説明

インナーライナー用ポリマーシートおよびそれを用いた空気入りタイヤ

【課題】厚みが薄く、インナーライナー部に用いた場合に、耐屈曲亀裂成長性、転がり抵抗および静的空気圧低下率において優れた性能を示す空気入りタイヤを得ることのできるインナーライナー用ポリマーシート、およびそれを用いた空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】インナーライナー用ポリマーシートは、スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体を含むSIBS層を有し、SIBS層の厚さが0.05mm以上0.6mm以下であり、SIBS層が、炭素数4のモノマー単位を重合して得られる重合体を0.5質量%以上40質量%以下含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインナーライナー用ポリマーシートおよびそれを用いた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車の低燃費化に対する強い社会的要請から、タイヤの軽量化が図られている。タイヤ部材のなかでも、タイヤ半径方向の内側に配置され、空気入りタイヤ内部から外部への空気の漏れの量(空気透過量)を低減して耐空気透過性を向上させるはたらきをもつインナーライナーにおいても、軽量化などが行われるようになってきた。
【0003】
現在、インナーライナー用ゴム組成物として、ブチルゴム70〜100質量%および天然ゴム30〜0質量%を含むブチル系ゴムを使用することで、タイヤの耐空気透過性を向上させることが行われている。また、ブチル系ゴムはブチレン以外に約1質量%のイソプレンを含み、これが硫黄・加硫促進剤・亜鉛華と相まって、隣接ゴムとの共架橋を可能にしている。上記ブチル系ゴムは、通常の配合では乗用車用タイヤでは0.6〜1.0mm、トラック・バス用タイヤでは1.0〜2.0mm程度の厚みが必要となる。
【0004】
そこで、タイヤの軽量化を図るために、ブチル系ゴムより耐空気透過性に優れ、インナーライナー層の厚みを薄くすることができる熱可塑性エラストマーを、インナーライナーに用いることが提案されている。しかし、ブチル系ゴムよりも薄い厚みで、高い耐空気透過性を示す熱可塑性エラストマーは、インナーライナーに隣接するインスレーションゴムやカーカスゴムとの加硫接着力が、ブチル系ゴムよりも劣っている。インナーライナーの加硫接着力が低いと、インナーライナーとインスレーションまたはカーカスとの間に空気が混入して小さな気泡が多数現れる、エアーイン現象が生じる。この現象はタイヤ性能上は特に問題はないが、タイヤの内側に小さな斑模様があることでユーザーには外観が悪いという印象を与えてしまうという問題がある。
【0005】
特許文献1(特開平9−165469号公報)には、空気透過率の低いナイロンを用いてインナーライナー層を形成することで、インナーライナーとタイヤ内部またはカーカス層を形成するゴム組成物との接着性を向上させることのできる空気入りタイヤが提案されている。しかし、特許文献1の技術においては、ナイロンフィルム層を形成するために、ナイロンフィルムをRFL処理した後、ゴム組成物から成るゴム糊を接着する必要があり、工程が複雑化するという問題がある。さらに、加硫工程では一般に、金型内に収容した未加硫タイヤ(生タイヤ)内にブラダー本体を挿入し、ブラダー本体を膨張させて未加硫タイヤの内側から金型内面に押し付けて加硫成形を行うタイヤ加硫方法が採用されているが、特許文献1のインナーライナー層では、ナイロンフィルム層からなるインナーライナー層とブラダーとが加熱状態で接触することになり、インナーライナー層がブラダーに粘着、接着してしまう。すると加硫後タイヤを金型から取り出す時に、ブラダーに接着したインナーライナー層がブラダー側にとられ、インナーライナー層とインスレーションまたはカーカスの間にエアーイン現象が生じるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−165469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、厚みが薄く、インナーライナー部に用いた場合に、耐屈曲亀裂成長性、転がり抵抗および静的空気圧低下率において優れた性能を示す空気入りタイヤを得ることのできるインナーライナー用ポリマーシート、およびそれを用いた空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体を含むSIBS層を有し、SIBS層の厚さが0.05mm以上0.6mm以下であり、SIBS層が、炭素数4のモノマー単位を重合して得られる重合体を0.5質量%以上40質量%以下含む、インナーライナー用ポリマーシートである。
【0009】
本発明は、スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体を含むSIBS層、ならびにスチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体を含むSIS層およびスチレン−イソブチレンジブロック共重合体を含むSIB層の少なくともいずれかを有し、SIBS層の厚さが0.05mm以上0.6mm以下であり、SIS層および前記SIB層の厚さが合計で0.01mm以上0.3mm以下であり、SIBS層、SIS層およびSIB層の少なくともいずれかが、炭素数4のモノマー単位を重合して得られる重合体を0.5質量%以上40質量%以下含む、インナーライナー用ポリマーシートである。
【0010】
本発明に係るインナーライナー用ポリマーシートにおいて好ましくは、炭素数4のモノマー単位を重合して得られる重合体が、ポリブテンおよびポリイソブチレンの少なくともいずれかからなる。
【0011】
本発明に係るインナーライナー用ポリマーシートにおいて好ましくは、炭素数4のモノマー単位を重合して得られる重合体が、数平均分子量300以上3,000以下、重量平均分子量700以上100,000以下、および粘度平均分子量20,000以上70,000以下の少なくともいずれかを満たす。
【0012】
本発明に係るインナーライナー用ポリマーシートにおいて好ましくは、スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体は重量平均分子量が5万以上40万以下であり、かつスチレン単位含有量が10質量%以上30質量%以下である。
【0013】
本発明に係るインナーライナー用ポリマーシートにおいて好ましくは、スチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体は重量平均分子量が10万以上29万以下であり、かつスチレン単位含有量が10質量%以上30質量%以下である。
【0014】
本発明に係るインナーライナー用ポリマーシートにおいて好ましくは、スチレン−イソブチレンジブロック共重合体は直鎖状であり、重量平均分子量が4万以上12万以下であり、かつスチレン単位含有量が10質量%以上35質量%以下である。
【0015】
本発明は、インナーライナー用ポリマーシートをインナーライナー部に適用した空気入りタイヤである。
【0016】
本発明に係る空気入りタイヤにおいて好ましくは、SIBS層が、空気入りタイヤの半径方向の最も内側に配置される。
【0017】
本発明に係る空気入りタイヤにおいて好ましくは、炭素数4のモノマーユニットを重合して得られる重合体を含むSIS層または炭素数4のモノマーユニットを重合して得られる重合体を含むSIB層が、空気入りタイヤのカーカス層に接して配置される。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、厚みが薄く、インナーライナー部に用いた場合に、耐屈曲亀裂成長性、転がり抵抗および静的空気圧低下率において優れた性能を示す空気入りタイヤを得ることのできるインナーライナー用ポリマーシート、およびそれを用いた空気入りタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施の形態における空気入りタイヤの右半分を示す模式的断面図である。
【図2】本発明の一実施の形態におけるインナーライナー用ポリマーシートを示す模式的断面図である。
【図3】本発明の一実施の形態におけるインナーライナー用ポリマーシートを示す模式的断面図である。
【図4】本発明の一実施の形態におけるインナーライナー用ポリマーシートを示す模式的断面図である。
【図5】本発明の一実施の形態におけるインナーライナー用ポリマーシートを示す模式的断面図である。
【図6】本発明の一実施の形態におけるインナーライナー用ポリマーシートを示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<空気入りタイヤ>
本発明の一実施の形態における空気入りタイヤの構造について、図1を用いて説明する。
【0021】
