説明

インビボスクリーニングアッセイ

【課題】 LOXL2の阻害剤のスクリーニング方法の改善。
【解決手段】 LOXL2活性の阻害剤を同定する方法であって、該方法は動物を試験分子で処置することを含み、該動物は1又は2以上の線維症の領域を含むこと、及び、線維症の症状を改善する(寛解する)試験分子がLOXL2活性の阻害剤として同定されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
この出願は、2009年8月21日に出願された米国仮出願第61/235,846号の利益を主張する。なお、該仮出願はあらゆる目的のためにその全内容が引用をもって本願に組み込まれる。
【0002】
この出願は、2009年8月21日に出願された(本願と)同一出願人による(co-owned)米国仮出願第61/235,852号及びこれと同日に出願された同一出願人による米国出願、表題「治療方法及び組成物」、代理人整理番号ARBS−011、依頼人(出願人)整理番号A11−US1に関連する。なお、これらの出願の開示はあらゆる目的のためにそれらの全内容が引用をもって本願に組み込まれる。
【0003】
[連邦政府の支援に関する陳述]
適用無し。
【技術分野】
【0004】
本願の開示は、例えば癌及び線維症を含む、結合組織が関与する種々の疾患の治療のための分子の同定に有用なスクリーニングアッセイの分野にある。
【背景技術】
【0005】
異種移植及び外科的同所(正位)移植を含む多くのインビボアッセイが、腫瘍形成及び転移の研究に使用されてきた。また、化学的に誘発される線維症の研究のためのインビボモデルシステムも多くある。細胞外マトリクス酵素リシル酸化酵素様タンパク質−2(LOXL2)は、両者のプロセスに関与することが示されている。例えば、WO 2004/047,720(2004年6月10日);US 2006/0127402(2006年6月15日);US 2009/0053224(2009年2月26日);US 2009/0104201(2009年4月23日);Kirschmann et al. (2002) Cancer Research 62:4478-4483 参照。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO 2004/047720
【特許文献2】US 2006/0127402
【特許文献3】US 2009/0053224
【特許文献4】US 2009/0104201
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Kirschmann et al. (2002) Cancer Research 62:4478-4483
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、リシル酸化酵素様−2酵素は、重要な治療ターゲットの代表例である。それゆえ、LOXL2の阻害剤のスクリーニング方法の改善が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願において開示されているのは、この酵素の線維形成及び線維性活性の阻止に有効なLOXL2の阻害剤を同定する種々のインビボアッセイの使用のための方法及び組成物である。従って、本願の開示は以下の形態を提供する:
1. LOXL2活性の阻害剤を同定する方法であって、該方法は動物を試験分子で処置することを含み、該動物は1又は2以上の線維症の領域を含むこと、及び、線維症の症状を改善する(寛解する)試験分子がLOXL2活性の阻害剤として同定されること
を特徴とする方法。
2. 前記線維症は肝線維症である、形態1の方法。
3. 前記線維症はCCl処置によって誘発される、形態2の方法。
4. 前記線維症は肺線維症である、形態1の方法。
5. 前記線維症はブレオマイシンによる処置によって誘発される、形態4の方法。
6. LOXL2活性の阻害剤を同定する方法であって、該方法は動物を試験分子で処置することを含み、該動物は1又は2以上の関節炎の領域を含むこと、及び、関節炎の症状を改善する(寛解する)試験分子がLOXL2活性の阻害剤として同定されること
を特徴とする方法。
7. 前記関節炎はコラーゲンの注入によって誘発される、形態6の方法。
8. LOXL2活性の阻害剤を同定する方法であって、該方法は動物を試験分子で処置することを含み、該動物は腫瘍細胞の外科的同所(正位)移植により生成される1又は2以上の実験的腫瘍を含むこと、及び、腫瘍体積を減少する試験分子がLOXL2活性の阻害剤として同定されること
を特徴とする方法。
9. 前記腫瘍細胞はMDA−MB435細胞である、形態8の方法。
10. 前記実験的腫瘍は肺腫瘍である、形態8の方法。
11. LOXL2活性の阻害剤を同定する方法であって、該方法は動物を試験分子で処置することを含み、該動物は腫瘍細胞の血管内注入により生成される実験的転移を含むこと、及び、転移の程度を減少する試験分子がLOXL2活性の阻害剤として同定されること
を特徴とする方法。
12. 前記腫瘍細胞はMDA−MB231細胞である、形態11の方法。
13. LOXL2活性の阻害剤を同定する方法であって、該方法は動物を試験分子で処置することを含み、該動物は外来性基底膜を含むこと、及び、該外来性基底膜の脈管形成を減少する試験分子がLOXL2活性の阻害剤として同定されること
を特徴とする方法。
14. 前記外来性基底膜はマトリゲルを含む、形態13の方法。
15. LOXL2活性の阻害剤を同定する方法であって、該方法は動物を試験分子で処置することを含み、該動物は1又は2以上の線維形成(desmoplasia)の領域を含むこと、及び、線維形成の症状を改善する(寛解する)試験分子がLOXL2活性の阻害剤として同定されること
を特徴とする方法。
16. 線維形成の症状の改善(寛解)はコラーゲン架橋結合の減少によって示される、形態15の方法。
17. 線維形成の症状の改善(寛解)はα−平滑筋アクチンの発現の減少によって示される、形態15の方法。
18. 前記試験分子はポリペプチドである、形態1、6、8、11、13又は15の何れかの方法。
19. 前記ポリペプチドは抗体である、形態18の方法。
20. 前記抗体は抗LOXL2抗体である、形態19の方法。
21. 前記試験分子は核酸である、形態1、6、8、11、13又は15の何れかの方法。
22. 前記核酸はsiRNAである、形態21の方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(詳細な説明)
本願開示の実施は、別段の定めがない限り、細胞生物学、毒物学、分子生物学、分子化学、細胞培養、免疫学、腫瘍学、組み換えDNAの分野及び当該技術の知見の及ぶ範囲内の関連分野における標準的方法及び伝統的技術を採用する。そのような技術は、文献に記載されており、それ故、当業者に利用可能である。例えば、Alberts, B. et al., "Molecular Biology of the Cell," 第5版, Garland Science, New York, NY, 2008; Voet, D. et al. "Fundamentals of Biochemistry: Life at the Molecular Level,"第3版, John Wiley & Sons, Hoboken, NJ, 2008; Sambrook, J. et al., "Molecular Cloning: A Laboratory Manual,"第3版, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2001; Ausubel, F. et al., "Current Protocols in Molecular Biology," John Wiley & Sons, New York, 1987及び定期的な更新; Freshney, R.I., "Culture of Animal Cells: A Manual of Basic Technique,"第4版, John Wiley & Sons, Somerset, NJ, 2000; 及び"Methods in Enzymology," Academic Press, San Diego, CAのシリーズ参照。
【0011】
LOXL2阻害剤のインビボアッセイ
【0012】
線維症、腫瘍線維形成及び腫瘍間質の線維芽細胞活性化におけるリシル酸化酵素様−2タンパク質(LOXL2)の役割については最近説明がなされている。2009年8月21日に出願された同一出願人による米国出願第61/235,852号及びこれと同日に出願された同一出願人による出願、表題「治療方法及び組成物」、米国出願第 号、代理人整理番号ARBS−011、依頼人(出願人)整理番号A11−US1参照。上記各出願の開示は、腫瘍形成、転移及び線維症並びにとりわけ線維形成及び線維芽細胞活性化におけるLOXL2の役割を説明する目的のためにそれらの全内容が引用を以って本願に組み込まれる。LOXL2の阻害剤の多くは線維形成及び/又は線維症の症状の減少ないし改善(寛解)を達成できないため、より効率的なアッセイが必要とされる。従って、本願に開示されるのは、LOXL2の治療的に有効な阻害剤の同定に有用な多くのインビボアッセイである。これらのアッセイは、任意の試験物質について新規に使用可能であり、また、他の方法によって治療的に有効なものとして同定されているLOXL2結合分子(例えば抗LOXL2抗体)のスクリーニングにも使用可能である。
【0013】
外科的同所(正位:orthotopic)移植(SOI)モデル
【0014】
(本発明の)アッセイは、齧歯類モデル;例えばラット又はマウスにおいて最も便利に実行できるが、任意の哺乳動物モデル系で使用可能である。例えば、試験される腫瘍のタイプに応じて、適切なマウス系統が使用される。多くの目的のために、ヌードマウス(NCr:nu/nu)が好適である。一般的には、5−6週齢の健康なマウスが使用される。試験される腫瘍に応じて、適切な性が使用される。例えば、オスのマウスは前立腺腫瘍の試験に使用され、メスのマウスは乳房腫瘍の試験に使用される。
【0015】
腫瘍細胞株から(の)培養細胞の皮下注射によって得られる、実験的腫瘍が最初に樹立される。この目的のために、腫瘍誘導に十分な多くの培養細胞(例えば1−10×10細胞)がマウスの側腹部に皮下注射される。注射用の細胞は、例えば0.1mlのPBSに懸濁され、例えば27Gニードルの1mlツベルクリンシリンジを用いて注射される。実験的腫瘍の樹立に使用される細胞を供給するために、任意の腫瘍細胞株が使用可能であることは、当業者には明らかである。例えば、アメリカンタイプカルチャーコレクション、マナッサス、ヴァージニア州のカタログ参照。
【0016】
腫瘍サイズが10−15mmに達したとき、又は腫瘍が壊死性になったとき、腫瘍は以下のように継代される。腫瘍を切除し、壊死組織を除去し、腫瘍をMM培地において凡そ1−2mmのサイズの断片にカットする。一方、動物は、(例えば、Ketaset/Xylazine/PromAce等のケタミンカクテルを用いて)麻酔し、麻酔中に、その側腹部に凡そ0.5cmの長さの切開部を形成する。(上記の)切り刻んだ腫瘍組織の2−3片を切開部に挿入する。切開部を閉鎖し、動物を回復させる。その結果として生成した腫瘍は、同じ方法に従って、腫瘍を切除し、壊死組織を除去し、腫瘍を切り刻み、その小片を新たな宿主に再移植することによって、再継代することもできる。継代は、最大で3回実施される。
【0017】
同所(正位)移植のために、2回又は3回継代した腫瘍を切除し、壊死組織を除去し、腫瘍を、MM培地において、1−2mmの小片に切り刻む。実験的マウスを、上述のように、麻酔し、実施されるべき手術に適するように配置する。大抵の腹部手術(例えば結腸、膵臓、膀胱、前立腺、卵巣)及び頭頸部腫瘍移植のためには、マウスは仰臥位に固定する。肺、腎臓又は側腹部への移植のためには、マウスは側臥位に固定する。体温は、手術及び術後回復中、例えば等温パッド(例えばDeltaphase Isothermal Pad, Braintree Scientific, Inc., Braintree, MA)を用いて維持する。移植手術中は、標準的な無菌処置を利用する(例えば、ヨウ素及び/又はエチル若しくはイソプロピルアルコールによる所定領域の殺菌)。適切な器官又は組織への腫瘍組織の小片の移植後、切開部を閉鎖し、動物をホメオスタシス及び正常行動の回復について観察する。任意的に、術後感染を阻止するために、抗生物質を投与することもできる(例えば飲料水に0.0008%アンピシリン)。
【0018】
単なる一例であるが、外科的同所(正位)移植アッセイを提供するために、乳房腫瘍は以下のように移植される。雌性マウスの第2乳頭の内側に沿って小切開部を形成する。皮下乳房脂肪体を鈍的切開(Blunt Dissection)によって露出し、脂肪体に小さな切り口を形成し、この切り口を鈍的に拡張して小ポケットを形成する。上述のように調製した、切り刻んだ乳房腫瘍組織の2−3片を、8−0ナイロン縫合糸を用いて該小ポケットに縫合し、6−0絹縫合糸を用いて切開部を閉鎖する。
【0019】
既述の通り、SOIアッセイは、任意の動物モデル系、例えば哺乳動物、において実施することができる。マウス系は単なる例示目的で本願において説明されているに過ぎない。
【0020】
線維芽細胞と腫瘍細胞の共培養の異種移植
【0021】
腫瘍関連線維形成のモデル系を提供するために、腫瘍細胞と線維芽細胞をマウスに同時注入する。マウス異種移植モデル系(複数)は当業者には既知であり、多くのマウスモデル系が本願の「実施例」の項において説明されている。このアッセイで使用する腫瘍細胞には、HT29(結腸腺癌から樹立された細胞株)、MDA−MB−231(乳腺癌から樹立された細胞株)、MDA−MB−435(メラノーマから樹立された細胞株)、SKOV3(卵巣腫瘍から樹立された細胞株)及びBxPC3(膵臓腫瘍から樹立された細胞株)が含まれるが、これらに限定されない。典型的な線維芽細胞は、ヒト包皮線維芽細胞(HFF)及びNIH 3T3細胞である。
【0022】
線維芽細胞及び腫瘍細胞は、何れも培地で増殖させて、収集し、細胞数を測定し、これらの線維芽細胞及び腫瘍細胞を1:1(細胞:細胞)の割合で混合する。細胞混合物を試験動物に(例えば、マウス、必要に応じて、ヌードマウス等の免疫不全マウス、の側腹部への皮下注射によって)接種する。試験化合物の存在下及び非存在下において腫瘍増殖及び必要に応じて転移を観察し、例えばコラーゲン沈着、コラーゲン架橋結合、線維芽細胞活性化、脈管形成、血管新生等のようなプロセスに対する試験化合物の効果を評価する。
【0023】
線維芽細胞活性化
【0024】
腫瘍線維形成は線維芽細胞活性化から生じることがあり、正常な線維芽細胞が「腫瘍関連線維芽細胞」又は「筋線維芽細胞」に変換される。腫瘍関連線維芽細胞(TAFs)はその産生及び/又は表10(実施例12参照)に記載した因子を含む多くの因子の分泌に基づいて同定することができる。これらのマーカーの任意の1つ又は任意の組合せの発現は、本願に記載した任意のインビボアッセイにおいて終点として利用することができる。
【0025】
血管新生(angiogenesis)アッセイ
【0026】
インビボ血管新生アッセイに関する情報は、Auerbach et al. (2003) Clinical Chemistry 49:32-40及びNorrby (2006) J. Cell. Mol. Med. 10:588-612に見出すことができる;これらの文献の開示は血管新生アッセイを説明する目的のためにそれらの全内容が引用を以って本願に組み込まれる。更に、2009年8月21日に出願された同一出願人による米国仮出願第61/235,796号及びこれと同日に出願された同一出願人による米国特許出願、表題「インビボスクリーニングアッセイ」、代理人整理番号ARBS-013、依頼人(出願人)整理番号A13-US1も参照;これらの開示はあらゆる目的のためにその全内容が引用を以って本願に組み込まれる。
【0027】
リシル酸化酵素型酵素
【0028】
本願で使用される場合、用語「リシル酸化酵素型酵素」は、とりわけ、リシン及びヒドロキシリシン残基のε‐アミノ基の酸化的脱アミノ化を触媒し、かくして、ペプチジルリシンをペプチジル‐α‐アミノアジピック‐δ−セミアルデヒド(アリシン)に変換し、化学量論的量のアンモニア及び過酸化水素を放出するタンパク質のファミリーのメンバーをいうものとする:

【0029】
この反応は、ほとんどの場合、細胞外のコラーゲン及びエラスチンのリシン残基に生じる。アリシンのアルデヒド残基は、活性であり、また、他のアリシン及びリシン残基と自発的に凝集し、かくして、コラーゲン分子を架橋してコラーゲン原繊維を形成する。
【0030】
リシル酸化酵素型酵素は、ニワトリ、ラット、マウス、ウシ及びヒトから精製されてきた。すべてのリシル酸化酵素型酵素は、当該タンパク質のカルボキシ末端部分に位置しかつ当該酵素の活性部位を含む、凡そ205アミノ酸の長さの共通の触媒ドメインを含む。活性部位は、Cu(II)原子と配位結合する4つのヒスチジン残基を含む保存アミノ酸配列を含む銅結合部位を含む。活性部位はまた、リシン残基とチロシン残基(ラットリシル酸化酵素のlys314及びtyr349、ヒトリシル酸化酵素のlys320及びtyr355に対応)の間の分子内共有結合により形成されるリシルチロシルキノン(LTQ)補因子を含む。LTQ補因子を形成するチロシン残基を取り囲む配列はまた、(種々の)リシル酸化酵素型酵素間で保存される。触媒ドメインはまた、5個のジスルフィド結合の形成に関与する10個の保存システイン残基を含む。触媒ドメインはまた、フィブロネクチン結合ドメインを含む。最後に、成長因子及びサイトカインレセプタードメインに類似し4個のシステイン残基を含むアミノ酸配列が、触媒ドメインに存在する。これらの保存領域が存在するにも関わらず、異なるリシル酸化型酵素は、異なるヌクレオチド配列及びアミノ酸配列の領域のために、それらの触媒ドメインの内部及び外側の両方において、互いに区別することができる。
