インナーケーブルの設計方法
【課題】 インナーケーブルの設計作業を効率的に進める技術を提供する。
【解決手段】 ガイドプーリーに沿って湾曲するインナーケーブルの耐久性を評価する耐久試験を実施した結果、例えば被覆層の内周部を起点に破壊が生じた場合には、被覆層の内周部で生じる最大応力が低下するように、インナーケーブル又はガイドプーリーの設計値を変更する。設計値の変更後、破壊の起点とならなかった被覆層の外周部についても、生じる最大応力が上昇しないことを確認する。その上で、耐久試験を再度実施し、被覆層の耐久性を確認する。
【解決手段】 ガイドプーリーに沿って湾曲するインナーケーブルの耐久性を評価する耐久試験を実施した結果、例えば被覆層の内周部を起点に破壊が生じた場合には、被覆層の内周部で生じる最大応力が低下するように、インナーケーブル又はガイドプーリーの設計値を変更する。設計値の変更後、破壊の起点とならなかった被覆層の外周部についても、生じる最大応力が上昇しないことを確認する。その上で、耐久試験を再度実施し、被覆層の耐久性を確認する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コントロールケーブル用のインナーケーブルを設計する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一方の端末装置の動作を、他方の端末装置に伝達するコントロールケーブルが知られている。コントロールケーブルは、筒状のアウターチューブと、アウターチューブに摺動可能に挿通されたインナーケーブルを有している。インナーケーブルの一端は、一方の端末装置に接続され、インナーケーブルの他端は、他方の端末装置に接続される。この構造により、一方の端末装置の動作が、インナーケーブルの進退動作を介して、他方の端末装置に伝達される。
【0003】
特許文献1に、インナーケーブルが開示されている。このインナーケーブルでは、ワイヤロープの表面が、樹脂材料によって被覆されている。このような樹脂材料による被覆層を形成すると、例えば、ワイヤロープの腐食や損傷を抑制することができる。あるいは、アウターチューブとインナーケーブルの間で、摺動抵抗を低下させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−321989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
インナーケーブルに被覆層を形成する場合、被覆層が必要とされる耐久性を満足するように、被覆層の厚みを適切な値に設定する必要がある。特に、被覆層を有するインナーケーブルを、ガイドプーリーによって案内される状態で使用すると、ガイドプーリーによって案内される位置で、被覆層の破壊が生じることが多い。そこで、従来のインナーケーブルの設計作業では、被覆層の厚さ寸法をパラメータとし、ガイドプーリーに沿って湾曲するインナーケーブルの耐久試験を繰り返し行うことによって、被覆層の厚み寸法が試行錯誤的に決定されている。そのことから、インナーケーブルの設計には、多大な労力と時間が必要とされている。
本発明は、上記の問題を解決する。本発明は、インナーケーブルの設計作業を効率的に進めることを可能とする技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
被覆層を有するインナーケーブルでは、ガイドプーリーに沿って湾曲する位置で、被覆層に比較的に大きな応力が生じ、その結果、被覆層の破壊といった耐久性不足が問題となる。そのことから、被覆層が破壊されることを抑制し、インナーケーブルの耐久性を向上するためには、被覆層に生じる最大応力を低下させることが重要となる。
ガイドプーリーに沿って湾曲するインナーケーブルの被覆層に生じる応力分布は、有限要素法に代表される数値計算によって算出することができる。本発明者らは、ガイドプーリーの径寸法と被覆層の厚さ寸法をパラメータとし、ガイドプーリーに沿って湾曲するインナーケーブルの被覆層に生じる応力分布を検証した。そして、ガイドプーリーの径寸法及び被覆層の厚さ寸法と、被覆層に生じる最大応力との間に、これまで予期されなかった関係が存在することを見出した。
【0007】
図6から図12を参照し、本発明者らによる検証結果について説明する。図6から図12は、ガイドプーリーの径寸法(プーリー半径R)毎に、被覆層の厚さ寸法(被覆厚さ)を横軸として、計算された被覆層の最大主応力を示している。各図におけるグラフAは、ガイドプーリーに沿って湾曲するインナーケーブルの湾曲外側部分において、インナーケーブルの中心線側に位置する被覆層の内周部で生じる最大主応力を示しており、各図におけるグラフBは、同じくガイドプーリーに沿って湾曲するインナーケーブルの湾曲外側部分において、インナーケーブルの反中心線側に位置する被覆層の外周部で生じる最大主応力を示している。
ここで、図6から図12のグラフに示す最大主応力は、インナーケーブルの本体であるワイヤーケーブルの線径を、1.53mmに設定して計算したものである。また、各グラフ中のポイント(◆又は■)は、被覆層の厚さ寸法を0.15mm、0.23mm、0.30mm、0.38mm、0.45mm、0.60mmに設定して計算した最大主応力を示している。
なお、本発明者らは、被覆層に生じる応力を検証する指標として主応力を採用したが、被覆層に生じる応力を示す他の指標として、Mises応力や歪などを挙げることができる。
【0008】
図6から図12に示す検証結果から、被覆層の内周部で生じる最大主応力と、被覆層の外周部で生じる最大主応力は、被覆層の厚さ寸法に応じてそれぞれ変化するとともに、その変化の挙動については、両者の間で有意に相違することが確認された。ここで注目すべきは、被覆層の内周部で生じる最大主応力を最小とする被覆層の厚さ寸法と、被覆層の外周部で生じる最大主応力を最小とする被覆層の厚さ寸法が、互いに相違することである。このような傾向は、ガイドプーリーの径寸法が小さい場合(例えばプーリー半径Rが10mmから30mmの場合)ほど、より明確に現われている。
【0009】
本発明者らは、上記した知見を基に、従来の設計手法の問題点を分析した。従来の手法では、例えば試作品を用いた耐久試験を行い、被覆層の内周部に破壊の発生が確認された場合、被覆層の内周部で生じる最大応力が低下するように、被覆層の厚さ寸法を変更していた。今回の知見によれば、このような設計変更は、被覆層の内周部で生じる最大応力を低下させる一方で、被覆層の外周部で生じる最大応力を上昇させることが起こり得る。この場合、設計変更後に再度の耐久試験を実施すると、被覆層の内周部に破壊は発生しなくなるが、今度は被覆層の外周部で破壊が発生するといった事態が起きてしまう。その結果、従来の設計手法では、試作品を用いた耐久試験が、無用に繰り返されることになる。それに対して、被覆層の厚さ寸法を変更した時点で、被覆層の外周部で生じる最大応力の変化を確認すれば、無用な耐久試験を避けることが可能となる。
【0010】
以上に説明した技術思想に基づき、本発明は、インナーケーブルの設計方法に具現化される。この設計方法は、特に、樹脂材料による被覆層を有し、ガイドプーリーによって案内される状態で使用されるインナーケーブルの設計を、効率的に行うものである。この設計方法は、少なくとも、以下に説明する決定工程と試験工程と判断工程と確認工程を備えている。