空気入りタイヤ1は、乗用車用、トラック・バス用、重機用等として用いることができる。空気入りタイヤ1は、トレッド部2とサイドウォール部3とビード部4とを有している。さらに、ビード部4にはビードコア5が埋設される。また、一方のビード部4から他方のビード部にわたって設けられ、両端を折り返してビードコア5を係止するカーカス6と、該カーカス6のクラウン部外側に2枚のプライよりなるベルト層7とが配置されている。カーカス6のタイヤ半径方向内側には一方のビード部4から他方のビード部4に亘るインナーライナー9が配置されている。ベルト層7は、スチールコードまたはアラミド繊維等のコードよりなる2枚のプライを、タイヤ周方向に対してコードが通常5〜30°の角度になるようにプライ間で相互に交差するように配置される。またカーカスはポリエステル、ナイロン、アラミド等の有機繊維コードがタイヤ周方向にほぼ90°に配列されており、カーカスとその折り返し部に囲まれる領域には、ビードコア5の上端からサイドウォール方向に延びるビードエーペックス8が配置される。なお、インナーライナー9とカーカス6との間に、インスレーションが配置されていてもよい。
【0022】
本発明の一実施の形態において、インナーライナー9はインナーライナー用ポリマーシートからなることを特徴とする。
【0023】
<インナーライナー用ポリマーシート>
[実施の形態1]
実施の形態1におけるインナーライナー用ポリマーシートの構造について、図2を用いて説明する。
【0024】
インナーライナー用ポリマーシート10aは、スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体(以下、SIBSともいう)を含むSIBS層11aを有する。前記SIBS層11aは、炭素数4のモノマー単位を重合して得られる重合体を0.5質量%以
上40質量%以下含む。
【0025】
(スチレン−イソブチレン−トリブロック共重合体)
SIBSのイソブチレンブロックにより、SIBSを含むポリマーシートは優れた耐空気透過性を有する。したがって、SIBSを含むポリマーシートをインナーライナーに用いた場合、耐空気透過性に優れた空気入りタイヤを得ることができる。
【0026】
さらに、SIBSは芳香族以外の分子構造が完全飽和であることにより、劣化硬化が抑制され、優れた耐久性を有する。したがって、SIBSを含むポリマーシートをインナーライナーに用いた場合、耐久性に優れた空気入りタイヤを得ることができる。
【0027】
SIBSを含むポリマーシートをインナーライナーに適用して空気入りタイヤを製造した場合、SIBSを含有させることにより耐空気透過性を確保するため、たとえばハロゲン化ブチルゴムなどの、従来耐空気透過性を付与するために使用されてきた高比重のハロゲン化ゴムを使用しないか、使用する場合にも使用量の低減が可能である。これによってタイヤの軽量化が可能であり、燃費の向上効果が得られる。
【0028】
SIBSの分子量は特に制限はないが、流動性、成形化工程、ゴム弾性などの観点から、GPC法による重量平均分子量が5万以上40万以下であることが好ましい。重量平均分子量が5万未満であると引張強度、引張伸びが低下するおそれがあり、40万を超えると押出加工性が悪くなるおそれがあるため好ましくない。
【0029】
SIBSは一般的にスチレン単位を10質量%以上40質量%以下含む。耐空気透過性と耐久性がより良好になる点で、SIBS中のスチレン単位の含有量は10質量%以上30質量%以下であることが好ましい。
【0030】
SIBSは、イソブチレン単位とスチレン単位のモル比(イソブチレン単位/スチレン単位)が、該共重合体のゴム弾性の点から40/60〜95/5であることが好ましい。SIBSにおいて、各ブロックの重合度は、ゴム弾性と取り扱い(重合度が10,000未満では液状になる)の点からイソブチレンブロックでは10,000〜150,000程度、またスチレンブロックでは5,000〜30,000程度であることが好ましい。
【0031】
SIBSは、一般的なビニル系化合物の重合法により得ることができる。たとえば、リビングカチオン重合法により得ることができる。
【0032】
特開昭62−48704号公報および特開昭64−62308号公報には、イソブチレンと他のビニル化合物とのリビングカチオン重合が可能であり、ビニル化合物にイソブチレンと他の化合物を用いることでポリイソブチレン系のブロック共重合体を製造できることが開示されている。このほかにも、リビングカチオン重合法によるビニル化合物重合体の製造法が、たとえば、米国特許第4,946,899号、米国特許第5,219,948号、特開平3−174403号公報などに記載されている。
【0033】
SIBSは分子内に芳香族以外の二重結合を有していないために、たとえばポリブタジエンなどの分子内に二重結合を有している重合体に比べて紫外線に対する安定性が高く、耐候性が良好である。
【0034】
(炭素数4のモノマー単位を重合して得られる重合体)
実施の形態1において、SIBS層11aは炭素数4のモノマー単位を重合して得られる重合体を含む。該重合体の低分子量成分は、SIBS由来の耐空気透過性を損なうことなく、SIBS層と、他のポリマーシートやゴム層との未加硫粘着力および加硫接着力を
向上させることができる。したがって、該重合体を含むSIBS層11aをタイヤのインナーライナー部に用いると、隣接するカーカスやインスレーションなどを形成するゴム層との接着力が向上し、インナーライナーとカーカス、またはインナーライナーとインスレーションの間のエアーイン現象を防ぐことができる。
【0035】
炭素数4のモノマー単位を重合して得られる重合体のGPC法による数平均分子量は、300以上3,000以下であることが好ましく、500以上2,500以下であることがさらに好ましい。該重合体のGPC法による重量平均分子量は700以上100,000以下であることが好ましく、1,000以上80,000以下であることがさらに好ましい。該重合体のFCC法による粘度平均分子量は20,000以上70,000以下であることが好ましく、30,000以上60,000以下であることがさらに好ましい。
【0036】
炭素数4のモノマー単位を重合して得られる重合体としては、ポリブテン、ポリイソブチレンなどが挙げられる。
【0037】
ポリブテンは、モノマー単位としてイソブテンを主体として、さらにノルマルブテンを用い、これらを反応させて得られる長鎖状炭化水素の分子構造を持った共重合体である。ポリブテンとしては、水素添加型のポリブテンも用いることができる。
【0038】
ポリイソブチレンは、モノマー単位としてイソブテンを用いて、これを重合させて得られる長鎖状炭化水素の分子構造を持った共重合体である。
【0039】
(SIBS層)
実施の形態1において、SIBS層11aは、炭素数4のモノマー単位を重合して得られる重合体を0.5質量%以上40質量%以下含む。炭素数4のモノマー単位を重合して得られる重合体の含有量が0.5質量%未満であると、カーカスやインスレーションとの加硫接着力が低下するおそれがあり、40質量%を超えると、耐空気透過性が低下し、さらに粘度が低くなるため押出加工性が悪くなるおそれがある。該重合体の含有量は、好ましくは5質量%以上20質量%以下である。一方、SIBS層11a中のSIBSの含有量は60質量%以上99.5質量%以下が好ましい。SIBSの含有量が60質量%未満であると、耐空気透過性が低下するおそれがあり、99.5質量%を超えると、カーカスやインスレーションとの加硫接着力が低下するおそれがあるため好ましくない。SIBSの含有量は、80質量%以上95質量%以下がさらに好ましい。
【0040】
SIBS層11aの厚みは、0.05mm以上0.6mm以下である。SIBS層11aの厚みが0.05mm未満であると、ポリマーシートをインナーライナーに適用した生タイヤの加硫時に、SIBS層がプレス圧力で破れてしまい、得られたタイヤにおいてエアーリーク現象が生じるおそれがある。一方、SIBS層11aの厚みが0.6mmを超えると、タイヤ重量が増加して低燃費性能が低下する。SIBS層11aの厚みは、さらに0.05mm以上0.4mm以下であることが好ましい。
【0041】
SIBS層11aは、SIBSを押出成形、カレンダー成形といった熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマーをシート化する通常の方法によって得ることができる。
【0042】
図1を参照して、ポリマーシート10aを空気入りタイヤ1のインナーライナー9に適用する場合、タイヤの加硫工程においてSIBS層11aとカーカス6とが加硫接着することができる。したがって得られた空気入りタイヤ1は、インナーライナー9とカーカス6のゴム層とが良好に接着しているため、エアーインを防ぐことができ、さらに優れた耐空気透過性を有することができる。
【0043】
[実施の形態2]
実施の形態2におけるインナーライナー用ポリマーシートの構造について、図3を用いて説明する。
【0044】
インナーライナー用ポリマーシート10bは、SIBSを含むSIBS層11bおよびスチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体(以下、SISともいう)を含むSIS層12bを有する。前記SIBS層11bおよび前記SIS層12bの少なくともいずれかが、炭素数4のモノマー単位を重合して得られる重合体を0.5質量%以上40質量%以下含む。
【0045】
SIBSおよび炭素数4のモノマー単位を重合して得られる重合体は、実施の形態1と同様のものを用いることができる。
【0046】
(スチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体)
スチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体のイソプレンブロックはソフトセグメントであるため、SISを含むポリマーシートはゴム成分と加硫接着しやすい。したがって、SISを含むポリマーシートをインナーライナーに用いた場合、該インナーライナーは、たとえばカーカスやインスレーションを形成する隣接ゴムとの接着性に優れているため、エアーインを防ぐことができ、耐久性に優れた空気入りタイヤを得ることができる。
