説明

インバータ装置および空気調和機

【課題】発生する熱を効率よく放熱し、大容量化した場合のサイズやコスト増を抑えることができるインバータ装置を得ること。
【解決手段】直流電力を交流電力に変換するインバータ主回路22を備えるインバータ装置であって、インバータ主回路22に接続されるノーマリーオン形のMOSFET5と、MOSFET5のドレイン−ソース間電圧に基づいてインバータ主回路22に流れる電流を検出する電流検出回路9と、電流検出回路9により検出された電流に基づいてインバータ主回路22を制御するインバータ制御部11と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インバータ装置および空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の単相または三相の交流電源用のインバータ装置では、インバータ装置の保護や制御のために、自装置内を流れる電流を検出する。従来のインバータ装置は、この電流の検出のために、ひとつまたは複数の抵抗を備える構成をしている(例えば、下記特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−246649号公報
【特許文献2】特開2003−284374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の単相または三相の交流電源用のインバータ装置は、インバータ装置を流れる電流の検出のために、ひとつまたは複数の抵抗を用いた構成をしており、一般的にこの抵抗としてセメント抵抗が用いられる。そのため、構造的に抵抗体の放熱性が悪いという問題があった。特に大容量のインバータ装置では発熱量が大きく、基板には実装できない大きな抵抗体が必要となり、サイズも大きくなりコストも高くなる。従って、セメント抵抗を用いる従来の単相または三相の交流電源用のインバータ装置は、大容量のインバータ装置には不向きであるという問題点があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、発生する熱を効率よく放熱し、大容量化した場合のサイズやコスト増を抑えることができるインバータ装置および空気調和機を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、直流電力を交流電力に変換するインバータ主回路を備えるインバータ装置であって、前記インバータ主回路に接続されるノーマリーオン形のMOSFETと、前記MOSFETのドレイン−ソース間電圧に基づいて前記インバータ主回路に流れる電流を検出する電流検出回路と、前記電流検出回路により検出された電流に基づいて前記インバータ主回路を制御するインバータ制御部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、発生する熱を効率よく放熱し、大容量化した場合のサイズやコスト増を抑えることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、実施の形態1のインバータ装置の回路構成例を示す図である。
【図2】図2は、実施の形態2のインバータ装置の回路構成例を示す図である。
【図3】図3は、実施の形態3のインバータ装置の回路構成例を示す図である。
【図4】図4は、実施の形態4のインバータ装置の回路構成例を示す図である。
【図5】図5は、抵抗、ダイオードおよびツェナーダイオードを備えない場合のMOSFETのドレイン−ソース間電圧の変化の様子の一例を示す図である。
【図6】図6は、抵抗、ダイオードおよびツェナーダイオードを備える場合のMOSFETのドレイン−ソース間電圧の変化の様子の一例を示す図である。
【図7】図7は、インバータ装置の実施の形態5の実装例を示す概略図である。
【図8】図8は、実施の形態1〜4のインバータ装置を備える空気調和機の室外ユニットの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明にかかるインバータ装置および空気調和機の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0010】
実施の形態1.
