説明

インビボ誘導性結核菌遺伝子

本発明は結核菌(Mycobacterium tuberculosis)の検出のための組成物および方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権
本出願は米国仮出願第60/781,953号(2006年3月13日出願)に基づく優先権を主張する。この仮出願は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
政府の権利
本発明は国立衛生研究所(National Institutes of Health)のコントラクトNo.1R43AI055082-01A1に基づく政府の助成によって行われたものである。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
結核(TB)は世界における感染性病原体の中で最も多い死亡原因である。世界保健機構(WHO)の推定によれば、年間8百万件の新規症例があり、2-3百万人が死亡している。特に多剤耐性株については、現在の診断および治療法は不十分である。1993年、WHOは結核の世界的緊急事態宣言という前例のない措置をとった。結核の原因となる結核菌(マイコバクテリウム・ツベルクローシス;Mycobacterium tuberculosis)は従来の方法を使用しての研究が困難な微生物である。そのため、これがいかにして疾患を誘発するかについて、まだ多くの研究すべき点が残されている。
【0004】
TBは世界で最も古い感染性疾患の一つであり、紀元前4000年という古さの有史以前の人類もTBに罹患していたことが遺骨から明らかになっている。しかしながらその病原体である結核菌は1882年になるまで同定されなかった。1946年になって初めて、抗生物質ストレプトマイシンの開発により、予防ではなく治療が可能となった。1946年以前は、想定される治療として可能なものは療養および外科的介入のみであった。薬剤の使用によって疾患を根絶しうるという可能性は、1980年代の薬剤耐性株の発見によって打ち砕かれた。耐性株の増加は多数の患者がその投薬過程を完了しなかったことに関係しうる。結核の再流行により、世界保健機構は1993年、世界非常事態宣言を発表した。
【0005】
TB感染患者の90%は無症候の潜在性TB感染(LTBI)である。生涯のうちにLTBIが進行して活動性のTB症になる確立は10%であり、これを未治療のまま放置すると罹患者の50%以上が死亡する。TBはマラリアおよびHIV/AIDSと並んで、世界の三大致死性感染症の一つである。TBは一般に発展途上国のみの問題であると考えられているが、公衆衛生当局は1000万から1500万人の米国人が潜在型の疾病に感染していると試算している。潜在性TB患者のおよそ10人に1人が発症し、感染性となる。未治療のまま放置すると、患者は毎年平均で最大15人に感染させる。
【0006】
より効果的かつ簡易なTB治療計画が世界中で緊急に必要とされているにもかかわらず、1960年代以来、新種のTB治療薬は開発されていない。TBはHIV/AIDS患者にとっての最大の死因となり、薬剤耐性型への変異が急速に進んでいる。唯一のTBワクチンの有効性は限界を迎えている。TB治療薬は廉価であるが、治療計画は長期かつ煩雑である。現在のTB治療薬は40年以上前に発見された4つの薬剤に基づくもので、6-8ヶ月間、医療提供者の直接の観察下で投与を行わなければならない。上記のような煩雑性により、世界におけるTB制御の進歩は遅く、薬剤耐性が拡大し、特にHIV有病率の高い地域ではTB死亡者が増加している。新規の診断法およびワクチンは、この疾患の制御に極めて有用であり得る。
【0007】
結核菌は最も長い間研究されている細菌の一つであり、1882年のRobert Kochによる単離にまでさかのぼる。1940年代のカルメット・ゲラン菌(Bacillus Calmette-Guerin,BCG)ワクチンの単離および実施と効果的な抗結核薬の開発により、かなり早期から結核の予防および治療が展望されていた。結核の再出現は種々の因子により(Pelicicら,1998)、その主なものにはAIDSの出現、肺結核に対するBCGワクチンの効果の低さ、社会情勢の悪化、および15%に及ぶ臨床分離株が1つまたはそれ以上の最先端抗結核薬に対して耐性を有することがある(WHO,1997)。1993年、WHOはこの疾患が世界的緊急事態であると宣言した(WHO,1994)。
【0008】
結核は主に肺疾患であるが、肺以外の臓器も感染しうる。一次的暴露は通常、飛沫感染であり、結核菌への暴露によって顕在的な感染(これは宿主防御を制御するヒト遺伝子における可変性に部分的に起因する影響である(CasadevallおよびAbel,2002))を起こすことは稀である。個々の暴露の頻度を正確に測定することができないため暴露に対する感染の実際の比率を確認することはできないが(Casadevallら,2000)、5-10%という比率が提示されている(Pine,2002)。
【0009】
基礎的な微生物学的および免疫学的研究の観点から、現在の結核流行の悪化状態は、マイコバクテリウムの特有の性質を大いに反映するいくつかの主要な因子に帰することができる。第1に、結核の診断という観点では、結核菌はインビトロにおける増殖速度が非常に緩慢である。結核の診断は未だに大きな問題である。抗酸菌に関する喀痰塗抹標本の感度は約50%にすぎず、インビトロにおける結核菌の増殖は緩慢であるため相対的に所要時間が長く、このことは治療の開始時期および未感染接触者への病原菌の伝播の可能性など、重要な因子に影響を与える。分子技術における近年の進歩にもかかわらず、喀痰塗抹標本および陽性培養液中の抗酸菌の存在により結核診断のゴールド・スタンダードの問題は残されたままである(Chanら,2000)。無症候性結核感染の診断はこれまで長い間にわたって、結核菌の精製タンパク質誘導体(PPD)に対する遅延型過敏反応に大きく依存してきた。ツベルクリン(または同様の)皮膚試験は事実上、潜在性結核感染を同定する唯一の方法であり、これは定義上、潜在性感染と見なすためには全ての培養物質が陰性でなければならないためである(Chanら,2000)。PPD試験は信頼性が低く、特に若年および老年被験者並びに免疫抑制状態の被験者では有意数が偽陰性となる。また、BCGワクチンを受けた被験者では有意数が偽陽性となるため、一般にそれらの被験者には用いられない。
【0010】
活動性結核の高感度かつ特異的で細菌学的方法によらない迅速な診断試験の開発は重大な問題となっている。この困難は、多くの試験が潜在性感染と活動性疾患を鑑別できないことと、世界中のほとんどの個体がBCGワクチンを受けているという事実、そして腐生非結核性マイコバクテリアへの暴露によるところが大きい(Chanら,2000;DanielおよびJanicki,1978)。近年、いくつかの血清学的アッセイが開発され、陰性的中率が高いことが発見されたが、これは活動性結核を除外するのに有用であり得る(Chanら,2000;Gennaro,2001)。しかしながら、潜在性結核感染者率が高い集団では、試験の陽性的中率が相対的に低いために有用性が低い(Zahraniら,2000)。また、これらの試験は非常に高いコストと訓練を必要とし、このことはそれらの試験が最も必要とされる第三世界の集団への適用において特に懸念される。Landowskiら(2001)は、活動性感染の際に脱落する結核菌タンパク質の循環を免疫学的に検出することに基づく試験を報告した。この試験は輸送に関与するAg85タンパク質の特定のエピトープに対するモノクローナル抗体を使用し、また他のいくつかの可能性のある脱落タンパク質も単独、および組み合わせて試験する。Ag85が最も機能することが発見されたが、試験の総体的な感度および特異度はある種のホスト免疫応答に基づく血清学的試験に有意に優るものではなく、非培養核増幅(nucleic amplification)試験よりわずかに低かった。それらは同一の、または他の脱落タンパク質由来の更なるエピトープを加えてそのホスト免疫応答に依存しない試験のクォリティーを向上させる可能性を持っている。要約すれば、診断に関しては、BCG接種を受けているか否かにかかわらず、健常者および潜在性感染者を活動性感染者と鑑別することができる簡単、迅速、かつ高い感度および特異度を有する試験が切望されており、これは例えばより効果的な新規ワクチン開発のための新規の標的の同定である。
【0011】
その病態生理学の観点から、結核菌は進化してホストにおけるその生存および新たなホストへの伝染を確実にするために役立ついくつかの顕著な特性を獲得した。初感染は通常、自己限定的過程であり、病原体に対するホストの免疫応答を反映する(CasanovaおよびAbel,2002)。この期間中は、結核菌は1つまたはそれ以上の機構によってホストのマクロファージに取り込まれ(Pieters,2001)、一度細胞内に取り込まれると、ファゴソームの成熟を阻害し、リソソームと融合する。これは、ファゴソーム・コート・タンパク質(phagosomal coat protein,TACO)に(少なくとも一部には)関与するマクロファージの正常なシグナル輸送を改変することによって起こる。結核菌は他の、局所および全身免疫応答に対する影響も有する。マウスの感染モデルを使用して明らかになったところによると、肉芽腫を形成するマクロファージのいくつかでは、結核菌はFasリガンドの生成を刺激する1つまたはそれ以上の抗原を分泌する(Mustafaら,1999)。このリガンドは細胞傷害性Tリンパ球のアポトーシスを惹起し、ホスト・マクロファージがそれによって破壊されるのを防ぐ。これによって結核菌はマクロファージ内で生存できるようになる。局所壊死が顕著になると、低下した酸素圧がシグナルとなって、結核菌は非複製持続段階に入る(WayneおよびSohaskey,2001)。これには、最も中心となる中間代謝過程(ただしグリオキシル酸短絡回路、並びに、代謝を基礎レベルとし、ホスト免疫機構に対する防御を亢進するいくつかの他の主要経路を除く)の抑制的制御が関与している。この段階では病原体は数十年間、複製することなく存続できる。これは臨床的には潜伏期に相当する。種々のシグナル、特に免疫系を抑制する因子によって休眠状態の結核菌細胞が亢進的に制御され、疾病過程が再活性化される。種々の動物モデルおよび培養細胞モデルによって現在われわれが持つ情報の多くが得られてきた。今なお研究すべき多くの事柄が残っている。例えば酸素センサーおよび低酸素誘導型非複製持続状態を引き起こす包括的な制御因子は同定されていない。肉芽腫形成および非複製持続状態へ(から)のシフトダウン/シフトアップに関与する因子および事象の更なる同定により、新規の薬剤および診断戦略の開発のためのターゲットが同定される可能性がある。
【0012】
市場の大半を占めるのは1960年代に開発された長期にわたる複雑な治療計画を有する薬剤、効果に限界があるワクチン、および旧式で時間のかかる試験計画であり、結核菌のインビボ誘導性(IVI)遺伝子の同定が可能であり、迅速かつ正確な診断ができ、創薬のための代替マーカーとなり、有効な新規のワクチンを開発できる可能性のある技術が医学界で非常に興味を持たれている。現在の薬剤に対するTB菌耐性の増加は医学界の重大な関心事であり、疾病段階の診断を促進する能力のみならず、結核菌に対する新規のより効果的なワクチンを生成できる可能性があるという事実にも注目が集められている。
【0013】
現在の臨床検査に関しては、AFB塗抹標本および培養液がゴールド・スタンダードであり、活動性結核感染、マイコバクテリウム・ファミリーの他のメンバーによる感染、または別の原因によるTB様症状を有するか否かの判定に使用される。培養段階は結果が得られるまで数週間を要し、喀痰塗抹標本は多くの場合、培養液中で明らかな場合でさえAFBを同定できないために信頼性が低い。マイコバクテリウムの遺伝子成分に基づくいくつかの他の試験法が開発され、結核診断の所要時間を短縮する一助となった。それらには遺伝子プローブおよび分子TB試験がある。これは微生物の遺伝コードの断片を増幅/複製することによって24時間以内で身体サンプル中のマイコバクテリウムを検出し、マイコバクテリウムの群(組み合わせたもの。そのうち結核菌のものが最も多い)に同定を絞り込むことができる。この試験は費用がかかり、日常的に使用するために高度なメインテナンスおよび必要な基準を満たすための装置の較正が必要である。これらの欠点により、発展途上国では有用性が低いと考えられる。
【0014】
細菌感染の発病機序は複雑かつ動的過程であり、常にホスト内で進化している。多くの場合、病原性決定因子の生成は厳重に制御されており、その生成は感染部位で遭遇する環境の変化に応答して調節される。制御されている病原性決定因子の全てがインビトロで同定できるとは考えにくい。なぜなら、感染部位で起こる複雑で変化に富んだ環境刺激の全てを確認し、擬態することは技術的に不可能だからである。こうした欠点が、結核菌を含むヒト病原体が用いる病原性機構の完全な理解を妨げている。この問題を解決するために、多くの研究者が実際の感染過程に関与する生物を用いて細菌病原性を研究する必要性を強調している(Smithら,1998;Mekalanos,1992;FinlayおよびFalkow,1997;Mahanら,1993;HandfieldおよびLevesque,1999)。
【0015】
1990年代前半からインビボにおける微生物の遺伝子制御を研究するための新規の技術が考案され、細菌病原性機構の理解の不足部分が補われることが期待されている。活動性感染過程で特異的に誘導される遺伝子(別名“インビボ誘導性(IVI)遺伝子”)を同定する新たな方法により、ヒト感染の動物モデルにおける種々の感染過程、植物-病原体相互作用、生物膜中での細菌-マトリクス会合、およびバイオレメディエーションに光が当てられた(HandfieldおよびLevesque(1999);CotterおよびMiller(1998))。これらの方法は全て、慣例的なインビトロ増殖ではなくインビボ増殖の際に発現する遺伝子は発病過程、または少なくともホストにおける生存に重要であるということは大いにあり得ることであるという仮定に基づいている。インビボ発現法(IVET)、シグニチャー・タグ化突然変異法(signature-tagged mutagenesis,STM)、差次的発現、プロテオミクス法、差次蛍光誘導(DFI)、および種々のマクロおよびマイクロ・スケールの差次ハイブリダイゼーション法を含む技術の使用は強力な手段であることが判明し、増え続ける数々の病原性微生物に適用されてきた。これらの新しい手段によって病原性島が特性決定され(Henselら,1997)、活性受動ワクチン法の新たな標的が報告され(Wangら,1996)、病原性におけるDNAアデニンメチル化(Dam)の総体的な役割が証明され(Heithoffら,1999)、抗生物質治療の新たな標的がIVI遺伝子およびタンパク質の研究から最初に発見された(StanislavskyおよびLam,1997)。ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)および緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)において、変異分析を用いて、種々の病原体からこれらの方法によって同定されたある種の遺伝子が実際に動物感染モデルにおけるアッセイで病原性因子をコードするということの確認が行われてきた(Manhanら,1993;Wangら,1996;Heithoffら,1999;HandfieldおよびLevesque,1999;Lehouxら,2000)。
【0016】
これらの技術は全て,非常に強力で革新的であるが,表1に要約するような一定の限界を有する。それらの本質的に全てに当てはまる一つの欠点は、動物モデルの使用に依存して実際の感染部位で増殖する病原体の細胞を得ることである。ほとんどの場合、動物モデルは天然のヒト・ホスト内で見られる条件に酷似してはいない。従って、動物モデルの結果からヒトに外挿することによって導かれる誤った結論を持った文献の例が多くある(例えばSmith,1998参照)。更に、これらのスキームの多くは、遺伝子的に“飼い慣らされていない”微生物、すなわち、十分確立された、または信頼性のある遺伝子操作法がない微生物に適用するのは困難である。改変型IVET法(SlauchおよびCamilli,2000。実施は技術的に困難である)を唯一の例外として、これらの方法の中で感染過程で一時的に発現されるIVI遺伝子を同定するのに十分適したものはない。最終的に、複数の株を使用することは技術的な面から非常に多くのことが要求されるため、これらの方法は一般に病原体の代表的な株の一つを使用することに限定される。この制限は、病原体種が潜在的病原性において株特異的相違を示す場合(いわゆるクロナリティー)、特に重要となりうる。
【0017】
【表1】

