インパネモジュールの車両搭載方法
【課題】インパネモジュールを車室前部に組み付ける作業を容易かつ適正に行い得るようにする。
【解決手段】支持メンバ2の左右両端部に設けられた取付ブラケット6よりも車幅方向内方側部の下面側に形成された位置決め孔部に挿入される上向きのピン部8,9と支持メンバ2の受け座23と車両前後方向に面する被クランプ面部25とを有する搭載治具7を支持メンバ2の左右両側方部に装着する装着工程と、上記搭載治具7の被クランプ面部24を移送手段のクランプ部によりクランプするクランプ工程と、該移送手段により上記インパネモジュールを車室前部に移送して上記取付ブラケット6を車体側壁部に仮預けする仮預け工程と、その後に上記搭載治具を支持メンバから取り外すとともに上記取付ブラケットを締結ボルトにより車体側壁部に対して車幅方向に締結する締結工程とを備えた。
【解決手段】支持メンバ2の左右両端部に設けられた取付ブラケット6よりも車幅方向内方側部の下面側に形成された位置決め孔部に挿入される上向きのピン部8,9と支持メンバ2の受け座23と車両前後方向に面する被クランプ面部25とを有する搭載治具7を支持メンバ2の左右両側方部に装着する装着工程と、上記搭載治具7の被クランプ面部24を移送手段のクランプ部によりクランプするクランプ工程と、該移送手段により上記インパネモジュールを車室前部に移送して上記取付ブラケット6を車体側壁部に仮預けする仮預け工程と、その後に上記搭載治具を支持メンバから取り外すとともに上記取付ブラケットを締結ボルトにより車体側壁部に対して車幅方向に締結する締結工程とを備えた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車幅方向に延びる支持メンバにダッシュボードを組み合わせたインパネモジュールを車室前部に組み付けるインパネモジュールの車両搭載方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に示されるように、支持メンバ(ステアリングメンバ)を主体として各種部品が組み付けられたインパネモジュール(コクピットモジュール)を車体のダッシュ部等に取り付ける際に、上記支持メンバの両端部に把持用ブラケットを着脱可能に装着し、上記インパネモジュールを車体のダッシュ部に取り付けた場合に車体のフロントドア開口部に対して車幅方向外側に露出するように位置させた把持用ブラケットの被把持部を、上記搭載治具により車幅方向外側から把持しつつ、インパネモジュールを車両に搭載することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3698092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示されたインパネモジュールの車両搭載方法によれば、側面視でフロントドアの開口部からインパネモジュールの一部が露出しない構造であっても、上記把持用ブラケットをフロントドアの開口部よりも車両後方側に位置させることにより、ロボットや助力装置などのハンドリング装置を用いることなく、上記インパネモジュールを把持した状態で車室前部に組み付けることが可能である。しかし、上記インパネモジュールの車両搭載方法では、把持用ブラケットをダッシュボードの車両後方側へ突出させるための開口部等を該ダッシュボードの車室面側に形成する必要があり、上記把持用ブラケットをダッシュボードから取り外した後に、上記開口部等をカバー部材で覆わなければならないという問題があった。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、ダッシュボードに開口部を形成する等の手段を講じることなく、車幅方向に延びる支持メンバにダッシュボードを組み合わせたインパネモジュールを車室前部に組み付ける作業を容易かつ適正に行うことができるインパネモジュールの車両搭載方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、車幅方向に延びる支持メンバにダッシュボードを組み合わせたインパネモジュールを車室前部に組み付けるインパネモジュールの車両搭載方法であって、上記支持メンバの左右両端部に設けられた取付ブラケットよりも車幅方向内方側部の下面側に形成された位置決め孔部に挿入される上向きのピン部と支持メンバの受け座と車両前後方向に面する被クランプ面部とを有する搭載治具を支持メンバの左右両側方部に装着する装着工程と、上記搭載治具の被クランプ面部を移送手段のクランプ部によりクランプするクランプ工程と、該移送手段により上記インパネモジュールを車室前部に移送して上記取付ブラケットを車体側壁部に仮預けする仮預け工程と、その後に上記搭載治具を支持メンバから取り外すとともに上記取付ブラケットを締結ボルトにより車体側壁部に対して車幅方向に締結する締結工程とを備えたものである。
【0007】
請求項2に係る発明は、上記請求項1に記載のインパネモジュールの車両搭載方法において、上記車両の車室前壁には、車両前後方向に面したガイド孔部が形成され、かつ上記支持メンバを車室前部に移送する移送手段には、搭載治具の被クランプ面部をクランプ部によりクランプして車両前方側に移送する過程で上記ガイド孔部に挿入されるガイドピン部が設けられ、上記取付ブラケットを車体側壁部に仮預けする前に、該ガイドピン部が上記ガイド孔部に挿入されることによりインパネモジュールが車両の少なくとも幅方向に案内されて位置決めされるように構成されたものである。
【0008】
請求項3に係る発明は、上記請求項1または2に記載のインパネモジュールの車両搭載方法において、上記支持メンバが筒状体を有するとともに、その下面に2つの位置決め孔部が設けられ、該位置決め孔部に上記搭載治具に設けられた2つのピン部が係合されることにより、該搭載治具が支持メンバに位置決めされた状態で装着されるように構成されたものである。
【0009】
請求項4に係る発明は、上記請求項1〜3のいずれか1項に記載のインパネモジュールの車両搭載方法において、車両のメイン組立ラインにおける特定ステージで車体側壁部に対するインパネモジュールの搭載が行われるとともに、上記メイン組立ラインとは別のサブ組立ラインで上記支持メンバにダッシュボードを組み合わせるインパネモジュールのサブ組付が行われるように構成され、該サブ組立ラインの何れかの工程で上記搭載治具が支持メンバに装着されるように構成されたものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明では、搭載治具に設けられた上向きのピン部を支持メンバの下面に形成された位置決め孔部に挿入するとともに、該支持メンバの下面に上記搭載治具の受け座を当接させた状態で該搭載治具を支持メンバに装着するように構成したため、上記支持メンバの左右両端部に設けられた取付ブラケットの車幅方向内方側において、上記搭載治具を正確に位置決めした状態で上記支持メンバの下方側に配設することができる。したがって、上記移送手段のクランプ部によりクランプされる被クランプ部をダッシュボードに形成された開口部等から車両後方側へ突出させる等の手段を講じることなく、上記搭載治具の被クランプ面部を移送手段によりクランプした状態で、該移送手段を使用して上記インパネモジュールを車室内に搬入し、上記取付ブラケットを車体側壁部に仮預けする等の作業を容易かつ適正に行うことができる。
【0011】
請求項2に係る発明では、上記取付ブラケットを車体側壁部に仮預けする前に、車両の車室前壁部に形成された車両前後方向に面したガイド孔部に移送手段のガイドピン部を挿入することによりインパネモジュールを車両の少なくとも幅方向に案内して位置決めするように構成したため、上記車体側壁部に対するインパネモジュールの車幅方向における位置決めを容易かつ適正に行うことができ、これによって上記車体側壁部に対する取付ブラケットの仮預け作業および締結作業を簡単な構成で適正に実行できるという利点がある。
【0012】
請求項3に係る発明では、筒状体からなる支持メンバの下面に2つの位置決め孔部を設け、該位置決め孔部に上記搭載治具に設けられた2つのピン部を係合することにより、搭載治具を支持メンバに装着するように構成したため、上記支持メンバの強度を充分に維持しつつ、該支持メンバに対して上記搭載治具を正確に位置決めした状態で適正に装着できるとともに、その装着状態を安定して維持できるという利点がある。
【0013】
請求項4に係る発明では、車両のメイン組立ラインにおける特定ステージで車体側壁部に対するインパネモジュールの搭載を行うとともに、上記メイン組立ラインとは別のサブ組立ラインで上記支持メンバにダッシュボードを組み合わせるインパネモジュールのサブ組付を行うように構成し、かつ該サブ組立ラインの何れかの工程で上記搭載治具を支持メンバに装着するように構成したため、該搭載治具を上記サブ組立ラインの搬送台車に設けられた位置決めクランプ用の部材としても利用可能であり、その有効利用を図ることができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】インパネモジュールの具体的構成を示す斜視図である。
