インナー・ウェア
【課題】 従来のシンカーを利用して形成するパイル編とは異なって、編組織と糸使いとの特殊な組合せによりパイルを形成したインナー・ウェアを提供する。
【解決手段】 緯編で編まれたインナー・ウェアであって、ポリウレタン糸を芯糸とするカバードヤーンYbおよび綿糸Yaを含んで編成されており、無張力状態ではインナー・ウェアの内面側において綿糸がパイルを形成しているパイル領域Aがあり、パイル領域においてはカバードヤーンまたはカバードヤーンと捲縮加工糸とを組合せた糸が半分以上のコースにおいて使用されており、綿糸単独または綿糸とカバードヤーンとを組合せた糸が半分以下のコースにおいて使用されており、綿糸単独または綿糸とカバードヤーンとを組合せた糸によりコース方向において連続して2〜8ウェール分浮き編が行われている。
【解決手段】 緯編で編まれたインナー・ウェアであって、ポリウレタン糸を芯糸とするカバードヤーンYbおよび綿糸Yaを含んで編成されており、無張力状態ではインナー・ウェアの内面側において綿糸がパイルを形成しているパイル領域Aがあり、パイル領域においてはカバードヤーンまたはカバードヤーンと捲縮加工糸とを組合せた糸が半分以上のコースにおいて使用されており、綿糸単独または綿糸とカバードヤーンとを組合せた糸が半分以下のコースにおいて使用されており、綿糸単独または綿糸とカバードヤーンとを組合せた糸によりコース方向において連続して2〜8ウェール分浮き編が行われている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインナー・ウェアに関するものである。本発明におけるインナー・ウェアは身体にフィットさせた状態で着用するものであり、例えば、パンツ部を有するインナー(ガードル、スパッツ、タイツ、パンティストッキング等)、上衣用インナー(タンクトップ、肌着、スリップ、チューブ・トップ、オール・イン・ワン等)、サポータ、腹巻、靴下(ソックス、ハイソックス、オーバーニー等)である。
【背景技術】
【0002】
インナー・ウェアは肌に直接つけて衛生を保つ、体形を整える、表着との間に着て滑りをよくする、保温する等の機能の何れかを有するものであるが、最近では身体にフィットさせた状態で着用するインナー・ウェアが多用されている。このような身体にフィットさせた状態で着用するインナー・ウェアには、伸縮性の大きい編地が少なくともフィットさせたい部分に使用されている。
【0003】
身体にフィットさせた状態で着用するインナー・ウェアでは、着圧を変化させることにより血液の還流を促したり、フィットさせた部位にマッサージ効果、リラックス効果等をもたらすことが従来から提案されている。
【0004】
また、特許文献1には、ガードルに包まれた体の部位(臀部、尻および腿を包む領域)が平メッシュの編み面に対して浮き上がった波形を有するタックステッチメッシュによって形成されているタイツ用ガードルが提案されている。このガードルは、着用中の骨盤の運動により、隆起した波形領域が皮膚に対して摩擦を生じ、これによりマッサージ効果、爽快効果やリラックス効果を生じさせるものである。
【0005】
前記特許文献1の発明を改良したものとして、特許文献2には、タック編による波形隆起部を複数本づつ群として、タック編部群とタック編部群との間に平編地を配設することが提案されている。タック編部群の間に平編地を介在させることによりマッサージ効果、爽快効果やリラックス効果をより高めようとするものである。
【0006】
特許文献3には、インナー・ウェアの内面に突出する菱形の畝を出す形成したものが開示されており、この菱形の突起によってマッサージ効果を発揮することが開示されている。
【0007】
前述したような特許文献1〜3に示したものにおいては、体にフィットさせたものとするために、編糸は主としてスパンデックスなどポリウレタンを芯としたカバードヤーンがその大部分を占めているものである。このため汗をかいた場合などは、そのインナー・ウェアは吸汗性が余りないものである。
【0008】
特許文献4には、吸汗性のある素材をバストアンダーに縫着することが開示されている。特許文献5には、吸湿性に優れた布地素材を背中や脇下部分に縫着して二重とすることが開示されている。また、特許文献6にも同様に発汗量の多い領域に吸湿性繊維パッドを取付けることが開示されている。
【0009】
これら特許文献4〜6に示されているようなものは吸汗性のある生地を縫着するなどしているので、その吸汗性を有する布地を縫着した部分は吸汗性に優れているものであるが、体にフィットするような構成とはなっていない。また、このようなものは肌着本体とは別の吸水性や吸汗性に優れた布地を縫着するために製造にも手間暇の掛かるという欠点がある。特許文献4〜6に開示されている肌着はマッサージ効果を有するものではない。
【0010】
一方、最近では姿勢の悪い人が目立つようになっている。姿勢が悪いのは背筋力の衰えなどもあるが、姿勢に対して注意しない若い人などにも多く見られる。このように姿勢が悪く背中が丸まった状態であると、胸も縮まり、バストも垂下した状態となってしまい、見た目も悪くなってしまう。姿勢の悪さをインナー・ウェアによって正しくしようというものが提案されている。例えば、特許文献7には、体に密着するシャツ本体に伸縮性の低い帯状の布を縫い付け、この帯状の布が胸部から背中に延びるようにしている。これにより脊柱の動きを疎外せずに息をすることができるような衣類が提案されている。
【0011】
しかし、特許文献7に示したような衣類においては、外力に対して伸縮し難く、伸ばした場合に強い反発力(縮む力)を生じるような伸縮性が低い帯状の布が胸部に複数本縫い付けられ、また背中部もこのような帯状布が縫い付けられているので、製造するのに手間が掛かり高価なものになってしまう。しかも、このような衣類を着用した際に、着用者の体型と帯状布の位置が適切に合えばよいが、人の体型、特に胸の位置などは様々であるため、必ずしも一致するものではなく、かえって邪魔になり着心地が悪いという問題がある。
【0012】
【特許文献1】特開平11−152607号公報
【特許文献2】特開2001−336001号公報
【特許文献3】特許第3415617号公報
【特許文献4】登録実用新案第3023674号公報
【特許文献5】特開2003−278003号公報
【特許文献6】特開2001−040504号公報
【特許文献7】特開2002−302810号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は前述したような従来のインナー・ウェアにおける問題を解決し、吸汗性に優れたインナー・ウェアを提供することを目的とするものである。また、本発明においては、吸汗性が優れているとともにマッサージ効果を有するインナー・ウェアを提供することを目的とするものである。更に、本発明は姿勢の悪さをカバーするようなインナー・ウェアを提供することを目的とするものである。
【0014】
また、本発明は、従来のシンカーを利用して形成するパイル編とは異なって、編組織と糸使いとの特殊な組合せによりパイルを形成したインナー・ウェアを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、緯編で編まれたインナー・ウェアであって、ポリウレタン糸を芯糸とするカバードヤーンおよび綿糸を含んで編成されており、無張力状態ではインナー・ウェアの内面側において前記綿糸がパイルを形成しているパイル領域があり、該パイル領域においてはカバードヤーンまたはカバードヤーンと捲縮加工糸とを組合せた糸が半分以上のコースにおいて使用されており、綿糸単独または綿糸とカバードヤーンとを組合せた糸が半分以下のコースにおいて使用されており、前記綿糸単独または綿糸とカバードヤーンとを組合せた糸によりコース方向において連続して2〜8ウェール分浮き編が行われていることを特徴とするインナー・ウェアにより上記目的を達成する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によればインナー・ウェアの内面に綿糸によるパイルが形成されているパイル部分があり、このパイルが綿糸であるため吸汗性に優れている。
【0017】