【0031】
単離されかつ特徴付けらるべきこの酵素ファミリーの最初のメンバーは、タンパク質‐リシン6‐酸化酵素、タンパク質‐L‐リシン:酸素‐6‐酸化還元酵素(脱アミノ化)又はLOXとしても知られているリシル酸化酵素(EC 1.4.3.13)であった。例えば、Harris et al., Biochim. Biophys. Acta 341:332-344 (1974); Rayton et al. J. Biol. Chem. 254:621-626 (1979); Stassen, Biophys. Acta 438:49-60 (1976) 参照。
【0032】
更なるリシル酸化酵素型酵素が続いて発見された。これらのタンパク質は「LOX様」又は「LOXL」と称されている。これらは全て、上記の共通の触媒ドメインを含み、類似の酵素的活性を有する。これまでのところ、5つの異なるリシル酸化酵素型酵素が、ヒトとマウスの両方に存在することが知られている。これらの酵素は、LOX及び4つのLOX関連ないしLOX様タンパク質であるLOXL1(これらは「リシル酸化酵素様」「LOXL」又は「LOL」とも称される)、LOXL2(これは「LOR−1」とも称される)、LOXL3(これは「LOR−2」とも称される)及びLOXL4である。これらの5つの異なるリシル酸化酵素型酵素をコードする各遺伝子は、異なる染色体上に存在する。例えば、Molnar et al., Biochim Biophys Acta. 1647:220- 24 (2003); Csiszar, Prog. Nucl. Acid Res. 70:1-32 (2001); 2001年11月8日に公開されたWO 01/83702、及び米国特許第6,300,092号参照(これらは全て引用を以って本願に組み込まれる)。LOXL4といくつかの類似性を有するが、異なる発現パターンを有する、LOXCと呼ばれるLOX様タンパク質は、マウスEC細胞株から単離されている。Ito et al. (2001) J. Biol. Chem. 276:24023-24029参照。2つのリシル酸化酵素型酵素DmLOXL−1及びDmLOXL−2は、ショウジョウバエから単離されている。
【0033】
リシル酸化酵素型酵素はすべて共通の触媒ドメインを共有しているにも拘わらず、こられらはまた、特にそれらのアミノ末端領域において、互いに異なる。LOXと比べると、4つのLOXLタンパク質はアミノ末端伸長を有する。従って、ヒトプレプロLOX(即ち、シグナル配列開裂前の一次翻訳産物、以下参照)は、417個のアミノ酸残基を含み、LOXL1は574個(のアミノ酸残基)を含み、LOXL2は638個(のアミノ酸残基)を含み、LOXL3は753個(のアミノ酸残基)を含み及びLOXL4は756個(のアミノ酸残基)を含む。
【0034】
LOXL2、LOXL3及びLOXL4は、それらのアミノ末端領域の内部において、スカベンジャーレセプターシステインリッチ(SRCR)ドメインの4つの繰り返しを含む。これらのドメインは、LOX又はLOXL1には存在しない。SRCRドメインは、分泌型、膜貫通型又は細胞外マトリクスタンパク質に見られ、幾つかの分泌型及びレセプタータンパク質におけるリガンド結合を媒介することが知られている。Hoheneste et al. (1999) Nat. Struct. Biol. 6:228-232; Sasaki et al. (1998) EMBO J. 17:1606-1613参照。LOXL3は、そのSRCRドメインに加えて、核局在シグナルをそのアミノ末端領域に含む。プロリンリッチドメインはLOXL1に特有であると思われる。Molnar et al. (2003) Biochim. Biophys. Acta 1647:220-224参照。様々なリシル酸化酵素型酵素はまた、それらのグリコシル化パターンの点でも異なる。
【0035】
組織分布もまた、リシル酸化酵素型酵素間で異なる。ヒトLOXmRNAは、心臓、胎盤、睾丸、肺、腎臓及び子宮において高発現するが、脳及び肝臓における発現は僅かである。ヒトLOXL1のmRNAは、胎盤、腎臓、筋肉、心臓、肺及び膵臓において発現し、LOXと同様に、脳及び肝臓における発現レベルははるかにより小さい。Kim et al. (1995) J. Biol. Chem. 270:7176-7182参照。LOXL2mRNAは子宮、胎盤及び他の器官において高レベルで発現するが、LOX及びLOXLと同様に、脳及び肝臓における発現レベルは小さい。Jourdan Le-Saux et al.(1999) J. Biol. Chem. 274:12939:12944参照。LOXL3mRNAは、睾丸、脾臓及び前立腺において高発現し、胎盤においては、中程度に発現し、肝臓では発現しない。他方、LOXL4mRNAの高レベル(の発現)が肝臓において観察される。Huang et al. (2001) Matrix Biol. 20:153-157、Maki and Kivirikko (2001) Biochem. J. 355:381-387; Jourdan Le-Saux et al. (2001) Genomics 74:211-218; Asuncion et al. (2001) Matrix Biol. 20:487-491参照。
【0036】
異なるリシル酸化酵素型酵素の発現及び/又は関与も疾病に応じて異なる。例えば、Kagan (1994) Pathol. Res. Pract. 190:910-919; Murawaki et al. (1991) Hepatology 14:1167-1173; Siegel et al. (1978) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 75:2945-2949; Jourdan Le-Saux et al. (1994) Biochem. Biophys. Res. Comm. 199:587-592; 及び Kim et al. (1999) J. Cell Biochem. 72:181-188参照。リシル酸化酵素型酵素はまた、頭頸部癌、膀胱癌、大腸癌、食道癌及び乳癌を含む幾つかの癌における関与も示唆されている。例えば、Wu et al. (2007) Cancer Res. 67:4123-4129; Gorough et al. (2007) J. Pathol. 212:74-82; Csiszar (2001) Prog. Nucl. Acid Res. 70:1-32及び、Kirschmann et al. (2002) Cancer Res. 62:4478-4483参照。
【0037】
従って、リシル酸化酵素型酵素は、構造及び機能においていくつかの重なりを示すが、それぞれ異なる構造及び機能も有する。構造に関していえば、例えば、LOXの触媒ドメインに対して産生される幾つかの抗体はLOXL2に結合しない。機能に関していえば、LOXの標的除去はマウスにおいて出産の際に致死的であると思われるが、他方、LOXL1の欠損は深刻な発達表現型を引き起こさないことが報告されている。Hornstra et al. (2003) J. Biol. Chem. 278:14387-14393; Bronson et al. (2005) Neurosci. Lett. 390:118-122参照。
【0038】
最も広く報告されているリシル酸化酵素型酵素の活性は細胞外のコラーゲン及びエラスチンにおける特定のリシン残基の酸化であるが、リシル酸化酵素型酵素がいくつかの細胞内プロセスにも関与することについての証拠がある。例えば、いくつかのリシル酸化型酵素は遺伝子発現を制御することについての報告がある。Li et al. (1997) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:12817-12822; Giampuzzi et al. (2000) J. Biol. Chem. 275:36341-36349参照。更に、LOXはヒストンH1におけるリシン残基を酸化することが報告されている。LOXの更なる細胞外活性は、単核球、繊維芽細胞及び平滑筋細胞の走化性の誘導を含む。Lazarus et al. (1995) Matrix Biol. 14:727-731; Nelson et al. (1988) Proc. Soc. Exp. Biol. Med. 188:346-352参照。LOX自体の発現は、TGF‐β、TNF‐α及びインターフェロンのようないくつかの増殖因子及びステロイドにより誘導される。Csiszar (2001) Prog. Nucl. Acid Res. 70:1-32参照。近年の研究によれば、LOXには、発生調節、腫瘍抑制、細胞運動性及び細胞老化のような種々の生物学的機能における他の役割があるとされている。
【0039】
様々な材料由来のリシル酸化酵素(LOX)タンパク質の例は、次の配列の1つから発現又は翻訳されるポリペプチドと実質的に同一(相同)であるアミノ酸配列を有する酵素を含む:EMBL/GenBank受託番号: M94054;AAA59525.1−−mRNA;S45875;AAB23549.1−mRNA;S78694;AAB21243.1−mRNA;AF039291;AAD02130.1−mRNA;BC074820;AAH74820.1−mRNA;BC074872;AAH74872.1−mRNA;M84150;AAA59541.1――ゲノムDNA。LOXの1つの実施形態は、ヒトリシル酸化酵素(hLOX)プレプロタンパク質である。
【0040】
リシル酸化酵素様酵素をコードする配列の例示的な開示は次の通りである:LOXL1はGenBank/EMBL BC015090;AAH15090.1で寄託されたmRNAによってコードされる;LOXL2はGenBank/EMBL U89942で寄託されたmRNAによってコードされる;LOXL3はGenBank/EMBL AF282619;AAK51671.1で寄託されたmRNAによってコードされる;及びLOXL4はGenBank/EMBL AF338441;AAK71934.1で寄託されたmRNAによってコードされる。
【0041】
プレプロペプチドとして知られるLOXタンパク質の一次翻訳産物はアミノ酸1−21から伸長するシグナル配列を含む。このシグナル配列は、マウス及びヒトLOXの両方において、Cys21とAla22の間の開裂によって細胞内に放出されて、46−48kDaのプロペプチド形態のLOXを生じるが、これは本願において全長形態と称することもある。プロペプチドは、ゴルジ体を通過する間にN−グリコシル化されて50kDaタンパク質を生じ、続いて、細胞外環境に分泌される。この段階においては、該タンパク質は触媒的に不活性である。マウスLOXにおけるGly168とAsp169の間での更なる開裂及びヒトLOXにおけるGly174とAsp175の間での更なる開裂によって、成熟した、酵素的に活性な、30−32kDAの酵素が生じ、18kDaのプロペプチドを放出する。この最後の開裂事象は、骨(形態)形成タンパク質−1(BMP−1)としても知られる、メタロエンドプロテアーゼプロコラーゲンC−プロテイナーゼによって触媒される。興味深いことに、この酵素はまた、LOXの基質であるコラーゲンのプロセシングにおいても機能する。N−グリコシル化ユニットは、その後除去される。
【0042】
シグナルペプチド開裂部位候補(潜在的シグナルペプチド開裂部位)は、LOXL1、LOXL2、LOXL3及びLOXL4のアミノ末端に存在することが予測されている。予測シグナル開裂部位は、LOXL1のGly25とGln26の間、LOXL2のAla25とGln26の間、LOXL3のGly25とSer26の間及びLOXL4のArg23とPro24の間に存在する。
【0043】
LOXL1タンパク質におけるBMP−1開裂部位は、Ser354とAsp355の間に同定されている。Borel et al. (2001) J. Biol. Chem.276:48944-48949参照。他のリシル酸化酵素型酵素におけるBMP−1開裂部位候補は、Ala/Gly‐Aspの配列(これには、しばしば酸性又は荷電残基が続く)にある、プロコラーゲン及びプロ‐LOXにおけるBMP−1開裂のコンセンサス配列に基づいて、予測されている。LOXL3における予測BMP−1開裂部位はGly447とAsp448の間に位置するが、この部位でのプロセシングによって、成熟LOXと類似する大きさの成熟ペプチドが生じ得る。BMP−1の開裂部位候補はまた、LOXL4の内部の、残基Ala569とAsp570の間においても同定された。Kim et al. (2003) J. Biol. Chem. 278:52071-52074参照。LOXL2もまた、LOXLファミリーの他のメンバーと同様にタンパク質分解的に開裂され、分泌され得る。Akiri et al.(2003) Cancer Res. 63:1657-1666参照。
【0044】
リシル酸化酵素型酵素は、活性部位が高度に保存される(凡そ95%)プロ酵素(酵素前駆体)のC末端30kDa領域の配列を有する、当該リシル酸化酵素型酵素における共通の触媒ドメインを共有する。中高程度の保存(凡そ60−70%)はプロペプチドドメインにおいて観察される。
【0045】
本願の開示の目的において、用語「リシル酸化酵素型酵素」は、上述の5つのリシン酸化酵素(LOX、LOXL1、LOXL2、LOXL3及びLOXL4)の全てを含み、更に、酵素活性例えばリシル残基の脱アミノ化を触媒する能力を実質的に保持するLOX、LOXL1、LOXL2、LOXL3及びLOXL4の機能的フラグメント及び/又は誘導体も含む。典型的には、機能的フラグメント又は誘導体は、そのリシン酸化活性の少なくとも50%を保持する。幾つかの実施形態では、機能的フラグメント又は誘導体は、そのリシン酸化活性の少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%又は100%を保持する。
【0046】
リシル酸化酵素型酵素の機能的フラグメントが触媒活性を実質的に変化させない(天然のポリペプチド配列に関する)保存的アミノ酸置換を含み得ることも意図されている。用語「保存的アミノ酸置換」は、ある一定の共通の構造及び/又は特性に基づくアミノ酸のグループ化(grouping)を意味する。共通の構造に関していえば、アミノ酸は、非極性側鎖を有するアミノ酸(グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、プロリン、フェニルアラニン及びトリプトファン)、非荷電極性側鎖を有するアミノ酸(セリン、トレオニン、アスパラギン、グルタミン、チロシン及びシステイン)及び荷電極性側鎖を有するアミノ酸(リシン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸及びヒスチジン)にグループ化されることができる。芳香族側鎖を含むアミノ酸のグループは、フェニルアラニン、トリプトファン及びチロシンを含む。複素環側鎖は、プロリン、トリプトファン及びヒスチジンに存在する。非極性側鎖を含むアミノ酸のグループの中では、短い炭化水素側鎖を有するアミノ酸(グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン)は、より長い非炭化水素側鎖を有するアミノ酸(メチオニン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン)から区別されることができる。荷電極性側鎖を有するアミノ酸のグループの中では、酸性アミノ酸(アスパラギン酸、グルタミン酸)は、塩基性側鎖を有するアミノ酸(リシン、アルギニン及びヒスチジン)から区別されることができる。
【0047】
個々のアミノ酸の共通の特性を定義するための機能的な方法は、相同の(homologous)生物の対応するタンパク質の間のアミノ酸変化の正規化された頻度を解析することである。Schulz, G. E. and R. H. Schirmer, Principles of Protein Structure, Springer-Verlag, 1979参照。そのような解析によって、1つのグループ内のアミノ酸(複数)が相同タンパク質において互いに優先的に(選択的に)置換され、それゆえタンパク質構造全体に類似の影響を及ぼすアミノ酸のグループ(複数)を定義することができる。Schulz, G. E. and R. H. Schirmer, Principles of Protein Structure, Springer-Verlag, 1979参照。この種の解析によって、以下に示す互いに保存的に置換可能なアミノ酸のグループを同定することができる:
(i)Glu、Asp、Lys、Arg及びHisからなる荷電基を含むアミノ酸;
(ii)Lys、Arg及びHisからなる正荷電基を含むアミノ酸;
(iii)Glu及びAspからなる負荷電基を含むアミノ酸;
(iv)Phe、Tyr及びTrpからなる芳香族基を含むアミノ酸;