【0018】
インビボ誘導性抗原(in vivo induced antigen)法と呼ばれる新規の方法(IVIAT;米国特許出願09/980845号;米国特許出願10/092243号;Handfieldら,2000)は、IVI遺伝子の同定においてIVET、STM、DFI、およびマイクロアレイと同じ目的を果たすという報告がなされている。IVIATは上記の問題を全て解決し、特に、誤解を招く可能性のある動物モデルの使用を必要としない。IVIAT(Handfieldら,Trends Microbiol.8:336-339,2000)では、実際のヒト感染の際に特異的に発現される病原菌の遺伝子が同定される。これまでは、IVIATは多くの病原性微生物(中でも以下に記載するもの)の分析に用いられ、成功してきた:アクチノバチルス・アクチノミセタムコミタンス(Actinobacillus actinomycetemcomitans。Handfieldら,2000;Caoら,2004;Handfieldら,投稿済)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans。Chengら,2003;Chengら,投稿済)、ポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis。Songら,2002)、ビブリオ・コレレ(Vibrio cholerae。Hangら,2003)、エシェリキア・コリ(Escherichia coli。Manoharら,近刊)、ビブリオ・バルニフィカス(V. vulnificus。Kimら,2003)、シュードモナス・エルジノーサ(Pseudomonas aeruginosa。J.D.Hillman,未発表)、およびバークホルデリア・シュードマレイ(Burkholderia pseudomallei。S.Tumwasorn,未発表)。シュードモナスおよびアクチノバチルスの場合、約2倍のカバー率で全ゲノムのスクリーニングが終了している(それぞれ500,000および200,000個の独立したクローンを含む)。
【0019】
これらの過去の研究から、IVIAT法を正しく評価および理解するために重要ないくつかの点が浮かび上がってきている。第1に、これまで研究されてきた微生物において、ヒトは病原体によって発現される非常に広範なタンパク質に応答することが明らかになっている。これは抗体が防御の役割を果たすか、あるいはいわゆる“バイスタンダー(bystander)”抗体であるかに関係しないと考えられる(JensenおよびKapp,1986)。発現ライブラリー中の33%に及ぶクローンが感染患者由来の未吸着血清のプールと反応した。この知見と一致して、ウェスタンブロット(インビトロで増殖した細胞の溶解物を未吸着血清でプローブ)では数百の検出バンドが検出される。従って、アプリオリな推測に反して、ヒト液性応答は単なる病原体の表面タンパク質をはるかに超えるものに対して行われている。このため、IVIATでは発現産物の細胞局在性にかかわらず、広範なIVI遺伝子を同定することが可能となる。
【0020】
第2に、IVI遺伝子は必ずしも病原性遺伝子である必要はなく、またインビボでの生存に必須であるというのは必然的な結論ではない。診断およびワクチン法のいずれの場合でも、これらの特性はいずれも本質的でないが、後者の場合には非常に好ましい。従って、IVIATの唯一の目的は、微生物の病原特性に重要である可能性がインビトロで構成的に発現される遺伝子より高く、慣例的な方法では発見されないと考えられるIVI遺伝子を同定することである。病原体のIVI遺伝子が同定されれば、慣例的な生化学的、遺伝子的、および/または免疫学的方法を適用して、プロジェクトの最終目的を考慮して優先順位を決めることができる。
【0021】
第3に、他の全てのインビボ発現法の場合と同様、IVIATでは特定の病原体が発現する病原性因子の全てが同定されるわけではない。明らかに、インビボ増殖同様、インビトロ増殖の際にも発現される病原性因子が同定されないかもしれない。これらは慣例的なインビトロ法で発見されると推測される。また、何らかの理由で免疫原性を持たないタンパク質もあり得る。しかしながら、IVIATで同定されるIVI遺伝子は慣例的なインビトロでの生化学的、遺伝子的、または免疫学的方法ではほぼ間違いなく発見されないことは明らかである。更に、IVIATは動物の感染モデルに依存しないため、また微生物への適用が迅速および簡易であり、一時的に発現される遺伝子を同定することができ、起こりうるクロナリティーの問題に関して柔軟性を有するため、IVIATは報告されている他のインビボ発現法よりはるかに優れている。
【0022】
回収されるIVI遺伝子の質の観点から、IVIATがマイクロアレイや他の方法より優れているという非常に明らかな証拠がある。例えば、コレラ菌(V. cholerae)はIVI遺伝子の同定を目的とする種々の方法(マイクロアレイを含む)で広範に研究されてきた。部分的なコレラ菌ゲノムライブラリーのIVIAT分析が行われた(Hangら,Proc. Natl. Acad. Sci.,2003)。吸着法では、CtxB、MshA、およびTcpF等のタンパク質(他の方法によって、インビトロ増殖では抑制され、ヒト感染の際には発現されることが知られている)に対する回復期患者血清プール中の抗体は有意に除去されなかった。吸着された回復期血清との反応性に関する部分的発現ライブラリーのスクリーニングによって38個の複製可能な反応性クローンを得た。既に新生仔マウスモデルでRIVET、STM、またはマイクロアレイを用いて同定されている27個の遺伝子(Leeら,2001;Henselら,1995;Xuら,2003;Merrellら,2002)の同定に加え、IVIATではmshO、mshP、cheA、cheR、luxP、および4個の仮想的オープンリーディングフレームなどの更なる遺伝子が同定された。意義深いことに、IVIATで同定された4個の仮想的オープンリーディングフレームのうち3個は第2染色体にコードされており、これらの遺伝子がヒト腸における増殖に特異的に必要な機能をコードしうるという可能性を示している。従ってIVIATによって、ヒト感染の際に発現されるが広範な動物実験ではこれまで同定されなかった推定病原体遺伝子が同定されると考えられる。この知見により、IVIATの主な利点の一つが非常に明確に示唆される。すなわち、動物モデルを使用すると、特に、多くのそれらモデルが自然の感染様式を回避することにより、誤った不完全な結果を導き出す可能性がある。例えば、胃腸病原体のコロニー形成に必要なアドヘシンの誘導はラビット回腸ループモデルでは見られず、これはそれらの誘導のための条件が存在しないと考えられるためである。従って、自然感染の過程で感染したヒトにおいて直接IVI遺伝子を同定できることは、他の方法に優る非常に大きな利点である。十分な数の細胞を感染したヒト被験体から回収できるという稀な場合でも、多くの場合、マイクロアレイ分析では不十分であると考えられる(Schoolnik,2002;Selingerら,2003)。このことは、ヒト糞便中のコレラ菌の転写プロファイリングを実施したMerrellら(2002)の結果を比較することによって十分証明される。IVIATによってヒト糞便中に強く発現される遺伝子の多くが同定されたが、IVIATで同定されたコレラ菌の第2染色体由来遺伝子は、マイクロアレイ分析ではヒト糞便中で十分発現されていなかった(Binaら,2003)。一つの可能性として、上部消化管から糞便までの移行の際に、第2染色体上の遺伝子が迅速に発現を停止させることが考えられる。これらの同じタンパク質は防御免疫応答の発生に関与すると考えられるため、IVIATではインビボで発現される関連抗原を同定することによって、マイクロアレイ法より優れたデータが得られる。IVIATはコレラ菌ゲノムのより完全なスクリーニングに使用される。
【0023】
第4に、IVIATの真に注目すべき点の一つはその簡易さである。特定の病原体の増殖および操作の数年にわたる経験を必要とせずに、スクリーニングを行って、IVI遺伝子を同定することができる。Coxら(1999)およびCamachoら(1999)は多年を費やして研究を行い(R. Jacob, personal communication)、シグニチャー・タグ化突然変異誘発を行うための結核菌のライブラリーを構築した。それらの疾病モデルはマウスモデルにおけるライブラリーの静脈注射を用い、合計13個の密集したオープンリーディングフレームが発見されたが、このうち7個はマイコバクテリア細胞エンベロープの生合成に関与すると信じられる。一方、我々の研究では6ヶ月で結核菌の全ゲノムをスクリーニングし、細胞生理学および遺伝学の種々の観点において機能する44個のIVI遺伝子を回収および同定した(下記)。コロラド州立大学のTB Research Materials and Vaccine Testing Centerからの調製済の細胞、細胞溶解物、およびDNAの供与により、研究が容易になった。世界保健機構から種々の疾病段階における感染患者由来の血清サンプル80検体の供与を受けた。それらは各被験体の健康状態、BCGワクチン接種歴、および抗酸菌に関する喀痰サンプルの染色結果に関する基礎情報も含まれた。これらが回収されたIVI遺伝子の一次スクリーニングおよび特性決定を実施するために必要な試薬の全てであり、結核菌の遺伝学、生理学、または免疫生物学に関する特別な知識は必要ではない。
【0024】
第5に、我々は、いずれの遺伝子も基本レベルの発現はあり得るため、インビトロ増殖条件下で完全に遮断されるわけではないと考える。IVIATの経験から、吸着過程によってある種の差次的発現遺伝子に対する血清抗体が使い尽くされる可能性は示唆されるが、これは一般的なケースではない。試行錯誤により吸着過程を改良し、インビトロ誘導性抗原に対する抗体の除去およびIVI抗原に対する抗体の保持の最良のバランスを得た。我々が既にかなりの数の広範なヒト病原体由来IVI遺伝子を同定しているという事実が、IVIATが目的に沿って機能し、市場性の高い結果をもたらすことの最も強い根拠である。
【0025】
最後に、感染動物またはヒト由来の抗体プローブを使用しての細菌病原性の研究が過去に為されている(例えばAitchisonら,1987;Lyashchenkoら,1998a;Yiら,1997;Liら,2000)。これらのプローブの標的はインビトロで増殖させた細胞であるため、これらの研究は、使用するインビトロ培養の条件下で偶然発現された構成的に発現または調節される遺伝子を同定するように設計されたものであった。IVIATはこの種の研究とは明らかに全く異なる。インビトロで発現された遺伝子に対する抗体を吸着により取り除き、病原体DNAのゲノム発現ライブラリーをプローブすることによって、IVIATでは、(特に実際のヒト・ホストの感染の際に)インビボで特異的に発現される病原体の遺伝子を同定する。この目的を達成できる技術は現在のところ、他に存在しない。
【0026】
持続期に特異的に発現される遺伝子を、その感染期にある感染患者由来の血清を用いてIVIATによって同定することができ、これらの遺伝子は診断試験への使用のための有望なマーカーとなりうる。一般に、IVIATの結核菌への適用によって種々の重要な機能に関与する遺伝子を単離できる可能性が非常に高く、これはそれらが感染の初期、再発、および非複製段階にヒト・ホスト内で起こるためである。
【0027】
IVI遺伝子からワクチン法のための興味深い新規の標的が得られる可能性も非常に高い。ワクチン法に関しては、数十年にわたるBCGワクチン適用のメタアナリシスにより、有効性が乏しいことが明らかになっている(Coldiz,1995;BehrおよびSmall,1997)。主にTリンパ球によって制御されている他の細胞内病原体と同様、これまでに一定した効果を有するワクチンは発見されていない。このことから、DNAワクチン(SharmaおよびKhuller,2001)のような新規の方法および弱毒化生ワクチンまたはワクチン保有株の使用(Mollenkopfら,2001)が必要とされていることが示唆されてきた。また、確かにこれまで開発されてきた多くのサブユニットワクチンもある。これらの種類のワクチンは全て、最近報告されたものである(Ormeら,2001)。それらが報告された時、170の候補またはそれらの候補を組み合わせたものを、まずマウスモデルで、そしてもし有望であればモルモットモデルで試験した。著者は動物からヒトへの大きな飛躍であることを強調している。実際に、これらの動物モデルはBCGが正の効果を有するはずだという予測を与えたが、広範囲に及ぶヒトでの試験から、それは部分的にしか正しくないことが知られている。結核菌は容易に遺伝子操作につながるものではないが(Pelicicら,1998;Tangら,2001)、上記のように、いくらかの進歩によってシグニチャー・タグ化突然変異誘発を用いるいくつかのIVI遺伝子の同定が可能となった。2つのグループ(Camachoら,1999;Coxら,1999)が、細胞外皮の生合成に関与するORFを含む遺伝子クラスター中の弱毒化インサートについて個々に報告した。これらの遺伝子の一つで変異が起こることによって病原性が変化することが動物モデルにおいて証明され、これは、IVI遺伝子が新規の抗生物質および/またはワクチン適用のための弱毒生ワクチン株に使用するための、優れた有望な標的となりうることを直接証明している。これらの結果は、IVI遺伝子が種々の微生物感染へのワクチンの適用のための好ましい標的の中に含まれるという、広範に支持されている考えと一致しており(HandfieldおよびLevesque,1999)、これは、それらの産物が病原性過程に関与している可能性があるためである。
【0028】
結核の再流行により、新規の診断試験、ワクチン、および薬剤の必要性が重視されてきた。人が感染しているか否か、および疾患が活動期であるか潜伏期であるかをより正確かつ迅速に測定することによって、治療はより方向性を持ち、多くの命を救える可能性があり、疾患の各症例を治療するための費用の総額を実質的に低減できる。BCGワクチンの接種を受けたか否かにかかわらず健常者とTB感染者を識別できる簡単、迅速、高感度、かつ特異的な試験が必要とされている。
【0029】
TB診断試験の開発が無事完了すれば、健常者および潜在性感染者を活動性感染者と鑑別するその能力を通して、必要度の高い医療ニーズに対処できることが期待されている。前述のように、同定されたインビボ発現結核菌タンパク質は診断およびワクチンの両方として適用されうる。従って、IVI遺伝子の同定により、(特に発展途上国における)切迫した必要性に応える新規のTB診断試験が約束され、これがより有効なTBワクチンの開発にも繋がりうる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0030】
発明の概要
ある態様では、本発明は試験サンプル中の結核菌に特異的な抗体を検出する方法を提供し、この方法は、試験サンプルをSEQ ID NO:1-44を含む精製ポリペプチドまたはそれらを組み合わせたものと接触させること、並びにSEQ ID NO:1-44のポリペプチドと結核菌に特異的な抗体とを含む免疫複合体の生成を検出することを含み、免疫複合体の検出は試験サンプル中の結核菌に特異的な抗体の存在を示す。試験サンプルは血液、喀痰、血清、または肺洗浄液であってもよい。ポリペプチドを基質上に固定化してもよい。方法はラジオイムノアッセイ、水平流クロマトグラフィー(horizontal flow chromatography)、ドットブロット・アッセイ、競合結合アッセイ、ウェスタンブロット、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、およびサンドイッチアッセイから成る群から選択されるアッセイを含んでもよい。
【0031】
別の態様では、本発明は結核患者の診断法を提供し、この方法は、患者由来の試験サンプルをSEQ ID NO:1-44を含む精製ポリペプチドと接触させること、並びにSEQ ID NO:1-44のポリペプチドと結核菌特異的抗体とを含む免疫複合体の生成を検出することを含み、免疫複合体の検出は患者が結核に罹患していることを示す。免疫複合体の検出は、患者が結核ワクチンの接種を受けたか否かにかかわらず、患者が結核に罹患していることを示す。
【0032】
更に別の態様では、本発明は試験サンプル中の結核菌抗原の存在または非存在を検出する方法を提供し、この方法は、試験サンプルをSEQ ID NO:1-44から成るポリペプチドに特異的に結合する抗体またはその抗原結合部分と接触させること、並びに結核菌抗原と抗体またはその抗原結合部分とを含む免疫複合体を検出することを含み、免疫複合体の検出は試験サンプル中に結核菌抗原が存在することを示す。
【0033】
本発明の更に別の態様では、SEQ ID NO:1-44から成るポリペプチドとKaが約107l/mol以上の結合親和性で結合する精製された抗体またはその抗原結合部分を提供する。本発明の別の態様では、精製された抗体またはその抗原結合部分および医薬的に許容されるキャリアーを含有する組成物を提供する。
【0034】
本発明の更に別の態様では、結核菌感染治療の有効性を測定する方法を提供し、この方法は以下:
(a)治療前に、結核菌感染患者由来の試験サンプル中のSEQ ID NO:1-44を含む1つまたはそれ以上のポリペプチドの量または存在を測定すること;
(b)1つまたはそれ以上の治療後に、患者由来の試験サンプル中のSEQ ID NO:1-44を含む1つまたはそれ以上のポリペプチドの量または存在を測定すること;そして
(c)段階(a)および(b)のSEQ ID NO:1-44を含む1つまたはそれ以上のポリペプチドの量または存在を比較すること;
を含み、段階(b)のポリペプチドの量が段階(c)より少なければ治療が有効であることを示し、段階(a)ではポリペプチドが存在し段階(b)ではポリペプチドが存在しなければ治療が有効であることを示す。
【0035】
本発明の別の態様では、結核菌感染治療の有効性を測定する方法を提供する。方法は以下:
(a)結核菌感染患者由来の試験サンプル中のSEQ ID NO:1-44を含む1つまたはそれ以上のポリペプチドの量を測定すること;
(b)SEQ ID NO:1-44を含む1つまたはそれ以上のポリペプチドの量を標準と比較すること
を含む。
【0036】
1つ以上のポリペプチドの量が標準より高ければ治療は有効でなく、1つまたはそれ以上のポリペプチドの量が標準と等しいか、それより低ければ、治療は有効である。
【0037】
本発明は、SEQ ID NO:1-44から成るポリペプチドに特異的に結合する抗体を提供する。
【0038】
本発明の別の態様では、結核の1つまたはそれ以上の症状を寛解させる方法を提供し、この方法は本発明の1つまたはそれ以上の抗体を結核患者に投与することを含む。
【0039】
本発明の更に別の態様では、1つまたはそれ以上のSEQ ID NO:1-44に示す精製ポリペプチドおよび1つまたはそれ以上の医薬的に許容されるキャリアーを含有する免疫原性組成物を提供する。組成物は1つまたはそれ以上のアジュバントを更に含んでもよい。
