説明

インドール環を有する化合物、液晶組成物、及び液晶表示素子

【課題】 熱、光などに対する安定性を有し、広い温度範囲でネマチック相となり、粘度が小さく、及び適切な光学異方性を有し、さらに、大きな誘電率異方性、および他の液晶性化合物との優れた相溶性を有する液晶性化合物を提供する。
【解決手段】 化合物(1)とする。



例えばこの式において、RおよびRは独立して、炭素数1〜20のアルキルであり、環A〜Aは独立して、1,4−シクロヘキシレンまたは1,4−フェニレンであり;Z〜Zは独立して、単結合、−CHCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−COO−、−OCO−、−CFO−、−OCF−、−CHO−、−OCH−、または−CF=CF−であり;Lは独立して、水素またはハロゲンである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶性化合物、液晶組成物および液晶表示素子に関する。さらに詳しくはインドール環を有する液晶性化合物、この化合物を含有したネマチック相を有する液晶組成物、およびこの組成物を含有する液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶性化合物(本願において、液晶性化合物なる用語は、液晶相を有する化合物および液晶相を有さないが液晶組成物の構成成分として有用である化合物の総称として用いられる。)を用いた表示素子は、時計、電卓、ワ−プロなどのディスプレイに広く利用されている。これらの表示素子は液晶性化合物の光学異方性、誘電率異方性などを利用したものである。
【0003】
液晶表示パネル、液晶表示モジュール等に代表される液晶表示素子は、液晶性化合物が有する光学異方性、誘電率異方性などを利用したものであるが、この液晶表示素子の動作モードとしては、PC(phase change)モード、TN(twisted nematic)モード、STN(super twisted nematic)モード、BTN(bistable twisted nematic)モード、ECB(electrically controlled birefringence)モード、OCB(optically compensated bend)モード、IPS(in-plane switching)モード、VA(vertical alignment)モード、PSA(polymer sustained alignment)モードなどの様々なモードが知られている。
【0004】
これらの液晶表示素子は、適切な物性を有する液晶組成物を含有する。液晶表示素子の特性を向上させるには、この液晶組成物が適切な物性を有するのが好ましい。液晶組成物の成分である液晶性化合物に必要な一般的物性は、次の(1)〜(6)で示す特性を有することが必要である。すなわち、
(1)化学的に安定であること、および物理的に安定であること、
(2)高い透明点(液晶相−等方相の転移温度)を有すること、
(3)液晶相(ネマチック相、スメクチック相等)の下限温度、特にネマチック相の下限温度が低いこと、
(4)適切な光学異方性を有すること、
(5)適切な大きさの誘電率異方性を有すること、
(6)他の液晶性化合物との相溶性に優れること、
である。
【0005】
(1)のように化学的、物理的に安定な液晶性化合物を含む組成物を液晶表示素子に用いると、電圧保持率を大きくすることができる。
(2)および(3)のように、高い透明点、または液晶相の低い下限温度を有する液晶性化合物を含む組成物では、ネマチック相の温度範囲が広いので、素子は幅広い温度領域で使用することが可能となる。
【0006】
さらに、(4)のように適切な光学異方性を有する化合物を含む組成物を用いた表示素子の場合は、素子のコントラストの向上を図ることができる。素子の設計次第では、光学異方性は小さいものから大きなものまで必要である。最近ではセル厚を薄くすることにより応答速度を改善する手法が検討されており、それに伴い、大きな光学異方性を有する液晶組成物も必要となっている。
【0007】
しきい値電圧(Vth)はよく知られているように、下式により示される(H.J.Deuling, et al.,Mol.Cryst.Liq.Cryst.,27 (1975)81)。

th=π(K/εΔε)1/2

上式において、Kは弾性定数、εは真空の誘電率である。該式から判るように、Vthを低下させるには、Δε(誘電率異方性)の値を大きくするかまたはKを小さくするかの2通りの方法が考えられる。しかし、現在の技術では未だ実際にKをコントロールすることは困難であるため、通常はΔεの大きな液晶材料を用いて要求に対処しているのが現状である。このような事情から(5)のように適切な大きさの誘電率異方性を有する液晶化合物、特に大きな誘電率異方性を有する液晶化合物の開発が盛んに行われている。
【0008】
液晶性化合物は、単一の化合物では発揮することが困難な特性を発現させるために、他の多くの液晶性化合物と混合して調製した組成物として用いることが一般的である。したがって、表示素子に用いる液晶性化合物は、(6)のように、他の液晶性化合物等との相溶性が良好であることが好ましい。また、表示素子は、氷点下を含め幅広い温度領域で使用することもあるので、低い温度領域から良好な相溶性を示す化合物であることが好ましい場合もある。
【0009】
インドール環を有する化合物を添加物として液晶表示素子に用いた例(特許文献1)や、偏光版、光学フィルター、色素等として用いる例(特許文献2、3、および4)は報告されている。しかし、インドール環を有する化合物を液晶性化合物として用いている例はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平7−53962号公報
【特許文献2】特開2008−75015号公報
【特許文献3】国際公開第2006/109618パンフレット
【特許文献4】国際公開第2004/069394パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の第一の目的は、熱、光などに対する安定性を有し、広い温度範囲でネマチック相となり、粘度が小さく、及び適切な光学異方性を有し、さらに、大きな誘電率異方性、および他の液晶性化合物との優れた相溶性を有する液晶性化合物であり、特に大きな誘電率異方性および他の液晶性化合物との優れた相溶性を有する液晶性化合物を提供することである。
【0012】
本発明の第二の目的は、熱、光などに対する安定性を有し、粘度が低く、適切な光学異方性、および大きな誘電率異方性を有し、しきい値電圧が低く、さらに、この化合物を含有して、ネマチック相の上限温度(ネマチック相−等方相の相転移温度)が高く、ネマチック相の下限温度が低いといった諸特性において、少なくとも一つの特性を充足する液晶組成物を提供することである。さらには、少なくとも二つの特性に関して適切なバランスを有する液晶組成物を提供することである。
【0013】
本発明の第三の目的は、応答時間が短く、消費電力および駆動電圧が小さく、大きなコントラストを有し、広い温度範囲で使用可能である、液晶組成物を含有する液晶表示素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、以下のような液晶性化合物、液晶組成物、および液晶組成物を含有する液晶表示素子等を提供する。また、以下に、式(1)で表わされる化合物における末端基、環、結合基等に関して好ましい例も述べる。
【0015】
[1] 式(1)で表される化合物。


この式において、RおよびRは独立して、水素、ハロゲン、または炭素数1〜20のアルキルであり、このアルキルにおいて、任意の−CH−は−O−または−S−で置き換え換えられてもよく、任意の−(CH−は−CH=CH−で置き換えられてもよく、これらにおいて、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく;環A、環A、環A、環A、環A、環A、環A、および環Aは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、1,4−フェニレン、または任意の水素がハロゲンで置き換えられた1,4−フェニレンであり;Z、Z、Z、Z、Z、Z、Z、およびZは独立して、単結合、−CHCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−COO−、−OCO−、−CFO−、−OCF−、−CHO−、−OCH−、−CF=CF−、−(CH−、−(CHCFO−、−(CHOCF−、−CFO(CH−、−OCF(CH−、−CH=CH−(CH−、または−(CH−CH=CH−であり;L、L、L、L、およびL)は独立して、水素、ハロゲン、−CH、または−CFであり;a、a、a、a、a、a、a、およびaは独立して、0または1であり、a、a、a、a、a、a、a、およびaの和は2、3、または4であり;R−(A)a−(A)a−(A)a−(A)a−、L、およびLは、インドール環の1位、2位、および3位から選ばれた個別な1つずつにあり、R−(A)a−(A)a−(A)a−(A)a−、L、L、およびLはインドール環の4位、5位、6位、および7位から選ばれた個別な1つずつにある。
【0016】
[2] 式(1)において、R−(A)a−(A)a−(A)a−(A)a−がインドール環の1位にあり;LおよびLが水素である請求項1に記載の化合物。
【0017】
[3] 式(1)において、R−(A)a−(A)a−(A)a−(A)a−がインドール環の1位にあり;LおよびLが水素であり;インドール環の6位および7位が水素またはフッ素である項[1]に記載の化合物。
【0018】
[4] 式(1)において、R−(A)a−(A)a−(A)a−(A)a−がインドール環の1位にあり、かつR−(A)a−(A)a−(A)a−(A)a−がインドール環の4位にあり;LおよびLが水素であり;L、L、およびLが、水素またはフッ素である項[1]に記載の化合物。
【0019】
[5] 式(1−1)〜(1−2)のいずれか一つで表される項[1]に記載の化合物。


これらの式において、Rは、炭素数1〜15のアルキル、炭素数2〜15のアルケニル、炭素数1〜15のアルコキシ、または炭素数2〜15のアルケニルオキシであり;Rは、フッ素、塩素、−CF、−CHF、−CHF、−OCF、−OCHF、または−OCHFであり;環A、環A、環A、環A、環A、環A、環A、および環Aは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、1,4−フェニレン、または任意の水素がフッ素で置き換えられた1,4−フェニレンであり;a、a、a、a、a、a、a、およびaは独立して、0または1であり、a、a、a、a、a、a、a、およびaの和は、2、3、または4であり;Z、Z、Z、Z、Z、Z、Z、およびZは独立して、単結合、−CHCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−COO−、−CFO−、−CHO−、または−OCH−であり;LおよびLは独立して、水素またはフッ素である。
【0020】
[6] 式(1−3)〜(1−14)のいずれか一つで表される項[1]に記載の化合物。




これらの式において、Rは、炭素数1〜15のアルキル、炭素数2〜15のアルケニル、炭素数1〜15のアルコキシ、または炭素数2〜15のアルケニルオキシであり;Rは、フッ素、−CF、または−OCFであり;環A、は、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、または任意の水素がフッ素で置き換えられた1,4−フェニレンであり;Z、Z、Z、Z、Z、およびZは独立して、単結合、−CHCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−COO−、−CFO−、−CHO−、または−OCH−であり;Y1、Y、Y、Y、Y、およびYは独立して、水素またはフッ素であり;L、L、およびLは独立して、水素またはフッ素であり;式(1−13)および式(1−14)において、R、L、L、およびLは、インドール環の4位、5位、6位、および7位から選ばれた個別な1つずつにある。
【0021】
[7] 式(1−15)〜(1−20)のいずれか一つで表される項[1]に記載の化合物。


これらの式において、Rは、炭素数1〜15のアルキル、炭素数2〜15のアルケニル、または炭素数1〜15のアルコキシであり;Rは、フッ素、−CF、または−OCFであり;Y1、Y、Y、およびYは独立して、水素またはフッ素であり;L、およびLは独立して、水素またはフッ素である。
【0022】
[8] 式(1−21)〜(1−24)のいずれか一つで表される項[1]に記載の化合物。


これらの式において、Rは炭素数1〜15のアルキルである。
【0023】
[9] 項[1]〜[8]に記載の少なくとも1つの化合物を1成分として含有する、2成分以上からなる液晶組成物。
【0024】
[10] 式(2)、(3)および(4)ので表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物を1成分として含有する項[9]に記載の液晶組成物。


これらの式において、Rは炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH2−は−O−で置き換えられてもよく;Xは、フッ素、塩素、−OCF3、−OCHF2、−CF3、−CHF2、−CH2F、−OCF2CHF2、または−OCF2CHFCF3であり;環B、環B、および環Bは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、1,4−フェニレン、または任意の水素がフッ素で置き換えられた1,4−フェニレンであり;ZおよびZは独立して、−(CH22−、−(CH24−、−COO−、−CF2O−、−OCF2−、−CH=CH−、−C≡C−、−CHO−、または単結合であり;LおよびLは独立して、水素またはフッ素である。
【0025】
[11] 式(5)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物を1成分として含有する項[9]に記載の液晶組成物。