(v)His及びTrpからなる窒素環基を含むアミノ酸;
(vi)Val、Leu及びIleからなる大きな脂肪族非極性基を含むアミノ酸;
(vii)Met及びCysからなる僅かに極性な基を含むアミノ酸;
(viii)Ser、Thr、Asp、Asn、Gly、Ala、Glu、Gln及びProからなる小さい残基の基を含むアミノ酸;
(ix)Val、Leu、Ile、Met及びCysからなる脂肪族基を含むアミノ酸;及び
(x)Ser及びThrからなるヒドロキシル基を含むアミノ酸。
【0048】
従って、上に例示したように、アミノ酸の保存的置換は、当業者には既知であり、一般的にその結果として生じる分子の生物学的活性を変化することなく行なうことができる。また、当業者であれば、一般的に、ポリペプチドの非本質的領域における単一のアミノ酸置換は生物学的活性を実質的に変化しないことも分かる。例えば、Watson, et al., "Molecular Biology of the Gene,"第4版, 1987, The Benjamin/Cummings Pub. Co., Menlo Park, CA, 224頁参照。
【0049】
リシル酸化酵素型酵素に関する更なる情報については、例えば、Rucker et al. (1998) Am. J. Clin. Nutr. 67:996S-1002S及びKagan et al. (2003) J. Cell. Biochem 88:660-672参照。更に、同一出願人による米国特許出願公開第2009/0053224号(2009年2月26日)及び第2009/0104201号(2009年4月23日)も参照。これらの開示は引用を以って本願に組み込まれる。
【0050】
リシル酸化酵素型酵素の活性のモジュレータ
【0051】
リシル酸化酵素型酵素の活性のモジュレータは、活性化剤(アゴニスト)及び阻害剤(アンタゴニスト)の両方を含み、様々なスクリーニングアッセイを使用することにより選択することができる。本願の開示は、1又は2以上のリシル酸化酵素型酵素の活性のモジュレータを同定するために有用な多くのインビボアッセイを提供する。
【0052】
更なる実施形態では、モジュレータは、試験化合物がリシル酸化酵素型酵素に結合するかを確認することにより同定することができるが、この場合、結合が生じれば、その化合物は候補モジュレータとなる。必要に応じ、そのような候補モジュレータに対し付加的な試験を実施することもできる。あるいは、候補化合物をリシル酸化酵素型酵素と接触させて、該リシル酸化酵素型酵素の生物学的活性をアッセイしてもよい;このリシル酸化酵素型酵素の生物学的活性を変化する化合物はリシル酸化酵素型酵素のモジュレータである。一般に、リシル酸化酵素型酵素の生物学的活性を低下する化合物は、その阻害剤である。
【0053】
リシル酸化酵素型酵素の活性のモジュレータを同定する他の方法は、細胞が1又は2以上のリシル酸化酵素型酵素を含有する細胞培養物中で候補化合物をインキュベートし、該細胞の1又は2以上の生物学的活性又は特性をアッセイすることを含む。培養物中において細胞の生物学的活性又は特性を変化する化合物は、リシル酸化酵素型酵素の活性のモジュレータ候補(潜在的モジュレータ)である。アッセイ可能な生物学的活性には、例えば、リシン酸化、過酸化物生成、アンモニア生成、リシル酸化酵素型酵素のレベル、リシル酸化型酵素をコードするmRNAのレベル、及び/又は、リシル酸化酵素型酵素に特異的な1又は2以上の機能が含まれる。上記アッセイの更なる実施形態において、候補化合物との接触の非存在下において、1又は2以上の生物学的活性又は細胞特性が、1又は2以上のリシル酸化酵素型酵素のレベル又は活性と関連付けられる。例えば、生物学活性は、遊走、走化性、上皮間葉転換、又は間葉上皮転換のような細胞機能であり得、その変化は、1又は2以上の対照又は基準試料との対比によって検出される。例えば、陰性対照試料としては、候補化合物が添加され低下したレベルのリシル酸化酵素型酵素を含む培養物;又は試験培養物と同じ量のリシル酸化酵素型酵素を含むが候補化合物は添加されていない培養物が含まれ得る。ある実施形態では、異なるレベルのリシル酸化酵素型酵素を含有する別々の培養物が候補化合物と接触される。生物学的活性に変化が観察された場合であって、その変化がより大きいレベルのリシル酸化酵素型酵素を有する培養物における(変化)より大きい場合、該化合物はリシル酸化酵素型酵素の活性のモジュレータとして同定される。化合物がリシル酸化酵素型酵素の活性化剤であるか阻害剤であるかの決定は、当該化合物によって誘導される表現型から明らかとなり得るが、1又は2以上のリシル酸化酵素型酵素の酵素活性に対する当該化合物の効果の試験のような更なるアッセイが必要になることもある。
【0054】
リシル酸化酵素型酵素を、生化学的に又は組換え技術的に、取得するための方法、並びに上述したようなリシル酸化酵素型酵素の活性のモジュレータを同定するための細胞培養物及び酵素アッセイのための方法は、当業界において既知である。更に、本願と同日に出願された同一出願人による米国特許出願、表題「リシル酸化酵素及びLOXL2からの触媒ドメイン」、代理人整理番号ARBS−010も参照。
【0055】
リシル酸化酵素型酵素の酵素活性は、多くの異なる方法によってアッセイすることができる。例えば、リシル酸化酵素の酵素活性は、過酸化水素、アンモニウムイオン及び/又はアルデヒドの生成の検出及び/又は定量によって、リシン酸化及び/又はコラーゲン架橋結合のアッセイによって、又は細胞浸潤能、細胞接着、細胞増殖又は転移増殖の測定によって、評価することができる。例えば、Trackman et al. (1981) Anal. Biochem. 113:336-342; Kagan et al. (1982) Meth. Enzymol. 82A:637-649; Palamakumbura et al. (2002) Anal. Biochem. 300:245-251; Albini et al. (1987) Cancer Res. 47:3239-3245; Kamath et al. (2001) Cancer Res. 61:5933-5940; 米国特許第4,997,854号及び米国特許出願公開第2004/0248871参照。
【0056】
試験化合物としては、例えば、小さな有機化合物(例えば、凡そ50〜凡そ2500Daの分子量を有する有機分子)、核酸又はタンパク質が含まれるが、これらに限定されない。1の化合物又は複数の化合物は、化学的に合成され又は微生物学的に産生され及び/又は、例えば、試料、例えば、植物、動物又は微生物からの細胞抽出物、に含まれ得る。更に、(1又は複数の)化合物は、(それ自体)当業界において既知ではあるが、リシル酸化酵素型酵素の活性をモジュレート(調節)する能力があるものとしては従前は知られていないものであり得る。リシル酸化酵素型酵素のモジュレータについてアッセイするための反応混合物は、無細胞抽出物であり得、又は、細胞培養物又は組織培養物を含むことができる。複数の化合物を、例えば、反応混合物に添加され、培養培地に添加され、細胞に注入され又は遺伝子組み換え動物に投与することもできる。アッセイに採用される細胞又は組織は、例えば、微生物細胞、真菌細胞、昆虫細胞、脊椎動物細胞、哺乳類細胞、霊長類細胞、ヒト細胞であり得、又は、非ヒト遺伝子組み換え動物から構成又は取得され得る。
【0057】
リシル酸化酵素型酵素のような標的に対して特異的な親和性を有する化合物を同定するための大きなライブラリを作成し及びスクリーニングするための幾つかの方法は当業者には既知である。これらの方法には、無作為化されたペプチドがファージからディスプレイされ(提示され)、固定化されたレセプターを使用したアフィニティクロマトグラフィによってスクリーニングされるファージディスプレイ法が含まれる。例えば、WO 91/17271、WO 92/01047及び米国特許第5,223,409号参照。他の手法では、固相支持体(例えば、「チップ」)上に固定化されたポリマーのコンビナトリアルライブラリがフォトリソグラフィを使用して合成される。例えば、米国特許第5,143,854号、WO 90/15070及びWO 92/10092参照。固定化されたポリマーを標識されたレセプター(例えば、リシル酸化酵素型酵素)と接触させ、支持体をスキャンして標識の位置を決定し、それにより、当該レセプターに結合するポリマーを同定する。
【0058】
目的のポリペプチド(例えば、リシル酸化酵素型酵素)の結合リガンドを同定するために使用可能な連続的セルロース膜支持体上でのペプチドライブラリの合成及びスクリーニングは、例えば、Kramer (1998) Methods Mol. Biol. 87: 25-39において説明されている。そのようなアッセイによって同定されるリガンドは、目的のタンパク質の候補モジュレータであり、更なる試験のために選択することができる。また、この方法は、例えば、目的のタンパク質における結合部位及び認識モチーフを決定するためにも使用することができる。例えば、Rudiger (1997) EMBO J. 16:1501-1507及びWeiergraber (1996) FEBS Lett. 379:122-126参照。
【0059】
WO 98/25146は、所望の特性、例えば、ポリペプチド又はその細胞レセプターをアゴナイズ(agonize)し、結合し又はアンタゴナイズ(antagonize)する能力、を有する化合物の複合体のライブラリをスクリーニングするための更なる方法を記載している。そのようなライブラリにおける複合体は、供試化合物、化合物の合成における少なくとも1つのステップ(工程)を記録ないし表示する(recording)タグ、及びレポーター分子による修飾に感受性のテザーを含む。テザーの修飾は、複合体が所望の特性を有する化合物を含むことを示すために使用される。タグは、そのような化合物の合成における少なくとも1つのステップ(工程)を示す(明らかにする)ために解読(decode)され得る。リシル酸化酵素型酵素と相互作用する化合物を同定するための他の方法は、例えば、ファージディスプレイシステムによるインビトロスクリーニング、フィルター結合アッセイ、及び、例えば、BIAcore装置(Pharmacia)を使用した相互作用の「リアルタイム」測定である。
【0060】
これらの方法は全て、本願の開示に従って、リシル酸化酵素型酵素又は関連ポリペプチドの活性化剤/アゴニスト及び阻害剤/アンタゴニストを同定するために使用することができる。
【0061】
リシル酸化酵素型酵素のモジュレータの合成のための他の手法は、ペプチドの模倣アナログを使用することである。模倣ペプチドアナログは、例えば、天然(に存在する)アミノ酸をステレオイソマー即ちD−アミノ酸で置換することによって生成することができる。例えば、Tsukida (1997) J. Med. Chem. 40:3534-3541参照。更に、元のポリペプチドの部分を除去する際に喪失し得る(立体)配座特性を再建(回復)するために前駆模倣成分(pro-mimetic components)をペプチドに組み込むこともできる。例えば、Nachman (1995) Regul. Pept. 57:359-370参照。
【0062】
ペプチド模倣体(peptide mimetic)を構築するための他の方法は、アキラルO−アミノ酸残基をペプチドに組み込むことにより、アミド結合を脂肪族鎖のポリメチレン単位で置換することである。Banerjee (1996) Biopolymers 39:769-777。他のシステムにおける小さなペプチドホルモンの超活性なペプチド模倣アナログについても説明されている。Zhang (1996) Biochem. Biophys. Res. Commun. 224:327-331。
【0063】
リシル酸化酵素型酵素のモジュレータのペプチド模倣体は、連続的なアミドアルキル化によるペプチド模倣体のコンビナトリアルライブラリを合成し、次いで、得られた化合物を、例えばそれらの結合及び免疫学的特性について試験することによって同定することもできる。ペプチド模倣体のコンビナトリアルライブラリの生成及び使用方法は既に開示されている。例えば、Ostresh, (1996) Methods in Enzymology 267:220-234及びDorner (1996) Bioorg. Med. Chem. 4:709-715参照。更に、1又は2以上のリシル酸化酵素型酵素の3次元及び/又は結晶構造は、1又は2以上のリシル酸化酵素型酵素の活性のペプチド模倣体阻害剤の設計のために使用することができる。Rose (1996) Biochemistry 35:12933-12944; Rutenber (1996) Bioorg. Med. Chem. 4:1545-1558。
【0064】
天然の生物学的ポリペプチドの活性を模倣する低分子量の合成分子の構造に基づく設計及び合成は、例えば、Dowd (1998) Nature Biotechnol. 16:190-195; Kieber-Emmons (1997) Current Opinion Biotechnol. 8:435-441; Moore (1997) Proc. West Pharmacol. Soc. 40:115-119; Mathews (1997) Proc. West Pharmacol. Soc. 40:121-125及びMukhija (1998) European J. Biochem. 254:433-438に、更に記載されている。
【0065】
また、例えば、リシル酸化酵素型酵素の基質又はリガンドとして機能できる小さな有機化合物の模倣体を設計、合成、及び評価することが可能であることは当業者には周知である。例えば、ハパロシンのD−グルコース模倣体は、細胞毒性において多剤耐性補助関連タンパク質(multidrug resistance assistance-associated protein)をアンタゴナイズする際に、ハパロシンと類似の効率(効力)を示したことが開示されている。Dinh (1998) J. Med. Chem. 41:981-987参照。
【0066】
リシル酸化酵素型酵素の構造は、例えば、小分子、ペプチド、ペプチド模倣体及び抗体のようなモジュレータの選択を導くために試験することができる。リシル酸化酵素型酵素の構造的特性は、リシル酸化酵素型酵素に結合する、又はリシル酸化酵素型酵素のリガンド、基質、結合相手(binding partner)又はレセプターとして機能する、天然又は合成分子を同定するのに役立ち得る。例えば、Engleman (1997) J. Clin. Invest. 99:2284-2292参照。例えば、リシル酸化酵素型酵素の構造的モチーフのフォールディングシミュレーション及びコンピュータ再設計は、適切なコンピュータプログラムを使用して行うことができる。Olszewski (1996) Proteins 25:286-299; Hoffman (1995) Comput. Appl. Biosci. 11:675-679参照。タンパク質フォールディングのコンピュータモデリングは、詳細なペプチド及びタンパク質構造の立体配座解析及びエネルギ解析に使用することができる。Monge (1995) J. Mol. Biol. 247:995-1012; Renouf (1995) Adv. Exp. Med. Biol. 376:37-45参照。適切なプログラムが、相補的なペプチド配列のコンピュータ支援サーチを使用することにより、リシル酸化酵素型酵素の、リガンド及び結合相手と相互作用する部位の同定に使用することができる。Fassina (1994) Immunomethods 5:114-120。タンパク質及びペプチドの設計のための更なるシステムは、例えば、Berry (1994) Biochem. Soc. Trans. 22:1033-1036; Wodak (1987), Ann. N.Y. Acad. Sci. 501:1-13及びPabo (1986) Biochemistry 25:5987-5991に記載されている。上記の構造解析から得られた結果は、例えば、1又は2以上のリシル酸化酵素型酵素の活性のモジュレータとして機能する有機分子、ペプチド及びペプチド模倣体の調製に使用することができる。
【0067】
リシル酸化酵素型酵素の阻害剤は、競合的阻害剤、不競合的(uncompetitive)阻害剤、混合型阻害剤又は非競合的(non-competitive)阻害剤であり得る。競合的阻害剤は、しばしば、基質と構造的な類似性を有し、通常、活性部位に結合し、一般的に、より低い基質濃度においてより効果的(有効性が大きい)である。見かけのKは、競合的阻害剤存在下で増加する。不競合的阻害剤は、一般的に、酵素‐基質複合体に、又は基質が活性部位に結合し場合により該活性部位を変形した後に結合可能になる部位に結合する。見かけのK及びVmaxは何れも、不競合的阻害剤の存在下で減少し、基質濃度は阻害に対し殆ど又は全く効果を及ぼさない。混合型阻害剤は、遊離酵素と酵素‐基質複合体の両方に結合することができ、かくして、基質結合及び触媒活性の両方に影響を及ぼす。非競合的阻害とは、阻害剤が酵素及び酵素‐基質複合体に同等の結合活性(avidity)で結合する混合型阻害の特殊例であり、阻害は基質濃度によって影響されない。非競合的阻害剤は、一般的に、活性部位の外部の領域で酵素と結合する。酵素阻害の更なる詳細については、例えば、上掲Voet et al. (2008)参照。その天然の基質(例えば、コラーゲン、エラスチン)が(インビボにおいて達成可能な任意の阻害剤の濃度と比較して)インビボにおいて通常大過剰に存在する、リシル酸化酵素型酵素のような酵素に対しては、非競合的阻害剤は、阻害が基質濃度から独立であるので、有益である。