図1は、本発明にかかるインバータ装置の実施の形態1の回路構成例を示す図である。図1に示すように、本実施の形態のインバータ装置は、交流電源1、ダイオード2−1〜2−4、リアクトル3、平滑コンデンサ4、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)5、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)6−1〜6−6、ダイオード7−1〜7−6、サーミスタ(温度検出素子)8、電流検出回路9、温度検出回路10およびインバータ制御部11を備える。
【0011】
ダイオード2−1〜2−4は、交流電源1から供給される交流電力を直流電力に変換する整流回路21を構成する。なお、整流回路21の回路構成は図1の例に限定されない。リアクトル3は力率を改善するために整流回路21に接続されている。また、平滑コンデンサ4は、リアクトル3を介して整流回路21に並列に接続されている。
【0012】
IGBT6−1〜6−6およびダイオード7−1〜7−6は、インバータ主回路22を構成する。インバータ主回路22は、スイッチングによりモータ(M)12へ電流を供給するとともにモータ12から入力される直流電力を交流電力へ変換する。インバータ主回路22は、平滑コンデンサ4と並列に接続されており、インバータ主回路22の3相の各出力は1つのモータ12に接続されている。インバータ主回路22に接続される負荷はモータ12に限定されない。また、インバータ主回路22の構成は、図1の例に限定されない。IGBT6−1,6−3,6−5は、上アームのスイッチング素子であり、IGBT6−2,6−4,6−6は、下アームのスイッチング素子である。
【0013】
MOSFET5はインバータ主回路22のスイッチング素子(IGBT6−1〜6−6)を保護するために設けられている。MOSFET5としてはノーマリーオン形の素子を用い、耐圧はインバータ主回路22のIGBT6−1〜6−6やダイオード7−1〜7−6よりも低い耐圧のものを使用する。電流検出回路9はMOSFET5の基準オン抵抗(所定の基準温度における規定値または測定値等)に基づいて(MOSFET5のオン抵抗とMOSFET5のドレイン−ソース間電圧とに基づいて)電流値を検出する電流検出回路であり、検出された電流値をインバータ制御部11に伝達する。インバータ制御部11は、電流検出回路9で検出された電流値に基づいて所望のスイッチングパターンをIGBT6−1〜6−6の駆動回路へ出力する。
【0014】
サーミスタ8は、MOSFET5の近傍に取り付けられており、温度検出回路10はサーミスタ8により検出(測定)された温度情報をMOSFET5の温度情報としてインバータ制御部11に伝達する。本実施の形態では、MOSFET5の近傍にサーミスタ8を実装することにより、MOSFET5のオン抵抗に基づいて検出された電流値を温度により補正することができる。
【0015】
次に本実施の形態の動作について説明する。インバータ制御部11がモータ12を所望の速度で回転させる(駆動する)ためのスイッチングパターンをインバータ主回路22へ入力すると、インバータ主回路22のIGBT6−1〜6−6がインバータ制御部11からの入力に基づいてスイッチングすることにより、インバータ主回路22の3相の出力からモータ12に電流が流れ、モータ12が所望の速度で回転する。
【0016】
モータ12の回転中にはMOSFET5に電流が流れる。IGBT6−1〜6−6等を過電流から保護するために、モータ12の運転中は常にインバータ主回路22内の電流を検出する必要があり、MOSFET5はノーマリーオン形の素子を用いることが望ましいが、ノーマリーオフ形の素子を用いてもよい。ノーマリーオン形の素子を用いると、常にオンであるため部品の耐圧(例えば30V以下)は高い必要がない。このため、ノーマリーオン形の素子を用いることで、部品定格が低く安価である、オン抵抗の低い(例えば、10mΩ以下)MOSFET5により電流検出を実現することができる。さらに、ゲート電圧を印加するのみの簡易的な回路でドレイン電流を流さないことができ、ノーマリーオン形のMOSFET5を遮断するための大掛かりな駆動回路が不要であるため、安価で構成できる。
【0017】
温度検出回路10は、MOSFET5の近傍に取り付けられたサーミスタ8により測定された温度情報をMOSFET5の温度情報としてインバータ制御部11に伝達する。インバータ制御部11は、MOSFET5のオン抵抗に基づいて検出した電流値を、温度検出回路10から取得した温度情報に基づいて補正する。MOSFET5のオン抵抗は、温度に依存して変化する。例えば、予めMOSFET5のオン抵抗の温度特性を取得し(または仕様値等を用い)、この温度特性に基づいて補正を行うための温度情報に対する補正係数のテーブル等をインバータ制御部11が保持しておく。インバータ制御部11は、温度情報に基づいて補正係数を用いて基準オン抵抗を用いて補正して電流値を求める。または、補正係数を電流に対する補正係数として求めておき、基準オン抵抗に基づいて求めた電流値を補正係数で補正してもよい。
【0018】
インバータ制御部11は、補正後の電流値をインバータ主回路22のインバータ制御やインバータ主回路22のスイッチング素子の保護のために用いる。
【0019】