これらの式において、Rは炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH2−は−O−で置き換えられてもよく;Xは−C≡Nまたは−C≡C−C≡Nであり;環C、環Cおよび環Cは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、任意の水素がフッ素で置き換えられた1,4−フェニレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、またはピリミジン−2,5−ジイルであり;Zは−(CH22−、−COO−、−CF2O−、−OCF2−、−C≡C−、−CHO−、または単結合であり;LおよびLは独立して、水素またはフッ素であり;rは、0、1または2であり、sは0または1であり、rとsとの和が、0、1、または2である。
【0026】
[12] 式(6)、(7)、(8)、(9)および(10)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物を1成分として含有する項[9]に記載の液晶組成物。


これらの式において、RおよびRは独立して、炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH2−は−O−で置き換えられてもよく;環D、環D、環D、および環Dは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,4−フェニレン、任意の水素がフッ素で置き換えられた1,4−フェニレン、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、またはデカヒドロナフタレン−2,6−ジイルであり;Z10、Z11、Z12、およびZ13は独立して、−(CH22−、−COO−、−CHO−、−OCF−、−OCF(CH22−、または単結合であり;LおよびL10は独立して、フッ素または塩素であり;t、u、x、y、およびzは独立して0または1であり、u、x、y、およびzの和は、1または2である。
【0027】
[13] 式(11)、(12)および(13)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物を1成分として含有する項[9]に記載の液晶組成物。


これらの式において、RおよびRは独立して、炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH2−は−O−で置き換えられてもよく;環E、環E、および環Eは独立して、1,4−シクロヘキシレン、ピリミジン−2,5−ジイル、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、3−フルオロ−1,4−フェニレン、または2,5−ジフルオロ1,4−フェニレンであり;Z14およびZ15は独立して、−C≡C−、−COO−、−(CH22−、−CH=CH−、または単結合である。
【0028】
[14] 項[11]記載の式(5)で表される化合物の群から選択される少なくとも2つの異なる化合物を含有する、項[9]に記載の液晶組成物。
【0029】
[15] 項[12]記載の式(11)、(12)および(13)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する項[11]に記載の液晶組成物。
【0030】
[16] 項[13]記載の式(11)、(12)および(13)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する項[12]に記載の液晶組成物。
【0031】
[17] 項[11]記載の式(11)、(12)および(13)のそれぞれで表される化合物の群から選択される少なくとも2種類の異なる化合物を含有する項[12]に記載の液晶組成物。
【0032】
[18] 少なくとも1つの光学活性化合物をさらに含有する項[9]に記載の液晶組成物。
【0033】
[19] 少なくとも1つの酸化防止剤および/または紫外線吸収剤をさらに含有する項[9]に記載の液晶組成物。
【0034】
[20] 項[9]〜[19]のいずれか1項に記載の液晶組成物を含有する液晶表示素子。
【0035】
この明細書における用語の使い方は次のとおりである。液晶化合物は、ネマチック相、スメクチック相などの液晶相を有する化合物および液晶相を有しないが液晶組成物の成分として有用な化合物の総称である。液晶化合物、液晶組成物、液晶表示素子をそれぞれ化合物、組成物、素子と略すことがある。液晶表示素子は液晶表示パネルおよび液晶表示モジュールの総称である。ネマチック相の上限温度はネマチック相−等方相の相転移温度であり、そして単に透明点または上限温度と略すことがある。ネマチック相の下限温度を単に下限温度と略すことがある。式(1)で表わされる化合物を化合物(1)と略すことがある。この略記は式(2)などで表される化合物にも適用することがある。式(1)から式(13)において、六角形で囲んだB、D、Eなどの記号はそれぞれ環B、環D、環Eなどに対応する。百分率で表した化合物の量は組成物の全重量に基づいた重量百分率(重量%)である。環A、Y、Bなど複数の同じ記号を同一の式または異なった式に記載したが、これらはそれぞれが同一であってもよいし、または異なってもよい。
【0036】
「任意の」は、位置だけでなく個数についても任意であることを示すが、個数が0である場合を含まない。任意のAがB、CまたはDで置き換えられてもよいという表現は、任意のAがBで置き換えられる場合、任意のAがCで置き換えられる場合および任意のAがDで置き換えられる場合に加えて、複数のAがB〜Dの少なくとも2つで置き換えられる場合をも含むことを意味する。例えば、任意の−CH−が−O−または−CH=CH−で置き換えられてもよいアルキルには、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルコキシアルケニル、アルケニルオキシアルキルなどが含まれる。なお、本発明においては、連続する2つの−CH−が−O−で置き換えられて、−O−O−のようになることは好ましくない。そして、アルキルにおける末端の−CH−が−O−で置き換えられることも好ましくない。以下に本発明をさらに説明する。
【発明の効果】
【0037】
本発明の化合物は、化合物に必要な一般的物性、熱、光などに対する安定性、液晶相の広い温度範囲、他の化合物との良好な相溶性、大きな誘電率異方性および適切な光学異方性を有する。本発明の液晶組成物は、これらの化合物の少なくとも一つを含有し、そしてネマチック相の高い上限温度、ネマチック相の低い下限温度、小さな粘度、および低いしきい値電圧を有する。本発明の液晶表示素子は、この組成物を含有し、そして使用できる広い温度範囲、短い応答時間、小さな消費電力、大きなコントラスト比、および低い駆動電圧を有する。
【発明を実施するための形態】
【0038】
1−1 本発明の化合物
本発明の第1の態様は、式(1)で表される化合物に関する。


式(1)において、R−(A)a−(A)a−(A)a−(A)a−、L、およびLは、インドール環の1位、2位、および3位から選ばれた個別な1つずつにあり、R−(A)a−(A)a−(A)a−(A)a−、L、L、およびLはインドール環の4位、5位、6位、および7位から選ばれた個別な1つずつにある。
【0039】
「R−(A)a−(A)a−(A)a−(A)a−」とは、下記の基を示す。


「R−(A)a−(A)a−(A)a−(A)a−」とは、下記の基を示す。


「個別な1つずつ」とは、それぞれが違ったものを選択することを示す。「R−(A)a−(A)a−(A)a−(A)a−、L、およびLは、インドール環の1位、2位、および3位から選ばれた個別な1つずつ」とは、例えば、R−(A)a−(A)a−(A)a−(A)a−がインドール環の1位にあり、Lがインドール環の2位にあり、そしてLはインドール環の3位にある場合である。
【0040】
およびRは独立して、水素、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルコキシアルコキシ、チオアルキル、チオアルキルアルコキシ、アルケニル、アルケニルオキシ、アルケニルオキシアルキル、アルコキシアルケニル等であり、そして任意の水素はハロゲンにより置き換えられてもよい。これらの基において分岐よりも直鎖の方が好ましい。RまたはRが分岐の基であっても光学活性であるときは好ましい。アルケニルにおける−CH=CH−の好ましい立体配置は、二重結合の位置に依存する。−CH=CHCH、−CH=CHC、−CH=CHC、−CH=CHC、−CCH=CHCH、および−CCH=CHCのような奇数位に二重結合をもつアルケニルにおいてはトランス配置が好ましい。−CHCH=CHCH、−CHCH=CHC、および−CHCH=CHCのような偶数位に二重結合をもつアルケニルは、シス配置が好ましい。好ましい立体配置を有するアルケニルは、高い上限温度または液晶相の広い温度範囲を有する。Mol. Cryst. Liq. Cryst., 1985, 131, 109およびMol. Cryst. Liq. Cryst., 1985, 131, 327に詳細な説明がある。
【0041】
アルキルは、直鎖でも分岐鎖でもよく、アルキルの具体的な例は、−CH、−C、−C、−C、−C11、−C13、−C15、−C17、−C19、−C1021、−C1123、−C1225、−C1327、−C1429、および−C1531である。
【0042】
アルコキシは、直鎖でも分岐鎖でもよく、アルコキシの具体的な例は、−OCH、−OC、−OC、−OC、−OC11、−OC13および−OC15、−OC17、−OC19、−OC1021、−OC1123、−OC1225、−OC1327、および−OC1429である。
【0043】
アルコキシアルキルは、直鎖でも分枝鎖でもよく、アルコキシアルキルの具体的な例は、−CHOCH、−CHOC、−CHOC、−(CH−OCH、−(CH−OC、−(CH−OC、−(CH−OCH、−(CH−OCH、および−(CH−OCHである。
【0044】
アルケニルは、直鎖でも分枝鎖でもよく、アルケニルの具体的な例は、−CH=CH、−CH=CHCH、−CHCH=CH、−CH=CHC、−CHCH=CHCH、−(CH−CH=CH、−CH=CHC、−CHCH=CHC、−(CH−CH=CHCH、および−(CH−CH=CHである。
【0045】
アルケニルオキシは、直鎖でも分枝鎖でもよく、アルケニルオキシの具体的な例は、−OCHCH=CH、−OCHCH=CHCH、および−OCHCH=CHCである。
【0046】
任意の水素がハロゲンにより置き換えられたアルキルの具体的な例は、−CHF、−CHF、−CF、−(CH−F、−CFCHF、−CFCHF、−CHCF、−CFCF、−(CH−F、−(CF−F、−CFCHFCF、−CHFCFCF、−(CH−F、−(CF−F、−(CH−F、および−(CF−Fである。
【0047】
任意の水素がハロゲンにより置き換えられたアルコキシの具体的な例は、−OCHF、−OCHF、−OCF、−O−(CH−F、−OCFCHF、−OCFCHF、−OCHCF、−O−(CH−F、−O−(CF−F、−OCFCHFCF、−OCHFCFCF、−O(CH−F、−O−(CF−F、−O−(CH−F、および−O−(CF−Fである。
【0048】
任意の水素がハロゲンにより置き換えられたアルケニルの具体的な例は、−CH=CHF、−CH=CF、−CF=CHF、−CH=CHCHF、−CH=CHCF、−(CH−CH=CF、−CHCH=CHCF、および−CH=CHCFCFである。
【0049】
またはRは、ハロゲン、炭素数1〜15のアルキル、炭素数2〜15のアルケニル、任意の水素がハロゲンにより置き換えられた炭素数1〜15のアルキル、または任意の水素がハロゲンにより置き換えられた炭素数2〜15のアルコキシが好ましい。また、RまたはRの最も好ましい例は、フッ素、塩素、−CH、−C、−C、−C、−C11、−C13、−C15、−C17、−C19、−C1021−C1123、−C1225、−C1327、−C1429、−C1531、−CH=CH、−CH=CHCH、−CHCH=CH、−CH=CHC、−CHCH=CHCH、−(CH−CH=CH、−CH=CHC、−CHCH=CHC、−(CH−CH=CHCH、−(CH−CH=CH、−CF、−CHF、−CHF、−OCF、−OCHFまたは−OCHFである。
【0050】
式(1)において、環A、環A、環A、環A、環A、環A、環A、および環Aは独立して、1,4−シクロヘキシレン(14−1)、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル(14−2)、1,4−フェニレン(14−3)、または任意の水素がハロゲンで置き換えられた1,4−フェニレンである。任意の水素がハロゲンで置き換えられた1,4−フェニレンの例は、下記の式(14−4)〜(14−20)で表される基である。好ましい例は、式(14−4)〜(14−9)で表される基である。
【0051】