【0068】
抗体
【0069】
ある実施形態では、リシル酸化酵素型酵素のモジュレータは抗体である。更なる実施形態では、抗体はリシル酸化酵素型酵素の活性の阻害剤である。
【0070】
本願において使用される場合、用語「抗体」は、抗原エピトープに特異的に結合するペプチド配列(例えば可変領域配列)を含む単離又は組換えポリペプチド結合剤を意味する。この用語は、最広義に使用され、とりわけ、モノクローナル抗体(全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、単一ドメイン抗体(nanobody)、二重特異性抗体(diabody)、多特異性(multispecific)抗体(例えば二特異性(bispecific)抗体)、及び所望の生物学的活性を示す限りにおいて、Fv、scFV、Fab、Fab’、F(ab’)、及びFabを含むが、これらに限定されない抗体フラグメントを含む。用語「ヒト抗体」は、潜在的(possible)非ヒトCDR領域を除くヒト起源の配列を含む抗体をいうが、この用語は、免疫グロブリン分子の全構造が存在することは示唆しておらず、該抗体がヒトにおいて最小の免疫原性効果を有すること(即ち、それ自身に対する抗体の産生を誘導しないこと)のみを示唆している。
【0071】
「抗体フラグメント」は、全長抗体の部分、例えば、全長抗体の抗原結合ないし可変領域を含む。抗体フラグメントの例としては、Fab、Fab’、F(ab’)、及びFvフラグメント;二重特異性抗体(diabody);線状抗体(linear antibody)(Zapata et al. (1995) Protein Eng. 8(10):1057-1062参照);単鎖抗体分子;及び複数の抗体フラグメントから形成される多特異性(multispecific)抗体が含まれる。抗体のパパイン消化により、夫々単一の抗原結合部位を有する「Fab」と称される2つの同一の抗原結合フラグメントと、残余の「Fc」フラグメント(この名称は容易に結晶化する能力を反映している)が得られる。ペプシン処理により、2つの抗原結合部位を有し、抗原を架橋する能力を維持しているF(ab’)フラグメントが得られる。
【0072】
「Fv」は、完全な抗原認識及び結合部位を含む最小の抗体フラグメントである。この領域は、緊密な非共有結合的結合(会合)状態にある1つの重鎖可変ドメインと1つの軽鎖可変ドメインのダイマーから構成されている。この立体配置において、各可変ドメインの3つのCDRS[sic:CDR]が該V−Vダイマーの表面の抗原結合部位を定義するよう相互作用する。集合的に、6つのCDRが、抗原結合特異性を抗体に与える。しかしながら、単一の可変ドメイン(ないし抗原に特異的な6つのCDRの3つのみを含む単離されたV又はV領域)でも、一般的に完全なFvフラグメントよりも親和性は小さいが、抗原を認識しかつ結合する能力を有する。
【0073】
また、「Fab」フラグメントは、重鎖及び軽鎖可変領域に加えて、軽鎖の定常ドメインと重鎖の第1定常ドメイン(CH)を含む。Fabフラグメントは、当初、抗体のパパイン消化に続いて観察された。Fab’フラグメントは、F(ab’)フラグメントが、抗体ヒンジ領域からの1又は2以上のシステインを含む、重鎖CHドメインのカルボキシ末端の幾つかの付加的残基を含むという点において、Fabフラグメントと相違する。F(ab’)フラグメントは、ジスルフィド結合によって、ヒンジ領域の近傍において、連結した2つのFabフラグメントを含み、当初は、抗体のペプシン消化に続いて観察された。Fab’−SHは、定常領域の(1又は複数の)システイン残基が遊離チオール基を有するFab’フラグメントに対する本願における名称である。抗体フラグメントのその他の化学結合体も既知である。
【0074】
任意の脊椎動物種に由来する抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ及びラムダと称される、明確に異なる2つのタイプの一方に分類することができる。その重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンは、5つの主要クラス:IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMに分類することができ、これらの幾つかは、更に、サブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2に分類されることもある。
【0075】
「単鎖Fv」又は「sFv」又は「scFv」抗体フラグメントは、抗体のV及びVドメインを含むが、これらのドメインは単一のペプチド鎖で存在する。ある実施形態では、Fvポリペプチドは、更に、VドメインとVドメインとの間のポリペプチドリンカーを含むが、これにより、Fvは抗原結合のための所望の構造を形成することが可能になる。sFvについては、Pluckthun, in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113 (Rosenburg and Moore eds.) Springer-Verlag, New York, pp. 269-315 (1994) 参照。
【0076】
用語「二重特異性抗体(diabody)」は、2つの抗原結合部位を有する小さい抗体フラグメントをいうが、このフラグメントは、同一のポリペプチド鎖(V−V)において軽鎖可変ドメイン(V)に結合した重鎖可変ドメイン(V)を含む。同一の鎖の2つのドメイン間での対形成を可能にするには長さが足りないリンカーを使用することにより、これらのドメインは他方の鎖の相補的なドメインと対形成せざるを得ず、その結果、2つの抗原結合部位が形成される。二重特異性抗体(diabody)については、更に、例えば、EP 404,097; WO 93/11161 及び Hollinger et al. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444-6448に記載されている。
【0077】
「単離(isolated)」抗体は、その自然環境の成分から同定されかつ分離及び/又は回復された抗体である。その自然環境の成分としては、酵素、ホルモン、及びその他のタンパク性又は非タンパク性溶質が含まれ得る。ある実施形態では、単離抗体は、(1)ローリー法により決定される95質量%超の抗体、例えば99質量%超に、(2)例えばスピニングカップ配列決定装置(spinning cup sequenator)を用いることによって、N末端又は内部アミノ酸配列の少なくとも15残基を取得するのに十分な程度に、又は(3)クマシーブルー又は銀染色による検出を伴う、還元又は非還元条件下でのゲル電気泳動(例えばSDS−PAGE)による均一性に、精製される。用語「単離抗体」は、組換え細胞内のインサイチュの抗体を含むが、これは、該抗体の自然環境の少なくとも1つの成分は存在しないからである。ある実施形態では、単離抗体は、少なくとも1つの精製ステップによって調製される。
【0078】
ある実施形態では、抗体はヒト化抗体又はヒト抗体である。ヒト化抗体は、レシピエント(被移植者)の相補性決定領域(CDR)の残基が所望の特異性、親和性及び能力を有するマウス、ラット又はウサギのような非ヒト種(ドナー抗体)のCDRの残基によって置換されているヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)を含む。従って、非ヒト(例えばマウス)抗体のヒト化形態は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小の配列を含むキメラ免疫グロブリンである。非ヒト配列は、主に可変領域に、とりわけ相補性決定領域に(CDR)に位置する。ある実施形態では、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基は、対応する非ヒト残基によって置換される。ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも導入されたCDR又はフレームワーク配列にも見出されない残基を含むこともできる。ある実施形態では、ヒト化抗体は、CDRの全て又は実質的に全てが非ヒト免疫グロブリンのCDRに対応しかつフレームワーク領域の全て又は実質的に全てがヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のフレームワーク領域である少なくとも1つの、典型的には2つの、可変領域の実質的に全てを含む。本願の開示の目的のために、ヒト化抗体は、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)又は抗体のその他の抗原結合サブ配列のような免疫グロブリンフラグメントも含むことができる。
【0079】
ヒト化抗体は、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンの定常領域、の少なくとも一部を含むこともできる。例えば、Jones et al. (1986) Nature 321:522-525; Riechmann et al. (1988) Nature 332:323-329; 及び Presta (1992) Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596参照。
【0080】
非ヒト抗体をヒト化する方法は当業界において既知である。一般的に、ヒト化抗体は、非ヒトであるソースから導入された1又は2以上のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、しばしば、「インポート」又は「ドナー」残基と称され、典型的には「インポート」又は「ドナー」可変ドメインから取得される。例えば、ヒト化は、本質的にWinter及びその共同研究者の方法に従って、齧歯類CDR又はCDR配列でヒト抗体の対応する配列を置換することによって、実行することができる。例えば、上掲Jones et al.; 上掲Riechmann et al.及び Verhoeyen et al. (1988) Science 239:1534-1536参照。従って、そのような「ヒト化」抗体は、実質的に無傷ではないヒト可変領域が非ヒト種からの対応する配列で置換されたキメラ抗体(米国特許第4,816,567号)を含む。ある実施形態では、ヒト化抗体は、幾つかのCDR残基及び必要に応じ幾つかのフレームワーク領域の残基が齧歯類抗体(例えばマウスモノクローナル抗体)の類似部位からの残基によって置換されたヒト抗体である。
【0081】
ヒト抗体は、例えば、ファージディスプレイライブラリを使用することによって、作成することもできる。Hoogenboom et al. (1991) J. Mol. Biol, 227:381; Marks et al. (1991) J. Mol. Biol. 222:581。ヒトモノクローナル抗体を調製するための他の方法は、Cole et al. (1985) "Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy," Alan R. Liss, p. 77 及び Boerner et al. (1991) J. Immunol. 147:86-95に記載されている。
【0082】
ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を、内在性免疫グロブリン遺伝子(複数)が部分的又は完全に不活性化されたトランスジェニック動物(例えばマウス)に導入することによって作成することができる。免疫学的チャレンジ(免疫原投与)と同時に、ヒト抗体産生が観察されるが、これは、遺伝子再構成、アセンブリ(assembly)及び抗体レパートリを含むあらゆる点においてヒトにおいて見られるものとよく似ている。この手法は、例えば、米国特許第5,545,807号;第5,545,806号;第5,569,825号;第5,625,126号;第5,633,425号;第5,661,016号及び以下の学術文献:Marks et al. (1992) Bio/Technology 10:779-783 (1992); Lonberg et al. (1994) Nature 368: 856-859; Morrison (1994) Nature 368:812-813; Fishwald et al. (1996) Nature Biotechnology 14:845-851; Neuberger (1996) Nature Biotechnology 14:826 及び Lonberg et al. (1995) Intern. Rev. Immunol. 13:65-93 に記載されている。
【0083】
抗体は、上述のような既知の選択及び/又は変異誘発法を用いることにより、親和性成熟となり得る。ある実施形態では、親和性成熟抗体は、当該成熟抗体を調製した出発抗体(一般的に、マウス、ウサギ、ニワトリ、ヒト化又はヒト)の親和性の5倍以上、10倍以上、20倍以上又は30倍以上の親和性を有する。
【0084】
抗体は、二特異性(bispecific)抗体でもあり得る。二特異性抗体は、モノクローナルであり、少なくとも2つの異なる抗原に対し結合特異性を有するヒト抗体又はヒト化抗体であってもよい。この場合、2つの異なる結合特異性は、2つの異なるリシル酸化酵素型酵素に対するもの、又は、1つのリシル酸化酵素型酵素の2つの異なるエピトープに対するものであり得る。
【0085】
本願に開示される抗体は、免疫複合体(immunoconjugate)でもあり得る。そのような免疫複合体は、レポーターのような第2の分子に結合された(例えばリシル酸化酵素型酵素に対する)抗体を含む。免疫複合体は、化学療法剤、毒素(例えば細菌、真菌、植物又は動物起源の酵素的に活性な毒素又はそのフラグメント)、又は放射性同位元素(即ち放射性複合体(radioconjugate))のような細胞傷害性剤に結合された抗体も含み得る。
【0086】
特定のポリペプチド又は特定のポリペプチドの(1つの)エピトープ「に特異的に結合する」ないし「に対し特異的な」抗体は、他の任意のポリペプチド又はポリペプチドエピトープに実質的に結合することなく、当該特定のポリペプチド又はエピトープに結合する抗体である。ある実施形態では、本願に開示の抗体は、凡そ4℃、25℃、37℃又は42℃の温度で測定された、モノクローナル抗体、scFv、Fabの形態又は抗体のその他の形態で、100nM以下、場合により10nM以下、場合により1nM以下、場合により0.5nM以下、場合により0.1nM以下、場合により0.01nM以下、場合により0.005nM以下の解離定数(K)で、その標的に特異的に結合する。
【0087】
ある実施形態では、本願開示の抗体は、リシル酸化酵素型酵素の1又は2以上のプロセッシング部位(例えばタンパク質切断部位)に結合することにより、プロ酵素又はプレプロ酵素の触媒的に活性な酵素へのプロセッシングを効果的に阻害し、かくして、リシル酸化酵素型酵素の活性を低下する。
【0088】
ある実施形態では、本願開示の抗体は、ヒトLOXに、その他のリシル酸化酵素型酵素、例えばLOXL1、LOXL2、LOXL3及びLOXL4に対する結合親和性よりも大きい、例えば10倍、少なくとも100倍、又は更には少なくとも1000倍大きい結合親和性で結合する。
【0089】
更なる実施形態では、本願開示の抗体は、ヒトLOXL2に、その他のリシル酸化酵素型酵素、例えばLOX、LOXL1、LOXL3及びLOXL4に対する結合親和性よりも大きい、例えば10倍、少なくとも100倍、又は更には少なくとも1000倍大きい結合親和性で結合する。結合する
【0090】
ある実施形態では、本願開示の抗体は、リシル酸化酵素型酵素の触媒活性の非競合的阻害剤である。ある実施形態では、本願開示の抗体は、リシル酸化酵素型酵素の触媒ドメインの外部に結合する。ある実施形態では、本願開示の抗体は、LOXL2のSRCR4ドメインに結合する。ある実施形態では、LOXL2のSRCR4ドメインに結合しかつ非競合的阻害剤として機能する抗LOXL2抗体は、同一出願人による米国特許出願公開第2009/0053224号及び第2009/0104201号に記載されたAB0023抗体である。ある実施形態では、LOXL2のSRCR4ドメインに結合しかつ非競合的阻害剤として機能する抗LOXL2抗体は、同一出願人による米国特許出願公開第2009/0053224号及び第2009/0104201号に記載されたAB0024抗体(AB0023抗体のヒトバージョン)である。
【0091】
任意的に、本願開示の抗体は、リシル酸化酵素型酵素に結合するだけではなく、リシル酸化酵素型酵素の取込み(uptake)又は内部移行(internalization)を、例えばインテグリンβ1又はその他の細胞受容体ないしタンパク質を介して、低下又は阻害する。そのような抗体は、例えば、細胞外マトリクスタンパク質、細胞受容体及び/又はインテグリンに結合可能である。
【0092】
リシル酸化酵素型酵素を認識する例示的な抗体、及びリシル酸化酵素型酵素に対する抗体に関する更なる開示は、同一出願人による米国特許出願公開第2009/0053224号及び第2009/0104201号に記載されている。これらの開示は、リシル酸化酵素型酵素に対する抗体、それらの製造及びそれらの使用を説明する目的のために、引用を以って本願に組み込まれる。
