説明

インドロカルバゾール含有イミド化合物及び合成中間体、これらの製造方法、有機半導体組成物、ならびに有機太陽電池素子

【課題】より高い熱安定性を示す有機半導体を提供する。
【解決手段】本発明に係るインドロカルバゾール含有イミド化合物、下記式(3)で表される化合物と、酸無水物、ジカルボン酸又は酸ハロゲン化物とを反応させて得たことを特徴とする。
【化1】


(上記式(3)中、R及びRはそれぞれ独立して炭素数1〜10のアルキル基を表し、R及びRはそれぞれ独立して炭素数1〜5のアルキル基を表わし、n1及びn2はそれぞれ独立して0又は1である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インドロカルバゾール含有イミド化合物及び合成中間体、これらの製造方法、有機半導体組成物、ならびに有機太陽電池素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機半導体は、キャリア(ホールあるいは電子)を輸送する材料であり、これまでに、有機半導体を用いた多くの有機エレクトロニクスデバイスが開発されている。有機半導体を用いたデバイスは、薄く、軽く、かつ曲げられるなどの特徴を有するため,次世代の光・電子デバイスとして注目されている。
【0003】
インドロカルバゾールは,ホール輸送性を示す有機半導体であり,これまでに有機トランジスタや有機エレクトロルミネッセンスデバイスの作製がおこなわれている。
【0004】
インドロカルバゾール骨格を有する有機化合物として、例えば特許文献1には、6,12−ジアリールインドロ[3,2−b]カルバゾール誘導体に電子受容性物質をドーピングした材料を含有する電子デバイス用有機導電性材料が記載されている。また、特許文献2には、同一または互いに異なった、複数の任意に置換されたインドロカルバゾール残基を含む化合物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−224593号公報(2009年10月1日公開)
【特許文献2】特開2006−193729号公報(2006年7月27日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的に、有機物の熱的安定性は無機物に比べて低いため、デバイスを駆動する際に発生するジュール熱は,上述したような有機化合物を含有する有機層の劣化を誘発する。そして、結果的に素子の寿命を低下させる。そのため、優れた特性を示すデバイスを作製するには,より高い熱安定性を示す材料の開発が求められている。
【0007】
本発明は、上記の従来技術が有する問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、より高い熱安定性を示す有機半導体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行なった。本発明者らは、分子内にイミド骨格を導入したインドロカルバゾール誘導体を合成した。得られた化合物の熱物性を測定したところ、熱分解開始温度が400℃以上である化合物、言い換えれば少なくとも400℃までは安定な化合物であることを見出し、以下の発明を完成させた。
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明に係るインドロカルバゾール含有イミド化合物は、下記式(3)で表される化合物と、酸無水物、ジカルボン酸又は酸ハロゲン化物とを反応させて得たことを特徴とする。
【0010】
【化1】

【0011】
(上記式(3)中、R及びRはそれぞれ独立して炭素数1〜10のアルキル基を表し、R及びRはそれぞれ独立して炭素数1〜5のアルキル基を表わし、n1及びn2はそれぞれ独立して0又は1である。)
また、本発明に係るインドロカルバゾール含有イミド化合物では、上記酸無水物は、テトラカルボン酸二無水物であることが好ましい。
【0012】
上記の課題を解決するために、本発明に係るインドロカルバゾール含有イミド化合物は、下記式(1)で表されることを特徴とする。
【0013】
【化2】

【0014】
(上記式(1)中、R、R、R及びRはそれぞれ独立して炭素数1〜10のアルキル基を表し、R、R、R及びRはそれぞれ独立して炭素数1〜5のアルキル基を表わし、n1、n2、n3及びn4はそれぞれ独立して0又は1であり、Aは置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基を表す。)
また、本発明に係るインドロカルバゾール含有イミド化合物では、上記Aが下記式(1a)で表されることが好ましい。
【0015】
【化3】

【0016】
(上記式(1a)中、Rは任意の原子又は2価の炭化水素基を表し、R10及びR11はそれぞれ独立して水素原子又は任意の置換基を表し、*は上記式(1)のイミド基の炭素原子との連結部分を示す。)
また、本発明に係るインドロカルバゾール含有イミド化合物では、上記式(1a)が、下記式(1aa)、(1ab)、(1ac)又は(1ad)のいずれかであることが好ましい。
【0017】
【化4】

【0018】
また、本発明に係るインドロカルバゾール含有イミド化合物では、上記Aが下記式(1b)で表されることが好ましい。
【0019】
【化5】

【0020】
(上記式(1b)中、nは1以上の整数であり、*は上記式(1)のイミド基の炭素原子との連結部分を示す。)
上記の課題を解決するために、本発明に係る合成中間体は、上記式(3)で表されることを特徴とする。
【0021】
上記の課題を解決するために、本発明に係る合成中間体は、下記式(4)で表されることを特徴とする。
【0022】
【化6】