【0052】
環A、環A、環A、環A、環A、環A、環A、または環Aの好ましい例は、1,4−シクロヘキシレン(14−1)、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル(14−2)、1,4−フェニレン(14−3)、2−フルオロ−1,4−フェニレン(14−4)(14−5)、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン(14−6)、2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン(14−8)、2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレン(14−7)(14−9)である。
【0053】
環A、環A、環A、環A、環A、環A、環A、または環Aの最も好ましい例は、1,4−シクロヘキシレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、および2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレンである。
【0054】
式(1)において、Z、Z、Z、Z、Z、Z、Z、およびZは独立して、単結合、−CHCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−COO−、−OCO−、−CFO−、−OCF−、−CHO−、−OCH−、−CF=CF−、−(CH−、−(CH−CFO−、−(CH−OCF−、−CFO−(CH−、−OCF(CH−、−CH=CH−(CH−、または−(CH−CH=CH−である。
【0055】
、Z、Z、Z、Z、Z、Z、またはZの好ましい例は、単結合、−CHCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−COO−、−CFO−、−CHO−、および−OCH−である。これらの結合において、−CH=CH−、−CF=CF−、−CH=CH−(CH−、および−(CH−CH=CH−のような結合基の二重結合に関する立体配置は、シスよりもトランスが好ましい。最も好ましいZ、Z、Z、Z、Z、Z、Z、またはZは、単結合である。
【0056】
式(1)において、L、L、L、L、およびLは独立して、水素、ハロゲン、−CH、または−CFである。また、L、L、L、L、またはLは、水素またはフッ素であることが好ましい。
【0057】
式(1)において、a、a、a、a、a、a、a、およびaは独立して、0または1であり、a、a、a、a、a、a、a、およびaの和は2、3、または4である。
【0058】
式(1)において、R−(A)a−(A)a−(A)a−(A)a−はインドール環の1位にあることが好ましい。
【0059】
式(1)において、R−(A)a−(A)a−(A)a−(A)a−は、インドール環の4位または5位にあることが好ましい。
【0060】
1−2 本発明の化合物の性質およびその調整方法
本発明の化合物(1)をさらに詳細に説明する。この化合物は、素子が通常使用される条件下において物理的および化学的に極めて安定であり、そして他の液晶化合物との相溶性がよい。この化合物を含有する組成物は素子が通常使用される条件下で安定である。この組成物を低い温度で保管しても、この化合物が結晶(またはスメクチック相)として析出することがない。この化合物は、化合物に必要な一般的物性、適切な光学異方性、そして適切な誘電率異方性を有する。また、化合物(1)は、誘電率異方性が正に大きい。大きな誘電率異方性を有する化合物は、組成物のしきい値電圧を下げるための成分として有用である。
【0061】
化合物(1)において、R、R、環A、環A、環A、環A、環A、環A、環A環A、Z、Z、Z、Z、Z、Z、Z、Z、L、L、L、L、L、a、a、a、a、a、a、a、およびaの組み合わせ、と、R−(A)a−(A)a−(A)a−(A)a−、L、L、R−(A)a−(A)a−(A)a−(A)a−、L、L、およびLの結合位置とを適切に選択することによって、透明点、光学異方性、誘電率異方性などの物性を任意に調整することが可能である。これらが、化合物(1)の物性に与える効果を以下に説明する。
【0062】
−(A)a−(A)a−(A)a−(A)a−、およびR−(A)a−(A)a−(A)a−(A)a−が、それぞれインドール環の1位および4位にあるときは、液晶相の温度範囲が広く、透明点が高い。R−(A)a−(A)a−(A)a−(A)a−、およびR−(A)a−(A)a−(A)a−(A)a−が、それぞれインドール環の1位および5位にあるときは、他の化合物との相溶性が高く、誘電率異方性が大きい。
【0063】
、L、L、L、およびLのすべてが水素である場合は、液晶相の温度範囲が広く、透明点が高い。L、L、L、L、およびLの少なくとも1つがフッ素である場合は、誘電率異方性が大きい。
【0064】
、a、a、a、a、a、a、およびaで、その和が2である組み合わせの場合は、他の化合物との相溶性が高く、その和が3である組み合わせの場合は、液晶相の温度範囲が広く、透明点が高い。
【0065】
環A、環A、環A、環A、環A、環A、環A、および環Aが全て、1,4−シクロヘキシレンであるときは、透明点が高く、粘度が小さい。少なくとも一つの環A、環A、環A、環A、環A、環A、環A、および環Aが1,4−フェニレンのときは、光学異方性が比較的大きく、そして配向秩序パラメーター(orientational order parameter)が比較的大きい。また環A、環A、環A、環A、環A、環A、環A、および環Aが全て、1,4−フェニレンであるときは、光学異方性が特に大きい。
【0066】
およびRが直鎖であるときは、液晶相の温度範囲が広くそして粘度が小さい。RまたはRが分岐鎖であるときは、他の液晶化合物との相溶性がよい。RまたはRが光学活性基である化合物は、キラルドーパントとして有用である。この化合物を組成物に添加することによって、素子に発生するリバース・ツイスト・ドメイン(reverse twisted domain)を防止することができる。RおよびRが光学活性基でない化合物は組成物の成分として有用である。RまたはRがアルケニルであるとき、好ましい立体配置は二重結合の位置に依存する。好ましい立体配置を有するアルケニルは、高い上限温度または液晶相の広い温度範囲を有する。RおよびRがハロゲンを有する場合は誘電率異方性が大きい。
【0067】
、Z、Z、Z、Z、Z、Z、またはZが、単結合、−CHCH−、−CH=CH−、−CFO−、−OCF−、−CH2O−、−OCH2−、−CF=CF−、−(CH−O−、−O−(CH−、−(CH−CFO−、−OCF−(CH−、または−(CH−であるときは、粘度が小さい。Z、Z、Z、Z、Z、Z、Z、またはZ、単結合、−(CH−、−CFO−、−OCF−、または−CH=CH−であるときは、粘度がより小さい。Z、Z、Z、Z、Z、Z、Z、またはZが、−CH=CH−であるときは、液晶相の温度範囲が広く、そして弾性定数比K33/K11(K33:ベンド弾性定数、K11:スプレイ弾性定数)が大きい。Z、Z、Z、Z、Z、Z、Z、またはZが、−C≡C−のときは、光学異方性が大きい。Zが単結合、−(CH−、−CHO−、−CFO−、−OCF−、−(CH−であるときは化学的に比較的安定であって、比較的劣化をおこしにくい。
【0068】
以上のように、環A、末端基R、結合基Zなどの種類を適当に選択することにより目的の物性を有する化合物を得ることができる。したがって、化合物(1)は、PC、TN、STN、ECB、OCB、IPS、VAなどの素子に用いられる組成物の成分として有用である。
【0069】
1−3 化合物(1)の具体例
化合物(1)の好ましい例は、項[5]に示した式(1−1)〜(1−2)である。より好ましい例は、項[6]に示した式(1−3)〜(1−14)である。さらに好ましい例は、項[7]に示した式(1−15)〜(1−20)である。最も好ましい例は、項[8]に示した式(1−20)〜(1−24)である。


これらの式において、Rは、炭素数1〜15のアルキル、炭素数2〜15のアルケニル、炭素数1〜15のアルコキシ、または炭素数2〜15のアルケニルオキシであり;Rは、フッ素、塩素、−CF、−CHF、−CHF、−OCF、−OCHF、または−OCHFであり;環A、環A、環A、環A、環A、環A、環A、および環Aは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、1,4−フェニレン、または任意の水素がフッ素で置き換えられた1,4−フェニレンであり;Z、Z、Z、Z、Z、Z、Z、およびZは独立して、単結合、−CHCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−COO−、−CFO−、−CHO−、または−OCH−であり;LおよびLは独立して、水素またはフッ素である。
【0070】

【0071】


これらの式において、Rは炭素数1〜15のアルキル、炭素数2〜15のアルケニル、炭素数1〜15のアルコキシ、または炭素数2〜15のアルケニルオキシであり;Rは、フッ素、−CF、または−OCFであり;環A、は独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、または任意の水素がフッ素で置き換えられた1,4−フェニレンであり;Z、Z、Z、Z、Z、およびZは独立して、単結合、−CHCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−COO−、−CFO−、−CHO−、または−OCH−であり;Y1、Y、Y、Y、Y、およびYは独立して、水素またはフッ素であり;L、L、およびLは独立して、水素またはフッ素であり;式(1−13)および式(1−14)において、R、L、L、およびLは、インドール環の4位、5位、6位、および7位から選ばれた個別な1つずつにある。
【0072】


これらの式において、Rは炭素数1〜15のアルキル、炭素数2〜15のアルケニル、または炭素数1〜15のアルコキシであり;Rは、フッ素、−CF、または−OCFであり;Y1、Y、Y、およびYは独立して、水素またはフッ素であり;LおよびLは独立して、水素またはフッ素である。
【0073】


これらの式において、Rは炭素数1〜15のアルキルである。
【0074】
1−4 化合物(1)の合成
次に、化合物(1)の合成について説明する。化合物(1)は有機合成化学における手法を適切に組み合わせることにより合成できる。出発物に目的の末端基、環および結合基を導入する方法は、オーガニックシンセシス(Organic Syntheses, John Wiley & Sons, Inc)、オーガニック・リアクションズ(Organic Reactions, John Wiley & Sons, Inc)、コンプリヘンシブ・オーガニック・シンセシス(Comprehensive Organic Synthesis, Pergamon Press)、新実験化学講座(丸善)などに記載されている。
【0075】
1−4−1 結合基Zを生成する方法
化合物(1)における結合基Zを生成する方法の一例は、下記のスキームの通りである。このスキームにおいて、MSGまたはMSGは少なくとも一つの環を有する1価の有機基である。スキームで用いた複数のMSG(またはMSG)は、同一であってもよいし、または異なってもよい。化合物(1A)〜(1J)は、化合物(1)に相当する。
【0076】

【0077】

【0078】
次に、化合物(1)における結合基Zについて、各種の結合の生成方法について、以下の(I)〜(XI)項で説明する。
【0079】
(I)単結合の生成
アリールホウ酸(15)と公知の方法で合成される化合物(16)とを、炭酸塩水溶液とテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムのような触媒の存在下で反応させて化合物(1A)を合成する。この化合物(1A)は、公知の方法で合成される化合物(17)にn−ブチルリチウムを、次いで塩化亜鉛を反応させ、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムのような触媒の存在下で化合物(16)を反応させることによっても合成される。
【0080】
(II)−COO−と−OCO−の生成
化合物(17)にn−ブチルリチウムを、続いて二酸化炭素を反応させてカルボン酸(18)を得る。化合物(18)と、公知の方法で合成されるフェノール(19)とをDCC(1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド)とDMAP(4−ジメチルアミノピリジン)の存在下で脱水させて−COO−を有する化合物(1B)を合成する。この方法によって−OCO−を有する化合物も合成する。
【0081】
(III)−CFO−と−OCF−の生成
化合物(1B)をローソン試薬のような硫黄化剤で処理して化合物(20)を得る。化合物(20)をフッ化水素ピリジン錯体とNBS(N−ブロモスクシンイミド)でフッ素化し、−CFO−を有する化合物(1C)を合成する。M. Kuroboshi et al., Chem. Lett., 1992,827.を参照。化合物(1C)は化合物(20)を(ジエチルアミノ)サルファートリフルオリド(DAST)でフッ素化しても合成される。W. H. Bunnelle et al., J. Org. Chem. 1990, 55, 768.を参照。この方法によって−OCF−を有する化合物も合成する。Peer. Kirsch et al., Angew. Chem. Int. Ed. 2001, 40, 1480.に記載の方法によってこれらの結合基を生成させることも可能である。
【0082】
(IV)−CH=CH−の生成
化合物(17)をn−ブチルリチウムで処理した後、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)などのホルムアミドと反応させてアルデヒド(22)を得る。公知の方法で合成されるホスホニウム塩(21)をカリウムtert−ブトキシドのような塩基で処理して発生させたリンイリドを、アルデヒド(22)に反応させて化合物(1D)を合成する。反応条件によってはシス体が生成するので、必要に応じて公知の方法によりシス体をトランス体に異性化する。
【0083】
(V)−(CH−の生成
化合物(1D)をパラジウム炭素のような触媒の存在下で水素化することにより、化合物(1E)を合成する。
【0084】
(VI)−(CH−の生成
ホスホニウム塩(21)の代わりにホスホニウム塩(23)を用い、項(IV)の方法に従って−(CH−CH=CH−を有する化合物を得る。これを接触水素化して化合物(1F)を合成する。
【0085】
(VII)−C≡C−の生成
ジクロロパラジウムとハロゲン化銅との触媒存在下で、化合物(17)に2−メチル−3−ブチン−2−オールを反応させたのち、塩基性条件下で脱保護して化合物(24)を得る。ジクロロビストリフェニルホスフィンパラジウムとハロゲン化銅との触媒存在下、化合物(24)を化合物(16)と反応させて、化合物(1G)を合成する。
【0086】
(VIII)−CF=CF−の生成
化合物(17)をn−ブチルリチウムで処理したあと、テトラフルオロエチレンを反応させて化合物(25)を得る。化合物(16)をn−ブチルリチウムで処理したあと化合物(25)と反応させて化合物(1H)を合成する。
【0087】
(IX)−CHO−または−OCH−の生成
化合物(22)を水素化ホウ素ナトリウムなどの還元剤で還元して化合物(26)を得る。これを臭化水素酸などでハロゲン化して化合物(27)を得る。炭酸カリウムなどの存在下で、化合物(27)を化合物(19)と反応させて化合物(1I)を合成する。
【0088】
(X)−(CH23O−または−O(CH23−の生成
化合物(22)の代わりに化合物(28)を用いて、前項(IX)と同様な方法にて化合物(1J)を合成する。
【0089】
1−4−2 環Aを合成する方法
1,4−シクロヘキシレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,3,5,6−テトラフルオロ−1,4−フェニレンなどの環に関しては出発物が市販されているか、または合成法がよく知られている。
【0090】
1−4−3 化合物(1)を合成する方法
式(1)で表される化合物を合成する方法は複数あるが、ここにその例を示す。インドール誘導体(31)とボロン酸誘導体(32)をテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム、炭酸カリウムなどの存在下でカップリングさせてインドール誘導体(33)に導いた後、ヨウ素誘導体(34)、ジエチルシクロヘキサンジアミン(35)、ヨウ化銅、炭酸カリウムなどの存在下でカップリングさせて化合物(1)へと導くことができる。
【0091】