通常のパイル編ではシンカーにパイル糸を引掛けてパイルを形成しているものであるが、本発明においては、このようなシンカーによってパイルを形成するのではなく、芯糸にポリウレタン糸を使用したカバードヤーンを使うことにより、熱によりポリウレタン糸が収縮するという性質を利用して、綿糸によるパイルを形成したものである。従って、本発明によればパイルの大きさ(長さ)は、従来のようにシンカーを変えることによって大きさを変更させたりするのではなく、コース方向に連続して行う浮き編の数を変更することによってパイルの長さ(大きさ)を変更することができる。また従来のプレーティングパイル編では編地の表にパイル糸とグランド糸が斑に現れるが、本発明によれば斑がなくパイルを形成することが可能となるものである。
【0018】
本発明のインナー・ウェアは体にフィットするようにカバリングヤーンを使用しているものであり、またマッサージが必要な部分にはインナー・ウェアの内面に突出した凸部が多数形成されていることによりマッサージ効果を有するものである。
【0019】
また、本発明によれば背中部分にX字状部があり、この部分は本発明によりパイル領域としたものである。このパイル領域の編地を縦方向よりも横方向の伸縮性を小さいものとすることにより、このX字状部によって猫背になることを防止し、姿勢を正すことが可能となる。本発明のインナー・ウェアは、背筋をすっきりと伸ばすことを補助する役目を果すことができる。
【0020】
更に、このような横方向の伸縮性が小さなパイル領域を乳房の周囲を囲むように配置するとともに、乳房部を締め付け力の弱い編地で編成することにより、本発明のインナー・ウェアを着用した者の乳房を押さえ付けることなく、乳房を包み込み、伸縮性が小さな周縁の編地により乳房の移動を防止し、乳房が揺れたりすることを防ぎ、安定感を与えることができる。
【0021】
この横方向の伸縮性が小さい編地は、平編目がウェール方向に連続して編成される連続平編目ウェールと浮き編目がウェール方向に編成される浮き編目ウェールとからなり、浮き編目ウェールが2〜8本、好ましくは3〜5本、更に好ましくは4本連続して配置され次に連続平編目ウェールが1〜5本、好ましくは1〜3本、更に好ましくは1本配置される繰返しであり、且つ浮き編目ウェールにおける浮き編の開始位置がコース方向において揃っており、該編地がリブ編風の外観を呈していることが好ましい。
【0022】
更に、本発明によれば、インナー・ウェアの内側に突出する凸部を腹部や肩甲骨部および後身頃の下部に設けており、この内側に突出する凸部によりマッサージ作用が発揮され、血行の促進が促される。このように本発明のインナー・ウェアによれば、腹部の血行をよくし且つ腹部を引締める効果があり、更に正しい姿勢を保つことを補助するので、本発明のインナー・ウェアを着用することによりスタイルがよく見える。
【0023】
また、本発明のインナー・ウェアは、緯編で形成されており、しかもシングル針床の丸編機で編成できるので、生産性がよい。従って、本発明のインナー・ウェアは従来の補整用下着や特許文献7の衣類などに比べて安価なものとすることができる。本発明のインナー・ウェアはまた、締付けが適度なものとなるので窮屈でなく、着用感のよいインナー・ウェアである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を図面に基いて説明する。本発明のインナー・ウェアは、緯編で編成するものであり、特に、シングル針床の丸編機にて効率よく編成されるものである。
【0025】
本発明のインナー・ウェアの編成に使用する糸は伸縮性が比較的大きな糸がよい。糸使いはカバードヤーン(例えば、ポリウレタン糸を芯糸として、これにナイロン糸をカバリングしたもの)、ウーリーナイロン糸、カバードヤーンとウーリーナイロン糸とを組合わせたもの、その他の伸縮性を有する糸、および綿糸または綿糸とカバードヤーンとを組合わせたものを使用して編成するものである。従って、本発明におけるインナー・ウェアは、通常の綿素材だけで編成されている肌着などに比較して伸縮性の大きいものである。
【0026】
図1は本発明のインナー・ウェアの一実施例を示す正面図であり、図2は図1に示したインナー・ウェアの背中部を示す背面図である。この図示した実施例においては、裾部1を除いて同じ編組織の部分は同じような線(縦線や斜線)や白地で示している。裾部1は袋編で編成されている。図1および図2に示した実施例においては、衿ぐりはテープ2により縁取られており、また袖ぐりもテープ3により縁取られている。これらのテープ2、3はその長手方向に伸縮性を有するものを使用する。
【0027】
図1および図2に示したインナー・ウェアにおいて縦線を施した領域Aはパイル領域であり、斜線を施した領域Bはマッサージ領域であり、白地で示した部分Cは締め付け力の弱い編組織で編成された領域である。
【0028】
図1に示したように、前身頃においてパイル領域Aは乳房部11を除いて肩12からウエスト部分13まで広がっているものである。マッサージ部Bは前身頃においては腹部14の箇所がマッサージ部Bとなっている。また図2に示すように、後身頃においては右肩12Rから左脇下15Lにかけておよび左肩12Lから右脇下15RにかけてX字状にパイル領域Aが広がっている。また腰部16および肩甲骨部17がマッサージ領域Bとなっている。
【0029】
乳房部11の周縁のパイル領域Aおよび背中のX字状部19におけるパイル領域Aの編地は、縦方向(編地におけるウェール方向W)よりも横方向(編地におけるコース方向C)の伸縮性が小さいものが好ましい。伸縮性が小さいと、乳房の揺れを防止したり、背筋を伸ばすような方向に編地の張力が働き、猫背になることを防止し、すっきりと背筋を伸ばすことができる。なお、前身頃のパイル領域Aの編組織と後身頃のパイル領域Aの編組織とは必ずしも同じものでなくてもよい。
【0030】
図3はパイル領域Aを編成するための編組織の一例を記号により表示したものである。図3において、×印は平編の編目を表わし、−の印は浮き編を示している。なお、浮き編は編目を保持した編針が編成中にウエルト位置(不作動位置)をとり、編目を保持した編針に糸が新たに給糸されない状態とすることにより形成されるものである。すなわち、浮き編が連続して行われている箇所では編目が連続して作られずに、同じコースにおいて次の編目が作られるところまで糸が真直ぐに飛んでいる状態となる。
【0031】
例えば、給糸口が8箇所ある編機を使用して図3に示したように編地を編成する場合、例えば、1番目の給糸口の箇所においては1Fで示したコースが糸Y1(図4参照)により編まれ、コース1Fにおいては4回連続して浮き編が行われ、次に1回(1針分)平編が行われることが繰返されている。そして、次のコースである2番目の給糸口の箇所において編成されるコース2Fにおいて、糸Y2(図4参照)により全ての編針で平編目が形成される。次の3番目の給糸口の箇所において編成されるコース3Fにおいては、1Fで示したコースの編目(編針)と同じウェールに位置する編目(編針)においては同じく浮き編が糸Y3により行われている。すなわち、4回連続して浮き編が行われ、次に平編が行なわれることが繰返されている。そして、4番目の給糸口の給糸口の箇所において編成されるコース4Fコースにおいては、糸Y4により再び全ての編目が平編で編まれる。コース5Fにおいては、1Fおよび3Fで示したコースの編目(編針)と同じウェールに位置する編目(編針)においては同じく浮き編が糸Y5により行われている。コース6Fにおいて、糸Y6により全ての編針で平編目が形成される。コース7Fにおいては、1F、3Fおよび5Fで示したコースの編目(編針)と同じウェールに位置する編目(編針)においては同じく浮き編が糸Y7により行われている。コース8Fにおいて、糸Y8により全ての編針で平編目が形成される。このように、浮き編を行った同じウェールにおいてY1、Y3、Y5およびY7が全て同じように浮き編とされている。そして、このような編組織が繰返されている。
【0032】
図4は図3に示した編組織を編目で表した編組織図である。図4に示すように、ウェール方向Wに連続して平編目が編成されているウェール11w(以下、連続平編目ウェールと言う)と浮き編120の保持ループ121による編目がウェール方向Wに連続的に編成されている浮き編目ウェール12wとから編地が構成されている。この編地はコース方向Cにおいて、連続平編目ウェール11wに続いて浮き編目ウェール12wが4本形成され、再び連続平編目ウェール11wが1本編成され、そして再び浮き編目ウェール12wが4本編成され、この繰返しとなっている。浮き編目ウェール12wにおいては、浮き編120が連続して編成されており、これらの浮き編の開始点はどのウェールにおいても同じ位置から開始されている。
【0033】
