説明

インバータ装置および機電一体型駆動装置

【課題】 電子部品の寿命向上を図ることができるインバータ装置および機電一体型駆動装置を提供する。
【解決手段】 開口部6を有するインバータハウジング5と、開口部6に取り付けられた基板7と、基板7の表面7aに表面実装されたパワーMOSFET9と、基板7の裏面7b側に設けられたヒートシンク8と、パワーMOSFET9が発する熱をヒートシンク8へ伝導する放熱シート12と、基板7の表面7a側に設けられパワーMOSFET9を覆う遮熱部材15と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インバータ装置および機電一体型駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されたインバータ装置では、パワーデバイスとヒートシンクとの間に放熱シートを介装し、放熱シートおよびヒートシンクによってパワーデバイスの発する熱をハウジングの外部へ放熱する放熱経路を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−245174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術にあっては、パワーデバイスの発する熱の一部によりハウジングの内気の温度が上昇して電子部品が加熱され、パワーデバイスに近接して配置された耐熱性の低い電子部品の寿命低下を招くという問題があった。
本発明の目的とするところは、電子部品の寿命向上を図ることができるインバータ装置および機電一体型駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明では、基板のハウジング側にパワーデバイスを覆う遮熱部材を設けた。
【発明の効果】
【0006】
よって、電子部品の寿命向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施例1の電動オイルポンプ1の側面一部断面図である。
【図2】実施例1の基板7の表面図である。
【図3】実施例1の基板7の裏面図である。
【図4】実施例1の電動オイルポンプの背面図である。
【図5】実施例1のパワーMOSFET9の発熱に伴う熱流束の流れを示す図1の要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明のインバータ装置および機電一体型駆動装置を実施するための形態を、図面に示す実施例に基づいて説明する。
〔実施例1〕
図1は、実施例1の電動オイルポンプ1の側面一部断面図である。
実施例1の電動オイルポンプ1は、オイルポンプ部2とインバータ部(インバータ装置)3とを一体に設けた機電一体型の電動オイルポンプであり、例えば、車両のパワーステアリングシステムに適用される。
オイルポンプ部2は、図外の内接歯車ポンプおよびこれを駆動する交流モータ(モータ)がオイルポンプハウジング4内に収容されている。
インバータ部3は、インバータハウジング(ハウジング)5の開口部6に基板7が取り付けられ、基板7を覆うようにヒートシンク(放熱手段)8がインバータハウジング5と固定されている。
【0009】
基板7は、例えば、ガラス織布とエポキシ樹脂からなるFR-4等のプリント配線板であって、インバータハウジング5の開口部6の形状に合わせて形成されている。
図2に示すように、基板7の表面7aには、6つのパワーMOSFET(パワーデバイス)9が表面実装されると共に、2つのコンデンサ10およびインダクタ(コイル)11(図4参照)がパワーMOSFET9に近接して配置されている。2つのコンデンサ10およびインダクタ11はリード付き電子部品であり、リード10a,11a(図4参照)が基板7挿入され、基板7の裏面7b側ではんだ付けされている。
図3に示すように、基板7の裏面7bには、6つのパワーMOSFET9と対応する位置に、平板状の放熱シート(熱伝導部材)12が取り付けられている。基板7の外周縁付近には、基板7をインバータハウジング5の開口部6にボルト締結するための5つのボルト穴7cが形成されている。
【0010】
ヒートシンク8は、例えば、アルミ銅等から基板7を覆う形状に形成され、図4に示すように、外周縁を5つのボルト13によってインバータハウジング5にボルト締結されている。
パワーMOSFET9は、コネクタ14を経由して図外のバッテリからモータに供給される電流をスイッチングする。パワーMOSFET9は、基板7を表面7a側から見たとき、基板7の右側に寄せて配置されている。