決定工程では、ガイドプーリーの径寸法の設計値と、被覆層の厚さ寸法の設計値を決定する。この工程で決定する設計値は、必要とされる機能に応じて、あるいは、目標とされる製造コストに応じて、適宜設定するとよい。また、類似する既存装置の設計値を、必要に応じて修正した上で、流用してもよい。
【0011】
試験工程では、決定した設計値の被覆層を有するインナーケーブルと、決定した設計値の径寸法を有するガイドプーリーを用意し、ガイドプーリーに沿って湾曲するインナーケーブルの耐久性を評価する耐久試験を実施する。この耐久試験は、ガイドプーリーによって案内されるインナーケーブルの使用状態を再現するものであれば、専用の試験装置を用いてもよいし、あるいは、インナーケーブルが実装される実機(例えば自動車)を用いて行ってもよい。
【0012】
判断工程では、前記耐久試験後のインナーケーブルについて、被覆層の内周部と外周部との間で、耐久性の優劣を判断する。例えば、被覆層に亀裂のような破壊が生じている場合、その破壊の起点が被覆層の内周部に位置していれば、内周部の方が耐久性に劣っており、外周部の方が耐久性に優れていると判断する。その他、被覆層を形成する樹脂材料に生じた変質の度合を評価して、優劣の判断を行ってもよい。
【0013】
変更工程では、判断工程における判断結果に基づいて、ガイドプーリーの径寸法とインナーケーブルの被覆層の厚さ寸法の少なくとも一方の設計値を変更する。具体的には、耐久性が劣ると判断された内周部と外周部の一方について、インナーケーブルがガイドプーリーに沿って湾曲したときに被覆層で生じる最大応力又は最大歪が低下するように、上記した設計値の変更を行う。この変更工程では、例えば有限要素法による数値計算を実行可能な計算装置を用い、湾曲時に被覆層で生じる応力分布又は歪みを算出することによって、設計値の変更前後における最大応力又は最大歪の変化を検証するとよい。
【0014】
確認工程では、耐久性が優れると判断された内周部と外周部の他方について、インナーケーブルがガイドプーリーに沿って湾曲したときに生じる最大応力又は最大歪が、設計値の変更によって上昇するのか否かを確認する。それにより、設計値の変更の前後において、耐久性が優れると判断された内周部又は外周部の耐久性が、維持されるのか否かを確認することができる。従って、無用な耐久試験を繰り返すといった従来の問題を避けることができ、インナーケーブルの設計作業を効率的に進めることができる。
【0015】
上記した設計方法では、確認工程において最大応力又は最大歪が上昇しないと確認された場合、変更後の設計値を用いて、前記した試験工程以降の各工程を再度実施することが好ましい。それにより、設計値の変更と試作品による評価を適切に繰り返し、必要な耐久性を満足するインナーケーブルを確実に設計することができる。
一方、確認工程において最大応力又は最大歪が上昇する確認された場合は、変更工程に戻って設計値を再度変更することが好ましい。それにより、無用な耐久試験を行うことなく、設計値の再変更を行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、無用な耐久試験を行うことなく、必要な耐久性を満足するインナーケーブルを、比較的に短時間で設計することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】コントロールケーブルの使用状態を示す模式図。
【図2】コントロールケーブルの構造を示す模式図。
【図3】インナーケーブルの設計方法の流れを示すフローチャート。
【図4】インナーケーブルとガイドプーリーのメッシュモデルを模式的に示す図。
【図5】インナーケーブルとガイドプーリーのメッシュモデルを用い、ガイドプーリーに沿って湾曲するインナーケーブルの被覆層に生じる応力分布を数値計算する様子を例示する図。
【図6】ガイドプーリーの半径が10mmの場合に、ガイドプーリーに沿って湾曲するインナーケーブルの湾曲外側部分において、被覆層に生じる最大主応力を示すグラフ。ここで、横軸は被覆層の厚さ寸法(被覆厚さ)を示しており、縦軸は最大応力(計算値)を示している。グラフAは、被覆層の内周部で生じる最大主応力を示しており、グラフBは、被覆層の外周部に生じる最大主応力を示している(以上の注釈は、図7から図12のグラフについても同じ)。
【図7】ガイドプーリーの半径が12mmの場合に、ガイドプーリーに沿って湾曲するインナーケーブルの湾曲外側部分において、被覆層に生じる最大主応力を示すグラフ。
【図8】ガイドプーリーの半径が14mmの場合に、ガイドプーリーに沿って湾曲するインナーケーブルの湾曲外側部分において、被覆層に生じる最大主応力を示すグラフ。
【図9】ガイドプーリーの半径が17mmの場合に、ガイドプーリーに沿って湾曲するインナーケーブルの湾曲外側部分において、被覆層に生じる最大主応力を示すグラフ。
【図10】ガイドプーリーの半径が30mmの場合に、ガイドプーリーに沿って湾曲するインナーケーブルの湾曲外側部分において、被覆層に生じる最大主応力を示すグラフ。
【図11】ガイドプーリーの半径が45mmの場合に、ガイドプーリーに沿って湾曲するインナーケーブルの湾曲外側部分において、被覆層に生じる最大主応力を示すグラフ。
【図12】ガイドプーリーの半径が60mmの場合に、ガイドプーリーに沿って湾曲するインナーケーブルの湾曲外側部分において、被覆層に生じる最大主応力を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0018】
最初に、以下に説明する実施例の主要な特徴を列記する。
(特徴1)被覆層に生じる最大応力は、有限要素法による数値計算装置(FEM計算装置)を用いて計算する。なお、ここでいう最大応力は、最大主応力であってもよいし、最大Mises応力であってもよい。あるいは、最大応力を計算することに代えて、最大歪を計算してもよい。最大歪は、最大応力と一義的に対応するので、最大歪を用いても同じ結果を得ることができる。
(特徴2)設計値を変更する工程では、ガイドプーリーの径寸法よりも、被覆層の厚さ寸法の設計値を優先的に変更する。
【実施例】
【0019】
本発明を適用したインナーケーブルの設計方法について説明する。最初に、設計対象であるインナーケーブルについて説明する。図1に示すように、インナーケーブル24は、コントロールケーブル12に用いられる線材である。コントロールケーブル12は、一方の端末装置である入力装置14と、他方の端末装置である出力装置16の間に配設され、入力装置14における動作を、離れた位置にある出力装置16に伝達するものである。
コントロールケーブル12は、アウターチューブ22とインナーケーブル24を組み合せて構成される。アウターチューブ22は、筒状の長尺部材であり、インナーケーブル24が摺動可能に挿通される。インナーケーブル24の一端は、入力装置14に接続され、インナーケーブル24の他端は、出力装置16に接続される。この構造により、入力装置14の動作が、インナーケーブル24を介して、出力装置16に伝達される。
【0020】
コントロールケーブル12は、例えば、自動車のステアリング機構や、自動車のパワースライドドア機構に採用される。これらの機構では、通常、一対のコントロールケーブル12が使用される。
ステアリング機構では、インナーケーブル24の一端が、運転席のステアリングホイール(入力装置14に相当する)に接続され、インナーケーブル24の他端が、車輪の操舵機構(出力装置16に相当する)に接続される。それにより、運転者がステアリングホイールを操作すると、インナーケーブル24がアウターチューブ22に対して摺動し、車輪の操舵機構が動作する。
