説明

インバータ一体型電動圧縮機

【課題】電磁放射ノイズを小さくできるとともに、外部に漏出する量、更にはアース線から外部に流れる量をも低減することができ、しかもノイズ低減用回路を小型軽量化、低コスト化することができるインバータ一体型電動圧縮機を提供することを目的とする。
【解決手段】圧縮機構と、該圧縮機構を駆動する電動モータ3とが内蔵されるハウジング2に、電動モータ3に印加される電力を制御するインバータ5が一体に組み込まれているインバータ一体型電動圧縮機1において、インバータ5および電動モータ3からの高調波電流が流れる筐体接地されているハウジング2と、電源からの電力をインバータ5に供給するPNライン7との間に、それぞれ同容量のインピーダンスZが挿入接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インバータが一体に組み込まれているインバータ一体型電動圧縮機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気自動車(EV車)やハイブリッド車(HEV車)等の車両用空調装置に適用される電動圧縮機は、圧縮機構と、該圧縮機構を駆動する電動モータとが内蔵されているハウジングに、電源ユニットから高電圧ライン(HVライン)を介して供給される直流電力を三相交流電力に変換して電動モータに印加し、電動モータを駆動するインバータが一体に組み込まれた構成とされている。このようなインバータ一体型電動圧縮機において、インバータにより駆動される電動モータおよびインバータの電位は、PWM(Pulse Width Modulation)制御されるため、高調波を多く含んでいる。
【0003】
上記電動圧縮機において、ハウジングとインバータおよび電動モータとの間には、浮遊容量が存在するため、発生した高調波電流は、導体であるハウジングに流れ、筐体接地されているハウジングのアース線を通して車両ボディーに流れる。また、車両ボディーと車両バッテリ(電源ユニット)との間にも浮遊容量が存在するため、車両ボディーに流れた高調波電流は、車両バッテリを通してインバータ一体型電動圧縮機のHVラインへと流れる電流ループを構成する。この高調波電流は、電磁放射ノイズとなるが、車両ボディーを通して高電圧ラインへと流れる電流ループは、面積的に大きくなることから放射ノイズも大きく、それがAM放送周波数帯であった場合、ラジオノイズ源となる。
【0004】
このAM放送周波数帯域の高調波電流を遮断するため、一般にインバータ一体型電動圧縮機に対して高電圧を供給するHVライン上にコモンモードコイルを挿入し、高調波電流に対してハイインピーダンスとなるような対策を採っていた。しかしながら、コモンモードコイルは、HVライン上に挿入するしかなく、HVラインは数十Aオーダーの大電流が流れることから、コモンモードコイルが必然的に大きくなり、大型化、高コスト化を招く等の問題を内包していた。
【0005】
そこで、インバータ回路に流れるノイズ電流を低減するため、交流電源に接続される整流回路と、この整流回路の直流出力に平滑回路およびインバータ回路が接続されている電力変換装置において、整流回路の直流出力端子と、モータのアース線との間に、モータとアース端子との間の静電容量からの漏れ電流(高調波を含むノイズ電流)を、整流回路の直流出力端子(PNライン)の双方にバイパスさせる、コンデンサCとインピーダンス要素Lとの直列回路を接続したものが、特許文献1により提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−235269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に示されたものは、モータからのアース線に流れたノイズ電流が、アース線からLC直列回路を介して整流回路の直流出力端子(PNライン)にバイパスされる構成とされている。このため、ノイズ電流が流れる電流ループは、アース線を含み面積的に大きくなることから、放射ノイズが大きくなることは避けられず、ノイズ低減効果に限界があった。特に、車両搭載機器では、電磁放射ノイズに対して、厳しい制限が課せられることから、更なる電磁放射ノイズの低減対策が求められていた。