
ハブ本体5の構成材料としては、特に限定されず、例えば、ダイレータハブ92の説明で挙げたような材料を用いることができる。
【0055】
図1に示すように、ハブ本体5の挿入口53には、キャップ8が着脱自在に装着される。イントロデューサ組立体1では、図1に示すキャップ8が外された状態(以下この状態を「キャップ離脱状態」と言う)で、ダイレータ9をシース2(シースハブ4)の挿入口53を介して、当該シース2に挿入することができる。また、図4に示すように、キャップ装着状態のイントロデューサ組立体1では、カテーテル10を、キャップ8の弁体6aの開閉部61を介して、シース2に挿入することができる。
【0056】
キャップ8は、キャップ本体81と、キャップ本体81に設置された弁体6aとを有している。
【0057】
キャップ本体81は、その形状が円筒状をなす(外形形状が円柱状をなす)ものである。
【0058】
キャップ本体81の内周部には、その長手方向の途中に、弁体6aが設置される弁体設置部82が設けられている。弁体設置部82は、キャップ本体81の内周部の周方向に沿って形成されたリング状の凹部(溝)で構成されている。この弁体設置部82に、弁体6aの縁部が挿入されることにより、弁体6aを固定することができる。
【0059】
キャップ本体81の内周部の基端部(基端内周部)には、その内径が基端方向に向かって漸増したテーパ部83が形成されている。キャップ装着状態でカテーテル10を挿入する際、カテーテル10のカテーテルチューブ101の先端がテーパ部83に当接して、弁体6aの開閉部61に向かって案内されることとなり、よって、その挿入操作を容易に行なうことができる。
【0060】
キャップ本体81の外周部には、その長手方向の途中、すなわち、弁体設置部82に対応する部分に、後述する連結部材7の回転支持部71が「すきまばめ」の状態で嵌合する(挿入される)嵌合部84が設けられている。嵌合部84は、キャップ本体81の外周部の周方向に沿って形成されたリング状の凹部(溝)で構成されている。この嵌合部84の外径は、回転支持部71の内径よりも小さい(図1参照)。これにより、連結部材7の回転支持部71によって、キャップ8(キャップ本体81)をその軸回りに回転可能に支持することができる。
【0061】
キャップ本体81の外周部の先端部(先端外周部)には、シースハブ4の雌ネジ部532と螺合する雄ネジ部85が形成されている。キャップ8を所定方向に回転操作することにより、雄ネジ部85と雌ネジ部532とが螺合して、キャップ8をシースハブ4に装着することができる(図3参照)。また、このキャップ装着状態からキャップ8を前記と反対方向に回転操作することにより、雄ネジ部85と雌ネジ部532との螺合が解除されて、キャップ8をシースハブ4から取り外すことができる。
【0062】
キャップ本体81の構成材料としては、特に限定されず、例えば、ダイレータハブ92の説明で挙げたような材料を用いることができる。
【0063】
図5に示すように、弁体6aは、円形の膜状(円盤状)をなす弾性体で構成されている。この弁体6aは、弁体6bと同様の構成のものである。
【0064】
弁体6aは、その中心部に、カテーテル10の挿入・抜去に伴って開閉する開閉部61を有している。開閉部61は、第1のスリット62と第2のスリット63とで構成されている。
【0065】
第1のスリット62は、弁体6aの内部から弁体6aの一方の面(図5中の上面)68にのみ到達するように形成されている。また、この第1のスリット62は、その形状が平面視で一文字状をなしている。これにより、第1のスリット62を簡単な形状(構成)とすることができ、よって、第1のスリット62(開閉部61)が容易かつ確実に開閉することができる。
【0066】
第2のスリット63は、弁体6aの内部から弁体6aの他方の面(図5中の下面)69にのみ到達するように形成されている。また、この第2のスリット63は、その形状が平面視で一文字状をなしている。これにより、第2のスリット63を簡単な形状(構成)とすることができ、よって、第2のスリット63(開閉部61)が容易かつ確実に開閉することができる。
【0067】
また、このような第1のスリット62と第2のスリット63とは、弁体6aの内部において部分的に交差している。図5に示す構成では、両スリット62、63は、十文字状に交差している、すなわち、両スリット62、63の交差角度は、90°となっているが、この交差角度は、90°に限定されない。
【0068】