パワースライドドア機構では、インナーケーブル24の一端が、モータ等のアクチュエータ(入力装置14に相当する)に接続され、インナーケーブル24の他端が、スライドドアに(出力装置16に相当する)に接続される。それにより、アクチュエータが動作すると、インナーケーブル24がアウターチューブ22に対して摺動し、スライドドアが動作する。
【0021】
図1に示すように、インナーケーブル24は、必要に応じて、一又は複数のガイドプーリー18によって案内される。本実施例の設計方法は、そのようなインナーケーブル24、即ち、ガイドプーリー18によって案内された状態で使用されるインナーケーブル24を、設計対象としている。
ガイドプーリー18が使用される場合、インナーケーブル24は、ガイドプーリー18の位置で大きく湾曲する。そのため、インナーケーブル24の劣化や損傷が進行しやすい。特に、インナーケーブル24の中心線Cよりも反ガイドプーリー18側の湾曲外側部分24aでは、インナーケーブル24の変形量(歪量)が大きく、その内部に生じる応力も比較的に大きい。従って、インナーケーブル24の耐久性を向上するためには、インナーケーブル24の湾曲外側部分24aで生じる応力を、できる限り小さくすることが必要となる。
【0022】
図1、図2を参照して、インナーケーブル24の構造について説明する。インナーケーブル24は、主に、スチールコード26と被覆層28によって構成されている。スチールコード26は、複数のスチールワイヤを撚り合わせた構造を有しており、インナーケーブル24の本体を構成している。被覆層28は、樹脂材料で形成されており、スチールコード26を被覆している。図2において、寸法Dはインナーケーブル24の直径寸法を示しており、寸法d1はスチールコード26の直径寸法を示しており、寸法d2は被覆層28の厚さ寸法を示している。ここで、D=d1+d2+d2が成立する。
【0023】
インナーケーブル24が被覆層28を有する場合、被覆層28が必要とされる耐久性を満足するように、被覆層28の厚みを適切な値に設定する必要がある。特に、被覆層28を有するインナーケーブル24を、ガイドプーリー18によって案内される状態で使用すると、ガイドプーリー18によって湾曲する湾曲外側部分24aでは、被覆層28に大きな応力又は歪が発生することによって、亀裂といった被覆層28の破壊が生じやすい。そこで、本実施例の設計方法では、インナーケーブル24の湾曲外側部分24aに位置する被覆層28で生じる応力又は歪が低下するように、ガイドプーリー18の半径寸法と被覆層28の厚さ寸法を決定していく。
さらに、被覆層28の破壊は、インナーケーブル24の中心線C側に位置する被覆層28の内周部28aを起点に発生することもあれば、インナーケーブル24の反中心線C側に位置する被覆層28の外周部28bを起点に発生することもある。そこで、本実施例の設計方法では、被覆層28に生じる応力又は歪を、その内周部28aと外周部28bのそれぞれについて個別に評価し、ガイドプーリー18の半径寸法と被覆層28の厚さ寸法を決定する。
【0024】
以下、本実施例によるインナーケーブル24の設計方法を詳細に説明する。図3は、インナーケーブル24の設計方法の流れを示すフローチャートである。図3に示すフローチャートに沿って、当該設計方法の各工程を詳細に説明する。
先ず、ステップS10では、ガイドプーリー18の半径寸法、及び被覆層28の厚さ寸法の設計値を決定する。なお、スチールコード26の直径寸法の設計値は、インナーケーブル24に負荷される荷重等に基づいて、既に決定されている。以下、ガイドプーリー18の半径寸法を単にプーリー半径と称し、被覆層28の厚さ寸法を単に被覆厚さと称することがある。
この実施例における説明では、具体例として、プーリー半径の設計値を12mmに決定し、被覆厚さの設計値を0.38mmに決定したとする。また、スチールコード26の直径寸法の設計値は、1.53mmに決定されているものとする。
【0025】
次に、ステップS20では、ステップS10で決定した設計値に基づいて、インナーケーブル24及びガイドプーリー18の試作品を準備し、耐久試験を実施する。この耐久試験によって、ガイドプーリー18に沿って湾曲するインナーケーブル24の耐久性を評価する。この耐久試験は、インナーケーブル24の使用状態を再現したものであればよく、その細部の仕様について特に限定はない。例えば、インナーケーブル24が実装される実機(例えば自動車のパワースライドドア機構)を用い、多数回の動作を繰り返させるようなテストであってもよい。
【0026】
次に、ステップS30では、耐久試験後のインナーケーブル24を評価し、被覆層28に破壊が生じているのか否かを確認する。被覆層28に破壊が発生していなければ、現時点における設計値によって、必要とされる耐久性が満足されることになる。この場合、本実施例の設計方法は終了する。一方、被覆層28に破壊が発生している場合、現時点における設計値では、必要とされる耐久性を満足しないことになる。この場合、以下に説明するステップS40以降の工程へ進み、プーリー半径や被覆厚さの設計値を変更する作業を行う。
【0027】
ステップS40では、被覆層28に生じた破壊について、その破壊の起点が被覆層28の内周部28aに位置しているのか、被覆層28の外周部28bに位置しているのを確認する。破壊の起点が被覆層28の内周部28aに位置していれば、被覆層28の耐久性は内周部28aで劣っており、外周部28bで優れていると判断することができる。逆に、破壊の起点が被覆層28の外周部28bに位置していれば、被覆層28の耐久性は外周部28bで劣っており、内周部28aで優れていると判断することができる。このステップS40では、破壊の起点となった位置を特定することにより、内周部28aと外周部28bのいずれにおいて、被覆層28の耐久性が不足しているのかを確認する。以下では、内内周部28aと外周部28bのうち、破壊の起点が確認された一方を破壊起点側と称し、破壊の起点が位置しなかった他方を非破壊起点側と称する。
この実施例における説明では、具体例として、破壊の起点が被覆層28の外周部28bに確認されたものとする。
【0028】
次に、ステップS50からステップS80の工程では、上記した耐久試験の結果を踏まえ、プーリー半径と被覆厚さの少なくとも一方の設計値を変更する。具体的には、インナーケーブル24がガイドプーリー18に沿って湾曲した際に、被覆層28の破壊起点側で生じる最大主応力が低下するように、上記した設計値の変更を行う。
先ず、ステップS50では、被覆厚さをパラメータとして、ガイドプーリー18に沿ってインナーケーブル24が湾曲するときに、被覆層28の破壊起点側で生じる最大主応力を計算する。例えば、先に仮定したように、プーリー半径の設計値が12mmであって、被覆層28に生じた破壊の起点が外周部28bに位置していたとする。この場合、図7のグラフBが示すような被覆厚さと最大主応力の関係を計算することになる。なお、本実施例では、被覆層28で生じる最大主応力を計算する際に、その計算対象範囲をインナーケーブル24の湾曲外側部分24aに限定している。これは、被覆層28で生じる主応力が、通常、インナーケーブル24の湾曲外側部分24aの範囲で最大になるという知見に基づく。
【0029】
