説明

インパルスノイズを監視する方法

【課題】デジタルデータパケットを伝送するネットワークにおけるインパルスノイズを監視する方法を提供する。
【解決手段】デジタルデータパケットを伝送するネットワークにおいて、品質記録がメモリに格納される。この品質記録のそれぞれは、1つまたは複数の受信されたデータパケットの検知された受信品質を示している。その後、メモリがオーバーフローになると、この品質記録の1つまたは複数がメモリから廃棄される。品質記録の少なくとも1つについて、廃棄の重みが品質記録の少なくとも1つの関数として生成され、品質記録に関連付けられる。これによって、このようなオーバーフローになると、所定のルールおよび条件の中で廃棄の重みが考慮に入れられ、これに従って品質記録の廃棄が行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、デジタルデータ通信におけるインパルスノイズの管理、すなわち受信されたデータパケット中のインパルスノイズの検出および特性解析に関する。
【背景技術】
【0002】
インパルスノイズは、外部のノイズ源によって通信回線の中の電磁結合により生じる、比較的継続時間の短いノイズである。例えば照明のスイッチのオン/オフを切り換えると、供給電圧および電流に過渡効果を発生させ、その結果例えば電話回線がDSLループとして配置されているとき、離散マルチトーン(Discrete Multi Tone、DMT)シンボルにパックされて、デジタルデータを搬送することができる電話回線にノイズインパルスを生じる可能性がある。インパルスの振幅および継続時間に応じてインパルスノイズは、受信されるデータパケットの品質の低下および/またはエラーを引き起こす。本発明の出願の文脈では、データパケットは、単一エンティティとして転送されるいかなる固定長または可変長のデータバイト群またはデータビット群をも広く含むと解釈されなければならないことに注意されたい。言い換えれば、これはデータフレーム、データセル、データワード、データシンボル、データセグメントなどを含む。データパケットの一例は、例えばADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line、非対称デジタル加入者線)またはVDSL(Very High Speed Digital Subscriber Line、超高速デジタル加入者線)ループを通じて送信されるDMTシンボルである。
【0003】
単独型高インパルスノイズ環境(Single High Impulse Noise Environment)は、略してSHINEと呼ばれる。
【0004】
調光器、蛍光灯、クリスマスロープライト、TVまたはPCのスイッチモード電源装置(PSU)、ビデオレコーダ、電子変換器、セキュリティライトなどがデジタル通信回線の近くにある場合、この通信回線によるデジタルデータの転送に障害を生じるノイズインパルスは、反復特性を有する可能性がある。このような反復型ノイズインパルスは、やはり継続時間が短く、したがって反復型電気インパルスノイズ(REIN)と呼ばれる。通常ノイズインパルスは、ヨーロッパでは50ヘルツ(Hz)、米国では60Hzである電力の周波数に基づいたレートでのオン/オフ遷移の結果であるので、一般に2つの連続するノイズインパルス間の時間は、ヨーロッパでは10ミリ秒(ms)、米国では8.3msほどの短さである可能性がある。例えばライト調光器の例では、ライトの強さはライトをオンおよびオフに切り換える電気回路によって制御される。オン時間とオフ時間の間の比が、ライトの強さを決定する。オン/オフ遷移のたびに、近隣の通信回線でノイズインパルスを引き起こす。ライトのオン/オフを切り換えるトリガは電力網の周波数から導出されるため、10ms(ヨーロッパの場合)または8.3ms(米国の場合)おきの頻度でノイズインパルスをもたらす。
【0005】
インパルスノイズを監視するための知られている方法は、2007年1月11日、ジュネーブ時間00:35:49にアップロードされたStandard Contribution(標準寄稿)SD−068文書に記載されている。「G.VDSL:In−Service Impulse Noise Logging for Troubleshooting Purposes and Alternative for INM」と題するこの寄稿は、トラブルシューティングの目的でImpulse Noise Logging(インパルスノイズロギング)を稼働させる方法について記載しており、以下のURLにロードされた:
http://ties.itu.ch/u/tsg15/sg15/xchange/wp1/q4/Meetings/2007−01−SanDiego/SD−068.doc
【0006】
この寄稿は、トラブルシューティングの目的でImpulse Noise Loggingを稼働させる方法を含んでいる。これは、サービスを中断することも、デジタル加入者線の顧客宅内機器(DSL CPE)から情報を収集するための発信もなく、オンラインでインパルスノイズを詳細に特性解析する方法を提案している。これは、ノイズに関する情報の損失を回避する唯一の方法は情報を実際に記録することであると記載している。DSL CPEの受信機にこのデータをすべて格納することは、あまり都合が良くない場合があるので、このデータが記録されることまたは解釈されることが可能であるどこか他の場所に転送される。
【0007】
この寄稿はさらに、データシンボルが著しく劣化しているかどうかを示すインパルスノイズセンサを使用することと、管理チャネルすなわちデジタル加入者線の埋め込み操作チャネル(Embedded Operation Channel、EOC)によってこのデータストリームを自律的に送信することを提案している。メッセージは、タイムスタンプ、および完全なインパルスノイズ事象をモデル化する一連のビットを含むことができる。したがって、このように離散マルチトーンシンボルDMTまたはデータが劣化されているかどうかを判断し、それにより1つまたは複数の受信されたデータパケットの検知された受信品質を示すビットストリームが生成される方法が記載されている。
【0008】
このビットストリームは、自律的方法により、すなわちDSL CPEによって、または中央処理装置を備えた対応するネットワークノードからの要求に応じて、管理チャネルすなわちデジタル加入者線の埋め込み操作チャネル(EOC)によって送信可能であることが、さらに説明されなければならない。
【0009】
効率的に動作するために、転送されるデータの量は削減されるべきであり、簡単なデータの削減が導入される。これには、DSL CPEの受信機によるデータ処理が必要であるが、同時にこれは、DSL CPEの受信機で必要とされる記憶装置の量を削減するという付加的利点を有する。このようなデータ削減方法は、「品質記録」すなわちシンボル品質ビットのビット列または群を生成することができる。通常の実施は、品質記録が先入れ先出しメモリFIFOに格納されるものとすることができる。特に要求に応じて品質記録を転送する場合には、ビット列を送信するために、前の要求と現在の要求との間でFIFOがオーバーフロー状態であるかどうかを監視することが勧められる。この結果として新しい記録が記録され、古い記録が廃棄される。
【0010】
このような品質記録は、固定数のシンボル品質ビット、固定数のシンボル品質ビットを有するタイムスタンプ、連続的な廃棄されたビットのカウントおよび/または連続的な廃棄されていないシンボルビットのカウントを有するタイムスタンプ、タイムスタンプ、カウント数、カウントおよびビットの組み合わせであることが可能である。
【0011】
知られている方法は、前の転送と新しい転送との間でFIFOにオーバーフローがあったことを示すために、またFIFOが最後のシンボル品質の転送要求以後に(部分的に)新しい項目を有することを示すために、FIFOにインジケータを備えて動作している。実際にFIFOの読み出しレートが十分に高くないときは、非常に起こり得ることであるが、再び新しい記録でFIFOを満たすために最も古い記録が削除される。
【0012】
インパルスノイズが反復型電気インパルスノイズREINのみである場合、シンボル品質の記録は反復特性を有することになる。FIFOで最も古い記録を削除すると、これらの記録の情報は失われる。しかしながら、記録は反復特性を有するので、失われた情報は適切ではない。
【0013】
