説明

インピーダンス整合装置

【課題】精度よくインピーダンス整合を行うことのできるインピーダンス整合装置を提供する。
【解決手段】本発明のインピーダンス整合装置3は、高周波電源1と負荷5との間に設けられ、可変キャパシタVC1,VC2のインピーダンスを変化させることにより、高周波電源1と負荷5とのインピーダンスを整合させるためのものであって、入力端3aにおける進行波の電圧Vfi及び反射波の電圧Vriと、予め測定することによって取得された、可変キャパシタVC1,VC2の可変値に関する情報と、この情報に対応するインピーダンス整合装置3のTパラメータとに基づいて、出力端3bにおける進行波の電圧Vfo及び反射波の電圧Vro並びに入力端3aにおける入力反射係数Гiを算出する。そして、可変キャパシタVC1,VC2の可変値に対する入力反射係数の絶対値|Гi|のうち、最小の値を選定し、これに基づいて、インピーダンスを調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波電源と負荷との間に介装されて高周波電源のインピーダンスと負荷のインピーダンスとを整合させるインピーダンス整合装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体やフラットパネルディスプレイ等を製造する際のプロセスのうち最も重要なプロセスの一つとして、プラズマプロセスがある。このプラズマプロセスに用いるプラズマプロセスチェンバーには、プラズマを生成するためのエネルギー源として直流電圧やマイクロ波電圧を印加するタイプのものも一部には存在するが、多くのプラズマプロセスチェンバーでは、例えば100kHz〜300MHzの無線周波帯域の高周波電圧を印加する。
【0003】
無線周波帯域の高周波電圧を用いるプラズマプロセスチェンバーにおいては、高周波電源のインピーダンスと、負荷としてのプラズマプロセスチェンバーのインピーダンスとを整合させることにより、負荷から高周波電源への反射電力を最小にして負荷への供給電力を最大にするために、高周波電源と負荷との間にインピーダンス整合装置が介装される。図10は、特許文献1に記載された、インピーダンス整合装置を用いたシステムの構成を示す図である。
【0004】
【特許文献1】特開平5−63604号公報
【0005】
上記公報に開示されたインピーダンス整合装置には、その入力側に高周波電源31が接続され、その出力側に負荷32が接続されている。インピーダンス整合装置には、入力側検出器34と、インダクタL2,L3及びインピーダンス可変素子としての可変キャパシタVC3,VC4からなる整合回路とが設けられている。入力側検出器34は、無線周波帯域の高周波電圧V、高周波電流I、及び高周波電圧Vと高周波電流Iとの位相差θを検出するものであり、検出された高周波電圧V、高周波電流I及びそれらの位相差θは、インピーダンス整合回路33とは別途設けられたA/Dコンバータ35を介してコンピュータ36に入力される。
【0006】
コンピュータ36は、入力側検出器34からの検出結果(高周波電圧V,高周波電流I,位相差θ)に基づいて、インピーダンス整合回路33の入力インピーダンスZi、すなわちインピーダンス整合回路33の入力端33aから負荷32側を見たインピーダンスZiを演算する。
【0007】
可変キャパシタVC3,VC4は、コンピュータ36から出力される制御信号が駆動電圧供給手段37に送られることにより、モータMが駆動し、可変キャパシタVC3,VC4に設けられた調整部(図略)が制御され、そのキャパシタンスの値が調整可能となっている。コンピュータ36は、可変キャパシタVC3,VC4の調整位置を検出することにより、インピーダンス可変素子としての可変キャパシタVC3,VC4のインピーダンスZc3,Zc4を演算する。
【0008】
また、コンピュータ36は、入力インピーダンスZiと、インピーダンス可変素子のインピーダンスZc3,Zc4とに基づいて、インピーダンス整合回路33の出力端子から負荷32側を見た負荷回路側インピーダンスZoを演算する。
【0009】
そして、コンピュータ36は、算出された負荷回路側インピーダンスZoに基づいて、入力インピーダンスZiが高周波電源31側の出力インピーダンスZp(例えば50Ω)に一致するように、可変キャパシタVC3,VC4の調整位置を変化させ、高周波電源31と負荷32とのインピーダンスを整合させている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記公報に開示されたインピーダンス整合回路33では、入力側検出器34で検出された高周波電圧V、高周波電流I及びそれらの位相差θから求められた入力インピーダンスZiと、可変キャパシタVC3,VC4の調整位置に基づいてコンピュータ36で検出された当該可変キャパシタVC3,VC4のインピーダンスZc3,Zc4とに基づいて、負荷回路側インピーダンスZoを取得し、整合させるべき可変キャパシタVC3,VC4の調整位置を求めている。
【0011】
しかしながら、取り扱う周波数が高周波の場合には、インピーダンス整合回路33の整合回路として機能する回路素子は可変キャパシタVC3,VC4及びインダクタL2,L3だけでなく、これらの部品とケースとの間の浮遊容量や、これらの部品同士を接続するための銅板あるいは導波管等の部品のインダクタンス成分も含まれ、これらのインピーダンス成分のインピーダンス整合動作への影響が無視できなくなる。
【0012】
上記公報に開示されたインピーダンス整合回路33のインピーダンス制御方法は、整合回路を可変キャパシタVC3,VC4及びインダクタL2,L3だけで構成される回路とし、可変キャパシタVC3,VC4の現時点の調整位置におけるインピーダンス値Zc3,Zc4とインダクタL2,L3のインピーダンス値Zl3,Zl4とから現時点の調整位置における整合回路の整合特性を求める方法であるため、上記の浮遊容量等の目に見えないインピーダンス成分が整合回路に含まれておらず、整合回路の実際の整合動作を把握してインピーダンス制御を行うものとはなっていない。このため、特に高周波領域においては、整合精度が低下するといった問題点があった。
【0013】
また、浮遊容量等のインピーダンス成分は、インピーダンス整合回路33のケースの形状やインピーダンス整合回路33内の可変キャパシタVC3,VC4及びインダクタL2,L3のその他の部品や配線の配置関係等で容易に変化し、整合回路を構成する可変キャパシタVC3,VC4及びインダクタL2,L3が同一であっても、浮遊容量等のインピーダンス成分を含む整合回路は内部構造の異なる装置毎に異なるものとなるから、装置毎に整合精度が異なってくるという問題もある。
【0014】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、精度よくインピーダンス整合を行うことのできるインピーダンス整合装置を提供することを、その課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0016】