【0023】
(上記式(4)中、R及びRはそれぞれ独立して炭素数1〜10のアルキル基を表し、R及びRはそれぞれ独立して炭素数1〜5のアルキル基を表わし、n1及びn2はそれぞれ独立して0又は1である。)
本発明に係る合成中間体では、上記式(3)で表される合成中間体の製造方法であって、上記式(4)で表される合成中間体を水素化させる水素化工程を含むことを特徴とする合成中間体の製造方法。
【0024】
上記の課題を解決するために、本発明に係るインドロカルバゾール含有イミド化合物の製造方法は、上記式(3)で表される合成中間体と、酸無水物、ジカルボン酸又は酸ハロゲン化物とを反応させる反応工程を含むことを特徴とする。
【0025】
上記の課題を解決するために、本発明に係る有機半導体組成物は、上述したインドロカルバゾール含有イミド化合物を含むことを特徴とする。
【0026】
上記の課題を解決するために、本発明に係る有機太陽電池素子は、上述したインドロカルバゾール含有イミド化合物を含有する有機薄膜を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、より高い熱安定性を示す有機半導体を提供することができる。したがって、本発明に係るインドロカルバゾール含有イミド化合物を電子デバイスの有機薄膜に用いれば、デバイスを駆動する際に発生するジュール熱による有機薄膜の劣化を抑制することができるため、電子デバイスを安定に作動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る有機太陽電池素子の一実施形態の要部を示す断面図である。
【図2】化合物(16),(17),(18)の熱重量測定の結果を示すグラフである。
【図3】化合物(16),(17),(18)の示差走査熱量測定の結果を示すグラフである。
【図4】化合物(16)の紫外可視吸収スペクトルを示す図である。
【図5】化合物(17)の紫外可視吸収スペクトルを示す図である。
【図6】化合物(18)の紫外可視吸収スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
〔インドロカルバゾール含有イミド化合物〕
本発明に係るインドロカルバゾール含有イミド化合物は、上記式(3)で表される化合物と、酸無水物、ジカルボン酸又は酸ハロゲン化物とを反応させて得たことを特徴とする。
【0030】
上記式(3)中、R及びRはそれぞれ独立して炭素数1〜10のアルキル基を表す。RとRとは同一であってもよく、異なっていてもよい。アルキル基は、直鎖状であってもよいし、分岐していてもよい。また、アルキル基は、炭素数3以上であることが好ましい。これにより、インドロカルバゾール含有イミド化合物の溶媒への溶解性をより高めることができる。また、R及びRが表すアルキル基が炭素数10以下であることにより、インドロカルバゾール含有イミド化合物が容易に合成されやすくなる。
【0031】
なお、本発明に係るインドロカルバゾール含有イミド化合物を溶解させる溶媒としては、例えばクロロホルム、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン,ジメチルホルムアミド,N−メチルピロジノン等が挙げられる。
【0032】
上記式(3)中、R及びRはそれぞれ独立して炭素数1〜5のアルキル基を表わす。n1及びn2はそれぞれ独立して0又は1である。RとRとは、同一であってもよく、異なっていてもよい。アルキル基は、直鎖状であってもよいし、分岐していてもよい。
【0033】
なお、本発明に係るインドロカルバゾール含有イミド化合物は、上記式(3)で表される化合物と酸無水物とを反応させて得たものであることが好ましい。酸無水物としては、例えば下記式(5)で表されるテトラカルボン酸二無水物又は下記式(6)で表されるジカルボン酸無水物であることが好ましい。
【0034】
【化7】

【0035】
(上記式(5)中、Aは置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基を表す。)
【0036】
【化8】

【0037】
(上記式(6)中、R21は脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基を表し、R22は脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基を表し、R21とR22とは互いに結合されていてもよい。)
酸無水物がテトラカルボン酸二無水物である場合には、2個のインドロカルバゾールが互いに連結されたインドロカルバゾール含有イミド化合物を得ることができる。
【0038】
例えば、本発明に係るインドロカルバゾール含有イミド化合物の一実施形態は、上記式(1)で表される。
【0039】
上記式(1)中の2個のインドロカルバゾール部分における構造、置換基の種類及び位置は、同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0040】
上記式(1)中、R、R、R及びRとしては、それぞれ独立して、上記式(3)におけるR及びRとして例示したものを好適に用いることができる。R、R、R及びRは、全てが同じであってもよく、互いに異なっていてもよい。RとRとは同一であってもよく、異なっていてもよい。RとRとは同一であってもよく、異なっていてもよい。RとRとの組合せと、RとRとの組合せとは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0041】
上記式(1)中、R、R、R及びRとしては、それぞれ独立して、上記式(3)におけるR及びRとして例示したものを好適に用いることができる。R、R、R及びRは、全てが同じであってもよく、互いに異なっていてもよい。RとRとは同一であってもよく、異なっていてもよい。RとRとは同一であってもよく、異なっていてもよい。RとRとの組合せと、RとRとの組合せとは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0042】
上記式(1)中、Aは置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基を表す。Aが表す構造としては、例えば下記式(1ca)、(1cb)、(1cc)で表される構造等が挙げられる。
【0043】
【化9】

【0044】
上記式(1ca)、(1cb)、(1cc)中、*は上記式(1)のイミド基の炭素原子との連結部分を示す。
【0045】
また、例えば、Aは、上記式(1a)で表されることが好ましい。
【0046】
上記式(1a)中、Rは任意の原子又は2価の炭化水素基を表す。Rが表す任意の原子としては、例えば置換基又は特性基を有していてもよい炭素原子、酸素原子、硫黄原子等が挙げられる。上記式(1a)中、R10及びR11はそれぞれ独立して水素原子又は任意の置換基を表す。置換基としては、例えば炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、水酸基、アルデヒド基、クロロカルボニル基、ニトロ基、トリフルオロメチル基等が挙げられる。アルキル基及びアルコキシ基は、直鎖状であってもよいし、分岐していてもよい。
【0047】
上記式(1a)中、*は上記式(1)のイミド基の炭素原子との連結部分を示す。
【0048】
また、上記式(1a)は、例えば上記式(1aa)、(1ab)、(1ac)、(1ad)で表される構造であることが好ましい。
【0049】
上記式(1)中のAが上記式(1a)で表されるインドロカルバゾール含有イミド化合物は、アモルファス性を示す可能性が高い。例えば、Aが上記式(1aa)で表されるインドロカルバゾール含有イミド化合物(化合物(17))及び上記式(1ab)で表されるインドロカルバゾール含有イミド化合物(化合物(18))は、アモルファス性を示した(後述する試験例1)。
【0050】
ここで、従来、インドロカルバゾール含有化合物の成膜には、通常真空蒸着プロセスを用いるため,電子デバイスの作製が煩雑化する。また,得られた薄膜はインドロカルバゾールの平面構造によって分子の結晶化を誘発しやすいため、成膜性に乏しく,安定な有機薄膜を得ることは難しい。
【0051】
しかし、本発明者らは、上記式(1)中のAが上記式(1a)で表されるインドロカルバゾール含有イミド化合物が、アモルファス性を有することを見出した。これは、このインドロカルバゾール含有イミド化合物がねじれた構造となっているためであると考えられる。アモルファス性を有するインドロカルバゾール含有イミド化合物は、結晶化しにくいため、成膜性に優れている。また、スピンコート等の方法によって成膜することが可能であるため、より均一な有機薄膜を簡便に形成させることができる。そのため、このようなインドロカルバゾール含有イミド化合物は、有機エレクトロニクスデバイスにおける有機薄膜に好適に利用することができる。
【0052】
また、例えばAは、上記式(1b)で表されることが好ましい。
【0053】
上記式(1b)中、nは1以上の整数であり、1〜4であることが好ましく、1又は2であることがより好ましい。*は上記式(1)のイミド基の炭素原子との連結部分を示す。上記式(1b)の具体例としては、例えば下記式(1ba)、(1bb)で表される構造等が挙げられる。
【0054】
【化10】