サーミスタ8は、MOSFET5のパッケージに内蔵できるなど、その構造の性質上セメント抵抗よりもMOSFET5の近傍に実装できる。このため、温度の検出精度や応答性を高くすることができ、セメント抵抗を用いる場合より高精度なインバータ制御を実現できる。
【0020】
また、MOSFET5のパッケージは通常ヒートシンクなどの放熱部品への取り付けが容易であるため、放熱性を高めることができ、大容量のインバータ装置に適用した場合のサイズやコスト増を抑えることができる。
【0021】
なお、MOSFET5として、ワイドギャップ半導体を用いてもよい。ワイドバンドギャップ半導体としては、例えば、炭化珪素、窒化ガリウム系材料又はダイヤモンドがある。
【0022】
このようなワイドバンドギャップ半導体によって形成されたMOSFET5は、耐電圧性が高く、許容電流密度も高いため、MOSFET5の小型化が可能であり、これら小型化されたMOSFET5を用いることにより、これらの素子を組み込んだモジュールの小型化が可能となる。
【0023】
またワイドバンドギャップ半導体は、耐熱性も高いため、ヒートシンクの放熱フィンの小型化や、水冷部の空冷化が可能であるので、モジュールの一層の小型化が可能になる。
【0024】
更にワイドバンドギャップ半導体は、電力損失が低いため、MOSFET5の高効率化が可能であり、延いてはモジュールの高効率化が可能になる。
【0025】
また、ワイドギャップ半導体は温度による変化が少ないため、MOSFET5にワイドバンドギャップ半導体を用いる場合にはサーミスタ8と温度検出回路10を備える必要はない。
【0026】
なお、本実施の形態では、交流電源1が単層であり、交直変換部(整流回路21、リアクトル3、平滑コンデンサ4)が図1に示すような単層パッシブ型である場合を示しているが、交流電源1を多相(例えば三相)であり交直変換部が多相パッシブ型であってもよい。また、交直変換部の構成は、図1の構成に限らず、例えばACチョッパー、DCチョッパー等を適用した構成等どのような構成であってもよい。
【0027】
また、本実施の形態では、ノーマリーオン形のMOSFET5を用いているが、MOSFET5の変わりにノーマリーオン形のFETを用いてもよい。
【0028】
以上のように、本実施の形態では、インバータ主回路22の電流検出にノーマリーオン形のMOSFET5を用いるようにした。そのため、発生する熱を効率よく放熱し、大容量化した場合のサイズやコスト増を抑えることができる。
【0029】
実施の形態2.
図2は、本発明にかかるインバータ装置の実施の形態2の回路構成例を示す図である。図2に示すように、本実施の形態のインバータ装置は、実施の形態1のMOSFET5およびサーミスタ8の代わりにMOSFET5−1〜5−3およびサーミスタ8−1〜8−3を備える以外は、実施の形態1のインバータ装置と同様である。実施の形態と同様の機能を有する構成要素は、実施の形態1と同一の符号を付して重複する説明を省略する。インバータ主回路部22aは、実施の形態1のIGBT6−1〜6−6およびダイオード7−1〜7−6(インバータ主回路22)とMOSFET5−1〜5−3で構成される。
【0030】
実施の形態1では、インバータ主回路22に流れる電流を1つのMOSFET5によって検出していたが、本実施の形態では、インバータ主回路22にMOSFET5−1〜5−3を追加してインバータ主回路部22aとし、各相の下アームのIGBT6−2,6−4,6−6のエミッタ電流を検出する。従って、電流検出回路9は、相ごとに電流値を取得し、取得した相ごとに電流値をインバータ制御部11へ伝達する。MOSFET5−1〜5−3としては、実施の形態1のMOSFET5と同様にノーマリーオン形の素子を用いる。
【0031】
また、サーミスタ8−i(i=1,2,3)はMOSFET5−iの近傍に取り付けられる。温度検出回路10は、サーミスタ8−1〜8−3がそれぞれ測定した温度情報をMOSFET5−1〜5−3のそれぞれの温度情報として、インバータ制御部11へ伝達する。
【0032】
インバータ制御部11は、MOSFET5−1〜5−3ごとに実施の形態1と同様に温度情報を用いた補正を実施して補正後の電流値を求める。そして、インバータ制御部11は、補正後の各相の電流値を用いてインバータ制御およびスイッチング素子の保護を実施する。
【0033】
なお、MOSFET5−1〜5−3として、実施の形態1と同様にワイドギャップ半導体を用いてもよい。この場合、サーミスタ8−1〜8−3および温度検出回路10を備える必要はない。
【0034】
なお、本実施の形態では、交流電源1が単層であり、交直変換部(整流回路21、リアクトル3、平滑コンデンサ4)が図2に示すような単層パッシブ型である場合を示しているが、交流電源1を多相であり交直変換部が多相パッシブ型であってもよい。また、交直変換部の構成は、図2の構成に限らず、例えばACチョッパー、DCチョッパー等を適用した構成等どのような構成であってもよい。
【0035】
以上のように、本実施の形態では、インバータ主回路22の相ごとにMOSFET5−1〜5−3を用いて電流値を求めるようにした。そのため、相ごとの電流値を用いて制御を行うインバータ装置においても実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0036】
実施の形態3.