【0047】
SISの分子量は特に制限はないが、ゴム弾性および成形性の観点から、GPC法による重量平均分子量が10万以上29万以下であることが好ましい。重量平均分子量が10万未満であると引張強度が低下するおそれがあり、29万を超えると押出加工性が悪くなるため好ましくない。
【0048】
SIS中のスチレン単位の含有量は、粘着性、接着性およびゴム弾性の観点から10質量%以上30質量%以下であることが好ましい。
【0049】
SISは、イソプレン単位とスチレン単位のモル比(イソプレン単位/スチレン単位)が、90/10〜70/30であることが好ましい。SISにおいて、各ブロックの重合度は、ゴム弾性と取り扱いの観点からイソプレンブロックでは500〜5,000程度、またスチレンブロックでは50〜1,500程度であることが好ましい。
【0050】
SISは、一般的なビニル系化合物の重合法により得ることができる。たとえば、リビングカチオン重合法により得ることができる。
【0051】
SIS層は、SISを押出成形、カレンダー成形といった熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマーをシート化する通常の方法によって得ることができる。
【0052】
(SIBS層、SIS層)
実施の形態2においては、SIBS層11bおよびSIS層12bの少なくともいずれかが、炭素数4のモノマー単位を重合して得られる重合体を0.5質量%以上40質量%以下含む。すなわち、(a)SIBS層11bが前記重合体を含み、SIS層12bが前記重合体を含まない場合、(b)SIBS層11bが前記重合体を含まず、SIS層12bが前記重合体を含む場合、(c)SIBS層11bおよびSIS層12bの両方が前記重合体を含む場合が該当する。上記(a)〜(c)のうち、(c)を用いることが、接着力が高いという観点から好ましい。
【0053】
SIBS層11bが炭素数4のモノマー単位を重合して得られる重合体を含む場合は、
SIBSおよび前記重合体それぞれの含有量は、実施の形態1と同様にすることができる。
【0054】
SIS層12bが炭素数4のモノマー単位を重合して得られる重合体を含む場合は、前記重合体の含有量を0.5質量%以上40質量%以下とすることが好ましい。前記重合体の含有量が0.5質量%未満であると、カーカスやインスレーションとの加硫接着力が低下するおそれがあり、40質量%を超えると、耐空気透過性が低下し、さらに粘度が低くなるため押出加工性が悪くなるおそれがあるため好ましくない。該重合体の含有量は、5質量%以上20質量%以下がさらに好ましい。一方、SIS層12b中のSISの含有量は60質量%以上99.5質量%以下が好ましい。SISの含有量が60質量%未満であると、粘度が低くなるため押出加工性が悪くなるおそれがあり、99.5質量%を超えると、カーカスやインスレーションとの加硫接着力が低下するおそれがあるため好ましくない。SISの含有量は、80質量%以上95質量%以下がさらに好ましい。
【0055】
SIBS層11bの厚みは、実施の形態1と同様にすることができる。
SIS層12bの厚みは、0.01mm以上0.3mm以下である。SIS層12bの厚みが0.01mm未満であると、ポリマーシートをインナーライナーに適用した生タイヤの加硫時に、SIS層12bがプレス圧力で破れてしまい、加硫接着力が低下する恐れがある。一方、SIS層12bの厚みが0.3mmを超えるとタイヤ重量が増加し、低燃費性能が低下する。SIS層12bの厚みは、さらに0.05mm以上0.2mm以下であることが好ましい。
【0056】
図1を参照して、ポリマーシート10bを空気入りタイヤ1のインナーライナー9に適用する場合、SIBS層11bの存在する面をタイヤ半径方向の最も内側に向け、SIS層12bの存在する面をカーカス6に接するようにタイヤ半径方向外側に向けて設置すると、タイヤの加硫工程において、SIS層12bとカーカス6とが加硫接着することができる。したがって得られた空気入りタイヤ1は、インナーライナー9とカーカス6のゴム層とが良好に接着しているため、エアーインを防ぐことができ、さらに優れた耐空気透過性および耐久性を有することができる。
【0057】
[実施の形態3]
実施の形態3におけるインナーライナー用ポリマーシートの構造について、図4を用いて説明する。
【0058】
インナーライナー用ポリマーシート10cは、SIBSを含むSIBS層11cおよびスチレン−イソブチレンジブロック共重合体(以下、SIBともいう)を含むSIB層13cを有する。前記SIBS層11cおよび前記SIB層13cの少なくともいずれかが、炭素数4のモノマー単位を重合して得られる重合体を0.5質量%以上40質量%以下含む。
【0059】
SIBSおよび炭素数4のモノマー単位を重合して得られる重合体は、実施の形態1と同様のものを用いることができる。
【0060】
(スチレン−イソブチレンジブロック共重合体)
スチレン−イソブチレンジブロック共重合体のイソブチレンブロックはソフトセグメントであるため、SIBを含むポリマーシートはゴム成分と加硫接着しやすい。したがって、SIBを含むポリマーシートをインナーライナーに用いた場合、該インナーライナーは、たとえばカーカスやインスレーションを形成する隣接ゴムとの接着性に優れているため、エアーインを防ぐことができ、耐久性に優れた空気入りタイヤを得ることができる。
【0061】
SIBとしては、直鎖状のものを用いることがゴム弾性および接着性の観点から好ましい。
【0062】
SIBの分子量は特に制限はないが、ゴム弾性および成形性の観点から、GPC法による重量平均分子量が4万以上12万以下であることが好ましい。重量平均分子量が4万未満であると引張強度が低下するおそれがあり、12万を超えると押出加工性が悪くなるおそれがあるため好ましくない。
【0063】
SIB中のスチレン単位の含有量は、粘着性、接着性およびゴム弾性の観点から10質量%以上35質量%以下であることが好ましい。
【0064】
該SIBは、イソブチレン単位とスチレン単位のモル比(イソブチレン単位/スチレン単位)が、90/10〜65/35であることが好ましい。SIBにおいて、各ブロックの重合度は、ゴム弾性と取り扱いの観点からイソブチレンブロックでは300〜3,000程度、またスチレンブロックでは10〜1,500程度であることが好ましい。
【0065】
SIBは、一般的なビニル系化合物の重合法により得ることができる。たとえば、リビングカチオン重合法により得ることができる。
【0066】
国際公開第2005/033035号には、攪拌機にメチルシクロヘキサン、n−ブチルクロライド、クミルクロライドを加え、−70℃に冷却した後、2時間反応させ、その後大量メタノールを添加して反応を停止させ、60℃で真空乾燥してSIBを得るという製造方法が開示されている。
【0067】
SIB層は、SIBを押出成形、カレンダー成形といった熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマーをシート化する通常の方法によって得ることができる。
【0068】
(SIBS層、SIB層)
実施の形態3においては、SIBS層11cおよびSIB層13cの少なくともいずれかが、炭素数4のモノマー単位を重合して得られる重合体を0.5質量%以上40質量%以下含む。すなわち、(a)SIBS層11cが前記重合体を含み、SIB層13cが前記重合体を含まない場合、(b)SIBS層11cが前記重合体を含まず、SIB層13cが前記重合体を含む場合、(c)SIBS層11cおよびSIB層13cの両方が前記重合体を含む場合が該当する。上記(a)〜(c)のうち、(c)を用いることが、接着力が高いという観点から好ましい。
【0069】
SIBS層11cが炭素数4のモノマー単位を重合して得られる重合体を含む場合は、SIBSおよび前記重合体それぞれの含有量は、実施の形態1と同様にすることができる。
【0070】
SIB層13cが炭素数4のモノマー単位を重合して得られる重合体を含む場合は、前記重合体の含有量を0.5質量%以上40質量%以下とすることが好ましい。前記重合体の含有量が0.5質量%未満であると、カーカスやインスレーションとの加硫接着力が低下するおそれがあり、40質量%を超えると、耐空気透過性が低下し、さらに粘度が低くなるため押出加工性が悪くなるおそれがあるため好ましくない。該重合体の含有量は、5質量%以上20質量%以下がさらに好ましい。一方、SIB層13c中のSIBの含有量は60質量%以上99.5質量%以下が好ましい。SIBの含有量が60質量%未満であると、粘度が低くなるため押出加工性が悪くなるおそれがあり、99.5質量%を超えると、カーカスやインスレーションとの加硫接着力が低下するおそれがあるため好ましくない。SIBの含有量は、80質量%以上95質量%以下がさらに好ましい。
【0071】
SIBS層11cの厚みは、実施の形態1と同様にすることができる。
SIB層13cの厚みは、0.01mm以上0.3mm以下である。SIB層13cの厚みが0.01mm未満であると、ポリマーシートをインナーライナーに適用した生タイヤの加硫時に、SIB層13cがプレス圧力で破れてしまい、加硫接着力が低下する恐れがある。一方、SIB層13cの厚みが0.3mmを超えるとタイヤ重量が増加し、低燃費性能が低下する。SIB層13cの厚みは、さらに0.05mm以上0.2mm以下であることが好ましい。