【0055】
上記式(1)中のAが上記式(1b)で表されるインドロカルバゾール含有イミド化合物は、バイポーラー性を示す可能性が高い。バイポーラー性を示すインドロカルバゾール含有イミド化合物は、電子デバイスの素子における有機薄膜に、他のn型半導体と組み合わせる必要なく単独で用いることが可能である。したがって、電子デバイスの素子を容易に作製することが可能となる。
【0056】
酸無水物がジカルボン酸無水物である場合には、1個のインドロカルバゾールを有するインドロカルバゾール含有イミド化合物を得ることができる。例えば、本発明に係るインドロカルバゾール含有イミド化合物は、下記式(2)で表される化合物であってもよい。
【0057】
【化11】

【0058】
21及びR22は、それぞれ独立して脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基を表す。また、R21及びR22は、互いに結合されていてもよく、また、互いに結合して1つの芳香族炭化水素を構成していてもよい。また、R21及びR22は、置換基を有していてもよい。
【0059】
21及びR22が互いに結合して1つの芳香族炭化水素を構成する場合、例えば置換基を有していてもよいベンゼン、ナフタレン、アントラセン等であってもよく、例えば下記式(2a)、(2b)、(2c)及び(2d)で表される構造等が挙げられる。
【0060】
【化12】

【0061】
上記式(2a)〜(2d)中、Xは水素原子又は置換基を表す。置換基としては、例えば、H,C2n+1(n:1〜10),C(CH(t−ブチル基),OC2n+1(n:1−10),F,Cl,Br,I,OH,CHO,COOH,COCl,NO,及びCFからなる群より選択されればよい。*は上記式(2)のイミド基の炭素原子との連結部分を示す。
【0062】
本発明に係るインドロカルバゾール含有イミド化合物は、高い熱安定性を有している。そのため、電子デバイス等の素子に有機半導体として用いた場合に、このデバイスを駆動する際に発生するジュール熱等によって劣化する可能性が低く、素子の寿命を長くすることができる。したがって、優れた特性の電子デバイスを作製するために利用することができる。
【0063】
本発明は、上述したインドロカルバゾール含有イミド化合物を含む有機半導体組成物の形態であってもよい。有機半導体組成物は、さらに溶媒を含んでいてもよい。溶媒としては、インドロカルバゾール含有イミド化合物を溶解させる溶媒として上述したものを用いることが好ましい。この有機半導体組成物は、電子デバイスの素子における有機薄膜の形成に好適に利用することができる。電子デバイスとしては、例えば有機エレクトロルミネッセンス、有機トランジスタ、有機太陽電池などの有機エレクトロニクスデバイスが挙げられる。
【0064】
〔合成中間体〕
本発明は、上述したインドロカルバゾール含有イミド化合物の合成中間体をも提供する。
【0065】
本発明に係る合成中間体の1つは、上記式(3)で表される化合物である。上記式(3)で表される合成中間体は、後述する「合成中間体の製造方法」により製造することができる。
【0066】
また、本発明に係る合成中間体の1つは、上記式(4)で表される。
【0067】
上記式(4)中、R、R、R及びRとしては、上記式(3)のR、R、R及びRとして例示したものと同様のものを例示することができる。
【0068】
上記式(4)で表される合成中間体は、例えば後述する実施例1において説明する化合物(14)を合成する方法を参考にして製造することができる。
【0069】
〔合成中間体の製造方法〕
本発明は、上記式(3)で表される合成中間体の製造方法を提供する。この製造方法は、上記式(4)で表される合成中間体を水素化させる水素化工程を含む。
【0070】
水素化させる方法としては、例えば、上記(4)で表わされる合成中間体を溶媒に溶解させ、触媒を加えた後、水素ガスと接触させる方法などが挙げられる。触媒としては、例えばパラジウム触媒、白金触媒等を用いることが好ましい。水素化工程では、20〜45℃で20〜72時間、水素ガスと接触させることが好ましい。
【0071】
上述したように水素化工程を行なうことにより、上記式(4)で表わされるジニトロ化合物から、上記式(3)で表わされるモノアミン化合物を効率よく合成することができる。
【0072】
〔インドロカルバゾール含有イミド化合物の製造方法〕
本発明は、インドロカルバゾール含有イミド化合物の製造方法を提供する。この製造方法は、上記式(3)で表される合成中間体と、酸無水物、ジカルボン酸又は酸ハロゲン化物とを反応させる反応工程を含む。反応工程では、縮合及びイミド化が行なわれる。なお、反応工程では、上記式(3)で表される合成中間体と酸無水物とを反応させることが好ましい。酸無水物としては、「インビトロカルバゾール誘導体」において例示したものを好適に用いることができる。
【0073】
反応工程では、例えば、アルゴンガス、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下、溶媒中で上記式(3)で表される合成中間体と、酸無水物、ジカルボン酸又は酸ハロゲン化物とを接触させればよい。溶媒としては、氷酢酸、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、キノリン等を用いることが好ましい。縮合及びイミド化を行なう反応工程では、120℃〜190℃で3〜20時間反応させることが好ましい。
【0074】
〔有機太陽電池素子〕
本発明に係る有機太陽電池素子は、上述したインドロカルバゾール含有イミド化合物を含有する有機薄膜層を備えている。
【0075】
本発明に係る有機太陽電池素子の一実施形態について、図1を参照して説明する。図1は、本発明に係る有機太陽電池素子の一実施形態の要部を示す断面図である。
【0076】
本実施形態に係る有機太陽電池素子10は、有機太陽電池に用いるための素子であり、基板1と、陽極2と、バッファー層3と、活性層(有機薄膜)4と、陰極5とがこの順に積層されて構成される。
【0077】
基板1は、陽極2と、バッファー層3と、活性層4と、陰極5とにより構成される積層体を支持するものである。基板1を構成する材料としては、光透過性を有する材料であればよく、例えばガラス、高分子樹脂等を用いることができ、
陽極2は、陽極2と陰極5との間において生じた正孔を取り出すための電極である。陽極2に用いる材料としては、例えばインジウムすず酸化物(ITO)等の導電性透明材料が挙げられる。
【0078】
バッファー層3は、正孔を輸送するための層である。バッファー層3に用いる材料としては、特に限定されないが、例えばポリエチレンジオキサイドチオフェン(PEDOT)、PEDOT:PSS等の導電性高分子材料などを用いることができる。
【0079】
活性層4は、光が照射された際に電子と正孔とを発生させる層であり、上述したインドロカルバゾール含有イミド化合物を含む。活性層4は、例えば電子供与性有機化合物(ドナー)と、電子受容性有機化合物(アクセプタ)とが混合された層であってもよく、ドナー又はアクセプタとして上述したインドロカルバゾール含有イミド化合物を含んでいてもよい。すなわち、有機太陽電池素子10は、バルクヘテロ構造であってもよい。
【0080】
陰極5は、活性層4において生じた電子を取り出すための電極である。陰極5に用いる材料としては、例えば金属、合金等の電極材料が挙げられる。金属としては、例えばアルミニウム(Al)等が挙げられる。
【0081】
以下に本発明の実施例を示し、本発明についてさらに詳しく説明するが、本発明は上述した実施形態及び以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0082】
[実施例1:インドロカルバゾール含有アミン誘導体の合成]
本発明に係る合成中間体の一実施例として、下記反応式(A)により、まず下記式(14)で表わされるインドロカルバゾール誘導体を合成し、これを用いて下記式(15)で表されるインドロカルバゾール含有アミン誘導体を合成した。
反応式(A):
【0083】
【化13】