これらの式において、R、R、環A、環A、環A、環A、環A、環A、環A、環A、Z、Z、Z、Z、Z、Z、Z、a、a、a、a、a、a、aおよびaは、項[1]と同じ定義である。
【0092】
式(1)で表される化合物のうち、(a=a=a=a=0)である場合は以下に示す方法でも合成できる。
【0093】
前述した方法で合成したインドール誘導体(33)に、臭化物(36)と水酸化カリウムなどの存在下でカップリングさせて化合物(1)へと導くことができる。
【0094】


これらの式において、R、R、A、A、A、A、Z、Z、Z、a、a、a、およびaは、項[1]と同じ定義である。
【0095】
2 本発明の組成物
本発明の第2の態様は、式(1)で表される化合物を含む組成物であり、好ましくは、液晶材料に用いることのできる液晶組成物である。本発明の液晶組成物は、前記本発明の式(1)で表される化合物を成分Aとして含む必要がある。この成分Aのみの組成物、または成分Aと本明細書中で特に成分名を示していないその他の成分との組成物でもよいが、この成分Aに以下に示す成分B、C、D、およびEから選ばれた成分を加えることにより種々の特性を有する本発明の液晶組成物が提供できる。
【0096】
成分Aに加える成分として、前記式(2)、(3)および(4)からなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物からなる成分B、または前記式(5)からなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物からなる成分C、または前記式(6)、(7)、(8)、(9)、(10)からなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物からなる成分Dを混合したものが好ましい。
さらに、式(11)、(12)および(13)からなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物からなる成分Eを混合することにより、しきい値電圧、液晶相温度範囲、光学異方性値、誘電率異方性値、粘度等を調整することができる。
【0097】
また、本発明に使用される液晶組成物の各成分は、各元素の同位体元素からなる類縁体でもその物理特性に大きな差異がない。
【0098】
上記成分Bのうち、式(2)で表される化合物の好適例として式(2−1)〜(2−16)、式(3)で表される化合物の好適例として式(3−1)〜(3−112)、式(4)で表される化合物の好適例として式(4−1)〜(4−52)をそれぞれ挙げることができる。
【0099】

【0100】

【0101】

【0102】

【0103】

【0104】

【0105】

【0106】


これらの式において、RおよびXは、項[10]と同じ定義である。
【0107】
これらの式(2)〜(4)で表される化合物すなわち成分Bは、誘電率異方性値が正であり、熱安定性や化学的安定性が非常に優れているので、TFT用の液晶組成物を調製する場合に用いられる。本発明の液晶組成物における成分Bの含有量は、液晶組成物の全重量に対して約1〜約99重量%の範囲が適するが、好ましくは約10〜約97重量%、より好ましくは約40〜約95重量%である。また式(11)〜(13)で表される化合物(成分E)をさらに含有させることにより粘度調整をすることができる。
前記、式(5)で表される化合物すなわち成分Cのうちの好適例として、式(5−1)〜(5−62)を挙げることができる。
【0108】

【0109】

【0110】


これらの式において、RおよびXは、項[11]と同じ定義である。
【0111】
これらの式(5)で表される化合物すなわち成分Cは、誘電率異方性値が正でその値が非常に大きいのでSTN,TN用の液晶組成物を調製する場合に主として用いられる。この成分Cを含有させることにより、組成物のしきい値電圧を小さくすることができる。また、粘度の調整、光学異方性値の調整、および液晶相温度範囲を広げることができる。さらに急峻性の改良にも利用できる。
【0112】
成分Cの含有量は、STNまたはTN用の液晶組成物を調製する場合には、組成物全量に対して好ましくは約0.1〜約99.9重量%の範囲、より好ましくは約10〜約97重量%の範囲、さらに好ましくは約40〜約95重量%の範囲である。また、後述の成分を混合することによりしきい値電圧、液晶相温度範囲、光学異方性値、誘電率異方性値、粘度などを調整できる。
【0113】
式(6)〜(8)および式(10)からなる群から選ばれた少なくとも一種の化合物からなる成分Dは、垂直配向モ−ド(VAモ−ド)などに用いられる誘電率異方性が負の本発明の液晶組成物を調製する場合に、好ましい成分である。
【0114】
この式(6)〜(8)および式(10)で表される化合物(成分D)の好適例として、それぞれ式(6−1)〜(6−5)、式(7−1)〜(7−11)、式(8−1)、および式(10−1)〜(10−11)を挙げることができる。
【0115】


これらの式において、RおよびRは、項[12]と同じ定義である。
【0116】
これら成分Dの化合物は主として誘電率異方性の値が負であるVAモ−ド用の液晶組成物に用いられる。その含有量を増加させると組成物のしきい値電圧が低くなるが、粘度が大きくなるので、しきい値電圧の要求値を満足している限り含有量を少なくすることが好ましい。しかしながら、誘電率異方性値の絶対値が5程度であるので、含有量が約40重量%より少なくなると電圧駆動ができなくなる場合がある。
【0117】
成分Dのうち式(6)で表される化合物は2環化合物であるので、主としてしきい値電圧の調整、粘度調整、または光学異方性値の調整の効果がある。また、式(7)および式(8)で表される化合物は3環化合物であるので透明点を高くする、ネマチックレンジを広くする、しきい値電圧を低くする、光学異方性値を大きくするなどの効果が得られる。
【0118】
成分Dの含有量は、VAモ−ド用の組成物を調製する場合には、組成物全量に対して好ましくは約40重量%以上であり、より好ましくは約50〜約95重量%の範囲である。また、成分Dを混合することにより、弾性定数をコントロ−ルし、組成物の電圧透過率曲線を制御することが可能となる。成分Dを誘電率異方性値が正である組成物に混合する場合はその含有量が組成物全量に対して約30重量%以下が好ましい。
【0119】
式(11)、(12)および(13)で表わされる化合物(成分E)の好適例として、それぞれ式(11−1)〜(11−11)、式(12−1)〜(12−18)および式(13−1)〜(13−6)を挙げることができる。
【0120】

【0121】


これらの式において、RおよびRは、項[13]と同じ定義である
【0122】
式(11)〜(13)で表される化合物(成分E)は、誘電率異方性値の絶対値が小さく、中性に近い化合物である。式(11)で表される化合物は主として、粘度調整または光学異方性値の調整の効果があり、また式(12)および(13)で表される化合物は透明点を高くするなどのネマチックレンジを広げる効果、または屈折率異方性値の調整の効果がある。
【0123】
成分Eで表される化合物の含有量を増加させると液晶組成物のしきい値電圧が高くなり、粘度が低くなるので、液晶組成物のしきい値電圧の要求値を満たす限り、含有量は多いほうが望ましい。TFT用の液晶組成物を調製する場合に、成分Eの含有量は、組成物全量に対して好ましくは約30重量%以上、より好ましくは約50重量%以上である。また、STNまたはTN用の液晶組成物を調製する場合には、成分Eの含有量は、組成物全量に対して好ましくは約30重量%以上、より好ましくは約40重量%以上である。
本発明の液晶組成物は、本発明の式(1)で表される化合物の少なくとも1種類を約0.1〜約99重量%の割合で含有することが、優良な特性を発現せしめるために好ましい。
【0124】
本発明の液晶組成物の調製は、公知の方法、例えば必要な成分を高温度下で溶解させる方法などにより一般に調製される。また、用途に応じて当業者によく知られている添加物を添加して、例えばつぎに述べるような光学活性化合物を含む本発明の液晶組成物(e)、染料を添加したGH型用の液晶組成物を調製することができる。通常、添加物は当該業者によく知られており、文献などに詳細に記載されている。
【0125】
本発明の液晶組成物(e)は、前述の本発明の液晶組成物にさらに1種以上の光学活性化合物を含有する。
光学活性化合物として、公知のキラルド−プ剤を添加する。このキラルド−プ剤は液晶のらせん構造を誘起して必要なねじれ角を調整し、逆ねじれを防ぐといった効果を有する。キラルド−プ剤の例として以下の光学活性化合物(Op−1)〜(Op−13)を挙げることができる。
【0126】