コンデンサ10およびインダクタ11は、パワーMOSFET9のスイッチングする電流を平滑化する。コンデンサ10は、基板7を表面7a側から見たとき、基板7の上方側に寄せて配置されている。また、インダクタ11は、基板7を表面7a側から見たとき、基板7の左側に寄せて配置されている。
放熱シート12は、例えば、シリコン等を含む熱抵抗の小さな絶縁シートである。放熱シート12は、ヒートシンク8と接し、放熱シート12およびヒートシンク8によってパワーMOSFET9の発する熱をインバータハウジング5の外部へ放熱する放熱経路が形成されている。
【0011】
基板7の表面7aには、遮熱部材15が設けられている。遮熱部材15は、絶縁体であって、熱伝導率が低く、かつ耐熱性の高い素材、例えば、エンジニアリングプラスチックで形成されている。遮熱部材15は、インバータハウジング5に対し、接着剤、ボルト締結または溶着(超音波、レーザ、熱等)により固定されている。遮熱部材15は、遮熱部16と延長部17とを有する。
遮熱部16は、6つのパワーMOSFET9の上方および全周を覆う矩形の断面コ字状に形成され、全周が基板7の表面7aと当接している。インバータハウジング5の内部空間は、遮熱部16によって遮熱部材15の内部空間18と外部空間19とに隔成されている。
延長部17は、遮熱部16から表面7aに沿って基板7のコンデンサ10およびインダクタ11側へ延びる板状に形成されている。延長部17において、基板7のリード挿入穴(不図示)と対応する位置には、コンデンサ10およびインダクタ11のリード10a,11aを挿入するためのリード挿入穴20,21がそれぞれ形成されている。
【0012】
次に、作用を説明する。
[電子部品の寿命向上作用]
従来のインバータ装置では、パワーMOSFETとヒートシンクとの間に放熱シートを介装し、放熱シートおよびヒートシンクによってパワーデバイスの発する熱をハウジングの外部へ放熱する放熱経路を形成することで、ハウジング内部の空気(内気)の温度上昇を抑制している。
ここで、インバータ装置の基板上には、パワーMOSFETの他に複数の電子部品が配置される。このうち、コンデンサおよびインダクタは、パワーMOSFETのスイッチングする電流を平滑化するものであり、基板設計上、パワーMOSFETと近接して配置するのが好ましい。
【0013】
従来のインバータ装置において、パワーMOSFETの発する熱のすべてを上記放熱経路から外部へ逃すのは不可能であるから、熱の一部によって内気の温度が上昇し、パワーMOSFETに近接して配置された耐熱性の低いコンデンサおよびインダクタが加熱されることで、耐久性の低下を招くという問題があった。
これに対し、実施例1では、基板7の表面7a側に、パワーMOSFET9を覆う遮熱部材15を設け、遮熱部材15の内部空間18と外部空間19とを隔成した。
これにより、図5に示すように、パワーMOSFET9による内気の加熱をパワーMOSFET9の周辺、すなわち、遮熱部材15の内部空間18に留め、放熱シート12を介してヒートシンク8から外部へ放熱できる。このため、従来のインバータ装置に対し、加熱された内気および輻射によるコンデンサ10およびインダクタ11の加熱を低減できるため、寿命向上を図ることができる。
【0014】
[リード付き電子部品の組み付け性向上作用]
実施例1では、遮熱部材15にコンデンサ10およびインダクタ11のリード10a,11aを挿入するためのリード挿入穴20,21を設けた。組み付け時には、遮熱部材15のリード挿入穴20,21にコンデンサ10およびインダクタ11のリード10a,11aを挿入して遮熱部材15にコンデンサ10およびインダクタ11を固定した状態で、遮熱部材15と基板7とを位置合わせした後、リード10a,11aを基板7に挿入する。
従来、コンデンサやインダクタ等のリード付き電子部品は、リードに挿入され、基板の裏面側ではんだ付けされているが、通常、リード付き電子部品はリード位置の精度が悪く、リードの剛性も低いため、基板へ挿入するリード数が多いと基板への挿入作業が困難であった。
実施例1では、コンデンサ10およびインダクタ11のリード10a,11aをリード挿入穴20,21に挿入するだけでリード10a,11aを位置決めでき、基板7への挿入作業が容易となり、組み付け性の向上を図ることができる。
【0015】
[リード支持剛性向上作用]
従来、リード付き電子部品のリードは基板にのみ支持されているのに対し、実施例1では、基板7に加えて遮熱部材15によってコンデンサ10およびインダクタ11のリード10a,11aを支持しているため、従来の基板のみに固定する構造と比較して、リード支持剛性を高めることができる。