【0084】
<化合物(11)の合成>
2Lセパラブルフラスコにインドール(80g,0.68mol),蒸留水(1.5L)を加え,メカニカルスターラーを用いてしばらく撹拌した。その後,35%ホルムアルデヒド(29g,0.34mol),酢酸(41g,0.68mol)を順次加え,還流下で20時間反応させた。反応後,反応系中の析出物を濾過にて回収した。さらに,トルエンにて再結晶精製を行ない白色の固体を得た(収量:54g,収率:64%)。なお,この化合物の構造は下記のH−NMRスペクトルから確認した。
【0085】
H−NMR(400MHz,DMSO−d,ppm)δ4.11(2H,s),6.90(2H,d,J=6.83Hz),7.01(2H,d,J=6.83Hz),7.10(2H,s),7.29(2H,d,J=8.29Hz),7.49(2H,d,J=8.29Hz),10.7(2H,s)。
【0086】
<化合物(12)の合成>
2Lセパラブルフラスコに化合物(11)(60g,0.24mol),メタノール(1.0L)を加え,メカニカルスターラーを用いてしばらく撹拌した。その後,オルトギ酸トリエチル(36g,0.24mol)と,滴下ロートを用いて濃硫酸(30mL)とを滴下し,還流下,24時間反応させた。反応後,反応系中の析出物を濾過にて回収した。さらに,メタノール(1.0L)中で還流下,12時間洗浄を行なった。熱吸引濾過にて固形物を回収することにより,茶白色の粉末を得た(収量:34g,収率:56%)。なお,この化合物の構造は下記のH−NMRスペクトルから確認した。
【0087】
H−NMR(400MHz,DMSO−d,ppm)δ7.11(2H,t,J=7.32Hz),7.36(2H,t,J=8.29Hz),7.43(2H,d,J=8.29Hz),8.10(2H,s),8.17(2H,d,J=7.32Hz),11.0(2H,s)。
【0088】
<化合物(13)の合成>
三ツ口フラスコに水素化ナトリウム(0.79g,20mmol)を入れ,0.5時間脱気を行なった後,系内をアルゴン雰囲気下とし,ジメチルホルムアミド(21mL)を加え,1時間撹拌した。その後,化合物(2)(2.0g,7.9mmol)を加え,室温で3時間撹拌した。その後,1−ヨードオクタン(4.3mL,24mmol)を加え,室温で16時間反応させた。
【0089】
反応終了後,反応液をメタノール(1.0L)に加えて,析出物を濾別し,カラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン)にて分離精製を行なうことにより化合物(13)を黄色の固体として得た(収量:3.3g,収率:86%)。なお,この化合物の構造は下記のH−NMRスペクトルから確認した。
【0090】
H−NMR(400MHz,DMSO−d,ppm)δ0.78(6H,t,J=6.83Hz),1.10−1.45(20H,m),1.84(4H,m),4.46(4H,t,J=6.83Hz),7.17(2H,t,J=7.56Hz),7.44(2H,t,J=7.81Hz),7.55(2H,d,J=7.56Hz),8.26(2H,d,J=7.81Hz),8.30(2H,s)。
【0091】
<化合物(14)の合成>
200mlのナス型フラスコに化合物(13)(20g,42mmol)を加え,クロロホルム(130ml)に溶解した。濃硝酸(8.0g,87mmol)を徐々に滴下し,滴下完了後,室温で12時間攪拌した。反応完結後,反応溶液に過剰量の炭酸水素ナトリウム飽和水溶液を加えクロロホルムで抽出した後,蒸留水で有機層を洗浄した。続いて,有機層を硫酸ナトリウムで脱水後,エバポレーターにて溶媒を留去した。
【0092】
シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム:ヘキサン=3:10(体積比))にて精製し,化合物(14)を赤色固体として得た(収量:14g,収率:58%)。なお,この化合物の構造は下記のH−NMRスペクトル、及び元素分析から確認した。
【0093】
H−NMR(400MHz,DMSO−d,ppm)δ0.81(6H,t,J=6.83Hz),1.10−1.45(20H,m),1.66(4H,m),4.30(4H,t,J=6.83Hz),7.39(2H,t,J=7.81Hz),7.71(2H,t),7.77(2H,d,J=8.29Hz),7.88(2H,d,J=8.78Hz)。
【0094】
Found:C,71.72;H,7.48;N,9.56%.Calcd for C3442:C,71.55;H,7.42;N,9.82%。
【0095】
<化合物(15)の合成>
100mlナスフラスコに化合物(14)(0.50g,0.88mmol)を加えジメチルホルムアミド(40mL)とテトラヒドロフラン(40ml)との混合溶媒に溶解させ,5%パラジウムカーボン(37mg,Pd:0.018mmol)を加えた。その後,容器を−78℃に冷却し系内を水素置換して,室温にて40時間攪拌した。反応終了後,パラジウムカーボンをセライトにてろ別した後,エバポレーターにて溶媒を留去した。
【0096】
シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン:トリエチルアミン=19:1(体積比))にて精製し,化合物(15)を黄色固体として得た(収量:0.30g,収率:69%)。なお,この化合物の構造は下記のH−NMRスペクトル、IRスペクトル、及びマススペクトルから確認した。
【0097】
H−NMR(400MHz,DMSO−d,ppm)δ0.690−0.820(6H,m),1.10−1.45(20H,m),1.60−1.72(2H,m),1.75−1.86(2H,m),4.39(2H,t,J=6.83Hz),4.63(2H,t,J=6.83Hz),5.40(2H,s),7.11−7.17(2H,m),7.35−7.42(2H,m),7.49(1H,d,J=8.00Hz),7.57(1H,d,J=8.00Hz),7.61(1H,s),8.16(1H,d,J=7.56Hz),8.36(1H,d,J=8.00Hz)。
【0098】
IR(KBr):3445,3364,3055,2920,2854,1608,1520,1458,1292,810,737cm−1
【0099】
MALDI−TOF MS(m/z)494.97[M]。
【0100】
[実施例2:インドロカルバゾール含有イミド化合物の合成]
本発明に係るインドロカルバゾール含有イミド化合物のいくつかの実施例として、下記反応式(B)により、インドロカルバゾール含有イミド化合物(16)〜(18)を合成した。
反応式(B):
【0101】
【化14】