本発明の第1の側面によって提供されるインピーダンス整合装置は、高周波電源と負荷との間に設けられ、インピーダンス可変素子のインピーダンスを変化させることにより、前記高周波電源と負荷とのインピーダンスを整合させるためのインピーダンス整合装置であって、前記インピーダンス整合装置の入力端における、前記高周波電源から前記負荷側に進行する進行波に関する情報及び前記負荷から前記高周波電源側に進行する反射波に関する情報を検出する高周波情報検出手段と、前記インピーダンス可変素子の可変値に関する情報を検出する可変素子情報検出手段と、予め測定することによって取得された、複数の前記インピーダンス可変素子の可変値に関する情報に対する前記インピーダンス整合装置の特性パラメータを前記インピーダンス可変素子の可変値に関する情報との対応関係を持たせて記憶する第1記憶手段と、前記可変素子情報検出手段によって検出された前記インピーダンス可変素子の可変値に関する情報と、前記第1記憶手段に記憶された前記特性パラメータと、前記高周波情報検出手段によって検出された進行波に関する情報及び反射波に関する情報とに基づいて、前記インピーダンス整合装置の出力端における進行波に関する情報及び反射波に関する情報を算出する第1算出手段と、前記第1算出手段によって算出された前記インピーダンス整合装置の出力端における進行波に関する情報及び反射波に関する情報と、前記第1記憶手段に記憶された複数の前記特性パラメータとに基づいて、複数の前記インピーダンス可変素子の可変値に関する情報に対する前記インピーダンス整合装置の入力端における入力反射係数を算出する第2算出手段と、前記第2算出手段によって算出された複数の入力反射係数をインピーダンス可変素子の可変値に関する情報との対応関係を持たせて記憶する第2記憶手段と、前記第2記憶手段に記憶された複数の入力反射係数のうち、予め設定された所望の目標入力反射係数に最も近似する入力反射係数を選定し、選定した入力反射係数に対応する前記インピーダンス可変素子の可変値に関する情報を特定する第1特定手段と、前記第1特定手段によって特定された前記インピーダンス可変素子の可変値に関する情報に基づいて、前記インピーダンス可変素子のインピーダンスを調整する調整手段と、を備えたことを特徴としている(請求項1)。
【0017】
本発明によれば、インピーダンスを整合させるとき、例えば特性パラメータとしてSパラメータやTパラメータを用いているので、従来のように入力インピーダンス、インピーダンス可変素子のインピーダンス、及び負荷回路側のインピーダンスに基づいてインピーダンスを整合させる構成に比べ、インピーダンス整合装置内部の浮遊容量やインダクタンス成分等を含んだ上で、より精度よくインピーダンス整合を行うことができる。
【0018】
好ましい実施の形態によれば、前記第2算出手段は、前記第1算出手段によって算出された前記インピーダンス整合装置の出力端における進行波に関する情報及び反射波に関する情報と、前記第1記憶手段に記憶された複数の前記特性パラメータとに基づいて、複数の前記インピーダンス可変素子の可変値に関する情報に対する前記インピーダンス整合装置の入力端における進行波に関する情報及び反射波に関する情報を算出し、この算出された前記インピーダンス整合装置の入力端における進行波に関する情報及び反射波に関する情報に基づいて、複数の前記インピーダンス可変素子の可変値に関する情報に対する入力反射係数を算出するとよい(請求項2)。
【0019】
本発明の第2の側面によって提供されるインピーダンス整合装置は、高周波電源と負荷との間に設けられ、インピーダンス可変素子のインピーダンスを変化させることにより、前記高周波電源と負荷とのインピーダンスを整合させるためのインピーダンス整合装置であって、前記インピーダンス整合装置の入力端における、前記高周波電源から前記負荷側に進行する進行波に関する情報及び前記負荷から前記高周波電源側に進行する反射波に関する情報を検出する高周波情報検出手段と、前記インピーダンス可変素子の可変値に関する情報を検出する可変素子情報検出手段と、予め測定することによって取得された、複数の前記インピーダンス可変素子の可変値に関する情報に対する前記インピーダンス整合装置の特性パラメータを前記インピーダンス可変素子の可変値に関する情報との対応関係を持たせて記憶する第1記憶手段と、前記可変素子情報検出手段によって検出された前記インピーダンス可変素子の可変値に関する情報と、前記第1記憶手段に記憶された前記特性パラメータと、前記高周波情報検出手段によって検出された進行波に関する情報及び反射波に関する情報とに基づいて、前記インピーダンス整合装置の出力端における進行波に関する情報及び反射波に関する情報を算出する第1算出手段と、前記第1算出手段によって算出された前記インピーダンス整合装置の出力端における進行波に関する情報及び反射波に関する情報に基づいて、前記インピーダンス整合装置の出力端における反射係数を算出する第3算出手段と、予め設定された所望の目標入力反射係数と、前記第1記憶手段に記憶された複数の特性パラメータとに基づいて、前記第1記憶手段に記憶された、複数の前記インピーダンス可変素子の可変値に関する情報に対する前記インピーダンス整合装置の出力端における反射係数を算出する第4算出手段と、前記第4算出手段によって算出された複数の反射係数を前記インピーダンス可変素子の可変値に関する情報との対応関係を持たせて記憶する第3記憶手段と、前記第3記憶手段に記憶された複数の反射係数のうち、前記第3算出手段によって算出された前記インピーダンス整合装置の出力端における反射係数に最も近似する反射係数を選定し、選定した反射係数に対応する前記インピーダンス可変素子の可変値に関する情報を特定する第2特定手段と、前記第2特定手段によって特定された前記インピーダンス可変素子の可変値に関する情報に基づいて、前記インピーダンス可変素子のインピーダンスを調整する調整手段と、を備えたことを特徴としている(請求項3)。
【0020】
好ましい実施の形態によれば、前記所望の目標入力反射係数を設定する設定手段がさらに設けられるとよい(請求項4)。
【0021】
他の好ましい実施の形態によれば、前記特性パラメータは、Sパラメータ、又はこのSパラメータから変換されることによって取得されたTパラメータであるとよい(請求項5)。
【0022】
本発明のその他の特徴及び利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、添付図面を参照して具体的に説明する。
【0024】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係るインピーダンス整合装置が適用される高周波電力供給システムの構成及びインピーダンス整合装置の回路ブロックを示す図である。
【0025】
このシステムは、半導体ウェハや液晶基板等の被加工物に対して高周波を供給して、例えばプラズマエッチングといった加工処理を行うものである。このシステムは、高周波電源1、伝送線路2、インピーダンス整合装置3、負荷接続部4及びプラズマ処理装置(プラズマプロセスチャンバー)からなる負荷5によって構成されている。
【0026】
高周波電源1は、負荷5に対して所定の周波数(例えば13.56MHzや200MHz)を有する高周波電力を供給するための装置である。高周波電源1には、例えば同軸ケーブルからなる伝送線路2を介してインピーダンス整合装置3が接続され、インピーダンス整合装置3には、例えば電磁波の漏れを抑制するために、遮蔽された銅板からなる負荷接続部4が接続され、負荷接続部4には、負荷5が接続されている。
【0027】
負荷5は、半導体ウェハや液晶基板等の被加工物をエッチングやCVD等の方法を用いて加工するためのプラズマ処理装置である。プラズマ処理装置では、被加工物の加工目的に応じて各種の加工プロセスが実行される。例えば、被加工物に対してエッチングを行う場合には、そのエッチングに応じたガス種類、ガス圧力、高周波電力の供給電力値、及び高周波電力の供給時間等が適切に設定された加工プロセスが行われる。プラズマ処理装置では、被加工物が配置される容器(図略)内にプラズマ放電用ガスを導入し、そのプラズマ放電用ガスを放電させて非プラズマ状態からプラズマ状態にしている。そして、プラズマ状態になったガスを用いて被加工物を加工している。
【0028】
インピーダンス整合装置3は、その入力端3aに接続される高周波電源1と出力端3bに接続される負荷5とのインピーダンスを整合させるものである。より具体的には、例えば入力端3aから高周波電源1側を見たインピーダンス(出力インピーダンス)が50Ωに設計され、高周波電源1が特性インピーダンス50Ωの伝送線路2でインピーダンス整合装置3の入力端3aに接続されているとすると、インピーダンス整合装置3は、当該インピーダンス整合装置3の入力端3aから負荷5側を見たインピーダンスを可及的に50Ωに自動調整する。なお、本実施例では特性インピーダンスを50Ωとしているが、特性インピーダンスは50Ωに限定されるものではない。