【0093】
リシル酸化酵素型酵素の発現を調節(モジュレート)するためのポリヌクレオチド
【0094】
アンチセンス
【0095】
リシル酸化酵素型酵素の調節(例えば阻害)は、転写又は翻訳のレベルでリシル酸化酵素型酵素の発現を下方制御することによって引き起こすことができる。そのような調節方法の1つは、リシル酸化酵素型酵素をコードするmRNA転写物に配列特異的に結合する能力を有するアンチセンスオリゴ又はポリヌクレオチドの使用を含む。
【0096】
標的mRNA分子に対するアンチセンスオリゴヌクレオチド(又はアンチセンスオリゴヌクレオチドアナログ)の結合は、細胞内リボヌクレアーゼHによるハイブリッドの酵素的開裂を引き起こし得る。あるケースでは、アンチセンスRNA−mRNAハイブリッドの形成が、正確なスプライシングを妨害し得る。何れの場合であっても、翻訳に適した、無傷の機能的な標的mRNAの数は、減少され又は除去される。別のケースでは、標的mRNAに対するアンチセンスオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドアナログの結合は、(例えば立体障害によって)リボソーム結合を阻止し、以って、該mRNAの翻訳を阻止する。
【0097】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、任意のタイプのヌクレオチドサブユニットを含むことができ、例えば、DNA、RNA、ペプチド核酸(PNA)のようなアナログ、又はそれらの混合物であり得る。RNAオリゴヌクレオチドは、標的mRNA分子とより安定的な二本鎖を形成するが、ハイブリダイズしていないオリゴヌクレオチドは、他のタイプのオリゴヌクレオチド及びオリゴヌクレオチドアナログよりも細胞内安定性が小さい。RNAオリゴヌクレオチドの不安定性は、この目的のために設計されたベクターを用いた細胞内で当該RNAオリゴヌクレオチドを発現させることにより、緩和され得る。このアプローチは、例えば、豊富かつ長命のタンパク質をコードするmRNAの標的を試みる場合に、使用することができる。
【0098】
アンチセンスオリゴヌクレオチドを設計する場合、(i)標的配列への結合における十分な特異性;(ii)溶解性;(iii)細胞内及び細胞外ヌクレアーゼに対する安定性;(iv)細胞膜貫通能;及び(v)生物の処置に使用する場合における、低毒性を含む、更なる事項を考慮に入れることができる。
【0099】
標的mRNAに対する最も大きい推定結合親和性を有するオリゴヌクレオチド配列を、該標的mRNAと該オリゴヌクレオチドの両者における構造変化のエネルギの原因となる熱力学サイクルに基づいて、同定するためのアルゴリズムは利用可能である。例えば、Walton et al. (1999) Biotechnol. Bioeng. 65:1-9は、ウサギβグロブリン(RBG)及びマウス腫瘍壊死因子α(TNFα)転写物に向けられたアンチセンスオリゴヌクレオチドを設計するための方法を使用した。更に、この同じ研究グループは、細胞培養物における3つのモデル標的mRNA(ヒト乳酸脱水素酵素A及びB及びラットgp130)に対する合理的に選択されたオリゴヌクレオチドのアンチセンス活性は殆ど全てのケースにおいて有効性を示したことを報告している。これは、リン酸ジエステル及びホスホロチオエートケミストリの両者により作成されたオリゴヌクレオチドを用いた2つの細胞タイプにおける3つの異なる標的に対する試験を含んでいた。
【0100】
更に、インビボ系を用いて特定のオリゴヌクレオチドの効率を設計し、予測するアプローチが幾つか利用可能である。例えば、Matveeva et al. (1998) Nature Biotechnology 16:1374-1375参照。
【0101】
本願開示のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、少なくとも10ヌクレオチド、例えば、10〜15、15〜20、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも22、少なくとも25、少なくとも30又は更には少なくとも40ヌクレオチドのポリヌクレオチド又はポリヌクレオチドアナログを含む。そのようなポリヌクレオチド又はポリヌクレオチドアナログは、リシル酸化酵素型酵素、例えばLOX又はLOXL2をコードするmRNAと、生理学的条件下、インビボでアニール又はハイブリダイズする(即ち塩基相補性に基づく二本鎖構造を形成する)ことができる。
【0102】
本願開示のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、細胞又は組織に投与された核酸構築物から発現され得る。任意的に、アンチセンス配列の発現は、アンチセンス配列の発現が細胞又は組織内でオンオフ切換えされるよう、誘導性プロモータによって制御される。代替的に、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、化学的に合成され、例えば医薬組成物の一部として、細胞又は組織に直接投与されることができる。
【0103】
アンチセンス技術により、高度に正確なアンチセンス設計アルゴリズム及び極めて多様なオリゴヌクレオチド送達システムが作成され、かくして、当業者であれば既知の配列の発現の下方制御に適するアンチセンスアプローチを設計及び実行することが可能になった。アンチセンス技術に関する更なる情報については、例えば、Lichtenstein et al., "Antisense Technology: A Practical Approach," Oxford University Press, 1998参照。
【0104】
低分子RNA及びRNAi
【0105】
リシル酸化酵素型酵素の活性の阻害のための他の方法は、RNA干渉法(RNAi)、即ち、標的mRNAに相同でありかつその分解を引き起こす二本鎖低分子干渉RNA(siRNA)分子を用いるアプローチである。Carthew (2001) Curr. Opin. Cell. Biol. 13:244-248参照。
【0106】
RNA干渉は、典型的には、2ステッププロセスである。開始ステップと称される第1のステップでは、インプットdsRNAが、21−23ヌクレオチド(nt)の低分子干渉RNA(siRNA)に消化されるが、これは恐らく二本鎖RNAをATP依存様式で開裂する二本鎖特異的リボヌクレアーゼのリボヌクレアーゼIIIファミリーのメンバーであるダイサーの作用によって行われる。インプットRNAは、例えば直接的に又は導入遺伝子又はウイルスを介して、送達することも可能である。連続的開裂イベントにより、RNAは夫々2ヌクレオチドの3’オーバーハングを有する19−21bpの二本鎖(siRNA)に分解される。Hutvagner et al. (2002) Curr. Opin. Genet. Dev. 12:225-232; Bernstein (2001) Nature 409:363-366参照。
【0107】
第2のエフェクタステップでは、siRNA二本鎖は、ヌクレアーゼ複合体に結合し、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)を形成する。siRNA二本鎖のATP依存性の巻き戻しは、RISCの活性化に必要である。(単一siRNA及びリボヌクレアーゼを含む)活性RISCは、次いで、塩基対形成相互作用によって相同転写物を標的とし、典型的には、mRNAを、siRNAの3’末端から開始する凡そ12ヌクレオチドのフラグメントに開裂する。上掲Hutvagner et al.; Hammond et al. (2001) Nat. Rev. Gen. 2:110-119; Sharp (2001) Genes. Dev. 15:485-490参照。
【0108】
RNAi及び関連方法は、Tuschl (2001) Chem. Biochem. 2:239-245; Cullen (2002) Nat. Immunol. 3:597-599; 及び Brantl (2002) Biochem. Biophys. Acta. 1575:15-25にも記載されている。
【0109】
リシル酸化酵素型酵素の活性の阻害剤として、本願開示による使用に適するRNAi分子の合成のための典型的な方策は、AAジヌクレオチド配列の開始コドンの下流にある適切なmRNA配列をスキャンすることである。個々のAAは、下流の(即ち3’に近接する)19ヌクレオチドと共に、siRNA標的部位候補として記録される。コード領域における標的部位が望ましい。というのは、mRNAの非翻訳領域(UTR)に結合するタンパク質、及び/又は翻訳開始複合体は、siRNAエンドヌクレアーゼ複合体の結合と干渉し得るからである。上掲Tuschl (2001)参照。尤も、GAPDH遺伝子の5’UTRに向けられたsiRNAが細胞GAPDH mRNA及び完全破壊タンパク質レベルにおいて凡そ90%の減少を媒介したケース(アンビオン(Ambion)、オースティン、テキサス州)で示されたように、非翻訳領域に向けられたsiRNAも有効であり得ることが分かるであろう。一旦、一組の標的部位候補が得られれば、上述のように、標的候補の配列は、(NCBIから入手可能なBLASTソフトウェアのような)配列アラインメントソフトウェアを用いることにより、(例えばヒト、マウス、ラット等の)適切なゲノムデータベースと対比される。他のコード配列に対し有意な(著しい)相同性を示す標的部位候補は排除される。
【0110】
条件を満たす(qualifying)標的配列は、siRNA合成のためのテンプレートとして選択される。選択された配列は、G/C含有量が55%超の配列と比べて、遺伝子サイレンシングの媒介においてより効果的であることが示されているため、G/C含有量が小さい配列を含むことができる。幾つかの標的部位は、評価のために、標的遺伝子の長さに沿って選択されることができる。選択されたsiRNAをよりよく評価するために、陰性対照が併用される。陰性対照siRNAは、試験siRNAと同じヌクレオチド組成を有するが、該ゲノムに対する有意な(著しい)相同性を欠く配列を含むことができる。従って、例えば、siRNAのスクランブルヌクレオチド配列は、他の任意の遺伝子に対する如何なる有意な(著しい)相同性も示さなければ、使用されてもよい。
【0111】
本願開示のsiRNA分子は、一旦宿主細胞に導入されればsiRNA転写物の安定的な発現を可能にする発現ベクターから転写されることができる。これらのベクターは、遺伝子特異的サイレンシングを実行可能なsiRNA分子にインビボでプロセシングされる、低分子ヘアピンRNA(shRNA)を発現するよう設計される。例えば、Brummelkamp et al. (2002) Science 296:550-553; Paddison et al (2002) Genes Dev. 16:948-958; Paul et al. (2002) Nature Biotech. 20:505-508; Yu et al. (2002) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99:6047-6052参照。
【0112】
低分子ヘアピンRNA(shRNA)は、二本鎖ヘアピンループ構造を形成する一本鎖ポリヌクレオチドである。二本鎖領域は、リシン酸化酵素型酵素をコードするポリヌクレオチド(例えばLOX又はLOXL2 mRNA)のような、標的配列にハイブリダイズ可能な第1配列と、該第1配列に相補的な第2配列とから形成される。第1配列と第2配列は、二本鎖領域を形成する;第1配列と第2配列の間にある塩基対非形成(un-base-paired)リンカーヌクレオチドは、ヘアピンループ構造を形成する。shRNAの二本鎖領域(ステム)は、制限酵素認識部位を含み得る。
【0113】
shRNA分子は、例えば3’UUオーバーハング等の2bpオーバーハングのような、任意的なヌクレオチドオーバーハングを有し得る。バリエーションはあり得るが、ステム長は、典型的には、凡そ15〜49bp、凡そ15〜35bp、凡そ19〜35bp、凡そ21〜31bp、又は凡そ21〜29bpの範囲であり、ループのサイズは、凡そ4〜30bp、例えば凡そ4〜23bpの範囲であり得る。
【0114】
細胞内でのshRNAの発現のために、プロモータ(例えば、RNAポリメラーゼIII H1−プロモータ又はU6 RNAプロモータ)、shRNAをコードする配列の挿入のためのクローニング部位、及び転写終結シグナル(例えば、4−5アデニン−チミジン塩基対のストレッチ(一続きの4−5アデニン−チミジン塩基対))を含むプラスミドベクターを採用することができる。ポリメラーゼIIIプロモータは、一般に、明確に定義された転写開始及び終結部位を有し、それらの転写物はポリAテイルを欠いている。これらのプロモータのための終結シグナルは、ポリチミジン鎖(tract)によって定義され、転写物は、典型的には、第2の(2番目の)コード化ウリジンの後で開裂される。この位置での開裂により、発現されたshRNAに3’UUオーバーハングが生じるが、これは、合成siRNAの3’オーバーハングに類似する。哺乳動物細胞においてshRNAを発現するための更なる方法は、既述の文献に記載されている。
【0115】
好適なshRNA発現ベクターの一例は、pSUPERTM(オリゴエンジン社、シアトル、ワシントン州)であり、これは、明確に定義された転写開始部位と、5つの連続したアデニン−チミジンペアからなる終結シグナルとを有するポリメラーゼIII H1−RNA遺伝子プロモータを含む。上掲Brummelkamp et al.参照。転写産物は、(終結配列によってコードされた5つのうちの)第2の(2番目の)ウリジンの後の部位で開裂され、合成siRNAの末端部に類似する転写物を生じるが、これもヌクレオチドオーバーハングを含む。shRNAへと転写されるべき配列は、そのようなベクターにクローン化され、第1配列の逆相補体(reverse complement)を含む第2配列から短いスペーサによって離隔された、mRNA標的(例えばリシル酸化酵素型酵素をコードするmRNA)の一部に相補的な第1配列を含む転写物を生成する。生じた転写物は(自発的に)折畳まれてステム−ループ構造を形成するが、これは、RNA干渉(RNAi)を媒介する。
【0116】
他の好適なsiRNA発現ベクターは、別々のpol IIIプロモータ(複数)の制御下でセンス及びアンチセンスsiRNAをコードする。Miyagishi et al. (2002) Nature Biotech. 20:497-500参照。このベクターによって生成されるsiRNAは、5つのチミジン(T5)終結シグナルも含む。
【0117】
siRNA、shRNA及び/又はそれらをコードするベクターは、種々の方法、例えばリポフェクション法によって、細胞に導入することができる。ベクター媒介法も開発されている。例えば、siRNA分子は、レトロウイルスを用いて細胞内に送達することができる。レトロウイルスを用いたsiRNAの送達は、或る状況下において利点を提供し得る。というのは、レトロウイルス送達は、安定的な「ノックダウン」細胞を効率的、均一かつ即時的に選択し得るからである。Devroe et al. (2002) BMC Biotechnol. 2:15参照。
【0118】
最近の科学刊行物により、標的mRNA発現の阻害におけるそのような短い二本鎖RNA分子の有効性が確認された、従って、そのような分子の治療可能性が明確に示された。例えば、RNAiは、C型肝炎ウイルスが感染した細胞(McCaffrey et al. (2002) Nature 418:38-39)、HIV−1感染細胞(Jacque et al. (2002) Nature 418:435-438)、子宮頸癌細胞(Jiang et al. (2002) Oncogene 21:6041-6048)及び白血病細胞(Wilda et al. (2002) Oncogene 21:5716-5724)における阻害のために利用された。
【0119】
リシル酸化酵素型酵素の発現の調節(モジュレート)方法
【0120】
リシル酸化酵素型酵素の活性を調節(モジュレート)するための他の方法は、そのコード遺伝子の発現を調節し、遺伝子発現が抑制されればより低いレベルの活性を導き、遺伝子発現が活性化されればより高いレベル(の活性)に導くことである。細胞における遺伝子発現の調節は、多くの方法によって実現することができる。
【0121】
例えば、鎖置換又は三重螺旋形成によってゲノムDNA(例えばリシル酸化酵素型遺伝子の制御領域)に結合するオリゴヌクレオチドは、転写を阻止し、かくして、リシル酸化酵素型酵素の発現を阻止することができる。これに関し、オリゴヌクレオチドがその標的の一方の鎖のポリプリン配列(stretch)と他方の鎖のホモプリン配列を認識するいわゆる「スイッチバック」化学結合(linking)の使用は、既に開示されている。三重螺旋形成は、人工塩基を含むオリゴヌクレオチドを用いて取得することもでき、これにより、イオン強度及びpHに関し結合条件を拡張することができる。
リシル酸化酵素型酵素をコードする遺伝子の転写の調節は、例えば、機能性ドメイン及びDNA結合ドメインを含む融合タンパク質、又はそのような融合タンパク質をコードする核酸を細胞に導入することによって、実現することもできる。機能性ドメインは、例えば、転写活性化ドメイン又は転写抑制ドメインであり得る。典型的な転写活性化ドメインは、VP16、VP64及びNF−κBのp65サブユニットを含み、典型的な転写抑制ドメインは、KRAB、KOX及びv−erbAを含む。
