説明

インバータ式蛍光灯器具対応の蛍光管型LED照明

【課題】 多くの異なる回路構成を持つインバータ式蛍光灯器具に対応できる蛍光管型のLED照明を提供する。
【解決手段】 通常の蛍光管における電極部分に当たる部分に、それと同程度のインピーダンスを持つインダクタA(4)と(5)を設置して導通を確保する。
両インダクタAに並列にリレー回路(2)と抵抗(6)を設置して、通電前における両インダクタA間の絶縁状態を確保する。
通常の蛍光管の放電時と同程度のインピーダンスを持つインダクタB(7)及びインダクタC(8)を設置して、通電時の正常な動作電流を確保する。
インダクタB(7)及びインダクタC(8)間で降圧(分圧)した電流を、並列に設置した整流・平滑回路(1)により直流に変換し、直流電源を確保する。
(1)の出力側にLED基板(3)を設置し、照明として利用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインバータ式蛍光灯器具に通常の蛍光管のように装着し使用できる蛍光管型のLED照明器具である。
【背景技術】
【0002】
従来から使われている蛍光管型LED照明器具は、本体内部にコイル・ダイオード・スイッチングレギュレータ・コンデンサ・抵抗・トランスなどで構成された回路により、変圧(または降圧)・整流・平滑などを行い、LED素子を点灯させるものが殆どであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−105355
【特許文献2】特開2010−177038
【発明の概要】