ステップS50における最大主応力の計算は、有限要素法による数値計算装置(FEM計算装置)を用いて行うとよい。図4、図5を参照して、FEM計算装置を用いた計算手順について説明する。先ず、図4に示すように、ガイドプーリー18をモデル化したガイドプーリーモデル18Mと、インナーケーブル24をモデル化したインナーケーブルモデル24Mを作成する。これらのモデル化では、剛体要素やソリッド要素等によるモデル化技術を適宜利用するとよい。例えば、ガイドプーリーモデル18Mは、剛体モデルとするとよい。一方、インナーケーブルモデル24Mは、スチールコード26をソリッド要素の集合で表現するスチールコードモデル26Mと、被覆層28をソリッド要素の集合で表現する被覆層モデル28Mによって、構成することができる。これらのモデル作成では、ガイドプーリーモデル18Mと被覆層モデル28Mの間の摩擦抵抗、スチールコードモデル26Mにおけるスチールワイヤ間の摩擦抵抗、スチールコードモデル26Mの材料特性、被覆層モデル28Mの材料特性等についても、それぞれ定めておくとよい。
【0030】
ガイドプーリー18及びインナーケーブル24のモデル作成後、図5(a)に示すように、インナーケーブルモデル24Mと、ガイドプーリーモデル18Mの位置関係を定義する。このとき、インナーケーブルモデル24Mは、その両端を例えば単純支持とするとよい。次いで、図5(b)に示すように、ガイドプーリーモデル18Mとインナーケーブルモデル24Mが十分に接触するまで、ガイドプーリーモデル18Mとインナーケーブルモデル24Mの少なくとも一方を平行移動させる。それにより、ガイドプーリー18に沿って湾曲するインナーケーブル24が再現され、被覆層28に生じる主応力分布を計算させることができる。計算された主応力分布から、被覆層28の破壊起点側における最大主応力を特定すればよい。
【0031】
次に、ステップS60では、ステップS50で計算した被覆厚さと最大主応力の関係から、現時点の設計値よりも最大主応力が低下する被覆厚さが存在するのか否かを確認する。例えば、先に仮定したように、現時点の被覆厚さの設計値が0.38mmであって、先のステップS50で図7のグラフBに示す関係が得られたとする。この場合、図7のグラフBに基づき、最大主応力が低下する被覆厚さとして、例えば0.30mm、0.23mmが存在することがわかる。
最大主応力が低下する被覆厚さが存在する場合、ステップS70に進み、被覆厚さの設計値を最大応力が低下する値へと変更する。ここでは、被覆厚さの設計値を、例えば0.30mmに変更したとする。
一方、最大主応力が低下する被覆厚さが存在しない場合、ステップS80に進み、プーリー半径の設計値を変更する。この場合、プーリー半径の設計値を、より大きな値へ変更するとよい。図6から図12に示すように、プーリー半径を大きくすると、被覆層28に生じる最大主応力は総じて低下する。
【0032】
次に、ステップS90、S100では、被覆層28の非破壊起点側で生じる最大主応力が、ステップS70、80による設計値の変更によって、上昇するのか否かを確認する。被覆層28の非破壊起点側で生じる最大主応力は、前記した被覆層28の破壊起点側で生じる最大主応力と同様に、FEM計算装置によって計算することができる。先ず、プーリー半径及び被覆厚さの変更前の設計値を用い、被覆層28の非破壊起点側で生じる最大主応力を計算する。次いで、プーリー半径及び被覆厚さの変更後の設計値を用い、被覆層28の非破壊起点側で生じる最大主応力を計算する(以上、ステップS90)。そして、計算した設計変更後の最大主応力が、計算した設計変更前の最大主応力よりも、大きいのか否かを判断する(ステップS100)。例えば、先に仮定したように、プーリー半径の設計値が12mmであり、破壊起点側が外周部28bであって、被覆厚さの設計値を0.38mmから0.30mmに変更したとする。この場合、図7のグラフAに基づき、非破壊起点側である内周部28aでは、最大主応力が上昇することを確認することができる。
【0033】
上記のように、ステップS70、S80の設計変更は、被覆層28の破壊起点側(上記の例示では外周部28b)で最大主応力を低下させる一方、被覆層28の非破壊起点側(内周部28a)で最大主応力を上昇させてしまうことがある。このような場合、設計変更後に再度の耐久試験を実施すると、被覆層28の破壊起点側(外周部28b)では破壊の発生が抑制される一方、今度は被覆層28の非破壊起点側(内周部28a)において、新たに破壊が発生するといった事態が生じることがある。
上記の問題に対して、本実施例の設計方法では、設計値の変更を行った結果、被覆層28の非破壊起点側で最大主応力が上昇すると確認された場合(ステップS100でNO)、試作品を用いた耐久試験を行うことなく、ステップS60に戻って設計値の変更を行う一連の工程を再度実施する。それにより、無用な耐久試験を行うことが防止される。
一方、被覆層28の非破壊起点側で最大主応力が上昇しないと確認された場合(ステップS100でYES)、ステップS20へ戻り、変更後の設計値に基づいて試作品を準備し、インナーケーブル24の耐久試験を実施する。その後、ステップS30では、耐久試験後のインナーケーブル24を評価し、被覆層28の耐久性を確認する。被覆層28が必要とされる耐久性を具備しなければ、ステップS40以降の工程を再度実行し、プーリー半径又は被覆厚さの設計値を再び変更する。
【0034】
以上のように、本実施例で説明した設計方法では、耐久性に問題があるとされた範囲に着目して設計変更を行った後、耐久性に問題がないとされた範囲についても、設計変更による影響を確認している。それにより、無用な耐久試験を行うことを避け、インナーケーブル24の設計を効率的に進めることができる。
【0035】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。本明細書または図面に例示した技術は複数の目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0036】
12:コントロールケーブル
14:入力装置
16:出力装置
18:ガイドプーリー
22:アウターチューブ
24:インナーケーブル
24a:インナーケーブルの湾曲外側範囲
26:スチールコード
28:被覆層
28a:被覆層の内周部
28b:被覆層の外周部
【技術分野】
【0001】
本発明は、コントロールケーブル用のインナーケーブルを設計する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一方の端末装置の動作を、他方の端末装置に伝達するコントロールケーブルが知られている。コントロールケーブルは、筒状のアウターチューブと、アウターチューブに摺動可能に挿通されたインナーケーブルを有している。インナーケーブルの一端は、一方の端末装置に接続され、インナーケーブルの他端は、他方の端末装置に接続される。この構造により、一方の端末装置の動作が、インナーケーブルの進退動作を介して、他方の端末装置に伝達される。
【0003】
特許文献1に、インナーケーブルが開示されている。このインナーケーブルでは、ワイヤロープの表面が、樹脂材料によって被覆されている。このような樹脂材料による被覆層を形成すると、例えば、ワイヤロープの腐食や損傷を抑制することができる。あるいは、アウターチューブとインナーケーブルの間で、摺動抵抗を低下させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−321989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