図4に示した実施例では、浮き編120は保持ループ121となる編目を保持した編針が、編成中ウエルト位置(不作動位置)に保たれており、編成動作を行わず、その間に供給する糸は編目を形成せずウエルトループ122となり、このウエルトループ122は保持ループ121の裏側に飛んで浮いている状態となる。図4に示した実施例では、浮き編120においては1コース分だけがウエルトループ122として編成が行われ、次の2コース目で保持ループ121を保持した編針が編成動作を行い、保持ループ121が編目を形成している。コース方向Cにおいて4ウェール分のウエルトループ122が保持ループ121の裏側に浮いた状態となっており、5ウェール毎に連続平編目ウェール11wが編成されている。
【0034】
連続平編目ウェール11wの間の浮き編目ウェール12wにおいては、前述したように、浮き編120におけるウエルトループ122が浮いた状態で保持ループ121による編目の裏側に飛んでおり、編地の裏側においてはウエルトループ122が連続平編目ウェール11wよりも裏側に浮き上がった状態となっている。編地の表側では、浮き編120の保持ループ121による編目はウエルトループ122の上に浮いて編まれた編目であるので、連続平編目ウェール11wの平編目よりも浮き上がった状態となっている。
【0035】
本発明で特徴とするのは、編組織と糸使いとを組合せたことによりインナー・ウェアの内側においてパイルを形成したものである。すなわち、パイル領域においてはポリウレタン糸を芯糸とするカバードヤーンまたはこのカバードヤーンと捲縮加工糸とを組合せた糸を半分以上のコースにおいて使用し、綿糸単独または綿糸とポリウレタン糸を芯糸とするカバードヤーンとを組合せた糸を半分以下のコースにおいて使用し、綿糸単独または綿糸とカバードヤーンとを組合せた糸によりコース方向において連続して2〜8ウェール分浮き編を行う。このようにすると編成後に仕上げセット(熱セット)が行われると、ポリウレタン糸は収縮するが、綿糸は収縮しないので、コース方向に連続した浮き編における綿糸は長さが余った状態となり、パイルを形成する。好ましくは、綿糸によるコース方向に連続した浮き編と同じウェールにおいてポリウレタン糸を芯糸とするカバードヤーンにより同様にコース方向に連続した浮き編を形成する。この場合、綿糸とカバードヤーンとを組合せた糸として両者一緒に連続浮き編を形成してもよいし、綿糸とカバードヤーンとが別々のコースにおいて連続浮き編を形成してもよい。 図3および図4に示した編組織を使用して、8口給糸の丸編機で編成する場合の糸使いの一実施例を説明する。第1給糸口から給糸される糸Y1は20/40のSCY(シングルカバードヤーン)と60番綿糸との組合せであり、両糸が同じ編針に給糸されて両糸が同時に編まれる。糸Y2は40/40SCYと30/10ウーリーナイロンとの組合せであり、第2給糸口から同時に給糸される。糸Y3は第3給糸口から給糸され、糸Y1と同じ糸使いであり、20/40SCYと60番綿糸とを組合せたものである。糸Y4は第4給糸口から給糸され、20/40SCYと30/10ウーリーナイロン糸とを組合せたものである。糸Y5は第5給糸口から給糸され、20/40SCYと60番綿糸とを組合せたものであり、糸Y1と同じ糸使いである。糸Y6は第6給糸口から給糸され、40/40SCYと30/10ウーリーナイロン糸とを組合せて使用したものであり、糸Y2と同じ構成である。糸Y7は第7給糸口から給糸され、20/40SCYである。糸Y8は第8給糸口から給糸され、20/40SCYと30/10ウーリーナイロンとを組合せたものであり、糸Y4と同じ構成である。
【0036】
図4に示すように、糸Y1、Y3、Y5およびY7においてウエルトループ122が4ウェール分連続して飛んだ状態となっており、糸Y1、Y3、Y5は綿糸とSCYとの組合せからなるものである。
【0037】
図5はパイル領域Aにおける編地を断面した状態を模式的に示した説明図である。このような編組織で編成した後に熱セットを行うと、SCYの芯糸であるポリウレタン糸が熱収縮して縮まる。このため図5に示すように、浮き編のウエルトループ122のうちカバードヤーンYbの部分は熱収縮するが、綿糸Yaは縮まないので、その分が余って図5(a)に示すような捩じれたようなパイル、或いは図5(b)に示すように、単に膨らんだパイルとなってインナー・ウェアの内側に形成される。
【0038】
また図5においてYcで示した糸は伸縮性を有する糸で、図3および図4においてコース方向に全て平編とした部分の糸を模式的に示したものである。すなわち、インナー・ウェアの表側となる部分は浮き編目の平編目部分120が表側に現れるので、表側は全て平編目が形成されていることになる。この糸Ycは図5に関して言えば、4本分の浮き編目ウェール12wの編目が膨らんだ状態、すなわち、インナー・ウェアの外側に突出した状態で膨らみ、この膨らみはウェール方向に延びている。そしてこの膨らみと膨らみの間に連続平編目ウェール11wで形成された凹部が形成される。このような状態であるので、図3、図4に示した編地によればインナー・ウェアの表側においては、このパイル領域Aはウェール方向に延びる凹部と凸部が並列して設けられたリブ風編地となっているものである。このリブ風編地は裏側(インナー・ウェアの内側)に浮き編120のウエルトループのうち綿糸Yaがパイルとなっているので、吸汗性がよく、肌触りがソフトである。
【0039】
図3および図4に示した編組織で且つ前述した糸使いとすると、1コース置きに形成された連続浮き編にポリウレタン糸を芯糸とするカバードヤーンが全て使用されているので、このパイル領域Aにおける編地は、縦方向に対するよりも身頃の横方向に対する伸縮性が小さいものである(すなわち、この編地はウェール方向Wよりもコース方向Cの伸縮性が小さいものである)。
【0040】
図3、図4に示した実施例では、浮き編目ウェール12wが4本連続した後、連続平編目ウェール11wが1本編成される構成となっているが、この浮き編目ウェール12wは2〜8本連続して配置してもよい。この場合、コース方向に浮き編が連続している数が多い方がパイルの長さ(大きさ)が長く(大きく)なる。浮き編目ウェール12wに続く連続平編目ウェール11wは1本に限られず2〜5本でもよい。連続平編目ウェール11wが多過ぎると横方向(ウェール方向C)の延びが大きくなる傾向があるので、連続平編目ウェール11wの本数は1〜5本程度とすることが好ましい。また、図3、図4に示した実施例では、コース方向の連続浮き編を1コース置きに配置したが、これに限定されず、ウェール方向に1〜5コース連続したものとしてもよいし、或はウェール方向に2〜4コース、更に好ましくは2〜3コース置きに配置してもよい。
【0041】
マッサージ領域Bはインナー・ウェアの内側に突出した凸部を多数形成した領域であり、その編組織の一実施例を図6に示している。
【0042】
図6に示した編組織は、腹部14、腰部16、肩甲骨部17において適用される編組織の一例を示すものである。この編組織においては、インナー・ウェアの内側に突出する非連続状態の隆起部が形成されるものである。図6に示した実施例においては、浮き編が行われるウェールと、平編目のみが形成されるウェールの比率は1:2となっている。図6に示した編組織図において、浮き編が行われている箇所がインナー・ウェアの内側に向かって突出した隆起部となる箇所である。この実施例においては、一番長い浮き編はウェール方向Wにおいてウエルトループが16個形成された16飛びの浮き編であり、そこを中心に左右に浮き編の開始点および終了点が2つずつずらされた浮き編が3ウェール毎に形成されている。すなわち16飛びの浮き編を中心として、その左右に12飛びの浮き編、8飛びの浮き編、4飛びの浮き編が順次形成されており、これら一群の浮き編により1つの隆起部が形成される。このような一群の浮き編が上下左右に広がって配置されており、多数の隆起部が形成されるものである。図6においては、下側の浮き編との間には6つの平編目が形成されており、左右の隆起部となる浮き編と浮き編の間には11本のウェールにおいて連続して平編目となっている。
【0043】
なお、隆起部を形成するためには、この編組織に限定されるものではない。また、非連続状の隆起部だけではなく、隆起部が連続している畝状のものとしてもマッサージ効果があればよい。
【0044】