【0122】
或る実施形態では、そのような融合タンパク質のDNA結合ドメイン部分は、リシル酸化酵素型酵素をコードする遺伝子内又は近傍に、又はそのような遺伝子の制御領域に結合する配列特異的DNA結合ドメインである。DNA結合ドメインは、該遺伝子又は制御領域又はその近傍にある配列に自発的に結合可能であるか、或いは、そのように結合するよう設計可能である。例えば、DNA結合ドメインは、リシル酸化酵素型酵素をコードする遺伝子の発現を制御する天然タンパク質から取得することができる。或いは、DNA結合ドメインは、リシル酸化酵素型酵素をコードする遺伝子又はその近傍又はそのような遺伝子の制御領域における所望の(of choice)配列に結合するよう設計することができる。
【0123】
これに関し、所望の(of choice)任意のDNA配列に結合するよう亜鉛フィンガータンパク質を設計することが可能であるので、亜鉛フィンガーDNA結合ドメインは有用である。亜鉛フィンガー結合ドメインは、1又は2以上の亜鉛フィンガー構造を含む。Miller et al. (1985) EMBO J 4:1609-1614; Rhodes (1993) Scientific American, February: 56-65; 米国特許第6,453,242号参照。典型的には、単一の亜鉛フィンガーは長さが凡そ30アミノ酸であり、4つの亜鉛配位アミノ酸残基を有する。正準(canonical)(C)亜鉛フィンガーモチーフが、(一般的に2つの亜鉛配位ヒスチジン残基を含む)1つのαヘリックスに対抗して詰め込まれた(packed)(一般的に2つの亜鉛配位システイン残基を含む1つのβターンに保持される)2つのβシートを有することが、構造研究により明らかにされている。
【0124】
亜鉛フィンガーは、正準C亜鉛フィンガー(即ち、亜鉛イオンが2つのヒスチジン残基と2つのシステイン残基によって配位されるもの)と、例えばCH亜鉛フィンガー(亜鉛イオンが3つのシステイン残基と1つのヒスチジン残基によって配位されるもの)やC亜鉛フィンガー(亜鉛イオンが4つのシステイン残基によって配位されるもの)のような非正準亜鉛フィンガーの両者を含む。非正準亜鉛フィンガーは、システイン又はヒスチジン以外のアミノ酸によってこれらの亜鉛配位残基の1つが置換されるものも含む。例えば、WO 02/057293 (July 25, 2002) 及び US 2003/0108880 (June 12, 2003)参照。
【0125】
亜鉛フィンガー結合ドメインは、天然の亜鉛フィンガー結合タンパク質と比べて、新規な結合特異性を有するよう設計することができ、これにより、所望の(of choice)配列に結合するよう亜鉛フィンガー結合ドメインの構造を設計することが可能になる。例えば、Beerli et al. (2002) Nature Biotechnol. 20:135-141; Pabo et al. (2001) Ann. Rev. Biochem. 70:313-340; Isalan et al. (2001) Nature Biotechnol. 19:656-660; Segal et al. (2001) Curr. Opin. Biotechnol. 12:632-637; Choo et al. (2000) Curr. Opin. Struct. Biol. 10:411-416参照。設計方法は、合理的設計(rational design)及び種々のタイプの経験的選択(empirical selection)法を含むが、これらに限定されない。
【0126】
合理的設計は、例えば、三重(又は四重)ヌクレオチド配列と個々の亜鉛フィンガーアミノ酸配列であって、各々の三重又は四重ヌクレオチド配列が、特定の三重又は四重配列に結合する亜鉛フィンガーの1又は2以上のアミノ酸配列と関連するものを含むデータベースを用いること、を含む。例えば、米国特許第6, 140,081号; 同第6,453,242号; 同第6,534,261号; 同第6,610,512号; 同第6,746,838号; 同第6,866,997号; 同第7,030,215号; 同第7,067,617号; 米国特許出願公開第2002/0165356号; 同第2004/0197892号; 同第2007/0154989号; 同第2007/0213269号; 及び 国際特許出願公開WO 98/53059 及び WO 2003/016496参照。
【0127】
ファージディスプレイ、相互作用トラップ(interaction trap)、ハイブリッド選択及び二重ハイブリッドを含む、例示的な選択法は、米国特許第5,789,538号; 同第5,925,523号; 同第6,007,988号; 同第6,013,453号; 同第6,140,466号; 同第6,200,759号; 同第6,242,568号; 同第6,410,248号; 同第6,733,970号; 同第6,790,941号; 同第7,029,847号 及び 同第7,297,491号; 並びに 米国特許出願公開第2007/0009948号 及び同第2007/0009962号; WO 98/37186; WO 01/60970 及び GB 2,338,237に記載されている。
【0128】
亜鉛フィンガー結合ドメインに対する結合特異性の増強は、例えば、米国特許第6,794,136号 (Sept. 21, 2004)に記載されている。亜鉛フィンガーリンカー配列に関する、亜鉛フィンガー設計の更なる側面は、米国特許第6,479,626号 及び米国特許出願公開第2003/0119023号に記載されている。更に、Moore et al. (2001a) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 98:1432-1436; Moore et al. (2001b) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 98:1437-1441 及び WO 01/53480も参照。
【0129】
設計された亜鉛フィンガーDNA結合ドメインを含む融合タンパク質の使用についての更なる詳細は、例えば、米国特許第6,534,261号; 同第6,607,882号; 同第6,824,978号; 同第6,933,113号; 同第6,979,539号; 同第7,013,219号; 同第7,070,934号; 同第7,163,824号 及び同第7,220,719号に見出される。
【0130】
リシル酸化酵素型酵素の発現を調節するための更なる方法は、遺伝子又は該遺伝子の発現を制御する制御領域の何れか一方の標的変異誘発を含む。ヌクレアーゼドメインと設計されたDNA結合ドメインを含む融合タンパク質を用いる標的変異誘発の典型的な方法は、例えば、米国特許出願公開第2005/0064474号; 同第2007/0134796号; 及び 同第2007/0218528号に規定されている。
【0131】
製剤(処方物)、キット及び投与経路
【0132】
リシル酸化酵素型酵素の活性のモジュレータ(例えば、リシル酸化酵素型酵素の阻害剤又は活性化剤)として同定される化合物を含む治療組成物も提供される。そのような組成物は、典型的には、モジュレータと医薬的に許容可能な担体とを含む。組成物には、追加の活性化合物を組み入れることも可能である。
【0133】
本願において使用する場合、用語「治療有効量」又は「有効量」は、単独で又は他の治療剤と組み合わせて細胞、組織又は被検体(例えばヒト又は例えば霊長類、齧歯類、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ等のような非ヒト動物のような哺乳動物)に投与したとき、疾患状態又は疾患の進行を阻止又は寛解するのに有効な治療剤の量をいう。治療有効(量)とは、更に、症状の完全又は部分的な寛解、例えば関連する医学的状態の治療(treatment)、治癒(healing)、阻止(prevention)又は寛解(amelioration)、或いはそのような状態の治療、治癒、阻止又は寛解の割合の増加、を引き起こすのに十分な化合物の量をいう。例えば、リシル酸化酵素型酵素の活性の阻害剤の治療有効量は、疾患又は障害のタイプ、該疾患又は障害の広範さ(extensiveness)、及び該疾患又は障害に罹患した生物のサイズに応じて異なる。
【0134】
本願開示の治療組成物は、とりわけ、線維症性障害(fibrotic damage)の減少、腫瘍増殖の阻害、癌転移の阻害及び血管新生の調節に有用である。従って、リシル酸化酵素型酵素の活性のモジュレータ(例えば、阻害剤)の「治療有効量」は、線維症性障害の減少、腫瘍増殖の減少、転移の減少及び/又は血管新生の調節(例えば、阻害)を引き起こす量である。例えば、リシル酸化酵素型酵素の阻害剤が抗体であり、該抗体がインビボで投与される場合、正常な(通常の)投与量は、例えば体重、投与経路、疾患の重症度等に応じて、1日につき哺乳動物体重当り凡そ10ng/kg〜100mg/kg又はそれ以上の範囲で変更することができ、例えば、凡そ1μg/kg/日〜50mg/kg/日、必要に応じ、凡そ100μg/kg/日〜20mg/kg/日、500μg/kg/日〜10mg/kg/日、又は1mg/kg/日〜10mg/kg/日、の間で変更してもよい。
【0135】
種々の医薬組成物及びその調製及び使用技術は、本願開示に照らして、当業者には既知である。好適な薬理学的組成物及びその投与技術の詳細なリストについては、本願の詳細な教示が参照され得るが、更に、Remington's Pharmaceutical Sciences, 17th ed. 1985; Brunton et al., "Goodman and Gilman's The Pharmacological Basis of Therapeutics," McGraw-Hill, 2005; University of the Sciences in Philadelphia (eds.), "Remington: The Science and Practice of Pharmacy," Lippincott Williams & Wilkins, 2005; 及び University of the Sciences in Philadelphia (eds.), "Remington: The Principles of Pharmacy Practice," Lippincott Williams & Wilkins, 2008のような文献によっても補足され得る。
【0136】
開示された治療組成物は、更に、液体又は固体フィラー、希釈剤、賦形剤、溶解剤又はカプセル材料のような、医薬的に許容可能な材料、組成物又はビヒクル(vehicle)、即ち(医薬的に許容可能な)担体を含む。これらの担体は、被検モジュレータをある器官又は身体の領域から他の器官又は身体の他の領域への運搬に関与する。各々の担体は、製剤の他の成分に対し適合性でありかつ患者に対し有害ではないという意味において「許容可能」であるべきである。医薬的に許容可能な担体として機能し得る材料の例には、ラクトース、グルコース及びスクロースのような糖;トウモロコシデンプン及びイモデンプンのようなデンプン;カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース及び 酢酸セルロースのようなセルロース及びその誘導体;粉末トラガカント;麦芽;ゼラチン;タルク;ココアバター及び坐薬ワックスのような賦形剤;ピーナッツ油、綿実油、サフラワー油、ごま油、オリーブ油、トウモロコシ油及び大豆油のようなオイル;プロピレングリコールのようなグリコール;グリセリン、ソルビトール、マニトール及びポリエチレングリコールのようなポリオール;オレイン酸エチル及びラウリン酸エチルのようなエステル;アガー;水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウムのような緩衝剤;アルギン酸;ピロゲン不含有(pyrogen-free)水;等張食塩水;リンガー溶液;エチルアルコール;リン酸緩衝液;及び 医薬製剤で採用されるその他の非毒性適合性物質が含まれる。ラウリル硫酸ナトリウム及びステアリン酸ナトリウムのような湿潤剤、乳化剤及び潤滑剤、並びに着色剤、離型剤、コーティング剤、甘味剤、香味剤及び芳香剤、保存剤及び抗酸化剤も組成物に含むことができる。
【0137】
本願開示の他の側面は、リシル酸化酵素型酵素の活性のモジュレータの投与を実行するためのキットに関する。1つの実施形態では、キットは、適切なものとして、医薬担体に処方されたリシル酸化酵素型酵素の活性の阻害剤(例えば、LOX又はLOXL2の阻害剤)を含む。
【0138】
製剤及び送達方法は、線維性障害、腫瘍増殖、転移又は血管新生の部位又は程度に応じて適合化することができる。例示的な製剤は、非経口投与、例えば、静脈(内)投与、動脈内投与、眼内投与又は皮下投与に好適な製剤を含み、ミセル、リポソーム又は薬物放出カプセルに被包された製剤(徐放用に設計された生体適合性コーティング内に組み入れられた活性剤);(経口)摂取可能な製剤;点眼剤、クリーム、軟膏及びゲルのような局所用途用の製剤;及び吸入剤、エアロゾル及びスプレーのようなその他の製剤を含むが、これらに限定されない。本願開示の組成物の用量は、治療に必要な程度及び重症度、投与される組成物の活性、被検体の全体的健康状態及び当業者に周知のその他の考慮要素に応じて変更される。
【0139】
更なる実施形態では、本願開示の組成物は局所的に送達される。局在化された送達(局所的送達)により、例えば創傷領域、腫瘍領域又は線維症領域への、組成物の非全身的送達が可能になり、これにより、全身的送達に比べて、組成物の身体負担を低減することができる。従って、本願開示は、全身的送達及び局所的送達(例えば腫瘍又は線維症組織への送達)の両者のための製剤及び送達方法を提供する。
【0140】
リシル酸化酵素型酵素に対する抗体(又は任意の他のタイプのモジュレータ;例えばリシル酸化酵素型酵素の阻害剤、例えばリボソーム、siRNA、shRNA又はマイクロRNA)をコードする核酸は、任意的に、ウイルスベクターにキャプシド形成することができる。パルボウイルス、パポバウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、レトロウイルス及びレンチウイルスを含む多くのウイルスベクターが、当業界において既知である。
【実施例】
【0141】
実施例1:マウスの四塩化炭素誘発性肝線維症
【0142】
この実施例は、LOX及びLOXL2酵素の阻害剤である、β−アミノプロピオニトリル(BAPN)の効果、及び肝線維症のマウスモデルにおける特定のLOXL2阻害剤(抗LOXL2モノクローナル抗体AB0023)の効果を示す。このモデルでは、雄性BALB/cマウスは、四塩化炭素(CCl)が投与され、その結果、肝線維症が発症する。線維症の範囲及び重症度に対する阻害剤の効果が評価された。
【0143】
動物の管理
【0144】
動物は、12時間の明暗サイクル(7am/7pm)で恒温室に収容され、実験の間、加圧滅菌水及び放射線照射実験用飼料に自由にアクセスできるようにした。動物は、耳標によって個別に同定(識別)され、実験の開始前に体重を計測した。
【0145】
実験計画
【0146】
実験開始時10−12週齢であった65頭の雄性BALB/cマウスを使用した。マウスは、夫々15頭の4つの異なるグループに割り当てられた;これらの4つのグループの各グループのマウスは、1:1の割合でミネラルオイルに溶解されたCCl(Sigma cat # 319961)が1ml/kgで注射された。5頭のマウスからなる第5の対照グループは、類似の体積の生理食塩水+ミネラルオイルが投与された。個々のマウスは、CCl処置の1週前から始めて週2回適切な化合物(BAPN、抗体又はビヒクル)が投与された。
【0147】
CCl投与の開始前1週に、処置グループ1及び2のマウスは、30mg/kg(グループ1)又は15mg/kg(グループ2)の用量のAB0023の腹腔内投与を受けた。モノクローナル抗体AB0023により処置は、実験の終了まで、週2回続けられた。グループ3のマウスは、それらの飲料水中にて2mg/mlのBAPNが投与されたが、これは、CCl投与前1週に開始され、その後、2日毎に水を交換しながら、週2回続けられた。更に、(BAPN処置された)グループ3のマウスは、グループ4及び5の全てのマウスと同様に、ビヒクルが(腹腔内に、週2回)投与された。
【0148】
グループ1、2、3及び4のマウスは、5週間火曜日と金曜日に1ml/kg体重のCCl:ミネラルオイルが投与された。グループ5のマウスは、対照として利用され、1ml/kgの0.9%生理食塩水:ミネラルオイルが投与された。全てのマウスに、CCl:ミネラルオイル又は生理食塩水:ミネラルオイルを腹腔内投与した。
【0149】
マウスは、抗体の第1回投与の前に(即ち、CCl処置の開始前1週に)、次いで、その後実験の継続中週2回体重を計測し、病的状態(morbidity)及び歩行異常(ambulatory discomfort)の臨床症状について毎日モニターした。
【0150】
4週のCCl投与措置の完了後4日目(凡そ96時間)に、生存マウスの体重を計測し、それらの活動レベルを観察し、それらの血液を心臓穿刺によって抽出して血清分離管に採取した。血清は、適切な、種々のバイオマーカーで分析した。次いで、マウスは、安楽死させ、肉眼的剖検(gross necropsy)を行った。