しかしながら、例えば反復型電気インパルスノイズREINおよび単独型高インパルスノイズSHINEがともに回線に存在する場合には、SHINEは非反復型インパルスノイズであり比較的まれにしか発生しないのでシンボル品質の記録には反復特性がない。バッファのオーバーフローの場合に、FIFOで最も古い記録を削除すると、これらの記録の中の情報が失われ、それによってSHINEの情報が失われることになる可能性がある。これは、情報の問題とされる損失であり、それによってインパルスノイズを特性解析することおよびノイズ源を識別することが不可能になる場合がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Standard Contribution SD−068文書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
デジタルデータパケットを伝送するネットワークにおけるインパルスノイズを監視する方法を提供することが本発明の目的であり、この方法は、従来技術の方法の上述の欠点を克服するものである。より詳細には、インパルスノイズの特性解析およびインパルスノイズ源の識別に利用可能な情報を失わないようにするインパルスノイズの監視方法を開示することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明によれば、上記の定義の目的が実現され、知られている従来技術の解決法の欠点は、請求項1で定義されるデジタルデータパケットを伝送するネットワークにおいてインパルスノイズを監視する方法によって克服され、この方法は以下のステップを含む:
− 1つまたは複数の受信されたデータパケットの検知された受信品質を示す品質記録をメモリに格納するステップ。
− メモリがオーバーフローになるとメモリから品質記録の1つまたは複数を廃棄するステップ。
− 品質記録の少なくとも1つについて、それぞれの品質記録の少なくとも1つの関数として廃棄の重み(discarding weights)を生成し、これを品質記録の少なくとも1つに関連付けるステップ。
− 上記のオーバーフローになると、予め定められた廃棄の重みを考慮する所定のルールおよび条件により品質記録の1つまたは複数を廃棄するステップ。
【0017】
品質記録は、上述のようにシンボルの品質記録、すなわちビット列または元の未加工のビット列と同様の情報を依然として含んでいるビット列の圧縮バージョンであることに注目されたい。さらに、すべての品質記録が同一の長さを有する必要があるわけではないことに注意されたい。
【0018】
このようにそれぞれの品質記録の中の情報を解釈して使用することによって、品質記録の中に含まれる情報の適切性を示す重みが決定されることが可能である。これについては一例によってさらに説明される。簡易バージョンの品質記録は、受信されたデータパケットにつき1ビットを含むことができ、例えばDSLの受信機の中に受信されたDMTシンボルにつき1ビットを含むことができ、このビットは、例えばDMTシンボルの受信品質が一定のしきい値を超える場合には「0」を設定され、例えばDMTシンボルの受信品質がそのしきい値を下回っている場合には「1」を設定される、あるいはその逆を設定される。
【0019】
例えば1つのビット以外はすべて「0」を含む一連の品質記録は、REINの存在を指摘する可能性がある。この種の記録は、例えば数個の「0」の後にいくつかの「1」が続き、再びいくつかの「0」が続く単一の品質記録よりも、あまり適切でない情報を含む。このような単一の品質記録は、SHINEの存在を指摘する可能性がある。
【0020】
このように、第1に記載の一連の品質記録については、第2に記載の品質記録について生成されるよりも、例えばより低い廃棄の重みが生成されることになる。メモリのオーバーフローが発生する場合には、予め定められたルールおよび条件により、予め定められた関連する廃棄の重みが考慮に入れられ、したがってこの例によれば、最も低い廃棄の重みと関連付けられる品質記録が廃棄されるものに選択されることになる。高い廃棄の重みを有する品質記録は、廃棄されるものに選択されることはなく、それによりその適切な情報はさらに保存され、多くの場合例えば後続の要求の1つの際に処理ユニットを備えたネットワークノードに転送される。
【0021】
このように、所定のルールおよび条件により品質記録の1つまたは複数を廃棄し、関連する廃棄の重みを考慮することによって、最も古い品質記録でないものも廃棄される。実際にこの方法は、品質記録に含まれる情報を考慮に入れて廃棄の重みを決定し、これらの予め定められた関連する廃棄の重みを考慮に入れた所定のルールおよび条件により、その後の品質記録の1つまたは複数を廃棄する。
【0022】
1つの品質の重みは、ただ1つの品質記録と関連付けられる必要はなく、2つ以上の(例えば連続した)品質記録と関連付けられることが可能であることに注目されたい。
