説明

インバート部の掘削管理方法

【課題】インバート部を容易かつ精度良く測量しながら、インバート部を必要以上に深く掘削する過掘り部が形成されてしまうことを極力防ぐインバート部の掘削管理方法を提供することを目的とする。
【解決手段】ノンプリズムで測距・測角が可能なトータルステーション10と、インバート部2の設計断面座標が入力された演算装置20と、出力手段31および入力手段を有する携帯情報端末30とを接続してなる測量システムによって、まず、掘削前のインバート部2を測量し、工事車両3による掘削開始後、掘削途中のインバート部2を任意の回数測量し、さらに、掘削終了後にインバート部2を測量することを特徴とするインバート部2の掘削管理方法。これにより、プリズムを用いずにインバート部を容易に測量できるとともに、掘削前から掘削後にわたって測量することで測量精度に優れるので、過掘り部の形成も極力防げる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測量システムによってインバート部を測量しながら、工事車両によってインバート部の掘削を行うインバート部の掘削管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばNATM工法においては、アーチ部分の掘削直後のトンネル地山にコンクリートを吹き付けて覆工しているが、地質が不安定な場合には、特許文献1に記載のようにインバート部を掘削し、このインバート部に別途にコンクリートを打設して施工している。
また、このようにインバート部を掘削する際は、例えば、インバート部の断面方向に沿って水糸を水平に張り、この水糸からの掘削深度をスタッフ等によって測量しながら行っている。この時、インバート部の測量点を水糸に沿って細分化することによって、インバート部を精度良く掘削できるようになっている。
【特許文献1】特開平10−115187号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、従来のようにスタッフ等による測量点を細分化するとなると、手間や時間がかかるため、測量点を少なくする場合があるが、その分、インバート部の掘削精度が低下してしまうという問題がある。そして、このように掘削精度が低下すると、インバート部を必要以上に深く掘削する過掘り部が形成されてしまう場合があり、これによって、インバート部に打設するコンクリートの量が多くなり、好ましくない。
そこで、例えばトータルステーション等の測量機器を用いて、インバート部を精度良く測量しながら、掘削を行いたいという要望がある。しかしながら、測量を行うトータルステーションが、光波を反射するターゲットであるプリズムを必要とするものであった場合、精度良く測量を行うためには、このプリズムを多数の測量点にいちいち設置したり、作業者がプリズムを持って測量点間を移動したりしなければならず、手間である。また、これによって、測量の際は、掘削作業を長時間にわたって中断しなければならないという問題があった。
【0004】
本発明の課題は、インバート部を容易かつ精度良く測量しながら、インバート部を必要以上に深く掘削する過掘り部が形成されてしまうことを極力防ぐことが可能なインバート部の掘削管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、ノンプリズムで測距・測角が可能なトータルステーションと、
少なくともトンネルのインバート部の設計断面座標データが入力された演算装置と、
この演算装置による演算結果を出力する出力手段と、前記インバート部の設計断面に沿って任意に設定されるとともに前記トータルステーションで前記インバート部を測量する際の基準となる複数の測量基準点の位置情報を入力する入力手段とを有する携帯情報端末と、を互いにデータの送受信が可能な状態で接続してなり、
前記携帯情報端末の入力手段によって、前記複数の測量基準点の位置情報を入力した後、これら複数の測量基準点の位置情報に基づき、前記トータルステーションで前記インバート部を測量し、得られた測量点データを前記演算装置に送信して該測量点の3次元座標をそれぞれ求めるとともに、該3次元座標と前記測量基準点の座標との離れ距離から該測量基準点におけるインバート部の掘削深度を演算して導き出し、さらに、この演算結果を前記携帯情報端末の出力手段によって出力する測量システムによって、前記インバート部を測量しながら、工事車両によって前記インバート部の掘削を行うインバート部の掘削管理方法であって、