【0072】
図1を参照して、ポリマーシート10cを空気入りタイヤ1のインナーライナー9に適用する場合、SIBS層11cの存在する面をタイヤ半径方向の最も内側に向け、SIB層13cの存在する面をカーカス6に接するようにタイヤ半径方向外側に向けて設置すると、タイヤの加硫工程において、SIB層13cとカーカス6とが加硫接着することができる。したがって得られた空気入りタイヤ1は、インナーライナー9とカーカス6のゴム層とが良好に接着しているため、エアーインを防ぐことができ、さらに優れた耐空気透過性および耐久性を有することができる。
【0073】
[実施の形態4]
実施の形態4におけるインナーライナー用ポリマーシートの構造について、図5を用いて説明する。
【0074】
インナーライナー用ポリマーシート10dは、SIBSを含むSIBS層11d、SISを含むSIS層12dおよびSIBを含むSIB層13dを有し、SIBS層11d、SIS層12dおよびSIB層13dが前記の順で積層されている。前記SIBS層11d、前記SIS層12dおよび前記SIB層13dの少なくともいずれかが、炭素数4のモノマー単位を重合して得られる重合体を0.5量%以上40質量%以下含む。
【0075】
SIBSおよび炭素数4のモノマー単位を重合して得られる重合体は、実施の形態1と同様のものを用いることができる。SISは、実施の形態2と同様のものを用いることができる。SIBは実施の形態3と同様のものを用いることができる。
【0076】
(SIBS層、SIS層、SIB層)
実施の形態4においては、SIBS層11d、SIS層12dおよびSIB層13dの少なくともいずれかが、炭素数4のモノマー単位を重合して得られる重合体を0.5質量%以上40質量%以下含む。すなわち、(a)SIBS層11dのみが前記重合体を含む場合、(b)SIS層12dのみが前記重合体を含む場合、(c)SIB層13dのみが前記重合体を含む場合、(d)SIBS層11dおよびSIS層12dが前記重合体を含み、SIB層13dが前記重合体を含まない場合、(e)SIBS層11dおよびSIB層13dが前記重合体を含み、SIS層12dが前記重合体を含まない場合、(f)SIS層12dおよびSIB層13dが前記重合体を含み、SIBS層11dが前記重合体を含まない場合、(g)SIBS層11d、SIS層12dおよびSIB層13dのすべてが前記重合体を含む場合が該当する。上記(a)〜(g)のうち、(d)を用いることが、接着力が高く、コストを抑えられるという観点から好ましい。
【0077】
SIBS層11dが炭素数4のモノマー単位を重合して得られる重合体を含む場合は、SIBSおよび前記共重合体それぞれの含有量は、実施の形態1と同様にすることができる。
【0078】
SIS層12dが炭素数4のモノマー単位を重合して得られる重合体を含む場合は、SISおよび前記重合体それぞれの含有量は、実施の形態2と同様にすることができる。
【0079】
SIB層13dが炭素数4のモノマー単位を重合して得られる重合体を含む場合は、SIBおよび前記重合体それぞれの含有量は、実施の形態3と同様にすることができる。
【0080】
SIBS層11cの厚みは、実施の形態1と同様にすることができる。
SIS層12dおよびSIB層13dの厚みは、両者の合計が0.01mm以上0.3mm以下である。SIS層12dおよびSIB層13dの合計の厚みが0.01mm未満であると、ポリマーシートをインナーライナーに適用した生タイヤの加硫時に、SIBS層12dおよびSIB層13dがプレス圧力で破れてしまい、加硫接着力が低下する恐れがある。一方、SIBS層12dおよびSIB層13dの合計の厚みが0.3mmを超えるとタイヤ重量が増加し、低燃費性能が低下する。SIBS層12dおよびSIB層13dの合計の厚みは、さらに0.05mm以上0.2mm以下であることが好ましい。
【0081】
図1を参照して、ポリマーシート10dを空気入りタイヤ1のインナーライナー9に適用する場合、SIBS層11dの存在する面をタイヤ半径方向の最も内側に向け、SIB層13dの存在する面をカーカス6に接するようにタイヤ半径方向外側に向けて設置すると、タイヤの加硫工程において、SIB層13dとカーカス6とが加硫接着することができる。したがって得られた空気入りタイヤ1は、インナーライナー9とカーカス6のゴム層とが良好に接着しているため、エアーインを防ぐことができ、さらに優れた耐空気透過性および耐久性を有することができる。
【0082】
[実施の形態5]
実施の形態5におけるインナーライナー用ポリマーシートの構造について、図6を用いて説明する。
【0083】
インナーライナー用ポリマーシート10eは、SIBSを含むSIBS層11e、SIBを含むSIB層13eおよびSISを含むSIS層12eを有し、SIBS層11e、SIB層13eおよびSIS層12eが前記の順で積層されている。前記SIBS層11e、前記SIS層12eおよび前記SIB層13eの少なくともいずれかが、炭素数4のモノマー単位を重合して得られる重合体を0.5量%以上40質量%以下含む。
【0084】
実施の形態5のインナーライナー用ポリマーシート10eは、SIS層およびSIB層の積層順が異なる以外は、実施の形態4と同様の構成にすることができる。
【0085】
<インナーライナー用ポリマーシートの製造方法>
本発明の一実施の形態におけるインナーライナー用ポリマーシートは、SIBS、SIS、SIBのペレットを、Tダイ押出機により共押出をして得ることができる。また、たとえば実施の形態2〜5のいずれかに記載された順序で、SIBS層、SIS層、SIB層をラミネート押出や共押出などの積層押出をして得ることができる。
【0086】
<空気入りタイヤの製造方法>
本発明の一実施の形態において、空気入りタイヤの製造方法は以下の工程を含むことが好ましい。インナーライナー用ポリマーシートをインナーライナーに用いた生タイヤを準備する。前記生タイヤを金型に装着し、ブラダーにより加圧しつつ加硫して加硫タイヤを得る。前記加硫タイヤを50〜120℃で10〜300秒間冷却する。
【0087】
(生タイヤを準備する工程)
インナーライナー用ポリマーシートは生タイヤのインナーライナー部に配置される。複層構造のインナーライナー用ポリマーシートを生タイヤに配置する際は、ポリマーシートのSIB層またはSIS層を、カーカス6に接するようにタイヤ半径方向外側に向けて配
置する。このように配置すると、タイヤ加硫工程において、SIB層またはSIS層とカーカス6とが加硫接着することができる。したがって得られた空気入りタイヤ1は、インナーライナー9とカーカス6のゴム層とが良好に接着しているため、優れた耐空気透過性および耐久性を有することができる。
【0088】
また、インナーライナー9とカーカス6との間に、インスレーションが配置されている場合も、SIB層またはSIS層が、インスレーションに接するようにタイヤ半径方向外側に向けて配置することにより、インナーライナー9とインスレーションとの接着強度を高めることができる。
【0089】
(加硫タイヤを得る工程)
次に、得られた生タイヤを金型に装着し、かつブラダーにより加圧しつつ加硫する。
【0090】
金型は、金属からなる。ブラダーは、ゴムからなる。ブラダーは、金型に収容されている。
【0091】
加硫タイヤを得る工程では、生タイヤが開かれた金型に投入される。投入のとき、ブラダーは収縮している。投入により、ブラダーは生タイヤの内側に位置する。ブラダーは、ガスの充填により膨張する。この膨張により、生タイヤは変形する。この変形は、シェーピングと称されている。次に、金型が締められ、ブラダーの内圧が高められる。生タイヤは、金型のキャビティ面とブラダーの外側表面とに挟まれて、加圧される。生タイヤは、金型およびブラダーからの熱伝導により、加熱される。加圧と加熱とにより、生タイヤのゴム組成物が流動する。流動によってモールド内のエアーが移動し、モールドから排出される。加熱によりゴムが加硫反応を起こし、加硫タイヤが得られる。
【0092】
加硫はたとえば150〜180℃で3〜50分間行うことが好ましい。
(加硫タイヤを冷却する工程)
次に、得られた加硫タイヤを50〜120℃で10〜300秒間冷却することが好ましい。
【0093】
空気入りタイヤは、本発明に係るインナーライナー用ポリマーシートをインナーライナーに用いている。該ポリマーシートを構成するSIBS、SISおよびSIBは熱可塑性エラストマーであるため、加硫タイヤを得る工程において、たとえば150〜180℃に加熱されると、金型内で軟化状態となる。軟化状態の熱可塑性エラストマーは、固体状態よりも反応性が向上するため、隣接部材と融着する。すなわち、膨張したブラダーの外側表面と接するインナーライナーは、加熱により軟化してブラダーに融着してしまう。インナーライナーとブラダーの外側表面が融着した状態で加硫タイヤを金型から取り出そうとすると、インナーライナーが、隣接するインスレーションやカーカスから剥離してしまい、エアーイン現象が生じてしまう。また、タイヤの形状自体が変形してしまう場合もある。
【0094】
そこで、得られた加硫タイヤを直ちに120℃以下で10秒以上急冷することにより、インナーライナーに用いられている熱可塑性エラストマーを固化させることができる。熱可塑性エラストマーが固化すると、インナーライナーとブラダーとの融着が解消し、加硫タイヤを金型から取り出す際の離型性が向上する。
【0095】