図3は、本発明にかかるインバータ装置の実施の形態3の回路構成例を示す図である。図3に示すように、本実施の形態のインバータ装置は、実施の形態1のインバータ装置に、遮断回路13、抵抗14およびダイオード15およびツェナーダイオード16を追加する以外は実施の形態1のインバータ装置と同様である。実施の形態と同様の機能を有する構成要素は、実施の形態1と同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0037】
遮断回路13は、MOSFET5をオフすることのできる遮断回路であり、MOSFET5のドレイン−ソース間に接続されている。また、抵抗14と、順方向に接続されたダイオード15と逆方向に接続されたツェナーダイオード16とが直列に接続されたものと、がMOSFET5に並列に接続されている。抵抗14は高抵抗値(例えば、100kΩ以上)の抵抗であり、ダイオード15の定格電圧とツェナーダイオード16の降伏電圧はMOSFET5を過電圧から保護するための電圧値に設定される。
【0038】
次に本実施の形態の動作について説明する。本実施の形態では、MOSFET5に遮断回路13が接続されているので、電流検出回路9がインバータ装置の過電流を検出したときに直接的に、またはインバータ制御部11を介して、遮断回路13にMOSFET5のオフを指示する信号を出力する。遮断回路13は、電流検出回路9またはインバータ制御部11からMOSFET5のオフを指示する信号を受信すると、MOSFET5のゲート−ソース間に電圧を与えてMOSFET5をオフにする。このように、遮断回路13を備えることにより、MOSFET5として定格電圧の低いMOSFETを用いることができる。
【0039】
また、抵抗14とダイオード15とツェナーダイオード16を備えることにより、MOSFET5のオフ時の跳ね上がり電圧からMOSFET5を保護することができる。なお、MOSFET5のオフ時の跳ね上がり電圧からMOSFET5を保護するための回路(保護回路)の構成は、図3の例(抵抗14とダイオード15とツェナーダイオード16)に限定されない。
【0040】
また、MOSFET5を駆動する直流電源と、インバータ主回路22の下アームに使われるスイッチング素子を駆動する直流電源をひとつの直流電源で共用することが可能である。この場合、MOSFET5のオフ時には、IGBT6−2,6−4,6−6のエミッタの電位が不定となりインバータ主回路22の3相下アームのIGBT6−2,6−4,6−6のゲート−エミッタ間に駆動電圧を保持することができないため、3相下アームがおのずとオフすることになる。このため、インバータ主回路22の3相下アームのIGBT6−2,6−4,6−6をオフするためにインバータ制御部11からのモータ駆動のためのパターンを極めて短い時間で止める必要がなくなり、インバータ主回路22の3相下アームのIGBT6−2,6−4,6−6をオフするまでの時間も短縮することができる。以上述べた以外の本実施の形態の動作は実施の形態1と同様である。
【0041】
なお、本実施の形態では、交流電源1が単層であり、交直変換部部(整流回路21、リアクトル3、平滑コンデンサ4)が図3に示すような単層パッシブ型である場合を示しているが、交流電源1を多相であり交直変換部が多相パッシブ型であってもよい。また、交直変換部の構成は、図3の構成に限らず、例えばACチョッパー、DCチョッパー等を適用した構成等どのような構成であってもよい。
【0042】
以上のように、本実施の形態では、MOSFET5を遮断する遮断回路13を備え、電流検出回路9がインバータ装置の過電流を検出した場合に、遮断回路13がMOSFET5をオフするようにした。このため、実施の形態1と同様の効果が得られるとともに、電流検出のために安価な定格電圧の低いMOSFETを採用しつつ簡単な保護機能で実施の形態1よりも信頼性の高いインバータ装置を得ることができる。
【0043】
実施の形態4.