【0040】
本発明の更に別の態様では、哺乳動物を結核菌感染に対して免疫する方法を提供し、この方法は本発明の免疫原性組成物を哺乳動物に投与することを含む。
【0041】
本発明の更に別の態様では、SEQ ID NO:1-44を含む1つまたはそれ以上のポリペプチドおよび異種タンパク質を含有する融合タンパク質を提供し、ここで異種タンパク質はSEQ ID NO:1-44を含むポリペプチドであってもよい。異種タンパク質は結核菌抗原85b、結核菌ESAT-6、結核菌MtB41、または結核菌Mtb39であってもよい。
【0042】
本発明の別の態様では、SEQ ID NO:1-44を含む1つまたはそれ以上のポリペプチドをコードする1つまたはそれ以上の精製されたポリヌクレオチドおよび1つまたはそれ以上の医薬的に許容されるキャリアーを含有する免疫原性組成物を提供する。
【0043】
本発明の更に別の態様では、本発明は哺乳動物を結核菌感染に対して免疫するか、哺乳動物において結核菌特異的免疫応答を誘発するか、または結核菌感染の重篤度を低減するための方法を提供し、この方法はSEQ ID NO:1-44を含む1つまたはそれ以上のポリペプチドをコードする1つまたはそれ以上の精製されたポリヌクレオチドおよび1つまたはそれ以上の医薬的に許容されるキャリアーを含有する免疫原性組成物を哺乳動物に投与することを含む。
【0044】
本発明の更に別の態様では、結核菌感染患者を診断する方法を提供し、この方法は以下を含む:a)ポリメラーゼ連鎖反応において患者由来の生体サンプルを少なくとも2つのオリゴヌクレオチド・プライマーと接触させること(ここで、少なくとも2つのオリゴヌクレオチド・プライマーはSEQ ID NO:1-44を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイズし、オリゴヌクレオチド・プライマーは十分ハイブリダイズすることによってプライマーの増幅を可能とする);そして、b)増幅された生体サンプル中の核酸配列を検出すること(ここで、増幅された核酸配列が存在すれば結核菌感染を示し、増幅された核酸配列が存在しなければ結核菌に感染していないことを示す)。
【0045】
本発明の別の態様では、結核菌感染患者を診断する方法を提供し、この方法は以下を含む;a)SEQ ID NO:1-44を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイズする1つまたはそれ以上のオリゴヌクレオチド・プローブと生体サンプルを、高ストリンジェンシー条件下、サンプル中に存在するポリヌクレオチドと1つまたはそれ以上のオリゴヌクレオチド・プローブがハイブリダイズできるために十分な条件下で接触させること;およびb)サンプル中の1つまたはそれ以上のポリペプチドにハイブリダイズした1つまたはそれ以上のオリゴヌクレオチド・プローブを検出すること(ここで、ハイブリダイゼーションが起これば結核菌感染を示し、ハイブリダイゼーションが起こらなければ結核菌感染が起こっていないことを示す)。
【0046】
従って、本発明は診断、創薬、およびワクチンに使用するポリペプチドおよび抗体を提供する。本発明は、患者のBCG接種歴にかかわらず、一次TB、潜在性感染、二次TBおよび一次または二次TBに特異的な迅速かつ正確な一連の試験を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
発明の詳細な説明
インビボ誘導性抗原法(IVIAT)が結核菌の病原の研究に用いられてきた。IVETおよびシグニチャー・タグ化突然変異法などの従前の技術と同様に、実際の感染過程中しか発現されず、そのため疾患の原因またはインビボでの生存に重要であると考えられる病原体の遺伝子を同定するように方法を設計する。IVIATは結核患者由来の血清プールを使用する。血清中の抗体をプローブとして使用し、結核菌のインビボ増殖の際には発現されるがインビトロでの増殖の際には発現されない遺伝子を同定する。IVIATには以下の3つの主な概念的および技術的利点がある:
1)インビボ誘導性(IVI)遺伝子の同定は動物モデル(多くの場合、ヒト・ホストでの天然の感染を再現していない)によらず、実際のヒト感染で発現される遺伝子を同定する;
2)遺伝子操作能力に関係なく、任意の微生物を容易に研究できる;そして
3)感染の過程のいずれの時点で発現される遺伝子でも(たとえそれが一時的にしか発現されないものであっても)同定できる。IVIATの結核菌への適用から、44個のIVI遺伝子が同定および確認された。そのうちの大多数で、ウェスタンブロット分析を用いて、患者血清中の抗体がクローニングしたIVI遺伝子の発現産物と反応することが確認された。遺伝子をその機能、そして既知の場合にはその細胞局在性、そして他のゲノムおよびプロテオーム・パラメーターについても分析した。IVI遺伝子を使用して、現行のPPD試験(展開(development)に時間がかかり、医療提供者を2回訪問しなければならず、結核患者とBCGワクチンを接種した個体とを識別できない)より実質的に迅速で優れた試験の開発を行うことができる。活動性結核と診断され、治療が開始されると、これらの標的は治療の有効性を判断する生体指標として機能しうる。
【0048】
結核菌の研究のための優れた動物モデルを得ることがこの微生物を研究する大きな妨げであったため(Balasubramanianら,1994;Tsuyuguchi,2000;Smithら,2000)、本発明がその突破口となる大きな可能性を有している。結核菌のIVI遺伝子の同定に使用したIVIATスキームの概要を図1に示す。まず、病原体DNAの発現ライブラリーを好適なホスト(例えば大腸菌)で構築する。1つまたはそれ以上の病原体株に由来するDNAをライブリー構築に使用することができる。次に、研究対象の病原体による感染歴のある患者由来の血清をプールし、インビトロで増殖させた病原体の全細胞および細胞抽出物で繰り返し吸着させ、インビボでしか発現されない抗原に対する抗体は残存させる。使用する血清サンプルのタイプおよび数に細心の注意を払い、回収されるIVI遺伝子群を最適化すべきである。IVIATのこの観点の全詳細(特に結核菌に適用する場合の)は実施例の項に記載する。第3に、吸着された抗体プローブをコロニーリフト法に適用し、ライブラリー中の反応性クローンを同定する。これらは天然の感染の際に発現される抗原を生成するクローンである。第4段階として、これらのクローンを精製し、再度スクリーニングして偽陽性を最小限にする。第5および第6段階で、反応性クローン由来のプラスミドDNAをシーケンシングし、IVI抗原の発現に関与するORFをサブクローニングする。最後に、PAGEおよびウェスタンブロット分析を用いて最終確認段階を行う。
【0049】
44個のIVI遺伝子が結核菌のIVIAT分析で同定された。これらの遺伝子およびその発現産物は新規の診断、ワクチン、および生体マーカー法の開発のための大きな可能性を有している。
【0050】
結核菌ポリペプチド
ポリペプチドは、アミド結合によって共有結合した3個またはそれ以上のアミノ酸のポリマーである。ポリペプチドは翻訳後修飾を受けうる。精製ポリペプチドは、細胞物質、他のタイプのポリペプチド、化学前駆体、ポリペプチドの合成に使用した化学物質、またはそれらを組み合わせたものを実質的に含有しないポリペプチド標本である。細胞物質、培養液、化学前駆体、ポリペプチドの合成に使用した化学物質を実質的に含有しないポリペプチド標本は、他のポリペプチド、培養液、化学前駆体、および/または合成に使用した他の化学物質を約30%、20%、10%、5%、1%未満または更に少ない量で含有する。従って、精製ポリペプチドは約70%、80%、90%、95%、99%、またはそれ以上の純度である。
【0051】
本発明の精製ポリペプチドは完全長ポリペプチドまたはポリペプチドフラグメントのいずれであってもよい。例えば本発明のポリペプチドフラグメントは本発明のポリペプチドの約5、10、20、50、100、200、300、400、500、600、750、1,000、またはそれ以上のアミノ酸を含んでもよい。本発明のポリペプチドの例としてSEQ ID NO:1-44に示すものがある。変異ポリペプチドはSEQ ID NO:1-44に示すポリペプチド配列と少なくとも約90、96、98、または99%の相同性を有する。変異ポリペプチドは1、2、3、4、5、10、20、30、40、50、もしくはそれ以上の保存的アミノ酸置換、または必要により他の軽度の変更を有し、生体活性は保持している、すなわち生体機能は同等である。生体活性同等物は、相当する野生型ポリペプチドと比較した場合、実質的に同等の機能を有する。
【0052】
配列相同性%は当該分野で認識される意味を有し、2つのポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列間の相同性を測定する多くの方法がある。例えば以下を参照されたい:Lesk編,Computational Molecular Biology,Oxford University Press,New York,(1988);Smith編,Biocomputing:Informatics And Genome Projects,Academic Press,New York,(1993);GriffinおよびGriffin編,Computer Analysis Of Sequence Data,Part I,Humana Press,New Jersey,(1994);von Heinje,Sequence Analysis In Molecular Biology,Academic Press,(1987);およびGribskovおよびDevereux編,Sequence Analysis Primer,M Stockton Press,New York,(1991)。ポリヌクレオチドまたはポリペプチドのアラインメント法は以下のようなコンピュータープログラムで体系化されている:GCGプログラムパッケージ(Devereuxら,Nuc. Acids Res.12:387(1984))、BLASTP、BLASTN、FASTA(Atschulら,J.Molec.Biol.215:403(1990))、およびBestfitプログラム(Wisconsin Sequence Analysis Package,Version 8 for Unix,Genetics Computer Group,University Research Park,575 Science Drive,Madison,WI 53711)(これはSmithおよびWatermanの局所的相同性アルゴリズムを使用する(Adv. App. Math.,2:482-489(1981))。例えば、FASTAアルゴリズムを使用するコンピュータープログラムALIGNを、ギャップオープンペナルティー:12、ギャップ伸長ペナルティー:2のアフィンギャップペナルティー検索で使用してもよい。
【0053】
配列アラインメントプログラムを用いて特定の配列が、例えば参照配列と約95%の相同性を有するか否かを確認する場合、相同性%が参照ポリヌクレオチド全長にわたって算出され、参照ポリヌクレオチド中のヌクレオチド総数の5%までの相同性ギャップが許容されるようにパラメーターを調整する。
【0054】
変異体の同定は一般に、本発明のポリペプチド配列の一つを修飾し、修飾したポリペプチドの特性を評価して生物学的に同等であるか否かを確認することによって行う。変異体は、アッセイ(例えば免疫組織化学的アッセイ、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、免疫酵素アッセイ、またはウェスタンブロットアッセイ)において本発明のポリペプチドと実質的に同じ反応をすれば(例えば元のポリペプチド配列の90-110%の活性を有すれば)生物学的に等価である。ある態様ではアッセイは競合アッセイであって、生物学的に等価なポリペプチドは、本発明のポリペプチドの対応する反応性抗原または抗体への結合を約80、95、99、または100%低下させる能力を有する。対応する野生型ポリペプチドに特異的に結合する抗体は、ポリペプチド変異体にも特異的に結合する。本発明のポリペプチド変異体は約1、2、3、4、5、10、10、30、40、50、60、70、80、90、100個、またはそれ以上の保存的アミノ酸置換を含んでもよい。
【0055】
保存的置換とはあるアミノ酸が同様の特性を有する別のアミノ酸で置換されたものであり、ペプチド化学分野の当業者によってポリペプチドの二次構造およびヒドロパシーが実質的に変化しないと予測されるものである。保存的置換には以下のようなアミノ酸群内での交換がある:脂肪族または疎水性アミノ酸Ala、Val、Leu、およびIleの置換;ヒドロキシル基SerおよびThrの置換;酸性基AspおよびGluの置換;アミド基AsnおよびGlnの置換;塩基性基Lys、Arg、およびHisの置換;芳香族基Phe、Tyr、およびTrpの置換;および小型アミノ酸Ala、Ser、Thr、Met、およびGlyの置換。本発明のポリペプチドは、共翻訳的に、または翻訳後にタンパク質の輸送を行うシグナル(またはリーダー)配列を更に含んでもよい。また、ポリペプチドはポリペプチドの合成、精製、もしくは同定を容易にする(例えばポリHis)、またはポリペプチドの固相への結合を促進するリンカーまたは他の配列を含んでもよい。例えば、ポリペプチドを免疫グロブリンFc領域またはウシ血清アルブミンにコンジュゲートさせてもよい。
【0056】
ポリペプチドは、天然ではポリペプチドが通常結合していないアミノ酸配列(すなわち異種アミノ酸配列)に共有または非共有結合させることができる。異種アミノ酸配列は非結核菌ポリペプチドであるか、または天然ではポリペプチドに結合して見られることのない結核菌ポリペプチドであってもよい。異種ポリペプチドは、例えば結核菌抗原85b、結核菌ESAT-6、結核菌MtB41、または結核菌Mtb39であってもよい。更に、ポリペプチドはアミノ酸以外の化合物または分子に共有または非共有結合してもよい。例えば、ポリペプチドをインジケーター、アミノ酸スペーサー、アミノ酸リンカー、シグナル配列、輸送停止配列、膜貫通ドメイン、タンパク質精製リガンド、またはそれらを組み合わせたものに結合させてもよい。本発明のある態様では、タンパク質精製リガンドは(例えば本発明のポリペプチドのアミノ末端またはカルボキシ末端にある)1つまたはそれ以上のCアミノ酸残基であってもよい。アミノ酸スペーサーは天然では本発明のポリペプチドに結合していないアミノ酸配列である。アミノ酸スペーサーは約1、5、10、20、100、または1,000個のアミノ酸を含んでもよい。
【0057】
必要により、ポリペプチドは融合タンパク質であって、他のアミノ酸配列(例えばアミノ酸リンカー、アミノ酸スペーサー、シグナル配列、TMR輸送停止配列、膜貫通ドメイン)、およびタンパク質精製に有用なリガンド(例えばグルタチオン-S-トランスフェラーゼ、ヒスチジン・タグ、およびブドウ球菌プロテインA)、またはそれらを組み合わせたものを含んでもよい。1つ以上の本発明のポリペプチドが融合タンパク質に含まれてもよい。本発明のポリペプチドのフラグメントが本発明の融合タンパク質に含まれてもよい。本発明の融合タンパク質は1つまたはそれ以上のSEQ ID NO:1-44、それらのフラグメント、またはそれらを組み合わせたものを含んでもよい。融合タンパク質はSEQ ID NO:1-44を含む1つまたはそれ以上のポリペプチドおよび異種タンパク質を含んでもよい。
【0058】
本発明のポリペプチドは多量体であってもよい。すなわち、ポリペプチドはSEQ ID NO:1-44の1つもしくはそれ以上のコピーまたはそれらを組み合わせたものを含んでもよい。多量体ポリペプチドは多抗原性ペプチド(MAP)であってもよい。例えばTam, J. Immunol. Methods, 196:17-32(1996)参照。
【0059】
本発明のポリペプチドは結核菌に特異的な抗体で認識される抗原を含んでもよい。抗原は1つまたはそれ以上のエピトープ(すなわち抗原決定基)を含んでもよい。エピトープは直鎖エピトープ、シークエンシャル・エピトープ、またはコンフォメーショナル・エピトープであってもよい。本発明のポリペプチド内のエピトープはいくつかの方法で同定できる。例えば米国特許第4,554,101号;JamesonおよびWolf, CABIOS 4:181-186(1988)参照。例えば本発明のポリペプチドを単離およびスクリーニングしてもよい。合わせると全ポリペプチド配列を網羅するような一連の短鎖ペプチドをタンパク質開裂によって調製してもよい。例えば100量体ポリペプチドフラグメントから開始して、各フラグメントをELISAで認識されるエピトープの存在について試験してもよい。例えばELISAアッセイにおいて、結核菌ポリペプチド(例えば100量体ポリペプチドフラグメント)を固相(例えばプラスチックのマルチウェルプレート)に結合させる。抗体集団を標識し、固相支持体に付加し、非特異的吸収が阻害されるような条件下で未標識の抗原に結合させ、未結合の抗体および他のタンパク質を洗浄除去する。抗体結合の検出を、例えば無色の基質が有色の反応産物に変化するような反応で検出する。次いで、同定した100量体からサイズを漸減、重複させたフラグメントを試験し、目的のエピトープをマッピングする。
【0060】
本発明のポリペプチドは組換え技術によって生成することができる。当該分野で公知の方法を用いて本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを組換え発現ベクターに導入し、好適な発現ホスト細胞系で発現させてもよい。種々の細菌、酵母、植物、哺乳動物、および昆虫発現系が当該分野で使用できるが、任意のそれら発現系を使用してもよい。必要により、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを無細胞翻訳系で翻訳してもよい。またポリペプチドは化学的に合成するか、または結核菌細胞から得てもよい。
【0061】
本発明の免疫原性ポリペプチドはSEQ ID NO:1-44に示すアミノ酸配列を含んでもよい。免疫原性ポリペプチドはSEQ ID NO:1-44を有するポリペプチドのエピトープを認識する抗体または他の免疫応答(例えば免疫系のT細胞応答)を惹起する。本発明の免疫原性ポリペプチドはSEQ ID NO:1-44に示すアミノ酸配列を有するポリペプチドのフラグメントであってもよい。本発明の免疫原性ポリペプチドフラグメントは約5、10、20、50、100、200、300、400、500、600、750、1,000、またはそれ以上のアミノ酸長であってもよい。
【0062】
結核菌ポリヌクレオチド