【0029】
インピーダンス整合装置3は、方向性結合器6、制御部9、インダクタL1、及びインピーダンス可変素子としての可変キャパシタVC1,VC2を備えている。これらインダクタL1及び可変キャパシタVC1,VC2によって整合回路が構成されている。
【0030】
方向性結合器6は、高周波電源1から負荷5側に進行する高周波(以下、進行波という。)と負荷5側から反射してくる高周波(以下、反射波という。)とを分離して検出するものである。方向性結合器6は、例えば1個の入力ポート6aと3個の出力ポート6b,6c,6dを有し、入力ポート6aには高周波電源1が接続され、第1出力ポート6bには可変キャパシタVC1,VC2が接続されている。また、第2出力ポート6c及び第3出力ポート6dは、制御部9に接続されている。なお、方向性結合器6は、本願の高周波情報検出手段の一部として機能する。
【0031】
入力ポート6aから入力される進行波は、第1出力ポート6bから出力され、第1出力ポート6bから入力される反射波は、入力ポート6aから出力される。また、進行波は、適切なレベルまで減衰されて検出され、第2出力ポート6cから出力される。また、反射波は、適切なレベルまで減衰されて検出され、第3出力ポート6dから出力される。
【0032】
なお、方向性結合器6に代えて、入力側検出器が用いられてもよい。入力側検出器は、例えば高周波電源1から入力端3aに入力される高周波電圧、高周波電流、及びそれらの位相差を検出するものである。入力側検出器により検出された高周波電圧、高周波電流及び位相差は、制御部9に入力される。
【0033】
制御部9は、このインピーダンス整合装置3の制御中枢となるものであり、図示しないCPU、RAM、及びROM等を有している。制御部9は、方向性結合器6の出力等に基づいて、後述するように、可変キャパシタVC1,VC2のキャパシタンスC1,C2を変化させて、インピーダンス整合装置3の自動整合動作を制御するものである。
【0034】
制御部9は、高周波電源1と負荷5とのインピーダンスマッチングを取るために、可変キャパシタVC1,VC2に制御信号を出力する。可変キャパシタVC1,VC2は、制御部9から送られる制御信号に基づいて対向電極(図略)の面積を変化させ、それぞれのキャパシタンスC1,C2を可変させるものである。具体的には、可変キャパシタVC1,VC2には、キャパシタンスC1,C2を変更するための調整部11,12がそれぞれ設けられている。調整部11,12は、上記対向電極の駆動部材としてステッピングモータやモータ駆動回路(いずれも図略)によって構成され、制御部9は、そのステッピングモータの回転量を制御することにより、可変キャパシタVC1,VC2のキャパシタンスC1,C2を変更する。本実施形態では、可変キャパシタVC1,VC2のキャパシタンスC1,C2は、それぞれ例えば1000段階にステップ状に可変になっている。なお、調整部11,12は、本願の調整手段として機能する。
【0035】
可変キャパシタVC1,VC2には、調整部11,12によって変更される調整位置を検出するための位置検出部13,14が設けられている。位置検出部13,14によって検出された可変キャパシタVC1,VC2の位置情報は、制御部9に送られ、制御部9において認識されるようになっている。
【0036】
なお、位置検出部13,14は、本願の可変素子情報検出手段として機能する。また、本願のインピーダンス可変素子の可変値に関する情報とは、可変キャパシタVC1,VC2等のインピーダンス可変素子の可変値を特定することができるものであればよい。例えば、本実施形態では、ステッピングモータの位置情報をインピーダンス可変素子の可変値としているが、これに限定されるものではなく、サーボモータ等の他の方式のモータを用いて、その位置情報をインピーダンス可変素子の可変値としてもよい。また、その位置情報は、ステッピングモータのように、ステップ数で表されるものであってもよいし、パルス数や電圧等の他の形式で表されるものであってもよい。このように、インピーダンス可変素子の可変値に関する情報とは、インピーダンス可変素子の可変値を直接的または間接的に特定することができる情報である。
【0037】
制御部9には、EEPROM15が接続されており、このEEPROM15には、可変キャパシタVC1,VC2の各調整位置におけるインピーダンス整合装置3のSパラメータ(Scattering Parameter)のデータが記憶される。可変キャパシタVC1,VC2の各調整位置におけるSパラメータのデータは、後述するように、予め製品出荷前に例えば工場内で測定されて記憶されるものである。なお、これらのデータは、EEPROM15に代えてフラッシュメモリ等の他の不揮発性メモリに記憶させるようにしてもよい。なお、EEPROM15は、本願の第1記憶手段として機能する。
【0038】
ここで、Sパラメータとは、周知のように、所定の4端子回路網の入力端子及び出力端子に特性インピーダンス(例えば50Ω)の線路を接続した高周波信号を入力したときの4端子回路網における伝送特性を示したものであり、数式1に示すように、入力側の電圧反射係数(S11)、順方向電圧の伝達係数(S21)、逆方向電圧の伝達係数(S12)、出力側の電圧反射係数(S22)の各パラメータから構成される行列で表されるものである。本実施形態では、インピーダンス整合装置3を4端子回路網として扱って、インピーダンス整合装置3におけるSパラメータを算出するようにしている。
【0039】
【数1】

【0040】
EEPROM15には、上記のSパラメータが、図2に示すように、可変キャパシタVC1,VC2の調整位置ごとに記憶される。同図によると、Sパラメータは、「SXY(X=0,1,‥,999、Y=0,1,‥,999)」で表され、例えば可変キャパシタVC1の調整位置が「0」の位置であって、可変キャパシタVC2の調整位置が「0」の位置である場合には、Sパラメータは「S00」である。このデータ「S00」は、数式1に示したように、入力側の電圧反射係数(S11)、順方向電圧の伝達係数(S21)、逆方向電圧の伝達係数(S12)、出力側の電圧反射係数(S22)の各パラメータから構成される。各パラメータの値は、可変キャパシタVC1,VC2の調整位置ごとに固有の値を有している。
【0041】
制御部9は、EEPROM15に記憶されたSパラメータから変換されたTパラメータ(Transmission Parameter)と方向性結合器6の出力(詳細には、後述するベクトル化部20にてベクトル情報としたもの)とに基づいて、インピーダンス整合装置3の出力端3bにおける進行波の電圧Vfoと反射波の電圧Vroとを算出し、これら出力端3bにおける進行波の電圧Vfoと反射波の電圧Vroとに基づいて、可変キャパシタVC1,VC2の各調整位置の組み合わせについての、入力端3aにおける入力反射係数Гiの絶対値|Гi|を算出し、入力反射係数Гiの絶対値|Гi|のうち、最小の入力反射係数Гiの絶対値|Гi|を選定し、最小の入力反射係数Гiの絶対値|Гi|に基づいて可変キャパシタVC1,VC2の調整位置を決定する。この制御の詳細は、後述する。
【0042】
図3は、インピーダンス整合装置3のSパラメータのデータを取得するための測定回路の構成を示す図である。この測定回路の構成は、予め製品出荷前に例えば工場内で組み上げられるものである。
【0043】
この図によると、インピーダンス整合装置3のSパラメータのデータは、例えば入出力インピーダンスが50Ωのネットワークアナライザ21を用いて取得される。すなわち、インピーダンス整合装置3の入力端3aに、ネットワークアナライザ21の第1入出力端子21aが接続され、インピーダンス整合装置3の出力端3bに、ネットワークアナライザ21の第2入出力端子21bが接続される。また、インピーダンス整合装置3の制御部9に、ネットワークアナライザ21の制御端子21cが接続される。