インナーケーブルに被覆層を形成する場合、被覆層が必要とされる耐久性を満足するように、被覆層の厚みを適切な値に設定する必要がある。特に、被覆層を有するインナーケーブルを、ガイドプーリーによって案内される状態で使用すると、ガイドプーリーによって案内される位置で、被覆層の破壊が生じることが多い。そこで、従来のインナーケーブルの設計作業では、被覆層の厚さ寸法をパラメータとし、ガイドプーリーに沿って湾曲するインナーケーブルの耐久試験を繰り返し行うことによって、被覆層の厚み寸法が試行錯誤的に決定されている。そのことから、インナーケーブルの設計には、多大な労力と時間が必要とされている。
本発明は、上記の問題を解決する。本発明は、インナーケーブルの設計作業を効率的に進めることを可能とする技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
被覆層を有するインナーケーブルでは、ガイドプーリーに沿って湾曲する位置で、被覆層に比較的に大きな応力が生じ、その結果、被覆層の破壊といった耐久性不足が問題となる。そのことから、被覆層が破壊されることを抑制し、インナーケーブルの耐久性を向上するためには、被覆層に生じる最大応力を低下させることが重要となる。
ガイドプーリーに沿って湾曲するインナーケーブルの被覆層に生じる応力分布は、有限要素法に代表される数値計算によって算出することができる。本発明者らは、ガイドプーリーの径寸法と被覆層の厚さ寸法をパラメータとし、ガイドプーリーに沿って湾曲するインナーケーブルの被覆層に生じる応力分布を検証した。そして、ガイドプーリーの径寸法及び被覆層の厚さ寸法と、被覆層に生じる最大応力との間に、これまで予期されなかった関係が存在することを見出した。
【0007】
図6から図12を参照し、本発明者らによる検証結果について説明する。図6から図12は、ガイドプーリーの径寸法(プーリー半径R)毎に、被覆層の厚さ寸法(被覆厚さ)を横軸として、計算された被覆層の最大主応力を示している。各図におけるグラフAは、ガイドプーリーに沿って湾曲するインナーケーブルの湾曲外側部分において、インナーケーブルの中心線側に位置する被覆層の内周部で生じる最大主応力を示しており、各図におけるグラフBは、同じくガイドプーリーに沿って湾曲するインナーケーブルの湾曲外側部分において、インナーケーブルの反中心線側に位置する被覆層の外周部で生じる最大主応力を示している。
ここで、図6から図12のグラフに示す最大主応力は、インナーケーブルの本体であるワイヤーケーブルの線径を、1.53mmに設定して計算したものである。また、各グラフ中のポイント(◆又は■)は、被覆層の厚さ寸法を0.15mm、0.23mm、0.30mm、0.38mm、0.45mm、0.60mmに設定して計算した最大主応力を示している。
なお、本発明者らは、被覆層に生じる応力を検証する指標として主応力を採用したが、被覆層に生じる応力を示す他の指標として、Mises応力や歪などを挙げることができる。
【0008】
図6から図12に示す検証結果から、被覆層の内周部で生じる最大主応力と、被覆層の外周部で生じる最大主応力は、被覆層の厚さ寸法に応じてそれぞれ変化するとともに、その変化の挙動については、両者の間で有意に相違することが確認された。ここで注目すべきは、被覆層の内周部で生じる最大主応力を最小とする被覆層の厚さ寸法と、被覆層の外周部で生じる最大主応力を最小とする被覆層の厚さ寸法が、互いに相違することである。このような傾向は、ガイドプーリーの径寸法が小さい場合(例えばプーリー半径Rが10mmから30mmの場合)ほど、より明確に現われている。
【0009】
本発明者らは、上記した知見を基に、従来の設計手法の問題点を分析した。従来の手法では、例えば試作品を用いた耐久試験を行い、被覆層の内周部に破壊の発生が確認された場合、被覆層の内周部で生じる最大応力が低下するように、被覆層の厚さ寸法を変更していた。今回の知見によれば、このような設計変更は、被覆層の内周部で生じる最大応力を低下させる一方で、被覆層の外周部で生じる最大応力を上昇させることが起こり得る。この場合、設計変更後に再度の耐久試験を実施すると、被覆層の内周部に破壊は発生しなくなるが、今度は被覆層の外周部で破壊が発生するといった事態が起きてしまう。その結果、従来の設計手法では、試作品を用いた耐久試験が、無用に繰り返されることになる。それに対して、被覆層の厚さ寸法を変更した時点で、被覆層の外周部で生じる最大応力の変化を確認すれば、無用な耐久試験を避けることが可能となる。
【0010】
以上に説明した技術思想に基づき、本発明は、インナーケーブルの設計方法に具現化される。この設計方法は、特に、樹脂材料による被覆層を有し、ガイドプーリーによって案内される状態で使用されるインナーケーブルの設計を、効率的に行うものである。この設計方法は、少なくとも、以下に説明する決定工程と試験工程と判断工程と確認工程を備えている。
決定工程では、ガイドプーリーの径寸法の設計値と、被覆層の厚さ寸法の設計値を決定する。この工程で決定する設計値は、必要とされる機能に応じて、あるいは、目標とされる製造コストに応じて、適宜設定するとよい。また、類似する既存装置の設計値を、必要に応じて修正した上で、流用してもよい。
【0011】
試験工程では、決定した設計値の被覆層を有するインナーケーブルと、決定した設計値の径寸法を有するガイドプーリーを用意し、ガイドプーリーに沿って湾曲するインナーケーブルの耐久性を評価する耐久試験を実施する。この耐久試験は、ガイドプーリーによって案内されるインナーケーブルの使用状態を再現するものであれば、専用の試験装置を用いてもよいし、あるいは、インナーケーブルが実装される実機(例えば自動車)を用いて行ってもよい。
【0012】
判断工程では、前記耐久試験後のインナーケーブルについて、被覆層の内周部と外周部との間で、耐久性の優劣を判断する。例えば、被覆層に亀裂のような破壊が生じている場合、その破壊の起点が被覆層の内周部に位置していれば、内周部の方が耐久性に劣っており、外周部の方が耐久性に優れていると判断する。その他、被覆層を形成する樹脂材料に生じた変質の度合を評価して、優劣の判断を行ってもよい。
【0013】
変更工程では、判断工程における判断結果に基づいて、ガイドプーリーの径寸法とインナーケーブルの被覆層の厚さ寸法の少なくとも一方の設計値を変更する。具体的には、耐久性が劣ると判断された内周部と外周部の一方について、インナーケーブルがガイドプーリーに沿って湾曲したときに被覆層で生じる最大応力又は最大歪が低下するように、上記した設計値の変更を行う。この変更工程では、例えば有限要素法による数値計算を実行可能な計算装置を用い、湾曲時に被覆層で生じる応力分布又は歪みを算出することによって、設計値の変更前後における最大応力又は最大歪の変化を検証するとよい。
【0014】
確認工程では、耐久性が優れると判断された内周部と外周部の他方について、インナーケーブルがガイドプーリーに沿って湾曲したときに生じる最大応力又は最大歪が、設計値の変更によって上昇するのか否かを確認する。それにより、設計値の変更の前後において、耐久性が優れると判断された内周部又は外周部の耐久性が、維持されるのか否かを確認することができる。従って、無用な耐久試験を繰り返すといった従来の問題を避けることができ、インナーケーブルの設計作業を効率的に進めることができる。
【0015】
上記した設計方法では、確認工程において最大応力又は最大歪が上昇しないと確認された場合、変更後の設計値を用いて、前記した試験工程以降の各工程を再度実施することが好ましい。それにより、設計値の変更と試作品による評価を適切に繰り返し、必要な耐久性を満足するインナーケーブルを確実に設計することができる。
