説明

インナーウェア

【課題】 保温性が高く、肌触りに優れ、しかも生地が可及的に薄いインナーウェアを提供する。
【解決手段】 保温性組織22は、一重の地編組織23の裏面側に突出させた畝部24,24,…にて六角形状に囲んでなる複数のエアセル25,25,…をハニカム構造状に設けて構成しており、各エアセル25,25,…内には周囲の気体が蓄えられるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガードル、ボディスーツ及びスパッツ等のインナーウェアに関する。
【背景技術】
【0002】
ガードル、ボディスーツ及びスパッツ等のインナーウェアにあっては、保温性が高く、肌触りに優れた製品の開発が要求されている。
【0003】
例えば、後記する特許文献1にはつぎのような下着が開示されている。
【0004】
すなわち、当該下着は、第1糸で編成された裏面と第2糸で編成された表面との間を充填糸で繋ぎ合わせてなる二重構造のダブルラッシェル編成組織によって構成されており、該下着の着用者の肌に接する裏面に、複数条の畝状の凹凸が縦方向へ延設してある。
【0005】
このような下着にあっては、ダブルラッシェル編成組織によって構成してあるため保温性が高く、また発汗による湿気が畝状の凹部を通って下着の上方から外へ排気されるため、蒸れが軽減され、サラサラした肌触りが保たれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−81607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような従来のインナーウェアにあっては、前述したようにダブルラッシェル編成組織によって構成してあるため生地が厚く、インナーウェアの上に着用したアウターウェアの表面に当該インナーウェアが響いてしまうという問題があった。また、従来のインナーウェアは生地が厚いため、外気温が比較的高い季節にあっては汗をかき易く、着用するには不向きであった。
【0008】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、保温性が高く、肌触りに優れ、しかも生地が可及的に薄いインナーウェアを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明に係るインナーウェアは、外気から着用者を保温する保温性組織を編成してなるインナーウェアにおいて、前記保温性組織は、一重の地編組織と、該地編組織の裏面側に複数の環状の畝部を突出させてなり、周囲の気体を蓄えることができる複数のエアセルとを備えることを特徴とする。
【0010】
本発明のインナーウェアにあっては、外気から着用者を保温する保温性組織を編成してなり、該保温性組織は、一重の地編組織と、この地編組織の裏面側に複数の環状の畝部を突出させてなり、周囲の気体を蓄えることができる複数のエアセルとを備える。
【0011】
このように、保温性組織は、地編組織の裏面側、即ち着用者の肌に接する面側に、周囲の気体を蓄えることができる複数のエアセルが突設してあるため、各エアセル内に蓄えられた空気の層によって外界からの熱の伝導が抑制される一方、各エアセル内の空気が着用者から放出される熱を蓄えるため、高い保温効果を奏する。
【0012】
一方、着用者の肌に接触する部分は主に、裏面に突出したエアセルを構成する畝部であるので、着用者の肌への接触面積が狭く、従って着用者が発汗した場合であっても、着用者にサラサラ感を与える。
【0013】
ところで、保温性組織の大部分の領域は一重に編成された地編組織によって構成されているため、保温性組織の厚さ寸法の増大を可及的に抑制することができる。従って、かかる保温性組織を具備するインナーウェアを着用した場合であっても、着用者にゴワゴワ感を与えず、また、当該インナーウェアの保温性組織がアウターウェアに響くことが防止される。
【0014】
更に、保温性組織は可及的に薄く、着用者の肌への接触面積が狭いため、着用者は外気温が比較的高い季節であっても当該保温性組織を備えるインナーウェアを快適に着用することができる。
【0015】
(2)また、本発明に係るインナーウェアは必要に応じて、前記各エアセルはハニカム構造状になしてあることを特徴とする。
【0016】