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、電磁放射ノイズを小さくできるとともに、外部に漏出する量、更にはアース線から外部に流れる量をも低減することができ、しかもノイズ低減用回路を小型軽量化、低コスト化することができるインバータ一体型電動圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した課題を解決するために、本発明のインバータ一体型電動圧縮機は、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明にかかるインバータ一体型電動圧縮機は、圧縮機構と、該圧縮機構を駆動する電動モータとが内蔵されるハウジングに、前記電動モータに印加される電力を制御するインバータが一体に組み込まれているインバータ一体型電動圧縮機において、前記インバータおよび前記電動モータからの高調波電流が流れる筐体接地されている前記ハウジングと、電源からの電力を前記インバータに供給するPNラインとの間に、それぞれ同容量のインピーダンスが挿入接続されていることを特徴とする。
【0010】
ハウジング内にインバータおよび電動モータが内蔵されているインバータ一体型電動圧縮機では、ハウジングとインバータおよび電動モータとの間に、それぞれ浮遊容量が存在することから、ハウジングに高調波電流が流れ、これが電磁放射ノイズとなる。本発明によれば、インバータがハウジングに一体に組み込まれているインバータ一体型電動圧縮機において、インバータおよび電動モータからの高調波電流が流れる筐体接地されているハウジングと、電源からの電力をインバータに供給するPNラインとの間に、それぞれ同容量のインピーダンスが挿入接続されているため、例えばラジオノイズ源等となる目的周波数帯域の上記高調波電流を、筐体接地されているハウジングとPNラインとの間に、それぞれ同容量のインピーダンスを挿入接続することにより、導体であるハウジングを介してインバータ一体型電動圧縮機内で完結される小さい電流ループにバイパスさせ、ノイズ電流の発生源に返すことができる。従って、発生する電磁放射ノイズを小さくすることができるとともに、導体であるハウジングで覆うことによって外部に漏出する量、更にはアース線から外部に流れる量をも低減することができる。また、数十Aオーダーの大電流が流れる高電圧(HV)ラインにコモンモードコイルを挿入している従来方式に比べ、数mAオーダーのノイズ成分のみをバイパスさせるだけでよく、大容量のコモンモードコイルを不要化して、小型軽量化、低コスト化することができる。特に、小型軽量化が求められる車載用インバータ一体型電動圧縮機では、大容量のコモンモードコイルの省略化は、小型軽量化する上で大きなメリットとなる。
【0011】
さらに、本発明のインバータ一体型電動圧縮機は、上記のインバータ一体型電動圧縮機において、前記インピーダンスは、コンデンサCとコイルLとが直列に接続されたLC直列回路とされていることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、インピーダンスが、コンデンサCとコイルLとが直列に接続されたLC直列回路とされているため、コンデンサCとコイルLとの直列回路でインピーダンスを構成し、その共振周波数を、例えばノイズ低減したい周波数付近とすることにより、低減させたいも目的周波数に対して低インピーダンスとすることができる。従って、目的の周波数に対して鋭くインピーダンスを低減させることができ、例えば問題となっているAM放送周波数帯のラジオノイズを確実に低減させることができる。
【0013】
さらに、本発明のインバータ一体型電動圧縮機は、上記のインバータ一体型電動圧縮機において、前記LC直列回路は、前記ハウジングと前記PNラインとの間に、それぞれ並列に挿入接続されていることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、LC直列回路が、ハウジングとPNラインとの間に、それぞれ並列に挿入接続されているため、PNラインの双方、すなわちプラス極、マイナス極の双方に対して、それぞれ同容量のLC直列回路を並列に接続することによって、インピーダンス特性をプラス極およびマイナス極の双方でバランスさせることができる。従って、目的周波数帯域のコモンモードノイズを、アンバランスが生じないようにして確実に低減させることができる。
【0015】