冷却温度は50〜120℃が好ましい。冷却温度が50℃より低いと、特別な冷却媒体を準備する必要があり、生産性を悪化させるおそれがある。冷却温度が120℃を超えると、熱可塑性エラストマーが十分に冷却されず、金型開放時にインナーライナーがブラダーに融着したままとなり、エアーイン現象が発生するおそれがある。冷却温度は、70〜100℃であることがさらに好ましい。
【0096】
冷却時間は10〜300秒間が好ましい。冷却時間が10秒より短いと熱可塑性エラストマーが十分に冷却されず、金型開放時にインナーライナーがブラダーに融着したままとなり、エアーイン現象が発生する恐れがある。冷却時間が300秒を超えると生産性が悪くなる。冷却時間は、30〜180秒であることがさらに好ましい。
【0097】
加硫タイヤを冷却する工程は、ブラダー内を冷却して行うことが好ましい。ブラダー内は空洞であるため、加硫工程終了後にブラダー内に前記冷却温度に調整された冷却媒体を導入することができる。
【0098】
なお、加硫タイヤを冷却する工程は、ブラダー内を冷却することと併せて、金型に冷却構造を設置して実施することも可能である。
【0099】
冷却媒体としては、空気、水蒸気、水およびオイルよりなる群から選択される1種以上を用いることが好ましい。なかでも、冷却効率に優れている水を用いることが好ましい。
【0100】
<実施例1〜32、比較例1〜41>
実施例にもとづいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0101】
(SIBの製造)
攪拌機付き2L反応容器に、メチルシクロヘキサン(モレキュラーシーブスで乾燥したもの)589mL、n−ブチルクロライド(モレキュラーシーブスで乾燥したもの)613ml、クミルクロライド0.550gを加えた。反応容器を−70℃に冷却した後、α−ピコリン(2−メチルピリジン)0.35mL、イソブチレン179mLを添加した。さらに四塩化チタン9.4mLを加えて重合を開始し、−70℃で溶液を攪拌しながら2.0時間反応させた。次に反応容器にスチレン59mLを添加し、さらに60分間反応を続けた後、大量のメタノールを添加して反応を停止させた。反応溶液から溶剤などを除去した後に、重合体をトルエンに溶解して2回水洗した。このトルエン溶液をメタノール混合物に加えて重合体を沈殿させ、得られた重合体を60℃で24時間乾燥することによりスチレン−イソブチレンジブロック共重合体を得た。
【0102】
(ポリマーシートの作製)
(実施例1〜32、比較例2〜12、14〜27、29〜41)
表2〜6に示す配合処方にしたがって各配合剤を混合した後、2軸押出機(スクリュ径:φ50mm、L/D:30、シリンダ温度:220℃)にてペレット化した。得られたペレットから、Tダイ押出機(スクリュ径:φ80mm、L/D:50、ダイグリップ幅:500mm、シリンダ温度:220℃)を用いて共押出しを行い、表2〜6に示す厚みの第1層、第2層、第3層を有するポリマーシートを作製した。なお、ポリマーシートが3層から構成される場合は、第1層、第2層、第3層の順で積層した。
【0103】
(比較例1、13、28)
表3,6に示す配合処方にしたがって各配合剤をバンバリーミキサーで混合し、カレンダーロールにてシート化して、厚さ0.5mmのポリマーシートを得た。
【0104】
(空気入りタイヤの作製)
得られたポリマーシートをタイヤのインナーライナー部分に適用して生タイヤを準備した。なお、ポリマーシートが複数層からなる場合は、第1層が生タイヤの半径方向の最も内側に配置され、第2層または第3層が生タイヤのカーカス層に接するように、ポリマー
シートを配置した。該生タイヤを金型内で170℃で20分間プレス成形して、195/65R15サイズの加硫タイヤを作製した。加硫タイヤを100℃で3分間冷却した後、加硫タイヤを金型から取り出し空気入りタイヤを得た。
【0105】
ポリマーシートおよび空気入りタイヤについて以下の評価を行った。
(第1層の加硫接着力)
第1層とカーカス層、および第1層と第2層の未加硫ゴムシートを貼り合わせて、170℃で20分間加熱し、加硫接着力測定用のサンプルを作製する。引張剥離試験により剥離力を測定することで加硫接着力とした。得られた数値を比較例1を基準(100)として、実施例1〜32、比較例2〜41の第1層の加硫接着力について、下記式により指数表示した。なお、数値が大きいほど加硫接着力が強く、好ましいことを示す。
【0106】
(加硫接着力指数)=(実施例1〜32、比較例2〜41の加硫接着力)/(比較例1の加硫接着力)×100
(エアーイン有無)
加硫後のタイヤの内側を検査し、以下の基準で評価した。
【0107】
A:外観上、タイヤ1本あたり、直径5mm以下のエアーインの数が0個、かつ直径5mmを超えるエアーインの数が0個。
【0108】
B:外観上、タイヤ1本あたり、直径5mm以下のエアーインの数が1〜3個、かつ直径5mmを超えるエアーインの数が0個。
【0109】
C:外観上、タイヤ1本あたり、直径5mm以下のエアーインの数が4個以上、または直径5mmを超えるエアーインの数が1個以上。
【0110】
(耐屈曲亀裂成長性)
タイヤの耐久走行試験にて、インナーライナーが割れたり剥がれたりするかを評価した。製造した195/65R15サイズの空気入りタイヤを、JIS規格リム15×6JJに組み付け、タイヤ内圧を通常よりも低内圧である150KPa、荷重600kg、速度100km/時間とし、走行距離20,000kmの時のタイヤ内側を観察し、亀裂剥離の数を測定した。得られた数値を比較例1を基準(100)として、実施例1〜32、比較例2〜41の屈曲亀裂成長性について、下記式により指数表示した。数値が大きいほど、耐屈曲亀裂成長性が優れていることを示す。
【0111】
(屈曲亀裂成長性指数)=(比較例1の亀裂剥離の数)/(実施例1〜32、比較例2〜41の亀裂剥離の数)×100
(転がり抵抗)
(株)神戸製鋼所製の転がり抵抗試験機を用い、製造した195/65R15サイズの空気入りタイヤをJIS規格リム15×6JJに組み付け、荷重3.4kN、空気圧230kPa、速度80km/時間の条件下で、室温(38℃)にて走行させて、転がり抵抗を測定した。得られた数値を比較例1を基準(100)とし、実施例1〜32、比較例2〜41の転がり抵抗について、下記式により指数表示した。なお、数値が大きいほど、転がり抵抗が低減され、好ましいことを示す。
【0112】
(転がり抵抗指数)=(比較例1の転がり抵抗)/(実施例1〜32、比較例2〜41の転がり抵抗)×100
(静的空気圧低下率)
製造した195/65R15サイズのタイヤをJIS規格リム15×6JJに組み付け、初期空気圧300Kpaを封入し、90日間室温で放置し、空気圧の低下率を計算した

【0113】
(総合判定)
総合判定の判定基準は表1の通り。
【0114】
【表1】

【0115】
(評価結果)
試験結果を表2〜6に示す。
【0116】
【表2】

【0117】
【表3】

【0118】
【表4】

【0119】
【表5】

【0120】
【表6】

【0121】
(注1)IIR/NR:IIR(エクソンモービル(株)社製の「エクソンクロロブチル 1068」)とNR(TSR20)を80:20の質量比で混合して用いる。
【0122】
(注2)フィラー:東海カーボン(株)社製の「シーストV」(N660、窒素吸着比表面積:27m2/g)。
【0123】
(注3)SIBS:カネカ(株)社製の「シブスターSIBSTAR 102T」(スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体、重量平均分子量100,000、スチレン単位含有量25質量%、ショアA硬度25)。
【0124】
(注4)ポリブテン:新日本石油(株)社製の「日石ポリブテン グレードHV300」(数平均分子量300)。
【0125】
(注5)ナフテン系オイル:出光興産(株)社製の「ダイアナプロセスオイルNM280」。
【0126】
(注6)SIS:クレイトンポリマー社製の「D1161JP」(スチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体、重量平均分子量150,000、スチレン単位含有量15質量%)。
【0127】
(注7)SIB:上記のSIBの製造方法を用いて製造したSIB(スチレン−イソブチレンジブロック共重合体、重量平均分子量70,000、スチレン単位含有量15質量%)。
【0128】
(注8)ポリイソブチレン:新日本石油(株)社製の「テトラックス 3T」(重量平均分子量49,000、粘度平均分子量30,000)。
【0129】
(注9)配合剤中、IIR/NR、SIBS、ポリブテンおよびナフテン系オイルの合計を100質量%として記載した。フィラーの配合量は、前記合計を100質量%とした場合の配合割合(質量%)で示した。
【0130】
実施例1は、SIBS99.5質量%およびポリブテン0.5質量%を含むSIBS層からなるポリマーシートおよび該ポリマーシートをインナーライナー部に適用した空気入りタイヤである。該実施例は、従来例の比較例1に比べてエアーインの数は同等で、接着力、耐屈曲亀裂成長性、転がり抵抗、静的空気圧低下率については、性能が向上した。
【0131】
実施例2、3は、SIBS99.5質量%およびポリブテン0.5質量%を含むSIBS層、ならびにSIS層またはSIB層を有する2層構造のポリマーシートおよび該ポリマーシートをインナーライナー部に適用した空気入りタイヤである。該実施例は、従来例の比較例1に比べてエアーインの数は同等で、接着力、耐屈曲亀裂成長性、転がり抵抗、静的空気圧低下率については、性能が向上した。
【0132】
