説明

インナーライナー用ゴム組成物およびそれを用いたインナーライナーを有するタイヤ

【課題】タイヤの加硫時間を短縮しつつ、耐空気透過性、発熱性および加工性を向上させることができるインナーライナー用ゴム組成物を提供する。
【解決手段】ブチル系ゴム30〜60重量%、天然ゴムおよび/またはイソプレンゴム20〜50重量%、ブタジエンゴム10〜40重量%からなるゴム成分100重量部に対して、平均粒子径が40〜100μmであるマイカを10〜50重量部、カーボンブラックおよび/またはシリカを10〜35重量部、ならびに平均粒子径が0.5〜20μmであるフィラーを5〜20重量部含有し、該カーボンブラック、シリカおよびフィラーの合計含有量が30〜55重量部であるインナーライナー用ゴム組成物、ならびにそれを用いたインナーライナーを有するタイヤ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インナーライナー用ゴム組成物およびそれを用いたインナーライナーを有するタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車の低燃費化に対する強い社会的要請から、タイヤの低発熱化や軽量化が図られており、タイヤ部材のなかでも、タイヤの内部に配され、空気入りタイヤ内部から外部への空気の漏れの量(空気透過量)を低減して空気保持性を向上させるはたらきをもつインナーライナーにおいても、軽量化などが行なわれるようになってきた。
【0003】
現在、インナーライナー用ゴム組成物としては、ブチル系ゴムとジエン系ゴムとを配合し、ブチル系ゴムを高配合することで、タイヤの空気保持性を向上させることがおこなわれている。しかし、ブチル系ゴムは、空気透過量の低減効果は優れるが、得られたゴム組成物のヒステリシスロスが大きく、ブチル系ゴムを高配合とするほど、タイヤの発熱が増大し、車の燃費特性が低下するという問題があった。
【0004】
また、車の低燃費性を向上させるため、天然ゴムの配合比率を増やすと、空気透過量が増大するという問題があった。
【0005】
これらの問題を解決する手法として、板状の雲母を含有する手法(特許文献1参照)が知られているが、充分にタイヤの空気保持性を向上させ、転がり抵抗を低減したものではなく、さらに、インナーライナーに亀裂が生じるという問題があった。
【0006】
【特許文献1】特開平11−140234号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、タイヤの加硫時間を短縮しつつ、耐空気透過性、発熱性および加工性を向上させることができるインナーライナー用ゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ブチル系ゴム30〜60重量%、天然ゴムおよび/またはイソプレンゴム20〜50重量%、ブタジエンゴム10〜40重量%からなるゴム成分100重量部に対して、平均粒子径が40〜100μmであるマイカを10〜50重量部、カーボンブラックおよび/またはシリカを10〜35重量部、もしくは平均粒子径が0.5〜20μmであるフィラーを5〜20重量部含有し、該カーボンブラック、シリカおよびフィラーの合計含有量が30〜55重量部であるインナーライナー用ゴム組成物に関する。
【0009】
前記インナーライナー用ゴム組成物は、さらに、硫黄を0.4〜1.2重量部含有することが好ましい。
【0010】
前記ブタジエンゴムは、1,2−シンジオタクチック結晶を含むブタジエンゴム、もしくはリチウム開始剤により重合され、スズ原子の含有量が50〜3000ppm、ビニル結合量が5〜50重量%、および分子量分布(Mw/Mn)が2以下であるスズ変性ブタジエンゴムであることが好ましい。
【0011】
前記インナーライナー用ゴム組成物は、さらに、マイカ100重量部に対して、相溶化剤を5〜35重量部含有することが好ましい。
【0012】
また、本発明は、前記インナーライナー用ゴム組成物を用いたインナーライナーを有するタイヤに関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、所定のゴム成分、所定のマイカ、カーボンブラックおよび/またはシリカ、ならびに所定のフィラーを所定量含有することで、タイヤの加硫時間を短縮しつつ、耐空気透過性、発熱性および加工性を向上させることができるインナーライナー用ゴム組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明のインナーライナー用ゴム組成物は、所定のゴム成分、マイカ、カーボンブラックおよび/またはシリカ、ならびに所定のフィラーを含有する。