前記トータルステーションを、前記工事車両の作業範囲外であるとともに前記インバート部を測量可能な所定の位置に据え付けてから、前記複数の測量基準点の位置情報に基づき、前記測量システムによって、掘削前の前記インバート部を測量し、
その後、前記工事車両によって前記インバート部の掘削を開始し、この工事車両による前記インバート部の掘削の途中に、前記複数の測量基準点の位置情報に基づき、前記測量システムによって、掘削途中の前記インバート部を任意の回数測量し、
前記工事車両によって前記インバート部の掘削が終了した後、前記複数の測量基準点の位置情報に基づき、前記測量システムによって、掘削後の前記インバート部を測量することを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のインバート部の掘削管理方法において、前記携帯情報端末を前記工事車両に搭載しておくことを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のインバート部の掘削管理方法において、前記トータルステーションを、前記インバート部の上方に位置するトンネルの天端近傍に据え付けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ノンプリズムで測距・測角が可能なトータルステーションによってインバート部を測量しながら、工事車両によってインバート部を掘削することができるので、光波を反射するターゲットのプリズムを必要とするトータルステーションによって測量する場合に比して、プリズムを多数の測量点にいちいち設置したり、作業者がプリズムを持って測量点間を移動したりする手間を省くことができ、インバート部を容易に測量することができる。
しかも、インバート部の設計断面に沿って任意に設定される複数の測量基準点に基づき、トータルステーションによってインバート部を測量するとともに、少なくとも掘削前と、掘削の途中と、掘削後のインバート部を測量するので、インバート部を精度良く測量することができる。
さらに、掘削の途中におけるインバート部の測量回数を複数回行うことによって、インバート部の測量をより精度良く行うことができる。
その上、インバート部の設計断面座標データが演算装置に入力され、このインバート部の設計断面に沿って複数の測量基準点が設定されており、これら複数の測量基準点に基づいて、トータルステーションによる測量が行われるので、掘削前から掘削後の複数回にわたってインバート部の測量を行っても、測量精度が低下することがなくなり、インバート部を常に精度良く測量を行うことができる。
また、少なくとも掘削前と、掘削の途中と、掘削後のインバート部を精度良く測量するとともに、携帯情報端末の出力手段に出力される演算結果を確認しながら、インバート部を掘削することができるので、工事車両によるインバート部の掘削精度が低下することを防ぎ、インバート部を必要以上に深く掘削する過掘り部が形成されてしまうことを極力防ぐことができる。これによって、インバート部に打設するコンクリートの量が多くなることを確実に防ぐことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0010】
図1〜図3は本発明を適用した一実施形態の構成を示すもので、1はトンネル、2はインバート部、3は工事車両であり、10はトータルステーション、20は演算装置、30は携帯情報端末である。
そして、本実施の形態における測量システムは、前記トータルステーション10と、演算装置20と、携帯情報端末30と、を互いにデータの送受信が可能な状態で接続してなるものである。なお、これらトータルステーション10と、演算装置20と、携帯情報端末30との接続は有線通信または無線通信である。
【0011】
なお、本実施の形態のトンネル1は、例えばNATM工法によって形成されるものであり、アーチ部分の掘削直後のトンネル地山にコンクリートを吹き付けて覆工している。
また、前記インバート部2は、前記トンネル1の底部を指すものであり、前記トンネル1の側壁基部間を結ぶ逆アーチ型のものである。このようなインバート部2を備えることによって前記トンネル1は、覆工コンクリートを閉合断面として耐力を増加させ、沈下・変状を防止することができる。
そして、本実施の形態において、前記インバート部2は、トンネル1の坑口から切羽へと向かう方向に沿って掘削とコンクリート覆工とを繰り返して施工されてなり、コンクリートを覆工した既設コンクリート部2bと、掘削対象部2aと、未掘削部2cとを備えている。また、このインバート部2は、油圧ショベル等の工事車両3によって掘削される。