図7は乳房部11のところを編むための締め付け度が弱い編組織の一実施例を示す編組織図である。この編組織において糸Y1、Y3およびY5における綿糸YaとカバードヤーンYbが図に示すようにコース方向において異なった編方を行うものである。すなわち、糸Y1、Y3およびY5を編成する各コースにおいて、両方の糸Ya、Ybにより連続して2つ平編目が形成され、続いてカバードヤーンYbのみにより平編目が2つ形成され、その間は綿糸Yaは浮き編と同じように編針には掛けられない状態とする。これは、糸Yaおよび糸Ybが同じ給糸口で給糸されても、糸Yaと糸Ybの給糸位置が少しずれているので、この間に編針の上下動をコントロールすることによって行える。そしてこの編方の繰返しが行われる。糸Y1、Y5と糸Y3は同じような動きであるが、2針分ずつずれている。糸Y2、Y4、Y6、Y7およびY8は全て平編で編成されている。全体として、この図7に示した編組織はインナー・ウェアの外側からは平編と同様なものであり、インナー・ウェアの内側には浮き編状態とした綿糸Yaが形成されている。このように殆ど平編目と同じ状態としているので締め付け力が弱く、乳房を押し潰したりすることがない。また、乳房部11の周囲の編組織を図3、図4に示したリブ編風のパイル領域Aとすると、ウェール方向においてパイル領域Aにおける平編の編目の数が図7に示した編組織における平編の編目の数よりも少なく且つコース方向においてもパイル領域Aの編地はリブ編風に凹凸を形成して長さが短くなっているので、図1に示すように、乳房部11はパイル領域Aとの境付近の周縁にひだ11aが形成され、乳房部11は全体として立体的になる。なお、乳房部11のところを編むための編組織は締め付け力が弱いものであればよく、図7の編組織に限られない。
【0045】
図8は本発明の第2実施例の正面図である。図9は図8に示した実施例の背面図である。図8および図9に示した第2実施例が図1、2に示した第1実施例と異なっている点は丈を長くしたことである。そして、ウエスト部分13より下の前身頃側の側部の箇所および後身頃側の側部の箇所に連続するような逆Uの字形のパイル領域Aを設けていることである。この逆Uの字形の部分18を設けて、この箇所の編組織を横方向に広がり難いもの(例えば図4に示した組織)とすることにより、身体の側部を適度の緊張力で締め付けることができる。その他の部分については第1実施例と同様のものである。
【0046】
前述した2つの実施例では袖なしのキャミソールで説明したが、本発明のインナー・ウェアは、このキャミソールタイプに限られず袖のついたインナー・ウェアであってよい。
【0047】
図10はパンツ部を有するインナー・ウェアに本発明を適用した場合の実施例を示すものである。図10はその正面図であり、図11はその背面図である。図10および図11に示すように、パイル領域Aはヒップ部21を除いた後身頃のヒップ周縁部22および前身頃においては脇から腹部上部23にかけてパイル部Aが形成されている。腹部中央部24は斜めの畝がインナー・ウェアの内側に形成された部分でマッサージ領域Bである。脚部25も別の編組織のマッサージ領域Bである。ヒップ部21は締め付け力の弱い編組織による領域Cである。裾部1とパンツのウエスト部4は袋編である。
【0048】
パイル領域Aは先に説明した実施例のものと同様であり、また脚部25におけるマッサージ部も先に説明したものと同様の編組織である。腹部中央部24におけるマッサージ領域Bの編組織を図12に示している。
【0049】
図12に示した編地は、図10の腹部中央部24を編成するための編組織図の一実施例を示すものである。この図12に示した編組織図においては、ウェール方向に12飛んだ浮き編が開始点を左上りまたは右上りに2つずつずらしながら編成される。このウェール方向の浮き編と浮き編との間に平編目のみのウェールが2本、3本の繰返しで配置されている。このように開始点が2つずつずれるという繰返しによりV字形の畝がインナー・ウェアの内部に突出した状態のものを編成することができる。このV字形畝の編組織も、図12に示したものに限定されず、適宜変化させることができる。
【0050】
またヒップ部21における編組織は図7に示したような編組織としてもよいし、全てが平編目である編組織としてもよく、締め付け力が弱くヒップ部を潰さないような編組織であれば特に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明のインナー・ウェアの一実施例を示す正面図である。
【図2】図1に示した実施例のインナー・ウェアの背面図である。
【図3】パイル領域における編み方の一例を記号で表した編組織図である。
【図4】図3の編組織を編目で表わした編組織図である。
【図5】パイル領域の編地の断面を模式的に表した説明図であり、図4(a)はパイルが大きい場合の例を示し、図4(b)はパイルが小さい場合の例を示している。
【図6】マッサージ領域における編み方の一例を編目で表わした編組織図である。
【図7】締め付け力の弱い領域における編み方の一例を編目で表わした編組織図である。
【図8】本発明のインナー・ウェアの別の実施例を示す正面図である。
【図9】図8に示した実施例のインナー・ウェアの背面図である。
【図10】本発明のパンツ部を有するインナー・ウェアの一実施例を示す正面図である。
【図11】図10に示した実施例のインナー・ウェアの背面図である。
【図12】図10に示した実施例の腹部中央部の編み方の一例を編目で表わした編組織図である。
【符号の説明】
【0052】
A パイル領域
B マッサージ領域
C 締め付け力の弱い領域
Ya 綿糸
Yb カバードヤーン
Yc 伸縮性を有する糸
Y1〜Y8 糸
11w 連続平編目ウェール
12w 浮き編目ウェール
【技術分野】
【0001】
本発明はインナー・ウェアに関するものである。本発明におけるインナー・ウェアは身体にフィットさせた状態で着用するものであり、例えば、パンツ部を有するインナー(ガードル、スパッツ、タイツ、パンティストッキング等)、上衣用インナー(タンクトップ、肌着、スリップ、チューブ・トップ、オール・イン・ワン等)、サポータ、腹巻、靴下(ソックス、ハイソックス、オーバーニー等)である。
【背景技術】
【0002】
インナー・ウェアは肌に直接つけて衛生を保つ、体形を整える、表着との間に着て滑りをよくする、保温する等の機能の何れかを有するものであるが、最近では身体にフィットさせた状態で着用するインナー・ウェアが多用されている。このような身体にフィットさせた状態で着用するインナー・ウェアには、伸縮性の大きい編地が少なくともフィットさせたい部分に使用されている。
【0003】
身体にフィットさせた状態で着用するインナー・ウェアでは、着圧を変化させることにより血液の還流を促したり、フィットさせた部位にマッサージ効果、リラックス効果等をもたらすことが従来から提案されている。
【0004】
また、特許文献1には、ガードルに包まれた体の部位(臀部、尻および腿を包む領域)が平メッシュの編み面に対して浮き上がった波形を有するタックステッチメッシュによって形成されているタイツ用ガードルが提案されている。このガードルは、着用中の骨盤の運動により、隆起した波形領域が皮膚に対して摩擦を生じ、これによりマッサージ効果、爽快効果やリラックス効果を生じさせるものである。
【0005】
前記特許文献1の発明を改良したものとして、特許文献2には、タック編による波形隆起部を複数本づつ群として、タック編部群とタック編部群との間に平編地を配設することが提案されている。タック編部群の間に平編地を介在させることによりマッサージ効果、爽快効果やリラックス効果をより高めようとするものである。
【0006】
特許文献3には、インナー・ウェアの内面に突出する菱形の畝を出す形成したものが開示されており、この菱形の突起によってマッサージ効果を発揮することが開示されている。
【0007】
前述したような特許文献1〜3に示したものにおいては、体にフィットさせたものとするために、編糸は主としてスパンデックスなどポリウレタンを芯としたカバードヤーンがその大部分を占めているものである。このため汗をかいた場合などは、そのインナー・ウェアは吸汗性が余りないものである。
【0008】
特許文献4には、吸汗性のある素材をバストアンダーに縫着することが開示されている。特許文献5には、吸湿性に優れた布地素材を背中や脇下部分に縫着して二重とすることが開示されている。また、特許文献6にも同様に発汗量の多い領域に吸湿性繊維パッドを取付けることが開示されている。
【0009】