【0015】
前記ゴム成分は、ブチル系ゴム、天然ゴム(NR)および/またはイソプレンゴム(IR)、ならびにブタジエンゴム(BR)を含有する。
【0016】
ブチル系ゴムとしては、たとえば、ブチルゴム(IIR)、臭素化ブチルゴム(Br−IIR)、塩素化ブチルゴム(Cl−IIR)などがあげられる。なかでも、加硫速度が向上することから、臭素化ブチルゴムまたは塩素化ブチルゴムが好ましい。
【0017】
ゴム成分中のブチル系ゴムの含有率は30重量%以上、好ましくは35重量%以上である。ブチル系ゴムの含有率が30重量%未満では、耐空気透過性および耐亀裂成長性を維持できない。また、ブチル系ゴムの含有率は60重量%以下、好ましくは55重量%以下である。ブチル系ゴムの含有率が60重量%をこえると、tanδが増大し、インナーライナーの発熱を抑制することが困難となる。
【0018】
NRとしては、とくに制限はなく、タイヤ工業において一般的に使用されるRSS♯3、TSR20などがあげられる。また、IRとしても同様に、タイヤ工業において一般的に使用されるものがあげられる。なかでも、安価に破断特性を確保できることから、TSR20が好ましい。
【0019】
ゴム成分中のNRおよび/またはIRの含有率は20重量%以上、好ましくは30重量%以上である。NRおよび/またはIRの含有率が20重量%未満では、ロール加工性が悪化する。また、NRおよび/またはIRの含有率は50重量%以下、好ましくは40重量%以下である。NRおよび/またはIRの含有率が50重量%をこえると、耐空気透過性が悪化する。
【0020】
BRとしては、たとえば、タイヤ工業などにおいて一般的に使用される宇部興産(株)製のBR150B、BR130Bなどがあげられる。また、他にも、1,2−シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含むブタジエンゴム(SPB含有BR)や、スズ変性ブタジエンゴム(変性BR)もあげられる。これらのBRのなかでも、シート加工性が向上することから、SPB含有BRまたは変性BRが好ましい。
【0021】
SPB含有BRを使用する場合、宇部興産(株)製のVCR412のように、高シス含有量のBRと高結晶性の1,2−シンジオタクチックポリブタジエン結晶を複合化したものが好ましい。
【0022】
SPB含有BRを使用すると、ゴム配合の未加硫時に、粘度が高くなり、練り時の生産性に優れる。
【0023】
SPB含有BR中の1,2−シンジオタクチックポリブタジエン結晶(SPB)の含有量は3重量%以上が好ましく、5重量%以上がより好ましい。SPBの含有量が3重量%未満では、SPBの割合が小さいため、粘度が低く、練り時の生産性の充分な改善効果が得られない傾向がある。また、SPBの含有量は25重量%以下が好ましく、20重量%以下がより好ましい。SPBの含有量が25重量%をこえると、ポリブタジエン結晶の分散性が低下し、耐亀裂成長性が低下する傾向がある。
【0024】
変性BRを使用する場合、リチウム開始剤により1,3−ブタジエンの重合をおこなったのち、スズ化合物を添加することにより得られ、さらに、変性BR分子の末端がスズ−炭素結合で結合されていることが好ましい。
【0025】
リチウム開始剤としては、アルキルリチウム、アリールリチウム、アリルリチウム、ビニルリチウム、有機スズリチウムおよび有機窒素リチウム化合物などのリチウム系化合物があげられる。リチウム系化合物を変性BRの開始剤とすることで、高ビニル結合量、低シス結合量の変性BRを作製できる。
【0026】
スズ化合物としては、四塩化スズ、ブチルスズトリクロライド、ジブチルスズジクロライド、ジオクチルスズジクロライド、トリブチルスズクロライド、トリフェニルスズクロライド、ジフェニルジブチルスズ、トリフェニルスズエトキシド、ジフェニルジメチルスズ、ジトリルスズクロライド、ジフェニルスズジオクタノエート、ジビニルジエチルスズ、テトラベンジルスズ、ジブチルスズジステアレート、テトラアリルスズ、p−トリブチルスズスチレンなどがあげられ、特に制限はなく、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
変性BR中においてスズ原子の含有量は50ppm以上が好ましく、60ppm以上がより好ましい。スズ原子の含有量が50ppm未満では、変性BR中のカーボンブラックの分散を促進する効果が小さく、tanδが悪化する傾向がある。また、スズ原子の含有量は3000ppm以下が好ましく、2500ppm以下がより好ましく、250ppm以下がさらに好ましい。スズ原子の含有量が3000ppmをこえると、混練り物のまとまりが悪く、エッジが整わないため、混練り物の押出し性が悪化する傾向がある。