【0012】
前記トータルステーション10は、例えば、少なくとも、視準用望遠鏡から視準点に向けて出射した測距光(レーザー光)とその戻り光により器械点から視準点までの距離を測距する測距手段と、視準用望遠鏡の視準軸に対する前記視準点の水平角と鉛直角を測角する測角手段と、これら測距・測角手段によって得られた測量データを記憶する記憶手段と、視準用望遠鏡を水平方向および鉛直方向に旋回駆動させる旋回駆動手段と、前記演算装置20および携帯情報端末30とデータの送受信を行う通信手段と、これら測距手段、測角手段、記憶手段、旋回駆動手段、通信手段をマイコン制御する制御手段等を備えているものである。
特に、このトータルステーション10は、視準点に前記レーザー光を照射し、戻ってくる僅かな乱反射光を使って視準点までの距離を測定することで、従来のような測距光を反射するターゲットであるプリズムを必要としないノンプリズム型のものである。
また、このトータルステーション10は、上述のように旋回駆動手段を備えているので、レーザー光を、図4に示すように、順々に照射したり、往復させて照射したり、水平方向および鉛直方向との組み合わせによる斜め方向や円方向へと照射したりすることができる。
【0013】
なお、このトータルステーション10は、ターゲットであるプリズムを用いるプリズム方式によっても測量可能である。
これにより、前記トータルステーション10の設置場所は、図1および図3に示すように、前記トンネル1内において予め座標が既知とされる少なくとも2点にプリズム11を設置するとともに、これら2点のプリズム11を視準可能な位置に前記トータルステーション10を据え付け、前記2点のプリズム11を視準して得た測距・測角データを前記演算装置20に伝送し、後方交会法により前記トータルステーション10の設置点の3次元座標を求めることにより設定される。
また、このトータルステーション10の設置場所は、後方交会法によって得られた前記設置点であるだけでなく、前記工事車両3の作業範囲外であるとともに前記インバート部2を測量可能な位置であるように設定されている。
【0014】
なお、本実施の形態のトータルステーション10は、図2および図3に示すように、前記インバート部2の上方に位置するトンネル1の天端1aに固定された設置台12に設置されるようにして、このトンネル1の天端1a近傍に据え付けられている。その他、前記既設コンクリート部2bに架台(図示せず)を設置し、この架台上に前記トータルステーション10を据え付けるようにしてもよい。
【0015】
また、前記演算装置20は、前記トータルステーション10および携帯情報端末30とデータの送受信が可能な管理用コンピュータであり、予め少なくとも前記トンネル1のインバート部2の設計断面座標データが入力されている。
この設計断面座標データは掘削設計値であり、前記インバート部2は、この設計断面座標データに基づいて掘削されるようになっている。すなわち、前記インバート部2の掘削対象部2aを前記工事車両3によって、どの程度の高さまで掘削すればよいかを判断するための判断材料となる。なお、この設計断面座標データは、掘削設計値だけでなく、既設コンクリートの仕上げ面までの高さを示すデータを含むものでもよい。
その他、この演算装置20には、前記トンネル1全体の設計断面座標データや各種データが入力され、トンネル1全体の施工管理を行うものとしてもよい。
【0016】
また、前記携帯情報端末30は、前記トータルステーション10および演算装置20とデータの送受信が可能となっており、前記演算装置20による演算結果を出力する出力手段31と、前記インバート部2の設計断面に沿って任意に設定されるとともに前記トータルステーション10で前記インバート部2を測量する際の基準となる複数の測量基準点10aの位置情報を入力する入力手段とを有する。
ここで、測量基準点10aとは、前記トータルステーション10から出射されるレーザー光の照射目標点であり、上述のように前記インバート部2の設計断面に沿って設定されるものである。したがって、前記インバート部2の設計断面座標データに基づく測量基準点10aの座標と、前記トータルステーション10によって実際に測量されて演算装置20によって導き出される座標とが略等しい場合は、工事車両3による掘削作業が設計通りに行われたことを示すこととなる。
【0017】