【図2】インパネモジュールの具体的構成を示す背面図である。
【図3】インパネモジュールの具体的構成を示す正面図である。
【図4】支持メンバの具体的構成を示す斜視図である。
【図5】支持メンバの具体的構成を示す底面図である。
【図6】搭載手段の具体的構成を示す背面図である。
【図7】搭載手段の具体的構成を示す斜視図である。
【図8】図6のVIII−VIII線断面図である。
【図9】移送手段の具体的構成を示す斜視図である。
【図10】搭載治具の装着工程を示す側面断面図である。
【図11】取付ブラケットの仮預け工程を示す側面断面図である。
【図12】取付ブラケットの締結工程を示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1〜図3は、本発明に係る車両搭載方法により車室前部に組み付けられるインパネモジュール1を示している。該インパネモジュール1は、ヒンジピラーの基端部等からなる車体側壁部に左右両端部が固定される支持メンバ2とダッシュボード3を有し、これらが組み合わされることにより構成されている。
【0016】
上記インパネモジュール1の支持メンバ2は、運転席側に位置する大径の丸パイプ材かなる第1筒状体4と、該第1筒状体4と一体に連結されるとともに助手席側に位置する小径の丸パイプ材からなる第2筒状体5と、該第1筒状体4および第2筒状体5の左右両端部に固定された取付ブラケット6とを有している。また、上記インパネモジュール1には、ダッシュボード3を支持する取付部材と、支持メンバ2を車両のフロア部に支持させるためのステー部材と、ステアリンクシャフトの支持部材と、空調ダクト等とが設けられている。
【0017】
上記支持メンバ2の左右両側方部、具体的には図4および図5に示すように、上記取付ブラケット6よりも所定距離だけ車幅方向内側部位に位置する第1筒状体4および第2筒状体5の下面側には、後述の搭載治具7に設けられた上向きのピン部8,9(図6参照)が挿入される2つの位置決め孔部10,11が一定間隔で形成されている。また、上記支持メンバ2の左右両側方部の上面側には、上記両ピン部8,9のうち車幅方向外方側に位置するピン部8の上端部が挿入される位置決め孔部12が形成されている。
【0018】
上記支持メンバ2の取付ブラケット6は、第1筒状体4および第2筒状体5の端部に溶接されることにより上記車体側壁部に面するように設置されたプレート状部材からなっている。該取付ブラケット6の前面部には、後述する仮預け工程で車体側壁部から車幅方向内方側に向けて突設された支持ピン67,68(図11参照)に沿って摺動する前上がりに傾斜した上下一対のガイド面14,15が形成されるとともに、該ガイド面14,15の基端部には、上記支持ピン67,68が係止される上向きの凹部からなる上下一対の係止溝部16,17が形成されている。
【0019】
また、上記取付ブラケット6には、後述する締結工程で支持メンバ2を車体側壁部に固定する締結ボルト69(図12参照)の挿通孔18が周縁部の複数個所に形成されている。さらに、上記取付ブラケット6の下端部の後方側、つまり支持メンバ2の取付状態において車両後方側に位置する部位(以下、単に後方側という)には、図8に示すように、固定ボルト19およびナット20により搭載治具7の固定台部21が固定される被固定板部22が車幅方向内方側(支持メンバ2の長手方向中央部側)に向けて突設されている。
【0020】
上記搭載治具7は、図6〜図8に示すように、支持メンバ2の位置決め孔部10〜12に挿入される2つのピン部8,9と、その下端部に設置された受け座23と、上記インパネモジュール1を移送する移送手段24のクランプ部33(図9参照)によりクランプされる被クランプ面部25と、支持メンバ2の取付ブラケット6に設けられた上記被固定板部22に固定される上記固定台部21とを有している。上記搭載治具7の受け座23は、水平方向に延びるように設置された支持プレート27の上面に固定されたブロック体状からなり、その上面には長尺の第1ピン部8と短尺の第2ピン部9とが左右方向に一定間隔で配設されるとともに上方に突設されている。
【0021】
上記受け座23の後方側壁面には、スペーサ28がヒンジ金具29により接続されている。該スペーサ28は、支持メンバ2を構成する第1筒状体4と第2筒状体5との直径差の1/2に相当する板厚を有し、図6および図7の右側(助手席側)に位置する搭載治具7のように受け座23上に重ねられた状態と、図6および図7の左側(運転席側)に位置する搭載治具7のように後方側に展開した状態とに揺動変位することにより、左ハンドル車と右ハンドル車とに兼用可能に構成され、かつ上記スペーサ28には、これを受け座23上に重ねる際に、上記第1,第2ピン部9に干渉するのを回避するための切欠き30,30が形成されている。
【0022】
すなわち、上記支持メンバ2の左右両端部には、左右対称の搭載治具7がそれぞれ設置されている。そして、図7に示すように、大径の第1筒状体4が車幅方向の左側に配設された左ハンドル車に上記両搭載治具7を使用する場合には、支持メンバ2の左側に配設される搭載治具7のスペーサ28を受け座23の後方に展開させるとともに、支持メンバ2の右側に配設される搭載治具7のスペーサ28を受け座23上に重ねることにより、左右の搭載治具7の設置高さを同一に設定しつつ、運転席側(左側)に位置する第1筒状体4と助手席側(右側)に位置する第2筒状体5とをそれぞれ水平状態で支持し得るようになっている。
【0023】
また、大径の第1筒状体4が車幅方向の右側に配設される右ハンドル車に上記両搭載治具7を使用する場合には、支持メンバ2の左側に配設される搭載治具7のスペーサ28を前方側に揺動変位させて受け座23上に重ねるとともに、支持メンバ2の右側に配設される搭載治具7のスペーサ28を後方側に揺動変位させて受け座23の後方に展開させるようにすればよい。このようにして上記両搭載治具7を左ハンドル車用と右ハンドル車用とに兼用可能に構成されている。
【0024】
上記搭載治具7の被クランプ面部25は、上記支持プレート27の下面に接続された筒状体30の車幅方向内側面に沿って下方に延びるように設置された所定幅のプレート状体からなり、車両前後方向に面するように設置されている。上記被クランプ面部25には、移送手段24に設けられたガイドピン部31が挿通される位置決め孔32が形成されるとともに、その下方には、移送手段24のクランプ部33が係合される長方形状のクランプ用開口部34が形成されている。また、上記被クランプ面部25の上下両端部には、上記支持メンバ2にダッシュボード3を組み合わせるインパネモジュール1のサブ組付を行うサブ組立ラインの搬送台車(図示せず)に設けられた位置決めクランプ部等が係合される位置決めクランプ用の透孔35,36が形成されている。
【0025】
上記搭載治具7の固定台部21は、図7および図8に示すように、上記被クランプ面部25の基端側においてその上方部から車両後方側に突設された支持台37と、該支持台37に形成された図略のガイド溝に沿って前後方向にスライド可能の支持された係止ブロック39と、該係止ブロック39を車両後方側に付勢する圧縮コイルばねからなる付勢手段40と、該付勢手段40の付勢力に抗して上記係止ブロック39を車両前方側に押動する押動手段41とを有している。
【0026】
上記係止ブロック39の先端部下面には、上記取付ブラケット6の被固定板部22の板厚に対応したスリット42が形成されている。また、上記係止ブロック39の先端部には、平面視でV字状の切欠き43が形成されている。該切欠き43により、上記固定ボルト19が螺着されるナット20が保持されて回り止めされるようになっている。さらに、上記支持台37には、該支持台37を上記被固定板部22に固定する固定ボルト19の挿通孔44が形成されている。
【0027】
図8の矢印Aに示すように、上記押動手段41を操作して係止ブロック39を前方側の退避位置に移動させた状態で、上記搭載治具7のピン部8,9を支持メンバ2の位置決め孔部10〜12に挿入することにより、該支持メンバ2の下面に上記受け座23を当接させるとともに、上記支持台37を取付ブラケット6の被固定板部22の下面に当接させた状態とする。その後、上記押動手段41による係止ブロック39の押動操作状態を解除すると、上記付勢手段40の付勢力に応じて係止ブロック39が後方側に移動し、該係止ブロック39の下面先端部が支持台37に設けられたストッパ(図示せず)に当接して係止されるとともに、上記係止ブロック39と支持台37とにより上記取付ブラケット6の被固定板部22が上下から挟持されるようになっている。