【0102】
<化合物(16)の合成>
25mlナスフラスコに化合物(15)(1.0g,2.0mmol)とピロメリット酸無水物(0.26g,1.2mmol)とを加え,氷酢酸(7ml)に懸濁させた。系内をアルゴン雰囲気下とし,12時間還流した。反応終了後,反応溶液に過剰量の炭酸水素ナトリウム飽和水溶液を加え,トルエンで抽出し,多量の蒸留水で有機層を洗浄した。続いて,有機層を硫酸ナトリウムで脱水後,エバポレーターにて溶媒を留去した。
【0103】
シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:トルエン:ヘキサン=2:1(体積比))にて精製し,化合物(16)を緑色固体として得た(収量:0.91g,収率:77%)。なお,この化合物の構造は下記のH−NMRスペクトル,IRスペクトル,MSスペクトル,及び元素分析から確認した。
【0104】
H−NMR(400MHz,CDCl,ppm)δ0.71−0.97(12H,m),1.00−1.52(40H,m),1.66−1.83(4H,m),1.95−2.06(4H,m),4.13−4.32(4H,m),4.44(4H,t,J=7.07Hz),6.93−7.02(1H,m),7.01(1H,t,J=7.07Hz),7.30(2H,t,J=7.32Hz),7.34−7.61(10H,m),8.22(2H,s),8.25(2H,d,J=7.80Hz),8.87(2H,s).
IR(KBr):3467,3062,2927,2854,1731,1612,1469,1369,1326,1288,1103,804,736cm−1
MALDI−TOF MS(m/z)1172.96 [M].
Found:C,79.94;H,7.67;N,7.00%.Calcd for C7888:C,79.83;H,7.56;N,7.16%。
【0105】
<化合物(17)の合成>
25mlナスフラスコに化合物(15)(0.70mg,1.4mmol)と4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(0.32mg,1.2mmol)とを加え,氷酢酸(7ml)に懸濁させた。系内をアルゴン雰囲気下とし,12時間還流した。反応終了後,反応溶液に過剰量の炭酸水素ナトリウム飽和水溶液を加え,トルエンで抽出し,多量の蒸留水で有機層を洗浄した。続いて,有機層を硫酸ナトリウムで脱水後,エバポレーターにて溶媒を留去した。
【0106】
シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:トルエン:ヘキサン=2:1(体積比))にて精製し,化合物(17)を褐色固体として得た(収量:0.68g,収率:69%)。なお,この化合物の構造は下記のH−NMRスペクトル,IRスペクトル,MSスペクトル,及び元素分析から確認した。
【0107】
H−NMR(400MHz,CDCl,ppm)δ0.75−0.91(12H,m),1.00−1.52(40H,m),1.61−1.74(4H,m),1.88−2.05(4H,m),4.10−4.23(4H,m),4.34(4H,t,J=7.07Hz),6.90−7.06(2H,m),7.27−7.55(12H,m),8.02−8.15(2H, m),8.18(2H,s),8.22(2H,d,J=7.81Hz),8.25−8.37(4H,m).
IR(KBr):3467,3062,2927,2854,1731,1612,1469,1377,1326,1257,1211,1141,1099,740cm−1
MALDI−TOF MS(m/z)1397.23[M].
Found:C,74.74;H,6.73;N,5.88%.Calcd for C8792:C,74.65;H,6.63;N,6.00%。
【0108】
<化合物(18)の合成>
25mlナスフラスコに化合物(15)(0.80mg,1.6mmol)と4,4’−オキシジフタル酸無水物(26mg,1.2mmol)とを加え,氷酢酸(7ml)に懸濁させた。系内をアルゴン雰囲気下とし,12時間還流した。反応終了後,反応溶液に過剰量の炭酸水素ナトリウム飽和水溶液を加え,トルエンで抽出し,多量の蒸留水で有機層を洗浄した。続いて,有機層を硫酸ナトリウムで脱水後,エバポレーターにて溶媒を留去した。
【0109】
シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:トルエン:ヘキサン=2:1(体積比))にて精製し,化合物(18)を橙色固体として得た(収量:0.78g,収率:77%)。なお,この化合物の構造は下記のH−NMRスペクトル,IRスペクトル,MSスペクトル,及び元素分析から確認した。
【0110】
H−NMR(400MHz,CDCl,ppm)δ0.79−0.95(12H,m),1.00−1.52(40H,m),1.66−1.77(4H,m),1.89−2.01(4H,m),4.19(4H,t,J=7.07Hz),4.37(4H,t,J=7.07Hz),6.96−7.05(2H,m),7.26(2H,t,J=7.32Hz),7.33(2H,d,J=8.29Hz),7.36−7.58(8H,m),7.67(2H,m),7.65−7.83(2H,m),8.15(2H,s),8.21(2H,d,J=7.81Hz),8.25(2H,d,J=7.81Hz).
IR(KBr):3467,3062,2923,2854,1724,1612,1515,1469,1373,1326,1276,1226,1095,840,740cm−1
MALDI−TOF MS(m/z)1262.46[M].
Found:C,79.74;H,7.45;N,6.51%.Calcd for C8492:C,79.71;H,7.33;N,6.64%。
【0111】
[実施例3:非対称型インドロカルバゾール誘導体の合成]
本発明に係る合成中間体の他の実施例として、下記反応式(C)により、下記式(23)〜(24)で表される非対称型のインドロカルバゾール誘導体を合成した。
反応式(C):
【0112】
【化15】