これら特許文献4〜6に示されているようなものは吸汗性のある生地を縫着するなどしているので、その吸汗性を有する布地を縫着した部分は吸汗性に優れているものであるが、体にフィットするような構成とはなっていない。また、このようなものは肌着本体とは別の吸水性や吸汗性に優れた布地を縫着するために製造にも手間暇の掛かるという欠点がある。特許文献4〜6に開示されている肌着はマッサージ効果を有するものではない。
【0010】
一方、最近では姿勢の悪い人が目立つようになっている。姿勢が悪いのは背筋力の衰えなどもあるが、姿勢に対して注意しない若い人などにも多く見られる。このように姿勢が悪く背中が丸まった状態であると、胸も縮まり、バストも垂下した状態となってしまい、見た目も悪くなってしまう。姿勢の悪さをインナー・ウェアによって正しくしようというものが提案されている。例えば、特許文献7には、体に密着するシャツ本体に伸縮性の低い帯状の布を縫い付け、この帯状の布が胸部から背中に延びるようにしている。これにより脊柱の動きを疎外せずに息をすることができるような衣類が提案されている。
【0011】
しかし、特許文献7に示したような衣類においては、外力に対して伸縮し難く、伸ばした場合に強い反発力(縮む力)を生じるような伸縮性が低い帯状の布が胸部に複数本縫い付けられ、また背中部もこのような帯状布が縫い付けられているので、製造するのに手間が掛かり高価なものになってしまう。しかも、このような衣類を着用した際に、着用者の体型と帯状布の位置が適切に合えばよいが、人の体型、特に胸の位置などは様々であるため、必ずしも一致するものではなく、かえって邪魔になり着心地が悪いという問題がある。
【0012】
【特許文献1】特開平11−152607号公報
【特許文献2】特開2001−336001号公報
【特許文献3】特許第3415617号公報
【特許文献4】登録実用新案第3023674号公報
【特許文献5】特開2003−278003号公報
【特許文献6】特開2001−040504号公報
【特許文献7】特開2002−302810号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は前述したような従来のインナー・ウェアにおける問題を解決し、吸汗性に優れたインナー・ウェアを提供することを目的とするものである。また、本発明においては、吸汗性が優れているとともにマッサージ効果を有するインナー・ウェアを提供することを目的とするものである。更に、本発明は姿勢の悪さをカバーするようなインナー・ウェアを提供することを目的とするものである。
【0014】
また、本発明は、従来のシンカーを利用して形成するパイル編とは異なって、編組織と糸使いとの特殊な組合せによりパイルを形成したインナー・ウェアを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、緯編で編まれたインナー・ウェアであって、ポリウレタン糸を芯糸とするカバードヤーンおよび綿糸を含んで編成されており、無張力状態ではインナー・ウェアの内面側において前記綿糸がパイルを形成しているパイル領域があり、該パイル領域においてはカバードヤーンまたはカバードヤーンと捲縮加工糸とを組合せた糸が半分以上のコースにおいて使用されており、綿糸単独または綿糸とカバードヤーンとを組合せた糸が半分以下のコースにおいて使用されており、前記綿糸単独または綿糸とカバードヤーンとを組合せた糸によりコース方向において連続して2〜8ウェール分浮き編が行われていることを特徴とするインナー・ウェアにより上記目的を達成する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によればインナー・ウェアの内面に綿糸によるパイルが形成されているパイル部分があり、このパイルが綿糸であるため吸汗性に優れている。
【0017】
通常のパイル編ではシンカーにパイル糸を引掛けてパイルを形成しているものであるが、本発明においては、このようなシンカーによってパイルを形成するのではなく、芯糸にポリウレタン糸を使用したカバードヤーンを使うことにより、熱によりポリウレタン糸が収縮するという性質を利用して、綿糸によるパイルを形成したものである。従って、本発明によればパイルの大きさ(長さ)は、従来のようにシンカーを変えることによって大きさを変更させたりするのではなく、コース方向に連続して行う浮き編の数を変更することによってパイルの長さ(大きさ)を変更することができる。また従来のプレーティングパイル編では編地の表にパイル糸とグランド糸が斑に現れるが、本発明によれば斑がなくパイルを形成することが可能となるものである。
【0018】
本発明のインナー・ウェアは体にフィットするようにカバリングヤーンを使用しているものであり、またマッサージが必要な部分にはインナー・ウェアの内面に突出した凸部が多数形成されていることによりマッサージ効果を有するものである。
【0019】
また、本発明によれば背中部分にX字状部があり、この部分は本発明によりパイル領域としたものである。このパイル領域の編地を縦方向よりも横方向の伸縮性を小さいものとすることにより、このX字状部によって猫背になることを防止し、姿勢を正すことが可能となる。本発明のインナー・ウェアは、背筋をすっきりと伸ばすことを補助する役目を果すことができる。
【0020】
更に、このような横方向の伸縮性が小さなパイル領域を乳房の周囲を囲むように配置するとともに、乳房部を締め付け力の弱い編地で編成することにより、本発明のインナー・ウェアを着用した者の乳房を押さえ付けることなく、乳房を包み込み、伸縮性が小さな周縁の編地により乳房の移動を防止し、乳房が揺れたりすることを防ぎ、安定感を与えることができる。
【0021】
この横方向の伸縮性が小さい編地は、平編目がウェール方向に連続して編成される連続平編目ウェールと浮き編目がウェール方向に編成される浮き編目ウェールとからなり、浮き編目ウェールが2〜8本、好ましくは3〜5本、更に好ましくは4本連続して配置され次に連続平編目ウェールが1〜5本、好ましくは1〜3本、更に好ましくは1本配置される繰返しであり、且つ浮き編目ウェールにおける浮き編の開始位置がコース方向において揃っており、該編地がリブ編風の外観を呈していることが好ましい。
【0022】
更に、本発明によれば、インナー・ウェアの内側に突出する凸部を腹部や肩甲骨部および後身頃の下部に設けており、この内側に突出する凸部によりマッサージ作用が発揮され、血行の促進が促される。このように本発明のインナー・ウェアによれば、腹部の血行をよくし且つ腹部を引締める効果があり、更に正しい姿勢を保つことを補助するので、本発明のインナー・ウェアを着用することによりスタイルがよく見える。
【0023】
また、本発明のインナー・ウェアは、緯編で形成されており、しかもシングル針床の丸編機で編成できるので、生産性がよい。従って、本発明のインナー・ウェアは従来の補整用下着や特許文献7の衣類などに比べて安価なものとすることができる。本発明のインナー・ウェアはまた、締付けが適度なものとなるので窮屈でなく、着用感のよいインナー・ウェアである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を図面に基いて説明する。本発明のインナー・ウェアは、緯編で編成するものであり、特に、シングル針床の丸編機にて効率よく編成されるものである。
【0025】
本発明のインナー・ウェアの編成に使用する糸は伸縮性が比較的大きな糸がよい。糸使いはカバードヤーン(例えば、ポリウレタン糸を芯糸として、これにナイロン糸をカバリングしたもの)、ウーリーナイロン糸、カバードヤーンとウーリーナイロン糸とを組合わせたもの、その他の伸縮性を有する糸、および綿糸または綿糸とカバードヤーンとを組合わせたものを使用して編成するものである。従って、本発明におけるインナー・ウェアは、通常の綿素材だけで編成されている肌着などに比較して伸縮性の大きいものである。
【0026】
図1は本発明のインナー・ウェアの一実施例を示す正面図であり、図2は図1に示したインナー・ウェアの背中部を示す背面図である。この図示した実施例においては、裾部1を除いて同じ編組織の部分は同じような線(縦線や斜線)や白地で示している。裾部1は袋編で編成されている。図1および図2に示した実施例においては、衿ぐりはテープ2により縁取られており、また袖ぐりもテープ3により縁取られている。これらのテープ2、3はその長手方向に伸縮性を有するものを使用する。
【0027】
図1および図2に示したインナー・ウェアにおいて縦線を施した領域Aはパイル領域であり、斜線を施した領域Bはマッサージ領域であり、白地で示した部分Cは締め付け力の弱い編組織で編成された領域である。