【0023】
さらに、品質の重みは1つの品質記録の中の情報に基づいて決定されることが可能であるだけでなく、2つ以上の品質記録の中の情報に基づいて決定されることも同様に可能であり、例えば前の品質記録に基づいてまたは次の品質記録の関数で決定されることも可能であることに注目されたい。
【0024】
また、オーバーフローという表現は、最も広い意味で解釈されなければならないことが説明されなければならない。つまりメモリに全く空きがなくなり、それによって新しい品質記録が再び格納可能になる前にまず品質記録を廃棄する必要がある場合に、「オーバーフロー」に至る可能性があるということである。しかしながら、格納された品質記録の数がメモリの所定のしきい値を超える場合にも、同様に「オーバーフロー」に至る可能性がある。これによって、本方法によれば、品質記録の1つまたは複数が廃棄される前に、発生する新しい品質記録が格納されることもやはり可能である。
【0025】
請求項1で定義されるインパルスノイズを管理する方法に加えて、本発明は請求項7で定義される対応するネットワーク装置に関連する。
【0026】
請求項2で示すように、この品質記録は、第1に1つまたは複数の受信されたデータパケットの検知された前述の受信品質を示す品質インジケータと、第2に上記品質記録を生成する時間モーメントを示す時間インジケータとを含むことができる。したがってこの関数は、品質インジケータ引数と呼ばれるそれぞれの品質インジケータの少なくとも1つである引数と、それぞれの時間インジケータの少なくとも1つを含む。
【0027】
時間インジケータは品質記録を生成する時間モーメントを示しているので、また品質記録を生成するモーメントは1つまたは複数の受信されたデータパケットの受信品質を検知する時間モーメントを表しているので、事実上時間インジケータは、インパルスノイズのソースを監視するモーメントを表していることに注目されたい。
【0028】
さらに可能な実施が請求項3に記載されており、この関数は時間インジケータに対して相対的により高い品質インジケータの寄与を含む。請求項3による関数は、品質記録が生成される/された時間モーメントよりもこれらの品質インジケータの中の利用可能な情報の適切性を考慮に入れた廃棄の重みを生成する。これにより、より古い記録を廃棄するのではなくより古い適切な品質記録を保持する方法が可能になる。
【0029】
さらなる実施例が請求項4に記載されている。本明細書では、等しい廃棄の重みが生成される場合、所定のルールおよび条件は、最も新しい品質記録が廃棄されるというルールを含んでいることに言及される。この実施により、より古い品質記録の中の適切な情報を保存することが可能になる。実際にこのような実施により、例えばSHINEおよびREINを用いて上記の例で説明したような適切な情報を含んでいるより古い品質記録を保存することが可能になる。
【0030】
請求項5は、品質サブインジケータを有する品質インジケータに可能な実施について記載しており、この各品質サブインジケータは受信されたデータパケットの1つまたは複数の中の受信品質についてのインジケータであり、この関数は特定の値の組に含まれる値を有するサブインジケータの集計を含む。この値の組は、例えばしきい値を使用して実施されることが可能であり、したがってこの値の組は、このしきい値を下回るすべての値に対応する。例えば複数のビットによって品質サブインジケータを実施して、インパルスノイズの中のあらゆる種類の統計的分析を可能にする、検知された品質または品質低下についての程度情報が提供されることが可能である。
【0031】
またこのような品質サブインジケータは、例えば受信されたデータパケットにつきただ1ビットで実施されることが可能であり、この場合1ビットはこのような受信されたデータパケットが一定のしきい値をパスする際の上述の受信品質を示す。これは、請求項6に記載されている。上述の関数は、したがって受信されたデータパケットにつきこのような1ビットが、所定の値、すなわち「1」または「0」に等しくなる回数を含む。しかしながら、データパケットにつきただ1ビットを有するこのような実施例は、検知された品質について程度情報を提供することができない。
【0032】