実施例4は、SIBS99.5質量%およびポリブテン0.5質量%を含むSIBS層、ならびにSIS層およびSIB層を有する3層構造のポリマーシートおよび該ポリマーシートをインナーライナー部に適用した空気入りタイヤである。該実施例は、従来例の比較例1に比べてエアーインの数は同等で、接着力、耐屈曲亀裂成長性、転がり抵抗、静的空気圧低下率については、性能が向上した。
【0133】
実施例5、6は、SIBS層ならびに、SIS99.5質量%およびポリブテン0.5質量%を含むSIS層またはSIB99.5質量%およびポリブテン0.5質量%を含むSIB層を有する2層構造のポリマーシートおよび該ポリマーシートをインナーライナー部に適用した空気入りタイヤである。該実施例は、従来例の比較例1に比べてエアーインの数は同等で、接着力、耐屈曲亀裂成長性、転がり抵抗、静的空気圧低下率については、性能が向上した。
【0134】
実施例7は、SIBS層、SIS99.5質量%およびポリブテン0.5質量%を含む
SIS層ならびにSIB99.5質量%およびポリブテン0.5質量%を含むSIB層を有する3層構造のポリマーシートおよび該ポリマーシートをインナーライナー部に適用した空気入りタイヤである。該実施例は、従来例の比較例1に比べてエアーインの数は同等で、接着力、耐屈曲亀裂成長性、転がり抵抗、静的空気圧低下率については、性能が向上した。
【0135】
実施例8は、SIBS99.5質量%およびポリブテン0.5質量%を含むSIBS層、SIS99.5質量%およびポリブテン0.5質量%を含むSIS層ならびにSIB99.5質量%およびポリブテン0.5質量%を含むSIB層を有する3層構造のポリマーシートおよび該ポリマーシートをインナーライナー部に適用した空気入りタイヤである。該実施例は、従来例の比較例1に比べてエアーインの数は同等で、接着力、耐屈曲亀裂成長性、転がり抵抗、静的空気圧低下率については、性能が向上した。
【0136】
実施例9は、SIBS60質量%およびポリブテン40質量%を含むSIBS層からなるポリマーシートおよび該ポリマーシートをインナーライナー部に適用した空気入りタイヤである。該実施例は、従来例の比較例1に比べてエアーインの数は同等で、接着力、耐屈曲亀裂成長性、転がり抵抗、静的空気圧低下率については、性能が向上した。
【0137】
実施例10、11は、SIBS60質量%およびポリブテン40質量%を含むSIBS層、ならびにSIS層またはSIB層を有する2層構造のポリマーシートおよび該ポリマーシートをインナーライナー部に適用した空気入りタイヤである。該実施例は、従来例の比較例1に比べてエアーインの数は同等で、接着力、耐屈曲亀裂成長性、転がり抵抗、静的空気圧低下率については、性能が向上した。
【0138】
実施例12は、SIBS60質量%およびポリブテン40質量%を含むSIBS層、ならびにSIS層およびSIB層を有する3層構造のポリマーシートおよび該ポリマーシートをインナーライナー部に適用した空気入りタイヤである。該実施例は、従来例の比較例1に比べてエアーインの数は同等で、接着力、耐屈曲亀裂成長性、転がり抵抗、静的空気圧低下率については、性能が向上した。
【0139】
実施例13、14は、SIBS層ならびに、SIS60質量%およびポリブテン40質量%を含むSIS層またはSIB60質量%およびポリブテン40質量%を含むSIB層を有する2層構造のポリマーシートおよび該ポリマーシートをインナーライナー部に適用した空気入りタイヤである。該実施例は、従来例の比較例1に比べてエアーインの数は同等で、接着力、耐屈曲亀裂成長性、転がり抵抗、静的空気圧低下率については、性能が向上した。
【0140】
実施例15は、SIBS層、SIS60質量%およびポリブテン40質量%を含むSIS層ならびにSIB60質量%およびポリブテン40質量%を含むSIB層を有する3層構造のポリマーシートおよび該ポリマーシートをインナーライナー部に適用した空気入りタイヤである。該実施例は、従来例の比較例1に比べてエアーインの数は同等で、接着力、耐屈曲亀裂成長性、転がり抵抗、静的空気圧低下率については、性能が向上した。
【0141】
実施例16は、SIBS60質量%およびポリブテン40質量%を含むSIBS層、SIS60質量%およびポリブテン40質量%を含むSIS層ならびにSIB60質量%およびポリブテン40質量%を含むSIB層を有する3層構造のポリマーシートおよび該ポリマーシートをインナーライナー部に適用した空気入りタイヤである。該実施例は、従来例の比較例1に比べてエアーインの数は同等で、接着力、耐屈曲亀裂成長性、転がり抵抗、静的空気圧低下率については、性能が向上した。
【0142】
比較例1は従来例であり、IIR、NR、フィラーおよびナフテン系オイルを含むポリマーシートおよび該ポリマーシートをインナーライナー部に適用した空気入りタイヤである。従来例は、静的空気圧低下に関する性能が不十分である。
【0143】
比較例2は、SIBS100質量%からなるポリマーシートおよび該ポリマーシートをインナーライナー部に適用した空気入りタイヤである。該比較例は、比較例1に比べて接着力が非常に弱く、エアーインの数も増加した。耐屈曲亀裂成長性、転がり抵抗、静的空気圧低下率については、性能が向上した。
【0144】
比較例3および4は、SIBS層および、SIS層またはSIB層を有する2層構造のポリマーシートおよび該ポリマーシートをインナーライナー部に適用した空気入りタイヤである。なお、SIBS層、SIS層、SIB層のいずれもポリブテンを含まない。該比較例は、比較例1に比べて接着力が非常に弱く、エアーインの数も増加した。耐屈曲亀裂成長性、転がり抵抗、静的空気圧低下率については、性能が向上した。
【0145】
比較例5は、SIBS層、SIS層およびSIB層を有する3層構造のポリマーシートおよび該ポリマーシートをインナーライナー部に適用した空気入りタイヤである。なお、SIBS層、SIS層、SIB層のいずれもポリブテンを含まない。該比較例は、比較例1に比べて接着力が非常に弱く、エアーインの数も増加した。耐屈曲亀裂成長性、転がり抵抗、静的空気圧低下率については、性能が向上した。
【0146】
比較例6は、SIBSおよびナフテン系オイルを含むポリマーシートおよび該ポリマーシートをインナーライナー部に適用した空気入りタイヤである。該比較例は、比較例1に比べて接着力が非常に弱く、エアーインの数も増加した。耐屈曲亀裂成長性、転がり抵抗、静的空気圧低下率については、性能が向上した。
【0147】
比較例7および8は、ナフテン系オイルを含むSIBS層および、SIS層またはSIB層を有する2層構造のポリマーシートおよび該ポリマーシートをインナーライナー部に適用した空気入りタイヤである。該比較例は、比較例1に比べて接着力が非常に弱く、エアーインの数も増加した。耐屈曲亀裂成長性、転がり抵抗、静的空気圧低下率については、性能が向上した。
【0148】
比較例9は、ナフテン系オイルを含むSIBS層、SIS層およびSIB層を有する3層構造のポリマーシートおよび該ポリマーシートをインナーライナー部に適用した空気入りタイヤである。該比較例は、比較例1に比べて接着力が非常に弱く、エアーインの数も増加した。耐屈曲亀裂成長性、転がり抵抗、静的空気圧低下率については、性能が向上した。
【0149】
比較例10および11は、SIBS層および、ナフテン系オイルを含むSIS層またはSIB層を有する2層構造のポリマーシートおよび該ポリマーシートをインナーライナー部に適用した空気入りタイヤである。該比較例は、比較例1に比べて接着力が非常に弱く、エアーインの数も増加した。耐屈曲亀裂成長性、転がり抵抗、静的空気圧低下率については、性能が向上した。
【0150】
比較例12は、SIBS層ならびに、ナフテン系オイルを含むSIS層およびSIB層を有する3層構造のポリマーシートおよび該ポリマーシートをインナーライナー部に適用した空気入りタイヤである。これらの比較例は、比較例1に比べて接着力が非常に弱く、エアーインの数も増加した。耐屈曲亀裂成長性、転がり抵抗、静的空気圧低下率については、性能が向上した。
【0151】
比較例13は、IIR、NR、フィラーおよびポリブテンを含むポリマーシートおよび該ポリマーシートをインナーライナー部に適用した空気入りタイヤである。該比較例は、比較例1に比べて接着力が弱く、エアーインの数も増加した。耐屈曲亀裂成長性、転がり抵抗については、性能が低下した。
【0152】
比較例14は、SIBS99.6質量%およびポリブテン0.4質量%を含むSIBS層からなるポリマーシートおよび該ポリマーシートをインナーライナー部に適用した空気入りタイヤである。該比較例は、比較例1に比べて接着力が弱く、エアーインの数も増加した。耐屈曲亀裂成長性、転がり抵抗、静的空気圧低下率については、性能が向上した。
【0153】
比較例15および16は、SIBS99.6質量%およびポリブテン0.4質量%を含むSIBS層および、SIS層またはSIB層を有する2層構造のポリマーシートおよび該ポリマーシートをインナーライナー部に適用した空気入りタイヤである。該比較例は、比較例1に比べて接着力が弱く、エアーインの数も増加した。耐屈曲亀裂成長性、転がり抵抗、静的空気圧低下率については、性能が向上した。
【0154】
比較例17は、SIBS99.6質量%およびポリブテン0.4質量%を含むSIBS層ならびに、SIS層およびSIB層を有する3層構造のポリマーシートおよび該ポリマーシートをインナーライナー部に適用した空気入りタイヤである。該比較例は、比較例1に比べて接着力が弱く、エアーインの数も増加した。耐屈曲亀裂成長性、転がり抵抗、静的空気圧低下率については、性能が向上した。