このような構成の弁体6a(開閉部61)にカテーテル10を挿入したときには、第1のスリット62、第2のスリット63がそれぞれ弾性変形して開く。これにより、カテーテル10が開閉部61を通過する際、カテーテル10のカテーテルチューブ101と弁体6aとの摺動抵抗が低減(軽減)する。また、このカテーテル10の挿入に際しては、第1のスリット62および第2のスリット63が、それぞれ、カテーテル10のカテーテルチューブ101に異なる方向から密着し、摺動するため、弁体6aにカテーテル10が挿通された状態でも、液密性が確保され、シース2内を逆流した(通過した)血液の漏れ出しが有効に防止される。
【0069】
そして、カテーテル10を弁体6a(イントロデューサシース2)から抜去したときには、第1のスリット62、第2のスリット63は、自己閉塞性により、すなわち、その弾性により瞬時に元の形状に復元して、閉じる。これにより、弁体6aの液密性が発揮されて、液漏れが防止される。
【0070】
弁体6aの構成材料としては、特に限定されず、例えば、天然ゴム、またはイソプレンゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム等の各種合成ゴム、ポリアミド系、ポリエステル系等の各種熱可塑性エラストマー等の弾性材料が挙げられる。
【0071】
なお、弁体6bについても、弁体6aとほぼ同様に、ダイレータ9やカテーテル10の挿入・抜去に伴って確実に開閉することができる。
【0072】
キャップ8は、連結部材7を介して、シースハブ4と連結されている。この連結部材7は、キャップ8を回転可能に支持する回転支持部71と、回転支持部71とシースハブ4とを連結する連結部72とで構成されている。
【0073】
回転支持部71は、円環状をなす部材で構成されている。また、前述したように、この回転支持部71の内径は、キャップ本体81の嵌合部84の外径よりも若干大きい。これにより、回転支持部71を嵌合部84に挿入することにより、当該回転支持部71をキャップ8の外周側に設置することができる。また、このとき、回転支持部71と嵌合部84との間には、間隙86が形成される。これにより、キャップ8を回転支持部71に対し確実に回転操作することができる。
【0074】
回転支持部71の外周部には、連結部72が設けられている。連結部72は、可撓性を有する線状体または帯状体で構成されている。この連結部72の回転支持部71と反対側の端部(先端部)721は、シースハブ4のハブ本体5の外周部55に埋設、固定されている。このような構成の連結部72により、キャップ離脱状態でも、キャップ8が脱落して紛失するのを確実に防止することができる。また、連結部72が可撓性を有しているので、キャップ8をシースハブ4の挿入口53に対し容易に接近・離間させることができる。これにより、キャップ8着脱操作を容易に行なうことができる。
【0075】
なお、連結部材7は、回転支持部71と連結部72とが一体的に形成されたものとなっている。回転支持部71と連結部72とが一体的に形成されていることにより、連結部材7を製造する際、回転支持部71と連結部72とを一括成型することができ、よって、その製造が容易となる。また。回転支持部71と連結部72とを別体で構成した場合に比べて、部品点数を抑えることができる。また、回転支持部71と連結部72とを接合(接着、融着等)する生産工程を省略することができる。
【0076】
また、連結部材7の構成材料としては、特に限定されず、例えば、ダイレータチューブ91の説明で挙げたような材料を用いることができる。
【0077】
さて、以上のような構成のイントロデューサ組立体1(シース2)では、ダイレータ9を挿入する状態と、カテーテル10を挿入する状態とが異なる。すなわち、イントロデューサ組立体1は、ダイレータ9を挿入するときには、シース2がキャップ離脱状態となっており、カテーテル10を挿入するときには、シース2がキャップ装着状態となっている。
【0078】
イントロデューサ組立体1では、キャップ離脱状態のシース2の挿入口53にダイレータ9を挿入して組み立てた、図1に示す組立状態とすることができる。そして、この組立状態では、ダイレータ9のダイレータチューブ91が弁体6aを挿通するのが防止されている。このような状態でイントロデューサ組立体1を長期間保管しても、弁体6aに不本意な変形癖が生じるのが防止することができる。これにより、弁体6aの前記変形癖による経時劣化を確実に防止することができ、よって、弁体6aが確実に弾性変形して、開閉部61が開閉することができる。
【0079】
また、キャップ離脱状態で、かつ、ダイレータ9を挿入する前に、シース2に例えばオートクレーブ滅菌を施した場合、高圧蒸気がシースハブ4の内腔52まで行き渡り、当該内腔52が充分に滅菌される。
【0080】