【0127】
本発明の液晶組成物(e)は、通常これらの光学活性化合物を添加して、ねじれのピッチを調整する。ねじれのピッチはTFT用およびTN用の液晶組成物であれば40〜200μmの範囲に調整するのが好ましい。STN用の液晶組成物であれば6〜20μmの範囲に調整するのが好ましい。また、双安定TN(Bistable TN)モ−ド用の場合は、1.5〜4μmの範囲に調整するのが好ましい。また、ピッチの温度依存性を調整する目的で2種以上の光学活性化合物を添加しても良い。
【0128】
本発明の液晶組成物は、メロシアニン系、スチリル系、アゾ系、アゾメチン系、アゾキシ系、キノフタロン系、アントラキノン系、テトラジン系などの二色性色素を添加すれば、GH型用の液晶組成物として使用することもできる。
【0129】
また、本発明の液晶組成物は、ネマチック液晶をマイクロカプセル化して作製したNCAPや、液晶中に三次元網目状高分子を形成して作製したポリマ−分散型液晶表示素子(PDLCD)例えばポリマ−ネットワ−ク液晶表示素子(PNLCD)用をはじめ、複屈折制御(ECB)型やDS型用の液晶組成物としても使用できる。
【0130】
[[実施例]]
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例によっては制限されない。なお特に断りのない限り、「%」は「重量%」を意味する。
【0131】
得られた化合物は、1H−NMR分析で得られる核磁気共鳴スペクトル、ガスクロマトグラフィー(GC)分析で得られるガスクロマトグラムなどにより同定したので、まず分析方法について説明をする。
【0132】
1H−NMR分析:測定装置は、DRX−500(ブルカーバイオスピン(株)社製)を用いた。測定は、実施例等で製造したサンプルを、CDCl3等のサンプルが可溶な重水素化溶媒に溶解し、室温で、500MHz、積算回数24回の条件で行った。なお、得られた核磁気共鳴スペクトルの説明において、sはシングレット、dはダブレット、tはトリプレット、qはカルテット、mはマルチプレットであることを意味する。また、化学シフトδ値のゼロ点の基準物質としてはテトラメチルシラン(TMS)を用いた。
【0133】
GC分析:測定装置は、島津製作所製のGC−14B型ガスクロマトグラフを用いた。カラムは、島津製作所製のキャピラリーカラムCBP1−M25−025(長さ25m、内径0.22mm、膜厚0.25μm);固定液相はジメチルポリシロキサン;無極性)を用いた。キャリアーガスとしてはヘリウムを用い、流量は1ml/分に調整した。試料気化室の温度を300℃、検出器(FID)部分の温度を300℃に設定した。
【0134】
試料はトルエンに溶解して、1重量%の溶液となるように調製し、得られた溶液1μlを試料気化室に注入した。
記録計としては島津製作所製のC−R6A型Chromatopac、またはその同等品を用いた。得られたガスクロマトグラムには、成分化合物に対応するピークの保持時間およびピークの面積値が示されている。
【0135】
なお、試料の希釈溶媒としては、例えば、クロロホルム、ヘキサンを用いてもよい。また、カラムとしては、Agilent Technologies Inc.製のキャピラリカラムDB−1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)、Agilent Technologies Inc.製のHP−1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)、Restek Corporation製のRtx−1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)、SGE International Pty.Ltd製のBP−1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)などを用いてもよい。
【0136】
ガスクロマトグラムにおけるピークの面積比は成分化合物の割合に相当する。一般には、分析サンプルの成分化合物の重量%は、分析サンプルの各ピークの面積%と完全に同一ではないが、本発明において上述したカラムを用いる場合には、実質的に補正係数は1であるので、分析サンプル中の成分化合物の重量%は、分析サンプル中の各ピークの面積%とほぼ対応している。成分の液晶化合物における補正係数に大きな差異がないからである。ガスクロマトグラムにより液晶組成物中の液晶化合物の組成比をより正確に求めるには、ガスクロマトグラムによる内部標準法を用いる。一定量正確に秤量された各液晶化合物成分(被検成分)と基準となる液晶化合物(基準物質)を同時にガスクロ測定して、得られた被検成分のピークと基準物質のピークとの面積比の相対強度をあらかじめ算出する。基準物質に対する各成分のピーク面積の相対強度を用いて補正すると、液晶組成物中の液晶化合物の組成比をガスクロ分析からより正確に求めることができる。
【0137】
[液晶化合物等の物性値の測定試料]
液晶化合物の物性値を測定する試料としては、化合物そのものを試料とする場合、化合物を母液晶と混合して試料とする場合の2種類がある。
【0138】
化合物を母液晶と混合した試料を用いる後者の場合には、以下の方法で測定を行う。まず、得られた液晶化合物15重量%と母液晶85重量%とを混合して試料を作製する。そして、得られた試料の測定値から、下記式に示す式に基づく外挿法にしたがって、外挿値を計算する。この外挿値をこの化合物の物性値とする。
【0139】
〈外挿値〉=(100×〈試料の測定値〉−〈母液晶の重量%〉×〈母液晶の測定値〉)/〈液晶化合物の重量%〉
【0140】
液晶化合物と母液晶との割合がこの割合であっても、スメクチック相または結晶が25℃で析出する場合には、液晶化合物と母液晶との割合を10重量%:90重量%、5重量%:95重量%、1重量%:99重量%の順に変更をしていき、スメクチック相、または結晶が25℃で析出しなくなった組成で試料の物性値を測定し上記式にしたがって外挿値を求めて、これを液晶化合物の物性値とする。
【0141】
測定に用いる母液晶としては様々な種類が存在するが、例えば、母液晶Aの組成(重量%)は以下のとおりである。
母液晶A:

【0142】
[液晶化合物等の物性値の測定方法]
物性値の測定は後述する方法で行った。これら測定方法の多くは、日本電子機械工業会規格(Standard of Electric Industries Association of Japan)、EIAJ・ED−2521Aに記載された方法、またはこれを修飾した方法である。また、測定に用いたTN素子には、TFTを取り付けなかった。
【0143】
測定値のうち、液晶化合物そのものを試料とした場合は、得られた値を実験データとして記載した。液晶化合物と母液晶との混合物を試料として用いた場合は、外挿法で得られた値を実験データとして記載した。
【0144】
相構造および相転移温度(℃):以下(1)、および(2)の方法で測定を行った。
(1)偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレート(メトラー社FP−52型ホットステージ)に化合物を置き、3℃/分の速度で加熱しながら相状態とその変化を偏光顕微鏡で観察し、液晶相の種類を特定した。
(2)パーキンエルマー社製走査熱量計DSC−7システム、またはDiamond DSCシステムを用いて、3℃/分速度で昇降温し、試料の相変化に伴う吸熱ピーク、または発熱ピークの開始点を外挿により求め(on set)、相転移温度を決定した。
【0145】
以下、結晶はCと表し、さらに結晶の区別がつく場合は、それぞれC1またはC2と表した。また、スメクチック相はS、ネマチック相はNと表した。液体(アイソトロピック)はIと表した。スメクチック相の中で、スメクチックA相、スメクチックB相、スメクチックC相、またはスメクチックF相の区別がつく場合は、それぞれS、S、S、またはSと表した。相転移温度の表記として、例えば、「C 50.0 N 100.0 I」とは、結晶からネマチック相への相転移温度(CN)が50.0℃であり、ネマチック相から液体への相転移温度(NI)が100.0℃であることを示す。他の表記も同様である。
【0146】
ネマチック相の上限温度(TNI;℃):偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレート(メトラー社FP−52型ホットステージ)に、試料(液晶化合物と母液晶との混合物)を置き、1℃/分の速度で加熱しながら偏光顕微鏡を観察した。試料の一部がネマチック相から等方性液体に変化したときの温度をネマチック相の上限温度とした。以下、ネマチック相の上限温度を、単に「上限温度」と略すことがある。
【0147】
低温相溶性:母液晶と液晶化合物とを、液晶化合物が、20重量%、15重量%、10重量%、5重量%、3重量%、および1重量%の量となるように混合した試料を作製し、試料をガラス瓶に入れる。このガラス瓶を、−10℃または−20℃のフリーザー中に一定期間保管したあと、結晶もしくはスメクチック相が析出しているかどうか観察をした。
【0148】
粘度(バルク粘度;η;20℃で測定;mPa・s):液晶化合物と母液晶との混合物を、E型回転粘度計を用いて測定した。
【0149】
光学異方性(屈折率異方性;Δn):測定は25℃の温度下で、波長589nmの光を用い、接眼鏡に偏光板を取り付けたアッベ屈折計により行なった。主プリズムの表面を一方向にラビングしたあと、試料(液晶化合物と母液晶との混合物)を主プリズムに滴下した。屈折率(n‖)は偏光の方向がラビングの方向と平行であるときに測定した。屈折率(n⊥)は偏光の方向がラビングの方向と垂直であるときに測定した。屈折率異方性(Δn)の値は、Δn=n‖−n⊥の式から計算した。
【0150】
誘電率異方性(Δε;25℃で測定):2枚のガラス基板の間隔(ギャップ)が約9μm、ツイスト角が80度の液晶セルに試料(液晶化合物と母液晶との混合物)を入れた。このセルに20ボルトを印加して、液晶分子の長軸方向における誘電率(ε‖)を測定した。0.5ボルトを印加して、液晶分子の短軸方向における誘電率(ε⊥)を測定した。誘電率異方性の値は、Δε=ε‖−ε⊥、の式から計算した。
【実施例1】
【0151】
1−プロピル−4−(3‘,4’,5‘−トリフルオロビフェニル−4−イル)−1H−インドール(No.23)の合成
【0152】

【0153】
第1工程
窒素雰囲気下の反応器へ、1−ブロモプロパン(e−1) 1.1g、4−ブロモ−1H−インドール(e−2) 1.2g、水酸化カリウム 1.7gとDMF 25mlとを加えて、室温で1時間攪拌した。そこへ、水 100mlとトルエン 100mlとを加えて、有機層と水層とに分離させ抽出操作を行った。得られた有機層を分取して、水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。その後、減圧下、溶媒を留去して、得られた残渣をトルエンとヘプタンとの混合溶媒(容量比 トルエン:ヘプタン=1:9)を展開溶媒とし、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーによる分取操作で精製し、乾燥させ、4−ブロモ−1−プロピル−1H−インドール(e−3) 1.5gを得た。
【0154】
第2工程
窒素雰囲気下の反応器へ4−ブロモ−1−プロピル−1H−インドール(e−3) 1.5g、3‘,4’,5‘−トリフルオロビフェニルボロン酸(e−4) 1.6g、10%炭酸カリウム水溶液 8.1ml、Pd(PhP) 0.2g、ジメトキシエタン 30mlを加え5時間加熱還流させた。反応液を25℃まで冷却後、水 100mlおよびトルエン 100ml加えて、有機層と水層とに分離させ抽出操作を行った。得られた有機層を分取して、水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた溶液を減圧下、濃縮し、残渣をトルエンとヘプタンとの混合溶媒(容量比 トルエン:ヘプタン=1:5)を展開溶媒とし、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーによる分取操作で精製した。さらにヘプタンからの再結晶により精製し、乾燥させ、1−プロピル−4−(3‘,4’,5‘−トリフルオロビフェニル−4−イル)−1H−インドール(No.23) 0.5gを得た。化合物(e−2)からの収率は27%であった。
【0155】
H−NMR分析の化学シフトδ(ppm)は以下の通りであり、得られた化合物が、1−プロピル−4−(3‘,4’,5‘−トリフルオロビフェニル−4−イル)−1H−インドール(No.23)であることが同定できた。なお、測定溶媒はCDClである。
【0156】
化学シフトδ(ppm);7.81−7.79(m,2H),7.62−7.60(m,2H),7.39−7.18(m,6H),6.67(d,1H),4.14(t,2H),1.92(m,2H),0.97(t,3H).
【0157】
得られた化合物(No.23)の転移温度は以下の通りである。
転移温度 :C 66.5 I
【0158】
化合物(No.23)の物性
母液晶A 85重量%と、実施例1で得られた1−プロピル−4−(3‘,4’,5‘−トリフルオロビフェニル−4−イル)−1H−インドール(No.23)の15重量%とからなる液晶組成物Bを調製した。得られた液晶組成物Bの物性を測定し、測定値を外挿することで化合物(No.23)の物性の外挿値を算出した。その値は以下のとおりであった。
【0159】
上限温度(TNI)=−15.0℃;誘電率異方性(Δε)=30.27;光学異方性(Δn)=0.124。
これらのことから化合物(No.23)は、他の液晶化合物との優れた相溶性を有し、誘電率異方性(Δε)が高い化合物であることがわかった。
【実施例2】
【0160】
1−(4−プロピルフェニル)−4−(3,4,5−トリフルオロフェニル)−1H−インドール(No.57)の合成
【0161】