さらに、本発明のインバータ一体型電動圧縮機は、上述のいずれかのインバータ一体型電動圧縮機において、前記LC直列回路は、前記PNライン間に、同一容量の2個のコンデンサCが直列接続された回路が接続され、その直列接続回路の中間点と前記ハウジングとの間にコイルLが接続された回路構成とされていることを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、LC直列回路が、PNライン間に、同一容量の2個のコンデンサCが直列接続された回路が接続され、その直列接続回路の中間点とハウジングとの間にコイルLが接続された回路構成とされているため、ハウジングとPNラインとの間に並列に接続される同容量のLC直列回路を、2個のコンデンサCと1個のコイルLとで構成することができる。従って、単純にコンデンサCとコイルLとの直列回路を並列に接続したものに比べ、部品数を減らし、更なる構成の簡素化、低コスト化を図ることができる。
【0017】
さらに、本発明のインバータ一体型電動圧縮機は、上述のいずれかのインバータ一体型電動圧縮機において、前記インピーダンスは、前記ハウジングに組み込まれるインバータ基板側のPN端子と前記ハウジングに接続されるアース端子との間において、前記インバータ基板上に設けられていることを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、インピーダンスが、ハウジングに組み込まれるインバータ基板側のPN端子とハウジングに接続されるアース端子との間において、インバータ基板上に設けられているため、インピーダンス(LC直列回路)をインバータ基板上に組み込むことによって、ノイズ低減用回路をインバータに組み込み易くし、インバータ自体のハウジングに対する組み込みスペースを省スペース化することができる。従って、インバータ一体型電動圧縮機の組立て性を向上することができるとともに、その小型軽量化を実現し、車両等に対する搭載性を向上することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、例えばラジオノイズ源等となる目的周波数帯域の高調波電流を、筐体接地されているハウジングとPNラインとの間に、それぞれ同容量のインピーダンスを挿入接続することによって、導体であるハウジングを介してインバータ一体型電動圧縮機内で完結される小さい電流ループにバイパスさせ、ノイズ電流の発生源に返すことができるため、発生する電磁放射ノイズを小さくすることができるとともに、導体であるハウジングで覆うことによって外部に漏出する量、更にはアース線から外部に流れる量をも低減することができる。また、数十Aオーダーの大電流が流れる高電圧(HV)ラインにコモンモードコイルを挿入している従来方式に比べ、数mAオーダーのノイズ成分のみをバイパスさせるだけでよく、大容量のコモンモードコイルを不要化して、小型軽量化、低コスト化することができる。特に、小型軽量化が求められる車載用のインバータ一体型電動圧縮機では、大容量のコモンモードコイルの省略化は、小型軽量化する上で大きなメリットとなる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態に係るインバータ一体型電動圧縮機のモータ駆動系回路の模式図である。
【図2】図1に示すモータ駆動系回路の略式図である。
【図3】図1および図2に示すインピーダンス回路の異なる形態(A),(B)の構成図である。
【図4】図1に示すモータ駆動系回路から外部に漏れる高調波電流の低減効果を示す説明図である。
【図5】図1および図2に示すインピーダンス回路により目的周波数に対して低インピーダンスとした回路特性の説明図である。
【図6】図1に示すインバータ一体型電動圧縮機の概略構成を示す模式図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係るインバータ一体型電動圧縮機の概略構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明にかかる実施形態について、図面を参照して説明する。
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について、図1ないし図6を用いて説明する。
図1には、本発明の第1実施形態に係るインバータ一体型電動圧縮機のモータ駆動系回路の模式図が示され、図2には、その略式図が示されている。また、図6には、インバータ一体型電動圧縮機の概略構成を示す模式図が示されている。
インバータ一体型電動圧縮機1は、アルミダイカスト製の導体からなるハウジング(筐体)2を備えており、そのハウジング2の内部に、圧縮機構(図示省略)と、それを駆動する電動モータ3が内蔵された構成とされている。