【0044】
この測定回路では、以下の手順でSパラメータのデータが取得される。
【0045】
可変キャパシタVC1,VC2は、上述したように多段階に調整可能になされており、インピーダンス整合装置3のSパラメータは、可変キャパシタVC1,VC2の調整位置をそれぞれ1段ずつ変化させながらネットワークアナライザ21において取得される。
【0046】
具体的には、まず、制御部9により可変キャパシタVC1,VC2の調整位置が例えば(0,0)に設定される。次いで、ネットワークアナライザ21の第1入出力端子21aから、例えば13.56MHzや200MHz等の高周波がインピーダンス整合装置3の入力端3aに入力される。なお、この高周波の周波数は、高周波電力供給システムにおいて高周波電源1から負荷5に供給される高周波電力の周波数である。
【0047】
ネットワークアナライザ21から出力された高周波(入射波)は、インピーダンス整合装置3の入力端3aで一部は反射し、第1入出力端子21aからネットワークアナライザ21に入力され、残りはインピーダンス整合装置3内を透過し、出力端3bから出力されて第2入出力端子21bからネットワークアナライザ21に入力される。
【0048】
そして、反射波及び透過波は、ネットワークアナライザ21の内部でそれぞれ検出され、入射波、反射波及び透過波を用いてSパラメータのうち、入力側の電圧反射係数(S11)、順方向電圧の伝達係数(S21)が測定される。すなわち、入射波、反射波及び透過波をそれぞれa1,b1,b2とすると、S11=b1/a1、S21=b2/a1の演算処理を行うことにより、電圧反射係数(S11)、順方向電圧の伝達係数(S21)が測定される。
【0049】
次に、ネットワークアナライザ21の第2入出力端子21bから同一の高周波がインピーダンス整合装置3の出力端3bに入力される。ネットワークアナライザ21から出力された高周波(入射波)は、インピーダンス整合装置3の出力端3bで一部は反射し、第2入出力端子21bからネットワークアナライザ21に入力され、残りはインピーダンス整合装置3内を透過し、入力端3aから出力されて第1入出力端子21aからネットワークアナライザ21に入力される。
【0050】
そして、反射波及び透過波は、ネットワークアナライザ21の内部でそれぞれ検出され、入射波、反射波及び透過波を用いてSパラメータのうち、逆方向電圧の伝達係数(S12)、出力側の電圧反射係数(S22)が測定される。すなわち、入射波、反射波及び透過波をそれぞれa2,b2,b1とすると、S12=b1/a2、S22=b2/a2の演算処理を行うことにより、電圧反射係数(S12)、順方向電圧の伝達係数(S22)が測定される。
【0051】
その後、制御部9により可変キャパシタVC1,VC2の調整位置が1段ずつ変更され、その変更された調整位置におけるSパラメータが同様の方法でそれぞれ測定される。
【0052】
ネットワークアナライザ21は、可変キャパシタVC1,VC2の調整位置とSパラメータとを1組とする多数組のデータを制御部9に出力し、制御部9は、それらのデータをEEPROM15に順次格納する。そのために、EEPROM15には、図2に示したように、可変キャパシタVC1,VC2の調整位置とSパラメータとを対応関係を持たせて記憶させることができる。なお、可変キャパシタVC1,VC2のキャパシタンスC1,C2を可変させるためのステッピングモータの位置情報に代えて、可変キャパシタVC1,VC2のキャパシタンスC1,C2をSパラメータとともにEEPROM15に記憶させてもよい。また、ステッピングモータに代えてサーボモータ等を使用する場合は、そのサーボモータ等の位置情報とSパラメータとを対応関係を持たせてEEPROM15に記憶させてもよい。
【0053】
データの収集数は、最大で、インピーダンス整合装置3に設けられたインピーダンス可変素子、すなわち可変キャパシタVC1,VC2の調整範囲の全組み合わせ数になる。本実施形態では、可変キャパシタVC1,VC2の各可変数が1000個であるから、100万組(1000×1000組)のデータが取得される。なお、測定周波数が2以上ある場合は、各周波数について100万組のデータが取得される。
【0054】
なお、Sパラメータのデータは、ネットワークアナライザ21のモニタ(図略)やインピーダンス整合装置3の外部に設けられたディスプレイやプリンタ(いずれも図略)等に出力するようにされてもよい。もちろん、アナログ信号の形式で波形表示機能を有する外部の各種装置(図略)に出力してもよいし、シリアル通信等を用いて外部の情報処理装置(図略)等に出力してもよい。
【0055】
このようにして、インピーダンス整合装置3のSパラメータが取得されると、インピーダンス整合装置3は、例えば工場から出荷され、図1に示したような接続状態で高周波電力供給システムに組み込まれ、現地において実際に使用される。
【0056】
次に、高周波電力供給システムとして実際に使用されるインピーダンス整合装置3の動作を、図4に示す制御部9の機能ブロック図、及び図5に示すフローチャートを参照して説明する。なお、制御部9は、機能の観点から、図4に示すように、ベクトル化部20、進行波反射波算出部22、第1Tパラメータ参照部23、仮想入力反射係数算出部24、最小反射係数特定部25、第2Tパラメータ参照部26、及びメモリ27によって構成される。
【0057】
また、進行波反射波算出部22及び第1Tパラメータ参照部23で構成される部分が本願の第1算出手段として、仮想入力反射係数算出部24及び第2Tパラメータ参照部26で構成される部分が第2算出手段として、最小反射係数特定部25は第1特定手段として、メモリ27は第2記憶手段としてそれぞれ機能する。また、ベクトル化部20は、高周波情報検出手段の一部として機能する(前述したように、方向性結合器6も、本願の高周波情報検出手段の一部として機能している。すなわち、方向性結合器6およびベクトル化部20によって構成される部分が、高周波情報検出手段として機能する)。
【0058】
高周波電源1によって高周波が供給されると、方向性結合器6によって進行波及び反射波が分離されて検出され、出力される。ベクトル化部20では、方向性結合器6の出力を入力し、入力信号を所定の間隔でサンプリングして、進行波の大きさ及び位相情報を含むベクトル情報として進行波の電圧Vfi及び反射波の電圧Vriとする(S0)。なお、方向性結合器6の出力をディジタル情報に変換するために、A/Dコンバータ(図略)が設けられている。
【0059】
また、方向性結合器6等に代えて入力側検出器を用いる場合も、入力側検出器の出力をディジタル情報に変換するために、A/Dコンバータ(図略)が設けられており、周知の方法によって、入力側検出器から入力された情報に基づいて、進行波の電圧Vfi及び反射波の電圧Vriが求められる。
【0060】
次いで、ベクトル化部20から現時点における進行波の電圧Vfi及び反射波の電圧Vriが出力され、それらは進行波反射波算出部22(図4参照)に入力される(S1)。
【0061】
一方、可変キャパシタVC1,VC2の位置検出部13,14では、可変キャパシタVC1,VC2の現時点における調整位置が検出され、それらの位置情報は、第1Tパラメータ参照部23に入力される(S2)。
【0062】
第1Tパラメータ参照部23では、位置検出部13,14から可変キャパシタVC1,VC2の現時点における位置情報が入力されているため、当該位置情報に基づいて、EEPROM15に格納されている、可変キャパシタVC1,VC2の調整位置の組み合わせごとのSパラメータ(図2参照)のデータのうち、位置検出部13,14から出力された現時点の位置情報(調整位置)に対応させて記憶したSパラメータを読み出し(S3)、その読み出したSパラメータをTパラメータに変換する(S4)。この変換したTパラメータは、進行波反射波算出部22に送られる。