図4は、本発明にかかるインバータ装置の実施の形態4の回路構成例を示す図である。図4に示すように、本実施の形態のインバータ装置は、実施の形態2のインバータ装置に、遮断回路13、抵抗14−1〜14−3、ダイオード15−1〜15−3およびツェナーダイオード16−1〜16−3を追加する以外は実施の形態2のインバータ装置と同様である。実施の形態と同様の機能を有する構成要素は、実施の形態2と同一の符号を付して重複する説明を省略する。インバータ主回路部22bは、実施の形態1のIGBT6−1〜6−6およびダイオード7−1〜7−6(インバータ主回路22)と、MOSFET5−1〜5−3と、抵抗14−1〜14−3と、ダイオード15−1〜15−3と、ツェナーダイオード16−1〜16−3と、で構成される。
【0044】
本実施の形態では、実施の形態3と同様にMOSFET5−1〜5−3をオフするための遮断回路13を備える。本実施の形態では、遮断回路13は、電流検出回路9またはインバータ制御部11が、相ごとに検出した電流値に基づいて過電流を検出した相に接続するMOSFET5−1〜5−3のオフを指示する信号を遮断回路13へ出力する。遮断回路13は、オフを指示する信号を受信すると、指示されたMOSFET5−1〜5−3のゲート−ソース間に電圧を与えてオフを指示されたMOSFET5−1〜5−3をオフにする。
【0045】
また、抵抗14−1〜14−3とダイオード15−1〜15−3とツェナーダイオード16−1〜16−3とを、MOSFET5−1〜5−3ごとに備えることにより、MOSFET5−1〜5−3のオフ時の跳ね上がり電圧からMOSFET5−1〜5−3を保護することができる。
【0046】
図5は、抵抗14−1〜14−3、ダイオード15−1〜15−3およびツェナーダイオード16−1〜16−3を備えない場合のMOSFET5−1〜5−3のドレイン−ソース間電圧の変化の様子の一例を示す図である。図6は、抵抗14−1〜14−3、ダイオード15−1〜15−3およびツェナーダイオード16−1〜16−3を備える場合のMOSFET5−1〜5−3のドレイン−ソース間電圧の変化の様子の一例を示す概念図である。
【0047】
図5に示すように、抵抗14−1〜14−3、ダイオード15−1〜15−3およびツェナーダイオード16−1〜16−3を備えない場合には、MOSFET5−1〜5−3のオフ時にドレイン−ソース間電圧の跳ね上がりが生じ、この電圧は最大で平滑コンデンザ4の両端電圧レベルまで上昇する。したがって、抵抗14−1〜14−3、ダイオード15−1〜15−3およびツェナーダイオード16−1〜16−3を備えない場合は、図5のようにMOSFET5−1〜5−3の耐圧レベルを超える可能性がある。
【0048】
これに対し、抵抗14−1〜14−3、ダイオード15−1〜15−3およびツェナーダイオード16−1〜16−3を備える場合には、図6に示すように、MOSFET5−1〜5−3のオフ時にドレイン−ソース間電圧の跳ね上がりを抑えることができる。このため、MOSFET5−1〜5−3のオフ時にMOSFET5−1〜5−3を保護することができる。
【0049】
なお、本実施の形態では、交流電源1が単層であり、交直変換部(整流回路21、リアクトル3、平滑コンデンサ4)が図4に示すような単層パッシブ型である場合を示しているが、交流電源1を多相であり交直変換部が多相パッシブ型であってもよい。また、交直変換部の構成は、図4の構成に限らず、例えばACチョッパー、DCチョッパー等を適用した構成等どのような構成であってもよい。
【0050】
以上のように、本実施の形態では、インバータ主回路22の相ごとにMOSFET5−1〜5−3を備えて電流値を検出する場合に、MOSFET5−1〜5−3を遮断する遮断回路13を備え、電流検出回路9がインバータ装置の過電流を検出すると、遮断回路13がMOSFET5−1〜5−3をオフするようにした。このため、実施の形態2と同様の効果が得られるとともに、電流検出のために安価な定格電圧の低いMOSFETを採用しつつ簡単な保護機能で実施の形態2よりも信頼性の高いインバータ装置を得ることができる。
【0051】
実施の形態5.