一方、確認工程において最大応力又は最大歪が上昇する確認された場合は、変更工程に戻って設計値を再度変更することが好ましい。それにより、無用な耐久試験を行うことなく、設計値の再変更を行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、無用な耐久試験を行うことなく、必要な耐久性を満足するインナーケーブルを、比較的に短時間で設計することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】コントロールケーブルの使用状態を示す模式図。
【図2】コントロールケーブルの構造を示す模式図。
【図3】インナーケーブルの設計方法の流れを示すフローチャート。
【図4】インナーケーブルとガイドプーリーのメッシュモデルを模式的に示す図。
【図5】インナーケーブルとガイドプーリーのメッシュモデルを用い、ガイドプーリーに沿って湾曲するインナーケーブルの被覆層に生じる応力分布を数値計算する様子を例示する図。
【図6】ガイドプーリーの半径が10mmの場合に、ガイドプーリーに沿って湾曲するインナーケーブルの湾曲外側部分において、被覆層に生じる最大主応力を示すグラフ。ここで、横軸は被覆層の厚さ寸法(被覆厚さ)を示しており、縦軸は最大応力(計算値)を示している。グラフAは、被覆層の内周部で生じる最大主応力を示しており、グラフBは、被覆層の外周部に生じる最大主応力を示している(以上の注釈は、図7から図12のグラフについても同じ)。
【図7】ガイドプーリーの半径が12mmの場合に、ガイドプーリーに沿って湾曲するインナーケーブルの湾曲外側部分において、被覆層に生じる最大主応力を示すグラフ。
【図8】ガイドプーリーの半径が14mmの場合に、ガイドプーリーに沿って湾曲するインナーケーブルの湾曲外側部分において、被覆層に生じる最大主応力を示すグラフ。
【図9】ガイドプーリーの半径が17mmの場合に、ガイドプーリーに沿って湾曲するインナーケーブルの湾曲外側部分において、被覆層に生じる最大主応力を示すグラフ。
【図10】ガイドプーリーの半径が30mmの場合に、ガイドプーリーに沿って湾曲するインナーケーブルの湾曲外側部分において、被覆層に生じる最大主応力を示すグラフ。
【図11】ガイドプーリーの半径が45mmの場合に、ガイドプーリーに沿って湾曲するインナーケーブルの湾曲外側部分において、被覆層に生じる最大主応力を示すグラフ。
【図12】ガイドプーリーの半径が60mmの場合に、ガイドプーリーに沿って湾曲するインナーケーブルの湾曲外側部分において、被覆層に生じる最大主応力を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0018】
最初に、以下に説明する実施例の主要な特徴を列記する。
(特徴1)被覆層に生じる最大応力は、有限要素法による数値計算装置(FEM計算装置)を用いて計算する。なお、ここでいう最大応力は、最大主応力であってもよいし、最大Mises応力であってもよい。あるいは、最大応力を計算することに代えて、最大歪を計算してもよい。最大歪は、最大応力と一義的に対応するので、最大歪を用いても同じ結果を得ることができる。
(特徴2)設計値を変更する工程では、ガイドプーリーの径寸法よりも、被覆層の厚さ寸法の設計値を優先的に変更する。
【実施例】
【0019】
本発明を適用したインナーケーブルの設計方法について説明する。最初に、設計対象であるインナーケーブルについて説明する。図1に示すように、インナーケーブル24は、コントロールケーブル12に用いられる線材である。コントロールケーブル12は、一方の端末装置である入力装置14と、他方の端末装置である出力装置16の間に配設され、入力装置14における動作を、離れた位置にある出力装置16に伝達するものである。
コントロールケーブル12は、アウターチューブ22とインナーケーブル24を組み合せて構成される。アウターチューブ22は、筒状の長尺部材であり、インナーケーブル24が摺動可能に挿通される。インナーケーブル24の一端は、入力装置14に接続され、インナーケーブル24の他端は、出力装置16に接続される。この構造により、入力装置14の動作が、インナーケーブル24を介して、出力装置16に伝達される。
【0020】
コントロールケーブル12は、例えば、自動車のステアリング機構や、自動車のパワースライドドア機構に採用される。これらの機構では、通常、一対のコントロールケーブル12が使用される。
ステアリング機構では、インナーケーブル24の一端が、運転席のステアリングホイール(入力装置14に相当する)に接続され、インナーケーブル24の他端が、車輪の操舵機構(出力装置16に相当する)に接続される。それにより、運転者がステアリングホイールを操作すると、インナーケーブル24がアウターチューブ22に対して摺動し、車輪の操舵機構が動作する。
パワースライドドア機構では、インナーケーブル24の一端が、モータ等のアクチュエータ(入力装置14に相当する)に接続され、インナーケーブル24の他端が、スライドドアに(出力装置16に相当する)に接続される。それにより、アクチュエータが動作すると、インナーケーブル24がアウターチューブ22に対して摺動し、スライドドアが動作する。
【0021】
図1に示すように、インナーケーブル24は、必要に応じて、一又は複数のガイドプーリー18によって案内される。本実施例の設計方法は、そのようなインナーケーブル24、即ち、ガイドプーリー18によって案内された状態で使用されるインナーケーブル24を、設計対象としている。
ガイドプーリー18が使用される場合、インナーケーブル24は、ガイドプーリー18の位置で大きく湾曲する。そのため、インナーケーブル24の劣化や損傷が進行しやすい。特に、インナーケーブル24の中心線Cよりも反ガイドプーリー18側の湾曲外側部分24aでは、インナーケーブル24の変形量(歪量)が大きく、その内部に生じる応力も比較的に大きい。従って、インナーケーブル24の耐久性を向上するためには、インナーケーブル24の湾曲外側部分24aで生じる応力を、できる限り小さくすることが必要となる。
【0022】
図1、図2を参照して、インナーケーブル24の構造について説明する。インナーケーブル24は、主に、スチールコード26と被覆層28によって構成されている。スチールコード26は、複数のスチールワイヤを撚り合わせた構造を有しており、インナーケーブル24の本体を構成している。被覆層28は、樹脂材料で形成されており、スチールコード26を被覆している。図2において、寸法Dはインナーケーブル24の直径寸法を示しており、寸法d1はスチールコード26の直径寸法を示しており、寸法d2は被覆層28の厚さ寸法を示している。ここで、D=d1+d2+d2が成立する。
【0023】
インナーケーブル24が被覆層28を有する場合、被覆層28が必要とされる耐久性を満足するように、被覆層28の厚みを適切な値に設定する必要がある。特に、被覆層28を有するインナーケーブル24を、ガイドプーリー18によって案内される状態で使用すると、ガイドプーリー18によって湾曲する湾曲外側部分24aでは、被覆層28に大きな応力又は歪が発生することによって、亀裂といった被覆層28の破壊が生じやすい。そこで、本実施例の設計方法では、インナーケーブル24の湾曲外側部分24aに位置する被覆層28で生じる応力又は歪が低下するように、ガイドプーリー18の半径寸法と被覆層28の厚さ寸法を決定していく。