【0028】
変性BRの分子量分布(Mw/Mn)は2以下が好ましく、1.5以下がより好ましい。変性BRのMw/Mnが2をこえると、カーボンブラックの分散性、およびtanδが悪化する傾向がある。
【0029】
変性BRのビニル結合量は5重量%以上が好ましく、7重量%以上がより好ましい。変性BRのビニル結合量が5重量%未満では、変性BRを重合(製造)することが困難である傾向がある。また、変性BRのビニル結合量は50重量%以下が好ましく、20重量%以下がより好ましい。変性BRのビニル結合量が50重量%をこえると、耐亀裂成長性が悪化する傾向がある。
【0030】
SPB含有BRおよび変性BRを含んだBRのゴム成分中の合計含有率は10重量%以上、好ましくは12重量%以上である。BRの合計含有率が10重量%未満では、生じた亀裂が成長しやすく(耐亀裂成長性に劣り)、インナーライナーの耐久性が低下する。また、BRの合計含有率は40重量%以下、好ましくは30重量%以下である。BRの合計含有率が40重量%をこえると、ロールによる加工性が悪化し、シート状に穴開きなく圧延することが困難である。
【0031】
ゴム成分としては、ほかにも、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)などもあげられるが、tanδが高く、破談強度が低いという理由から、含まないことが好ましい。
【0032】
マイカ(雲母)としては、マスコバイト(白雲母)、フロゴバイト(金雲母)、バイオタイト(黒雲母)などがあげられ、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、他のマイカより扁平率が大きく、空気遮断効果に優れることから、フロゴバイトが好ましい。
【0033】
マイカの平均粒子径は40μm以上、好ましくは45μm以上である。マイカの平均粒子径が40μm未満では、耐空気透過性の充分な改善効果が得られない傾向がある。また、マイカの平均粒子径は100μm以下、好ましくは70μm以下である。マイカの平均粒子径が100μmをこえると、マイカが亀裂の起点となり、インナーライナーが屈曲疲労により割れてしまう傾向がある。
【0034】
マイカのアスペクト比は50以上が好ましく、55以上がより好ましい。マイカのアスペクト比が50未満では、耐空気透過性の充分な改善効果が得られない傾向がある。また、マイカのアスペクト比は100以下が好ましく、70以下がより好ましい。マイカのアスペクト比が100をこえると、マイカの強度が低下することで、マイカに割れが生じる傾向がある。ここでアスペクト比とは、マイカにおける厚さに対する長径の比のことをいう。
【0035】
本発明で使用するマイカは、湿式粉砕、乾式粉砕などの粉砕方法によって得ることができる。湿式粉砕はきれいな表面ができ、耐空気透過性の改善効果がやや高い。また、乾式粉砕は製造工程が簡単でコストが安いというそれぞれの特徴がある。それぞれのケースにより、使い分けることが好ましい。
【0036】
マイカの含有量は、ゴム成分100重量部に対して10重量部以上、好ましくは30重量部以上である。マイカの含有量が10重量部未満では、インナーライナーとして、充分な耐空気透過性、発熱性および耐亀裂成長性が得られない。また、マイカの含有量は50重量部以下、好ましくは45重量部以下、より好ましくは40重量部以下である。マイカの含有量が50重量部をこえると、ゴム組成物の引き裂き強度が低下したりして、クラックが発生しやすくなる。
【0037】
カーボンブラックおよび/またはシリカとしては、カーボンブラックが好ましい。
【0038】
カーボンブラックのチッ素吸着比表面積(N2SA)は20〜100m2/gが好ましい。カーボンブラックのN2SAが20m2/g未満では、充分な補強性が得られない傾向があり、100m2/gをこえると、ゴムの硬度が高くなり、発熱性も悪化する傾向がある。
【0039】
シリカとしては、湿式法で調製されたものや、乾式法で調製されたものがあげられるが、とくに制限はない。
【0040】
カーボンブラックおよび/またはシリカの含有量は、ゴム成分100重量部に対して10重量部以上、好ましくは20重量部以上である。カーボンブラックおよび/またはシリカの含有量が10重量部未満では、ポリマーとマイカが充分に分散せず、シート状に圧延したときに穴が開きやすい。また、カーボンブラックおよび/またはシリカの含有量は35重量部以下、好ましくは30重量部以下である。カーボンブラックおよび/またはシリカの含有量が35重量部をこえると、発熱性が悪化する傾向がある。