【0022】
また、ハウジング2の外周には、インバータ収容部4(図6参照)が一体に成形されており、このインバータ収容部4内にインバータ5が収容設置されることによって、ハウジング2の外周にインバータ5が一体に組み込まれたインバータ一体型電動圧縮機1が構成されている。このインバータ一体型電動圧縮機1は、車載の電源ユニット6のバッテリから電源ケーブル(HVライン)を介してインバータ5のPNライン7に供給された高電圧の直流電力が、インバータ5を介して指令周波数の三相交流電力に変換された後、ハウジング2内に内蔵されている電動モータ3に印加されることにより、電動モータ3が駆動されるように構成されている。
【0023】
インバータ5としては、半導体スイッチング回路を備えており、制御回路を介してその電流流通率を変えて出力電圧を制御するPWM(Pulse Width Modulation)制御方式を採用し、電動モータ3の速度制御を行うものが一般的である。このように、PWM制御されるインバータ5により駆動される電動モータ3およびインバータ5の電位は、高調波を多く含んだものとなる。なお、インバータ5自体は、公知のものであり、ここでの詳細説明は省略する。
【0024】
車載用のインバータ一体型電動圧縮機1は、インバータ5、電動モータ3および圧縮機構を構成するメカ部分が、1つのハウジング(筐体)2内に収容設置されている。このハウジング2と電動モータ3およびインバータ5との間には、図1中に破線で示されているように、浮遊容量Q1,Q2,Q3が存在するため、電動モータ3およびインバータ5で発生した高調波電流はハウジング2側に流れることになる。ハウジング2は、通常、アース線8を介して車両ボディー9に筐体接地されていることから、ハウジング2側に流れた高調波電流は、アース線8を通して車両ボディー9に流れるようになっている。
【0025】
さらに、車両ボディー9と車載用電源ユニット6との間にも、浮遊容量Q4が存在していることから、車両ボディー9に流れた高調波電流は、車載用電源ユニット6から電源ケーブルを介してインバータ5のPNライン7に流れる大きな電流ループを構成することになる。このように、電動モータ3およびインバータ5で発生したノイズ成分である高調波電流により大きな電流ループが構成されると、それが大きな電磁放射ノイズとなり、その周波数帯域がAM放送周波数帯であった場合、ラジオノイズ源となってしまう。
【0026】
そこで、本実施形態では、上記したノイズ電流を低減するため、インバータ一体型電動圧縮機1のハウジング2と、インバータ5に高電圧を入力するPNライン7との間に、それぞれ同容量の小さいインピーダンスZを挿入接続した構成を採用している。このインピーダンスZは、図1および図3(A)に示されるように、PNライン7のプラス極およびマイナス極の双方と、筐体接地されているハウジング2との間に、コモンモード電流を流すコンデンサC1とコイルL1およびコンデンサC2とコイルL2を、それぞれ直列に接続したLC直列回路(LCフィルタ回路)10,11を並列に接続した回路構成とされている。
【0027】
なお、上記LC直列回路10,11は、図3(B)に示されるように、PNライン7のプラス極とマイナス極との間に、同一容量の2個のコンデンサC3,C4が直列に接続された回路を接続し、その直列接続回路の中間点Mと、筐体接地されているハウジング2との間に、コイルL3を接続した構成のLC直列回路(LCフィルタ回路)12により代替してもよい。
【0028】
また、上記インピーダンスZ、すなわちLC直列回路10,11は、具体的には、図6に示されるように、インバータ収容部4内に収容設置されているインバータ5の制御基板(インバータ基板)5Aに設けられているPN端子13,14と、筐体接地されているハウジング2との間に、互いに並列に接続された回路構成とされている。
【0029】
このようにして、インバータ5および電動モータ3で発生するノイズ成分となる高調波電流を、筐体接地されているハウジング2からLC直列回路10,11を経てPNライン7にバイパスさせ、インバータ一体型電動圧縮機1内で完結される小さな電流ループに流してノイズ電流の発生源に返すようにし、図2に示されるように、導体であるハウジング2でシールドした構成とすることによって、電磁放射ノイズが外部に漏出しないようにしている。
【0030】
斯くして、本実施形態によると、以下の作用効果を奏する。