【0155】
比較例18および19は、SIBS層ならびに、SIS99.6質量%およびポリブテン0.4質量%を含むSIS層またはSIB99.6質量%およびポリブテン0.4質量%を含むSIB層を有する2層構造のポリマーシートおよび該ポリマーシートをインナーライナー部に適用した空気入りタイヤである。該比較例は、比較例1に比べて接着力が弱く、エアーインの数も増加した。耐屈曲亀裂成長性、転がり抵抗、静的空気圧低下率については、性能が向上した。
【0156】
比較例20は、SIBS層、SIS99.6質量%およびポリブテン0.4質量%を含むSIS層ならびにSIB99.6質量%およびポリブテン0.4質量%を含むSIB層を有する3層構造のポリマーシートおよび該ポリマーシートをインナーライナー部に適用した空気入りタイヤである。該比較例は、比較例1に比べて接着力が弱く、エアーインの数も増加した。耐屈曲亀裂成長性、転がり抵抗、静的空気圧低下率については、性能が向上した。
【0157】
比較例21は、SIBS99.6質量%およびポリブテン0.4質量%を含むSIBS層、SIS99.6質量%およびポリブテン0.4質量%を含むSIS層ならびにSIB99.6質量%およびポリブテン0.4質量%を含むSIB層を有する3層構造のポリマーシートおよび該ポリマーシートをインナーライナー部に適用した空気入りタイヤである。該比較例は、比較例1に比べて接着力が弱く、エアーインの数も増加した。耐屈曲亀裂成長性、転がり抵抗、静的空気圧低下率については、性能が向上した。
【0158】
比較例22は、SIBS55質量%およびポリブテン45質量%を含むSIBS層からなるポリマーシートおよび該ポリマーシートをインナーライナー部に適用した空気入りタイヤである。該比較例は、比較例1に比べて接着力、耐屈曲亀裂成長性、静的空気圧低下率については、性能が向上し、エアーインの数は同等であった。一方、転がり抵抗性能は低下した。
【0159】
比較例23および24は、SIBS55質量%およびポリブテン45質量%を含むSI
BS層および、SIS層またはSIB層を有する2層構造のポリマーシートおよび該ポリマーシートをインナーライナー部に適用した空気入りタイヤである。該比較例は、比較例1に比べて接着力、耐屈曲亀裂成長性、静的空気圧低下率については、性能が向上し、エアーインの数は同等であった。一方、転がり抵抗性能は低下した。
【0160】
比較例25は、SIBS55質量%およびポリブテン45質量%を含むSIBS層ならびに、SIS層およびSIB層を有する3層構造のポリマーシートおよび該ポリマーシートをインナーライナー部に適用した空気入りタイヤである。該比較例は、比較例1に比べて接着力、耐屈曲亀裂成長性、静的空気圧低下率については、性能が向上し、エアーインの数は同等であった。一方、転がり抵抗性能は低下した。
【0161】
比較例26は、SIBS55質量%およびポリブテン45質量%を含むSIBS層、SIS55質量%およびポリブテン45質量%を含むSIS層ならびにSIB55質量%およびポリブテン45質量%を含むSIB層を有する3層構造のポリマーシートおよび該ポリマーシートをインナーライナー部に適用した空気入りタイヤである。該比較例は、比較例1に比べて接着力、耐屈曲亀裂成長性、静的空気圧低下率については、性能が向上し、エアーインの数は同等であった。一方、転がり抵抗性能は低下した。
【0162】
比較例27は、SIBS60質量%およびナフテン系オイル40質量%を含むSIBS層、SIS60質量%およびナフテン系オイル40質量%を含むSIS層ならびにSIB60質量%およびナフテン系オイル40質量%を含むSIB層を有する3層構造のポリマーシートおよび該ポリマーシートをインナーライナー部に適用した空気入りタイヤである。該比較例は、比較例1に比べて接着力、転がり抵抗、静的空気圧低下率については、性能が低下し、エアーインの数は増加した。
【0163】
実施例17は、SIBS99.5質量%およびポリイソブチレン0.5質量%を含むSIBS層からなるポリマーシートおよび該ポリマーシートをインナーライナー部に適用した空気入りタイヤである。該実施例は、従来例の比較例1に比べてエアーインの数は同等で、接着力、耐屈曲亀裂成長性、転がり抵抗、静的空気圧低下率については、性能が向上した。
【0164】
実施例18および19は、SIBS99.5質量%およびポリイソブチレン0.5質量%を含むSIBS層および、SIS層またはSIB層を有する2層構造のポリマーシートおよび該ポリマーシートをインナーライナー部に適用した空気入りタイヤである。該実施例は、従来例の比較例1に比べてエアーインの数は同等で、接着力、耐屈曲亀裂成長性、転がり抵抗、静的空気圧低下率については、性能が向上した。
【0165】
実施例20は、SIBS99.5質量%およびポリイソブチレン0.5質量%を含むSIBS層ならびに、SIS層およびSIB層を有する3層構造のポリマーシートおよび該ポリマーシートをインナーライナー部に適用した空気入りタイヤである。該実施例は、従来例の比較例1に比べてエアーインの数は同等で、接着力、耐屈曲亀裂成長性、転がり抵抗、静的空気圧低下率については、性能が向上した。
【0166】
実施例21および22は、SIBS層ならびに、SIS99.5質量%およびポリイソブチレン0.5質量%を含むSIS層またはSIB99.5質量%およびポリイソブチレン0.5質量%を含むSIB層を有する2層構造のポリマーシートおよび該ポリマーシートをインナーライナー部に適用した空気入りタイヤである。該実施例は、従来例の比較例1に比べてエアーインの数は同等で、接着力、耐屈曲亀裂成長性、転がり抵抗、静的空気圧低下率については、性能が向上した。
【0167】
実施例23は、SIBS層、SIS99.5質量%およびポリイソブチレン0.5質量%を含むSIS層、ならびにSIB99.5質量%およびポリイソブチレン0.5質量%を含むSIB層を有する3層構造のポリマーシートおよび該ポリマーシートをインナーライナー部に適用した空気入りタイヤである。該実施例は、従来例の比較例1に比べてエアーインの数は同等で、接着力、耐屈曲亀裂成長性、転がり抵抗、静的空気圧低下率については、性能が向上した。
【0168】
実施例24は、SIBS99.5質量%およびポリイソブチレン0.5質量%を含むSIBS層、SIS99.5質量%およびポリイソブチレン0.5質量%を含むSIS層、ならびにSIB99.5質量%およびポリイソブチレン0.5質量%を含むSIB層を有する3層構造のポリマーシートおよび該ポリマーシートをインナーライナー部に適用した空気入りタイヤである。該実施例は、従来例の比較例1に比べてエアーインの数は同等で、接着力、耐屈曲亀裂成長性、転がり抵抗、静的空気圧低下率については、性能が向上した。
【0169】
実施例25は、SIBS60質量%およびポリイソブチレン40質量%を含むSIBS層からなるポリマーシートおよび該ポリマーシートをインナーライナー部に適用した空気入りタイヤである。該実施例は、従来例の比較例1に比べてエアーインの数は同等で、接着力、耐屈曲亀裂成長性、転がり抵抗、静的空気圧低下率については、性能が向上した。
【0170】
実施例26および27は、SIBS60質量%およびポリイソブチレン40質量%を含むSIBS層および、SIS層またはSIB層を有する2層構造のポリマーシートおよび該ポリマーシートをインナーライナー部に適用した空気入りタイヤである。該実施例は、従来例の比較例1に比べてエアーインの数は同等で、接着力、耐屈曲亀裂成長性、転がり抵抗、静的空気圧低下率については、性能が向上した。
【0171】
実施例28は、SIBS60質量%およびポリイソブチレン40質量%を含むSIBS層ならびに、SIS層およびSIB層を有する3層構造のポリマーシートおよび該ポリマーシートをインナーライナー部に適用した空気入りタイヤである。該実施例は、従来例の比較例1に比べてエアーインの数は同等で、接着力、耐屈曲亀裂成長性、転がり抵抗、静的空気圧低下率については、性能が向上した。
【0172】
実施例29および30は、SIBS層ならびに、SIS60質量%およびポリイソブチレン40質量%を含むSIS層またはSIB60質量%およびポリイソブチレン40質量%を含むSIB層を有する2層構造のポリマーシートおよび該ポリマーシートをインナーライナー部に適用した空気入りタイヤである。該実施例は、従来例の比較例1に比べてエアーインの数は同等で、接着力、耐屈曲亀裂成長性、転がり抵抗、静的空気圧低下率については、性能が向上した。
【0173】
実施例31は、SIBS層、SIS60質量%およびポリイソブチレン40質量%を含むSIS層、ならびにSIB60質量%およびポリイソブチレン40質量%を含むSIB層を有する3層構造のポリマーシートおよび該ポリマーシートをインナーライナー部に適用した空気入りタイヤである。該実施例は、従来例の比較例1に比べてエアーインの数は同等で、接着力、耐屈曲亀裂成長性、転がり抵抗、静的空気圧低下率については、性能が向上した。
【0174】
実施例32は、SIBS60質量%およびポリイソブチレン40質量%を含むSIBS層、SIS60質量%およびポリイソブチレン40質量%を含むSIS層、ならびにSIB60質量%およびポリイソブチレン40質量%を含むSIB層を有する3層構造のポリマーシートおよび該ポリマーシートをインナーライナー部に適用した空気入りタイヤであ
る。該実施例は、従来例の比較例1に比べてエアーインの数は同等で、接着力、耐屈曲亀裂成長性、転がり抵抗、静的空気圧低下率については、性能が向上した。