【0151】
個々のマウスから肝臓を摘出し、計量した。CCl処置グループの各々からは、生存マウスの50%からの肝臓が10%中性緩衝ホルマリンに固定された。これらのグループの残存するマウスからの肝臓は急速凍結した。対照グループ(グループ4(sic))の3頭のマウスからの肝臓は10%NEBに固定した。このグループの残りの2頭のマウスからの肝臓は急速凍結した。
【0152】
上記の組織の摘出後、全てのグループからのマウスの残りは、10%中性緩衝ホルマリンに固定した。コラーゲン架橋結合の減少及び間質細胞によるα平滑筋アクチンの発現の減少によって証明されるように、AB0023によって処置されたマウスの肝臓において線維症が減少したことが、実験結果から示された。
【0153】
実施例2:コラーゲン誘発関節炎(CIA)モデル系
【0154】
この実施例では、マウスモデル系におけるコラーゲン誘発関節炎の発生に対する抗LOXL2抗体AB0023の効果が評価される。CIAに対する感受性が非常に大きいため、DBA/1マウス系統が使用される。0日目に、全てのマウスが、0.1mlの2型コラーゲン/完全フロインドアジュバント(CFA)エマルジョン中の200μgのコラーゲンの尾部皮内注射を受ける。注射の部位は、尾部の基部から尾側に凡そ1cmの距離のところである。(マウス当り200μgの)コラーゲンチャレンジ(投与)は、21日目にPBS中のコラーゲンの腹腔内注射によって与えられる。
【0155】
何れも平均体重の±20%内にある、6−8週齢の、雄性DBA/1マウスが、無作為に3つの処置グループの何れか1つに割り当てられる。グループ1は、ビヒクル対照グループ(n=13)である。このグループのマウスは、0日目から、週2回、10ml/kgのビヒクル(PBS)を、腹腔内(IP)に、投与される。グループ2のマウスは、陽性対照グループ(n=10)であり、0日目から、1日1回、1mg/kgのデキサメタゾン(エタノールに処方され、必要に応じPBSで希釈された、保存液)を10ml/kgで、IPに、投与される。グループ3(n=10)のマウスは、0日目から、週2回、30mg/kgの抗LOXL2抗体AB0023を10ml/kgで、IPに、投与される。実験は42日目に終了し、全ての残存するマウスをCO吸入後、頚部脱臼によって安楽死させる。
【0156】
マウスは、0日目と18日目に、その後実験が完了するまで週3回、末梢関節における関節炎誘発性反応の徴候について検査する。関節炎反応は、以下のように、各足毎に、重症度が大きくなる順に等級付けられる:
等級0:無反応、正常
等級1:足首(足関節)及び/又は手首(手関節)における軽度であるが明確な発赤及び腫脹;又は(発症した指の数に拘わらず)個々の指に限定された明らかな発赤
等級2:足首(足関節)及び/又は手首(手関節)における中度から重度の発赤及び腫脹
等級3:指を含む、足全体の発赤及び腫脹
等級4:多関節の併発を伴う最大限に炎症が生じた肢
【0157】
臨床試験は、0日目、18日目、及びその後週3回実施される。観察は、皮膚、下毛、眼、粘膜における変化、分泌物及び排泄物(例えば、下痢)の発生、及び自律(神経)性活動(例えば流涙、唾液分泌、立毛、瞳孔サイズ、異常な呼吸パターン)(の観察)を含む。歩調、姿勢、取り使いに対する反応における変化、並びに、異様な挙動、振戦、痙攣、睡眠及び昏睡にも注目する。
【0158】
マウスは、0日目の尾部注射の直前に計量し、18日目にも再び計量し、その後、実験が終結するまで週3回計量する。
【0159】
実験的関節炎の指標として、両方の後足の太さが、0日目、18日目、及びその後週3回測定される。左右の足は、ダイヤルキャリパー(Kroeplin、ミュンヘン、ドイツ)を用いて、丁度つま先の上かつ踵骨の下において背側から腹側に向って測定される。
【0160】
実験の終了時、即ち42日目に、全ての残存(生存)するマウスから足を切除し、その足は皮を剥ぎ取って急速凍結する。薄切片をH&E染色によって組織学的に分析し、CD31及びフォンヴィルブランド因子(両方の内皮マーカー)に対し及びα平滑筋アクチン(線維芽細胞活性化のマーカー)に対し免疫組織化学的に分析する。
【0161】
このCIAモデルの別のバージョンでは、マウスには、尾部に初期コラーゲン注射を施すが、21日目のコラーゲンチャレンジは実施しない。更なるバリエーションでは、抗体によるマウスの処置は、マウスの50%が疾患の臨床的徴候を示すか17日目の何れか早い方が到来するまで開始されない。
【0162】
観察された任意の効果の有意性(顕性)を決定するためのデータの評価は、主として、ANOVAの後にTukey事後(post-hoc)分析(Winsat 2005.1 for Excel)による、関節炎スコア、体重、及び足太さ測定(これらについては全て既述した)について平均グループ値の対比に基づく。
【0163】
実施例3:ヌードマウスにおけるMDA−MB435−GFP腫瘍細胞の外科的同所(正位)移植(SOI)−第1実験
【0164】
この実施例は、乳房腫瘍モデルにおける抗LOXL2モノクローナル抗体AB0023の効果を示す。このモデル系、即ち、MDA−MB−435−GFP細胞(Caliper Life Sciences, Hopkinton, MA)では、緑色蛍光タンパク質をコードする遺伝子で安定的に形質移入されたヒト乳癌細胞株の誘導体が、乳房脂肪体への外科的同所移植(SOI)によって雌性ヌードマウスに導入される。腫瘍形成及び転移が蛍光イメージングによってモニターされる。
【0165】
5−6週齢の、凡そ60頭の雌性ヌードマウス(NCr nu/nu)に100mg/kgケタミンと5mg/kgキシラジンの溶液の腹腔内注射で麻酔をした。麻酔状態において、MDA−MB−435−GFP腫瘍細胞を、縫合によって、乳房脂肪体へ外科的に移植した。
【0166】
移植後、マウスは腫瘍発達についてモニターした。実験個体群における平均腫瘍サイズが75mmに達したとき、マウスを、表1に示すように、複数の処置グループに組分けし、処置を開始した。処置グループは、各グループが全範囲の腫瘍サイズ(各グループの平均サイズは75mm)を含むように構成された。各グループは15頭のマウスを含み、全ての投与は腹腔内で行われたが、タキソテールは静脈内投与した。
【0167】
腫瘍形成は、FluorVivoイメージングシステム(Indec BioSystems, Santa Clara, CA)を用いて、GFP FOTI(蛍光光学腫瘍イメージング)によって、毎週モニターした。体重は週1回測定した。
【0168】
表1

【0169】
28日目に、マウスを殺処分した。血液を心穿刺によって採取し、1mlを血清の調製に使用した。剖検の際、原発性乳房腫瘍を切除し、計量した。肺、リンパ節及びその他の部位への転移について試験するために、胸腔及び腹腔のオープン(open)蛍光イメージングを行った。どの転移も採取した。腫瘍及び転移を二分し、各半部に腫瘍が等しく現れるようにした。各腫瘍又は器官の一方の半部をパラホルムアルデヒドに固定し、組織学的分析のために(複数の)パラフィンブロックに包埋した。他方の半部はRNA単離のために急速凍結した。
【0170】
AB0023抗体で処置したマウスにおいて平均腫瘍体積が減少したことが、結果から明かとなった。
【0171】
実施例4:ヌードマウスにおけるMDA−MB435−GFP腫瘍細胞の外科的同所(正位)移植(SOI)−第2実験
【0172】
この実施例は、マウスモデル系における抗LOXL2抗体AB0023の効果を示す。緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードする遺伝子で安定的に形質移入された、細胞株MDA−MB435からのヒト乳癌細胞が、5−6週齢の雌性NCr nu/nuマウス(MetaMouse(登録商標), AntiCancer, Inc., San Diego, CA)に導入された。移植後、マウスを腫瘍発生についてモニターした。実験的個体群における腫瘍サイズが75mmに達したとき、マウスを、表2に示すように、複数の処置グループに組分けし、処置を開始した。処置グループは、各グループが全範囲の腫瘍サイズ(各グループの平均サイズは75mm)を含むように構成された。各グループは15頭のマウスを含み、全ての投与は腹腔内で行われたが、タキソテールは静脈内投与した。
【0173】
表2

【0174】
処置の経過中、マウスは、FluorVivoイメージングシステム(Indec BioSystems, Santa Clara, CA)を用いて、GFP FOTI(蛍光光学腫瘍イメージング)によって、週1回モニターした。体重は週1回測定した。
【0175】
実験は、処置の開始後6週目(即ち、抗体又は化学療法剤の最初の投与の6週後)又は個体群の平均腫瘍サイズが2,000mmになったときの何れか早い方が到来したときに終了するよう計画された。実験の終了時に、心穿刺によって血液を採取し、1mlを血清の調製のために使用した。
【0176】
剖検の際、原発性(乳房)腫瘍を切除して計量し、とりわけ肺及びリンパ節への転移の証拠を得るために、胸腔及び腹腔を視覚的に検査した。(GFP蛍光法によって証明された)転移腫瘍細胞を含む器官は何れも採取した。腫瘍及び転移を有する器官を二分し、各半部に腫瘍が等しく現れるようにした。各腫瘍又は器官の一方の半部をパラホルムアルデヒドに固定し、組織学的分析のために(複数の)パラフィンブロックに包埋した。他方の半部はRNA単離のために急速凍結した。
【0177】
処置の効果は、体重及び腫瘍体積に対するそれらの効果に基づいて評価し、スチューデントのt検定を用いて統計分析に供した。AB0023抗体で処置したマウスにおいて平均腫瘍体積が減少したことが、結果から示された。何れかの剤単独で処置したマウスと比べると、AB0023とタキソテールの両方で処置したマウスは、腫瘍体積においては有意差を示さなかったが、それらの腫瘍はより大きい程度の自己貪食細胞死を示した。
【0178】
実施例5:乳房腫瘍転移モデル系
【0179】
この実施例は、乳房腫瘍転移モデルにおける抗LOXL2モノクローナル抗体AB0023の効果を示す。このモデル系、即ち、MDA−MB−231−luc−D3H2LN細胞(Caliper Life Sciences, Hopkinton, MA)では、ルシフェラーゼ遺伝子で安定的に形質移入されたヒト乳癌細胞株の誘導体が、心臓内注射によって雌性ヌードマウスに導入された。細胞は循環(血行)によって播種され、転移の発生及び位置はインビボ生物発光イメージング(BLI)によって決定される。
【0180】
8−10週齢の、凡そ80頭の雌性ヌードマウス(NCr nu/nu)に100mg/kgケタミンと5mg/kgキシラジンの溶液の腹腔内注射で麻酔をした。麻酔状態において、1×10個のMDA−MB−231−luc−D3H2LN腫瘍細胞を、50μlの体積で、Arguello et al.(1992) Cancer Research 52:2304-2309の方法に応じて、左心室に注射した。注射したマウスは直ちに左心室注射を確認するためイメージングを行った。全身及び肺投射(projection)からの生物発光が、1秒当りの光子数として測定され、表された。肺発光に対する全身発光の比率が3未満であるとき、そのマウスは実験から除外された。
【0181】
腫瘍細胞の投与後、表3に示すような複数の処置グループにマウスを組分けした。すべてのグループは18頭のマウスを当初含んでいたが、グループ5は8頭のマウスを当初含んでいた。投与は、腹腔内注射(但し、タキソールは静脈内注射)によって行い、0日目に開始した。
【0182】
表3

【0183】
マウスの腹部及び背部画像は、IVIS(登録商標)−スペクトルイメージングシステム(Caliper Life Sciences, Hopkinton, MA)を用いて、0、7、10、13、16、21、24及び28日目にインビボ生物発光イメージング(BLI)によって得た。Living Image 3.0ソフトウェア(Caliper Life Sciences, Hopkinton, MA)を用いて、データを分析した。
【0184】
体重は、実験の最初の2週間は週1回測定し、その後、実験の終了まで週3回測定した。
【0185】
28日目に、インビボBLIの後に、生存マウスを安楽死させ、転移を示す部位(大腿骨、脳、脊椎及び肺を含む)を切り取り出し、エクスビボで撮像(イメージング)した。
【0186】
イメージング後、組織は組織学的及び免疫組織化学的分析のために急速凍結した。これらの分析は、H&E染色、コラーゲンのためのシリウスレッド染色、及び、LOXL2、I型コラーゲン、α平滑筋アクチン及びCD31のための免疫組織化学的検査を含む。
【0187】
データ分析
【0188】
骨(主に大腿骨及び脊椎)、軟組織(主に肺及び脳)における生物発光並びに全身生物発光が検出され、プロットされ、2つの主要因子として時間及び処置を用いて、二元配置(two-way)ANOVAによって分析した。
【0189】
結果
【0190】
28日後、大腿骨及び全腹部骨において、腫瘍細胞量(負荷)の顕著な(有意な)減少が、抗LOXL2抗体AB0023で処置したマウスに観察された(大腿骨では、中央値で127倍、p=0.0021;全腹部骨では中央値で28倍、p=0.0197)。腫瘍細胞注入マウスの抗LOX抗体処置は、そのような効果を示さなかった。
【0191】
ビヒクル処置マウスと比べると、AB0023とタキソールの両方で処置したマウスにおいて生存優位性が観察されたが、これらの何れか一方単独で処置したマウスではそのような生存優位性は観察されなかった。
【0192】
実施例6:皮下異種移植モデル:HT29−HFF同時注入アッセイ
【0193】
実験的腫瘍は、HT29細胞とHFFを、1:1の割合で、マウスの側腹部に移植することにより誘発される。6−7週齢の雌性NCr:nu/nuマウスが、表4に記載された14の実験グループにおいて試験される。各グループは15頭のマウスを含む。マウスは、抗LOXL2抗体(AB0023)で週2回処置されるが、該抗体は、単独で、又は、2つの化学療法剤(ソラフェニブは毎日又は5−フルオロウラシルは毎週)の一方との組合せで使用される。マウスのグループ(複数)は、対比のために、該2つの化学療法剤の各々単独でも処置される。最終グループは、AB0024抗体、即ち、AB0023のヒト化バージョンで処置される。
【0194】
ヒト包皮線維芽細胞(HFF)及びヒト結腸(colon)線癌HT29細胞は、標準的な組織培養技術(DMEM培地+10%FBS、Pen−Strep(ペニシリン−ストレプトマイシン)補充、37℃、5%CO)を用いて、培地中で増殖させる。注入の当日(0日目)に、細胞をトリプシン処理し、HBSS+1%FBSで洗浄し、次いで、HBSSで2回洗浄する。細胞を計数し、HBSS+0.04%DNaseI中に再懸濁する。マウスに、1×10HT29細胞及び1×10HFFを0.1ml体積で同時注入する。
【0195】
表4

【0196】
体重及び腫瘍増殖は週2回モニターする。腫瘍増殖はデジタルキャリパーで測定し、触知可能な腫瘍量は、NIH勧告に従い、以下の式を用いて計算する:
触知可能な腫瘍量(mm)=(d×D)/2
上式において、d及びDは夫々腫瘍の最小径及び最大径(mm)である。
【0197】
実験は同時注入の6週後に終了する;但し、特定のグループにおける平均腫瘍が1,800mmに達する場合、そのグループについては、実験はその時点で終了する。終了時、血清の調製のために採血する。マウスを安楽死させ、肉眼的試験(gross examination)を行う。腫瘍を採取し、測定し、計量する。そして、組織学的及び免疫組織化学的分析のために急速凍結する。異常又は目視可能な転移を注視し、取出し、更なる分析のために凍結する。
【0198】
抗LOXL2抗体で処置したマウスは、平均腫瘍増殖の減少について検査する。
【0199】
実施例7:ブレオマイシン誘発肺線維症
【0200】
雄性C57B/L6マウスを、抗LOXL2抗体AB0023で前処置し、次いで、ブレオマイシンの口腔咽頭投与によって肺線維症を誘発した。
【0201】
ブレオマイシンの投与の4日前(−4日目)とブレオマイシン投与の1日前(−1日目)において、AB0023(又はビヒクル)による2回の前処置を実行した。実験の0日目に、グループ2及び3のマウスを麻酔し、上顎切歯の下方を通したゴムバンドによって凡そ60℃の角度でそれらの背中で吊した。クッション付のピンセットの一方の柄で舌を保持し、これによって気道を開けた。75μlのブレオマイシンをピペットで口腔の奥に注入し、液体が口の中で見えなくなるまで舌と口を開けた状態に維持した。
【0202】
次いで、表5に示したスケジュールに応じてマウスを処置した。抗体の投与は腹腔内注射によって行った。グループ1は5頭のマウスを含んでいた;他のグループはすべて夫々8頭のマウスを含んでいた。体重は週2回測定し、マウスは毎日観察した。
【0203】
表5

【0204】
実験は14日目に終了した。マウスを安楽死させ、血清調製のために心穿刺により採血した。内臓器官を露出し、異常がないか検査した。肺を摘出し計量した。気管支肺胞(上皮)洗浄(BAL)液を、2mlハンクス平衡塩類溶液+5%FBSによって肺を洗浄することによって採取した。そして、肺は、後の組織学的及び免疫組織化学的分析のために急速凍結した。
【0205】