【発明が解決しよとする課題】
【0004】
グローランプを有する従来の蛍光灯器具の場合、蛍光管の両電極間に加わる電圧は無負荷時で100V前後である(100V用器具の場合)。
そして、これはラピッドスタート式や電子安定器の器具でも同じである。
※ 但し、蛍光管を放電させるためにスイッチを入れた当初は高い電圧(インダクションキック電圧)が加わる。
【0005】
しかしながら、Hf灯などのインバータ式蛍光灯は器具本体の回路構成が従来の蛍光灯と大きく異なっているために、従来の蛍光管型LED照明器具を装着しても下記の3つの課題に示すような事象が起き、使用できないことがあった。
【0006】
(課題1)
当初は点灯するが、しばらく使用していると点灯しなくなる。
(課題2)
点灯するが暗い。
(課題3)
最初から点灯しない。
【0007】
上記の課題のような事象が起こるため従来品ではインバータ式蛍光灯に使用する場合、器具本体の安定器を取り外しLED照明用の電源装置に交換して使用するものが多かった。
【0008】
しかしながら、これでは通常の蛍光管のようにソケットに差し替えるだけで使用できるという、蛍光管型LED照明の利点が損なわれるものである。
【0009】
本発明はインバータ式蛍光灯器具本体に手を加えることなく、なおかつ上記の3つの課題も克服し、蛍光管型LED照明を通常の蛍光管と同じように蛍光灯器具のソケット部分に口金を差し込むだけで使用できる様にしたものである。
【課題が生ずる原因】
【0010】
上記の課題が生ずる原因としては下記の3つが挙げられるので、図2を参照して説明する。
インバータ式蛍光灯の回路は、図2に示すような構成になっている。
商用の交流電源を整流・平滑回路でまず直流に変換した後、高周波発振回路で数十kHzの交流を発振し、高周波安定器を介して蛍光管に電流を送る構造である。
【0011】
(原因1)
高周波発振回路で発生させる電圧が通常の蛍光灯器具に比べて高いものがあり、蛍光管の両電極間(F1とF2の間)に加わる電圧も高い。
そのために当初は使用できるが、しばらく使っているとLED照明器具の内部回路の素子が絶縁破壊などの劣化で使用できなくなり、(課題1)のような事象が起こる。
【0012】
(原因2)
高周波発振回路で発生させる周波数が比較的高い(70〜80kHz程度)代わりに、電圧が通常の蛍光灯器具に比べて低いものがあり、蛍光管の両電極間(F1とF2の間)に加わる電圧も低い。
そのために、使用はできるが従来のLED照明器具の定格電圧以下のために、(課題2)のような事象が起こる。
【0013】
高周波発振回路に保護回路を持っている器具がある。
保護回路の機能としては下記の2つがある。
(原因3)
蛍光管が切れている状態でも発振を続けていると、スイッチが入った状態では常に電極部分に電圧が加わっていることになる。
通常、器具のソケット部分は内部の電極部分に触れられない構造にはなっているが、蛍光管を取り替える際などに何らかの原因で接触すると感電する恐れがある。
その保護機能として、器具のスイッチを入れると回路が先ず蛍光管の電極部分(F1およびF2)の導通を検知する。
導通が検知できなければ蛍光管(電極部分)が切れている可能性があるため、高周波発振をしないものである。
通常、蛍光管内電極のフィラメントはコイル状で、直流に対しては数Ω程度の小さい抵抗しかない。
また、交流にはインピーダンスとして働くが、小さい電流では十分なインダクタンスが得られないのでインピーダンスも小さい。
一方、従来の蛍光管型LED照明の多くは、口金の端子内側にブリッジダイオードやトランスなどを持っていて、これらの素子は弱い電圧に対して大きな抵抗として働く。
そのため保護回路が働いて発振をせず、最初から電極部分に動作電圧が加わらないために、(課題3)のような事象が起こる。
【0014】
(原因4)
蛍光管の内部は数hPaという非常に薄いガスが封入されており、高い電圧を加えて放電させない限り、蛍光管内の両電極間は通常は絶縁状態にある。
蛍光管が点灯していない状態で両電極間(F1とF2の間)に導通がある場合、器具が短絡(ショート)している可能性があり、その状態で動作電流が流れると器具が破損する恐れがある。
その保護機能として、器具のスイッチを入れると回路が先ず蛍光管の両電極間の導通を検知し、導通が検知されると器具内部で短絡している可能性があるため、高周波発振をしないものである。
一方、従来の蛍光管型LED照明の多くは内部で閉回路を構成していて、初期電圧が加わる前に両電極間に導通がある。
そのため保護回路が働いて発振をせず、最初から電極部分に動作電圧が加わらないために、(課題3)のような事象が起こる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
蛍光管型LED照明の内部に図1に示すような回路を構成し、上記の課題(課題1〜3)を克服する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態および、その効果について図1を参照して説明する。
(形態1)
上記(課題1)および(課題2)の課題を克服するために、LED照明器具本体の内部に、整流・平滑回路(1)と定電圧出力型のDC/DCコンバータ回路(2)を設ける。
DC/DCコンバータは絶縁型・非絶縁型などがあり、また内部の回路構成も多くの種類が流通しているので、下記の2点の機能を有しているものであれば種類は問わない。
(機能1)
DC入力側の定格電圧の幅が、各種のインバータ式蛍光灯における動作電圧の幅を(1)で降圧した範囲内であること。
(機能2)
DC出力側の定電圧出力がLED基板(3)の定格電圧であり、なおかつ出力側の定格電力がLED基板(3)の消費電力の定格を上回っていること。
【0017】
上記の整流・平滑回路(1)で直流にした電流を、DC/DCコンバータ回路(2)により定電圧出力にすることにより、(原因1)及び(原因2)によって生ずる(課題1)と(課題2)を克服できる。
【0018】
(形態2)
通常、蛍光管のフィラメントは直流に対して数Ω程度の抵抗があり、また、動作時の高周波電流に対してある程度のインピーダンスを有する。
これと同程度のインピーダンスを有するコイルや抵抗を設けることにより、切れていないフィラメントと同じ状態を作り出せる。
上記(原因3)による(課題3)を克服するために、口金内側の両電極部分にインダクタA(4)と(5)を設ける。
ここで、(4)と(5)は左右対称に同じ構成である。
また、インダクタAは抵抗でも置き換えられるが、抵抗では動作電流での熱損失が大きくなるために好ましくない。
【0019】
(形態3)
上記(課題3)のうち、(原因4)を克服するために、図のようにリレー回路(6)と抵抗(7)を設ける。
ここで、(7)は(6)の回路全体と同程度のインピーダンスを有するものである。
図中でリレー回路の内部構成をDCコイルのタイプで示しているが、これはACコイルのリレーを使用した構成でも構わない。
また、リレーは機械式リレーでも動作するが、双方向サイリスタを使ったものやソリッドステートリレーなどの半導体式のほうが好ましい。
図1に示すような構成により、動作時に(4)と(5)の間での導通を確保するとともに、電圧加圧前の両電極間の絶縁状態を確保する。
【0020】
(形態4)
通常、蛍光管の使用時(放電中)には、動作時の高周波電流に対してある程度のインピーダンスを有する。
これと同程度のインピーダンスを有するインダクタB(8)を設けることにより、通常の蛍光管の装着時のように、器具の正常動作を継続できる。
上記の(形態3)と(形態4)の組み合わせることにより(原因4)によって生ずる(課題3)を克服できる。
また、インダクタBは抵抗でも置き換えられるが、抵抗では動作電流での熱損失が大きくなるために好ましくない。
【0021】
(形態5)
インダクタB(8)に対し、図1のように(1)と(2)を接続し、上記の(形態2〜4)の組み合わせにより得られた動作電流を直流変換して取り出し、(3)に接続する。
【0022】
上記の実施形態(形態1〜5)を組み合わせて実施することにより、(原因1〜4)によって生ずる(課題1〜3)を克服できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の内部回路構成
【図2】インバータ式蛍光灯器具の一般的な回路構成
【符号の説明】
【0024】
F1. 蛍光管内の電極(フィラメント)
F2. 同上
(1).整流・平滑回路
(2).定電圧出力型DC/DCコンバータ回路
(3).LED基板(LED素子を複数配置したもの)
(4).インダクタA
(5).4の左右対称配置したもの
(6).リレー回路
(7).抵抗
(8).インダクタB

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光管型LED照明の内部回路において、通常の蛍光管の電極にあたる部分に、その電極と同程度のインピーダンスを持つインダクタAを設置して、電極部分の導通を確保する。
【請求項2】
通常の蛍光管が放電する際と同程度のインピーダンスを有するインダクタBを両インダクタAの間に設置して、動作時における電極間の導通を確保する。
【請求項3】
インダクタAとインダクタBの間にリレー回路を設置して、電圧加圧前の両電極間の絶縁状態を確保する。
【請求項4】
インダクタBの両端より得た動作電流を、整流・平滑回路およびDC/DCコンバータ回路にて定電圧直流電源に変換することにより、安定した電源電圧でLED照明を点灯させる。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−221940(P2012−221940A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−98718(P2011−98718)
【出願日】平成23年4月11日(2011.4.11)
【出願人】(502000713)
【Fターム(参考)】