なお、前記出力手段31は、例えば図5に示すようなモニター等の表示部や、印字機能を有する印刷部であり、前記入力手段は、図示はしないが、入力ボタンやタッチパネル等が採用される。
【0018】
ここで、前記複数の測量基準点10aの位置情報は、前記インバート部2の設計断面座標データに基づき、前記トンネル1の延在方向(x方向)に沿う所定の掘削範囲と、前記インバート部2の断面方向(y方向)に沿って測量基準点10aを配設する任意の数と、これらインバート部2の断面方向に沿って配設される複数の測量基準点10aの前記掘削範囲におけるピッチの値(例えば、メートル)とを含んでいる。
【0019】
なお、前記トンネル1は、その長手方向において所定間隔毎に区切ることにより複数の区域、例えば、旧道路公団表示ではステーション(STA.)という路線中心線位置(距離程)に分けられている。STA間隔は20mに設定されている。
したがって、トンネル1内において、例えばSTA108+6.05454とは、起点より2166.05454mの位置にあることを示している。
本例の計算式は以下のとおりである。
式)108×20+6.05454=2160+6.05454 単位m
そして、本実施の形態においては、それぞれのステーションに、000、001、002…等の番号が付されている。
したがって、前記トンネル1の延在方向(x方向)に沿う所定の掘削範囲を、前記携帯情報端末30に入力する際は、例えば、ステーションの番号を適宜入力する。
【0020】
また、前記インバート部2の断面方向(y方向)に沿って測量基準点10aを配設する任意の数と、複数の測量基準点10aの前記掘削範囲におけるピッチの値とは、トンネル1自体の大きさ等に応じて適宜決定する。
【0021】
なお、本実施の形態においては、例えばステーション番号が049〜050の掘削範囲で、前記インバート部2の断面方向に沿って測量基準点10aを10箇所に配設し、これら測量基準点10aを前記掘削範囲に沿って2mピッチで配設する設定として、各入力項目を、前記入力手段によって入力すると、例えば図3に示すように、前記複数の測量基準点10aの位置情報を格子状に仮想構築することができる。
そして、前記複数の測量基準点10aは、前記インバート部2の設計断面(設計断面座標データ)に沿って、この仮想格子の交差点に配設されることとなる。
【0022】
ただし、前記複数の測量基準点10aの位置情報は、このように格子状に仮想構築する場合だけに限られるものではなく、前記複数の測量基準点10aを、前記トンネル1の延在方向に沿う所定の掘削範囲と、前記インバート部2の幅とで囲まれる範囲内でランダムに配設してなるものであってもよい。
このように前記複数の測量基準点10aをランダムに配設する場合は、前記トンネル1の延在方向に沿う所定の掘削範囲と、前記インバート部2の幅の値(例えば、メートル)を適宜入力する。さらに、所定の範囲内で測量基準点10aをランダムに配設するプログラムを前記携帯情報端末30内に設定しておいてもよいし、測量基準点10aを配設すべき位置を、タッチパネル等によって作業者が適宜入力するようにしてもよい。
【0023】
そして、以上のような複数の測量基準点10aに関する入力情報が、前記トータルステーション10および演算装置20に送信されて、測量時においては、前記トータルステーション10が、これら複数の測量基準点10aに向けてレーザー光を照射するように設定される。
【0024】
なお、前記トータルステーション10によって前記複数の測量基準点10aに向かってレーザー光を照射することで前記インバート部の掘削対象部2aを測量する際に、図1に示すように、レーザー光が、この掘削対象部2aのトンネル地山に当たった部分が、実際に測量される測量点10bである。
【0025】
得られた測量点10bデータは、前記演算装置20に送信して演算することで3次元座標を求めることができる。そして、この3次元座標と前記測量基準点10aの座標との離れ距離に基づいて、該測量基準点10aにおけるインバート部2の掘削深度を導き出すことができる。
この掘削深度は、図1に示すように、前記測量点10bの3次元座標(x,y,z)と、前記インバート部2の設計断面座標データに基づく測量基準点10aの座標(x,y,z)との差分を演算することによって導き出されている。
【0026】
なお、掘削深度の演算方法はこれに限られるものではなく、例えば、前記測量点10bの位置や、前記トータルステーション10によって求められる測距データおよび測角データ等に基づいて、周知の三角関数を用いた数学的手法により導き出されるものとしてもよい。
【0027】