【0028】
そして、上記被固定板部22に形成されたボルト挿通孔の上にナット20を載置して上記係止ブロック39の切欠き43に保持させた状態で、上記支持台37の下方からその挿通孔43に固定ボルト19のねじ軸を挿入して上記ナット20に螺着することにより、上記支持台37が取付ブラケット6の被固定板部22に止着されるようになっている。このようにして上記支持メンバ2の左右両側方部の所定位置に搭載治具7が装着されることになる。
【0029】
上記搭載治具7の押動手段41は、上記筒状体30の下端部に設けられた支持ブラケット46に支持軸47を介して基端部が揺動可能に支持されたパイプ材等からなる操作部材48と、その上端部に設けられた駆動プレート49と、該駆動プレート49を上記係止ブロック39の側面に接続する接続ボルト50とを有し、上記駆動プレート49には、接続ボルト50の上下移動を許容する長孔51が上下方向に延びるように形成されている。そして、上記操作部材48を把持して係止ブロック39を矢印A方向(前方側)に押動操作し、付勢手段40の付勢力に抗して上記係止ブロック39を支持台37の上面に沿って上記退避位置にスライド変位させることにより、上記支持台37上に取付ブラケット6の被固定板部22を載置し得るように構成されている。
【0030】
上記インパネモジュール1を車室の前部に移送する移送手段24は、図9に示すように、車両のメイン組立ラインに沿って設置された搬送レールにより吊下されるとともに、搬送ラインの搬送方向およびその左右方向に移動可能に支持されたハンガー52と、その下端に設けられた車幅方向に延びる水平アーム53の前方側面に取り付けられた保持筒54と、該保持筒54の基端部から下方に延びる第1垂下部55とを有し、該第1垂下部55の下端部には、上記搭載治具7の被クランプ面部25をクランプするクランプ部33が設けられている。
【0031】
上記移送手段24の保持筒54内には、上記第1垂下部55に対応する第2垂下部56が先端部に設けられたスライドバー57がスライド可能に設置されている。また、上記保持筒54の下方には、上記スライドバー57をスライド変位させて、保持筒54の先端部から突出したスライドバー57の突出長さを変化させることにより、上記第1,第2垂下部55,56の下端部に位置する左右クランプ部33の車幅方向における設置間隔を調節する往復動アクチュエータ58が設けられている。
【0032】
上記移送手段24のクランプ部33は、図10に示すように、上記第1,第2垂下部55,56の下端部に固定された支持ボックス59と、その前面上端部から前方側に向けて突設された丸棒材からなるガイドピン部31と、その下方に設置された上下一対の係止爪60,61と、矢印Bに示すように該係止爪60,61を上下動させてその設置間隔を調節するカム機構等からなる間隔調節手段と、矢印Cに示すように上記係止爪60,61の基端部を後退させて上記支持ボックス59内に引き込むように駆動する駆動シリンダ等からなる引込駆動手段とを備えている。上記両係止爪60,61のうち上方の係止爪60の先端部には、上方に突出するフック部が形成され、下方の係止爪61の先端部には、下方に突出するフック部が形成されている。
【0033】
上記搭載治具7を支持メンバ2の左右両側方部に装着した後、上記搭載治具7の被クランプ面部25を移送手段24のクランプ部33によりクランプするクランプ工程において、図示を省略した搬送台車等の上に位置決めされた状態で支持された上記インパネモジュール1を、上記移送手段24が設けられた車両の組付ラインに搬入する。そして、上記移送手段24の第1,第2垂下部55,56の下端部に設けられたクランプ部33の設置間隔を、上記支持メンバ2の左右両端部に装着された搭載治具7の設置間隔に対応させるように調節した状態で、上記移送手段24のハンガー52を前進させることにより、上記クランプ部33に設けられたガイドピン部31の先端部を、上記搭載治具7の被クランプ面部25に設けられた位置決め孔32に挿入して該搭載治具7と移送手段24とを位置合わせする。
【0034】
次いで、上記移送手段24のクランプ部33を前進させて上記係止爪60,61の先端部を、上記被クランプ面部25に設けられたクランプ用開口部34内に挿入した後、両係止爪60,61を上下動させることにより、上方の係止爪60を上記クランプ用開口部34の上面に当接させるとともに、下方の係止爪61を上記クランプ用開口部34の下面に当接させて係合する。その後、図11に示すように、上記係止爪60,61を後退させることにより、両係止爪60,61のフック部をクランプ用開口部34の上下両端部に当接させた状態で上記被クランプ面部25を後方側に引き込んで上記支持ボックス59の前面に当接させる。
【0035】
このようにして上記クランプ部33の係止爪60,61により搭載治具7の被クランプ面部25が係止された状態で、その背面が支持ボックス59の前面に圧接されてクランプされることにより、上記搭載治具7を介して支持メンバ2の左右両端部に設けられた取付ブラケット6が上記移送手段24に保持された状態で、該移送手段24を介して上記インパネモジュール1が組付位置に移送されるようになっている。
【0036】
次に、上記支持メンバ2にダッシュボード3が組み合われてなるインパネモジュール1を車室前部に組み付ける本発明に係るインパネモジュール1の車両搭載方法の実施形態を以下に説明する。該インパネモジュール1の車両搭載方法は、上記上向きのピン部8,9と支持メンバ2の受け座23と車両前後方向に面する被クランプ面部25とを有する搭載治具7を支持メンバ2の左右両側方部に装着する装着工程と、上記搭載治具7の被クランプ面部25を移送手段24のクランプ部33によりクランプするクランプ工程と、該移送手段24により上記インパネモジュール1を車室前部に移送して上記取付ブラケット6を車体側壁部に仮預けする仮預け工程と、その後に上記取付ブラケット6を締結ボルトにより車幅方向に締結する締結工程とを備えている。
【0037】
上記支持メンバ2の左右両側方部に対する搭載治具7の装着は、インパネモジュール1の仮預け工程および締結工程を有する車両のメイン組立ラインとは別のサブ組立ラインで行われる。具体的には、該サブ組立ラインで上記支持メンバ2にダッシュボード3を組み合わせてインパネモジュール1のサブ組付を行った後、あるいはその前における該サブ組立ラインの何れかの工程で、図8に示すように、上記搭載治具7のピン部8,9を支持メンバ2の位置決め孔部10〜12に挿入して、該支持メンバ2の下面に上記受け座23の上面を当接させるとともに、上記取付ブラケット6の被固定板部22を上記係止ブロック39と支持台37とにより上下から挟持した状態で、上記固定ボルト19およびナット20で搭載治具7の支持台37を取付ブラケット6の被固定板部22に止着することにより、上記支持メンバ2に搭載治具7を装着するように構成されている。
【0038】
上記装着工程で搭載治具7を支持メンバ2の左右両側方部に装着した後、上記インパネモジュール1を車両のメイン組付ラインに搬送し、該メイン組付ラインのクランプ工程で、上記搭載治具7の被クランプ面部25を移送手段24のクランプ部33によりクランプした後、上記移送手段24によりインパネモジュール1を吊下しつつ、車体側面のフロントドア用開口部から車室内に上記インパネモジュール1を搬入する。次いで、該インパネモジュール1を上記移送手段24により車室前部に移送して上記支持メンバ2の取付ブラケット6を車体側壁部に仮預けする作業を行う。
【0039】
上記取付ブラケット6の仮預け工程では、まず図11に示すように、搭載治具7の被クランプ面部25に設けられた位置決め孔32を挿通したガイドピン部31の先端部を、ダッシュパネル等からなる車室前壁部64に形成された上下方向に延びる長孔からなるガイド孔部65に挿入することにより、上記取付ブラケット6を車体側壁部に仮預けする前に上記インパネモジュール1を車両の少なくとも車幅方向に案内して位置決めする。例えば上記ガイドピン部31に形成された先窄まりのテーパ面を上記ガイド孔部65に沿って摺動させる等により、上記取付ブラケット6と車体側壁部との車幅方向における位置合わせを行う。
【0040】
その後、図11の矢印Dに示すように、上記取付ブラケット6の前面部に形成された上下一対のガイド面14,15を、ヒンジピラーの基端部等からなる車体側壁部に突設された上下一対の支持ピン67,68に当接させて斜め上方に摺動させる。そして、該支持ピン67,68を、上記ガイド面14,15の基端部に形成された上下一対の係止溝部16,17内に導入して係合することにより、上記取付ブラケット6を車体側壁部に位置合わせした状態で、上記支持ピン67,68により取付ブラケット6を仮預けして支持させるようにする。