【0028】
図1に示したように、前身頃においてパイル領域Aは乳房部11を除いて肩12からウエスト部分13まで広がっているものである。マッサージ部Bは前身頃においては腹部14の箇所がマッサージ部Bとなっている。また図2に示すように、後身頃においては右肩12Rから左脇下15Lにかけておよび左肩12Lから右脇下15RにかけてX字状にパイル領域Aが広がっている。また腰部16および肩甲骨部17がマッサージ領域Bとなっている。
【0029】
乳房部11の周縁のパイル領域Aおよび背中のX字状部19におけるパイル領域Aの編地は、縦方向(編地におけるウェール方向W)よりも横方向(編地におけるコース方向C)の伸縮性が小さいものが好ましい。伸縮性が小さいと、乳房の揺れを防止したり、背筋を伸ばすような方向に編地の張力が働き、猫背になることを防止し、すっきりと背筋を伸ばすことができる。なお、前身頃のパイル領域Aの編組織と後身頃のパイル領域Aの編組織とは必ずしも同じものでなくてもよい。
【0030】
図3はパイル領域Aを編成するための編組織の一例を記号により表示したものである。図3において、×印は平編の編目を表わし、−の印は浮き編を示している。なお、浮き編は編目を保持した編針が編成中にウエルト位置(不作動位置)をとり、編目を保持した編針に糸が新たに給糸されない状態とすることにより形成されるものである。すなわち、浮き編が連続して行われている箇所では編目が連続して作られずに、同じコースにおいて次の編目が作られるところまで糸が真直ぐに飛んでいる状態となる。
【0031】
例えば、給糸口が8箇所ある編機を使用して図3に示したように編地を編成する場合、例えば、1番目の給糸口の箇所においては1Fで示したコースが糸Y1(図4参照)により編まれ、コース1Fにおいては4回連続して浮き編が行われ、次に1回(1針分)平編が行われることが繰返されている。そして、次のコースである2番目の給糸口の箇所において編成されるコース2Fにおいて、糸Y2(図4参照)により全ての編針で平編目が形成される。次の3番目の給糸口の箇所において編成されるコース3Fにおいては、1Fで示したコースの編目(編針)と同じウェールに位置する編目(編針)においては同じく浮き編が糸Y3により行われている。すなわち、4回連続して浮き編が行われ、次に平編が行なわれることが繰返されている。そして、4番目の給糸口の給糸口の箇所において編成されるコース4Fコースにおいては、糸Y4により再び全ての編目が平編で編まれる。コース5Fにおいては、1Fおよび3Fで示したコースの編目(編針)と同じウェールに位置する編目(編針)においては同じく浮き編が糸Y5により行われている。コース6Fにおいて、糸Y6により全ての編針で平編目が形成される。コース7Fにおいては、1F、3Fおよび5Fで示したコースの編目(編針)と同じウェールに位置する編目(編針)においては同じく浮き編が糸Y7により行われている。コース8Fにおいて、糸Y8により全ての編針で平編目が形成される。このように、浮き編を行った同じウェールにおいてY1、Y3、Y5およびY7が全て同じように浮き編とされている。そして、このような編組織が繰返されている。
【0032】
図4は図3に示した編組織を編目で表した編組織図である。図4に示すように、ウェール方向Wに連続して平編目が編成されているウェール11w(以下、連続平編目ウェールと言う)と浮き編120の保持ループ121による編目がウェール方向Wに連続的に編成されている浮き編目ウェール12wとから編地が構成されている。この編地はコース方向Cにおいて、連続平編目ウェール11wに続いて浮き編目ウェール12wが4本形成され、再び連続平編目ウェール11wが1本編成され、そして再び浮き編目ウェール12wが4本編成され、この繰返しとなっている。浮き編目ウェール12wにおいては、浮き編120が連続して編成されており、これらの浮き編の開始点はどのウェールにおいても同じ位置から開始されている。
【0033】
図4に示した実施例では、浮き編120は保持ループ121となる編目を保持した編針が、編成中ウエルト位置(不作動位置)に保たれており、編成動作を行わず、その間に供給する糸は編目を形成せずウエルトループ122となり、このウエルトループ122は保持ループ121の裏側に飛んで浮いている状態となる。図4に示した実施例では、浮き編120においては1コース分だけがウエルトループ122として編成が行われ、次の2コース目で保持ループ121を保持した編針が編成動作を行い、保持ループ121が編目を形成している。コース方向Cにおいて4ウェール分のウエルトループ122が保持ループ121の裏側に浮いた状態となっており、5ウェール毎に連続平編目ウェール11wが編成されている。
【0034】
連続平編目ウェール11wの間の浮き編目ウェール12wにおいては、前述したように、浮き編120におけるウエルトループ122が浮いた状態で保持ループ121による編目の裏側に飛んでおり、編地の裏側においてはウエルトループ122が連続平編目ウェール11wよりも裏側に浮き上がった状態となっている。編地の表側では、浮き編120の保持ループ121による編目はウエルトループ122の上に浮いて編まれた編目であるので、連続平編目ウェール11wの平編目よりも浮き上がった状態となっている。
【0035】
本発明で特徴とするのは、編組織と糸使いとを組合せたことによりインナー・ウェアの内側においてパイルを形成したものである。すなわち、パイル領域においてはポリウレタン糸を芯糸とするカバードヤーンまたはこのカバードヤーンと捲縮加工糸とを組合せた糸を半分以上のコースにおいて使用し、綿糸単独または綿糸とポリウレタン糸を芯糸とするカバードヤーンとを組合せた糸を半分以下のコースにおいて使用し、綿糸単独または綿糸とカバードヤーンとを組合せた糸によりコース方向において連続して2〜8ウェール分浮き編を行う。このようにすると編成後に仕上げセット(熱セット)が行われると、ポリウレタン糸は収縮するが、綿糸は収縮しないので、コース方向に連続した浮き編における綿糸は長さが余った状態となり、パイルを形成する。好ましくは、綿糸によるコース方向に連続した浮き編と同じウェールにおいてポリウレタン糸を芯糸とするカバードヤーンにより同様にコース方向に連続した浮き編を形成する。この場合、綿糸とカバードヤーンとを組合せた糸として両者一緒に連続浮き編を形成してもよいし、綿糸とカバードヤーンとが別々のコースにおいて連続浮き編を形成してもよい。 図3および図4に示した編組織を使用して、8口給糸の丸編機で編成する場合の糸使いの一実施例を説明する。第1給糸口から給糸される糸Y1は20/40のSCY(シングルカバードヤーン)と60番綿糸との組合せであり、両糸が同じ編針に給糸されて両糸が同時に編まれる。糸Y2は40/40SCYと30/10ウーリーナイロンとの組合せであり、第2給糸口から同時に給糸される。糸Y3は第3給糸口から給糸され、糸Y1と同じ糸使いであり、20/40SCYと60番綿糸とを組合せたものである。糸Y4は第4給糸口から給糸され、20/40SCYと30/10ウーリーナイロン糸とを組合せたものである。糸Y5は第5給糸口から給糸され、20/40SCYと60番綿糸とを組合せたものであり、糸Y1と同じ糸使いである。糸Y6は第6給糸口から給糸され、40/40SCYと30/10ウーリーナイロン糸とを組合せて使用したものであり、糸Y2と同じ構成である。糸Y7は第7給糸口から給糸され、20/40SCYである。糸Y8は第8給糸口から給糸され、20/40SCYと30/10ウーリーナイロンとを組合せたものであり、糸Y4と同じ構成である。
【0036】
図4に示すように、糸Y1、Y3、Y5およびY7においてウエルトループ122が4ウェール分連続して飛んだ状態となっており、糸Y1、Y3、Y5は綿糸とSCYとの組合せからなるものである。
【0037】
図5はパイル領域Aにおける編地を断面した状態を模式的に示した説明図である。このような編組織で編成した後に熱セットを行うと、SCYの芯糸であるポリウレタン糸が熱収縮して縮まる。このため図5に示すように、浮き編のウエルトループ122のうちカバードヤーンYbの部分は熱収縮するが、綿糸Yaは縮まないので、その分が余って図5(a)に示すような捩じれたようなパイル、或いは図5(b)に示すように、単に膨らんだパイルとなってインナー・ウェアの内側に形成される。
【0038】