本発明のインナーウェアにあっては、前記各エアセルはハニカム構造状になしてある。エアセルをハニカム構造状になした場合は、そうでない場合より構造上の強度が高いので、例えば洗濯に対する耐性も強く、洗濯を繰り返しても保温機能を含む前記各機能が損なわれ難い。
【0017】
また、ハニカム構造状をなしたエアセルは構造的に強固であり、かかるエアセルを具備するインナーを着用した場合であっても、エアセルの構造が維持されるので、着用者の皮膚に刺激が与えられ、これによって皮膚に引き締め作用が働く。
【0018】
(3)また、本発明に係るインナーウェアは必要に応じて、前記地編組織にはメッシュが形成してあることを特徴とする。
【0019】
本発明のインナーウェアにあっては、前記地編組織にはメッシュが形成してある。地編組織にメッシュが形成してあるため、着用者の発汗による湿気がメッシュを通って地編組織の外方へ排出され、従って着用者が発汗した場合であっても蒸れが生じ難い。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係るインナーウェアの一例であるガードルを示す正面図である。
【図2】本発明に係るインナーウェアの一例であるガードルを示す背面図である。
【図3】図1に示した前部の裏面図である。
【図4】図3に示した保温性組織の部分拡大図である。
【図5】保温性組織を示す模式的一部編成組織図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1及び図2は、本発明に係るインナーウェアの一例であるガードルを示す正面図及び背面図であり、図中、FはガードルGの着用者の正面側に配置される前部、BはガードルGの着用者の背面側に配置される後部である。また、図3は、図1に示した前部Fの裏面図である。
【0022】
両図1及び図2に示したように、ガードルGは、例えば丸編機を用いて編成してあり、所謂パンツ型になしてある。すなわち、ガードルGは、着用者のウェスト部、下腹部及び臀部を囲繞するパンティ部1及び着用者の両太腿を各別に囲繞する大腿部2,2とを適宜の伸縮力を有する組織に編成して構成してある。
【0023】
パンティ部1のウェスト開口部10に臨む縁部には、パンティ部1の収縮力より強い収縮力を有するように編成してなる帯状のウェスト口ゴム部11が、前記ウェスト開口部10を囲繞するように設けてあり、該ウェスト口ゴム部11によって、着用者に着用されたガードルGのパンティ部1の縁部がずれないようになしてある。
【0024】
一方、ガードルGの大腿部2,2の縁にはそれぞれ、着用者の脚部を通す脚刳り部20,20が設けてある。これら脚刳り部20,20には、大腿部2,2の収縮力以上の収縮力を有するように編成してなる帯状の脚口ゴム部21,21が、脚刳り部20,20の全周に亘って設けてあり、両脚口ゴム部21,21によって、着用者に着用されたガードルGの大腿部2,2にずれ及び捲り上がり等が生じることが防止されている。
【0025】
パンティ部1の前側であって着用者の下腹部の中央領域に対向する部分には、他の部分より強い伸縮性を持たせた腹部矯正部12が設けてあり、該腹部矯正部12によって着用者の主に下腹部の出っ張りが抑制されるようになっている。
【0026】
また、パンティ部1の両側部からパンティ部1の後側であって、着用者の臀部の略中央領域を除く部分に亘って、パンティ部1の他の部分より強い伸縮性を持たせたヒップ部矯正部14が設けてあり、該ヒップ部矯正部14によって着用者のヒップ部の外径をより小さくするようになしてある。
【0027】
このヒップ部矯正部14内には、ヒップ部矯正部14の他の部分より強い伸縮性を持たせてなる三日月形状のヒップアップ部15が着用者の臀部の下縁に倣って設けてあり、該ヒップアップ部15によって着用者の臀部が持ち上げられるようになっている。
【0028】
また、パンティ部1の後側の略中央領域には、横方向へ延設してなる複数の波形線状部16,16,…が縦方向へ適宜の間隔で設けてある。波形線状部16,16,…はフロート編によって編成されており、これによって波形線状部16,16,…の裏面には複数の波形状凸部が形成されている。
【0029】
かかる波形線状部16,16,…の裏面に形成された複数の波形状凸部によって、着用者の臀部にマッサージ効果が与えられるようになっている。
【0030】