【0041】
次いで、図12に示すように、上記支持メンバ2の運転席側に位置する取付ブラケット6を締結ボルト69により上記車体側壁部に対して車幅方向に締結した後、該運転席側の取付ブラケット6を基準として支持メンバ2の助手席側に位置する取付ブラケット6を締結ボルト69により上記車体側壁部に対して車幅方向に締結する締結工程の作業を行う。また、上記固定ボルト19およびナット20による搭載治具7の支持台37と取付ブラケット6の被固定板部22との止着状態を解除することにより、上記搭載治具7を支持メンバ2から取り外す。なお、上記搭載治具7を支持メンバ2から取り外した後に、上記締結ボルト69による取付ブラケット6の締結作業を行うようにしてもよい。なお、上記支持メンバ2から取り外された装着治具7は、その後に順次、実行されるインパネモジュール1の組付作業において再使用される。
【0042】
上記のように車幅方向に延びる支持メンバ2にダッシュボード3を組み合わせたインパネモジュール1を車室前部に組み付けるインパネモジュールの車両搭載方法において、上記支持メンバ2の左右両端部に設けられた取付ブラケット6よりも車幅方向内方側部の下面側に形成された位置決め孔部10,11に挿入される上向きのピン部8,9と支持メンバ2の受け座23と車両前後方向に面する被クランプ面部25とを有する搭載治具7を支持メンバ2の左右両側方部に装着する装着工程と、上記搭載治具7の被クランプ面部25を移送手段24のクランプ部33によりクランプするクランプ工程と、該移送手段24により上記インパネモジュール1を車室前部に移送して上記取付ブラケット6を車体側壁部に仮預けする仮預け工程と、その後に上記搭載治具7を支持メンバから取り外すとともに上記取付ブラケット6を締結ボルト69により車体側壁部に対して車幅方向に締結する締結工程とを設けたため、ダッシュボード3に開口部を形成する等の手段を講じることなく、車幅方向に延びる支持メンバ2にダッシュボード3を組み合わせたインパネモジュール1を車室前部に組み付ける作業を容易かつ適正に行うことができる。
【0043】
すなわち、上記実施形態では、搭載治具7の受け座23から上向きに突設したピン部8,9を支持メンバ2の位置決め孔部10〜12に下方から挿入することにより、該支持メンバ2の下面に上記受け座23の上面を当接させた状態で、上記固定ボルト19およびナット20により搭載治具7の支持台37を取付ブラケット6の被固定板部22に止着して搭載治具7を支持メンバ2に装着するように構成したため、上記支持メンバ2の左右両端部に設けられた取付ブラケット6の車幅方向内方側において、上記搭載治具7を正確に位置決めした状態で上記支持メンバ2の下方側に装着することができる。
【0044】
したがって、上記移送手段24のクランプ部33によりクランプされる被クランプ部をダッシュボード3に形成された開口部等から車両後方側へ突出させる等の手段を講じることなく、上記搭載治具7の被クランプ面部25を移送手段24のクランプ部33によりクランプした状態で、該移送手段24を使用して上記インパネモジュール1を車室内に搬入して車体前部に組み付ける作業を容易かつ適切に行うことかできる。このため、上記インパネモジュール1の組付作業の終了後に上記開口部等をカバー部材で覆うという煩雑な作業が不要であり、インパネモジュール1の車両への搭載作業を容易かつ適正に行うことができる。
【0045】
また、上記実施形態に示すように、車両の車室前壁部64に、車両前後方向に面したガイド孔部65を形成し、かつ上記支持メンバ2を車室前部に移送する移送手段24に、搭載治具7の被クランプ面部25をクランプ部33によりクランプして車両前方側に移送する過程で上記ガイド孔部65に挿入されるガイドピン部31を設け、上記支持メンバ2の取付ブラケット6を車体側壁部に仮預けする前に、上記ガイド孔部65にガイドピン部31を挿入することによりインパネモジュール1を車両の少なくとも幅方向に案内して位置決めするように構成した場合には、上記搭載治具7と移送手段24とを位置合わせするために設けられた上記ガイドピン部31を利用して、上記車体側壁部に対するインパネモジュール1の車幅方向における位置決めを容易かつ適正に行うことができる。したがって、上記車体側壁部に対する取付ブラケット6の仮預け作業および締結作業を簡単な構成で適正に実行できるという利点がある。
【0046】
さらに、上記実施形態では、第1,第2筒状体4,5からなる支持メンバ2の下面に2つの位置決め孔部10,11を設け、該位置決め孔部10,11に、上記搭載治具7に設けられた2つのピン部8,9を係合することにより、該搭載治具7を支持メンバ2に装着するように構成したため、支持メンバ2の強度を充分に維持しつつ、該支持メンバ2に対して上記搭載治具7を正確に位置決めした状態で適正に装着できるとともに、その装着状態を安定して維持できるという利点がある。
【0047】
また、上記実施形態に示すように、車両のメイン組立ラインにおける特定ステージで車体側壁部に対するインパネモジュール1の搭載を行うとともに、上記メイン組立ラインとは別のサブ組立ラインで上記支持メンバ2にダッシュボード3を組み合わせるインパネモジュール1のサブ組付を行うように構成し、かつ該サブ組立ラインの何れかの工程で上記搭載治具7を支持メンバ2に装着するように構成した場合には、該搭載治具7を上記サブ組立ラインの搬送台車に設けられた位置決めクランプ用の部材として利用可能であり、その有効利用を図ることができる。
【0048】
なお、上記搭載治具7を支持メンバ2に装着した後、該搭載治具7に設けられた被クランプ面部25を上記移送手段24のクランプ部33によりクランプするように構成した上記実施形態に代え、搭載治具7の被クランプ面部25を上記移送手段24のクランプ部33によりクランプして搭載治具7を移送手段24に取り付けた後、上記支持メンバ2の位置決め孔部10,11に搭載治具7のピン部8,9を係合することにより、搭載治具7を支持メンバ2に装着するように構成してもよい。この場合には、搭載治具7の支持台37を取付ブラケット6の被固定板部22に止着する上記固定ボルト19およびナット20等を省略し、上記支持メンバ2と搭載治具7との連結状態を該支持メンバ2の自重等によって維持することも可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 インパネモジュール
2 支持メンバ
3 ダッシュボード
4 第1筒状体
5 第2筒状体
6 取付ブラケット
7 搭載治具
8,9 ピン部
10,12 位置決め孔部
14,15 ガイド面
23 受け座
24 移送手段
25 被クランプ面部
31 ガイドピン部
33 クランプ部
64 車室前壁
65 ガイド孔部
67,68 支持ピン
69 締結ボルト
【技術分野】
【0001】
本発明は、車幅方向に延びる支持メンバにダッシュボードを組み合わせたインパネモジュールを車室前部に組み付けるインパネモジュールの車両搭載方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に示されるように、支持メンバ(ステアリングメンバ)を主体として各種部品が組み付けられたインパネモジュール(コクピットモジュール)を車体のダッシュ部等に取り付ける際に、上記支持メンバの両端部に把持用ブラケットを着脱可能に装着し、上記インパネモジュールを車体のダッシュ部に取り付けた場合に車体のフロントドア開口部に対して車幅方向外側に露出するように位置させた把持用ブラケットの被把持部を、上記搭載治具により車幅方向外側から把持しつつ、インパネモジュールを車両に搭載することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3698092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示されたインパネモジュールの車両搭載方法によれば、側面視でフロントドアの開口部からインパネモジュールの一部が露出しない構造であっても、上記把持用ブラケットをフロントドアの開口部よりも車両後方側に位置させることにより、ロボットや助力装置などのハンドリング装置を用いることなく、上記インパネモジュールを把持した状態で車室前部に組み付けることが可能である。しかし、上記インパネモジュールの車両搭載方法では、把持用ブラケットをダッシュボードの車両後方側へ突出させるための開口部等を該ダッシュボードの車室面側に形成する必要があり、上記把持用ブラケットをダッシュボードから取り外した後に、上記開口部等をカバー部材で覆わなければならないという問題があった。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、ダッシュボードに開口部を形成する等の手段を講じることなく、車幅方向に延びる支持メンバにダッシュボードを組み合わせたインパネモジュールを車室前部に組み付ける作業を容易かつ適正に行うことができるインパネモジュールの車両搭載方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、車幅方向に延びる支持メンバにダッシュボードを組み合わせたインパネモジュールを車室前部に組み付けるインパネモジュールの車両搭載方法であって、上記支持メンバの左右両端部に設けられた取付ブラケットよりも車幅方向内方側部の下面側に形成された位置決め孔部に挿入される上向きのピン部と支持メンバの受け座と車両前後方向に面する被クランプ面部とを有する搭載治具を支持メンバの左右両側方部に装着する装着工程と、上記搭載治具の被クランプ面部を移送手段のクランプ部によりクランプするクランプ工程と、該移送手段により上記インパネモジュールを車室前部に移送して上記取付ブラケットを車体側壁部に仮預けする仮預け工程と、その後に上記搭載治具を支持メンバから取り外すとともに上記取付ブラケットを締結ボルトにより車体側壁部に対して車幅方向に締結する締結工程とを備えたものである。