図7は、本発明にかかるインバータ装置の実施の形態5の実装例を示す概略図である。本実施の形態では、実施の形態1〜4で述べた回路構成のインバータ装置の実装例について説明する。
【0052】
図7において、MOSFETモジュール30は、実施の形態1,3で述べたMOSFET5を内蔵するパッケージであり、パワーモジュール31には、スイッチング素子(IGBT6−1〜6−6)等を備えるインバータ主回路(インバータ主回路22)が内蔵されている。または、実施の形態2,4のインバータ装置の場合、MOSFETモジュール30は実施の形態2,4で述べたMOSFET5−1〜5−3である。また、実施の形態3,実施の形態4のインバータ装置の場合には、抵抗14とダイオード15とツェナーダイオード16、または抵抗14−1〜14−3とダイオード15−1〜15−3とツェナーダイオード16−1〜16−3と、は、MOSFETモジュール30に内蔵されていてもよいし、MOSFETモジュール30と別のモジュールとして実装されていてもよい。
【0053】
サーミスタ8(またはサーミスタ8−1〜8−3)は、MOSFETモジュール30の近傍に実装されるかMOSFETモジュール30内に実装される。MOSFETモジュール30とパワーモジュール31は同一のプリント基板32に搭載され、ヒートシンク33の同一平面状にネジ34により実装される。
【0054】
以上のように、MOSFETモジュール30をヒートシンク33に実装することによりMOSFET5(またはMOSFET5−1〜5−3)により発生する熱を良好な放熱方式で放熱することができる。このため、大電流のインバータ装置を提供することができる。またMOSFETモジュール30をパワーモジュール31と同一のヒートシンク33に実装することにより、放熱部品を共用することができる。
【0055】
なお、実施の形態2,4のインバータ装置の場合、MOSFETモジュール30を設けずに、MOSFET5−1〜5−3(実施の形態4の場合は抵抗14−1〜14−3とダイオード15−1〜15−3とツェナーダイオード16−1〜16−3についても)をパワーモジュール31のパッケージ内に内蔵するようにしてもよい。また、実施の形態1,3のインバータ装置の場合にも、MOSFETモジュール30を設けずに、MOSFET5(実施の形態3の場合は抵抗14とダイオード15とツェナーダイオード16についても)をパワーモジュール31のパッケージ内に内蔵するようにしてもよい。このように、MOSFET5(またはMOSFET5−1〜5−3)とサーミスタ8(またはサーミスタ8−1〜8−3)等をパワーモジュール31に内蔵することにより、さらに小型で、実装制約の少ないインバータ装置を提供することができる。
【0056】
実施の形態6.
図8は、本発明にかかるインバータ装置を備える空気調和機の室外ユニット40の実施の形態6の構成例を示す図である。図8に示すように、室外ユニット40は、ファン41、インバータ装置42と、冷媒を圧縮する圧縮機43と、を備え、図示しない室内ユニット等とともに空気調和機を構成する。
【0057】
インバータ装置42は、実施の形態1〜実施の形態5で説明したインバータ装置であり、室外ユニット40内の例えば上部に取り付けられ、圧縮機43や圧縮機43内のモータ、また室内ユニットの送風用ファン等を制御する。なお、図6では、概観の概念を示しているため、配線等を図示していないが、インバータ装置42は、圧縮機43や送風ファン等と配線等により接続されている。インバータ装置42の構成および動作は、実施の形態1〜実施の形態4で説明した電源変換装置と同様である。
【0058】
したがって、本実施の形態によれば、実施の形態1〜実施の形態5のインバータ装置を空気調和機に適用することができ、発生する熱を効率よく放熱し、大容量化した場合のサイズやコスト増を抑え、安価で信頼性の高い空気調和機を得ることができる。
【符号の説明】
【0059】
1 交流電源
2,15,15−1〜15−3 ダイオード
3 リアクトル
4 平滑コンデンサ
5,5−1〜5−3 MOSFET
6−1〜6−6 IGBT
7−1〜7−6 ダイオード
8,8−1〜8−3 サーミスタ
9 電流検出回路
10 温度検出回路
11 インバータ制御部
12 モータ
13 遮断回路
14,14−1〜14−3 抵抗
16−1〜16−3 ツェナーダイオード
21 整流回路
22 インバータ主回路
30 MOSFETモジュール
31 パワーモジュール
32 プリント基板
33 ヒートシンク
34 ネジ
40 室外ユニット
41 ファン
42 インバータ装置
43 圧縮機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電力を交流電力に変換するインバータ主回路を備えるインバータ装置であって、