【0175】
比較例28は、IIR、NR、フィラー、ポリイソブチレンを含むポリマーシートおよび該ポリマーシートをインナーライナー部に適用した空気入りタイヤである。該比較例は、比較例1に比べてエアーインの数が増加し、接着性、耐屈曲亀裂成長性、転がり抵抗について、性能が低下した。
【0176】
比較例29は、SIBS99.6質量%およびポリイソブチレン0.4質量%を含むSIBS層からなるポリマーシートおよび該ポリマーシートをインナーライナー部に適用した空気入りタイヤである。該比較例は、比較例1に比べて接着力が弱く、エアーインの数も増加した。耐屈曲亀裂成長性、転がり抵抗、静的空気圧低下率については、性能が向上した。
【0177】
比較例30および31は、SIBS99.6質量%およびポリイソブチレン0.4質量%を含むSIBS層ならびに、SIS層またはSIB層を有する2層構造のポリマーシートおよび該ポリマーシートをインナーライナー部に適用した空気入りタイヤである。該比較例は、比較例1に比べて接着力が弱く、エアーインの数も増加した。耐屈曲亀裂成長性、転がり抵抗、静的空気圧低下率については、性能が向上した。
【0178】
比較例32は、SIBS99.6質量%およびポリイソブチレン0.4質量%を含むSIBS層ならびに、SIS層およびSIB層を有する3層構造のポリマーシートおよび該ポリマーシートをインナーライナー部に適用した空気入りタイヤである。該比較例は、比較例1に比べて接着力が弱く、エアーインの数も増加した。耐屈曲亀裂成長性、転がり抵抗、静的空気圧低下率については、性能が向上した。
【0179】
比較例33および34は、SIBS層ならびに、SIS99.6質量%およびポリイソブチレン0.4質量%を含むSIS層またはSIB99.6質量%およびポリイソブチレン0.4質量%を含むSIB層を有する2層構造のポリマーシートおよび該ポリマーシートをインナーライナー部に適用した空気入りタイヤである。該比較例は、比較例1に比べて接着力が弱く、エアーインの数も増加した。耐屈曲亀裂成長性、転がり抵抗、静的空気圧低下率については、性能が向上した。
【0180】
比較例35は、SIBS層、SIS99.6質量%およびポリイソブチレン0.4質量%を含むSIS層ならびにSIB99.6質量%およびポリイソブチレン0.4質量%を含むSIB層を有する3層構造のポリマーシートおよび該ポリマーシートをインナーライナー部に適用した空気入りタイヤである。該比較例は、比較例1に比べて接着力が弱く、エアーインの数も増加した。耐屈曲亀裂成長性、転がり抵抗、静的空気圧低下率については、性能が向上した。
【0181】
比較例36は、SIBS99.6質量%およびポリイソブチレン0.4質量%を含むSIBS層、SIS99.6質量%およびポリイソブチレン0.4質量%を含むSIS層ならびにSIB99.6質量%およびポリイソブチレン0.4質量%を含むSIB層を有する3層構造のポリマーシートおよび該ポリマーシートをインナーライナー部に適用した空気入りタイヤである。該比較例は、比較例1に比べて接着力が弱く、エアーインの数も増加した。耐屈曲亀裂成長性、転がり抵抗、静的空気圧低下率については、性能が向上した。
【0182】
比較例37は、SIBS55質量%およびポリイソブチレン45質量%を含むSIBS層からなるポリマーシートおよび該ポリマーシートをインナーライナー部に適用した空気
入りタイヤである。該比較例は、比較例1に比べて接着力、耐屈曲亀裂成長性、静的空気圧低下率については、性能が向上し、エアーインの数は同等であった。一方、転がり抵抗については、性能が低下した。
【0183】
比較例38および39は、SIBS55質量%およびポリイソブチレン45質量%を含むSIBS層ならびに、SIS層またはSIB層を有する2層構造のポリマーシートおよび該ポリマーシートをインナーライナー部に適用した空気入りタイヤである。該比較例は、比較例1に比べて接着力、耐屈曲亀裂成長性、静的空気圧低下率については、性能が向上し、エアーインの数は同等であった。一方、転がり抵抗については、性能が低下した。
【0184】
比較例40は、SIBS55質量%およびポリイソブチレン45質量%を含むSIBS層ならびに、SIS層およびSIB層を有する3層構造のポリマーシートおよび該ポリマーシートをインナーライナー部に適用した空気入りタイヤである。該比較例は、比較例1に比べて接着力、耐屈曲亀裂成長性、静的空気圧低下率については、性能が向上し、エアーインの数は同等であった。一方、転がり抵抗については、性能が低下した。
【0185】
比較例41は、SIBS55質量%およびポリイソブチレン45質量%を含むSIBS層、SIS55質量%およびポリイソブチレン45質量%を含むSIS層ならびにSIB55質量%およびポリイソブチレン45質量%を含むSIB層を有する3層構造のポリマーシートおよび該ポリマーシートをインナーライナー部に適用した空気入りタイヤである。該比較例は、比較例1に比べて接着力、耐屈曲亀裂成長性、静的空気圧低下率については、性能が向上し、エアーインの数は同等であった。一方、転がり抵抗については、性能が低下した。
【0186】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0187】
1 空気入りタイヤ、2 トレッド部、3 サイドウォール部、4 ビード部、5 ビードコア、6 カーカス、7 ベルト層、8 ビードエーペックス、9 インナーライナー、10a,10b,10c,10d,10e インナーライナー用ポリマーシート、11a,11b、11c、11d、11e SIBS層、12b、12d、12e SIS層、13c,13d,13e SIB層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体を含むSIBS層を有し、
前記SIBS層の厚さが0.05mm以上0.6mm以下であり、
前記SIBS層が、炭素数4のモノマー単位を重合して得られる重合体を0.5質量%以上40質量%以下含む、インナーライナー用ポリマーシート。
【請求項2】
スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体を含むSIBS層、ならびにスチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体を含むSIS層およびスチレン−イソブチレンジブロック共重合体を含むSIB層の少なくともいずれかを有し、
前記SIBS層の厚さが0.05mm以上0.6mm以下であり、
前記SIS層および前記SIB層の厚さが合計で0.01mm以上0.3mm以下であり、
前記SIBS層、前記SIS層および前記SIB層の少なくともいずれかが、炭素数4のモノマー単位を重合して得られる重合体を0.5質量%以上40質量%以下含む、インナーライナー用ポリマーシート。
【請求項3】
前記炭素数4のモノマー単位を重合して得られる重合体が、ポリブテンおよびポリイソブチレンの少なくともいずれかからなる、請求項1または2に記載のインナーライナー用ポリマーシート。
【請求項4】
前記炭素数4のモノマー単位を重合して得られる重合体が、数平均分子量300以上3,000以下、重量平均分子量700以上100,000以下、および粘度平均分子量20,000以上70,000以下の少なくともいずれかを満たす、請求項1〜3のいずれかに記載のインナーライナー用ポリマーシート。
【請求項5】
前記スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体は重量平均分子量が5万以上40万以下であり、かつスチレン単位含有量が10質量%以上30質量%以下である、請求項1〜4のいずれかに記載のインナーライナー用ポリマーシート。
【請求項6】
前記スチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体は重量平均分子量が10万以上29万以下であり、かつスチレン単位含有量が10質量%以上30質量%以下である、請求項2〜5のいずれかに記載のインナーライナー用ポリマーシート。
【請求項7】
前記スチレン−イソブチレンジブロック共重合体は直鎖状であり、重量平均分子量が4万以上12万以下であり、かつスチレン単位含有量が10質量%以上35質量%以下である、請求項2〜6のいずれかに記載のインナーライナー用ポリマーシート。
【請求項8】
請求項1に記載のインナーライナー用ポリマーシートをインナーライナー部に適用した空気入りタイヤ。
【請求項9】
請求項2〜7のいずれかに記載のインナーライナー用ポリマーシートをインナーライナー部に適用した空気入りタイヤ。
【請求項10】
前記SIBS層が、空気入りタイヤの半径方向の最も内側に配置される、請求項9に記載の空気入りタイヤ。
【請求項11】
前記炭素数4のモノマーユニットを重合して得られる重合体を含むSIS層または前記炭素数4のモノマーユニットを重合して得られる重合体を含むSIB層が、空気入りタイヤのカーカス層に接して配置される、請求項9または10に記載の空気入りタイヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−31362(P2012−31362A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−230367(P2010−230367)
【出願日】平成22年10月13日(2010.10.13)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】