【0007】
請求項2に係る発明は、上記請求項1に記載のインパネモジュールの車両搭載方法において、上記車両の車室前壁には、車両前後方向に面したガイド孔部が形成され、かつ上記支持メンバを車室前部に移送する移送手段には、搭載治具の被クランプ面部をクランプ部によりクランプして車両前方側に移送する過程で上記ガイド孔部に挿入されるガイドピン部が設けられ、上記取付ブラケットを車体側壁部に仮預けする前に、該ガイドピン部が上記ガイド孔部に挿入されることによりインパネモジュールが車両の少なくとも幅方向に案内されて位置決めされるように構成されたものである。
【0008】
請求項3に係る発明は、上記請求項1または2に記載のインパネモジュールの車両搭載方法において、上記支持メンバが筒状体を有するとともに、その下面に2つの位置決め孔部が設けられ、該位置決め孔部に上記搭載治具に設けられた2つのピン部が係合されることにより、該搭載治具が支持メンバに位置決めされた状態で装着されるように構成されたものである。
【0009】
請求項4に係る発明は、上記請求項1〜3のいずれか1項に記載のインパネモジュールの車両搭載方法において、車両のメイン組立ラインにおける特定ステージで車体側壁部に対するインパネモジュールの搭載が行われるとともに、上記メイン組立ラインとは別のサブ組立ラインで上記支持メンバにダッシュボードを組み合わせるインパネモジュールのサブ組付が行われるように構成され、該サブ組立ラインの何れかの工程で上記搭載治具が支持メンバに装着されるように構成されたものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明では、搭載治具に設けられた上向きのピン部を支持メンバの下面に形成された位置決め孔部に挿入するとともに、該支持メンバの下面に上記搭載治具の受け座を当接させた状態で該搭載治具を支持メンバに装着するように構成したため、上記支持メンバの左右両端部に設けられた取付ブラケットの車幅方向内方側において、上記搭載治具を正確に位置決めした状態で上記支持メンバの下方側に配設することができる。したがって、上記移送手段のクランプ部によりクランプされる被クランプ部をダッシュボードに形成された開口部等から車両後方側へ突出させる等の手段を講じることなく、上記搭載治具の被クランプ面部を移送手段によりクランプした状態で、該移送手段を使用して上記インパネモジュールを車室内に搬入し、上記取付ブラケットを車体側壁部に仮預けする等の作業を容易かつ適正に行うことができる。
【0011】
請求項2に係る発明では、上記取付ブラケットを車体側壁部に仮預けする前に、車両の車室前壁部に形成された車両前後方向に面したガイド孔部に移送手段のガイドピン部を挿入することによりインパネモジュールを車両の少なくとも幅方向に案内して位置決めするように構成したため、上記車体側壁部に対するインパネモジュールの車幅方向における位置決めを容易かつ適正に行うことができ、これによって上記車体側壁部に対する取付ブラケットの仮預け作業および締結作業を簡単な構成で適正に実行できるという利点がある。
【0012】
請求項3に係る発明では、筒状体からなる支持メンバの下面に2つの位置決め孔部を設け、該位置決め孔部に上記搭載治具に設けられた2つのピン部を係合することにより、搭載治具を支持メンバに装着するように構成したため、上記支持メンバの強度を充分に維持しつつ、該支持メンバに対して上記搭載治具を正確に位置決めした状態で適正に装着できるとともに、その装着状態を安定して維持できるという利点がある。
【0013】
請求項4に係る発明では、車両のメイン組立ラインにおける特定ステージで車体側壁部に対するインパネモジュールの搭載を行うとともに、上記メイン組立ラインとは別のサブ組立ラインで上記支持メンバにダッシュボードを組み合わせるインパネモジュールのサブ組付を行うように構成し、かつ該サブ組立ラインの何れかの工程で上記搭載治具を支持メンバに装着するように構成したため、該搭載治具を上記サブ組立ラインの搬送台車に設けられた位置決めクランプ用の部材としても利用可能であり、その有効利用を図ることができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】インパネモジュールの具体的構成を示す斜視図である。
【図2】インパネモジュールの具体的構成を示す背面図である。
【図3】インパネモジュールの具体的構成を示す正面図である。
【図4】支持メンバの具体的構成を示す斜視図である。
【図5】支持メンバの具体的構成を示す底面図である。
【図6】搭載手段の具体的構成を示す背面図である。
【図7】搭載手段の具体的構成を示す斜視図である。
【図8】図6のVIII−VIII線断面図である。
【図9】移送手段の具体的構成を示す斜視図である。
【図10】搭載治具の装着工程を示す側面断面図である。
【図11】取付ブラケットの仮預け工程を示す側面断面図である。
【図12】取付ブラケットの締結工程を示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1〜図3は、本発明に係る車両搭載方法により車室前部に組み付けられるインパネモジュール1を示している。該インパネモジュール1は、ヒンジピラーの基端部等からなる車体側壁部に左右両端部が固定される支持メンバ2とダッシュボード3を有し、これらが組み合わされることにより構成されている。
【0016】
上記インパネモジュール1の支持メンバ2は、運転席側に位置する大径の丸パイプ材かなる第1筒状体4と、該第1筒状体4と一体に連結されるとともに助手席側に位置する小径の丸パイプ材からなる第2筒状体5と、該第1筒状体4および第2筒状体5の左右両端部に固定された取付ブラケット6とを有している。また、上記インパネモジュール1には、ダッシュボード3を支持する取付部材と、支持メンバ2を車両のフロア部に支持させるためのステー部材と、ステアリンクシャフトの支持部材と、空調ダクト等とが設けられている。
【0017】
上記支持メンバ2の左右両側方部、具体的には図4および図5に示すように、上記取付ブラケット6よりも所定距離だけ車幅方向内側部位に位置する第1筒状体4および第2筒状体5の下面側には、後述の搭載治具7に設けられた上向きのピン部8,9(図6参照)が挿入される2つの位置決め孔部10,11が一定間隔で形成されている。また、上記支持メンバ2の左右両側方部の上面側には、上記両ピン部8,9のうち車幅方向外方側に位置するピン部8の上端部が挿入される位置決め孔部12が形成されている。
【0018】
上記支持メンバ2の取付ブラケット6は、第1筒状体4および第2筒状体5の端部に溶接されることにより上記車体側壁部に面するように設置されたプレート状部材からなっている。該取付ブラケット6の前面部には、後述する仮預け工程で車体側壁部から車幅方向内方側に向けて突設された支持ピン67,68(図11参照)に沿って摺動する前上がりに傾斜した上下一対のガイド面14,15が形成されるとともに、該ガイド面14,15の基端部には、上記支持ピン67,68が係止される上向きの凹部からなる上下一対の係止溝部16,17が形成されている。
【0019】
また、上記取付ブラケット6には、後述する締結工程で支持メンバ2を車体側壁部に固定する締結ボルト69(図12参照)の挿通孔18が周縁部の複数個所に形成されている。さらに、上記取付ブラケット6の下端部の後方側、つまり支持メンバ2の取付状態において車両後方側に位置する部位(以下、単に後方側という)には、図8に示すように、固定ボルト19およびナット20により搭載治具7の固定台部21が固定される被固定板部22が車幅方向内方側(支持メンバ2の長手方向中央部側)に向けて突設されている。