前記インバータ主回路に接続されるノーマリーオン形のFETと、
前記FETのドレイン−ソース間電圧に基づいて前記インバータ主回路に流れる電流を検出する電流検出回路と、
前記電流検出回路により検出された電流に基づいて前記インバータ主回路を制御するインバータ制御部と、
を備えることを特徴とするインバータ装置。
【請求項2】
前記FETをMOSFETとする、ことを特徴とする請求項1に記載のインバータ装置。
【請求項3】
前記MOSFETは、前記インバータ主回路に使用されるスイッチング素子の耐圧より低い耐圧を有する、ことを特徴とする請求項2に記載のインバータ装置。
【請求項4】
前記MOSFETの近傍に配置された温度検出素子と、
前記温度検出素子が検出した温度を温度情報として前記インバータ装置へ出力する温度検出回路と、
をさらに備え、
前記インバータ制御部は、前記温度情報に基づいて前記電流検出回路が検出した電流を補正する、ことを特徴とする請求項2または3に記載のインバータ装置。
【請求項5】
交流電力を直流電力に変換する整流回路、
をさらに備え、
前記MOSFETは、前記インバータ主回路と前記整流回路とを接続する母線に接続される、ことを特徴とする請求項2、3または4に記載のインバータ装置。
【請求項6】
前記インバータ主回路は、相ごとに上アームおよび下アームのスイッチング素子を備え、
前記MOSFETを相ごとに備え、
前記MOSFETは、相ごとの下アームのスイッチング素子にそれぞれ接続される、ことを特徴とする請求項2、3または4に記載のインバータ装置。
【請求項7】
前記電流検出回路が過電流を検出した場合に、前記MOSFETをオフする遮断回路、
をさらに備える、ことを特徴とする請求項2〜6のいずれか1つに記載のインバータ装置。
【請求項8】
前記MOSFETに並列に接続された抵抗と、
前記MOSFETに並列に接続されたダイオードおよびツェナーダイオードと、
を備え、
順方向に接続された前記ダイオードと逆方向に接続された前記ツェナーダイオードとが直列に接続される、ことを特徴とする請求項7に記載のインバータ装置。
【請求項9】
前記MOSFETを駆動する直流電源と、前記インバータ主回路の下アームの前記スイッチング素子を駆動する直流電源と、を同一の直流電源とする、ことを特徴とする請求項2〜8のいずれか1つに記載のインバータ装置。
【請求項10】
ヒートシンク、
をさらに備え、
前記MOSFETと前記インバータ主回路とを前記ヒートシンクの同一の平面上に実装する、ことを特徴とする請求項2〜9のいずれか1つに記載のインバータ装置。
【請求項11】
前記MOSFETと前記インバータ主回路とを同一パッケージ内に実装する、ことを特徴とする請求項2〜10のいずれか1つに記載のインバータ装置。
【請求項12】
前記MOSFETはワイドバンドギャップ半導体により形成されていることを特徴とする請求項2〜11のいずれか1つに記載のインバータ装置。
【請求項13】
前記ワイドバンドギャップ半導体は、炭化珪素、窒化ガリウム系材料またはダイヤモンドであることを特徴とする請求項12に記載のインバータ装置。
【請求項14】
交流電力を直流電力に変換する交直変換部、を備え、
前記インバータ主回路は、前記交直変換部により変換された直流電力を交流電力に変換する、ことを特徴とする請求項1〜12のいずれか1つに記載のインバータ装置。
【請求項15】
前記交直変換部に入力される交流電力を単相交流電力とする、ことを特徴とする請求項14に記載のインバータ装置。
【請求項16】
前記交直変換部に入力される交流電力を多相交流電力とする、ことを特徴とする請求項14に記載のインバータ装置。
【請求項17】
前記交直変換部は、直流チョッパー回路を備える、ことを特徴とする請求項14、15または16に記載のインバータ装置。
【請求項18】
前記交直変換部は、交流チョッパー回路を備える、ことを特徴とする請求項14、15または16に記載のインバータ装置。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれか1つに記載のインバータ装置、
を備えることを特徴とする空気調和機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−182921(P2012−182921A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−44687(P2011−44687)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】