【0162】
第1工程
窒素雰囲気下の反応器へ、4−ブロモ−1H−インドール(e−2) 3.3g、3,4,5−トリフルオロフェニルボロン酸(e−5) 3.3g、10%炭酸カリウム水溶液 23.1ml、Pd(PhP) 0.6g、ジメトキシエタン 70mlを加え5時間加熱還流させた。反応液を25℃まで冷却後、水 200mlおよびトルエン 200ml加えて、有機層と水層とに分離させ抽出操作を行った。得られた有機層を分取して、水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた溶液を減圧下、濃縮し、残渣をトルエンとヘプタンとの混合溶媒(容量比 トルエン:ヘプタン=2:1)を展開溶媒とし、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーによる分取操作で精製した。さらにヘプタンからの再結晶により精製し、乾燥させ、4−(3,4,5−トリフルオロフェニル)−1H−インドール(e−6) 3.0gを得た。化合物(e−2)からの収率は72%であった。
【0163】
第2工程
窒素雰囲気下の反応器へ、4−(3,4,5−トリフルオロフェニル)−1H−インドール(e−6) 3.0g、1−ヨード−4−プロピルベンゼン(e−7) 3.6g、ヨウ化銅(I) 1.2g、(1R,2S)−N1,N2−ジメチルシクロヘキサン−1,2−ジアミン(e−8) 0.9g、リン酸三カリウム 5.4g、トルエン 30mlを加えて110℃にて8時間攪拌した。反応液を25℃まで冷却後、水 100mlおよびトルエン 70ml加えて、有機層と水層とに分離させ抽出操作を行った。得られた有機層を分取して、水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた溶液を減圧下、濃縮し、残渣をトルエンとヘプタンとの混合溶媒(容量比 トルエン:ヘプタン=1:9)を展開溶媒とし、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーによる分取操作で精製した。さらにヘプタンからの再結晶により精製し、乾燥させ、1−(4−プロピルフェニル)−4−(3,4,5−トリフルオロフェニル)−1H−インドール(No.57) 3.0gを得た。化合物(e−6)からの収率は66%であった。
【0164】
H−NMR分析の化学シフトδ(ppm)は以下の通りであり、得られた化合物が、1−(4−プロピルフェニル)−4−(3,4,5−トリフルオロフェニル)−1H−インドール(No.57)であることが同定できた。なお、測定溶媒はCDClである。
【0165】
化学シフトδ(ppm);7.56(d,1H),7.42−7.28(m,8H),7.15(d,1H),6.77(d,1H),2.68(t,2H),1.72(m,2H),1.01(t,3H).
【0166】
得られた化合物(No.57)の転移温度は以下の通りである。
転移温度 :C 62.5 I
【0167】
化合物(No.57)の物性
母液晶A 85重量%と、実施例2で得られた1−(4−プロピルフェニル)−4−(3,4,5−トリフルオロフェニル)−1H−インドール(No.57)の15重量%とからなる液晶組成物Cを調製した。得られた液晶組成物Cの物性を測定し、測定値を外挿することで化合物(No.57)の物性の外挿値を算出した。その値は以下のとおりであった。
【0168】
上限温度(TNI)=−18.3℃;誘電率異方性(Δε)=21.03;光学異方性(Δn)=0.110。
これらのことから化合物(No.57)は、他の液晶化合物との優れた相溶性を有し、誘電率異方性(Δε)が高い化合物であることがわかった。
【実施例3】
【0169】
1−(4−プロピルフェニル)−5−(3,4,5−トリフルオロフェニル)−1H−インドール(No.63)の合成
【0170】

【0171】
第1工程
窒素雰囲気下の反応器へ、5−ブロモ−1H−インドール(e−9) 5.0g、3,4,5−トリフルオロフェニルボロン酸(e−5) 4.9g、10%炭酸カリウム水溶液 35.0ml、Pd(PhP) 0.9g、ジメトキシエタン 100mlを加え5時間加熱還流させた。反応液を25℃まで冷却後、水 200mlおよびトルエン 200ml加えて、有機層と水層とに分離させ抽出操作を行った。得られた有機層を分取して、水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた溶液を減圧下、濃縮し、残渣をトルエンとヘプタンとの混合溶媒(容量比 トルエン:ヘプタン=2:1)を展開溶媒とし、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーによる分取操作で精製した。さらにヘプタンからの再結晶により精製し、乾燥させ、5−(3,4,5−トリフルオロフェニル)−1H−インドール(e−10) 4.1gを得た。化合物(e−9)からの収率は58%であった。
【0172】
第2工程
窒素雰囲気下の反応器へ、5−(3,4,5−トリフルオロフェニル)−1H−インドール(e−10) 4.1g、1−ヨード−4−プロピルベンゼン(e−7) 4.9g、ヨウ化銅(I) 1.6g、(1R,2S)−N1,N2−ジメチルシクロヘキサン−1,2−ジアミン(e−8) 1.2g、リン酸三カリウム 7.4g、トルエン 40mlを加えて110℃にて8時間攪拌した。反応液を25℃まで冷却後、水 100mlおよびトルエン 60ml加えて、有機層と水層とに分離させ抽出操作を行った。得られた有機層を分取して、水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた溶液を減圧下、濃縮し、残渣をトルエンとヘプタンとの混合溶媒(容量比 トルエン:ヘプタン=1:9)を展開溶媒とし、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーによる分取操作で精製した。さらにヘプタンからの再結晶により精製し、乾燥させ、1−(4−プロピルフェニル)−5−(3,4,5−トリフルオロフェニル)−1H−インドール(No.63) 3.8gを得た。化合物(e−10)からの収率は63%であった。
【0173】
H−NMR分析の化学シフトδ(ppm)は以下の通りであり、得られた化合物が、1−(4−プロピルフェニル)−5−(3,4,5−トリフルオロフェニル)−1H−インドール(No.63)であることが同定できた。なお、測定溶媒はCDClである。
【0174】
化学シフトδ(ppm);7.80(d,1H),7.59(d,1H),7.45−7.21(m,8H),6.72(d,1H),2.68(t,2H),1.72(m,2H),1.01(t,3H).
【0175】
得られた化合物(No.63)の転移温度は以下の通りである。
転移温度 :C 64.2 I
【0176】
化合物(No.63)の物性
母液晶A 85重量%と、実施例3で得られた1−(4−プロピルフェニル)−5−(3,4,5−トリフルオロフェニル)−1H−インドール(No.63)の15重量%とからなる液晶組成物Dを調製した。得られた液晶組成物Dの物性を測定し、測定値を外挿することで化合物(No.63)の物性の外挿値を算出した。その値は以下のとおりであった。
【0177】
上限温度(TNI)=−27.6℃;誘電率異方性(Δε)=21.13;光学異方性(Δn)=0.104。
これらのことから化合物(No.63)は、他の液晶化合物との優れた相溶性を有し、誘電率異方性(Δε)が高い化合物であることがわかった。
【実施例4】
【0178】
1−(4−(4−プロピルシクロヘキシル)フェニル)−4−(3,4,5−トリフルオロフェニル)−1H−インドール(No.193)の合成
【0179】

【0180】
第1工程
窒素雰囲気下の反応器へ、実施例2に記載の方法で合成した4−(3,4,5−トリフルオロフェニル)−1H−インドール(e−6) 1.0g、1−ヨード−4−(4−プロピルシクロヘキシル)ベンゼン(e−11) 1.6g、ヨウ化銅(I) 0.4g、(1R,2S)−N1,N2−ジメチルシクロヘキサン−1,2−ジアミン(e−8) 0.3g、リン酸三カリウム 1.8g、トルエン 10mlを加えて110℃にて8時間攪拌した。反応液を25℃まで冷却後、水 50mlおよびトルエン 40ml加えて、有機層と水層とに分離させ抽出操作を行った。得られた有機層を分取して、水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた溶液を減圧下、濃縮し、残渣をトルエンとヘプタンとの混合溶媒(容量比 トルエン:ヘプタン=1:9)を展開溶媒とし、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーによる分取操作で精製した。さらにヘプタンからの再結晶により精製し、乾燥させ、1−(4−(4−プロピルシクロヘキシル)フェニル)−4−(3,4,5−トリフルオロフェニル)−1H−インドール(No.193) 1.5gを得た。化合物(e−6)からの収率は84%であった。
【0181】
H−NMR分析の化学シフトδ(ppm)は以下の通りであり、得られた化合物が、1−(4−(4−プロピルシクロヘキシル)フェニル)−4−(3,4,5−トリフルオロフェニル)−1H−インドール(No.193)であることが同定できた。なお、測定溶媒はCDClである。
【0182】
化学シフトδ(ppm);7.57(d,1H),7.43−7.27(m,8H),7.15(d,1H),6.76(d,1H),2.57(m,1H),1.94(m,4H),1.51(m,2H),1.41−1.30(m,3H),1.25(m,2H),1.09(m,2H),0.92(t,3H).
【0183】
得られた化合物(No.193)の転移温度は以下の通りである。
転移温度 :C 120.2 N 137.7 I
【0184】
化合物(No.193)の物性
母液晶A 90重量%と、実施例4で得られた1−(4−(4−プロピルシクロヘキシル)フェニル)−4−(3,4,5−トリフルオロフェニル)−1H−インドール(No.193)の10重量%とからなる液晶組成物Eを調製した。得られた液晶組成物Eの物性を測定し、測定値を外挿することで化合物(No.193)の物性の外挿値を算出した。その値は以下のとおりであった。
【0185】
上限温度(TNI)=117.7℃;誘電率異方性(Δε)=19.8;光学異方性(Δn)=0.167。
これらのことから化合物(No.193)は、他の液晶化合物との優れた相溶性を有し、誘電率異方性(Δε)が高い化合物であることがわかった。
【0186】
実施例1、2、3、4に記載された合成方法と同様の方法により以下に示す、化合物(No.1)〜(No.395)を合成することができる。付記したデータは前記した手法に従い、測定した値である。転移温度は化合物自体の測定値であり、上限温度(TNI)、誘電率異方性(Δε)、および光学異方性(Δn)は、化合物を母液晶(i)に混合した試料の測定値を、上記外挿法に従って換算した物性値である。
【0187】

【0188】

【0189】

【0190】

【0191】

【0192】

【0193】


【0194】

【0195】

【0196】


【0197】


【0198】

【0199】

【0200】

【0201】

【0202】

【0203】

【0204】
〔液晶組成物の実施例〕
以下、本発明で得られる液晶組成物を実施例により詳細に説明する。なお、実施例で用いる液晶性化合物は、下記表の定義に基づいて記号により表す。なお、表中、1,4−シクロへキシレンの立体配置はトランス配置である。各化合物の割合(百分率)は、特に断りのない限り、組成物の全重量に基づいた重量百分率(重量%)である。各実施例の最後に得られた組成物の特性を示す。
【0205】
なお、各実施例で使用する液晶性化合物の部分に記載した番号は、上述した本発明の液晶組成物に含有させる液晶性化合物を示す式番号に対応をしており、式番号を記載せずに、単に「−」と記載をしている場合には、この化合物はその他の化合物であることを意味している。
【0206】
化合物の記号による表記方法を以下に示す。
【0207】