【0041】
フィラーとしては、たとえば、炭酸カルシウム、セリサイト、卵殻粉、フライアッシュ、タルクなどがあげられ、これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、亀裂核にならない程度の適度な大きさであり、加工伸延性や分散性に優れるという理由から、炭酸カルシウムが好ましい。なお、カーボンブラックやシリカは、平均粒子径が小さく、本発明で使用するフィラーには含まない。
【0042】
フィラーの平均粒子径は0.5μm以上、好ましくは1.0μm以上である。フィラーの平均粒子径が0.5μm未満では、カーボンブラックなどのように補強効果は充分に得られるが、tanδが増大してしまう。また、フィラーの平均粒子径は20μm以下、好ましくは15μm以下である。フィラーの平均粒子径が20μmをこえると、シート生地の充分な補強効果が得られない。
【0043】
フィラーの含有量は、ゴム成分100重量部に対して5重量部以上、好ましくは7重量部以上である。フィラーの含有量が5重量部未満では、tanδを低く保ち、シート加工性を改善するという目的を達成できない。また、フィラーの含有量は20重量部以下、好ましくは15重量部以下である。フィラーの含有量が20重量部をこえると、走行使用中に、粒子間で再凝集が生じ、破壊核となり、耐クラック性が悪化する。
【0044】
カーボンブラック、シリカおよびフィラーの合計含有量は、ゴム成分100重量部に対して30重量部以上、好ましくは35重量部以上である。カーボンブラック、シリカおよびフィラーの合計含有量が30重量部未満では、補強性やシート加工性に劣る。また、カーボンブラック、シリカおよびフィラーの合計含有量は55重量部以下、好ましくは50重量部以下である。カーボンブラック、シリカおよびフィラーの合計含有量が55重量部をこえると、tanδが増大し、発熱性が悪化する。
【0045】
本発明のインナーライナー用ゴム組成物は、さらに、硫黄を含有することが好ましい。
【0046】
硫黄の含有量は、ゴム成分100重量部に対して0.4重量部以上が好ましく、0.45重量部以上がより好ましい。硫黄の含有量が0.4重量部未満では、加硫速度が著しく遅い傾向がある。また、硫黄の含有量は1.2重量部以下が好ましく、1.0重量部以下がより好ましい。硫黄の含有量が1.2重量部をこえると、走行中の熱硬化の原因となり、耐亀裂成長性に劣る傾向がある。なお、硫黄として不溶性硫黄を含有する場合、硫黄の含有量とは、オイル分を除いた純硫黄分の含有量のことをいう。
【0047】
本発明のインナーライナー用ゴム組成物は、さらに、相溶化剤を含有することが好ましい。
【0048】
本発明では、相溶化剤を含有することで、ゴム成分とマイカとの間の空隙を少なくし、空気のショートカットを少なくすることができる。一方、相溶化剤は、マイカや、フィラーや、酸化亜鉛などの分散向上剤としても働く。
【0049】
相溶化剤としては、たとえば、スチレン−エチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−メチルメタクリレートブロック共重合体、エチレン−スチレングラフト共重合体、塩素化ポリエチレン、芳香族炭化水素系樹脂および脂肪族炭化水素系樹脂混合物、不飽和脂肪酸の金属石鹸などの非反応性相溶化剤、無水マレイン酸グラフトポリプロピレン、スチレン−無水マレイン酸共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体へのスチレングラフト共重合体などの反応性相溶化剤があげられる。なかでも、本発明の3成分系のゴム成分となじみが良く、熱化学的に安定であることから、非反応性相溶化剤が好ましく、芳香族炭化水素系樹脂および脂肪族炭化水素系樹脂混合物や不飽和脂肪酸の金属石鹸がより好ましい。好適に使用される相溶化剤としては、具体的には、ストラクトール社製のストラクトール40MSなどがあげられる。
【0050】
相溶化剤の含有量は、マイカ100重量部に対して5重量部以上が好ましく、7重量部以上がより好ましい。相溶化剤の含有量が5重量部未満では、耐空気透過性の向上効果が少ない傾向がある。また、相溶化剤の含有量は35重量部以下が好ましく、30重量部以下がより好ましい。相溶化剤の含有量が35重量部をこえると、tanδが大きくなってしまう傾向がある。
【0051】
本発明のインナーライナー用ゴム組成物には、さらに、加硫促進剤を含有することが好ましい。
【0052】