さらに、被覆層28の破壊は、インナーケーブル24の中心線C側に位置する被覆層28の内周部28aを起点に発生することもあれば、インナーケーブル24の反中心線C側に位置する被覆層28の外周部28bを起点に発生することもある。そこで、本実施例の設計方法では、被覆層28に生じる応力又は歪を、その内周部28aと外周部28bのそれぞれについて個別に評価し、ガイドプーリー18の半径寸法と被覆層28の厚さ寸法を決定する。
【0024】
以下、本実施例によるインナーケーブル24の設計方法を詳細に説明する。図3は、インナーケーブル24の設計方法の流れを示すフローチャートである。図3に示すフローチャートに沿って、当該設計方法の各工程を詳細に説明する。
先ず、ステップS10では、ガイドプーリー18の半径寸法、及び被覆層28の厚さ寸法の設計値を決定する。なお、スチールコード26の直径寸法の設計値は、インナーケーブル24に負荷される荷重等に基づいて、既に決定されている。以下、ガイドプーリー18の半径寸法を単にプーリー半径と称し、被覆層28の厚さ寸法を単に被覆厚さと称することがある。
この実施例における説明では、具体例として、プーリー半径の設計値を12mmに決定し、被覆厚さの設計値を0.38mmに決定したとする。また、スチールコード26の直径寸法の設計値は、1.53mmに決定されているものとする。
【0025】
次に、ステップS20では、ステップS10で決定した設計値に基づいて、インナーケーブル24及びガイドプーリー18の試作品を準備し、耐久試験を実施する。この耐久試験によって、ガイドプーリー18に沿って湾曲するインナーケーブル24の耐久性を評価する。この耐久試験は、インナーケーブル24の使用状態を再現したものであればよく、その細部の仕様について特に限定はない。例えば、インナーケーブル24が実装される実機(例えば自動車のパワースライドドア機構)を用い、多数回の動作を繰り返させるようなテストであってもよい。
【0026】
次に、ステップS30では、耐久試験後のインナーケーブル24を評価し、被覆層28に破壊が生じているのか否かを確認する。被覆層28に破壊が発生していなければ、現時点における設計値によって、必要とされる耐久性が満足されることになる。この場合、本実施例の設計方法は終了する。一方、被覆層28に破壊が発生している場合、現時点における設計値では、必要とされる耐久性を満足しないことになる。この場合、以下に説明するステップS40以降の工程へ進み、プーリー半径や被覆厚さの設計値を変更する作業を行う。
【0027】
ステップS40では、被覆層28に生じた破壊について、その破壊の起点が被覆層28の内周部28aに位置しているのか、被覆層28の外周部28bに位置しているのを確認する。破壊の起点が被覆層28の内周部28aに位置していれば、被覆層28の耐久性は内周部28aで劣っており、外周部28bで優れていると判断することができる。逆に、破壊の起点が被覆層28の外周部28bに位置していれば、被覆層28の耐久性は外周部28bで劣っており、内周部28aで優れていると判断することができる。このステップS40では、破壊の起点となった位置を特定することにより、内周部28aと外周部28bのいずれにおいて、被覆層28の耐久性が不足しているのかを確認する。以下では、内内周部28aと外周部28bのうち、破壊の起点が確認された一方を破壊起点側と称し、破壊の起点が位置しなかった他方を非破壊起点側と称する。
この実施例における説明では、具体例として、破壊の起点が被覆層28の外周部28bに確認されたものとする。
【0028】
次に、ステップS50からステップS80の工程では、上記した耐久試験の結果を踏まえ、プーリー半径と被覆厚さの少なくとも一方の設計値を変更する。具体的には、インナーケーブル24がガイドプーリー18に沿って湾曲した際に、被覆層28の破壊起点側で生じる最大主応力が低下するように、上記した設計値の変更を行う。
先ず、ステップS50では、被覆厚さをパラメータとして、ガイドプーリー18に沿ってインナーケーブル24が湾曲するときに、被覆層28の破壊起点側で生じる最大主応力を計算する。例えば、先に仮定したように、プーリー半径の設計値が12mmであって、被覆層28に生じた破壊の起点が外周部28bに位置していたとする。この場合、図7のグラフBが示すような被覆厚さと最大主応力の関係を計算することになる。なお、本実施例では、被覆層28で生じる最大主応力を計算する際に、その計算対象範囲をインナーケーブル24の湾曲外側部分24aに限定している。これは、被覆層28で生じる主応力が、通常、インナーケーブル24の湾曲外側部分24aの範囲で最大になるという知見に基づく。
【0029】
ステップS50における最大主応力の計算は、有限要素法による数値計算装置(FEM計算装置)を用いて行うとよい。図4、図5を参照して、FEM計算装置を用いた計算手順について説明する。先ず、図4に示すように、ガイドプーリー18をモデル化したガイドプーリーモデル18Mと、インナーケーブル24をモデル化したインナーケーブルモデル24Mを作成する。これらのモデル化では、剛体要素やソリッド要素等によるモデル化技術を適宜利用するとよい。例えば、ガイドプーリーモデル18Mは、剛体モデルとするとよい。一方、インナーケーブルモデル24Mは、スチールコード26をソリッド要素の集合で表現するスチールコードモデル26Mと、被覆層28をソリッド要素の集合で表現する被覆層モデル28Mによって、構成することができる。これらのモデル作成では、ガイドプーリーモデル18Mと被覆層モデル28Mの間の摩擦抵抗、スチールコードモデル26Mにおけるスチールワイヤ間の摩擦抵抗、スチールコードモデル26Mの材料特性、被覆層モデル28Mの材料特性等についても、それぞれ定めておくとよい。
【0030】
ガイドプーリー18及びインナーケーブル24のモデル作成後、図5(a)に示すように、インナーケーブルモデル24Mと、ガイドプーリーモデル18Mの位置関係を定義する。このとき、インナーケーブルモデル24Mは、その両端を例えば単純支持とするとよい。次いで、図5(b)に示すように、ガイドプーリーモデル18Mとインナーケーブルモデル24Mが十分に接触するまで、ガイドプーリーモデル18Mとインナーケーブルモデル24Mの少なくとも一方を平行移動させる。それにより、ガイドプーリー18に沿って湾曲するインナーケーブル24が再現され、被覆層28に生じる主応力分布を計算させることができる。計算された主応力分布から、被覆層28の破壊起点側における最大主応力を特定すればよい。
【0031】
次に、ステップS60では、ステップS50で計算した被覆厚さと最大主応力の関係から、現時点の設計値よりも最大主応力が低下する被覆厚さが存在するのか否かを確認する。例えば、先に仮定したように、現時点の被覆厚さの設計値が0.38mmであって、先のステップS50で図7のグラフBに示す関係が得られたとする。この場合、図7のグラフBに基づき、最大主応力が低下する被覆厚さとして、例えば0.30mm、0.23mmが存在することがわかる。
最大主応力が低下する被覆厚さが存在する場合、ステップS70に進み、被覆厚さの設計値を最大応力が低下する値へと変更する。ここでは、被覆厚さの設計値を、例えば0.30mmに変更したとする。
一方、最大主応力が低下する被覆厚さが存在しない場合、ステップS80に進み、プーリー半径の設計値を変更する。この場合、プーリー半径の設計値を、より大きな値へ変更するとよい。図6から図12に示すように、プーリー半径を大きくすると、被覆層28に生じる最大主応力は総じて低下する。
【0032】