【0208】
特性の測定は以下の方法にしたがって行った。これらの多くは、日本電子機械工業会規格(Standard of Electric Industries Association of Japan)EIAJ・ED−2521Aに記載された方法、またはこれを修飾した方法である。
【0209】
(1)ネマチック相の上限温度(NI;℃)
偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレートに試料を置き、1℃/分の速度で加熱した。試料の一部がネマチック相から等方性液体に変化したときの温度を測定した。以下、ネマチック相の上限温度を「上限温度」と略することがある。
【0210】
(2)ネマチック相の下限温度(TC;℃)
ネマチック相を有する試料を0℃、−10℃、−20℃、−30℃、および−40℃のフリーザー中に10日間保管したあと、液晶相を観察した。例えば、試料が−20℃ではネマチック相のままであり、−30℃では結晶またはスメクチック相に変化したとき、TCを≦−20℃と記載した。以下、ネマチック相の下限温度を「下限温度」と略すことがある。
【0211】
(3)光学異方性(Δn;25℃で測定)
波長が589nmの光を用い、接眼鏡に偏光板を取り付けたアッベ屈折計により測定した。まず、主プリズムの表面を一方向にラビングしたあと、試料を主プリズムに滴下した。そして、偏光の方向がラビングの方向と平行であるときの屈折率(n‖)、および偏光の方向がラビングの方向と垂直であるときの屈折率(n⊥)を測定した。光学異方性の値(Δn)は、(Δn)=(n‖)−(n⊥)の式から算出した。
【0212】
(4)粘度(バルク粘度;η;20℃で測定;mPa・s)
測定にはE型粘度計を用いた。
【0213】
(5)誘電率異方性(Δε;25℃で測定)
よく洗浄したガラス基板にオクタデシルトリエトキシシラン(0.16mL)のエタノール(20mL)溶液を塗布した。ガラス基板をスピンナーで回転させたあと、150℃で1時間加熱した。2枚のガラス基板から、間隔(セルギャップ)が20μmであるVA素子を組み立てた。
【0214】
同様の方法で、ガラス基板にポリイミドの配向膜を調製した。得られたガラス基板の配向膜にラビング処理をした後、2枚のガラス基板の間隔が9μmであり、ツイスト角が80度であるTN素子を組み立てた。
【0215】
得られたVA素子に試料(液晶性組成物、または液晶化合物と母液晶との混合物)を入れ、0.5V(1kHz、サイン波)を印加して、液晶分子の長軸方向における誘電率(ε‖)を測定した。
【0216】
また、得られたTN素子に試料(液晶性組成物、または液晶化合物と母液晶との混合物)を入れ、0.5V(1kHz、サイン波)を印加して、液晶分子の短軸方向における誘電率(ε⊥)を測定した。
誘電率異方性の値は、Δε=ε‖−ε⊥の式から計算した。
この値が負である組成物が、負の誘電率異方性を有する組成物である。
【0217】
(6)電圧保持率(VHR;25℃と100℃で測定;%)
ポリイミド配向膜を有し、そして2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が6μmであるセルに試料を入れてTN素子を作製した。25℃において、このTN素子にパルス電圧(5Vで60マイクロ秒)を印加して充電した。TN素子に印加した電圧の波形を陰極線オシロスコープで観測し、単位周期(16.7ミリ秒)における電圧曲線と横軸との間の面積を求めた。TN素子を取り除いたあと印加した電圧の波形から同様にして面積を求めた。電圧保持率(%)の値は、(電圧保持率)=(TN素子がある場合の面積値)/(TN素子がない場合の面積値)×100の値から算出した。
【0218】
このようにして得られた電圧保持率を「VHR−1」として示した。つぎに、このTN素子を100℃、250時間加熱した。このTN素子を25℃に戻したあと、上述した方法と同様の方法により電圧保持率を測定した。この加熱試験をした後に得た電圧保持率を「VHR−2」として示した。なお、この加熱テストは促進試験であり、TN素子の長時間耐久試験に対応する試験として用いた。
【実施例5】
【0219】
3−BIn(1,5)B(F,F)−F (No.63) 3%
3−BIn(1,4)B(F,F)−F (No.57) 3%
2−BEB(F)−C (5−14) 5%
3−BEB(F)−C (5−14) 4%
4−BEB(F)−C (5−14) 12%
1V2−BEB(F,F)−C (5−15) 16%
3−HB−O2 (11−5) 10%
3−HH−4 (11−1) 3%
3−HHB−F (3−1) 3%
3−HHB−1 (12−1) 8%
3−HHB−O1 (12−1) 4%
3−HBEB−F (3−37) 4%
3−HHEB−F (3−10) 5%
5−HHEB−F (3−10) 3%
3−H2BTB−2 (12−16) 4%
3−H2BTB−3 (12−16) 4%
3−H2BTB−4 (12−16) 4%
3−HB(F)TB−2 (12−17) 5%
NI=73.4℃;Δn=0.140;Δε=29.2;Vth=1.01V.
【実施例6】
【0220】
3−HBIn(1,4)B(F,F)−F (No.193) 3%
3−In(1,4)BB(F,F)−F (No.23) 3%
2−HB−C (5−1) 5%
3−HB−C (5−1) 12%
3−HB−O2 (11−5) 15%
2−BTB−1 (11−10) 3%
3−HHB−F (3−1) 4%
3−HHB−1 (12−1) 8%
3−HHB−O1 (12−1) 5%
3−HHB−3 (12−1) 14%
3−HHEB−F (3−10) 4%
2−HHB(F)−F (3−2) 7%
3−HHB(F)−F (3−2) 7%
5−HHB(F)−F (3−2) 7%
3−HHB(F,F)−F (3−3) 3%
NI=92.5℃;Δn=0.101;Δε=5.8;Vth=2.11V;η=23.8mPa・sec.
【実施例7】
【0221】
3−BIn(1,5)B(F,F)−F (No.63) 4%
3−HBIn(1,4)B(F,F)−F (No.193) 3%
3−BEB(F)−C (5−14) 8%
3−HB−C (5−1) 8%
V−HB−C (5−1) 8%
1V−HB−C (5−1) 8%
3−HB−O2 (11−5) 3%
3−HH−2V (11−1) 14%
3−HH−2V1 (11−1) 7%
V2−HHB−1 (12−1) 15%
3−HHB−1 (12−1) 5%
3−HHEB−F (3−10) 3%
3−H2BTB−2 (12−16) 6%
3−H2BTB−3 (12−16) 3%
3−H2BTB−4 (12−16) 5%
NI=86.7℃;Δn=0.129;Δε=9.4;Vth=1.86V;η=23.1mPa・sec.
上記組成物100重量部に光学活性化合物(Op−5)を0.25重量部添加したときのピッチは60.9μmであった。
【実施例8】
【0222】
3−BIn(1,4)B(F,F)−F (No.57) 3%
3−In(1,4)BB(F,F)−F (No.23) 3%
5−BEB(F)−C (5−14) 5%
V−HB−C (5−1) 11%
5−PyB−C (5−8) 6%
4−BB−3 (11−8) 11%
3−HH−2V (11−1) 10%
5−HH−V (11−1) 11%
V−HHB−1 (12−1) 3%
V2−HHB−1 (12−1) 15%
3−HHB−1 (12−1) 9%
1V2−HBB−2 (12−4) 10%
3−HHEBH−3 (12−16) 3%
NI=79.2℃;Δn=0.116;Δε=6.2;Vth=1.87V;η=23.7mPa・sec.
【実施例9】
【0223】
3−BIn(1,5)B(F,F)−F (No.63) 4%
3−BIn(1,4)B(F,F)−F (No.57) 4%
1V2−BEB(F,F)−C (5−15) 6%
3−HB−C (5−1) 10%
2−BTB−1 (11−10) 10%
5−HH−VFF (11−1) 30%
3−HHB−1 (12−1) 4%
VFF−HHB−1 (12−1) 8%
VFF2−HHB−1 (12−1) 11%
3−H2BTB−2 (12−16) 5%
3−H2BTB−3 (12−16) 4%
3−H2BTB−4 (12−16) 4%
NI=76.1℃;Δn=0.128;Δε=7.2;Vth=1.87V;η=22.2mPa・sec..
【実施例10】
【0224】
3−HBIn(1,4)B(F,F)−F (No.193) 4%
3−In(1,4)BB(F,F)−F (No.23) 4%
5−HB−CL (2−2) 16%
3−HH−4 (11−1) 12%
3−HH−5 (11−1) 4%
3−HHB−F (3−1) 4%
3−HHB−CL (3−1) 3%
4−HHB−CL (3−1) 4%
3−HHB(F)−F (3−2) 6%
4−HHB(F)−F (3−2) 5%
5−HHB(F)−F (3−2) 9%
7−HHB(F)−F (3−2) 8%
5−HBB(F)−F (3−23) 4%
1O1−HBBH−5 (13−1) 3%
3−HHBB(F,F)−F (4−6) 2%
4−HHBB(F,F)−F (4−6) 3%
5−HHBB(F,F)−F (4−6) 3%
3−HH2BB(F,F)−F (4−15) 3%
4−HH2BB(F,F)−F (4−15) 3%
NI=110.9℃;Δn=0.096;Δε=5.2;Vth=2.10V;η=31.3mPa・sec.
【実施例11】
【0225】
3−BIn(1,5)B(F,F)−F (No.63) 4%
3−In(1,4)BB(F,F)−F (No.23) 3%
3−HHB(F,F)−F (3−3) 9%
3−H2HB(F,F)−F (3−15) 8%
4−H2HB(F,F)−F (3−15) 8%
5−H2HB(F,F)−F (3−15) 8%
3−HBB(F,F)−F (3−24) 21%
5−HBB(F,F)−F (3−24) 20%
3−H2BB(F,F)−F (3−27) 8%
5−HHBB(F,F)−F (4−6) 3%
5−HHEB−F (3−10) 2%
3−HH2BB(F,F)−F (4−15) 3%
1O1−HBBH−5 (13−1) 3%
NI=83.0℃;Δn=0.113;Δε=10.3;Vth=1.34V.
【実施例12】
【0226】
3−BIn(1,4)B(F,F)−F (No.57) 4%
3−HBIn(1,4)B(F,F)−F (No.193) 4%
5−HB−F (2−2) 12%
6−HB−F (2−2) 9%
7−HB−F (2−2) 7%
2−HHB−OCF3 (3−1) 7%
3−HHB−OCF3 (3−1) 7%
4−HHB−OCF3 (3−1) 7%
5−HHB−OCF3 (3−1) 5%
3−HH2B−OCF3 (3−4) 4%
5−HH2B−OCF3 (3−4) 4%
3−HHB(F,F)−OCF2H (3−3) 4%
3−HHB(F,F)−OCF3 (3−3) 5%
3−HH2B(F)−F (3−5) 3%
3−HBB(F)−F (3−23) 5%
5−HBB(F)−F (3−23) 7%
5−HBBH−3 (13−1) 3%
3−HB(F)BH−3 (13−2) 3%
NI=82.4℃;Δn=0.092;Δε=5.4;Vth=2.12V;η=23.9mPa・sec.
【実施例13】
【0227】
3−BIn(1,5)B(F,F)−F (No.63) 3%
3−BIn(1,4)B(F,F)−F (No.57) 3%
5−HB−CL (2−2) 11%
3−HH−4 (11−1) 8%
3−HHB−1 (12−1) 5%
3−HHB(F,F)−F (3−3) 8%
3−HBB(F,F)−F (3−24) 20%
5−HBB(F,F)−F (3−24) 15%
3−HHEB(F,F)−F (3−12) 10%
4−HHEB(F,F)−F (3−12) 3%
2−HBEB(F,F)−F (3−39) 3%
3−HBEB(F,F)−F (3−39) 5%
3−HHBB(F,F)−F (4−6) 6%
NI=73.3℃;Δn=0.104;Δε=9.0;Vth=1.34V;η=28.4mPa・sec.
【実施例14】
【0228】
3−HBIn(1,4)B(F,F)−F (No.193) 3%
3−In(1,4)BB(F,F)−F (No.23) 3%
3−HB−CL (2−2) 3%
5−HB−CL (2−2) 4%
3−HHB−OCF3 (3−1) 5%
3−H2HB−OCF3 (3−13) 5%
5−H4HB−OCF3 (3−19) 15%
V−HHB(F)−F (3−2) 5%
3−HHB(F)−F (3−2) 5%
5−HHB(F)−F (3−2) 5%
3−H4HB(F,F)−CF3 (3−21) 8%
5−H4HB(F,F)−CF3 (3−21) 10%
5−H2HB(F,F)−F (3−15) 5%
5−H4HB(F,F)−F (3−21) 7%
2−H2BB(F)−F (3−26) 5%
3−H2BB(F)−F (3−26) 7%
3−HBEB(F,F)−F (3−38) 5%
NI=70.4℃;Δn=0.100;Δε=9.4;Vth=1.66V.
【実施例15】
【0229】
3−BIn(1,5)B(F,F)−F (No.63) 5%
3−HBIn(1,4)B(F,F)−F (No.193) 4%
5−HB−CL (2−2) 8%
7−HB(F,F)−F (2−4) 3%
3−HH−4 (11−1) 10%
3−HH−5 (11−1) 5%
3−HB−O2 (11−5) 15%
3−HHB−1 (12−1) 8%
3−HHB−O1 (12−1) 5%
2−HHB(F)−F (3−2) 7%
3−HHB(F)−F (3−2) 7%
5−HHB(F)−F (3−2) 7%
3−HHB(F,F)−F (3−3) 6%
3−H2HB(F,F)−F (3−15) 5%
4−H2HB(F,F)−F (3−15) 5%
NI=74.4℃;Δn=0.080;Δε=4.1;Vth=1.72V;η=27.6mPa・sec.
【実施例16】
【0230】
3−BIn(1,4)B(F,F)−F (No.57) 3%
3−In(1,4)BB(F,F)−F (No.23) 4%
5−HB−CL (2−2) 3%
7−HB(F)−F (2−3) 7%
3−HH−4 (11−1) 9%
3−HH−EMe (11−2) 23%
3−HHEB−F (3−10) 8%
5−HHEB−F (3−10) 8%
3−HHEB(F,F)−F (3−12) 10%
4−HHEB(F,F)−F (3−12) 5%
4−HGB(F,F)−F (3−103) 5%
5−HGB(F,F)−F (3−103) 6%
2−H2GB(F,F)−F (3−106) 4%
3−H2GB(F,F)−F (3−106) 3%
5−GHB(F,F)−F (3−109) 2%
NI=75.4℃;Δn=0.068;Δε=6.2;Vth=1.35V;η=28.1mPa・sec.
【実施例17】
【0231】
3−BIn(1,5)B(F,F)−F (No.63) 3%
3−BIn(1,4)B(F,F)−F (No.57) 3%
3−HB−O2 (11−5) 10%
5−HB―CL (2−2) 13%
3−HBB(F,F)−F (3−3) 7%
3−PyB(F)−F (2−15) 10%
5−PyB(F)−F (2−15) 10%
3−PyBB−F (3−80) 10%
4−PyBB−F (3−80) 10%
5−PyBB−F (3−80) 10%
5−HBB(F)B−2 (13−5) 7%
5−HBB(F)B−3 (13−5) 7%
NI=83.9℃;Δn=0.182;Δε=9.0;Vth=1.55V.
【実施例18】
【0232】
3−HBIn(1,4)B(F,F)−F (No.193) 5%
3−In(1,4)BB(F,F)−F (No.23) 3%
3−HH−V (11−1) 33%
3−BB(F,F)XB(F,F)−F (3−97) 18%
3−HHB−1 (12−1) 2%
2−HBB−F (3−22) 3%
3−HBB−F (3−22) 4%
3−HHB−CL (3−1) 3%
1−BB(F)B−2V (12−6) 6%
2−BB(F)B−2V (12−6) 6%
3−BB(F)B−2V (12−6) 3%
3−HHB(F,F)−F (3−3) 4%
4−BB(F)B(F,F)XB(F,F)−F (4−46) 10%
NI=84.4℃;Δn=0.137;Δε=8.9;Vth=1.45V;η=28.5mPa・sec.
【産業上の利用可能性】
【0233】
本発明の化合物は、化合物に必要な一般的物性、熱、光などに対する安定性、他の化合物との良好な相溶性、大きな誘電率異方性および適切な光学異方性を有する。本発明の液晶組成物は、これらの化合物の少なくとも一つを含有し、低い温度領域から良好な相溶性、大きな誘電率異方性を有する。本発明の液晶表示素子は、この組成物を含有し、そして使用できる広い温度範囲、短い応答時間、小さな消費電力、大きなコントラスト比、および低い駆動電圧を有するので、時計、電卓、ワ−プロなどのディスプレイに広く利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される化合物。