また図5においてYcで示した糸は伸縮性を有する糸で、図3および図4においてコース方向に全て平編とした部分の糸を模式的に示したものである。すなわち、インナー・ウェアの表側となる部分は浮き編目の平編目部分120が表側に現れるので、表側は全て平編目が形成されていることになる。この糸Ycは図5に関して言えば、4本分の浮き編目ウェール12wの編目が膨らんだ状態、すなわち、インナー・ウェアの外側に突出した状態で膨らみ、この膨らみはウェール方向に延びている。そしてこの膨らみと膨らみの間に連続平編目ウェール11wで形成された凹部が形成される。このような状態であるので、図3、図4に示した編地によればインナー・ウェアの表側においては、このパイル領域Aはウェール方向に延びる凹部と凸部が並列して設けられたリブ風編地となっているものである。このリブ風編地は裏側(インナー・ウェアの内側)に浮き編120のウエルトループのうち綿糸Yaがパイルとなっているので、吸汗性がよく、肌触りがソフトである。
【0039】
図3および図4に示した編組織で且つ前述した糸使いとすると、1コース置きに形成された連続浮き編にポリウレタン糸を芯糸とするカバードヤーンが全て使用されているので、このパイル領域Aにおける編地は、縦方向に対するよりも身頃の横方向に対する伸縮性が小さいものである(すなわち、この編地はウェール方向Wよりもコース方向Cの伸縮性が小さいものである)。
【0040】
図3、図4に示した実施例では、浮き編目ウェール12wが4本連続した後、連続平編目ウェール11wが1本編成される構成となっているが、この浮き編目ウェール12wは2〜8本連続して配置してもよい。この場合、コース方向に浮き編が連続している数が多い方がパイルの長さ(大きさ)が長く(大きく)なる。浮き編目ウェール12wに続く連続平編目ウェール11wは1本に限られず2〜5本でもよい。連続平編目ウェール11wが多過ぎると横方向(ウェール方向C)の延びが大きくなる傾向があるので、連続平編目ウェール11wの本数は1〜5本程度とすることが好ましい。また、図3、図4に示した実施例では、コース方向の連続浮き編を1コース置きに配置したが、これに限定されず、ウェール方向に1〜5コース連続したものとしてもよいし、或はウェール方向に2〜4コース、更に好ましくは2〜3コース置きに配置してもよい。
【0041】
マッサージ領域Bはインナー・ウェアの内側に突出した凸部を多数形成した領域であり、その編組織の一実施例を図6に示している。
【0042】
図6に示した編組織は、腹部14、腰部16、肩甲骨部17において適用される編組織の一例を示すものである。この編組織においては、インナー・ウェアの内側に突出する非連続状態の隆起部が形成されるものである。図6に示した実施例においては、浮き編が行われるウェールと、平編目のみが形成されるウェールの比率は1:2となっている。図6に示した編組織図において、浮き編が行われている箇所がインナー・ウェアの内側に向かって突出した隆起部となる箇所である。この実施例においては、一番長い浮き編はウェール方向Wにおいてウエルトループが16個形成された16飛びの浮き編であり、そこを中心に左右に浮き編の開始点および終了点が2つずつずらされた浮き編が3ウェール毎に形成されている。すなわち16飛びの浮き編を中心として、その左右に12飛びの浮き編、8飛びの浮き編、4飛びの浮き編が順次形成されており、これら一群の浮き編により1つの隆起部が形成される。このような一群の浮き編が上下左右に広がって配置されており、多数の隆起部が形成されるものである。図6においては、下側の浮き編との間には6つの平編目が形成されており、左右の隆起部となる浮き編と浮き編の間には11本のウェールにおいて連続して平編目となっている。
【0043】
なお、隆起部を形成するためには、この編組織に限定されるものではない。また、非連続状の隆起部だけではなく、隆起部が連続している畝状のものとしてもマッサージ効果があればよい。
【0044】
図7は乳房部11のところを編むための締め付け度が弱い編組織の一実施例を示す編組織図である。この編組織において糸Y1、Y3およびY5における綿糸YaとカバードヤーンYbが図に示すようにコース方向において異なった編方を行うものである。すなわち、糸Y1、Y3およびY5を編成する各コースにおいて、両方の糸Ya、Ybにより連続して2つ平編目が形成され、続いてカバードヤーンYbのみにより平編目が2つ形成され、その間は綿糸Yaは浮き編と同じように編針には掛けられない状態とする。これは、糸Yaおよび糸Ybが同じ給糸口で給糸されても、糸Yaと糸Ybの給糸位置が少しずれているので、この間に編針の上下動をコントロールすることによって行える。そしてこの編方の繰返しが行われる。糸Y1、Y5と糸Y3は同じような動きであるが、2針分ずつずれている。糸Y2、Y4、Y6、Y7およびY8は全て平編で編成されている。全体として、この図7に示した編組織はインナー・ウェアの外側からは平編と同様なものであり、インナー・ウェアの内側には浮き編状態とした綿糸Yaが形成されている。このように殆ど平編目と同じ状態としているので締め付け力が弱く、乳房を押し潰したりすることがない。また、乳房部11の周囲の編組織を図3、図4に示したリブ編風のパイル領域Aとすると、ウェール方向においてパイル領域Aにおける平編の編目の数が図7に示した編組織における平編の編目の数よりも少なく且つコース方向においてもパイル領域Aの編地はリブ編風に凹凸を形成して長さが短くなっているので、図1に示すように、乳房部11はパイル領域Aとの境付近の周縁にひだ11aが形成され、乳房部11は全体として立体的になる。なお、乳房部11のところを編むための編組織は締め付け力が弱いものであればよく、図7の編組織に限られない。
【0045】
図8は本発明の第2実施例の正面図である。図9は図8に示した実施例の背面図である。図8および図9に示した第2実施例が図1、2に示した第1実施例と異なっている点は丈を長くしたことである。そして、ウエスト部分13より下の前身頃側の側部の箇所および後身頃側の側部の箇所に連続するような逆Uの字形のパイル領域Aを設けていることである。この逆Uの字形の部分18を設けて、この箇所の編組織を横方向に広がり難いもの(例えば図4に示した組織)とすることにより、身体の側部を適度の緊張力で締め付けることができる。その他の部分については第1実施例と同様のものである。
【0046】
前述した2つの実施例では袖なしのキャミソールで説明したが、本発明のインナー・ウェアは、このキャミソールタイプに限られず袖のついたインナー・ウェアであってよい。
【0047】
図10はパンツ部を有するインナー・ウェアに本発明を適用した場合の実施例を示すものである。図10はその正面図であり、図11はその背面図である。図10および図11に示すように、パイル領域Aはヒップ部21を除いた後身頃のヒップ周縁部22および前身頃においては脇から腹部上部23にかけてパイル部Aが形成されている。腹部中央部24は斜めの畝がインナー・ウェアの内側に形成された部分でマッサージ領域Bである。脚部25も別の編組織のマッサージ領域Bである。ヒップ部21は締め付け力の弱い編組織による領域Cである。裾部1とパンツのウエスト部4は袋編である。
【0048】
パイル領域Aは先に説明した実施例のものと同様であり、また脚部25におけるマッサージ部も先に説明したものと同様の編組織である。腹部中央部24におけるマッサージ領域Bの編組織を図12に示している。
【0049】
図12に示した編地は、図10の腹部中央部24を編成するための編組織図の一実施例を示すものである。この図12に示した編組織図においては、ウェール方向に12飛んだ浮き編が開始点を左上りまたは右上りに2つずつずらしながら編成される。このウェール方向の浮き編と浮き編との間に平編目のみのウェールが2本、3本の繰返しで配置されている。このように開始点が2つずつずれるという繰返しによりV字形の畝がインナー・ウェアの内部に突出した状態のものを編成することができる。このV字形畝の編組織も、図12に示したものに限定されず、適宜変化させることができる。
【0050】
またヒップ部21における編組織は図7に示したような編組織としてもよいし、全てが平編目である編組織としてもよく、締め付け力が弱くヒップ部を潰さないような編組織であれば特に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明のインナー・ウェアの一実施例を示す正面図である。
【図2】図1に示した実施例のインナー・ウェアの背面図である。
【図3】パイル領域における編み方の一例を記号で表した編組織図である。