ところで、本発明に係るガードルGにあっては、両大腿部2,2及びパンティ部1の一部分を、高い保温性を発揮する保温性組織22,22,…で構成してある。
【0031】
この保温性組織22は、図3及び図3に示した保温性組織22の部分拡大図である図4に示した如く、一重の地編組織23の裏面側に突出させた畝部24,24,…にて六角形状に囲んでなる複数のエアセル25,25,…をハニカム構造状に設けて構成しており、各エアセル25,25,…内には周囲の気体が蓄えられるようになっている。
【0032】
これによって、地編組織23の表面側には図1及び図2に示した如く、六角形のハニカム構造上の模様が形成されている。
【0033】
エアセル25,25,…を構成する畝部24,24,…は地編組織23の裏面、即ち着用者の肌に接する面側に形成されており、各エアセル25,25,…内に蓄えられた空気の層によって外界からの熱の伝導が抑制される一方、各エアセル25,25,…内の空気が着用者から放出される熱を蓄えるため、高い保温効果を奏する。
【0034】
一方、保温性組織22の大部分の領域は一重に編成された地編組織23によって構成されているため、保温性組織22の厚さ寸法の増大を可及的に抑制することができる。従って、かかる保温性組織22を具備するガードルGをインナーとして着用した場合であっても、着用者にゴワゴワ感を与えず、当該ガードルGの保温性組織22がアウターウェアに響くことが防止される。
【0035】
図5は前述した保温性組織22を示す模式的一部編成組織図であり、図中、実線Sで囲まれた領域が保温性組織22の基本単位である。
【0036】
図5に示した如く、基本単位の保温性組織22は、地編組織23中に畝部24,24,…が相互に交差するように配置してある。なお、図中、Cは編成組織のコースを示しており、Wは編成組織のウェールを示している。
【0037】
畝部24,24,…は、当該畝部24,24,…の幅寸法に応じたコース数をフロートさせるようにフロート編したウェールWと、畝部24,24,…の幅寸法を漸次平編したウェールWとを交互に編み立てて形成してあり、フロート編したウェールWによって当該フロート編に係る各コースC,C,…が束ねられるのに伴って、フロート編したウェールWに相隣る平編したウェールWの対応する部分が密集して盛り上がり、図4に示した如く地編組織23から突出した畝部24,24,…が形成される。
【0038】
かかる保温性組織22では、着用者の肌に接触する部分は主に、裏面に突出した畝部24,24,…であるので、着用者の肌への接触面積が狭く、従って着用者が発汗した場合であっても、着用者にサラサラ感を与える。
【0039】
一方、保温性組織22の畝部24,24,…以外の領域を構成する地編組織23,23,…は、各ウェールW,W,…に適宜の間隔で2コース程度をフロートさせるフロート編を施してあり、これによってメッシュM,M,…が形成されている。
【0040】
このように、地編組織23,23,…にメッシュM,M,…が形成してあるため、着用者の発汗による湿気がメッシュM,M,…を通って地編組織23,23,…の外方へ排出され、従って着用者が発汗した場合であっても蒸れが生じ難い。
【0041】
ここで、保温性組織22の編成に使用する糸としては、例えば図5中に白抜き矢符で示した如きフロート編に係るコースには伸縮性を有するフィラメント・ツイステッド・ヤーン(FTY)を用い、それ以外のコースにあっては、ナイロン糸及び綿糸の2本を用いており、後者の場合、保温性組織22の表側にナイロン糸が、保温性組織22の裏側に綿糸が配置されるように編み立ててある。
【0042】
このようにフロート編に係るコースには伸縮性を有する糸を用いているため、着用時の伸縮によっても保温性組織22に切断が発生し難く、また、保温性組織22の裏側に綿糸が配置してあるため、着用者の肌触りが良い。
【0043】
このような保温性組織22を具備するガードルGにあっては、前述したようにエアセル25,25,…によって優れた保温性が奏されるため、外気温が低い季節において着用者を寒さから保護することができる一方、保温性組織22は生地が薄く、エアセル25,25,…内の湿気を排出することができ、更に接触面積が狭いため、外気温が比較的高い季節であっても着用者はガードルGを快適に着用することができる上に、薄手のアウターウェアを着用した場合であっても当該ガードルGがアウターウェアに響くことが抑制される。