この式において、RおよびRは独立して、水素、ハロゲン、または炭素数1〜20のアルキルであり、このアルキルにおいて、任意の−CH−は−O−または−S−で置き換えられてもよく、任意の−(CH−は−CH=CH−で置き換えられてもよく、これらにおいて、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく;環A、環A、環A、環A、環A、環A、環A、および環Aは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、1,4−フェニレン、または任意の水素がハロゲンで置き換えられた1,4−フェニレンであり;Z、Z、Z、Z、Z、Z、Z、およびZは独立して、単結合、−CHCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−COO−、−OCO−、−CFO−、−OCF−、−CHO−、−OCH−、−CF=CF−、−(CH−、−(CHCFO−、−(CHOCF−、−CFO(CH−、−OCF(CH−、−CH=CH−(CH−、または−(CH−CH=CH−であり;L、L、L、L、およびLは独立して、水素、ハロゲン、−CH、または−CFであり;a、a、a、a、a、a、a、およびaは独立して、0または1であり、a、a、a、a、a、a、a、およびaの和は、2、3、または4であり;R−(A)a−(A)a−(A)a−(A)a−、L、およびLは、インドール環の1位、2位、および3位から選ばれた個別な1つずつにあり、R−(A)a−(A)a−(A)a−(A)a−、L、L、およびLは、インドール環の4位、5位、6位、および7位から選ばれた個別な1つずつにある。
【請求項2】
式(1)において、R−(A)a−(A)a−(A)a−(A)a−がインドール環の1位にあり;LおよびLが水素である請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
式(1)において、R−(A)a−(A)a−(A)a−(A)a−がインドール環の1位にあり;LおよびLが水素であり;インドール環の6位および7位が水素またはフッ素である請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
式(1)において、R−(A)a−(A)a−(A)a−(A)a−がインドール環の1位にあり、かつR−(A)a−(A)a−(A)a−(A)a−がインドール環の4位にあり;LおよびLが水素であり;L、L、およびLが、水素またはフッ素である請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
式(1−1)〜(1−2)のいずれか一つで表される請求項1に記載の化合物。


これらの式において、Rは、炭素数1〜15のアルキル、炭素数2〜15のアルケニル、炭素数1〜15のアルコキシ、または炭素数2〜15のアルケニルオキシであり;Rは、フッ素、塩素、−CF、−CHF、−CHF、−OCF、−OCHF、または−OCHFであり;環A、環A、環A、環A、環A、環A、環A、および環Aは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、1,4−フェニレン、または任意の水素がフッ素で置き換えられた1,4−フェニレンであり;Z、Z、Z、Z、Z、Z、Z、およびZは独立して、単結合、−CHCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−COO−、−CFO−、−CHO−、または−OCH−であり;a、a、a、a、a、a、a、およびaは独立して、0または1であり、a、a、a、a、a、a、a、およびaの和は、2、3、または4であり;YおよびYは独立して、水素またはフッ素である。
【請求項6】
式(1−3)〜(1−14)のいずれか一つで表される請求項1に記載の化合物。




これらの式において、Rは、炭素数1〜15のアルキル、炭素数2〜15のアルケニル、炭素数1〜15のアルコキシ、または炭素数2〜15のアルケニルオキシであり;Rは、フッ素、−CF、または−OCFであり;環Aは、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、または任意の水素がフッ素で置き換えられた1,4−フェニレンであり;Z、Z、Z、Z、Z、およびZは独立して、単結合、−CHCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−COO−、−CFO−、−CHO−、または−OCH−であり;Y、Y、Y、Y、Y、およびYは独立して、水素またはフッ素であり;L、L、およびLは独立して、水素またはフッ素であり;式(1−13)および式(1−14)において、R、L、L、およびLは、インドール環の4位、5位、6位、および7位から選ばれた個別な1つずつにある。
【請求項7】
式(1−15)〜(1−20)のいずれか一つで表される請求項1に記載の化合物。



これらの式において、Rは、炭素数1〜15のアルキル、炭素数2〜15のアルケニル、または炭素数1〜15のアルコキシであり;Rは、フッ素、−CF、または−OCFであり;Y、Y、Y、およびYは独立して、水素またはフッ素であり;L、およびLは独立して、水素またはフッ素である。
【請求項8】
式(1−21)〜(1−24)のいずれか一つで表される請求項1に記載の化合物。


これらの式において、Rは炭素数1〜15のアルキルである。
【請求項9】
請求項1〜8に記載の少なくとも1つの化合物を1成分として含有する、2成分以上からなる液晶組成物。
【請求項10】
式(2)、(3)および(4)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物を1成分として含有する請求項9に記載の液晶組成物。


これらの式において、Rは、炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよく;Xは、フッ素、塩素、−OCF、−OCHF、−CF、−CHF、−CHF、−OCFCHF、または−OCFCHFCFであり;環B、環B、および環Bは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、1,4−フェニレン、または任意の水素がフッ素で置き換えられた1,4−フェニレンであり;ZおよびZは独立して、−(CH−、−(CH−、−COO−、−CFO−、−OCF−、−CH=CH−、−C≡C−、−CHO−、または単結合であり;LおよびLは独立して、水素またはフッ素である。
【請求項11】
式(5)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物を1成分として含有する請求項9に記載の液晶組成物。


これらの式において、Rは炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよく;Xは−C≡Nまたは−C≡C−C≡Nであり;環C、環Cおよび環Cは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、任意の水素がフッ素で置き換えられた1,4−フェニレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、またはピリミジン−2,5−ジイルであり;Zは、−(CH−、−COO−、−CFO−、−OCF−、−C≡C−、−CHO−、または単結合であり;LおよびLは独立して、水素またはフッ素であり;rは、0、1または2であり、sは0または1であり、rとsとの和が、0、1、または2である。
【請求項12】
式(6)、(7)、(8)、(9)、および(10)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物を1成分として含有する請求項9に記載の液晶組成物。


これらの式において、RおよびRは独立して、炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよく;環D、環D、環D、および環Dは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,4−フェニレン、任意の水素がフッ素で置き換えられた1,4−フェニレン、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、またはデカヒドロナフタレン−2,6−ジイルであり;Z10、Z11、Z12、およびZ13は独立して、−(CH−、−COO−、−CHO−、−OCF−、−OCF(CH−、または単結合であり;LおよびL10は独立して、フッ素または塩素であり;t、u、x、y、およびzは独立して0または1であり、u、x、y、およびzの和は、1または2である。
【請求項13】
式(11)、(12)および(13)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物を1成分として含有する請求項9に記載の液晶組成物。


これらの式において、RおよびRは独立して、炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよく;環E、環E、および環Eは独立して、1,4−シクロヘキシレン、ピリミジン−2,5−ジイル、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、3−フルオロ−1,4−フェニレン、または2,5−ジフルオロ1,4−フェニレンであり;Z14およびZ15は独立して、−C≡C−、−COO−、−(CH−、−CH=CH−、または単結合である。
【請求項14】
請求項11記載の式(5)で表される化合物の群から選択される少なくとも2つの異なる化合物を含有する、請求項9に記載の液晶組成物。
【請求項15】
請求項13記載の式(11)、(12)および(13)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する請求項11に記載の液晶組成物。
【請求項16】
請求項13記載の式(11)、(12)および(13)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する請求項12に記載の液晶組成物。
【請求項17】
請求項13記載の式(11)、(12)および(13)で表される化合物の群から選択される少なくとも2つの異なる化合物を含有する請求項12に記載の液晶組成物。
【請求項18】
少なくとも1つの光学活性化合物をさらに含有する請求項9に記載の液晶組成物。
【請求項19】
少なくとも1つの酸化防止剤および/または紫外線吸収剤をさらに含有する請求項9に記載の液晶組成物。
【請求項20】
請求項9〜19のいずれか1項に記載の液晶組成物を含有する液晶表示素子。

【公開番号】特開2011−184388(P2011−184388A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−53053(P2010−53053)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(311002067)JNC株式会社 (208)
【出願人】(596032100)チッソ石油化学株式会社 (309)
【Fターム(参考)】