上述のように、その後の品質記録の少なくとも1つに対して、それぞれの品質記録の中の情報に基づき廃棄の重みを生成して関連付けるステップは、1対1の生成および関連付けに限定されない。実際にこの方法は、ただ1つの品質記録に対してだけでなく、所定数の品質記録に対してただ1つの廃棄の重みを生成して関連付けるように実施されることが同様に可能である。
【0033】
さらにインパルスノイズを監視するための請求項7のネットワーク装置は、受信されたデータパケットの中のインパルスノイズを検知することができる、デジタルデータパケットを伝送するネットワーク端末に統合されることが可能である。これは、請求項8に記載されている。これは、このようなネットワーク端末が、まず受信されたデータパケットの受信品質の検知を行って、さらに検知された受信品質を示す品質記録の生成を行ったということである。この実施例は、ネットワーク端末で品質検知を行い、ネットワークノードに品質記録を提供するダウンストリームのデジタルデータパケット伝送による実施例である。
【0034】
しかしながら、請求項7のデジタルデータパケットを伝送するネットワークでインパルスノイズを監視するネットワーク要素は、デジタルデータパケットを伝送するためのネットワークノードに統合されることも可能である。これは、請求項9に記載されている。このような実施によればネットワークノードは、関連するネットワーク端末によって生成された品質記録(データパケットを送信されるダウンストリームの品質)を受信することができ、これらの品質記録は、これにより例えばさらなる処理のためにネットワークマネージャにさらに伝送されるまで、請求項7と同様のネットワーク要素に格納される。これによりネットワーク装置のメモリはオーバーフロー状態に至り、それによってインテリジェントな廃棄の決定を行うことが必要とされる可能性もある。さらなるネットワークマネージャについても同様であり、ネットワークマネージャが本発明によるネットワーク装置を含む場合もある。さらに、やはり請求項9の実施例によるが、ネットワークノードが単独でデータパケットを受信することができ、この際にはネットワークノードが品質の検知を行い、それによって品質記録を単独で生成する。これは、アップストリームのデータパケットのインパルスノイズを監視することである。
【0035】
特許請求の範囲で使用される「含む」という用語は、その後に列挙される手段に限定されると解釈されるべきではないことに注意されたい。したがって、「手段AおよびBを含む装置」という表現の範囲は、構成要素AおよびBのみからなる装置に限定されるべきではない。本発明に関して、装置の単に関連する構成要素がAおよびBであるという意味である。
【0036】
添付の図面と併せて解釈される次の実施形態の説明を参照することによって、本発明の上述のおよび他の目的および特徴がさらに明らかになり、本発明自体が最もよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】ネットワーク端末101と、ネットワークノード102と、ネットワークマネージャ103とを備えるDSLネットワークにおいて本発明によりインパルスノイズを管理する方法の一実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1に示される電気通信環境に従った本発明による装置の動作が、そこに示される様々なブロックの機能の記載によって説明される。この記載に基づいて、諸ブロックの実際の実施例は当業者には明白となるため、詳細には記載されない。また、ノイズインパルスを管理する方法を行う原理について、さらに詳細に記載される。
【0039】
図1は、DSL回線104を介してDSL CO(Digital Subscriber Line Central Office、デジタル加入者線の電話局)102に接続されたDSL CPE(Digital Subscriber Line Customer Premises Equipment、デジタル加入者線の顧客宅内機器)のモデム101を示している。DSL CPE101は例えばADSLのモデムまたはVDSLのモデムであることが可能であり、DSL CO102はDSLAM(Digital Subscriber Line ACCESS Multiplexer、デジタル加入者線のアクセスマルチプレクサ)、DSLAM内の回線端末ボード、または電話局のDSLのモデムの1つまたは複数を統合するASIC(Application Specific Integrated Circuit、特定用途向け集積回路)であることが可能である。このDSL CPE101は、伝統的なDSL CPEの機能に加えて、DMTシンボル受信品質センサ、SENSすなわち111と、DMTシンボル品質記録生成器、QR−GENすなわち112と、インパルスノイズを管理するためのネットワーク装置NA1すなわち113と、DMTシンボル品質記録転送ユニット、TRANSFすなわち114とを備える。