【0020】
上記搭載治具7は、図6〜図8に示すように、支持メンバ2の位置決め孔部10〜12に挿入される2つのピン部8,9と、その下端部に設置された受け座23と、上記インパネモジュール1を移送する移送手段24のクランプ部33(図9参照)によりクランプされる被クランプ面部25と、支持メンバ2の取付ブラケット6に設けられた上記被固定板部22に固定される上記固定台部21とを有している。上記搭載治具7の受け座23は、水平方向に延びるように設置された支持プレート27の上面に固定されたブロック体状からなり、その上面には長尺の第1ピン部8と短尺の第2ピン部9とが左右方向に一定間隔で配設されるとともに上方に突設されている。
【0021】
上記受け座23の後方側壁面には、スペーサ28がヒンジ金具29により接続されている。該スペーサ28は、支持メンバ2を構成する第1筒状体4と第2筒状体5との直径差の1/2に相当する板厚を有し、図6および図7の右側(助手席側)に位置する搭載治具7のように受け座23上に重ねられた状態と、図6および図7の左側(運転席側)に位置する搭載治具7のように後方側に展開した状態とに揺動変位することにより、左ハンドル車と右ハンドル車とに兼用可能に構成され、かつ上記スペーサ28には、これを受け座23上に重ねる際に、上記第1,第2ピン部9に干渉するのを回避するための切欠き30,30が形成されている。
【0022】
すなわち、上記支持メンバ2の左右両端部には、左右対称の搭載治具7がそれぞれ設置されている。そして、図7に示すように、大径の第1筒状体4が車幅方向の左側に配設された左ハンドル車に上記両搭載治具7を使用する場合には、支持メンバ2の左側に配設される搭載治具7のスペーサ28を受け座23の後方に展開させるとともに、支持メンバ2の右側に配設される搭載治具7のスペーサ28を受け座23上に重ねることにより、左右の搭載治具7の設置高さを同一に設定しつつ、運転席側(左側)に位置する第1筒状体4と助手席側(右側)に位置する第2筒状体5とをそれぞれ水平状態で支持し得るようになっている。
【0023】
また、大径の第1筒状体4が車幅方向の右側に配設される右ハンドル車に上記両搭載治具7を使用する場合には、支持メンバ2の左側に配設される搭載治具7のスペーサ28を前方側に揺動変位させて受け座23上に重ねるとともに、支持メンバ2の右側に配設される搭載治具7のスペーサ28を後方側に揺動変位させて受け座23の後方に展開させるようにすればよい。このようにして上記両搭載治具7を左ハンドル車用と右ハンドル車用とに兼用可能に構成されている。
【0024】
上記搭載治具7の被クランプ面部25は、上記支持プレート27の下面に接続された筒状体30の車幅方向内側面に沿って下方に延びるように設置された所定幅のプレート状体からなり、車両前後方向に面するように設置されている。上記被クランプ面部25には、移送手段24に設けられたガイドピン部31が挿通される位置決め孔32が形成されるとともに、その下方には、移送手段24のクランプ部33が係合される長方形状のクランプ用開口部34が形成されている。また、上記被クランプ面部25の上下両端部には、上記支持メンバ2にダッシュボード3を組み合わせるインパネモジュール1のサブ組付を行うサブ組立ラインの搬送台車(図示せず)に設けられた位置決めクランプ部等が係合される位置決めクランプ用の透孔35,36が形成されている。
【0025】
上記搭載治具7の固定台部21は、図7および図8に示すように、上記被クランプ面部25の基端側においてその上方部から車両後方側に突設された支持台37と、該支持台37に形成された図略のガイド溝に沿って前後方向にスライド可能の支持された係止ブロック39と、該係止ブロック39を車両後方側に付勢する圧縮コイルばねからなる付勢手段40と、該付勢手段40の付勢力に抗して上記係止ブロック39を車両前方側に押動する押動手段41とを有している。
【0026】
上記係止ブロック39の先端部下面には、上記取付ブラケット6の被固定板部22の板厚に対応したスリット42が形成されている。また、上記係止ブロック39の先端部には、平面視でV字状の切欠き43が形成されている。該切欠き43により、上記固定ボルト19が螺着されるナット20が保持されて回り止めされるようになっている。さらに、上記支持台37には、該支持台37を上記被固定板部22に固定する固定ボルト19の挿通孔44が形成されている。
【0027】
図8の矢印Aに示すように、上記押動手段41を操作して係止ブロック39を前方側の退避位置に移動させた状態で、上記搭載治具7のピン部8,9を支持メンバ2の位置決め孔部10〜12に挿入することにより、該支持メンバ2の下面に上記受け座23を当接させるとともに、上記支持台37を取付ブラケット6の被固定板部22の下面に当接させた状態とする。その後、上記押動手段41による係止ブロック39の押動操作状態を解除すると、上記付勢手段40の付勢力に応じて係止ブロック39が後方側に移動し、該係止ブロック39の下面先端部が支持台37に設けられたストッパ(図示せず)に当接して係止されるとともに、上記係止ブロック39と支持台37とにより上記取付ブラケット6の被固定板部22が上下から挟持されるようになっている。
【0028】
そして、上記被固定板部22に形成されたボルト挿通孔の上にナット20を載置して上記係止ブロック39の切欠き43に保持させた状態で、上記支持台37の下方からその挿通孔43に固定ボルト19のねじ軸を挿入して上記ナット20に螺着することにより、上記支持台37が取付ブラケット6の被固定板部22に止着されるようになっている。このようにして上記支持メンバ2の左右両側方部の所定位置に搭載治具7が装着されることになる。
【0029】
上記搭載治具7の押動手段41は、上記筒状体30の下端部に設けられた支持ブラケット46に支持軸47を介して基端部が揺動可能に支持されたパイプ材等からなる操作部材48と、その上端部に設けられた駆動プレート49と、該駆動プレート49を上記係止ブロック39の側面に接続する接続ボルト50とを有し、上記駆動プレート49には、接続ボルト50の上下移動を許容する長孔51が上下方向に延びるように形成されている。そして、上記操作部材48を把持して係止ブロック39を矢印A方向(前方側)に押動操作し、付勢手段40の付勢力に抗して上記係止ブロック39を支持台37の上面に沿って上記退避位置にスライド変位させることにより、上記支持台37上に取付ブラケット6の被固定板部22を載置し得るように構成されている。
【0030】
上記インパネモジュール1を車室の前部に移送する移送手段24は、図9に示すように、車両のメイン組立ラインに沿って設置された搬送レールにより吊下されるとともに、搬送ラインの搬送方向およびその左右方向に移動可能に支持されたハンガー52と、その下端に設けられた車幅方向に延びる水平アーム53の前方側面に取り付けられた保持筒54と、該保持筒54の基端部から下方に延びる第1垂下部55とを有し、該第1垂下部55の下端部には、上記搭載治具7の被クランプ面部25をクランプするクランプ部33が設けられている。
【0031】
上記移送手段24の保持筒54内には、上記第1垂下部55に対応する第2垂下部56が先端部に設けられたスライドバー57がスライド可能に設置されている。また、上記保持筒54の下方には、上記スライドバー57をスライド変位させて、保持筒54の先端部から突出したスライドバー57の突出長さを変化させることにより、上記第1,第2垂下部55,56の下端部に位置する左右クランプ部33の車幅方向における設置間隔を調節する往復動アクチュエータ58が設けられている。
【0032】
上記移送手段24のクランプ部33は、図10に示すように、上記第1,第2垂下部55,56の下端部に固定された支持ボックス59と、その前面上端部から前方側に向けて突設された丸棒材からなるガイドピン部31と、その下方に設置された上下一対の係止爪60,61と、矢印Bに示すように該係止爪60,61を上下動させてその設置間隔を調節するカム機構等からなる間隔調節手段と、矢印Cに示すように上記係止爪60,61の基端部を後退させて上記支持ボックス59内に引き込むように駆動する駆動シリンダ等からなる引込駆動手段とを備えている。上記両係止爪60,61のうち上方の係止爪60の先端部には、上方に突出するフック部が形成され、下方の係止爪61の先端部には、下方に突出するフック部が形成されている。
【0033】