BAL液を5分間遠心分離(1,000rpm、4℃)し、上清を凍結した。ペレット状の細胞の一部を取り出し、Cytospin(Thermo Scientific, Waltham, MA)で遠心分離し、Giemsa/May−Grunwald染色キット(American Master Technology)を用いてギムザ染色した。ギムザ染色試料で白血球百分率(differential white blood cell counts)を行った。残余の細胞は、赤血球溶解(lysis)用に2mlの1×Pharmalyse緩衝液(BD Biosciences, San Jose, CA)に懸濁した。溶解(lysis)は、PBS+2%FBSの添加により終了し、次いで、遠心分離した。ペレットを再懸濁し、白血球を、血球計数器を用いたトリパンブルー色素排除により計数した。
【0206】
平均白血球数についての気管支肺胞(上皮)洗浄液の分析により以下の結果が得られた:
グループ1 ブレオマイシン無し 〜50,000
グループ2 ブレオマイシン+ビヒクル 〜350,000
グループ3 ブレオマイシン+AB0023 〜100,000
【0207】
実施例8:ヌードマウスにおける膵臓腫瘍細胞の外科的同所移植(SOI)
【0208】
この実施例は、膵臓腫瘍モデルにおける抗LOXL2モノクローナル抗体AB0023の効果を示す。このモデル系では、緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードする遺伝子で安定的に形質移入された、膵臓腫瘍に由来する細胞株であるBxPC−3細胞が、外科的同所移植(SOI)によって、雌性ヌードマウスに導入される。腫瘍形成及び転移は、蛍光イメージングによってモニターされる。
【0209】
5−6週齢の凡そ75頭の雌性ヌードマウス(NCr nu/nu)は、100mg/kgケタミンと5mg/kgキシラジンの溶液の腹腔内注射によって麻酔される。麻酔状態で、BxPC−3−GFP腫瘍細胞は、膵臓に縫合することによって、外科的に移植される。移植後、マウスは、FluorVivoイメージングシステム(Indec BioSystems, Santa Clara, CA)を用いたGFP FOTI(蛍光光学腫瘍イメージング)によって腫瘍発生についてモニターされる。実験的個体群における平均腫瘍サイズが75mmに達したら、表6に示されるように、マウスを複数の処置グループに組分けし、処置を開始する。処置グループは、各グループが腫瘍サイズの全範囲(各グループの平均サイズは75mm)を含むように構成される。各グループは15頭のマウスを含み、投与は全て腹腔内で行われる。
【0210】
表6

【0211】
処置の経過中、マウスは、FluorVivoイメージングシステム(Indec BioSystems, Santa Clara, CA)を用いたGFP FOTI(蛍光光学腫瘍イメージング)によって週1回モニターされる。体重は週1回測定される。
【0212】
実験は、処置の開始後6週目(即ち、抗体又は化学療法剤の初回投与の6週後)又は個体群の平均腫瘍サイズが2,000mmになるときの何れか早い方が到来するときに終了するよう計画される。実験の終了時に、心穿刺によって採血し、1mlを血清の調製のために使用する。
【0213】
剖検の際、原発性腫瘍を切除して計量し、転移の証拠を得るために、胸腔及び腹腔を視覚的に検査する。(GFP蛍光法によって証明される)転移腫瘍細胞を含む器官は何れも採取する。腫瘍及び転移を有する器官を二分し、各半部に腫瘍が等しく現れるようにする。各腫瘍又は器官の一方の半部をパラホルムアルデヒドに固定し、組織学的分析のために(複数の)パラフィンブロックに包埋する。他方の半部はRNA単離のために急速凍結する。
【0214】
処置の効果は、体重及び腫瘍体積に対するそれらの効果に基づいて評価し、スチューデントのt検定を用いて統計分析に供した。AB0023抗体又はジェムザール(Gemzar)で処置したマウスにおいて平均腫瘍体積が減少したが、これらの両方で処置したマウスでは更に減少したことが、結果から示された。
【0215】
実施例9:膵臓腫瘍異種移植モデル系
【0216】
この実施例では、抗LOXL2モノクローナル抗体AB0023及びそのヒト化誘導体AB0024の効果が、膵臓腫瘍モデル系における他の幾つかの抗悪性腫瘍剤の効果と対比される。
【0217】
膵臓腫瘍細胞株であるBxPC3細胞(ATCC, Manassas, VA)は、組織培養物中で増殖され、次いで、洗浄され、1:1v/vマトリゲルの無血清培地に再懸濁される。凡そ1×10個のBxPC3細胞が、側腹部への皮下注射によって、4−6週齢の雄性胸腺欠損(nu/nu)マウスに投与される。
【0218】
腫瘍体積がモニターされ、以下の式によって計算される:
腫瘍体積=(a×b)/2
上式において、「a」は最小径、「b」は最大径である。樹立した腫瘍が100mmに達すると、マウスを無作為に抽出し、複数の処置グループ(各グループに15頭)に割り振り、同日(1日目)に処置する。マウスは、表7に示されるように処置する。投与は全て腹腔内(IP)で行うが、エルロチニブ(Erlotinib)はPOで投与する。腫瘍のサイズが2000mmになり、マウスが瀕死状態にあるか、或いは、マウスの体重が20%を超えて減少していれば、(CO吸入によって)安楽死させる。
【0219】
表7

【0220】
体重は、処置の初日に開始し実験が終了する日まで、週2回測定する。腫瘍サイズは、週2回電子キャリパーで測定する。
【0221】
実験の終了時(6週)、各マウスをCO吸引で安楽死させる。心穿刺(致死(末期)出血:terminal bleed)によって採血する。サンプルをKEDTA管に採取し、氷上に置く。採血から30分以内に、血漿採取のために、凡そ2,000rpm、凡そ10分間の遠心分離によって、サンプルを処理する。血液の細胞画分を廃棄し、血漿サンプルを−80℃で保存する。
【0222】
腫瘍を回収し、分析のために液体窒素で急速凍結する。抗LOXL2抗体で処置したマウスは、平均腫瘍体積の減少について検査される。
【0223】
実施例10:卵巣腫瘍異種移植モデル系
【0224】
この実施例では、抗LOXL2モノクローナル抗体AB0023及びそのヒト化誘導体AB0024の効果が、卵巣腫瘍モデル系における他の幾つかの抗悪性腫瘍剤の効果と対比される。
【0225】
卵巣腫瘍細胞株であるSKOV3細胞(ATCC, Manassas, VA)は、組織培養物中で増殖され、次いで、洗浄され、1:1v/vマトリゲルの無血清培地に再懸濁される。凡そ5×10個のSKOV3細胞が、側腹部への皮下注射によって、4−6週齢の雌性胸腺欠損(nu/nu)マウスに投与される。
【0226】
腫瘍体積がモニターされ、以下の式によって計算される:
腫瘍体積=(a×b)/2
上式において、「a」は最小径、「b」は最大径である。樹立した腫瘍が100mmに達すると、マウスを無作為に抽出し、複数の処置グループ(各グループに15頭)に割り振り、同日(1日目)に処置する。マウスは、表8に示されるように処置する。投与は全て腹腔内で(IP)行う。腫瘍のサイズが2000mmになり、マウスが瀕死状態にあるか、或いは、マウスの体重が20%を超えて減少していれば、(CO吸入によって)安楽死させる。
【0227】
表8

【0228】
体重は、処置の初日に開始し実験が終了する日まで、週2回測定する。腫瘍サイズは、週2回電子キャリパーで測定する。
【0229】
実験の終了時(6週)、各マウスをCO吸引で安楽死させる。採血は、心穿刺(致死(末期)出血:terminal bleed)によって行う。サンプルをKEDTA管に採取し、氷上に置く。採血から30分以内に、血漿採取のために、凡そ2,000rpm、凡そ10分間の遠心分離によって、サンプルを処理する。血液の細胞画分を廃棄し、血漿サンプルを−80℃で保存する。
【0230】
腫瘍を回収し、分析のために液体窒素で急速凍結する。抗LOXL2抗体で処置したマウスは、平均腫瘍体積の減少について検査される。
【0231】
実施例11:異なる腫瘍細胞株の異種移植後の線維形成(desmoplasia)の分析
【0232】
この実施例では、4つのタイプの培養腫瘍細胞が、胸腺欠損(ヌード)雌性マウスの側腹部及び乳房脂肪体の何れか一方に移植され、発生に対する抗LOXL2抗体の効果及び線維形成(desmoplasia)の程度が分析される。
【0233】
MiaPaCa2、A549、OVCAR3及びSKOV3細胞株は、ATCC(Manassas, VA)から入手する。細胞は、組織培養物中で増殖し、回収し、洗浄し、1:1v/vマトリゲルの無血清培地に再懸濁し、注入の準備に備える。各マウスは、乳房脂肪体及び側腹部において、21Gニードル及びシリンジを用いて、各細胞タイプの5×10個の接種菌液で各部位に接種する。
【0234】
腫瘍体積をモニターし、以下の式により計算する:
腫瘍体積=(L×W×H/2)
上式において、「L」は長さ、「W」は幅、「H」は高さである。樹立した腫瘍が100mmになると、マウスを無作為に抽出し、複数の処置グループ(各グループに5頭)に割り振り、同日(1日目)に処置する。マウスは、表9に示すように処置する。AB0023の投与は全て、抗体の10mg/kg製剤の腹腔内(IP)投与によって行う。腫瘍のサイズが2000mmになるか、マウスが瀕死状態にあるか、或いは、マウスの体重が20%を超えて減少していれば、(CO吸入によって)安楽死させる。
【0235】
表9

【0236】
体重は、処置の初日に開始し実験が終了する日まで、週2回測定する。腫瘍サイズは、週3回電子キャリパーで測定する。
【0237】
実験の終了時、各マウスを安楽死させ、腫瘍、並びに大腿骨及び/又は肺の何れの転移も分析のために採取する。各半部に腫瘍が等しく現れるようにするために、腫瘍及び何れかの転移器官は対称的に二分する。各腫瘍及び各器官の一方の半部はホルマリンに固定し、腫瘍及び任意の転移器官の他方の半部はOCTにおいて凍結する。腫瘍及び周囲の組織は、例えば(免疫組織化学的に又はシリウスレッド試薬を用いる)I型コラーゲンのための染色法及び/又はα平滑筋アクチンのための免疫組織化学的染色法によって、線維形成について分析される。
【0238】
採血は、心穿刺(致死(末期)出血:terminal bleed)によって行い、血漿採取のために処理する。
【0239】
抗LOXL2抗体で処置したマウスは、線維形成の減少について検査される。
【0240】
実施例12:線維芽細胞活性化のマーカー
【0241】
表10に記載した因子は、線維芽細胞活性化の例示的なマーカーである。
【0242】
表10
因子 コメント
VEGF 確認された腫瘍血管新生/治療剤
PDGFC 抗VEGF耐性の機序の部分として
提案された
SDF−1/CXCL12 乳癌におけるレセプターCXCR4関与
GCSF 抗VEGF耐性(転移)の機序の部分
として提案された
P1GF 抗VEGF耐性の代替療法として
提案された
GM−CSF
bFGF/FGF2 強力な血管新生(試験における抗FGF
シグナル伝達治療剤)
HGF
EGF
MMP9 MCF7−LOXL2を介した
転写(物)誘発
TGFb
MCP−1/CCL2 TAMであるがTAFでもある
OPN/SPP1 腫瘍内皮細胞マーカー
CCL5/RANTES
TGF−1
CTGF
CCL5 間葉系幹細胞における分泌は乳癌細胞
刺激される
FAP 活性化線維芽細胞表面タンパク質
非分泌
FSP−1/S100A 活性化線維芽細胞表面タンパク質
非分泌
エンドシアリン/TEM1(CD248) 腫瘍間質及び内皮における差次的発現
ECMと相互作用すると考えられる
【0243】
実施例13:マトリゲルプラグアッセイ
【0244】
脈管形成に対する抗LOXL2抗体AB0023の効果をインビボマウスモデル系で試験した。胸腺欠損雌性Ncr:Nu/Nuマウスは、週2回の腹腔内注射による抗体(30mg/kg)又はビヒクル(PBST)で前処置した。抗体(又はビヒクル)の初回注入の1週後、マウスの側腹部に、100ng/ml線維芽細胞増殖因子(FGF)及び60Uヘパリンを補充した高濃度マトリゲル(BD Biosciences, San Jose, CA)500μlを皮下注射した。マトリゲルプラグは、移植の10日後に、プラグを切除することにより、付着した皮膚と共に、回収した。プラグは、10%中性緩衝ホルマリンに固定し、パラフィンに包埋した。5μmの切片(複数)を切り取り、ヘマトキシリン及びエオシンで染色するか、又は抗CD31又は抗CD34抗体を用いて免疫組織化学的に分析して血管形成の程度を評価し、シグナルを定量化した。
【0245】
結果は、ビヒクル処置マウスから単離したプラグはCD31陽性細胞と関連する浸潤かつ分枝する脈管構造の証拠を含んでいたのに対し、腹腔内注射によりAB0023で処置したマウスから単離したプラグは形成された脈管構造についての限られた証拠と遥かにより少ないCD31陽性細胞を示したことを示している。浸潤性内皮細胞によるLOXL2発現はIHCによって確認された。種々異なるプラグからの血管の平均数の定量分析は、AB0023処置マウスについて〜7倍の減少をもたらした(p=0.0319)。マトリゲルプラグ中のCD31陽性細胞を定量する別個の分析により、AB0023処置マウスにおいて顕著に(有意に)減少することも明らかになった(p=0.0168)。これらの結果は、分泌型LOXL2は血管新生の種々の側面において重要な役割を有すること、及び、血管新生はインビトロ及びインビボの何れにおいてもAB0023によって直接的に阻害されることを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
LOXL2活性の阻害剤を同定する方法であって、該方法は動物を試験分子で処置することを含み、該動物は1又は2以上の線維症の領域を含むこと、及び、線維症の症状を改善する(寛解する)試験分子がLOXL2活性の阻害剤として同定されること
を特徴とする方法。
【請求項2】
前記線維症は肝線維症である、請求項1の方法。
【請求項3】
前記線維症はCCl処置によって誘発される、請求項2の方法。
【請求項4】
前記線維症は肺線維症である、請求項1の方法。
【請求項5】
前記線維症はブレオマイシンによる処置によって誘発される、請求項4の方法。
【請求項6】
LOXL2活性の阻害剤を同定する方法であって、該方法は動物を試験分子で処置することを含み、該動物は1又は2以上の関節炎の領域を含むこと、及び、関節炎の症状を改善する(寛解する)試験分子がLOXL2活性の阻害剤として同定されること
を特徴とする方法。
【請求項7】
前記関節炎はコラーゲンの注入によって誘発される、請求項6の方法。
【請求項8】
LOXL2活性の阻害剤を同定する方法であって、該方法は動物を試験分子で処置することを含み、該動物は腫瘍細胞の外科的同所(正位)移植により生成される1又は2以上の実験的腫瘍を含むこと、及び、腫瘍体積を減少する試験分子がLOXL2活性の阻害剤として同定されること
を特徴とする方法。
【請求項9】
前記腫瘍細胞はMDA−MB435細胞である、請求項8の方法。
【請求項10】
前記実験的腫瘍は肺腫瘍である、請求項8の方法。
【請求項11】
LOXL2活性の阻害剤を同定する方法であって、該方法は動物を試験分子で処置することを含み、該動物は腫瘍細胞の血管内注入により生成される実験的転移を含むこと、及び、転移の程度を減少する試験分子がLOXL2活性の阻害剤として同定されること
を特徴とする方法。
【請求項12】
前記腫瘍細胞はMDA−MB231細胞である、請求項11の方法。
【請求項13】
LOXL2活性の阻害剤を同定する方法であって、該方法は動物を試験分子で処置することを含み、該動物は外来性基底膜を含むこと、及び、該外来性基底膜の脈管形成を減少する試験分子がLOXL2活性の阻害剤として同定されること
を特徴とする方法。
【請求項14】
前記外来性基底膜はマトリゲルを含む、請求項13の方法。
【請求項15】
LOXL2活性の阻害剤を同定する方法であって、該方法は動物を試験分子で処置することを含み、該動物は1又は2以上の線維形成(desmoplasia)の領域を含むこと、及び、線維形成の症状を改善する(寛解する)試験分子がLOXL2活性の阻害剤として同定されること
を特徴とする方法。
【請求項16】
線維形成の症状の改善(寛解)はコラーゲン架橋結合の減少によって示される、請求項15の方法。
【請求項17】
線維形成の症状の改善(寛解)はα−平滑筋アクチンの発現の減少によって示される、請求項15の方法。
【請求項18】
前記試験分子はポリペプチドである、請求項1、6、8、11、13又は15の何れかの方法。
【請求項19】
前記ポリペプチドは抗体である、請求項18の方法。
【請求項20】
前記抗体は抗LOXL2抗体である、請求項19の方法。
【請求項21】
前記試験分子は核酸である、請求項1、6、8、11、13又は15の何れかの方法。
【請求項22】
前記核酸はsiRNAである、請求項21の方法。

【公表番号】特表2013−502589(P2013−502589A)
【公表日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−525736(P2012−525736)
【出願日】平成22年8月20日(2010.8.20)
【国際出願番号】PCT/US2010/046196
【国際公開番号】WO2011/022670
【国際公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(512043588)ギリアド バイオロジクス,インク. (7)
【氏名又は名称原語表記】GILEAD BIOLOGICS,INC.
【Fターム(参考)】