機電一体型の電動オイルポンプは、ポンプ駆動時、インバータ部にオイルポンプ部の振動が入力されるため、リードの支持剛性は、オイルポンプ部の振動に耐える耐久性が必要となる。さらに、電動オイルポンプを車両のパワーステアリングシステムに適用した場合、車両の振動に耐える耐久性が要求される。
これに対し、実施例1の電動オイルポンプ1を採用することで、ポンプ駆動時や車両の振動に対して十分なリード支持剛性を確保でき、耐久性の向上を図ることができる。
【0016】
次に、効果を説明する。
実施例1のインバータ装置および機電一体型駆動装置にあっては、以下に列挙する効果を奏する。
(1) 開口部6を有するインバータハウジング5と、開口部6に取り付けられた基板7と、基板7の表面7aに表面実装されたパワーMOSFET9と、基板7の裏面7b側に設けられたヒートシンク8と、パワーMOSFET9が発する熱をヒートシンク8へ伝導する放熱シート12と、基板7の表面7a側に設けられパワーMOSFET9を覆う遮熱部材15と、を備えた。
よって、パワーMOSFET9による内気の加熱をパワーMOSFET9の周辺に留め、放熱シート12を介してヒートシンク8から外部へ放熱でき、加熱された内気および輻射によるコンデンサ10およびインダクタ11の加熱を低減できるため、寿命向上を図ることができる。
【0017】
(2) 遮熱部材15は、コンデンサ10およびインダクタ11のリード挿入穴20,21を有する。
よって、コンデンサ10およびインダクタ11のリード10a,11aをリード挿入穴20,21に挿入するだけでリードを位置決めできるため、リード10a,11aの基板7への挿入作業が容易となり、組み付け性の向上を図ることができる。また、遮熱部材15と基板7でリード10a,11aを支持する構成となるため、リード支持剛性を高めることができる。
【0018】
(3) 電動オイルポンプ1は、直流電源の直流出力を交流出力に変換するインバータ部3と、インバータ部3の交流出力によって駆動されるオイルポンプ部2と、を備えた機電一体型電動オイルポンプである。
よって、ポンプ駆動時の振動に対して十分なリード支持剛性を確保でき、耐久性の向上を図ることができる。
耐久性の向上を図ることができる。
【0019】
(他の実施例)
以上、本発明のインバータ装置および機電一体型駆動装置を実施例に基づいて説明したが、本発明の具体的な構成は実施例の構成に限定されるものではない。
例えば、実施例1では、遮熱部材15をパワーMOSFET9の四方を完全に覆う形状としたが、他の電子部品が存在しない方向は基板との間に隙間を設けてもよい。
実施例1では、本発明を機電一体型の電動オイルポンプ1に適用した例を示したが、本発明は、他の機電一体型駆動装置にも適用でき、実施例1と同様の作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0020】
1 電動オイルポンプ
2 オイルポンプ部
3 インバータ部
5 インバータハウジング(ハウジング)
6 開口部
7 基板
8 ヒートシンク(放熱部材)
9 パワーMOSFET(パワーデバイス)
10 コンデンサ
11 インダクタ
12 放熱シート(熱伝導部材)
15 遮熱部材
20 リード挿入穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有するハウジングと、
前記開口部に取り付けられた基板と、
前記基板のハウジング側に表面実装されたパワーデバイスと、
前記基板の前記パワーデバイスとは反対側に設けられた放熱部材と、
前記パワーデバイスが発する熱を前記放熱部材へ伝導する熱伝導部材と、
前記基板のハウジング側に設けられ前記パワーデバイスを覆う遮熱部材と、
を備えたことを特徴とするインバータ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のインバータ装置において、
前記遮熱部材は、リード付き電子部品のリード挿入穴を有することを特徴とするインバータ装置。
【請求項3】
直流電源の直流出力を交流出力に変換するインバータ装置と、
前記インバータ装置の交流出力によって回転駆動される交流モータと、
を備えた機電一体型駆動装置において、
前記インバータ装置として、請求項1または請求項2に記載にインバータ装置を用いたことを特徴とする機電一体型駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−110833(P2013−110833A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253382(P2011−253382)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】