上記搭載治具7を支持メンバ2の左右両側方部に装着した後、上記搭載治具7の被クランプ面部25を移送手段24のクランプ部33によりクランプするクランプ工程において、図示を省略した搬送台車等の上に位置決めされた状態で支持された上記インパネモジュール1を、上記移送手段24が設けられた車両の組付ラインに搬入する。そして、上記移送手段24の第1,第2垂下部55,56の下端部に設けられたクランプ部33の設置間隔を、上記支持メンバ2の左右両端部に装着された搭載治具7の設置間隔に対応させるように調節した状態で、上記移送手段24のハンガー52を前進させることにより、上記クランプ部33に設けられたガイドピン部31の先端部を、上記搭載治具7の被クランプ面部25に設けられた位置決め孔32に挿入して該搭載治具7と移送手段24とを位置合わせする。
【0034】
次いで、上記移送手段24のクランプ部33を前進させて上記係止爪60,61の先端部を、上記被クランプ面部25に設けられたクランプ用開口部34内に挿入した後、両係止爪60,61を上下動させることにより、上方の係止爪60を上記クランプ用開口部34の上面に当接させるとともに、下方の係止爪61を上記クランプ用開口部34の下面に当接させて係合する。その後、図11に示すように、上記係止爪60,61を後退させることにより、両係止爪60,61のフック部をクランプ用開口部34の上下両端部に当接させた状態で上記被クランプ面部25を後方側に引き込んで上記支持ボックス59の前面に当接させる。
【0035】
このようにして上記クランプ部33の係止爪60,61により搭載治具7の被クランプ面部25が係止された状態で、その背面が支持ボックス59の前面に圧接されてクランプされることにより、上記搭載治具7を介して支持メンバ2の左右両端部に設けられた取付ブラケット6が上記移送手段24に保持された状態で、該移送手段24を介して上記インパネモジュール1が組付位置に移送されるようになっている。
【0036】
次に、上記支持メンバ2にダッシュボード3が組み合われてなるインパネモジュール1を車室前部に組み付ける本発明に係るインパネモジュール1の車両搭載方法の実施形態を以下に説明する。該インパネモジュール1の車両搭載方法は、上記上向きのピン部8,9と支持メンバ2の受け座23と車両前後方向に面する被クランプ面部25とを有する搭載治具7を支持メンバ2の左右両側方部に装着する装着工程と、上記搭載治具7の被クランプ面部25を移送手段24のクランプ部33によりクランプするクランプ工程と、該移送手段24により上記インパネモジュール1を車室前部に移送して上記取付ブラケット6を車体側壁部に仮預けする仮預け工程と、その後に上記取付ブラケット6を締結ボルトにより車幅方向に締結する締結工程とを備えている。
【0037】
上記支持メンバ2の左右両側方部に対する搭載治具7の装着は、インパネモジュール1の仮預け工程および締結工程を有する車両のメイン組立ラインとは別のサブ組立ラインで行われる。具体的には、該サブ組立ラインで上記支持メンバ2にダッシュボード3を組み合わせてインパネモジュール1のサブ組付を行った後、あるいはその前における該サブ組立ラインの何れかの工程で、図8に示すように、上記搭載治具7のピン部8,9を支持メンバ2の位置決め孔部10〜12に挿入して、該支持メンバ2の下面に上記受け座23の上面を当接させるとともに、上記取付ブラケット6の被固定板部22を上記係止ブロック39と支持台37とにより上下から挟持した状態で、上記固定ボルト19およびナット20で搭載治具7の支持台37を取付ブラケット6の被固定板部22に止着することにより、上記支持メンバ2に搭載治具7を装着するように構成されている。
【0038】
上記装着工程で搭載治具7を支持メンバ2の左右両側方部に装着した後、上記インパネモジュール1を車両のメイン組付ラインに搬送し、該メイン組付ラインのクランプ工程で、上記搭載治具7の被クランプ面部25を移送手段24のクランプ部33によりクランプした後、上記移送手段24によりインパネモジュール1を吊下しつつ、車体側面のフロントドア用開口部から車室内に上記インパネモジュール1を搬入する。次いで、該インパネモジュール1を上記移送手段24により車室前部に移送して上記支持メンバ2の取付ブラケット6を車体側壁部に仮預けする作業を行う。
【0039】
上記取付ブラケット6の仮預け工程では、まず図11に示すように、搭載治具7の被クランプ面部25に設けられた位置決め孔32を挿通したガイドピン部31の先端部を、ダッシュパネル等からなる車室前壁部64に形成された上下方向に延びる長孔からなるガイド孔部65に挿入することにより、上記取付ブラケット6を車体側壁部に仮預けする前に上記インパネモジュール1を車両の少なくとも車幅方向に案内して位置決めする。例えば上記ガイドピン部31に形成された先窄まりのテーパ面を上記ガイド孔部65に沿って摺動させる等により、上記取付ブラケット6と車体側壁部との車幅方向における位置合わせを行う。
【0040】
その後、図11の矢印Dに示すように、上記取付ブラケット6の前面部に形成された上下一対のガイド面14,15を、ヒンジピラーの基端部等からなる車体側壁部に突設された上下一対の支持ピン67,68に当接させて斜め上方に摺動させる。そして、該支持ピン67,68を、上記ガイド面14,15の基端部に形成された上下一対の係止溝部16,17内に導入して係合することにより、上記取付ブラケット6を車体側壁部に位置合わせした状態で、上記支持ピン67,68により取付ブラケット6を仮預けして支持させるようにする。
【0041】
次いで、図12に示すように、上記支持メンバ2の運転席側に位置する取付ブラケット6を締結ボルト69により上記車体側壁部に対して車幅方向に締結した後、該運転席側の取付ブラケット6を基準として支持メンバ2の助手席側に位置する取付ブラケット6を締結ボルト69により上記車体側壁部に対して車幅方向に締結する締結工程の作業を行う。また、上記固定ボルト19およびナット20による搭載治具7の支持台37と取付ブラケット6の被固定板部22との止着状態を解除することにより、上記搭載治具7を支持メンバ2から取り外す。なお、上記搭載治具7を支持メンバ2から取り外した後に、上記締結ボルト69による取付ブラケット6の締結作業を行うようにしてもよい。なお、上記支持メンバ2から取り外された装着治具7は、その後に順次、実行されるインパネモジュール1の組付作業において再使用される。
【0042】
上記のように車幅方向に延びる支持メンバ2にダッシュボード3を組み合わせたインパネモジュール1を車室前部に組み付けるインパネモジュールの車両搭載方法において、上記支持メンバ2の左右両端部に設けられた取付ブラケット6よりも車幅方向内方側部の下面側に形成された位置決め孔部10,11に挿入される上向きのピン部8,9と支持メンバ2の受け座23と車両前後方向に面する被クランプ面部25とを有する搭載治具7を支持メンバ2の左右両側方部に装着する装着工程と、上記搭載治具7の被クランプ面部25を移送手段24のクランプ部33によりクランプするクランプ工程と、該移送手段24により上記インパネモジュール1を車室前部に移送して上記取付ブラケット6を車体側壁部に仮預けする仮預け工程と、その後に上記搭載治具7を支持メンバから取り外すとともに上記取付ブラケット6を締結ボルト69により車体側壁部に対して車幅方向に締結する締結工程とを設けたため、ダッシュボード3に開口部を形成する等の手段を講じることなく、車幅方向に延びる支持メンバ2にダッシュボード3を組み合わせたインパネモジュール1を車室前部に組み付ける作業を容易かつ適正に行うことができる。
【0043】
すなわち、上記実施形態では、搭載治具7の受け座23から上向きに突設したピン部8,9を支持メンバ2の位置決め孔部10〜12に下方から挿入することにより、該支持メンバ2の下面に上記受け座23の上面を当接させた状態で、上記固定ボルト19およびナット20により搭載治具7の支持台37を取付ブラケット6の被固定板部22に止着して搭載治具7を支持メンバ2に装着するように構成したため、上記支持メンバ2の左右両端部に設けられた取付ブラケット6の車幅方向内方側において、上記搭載治具7を正確に位置決めした状態で上記支持メンバ2の下方側に装着することができる。
【0044】
したがって、上記移送手段24のクランプ部33によりクランプされる被クランプ部をダッシュボード3に形成された開口部等から車両後方側へ突出させる等の手段を講じることなく、上記搭載治具7の被クランプ面部25を移送手段24のクランプ部33によりクランプした状態で、該移送手段24を使用して上記インパネモジュール1を車室内に搬入して車体前部に組み付ける作業を容易かつ適切に行うことかできる。このため、上記インパネモジュール1の組付作業の終了後に上記開口部等をカバー部材で覆うという煩雑な作業が不要であり、インパネモジュール1の車両への搭載作業を容易かつ適正に行うことができる。
【0045】