【0040】
このDSL CO102は、伝統的なDSL COの機能に加えて、第1の中央処理装置、CPU1すなわち121を含み、このCPU1もまた、ネットワーク装置NA2すなわち122を有する。
【0041】
さらに図1は、第2の中央処理装置、CPU2すなわち131を装備されたDSLネットワークマネージャ、NETWORK MNGRすなわち103を示している。
【0042】
ダウンストリーム方向では、DMTシンボルは、DSL CO102からDSL CPE101へDSL回線104によって送信される。DSL CPE101でこうしたDMTシンボルが受信されると、シンボル受信品質センサ111が、例えば抹消の検出、SNR(信号対雑音比)の測定、またはBER(ビット誤り率)の計算を通して、各受信されたDMTシンボルについてDMTシンボルの品質の低下を検知する。検知されたDMTシンボルの品質に基づいて、シンボル受信品質センサ111は、受信DMTシンボルの低下を示す、DMTシンボルにつき1ビットを生成する。このようなビットは、次の段落ではシンボル品質ビットすなわちSQビットと呼ばれる。シンボル受信品質センサ111は、検出したDMTシンボルの品質が一定のしきい値を下回っている場合にはDEgraded SYmbolビットすなわちDESYビット(例えば1に設定されたビット)を生成し、対応するDMTシンボルの受信品質がこの同じしきい値を超える場合にはNOn−DEgraded SYmbolビットすなわちNODESYビット(例えば0に設定されたビット)を生成する。これらのSQビットは、現在あるサービスまたは将来のサービスについて生成されることが可能である。ADSLの場合このように生成されたビットは、SQストリームと名付けられた約4kbit/sのデータストリームを表す。品質記録生成器(QR−GEN)112は、これらのビットをビットストリングに分類し、これが時間インジケータとともに品質記録を構成する。
【0043】
ネットワーク装置NA1は、廃棄の重み生成器DW−GENすなわち1131と、メモリMEMすなわち1132と、廃棄器DISすなわち1133とを含んでいる。
【0044】
廃棄の重み生成器DW−GENは、例えば品質記録QRのうちの品質記録QR2に対して、それぞれの品質記録QR2の中の情報に基づいて廃棄の重みDW2を生成して関連付け、すなわち廃棄の重みDW2は、品質記録QR2の関数で生成される。例えば(QR2;DW2)のようなデータの対(品質記録;廃棄の重み)が、廃棄の重み生成器DW−GENによってメモリMEMに提供されて格納される。前述のように、本発明の範囲は、ただ1つの品質記録の関数で廃棄の重みを生成することに限定されないことに注意されたい。実際に廃棄の重みは、以前の品質記録またはその後の品質記録の関数で生成されることも可能である。さらに、2つ以上の品質記録に対して1つの廃棄の重みが決定されることも可能であることは明らかである。
【0045】
その後品質記録は、転送ユニット114によってEOC(埋め込み操作チャネル)管理チャネルによってDSL CO102へアップストリームで送信される。これは自律的に行われることが可能であり、あるいはこれはDSL CO102によって、具体的にはその中の中央処理装置121によって出される要求に基づいて行われることが可能である。後者の場合、DSL CPEの中のメモリ1132は実際には、中央処理装置121によって品質記録の転送が要求されるまで、品質記録をやむを得ず格納する。メモリ1132のサイズは、例えば32×4バイトに固定されることが可能である。
【0046】
メモリMEM1132は、前の要求と現在の要求の間のオーバーフローについて監視される。メモリMEMのサイズが新しい品質記録、すなわち前の要求後に生成されたビット列を格納するのに不十分になるとすぐに、格納されている品質記録の1つまたは複数が廃棄されることになる。廃棄されることになる1つまたは複数の品質記録は、予め定められた関連する廃棄の重みを考慮する所定のルールおよび条件により決定される。
【0047】