本発明のポリヌクレオチドは微生物の全ゲノムを含有するわけではなく、1本鎖または2本鎖核酸であってもよい。ポリヌクレオチドはRNA、DNA、cDNA、ゲノムDNA、化学的に合成したRNAもしくはDNA、またはそれらを組み合わせたものであってもよい。ポリヌクレオチドを精製して他の成分(例えばタンパク質、脂質、および他のポリヌクレオチド)を含有しないようにしてもよい。例えばポリヌクレオチドは50%、75%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の純度であってもよい。本発明のポリヌクレオチドは上記のポリペプチドをコードする。本発明のある態様では、ポリヌクレオチドはSEQ ID NO:1-44に示すポリペプチドまたはそれらを組み合わせたものをコードする。本発明のポリヌクレオチドは他のヌクレオチド配列(例えばリンカーをコードする配列、シグナル配列、TMR輸送停止配列、膜貫通ドメイン)またはタンパク質精製に有用なリガンド(例えばグルタチオン-S-トランスフェラーゼ、ヒスチジン・タグ、およびブドウ球菌プロテインA)を含んでもよい。
【0063】
本発明のポリヌクレオチドは単離することができる。単離したポリヌクレオチドは、天然では結合している5’および3’隣接ゲノム配列の一方または両方と直接隣接していない、天然に存在するポリヌクレオチドである。単離したポリヌクレオチドは、例えば任意の長さの組換えDNA分子であってもよいが、ただし、天然に存在するゲノム中でそれら組換えDNA分子に直接隣接してみられる核酸配列は除去されているか、または存在しない。非天然型核酸分子も単離したポリヌクレオチドに含まれる。例えばcDNAまたはゲノムライブラリー内の、数百から数百万個の他の核酸分子中に存在する核酸分子、またはゲノムDNAの制限酵素消化物を含有するゲル切片は、単離されたポリヌクレオチドと見なされない。
【0064】
本発明のポリヌクレオチドは免疫原性ポリペプチドをコードするフラグメントを含んでもよい。本発明のポリヌクレオチドは完全長のポリペプチド、ポリペプチドフラグメント、および変異または融合ポリペプチドをコードしてもよい。
【0065】
本発明のポリペプチドをコードする縮重ヌクレオチド配列、並びに本発明のポリヌクレオチド配列と少なくとも約90、96、98、または99%の相同性を有する相同ヌクレオチド配列、およびそれらの相補体も本発明のポリヌクレオチドである。配列相同性%は“結核菌ポリペプチド”の項に記載するように算出する。縮重ヌクレオチド配列は、本発明のポリペプチドまたはそのフラグメントをコードするポリヌクレオチドであるが、遺伝子コードの縮重によって野生型ポリヌクレオチド配列と核酸配列が異なる。生物学的に機能的な結核菌ポリペプチドをコードする結核菌ポリヌクレオチドの相補的DNA(cDNA)分子、種相同体、および変異体も結核菌ポリヌクレオチドである。本発明のポリヌクレオチドは、例えば生体サンプル、例えば感染した個体由来の血液、血清、喀痰、肺洗浄液、唾液、または組織中に存在する核酸配列から単離してもよい。ポリヌクレオチドは、例えば自動合成装置を用いて合成してもよい。PCRのような増幅法を用いてポリペプチドをコードするゲノムDNAまたはcDNAのいずれかからポリヌクレオチドを増幅することもできる。
【0066】
本発明のポリヌクレオチドは天然に存在するポリペプチドのコーディング配列を含むか、または天然に存在しない改変型配列をコードしてもよい。必要により、発現調節要素(例えば複製起点、プロモーター、エンハンサー、またはホスト細胞中で本発明のポリヌクレオチドの発現を誘導する他の調節要素)を含む発現ベクターにポリヌクレオチドをクローニングしてもよい。発現ベクターは、例えばプラスミド(例えばpBR322、pUC、またはColE1)またはアデノウィルスベクター(例えば2型または5型アデノウィルスベクター)であってもよい。必要により他のベクターを用いてもよく、それらには、限定されるわけではないが以下がある:シンドビスウィルス、シミアンウィルス、アルファウィルス・ベクター、ポックスウィルス・ベクター、およびサイトメガロウィルス、そしてレトロウィルス・ベクター(例えばマウス肉腫ウィルス、マウス乳癌ウィルス、モロニー・マウス白血病ウィルス、およびラウス肉腫ウィルス)。ミニクロモソーム(例えばMCおよびMC1)、バクテリオファージ、ファージミド、酵母人工染色体、細菌人工染色体、ウィルス粒子、ウィルス様粒子、コスミド(λファージcos部位を挿入したプラスミド)、およびレプリコン(細胞中で、それ自身の制御下で複製することができる遺伝子要素)を用いてもよい。
【0067】
発現制御配列に機能的に結合するポリヌクレオチドの調製およびホスト細胞中でのそれらの発現の方法は当該分野で公知である。例えば米国特許第4,366,246号参照。本発明のポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドの転写および/または翻訳を駆動する1つまたはそれ以上の発現制御要素に隣接している、または近傍に位置している場合、機能的に結合してもよい。
【0068】
本発明のポリヌクレオチドを、例えばプローブまたはプライマー(例えばPCRプライマー)として用い、サンプル(例えば生体サンプル)中の結核菌ポリヌクレオチドの存在を検出することができる。それらのプローブおよびプライマーの結核菌ポリヌクレオチド配列に特異的にハイブリダイズする能力により、所定のサンプル中の相補的配列の存在を検出するためにそれらを用いることができる。本発明のポリヌクレオチドプローブおよびプライマーはサンプル(例えば唾液、喀痰、血液、血清、肺洗浄液、尿、糞便、脳脊髄液、羊水、創傷浸出液、または組織)中の相補的配列にハイブリダイズする。サンプル由来のポリヌクレオチドを、例えばゲル電気泳動もしくは他のサイズ分離法に施与するか、またはサイズ分離をせずに固定化することができる。ポリヌクレオチドプローブまたはプライマーを標識してもよい。好適な標識、並びにプローブおよびプライマーを標識する方法は当該分野で公知であり、例えばニック翻訳またはキナーゼによって導入される放射性標識、ビオチン標識、蛍光標識、化学発光標識、生物発光標識、金属キレート標識、および酵素標識がある。サンプル由来のポリヌクレオチドを好適なストリージェンシーのハイブリダイゼーション条件下でプローブまたはプライマーと接触させる。
【0069】
適用により、種々のハイブリダイゼーション条件を使用して標的配列へのプローブまたはプライマーの選択性の程度を変化させることができる。ハイブリダイゼーション法は公知であり、プローブおよびプライマーの設計は当該分野で公知である。高度の選択性を必要とする適用では、相対的に高いストリンジェント条件、例えば低塩濃度および/または高温条件(例えば約0.02Mから約0.15Mの塩濃度で、約50℃から約70℃の温度)を用いてもよい。より低い選択性が必要とされる適用では、より低いストリンジェンシーのハイブリダイズ条件を用いることができる(例えば、約0.14Mから約0.9Mの塩濃度で、約20℃から約55℃の温度)。プローブまたはプライマーおよび試験サンプル由来の相補的ポリヌクレオチドを含むハイブリダイズ複合体の存在は、サンプル中の結核菌または結核菌ポリヌクレオチド配列の存在を示す。
【0070】
抗体
本発明の抗体は、本発明の結核菌ポリペプチドまたはそのフラグメントに特異的かつ安定に結合する抗体分子である。本発明の抗体はポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、1本鎖抗体(scFv)、または抗体の抗原結合部分であってもよい。抗体の抗原結合部分は抗原結合部位を含む抗体の一部または抗体の可変領域であり、この部分は無傷抗体のFc領域の定常重鎖ドメインを含まない。抗原結合部分の例としてFab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、およびFvフラグメントがある。
【0071】
精製された抗体とは細胞物質、他の型の抗体、または他の混入物質を実質的に含まない抗体標品である。細胞物質、他の抗体、または他の混入物質を実質的に含まない抗体標品は約30%、20%、10%、5%、1%、またはそれ未満の他の抗体、細胞物質、または他の混入物質を含有する。従って精製された抗体は約70%、80%、90%、95%、99%、またはそれ以上の純度を有する。
【0072】
本発明の抗体は任意のクラスの抗体(例えばIgG、IgM、IgA、IgD、およびIgE)であってもよい。抗体またはその抗原結合部分は本発明のポリペプチドのエピトープに結合する。抗体は好適な実験動物でインビボで調製してもよいし、組換えDNA法を用いてインビトロで調製してもよい。抗体の調製および特性決定法は当該分野で公知である。例えばDean,Methods Mol.Biol.80:23-37(1998);Dean,Methods Mol.Biol.32:361-79(1994);Baileg,Methods Mol.Biol.32:381-88(1994);Gullick,Methods Mol.Biol.32:389-99(1994);Drenckhahnら.Methods Cell.Biol.37:7-56(1993);Morrison,Ann. Rev.Immunol.10:239-65(1992);Wrightら.Crit.Rev.Immunol.12:125-68(1992)参照。例えばポリクローナル抗体は本発明のポリペプチドを動物(例えばヒトまたは他の霊長類、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ヤギ、ブタ、イヌ、ウシ、ヒツジ、ロバ、またはウマ)に投与して産生させてもよい。免疫した動物由来の血清を回収し、(例えば硫酸アンモニウムで沈殿させた後、クロマトグラフィー(例えばアフィニティークロマトグラフィー)を行って)抗体を血漿から精製する。ポリクローナル抗体の調製および加工法は当該分野で公知である。
【0073】
“特異的に結合する”または“に特異的である”とは、第1の抗原(例えばポリペプチド)が他の非特異的分子に対するよりも高いアフィニティーで本発明の抗体を認識および結合することを意味する。非特異的分子は第1の抗原と共通のエピトープを共有しない抗原である。例えば、ある抗原(例えばポリペプチド)に対して産生させた抗体が、この抗原に対して非特異的抗原に対するよりも効率的に結合すれば、この抗体は抗原に特異的に結合するとみなされる。ある態様では、抗体またはその抗原結合部分がSEQ ID NO:1-44から成るポリペプチドにKa約107l/mol以上の親和性で結合する場合、これは特異的に結合する。例えば酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、またはウェスタンブロットアッセイにより、当該分野で公知の方法を用いて特異的結合を試験してもよい。
【0074】
更に、本発明のポリペプチド上に存在するエピトープに対するモノクローナル抗体を容易に調製することができる。例えば本発明のポリペプチドで免疫した哺乳動物(例えばマウス)由来の正常B細胞を、例えばHAT-感受性マウス骨髄腫細胞と融合させ、ハイブリドーマを生成する。結核菌特異的抗体を産生するハイブリドーマをRIAまたはELISAを用いて同定し、半流動寒天でのクローニングまたは限界希釈によって単離してもよい。結核菌特異的抗体を産生するクローンを更なるスクリーニングによって単離する。モノクローナル抗体の特異性に関するスクリーニングを標準的な方法、例えば本発明のポリペプチドをマイクロタイタープレートに結合させ、ELISAアッセイでモノクローナル抗体の結合を測定することによって行ってもよい。モノクローナル抗体の調製および加工法は当該分野で公知である。例えばKohlerおよびMilstein,Nature,256:495(1975)参照。モノクローナル抗体の特定のアイソタイプの調製は、一次融合体からの選択によって直接行ってもよいし、あるいは、同胞選択法を用いてクラススイッチ変異体を単離することによって異なるアイソタイプのモノクローナル抗体を分泌する親ハイブリドーマから二次的に行ってもよい。例えばSteplewskiら, P.N.A.S. U.S.A.82:8653 1985;Spriaら,J.Immunolog.Meth.74:307,1984参照。本発明のモノクローナル抗体は組換えモノクローナル抗体であってもよい。例えば米国特許第4,474,893号;米国特許第4,816,567号参照。本発明の抗体は化学的に構築してもよい。例えば米国特許第4,676,9080号参照。
【0075】
本発明の抗体はキメラ(例えば米国特許第5,482,856号参照)、ヒト化(例えばJonesら,Nature 321:522(1986);Reichmannら,Nature 332:323(1988);Presta,Curr.Op.Struct.Biol.2:593(1992))、またはヒト抗体であってもよい。ヒト抗体は、例えば不死化、ファージディスプレイ、トランスジェニックマウス、またはTrimera法によって調製してもよい(例えばReisenerら,Trends Biotechnol.16:242-246(1998)参照)。
【0076】
結核菌抗原(例えば結核菌ポリペプチド)に特異的に結合する抗体は、サンプル(例えば結核菌に感染した動物(例えばヒト)由来の血清、血液、肺洗浄液、喀痰、尿、または唾液サンプル)中の結核菌または結核菌抗原の存在を検出するのに特に有用である。結核菌または結核菌抗原の免疫アッセイは1つまたはいくつかの抗体を使用してもよい。結核菌または結核菌抗原の免疫アッセイは、例えば結核菌エピトープ(単数)に対するモノクローナル抗体(単数)、1つの結核菌ポリペプチドのエピトープ(複数)に対するモノクローナル抗体(複数)を組み合わせたもの、種々の結核菌ポリペプチドのエピトープ(複数)に対するモノクローナル抗体(複数)、同じ結核菌抗原(単数)に対するポリクローナル抗体(複数)、種々の結核菌抗原に対するポリクローナル抗体(複数)、またはモノクローナル抗体およびポリクローナル抗体を組み合わせたものを使用してもよい。免疫アッセイのプロトコルは、例えば競合、直接反応、または(例えば標識された抗体を使用する)サンドイッチ型アッセイに基づいてもよい。本発明の抗体に当該分野で公知の任意の型の標識を施与してもよく、それらには例えば蛍光、化学発光、放射能、酵素、コロイド金属、放射性同位体、および生物発光標識がある。
【0077】
本発明の抗体またはその抗原結合部分を支持体に結合させ、結核菌または結核菌抗原の存在の検出に使用することができる。支持体には、例えばガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ、天然および変性セルロース、ポリアクリルアミド、アガロース、およびマグネタイト(magletite)がある。
【0078】
更に、本発明の抗体を用いて、免疫親和性カラムで結核菌体または結核菌抗原を単離することができる。抗体を(例えば吸着または共有結合によって)固相支持体に固定し、抗体の免疫選択活性を保持させてもよい。必要により、スペーサー基を有して抗体の抗原結合部位をアクセス可能な状態に保持してもよい。次いで、固定化された抗体を使用してサンプル、例えば生体サンプル(例えば唾液、血清、喀痰、血液、肺洗浄液、尿、糞便、脳脊髄液、羊水、創傷浸出液、または組織)由来の結核菌体または結核菌抗原を結合させてもよい。結合した結核菌体または結核菌抗原を、例えばpH変化によって、カラム充填剤から回収する。
【0079】
本発明の抗体を免疫局在性試験に使用して、種々の細胞事象または生理学的条件での本発明のポリペプチドの存在および分布を分析することができる。抗体を用いて、受動免疫に関与する分子を同定し、また、非タンパク質抗原の生合成に関与する分子を同定することもできる。それらの分子の同定はワクチンの開発に有用であり得る。本発明の抗体(例えばモノクローナル抗体および1本鎖抗体)を使用して、結核菌に起因する疾病の改善経過をモニタリングしてもよい。動物由来の試験サンプル中の結核菌抗原に対する結核菌抗体の増加または減少を測定することによって、疾患の改善を目的とする特定の治療計画が有効であるか否かを判断できる。抗体の検出および/または定量は、例えば直接結合アッセイ、例えばRIA、ELISA、またはウェスタンブロットアッセイを用いて行ってもよい。本発明の抗体を受動免疫療法として患者に投与してもよい。
【0080】
検出法
本発明の方法を用いて、試験サンプル、例えば生体サンプル、環境サンプル、または実験用サンプル中の、結核菌に特異的な抗体またはその抗原結合部分を検出することができる。生体サンプルには、例えば哺乳動物(例えばウマ、ネコ、イヌ、またはヒト)由来の血清、血液、細胞、血漿、肺洗浄液、喀痰、唾液、または組織がある。試験サンプルは未処理のままか、沈殿、分画、分離、希釈、濃縮、または精製を行った後に本発明のポリペプチドと合一してもよい。
【0081】
方法は、ポリペプチド/抗体複合体(すなわち免疫複合体)の形成が可能な条件下で本発明のポリペプチド(または少なくとも1つのエピトープを含むそのフラグメント)を試験サンプルと接触させることを含む。すなわち、本発明のポリペプチドはサンプル中に存在する結核菌に特異的な抗体またはその抗原結合部分に特異的に結合する。当業者は抗体/ポリペプチド複合体結合を検出するのに使用されるアッセイおよび条件に精通している。サンプル中でのポリペプチドおよび抗結核菌抗体間の複合体形成を検出する。
【0082】
結核菌に感染している疑いのあるヒトまたは動物由来の試験サンプルを得ることによって、本発明の抗体を結核菌感染の診断法に使用することができる。抗体-抗原複合体(すなわち免疫複合体)の生成が可能な条件下で試験サンプルを本発明の抗体と接触させる。抗体-抗原複合体の量を当該分野で公知の方法によって測定してもよい。レベルがコントロールサンプル中で形成されるより高ければ結核菌感染を示す。あるいはまた、本発明のポリペプチドを試験サンプルと接触させてもよい。陽性身体サンプル中の結核菌抗体は好適な条件下で抗原-抗体複合体を形成する。抗原-抗体複合体の量は当該分野で公知の方法で測定できる。この方法では、患者がワクチン接種を受けている場合でも活動性感染を明らかにできる。この方法では、感染歴のある患者における二次感染も明らかにできる。
【0083】
本発明のある態様では、抗体に結合した指示薬(例えば酵素コンジュゲート)が検出可能な反応を触媒すると、ポリペプチド/抗体複合体が検出される。必要により、ポリペプチド/抗体/指示薬複合体の形成が可能な条件下で、シグナル生成化合物を含む指示薬をポリペプチド/抗体複合体に適用する。ポリペプチド/抗体/指示薬複合体を検出する。必要により、ポリペプチドまたは抗体を指示薬で標識した後、ポリペプチド/抗体複合体を生成させる。方法は必要により陽性または陰性コントロールを含んでもよい。
【0084】
本発明のある態様では、本発明の抗体を固相または基質に結合させる。本発明のポリペプチドを含むタンパク質を含有する可能性のある試験サンプルを基質に添加する。本発明のポリペプチドに特異的に結合する抗体を添加する。抗体は固相上に使用する抗体と同一であってもよいし、または異なる供与源もしくは種由来のものであってもよく、指示薬(例えば酵素コンジュゲート)に結合させてもよい。各添加段階の前に洗浄段階を実施してもよい。発色団または酵素基質を添加し、呈色させる。呈色反応を停止させ、例えば分光光度計を用いて、色を定量する。