以上のようにして導き出された掘削深度は、図5に示すように、前記出力手段31に出力される。出力画面のデザインは適宜変更可能であるが、本実施の形態では、例えば前記格子状に組まれた前記複数の測量基準点10aの位置情報に基づいて出力される。
【0028】
すなわち、図3に示すように、前記掘削対象部2aの既設コンクリート部2b側に、前記インバート部2の断面方向に沿って配設される複数の測量基準点10aが、平面視において一直線上に並んでいる。これを一列目とし、この一列目を仮想的にA−A線断面視したものが、前記出力手段31の第1表示部31aに表示されている。
そして、このA−A線断面図である第1表示部31aには、前記インバート部2の断面方向に沿って配置される複数の測量基準点10aと測量点10bとの離れ距離から導き出される掘削深度を数値化したものが表示されている。
【0029】
つまり、前記第1表示部31aでは、前記インバート部2の断面方向の両端部から中央付近にかけて、前記測量点10bが前記測量基準点10bよりも高い(浅い)部分に位置する掘削不足部分が表されている。なお、図示例における掘削深度の数値は「10〜35」の値となっており、単位は予め設定されたプログラムに従うものとする。
【0030】
また、前記インバート部2の断面方向の中央付近には、前記測量点10bが前記測量基準点10aと近い部分に位置する設計値クリア部分が表されている。なお、図示例における掘削深度の数値は「−5,0」の値となっている。
なお、掘削深度の数値「0」とは、前記インバート部2の設計断面座標データに基づく測量基準点10aの座標と、前記トータルステーション10によって実際に測量されて演算装置20によって導き出される座標とが略等しい場合を示している。
【0031】
また、前記インバート部2の断面方向の中央付近よりも右側には、前記測量点10bが前記測量基準点10aよりも低い(深い)部分に位置する過掘り部分が表されている。なお、図示例における掘削深度の数値は「−20,−20」の値となっている。
【0032】
したがって、例えば、これら数値の単位がセンチメートルだとすると、前記測量基準点10aよりも20センチメートル(または、これに近い値)深く掘ってしまうと過掘りであると評価することができることとなる。同様に、掘削不足や設計値クリアも評価できるので、作業者または工事車両3の操縦者は一目で確認することができ、掘削作業に反映させることができる。
【0033】
また、作業者または操縦者が掘削深度を識別する際は、上述のような数値による識別だけでなく、色分けなどによって識別できるようにしても良い。
すなわち、図5に示すように、例えば、前記インバート部2の設計断面に対する管理値Zを設定しておき、以下の測定結果により適宜色分けを行う。
・10≦Z:掘削不足:赤色
・−10<Z<10:設計値クリア:緑色
・Z≦−10:過掘り:黄色
これにより、前記工事車両3の操縦者が、掘削深度の数値を確認しなくても表示された色を認識するだけで、瞬時に掘削状況を把握できる。
なお、各数値は適宜変更可能であり、例えば以下のようにしてもよい。
・0<Z:掘削不足:赤色
・−10<Z≦0:設計値クリア:緑色
・Z≦−10:過掘り:黄色
【0034】
また、前記出力手段31において、第2表示部31bは図3に示すB−B線断面図であり、第3表示部31cは図3に示すC−C線断面図であり、第4表示部31dは図3に示すD−D線断面図であり、第5表示部31eは図3に示すE−E線断面図である。図示はしないが、この出力手段31の一画面に前記インバート部2の掘削に関する情報を表示しきれない場合は、例えばページ機能を備えさせることによって対応し、次ページに、図3に示すF−F線断面図やG−G線断面図を表示するようにしてもよい。
【0035】
次に、以上のような本実施の形態の測量システムによって、前記インバート部2を測量しながら、前記工事車両3によって前記インバート部2の掘削を行う方法について説明する。
なお、本実施の形態では、予め前記携帯情報端末30を前記工事車両3に搭載しておき、この工事車両3の操縦者が前記インバート部2の掘削状況を確認しながら掘削作業を行うようにする。
【0036】
まず、前記トータルステーション10を、図1〜図3に示すように、後方交会法によって得られた設置点に、かつ前記工事車両3の作業範囲外であるとともに前記インバート部2を測量可能な位置に据え付ける。
これによって、前記トータルステーション10の設置位置を固定して正確な測量を行えるとともに、前記工事車両3の作業を妨げることなく、前記インバート部2を確実に測量することができる。