【0044】
ところで、地編組織23,23,…は前述したフロート編代えてタック編になすこともできる。このようにタック編になした場合、フロート編になしたときよりメッシュM,M,…の孔径が大きくなるため、着用者の発汗による湿気をより排出することができる。
【0045】
また、地編組織23,23,…はフロート編み代えて平編になすこともできる。このように平編になした場合、フロート編になしたときよりエアセル25,25,…による保温性を向上させることができる。かかる地編組織23,23,…になした保温性組織22を具備するガードルGにあっては、エアセル25,25,…による保温性がより高いため、外気温がより低い地域で使用することができる。また、そのような地域にあっては、外気湿度が比較的低い地域において外気温が高い季節であっても外気湿度が比較的低いので、エアセル25,25,…の保温性がより高い場合であっても好適に使用することができる。
【0046】
一方、ハニカム構造状をなしたエアセル25,25,…は構造的に強固であり、かかるエアセル25,25,…を具備するガードルGを着用した場合であっても、エアセル25,25,…の構造が維持されるので、着用者の皮膚に刺激が与えられ、これによって皮膚に引き締め作用が働く。また、エアセル25,25,…はガードルGの太腿部の全周に亘って略均一に設けてあるため、ガードルGを着用した場合、各エアセル25,25,…がバランス良く相互に引き合い、着用者の太腿部をバランス良く引き締めることができる。
【0047】
更に、六角形状のエアセル25,25,…にあっては印加された負荷を効率的に分散させることができるため、着用者の皮膚に食い込むことが防止され、着用者に快適な着用感を持続的に与えることができる。
【0048】
なお、本実施の形態ではエアセル25,25,…を六角形状になした場合について説明したが、本発明はこれに限らず、エアセル25,25,…を丸形又は多角形等の定型の環状形、或いは不定型の環状形になしてよい。ただし、エアセル25,25,…を六角形状になした場合は、他の形状になした場合より構造上の強度が高いので好適である。
【0049】
また、本実施の形態ではエアセル25,25,…をハニカム構造状になした場合について説明したが、本発明はこれに限らず、エアセル25,25,…を互いに適宜の距離を隔てて設けてもよい。
【0050】
ただし、エアセル25,25,…をハニカム構造状になした場合は、そうでない場合より構造上の強度が高いので、例えば洗濯に対する耐性も強く、洗濯を繰り返しても保温機能を含む前述した各機能が損なわれ難い。
【0051】
なお、本実施の形態ではガードルGに適用した場合について説明したが、本発明はこれに限らず、ボディスーツ及びスパッツ等の他のインナーウェアにも適用し得ることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0052】
1 パンティ部
2 大腿部
22 保温性組織
23 地編組織
24 畝部
25 エアセル
G ガードル
W ウェール
C コース
M メッシュ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外気から着用者を保温する保温性組織を編成してなるインナーウェアにおいて、
前記保温性組織は、一重の地編組織と、該地編組織の裏面側に複数の環状の畝部を突出させてなり、周囲の気体を蓄えることができる複数のエアセルとを備えることを特徴とするインナーウェア。
【請求項2】
前記各エアセルはハニカム構造状になしてある請求項1記載のインナーウェア。
【請求項3】
前記地編組織にはメッシュが形成してある請求項1又は2記載のインナーウェア。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−265568(P2010−265568A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−120376(P2009−120376)
【出願日】平成21年5月18日(2009.5.18)
【出願人】(593065110)イイダ靴下株式会社 (22)
【出願人】(500294888)株式会社 アドヴァンシング (26)
【Fターム(参考)】