【0085】
本発明の別の態様では、本発明の抗体を固相または基質に結合させる。本発明のポリペプチドを含むタンパク質を含有する可能性のある試験サンプルを基質に添加する。本発明のポリペプチドに特異的に結合する二次抗種抗体を添加する。これらの二次抗体は固相抗体と異なる種由来である。二次抗体と特異的に結合し、固相抗体とは特異的結合をしない三次抗種抗体を添加する。三次抗体は指示薬(例えば酵素コンジュゲート)を含んでもよい。各添加段階の前に洗浄段階を実施してもよい。発色団または酵素基質を添加し、呈色させる。呈色反応を停止させ、例えば分光光度計を用いて、色を定量する。
【0086】
本発明のアッセイには、それらに限定されるわけではないが競合、直接反応、またはサンドイッチ型アッセイに基づくものがあり、それらには、限定されるわけではないが酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ウェスタンブロット、IFA、ラジオイムノアッセイ(RIA)、水平流クロマトグラフィー、ドットブロット、血球凝集(HA)、蛍光偏光免疫アッセイ(FPIA)、およびマイクロタイタープレート・アッセイ(1個またはそれ以上のマイクロタイタープレート・ウェル中で行うアッセイ)がある。
【0087】
アッセイは固相もしくは基質を使用するか、または免疫沈降もしくは固相を使用しない他の任意の方法で実施してもよい。固相または基質を使用する場合、本発明のポリペプチドを以下のような固相支持体または基質に直接または間接的に結合させてもよい:マイクロタイター・ウェル、磁気ビーズ、非磁気ビーズ、カラム、充填剤、膜、合成または天然ファイバー(例えばガラスもしくはセルロースを主成分とする物質、または熱可塑性ポリマー、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、またはポリエステル)から成る繊維状マット、粒子状物質(例えばガラスまたは種々の熱可塑性ポリマー)から成る焼結構造、またはニトロセルロース、ナイロン、ポリスルホンなど(性質上、一般に合成である)から成るキャスト膜フィルム。これらの基質物質は全て、好適な形状、例えばフィルム、シート、またはプレートで使用することができ、あるいは好適な不活性キャリアー(例えば紙、ガラス、プラスチックフィルム、または線維)上にコーティングするか、またはそれに結合もしくはラミネートさせてもよい。ペプチドを固相に固定化するための好適な方法にはイオン性相互作用、疎水性相互作用、共有結合性相互作用などがある。
【0088】
あるアッセイ形式では、1つまたはそれ以上のポリペプチドを固相または基質上にコーティングしてもよい。抗結核菌抗体またはその抗原結合部分を含有する疑いのある試験サンプルを、結核菌に特異的な抗体またはその抗原結合部分にコンジュゲートしたシグナル生成化合物を含む指示薬と共に、試験サンプルの抗体が固相のポリペプチドへ、または結核菌特異的抗体にコンジュゲートした指示薬が固相のポリペプチドへ結合して抗原/抗体複合体が形成されるのに十分な時間および条件下でインキュベートする。抗結核菌抗体にコンジュゲートした指示薬の固相への結合の低下を定量的に測定してもよい。結核菌陰性であることを確認した試験サンプルから生成されるシグナルと比較して測定可能なシグナルの低下が見られれば、これは試験サンプル中に抗結核菌抗体が存在することを示す。この型のアッセイでは、試験サンプル中の抗結核菌抗体を定量化できる。この方法では、患者がワクチン接種を受けている場合でも、活動性感染を明らかにできる。この方法では、感染歴のある患者における二次感染も明らかにできる。
【0089】
別の型のアッセイ形式では、1つまたはそれ以上の本発明のポリペプチドを支持体または基質上に固定化する。本発明のポリペプチドを指示薬にコンジュゲートさせて試験サンプルに添加する。この混合物を支持体または基質に適用する。結核菌特異的抗体が試験サンプル中に存在すれば、それらは指示薬にコンジュゲートしたポリペプチドおよび支持体に固定化されたポリペプチドに結合する。その後、ポリペプチド/抗体/指示薬複合体を検出してもよい。この型のアッセイでは、試験サンプル中の抗結核菌抗体を定量化できる。
【0090】
別の型のアッセイ形式では、1つまたはそれ以上の本発明のポリペプチドを支持体または基質上に固定化する。試験サンプルを支持体または基質に適用し、インキュベートする。洗浄液で固相支持体を洗浄し、未結合のサンプル由来成分を除去する。結核菌特異的抗体が試験サンプル中に存在すれば、それらは固相上に固定化されたポリペプチドに結合する。このポリペプチド/抗体複合体は、指示薬にコンジュゲートした種特異的二次抗体を用いて検出できる。その後、ポリペプチド/抗体/抗種抗体指示薬複合体を検出してもよい。この型のアッセイでは、試験サンプル中の抗結核菌抗体を定量化できる。
【0091】
ポリペプチド/抗体複合体またはポリペプチド/抗体/指示薬複合体の形成は、例えば放射測定、比色測定、蛍光測定、サイズ分離、または沈殿法によって検出できる。必要により、ポリペプチド/抗体複合体の検出を、シグナル生成化合物を含む指示薬に結合した二次抗体を添加することによって行う。ポリペプチド/抗体複合体に結合するシグナル生成化合物(標識)を含む指示薬を上記の方法で検出できるが、それらには発色剤、触媒(例えばフルオレセインおよびローダミンのような蛍光化合物にコンジュゲートした酵素)、化学発光化合物(例えばジオキセタン、アクリジニウム、フェナントリジニウム、ルテニウム、およびルミノール)、放射性元素、直接目視できる標識,並びにコファクター、阻害剤、磁気ビーズなどがある。酵素コンジュゲートの例としてアルカリホスファターゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、βガラクトシダーゼなどがある。特定の標識の選択は重要ではないが、それ自体によって、または1つもしくはそれ以上の更なる物質とコンジュゲートして、シグナルを生成する能力を有するものである。
【0092】
複合体の形成は試験サンプル中の抗結核菌抗体の存在を示す。従って、本発明の方法を使用して患者における結核菌感染を診断できる。この方法では、患者がワクチン接種を受けている場合でも活動性感染を明らかにできる。この方法では、感染歴のある患者における二次感染も明らかにできる。
【0093】
本発明の方法では、試験サンプル中の抗結核菌抗体の量についての情報も得られる。多くの指示薬(例えば酵素コンジュゲート)によって、存在する抗体の量は生成されるシグナルに比例する。試験サンプルの型によって、好適なバッファーで希釈する、濃縮する、またはいずれの操作も行わずに固相と接触させることができる。例えば通常、希釈済みの血清もしくは血漿サンプル、または濃縮標本(例えば尿)を試験して抗体の存在および/または量を測定するのが好ましい。
【0094】
また、本発明の方法を使用して以下を行うこともできる:一次結核試験、潜在性感染試験;二次結核試験;一次結核試験;および/または3つの感染段階全てに関する試験。
【0095】
本発明は更に、サンプル中の抗結核菌抗体もしくは抗体フラグメント、結核菌、または結核菌ポリペプチドを検出するアッセイキットを含む。キットは1つまたはそれ以上の本発明のポリペプチド、およびサンプルにおける抗結核菌抗体またはその抗原結合部分へのポリペプチドの結合を測定する方法を含む。また、キットまたは製品は1つまたはそれ以上の本発明の抗体またはその抗原結合部分、およびサンプル中の結核菌または結核菌ポリペプチドへの抗体またはその抗原結合部分の結合を測定する方法を含んでもよい。キットは、1つまたはそれ以上の本発明のポリペプチドまたは抗体、および1つまたはそれ以上のポリペプチドまたは抗体の使用のため(例えば哺乳動物における結核菌感染の同定のための)説明書を含んでもよい。またキットは、キットの1つまたはそれ以上のポリペプチドまたは抗体を結核菌感染の同定に使用できることを示すラベルを含む包装材料を含んでもよい。当業者に公知の他の成分(例えばバッファー、コントロールなど)をそれらの試験キットに含ませてもよい。本発明のポリペプチド、抗体、アッセイ、およびキットは、例えば患者の個々の結核菌感染症例、並びに結核菌蔓延の疫学的研究に有用である。
【0096】
本発明のポリペプチド、抗体、およびアッセイを他のポリペプチド、抗体、またアッセイと併用して、結核菌の存在を他の生物と共に検出することができる。例えば本発明のポリペプチドおよびアッセイを、HIVを検出する試薬と併用してもよい。
【0097】
結核菌に起因する疾患の治療、寛解、または予防のための方法
本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチド、および抗体を使用して、被験体(例えば哺乳動物)の結核菌感染に対する免疫、結核菌特異的免疫原性応答の刺激、または結核菌に起因する疾患の1つまたはそれ以上の症状の重篤度の寛解もしくは低減を行うことができる。例えば、抗体(例えば本発明のモノクローナル抗体またはその抗原結合部分)を動物(例えばヒト)に投与してもよい。本発明のある態様では、1つまたはそれ以上の抗体またはその抗原結合部分を医薬的に許容されるキャリアーを含む医薬組成物として動物またはヒトに投与する。組成物は治療的有効量の抗体またはそのフラグメントを含む。治療的有効量は、被験体における結核菌感染の症状の寛解または結核菌体量の低減に有効な量である。
【0098】
本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドを免疫原性組成物中に含有させ、これを用いてホストにおける免疫応答を誘発することができる。免疫原性組成物は動物において免疫応答を誘導する能力がある。本発明の免疫原性ポリペプチドまたはポリヌクレオチド組成物は、動物の免疫系を感作し、結果として免疫応答を惹起して結核菌感染の影響を寛解または予防するのに特に有用である。動物モデルでの免疫応答の誘導は、例えば最適な投与量または投与経路を決定するのに有用であり得る。免疫応答の誘導を用いて、結核菌によって誘発される疾患または感染の治療、予防、または寛解を行ってもよい。免疫応答には液性免疫応答もしくは細胞性免疫応答、またはそれらを組み合わせたものがある。免疫応答は、例えばデフェンシンの生成を促進することによる、ホストの全身性応答の促進を含んでもよい。
【0099】
動物による結核菌に対する抗体価の産生は感染からの防御および感染のクリアランスに重要であり得る。ポリペプチドまたはポリヌクレオチド運搬後の抗体価の検出および/または定量を用いて、抗体価の産生に特に有効なエピトープを同定できる。結核菌に対する強力な抗体反応に関与するエピトープの同定は、異なる長さの結核菌ポリペプチドに対して抗体を産生させることによって同定できる。特定のポリペプチドエピトープによって産生される抗体を,例えばELISAアッセイを用いて試験し、いずれのポリペプチドが強力な応答を惹起するのに最も有効なエピトープを含有するかを確認する。その後、それらのエピトープまたはエピトープをコードするポリヌクレオチドを含むポリペプチドまたは融合タンパク質を構築し、それを用いて強力な抗体反応を惹起してもよい。
【0100】
本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチド、または抗体を哺乳動物(例えばマウス、ウサギ、モルモット、マカク、ヒヒ、チンパンジー、ヒト、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマ、イヌ、ネコ)、またはニワトリもしくはアヒルのような動物に投与し、インビボにおいて抗体を産生させてもよい。ポリヌクレオチドの注射は構築および改変を容易にするために実用面で有益である。更に、ポリヌクレオチドの注射により、ホストにおいてポリペプチドが合成される。従って、ポリペプチドが天然の翻訳後修飾、構造、およびコンフォメーションと共にホスト免疫系に提示される。ポリヌクレオチドを“裸のDNA”として被験体に運搬してもよい。
【0101】
ポリヌクレオチド、ポリペプチド、または抗体の投与は、任意の当該分野で公知の方法によって行うことができ、それらには筋肉内、静脈内、肺内、筋肉内、皮内、腹腔内、もしくは皮下注射、エアロゾル、鼻腔、輸液ポンプ、座薬、粘膜、局所、および経口、例えば生体弾道銃(“遺伝子銃”)を用いた注射がある。ポリヌクレオチド、ポリペプチド、または抗体は経口投与のためのタンパク質キャリアーを伴ってもよい。投与法を組み合わせて免疫応答を惹起してもよい。抗体は約0.5mgから約200mgの1日量で投与してもよい。本発明のある態様では、抗体を約20から約100mgの1日量で投与する。
【0102】
治療に使用するための医薬的に許容されるキャリアーおよび希釈剤は当該分野で公知であり、例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing社(A.R. Gennaro編(1985))に記載されている。キャリアーはそれ自体ではホストに有害な抗体の産生を誘導しないものでなければならない。それらのキャリアーには、限定されるわけではないが以下がある:大型で代謝が遅い高分子、例えばタンパク質、多糖(ラテックス機能性SEPHAROSE(登録商標)、アガロース、セルロース、セルロースビーズなど)、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、アミノ酸ポリマー(例えばポリグルタミン酸、ポリリジンなど)、アミノ酸コポリマー、ペプトイド、リピトイド(lipitoid)、および不活性非病原性ウィルス粒子または細菌細胞。リポソーム、ハイドロゲル、シクロデキストリン、生分解性ナノカプセル、および生体接着物質を本発明の組成物のキャリアーとして使用してもよい。
【0103】
例えば以下のような医薬的に許容される塩を本発明の組成物に使用することができる:無機塩、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、または硫酸塩、並びに有機酸塩、例えば酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、または安息香酸塩。特に有用なタンパク質基質は血清アルブミン、キーホールリンペットヘモシアニン、免疫グロブリン分子、サイログロブリン、オボアルブミン、破傷風トキソイド、および当業者に公知の他のタンパク質である。本発明の組成物は液体または賦形剤、例えば水、生理食塩水、リン酸バッファー、リンガー液、ハンクス液、グルコース、グリセロール、デキストロース、マロデキストリン、エタノールなど(単独または組み合わせで)、並びに湿潤剤、乳化剤、浸透圧調整剤、界面活性剤、またはpH緩衝剤を含有してもよい。更なる活性剤、例えば殺菌剤を使用してもよい。
【0104】
必要により、リンパ球への免疫原性提示を向上させる共刺激分子、例えばB7-1もしくはB7-2、またはサイトカイン、例えばMIP1α、GM-CSF、IL-2、およびIL-12を本発明の組成物に含有させてもよい。必要により、アジュバントを組成物に含有させてもよい。アジュバントは特異的免疫応答を非特異的に増強させるのに使用できる物質である。一般に、アジュバントおよび本発明のポリペプチドを混合した後に免疫系に提示するか、または別々に、しかし動物の同じ部位に提示する。アジュバントには、例えば油性アジュバント(例えばフロイント完全および不完全アジュバント)、無機塩(例えばAlk(SO4)2、AlNa(SO4)2、AlNH4(SO4)、シリカ、アラム、Al(OH)3、およびCa3(PO4)2)、ポリヌクレオチド(すなわちポリICおよびポリAU酸)、およびある種の天然物質(例えば結核菌由来のワックスD、並びにコリネバクテリウム・パルバム、ブルデテラ・パータシス、およびブルセラ属のメンバーに見られる物質)がある。使用できるアジュバントには、それらに限定されるわけではないが以下がある:MF59-0、水酸化アルミニウム、N-アセチル-ムラミル-L-スレオニル-D-イソグルタミン(thr-MDP)、N-アセチル-ノル-ムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミン(CGP 11637、別名ノル-MDP)、N-アセチルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミニル-L-アラニン-2-(1’-2’-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ヒドロキシホスホリルオキシ)-エチルアミン(CGP 19835A、別名MTP-PE)、およびRIBI(細菌由来の3つの成分、モノホスホリル脂質A、トレハロースジミコレート、および細胞壁骨格(MPL+TDM+CWS)を2%スクアレン/TWEEN80(登録商標)に混合したエマルジョンを含有する)。
【0105】
本発明の組成物を調剤して、経口錠剤、バッカル錠、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁液、シロップ、ウェハー、注射液、マウスウォッシュ、デントリファイス(dentrifices)等にすることができる。それらの組成物および製剤中の1つまたはそれ以上の本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチド、または抗体のパーセンテージはユニット重量の0.1%から60%まで変化しうる。
【0106】
ポリペプチド、ポリヌクレオチド、または抗体の投与により動物における免疫応答が惹起され、これは少なくとも1週間、1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、1年間、またはそれ以上持続する。必要により、動物における免疫応答を保持するために、初回注射の1ヶ月後、3ヶ月後、6ヶ月後、1年後、またはそれ以降に1回またはそれ以上の、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、または抗体のブースター注射を行ってもよい。必要により、共刺激分子またはアジュバントを組成物の前、後、またはそれと共に投与してもよい。
【0107】
ポリペプチド、ポリヌクレオチド、抗体、またはそれらの組み合わせを含む本発明の組成物を、使用する特定の組成物に適合する方法により、(例えばELISAによって)検出されるような免疫応答を惹起するのに有効な量で投与する。ポリヌクレオチドを哺乳動物(例えばヒヒ、チンパンジー、イヌ、またはヒト)に、1ng/kg、10ng/kg、100ng/kg、1000ng/kg、0.001mg/kg、0.1mg/kg、または0.5mg/kgの用量で筋肉内注射してもよい。ポリペプチドまたは抗体を0.01、0.05、0.5、0.75、1.0、1.5、2.0、2.5、5、または10mg/kgの用量で哺乳動物に筋肉内注射してもよい。
【0108】