【0063】
なお、第1Tパラメータ参照部23における処理に換えて、後述する第2Tパラメータ参照部26における各SパラメータのデータからTパラメータへの変換処理を先に行い、変換したTパラメータの中から、現時点の位置情報(調整位置)に対応したTパラメータを選定し、選定したTパラメータを出力するようにしてもよい。また、Tパラメータは、数式2に示すような行列式を用いてSパラメータから変換可能であり、第1Tパラメータ参照部23では、数式2に基づく演算が行われる。一般に、4端子回路網においては、その伝送特性を測定するときにはSパラメータを用いるのが簡便とされ、演算を行うときにはTパラメータを用いるのが簡便とされている。そのため、本実施形態では、Sパラメータを変換して演算が簡便なTパラメータを用いるようにしている。
【0064】
【数2】

【0065】
なお、Tパラメータは、例えば製品出荷前にインピーダンス整合装置3のSパラメータが測定されるときに変換された上で、EEPROM15に予め格納されていてもよい。この場合、第1Tパラメータ参照部23では、可変キャパシタVC1,VC2の現時点における位置情報に基づいて、EEPROM15に格納されている、可変キャパシタVC1,VC2の調整位置に対応するTパラメータを読み出し、その読み出したTパラメータを進行波反射波算出部22に送る。
【0066】
進行波反射波算出部22では、ステップS1において現時点における入力端3aの進行波の電圧Vfi及び反射波の電圧Vriが入力されており、それらと、可変キャパシタVC1,VC2の現時点の調整位置におけるTパラメータのデータとに基づいて、出力端3bにおける進行波の電圧Vfo及び反射波の電圧Vroが算出される(S5)。この場合、下記に示す数式3によって現時点の出力端3bにおける進行波の電圧Vfo及び反射波の電圧Vroが算出される。なお、現時点の出力端3bにおける反射波の電圧Vroを進行波の電圧Vfoで除算すると、負荷反射係数Гoを算出することができる。
【0067】
【数3】

【0068】
ここで、T11′,T21′,T12′,T22′は、現時点の可変キャパシタVC1,VC2の調整位置におけるTパラメータの各パラメータである。
【0069】
現時点の出力端3bにおける進行波の電圧Vfo及び反射波の電圧Vroは、仮想入力反射係数算出部24に出力される。
【0070】
一方、第2Tパラメータ参照部26では、EEPROM15に記憶されている、可変キャパシタVC1,VC2の全ての調整位置の組み合わせ(図6参照)ごとにSパラメータのデータが読み出され、各SパラメータのデータがそれぞれTパラメータに変換される。変換されたTパラメータは、対応する可変キャパシタVC1,VC2の位置情報(調整位置の組み合わせ情報)とともに入力反射係数算出部24に出力される。なお、出力されるTパラメータの順番が決まっていて、対応する可変キャパシタVC1,VC2の位置情報が無くても、Tパラメータと可変キャパシタVC1,VC2の位置情報との対応関係が分かる場合は、Tパラメータだけを出力すればよい。
【0071】
また、上述したように、Tパラメータが、EEPROM15に予め格納された場合、第2Tパラメータ参照部26では、可変キャパシタVC1,VC2の全ての調整位置の組み合わせに対応するTパラメータのデータを可変キャパシタVC1,VC2の位置情報(調整位置の組み合わせ情報)とともにEEPROM15から読み出して、後述する仮想入力反射係数算出部24に出力する。あるいは、第2Tパラメータ参照部26をなくして、仮想入力反射係数算出部24に、可変キャパシタVC1,VC2の全ての調整位置の組み合わせに対応するTパラメータのデータを可変キャパシタVC1,VC2の位置情報(調整位置の組み合わせ情報)とともにEEPROM15から読み出す機能を付加してもよい。
【0072】
仮想入力反射係数算出部24では、現時点の出力端3bにおける進行波の電圧Vfo及び反射波の電圧Vroに基づいて、可変キャパシタVC1,VC2の全ての調整位置の組み合わせに対しての仮想の入力反射係数Гi(以下、「仮想入力反射係数Гi」という。)が算出される(S6)。
【0073】
具体的には、まず、下記に示す行列式4が用いられ、現時点の出力端3bにおける進行波の電圧Vfo及び反射波の電圧Vroと、第2Tパラメータ参照部26から出力された、可変キャパシタVC1,VC2の各調整位置の組み合わせ(図6参照)に対するTパラメータとから、可変キャパシタVC1,VC2の各調整位置の組み合わせに対する入力端3aにおける進行波の電圧Vfi′及び反射波の電圧Vri′が算出される。
【0074】
【数4】

【0075】
ここで、T11″,T21″,T12″,T22″は、可変キャパシタVC1,VC2の各調整位置に対するTパラメータの各パラメータである。すなわち、仮想入力反射係数算出部24では、現時点の出力端3bにおける進行波の電圧Vfo及び反射波の電圧VroをTパラメータ(T11″,T21″,T12″,T22″)の逆行列式を用いて逆演算し、入力端3aにおける進行波の電圧Vfi′及び反射波の電圧Vri′を算出している。
【0076】
次に、数式5に示すように、反射波の電圧Vri′から進行波の電圧Vfi′を除算することにより、仮想入力反射係数Гiが算出される。仮想入力反射係数Гiは、可変キャパシタVC1,VC2の全ての調整位置の組み合わせに対してそれぞれ算出される。可変キャパシタVC1,VC2の全ての調整位置の組み合わせに対しての仮想入力反射係数Гiは、対応する可変キャパシタVC1,VC2の位置情報とともに、メモリ27に順次送られ、メモリ27に一旦記憶される。なお、出力される仮想入力反射係数Гiの順番が決まっていて、対応する可変キャパシタVC1,VC2の位置情報が無くても、仮想入力反射係数Гiと可変キャパシタVC1,VC2の位置情報との対応関係が分かる場合は、仮想入力反射係数Гiだけを出力すればよい。
【0077】
【数5】

【0078】
最小反射係数特定部25では、仮想入力反射係数算出部24で算出されメモリ27に記憶された、可変キャパシタVC1,VC2の全ての調整位置の組み合わせに対しての仮想入力反射係数Гiのうち、その絶対値が最小の仮想入力反射係数の絶対値|Гimin|を選定し、選定された仮想入力反射係数の絶対値|Гimin|に対応する可変キャパシタVC1,VC2の調整位置が目標位置として特定される。例えば、図6に示すA点において、最小の仮想入力反射係数の絶対値|Гimin|が選定された場合、可変キャパシタVC1,VC2の調整位置(4,3)が目標位置として特定される。
【0079】
すなわち、仮想入力反射係数Гiのうち、その絶対値が最小の仮想入力反射係数の絶対値|Гimin|に対応する可変キャパシタVC1,VC2の調整位置に調整した場合に、入力端3aにおける反射波が最小になるので、インピーダンス整合を行わせることができる。
【0080】
なお、本実施形態では、最小反射係数特定部25において、メモリ27に記憶された、可変キャパシタVC1,VC2の全ての調整位置の組み合わせに対しての仮想入力反射係数Гiのうち、その絶対値が最小の仮想入力反射係数の絶対値|Гimin|を選定していた。これは目標となる入力反射係数(以下「目標入力反射係数Г′」という。)が0であり、この目標入力反射係数Г′に最も近似する仮想入力反射係数Гiを選定していることになる。ちなみに、反射係数が0というのは、反射係数を実数部と虚数部との和で表したときに、実数部および虚数部が共に0であることを示す。しかし、これに限定されるものではなく、目標入力反射係数Г′を0以外にしてもよい。この場合は、メモリ27に記憶された、可変キャパシタVC1,VC2の全ての調整位置の組み合わせに対しての仮想入力反射係数Гiのうち、目標入力反射係数Г′に最も近似するものを選定すればよい。所望する目標入力反射係数Г′は、予め設定しておいてもよいし、目標入力反射係数Г′を設定するための設定部を設けて、随時変更できるようにしてもよい。
