説明

インバータの異常検知装置および異常検知方法

【課題】インバータの異常を簡便且つ迅速に検知できる上に汎用的であるインバータの異常検知測定装置を提供する。
【解決手段】本発明のインバータの異常検知装置10は、電気機器に接続されたインバータ30の異常を検知するものであり、インバータ30から電気機器に供給されている多相交流電流の各相の電流値を、変流器および電流計を備える電流測定装置11aによって同時に測定する測定部11と、測定部11によって測定された各相の電流値同士を対比して異常を判定する判定部12とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インバータの異常を検知するための異常検知装置および異常検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルムやシートの搬送装置又は押出機に備えられるモータにおいては、通常、回転速度調整や出力トルクの調整が容易になり、高効率になることから、三相誘導電動機が広く用いられている。
三相誘導電動機には、インバータを用いて三相交流電流が供給されるが、インバータが故障すると、モータの回転が等速にならず、不安定になることがあった。モータの回転が不安定になると、製造されるフィルムやシートの品質や厚みが不安定になり、製品として使用できないこともあった。そのため、インバータの異常を検知する方法が求められていた。
インバータの異常を検知する方法としては、クランプ電流計を用いて各相の電流値を測定し、それらの測定値を対比する方法が知られている。しかし、この方法では、検査者が1相ずつ測定するため、手間を要する上に異常の発見が遅れるという問題を有していた。
特許文献1には、各相の電流値を、交流カレントトランスとI−V変換回路とを備える電流センサを用いて測定する方法が開示されている。特許文献1に記載の電流センサを用いた場合には、迅速に異常を検知できるものの、特殊な電流測定装置を使用しなければならなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−184241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、インバータの異常を簡便且つ迅速に検知できる上に汎用的であるインバータの異常検知測定装置および異常検知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のインバータの異常検知装置は、電気機器に接続されたインバータの異常を検知する異常検知装置であって、インバータから電気機器に供給されている多相交流電流の各相の電流値を、変流器および電流計を備える電流測定装置によって同時に測定する測定部と、該測定部によって測定された各相の電流値同士を対比して異常を判定する判定部とを具備することを特徴とする。
本発明のインバータの異常検知方法は、インバータから電気機器に供給している多相交流電流の各相の電流値を、変流器および電流計を備える電流測定装置によって常時測定し、各相の電流値同士を常時対比し、その対比結果に基づいて異常を検知することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明のインバータの異常検知測定装置および異常検知方法は、インバータの異常を簡便且つ迅速に検知できる上に汎用的である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明のインバータの異常検知装置の一実施形態について説明する図である。
【図2】図1のインバータの異常検知装置を構成する測定部の一例について説明する図である。
【図3】図2の測定部を構成する電流測定装置の一例について説明する図である。
【図4】図1のインバータの異常検知装置を構成する判定部の一例について説明する図である。
【図5】図1のインバータの異常検知装置を構成する警報部の一例について説明する図である。
【図6】図1の異常検知装置が適用されるインバータの一例について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のインバータの異常検知装置(以下、「異常検知装置10」と略す。)の一実施形態について説明する。
図1に、本実施形態の異常検知装置の概略構成図を示す。本実施形態のインバータの異常検知装置10は、モータ20に接続されたインバータ30の異常を検知するものであり、測定部11と判定部12と警報部13とを具備する。
【0009】
測定部11は、インバータ30からモータ20に供給されている三相交流電流の各相u,v,wの電流値を電流測定装置11aによって常時測定する部分である。ここで、電流測定装置11aは、変流器および電流計を備えるものである。電流測定装置11aによって測定された各相u,v,wの電流値は判定部12に伝送される。
測定部11としては公知のものを使用できる。例えば、図2に示すような、変流器からなる電流測定装置11aと、電流を増幅するオペアンプAを備える回路からなる増幅部11bとを有するものが挙げられる。