ポリペプチド、ポリヌクレオチド、もしくは抗体、またはそれらの組み合わせは、結核菌未感染動物に投与するか、または結核菌感染動物に投与することができる。組成物中のポリヌクレオチド、ポリペプチド、または抗体の特定の用量は多くの因子に依存し、それらの因子には、限定されるわけではないが組成物を投与する哺乳動物の種、年齢、性別、併用薬剤、全身症状、および組成物の投与方式がある。本発明の組成物の有効量は慣例的な実験法を用いるだけで容易に決定できる。
【0109】
更に、本発明は結核菌治療の有効性を測定する方法を提供する。例えば治療の前に、SEQ ID NO:1-44を含む1つまたはそれ以上のポリペプチドの量または存在を結核菌感染患者由来の試験サンプルで測定することができる。次いで1つまたはそれ以上の治療後に、試験サンプル中のSEQ ID NO:1-44を含む1つまたはそれ以上のポリペプチドの量または存在を測定してもよい。治療前後の1つまたはそれ以上のポリペプチドの量または存在を比較してもよい。治療後のポリペプチドの量が治療前に比較して少なければ、治療が有効であることを示している;治療前のポリペプチドの存在に対して治療後にポリペプチドが存在しなければ、これは治療の有効性を示している。
【0110】
結核菌感染治療の有効性を測定する別の方法は、結核菌感染患者由来の試験サンプル中のSEQ ID NO:1-44を含む1つまたはそれ以上のポリペプチドの量を測定することを含む。SEQ ID NO:1-44を含む1つまたはそれ以上のポリペプチドの量を標準と比較する。標準は、例えばSEQ ID NO:1-44の結核菌ポリペプチドを含まないものであってもよい。1つまたはそれ以上のポリペプチドの量が標準よりも高ければ、治療は有効でない。1つまたはそれ以上のポリペプチドの量が標準より低いか、または同等であれば、治療は有効である。
【0111】
本発明について本明細書に例証的に記載するが、本発明は任意の要素(単数または複数)、制限(単数または複数)(それについては本明細書に特に開示していない)を欠いた状態で実施することができる。従って、例えば本明細書に記載するそれぞれの例で、“・・・を含む”、“本質的に・・・から成る”、および“・・・から成る”という用語は、それぞれ他の2つの用語と置換してもよく、それでもなお、その慣例的な意味を保持する。使用した用語および表現は制限ではなく説明のための用語として使用するものであって、それらの用語および表現の使用において、表示および記載する特長の同等物またはその一部のいずれをも除外する意図はなく、認識されるように、種々の改変が本明細書の特許請求の範囲内で可能である。従って、本発明について好ましい態様、必要に応じた特長として具体的に開示したが、当業者は本明細書に開示するコンセプトの改変および変更を実施してもよく、それらの改変および変更は記述および添付の特許請求の範囲に定義される本発明の範囲内であると見なされる。
【0112】
更に、本発明の特長または観点をマーカッシュ群または他の選択肢群で記載する場合、当業者に認識されるように、本発明はそれによってマーカッシュ群または他の群の個々のメンバーまたはメンバーの亜群でも記述される。
【0113】
以下は例証の目的で提供するものであり、上に広範に記載した本発明の範囲を制限することを意図するものではない。本明細書に開示する全ての文献は参照により本明細書に組み込まれる。
【実施例】
【0114】
実施例1 ゲノム発現ライブラリーの構築
図1に示すIVIATスキームはヒト微生物病原体のIVI抗原の単離および同定に必要な7つの基本的段階を示す。IVIAT法による病原体のIVI遺伝子の同定に好適な出発株の選択は、程度の差はあるがプロジェクトの最終目的によって重要となる。研究の主要目的が診断またはワクチン法のための候補となりうるインビボ発現タンパク質の同定である場合、全ての病原性クローン型に共通の抗原が必要とされる。この場合、単一の病原体株に由来するDNAを用いてゲノム発現ライブラリーを構築するのが妥当である。研究の主目的が微生物が使用する病原性機構に関する知見を可能な限り得ることであれば、一般に各クローン型の1つまたはそれ以上の代表サンプルを使用して、最も広範な病原性遺伝子を同定する可能性を最大限にする。結核菌種内でかなりの遺伝的多様性があるのは明らかであるが(Burmanら,1997;Filliolら,1999;Kato-Maedaら,2001)、ここでの目的は診断への適用であるため、コロラド州立大学から供与されたCSU93 DNAを用いてライブラリーを構築した。この株はケンタッキー/テネシー地域から最近単離された臨床分離株であり(Valwayら,1998)、その4.4MbのゲノムはTIGRでシーケンシングされているため、IVIAT分析に好適である。多剤耐性株由来の細胞およびDNAから開始するのが好ましいが、現在のところ、CSUでは入手できない。CSU93は多剤(pan-drug)感受性である。
【0115】
ライブラリーの構築はNovagen(Madison,WI)のpET30abc系を用いて実施した。このベクター系がIVIATへの使用に適しているのはいくつかの重要な特性による。第一に、pET系では、構築物が好適なラムダ溶原菌ホスト(例えばBL21(DE3))中に存在すれば、クローニングされたDNAがT7 RNAポリメラーゼ(DE3)によってT7プロモーターで転写される。このホストでは、クローニングした遺伝子の潜在的な毒性効果がlacオペレーター(これによってIPTGによる発現が厳密に制御される)の存在によって抑制される。第二に、プラスミドによって、マルチクローニング部位の直ぐ上流にある翻訳開始コドンの直後にリボソーム結合部位(RBS)および(ヒスチジン)6-タグ(His-タグ)が提供される。His-タグによって、翻訳されたタンパク質をニッケルアフィニティークロマトグラフィーを用いて迅速に精製することができ、また、ウェスタンブロット分析の簡便なマーカーともなる。最後に、系は、pET30aのマルチクローニング部位の前に1個(pET30b)および2個(pET30c)の塩基欠失を導入することによってユニバーサルなインフレーム・クローニングが可能となるように遺伝子操作されている。
【0116】
コロラド州立大学からCSU93株(CDC 1551)由来のゲノムDNAを得た。10μgのDNAサンプルをTEバッファーに溶解し、0.5-1.5Kbフラグメントの生成に最適な条件下、Hydroshear(Genomic Solutions, Ann Arbor, MI)で処理した。この方法により制限酵素の使用によって生じる偏りが回避される。このサイズのフラグメントを0.75%アガロースゲルから切り出し、GeneClean Turbo(Q-BIOgene, Carlsbad, CA)を用いて精製した。Epicenter社(Madison,WI)のEND-ITTM DNA末端修復キットを用いて末端のオーバーハングを除去し、得られた平滑末端産物をpET30cマルチクローニング部位のCIP脱リン酸化EcoRV制限部位にライゲートさせた。これをE.coli NOVABLUETM細胞(Novagen)にエレクトロポレーションしてベクターライブラリーを増幅し、形質転換体をBHI/カナマイシン培地で選択した。最低105個の独立したTop10クローンが生成された。生じたコロニーを回収し、WIZARD(登録商標)PlusマキシプレップでプラスミドDNAを単離した。精製したプラスミドDNAを用いてBL21(DE3)コンピテントセルに化学的に形質転換し、再度BHI/カナマイシンプレートで選択した。100個のクローンの断片標品(crackpreparation)をアガロース電気泳動で試験し、ライブラリーが0.5から1.5Kbの範囲にある種々のサイズのインサートをpET30内に高率(>95%)で含有していることを確認した。無菌80%グリセロールをライブラリーに添加して最終濃度30%(v/v)とし、アリコートを、スクリーニング段階で使用するまで-80℃で凍結保存した。
【0117】
実施例2 抗体プローブの調製
世界保健機構から血清を、感染の段階を分類し、その重篤度を決定するための十分な情報と併せて入手した。一次感染(4)、再発性感染(4)、および潜在性感染(2)を示す10検体の血清を選択した。血清の亜群はそれぞれ有意な時間枠にわたっており、特定のステージの開始より数週間から数ヶ月であった。これによって、一時的に発現された遺伝子を同定する可能性が高まる。プールに添加する前に、改良型ELISA法(Ebersole 1980)およびウェスタンブロットによって各血清を個々に試験し、CSU93抽出物(コロラド州立大学より供与)に対して高力価で広範な反応性を有することを確認した。その後、個々の血清サンプルを等量ずつプールした。プールしたヒト血清を吸着させ、インビトロ培養の際にCSU93によって生成されるタンパク質と反応する抗体を除去した。これを行うために、500μlの血清を放射線照射したCSU93全細胞に対して、5ラウンド吸着させた(図2)。各吸着では、プールした血清を100μlのリン酸バッファー(PBS。0.02%アジ化ナトリウム含有)中の約1010の細胞と共に4℃で穏やかに撹拌しながら2時間インキュベートした。次いで、製造者の取扱説明書に従い、0.49μmラテックスビーズ(Bangs Laboratories, Fishers, IN)に結合したCSU93の細胞抽出物で血清を吸着させた。沸騰水中10分間インキュベートして調製した熱変性CSU93細胞溶解物を用いてこの段階を反復した。その後、ラテックスビーズに結合したIPTG誘導性BL21(DE3)/pET30b細胞溶解物で血清を処理した。各吸着段階後に少量(10μl)のサンプルを採取し、ELISAおよびウェスタンブロット分析を行って工程の完了を確認した。ELISAで力価が<1:100となり、一次抗体の1:100希釈液を用いたウェスタンブロットで反応性が観察されないことを、吸着工程終了の基準とした。未吸着の血清および二次血清をELISAおよびウェスタンブロット分析の陽性および陰性コントロールとした。ヤギ抗ヒトIgGを用いるドットブロット分析では吸着された血清のIgGの総量は有意な減少が見られず、吸着工程が特異的で、非特異的プロテアーゼ介在型分解または免疫グロブリンの結合が起こらないことを示している。プロテインAカラムおよびBioLogic Duo-Flow Protein Purification System(BioRad, Hercules, CA)を用いて吸着した血清からIgGを精製した。最終の抗体プローブをアリコートに分け、使用まで-80℃で凍結保存した。
【0118】
実施例3 発現ライブラリーのプロービング
ゲノム発現ライブラリーサンプルを解凍および希釈し、サンプルをBHI/kanプレートに播種し、プレート当たり約500個のコロニーを得た。コロニーをPROTRAN(登録商標)ニトロセルロース膜(0.2μm;SchleicherおよびSchuell, Keene, NH)に転写し、コロニー側を上にして1mM IPTG含有BHI/kan培地上に配した。プレートを37℃で3時間インキュベートし、クローン化遺伝子の発現を誘導した。元のライブラリープレートを再び3から5時間インキュベートしてコロニーを増殖させ、後に反応性クローンの単離に使用するための“マスタープレート”とした。次いで、クロロホルムで飽和させたワットマン#1濾紙上に膜を配して細胞を溶解し、発現したタンパク質を遊離させた。膜を風乾し、5%スキムミルク含有PBS-TWEENTM中、室温で1時間ブロッキングした。PBS/TWEENTM中で3回洗浄した後、膜を段階2で調製してPBS/TWEENTMで1:2500に希釈したIVI抗体プローブと共に、穏やかに揺動しながら4℃で一晩インキュベートした。次に、膜をPBS/TWEENTMで3回洗浄した後、二次抗体(アフィニティー精製した、ペルオキシダーゼをコンジュゲートさせたヤギ抗ヒト免疫グロブリン(ICN/Cappel)をPBS/TWEENTMで1:20,000に希釈したもの)と共に、穏やかに揺動しながら室温で1時間インキュベートした。膜をPBS/TWEENTMで3回、PBSで2回洗浄した。SUPERSIGNAL(R) West Femto Maximum Sensitivity Substrate(Pierce, Rockford, IL)を添加し、UVP化学発光イメージャーで15、30、45、60、75、および90秒間隔で暴露して反応性クローンを可視化した。イメージャーから得られた、サイズを調整した画像を用いてマスタープレート上の反応性クローンを同定してそれを採取し、選択培地にストリークして精製した。吸着工程によって未吸着血清と反応する多数のコロニー(おそらく、インビトロで増殖した細胞によって生成されるタンパク質を生成するものである)を除去した。
【0119】
我々の算定では、平均1kbのインサートサイズを有する約125,000個の個別クローンで、2つの挿入方向および3つの異なるリーディングフレームを考慮して、結核菌の4.4Mbゲノムの99%が網羅される。このサイズのインサートで最大3個のORFと仮定すると、CSU93の染色体全体を網羅するためには500,000個のクローンが必要である。我々は3ヶ月間でこの数のクローンをスクリーニングした。
【0120】
実施例4 二次スクリーニング
偽陽性数を低減するために、一次スクリーニングから単離および精製されたクローンを、吸着させた血清との反応性に関して再試験した。クローンをカナマイシン含有BHI培地1ml中、37℃で一晩インキュベートし、細胞ペレットを回収して最少量のフレッシュな培地に再懸濁した。再懸濁後、5μLをカナマイシン含有BHI寒天プレート(1mM IPTG含有または未含有)上にスポッティングした。プレートを37℃で5時間インキュベートした後、クローンをクロロホルム蒸気で処理し、タンパク質をニトロセルロース膜上に固定化し、上記のように吸着済み血清でプロービングした。2つの陰性コントロールを各プレート上に含有させた:すなわち、クローン・インサートを含有しないpET30b/BL21(DE3)およびインサートは含有するが吸着済み血清と反応しないランダムクローンである。予備スクリーニングで高度な反応性を示す抗原を発現するクローンを同定した後、このクローンを陽性コントロールとして各プレート上に含有させた。再スクリーニングを各クローンに対して少なくとも3回実施し、反応性を確認した。最初にスクリーニングした合計500,000個の個別クローンから、中度から高度の反応性を有する116個のIPTG誘導性クローンを選択し、更なる研究に供した。反応性が低いクローンおよび二次スクリーニングでの結果が一致しないクローンは後の研究のためにグリセロール中で凍結保存した。
【0121】
実施例5 ORFを発現する反応性抗原の同定
IPTG誘導性陽性クローン由来の組換えプラスミドを1mlのBHI/カナマイシン培養液から精製し(Qiagenミニプレップ)、pET30プライマー(Novagen)を両方向で使用してクローン化DNAインサートのシーケンシングを行った。シーケンシングはUniversity of Florida Interdisciplinary Biotechnology Coreによる。一般に、約500-800bpの良好な配列を各反応から得た。両方向のシーケンシングデータからクローニングしたインサートの開始点および終了点を明らかにし、CSU93ゲノムデータベースと一致させ、インサートおよびラベル付きのORFの全体のサイズを測定した。2つのインサートやオーバーラップしたインサートを含有するクローンを除き、44個のユニークなオープンリーディングフレームが残った。重複クローンの発生は、段階3で実施した一次スクリーニングが完全であったことを示す強力な証拠である。pET30ベクターとの連結部分の配列データを分析し、クローンニングしたインサートが好適な方向かつ好適なリーディングフレームでpET30リーダーと融合タンパク質を形成していることを確認した。発現されたタンパク質の機能、局在性、構造モチーフなどに関する情報をデータベースに記録し、検索を容易にした。
【0122】
カンジダ・アルビカンス(Candida albicans;Chengら,2003)および他の例のように、クローンのほとんどはプラス鎖上に1つのORFのフラグメントを含有した。これらの場合、およびプラス鎖に存在するORFが1より多い場合で、CSU93 DNAをテンプレートとして用いて全ORFを増幅した。得られたフラグメントをアガロースゲル電気泳動で単離し、製造者(Novagen)が提供するワンステップ・プロトコルを用いて、pET30 Ek/LICベクター系にプラスミドリーダーペプチドと共にインフレームでクローニングした。BL21(DE3)は相対的に形質転換性が低いので、まず組換えコンストラクトをNovaBlueに形質転換して増幅し、その後、BL21(DE3)に形質転換する。上記の二次スクリーニング法を用いて、吸着した抗体プローブとサブクローンの反応性を分析した。
【0123】
実施例6 PAGEおよびウェスタンブロットによる確認
サブクローンをPAGEおよびウェスタンブロットで分析し、DNA配列から推定されるおおよそのサイズのIPTG誘導性タンパク質を生成し、このバンドが抗Hisタグ抗体(Ek/LICリーダー配列がHisタグを提供する)およびIVIAT抗体プローブとの反応性を有することを確認した。まず、クローニングした遺伝子の過剰発現の条件を決定した。1mlアリコートの3つの別個の培地にクローンを接種し、37℃で一晩培養した。次いで細胞ペレットを回収し、同量の培地(IPTG含有または未含有)に10、25、および37℃で1、2、または3時間再懸濁した。遠心分離して細胞を回収し、6%(v/v)2-メルカプトエタノール含有SDS-PAGEサンプルバッファー100μlに溶解し、沸騰水浴中、10分間インキュベートし、マイクロフュージ管中、最高速で5分間遠心分離して不溶性物質を除去した。25μlのサンプルを12% SDS-PAGEゲル上で着色済スタンダード分子量マーカーと共に電気泳動した。ゲルをクマシーブルーR250で染色し、IPTG誘導性クローン遺伝子産物の生成が最大となるような条件を検討した。最適な生成条件からの細胞サンプルを3つのゲルで泳動し、1つはクマシーブルーで染色し、他の2つはHoefer Transphor(Hoefer Scientific Instruments, San Francisco)で、ブロットバッファーを用い、400mA(定電流)で1時間、ニトロセルロース膜(Schleicher & Schuell)上に電気ブロッティングした。これらのブロットの一つをペルオキシダーゼをコンジュゲートさせたマウス抗(His)6IgG1モノクローナル抗体(Cappel/ICN)でプローブし、発現されたIVI抗原がHisタグで標識されていることを確認した。第2のブロットを上記のように、吸着済み抗体プローブと共にインキュベートし、発色させた。ブロットおよび染色したゲルを比較し、抗Hisタグ抗体およびIVI抗体プローブの両方と反応性のあるバンドと共移動するIPTG誘導性バンドを生成するクローンを同定する。段階4の二次スクリーニングで確認された44のIVI遺伝子のうち約半数が段階5および6を通過した。