そして、シース2では、挿入口53からダイレータ9を抜去し(図2参照)、当該挿入口53にキャップ8を装着することができる(図3参照)。このキャップ装着状態で、シース2にカテーテル10を挿入することができる(図4参照)。このとき、カテーテル10が弁体6aの開閉部61を挿通する。このように、キャップ装着状態として、カテーテル10を挿入したときにのみ、弁体6aが変形するため、当該弁体6aに対する負担を軽減することができ、よって、経時劣化を確実に防止することができる。
【0081】
次に、イントロデューサ組立体1(シース2)の使用方法の一例について詳細に説明する。
【0082】
[1] 図1に示す組立状態のイントロデューサ組立体1を用意する。
また、血管には、予め、留置針のような穿刺針(図示せず)が経皮的に穿刺されている。
【0083】
[2] 血管に留置された穿刺針に、その後端側からガイドワイヤ(図示せず)を挿入する。その挿入後、穿刺針を抜き取る。これにより、血管にガイドワイヤが留置される。
【0084】
[3] 次に、ダイレータ9にガイドワイヤを挿入して、シース2をダイレータ9ごと、すなわち、イントロデューサ組立体1を組立状態のまま、ガイドワイヤに沿って血管に向かって押し進める。これにより、ダイレータ9の先端部912で経皮挿入口が押し広げられ、ダイレータチューブ91が血管に挿入する。その後、ダイレータチューブ91に案内されて、シースチューブ3が血管に挿入される。
【0085】
[4] 次に、シース2からガイドワイヤおよびダイレータ9を抜き取る(図2参照)。
【0086】
[5] 次に、シース2の挿入口53にキャップ8を当接させて、当該キャップ8を所定方向に回転操作する。これにより、挿入口53にキャップ8が装着され、シース2がキャップ装着状態となる(図3参照)。
【0087】
[6] 次に、キャップ8の弁体6aを介して、カテーテル10を挿入する(図4参照)。これにより、カテーテル10のカテーテルチューブ101が血管に挿入される。
【0088】
このようにイントロデューサ組立体1では、カテーテル10を挿入するまで、弁体6aの開閉部61が自然状態で維持される。これにより、弁体6aの経時劣化を確実に防止することができる。
【0089】
<第2実施形態>
図6は、本発明のイントロデューサ組立体(イントロデューサシース)の第2実施形態を示す縦断面図である。
【0090】
以下、この図を参照して本発明のイントロデューサシースおよびイントロデューサ組立体の第2実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0091】
本実施形態は、キャップをシースハブに装着する装着態様が異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
【0092】
図6に示すように、キャップ8Aでは、キャップ本体81から雄ネジ部85が省略され、その省略された部分に、栓体87が固定されて(設置されて)いる。栓体87は、例えば弁体6aと同様の弾性材料で構成された円筒状をなすものである。栓体87の先端部には、その外径が先端方向に向かって漸減したテーパ部871が形成されている。このテーパ部871により、キャップ8Aをシースハブ4の挿入口53に挿入して、装着する操作を容易に行なうことができる。このときの装着操作は、キャップ8Aをその軸回りに回転しつつ、先端方向に向かって押し込むことにより行われる。
【0093】
また、シースハブ4のハブ本体5Aでは、雌ネジ部532が省略され、挿入口53の内径がキャップ8Aの栓体87の外径よりも若干小さく設定されている。これにより、キャップ装着状態では、ハブ本体5Aの挿入口53によって、キャップ8Aの栓体87がその中心軸に向かって圧縮されて、これらが液密に嵌合する。これにより、キャップ8Aとハブ本体5Aとの境界部から血液が漏出するのを確実に防止することができる。
【0094】
以上、本発明のイントロデューサシースおよびイントロデューサ組立体を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、イントロデューサシースおよびイントロデューサ組立体を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【0095】
イントロデューサシースでは、キャップの弁体に、カテーテルの他、ガイドワイヤも挿入することができる。
【0096】
また、弁体の開閉部は、2本のスリットで構成されたものに限定されず、例えば、1本または3本以上のスリットで構成されたもの、ピンホール(小孔)で構成されたものであってもよい。
【0097】