【図4】図3の編組織を編目で表わした編組織図である。
【図5】パイル領域の編地の断面を模式的に表した説明図であり、図4(a)はパイルが大きい場合の例を示し、図4(b)はパイルが小さい場合の例を示している。
【図6】マッサージ領域における編み方の一例を編目で表わした編組織図である。
【図7】締め付け力の弱い領域における編み方の一例を編目で表わした編組織図である。
【図8】本発明のインナー・ウェアの別の実施例を示す正面図である。
【図9】図8に示した実施例のインナー・ウェアの背面図である。
【図10】本発明のパンツ部を有するインナー・ウェアの一実施例を示す正面図である。
【図11】図10に示した実施例のインナー・ウェアの背面図である。
【図12】図10に示した実施例の腹部中央部の編み方の一例を編目で表わした編組織図である。
【符号の説明】
【0052】
A パイル領域
B マッサージ領域
C 締め付け力の弱い領域
Ya 綿糸
Yb カバードヤーン
Yc 伸縮性を有する糸
Y1〜Y8 糸
11w 連続平編目ウェール
12w 浮き編目ウェール
【特許請求の範囲】
【請求項1】
緯編で編まれたインナー・ウェアであって、ポリウレタン糸を芯糸とするカバードヤーンおよび綿糸を含んで編成されており、無張力状態ではインナー・ウェアの内面側において前記綿糸がパイルを形成しているパイル領域があり、該パイル領域においてはカバードヤーンまたはカバードヤーンと捲縮加工糸とを組合せた糸が半分以上のコースにおいて使用されており、綿糸単独または綿糸とカバードヤーンとを組合せた糸が半分以下のコースにおいて使用されており、前記綿糸単独または綿糸とカバードヤーンとを組合せた糸によりコース方向において連続して2〜8ウェール分浮き編が行われていることを特徴とするインナー・ウェア。
【請求項2】
前記パイル領域において、インナー・ウェアの外面側はウェール方向に延びる凹凸が並列していて、リブ編風外観を有することを特徴とする請求項1記載のインナー・ウェア。
【請求項3】
前記パイル領域において、前記綿糸単独または綿糸とカバードヤーンとを組合せた糸によるコース方向に連続した浮き編が同じウェールにおいて繰返して行われ且つウェール方向において前記浮き編と前記カバードヤーンまたはカバードヤーンと捲縮加工糸とを組合せた糸による平編とが1〜4コース置きに編成されていることを特徴とする請求項1または2記載のインナー・ウェア。
【請求項4】
パイル領域における編地は、平編目がウェール方向に連続して編成される連続平編目ウェールと浮き編目がウェール方向に編成される浮き編目ウェールとからなり、コース方向において前記浮き編目ウェールが2〜8本連続して配置され次に連続平編目ウェールが1〜5本配置される繰返しであり、前記浮き編目ウェールにおける浮き編が綿糸単独または綿糸とカバードヤーンとを組合せた糸により行われ、該編地がリブ編風の外観を呈していることを特徴とする請求項1または2に記載のインナー・ウェア。
【請求項5】
前記パイル領域が後身頃において右肩から左脇下にかけておよび左肩から右脇下にかけて延びるX字状をなしていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のインナー・ウェア。
【請求項6】
インナー・ウェアの内側に突出する凸部が多数形成されているマッサージ領域を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のインナー・ウェア。
【請求項7】
前身頃において乳房部を除いて肩からウエストまでが前記パイル領域であり、前記乳房部はほぼ全部の編目が平編であり、腹部および腰部がマッサージ領域であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のインナー・ウェア。
【請求項8】
インナー・ウェアがパンツ部を有するものであり、左右のヒップ部が締め付け力の弱い編組織に編成され、ヒップ周縁部が前記パイル領域となっていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のインナー・ウェア。
【請求項1】
緯編で編まれたインナー・ウェアであって、ポリウレタン糸を芯糸とするカバードヤーンおよび綿糸を含んで編成されており、無張力状態ではインナー・ウェアの内面側において前記綿糸がパイルを形成しているパイル領域があり、該パイル領域においてはカバードヤーンまたはカバードヤーンと捲縮加工糸とを組合せた糸が半分以上のコースにおいて使用されており、綿糸単独または綿糸とカバードヤーンとを組合せた糸が半分以下のコースにおいて使用されており、前記綿糸単独または綿糸とカバードヤーンとを組合せた糸によりコース方向において連続して2〜8ウェール分浮き編が行われていることを特徴とするインナー・ウェア。
【請求項2】
前記パイル領域において、インナー・ウェアの外面側はウェール方向に延びる凹凸が並列していて、リブ編風外観を有することを特徴とする請求項1記載のインナー・ウェア。
【請求項3】
前記パイル領域において、前記綿糸単独または綿糸とカバードヤーンとを組合せた糸によるコース方向に連続した浮き編が同じウェールにおいて繰返して行われ且つウェール方向において前記浮き編と前記カバードヤーンまたはカバードヤーンと捲縮加工糸とを組合せた糸による平編とが1〜4コース置きに編成されていることを特徴とする請求項1または2記載のインナー・ウェア。
【請求項4】
パイル領域における編地は、平編目がウェール方向に連続して編成される連続平編目ウェールと浮き編目がウェール方向に編成される浮き編目ウェールとからなり、コース方向において前記浮き編目ウェールが2〜8本連続して配置され次に連続平編目ウェールが1〜5本配置される繰返しであり、前記浮き編目ウェールにおける浮き編が綿糸単独または綿糸とカバードヤーンとを組合せた糸により行われ、該編地がリブ編風の外観を呈していることを特徴とする請求項1または2に記載のインナー・ウェア。
【請求項5】
前記パイル領域が後身頃において右肩から左脇下にかけておよび左肩から右脇下にかけて延びるX字状をなしていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のインナー・ウェア。
【請求項6】
インナー・ウェアの内側に突出する凸部が多数形成されているマッサージ領域を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のインナー・ウェア。
【請求項7】
前身頃において乳房部を除いて肩からウエストまでが前記パイル領域であり、前記乳房部はほぼ全部の編目が平編であり、腹部および腰部がマッサージ領域であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のインナー・ウェア。
【請求項8】
インナー・ウェアがパンツ部を有するものであり、左右のヒップ部が締め付け力の弱い編組織に編成され、ヒップ周縁部が前記パイル領域となっていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のインナー・ウェア。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−70399(P2006−70399A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−256819(P2004−256819)
【出願日】平成16年9月3日(2004.9.3)
【出願人】(000000952)カネボウ株式会社 (120)
【出願人】(598076878)カネボウストッキング株式会社 (2)
【出願人】(000112299)ピップフジモト株式会社 (46)
【出願人】(597036983)パスミ繊維工業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月3日(2004.9.3)
【出願人】(000000952)カネボウ株式会社 (120)
【出願人】(598076878)カネボウストッキング株式会社 (2)
【出願人】(000112299)ピップフジモト株式会社 (46)
【出願人】(597036983)パスミ繊維工業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】
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