【0037】
続いて、前記複数の測量基準点10aの位置情報に基づき、前記測量システムのトータルステーション10によって、掘削前の前記インバート部2を測量する。
これによって、前記工事車両3の操縦者は、掘削前の前記インバート部2の掘削対象部2aの状況を把握することができ、この掘削対象部2aをそれだけ掘削すればよいか、おおよその予測をもって作業を開始することができる。
【0038】
そして、図3に示すように、前記工事車両3によって前記インバート部2の掘削を開始する。
その後、前記工事車両3による前記インバート部2の掘削の途中に、前記複数の測量基準点10aの位置情報に基づき、前記測量システムのトータルステーション10によって、掘削途中の前記インバート部2を任意の回数測量する。
【0039】
ここで、任意の回数とは、少なくとも1回以上の回数であり、1回よりも2回、3回…と測量を行うことによって前記インバート部2の測量をより精度良く行うことができる。多数回にわたって測量を行っても工期等に影響が出なければ、特に回数は限定されない。
【0040】
なお、掘削の途中で前記インバート部2を測量する際は、前記工事車両3を前記インバート部2の掘削対象部2a外に一時撤退させておいてもよいが、前記トータルステーション10から出射されるレーザー光が前記工事車両3に照射されても、この工事車両3からの反射光は測量データとして認識しないように設定しておけば、前記工事車両3に係りなく前記インバート部2を測量できるので、好ましい。
【0041】
なお、前記工事車両3からの反射光は測量データとして認識しないように設定する方法としては、例えばレーザー光の反射態様が工事車両3と地山とで異なることを利用したり、一定以上の速度で動作するものを除外して測量を行ったりするなど、種々の方法が挙げられるが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0042】
そして、前記工事車両3によって前記インバート部2の掘削が終了した後、前記複数の測量基準点10aの位置情報に基づき、前記測量システムのトータルステーション10によって、掘削後の前記インバート部2を測量する。
これによって、前記掘削対象部2aの掘削状況を把握することができるので、例えば掘削不足部分が形成されていれば、その部分を前記工事車両3で掘削して調整したり、過掘り部が形成されていれば、その部分に掘削不足部分から出た土砂を埋め込んだりして、前記掘削対象部2aを均すことができる。
また、このように前記掘削対象部2aを均した後に、前記トータルステーション10によって最終的に前記インバート部2を測量してもよいものとする。
さらに、このように最終的に前記インバート部2を測量することで、この測量によって得られた測量データを基に、前記インバート部2に打設するコンクリートの量を、その打設前に正確に求めることができるので、前記インバート部2におけるコンクリートの打設管理も容易となる。
【0043】
本実施の形態によれば、ノンプリズムで測距・測角が可能な前記トータルステーション10によって前記インバート部2を測量しながら、前記工事車両3によってインバート部2を掘削することができるので、光波を反射するターゲットのプリズムを必要とするトータルステーションによって測量する場合に比して、プリズムを多数の測量点にいちいち設置したり、作業者がプリズムを持って測量点間を移動したりする手間を省くことができ、前記インバート部2を容易に測量することができる。
しかも、前記インバート部2の設計断面に沿って任意に設定される複数の測量基準点10aに基づき、前記トータルステーション10によって前記インバート部2を測量するとともに、少なくとも掘削前と、掘削の途中と、掘削後の前記インバート部2を測量するので、前記インバート部2を精度良く測量することができる。
さらに、掘削の途中における前記インバート部2の測量回数を複数回行うことによって、前記インバート部2の測量をより精度良く行うことができる。
その上、前記インバート部2の設計断面座標データが前記演算装置20に入力され、このインバート部2の設計断面に沿って前記複数の測量基準点10aが設定されており、これら複数の測量基準点10aに基づいて、前記トータルステーション10による測量が行われるので、掘削前から掘削後の複数回にわたって前記インバート部2の測量を行っても、測量精度が低下することがなくなり、前記インバート部2を常に精度良く測量を行うことができる。