【0081】
なお、最小の仮想入力反射係数の絶対値|Гimin|を選定する方法としては、可変キャパシタVC1,VC2の全ての調整位置の組み合わせに対しての仮想入力反射係数Гiのうちから、最小の仮想入力反射係数の絶対値|Гimin|を選定するのではなく、可変キャパシタVC1,VC2の全ての調整位置の組み合わせを複数個のグループに分け、あるグループ内に存在する可変キャパシタVC1,VC2の調整位置の組み合わせに対しての仮想入力反射係数Гiのうちから、最小の仮想入力反射係数の絶対値|Гimin|を選定するようにしてもよい。
【0082】
また、あるグループ内に存在する可変キャパシタVC1,VC2の調整位置の組み合わせの中から選定された最小の仮想入力反射係数の絶対値|Гimin|が所定の閾値を下回らないときには、他のグループ内に存在する可変キャパシタVC1,VC2の調整位置の組み合わせの中から最小の仮想入力反射係数の絶対値|Гimin|を選定するようにしてもよい。
【0083】
選定された可変キャパシタVC1,VC2の目標位置情報は、調整部11,12に送られ(S7)、これにより、可変キャパシタVC1,VC2は、ステッピングモータ等によって、特定された調整位置に変移される。すなわち、仮想入力反射係数Гiが最小となる位置に可変キャパシタVC1,VC2が調整される。
【0084】
これにより、可変キャパシタVC1,VC2のキャパシタンスC1,C2が可変され、インピーダンス整合装置3の入力端3aに接続される高周波電源1のインピーダンスと出力端3bに接続される負荷5のインピーダンスとが整合されることになり、負荷5に対して最大の高周波電力が供給される。
【0085】
このように、この実施形態によれば、インピーダンス整合装置3全体を伝送装置として扱い、可変キャパシタVC1,VC2の調整可能な範囲についてこの伝送装置の伝送特性をSパラメータ及びTパラメータの情報として取得しておき、これらの情報を用いてインピーダンス整合を行うので、従来のインピーダンス整合方法に比して高い精度でインピーダンス整合を行うことができる。すなわち、上記したSパラメータ及びTパラメータは、インピーダンス整合装置3内部における浮遊容量やインダクタンス成分等を含んだ整合回路に対する伝送特性を示すものであるから、可変キャパシタVC1,VC2のキャパシタンスC1,C2をこの伝送特性に基づいて算出した最小の仮想入力反射係数に対応するキャパシタンスC1o,C2oに調整することにより従来の構成に比べ、より正確にかつ精度よくインピーダンス整合を行うことができる。
【0086】
また、上記実施形態では、インダクタL1及び可変キャパシタVC1,VC2からなる整合回路が設けられたインピーダンス整合装置3についてインピーダンス整合が行われる場合について説明したが、従来の構成では、その整合回路の構成が異なると、回路構成に応じてインピーダンスの演算方法を変更する必要性がある。しかし、本実施形態では、整合回路の構成要素が異なってもそれを含むインピーダンス整合装置3全体としてのSパラメータ及びTパラメータを測定及び算出するようにしているので、その都度、演算方法を変更する必要がない。
【0087】
<第2実施形態>
図7は、本発明の第2実施形態に係るインピーダンス整合装置の制御部9Aの機能ブロックを示す図である。この第2実施形態に係るインピーダンス整合装置では、予め所望の入力反射係数Г′を設定し、それと可変キャパシタVC1,VC2の全ての調整位置の組み合わせごとのTパラメータのデータとに基づいて、仮想の出力反射係数Гo′を算出して、その中から現時点の出力反射係数Гoに最も近似した仮想の出力反射係数Гo″を選定し、選定した仮想の出力反射係数Гo″に基づいてインピーダンスを調整する点で第1実施形態のインピーダンス整合装置と異なる。
【0088】
以下、インピーダンス整合装置3の動作を、図7に示す制御部9Aの機能ブロック図、及び図8に示すフローチャートを参照して説明する。第2実施形態に係る制御部9Aは、ベクトル化部20、進行波反射波算出部22、第1Tパラメータ参照部23、出力反射係数算出部31、第2Tパラメータ参照部26、仮想出力反射係数算出部32、メモリ33、及び反射係数特定部34によって構成される。上記構成において、第1実施形態と同一の記号を付した部分については、同一の機能を有するものとする。その他の構成については、第1実施形態の構成と略同様である。なお、出力反射係数算出部31は本願の第3算出手段として、仮想出力反射係数算出部32及び第2Tパラメータ参照部26で構成される部分が第4算出手段として、メモリ33は第3記憶手段として、反射係数特定部34は第2特定手段としてそれぞれ機能する。
【0089】
この第2実施形態では、図8に示すステップS10〜S15については、第1実施形態の動作を示す図5のステップS0〜ステップS5と同様であるため、以下では、ステップS16からの動作について説明する。制御部9Aは、進行波反射波算出部22において、現時点の出力端3bにおける進行波の電圧Vfo及び反射波の電圧Vroが算出されると(図8のS15参照)、それら進行波の電圧Vfo及び反射波の電圧Vroを出力反射係数算出部31に出力する。
【0090】
出力反射係数算出部31においては、進行波反射波算出部22から出力された、進行波の電圧Vfo及び反射波の電圧Vroに基づいて、現時点の出力端3bにおける出力反射係数Гoを算出する(S16)。出力端3bにおける出力反射係数Гoは、以下の式によって算出される。
【0091】
【数6】

【0092】
出力反射係数算出部31において算出された、出力端3bにおける出力反射係数Гoは、反射係数特定部34に出力される。
【0093】
一方、第2Tパラメータ参照部26では、EEPROM15に記憶されている、可変キャパシタVC1,VC2の全ての調整位置に組み合わせごとのSパラメータのデータがそれぞれ読み出され、各SパラメータのデータがそれぞれTパラメータに変換される。変換されたTパラメータは、対応する可変キャパシタVC1,VC2の位置情報(調整位置の組み合わせ情報)とともに仮想出力反射係数算出部32に出力される。なお、出力されるTパラメータの順番が決まっていて、対応する可変キャパシタVC1,VC2の位置情報が無くても、Tパラメータと可変キャパシタVC1,VC2の位置情報との対応関係が分かる場合は、Tパラメータだけを出力すればよい。
【0094】
なお、これらのTパラメータは、例えば製品出荷前にインピーダンス整合装置3のSパラメータが測定されるときにTパラメータに変換された上で、EEPROM15に予め格納されていてもよい。
【0095】
また、Tパラメータが、EEPROM15に予め格納された場合、第2Tパラメータ参照部26では、可変キャパシタVC1,VC2の全ての調整位置の組み合わせに対応するTパラメータのデータを可変キャパシタVC1,VC2の位置情報(調整位置の組み合わせ情報)とともにEEPROM15から読み出して、仮想出力反射係数算出部32に出力する。あるいは、第2Tパラメータ参照部26をなくして、仮想出力反射係数算出部32に、可変キャパシタVC1,VC2の全ての調整位置の組み合わせに対応するTパラメータのデータを可変キャパシタVC1,VC2の位置情報(調整位置の組み合わせ情報)とともにEEPROM15から読み出す機能を付加してもよい。
【0096】
ここで、仮想出力反射係数算出部32では、予め目標となる入力反射係数Г′(以下「目標入力反射係数Г′」という。)が設定されている(通常、入力端3aにおける反射波が最小となるような入力反射係数Г′が設定される。)。この目標入力反射係数Г′は、数式7によって表すことができる。
【0097】
【数7】

【0098】