インバータ5がPWM制御されることにより発生した高調波電流は、浮遊容量Q1,Q2,Q3を経て筐体接地されているハウジング2に流れる。このノイズ成分となる高調波電流は、ハウジング2と、インバータ5のPNライン7のプラス極およびマイナス極の双方との間に、それぞれ並列に挿入接続されている低減目標の周波数に対して低インピーダンスとされたインピーダンスZ、すなわちLC直列回路(LCフィルタ回路)10,11にバイパスされ、ノイズ電流の発生源に返されるようになっている。
【0031】
このように、電動モータ3およびインバータ5で発生したノイズ成分となる高調波帯域のコモンモード電流は、インバータ一体型電動圧縮機1内の筐体接地されている導体のハウジング2から低インピーダンスのLC直列回路10,11を経てインバータ5のPNライン7にバスパスする、インバータ一体型電動圧縮機1内で完結する小ループの電流ループを流れることになる。
【0032】
つまり、ハウジング2とPNライン7との間には、同容量の小さいインピーダンスZが並列に挿入接続され、それぞれがLC直列回路10,11で構成されており、その共振周波数が、ノイズを低減させたい周波数付近とされ、目的周波数に対して低インピーダンスとされている。このため、図5に示されるように、目的周波数に対して鋭くインピーダンスを低減させることが可能となる。なお、図5に示されるものは、500kHz付近の周波数を低減させたい目的周波数としたものの回路特性図である。
【0033】
従って、本実施形態によると、図4の示されるように、発生するノイズ電流(電磁放射ノイズ)を小さくすることができるとともに、それを導体であるハウジング2で覆うことによって外部に漏出する量、あるいはアース線7から外部に流れる量を低減することができる。また、ノイズ電流を低減するため、数十Aオーダーの大電流が流れるHVラインにコモンモードコイルを挿入している従来方式に比べ、数mAオーダーのノイズ成分のみをバイパスさせるだけでよく、大容量のコモンモードコイルを不要化し、小型軽量化、低コスト化することができる。特に、小型軽量化が求められる車載用インバータ一体型電動圧縮機1では、大容量のコモンモードコイルの省略化は、小型軽量化する上で大きなメリットとなる。
【0034】
また、インピーダンスZが、上記の如く、コンデンサC1,C2とコイルL1,L2とが直列に接続されたLC直列回路10,11とされているため、LC直列回路10,11の共振周波数を、例えばノイズ低減したい周波数付近とし、低減させたい目的周波数に対して低インピーダンスとすることにより、目的の周波数に対して鋭くインピーダンスを低減させることができる。これによって、例えば問題となっているAM放送周波数帯のラジオノイズを確実に低減させることができる。
【0035】
また、LC直列回路10,11が、ハウジング2とPNライン7との間に、それぞれ並列に挿入接続され、PNライン7の双方、すなわちプラス極およびマイナス極の双方に対して、それぞれ同容量のLC直列回路10,11が並列に接続された構成とされることによって、インピーダンス特性をプラス極およびマイナス極の双方でバランスさせることができる。従って、目的周波数帯域のコモンモードノイズをアンバランスが生じないようにして、確実に低減することができる。
【0036】
さらに、ハウジング2とPNライン7との間に挿入するインピーダンスZを構成するLC直列回路を、図3(B)に示されるように、PNライン7間に、同一容量の2個のコンデンサC3,C4が直列接続された回路が接続され、その直列接続回路の中間点Mとハウジング2との間にコイルL3を接続した構成のLC直列回路12とすることにより、LC直列回路12を、2個のコンデンサC3,C4と1個のコイルL3とで構成することができる。このため、コンデンサCとコイルLとの直列回路を並列に接続したものに比べ、部品数を減らし、更なる構成の簡素化、低コスト化を図ることができる。
【0037】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について、図7を用いて説明する。
本実施形態は、上記した第1実施形態に対して、インピーダンスZの挿入接続形態が異なっている。その他の点については、第1実施形態と同様であるので説明は省略する。