また、少なくとも掘削前と、掘削の途中と、掘削後の前記インバート部2を精度良く測量するとともに、前記携帯情報端末30の出力手段31に出力される演算結果を確認しながら、前記インバート部2を掘削することができるので、前記工事車両3による前記インバート部2の掘削精度が低下することを防ぎ、前記インバート部2を必要以上に深く掘削する過掘り部が形成されてしまうことを極力防ぐことができる。これによって、前記インバート部2に打設するコンクリートの量が多くなることを確実に防ぐことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施の形態に係るインバート部を示す側断面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るインバート部を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るインバート部を示す平断面図である。
【図4】トータルステーションによる光波照射動作を示す概略図である。
【図5】携帯情報端末の出力手段の実施の形態を示す概略図である。
【符号の説明】
【0045】
1 トンネル
1a 天端
2 インバート部
2a 掘削対象部
2b 既設コンクリート部
2c 未掘削部
3 工事車両
10 トータルステーション
10a 測量基準点
10b 測量点
11 プリズム
12 設置台
20 演算装置
30 携帯情報端末
31 出力手段
31a 第1表示部(仮想A−A線断面)
31b 第2表示部(仮想B−B線断面)
31c 第3表示部(仮想C−C線断面)
31d 第4表示部(仮想D−D線断面)
31e 第5表示部(仮想E−E線断面)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノンプリズムで測距・測角が可能なトータルステーションと、
少なくともトンネルのインバート部の設計断面座標データが入力された演算装置と、
この演算装置による演算結果を出力する出力手段と、前記インバート部の設計断面に沿って任意に設定されるとともに前記トータルステーションで前記インバート部を測量する際の基準となる複数の測量基準点の位置情報を入力する入力手段とを有する携帯情報端末と、を互いにデータの送受信が可能な状態で接続してなり、
前記携帯情報端末の入力手段によって、前記複数の測量基準点の位置情報を入力した後、これら複数の測量基準点の位置情報に基づき、前記トータルステーションで前記インバート部を測量し、得られた測量点データを前記演算装置に送信して該測量点の3次元座標をそれぞれ求めるとともに、該3次元座標と前記測量基準点の座標との離れ距離から該測量基準点におけるインバート部の掘削深度を演算して導き出し、さらに、この演算結果を前記携帯情報端末の出力手段によって出力する測量システムによって、前記インバート部を測量しながら、工事車両によって前記インバート部の掘削を行うインバート部の掘削管理方法であって、
前記トータルステーションを、前記工事車両の作業範囲外であるとともに前記インバート部を測量可能な所定の位置に据え付けてから、前記複数の測量基準点の位置情報に基づき、前記測量システムによって、掘削前の前記インバート部を測量し、
その後、前記工事車両によって前記インバート部の掘削を開始し、この工事車両による前記インバート部の掘削の途中に、前記複数の測量基準点の位置情報に基づき、前記測量システムによって、掘削途中の前記インバート部を任意の回数測量し、
前記工事車両によって前記インバート部の掘削が終了した後、前記複数の測量基準点の位置情報に基づき、前記測量システムによって、掘削後の前記インバート部を測量することを特徴とするインバート部の掘削管理方法。
【請求項2】
前記携帯情報端末を前記工事車両に搭載しておくことを特徴とする請求項1に記載のインバート部の掘削管理方法。
【請求項3】
前記トータルステーションを、前記インバート部の上方に位置するトンネルの天端近傍に据え付けることを特徴とする請求項1または2に記載のインバート部の掘削管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−85311(P2010−85311A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−256282(P2008−256282)
【出願日】平成20年10月1日(2008.10.1)
【出願人】(000195971)西松建設株式会社 (329)