【0113】
<化合物(19)の合成>(参考文献:Tetrahedron 1999, 55, 6243-6260)
三つ口フラスコに化合物(12)(10g,39mmol)とテトラヒドロフラン(600ml)とを加え,アルゴン雰囲気下で1時間撹拌した。次に二炭酸ジ−tert−ブチル(19g,86mmol)とN,N−ジメチルアミノピリジン(1.0g,8.6mmol)とを加え,12時間室温で撹拌し反応した。反応後,溶媒を留去し,酢酸エチル(100ml)を加え撹拌した。この懸濁液をろ過し,ろ紙上の白色固体を回収した(収量:14g,収率:76%)。
【0114】
H−NMR(400MHz,CDCl,ppm)δ1.83(18H,s),7.46(2H,t,J=7.32Hz),7.48(2H,t,J=7.32Hz),8.07(2H,d,J=7.32Hz),8.28(2H,d,J=8.29Hz),8.93(2H,s)。
【0115】
<化合物(20)の合成>(参考文献:Tetrahedron 2003, 59, 1265-1275)
三つ口フラスコに化合物(19)(10g,22mmol)を加え,アルゴン雰囲気下でテトラヒドロフラン(370ml)に溶解させた。この溶液を0℃に冷却し,撹拌させながらn−ブチルリチウムヘキサン溶液(42ml,66mmol)を1時間かけて滴下した。反応の進行をTLCよりモニターした。反応溶液に塩化アンモニウム飽和水溶液(6ml)を加え,反応を停止した。
【0116】
クロロホルム(500ml)を加え、pHが7になるまで有機層を水で洗浄した。硫酸ナトリウムを加え溶液を乾燥し,溶媒を留去した。さらに反応混合物へアセトン(30ml)を加え懸濁させ,ろ過によって白色の固形物を回収した(収量:5.2g,収率:66%)。
【0117】
H−NMR(400MHz,CDCl,ppm)δ1.85(9H,s),7.36(1H,t,J=7.32Hz),7.42−7.52(3H,m),7.93(1H,s),8.03(1H,d,J=6.83Hz),8.09(1H,s),8.16(1H,d,J=7.81Hz),8.31(1H,d,J=7.81Hz),9.05(1H,s)。
【0118】
<化合物(21)の合成>
三つ口フラスコに水酸化カリウム(4.6g,70mmol)とジメチルスルホキシド(60 ml)とを加え,アルゴン雰囲気下で1時間撹拌した。続いて,化合物(20)(5.0g,14mmol)を加え2時間撹拌を続けた。この混合溶液に1−ヨードヘプタン(4.8g,21mmol)を加え,4時間室温で反応した。
【0119】
反応終了後,反応液に氷水(1.3L)を加えて析出物をろ別し,クロロホルム(200ml)に溶解させ,pHが7になるまで有機層を水で洗浄した。硫酸ナトリウムを加えて脱水した後,溶媒を留去した。系内を再びアルゴンで置換し,150℃,9時間加熱した。加熱終了後,再結晶によって淡黄色の固形物を得た(収量:1.7g,収率:34%)。
【0120】
H−NMR(400MHz,DMSO−d,ppm)δ0.79(3H,t,J=7.32Hz),1.13−1.41(8H,m),1.78−1.90(2H,m),4.44(2H,t,J=7.32Hz),7.13(1H,t,J=4.39Hz),7.15(1H,t,J=4.39Hz),7.36(1H,t,J=7.32Hz),7.41(1H,t,J=7.32Hz),7.41(1H,d,J=8.29Hz),7.46(1H,d,J=8.29Hz),8.15(1H,s),8.22(1H,d,J=2.93Hz),8.24(1H,d,J=2.93Hz),8.26(1H,s),11.0(1H,s).
IR(KBr):3402,3051,2923,2854,1616,1515,1466,1447,1326,1276,1238,1176,840,744,690cm−1
【0121】
<化合物(22)の合成>
三つ口フラスコに水酸化カリウム(4.6g,70mmol),ジメチルスルホキシド(60ml)を加え,アルゴン雰囲気下で1時間撹拌した。その後,化合物(20)(5.0g,14mmol)を加え2時間撹拌した。この混合溶液に1−ヨードノナン(5.3g,21mmol)を加え,室温にて4時間反応した。
【0122】
反応終了後,反応溶液をクロロホルム(200ml)に溶解させ,pHが7になるまで有機層を水で洗浄した。硫酸ナトリウムを加えて脱水した後,溶媒を留去した。系内を再びアルゴンで置換し,150℃,9時間加熱した。加熱終了後,反応混合物を再結晶により精製し,淡黄色の固形物を得た(収量:3.7g,収率:69%)。
【0123】
H−NMR(400MHz,DMSO−d,ppm)δ0.77(3H,t,J=6.83Hz),1.10−1.40(12H,m),1.83(2H,t,J=6.83Hz),4.45(2H,t,J=6.83Hz),7.12(1H,t,J=3.90Hz),7.14(1H,t,J=3.90Hz),7.35(1H,t,J=8.29Hz),7.40(1H,t,J=8.29Hz),7.44(1H,d,J=8.29Hz),7.52(1H,d,J=8.29Hz),8.13(1H,s),8.19(1H,d,J=7.32Hz),8.22(1H,d,J=7.32Hz),8.24(1H,s),11.0(1H,s).
IR(KBr):3402,3051,2923,2854,1616,1515,1466,1447,1326,1276,1238,1176,840,744,690cm−1
【0124】
<化合物(23)の合成>
三つ口フラスコに水酸化カリウム(0.92g,14mmol)とジメチルスルホキシド(12ml)とを加え,アルゴン雰囲気下で1時間撹拌した。その後,化合物(21)(1.0g,2.8mmol)を加え2時間撹拌した。この混合溶液に1−ヨードプロパン(0.71g,4.2mmol)を加え,4時間室温で反応させた。反応終了後,クロロホルム(200ml)に溶解させ,pHが7になるまで有機層を水で洗浄した。溶液に硫酸ナトリウムを加えて脱水した後,溶媒を除去した。反応混合物を再結晶により精製し,淡黄色の固形物を得た(収率:0.79g,収量:71%)。
【0125】
H−NMR(400MHz,DMSO−d,ppm)δ0.79(3H,t,J=6.83Hz),0.94(3H,t,J=7.32Hz),1.12−140(8H,m),1.77−1.94(4H,m),4.42(4H,t,J=7.32Hz),7.15(2H,t,J=7.32Hz),7.41(2H,t,J=8.29Hz),7.56(2H,d,J=8.29Hz),8.26(2H,d,J=7.80Hz),8.30(2H,d,J=7.80Hz).
IR(KBr):3043,2920,2850,1612,1508,1469,1326,1228,1153,1114,1002,829,740cm−1
【0126】
<化合物(24)の合成>
三つ口フラスコに水酸化カリウム(0.86g,14mmol)とジメチルスルホキシド(12ml)とを加え,アルゴン雰囲気下で1時間撹拌した。その後,化合物(22)(1.0g,2.8mmol)を加え2時間撹拌した。この混合溶液に1−ヨードプロパン(0.71g,4.2mmol)を加え,4時間室温にて反応させた。
【0127】
反応終了後,クロロホルム(200ml)に溶解させ,pHが7になるまで有機層を水で洗浄した。溶液に硫酸ナトリウムを加え脱水した後,溶媒を留去した。加熱終了後,再結晶によって淡黄色の固形物を得た(収量:0.86g,収率:78%)。
【0128】