本実施形態においては、図7に示されるように、インバータ一体型電動圧縮機1のハウジング(筐体)2と、PNラインとの間に挿入接続されるインピーダンスZ、すなわちコンデンサCとコイルLとを直列に接続したLC直列回路10,11(12)を、インバータ5の制御基板(インバータ基板)5Aに組み込んだ構成としている。
【0038】
つまり、本実施形態では、LC直列回路10,11(12)により構成されるインピーダンスZは、ハウジング2のインバータ収容部4内に収容設置されるインバータ5の制御基板(インバータ基板)5Aに設けられているPN端子13,14と、ハウジング2に接続されるアース端子15との間において、インバータ5の制御基板5A上に組み込まれた構成とされている。
【0039】
斯くして、本実施形態によれば、LC直列回路10,11(12)により構成されるインピーダンスZが、ハウジング2に組み込まれるインバータ5の制御基板5A側のPN端子13,14とハウジング2に接続されるアース端子15との間において、制御基板5A上に設けられている。このため、電磁放射ノイズ低減用回路をインバータ5に組み込み易くし、インバータ5自体のハウジング2に対する組み込みスペースを省スペース化することができる。従って、インバータ一体型電動圧縮機1の組立て性を向上することができるとともに、その小型軽量化を実現し、車両等に対する搭載性を向上することができる。
【0040】
なお、本発明は、上記実施形態にかかる発明に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、適宜変形が可能である。例えば、電動圧縮機1のハウジング2に対するインバータ5の組み込み構成については、様々な様式が考えられ、その様式について特に制限されるものではない。また、ハウジング2とPNライン7との間に挿入されるインピーダンスZについては、LC直列回路として例について説明したが、必ずしもコンデンサCとコイルLとの直列回路のみに限定されるものではなく、他の要素からなるフィルタ回路としてもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 インバータ一体型電動圧縮機
2 ハウジング(筐体)
3 電動モータ
5 インバータ
5A 制御基板(インバータ基板)
7 PNライン
10,11,12 LC直列回路
13,14 PN端子
15 アース端子
C1,C2,C3,C4 コンデンサ
L1,L2,L3 コイル
Z インピーダンス


【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機構と、該圧縮機構を駆動する電動モータとが内蔵されるハウジングに、前記電動モータに印加される電力を制御するインバータが一体に組み込まれているインバータ一体型電動圧縮機において、
前記インバータおよび前記電動モータからの高調波電流が流れる筐体接地されている前記ハウジングと、電源からの電力を前記インバータに供給するPNラインとの間に、それぞれ同容量のインピーダンスが挿入接続されていることを特徴とするインバータ一体型電動圧縮機。
【請求項2】
前記インピーダンスは、コンデンサCとコイルLとが直列に接続されたLC直列回路とされていることを特徴とする請求項1に記載のインバータ一体型電動圧縮機。
【請求項3】
前記LC直列回路は、前記ハウジングと前記PNラインとの間に、それぞれ並列に挿入接続されていることを特徴とする請求項2に記載のインバータ一体型電動圧縮機。
【請求項4】
前記LC直列回路は、前記PNライン間に、同一容量の2個のコンデンサCが直列接続された回路が接続され、その直列接続回路の中間点と前記ハウジングとの間にコイルLが接続された回路構成とされていることを特徴とする請求項2または3に記載のインバータ一体型電動圧縮機。
【請求項5】
前記インピーダンスは、前記ハウジングに組み込まれるインバータ基板側のPN端子と前記ハウジングに接続されるアース端子との間において、前記インバータ基板上に設けられていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のインバータ一体型電動圧縮機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−172611(P2012−172611A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−36127(P2011−36127)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】