数式7において、Zinは目標インピーダンスであって、実数部Rin及び虚数部Xinの和であるZin=Rin+jXinで表される。また、Zoは特性インピーダンスである。なお、仮想出力反射係数算出部32では、目標入力反射係数Г′が直接的に設定されることに代えて、上記した目標インピーダンスZin及び特性インピーダンスZoが予め設定され、これらから目標入力反射係数Г′に変換されて用いられてもよい。
【0099】
仮想出力反射係数算出部32では、設定された目標入力反射係数Г′と、第2Tパラメータ参照部26から出力されたTパラメータに基づいて、出力端3bにおける仮想の出力反射係数Гo′(以下「仮想出力反射係数Гo′」という。)を算出する(S17)。
【0100】
具体的には、仮想出力反射係数Гo′は、数式8によって算出することができる。仮想出力反射係数Гo′は、可変キャパシタVC1,VC2の全ての調整位置の組み合わせごとのSパラメータ(又はTパラメータ)に対してそれぞれ算出される。
【0101】
【数8】

【0102】
ここで、T11″,T21″,T12″,T22″は、可変キャパシタVC1,VC2の各調整位置に対するTパラメータの各パラメータである。なお、数式8は、以下のようにして求めることができる。仮想出力反射係数Гo′は、出力端における反射波の電圧Vroを進行波の電圧Vfoで除算したもので表され、Гo′=Vro/Vfoとなる。反射波及び進行波の電圧Vro,Vfoは、数式3を参照してTパラメータを考慮すれば、Vfo=T11″・Vfi+T12″・Vri、Vro=T21″・Vfi+T22″・Vriで表される(Vfi,Vriは、出力端における進行波及び反射波の電圧)。したがって、Гo′=(T21″・Vfi+T22″・Vri)/(T11″・Vfi+T12″・Vri)となる。ここで、入力反射係数Г′はГ′=Vri/Vfiなので、Гo′=[T21″・Vfi+T22″・(Г′・Vfi)]/[T11″・Vfi+T12″・(Г′・Vfi)]=(T21″+T22″・Г′)/(T11″+T12″・Г′)となる。
【0103】
仮想出力反射係数算出部32において算出され、可変キャパシタVC1,VC2の全ての調整位置の組み合わせに対しての仮想出力反射係数Гo′は、対応する可変キャパシタVC1,VC2の位置情報(調整位置の組み合わせ情報)とともに順次、メモリ33に出力され、メモリ33に一旦記憶される(S18)。なお、出力される仮想出力反射係数Гo′の順番が決まっていて、対応する可変キャパシタVC1,VC2の位置情報が無くても、仮想出力反射係数Гo′と可変キャパシタVC1,VC2の位置情報との対応関係が分かる場合は、仮想出力反射係数Гo′だけを出力すればよい。
【0104】
反射係数特定部34では、仮想出力反射係数算出部32で算出されメモリ33に記憶された、可変キャパシタVC1,VC2の全ての調整位置の組み合わせに対しての仮想出力反射係数Гo′のうち、出力反射係数算出部31から出力された出力端3bにおける出力反射係数Гoに、最も近似した仮想出力反射係数Гo″を選定する。
【0105】
例えば、反射係数は、実数部と虚数部との和(実数部をu、虚数部をvとすれば、反射係数Гは、Г=u+jvで表すことができる。)によって表されるため、反射係数同士の距離は容易に求めることができる。すなわち、図9に示すように、出力反射係数Гoをuo+jvo、ある仮想出力反射係数Г1をu1+jv1とすると、uv座標上における両者の距離L1は、L1=√[(uo−u1)2+(vo−v1)2]で求められる。また、仮想出力反射係数Г1とは異なる仮想出力反射係数Г2(u2+jv2)と、出力反射係数Гoとの距離L2は、L2=√[(uo−u2)2+(vo−v2)2]で求められる。したがって、距離L1,L2のうち短い方の距離に対応する仮想出力反射係数(この場合Г2)を、出力反射係数Гoに最も近似した仮想出力反射係数Гo″として選定すればよい。
【0106】
次いで、反射係数特定部34では、選定された仮想出力反射係数Гo″に対応した可変キャパシタVC1,VC2の調整位置が目標位置として特定される。選定された仮想出力反射係数Гo″が、例えば図6に示したA点における調整位置を有している場合、可変キャパシタVC1,VC2の調整位置(4,3)が目標位置として特定される。
【0107】
すなわち、出力端3bにおける出力反射係数Гoに最も近似した仮想出力反射係数Гo″に対応する可変キャパシタVC1,VC2の調整位置に調整した場合に、予め設定された目標入力反射係数Г′に最も近似することになる。目標入力反射係数Г′は通常は最小値、すなわち0(目標入力反射係数Г′を実数部と虚数部との和で表した場合、Г′=0+j0)であるので、上述したようにして可変キャパシタVC1,VC2を調整すると、入力端3aにおける反射波が最小になって、インピーダンス整合を行わせることができる。もちろん、第1実施形態で説明したように、目標入力反射係数Г′を0以外にしてもよい。また、所望する目標入力反射係数Г′は、予め設定しておいてもよいし、目標入力反射係数Г′を設定するための設定部を設けて、随時変更できるようにしてもよい。
【0108】
特定された可変キャパシタVC1,VC2の目標位置情報は、調整部11,12に出力され(S19)、これにより、可変キャパシタVC1,VC2は、ステッピングモータ等によって、特定された調整位置に変移される。すなわち、出力端3bにおける出力反射係数Гoに最も近似した仮想出力反射係数Гo″に対応する調整位置に可変キャパシタVC1,VC2が調整される。
【0109】
このように、この第2実施形態によれば、第1実施形態と同様に、インピーダンス整合装置3全体を伝送装置として扱い、可変キャパシタVC1,VC2の調整可能な範囲についてこの伝送装置の伝送特性をSパラメータ又はTパラメータの情報として取得しておき、これらの情報を用いてインピーダンス整合を行うので、従来のインピーダンス整合方法に比して高精度でインピーダンス整合を行うことができる。
【0110】
また、予め目標となる入力反射係数Г′を設定するので、システム稼動後に、目標となる入力反射係数Г′の値を変更することがない限り、仮想出力反射係数算出部32における、可変キャパシタVC1,VC2の全ての調整位置の組み合わせに対しての仮想出力反射係数Гo′の算出演算は、一度で済ますことができる。第1実施形態の制御部9では、負荷変動時のたびに、仮想入力反射係数算出部24において入力端3aにおける進行波の電圧Vfi′及び反射波の電圧Vri′の算出演算を何度も行わなければならないが、本第2実施形態では、一度で済ますことができるので、演算負荷を大幅に低減することができる。また、第2実施形態では、第1実施形態のようにTパラメータの逆行列式を用いることがないため、Tパラメータの逆行列式が記憶される記憶領域が必要ないといった利点がある。
【0111】
もちろん、この発明の範囲は上述した実施の形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、端子回路網の特性パラメータとしてSパラメータやTパラメータを用いたが、特性パラメータとしてはこれらに限るものではない。例えばZパラメータやYパラメータであってよく、この場合は、これらのパラメータを上述したTパラメータに変換して上述のインピーダンス整合処理を行えばよい。
【0112】
また、上記実施形態では、インダクタL1及び可変キャパシタVC1,VC2からなる逆L型の整合回路を有するインピーダンス整合装置3について説明したが、整合回路の構成も上記実施形態の構成に限るものではなく、例えばπ型、T型、L型等が採用されてもよい。また、インピーダンス可変素子として可変キャパシタに代えて、可変インダクタが採用されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】本発明の第1実施形態に係るインピーダンス整合装置が適用される高周波電力供給システムの構成と、インピーダンス整合装置の回路ブロックとを示す図である。