【0124】
IVI遺伝子およびその特性決定の程度の全リストを付録1に示す。遺伝子配列は公表されており、タンパク質産物に関する情報はオンライン(例えばGenBank)で入手できる。単離された遺伝子の多くは機能が未知である(19は機能が未知であった;9つは膜/表面に局在した。12は代謝に関するものであった。2つは調節機能に関するものであった。2つは薬剤耐性に関するものであった)。ほとんどは細胞質内に局在すると推定され、これは表面に露出された分子だけが体液性免疫応答を誘導するわけではないという我々の記述を立証するものである。少なくとも9つが膜に結合している可能性があり、そのためワクチン法の標的の可能性として興味深い。BLAST分析によれば、5つの遺伝子は遺伝子調節に関与しており、4つはストレスに関係していると考えられる。数例においては別個に単離されたIVI遺伝子が隣接する遺伝子座にあるか、または既知のオペロンの一部であることは注目に値する。
【0125】
実施例7 過剰発現されたIVIタンパク質の精製並びに患者およびコントロール血清の識別反応性に関する試験
最適な培地および時間の条件下でIPTGによってクローンを誘発した場合にIVI遺伝子がどの程度発現されるかに基づいて、1から100mlのクローン培養液を増殖させた。遠心分離によって細胞を回収し、氷上で超音波(共振周波数で10秒間破砕し、過熱を防ぐために30秒の停止間隔をおく。これを5回)によって溶解した。サンプルを遠心分離し、細胞を含有しない上清と細胞デブリのサンプルをSDS-PAGEで分析し、過剰発現したIVIタンパク質の局在性を確認した。上清中に存在する場合は、ニッケルクロマトグラフィーを製造者(Novagen)の取扱説明書に従って使用し、そのhisタグを介してタンパク質を精製する。IVIタンパク質がペレット中に存在する場合は、封入体バッファー(20mM Tris、pH8、0.2M NaCl、および1%デオキシコレート)中でペレットを洗浄し、室温で20分間撹拌して封入体から精製した。懸濁液を遠心分離し、遠心分離法によりペレットを封入体バッファー2(10mM Tris、pH8、0.25%デオキシコール酸ナトリウム、1mM EGTA)中、室温で30分間、更に3回洗浄した。ペレットを8M尿素、0.1mMアジ化ナトリウム、1mM EGTA、およびTris(pH8)を含有する溶液に溶解した。ボルテックス処理をした後、等量の水を添加し、得られた溶液を0.8% NaCl含有Tris(pH8)に対して透析した。透析中に溶液からタンパク質が沈殿すれば、これを遠心分離して回収し、保存した。分析の次の段階でSDS-PAGEサンプルバッファーを添加し、沸騰水中で5分間放置するため、タンパク質が溶液中に存在するか否かは問題ではない。サンプルを12% SDS-PAGEゲル上で泳動させ、クマシーブルーR250で染色した。目的のタンパク質がクマシーブルー染色したゲル上に目視されるタンパク質の>90%であれば、ペルオキシダーゼをコンジュゲートさせたマウス抗(His)6IgG1モノクローナル抗体(Cappel/ICN)(マイナーなバンドのいずれかが分解産物であるか否かを示す)および吸着済みIVI抗体プローブを用いてウェスタンブロットを実施し、正しいタンパク質が精製されたことを確認した。
【0126】
この時点までで、10個のIVI遺伝子が過剰発現され、そのタンパク質が精製された。更なる10個のタンパク質は精製の最終段階にある。これらのタンパク質の1つを無作為に選択して予備的にスクリーニングし、結核患者由来の血清と反応性を有しコントロール被験体由来の血清とは反応性を有さないか否かを確認した。このタンパク質に関する純度は確定していないため、ドットブロットまたはELISAではなく、ウェスタンブロット分析を行って反応性を明らかにしたgi13882534タンパク質を発現するIVIクローン141由来の精製IVIタンパク質をウェスタンブロットで分析した。明らかに、それら少量のサンプルからは確実な結論は得られないが、gi13882534によって発現されるタンパク質は活動性結核患者由来の血清とより強く反応し、潜在性感染患者由来の血清との反応性は中度であると考えられる。これらの予備的結果は、gi13882534によって発現されるタンパク質が活動性結核に関するホスト免疫応答依存型血清学的試験の基礎となりうる可能性を示唆している。
【0127】
実施例8 IVI遺伝子のウェスタンブロット変法および発現タンパク質の精製
これまでに開発されたIVI ORFのサブクローニング、クローン遺伝子の過剰発現、およびウェスタンブロット法による発現産物と吸着済み抗体プローブの反応性の確認のための方法は上に詳述する。それらは最適化されており、クローン遺伝子がIPTGで誘導されるタンパク質を発現すること、および発現されたタンパク質が抗his抗体および吸着済みのIVI抗体プローブの両方と反応することを確認する作業を完遂するのに十分適合し、正しい遺伝子がクローニングされたことが確認された。gi13881781 IVI遺伝子の12.45Kb PCRフラグメント全長をEk/LICにクローニングした。我々は現在、その431.6KDaタンパク質を発現するための研究を開始している。
【0128】
上記のように確認段階でクローニングしたIVI遺伝子の過剰発現のために構築された条件を、精製段階のためにスケールアップする。ここでも、以降の方法は精製されたタンパク質を可溶性の形態で得ることに依存しないため、ホスト株から回収されるタンパク質が可溶性画分中にあれば、ニッケルクロマトグラフィーを使用し、そのhisタグを介してタンパク質を精製することもできるし、ホスト株から回収されるタンパク質が不溶性画分中に存在する場合は、封入体調製を行ってもよい。いずれの場合も、精製の程度をSDS-PAGEで概算し、タンパク質をアリコートに分け、使用まで-80℃で保存する。
【0129】
クローンの培地およびインキュベーション温度の変化によって遺伝子産物の有意な過剰生成が誘引されない場合は、遺伝子を別のベクターおよびホストにサブクローニングできる。Ek/LICにクローニングされたORFの両側には多くの制限酵素部位が存在し、この段階を容易にする助けとなっている。高度に発現される調節可能な発現ベクター(例えばpRSET(Invitrogen))を発見すること、そして、ORFがリーダー配列と共に正しい方向性でインフレームに挿入されることに留意し、生成物が好適に発現されるようにする。
【0130】
実施例9 結核の診断への使用可能性に関するIVI遺伝子産物のスクリーニング
得られた精製タンパク質のそれぞれの一次スクリーニングを、健常コントロール被験体、過去にBCGワクチン接種を受けた健常コントロール被験体、活動性一次結核患者、潜在性感染患者、および二次結核患者由来の血清を用いてウェスタンブロットによって行う。PBS-TWEEN(登録商標)で1:500に希釈した血清を上記のようにホースラディッシュ・ペルオキシダーゼをコンジュゲートしたヤギ抗ヒト抗体(1:20,000希釈)と共に使用してブロットを発色させる。ブロットを目視で検査し、ホスト免疫応答依存型血清学的検査への使用に最も好適であると考えられる候補タンパク質を判定する。
【0131】
一次感染に関与する結核菌が潜在性の(そしておそらくは二次感染の際には生成されない)タンパク質を発現すると考えるのは妥当である。同様に、潜伏期の結核菌が活動性感染の際には生成しないタンパク質を生成すると考えるのも妥当である。これらのタンパク質は、潜伏期には生体の代謝状態が低いことを考えるとごく少量しか生成されないが、1つまたはそれ以上のこれらタンパク質が高度な免疫原性を有するとすれば、IVI遺伝子リストに掲載されうる。有意なパーセンテージの結核菌感染個体はそのように診断されてこなかった。従って、潜在性感染患者を同定する検査は、それが警告となって医師がそれらの患者を慎重に観察し続けることができるため、興味深い。ウェスタンブロットは以下のような種々の可能性を念頭において調査する:一次結核に特異的な検査;潜在性感染に特異的な検査;二次結核に特異的な検査;一次感染および二次感染に特異的な検査;3つの段階全てを認識する検査。
【0132】
これらの点のいずれかの可能性を示すタンパク質を、一次、二次、および潜在性感染を示す一連の血清を用いて更に試験する。同数のBCGワクチン接種および未接種健常被験体を含む同数のコントロール血清を試験する。個々の試験数が多いので、試験タンパク質を精製して本質的に均質にし、ウェスタンブロット法ではなくELISA法に使用できるようにすると、コストおよび時間効率が高くなる。まずC18逆相HPLCクロマトグラフィー(Bio-Rad,Hercules,CA)を用いて精製を試みる。ニッケルカラムまたは封入体精製を行ったタンパク質サンプルを、可溶性タンパク質の場合は20%アセトニトリルに調製するか、あるいは最低限のアセトニトリル:水比を用いてIVIタンパク質沈殿を溶解する。約500μgのタンパク質を分析用C18カラム(20から80%のアセトニトリルグラジエント(0.1%トリフルオロ酢酸含有))で分析する。214nmおよび280nmの光学密度をモニタリングし、ピークを回収する。ピークサンプルを凍結乾燥してアセトニトリルを除去し、SDS-PAGEサンプルバッファーに溶解する。サンプルをゲルで泳動し、IVIタンパク質を含有するピークを確認し、その純度を評価する。>99%の純度を示すIVIタンパク質のラージスケールの調製は、セミ分取C18カラムで同じ条件を使用し、20mgの出発タンパク質を用いて行う。C18でこの純度が得られなければ、C8およびC12カラムによってこの目的が達成されるかどうか検討する。精製したタンパク質を凍結乾燥し、ELISA法(Ebersoleら,1980)に使用するまで4℃に保存する。簡潔に記載すると、結合バッファーに溶解したタンパク質を用いてポリ塩化ビニル・マクロタイターウェルを室温で1時間コーティングする。プレート洗浄装置(Bio-Rad)を用い、繰り返し洗浄して未結合の抗原を除去し、ウェルをPBS-TWEEN(登録商標)でブロッキングする。100μlの各血清サンプル(1:500希釈)をプレートに添加し、4℃で一晩インキュベートする。ウェルを十分洗浄し、二次抗体(ヤギ抗ヒトIgG-HRPコンジュケート)を添加し、室温で1時間インキュベートする。十分洗浄した後、3%過酸化水素を含有するABTS基質(BD Biosciences,Canada)を添加し、プレートの読み取り(405nm)を10分間隔で5から80分の間、または陽性コントロールがOD=1.5に達するまで行う。陽性コントロールは吸着済みIVI抗体プローブを含有するウェルから成り、陰性コントロールはタンパク質または一次抗体を含有しない。データを未感染および感染群に分け、後者を更に一次、潜在性、二次に分類する。各群内で結果の平均値を算出し、統計学的に有意な差を2つの方法で判定する。第1に、独立サンプルt検定を用いて未感染(コントロール)群の平均値を3つの感染群の平均値と比較し、処理群とコントロール群の全体的な差異を確認する。第2に、感染群間の差異をより詳細に理解するために、一元配置分散分析(ANOVA)を行う。群間の有意差を計画比較t検定で分解し、種々の感染群が未感染コントロール群と差異を示すか否かを判断する。
【0133】
有望なタンパク質を現場での検査に使用し、結核に感染した個体を同定する。検査(単数または複数)の特異度および感度を測定してもよい。
【0134】
実施例10 活動性感染の際に結核菌から脱落するタンパク質を同定するためのIVIタンパク質に対するポリクローナル抗体の産生
結核の診断は、多くの場合、現在可能な方法では困難である。皮膚のPPDへの反応性は重要な診断手段であるが、BCGワクチンの接種を受けた被験体では無効であり、また、ホスト免疫系が無傷であることが必要とされる。ツベルクリン・アネルギーは非HIV感染結核患者の15-25%で発生し、HIV感染した結核患者では50%に近い。喀痰の細菌学的培養は緩慢かつ不明瞭であり、喀痰中の抗酸菌の同定は感度が低い。分子的診断法、例えば核酸増幅は相対的に迅速かつ高感度であるが、高価で技術的に煩雑であり、正確に実行するためには高度のクォリティーコントロールが必要とされる。結核菌に対する循環抗体に依存する検査は簡易でコスト効率が高いが、HIV感染被験体での使用には明らかに制限がある。Landowskiら(2001)は、結核菌をインビトロ培養する際に生成される主要な脱落タンパク質の1つであることが知られているタンパク質複合体、Ag85が感染患者の血液中に高頻度で存在するという証拠を提供した。この複合体のエピトープに対するモノクローナル抗体を試験の基礎とし、患者血液中の脱落複合体を探索することによって活動性感染を確認した。結果は、これが実行可能な方法であるが、更なる成分を添加して試験の感度および特異度を許容可能なレベルまで引き上げることが必要であることを示唆した。上記のホスト免疫応答依存型試験の同定に付随しうる問題を認識しつつ、活動性感染を検出するためのホスト免疫応答に依存しない試験の標的として作用しうる脱落結核菌タンパク質上の相補的エピトープの探索に本発明の方法を適合させる。我々は、この目的を達成するための新規の方法を発明した。
【0135】
まず、活動性感染の際に結核菌から誘導される循環抗原が必ずしもその輸送および細菌細胞からの排出に依存する必要はないという可能性を考慮した。感染の経過で、特に細胞集団が増殖する際に、細胞死によって細胞融解が起こり、分解産物が放出されるが、これは細菌細胞のいずれの細胞区画にも由来しうる。従って我々は、IVI遺伝子によって発現されるタンパク質産物の全てを可能性のある標的として使用することにより、全く方向付けのない方法を取ることにする。以下の方法を使用する:
・各精製IVIタンパク質を使用し、Sprague Dawleyラットに接種する;Ribiアジュバントを用いて免疫応答をブーストする。時間および免疫原の量は製造者(Corixa,Hamilton,MT)の指示に従う;表示された時点でのサンプル血液を採取し、ELISAを用いて採取前のコントロール血液と比較し、接種したタンパク質に対して高力価の応答が起こる時点を確認する;心穿針で血清を回収し、プールして使用まで-80℃で保存する。
・健常ヒト血液中の成分と反応する可能性のあるラット血清中の抗体を、IVIATに関して記載したのと同様の吸着法を用いて除去する;50検体の健常被験体由来の血清をプールし、これをラテックスビーズ(Bangs Laboratories)に結合させ、穏やかに撹拌しながら4℃で暴露を繰り返し、ラット血清に吸着させる(この試薬は大量に調製および保存することができ、1または2バッチで試験すべきラット血清の全てを処理するのに十分である);吸着の全課程にわたり、ELISA法でサンプルを試験することによって、マウス血清の健常ヒト血清との反応性を追跡する;図2に示すのと同様のパターンが観察されると予想されるが、実験の開始時における初期力価はかなり低いかもしれない;次いでプロテインAカラムおよび逆相HPLCを用いて,吸着したラット血清からIgGを精製する。
・健常者および結核患者由来の血清を使用し、PVCマイクロタイタープレートのウェルを4℃で一晩コーティングする(健常者由来血清は吸着過程で使用したサンプルとは別のものである);プレートをPBS-TWEEN(登録商標)でブロッキングし、免疫したラット由来の精製IgGを結合バッファーで1:1000に希釈し、100μlを各ウェルに添加する;プレートを4℃で一晩インキュベートした後、PBS-TWEEN(登録商標)で洗浄する;ラット血清(RDI research Diagnostics,Concord,MA)で吸着済みのロバ抗ラットIgG-ホースラディッシュ・ペルオキシダーゼコンジュゲートを用いてELISAを発色させる;3%過酸化水素含有ABTS基質(BD Biosciences)を用いてELISAを発色させ、プレートの読み取り(405nm)を10分間隔で5から80分の間、または陽性コントロールがOD=1.5に達するまで行う。陽性コントロールは最初に精製タンパク質でウェルをコーティングしたものであり、陰性コントロールのウェルは最初にヒト血清でコーティングしないものである。
・データを分析し、結核患者由来の血清には一定して存在し、健常コントロール被験体由来の血清には存在しないIVIタンパク質を同定する;2つの群でウェルの平均測定値およびその分散を算出し、スチューデントt検定を用いて比較する;結核患者由来血清の方がコントロール被験体由来のコントロール血清より有意に高い反応性を示す事例を同定し、これを使用して現場での結核菌感染個体の同定のための検査の開発を行う。
【0136】
Landowskiら(2001)はドット免疫ブロッティング法を用いてAg85およびインビトロ培養の際に脱落することが知られている他のタンパク質の感度および特異度を試験することを選択した。彼らの数値はホスト免疫応答依存型試験と有意差はないが、試験に更なるエピトープを加えることによって特異度を有意に低下させること無く感度を上昇させることができる可能性が非常に高いことに言及している。彼らは腐生微生物への暴露または他の原因に起因しうる交差反応の量を制限するために小ペプチド・エピトープで研究することを選択した。これは非常に有効であるように見えるが、明らかに不完全である。多数の健常個体由来血清での吸着によって交差反応性抗体がより有効に除去され、この方法の新規の要素が示されると考えられる。必然的に全IVIタンパク質をアッセイの標的として使用できるはずであるが、コントロール血清で処理したサンプル中には有意なバックグラウンドが観察され、更に多数の健常血清での吸着が必要であるか、またはタンパク質の小フラグメントの使用が免疫原としての役割を果たすのにより適していることが示唆されている。後者の場合、Landowskiら(2001)が記載する方法を用いて、最初の試験で最適と考えられたIVIタンパク質を再試験する。また、Wallisら(2001)が結核治療の有効性の代理マーカーとして喀痰中のAg85を使用したことは価値がある。従って、肺結核の症例では、血清ではなく喀痰サンプルを使用して本明細書に記載する実験を行うことが考えられる。原発の罹患臓器を用いることによって得られる濃度効果によって、反応強度が向上される可能性が高い。
【0137】
実施例11 ホスト免疫応答に依存しない診断
本発明のポリペプチドを用いてホスト免疫応答に依存しない試験を構築することもできる。活動性結核感染患者の血液中で、結核菌の脱落タンパク質を同定することができる。これを行うために、各精製タンパク質(SEQ ID NO:1-44)を用いてラットにおいて免疫血清を産生させる。免疫血清を健常ヒト由来血清で十分に吸着させ、交差反応性抗体を除去し、ラットIgGを精製して脱落タンパク質のプローブとする。結核および健常被験体由来血清をマイクロタイター・ウェルに結合させ、吸着させたラットIgGプローブを用いてELISAアッセイでプローブする。反応性を示すウェルは免疫ラットIgGプローブで認識される結核菌脱落タンパク質を含有することを示す。脱落タンパク質の活動性感染マーカーとして作用する能力は、統計学的方法によって測定される。
【0138】
【表2】