加硫促進剤としては、加硫速度を実加硫生産性にミートする程度にはやく保つことができるという理由から、テトラベンジルチウラムジスルフィド、テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、ジンクジベンジルジチオカーバメイトなどのチウラム系超加硫促進剤を含むことが好ましい。
【0053】
加硫促進剤中の超加硫促進剤の含有率は10重量%以上が好ましく、15重量%以上がより好ましい。超加硫促進剤の含有率が10重量%未満では、加硫促進効果が少ない傾向がある。また、超加硫促進剤の含有率は80重量%以下が好ましく、70重量%以下がより好ましい。超加硫促進剤の含有率が80重量%をこえると、架橋密度が向上せず、破断強度および硬度(Hs)が低い傾向がある。
【0054】
加硫促進剤の含有量は、ゴム成分100重量部に対して0.8重量部以上が好ましく、1.0重量部以上がより好ましい。加硫促進剤の含有量が0.8重量部未満では、破断強度およびHsが低い傾向がある。また、加硫促進剤の含有量は3.0重量部以下が好ましく、2.0重量部以下がより好ましい。加硫促進剤の含有量が3.0重量部をこえると、架橋密度およびHsが高すぎるだけでなく、耐亀裂成長性が低い傾向がある。
【0055】
本発明のインナーライナー用ゴム組成物は、前記ゴム成分、マイカ、カーボンブラックおよび/またはシリカ、フィラー、硫黄、相溶化剤および加硫促進剤以外にも、タイヤ工業において一般的に使用される配合剤、たとえば、酸化亜鉛、老化防止剤、アロマオイル、ステアリン酸などを適宜配合することができる。
【0056】
本発明のタイヤは、本発明のインナーライナー用ゴム組成物をインナーライナーに用いて、通常の方法によって製造される。すなわち、本発明のインナーライナー用ゴム組成物を、未加硫の段階でインナーライナーの形状に合わせて押し出し加工し、タイヤ成型機上で他のタイヤ部材とともに貼りあわせ、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することによって本発明のタイヤを製造できる。
【実施例】
【0057】
実施例にもとづいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0058】
実施例および比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
ブチル系ゴム:エクソンモービル(有)製のエクソンクロロブチル1068(クロロブチルゴム)
天然ゴム(NR):RSS#3
1,2−シンジオタクチック結晶を含むブタジエンゴム(SPB含有BR):宇部興産(株)製のVCR412(1,2−シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含むブタジエンゴム、1,2−シンジオタクチックブタジエン結晶の含有率:12重量%)
スズ変性ブタジエンゴム(変性BR):日本ゼオン(株)製のBR1250H(開始剤としてリチウムを用いて重合、ビニル結合量:10〜13重量%、Mw/Mn:1.5、スズ原子の含有量:250ppm)
カーボンブラック:東海カーボン(株)製のシーストV(N660、N2SA:27m2/g)
フィラー:白石工業(株)製の白樺華CC(炭酸カルシウム、平均粒子径:2μm、BET:26.0m2/g、比重:2.55、pH:8.8)
マイカ:(株)レブコ製のマイカ(雲母)S−200HG(フロゴバイト、平均粒子径:50μm、アスペクト比:55)
酸化亜鉛:東邦亜鉛(株)製の銀嶺R
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック224(2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体)
アロマオイル:(株)ジャパンエナジー製のプロセスX−140
ステアリン酸:日本油脂(株)製の椿
相溶化剤(分散向上剤):ストラクトール社製のストラクトール40MS(芳香族炭化水素系樹脂および脂肪族炭化水素系樹脂混合物)
不溶性硫黄:日本乾溜工業(株)製のセイミサルファー(二硫化炭素による不溶物60%、オイル分10%)
加硫促進剤DM:大内新興化学工業(株)製のノクセラーDM(ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド)
加硫促進剤TBZTD:フレキシス社製のTBZTD(テトラベンジルチウラムジスルフィド)
【0059】
実施例1〜9および比較例1〜6