図1は品質記録が格納されるものと同一のメモリMEMに廃棄の重みを格納するように示しているが、本発明はこのような実施例に限定されないことに注意されたい。実際には、ネットワーク装置NA1に第2のメモリが導入されて、生成された廃棄の重みを格納することも可能である。
【0048】
さらに、1つまたは複数の品質記録に関連している廃棄の重みの生成は、必ずしも1回の生成に限定されないことが説明されなければならない。実際には、以前に生成された廃棄の重みを再計算するために機能ブロックの追加が予測される。これは、例えば品質記録の品質インジケータが非常に適切な受信品質を含む場合に行われる可能性があり、例えば式中で時間インジケータの寄与により高い重みを含み、それによって例えば品質記録が長期間保存される第2の関数が適用される可能性がある。
【0049】
品質記録を第1の中央処理装置CPU1に転送した後に、受信された品質記録は、第2のネットワーク装置NA2すなわち122の中に格納されることが可能である。実際には、品質記録はCPU1によって処理される、または圧縮されることが可能であり、さらに1つまたは複数のDSLオペレータのDSLAMベース全体あるいはDSLオペレータのDSLAMベースの一部を管理するネットワークマネージャまたはネットワーク分析器103の中の第2の中央処理装置131にチャネル105によって転送されることが可能であり、また品質記録の転送は自律的に(プッシュ型)またはCPU2の明示的な要求に基づいて(プル型)行われることが可能であるので、第2のメモリ(図示せず)は、ネットワーク装置NA1のメモリと同様であるが、読み取り、書き込み、廃棄、およびオーバーフローの管理機能を備えて追加され、品質記録がCPU2に要求されるペースに適切に対処することが可能である。これによってやはり、実際に第1のネットワーク装置NA1と同様の第2のネットワーク装置NA2を含むことは意味があり、メモリがオーバーフローになると品質記録のインテリジェントな廃棄を可能にする。
【0050】
最初に注目するのは、DMTシンボルすなわち上記の離散マルチトーンシンボルは、国際的なDSL標準により、データシンボルおよびSYNCシンボルを含むことである。しかしながら、本発明により生成されたビット列が明らかにDMTシンボル、またはデータシンボルのみ、またはSYNCシンボルのみを基にしている可能性があるとき、このような厳密な解釈は本発明には適用されないことに注意されたい。実際には、ビット列は、データパケット、セル、ワード、シンボルなどの代替型で計算されることさえ可能である。
【0051】
さらに、電気通信機器の当業者には明らかであるように、図1に描かれて上記で説明された機能ブロックは、ソフトウェア、ハードウェア、またはソフトウェアとハードウェアの組み合わせで実行されることが可能である。
【0052】
最後に本発明の実施形態は、上記では機能ブロックに関して説明されていることに注目されたい。上記のこれらのブロックの機能的な説明から、電子デバイスを設計する当業者には、これらのブロックの実施形態がよく知られている電子部品を用いてどのように製造可能であるかが明らかであろう。したがって機能ブロックの内容の詳細な構造については示されていない。
【0053】
本発明の原理を特定の装置に関して説明したが、この説明は単に一例として行われ、添付の特許請求の範囲で定義する本発明の範囲についての限定ではないことは、明確に理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタルデータパケットを伝送するネットワークにおいてインパルスノイズを監視する方法にして、
メモリ(1132)の中に品質記録(QR1、QR2、……QRn)を格納するステップであって、前記品質記録(QR)のそれぞれが、1つまたは複数の受信されたデータパケットの検知された受信品質を示しているステップと、
前記メモリ(1132)がオーバーフローになると前記メモリ(1132)から前記品質記録の1つまたは複数を廃棄するステップとを含む方法であって、
前記品質記録(QR1、QR2、……QRn)の少なくとも1つに対して前記品質記録の少なくとも1つの関数として廃棄の重み(DW1、DW2、……DWn)を生成して、前記品質記録の少なくとも1つにこれを関連付けるステップ(1131)と、
前記オーバーフローになると、前記廃棄の重み(DW1、DW2、……DWn)を考慮に入れた所定のルールおよび条件により前記品質記録の1つまたは複数を廃棄するステップ(1133)と