【0139】
【表3】

【0140】
【表4】

【0141】
【表5】

【0142】
【表6】

【0143】
【表7】

【0144】
【表8】

【0145】
【表9】

【0146】
【表10】

【0147】
【表11】

【0148】
【表12】

【0149】
【表13】

【0150】
【表14】

【0151】
【表15】

【0152】
【表16】

【0153】
【表17】

【図面の簡単な説明】
【0154】
【図1】IVIAT系の図解である。
【図2】5ラウンドの、CSU93(CDC 1551)の放射線照した全細胞および抽出物に対する500μl血清の吸着を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験サンプル中の結核菌(Mycobacterium tuberculosis)特異的抗体を検出する方法であって、試験サンプルをSEQ ID NO:1-44を含む精製ポリペプチドまたはそれらを組み合わせたものと接触させ、そしてSEQ ID NO:1-44のポリペプチドと結核菌特異的抗体とを含む免疫複合体の生成を検出することを含み、ここで、免疫複合体の検出は試験サンプル中の結核菌特異的抗体の存在を示す、上記方法。
【請求項2】
試験サンプルが血液、喀痰、血清、または肺洗浄液である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
ポリペプチドは担体上に固定化されている、請求項1記載の方法。
【請求項4】
該方法が、ラジオイムノアッセイ、水平流クロマトグラフィー、ドットブロット・アッセイ、競合結合アッセイ、ウェスタンブロット、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、およびサンドイッチアッセイから成る群から選択されるアッセイを含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
結核患者を診断する方法であって、患者由来の試験サンプルをSEQ ID NO:1-44を含む精製ポリペプチドと接触させ、そしてSEQ ID NO:1-44のポリペプチドと結核菌特異的抗体とを含む免疫複合体の生成を検出することを含み、ここで、免疫複合体の検出は患者の結核への罹患を示す、上記方法。
【請求項6】
患者が結核ワクチンを受けたか否かにかかわらず、免疫複合体の検出は患者の結核への罹患を示す、請求項5記載の方法。
【請求項7】
試験サンプル中の結核菌抗原の存在または非存在を検出する方法であって、試験サンプルをSEQ ID NO:1-44から成るポリペプチドに特異的に結合する抗体または抗原結合部分と接触させ、そして結核菌抗原と抗体またはその抗原結合部分とを含む免疫複合体を検出することを含み、ここで、免疫複合体の検出は試験サンプル中の結核菌抗原の存在を示す、上記方法。
【請求項8】
試験サンプルが血液、喀痰、血清、または肺洗浄液である、請求項7記載の方法。
【請求項9】
抗体またはその抗原結合部分が担体上に固定化されている、請求項7記載の方法。
【請求項10】
該方法が、ラジオイムノアッセイ、水平流クロマトグラフィー、ドットブロット・アッセイ、競合結合アッセイ、ウェスタンブロット、ELISA、およびサンドイッチアッセイから成る群から選択されるアッセイを含む、請求項7記載の方法。
【請求項11】
SEQ ID NO:1-44から成るポリペプチドとKaが約107l/mol以上の結合親和性で結合する精製された抗体またはその抗原結合部分。
【請求項12】
精製された抗体またはその抗原結合部分および医薬的に許容されるキャリアーを含有する組成物。
【請求項13】
結核菌感染治療の有効性を測定する方法であって、
(a)治療前に結核菌感染患者由来の試験サンプル中のSEQ ID NO:1-44を含む1つまたはそれ以上のポリペプチドの量または存在を測定すること;
(b)1つまたはそれ以上の治療後に、患者由来の試験サンプル中のSEQ ID NO:1-44を含む1つまたはそれ以上のポリペプチドの量または存在を測定すること;そして
(c)段階(a)および(b)におけるSEQ ID NO:1-44を含む1つまたはそれ以上のポリペプチドの量または存在を比較すること;
を含み、段階(b)のポリペプチドの量が段階(c)に比較して少なければ治療が有効であることを示し、段階(a)ではポリペプチドが存在し段階(b)ではポリペプチドが存在しなければ治療が有効であることを示す、上記方法。
【請求項14】
結核菌感染治療の有効性を測定する方法であって、以下:
(a)結核菌感染患者由来の試験サンプル中のSEQ ID NO:1-44を含む1つまたはそれ以上のポリペプチドの量を測定すること;
(b)SEQ ID NO:1-44を含む1つまたはそれ以上のポリペプチドの量を標準と比較すること;
を含み、1つまたはそれ以上のポリペプチドの量が標準より高ければ治療が有効でなく、1つまたはそれ以上のポリペプチドの量が標準と等しいか、それより低ければ治療は有効である、上記方法。
【請求項15】
請求項12記載の抗体を結核患者に投与することを含む、受動免疫または結核の1つもしくはそれ以上の症状の寛解の方法。
【請求項16】
SEQ ID NO:1-44を含む1つまたはそれ以上の精製ポリペプチドおよび1つまたはそれ以上の医薬的に許容されるキャリアーを含む免疫原性組成物。
【請求項17】
1つまたはそれ以上のアジュバントまたは免疫刺激化合物を更に含む、請求項16記載の免疫原性組成物。
【請求項18】
請求項16記載の免疫原性組成物を哺乳動物に投与することを含む、結核菌感染に対して哺乳動物を免疫するか、哺乳動物において結核菌特異的免疫原性応答を刺激するか、または結核菌感染の重篤度を低下させる方法。
【請求項19】
SEQ ID NO:1-44を含む1つまたはそれ以上のポリペプチドおよび異種タンパク質を含む融合タンパク質であって、異種タンパク質がSEQ ID NO:1-44を含むポリペプチドであってもよい、上記融合タンパク質。
【請求項20】
異種タンパク質が結核菌抗原85b、結核菌ESAT-6、結核菌MtB41、または結核菌Mtb39である、請求項19記載の融合タンパク質。
【請求項21】
SEQ ID NO:1-44を含む1つまたはそれ以上のポリペプチドをコードする1つまたはそれ以上の精製されたポリヌクレオチドおよび1つまたはそれ以上の医薬的に許容されるキャリアーを含む免疫原性組成物。
【請求項22】
請求項21記載の免疫原性組成物を哺乳動物に投与することを含む、結核菌感染に対して哺乳動物を免疫するか、哺乳動物において結核菌特異的免疫原性応答を刺激するか、または結核菌感染の重篤度を低下させる方法。
【請求項23】
結核菌感染患者を診断する方法であって、
(a)ポリメラーゼ連鎖反応において患者由来の生体サンプルを少なくとも2つのオリゴヌクレオチド・プライマーと接触させ、ここで、少なくとも2つのオリゴヌクレオチドプライマーはSEQ ID NO:1-44を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイズし、オリゴヌクレオチドプライマーはプライマーの増幅が起こるのに十分な程度ハイブリダイズし;そして
(b)生体サンプル中の増幅された核酸配列を検出し、ここで、増幅された核酸配列の存在は結核菌感染を示し、増幅された核酸配列が存在しないことは結核菌感染が存在しないことを示す;
を含む上記方法。
【請求項24】
結核菌感染患者を診断する方法であって、
(a)生体サンプルを、SEQ ID NO:1-44を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイズする1つまたはそれ以上のオリゴヌクレオチドプローブと、高ストリンジェンシー条件下で、サンプル中に存在するポリヌクレオチドおよび1つまたはそれ以上のオリゴヌクレオチドプローブとの間でハイブリダイズが起こるのに十分な条件下で接触させ;そして
(b)1つまたはそれ以上のオリゴヌクレオチドプローブがサンプル中の1つまたはそれ以上のポリペプチドにハイブリダイズしたか否かを検出する;
ことを含み、ここで、ハイブリダイゼーションの存在は結核菌感染を示し、ハイブリダイゼーションが存在しないことは結核菌感染が存在しないことを示す、上記方法。



【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−530620(P2009−530620A)
【公表日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−500583(P2009−500583)
【出願日】平成19年3月13日(2007.3.13)
【国際出願番号】PCT/US2007/063858
【国際公開番号】WO2007/106800
【国際公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.UNIX
【出願人】(506047905)オラジェニックス,インコーポレイテッド (10)
【Fターム(参考)】