H−NMR(400MHz,DMSO−d,ppm)δ0.79(3H,t,J=6.83Hz),1.12−1.40(14H,m),1.79−1.89(2H,m),4.45(3H,t,J=7.32Hz),7.15(2H,t,J=7.32Hz),7.42(2H,t,J=7.81Hz),7.55(2H,d,J=8.29Hz),8.261(2H,t,J=7.32Hz),8.30(2H,d,J=6.34Hz).
IR(KBr):3028,2916,2850,1612,1508,1469,1326,1234,1149,1110,1006,829,740,686cm−1
【0129】
[試験例1:化合物(16)〜(18)の性質]
<化合物(16)の性質>
化合物(16)の熱分解温度を熱重量測定より確認した。化合物(16)を4mg用い,窒素雰囲気下,室温から1000℃まで,昇温レート10℃/分で行なった。図2は、化合物(16),(17),(18)の熱重量測定の結果を示すグラフである。化合物(16)の5%重量減少温度は435℃であり,10%重量減少温度は445℃であった。
【0130】
また、化合物(16)の融点及びガラス転移温度(軟化温度)を示差走査熱量計により確認した。化合物(16)を16mg用い,窒素雰囲気下,−20℃から340℃の範囲で,昇降温を3回繰り返し測定した(昇温,降温レート:10℃/分)。図3は、化合物(16),(17),(18)の示差走査熱量測定の結果を示すグラフである。なお、図3には、3度目の昇温の結果を示す。化合物(16)は289℃に融点由来の吸熱ピークを示し,結晶性の化合物であった。
【0131】
また,得られた化合物(16)はクロロホルム,テトラヒドロフラン,トルエン,ジメチルホルムアミド,N−メチルピロジノン等の溶媒に対して可溶であり,水,メタノール,ヘキサン等の溶媒に対して不溶であった。このような化合物(16)の溶解性は,特定の溶媒に可溶であることから、コーティングや材料化のための成形加工を行なう際に有利である。また,その他の多くの溶媒に不溶であることから、材料化した後には,耐久性に優れたデバイスとなりうる点で有利である。
【0132】
<化合物(17)の性質>
化合物(17)の熱分解温度を熱重量測定より確認した。化合物(17)を4mg用い,窒素雰囲気下,室温から1000℃まで,昇温レート10℃/分で行なった。5%重量減少温度は460℃,10%重量減少は469℃であった(図2)。
【0133】
また、化合物(17)の融点及びガラス転移温度(軟化温度)を示差走査熱量計により確認した。化合物(17)を11mg用い,窒素雰囲気下,−20℃から340℃の範囲で,昇降温を3回繰り返し測定した(昇温,降温レート:10℃/分)。その結果、化合物(17)は93℃にガラス転移由来の吸熱カーブを示し,アモルファス性の化合物であることが確認できた(図3)。
【0134】
また,得られた化合物(17)はクロロホルム,テトラヒドロフラン,トルエン,ジメチルホルムアミド,N−メチルピロジノン等の溶媒に対して可溶であり,水,メタノール,ヘキサン等の溶媒に対して不溶であった。このような化合物(17)の溶解性は,特定の溶媒に可溶であることから、コーティングや材料化のための成形加工を行なう際に有利である。また,その他の多くの溶媒に不溶であることから、材料化した後には,耐久性に優れたデバイスとなりうる点で有利である。
【0135】
<化合物(18)の性質>
化合物(18)の熱分解温度を熱重量測定より確認した。化合物(18)を4mg用い,窒素雰囲気下,室温から1000℃まで,昇温レート10℃/分で行なった。5%重量減少温度は458℃,10%重量減少は468℃であった(図2)。
【0136】
また、化合物(18)の融点及びガラス転移温度(軟化温度)を示差走査熱量計により確認した。化合物(18)を6mg用い,窒素雰囲気下,−20℃から340℃の範囲で,昇降温を3回繰り返し測定した(昇温,降温レート:10℃/分)。その結果、化合物(17)は83℃にガラス転移由来の吸熱カーブを示し,アモルファス性の化合物であることが確認できた(図3)。
【0137】
また,得られた化合物(18)はクロロホルム,テトラヒドロフラン,トルエン,ジメチルホルムアミド,N−メチルピロジノン等の溶媒に対して可溶であり,水,メタノール,ヘキサン等の溶媒に対して不溶であった。このような化合物(18)の溶解性は,特定の溶媒に可溶であることから、コーティングや材料化のための成形加工を行なう際に有利である。また,その他の多くの溶媒に不溶であることから、材料化した後には,耐久性に優れたデバイスとなりうる点で有利である。
【0138】
[試験例2:化合物(13)の性質]
本発明の比較例として、化合物(13)の熱分解温度を、試験例1と同様の方法によって確認した。その結果、化合物(13)の5%重量減少温度は329℃であり,10%重量減少は347℃であった。
【0139】
以上の結果から、本発明に係る実施例である化合物(16)〜(18)の熱分解温度は400℃以上であり、化合物(13)と比較して100℃程度高いことが示された。したがって、本発明に係るインドロカルバゾール含有イミド化合物は、熱安定性が高いことが示された。
【0140】
[試験例3:成膜試験]
化合物(16),(17),(18)をそれぞれクロロホルムに溶解し,1.0重量%溶液に調製した。各溶液をそれぞれ石英基板へ滴下し,1000回転/分30秒間でスピンコートした。その後,基板を4時間真空乾燥することで溶媒を取り除いた。その結果,化合物(16),(17),(18)の透明かつ均一な薄膜を得ることができた。
【0141】
以上の結果から、化合物(16),(17),(18)は、スピンコートにより均一に成膜することができることが示された。したがって、本発明を利用すれば、均一な有機薄膜を簡便に形成することができるため、より優れた特性を示す有機エレクトロルミネッセンス、有機トランジスタ、有機太陽電池等の有機エレクトロニクスデバイスなどを作製することができる。
【0142】
[試験例4:紫外可視吸収スペクトル]
化合物(16),(17),(18)をそれぞれ1.4−ジオキサンに溶解し,1×10−6mol/L溶液に調製した。各溶液と,試験例2で得た各スピンコート膜とのそれぞれの紫外可視吸収スペクトルを測定した。
【0143】
その結果を図4〜図6に示す。図4、図5、図6はそれぞれ、化合物(16)、(17)、(18)の紫外可視吸収スペクトルを示す図である。
【0144】
化合物(16),(17),(18)の各溶液サンプルの極大吸収波長は、それぞれ281nm,338nm,416nmとなった。また,各スピンコート膜は、各溶液と同様の吸収スペクトルを示した。したがって、各化合物における溶液とスピンコート膜との吸収スペクトルの違いがないため、各化合物を変化させることなく成膜することが可能であることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0145】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス,有機トランジスタ、有機太陽電池等の有機エレクトロニクスデバイスに好適に利用できる。
【符号の説明】
【0146】
1 基板
2 陽極
3 バッファー層
4 活性層(有機薄膜)
5 陰極
10 有機太陽電池素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(3)で表される化合物と、酸無水物、ジカルボン酸又は酸ハロゲン化物とを反応させて得たことを特徴とするインドロカルバゾール含有イミド化合物。
【化1】