変流器からなる電流測定装置11aは、図3に示すような、インバータ30からモータ20までの導線Lが中心に通された環状の鉄心11cと、鉄心11cに巻かれたコイル11dとを備え、コイル11dにおいて、アンプ11bに接続される一対の線11e,11eには電圧が生じるようにされている。
【0010】
判定部12は、測定部11によって測定された各相u,v,wの電流値同士を常時対比して異常を判定する部分である。具体的には、電流測定装置11aによって測定された各相u,v,wの電流値同士を比較し、全ての相u,v,wが同様の電流波形を示している場合には警告信号を警報部13に出力しないが、いずれか1つの相の電流波形が残りの相の電流波形と異なった場合には警告信号を警報部13に出力する。
判定部12として公知のものを使用できる。例えば、図4(a)に示すような、オペアンプA2を備える回路からなるヒステリシスコンパレータ12a、図4(b)に示すような、トランジスタTを備える回路からなるOR回路12bなどが挙げられる。
【0011】
警報部13は、判定部12にてインバータの異常を検知した際に出力された警告信号に従って警報を発する部分である。警報としては、例えば、警告音、モニタへの警告メッセージの表示、警告ランプの点灯などが挙げられる。
警告音を発する警報部13としては、図5に示すような、判定部12にて異常を検知した際に警報部13に電源が入るように駆動するスイッチ部13aと、スイッチ部13aを介して電源が接続された際に警告音を発するスピーカ13bとを備えるものが挙げられる。
【0012】
インバータ30は、図6に示すように、コンバータ回路31と、コンバータ回路の後段に設けられたインバータ回路32と、インバータ回路に接続された制御回路33とを備える。制御回路33は、始動指令および周波数指令が入力され、周波数信号をインバータ回路32に出力するようになっている。
【0013】
上記異常検知装置10を用いたインバータの異常検知方法について説明する。
本実施形態のインバータの異常検知方法では、インバータ30からモータ20に供給している多相交流電流の各相u,v,wの電流値を測定部11の電流測定装置11aによって常時測定する。測定された各相u,v,wの電流値は判定部12に伝送される。
判定部12では、伝送された各相u,v,wの電流値同士を常時対比し、全ての相u,v,wが同様の電流波形を示している場合には警告信号を警報部13に出力せず、いずれか1つの相の電流波形が残りの相の電流波形と異なった場合に警告信号を警報部13に出力する。
警報部13では、警告信号が入力されたことによって、警報を発する。
【0014】
上記の異常検知装置10および異常検知方法は、インバータ30からモータ20に供給している三相交流電流の電流を同時に且つ連続的に測定し、各相の電流値同士を常時対比して異常を検知するため、インバータ30の異常を簡便且つ迅速に検知できる。また、各相の電流値に測定に使用される電流測定装置11aは汎用的な構成であるから、上記異常検知装置10および異常検知方法も汎用的である。
【0015】
本発明の異常検知装置および異常検知方法は、フィルムやシートを製造する際に使用される押出機や搬送装置のモータの駆動の際に好適に利用できる。フィルムやシートを製造する際に使用される押出機や搬送装置のモータの駆動の際に異常検知装置および異常検知方法を利用すれば、インバータの不安定化を簡便に且つ迅速に発見できる。したがって、インバータを速やかに交換することができ、低品質のフィルムまたはシートの製造を抑制できる。
また、本発明の異常検知装置および異常検知方法は、化学プラントに使用されるポンプ、車両駆動用のモータ等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0016】
10 異常検知装置
11 測定部
11a 電流測定装置
12 判定部
13 警報部
20 モータ
30 インバータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機器に接続されたインバータの異常を検知する異常検知装置であって、
インバータから電気機器に供給されている多相交流電流の各相の電流値を、変流器および電流計を備える電流測定装置によって同時に測定する測定部と、該測定部によって測定された各相の電流値同士を対比して異常を判定する判定部とを具備することを特徴とするインバータの異常検知装置。
【請求項2】
インバータから電気機器に供給している多相交流電流の各相の電流値を、変流器および電流計を備える電流測定装置によって常時測定し、各相の電流値同士を常時対比し、その対比結果に基づいて異常を検知することを特徴とするインバータの異常検知方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−99195(P2013−99195A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242160(P2011−242160)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(000106726)シーアイ化成株式会社 (267)
【Fターム(参考)】