【図2】EEPROMに記憶される、可変キャパシタの調整位置ごとのSパラメータのデータを示す図である。
【図3】インピーダンス整合装置のSパラメータを測定するときの構成図である。
【図4】制御部の機能ブロックを示す図である。
【図5】インピーダンス整合装置の動作を示すフローチャートである。
【図6】可変キャパシタの調整位置の組み合わせを模式的に示す図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係るインピーダンス整合装置における制御部の機能ブロックを示す図である。
【図8】第2実施形態に係るインピーダンス整合装置の動作を示すフローチャートである。
【図9】出力反射係数に最短の反射係数を選定する場合のuv座標を示す図である。
【図10】従来のインピーダンス整合装置が適用される高周波電力供給システムの構成を示す図である。
【符号の説明】
【0114】
1 高周波電源
3 インピーダンス整合装置
5 負荷
6 方向性結合器
9,9A 制御部
11,12 調整部
13,14 位置検出部
15 EEPROM
20 ベクトル化部
21 ネットワークアナライザ
22 進行波反射波算出部
23 第1Tパラメータ参照部
24 入力反射係数算出部
25 最小反射係数特定部
26 第2Tパラメータ参照部
27,33 メモリ
31 出力反射係数算出部
32 仮想出力反射係数算出部
34 反射係数特定部
L1 インダクタ
VC1,VC2 可変キャパシタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波電源と負荷との間に設けられ、インピーダンス可変素子のインピーダンスを変化させることにより、前記高周波電源と負荷とのインピーダンスを整合させるためのインピーダンス整合装置であって、
前記インピーダンス整合装置の入力端における、前記高周波電源から前記負荷側に進行する進行波に関する情報及び前記負荷から前記高周波電源側に進行する反射波に関する情報を検出する高周波情報検出手段と、
前記インピーダンス可変素子の可変値に関する情報を検出する可変素子情報検出手段と、
予め測定することによって取得された、複数の前記インピーダンス可変素子の可変値に関する情報に対する前記インピーダンス整合装置の特性パラメータを前記インピーダンス可変素子の可変値に関する情報との対応関係を持たせて記憶する第1記憶手段と、
前記可変素子情報検出手段によって検出された前記インピーダンス可変素子の可変値に関する情報と、前記第1記憶手段に記憶された前記特性パラメータと、前記高周波情報検出手段によって検出された進行波に関する情報及び反射波に関する情報とに基づいて、前記インピーダンス整合装置の出力端における進行波に関する情報及び反射波に関する情報を算出する第1算出手段と、
前記第1算出手段によって算出された前記インピーダンス整合装置の出力端における進行波に関する情報及び反射波に関する情報と、前記第1記憶手段に記憶された複数の前記特性パラメータとに基づいて、複数の前記インピーダンス可変素子の可変値に関する情報に対する前記インピーダンス整合装置の入力端における入力反射係数を算出する第2算出手段と、
前記第2算出手段によって算出された複数の入力反射係数をインピーダンス可変素子の可変値に関する情報との対応関係を持たせて記憶する第2記憶手段と、
前記第2記憶手段に記憶された複数の入力反射係数のうち、予め設定された所望の目標入力反射係数に最も近似する入力反射係数を選定し、選定した入力反射係数に対応する前記インピーダンス可変素子の可変値に関する情報を特定する第1特定手段と、
前記第1特定手段によって特定された前記インピーダンス可変素子の可変値に関する情報に基づいて、前記インピーダンス可変素子のインピーダンスを調整する調整手段と、
を備えたことを特徴とする、インピーダンス整合装置。
【請求項2】
前記第2算出手段は、
前記第1算出手段によって算出された前記インピーダンス整合装置の出力端における進行波に関する情報及び反射波に関する情報と、前記第1記憶手段に記憶された複数の前記特性パラメータとに基づいて、複数の前記インピーダンス可変素子の可変値に関する情報に対する前記インピーダンス整合装置の入力端における進行波に関する情報及び反射波に関する情報を算出し、この算出された前記インピーダンス整合装置の入力端における進行波に関する情報及び反射波に関する情報に基づいて、複数の前記インピーダンス可変素子の可変値に関する情報に対する入力反射係数を算出する、請求項1に記載のインピーダンス整合装置。
【請求項3】
高周波電源と負荷との間に設けられ、インピーダンス可変素子のインピーダンスを変化させることにより、前記高周波電源と負荷とのインピーダンスを整合させるためのインピーダンス整合装置であって、
前記インピーダンス整合装置の入力端における、前記高周波電源から前記負荷側に進行する進行波に関する情報及び前記負荷から前記高周波電源側に進行する反射波に関する情報を検出する高周波情報検出手段と、
前記インピーダンス可変素子の可変値に関する情報を検出する可変素子情報検出手段と、
予め測定することによって取得された、複数の前記インピーダンス可変素子の可変値に関する情報に対する前記インピーダンス整合装置の特性パラメータを前記インピーダンス可変素子の可変値に関する情報との対応関係を持たせて記憶する第1記憶手段と、
前記可変素子情報検出手段によって検出された前記インピーダンス可変素子の可変値に関する情報と、前記第1記憶手段に記憶された前記特性パラメータと、前記高周波情報検出手段によって検出された進行波に関する情報及び反射波に関する情報とに基づいて、前記インピーダンス整合装置の出力端における進行波に関する情報及び反射波に関する情報を算出する第1算出手段と、
前記第1算出手段によって算出された前記インピーダンス整合装置の出力端における進行波に関する情報及び反射波に関する情報に基づいて、前記インピーダンス整合装置の出力端における反射係数を算出する第3算出手段と、
予め設定された所望の目標入力反射係数と、前記第1記憶手段に記憶された複数の特性パラメータとに基づいて、前記第1記憶手段に記憶された、複数の前記インピーダンス可変素子の可変値に関する情報に対する前記インピーダンス整合装置の出力端における反射係数を算出する第4算出手段と、
前記第4算出手段によって算出された複数の反射係数を前記インピーダンス可変素子の可変値に関する情報との対応関係を持たせて記憶する第3記憶手段と、
前記第3記憶手段に記憶された複数の反射係数のうち、前記第3算出手段によって算出された前記インピーダンス整合装置の出力端における反射係数に最も近似する反射係数を選定し、選定した反射係数に対応する前記インピーダンス可変素子の可変値に関する情報を特定する第2特定手段と、
前記第2特定手段によって特定された前記インピーダンス可変素子の可変値に関する情報に基づいて、前記インピーダンス可変素子のインピーダンスを調整する調整手段と、
を備えたことを特徴とする、インピーダンス整合装置。
【請求項4】
前記所望の目標入力反射係数を設定する設定手段がさらに設けられた、請求項1ないし3のいずれかに記載のインピーダンス整合装置。
【請求項5】
前記特性パラメータは、Sパラメータ、又はこのSパラメータから変換されることによって取得されたTパラメータである、請求項1ないし4のいずれかに記載のインピーダンス整合装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−166412(P2006−166412A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−286882(P2005−286882)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(000000262)株式会社ダイヘン (990)
【Fターム(参考)】