また、弁体および補助弁体は、1枚の膜状のものに限定されず、例えば、ダックビル弁であってもよい。
【0098】
また、イントロデューサシースでは、図示の構成ではキャップに雄ネジが形成され、ハブに雌ネジが形成されたものであるが、これに限定されず、ハブに雄ネジが形成され、キャップに雌ネジが形成されたものであってもよい。
【符号の説明】
【0099】
1 イントロデューサ組立体(イントロデューサキット)
2 イントロデューサシース(シース)
3 シースチューブ
31 内腔
32 先端開口部
33 基端部
4 シースハブ(ハブ)
5、5A ハブ本体
51 先端開口部
52 内腔
53 挿入口
531 基端面(開口面)
532 雌ネジ部
541 テーパ部
542 大径部
543 弁体設置部
55 外周部
59 ポート
6a 弁体
6b 弁体
61 開閉部
62 第1のスリット
63 第2のスリット
68 一方の面(上面)
69 他方の面(下面)
7 連結部材
71 回転支持部
72 連結部
721 端部(先端部)
8、8A キャップ
81 キャップ本体
82 弁体設置部
83 テーパ部
84 嵌合部
85 雄ネジ部
86 間隙
87 栓体
871 テーパ部
9 ダイレータ
91 ダイレータチューブ
911 内腔
912 先端部
92 ダイレータハブ
921 内腔
922 フランジ部(規制部)
10 カテーテル
101 カテーテルチューブ
102 カテーテルハブ
103、104 内腔
11 チューブ
111 内腔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺なシースチューブと、
前記シースチューブの基端部に設けられ、ダイレータが挿入される挿入口を有するハブと、
前記挿入口に着脱自在に装着され、弾性材料で構成された弁体を有するキャップと、
前記キャップを回転可能に支持する回転支持部と、該回転支持部と前記ハブとを連結する連結部とを有する連結部材とを備え、
前記キャップを外した状態で前記挿入口から前記ダイレータを挿入して使用されることを特徴とするイントロデューサシース。
【請求項2】
前記挿入口に挿入された前記ダイレータを抜去し、該ダイレータが抜去された挿入口に前記キャップを装着して使用される請求項1に記載のイントロデューサシース。
【請求項3】
前記キャップは、その外形形状が円柱状をなすものであり、
前記回転支持部は、前記キャップの外周側に設置された、円環状をなす部材で構成されている請求項1または2に記載のイントロデューサシース。
【請求項4】
前記連結部は、可撓性を有する線状体または帯状体で構成されている請求項1ないし3のいずれかに記載のイントロデューサシース。
【請求項5】
前記回転支持部と前記連結部とは、一体的に形成されている請求項1ないし4のいずれかに記載のイントロデューサシース。
【請求項6】
前記ハブおよび前記キャップのうちの一方には、雄ネジ部が形成され、他方には、前記雄ネジ部と螺合する雌ネジ部が形成されている請求項1ないし5のいずれかに記載のイントロデューサシース。
【請求項7】
前記キャップは、前記挿入口に装着された際、該挿入口と液密に嵌合する請求項1ないし5のいずれかに記載のイントロデューサシース。
【請求項8】
前記ハブは、管体で構成され、その基端開口部が前記挿入口として機能する請求項1ないし7のいずれかに記載のイントロデューサシース。
【請求項9】
前記ハブは、その長手方向の途中を仕切り、開閉可能な補助弁体を有する請求項8に記載のイントロデューサシース。
【請求項10】
前記弁体は、少なくとも1本のスリットを有する請求項1ないし9のいずれかに記載のイントロデューサシース。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれかに記載のイントロデューサシースと、
前記キャップが外された状態で前記イントロデューサシースに前記挿入口から挿入して、組み立てられたダイレータとを備えた状態で滅菌包装されてなることを特徴とするイントロデューサ組立体。
【請求項12】
前記ダイレータは、前記イントロデューサシースに対する挿入深さを規制する規制部を有する請求項11に記載のイントロデューサ組立体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−67558(P2011−67558A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−223362(P2009−223362)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】