をさらに含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記品質記録(QR1、QR2、……QRn)の部分がそれぞれ、1つまたは複数の受信されたデータパケットの検知された受信品質を示している品質インジケータと、前記品質記録を生成する時間モーメントを示している時間インジケータとを含み、前記関数の引数が品質インジケータ引数と呼ばれる前記それぞれの品質インジケータの少なくとも1つと、前記それぞれの時間インジケータの少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項1に記載のインパルスノイズを監視する方法。
【請求項3】
前記関数が、前記時間インジケータに対して前記品質インジケータの比較的高い寄与を含むことを特徴とする、請求項2に記載のインパルスノイズを監視する方法。
【請求項4】
生成された廃棄の重みが等しい場合、前記所定のルールおよび条件により最も新しい品質記録を廃棄することをさらに含む、請求項1に記載のインパルスノイズを監視する方法。
【請求項5】
前記品質インジケータのそれぞれが品質サブインジケータを含み、各品質サブインジケータが前記受信されたデータパケットの1つまたは複数の中の前記受信品質を示し、前記関数が前記品質インジケータ引数に対するサブ関数を含み、特定の値の組に含まれる値を有する前記サブインジケータの集計であることを特徴とする、請求項2に記載のインパルスノイズを監視する方法。
【請求項6】
このような品質記録が、受信されたデータパケットにつき1ビットをさらに含むビット列を含み、前記1ビットが前記受信されたデータパケットが一定のしきい値をパスする際の前記受信品質を示しており、前記関数が前記ビット列に対するサブ関数を含み、所定の値を有する受信されたデータパケットにつき前記1ビットの集計であることを特徴とする、請求項1に記載のインパルスノイズを監視する方法。
【請求項7】
デジタルデータパケットを伝送するネットワークにおいてインパルスノイズを監視するネットワーク装置(113;122)にして、
品質記録(QR1、QR2、……QRn)を格納するメモリ(1132)であって、前記品質記録(QR)のそれぞれが、1つまたは複数の受信されたデータパケットの検知された受信品質を示しているメモリ(1132)と、
前記メモリ(1132)がオーバーフローになると前記メモリ(1132)から前記品質記録(QR1、QR2、……QRn)の1つまたは複数を廃棄する手段(1133)とを備えたネットワーク装置(131;122)であって、
前記品質記録の少なくとも1つに対して、前記それぞれの品質記録の少なくとも1つの関数として生成される廃棄の重み(DW1、DW2、……DWn)を生成して、前記品質記録の少なくとも1つにこれを関連付ける手段(1131)と、
前記オーバーフローになると、前記廃棄する手段(1133)によって、前記品質記録(QR1、QR2、……QRn)の1つまたは複数を、前記廃棄の重み(DW1、DW2、……DWn)を考慮に入れた所定のルールおよび条件により廃棄することと、
をさらに含むことを特徴とする、ネットワーク装置。
【請求項8】
受信されたデータパケットの中のインパルスノイズを検知することができるデジタルデータパケットを伝送するネットワーク端末の中に備えられていることを特徴とする、請求項7に記載のデジタルデータパケットを伝送するネットワークにおいてインパルスノイズを監視するネットワーク装置(113)。
【請求項9】
デジタルデータパケットを伝送するネットワークノード(102)の中に備えられていることを特徴とする、請求項7に記載のデジタルデータパケットを伝送するネットワークにおいてインパルスノイズを監視するネットワーク装置(122)。

【図1】
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【公開番号】特開2012−231510(P2012−231510A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−140442(P2012−140442)
【出願日】平成24年6月22日(2012.6.22)
【分割の表示】特願2010−501408(P2010−501408)の分割
【原出願日】平成20年3月17日(2008.3.17)
【出願人】(391030332)アルカテル−ルーセント (1,149)
【Fターム(参考)】