次に、ステップS90、S100では、被覆層28の非破壊起点側で生じる最大主応力が、ステップS70、80による設計値の変更によって、上昇するのか否かを確認する。被覆層28の非破壊起点側で生じる最大主応力は、前記した被覆層28の破壊起点側で生じる最大主応力と同様に、FEM計算装置によって計算することができる。先ず、プーリー半径及び被覆厚さの変更前の設計値を用い、被覆層28の非破壊起点側で生じる最大主応力を計算する。次いで、プーリー半径及び被覆厚さの変更後の設計値を用い、被覆層28の非破壊起点側で生じる最大主応力を計算する(以上、ステップS90)。そして、計算した設計変更後の最大主応力が、計算した設計変更前の最大主応力よりも、大きいのか否かを判断する(ステップS100)。例えば、先に仮定したように、プーリー半径の設計値が12mmであり、破壊起点側が外周部28bであって、被覆厚さの設計値を0.38mmから0.30mmに変更したとする。この場合、図7のグラフAに基づき、非破壊起点側である内周部28aでは、最大主応力が上昇することを確認することができる。
【0033】
上記のように、ステップS70、S80の設計変更は、被覆層28の破壊起点側(上記の例示では外周部28b)で最大主応力を低下させる一方、被覆層28の非破壊起点側(内周部28a)で最大主応力を上昇させてしまうことがある。このような場合、設計変更後に再度の耐久試験を実施すると、被覆層28の破壊起点側(外周部28b)では破壊の発生が抑制される一方、今度は被覆層28の非破壊起点側(内周部28a)において、新たに破壊が発生するといった事態が生じることがある。
上記の問題に対して、本実施例の設計方法では、設計値の変更を行った結果、被覆層28の非破壊起点側で最大主応力が上昇すると確認された場合(ステップS100でNO)、試作品を用いた耐久試験を行うことなく、ステップS60に戻って設計値の変更を行う一連の工程を再度実施する。それにより、無用な耐久試験を行うことが防止される。
一方、被覆層28の非破壊起点側で最大主応力が上昇しないと確認された場合(ステップS100でYES)、ステップS20へ戻り、変更後の設計値に基づいて試作品を準備し、インナーケーブル24の耐久試験を実施する。その後、ステップS30では、耐久試験後のインナーケーブル24を評価し、被覆層28の耐久性を確認する。被覆層28が必要とされる耐久性を具備しなければ、ステップS40以降の工程を再度実行し、プーリー半径又は被覆厚さの設計値を再び変更する。
【0034】
以上のように、本実施例で説明した設計方法では、耐久性に問題があるとされた範囲に着目して設計変更を行った後、耐久性に問題がないとされた範囲についても、設計変更による影響を確認している。それにより、無用な耐久試験を行うことを避け、インナーケーブル24の設計を効率的に進めることができる。
【0035】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。本明細書または図面に例示した技術は複数の目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0036】
12:コントロールケーブル
14:入力装置
16:出力装置
18:ガイドプーリー
22:アウターチューブ
24:インナーケーブル
24a:インナーケーブルの湾曲外側範囲
26:スチールコード
28:被覆層
28a:被覆層の内周部
28b:被覆層の外周部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂材料による被覆層を有し、ガイドプーリーによって案内される状態で使用されるインナーケーブルの設計方法であって、
前記ガイドプーリーの径寸法の設計値と、前記被覆層の厚さ寸法の設計値を決定する工程と、
決定した設計値の被覆層を有するインナーケーブルと、決定した設計値の径寸法を有するガイドプーリーを用意し、ガイドプーリーに沿って湾曲するインナーケーブルの耐久性を評価する耐久試験を実施する試験工程と、
前記耐久試験後のインナーケーブルについて、被覆層の内周部と外周部との間で耐久性の優劣を判断する判断工程と、
耐久性が劣ると判断された被覆層の内周部と外周部の一方において、インナーケーブルがガイドプーリーに沿って湾曲したときに被覆層で生じる最大応力又は最大歪が低下するように、ガイドプーリーの径寸法と被覆層の厚さ寸法の少なくとも一方の設計値を変更する変更工程と、
耐久性が優れると判断された被覆層の内周部と外周部の他方において、インナーケーブルがガイドプーリーに沿って湾曲したときに被覆層で生じる最大応力又は最大歪が、前記設計値の変更によって上昇するのか否かを確認する確認工程と、
を備えるインナーケーブルの設計方法。
【請求項2】
前記確認工程において最大応力又は最大歪が上昇しないと確認された場合、変更後の設計値を用いて、前記試験工程以降を再度実施することを特徴とする請求項1に記載のインナーケーブルの設計方法。
【請求項3】
前記確認工程において最大応力又は最大歪が上昇する確認された場合、前記変更工程に戻って設計値を再度変更することを特徴とする請求項1又は2に記載のインナーケーブルの設計方法。
【請求項1】
樹脂材料による被覆層を有し、ガイドプーリーによって案内される状態で使用されるインナーケーブルの設計方法であって、
前記ガイドプーリーの径寸法の設計値と、前記被覆層の厚さ寸法の設計値を決定する工程と、
決定した設計値の被覆層を有するインナーケーブルと、決定した設計値の径寸法を有するガイドプーリーを用意し、ガイドプーリーに沿って湾曲するインナーケーブルの耐久性を評価する耐久試験を実施する試験工程と、
前記耐久試験後のインナーケーブルについて、被覆層の内周部と外周部との間で耐久性の優劣を判断する判断工程と、
耐久性が劣ると判断された被覆層の内周部と外周部の一方において、インナーケーブルがガイドプーリーに沿って湾曲したときに被覆層で生じる最大応力又は最大歪が低下するように、ガイドプーリーの径寸法と被覆層の厚さ寸法の少なくとも一方の設計値を変更する変更工程と、
耐久性が優れると判断された被覆層の内周部と外周部の他方において、インナーケーブルがガイドプーリーに沿って湾曲したときに被覆層で生じる最大応力又は最大歪が、前記設計値の変更によって上昇するのか否かを確認する確認工程と、
を備えるインナーケーブルの設計方法。
【請求項2】
前記確認工程において最大応力又は最大歪が上昇しないと確認された場合、変更後の設計値を用いて、前記試験工程以降を再度実施することを特徴とする請求項1に記載のインナーケーブルの設計方法。
【請求項3】
前記確認工程において最大応力又は最大歪が上昇する確認された場合、前記変更工程に戻って設計値を再度変更することを特徴とする請求項1又は2に記載のインナーケーブルの設計方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−249201(P2010−249201A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−98041(P2009−98041)
【出願日】平成21年4月14日(2009.4.14)
【出願人】(000210986)中央発條株式会社 (173)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月14日(2009.4.14)
【出願人】(000210986)中央発條株式会社 (173)
【Fターム(参考)】
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