表1および2に示す配合処方にしたがい、バンバリーミキサーを用いて、硫黄および加硫促進剤以外の薬品を添加し、150℃の条件下で4分間混練りし、混練り物を得た。その後、得られた混練物に硫黄および加硫促進剤を添加し、2軸オープンロールを用いて、80℃の条件下で4分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物を金型にてシート状に圧延し、170℃の条件下で12分間プレス加硫することにより、実施例1〜9および比較例1〜6の加硫ゴムシートを作製した。なお、実施例1〜9および比較例1〜6において、加硫促進剤の含有量は、同程度の硬度(Hs)となるように調整した。
【0060】
(加硫試験)
JIS K 6300「未加硫ゴムの試験方法」に記載されている振動式加硫試験機(キュラストメーター)を用い、測定温度160℃で加硫試験を行い、時間とトルクとをプロットした加硫速度曲線を得た。得られた加硫速度曲線のトルクの最小値をML、最大値をMH、その差(MH−ML)をMEとしたとき、ML+0.1MEに到達する時間T10(分)を読み取った。なお、T10は、2.5〜4.5分が好ましい。T10が2.5分未満では、ゴム焼けが生じやすい傾向があり、4.5分以上では、加硫時間の充分な短縮効果が得られない傾向がある。
【0061】
(ロール加工性)
前記加硫ゴムシートの作製工程において、バンバリーミキサーから得られた混練り物を、熱入れされたロール(温度:80℃)にかけ、8mm程度の厚さにした場合、ロールに適度な密着性で巻きつくこと、浮きやゴム落下がないことを目視にて以下のように評価した。
◎:優れる
○:良好
△:許容下限
×:許容できない
××:全く加工不可
【0062】
(シート加工性)
前記加硫ゴムシートの作製工程において、バンバリーミキサーから得られた混練り物を、ロールにかけ、厚さが0.5〜0.6mmの薄いシート状に均一に押し出して、シートに穴がない、またはシートの端にギザギザが生じないことを目視にて以下のように評価した。
◎:優れる
○:良好
△:許容下限
×:許容できない
××:全く加工不可
【0063】
(粘弾性試験)
(株)岩本製作所製の粘弾性スペクトロメータを用いて、周波数10Hz、初期歪10%、動歪2%の条件下で、70℃における加硫ゴムシートの損失正接tanδの測定を行なった。なお、tanδが小さいほど、発熱が小さく、発熱性に優れることを示す。
【0064】
(空気透過性試験)
ASTM D−1434−75M法にしたがい、加硫ゴムシートの空気透過量を測定し、それぞれ逆数をとった。そして、実施例2の耐空気透過性指数を100とし、下記計算式により、各配合の空気透過量の逆数を指数表示した。なお、耐空気透過性指数が大きいほど、加硫ゴムシートの空気透過量が小さく、加硫ゴムシートの耐空気透過性が向上し、好ましいことを示す。
(耐空気透過性指数)=(各配合の空気透過量の逆数)
÷(実施例2の空気透過量の逆数)×100
【0065】
以上の評価結果を表1および2に示す。
【0066】
【表1】

【0067】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブチル系ゴム30〜60重量%、
天然ゴムおよび/またはイソプレンゴム20〜50重量%、
ブタジエンゴム10〜40重量%からなるゴム成分100重量部に対して、
平均粒子径が40〜100μmであるマイカを10〜50重量部、
カーボンブラックおよび/またはシリカを10〜35重量部、ならびに
平均粒子径が0.5〜20μmであるフィラーを5〜20重量部含有し、
該カーボンブラック、シリカおよびフィラーの合計含有量が30〜55重量部であるインナーライナー用ゴム組成物。
【請求項2】
さらに、硫黄を0.4〜1.2重量部含有する請求項1記載のインナーライナー用ゴム組成物。
【請求項3】
ブタジエンゴムが、1,2−シンジオタクチック結晶を含むブタジエンゴム、もしくはリチウム開始剤により重合され、スズ原子の含有量が50〜3000ppm、ビニル結合量が5〜50重量%、および分子量分布(Mw/Mn)が2以下であるスズ変性ブタジエンゴムである請求項1または2記載のインナーライナー用ゴム組成物。
【請求項4】
さらに、マイカ100重量部に対して、
相溶化剤を5〜35重量部含有する請求項1、2または3記載のインナーライナー用ゴム組成物。
【請求項5】
請求項1、2、3または4記載のインナーライナー用ゴム組成物を用いたインナーライナーを有するタイヤ。

【公開番号】特開2008−31342(P2008−31342A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−207966(P2006−207966)
【出願日】平成18年7月31日(2006.7.31)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】