また、上記実施形態に示すように、車両の車室前壁部64に、車両前後方向に面したガイド孔部65を形成し、かつ上記支持メンバ2を車室前部に移送する移送手段24に、搭載治具7の被クランプ面部25をクランプ部33によりクランプして車両前方側に移送する過程で上記ガイド孔部65に挿入されるガイドピン部31を設け、上記支持メンバ2の取付ブラケット6を車体側壁部に仮預けする前に、上記ガイド孔部65にガイドピン部31を挿入することによりインパネモジュール1を車両の少なくとも幅方向に案内して位置決めするように構成した場合には、上記搭載治具7と移送手段24とを位置合わせするために設けられた上記ガイドピン部31を利用して、上記車体側壁部に対するインパネモジュール1の車幅方向における位置決めを容易かつ適正に行うことができる。したがって、上記車体側壁部に対する取付ブラケット6の仮預け作業および締結作業を簡単な構成で適正に実行できるという利点がある。
【0046】
さらに、上記実施形態では、第1,第2筒状体4,5からなる支持メンバ2の下面に2つの位置決め孔部10,11を設け、該位置決め孔部10,11に、上記搭載治具7に設けられた2つのピン部8,9を係合することにより、該搭載治具7を支持メンバ2に装着するように構成したため、支持メンバ2の強度を充分に維持しつつ、該支持メンバ2に対して上記搭載治具7を正確に位置決めした状態で適正に装着できるとともに、その装着状態を安定して維持できるという利点がある。
【0047】
また、上記実施形態に示すように、車両のメイン組立ラインにおける特定ステージで車体側壁部に対するインパネモジュール1の搭載を行うとともに、上記メイン組立ラインとは別のサブ組立ラインで上記支持メンバ2にダッシュボード3を組み合わせるインパネモジュール1のサブ組付を行うように構成し、かつ該サブ組立ラインの何れかの工程で上記搭載治具7を支持メンバ2に装着するように構成した場合には、該搭載治具7を上記サブ組立ラインの搬送台車に設けられた位置決めクランプ用の部材として利用可能であり、その有効利用を図ることができる。
【0048】
なお、上記搭載治具7を支持メンバ2に装着した後、該搭載治具7に設けられた被クランプ面部25を上記移送手段24のクランプ部33によりクランプするように構成した上記実施形態に代え、搭載治具7の被クランプ面部25を上記移送手段24のクランプ部33によりクランプして搭載治具7を移送手段24に取り付けた後、上記支持メンバ2の位置決め孔部10,11に搭載治具7のピン部8,9を係合することにより、搭載治具7を支持メンバ2に装着するように構成してもよい。この場合には、搭載治具7の支持台37を取付ブラケット6の被固定板部22に止着する上記固定ボルト19およびナット20等を省略し、上記支持メンバ2と搭載治具7との連結状態を該支持メンバ2の自重等によって維持することも可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 インパネモジュール
2 支持メンバ
3 ダッシュボード
4 第1筒状体
5 第2筒状体
6 取付ブラケット
7 搭載治具
8,9 ピン部
10,12 位置決め孔部
14,15 ガイド面
23 受け座
24 移送手段
25 被クランプ面部
31 ガイドピン部
33 クランプ部
64 車室前壁
65 ガイド孔部
67,68 支持ピン
69 締結ボルト
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向に延びる支持メンバにダッシュボードを組み合わせたインパネモジュールを車室前部に組み付けるインパネモジュールの車両搭載方法であって、上記支持メンバの左右両端部に設けられた取付ブラケットよりも車幅方向内方側部の下面側に形成された位置決め孔部に挿入される上向きのピン部と支持メンバの受け座と車両前後方向に面する被クランプ面部とを有する搭載治具を支持メンバの左右両側方部に装着する装着工程と、上記搭載治具の被クランプ面部を移送手段のクランプ部によりクランプするクランプ工程と、該移送手段により上記インパネモジュールを車室前部に移送して上記取付ブラケットを車体側壁部に仮預けする仮預け工程と、その後に上記搭載治具を支持メンバから取り外すとともに上記取付ブラケットを締結ボルトにより車体側壁部に対して車幅方向に締結する締結工程とを備えたことを特徴とするインパネモジュールの車両搭載方法。
【請求項2】
上記車両の車室前壁には、車両前後方向に面したガイド孔部が形成され、かつ上記支持メンバを車室前部に移送する移送手段には、搭載治具の被クランプ面部をクランプ部によりクランプして車両前方側に移送する過程で上記ガイド孔部に挿入されるガイドピン部が設けられ、上記取付ブラケットを車体側壁部に仮預けする前に、該ガイドピン部が上記ガイド孔部に挿入されることによりインパネモジュールが車両の少なくとも幅方向に案内されて位置決めされるように構成されたことを特徴とする請求項1に記載のインパネモジュールの車両搭載方法。
【請求項3】
上記支持メンバが筒状体を有するとともに、その下面に2つの位置決め孔部が設けられ、該位置決め孔部に上記搭載治具に設けられた2つのピン部が係合されることにより、該搭載治具が支持メンバに位置決めされた状態で装着されるように構成されたことを特徴とする請求項1または2に記載のインパネモジュールの車両搭載方法。
【請求項4】
車両のメイン組立ラインにおける特定ステージで車体側壁部に対するインパネモジュールの搭載が行われるとともに、上記メイン組立ラインとは別のサブ組立ラインで上記支持メンバにダッシュボードを組み合わせるインパネモジュールのサブ組付が行われるように構成され、該サブ組立ラインの何れかの工程で上記搭載治具が支持メンバに装着されるように構成されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のインパネモジュールの車両搭載方法。
【請求項1】
車幅方向に延びる支持メンバにダッシュボードを組み合わせたインパネモジュールを車室前部に組み付けるインパネモジュールの車両搭載方法であって、上記支持メンバの左右両端部に設けられた取付ブラケットよりも車幅方向内方側部の下面側に形成された位置決め孔部に挿入される上向きのピン部と支持メンバの受け座と車両前後方向に面する被クランプ面部とを有する搭載治具を支持メンバの左右両側方部に装着する装着工程と、上記搭載治具の被クランプ面部を移送手段のクランプ部によりクランプするクランプ工程と、該移送手段により上記インパネモジュールを車室前部に移送して上記取付ブラケットを車体側壁部に仮預けする仮預け工程と、その後に上記搭載治具を支持メンバから取り外すとともに上記取付ブラケットを締結ボルトにより車体側壁部に対して車幅方向に締結する締結工程とを備えたことを特徴とするインパネモジュールの車両搭載方法。
【請求項2】
上記車両の車室前壁には、車両前後方向に面したガイド孔部が形成され、かつ上記支持メンバを車室前部に移送する移送手段には、搭載治具の被クランプ面部をクランプ部によりクランプして車両前方側に移送する過程で上記ガイド孔部に挿入されるガイドピン部が設けられ、上記取付ブラケットを車体側壁部に仮預けする前に、該ガイドピン部が上記ガイド孔部に挿入されることによりインパネモジュールが車両の少なくとも幅方向に案内されて位置決めされるように構成されたことを特徴とする請求項1に記載のインパネモジュールの車両搭載方法。
【請求項3】
上記支持メンバが筒状体を有するとともに、その下面に2つの位置決め孔部が設けられ、該位置決め孔部に上記搭載治具に設けられた2つのピン部が係合されることにより、該搭載治具が支持メンバに位置決めされた状態で装着されるように構成されたことを特徴とする請求項1または2に記載のインパネモジュールの車両搭載方法。
【請求項4】
車両のメイン組立ラインにおける特定ステージで車体側壁部に対するインパネモジュールの搭載が行われるとともに、上記メイン組立ラインとは別のサブ組立ラインで上記支持メンバにダッシュボードを組み合わせるインパネモジュールのサブ組付が行われるように構成され、該サブ組立ラインの何れかの工程で上記搭載治具が支持メンバに装着されるように構成されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のインパネモジュールの車両搭載方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−162101(P2012−162101A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−21734(P2011−21734)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
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