(上記式(3)中、R及びRはそれぞれ独立して炭素数1〜10のアルキル基を表し、R及びRはそれぞれ独立して炭素数1〜5のアルキル基を表わし、n1及びn2はそれぞれ独立して0又は1である。)
【請求項2】
上記酸無水物は、テトラカルボン酸二無水物であることを特徴とする請求項1に記載のインドロカルバゾール含有イミド化合物。
【請求項3】
下記式(1)で表されることを特徴とするインドロカルバゾール含有イミド化合物。
【化2】

(上記式(1)中、R、R、R及びRはそれぞれ独立して炭素数1〜10のアルキル基を表し、R、R、R及びRはそれぞれ独立して炭素数1〜5のアルキル基を表わし、n1、n2、n3及びn4はそれぞれ独立して0又は1であり、Aは置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基を示す。)
【請求項4】
上記Aが下記式(1a)で表されることを特徴とする請求項3に記載のインドロカルバゾール含有イミド化合物。
【化3】

(上記式(1a)中、Rは任意の原子又は2価の炭化水素基を表し、R10及びR11はそれぞれ独立して水素原子又は任意の置換基を表し、*は上記式(1)のイミド基の炭素原子との連結部分を示す。)
【請求項5】
上記式(1a)が、下記式(1aa)、(1ab)、(1ac)又は(1ad)のいずれかであることを特徴とする請求項4に記載のインドロカルバゾール含有イミド化合物。
【化4】

【請求項6】
上記Aが下記式(1b)で表されることを特徴とする請求項3に記載のインドロカルバゾール含有イミド化合物。
【化5】

(上記式(1b)中、nは1以上の整数であり、*は上記式(1)のイミド基の炭素原子との連結部分を示す。)
【請求項7】
下記式(3)で表されることを特徴とする合成中間体。
【化6】

(上記式(3)中、R及びRはそれぞれ独立して炭素数1〜10のアルキル基を表し、R及びRはそれぞれ独立して炭素数1〜5のアルキル基を表わし、n1及びn2はそれぞれ独立して0又は1である。)
【請求項8】
下記式(4)で表されることを特徴とする合成中間体。
【化7】

(上記式(4)中、R及びRはそれぞれ独立して炭素数1〜10のアルキル基を表し、R及びRはそれぞれ独立して炭素数1〜5のアルキル基を表わし、n1及びn2はそれぞれ独立して0又は1である。)
【請求項9】
請求項7に記載の合成中間体の製造方法であって、
請求項8に記載の合成中間体を水素化させる水素化工程を含むことを特徴とする合成中間体の製造方法。
【請求項10】
請求項7に記載の合成中間体と、酸無水物、ジカルボン酸又は酸ハロゲン化物とを反応させる反応工程を含むことを特徴とするインドロカルバゾール含有イミド化合物の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のインドロカルバゾール含有イミド化合物を含むことを特徴とする有機半導体組成物。
【請求項12】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のインドロカルバゾール含有イミド化合物を含有する有機薄膜を備えていることを特徴とする有機太陽電池素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−236777(P2012−236777A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−104785(P2011−104785)
【出願日】平成23年5月9日(2011.5.9)
【出願人】(503359821)独立行政法人理化学研究所 (1,056)
【出願人】(000125369)学校法人東海大学 (352)
【Fターム(参考)】